第37回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 議事録

健康局 健康課予防接種室

日時

令和2年1月27日(月)17:30~19:30
 

場所

中央合同庁舎5号館 共用第8会議室
 

議題

(1)ワクチンの接種間隔について
(2)予防接種施策について
(3)その他
 

議事

 
○元村予防接種室長補佐 それでは、定刻になりましたので、第37回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会を開催いたします。本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、関係者の方々におかれましては御理解と御協力をお願いいたします。また、傍聴の方は「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いいたします。また、会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。
開会に先立ちまして、委員の改選がありましたので、御報告いたします。本部会に所属されていた宮崎委員が昨年12月20日で任期満了となり、退任されております。後任としまして、国立研究開発法人国立成育医療研究センターの宮入烈委員に、新たに御参加いただくことになりました。
続きまして、出欠状況について御報告いたします。山中委員から御欠席の連絡を受けております。また、池田委員、磯部委員からは、遅れて出席される旨の連絡を受けております。川俣委員ですが、間もなく到着されるということです。現在、委員12名のうち8名に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会令第7条の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。また、本日は議題2の関連で、NPO法人予防接種被害者をささえる会代表理事、東京大学大学院学術研究員の野口友康さんに参考人として御出席をお願いしております。
申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。これ以降は、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。
続きまして、本日の資料の確認をさせていただきます。お手元のタブレットには、番号01の「第37回予防接種基本方針部会議事次第及び委員名簿」から、番号13番の「第37回予防接種基本方針部会利益相反関係書類」を格納しております。不足の資料等がありましたら事務局にお申し出ください。それでは、ここからの進行は脇田部会長にお願いいたします。
○脇田部会長 皆様、今日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。それでは、本日はよろしくお願いいたします。まず事務局から、審議参加に関する遵守事項について、報告をお願いします。
○元村予防接種室長補佐 審議参加の取扱いについて御報告いたします。まず、本日御出席いただいた委員、参考人のほうから、予防接種・ワクチン分科会審議参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄附金等の受取り状況、薬事承認等の申請資料への関与について申告を頂きました。各委員、参考人からの申告内容については資料13を御確認いただければと思います。本日は議事内容に関し、「退室」や「審議又は議決に参加しない」に該当する方はいらっしゃいません。以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。それでは、議事に入りたいと思います。まず、議事次第を御覧ください。今日は議題が3つです。議題1は「ワクチンの接種間隔について」、議題2は「予防接種施策について」、議題3は「その他」となっています。まず議題1の「ワクチンの接種間隔について」の議事に入りたいと思います。これまでの部会で、既にロタウイルスワクチンの定期接種化について議論を重ねてまいりました。確実に接種機会を確保するという観点から、ロタウイルスワクチンとその他のワクチンとの接種間隔を議論して、ロタウイルスワクチン以外の生ワクチンについても議論していただきました。
これまでの論点ですが、ロタウイルスワクチンにつきましては、他のワクチンと干渉するというエビデンスはないということですので、他のワクチンとの接種間隔に対する制限は設けないことにしてはどうかというお話でした。その他の、ロタウイルスワクチン以外の不活化ワクチンについても、他のワクチンと干渉する可能性は低いことから、諸外国と同様に、他のワクチンとの接種間隔に対する制限を見直してはどうかということでした。さらに、生ワクチンのほうですが、注射の生ワクチンについては、過去にワクチン間の干渉が報告されており、諸外国でも一定の制限を設けていますので、引き続き、他の注射生ワクチン接種まで27日以上の間隔をあけることにしてはどうかというような論点でした。
このような方針案に対して、おおむね賛成という御意見を頂いていますが、これまで広く定着したルールを変更するということですので、パブリックコメントを実施して意見を募集した上で、改めてこの部会で検討し、結論を出すという議論をしてきたと思います。事務局のほうでパブリックコメントの意見を整理しておりますので、御審議いただくことをお願いしたいと思います。それでは、ファイルのほう、資料1を開いていただき、こちらは「予防接種の接種間隔に関する検討」ですので、まず事務局から説明をお願いします。
○元村予防接種室長補佐 事務局でございます。資料1です。今、部会長のほうから、これまでの経緯について御説明いただきましたが、資料の2、3ページについては、今御説明いただいた部分、これまでの議論の経緯をまとめたものです。
前回、パブリックコメントを実施して、意見を募集してはどうかということで、パブリックコメントの結果等についてまとめたものが4、5ページです。具体的内容についてですが、パブリックコメントの結果、部会での検討内容に対して科学的に疑義を挟む内容は見られなかったが、見直しの方針に賛成の意見のほか、運用等に関する質問や、慎重に進めるべき等の意見を頂いたことから、見直しに当たっては、こうした点について丁寧な情報提供に努めることとしてはどうかということです。こちらは改正案に賛成の意見ということなので、対応の方向性ということでは特段記載しておりません。
次に、慎重に進めるべきという御意見に対して、資料の4ページに対応の方向性を記載しております。また、エビデンス等に関する質問ということで、これについては引き続き情報提供をしていくということで、このような対応の方向性でどうかということで、また記載しております。
5ページでは、運用等に関する質問・意見、その他ということで、BCG接種も不活化ワクチンと同じ扱いにしてほしいという御意見を頂いたということで、記載のとおり、それぞれ対応の方向性をまとめております。
こういった対応の方向性を踏まえて、6ページに、「まとめ」と、「今後の対応(案)」ということでまとめています。「まとめ」は、これまでの議論の経過、また、パブリックコメントの結果、こういった意見を頂いたということをまとめております。「今後の対応(案)」というところで、異なるワクチンの接種間隔については、前回の基本方針部会で示された方向で見直すこととしてはどうかと。また、併せて、改正の内容やワクチン接種時の注意点などについて、パブリックコメントで頂いた意見等を踏まえ、丁寧な情報提供に努めることとしてはどうかということで、対応(案)をお示ししております。説明は以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。そういうことですね。パブリックコメントで頂いたコメントですが、慎重に進めるべきとか、エビデンス等に対する御質問、それから、運用に関する御意見ということで頂いております。ですので、この方針についておおむね、大きく反対する御意見はないと理解していますので、今後の対応(案)の所に2つのポツがありますが、そちらのほうで進めてはどうかということになります。
7ページを見ていただくと、考え方、イメージとして、現行から接種間隔が変わりまして、注射生という所以外は制限なしへ変更されるということで、これまでかなり現行の形でやってきましたので、現場で混乱が生じることのないように、情報提供を丁寧にやっていくべきだということかと思います。
それでは、委員の皆様から御意見を頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。これまでも議論をしてきていますから、こういう方針でよろしいかと思いますが、ここで更に御意見を頂いておきたいと思います。
○釜萢委員 もう既に議論が出ておりますが、部会長が御指摘のように、従来のやり方がずっと定着してきていますので、やり方を変えることについて、現場、これは医療を提供する側も、それから接種をお受けになる側も、両方にしっかり周知することが是非必要でして、これはマスコミを含めていろいろな御協力が必要だろうと思います。それから、同一のワクチンについて、例えば、4種混合ワクチンの1回目と次の2回目の接種の間隔については、これは添付文書に書いてあるとおり、一定の間隔をあけることになっていますので、そこは間違うことのないように、しっかりやらなければいけないと、改めて発言しておきたいと思います。
○脇田部会長 ありがとうございました。丁寧な周知というところは、接種側、それから接種を受ける側、両方に丁寧にしていくべきだという御意見、そして、異なるワクチンではなくて、同一のワクチンはきちんと接種間隔を守っていただくように、こちらもきちんと丁寧に行うべきだという御意見です。そのほか、いかがでしょうか。
○多屋委員 不活化ワクチンの接種の後は制限なしとなっているのですが、中には接種して早期に熱が出るワクチンなどもありますので、接種する前の問診、診察はこれまでも十分にされていたのですが、そこはしっかりして、接種がその日にできるかどうかの判断は丁寧にやっていく必要があるのではないかと思います。
○脇田部会長 ありがとうございます。接種前、接種時における問診ですね。これをきちんと丁寧にやって、接種の判断を丁寧にやっていただくということも周知する必要があるという御意見だと思います。
さらに、いかがでしょうか。意見は丁寧な周知というところに大体集約をしていると考えますので、こちらはそのように進めてまいりたいと思います。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。それでは、パブリックコメントで頂いた御意見等を踏まえまして、異なるワクチンとの接種間隔については、丁寧な情報提供に努めると。今日頂きましたように、同一のワクチンの接種間隔についても、同じように丁寧に周知をしていくということで、今後の対応方針というものを、部会としては了承することにしたいと思います。ありがとうございました。それでは、本日頂いた御意見を踏まえまして、事務局で定期接種実施要領等への対応をよろしくお願いいたします。
それでは、議題2に進みます。予防接種施策についてです。資料2を開いてください。議題2の「予防接種施策について」ですが、こちらもこれまでに様々な参考人の方から御意見やデータを頂戴しています。本日も、予防接種の健康被害について御意見を伺うために、参考人をお招きしております。NPO法人予防接種被害者をささえる会代表理事の野口参考人から、資料2をもって御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○野口参考人 御紹介、ありがとうございました。ただいま御紹介いただきました野口です。本日は当部会で発言の機会を頂きまして、ありがとうございました。厚く御礼申し上げます。時間を10分少々頂きまして進めていきたいと思います。
まず2ページ目をめくっていただきまして、本日、なぜ私がここにいるのかということからお話したいと思います。NPO法人予防接種被害者をささえる会は、1970年代に起こった集団予防接種禍の原告が設立した予防接種健康被害者の支援団体です。2016年に前身の全国予防接種被害者の会をNPO法人化したものです。主な事業としては、健康被害者の支援事業・予防接種副反応に関するリスクの周知、予防接種健康被害の再発防止、啓蒙活動などを行っております。
私は被害者、姉である野口恭子の弟です。個人情報については、特に問題はありません。姉は、1963年11月に種痘の予防接種を、当時、2歳2か月のときに受けました。そのときに左側の脳に損傷を受けまして、今、障害者手帳第1級ということで、知的障害、てんかん、1日に大体2回の抗てんかん薬を服用しております。日常生活はできることとできないことがありまして、食事などは一人でできます。それから安全な場所への移動、こういうこともできます。ただ、難しいことになりますと、会話のやり取りとか判断、それから日常の基本的な歯磨き、入浴、トイレなども介助が必要になっています。一番困っておりますのは突然の発作です。今でも抗てんかん薬を服用しているのですが平均で1週間に1回ぐらい発作が、今月は6回発作があったのですけれども。情緒不安定ということで、抗てんかん薬の副作用もちょっと出ているような状況です。
次のページで被害の歴史的経緯を振り返ってみたいと思います。1973年に東京予防接種禍訴訟についてですが、私の姉のような、被害に遭った方が集まって訴訟を提起いたしました。その後、1984年に予防接種禍第一審判決が出ました。それから、1989年には北海道でB型肝炎訴訟提訴が出てきまして、1992年には予防接種禍の第二審ですね、東京高裁の判決で、ここで一応、国が上告を断念して和解というような結果となりました。この間19年がたっております。1993年にはMMR大阪訴訟が起きました。2003年にMMR大阪訴訟一審判決。それから2008年には全国B型肝炎訴訟提訴が10か所で起きました。次のページにいっていただきまして、2011年、全国B型肝炎訴訟、国が謝罪ということで基本合意締結。2016年、HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団が結成されて4地裁で提訴。ということでざっと足早に振り返りましたけれども、一言でまとめて言うならば、昭和の集団予防接種禍、MMR、平成のB型肝炎、平成から令和に入るとHPVという、被害と訴訟のサイクルというのは歴史的には繰り返されているというように見ることができるのではないかと思います。傾向といたしましては、国は因果関係について争い、裁判が長期化する傾向があると言えると思います。
次のページにいっていただきまして、こちらは基本部会の方針ということで、過去の方針がどのような理論で裏付けられているかということを俯瞰することは役に立つのではないかと思います。その際に、御存じの手塚先生の「予防接種に内在する過誤回避のディレンマの理論」から引用しております。
予防接種を実施すれば必ず一定の割合で副反応の被害が生じる。しかし、実施しなければ防げる感染症に罹患する被害が発生する。予防接種を行うことは、するべきでないのにした誤り(作為の過誤)、つまり副反応のことと、すべきなのにしなかった誤り(不作為の過誤)、感染症罹患という2つの過誤の可能性を行政が引き受けることになる。しかも、これらの2つの過誤は同時に回避することはできない。
手塚先生は戦後の予防接種行政について3つの区分を設けています。➀は、占領期~1960年代前半の強い不作為過誤の時期です。感染症罹患回避の志向があった時期です。このときは、強制接種のもとで副反応が発生しても問題にされない時期でした。➁は1960年代の後半で、作為過誤、副反応が顕在化してきた時期です。➂が、1980年代後半の強制接種から勧奨接種へ、個別接種中心の政策に転換した、作為過誤回避の時期で、副反応回避をより重視した政策が取られてきたというように理論付けています。
これは私が研究しているテーマなのですけれども、その論点として、では、➂以降の政策は一体どうなっているのだろうかということを見ているのですけれども、不作為過誤、感染症罹患回避志向にもしかしたら転換しているのではないかということです。これを裏付ける点として、例えばワクチンギャップ論ですね、定期接種ワクチンの増加とか、接種率目標の達成維持とか、環境的に見ると、新型インフルエンザとかエボラウイルス、ロタウイルスなどの新興感染症の影響があるのではないかということです。政策の転換が良いかか悪いかではなくて、一応、理論的に俯瞰するとこのようになるのではないかということで、全体の政策の方向性の枠を把握するのに役立つのではないかと思います。一方で、今日のテーマである、被害者はどのようになっているのかということで、次のページで被害者の困難とか救済制度について述べます。
6ページにいっていただきまして、被害者が直面する問題といたしまして、一言で言いますと、社会防衛システムの犠牲の長期化の傾向にあるのではないかと、被害者の迅速な救済とは言えないような状況があるのではないかと。幾つかそれを裏付ける事象があります。
1つは認定の段階です。健康被害者認定審査書類の準備と、医師の協力があるかないかということで、2019年の予防接種健康被害者実態調査、こちらは厚生労働省の協力の下で出されましたが、約半分の人が申請書類をそろえるのが大変だったという結果になっています。また、申請書類の準備の際に医師の協力が得られる場合と得られない場合があって、得られない場合もあるということで、得られない場合は非常に手間取るというような傾向にあると言えます。この辺は、諸外国の事例として先行研究を幾つか見ているのですが、書類の申請の受理の速さということではニュージーランドの事例などが参考になるのではないかと思っております。ニュージーランドの救済制度の全てがいいということではなくて、判断の速さという意味でアメリカよりも速いと感じております。
2番目が健康被害者認定通知の問題です。これは平成30年の国会の質問にありましたが、予防接種健康被害者「認定通知発出」の大幅な遅延に関する質問ということで、阿部議員が質問されております。平成20年から29年に796件の審査がなされましたが、約43%の通知発出が60日未満で完了しましたが、39%が60日以上150日未満の期間を要していたということです。それから300日以上を要したものも5%あったということで、こちらの遅延の問題です。それから、先ほどちょっと話しました裁判解決までの長期化、集団予防接種禍で19年、B型肝炎訴訟で22年と、今、HPV関連が訴訟をやっておりますが、これは一体いつまでかかるのでしょうかという問題提起です。
最後に遺族の死亡一時金の受け取りの遅延です。被害者、当事者がお亡くなりになった場合、遺族が一時金を受け取るというようなシステムがございます。昨年も残念ながら、突然死で、2名の方がお亡くなりになりました。てんかんという病気の性質上、突然亡くなるというようなリスクが医学上でも証明されております。Aさん、40代は、インフルエンザ予防接種被害者なのですが、平成30年11月に突然お亡くなりになりました。当初、市役所は、予防接種被害者死亡一時金制度を認知していなかったために、被害者からの申請を受け付けず、当会が中に入り、予防接種リサーチセンター・厚生労働省の協力を得て平成31年2月に死亡一時金を申請しました。しかし、約1年が経過しようとしている令和2年、つい先週のことですね、1月20日現在、遺族への死亡一時金の支払いはなされていないということです。
まず全体的にお話したいのは、1つのことをやるのになかなか難儀であって長期化する傾向にあるということで、社会のシステムの犠牲になった方々の苦しみが長く続く傾向にあるのではないかということです。
次のページにいっていただきまして、実際に日常でどんな問題に直面しているかというとをお話しします厚生労働省の予防接種リサーチセンターの協力の下で実態調査が過去3回行われておりますが、私のほうで、過去3回の経年的にどのような変化が見られるのかということをまとめてみました。
1つは2番の居住に関してですが、やはり施設への移行が進んでいます。はじめは在宅でやっていたのですけれども、施設の利用者が増える傾向にあります。それから3番の介護ですが、これは、介護といいましても、子供が2歳とか3歳ぐらいからずっと介護をされているのです。それで特に母親の負担、シャドーワークの部分が非常に増えている傾向があります。ただ、近年、昨年の調査では、若干、兄弟にも介護がきているということです。あと、やはり介護が長いということです、4番の介護12時間以上ということです。
それから、もう1つ問題なのは、6番とか8番の、地域で力になってもらえる方がいないということです。これは様々な要因があると思うのですけれども、両親とか兄弟以外に余り頼っていないというような傾向が見られると思います。
それから、一番の不安の要因としては、当時の両親が既にお亡くなりになっている方もいらっしゃいますし、今後、お亡くなりになる可能性が高いということで、親が死んだ後、誰が介護するんだというような、そのような問題が内在的にあって、そこから、やはり施設、入所設備の整備の期待というのが出てきているというのが最近の傾向です。
最後のページです。今日、お邪魔して、今後の御要望として、お願いですね、こういうことを申し上げたいと思うのです。
まず前提として、私どもの会は、予防接種の公衆衛生・社会防衛的な役割は否定しておりません。これは、歴史的に見ても様々な有益なことだと思っております。ただし、接種回数が増加しますと、例えば定期接種化の推進ですね、そうしますと不可避な被害も増加するということです。アメリカの事例でいきますと、接種を積極的にやっておりますので、健康被害の救済額は、1986年からの累積で2,200億円ぐらいまで今なっている状況で、年間、1万件ぐらいの請求がなされていて、処理に遅延が発生しているという、そのような現実がございます。
第2の点は、予防接種の効率性・合理性・コスト減を優先するとヒューマンエラーが起こる可能性が増えるのではないかと。これはB型肝炎検証委員会からの示唆でして、私も委員として出席しましたけれども、この示唆を今後、どのように生かしていくのだろうかというのが課題かと思います。
次の3つは要望です。定期接種を推奨するならば、副反応のリスクと救済制度の周知を徹底する必要があるのではないかという点です。2019年の健康被害者実態調査では、救済制度の認知時期が、約6割が「被害が生じてしばらく時間がたってから」、約3割が「健康被害が生じたとき」ということで、9割ぐらいの人が自分がなるまで全く知らなかったと。強いて言うならば、副反応についての周知が国民の中にどれぐらいあるのかということは考えておかなければいけないのではないかと思います。
次の項目です。予防接種リサーチセンターには健康被害の方の救済活動を積極的に行っていただいておりますが、1つ評議会等で挙がっている案件といたしまして、厚生労働省から予防接種リサーチセンターに健康被害者の個人情報が伝えられないということです。昨今の個人情報保護の観点から見るとそうかもしれないのですけれども、これはあくまでも健康被害救済ということですので、この辺はもう少し柔軟にやっていただけないかということです。
最後のこれが今日の1つ大きなお願いなのです。当審議会、予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会、副反応検討部会に、被害者の代表を参考人としてではなく委員として出席させていただけないかという点です。これは過去にも要望書を上げておりますので、添付してございます。
最後に、誰一人犠牲にならないようなシステムの構築、一人一人の命を守って犠牲を和らげるというような、こういうシステムが構築されなければ、予防接種への信頼感は低下するのではないかと思っております。以上です。ありがとうございました。
○脇田部会長 ありがとうございました。それでは、今説明していただきました内容につきまして、委員の皆様から御意見・御質問等ございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。なかなか副反応の被害に遭われた方に対する救済も、時間が非常に掛かるという実態についてお話をいただいたということかと思います。
今、御提案がありましたように、定期接種の推奨とともに副反応のリスク、あるいは救済制度の周知というものも丁寧に周知をしていく必要があるという御提案です。それから個人情報の問題で、なかなか予防接種リサーチセンターが救済活動をできないような場合があるということで、そこの改善をする。それから、我々は今、基本方針部会をやっていますけれども、そういった部会・分科会等に被害者の方々が委員として参加をできるようにしてほしい。御提案としては、主にその3つです。そういうように受け止めました。多屋先生、何かございますか。
○多屋委員 健康被害救済の認定の委員会に参加させていただいていますけれども、膨大なカルテの資料を提出していただくのに非常に時間が掛かっているのだと思います。
1つ質問ですけれども、スライド6番目の上から3行目にニュージーランドでの医師の協力体制の構築の事例という論文紹介がありますが、ここはニュージーランドではどういう協力体制があっていいということをおっしゃられているのか、もし分かりましたらお教えください。
○野口参考人 最後から2ページ、引用参考文献に一応出所は書いてあります。これはダブリンで行われた調査で、アイルランド政府が全世界的な救済制度がどうなっているかという調査をしたかなり厚いペーパーなのですが、そこから引用してきています。
ニュージーランドも2005年頃に法改正がなされまして、予防接種の健康被害に関して、今までの医師のカテゴリーで言うとエラーと言いますか、過誤でミスをしてインシデントが起こってしまった、そういうカテゴリーから、treatment injuryというようなカテゴリーで、医師の側の心理的な負担と言うのでしょうか、これはミスというよりは起こってしまった、それでtreatmentが必要な事例であるというような、そういうようなカテゴリーの変更をしたらしく、それと同時に、医師が申請をする際に申請者と一緒に署名をする、co-signerという単語が使われているのですが、そういうような制度を確立したということです。
私も現在までニュージーランドに行っていませんので、実際に文献だけを見て一足とびに判断することができないのですが、文献で見る限りでは医師の協力が得られるような体制づくりをしていて、そのために審査の日数が速いということで、かなり複雑なものでも平均80日ぐらいで下りていると。大体、ガイドラインが5か月ですね、アメリカの場合は8か月、240日のガイドラインです。
誤解のないように申し上げると、私が言っているのは全体の救済制度がいいというのではなくて、医師との協力関係の部分でニュージーランドの事例が他の国の事例よりもうまくいっているということでございます。すみません、詳細な答えになっていないと思いますが、また機会がありましたらもう少し調査をして発表させていただければと思います。
○脇田部会長 ありがとうございました。御提示いただいた6ページのところで、健康被害者認定審査の時間が掛かること、一つには医師の協力がなかなか得られなくて申請書をそろえるのが大変だというところで、ニュージーランドでは医師の協力を得るような体制を作って、そこで短縮をしていくということがあるのではないかという御説明だったかと思います。
○多屋委員 多分、日本の医療従事者も予防接種後の副反応であったのではないかということであれば、健康被害救済申請をするのに恐らく協力は惜しまないような気がします。恐らく、膨大な資料を集めるところに少し時間が掛かっているのではないかという気がいたします。多分、依頼されたときは恐らく全力で準備はされているのだと思っていますけれども、そこに時間がどうしても掛かるのかなと思います。
○脇田部会長 多分、そこの個別の所というのはよく調査をしてみないと事情がはっきり分からないので、なぜ医師の協力というか、申請種類がなかなかそろわないかの日本の実態を調べるということも必要かなと感じたところです。そのほか、いかがでしょうか。
○伊藤委員 日本の被害救済制度というのは普通の医薬品などに比べると手厚くて、その分紛れ込みを少なくするための排除の努力はしているのだと思います。一方で産科の補償制度というのは、いわゆる過失認定をせずに補償をしている。ある意味で紛れ込みも含めて、それを拾う代わりに、ある程度補償限度額、補償の程度を下げるとかして、トータルコストをある程度一定にしないと社会保障できないと思うので、そういうような考え方をしていると思うのですが、こういう考え方は被害者の方々にとって受け入れられる可能性はあるのでしょうか。
○野口参考人 やはり、どうしても対コストというような観点が出てきてしまうので、対コストという観点で考えると被害者のほうは少し二の足を踏むような傾向にあると思います。今、ちょっと紛れ込みという話がありましたけれども、現実的に一人一人を見ると何らかの被害を被っているわけで、それを救っていくのが社会全体のシステムだと思います。
最終的には、コストの話は被害者の人には避けたいのですが、そうであるならば、どれぐらいのコストのイメージを持たれているのか。つまり予算の中に被害の救済、副反応の被害者が出た想定の下に予算化がなされているとかです。例えば、今の副反応が出る確率の精査、やはりこういうものをもう少し知っていかないといけないのではないか。つまり、申請されていない被害ももしかしたらある可能性があるので、その辺を併せて考える必要があるのではないかと思います。
○脇田部会長 よろしいですか。
○伊藤委員 具体的にはやはり産科の補償制度みたいに、起きてしまったことに関して過失があるかどうかは別にして補償するという考え方もありだろうと思う反面、一方で、原疾患に伴っての障害の方まで全体として補償する負担というのはなかなか難しいのではないかというところもある。一定の基準は作っておかなければいけないのと、もう1点は、健康人に対する補償という意味で他の医薬品の補償に比べて予防接種は手厚い。とりわけ定期接種になった途端に厚くなるところがあって、そこら辺も含めて全体の制度設計を考えなければ難しいのではないか。
ただ一方で、被害を受けられた方の感覚がどのような感じなのかが分からないと、なかなか議論に踏み込めないところもあるのだろうと思います。そういう点をまず伺いたいと思ったので質問させていただきました。
○脇田部会長 いかがでしょうか。
○野口参考人 私も各国の予防接種救済制度を比較していますけれども、日本の制度はおっしゃるように手厚いと思います。そこが非常にいいところだと思います。他の世界、例えば今のアメリカの状況を見てみるとかなりの所で反ワクチン運動が起こっていて、反ワクチンの文献がこの10年くらいたくさん上がってきています。そういう意味では、各国との比較も大事なのですが、日本の歴史的経緯を踏まえてきたものを大切にしていくべきではないかと思います。
○脇田部会長 ありがとうございます。委員の皆さん、その他いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
○中山委員 8ページの所で、健康被害者の実態調査で、救済制度の認知時期は6割が「被害が生じてしばらくたってから」ということでした。被害者の会の皆さんとしては、いつこの制度を知っておくべきであったか、例えば予防注射をするときに全員がこの制度を知っておくべきであるというような、制度的なことが必要だというようにお考えでしょうか。
○野口参考人 幾つかの観点があるのですが、先ほど出ましたメディアを通じて周知していく。もちろん、感染症の罹患リスクの脅威というのはもちろん分かります。メディアの報道を見ているとリスクの部分、感染症罹患の部分と、そうではないことが起こり得るかもしれないという告知が必要です。ただ、そういうものが一旦起こると今度は報道が二項対立論的になりやすい傾向にありますですから、メディアに対していかに公正な、中立な情報を与えていくかということでは働き掛けが必要かと思います。
もう1つは接種するときです。ずっとメディアに言われても人間は忘れるものですので、接種するときに何らかのもっと有効的な手段である告知方法がないかどうかです。今は問診的なものがありますけれども、問診的なものも全部読まれる方と全然読まない方がいます。医師の方がそういうことを言うことによって、救済制度としての副反応の認知が広がれば、全体的な報告が早く上がるようになるのではないかと考えています。
○脇田部会長 ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。
○川俣委員 市役所のほうが予防接種被害の死亡一時金制度が分かっていなかったと最初に出ていますよね。私、市長をやっているので、そういうのは伝達がうまくいっていなかったのかなと思うのですが、その後もっと年月がたっていますよね。それで、今まだ請求が出ないというのは市役所のほうの対応が悪いのか、それとも国とかに上がっていく段階の期間が長いという意味なのか。先ほどから、医者が書類を作る時間が掛かるということで一番はどこなのか、どこをもうちょっと簡潔にしたらやりやすくなるのかをもし一番思っているお気持があったら、市のほうの対応が悪いというのだったらもうちょっと円滑に職員全員が把握できるような指導方法もあるのかなと思いますが、どこら辺をやっていったら一番いいと野口さん御自身が考えていらっしゃるのかを教えていただけると有り難いなと思います。
○野口参考人 正直なところ、プロセスがどういう状況かというのを詳細に教えていただけないというところが一番の問題です。書類自体は、11月にお亡くなりになられて、2月にあけて、再度医師の膨大なカルテを大体4月ぐらいには送っているというように遺族の方からはお伺いしています。その後のプロセスに関しては、残念ながらお伺いしても詳細には教えていただけないということで、市から県に上がり、県から厚生労働省に上がるというような段階的なステップがあって、どこでそうなっているというのはちょっと分かりかねるところでございます。
御指摘のように、その辺の状況がどういうところであるかを一つ教えていただけますと、御遺族の方も、お金が全てを解決するわけではないですけれども、お亡くなりになられて悲しまれている中、更にこういう問題といいますか、整理することができない状態というのが和らぐのではないかと感じます。
○脇田部会長 ありがとうございます。認定のプロセスが分かりにくいので、その過程を透明化してほしい、というような御意見だったかなと思いました。
○野口参考人 付け加えて言いますと、被害になったときに認定の書類を上げてから大体どのぐらいというガイドラインはあると思うのですが、この死亡一時金に関しては、大体どれぐらいというガイドラインがなくて、通常、保険で言いますと大体3か月ぐらいで請求して支払われますが、まず、大体いつ頃までにという見通しというのが提示されていないのではないかと思います。
○脇田部会長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
○磯部委員 すみません、講義があったので遅れてきて申し訳ありません。PMDAが担っている医薬品副作用等の被害救済制度のほうでは、救済給付の申請から給付決定まで実際どのぐらいかかるということについて、中期目標の中で目安としている6ヶ月で処理できている件数が65%、9割がたは8ヶ月で処理できているという話しでした。でもやはりこういうところで滞っていてとか、受給している方に果たして申請のときにどういう不都合がありましたかといったアンケート調査をして、3割ぐらいの方が一度は問合せをされている。それが果たして書類の何を集めたらいいかとか、どういうところの難しさなのか何なのかといったことを、今、詳細に調査をして、運営改善についての委員会を設けまして、私もそこの委員なのですが、やり始めているところです。是非、そちらの実態も十分参考に踏まえながら、今後議論させていただけたらいいなと思っております。すみません、こちらの中身に直接関わることではないのですが。
○脇田部会長 ありがとうございます、よろしいですか。
ありがとうございました。いろいろ今日御提案いただいた点もありますし、今後、予防接種を推進するには、こういった健康被害が生じた場合に救済制度をより良いものにしていくということは非常に重要だと思いますので、また様々な意見を伺いながらより良いシステムを作っていくということにしたいと思います。参考人から御意見を頂きまして、今日議論しましたけれども、時間の関係上ここまでとさせていただきます。
これまで予防接種施策の関係者をお招きしてヒアリングを行ってまいりましたが、様々な御意見を頂きました。それらの意見を踏まえまして、見直しに係る論点を整理して、提言の取りまとめに向けた検討を更にこの部会で行っていきたいと考えておりますので、また議論のほうをよろしくお願いいたします。本日、野口参考人におかれましては、お忙しいところ御出席いただきましてありがとうございました。
続きまして、議題2の後半部分に入りたいと思います。資料3-1以降、事務局から説明をしていただきます。まず始めに、副反応の情報収集と評価、健康被害救済について、資料3-1から3-3まで事務局から説明していただきます。お願いします。
○田村予防接種室長補佐 資料3-1を御覧ください。予防接種施策の見直しに関する議論についてということで、これまで過去3回、接種類型、定期接種化のプロセス、安定供給、研究開発、費用の効率化、接種記録、コミュニケーション、災害時の対応等について御議論を頂きました。本日、御審議いただきたい事項として、右側に記載していますが、副反応の情報収集と評価、健康被害救済、施策の立案に係る各種調査、造血幹細胞移植後の接種、この4点について議題とさせていただければと思います。
続きまして、資料3-2を御覧ください。こちらは副反応の情報収集と評価についてということで、副反応に関する資料を御用意させていただいています。2ページ目、こちらはワクチン行政の概要(全体像)の資料です。副反応疑い事例の収集というところが、今回関わるところかと思っています。3、4ページの所ですが、3ページについては副反応疑い報告の仕組みについてということで、全体の制度的な立付けを説明させていただいています。4ページは、副反応報告制度における報告事項ということで、患者情報、接種場所、ワクチンの種類、接種状況、あるいは副反応の症状、症状の程度、どういった内容を報告させていただいているのかということを表わしています。
5ページ目に各ワクチンに関する副反応の報告件数、また副反応検討部会での審議回数ということで、これまでの検討状況、審議状況をまとめています。6ページで、こうした副反応報告制度について、さらに報告制度の改善に向けた取組ということで、研究班で電子報告制度の在り方に関する検討、また客観的な診断基準の策定に関する検討、適時適切な安全性評価等のための基盤に関する検討、こういったことの検討を進めていただいています。副反応報告制度全体の改善に向けた取組も継続的に行っているところです。
7ページですが、こういった副反応報告制度と合わせて、予防接種後の健康状況調査ということで、こちらはまれなものと言うよりは、逆に、一定の頻度で発生が見られる副反応について、接種された方々に御報告いただくということで対応を行っています。8ページですが、こうしたものを活用しつつ、ワクチンの安全性評価についてということで、評価全体の体系の概要を示しています。ワクチンの安全性を評価するに当たっては、有害事象のモニタリングをやって、承認時には想定されていなかったまれな副反応の発生、あるいは想定されていた副反応の増加等の安全性に関する懸念を早期に探知した上で、探知された懸念の妥当性やリスク、そういったものについて検証していく必要があるということで、図に示していますが、こういった形で随時検討が行われているものと理解しています。
そういった際の留意点として、9ページですが、副反応の発生数と副反応疑い報告数の関係です。以前、ロタウイルスワクチンのときに使用した資料ですが、➀、➁、➂と定期接種化による変動、あるいはベースラインとの波の差、同じようにモニタリングしていても認知の向上など、ほかの他律的な要因による変動、こういったもので副反応の報告数自体は変動が来し得るものだということを理解していただくために、参考として添付しています。
10ページ、こういった副反応報告制度等々とまた合わせた形で、NDBを用いたワクチンの安全性評価ということで、こちらは例としてロタウイルスワクチン接種後の腸重積のモニタリングを提示させていただいています。腸重積全体の発生頻度、報告数を経時的に推移を見ることで、一定の評価ができるのではないかということで、例示させていただいています。
11ページについては、諸外国におけるワクチンのモニタリング・安全性評価ということで、米国、韓国、デンマーク、フィンランド、英国、台湾、こちらについて研究班において調査をしていただいて、ワクチンの安全性に関するシグナルの探知、あるいは予防接種歴、医療記録を合わせたデータベース、そういった安全性をモニタリングし、さらに検証していくための体制のあり方について、他国と比較しつつ、まとめた資料になります。一例として、12ページに米国におけるワクチンのモニタリング・安全性評価ということで、例示させていただいています。アメリカでも副反応、有害事象の報告制度があって、こちらで有害事象を早期に探知、検知することを目的として運用されています。さらにそういった左側のVAERSの制度で安全性に関する危機を何か探知した場合には、右側のVSDでこちらは基本的にはマネジドケア、保険のデータベースを使ったものだと思いますが、ワクチンの接種歴とそういった医療機関の受診歴、診療歴を合わせて、なるべく早く検証するということを行っていると承知しています。
他方、13ページ、ワクチンの安全性評価に関する情報についてということで、左側はワクチン接種歴と有害事象歴のテーブルですが、こういったワクチンのリスクの検証を行うに当たって、現在、各主体が別個にデータを保有していて、副反応報告疑いは国においてデータを保有しています。また予防接種後の健康状況調査についても国で保有していて、他方、予防接種台帳については市町村で保管していて、接種数の合計数のみ国において収集をしているという状況です。またNDB・レセプト、こういったものは国又は保険者で所有しています。カルテ情報については医療機関で所有していますが、そのデータの網羅性という意味では一定の問題があるかもしれない、こういった幾つかのデータがあって、それぞれどこで保有しているのか、なかなか連結して使うことが難しいというのが現状かと思います。
14ページですが、そういった中で予防接種記録と保険診療データを連結した安全性評価ということで、こちらは事業になりますが、連結して安全性等について迅速に評価するためのデータベースを試行的に構築しているといった取組を、今、行っているところです。
こうしたことを踏まえて、15ページ、副反応疑い報告等についてのまとめになります。以上、説明させていただいた背景と現状を踏まえて、検討の課題として、副反応疑い報告制度をはじめとする各種調査を用いたワクチンの安全性評価の現状についてどのように考えるのか、また、因果関係を客観的に評価するために必要なデータを収集するため、大規模なデータを活用して報告者の判断によらない情報収集を行う可能性等についてどのように考えるのか、この2つの論点を提示させていただいています。
続きまして、資料3-3を御覧ください。こちらについては、健康被害救済制度についてということで資料を用意させていただきました。まず、➀健康被害救済の認定等についてです。3ページに制度の概要を示しています。また、4ページに健康被害に対する給付額の比較ということで、A類疾病、B類疾病、医薬品の副作用被害救済制度について載せています。
5ページに、健康被害救済制度の変遷ということで、昭和51年の改正のときに制度が創設されて、平成6年に法の目的の所に「予防接種による健康被害の迅速な救済を図ること」という文言が追加されたと承知しています。
こういった変遷を踏まえて、6ページに現在の健康被害救済制度の考え方を示しています。下線にありますように、「厳密な医学的な因果関係までは必要とせず、接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も対象とする」という方針で審査が行われており、円グラフがありますが、予防接種に起因することが否定できないとしたものが46%程度という内訳になっています。
7ページが、手続を示したものです。申請者が市町村に申請をして、市町村から都道府県、都道府県から厚労大臣、そして疾病・障害認定審査会といった形でいって、さらに戻っていくという形の手続になっています。
また、8ページですが、そういった形を経た上で、不支給処分に不服がある場合には、さらに都道府県知事に対して審査請求が可能であって、そうした場合、処分の取消しの裁定がされると法令に基づいて再度、厚労大臣が認可を行うことが求められています。この図に示してあるように、再度、手続が進むということになります。
9ページですが、こちらは過去の審査件数等の実績、平成26年度から30年度までの実績を認定件数とワクチン別の認定件数で示したものです。
また、10ページは参考ですが、日本と米国の健康被害救済制度の比較を表にしたものです。アメリカでは補償の対象となる症状と発現までの期間がワクチンごとに示されており、こうしたワクチンのInjury Tableに該当する場合は、厳密な医学的因果関係の立証を求めずに速やかに補償するという仕組みがあると承知しています。ただ、そうしたテーブルに該当しない場合は、逆に請求者が立証責任を負うという仕組みのようです。表にそのほか支給までに要する期間として、国での申請受理から支給まで、日本では4か月から12か月程度、米国では1年から2年程度、時間が掛かっている状況です。
11ページですが、予防接種に関する間違いについてということで、接種間違いが一定数ありますが、このような間違いが生じた際の健康被害救済制度における取扱いについて、必ずしも明示的に示されていないということで報告させていただいています。
次に➁保健福祉事業等について、13ページを御覧ください。予防接種による健康被害救済に関して、国が行うべき保健福祉事業の推進に関する責務というのが、予防接種法に規定されています。こういった条文を受けて、健康被害の認定を受けた者の実態の把握をするための調査、リサーチセンターによる相談事業、予防接種センターの推進事業等が行われています。
健康被害の認定を受けた方々の状況についての調査の概要が、14ページ以降に示されています。14ページは、認定者の年齢、障害等級を示しています。15ページを御覧ください。申請に当たって、制度の認知・理解や書類の準備等に苦労を感じた者が相当程度存在したこと。また、今後に対する不安を感じている方が多く、その理由として、金銭的な不安よりも必要なときの受け入れ体制等に関する不安が多く見られたことなどが、報告されています。
16ページを御覧ください。「どのようなサービスがあるのか、情報がないので分からない」など、情報不足によってサービスの利用を行っていない者というのも、一定程度存在していたということが報告されています。
17ページ、こういった状況に対して保健福祉相談事業の中で相談支援、あるいは関係機関との連携、相談員、医師、理学療法士等による家庭訪問などを実施しているということが事業内容となっています。18ページで、実施状況を報告させていただいています。
19ページを御覧ください。予防接種センターの機能推進事業ということで、予防接種法に基づく定期接種が、より安全かつ有効に実施されるように予防接種センターの機能の推進事業を行っています。内容としては、健康被害が発生した場合に迅速かつ的確な対応を図ることや、あるいは医療相談を通して、予防接種の要注意者に対して事前・事後における医療相談を実施するなどの対応を行っているところです。
20ページは参考ですが、HPVワクチン接種後に多様な症状を呈した方々への支援体制ということで、このような対応を行っていますということを例示させていただいています。
21ページになりますが、こうした背景と現状を踏まえて検討すべき論点として、健康被害救済制度の審査・認定の状況等を踏まえ、制度のあり方をどう考えるのか、また、健康被害を受けた方々の現状に鑑みて、予防接種に起因するかどうか分からない場合も含め、接種後に症状を有する方々への医療体制や相談支援体制などのあり方をどう考えるのかということで、2点論点を御用意させていただいています。事務局からの説明は以上です。
○脇田部会長 ありがとうございました。かなり資料の量も多くて、説明も駆け足だったかと思いますが、最初の資料3-2では、副反応の情報収集と評価についてというところで、副反応疑いの報告制度をはじめ、各種調査を用いたワクチンの安全性評価の現状についてどう考えるかと。それから、因果関係を客観的に評価するために必要なデータを収集するため、NDB等の大規模なデータを活用して、報告者の判断によらない情報収集を行う可能性についてどう考えるかという論点です。
その次の資料3-3は、検討事項の所で健康被害救済制度の審査・認定の状況を踏まえて、あり方をどう考えるのかということ。2つ目の論点は、健康被害を受けた方々の現状に鑑みて、予防接種に起因するかどうか分からない場合も含めて、接種後に症状を有する方々への医療体制や相談支援体制などのあり方をどう考えるのかということで、現状の制度をより充実させていくために、どう考えるかということかと思います。
それでは、委員の皆様から御意見、御質問等いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○中野委員 副反応の情報収集と評価ということについて、発言をさせていただきたいと思います。2013年に予防接種法が改正されて、ワクチンギャップの解消のみならず、副反応報告制度に関しても、やはり一定の充実が見られていますし、幅広く情報が得られるようになっていると思っています。ただ、アメリカが全ていいとは別に思っていませんが、これをアメリカと比較して、アメリカのVSDに当たるものが我が国にはないと思うのです。ですから、先ほど野口参考人がおっしゃられた、健康被害を接種後に受けられた方の評価に関しても、医学的評価、因果関係があるかないかというものの判断基準が、添付文書の記載や過去の事例がどうかということしか参考にすることができない。現在、使われているワクチンによってそういった有害事象が起こり得るか起こり得ないのかという科学的判断のもとにする我が国のデータが余りないように思います。ですので、アメリカで申し上げれば、シグナル察知のVAERSはかなり充実してきたのですが、VSDに相当するような当該ワクチンとの因果関係を検証できるシステムを、今回、改正予防接種施策の今後も含めての今日の会議かと思いますので、拝聴していて思いました。
アメリカのVSDは数を見ますと、国民の皆さんの半分近くをカバーしているということになるかなと思うのですが、そこまでは難しいのかもしれませんが、少数例でもいいので何らかの方法で、これは医療記録と予防接種の記録を同一に得ないといけないので難しいと思いますが、それに加えて疫学的評価と臨床的評価ができるデータが十分に得られないと、正当な評価ができないと思いますから、その観点から1つ副反応の有害事象の評価ということで何らかのシステムを、具体的なことは、私自身も頭の中で整理できていなくて申し訳ないのですが、そのように感じています。
○脇田部会長 ありがとうございます。例えば、予防接種記録と医療カルテを紐付けるような何かシステムを作るということなのでしょうか。
多屋先生、研究班でやられているので、何かコメントを頂ければと思います。
○多屋委員 今の中野委員の御意見に、私も賛成です。今後、予防接種を受けた人の記録が番号と共に紐付けられていて、その人がその後どんな症状を呈したかということが分かるような仕組みができるのがいいのではないかと思っています。
米国で言うVSDの仕組みを、もし日本に導入するとすれば、全ての人が入らなくてもいいので、予防接種後に起こる副反応疑い症状として挙げられているような病気が、比較的多く受診されるような病院を幾つかチームを組んで、その病気を起こした人がワクチンを受けているか受けていないかという情報が紐付けられれば、接種を受けた人によって起こったのか、あるいは接種を受けていない人によっても起こっているのかという結果が得られるのではないかなと思います。
そして、3、4ページ目にある制度は、2013年の予防接種法改正で大きく変わったところだと思っています。以前は、医師も届出制度が非常に複雑で、定期と任意では制度が違うし、重篤な副反応が起これば予防接種の実施要領に基づく報告と医薬品医療機器法、昔の薬事法による報告を複数届けなければいけないという、かなり煩雑な制度だったのですが、そこが一元化されてPMDAの方が集計されて、そして副反応検討部会も頻回に行われるようになったので、そこは本当に充実してきたところだと思います。さらにそれよりも毎週、異常なアラートが起こっていないかということを我々も一緒に見せていただくことができるようになっています。更にそこに、資料3-2の6ページにある、今、副反応の研究班でやっていることですが、特に重篤な1例とも言えるかと思いますが、神経系の合併症を起こした人については、報告していただいた後に判断ができるように、世界的に使われているブライトン分類などを使って判断ができるような報告書案を、研究班で神経専門の中村先生らの分担協力を得て今作っているところです。年度内に御紹介するものができればと思っています。
かなり充実してきたと思うのですが、これから足していくところとしては、そのようなことができるようになれば、より充実していくのではないかなと感じているところです。
○脇田部会長 ありがとうございます。14ページに、予防接種記録と保険診療データを連結した安全性評価というものがありますが、こちらの事業は、先ほどの予防接種の記録と診療記録を紐付けるという意味では、かなり有効なものになるとは思いますが、国民健康保険だけではなく、社会保険的なところもカバーしないと全部がカバーできてこないということになろうかと思います。
○宮入委員 今まで出てきた議論に関して、特に異論はありませんが、やはり接種記録そのものの電子化ということを早く進めていただきたいと思っています。これは近隣の諸国でも10年ほど前から導入されている国もあります。接種をしたら、すぐに全国のどの医療者でも接種記録が確認できるシステムが導入されているところもあります。我々が診療していて、例えば救急外来で何らかの症状で来られた患者さんが、実は2週間ほど前に弱毒生ワクチンを打っていたということが、後になって分かるということがあります。副反応報告の機会を逸する、あるいは遅れてしまうので、接種記録の電子化やそれに紐付けた副反応報告という形が実現すると非常によいと思います。
もう1点、NDBを用いた解析については、タイムラグがあります。データが整理されて、研究所に提供されて、それを解析するのに1年、2年という時間が掛かります。これは進めていただくと同時に、リアルタイムでそれを判断できるような制度も必要だと思います。
○脇田部会長 最初の所で、実際に診療の現場で使えるような形の接種記録を電子化して、それが診療の現場で参照できるような形を取れれば、よりいいという御意見ですね。ありがとうございます。そのほかは、いかがですか。
○釜萢委員 今の宮入委員のお話で、ちょっと伺いたいのですが、その接種記録の電子化の場合には、接種した医療機関で即座に入力をするということが必要になるわけでしょうか。
○宮入委員 海外の事例では、そのような形で入力すると、そのまま同じシステムでどこの医療機関でも確認できる形になっています。
○釜萢委員 それは大変優れているので、医療機関でそれに対応できるための準備をする必要があると思いますが、その場合に我が国での実施主体である市町村の関与は、どの辺りに出てくることがよろしいのでしょうか。
○宮入委員 そこの整理はまたこれからだとは思います。やはり実施主体が保健所、地方自治体ということになりますので、そこが軸になって管理していくのかなとは思います。
○坂元委員 川崎市の坂元です。まず医療機関から上がってきた予防接種の副作用の情報というのは、本当にタイムリーに市町村に送られてくるのですが、1つ問題点は、市町村側がその内容を正確に把握するというのは、いろいろ問題があります。必ずしも市町村の中に、その内容を見てしっかり把握できて、例えば被害者の方から連絡があったときに、コミュニケーションが成り立つかというのは、多分、市町村の内容を理解できる専門家がいるなど、そういうことにも関わってくるのではと思います。市町村によっては送られてきても、それをどうしていいかと悩んでいるところは実際はあるのではないかと思います。
○脇田部会長 ありがとうございます。この点に関しては、やはり予防接種に関する効果も、もちろん副反応のことも、より専門的な知識を持った人たちを育成をしていくということが重要かと感じているところです。どういったプログラムで、そういうことを行えるのかということは、今後、本省の担当の方とも相談しながら進めていくべきかなと思っています。
今、副反応疑い報告、資料3-2に関して主に御意見を頂いていますが、後半の健康被害救済制度、こちらも御意見いただければと思いますが、先ほど野口参考人からお話いただいたときにも大分御意見はいただいたと思いますが、更に御意見があれば。
○釜萢委員 資料3-3の21ページ、検討の2番目です。私は、ここが非常に大事だと思っています。「健康被害を受けた方々の現状に鑑みて、予防接種に起因するかどうか分からない場合も含め、接種後に症状を有する方々への医療体制や相談支援体制などのあり方をどう考えるか」ということです。もちろん相談支援体制もそうですが、そういう体調の不良を訴えて医療機関を受診された場合に、その医療機関の対応が、体調を崩しておられる方々にしっかり寄り添って、適切に対応されるという最初の段階が非常に大事だと思います。そこでボタンの掛け違いが起こると、非常にその後の対応に難渋するということがあるので、その医療機関の対応のところについて、日本医師会も予防接種後の対応についていろいろ資料も作って、医療機関に見ていただきたいと思って情報提供をしているのですが、そこがまだまだ不十分だろうと感じています。そこを何とか医療機関の対応窓口、あるいは診察をする医師が、そこのところをしっかりと踏まえた適切な対応ができるような取組が、是非求められていて、そこには更に力を入れなければいけないと思います。
○脇田部会長 そのとおりだと感じるところです。ありがとうございます。
○多屋委員 今の釜萢先生の御意見は、本当におっしゃるとおりだと思いました。そこで資料3-3の19ページに、予防接種センター機能推進事業の資料が準備されていますが、現在、予防接種センターがまだ設置されていない都道府県も半分ぐらいある状況なのかなと思います。予防接種センターが設置されている県の先生方の御意見などを頂いて、例えばこういうところが充実してくれば、相談体制などもセンターのほうで実施していけるような体制ができるのかなと思いますが、実際に予防接種センターをされている先生もいらっしゃると思うので、そういうことを充実させていくというのは今の釜萢先生の御意見にも合致するかと思いますが、いかがでしょうか。
○脇田部会長 ありがとうございます。確かにこの事業内容の所で、医療相談、医療従事者向けの研修といったことがありますので、こういったところを予防接種センターが各自治体において、機能を持って行っていくということかと思います。
この件に関してでも、それ以外でも結構ですが、いかがでしょうか。
○宮入委員 教育といった観点では、厚労省、国立国際医療研究センターと成育医療研究センター、リサーチセンターの共催で予防接種基礎講座を年に1回程度ですが開いています。今はそれを全国で普及できるようなテキストの作成、カリキュラムの作成をやっています。予防接種に関するフォーマルな教育として、BCGに関しては各自治体で個別接種を行う場合には、受講を義務化するという流れがあると思います。予防接種の実務について、医学教育の中に取り組んでいくなど、裾野を広げていく必要があるのではないかと思います。
○脇田部会長 当然、予防接種を実施する医師が、そういった教育、あるいは研修を受ける機会をより多く持てるようにしていくということが重要なところであろうかと思っています。さらにいかがでしょうか。ありがとうございました。
それでは、いろいろ御意見を頂きましたので、そこに関しては参考にさせていただいて、また議論していきたいと思っています。
次に資料3-4、3-5です。こちらは施策の立案に関わる調査、造血幹細胞移植後の接種ということで、こちらも事務局から説明をしていただきます。お願いいたします。
○田村予防接種室長補佐 資料の説明をさせていただきます。資料3-4を御覧ください。こちらは施策の立案に関わる調査についてということで、各種の調査について資料を用意させていただいております。
2ページですが、調査に関する予防接種法あるいは基本計画に関する記載をこちらにまとめております。3ページを御覧いただきますと、予防接種に関係する調査等の概要ということで、薬事承認前、薬事承認後、定期接種化前、定期接種化後に、各種調査でどういった情報が得られるのかを一覧にしております。疾病負荷等、ワクチンの接種状況、あるいはワクチンの有効性・安全性等、その他諸々の所から取られる情報ということで、概略を分けてあります。
4ページです。国立感染症研究所・地方衛生研究所についてということで、特に感染症の発生動向調査や感染症流行予測調査等については、国及び自治体のほか、感染研あるいは地衛研の協力の下、実施されており、これらの概要についてここに記載をしております。
5ページです。そうした各調査の概要について説明させていただきます。疾病負荷等に係る調査➀ということで、感染症の発生動向調査の概要をここに記しております。感染症法の第12条から第16条の規定に基づいて、病原体の検出報告と患者の発生報告の両方を調査している調査になります。
6ページを見ていただきますと更にもう少し詳しく書いてありますが、患者発生サーベイランスということで、全数届出になっている87疾患と、定点の報告になっている26疾患があります。また、病原体サーベイランスとして、必要に応じて病原体の検査のための検体及び病原体情報について提供依頼を行う疫学調査と、定点把握の疾病ということで、患者定点として選定された医療機関から病原体を採取して、地衛研で検査を行っていただくもの、これら2種類が病原体サーベイランスにもあります。全体のサーベイランス体制としては、右下の図に示してある形になっております。
7ページですが、こちらは感染症流行予測調査の概要をまとめております。こちらは予防接種法の第23条の規定をもとに実施されているもので、感受性調査と感染源調査とその他疫学調査ということで大きく区分けされていて、毎年実施されております。こちらも右下の図に示してあるとおり、厚労省、国立感染症研究所、都道府県衛研と調査対象者の協力の下に実施されております。
8ページは、こういった調査の活用例です。こちらは風しんの定期接種化の事例ですが、感染症発生動向調査と流行予測調査を用いつつ、どの年代で感染症の患者の発生が多く、どの年代の抗体免疫保有率が低いか、そういったことを踏まえながら対象の選定を行って、定期接種として追加的に実施したといった事例を紹介しております。
9ページです。こちらも調査の活用例ということで、麻しんウイルスの遺伝子型の解析ですが、医療機関に病原体検査のための検体と病原体情報を送っていただき、地衛研で検査を行い解析したものです。こういったものを踏まえて、各種報告等を行っているといった活用事例を報告させていただいております。
10ページです。そういった疾病等の状況に続いて、こちらはワクチンの接種状況に関する調査です。接種状況については、市町村において予防接種台帳で管理するとともに、地域保・健健康増進事業により、国に総接種回数が報告されて、表のような形になっているのが現状です。
11ページです。こちらは簡略ですが、ワクチンの有効性・安全性については、臨床試験等治験では、非臨床試験、臨床試験、それから製造販売後調査、これは1事例ですが、こういった形で有効性・安性に関する情報は収集されております。
12ページです。こちらのワクチンについては、先ほど副反応報告制度のときに御紹介させていただいた資料と同じです。特に安全性に関する調査では、副反応疑い報告に関する制度があります。また、13ページを見ていただくと、こちらも先ほどと一緒ですが、予防接種後の健康状況調査で、こちらもまた安全性等に関する調査ということで紹介させていただいております。
14ページです。こういった調査を活用しつつ、ワクチンの定期接種化までのプロセスの全体像を議論していくことになっていますが、現在、主に予防接種法の対象疾病に加えられておらず、新たに薬事承認されるワクチンを前提に、薬事承認後に定期接種化のために必要な情報の収集及び検討を始めるのが、いちばん一般的にイメージされているプロセスになっているかと思います。
具体的には、15ページを見ていただきますと、各部会あるいはワクチン評価に関する小委員会で、このような手順を踏んで定期接種化に関する検討のプロセスを経て議論をしていっているのが現状です。
16ページを見ていただきますと、各種調査等によって収集可能なデータということで表にしております。実際、対象疾病に関する予防接種法上の取扱い、あるいはワクチンの薬事承認の状況等によって、定期接種化等の検討に当たってあらかじめ収集可能なデータは、ある程度パターンによって少し変わってくるのだろうと、どの時点でどういったデータがあるのかをなるべく簡便に一覧にしたものです。
17ページです。現在、定期接種化を検討中のワクチンの論点ということです。新たな対象疾病に関する検討をしているワクチンである、おたふくかぜワクチンと帯状疱疹ワクチン、また、既に対象疾病となっている疾患についての接種回数や年齢、接種するワクチンの種類に関する検討を行っているものとして、不活化ポリオワクチン、PCV13、あるいは百日せきワクチン、こういったものがあるということで御紹介させていただいております。
こういった全体を踏まえて、18ページです。検討する論点としては、予防接種施策の推進に必要な科学的データの収集に関する各種調査の実施状況等を踏まえ、その実施体制や活用の在り方について、どのように考えるか、また、定期接種への導入を検討するための科学的データの収集について、より迅速に実施していくための方法について、どのように考えるのか、論点を2つ御用意させていただいております。
資料3-5ですが、造血幹細胞移植後の接種についてということで、資料を御用意させていただいております。1ページを御覧いただきますと、造血幹細胞移植に関する概要を分かりやすくまとめた資料になっております。
2ページを見ていただきますと、こうした造血幹細胞移植が患者に与える副次的な影響ということで、造血幹細胞移植を受けると、患者の体内にあった血液細胞が消失して、免疫力を持っていない状態になってしまうと。こういった免疫状態では、予防接種で新たに再度、免疫を付与してあげないと、感染のリスクが高い状態が継続しますということを説明している資料になっております。
3ページを御覧いただきますと、造血幹細胞移植後のワクチンの接種の時期、スケジュール、こういったものをガイドラインで学会から示されていて、推奨されているといったものです。
4ページは、こういった造血幹細胞移植後の予防接種に関してですが、平成28年の地方分権改革に係る提案募集で、複数の自治体から定期接種として扱ってほしいとの提案がなされました。そういった提案に対して、医療行為による免疫を失った場合の再接種の支援を実施している自治体の例を周知すること、ということで対応方針が閣議決定されて、周知を継続的に行っているのが現状です。
5ページを見ていただきますと、骨髄移植等の医療行為により免疫を消失された方への支援状況で、各市町村の現状をまとめております。現状を申し上げますと、こういった方々に対する再接種に対して、何らかの助成事業を行っている自治体が89自治体で、全体の5%強になります。また、現在実施していない自治体のうち今後助助成事業を実施予定としているのが83自治体で5%、また、実施を検討しているのが283自治体で、全体の14.4%だったという調査結果となっております。
6ページについては、同じ調査結果をグラフで表したものになっております。
7ページは、これまでの造血幹細胞移植後の接種に関する御意見をまとめております。定期接種化を進めるべきとの御意見として、こういった接種については定期接種化すべきではないかという強い意見を持っている市町村もありますし、個人的にもそうすべきではないかと思っていますという御意見を頂いております。他方、定期接種化に課題があるとの御意見も頂いており、こういった接種については治療の一環ではないかという意見、また、必ずしも骨髄移植でなくても免疫が落ちてしまう場合もあり、疾病による状況等もあるので、その辺の整理をどのように線引きするのかという課題があるのではないかという御指摘を頂いております。また、このケースだけを特に取り上げるということの合理的な説明ができないといけないのだろうと。平等原則という観点から、そこは避けて通れない論点ではないかと法律の点から考えられるという意見も頂いております。
8ページで、こういった免疫獲得状況に影響する因子ということで図にまとめておりますが、免疫を有さない原因が幾つかあると推察される中、例えば➀定期接種を受けなかったために免疫を有していない者、➁定期接種を受けたけれども免疫を獲得できなかった者、➂➃では、定期接種を受けたけれども自然に免疫が失われた者、あるいは何らかの外的要因により失った者、➄現在では定期接種の対象になっているけれども、過去対象になっていなかった者で免疫を有していないと。こういった幾つかの要因で免疫を有していない方がいるのだろうというのを表しています。
9ページです。それら5つを例示したうち、特に何らかの外的要因により免疫が喪失又は低下する場合として、今回特に議論している造血幹細胞移植後の免疫状態についてということで、1つまとめています。それ以外の要因で、例えば化学療法、あるいは臓器移植、又はその他免疫抑制剤等の使用により免疫が低下するといった方々も見られるのではないかということで、資料にまとめています。
10ページです。こういったことについて、現行の予防接種法の考え方との関係で3つ視点が考えられるのではないかということで、視点を示しています。➀として、造血幹細胞移植後の接種は、まん延予防というより個人の感染予防の観点が強いと考えられることから、まん延予防を目的とする予防接種法との関係をどのように考えるのか。また、A類疾病の定期接種は対象者に努力義務が掛かるが、この点についてどう考えるのか。
➁として、一度定期接種を受けた者が免疫が十分でない場合の再接種は、予防接種法上想定されておらず、この点についてどのように考えるのか、また、造血幹細胞移植後の患者も含め免疫の獲得状況は様々であることから、こういった免疫が不十分な方への接種の在り方についてどう考えるのか。最後のものとして、➂定期接種が感染症に罹患しやすい年齢等を踏まえて接種年齢等を定めていることとの関係をどのように考えるのか。こういった3つの視点を踏まえつつ検討していく必要があるのではないかということで、10ページに記載しております。
最後、11ページで、こういったことを踏まえて検討すべき論点です。造血幹細胞移植後の接種について、今申し上げた視点も含め、接種の在り方、支援の在り方について、どのように考えるのかということで、論点を出させていただいております。以上です。
○脇田部会長 資料3-4と資料3-5、3-4は施策の立案に係る調査、3-5は造血幹細胞移植後のワクチン接種ということで違う内容なのですが、まとめて議論をしましょうということですので、よろしくお願いいたします。まず資料3-4からいきますが、様々な調査がなされています。まず疾病負荷の調査、感染症発生動向調査、流行予測調査です。さらに、ワクチンの有効性・安全性に関する調査、これは副反応疑い報告とか、接種後健康状況調査等があるというところです。論点的には、このようなデータの収集に関する各種調査の実施状況を踏まえて、その実施体制や活用の在り方をどう考えるか、2番目として、定期接種への導入を検討するための科学的データの収集について、より迅速に実施していくための方法についてどのように考えるかということです。
多分、2番目の論点のほうがより大きくて、14、15ページですかね、ワクチン定期接種化の検討プロセスの所で、薬事承認後にしか定期接種化のために必要な情報の収集及び検討のプロセスが始まらないというところを、もっと加速して広く情報を収集できないかを検討できないかということかと思います。まず最初の資料3-4のほうで、委員の皆様から御意見を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。多屋委員、お願いいたします。
○多屋委員 資料3-4の17ページに、定期接種化を検討中のワクチンの論点というスライドを準備していただいているのですが、今は定期接種化になるということが決まってから、発生動向調査のやり方を変えたりしていることが多いです。現在ここに挙げている帯状疱疹ワクチン等も定期接種化が検討されているのですが、帯状疱疹の疾病負荷については、国としてのサーベイランスは行われていないので、これも定期接種化すると決まってから集めるのでは遅いのではないかと思うことと、百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン、一番下ですけれども、百日せきワクチンの追加をどうするかということを考えようということで、いろいろな議論があって全数になりました。今、既に2年たって随分情報も集まってきていますが、定期接種化すると決まるよりもうちょっと早めから疾病負荷を調査できるようなサーベイランス体制を組んでいくというのも大事ではないかなと思います。我々にも降りかかってはくるのですが、大事ではないかなと感じています。
○脇田部会長 お仕事が増えてくるということでありますが、大事な所ですよね。感染症流行予測調査を早めに始めて、免疫の状況などをきちんと調べていくことがやはり重要かということだと思います。
○野口参考人 被害者の立場で今の御意見に賛成です。感染症流行予測調査、それから1番の発生動向調査は、やはりこれをやることによって、その感染が大規模に発生していない地域であれば、分かりやすい例でいくとインフルエンザですが、場合によっては予防接種を打たない場合というのもあると思うのです。それは、ひいては一人一人に合った予防接種の打ち方というものが、もしかしたらそういう可能性というのが開けていくのではないかと。予測が非常にない地域で、無理して予防接種を打つ必要性がないということが科学的に証明されれば、それはそれで副反応のリスクを減らすようにデータを活用するというやり方もあるのではないかと思います。
○脇田部会長 ありがとうございます。今の野口参考人の意見は、定期接種化に向けるだけではなくて、逆にそういった情報をワクチンを個人として取捨選択できるような情報として利用できないかと、そういう御意見だったかと思います。それはもちろん使えると思うのですが、今の論点からいくと、むしろ定期接種化に向けて調査をより早く始められないかというような話になっているわけで、調査が地域ごとにより詳細にされていくことによって、そういったことにも使われていく可能性は出てくるかなと思います。
そのほか、いかがでしょうか。施策の立案に係る各種調査ということですが、データを収集していくことは非常に重要で、定期接種化に向けて、調査についてもより迅速にと書いてありますけれども、早く始めていくことが必要だという論点で、多屋先生からも御意見がありましたから、そういったところでよろしいでしょうか。
それから、2番目の資料3-5で、造血幹細胞移植後に免疫が失われて、その後のワクチン接種への支援をどう考えていくかということですが、なかなか難しいところはありますよね。集団予防の目的ではなくて、個人予防の目的になっていくわけですから、そこをどう考えるかということです。造血幹細胞移植だけではなくて、そのほかにも免疫を失う人は多くいるわけで、その人たちとの違いをどう考えていくかということになるので、その辺りの考え方の御意見を頂ければいいかなと思います。
○伊藤委員 閣議決定に物申すのですが、前から主張させていただいているように、造血幹細胞移植とか、こういう個人としてワクチンを打つほうが望ましいのか望ましくないのかという個別の議論がたくさんある方に対して、予防接種というある程度集団を対象にするような作法を適応するのは、どんなものかなという気がするのです。
それよりは、厚生労働省は嫌いますが、保険診療の中に予防接種も入れてしまう。だから、医師がこの人は必要だと思ったら打てると。その費用負担に関しては、前に研究開発及び生産・流通部会でも話が出ましたが、例えば税政上の免除をするとか、若しくは補填上、診療報酬の中で100%補填するとか、それをすることによって、市町村がやられているいつ来るか分からない人のための準備の費用から考えれば、そちらのほうがコストエフェクティブではないかとも考えますので、どこかでそういった議論をしたほうがいいのではないかと。予防と治療に関して極端な線引きをするよりは、こういう実利的に一番得られそうな所から考えていく、線引きを少し緩くしていくことも考えてもいいのではないかと思います。
○坂元委員 川崎市では、昨年4月から造血幹細胞移植とか骨髄移植を受けた人に、いわゆる全額補助という形で予防接種の補助制度を開始いたしました。確か以前の基本方針部会で骨髄移植に補助すると言ったら、この疾病は補助対象でこの疾病は駄目とかだと、そこは公平性に欠けるのではないかという意見が出されました。そこで川崎市としては、医師が認める場合というようにして、医師が疾病への免疫が十分ではないと、つまり予防接種によって得た免疫が消えてしまって予防接種をもう一回やらないといけないと医師が判断したケースは全部認めるという方法で開始いたしました。昨年4月1日から開始して、疾病が特殊な場合があるので、個人情報に触れてしまうので詳細は言えないのですが、現在までに10件の問合せがあって、7件は支出を決定いたしました。
内容を見てみると、骨髄移植というよりは小児腫瘍後の治療に基づくという場合の申請が多くて、造血器の腫瘍だけではなくて固形腫瘍も含まれるという形で、内容がかなり多様性に富んでいるなと思っております。10件申請が来て、3件支払わないということではなくて、まだ医師から詳細な申請が上がってきていないという形で、今のところ来た申請をお断りしたケースはないということです。御存じのように、川崎市は若年人口の比率が最も多い都市で、最初はもっと来るのかなと思ったところ、まだ1年はたっていませんが、現段階ではこれぐらいの数という形です。
では、周知はどうなのだということなのですが、意外とかなり周知されているようで、川崎市の病院に限っていなくて、例えば東京都の病院で治療を受けても川崎市に住民票がある方であれば受けられます。ただし、年齢制限として、二十歳までという形で今のところは実施させていただいています。伊藤先生がおっしゃったように、定期以外は医療でやってもいいのではないかという意見もあったということは、付け加えさせていただきたいと思います。以上です。
○脇田部会長 ありがとうございます。今、川崎市で実施されている内容について御紹介していただきました。医師が診察をして判断するわけですから、ある意味これは医療行為として考えたほうがいい部分は、確かにあるだろうというところです。ただ一方で、予防のための定期接種を含めて、ワクチン接種と診療治療というところの線引きが今明確になっているわけですが、そこをある程度、治療に入るものは治療に持っていってもいいのではないかという意見もあるということだと考えます。そこは更に議論を重ねていく必要があろうかと思います。更に御意見があればお願いいたします。
○宮入委員 成育医療研究センターという小児の難病を扱っている病院で患者さんを多数診ていると、造血幹細胞移植を受けた方、あるいは固形臓器の移植を受けた方、化学療法を受けた方等様々な免疫抑制状態にある患者さんがおられます。特に骨髄移植を受けられた患者さんは、一から接種し直すことで合計で15万円から20万円の出費になり、これは非常に大きなハードルになります。現場の者としては、費用負担が保険でも予防接種法の下でも患者負担が軽減されて推進されれば結果としては良いと思っています。ただし保険診療に持っていくというプロセスは、時間が掛かるのではないかと予想しています。
現行の制度の下で一つずつ進めるという考えがあるのであれば、現在も長期療養特例で、予防接種機会を病気のために逸した患者さんについては、それが免疫状態が回復してから2年は定期接種として接種が可能となっています。ただ、今まで受けたワクチンについてはそこは除外してという形になると、再接種が必要な患者さんについては補償されないことになります。様々な免疫不全の患者さんがいるという中で、骨髄移植に関しては、それまで持っていた免疫機能が全てなくなり、ゼロからのスタートという観点で他の疾患と切り分けることはできるのではないかと思います。
ほかの免疫抑制状態にあるような患者さんについては、それまでに打ったことのある不活化ワクチンについては、再接種することは一部の例外を除いて基本的にはありません。また、弱毒生ワクチンに関しても、免疫抑制状態にある場合には禁忌になり、接種不能という立て付けになります。現行の制度の下で推進していくために、長期療養特例等を改変して、そこで進めていくことはできないかと個人的には思っております。
○脇田部会長 ありがとうございます。現場ではそういった不利益というか、免疫がゼロになることによって、これまで持っていた各種ワクチンによる免疫反応を失ってしまうということを再構築するためのコストが掛かっているわけで、それをある程度何らかの方法で補填というか、補償というか、そういったことはできないかという観点があるということだと思います。
○中野委員 今まで御意見を述べられた3名の先生方と、大きな意見の違いはありません。1つは、費用の負担も含めた接種機会の確保という観点からは、彼らにも当然予防の機会は与えてあげたいので、それに関しては諸手を挙げて賛成です。1つ気になるのは、やはり副反応、有害事象対策です。生ワクチンを免疫不全宿主に接種した場合、一定の頻度で、全く健康な方よりは副反応の頻度が高いことは事実だと思います。今日も定期接種に関して、副反応健康被害でこれだけいろいろな議論があって、なかなか1つのゴールまで達することができないというところがあるかなと思います。
現場で接種をしておりますと、細かい事情を申し上げれば、成育医療センターのように血液疾患、骨髄移植を診ている医療機関と予防接種をやっている機関が同一の所もあれば、かなり離れた所もあります。また、地方に住んでいらっしゃる方でそういう病気をお持ちの方もいらっしゃるのです。本当に重篤な副反応被害だけではなくて、打った方々には、その夜熱が出ても違う症状が出ても、先ほど釜萢先生が最初のボタンの掛け違いということをおっしゃいましたが、そのときにどれだけ適切な対応ができるかということも、広い意味で予防接種を有効に安全に実施するためには大切なことだと思いますので、接種機会の確保という観点は諸手を挙げて賛成なのですが、定期接種にどうするかとか、そこはかなり議論を成熟させないといけないと思っています。
○脇田部会長 ありがとうございます。
○川俣委員 地方の弱小の市町村からすると、実はこれをやることによって、すごく財政に響くわけです。伊藤委員がおっしゃってくれたように、国できちんと予防も医療だとやってくださると一番楽ですが、そうではないので、今、実は地方自治体は競争になっています。この予防接種に補助を出すか出さないか、あそこなら出してくれるのだからというので、子育ての環境の良さの指標になってしまったりしているのは、本当は違うことだと思うのです。同じ国に生まれ、地域によって差が出ているということは。ですから、免疫がなくなったからといって、やれるかどうかと言われたら、川崎で10件しかないので、うちのほうでは何年かに1件しか出ないのかなとは思いますが、その予算を取っておくかとなると、15万円ぐらいで済むなら毎年キープしていても何とかなる金額ですけれども、それが増えたり、あと予防接種では今回のも、実際に私はこういう役員になったので、4月からロタを受けさせようと、その分は補助を出すことを決めましたが、そうすると、職員の中でもなぜ出すのだと。国が10月から出すのだったら4月からやめろとかというのも、財政からすれば出てきます。でも、同級生が皆受けているなら、なるべく同級生から受けさせようという発想で、実は昨日それでもめて、やっと認めてもらえました。そういうのもあるのです。大きい市町村とはちょっと違うのもあるので、できたらレールが一緒になることが同じ日本国民として生まれた条件なのかなと。そうなれば副反応が出たときの対応も同じだと思うのですが、ある地方では打たせて、こちらの地方ではなっていなかったとなると、任意で受けた人が補償をもらえるのかとか、市はやっている所だから補償するのかとか、いろいろな話が出てきてしまうと思います。
その辺の区切りがもうちょっと、本当に打っていいのだというのが、任意と任意ではないというので市町村によって差があるのは、ちょっとどうにかできないのかなというのが私の中であります。自分でも認めてあげて、やってもしも副反応が出た場合、うちの市だけがやったと言ったら報告してもちゃんと通るのかは大きな問題なので、その辺の協議は、同じように副反応が出た場合に対応できるかと言われたら、国がやってくれるという確証があるときとは違うと思います。やってあげたいのは山々ですが、なかなかその辺が地方には難しいところがあるので、御協議いただけると有り難いと思います。伊藤先生、ありがとうございます。
○坂元委員 今、川俣委員がおっしゃった副作用の問題は、実はこれをやるときに、それが1つの大きな懸案になりました。予防接種法ではないので、予防接種法の副作用救済と医薬品等の副作用救済では、補償の費用の額が異なるというところが1つの課題となりました。今でも実はそれは課題なのですが、そこは我々としては、まず申請されてきた主治医の先生と、受けたいと希望される方とが十分話し合っていただき、制度の内容もちゃんと理解していただきたいということは、しっかりお願いしております。さらに、例えば腫瘍の治療をされた先生と接種をする先生が別の場合があるというところも含めて、そこはしっかりネットワークを作っていただいて、十分話し合った上で受けていただきたいということは、やはり副作用という懸念があることと、免疫を一切なくした人が受けた場合の接種後の問題等が十分学問的にもまだ集積されていないという段階において、我々も十分に注意して、受ける方に主治医を介して説明しているところです。できればそれは国でやっていただければと思います。
川崎市だけの事情を言うと、川崎市は地方交付税不交付団体なので、国が実施してもうちにはお金が来ないので、どのみち川崎市が自腹で払うという形にはなっておりますので、そこのところは若干違いがあるかなと思っています。以上です。
○脇田部会長 まだ意見はあるかと思いますが、池田先生、最後の御意見をお願いいたします。
○池田委員 私個人の考えとしては、骨髄移植等の医療行為と関連して必要となる接種になりますので、本来は医療保険で一連の治療の一環として支払うのがいいのかなと個人的には思っています。ただ、そのように持っていくにはいろいろな議論とか、もちろん調整が必要なのは分かっております。
1つ質問は、助成事業ありの自治体というのが極めて少ない、5%程度ということですが、これは財政的なこと、つまり、大きな自治体等では助成事業というのは経済的にやれるのだけれども、小さい所はできないというようなお金の問題でこういう差が出ているのか、それとも今御指摘がいろいろありましたような副反応、そういったことへの対応なのか。副反応に対する対応が十分にできないとか、あるいはこの自治体だとできると、そういう地域的な格差があるというのは大きな問題だと思うのですが、助成事業ありの所は財政的に余裕がある、あるいは大きな自治体が中心になっているのか、なぜ助成事業をしない自治体があるのか、その辺りについて何か調査結果というのはあるのでしょうか。
○脇田部会長 事務局、いかがですか。
○田村予防接種室長補佐 すみません、どういった自治体であったのかすぐには確認ができないので、今すぐに回答というのはちょっと難しいです。申し訳ありません。
○脇田部会長 それでは、その理由を調べていただきたい、お願いしたいと思います。様々な御意見をありがとうございました。資料3-4は御意見が大体一致したと思いますが、造血幹細胞移植のほうは、意見が様々でして、なかなかまとまらないところではないかなと思います。中野委員がおっしゃったように、やはり議論の成熟が必要だというところですので、今後もここは議論のポイントになってくるかなと思います。
以上で予防接種施策の見直しに関する議論を終了いたしますが、昨年から見直しに向けた提言をまとめることを目指して議論を行ってきたわけです。引き続き、この部会で議論を進めていきたいと考えておりますが、これまでの御意見、ヒアリングで様々な参考人の方々から頂いた御意見等がございますので、そういったところの論点を整理して、更に詳細な検討を行って提言をまとめていくことを、この部会としては目指していきたいと考えておりますので、引き続き、よろしくお願いいたします。少し時間が延びましたが、以上です。そのほか、事務局から何かございますか。
○元村予防接種室長補佐 本日は長時間にわたり、また遅い時間からの開催となりましたが、御議論いただきありがとうございました。次回の開催については、おって御連絡させていただきます。以上です。
○脇田部会長 それでは、本日の会議はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。