2019年度第4回化学物質のリスク評価検討会議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

令和2年2月3日(月)13:27~14:55

場所

労働委員会会館7階 講堂

議題

  1. リスク評価対象物質のリスク評価について
    1. クロロメタン(別名塩化メチル)
    2. アセトニトリル
    3. 塩化アリル
  2. その他(ばく露実態調査の実施に課題がある物質の取扱いについて)

議事

 
○阿部中央労働衛生専門官 すみません。そうしましたら、時間は少し早いのですけれども、傍聴者の方々を含めて皆さんおそろいだということですので、開始させていただければと思います。本日は、大変お忙しい中御参集いただきまして、まことにありがとうございます。2019年度第4回の化学物質のリスク評価検討会を開催させていただきたいと思います。
  委員の方々の出席状況ですけれども、御欠席が平林先生、内山先生、小嶋先生、高田先生、吉成先生に、本日、朝、津田先生がお風邪で欠席という連絡をいただいているところでございます。
  そうしましたら、毎度のことながら、座長の名古屋先生、以下議事進行をお願いできればと思います。
○名古屋座長 まず、事務局から資料確認をよろしくお願いいたします。
○阿部中央労働衛生専門官 そうしましたら、資料番号もろもろ含めて確認させていただきたいと思います。委員の方々にはタブレットの形でお配りしてございます。ネット上には一式資料を載せさせていただいておりますけれども、まず1つ目、資料1としまして「ばく露実態調査の実施に課題がある物質」というものをご用意しております。それから資料2-1~2-3までで、クロロメタン、アセトニトリル、塩化アリルのそれぞれの詳細リスク評価書の案と、有害物ばく露作業報告の提出状況の詳細、それから、ばく露実態調査の集計表をそれぞれ載せております。
  あわせて、委員の方々のタブレットには、3物質それぞれの初期リスク評価書もおつけしているところでございます。ナンバリングとしては、資料何々の1Aが詳細リスク評価書(案)、Bが実態調査の集計表、それからCとして初期リスク評価書を添付しているところでございます。それから、もろもろ全部まとめた概要として、資料2-4「詳細リスク評価対象物質に係る追加調査実施状況」、こういう資料をおつけしているところでございます。
  参考資料としては、毎度の開催要綱・名簿、リスク評価の実施状況、それから、これまたちょっと長引いている案件ですけれども、リスク評価実施要領の改定案──有害性のほうがまだフィックスできていないというところもありますので、継続検討中の未定稿という位置付けになりますけれども──現在の改定状況という見え消し状態のものをおつけしております。それから、「ばく露評価ガイドライン」につきましては、参考3-2としておりますけれども、1月15日に開催させていただきました本年度第4回のばく露評価小検討会で皆さま合意ということで一旦セットさせていただいている版をお配りしているところでございます。
  1点だけ、「ばく露評価ガイドライン」につきましては、冒頭のスキーム図を書き直さなければいけないかなと思っているところがあるので、便宜上そこだけペンディングになっておりますが、内容的にはこれでセットという形のものを一式お配りしているところでございます。
  以上です。
○名古屋座長 ありがとうございました。
  それでは、本日の議題に入りたいと思います。
  本日は「リスク評価対象物質のリスク評価について」を議論します。まず、ばく露実態調査の実施に課題のある物質の取り扱いについて検討したいと思いますので、事務局、よろしくお願いいたします。
○阿部中央労働衛生専門官 そうしましたら、資料1をごらんいただければと思います。
  ばく露評価小検討会の委員の方々には、この間、見たなという感じのフォーマットかと思うのですけれども、「ばく露実態調査の実施に課題がある物質(2019年12月末時点)」という資料をご用意してございます。こちらにつきましては、ざっくり申し上げると、ばく露作業報告がゼロ件だったものについては、初回でゼロだったら再告示をして、それでもゼロだったらもう打ち切りとしましょうと、こういう取り扱いは従前からなされていたのですけれども、報告自体は来ているのだけれども実際にはなかなか調査ができないというものが出てきておりまして、それらについての方向性を確認させていただきたいなということで、先ほど申し上げた1月15日のばく露評価小検討会のほうでお諮りしたものでございます。
  例えば上から見ていっていただきますと、No.が18、44、93となっています。このNo.は、参考2としてリスク評価の実施状況一覧をおつけしてございますが、その中に書いてある対象物質のNo.でございます。便宜上これを使わせていただきますけれども、例えばウレタンに関しては、2008年の報告で3件出てきておりましたが、これはどうも全件誤報告だったということで、再告示をやらせていただいたのが2011年です。そのときに2件出てきたのですけれども、これは1件誤報告で、1件取り扱いなし。
  ※書きで備考のところに書いてございますけれども、ばく露実態調査のときにやらせていただきます事前調査で、どんな物質を取り扱っているのかというのを事業者の方にお伺いするわけなのですけれども、ちょっとSDSを見せてという話をしたところ、使われている製品の中身にウレタンは入っていなかったということでして、結論としては、今のところ初回に3件、再告示で2件報告が出てきているのですけれども、実態調査に入れるところがないという状況でございます。
  44番のパラ-フェニルアゾアニリン、93番のデカボラン、これらについてもほぼ同様のステータスだと思っていただければと思います。
  これら3つにつきましては、ばく露評価小検討会の皆様とも御相談させていただいた方向性として、もういたし方ないということで、打ち切りにさせていただければどうかなと思っているところでございます。
  その次の107番~166番、これらにつきましては、それぞれ初回で1件、1件、1件、2件、2件、1件とだいぶ少ないのですけれども、記載してありますとおり、取り扱いが中止されていたりですとか、誤報告ですとか、一番上のワルファリンなんかだと、ネズミ駆除で清掃業者が120g使用するのみですと。結論としては、どうもばく露実態調査の機会がなかなかつかめないということで、こちらにつきましては、ばく露作業報告自体はゼロ件ではなかったのですけれども、再告示させていただいて、もう一回チャレンジという方向性でいかがかなということを考えているところでございます。
  こちらの場で御報告させていただいたことをもって、打ち切りの物質について御異論がなければその形にさせていただければと思っておりますし、その他107番~166番につきましては、再告示の必要性について企画検討会のほうにお諮りするという流れで、来年度ですけれども、リスク評価対象物質の検討というところに入れ込ませていただければと考えているところでございます。
  1点だけ、細かい資料はおつけしておりませんけれども、留意事項という形で、148番、エリオナイトにつきましては、備考のところに「測定分析手法について標準物質の調達が困難」という補足を一筆入れてございます。これは石綿のような繊維状の鉱物だということでして、例えば顕微鏡とかで標準物質と比べながら本数を測るというようなことをやるらしいのですけれども、その標準物質が日本国内に出回っていない。そもそも生産中止……といいますか、つくられていないということで、なかなか調達が困難だという事情がございまして、仮にばく露作業報告が出てきて──といっても、生産中止という状況だということを踏まえると、多分出てこないのではないかなと思っているのですけれども──仮に出てきても測定がなかなかしにくいなという事情があります。
  そういったなかなか困難な状況があるというものではございますけれども、一旦は粛々と、先ほど御説明させていただいたような方針で、企画検討会に諮らせていただくということでいかがでしょうかという御相談でございます。
  以上です。
○名古屋座長 ありがとうございます。
  では、御意見等をお願いいたします。
○原委員 質問ですけれども、140番の1・1・1-トリクロロエタンが、もう実際に作業場で使用されないという状況になっているからということで考えてよろしいのでしょうか。
○阿部中央労働衛生専門官 そのようです。「ばく露可能性なし」としている1件については、ばく露実態調査の事前調査で、先ほど申し上げた、どんな作業をやっているのかというのを確認していただいております。その中で、どうも取り扱っている工程があるのは確かなのだけれども、どうあってもばく露しないだろうと考えられるような状況が確認されたと。
  実はほかの物質でも、例えば先日こちらの検討会にお諮りしましたジボランなんかだと、ボンベを運搬しているだけなのでばく露は発生しないだろうみたいな、それは流石に現場に測りに行ってもしようがないみたいなケースがありまして、これはちょっとしようがないとして調査対象からは外す取扱いとしてきているという理解です。
  取り扱い中止というのは、これは上のウレタンやデカボランなどもそうなのですけれども、報告年から実態調査までにちょっと時間が経ってしまっていたりすると、報告当時は使っていたかもしれないんだけれども、少なくとも今はもうその事業場さんでは取り扱っていませんというのがどうしても出てきてしまっているというのが現状です。
○名古屋座長 あとは、よろしいでしょうか。
  エリオナイトがありますけれども、もともとの疾病はトルコのカッパドキアで産出される繊維状のエリオナイトに起因するのですけれども、日本には幸いなことに繊維状のエリオナイトは産出されなくて、工業的に合成されたエリオナイトは繊維状形態をしておらずみんな微粒子です。そのため、日本でエリオナイトの繊維状物質として濃度を求めるときには、標準試料がないということと、そもそも繊維状エリオナイトの許容濃度の様な濃度がないということ。国内産地から得られるエリオナイトは、一般に繊維状形態を呈さず、他種のゼオライト鉱物(レビナイト、チャバザイト、ヒューランダイトなど)と共生して産するということです。こうした現状からエリオナイトをどうするのかといったときに、多分、天然鉱物の場合は、蛇紋岩もそうなのですけれども、ある程度の塊状のものについては、天然鉱物の場合は除外しています。ただ、それを粉砕した時に、もしかして繊維状の物質が出たときには規制をかけましょうとなっているけれども、多分日本で産出されるエリオナイトは粉砕しても繊維状にならないので、多分リスク対象物質にはならないのではないかなと思います。でも、ここに書かれていますように、企画検討会で今のような話をして、再告示するかどうかを検討していただきましょうという形にしましたということですね。
  あとどうでしょうか。必ず初回はこういうふうにしましたけれども、やはり企画検討会に持っていって、再告示をするかどうかということを決めていただいて、やめてもいいし、また再告示をしても出てこなかったら、最終的には上の3物質のように中止、打ち切りという形になるかと思いますけれども、こういうふうな流れでいきたいと思いますけれども、どうでしょうか。
  よろしいでしょうか。そうしましたら、今回取り上げた物質のうち、打ち切りになることが了解された物質については、その旨を企画検討会に報告します。再告示をかける方針とされたものについては、同じく企画検討会に対して次回の有害ばく露作業報告の対象物質にするかどうかについて議論していただくという形になります。よろしいでしょうか。
  どうもありがとうございました。
  そうしましたら、続いて、詳細リスク評価に進むことになっていた3物質について検討したいと思います。一番最初から、事務局、よろしくお願いします。
○阿部中央労働衛生専門官 ありがとうございます。そうしましたら、順次御説明させていただきたいと思います。
  本年度、初期リスク評価は、かなり駆け足で16物質片づけてきたところなのですけれども、今回の3物質は詳細リスク評価ということで、これを過ぎたら一応措置検に回るというものになりますので、一つ一つ過去の経過を振り返りながらやらせていただきたいと思っております。3物質それぞれ、30分ちょっとをめどに御議論をお願いできればなと考えております。ただ、文言とかについては、いろいろ不備、不手際等が残っているところがあるかもしれません。そういったところにつきましては追って修正させていただきたいと思っておりますので、これは初期リスク評価書もろもろとセットで―実際にセットになるかどうかは分かりませんが──本年度初期リスク評価書16物質分と、今回のこの詳細リスク評価3物質分、委員の方々に順次ご確認いただくようにしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  そうしましたら、中身のほうのご説明に入らせていただきます。資料2-1A、クロロメタンの詳細リスク評価書(案)というのをご覧いただければと思います。冒頭、表紙に「詳細;経気道に係る中間報告」という形で書かせていただいているのですけれども、今回取り上げさせていただきましたクロロメタン、アセトニトリル、塩化アリルはそれぞれ実は経皮の勧告がついている物質になります。ですので、従前の取り扱いからいきますと、リスク評価確定のためには経皮ばく露の調査をやらなければいけないという取り扱いになっておりますので、今回で確定という形になかなかならないのですけれども、一旦経気道のリスクについてはある程度めどがついたかなということで、御相談させていただくものでございます。
  一応、3物質全体の概要としまして、資料2-4ということで、ざっくりポイントをまとめたものを御用意しているのですけれども、詳細リスク評価に入る前の初期リスク評価からすると何年か経っている物質ということもありますので、今回は物性のところから改めてちょこちょこと御説明させていただきたいと思います。
  そうしましたら、クロロメタン、資料2-1Aです。別名塩化メチルということで、構造式は見ていただいたとおりです。順次1行目から、上からちょこちょこなぞっていきます。資料上で黄色のマーカーに赤字にしてあるところが、おおよそ初期リスク評価書の記述からアップデートしているところとお考えください。
  物理的化学的性状については、無色のガスということで、沸点が低いです。通常気体で存在しているものだということですね。蒸気圧が506kPaぐらい。蒸気密度はちょっと空気より重いぐらいですかね。
  そういった性状のものなのですけれども、物理的化学的危険性につきましては、引火性が高いとか、爆発性であるとか、そういった情報がございます。
  製造・輸入量につきましては、経産省の2017年度のデータでいって37,831 t。化工日では18万 tくらいと、このぐらいの規模感の物質だということでございます。
  用途としては医薬品、農薬、発泡剤、不燃性フィルムなどにもろもろ使われております。まあまあメジャーな物質なのかなと思います。製造業者さんについての説明は省きます。
  発がん性につきましては、ヒトに対する発がん性は判断できないという情報になっております。
  閾値の有無のところは、これは、記載内容自体はもともと総合評価表には書いてあったのですけれども、初期リスク評価書の本文の方には実は書いていなかった部分でして、今回改めて転記しました。
  補足になりますが、これはだいぶ前に初期リスク評価書を作成していたものなので、フォーマットが結構今のものと違う部分があるのです。なので、情報が足りないように見えるところは最近の記述に合わせてなるべく埋めたのですけれども、若干並びが揃っていないところも無くはない状況です。情報として足りないところがありましたら、申し訳ありませんが、後ほど御指摘いただければと思います。
  また、実は、「報告がない」、「情報がない」といった場合の記述の書きぶりとか、あるいは有害性の分類の書き方が、時代の変遷なのか、その時々の担当者の変節なのかはわからないのですが、微妙に書きぶりが違ったりする部分がありまして。この辺につきましては、追って2019年度の報告書をセットする際には、詳細リスク評価3物質と初期リスク評価16物質、全てなるべく平仄を合わせた形にできるようにしたいと思っておりますが、今回は、一旦初期リスク評価のときの記述をそのまま使っているということで御理解ください。どれに最終的に統合するかについては、また御相談させていただきたいと思います。
  中身の話ですが、発がん性以外の有害性につきましては、急性毒性がここに書いてあるぐらいです。皮膚刺激性/腐食性、眼に対する重篤な損傷性/刺激性、皮膚感作性、呼吸器感作性はそれぞれ報告なしということになってございます。
  反復投与毒性につきましては、実は初期リスク評価書ではもともと神経毒性を含む形で書かれていまして、最近のリスク評価書では、神経毒性は別立てで書くことになっておりますけれども、すみません、便宜上ここでは当時の記述前提に、神経毒性を含む形の記述をそのまま使わせていただいております。その前提でLOAELは50ppmとなっています。
  生殖毒性はあり。これはラットの試験です。
  遺伝毒性あり。こちらも根拠のところが実は初期リスク評価書に記載されていなかったのですけれども、昨今のトレンドとして根拠はリスク評価書本文にも一通り記載しておくことになっていますので、差し当たり総合評価表等に記載されていたものをベースに書かせていただきました。
  今年度いろいろ御指摘いただいた、遺伝毒性の中に生殖細胞変異原性の記述を入れるというところについては、この物質について生殖細胞変異原性の有無の確認がされていなかったものですから、一旦、事務局で有害性評価書の記述を見て、これなのかなというのを記載する形にしてはいるのですけれども、正直ちょっと自信がないので、こちらについては後ほど、これは「あり」でいいのか、それとも「判断できない」なのか、「なし」なのか、そういったところを御確認いただければと思っているところでございます。
  許容濃度等につきましては、ACGIHがTLV-TWAとして50ppmを設定しております。産衛も同じ50ppmです。 DFG MAKも同じです。
  評価値につきましては、一次評価値が0.38ppmと、神経毒性に関する動物試験結果により導き出されたLOAELから算定した評価レベルを設定されておりました。二次評価値につきましては、先ほどお話ししましたACGIHのTLV-TWA、それから産衛の許容濃度が一致しているということで、この50ppmを採用されているところでございます。
  149行目以降、ばく露評価のところです。ばく露作業報告の提出状況は表のとおりでございました。37事業場。そこそこ候補があるのかなという印象ですけれども、使われ方としては「他の製剤等の原料として使用」、「溶剤、希釈又は溶媒として使用」、他もろもろという感じでございました。
  158行目以降の「初期リスク評価までのばく露実態調査結果」、このあたりの記述は、従前の詳細リスク評価書とちょっと項目立ての仕方を変えております。なにぶん、詳細リスク評価をとりまとめること自体、実は3~4年ぶりでして、詳細リスク評価書というものの形も微妙にどうしようかなと思ったのですが、初期リスク評価からの年数の経過なども考えますと、便宜上経緯を追いかけられるようにしたほうがいいかなということで、一旦初期リスク評価までのばく露実態調査結果をそのまま残した形で、その後の追加調査部分を別の項として立てる形にまとめさせていただきました。
  ばく露作業報告を提出いただいた37事業場のうち、初期リスク評価の段階では9事業場を選定してばく露実態調査を実施してございます。個人ばく露測定が16人分、スポット測定15地点分、A測定が1単位事業場。
  測定分析法のところにつきましては、すみませんが説明は割愛させていただきます。
  ばく露実態調査の対象事業場における作業の概要としては、「クロロメタンを含有する製剤その他の物を製造するために原料として使用」ないし「建材の製造を目的とした原料としての使用」が主な用途でございました。
  ばく露の可能性のある主な作業としては、サンプリングですとか製品切りかえとかを書いてございます。屋内よりは、どちらかというと屋外が多いかなという感じでしょうか。局排が設置されている作業はなく、防毒マスクが一部で使われていたということです。
  その初期リスク評価までの16人分のうち、定量下限値を下回ったのが1データございましたので、評価データは15データを採用しておりまして、それらをまとめたものが194行目と195行目、ばく露の可能性のある作業と測定結果をまとめたグラフになっております。
  中身の説明につきましては、その上の測定結果、180行目以降のところをつらつらとご覧いただければと思うのですけれども、結論をまとめますと196行目、「最大ばく露濃度の推定」というところですが、測定データの最大値、個人ばく露のTWAの最大値自体は34ppmということで、二次評価値50ppmを下回ってはいました。ですけれども、グラフを見ていただくと、きゅうっといい感じに曲線が伸びていくような感じで見ていただけると思うのですが、区間推定の値をとりましたら63ppmと二次評価値をちょっと超えたということで、これは初期リスク評価では終わらなかったというのが、その当時の状況です。
  以上、クロロメタンについての初期リスク評価をまとめたものが198行目以降でございます。斜体部分にしておりますのが、当時こういう記述をされていた内容ですけれども、最近まとめている初期リスク評価と考え方は基本的に変わりません。二次評価値を上回るばく露が──これは区間推定ですけれども──見られたということで、ばく露の高かった要因等を明らかにするため詳細リスク評価を行うべき、というような結論とされていました。
  比較的高いばく露量が確認された作業としては、調合・仕込み、試料のサンプリング等々とされておりまして、今回、こういったところについて追加の実態調査を行ってきたところでございます。
  具体的な追加調査の結果が211行目以降の記述になります。初期リスク評価の結果を踏まえて、2つ事業場を確保しまして調査を行ってきております。
  1つはクロロメタンの製造を行っている──これはJ事業場と書いておりますけれども──事業場でサンプリング、試料分析の作業を行っているところ。もう一個、同じ構内のK事業場というところで、ポンプを使用してクロロメタンを製品タンクからローリーに充填する作業があったということで、この2つについて追加のばく露実態調査を実施してきたところでございます。
  測定結果につきましては223行目以降にございますけれども、JとKを足していただいて、個人ばく露測定は4人分です。そのうち測定時間が60分のみと短かった1データがあったということで、これを除いた3データを評価データとして採用してございます。
  個人ばく露測定の結果から、この3人分の追加調査の中の最大値が4.6ppm。これは、屋外におけるローリーへの充填の作業で測定されたものでございました。
  追加調査結果を含めて全データで区間推定をとり直すと48ppmとなりました。要は追加調査分の個人ばく露がかなり小さい値だったということがございまして、区間推定をとり直したら低くなった、「リスクが低い」の範囲に入ってきたということでございます。
  これを改めてグラフにして最大ばく露濃度の推定をまとめたのがその次のページにございますけれども、グラフ自体はさっきの絵と余り変わらないように見えますが、J事業場のj1さん、j2さんとか、K事業場のk1さんとかがカウントされているデータになっています。見ていただくと、k1が今回追加調査分の最大で4.6 ppmということで、j1、j2もかなり低かったので、結果として区間推定の値はちょっと下側に引っ張られました、ということになります。
  こういった場合の取り扱いをどうするのかということですが、もともと初期リスク評価の時点では区間推定で「リスクが高い」という判断をしていたわけなのですけれども、今回、追加調査の結果、全般に下回ったというところがございますので、経気道に関して見たときには「リスクが低い」の範囲に評価し直すのかなという発想でおりまして、それをまとめたものが238行目以降の「リスクの判定及び今後の対応」というところでございます。
  繰り返しになりますが、経気道に係る中間報告という位置づけにさせていただければと思っております。経皮吸収、この物質についてはACGIHのSkinとかDFGの区分Hがついておりますので、本当の意味でのリスク評価の確定には経皮のばく露評価が必要でしょうというところはございますけれども、経気道からのばく露については一定程度様子が見えたと言ってよいのではないか……ということで、244行目以降のところです。
  「初期リスク評価の段階で、サンプリング作業等において二次評価値を上回るばく露が推定されたことから、これらの作業等に関して追加のばく露実態調査を行った。その結果、追加調査事業場における個人ばく露(8時間TWA)は二次評価値を大きく下回っていたことから、作業工程に共通して高いばく露があるわけではないものと推定される」。ここの「二次評価値を大きく下回っていた」というのは、今回の追加調査分の中では4.6 ppmが最大でしたという話のところです。「また、当該追加調査分も含めて区間推定上側限界値を再算出したところ、ばく露レベルは二次評価値を僅かながら下回るものとなっており、総じて、経気道からのばく露のリスクは低いものと考えられる」。ここまでが大まかなまとめでございます。
  ただ、すみません、先ほどは便宜上説明を飛ばさせていただいたところなのですけれども、231行目をご覧いただければと思います。「スポット測定の実測データの最大値は、屋外におけるローリーへの充填の作業で測定された144.3ppmとなった」ということで、144.3ppmというスポット測定の値がございました。これは、充填に用いるホースの接続部を取り外す作業のときに、ホース内の残液が漏れていて、それが──クロロメタンは気化しやすい物質ですので──拡散しているものと考えられた、というのが調査をやっていただいた受託者さんのほうの分析・検討の結果として報告をしていただいてございますので、考慮が必要でしょうと。
  ですので、ざっくり個人ばく露全体として見ると比較的濃度が低かった作業ではございますけれども、スポット測定として見るとちょっと高いものがあったというところを考慮する必要があるのかなという発想でございまして、それをリスク評価の結果のところにまとめましたのが251行目以降のところになります。先ほどまでの「経気道からのばく露のリスクは低いものと考えられる」の次のところです。
  「ただし、追加調査事業場で実施したスポット測定においては、二次評価値に比べかなり高い値が計測されている。具体的にスポット測定の値が高かった作業はポンプを使用したローリー等への充填の作業であるが、その要因と考えられる残液からの気化による作業環境中への拡散は特定の作業でのみ発生しうる事象ではないと考えられ、注意が必要である」。
  255行目以降は割と毎度の、自主管理をしっかりやりましょうという記述ですけれども、258行目の途中で、スポット測定の記述のところを反映させて、「容易に気化し、高濃度になりやすい物質であることを十分に踏まえてリスクアセスメントを実施」すべきというような記述に一旦させていただいているところでございます。
  事務局としては、こういった形でまとめさせていただいて、今回、経気道の評価としては区切りをつける。経皮についてはまだ引き続き検討が必要ですけれども、中間報告をさせていただきつつ、自主的な管理につなげていくような形の指導をさせていただくという路線でいかがかなと考えているところでございます。
  以上です。
○名古屋座長 ありがとうございました。
  この報告に御意見等ありますでしょうか。どうでしょう。
○鷹屋委員 初期のときのデータなのですけれども、初期で一番高かった人、34ppmという。だけど、作業を見ると1分間の作業を4回しかしていないのに、8時間のTWAが34ppmなので、すみません、これをばく露評価小検討会で精査しなくてはいけなかったのかもしれませんけれども、これはスポットの144ppm以上に、この人が作業していたときに、短時間であっても非常に高いばく露があった可能性があって、確かにほかの結果から、定常的に共通して経気道の高いばく露があるとは言えないのですけれども、揮発性が高いガス状の物質ということで、突発的に高濃度のばく露を受ける、しかもSTELも設定されているわけで、それを超えるようなばく露の可能性は常にあるということ、つまり経気道のリスクが低いと言い切るのではなくて、そういった突発的なばく露に関して常に注意をするというような表現を加えたほうがいいように感じるのですけれども。
○阿部中央労働衛生専門官 一応補足的に委員各位のタブレットのほうに非公開扱いの資料を入れてありますので、中身を読み上げずに見ていただければと思うのですけれども。D事業場のd1さんがその34ppmの人なのですが、この作業のところでスポット測定も行われております。屋内の局排なしの作業でサンプリングをやっていました。
  スポット測定は最大値で30ppmとなっているのです。初期リスク評価を検討したときには、その辺りも踏まえまして、d1さんについてはまあまあどうかなくらいの評価をされたのかなと思っております。
  ただ、今御指摘いただいたような、何か注意書きのための記述を入れるべしというところは、まさにばく露評価小検討会でも御指摘いただいた、『スポット測定の値がえらく高いよね』という記述をどう書いていくかの話だと思うので、そこは御相談させていただきたいと思います。「リスクが低い」という表現をどうするかについても、正直私もちょっとどうしようかなとは思っていたのですけれども、そこは本当に御相談かなと思います。
○名古屋座長 多分、これは、経皮のところで測定をするときに、この作業場も多分入れてスポット測定をするはずなので、Ceilingだから。そうすると、今回はスポット測定は1回だけで、短い測定時間だったけれども、今度の測定は多分午前2回、午後2回必ずやらなくてはいけなくなってくると、その測定データで、Ceilingの測定としての評価もできるし、ばく露としての評価もできるので、そのときにもう一度検討できると思います。
  ただ、このときだけだと多分そうした測定はしていないので、たまたま詳細リスク評価のところで、あくまでも区間推定値の値で詳細リスクになったときは、詳細リスクでのデータがふえると区間推定値の値が下がることがあるので、詳細リスク評価のところでも必ず、自主的対策と要因解析に分けていますよね。要するに、超えている部分と超えていない部分が、たまたま2例ぐらいだと出てくる可能性がありますが、なかなか出てこないです。
  ただ、これがありがたいのは、経皮のところをもう一度測定するので、それを踏まえて評価できることです。今回のばく露は、ばく露のところの表現が低いというのは、今、鷹屋さんが言ったように、これだけでいくと無視する、もうちょっとやわらかく高いというのが入ってもいいのかと思って。その辺を入れながら、経皮のところのスポット測定とあわせて総合的な判断をしたほうがいいのかなと思いますけれども、どうでしょうか。
○阿部中央労働衛生専門官 補足で済みません。126行目あたりの許容濃度のところを見ていただければと思うのですが、STELです。CeilingはOSHAが15分間とか書いてある。このOSHAのCeilingの15分間とかのまとめがよくわからないので、ここをもう一回見直そうかなと思っているのですけれども、基本的にはSTELベースで100になっているということではないかと思われます。
  一方で、今御指摘いただいたような、やわらかくリスク低いと言い切らない路線は、その方向性で書きぶりを検討させていただきたいと思います。趣旨としましては、今の時点で「リスクが高い」と言い切って措置検に回すようなステータスではないが、中間報告は1回やっておきましょうという位置付けで。
○名古屋座長 そういうことです。全くそのとおり。やはり初期リスクのことが書いてあるほうがいいですよね。わかりやすくて。要するに、初期リスクから何が原因で詳細リスク評価の物質になったかということが書かれているこの表現のほうがわかりやすいと思いますので、ありがたいと思います。
  ほかに何かお気づきの点はありますでしょうか。よろしいですか。
  そうしましたら、中間報告という形ですけれども、ばく露のところに少し手を入れるかもしれませんけれども、こういう形で中間報告ということでまとめたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
○西川委員 結論はいいのですけれども、初期評価書をつくってから約5年たっていますよね。ばく露については当然新しいデータが出てきて解析するということでいいのですけれども、有害性についての初期評価書以降に出てきた試験データとか、評価書とか、そういうのは漏れなくチェックされた上での話なのでしょうか。
○阿部中央労働衛生専門官 漏れなくチェックができているかというと、漏れなくでは正直ないです。一応、許容濃度とかの値が変わっていないかどうかについては、ちょろっと見てはいるのですけれども、その後に出ている試験データも含めてもう一回調べ直すというのは正直なかなかできていない。
  実はその点については、今回取り上げさせていただいたほかの2物質も含めて御相談だと思っておりまして。本論とちょっと離れるのですけれども、参考2というのを見ていただけますでしょうか。リスク評価の実施状況という資料です。今までリスク評価の実施状況について必ずおつけしていた表があったのですけれども、どうもそれだと進捗がよくわからないなと思っていまして、今回がっつりまとめ直したのがあるのです。相当細かいので、すみません、適度に拡大していただきながら見ていただけるとありがたいのですけれども。
  初期リスク評価で有害性評価を行った年度とかを一応一通りまとめています。有害性評価の検討会等のところが空欄になっているものは、要は評価が終わっていないものだと思っていただければ大体間違いないかと思うんですけれども。見ていただきますと、有害性評価を1回やっていただいてからだいぶ時間が経っているけれども、詳細リスク評価まで含めるとまだ完結していないものが結構溜まっているのが見てとれるかと思います。
  有害性評価書については、委託事業で毎年度やっております有害性評価書作成事業の中で作成・更新していただいているのですけれども、来年度はおそらく全く新規に作る必要があるものはあまり無いかなと思っておりまして。なぜかといいますと、ばく露作業報告で新規に1個追加したのがモリブデン化合物、三酸化モリブデンのみなのです。なので、来年度の委託事業の中では、1回、棚卸し……というわけではないのですけれども、有害性評価書で更新できていないもののステータスを改めてきれいに整理した上で、場合によっては有害性評価の情報の部分について、今回の中間報告の対象物質はアップデートの対象にするのもありなのかなと。ですので、ご指摘の点については、来年度以降評価結果をまとめる中で、更新すべき部分があれば当該部分だけ更新するというような形をとらせていただけるとありがたいです。
○名古屋座長 前の場合だと経皮に関連した測定などをやっていないから、今のようなばく露だけで評価しているけれども、経皮測定のときにばく露の測定をしないわけではなくて、ばく露も測定するし、スポットも測定するということなので、結果的には今のような作業が入ってくることになると、5年前のばく露測定の結果はあったけれども、また新たにばく露の測定もするし、場の測定もするので、そのデータが要するに経気道ばく露のところと経皮のとことの、2つの測定結果が出てくるので、従来よりはより正確な判断ができると思うので。ただただ5年前のデータでリスク評価しているのではないと言うことができるので、これは経皮吸収のところのデータが出てきてから、また経気のところもあわせて議論して、今のデータではこうなのだけれども、出てきたらまた違うのか、前と同じなのかわかると思います。
○阿部中央労働衛生専門官 まさに、ばく露評価のところについては、今、名古屋先生が御指摘のとおりで、有害性情報もそれはそれで、場合によっては有害性評価書のみ更新するとかいうことも、一部添付資料差しかえではないですけれども、そういうこともできるかなと思いますので。
○西川委員 その際は、有害性小検討会にかけてということになるのでしょうか。
○阿部中央労働衛生専門官 おそらくそうならざるを得ないと思います。アップデート部分をどこまで真面目に見ていただくかというのは結構大変だと思うので、実際にどこまでできるかはご相談ですが、どうしても判断が難しい部分は残ると思いますので。何でそういうことを申し上げているかというと、今もう見ていただいたとおりなのですけれども、今回はたまたま詳細リスク評価の案件3物質だけなのですが、初期リスク評価が終わっていないものも、実は、1回有害性評価をやってから時間が経ってしまっているものとかもかなりございますし、有害性評価書自体は1回つくっているのだけれども、まだなかなかその次のステップに進むところがちょっとね、というステータスのものがいっぱいありますので。一方で、詳細リスク評価とか、次のステップに入れるだけのばく露実態調査が完了する見込みというのが結構その時々なものですから、タイミングよくリスク評価をまとめるのに合わせて有害性情報をアップデートするというのはなかなか難しいというのがございます。そこは今後も御相談しながら、有害性評価小検討会のほうに諮らせていただきつつ、アップデートしていく。今まで有害性情報の部分だけアップデートするということはなかなかしなかったかもしれないですけれども、そこは場合によってやらせていただく形で調整させていただきたいと思います。
○名古屋座長 よろしくお願いします。
  そうしましたら、ここはこれで終わりまして、アセトニトリル、次、よろしくお願いいたします。
○阿部中央労働衛生専門官 そうしましたら、資料2-2A、アセトニトリルの詳細リスク評価書(案)をごらんいただければと思います。
  こちらも表紙に書いてあるとおり、「詳細;経気道に係る中間報告」──位置づけとしては中間報告という位置づけになってございます。
  とりあえず中身に入らせていただきます。こちらも1行目から順次内容を御説明させていただきたいと思います。
  アセトニトリル、別名シアン化メチルとかいろいろありますけれども、物理的化学的性状としては、特徴的な臭気のある無色の液体とされています。沸点82℃なので、常温だと液体です。ちょっと温めると揮発するという感じかなと思われます。
  蒸気密度としては1.4と、空気よりちょっと重いです。引火点は比較的低いですが、発火点は524℃と、そのぐらいまで行かないと発火しないというものでございます。
  生産量は13,000t、これは2017年の推定です。製造・輸入量は、経産省の情報ベースで5,776t。用途としては、農薬、医薬、香料──この辺を読んでいると、さっきのと余り変わらないような気もしますけれども──染料等の有機合成用原料、抗生物質抽出剤、クロマト分離のキャリアー液等々ということです。
  発がん性の情報につきましては、24行目ですけれども、「ヒトに対する発がん性については判断できない」という書き方になってございます。ラット、マウスの試験の結果とか、肝腫瘍の発生が増加したが云々とかいうところをいろいろ書いてございますが、IARC、産衛学会もそれぞれ評価区分はなし。ACGIHはA4がついているところです。
  発がん性以外の有害性については、急性毒性、LC、LDはそれぞれ書いてあるとおりですけれども、つらつらつらと下に行っていただいて、92行目、皮膚刺激性/腐食性は「あり」。軽度の刺激性が認められたとされています。
  眼に対する重篤な損傷性/刺激性は「あり」。
  皮膚感作性は「判断できない」。
  呼吸器感作性は「調査した範囲で報告なし」。
  反復投与毒性が、NOAELで100ppm。これはマウスの試験ベースでとってきた値でございます。
  生殖毒性は「判断できない」。
  遺伝毒性も「判断できない」になっております。
  生殖細胞変異原性につきましては、これは項目を新しく追加しているものになります。これも正直、後で文言を確認いただくところでチェックいただければと思っているのですけれども、結論としては「判断できない」でいいのかなという見方をしております。遺伝毒性全体の根拠と同じなのですが、よく読むと「DFGは「生殖細胞変異についてはカテゴリーを設定するための十分なデータはない」と判断している」という情報がございましたので、総合的に見ると生殖細胞変異原性は「判断できない」なのかな……という発想で今のような記述を置いております。
  神経毒性は「あり」です。──ここのところ、多分1年か2年かの有害性評価のタイミングのずれなのですけれども、ここでは既に神経毒性が別立てになっていますね。
  許容濃度とかにつきましては172行目以降です。TWA、ACGIHが20ppmをつけております。SKIN、A4です。産衛学会は設定なし。DFGが20ppmでH区分をつけております。
  根拠のところとかで黄色くマーカーを設定しておりますのは、初期リスク評価書の時点では総合評価表とか記載されていた根拠を転記していなかった部分がありましたので、クロロホルムと同様、最近のトレンドだと一応全部これは転記しているということを踏まえて記載してございます。
  237行目以降、評価値についてです。一次評価値は「なし」。二次評価値は、ACGIHのTLV-TWAを採用しまして、20ppmという値を使っておりました。
  以上のようなアセトニトリルについて、ばく露作業報告がどんなものだったのかというところが257行目の表でございます。213事業場出てきておりました。かなり多いほうですね。
  これを踏まえて、初期リスク評価までのばく露実態調査はどうだったのかというのが258行目以降になります。213事業場のうち、調査の実施に同意が得られた5事業場を選定してばく露実態調査を実施させていただきました。個人ばく露測定が6人分、スポット測定が6地点というのが、それぞれ調べてきた範囲でございます。
  ではそういったところでアセトニトリルがどういうふうに使われていたのかですが、「触媒又は添加剤として使用」、「溶剤、希釈又は触媒として使用」、「洗浄を目的とした使用」と、よくある有機溶剤系のもろもろの使われ方の気がしますけれども、ばく露の可能性のある主な作業としては、対象物による部品の洗浄、「部品の浸漬、超音波洗浄、乾燥等」というのが一連の工程です。それから、溶媒としてアセトニトリルを使用している部分で、抜き出しの作業が行われていたということです。
  作業環境としては、どちらかというと屋内作業が多い感じですかね。局排は一部を除いてつけられていて、同じく有機ガス用の防毒マスクも一部を除いて使われていたということでございました。
  277行目が、以上の測定結果がどうだったのか、まとめられていたものですが、これをそれぞれグラフと表にしているのが287行目と288行目でございます。6地点分のデータをまとめましたらこうなったということなのですけれども。これもさっきのクロロメタンと似たようなものだと思うのですが、個人ばく露の値自体は二次評価値をだいぶ下回っていたようなのですけれども、区間推定をとりましたところ、289行目とかに表をまとめてございますけれども、35ppmと二次評価値と比べてだいぶ上回っていたということがございまして、詳細リスク評価に進んでいたものでございます。
  これを踏まえて、291行目に記載しているのが当時の初期リスク評価の結果でございますけれども、大宗は変わりません。区間推定ですけれども、ばく露が高かったので、要因等を明らかにするための詳細リスク評価を行いましょうと。
  その際、具体的にどういう作業に注目するべきかについては、特に、二次評価値を上回ってはいないものの、高いばく露が確認された作業として、溶媒として使用する際の抜き出し、開放系での作業ですとか、洗浄、ホースの着脱作業を行う事業場での追加調査、こういったところが指摘されていたものでございます。
  以上を踏まえまして、305行目以降です。上記4の初期リスク評価の結果を踏まえ、2つ事業場を追加で調べてまいりました。
  一つ目はF事業場。他製剤の製造のため、粉体原料と液体のアセトニトリルを反応槽に投入し加温・反応を行う作業を行っている。そういったところでの仕込み作業、ドラム缶から反応釜にアセトニトリルを注入する、その反応釜を洗浄する、反応が始まったらその反応釜からちょこちょことサンプリングしてくる、といったような作業です。
  もう一つは、中間体を精製するための再結晶の溶媒としてアセトニトリルを使用していたG事業場で、ドラム缶からの抜き取りと、遠心分離機の監視及び付着する結晶のかき落とし──と言うとちょっと分かりにくいような気もするんですけれども、中間体を精製するための再結晶の溶媒としてアセトニトリルを使用している。多分、再結晶してきたその結晶部分を遠心分離機か何かにかけるのですね。で、その遠心分離機の監視を行っていると、内側にその結晶がついてきますので、それをかき落とします、といった作業かなと思いますが──それから、製造した中間体のファイバードラムへの充填等の作業。この辺の一連の作業を追加で調べていただきました。
  注意書き的に※書きで314行目に書いてございますが、G事業場につきましてはクリーンルーム内で行われていたということがございまして、スポット測定とA測定はできませんでした。
  こういった追加調査の測定結果が、320行目以降です。追加調査で6名分、個人ばく露測定がございましたけれども、全てデータをとりました。ただ、特に322行目以降のところですけれども、さっき申し上げた遠心分離機の監視及び付着する結晶のかき落としの作業で、8時間TWAの最大値は160ppmという値が出ました。グラフをそのまま下に描いておりますけれども、この最大値が結構ぽんと上に飛び抜けている感じですね。ただ、そのg1さんだけでなく、g2さんについてもそれなりに大きな、二次評価値に比べて高い値になってございます。
  スポット測定につきましては、反応開始後の反応釜からのサンプリングの作業で18.1ppmという値が出てございます。
  追加調査で実際に追加して調べてきた作業の内容は331行目に表の形でまとめてございますけれども、これを踏まえますと、332行目の「最大ばく露濃度の推定」というところ、もともと区間推定で超えているから追加で調べてきましたという入り口なのですけれども、その追加調査で調べてきた分で個人ばく露もかなりでかい値が出てしまったと、そういうようなまとめになってございます。
  こういった追加調査の結果に基づきまして、「リスクの判定及び今後の対応(経気道に係る中間報告)」としてまとめているのが334行目以降でございます。
  「本物質については経皮吸収が指摘されている」云々と、ここの記述は先ほどのクロロメタンと同じ発想です。とりあえず経気道だけでも中間報告を行わせていただきたいというようなラインです。
  340行目。「初期リスク評価の段階で、本物質を溶媒として使用する作業等において、二次評価値を上回ってはいないものの他の作業に比べて比較的高いばく露が確認されたことから、これらの作業等に関して追加のばく露実態調査を行った。その結果、追加調査事業場における個人ばく露(8時間TWA)の最大値は二次評価値を大きく上回っていたことから、本物質については作業工程に共通して高いばく露があるものと推定され、経気道からのばく露のリスクは高く、健康障害防止措置を検討する必要があるものと考えられる。
  ここで、ばく露作業報告によれば、本物質の用途の中で特に多くの割合を占めるのが「溶剤、希釈又は溶媒として使用」となっており、追加調査事業場で特に高いばく露が認められたのも本物質を溶媒として使用する作業等であった。しかしながら、当該追加調査分を含め、他の作業も含む全データにより再算出した区間推定上側限界値も二次評価値を上回っていることを踏まえると、本物質に関して特に注意が必要なのは本物質を溶媒として使用する作業等であるが、健康障害防止措置の検討に当たっては、他の作業も十分考慮する必要があると考えられる」と、こういった記述にさせていただいているのですけれども。
  さっきから度々申し上げていますが、詳細リスク評価自体がだいぶ久しぶりで、過去にはまとめ方はどうしていたのかなと、詳細リスク評価の前例をいくつか見てみたのですが、あまり細かく説明が書いてないものもあれば、結構細かい点をいろいろ書いているものもありまして、その時々で記述の仕方が変わっていましたので、今回はどうしようかなと。ただ、リスク評価検討会の報告書としてまとめていただいている中で共通するポイントとしては、どういった作業に注意するべきなのかは確認をとりましょうというところが一つあったのかなと思っています。
  そういった視点でいくつかの例を見てみますと、本当にこの作業は要注意というのが露骨に明確になっているものは、その作業について注意するべきという限定した書き方をしている場合もあったのですが、全体として見たときに区間推定の値が上回っているものについては、これといった作業を限定せず、総合的にその物質を取り扱う作業についてリスクが高いおそれがあるという路線でまとめられているようでしたので、347行目以降の「ここで」云々では、まさにそういった路線で記述してみているところになります。全データで再算出した区間推定上側限界値が二次評価値を上回っていることを踏まえて、他の作業も含めて注意が必要ではないかというような書き方にしているところでございます。溶媒──さっき申し上げた遠心分離機かき落としのところが実際にはばく露がすごく高かったということなのですけれども、措置を考えるに当たっては、それだけに限定しない形にするべきではないのか、というまとめだと思っていただければどうかなと。
  353行目以降は毎度の記述で、自主的なリスク管理云々という話ですので、細々としたところは後でチェックをしていただければと思います。
  こういった状況を踏まえまして、こちらについても経皮のところはまだ置いておくことになりますけれども、経気道に関しては一旦措置の検討を要するのではないかというまとめ方にさせていただいて、とりあえず経気道の部分の措置の検討に移る、と中間報告の形にさせていただくのはいかがかなと考えているところでございます。
  以上です。
○名古屋座長 ありがとうございました。
  何か御質問等はありますでしょうか。
  この場合はもともとばく露が160と高いということで、区間推定値で詳細リスクの対象になっているわけではないから、間違いなく健康措置検討会に行くのだと思います。
  ただ、当リスク評価検討会で判断すべきは、例えばグラフを見てわかりますけれども、物すごく低いばく露濃度のところもあるし、高いばく露濃度のところもあるけれども、このデータを見ながら健康措置検討会に送るかどうかを判断することであって、今度、健康措置検討会に行ったときに、健康措置検討会でこれをどう特化則に当てはめるかを議論する。要するに、小さいばく露作業のところは除くのか、大きいばく露作業のところだけ規制をかけるのかということは健康措置検討会でやる話なので、当検討会ではこのデータを見て健康措置検討会に送っていいかどうかを判断するところなので、このデータを見る限り、健康措置検討会に送ったほうがいいかねと思うのです。
  あと、先ほども言いましたように、経皮のところでまた現場のデータが出てくると、もしかしたら区間推定の値も少し上がってくるかもしれないしということがあるので、そのデータをひっくるめながら最終的なまとめになるのだと思いますけれども、このデータを見る限り、先ほどとちょっと違った意味で健康措置検討会に行くという形のまとめ方でいいのかなと思いますけれども、どうでしょうか。―よろしいでしょうか。
  そうしましたら、このまとめ方でよろしいと思います。
  では、次の物質、塩化アリルをよろしくお願いいたします。
○阿部中央労働衛生専門官 ありがとうございます。
  資料2-3Aをごらんいただければと思います。塩化アリルです。Allyl Chlorideですね。
  これも物理化学的性質のところから順次御説明させていただきたいと思います。
  塩化アリル、アリルクロリドと、別名がいっぱい書いてありますけれども、物理的化学的性状としては、刺激臭のある無色の液体。沸点は45℃ということなので、微妙なところですね。液体といえば液体ですけれども、ちょっと温かくなればすぐ気化していくようなイメージかなと思いますが。刺激的で不快なニンニク様のにおいと。
  生産量とかについては「追って更新」とさせていただいております。本日時点で調べきれていないので、ここは後で更新させていただきます。
  用途としては、エピクロロヒドリン、アリルエーテル、アリルアミン、ジアリルフタレートなどのアリル誘導体化合物、除草剤、殺虫剤などの農薬原料、鎮静剤、麻酔剤などの医薬原料云々。
  発がん性に関しては、24行目、ヒトに対する発がん性が疑われる。IARCはGroup3になっていますけれども、今回我々のリスク評価の枠組みの中では「ヒトに対する発がん性が疑われる」の扱いで整理しているところでございます。
  産衛学会も設定なしですね。
  発がん性以外の有害性については、急性毒性についてLC、LD、それぞれをまとめているのが44行目になります。
  67行目以降、皮膚刺激性/腐食性については「あり」。
  眼に対する重篤な損傷性/刺激性、これも「あり」。
  皮膚感作性、呼吸器感作性については「調査した範囲で報告なし」。
  反復投与毒性は、ラットの試験ベースでNOAELが100ppmという値が出ております。
  生殖毒性は「判断できない」。
  遺伝毒性は「あり」。
  生殖細胞変異原性の記述は、これもどうしようかと思ったのですけれども、それに該当しそうな情報が有害性評価書ベースで見ると書いてないので、ほかになしというベースにしておこうかということで、一旦こういう形に書かせていただきました。
  神経毒性は「あり」です。
  許容濃度等については111行目以降です。ACGIHがTWAで1ppm、STELで2ppmです。Skinがついています。産衛の値は設定なし。DFGは、MAKの値は「設定できない」とされているのですけれども、H区分はついています。
  一次評価値は0.056ppm。発がん性を考慮した場合で閾値のない場合において、ユニットリスクを用いたがんの過剰発生率に相当する濃度ということになっております。この後ろのところの記述、もろもろこれは全部初期リスク評価書の記述そのままです。
  二次評価値については、ACGIHのTLV-TWAを採用して、1ppmという設定になっていました。
  ばく露作業報告については、下のところをつらつらと見ていっていただきまして、150行目の表です。21事業場ということですので、無くはないというぐらいですかね。割と提出元の事業場の性質もばらけている印象でしょうか。1,000 tのところが結構多いですかね。そのような状況です。
  この21事業場のうち、調査の実施に同意が得られた6事業場を選定してばく露実態調査をやったというのが初期リスク評価までの調査結果です。151行目以降のところですね。個人ばく露測定11人分とスポット測定28地点分が実施されていました。
  対象事業場における塩化アリルの主な用途は、「他製剤等の原料として使用」でした。ばく露の可能性のある主な作業としては、ストレーナーの洗浄。ストレーナーというのは、こし器なのですね。このストレーナーの洗浄、塩化アリルの計量といった作業が、ばく露の可能性のある主な作業でございました。
  作業環境としては、屋内・屋外が半々ぐらいでしょうか。ばく露防止対策としては、局排、有機ガス用防毒マスク、それぞれ使われているところもあれば使われていないところもあるような感じで、そこそこという感じですかね……という状況です。
  測定結果としては、全11人の労働者に対して実施したデータを評価データとして採用してございました。
  これをまとめているものが178行目のグラフと179行目の表になります。これは初期リスク評価の時点でのまとめです。見ていただくと、グラフのとおり、1ppmという設定の二次評価値に対して、dさんとb3さんが個人ばく露の時点で超えていますので、これは文句なしに詳細リスク評価へ、というような状況だったのかと思っています。
  176行目、これはスポット測定の実測のデータの最大値も大きい感じだったということですね。
  こういった状況で行われていた初期リスク評価の当時のまとめ方を記載しているのが182行目以降の「4 初期リスク評価の結果」というところでございます。二次評価値を上回るばく露が見られたので、詳細リスク評価を行い、ばく露の高かった要因等を明らかにする必要があるでしょうと。その際特に注意するべき作業としては、ストレーナーの洗浄、計量作業、こういったものについて比較的高いばく露量が確認されておりますので、当該作業工程に共通した問題かをより詳細に分析するとともに、実態調査を行った作業以外に高いばく露の可能性があるかどうかを確認しましょう、そういったまとめ方になってございました。
  以上を踏まえて、194行目以降、「詳細リスク評価に係る追加調査の結果」というところになります。上記4の初期リスク評価の結果を踏まえ、追加で行ってきたばく露実態調査の事業場が5つですね。
  塩化アリルそのものの製造を行っているG事業場でサンプリングや分析、ドラム缶への充填等の作業。それから、他製剤の原料として塩化アリルを使用しているH事業場での、ドラム缶から反応槽への仕込み。I事業場もH事業場と似たような感じの作業ですね。他製剤の原料として塩化アリルを使用しているJ事業場における、こちらはストレーナーの洗浄の作業。それから、これも同じく他製剤の原料として塩化アリルを使用しているK事業場での、ドラム缶から反応槽への仕込みの作業。これらについて追加のばく露実態調査を実施してまいりました。
  測定は追加分が11人分になります。全データ、評価データとして採用してございますけれども、8時間TWAの最大値がどうなったのかというのが、220行目以降です。ドラム缶への充填の作業で9.1ppmという値が測定されてございます。区間推定をとり直すと、初期リスク評価のときに比べてだいぶ上がっている感じですね。グラフの形も、231行目、追加調査分も含めて入れ込んでいるのを見ていただくと、最初の初期リスク評価の段階で多かったのがb3さんで2.2 ppmというところだったのですけれども、追加調査分のg2、i1、g3、それぞれぐぐぐっと伸びていく感じで、二次評価値を明らかに上回っているような結果となっているところでございます。
  追加調査実施分の作業の中身は、232行目に記載しているとおりです。上から追加分のみ引っ張ってきておりますけれども、当初ここはどうなのかなと思われていたストレーナーの洗浄の作業については、結果的に言えば、j3さん以降の追加部分では二次評価値自体と比べると下回っていました。一方で、その他の作業のところ、ドラム缶への充填とかのところでかなり大きく上回っておりますので、最大ばく露濃度としては9.1ppm、区間推定が6.0ppm。いずれにせよ二次評価値1ppmに比べるとかなり大きいという結果になっているところでございます。
  以上を踏まえまして、235行目以降、「リスクの判定及び今後の対応(経気道に係る中間報告)」というところでございます。「本物質については経皮吸収が指摘されていることから」―ここの記述は先ほどまでと変わりません。経皮の指摘があるところを反映しましょうという話でございます。なので、あくまでこれは中間報告という位置づけでございますけれども。241行目以降、「初期リスク評価の段階で、ストレーナーの洗浄や計量の作業等において、二次評価値を上回るばく露が確認されたことから、これらの作業等に関して追加のばく露実態調査を行った。その結果、追加調査事業場における個人ばく露(8時間TWA)の最大値は二次評価値を大きく上回っていたことから、本物質については作業工程に共通して高いばく露があるものと推定され、経気道からのばく露のリスクは高く、健康障害防止措置を検討する必要があるものと考えられる。
  なお、当該追加調査分を含め、他の作業も含む全データにより再算出した区間推定上側限界値も二次評価値を上回っていることを踏まえると、本物質に関しては、特定の作業に限定せず健康障害防止措置の検討を行う必要があると考えられる」というまとめにしてございます。区間推定が二次評価値を上回っているので云々というのは、先ほど御説明したところと同じです。具体的にどの作業に注意が必要かという話で見たときに、割となだらかに、作業の種類も割とばらけて二次評価値を超えている例が出ていますので、どれと言わずに要注意というラインでまとめさせていただくのかなと考えているところでございます。
  以上です。
○名古屋座長 ありがとうございました。
  何か御質問等ありますでしょうか。
○江馬委員 生殖細胞変異原性のところですが、優性致死試験で陽性が出ているという記載が後のほうにありますので、生殖細胞変異原性はありという記載になるのかと思います。
○阿部中央労働衛生専門官 有害性評価書の中の記述のお話ですよね。
○江馬委員 はい。256行目、その下でもいいのですが、有害性評価書の遺伝毒性の表がありますね。
○阿部中央労働衛生専門官 試験を並べているところですよね。
○江馬委員 はい。その最後の部分です。in vivoのラット優性致死試験で陽性になっています。
○阿部中央労働衛生専門官 率直に申し上げると専門用語があまり理解できていないもので、生殖細胞変異原性のデータはどこを見て何を決め手と捉えればいいのか、どうしようかなと思っていたのですが、今ご指摘いただいたところの情報を踏まえて、「あり」という評価にさせていただくということですね。
○江馬委員 生殖細胞変異原性ありになると思います。
○阿部中央労働衛生専門官 わかりました。ありがとうございます。
○江馬委員 では、修正をよろしくお願いします。
○名古屋座長 あとはよろしいでしょうか。
  これは今までと違って詳細リスクをやったおかげで高いところが見つかったという、なかなか珍しい例で、やってよかったですねということだと思いますけれども。間違いなくこれは詳細リスクから健康措置検討会に行って検討していただけるということです。そのほかに経皮吸収も出てきますが、それをあわせてまた先ほどの形で評価して最終評価にしたいと思いますけれども、間違いなくこれは健康措置検討会に行くという形でまとめたいと思います。よろしいでしょうか。
○宮川委員 生殖細胞変異原性については、in vivoで哺乳類を使って実際に生殖細胞で遺伝毒性が出ていれば大体ありと考えていいということだと思うのですが、今回の場合には優性致死が出ているので、明らかにありということでもよろしいかと思います。
  ただ、1点気がついてしまったのですが、優性致死でひっかかってくると、これは生殖毒性としても捉えたほうがいいのかなと。日本産業衛生学会の基準では、優性致死が出ている場合には生殖毒性ありと判断する根拠としておりますので、そうすると、今、生殖毒性の試験のところで「判断できない」となっていますけれども、恐らくそこのところを十分検討していなかった可能性がちょっと今出てきたのかなと。この段階で言うのは非常に申しわけないのですけれども、というところがちょっと気になるところではございます。
○名古屋座長 これはどう修正しましょうか。
○阿部中央労働衛生専門官 率直に申し上げると、冒頭にご説明させていただいておりましたように、項目を追加するだけはしておきましたけれども、正直、評価の内容自体は仮置きです。生殖細胞変異原性ってどのように見ればいいのかなというのがあまり私がよくわかっていなくて、そこは本当に御相談かなと思っておりました。
  今御指摘いただいた、他の毒性のところに反映する部分があるのではないかというお話につきましても……これはもともとの評価書自体、何年か前につくったものなんですよね。当時も多分それなりに数をどんどんこなしながらやっていたところだと思いますので、今になって気づくというのはしようがないのかなと思っています。という、私自身の作業の予防線でもあるのですけれども。
  今回、これも冒頭申し上げましたように、初期リスク評価16物質、それから詳細リスク評価3物質の中間報告についてまとめさせていただこうと考えているところでございます。有害性の情報のところも、これは今年度、こちらの合同検討会の場でも都度御指摘いただいてはおりましたけれども、最後まとめる段階で、これはやはりおかしくないかなというのが出てくる可能性は当然あると思いますので、お気づきの点がございましたら、そこは御指摘いただいた上で、他の先生方も含めましてこれこれこういう御指摘についてはこれでよろしいでしょうか、みたいなのを都度お諮りするという形にさせていただければなとは思っているところです。
○宮川委員 2つやり方があって、前のものなのであえていじらないという方法と、今の段階であってもいじれるものならいじるという方法とあると思うので、事務局の判断で結構だと思いますが、この生殖毒性の判断については実質的には江馬先生に聞いていただいて、優性致死を生殖毒性の根拠としていいということであれば、ありにしてもいいような気がいたしますので、御検討いただければと思います。
○阿部中央労働衛生専門官 基本的には、今明確に違うと言えるものがあるのであれば、それを反映させたいと思います。
○名古屋座長 よろしいでしょうか。
○鷹屋委員 この評価書そのものとは直接関係が薄いですが、今後、経皮も調べられるわけですよね。お願いというか、せっかくと言うと非常に語弊がありますけれども、低いところから高いところまで経気道におけるばく露の差が非常に違うという作業が抽出されているので、できれば経皮は逆にこれを漏れなく低いところから高いところまで調査されると、今後ほかの物質の経皮に関するばく露の実態を調べる際にも、これは非常にいいケースになるのではないかと思いますので、ぜひともお願いいたしたいと思います。
○名古屋座長 もう始めているのですか。これから。
○阿部中央労働衛生専門官 実は、経皮のばく露実態調査をどうするかという点については、今日、検討会の開始前、会場準備中に他の方と世間話をしていたのですが、委託事業のほうで方法論を検討していて、実際の現場での調査にも着手しつつある、というのが端的な状況です。本論とちょっと離れますけれども。経皮ばく露実態調査の基本的なアプローチとしては、綿棒か何かで肌をちょっと擦ってとって、これをサンプリングとするというのが1つ。それから、バイオロジカルモニタリングとして尿とか血とかを採って分析するというのがもう1つの基本的なアプローチとなっています。ただし、これは実際にばく露実態調査を受託していただいた中災防さんのほうと、有識者の皆さまともご相談しながら、正味のところどうやって進めていけばいいですかねと言いながら検討を進めているものでして。このバイオロジカルモニタリングをベースとするアプローチだと、まず体内の代謝がわかっていないと血を採ってきてもしようがないというか、採血の中の何を分析すればいいのでしたっけという話にしかなりませんので、これは本当に一つ一つの物質について代謝の情報を調べながら、文献から情報をまとめて云々といったところを多分やらなければいけない。指標が既に設定されているものとか、きれいにまとまっている情報がある物質はそのまま使えばいいのですけれども、指標がないものもやはり結構あるので、差し当たりは、経皮吸収が指摘されているものの中でも、とりあえずは指標があるものを優先してやっていくしかないかなという話をしているのですが、実際なかなか大変だというのが現状だと認識しております。
○名古屋座長 今、ワーキングでもうじき経皮吸収の測定の結論が出ますよね。それを受けて測定に入ると考えてよろしいのですか。
○阿部中央労働衛生専門官 はい。一応幾つか現場の調査に入っているのも出ています。さっき参考2のリスク評価の実施状況という資料をご覧いただいたと思うのですけれども、このリスク評価の実施状況のオリジナルのシートがあるのです。あまりにも細かい資料なので、お手元のタブレットにも机上配布扱いとして入れているだけになっているのですが、リスク評価のプロセス的につらつらと、ばく露作業報告から有害性評価、初期リスク評価云々という進捗を一つ一つ記述しているのですけれども、ばく露評価という枠の中で、経皮の調査の状況を並べて書いてある箇所があります。初期リスク評価案件として今までにやっているのが、エチレングリコールモノエチルエーテルと、エチレングリコールモノメチルエーテル、それからもう一個、N,N-ジメチルホルムアミド。これらについては、経皮のばく露実態調査をちょこちょこ進めているところではあります。予定しているものよりもまだちょっと足りていないので、もうちょっといけるかなという話をしているところですね。
  詳細リスク評価の段階に行っているものとしては、とりあえず今、ここは押さえられそうかなといって着手しているのが、ニトロベンゼンとN,N-ジメチルアセトアミドですかね。いくつかの物質について足し上げると、一応全部で2桁台に乗っているぐらいは行っているはずなのですが、なにぶん経皮吸収勧告が「あり」のもの自体がかなりあるので、順次調査を進めるにしても、順番が回ってくるのはいつになるかなというのが現状だという理解です。
○名古屋座長 鷹屋さんの意を伝えてあげてください。
○阿部中央労働衛生専門官 ご指摘の趣旨をまとめた上で、次年度以降の調査に反映させるようにお伝えしたいと思います。
  ただ、なにぶん、先ほど申し上げたように、調査を進める上でのそもそも論の課題が残っているところがありますので、そこはひょっとしたらどこかのタイミングで、個別の物質について経皮の調査結果がある程度まとまった段階で、とりあえずこの物質についてはこんな感じの調査をしてきました、こんな結果でしたという報告をさせていただいて、このまま進めることとしてよいのか、他の物質にどう展開するかとかのところは、委員の方々にまた御相談しながらやらせていただくのかなという気がします。
○名古屋座長 ありがとうございました。
  では、塩化アクリルとのところ、若干修正部分がありましたけれども、健康措置検討会に送るということです。
  そうすると、この3物質終わりましたので、これに修正案を加えたものを皆さんに送ることになるのですか。
○阿部中央労働衛生専門官 改めて見ていただきたいとは思っております。なるべく早い段階で。一応今私のほうでも、初期リスク評価書と詳細リスク評価書、これをまとめたものを準備して、いろいろ御指摘いただいた点は最低限なるべく直した上で、もう一回見直して、できれば来週ぐらいにはもう一回展開させていただきたいと思っています。なにぶん数が多いので、基本的にはリスク評価書本体中心にさせていただこうかなと思っておりますが……メールベースなり何なりで展開させていただいて、御指摘いただいたものを取りまとめながらと考えております。
○名古屋座長 ありがとうございました。
  そうしましたら、一応これできょうの議論は終わりましたけれども、次回以降というのは何かあるのですか。
○阿部中央労働衛生専門官 今のところ、今年度のリスク評価検討会としては。テクニカルには遺伝毒性のワーキングで変異原性試験とか形質転換試験の評価をしたりですとか、発がん性ワーキングで中期発がん性試験の結果を見ていただいたりですとか、さらに企画検討会で年度末の総括みたいな形でお話をしたりですとか、リスコミの反省会……ではないですけれども、今年度、リスコミで新しい取り組みをしましたので、そこら辺の感想ですとか話があるかなと思っておりますが、リスク評価検討会の本体としては一旦これで締め……というか一区切りさせていただいて、先ほどの報告書をご覧いただくというところに注力していきたいと思っております。
○名古屋座長 ありがとうございました。
○宮川委員 今リスクコミュニケーションの話が出たのでちょっと思い出したのですけれども、このリスク評価書の最後のところで、これこれこういうことが見られたので、その後リスクアセスメントをするとともに自主的なリスク管理をしろという言い方が多かったと思うのです。ただ、物質によって、673のリスクアセスメントの義務になっているということが書いてある物質と書いてない物質があって、もし義務になっている物質であれば、必ずそのことを書いていただいて、リスクアセスメントをしなくてはいけない物質だということが1点。
  それから、ここはもしかすると議論があるかもしれませんけれども、こういうことでリスクが高いと認められたものについては、なるべく望ましい形でリスクアセスメントをするべきだと。つまり、ばく露濃度とここで言う評価値、許容濃度等々を比較するという方法でやるのが望ましいということで。具体的な方法を書き切るのは難しいかもしれませんけれども、なるべく、一言で言うと難しいのですけれども、簡易な方法ではなくてしっかりとしたリスクアセスメントを実施するようにいう。義務であるということとともに、方法についても、できればそれとなく個人のばく露と許容濃度を比較するのが望ましいのだということをにおわすような文言で、リスクアセスメントをするようにと最後は自主的なリスク管理をということにしていただければいいかなという気がいたします。
○阿部中央労働衛生専門官 ありがとうございます。
  実は今ちょうど、今回なにぶん数も多いので、いろいろ情報をまとめているのですけれども、1点目のラベル・SDSの義務がどこにかかっているのかにつきましては、今回の詳細リスク評価3物質には全部かかっています。初期リスク評価16物質のうち1つだけ、メタクリル酸2,3-エポキシプロピルというのがあって、それだけ努力義務の範囲ですけれども、他は全部義務がかかっている範囲になりますので、これは御指摘を踏まえて、抜け漏れがないか確認したいと思います。それが1点目です。
  もう一つのリスクアセスメントの進め方のお話ですけれども、物質ごとに何がどこまで書けるかというのは正直あるかと思うのですが、これは本当にすみません、まとめ方、書き方の御相談だと思うのですけれども、役所的なアプローチとしては、化学物質のリスクアセスメント指針がありますので、あれを参照させて、何それの指針に基づくリスクアセスメントをしなさいというところを一応明示した上で、何かの資料の中にまとめるところにリスクアセスメント指針を引っ張って書いておくとか、報道発表とかのリンクを張っておくとか、そんな感じとか何かあるかなと、そんなことは思いました。そこは検討したいと思います。
○宮川委員 私としては、リスクアセスメント指針のア、イ、ウのイに書いてある方法。大きくア、イ、ウに分かれていて、ウは作業環境測定で、管理濃度があるもので、特別規則に準じてやる。イの部分ですが、一番目が許容濃度とばく露濃度を比較、2番目がばく露推定値とばく露限界濃度の比較。3番目が簡易方法となっています。全体のアの部分は安全分野で使われるマトリックス法とか枝分かれ法とか数値化法というのが書いてあって、実際は健康障害のほうでは余り、私は個人的には使うべきではないと思う、使わない方法。例外的に、そこの中にコントロールバンディングが入っているのですけれども、大きく分けてア、イ、ウ、括弧なしのほうのア、イ、ウのイのところを参考にというようなことを書いていただけると。イの中では、その中に括弧で(ア)、(イ)、(ウ)とあると思うのですけれども、その中で上のほうの許容濃度と比較するのが望ましいと書いてありますので、そのあたりに何となく目が行っていただくような、微妙な書きぶりになると思いますけれども、そこを御検討いただければと思います。
○名古屋座長 よろしくお願いします。
○阿部中央労働衛生専門官 多分、最後まとめ方のところは割と共通になると思いますので、共通部分の書きぶりの相談でさせていただきたいと思います。
○名古屋座長 よろしくお願いいたします。
  では、後日皆さんのところに送られたときに、そこを見てあげてください。よろしくお願いします。
  あとよろしいですか。
  そうしましたら、本年度はこれで終わりということでございます。本日のリスク評価検討会は、閉会とします。本当に長い間ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。