難病に関するゲノム医療の推進に関する検討会(第1回)議事録

日時

令和元年10月8日(火)9:00~11:00

場所

TKP新橋カンファレンスセンターホール15A(15階)

議事録

 
○南川難病対策課長補佐 それでは、定刻となりましたので、第1回「難病に関するゲノム医療の推進に関する検討会」を開催させていただきます。
構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。
また、本日は参考人として、東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑形質ゲノム解析分野教授の鎌谷洋一郎先生、慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター教授の小崎健次郎先生、東京大学大学院医学系研究科分子神経学特任教授の辻省次先生、横浜市立大学大学院医学研究科遺伝学教授の松本直道先生の4名の方に御出席いただいております。
続きまして、宮嵜健康局長より御挨拶申し上げます。
○宮嵜健康局長 おはようございます。構成員の先生方には、朝早くからお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
また、日ごろより、難病対策を初め、健康行政全般にわたりまして、御支援、御指導を賜っておりますことを厚く御礼申し上げる次第でございます。
さて、難病患者さんの方々に対し、良質かつ適切な医療を提供するためには、より早期に正しい診断ができる体制を実現することや、治療方法の開豁を推進することが急務であり、遺伝学的検査の実施体制の整備や全ゲノム情報の活用等が重要であると考えております。
本年6月に閣議決定されました成長戦略実行計画等では、国は難病等のゲノム医療を推進するため、これまでの取り組みと課題を整理した上で、数値目標や人材育成、体制整備を含めた具体的な実行計画を2019年中、本年中を目途に策定するとされたところでございます。
これを受けまして、実行計画の策定に向けて、専門的な観点から御意見、御議論をいただくために、このたび、難病に関するゲノム医療の推進に関する検討会を立ち上げることとした次第でございます。構成員の皆様方におかれましては、実行計画の策定に向け、それぞれ御専門の立場から、全ゲノム解析等の対象疾患や症例数に関する数値目標の考え方、全ゲノム解析等に必要な体制整備、全ゲノム解析等にかかる人材育成などに関しまして、ぜひ忌憚のない御意見をいただければと思っております。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
○南川難病対策課長補佐 カメラの撮影はここまでとさせていただきます。
宮嵜健康局長につきましては、公務のため、後ほど退席とさせていただきます。
傍聴される皆様におかれましては、傍聴時の注意事項の遵守をよろしくお願いします。
まず、本検討会の座長でございますが、開催要綱において構成員の中から、厚生労働省健康局長が指名するとされておりますところ、健康局長の指名により水澤構成員に座長をお願いしております。よろしくお願いします。
続きまして、今回、本ワーキングの初回となりますので、議事に先立ち、皆様から自己紹介を兼ねて簡単な御挨拶をいただければと思います。
それでは、鎌谷参考人から森構成員まで、1人ずつ自己紹介をお願いしたいと思います。
鎌谷参考人、よろしくお願いします。
○鎌谷参考人 東京大学の鎌谷でございます。
本日、このような会議に出席させていただきまして、大変光栄に思っております。
もともと私は単因子疾患の解析、単因子形質を主にやっておりました。中でも非常にありふれたコモンディジーズが多かったので、今回の難病の会議に当たりましては、どちらかというと中立な意見を述べるように期待されているのかなと思っておりますので、そのように努力したいと考えております。
また、同時に難病プラットフォームのほうにもかかわらせていただいておりまして、こちらは病気の研究をするというよりは、プラットフォームの成立に努力させていただいております。そういったわけで全くの素人ではないというところで、よろしくお願いいたします。
○神里構成員 東京大学医科学研究所の神里彩子と申します。
専門は生命倫理に関する研究を行っております。研究、医療が適切に推進できるように、倫理面のほうから何か意見を言うことができたらと思っております。よろしくお願いいたします。
○菅野構成員 東京医科歯科大学難治疾患研究所の菅野と申します。
日本学術会議のほうのゲノム科学委員会等で辻先生や松本先生と一緒に、ことしの7月、ゲノム医療推進のための提言をまとめさせていただきました。そういう関係でこちらに招かれたかなと考えております。
難病の克服に向けて、ゲノムでどういうことができるか一緒に考えていければと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○松原構成員 国立成育医療研究センター研究所長の松原でございます。
私自身は希少遺伝性疾患、非常に数が少ない珍しい遺伝性疾患の診療、研究、それに伴う遺伝カウンセリングなど、40年ほど携わってまいりました。この会議で、特に希少遺伝性疾患に対する患者さんへ還元できるような、さまざまな研究成果あるいは臨床実装が一層推進されることを願っております。どうぞよろしくお願いします。
○水澤座長 ただいま座長を拝命いたしました、国立精神・神経医療研究センター理事長の水澤と申します。
私は神経内科医でありまして、ずっと難病等を扱ってまいりました。今はIRUDの研究代表者ということで、きょうもここに関係者の方がたくさんおられますけれども、この検討会でも少しでもお役に立てばと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○三津家構成員 日本製薬工業協会の副会長をしております三津家と申します。よろしくお願いいたします。
出ている会社は田辺三菱製薬というところで、私ども製薬会社では、最近、がんと難病ということに対して、どういうふうに患者さんに新しい治療法を届けることができるかと一生懸命考えているわけでございます。一方で、さまざまなキャッチーな問題といいますか、慎重に扱わなければいけない問題があるとも了解しております。皆さんと知恵を出し合いながら、今回の検討会が少しでもよい方向に向かうように頑張りたいと思います。よろしくお願いします。
○森構成員 おはようございます。日本難病疾病団体協議会代表理事の森幸子と申します。
私自身も指定難病の一人です。今、難病法のほうでも、医療提供体制の中でいち早く診断がつくようにといった体制を組まれておりますけれども、私自身も、症状を抱えながらも何年も診断がつかず、重症となり、また障害まで抱えてしまった患者の一人です。
今、ようやく患者会のほうでも、ゲノム医療について関心が高まってきました。この検討会でも、これからますます注目されるところだと思います。
一つまた先生方にお願いしたいのが、患者の協力がないとこれもなかなか進みませんので、この検討会の中でも、どうか患者にわかりやすい言葉で御説明、討議いただきますようにお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○南川難病対策課長補佐 ありがとうございました。
以下の議事進行については、水澤座長にお願いします。
○水澤座長 それでは、本日の検討会では、厚生労働省が取り組んでいる会議のペーパーレス化の一貫として、皆さんの卓上にタブレットがあると思います。それを使用いたしますので、まずこの使用方法について解説をお願いいたします。
○南川難病対策課長補佐 本日の検討会ですが、タブレットを使用し、議事を進行させていただきます。簡単ですが、使用方法を御説明いたします。
タブレットの画面上に資料一覧が表示されています。資料のタイトルをタップしていただきますと、本体資料が表示されます。2本指で広げたり、狭めたりすることで、資料の拡大、縮小が可能です。ページをめくる際には、画面に指を置き、上下に動かしていただければ、1ページずつめくることが可能です。
また、資料全体を閲覧した場合には、机上配付の操作資料の記載にあるとおり、画面の左下のマークをタップしていただき、ファイル、印刷に注釈をつけるをタップしていただきますと、画面の下部に全ページの画像が小さく表示されますので、こちらで指を左右に動かしていただきますと、閲覧したいページを選択して、ページを表示することができます。
お手元に操作説明書をお配りしていますので、そちらもごらんいただきながら、もし御不明点や機器のふぐあい等がありましたら、遠慮なく挙手をお願いします。会議の途中でも、事務局が個別に御説明いたします。
なお、タブレットに関しては、会議終了後回収いたしますので、持ち帰らず、机の上に置いたままにしていただきますよう、お願いいたします。
事務局からの説明は以上です。
○水澤座長 ありがとうございました。
それでは、議事に移りたいと思います。
本日は議事が3つございます。1つ目の議事は「本検討会について」であります。本検討会の設置の経緯、前提等について、事務局から御説明をお願いいたします。
2つ目の議事は「関係者からヒアリング」でございます。先ほど事務局から御紹介いただいた3名の方からそれぞれプレゼンテーションをいただきます。
3つ目の議事が「難病に関する実行計画の策定に向けた検討」ということでありまして、事務局の資料及び関係者からのヒアリングの内容を踏まえて、議論をしていただきたいと思っております。
早速、議事「(1)本検討会について」に入りたいと思いますので、事務局からこれまでの経緯等について御説明をお願いいたします。
○南川難病対策課長補佐 それでは、資料1及び2を説明させていただきます。かなりざっくりと御説明させていただきます。
まず、資料1を御確認ください。本検討会の開催要綱になります。目的については、後ほどの資料2でも御説明しますが、成長戦略等の中で、実行計画についての策定が記載されているため、それに関する検討事項として今回の検討会をやらせていただく予定です。
「2.実施項目」にマル1からマル4を書いてありますが、マル4に、難病に関するゲノム医療の推進に関し必要な事項についてとありますとおり、全体的なゲノム医療の推進に関し必要な事項の中で、特にマル1からマル3に書いてある全ゲノム解析等の数値目標や体制整備、人材育成についてこの検討会の検討事項とさせていただいております。
資料2、1ページ目から2ページ目をそのままスライドしていただいて、3ページ目を御確認ください。今回の全ゲノム解析の実行計画の策定についてという資料ですが、まず、ブルーの部分の赤字ですけれども、難病等については、より早期の診断の実現に向けた遺伝子学的検査の実施体制の整備や、遺伝子治療を含む全ゲノム情報等を活用した治療法の開発を推進する。このため、10万人の全ゲノム検査を実施し、今後100万人の検査を目指す英国等を参考にしつつ、これまでの取り組みと課題を整理した上で、数値目標や人材育成・体制整備を含めた具体的な実行計画を、2019年度中をめどに策定すると書いてありますが、これを受けた検討を今後していただければと思います。
経済財政運営と改革の基本方針にも同様の記載がありますので、御確認いただければと思います。
続きまして、4ページ目を飛ばしていただきまして、5ページ目を御確認ください。英国等の取り組みについて簡単に御説明させていただきます。英国等については、10万ゲノムプロジェクトという形で、10万献体を解析するというプロジェクトが2012年に、当時の首相の宣言により始まりました。上の囲みを見ていただければと思いますが、その内訳としましては、基本的にがんと難病半分ずつで5万献体、5万献体で、難病患者さんについては約1.7万人と、1人の患者さんに対してさらに親戚が2人必要だということで、合わせて5万献体という形でプロジェクトそのものは始まっております。
下の経緯表ですが、2012年の首相の宣言から2013年度にGenomics Englandという核となる組織が立ち上がり、2014年にリクルートの拠点となるような11カ所の医療センターが設置され、ここから患者のリクルートが開始されました。2015年に研究者の利活用をするためのプラットフォームであるGeCIP reseach platformが設置され、2016年に患者さん、特に参加者が主に運営団体にアドバイスするボードが立ち上がり、2017年には産業界との連携のためのDiscovery Forumが立ち上がっております。5年たって2018年12月に、10万の全ゲノム解析が完了しましたという公表があったところです。
続きまして、6ページ目、今回のGenomics Englandについては4つの目的なのですけれども、主にpatients、学術、産業界みんながベネフィットになるもの。
そして、2にあるとおり、倫理的透明性を持った、患者の同意を持ったプログラムを推進していくということがGenomics Englandの大きな4つの目的でして、特に最初のフォーカスとしては、希少疾病、がんを対象にしているということになります。
7ページ目、現在はサンプル数として、これはことし5月にゲノム解析センターのヘッドが提示している資料ですけれども、12万のサンプルが集まっていて、10万のゲノムが既にシークエンスをされていて、右にあるとおり7万6000が解析されて、NHSの医療センターに返されている。リサーチの部分においても、一定程度活用されているという資料が7ページに書いてあります。
8ページ目、基本的にリクルートの拠点となるGenomics Medicine Centresというのがイギリスの中に13拠点ございまして、ここで患者さんのサンプルとインフォームド・コンセントをとった上でサンプルと臨床情報等をGenomics Englandに送りつつ、最終的には分析したものをさらに患者さんに返しているという形のプロジェクトになっております。
9ページ目、さらに具体的な流れとしましては、真ん中にGenomics Englandがございまして、青くブルーになっているのが、どちらかというとクリニカルな観点、臨床的な観点での流れですけれども、Genomics Medicine CentresからシークエンスというのはIllumina社という会社にシークエンス依頼をして、その情報についてもデータセンターにためられていって、そこにClinical Interpretationという臨床的な解析サービスが、外のサービス会社と連携してあって、それがまたGenomics Medicine Centresという形に戻っていく流れで、ブルーの流れで臨床的には回っていて、それ以外にも、研究的な部分としては、右の上にGeCIPとありますけれども、研究的なコンソーシアムだったりとか、右下にDiscovery Forumという産業界の部分が、この中でデータセンターを利活用できる体制を構築中であるという形であると理解しております。
11ページ、今度は厚生労働省側のこれまでの取り組みという形になりますが、難病医療提供体制の中は、難病医療の確保については、難病に関する法律に記載がございまして、その中に、下にあるとおり、難病の研究班、国立高度専門医療研究センター、各病院の学会等の連携体制をつくるという話だったりとか、遺伝子診断の特殊な検査については、倫理的な観点も含めて幅広く実施できる体制に努めている記載がございます。
12ページ、これを受けて、さらに都道府県に示している医療提供体制の構築に関する手引の中では、カウンセリング体制の充実・強化であったり、下のほうにありますが、難病診療連携拠点病院というのを診断の拠点として都道府県に原則1カ所指定するという形になっていまして、ここには遺伝子カウンセラーなども配置するように示しているところでございます。
13ページ、難病医療提供体制の全体像をお示ししますと、拠点病院というものと身近な協力病院等が連携して、診療を提供するのですが、左上にIRUDや研究班のような遺伝子診断体制についても協力できるネットワークをつくって、進めていこうという形でこれまで取り組んできております。
14ページ、実際に遺伝子検査として保険収載されているものはどれぐらいあるかと申しますと、下にあるとおり、60疾病については遺伝学的検査が保険収載されているところです。これにつきまして、昨日の法律の見直しに関する検討会においても、特に診断基準、必須のものについては収載がされていかないと困るなどの課題が指摘されたところでございます。
15ページ、今度は研究の部分でございます。研究につきましては大きく2つの研究を難病に対してやっているところでございます。一つは左側の政策研究班の部分で、疫学研究だったり診断基準もしくは診療ガイドラインなどの作成等に携わっている研究班と、右側のいわゆる実用化につながる研究として、日本医療研究開発機構のほうで主にマネジメントしている病態解明だったりオミックス解析だったりをやっている研究班になります。
16ページ、実用化研究の全体像を示した図になります。ここで、特にゲノム関係という形で、関係する研究については、ピンクで示しています未診断を基準とした研究の中のIRUDというものと、青、既知の難病を起点とした研究のオミックス解析拠点について、この後、御説明させていただきます。
17ページ、IRUD、未診断疾患イニシアチブは、単一遺伝子疾患については、難病診療連携拠点病院で遺伝学的検査が受けられるようになってきている。他方、症状が非典型な場合や、今まで見つかっていないような疾病に対しては、通常の診療でも診断が困難な場合があるということに対して、遺伝子異常を伴う未診断の患者に対して、専門家による検討に加え、必要に応じ研究的に遺伝子学的な解析を実施するための体制となっております。
18ページ、後ほど御説明があると思いますが、IRUDにおいては、18ページの3つのトライアングルのうちのIRUD拠点病院というところを37カ所設置しまして、そこでいわゆる診断委員会等により、未診断であることをしっかり明確にした上で、左下の解析センターに献体を送って、網羅的なゲノム解析をやっているという体制になっております。
19ページになります。診断がもう既についている、既知の希少難治性の疾患に対する基盤研究として、AMEDのほうでオミックス研究というものをやっています。これについては、いろいろな軸で、オミックスですのでゲノムだけではなくて、さまざまメタボロームだったりグライコームだったりいろいろな視点でやっているのですが、全ゲノム解析もここでやっていまして、特にこの後、東大の辻先生もしくは松本先生については、このオミックス研究班の代表者としてもプレゼンテーションしていただく予定です。
20ページ、このような研究をやることによって、どのようにつながるかの一つの例ですが、IRUDという未診断の研究事業により、新規病因遺伝子というものが発見されて、「武内・小崎症候群」という形で、そこの病気に対する新規病因遺伝子が発見され、それに対して現在、iPSや遺伝子改変マウスなどを使いながら、新しい治療薬に対するスクリーニングに努めるという事例を御紹介させていただければと思います。
21ページ、もう一つは、遺伝性だけではなく、孤発性のALS患者であっても、ゲノム解析することによって、それが急速に進行するのか、それともそうではないのかという形で層別化をした上で、またそれが孤発性ALSの進行パターンに反映することが示されただけではなくて、さらに治療薬にもつながって、医師主導治験につながっているという事例を御紹介させていただければと思っております。
最後になりますが、23ページ、先ほどの経緯で始まりましたが、今回の委員の名簿がございます。これは別途、がんのほうでも検討会が開催されていまして、最終的にはがん、難病合わせて検討状況を政府内もしくは省内の関係する会議体に御報告していくということを考えています。
24ページ、今後の検討スケジュールですが、今回は背景の御説明、ヒアリング、そして論点を提示した上での議論。今回、必要性・目的、対象疾患、症例数という形の御議論をしていただいて、2回目以降に、今回の議論を踏まえた検討と運営体制、体制整備をやって、最後、実行計画に関する案に対して、がん、難病の合同開催をしていきたいと思っているところでございます。
以上でございます。
○水澤座長 ありがとうございました。
それでは、次に議事「(2)関係者からヒアリング」に入りたいと思います。
本日は、辻参考人、松本参考人、小崎参考人、合わせて3名の皆さんからプレゼンテーションをいただきます。
進め方といたしましては、プレゼンされる方々から続けて10分程度で御発表いただきまして、その後にまとめて10分程度の質疑を行いたいと思います。タイトな時間配分となって恐縮ですけれども、プレゼン者の方々、委員の方々におかれては、円滑な進行に御協力をお願いいたします。
最初に横浜市立大学大学院医学研究科遺伝学教授の松本参考人からお願いいたします。
○松本参考人 よろしくお願いいたします。横浜市大の松本と申します。
資料3-1をごらんください。
まず、私の自己紹介といたしまして、難病研究の中で、私は主にオミックス研究班の一翼を9年ほど担っておりました。それから、IRUDにおいては、最初から解析センターの仕事をしてきております。
次のページに行きまして、まず、お題をいただいております難病領域においてどうして全ゲノムが必要かというところの背景を御説明いたします。
私どもはこのような次世代シークエンス、主に全エクソーム解析を用いた解析を行いながら、これまでに次世代シークエンスで50疾患の解明をすることができて、それを用いずに約8疾患ということで、60疾患弱の病気の解明を行ってまいりました。これは国内外でもかなり突出した成果であると思います。この過程で、約1万4000弱のWhole exome sequenceを解析しております。
続きまして、右側上の私どものゲノムセンターの解析状況で、2018年のところを見ていただきたいのですけれども、独立した発端者数7,640例の中で、解決した患者さんは2,075と、27%の解決率であるということで、逆に70%ぐらいが未解決のままであるという現状がございます。
それから、右下にOMIMエントリーがありまして、疾患のエントリーが8,977の中で、遺伝子解明率が5,670、63%ですけれども、未解明は3,307疾患、36.8%で、ここの3,307の減りがすごく遅いという現状がございます。ですから、未解明の症例がなかなか減っていないということがございます。
次のページに行きまして、引き続き、なぜ全ゲノムが必要かという話でございます。
左側に、全ゲノムが有効であった症例の簡単な模式図をしております。ミオクローヌスてんかんという病気の全エクソーム解析をしても何も見つからない症例が左上なのですけれども、上がエクソーム解析の結果、真ん中が全ゲノムのショートリード、それから全ゲノムのロングリードの結果です。12kのエクソームの5’領域を含む欠失があって、これはエクソームでは全くかすりもしない状況です。全ゲノムをやることで、こういうものがきれいにわかってきます。
この家系は、実はこの欠失がヘテロで父親、母親にあって、ホモで伝わったというのが下の図になりまして、全ゲノムがいかに有効であるかということを示しています。
さらに右上に参りまして、上のしま状のものがエクソーム解析のリードがマップされるところ、下が全ゲノム解析のリードがマップされるところで、全ゲノム解析はエクソーム解析を含むあらゆる領域を含んでいるという図式でありまして、Whole exome sequenceをやれば、エクソームプラスアルファの解析ができるということでございます。
右下が、全ゲノム解析で見つけた22kのいわゆる欠失を示しており、これはお父さん、お母さんにない欠失ですので、遺伝子を巻き込む新たな欠失が見つかるということで、強調したいのは、全ゲノム解析は、全エクソーム解析プラスアルファができるということでございます。
続きまして、今、お話ししたのは全ゲノム解析のショートリードのお話でしたが、実は最近、長鎖リード、ロングリードの全ゲノムシークエンスが入手できるようになりまして、長鎖シークエンスと短鎖シークエンスの比較を書いております。
短鎖シークエンスは100~250bpに対して、長鎖シークエンスは10kbものシークエンスを読むことができます。
PCRをしなくていいのが長鎖シークエンスで、このため、GC領域とかの偏りもない。ただ、エラーが多いので、ある程度、重ねて読む必要があるということがあります。ただ、まだコストが高いということで、短鎖シークエンスは大分低コストになってきて、コストの話は後で少ししたいと思います。
その下に、ヒトのゲノムの構成を示しておりまして、100%が全ゲノムの構成物としますと、実はショートリードシークエンスで見ているところはイントロンの横にある100と書いたところの小さい四角にある遺伝子領域は実は2%しかないのですけれども、この領域しか見ていないというのが実情です。
ところが、全ゲノムはこれだけ構成物がありまして、ロングリードシークエンスは実は左側半分の反復配列とかそういうところまで見られるポテンシャルがあるということで、ちゃんと見られていない全ゲノムシークエンスの短鎖シークエンスに比べて、長鎖シークエンスはかなりいろいろなものが見られるという状況にあります。
右上に、神経疾患が多いのですけれども、40種に及ぶリピート病についてまとめた図を論文からとってきております。これだけショートリードで見られない病気が既にたくさん登録されておりまして、右下が、これらのリピート病の長さをあらわしているのです。そして、赤の点線で長鎖シークエンスの平均リード長を書いていますが、大体10~20kありますので、これよりはほとんどのリピート病の反復配列が伸びたシークエンスが小さいわけで、ロングリードをやることで、こういうリピート病も全てわかるということがございます。
5ページ、実際にロングリードシークエンスで、つい最近原因を明らかにした神経核内封入体病という病気がございます。左上に9家系ありますけれども、この中の赤で囲った大きな大家系を使って、右側にあります連鎖解析をしたところ、1番にロットが高い領域がございまして、ここに遺伝子が入っているわけなのですけれども、いわゆるショートリードシークエンスでは全くつかまえることができなかったのですが、左下のロングリードシークエンスをやることで、NOTCH2NLCという5’領域のリピート配列が見つかってきました。このリピート配列は、患者にのみたくさん伸びたリピートでございまして、これが右に、オレンジと緑の分布が上に、そして正常のリピートが下にということで、こういうものがどんどんわかってくるということが期待されているわけです。
6ページ、難病領域において、全ゲノム医療がなぜ今、必要か。そしてなぜ日本で必要かということです。これにはまずコストの観点が見逃せないと思います。全エクソームは今、日本でやると6万円ぐらいでできます。全ゲノムのショートリードは12万円、倍です。そして、ロングリードでやりますと24万円ぐらい、1サンプルで恐らくかかると思います。そういうことで、倍、倍、倍という感じになってきていますが、特に短鎖シークエンスのコストが非常に安価になってきております。そして、つい最近、大型の長鎖シークエンサーが台頭してきまして、1サンプルを1つのチップで解析できるようになってきました。
ここに2つ、ロングリードシークエンスの機器を並べていますけれども、本格始動はまだ本当に始まったばかりで、これを強く進めることで、日本としての研究プレゼンスを高めないといけないのではないかと考えています。
それから、ヘルスケアに向けたゲノム解析の国際動向がことしのアメリカ人類遺伝学会雑誌に発表されていましてサマリーがありまして、それから持ってきたのですけれども、先ほどGenomics Englandの話で、10万人ゲノムから500万ゲノムという話がありましたが、英国が多分最もアグレッシブにやっているところです。そして、イギリスに関しましては23.5万ゲノムを1年でやる。希少疾患2万例も含んでいます。イギリスでは372ミリオンドルを10年間で使う。希少疾患も含まれています。アメリカでは、100万人のボランティアのあらゆるデータでゲノム解析を行う。それから、保険会社が絡んだガイジンガー等のプロジェクトで、10万人の保険加入者のゲノムが動いております。
次のページに行きまして、こういういわゆる一流国ばかりではなくて、比較的小さな国もゲノム解析をするという体制に非常に積極的に取り組んでいるという現状です。デンマーク、エストニアなども5.2万人ゲノムです。カタール6,000、サウジアラビア10万、トルコ10万、中国に関してはちょっと桁違いで1億のゲノムをやるという状況です。オランダ、スイス等もちゃんとお金を使ってやろうという現状はございます。
そして、何より重視しないといけないのは、Genomics-Medicine Initiativeにおいて、クロスカントリープロジェクトが既に動き出しているということで、さまざまなゲノムのプラットフォームを使った国際協調研究みたいなものがどんどん進みつつあるという中で、いわゆる全ゲノムのラージデータアセットを前提とした、地球規模のGenomics-Medicineの取り組みが始まる中で、日本でなぜ必要かというよりも、日本でなぜ必要でないのかということのほうがむしろ大事なのではないかと。いわゆるライフサイエンス、医療、産業に当然配備する共通の情報であると考えております。
今度は、8ページの対象疾患の考え方でございます。何例解析をやればいいのかということで、特に単一遺伝子病、希少疾患の条件として少し箇条書きをしております。交互に色分けしていますので読んでいきます。
まず、既知の遺伝子異常が既に同定されている例を除外すべきではないかと。これは新たな発見にはつながらないということで、私はプレスクリーニングが終わっているものから先にやるのが一番いいのではないかと考えています。
そして、例えば全エクソームの未解明例等を優先していくのが一つの考え方ではないかなと思います。というのは、全く未解析で全ゲノム解析をやって、単一遺伝子病の遺伝子異常がどんどん見つかるようでは、結局、既知の病気の遺伝子の異常だけで、全ゲノムをやろうがやるまいがその異常が全て説明がつくという状況が生じかねないので、いわゆる全ゲノムをやるということの意味合い、大事さが少し下がってしまうように思うのです。ですから、これは新しい学問展開が難しくなるので、こういうもののプレスクリーニングは大事ではないかとは考えています。ただし、既知遺伝子の特殊な異常の同定は学問的意義があるだろうと考えています。
超希少疾患、例えば日本に1例しかないものなどは、少ないから除外すべきという意見は賛成できません。なぜなら、学問的・生物学的知見につながる可能性を有します。そして、また世界に1例であっても、今、Matchmaker Exchangeというシステムを使えば、国際連携はあっという間にできるという状況が生じていますので、これもぜひやらなければいけないと思います。
症例のみで、特に難病は全ゲノム解析には限界がありますので、両親の全ゲノム解析を考慮すべきだと思います。例えば希少疾患3万例の解析で、その両親は当然6万になります。高齢の難病では、両親が亡くなっているということもありますので、約半分の回収ができれば3万ということになりますので、少なくとも1対1ぐらいで親の解析をしていかないといけないのではないかと思います。
例えば、私どもの拠点では、6,000例の未解決があって、6,000プラス親の半分が回収できるとして1万2000のサンプルはすぐに解析ができるという状況です。
それから、10万人ゲノムという枠内であったら、例えば半分を難病でゲノム解析するとすると、希少疾患症例2万5000に両親の2万5000の5万というのはいいのではないかと考えます。
2016年からのオミックス解析の全拠点、IRUD調査でWhole exome sequenceは3年間で1万3000弱の症例が行われておりますので、7割が未解決とすると、9,000例程度が残っているという現状は、日本全体のプロジェクトとしてあります。
これは私の個人的希望なのですけれども、短鎖と長鎖シークエンスを8対2ぐらい、5万のゲノムをやるとしたら、1万ぐらいロングをやってもいいのではないかと考えております。
次のページ、国民への還元ということで、幾つか我々のプロジェクトで、患者さんの治療改善につながったというものを挙げております。小脳低形成の原因が葉酸受容体遺伝子の劣勢変異によって、葉酸誘導体の大量経口をやりますと大幅に改善したというのがYahooのトップ記事も含めて報道されたことがあります。
自治医大のAADC欠損症の患者さんのリクルートは、私どものところでまず診断をしてから始まったということ。
NIIDという60代で認知症を発症する原因がわかったということで、今後、認知症のDNAスクリーニングをすることができるということ。
Genomics Englandで、実は難病は診断したことが既にactionableという位置づけをされているということ。これは無駄な診断オデッセイを防ぐとか、さまざまな効果が前向きにとられているということになります。
最後のページになります。いわゆるPCSK9という有名な遺伝性高ステロール血症の薬があるのですけれども、これは難病の解析から生まれた薬でありますし、特に機能喪失型変異が創薬の契機にあるというのは非常に強く言われております。
それから、最近は世界に1例しかない患者をハンドレイジングして、ドラッグデベロップメントをするという動きも生まれていまして、どんどんその可能性が広がっているということがございます。
そして最終的にゲノムサイエンスで全ゲノムデータを蓄積することで、今ある京都データベースやToMMOすら凌駕できる非常に強力な日本のデータベースができるということもサイエンスの大きな役目かと思います。
以上になります。ありがとうございました。
○水澤座長 ありがとうございました。
次に、東京大学大学院医学系研究科分子神経学部特任教授の辻参考人からお願いいたします。
○辻参考人 辻でございます。
私は東京大学の分子神経学、それから国際医療福祉大学のゲノム医学研究所を担当しております。
自分自身は、遺伝性の神経疾患の研究から始まって、2000年代に入ってから孤発性の神経疾患に広げてきて、それを利用に結びつける。医師主導治験も含めてやっていますけれども、そういった流れの中で今後の将来を見越して、特に孤発性の難病に対して、日本でどういうふうに展開すべきかというところで展望をお話ししたいと思います。
資料の2ページ目、ゲノムサイエンスから見て疾患の発症機構というものを考えますと、そこにありますように遺伝性疾患というのは一つの遺伝子の変異で病気が説明できるわけですが、恐らく希少性の難病というのは幾つかの要因、一つ一つかなりエフェクトサイズの大きいものが合わさって発症するのではないかと考えることができますし、生活習慣病などは、これが多数になるかなというところで、研究の方向としてはいろいろありますけれども、この遺伝性疾患から希少難病に向けて発展させていくという方向と、単一遺伝子疾患のGWASの研究から、右から左に向けて発展させていくという、両方の方向があり得るのだと考えています。
次のページに行っていただいて、これも非常にシンプルな絵ですけれども、単一疾患、特に孤発性の難病の場合にメジャーな要因が一つ一つ見つかれば、それに対する治療法をつくっていくというのは基本で、これがゴールドスタンダードになる、これを目指すべきであると考えています。例を後で出します。
次に、孤発性ALSの分子疫学と書いています。左の絵が410例の孤発性のALSの分析結果ですけれども、遺伝性のALSでわかっている遺伝子を調べてみても、そこに変異が見られるのは5%ぐらいということで、95%は原因がわからない。
右に書いてあるのは欧州のコホートですけれども、ここにC9ORF72というのが結構大きな割合で存在するのがわかりますが、これはフィンランド系の方々から由来するrepeat expansionの疾患であります。このC9ORF72に関しては、遺伝性でもあり、また、孤発性の中にも実はかなりの割合で出現してくる。フィンランド系の方々では、実は25%ぐらいは持っていると言われますので、こういうふうに遺伝性疾患と孤発性疾患のつながるところもあるということになります。
5ページ、これが一つの例ですけれども、孤発性のパーキンソン病ですが、GWASで見つかってきている遺伝子はあるのです。ここにありますように、下の4つ、SNCA以下のものがそうですけれども、オッズ比が1.3とか1.2とか、これが典型的なGWASの成果になるわけです。1番上の行、GBAのところを見ていただきますと、これは日本人では0.4%が、一般のポピュレーションがキャリアですけれども、パーキンソン病の方は実は9.4%の方がキャリアになっている。オッズ比で言うと28倍ということで、非常に高いということになります。
ですから、孤発性の疾患の中にも、こういったオッズ比の大きいリスクファクターがあるということがわかってきていて、このGBAについては今、もう企業主導の治験まで発展しているというところがございますので、治療に発展するということでございます。
次のページがその例ですけれども、低頻度で、集団におけるアレル頻度をX軸にとっていまして、縦軸に疾患発症に対するオッズ比をとったとします。そうしますと、GBAは、さっき言いましたように0.4%ぐらいのアレル頻度に対して、患者さんでは8~9%ということですから、日本人ではパーキンソン病では1万2000人ぐらい持っているのですけれども、この方々に対しては、GBAというのはグルコセレブロシダーゼ遺伝子というスフィンゴ脂質の加水分解をする酵素をコードしていまして、これが両方のアレルに変異がありますと合成病を起こします。そちらのほうでは今、いろいろな治療が行われていますが、そのうちの一つとして、酵素の基質になる物質を減らせばいいのです。基質合成阻害剤というものが今、治療として使われ始めているのです。その原理を応用できるのではないかということで、中枢への移行のよい低分子化合物で、基質合成を阻害できる化合物を、パーキンソン病に対する企業主導治験として現在、進められている。ここまで来ています。
もう一つの例として、これは私どもがやっている例ですけれども、多系統萎縮症で、COQ2という遺伝子にバリエントがあって、これは頻度がさまざまですけれども、コエンザイムQ10の合成系の酵素をコードしていますので、結果として、コエンザイムQ10が下がるということで、コエンザイムQ10の高用量の補充療法を私どもが医師主導で今、治験を進めているということがございます。
こういうふうに、rare variantsでエフェクトサイズの大きいものというのは、治療の対象になるということになってきます。
7ページ、これも同じような絵ですけれども、アレル頻度が、これまではGWASといって、コモンスニップで5%以上ぐらいの頻度の高いスニップを使って関連解析を行っていましたけれども、だんだん左のほう、rarなほうに行くと、エフェクトサイズが大きいものがあるのではないかということです。ところがそれがなかなか見つからないということで、それはMissing heritabilityと呼ばれて、大きな検討課題になっているのですけれども、そこを読み解くには、結局、低頻度のものはコモンスニップでは対応できませんので、ゲノム配列解析が必要であるということで、ゲノムシークエンスが今後必要になってくるということになります。
8ページ、GWASから全ゲノムシークエンスへという動きの中で、ちょっとおもしろい論文が最近出ていまして、これは『BioRxiv』のところに発表されているだけですけれども、早速『Nature』のほうでこれが少し引用されているのです。身長に対するheritabilityというのは0.8ぐらいあると言われていますけれども、これがGWASではそこまで全部を説明し切れないということで、これが全ゲノムシークエンスのデータをとると、実は0.79ぐらいの遺伝率、heritabilityが説明できるということで、これまでGWASで説明できなかったところが、全ゲノムシークエンスでほぼ大部分、説明できるという論文が出て、注目されています。
9ページもアレル頻度、これは右のほうがrareになっていますけれども、実際見てみると、実は私たちがゲノム上で持っているバリアントの多くは、極めてrareなvariantsが多いということがわかっていまして、しかも例えばトリオ解析をすると、翻訳領域に非同義置換が生じる頻度というのは1世代当たり1~2個ぐらいと言われていますので、日本では常時100~200万個の新生非同義置換が出ているということになります。
特に地域ごとに人口爆発が起こって、それは地域ごとに集積していますので、低頻度のバリアントというのは地域ごとに特徴がある集積が行われているということがあって、地域を意識する必要があるということになります。
10ページ、こういった形で、rare variantsでエフェクトサイズの大きい遺伝子を探そうというのは、今、だんだん行われてきているわけですけれども、これはエリック・ランダーという私たちの領域では非常に神様みたいな有名な先生が『PNAS』に発表した論文です。彼はrare variant association studyと表現していますが、その場合、どういう研究、アルゴリズムが必要であるかということをしっかりと数学的に計算していまして、前提条件によりますけれども、規模としては2万5000人ぐらいの規模で解析をすれば、十分な結果が得られるのではないかということを提案しています。
こういうアプローチの場合には、解析規模が非常に大事になってきまして、それが不十分ですと、type 2 errorになってしまって、第2種過誤でフォールスネガティブになってしまいますので、中途半端な形ではできない。だから、十分な規模を達成する必要があるということになると思います。
次のスライドもシンプルなシミュレーションですけれども、アレル頻度が下がってくると、必要なサンプルサイズというのはどんどん大きくなってきて、GWASよりも大きくなるかもしれないということで、rareになるほど解析規模を大きくする必要があるということがわかります。
12ページ、研究パラダイムとしては、十分なサンプルサイズを得る必要があるということが一つ。
戦略1としては、バイオリソースと臨床情報の集積が必要になってきますので、オールジャパン体制で症例の蓄積が必要であるということになります。当然ですけれども、データの利活用ということで、最初の段階から十分なインフォームド・コンセントをとって、データの利活用ができるようにするということが必要になってきます。コントロール群の集積も必要になってくる。replication setの準備も必要で、これは国際的な共同研究も視野に含めるとよろしい。
戦略2ですけれども、繰り返しですが、必要とされるサンプルサイズの検討、大規模ゲノム解析拠点の構築、バリアントの絞り込みということがとても大事になってきますので、その次の遺伝統計学を含めて、こちらのほうは十分な研究者の参加、人材育成が必要ということになります。
次のページ、指定難病の中で患者数を見ていくと、頻度の高い、患者数の多い疾患に着目する必要があるだろうということで、神経疾患ではパーキンソン病というのは15万人ぐらいが推定されますので、そういったものが対象になりやすいということになります。
heritability、遺伝率が高いということがこれまでの研究で示されているというものを対象にすることがよろしいと。神経変性疾患の場合、孤発性のものと遺伝性のもので病理所見なども非常に似ていることが多いので、そういう意味では病態に共通するところも多いということで、ターゲットとしてはよろしいのではないかと考えます。
神経疾患ではパーキンソン病、ALS、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症などが対象になってくる。
神経疾患以外でも、実は難病の多くでこれまでも遺伝率の検討がされてきていまして、例えば炎症性腸疾患の場合には、異様にheritabilityが高いと言われていますし、患者の数も多いということがありますから、こういったものも対象になり得るかなと思います。
14ページは、これまで報告されているheritabilityの表でありますので、また後で見ていただければと思います。
15ページが最後のスライドになりますけれども、展望としては、患者数が圧倒的に多い難病を対象として、特に孤発性の難病の発症原因の解明と治療法開発ということが必要になってくるということで、遺伝率の高いことがある程度わかっているものに集中することがよろしいと思います。
それから、やはりバイオリソースの集積というのは大きな課題になりますので、オールジャパン体制を構築する必要があるということがあるし、規模を一気に2万5000を実現するというのは難しいかもしれませんが、例えば最初の段階で1,000例以上のコホートで集積できているところからすぐに始めて、5,000例を目指す、あるいはその次に2万5000を目指すというようにステップを踏みながら、評価しながら拡大していくのが現実的かなと思います。
この規模になりますと、大規模ゲノムシークエンスの拠点も形成する必要があるということと、情報解析のほうがさらに負荷が大きくなりますので、そちらの充実が大変大事であるということ。それから、できるだけオープンなストラクチャーにして、幅広い研究者が参加できる、またデータの利活用ができるということが大事になってきて、セキュリティーの関係で厳密に管理するとオープン性がなくなるということが大きな課題になると思います。私はやはりオープンな設計をする必要があると思っていて、日本ではインフォームド・コンセントは後づけになることが多いのですけれども、最初から十分なインフォームド・コンセントを得て、前向きに展開するのがいいと。最後に、米国ではAccelerating Medicines Partnership(AMP)という形で、1万人のパーキンソン病の方の全ゲノムシークエンスをしようというふうに動いています。これはpublic–private partnership(PPP)のフレームワークで動いていますけれども、予算的にも、そういった企業も参画する形でのPPPのフレームワークで展開することも必要ではないかと思っています。
以上です。
○水澤座長 ありがとうございました。
それでは3番目、慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター教授の小崎参考人からお願いいたします。
○小崎参考人 よろしくお願いします。
私は、慶應大学医学部で希少疾患あるいは未診断疾患の患者さんの診療と研究を行っています。また、慶應病因で実際に小児科医として患者さんを診ております。
遺伝性疾患の多くは小児期に発症することから、先天異常として症状が出るわけですけれども、日本先天異常学会の理事長を担当させていただいております。それから、米国の臨床遺伝専門医の資格を持っておりまして、全ゲノムが医療に取り入れられる海外の様子を見ながら、我が国に適したあり方について提言できればと考えております。
次のスライドをお願いします。希少疾患の特徴ですが、非常に頻度の低いものが多数あるというところが特徴で、そのうち比較的頻度の高いものが指定難病として指定されているわけですが、それ以外にも、先ほど松本先生から紹介がありましたように、多くの比較的数の少ない原遺伝子が原因となっている患者さん、一つ一つの数は少ないけれども、多数の疾患があって、積分すると相当数になるというところが問題で、さらにはまだ新たな疾患として認識されていない疾患も存在するというところが問題であります。
次のスライドに参ります。同じことを書き直しておりますが、原因がわかった病気、疾患原因遺伝子がわかった病気、疾患として確立されているけれども、まだ原因遺伝子がわからない病気、そして新たな病気としてまだ認識されていない病気ということになるわけです。これは研究者からの視点でありますが、患者さんからの視点はいずれのカテゴリーも未診断という状況になるので、そのことに関して解決が必要であり、全ゲノムが有用ではないかということになります。
次のスライドをお願いします。疾患の診断というのは、初めはゲノムで診断するものではなくて、特徴的な症状の組み合わせから臨床医がその診断を試みるわけですが、特定の診断名が想起される場合、考えられる場合には、その原因遺伝子のみを調べる、あるいは複数の遺伝子であればパネル解析ということで確定診断が行われるわけです。特定の診断名が思い至らない場合には、きょう話題になっているエクソーム解析ないし全ゲノム解析という形で、全ての遺伝子を幅広く調べるという探索的なアプローチが有用というよりはむしろ必要になるわけです。
次のスライドをお願いします。では、なぜ世界は全ゲノム解析に向かっているかということです。パネル解析ではなくてエクソーム解析や全ゲノム解析を使われる理由については、今、お話ししたとおりで、特に新規疾患の原因遺伝子については、パネル解析では同定することができないということになります。
それでは、2万の遺伝子を全て調べるエクソーム解析と全ゲノム解析のうち、どちらを用いるか。全ゲノム解析を用いる利点は、先ほど来、松本先生からお話がありましたように、価格がほぼ同程度の水準になっているにもかかわらず、変異の検出感度が格段に向上するためであります。
次のスライドに参ります。これは灯台が光を360度当てているものに対して、パネル解析が特定の角度のみに光が当たっているということを図示したこと。それから、灯台の光が、全ゲノム解析のほうがより遠くに届くというところに着目していただきたいと思います。スライドの右下に、同じ遺伝子であってもさまざまな異常のタイプがあるわけですが、ここに示されているようなものがおおむねカバーできるというのが全ゲノム解析の特徴であります。
次のスライドに参ります。同じことを図に示したものです。単に調べられる領域がふえるというだけではなく、さまざまな機序で発症している病気について対応が可能になるというのが全ゲノム解析の特徴であります。
次のスライドをお願いいたします。これは実際に自分が外来で20年来診ている患者さんで、なかなか診断がつかず、1つの遺伝子の解析、パネル解析、エクソーム解析と続けてまいりましたが、最後、全ゲノム解析で診断がついた事例です。
上が全ゲノム解析の絵でありまして、先ほど松本先生がおっしゃいましたように、領域を幅広く拾っているわけです。エクソーム解析では、この白く抜けている部分がたくさんあるわけですが、実際に欠失が証明されまして、初めて異常が検出されたという事例であります。
次のスライドに参ります。エクソーム解析の特徴は、全体のうちのたんぱく翻訳領域、すなわち全体の1~2%程度で、特に重要と思われる部分を拾い出すという点であるわけですが、この拾い出すという手間が一手間かかるということで、実際に全部読み尽くすほうが値段がだんだん安くなってきているという現状であります。
次のスライドをお願いします。すなわち、いわゆる損益分岐点に近づいているというのが現状ではないかと考えています。松本先生からエクソームが6万、全ゲノムが12万というお話がありましたが、そのような状況であります。
次のスライドをお願いします。それを受けまして、先ほど話題になっております南川先生から紹介のありましたGenomics Englandでは、10万のゲノムを達成したということで、これは臨床検体を用いているというところが特徴でありまして、ナショナルヘルスサービスの臨床献体を非常にうまく使ってたプロジェクトです。
当初、がんと希少疾患は1対1の検体数で行われる予定でありましたが、実際にはスライドに書いてありますように、8対2ぐらいで、患者数にしますと2万7000の患者さん、がんが1万1000ですので、希少疾患が中心に行われたというのが現状でありまして、このあたり、実際に慶應大学にCEOの方がいらっしゃいましたが、希少疾患に全ゲノムがいかに有効かということについてお話を伺いました。診断率は25%ということであります。
米国においては、未診断疾患ネットワークというものが推進されておりまして、England Journalに非常に有効であるというエビデンスが昨年発表されております。382名のうち132例で診断が確定しています。
次のスライドをお願いいたします。Genomics England、それから米国の未診断疾患ネットワークの特徴は、単にゲノム解析を行うのみならず、臨床データを非常に集めているという点なのです。先ほど申し上げましたが、Genomics Englandではナショナルヘルスサービスのデータを活用しています。それからUDNでは実際にNIHのクリニカルセンター等に患者さんを入院させて、非常に詳しい臨床検査を重ねているのが特徴です。
日本においては国民皆保険に裏づけられていまして、実際に、非常に詳しい臨床データがあるというものがアドバンテージでありまして、我が国がこの分野にプレゼンスを示せるという大きな潜在的な要素があると考えています。
未診断疾患イニシアチブについては、先ほど南川先生より御紹介がありましたが、全国に約400の協力病院があり、拠点病因が約40、ここで臨床診断を整理した後、慶應大学あるいは横浜市立大学、成育医療センター等の5カ所でゲノム解析が行われ、臨床症状と結びつけた形で解釈が行われて、新しいデータがとられ、その結果が患者さんに還元されているという状況でございます。
次のスライドをお願いいたします。3年間で約3,000の解析が行われまして、1,016名で原因が判明しております。その結果、新たな疾患も約30ほど見つかってきております。これがプロジェクトの主たる目的でありますが、着目していただきたいのは、指定難病以外の疾患に属する患者さんが相当数、診断がつかない状況で我が国でも、ある意味、そのままにされているという状況だと思っています。野球に例えることが適切かどうかはわかりませんが、内野手のみで全ての難病をカバーしようとしている我が国の現状がある程度、明らかになったのではないかと考え、このようなプロジェクトの重要性を再認識しているところでございます。
このようにして集められました患者さんのゲノム情報、詳細な臨床情報は、現在、IRUD-Exchangeというデータベースに取りまとめられております。同じ疾患原因遺伝子の候補遺伝子で同じような症状の組み合わせの患者さんが2人異常見つかった場合には、新規疾患が強く疑われるわけですが、このような患者さんが国内で同定されつつあることと、この中で、国内で見つけられないときには先ほど松本先生から紹介のありましたMatchmaker Exchangeという仕組みを通じて、国際的にデータの共有を図り、新たな疾患が確立されているところです。
また、診断がついた患者さんについては、実際にどのような先生がどの疾患を診ておられるかということが国内で把握されておりますので、希少疾患の国際的なレジストリーとして機能し始めているところです。
新たに同定された疾患について、次のスライドで説明したいと思います。これは最初の2名の患者さんが慶應病院で同定された患者さんですが、IRUDで国内で3例目、4例目が見つかり、さらに海外でも確認されまして、我々の研究グループを冠した名前がついている病気です。過成長、身長が伸び続けることに加えて、神経変性疾患、骨系統疾患を多く呈する疾患で、進行性疾患であることから、治療薬の開発が強く望まれていた疾患です。
次のスライドをお願いいたします。我々の論文を読んだ基礎研究者の先生が、これはPDGFRBの機能獲得性変異なのですが、これを抑制するイマチニブという白血病の薬が治療に有効ではないかということに気づき、実際に英国で治験が始まり、またノルウェーでも患者さんへの利用が始まっている。これはドラッグ・リポジショニングと言いまして、既に市場に安全性が確認されて、発売されている薬を超希少疾患の治療に使えるという非常によい事例として認識されております。
なかなか遺伝性疾患あるいは超希少疾患の研究をしても、治療に結びつかないのではないかという指摘を受けることがありますが、原因がわかるということがいかに重要かということがよくわかる実例と思います。
まとめさせていただきます。次のスライドです。全ゲノムの感度が高いことから、これが国際標準となりつつあること、そしてコストの点でもエクソームとの損益分岐点が近づいていること、人口が日本の半分の英国で10倍の数の希少疾患の全ゲノム解析が終了していること、そしてエビデンスとして、England Journalに臨床的有用性がパブリッシュされる状況になっていること。日本でもデータを生成し、世界と共有しなければ、世界のデータを共有させていただけないわけです。ただ乗りはできないということを考えると、日本でプロジェクトを進めなければ、日本人の患者さんの不利益となります。我が国発の新規疾患が次々と発見され、その一部は国際協力によって治療法の開発も進んでいます。最後になりますが、未診断疾患のゲノム解析は、指定難病の施策の範囲外の患者を正しく診断し、治療への道筋に乗せるための現在唯一の方法であると考えています。
以上です。
○水澤座長 ありがとうございました。
ただいまお三方の参考人の方々から御発表いただきました。少し時間をとってございますので、意見交換を行いたいと思います。御質問等がありましたら、いかがでしょうか。
松原先生、お願いします。
○松原構成員 3人の方に、これまでたくさんされてきた解析のことについて御説明いただいたわけですけれども、それぞれ3人の先生方にお聞きしたいのですが、今までされてきた遺伝子解析、エクソーム、全ゲノムは御自身の研究室あるいは施設でされたものがほとんどなのか、あるいは外のコマーシャルの検査施設といったところに依頼されたものがあるのかどうかということをそれぞれにお聞きしたい。
それから、それを踏まえた上で、先ほど辻先生から、全ゲノム解析の拠点が日本に必要だというお話がありましたけれども、今後、全ゲノムを国として非常に大規模に進めるに当たって、今のような体制で、各研究室あるいはコマーシャルラボに依頼するという形で全ゲノムをやっていくことで対応できるのかどうか。辻先生がおっしゃったような拠点形成が日本で必要なのかどうかということについて、それぞれの先生から御意見を伺いたいと思います。
○水澤座長 どうぞ。
○松本参考人 発表の順番ということで、横浜市大の松本がお答えします。
まず、ショートリードに関しましては、当初は自分たちの研究室で行っておりましたけれども、最新機器のアップデートを自前でやることがだんだん困難になってまいりまして、最終的には現状、ショートリードに関しましては全部外注へ移行しております。不思議なことに、自分たちでやるほうがコストが高いという、何ともおかしな状況が生じているというのがまず一つございます。ただ、全部外注することに対して、技術の空洞化とかそういう懸念は研究者の人が一部抱いているところがあるように思います。
ロングリードに関しましては、全て自前でやっております。
いわゆるセントラライゼーションというか、センター化をすることに関しては、少なくともショートリードに関しては外注をやっておりますので全く賛成というか、そういうことで進めていただくのが一番いいのではないかとは考えております。
ただし、データ解析の途中ぐらいまで、ある程度やっていただくほうが最も効率がいいのではないかと考えております。
以上になります。
○辻参考人 私どものところは、1万件ほどの解析実績がございますけれども、全て中でやっています。ショートリードもロングリードも、それからインフォマティクス解析も全て一気通貫で全部やるという形の体制をとっていて、それのメリットは、人材育成にはすごく役立つと思うのです。ウエットもドライも全部中でやりますから、そういう点での人材育成の拠点としても機能していると思いますので、私はそういう意味での拠点はあったほうがいいと考えています。
ただ、この解析の規模をどこまで大きくするかによると思います。本当に大規模な全ゲノムシークエンスをやるとなると、大学の研究室でできる規模ではないと私は思いますので、そうすると、また別途そういった解析の拠点の構築は必要になってくるのではないかと。規模によると思うです。
ただ、松本先生もおっしゃったように、全て外注でいいかというとそのようなことはなくて、拠点となるところでウエットからドライまで全部頑張ってできるという体制は必要で、しかもそこにオープンな形で、さまざまな研究者が参加することができるという場ができれば、私は理想的だと思っていて、外注で全部済ませられるということではないと思います。
あとは、インフォマティクスのほうの負荷が非常に大きくなると思います。これはシークエンサーの負荷よりももっと大きいと思いますので、データの保管、コンピュータでの解析のところを、クラウドも含めてどういうふうに行うかということは、日本としても考える必要があるし、そういったインフラを提供している日本の企業は余りないと思うのです。全部アメリカのそういう企業に依存するのか、そういったところも考える必要があるかと考えています。
以上です。
○小崎参考人 最初にマツモト先生がおっしゃったように、外注という話がありました。辻先生がおっしゃったように、ゲノムのローデータを出す部分と、その後のインフォマティクスの部分に分けて考えると、ローデータの部分は多分、松本先生がおっしゃったように外注のほうがスケールメリットがありまして、私どもも自分の患者さんを急いでやるということ以外については、かなり外注に頼っています。
一方で、インフォマティクスの部分については全部自前でやっておりまして、この部分は特にデータの解釈をコマーシャルの会社に出すということは、我が国においては現状難しいと思いますし、データを解釈できる臨床医を育てるということは人材育成の上で非常に重要ですので欠かせないと思い、そのように行っております。
以上です。
○水澤座長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
ほかにはいかがでしょうか。
鎌谷先生、お願いします。
○鎌谷参考人 大変わかりやすい御発表をありがとうございました。
私から質問させていただきたいことなのですけれども、今回、厚労省の難病に関してどのように進めていくかというお話で、厚労省の難病の中にはメンデル遺伝病を含む非常に非常にまれな疾患から、ある程度の頻度があって多因子の疾患まで含まれています。
3人の先生方がそれぞれの御専門で御発表されて、それぞれのお話について大変納得のいくところだったのですけれども非常にまれな疾患と、ややありふれた疾患をどのような割合でやっていくべきかについての御見解はありますでしょうか。
○水澤座長 お三方で順番に行きましょう。お願いします。
○松本参考人 ある意味、非常に根幹の難しいところのお答えになるかと思います。
メンデル遺伝病、いわゆる単一遺伝子疾患というのは、実は1例からでも新しい発見が生まれてくる。そして、それがたくさんの種類の病気があるというところが、ストラクチャーとして、病気の成り立ちとして、全く違うという観点があろうと思います。
一方で、よりありふれた病気に近い多因子の構成要素が入ってくる場合には、1例でというのは全く成立しないわけです。辻先生の御発表にあったと思うのですけれども、ある程度の数を担保しないといけない。
そういうことで、全くアプローチが異なってくるのだろうと思うのです。ですから、なかなか何対何ぐらいでやっていいというお答えを出すのが難しいし、多因子の疾患であれば数の確保は必須です。そうでないと、やること自体に全く意味がないということになりますし、希少疾患は、日本に1例でも答えが出る可能性があるという特徴があるということです。
以上です。
○水澤座長 辻先生、お願いします。
○辻参考人 単一遺伝子疾患に関して言いますと、クリニカルシークエンス的に、診断確定のために行うゲノム検査というものが保険収載されていのはわずかでございますので、臨床検査としてゲノム検査をどう提供するかというところが大きな課題だと思うのです。
つまり、単一遺伝子疾患でもゲノム検査をクリニカルシークエンスとして行うことで対応できる部分はかなりあって、それではなかなか決定できなくて、探索的にやらなければいけない。あるいは診断自体が難しくて、IRUD的な考え方でやらなければいけないというところは別に立てる。私は最初の部分が、日本では方針が決まっていないところが大きな課題だと思っています。
単一遺伝子疾患と孤発性疾患、あるいは多因子疾患はどれだけの割合でというのは難しくて、お互いに足を引っ張り合う必要は全くないので、両方とも大事な柱になると思うので、私は2本の柱をしっかり立てて、それぞれに適切な資源の配分をしたほうがいいと考えています。
多因子疾患に関しては、ゲノム医療実現推進協議会の中間取りまとめを受けてつくられたのは、ゲノプラで文科省のほうでの予算を負担するということをやってきたのだけれども、そこが非常に規模が小さいと私は思っていまして、多因子疾患に関しては、孤発性の難病に関してどのように戦略を立てるかというのは、規模も考えて十分に練ったほうがいいと思います。
ただし、むやみやたら規模をふやすということは現実的ではないし、予算の面からも実現性はないと思いますので、ある程度絞り込んだ形で、しかも十分な結果が出る形のものを幾つかプロジェクトとして立ち上げて、評価しながら発展を考えるということで、いずれにしても今、ある予算の枠の中でどのように配分しようかというと、非常にみじめな結果になります。そうではなくて、これはむしろ新たに予算を立てる必要があるということになりますので、ぜひ、そういうスケールの大きい観点から議論をいただけるといいのではないかと思います。
○水澤座長 小崎先生、お願いします。
○小崎参考人 私が発表したスライドの15枚目に野球場の絵を書いたのですが、実際に指定難病になっていない患者さんに関して研究を進めるためには、先ほど松本先生がおっしゃったような超希少疾患の研究事業です。
それから、疾患の原因遺伝子を見つけるだけが難病の研究ではなくて、見つかった希少疾患を、ほかのゲノム研究者以外の研究者と連携していくということも非常に重要な視点でありまして、例えば、私は小児科の専門ですが、このIRUDの仕組みを使って、希少疾患の原因がわかることで治療研究が新たに組み立てられるということもありますので、単に新しい疾患の遺伝子を見つけるというジーンハンティングだけが目的ではないという視点も強調させていただきたいと思います。
○水澤座長 よろしいでしょうか。
ほかはどうでしょうか。
菅野先生、お願いします。
○菅野構成員 IRUDは結構診断がつきにくいものが入ってきて、実際にシークエンスしてみると既知のものだったみたいな、言ってみれば、研究面から見ると若干効率の悪いことになっている可能性はあるけれども、現実の患者さんたちにとってみると非常に深刻な問題に対して、一つの解決策を与えているみたいなところがあると思うのです。そういうところでGenomics Englandなどは結構ある意味、診療というのですか。研究ではなくて、そういう診療寄りのプロジェクトになっているような気がするのですけれども、今回のことについて、これはどういうふうにそういうものをセッティングしていったらよいか、先ほどのバランスの問題もあると思うのですが、各参考人の方々に、そのバランスについて思うところをいただければと思います。
○水澤座長 お願いします。
○松本参考人 私自身が考えますのは、ホールゲノムをやるからには、第一義的には、研究的な意味合いを最優先していくべきではないかと。
要するに、診療の部分では、多分コンプリメントな方法が恐らくあるのだろうと思うのです。先ほどパネルの効率が悪いではないかという話もあったのですけれども、一部ではパネルが安価に、いわゆるホールゲノムなどよりも安価にできる体制で動いているところもありますし、研究的要素であるホールゲノムのところと少し違うディメンションで考えていくべきなのではないかとは思っております。
○水澤座長 辻先生、お願いします。
○辻参考人 バランスに関して言いますと、患者さんの数のことも意識していただくのがいいのではないか。孤発性の多因子疾患と考えられる難病のほうが数としては非常に大きいので、そこに対して、これまで余り手を入れていなかった、アプローチしていなかったというのがありますから、そこを積極的に考えて、治療法開発まで結びつくようにしていただくのがいいのではないかということで、大きく考えていただくのが本人にとってはいいのではないかと思います。
それから、遺伝性疾患が想定される場合の効率に関して言いますと、英国は歴史があって、NHSの中に非常にいいシステムができていて、検査の適用、必要性などを判断するような形になっていますね。ですから、あそこは検査に関するゲートキーパーがしっかり機能しているというのがあります。診断確定のためのクリニカルシークエンスをどう進めるかというところが、だんだん医療の中では大きくなってきますので、研究的な色彩はもちろん医療、診療になってきますので、そこを日本でどうつくるかというのは別途考える必要があるのだと思うのです。
もちろん、研究的な色彩をもって希少難病に対してアプローチをするというのは必要になってくるのだけれども、多分ゲートキーパーが必要で、もうクリニカルシークエンスで診断確定できるというほうに促すものと、もっと深掘りしたほうがいいというものをどういうふうにやっていくかというところのゲートキーパーが、日本では十分できていないのかなと。難病拠点病院とか、いろいろ厚労省のほうでつくってきているネットワークのほうがうまく機能すれば、その役割を果たせるのかもしれないのですけれども、そういう点でも英国はすごくしっかりしているので、NHSのやり方を少し参考にされたらいいのかなと思います。
○水澤座長 小崎先生、お願いします。
○小崎参考人 お二人の御意見に全く賛成で、研究と診療は別立てで考えていくべきだと思います。
一方で、辻先生から御紹介のあった英国では、先行するUKGTNという仕組みによって遺伝子検査のクライテリアがしっかり決まってきて、それを受けて、今回のGenomics Englandの結論として、この分野の疾患に関しては全ゲノムが有効だろうというのは20疾患ほど示されておりますので、そういったものを参考にしていくとよいかと考えています。
○水澤座長 よろしいですか。
ほかはいかがでしょうか。
どうぞ。
○三津家構成員 先生方、ありがとうございました。
少し産業応用ということを考えますと、今回、これから行われる全ゲノム解析のデータとともに、先生方の日常の診療のデータと、いわゆる生体試料の測定みたいなもの、オミックス解析をいろいろな班研究でやられているわけですけれども、その3本が上手にそろってくることによって、いろいろな研究とか治療が前に進んでいくのではないかと思っております。
先生方にお伺いしたいのは、1つ目は、素人の質問で申しわけないのですけれども、診断というところは、きょうは本当の専門家の先生方がいらっしゃっているわけですけれども、拠点病院がふえて、対象の先生方がふえたときに、診断基準みたいなものがどのようにそろえられるかというのが最初の質問です。
2つ目は今、既に全国で進んでおりますオミックスの解析みたいなものと、今回のものを組み合わせるためにこういう仕組みがあればよいか、ということに対して、サジェスチョンがあれば御教示いただきたいのです。
○水澤座長 お願いします。
○松本参考人 例えば、IRUDとかオミックスに関連して研究協力をいただいている拠点の先生方とか、こと現実的なところを考えていきますと、疾患をappropriateに診断できているという病院のクオリティーとか、そういうところはまだかなりばらつきがある状況ではないかと考えます。
まして希少疾患の場合は、実は有名な病気でも見たことがない先生というのはたくさんいらっしゃるわけで、結局そこを逆に結果としてつないだのがゲノム情報だったように思うのです。ですから、最初からある疾患名を疑っても、遺伝子診断をしたらがらりと入れかわってしまうようなことは、全く珍しいことではないという現状を考えますと、双方向でつくっていくようなシステムが要るのではないかとは考えます。ただ、いわゆるゲノム情報等でつながっていきますので、それは前向きに考えると、できないシステムではないのではないかと考えます。
○水澤座長 辻先生、お願いします。
○辻参考人 一般論としては、日本の診療の診断精度は極めて高いと思います。もちろん、超希少な疾患のことはちょっと横に置いて、一般的に海外とお話をしていても、非常に診断精度が高いということはむしろ誇るべきである。日本の製薬企業は海外ばかり見ていますけれども、もっと国内をちゃんと見てほしいと思います。それは非常に強い要請です。
ただ、臨床情報とオミックス情報なりゲノム情報なりをどのように統合するかということに関しては、多分大切なことだと私も思いまして、それはなかなか難しい。日本の電カルの問題、EMRの問題もあって、なかなか統合しにくいというのがあって、大きな課題だと思います。
提案ですけれども、もしある程度の規模でゲノム解析研究をするということになっていくと、プロジェクトとして組んで、前向きのコホート的な形でもって、どういう臨床情報をどれだけ集めますかということをしっかり定義して、それを前向きに収集していくということをプロジェクトとしてやったらいいと思うのです。そうすると、全体の統合されたデータベースは非常にいいものになってくると思います。単に日常診療で行われている電子カルテ情報を抽出してきても、なかなか十分なデータにならないと思うのです。
もう一つ考えなければいけないのは規模です。例えば、私が言っているのは、数千人あるいは数万人という規模で収集しようとすると、これは物すごく負担が大きいことになってきて、そのクオリティーとデータの規模とのバランスをどうとるかという問題もあるので、それを本当にやろうと思ったら、かなりのマンパワーというか、エネルギー、人の数、システムを構築してやらなければいけないので、単に臨床の医者に、何かデータを入力しろというのでは済まないように思うのです。ですから、データ収集の体制をきちんとつくったほうがいいと思います。
理研の30万人プロジェクトで、かなり腕力を持ってサンプル収集と臨床情報の収集をしてこられましたけれども、データのクオリティーとデータの規模の両立というのは難しかったのではないか。鎌谷先生に御意見をいただいたらいいのですけれども、規模に応じた形の適切なクオリティーをどこに設定するかということは、現実的にはしっかり議論したほうがいいのかと感じています。
○水澤座長 小崎先生、お願いします。
○小崎参考人 私のスライドの16枚目に、こういう希少疾患、新しい疾患を発見するためのデータベースが、いずれは希少疾患のレジストリーになるという話をしましたが、ある程度詳しい臨床データを集めておいて、患者の所在がわかると、ある疾患あるいはパスウェイに対して治療法が示唆されたときに、患者さんが日本のどこにいらっしゃるのか、どのぐらいの数がわかるのかというのと、今は製薬業界もオーファンドラッグに力を入れておられると思うので、そういう意味合いは非常に強いかと思いますし、そこでまた新たにオミックスの情報を集めるということもできるのかもしれません。
そういう意味では、臨床情報をある程度標準化された形で集めていくという仕組みづくりは必須だと思いますし、単にゲノムを決めるということではなく、ぜひそういう視点を加えていくべきだと考えています。
○辻参考人 追加の提案なのですけれども、企業の方にぜひ考えていただきたいと思うのですが、規模を大きくしようとするとレジストリーがどうしても必要になってきます。それをしっかりやっていこうとすると予算も必要になってきますから、そこはPublic Private Partnershipでプレ・コンペティティブなところで連携して、レジストリーをつくっていって、情報も収集して、データベースをつくるということをぜひ前向きに考えていただきたいという提案です。
○水澤座長 ありがとうございました。
まだたくさんあるかもしれませんけれども、大分時間も押しておりますので、次に進ませていただきたいと思っております。
次の議題が、難病に関する実行計画の策定に向けた検討でございます。
まず、事務局のほうから、議論を進める上での論点について、資料を用いて御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○南川難病対策課長補佐 それでは、説明させていただきます。
資料4を御確認ください。本日御検討いただきたいことですが、資料4-1にありますけれども、難病領域における全ゲノム解析等の必要性・目的についてということでございます。
1つ目はこれまで御説明したとおりですが、これまでの経緯を踏まえて、難病のゲノム医療に関するこれまでの取り組み、我々は研究・医療とやってきましたが、それに対する課題、今回は途中でも、例えばクリニカルシークエンスの課題とかをまた指摘されましたが、どのように考えて、また、難病領域における全ゲノム解析等の必要性・目的についてどう考えるかという論点です。
次は数値目標なのですが、2の1つ目の○にありますとおり、後ほど参考資料で御説明しますが、現在、指定難病は333疾病で、受給者証所持者数は約89万人いるとされています。
難病領域におけるゲノムデータ規模の整備に当たって、対象疾患や症例数に関する数値目標の設定の考え方を整理する際に、難病の中から対象疾病に優先順位をつけつつ全ゲノム解析等を行う検体数について、これまでの研究実績や統計学的な観点を含めて検討してはどうかということでございます。
それを検討するに当たって、以下の3つの類型に分け、それぞれ必要生・目的・優先順位を検討してはどうかと記載しています。
1つ目は単一遺伝性疾患ということで、定義としては、単一の遺伝子の変異により起こる遺伝性疾患。これについて、対象疾患の優先順位を検討するに当たり考慮すべき点は何か。例えば、原因遺伝子の数であったりとか、遺伝子検査が保険収載されるか否かなどが考えられるとは思っております。
次に、数値目標を検討するに当たり考慮すべき点は何かということで、1症例当たりの必要な検体数であったりとか、疾患の症例数に応じた数値目標の定め方(全数、一定数)ということをさせていただきます。
多因子疾患については、複数の遺伝子を加えて、環境や生活習慣、老化がかかわって発症する疾患とさせていただいていまして、これについても対象疾患・優先順位・数値を検討するに当たり考慮する点は何かということをさせていただいています。
(3)の部分で、現時点で疾患概念が確立していない新規疾患として、対象疾患と定めることは困難ですが、この領域の全ゲノム解析をどう考えるかということで、昨日行われた法制化の見直しの検討会においても、ちょうど小児慢性特定疾患から指定難病に行くに当たって、客観的な診断基準の部分がネックになって、それに対して疾患概念の確立が重要だみたいな御指摘を、昨日の検討会でもされていました。そのようなことも含めて、この(3)の部分の領域について御議論をいただければと思っています。
人材育成・体制整備は次回の議論として、括弧とさせていただいているところです。
2ページ目を見ていだたきますと、概念図をつくらせていただいております。難病法上の難病というものは、難病法上は発症機構不明、治療法未確立、希少疾病、長期療養の4つの要件とされていますが、その中の指定難病というものを厚生労働省で指定しておりまして、そこには要件として、客観的な診断基準の確立というものが入ります。
さらにその中に、今回調査をしまして、単一遺伝子疾患が含まれる疾病ということで約230疾病。そして、そこには2つに分けていまして、単一遺伝性疾患のみのものと、単一遺伝性疾患と多因子性が混在したものが約80疾患あるということで分けさせていただいています。
それぞれ(1)の領域、(2)の領域、(3)の領域は、先ほどの資料の文字の(1)(2)(3)に該当している部分ということになります。
参考資料1を御確認ください。今回の検討に当たって、指定難病にかかる遺伝子関与の調査についてということで、333の指定難病に対応する約60の難治性疾患政策研究班にメールにて調査を行いました。
調査について、下に円グラフがございますが、青い部分が単一遺伝子性疾患で構成されるもの、緑の部分が多因子性疾患で構成されるもの、赤い部分が両方で構成されるものということで、青い部分と緑の部分の割合という形になっています。
次のページを見ていただきますと、最終的な調査結果なのですが、333について、まず単一遺伝性疾患のみで構成されるものは153疾患ということになります。
次に、単一遺伝子性疾患と多因子性疾患で構成するのが81疾患。そして、多因子性疾患のみで構成されるのが99疾患という結果になっています。
これも研究班とまだやりとりが続いていまして、一応これは暫定版として提出させていただきます。
調査結果については、右のその他の調査結果ということで、原因遺伝子は1つであるか2つであるかという意味で言うと、A類型にあるものは、原因遺伝子が1つと言っている92の中で、その中の分布としてA類型が73、B類型が19。2つ以上というのが119で、A類型が69、B類型が50となっています。
単一遺伝子性疾患が疑われるが原因遺伝子が不明な症例数の有無という意味で言うと、それぞれ記載されているとおりです。
B類型の中で、いわゆる単一遺伝子性疾患の割合が何パーセントあるかということで、これも調査しまして、10%未満が12、10%以上が26、不明が43という形でまとめさせてもらっています。
次のスライドを見ていただきますと、単一遺伝子性疾患のみと言われている153について、受給者証で縦軸にだっと並べさせてもらったものです。一番右のものは網膜色素変性症という形で、約2万の患者数がいるということになっています。
次のグラフについては混在しているということで、これも棒グラフを見ていただければと思います。
下に受給者数について表になっていますが、徐々に単一遺伝子性疾患のみで構成されるほうが少なくて、B類型になると、一番右はパーキンソン病で12万ぐらいありますけれども、Aと比較してかなり少ないということがわかると思います。最後、C類型という形で、多因子性疾患のみで構成されているものは、1万以上の受給者数がいるのが14疾患もあって、一番右は潰瘍性大腸炎で、その次はSLEという形になっています。
その次の資料は、実際に調査結果が来たものについて、表として333をまとめさせていただいたものでございます。
私からの説明は以上です。
○水澤座長 ありがとうございました。
先ほどの論点でございますけれども、3つありまして、本日は1番と2番について御議論をいただき、残された時間でできる限り議論を深めていきたいと思っております。
最初は1番のほうでございまして、難病領域における全ゲノム解析等の必要性・目的について御議論いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。御発言がありますでしょうか。
菅野先生、どうぞ。それから神里先生。
○菅野構成員 きょう、参考人の方々からいろいろな発表があったように、特に研究をターゲットとするプロジェクトでは、全ゲノム解析は避けて通れない状況かと思います。
特にシークエンスの新しい技術も出てきて、非常にまだ高価ですけれどもロングリードなどが出てきておりますので、そういうものも症例数が少ないけれども、貴重な疾患についてはロングリードを少数やることによってよい結果を得ることも可能ですので、ケース・バイ・ケースでお金のバランスを考えながら計画を立てていくのが望ましいと思います。
以上です。
○水澤座長 ありがとうございました。
神里先生、お願いいたします。
○神里構成員 私のほうからは事務局に質問という形になるかと思うのですが、今、御紹介いただいたのは、調査に関しては指定難病についての調査ということかと思うのですが、今回の疾患の対象の枠の決める範囲というのは、特段指定難病に限定してという話ではないという理解でいいのですか。
○南川難病対策課長補佐 成長戦略等には難病としか書いてございませんので、難病という意味で言うと指定難病ではなくて、まだ見ぬ4つの要件を満たす客観的な診断基準がまだないみたいな部分も当然該当になると理解しています。
○神里構成員 そうなると、さらなる基本情報みたいなものが、事務局のほうから今後出される予定はあるのでしょうか。
○南川難病対策課長補佐 後の数値目標とかについては、今回出した資料については、現在、指定難病に対する患者数なのですけれども、例えば指定難病ではないものに対して波及する取り組みとして、先ほど小崎委員からあったIRUD解析数だったりとか、そのような資料も必要に応じて提出していきたいと思っております。
○水澤座長 よろしいでしょうか。
森さん、どうぞ。
○森構成員 ありがとうございます。患者の立場から御質問させていただきたいと思います。
今、わかっていないことが大変多くて、指定難病の検討委員会のほうにも上げていけない疾病が非常にたくさんあります。そのことで、指定難病になっているか、なっていないかによって、今の日本の難病対策は大きく支援が異なりますので、いち早く指定難病にしてほしいといった患者の声は大変大きいです。
まず、診断がつかなくて困っておられる患者さん、それから、薬があるのにその患者さんのところになかなか届かないといった状況もたくさんありますので、ぜひ、このゲノム診断の解析のほうで進んでいければと願っています。
難病の医療提供体制の構築で、例えば東京都ですと非常に専門医の数も多く、施設も多くありますけれども、地方のほうではまだ、なかなか難病の専門の医師にかかることができない患者さんも多くおられますし、拠点となる病院の施設というのか、そういうところも非常になかなか厳しい点があります。
先ほどインフォームド・コンセントなども早期にという話がありましたけれども、全ゲノム解析実施のためには、例えば患者はどこで、どのような協力、参加が必要になってくるのかというところを、まず教えていただきたいと思います。
○水澤座長 それでは、まずは、事務局。
○南川難病対策課長補佐 体制の件はあれなのですけれども、先ほどGenomics Englandのところでお示しした例を言うと、今回は参考の御議論なので、最終的に日本がどうすべきかは今後御議論していただければと思いますけれども、患者さんについては、まず、一つはGenomic Medicine Centresに受診して、同意を受けて、サンプルを提供する。そのときに一定程度、どこまで返してもらいたいかみたいな部分は、基本的にはここまで絶対返ってきますという話があるのと、さらにオプションでここまで返してもらいますみたいな部分もやりながら、患者さんに戻ってくるということは一つやっていく中で、臨床情報だったり検体を提供して、それを解析したものを、自分にも一定程度戻ってくるけれども、それは研究に使うことそのものが前提であるという体制をGenomics Englandはとっていると理解しています。
プラスアルファで申し上げますと、患者さん側のPatient Panelという形で、患者さんが会議体をGenomics Englandの中では持って、実際の運営に対するコミッティーに対して、そのパネルとして意見を出していたりとか、そのような取り組みをGenomics Englandは行っていると承知しています。これは次回、体制を議論する際にもまた改めて、患者さんの参加の仕方は御議論いただければと思っております。
以上です。
○水澤座長 私も質問があります。今のお話ですと、日本でそれに相当するのは難病診療拠点病院かと思うのですけれども、IRUDにもそういう拠点病院がありますが、必ずしも対応していないということがあります。今、難病の診療拠点病院はどれぐらい整備されているか、大体わかれば参考になるかと思いました。
○南川難病対策課長補佐 現時点で35都道府県に整備されていまして、数値としては今すぐ正しいのは出てこないのですが、70ぐらいあると承知しています。
○水澤座長 そういう現状でございます。ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
最初の菅野先生の発言にありましたけれども、その必要性はよく認識されたという感じで、松本先生は帰られましたけれども、(WGSを)しないほうがおかしいという御発言もございました。そういう理解かとは思っておりますけれども、この点はよろしいでしょうか。
辻先生、どうぞ。
○辻参考人 領域にもよると思うのですけれども、例えば精神・神経医療研究センターの西野先生のお話などをお伺いしますと、筋疾患の場合にはかなりサチュレートしてきているといいますか、かなり遺伝子がわかってきているので、その場合にはパネルなりエクソームなりで十分に診断効率が高くなるということもあるようですので、全てを全ゲノムというふうにする必要は必ずしもないと思うのですけれども、保険もそうなのですが、クリニカルシークエンスとして有効に使えるところはしっかり仕組みをつくって、その上で全ゲノムというふうに2段階に組んでも現実的かと感じました。
○水澤座長 そうですね。先ほど来、何名かおっしゃっていらっしゃるように、その領域領域での現状を考慮してやり方を考えていくということは、十分可能ではないでしょうか。
三津家さん、どうぞ。
○三津家構成員 必要性は、ほとんどの先生方も言葉は要らないというお話なのですけれども、目的のところに、これはお考えがいろいろあるかと思いますが、私的には、単に日本の患者さんだけではなくて、こういう病気というのは非常にいろいろなところで人種差があるものもあるということで、最低限東アジア、場合によっては東南アジアの方々への福祉に資するという、高い目標というものも場合によっては加え得るのではなかろうかと考えているのです。
○水澤座長 ありがとうございます。
これはたしか松本参考人からの御発言にもありましたし、小崎先生もおっしゃっていたように思います。実際にそういう国際的連携が進んでいますし、レアな病気が多いので、恐らく国際連携しないとなかなかできないという部分もあろうかと思いますので、その辺のところの再確認は非常に重要だと思います。ありがとうございます。
ほかはどうでしょうか。
松原先生、どうぞ。
○松原構成員 国際連携のことで今、お話がありましたけれども、データ共有とかいうことで成果をどんどん追求していくと、どうしても欧米との連携というのが今のところは中心になってきていると思うのです。
ただ、三津家構成員のおっしゃったのは多分、まだ全ゲノムがなかなか自分たちではできないところの症例に対して、日本でやってあげるといった観点からではないかと思うのです。実際に私たちがやっていると、東南アジアとかいろいろな国からも依頼されることはあるのですけれども、そういったものに手を差し伸べる、そういった検体を集めてやるということは、いま一つ組織的にはできていないと思いますので、そういう観点からの国際化といった面も必要かと私は思います。
○水澤座長 ありがとうございました。非常に重要な観点だと理解しております。
よろしいでしょうか。大分時間が押してきたのですが、もう一個議題がございます。数値目標等についてということで、対象疾患や症例数の考え方というところでございまして、こちらについての御議論をいただければと思います。
いかがでしょうか。
三津家さん、お願いします。
○三津家構成員 私自身の頭の整理の中でということで、きょう、松本先生のほうから、1例であっても非常に大事だというのが、まさにきょう事務局のほうで提示されたAということになるかと思うのですけれども、もう一つ、辻先生がかなり強調されたところは、きょうのお話で、この事務局の絵のBに入るものという理解でよろしいでしょうか。
○南川難病対策課長補佐 そうですね。別紙1の(1)の領域で、辻先生がおっしゃったのは、パーキンソンやALSの話なので、おっしゃるとおりBです。
○辻参考人 おっしゃるとおりです。研究としてもアプローチしやすいのではないかということです。
○水澤座長 松原先生、どうぞ。
○松原構成員 A、B、Cという分類で物事を考えていくのは非常にわかりやすいとは思うのですけれども、その一方で、資料4の数値目標の(1)(2)(3)の(3)に当たるところです。現時点で疾患概念を確立していない新規疾患は、やってみないと単一遺伝子か多因子かもわからないのです。
でも、この中に小崎先生がおっしゃったホームランを狙えるものがいっぱいあるわけです。この野球も適当かどうかわからないのですけれども、こつこつとヒットとかで稼いでいくか、あるいはホームランを狙ってやっていくかということになると、この(3)の部分は非常に研究的意義は大きいかと思います。
ただ、ここに全部投資してしまうと、大穴を狙うようなことになって潰れることもありますので、バランスは必要かと思いますけれども、A、B、C分類に余りとらわれ過ぎないで、特に全ゲノム解析というのは、やってみて、あっと驚くものがいっぱい出てきますので、そういった観点からの目配りも必要かと私は考えます。
○水澤座長 ありがとうございます。
A、B、Cと(1)(2)(3)はちょっと違うのですが、(3)についての非常に貴重なコメントをいただきました。
菅野先生、お願いします。
○菅野構成員 現実的な視点から言うと、極端なことを言いますと、本当に患者さんが集まるのか。両方とも、例えば原因がまだわかっていない遺伝性の単因子病からやっていくみたいな計画をつくるとして、でも、実際にどれだけ本当に患者さんが集まるのだろうかという観点は、一度考えておく必要があるかと思いました。
一方で、辻先生がおっしゃった単因子病で患者数の多い方々を中核でやるとなると、辻先生もおっしゃっていましたけれども、体制をどうするのか。サンプルを集めるときのやり方をどうするのか。そういう、言ってみればロジスティックのことが本当にできていないと、そういうことはエフェクティブにならない。一見それは単因子ですから、下手すると細かく型に分かれてしまうので、1万人でいいと思っていたら10万人やらないとうまくいかないということまで起こってくるというところもありますので、そういうところで、限られているお金ですから、ある意味既存のロジスティックがかなりちゃんと充実しているようなところも含めてやっていくというのが、若干現実的かと思います。
ただ、辻先生がおっしゃったように、こういうのをきっかけにして、産学官という体制もつくって、これを呼び水にしてきちんとしたものをつくっていくみたいな取り組みもまた必要になってくるかと思います。
○水澤座長 ありがとうございます。大変重要なロジスティックというか、予算は誰も知らないのですけれども、議論はまずやらなければいけないということかもしれません。
小崎先生、どうぞ。
○小崎参考人 2点なのですが、Genomics Englandでは、rare undescribed monogenic disordersという、(3)に当たるようなものが明示的に書かれているので、必ずしもこの(1)(2)(3)という分け方ではないやり方もあるのかと思いました。
もう一点は指定難病の病気の指定のプロセスにかかわる経験があるのですが、成人の患者がある程度いて、しかも重症であるということが指定難病として認定されるために必要なのですが、小児期に亡くなってしまうような患者さんはそこには入ってこないので、それが小児慢性毒性疾患の精度でカバーされているかどうかわかりませんが、そもそも指定難病という名前にするかどうかは別にして、国が認識して、対応していく病気のリストをふやしていく。具体的にはヨーロッパのOrphanetのようなものに加えていくという動きも必要ではないかと考えています。
小児科医としての観点から発言させていただきました。
○水澤座長 ありがとうございます。
今の点は何かコメントはありますか。小崎先生の、難病をふやしていくというか。
○南川難病対策課長補佐 まず、菅野先生のロジスティックの部分については御指摘のとおり同時並行で考えていくものだとは思うのですけれども、そこを考えるに当たっても、いずれにしてもどのような対象疾患であり、どのようなものがあるかというのを今回御議論いただければと思っています。
続きまして、小崎先生のおっしゃった部分については、実際に小児慢性特定疾患と指定難病についての移行の部分については、法制化見直しの議論をされていますので、その中でも議論されていくこととなると思いますが、他方、いわゆる指定難病制度そのものについては一定の要件をもって、難病制度と指定難病制度の医療費助成という観点もいろいろな要件を持ってやっているので、それに基づきながらやっていく部分もありつつ、当然、いろいろ検討していきたいと思っています。
○水澤座長 それでは、辻先生。
○辻参考人 ロジスティックスに関連するのですけれども、どれだけの規模の全ゲノム解析をするかということをよく考えたほうがよくて、ある規模以上のものに、例えば万とかというオーダーで全ゲノム解析をするとなると、これはそういう拠点というか、会社かわからないですけれども、そういうセンターをつくらないと実現しないと思うのです。大学の一研究室とか、幾つかの研究室が分散型であってもできないと思うのです。
そうすると、日本はそういったものをつくってもなかなか継続性がうまくいかないのです。これまで見ても、理研なり幾つかあると思うのですけれども、なかなか継続は難しいというのがあるので、それの制度設計をある期間集中してやればいいと考えるのか、あるいは発展するような形で、将来的にも継続できる形の仕組みをしっかりつくるのか、こういう規模でビッグセンスをやろうとすると、私たちは余り経験がないので、かなり難しいと思うのですけれども、継続的に発展できる仕組みなりをつくっていただくのがいいのではないか。
○水澤座長 ありがとうございました。
どうぞ。
○三津家構成員 今、議論になっている点と少し関係あるので、事務局側に御質問しようと思っているのですけれども、この閣議決定された文書を読みますと、資料1の目的の中ほどのところなのですが、これまでの取り組みと課題を整理した上で、数値目標や人材育成と。
数値目標と書いてあるのですけれども、ここの数値目標の中に、集める数とかそれだけではなくて、どれぐらいの期間というところが入るのかどうか。
つまり、先ほど菅野先生がおっしゃったように、非常にレアなものを集めるとすると、本当に集まりますかというお話もありますし、ある程度数があるものですと、辻先生がおっしゃるように体制をつくるところからばちっとやらなければいけないということで、この数値に関して、この検討会で時期の長さということに関して述べることがふさわしいのかどうか、そこはどう考えておられるか。
○南川難病対策課長補佐 この数値目標はそこも含めて御議論いただけばと思います。
Genomics Englandを参考にすると、Genomics Englandは10万という目標を掲げて、実際には5年程度かけて集めてきていますし、どのような対象疾患、対象疾病、そして、どのような規模だとどれぐらいの時間がかかるかということも、体制も含めてかかわってくるかもしれませんけれども、きょうはどちらかというと本当に必要な数値目標だったりとか、研究実績とか、統計学的な観点から御議論をいただければと思いますが、最終的には期間ということも含めた御意見をいただければ参考にしていきたいと思っています。
○水澤座長 ほかには。
松原先生、どうぞ。
○松原構成員 希少疾患の場合、検体数が集まるかどうかというお話が先ほどから出ておりますけれども、例えば資料3-1の8ページには、松本先生のところでは6,000例以上の未解決症例をお持ちだということで、片親を入れても1万2000検体が既にあるということがございます。成育でも、これまで普通のエクソームとか、ほかの解析で解決できていないものが数先検体あります。親も含めると万を超えるのです。
これはすぐお金をつけてあげると言えば、冷凍庫にあるもので、あしたからでもすぐ解析に出せますので、数がなくて困るということは絶対ないと思います。むしろ逆で、どれをセレクトして出そうかという逆の判断が難しくなるという状態だと私は考えております。
○水澤座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
そろそろお時間が迫ってきているのですけれども、ぜひという方はおられますか。
鎌谷先生、どうぞ。
○鎌谷参考人 今、一般的な議論としまして、レアな疾患で、特にメンデル遺伝性が証明されるようなものですと、シークエンスをして原因がわかるだろうと。1人やってもそれは役に立つ。
それに対して、多因子疾患ですと数が絶対必要で、たくさんやらなければ出ない。その二項対立でお話が進んでいるように感じるのですけれども、これは辻先生の御発表にもありましたが、多因子疾患の中に1遺伝子のバリアントで説明できるものがあるということが最近明らかになってきております一方、明らかにレアで、メンデリアンではないかという患者さんを集めて解析したところ、ポリジェニックな、コモンなheadbilityが証明されたといった驚きの論文が、昨年『Nature』に発表されております。
ですので、そういったことから考えると、2つに分けてやるというよりは、どちらも全体として進められるようにしていったほうが、これだけ狙っていくというよりも、本当の原因にたどり着く可能性が少し上がってくるのではないかと考えております。
○水澤座長 ありがとうございます。
鎌谷先生は多因子のほうを随分やってこられたというとで、大変貴重な御発言をいただきました。
よろしいでしょうか。お時間をちょっと過ぎてしまったのですけども、本日は予定した御議論をいただきましたので、ここまでとしたいと思います。
次回の日程などについて、事務局からお願いいたします。
○南川難病対策課長補佐 次回の詳細については調整でき次第、追って構成員の皆様に御連絡させていただきます。
○水澤座長 それでは、本日は以上で終了いたしたいと思います。どうもありがとうございました。