第4回薬剤耐性(AMR)に関する小委員会

健康局 結核感染症課

日時

令和元年10月30日(水)13:00~15:00

場所

厚生労働省 共用第8会議室(11階)

議題

  1.   (1) 薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの進捗について
  2. (2) 抗微生物薬適正使用の手引きの改正について
  3. (3) 報告事項
  4.       セファゾリンが安定供給されるまでの対応について
  5. (4) その他

議事

 
○結核感染症課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第4回「薬剤耐性(AMR)に関する小委員会」を開催いたします。
本日は、19名中17名の委員の先生方に御出席いただいております。賀来委員と山中委員より御欠席の連絡をいただいております。
現時点で、定足数以上の委員に御出席いただいておりますので、会議が成立しますことを御報告いたします。
また、今回から農林水産省動物医薬品検査所検査第二部長の関谷委員、日本歯科医師会理事の征矢委員、川崎安全研究所企画調整担当部長の三﨑委員が新たに委員として御参加いただくことになりました。
また、今回、国立感染症研究所薬剤耐性研究センターより菅井参考人、成育医療センターより宮入参考人に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
また、紹介がおくれましたけれども、私、結核感染症課に8月末に参りました。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の資料をごらんいただければと思います。
まず、議事次第がございまして、その次が委員名簿、座席図があるかと思います。その後、
資料1 薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの進捗について
資料2 AMRアクションプランの進捗、医療分野からの報告
資料3 薬剤耐性研究センターの活動報告
資料4 坑微生物薬適正使用の手引き(第2版)(案)
資料5 セファゾリンナトリウム注射用「日医工」が安定供給されるまでの対応について
あとは、参考資料1から8までございます。
資料の不足がございましたら、事務局にお申しつけください。
では、冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきたいと思いますので、御協力をよろしくお願いいたします。
(カメラ退室)
○結核感染症課長補佐 以降の議事運営につきましては、渡邉委員長、よろしくお願いいたします。
○渡邉委員長 渡邉です。よろしくお願いいたします。
まず、本日の議題を確認したいと思います。議事次第を皆さん、見ていただければ、ここに先ほど事務局から報告がありました4つの課題について、これから検討させていただきたいと思います。御協力をよろしくお願いいたします。
まず、議題(1)「薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの進捗について」、事務局のほうから資料に基づいて説明をお願いいたします。
○結核感染症課長補佐 結核感染症課の嶋田です。
それでは、資料1を御確認ください。「薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの進捗について」ということで、1枚おめくりいただいて、2016年に始まった薬剤耐性対策アクションプランも、今回、2019年で4年目になりましたが、前回の小委員会から1年ほどあいていまして、今の進捗状況の数値目標の結果なども踏まえて、今回出てきましたので、そのことも含めて御紹介させていただこうと思います。
1枚目は、御存じのとおり、「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2016-2020)」の概要としまして、1から6の柱に基づいてアクションプランをやっています。
2枚目ですけれども、薬剤耐性ワンへルス動向調査で、今月の半ば、薬剤耐性ワンヘルス動向調査の検討会を開催していまして、17年から始まった年次調査報告書の、今回が2019年を準備しているところで、2017年、18年は既に公表されていまして、19年のほうを11月末に向けて公表できるように準備しているところです。細かい説明は避けますけれども、ヒトの分野と動物の分野と環境の分野と、データも少しずつそろってきていまして、また、これらの資料については、日本語版が出た後に、ちょっと時間がおくれますけれども、海外にも見ていただけるように、英語版を作成しているところです。
続きまして、これは前回にも使った資料で、2018年度から始まった、外来における抗菌薬適正使用の取組に対する評価ということで、小児外来診療における抗菌薬の適正使用の推進ということで、加算をつけているという話であったり、外来診療における抗菌薬の適正使用の推進といったものを進めているところです。
その次のページですけれども、これに追加して抗微生物薬の適正使用に向けた取り組みとしましては、現時点では、2017年6月に「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版」が出ているところですけれども、今回はそれに赤ちゃんと、幼稚園・保育園ぐらいの年齢の学校に行くまでの年齢の乳幼児の診療を含めた「坑微生物薬適正使用の手引き 第二版」を今、改訂中でして、この後、議題2のほうでそちらも見ていただいて御議論いただければと思います。
下の2.AMR対策に関して、母子健康手帳に記載を追加し、坑微生物薬の適正使用のために、母子手帳に任意記載として追加されています。
さらに3番としまして、坑微生物薬の「使用上の注意」としまして、手引きを参照して、抗菌薬の必要性を判断した上で、抗菌薬が適切と判断される場合に投与することという文言を追加しているところです。
おめくりいただきまして、これが国際協力の一環ですけれども、2017年度から薬剤耐性の国際会議を開催しておりまして、2017年は11月に、そして2018年度は2019年2月に開催しました。2019年は、2019年2月20日と2月21日に、それぞれ国際会議とシンポジウムを開催しまして、2018年に開催した分については、WHOの西太平洋事務局と共催しまして、アジア・太平洋諸国の保健省・農水省の薬剤耐性の担当者を集めまして、あとは、薬剤耐性に関するNGOとか国際機関の方々に集まっていただきまして、薬剤耐性のそれぞれの進捗状況を共有したりということをしております。
参考資料5のほうに、この国際会議の議長サマリーをまとめたものを載せておりますので、またそちらのほうも御確認ください。
今、2019年度ですけれども、今年度も国際会議に向けて準備しているところでございます。
その次のページのグラフですけれども、今、ワンヘルスの動向調査も始まってきておりまして、2018年時点ですけれども、抗菌薬の使用状況、つまりアクションプランの成果指標についての結果が出始めているところなので、こちらを御報告します。去年、2017年度は、2013年度と比べて7.3%、全体の抗菌薬の使用量の削減が確認されて、今年度、2018年度については、全体の10.6%減少しています。
また、もう一つの目標であった経口の広域抗菌薬については、経口セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライドについては、17~18%減少しているところです。一方で、静注の抗菌薬については、10%増加している現状です。
最後のページになりますけれども、後で詳しいところは感染研の菅井参考人のほうからお話があるかもしれませんけれども、もう一つの成果指標としまして、抗菌薬の量だけではなくて、特定の耐性菌の分離率のほうも2018年度まで結果が出ております。こちらについては、残念ながら減少傾向にあるようなものは余りないのですが、大きな変化もないのですけれども、今後、これについても時間がかかるものかなと思いまして、薬剤耐性の啓発ないし抗菌薬の適正使用について、今後、一層続けていく必要があるかなと考えています。
簡単ですが、資料1のほうは、以上です。
○渡邉委員長 資料2と3も報告していただいてから、皆さんの御意見を伺いたいと思います。資料2については、大曲委員で、資料3については、菅井参考人のほうからお願いいたします。
まず、大曲委員、お願いいたします。
○大曲委員 国際医療研究センターの大曲と申します。
私からは、医療分野、特に臨床の観点からのAMRアクションプランの進捗について御報告いたします。資料は2を使います。
1枚おめくりください。まず、柱の1つ、教育啓発でありますけれども、こちらは主に医療従事者向けと市民向けということで、活動をこの3年間ちょっと行ってきました。
2枚目ですが、医療従事者向けの教育啓発活動の内容であります。医療者向けのセミナーを行いましたし、あとは保健所の職員の方々を中心とした公衆衛生セミナーというものも行ってまいりました。感染症専門としては、一般の医療者の教育啓発は非常に重要でありまして、これはセミナーを行いましたし、eラーニングも用意して、診療の方法について資材を提供することを行いました。
次のページ、市民向けの教育啓発活動をお示しします。医療を受ける側の一般の方々のAMRに対する知識・意識の変容というものは非常に重要ですので、力を入れています。こちらについては、小さな調査等々を行う中で、主たる対象を小さなお子さんを持つ世代に我々は定めまして、主に啓発活動を行ってきました。若い人が多いですので、SNSを使う、ネットを使うといったことも行ってまいりましたし、さまざまなキャラクターを使った啓発活動、あるいは実地でセミナーとか催しを行うという形で活動を行ってまいりました。
1枚おめくりください。実際、その効果はどうなのかというところですけれども、2016年にアクションプランが始まりまして、最初に意識調査を行ったのが2017年3月でして、直近の意識調査は2019年9月に行っております。かぜやインフルエンザに対して抗生物質は効果的かという設問に対して、間違った方といいますか、正答を選択しなかった方の比率をここに経年的に並べておりますけれども、端的には最初の調査から、この2年半の中では大きな変化は見られないところでありました。
残念な数値ではありますけれども、先行するヨーロッパの実績等々を見ますと、国民的なキャンペーンが始まってから、実際に知識・意識の変化が出てくるのには、三、四年あるいは5年と時間がかかるところでありますので、こちらに関してはもう少し様子を見て、効果が出るのを待つということを考えております。
次のページでありますが、サーベイランスに入ります。この中で、主に病院の中におけるAMR対策のサーベイランスに使っていただいて、業務を軽減して、なおかつ対策に役立てるようなサーベイランスのプラットフォームをつくりました。感染対策連携共通プラットフォーム、J-SIPHEと申します。こちらを2019年1月に実装しましたので、こちらについても簡単に御報告します。
1枚おめくりください。こちらは、現在の利用施設数であります。日々ふえておりますが、2019年10月15日締めの数字でありますと、全国で347施設が登録しております。県ごとの参加施設の数は、左側の表をごらんいただければと思います。
その次のページには、全抗菌薬使用量の施設間比較ということで、実際にJ-SIPHEを使うとどのような数字が見られるかという、一つの例をお示しするためにこちらの表を持ってまいりました。横軸には、各種の抗菌薬の名前が書いてありまして、縦軸にはJ-SIPHEに参加する医療機関、そこにおける抗菌薬の使用量をAUDとして標準化したものをはこひげ図で示しています。その中で、自施設のものは橙色の四角で見られるということで、日本における抗菌薬の使用量のベンチマーキングができましたし、その中で自分たちがどこにあるのかがわかるようになってきております。
1枚おめくりください。J-SIPHEにより、病院でのAMR関連指標の全国統計が出せるようになった一つの例ということで、これはことし、スイスで行われた学会に出したポスターであります。J-SIPHEの試行時の登録施設、35施設ございましたけれども、その施設に登録していただいたAMR関連のさまざまな指標。これは、主に血液培養の評価指標が示してありますけれども、こちらを報告してまいりました。もちろん、この中身をこれから細かく検討することも重要ですが、このように日本の35施設でありますけれども、とは言っても35施設もありますので、日本の医療機関におけるAMR関連の指標の状況が見えるようになってきたということが、これでもおわかりいただけるかと思います。
次に、AMRワンヘルスの動向調査のWebサイトを御紹介しております。先ほど嶋田さんのほうから、この調査が行われていて、これは世界にも類を見ないもので、注目度も高いということを御紹介いただきましたけれども、一般の方でもわかりやすく見ていただくことが重要ということで、Webサイトにまとめて公開しております。ビジュアルに見られるということを大事にしました。
1枚おめくりください。それだけではありませんで、このワンヘルスの報告書には、医療だけではなく、農水のほうから、あるいは環境のほうからといった各分野から非常に貴重なデータが集まっています。これは、むしろ研究や政策に生かしていただくことが非常に重要です。そこで、これらの数値を自分の目的とする見方、この菌種を見たいとか、この県の状況を見たいという形で数字が見られるように、触れるようにしたプラットフォームをつくりました。ワンヘルスプラットフォームということで、これも公開したばかりであります。いわゆるヒートマップで、例えば抗菌薬の使用量の地域差が見られることが、これでできるようになりましたし、ぜひ活用していただければと思います。
次に、ヒト用抗菌薬の販売量の図を示してあります。こちらは、全体としては減少傾向にあるというのは、先ほど嶋田さんから御紹介いただいたとおりです。
1枚おめくりいただきまして、今後、日本がその中で検討すべき課題が2点ほどあるかと思いまして、持ってまいりました。
1つは、こちらのAWaRe分類であります。WHOが抗菌薬の使用動向の評価の指標の一つとして導入したものでありまして、UHCの達成評価指標の中にも含まれてきています。具体的には、抗菌薬の中に占めるAccessと評価されるお薬は、一般的な市中でよくある感染症のうち、第1選択から第2選択に入る、頻用される、そして世界のどこでも患者さんに届くべきお薬と定めているわけですが、WHOではそれを6割にするようにということを言っています。日本の状況はこちらにお示ししたとおりで、2018年ですと17%であります。
では、どうするかというところを日本としては考えていく必要があろうかと思います。私個人としては、数字も大事なのですが、日本で課題となっている問題点を議論して抽出した上で、適正使用をどう具体的に進めていくかという議論が先に来るかと思っております。
診療の動向の変化に関しては、この3年間で調査がレセプト中心に進みました。次に、非細菌性の上気道感染症による受診100回当たりの処方回数というものを示しております。いわゆる非細菌性上気道感染症、雑駁に言えばかぜでありますけれども、一般的には抗菌薬はほとんど必要ありません。本邦で行われた過去の研究ですと、本当に必要なのは7%程度であるという研究がございます。日本でそれがどうかということを、レセプトを使って調べていきますと、2012年4月が100回受診中の34.36、これが最後の月、2017年7月になりますと27.77回と、全体として見ますと19.2%下がっておりました。ということで、まだ処方頻度は高いのですが、全体として日本における感冒診療での抗菌薬の適正使用は、年々進んできていることが見てとれます。
1つおめくりください。ただ、その中で見えてきたのは、次のターゲットであります。これは、各世代ごとに感冒、非細菌性の上気道感染症で医療機関を受診された方の中で、実際に抗菌薬が処方された方の比率を示しています。そうすると、意外なことに、19歳から29歳のところにピークがございました。私たちは、むしろ若年者と高齢者で高いのではないかと予測しておりましたが、全く逆の傾向でありました。ということで、実は若い方ほど抗菌薬の処方される率が高いという現実があります。こちらに関して、状況をもう少し調べて、具体的に教育啓発の対策等々に反映していく必要があろうかと思います。
もう一つの課題は、次のページにあります。注射用抗菌薬の使用量は、2013年よりも2018年のほうが10%ほどふえたというところであります。
こちらに関しては、もう一枚おめくりいただきますと少し状況が見えてきます。具体的には、日本における注射用抗菌薬の使用量の大部分は、65歳以上の方の抗菌薬使用に費やされているわけですけれども、その全体の注射用抗菌薬使用量の中で、65歳以上の方が占める比率と量はどんどん上がってきています。このグラフの一番左でごらんいただけると思います。これをどう具体的に考えていくかということが、これからの議論の課題だと思います。
抗菌薬の適正使用、特に注射用抗菌薬の適正使用をすれば、医療機関によっては使用量がふえるところもありますし、逆に減るところもあります。ということで、具体的に何を評価指標として適正使用を進めていくかという慎重な議論が、これからは必要と思います。
最後に、抗菌薬の適正使用を推進するためには、添付文書に適切な使い方が反映されていなければなりません。ただ、添付文書はさまざまな制約がありまして、科学的な知見がタイムリーには反映されにくいという課題があります。ということで、これは研究班のほうで行っているのですが、添付文書の中で、現実のサイエンスの観点からして、記載内容と現実の抗菌薬の使い方に乖離があるものに関して、アンケートを広くとりました。
その中で重みづけをしてA、B、Cに分けて、Aに分けられるものは優先度が高いということで、今後、こちらの改訂がなされるように働きかけを進めていきたいと思います。こちらに関しては、厚労省の御意見も伺いながら、そして最終的には学会の先生方のお力をかりて進めていければと思っております。
長くなりましたが、私からは以上です。
○渡邉委員長 では、菅井先生、お願いします。
○菅井参考人 国立感染症研究所薬剤耐性研究センターの菅井でございます。
2017年に薬剤耐性研究センターが感染研にできまして、2018年から19年にかけての活動報告をしたいと思います。
1枚おめくりいただきまして、アクションプランの目標2の中に、NESIDの強化とJANISの強化というものがうたわれています。
3ページ目に役割がございますけれども、そこにありますように、ナショナル・アクション・プランにおける役割の実行ということで、NESIDの強化、JANISの強化。そして、病院・自治体への耐性菌対策支援。薬剤耐性に関する国内外の実態調査、それ以外にもありますけれども、そういったことが役割としてあります。今回は、その中の、主に上3つについての御紹介をしたいと思います。
1枚めくっていただきまして、4ページにこのセンターの概要ですけれども、1室から7室まであったのですけれども、2018年に第8室の真菌室が増設されました。
5ページ以降で活動の実態を御紹介したいと思います。
まず最初に、NESIDの強化ですが、1枚おめくりいただきまして、2017年に結核感染症課長の通知で、全国の地方衛生研究所でCREの病原体サーベイランスが開始されることになりまして、遺伝子の検査が実施されるようになりました。
7ページにその結果が記載されてございます。これは、感染症ベースですので、2018年ですと、日本全体で約2000例のCREによる感染症が発生したことがわかりました。
その内訳を見ますと、その下のほうに菌種がありますが、菌種を見ると、日本全国、狭い日本ですけれども、地域によって菌種に差があることがわかったのと、実際はCREを起こしているCarbapenemaseの種類のほとんどは、いわゆるドメスチックなIMP型というものであることがわかりました。しかし、一部、海外から入ってきたタイプのものもあることがわかりました。
その下を見ていただきますと、海外から入ってきたものに関しては、2017年、18年の例を見ると、今、急増していることが見てとれます。したがって、今後、海外型のCarbapenemaseを産生するCREによる感染症がふえることが懸念されます。
1枚めくっていただきまして、9ページに参ります。NESIDの病原体・患者情報をあわせたリスク評価というものを、昨年の秋から始めました。これは、病院でアウトブレイクが起こった場合に、保健所にその情報が行って、さらに検体が地方衛生研究所に行きますが、そこでそれぞれに患者情報、病原体情報がNESIDに登録されます。それらを感染研の疫学センターと、我々の薬剤耐性研究センターが毎週、テレビカンファレンスを行って、そこで全国における状況を把握して、その中で必要があれば、その病院あるいは自治体の保健所、地方衛生研究所にアラートを出すというシステムでございます。必要があれば、疫学センターからFETPを派遣して対応するというシステムでございます。
10ページに、これはことしの7月末までのデータですけれども、実際にリスク評価を行った事例が書いてありますけれども、その中で一番下にありますが、実際にこの評価によってリスクがあると考えられて、先方の要請によって実地疫学調査に入った例が1例ございました。
次に、JANISの強化について御説明いたします。12ページをごらんください。現在、JANISに参加している医療機関は、日本全体で2120ということで、2000病院を超えました。
中身を見てみますと、右上の赤であらわした図がありますけれども、右のほうが200床以下の病院でございますが、大きな病院は80%以上、JANISに参加していただいていますけれども、200床以下の病院はまだ12.5%ということですが、左側の上の図を見ていただいて、ブルーのラインが上のほうにありますけれども、今、200床以下の病院が勢いがあって、加入率がふえているということで、200床以下の病院のデータもとれるようになってきているということでございます。
13ページをごらんいただいて、現在JANISを強化していくということで、200床未満の病院と200床以上の病院についての、それぞれのアンチバイオグラムの結果を出しております。200床以下の病院のほうが、200床以上の病院よりも若干耐性率が高い傾向にあるということが出ております。また、外来検体についてのデータも出すようになってまいりました。
次のページをごらんください。14ページでは、国立国際医療研究センター、今、大曲先生が御説明になりましたJ-SIPHEのほうに、あるいはワンヘルスプラットフォームのほうにJANISデータを供給しまして、有機的に連携をとることをことしから始めております。
15ページに参りまして、実際にアクションプランで使われている成果指標というのは、JANISのデータをもとにしております。表に、先ほど嶋田さんから御説明がありましたように、2018年のデータと2020年の目標値のデータがありますが、ごらんのように、達成しているものもあれば、そうでないものもあるということで、実際の中身について、少しコメントしたいと思います。
17ページをごらんください。大腸菌のフルオロキノロン耐性率ですが、これはどんどん上がっている状態で、どう見ても2020年に25%というのは難しいということで、これは懸念されることであります。
18ページに参りまして、ブドウ球菌のメチシリン耐性率がございます。こちらは、今、下がってはきているのですけれども、その下がり率が非常に鈍化していて、今後上昇するかもしれないことが危惧されていて、唯一、黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率は下がってきているのですけれども、これも今後懸念されるところでございます。
19ページは、緑膿菌のカルバペネム耐性率ですが、こちらは順調にイミペネムもメロペネムも両方とも下がってきておりますが、イミペネムはまだアクションプランの成果指標に届きませんけれども、漸減している状況でございます。
1枚めくっていただきまして、20ページの大腸菌のカルバペネム耐性率ですが、こちらはほぼ横ばいで基準値を達成できそうでありますが、21ページの肺炎桿菌に関しましては、カルバペネム耐性率が、イミペネムもメロペネムも2018年は上向きになりまして、今後上昇するのではないかということが危惧されております。ということで、メロペネムは既に成果指標を超えておりますので、今後懸念の材料となると思います。
以上がJANISの耐性率を示したグラフでございます。
次に、JANISと連携したAMR病原体サーベイランスを御紹介したいと思います。これはJARBSと言います。23ページにございますが、AMED研究で、JANISでは感受性率と菌体、菌種名というものを同定したデータを扱いますけれども、それにさらに参加施設に呼びかけて、実際の菌をいただいて、その遺伝情報、ゲノム情報、そして可能な場合には臨床情報も取り込んだものをデータとして集めるというプロジェクトを、今、推進しているところであります。
次の24ページが現在の状況ですけれども、GNR、グラム陰性菌に関しては、ほぼ全国から菌株が集まってくる。194施設が参加しておりまして、黄色ブドウ球菌に関しては55施設が参加していただいて、現在進行中で、今、株を集めているところで、今年度、来年度で、合わせて3万株から4万株を収集して、その実際の解析を行う予定にしております。
それから、25ページに参りまして、ワンヘルス・AMRサーベイランス、三輪車プロジェクトと言いますけれども、もともとWHOが主導で行おうとしていたプロジェクトですけれども、WHOとFAOとOIEのトリパタイトで行うサーベイランス、世界的に行うサーベイランスに参画するということで、準備しております。
26ページに具体的なものが書いてありますが、ヒトと食品と環境に関する、大腸菌の中に占めるESBL産生大腸菌の割合を測定するというのをベースにするサーベイランスでございます。現在、ヒトに関しては薬剤耐性研究センターが、食品に関しては農水省の動物医薬品検査所に御協力いただき、環境に関しても、現在はパイロット的に薬剤耐性研究センターが行って、スタートしようとしているところでございます。
このように、いろいろなサーベイランスを行っておりますけれども、集まった株を1カ所に集積するということで、27ページにございますが、薬剤耐性菌バンクというものを設置いたしました。
28ページにございますが、薬剤耐性研究センターの敷地内にある標本棟というところを改修しまして、フリーザースペースをつくっていただいて、700Lのフリーザーが入って、現在のところ70万株ほどのキャパシティーを持つ容量は得ております。ここに今後、菌をデポジットしていくことになるかと思います。
29ページに、実際にこの薬剤耐性菌バンクが今、どういう状況にあるかということですけれども、上のほうに工事の日程、その後に現在進めておりますJARBSのグラム陰性菌あるいはブドウ球菌のサーベイランス、そして、三輪車プロジェクトと書いてありますが、それ以外に、下のほうをごらんいただきますと、ことしの4月にUS CDC、FDA、アメリカの薬剤耐性菌の代表的な株、ARパネルを受け入れました。
また、11月、これからですけれども、第一三共製薬の約11万株のサーベイランスの株を受け入れることで、昨日、所長との間で覚書を交わしました。また、北里大学、あるいは私が前職でおりました広島大学等の耐性菌をここに収載していく予定でございます。
また、2020年には、パスツール研究所から薬剤耐性菌のパネルを受け入れるということで準備を進めております。
次のページへ参りまして、30ページに実際のARパネルをいただいたUS CDCの株のリストがありますが、この中を今後、製薬企業やアカデミアで利用してもらうことを考えています。
ということで、31ページに薬剤耐性菌バンクの全体的なアウトラインを示していますが、さまざまな耐性菌、ヒトからのものもありますし、環境あるいは食品、そういったものをこの薬剤耐性菌バンクに収集して、菌株、臨床情報、ゲノムデータをデータベース化したものをつくりまして、それを大学・企業等にお渡しするということで、そこでのR&Dを進めていただくことを目的としております。
33ページに参りまして、国際貢献について、最後、少し御紹介したいと思います。JANISというのは、もともと院内感染対策ということで、国内での利用が企図されたものですけれども、これを海外でのサーベイランスに利用してもらうということで、ASIARS-Netに名前を変えまして、英語版のJANIS、海外版のJANISというものを作成しました。
34ページを見ていただきたいのですけれども、世界中のサーベイランスを見ますと、あちこちの地域でサーベイランスが動いていますけれども、東南アジア地域だけがサーベイランスがないということで、ここでASIARS-Netを利用していただいて、そこでのサーベイランスを補強しようということを目的としております。
35ページにありますように、昨年からことしにかけまして、モンゴル、中国、ベトナム、タイ、そしてインドネシアとコンタクトを持ちまして、モンゴルでは現在、MOUを結ぶ予定で動いておりますし、中国のGuangdong CDCとはMOUを結びました。ベトナムでは、ベトナム政府のMOH、厚生省とことしになってMOUを結びまして、ベトナムの病院で、このASIARS-Netを試行するということが正式に認められました。タイでは、既に74病院で、このASIARS-Netを使った解析を実施しております。インドネシアは、今、MOUを結んで、これから実際にパイロットを進めていこうという状況でございます。
36ページに、それとあわせて、こういった国々でのさまざまな技術支援を開始しております。特に、JICA、SATREPSといったものと協力しての技術支援を行っております。
39ページに飛んでいただきまして、今後の取組ですけれども、1番は、現在、行おうとしているのは、高齢者医療施設における耐性菌実態調査であります。JANISで御紹介したように、200床以下の小さな病院のデータは、まだまだJANISのデータに反映されておりません。そこで、これらの小さな病院を対象とした耐性菌実態調査を、口腔検体、便検体を対象としたものとして行いたいと考えておりまして、その後、感染症の発生・予後調査、あるいは口腔ケアの介入調査というものを計画してございます。
以上で、2018年、19年にわたるAMR研究センターでの活動を御紹介させていただきました。どうもありがとうございます。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
資料1から3に基づいて、今、報告をいただいたわけですけれども、時間の関係もありますので、全ての資料に対しての御質問等を受け付けたいと思いますので、何か御質問がありましたら。
まず、厚労省のほうの全体のプランニングに対してのインプリメンテーションというか、この状況について何か御質問がありましたら、お願いいたします。
荒川先生。
○荒川委員 質問が出ないなら、言い出しっぺでお伺いしますけれども、厚労省の資料1の最後のページで、肺炎球菌のペニシリン非感受性率、髄液検体というのは、2017年は29%が2018年で38%と、途中で1回底を打って、またふえているように読めるのですけれども、これは菌株のアイソレーションのバイアスでこういうデータが出ているのか、実数を反映して、こういう再増加するような傾向が出ているのか。多分JANISのデータだと思いますけれども、教えていただけるとありがたい。
○渡邉委員長 柴山先生から。
○柴山委員 このデータは、JANISのほうからデータを提供していると思いますけれども、前回のワンヘルスの会議でも同じような質問が出たと記憶しているのですけれども、肺炎球菌の髄液検体由来の菌株数ということで、もともとの数が非常に少ない、多分100以下だと思います。年によって、ちょっとばらつきがありまして、それでパーセントにすると、こういう大きなばらつきがどうしても出てしまうということがあります。そういう理由になります。
○荒川委員 わかりました。
○渡邉委員長 誤解を生むといけない。できれば、少ないものに関しては検体数か何かを入れておいていただくと、検体数のバイアスかなと、皆さん御理解いただけるのではないかと思うので。
○結核感染症課長補佐 ありがとうございます。
そうですね。柴山先生の追加ですけれども、ワンヘルスの報告書、たたき台のところをつくっているのですけれども、髄液検体のnの数で言うと、100前後です。一方で、髄液検体以外のやつは3万とか2万ぐらいで全然数が違うので、恐らくそういったところのバイアスがあるのではないかと思いますので、記載についても検討しますので、ありがとうございます。
○渡邉委員長 ほかにございますか。
今、厚労省もいろいろな対策を打ち出すということで、これが先ほどからも話がありましたように、実際に例えば抗菌薬の使用量などは減っているのだけれども、それが耐性率にどのぐらい反映するかというのは、今後問題だと思いますけれども、これも即、あらわれてくればいいのですけれども、先ほど報告がありましたように、諸外国でも三、四年後に出てくるということですので、もうちょっと長い目で見ないといけないのかもしれないですけれども、この辺のことに関して、もっとこういうことをやったほうがいいのではないかというサゼスチョン等がありましたら、皆さんのほうからお願いしたいと思います。
では、臨床の立場として、感染症学会とかは、舘田さん、どのように考えていますか。
○舘田委員 改めて、ここ何年かアクションプランが出されてからの活動の幅の広さとインパクトというものを感じることができました。感染症学会は、臨床を中心とする学会で1万1000人いますけれども、感染症学会の中では、みんながこのアクションプランの情報を共有しているし、抗菌薬の適正使用の重要性というものをしっかりと認識しているような状況になっていると思います。
ただ、問題は学会員じゃない人たちです。日本の中では、30万人ぐらいが医師として処方にかかわっていることが報告されていますけれども、感染症学会は1万1000人ですから、それ以外の先生方にどういうふうに教育・啓発していくのかということが大事な問題。これは、まさに我々もですし、医師会の先生方との連携が重要だなということを感じているところです。
もう一つは、今お話がありましたけれども、国際的な連携です。これも、今月の初めにアメリカの感染症学会とのジョイントシンポジウムでAMR、AMSがあったのですけれども、そこで国立国際医療研究センターの石金先生が日本の状況を発表してくださったのですけれども、各国が日本の動きというものに非常に注目しているなということを改めて感じました。特に、司会の先生がおっしゃっていたのですけれども、日本はパニッシュメントじゃなくて、リワードによって、インセンティブによって適正使用を進めているのかということを非常に驚かれて、それに対して質問が非常にあったということが特徴的だった。ほかの国ではなかなかできない行政的なサポートができているということです。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
医師会からの立場で、釜萢先生、いかがですか。
○釜萢委員 今、舘田先生から御指摘がありましたが、診療報酬上の手当というのが導入されました。これについては、どのような効果が出てきているかについて、また検証が行われると思いますし、その検証の結果によって、次期2020年の診療報酬改定にどういうふうに反映されるかは、今後、中医協で議論されてくるだろうと思います。このような手法がそんなにどんどん利用できるわけでもないだろうと思いますけれども、一つの考え方として、画期的なことではないかなと思います。
アクションプランの目標というのは、もうしっかり掲げられていて、それについてはかなり多くの医師が理解していると思うのですけれども、目標の達成が現在の対応だけでできるのかどうか、検討しながら、なるべく目標達成に向けて、あと足りないと思われるところは何なのか、そして、どのようにそれに対応したらいいかということを、常に考えていかなければいけないと思っております。
以上です。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
日本薬剤師会からで、宮﨑先生、いかがですか。
○宮﨑委員 薬剤師会の宮﨑ですが、このアクションプランが始まって、最初のときに抗菌薬の使用量減少の目標値が出されたときに驚いたのですけれども、その後、先生方の施策の実施によって使用量が下がっているというのは、ある程度実感しています。私どものほうでも、薬局での調剤数量についてパイロット的な調査もやっておりますが、それによると、確実に2013年を基点にすると下がっているのが現状でございます。
ただ、前回の診療報酬の改定で、たしか小児科のほうに点数がついたということで、それもある程度効果があるというのはわかりますが、ほかの診療科についても、特に処方頻度が高いのは、耳鼻科がちょっと高いのかなというのはつかんでいまして、そういったものも今後は反映させていく必要があるかもしれないなと感じる次第です。ただ、患者さん自身が理解している人がかなりふえたというのは実感としてはあります。ただ、大曲先生の発表にありましたように、まだ如実には出ていませんが、今後は学校薬剤師会とか、そういった中で広報といいますか、教育啓発に力を入れていく必要はあるかなと考えております。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
病院薬剤師会の前田先生、いかがでしょうか。
○前田委員 病院のほうでも、診療報酬でAST加算というものがつきまして、かなり積極的に取り組んでいると思います。研修も全職員が年2回しないといけないという意味では、かなり進んでいると思います。実際、当院のほうでも抗菌薬の使用量、第3世代経口セフェムとかキノロン系の使用量はかなり減っているのですが、このスライドのように、大腸菌のフルオロキノロン耐性というのは、同じ傾向でふえていたのです。この原因がなぜなのか。ほかは全部減っていたのですけれども、これがふえていたから、不思議だな、どうしたらいいかなということで悩んでいる状況です。
以上です。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
先ほど菅井先生のほうから、今度は口腔検体もという形でお話があったので、歯科医師会のほうから、征矢先生。
○征矢委員 歯科の場合は、使う薬の量も他科に比べると非常に少なく、使用薬の種類も限られており、影響は少ないと思いますが、国の考えに従い正しい使用法については、きちんと会員に伝えているところです。
○渡邉委員長 実際に投薬にはかかわらないのですが、看護の領域でも耐性菌の問題というのは、いろいろな感染症で重要だと思うのですけれども、井本先生は看護の立場からいかがでしょうか。
○井本委員 日本看護協会の井本でございます。
今、お話にありましたように、看護、特に感染管理の認定看護師は、病院内でのこういったチーム活動に一緒に参加させていただいております。今、アクションプランや、その結果をお伺いしまして、感染管理の認定看護師にもしっかり啓蒙・啓発していきますが、感染管理の認定看護師がいないような施設の看護管理者にも、情報をしっかり伝えていく必要があるなと感じました。
ありがとうございます。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
ほかに、皆さんのほうから。
どうぞ。
○釜萢委員 大曲先生の御説明の中にありましたJ-SIPHEでありますが、これとJANISとは連携がとれるようになったという御説明もありましたけれども、役割分担とか今後のすみ分けとかについて、どのような方向性をお持ちなのか、もし教えていただければありがたいと思います。
○大曲委員 ありがとうございます。
J-SIPHEの方向性は、JANISの方向性とも連動しているところがありまして、簡単には言えないのですけれども、1つありますのは、実装して9カ月間、運用してみまして、JANISで得られてきたデータをうまく加工する、適切な臨床で使う指標をうまく選んで出すということで、情報というのはかなり生きてくることをすごく実感しました。
ですので、これは私の私見も入りますが、JANISから情報をいただくという現在のスタイルは当然踏襲して、あとはむしろ実際の病院の中での感染対策を進める上で、見るべき本当に有効な指標を専門家の中で議論しながら選んでいって、フィードバックでお返しする。そこの表現といいますか、加工のところにJ-SIPHEとしての特色を出していこうと考えています。
○釜萢委員 ありがとうございます。
○渡邉委員長 ほかに。
どうぞ。
○舘田委員 日本のアクションプランの一つの特徴は、数値目標を入れたということですね。その辺も海外から注目されているわけですけれども、その数値目標自体が、これは行政のほうも発表したときに、かなりチャレンジングな数字として出させていただきましたということを言われたのが、僕は印象に残っているのです。
そういう意味では、大事な方向性を示していることは間違いないのですけれども、数値目標の達成のために抗菌薬の抑制をするのではなくて、我々の目標は、あくまでも適正使用を進める。その結果として数値がどうなってくるのかという考え方。そうしないと、数字がまだ足りないから、減らせ、減らせみたいな形になるのは、ちょっと違うのではないかということは、ここで確認していたほうがいいのではないかなと思います。
○渡邉委員長 確かに数値がひとり歩きしてしまっているという傾向もなきにしもあらずで、そうなったときに患者さんの実際の治療がうまくいくかという、もっと根本的な問題にも突き当たるかなと思います。その辺のところはどこかでディスカッションしなければいけないけれども、ここでディスカッションしていると時間が足らないので、どこか別の機会を、セッティングしていただいても構わないですし、事務局、ちょっと考えていただけますか。よろしいですか。
○結核感染症課長補佐 承知しました。
○渡邉委員長 どうぞ。
○菅井参考人 先ほどの大曲先生の御回答に追加したいと思いますけれども、JANISそのものは全国の病院での検体の薬剤感受性データと、どんな菌が出てきているかというデータでございます。J-SIPHEは統合データベースですので、実際に例えば抗菌薬の使用量だったり、さまざまなパラメータがほかにありまして、それを統合することで見えてくる。それが病院にフィードバックされて、そこで役立てるという意味では、よりJ-SIPHEのほうが統合的な解釈ができるということで、JANISはそれをサポートするということで考えていきたいと思います。
ありがとうございます。
○渡邉委員長 どうぞ。
○釜萢委員 御質問した背景としては、J-SIPHEは始まったばかりなので、登録数がそんなに多くないというところがあって、これは今後登録数をふやすほうがよいのか、それともデータとしては共有できるから、そんなに登録がふえなくてもよいのか、そのあたりはどうかなということもあったのですけれども、いかがでしょうか。
○渡邉委員長 大曲委員。
○大曲委員 行政的な観点からは、また別の目標がおありだと思いますけれども、もともとのJ-SIPHEの発想は、現場の業務の質を上げる。そして、数字をうまく対策に生かしていただけるための底上げのツールとして開発したというところがあります。そういう意味では、ぜひ多くの施設で使っていただきたいというのが正直なところです。ただ、そうすると、質の担保に物すごく責任が重くなるのは存じ上げておるのですが、適切な指標を用いて対策することの重要性というのは、見ていて非常に感じますので、私どもとしては、なるたけふやしていきたいと考えております。
○渡邉委員長 ほかにございますか。
はい。
○山野委員 大曲先生、菅井先生にお伺いしたいのですけれども、カルバペネム耐性というところが今回幾つか報告いただいていると思います。それが少しでもふえる傾向になると、治療するお薬もなかなかない状況で、治療に困っていくところがあるかと思います。そのあたりについて、医療現場の皆さんを含めた認知度もしっかり上げていく必要があるかと思うのですけれども、いかがでしょう。
○大曲委員 まず、臨床の現場からの声ということでお伝えしていきたいのですけれども、確かに今の数字だけ見れば、特に腸内細菌科のグラム陰性桿菌のカルバペネム耐性率はすごく低い状況で、幸いなことだと思います。ただ現実に例えば感染研のIASRでも最近、報告がありましたけれども、実際には、いわゆる海外型、NDM-1の産生菌とかKPCの産生菌の感染例としてのNESIDを通じた報告例はふえてきていると、私たちは見ています。この中には、一定の数は海外から持ち込まれたものです。もっと怖いのは、どこから来たか、よくわからないものが混ざっているというところでして、これは非常に注意すべき動向だと思います。
つまり、それがもっと膨らんでしまうと、欧州とか米国で起こっているような腸内細菌科のCPEの大きな問題が起こって、治療に難渋するという状況が日本でも十分起き得ると思います。個人レベルの経験で恐縮ですけれども、学会でも出したお話なのですが、海外でCPEによる感染症に罹患して、日本に戻ってこられた方の治療をこの数年で何人か経験したのですけれども、大変です。なかなか治りません。
ということで、臨床家としては、とんでもない感染症であるという認識が非常に強いです。1つは、もちろん持ち込ませない、ふやさないということも大事ですし、一方で、現実的に持ち込まれる方、そういう感染症になっている方はいらっしゃるものですから、そこにどう治療で対応していくのかということは、本当に現実的な問題になっていると思いますので、そこは開発の話にもつながってくるのですけれども、前向きにやっていくべきだと、現場の人間としては思います。
○渡邉委員長 どうぞ。
○菅井参考人 薬剤耐性研究センターのほうではIASRを出させていただきましたけれども、先ほどお話に出ました海外型のものが若干ふえる傾向にある中で、実際には渡航歴のない方の割合がかなり多いということで、ひょっとするともうかなり広がっているのではないかということが懸念されます。
それに対してJANISでは、先ほど申し上げましたけれども、感受性率と菌株がどういう菌かということの情報しかありませんので、それを補うためにJARBSというのを立ち上げて、全国のCREならCREについて、どの程度本当に海外型があるのかという的確な情報を得ようということで、現在、3万株ぐらいの菌株を収集することをやっているということでございます。
○渡邉委員長 ほかにございますか。
バンクが年間3万とか4万ぐらい集めるということですけれども、解析するのは結構大変なことかなと思うけれども、解析の優位順位とかを決める予定ですか。それとも、ランダムに全部解析していくのですか。
○菅井参考人 ありがとうございます。
今、JARBSのサーベイランス3万株というのは、AMEDの研究の中での話で、まだ継続的なということではございません。3万株集めるのですけれども、それに関しては、最初に来た株に関して、PCRで遺伝子があるかないかのチェックをして、そのデータは2カ月以内に病院に先にお返しするようにしています。詳しい解析はもう少し後に行うということで、一応対応しているところであります。
○渡邉委員長 どうぞ、荒川先生。
○荒川委員 J-SIPHEとJANISの連携が動き始めたということで、J-SIPHEですと、施設ごとの抗菌薬の使用状況が7ページにあるようにわかるようになってきている。恐らく施設ごとにわかれば、地域的にもどのぐらい薬が使われているのかがわかると思いますけれども、これをJANISのほうの施設データと突き合わせて、本当に特定の抗菌薬を使うと、その耐性菌がその施設でふえるのかどうかというのは、データを照合することによって関連性がわかってくるかなと思います。ですから、そういう調査とか解析とか研究をしていかれるといいと思いますけれども、既にそういうことは始まっているのでしょうか。
○大曲委員 ありがとうございます。
課題としては掲げています。実は、まだ具体的な数字を出すところまではいっていないところです。順番として、1つ大きな課題があるのは精度管理かなと思っていまして、上がってくる数字の正確性ですね。施設がたくさんふえていく中で、その正確性をいかに担保するかというところが、実はその前の課題で出ていまして、そこをまず解決していきたいと思います。
ただ、その中でも、正確なサンプルをとってきて、荒川先生がおっしゃったような抗菌薬の使用と耐性の動向ですとか、ほかの指標も検討の対象になり得ると思うのですが、そこはぜひやっていければと思っています。
○荒川委員 追加でもう一点。
○渡邉委員長 資料は幾つですか。
○荒川委員 資料2の9ページ、ここでヒトと動物の耐性率が出ていますけれども、最初の厚労省の御説明だと、環境のほうも調査されていくという方針が述べられていましたけれども、現在は厚労省と農林水産省が主に協力して、こういう調査をしておられると思いますけれども、環境省などがこういった調査、ワンヘルスの動向調査に協力していただくことは、海外でも環境関係の省庁がかかわっているところも多いので、日本でも環境省などにも加わっていただくといいと思いますけれども、その辺は今どんな準備状況でしょうか。
○渡邉委員長 事務局。
○結核感染症課長補佐 ありがとうございます。
ワンヘルスの動向調査検討会については、環境省さんも毎回、会議に参加していただいているのです。こういった作成をするに当たっても、いろいろ情報交換しているところでございます。
○荒川委員 環境省のアクションが余り見えてこないので、ここで言っても仕方ないですけれども、環境省さんにこの動きに積極的に協力していただけるような仕組みができるといいかなと思います。
それから、最後ですけれども、資料2の後ろから2枚目の図ですけれども、65歳以上の患者への抗菌薬の使用量は年々増加している。これは、1000人当たり、1日当たりということになっていますけれども、ふえているように見えているのですけれども、実際は65歳以上の高齢者の数が年々ふえてきているので、そのバイアスがここに出ているだけで、実際には1人当たりの65歳以上の高齢者について見てみると、こういう増加はあるのですか。もしわかれば教えていただければと思います。
○大曲委員 まだ正確にはわかっていないというのが私の回答になります。ただ、現状で要因として考えられるのは、荒川先生がおっしゃるとおりではないかと思います。つまり、65歳以上ということの単位となる患者さんの数、特に高齢の方がふえているということの及ぼす影響は出ると思います。
○荒川委員 どうもありがとうございます。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
皆さん、まだまだ御質問があるかと思うのですけれども、時間も限られておりますので、1から3までの資料に基づいて、もう一回読み直してみて、御質問等がありましたら、事務局のほうに寄せていただければと思います。それで、各担当者のほうから回答すると同時に、次の会があったときに、その質問内容、回答内容を御紹介いただければと思います。
続きまして、きょうの本題というか、議題(2)「坑微生物薬適正使用の手引きの改正について」に皆さんの御意見を伺いたいと思いますので、まず事務局のほうから説明をお願いいたします。資料4です。
○結核感染症課長補佐 事務局です。
資料4、分厚いですけれども、お持ちください。「坑微生物薬適正使用の手引き 第二版(案)」として、今回、出させてもらいました。
1ページめくっていただいて、目次のほうをごらんください。こちらの手引きの大まかな内容としましては、前回、2017年6月にできた第一版、主に成人と学童期以降の小児が入っているところですけれども、その後ろに新たに宮入先生たちに御協力いただいて、乳幼児、赤ちゃんと学校に行く前の世代のお子さんを対象にした、上気道炎だったり、下痢症であったり、中耳炎も入っているのですけれども、そういったものを加えたもので第二版という形にしています。というので、ページが前回の倍になりまして90ページぐらいになっておりまして、前回、第一版よりはかなり分厚いものになっています。
第一版の内容については、それほど変えているところはないので、確認いただきたいのは主に47ページ以降の乳幼児編のところです。章で言うと、7章、8章、9章、10章を見ていただきたいです。細かい概要につきましては、宮入先生のほうから御説明があると思いますので、お願いします。
○渡邉委員長 宮入先生、お願いいたします。
○宮入参考人 よろしくお願いします。成育医療センターの宮入と申します。
私と小児にかかわる厚労のAMRの研究班のメンバー、及びこちらの作業部会のほうで、こちらの小児版の手引きについて検討させていただきました。
まず、構成についてですが、47ページ以降、7章については、小児における気道感染症の特徴ということを述べております。8章には、小児の気道感染症の各論というものを、気道感染症を5つに分けて論じており、9章では、急性下痢症、10章では、急性中耳炎について述べさせていただいております。
まず、1つ背景ですが、先ほど大曲先生のほうから、抗菌薬の処方率に関しては、小児よりも成人のほうが多いという、少し驚きのデータもあったのですが、実際に小児の場合は、年に七、八回、かぜを引く、処方機会が圧倒的に多い状況でありまして、我々もナショナルデータベースで検討したところ、5歳未満の小児に対する抗菌薬の処方量・処方回数が圧倒的に多いということがわかりました。また、その中で、小児に使われている抗菌薬の80%が気道感染症に使われているということがわかるとともに、処方している医師がどの診療科かということを見てみますと、小児科医が40%未満で、60%が小児科医以外の人が小児の患者さんに抗菌薬を処方しているということがわかりました。
ですので、この手引きの目的としましては、深くというよりは、初診時に小児のいわゆるかぜを診たときに、抗菌薬を処方すべきか、すべきではないか、あるいは処方するのであれば、どのような抗菌薬を投与するのかということを検討するために手引きを作成しました。作成の過程としましては、各種ガイドラインに加え、各論の項目について文献検索をいたしまして、その中からエビデンスを抽出して推奨を出しております。
まず、概要につきまして、47ページの7番にありますように、主たる項目については、色のついた枠線の中に記載させていただいております。
まず、小児における気道感染症については、感冒、咽頭炎、クループ、気管支炎、細気管支炎と分類したということ。その中で、基礎疾患のない小児で、生後3カ月から小学校入学前の患者を対象として、重症例の管理等は対象外としております。かなり大ざっぱに言いますと、ほとんどがウイルス性疾患なのですが、その中から、細菌、抗菌薬が必要となるA群溶連菌による咽頭炎や、急性鼻副鼻腔炎、非定型肺炎をどのように鑑別するかがポイントになるのと、小児においては、二次性の細菌性肺炎であるとか、感冒の裏に隠れているさまざまな疾患を鑑別することがポイントになります。
こちらの1点目についての補足ですが、右の48ページの図1をごらんください。こちらは、気道感染症を5つの疾患に分類しておりまして、成人の場合は、感冒というものを、せき、鼻、のどといった3つの症状が同等時にあるものと定義しておりますが、乳幼児では、咽頭痛の症状を訴えることができないということや、鼻炎や感冒を鑑別することが難しいことから、このように分類し、さらに、もう少し大きなお子さんですと、咽頭炎、あとは小児に特有な気道感染症候群であるクループ症候群や細気管支炎というものを定義して、それぞれ抗菌薬が必要ないような状態と定義しているのが特徴です。
次の49ページの図2に、少し不鮮明ですが、気道感染症の診療のフローを示しております。まず、熱が出たと訴えて受診した乳幼児については、左のほうに行きますと、必ずどのような子であっても、尿路感染症や中耳炎を考慮するというポイントがありまして、その次に、そこから熱が出たというところの最初の分岐点、右に行って、バイタルサインの不良。重症例かどうかということを見きわめるためにPATという指標がありまして、こちらは図3にあります。Pediatric Assessment Triangleと言いまして、患者さんの見た目、呼吸状態、あとは皮膚の循環の状態をアセスメントして、何かおかしい場合には重症感染症の鑑別をするという流れになっています。
フローに戻りまして、気道症状あり、なしで分類し、気道症状がない場合には、先ほどの中耳炎や尿路感染症について再考するということ。気道症状があった場合には、インフルエンザを除外し、そして、先ほどの5つの感染症症候群、ウイルス症候群、気道感染症症候群に分類し、それぞれについて、チェックポイントとして重篤な感染症がひそんでいないかというレッドフラッグを鑑別し、さらに抗菌薬が必要な状態を鑑別した上で、全体として多くの症例は、最終的に抗菌薬は不要と流れるような診療のフローになっております。
47ページに戻りまして、小児では、年齢ごとのリスクを加味する必要があるという中ポチになりますが、こちらについては、小児の感染症の特徴について、生後3カ月未満というものは、非常に重症感染症を発症するリスクが高い年齢ですので、こちらはこの手引きから外して検討しているということと、先ほどもレッドフラッグというものがありましたが、咽頭炎と診断するのではなく、深頸部膿瘍、喉頭蓋炎といった重篤な感染症を除外することが非常に大事だということを挙げさせていただいています。
その下の3番目のポチですが、急性気道感染症の治療に用いられる治療薬には、小児に特有な副作用が知られているものがあるという記載があります。こちらのほう、50ページの表に幾つかまとめておりまして、成人では使用できるような抗菌薬についても、小児では特有の副作用があることがわかっておりまして、こちらを列記して注意書きとさせていただいております。
各論に参ります。時間の関係もありますので、一つ一つ詳しくお話ししませんが、8番の小児の急性気道感染症各論の感冒・急性鼻副鼻腔炎について概説しますと、基本的にはウイルス性の感染症ですが、抗菌薬に関する推奨としては、原則推奨しない、予防投与は行わない。しかし、症状が10日以上続くような例、軽快してから再増悪する例については、抗菌薬の適用になるかもしれないという話。そして、初期治療はアモキシシリンを考慮する。さらに、この症状が長引いた場合、非定型肺炎が考えられる場合は、マクロライド系を投与するという記載をしております。
次の53ページには、感冒で想定される自然経過を、作業部会のほうでこのような経過があったほうがよいのではないかという話がありましたので、追記させていただいて、細かい記載がその後に続いております。
55ページに、患者さんへの説明の仕方ということで、どのような説明が望ましいかという一つの例を挙げさせていただいております。その四角の後は、このような形で文献検索を行い、推奨を行ったという形になります。
57ページ、急性咽頭炎のほうは、対応としましては、A群溶連菌感染症については、臨床症状と検査結果を用いて、該当する場合にはアモキシシリンの投与を行うという簡単な記載になっております。
59ページのほうに、経過図とともに赤字で書いてあるレッドフラッグ、見逃すべきではない疾患についての詳細な説明を記載しております。
飛びまして、63ページのほうはクループ症候群。こちらは、ほとんどの例が原則としてウイルス性疾患による喉頭の炎症により、小児特有の犬吠様咳嗽を呈するような疾患となっておりまして、ほぼ全てがウイルス性と考えられる疾患です。その中で、鑑別すべきような重篤なものを記載しております。
66ページには、急性気管支炎。小児においては、急性気管支炎自体は、5歳未満では診断することは比較的まれですが、こちらについて、百日咳等についての注意喚起をさせていただいております。
飛んで、69ページ、急性細気管支炎、こちらも小児のウイルス性疾患で、2歳未満の小児における喘鳴を主体とした気道感染症で、こちらも抗菌薬の適用がないということを記載しております。
72ページに参りまして、急性胃腸炎と言いかえてもいいかもしれませんが、急性下痢症については、こちらはほとんどの場合、ウイルス性の一過性の感染症であるということ。さらに、小児であっても、細菌性腸炎の場合、抗菌薬の適用は比較的少なく、ただ、生後3カ月未満の細菌性腸炎、免疫不全者、重症例については、抗菌薬の投与が検討されるということを記載しております。
急性下痢症については、73ページにありますように、急性腹症や、さまざまな重篤な疾患が隠れておりますので、そちらの点を記載したものと、治療自体については、本手引きの主目的ではありませんが、脱水への管理というものが大事になりますので、74ページにそちらを記載してあります。
78ページに、急性中耳炎について記載を加えたのが今回の特徴であります。急性中耳炎については、学会等のほうから非常に詳細なガイドラインが出ておりまして、細かい診療についてはそちらに譲るということではあるのですが、1つ重要な点として、耳が痛い、鼓膜が赤いといった所見だけではなく、多くの場合、ウイルス性のもので自然軽快する可能性があるということを加味して、全例治療必要ないということ。そして、治療が必要となるような状況についての記載を加えて、抗菌薬の処方に関しては、第1選択薬だけにとどめ、アモキシシリンについて記載させていただいたという形になります。
以上、長くなりましたが、報告させていただきます。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
では、今の御説明に対して、全体的な御意見を伺いたいと思います。小児科医でもあります釜萢先生、いかがでしょうか。
○釜萢委員 どうもありがとうございます。
この案を見せていただいて、私は非常にすばらしい内容だと思って、大変感銘を受けました。「坑微生物薬適正使用の手引き」の第一版が出されましたときに、小児科医はそういう意識は既に大体持っていたので、非常にいいものができたな、抵抗なく受け入れられたのですが、それ以外の特に内科の先生からは、坑微生物薬の使用の制限のような感じで、少し抵抗感が示されたわけです。舘田先生の感染症学会からも、基礎疾患を有する対象に対するものができて、大分皆さんの中にしっかり定着してきたなと感じておりました。今回出された学童より前の部分についての記載は、一小児科医としては、我が意を得たりという感じであります。
幾つか申し上げたいのですけれども、まず、溶連菌感染の部分で非常に大事だと思いますことは、58ページの記載の下のほうにGAS、これは溶連菌感染ですが、検査の基本原則は、適用外の児に行うと保菌者を拾い上げ、過剰な抗菌薬使用につながるため、検査適用を吟味すること。適用のある児に対して検査を行い、3迅速検査が陽性であれば培養は不要。まさにおっしゃるとおりです。
それで、下に検査適応表と書いてありまして、この表は下の表だとわかりますけれども、もうちょっとこれを特定できるように、下の表のことだとわかるようにやっていただいてもいいと思いますけれども、この中の、急性GAS咽頭炎の身体所見を有する。ここが非常に大事でありまして、この人に対して迅速診断をやるべきなのであって、ほとんど症状がないような人にやって、陽性に出たから、さあ、お薬というのが非常に問題なのでありまして、そこに対して非常にしっかりと書いていただいていることに、大変感銘を受けました。
もう一つは、69ページの下のほう、細気管支炎の診断と鑑別のところに、診断は臨床診断であり、血液検査、胸部X線画像、迅速抗原検査は一般に必要ない。ここの記載も非常に大事でありまして、ちょっと細気管支炎を疑った場合には、すぐRSの検査をするというのが、今、一般的かもしれませんが、大事なことは、評価するためには、バイタルサインと酸素飽和度です。まさに重症度がどうなのかというところに、全ての神経を集中して患者さんを拝見しなければならないわけでありまして、その意味で非常に使いやすい、すぐれたものになっていると思います。
全面的に大変すばらしい内容なので、大変うれしく存じておりますが、細かいことで恐縮ですが、1つ指摘させていただくと、49ページのこの図2、先ほど宮入先生から御説明がありましたが、すごく大事なので、もっと大きくしましょう。大きく見やすい表にしていただいて、1ページ、これに割いていただきたいというのがお願いでございます。
私からは、以上です。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
宮入先生、何かありますか。
○宮入参考人 ありがとうございます。ほっとしました。
○渡邉委員長 ほかの小児科の先生。
○八木委員 名古屋大学の八木です。
私は、感染症が食いぶちになっていますけれども、小児科は苦手で、余り診たことがないのですが。先生、先ほど一番最初にお話しされたように、これの対象になる人は、釜萢先生のようなベテランの小児科医の先生ではなくて、小児科以外の専門科のクリニックをやられているところに来られた先生が対象になるということで、そういったところにも配慮されているような、例えば自然経過の表であるとか。ざっくりとどういう経過をしていけばいいというのは、小児科の先生はそういうものは身に染みてというか、イメージがあると思うのですけれども、そういったところがなかなかうまくないような人にも、割とわかりやすいような形で書かれているなと、私自身、専門外として感じましたので、そういったところの配慮があります。
しかも、どういったところがレッドフラッグというか、危ないというか。先ほど、レッドフラッグでもないようなところで重要なポイントが幾つか、釜萢先生からも御指摘があったので、例えば本文で特に注意してほしいようなところは太字にするとか。ボリュームが結構あるので、次、専門外の先生がこれを全部読んでくれるかどうか心配で、ここが大事じゃないかというところがハイライトしてあると、より親切なのではないかと思いました。
以上です。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
まさしくそうで、これだけボリュームがあると、皆さん、なかなか読まないというか、読みたくなくなってしまう可能性があるので、1枚か何かのパンフレットじゃないけれども、診療所のどこかにとめておいていただくという工夫はございますか。
○結核感染症課長補佐 事務局です。
正直言うと、読んでほしいですけれども、先生方、みんな忙しいと思うので、第一版については、こういうダイジェスト版を出しているのです。第二版についても、こういったものが出せないかどうか、今後検討していきます。こういったものをちらっとクイックルックで見ていただいて、より細かいところはホームページ上で、この冊子が見られるような形にしたいと思っていますので、ありがとうございます。
○渡邉委員長 ほかに。
はい。
○高野委員 慶應の高野です。
看護師の立場からも、中身は大変長いのですけれども、内容はすごく読みやすいと思いました。それで、医師が保護者の方に説明されると思うのですけれども、そのときに看護師・助産師・保健師がそのサポートをするためには、これを読んで、自分たちも正しく理解して看護していけるといいかなと思いました。また薬剤師などほかの医療職も活用していけるのではないかと思います。
○渡邉委員長 ありがとうございます。ぜひお願いしたいと思います。
では、宮﨑さん。
○宮﨑委員 薬剤師会の宮﨑ですが、非常に細かく、丁寧に書いてあって、参考にさせていただきたいと思うのですが、処方されるのは小児科の先生方です。全般的にそうですが、全部アモキシシリン水和物が推奨されているということですね。気になるのが、これだけアモキシシリンの使用がふえたときに、アレルギーといいますか、特有の副作用が発生しないのかということです。
もう一つ、後でセファゾリンの供給の問題が出てきますが、アモキシシリンは大丈夫でしょうねというのが、我々供給側からするとお尋ねしておかないといけないことかなと思います。
○結核感染症課長補佐 事務局からですけれども、確かにアモキシシリンの表記が多くて、基本的には手引きで伝えたいメッセージというのは、ウイルス性感染症については、上気道炎であっても、下痢症であっても、基本的には抗菌薬が要らないケースが多いということと。使うときについては、もちろんアレルギーもしっかりと気にしないといけないと思いますけれども、ないようであれば、溶連菌や中耳炎であればアモキシシリンで、ファーストラインでいいということです。
今回、僕たちが出せるのはあくまでもベーシックなところだと思っていて、あと、より例外とか。処方は個別になってくると思いますので、そういったところについては、先ほど釜萢先生のほうから御紹介いただいた、感染症学会が出されている気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言みたいな、そういった別のガイドラインとあわせながら診療していただくのがいいと思います。
また、このガイドラインの中にも、感染症学会さんであったり、化学療法学会さんとか耳科学会さんのガイドラインとかも引用して載せていますので、そういったものを組み合わせながら、お互い補完し合って、目の前の患者さんに対して、こういったガイドラインを使いながら、患者さんにとってのよりよい診療とは何なのか、適正使用とは何なのかということを考えてもらって診療していただきたいなと思っています。
あと、アモキシシリンについては、今のところ、こちらのほうではセファゾリンのような状況になっているというのは聞いていません。
以上です。
○結核感染症課長補佐 アモキシシリンの流通について、つけ加えますと、我々、縦割りで恐縮ですけれども、流通状態を監視・監督している部署ではありませんのと、事前に準備ができていませんので、その状況について、この場でどうこう申し上げることはできないのですけれども、先ほど嶋田のほうから申し上げましたとおり、現状、著しく足りなくなっているという話は聞いていないという点と、必要な医薬品でありましたら、必要な分、流通を確保するというのは、別途、国がやるべきことだと思いますので、それについては問題がないように、引き続き省内で連携をとって対応してまいりたいと思います。
○宮﨑委員 私がお願いしておきたいのは、例えばこのガイドラインに沿って処方された場合に、現状ですとペニシリン系とかセファロスポリン系がこのぐらい販売されていますというのが出ていますね。そうしたら、このガイドラインに沿って、実際に処方が行われた場合に、どの程度ペニシリン系がふえて、ほかのものが減るかというのが多分出るのではないかという推測、シミュレーションをしていただきたい。その上で、厚労省としては予測を立てていただかないと、足りなくなったでは済まない話なのです。ぜひそこの研究といいますか、検討をしていただきたい。
患者さんの発生率、発症率がこのぐらいあって、そのうちの何割にアモキシシリンが出ると、どのぐらいの使用量が出ますということぐらいは、ある程度の概算はできると思うので、ぜひそこは検討していただきたいと思います。
○渡邉委員長 これは、現在の小児のこういう急性気道感染症に何がどのぐらい使われているかというデータは、どこかで出るのですか。
○結核感染症課長補佐 事務局でございます。
まず、このガイドラインに沿った場合、幾つかさまざまな影響が考えられると思います。
1点は、本来不要であったはずの抗菌薬がどのぐらいなくなる可能性があるのかという点と、先生御指摘いただいたように、これまで使っていたものからどのようにシフトしていくのかという点がありまして、全ての状況をシミュレーションするというのはなかなか難しいかと思いますけれども、どの辺ができるかというのは具体的に先生方とお話ししながらということになりますので、我々のほうでどこまでのデータが今すぐ出せるかというのは、ちょっとお答えできないですが、何ができるのか、考えてみたいと思います。
○渡邉委員長 どうぞ。
○宮入参考人 2012年から2016年にかけて、国内で抗菌薬が小児の何に使われているかという検討を我々の研究班で行いまして、急性上気道炎や下気道炎に対する処方率は3割ぐらいとなっています。適正使用が非常に進んでいるクリニックさん、あるいは救急外来での処方率は10%程度ですので、減らすところまで減らしたら、全体の量は3分の1に減るのではないかという見積もりがなされるかもしれません。
あとは、使用されている抗菌薬の種類で言いますと、第三世代セフェムとマクロライドが全体の六、七割を占めます。それが、もし半分でもアモキシシリンに切りかわると、相当な数にはなると思います。
済みません、大ざっぱな話になりますが。
○渡邉委員長 はい。
○宮﨑委員 ぜひ、そういったデータをもとに試算しておいていただければ、慌てないで済むということです。
○渡邉委員長 今の基本的なデータがあるので、そこから大体の換算は出てくると思うので、それに対して、今のアモキシシリンの供給量が間に合うのかどうかというところを、ちょっと計算していただければ、そんなに難しい計算ではないのではないかと思います。もし、宮入先生のところでやっていただければ、研究班でせっかくやられたデータがあるから。ちょっと検討していただければと思います。
ほかに。
○三﨑委員 川崎市の健康安全研究所の三﨑です。
私も実は小児科医でして、これを全体的に見せていただいて、年齢別のリスク評価とか、非常によくわかるような内容と思いました。
1点だけ、地方の情報センターとして発生動向を見ている立場として、気になったものが百日咳でして、百日咳は地域での流行が国の動向とはちょっと変わった形の流行が見られております。ワクチンを4回打ったお子さんでもなってしまっているという現状もあります。66ページに百日咳の記載はありますが、確定例との非常に濃厚な接触、あるいはその可能性が高い場合には抗菌薬が必要となることもあり、47ページのA群溶連菌等と書いてある部分にも百日咳の一言があるほうが、よりわかりやすいのではないかなと思いました。
以上です。
○渡邉委員長 ありがとうございました。
非常に重要な指摘だと思います。特に、百日咳は成人で非定型的な症状の方が出ているということで、その診断ができるようになったのも、PCRを含めたセンシティブな診断薬が使えるようになったということがバックにあると思うので、そうなったときに、大人から子供にという可能性も十分あるので、その辺を小児科の先生も考えていただくというのは、どこかにコメントを加えていただければ非常に参考になるのではないかと思います。よろしいでしょうか。
ほかにございますか。
今、全体的なお話を伺ったのですけれども、細かい点がもしありましたら、47ページの7章、小児における急性気道感染症の特徴と注意点、このあたりでもうちょっと細かい点で指摘がありましたら、お願いいたします。
荒川先生。
○荒川委員 この第一版のときに、抗菌薬を使わないことが適正使用みたいに誤解を受けるような記載がありました。確かに抗菌薬が必要でない症例には使わない。ただ、A群連鎖球菌みたいなものの場合は、きちんと治さなければいけないので、そういうところを強化してほしいというコメントをしたのですけれども、今回のこの第二版ではそのあたりが非常に充実していまして、臨床の現場の方、専門の方も含めて、非常に参考になる資料かなと思いました。
先ほど分厚いとか、長いとか、いろいろ御指摘もありましたけれども、ぜひ一、二枚の要約版みたいなものをつくって、感染症の治療ではなくて、耐性菌をいかに出さないかということに焦点を絞ったポイントを整理した薄いものをつくっていただいて、詳しく読みたい人は、どのページの何行目を読めば、それがわかるかという情報もつけていただけると、非常に使いやすいものになるのではないかなという気がしますので、要約版と本文と分けていかに使いやすくするかご検討頂けるといいと思います。
あと、関連学会のガイドラインが、先ほどありましたようにたくさんありますので、それもどこのガイドラインを見れば、より詳しく書いてあるかという情報も、もう少し書き込んでいただくと、あるいは定期的にバージョンアップしていただくと、外来の患者さんを診ておられるドクターは、より使いやすいのかなという気がします。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
事務局から何かありますか。
○結核感染症課長補佐 荒川先生、ありがとうございます。
今後、ダイジェスト版をつくっていく上の参考にしていきますので、よろしくお願いします。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
ほかにございますか。
では、8章の小児の急性気道感染症各論のところで、細かい点でも結構ですので、何かございましたら。よろしいですか。
では、9章の急性下痢症については、今、余りコメントがなかったのですけれどもね。子供の場合、ウイルス性が多いということで、たまに細菌性のものもあるので、そこは見逃さないようにしておかないとまずいかなと思いますけれども、よろしいでしょうか。
続いて、10章の急性中耳炎。先ほど、前田先生のほうから中耳炎も結構重要ではないかという御指摘があったのですけれども、子供の急性中耳炎の場合の抗菌薬の使用方法等について、記載がありますけれども、いかがでしょうか。
もしないようでしたら、今、皆さんからいただいたコメントをもとにして、リバイスしていただいて、先ほどちゃんとここだけは読んでくださいというのは、少し字を太くするとか、赤字にするとか、そういう注意事項がありましたけれども、その辺は適時入れていただくと読みやすくなるのではないかと思います。
あと、パンフレット版の御用意のほうをよろしくお願いしたいと思います。
もしよろしければ、今のような方針で、この第二班改訂版を進めるということで、皆さんの御了解を得られたということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○渡邉委員長 ありがとうございます。
では、事務局のほう、お願いいたします。
○結核感染症課長補佐 それでは、本日いただいた御意見に加えまして、また関連する学会からももう少し御意見を伺った上で、体裁等を微修正いたしまして、発出に向けて準備させていただきたいと思います。
○渡邉委員長 では、議題3の「報告事項」をお願いいたします。
○結核感染症課長補佐 事務局です。
資料5をごらんください。「セファゾリンナトリウム注射用が安定供給されるまでの対応について」ということで、事務連絡、1枚ありますので、ごらんください。
セファゾリンナトリウムの件ですが、先ほどから委員からも少しお話があったように、ことし初めから、セファゾリンナトリウムの一つの会社、比較的シェアの大きいところが安定供給できなくなってしまったことを踏まえまして、厚生労働省としまして、まず3月の終わりに事務連絡を出しまして、セファゾリンが使えないときの代替薬のリストを、AMRの臨床リファレンスセンターと一緒につくったものを1つ出しました。
それから、それだけではなくて、いろいろアンケートをとったり、感染症部会を経てわかってきたことは、一部のごく限られたところですけれども、アンケートの結果、セファゾリンナトリウムがないせいで患者さんを診られなかったとか、患者さんを診られずにほかの病院に搬送してしまったとか、手術をするのを延期したというケースがありましたので、少なくともそういったところを何とか対応したいということを踏まえまして、9月30日にこのような事務連絡を経済課と感染症課の連名で出しました。
これは、セファゾリンナトリウムがない場合、そのせいで患者さんが診られなかったり、手術を延期した医療機関については、連絡をいただければ感染症課と経済課のほうで協力しまして、あと、製薬メーカーと卸にお願いして、そちらのない医療機関にセファゾリンが供給できるようなスキームをつくって、それに関する事務連絡を発出したところです。今のところ、1件問い合わせがあって、それに対して対応したところです。今、プレスリリースの範囲では、この1社の安定供給できなかったところが、予定どおり11月末から徐々に安定供給が再開できると伺っております。
事務局としては、以上です。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
御質問等がありましたら。
どうぞ、荒川先生。
○荒川委員 このセファゾリン以外に、最近、ピペラシリン・タゾバクタムも出荷が滞る事態が起きたり、感染症の薬じゃないですけれども、プロトンポンプインヒビターにも発がん物質がまじっていて出荷できなくなる事態も起きています。その少し前には、同じように高血圧の薬で回収がされている。厚労省は、ジェネリックを推奨していただくのは、医療費の抑制とか適正使用とか、いろいろなことに効果があると思いますけれども、ジェネリックを推奨する以上、ジェネリックをつくっている会社の扱う原薬の品質管理をもっと徹底するように、同時にやっていただかないと、こういったことは繰り返すのではないかと思います。
ですから、原薬の成分規格とか純度規格とか品質のチェックをより強化するような体制が必要かなと思いますけれども、厚労省さんとしては、その辺の各製薬メーカーさんに対する、何かそういう働きかけなどは検討されておられるのでしょうか。
○渡邉委員長 どうぞ。
○結核感染症課長補佐 そもそも薬の承認に当たりましては、これはジェネリックである、ないにかかわらず、安定供給の能力も含めて承認の審査をしていると聞いておりますので、御指摘の内容も含めて、関係部局にお伝えするという形になるかなと思います。
○渡邉委員長 どうぞ。
○大曲委員 これは話題の共有ということでもないのですけれども、荒川先生がおっしゃったような根本的な生産の体制をどう確保するかという課題が物すごく大事です。
もう一つは、短期的な対応で何ができるかというところでお願いしたいといいますか、現場の声としてお伝えしたいのは情報の管理であります。ジェネリックのメーカーさんとおつき合いをしているとすごく感じるのは、物が来なくなるとか、出てこないという情報が本当にぎりぎりにならないと出てこないです。そうすると、私たちも例えば特定の抗菌薬の薬剤のオーダーをしようとしたら、物がないから出せないということが突然起こります。
これは、ジェネリックのメーカーだからというのではないのかもしれませんけれども、以前はそういうことが起こる場合には、事前に十分に情報をいただいていて、それなりに薬剤部も対応することが可能だったと思いますけれども、そういうものがやりにくくなって、難しくなっているなと思っています。恐らくそれは情報が出てこないからだろうと思います。ジェネリックのメーカーの方々も、抗菌薬を出すのはあまり長い経験をお持ちでない会社もおられるようでして、そうすると、欠品した場合の現場への影響とか、どれぐらい影響があるかということもなかなかぴんとこなかったり、そもそも現場とのコミュニケーションが余りないので、そういう問題の大きさが伝わってこないということもあるようです。
ですので、どう解決するかというのはまた難しいですけれども、少なくともそういう欠品の情報とか生産上のトラブルの情報を早い段階で公開していただけるように、何らかの仕組みをつくっていただけないかというのは、非常に強く感じます。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
この小委員会の責任範囲を超えている問題だと思いますけれども、加藤補佐のほうからこういう意見が上がったということを、担当部署にぜひ伝えていただければと思います。よろしくお願いします。
薬剤師会から何かありますか。
○前田委員 病院薬剤師会の前田です。
セファゾリンの原末のほうが高くて、商品のほうが安いとちょっと聞いたのですが、そういう状況であれば、耐性菌対策の薬、製薬メーカーはモチベーションが下がるのではないでしょうか。今、どこか抗菌薬を開発しようとか、ジェネリックも出ましたけれども、それを積極的にしようというメーカーが減っているようにうわさで聞いたのですが、抗生物質に手を出すまいとか。製薬会社の方が来られているので、山野先生に聞きたいのですが、どうなのでしょうか。
○渡邉委員長 山野先生、何かコメントできますか。
○山野委員 実は、日本だけではなく、世界的なレベルで抗菌薬の研究開発から撤退していく企業は非常に多いです。その原因というのは、企業ですので、ビジネスとしてうま味がないというところが、株主さん等々の意見でどうしても出てきます。背景としては、ジェネリックで対応できる部分が多いわけですし、さらに、新しい薬はニッチなところに使われる、使用量が少なくなる、その割には製造コストも高い等々の問題があって、企業としてなかなか取り組みにくい環境になっているという点が確かにあると思います。それもあって、こういうAMRなどを対象にした抗菌薬をどういうふうに開発促進するのかというのが、世界的なレベルで、WHO等々を含めて議論されている状態と思います。
根本的な解決はなかなか難しいですけれども、そこのところが途切れてしまうと、将来に禍根を残すかもしれませんので、何か、解決に向けて打てる手を産官学を含めて考えるべきタイミングは今だと思っています。
○前田委員 この会で、製薬会社のモチベーションが上がるように、特別枠をするとか、そういう対策も必要なのではないかなと思いますが。
○釜萢委員 加藤補佐の立場から答えにくいだろうと思うので。
日本医師会も、このことについては非常に危機感を持っています。宮﨑先生からも御指摘がありましたけれども、国民にとって本当に必要な薬で、どうしてもなくてはならないものが供給されないという事態を起こしてはいけないわけでありまして、そのためには、今、御指摘のあったいろいろな視点から対策を講じないといけない。
1つは、薬剤メーカーが、ジェネリックであっても、しっかり適正な利潤が得られるような価格の設定でないと供給してくれませんから、原薬のほうが仕入れ価格が高いということでは、とてもこれは持続可能性がないわけですね。ですから、そのあたりはこれまで国全体として余り議論されてこなかったように思うので、国民に対する安全あるいは危機管理という観点から、どういうふうな対策が国としてとれるのか、とらなければいけないのかというところを、ぜひ議論しなければいけないと思います。
この委員会はそういう役目ではないですけれども、大きな基本的な問題点として、まず認識して、いろいろなところで働きかけていく必要がある。日本医師会もその責任は非常に重いと感じておりますので、発言させていただきました。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
今の議論は、もちろん厚労省もそうですし、AMEDも含めた形での抗菌薬の開発をどうするかということは議論になっていますし、G7、G20でも当然問題となっていることで、日本を含めて、世界が考えていかなければいけない問題なのだと思います。
この会でどこまでそれを踏み込めるかということですけれども、勉強会ぐらいはできるのではないかと思います。そういう企画ですか。せっかく、ここに山野先生、日本製薬工業協会のイノベーション推進部会からおいでいただいているので、その辺のことをまとめて1回、現状の開発状況等も含めて、皆さんに情報提供していただくというのも一つの機会なのかなと思うので、御検討いただければと思います。
どうぞ。
○菅井参考人 AMRのこの会議の直接の担当でないということですけれども、実際に欠品が出て使えなくなると、ほかの薬で使えるものということになって、第三世代とかカルバペネムのほうに手が出て、そういうものがふえるとなると、このAMRの対策に逆行することになるので、そういう意味では、この会と非常に重要な関係があると思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
○渡邉委員長 まさしくそうですね。関連性がないわけではなくて、結構重要な関連性があるので、その辺の供給の問題等も、これは感染症課の対応ですか。
はい。
○結核感染症課長補佐 我々、直接流通を所管している部署ではございませんが、省内全体でそういうことは適宜話し合っていこうと思います。
○渡邉委員長 今の話にありましたように、耐性菌を考える上でも、抗菌薬の使用が偏った方向に流れる可能性もあるという点では非常に重要なポイントだと思うので、ぜひその辺の情報も、この会にシェアしていただいて考える機会にしていければと思うので、その辺も検討をよろしくお願いいたします。
ほかに何か皆さん、コメント等ございましたら。
どうぞ。
○宮﨑委員 薬剤師会の宮﨑ですが、以前のこの会議だったと思うのですが、ある委員さんが、日本の抗菌薬の第3セフェムの用量については、予防投与の量だということを言われたことがあった。昔から耳にしていたのですが、こういった会議でそういうことが出たということについて、耐性菌を出さないためにはちゃんと殺していただかないといけないということで、PK-PDといったものについて、きちんと検討した上で、用量について情報を発信していただかないと、適正な使用がされないと耐性菌は常に出てくる。だから、副作用を出さないために低い用量で与えると耐性化を起こす。それは当たり前のことですが、そこももう一回見直さないと、この薬剤耐性菌の対策としては片手落ちといいますか、それもあるのではないかと思いますので、何回か前の会議で出たのが非常に気になっていまして。
実際、私、幾つかのセフェム系でシミュレーションしたときも、ある菌についてはTime above MICが達しないものもあるなというのが印象です。それは、多くあるわけじゃないと思います。でも、注意喚起をどこかでしておかないと、抗菌薬の9割が、経口抗菌薬は全部外来処方ですね。外来処方の中には、どんな体重の人も300、3錠、3掛けと出る。でも、実際考えると、それは倍だっていいような体格の人もいるわけなので、そこをぜひ検討した上でしていただきたいなと思います。
以上です。
○渡邉委員長 貴重な御意見、ありがとうございます。
荒川先生。
○荒川委員 今の宮﨑委員の御指摘は、非常に重要なことが含まれていると思います。第3世代セファロスポリンの経口薬、臨床現場でかなり使われていると思いますけれども、第3世代セファロスポリン耐性の大腸菌は、JANISのデータでたしか40%を超えていますね。家畜、牛とか豚、ニワトリでは、第3世代セファロスポリンの耐性率はそんなにはふえていないと理解していますけれども、それでよろしいですね。ヒトだけぐんぐんふえて、50%に迫ろうとしている。ですから、そういう現象の背景に、今の第3世代セファロスポリンの経口薬が影響を及ぼしているかもしれませんので、抗菌薬の適正使用を考える上では、そのあたりも視点に入れて対策とか調査とか、あるいは研究も含めてしていただく必要があるのではないかと思います。
○渡邉委員長 ありがとうございます。
非常に大きな問題で、ワンヘルスで考えた場合に、確かに動物等に関しての、今、御指摘いただいたようなESBLとか、その辺の耐性率は、特にニワトリ系は下がっているのにかかわらず、ヒトの場合はぐんぐん上昇傾向である。それは、フルオロキノロンについても同じである。その辺の乖離がどこにあるのかというのは、研究班のほうでも常に議題になっているところですけれども、ヒト側でどういうふうに使われているのか。その辺を考えて行かないと、これはなかなか解決しないかもしれない。
もちろん、使い方等に対しての教育もさることながら、使う量等に関して、どういう形で今後求めればいいのかというところも議論の対象になると思うので、その辺のことに関しても、問題点がどこにあるのかということを一度洗い出して、それに対しての勉強会というものが必要なのではないかと思います。皆さんでどこに問題があるのかを共有することによって、それに対しての対策がどういうものがあるのかを考えていくという機会を、事務局にお願いすると事務局は大変かなと思うので、ここに専門の領域の薬剤師の先生方も多くおられますので、その辺の情報等を提供いただいて、一度、どこかの機会に勉強会等を設けていただければ。
この検討会は年に何回も開催されるわけではありませんが、お忙しい皆さんですけれども、1年に2回か3回ぐらいはおつき合いいただけるのではないかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
時間にもなりますので、何か皆様のほうからさらなるコメントがありましたら。よろしいでしょうか。もしないようでしたら、事務局のほうにお返しいたします。
○結核感染症課長補佐 御議論いただき、ありがとうございました。
次回の開催、第5回ですが、また日程調整の上、改めて御連絡させていただきたいと思います。
事務局からは、以上です。
○渡邉委員長 ありがとうございました。
これでこの会を終わりにいたします。