2020年2月10日 第1回厚生労働省統計改革検討会 議事録

日時

令和2年2月10日(月)15:00~17:00

場所

厚生労働省 専用第21会議室

出席者

<構成員(五十音順、敬称略)>

 

<オブザーバー(敬称略)>

議題

(1)厚生労働省統計改革検討会の開催及び座長の選任について
(2)厚生労働省統計改革ビジョン2019及び工程表の策定について
(3)総務省統計委員会及び統計改革推進会議における議論の状況等について
(4)統計改革ビジョンの進捗状況について
(5)その他

議事

 

○武藤政策統括官付参事官 それでは定刻近くになりましたので、ただいまから第1回厚生労働省統計改革検討会を開会させていただきます。委員の皆様方には、お忙しい中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。私は、政策統括官付参事官の武藤でございます。本日が第1回目の開催となりますことから、座長が選出されるまでの間、司会を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。最初に、開催に当たりまして、土屋厚生労働審議官から御挨拶を頂戴したいと思います。よろしくお願いいたします。
○土屋厚生労働審議官 厚生労働審議官の土屋でございます。委員の皆様方には大変御多忙のところ、この厚生労働省統計改革検討会に御参集をいただき、誠にありがとうございます。御案内のとおり先般、厚生労働省が所管する毎月勤労統計におきまして、長年に渡り、不適切な取り扱いをしたことが原因となって、雇用保険などにおける給付の支払いが不足をして、国民の皆様に多大な御迷惑をおかけするという事態となりました。
 このような中で、一連の統計不適切事案を踏まえ、政策立案や学術研究あるいは、経営判断の礎として、常に正確性が求められる公的統計の重要性に対する基本認識を明確にし、真に、統計ユーザーや国民の視点にたった統計を作成できる組織へと私どもが生まれ変わるために、昨年7月に、厚生労働省統計改革ビジョン2019有識者懇談会を立ち上げさせていただいたところでございます。この懇談会におきましては、今日お集まりの委員の皆様方に精力的に御議論いただきまして、8月20日に統計問題再発防止策や、統計行政のフロントランナーを目指すための提言をお示し頂きました。この提言を踏まえまして、厚生労働省統計改革ビジョン2019を、8月27日に取りまとめますとともに、具体的な統計改革のスケジュールを示す工程表を10月8日に取りまとめ、また、政府全体の様々な動きもございましたので、これにも対応しつつ、順次、これを実行に移してまいったところでございます。今回設置をさせていただきました、この厚生労働省統計改革検討会につきましては、提言において、学識経験者や有識者との継続的な関係性の構築というものが求められていたこと、そしてまた、ビジョンの進捗状況の管理の重要性などの御指摘もいただいていたことを踏まえまして、ビジョンの策定に携わっていただいた皆様方に、引き続き委員をお願いさせていただいたところでございます。提言に盛り込んでいただいた理念や、統計改革の内容が、実際に、どのように具体化されていくのかにつきまして、今後とも継続的に点検をしていただくとともに、忌憚のない御意見をいただければというふうに考えているところでございます。今後とも、こうした機会を継続的に持たせていただきながら、統計改革に着実に取り組んでまいりたいと考えております。本日も、皆様方の忌憚のない御意見を賜りますようお願い申し上げまして、私からの挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○武藤政策統括官付参事官 次に、審議に入る前に、本検討会の委員の御就任について報告いたします。資料1、厚生労働省統計改革検討会開催要領の別紙、構成員名簿にございます皆様となります。
 さて、本日は第1回目の開催となりますので、各委員、オブザーバーの皆様方の御紹介をさせていただきます。フレイ法律事務所の弁護士梶木委員です。
○梶木委員 梶木でございます。昨年の予算を受けて、新年度改革が着実に進んでいくように念じております。どうぞよろしくお願いいたします。
○武藤政策統括官付参事官 東京大学大学院経済学研究科教授の川口委員です。
○川口委員 川口です。よろしくお願いします。
○武藤政策統括官付参事官 一橋大学経済研究所教授の神林委員です。
○神林委員 よろしくお願いいたします。
○武藤政策統括官付参事官 大正大学地域創生学部教授の小峰委員です。
○小峰委員 小峰です。よろしくお願いします。
○武藤政策統括官付参事官 慶應義塾大学総合政策学部教授の中室委員です。
○中室委員 よろしくお願いいたします。
○武藤政策統括官付参事官 立正大学学長の吉川委員につきましては、本日、御都合により御欠席です。青山学院大学経営学部プロジェクト教授の美添先生です。
○美添教授 よろしくお願いします。
○武藤政策統括官付参事官 美添先生には、オブザーバーとして御参加いただくことになっております。
 続きまして、事務局メンバーについて御紹介いたします。厚生労働審議官の土屋です。
○土屋厚生労働審議官 土屋です。よろしくお願いします。
○武藤政策統括官付参事官 政策統括官(統計・情報政策、政策評価担当)の鈴木です。
○鈴木政策統括官 どうぞ、よろしくお願します。
○武藤政策統括官付参事官 政策立案総括審議官の山田です。
○山田政策立案総括審議官 よろしくお願いします。
○武藤政策統括官付参事官 以下の事務方の紹介は、時間の都合上省略させていただきます。本日の議題の1つ目でございますが、検討会の運営、座長の互選等について担当から御説明を申し上げます。
○菱谷企画官 それでは、資料1の本検討会の開催要綱に従いまして、検討会の目的、主な検討事項、運営等につきまして御説明させていただきます。資料1を御覧ください。検討会の目的につきましては、一連の統計問題への深い反省に立ち、その再発防止を図るとともに、真に、国民や統計ユーザーの視点に立った公的統計を作成すること等を目的とした「厚生労働省統計改革」を推進するため、専門的見地から定期的に検討を行い、意見や助言を得ることでございまして、年に2回程度、定期的な開催をお願いしたいと考えております。続きまして、2の検討事項です。検討会における検討事項につきましては、厚生労働省統計改革ビジョン2019に基づく取組の、進捗状況の確認及びビジョンの見直しに関すること。総務省統計委員会や統計改革推進会議における検討結果等を踏まえ、必要な対応や見直しの検討を行うこと。その他、統計業務の改善、人材の育成等に関することです。
 4の運営等におきましては、本検討会につきまして、厚生労働審議官が別紙の有識者を参集して開催し、検討会には座長を置き、構成員の互選により定めることとしております。その他、検討会の運営等に係る細かな規定につきましては、(3)~(10)まで定めているところでございますけれども、こちらの説明は省略させていただきます。
○武藤政策統括官付参事官 ただいまの説明のとおり、4の運営等において、本検討会は互選により構成員のうち、1名の方を座長として選出することとされております。これにつきましては、どなたがよいか御発言いただけないでしょうか。
○梶木委員 委員の梶木です。本検討会の座長ですけれども、昨年夏の統計改革ビジョンの有識者懇談会で座長を務めていただき、また、提言の取りまとめに御尽力を頂いた小峰先生が適任であると考えますが、いかがでございましょうか。
○武藤政策統括官付参事官 ただいま、梶木委員より御提案のありましたように、小峰委員にお願いすることとしてよろしいでしょうか。

 (異議なし)
○武藤政策統括官付参事官 御賛同いただきましたので、本検討会の座長を小峰委員にお願い申し上げたいと思います。それでは、以後の進行につきましては、小峰座長にお願いいたします。
○小峰座長 それでは御指名ですので、座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。最初に私から一言御挨拶をさせていただきたいと思いますが、昨年私が座長を務めまして、皆さん御参加いただいて、厚生労働省統計改革ビジョン2019有識者懇談会を3回開きまして、大変大急ぎだったのですが、精力的に御議論いただいて、8月に厚生労働省統計改革ビジョン2019の策定に向けた提言を取りまとめいただきまして、大変ありがとうございました。この提言を踏まえて厚生労働省において、厚生労働省統計改革ビジョン2019を取りまとめていただき、その具体的な進め方を示した工程表を策定して、現在、統計改革を進めていると伺っております。言うまでもなく、厚生労働省は重要な政府統計を所管をしておりますので、先ほど厚生労働審議官からもお話がありましたように、我々の提言を取りまとめた立場から、その後の取組状況についても、しっかりと点検をさせていただきたいと考えております。厚生労働省の統計を巡っては、いろんな問題点がこれまで指摘されてきたわけですが、これを契機として是非、厚生労働行政、公的統計への信頼を回復して、国民の期待に応える組織へと生まれ変わっていただくことを、私も願っていますので、本検討会においても必要な助言、アドバイス、またはときには厳しい指摘を、いとわず行っていきたいと考えております。委員の皆様におかれましても忌憚のない御議論をいただきますようお願い申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 早速議論に入りますが、今、御説明いただきました資料1全体について何か御質問、御意見等ありますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは資料1の開催要綱に基づいて、今後運営をさせていただくことにいたします。
 それでは、議事2、厚生労働省統計改革ビジョン2019及び工程表の策定について、それから、議事3、総務省統計委員会及び統計改革推進会議における議論の状況等について、事務局から併せて御説明をお願いいたします。
○菱谷企画官 私からは掛け足になって恐縮ですが、資料2~7を御説明いたします。まず、資料2の1ページ目を御覧ください。昨年8月20日にビジョン2019の策定に向けた提言を取りまとめていただきました。提言を踏まえまして、提言に記載されていた「すべきである」といった語尾を言い切りの「する」などに訂正し、一部の委員から出ていた意見等については、削る形にしておりますが、それ以外は基本的には提言を踏襲する形で、8月27日に厚生労働省統計改革ビジョン2019を取りまとめました。ビジョンの内容については、原則提言と同じでありますが、そのコンセプトとしては、基本的な考え方の箇所に記載されておりますように、統計の利活用を通じて統計の質の向上や、統計や品質に関する情報の開示を進めていくこと。透明性の確保の重要性などが強調されております。
 第2章のところですが、再発防止策については、組織の改革とガバナンスの強化、統計業務の改善、統計に関する認識・リテラシーの向上を3本の柱としており、その具体的な内容については、2、3ページ目に記載されております。また、有識者懇談会では、単なる再発防止に留まることなく、統計行政のフロントランナーを目指した取組の必要性も強調されていたことから、3ページ目の中段にありますように、個票データの一層の有効活用に向けた取組の推進、それからEBPMの推進などにも取り組んで行くこととしております。
 また、ビジョンをどのように進めていくかの工程表を策定すること。第4章のところです。それから工程表にのっとって厚生労働省統計改革ビジョン2019の進捗状況を確認していくための、常設の検討会の設置などを盛り込んでいたところです。
 続いて、資料2-2の表紙を御覧ください。工程表については、ビジョンの内容を具体的にどういうスケジュールで行っていくかを明らかにする形で、昨年10月8日に策定いたしました。スケジュールについては、すぐに取り組むべきものもあれば、システム改修や人材育成など、数年をかけて取り組んでいくべき内容もありまして、事案に応じて、いつ何に取り組むかを書きわけて記載しているところです。また、表紙にありますように、学識経験者等による統計改革を推進するための検討会を設置し、年2回程度、工程表の進捗管理、進捗状況を確認していくことなども記載しており、本日はその検討会の第1回目として開催しているものです。なお、工程表を策定するに当たりましては、提言やビジョンの多岐にわたる内容を分かりやすく、管理をしやすく記載する観点から、内容に即しまして、おおむね5本の柱立てに再編しております。有識者懇談会の提言やそれを踏まえたビジョン2019の内容については、この工程表に何らかの形で落とし込みが行われております。
 それでは、今後、進捗を管理していくことになる工程表の内容を御説明いたします。1ページ目を御覧ください。1つ目の柱については、適正な業務ルールに基づく業務の遂行等に該当するガイドラインの作成と、PDCAサイクルの着実な実施等について取りまとめております。これは一連の統計問題を踏まえまして、一連の統計プロセスを可視化した標準的なガイドラインの作成や、業務マニュアル、定期点検のルール化、チェックリストの策定などを定めております。こちらについては、今年度は標準的なガイドライン等を作成する前段階として、省内各統計の実態の把握や、課題の整理等を行うとともに、第三者が誤り等を報告するための相談窓口の設置などに取り組むこととしております。来年度については、調査研究を実施の上、ガイドラインを作成するとともに、順次各統計のマニュアルを策定することなどを位置付けております。なお、こうした作業の進捗状況については、追ってフォローアップの箇所で御説明いたします。
 2ページ目です。2つ目の柱として、システムの見直しに該当する情報システムの適正化について取りまとめております。こちらは毎月勤労統計で用いられているCOBOLをはじめといたしまして、レガシー化した情報システムの適正化に向けた調査研究を実施し、全体のシステムの移行方針を確定した上で、順次優先順位を付けながらシステムの見直しをしていくことを定めております。問題となりました毎月勤労統計のCOBOLについては、急ぎ、なにがしかの言語に置き換える作業を行うことも可能ではありますが、使える人が省内に少ない状況になると、結局またブラックスボックス化しかねないことを踏まえますと、今後の厚生労働省の統計関係職員のプログラム等に関する人材育成策とも連動させながら、システムの在り方の全体を考えていく必要があると考えております。今年度は、来年度の調査研究に先立ちまして実態把握と調査研究の仕様書の策定を行っており、来年度はいよいよ移行方針の確定等を進めてまいります。また、こうした検討に当たりましては、適宜RPAの導入などについても可能性を模索してまいりたいと考えております。
 3ページ目です。3つ目の柱として、組織の改革とガバナンスの強化、統計に関する認識リテラシーの向上等について取りまとめております。組織改革、体制整備に関しましては「開かれた組織」、「外部チェック機能」の強化等に努めるため、外部有識者の活用、政策所管部局との人事交流、適切な予算、組織要求に努めていくことなど定めております。また、人材育成・研修の充実については、段階的な研修体系の整備や幹部職員向けの研修の実施などを定めるとともに、統計人材の計画的なキャリアアップを図っていくことなどを定めているところです。
 4ページ目です。4つ目の柱については、統計行政のフロントランナーを目指した取組にも関連して、個票データの一層の有効活用に向けた取組や、データ利活用検討会の設置及び検討など、データの利活用を一元的な保存の推進について定めております。こちらについては、調査票情報の二次利用、行政記録情報の利用促進などをどのように進めていくかについて、今年度中に検討会を設置いたしまして、今年の春からでも具体の検討を開始できるように、今年度はこれらの準備を進めているところです。
 5ページ目です。統計行政のフロントランナーを目指した取組に関する取組ですが、EBPMの実践を通じた統計の利活用の促進について定めております。大きな内容は2つありますが、1点目は下のほうになります。有識者懇談会でも御提案いただいておりました、省内若手・中堅プロジェクトチームについて、今年度、既に設置済みとなっており、来年度、具体の分析等を進めてまいります。また、そもそも厚生労働省として、EBPMにどのように取り組んでいくのかという一大テーマについて、加藤厚生労働大臣の関心も非常に高いことから、そもそも対象をどのように広げていくのか、かつ予算要求過程でどのように活用していけるのかなどについて、事務的に検討を進めるとともに、会計課等とも調整を進めていくこととしております。以上、今後、年に2回程度本検討会を開催していくこととしておりますが、その時点の進捗状況や内閣官房や総務省統計委員会等の動きも踏まえつつ、節目節目で年に1回程度工程表のリバイスなども検討していく必要があるものと考えております。
 引き続きまして、資料3-1を御覧ください。厚生労働省では統計改革を、計画的に進めていくため、厚生労働審議官をチーム長として、統計改革プロジェクトグループを設置して、その下にガイドライン作成グループ、情報システム適正化グループ、データ利活用推進グループ、EBPMプロジェクト推進グループなどの5つのグループを編成し、それぞれについてグループ長が責任をもって進捗を管理していくという体制を構築しております。また、おおむね2週間に1回程度、ビジョン連絡会議というものを開催いたしまして、政策統括官、政策立案支援審議官に定期的に進捗状況の報告を行いながら、必要な指示を受けるとともに、各グループ間の横の連携を図りながら、統計改革を進めていくこととしております。
 資料4を御覧ください。こちらについては令和2年度の予算案の概要となっております。統計改革に関する予算案の概要になっております。統計部局においては、昨年度比プラス4億円の18億円の予算案を計上しているところです。具体的には、統計改革に関するガバナンスの強化のための統計分野に知見のある非常勤の民間人材の活用にかかる経費が800万円。統計業務の改善に関連して標準的なガイドラインの作成だとか、情報システムの見直しなどの検討などを執り行う諸経費として4.6億円。統計に関する認識リテラシーなど、研修内容の拡充等に要する経費が6,000万円などとなっております。
 資料5を御覧ください。ちょっと話があっちこっち行って恐縮ですが、ここまでが厚労省の取組のザックリしたものですが、ここからは政府全体の動きについて御説明します。資料5は政府全体の統計改革の進捗状況についてです。まず、上のほうですが、総務省統計委員会では、不適切事案の再発防止、政府統計の品質向上等を目的といたしまして、点検検証部会において、重点審議を行い、その結果を昨年9月30日に公的統計の総合的品質管理を目指した取組について、という形で報告を取りまとめております。詳細な説明は省略いたしますが、もともと6月27日にあった第1次再発防止策等の比較においては、若干細かいところの修正が入っている以外、再発防止策そのものについては、あまり修正が入っていないところです。したがいまして、厚生労働省統計改革ビジョン2019にも基本的にはその内容が踏襲されているものと考えております。
 下のほうになりますが、内閣官房が事務局を務める統計改革推進会議の下に統計行政新生部会という部会を設置して、統計行政の在り方に関する総合的な検討が進められて、昨年12月24日に「統計行政の新生に向けて」という提言が取りまとめられております。
 こちらについては、資料7を御覧ください。資料7の表紙に付けております。そもそもこれは内閣官房でどんなことを議論したのかということですが、左上の所に提言の基本的な考え方とありまして、総務省の統計委員会の再発防止策は、体制だとか、ルールの整備が非常に多かったのですが、内閣官房の検討のほうは、政府全体として、組織風土や職員の意識の改革といった内面に働く対応の必要性、ミスや事案の発生そのものを抑制するような、総合的な対策に取り組んでいく必要性があることなどが記載されております。その具体策ですが、右下のだいだい色の所ですが、1つ目の話としては、統計作成プロセスに対する第三者監査の導入に向けて、総務省から統計管理官を派遣すること。それからポンチ絵には記載されてないのですが、統計の重点的な作成や見直し、チェック等を実現する観点から、基幹統計の対象の絞り込み、一般統計のうち、重要なものを重要一般統計と位置付けるなど、政府統計の区分の見直しを行うこと。2つ目の所にも書いておりますが、統計職員を支える行動理念などを策定し、国民に信頼される統計を確実かつ安定的に提供する職場風土をどのように確立していくかということ。3つ目、総務省の政府全体の中央統計機関としてのハブ機能の強化に関すること。4つ目、政府統計のプロフェッショナルとして、統計業務資格、統計データアナリストとか、統計データアナリスト補というものを新設、必置化を推進することなどが掲げられております。統計改革推進会議の提言については、政府全体の取り組む内容が非常に多くなっておりまして、統計業務資格の詳細がある程度明らかになってくる過程などで、適宜、厚生労働省としても、順次そうした人材をどのように育成していくかなどを検討し、必要に応じて工程表の見直しなどにも反映していく必要があると考えております。私からの説明は以上です。
○小峰座長 ありがとうございました。引き続き、進捗状況の説明になるのですが、関連しますので、このまま議事4に入って説明を聞いて、質疑はその後まとめて行いたいと思います。それでは、議事4の統計改革ビジョンの進捗状況について、事務局から説明をお願いします。
○細井統計企画調整室長 それでは、御説明させていただきます。統計企画調整室長の細井でございます。よろしくお願いいたします。資料8-1の1ページを御覧ください。私からは、「ガイドラインの作成とPDCAサイクルの着実な実施」と「情報システムの適正化」について、御説明をさせていただきます。有識者懇談会では、一連の統計問題について、閉じた組織の中で作成過程がブラックボックス化され、何か問題に気が付いた職員がいても、そのことが組織内で共有されないなどという事態を招いたことを踏まえ、統計業務の在り方やその進め方に関する統計業務の改善に向けた取組が必要とされたところです。
 このため、当グループでは、統計作成プロセスの透明化を図るとともに、適正な業務ルールに基づく業務遂行を徹底していくことにより、統計の品質保証を推進することを目標として掲げ、具体的には、標準的なガイドラインや個別マニュアルを作成していくこととしております。
 このことに関連する今年度の取組について、3点あります。1点目は、標準的なガイドラインの作成等関係についてです。標準的なガイドラインの策定に先立ち、現状を把握する観点から、省内各統計における業務体系やルール策定の状況などの実態調査を実施したところです。結果の概要については、参考資料8-2の2ページに概要を掲載させていただいております。
 統計等のデータの保管状況については、集計用乗率など、統計を作成するために必要な他の数値情報の保存範囲の確定に手間取りを生じていたり、業務統計の集計方法や公表スケジュールなどの公表状況に課題が確認されたところです。また、標準的ガイドラインや個別統計マニュアルを検討する前提として、国際標準規格であるBPMNの手法を用い、統計業務の流れ図を試行的に作成し、統計業務の可視化、各階層ごとのレベル感のすり合わせ、共通要素、個別統計ごとの相違等について、議論を行ったところです。今後、これらの課題を整理した上で、来年度、委託研究として実施する予定である統計業務の改善に関する調査研究に適宜反映を行い、標準的なガイドラインや個別マニュアルの作成につなげてまいりたいと存じます。
 2点目は、定期点検、コンプライアンス関係についてです。調査員の業務履行状況を国が直接確認する取組(いわゆる「コンプライアンスチェック」)については、今年度中に一定の方針を打ち出すとともに、最終的には標準的なガイドラインの中で整理していきたいと考えております。一方、一口に調査員調査と申しましても、国が事業所等の住所地情報を必ずしも全て把握しているとは限らず、世帯調査の中には調査員しか居在地が分からないような統計などがありますので、ある程度類型化を検討するなどして、具体な進め方を検討してまいりたいと考えております。
 3点目は、第三者が誤りを報告するための相談窓口の関係です。統計の誤りや統計法に基づく調査計画との乖離などを第三者が発見した場合において、専用の連絡窓口を設置し、専用電話、専用メールアドレスを今年度中に整備できるように検討を行ってまいりたいと考えております。
 続いて、2020年度の取組方針について、3点あります。1点目は、先ほど来御説明しました事前準備を踏まえ、新年度の4月にも「統計業務の改善に関する調査研究」を実施してまいりたいと考えております。現在、年度早々に研究を開始できるように調達手続を進めているところです。
 2点目は、この研究結果を踏まえ、標準的なガイドライン及び幾つかの統計を対象として、個別マニュアルを作成してまいりたいと考えております。
 3点目は、コンプライアンスチェックについてです。今年度中に作成する一定のルール等に基づき、順次コンプライアンスチェックを実施していくとともに、その進め方について標準的なガイドラインなどにも反映してまいりたいと考えております。
 次に、資料8-1、2ページを御覧ください。
 ここからは「情報システムの適正化」についてです。有識者懇談会では、毎月勤労統計の事案において、使える人が少ない、ブラックボックス化したシステムにおいて、システム改修やそのチェック体制の在り方が課題となったことなどを踏まえ、情報システムの適正化やシステムを用いたエラーチェックの徹底などが必要との御意見を頂いておりました。このため、当グループでは、汎用性が高く、容易に改修等ができるシステムの計画的な移行を図るとともに、職員等による手作業のデジタル化や被調査者への負担軽減等を推進していくことなどを目指しており、これに関連した2019年度の取組内容について3点御説明をさせていただきます。
 1点目は、情報システムの計画的な移行を検討していく事前準備として、省内の統計作成業務において使用しているシステムの実態把握を行っております。具体的には、業務統計も含め、各統計調査のどの工程でシステムを使用しているのか、調達仕様書等の有無とか、利用しているプログラム言語の具体名、各プログラム言語を理解している職員の数などについて、把握に努めているところです。
 2点目は、こうした事前準備の進捗を踏まえながら、今後の統計処理システムの方向性を検討していくために、2020年度に実施する「統計処理システムの今後の方向性に関する調査研究」の調達仕様書の作成を進めているところです。
 3点目は、システムの見直しの中で、優先して取り組む必要のある毎月勤労統計調査のCOBOLについては、プログラムそのものからプログラム仕様書を作成し、プログラムの詳細な動作に対応した仕様書のない状態を解消した上で、2点目で御説明した今後の統計処理システムの方向性の検討を踏まえながら、新たなプログラム言語への置き換えを進めていく必要があると考えており、こうした調査研究を行うための調達仕様書の作成を行っているところです。
 また、来年度の取組方針については、2点あります。
 1点目は、「統計処理システムの今後の方向性に関する調査研究」について。こちらは、5月下旬にも外部委託業者と契約をしまして、速やかに調査研究を開始する予定でおります。具体的には、2019年度の実態把握を活用しつつ、現行統計処理システムの課題の洗い出し、そして組織職員、役割等の見直しの検討、最新のICTの動向調査を踏まえ、今後の統計処理システムの在り方を検討してまいりたいと考えております。
 また、この研究結果を踏まえ、今後の統計処理システムの在り方を踏まえたシステム基本計画書を策定し、今後の移行方針を作成することとしております。
 2点目は、毎月勤労統計調査に係る集計処理等の検討業務についてですが、こちらは先ほど申しましたようにCOBOLプログラムからプログラム仕様書を作成し、今後の統計処理システムの在り方の方向性を踏まえつつ、COBOLからの移行をするプログラム言語を検討してまいりたいと考えております。私からの説明は以上です。
○飯島政策立案支援室長 続いて、組織改革・研修の拡充等の取組について、政策立案支援室長の飯島より御説明させていただきます。資料8-1の3ページを御覧ください。私からは、大きく組織改革・体制整備関係と、人材育成・研修の充実関係の2つのテーマを御説明いたします。
 まず、組織改革・体制整備関係については、有識者懇談会においても、一連の統計問題は組織内におけるガバナンスが十分に機能しなかったことが最大の要因として指摘され、統計部門の組織の改革とガバナンスの強化を図るとともに、厚生労働省が開かれた組織への変革を果たすため、外部チェック機能の強化を図っていくこと等が必要との御提言をいただいたところです。
 このため、工程表においては、黄色の枠の1つ目にございますが、外部有識者の活用、職員の適正配置の推進等により、閉じた組織からの脱却を図るとともに、統計審査体制を強化することを目標として掲げているところです。
 今年度の組織改革・体制整備関係の具体的な取組としては、(1)にございますが、昨年10月に統計改革担当として民間出身の戸田企画官に着任いただくとともに、分析審査の導入に向け、統計分析審査官を4名配置しております。また、統計関係の令和2年度予算案といたしましては、統計改革の推進を図るため、組織改革とガバナンスの強化、統計業務の改善、統計に関する認識・リテラシーの向上、統計調査事務の見直しに関して、対前年度4億円増の18億円を計上するとともに、増員の組織定員要求をさせていただいたところです。こちらは、先ほど御説明がありましたが、資料4に記載しております。
 また、次年度の取組について、(2)にございますが、政策所管部局・他省庁との人事交流の拡大、各部署の業務量や職員の経験、専門性等を踏まえながら、職員配置の見直しを図ってまいります。また、外部有識者の更なる活用促進策の一環として、統計幹事を補佐する専門家の配置などを行ってまいります。
 次に、人材育成・研修の充実関係については、有識者懇談会の御意見も踏まえ、工程表においては、黄色の枠の2つ目ですが、職員の資質・能力の向上を図り、統計のスペシャリストなど、統計人材を計画的に育成することを目標としております。今年度の取組については、(1)の2つ目ですが、統計に関する認識・リテラシーの向上を図るため、この後説明する令和2年度中の研修体系の全面見直しを一部先取りする形で、研修体系の見直しを行っており、こちらは順次研修を実施しているところです。
 その具体的な内容については、資料8-2の5ページを御覧ください。まず、該当する者が必ず受けなければいけない必須研修として、赤枠にございますが、本省全職員を対象としたeラーニングによる統計研修を新設し、こちらについては、年度内に実施を予定しております。また、幹部職員の統計に関する知識不足などが指摘されていたことを踏まえ、幹部職員のための統計研修を新設し、昨年9月に総務省の政策統括官、統計局長兼統計研究研修所長、小峰先生を講師にお招きし、幹部職員研修を実施いたしました。
 このほか、統計調査所管課室長向けの統計研修やEBPMの実践担当職員に対する研修を新設し、順次実施しているところです。また、実際に統計調査を担当する統計調査担当職員や統計調査を活用して分析等を行う職員を対象とした青枠にございますスキルレベル別の研修については、体系自体はもともと整備されていたものですが、これについても一部見直しを行うとともに、総務省統計研究研修所や内閣府等とも連携し、そちらで実施されている研修をスキルレベル別研修に追加するといったことを通じ、統計研修の受講機会の拡大等も図っていくこととしております。こうした統計研修の実施状況については、6ページに記載しておりますので、後ほど御確認いただければと思います。
 それでは、先ほどの資料8-1の3ページにもう一度お戻りいただき、人材育成・研修の充実の次年度の取組について御説明します。(2)の2点目です。来年度の取組方針としては、今年度、既に先取りで拡充された研修体系の順次の実施に努めていくとともに、平成30年度から令和2年度までを期間とする厚生労働省人材育成基本方針の全面的な見直しの検討を行い、令和3年度からの新たな人材育成基本方針を策定してまいります。具体的には、各種研修を受けなければならない受講者の定義の明確化や、昨年10月に取りまとめられた統計改革推進会議報告書に記載されております、統計データアナリストの育成等への対応などを盛り込んでいく必要があると考えております。私からの説明は以上です。
○大野審査解析室長 引き続いて、データ利活用推進グループの取組について、審査解析室長の大野より御説明させていただきます。資料8-1、4ページを御覧ください。データ利活用・一元的な保存の推進については、データの利活用の促進を図るとともに、研究者等の外部有識者や第三者の意見等を踏まえ、適宜、統計の改善を図ることを目標としているところであり、今年度(2019年度)の取組と来年度(2020年度)の取組方針について、御説明させていただきます。
 今年度の取組については、主に3点あります。有識者懇談会の提言やそれを踏まえたビジョンにおいては、統計の利活用を通じた質の向上という視点が強調され、調査の個票データが研究者等の外部有識者の目に触れていたら、誤りなどの早期発見が行われた可能性があったのではないかなどの指摘がありました。
 こうした点を踏まえ、1点目は、調査票情報の二次利用、行政記録情報の利用促進に向け、広報の充実に取り組んでおります。具体的には、参考資料8-2の7~9ページに添付してあるチラシなどを用い、統計の日のイベントや学会などで配布させていただくといった活動を行っております。また、二次利用に関するホームページを利用者にとって、もっと分かりやすくなるよう、現在、ホームページの見直し作業を行っており、広報室などの意見も聞きながら、今月を目途にホームページを更新する予定となっております。
 また、2点目は、調査票情報の二次利用、行政記録情報の利用促進に関し、来年度は有識者からなるデータ利活用検討会を設置して、具体の検討を行っていくこととしておりますが、そのアジェンダ等の設定に向け、今年度は省内における調査票情報、行政記録情報の利活用状況の把握及び課題等の整理を行っている最中です。
 2018年度の公的機関や委託・公募研究等の二次利用の状況は、表にありますとおり1,239件となっており、審査に要する日数の平均は約47日間程度となっております。具体的に何に時間が掛かるのかですが、統計法の規定に基づく申請書類を確認する上で何度もメールのやり取りが必要となるなど、手間が生じておりました。
 こうした点を踏まえますと、データ利活用を促進していく際の役所側の事務負担の軽減をどう両立させていくかも課題となってくるわけですが、こうした観点から、大学、学術研究機関等に設置され、利用目的の範囲内で調査票情報が利用可能となっているオンサイト施設の訪問ヒアリングも行ってまいりました。この結果、思いのほか研究者の方々にとっても利用しやすいのではないかとの感想を持ちましたが、他方でオンサイト施設に格納している統計データは単年度だけのものがあるなど、まだまだ十分ではないことから、こうした課題にも対応しつつ、オンサイト施設の活用促進を図っていくことも重要だと考えております。オンサイト施設の関連資料については、資料8-2の11、12ページにお付けしております。
 次に、3点目のデータ利活用検討会については、来年度の開催に向けて準備を行っておりますが、参考資料8-2、13ページに開催要綱(案)をお付けしております。現在、事務的には、委員候補の先生方に委員就任のお願いを行っており、段取りが整いましたら、検討会の設置について委員名とともに公表させていただこうと考えております。また、検討会においては、委託・公募研究などを行っている研究者の方々のアンケートなども実施するなどして、課題や改善点についての意見も聞いてまいりたいと考えております。
 最後に、来年度の取組方針です。先ほども御説明させていただきましたが、有識者委員からなるデータ利活用検討会を、来年度早い時期、春から開催させていただき、具体的な利活用促進策等について御議論いただくこととしており、年度末までに報告書を取りまとめる予定とさせていただいております。そうした対応も踏まえつつ、主要な対応を検討してまいります。以上です。
○戸田政策企画官 引き続き、EBPMプロジェクト推進グループの取組について、政策企画官の戸田より御説明させていただきます。資料8-1の5ページを御覧ください。昨年の有識者懇談会では、全ての部局で統計に関心を持ち、EBPMを推進することにより、公正かつ透明性のある政策立案等を推し進め、統計を実際に利用することを通じて、統計の質を向上させていくことの重要性が強調されていたと理解しております。
 このため、目標として、EBPMの実践による政策立案の推進と主に人材育成の観点から、若手・中堅職員が高い分析手法を習得することにより、EBPMを一層推進できる職員の養成を図るとして、EBPMの実践を通じた統計の利活用の促進に取り組んでいくこととしております。
 まず、EBPMの実践に関する政府全体の取組について、簡単に御説明させていただきます。平成29年5月19日の統計改革推進会議最終取りまとめを踏まえ、内閣官房の指示に基づき取組が推進されており、厚生労働省においても2019年度の取組としては、各局から1施策ずつ事業をエントリーし、ロジックモデルを作成するとともに、各局が作成したロジックモデルに対しては、政策立案総括審議官から改善点や効果検証等の方法を指摘する等の支援を行ってまいりました。
 このEBPMの実践については、有識者懇談会の御意見も踏まえつつ、政府全体の取組から1歩でも2歩でも先に進めていく必要があると考えており、来年度に向けては各局から1施策ずつエントリーさせるという事業の選定方法ではなく、新規事業を原則対象とすることを検討するなど、対象事業の大幅拡大を目指すとともに、予算過程における活用方策を検討していく必要があると考えております。このため、現在、来年度の取組方針について、会計課等との調整を進めているところです。
 これに関連して先ほど飯島室長から御説明がありましたように、EBPMの実践担当職員のための研修を新設し、計画的に人材育成を行っているところです。さらに、各局における科学的なエビデンスに基づく政策立案を側面から支援するため、みずほ情報総研に業務委託を行い、昨年7月29日より毎週火曜日にEBPMよろず相談所を設置し、施策の効果検証の具体的な方策等について専門家による相談支援を行っているところです。こうした相談所の設置については、全職員一斉メールにて周知を行うとともに、この半年で8局28件の問合せに対応しております。これらの取組を通じて得られた知見等については、ロジックモデルの作成や効果検証等を実施する際の参考になるよう、今年度中にマニュアル及び事例集を作成する予定で作業を進めております。
 2020年度のEBPMの実践関係の取組方針といたしましては、会計課等との調整結果を踏まえ、EBPMの実践の範囲を大幅に拡充していくとともに、その進捗等を踏まえ、外部有識者によるEBPMの実施状況等の検証を実施していくことにより、適宜EBPMの進め方の見直しをしていく予定です。併せて、よろず相談所の取組についても継続して推進してまいります。
 引き続いて、省内若手・中堅プロジェクトチームについて、御説明いたします。昨年度の有識者懇談会において、外部有識者の力を借りつつ、省内にプロジェクトチームを設置するとの提言を頂いておりました。こうした点を踏まえ、2019年度の取組としては、省内各部局から統計等データの利活用に高い意欲のある職員を11名選出し、本年1月より省内若手・中堅プロジェクトチームを開催しております。プロジェクトチームのチーム長は私が拝命しており、この11名のプロフィールについては、統計を専門にする職員ばかりでなく、様々な職種を含み、役職も係員や係長を中心に課長補佐まで多様な人材によりチームを構成しているところです。
 本年度は、EBPMに関する研修を実行するとともに、来年度に向けて各自が担当する分析テーマを決定し、そのチーム会合を開催しているところです。来年度については、適宜、省内若手・中堅プロジェクトチームを開催するとともに、順次分析等を進めてゆき、優れた分析結果については、白書・ホームページ等での公表を視野に入れて取組を進めてまいる予定です。私の説明は以上です。
○小峰座長 それでは、これまでの説明について、委員の皆様から御意見などがございましたらお願いいたします。
○梶木委員 非常に多岐に渡る分野について、具体的で詳細な工程表を作っておられます。これがうまくいけばいいなと思っておりますが、省内の各局で様々な統計を取っておられるわけですが、統計を取る対象も違うでしょうし、頻度も違うでしょうし、省内のこういう形でのプロジェクトチームというのは、省内でうまく動きますか、それとも隘路がありますか。
○菱谷企画官 梶木委員から御質問がありました。統計情報部局と省内の原局が所管している統計との関係ですが、省全体の立て付けとしましては、我々統計情報部局が省の統計幹事という形で、省内の統計について指示を出していく立場というようになっています。
 ですので、1つガイドラインとかマニュアルを作成する過程の中で、それぞれについてルールを定めて、各局に守ってもらうということが必要かと思います。その検討自体は、我々が中心にやっておりますし、省内に指示を出していくということもありますので、そちらについては厚生労働審議官からも御指示を頂くなどして、徹底を図っていきたいと考えています。
○山田政策立案総括審議官 例えばBPMNの話ですが、1つの統計結果をまとめるに当たって、どういうプロセスで作業をやっているかを明らかにするようなものは、まずは統計情報部門の統計でモデルを作って、我々のほうがある意味では原局よりも専門性はありますので、それでもって原局にそうした動きを広げていくという形にする。最初からいきなり原局に押しつけたりするとうまく回らなくなるので、そこは順番にやっているところです。
○小峰座長 ほかはどうですか。
○川口委員 今回の資料に入っていないのですが、毎月勤労統計の不正で出た影響の1つは、当然、社会保障料の過小払いというような話はあると思うのですが、直接的には2004年から2011年の公式の系列が失われてしまったということがあると思います。その点について、私の不勉強かもしれませんが、どういう取組がされていて、いつまでに公式の系列が出る予定になっていて、今どういう状況にあるのでしょうか。簡単で結構ですので、御説明いただけないでしょうか。
○瀧原統計管理官 毎月勤労統計を担当をしています統計管理官の瀧原です。今、川口先生から御指摘のあったように空白期間が生まれていて、具体的には平成16年から平成23年の間が、再集計できなかったという状況になっています。
 これについては、統計の連続性から、そこのデータを何らかの形で推計することは不可欠だと思っていまして、これについて、今、統計委員会で、再集計できなかったところについてどのような形で集計するかという御指摘を頂いて、こういうやり方があるのではないかというところの提案を踏まえて、作業をしております。
 実際に作業を進めているところですが、その中で、幾つか具体的に推計なりをやると、一定の仮定を置く必要があります。それについて、その仮定の置き方が適切かどうか、あるいはもう少しいいものがあるのか、あるいは一定の誤差は入るけれども、その推計の仕方が適当であろうかというところは、統計委員会の委員の先生方の御示唆なり御意見を踏まえて、そこは修正しながらという形で、現在やっております。
 具体的に、統計委員会はほぼ毎月1回開催されていますので、毎回報告させていただいて、それを踏まえてまた次回に向けて検討を進めているということです。今、具体的には実数推計というところを進めているところですが、正直言いまして、我々としてもできるだけ早く結果を公表できる形で取り組みたいと思いますけれども、如何せん課題が出た部分と、一定程度、正確性というのは不可欠だと思っていますので、完全な再集計にはならないにしても、一定の精度をちゃんと確保した上で、連続性なりが担保されたものとしてやるということで、時期として、具体的に、この時期に出せるというものはまだ申し上げられる段階ではないのですが、できるだけ速やかに公表できるように、最大限の努力をしていきたいという状況です。
○小峰座長 ほかはいかがでしょうか。
○中室委員 幾つか質問がございます。1つは、資料8-1の3の組織改革のところです。今年度の概算要求で、組織定員の要求をされているということなのですが、これは具体的にどれぐらいの数を想定されていて、実現の見込みがあるのかどうかということです。特に、来年の4月から公務員の男性の1か月以上の育休の取得が原則になります。既に要員配置について検討が行われているかということも併せて教えてください。
 2つ目は、同じページの研修の実施についてです。内容面では非常に充実している研修だという印象を持つ一方で、どのように利用するかと問題意識がないままに受講すると、ただ時間だけが浪費されてしまうのではないかと心配されます。このため、研修は実践と一体化している必要があるのではないでしょうか。研修は研修で行われ、現場でのEBPMの実践はそれとは別にOJTで行われるとなると、研修の効果が最大限発揮されないのではないかと懸念されます。研修が、戸田政策企画官のチームにおけるEBPMの実践やその他の実践とセットになるような仕組みを作っていただくことが重要かと思いますがいかがでしょうか。
 3つ目は、同じ資料の4ページにあるデータの利活用というところです。統計法の調査票情報の利用に、審査に係る日数が平均47日というのは、これまで申請してきた立場からすると驚きはないものの、改めて非常に審査に時間がかかっているということがよくわかります。一方で、実際に申請を体験してきた立場でいうと、あまり実質的に審査とは関係のないフォーマリティ、例えば、研究者が別々に誓約書に署名したものを束ねるのではなく、研究者全員の署名を1枚の申請書に記入して提出することを求める差戻しが何回もあったりして、それが時間がかかる1つの要因になっているとも感じます。一方で、海外では二次利用のスピードが相当早い国もあり、特に、行政データの利用に関して様々な改革が進んでいるところです。今、この4ページに記載されていることは、省内の現状調査で、それはそれで非常に重要なことだと思うのですが、日本の現状を前に進めるというだけでなく、海外で二次利用がどうなっているか、そうした先進的な事例から取り入れられる制度設計やアイデアはないか、ということもリサーチしていただけないかと思います。できるだけ海外の先端的な状況に追い付くように努力していただきたいと思います。私からは以上です。
○武藤政策統括官付参事官 私から、1点目の組織定員要求の関係のお話をさせていただきます。来年度の予算や組織定員要求については、昨年の年末に内示を頂いていますので、そこで一定の結論が出ているということです。
 組織定員要求については、統計部局に関しては2名の増員ということになっております。具体的には、毎勤統計の調査の改善等に当たる者ということで、新規増ですとか、あるいは研修を強化する必要があるということがありますので、そういった者が増員されているという状況です。
 あと、それとは別に予算の内示の話で、資料4の1点目に、組織改革とガバナンス強化ということで、予算上、統計に関するガバナンス強化のために統計分野に知見のある民間人材の方を活用するという予算が、これは予算として付いているということです。
 組織定員要求の状況は以上ということなのですが、先ほど先生からお話のあった男性の育休のための要員配置のことについては、今でも育休の者を代替補充するために、その期間だけ代わりの者を一時的に採用させていただくような仕組みはありますので、状況に応じて対応していきたいと考えているところです。
○飯島政策立案支援室長 2点目の研修の実施につきまして説明させていただきます。資料8-2の5ページを御覧ください。EBPMの実践と研修による知識の習得が連動しないと意味がないという御指摘かと思いますが、この赤枠にございますように、EBPMの実践担当職員のための研修というものを新たに設けております。
 こちらは、今まではEBPMを実践しましても、必ずしも必須として研修を受けるという仕組みがなかったことから、この度こういった仕組みを設けまして、EBPMを行う実践の職員については、統計の知識とEBPMの基礎知識の習得のため、必ず全員に研修を受けていただくという形で、研修を体系化したところです。
○戸田政策企画官 2点目について補足させていただきます。中室委員がおっしゃるとおり、研修と実践を両立させるということは非常に重要な課題だと思っておりまして、今回若手と中堅のプロジェクトチームを立ち上げさせていただきましたが、まだまだ11名という少ない人数ではありますが、まずはそこから実際に研修で学んだことを実践していくということを始めていくと。これを次第に年を経るに従って大きくしていくということが、今の課題なのかなと考えています。
○大野審査解析室長 引き続きまして、3点目のデータ利活用の質問の件です。審査解析室長の大野です。データ利活用の海外の論点ですが、非常に参考になりますので、今回の利活用検討会の中で検討させていただきたいと思っていますが、例えば北欧などでは先生のおっしゃるとおり、かなり自由にデータが取得できるというようなこともありますが、代わりに非常に罰則が厳しいような話も聞いたこともございますし、ほかの国では、個票データとなると、なかなか手に入りづらいというような話も聞いたことがございますので、その点は整理させていただいて、利活用検討会の中で議論させていただきたいと思っております。
○菱谷企画官 大野室長が言ったとおりですが、補足的に申し上げますと、旧統計法が新統計法になって、その中で、統計の目的外利用ということについて、基本的には統計法の枠が掛かっているという状況の中で、例外的にという位置付けで、個票データを申請して使えるという立て付けになっているということです。
 ですので、これをどう考えていくかということについては、いろいろなレベルがあると思うのですが、まずは現行の統計法の世界で何ができるかについては、厚労省が頑張ったら何ができるか、ちょっとの工夫でできることは何なのか、組織定員とか、人が要るのか、お金が要るのか、いろいろな次元があると思うのですが、それをよく整理して、その中で何かできるかということ、場合によっては統計法そのものの問題として総務省に言わなければいけないこともあるということを整理していくということかと考えています。
○神林委員 途中で聞いておくべきだったのですが、幾つか質問があります。先ほどの2番目のポイントで、EBPMの資料の読み方なのですが、資料8-1の一番最後のページです。8局28件の問合せに対応していて、あと11名の方をチームとして組織しているというお話だったのですが、この11名の方というのは、具体的にもう研修を受けているのでしょうか。
○戸田政策企画官 はい。
○山田政策立案総括審議官 正に、今日の午前中も研修しています。
○神林委員 この研修のほうの統計検定2級レベル、3級レベル、4級レベルと書いてあるのですが、これは検定を受けるということなのですか、それとも単純に水準ということなのですか。
○飯島政策立案支援室長 そこは受けるということではなく、これらのコースが統計検定のレベルに相当しているということで、実際に受けるという意味ではございません。
○神林委員 受けてくださいということは何かあるのですか。
○飯島政策立案支援室長 統計検定を受けてくださいということは、特にアナウンスしておりません。それらに相当する研修を受けてくださいということです。
○神林委員 研修の最終的な評価というのは、どのように行われているのでしょうか。
○飯島政策立案支援室長 研修自体は、例えばレベル1であれば、最低この中から2つを受けていただくことになっておりまして、それらの受講をもって研修のレベルをクリアしたと認定しています。
○神林委員 最終的な評価というのはそれぞれのコースの講師の方が評価するという格好になっているのですか。
○飯島政策立案支援室長 研修の受講をもってということと、あとeラーニングですと、ところどころに問題を設けておりまして、そのテストに合格したら、次のカリキュラムにいけるといったような仕組みになっております。
○神林委員 カリキュラムについては、その統計担当の幹部の方々は、どの程度把握なさっているのでしょうか。
○飯島政策立案支援室長 中身については、うちの統計組織でしたら政策統括官まで御説明をしております。
○神林委員 大体このようなものかなというのが分かっているということですか。
○飯島政策立案支援室長 はい。
○神林委員 分かりました。あと、8局28件の問合せなのですが、この内容なのですが、いわゆる統計を担当している所からきているのか、それとも原局のほうからきているのか、どちらが多いのでしょうか。
○戸田政策企画官 ほとんどが原局からです。
○神林委員 そういう格好になっているわけですね。そうなると、先ほど山田さんがおっしゃっていたように、原局から来る情報をどのように整理するかということと、いわゆる統計の格好になっているところからガイドラインを詰めていくということで、タイムラグをもって順番で考えていくとおっしゃっていたのですが、要望としては原局からのほうが、むしろ今のところは多いと考えてよろしいのでしょうか。どういう情報を整理していくのか、どういった調査票で、どういう項目を使って、この政策をきちんとフォローしていくのかということを考えたときに、その対応窓口になっているのが戸田さんの所なわけですよね。それを考えたときに、既に統計の形をしていて、ある程度統計の知識があるような部局から出てくる相談事よりも、より現場に近い原局の人たちが相談に来るほうが頻度としては多いという理解でよろしいのでしょうか。
○山田政策立案総括審議官 直接的なお答えになるかどうか分からないのですが、28件というのは、私が今やっている17セクションの担当者からのヒアリングを直接しているので、そのときの雰囲気をお伝えすると、案件により、典型的なEBPM手法にはまるものと、はまらないものがあります。はまるものについては、それ自体が好事例になるのですが、実際にははまらないようなケースが結構多いです。ただ、EBPMというものは、データでもって客観的に対応を評価するというところが原点なので、典型的なEBPMの手法にあてはまらなくても、こういうやり方をすればEBPM的な観点が入るということを、こちらが教えると言うか、話をしながら、この統計を使ったらうまくはまるのではないかといったことをやり取りすることが多くて、恐らくこの28件の話で、原局からの問合せが多いというのは、そういうことに慣れていないがために、そういう問合せをしてきているのだと思います。そういう場合、お仕着せのやり方を押し付けることは避けた方がよいかと。今、そのようなやり取りも踏まえて、EBPMのガイドブックのようなもの作っているのですが、恐らく、かなり独自な内容になると思います。
 一方で、欧米での成功事例がよく紹介されるのですが、むしろ私は欧米の失敗事例のほうが各局での参考になると思っているので、EBPMでゴーサインが出たのに、すぐにやめになってしまったような事業といった話なども取り混ぜて、けれどもEBPMの原点に立ったらどういうやり方ができるかということを、やり取りしながらやっているという感じです。
○神林委員 ちょっと混乱してしまったのですが、この統計業務の改善その1ガイドラインの作成とPDCAサイクルの着実な実施という所で、いろいろ意見を聴取したり、状況を把握したりしているというのが、山田さんがおっしゃった話ですか。
○山田政策立案総括審議官 今のはEBPMの話です。
○神林委員 戸田さんの所で相談を受けている。
○山田政策立案総括審議官 戸田の所でも相談を受けていますし、全体の総括は私がしているので、今、実際にEBPMをやっているところについては、基本的に私が全部ヒアリングをして、様子は聞いています。その28件というのは、これからやる所も含めての相談だと思いますけれども。
○神林委員 では、17件というのは、各局1施策というもので、17件についてヒアリングをしたという話ですか。
○山田政策立案総括審議官 そうです。
○菱谷企画官 ちょっと整理して説明しますと、まず、統計改革は統計改革として、マニュアルとガイドラインを作っていきます。これが1つ目の柱の所でやっていきます。5つ目の柱の所に書いてあるEBPMですが、2つありまして、1つは、そもそも省全体というものです。これは政府全体として内閣官房の指示の下でやっていくEBPMの取組がありまして、これが毎年やっているものということで、今年であれば、各局から1つずつ17施策を取り上げてやっていくこととしています。
 こちらは、主には実例創出というのを今のところの目的としていまして、これは全省庁的な話です。やや弱いのは事実なのですが、何でかと言いますと、行政事業レビューというものが別途ございまして、行政事業レビューというのは全施策を対象としていて、それを言葉などで、必要性、有用性を説明して、予算過程で見ていくとしています。そういうものが別途ありますので、EBPMについては、どちらかと言うと実例創出が主な目的とされています。最終的には、これらはリンケージし、取り込んでいくものだと思いますが、今はそこまで政府全体としては至っていないところです。我々としては、そこももう少し進める必要があるとは思っていますが、それはそれとしてということです。
 ここで申し上げていましたEBPMのよろず相談窓口というのは、また別の話です。これは、EBPMというのはいろいろな次元がございますが、ここで言っているのは、例えば審議会の資料でどのように因果関係とか、施策の必要性をどのように説明していったらいいかという次元も含めての問合せを受けているものが、よろず相談窓口というものです。
○神林委員 分かりました。何が分からないのかが分かってきました。今の17事業を、例えばレビューする、相談をするというときに、最初のガイドラインであるとか、システムの改善の話というのは、全く絡んでいないということなのですね。
○山田政策立案総括審議官 そうです。基本的に、1つの事業をEBPM的な観点からチェックするという話なので、関係なくもないのですが、基本的に別の話です。
○神林委員 別として扱っているということですよね。
○山田政策立案総括審議官 はい。
○神林委員 それは有機的に、一緒のこととして扱ったほうがいいのではないでしょうか。
○山田政策立案総括審議官 今回は17事業で、来年度は基本的に新政策などは全部事業の対象にすると、恐らく相当重なってくると思いますので、同じ流れにだんだん乗ってくるかなという感じです。今は個別の事業なので、余り直接1つの大きな統計に影響を与えるという感じにはなってはいません。
○神林委員 ただ、来年度の場合には、新規事業ということなので、新規で事業をするのであれば、それで例えばどのようなデータが必要かというのを考えて、それをガイドラインにのっとって整備をする。それで、どのようなシステムが必要なのかということを考えるのであれば、2本目の柱と関係しますよね。
 ですので、聞いていて自分が違和感を持ったのは、この5本の柱というのが別々に動いていて、相互のリンクがどうなっているのかというのが、今一よく分からないというところだったと思います。今、分かりました。ですので、是非その辺は考えてやっていっていただきたいなと思います。
○美添教授 いくつか補足させていただきます。大事な話は資料8-1、8-2についてコメントを求められているということだと思います。ほかの議題はほとんどが報告事項だと思いますので、資料8-1について、いくつか気が付いたことをお話させていただきます。
 順番にいきます。資料8-1の1ページ目で、ここは細井さんに説明していただいた所です。今年度の取組内容として、標準的なガイドラインを作成する。このガイドラインは実際に作成されてきたということですし、BPMNなるものを私はよく分かっていないので、そこはお任せします。こういうものを作成すれば、標準的なガイドラインは来年度以降にできるとお考えのようなので、この提案に沿ってやっていただければいいと思います。
 1ページ目の(1)の③の所はちょっと気を付けていただきたいと思います。第三者が誤り等を報告するといっても、誤り等を報告するようなすごい第三者は滅多にいないわけで、データを分析してみて、これはどういうことでしょうかと質問をするのが普通ですよね。そういう方たちが、余り壁を感じないで連絡できるような窓口を作るということだと思うのです。これは、ほかの事例もたくさんありまして、我が国の公的な機関にも、統計の相談窓口というのは昔からあるのですが、例えば、私のような私立大学の助教授が電話をして、「これは間違っているのではないか」と主張しても、「そのようなことはあり得ない」となります。私は以前、大蔵省のデータを分析して、どう考えてもおかしいと言ったのに、無視されました。こういうことでは、何のために窓口を作るのかなという気がします。せっかく作るなら、エコノミストが疑問に思ったことにも丁寧に対応できるような窓口にしていただけるといいのですが。と言って、そうすると負担が増えるのです。そこのバランスを是非考えてください。
 それから、2ページ目はシステムの移行で、仕様書をきちんと作るということで、是非お願いしたいと思います。
 3ページ目が統計改革の本筋だと思うのですが、昔、私が統計審議会の会長だった頃から、統計人材の育成が大事だと繰り返し主張したことがほとんど無視されて、各省の予算も人員も減らされてきた。その中で、2009年に統計法を改正して、そのときの目玉は、統計は国民の共有財産だという視点で各省に合意していただきました。もう1つの目玉は、統計の二次利用が遅れていることに対応すべきことを書き込んだのが2009年です。まだ不満はあると思いますが、できることは精一杯やったつもりです。
 それから、去年、更に統計法を改正して、二次利用に関してはもう一歩進んだと思っています。あとは活用の仕方、各省がいかに対応するかですが、それは4ページになります。
 3ページで私が一番大事だと思っているのは、人材を育成することです。今回、4名の統計分析審査官を配置していただいたことはすばらしいのですが、その人たちがどういうキャリアをこれから歩むか。誇りを持って統計の仕事を続けられるようなキャリアパスを用意できるか。これは厚生労働省単体ではちょっと難しいかなという気はしています。
 実は、私は統計改革推進会議の委員も務めておりまして、先ほど御報告いただいた統計行政新生部会でも、一応答案を書いたのですが、各府省、政府全体で統計担当者を育成し、有効に活用する。これしか方法はないと思います。
 そういう道筋を、ほかの府省と協力しながら進んでいただく。その中で、フロントランナーを続けるというのは大変なことだと思うのですが、せっかくこれだけ高い目標を掲げていただいたのですから、対外的にも情報を発信して、厚生労働省はよくやっているというメッセージを出し続ける。職員の配置なども「適宜見直し」と文書に書いてありますが、見直しを本当に適宜に実施することがいかに難しいかは、皆さんがよく御存じのとおりだと思います。失敗している役所はたくさんあります。名前は出しませんが、幾つかの大事な府省では、すでに統計部門が壊滅状態になっています。厚労省がそういう轍を踏まないように、せっかく反省されているわけですので、是非お進めいただきたいと思います。
 4ページはちょっと違和感がありました。調査票情報の二次利用は、私が統計審議会の会長のときにこの問題を担当して、細かく手順を書いたのです。当時は二次利用の制限をされていましたが、目的外利用という制度があるからいいではないかという話はうそです。
 二次利用で使えたのは、特定の国立大学の先生とか、例えば私立大学であれば慶應大学の先生が使えましたが、私がいたような大学では、まず駄目という状況だったわけです。
 それを一般的に使わせるようにしようというときに、一番負担だったのは、まず、行政側が学者を信用しません。実際にもらったデータを皆にばらまいて共有したというのは、今の統計法なら罰則規定です。アメリカなら徴役5年だと思います。そういうことをした方がいる。
 ただ、彼は研究の理念があって、そうしてしまったのです。法律が研究目的に対応できなかったと思っているでしょう。そのように私も考えますが、やはり法律違反はいけないのです。そういうことをやった人たちがいたから、幾つかの府省は、絶対に学者には貸さないと言っていました。
 それを覆したのは、1995年から始まった科学研究費の重点研究領域です。当時、一橋大学の松田芳郎先生が、ミクロデータの利活用を主題にするを組織して、厳重に秘匿を掛けながら、ミクロデータを150人ぐらいの研究者に分析させました。見事な結果が出るわけです。今まで分からなかったことが、明らかにされる。その結果、各省庁でも公開してもいい、学者も信用してもいいというメッセージが出て、それを盛り込んで、2009年の統計法の改正で、二次利用の促進が入ったのです。
 問題は、それをどうするかです。審査の期間が47日と書いてありますが、手間は本当に掛かるのです。私のアイデアとしては、きちんとしたデータベースを作って、研究者の資質と研究上の必要性が分かれば、審査を簡単にする。
 それをやっていただければいいのですが、各省でデータベースを作れと言っても無理だから、始めたのが4ページに書いてあるオンサイト施設です。これは各大学でも始めていただいたので、慶應大学も1つ入っていると思いますが、そこに行けば、かなり大きなデータが使えます。そういうことをして、利用者を拡大する。これは是非やっていただきたいと思います。これをやらないと、研究者側からの批判、特に海外の研究機関からの批判がどんどん出てきて、日本の公的統計は出来が悪いと、誤解か正しい理解かは分かりませんが、そう思われることになるので、それは是非避けていただきたい。オンサイト施設を使えば、厚労省の負担はそれほどないです。
 ただ、法の整備は必要です。まだオンサイト施設を使う資格の認定という壁があって、まだ難しいかなということがあります。
 もう1つは、海外でミクロデータを自由に使えるというのは、うそです。アメリカでミクロデータをすぐに提供するけれども、あれには秘匿措置を掛けています。たとえばパータベーションの技術があるから出しているわけで、実は、これははっきり言っていいと思いますが、日本でもそういう技術を使って、もっと使い方を簡単にしようという動きがあります。このような検討に、厚労省としても是非参加してください。
 4ページで私が違和感を感じたのは、(1)の2つ目なのです。行政記録情報の利用促進はいいのですが、広報の充実にどうしてつながるのか。これは厚生労働省が持っている行政記録情報を利用するようにいろいろな手立てを考えるということなのですかね。広報とは関係ないかなと思いました。私の誤解であれば、どうでもいいようなコメントなのですが。要するに、データを使っていただくと、いい研究ができる。そのためにいい統計を作りましたと言えれば作成者としても誇りになるし、更に励みとして次の目標になるということだと思うのです。行政資料を使えないことの言い訳、行政記録情報は、いろいろな問題があって使えないことはよく分かりますが、その改善のための努力をすることだと理解しています。これはとても大変なことですが、統計改革の一環として、政府全体で書いたことですので、是非やってください。
 最後の5ページですが、とてもいいことが書いてあります。ただ、EBPMについては、どこからEBPMが出てきたかと言うと、統計改革推進会議なのです。例えば東日本大震災のときに、ある代議士が地元に帰って、こんなに悲惨なことがあるから、何とかしろと言うのはエビデンスではなくてエピソードです。証拠を自分が見てきたというのは、あなたが見たところだけでしょうと。本当に、エビデンスを比較する、因果関係の比較という話まで含めて考えてくださいというのが、国全体のEBPMなのです。
 ただ、専門家から見れば、易しくないです。こんなことが簡単にできるわけがないというのが本音だと思います。でも、大切なのはその姿勢です。目標として高く掲げて、EBPMのために必要なエビデンスは統計そのものだ、客観的な信頼性の高い統計を作るのだということが、統計改革推進会議で掲げた目標です。厚生労働省としてもEBPMは大事だと言っていただくしかないし、どなたかが失敗事例が大事だと言われましたが、本当にそのとおりだと思います。いろいろやってみて、なおかつ、統計を使ってどこまでできるかという議論をしていただけると、統計改革推進会議のほうでも非常に参考になる事例だと思います。よろしくお願いします。
○小峰座長 ありがとうございました。この広報の充実というのは、私の理解は一般の人に統計利用というのは統計の日みたいなので、「皆さんもっと統計に親しみましょう」みたいなレベルの話だと思うのですけれども、二次利用について厚生労働省はこういう措置を講じているので、是非もっと積極的にやってくださいというのは、もうちょっとレベルが違う話で、そこは1つの文章になってしまっているので混乱しているのかなという。
○美添教授 それは私の誤読かもしれません。
○菱谷企画官 正しくはそういうお話です。もともと統計をもっと利用されれば、誤りがもっと早く見付かるでしょうということについて、いろいろなステージがあると思いますけれども、そもそも二次利用そのものを、もう少し周知しないといけないというところを書いているのですが、ちょっとそこがごっちゃになっていると言えばごっちゃになっているかと。
○山田政策立案総括審議官 今までは省全体の窓口がなかったので、その統計の担当のセクションに直接つながって、丁寧でない対応をされたという話があったので、むしろちゃんとそういう外からの気付きにつながるものに対応できる人が省全体の窓口をする。外部に対して壁を低くするためにあえて省全体の窓口を作る、そこは平身低頭、外部に対しても対応する姿勢であります。
 先ほど中室先生のときにし損ねた話で、研修の話なのですが、完成された先ほどのような絵を見せてしまうと、かえって胡散臭く見えてしまうのですが、基本的に我々の姿勢としては、職員をユーザー側とメーカー側にある程度分けて考えて、それぞれに対してどこまでの力が必要なのかということで、研修を組み立てるという発想で考えています。この絵ではあまりそこが明確ではないのですが、誰も彼もが並んでいる研修のメニューからチョイスするという話ではなく、ユーザー側であっても最低限ここまでは知っていてほしいということをはっきりさせる、メーカー側はさらに知識をつけてもらうというような感じにしたいと思っています。
 あとはEBPMの研修についても、基本的に今はなるべく具体的な事例で、理念系を教え込むというよりは、むしろ先ほど申し上げた失敗事例も含めて、具体的な事例をある程度盛り込むことによって、眠くならないような研修内容にしていこうと、内容的にも工夫は凝らそうと思っています。
○小峰座長 ほかは何かございますか。
○川口委員 今日、たまたま統計委員会に出ていまして、厚生労働省の統計が審議の対象になっていて、やはり標本設計についてしっかりと公開してほしいということを受けて、そういう話が統計委員会のほうでも出ていて、それに応えて標本設計についての説明の原案というのが出てきたのですが、それを拝見すると前回調査の誤差率を上回らないようにやりますと書いてあって、やはり何が目標になっていて標本設計されているかという話が書いていないのですよね。それは御指摘申し上げて、快く改善しますと言っていただいたので、個別の事例としては結構なのですけれども、それでこの1というのを見ると、ガイドラインを作って、それに従ってやりますと。標本設計についても、どのように公開するかということに関してガイドラインを作られて、それに従ってやられますと。これが来年度になっているので、やはりまだ、そのガイドラインが実際にできるまでも、統計はどんどん作られていくわけで、書類も作られていくということがあって、改善できる部分に関しては前倒しで改善していただくといいのではないかなと。それで日本統計学会の提言のことなども御紹介させていただいたので、かなり具体的な提言もなされていると思いますので、そういった部分を参考にされて、前倒しで実行していただけると有り難いなと思います。
 あとはガイドラインについて、行政情報についても、私の個人的な経験で恐縮なのですけれども、これまで提供していただいていたデータが、今度ガイドラインができるので、それができるまでは提供できませんということを言われてしまったこともあって、そういうことだと本末転倒と言うか、ちょっと厳しい部分があるかなと個人的には思っておりまして、もちろんルールに従ってやるということは大切なのですけれども、やはり精神というのもあると思うのですよね、そのルールを作成する。そういうことに関して、なぜこういうことが議論されているのかという、基の精神の部分というのを忘れないで進めていっていただければ有り難いなと思っております。
 あと、二次利用については、今までいろいろな御議論があったところで、先ほど菱谷企画官のほうから、厚生労働省のほうで努力してできることと、そうでない上回る部分もあるという御指摘があって、全く御指摘のとおりだと思っておりまして、私が今まで二次利用の申請の中でやり取りさせていただいていて、一番厳しいのは多分審査される側も、ものすごい負担になってしまっているのが、必要最低限の変数しか出さないというガイドラインの一文があるのですよね。当然そういうルールがありますと、行政官の方としては本当に必要なのかということを立証しないといけないと。何でしたら第三者にも説明できるような資料を取っておく必要があるという形で、これは研究者も行政官の方も非常にこれで疲弊しているというような状況というのが恐らくあって、そういった点も含めて検討会のほうで、これから立ち上がるところで詰めていけるといいのではないかと。もちろんそれは厚生労働省だけが決めることではないというのは十分承知しているので、そういう検討会の中からもしもそういう点が洗い出されるようであれば、それを提言の中に盛り込んでいくということを考えてもいいのではないかなと思いました。3点とも全て要望なのですけれども、よろしくお願いします。
○山田政策立案総括審議官 工程表に書いてある順番でやっていくということだけではなくて、今、言われたように統計改革のスピリットを前倒しで考えていくというのは、そのつもりでいます。ルールの設定がどのレベルで行われているか(政府全体か、厚労省か等)にもよりますが、問題があるけれどまだ報告がまとまっていないからまったく対応ができないみたいなことは、あまり言わないように考えていきたいと思っています。
 利活用の二次利用の件については、川口先生のおっしゃられるとおり、各府省で結構対応が異なっている部分もあるかと思います。二次利用については、政府全体としてかかっている規制ということもありますが、我々としては、政府全体の話について、いきなり厚労省だけで対応するということはできないにしても、データ利活用検討会で(政府全体の話か厚労省の話かについて)ある程度の仕分けが必要かと思っています。本日のこの検討会の内容については総務省や内閣官房にも伝えるつもりです。検討は我々が一番早くしているかなという自負は持っていますが、利活用検討会の内容について厚労省だけで処理し切れないような話があれば、総務省等とも相談をして、政府全体の話としてどうしていくのかということの検討につながればと思っています。
○小峰座長 ほかには何か。
○神林委員 1点そろそろ付け加えてもいいのかなと思う論点があるのですけれども、二次利用の件なのですが、統計の数字を見ていただいてもお分かりになるとおり、実は32条とか33条の1号の申請がかなり多いわけですよね。二次利用の話をすると、自分たちはやはり研究者ですので、研究者がどのように二次利用をするのかということを考えがちなのですけれども、恐らくマスとして多いのは、やはり行政機関等々公的機関が再利用するという形になるのではないかと思います。例えば白書を作るために厚生労働省のデータを使うと。そういうときにかなりの手続が大きく煩雑になる可能性があります。このオンサイトの利用というのは、ある意味行政機関が自分たちで自分たちのデータを使うというときに、かなり威力を発揮するような施設で、研究者に対してもそこそこ便利になる施設であることは間違いないのですが、EBPMとの関連があるのですけれど、行政機関がサッと手元でデータを使えるというような状況と、あとは研究者が個票を使うというような状況というのをちょっと意識として分けて考えて、システムを作っていったほうがいいかなというのは自分の意見です。そろそろこの辺まで踏み込んで考えてもいいのではないかと思います。
○美添教授 そのとおりで大賛成なのですけれども、これは厚生労働省単独でできることではないので、政府全体で、1つは川口先生から統計委員会でそのような要望があるということを何回も繰り返していただきたいと思っております。私もお手伝いはしますけれども、改革推進会議でもう少し具体的に手順を書こうかなと密かに考えています。答えは簡単で、データを全部提供すればいいのです。ただ、公開する前に審査を受けてください。罰則も懲役2年では信用されないかもしれません。アメリカは懲役5年ですよね。研究者は悪いことをしないと信じていますから、5年でも10年でも罰則を定めて、とにかく結果を提供する。論文を公表するときに個別情報が漏洩しないように、それなりの秘匿ができていれば、全部のデータを扱うのは当たり前です。私も何回も経験がありますけれども、多くの変数がなぜ必要かと尋ねられて、回帰分析などで変数選択すると言っても通じないで、全ての出力を表形式で作れと言われる。分析を自分でやってみないといい結果が出るかどうかは分からない。だから擬似データでやってみせて、うまくいかないことを示す。こういうことを従来からやっているわけです。おっしゃるとおり統計法に忠実に従えば、ある先生が信頼できるから出しましたということはあり得ないので、その審査にどうしても手間が掛かるのですね。中には集計表にあるのと同じことを要求する先生がいるという愚痴もあり、それは準備不足かなと思うのですが、このような例も含めて、ミクロデータ分析の練習でも、認めていいと思うのです。ただ、結果を漏洩したときには厳密な罰則規定に従っていただくことだけ念を押した上で二次利用の推進を進めるなら、私もお手伝いしたいと思います。厚労省でも是非お願いします。
 1つだけ、議題には書いていないのですけれどもお願いがあります。厚生労働省が提供するデータ、ミクロデータではなく集計データを使うときに普通の人はe-Stat政府全体の統計総合窓口に行きます。失礼ながら、厚生労働省のe-Statは使いにくい、本当に難しい。もうちょっと改善していただけないか。そうするとユーザーは増えるのです。今は難しいから増えないのだと思う。学生にデータはここにあると言っても「分からない」と言いますから、そんなことではユーザーは増えないと思います。重点的に使いやすいシステムをお考えいただけるとユーザーは増えると思います。
○小峰座長 ありがとうございました。ほかはいかがですか。
○中室委員 2つありまして、1つは統計情報を用いて、EBPMを推進した部局や人にインセンティブがあるとよいのではないかと思います。もう1つは先ほど菱谷企画官から行政事業レビューのお話がありましたが、私も省内のEBPMと相性が良いのは行政事業レビューではないかと思います。私は昨年まで行政事業レビューの評価者を担当しておりましたが、評価者として最も困難を感じたのは、担当部署から「データがない」あるいは「分析をしていないので証明できません」という返答があった時です。しかし、財源が限られている中で、国民への説明責任の果たせない事業を継続することはできませんから、そういう回答しかできなかった事業は廃止あるいは大幅改善を求められることになります。しかし、それはその事業に「効果がない」ということは意味しません。本当は効果があったかもしれないが、「データがない」あるいは「分析していない」だけなのです。もしも、本当は効果があったとしたら、効果があったのに廃止してしまったということになる。これは、評価者だけでなく、担当部署のほうも忸怩たる思いだったはずです。しかも、現実には日ごろの業務が多忙で、いつやってくるかもしれない行政事業レビューのための準備に手が回らないことも多い。だから、説明責任を果たせずに事業が廃止や見直しになることがないよう、EBPM実践がサポートできれば、省内の理解を得ることは決して難しくはないのではないかと私には思えます。 最後に、将来的な構想として、今私が問題意識を持っていることについてもお話させてください。今後、行政データや公的統計データの利用を促進していくために重要な課題の1つは、「名寄せ」-所管の異なるデータの照合-なのではないかと思います。今は、その「名寄せ」ができていません。これをどのように設計するかということを、国全体で考えるべきときが来ているのと思います。なぜかというと、今厚労省では、医療や介護のデータは保険者番号をマッチングキーにして照合していくことが検討されていると聞いております。一方、文科省は、小中学校に一人一台のPCを設置する、いわゆる「GIGAスクール構想」を推進しており、ここでは生徒・児童に独自の学籍番号のようなマッチングキーを新たに組成するということです。行政データ利用に積極的な一部自治体では、住基コードをマッチングキーにして照合している。このように、各主体が異なるマッチングキーを用いて照合していくと、最終的にすべての情報を照合することは不可能になってしまいます。このため、自分のところだけでとりあえずできることをやるというのではなく、政府全体として最も効果的な方法をしっかり議論していただきたいというのが、私の要望です。
○飯島政策立案支援室長 行政事業レビューにつきましては、現状でも先生にも出ていただいている公開プロセスの中の連携という意味ではやっておりまして、一昨年は1事業で今年度は3事業ということで拡大しております。今、内閣官房のほうでも聞くところによりますと、今後レビューシートなどももう少しEBPMと絡めるとか、例えばロジックモデルを付けていこうということも検討していると聞いておりますので、当方としましてもレビューとEBPMをなるべく連携・連動できるような形にしていきたいと考えております。
○山田政策立案総括審議官 政府全体としては行政評価が総務省で、EBPMが内閣官房なのですが、一応今年の夏に行政評価でEBPMの組織は一体的に変更しようと思っていますので、よりそういうことが意識できるように、あとは予算のほうとのリンケージという話もありますけれども、そこは基本的にそういう方向で進めていくかなと思っています。
 EBPMを進めていった先に何があるのかという話なのですが、私はどちらかと言うと特定の人が引っ張っていくというよりは、多くの職員に、そのデータベースという意識を植え込むという方向で研修なども組んでいこうと思っていて、今年度の研修は割と先進人材を作るためにすごく人を限定して、研修の在り方そのものも彼らに考えてもらうようなことで、この1月から3月にかけてするつもりなのですけれども、基本的に来年度は、もっとEBPMの研修を受ける対象を一気に増やして、あまりデータと関係なさそうな人でも意識していけるような感じにしていきたいなと思っています。ただ、恐らくまだ当面はEBPMということをガンガン言わないと、誰かが引っ張っていかないと、なかなかこれは進まないなということはあると思いますので、その辺はどういう塩梅で進めていこうかなという感じで思案しています。
○中室委員 新卒で技術や知識のある人を採用するというのがコストが低い良い方法なのではないかなと思いますが、どうでしょうか。最近は、特にデータ分析については大学の教育水準が上がっていますので、新卒でも戦力になる人はいると思います。
○美添教授 資料7に統計行政新生部会の報告書を用意していただいたのですが、今の統計職員の養成とは、例えば33ページにあるのですが、統計データアナリストと、統計データアナリスト補の計画的な育成。先ほど神林先生から資料8-2の5ページ目について御質問が出たのですけれども、講習を受ければいいという回答でした。確かにそうなのですが、eラーニングは途中で試験があるのです。試験に合格しないと修了しないので、それでいいと思います。33ページ、34ページを見ていただくと、アナリスト補は必須よりもっと上ですから、統計研究研修所の講義を受けて修了認定を受けなければいけないのです。これは結構ハードルが高いので、レベルが高い。もう1つ書いていただいたのは、34ページに、その研修所に必ずしも行けるとは限らない、コースも受ける時間がない、その場合は学会等が認定する民間統計資格でも証明できる。先ほど中室先生が、うちの卒業生は統計検定2級を通ったと、それはすごいですよ。統計検定が始まったとき、ある有名な私立大学から学生が30人ぐらい2級を受けたのですが全滅でした。そんなに易しくない。その頃は何を勉強したらいいかよく分からなかったのが、今は大分分かるようになって、勉強しやすくなりました。統計検定に合格すれば企業では自慢できる。公開されているから言ってもいいと思うのですが、日本銀行ですら2級を通ったら報奨金が出ます。決して易しくない。この水準が理解できていればすばらしいと思います。
 客観的な能力評価をするのが、統計検定です。アメリカでもイギリスでも同じような制度があるのですけれども、日本ではこういうことをやって、少なくとも統計に携わる人たちは、2級はちょっと高望みだけれど、3級4級は誰でも分かるぐらいのレベル、いや、3級はちょっと難しいですが、4級は誰でも分からなければいけないし、ここに書いていないけれども、公的統計を扱う人のための統計調査士という検定もあるのです。統計調査士の上位の資格である専門統計調査士は統計委員会の点検検証部会で各府省が、統計担当職員の研修状況を説明する中で、博士号何人、修士号何人と並んで専門統計調査士何人という書き方をしています。各府省の統計担当者がそれなりの能力を持っているという証明に使っているので、厚生労働省としてもたくさん資格を持った職員がいることを公表していただけると、統計委員会の資料を見る人たちに、「厚生労働省の統計担当者ってレベルが高いんですね」というメッセージを与えられると思います。というわけで、ここに書いてあるのは私は大歓迎。
○小峰座長 ありがとうございました。ほかはいかがですか。
○梶木委員 データの二次利用の関係なのですけれども、資料8-2の10ページを見ると、行政機関等を除くと、研究者の方々が利用したいという件数は、そう大きい数字ではない。どれを見たらいいのか分かりませんが、200か300ぐらいまでの間という感じがしているのですけれども、一方で、その前の前のページですが、8ページか何かを見ると、かなり利用条件が面倒くさい。面倒くさいと言ってはいけないけれども、きちんとしたことが書いてあるわけです。例えば平成30年ぐらいで、何か問題が起きた事案というのはどういう問題が何件ぐらい起きているものなのですか。ほとんど起きていないとか、もしお分かりになれば。
○大野審査解析室長 御指摘の資料の10ページの調査票情報の二次利用の状況ですけれども、研究者の皆様はおおむね33条の2号が多いのかなと思っていますので、御指摘のとおり200件、だんだん増えてはいるのですけれども、200件程度ぐらいかなと。それに少し1号とか一部入るケースも自治体がやっている委託事業などで入っているケースがありますので、少し被っているものもありますが、そのような規模状況となっております。
 それから、問題が起きたというのは、要するに審査で引っ掛かったという趣旨でおっしゃっていらっしゃいますか。
○梶木委員 そうではなくて、実際に利用された方がその利用を通じて何か問題が起きたことがあるのかどうか。
○大野審査解析室長 私が来てからでしたら、1件もまだ起きていません。ただ、申請を出した人についてですよね。申請を出した後で、情報を漏らしたとか、そういうケースですかね。
○梶木委員 そうです。
○大野審査解析室長 少なくとも研究者の皆様方で、そういうことを起こしたということは、私の所には届いていない状態です。
○梶木委員 つまり、なぜこういうことを言うかというと、公的なデータをできる限り大勢の方に使っていただくことが国民のためになるだろうというのは、大前提としてそのとおりだと思うけれども、では何も規制を掛けないでいたときに、どういう問題がどれぐらい起きるのか。誰にとって起きるのか、個人なのか会社なのかどうかというのがありますよね。その辺がバランスなのだと思うのですが、今後、二次データの利用を議論されるときに、そういったバランスが分かるような感じで御説明いただけたらなという希望になります。以上です。
○山田政策立案総括審議官 恐らくここは、むしろエピソード・ベースで考えていたほうがいいと思っていて、利用者の人から具体的に、先ほど中室先生などからも具体的な話がされていますけれども、そういった話をしていただいて、ただ、我々のほうでなぜこの形を出してもらって、あまりにも申請の仕方がまずかったみたいな話も、率直にそこは出して、具体的な事例でもって、だけれど、それ全体を考えても、そこまで厳しくすることはないのではないかというところの相場感を見付けるという、こういうことというのは往々にして何かトラブルが起きると「羹に凝りて膾を吹く」ような話になって、思い切り規制が厳しくなってしまうことがあるので、そこはちょっとフラットに、具体的に指定を実際に出すまでに、なぜ時間が掛かっているのかといったことについて、利活用検討会などでさらしてみることによって、次のステップが踏めるかなと思います。
○美添教授 2009年の統計法を作ったときにお手伝いしたのですが、法律の細かいことはお任せしますけれども、個票を受け取るときに誓約書を出しますから当然、罰則規定を承知しています。大学によりますが、学長も連帯責任のような形で、誓約書を出させた上で、データを提供します。分析が終了したら直ちに返却ないし廃棄することまで書いてあって、これがないと提供しません。提供するときにも、個別の情報が漏洩される危険性はないかなど、丁寧に審査しているので、貸すほうも手間暇が掛かるし、大体手続を始めて出るまでに6か月掛かるのです。40何日とは早いと思います。ほかの役所だと私の経験では大体6か月です。丁寧に審査する担当者は大変だと思います。私は各府省の統計をお手伝いしているのですが、それでも審査は厳重です。そこまで厳密に審査されているから、調査に協力している世帯や企業が安心できるので、歯止めが必要だと思います。歯止めがどうなっているのかを明確にしろという意味でしたら、手続上こういう誓約書を出していることが分かるように書くのも手かなと思います。
○小峰座長 ありがとうございました。ほかはよろしいでしょうか。
○川口委員 時間がないところで本当に申し訳ないのですが、このEBPMで新規事業は全部それをやるのだというのはすごくいい話だと思うのですけれども、実際に出てきた書類を審査する、例えば会計課などがあるわけですよね。そういう方々はそれを受け止める能力というか、研修との関係ということになると思うのですが、その辺は何か考えみたいなものがあったらお聞かせいただきたいのですが。
○飯島政策立案支援室長 本年度は、財務省主計局に対して試行的にロジックモデルを用いて説明するということが政府の方針でもありまして、当省でも幾つかの事業について実施しました。しかしながら、先生がおっしゃるとおり、実際に聞く側がなかなかロジックモデルを見慣れていないということがあって、その意味すらも正直理解できないということで、あまり査定と言いますか、中身の議論にまでは至らなかったというところがあります。同じように会計課もこのまま実施しますと、なかなか活用するというところまで至らないと考えられます。そこで、各局にEBPMの実践を依頼した後に、勉強会ですとか研修会を開催し、もう少し担当レベルで細かなフォローをしながら、ロジックモデルとはどういうものかといったことを説明し、その上で会計課に実際に予算要求資料を見ていただくというような形で進めたいと考えております。
○小峰座長 ほかはいかがですか。それでは予定しておりました議事は終わりましたので、事務局から何かあればどうぞ。
○武藤政策統括官付参事官 皆様、本日はお忙しい中御出席いただき、ありがとうございました。次回の日程ですけれども、9月頃を予定しておりますが、また追って日程調整をお願いさせていただきたいと思います。決まり次第、御連絡させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
○小峰座長 ありがとうございました。本日は活発な御議論を頂いて大変貴重な意見がたくさん出たと思います。厚生労働省で対応できるものは是非積極的に取り上げていただいて、中には厚生労働省の枠を越えて国レベルでなければ対応できないというものもたくさん出てきたと思いますが、できるだけこういう問題意識を伝えていただくようにして、一歩でも前進していただくようにすればいいなと思います。それでは、これをもちまして第1回の厚生労働省統計改革検討会を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。

(了)

照会先

政策統括官付参事官付統計・情報総務室 菱谷・戸田・土屋

代表03-5253-1111 内線7345