2020年2月27日 薬事・食品衛生審議会 指定薬物部会 議事録

日時

令和2年2月27日(木)16:00~

 

場所

新橋5C会議室(5階)
 

出席者

出席委員(10名)五十音順

(注)◎部会長 ○部会長代理
 他参考人2名

欠席委員(1名)

行政機関出席者

 樽見英樹(医薬・生活衛生局長)
 山本史(大臣官房審議官)
 田中徹(監視指導・麻薬対策課長)
 江野英夫(監視指導・麻薬対策課監視指導室長)
 橋本隆志(監視指導・麻薬対策課薬物取締調整官) 他



 

議事

○監視指導・麻薬対策課長 定刻になりましたので、ただいまから薬事・食品衛生審議会令和元年度第5回指定薬物部会を開催させていただきます。
 本日、松本委員から欠席の御連絡を頂いております。現在のところ、当部会の委員数11名のうち10名の御出席を頂いておりますので、定足数に達しております。また本日、参考人として、国立精神・神経医療研究センターの舩田正彦先生、国立医薬品食品衛生研究所の花尻瑠理先生をお招きしております。よろしくお願いします。
 部会を開始する前に、本部会の公開・非公開の取扱いについて御説明いたします。審議会総会における議論の結果、非公開という取扱いとなっております。また、会議の議事録の公開については、発言者氏名を公にすることで発言者等に対して外部からの圧力や干渉、危害が及ぶおそれが生じることから、発言者氏名を除いた議事録を公開することとされておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと思います。また、ペーパーレスで実施したいと思っておりますので、よろしくお願いします。それでは、以後の議事進行は鈴木部会長にお願いします。
○鈴木部会長 最初に、事務局より資料の確認をお願いします。
○事務局 では、本日の資料の確認をさせていただきます。タブレットを操作しながら御確認をお願いいたします。
 まず、マイ・プライベート・ファイルの中に指定薬物部会というフォルダがあります。そのフォルダを開いていただきまして、マル1の部会資料の中に資料1~3までを格納しております。マル2の文献の中に文献1~45までを格納しております。マル3の参考資料に参考資料1~3までを格納しております。一番下の委員名簿、座席表につきましては、適宜、御参照ください。資料についての説明は以上です。操作等、御不明な点がございましたら事務局までお申し付けください。
○鈴木部会長 ありがとうございました。本日の議題は、指定薬物の指定についてです。それでは審議に入りたいと思います。審議物質について、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 それでは御説明いたします。資料1には、各物質の名称、通称名、構造式を記載しております。資料2は、御審議いただく物質のほか、構造が類似する指定薬物や麻薬等を一覧表にまとめたものです。資料3は、国内外の基礎研究や動物実験の結果等について、中枢神経系への影響を中心に取りまとめたものになっております。本日は審議物質が7物質あり、時間も限られておりますので、まず初めに、7物質の概要について御説明した後、各物質について詳しく御説明したいと思います。
 まず、資料1を御覧ください。今回の審議物質は、LSD analog3物質、フェンタニル系2物質、カチノン系1物質、カンナビノイド系1物質の、計7物質となっております。
 次に、資料2を用いて試験成績の概略や海外規制状況について御説明いたします。まず、資料2-1を御覧ください。審議物質マル1~マル3のLSD analog3物質については、動物への投与による症状観察や、受容体活性試験の成績と、海外規制の情報が得られております。これら3つの物質は、海外規制の欄に記載のとおり、フィンランド、スウェーデン、スイス等で規制が確認されております。
 次に、資料2-2を御覧ください。審議物質マル4及びマル5のフェンタニル系2物質については、動物を用いた薬物依存性の試験結果や、動物投与時の症状観察、受容体活性試験などの成績と、海外規制の情報が得られております。海外規制の欄の記載のとおり、アメリカ等で規制が確認されております。
 資料2-3を御覧ください。審議物質マル6のカチノン系1物質については、モノアミントランスポーターへの影響の試験やマイクロダイアリシス試験の成績と、海外規制の情報が得られております。海外規制の欄のとおり、セルビア等で規制が確認されております。
 資料2-4を御覧ください。審議物質マル7のカンナビノイド系1物質については、カンナビノイド受容体を用いた試験のほか、ここには記載はありませんが、動物へのばく露試験の成績が得られております。また、海外規制の欄の記載のとおり、スウェーデン等で規制が確認されております。
 最後に、国際条約に基づく統制について御説明いたします。今回の審議物質マル4及びマル5のフェンタニル系2物質と審議物質マル7のカンナビノイド系1物質については、WHOから国際条約に基づく統制対象とするべき旨勧告が出ており、本年3月の国連麻薬委員会において、条約に基づく統制対象とするか審議が予定されております。WHOの勧告では、1961年麻薬単一条約のスケジュールⅠで規制することとされております。以上です。
○鈴木部会長 ありがとうございました。それでは、7物質まとめて国内での流通実態について、○○委員に説明をお願いしたいと思います。
○○○委員 今回の審議化合物についてですが、まずALD-52について、2017年5月に1件、2019年4月に4件、2019年9月に2件、2019年12月に1件の検出事例があります。その次にAL-LADについて、2016年1月に1件、2019年4月に2件の検出事例があります。ETH-LADについて、2016年1月に1件、2019年4月に2件、2019年8月に1件、2019年12月に1件の検出事例があります。次に、4F-MDMB-BINACAにつきましては、2019年3月に1件の検出事例があります。
 ALD-52、AL-LAD、ETH-LADにつきましては、製品の形状につきまして、全て紙片状で検出されました。また、4F-MDMB-BINACAについては、薄褐色の粉末として検出されました。以上です。
○鈴木部会長 ありがとうございました。事務局から補足はありますでしょうか。
○事務局 ○○委員から御説明いただいた情報に加えまして、審議物質マル6のカチノン系1物質については、試買調査で検出事例が確認されております。以上です。
○鈴木部会長 ありがとうございました。それでは、各物質について詳しく説明をお願いいたします。
○事務局 本日は審議物質が7物質あり、時間も限られていることから、LSD analogである審議物質マル1~マル3については、まとめて説明させていただきます。
 資料3を御覧ください。まず、LSD関連物質の審議物質マル1のALD-52の物質名、構造式は、記載のとおりです。1、2ページの(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察について御説明します。マウスにALD-52(1.1mg/kg、11.0mg/kg、27.5mg/kg)を腹腔内投与し、投与後30分、60分、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、各用量ごとに観察された症状を記載しております。また、2、3ページの表1~3に、行動及び中枢・自律神経症状観察における平均評価値を載せており、数値は、各群マウス5匹のスコアの平均値となっております。また、観察された特徴的な症状を示した写真を4ページに記載しております。ここで、4ページの写真と併せて、実際の動画も御確認いただきたいと思います。スクリーンを御確認ください。
 こちらが、1.1mg/kg投与群の投与後7分経過のマウスですが、両側前肢を胸部に隠した伏臥位姿勢での静止状態が確認されました。続いて、11.0mg/kg投与群の投与後約18分経過の別のマウスですが、鼻部の小刻みな震え、眼裂の縮小、寄り掛かり立ちで静止状態が確認されました。こちらは、27.5mg/kg投与群の投与後約5分経過のマウスですが、伏臥位姿勢での静止状態、スニッフィング、挙尾反応が確認されました。これは、投与後約44分経過の別のマウスですが、腹這い歩行、挙尾反応が確認されております。
 資料に戻っていただきまして5ページ、(2)自発運動における運動量の測定について御説明いたします。マウスにALD-52(11.0mg/kg)を腹腔内投与し、投与後3時間までの10分ごとの自発運動量を測定しております。ALD-52投与群及び対照として50%PG-含有生理食塩水群の各群マウス4匹を使用し、総運動量、大きい運動量、立ち上がり回数、総移動距離について、Wilcoxon検定を用いて有意差検定を行っております。結果は下のFig.1に示すとおりですが、総運動量、大きい運動量、総移動距離は、投与直後から20分まで抑制される傾向がありましたが、測定期間を通して対照群と有意な差は見られませんでした。立ち上がり回数は投与直後から20分まで有意に減少しましたが、それ以降は、測定期間を通して対照群と有意な差は見られませんでした。
 続いて6ページ、(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。マウスを用いて、25%PG-生理食塩水投与によるモノアミン増加率に対する、ALD-52(約29mg/kg)を腹腔内投与によるモノアミン増加率の有意差をウェルチのt検定によって求めたところ、7ページのFig.2のとおり、マウス線条体内神経シナプス間隙のノルアドレナリンに対して増加作用が、セロトニンとドパミンに対して減少作用が確認されました。
 8ページ、(4)ヒトセロトニン受容体に対する受容体機能評価試験では、ALD-52のヒト5-HT2A及び5-HT2C受容体に対するアゴニスト活性を明らかにするため、発光タンパク質を用いたカルシウムアッセイ試験により、50%効果濃度(EC50)を算出した結果は、いずれもEC50が1×10-mol/Lを上回る結果でした。
 次に、9ページ(5)には首振り反応試験について結果を載せております。マウスにALD-52(0.1mg/kg、1.1mg/kg、11.0mg/kg)を腹腔内投与し、5分当たりの首振り反応数の経時変化と累積首振り反応数を測定した結果、全ての投与量において首振り反応に対する影響は認められませんでした。
 以上、ALD-52は、行動、症状観察において確認された異常行動や、マイクロダイアリシス試験においてモノアミンの増加や減少が見られたことにより、中枢神経に作用する物質であり、法律第2条第15項に規定する中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高いと考えており、過去に指定した指定薬物と同等の作用を有すると考えております。
 続いて、10ページの(6)海外での流通状況ですが、2016年から2019年にかけて複数の国において流通が確認されております。
 続いて、審議物質マル2及びマル3の御説明をいたします。審議物質マル2及びマル3については同じ研究論文を基に指定を検討しておりますので、ここでまとめて御説明いたします。審議物質マル2及びマル3の物質名、構造式については、11ページの記載のとおりです。
 12ページを御覧ください。(1)ラット脳ホモジネート中のドパミン受容体及びセロトニン受容体への結合親和性について御説明いたします。ラット線条体ホモジネートと、放射性物質でラベルされた、主としてドパミンD受容体に結合するSCH23390、及び主としてドパミンD受容体に結合するspiperoneを用いてラット線条体内のドパミン受容体への結合親和性を評価しております。また、ラット前頭皮質のホモジネート、脳内の放射性物質でラベルされた主として5HT受容体に結合するketaserinを用いて、ラット前頭葉内のセロトニン受容体への結合親和性を評価しております。ETH-LADとAL-LADの結合親和性の評価結果は、下の表のとおりです。LSDとETH-LADは、ラット線条体ホモジネート中のSCH23390結合部位及びspiperone結合部位に、高い親和性で結合することが示されたと報告されております。ドパミンD受容体のK0.5の値ですが、LSDで27.1nM、ETH-LADで22.1nM、ドパミンD受容体のK0.5の値ですが、AL-LADで12.3nM、ETH-LADで4.4nMであったと報告されております。一方で、AL-LADはやや弱く結合することが示されたと報告されており、ドパミンD受容体のK0.5の値189nM、ドパミンD受容体のK0.5の値が12.3nMであったと報告されております。また、LSDとETH-LAD、AL-LADは、ラット前頭皮質ホモジネート中のketaserin標識部位にも高い親和性で結合することが示されたと報告されております。セロトニン5HT受容体のK0.5の値は、LSDで4.3nM、ETH-LADで5.2nM、AL-LADで8.1nMであったと報告されております。
 続いて13ページ、(2)アカゲザルのD1A受容体への結合親和性と機能活性について御説明いたします。アカゲザルのD1A受容体タンパク質を発現するC-6グリオーマ細胞を用いて、ドパミンD1A受容体への結合親和性と細胞内cAMP量への作用を評価しております。ETH-LAD及びAL-LADのドパミンD受容体へのK0.5は、それぞれ、23.7nM、183.0nMであったと報告されております。また、ETH-LAD又はAL-LADを10μM添加することで、LSD10μMと同様の細胞内cAMPの増加が認められたと報告されており、LSD、ETH-LAD及びAL-LADにドパミン10μMを併用添加しても、増強や拮抗作用は認められなかったことにより、ドパミンD受容体に対する部分作用薬であると考えられると報告されております。
 続きまして、14ページの(3)を御覧ください。薬物弁別試験の結果を載せております。d-LSD酒石酸塩を弁別するように訓練されたラット8匹を用いて、ETH-LADとAL-LADを被験薬とした薬物弁別試験を行ったところ、ETH-LADとAL-LADの双方とも、93nM/kg投与量(それぞれ0.031mg/kg体重、0.033mg/kg体重に相当)において、LSDに100%般化したと報告されております。
 以上から、AL-LAD、ETH-LADはドパミンD受容体に結合すること、cAMPの増加が見られており、ドパミン受容体刺激作用を示すことが示唆されていること、薬物弁別試験で100%般化することが確認されており、LSD類似の中枢作用を示す可能性が示唆されていることにより、法律第2条第15項に規定する中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高いと考えております。
 14ページの(4)海外での流通状況ですが、2013年から2018年にかけて複数の国で流通が確認されております。以上になります。
 以上、3物質について御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○鈴木部会長 ありがとうございました。それでは3物質について、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。先生方、御意見はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは御意見がないようですので、審議をまとめます。
 ただいま御審議いただきました3物質は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは引き続き、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 続きまして、フェンタニル系の審議物質マル4及びマル5について御説明いたします。15ページに、Crotonylfentanylの物質名、構造式を記載しております。
 続いて16ページ、(1)精神依存性評価について御説明いたします。マウスを用いてCPP法により精神依存性の評価を行っております。CPP装置を用い、Crotonylfentanyl(1.25mg/kg、2.5mg/kg)を各群10匹を用いて1日置きに腹腔内投与し、30分間装置内に閉じ込め、6日間にわたって条件付けを行いました。対照群は、溶媒である生理食塩液を投与しております。その結果、Crotonylfentanyl(2.5mg/kg)投与群において有意な報酬効果の発現が認められたと報告されております。
 続いて、17ページの(2)オピオイド受容体作用について御説明いたします。チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)にヒトオピオイドμ受容体を発現させた細胞株を用いて、Crotonylfentanylのオピオイド受容体作用を解析し、下の図のとおり、結果が得られております。Crotonylfentanylを0.01μM添加したところ、有意な細胞内カルシウム濃度の増加が確認されております。
 次に、18ページの(3)運動活性への影響を御覧ください。Crotonylfentanylにより誘発される運動活性を、自発運動量測定装置を用いて測定しております。3時間の環境適応後、Crotonylfentanyl(2.5mg/kg、5mg/kg)をマウスに腹腔内投与し、各群12匹を用いて、投与後120分間にわたって運動量を測定したところ、下の図のとおり、対照群の生理食塩液群と比較しまして2.5mg/kg及び5mg/kgのCrotonylfentanylの投与によって、運動促進作用が発現することが報告されております。結果について、図(A)のとおり、Crotonylfentanyl投与の効果は、オピオイド受容体拮抗薬であるNaloxone(3mg/kg)の前処置により有意に抑制されたと報告を受けております。さらに、図(B)のとおり、Crotonylfentanyl(5mg/kg)投与の効果は、ドパミンD受容体拮抗薬であるSCH23390(0.5mg/kg)又はドパミンD受容体拮抗薬であるracloprode(6mg/kg)の前処置により有意に抑制されたと報告されております。
 続いて、20ページ、(4)ドパミン遊離作用を御覧ください。マイクロダイアリシス法を用いて、Crotonylfentanylのマウス脳側坐核におけるドパミン遊離に対する影響を検討したところ、Crotonylfentanyl(2.5mg/kg)腹腔内投与により有意なドパミン遊離の増加が確認されました。
 続いて、21ページの(5)細胞毒性の評価を御覧ください。マウス大脳辺縁系の細胞を用いて、Crotonylfentanylとモルヒネの毒性試験が行われました。Crotonylfentanylは25、50、100及び150μMの濃度で、モルヒネは500μMの濃度でそれぞれ投与され、投与後24時間後の細胞生存率は対照群と比較して、Crotonylfentanyl(100μM及び150μM)投与で有意に細胞生存率が低下したと報告されております。
 以上から、有意な報酬効果の発現、オピオイド受容体作用、運動促進作用の発現、マイクロダイアリシス試験により有意なドパミン遊離の増加から、中枢神経系に作用する物質であり、法律第2条第15項に規定する中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高いと考えており、過去に指定した指定薬物と同等の作用を有すると考えております。
 続いて、22ページの(6)海外での流通状況ですが、2017年から2019年にかけて海外での流通が確認されております。
 続いて、審議物質マル5のValerylfentanylについて御説明いたします。23ページにValerylfentanylの物質名、構造式を記載しております。
 続いて、23ページ下の(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察についてです。マウスにValerylfentanyl(1.1mg/kg、11.0mg/kg、27.5mg/kg)を腹腔内投与し、投与後30分、60分、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、各用量ごとに観察された症状を記載しております。また、24、25ページの表1~3に、行動及び中枢・自律神経症状観察における平均評価値を載せており、数値は、各群マウス5匹のスコアの平均値となっております。また、観察された特徴的な症状を示した写真を26ページに載せております。ここで、写真と併せて実際の動画も御覧ください。
 これは、11.0mg/kg投与群の投与後約17分経過のマウスですが、動きが鈍く、挙尾反応、眼裂の拡大が確認されました。これは、27.5mg/kg投与群の投与後約15分経過の別のマウスですが、伏臥位姿勢での静止状態、眼裂の拡大が確認されました。これは、投与後53分経過のマウスですが、動きが鈍く、自発運動が少ない、眼裂の拡大が確認されました。動画については以上です。
 続いて、資料の27ページ(2)自発運動における運動量の測定結果について御説明いたします。下のFig.1のグラフと併せて御覧いただければと思います。自発運動における運動量の測定について、マウスにValerylfentanyl(11.0mg/kg)を腹腔内投与し、投与後3時間までの10分ごとの総運動量、大きい運動量、立ち上がり回数、総移動距離について、Wilcoxon検定を用いて有意差検定を行った結果、下の図のとおり、立ち上がり回数が投与後10分では有意に減少したものの、それ以外に、測定期間を通して対照群と有意な差は見られませんでした。
 続いて、28ページの(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。コントロール群の生理食塩水投与群に対する、Valerylfentanyl(約32mg/kg)腹腔内投与群の、マウス線条体内神経シナプス間隙のモノアミンの増加率の有意差を、ウェルチのt検定によって求めたところ、29ページの図の一番上のグラフと一番下のグラフのとおり、セロトニン及びノルアドレナリンに対して増加作用、ドパミンに対しては、真ん中の図のとおり、投与直後に増加作用、その後、減少作用が確認されました。
 続いて、30ページの(4)ヒトオピオイド受容体に対するアゴニスト活性を御覧ください。Valerylfentanylのμ受容体のEC50は、6.18×10-mol/Lであり、κ受容体のEC50は、1×10-mol/Lを上回ると報告されております。
 以上から、行動、症状観察において確認された異常行動や、マイクロダイアリシス試験においてモノアミンの増加や減少が見られたこと、ヒトオピオイド受容体に対するアゴニスト活性が確認されたことにより、中枢神経に作用する物質であり、法律第2条第15項に規定する中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高いと考えており、過去に指定した指定薬物と同等の作用を有すると考えております。
 下の(5)海外の流通状況ですが、2016年から2019年にかけて複数の国において流通が確認されております。以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○鈴木部会長 ありがとうございました。それでは、2物質について委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは御意見がないようですので、審議をまとめます。
 ただいま御審議いただきました2物質は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは引き続き、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 それでは、続きましてカチノン系物質である審議物質マル6、N-Butylpentyloneの説明をいたします。N-Butylpentyloneの物質名、構造式については31ページに記載のとおりです。続いて31ページ下の(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスにN-Butylpentylone(2mg/kg、20mg/kg、100mg/kg)を経口投与し、投与後30分、60分、120分の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、各用量ごとに観察された症状を記載しております。
 また、32、33ページの表1~3に、行動及び中枢・自律神経症状観察における平均評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均値となっております。また、観察された特徴的な症状を34ページに載せております。ここで、写真と併せて実際に動画も御確認いただきたいと思います。
 これは、20mg/kg投与群の投与後約40分経過のマウスですが、前方への飛び跳ね、忙しい行動が確認されました。これは、投与後約1時間経過の別のマウスですが、寄り掛り立ち、忙しい行動が確認されました。これは、100mg/kg投与群の投与後約15分経過の別のマウスですが、不安定な状態での寄り掛り立ち、忙しい行動、眼裂の拡大が確認されました。これは、投与後約1時間40分経過の別のマウスですが、寄り掛り立ち、忙しい行動、眼裂の拡大、反復動作が確認されました。
 それでは資料に戻っていただきまして、35ページの(2)自発運動における運動量の測定結果について御説明をいたします。マウスにN-Butylpentylone(20mg/kg)を経口投与し、投与後約3時間までの10分ごとの総運動量、大きい運動量、立ち上がり回数、総移動距離についてWilcoxon検定を用いて有意差検定を行ったところ、下の図のとおり、110分には有意な増加が見られましたが、それ以外の時間帯は投与直後から測定期間を通して対照群と有意な差は見られませんでした。
 続いて、36ページの(3)マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化を御覧ください。コントロール群の水投与群に対する、N-Butylpentylone(約25mg/kg)経口投与群の、マウス線条体内神経シナプス間隙のモノアミン増加率の有位差をウェルチのt検定で求めたところ、下図の上から順にセロトニン、ドパミン、ノルアドレナリン、いずれに対しても増加作用が確認されたと報告を受けています。
 続いて、38ページの(4)モノアミントランスポーターに対する機能影響評価を御覧ください。N-Butylpentyloneのモノアミントランスポーターに対する阻害作用の評価のためノルアドレナリン、ドパミン、セロトニントランスポーターに対するIC50を算出しております。結果は下の表のとおり、ノルアドレナリントランスポーターについては、N-ButylpentyloneのIC50は1.5×10-Mでコカイン塩酸塩のIC50の5.6倍であり、ドパミントランスポーターについては、N-ButylpentyloneのIC50が2.8×10-Mでコカイン塩酸塩のIC50の0.74倍で、セロトニントランスポーターについては1.0×10-Mを上回り、求めることができなかったと報告されております。
 続いて40ページ、(5)にヒトセロトニン受容体に対するアゴニスト活性を測定した結果を載せております。N-Butylpentyloneのヒトセロトニン受容体(5-HT2A及び5-HT2C)に対するアゴニスト活性は、いずれもEC50が1×10-mol/Lを上回ると報告されています。
 以上から、N-Butylpentyloneは行動、症状観察において異常な行動や症状が確認されていること、マイクロダイアリシス試験においてノルアドレナリン、ドパミン、セロトニンの遊離量の増加が見られたこと、ノルアドレナリントランスポーター及びドパミントランスポーターへの阻害作用が認められたことから、中枢神経系に作用する物質であり、法律第2条第15項に規定する中枢神経系の興奮若しくは抑制、又は幻覚の作用を有する蓋然性が高いと考えており、過去に指定した指定薬物と同等の中枢神経系への作用を有すると考えております。
 (6)の海外での流通状況ですが、2018年から2019年にかけて複数の国において流通が確認されています。以上になります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○鈴木部会長 ありがとうございました。それでは委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは御意見がないようですので、審議をまとめます。ただいま御審議いただきました物質は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは引き続き、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 続きまして、カンナビノイド系物質である審議物質マル7について御説明をいたします。41ページに審議物質マル7の4F-MDMB-BINACAの物質名、構造式を記載しております。続きまして、ページ下方の(1)行動及び中枢・自律神経症状の観察を御覧ください。マウスに4F-MDMB-BINACA(15mg)を添加したマーシュマローリーフ(0.25g)を燃焼させ、マウスを薬物にばく露させて燃焼後15分、30分、60分後の行動及び中枢・自律神経症状を観察し、観察された症状を記載しております。また、42、43ページの表1~3に、行動及び中枢・自律神経症状観察における平均評価値を載せており、数値は各群マウス5匹のスコアの平均値となっております。また、観察された特徴的な症状を示した写真を44ページから載せております。また、この写真と併せて実際の動画も御確認いただきたいと思います。
 これは、燃焼終了後5分経過のマウスですが、異常姿勢、飛び跳ねなどが確認されました。これは、燃焼終了後約20分経過の別のマウスですが、触反応観察時のけいれん、四肢の硬直などが確認されました。これは、燃焼終了後約30分経過の別のマウスですが、伏臥位姿勢での静止状態、けいれんなどが確認されました。これは、燃焼終了後約50分経過の別のマウスですが、ケージ内壁への寄り掛かり、挙尾反応などが確認されました。これは、燃焼終了後約70分経過の別のマウスですが、伏臥位姿勢での静止状態、眼裂の縮小が確認されました。
 それでは資料に戻っていただきまして、45ページの(2)カタレプシー試験の結果を御覧ください。カタレプシー試験については、4F-MDMB-BINACA(15mg)ばく露群では、燃焼終了後約15分、30分、及び60分のいずれの観察時においても、5匹全てで陽性であったと報告をされています。
 続いて、46ページの(3)ヒトカンナビノイド受容体の活性を御覧ください。4F-MDMB-BINACAのヒトカンナビノイド受容体(CB及びCB)受容体に対するアゴニスト活性を測定した結果を載せております。CB受容体については1.58×10-mol/L、CB受容体については4.30×10-10mol/Lとの結果から、カンナビノイド受容体に対するアゴニスト活性があることが報告をされております。以上から4F-MDMB-BINACAは行動、症状観察において、異常な行動や症状が確認されていること、カンナビノイド受容体に対するアゴニスト活性を有していることが確認されたことから、中枢神経系に作用する物質であり、法律第2条第15項に規定する中枢神経系の興奮若しくは抑制、又は幻覚の作用を有する蓋然性が高いと考えており、過去に指定した指定薬物と同等の中枢神経系の作用を有すると考えております。
 また、海外の流通状況ですが、2018年から2019年にかけて複数の国で流通が確認されています。以上になります。御審議のほどよろしくお願いします。
○鈴木部会長 ありがとうございました。それでは委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは御意見がないようですので、審議をまとめます。ただいま御審議を頂きました物質は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、事務局から今後の手続について説明をお願いいたします。
○事務局 今後のスケジュールについて御説明をいたします。本件の結果については次回開催の薬事分科会で報告させていただく予定です。本日の結果を受けまして、指定薬物を指定するための省令改正の手続を進める予定です。また、本日御審議いただいた物質に関する、いわゆる正規用途については、今のところ確認をされておりません。いずれにしましても、可能な限り適正使用に支障を来さないように対応いたします。以上です。
○鈴木部会長 ありがとうございました。以上で本日の議題は全て終了いたしました。事務局から次回の予定について連絡をお願いいたします。
○事務局 来年度4月以降の部会日程については、正式に決まり次第、御連絡をいたします。以上です。
○鈴木部会長 それでは、以上をもちまして令和元年度第5回指定薬物部会を閉会いたします。ありがとうございました。 
(了)
 
備考
本部会は、公開することにより、委員の自由な発言が制限され公正かつ中立な審議に著しい支障をおよぼすおそれがあるため、非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局 

監視指導・麻薬対策課 課長補佐 坂西(2779)