第85回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録

 

 
第85回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会(議事録)
 
1.日時 令和2年2月26日(水) 17::29~17:51
 
2.場所 中央労働委員会 講堂
           (東京都港区芝公園1-5-32  7階)
 
3.出席委員
(公益代表委員)
○東京大学大学院法学政治学研究科教授 荒木 尚志
○読売新聞東京本社編集委員  宮智 泉

(労働者代表委員)
○全日本海員組合奨学金制度運営管理部長代理 楠 博志
○ 日本化学エネルギー産業労働組合連合会副会長 安原 三紀子
○全国建設労働組合総連合労働対策部長  田久 悟
○日本基幹産業労働組合連合会中央執行委員 黒島 巖
○日本労働組合総連合会総合政策推進局長 仁平 章
  
(使用者代表委員)
○東京海上ホールディングス株式会社人事部ウエルネス推進チーム専門部長 砂原 和仁
○鹿島建設株式会社安全環境部部長 本多 敦郎
○一般社団法人 日本経済団体連合会労働法制本部長 輪島 忍  

4.議題
(1)労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(2)労災年金担保貸付事業の廃止等について(報告)
 
5.議 事

○荒木部会長 それでは、ほぼ定刻になりましたので、ただいまから第85回「労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会」を開催いたします。新型コロナウイルス問題で大変な中、御参集いただきありがとうございます。

 本日の委員の出欠状況ですが、公益側代表の大前委員、中野委員、水島委員、森戸委員、労働者側代表の髙橋委員、使用者側代表の北委員、久保田委員、山内委員が御欠席です。そうしますと、出席者は10名ということになりますが、公益代表、労働者代表、使用者代表、それぞれ3分の1以上の出席がございますので、定足数は満たしていることを御報告いたします。

 それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いします。

 第1の議題は、「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令案要綱について」です。事務局から説明をお願いいたします。

○労災管理課長 お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。議題1は、労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令案です。資料1の最初の所に、いわゆる縦書きで諮問文を配らせていただいていますが、内容については参考1-1を用いて御説明いたします。参考1-1、横書きになっているペーパーです。労災保険法施行規則等の改正について(概要)です。今回お諮りする案件は、省令案として、6つの事項について諮問をさせていただいています。まず1つ目、1ページの一番上の所です。介護補償給付等の最高限度額、最低補償額の見直しというものです。例年この時期に行わせていただいていますが、業務上の事由又は通勤災害により、一定の障害を負って、介護を要する状態になった場合、その介護に要した費用について、給付を行うというものです。この給付については、最高限度額、最低補償額を設けております。例年、最高限度額については、特別養護老人ホームの介護職員の平均基本給をベースに見直しています。また、最低補償額については、最低賃金の全国加重平均額を参考に見直すということになっています。今年度も同じ方法で見直すということですが、今回、特別養護老人ホームの介護職員の平均基本給が、1.1%上昇している。最低賃金の全国加重平均額についても3.1%と上昇していますので、今年度の最高限度額、最低補償額にそのパーセントを掛けまして、新しい最高限度額、最低補償額を設定したいと思っております。額については、①②に書いているとおりです。以上が1点目です。

 2点目の改正点は、1ページの下の所に書いてありますが、障害補償年金及び傷病補償年金の定期報告等の見直しというところです。これは国民負担の軽減の観点から、定期報告等を廃止するというような見直しを行おうというものです。

 2ページです。(1)定期報告の見直しです。障害補償年金等の受給者については、生存情報、転居の情報の確認、あるいは厚生年金等の受給関係を明らかにするといった観点で、年に1回定期報告を求めています。これらの情報については、マイナンバー連携により、日本年金機構、あるいは地方公共団体情報システム機構、いわゆるJSで住基情報の情報提供を行うことによって、我々も把握可能になったということです。このため、これらの定期報告は求めないということにしたいと思っております。ただし、マイナンバーを取得されていない方、例えば外国人だとか、あるいは外国に転居をされてしまっている方、住基情報がありませんので、そういった方については定期報告を求めていくということを考えております。

 (2)です。定期報告の際に、傷病補償年金、あるいは傷病年金については、障害の状態の変化、治癒の状況を把握するために、医師の診断書を添付していただいているという状況です。この医師の診断書の情報についても、日常的にレセプト審査をこちらのほうで行っておりますが、この中で把握することが可能であるということから、今回定期報告を求めるというような場合であっても、医師の診断書の添付を不要とするといった改正を行おうと思っております。2点目は以上です。

 3点目の改正は、時間外労働と改善助成金の見直しです。2点あります。1点目は事業名の変更です。この助成金については中小企業事業主が働き方改革を円滑に行うことを支援するといった助成金ですので、名称についても「働き方改革推進支援助成金」と変更しようと思っております。

 助成対象等の拡充という所ですが、これについては6ページを御覧ください。6ページに働き方改革推進支援助成金についてというペーパーを付けさせていただいています。これを御覧いただきますと、赤い字になっている所が今回見直しを行おうと思っている内容です。コース名の所を御覧いただきますと、労働時間短縮・年休促進支援コース(新規)と書かれておりますが、下の※を御覧いただきますと、2つのコースを統合するということを考えています。支給要件、助成金の上限額等々について、拡充を行っていこうというふうに考えています。予算額については、予算案額ですが、今年度予算が626,000万円余ということですが、729,000万円余ということで審議をしているという状況です。

 2ページに戻っていただければと思います。このような拡充に伴い、省令上は事業主に事前に経過を出していただく項目があるのですが、この項目の中で、所定外労働の削減のための措置というところがありますが、これを労働時間の短縮のための措置と改めるというような支給要件に合わせた省令の改正を行おうと考えています。3点目は以上です。

 4点目の改正は、前払一時金等の見直しという所です。労災年金については、一定額について受給者が、前払いで一時金を選択できる、いわゆる年金を前倒しで受給することができるという制度です。前払一時金を選択した場合には、実際その前払一時金を選択しなければ、定期的に支給されていた年金金額がありますが、例えば200万円だったら200万円、その額に達するまで年金の支給を停止するとしております。その支給を停止する際に1年を超えた場合には、年5%の利率で割り引いて計算をしているという状況になっております。5%というのは法定利率なのですが、3ページを御覧いただきますと、平成29年の民法改正により、法定利率が年5%から年3%になるということになっております。これは今年の4月からということなのですが、加えて3年ごとに見直しをするというような規定も盛り込まれています。このため、今回法定利率を5%というところから、算定事由発生日の法定利率3%と書いてしまうとまた3.5%になると、そこを変えなければいけないとか、そういうことがあり得ますので、算定事由発生日の法定利率という改正を行おうと思っております。これは4点目です。

 5点目が統計数値の変更に伴う追加給付に係る規定の整備ということです。昨年の11月の部会で御報告を申し上げましたが、大阪府、それから奈良県の統計調査員の不正が発覚しまして、毎月勤労統計の数値が若干変更になったということがありました。それに伴い、労災年金について、追加給付を行う必要が生じたということです。総額としては全部で10万円程度となるかと思いますが、これに伴って、メリット収支率には影響しません。これは昨年行いました、毎月勤労統計の不適切事案に伴う追加給付のときも行った改正ですが、追加給付についてはメリット収支率に影響させないといった改正を行おうと思っております。これは5点目です。

 最後6点目ですが、社会復帰促進等事業の根拠規定の明記ということです。社会復帰促進等事業については、労災保険法第29条第2項において、必要な基準は省令で定めるとなっております。必要があれば省令で定めるということなのですが、例えば特別支給金、あるいは先ほど御覧いただきました時間外労働等改善助成金などの助成金、これらについては、省令上、根拠規定があり、法律には基づいているのですが、通達で根拠を欠いているといった事業が幾つかあります。そのような事業の中で、処分性を有する事業について、労災保険法施行規則に根拠規定を明記すると考えています。その点については、総務省に設置されている行政不服審査会からも、再三、指摘を受けている、こういった内容です。①から⑫までありますが、いわゆる処分性を有する事業について、根拠規定を規定していこうと考えています。

 これらの施行期日は、先ほどの民法改正に伴うもの、あるいは予算に関連するものについては、令和241日を考えています。ほかのものについては公布日施行と考えています。簡単ではありますが、説明は以上です。よろしくお願いします。

○荒木部会長 ありがとうございました。ただいまの説明について、何か御質問、御意見があればお願いいたします。

○輪島委員 助成金の関係ですが、参考資料1-16ページですけれども、働き方改革推進支援助成金を大くくりにするというのは分かるのですが、申請する事業主にとってみると、何の助成金なのかはっきり分かるような形。下を見れば何とかコース何とかコースなので、中身は分かるのですが、あまり大くくりにし過ぎると何の助成金なのか。これ使えるのか使えないのかという、とっかかりが事業主のほうで分かりにくくなるような傾向もあるので、その点はいろいろあったときに、調整していただきたいと思います。以上です。

○荒木部会長 事務局からいかがですか。

○労災管理課長 確かに助成金は余り何ていいますか、分かりにくくしてしまうと、本来は使っていただくべき方に使っていただけなくなるということがあろうかと思いますので、今回このようなコースの名前にはしようと思っているのですが、周知についてはしっかりやっていきたいと、分かりやすくなるような周知を行っていきたいと思っております。

○荒木部会長 提示の仕方によって分かりやすくという工夫ができると思いますので、御検討いただければと思います。ほかにはいかがでしょうか。特に御意見、御質問等ございませんでしょうか。それでは特段御意見がないということでしたら、本日は諮問案件ですので、諮問のあった件について、当部会としては妥当と認め、労働条件分科会会長宛てに報告することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

○荒木部会長 ありがとうございます。それではそのように進めさせていただきます。労働政策審議会令第7条第7項により、部会の議決をもって、分科会の議決とすることができ、同令第6条第7項により、分科会の議決をもって審議会の議決とすることができると定められております。また、労働条件分科会運営規定第7条において、当部会の議決をもって分科会の議決とすることとなっており、労働政策審議会運営規定第9条において、分科会の議決をもって審議会の議決とするとなっております。それでは、事務局に答申案を用意してもらっておりますので、まず、これを配布し、後ほど読み上げをしてもらうことといたします。

○労災管理課長 それでは読み上げいたします。労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令案要綱について。令和2226日付け厚生労働省発基02261号をもって労働政策審議会に諮問のあった標記については、本部会は、審議の結果、下記のとおり結論を得たので報告する。記、厚生労働省案は、妥当と認める。以上でございます。

○荒木部会長 ただいま配布して読み上げられました内容で、部会長から分科会長、分科会長から労働政策審議会会長宛てに報告し、この報告のとおりで、厚生労働大臣宛てに答申を行うこととしたいと思います。ありがとうございました。

 それでは、次の議題に移ります。第2の議題ですが、労災年金担保貸付事業の廃止等について(報告)です。事務局から説明をお願いします。

○労災管理課長 それでは、資料2を御覧ください。労災年金担保貸付事業の廃止についてという標題になっております。労災年金担保貸付事業と申しますのは、昭和56年から実施している事業です。労災年金の受給権を担保にお金を貸し付けると、このような事業です。その貸付事業ですが、見直しの趣旨、内容という所の2つ目の○にありますように、実は閣議決定により、事業の廃止は既に決まっているというものです。下の※ですが、平成22127日の閣議決定というものがあります。これは独法改革の関係の閣議決定なのですが、その中で生活費に当てられるべき年金が返済に当てられて、利用者の困窮化を招くこと等の指摘を踏まえて、年金担保貸付事業という、厚生年金であるとか国民年金の貸付け事業があるのですが、年金担保貸付事業と労災年金担保貸付事業については、廃止が決定されているということです。廃止が決定されたのですが、代替的な対策などをしっかりと整えて、工程表を作って廃止するようにという閣議決定になっています。この閣議決定に沿って、順々に準備を進めまして、2年前に独立行政法人福祉医療機構で、労災年金担保貸付事業をやっている所なのですが、この機構の中期目標を決定した際に、その当時は平成ですが、平成33年度末を目途に、新規貸付を終了するということが決まっていたということです。つまり令和3年度末に、この業務については廃止をされるということが既に決まっているということです。

 次のページです。この事業については、労災保険法の第12条の52項に、いわゆる受給権の保護の規定がありますが、その規定とは、保険給付を受ける権利は譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができないということです。ただし、例外として、年金たる保険給付を受ける権利を独立行政法人福祉医療機構法の定めるところにより、機構に担保に供する場合はこの限りではないという規定があります。ただし書きの所が、事業がなくなってしまうということがありますので、今回、現在検討中の年金制度改正法案がありますが、この法案の中に、このただし書きを削除するという改正を盛り込みたいと考えています。

 なお、年金担保貸付事業についても同様の改正を行うということを検討しています。報告は以上になります。

○荒木部会長 ただいまの説明につきまして、何か御質問、御意見がありましたらお願いいたします。特によろしいですか。それでは、報告事項ということですので、承っておきます。ほかに何かこの際ということであればお聞きいたしますが、よろしいですか。それでは、本日予定した議題は以上ということになりますので、部会は終了させていただきます。

 本日の議事録ですが、署名委員は労働者代表の楠委員、使用者代表の本多委員にお願いいたします。本日は以上といたします。どうもありがとうございました。