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第30回がん検診のあり方に関する検討会(議事録)
健康局がん・疾病対策課
日時
令和2年1月15日(水)17:00~19:00
場所
田中田村町ビル8階8E会議室
議題
(1)対象者のリスクに応じたがん検診のあり方について(その2)
(2)がん検診のあり方に関する検討会の議論の中間整理(骨子案)について(その2)
(3)その他
議事
- 議事内容
- 2020-1-15 第30回がん検診のあり方に関する検討会
○事務局 定刻より少し早い時間ですが、皆様おそろいですので、ただいまより第30回「がん検診のあり方に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
初めに、本日の構成員の先生方の出欠状況でございますが、皆様に御出席をいただいております。
また、本日は、議題(1)について、浅香正博参考人、深尾彰参考人をお招きしております。お二人の先生方におかれましても、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
続いて、資料の確認をさせていただきます。
上から座席表、議事次第、資料1-1から1-4、資料2-1、2-2、参考資料1から4をお配りしております。
なお、事務局の手違いで、構成員の先生方にお配りの資料の一部が白黒になっておりますことをおわび申し上げます。
以上の資料につきまして不足や乱丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。よろしいでしょうか。
では、以上をもちまして、カメラはおさめていただきますよう、御協力をお願いいたします。
(冒頭カメラ撮り終了)
○事務局 この後の進行は大内座長にお願いいたします。
○大内座長 それでは、第30回「がん検診のあり方に関する検討会」の、本日の議題に入りたいと思います。
初めに、議題(1)「対象者のリスクに応じたがん検診のあり方」について、前回、11月13日の第29回の本検討会の議論を踏まえつつ、本日の議論を行いたいと思います。
まずは、事務局から資料1-1について説明をお願いします。
○事務局 事務局でございます。
それでは、お手元に資料1-1を御準備ください。
2ページ目、前回の本検討会において、がん検診における「対象者のリスク」について、どのように捉えていくとよいか。対象者のリスクに応じたがん検診のあり方について、今後、どのように検討していくべきかとの論点を御提示させていただきました。
その結果、下にありますように、リスク層別化の因子に適しているかどうかの判断基準についての御意見、それから、リスク層別化した場合に、それに基づいたがん検診としての効果の大きさについて、別途の検証が必要ではないかとの御意見をいただいたところでございます。
3ページ目、4ページ目につきましては、過去の検討会におつけした資料として、参考となるものを付させていただいているところでございます。
本日は、このような内容に加え、資料1-2から1-4の有識者の先生からの御説明も踏まえ、ご議論いただけないかと、考えているところでございます。
事務局からは以上です。
○大内座長 ただいま事務局から、資料の御説明がございましたが、構成員の皆様からの御質問はありましょうか。よろしいですか。前回の整理です。
それでは、資料の1-2から1-4に関しまして、順に参考人及び構成員から説明をお願いしたいと思います。
まずは、資料1-2につきまして、中山構成員、よろしくお願いします。
○中山構成員 中山でございます。資料1-2をごらんください。
私は、まずは導入の部分で、リスク層別化というものの課題をお話ししたいと思います。
お手元の資料1-2の2のスライドを見ていただければわかると思うのですけれども、リスク層別化という言葉自体がまだ新しい言葉でして、そう明確に定義が決まっているわけでは恐らくないのだろうと思いますが、一応下には、循環器の世界での高血圧治療ガイドライン、これは日本高血圧学会のホームページから引用したものですけれども、ここでは、高血圧とほかの予後因子というもので、将来の循環器のイベント、すなわち脳卒中とか心筋梗塞というもののリスク、起こりやすさというものを区分して、それで管理基準を設けましょうということが提示されているわけなのです。基本的にはリスク層別化というのは、将来のイベントに備えてそれが起こりやすいのか起こりにくいのかを区分することなのだろうと解釈されるわけですけれども、まだ明確でない部分があるかと思います。
3のスライドでございますけれども、がん検診でどういうことを考えるのかということになりますと、高リスクグループと低リスクグループに分けて、それに応じて、検診手法を変えるとか、あるいは頻度、検診間隔を変えるといったことが考えられているわけで、候補としては、胃がんのPG I/II法とか、HP抗体単独法とか、これらをマッチしたABC検査などが考えられておりますし、子宮頸がんに関してはHPV検査というものもリスク層別化の範疇に入るかと思います。
また、今まで行ってきた肺がん検診というのは、喫煙歴でかなりリスクが変わってきますので、喫煙歴というよりも、本当に問診票情報でもリスクが分けられるのかなということなのですが、将来的にはゲノムとかその辺の検査なども含まれるかもしれません。
4のスライドの肺がんの場合なのですけれども、これは低線量CTを用いた肺がん検診がどのように行われているか、あるいは研究されているのかなのですけれども、米国では、30pack yearsといいまして、こういうヘビースモーカーに対しては、年に1回の低線量CTを行うのがスタンダードだと考えられていますが、これは、米国では喫煙に関連の強い肺がんが、肺がん全体の大半を占めているという状況にございます。
一方、日本ではどうなっているかというと、非喫煙者の肺がんもかなり多いというところがあるので、間隔をあけて提供してはどうかというところを考えて研究が行われているところでございますが、問題は、重喫煙者のエビデンスを非喫煙者に外層できないというところがあるので、別個でエビデンスを確立するために研究を行わざるを得ない状況にございます。
1枚めくっていただきますと、これがいわゆるABC検査と呼ばれる胃がんの検査でございますが、これを検診と称していいものか、それともリスク層別化と位置づけるべきかという根拠の一つなのですけれども、その図はROC解析という形でして、横軸に1-特異度、縦軸に感度という形になって、これで感度と特異度のバランスを見ているものです。感度を上げていきますと特異度は必ず下がっていくところになるのですが、感度を80%にすると特異度が40%という形でかなり低くなって、病気がない人を異常ありと判定してしまう形になってしまいますので、これをもって検診と称するには無理があるという形になりますので、ABC検査自体は、リスク層別化という形できちんと位置づけるべきであろうと考えられる根拠かと思います。
下は、子宮頸がんのHPV検査というものなのですが、これは検診と称するべきかリスク層別化と称するべきかということなのですけれども、下の図も似たようなROCカーブを書いているわけなのですけれども、これの特異度はかなり高いもので90%ぐらいになってしまいますので、恐らく検診と呼んでもいいし、リスク層別化としても使えるだろうということがわかっています。
下の右のものは、細胞診とHPV検査のどちらかが陽性になった場合の、年間にCIN3以上に進展するリスクを求めたものでございますけれども、HPV検査は、陽性の場合と陰性の場合で何%ぐらい進展するのかが、きれいに数字で出ておりますので、これはリスク層別化という形でも使えるのかなというものでございます。
1枚めくっていただきますと、検診の現場で検診と予防が、あるいはリスク層別化と予防が、そういうものを使って検診を運営していくというところでの課題を考えますと、リスク層別化というのは、今、診断できる状態のがんそのものを見つける行為ではありません。将来この人はがんになりやすい、がんが見つかりやすいだろうなというのを分けるという形なので、リスク層別化で分けて次のステップで例えば胃の内視鏡検査をして、その発見率を幾ら比較しても余り意味がないのです。これから何年間かの累積した発見率を比較するのは意味がありますけれども、発見率を1回だけ比較しても余り意味がないと考えられます。
もう一つは、将来この人が3年後にがんと診断されるのか、5年後に診断されるのか、10年後に診断されるのかはわからないのですけれども、将来の発病リスクに応じて管理法がばらばらになってきますので、それを理想的な状態で行った場合の死亡率が本当に減るのかどうかというエビデンスがあるのかと言われると、これはなかなか難しいところで、恐らくないと思いますので、それをどう解釈するのかという問題があります。
それから、現実の世の中で、ある人は発病リスクが高く、ある人は発病リスクが低いという状態が生じますので、個人の発病リスクが全然異なる場合に、管理は一体誰ができるのか。それから、そんなことを本当に実行できるのかが課題になると思います。
実際に下の図が子宮頸がんのHPV検査、それから、肺がんで喫煙歴で分けた場合のCTの検査の間隔などですけれども、子宮頸がんに関しましては、HPVが陰性の人は3年から5年後に再検査、HPVが陽性の人は細胞診をやるとかやらないとかして、年1回のフォローという形で研究計画とかが練られてきたわけなのですけれども、そういう検討という形で個々のリスクに応じて介入を行って、それで死亡率を求めるという研究は、国内外で行われているという状態がございます。
次のスライドが私のプレゼンの最後の資料なのですけれども、現実の状態で発病リスクに応じて、ばらばらのフォローアップとかマネジメントになるのですが、こういう管理が本当にできるのかというところです。
下の図は、デンマークで子宮頸がんの検診のガイドラインに沿って、HPVが陽性で細胞診が異常なしという形になりますと、18カ月後、1年半後にフォローアップを受けるべしとなっているのですが、実際にどのぐらいフォローアップを受けられたのかというデータでございますが、軒並み30%台ということで、北欧という非常に精度管理が行き届いたところでも実際にふたをあけてみると、フォローアップということが国民にも遵守されがたいことがわかってきているわけなのです。発病リスクに応じて本当に管理ができるのか、定期的に受診してくれるのかということになると、非常に難しい、世界的に苦戦しているというところでありますので、下手をすると、分けたのは分けたけれども、将来の発病を早期発見するのに失敗するという可能性も十分にあるので、その点の人間の行動というところに関しては、別途検討が必要かなというところでございます。
私のプレゼンは以上でございます。
○大内座長 ただいま、中山構成員から「リスク層別化によるがん検診の課題」についての発表がございました。
では、続きまして、資料1-3「リスクに応じた胃がん検診の考え方」に関しまして、浅香参考人から説明をお願いいたします。
○浅香参考人 今、北海道医療大学におります浅香でございます。
私はもともと胃がん検診という二次予防ではなくて、一次予防をずっとやっていたものですから、果たして私が参考人としてここに来るのが適当なのかどうなのか、厚労省の方ともお話をしたところ、私の考えを述べていただければいいということなので、本日参上したわけです。
胃がんの最も重要なリスクというのは、日本の場合にはピロリ菌感染であります。日本人の胃がんの98%はピロリ菌由来ですので、ピロリ菌の有無を最初にチェックしないことには、何を行っても意味がないのではないかということです。
最初の資料をご覧ください。ピロリ菌が感染すると数週から数カ月で100%の人が慢性胃炎になります。これは組織学的な胃炎で、ピロリ感染胃炎とも言われています。日本人では放置しますと大体10年から20年ぐらいで、8割ぐらいは萎縮性胃炎に移行します。それから分化型胃がんへと進行するのは大体0.4%から0.6%ぐらいです。そのほか、ピロリ感染胃炎をベースにして、胃・十二指腸潰瘍、胃MALT lymphoma、FD、ポリープ等が発生します。そして重要なのは、未分化型胃がんであるスキルス胃がんにも密接に関連しているのです。日本は世界でただ1国ピロリ感染胃炎に除菌の保険が通ったものですからそれを生かしながら、これを除菌することによって胃がんを初めとする多くの胃の病気の発生を予防できる可能性が高いことを知っていただきたいと思います。 次の図をごらんください。胃がんの死亡者とは大体40年にわたって5万人がずっと続いていたわけですけれども、2013年の2月にピロリ感染胃炎に除菌の保険が適用になってから、除菌者の数がそれまで数十万人だったのが150万人から200万人になり、現在に至るまでにほぼ1000万人近くが除菌されたのではないかと思います。そうしますと、胃がんの死亡者数が次第に下がってまいりまして、2018年では4万4000人台に下がってまいりました。
この結果、毎年5万人亡くなっていたのから見ると、1万8000人の命を救ったことになります。このことにより、約400億円もの医療費が節約になりました。
前回上村先生が提出されたデータでは70歳代、80歳代以上は除菌の効果がほとんどありませんでした。今回、2018年まで厚労省の人口動態調査を調べさせてもらいましたところ、80歳代以上は除菌が保険に通った後も胃がん死亡者数がふえているという興味深いデータが得られました。
次の図は層別解析を行ったものです。胃がん全体で言えば、1970年代ぐらいから80歳代を除けば減ってきているのです。日本人の塩分の摂取率が一番高かったのが1968年で、それから減ってきているのでそれに符合して胃がんで亡くなる人は減ってきているのです。
ところが、80歳代以上の割合がどんどんふえてきて、それが相殺されたために、40年にわたって死亡者数が毎年5万人という不思議な現象が引き起こされたのだと思います。
2013年からは、80歳代以上は減らなかったのですが、80歳未満の胃がん死亡者数が急に減ってきたために、全体として減少してきたと思われます。
胃がんの原因の98%がピロリ菌由来であることからすれば、国が行っている肝炎対策と同様、ピロリ菌検査を無料にすべきであると考えます。通常は血清または尿中抗体で十分でないかと考えています。
そして、保健所には肝炎対策同様に、胃炎医療コーディネーターを置いて市民への啓発を行ったらどうだろうかと考えます。
「リスクに応じた胃がん検診の考え方」ということ考えますと、胃がん死リスクが最も高いのは、80歳以上の超高齢者なのです。10万人当たりの死亡率を計算すると、90歳以上では70歳代の数倍もあります。超高齢者にはバリウム検診は特に危険ですし、内視鏡検査も、難しいのです。さらには80歳代では、様々な合併症があるために本当に胃がんで死んだかどうかもわからないケースが増えてきます。
超高齢者の場合にはピロリ菌抗体の偽陰性の可能性があるので、80歳以上の方に限ってペプシノゲンを加味したABC法を勧めたらどうだろうかと思います。陽性者には内視鏡を勧めるのが超高齢者に内視鏡検査を増やすよい方法と思います。
ピロリ菌陽性の超高齢者に胃がんの見つかる頻度は非常に高いと思われます。実際、日本内視鏡学会、日本ヘリコバクター学会での発表を見ても通常の年齢に比して5倍から10倍ぐらい見つかっています。超高齢者の方々はほとんど検診を受診しないという大きな問題を含んでいます。
最後に、若年者の話をさせていただきます。
若年者の問題は、検診とは特に関係はありません。高齢者の胃がんは萎縮性胃炎を背景にした分化型胃がんが多いのですけれども、若年者胃がんは未分化型胃がん(スキルス胃がん)が圧倒的であることが明らかになっています。
したがって、スキルス胃がんを予防するためには若年者のうちに、ピロリ菌の除菌を行う必要があります。中高生では胃がんを発症するリスクはきわめて低いために、若年者では内視鏡を省略したTest&Treat法が行われています。これは自治体単位で行われるケースが圧倒的に多いのです。スキルス胃がんの成因から考えると、これ以外スキルス胃がんを予防する方法はないといってよいと思います。
胃がん死亡者数は、胃炎が保険適用となった2011年に比べると全年齢では12%減ったのですけれども、80歳未満で検討すると減少は23.4%もあることが明らかになりました。
きょうの私の発表はここまででございます。
最後に言わせていただければ、胃がんを撲滅するためには肝炎の対策がすごく参考になります。というのは、二つとも同じ感染症であるからです。肝炎には肝炎対策法がありますが、胃炎には胃炎対策法がないのです。肝炎対策法に基づき、きわめて高額な肝炎対策予算が用意されており、2018年に総額で168億円、研究の推進に37億円という、国立がん研究センターの1年分並みの予算が肝炎の研究に支出されているのです。
その結果、金をかけた肝がん対策の結果、肝がん死亡者数の減少は20%前後なのです。胃がんは金をかけないで保険を通しただけで、胃がん死亡者数の減少は12%も見られています。この際、胃炎対策基本法が必要なのかどうかを、日本ヘリコバクター学会を中心に検討してもらおうと考えております。
大分脱線しましたけれども、私の報告は以上でございます。
○大内座長 ただいま、浅香参考人からの説明がございました。
続きまして、資料1-4「リスクに応じた胃がん検診の実現にむけて」と題しまして、深尾彰参考人からお願いいたします。
○深尾参考人 私は今、浅香先生がおっしゃった通り、ヘリコバクター・ピロリ感染と萎縮性胃炎、これが胃がんのリスクということがほとんど明らかになったということで、それを現在の検診の場でどのように活用できるかということを、まずスタートとして考えました。
スライドの2枚目が、現状の指針でございます。胃がん検診については、エックス線と内視鏡、50歳以上を2年に1回と、それぞれにただし書きがついています。
次のスライドですが、この検討会の中間報告が平成27年9月に発表されております。この中で、内視鏡を加えることが決まったほかに、ペプシノゲン検査、ヘリコバクター・ピロリ抗体については層別化できるということで、これをうまく絞り込みに使ってやる検診方法の構築等をすべきであるということが記載されています。これは多分、いわゆるABC検診を念頭に置いた記載ではないかということで、現状のABC検診がどうなっているかというのは、次のスライドでございます。
AからDまであって、1年間に発生する頻度の予測等があって、その後に、内視鏡検査をA群は勧奨せず、B、C、Dは定期的に内視鏡検診を受けるようにとなっています。これは一番新しい2019年6月に公表されたABC検診のマニュアルで、前は専門医で内視鏡検査を受けるようにという指導だったのですけれども、内視鏡検診に誘導するような格好になっております。
そのことについて一言触れたいと思いますが、次のスライドをご覧ください。日本ヘリコバクター学会が、いわゆるA群で、抗体価が非常に低いところであっても、画像所見を加味してピロリ未感染を判断しなければいけない、つまり画像診断を加えないと、未感染者というのは多分はっきり同定できないという考え方を示しています。つまりABC検診をやるとしたら、とりあえず血液検査をした全員を内視鏡検査しなくてはならないということになるのです。A群といっても既感染者がいるのでそれを除外するためには内視鏡検査をやらなくてはいけないということで、結局、ABC検診をやるためには、最初は全員に内視鏡をやるということになってしまいます。
そのことなどを踏まえて、現状のエックス線と内視鏡でやっている画像診断を用いた胃がん検診の中でピロリ抗体、萎縮をどういうふうに組み込んでいくかということで開始したのが、6枚目のAMED研究であります。「個別リスクに基づく適切な胃がん検診提供体制構築に関する研究」ということで、開始いたしました。
<研究の背景>です。
現在主にエックス線検診による胃がん検診が進められておりますけれども、受診率が伸び悩んでいることとか、レントゲンの読影医の育成が不足している、あるいは新たに内視鏡検診が導入されたこと、それから、今の浅香先生の御解説のとおり、がんリスクの解明が進んでいるといった背景に応じて対処するために、ピロリ感染と萎縮の情報を用いて、個人のリスクに応じた検診プログラムを開発したいというのが研究のねらいであります。具体的にここでやろうとしていることは、右下の、「個人の胃がんリスクに応じた適正な受診間隔を提案」するということにいたしました。死亡率減少効果とか、エビデンスをきちんと把握することも大事ではありますけれども、これは時間とお金がかかるということで、現在でき得る最大限のことでやっていきたいということです。
<研究方法>です。
まず、エックス線検査あるいは内視鏡検診を受ける人たちに、ピロリ抗体とペプシノゲン検査は無料でやり、その後、それぞれ3回継続して検診を受けていただきます。エックス線検診の場合は、原則的に逐年でやっているところが多いので毎年、内視鏡検診の場合は、2年ごとということで3回となります。そしてこの人たちの検診成績、あるいは全国がん登録などを用いて追跡して、胃がんの累積罹患数を把握して累積罹患率からリスクを層別化することにいたしました。次のスライドにありますように「AMED研究の目的」は、直近の胃がん発症リスクが低いグループを層別化して検診間隔を延長することにより、対策型検診として行われている胃エックス線検診・胃内視鏡検診の効率化を図るということにしました。この延長によって、医療資源の有効活用ができ、その結果多くの人々に公平なアクセス機会を確保することができるのではないかということであります。この解析の参考にしたのは、8枚目の「POBSCAM study」です。オランダでやっている子宮頸がんの検診です。この地域では細胞診検診を5年に1回やっているのですが、HPVの検査をかませたグループを設定し、それぞれ、細胞診だけのグループとHPV陰性のグループを追跡いたしますと、ちょうどHPV陰性の群の累積罹患率が細胞診だけの群と同じなるのが1回あけたところなのです。つまり細胞診で5年後の累積罹患率とHPVネガティブの人たちの10年後の累積罹患率が同じになるということです。間を5年間余計にあけてもHPVネガティブのグループはいいであろうということであります。これを胃がん検診でリスクの低い人たちは、今、2年に1回とか1年に1回とかと決めてありますけれども、これに少し幅を持たせることができるのではないかということにしたわけです。
9枚目のスライドです。
この研究のサンプルサイズを計算には多くの仮定がありますが、詳細は割愛させていただいて、内視鏡検診、あるいはエックス線検診のどちらも目標値は1万5000人としました。この検診受診者コホートを追跡して、その累積罹患率を測定することにしました。
10枚目の「研究の実施計画」です。
既に2016年から開始いたしまして、これまで登録した研究対象者数は、次のスライドに出ていますけれども、エックス線検診は宮城県と山形県で大体1万4000人。それから、内視鏡検診は今のところかなり多くの地域でやっていますけれども、5,000人ということであります。
そして、内視鏡検診のリクルート集積がはかがいかない理由といたしましては、今、エックス線検診は集団検診ですので、大きな会場に対象者が集まってそこで説明することによって研究の参加の声がけができるのですけれども、内視鏡検診はクリニックベースの個別検診でありますので、一人一人に説明して参加を求めるということで、かなり効率が悪いのが現状でありまして、これで少し出おくれております。12枚目以降の、研究参加状況とかその結果については、本日はこれが目的ではございませんので、御参考までに見ていただきたいと思います。
最後のスライド16に今後の課題を示しましたが、内視鏡検診がかなり難しい状況にあり、いろいろ苦労しているということで、サポートシステムを強化するとか、あるいは地域を広げると。仙台市、横浜市、浜松市などを今検討しています。実際に仙台市では、来年度から開始する予定でございます。
以上です。
○大内座長 ただいま、深尾参考人から、「リスクに応じた胃がん検診の実現にむけて」ということで、AMED研究の進捗状況について説明いただきました。
それでは、資料1-2から1-4までのプレゼンが終わりましたので、この3点につきまして御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
祖父江構成員、どうぞ。
○祖父江構成員 リスク層別化といったときのリスクの意味合いが、リスクという言葉が頻繁に使われるので、それぞれの人で異なった意味合いで使うことがあり得ます。ものすごくいろいろな意味で使われますけれども、きょう出てきた中でのリスクというのが、恐らく2つあると思います。
一つが有病率、prevalenceに関するリスクです。
それから、もう一つがCumulative incidenceです。累積罹患率です。10年とか5年とかの期間を区切るわけですけれども、それに関してのリスクです。
この2つを明確に分けないと、今までの3人の先生方のプレゼンをきちんと整理できていないように思います。
ですから、リスク層別化というときに言葉として、有病リスク層別化、あるいは将来発症リスク層別化の2つを明確に分けたほうがわかりやすいと思います。
恐らく、中山構成員のプレゼンが、その辺が一番よくわかると思うのですけれども、2枚目のスライドです。循環器の世界でのリスク層別化は、専ら、将来発症リスク層別化で使われています。ですから、対策としては予防介入が主となるわけで、検診というのは余りないのです。病気を見つけるための行為というのはないということです。
ページをめくっていただいて、ここからがんにかかわるところでいきますと、有病、あるいは将来発症リスク両方ともの意味でリスクを使っています。有病リスク層別化かというのは、専ら、検診の対象者を定義する際に使います。将来発症リスク層別化のほうは、予防介入にも、あるいは検診の対象者、これは主には検診の間隔だと思いますけれども、それを使う際に、将来発症リスク層別化という概念を使うと。だから、検診の対象者を定義するときには両方とも出てくるのです。予防介入のときには将来発症リスクしか出てこないということです。
そういう意味で見ていきますと、中山構成員のスライド3のあたりは、有病層別化によるがん検診ということなのだと思います。間隔を言い出すと、発症リスクと有病リスクの両方とも考えないといけない。
そして、「ABC検診?リスク層別化?」という5枚目と6枚目で、感度、特異度というものが出てきますと、これは有病に限られると思います。これは有病リスク層別化に関して、物を言っているのだと思います。
さらに、7枚目から9枚目のあたりでは、今度はスライドの中にも発病リスクという言葉が出てきますが、これが将来発症リスクのことだと思います。
このあたりが混乱していると思うのですけれども、リスク層別化が、がんそのものを見つける行為ではないというのはどちらもそうなのです。有病リスクであろうと将来発症リスクであろうと、がんそのものを見つける行為ではないことがあります。例えばFOBTなんかは潜血を見つけているといいますけれども、別にがんそのものではないです。だけれども、有病リスクといいますか検診として扱っています。
ですから、このこと自体が有病と将来発症との区別になっているわけではないのですけれども、将来発症リスク層別化においては、最初のステップでの発見率を比較しても意味がない。これは正しいのですけれども、有病リスク層別化のときには、それを問題とするわけです。それがターゲットなのです。ですから、この文章はちょっと混乱した扱いをしていると思います。あとの文章は将来発症リスクにかかわることなので、それに応じて管理を行うということを言っているのだと思います。
だから、私の提案は、リスク差別化というときに必ずその2つを使い分けてほしいというところです。
浅香参考人のスライドの中でも、ピロリ菌に関しては本当にこれは2つ混在するわけです。検診の対象者という意味では有病リスク層別化ですし、除菌の対象者といいますか、除菌という行為は将来のリスクを下げる行為ですから、その際の指標としては、将来発症リスクを下げることを、その効果の指標として用いるということになるのだと思います。
そして、深尾構成員のほうも間隔を考えているので、これは両方ともかかわってくると思います。ここががん検診の一番ややこしいところで、1回きりではないのです。1回きりでしたら有病なのですけれども、間隔ということを考え出すと、将来発症リスクのことも考えた検診メニューを考える必要があるということになるのだと思います。
私のコメントは以上です。
○大内座長 祖父江構成員から貴重なコメントをいただきましたが、現時点での有病率を主体としたリスクという意味なのか、将来発生率的な累積リスクなのかということで、言葉の整理をされるのはいかがかという提案です。
中山構成員はいかがでしょうか。
○中山構成員 言葉の定義をきちんとするべきことに関しては、異論は全くございませんので、場合によっては、自治体で今ABC検査を行われているのは、本当にABC検査をスポットでやって、その直後の胃の画像検査でがんが見つかって、そこまでの報告に限られているようなことが多いので、全く有病リスク層別化になってしまっているのですけれども、実際にこれをどう活用するかというところで議論が起こっているのは累積発症のほうだろうと思いますので、その辺のところで言葉の定義をきちんとして、例えば分けてということをこの検討会でされることは非常に重要だと思います。
○大内座長 ただいまの祖父江構成員の意見に対しまして、参考人からはいかがでしょうか。
深尾参考人、どうぞ。
○深尾参考人 中山先生がおっしゃった発症累積率ですが、やはり我々のコンセプトはそこにあって、現状の胃がんの内訳とか有病リスクを説明するようなスライドがあるのですけれども、この有病の所見は、今回わざと説明をしなかったのです。将来、この胃がんの人たちは1回目のスクリーニングで除外します。その何もない人を追跡していくことになりますので、あえて説明しなかったのは、累積罹患率に焦点を当てたというつもりです。
○大内座長 浅香参考人はいかがでしょうか。
○浅香参考人 先ほどお示ししましたけれども、ピロリ菌の感染による慢性胃炎から将来胃がんになるのは1%を切るぐらいの頻度なのです。しかし、ピロリ菌が感染した場合には、慢性活動性胃炎またはピロリ感染胃炎という病気を持っているのです。ですから、病気がある以上、それは治療の対象になるというのが我々の考え方であります。
わが国では80歳以上の人口の割合はすごくふえてきており、実際、80歳以上には除菌効果はなかったというデータを示しましたが、問題なのは胃がん死亡者の約半数が80歳以上なので、この対策を進めないと胃がんを撲滅することはできないと言うことです。この現象は、胃がんだけに特異的なことではなくて、大腸がんや肺がんも死亡者の半数以上が80歳代以上になってきているのです。ですからがんの予防の効果の判定は80歳未満で行うべきであるということです。80歳以降になってくると、どのような病気で亡くなるのか判定できないケースが多くなるので、がん予防対策の評価は80歳未満で行うべきであると考えられます。
○大内座長 80歳以上の方の比率が50%に近いのですね。
○浅香参考人 今は胃がんでほぼ50%ですね。
○大内座長 これを考えるに、浅香参考人のスライドの7番目ですけれども、やはり日本が抱える社会的な人口構成、長寿命化に伴ってあらわれてきている現象でもあるかと思いますが、年代別ということは、つまりピロリ菌感染した方々が高齢化しているという映しだと思います。
ですので、将来的にはこの部分が減っていくことも想定されるのですが。
○浅香参考人 はい。団塊の世代から下は急速にピロリ菌の感染率が減ってきますから、何も対策をしなくても、団塊の世代とそれより上の世代が死に絶えてしまうと、胃がんは劇的に減少してくる可能性が高いと思います。
深尾先生が重要なことを言われたのですけれども、ABC検診の結果のみを信用することは危険であると思います。一度は内視鏡かバリウムで確認される必要があると考えています。また、除菌された人がほぼ1000万人になったものですから、A群の中に除菌した人が随分紛れ込んできて、その人からは胃がんが出てくることを認識する必要があります。
血液検査でピロリ菌がマイナスであり、内視鏡でもしくはバリウム検査で所見がなければ、以後の検診を受けなくてもいいかもしれないということは言えますけれども、それ以外は難しいと思います。
○大内座長 胃がんのリスク層別化に関して、ほかに御意見はありますか。いかがでしょうか。
福田構成員、どうぞ。
○福田構成員 ちょっとお尋ねをさせていただければと思うのですが、きょうのお話を伺って、将来発生リスクに応じて検診間隔を変えてという考え方が非常にわかりやすいかなと思うのですが、心配されるような、中山先生がおっしゃっていたように、そういった管理が現実的に可能かがよくわからなくて、理解としては個別の対象者によってリスク層別化のリスクが違うので、例えば検診を推奨するタイミングが変わるという考え方なのでしょうか。これをどうやったらできるのかとか、椎名先生もいらっしゃるので、実際にこういうのが可能かというのを教えていただきたいのです。
○中山構成員 子宮頸がんのHPV検診を評価する研究では、ほぼ、98%ぐらいが、プロトコル沿って定期的なフォローアップなり精密検査を受けたと報告されていて、それは本当にすごいデータなのですけれども、現実にそれを国策としてやり始めた途端に30%とかそういうデータが出てきて、キャパシティーも足りないから、検診のフォローアップ間隔を3年から5年に延ばそうとかいろいろ悪戦苦闘をしている最中で、国によっては、検診から精密検査の医療機関受診のデータを全部コンピューターで管理して、その人が受診タイミングになったら通知が来るようなシステムを、国単位で導入したり州単位で導入しているというのが現実です。
本当にそれをやろうと思ったら、恐らくそこまで考えないと非常に難しいと考えられるのが世界のコンセンサスだと思います。
○大内座長 ただいまの福田構成員からの御質問に対しての中山構成員の御意見は、先ほどのプレゼンの資料にもありましたけれども、やはりなかなか管理しにくいといいますか、具体的にデータが出てきてもそれを実施した場合に、受診率が3割ちょっとしかないということなので、恐らく、もしリスクに応じたがん検診を実施する場合においては、そのための体制整備についても、議論のもう一工夫の必要があろうかと思いますが、いかがでしょうか。
椎名構成員、どうぞ。
○椎名構成員 今の御指摘の点は、現場でそうだろうなと確かに思われます。個々の状況に合わせて、例えば3年、5年と受診の感覚が異なると、それをどういうタイミングでお知らせするかとか、受診するモチベーション自体を維持できるのかと。
それに加えて、がん検診の機会というのは別に地域だけではないのです。職域、それからドックという形で任意でお受けになるというふうに複雑になっているので、恐らく対象者の方々の御自分の都合でとか年齢とかで、どこで受けるかとか何を受けるかなどを決めていらっしゃると思うのです。例えば肺がんは職域だけれども乳がんは地域とか、それから、若いときはドックとか職域だけれども高齢になったら地域というような形です。そうすると、やはり職域、地域のがん検診をどうつないでいくのかということであるとか、個々の状況に合わせて層別化した場合に、がん検診の実際の実施であるとか、精度管理を区市町村の中だけで完結するのは現実的には難しいのではないかということも思われます。
ですから、こういった層別化というのは受診される方にとっては大きなメリットがある方法ですけれども、運用可能な仕組みづくりを十分検討する必要があるのではないかと思います。
○大内座長 大変貴重な御意見だと思います。
松田構成員、どうぞ。
○松田構成員 中山構成員にデンマークのことをお聞きしたいと思います。HPVと細胞診の結果によって子宮頸がん検診の間隔を決めるということですが、決められた検診間隔で受診するかどうかは、この論文によると個人任せになっているのか、先生が御提案されたようなコンピューターで管理をして検診間隔をオファーしたにもかかわらず受けていないのかどうか。如何でしょうか。この結果を踏まえてデンマークはどうしようとしているのでしょうか。
○中山構成員 個人任せと言えば個人任せで、まだこれは、人数を見ていただければ数百レベルなので、ガイドラインが変わりました、始まりました、18カ月後はどうでしたかというレベルなのです。これをもとに隣のフィンランドは国単位でデータベースをつくってという形をやりましたし、デンマークは多分、そういうふうに隣がやり出したので、恐らくそういうシステムを入れようというふうに予算をとろうとしている最中だと思います。
○松田構成員 そうすると、今のようなプログラムを組まないとリスク層別化に基づいて受診間隔が異なる検診はとても管理ができなくて、受診にはつながらないと。やるのだったらそこまでやらないといけないということですね。
○中山構成員 恐らくそうなのだろうと思います。
○大内座長 井上構成員、どうぞ。
○井上構成員 リスク層別化のパターンがたくさんあるということで、理解するのに時間がかかっていたのですけれども、要するに、そもそもリスク層別化をすることの意義というのは、リスク層別化することによって、よりプリサイズに診断ができるということもあるし、受診率の問題はもちろんありますけれども、全員に呼びかけて同じ方法をとるよりもリスク層別化して、ハイリスクの人にだけ、お金のかかるもう少し細かい診断というか、診断する行為を行うということで、全体的には金銭的にメリットがあるとか、その辺まで考えていかなくてはいけないと思うのです。
実際に日本の受診率がこの低さで、リスク層別化を実際にプラスで行ったときに、例えば今まで来なかった人まで来るようになるのかとか、やはりハイリスクだと言われればそれなりに来るかもしれないけれども、たくさん来る人がどのくらい増加するのか、来る人がどのぐらい増加してくるのかということももちろん、エビデンスがないからわからないかもしれませんけれども、その辺も考えなくてはいけないし、必ずしもやったからといって、さっきのように、実際にその後に検診間隔をハイリスクの人は間隔を短くして、低リスクの人は長くしたからといってふえるものではないという話もあります。
何が結論ということからすると、エビデンスが全然なくて、これから全てエビデンスをもとに考えていかなくてはいけないということにはなるのでしょうけれども、そのリスク層別化ということのメリットというか、意味をもう一度きちんと整理しないと、こういうところでは一歩踏み込んで層別化を導入しましょうということはなかなか言いにくいかなと、今のお話を聞いていて頭の中で整理がついたので発言をしました。
○大内座長 ただいまの御意見は、リスク層別化を行ったとしても、今のような、がん検診の受診率が低迷している中では、その効果には限界があるのではないかという御指摘ですか。
○井上構成員 そうですね。
○大内座長 その場合、このリスク層別化をしたとしても、やはり受診率と並行して考えていくべきだということでしょうか。
○井上構成員 そうですね。ほかの方でおっしゃられた方がいらっしゃるかもしれませんけれども、結局、受診率が低ければリスク層別化しても結局低いわけで、リスク層別化することによってよりハイリスクの人に来てもらいたいという発想が、そのリスク層別化をプラスすることにはあると思うのです。なので、今までのように全員をターゲットにしているときのことを想定するというよりも、リスク層別化したときにハイリスクの人がよりたくさん来て検査ができてということを踏まえた上での効果を考えていかないといけないと思うのです。
○大内座長 層別化した場合の効果の大きさというのは、ある程度研究を続けていけば見えてくるのだと思いますが、深尾参考人、いかがでしょうか。
○深尾参考人 内視鏡検診を普及させるためには、今のキャパシティーが十分でないということはもうわかっていますね。今ある内視鏡の処理能力を十分に使うためには、ハイリスク検診というのはかなり有効でないかと考えます。
あと、これは先ほど議論になりましたけれども、保健サービスの平等化あるいは公平化という観点からは、多分これは外れているようにも見えますが、厚生行政としてはどう考えていらっしゃるのか。もしお答えできるならお答えしていただきたいと思います。
○がん・疾病対策課長 がん検診のことにつきましては先生方が御専門ですので、あえて行政としての特別な意見があるかというのは非常に微妙かなと思っておりますけれども、本来はがんである状態を早く見つけると。そのためにはどういう検診方法が科学的に根拠があるのかということをもとに行っていくというものであって、リスクが高い人も低い人も全く公正に同じタイミングで同じ検査を受けなければいけないという考え方を行政が持っているということではないのかなというふうに考えております。
○深尾参考人 安心しました。
○大内座長 大きなポイントですね。例えば肺がん検診の場合に重喫煙者を対象とするしないという、これは生活習慣病ともかかわってきますから、国民の公正性といいますか日本国憲法下における平等性の中で、私も気になっていたのですけれども、今の担当課長からのお答えで安心しましたので、議論は深められると思います。
祖父江構成員、どうぞ。
○祖父江構成員 こうしたリスク層別化で、恐らく今後行われていく方向は、リスクに応じて検診の間隔をあけていく方向だと思うのです。それによって、検診提供キャパシティーに余裕ができて、ほかの対象者に対して検診を提供できるようになるという点もありますけれども、それ以上に、それとは別の観点として、検診をやることは必ず不利益をもたらすという点があるのです。ですから、リスクに応じた検診を行わず過剰な検診になっている人がいるわけです。その人たちに対しては、適正な検診間隔を提供する、その情報を与えるというのが公平であって、そういう状況に持っていくというためのリスク層別化だと僕は思います。
○大内座長 ほかに意見ございますか。
どうぞ。
○浅香参考人 先ほども申し上げましたけれども、胃がんと肝がんはどちらもウイルスと細菌と感染源は違っても感染症であります。そして、肝炎は肝炎対策基本法ができていて、肝炎のウイルス検査は、保健所などで無料でやってくれます。ですから、胃炎においても、ピロリ菌抗体だけでも無料化が行われてほしいと思います。抗体検査を受けて、陽性だったら検診を受けるか専門病院に行くのかを選択してもらえばよいのです。この一件は、重要かつ必要であると思いますので、ぜひ厚労省に一考していただきたいと思っております。
○大内座長 羽鳥構成員、どうぞ。
○羽鳥構成員 リスク層別化の話はとても大事だとは思うのですけれども、例えば循環器とか高血圧、CKD、糖尿病の重症化予防とかそういうときに使う連続性のある変化のものと、それから、がんのようにYes or Noみたいなことと、やはり層別化とかそういうものも意味が違うのだろうなと思うので、援用するのは難しいのではないかなということが一つです。
それから、先ほど、ヘビースモーカーの人は検診頻度を高くしてより早く発見するということですけれども、たばこを吸われる方にお金をかけて、より多くの検診する機会を与えるというのは不公平ではないでしょうか。自らリスクを除外してきた方を助けてあげるのが大事なことではないのかなと思うのです。発想を変えてもらわないと無駄だと思います。
○大内座長 先ほどの議論の続きになりましたが、そろそろまとめます。
きょうは、参考人にも来ていただきましたので、具体的なデータ、それから、AMED深尾班では、現に今、研究が進んでいるところですので、今後の研究の推移を見守りながら、祖父江構成員、中山構成員からも意見が出ましたように、そもそものそのリスクという言葉の定義。それから、リスクの評価の仕方、大きさ。更にはリスク層別化によってその利益がどの程度大きくなるのか、あるいは不利益を生みはしないのかといったことについての研究も、引き続き行っていただきたい。
そういったことを踏まえて、妥当性についてはさらに検討が必要であろうと思いますが、いかがでしょうか。
(首肯する構成員あり)
○大内座長 恐らく後ほど、(2)の議題でもう一度議論になろうかと思います。
では、「対象者のリスクに応じたがん検診のあり方について」は、一旦ここで終わらせていただきます。よろしいでしょうか。
(首肯する構成員あり)
○大内座長 では、続きまして、議題(2)「がん検診のあり方に関する検討会の議論の中間整理(骨子案)について(その2)」でございます。
前回、(その1)が11月13日の第29回検討会で出されておりますので、皆様の御意見等を反映した上で今回の提案になります。
では、資料2-2について、事務局から説明をお願いします。
○事務局 事務局でございます。
それでは、資料2-1をまずお手元に御準備ください。
まず、2ページ目でございますけれども、ホームページ上では赤字で修正しておりますが、構成員の皆様にお手元にあるものは、むしろ若干薄い灰色になっているところでございます。「4」【総論】と書かれている間の「以下の点を含め」というものと、下2つのポツは、前回、構成員の先生方からいただいた意見を整理して、新たに追記を行ったものとしてご覧いただけたらと思います。このページは、本章全体に係る内容として、これらの考え方を含め、がん検診を受ける利益が不利益を上回ることという基本的な考え方が記載されておりませんでしたので、冒頭の【総論】の前に追記をしております。
次に、(今後の方向性)の2つ目のポツでございますけれども、前回御議論いただいた内容として、【総論】に係るところの科学的根拠の収集や医療資源の充足状況、それから、費用対効果等について、今後どのような形で対応していくか整理すること。あるいはその下のポツでございますけれども、死亡率が大きな課題となるがん種についてしっかり取り組んでいくべきではないかとの御意見を踏まえた記載を行っております。
3ページ目と4ページ目が、特に、前回十分に御意見をいただくお時間を設けることができなかった部分になりますので、本日追加で御議論をいただければと考えてございます。
続きまして、資料2-2をお手元に御準備いただけたらと思います。
こちらは、前回11月に提出させていただきました議論の中間整理の骨子案につきまして、そのときの検討会の御意見等を踏まえて、事務局で修正を行ったものになってございます。
主な変更点を御案内させていただけたらと思います。まず、表紙の目次のところでございますけれども、章立てにつきまして指針に関連する項目について、その関連がわかるように2-1、2-2、2-3と、番号を振り直しております。
また、前回は、「引き続き議論を要する課題について」というものを1つの章として記載しておりましたけれども、いただいた意見を含めて、この章立てより前の部分で記載のある(今後の方向性)の部分に、それらは内包されているものが多かったと認識しておりますので、かえって章を別立てすることが混乱を招いているのではないかと考え、前回御議論いただいた内容も含めて、今回御提示する各項目の(今後の方向性)に盛り込ませていただくこととしました。
それでは、1ページ目から順に主な変更点について御説明を申し上げます。
まず、「1 はじめに」の4ポツでございますけれども、前回御議論いただいた際、職域との関係性について御意見をいただきました。これらについて、昨今の取り組みを振り返りますと、職域におけるがん検診は法令に基づき実施されているものではございませんが、科学的根拠に基づくがん対策を行っていくという、がん対策基本法及び基本計画に基づき、保険者等ががん検診を実施される際の参考になるものとして、平成30年にはマニュアルを策定したという経緯がございます。
そして、現在、マニュアルを参考にがん検診を実施される保険者等が出てきているという御意見もいただいておりますので、このような経緯を踏まえ、職域のがん検診のあり方については、今後必要に応じて幅広く職域の関係者を交えて検討していくこととすると記載をいたしました。
続いて、「2-1」でございます。
1ページ目から2ページ目にかかるところの、「(1) がん検診の利益(メリット)・不利益(デメリット)について」は、(現状と課題)の4ポツをごらんいただけたらと思いますけれども、国民及び保健・医療従事者、それぞれに十分理解していただいているとは言いがたいという側面があるのではないかという御意見を踏まえまして、(今後の方向性)には、そのいずれの立場に置かれても理解が深まっていくような取り組みを行っていくとの観点で再整理を行っております。
続いて、3ページ目の「(2) がん検診の種類・検査方法について」でございます。
(今後の方向性)の2つ目のポツと4つ目のポツになりますけれども、ガイドラインの更新を加速化させていくために、適切な見直しを検討すること。あるいは、ガイドライン以外に科学的根拠の収集が必要な課題についても、引き続き対応していくことを新たに整理しております。
続きまして、4ページ目の「(3) がん検診の対象者について」です。
(今後の方向性)の3ポツをごらんいただけたらと思いますが、一般に加齢に伴い介護等を必要とするなど、さまざまな健康状態に置かれていることが考えられる御高齢の方についてがん検診をどのように考えていくかという際には、かかりつけ医が関与するなどして、総合的に考慮していくことが望ましいということ。
また、その下の4ポツでございますけれども、今後、年齢区分に応じたがん検診の推奨度を示すことを検討する場合には、実際の検診の受診結果に基づく不利益のデータについては、繰り返し受診をすることで要精検率が下がること等から、過小評価されているデータであるという可能性があることについて留意しながら取り組む必要があるとの御意見を追加で記載させていただいております。
続きまして、4ページ目から5ページ目にかかる「(4) 対象者のリスクに応じたがん検診のあり方について」でございます。
こちらの(現状と課題)には、前回の御意見をもとに、リスクの因子としては年齢や喫煙等が考えられるとの旨を記載してございます。
そのほかの(現状と課題)や(今後の方向性)については、本日御議論いただいた内容を踏まえ整理したいと考えております。
続きまして、5ページ目から6ページ目になります。「2-2」の「(2) 精度管理について」でございますけれども、(現状と課題)の2ポツ目に、前回、プロセス指標に基づく事業評価の重要性についても御指摘があったことに加え、市町村における検診の報告内容が複雑化しており、それを十分に活用できていないのではないかという御意見を踏まえての整理を行った上で、(今後の方向性)の2つ目のポツに、事業評価に関する報告書について、これらの必要な見直しを検討していくことという形で整理をしております。
続いて6ページ目の「(3) 受診率向上のための取組について」のところです。
(今後の方向性)の2ポツ目について、その前段に記載されているような、いわゆるコール・リコールといった科学的根拠に基づく既存の取り組みを着実に行っていくことの重要性に加えて、いわゆる検診無関心層等の未受診者の方については、個人の受診状況等に関するデータを有効活用するなどして、今後、より効果的なアプローチ方法等についても検討していくべきとの御指摘を踏まえた内容を整理しております。
続いて、6ページ目から7ページ目の「2-3 新たな検査項目の指針への導入を検討するに当たっての基本的な考え方について」です。
こちらは先ほど、資料2-1として御説明申し上げたとおり、本日追加で御議論いただきたい部分となってございます。
9ページ目の「3 職域におけるがん検診について」です。
こちらの(現状と課題)の1つ目のポツと2つ目のポツにつきましては、先ほど「1 はじめに」の4ポツのところで御説明した内容に加えまして、職域に関するがん検診のマニュアルの普及が進むことが望ましいとの御意見を踏まえ、(今後の方向性)の1ポツでは、マニュアルの普及に取り組んでいくことと記載してございます。
また、(現状と課題)の3ポツ目に、職域の実態に即した精度管理指標を設定することの必要性が示されていることや、(現状と課題)の4ポツ目でございますけれども、受診者の立場に立ったときに、退職後に市町村の実施するがん検診を受けられるよう、職域と市町村との間で情報共有をすることや、市町村でがん検診が受診できることの情報提供など、その連携に取り組んでいくことが重要ではないかとの御意見を踏まえ、(今後の方向性)の2ポツ目、厚労科研の結果を踏まえて対策を検討していくことと整理しているところでございます。
事務局からは以上です。
○大内座長 ただいま、資料2-1と2-2に基づいて説明がございました。
本日は、資料2-1の3ページ目と4ページ目に「追加で御議論いただきたい内容」とあります。
まず、この点は、皆様の御意見を確認させていただきたいと思います。時間が十分に確保できましたら、資料2-2についても踏み込んで議論できればと思っておりますが、よろしいでしょうか。
では、まず、この資料の2-1です。追加で議論すべき内容についてですが、御意見ありますか。
祖父江構成員、どうぞ。
○祖父江構成員 前回の続きの議論なので、よく記憶が定かでないところもありますけれども、【総論】は、検診を新たに導入する際の基本的な考え方ということですね。その際には、もちろんそのガイドラインを作成する過程で有効性に関しての、利益・不利益バランスでガイドラインのグレードを決めていくということは基本にあります。
ただ、そこで推奨レベルがAとかBとかゴーサインが出たとしても、そのことがこの【総論】の(現状と課題)の、「医療技術の進歩や高齢化等に伴う罹患率・死亡率等の変化」というよりは、「昨今のがん検診に関する研究・開発」のところのまとめがガイドラインの中身だと思います。
ただ、それだけではなくて、導入に当たっては実際にその検診期間ですとか、検診を提供できるキャパシティーの問題。あるいは医療経済的なcost/benefit balanceの問題ということも同時に検討した上での導入ということなので、そこの部分を追加したほうがいいのではないかということです。そういうことをきちんと検討した上で、(今後の方向性)の1ポツ目の、「指針へ導入するに当たっての基本的な考え方」を検討することはいいですけれども、この検討した結果をきちんとまとめて、その内容を提示することが必要かと思います。まずはそこです。
続けて言っていいですか。
○大内座長 どうぞ。
○祖父江構成員 では、裏側の【B:検診方法等について】の(現状と課題)の3ポツ目に、過剰診断問題があります。過剰診断は評価に時間がかかると。「検査の導入後、長い期間をかけて評価を行う必要があることに留意が必要である」という記述になっていますけれども、検診の導入の初期段階でもそのアラートは出るわけです。非常に罹患率に比べて発見率が高いというのは過剰診断を強く示唆するものなので、そうした初期の段階でのアラートを導入前にきちんと評価しておくことも重要であると。ですから、導入後に評価をするだけではなく、導入前に一定の評価をした上で、それに加えて、長い期間をかけた評価も必要であるという記述にしたほうがよいと思います。
それから、4ページ目の最後の、「新たな検査項目やがん検診の種類を、指針へ導入した場合、その有効性等について」ですけれども、有効性に加えて安全性というものは必ずバランスを持って記述しておくべきだと思います。
以上です。
○大内座長 貴重な御意見だと思います。
特に、後半で述べられた過剰診断については、導入前からも評価をしておくべきだろうということ、安全性も含めてということで御提言がありました。この考え方はよろしいでしょうかね。
中山構成員、いかがですか。
○中山構成員 異論は全然ございません。
○大内座長 ほかにいかがでしょうか。
井上構成員、どうぞ。
○井上構成員 2ページ目と3ページ目の記述のところで気になった点として、(現状と課題)のところです。これの文章には全く異存はなくて、がん種ごとの罹患率・死亡率の変化を踏まえる必要がもちろんあるのですけれども、これと同時に世代とか出生時期で明らかにダイナミックに変化している衛生環境だとか、いろいろなことの理由があって変化しているために、それと関連するがん種の罹患率がぐっと下がってきて、胃がんなんかそうですけれども、そうすると、先ほどのリスク層別化の話もそうですけれども、そもそもハイリスクの人がどんどん減ってきているという、そのスピード感も一緒に捉えておかないと、罹患率・死亡率だけの変化を見てもいいのですけれども、さらにわかっているものとしては検診には関係ない、先ほどの肝炎ウイルスの話も出てきましたけれども、ピロリ菌の問題とか、たばこの喫煙率の問題とか、社会全体で動いてきているものに関してもやはり踏まえておく必要があるので、そのような記述が少し加えられたらいいなと思いました。
○大内座長 ただいまの井上構成員の御意見はごもっともだと思うのですが、多分、【A:疫学的な背景について】の最初のところの、「医療技術の進歩や人口動態の変化等」の「等」の中に入っているのかなと思ったのですが、恐らく今、先生が言われたのは非常に重要でして、世代の問題、あるいは年齢区分という言葉なのか、あるいは私がふと思いついたのは疾病動向かと思うのです。国民衛生動向というのは、毎年のように確認されているわけですけれども、そういったものを踏まえた言葉も加えたほうがよいのかなと思うのです。
御意見をどうぞ。
○井上構成員 がんそのものの動向だけではなくて、その要因の動向も含めてという意味で申し上げました。
○大内座長 では、今の件については、多分この前段のところですので、井上構成員の意見を踏まえた上で、祖父江構成員も近いことを言われていましたので、後でもう一回修正を加えたいと思いますが、よろしいですか。
ほかに御意見ありますか。
福田構成員、どうぞ。
○福田構成員 こういう検診に一部であっても公費が投入されているところがありますので、費用対効果等について考えるのがとても重要だと思います。そういう意味で、今回追加していただいた中で、2枚目のスライドのところに、「経済評価(費用対効果)等」を入れていただいて、これは大変いいと思うのですが、裏の4ページ目の下から2行目のところは「費用対効果等」と書いてあって、細かなところで大変恐縮なのですが、「経済評価」と言っているのと「費用対効果」と言っているのは同じことを言っているのか。ときによって「経済評価」という言い方のほうが少し広く捉えられることがあって、例えば「費用対効果」は本当にコストエフェクティブネスなので、これだけお金をかけてどのような成果を得られたかですけれども、「経済評価」の場合には例えば新しい検査方法を導入したときに、それが財政的にどのくらいの影響があるか、バジェットインパクト的なものとかも含んだりする場合もあるので、そういう意図で分けて書かれているのか、そうではなくて単に同じことを言っているのかがちょっとわかりにくいかなと思いました。
○大内座長 この点は、言葉の使い方ですね。福田構成員が言われたように、これはがん検診に使われる公費ですね。使った場合の費用対効果等の分析です。その言葉として、別の言葉も使われているところが見受けられるということなのですが、では、事務局からお願いします。
○がん対策推進官 事務局でございます。
御指摘の点については余り区別をして書き分けたつもりではございませんので、御指摘のとおり統一を図っていきたいと思っております。
○大内座長 では、言葉の統一をさせてください。
ほかにいかがですか。
中山構成員、どうぞ。
○中山構成員 【B:検診方法等について】で推奨される検査は、「死亡率減少効果が明らかであることが基本である」というのがあって、(今後の方向性)で「死亡率減少効果の代替指標のあり方について」検討を行うことというのがあり、それはその流れでもいいと思うのですが、子宮頸がんとか大腸がんとか、前がん病変からだんだん進展していく流れがはっきりとわかっているものは、死亡率に行く手前の浸潤がんの罹患率というのも指標という形で用いられた研究も結構昔からあるのですけれども、これはこの文脈だと代替指標という位置づけにしてこれから検討しますという話になるのか、もうそんなものは昔からあるからいいですよという形になるのか、どちらなのでしょうか。
○大内座長 大変重要な点を指摘されましたが、これは文言の整理が必要ですね。代替指標のことを最後に書いていながら、ここで「死亡率減少効果が明らかであることが基本である」と限定されてしまうことの矛盾点ですね。
いかがでしょうか。
○がん対策推進官 ありがとうございます。事務局でございます。
そういう意味では、これまで、がんセンターに掲げていただいた7カ条、本日はお出ししていませんけれども、その中で死亡が確実に見込めることが明文化された条項でしたので、そういった意味では学術的にはおっしゃっていただいたとおりだと思いますから、それを国の検討会の基本的な方針としても明文化していくというつもりでここは書かせていただいた次第です。
○大内座長 よろしいですか。
松田構成員、いかがですか。
○松田構成員 結構です。大丈夫です。
○大内座長 では、資料2-1、追加で議論いただきたい内容ということで、今、意見をいただきましたので、これは修正を加えたいと思います。
では、前回に引き続いてですが、資料2-2「『がん検診のあり方に関する検討会』における議論の中間整理(骨子案)」でございます。
事務局から説明がございました。目次にあるように、「1 はじめに」からそれぞれの章にわたっておりますが、本日議論いただきました4ページ目、「(4) 対象者のリスクに応じたがん検診のあり方について」の(現状と課題)と(今後の方向性)につきましては、先ほどの参考人からのプレゼンに沿った討論内容をここに反映したいと思います。よろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○大内座長 では、これは大変重要なステップといいますか、本検討会の中身をきちんと反映することになりますので、皆様から御意見をいただきたいと思います。
時間的には大丈夫ですね。
○がん対策推進官 はい。
○大内座長 もう少し議論させてください。
では、「1 はじめに」にということで、健康増進法、あるいは「がん検診のあり方に関する検討会」そのもののこれまでの経緯について書いてあります。
最近、がん検診の利益のみならず不利益についてきちんと議論すべきであるということは、世界的な流れでして、昨年6月にオランダで行われた、国際がん検診ネットワーク会議でもメーンテーマが、balance in cancer screeningということでした。そのバランスのことも考えるべきだということで、「2-1 がん検診の指針の見直しの方向性について」のいの一番に、「(1) がん検診の利益(メリット)・不利益(デメリット)について」ということで書き込まれております。
これは、かねて皆様からも御指摘をいただき、特に、祖父江構成員や中山構成員からは、不利益についてきちんと議論をすべきだということで、かなりここは落とし込んであると思いますが、このような内容でいいのかどうかです。
それから、4ポツ目に、「職域におけるがん検診について」とあります。これは、これまで本検討会、あるいはその前に、第3期がん対策推進基本計画に盛り込まれた結論、それで検討会に委託されたわけですけれども、その中で本検討会のもとにワーキンググループが設置されまして、約1年かけて、「職域におけるがん検診に関するマニュアル」を策定したところです。このマニュアルが実際に職域におけるがん検診の現場においても使われ始めているということで、今後、この取り組みを進めるとともに、必要に応じて幅広く職域の関係者を交えた検討を行っていくことが骨子になろうかと思います。
では、最初に1ページ目の下、「2-1 がん検診の指針の見直しの方向性について」を御議論いただきたいと思います。
いかがでしょうか。
どうぞ。
○棟重構成員 いまだにこの議論の中に職域が項目としてあることに違和感があります。
まず、話が少し長くなりますが、平成30年3月に、今、座長がおっしゃったように、「職域におけるがん検診に関するマニュアル」について、この会議の下の段階で、職域のがん検診の関係者も含めたワーキンググループでの議論を経て、第23回検討会で決定されたものと認識しております。
ワーキングで検討したメンバーにも確認をしたのですが、そもそも、職域でのがん検診は健康増進法で実施されているものではなくて、それぞれの職場の任意で実施しています。対策型の目的や実施方法、ルールが当てはまらないということのワーキンググループのメンバーの見解により、これも第23回検討会の中で議論に出ていますが、ガイドラインと位置づけるのではなく、マニュアルとして職域でのがん検診の参考となるように、既存の職域でのがん検診を妨げるものではないと、マニュアルの14ページ目の「VII.おわりに」にも明確に書いてございます。
「職域におけるがん検診に関するマニュアル」は、参考資料にもございますが、先ほどありましたように平成30年3月です。これも前回か前々回のところで話しましたが、まだ制定されて2年も経っていない状況です。
ようやく、先進的な保険者や事業主が、自分の組織の中で検診にどう取り組んでいこうかとの検討を始めたばかりです。例えば胃がん検診であれば、多くの被用者保険では40歳以上毎年実施しているところが多いのです。
一方、こちらのマニュアルでは、50歳以上2年に1度と書かれたので今後どう取り組んでいくか、利用者の理解を得ながらどう進めるか頭を悩ましている段階です。
そういう意味では、このマニュアルがどう浸透していくかをまず見守る時期ではないのかと。浸透を促進させていくためには、いろいろなデータやメリット・デメリットを、保険者や事業主に周知していただくことをお願いしたいと思います。
実際に市町村でも、根拠に基づかない検診がなされているということでびっくりしたのですが、それこそ、国できちんとやっていただくことが必要かと思います。
そして、今回の中間骨子案は、第23回での議論やマニュアルを踏まえた内容とすべきと考えておりまして、仮に、職域のがん検診のあり方を変えようとするなら、最後のほうにも書いてございますけれども、職域の関係者を集めて実態を踏まえた議論をしないと、全く絵に描く餅になり、現場からそっぽを向かれてしまいます。そういう意味では、議論は時期尚早であるという認識です。
骨子案についてのコメントですが、まず「1 はじめに」のところで一言申し上げたいのが4つ目のポチです。確かに、「法令に基づき実施されているものではない」と書いていただいていますが、一方で、「職域においても科学的根拠に基づくがん検診が実施されるよう」というのは、確かに、がん対策推進基本計画には書いてありますが、マニュアルには書いてございません。
そういう意味では、このマニュアルに基づいてやるということで言えば、いろいろと議論はあるかと思いますので、そこのところはいっそのこと、「職域におけるがん検診については」から飛ばしていただき、「平成30年3月に厚生労働省から発出された『職域におけるがん検診に関するマニュアル』を参考にしながら」というかたちで、「現在」というところから「されるよう」というところを削っていただきたい。それでも中身の意図されたところは変わらないと思います。
○大内座長 棟重構成員から、職域に関する記載についての意見が出ました。確かにお手元の参考資料3「職員におけるがん検診に関するマニュアル」は、第3期のがん対策推進基本計画の中には、ガイドラインを定めることとなっていたのですが、職員におけるがん検診には根拠法がない、安衛法にがん検診は書いていないので、そういった背景のもとに手引書、マニュアルとなった経緯がございます。
ただ、参考資料4「がん対策推進基本計画」そのものでは書き込んであるのです。4ページ目、「マル3 職域におけるがん検診について」の(取り組むべき施策)に、「国は、職域におけるがん検診を支援するとともに、がん検診のあり方について検討する。また、科学的根拠に基づく検診が実施されるよう」といった文言があって、これを踏まえた上で、本検討会で議論されて、当時のワーキンググループは13名の構成員でしたので意見の取りまとめにかなりの時間を要しましたけれども、基本的には第3期のがん対策推進基本計画にのっとっているものだと私は理解しております。
そして、第23回の本検討会でしたか、ワーキンググループからの上申書を受けて本検討会で具体的にもう一度議論したわけですが、その結果としてこのマニュアルが出てきているわけです。
今、御意見の中にあった、この前段の部分の削除といいますか、関係根拠云々についてですけれども、皆さん、いかがですか。
どうぞ。
○祖父江構成員 確かにこのマニュアルの中では科学的根拠という文言はないですけれども、私もこのマニュアルづくりのメンバーでしたが、検診の種類をどう決めたか。これは、がん検診の推奨レベルで決めているのです。がん検診の推奨レベルは何で決めるかというと、科学的根拠で決めるのです。ですから、科学的根拠に基づかないものをがん検診の推奨レベルで推奨することはありません。
文言がないからといって、この全体の趣旨をきちんと把握した上で進めるのであれば、これは科学的根拠に基づくというのは、自然ここに入ってくるものだと思います。
以上です。
○大内座長 どうぞ。
○棟重構成員 マニュアルには、職域におけるがん検診において参考となることを目指すということですので、決して強制力はないという認識であります。
それからもう一つ、私の懸念としては、科学的根拠はいろいろな意味があると思います。死亡率減少に関する科学的根拠だけではなく、安全性における科学的根拠、あるいは我々が目指している早期発見に関する科学的根拠と、いろいろあると思います。どうもここで皆さんが議論している科学的根拠は、死亡率減少の科学的根拠とおっしゃっているのではないかということが非常に気になっております。
繰り返しになりますが、やはり職域における検診というのは死亡率減少だけを目的にしているわけではないので、あくまでもマニュアルは参考とするものであり、そういう意味では、この科学的根拠は死亡率減少だけではないということさえ確認できれば、構わないと思っています。
○大内座長 ちょっと誤解があるようです。参考資料3の14ページ目の「VII.おわりに」の第3段のところに、「がん検診の実施に当たっては、科学的根拠に基づく検診を」ということが明記されているのです。
○棟重構成員 それは認識しております。ただし、ここの書き方としては、職域におけるがん検診とは書いてありません。国が推進するがん検診に関して科学的根拠に基づく検診であり、その2行後に「職域におけるがん検診」という書き方をされていますので、そこは違うと思います。要は基本計画ではそう書いたけれども、具体的に議論したときにはこのような書き方になったという認識でいます。
だから、その辺の議論を余りやってもきりがないので、ここの段階では、「現在」から「されるよう」というところを削ることは、そんなに問題はないのではないかという折衷案での提案です。
○大内座長 どうぞ。
○祖父江構成員 職域においても、このマニュアルの「II.目的」として記述されているのは、「がんの死亡率を減少させること等を目的とする」とはっきり書いてあります。だから、確かに最初はこうではなかったのですよ。議論の中でこういうことに合意、落ちついたという経緯だと私は思っています。
○棟重構成員 そこについてはいろいろ議論があったと聞いていますが、一方で、最後にということで書いてございます。あくまでも参考としているということなので、そこは相当議論があった上での記述だと認識しております。
○大内座長 議論の末、「II.目的」には「がんの死亡率を減少させること等」としたのです。そういうこともあって、この「II.目的」と最後の「VII.おわりに」のところを解釈すれば、この骨子案に書かれている文言について私は妥当であると思っていますが、いかがでしょうか。
どうぞ。
○松田構成員 私も今の事務局案、この文章に賛成です。職域の検診については、1つ目は法令に基づいていない、その根拠がない、それをはっきり書くべきだと思います。2つ目は、職域における検診についても目指すべきは、やはり死亡率減少効果という利益だと。それは、職域であろうとなかろうと、どんな職域であろうと目指すべきものは同じであるべきです。職域における検診が先進的なものを取り入れてこられたということは十分理解はしておりますが、今後は本当に利益のあるものに限定していく必要があると思います。それはどの職域でも共通だろうと考えております。
したがって、この文言のとおりでいいと私は考えているところです。
○大内座長 どうぞ。
○棟重構成員 職域は法律に基づいてやっているわけではなく、ある意味、任意でやっています。先ほど言いましたように死亡率減少もありますが、早期発見、早期治療により安心をしてもらうという目的もあります。職域が死亡率減少だという定義をされるのであれば、それは市町村でやっていただければと思います。我々、職域は違う目的でやっているということに基づいて、あくまでもこのマニュアルの「VII.おわりに」に、「参考となることを目指すものである」、「既存の任意型検診を妨げるものではない」と書いてございます。
○大内座長 この文言の中の後ろのほうの、「ような状況を踏まえながら、職域におけるがん検診のあり方については、必要に応じて検討を行っていく」というのはだめなのですか。
○棟重構成員 検討を行っていくのはかまいませんが、その前提として、このマニュアルに書いていないようなこと、「職域においても科学的根拠に基づくがん検診が実施されるよう」という文言にこだわりがありますので、そういう意味ではそこの部分は削っても問題がないかと。具体的に職域の関係者を交えた検討を行うときに、そこの議論をすればいいと思います。
ただ、ここに書いてあるからそのとおりにやれと言われ、この科学的根拠は死亡率減少を目指しているのだと言われ、足かせをはめられると職域としては納得いかないということです。
○大内座長 先ほどの繰り返しですけれども、マニュアルの「II.目的」に「がんの死亡率を減少させる」と明記されているのですが、これはどうしますか。
先ほど、椎名構成員から、職域におけるがん検診受診者が定年後に市町村のがん検診、対策型に移ってくる。そういった方々をシームレスに見ていくべきだろうと。これは国民目線からすれば当然だと思います。そういった体系的なことをやらない限り、がん死亡率の減少につながらない。
ですので、あらゆる機会を通じてがん死亡率の減少を目指すということは、これは国民から見て当然だと思うのですが、いかがでしょうか。
どうぞ。
○椎名構成員 この「科学的根拠に基づく」という言葉は、一般の受診されている対象者の方々には御理解いただけていないところかもしれないのですが、実際にはがん検診に対する期待は、恐らく職域でも地域でも、また、ドックなどでも異ならないと思います。それはやはり、我々がこういったがん検診を行う際に根拠とできるもの、それをきちんと定められたものに基づいて実施しているというところにあると思っております。
もちろん職域でのがん検診については、根拠が今のところは明確にない。むしろ福利厚生の一環として行われていることは十分承知はしておりますけれども、ただ、恐らくですが、受診されている方の期待は全く同じなのではないかと思いますので、ぜひそのあたりについては整合できる方向で考えていただければと思います。
○棟重構成員 その辺の議論は、職域のところで議論をさせていただければと思います。
○大内座長 それでは、戻ります。
まず1ページ目の見直しの方向性についての「(1) がん検診の利益(メリット)・不利益(デメリット)について」という章について御意見をください。
科学的根拠といいますと、その言葉そのものが難しいのではないかと先ほどありました。ただ、最近になって、皆さんも気づかれていると思うのですが、言葉を使うことによって、やはり知識も高まってきますしナレッジメントとして蓄積されていくのです。それは一過性のものだと思いますので、今回、2ページ目の上の「がん検診の不利益」という言葉の中の「偽陰性」「偽陽性」というのは、国民の方々にとっては非常に難しい言葉だと思います。下に注釈がありまして、「偽陰性」とはがんがあるにもかかわらず、検診でがんの疑いがあると判定されないことです。それから、「偽陽性」というのは、がんの疑いがあると判定され精密検査でもがんが発見されないことと付されています。言葉そのものはかなり難しいのですけれども、どういう意味なのかを説明することで、不利益の中身について知る上では、一つのプロセスになると私は思うのです。
特に、椎名構成員からお聞きしたいのですが、いかがでしょうか。
○椎名構成員 もともとがん検診のメリット・デメリットという考え方の、メリットは理解できてもデメリットは理解できないという御意見がよく聞かれるところですが、私どもも地域でがん検診を行う際に、必ずデメリットも含めて御説明をした上で御理解いただいて実施するという体制をしっかりつくるようにしているところです。
やはりある意味の不確実性というか、そういったものは常にあるわけですけれども、なるべくそれを小さくしていくための努力は現場でも重ねているところでして、今、お話がありましたように難しい言葉ではあるけれども、あえて繰り返して説明をするというのは、その知識を高めていただくためには重要だと思いますので、こういった言葉もぜひ説明をつけながら示ししていただけるといいと思います。
○大内座長 羽鳥構成員、いかがですか。
○羽鳥構成員 僕も職域の委員会に出ていましたので、棟重構成員のおっしゃることはとてもよく理解できます。基本的にはそこのことに関しては、任意型検診と対策型検診は差をつけてもいいのかと思います。
「偽陰性」「偽陽性」「不利益」、繰り返し説明することによって、国民の皆さんに理解していただくというのは大事だと思いますし、検診の意味というのは訴えていく必要があると思いますので賛成です。
○大内座長 ありがとうございました。
まだ議論は尽きないと思うのですが、実はこの会場は午後7時には必ず退場することになっていまして、申しわけないのですが、資料2-2につきましては、ここまでとさせていただきたいと思います。
○棟重構成員 最後に、「3 職域におけるがん検診について」で2点ほど。
2つ目のポツの2行目ですけれども、「検査項目や検診間隔等の手引きとなるように」と書いてありますが、「手引き」という言葉は今までに1度も使われていませんので、やはりマニュアルと同様に「参考」という形にしていただければと思います。「手引き」というと、またガイドラインと勘違いされがちですので、新たな言葉を使うよりも今まで使われたような「参考」という言葉にしていただきたいということが一つです。
また、10ページ目の最後のポツですけれども、「被用者保険の代表や」という中に、産業医も入れていただければと思います。やはりその職場のことをわかっていらっしゃるのは産業医の先生方ですので、そういった言葉も入れていただき、職域の実態に合った形で検討を行っていただくことをお願いしたいと思います。
○大内座長 検討させてください。
よろしいでしょうか。また改めて、次回もこの検討をさせていただきたいと思います。この骨子案をもとに、次回は中間整理を提示できるよう準備を進めていただきたいと思います。
では、議論は尽きないのですけれども、本日はここまでとします。
事務局から連絡事項をお願いします。
○がん対策推進官 本日も御議論いただきましてありがとうございました。
次回の検討会については、調整の上、御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。今、座長から御指示がありましたとおり、中間整理をということでございます。本日は時間が限られておりましたので、こういった意見を追加で提出したいというものは、文書等により事務局にお寄せいただきたく存じます。
本日はありがとうございました。
○大内座長 それでは、本日の検討会をこれで終了します。
構成員、また参考人の皆様におかれましては、まことにありがとうございました。
照会先
健康局がん・疾病対策課
代表 03-5253-1111(内線2091)