技能実習評価試験の整備等に関する専門家会議(第42回)議事要旨

                               人材開発統括官海外人材育成担当参事官室

○日時 令和2年1月17日(金) 15:00~17:00

○場所 厚生労働省専用第13会議室(21階)

○出席者:
  大迫委員、岡野委員、下村委員、椎根委員、當間委員、冨高委員、羽柴委員、花山委員
  厚生労働省人材開発統括官海外人材育成担当参事官室、出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課、
  外務省領事局外国人課、外国人技能実習機構、公益財団法人国際研修協力機構
  (RPF製造関係)一般社団法人日本RPF工業会、経済産業省、環境省
  (漁船漁業関係)一般社団法人大日本水産会、水産庁
  (宿泊関係)一般社団法人宿泊業技能試験センター、観光庁、厚生労働省
 
○議題
1 RPF製造職種(RPF製造作業)の追加について
2 漁船漁業職種(棒受網漁業)の追加について
3 宿泊職種(接客・衛生管理作業)の追加について
 
○議事

1 RPF製造職種(RPF製造作業)の追加について
 
○ 日本RPF工業会より概ね以下のとおり説明があった。
・ 前回の専門家会議において、未経験の日本人従業員が技能を修得する場合に3年の期間を必要とするのは理解できたが、技能実習生の場合に5年の期間を必要とする理由を示して頂きたいとの御指摘があった。御指摘を踏まえ、5年の期間を必要とする理由を次のように整理した。
・ 一つ目の理由として、1)原料の理解、2)製造過程、3)機械故障・メンテナンス対応等について、それぞれ次の過程の実習内容と密接に関連するため、順を追って技能を確実に修得していくことが効果的であること。
・ 二つ目の理由として、1)原料の理解について、母国におけるプラスチック類や複合材などの廃棄物の種類や性状は先進国である日本と比べて概ね10数年程度遅れているため、母国での前提知識が通用せず、技能実習生は日本人従業員と比べて修得に最大半年程度の追加期間を要すること。
・ 三つ目の理由として、2)製造過程、3)機械故障・メンテナンス対応において機械を安全に動作させることについて、作業における安全の意識、知識及び文化が母国と日本で大きく異なるため、技能実習生は日本人従業員と比べて修得に1か月から3か月程度の追加期間を要すること。
・ 四つ目の理由として、1)原料の理解、2)製造過程、3)機械故障・メンテナンス対応等を指導までできるようになるためには、日本語の専門用語に加えて、日本語の日常用語まで修得することも必要であること。
・ 1)蛍光X線分析器による分析、2)車両機器の整備、3)自社で対応可能な修理か、外部の専門業者による修理かの判断は、技能実習生に対しては高度過ぎるのではないかとの御指摘があった。御指摘を踏まえ、各作業について次のように見直しを行った。
・ 1)蛍光X線分析器による分析は機器の操作ではなく分析値の理解・利用の方法の修得とした。
・ 2)車両のメンテナンスはオイルチェック、冷却水のチェックなど軽微な点検のみとした。
・ 3)自社で対応可能な修理か、外部の専門業者による修理かの判断は、工場長への報告までとし、最終判断は工場長が行うこととした。
・ RPF製造職種の実習期間は、1)原料の理解を1年目から2年目に行い、それを基に2)製造過程として原料の投入配合から最終検査、日常点検までの作業工程を2年目から4年目に行い、その後、3)機械故障・メンテナンス対応等を4年目から5年目に実習すると整理した。
・ また、各作業を更に細分化し、どの時期にどれくらいの期間で実習するかを整理した。技能の修得期間、技能の定着期間、部下を指導しながら実習する期間を整理した。
 
○ 同団体からの説明に対し、委員から意見、質問はなかった。
 
 
2 漁船漁業職種(棒受網漁業)の追加について
 
○ 大日本水産会より概ね以下のとおり説明があった。
・ 前回の専門家会議で確認いただいた内容で、2日間にわたり岩手県大船渡市で試行試験を実施した。学科試験と判断等試験は会社の事務所で、製作等作業試験は同事務所近くの港に係留した漁船上と岸壁で実施した。
・ 受検者は、各等級いずれも日本人3名で、実務経験は初級で2、3年程度の者、専門級で5、6年程度の者、上級で20から40年程度の者とした。
・ 試験官は、学識経験41年の者、学識経験40年の者、実務経験13年及び学識経験14年の者の3名を選任した。学科試験で1名、実技試験で3名が対応し、製作等作業試験は1名の受検者を3名の試験官で評価した。
・ 学科試験の結果は、初級で90点から95点、専門級で86点から93点、上級で60点から84点となり、上級の受検者1名が不合格となった。
・ 試行試験結果を踏まえた対応を試験委員会で検討し整理した。
・ 専門級の実技試験で、3名の試験官の評価が異なるものがあったため、評価を行った試験官と事務局で原因を整理した。評価に差が生じないよう、試験官マニュアルにチェックポイントを注記するとともに、図や写真による説明を加えた。
・ 初級の学科試験の問題の読み上げのスピードが速いと、外国人技能実習機構から御指摘を受けたため、試験実施細則に1問につき1分程度の時間を設けることを明記した。
・ 初級、専門級の実技試験は漁獲物写真がワンパターンで易しすぎるとの御指摘を受けたため、同じ種類の魚であっても他個体、大きさ、撮影アングルの異なる写真を用いることで難易度を上げる。
・ 上級の実技試験の「主要漁獲物の選別」は、 現場でも全てを完璧に選別する必要が無いこと、実務経験年数20~40年の日本人でも完璧に行うことは難しいことが明らかになったため、採点基準を修正した。
・ 上級の実技試験の判断等試験は、受検者が回答方法に戸惑う場面がみられたため、イラストのサイズ調整、簡単なタイトルの記載、試験官の説明方法の見直しを行う。また、操作の順番が各船で異なる選択肢が含まれていたため、各船で順番が一緒の事項のみを抽出して出題する。
・ 初級、専門級の実技試験の「ワーピングエンドの操作」は、周囲の者に危険が及ぶ作業を行った場合に点数を与えることは不適格と、前回の専門家会議で御指摘を受けたため、採点基準を見直した。
 
○ 同団体からの説明に対し、概ね以下のような質疑があった。
委員)試験中の受検者の発言内容を試験官が不正か否か判断することは困難であるため、私語を発言した時点で不正行為とすべき。また、不正行為の基準を学科と実技試験で共通にするべき。
説明者)御指摘を踏まえて、検討する。
委員)1人の受検者を評価する試験官の人数を、試行試験時の3名から実際に運用する際に1名とする理由の合理性が欠如している。
説明者)次回の専門家会議で説明したい。
委員)用語が地域で異なるが、全国の受検者が公平に受検できるようにしていただきたい。また、受検者が用語の意味が分からない場合に試験時に質問の機会を与えてはどうか。
説明者)対応について検討する。
委員)上級の学科試験において実務経験年数40年の日本人が不合格となっているが、試験の難易度は適切なのか。
説明者)試験内容の見直しを含めて検討する。
委員)上級の実技試験の「漁獲物の選別」の採点基準を変更した理由は何か。
説明者)現場の漁業者からの助言により変更した。
委員)同じく「漁獲物の選別」で、漁獲物のサイズ基準はどのように設定しているのか。また、漁業の場合、入港地により基準が異なり、実習で行っていない基準が試験で用いられる恐れはないのか。
説明者)資源状況によって年度毎に若干の基準変動は考えられるが、入港地により基準が異なることはない。しかし、念のために試験前に受検者に基準の確認を行う。これにより、実習とは異なる基準が試験に用いられることはない。
委員)試行試験の上級の受検者の実務経験年数が長過ぎる。実務経験年数が適切な受検者で試行試験を再度実施し、その結果を専門家会議に報告すべきである。
説明者)上級の試行試験の再実施について承知した。初級、専門級の作業追加をまず行うこととしたい。
 
○ 検討の結果、漁船漁業職種(棒受網漁業)の初級・専門級の追加について、次回以降、引き続き議論が行われることとなった。
 
 
3 宿泊職種(接客・衛生管理作業)の追加について
 
○ 宿泊業技能試験センターより概ね以下のとおり説明があった。
・ 前回の専門家会議において御指摘があった内容について対応を整理した。試験課題のシチュエーションやストーリーを予め想定しているのか、想定しているのであれば試験時期等により実習生に不公平が生じないように数種類のパターンを作ることまでを考えているのかとの指摘があった。御指摘を踏まえ、実習生に不公平が生じないよう複数パターンの試験案を作成する。
・ 判断等試験の「1.接客作業・衛生管理作業」の「利用客の安全確保」は専門級の試験では実施しないのかとの御指摘があった。利用客の安全確保の技能は第2号技能実習でも修得する技能もあるため、新たに試験課題を作成して試行試験を実施した。
・ アレルギーの有無の確認は第2号では実習生が自ら確認をすることになっているが、日本人ではどれぐらいの期間で出来るようになるのか、人の生命に関わるものなので、第1号と第2号で「上司の判断」「自分で判断」と必ずしも差をつける必要はないのではないかとの御指摘があった。日本人では日本語の理解力があるため1年程度で修得が可能であるが、技能実習生の場合は日本語の理解力を考慮し、第2号からアレルギーの有無を利用客に確認し、その有無を上司に報告することとした。
・ 料飲提供作業の配膳における手の不潔・清潔、本人の健康状態、手洗いのタイミング等を実技試験の採点基準や学科試験に追加すべきではないか、また、HACCPへの対応なども検討してはどうかとの御指摘があった。御指摘を踏まえ、初級及び専門級の料飲提供作業の実技試験の採点基準に、作業前の手洗いを追加した。手の不潔・清潔や手洗いのタイミングは学科の試験基準に含んでいたが、手消毒を追加した。本人の健康状態は安全衛生の疾病予防に含めた。HACCPへの対応も必要となる知識であるため、学科の試験基準に追加し出題範囲とした。
・ 旅館とホテルでどこまで試験を分けるのか、旅館とホテルで問題が全て異なることがないようにすべきとの御指摘があった。御指摘を踏まえ、テーブルセッティングの判断等試験の課題のみ和と洋の選択性とし、これらでレベルの差がないようにする。
・ 次に試行試験の結果を説明する。試験時間は初級は40分、専門級は45分で、受検者は各等級3名とした。初級の受検者は、在留資格が技術・人文知識・国際業務で実務経験1年1か月の者2名、在留資格が特定技能で実務経験5か月の者1名とした。専門級の受検者は、在留資格が技術・人文知識・国際業務で実務経験2年の者1名、1年9か月が2名とした。試験監督者は各等級ともに3名が担当し、初級で実務経験22年の者、7年の者、5年の者、専門級で実務経験17年、39年、7年の者を選任した。
・ 学科試験の結果は、初級で全員100点、専門級で90点が2名、83点が1名で、全員合格となった。
 
○ 同団体からの説明に対し、概ね以下のような質疑があった。
委員)具体的にどのようなシチュエーションを設定をして実技試験を行ったのか。
説明者)会議室を用意して、ここはフロントエリア、ここはロビーエリア、ここは入口のドアなどと、試験前に場面設定を伝えた。場面転換のときに、次の場面のもう少し詳しい説明が必要だった。
委員)実技試験ではどのような器具等を用いたのか。
説明者)例えば飲食物は写真を用いた。
委員)用意しづらいものがあることは理解するが、実技試験で使用する器具等は本物に近いものを用意したほうがよい。
説明者)御指摘を踏まえて対応を検討したい。
委員)試験実施体制等に関する要改善項目が多すぎるのではないか。このままでは受検者が同一条件で受検できないのではないか。指摘事項に対して1つ1つ緻密な対応を検討すべきではないか。
説明者)本番の試験が適切なものとなるよう着実に準備を進めてまいりたい。
委員)上司役の試験監督者が次の作業を指示するように進めると混乱がおさまったとあるが、試験が始まってから実施方法を変更したのか。
説明者)例えば、試験監督者がチェックイン作業を行ってくださいとだけ指示したところ、受検者は何をしなければいけないのか分からなかったので、具体的にこういうことをやってくださと指示したら、受検者はできた。
委員)それは答えを教えていることにならないか。
委員)試験監督者が一つ一つ受検者に指示しないと作業できないというのは、おもてなしと言えないのではないか。以前の専門家会議での説明と変わっていないか。
説明者)御指摘を踏まえて対応を検討したい。
委員)試行試験の学科試験の問題は技能実習で学んだ知識を確認するものではなく、日本語ができて一般常識があれば答えられてしまう問題のように思われる。内容について難易度を再度検討すべきであり、その際は学識経験者の意見を聞いた方が良い。
説明者)学識経験者の意見を聞いて難易度を再検討したい。
委員)3人の試験監督者の評価が分かれた場合には多数決も含めて協議で決定するとしてはどうか。例えば、1人の試験監督者だけが違う点数を付けた場合に、議論してみたら、この試験監督者の評価の方が正しいということもある。
説明者)御意見のように修正したい。
委員)実技試験の詳細な内容を事前に提供することは教え過ぎではないか。
説明者)御指摘を踏まえて対応を検討したい。
委員)第1号と第2号の技能実習でアレルギーの有無の確認内容に差を付ける理由は何か。
説明者)上司に確認を取るのは共通である。ただ、第1号の場合は、日本語が十分でなかったり、何をすべきか分からないため、実習生1人でお客様に注文を聞きに行くことは難しいので、上司に確認を取ることとしている。
一方、第2号では、実習生がアレルギーの有無をお客様に確認し、アレルギーがあると言われた場合はきちんと上司に報告し、上司がアレルギーの具体的な内容をお客様に聞きに行くこととしている。
委員)試行試験で不完全があったところのリストやそれらに対する詳細な対応を作成いただき、次回の専門家会議で検討することとしたい。
説明者)承知した。
 
○ 検討の結果、宿泊職種(接客・衛生管理作業)について、次回以降、引き続き議論が行われることとなった。

(以上)