技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会(第3回)議事録

政策統括官付政策統括室

日時

令和2年2月19日(水)10:00~12:00

場所

厚生労働省専用第22会議室(18階)

出席者

(委員)(五十音順)
池田委員、戎野委員、後藤委員、佐久間委員、仁平委員、羽柴委員、守島座長、森戸委員


(事務局)
伊原政策統括官(総合政策担当)、山田政策立案総括審議官、田中政策統括官付参事官、高松政策統括官付政策統括室企画官、新平政策統括官付政策統括室室長補佐、矢野労働基準局労働関係法課調査官、木嶋職業安定局雇用政策課雇用復興企画官、立石雇用環境・均等局総務課雇用環境・均等企画官、前田人材開発統括官付政策企画室長

議題

(1)ヒアリング
・株式会社楓の風 小室貴之様
・武州工業株式会社 林英夫様
・株式会社リコー 牛尾洋二様
(2)その他
 

議事

 
○守島座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから「技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会」の第3回を開催いたしたいと思います。
皆様方におかれましては、お忙しい中、またちょっと状況が大変になってきましたけれども、大変な中、御出席いただき、ありがとうございます。
カメラ撮りはここまでですけれども、いらっしゃらないですが、終わりにしたいと思います。
本日は、所用により、大竹委員、鬼丸委員、佐藤委員、冨山委員、根橋委員が御欠席でございます。
また、本日はもういらっしゃっていますが、委員の皆様方のほかに、ヒアリングのために株式会社楓の風、小室様、武州工業株式会社、林様、株式会社リコー、牛尾様にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
議事に入ります前に、本日の検討会の説明はタブレットで行いますので、はじめに事務局より、その点に関する説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○新平政策統括官付政策統括室室長補佐 本日の検討会もペーパーレスで実施させていただきます。お手元にはタブレット、スタンド、スタイラスペンを配付しております。使用方法につきましては、操作説明書を机上に配付しておりますので、御覧いただければと思いますが、御不明な点がございましたら職員にお声がけください。
本日のヒアリング資料は、マイプライベートファイルというフォルダー内に資料1から3として収納しております。参考資料1、2としまして、第1回に戎野委員からプレゼンテーションいただいた内容、第2回に後藤委員、佐藤委員から頂いたプレゼンテーションの概要を格納しております。併せて第1回と第2回の当検討会の資料についても御参考に格納しておりますので、必要に応じて御参照ください。
○守島座長 ありがとうございました。
それでは、議事に入りたいと思います。
本日の進め方ですが、最初に、AI等のデジタル技術の導入と労使間コミュニケーションについて、先ほど御紹介を差し上げました株式会社楓の風の小室様、武州工業株式会社の林様、株式会社リコーの牛尾様の順にお話を頂きたいと思います。続きまして、3社の皆さんのプレゼンテーションが全て終了した後に、まとめて質疑応答及びディスカッションの時間を設けたいと思います。
それでは、各社からのヒアリングに入りたいと思います。最初に、株式会社楓の風の小室様、よろしくお願いいたします。
○小室氏 おはようございます。どうぞよろしくお願いします。株式会社楓の風の小室と申します。いつも委員会等にお呼びいただきまして、ありがとうございます。
今日は「労使間コミュニケーション」というテーマで私どもの取組がどのように行われているのか、御報告させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
まず、弊社の概要ですが、株式会社以外にもグループの中に幾つか会社がございまして、大きく分けると、介護サービスのデイサービス、訪問看護のサービス、在宅医療を専門とする診療所経営を4か所させていただいておりまして、フランチャイズ等の連携先を持ちながら北海道から広島まで事業展開をしているグループでございます。
労働組合はございません。現在、医者が10人、看護師が100人、社会福祉士、介護福祉士等を入れまして、合計で260人のスタッフが働いているグループでございます。
常勤率が業界的には高いほうだと思っていますが、1拠点当たりは平均で7人のチームでやっておりまして、パートが20%です。正社員が43.2歳、パートは49歳、全体で45.4歳という平均年齢のグループでございます。
前回、昨年の基本部会でも御報告させていただいておりましたけれども、介護サービス「あるある」なのかもしれませんが、いわゆる残業が多いところが大きな課題でございました。また、いろんな資格を持った人間が集まり、同じ資格でもいろんなキャリアを持った人間が集まって、そこでそれぞれ、みんないい仕事をやりたいのだけれども、目指すものが微妙に違うというところでぶつかり合う。おかげさまでいろいろ御注目いただいているケアはやっているのですが、結果的に仕事が非常に難しくて、いい仕事はできるけれども、人材獲得が困難、こういった課題を抱えておりました。それが、今回のテーマでありますいろんなテクノロジーを使ったことによって、最終的には残業時間を11.5時間まで減らすことができまして、生産性も非常に上がっているという状況でございます。
どういったテクノロジーを使っているのかということですが、「楓の風では3シーン12のクラウドサービスを活用」と書いてあります。いわゆるケアサービスをやる現場の仕事、それと会社のマネジメントで特に人事の管理をするシーン、そして稟議決裁やいろんな通知をしたりという社内業務、全部で3つのシーン、合計12の市販されているクラウドサービスを活用しています。特に自社開発したというものは2つ、ケアサービスのところで「SIOS」というアウトカム指標のツール、あと、「颯システム」というものをつくった以外は基本的には全部市販のものを活用してやっている状況でございます。
今、1人1台のiPad miniというタブレット端末を入社時に配っておりまして、社員はみんなタブレットを持って会社とのコミュニケーションを取っているという状況でございます。
ICT化の歴史ということで示しましたが、弊社は2003年から介護事業をスタートしています。割と初期の頃から、当時はASP型と言われていましたが、カナミックネットワークの電子カルテシステム、クラウド型のサービスを使うところから介護業界としては割と早めに、当時まだタブレットはございませんでしたので、業務をパソコンで完結するということをやっておりました。
また、訪問系のサービス、特に訪問診療や訪問看護というサービスは患者さんの御自宅にお伺いしまして、結果的に夕方の時間でないと誰も顔を合わせないという業態でございます。いろんな情報もアナログでやっているとどうしても夕方になってしまうという欠点もございましたので、早くから取り入れようということで、当時はモバイルノート通信端末を持って電子カルテを開いて仕事をしていたという状況でございます。
2011年ぐらいにテレビ会議システムを一旦導入したのですが、最終的にテレビ会議システムはやめまして、今は全部タブレットで仕事が完了するような形になっております。
細かく挙げると、毎年、何かしらの道具を入れているのですが、今回のテーマである労使コミュニケーションというところで、都度、何かを入れようとすると文句を言われるということを繰り返しながらやってまいりました。
特に一番不満が大きかったのが、これは昨年、導入したものですけれども、驚くほど不満を言われたのが人工知能を搭載したnautoという会社のドライブレコーダーでした。この背景には、実は交通事故が多い、いつの間にか車がへこんでいる、そういった課題がありまして、我々としては事故を起こしたくないし、医療に携わる仕事でございますので、まさか人をけがさせてはいけないということで、どうやって事故を防止するのか、どうやって管理しようかと考えていたところ、人工知能を搭載した運転管理システムを入れようということになりました。
ところが、御覧のとおり、これはサンプル画像としてお出ししていますが、車内が丸見え状態で、外側だけでなく車内も見えるということで、スタッフたちにしてみれば運転中監視されているようで嫌だとか、あるいはプライバシーが侵害されているという不満が一斉に出ました。
我々は基本的に目的は何かということを、いつもテーブルに座って話し合うときに、ここを大事にしていくのですが、目的の理解という行動を常に取りながら賛同を得ていったということでございます。
例えば、今回のAIが載ったドライブレコーダーの導入については、監視が目的ではなくて、ともかく悲しい事故を予防する、あるいは万が一の事故のときに客観的な証拠保全でスタッフを守るものということで、この辺を説いて回りまして、監視されていることは嫌なのだけれども、事故はもっと嫌だから、賛同して導入しようという流れになっていったところでございます。
何とか導入して、事故は嫌だということで目的の理解を得られまして、結果的に交通事故が一気に6分の1に減りました。これはこれで保険料が安くなる、車の修理代がなくなるという成果が出ましたので、そういったときは賞与で全部フィードバックするという形でみんなの満足も得ているという状況でございます。
ケアサービスをやるに当たって、全部で十幾つのAI、ICT技術を活用していますが、いろんな不満はあるけれども、全て目的は何かということを説いてやってきたところでございます。特に介護サービスは今もいろんなことを言われておりますが、やはり紙から脱却するということで、介護業界は全産業の中でもこういったICT化の導入が遅れているのではないかと思います。長年、紙でやってきたという経験則が非常に大きく影響しているのか、変化を苦手とするような風潮が多いと思っております。
また、パソコン、そういったものがそもそもリテラシーが低くて苦手とする方も非常に多いのではないかと思いますが、苦手だからどうとか、生産性を上げたいからどうこうではなくて、あくまでもみんながいい仕事をするために、これを使うとどれだけ便利になるのかというところを説いて、理解して導入してきたということでございます。
テレビ会議も、今、LINE WORKSを使っています。こんな便利なものを入れるに当たっても、使いづらい、通信環境のいいところを探さなければいけない、家でも仕事をしなければいけないことになるとか、いろんな文句を言ってくるのですが、それはそれで目的をちゃんと伝えて、みんなの仕事がどれだけ楽になるのかを説きながらやってきたところでございます。
勤務時間、労務管理の効率化、いろんなモチベーション管理というところも全てテクノロジーを使ってやってきていますが、やはり監視されているとか、子供じみているとか、いろんなことを言ってきます。監視ではありませんよ、管理ですよとか、いろんなことを説きながら御理解いただいて今日に至っているところでございます。
それぞれのソリューションの効果、目的は、書いてあるとおりですので、御参照いただければと思っております。
全てにおいて共通している不満というのは、新しいことに取り組むのがどうも苦手である、今までのやり方から新しいことに切り替えるというところが非常に苦手だというのを我々の業界の中で痛感しております。そのときに、私たちは手段よりも目的を常に説いて、会議や文書通知の中で目的は何かを伝えて賛同を得るということを大事にやっているような状況でございます。
我々は、社内で整理していることですが、テクノロジーや、それ以外にも新しいケア技術等を入れるに当たっても、全てにおいて、手段の議論ではなく、まずどういう目的でやっていくものなのかというところを分かりやすく共有して賛同を得ていくということを大切にやっております。
便利になるからとか、業務が効率化されるというのは会社側の都合だと思いますので、従事者側の都合は何かというところを常に大事にリーダーたちがファシリテートするように教育、管理しているところでございます。
みんな基本的にはいいケアをしたいということだけは共通していますが、このいいケアがみんなばらばらなので、ここをちゃんと整えるというところを我々は大事にしております。特に介護サービスは、介護報酬でいろいろ指示されているのですが、何を目指して、いいケアかというところが、いわゆるアウトカムがまだ明確化されていないところがございます。我々はまず、我々の仕事の一番根幹であるケアサービスのアウトカムは何かというところを大学と一緒に研究しながら明確にして、共通のスケールである社会的自立支援アウトカムスケール「SIOS」を開発、共有し、その結果仕事そのもののコア・コンピタンスのところを明確化して共有することから始めて、いろんなICTやテクノロジーに関しては、より効率よく、よりいい仕事をやるための道具だという位置づけで、常に目的を中心にみんなが回っているという体制をつくっております。
勝手なあるべき姿が固着化すると結構厄介でございまして、変革を否定と捉えてしまうようになりますので、常に目的は何かということを確認するようにしております。
いろんな目的が共有されて賛同されてくると、結構、目的的な意見も出てくるようになります。会社としてはロボットスーツを入れたり、もっともっと効率化を働きかけたいということがあったのですが、現場の人たちが、あるロボットスーツの導入を逆に検討してくれまして、結果的に「仕事がこれだと遅い」「こんな投資をする必要はない」というような意見も現場のほうから上がってくるようになってきました。入れたらどう便利かではなくて、自分たちのケアサービスがどう高まるかという議論に昇華されていくと実感しているところでございます。
新しいものを入れようとすると、従ってくれるか、従ってくれないかという議論になるかもしれませんが、弊社の場合は、目的に対して効率的か、非効率か、あるいは目的的か、無目的なのかというところを常に大事に議論しながらマネジメントして、労使間コミュニケーションを取っているということでございます。
うちの労使間コミュニケーションの考え方ということで、今回をきっかけに3つ整理しました。
まず、何度も申し上げているとおり、目的への賛同と同意ということを常に大事にしております。ついつい手段、方法ばかり議論しがちなところなのですが、何のために自分たちは今この話合いをしているのか、常に意識させることを重要視しております。そもそも弊社自体が介護ビジネスをやることを目的にしておりません。人生最期のときを自分らしく生き抜こうとする要介護高齢者が病気や障害によってそれが発揮できなくなっている状態、そこに我々専門職が関わっていく、場の提供というのが実は楓の風というチームになっておりますので、会社そのものが目的的に回っているというところも一つの特徴と考えております。
先ほども申し上げましたが、いい仕事、いいケア、いい介護というのは個人の主観と経験でばらばらでございますので、我々は、社会的自立支援アウトカムスケール「SIOS」を導入して、そこで一番のコアの部分を明確化したということも特徴的と思っております。
次に、チーム運営に当たっては、常に円卓発想というものを大事にしております。いろいろエビデンスはあるのですが、5つのルールで回すと非常に効率よく創造的な仕事ができるということでやっております。真ん中に常に目的、目標は何かということを位置づけて、中華料理屋で食べているような状況で、常にみんなが率直でオープンなTwo way communicationを取りながら円卓的にやっているところがチーム運営のルールということで、風土として定着しております。
次に、職員をちやほやするといったら語弊があるかもしれませんが、誕生日会や忘年会をうちはやりません。新年会もないという会社なのですが、会社が勤務時間外にやるという公式行事は基本的にございません。合宿研修がそれぞれの事業部ごとに年に1回あるのみで、基本的にはそういったねちっこい人間関係はやりません。我々の会社は、職員の誕生日のたびにケーキを用意するのは職員をちやほやして図に乗らせてしまうのではないかということも感じておりまして、こういったことも一切やらずに、目的に対して場を提供しているところに徹しているというのが弊社の特徴でございます。
うちの訪問看護事業所のマネジメントをお見せしておりますが、基本的にはエリアを分けて、リーダーがファシリテーターのような形で関わってマネジメントしているという状況でございます。
夕方のカンファレンスの時間以外はほとんどクラウドで仕事をしているのですが、月に1回は顔を合わせていろいろ話合いをするという機会も大事にしておりまして、ある程度の日頃の暗黙知はクラウドで共有した中で、実際に会ったときには形式知を生み出していくという関係で仕事を効率よくやっております。
釈迦に説法になってしまうかもしれませんが、弊社の場合、ナレッジマネジメントを大事にしておりまして、野中郁次郎先生を師と仰ぎ、SECIモデルをマネジメントの軸にしております。現場の人たちが実践による様々な気づき、いろんな暗黙知を持ち寄ってくる、いわゆる暗黙知の共同化作業と、それを整理して形式知に変えていくという表出化の作業、この2点について徹底的にICT技術を活用しながら効率化を図るということを労使ともに共有しながらやっているところでございます。
ベテランの鶴の一声で仕事を決めてしまうと、その人の経験則以上の価値が起こらなくなるということも教育、徹底しておりまして、いろんな物の見え方、多様な考え方があるということを常に共有しながら、SECIモデルをちゃんと回し続けることを意識しながらICTの活用をやっているところでございます。
常に目的は何か、常に価値の最大化を図っていこうということで価値創造していくことをやっておりまして、価値を高めることに仕事の喜びを感じながら、かつテクノロジーがそれをより生かしてくれるというところで目的的な活用方法として共有されている状況でございます。
これは前回の基本部会でも発表させていただきましたが、まだまだテクノロジーをつくっていこうということで、スタッフたちと話し合いながらやっています。最終的には、ソーシャルワークという介護業界の中での大事な技術があるのですが、経験則や地頭の問題とか出てくるところに、我々は今、AIソーシャルワークの機能を設けたものを開発しようということで頑張っているところでございます。ここにも開発の段階からスタッフたちに関わってもらって、何のためにやっているのか、単に会社都合の生産性向上のためではなくて、みんなのケア価値が最大化されて、結果的に患者価値を最大化するためということを常に共有しながらやっているところでございます。
駆け足になりましたけれども、私どもの発表を終わらせていただきたいと思います。何かございましたら遠慮なく御質問等いただければと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○守島座長 小室様、ありがとうございました。
それでは、続きまして、武州工業株式会社の林様にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○林氏
御紹介いただきました武州工業の林でございます。今日はよろしくお願いいたします。
今、会社としてSDGsに取り組んでおりまして、今まで武州工業でやってきた活動をSDGsに当てはめたらどうなるかというのがこの10個の項目になっています。
SDGsの良いところだと思っているのが「誰ひとり取り残さない」ということです。企業間の取引もあるし、働く人と会社の関係というのも、誰ひとり取り残さないというところをうちの活動としてやってきたことがちょうど当てはまっていると思います。
私どもが製造する製品の値段は、LCC価格といいまして、ローコストカントリー、世界で一番安い国の値段がグローバルプライス、ワンプライスという業界です。日本と労務費が10倍も違う国の単価と同じ単価を納めなければいけないというのが基本でございます。その中で弊社ではSDGs8番で言う「地域の雇用を守る」、事を大事にしてきました。
それから、SDGs3番の「すべての人に健康と福祉を」の観点から、1日の勤務を8時間、月20日でやる「8.20体制」を取っております。
SDGs11番「住み続けられる街づくりを」の通り、きちんと税金を納める会社で、優良申告法人として昭和44年から7回表敬いただき、55年間、赤字がない会社ということが実現しています。
従業員が今、154人で、平均年齢は34歳です。154人で16億円の売上げですので、あまり儲からない会社ということですが、成り立っているというところがいいところだと思っています。各方面から様々な表彰を頂いたりしまして、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞というのも頂き、人に対して優しい会社だということを外が言ってくれたところでございます。
自己紹介はさておいて、働いている人の構成がこんな感じです。今、平均年齢が34歳で、3年前から「同一労働同一賃金」ということで、時短・正社員も含めて、60歳以上はパートさんがいますけれども、パート雇用を希望する方が2名いるだけで、あとは正社員化しています。男女比もこんな感じです。間接人員が18名、準間接人員25名、直接人員111名の計154名という中身でございます。
これは売上高の推移30年分です。緑の線が私どもの実績、黒の線が日経の株価です。立ち下がりが遅くて、立ち上がりが早いというのが私どもの特徴的なところですが、景気変動にそのままということで、いつも仕事が忙しいわけでもないし、暇なときもある、忙しいときもあるという状況でございます。
そんな中で、労使関係をつくっていくことを考えたときに、全部オープンにするというところがうちのやり方でして、このようなバランスシートも毎月、月次の報告を従業員、組合にも提示しながら、会社が今どういう状況にあるかを逐一報告しております。
今、69年目の活動が始まるところでございますが、5か年計画でいう「アタックV70」の3期目の終わりというところに来ています。V65の5か年では従業員満足度(ES)をやり、その前の5か年計画、V60では「お客様満足度の向上」という活動をしてまいりました。
従業員満足度の5年間の中で、デザインシンキングとか、会社がもうかったら期末賞与は折半にする、そんな事をかたちにしてきました。給与体系もオープンにして、何をすれば幾らもらえるか、はっきりさせています。BCP(事業継続計画)もつくり、パートさんの正社員化、それから育児や介護のために時短正社員も制度化したところでございます。
ISO9001の認証規格を卒業というふうに言っておりますが、やめたわけではなくて、よりレベルの高い活動に変えようということで、ICTなどを使ってISO基準を担保しています。大学だったら大学院レベルというような意味合いで卒業という言葉を使っています。
今、70周年に向けての活動は「社会満足度の向上」ということで、SDGsにも取り組んでいるところでございます。
うちのモノづくりは、非常に短いサイクルで行っています。PDCAとよく言われますけれども、Pは小さくもしくはDのところに纏めて実行しています。ですから、PDCAで1年のサイクルで計画を立ててやるのではなくて、短いサイクルで半年、3か月、1か月、1週間、そういうイメージでやっていくということでございます。
職人さんの絵が参考になるかと思いますが、この職人さんが自分に使いやすい道具を作り、最初から最後の工程までを責任持って一通りやる。自社開発の設備と多能工育成と一個流し生産というモノづくりをしております。
左側が売っている機械、右側が作った機械ですが、自社設備を作るというところは、価格が半分や、4分の1で済み、面積も小さく、電気も省エネで音も静か、昼間一直8時間だけ、償却できるような設備を作れるという事に繋がります。
一番難しいと言われているアルミのろうづけという仕事を入社時に2週間必修ということで、全員がアルミのろうづけができるようにしています。属人化してしまうと職人はなかなか教えなくなってしますが、多能工教育で先輩から後輩へ自動的に教える。非常に早い段階で難しいスキルを覚えられるということで、電気溶接やガス溶接は非常に簡単な仕事に変わってしまうということでございます。
手渡しの現金の給与を渡せなくなったので、二十数年前より社長からの手紙というのも始め社長の思いを伝えるというようなことをしております。
労使コミュニケーションということで、それぞれの層でいろんな活動をしています。リーダー層では、人づくりプロジェクト、価値共有ミーティング、QRQC、こんなテーマで活動しております。一般層は、PDCAではなくて先ほどのDCAで回すためにどうやって改善するのかというプロジェクト、それから、武州工業には見学会が非常に多く、年間50回ぐらいの見学会があるので、武州の魅力発信、工場見学の実動部隊として武州ミュージアムプロジェクト、それから、絆づくりプロジェクトということで若手を中心にイベントの企画などをしています。
一番大事にしているのは自律性を育てるということです。ヒエラルキーの組織ではなくて、ラーメン屋のフランチャイジーのような、一人ひとりが責任を持って任されるというような組織を目指して、一番上が実動部隊、真ん中がそれを支える部隊、経営層というようなフラットなイメージで、一人ひとりに責任を持たせるということでございます。
一人ひとりのレベル、ベクトルを合わせるために情報化の共有ということをしておりまして、BIMMSという仕組みを動かしております。楽天が商売を始めた頃と同じタイミング、1996年には弊社もプロバイダーを運営しておりました。いろんな仕事をウェブで一つの固まりとして動かしたかったのです。
2010年にタブレット端末が誕生し、BIMMSという仕組みをいれたタブレットを社員各自に1台ずつ全員に配りました。BIMMSは、コンビニのPOSのように販売時点管理、作った時点でデータを入れることを製造業でやろうという、製造業のPOSをイメージして、日々決算をやるというようなイメージでございます。BIMMS開発の為に、プログラマーを採用して、3年、現場の仕事をして覚えてもらってから、アジャイル開発でだんだん作り込んでいきました。現場において紙で管理していることをタブレットに入れる仕組みに進化させたのです。タブレットに入れることによってデータの共有ができるようになりました。また、いろんなIoT機器を内製化してまいりました。1つ御紹介すると、生産性見え太君というアプリで、iPod touchという音楽プレーヤーの万歩計の機能を利用しペースメーカーの役割を果たすものです。仕事が遅れると赤、早いと青、ちょうどいいと白という色の変化し、業務速度の見える化をしています。また、この仕組みは自動的にWi-Fiで吸い上げられデータ化する事ができます。
もう一つの機能が、機械が止まったときの停止理由をその場で入れられるようになっています。そんなことを工夫して、仕事をしながらデータが取れるということを標榜しております。
こうしてデータを取ったのがこの絵になりまして、目標線に対して実績線があり、この縦の線が止まった時間ということになります。いろんな理由で止まっています。その理由を解析して改善したら2割生産性が上がって、Before、Afterがありますが、残業しなければ終わらなかった仕事が定時で終わるようになった、こんな成果がでました。
従業員は最初、生産性見え太君の導入を嫌がりました。監視されているみたいで嫌だということです。しかしながら、蓄積したデータのBefore、Afterを見て、従業員が時間当たり出来高が上がったのだから給料が上がるという話になって、うちは、会社がもうかったら折半にする、半分は従業員のものと決めていますから、そのとおりだということで期末賞与が出せるようになりました。導入から3年近くたちまして、現在100台以上の機械について、日々データが活用されていることにつながっています。
ISOからの卒業ということを申し上げたのですが、やはり紙で記録をすると、その次の活用ができないのです。お客様にきちっとデータを提供するとか、無駄な工程を省くことについては、データの共有ということをやらなければなかなかできないのです。データの共有をすることによって、ある品物では検査を廃止し10%のコストダウン、増産の必要な品物は同じ勤務時間で生産できる体制を組む事ができました。また、データの共有は、長年注文のない廃却品の減少にも有効活用されています。
DXとか言いますけれども、今までのコンピューター化というのは、どちらかというと左から右に紙のデータをコンピューターに入れるということだったのですが、IoT、AIの時代は逆に現場の非常に緻密なデータが自動的に取れるということなのです。タイムスタンプのついた緻密なデータを使って、それを活用していく。必要とあらば、紙に出力する、記録に残す、そういったことが時代の流れなのかと感じているところでございます。
台風19号で、青梅市に流れている多摩川の河川敷のグラウンドや公園が全部水没してしまって、青梅も羽村も福生も立川も、川崎のほうまで影響が出たわけです。モノづくりというのは環境負荷を高くしてやっているので、より無駄を省いてものづくりをするというところがこれから今後の課題として感じているところでございます。
先ほどのお話にもあったように、人の気持ちを変えるというのはとても大変で、特に品質ということについて、日本人はとてもシビアで、日本品質と言っているのですが、かなりの無駄をしていると日々感じています。
環境のことを考え出して、私もスーパーで買い物をするときに一番奥から取るのをやめようと思っています。なぜかというと、モノづくりは、歩留りという、ある程度不良品が出るのを見越して商売をしています。スーパーで一番奥から取っていって手前のものは廃却になるということをスーパーの経営者に申し上げたら「いやいや、歩留りです。何%この牛乳が廃却に回るかは計算できているので、売価に乗せているだけだから一緒です」というお話を聞いて、なるほどと、思いました。モノづくりでも不良という形で歩留りを悪くして、奥から取ることによって歩留りを悪くしてというのが日本人のマインドなのですね。
では、今日、話を聞いたからといって、スーパーで品物を手前から取る方はなかなかいらっしゃらないかもしれません。私は講演のときに、ぜひスーパーでは手前から製品を取って、食品ロス600万トンが少しでも減るようにと申し上げています。モノづくりも一緒なので「行って来い」で損している。そこのマインドを変えるということに何かインセンティブがある、環境に優しいとか、少しコストが安いとか、そんなことができたらいいのかなと思っている次第でございます。
今日は御清聴ありがとうございました。失礼いたしました。(拍手)
○守島座長 林様、どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、株式会社リコーの牛尾様にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○牛尾氏 こんにちは。本日はお招きいただきまして、ありがとうございます。株式会社リコーの人事部、牛尾と申します。
これからリコーの取組について少しばかりお時間を頂いてお話をさせていただきます。
まず「リコーウェイ」ということで御紹介させていただいております。「リコーウェイ」というのは、リコーグループ共通の経営理念でございまして、創業の精神、私たちの使命、私たちの目指す姿、私たちの価値観という項目で、全世界のグループ会社に展開しております。
ここで一番御紹介させていただきたいのは創業の精神ということで、市村清という創業社長が提唱いたしました「三愛精神」でございます。「人を愛し、国を愛し、勤めを愛す」、この創業の精神が今も脈々と伝わっておりまして、新入社員においても、リコーのこの三愛精神に引かれて入社しましたと言っていただけるような創業の精神が伝わっています。特に「人を愛し」ということからスタートしておりまして、「国を愛し」は、今は日本という意味ではなくて世界、地球というような位置づけになっておりますが、国を愛し、自ら使命を受けて仕事をすることを愛する、三愛ということに思いを込めてリコーグループ全員が頑張っているという状況でございます。
リコーグループの概要について少しばかり御説明させていただきます。1936年2月6日に創業いたしまして、84年経過いたしました。2月6日ということで、先々週、創業の記念式典を行いまして、当日は、全世界の拠点と結んで、山下社長が全世界の現場の方とコミュニケーションを交わすということを8時間にわたって繰り広げました。現在、本社は東京都大田区中馬込、創業の場所に戻ってまいりました。一時期、銀座に拠点を構えておりましたけれども、現在は大田区に戻ってまいりました。
グループ全体としましては、220社、関連会社がございまして、従業員は9万2663名となっておりますが、日々変わっておりますので、今日時点で何人いるかという正式な数字はお話しできないという状況です。国内3万1000人、海外6万人というような規模感で、連結売上げで2兆円強頂いております。国内の売上げ40%、海外売上げ60%という状況でございます。
現在の私たちの提供価値ということで、表に出していただいているのが「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES」という言葉になっています。1行だけ読ませていただきますが、「人と情報をつなぎ、人の伝える力、人の生みだす力を支えること」、これを我々は支援していくことを事業ドメインにしているということでございます。
具体的にはどういうことかということですが、もともと私どもの事業ドメインは事務機屋というところでございます。オフィスの合理化を進めていくということにいろんな製品を提供してまいりました。
ここで一つ御紹介します。1977年に「オフィスオートメーション」という言葉が世の中に出ました。OAと言われていましたけれども、このオフィスオートメーションという言葉を世の中に発表させていただいたのがリコーという会社でございます。それ以来「OAのリコー」ということを標榜して、数々の商品、サービスを提供してまいりました。オフィスの中の創造性は徐々に高まっております。もちろん、複写機、ファクシミリ、コンピューター、こういったものを活用してオフィス内の作業の効率化をずっと進めてまいりました。
次に、オフィスを離れて現場においても、あらゆる情報のデジタル化を進めることによって生産性を向上するということでお役に立っていきたいと考えています。さらには、その先にある社会に対しても、リコーとしてはグループとして貢献していきたいというような社会課題への取組をやっています。
ちなみに、少し参考事例を御紹介いたします。現場ということで、病院、そういったところに入院患者がたくさんいらっしゃいます。ある8人部屋の病室で入院患者の方が今どういう状況になっているのか、ベッドにつけたセンサーを基に瞬時にナースルームで確認できる。Aさんは今ちゃんと寝ています、Bさんは起きて何かしています、Cさんはどこかに行っています、こういった状況が瞬時に分かることによってナースの方が巡回していく順番を変える、そういったお役立ちをさせていただくという事例がございます。
あと、社会への貢献ということで、これもようやく製品化できたということで、例えば道路が陥没している、亀裂があるということを調べるために、今までは人力で目視しながらやっていたことを、当社の持つカメラの技術をもって、車の後に複数台のカメラをつけて、車で走ることによって道路の状況を瞬時に理解した上で分析して提供する。
昨今、ペットボトル、ああいったものの害、プラスチックの問題があります。ペットボトルの上にラベルが貼ってあります。ラベルを剥がして、キャップを取って、分別されていると思います。今、私どもの技術としては、ペットボトルそのものをなくすというのはできませんが、ラベルをなくしてペットボトルに直接印字する、こういった技術も使って少しでもいろんな環境のお役に立つことを目指しています。
御存じのように、私ども商品・サービスというのは、先ほども申し上げましたように、オフィスから現場、社会へのインフラを提供するという事業でございます。
我々の労使コミュニケーションということも少し御紹介させていただきたいと思います。リコー懇談会制度となっておりますけれども、国内のリコー単体で1万人ぐらいの一部上場の会社でございますが、創業以来、労働組合がないという会社でございます。
先ほども申し上げました1936年2月6日に、社員33名の感光紙の会社でスタートいたしました。20年ぐらい経過したときに、33名の会社が約1000名の会社に成長してまいりました。その後、1年置きぐらいに500名、500名、1000名ぐらいの形で人員が拡大してきたということです。当然、新入社員を新卒だけで賄うというわけにはいかないので、いろんな会社からいろんな社員を集めてきて、これだけ拡大してきました。
その中で、賃金、労働環境、こういったものに対しての課題を会社としても受け止めてまいりまして、1962年6月に「リコー懇談会」という形で労使のコミュニケーションを図る会合をスタートさせたということです。後ほど御説明しますが、それ以来、今年1月に開催いたしました定例中央懇談会が823回を迎えているところでございます。
リコー懇談会の制度の理念ということで大きく2つございます。「会社の発展と個人の幸福の一致をはかる」「社員は事業の協力者」、この2つの理念の下に運営しています。
懇談会制度の理念ということで、我々のリコー懇談会というのは就業規則と同じように社内規定を設定しております。懇談会規定第2条に、目的として、ここに赤字で書いてございますが、これを集約すると「会社の発展と個人の幸福の一致をはかる」、こういう目的の下にこの懇談会を運営しております。
懇談会の理念でもう一つ「社員は事業の協力者」と申し上げました。リコー懇談会規定第3条に「本会の会員は会社の役員および全従業員とする」ということで、ここが労働組合と大きく異なっておりまして、役員も含めて全従業員がこの懇談会の会員であるということになっています。
御紹介しているのは「私の履歴書」という、昭和37年に出た、創業社長の市村清が書いたものでございます。「私の関係している会社はどこにも組合というものがない」と言っております。「従業員を使用人ではなく事業の協力者だと思っている」と書いております。「いつも彼らが勤めをたのしいおもしろいこととして愛するようにと導いているつもりだ。そして働くことになんの心配もつきまとわない、世界のどこにも類例のない独特の『市村産業団』というものを作りあげてゆきたいと念願しているのである」。社員が憂いなく仕事に専念できるようにという思いを市村は唱えているということでございます。
懇談会の組織ということで御紹介させていただきます。ベースには「職懇」と書いておりますが、これは職場懇談会という位置づけです。各グループ、課、こういった単位で職場懇談会を設けておりまして、職場の困り事をそこで解決していく。職場で解決できないことは、中段にあります「事懇」、これは事業所懇談会という位置づけになっていまして、事業所単位で困り事を持ち寄って、事業所の中で解決できることは解決するという動きになっています。一番上が「中懇」となって、これは中央懇談会と言っております。中段の事業所懇談会の代表者が集まって中央懇談会に来ていただいているという状況です。
職懇は職場の中で課題を解決していただく。それができなければ事懇に上程いただくということです。
事業所懇談会は、今、全国13か所あります。これは国内の株式会社リコーのみの話ですが、13か所の事業所で事業所懇談会を運営していただいています。
中央懇談会は、委員長、副委員長等を含めて、2019年度は全国で26名の委員が集まって運営しています。一般委員、世の中で言うところの非管理職層の委員が18名、常任委員というのは我々管理職層の委員で8名、26名で構成しています。
先ほどプレゼンされた会社さんにもありましたけれども、この懇談会で何をやっているのかということですが、毎月、定例で開催しておりまして、社員は事業の協力者であるということですから、ガラス張りの経営を社員に伝えるという位置づけもありまして、業績をきちっと毎月報告する。それから、業績見込み、今後の予測、そういったものを委員長である人事本部長が発表するということです。それから、給与、賞与、労働時間等の労働条件について、あるいは福利厚生等について、この中央懇談会のメンバーで審議してくださいとお願いして、それに対して委員から答申を受けるという位置づけになっています。この中央懇談会で審議した議事内容について「中懇ニュース」という形で全社員に配信するという役割を担っています。
今、中央懇談会の委員は2つの分科会に分かれて、それぞれ、こよみ(労働時間)と夏の賞与、それから昇給と冬の賞与、この2つずつの議案に対して審議を行い答申を行うというプロセスでやっております。ちょうど今、昇給に対する分科会を行っておりまして、今月末に答申します。こういう労働条件の決定プロセスは、経営側から諮問という形で検討してくださいと依頼が下りて、このメンバーが検討した上で会社に対して答申する。その答申を受けて最終的に経営側が回答を出すという位置づけになっています。
今日お招きいただいたところのAIやIoT、こういったものの導入に関する労使コミュニケーションでございますが、導入することによって社員の仕事が少なくなり、その仕事をしていた方が、言葉は悪いですけれども、要らなくなるのではないかと懸念されていると受け止めております。当社は、先ほどから御紹介いたしましたように、お客様に対していかにお役立ちするか、業務の効率化を図って、それに対する周辺サービスを提供することを事業ドメインにしておりますので、新たなIoTやAIの導入に対する社員の抵抗感は全くないという会社でございます。どちらかというと、より積極的にそれを導入した上で、どんな業務の効率化ができるのか、実際に商売につなげていくという動きをしております。
1988年に1人1台のPCを配付して、Lotus Notesというグループウェアを導入いたしましたが、そのときも、これによって自分の仕事がどうなるのかということよりも、いかにこのグループウェアを使って業務を効率化してお客様にお役立ちするかというところの感覚が今もございます。
RPAの導入についてもしかりでございます。ここに御紹介しているプロセス改革がございますが、社員自らが検討したRPAの内容を発表会という形で、来月、全国から事例を発表することも予定しております。
Lotus Notesのグループウェアを使ってやりましたが、その後、今はOffice365に変わってきております。当時もエンドユーザーコンピューティングということで、一人ひとりが自分で業務効率のためにソフトウェアを組むというところまで教育しておりましたが、今後は、社内デジタル革命ということで、リコーらしいRPA展開を追求していきます。社長のメッセージですが、機械に任せられることは機械に任せ、人間はより知的な作業に従事するということを言っています。それから、AIも含めてRPAを導入したことによって余った時間については、より付加価値のある仕事、あるいはクリエイティブな仕事、もっとやりたい仕事をやってもらう。これがAI等をリコーグループの社員に展開してデジタル革命をするということの意味でございます。
最後に、プロセス改革の先にあるものということで、「充実感」がある、「達成感」が生まれる、「満足感」が生まれる、それが「働きがい改革」になって「はたらく幸せ」になる。こういうメッセージを常に出し続けております。リコーグループ社員は常にそういう新しいものに取り組むことには全く抵抗がないということです。
今日お呼びいただいた中で、労使コミュニケーションでそういう危惧があるのではないかということについては、あまりお役に立つお話ではなかったかもしれませんが、リコーグループの取組について御紹介させていただきました。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
○守島座長 牛尾様、どうもありがとうございました。
それでは、お三方の御発表が終わりましたので、ここから質問もしくは自由討議に入りたいと思います。
ただいまの御発表に関して何か御質問、御意見のある方は挙手の上、御発言をお願いいたしたいと思います。どなたでも構いません。
○仁平委員 今日はどうもありがとうございました。それぞれに新しい技術を積極的に取り入れ、よりよいサービスの提供や働く人の環境の改善に役立てているのだなと、非常に興味深く聞かせていただいた次第でございます。
社会のニーズや市場の変化というのはこれまでになく速くなっていますし、その中で働く人が納得して変わっていく、変革していくということは非常に大事なことで、そのためのコミュニケーションも大事だと考えております。そこで、お三方に2つほど御質問があります。
1つは、新技術の導入に際してのコミュニケーションの取り方についてです。導入する前に意見集約など、コミュニケーションを取られているのか、あるいは導入した後のフォローアップや意見の集約がどのような形で行われているのか、断片的にはいろいろお聞きしたのですが、それぞれ改めてお聞かせいただければと思います。
問題意識としては、労働者側からすると、社長には言いにくいけれども、同僚には割と不満を漏らせるということはあり、そういう声を如何に拾えるのかは、納得感を高める上で非常に大事なことだと考えております。そういった観点から、コミュニケーションの取り方も含めて、気にされていること、留意されていることがあれば、そこも含めてお聞きしたいと思います。
新しいことを実施するときは、どうしても会社側からの提案が多いかと思いますが、逆に労働者側から提案があったり、あるいは会社側の提案に対する、これはどうか、やめてほしいといった労働者の声を受け入れたり、といったやりとりがあったのかどうかもお聞きしたい。
もう一つは、新技術を導入した際の教育訓練についてです。やはり人手不足の話もあり、これからは、様々な年代の人や経験のある人を取り込んで働いていただくということが、どの企業においても重要な課題ではないかと思っております。そういう意味では、年代や経験など人材の幅が広くなる中で、人材育成上の課題や、特に新技術になかなか適応できない難しさを抱えている方をどうフォローしていくのか、SDGsにもありましたが、「誰ひとり取り残さない」努力はどのようにしていくのか、お聞きしたいと思います。
○守島座長 ありがとうございます。
では、小室様からお願いいたします。
○小室氏 御質問ありがとうございます。
新技術導入前に、弊社の場合ですと、そのたびにいろいろ反対意見が起きるということは申し上げたとおりなのですが、円卓発を御紹介させていただきましたけれども、Two way communicationを大事にしているので、ともかくどんなことでもいいから意見を言いやすいような環境づくりを大事にしています。イエスと言ったけれども、ロッカールームでべろを出して「とか何とか言っちゃってさ」なんて言われてしまうと話にならないので、反対意見も賛成意見も多様な意見としてともかくちゃんと大事にしようという風土の中で、会議でしっかり吐き出させるということを大事にしております。議論だけはしっかりとやり尽くしているところです。
クラウドの中に必ず議事録を残して、話し合う前も何の話合いをするのかということも資料を共有しながら、みんな話合いの前に十分に準備してから実際の話合いをして、終わった後は議事録を確認して、またその後、クラウドの中で追加意見が言えるような環境づくりをしっかりしながら、とことん話し合って納得するということを大事にしております。
スタッフのほうからの意見というのが結構出てきます。ロボットの事例をお話ししたと思いますが、スタッフたち側のほうから提案してくるという機会も、クラウドなので、割と気楽に言えるような状況になっています。こんな技術がありますよ、こんな道具がありますけれども、御存じですかというのがSNSのような感じでつぶやけるような環境をつくっています。面白いと思ったら、早速、議論しようということでやったりしております。
会社でいろいろ入れたものの中で、セッティングが面倒なテレビ会議システムをやめてタブレットで簡単に使えるLINE WORKSにしたというのも実は職員からの提案でした。さんざん反対されたAIを搭載したドライブレコーダーも、ある職員が、自分たちの処遇改善の原資の一助にと保険料が下げられないかところから見つけてきた話で、そういった情報をいつでも言えるような環境は、会議だと堅苦しいのですが、クラウドにすることによって言いやすくなったという印象を持っております。
導入後ですけれども、うちの職員で一番年齢が高いのは81歳ですが、意外とリテラシーの問題はないと思っています。いろんな技術は、いかにシンプルにするかということで革新が進んでいると思いますので、パソコンは難しいけれども、タブレットでやるのは割と感覚的にできるようになっています。振り返れば、シニアでもスマートフォンは普通に使っております。昔、パソコンで仕事をしていた時代には難しかったのですけれども、今日に至っては、どれも結構感覚的に仕事ができるので、精神的に嫌だというのはあると思いますが、一回覚えてしまうと、誰も文句を言わずにスムーズにやってくれるのではないかと思っています。いかにシンプルにするかということと使いやすさということは、みんなでとことん話し合っていますので、最終的には合意形成の上で頑張って使っていただけているという状況でございます。
以上です。
○守島座長 ありがとうございます。
では、林様、お願いします。
○林氏 「誰ひとり取り残さない」という意味を働く人にも考えてもらう目的で「見える化」をしています。
設備を作るのも、内製することによって「私作る人、僕使う人」という感覚をなくす。
作る人=使う人であって、使う人=作る人だよねということで、設備やプログラムも考え方も分け隔てなく意見をもらっています。
気持ち、マインドを変えるというのはなかなか大変なので、一番簡単な方法は現場を変えることなのですね。例えば作る部署が離れた奥のほうにあったらば、そこになかなか行かないので、設備を作る場所を工場の入り口に持ってくる。そんなことをしながら、いや応なしに見える化する。自分が関わっていることが分かる仕組みづくりをし、気持ちが変わっていくよう働く人を巻き込んでいます。
「もっとこうしてほしい」、「これでは使いにくい」とか感じた事をアジャイルで創っていくという姿勢がうちのやり方のいいところだと思っています。
教育訓練も一緒で、配属された部署だけではなくて、他部署での応援を日常的に行っています。
その人の持っているスキルによって変わることがあるので、自分の思いの仕事ができるところへ行けるように努力してもらう、そういう形で過ごしています。
○守島座長 ありがとうございます。
では、牛尾様、お願いします。
○牛尾氏 新規技術の導入時のコミュニケーションということでございますが、まず、いきなりというわけではなくて、ある程度予告した上で実施しております。予告の場も、経営方針の発表であるとか、そういった場で経営トップから、この中計期間中にこういうことをやりたい、そのためにこういう技術を導入するというようなメッセージをまず発信します。その導入に当たっては、キーマンを各部署から出していただいて、その方々にこういうことをやっていきますということを伝えた上で、それをまた下へ下ろしていただく、こういうプロセスで動かしているということです。
それから、労働者側からの提案ということは、我々はいつでもオープンに受け付けています。先ほど懇談会制度を説明しましたが、その場で、職場で今こんなことで困っている、新しいこの技術はすごく使いにくいというような話が上がれば、それがすぐ我々のほうに上がってくるようなコミュニケーションができています。あるいはヘルプデスクや、SNSの中に書き込むことも簡単にできるというような、インフラ上はそういうことができております。
それから、教育訓練は確かにリテラシーの差がございますので、なかなか難しいところはございます。新規導入に当たっては、キーマンを設定して、その方を主体として教育訓練も行う、それに加えて、何らかの会議等も必要に応じてスカイプで配信して、自分の職場の自分のデスクの上で必要な情報を取ることもできるような工夫もしております。リテラシーの低い方、手取り足取りやらなければいけないという方も全くゼロではございませんが、できるだけ周りがフォローできるような仕組みができていると認識しております。
○守島座長 ありがとうございます。
どうぞ。
○佐久間委員 今日はありがとうございます。
楓の風の小室社長と武州工業の林社長にお伺いしたいのですが、2社を見ると、一方は、クラウドを母体としながら、業務別に適応したいろいろな既製のアプリを、これはもちろんカスタマイズされていると思いますが、入れてこられた。武州さんはアジャイル開発で進められ、特定のベンダーがいらっしゃって、それで開発、導入された。自社開発で基本的にいかれている。非常に対比できるのではないかと思います。
まず、楓の風さんのほうでは、人と人とのビジネスという形になりますから、例えばレジュメの2ページでは、医療関係を中心として、医師や看護師、社会福祉士、介護福祉士、事務職、いろいろな職種の方がいらっしゃると思います。医師や看護師は、異動や他の医療機関に行かれるとか、そういうのも結構見られるのではないかと思いますけれども、システムを入れたことによって勤続年数が延びたとか、職種別に大体の年数的なものを教えていただきたい。延びたという感触的なものでも構いませんので、教えていただきたいと思います。
武州の社長さんのほうですが、レジュメの6ページに売上高の推移があります。2015年のデータで「攻めの中小企業IT経営」の賞を取られていると思いますが、2013年、2014年、2015年ぐらいの3年間で売上げなり利益が伸びてきているのが評価されていると思います。最近のBSからということで財務比率なども非常にいいと思います。固定比率、固定長期の適合率、自己資本比率も50%程度いかれているのではないかと思います。
資料では生産性が20%上がったとありますが、この生産性については、労働生産性の関係なのか、またシステム開発もアジャイルですから結構、費用もかかっていると思います。資本生産性の観点からも、感覚的なもので構いませんけれども、どちらがアップしていると全体の生産性に貢献しているのか、教えていただきたいと思います。
○小室氏 では、楓の風のほうから御報告申し上げます。御質問ありがとうございます。
会社自体も10年ちょっとの会社なので、定着につながったかどうかというところがまだはっきり分からないところではありますが、もともと医者も看護師もどちらかというと会社につくというよりも仕事につくというところが強くて、我々もそこをよく理解していまして、どういう状態で、いいコンディションで仕事に就けているかというところを「見える化」していこうと考えていました。
実はその辺を「見える化」できるツールを私の資料の8ページにお示ししています。これは、医療系のコンサルタント会社で最大手の日本経営が開発したものですが、ES Navigatorという、これもクラウドで管理するものですけれども、いわゆる職員満足度を定量評価できるようになっていますので、スタッフの満足度がある程度見えています。そろそろ退職が近いのか、どうなのかというところは割と「見える化」できているところでございます。
あと、今年導入するNaviLightというものがあります。大体チームごとになっていますので、専門職の人たちは、会社がどうのこうのというよりも、今、自分が働いているチームがどれだけいいパフォーマンスをして、自分の専門性がどれだけ発揮できて、専門職としてのアイデンティティーが確立できているかというところが動機づけ要因になっているということがいろんな研究で明らかになっています。すなわち承認欲求がどれだけ満たされているか、このNaviLightというのは、その結果、そのチームが燃えているか燃えていないかというところをかわいいアニメーションで可視化できるという道具になっています。いわゆる御機嫌なチームであるかどうかというところも可視化できるようになって、そこで割と早目に手を打てるようになっているという現状です。
最終的には、仕事自体は単なる介護事業というよりも、私たちの場合、人の人生の最期のところを支えようということで、その目的に賛同して集まっています。テクノロジー以前にそういった特徴的なホスピスケアという仕事に対して取り組んでくれていますので、テクノロジーを入れたから、仕事を長く働く、働かないというところには影響しないのではないかという感じております。ただ、どうしても2対6対2の法則ですとか、いろいろありまして、あまり御機嫌ではない状態というところは可視化することで早目に対処できるのではないかと考えているところでございます。
○林氏 労働生産性がだんだん改善が進んで上がってまいりまして、現場の雇用を守る、地域の雇用を守るというのがうちのメインの目標なので、現場の労働生産性が上がってきました。今度はIT、プログラム、設備、そういう開発部隊をだんだん増やしてきております。従業員154名中35名がプログラムも含めて、IT、IoT、AI、社内の設備を開発する部隊に回っております。今はまだ投資の段階ですが、今までは社内の設備、ノウハウは外に売らないと決めていたのを生産性見え太君をフリーアプリにしたり、社内のオープン化を図りまして、この3月にはロボットのシステムが他会社に売れるまでに成長しました。
今後は、モノづくりということだけではなく、設備やエンジニアリング教育に少しウエイトが増えるかもしれません。それに伴い、資本生産性というのはだんだん上がってくるとは思いますね。
○佐久間委員 ありがとうございます。
○守島座長 ありがとうございました。
では、後藤さん。
○後藤委員 今日はどうもありがとうございました。
お三方のお話の中で、事業の目的あるいは目指すべきところに対して納得感が必要なのだということは非常に理解いたしましたし、私自身も共感するところです。ただ、目的を達成するための手段が適切なのか、あるいは適正なのかということに対して、働く方々の納得感を得ることに非常に苦労されているのだろうと思いまして、それぞれ少しずつお伺いしたいと思います。
まず、楓の風さんについてはいろいろな技術を取り入れられていて、一見すると、従業員同士が顔を合わせて何らかのコミュニケーションを取るという部分が資料の中ではあまり見えていなかったのですが、具体的に物理的に顔を合わせて意見交換して改善するであるとか、あるいは導入しているものに対してのフィードバックをし合うということがあるのかどうかということが一つ。
それから、先ほど自動車のAI運転管理システムは、従業員の方から、保険料が下がると自分たちにリターンが返ってくるので入れましょう、という様な御意見があったということですが、処遇に反映されるとすぐに新しいものを入れることに前向きになるのかどうか、そしてどういった御意見が上がっていたのか。
それから、いろいろな分野の技術を入れていらっしゃいますので、まだ事業として10年ぐらいということだったのですが、入れる前と入れた後で、減った分野があるのか、あるいは社内で人がほかの部門にシフトしてもらうなど、人の移動があったのか。この3点をお伺いしたいと思います。
武州工業さんについては、先ほどのお話の中で環境を変えることもされているということですが、社内でのコミュニケーションの取り方、物理的に何かミーティングのようなものがなされているのか、そういったところをお伺いしたいと思います。
リコーさんについては、懇談会制度をしっかり組織的にやられているようですけれども、最終的にそこで決まったことを経営層に答申していくということですが、そこで経営層のジャッジと答申との間に乖離が生じることがあるのか。
それから、職場の職制と関わるような形で懇談会制度ができ上がっているようにお見受けしましたが、非管理職の方々が懇談会の中でどこまで直接的に意見交換されているのか、実態はどうなのか、お伺いしたい。
事業としてそもそもこういうITのツールを入れていくことが御専門ですので、いろいろなことにチャレンジして、それを御商売につなげていくということですけれども、最終的に社内もIT化がさらに進展していったときに、現在は人の行き来というのはあまり考えていないというお話でしたが、これから先をどのように予測されているのか。あるいは社内である部門が携わっていた部分がITツールで置き換わっていったときのキャリアチェンジやスキルチェンジ、そういったことに対して何か備えをされているのか、その辺りについてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
○小室氏 3ついただきました。まず、人間同士のコミュニケーションは、やっているのかということです。プレゼンの仕方がちょっと甘かったのですが、暗黙知の共有は徹底的にクラウドでやっていますけれども、実際に形式知をつくっていく作業というのは必ずアナログでカンファレンス等の形でやっております。
ただ、通所系サービスは、スタッフ同士が常に顔を合わせながら仕事をしていますので、常時コミュニケーションという状況だと考えています。訪問系のスタッフ、在宅医療と訪問看護については、どうしても夕方しか会えない、あるいは夕方すら会えないということがありますので、おのずとクラウドのほうが多いと思っていますが、非常に使いやすく、電子カルテそのものがSNSでの交流をしているような感じで意見交換できますので、最低限の顔合わせでも済むような体制がテクノロジーのおかげで実現していると考えています。
2つ目のドライブレコーダーを入れたとき、職員の意見で、お金がもらえるというところが動機づけ要因になっているのかどうかという辺りですが、基本的に報酬は衛生要因なので、動機づけ要因には多分ならなくて、不満ではない状態になるだけだと思います。どちらかというとお金がもらえるということよりも、「楓の風総選挙」というアプリを使って相互称賛する仕組みを設けておりまして、そこでアイデアが称賛されるとみんなが「いいね」をいっぱい入れてくれるような仕組みになっていまして、そっちのほうがどちらかというと承認欲求が満たされて動機づけ要因になって、それが職場で働く満足度につながっていると考えております。本質的にはお金が目的よりも、いい仕事をしたということを周りから認められたいというところがきっかけになっていると思います。
3つ目の人員等で効率化されたかどうかという辺りです。我々は、非常に人手が足りないと言われる中で、株主との関係でどうしても事業を大きくしていかなければいけないのですが、人の確保を考えますと、厚生労働省から示されている人員配置基準がありまして、基準通りの人員を配置しなければいけないとなっています。ところが、一般的にどの介護サービスも、基準以上に人を置かなければ現場が回らないという悩みを持っていまして、その結果、利益を食い潰して、介護事業はなかなかもうからないという話になっていると思います。
おかげさまで弊社の場合は、テクノロジーだけではないのですが、去年の基本部会でもお話しさせていただいた幾つかの要因の中でも、こういったテクノロジーといろんな工夫によって人員基準どおりに運営できるようになったというのが弊社の場合のメリットだと思っております。最小限の人数でやれますので、1人当たりの報酬を高めに設定することができまして、介護福祉士でも年収400万円を全員もらっているのがうちの特徴でございます。30代半ばぐらいの10年目ぐらいの理学療法士でも550万円もらえていますので、何とか子供を私学に通わせることができるというような報酬も実現しています。そういった効率のよい人員配置が実現できるようになったというのはICT技術の一助もあると考えております。
以上です。
○後藤委員 ありがとうございます。
○林氏 資料の11ページですが、現場の人たちが主体となり、職位に応じて集まる会議が多数企画されています。いろんなミーティングなどを開けるようになり、現場の生産性が上がりました。
「武州庵」という場所がありまして、会議のメンバーが集まって、5時までは討論をし、その後はそのまま飲み会をしてもいいというような場所になっています。それから、外で飲み会をするのに会社の補助で3000円出しています。
○牛尾氏 3つ御質問を頂いたと思います。
答申とのギャップがあったのかということでございますが、私が知る限り、答申とのギャップというのは過去2回ございました。直近では2017年だったと思いますが、昇給率について社員から答申したことに対して経営側からプラスオンするという回答が出たことがあります。会社の業績が非常に厳しいという理解が社員の中にあったために、いわゆる定期昇給分で今回は我慢するべきではないかという答申をしました。その際に、社員は経営と一緒になってチャレンジしていきますというメッセージを込めた答申をしたことによって、経営側が、社員がここまで言ってくれるのだから会社としても形あるもので返すべきだということで、上乗せして返したという事例が直近で一つありました。
もう少しさかのぼりますと、それも経営が非常に厳しくなったときですが、私ども、賞与というものにつきましては、50年前から算定式を使っております。賞与というのは、ほぼ利益が固まれば、その算定式に基づいて出てくるということですが、利益の幅が大きく減ったときがございました。その算定式をそのまま使うと、前回の賞与に比べて大幅にダウンするということになったときに、経営の判断で今回はその算定式を使わないということで、前期比との比較で全く横並びにはなりませんけれども、ある程度減額幅を抑えたということがありました。
それ以外ほとんどないというのは、懇談会の審議において社員側は社員の意見だけを集めて答申するということではなくて、会社の現況がどうなのだということをきちっと見極めて、そのためにこちら側も、会社の業績の予測がこうですというデータも見せた上で、今後どのような商品戦略があるという経営計画を見せた上で、では今年どうするという経営側の視点も持って考えてくれというようなお願いを懇談会のメンバーにしていますので、おおむねギャップが出ない。
あとは、世の中のレベル感というものを見ながら、世の中が2%なのに、うちが5%、こんなことはあり得ないでしょうということも含めて、落としどころは、ある程度経営側と同じような目線で見ているので、ギャップがあったのはその2回ぐらいしかないということです。
それから、一般社員の懇談会への関わり方ということですが、まず、職場懇談会の委員の代表が事業所懇談会に集まってきて、事業所懇談会の議長、副議長が中央懇談会に集まってくるというプロセスになっています。18名の一般委員と8名の管理職委員が会合においてはフラットな立場です。ですから、管理職がいるから一般社員がしゃべれないとか、一般委員の中にも2年生、3年生の新人ぐらいから50代の方まで入っておりますが、意見を言うことは全くフラットな位置づけになっていますので、3年生はしゃべりにくい、ベテランが抑え込んでしまう、そういった形にはなっていないという状況です。
それから、IT化の進捗によりということで、人のシフトやスキルチェンジ、当然そういったものが必要になる。我々も随時新しい技術を開発しなければいけないということで、新規事業に人をシフトしていくということは当然やっています。一つには、IT技術によって時間的な余裕が出た部署から移していく、あるいは成熟した技術のところから新規のほうに人員をシフトしていくという動きは当然やっています。ただ、IT技術の導入によって余裕が出たところというのは、先ほど申し上げましたけれども、より高度な仕事に就くというものと、働き方変革という意味でゆとりのある生活、ワーク・ライフ・バランスを取った形に持っていくということも踏まえて、ITの成果を振り分けているという形になっております。よろしいでしょうか。
○後藤委員 ありがとうございます。
○守島座長 ありがとうございました。
ほかに、戎野委員、お願いいたします。
○戎野委員 御説明、いろいろとありがとうございました。
技術導入に当たって、労使コミュニケーションと教育が非常に充実した形で進められてきているということを勉強させていただきました。この検討会の一つの目的ではないかと思っているのですが、こういったすばらしい取組が社会に共有されて、ほかの企業、組織等でも導入にトライしていっていただけるということ、これは日本の社会全体にとってもとても重要なことだと思います。
そのときに、例えば目的を共有する、自律的に働いてベクトルをそろえる、従業員は協力者であるということが、多くの一般の企業ですぐにできるかというと、なかなかうまくいかないことも多々あるように思います。そこで、ぜひ教えていただきたいのですが、こういうメカニズムが機能するに当たって、これまで御苦労されたこと、中には、こうやったけれども、うまくいかなかったというようなことも私どもとしては勉強になるのではないかと思います。長い歴史の中には社会も変わり、世代も変わり、いろんな考え方の人が増えて、そういった中で御苦労されたこと、また、こういうところがポイントになって他社とは違ってうまくいくようになったということもあるのではないかと思います。その辺りも教えていただければと思います。
○小室氏 では、楓の風から行かせていただきます。
我々は、自分たちだけではなく、フランチャイズで連携するということもやっておりますが、全く組織風土が違うところにうちのマネジメントが入るということでいろいろ課題もあります。フランチャイズを使ってやっていこうという介護事業者の多くが、なかなか事業がうまくいかないとか、制度が3年に1回変わりますので、そこについていけないとか、いろんな課題の中からノウハウを欲しがって、私たちのノウハウを買っていただくのですが、うまくいっていない要因は、私たちの業界の場合は何をもってしてケアの成果と捉えるか、肝腎要のケアの目的のところが漠としているということでございます。
その結果、先ほどのプレゼンでもお話ししましたが、看護師はこんなことを言っているけれども、理学療法士はこんなことを言って、ベテランの介護福祉士はふんぞり返ってこんなことを言っているということで、ばらばらなのですね。漠然といいケアをやりたいということがあっても、それが具体的に何なのかというところを明らかにしないと、そもそも仕事が始まらないと考えています。
ばらばらの価値観でそれぞれの経験則の中で介護をやっている人たちに、何を自分たちの成果と捉えるかというところのノウハウを提供しているのですが、そのことによって、それぞれの個性や考え方、方法論はいろいろなのだけれども、目的のために自分のパフォーマンスを最大化しようという動きに、本当に心が腐っていなければ、変わっていきます。
まず、目的といっても、いいケアをしようは目的ではなくて、そんなのは当たり前の基礎的な手段にすぎないという話で、何をもってしていいケアなのかというところを明確にしてあげることがすごく大事だったというふうに振り返っております。
対等な人間関係も当然大事でしょうし、スタッフが自律的、主体的な存在でなければいけないこともそうなのですが、何よりも個性的で多様な人員が何のために自分を発揮するかというところの目的はしっかりと見詰めて話し合っていかなければいけないのではないかと実感しております。
介護業界は、一部、介護度という介護の度合いのランキングを表すものはありますけれども、それを改善すれば一つの成果だという意見もありますが、それだとどうしてもお年寄りに機能訓練、トレーニングばかり強いてしまって、年を取ったら機能訓練で人生が終わってしまうような課題もある中で、どうやったら自分らしく生き抜いていくか、定義することは非常に難しかったのです。誰も取り組んでいないところに我々は社会的自立支援アウトカムスケール「SIOS」というものを開発しました。体の元気とともに、自分らしく生きることは何かということをしっかりと点数で表現できるようになって、かつそれを使うことによって自分たちの専門性の視点もちゃんと整ってくるというような道具を開発して、ようやくこの辺が収まってきたというような感じでございます。それだけ目的は大事だということを実感しながら開発してきたところでございます。
○林氏 私どもは、55年間、赤字のない会社ということを社員にもオープンにしながらやってきているので、現場をオープンにすることも経営をオープンにすることも何も躊躇がないのです。ですから、IoTツールなどを入れて現場を「見える化」する、そういったことにも全然抵抗がありません。IoTツール、AIツール、ICTツールを使うと現場だけでなく経営も「見える化」されます。裸になってしまうのですね。裸になってしまうのを経営者が嫌だったらやらないですね。それから働く人が、「監視されているみたいで嫌です」とずっと言い続けていたら、IoTも進まないです。ですから、オープンにしていくということが大事なのではないかと思っています。
先ほどお話しした「生産性見え太君」を2016年から売り出したのですが、実はあまり売れていません。現場を「見える化」されると困ってしまう会社がまだまだ多いからです。働く人もひょっとすると監視されているみたいで嫌だと思っているかもしれないし、経営者も、原価や利益率が見える化されることにもつながる。やはりきちっと経営するということは現状も苦労しているところですし、もっと世の中をオープン化にしようという風潮にならないとダメですよね。
○牛尾氏 的確な回答にはならないと思いますが、まず、会社が元気があるかというところが一番大きい要因であって、業績が厳しくなっていくと、何だかんだと後ろ向きの行動に移りがちだというふうに考えます。したがって、業績を上げることによって、社員に明るい未来があるということを経営トップのメッセージとして出していただくのが社員のやる気を一番出すのではないか。
過去、何代か経営陣は替わってきておりますが、情報発信をあまりされない経営陣のときと、活発に情報発信をしよう、自らメッセージを出そうという経営陣の下で働くときとは、社員の生き生きさが違うということがあります。業績が落ち込んだときも、空元気ではないですけれども、メッセージだけは発信していただければ、社員のコミュニケーションはうまくいくのではないかという気がしています。
○守島座長 ありがとうございます。
では、羽柴委員、お願いいたします。
○羽柴委員 本日は大変参考になるお話をいただきまして、ありがとうございます。
3社のお取組を伺っていますと、まさにこのテーマについての好事例として取り上げてもいいものではないかと感じた次第でございます。また、委員の皆さんから多々質問がありましたので、あまり参考にはなりませんけれども、感想を述べさせていただきたいと思います。
技術革新が進展する中で、労使コミュニケーションをどうしていくかということですが、会社が業績を上げていくための労使コミュニケーションのあり方の一つは、労使の関係性は協力者であったり同志であったりするのかもしれません。そうした関係性を築くため、1つ目には理念と目的を明確にして共有すること、2つ目は、経営情報や業績等の透明性を担保する、「見える化」を図るといったことが肝要と思いました。そうしたことを通じて人材の自律性を引き出して、変化を恐れず、技術革新を前向きに捉えていく人たちを増やしていくということが非常に印象に残った次第でございます。
私は、経営というのは、二律背反することを高い次元でバランスする技術だと教わってまいりました。今回、お話を伺っていますと、ヒューマンセントリックな人間の幸福や働きがい、信頼と、技術革新への取組、社の業績・生産性、そういった非常にプラグマティックな部分が両立されていて、一見すると、人間の感情とそういった経営的な側面というのはうまく釣り合わないことがあるかもしれませんが、そこを高い次元でバランスされているところが印象に残った次第でございます。
○守島座長 ありがとうございます。
ほかにどなたか、池田委員、お願いいたします。
○池田委員 御報告ありがとうございました。3社とも企業規模や業種が違うのに、新規技術の導入に当たって労使のコミュニケーションを取ることを重視されていることが分かりまして、大変興味深く拝聴させていただきました。
質問ですが、私の理解が誤っているかもしれないのですけれども、労使間でのコミュニケーションというのは、2種類あると考えておりまして、経営側がイニシアティブを取って行うトップダウン型のコミュニケーションと、労働側がイニシアティブを取って行うボトムアップ型のコミュニケーションがあると思うのです。古典的な団体交渉などは基本的に労働組合側が要求する立てつけになっているので、これはボトムアップ型ということになると思います。これに対し、例えば、何か新しいことをやるに当たって社長からメッセージが来るというようなものはトップダウン型になると思います。
今回、3名の方から御紹介いただいた事例というのは、主に使用者側というか、経営側がイニシアティブを取ってコミュニケーションを取られているケースだったような気がしますので、トップダウン型ということになるのかなと考えました。これは、新規技術の導入という側面については労働者が意識を変えるのは大変だというお話もありましたので、労働者側の意識が変わりにくい中でトップダウン型のコミュニケーションを取るのが適しているという御趣旨であるのか、あるいは、今日たまたま取締役とか、そういった形で経営側を代表していらっしゃっているということで、御報告いただいた方の属性によるということなのか、もしくは、今日御報告いただいた内容が主にトップダウン型であるのではないかという私の理解の方が誤っているのかもしれません。そういうことであれば教えていただきたいということと、もしトップダウン型のお話がメインだったとすると、労働者側からイニシアティブを取ってボトムアップ型でコミュニケーションを取りたいという場合に、何かしら取組をされているかどうかというのを伺えれば幸いです。よろしくお願いします。
○小室氏 トップダウンではないつもりですが、役割の違いだと考えています。現場で医者としての役割、看護師としての役割、エリア長というマネジメントの役割、経営者という役割の役割分担をしていると考えています。真ん中に目的があって、それを達成するためにそれぞれが役割を発揮し合っているという円卓型の組織という感覚で今日御説明させていただいたつもりです。
基本的には対等な関係ですし、5つの円卓発想のルールにも書きましたが、目的に対して参加者は対等な人間関係ということと、それぞれのメンバーが自律的、主体的な存在であるということを尊重し合うというチーム運営、それぞれの役割と責任の所在をちゃんとシェアし合いながらお互いが自律性を発揮していくことを大事にして、その中で、ボトムアップ的に聞こえたのかもしれませんが、従業員はそれぞれの役割、立場から意見が自由に述べやすいような環境づくり、これは風土づくりだと考えていますけれども、それを実現している感じです。上からも下からもなく、そういった意味ではフラットだと思います。階級的な見方ではなくて、目的に対して役割が違う人間がいて、その役割によって報酬も給料も変わってくるという位置づけで整理していますので、弊社の場合はトップダウン型でもボトムアップ型でもないと考えております。
○林氏 まさに、うちも役割分担ということだと認識しているのですが、ただ、仕組みを考えるとか、構想を考えるところが社長の役割だったとしたらば、期末賞与は生産性向上分を折半にすると決めたのは社長です。従業員を巻き込んで決めるようになって参加意識が高まってきました。これからはもっとオープンというか、従業員を巻き込んだ、働く人の立場に立った運営をしていけばいいかなというふうにちょっとずつ役割が変わっているかもしれない。だんだん役割分担のフラット化につながっているかなという気がします。
○牛尾氏 新規のIT導入についてトップダウンという感覚でとお話がありましたけれども、最終的にメッセージを出すのはトップかもしれませんが、そこに至るプロセスについては、現行のITシステム上の不具合はこうだ、これを改善するためにはこういう新しいものを導入しなければならないというのは、どちらかというと実際の使用者側の使い勝手が悪いとか、そういった声が上がっていった上で刷新しようという話になっているという理解でございます。少なくとも何もないところからいきなりトップが下ろすということではなくて、いろんなボトムから上がってきた内容を踏まえた上で、最終決断としてこれを導入しますというのがトップメッセージとして出ているという理解になっています。
ボトムアップ型の提案というのは、ほぼ日常のいろんな困り具合はボトムアップ型で、ある人が困っている、私も困っているという声が上がっていって、それを制度として直すか、直さないかというのはまたトップダウンみたいなことになっているのかもしれませんが、スタートはボトムから行っているのではないかという認識です。
○守島座長 よろしいですか。ありがとうございました。
そろそろ時間になりましたので、これで終わらせていただきたいと思います。
お三方のお話を伺っていて私が強く感じたのは、IoTやAIというのは経営にとっては脅威ともなり得るし、機会、チャンスともなり得る。それを脅威ではなくてチャンスに変えていくためには、やはりちゃんとした労使関係を考えていかなければいけないし、従業員に対する配慮というか、コミュニケーションもきちんとやっていかなければいけない。
リコーさんはそういうシステムを既にかなり持っておられたので、そこに入れられている。武州さんは、リコーさんほど長くはないのかもしれませんが、ITやIoTを機会に変える努力をされている。楓の風さんは、新しいのだけれども、IoTを使ってどうやって企業を先に進めていくのかという努力を一生懸命やっていらっしゃるという感じがして、そういう意味では、労使コミュニケーションとITとの関係は私どもの研究会の中でもう少し複雑に考えていかなければいけないという感じがいたしました。
お三方、お忙しい中、今日はどうもありがとうございました。
それでは、これで終わりにさせていただきたいと思います。
では、事務局に次回以降の時間等をお願いいたします。
○新平政策統括官付政策統括室室長補佐 次回の検討会は来月3月19日、木曜日の午後の開催を予定しております。詳細につきましては、追って事務局から御案内いたします。
以上でございます。
○守島座長 それでは、今日の会合はこれで終わりにさせていただきたいと思います。皆様方、お忙しい中、どうもありがとうございました。