第6回精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会議事録

日時

令和2年2月28日(金)15:00~17:00

場所

全国都市会館 第1会議室(3階)

議題

1.精神保健福祉士資格取得後の継続教育や人材育成の在り方について
2.その他

議事


○高橋室長補佐 定刻となりましたので、ただいまより第6回「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
本検討会は公開ですが、撮影は審議前の頭撮りまでとさせていただきます。
また、傍聴される方につきましては、留意事項の順守をお願いしておりますが、今回、発熱等の風邪の症状がない方であっても、咳エチケット、小まめな手洗い、アルコール消毒等に御協力ください。
次に、委員の出欠状況ですが、本日は構成員全員が出席という回答をいただいております。
前回も御説明いたしましたが、本検討会はペーパーレスで実施させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
操作方法につきましては、本日は、外部の会議室での開催となりますので、タブレット内に表示されているファイルのうち、表示したい資料を1回タッチして表示するだけでございます。御不明な点がありましたら適宜事務局がサポートいたしますので、お申しつけください。
それでは、撮影はここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
以降の進行は、樋口座長にお願いしたいと思います。
○樋口座長 皆様、こんにちは。今日は大変寒い日になりましたけれども、最後の検討会でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、本日の議題に早速入りたいと思いますが、初めに事務局より資料の確認をお願いいたします。
○高橋室長補佐 それでは、資料の確認をさせていただきます。
資料1-1 「精神保健福祉士資格取得後の継続教育や人材育成の在り方について(概要)」でございます。
資料1-2 「精神保健福祉士資格取得後の継続教育や人材育成の在り方について」、報告書本体になります。
資料2 「「低所得者に対する支援と生活保護制度」に関する御意見とそれに対する考え方
参考資料1 柏木構成員提出資料「【暫定版】精神保健福祉士のキャリアラダー」(公益社団法人日本精神保健福祉士協会)」
加えて、カリキュラム案について、フォルダーに入っています。
資料に過不足等がございましたら、事務局にお申しつけください。
以上でございます。
○樋口座長 ありがとうございました。資料等は、皆様、そろっておりますでしょうか。
では、議事1から始めたいと思います。「精神保健福祉士資格取得後の継続教育や人材育成の在り方について」でございます。
議事の進め方でありますけれども、これまでと同様に、事務局のほうから資料の説明をいただきまして、各構成員から意見をいただき、議論を進めていく形でお願いしたいと思います。
では、初めに、資料1-1及び資料1-2になりますが、「精神保健福祉士資格取得後の継続教育や人材育成の在り方について」について、事務局から説明をお願いいたします。
○風間室長 心の健康支援室長の風間です。よろしくお願いいたします。
まず、資料1-2が「精神保健福祉士資格取得後の継続教育や人材育成の在り方について」ということで、提言案であり、資料1-1はその概要でございます。本日は資料1-1で説明させていただきますけれども、資料1-1の構成は、本体であります資料1-2と同じ構成になっておりますので、会議が終わってから、御参照いただければと思っております。資料1-1に沿って御説明させていただき、その上で、ワーキンググループの構成員の方から補足等があれば、お願いできればと考えております。よろしくお願いいたします。
それでは、資料の説明をさせていただきます。
まず、1枚目でございます。昨年6月28日に、この検討会におきまして精神保健福祉士の養成課程のカリキュラムの見直しについて、取りまとめていただきました。そして、精神保健福祉士の求められる役割を遂行するには、精神保健福祉士資格取得後の継続教育や人材育成が重要であることから、12月10日及び12月24日にワーキンググループを開催し、検討していただきまして、その結果を踏まえまして、前回、1月31日の検討会において御検討いただき、さらに2月14日にワーキンググループを開催し、整理していただいたものが資料1-1及び資料1-2でございます。本日は、提出させていただきました、この提言案について検討をお願いいたします。
資料ですけれども、前回検討会の際の資料から新たに加えられたもののほか、方向性は変わっていなくても、かなり具体的に記載したりしておりますので、一通り御説明させていただきます。
2ページ目をお願いいたします。「精神保健福祉士に求められる役割と能力」についてでございます。
精神保健福祉士法第41条の2におきまして、精神保健福祉士は、資質向上の責務が課せられております。
そして、日本精神保健福祉士協会が作成いたしました精神保健福祉士の倫理綱領に基づきまして、その責務を果たすことを前提とした上で、求められる精神保健福祉士の役割を遂行することが求められております。具体的には、左側が精神保健福祉士の倫理綱領でございまして、右側の記載が平成31年3月29日に取りまとめていただきました検討会中間報告書の内容でございます。
その下でございます。「精神保健福祉士に求められる能力の整理」についてでございます。「精神保健福祉士の行動特性(コンピテンシー)の明確化の視点」についてでございます。精神保健福祉士を取り巻く環境や業務は変化しており、それに適応する必要があるという認識に基づきまして、コンピテンシーの明確化を図っていく必要がある。
続きまして、精神保健福祉士のキャリアラダーについてでございます。精神保健福祉士は、資格取得までの経験等が多様であるということがありますので、各人の能力の獲得状況を的確に把握するためには、能力の成長過程を段階的に明確にする等し、整理したキャリアラダーが必要である。キャリアラダーは、資格取得までの多様性や個人の事情に併せて柔軟に活用できるものが求められるとしております。
続きまして、3ページをお願いいたします。「継続教育・人材育成の体制構築推進の視点」についてでございます。
「精神保健福祉士の配置状況と継続教育・人材育成の視点」についてです。
精神保健福祉士の各施設への配置状況は、下に記載しているとおりでございます。配置人数が1名、もしくは少数である場合も少なくなく、職場での研修や自己研さんの機会の確保が困難であることや、ロールモデルがいない等の状況が考えられることから、これらに配慮した研修や自己研さんの機会の確保が必要である。
人材育成やキャリア継続支援においては、個別の事情を勘案した対応が必要であり、個別性に着目した人材育成が求められるとしております。
次の資料をお願いいたします。職場で取り組む人材育成についてでございます。
職場で取り組む人材育成方針の作成と人材育成体制の構築についてでございます。職場で人材育成の体制の構築が推進できる環境にある場合につきましては、組織内の精神保健福祉士間で、目指すべき精神保健福祉士像や組織の期待と精神保健福祉士として組織に求められる能力の整理を行うことが重要。
続いて、「雇用主の役割」についてでございます。
職場内の研修として、外部講師を招く等により研修の機会を確保することが望ましいが、職場内で少数である精神保健福祉士の研修としてこれらの機会を確保することが困難である場合もある。
地域の複数の医療機関や障害福祉サービス等事業所等が連携し合同で精神保健福祉士に対する研修を開催する等の取組により、研修機会を確保するといった視点を持つことも重要。研修の企画や運営、講師等については職能団体や養成校等と連携し支援を得ることも重要。さらに、研修の内容により他職種を交えることで効果的になるものもあることから、精神保健福祉士以外の職種も交えた研修の企画等も重要。
保健・医療・福祉等の関係者からなる協議の場等への参加は、精神保健福祉士としての習熟の一助となることから、これらに参加する機会を担保する。
多くの分野や経験を積める異動等を考える視点も必要としております。
続きまして、「研修や自己研さんの機会の確保」についてでございます。
まず、職場内でございます。
ソーシャルワークの実践に際して、様々な戸惑いや葛藤、悩み等に直面する機会等があり、支援の内容や自身の関わり等を検討することは欠かせない要素であるため、スーパービジョンを活用する必要がある。職場内でスーパービジョンを行う体制を整備することが重要。
自己研さんの機会を確保しにくい者への対応については、eラーニングを活用する等個々の状況に合わせた方法による研修や自己研さんの機会の確保が望まれる。
続きまして、職場外についてでございます。
職場内でスーパービジョンの体制を整備できない等の場合には、職能団体等が提供するスーパービジョンを活用することが重要。
都道府県等や職能団体等が実施する研修や、関係者からなる協議の場等の機会は、職場で必要な技術等の習得のみならず、職場では得にくい知見や仲間の獲得につながり、求められる能力を習得し専門職として習熟する機会になるため、参加の促進が重要。
職場外の研修等の機会についても、職場における必要な研修の一つとして認証する等の仕組みの構築が重要。
組織内外にかかわらず、できる限り早期に自己研さんの重要性についての気づきを持ってもらうことが重要としております。
一番下の「キャリアパスの構築」についてです。
キャリアに応じて求められる役割、能力が整理されている場合には、職場で活用できるキャリアパスを作成する等により、各々の経験や能力の到達度の見える化を図る取組も重要としております。
続きまして、「国、地方公共団体、職能団体等関係団体及び養成校の役割」についてでございます。
「国等の行政機関等」の役割です。
「精神保健福祉士への社会的要請等の周知」でございます。
精神保健福祉士に期待されている役割について、現任者や養成校等が的確に応えられるよう、都道府県等や関係機関と連携しつつ、周知等の取組を行うべき。
「キャリアラダーの作成の要請及び周知」についてです。
国は、職能団体等と連携し、キャリアラダーの開発の要請及び支援をすべき。キャリアラダーが開発された場合、各職場で活用が推進されるよう、職能団体等と連携して周知に努めるべき。
「地域の基盤整備を推進できる精神保健福祉士の養成の研修に関する支援」についてです。
精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を推進するためには、地域の精神保健福祉士が能動的に地域包括ケアシステムに係る基盤を整備することが重要であり、自治体等における研修の実施の推進や研修費等を確保することが期待される。また、精神保健福祉士が他職種と協働する必要もあることから、精神保健福祉士をはじめとした多職種合同の研修についても実施の推進に努めることが望ましい。
地域の複数の医療機関や障害福祉サービス等事業所等が連携し合同で精神保健福祉士に対する研修を実施する体制構築の支援に努めるべき。
その他、職能団体等と連携しながら、研修や自己研さん等に対するインセンティブ付与について検討課題とすることが望まれるとしております。
続きまして、「都道府県や精神保健福祉センター、保健所の役割」についてです。
まず、都道府県についてです。
様々な社会的要請に応じ、効果的に精神保健福祉士を活用していく必要がある。その社会的要請に対し、精神保健福祉士が的確に役割を担えるよう、国等と連携しつつ、現任者や養成校等への周知等の取組を行うべき。
精神保健福祉センターについてでございます。
精神保健福祉士の配置の多様性を考慮した研修の企画及び周知等を行うことが期待される。
関係機関等が実施する研修等の情報について集約し周知することも期待されるとしております。
前回検討会におきまして、精神保健福祉センターに求める水準として厳しいのではないかとの御意見がございましたが、ワーキンググループにおいて議論した際、人材育成は、精神保健福祉センターの役割として運営要領に記載されているとの見解が示されまして、このような書きぶりにしております。
続きまして、保健所についてでございます。
関係者からなる協議の場につきましては、地域での支援の実際や地域アセスメントの視点等を学ぶ機会等にもなることから、精神保健福祉士が協議の場等に参加できるよう、その構成を意識した運営が求められるとしております。
次の資料をお願いいたします。続いて、市町村についてです。
関係者からなります協議の場などは、精神保健福祉士が地域での支援の実際や地域アセスメントの視点等を学ぶ機会となる。
現在、精神保健福祉士に求められている、関連する多職種・多機関との連携・協働における調整等の役割や精神保健医療福祉の向上のための政策提言や社会資源の開発と創出に係る役割等を遂行するに当たり必要な経験や知識、視点を得る機会になることから、関係機関の精神保健福祉士が参加できる仕組みの構築が期待される。
1つ飛ばしまして、市町村が精神保健福祉に関連する事業等の委託先を選定する際の基準の一つとして、精神保健福祉士の配置状況、研修の実施や自己研さんの実績を踏まえることで、研修や自己研さん等に対するインセンティブを付与するとともに、良質な支援を住民に届けるといった取組も考えられる。
続きまして、職能団体等関係団体についてです。
「職能団体における研修」についてです。
職場では研修や課題設定に至りにくい、職場での業務を超えた視点に関する課題設定がしやすいといったメリットがございます。
職場や教育機関との連携についてです。
精神保健福祉士は職場内で少数であることが少なくなく、複数の職場が連携して研修の機会を確保する取組も有効だと考えられ、これらの機会において、職能団体等関係団体が地域の複数の医療機関や障害福祉サービス等事業所等と連携し、当該研修の企画や運営、講師等の支援をするといった視点を持つことも重要。
出身の養成校が遠方である現任者等に対しても研修や資格取得後の継続教育の機会が地域で担保されるよう、地域の養成校と連携を図ることが求められる。
実習指導者が絶えず自己研さんを行えるよう養成校と連携し、実習指導者講習会を修了していても、学び直しを含めこれらの機会を提供することが望ましい。
「日本精神保健福祉士協会等の研修制度の活用」についてです。
生涯研修制度や全国規模・ブロック単位等で開催される各種研修がございますが、研修制度を活用して自己研さんしている精神保健福祉士が現任者の一部に止まっているとの指摘もあり、研修や自己研さんの機会を確保する上では課題である。研修や自己研さんの機会については、さらなる周知や受講のしやすさに関する検討、自己の研修参加や自己研さん及び職場へのインセンティブの付与、日本精神保健福祉士協会内外の研修や協議の場及び協議会等への参加等の認定の在り方の検討も含む受講の動機付けに関する方策については、前記ア及びイについても考慮しつつ、十分に検討すべきとしております。
次の資料をお願いいたします。「養成校での資格取得後の継続教育及び連携推進」についてでございます。
「養成校における資格取得後の継続教育の実態と効果、課題」についてです。
約5割弱の養成校において資格取得後の継続教育に取り組んでおります。
養成校が精神保健福祉士の資格取得後の継続教育に関わる効果として、特に卒業生同士の関係構築は、養成校が担うことが期待されております。
資格取得後の継続教育の実施上の課題につきましては、後ほど御説明させていただきます。
「養成校に期待される役割」についてです。
養成校は、養成課程の教育と資格取得後の継続教育の連続性を確保し精神保健福祉士の自己研さんを支援する観点から、職能団体や地域の職場とも連携しつつ、資格取得後の継続教育に取り組む必要がある。
資格取得後の継続教育として養成校に期待される取組の一つとして、資格取得後の数年間の新人期における支援が挙げられ、卒業生等を集めた交流の場を設定することや職能団体等が実施するスーパービジョンにつながるよう支援するといった取組が期待される。あわせて、学生の目標と学習の到達度を見える化する観点からポートフォリオの活用をしている場合には、資格取得後を見据えた形で活用することで、資格取得後の自己研さんを支援するといった取組が期待される。
1つ飛ばしまして、養成校における継続教育の取組は卒業生に限定されているものや対象が広く開放されているものなどがありますが、広く継続教育の場を開放していくといった取組とすることや、地域の実情を踏まえ、職能団体と連携し、地域単位で継続教育を行う取組も検討していくことが期待される。
実習演習担当教員が、絶えず自己研さんを行えるよう、実習演習担当教員講習会を修了していても、学び直しを含め、これらの機会を確保することが望ましい。
大学院での教育やリカレント教育の場についても資格取得後の継続教育の場であり、これらとの連携や充実を図ることの検討も必要。
「養成校における資格取得後の継続教育の推進」についてです。
資格取得後の継続教育を行わない理由として、教員の時間的余裕の無さや、周知方法や予算の確保等組織的な対応が図られないといった課題がございますが、この課題は、養成校が組織として資格取得後の継続教育に取り組むことで解決される側面もあることから、養成校でこれらの取組が推進されるよう、組織及び教員の意識を醸成する必要がある。
教育団体が養成校の教員等を対象とした講習会等により、養成校において行う資格取得後の継続教育の重要性についての視点が持てるような課題設定とすることが望まれる。
精神保健福祉士の養成に関わる各養成校や教員の取組の意見交換を行う場を定期的に開催する等の取組も重要。
教員が精神保健福祉士のソーシャルワーク実践での役割の変化等の実際を知ることができるよう、教育団体と職能団体及び実習先が連携し、教員がこれらの事柄について知る場を設けることが必要としております。
最後に、「今後の資格取得後の継続教育・人材育成の在り方」について整理しております。
国、地方公共団体、職能団体等関係団体及び養成校は、各機関が互いに連携を図りつつ、着実に提言にまとめられている事項を実行することが期待される。
提言にまとめられている事項は、現在実現していない事項も多いことから、適切な時期に各機関における取組状況を確認していくことが必要である。さらに、取組状況をまとめ、精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会及び当該検討会ワーキンググループにおいて、更に必要となる取組を検討することが望まれるとしております。
以下は参考資料ですので、説明を省略させていただきます。
以上で私からの説明を終わらせていただきます。
○樋口座長 ありがとうございました。
前回の検討会の開催後にワーキンググループを1回開いていただいておりまして、最初に、ワーキンググループで議論された内容につきまして、ワーキンググループの田村座長から補足の御報告をいただきたいと思います。田村構成員、よろしくお願いいたします。
○田村構成員 田村です。
今の御説明で、おおよそワーキングの議論については網羅していただいていますが、少しばかり補足をさせていただきます。スライドの4枚目になりますが、研修や自己研さんの機会を確保することの、イの一番最後の○の「組織内外にかかわらず、できる限り早期に自己研さんの重要性についての気づきを持ってもらうことが重要」についてです。
教育の段階から精神保健福祉士に研さん義務があるという法律的なことは習います。また、学生は、国家試験に合格するために知識を一定程度得ることまでは目指すものの、その知識や技術等を活用して、就職した現場できちんと仕事ができるようになるためには、その後の研さんが欠かせない、という意識づけまでを教育の段階でおこなうことが必要であると考えております。
そして、ポートフォリオも出てきますように、学生の段階で自分がどこまで成長できていっているかということを自分でも分かるようにし、また教育する側も、それを踏まえて一人一人に合った教育ができるようにしていくこと。その際、実習指導者の方々とも連携する発想が重要で、国家資格取得前の養成段階においても現場の方々と連携する重要性を再確認させていただきました。
また、国や職能団体等のほうでキャリアラダーが今後開発されると示されており、4ページの下「キャリアパスの構築」とも重なることですが、卒業後、各現場について、自分がどういうことができるようになっていく必要があるかというのが、キャリアラダーには示されています。このキャリアラダーと、その手前である養成段階でのポートフォリオが連動するというか、一貫性を持つものになることが必要だと考えております。
その中身や具体の方法は、今回の検討会あるいはワーキングで十分に吟味したというよりは、今後、両者が、つまり職能と教育団体が連携し、調査研究等もしながら、しっかりとしたものを開発していく必要があると考えております。
もう一つが、できる限り自己研さんの重要性について気づきを持ってもらったとしても、自分が卒後にどこでどうやって自己研さんしていいのか分からないということが生じるかと思います。職場によっては、非常に丁寧な新人教育や職員教育をされているところもありますし、また養成校に戻って卒後の研さんに努める人もいますが、このあたりには個人差があるというか、研修等の情報の格差などもあります。
なので、この格差をできる限り解消するために、例えば精神保健福祉士の国家試験の合格証を発送される段階で、「あなた方は、精神保健福祉士の国家資格に合格しました。でも、これで油断しないで、今後もきちんと研さんしてくださいね」というメッセージを伝えていただき、その方策として、例えば職能団体の研修制度などもあることですとか、教育団体のほうでも卒後研さんの機会を提供しているといったことが、何らか届けられるとよいのではないだろうかと協議させていただきました。
実現可能性のある方法が容易には見つからないのですけれども、精神保健福祉士として職能団体等に所属されなかったり、あるいはひとり職場などに配置されたときに、他の精神保健福祉士等と連携し、一緒に研さんする機会がなかなか得られにくい現実があることが分かってきています。
スライドの3ページには、精神保健福祉士の配置状況が提示されていますが、その全体像を一括して把握する仕組みが今なくて、幾つかの調査をまとめて数字が出されているかと思います。ですので、精神保健福祉士として登録している方全体の現任の状況が把握できる仕組み等も、今後作られて、それと併せて、どこまでの研修ができているかが可視化されるといいのではないかということも話題に上りました。
もう一つは、そういったことを含めて、研修受講の認定をする仕組みも望まれるのではないか。前回のこの検討会でも話されたかと思いますが、これについても議論させていただきましたが、何を認定するのかが明確になっていかないと、インセンティブをつけるとしても難しさがあるのではないかという話になりました。
例えば、コンピテンシーが明確になり、精神保健福祉士として何ができなければいけないかが明確になって、そのことについて、これだけの研修をしたという認定をしていくのか、それとも、一定の質が担保された研修を受けているということを認定していくのか。ただ、認定によって、何らか報酬等にそれが反映される仕組みを作るとなると、精神保健福祉士の活動領域が非常に多岐にわたっていますので、例えば診療報酬や障害福祉サービス報酬に関しては一定程度可能かもしれませんが、精神保健福祉士の全職場を網羅する形で可能かというと難しいのではないか、といった意見交換もさせていただいております。
社会福祉士が先行して、第三者機関による認定認証制度を持っていらっしゃるので参考にしながら協議させていただきましたが、望ましい形について一つの結論には至っておりません。
協議したことに関しては、おおよそ以上ですが、ワーキングのメンバーで伊東構成員、岩本構成員もいらっしゃいますので、補足があればおっしゃっていただきたいと思います。以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
何か補足がさらにございますか。どうぞ。
○伊東構成員 では、少し補足というか、印象を述べさせていただきます。
雇用主の責任・役割というところが、前回のワーキングでも話題になったかなと思っております。そのことが反映されて、先ほどありましたように、養成校と職能団体と実習先、雇用主との連携というのも出ておりました。
あと、田村構成員からもありましたけれども、養成校の責任として、教育の段階で生涯学習の意味とか継続学習の意味を教えていかなければいけないというところが、前回のワーキングではかなり語られたと思っております。個人的には、実習や演習という科目がそのつなぎになる科目であるというところでは、もう一回、新たにその辺の重要性を認識しながら、きちんとした形で教えていかなければいけないと感じたところです。
以上でございます。
○樋口座長 ありがとうございます。
どうぞ。
○岩本構成員 岩本です。
卒後教育におけるそれぞれの役割を明確に示していただけたと思っていますが、先ほど田村構成員がおっしゃったように、一番の出発点は精神保健福祉士一人一人ですので、その資質向上の責務をそれぞれが自覚するというのが最も大事なことかと思っております。
それから、研さんに関して、研修の受講の状況ということで、非常に熱心に受ける人もいれば、余り受けていないという格差があるということも書かれてありますが、研修の受講に関して、どの時点で何を受けるかということがとても大事だと思っています。例えば、やみくもに興味があることを受けていくことももちろん悪いことではないのですけれども、今、その人が行っている仕事に対して、どういった知識や技術をきちんと身につけなければいけないかということに基づいて、必要な研さんをすることがとても大事だと思っています。その点、キャリアラダーを示しながら、自分が今、何を学ぶべきかを確認していく作業が必要ということも挙げられたと思います。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
それで、先ほど少し話にも出ておりますが、参考資料として、暫定版ではあるようですけれども、日本精神保健福祉士協会が作成しているキャリアラダーについて情報提供いただけるということのようでございますので、それについて、まず柏木構成員からお願いいたしたいと思います。
○柏木構成員 柏木でございます。
毎回、貴重なお時間を頂戴いたしまして恐縮でございますが、本協会が作成途上にありますキャリアラダーにつきまして簡単に御説明させていただきます。
協会は、当然職能団体の使命として、精神保健福祉士の人材育成が大きな課題ではございますけれども、その資質を向上するための体系的な学びをするための一つのツールとして開発を進めているものでございます。現在、これを使用いたしまして、複数の職場で試行的にOJTを実施しておりますが、あくまで暫定的なものであることを御理解いただければと思います。
まず、横軸でございますけれども、質を向上させていくステップは1から5までの5段階としておりまして、各ステップの目安としては、新卒者を想定した経験年数を示しております。そして、各ステップの目標としては、そのとき、そのときに求められる力量を示しております。縦軸のほうは、資質向上を図る要素を6つの大項目に分けさせていただきまして、1つは仕事と暮らしの調和、2つは社会人・組織人としての力、3は専門職・実践者としての力、4は自己研さん、5は専門職教育と研究、6がソーシャルワーカー意識に分けて示しております。
その上で、大項目ごとに各ステップにおける目標を示しております。6つの大項目につきましては、内容をさらに細分化した小目を(1)から(5)までをつけて示しております。また、小項目ごとに各ステップで、獲得が求められる具体的な力量を記号を付して示しております。
基本的には、このキャリアラダーは新卒者を想定しておりますけれども、精神保健福祉士のキャリアは多様化しておりまして、新卒時から働いていらっしゃる方もあれば、他業種や他領域での勤務経験を持った上で、精神保健福祉士として働く人もいらっしゃることから、このキャリアラダーは経験年数で一律に資質向上を考えるのではなく、個別の状況に合わせた資質向上を考えることができるようにしております。例えば、他業種や他領域でも勤務経験がある方の場合、大項目2の社会人・組織人としての力は、既にステップ5から始まり、大項目3の専門職・実践者としての力の小項目には、ステップ1やステップ2が目標となる場合もあり得ることを想定しております。
精神保健福祉士が志向するキャリア形成の方向性も、とても多様性があると考えられております。管理者を目指す方もいらっしゃれば、特定の領域でスペシャリストを目指す方もいらっしゃり、幅広い課題に対応できるジェネラリストを目指す人もいらっしゃるし、教育・研究者を目指す方もいらっしゃいます。このキャリアラダーでは、特にステップ5において、管理職を想定した内容となっておりますけれども、多様なキャリア形成の方向性があることを示しております。
なお、書きぶりは、括弧で「何々できる」という表記を基本にしておりますが、これは個人の資質向上に加えて、何々ができるようになる環境作りも想定した表記となっております。
今後は、このラダー自体をさらにブラッシュアップを目指していくとともに、どうやって活用を広げていくかの具体的な方策をまとめていく必要があると考えております。調査研究や周知について、国や関係機関の皆様に御支援、御協力をお願いしたいと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
○樋口座長 ありがとうございました。
それでは、これまでの事務局からの説明、そして田村構成員からの補足説明、そして柏木構成員からの御説明等も踏まえて、皆様から御意見を頂戴したいと思います。また、先ほどワーキンググループの構成員からも補足説明いただきましたが、さらに何かありましたら追加していただいても結構でございます。
それでは、どうぞよろしくお願いいたします。どうぞ。
○中島構成員 2点ほどあるのです。
1点目はそんなに大したことじゃないのですが、概要版じゃないほうの報告書の中に「地域包括ケア」という言葉が出てくるのですが、「精神障害にも対応した」と書いているのです。今までのこの検討会での議論というのは、横断的な支援といいますか、いわゆる横串を想定しながらカリキュラムの見直しを図ってきたと思いますし、いわゆる普遍主義的な支援というところがかなり想定されたカリキュラムの改正だったと認識しているのですけれども、文脈上も、あえてこれを「精神障害にも対応した」と書かなくても、意味としては、当然、これは精神保健福祉士の在り方検討という形の報告書なので通用するので、あえて書く必要はないのかなと考えているというのが1点です。
2点目ですけれども、今日の概要版の御説明をしていただきまして、それの6ページになるのですが、今までも、本検討会の中での議論というのは、中心的な議論がもう一つありまして、それは社会福祉士と精神保健福祉士というものが、養成カリキュラムにおいても重複する部分がかなりの量があるという共通理解がなされたと認識しています。したがいまして、それによって共通科目の充足が図られてきたという、今までの経緯がありますので、それを踏まえると、継続研修においても、いわゆる社会福祉士と精神保健福祉士の重複部分というものがあるというところを明文化しておく必要があるだろうと。
であるがゆえに、前回の報告書の案の中には、認定精神保健福祉士と認定社会福祉士の連動性を高めるみたいな記載がありまして、いいなと思っていたのですけれども、その認定に関して、それをあえて書かなくしたというのは、先ほど田村構成員がおっしゃられた理由で分かりましたけれども、少なくとも連動性を担保していくことを考えたときに、研修部分のところで、例えば日本精神保健福祉士協会と日本社会福祉士会による研修の連動性を高めていくことも検討すべきといった文言が入ると、今までの議論の流れの中で、継続研修、継続教育の位置づけがつながってくるのではないかと考えますので、その点、ちょっと御意見申し上げておきたいと思います。
○樋口座長 ほかにはいかがでしょう。どうぞ。
○佐々木課長 事務局でございます。精神・障害保健課長の佐々木でございます。
今の中島構成員の御指摘について、後者のほうにつきましては、また御意見をいただきながら、それをどう捉えるかというのを考えたいと思いますけれども、前者の地域包括ケアシステムに精神障害にも対応したフレーズがあるという御指摘についての回答をさしあげたいと思っております。
このことにつきましては、いわゆる地域包括ケアの介護とか高齢者の世界から始まった言葉でございまして、もちろん立てつけとしては、多機関、多職種による連携というところで、かなり共通部分はあるのですけれども、精神障害に関しての特殊性に鑑みまして、こちらで使う場合には、「精神障害にも対応した」という枕言葉を使わせていただいているところでございます。
けれども、御指摘のとおり、精神保健福祉士の活躍する分野が、途中、「地方共生」という言葉が出ておりますように、拡充しつつありますので、決して精神障害にも対応した地域包括ケアシステムだけに限られるものではないとは思っておりますけれども、今後、厚生労働省としても、この分野における精神保健福祉士の御活躍を大変期待するところでもございますので、あえてここではこの枕言葉をつけさせていただきながら、引き続き議論させていただきたいと考えているところでございます。
以上です。
○樋口座長 ほかにはいかがでしょうか。岩上構成員、どうぞ。
○岩上構成員 岩上でございます。
大変よく取りまとめていただいていると思っています。先ほど、最後、中島さんがおっしゃった社会福祉士との関連というのは、御検討いただいたほうがいいと思います。この検討会は、引き続き見直しも図っていくということですから、そういった意味でも、言葉として残すというか、検討課題として入れておいたほうがいいと思います。
もう一点は、先ほど申し上げましたように、よく取りまとめられたものをどう浸透させるかということです。それぞれの機関に役割も明示していただいていますが、私の経験から言えばそれほど難しいことは書いていないと思っています。雇用主の役割であっても、他機関との連携の人材育成であっても、あるいは地域としての多職種協働の視点ということについても、実際取り組んできていますし、これは広げていきたいと思っている。
従って、非常に時宜を得た書き方をしていただいていると思うのだけれども、これをどう浸透させていくかというそのあたりの書きぶりも含めて、そこは皆さん、ワーキングの方も含めて、どんなふうに進めていけばいいのか、事務局もそうですが、ちょっとお考えがあればお聞かせいただければと思います。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
今の岩上構成員からの提案というか、御質問と言ってもいいのかもしれませんけれども、それについて何か御意見をお持ちの方、いらっしゃいましたら。どうぞ。
○岡﨑委員 岡﨑です。
財政的な裏づけということに関しては、研修費等ということで報告書の中にも書いてございますが、もう一つ、養成校のところでは、「養成校が予算の確保が難しいけれども、継続教育に取り組むことで解決される」ということで、「意識を醸成する必要がある」という文言で終わっておりまして、できれば財政的な支援など具体的にもう少し触れていただいたほうが、私たちの意識の醸成はもちろんしていくのですけれども、実際上はそういうところをもう少し見える形で書いていただけるといいと思っております。
以上です。
○樋口座長 ほかにはいかがでしょう。どうぞ。
○萱間委員 萱間でございます。
今日の取りまとめの中で、先ほど岩上構成員も言われたように、多職種の視点というのが複数書かれておりました。精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築は、どの職種もこれからやらなければならないことで、共通しているところがすごく多いと思います。今でも自治体の地域包括ケア促進のために選べるメニューの中に、例えばアウトリーチでは、研修をやるときは必ず多職種が入っています。そのような形を進めていただければと思います。看護もやらないといけないことはたくさんあるので、ぜひ協働でと思います。
ラダーを見せていただいたときに、多職種とかチームビルディングというところが、1か所、組織人としてというところのステップ2に書かれてあるのですけれども、どのステップでも、多職種協働はPSWの方にリーダーシップをとっていただきたいこともいっぱいあるので、どの段階でも強く押し出していただけたらなと思って拝見いたしました。
○樋口座長 ほかにはいかがでしょう。どうぞ、課長。
○佐々木課長 再び事務局でございます。
岡﨑構成員からいただいた御指摘の点につきましてでございますけれども、最終的に案として取りまとめさせていただいた責任主体として申し上げられるのは、まだまだ引き続き議論として必要な部分があるだろうと。ただ、非常に大事な御指摘をいただきましたので、当座の取りまとめとして、今回、この取りまとめ案を出させていただいたところでございます。記載の中には、予算的な裏打ちが見込まれる可能性がありそうなもの、難しいだろうというところもありますので、記載のばらつきはひょっとしたらお感じいただいているところがあるかもしれません。
今回、提言にまとめられている事項をそれぞれ浸透していく手法、必ずしも全部具体的に書かれているわけではございませんけれども、踏まえていろいろ知恵をいただきながら、場合によっては国としても連携をとらせていただきながらやっていくというフェーズに進めていけたら。ただ、その中で見えてくる課題等ももちろんあると思いますので、そういったものも引き続き行政としてもフォローアップしていく。また、適宜、こうした構成員の皆様方とも個別に意見を交わさせていただきながら、我々としても具体的な取組へ反映させていくということは検討してまいりたいなと思っております。
その上で、今、岩上構成員からございました御指摘につきまして、いろいろと御意見、頂戴できたらありがたいなと思っております。
○樋口座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。
○岩本構成員 すみません、ちょっと細かいことで、しかも事前に資料を拝見していたのに申し訳ないのですけれども、4ページです。最初の「組織で取り組む人材育成」のアの下線のところですけれども、「組織内の精神保健福祉士間で、目指すべき精神保健福祉士像や組織の期待と精神保健福祉士として組織に求められている能力の整理」というところは、精神保健福祉士として専門職として果たすべき役割と、組織から期待される役割がうまくフィットするときもあれば、ずれが生じるときもあるかと思うのですけれども、ここの項目は、そういった組織の期待と、精神保健福祉士が自ら責務をどのように調整していくかを示す、という理解でよろしいでしょうか。
その場合、雇用主によっては、精神保健福祉士やソーシャルワークをよく理解していただいている雇用主もいれば、ちょっと違うなと思うこともあるので、雇用主に精神保健福祉士を理解していただくことと、当然ながら、組織としての役割もありますので、その辺の調整を行うことがとても重要かなと思いましたので、確認させていただきました。
あと、研修の認定に関しては、今後の検討事項として田村構成員からも御発言がありましたけれども、先ほどの中島構成員の御発言で、精神保健福祉士と社会福祉士が連動して研修に取り組んでいく必要性について御意見がありました。この点に関して、例えば社会福祉士のほうでも資格取得後の継続教育の中で、精神保健福祉士と連動するような動きはあるのか、確認させていただきたいなと思いました。
○樋口座長 それでは、ちょっとお待ちいただいて、事務局のほうで、今の最初の御質問というか、確認ということでございますが、課長、お願いいたします。
○佐々木課長 前者の御指摘は、結論から言いますとおっしゃるとおりということでございまして、専門職から求められるもの、そして組織から求められるもの、まさにそれを調整していただくということでございます。
○樋口座長 ありがとうございます。
それでは、中島構成員、どうぞ。
○中島構成員 社会福祉士の在り方検討のほうでは、継続研修のところまで行けていないということです。ですので、そこでの議論は特になされていないと思いますけれども、現実的なレベルでは、社会福祉士と精神保健福祉士の働くフィールドがかなり重複してきているという現状があることを踏まえて、例えば、4つのソーシャルワーカーの団体間で組織を統合するとか、資格を統合するという方向性に向けた議論というのは、もう始まっていますので、最終的にどうなるかはまた別として、柏木構成員のほうも本の中でそういった主張もされているわけですから、現実的な流れとしても符合する。そういったことを想定しながら発言させていただきました。
○樋口座長 よろしいでしょうか。
ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。
○塚本構成員 塚本でございます。
キャリアラダーとか、このまとめを浸透させるという取組の例示みたいなものを、検討会は一度終わると思うのですけれども、将来的にそういうものの作成もいいのかなと思いました。例えば、多職種連携と言われますけれども、ある病院では、各職種のキャリアラダーを横並びにして、お互いを理解する取組をしているというのも聞いたことがありますので、そういう事例みたいなものを少しプレゼンテーションできるような形もいいのかなと思いました。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
ほかにはどうでしょう。どうぞ。
○伊東構成員 伊東でございます。
先ほどの岩上構成員の発言である、どうやって浸透させるかという責任の一つは、養成校団体にもあるかなと思っております。ワーキングの中でも、養成校の役割と責任というものがかなり語られていたわけです。養成団体としては、教員の意識改革も担っていかなければいけないと考えています。
それから、岡﨑構成員が言われた、養成校への財政的な支援というところでありますが、これはちょっと工夫が必要かなと思っております。予算のつけ方をうまくしていかないと、目的にかなわないというか。個人的には、先ほどありましたように、養成校と職能団体と実習先の三者の連合のところにお金がついて研修会をやるような仕組みのほうが、恒常的にうまくいくように思います。
以上でございます。
○樋口座長 ほかにはいかがでしょう。どうぞ。
○柏木構成員 研さんを受けるためのバリアになるものは、もちろん御本人の意識が一番大きいかなと私は思うのですけれども、それは養成校のレベルからぜひともたたき込んでいただきたいというのは、ずっと主張しているところです。
もう一つは、研修に一番出にくい状況というのは、御本人の意欲や個人的な事情というよりは、そこの職場環境にかなり左右されることが多いのではないかと思うのです。雇用主によっては、研修には積極的に行っていいよみたいに言ってくれるようなところは珍しいと思います。どちらかというと、行政とか市町村レベルでよろしいかと思うのですけれども、そこが雇用主に働きかけるような研修の仕組み。つまり、ここは必ず出てきてもらわないと困るといった研修の仕組みを行政機関の方が用意していただくというと、どのような職場でもとても出やすくなるのかなと思います。
それから中島さんがおっしゃったことですけれども、日本ソーシャルワーカー連盟4団体では、研修を一緒にやるような試みが既に始まっておりまして、ぜひそのことを書いていただければありがたいかなと思います。
以上です。
○樋口座長 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。
○和気構成員 研修との関わりで少しお話しさせていただきます。今、私は大学院で社会福祉学専攻の主任教授をしていて、大学院の運営に責任を持っているのですが、7ページに大学院での教育やリカレント教育というのを書き込んでいただいたのは、かなり画期的なことであると思っています。現在、社会福祉系の大学院も、かつてのような研究者養成だけのアカデミックな研究というよりは、むしろリカレント教育に重点を置くようになってきています。つまり、大学院は、現場のソーシャルワーカーの方々を受け入れて、研究指導をしているのですが、人材養成に関わっているという意味では、広い意味で「研修」の場にもなっているというところがあります。したがって、大学院との連動性というか、連携ということもぜひ今後は考えたほうがいいと思っています。
ただ、そのときに社会福祉系の大学院が、はたしてどれだけ受け入れた大学院生をきちんと教育して、現場でリーダーシップをとれるような人材にしているかということは、もう一度、検討してみる必要があると思っています。日本のソーシャルワークの場合、戦後、アメリカを一つのモデルとして考えてきたというところがあります。そういう意味では、単純に日本とアメリカの比較はできないですが、アメリカはMSWと言って、マスター・オブ・ソーシャルワークという大学院の修士課程を修了した人たちが中心になって、現場の組織を動かしています。たとえば、アメリカのソーシャルワーカーの全国組織であるNASW(National Association of Social Workers)などもそうです。日本も、そういう意味では、やがてその背中を追いかけて、追いついていくようになるのかもしれません。
そのときに大事なのは、私の大学院の学生などにもいるのですが、職場の人たちが背中を押して、大学院でしっかりと研究し、それを現場にフィードバックする、職場にフィードバックする。そういうシステムを作るということが大事ではないかと思います。その意味では、報告書のなかに大学院のことを書き込んでいただき、すごくいいと思うのですけれども、現実にはそれをどのように進めていくかということも、今後の課題としては検討していかなければならないと思います。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。
○岩本構成員 岩本です。
先ほど柏木構成員がおっしゃったことに関連して、研修もそうですけれども、今回のまとめでは、研修や勉強会だけではなく、地域の協議会や地域の活動に積極的に参画して、そこで研さんを積むということがところどころ書かれてあって、これは非常に有効だと思っています。積極的に研修や勉強会に行くように言わない職場でも、自治体が協議会を開催したり、協議会活動をするのに当たって、自治体から地域の法人に職員を出してくださいということで、人が集まっているところがあると思います。
協議会の活動の一環として、事例検討や学習会などを行っているところも多いので、そうした地域での学習の機会として、行政のほうも積極的に地域の法人に働きかけていくというのは、非常に現実的だと思っています。
○樋口座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょう。今日が最後になりますので、言い残すことがないように、後でしまったと思わないように。よろしいでしょうか。
それでは、多くの御意見、御議論を頂戴いたしまして、ありがとうございました。この議題につきましては、全体として構成員の方々のコンセンサスは得られたと思っております。幾つかいただきました取りまとめの文章の修正等については、座長と事務局のほうで最終調整を行って、本検討会の報告とさせていただきますけれども、よろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○樋口座長 ありがとうございます。
さて、今回の検討会で、中島構成員のほうから、カリキュラムの改正の内容について、前回御意見がございました。ワーキンググループのほうで、本件につきましても御確認いただいたところでございます。その点について事務局のほうから説明をお願いしたいと思います。
○風間室長 資料2を用意していただけますでしょうか。「『低所得者に対する支援と生活保護制度』に関する御意見とそれに対する考え方」という資料を用意させていただいております。
2枚物になっておりまして、まず1枚目でございます。
現行の養成課程のカリキュラムの科目である「低所得者に対する支援と生活保護制度」の見直しにつきましては、令和元年6月28日に開催されました第4回精神保健福祉士の養成等の在り方等に関する検討会におきまして、当該検討会ワーキンググループにより整理の考え方が示されまして、取りまとめられたところでございます。
今般、当該検討会の取りまとめに基づいた改正案であります、精神障害者の保健及び福祉に関する科目を定める省令の一部を改正する省令案及び精神保健福祉士法施行規則等の一部を改正する省令案における、現行の養成課程のカリキュラムの科目である「低所得者に対する支援と生活保護制度」の見直しについて御意見をいただいているところでございます。
具体的には、今、座長からもお話がございましたが、前回の検討会におきまして、中島構成員から、科目名をなくすことについて御意見があったところでございます。こちらにつきましては、ワーキンググループにお諮りいたしまして、この資料を作成させていただいております。中島構成員以外の方からも、この科目の見直しにつきましては、パブリックコメントにおいて御意見をいただいていることから、左側にいただいている「御意見の内容」、右側に「御意見に対する考え方」をまとめております。
「御意見の内容」といたしましては、「低所得者に対する支援と生活保護制度」の科目の見直しに係る御意見といたしまして、まず、精神保健福祉士養成課程において、従来のままの科目として存続させるか、社会福祉士養成課程の「貧困に対する支援」に準じた科目を加えるかして、貧困と生活保護についてしっかり学んだ精神保健福祉士を養成すべきであるという御意見があります。
また、社会福祉士との現共通科目である、この科目について教授する内容30時間は必要な量であるため、「ソーシャルワーク演習(専門)」を60時間に減らしてでも、共通科目として「貧困に対する支援」を位置づけるべきという御意見をいただいております。
こちらにつきまして、「御意見に対する考え方」をまとめております。右側でございます。
精神保健福祉士が低所得者に対する支援を担い、その役割を発揮する上で、「低所得者に対する支援と生活保護制度」で学ばれている事項については、重要なものであると考えております。一方、精神保健福祉士は生活保護制度等の知識を有するだけでなく、精神保健及び精神障害者が抱える課題である貧困や低所得に関する課題を社会保障の一環として系統的に理解し、精神障害者の福祉の増進という観点から当該制度を活用し適切に支援する実践的な能力や、支援の現場において現行の制度・施策が抱える課題に対して必要な働きかけを行う能力も求められております。
このような能力は、精神保健福祉士の養成課程において、貧困や低所得に関する課題を複数の座学の中で系統的に学ぶことに加え、演習・実習といった様々な学習機会を通じて養うことが重要かつ効果的であり、現行の「低所得者に対する支援と生活保護制度」の学習内容では十分でないと考えられます。
このため、今般の改正では、現行のこの科目で学ばれている事項については一科目で構成するのではなく、「社会保障」「精神保健福祉制度論」をはじめとした複数の科目で系統的、重層的に学ぶこととし、更に実践的な能力を醸成するために、「ソーシャルワーク演習(専門)」においても低所得者に対する支援として、貧困や低所得、ホームレス対策といった課題を取り扱うこととしております。
次のページをお願いいたします。科目の具体的な内容についてでございます。今、御説明した考え方を上の四角で囲みまして、その下に具体的にどの科目で何を学ぶのかということを※印のところで説明させていただいております。
まず、「社会保障」では、社会保障制度を体系的に学ぶこととしており、生活保護制度に関する教育が含まれます。
また、「精神保健福祉制度論」では、生活保護制度や生活困窮者自立支援制度等の経済的支援に関する制度の概要と課題、制度に規定されている精神保健福祉士の役割について理解することを目標に含みます。また、経済的支援に関する制度では生活保護制度、生活困窮者自立支援制度をはじめ、各種低所得者対策及び経済的支援に関する制度についても幅広く教育することとしております。
「ソーシャルワーク演習(専門)」では、精神疾患や精神障害、精神保健の課題のある人のための諸制度、サービスについて、その概念と利用要件や手続きを知り、援助に活用できるようになること、また、政策や制度、関係行政や地域住民に働きかける方法をイメージできるようになることを目標に含んでおります。精神保健福祉士が関わる各領域に対して貧困や低所得、ホームレス支援に係る課題を設定し、ソーシャルワーク実践に係る能力を養うこととされております。
さらに、上記3科目以外におきましても、例えば「精神保健福祉の原理」において、精神障害者の生活実態として社会生活を行う上での生活保障として生活保護に関連する事項を学習いたします。「地域福祉と包括的支援体制」において、地域共生社会の実現に向けた包括的支援体制を構築する上での生活困窮者自立支援の考え方を学習いたします。また、「現代の精神保健の課題と支援」におきまして、精神保健の視点から見た現代社会の課題とアプローチとして貧困問題を学習する等、こういったところにおいても生活保護や低所得、貧困等についてを教育に含むべき事項として取り扱うこととしております。
私からの説明は、以上でございます。
○樋口座長 ありがとうございました。
ただいま事務局からの説明がございましたが、構成員の皆様から御意見等ございますでしょうか。どうぞ。
○中島構成員 前回の私の発言に対しまして、樋口座長をはじめ、ワーキンググループの皆様方、事務局の方々には、非常に丁寧に御対応していただきましたこと、厚く御礼申し上げたいと思います。
そのことを前提としながらも、前回申し上げたように、生活保護制度というところに焦点を合わせるのではなくて、1990年代後半から世帯所得がずっと減少を続けているという日本の状況の中で、しかもその間、女性・高齢者の労働力人口がずっと伸びている、上がっているわけです。つまり、貧困という問題が日本の社会の中で普遍化してきているという事実を押さえたならば、この問題というのは、この在り方検討会でずっと議論してきました横断的な支援の中の一つに入ると認識していますので、科目としてあったほうがいいだろうというのは今でも思っているところであります。
しかし、今、科目としてはなくなるのだけれども、端的に言うと、複数の科目で系統的に全体的にしっかりと学習を継続していくといった意図があるというところを御丁寧に御説明いただきましたので、その御意見を尊重したいと思います。
ただ、先ほど岩上構成員がおっしゃられたように、特にこの科目の経緯に関しては、結構多くの人々が意見を寄せている、関心を寄せているテーマでもありますので、養成校や教員の方々に、こういう意図を持って構成されているというところを踏まえた教え方といいますか、生徒に対する教育というものがしっかりとできるようにしていただきたい。つまり、養成校や教員、あと関心を今回抱いていらっしゃる多くの人々に対して、こういう意図があるというところの説明をしっかりとしていただきたいと思います。
○樋口座長 ありがとうございました。
ほかにはございませんか。どうぞ。
○和気構成員 今の御意見、いろいろなところでたくさん出ているということを知った上で、私は今回の一連の作業のなかで、ワーキングチームのほうにもオブザーバーとして参加させていただきましたので、そのときに考えた意見を私なりに申し上げます。
この問題は、実は社会福祉の「L字型理論」で説明がつくと考えています。それは何かと言いますと、いわゆる分野論として生活保護、児童、障害、高齢と横に並んだ中の一つに精神保健福祉もあると思うのですが、そもそも社会福祉を考えるときに、生活保護制度とか、貧困・低所得者に対する支援というのは、その歴史的な成り立ちから考えて「基本」としてあるわけです。しかし、それが戦後、いわゆる福祉国家体制が確立し、社会福祉の領域においても福祉三法、福祉六法と呼ばれるように、制度的には分割されてきました。
しかしながら、貧困・低所得、格差、不平等の問題が近年、日本社会の中で急速に拡大していくという状況があり、今の社会福祉の問題は、貧困・低所得の問題が実はL字型のように、児童にも障害にも高齢にも、そして精神保健福祉にも横に伸びてきていると考えられるようになっています。したがって、現在は精神保健福祉の分野の中の、貧困・低所得の問題や、生活保護制度の問題が存在している、あるいは拡大してきていることは紛れもない事実です。しかし、そのときに、こちらのもともとの生活保護本体のほうを学んでいないと、横に伸びてきたほうを絶対に理解できないかということになると、必ずしもそうとは言えない。むしろ、精神保健福祉の領域において、貧困・低所得の問題をどう捉え、それを生活保護制度などの中でどのように支援するのかということを考えればいい。
その場合、もちろん生活保護本体のほうを学んだほうが望ましいわけですが、絶対に学んでいなければいけないということではなくて、こちらのL字型に伸びたところで、もう一度、その学び方を再構築することによって、むしろ精神保健福祉士の人たちが貧困・低所得の問題により的確に対応できるようになるのではないか、そういうカリキュラムが構成できるのではないかという文脈で、私はワーキングチームでの議論を聞いていました。
したがって、今回のカリキュラムが公表された後に、社会福祉系大学の多くの教員から「この科目が外されるのはおかしい」という意見がたくさん出てきたというのは知っていますが、今のように考えれば、必ずしも本体のほうの生活保護制度を学んでいる必要はないのではないでしょうか。それは、いま申し上げたように、社会福祉の領域で言われるL字型理論で説明がつくと考えています。
以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
それでは、この問題に関しましては、改正の内容の意図というものをしっかり丁寧に説明していって、今回の改正内容が御理解いただけるように努力する必要もあろうかと思いますけれども、こういうことで、この問題については決着させていただきたいと思います。
そのほかに事務局のほうから連絡事項はございますか。
○高橋室長補佐 本日は、報告書の最終取りまとめにつきまして御議論いただきまして、ありがとうございました。
なお、本検討会につきましては、先ほど座長からのお話があったとおり、本日で最後となりますので、障害保健福祉部長の橋本より一言御挨拶をさせていただきたいと思います。
○橋本部長 橋本でございます。
この検討会につきまして、平成30年12月から計6回にわたって開かせていただいたわけでございますが、構成員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中を集中的に御議論いただきまして、誠にありがとうございました。
振り返ってみますと、この検討会の目的というのは、新しい時代に、また新しい状況に的確に対応できる精神保健福祉士を養成するための教育内容の具体的な見直し案の検討ということでございました。構成員の皆様方の御議論によりまして、社会福祉士の養成課程との共通科目の調整なども含めまして、それぞれの御専門、お立場からのいろいろな御意見をいただきまして、昨年6月に養成課程のカリキュラムの具体的な見直し案を取りまとめていただいたわけでございます。
この見直し案を基に、今後、約10年ぶりのカリキュラム改正というものが行われることになり、そして、令和3年度の入学者からは、新たな教育内容での養成というものが開始され、令和6年度からは、新たな教育内容に基づく国家試験を実施するという運びになるわけでございます。
また、本日は、この資格取得後の継続教育や人材育成の在り方ということについても、考え方の取りまとめをいただきました。資格取得の前と後ろを通じました、生涯を通じた資質向上のための不断の取組によって、精神保健福祉士に対する国民の信頼が確保されていくのだろうと思いますので、関係者の皆様にも一層の御努力を期待したいと思いますし、先ほど来、どうやってこれを浸透させるのかというお話もございました。私ども行政といたしましても、国の施策としてどのようなことがやっていけるのかということを具体的に考えていかなければいけないだろうと思っております。
私どもとして、また次のステップに進むための数々の努力をさせていただきたいと思っております。また、構成員の皆様方におかれましては、今後とも私どもに対するさらなる御指導、御鞭撻をいただけますよう、よろしくお願い申し上げまして、私からの御礼の挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
予定よりも大分時間が残ってしまっておりますが、それだけ皆様が既におっしゃっていただけることを御披露していただいたと理解いたしまして、時間は早くなっておりますけれども、検討会を終了させていただきます。
検討会としては6回でございますが、そのほか、ワーキンググループの先生方には何度もワーキングを開いていただいて、こういう素案を作っていただくことに御尽力いただきましたことに心から御礼申し上げまして、この会議の終了とさせていただきます。
どうもお疲れさまでございました。