令和元年度化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーション(意見交換会)(第2回)議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

2020年1月17日(金)13:29~16:31

場所

大阪・梅田 貸会議室ティーオージー

議題

  1. 基調講演
    1. 「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会について」
    2. 「我が国における化学物質管理の現状と課題について」
    3. 「化学品管理自主対応型への流れ」
    4. 「化学物質取り扱いに対する安全配慮」
  2. 意見交換会

議事

(開会)
○司会 それでは、定刻になりましたので、ただいまより2019年度化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーションを開催させていただきます。
 本日、司会進行を務めさせていただきます、テクノヒルの鈴木でございます。何卒宜しくお願いいたします。
 本日は、皆さん大変御多忙中のところをお集りいただき誠にありがとうございます。
 思い返すと25年前に市街地中心地、阪神淡路大震災がございまして、並びにいろんな形で災害含めまして、心からお悔やみ申し上げます。早いもので25年経ちまして、当時の私も関西に住んでおりましたので、大変印象が強くありまして、皆さんあっという間の25年だったと思っております。
 本日は、化学物質のリスク評価のコミュニケーションを始めさせていただきますが、まず初めに、お手元の配付資料を見ていただければと思います。まず、2枚アンケート用紙ございます。水色のアンケート用紙、それからピンクのアンケート用紙ございます。それからあと札が、赤の札と青の札、これ皆さんお手元にございますか。不足の方いらっしゃいましたらお手を挙げ
ていただければ。
 まず、このA4のピンクと水色のアンケート、それぞれ1枚なんですが、ピンクのアンケート用紙を休憩の間、2時半のところで集めさせていただきます。宜しくお願いいたします。
 この、まずリスクコミュニケーションですが、働く方の健康障害を守るために厚生労働省が行っております化学物質のリスク評価に当たりまして関係する事業者の方、また、事業者の団体等の情報交換、意見交換が本日の主な目的でございます。
 私ども厚生労働省から委託されまして、運営をさせていただきます。
 本日のスケジュールについて簡単に御説明させていただきます。
 まず初めに、第1講としまして、1時35分から「職場における化学物質等の管理のあり方についての検討会について」というタイトルで、厚生労働省、労働基準局、安全衛生部の化学物質対策課の課長補佐、中村宇一様に30分ほどお話をいただきます。
 次に、化学物質管理の現状ということで、厚生労働省の化学物質のリスク評価の検討委員会の委員であられます帝京大学の医療技術部、スポーツ医療学科教授の宮川宗之先生に30分いただきます。
 ここでピンクのアンケートを集めさせていただきますので、御記入をよろしくお願いいたします。
 後半は30分ほど、化学物質の自主管理の流れということで、日本大学の理工学部、まちづくり工学科、特任教授の城内博先生から同じくお時間いただいて、お話をいただきます。
 それから、続きまして、企業のほうから、ダイセルのレスポンシンプル・ケア室、環境対策主任部員の田中洋己様からお話いただきます。
 全部で、講演が4つございます。最初に2つ、それから後半に2つございます。
 それから、その後ですが、皆さんから屈託ない意見をいただきたいと思います。この中でコーディネーターは東京理科大学、薬学部、医療薬学教育研究支援センターの堀口逸子先生にパネリストをお願いしています。パネルリストに、宮川先生、城内先生、それから田中様、それから中村様にお願いをするような形をとります。
 その後ピンクのアンケート用紙をいただいて、これについての話をさせていただくということです。ですからパネルディスカッションの最後に双方向コミュニケーションがあるので、ぜひいろんな御意見をいただきたいと思っております。
 以上、そういう形で、まず、最初の講演は「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会について」厚生労働省、労働基準局、安全衛生部の化学物質対策課の中村様からお願いしたいと思います。中村様一つよろしくお願いいたします。
 皆様「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会について」お願いいたします。
《テーマ1:職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会について》
○中村課長補佐 皆さんこんにちは、今、御紹介いただいた厚生労働省の化学物質対策課の中村と申します。
 私ども、厚生労働省ではいろいろなテーマを扱っているのですけれども、本日は化学物質を扱う現場での安全について、今、その現場でどういう課題を抱えているのか、それを解決するために、例えば仕組みの見直しでありますとか、どういう対策をとるか、そういうことについて、今まさに私ども厚生労働省のほうで検討をしておりまして、どういう議論を行っているか、それからどういう課題が今あると私どもも捉えているかということについてお話をさせていただきます。後半、先生方もお話されますけれども、その内容も含めて皆様ともいろいろ意見交換ができればと思っております。
 初めに私のほうからは、今、労働者が化学物質を取り扱うときにどういうことが、今、課題になっているかということを最初にお話させていただいて、その後に、そういうのを踏まえて検討会で、今どういう議論がなされているのかということを御紹介させていただきたいと思います。
 
(スライド1)
 
 初めにこの1枚目は、化学物質の管理について、様々な規制があるかと思うんですけれども、労働の安全という観点でどういう規定の改定になっているのかということをわかりやすく図示したものがこちらになっております。三角形のピラミッドのような形になっておりますけれども、上にいくほど危険性が高い物質、そして、それに応じて規制が厳しくなっている物質ということで、規制の種類、危険性で分けると大体4種類ぐらいに分かれて規制をしているというのが、今の状況になっています。一番上に書いてあります。石綿など管理使用が困難な物質、これは非常に危険性が高いということで、そもそも国内でつくること、使うこと、それから海外から国内に輸入することが禁止になっている物質が8物質ほどございます。これは国内で管理するという話にはならないんですけど、国の中にいかに入れないかとか、そういう話になってくるものです。
 それから2つ目、3つ目が、中心的な規制の対象の物質ということになっているんですけれども、国内で使用することができる物質の中で、特に危険性・有害性が高いものというのが、この2つ目のところになっておりまして、右を見ていただくとございますけれども、122物質が対象になっているということで、その中のごく一部のものは、つくること自体が許可制になっているものもございます。それ以外のものについては、製造するとき、使うときについて、例えば排気装置をつけるということでありますとか、マスクを使うとかでありますとか、特別規則を書いてありますけれども、物質を指定して規制がかかっているというものになっております。
 3番目、これが今お話した122物質ほどは危険性は高くないけれども、使うときに注意が必要ということで、許容濃度またはばく露限界値が示されている危険有害性物質となります。先ほどの122物質を除くと、大体550物質ぐらいになると思います。これらの物質を実際に使うということになると、この左側にございますけれども、リスクアセスメントをやるということが義務になっています。先ほどの122物質との違いということですが、122物質は具体的に、法令でやることが指定されているというものでございますけれど、この3番目の物質というのはどういう危険性があるかというのを使う現場、事業者さんのほうで、自分で評価をして、その評価結果に基づいて対策をとるということが義務づけになっているというものでございます。
 それ以外に4つ目にありますのは、具体的に法令でこういうことをやらなければならないという義務まではかかっていないものでございますけれども、今申し上げたようにリスクアセスメント、自分で危険性・有害性を評価して対策をとるということが努力義務、そういうことに努めてくださいということになっています。簡単にこの体系だけ頭に入れていただいてお聞きいただければと思います。
 
(スライド2)
 
 今お話した、上から2場目、個別の物質ごとにやるべきことが決まっている物質というのが、固定をされているということではなくて、新しくわかってくる危険性・有害性でありますとか、実際にその使って被害が出て危険性がわかった物質、こういったものがございまして、これは必要なものをこの規制に追加するということをやってきています。
 その仕組みが、今、お示ししているものでございますけれども、規制の対象になっていない物質であっても、例えば新しく発がん性があることがわかったとか、そういった物質については、実際に国内でどのぐらい使われているのか、どういう使われ方をしているのかということを、有害物ばく露作業報告と書いてありますが、そういったもので調査をして、実際にどういうリスクがあるのか、どういうことを対策としてとらなければいけないのかということを専門家の方々にも御議論いただいて、結果として国内で使用するときについては厳しい規制をするべきだという結論になれば、先ほど、お話した2つ目の、上から2番目の規制に加えるということをやってきております。
(スライド3)
 
 実際に、これまでにこういったやり方で新しく規制に追加されたものが、こちらに示している28物質ということでございまして、この28物質を加えた結果、現在122物質が厳しい規制の対象になっているというのが現状でございます。
 
(スライド4)
 
 ここからは課題のような話になってくるんですけれども、先ほど示した三角形の図にありますように、国内流通している化学物質は非常に数が多いという状況にございまして、しかも毎年、新規化学物質という、これまで国内で使われていなかったような、新しくつくられ、開発された化学物質というのは、国のほうに届け出るということが義務になっているんですけれども、それが年間、毎年1,000物質ぐらい届け出られるということで、それがその後もずっと国内で使用され続けるかどうかはわからんですけれども、この毎年1,000物質が、この国内で使用される化学物質として加わってくるという状況になっています。
 これら新しくつくられる化学物質とか、今、既に使われている化学物質もどういう危険性があるか、どういう有害性があるかというのは全てわかっているわけではない状況でございまして、このように非常に早いスピードで増え続ける化学物質について、今までやってきたような規制のやり方で対応できるのかということが、今、課題になっているということでございます。
 
(スライド5)
 
 こちらは実際国内の化学物質を扱う現場で、どういう災害が起きているかということをまとめた図になっています。左側にありますのが、先ほど三角形でお見せした4階層ほどありましたけれども、それに応じて分類したものでございまして、一番上が特別規則対象物質ということで厳しい規制がかかっている物質。その下が、SDSと書いてあるんですけども、リスクアセスメントなどをやらなければいけないことが義務となっている物質、その下2つが、それ以外のものということで、結局、法令で厳しい規制がかかっている物質によって起こっている災害というのは、実は全体の2割ほどでございまして、残りの8割、5分の4の災害というのは、この厳しく規制している物質ではないもので起こっているというのが現状でございます。
 右側を少し見ていただきますと、どういう災害が起きているのかということで、災害の内容で分類をしておりますけれども、これを見ていただければおわかりのように、圧倒的に多いというのは直接接触ですね。皮膚障害と書いてありますけれども、これは使っている中で身体にかかってしまったとか、そういった直接接触によるものというのが一番多いということで、例えば空気中に飛散をして、それを吸い込んで中毒になるというものは全体の15%ほどであるということでございます。
 
(スライド6)
 
 今、御説明した内容について、どういう規模の事業所で起こっているかということでまとめたのがこちらにございますけれども、これはご覧いただくとおわかりのように、規模的には小さい事業所での災害が多い傾向にあるということでございます。
 
(スライド7)
 
 ここから個別の事案になりますけれども、今、御説明したその全体的な、統計的な傾向とともに、実際にそのここ5年ぐらいで起こっている重大な事案というのが幾つかございます。これは報道をされているので御存じの方も多いかと思いますけれども、平成24年に大阪府内の印刷事業所が発端になっている事案で、印刷作業をしていた方、複数名の方に胆管がんが発生した事案がございます。そもそも胆管がんというのは一般的に多く発生するようなものではない、高齢者に発生することが多いがんと言われているものですから、普通は1つの会社で集中的に起こるということは考えられないということなんですけれども、一方でその当時、胆管がんというのはその職業由来で起こるという知見もなかったということで、大きく社会的関心を呼んだ事案でございます。
 
(スライド8)
 
 その後、この胆管がんの原因を調査していくと、ここにありますように「1、2-ジクロロプロパン」、それから「ジクロロメタン」という化学物質が原因ではないかということで、絞り込まれたわけですけれども、何が課題となっているかというと、一つは、これらの物質は当時発がん性があるということが知られていたわけではなかったということで、結果的に、先ほどの御説明した規制の対象にもなっていなかったということです。使っていらっしゃる事業者さん側の印刷業界では非常に多く使われていたものでございますけれども、規制の対象になっていないので、そんな危険な物質だと思わないで使っていたというのが、実際の状況であったということで、ここに書いてございますけれども、先ほども申し上げたように、その危険性とか、有害性があることがわかってない物質が非常に多い、わかっている物質については規制しているんですけれども、規制されていないからじゃあ安全なのかというと、そういうわけでないということなんですが、実際は、その規制されているものが危ないものだということの理解で、現場では使われてしまっているということで、こういった事案が起こってしまったというのがまず一つ目の事例でございます。結果的にこれらの物質は、その後規制の対象になっています。
 
(スライド9)
 
 それからもう一つ、これは平成27年に発生したものでございますけれども、今度は膀胱がんという、これはそれほど希少ながんではございませんけれども、膀胱がんが特定の事業所から複数出るという事案がありまして、これも調査していくと、オルト・トルイジンという物質が原因ではないかということがわかったということで、これも当時厳しい規制の対象にはなっていなかったということ、それから一つここで話題になったのは、これを体内に取り込んだ経路が、どういう経路だったかということで調べたところ、手袋が汚れていて、そこから手にしみ込んで、体内に取り込まれてがんになったのではないかということがわかってきて、皮膚吸収対策というのも非常に注意しなければいけないということがわかってきたということでございます。
(スライド10)
 
 今、申し上げた膀胱がんについては、オルト・トルイジンを使っていない人にも複数出ているということで、それも調べていくと、さらに別の物質であるMOCAというものが浮かび上がってきました。このMOCAという物質は、昔から規制の対象になっていたのですが、実際に使っている事業者さんできちんと対策はとられていたかというと、調べていくとなかなか十分な対策、十分な対策どころではないような状況の事業者さんもあったんですけれども、十分な対策がとられていなかったということでございまして、今御紹介したように全体的に規制対象外の物質による災害が多いという傾向の中での、こういう重大な事案が立て続けに起こってしまっているというのが課題の一つとなっております。
 
(スライド11)
 
 先ほど申し上げましたように、化学物質の有害性の中には、発がん性など重篤なものも結構あって、ただ、それがわかっていないこともあるということでございます。注意すべきことは、がんなどは特にその場でけがが起きたり、その場で傷ができたりということでなくて一定期間経ったあとに影響が出てくるということで、きちんと対策をとらないと取り返しがつかないことになるということ、それから先ほど申し上げたように、規制がされていないからといって安全なのかというと、そうではないということなので、安全性とか、危険性がわかっていないこと自体が、かなり不安要素だということは理解しておく必要があるかなと思っております。
 
(スライド12)
 
 後でお話される先生方のお話にも出てくるかと思いますけれども、今、申し上げたような状況がございますので、個別に一つ一つ物質を取り上げて規制をしていくというやり方には限界があるということで、取り入れられたのが、リスクアセスメントという仕組みでございまして、使う方がみずから危険性・有害性情報を入手して、それで使うときにどういうリスクがあるのかとかいうことを確認して、対策をとる。こういう規制の仕組みが、平成26年に義務として導入されております。
 
(スライド13)
 
 後でお話があるかと思いますけれども、その危険性・有害性というのが、実際に使う場合にどうやったらわかるのかという問題がございますので、これは実際にその化学物質をつくっている。もしくは輸入している事業者さんに、危険性・有害性の情報を販売するときには、販売した先に渡されなければいけませんよと、こういう義務がかかっておりまして、使われる場合は、それをもとにどういうリスクがあるかということを、確認していくと、こういう仕組みになっているということでございます。
 
(スライド14)
 
 こちらはその、そういう仕組みになった後の状況でございますけれども、実際にこのリスクアセスメントなり、義務措置となっている作業環境測定とか、特殊健康診断とか、どのぐらい行われているのかということを、全国調査したものでございますけれども、なかなか、ほとんど、全ての企業でやられているという状況にはまだなっていないということで、特にリスクアセスメントのほうは実施率まだ5割ぐらいにとどまっているということでございます。
 それから、その下にありますのは、実際のそういったものを使う労働者の方々がどういう認識でいるのかということを調べているのですけれども、実際に有害なもの扱っている方も、その自分がそれを使っているという意識が余りないまま使っている。もしくはそういった教育を受けたことがないという方も非常に多いという状況でございます。
 
(スライド15)
 
 こちらも御参考でございますけれども、危険な化学物質を扱う場合は作業環境中にどのぐらいの濃度で、その物質が飛んでいるかということを測定することを義務づけられておりまして、その結果、特に有害な場合は管理区分Ⅲという区分に分けられるわけですけれども、その下の表を見ていただくとおわかりのように、全国調査によると、実はその管理区分Ⅲの事業所が毎年増えていっている状況になっておりまして、年を経て現場の環境が改善されているかというと、そういう状況ではないのが、この調査結果ではわかります。
 
(スライド16)
 
 こういった今、御紹介したような状況を踏まえて、今の規制で本当に化学物質による災害事故が防げるのかということで、改めて化学物質管理の仕組みがどうあるべきかということを検討しようということで始まったのが、この検討会ということになっております。検討事項ですけれども、現場の労働災害防止のための措置をどうすればいいのか、それから、現場を支える人材をどう育成していくのか、こういったことについて、昨年9月から検討を始めたという状況でございます。
 
(スライド17)
 
検討会の中では、幾つかヒアリングをしておりまして、その中で見えてきた課題というのもございます。特に話が出ておりますのは、中小企業での取り組みがやはり難しいということで、人材もいなければ、情報もない、経済的な基盤も弱いということで、そういったところでどうやって有効な対策をとっていくことができるのか、これは下のほうの大手メーカーによる取り組みのところにもございますけれども、実はその大手メーカーで今、サプライチェーン全体でリスク管理をしようということで、メーカー中心に情報をどんどん出していくという取り組みも行われていますので、こういったことも含めてどうやってその中小企業への対策の充実というのができるのかという議論が一つ行われております。
 
(スライド18)
 
 それから、ヒアリングの中で海外に詳しい方のお話も伺っておりまして、この米国における化学物質の取り組み状況というところにございますけれども、アメリカの仕組みというのは日本とは全く違うんですけれども、特徴として言えるのは、個別の細かい規制を積み上げていくという方式でやられているわけでないということでございまして、特にその、三つ目にございますけれども、労働者とのハザードコミュニケーションですね。使う方が危険性をどういうふうにきちんと理解して、認識しているかということに結構重点が置かれているんだということが、このヒアリングの中ではお話いただきました。
 それから日本ではそれほど厳格にされていないんですけども、最終的に労働者が化学物質にばく露することから守る、マスクとか、手袋とか、そういった保護具についてもアメリカでは非常に厳しく、その使い方、選び方、管理の仕組みができ上がっていくというようなお話もありました。
 最後にありますけれども、こういったその現場での管理を支えるその専門家としては、インダストリアル・ハイジニストという名前でございますけれども、こういった方が、アメリカでは1万人から2万人ほどおりまして、そういった方が現場の管理を支えているといったお話もあったということでございまして、こういったヒアリングも踏まえながら、今後まだ検討を始めて日が浅いので、具体的な中身の方向性まで出ておりませんけれども、今後検討を深めていきましょうということで、5つほど課題を、前回の検討会では上げております。
 
(スライド19)
 
 一つ目は、中小企業での取り組みをどうしていくかということですね。
 それから2つ目、これは先ほど御紹介したように規制されていない物質によるがんの集団発生という重大な事案が立て続けに起こってしまっているということで、こういったものを防ぐ仕組みというのはどういうふうにつくっていけるのだろうかということが2つ目の課題です。
 それから三つ目にありますは、新しい規制の仕組みとして始まっている、そのリスクアセスメント、なかなか実施率も高まっていないですし、実際そのやっていらっしゃる方のお話を聞いてもリスクの評価はやったんだけれども、その評価結果を踏まえて対策をとるところまでなかなかいかないというお話も出ていましたので、その実効性をどう高めていくかということも課題の一つであるということだと思っています。
 それから4つ目でございます。これは先ほどお話しましたけれども、中小企業単独で取り組むということもなかなか難しいというお話もありましたので、サプライチェーンを通じた全体の管理というのはどういうふうにしていけるのかということも課題かなということでございます。それから5つ目として、今御紹介したように海外での知見というか、取り組みなどで何か参考にできるものはないのか、それを参考にしながら日本の管理というのはより充実させていけないだろうか、こういったことを検討していこうということで、前回まで検討会が進められているという状況でございます。
 
(スライド20・21)
 
 あと、最後の2枚に、それぞれ検討会の委員の先生方から出されている意見などをまとめておりますので、御参考にご覧いただければと思います。これはまだこういう方向で決まっているということではなくて、こういう意見が出ていますということで御参考いただければと思います。
 私からは以上になります。
(司会)
○司会 中村様どうもありがとうございます。皆さん拍手でよろしくお願いします。
 平成26年に労働安全法が改正されまして、28年に交付されています。3年半が実は経過しまして、現在に至っています。厚生労働省も現在、化学物質のあり方検討会、皆さんホームページが必要であれば、過去4回の検討会につきましては、ホームページの中で厚生労働省化学物質のあり方検討会というのを見ていただければ、過去4回の資料関係があると思います。
 それで、本日はこのあと第2講として、「我が国における化学物質管理の現状と課題」ということで帝京大学の宮川先生にこれからお話をしていただきます。この2講が終わったときに、先ほど申したようにオレンジの紙にぜひ記入をお願いしたと思いますので、その旨を含めまして一つよろしくお願いします。
 宮川先生お願いします。
《テーマ2:我が国における化学物質管理の現状と課題》
○宮川先生 帝京大学の宮川でございます。
 
(スライド1:我が国における化学物質管理の現状と課題)
 
 例年、この会では国が実施しているリスクアセスメントの結果について報告するという役目ですので、厚労省が用意した資料で説明させていただいております。恐らくこの、本日お集まりいただいた皆様も、例年いらしている方が多いと思うのですけれども、ことしはこちらのタイトルで好きに話して良いということなので、リスクアセスメントについて普段から気になっていること、基本的なことを皆さんで確認しましょうということで、健康障害にかかわるリスクアセスメントの基本の振り返りということをしてみたいと思います。
 私、スポーツ医療学科の所属ですけども、スポーツとは一切関係なく、第一種衛生管理者にかかわる科目を担当しています。授業をしながら、世の中これがもうちょっと広まるといいなと思っていることがありまして、皆さんは御存じのことが多いと思うのですけれども、我慢をしておつき合いいただきたいと思います。
 
(スライド2:化学物質による健康障害リスクアセスメントの基本とSDSの活用
1 リスクの定義と安全・安心及び事業者の責務)
 
 この3つですね。リスクって何、事業者の義務ってどういうこと、それからリスクアセスメント(特にリスクの見積もり)の基本、健康障害にかかわるものについてですね。それとSDSをどう使うかと言うことについて、特に化学物質のユーザー側となる業者の方、あるいはそこで働く方の立場に立って考えていただきたいそういうところで産業医をやっている方に聞いていただければと思うことをまとめてみました。
 
(スライド3:リスクの定義)
 
 まず、リスクですね。リスクの定義です。いろんなものがあるのですけれども、基本的には、危害発生の確率あるいは可能性と、度合いの組み合わせです。私が言っても信用されないかもしれませんので、権威のあるところから引いてきました。JISですね。GHSに基づく表示やGHS分類のJISで同じ定義がされています。危害発生の確率または可能性と、その度合いの組み合わせと定義されています。これは食品安全委員会の定義ですね。食品安全委員会も健康への悪影響が起きる可能性と、影響の程度、発生する確率と影響の程度というようなことを言っています。基本的には危害発生の確率・可能性と、危害の度合いの両方を考えたのものがリスクです。ただ、実際にこの「確率」と「度合い」を考慮に入れて危害の期待値を計算するのは難しいんですね。実際、健康障害の場合には可能性があるかどうかという判断がリスク評価の中心になるということになると思います。
 
(スライド4:工学システムに対する社会の安全目標)
 
 こんなことまで学術会議から出ている文書に書いてありました。リスクは「不確実さの程度と結果の大きさの程度の組み合わせ」は同じですね。ただ、重要なのは、この部分です。安全とは受容できないリスクがないこと。ゼロリスクは無理ですのでリスクが受容できるレベルに押さえられる。これが安全。安心は、安全であり、かつ安全であることが信じられること。規制や事業者が信頼できる状況です。事故が起きた後に、「直ちに危害は発生しないので安全ですよ」と言われるようなことが時々あると思いますけれど、それだと安心は保てないということになるかと思います。
 実際に、どのぐらいまでなら受容できるのかということですが、これはお配りした資料には入っていないのですけれども、年に「10⁻³」から「10⁻⁴」ぐらいで人命にかかる事故が起きる、このレベルを超えたらまずいですよとあります。もう一つ、ここまでいけば十分だというのが、生涯で「10⁻⁵」から、「10⁻⁶」。こんなことが学術会議からの文書には書いてあります。実際、パイロットがどのぐらいのリスクを負って仕事をしているか、これ計算をしたものも載っていました。
 
(スライド5:健康障害の防止)
 
 ここから労働者の健康障害の防止の話です。確認をしていただきたいのですが、ちゃんと法律に書いてあるのですね。健康と安全の確保は事業者の責務です。どこに書いてあるかと、安衛法に書いてあります。労働契約法にももっとはっきりと書いてあります。じゃあ、その義務を果たすときにはどうしたら良いか。予見可能な危害の発生を回避するということが求められます。リスクがあるか、危害が発生する可能性があるかどうかを予見する義務がありますね。予見された場合、これが、リスクがあるということになるわけですけど、それを回避する義務ということが出てきます。この両方をやる。つまり、リスクの評価とリスクの管理ということが事業者の義務ということになっています。
 
(スライド6:労働者保護規定)
 
 一応、念のため根拠を出しておきます。安衛法の第三条ですね。最低限の基準を守るだけでなく労働者の安全と健康を確保するようにしなければいけない。「ように」が入ると、弁護士の友達に聞いたのですけれど、努力義務。ただ、労働契約法のほうは「生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と明確に言いきっています。安全配慮義務は判例による法理と言われていたのが、明確に書かれたわけですね。そうすると人を雇うとき、労働契約を結ぶときには、こういうことを配慮しなければいけない。安全配慮をしていないというと債務不履行ということで訴えられる可能性があるということになるようです。
 
(スライド7:参考)
 
 さらに参考ですが予見可能な結果について回避義務を果たさないことを過失と言うようです。参考までに、私は専門ではないのですが、民法では、不法行為による損害賠償請求、過失によって他人の権利あるいは利益を侵害した者は賠償する責任を負うということがあるようです。また、業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合は刑法の業務上過失致死傷罪のようです。必要な注意を怠りというのは、当然予見可能な危ないことが起きそうなときに、それを予見し回避しないということも入るのではないでしょうか。
 
(スライド8:化学物質による健康障害リスクアセスメントの基本とSDSの活用
2 健康リスクアセスメント(リスク見積もり)の基本)
 
 ここからは健康リスクアセスメントの話にいきたいと思います。こちらも気になっていることがあります。
 
(スライド9:健康リスクアセスメントの基本 1)
 
 まず、言葉の確認です。私としては、こう考えていますという点を確認させてください。
 まず、ハザードという言葉ですね。リスクアセスメントの第一段階はハザード情報の収集だと言われています。このハザードは化学物質管理の世界では、その物質に固有の有害性のことで、intrinsic propertyと英語では言い方します。どんな健康障害が生じるのか、その証拠の確からしさはどの程度なのか、作用の強さはどの程度なのかということについての情報を得るということが重要になりますね。
 ここからが一つポイントです。リスクはハザードとばく露の両方に依存します。リスクの定義としては危害発生の可能性(あるいは確率)と重篤度・重大性と先ほど言いました。ただ、実際は可能性ぐらいしかわからない。
 もう一つよく出てくるものがこれです。リスク=ハザード×ばく露です。これはリスクの定義というよりは、リスクを評価するときにはハザードとばく露の両方を考えなければいけないという意味です。毒性が非常に低いものであればリスクは少ないでしょう、あるいは毒性が高いものであってもばく露が低ければ、リスクは低いでしょう。片方がゼロであったら、リスクはゼロになる。そういうことです。こちらはリスクの定義というよりは、リスクを評価するときの基本的な考え方を示したものだと理解するのがよろしいかと思います。
 それに従いますと、ばく露レベルが有害作用発現閾値を超えると、無視できないリスクが生じますし、そこを超えていなければ、リスクは受容できるレベルだろうということになる。これがリスクアセスメント、リスクの見積もりの一番のポイントだと思います。当たり前のことだと皆さん思われたら、ちゃんとした情報が世の中に浸透しているということになりますけれども、いかがでしょうか。
 
(スライド10:健康リスクアセスメントの基本 2)
 
 その次ですね。健康障害リスク評価は、健康障害発生の可能性があるかどうかを判断することになる。可能性があると判断されたら、危害発生が予見されたわけですから、それを放置しておくと、今度は回避をしなかったということで責任が問われることになります。ばく露が有害作用発現閾値を超えると可能性ありです。ここで許容濃度が出てくる。ばく露限界値と言ったほうがいいかもしれません。ばく露限界値というのは、通常健康障害が発生しないとされる濃度です。この濃度で一日8時間、生涯労働しても通常の人は健康障害を発症しないということは、それ以下であれば健康障害が発生する可能性は低いであろうということになると思います。ということは、許容濃度はリスクアセスメントの基準値になるということですね。ばく露が許容濃度を超えないことが重要だとなります。これがリスクの評価の基本であり、リスク管理の根幹だと思います。ここのところが世の中に浸透していない、これが非常に困ったものということになります。
 私の申し上げたいことの確認ですが、安全配慮義務を事業者に履行してもらわなくちゃ困ります。そのためには危害発生についての予見義務と予見された場合の回避義務がありますよとなります。この予見のところが、このリスクアセスメント、リスクの評価のポイントです。主として慢性影響についてですけれども、許容濃度を超えるかどうかということで可能性があるかどうか判断をしましょうということになります。
 
(スライド11:健康リスクアセスメントの実際)
 
 このスライドが有名な健康リスクアセスメントの実際のスキームです。もし化学物質による健康障害のリスクアセスメントについて400字以内で説明しなさいという試験問題で出たとすると、通常こういう段階を踏んでやりますと書くと正解になるというような枠組みです。1983年にアメリカのNational Research Council から出たリスクアセスメントの実施に関する文書にまとめられている方法です。
 1番目が有害性の同定。どういう有害性があるのか、どういう健康障害が生じるのか、そこをはっきりつかんでくださいということです。
 その次が量―反応関係解析ですね。いろいろと情報を集めて閾値を求める。本当の閾値はわかりません。実際はNOAELを求めるということになっていますね。ここまでなら有害性作用は出ないというデータがありました。そこをNOAELということにしましょうとなります。多くの場合は動物実験などからこういう数字が出てくるわけです。そのまま人間に適用できるかというと、人間と動物で同じでは困りますよということもあります。そこで、動物でのNOAELの値を不確実係数(UF)というもので割って基準値を決める。こういったやり方がリスク評価の基準値を決めるときも許容濃度を決めるときにも基本となります。許容濃度はリスク評価の基準値としても使えることになります。国の実施するリスク評価では、こうやって基準値(1次評価値・2次評価値というのありますけど、1次評価値は)を計算していますし、2次評価値としては許容濃度あるいはTLVをそのまま持ってきたのを使っているということです。
 3番目がばく露評価です。実際に作業者はどの程度ばく露を受けているのかを測定するということになります。国のリスクアセスメントでは、測定値のばらつきを考えて、上側5%の点を求めて、それと評価の基準値を比較するということをしていますけれども、もう少し緩くしても私は構わないような気がしています。平均的なばく露レベルと許容濃度を比べるということが、基本中の基本じゃないかと私は個人的には考えております。
 最後のリスクの総合判定ですが、今言ったことですね。ばく露の評価値と、実際のばく露レベルを比較するということが、世の中では行われているということになります。
 
(スライド12:量-反応(影響)曲線と評価基準値)
 
 模式図で少し説明します。ばく露レベルに対応して影響がでます。低いレベルでは気道刺激が出てくる。もう少し高くなると麻酔作用が出てくる。さらに高くなると肝臓毒性がある。こういう物質があったとします。縦軸が反応示した動物の割合だとしますと、ばく露が高くなるとだんだん症状のでる動物の割合が増えてくるわけですね。本当の閾値というのは、反応(影響)が出るかどうかのぎりぎりのところなのでわかりません、動物実験をする場合は数段階のばく露レベルで実験をするわけですね。この図で言えば、このレベルだと気道刺激が見られ、このレベルだといくらか反応していますが統計学的には有意にはならないので、結果としては影響がなかったとなります。そこで、このレベルがNOAELになる。この値を通常不確実係数(国のリスク評価でも10を使ってますけれども)の10で割って評価基準値とします。動物のデータから人間に外挿する場合、種差に応じた10という不確実係数を用いる場合が多くあります。
 
(スライド13:「閾値なし」発がん物質の評価基準)
 
 ちょっと飛ばします。発がん性物質でもってですね、遺伝毒性発がん物質、これは閾値がないと言われているのですね。少量のばく露でも、それが遺伝子に作用してがんのもとになる可能性がある。ではどうしてるかの説明です。動物実験で用量を増やすと発がんの割合が増えるというデータが得られとします。統計学的にデータのばらつきを考えて上側5%に相当する量―反応曲線をもとめるわけですね。この線をもとに、10%でがんが出るところはどのぐらいかを考える。これをBMDL10といい、10%発がんレベルの下側推定値というのになります。ここから原点に向かって真っすぐ線を引いてやって、何を推定するかというと10⁻⁴、1万分の1の発がんレベルを推定します。この値をVSD、ヴァーチャリィセーフティドーズ、事実上安全な量とみなしましょうということにします。国のリスク評価事業でも、こういう計算を、この傾き、この曲線がわかっている場合、これをやります。「10⁻⁴」に相当するところを評価値とします。発がんの閾値がない、遺伝毒性発がん物質では。こういうやり方をするということになっています。
 
(スライド14:厚労省リスク評価事業で用いられるリスク評価値)
 
 あとは一日8時間の労働時間ばく露を想定し、基準値を求めて実施しているのが、国のリスク評価事業のやり方です。
 これを毎年のように、こうやってリスクコミュニケーションの場でお話をしているわけです。化学物質を使っている会社の衛生管理者、産業医の先生、あるいは労働組合の代表者、あるいは会社の責任者に聞いていただいて、ではうちでもそうしようと考え実施してもらうのが重要だと思うんですね。
 
(スライド15:事業者が実施するリスクアセスメント)
 
ところが産業医の先生にいろいろ質問する機会がありまして、健康障害の化学物質のリスクアセスメントってどうすればいいんですか、基本は何でしょうと質問をすると、一番多く返ってくる答えが、国が出しているリスクアセスメント指針には、マトリックス法というのがありましてこれを使いますといったものです。これは基本的には安全分野でやる方法です。その次にもう少し知っている人は、コントロールバンディングというのがあって、それを使いますと答えます。確かにこういうものがあります。国のリスクアセスメント指針を勉強していない先生だとOSHMSでPDCAサイクルを回してリスクアセスメントをやるといったことを答えます。これらが産業医の先生からよく聞く答えです。
 
(スライド16:労働安全衛生法 事業者の行うべき調査等)
(スライド17:労働安全衛生法 第五十七条第一項の政令で定める物及び通知対象物について事業者が行うべき調査等)
 
 なぜそうなるか。細かいところは飛ばしますけれども、労働安全衛生法の57条の3のところに、先ほど中村さんからお話があったリスクアセスメント、通知対象物質については義務ということが書いてある。
 
(スライド18:労働安全衛生規則)
(スライド19:危険・有害性等の調査の指針「類」)
 
 それに合わせて、ここがポイントですけど、リスクアセスメントの指針が、3つ出ています。最初が平成18年にできたもので安衛法28条に対応した一般的なリスクアセスメントの指針です。これができたときに、化学物質については別ものをつくりましょうということで、「化学物質等による危険性または有害性等の調査等に関する指針」、旧指針としましたが、これが出ました。ただ、これも自主的なリスクアセスメントのためとなっています。それが57条の3で、640物質についてリスクアセスメントが義務になってときに、この新しい指針が出ています。この新指針が以外と浸透しているのですけれども、ポイントが伝わっていない、これ非常に残念です。何て書いてあるか、リスクの見積もり、これがリスクアセスメントの中心ですけども、こんなこと書いてあります。
 
(スライド20:化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針 H18)
(スライド21:化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針 H27)
 
 長い文章で書いてあるのですが、私がわかりやすいように短い表現にしてあります。アとイとウと大きく分かれています。そのアは、危険及び健康障害の発生の可能性と重篤度を考慮する方法として、一番目にアの(ア)として、この両者を尺度化した表、つまりマトリックスを用いる方法が書いてある。これが産業医の先生の頭に入っているので、リスクアセスメントというとマトリックス法が代表的ですとなります。でも衛生の方では実際は使わない方法です。
 その次です。数値化して足し算するとか、枝分かれ分岐図を使うとか、最後は危害発生のシナリオを使う方法が記載されていますが、(エ)以外は安全分野用のものがここにまとまって記載されているわけですね。どういうわけか、この(エ)のところにILOの簡易評価法、コントロールバンディングが入っています。
 
(スライド22:化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針 H27(2枚目))
 
本来健康障害に関するリスクアセスメントで使うべきものは、この大きなイにあるものです。この大きなイには(ア)(イ)(ウ)の3つが並んでいて、そのうち(ア)の方法をとることが望ましいとなっています。(ア)として、ばく露の程度と有害性の程度を考慮する方法の最初として、作業上の気中濃度をばく露限界値、つまり許容濃度と比較する方法が記載されています。これ本来の方法ですね。だから指針にあるイの(ア)を使うべきと産業医の先生言ってくれたとすると、それはよくわかっている先生です。
 その次ですね。(イ)は数理モデルで推定した気中濃度とばく露限界を比較する方法です。数理モデルって何か難しくてできそうもないからやめよう、数学不得意だった私は、これ見るとだめだなと思います。でも、これ言葉が悪いですね。数理モデルっていうから何か難しいことをしなくちゃいけないと思われる。私の大学で、一部液体クロマトグラフィーを使っている研究室がありまして、リスクアセスメントについて相談されたので、一日何ミリリットルその溶媒を使いますか、それを仮に実験室に全部揮発させると濃度はどうなりますかを聞きました。何ppmですと化学の人ですからすぐ計算できるわけです。そのような状態の部屋に一日8時間いても十分許容濃度より低いですよね。数理モデルでばく露の推定最大値を求めてリスクなしと判断したと記録しておきましょうと衛生委員会のメンバーとしてアドバイスをしました。こういう方法は化学の技術者がいるところであれば結構できるのではないかと思います。
 3番目の(ウ)ですが、ばく露と有害性の程度を尺度化しリスクの割付表を用いる方法です。これは、旧指針ではこういう言い方でコントロールバンディングのことが書いてあるのですね。つまりコントロールバンディングが2度出てるんです。ここのあたりの説明をもう少しわかりやすくしてもらいたいなという気がしています。今日は好きなことをしゃべっていいということなので、お話しました。
 それから、最も重要なのはウに記載されています。ウに何が書いてあるか、ア・イに準じる方法と書いてあるのですが、中を見ると、特別規則に規定された方法・それを準用する方法とあります。特別規則4則、あるいは粉じん関係でもあるかもしれないのですけれど、作業環境測定を実施し、国が決めた管理濃度と比較をして、上側5%点の推定値、あるいは算術平均の推定値と管理濃度を比べて、第Ⅰ管理区分、第Ⅱ管理区分、第Ⅲ管理区分に分けて、第Ⅰ管理区分だったらいいでしょう、第Ⅲ管理区分だったら改善をしてください。これはリスクの評価そのものですよね。つまり特別規則の対象のものは好きな方法でやればよいのではなくて、今日の最初の話もありましたように、特別規則に書いてある方法をきちんと行う。管理濃度を基準に管理区分を決定することで、リスク評価をやったことになるわけです。それをきちんとやるべきですし、特別規則の対象ではこれをやらないとアウトです。
 
(スライド23:化学物質による健康障害リスクアセスメントの基本とSDSの活用3リスクアセスメントのためのSDSの活用)
 
 最後ポイントですけど、もう3分しかありません。SDS見てリスクアセスメントをするときに、いわゆる慢性影響については許容濃度との比較、これに尽きると思います。ただしですね、事故的なばく露についてですが、手にかけたら化学品によりやけどをしてしまった、目に入ったら目がやられた、そういう事故を防ぐためには、これは安全流のやり方が重要ということになります。
 
(スライド24:健康リスクアセスメントとSDS 1)
 
そこでSDSを見てリスクアセスメントとして何をしたら良いのかという点ですが、最初に重要なのは適用法令の確認です。特別規則の適用であればもう、法令の規定順守です。作業環境測定をして管理区分を決めてリスクの評価はおしまいです。
 その次にですね、私だったら急性の有害性を確認します。皮膚にかかるとどうなるのか、目に入るとどうなるのか、吸い込んで麻酔でひっくり返ったりしないのか、アレルギーの人が大変なことになる感作性があるのかということを考えて、どういう状況でこういう事故的なばく露が起きるのかばく露のシナリオを想定します。そして、適切な保護具、ゴーグルや手袋ですよね、それから作業手順を決める。これが一番重要なポイントになると思います。
 次も、急性のばく露の基準値というのが時々ものによってはありますので、天井値だとか短時間ばく露の限界値、この辺をチェックして、そういうものがある場合には、それを活用するということになります。
 
(スライド25:健康リスクアセスメントとSDS 2)
 
 その次が慢性影響です。生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性、反復ばく露での臓器毒性ですね。これらについてどういうのがあるかを考えて、許容濃度やTLVを確認し、それらとばく露を比較するということでリスクアセスメントを行う。ただし、皮膚吸収がある場合、これは気中濃度だけだとだめなんですね。それから生殖毒性がある場合、これは高感受性期があるので、妊婦だとか、授乳中の人は感受性が高い。これは許容濃度では不十分な場合がありますから、こういうところに注意をするということになります。
 あとは、ばく露濃度ですが、これが実際に測定可能ならば測定をし、できない場合は化学の技術者に計算をして推定してもらう。また、作業のやり方を見て、ばく露が高いと思われるところでは、どのぐらいかなど個人ばく露をチェックする。
 その次ですね。コントロールバンディングよりもクリエイトシンプルという新しい簡便法を厚労省が公表していますので、これは許容濃度がある場合はばく露の推定値を計算して許容濃度と比較してリスク評価をしてくれるプログラムですので、私はこれがお勧めかなと思います。プログラムが厚労省から公表されています。
 しつこいようですけれど、ばく露限界値とばく露濃度の比較が本来の健康リスク評価の基本です。このことを最後に申し上げたいと思います。
 
(スライド26:JIS/GHSのSDS記載項目 1枚目)
(スライド27:JIS/GHSのSDS記載項目 2枚目)
(スライド28:JIS/GHSのSDS記載項目 3枚目)
(スライド29:JIS/GHSのSDS記載項目 4枚目)
(スライド30:まとめ)
 
ということで時間がきました。安全配慮義務を守りましょう。予見可能な健康障害はSDSでチェック。不十分なSDSだと予見や回避が困難なので、疑いがある有害性も含めてぜひ川上の会社にはSDSを書いていただきたい。そのために、GHSには「発がんのおそれの疑い」といった区分があります。疑いなら書かなくてもいいのではと考えるかもしれませんが、予防的に書いていただくのがよろしいのかなと思います。
 国のリスクアセスメント指針ですが、安全については見積方法としてア・イ・ウに分けて記載した中で、アとウしか使ってはいけないと書いてあるのですが、健康リスクのほうはどれでも使えるような記載になっています。けれども特別規則の対象はウでの対応が必要、その他については通常イを使ってください、急性のものについてはアの安全流でもいいですよというように、指針の方でもし改定するチャンスでもありましたら、見直していただけば幸いだと思います。ありがとうございました。
(司会)
○司会 宮川先生どうもありがとうございました。
 大変短い1時間の間に中村様、それから宮川先生からお話いただきました。今、お手元にあります。もう一度繰り返しますが、このオレンジの紙に本日の御質問、もしくは御意見をいただきたいと思っております。それからアンケートのカテゴリーについてもお願いいたします。お名前につきましては、私どもテクノヒルが必ず個人情報をちゃんと押収しまして、この会でまとめた後、処分いたしますので、個人名が厚生労働省の方に行くことはないと思いますので、お名前は書いていただいても、書かなくても結構でございます。
 ぜひ、今の中で、皆さんのお立場に立った形で御質問、それから御要望、御意見いただけましたら幸いでございます。今、2時32分なので、書く時間もありますので、2時45分から次を開始させていただきたいと思いますが、大変人使い荒くて申しわけないんですが、その間にアンケートほう一つ御記入をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
 お手洗いは出まして右と左、両方見ていただければあると思います。あとお飲み物は、この左からずっと行った先のところにございますので、もし喉渇かれた方ありましたらよろしくお願いいたします。
 でき上がった方おられたら、後ろのスタッフに渡していただくか、手を挙げていただければ取りにまいりますので、お願いいたします。
 それから御質問については、もし行政のほうに対する御要望であれば、それで書いていただいて、宮川先生に対しては、宮川先生と書いていただいても結構ですし、書かないでいただいても結構です。
 それでは、今いただいたものについて、堀内先生がまとめていただいております。
 続きまして、第3項につきまして、化学品管理自主対応型への流れということで、日本大学理工学部の城内先生にお話いただきます。城内先生は、国連GHSの専門家の小委員会の日本の代表でして、日本のGHSをずっと引っ張っていただいた先生でございます。
 では、城内先生、ひとつよろしくお願いいたします。
《テーマ3:我が国における化学物質管理の現状と課題》
○城内先生 皆さん、こんにちは。私の話は15分ぐらいで終わりたいと思います。中村さん、それから宮川先生のところでもお話があったのですが、いろいろな化学物質管理の始めに必要なのは危険・有害性情報だというお話がありました。私はそこの観点からお話をさせていただきます。それが、自主対応化学品管理につながるんだという話です。
 これは、大きな流れですけど、化学品管理の変遷ということでまとめたものですが、20世紀初頭、これは例えば黄リンマッチの製造工場ですとか、鉛の中毒ですとか、そういうのがいっぱい明治の中ごろぐらいから顕在化してきて、それで、ILOなどいろいろ対策をとっていくということが始まります。
 
(スライド2)
 
 そのころは比較的に緊急で重篤な中毒作用の対策や補償ということで始まりました。それが、20世紀の中期、これは日本も関係あるわけですけど、職業がん等の慢性的な疾病の問題もあって、20世紀末には予防的な対策、それから21世紀になって自主的な取り組みが主流になっていく。これはILO勧告と条約をまとめたものですけど、化学物質に関係したものを抜粋してあります。そうすると、今、一番目のスライドでお話したような傾向も見えてくるかなということです。
 
(スライド3)
 
 化学物質管理のそういう流れというのは、やっぱり法令準拠型から自主対応型になってきているのだろうということですが、じゃあその自主対応型というのは何なのかと。これはやはり、正しく理解することが多分大事なのだろうと思っています。というのは、自主対応型というのは何でも勝手にやればいいということではなく、やっぱり原則があります。これは、1974年の英国、職場における保健安全衛生法、聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、ローベンスレポートというのがあって、それが基本となり法律になっています。この中で、法律は原則のみとし、規則、指針、承認実施準則などで補完する体系。事業者は合理的に実施可能な限りにおいて対策を講じる。訴訟等が起きたときには、事業者は十分な防止対策を講じていたことを証明できなければ罰則が適用されるということなのですね。
 これはつまり、事業者の規模によって、やれることをちゃんとやっていればいいということだと、私は勝手に解釈しています。つまり、大きな企業ができることを中小企業もやりなさいということではなくて、中小だったら中小でできることがいっぱいあるわけですね。そういうことをちゃんとやっていて、極端な話ですけど、裁判になったらしっかりそれを主張する。経験的なものですけど、ちゃんとやろうとしてれば、そんなに大きな事故は起きないかなということは感じます。
 こういう法令準拠型から自主対応型への変化が一つありますけど、もう一つは化学的な枠組みでほかの見方もしなければいけないという時代になっています。これは、地球温暖化もそうですし、私がやってきたGHSもそうですけども、様々なものが国際的な枠組みからは逃れられないということです。
 
(スライド4)
 
 なぜ、自主対応型が必要かですけど、中村さんのお話にもありましたけが、法の遵守だけでは管理には限界があるのですね。これは化学品の数、CASで見ると1億数千万が化学物質として登録されてきたという歴史があります。あと、使い方も非常に多様化しています。なので、法律を守ればいいというのはもう限界だと皆さんが感じていることです。
 
(スライド5)
 
 あとは、労働安全衛生でやることがもうすごくふえてます。事業者の方は大変だと思います。あれやれ、これやれ、いっぱいあってですね、そういう中で、リソースをちゃんと適正に配分しないと、いろいろな健康、安全の管理ができなくなってくるんじゃないかと思っています。そういうことで、有効に資源を活用する必要があるかと。そのためには、優先順位をつけてリスク管理をすることが合理的だろうということがあります。
 その自主対応型なのですが、化学品についていうと、危険・有害性情報に関する情報というのが一番大事なのでして、それは我々が消費者製品を買ってもそうなわけですけど、それが危険かどうかということがわかれば、それで対応が全く違うわけで、当然それは労働の現場でも言えることかなと。
 
(スライド6)
 
 日本の制度で実はこれが一番欠けていました。化学品の危険性・有害性に関する情報の伝達というものが一番欠けていました。私はGHSをやってきて、一番にラッキーだったと思っていることがあります。それは労働安全衛生法の57条で、危険・有害性をちゃんとわかる言葉で書きなさいというたった一つの条文なのです。これはほかのどの法律にもないのです。消防法にもそんなこと書いてないし、化審法にもないし、消費者関連の法律にもそういうことは一切書いてないのです。危険・有害性を伝えるというのは、例えば、一番わかりやすい例が医薬用外毒物、医薬用外劇物で、急性毒性を伝える言葉が毒劇法にありますけど、これは一般の人に伝える言葉ではないです。これは、管理をする人に伝える言葉なのですね。つまり、毒物は棚の中に入れて鍵をかけて、使ったらその使用量をちゃんと書きなさいと、そういう法律ですよね。ですから、危険・有害性をちゃんと伝えるという法律は実は日本にはなかった。ところが、労働安全衛生法の57条だけはそれが書いてあったんですね。それが私にとっては、とってもラッキーでした。そもそも論に戻りますと、なんで危険性・有害性に関する情報伝達が必要かということですけど、化学品の危険・有害性は見えないんですね。におわない、見えない、さわれない。なので、じゃあどうするか。それは、絵表示とか文字で伝えるしかないわけですね。なので、ラベルとかSDSが重要だということになります。
 
(スライド7・8)
 
 じゃあ日本では、危険性・有害性の情報伝達に関する法規は整備されていたかということなのですが、実は法令が整備されていませんでした。これが整備されていなかったということを実は厚生労働省が2回も調査をしています。健康障害を起こす化学品の半数は未規制物質であること、さらに適切に表示・伝達が行われていれば防ぐことができた業務上疾病が少なくないということを発表しました。これは実はGHSを法律に導入するときにした調査なのですが、この2つを見ると労働安全衛生法は役に立ってませんでしたということですよね、はっきり言うと。それで、GHSを57条に入れる理由になったというところもあります。
 これは先ほど、中村さんも言ってましたけど、安全無害ではないが法律違反ではないという状況がずっとずっと続いていましたということですね。
 
(スライド9)
 
 あと、印刷会社で発生した胆管がんで問われていることについて。印刷会社の事故が起きたときに、他の専門家の皆さんは監督官がもっと働けばいいとか、事業者に研修を受けさせるべきだとか、局排をつけるべきだとかそういう主張がいっぱいあったんですね。だけど、私から見るとそうではなくて、労働安全衛生法を守らない事業者がいても、労働者を守らなきゃいけないのではないかと思ったんですね。それはどうすればいいかというと、労働者自身に危険・有害性を伝えること、それしかないと、私はずっと思っていました。それで、そういう主張を当時したんですが、実はあまり同意されませんでした、残念ながら。でも、今でもこれは正しいと思っていて、なので、ラベルで情報を消費者、労働者に伝えることを仕事として続けています。そういうことで解決しないと、法規制の強化だけでは多分解決できないことがあって、いろいろなその発がんもそうですけど、問題が出ているのだろうと思っています。
 
(スライド10)
 
 じゃあ、その危険・有害性に関する表示制度というのは欧州ではどうかというと、欧州の規定ではもう1970年代から危険・有害性をラベルに書かないと市場に出してはいけないという、理事会指令がずっとありました。欧州が一番すごいと思いますが、これは労働安全衛生法ではないのですね。流通の法律なんです。ですから、労働現場も消費者製品もそうですけど、全部にかかっている法律です。あとは、米国では1983年に危険・有害性周知基準というものがつくられました。つまり、欧米では法で規制する必要がある、つまり、事業者に対して危険・有害性情報を伝えることを法で規制しないと事業者は絶対守らないということがどうも常識になっている。これはGHSを国連機関として作るときのドラフトグループで何回も何回も出てきた話でした。日本ではなぜか、この考え方が導入されることはなかったということですね。
 
(スライド11)
 
 GHSのスライドですけども、これは飛ばします。さっきラッキーだと言いましたけども、労働安全衛生法57条が改正されて、GHS準拠、これは法律に書いてあるわけではなくて、ガイドライン等に下っていくと、危険・有害性情報がGHSに従ってやってくださいということになってきます。【スライド12】
 実は57条を改正したときに、ラベルの貼付義務はたった100物質前後だったのです。SDSは640でした。日本ではどちらかというと危険・有害性情報の伝達というとSDSでやるものだというのが常識になっていて、なぜかというと、SDSの義務がかかっているのは1400物質あったんですね。それは安衛法だけじゃなくて、毒劇も含めて、あとはPRTR法ですね、1400あったので、そちらに皆さんの目がいって、事業者も霞が関でも情報伝達というとSDS、SDSと言ってました。ところが、労働現場の調査でSDSが有効に使われていますという結果は一つもないのですよ。労働者はそんなものわかりませんという調査結果だけなんですね。だけど、情報伝達はうまくいっているという話でずっと来ていました。GHSが入ったことで100物質には義務がかかりました。
 
(スライド13)
だけどそれは実は、世界から見ると非常識だったわけです。つまり、GHSというものは危険・有害な物については全てラベルをつけるというのが基本ですから。日本ではそれが守られなかった。その後いろんなことがあったりして、労働安全規則が改正されます。これは、つまり、GHSに基づいて危険・有害物があったら、ラベルをつけましょうとか、文書交付もしましょうということですね。ただし、これは規則なので、罰則はなしということになります。だけど、これで、私としては、情報伝達が世界基準に一応なったわけで、ほっとしました。
 
(スライド14)
 
 その後、先ほどもお話が出ましたけども、平成28年6月に労働安全衛生法がさらに改正されて、ラベルとSDSとリスクアセスメントの3つのセットで全部義務がかかったということになります。それ以外の義務のかかっていないところも全て、その3つがセットで努力義務になったというのが一番大きな流れです。これで、ここまでの改正で法令的には自主対応型の基礎ができて、あとは先ほど宮川さんからもお話がありましたけど、労働契約法での事業者責任というのがあって、それで事業者の責任が明確になったのだろうと思っています。
 
(スライド15)
 
 このスライドは、中村さんの講義であった法律の枠組みですので飛ばします。
 
(スライド16)
 
 労働安全衛生法が整備され、これはGHSの導入と関係があったのだろうと勝手に考えていますけども、法令準拠型から自主対応型への基礎ができたと思っています。ただし、問題点があります。これは、義務と努力義務が混在しているのです。行政としてはどうするのか、行政からこうしてくださいというのは一切出てないのです。もちろんこれは結構難しいですよね。努力義務は罰則がないからやらなくてもいいですよねと言ったら、やってくださいという答えになるに決まってるんですけど、じゃあどうするんですかと言ったときに、多分答えに困るかもしれない。事業者さんも困るかもしれないというところで、行政はこの辺もちゃんと答える必要があるだろうと思っています。
 
(スライド17)
 
 あとは、事業者の意識がおくれていると非常に失礼なこと書きました。義務はわかっているからやればいいんでしょうという事業者さんが多いわけですけども、先ほどの自主対応型というのはどういうことを意味しているか考えてほしいのです。裁判になったときに多分、事業者の方が一番困るんじゃないかと思うのです。というのは、公害の歴史等でマスコミ的には何か災害が起きると法律ができてない、事業者もけしからんという一辺倒の批判でずっと来たのです。だけど、さっきも申し上げましたけど、法律はもう整備されたのです。あとはそれを守るか守らないかは事業者さんにかかってるわけです。そうすると、事業者さんが何をどこまでやるかということが多分これから問題になると思うので、その辺をちょっと頭に入れて対応していただければいいかなと思います。
 それから、GHSは法律にそのまま入らない、いろいろな制約があって、分量が多いとか、2年ごとに改訂されることで、実際には法律に入らなかったので、JISで運用してるということです。これがそのスライドです。
 
(スライド18)
 
 もう時間になりましたので、これで終わりたいと思いますが、一番大事なのは危険・有害性情報を化学品を使ってる人に直接伝えるということです。このために、GHSをさらに工夫していけばいいかなと私は思っています。どうもありがとうございました。【スライド19】【スライド20】
(司会)
○司会 城内先生、ありがとうございました。
 続きまして、企業の方からお話をいただくということで、化学物質取り扱いに対する安全配慮ということで、株式会社ダイセルのレスポンシブル・ケア室の田中様からお話をいただきます。ひとつよろしくお願いします。
《テーマ4:化学物質取り扱いに対する安全配慮》
○田中氏 先ほど、御紹介に預かりました株式会社ダイセルの田中です。本日はこのようなタイトルで、少し労働安全衛生という観点のほかにも保安防災、そういった観点含んでおりますが、含めまして御説明させていただきたいと思います。
 これが本日の御説明内容です。今回の御説明の中心は総合アセスメント、これ当社の独自のリスクアセスメントの仕組みでございます。こちらについて主に御説明していきたいと思います。
 当社の御紹介させていただきたいと思います。これ何かといいますと、当社の例えば、駅とか空港なんかに出してる広告です。当社は主にBtoBの商材が多いものですから、なかなか当社の名前御存じない方も多いと思うんですが、最近ですと年末年始にコマーシャルも打ちながら、アピールに努めてまいり、この機会に名前を覚えていただければと思います。
 
(スライド3)
 
 当社の概要です。当社は1919年に国内のセルロイド会社8社が合併して設立されました。ちょうど昨年の9月に創立100周年を迎えています。
 それから、当社の事業構成、このような形になっておりまして、セルロース化学や有機合成化学、そして樹脂の合成技術、そして火薬工学といったこういった技術をコア技術、グローバルに展開しております。
 
(スライド5)
 
 これは国内拠点です。東京と大阪に本社を持ち、国内6つの工場、あと研究所を有しております。
 
 グローバルに、主に事業所としてはアジアとヨーロッパ、北米に事業所を持ち、グローバルに展開しております。
 次に、レスポンシブル・ケア活動、略してRC活動と略すのですが、これについて少し御説明したいと思います。ちょっと御存じの方もいるかと思うんですが、RC活動といいますのは、我々化学工業界共通の取り組みで、一般に平たく言えば、CSR活動になります。これにおいては、化学物質の開発から製造、最終的な廃棄に至るその全ての過程において、自主的に、この自主的にというのが重要なんですが、これを「環境・安全・健康」を確保して、その成果を公表し、社会とのコミュニケーションを行う活動。自主的にといいますのは、ただ単に決められたことを守ればいいというわけではなくて、社会から必要とされる会社になるためにも自主的に行うという意味合いがございます。
 当社はこのRC活動の6分野を切り口に、製品を使用するお客様への安全配慮はもとより、その環境保全や火災爆発・漏えいの防止並びに当社で働く従業員の安全確保にも取り組んでおります。そしてこのRC活動は社長をトップに推進する体制でございます。
 
(スライド8)
 
 ここからは、総合アセスメントの御説明にまいりたいと思います。総合アセスメントといいますのは、特に化学物質なんかにおいては、化学物質を取り扱う上でのリスクの把握と極小化のために、当社独自では「環境、安全と健康の総合アセスメント」以下、総合アセスメントに略しますが、これを運用しております。
 総合アセスメントで何をしていますかといいますと、これは、事業活動における新規計画、当社では、新規計画がここに書いてあるんですが、現状からの全ての変更点、したがって、例えば新たに製品をジョウシする、事業を始める。それはもちろんなのですが、例えば、設備を改造する、撤去する、プロセスの変更を行うとか、物流かかわる変更だとか、そういったもの全てを新規計画と定義をしています。この中で、下に示しているんですが、事業活動、例えば研究開発活動から消費、廃棄に至るまで、その全ての事業活動の中で、多種多様なリスクがございます。このリスクを事前に評価し、対策を講じるための仕組みです。したがって、当社では例えば、この一連の事業活動の中で変更点が生じた場合、必ずその総合アセスメントを実施するという仕組みです。
 そもそもこの総合アセスメントの仕組みの背景ですが、当社は1982年、大阪の堺市にあった工場で化学物質の暴走反応リスク、これを過小に評価してしまったことで、大事故を起こしてしまった経験がございます。この事故では、当社の従業員に犠牲者も出ましたし、周辺地域も大きな御迷惑をおかけしました。また、こちらに示しますように、設備にも甚大な被害が出ました。こういった事故の反省から、リスク低減対策、こちらを評価する仕組みが必要になりました。当社のリスクアセスメントは、この化学プロセスに主に用いられておりますHAZOP等の手法の導入から始まり、1995年に事業全体を包括して評価する仕組みとして、リスクアセスメント、総合アセスメントを制定しました。
 
(スライド10)
 
 ここで、その総合アセスメントの仕組み、御説明したいと思います。総合アセスメント、これは、その事業所、例えば、工場とか研究所、こちらの起案部門がまずこちらの左に示しております8項目を切り口に、変化点のある項目について実施します。この8項目に示してありますのは、当然その化学物質を扱う計画によって、化学物質の情報を入手します。そのほか、法規対応、例えば、計画が法規に適合しているかどうか。環境影響、設備安全性、労働安全衛生、製品安全、こちらの製品安全といいまのは、当社の製品をお使いいただくお客様への安全配慮です。その他、物流上の安全や、委託製造・購入販売安全、こちらを評価します。
 右に示してあるフローなのですが、基本的に総合アセスメントは事業所で実施します。ただ、特に重要な案件に関しては専門知識持った本社の有識者がさらに審査するという仕組みです。
 以降、各アセスメント項目について御説明したいと思います。化学物質安全ですが、化学物質安全アセスメントではそもそも何をしますかといいまして、まず取り扱う化学物質の適応法規や環境影響、有害性を調査し、まず、使用可否を判断します。使用可否というのは、例えば、極端な例で挙げますと、例えば化学兵器に該当しないとか、そういうところから判断いたします。
 次に、使用できるものに関しては、その危険・有害性に基づいて、例えば、設備安全や、労働安全衛生アセスメント、こちらのリスク低減対策に反映される仕組みです。
 ここでは、まず先に、右下に書いてあります製品安全について少し御説明したいと思います。製品安全ということで、当社はもともと化学会社なのですが、近年、例えばコスメやメディカル・ヘルスケアといった、一般消費者の方に御使用いただくような製品も展開しております。これにおいては、当社の製品を安心して御使用いただけるような配慮ができるかどうかを、製品安全アセスメントで確認しております。こちらに示しましたパッケージの一つにとっても、誤解がない表記だとか、法に適合した表記になっているか。こちらを確認しています。
 ちょっとスライド戻ります。この後、法規対応から労働安全衛生、ここら辺のところを御説明していきたいと思います。
 まず、法規対応です。法規対応はその取り扱う化学物質に適用される国際、国内法規はもちろん、自治体や地域住民との協定の遵守状況を確認しています。こちらはその実施例になりますが、左に適応法規があって、それに対して適用される状況、一番右がそれに対する対応。これが妥当かどうかを確認しています。
 
(スライド15)
 
 次、環境保全です。環境保全では取り扱う化学物質やプロセスからの環境影響の極小化や省エネ、温室効果ガスの排出量削減対策の妥当性を評価しています。例えば、環境影響ですと、規制値に対する計画値はどうであるか、妥当であるか。それの低減対策は妥当であるか。こういったところをアセスメントで評価しています。
 次に、設備安全です。これは非常に簡単なプラントの模式図なのですが、例えば、設備安全性でして、取り扱う化学物質に起因するこういったところの静電気対策だとか、暴走反応対策ですね、反応缶の暴走対策、さらには材質の腐食対策などの評価、あとは非常時、例えば停電や断水が起きたときの安全対策、あとは自然災害発生時、例えば豪雨とかですね、そういったところの発生時の安全確保の対策も評価しています。この後、ここの静電気対策の一つ、暴走反応対策御説明したいと思います。
 静電気対策に関しては、当社では、まず、取り扱う化学物質の粉体、液体それぞれの物性値から、この静電気の着火危険度ランクを定めております。例えば、粉体ですと、このAAとされるものは最も着火しやすい。液体ですとラージAスモールaと書いています。それに対して対策を定めております。こういった形、これは粉体の例になりますが、静電気ランクに応じてその必要となる対策をアセスメントで出そうかと確認しております。なお、当社の静電気災害防止の考え方として、燃焼の3要素、これに対して2つに対して対策を講じる。これが当社の静電気作用防止の考え方です。
 
(スライド18)
 
 次、暴走反応対策をいたしまして、当社は、一旦異常反応が起きた場合に、急激な温度・圧力上昇から、火災・爆発に至るような可能性がある物質と使っている、そういったプラントもございます。こういったプラントに対して、安全対策の評価を行っております。この考え方として、まず、反応速度解析。これはもちろん、文献や実験データもそうですが、近年ですと、例えばコンピュータを用いたような計算から、こういったものを精度よく、反応の解析をできるようになっています。こういったものを用いまして、反応速度を解析します。次に、プラントへのリスク評価といたしまして、これはプラントの模式図なんですが、反応があって、精製して、最終的な製品という形を通るんですが、この中で暴走反応がいたるような設備に関して、安全対策を評価します。例えば、このプラント内、例えばポンプがとまったりだとか、あと、冷却がとまったりした場合、その場合に例えば配管部分が滞留したりした箇所で暴走反応が起きるかどうか。暴走反応が起きる場合、どのぐらいの時間を要するのか。そういった解析から、現状の安全対策が、例えば時間的観点まで考えて間に合うのかどうか。そういったところを評価しています。
 次に、労働安全衛生、アニメーションを入れていますので少し手元の資料と違っていると思います。労働安全衛生では、取り扱う化学物質の有害性をまずランク分けします。それは皮膚腐食性、皮膚刺激性、発がん性、変異原性、急性毒性、皮膚感作性のデータに基づき4クラスに分類しています。この中でも、1級となるものが最も有害性が高い物質となります。
 この労働安全衛生アセスメントでは、区分した有害性に応じて、こちらも必要となる安全対策、事故予防対策と事後対策を定めています。この安全対策をアセスメントで評価している形になります。
 これはちょっと、実例も交えて御説明したいと思います。特に作業者においては、この左から行きますと、この安全作業必携、これは全社の作業方法、統一した作業方法のルールを定めたものになります。作業者はこれを常に携帯し、決められた作業手順で安全な作業を行うようにしております。さらに、保護具においては、顔面シールド付のヘルメットなんですが、これ統一で導入しております。そのほか、これ、例ですと、保護具、手袋、手袋においても、化学物質に対する耐性を確認します。これはもちろん、データがあればそこから引用しますし、なければ例えば、実際に薬品に漬けてみて、耐性があるかどうかを確認し、適切な保護具を選別するようにしています。
 一番左です。これは、事後の対策になりますが、緊急水栓設備です。万が一、化学物質被液した場合に、そこで洗い流せるように、化学物質取り扱い近傍にこういった設備を有しております。取り扱い場所といいますと、具体的に例えば、サンプリングする箇所とか、そういったところに設けております。
 
(スライド20)
 
 こちらが最後になりますが、近年当社では化学物質による重大な労働災害は起こっておりません。ただ、少し被液したとか、そういったトラブルはございます。こういったトラブルの撲滅も目的に、労働組合と共同で、こういった現場スタッフ対象に実際の薬傷災害事例を用いた研修会を行ったりだとか、あとは過去に、これ薬傷の例なんですが、薬傷が起きた場所にこういった看板を設けて、基礎講習を行い、再発防止を行うとこういった取り組みを行っております。
 以上、簡単ですがご紹介とさせていただきます。
(休憩)
○司会 田中さん、どうもありがとうございました。皆様、拍手でお願いいたします。
 これで、第4項の講演が終わりました。この後、意見交換会をやりますので、ちょっと準備に5分ほどお時間いただきたいので、3時20分まで少しお休みください。
 お手元に、先ほどのアンケート、お帰りになるときにいただきたいアンケートは水色の方と。それから、お手元に赤と青の札をお手持ちに用意しておいてください。
 それでは済みませんが、ちょっと5分ばかりお時間いただきたいと思います。
《意見交換会》
○司会  それでは、最後の意見交換の時間になりましたので、これから始めさせていただきます。
先生方、5名の先生、もう一度御紹介させていただきます。
 まず、コーディネーターが東京理科大学薬学部の堀口先生、一つよろしくお願いいたします。
○堀口先生 よろしくお願いします。
○司会 次に、パネリスト、先ほどお話をいただきました、帝京大学の宮川先生、一つよろしくお願いいたします。
 続きまして、日本大学理工学部の城内先生、よろしくお願いいたします。
 それから、株式会社ダイセルの田中さん、よろしくお願いいたします。
 それから、厚生労働省の中村様、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、マイクを堀口先生のほうにお渡しいたしますので、一つよろしくお願いします。
○堀口先生 それでは、時間がもったいないので、進めさせていただきます。
 本日は、厚生労働省の中村さんのほうから、昨年の秋から今現在4回開催されている、職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会に関して、どういうことが検討されているかというような対応と、今現在出ている御意見というのが示されたと思います。それで、宮川先生には授業のスライドなども使いながら、化学物質の管理の課題などについてもお示ししていただけたと思います。それで、今日、実は一番質問が多かった、SDSを城内先生のほうからはGHSとSDSに関して、この日本における歴史的な背景を踏まえて、法律が改正されてまだ3年ぐらいしかたっていないのだなと思いながら今日は聞いておりましたが、そういうことをお話ししていただけたと思います。そして、田中さんのほうからは、実際に企業でどのように化学物質について管理をしているのかというところも具体的なお話をさわりでしていただいたと思うので、今日は皆さんの書いていただいた内容を踏まえて、例えば田中さんにはしつこく質問することになろうかと思いますが、済みませんが、よろしくお願いいたします
 それで、SDSについてたくさん書いていただきました。1個1個読んでいると時間がもったいないんですけれども、皆さんが書かれていることはSDSのデータがないとか、情報がない、情報に差があるとか、企業秘密もあるのでなかなか開示してもらえないとか、そういう内容と、それから、海外から輸入してくるもの、それから、海外に輸出する話で、情報がなかなか得られないというお話、そして、新規物質に関して、特にSDSは全然情報がありませんというような御指摘をいただいていて、ほぼ情報がないという話になっています。これに関して、どうにかならないのかという御要望がたくさんあるんですけれども、それに関して、これまでGHS、SDSを図ってこられた城内先生、ちょっと御意見をいただければと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○城内先生 原則論から言うと、記載対応不備だとか情報が不足しているというのは、本当にないのかあるのかというのがまず1点、GHSは基本的にわかるところを書きましょうになっているので、わからないこと、情報がないものは書かなくていいというのが、まず一つあります。ですから、SDSの種類によると思いますけれども、調べたけれども、わからなかったという供給者側の問題というのは、もともとなければそれはしょうがないのです。しかし、多分皆さんが御懸念されているのは、あるはずなのに出てこないという問題だと思います。それは、中村さんがおっしゃった、あり方検討委員会の中でも出ているんですけれども、では、それをどうやって担保していくかというのですね。それは、行政的に何かできるかできないかもあると思いますし、事業者のルールもあると思いますけれども、そこはまだ具体的にどうすればいいというのは配慮が難しい段階だなと、はっきり言って思います。具体的にどうすればいいかを決めるのはなかなか難しい、会社、状況等、いわゆる上流側下流側といっている会社の関係、信頼の関係とか、どうしても情報は出したくないとか、いろいろな事情があって、それはちょっと一概には言えないかなと思っています。
○堀口先生 宮川先生、いかがですか。
○宮川先生 私はSDSのことでは何も書いていないということを聞くたびに、その反対を思い出すのが、PL法関係の消費者向けに注意ですね。とてもこんな使い方は普通はしないだろうということまで含めて、無過失責任も問われ得るということで、いろいろ書きますよね。それを考えると、SDSに関しては、下流側の受け取るほうの会社にとっては自分のところの従業員を守る安全配慮義務を満たすために十分なものを書いてくれないと義務が果たせないとなります。もし事故が起こったときにはSDSに書いていなかったため上流の会社に責任が及ぶというようなことがあるかもしれません。大きな事故でも起きると世の中の見方がちょっと変わるような気もするんですけれども、事故が起きてはいけないと思いますので。考え方としては、会社の安全配慮義務を満たすためには、ぜひちゃんとしたものをつくってくださいということを供給側に少しずつでも言っていくしかない。
 もう一つは、実際に業者がつくって出回っているものと、それから、厚生労働省のサイトにモデルSDSとして公表されているものを比べると、私の偏見かもしれませんけれども、業者の方がつくられたもののほうが有害性の区分がついている場合が少ないようなことが結構あると思うんですよね。ではもし事故が起こって、予見可能であったかどうかというのが問題となり、ちょっと調べるとこういう毒性があるとどこかに書いてあったとする。そういうことが有名な評価書に書いてあるのにSDSに書かないというのは、予見義務の履行への協力を故意に怠ったということになるような気もするのです。そういうことを考えると、ある程度の専門家が毒性情報を探して出てきたものは書いておいたほうが無難だ、というのが世の中の常識になるということを、私としては期待しています。
○堀口先生 はい、ありがとうございます。
 それで、実際ダイセルさんのほうでB2Bの会社ということで、総合アセスメントをされていると思います。それで、ダイセルさんのほうでも全てのものでSDSなりの情報を得られているとはちょっと思わないので、ただ、例えば得られないものは使わないという整理もあるのかもしれないんですけれども、どのように考えてやっておられるのでしょうか。
○田中氏 まずおっしゃるように、我々化学物質を使う立場になったときに、SDSの情報がないことが多々あります。ただそういった場合でも、使わざるを得ないときもありますので、そういうときは危険有害性を類推します。例えば類似の化合物だとか、そういったところから割り切って割り当てます。先ほども少し御説明したのですが、当社ですと、危険有害性4ランクに分類しています。その中で、この化合物は算定できるのであれば1級なり2級なりで扱おうという考えをして、それに対しては安全対策を講じます。その後、例えば情報が入手できましたら、それに応じて安全対策を見直すとか、そういった形になります。したがって、ないことはたくさんあるのですが、それでも何かしらその危険有害性があるものと考えて、それがどのランクに応じるのか、それを推測なりして安全対策を講じているというふうなことが当社のやり方です。
○堀口先生 はい、ありがとうございます。
 それで、質問で、これまでの検討会で出された意見の中で、SDS記載事項を環境有害性が義務でないと書かれていますが、化管法対象物質もSDSが義務化されているので、環境有害性についてもSDSに入っていると考えますが、いかがでしょうか。理由、御意見があればですけれども、城内先生、お願いします。
○城内先生 GHSでは、各国の縦割り行政をよく知ってるので、例えば労働安全衛生法では環境有害性はもともと除いているので、日本でも労働安全衛生法上は抜いていますね。それで、私はそこをずっと気にしていたのですが、平成24年にPRTR法のSDSのところが、GHS準拠になったのですね。それで、義務対象物質については、環境有害性のところに入ったんですね。500物質ぐらいですか。その後、労働安全衛生規則が改正されたときに、PRTR法のSDSのところも、全部必要、努力義務にしましょうという話が1回経済産業省のほうでもあったんですが、実はそれは数年後には消えて、現在は義務対象SDS対象物質だけのところが、SDSで環境有害性も入っているということになっています。労働安全衛生法とかぶっているところについては、環境有害性の記載をすることになっていると思いますが、そうではない、労働安全衛生法だけでカバーしているSDSについては、環境有害性は書かなくてもいいことになっています。
○堀口先生 はい、よろしいでしょうか。
 それから、そのSDSなんですけれども、SDSは交付されるようになってきたけれども、内容を理解するのが難しいと。「同種材料でもメーカーにより表現の差が大きいので、同様の有害性は同様の取り扱いをするように読み取れない、それをかみ砕いて職場に展開できる人材がいる企業はいいけれども、中小企業は難しいのではないでしょうか」と。「せめてEUのようなリスクセーフティフレーズR-phrasesを用いて、同様な表現に統一することで、ほかの材料との有害性の比較もでき、理解が深まるのではないでしょうか」という御意見がありますが、どうでしょうか。どう思われますか。
○城内先生 先ほどもちょっとプレゼンの中で言ったんですけれども、SDSベースの日本では、情報伝達も進んできているのに、それを労働者はわからないというのは、ずっと1980年代後半からの調査でずっと言われてきていました。そこで、GHSが登場して、それで供給者はラベルで情報伝達しましょうという原則があったにもかかわらず、GHS導入後も各種の委員会でもそうでしたけれども、やはり情報伝達というとSDSだけが表に出てくるのですね。それは環境庁の会議でも、経済産業省の会議でもそうでしたけれども、情報伝達をどうしましょうかというと、SDSが回っているから問題ありませんという感じでずっときていました。実は企業の方と話していてもそうなのです。今の質問も多いのはSDSなんですよね。私は、そこが変わらないといけないのではないかと実は思っています。SDSを皆さんが問題にされるのは、SDSを作り、提供する際の問題なのですね。。私のところにもいっぱい会社の方が来られました。でも、私がそのときに聞き返したのは、「その情報は何のために使っているんですか」ということです。ほとんどの皆さんはSDSをつくるためにどうするかという質問に来られています。そうではなくて、危険有害性情報というのは、まず自社の労働者を守るために使うべきで、その上でSDSをつくるとかラベルをつくる。そういう気持ちでつくって外に出すべきだと言ってきたのです。先ほどの御質問にお答えすると、ラベルの言葉はやさしくなっています。そのためのラベルですから。そのラベルの言葉は誰が決めたかというと、実は日本化学工業協会に全部お願いしました。それはなぜかというと、今まで歴史的にその業界で使ってきた言葉を使いたいために、リスクフレーズのような言葉を日本化学工業協会に訳をお願いした。それがそのままJISになっています。なので、皆さん、もしあれがわかりにくいからということであれば、どんどん意見を言っていただきたいんですね。そのために、GHSの訳も日本語と英語の対訳にしていますし、日本化学工業協会の会員だったら日本化学工業協会に、「この言葉はわからないから変えろ」と言ってくだされば、どんどん変わりますので、ぜひそういうフィードバックにも使っていただきたいと思います。
○堀口先生 国が決めている言葉ではないから、基本的にはこういうことで誤解を生むとか、わかりづらいということを、日本化学工業協会にしっかり言うということですか。城内先生でもいいそうです。多分今先生がお話されたのは、先生の資料でいくと、12枚目のスライドがGHSの御説明だったと思うんですけれども、平成18年にGHSの対応が始まりましたということで、13ページ目に書いてありますけれども、その後の平成24年の規則の改正からラベルSDSの話につながってきているけれども、GHSの話よりは皆さんの頭の中がSDSのことで頭がいっぱいになっていますよねという御指摘だったかと思います。
 「SDSをリスク評価で使う上で、コントロールバンディングについてはGHSがあるとできるけれども、実現を含め、リスク評価を推進するには情報をくみ取りにくいと、混合物がほとんどの中で吸塵ばく露に対してどの物質をターゲットにすればいいかの選定が難しいので、正確な実例にやりづらい、材料の使用用途が決まっているならば、それに合わせた情報の明示も必要ではないか」という御意見をいただいております。SDSに関して、「規制されていない物質への被害を減らすためには、懸念情報の記載が必要と考えるので、構造解析データなど、広く情報提供されるように検討会で議論してほしい」という御意見があります。「SDSは記載されていない項目が多いので参考にできないから、行政でデータの収集はできないでしょうか」というお話があります。それで、データなし、治験なしというSDS、情報に偏りがあると、成分開示ができていないということが言われています。
 今のSDSに関して、厚生労働省の中村さん、何か御意見ありますでしょうか。
○中村課長補佐 先生からもお話がありましたけれども、今国のほうでやっている検討会で、そのSDSに記載する情報をどういうふうに充実させるかという議論もやっています。幾つかあるんですけれども、例えば先ほどお話に出ていた、混合物なのにきちんと混合についての情報がないというのは、多分いろいろなところで皆さん、課題として抱えていらっしゃるのかなと思っていまして、確かに今法制度上は混合物であってもその成分ごとのSDSでいいという取り扱いになってしまっているというものですから、例えば5種類のものが入っていれば、5つSDSがきて、どうすればいいんですかという現場で困っていらっしゃるという、これもよく聞きますので、これは検討会の中でもそろそろ混合物としてのSDSをつくらなければいけないということにしたほうがいいのではないかという御意見も出ていまして、そういったことも今後政府としてどうしていくかということは議論になっていくと思います。
 それから、一番恐らく皆様が困っていらっしゃることは、もとのSDSに書いていないようなこととか、SDSをつくるときの情報をどうやって集めればいいのかという点だと思いますが、大原則としては化学物質をつくる方が責任をもって集めるのが大原則ではあると思うんですけれども、検討会の中でもありましたけれども、中には中小のメーカーもあり、限界があるというお話もございましたし、今堀口先生からもありましたけれども、国のほうでは皆様がSDSとかラベルをつくるときに参考にしていただけるようにモデルSDS、モデルラベルというのをつくって公表していまして、今実質的に3,000物質ぐらいになっているんですけれども、これは引き続きふやしていこうということは考えています。また、国内外にいろいろな化学物質の有害性の情報とか、別に日本だけが調べているわけではなくて、海外でやられている知見などもありますので、国のほうでできるだけそういうものをうまく効率よく収集をして、皆さんに提供していくような仕組みもつくれないかなということも考えたりしていますので、そこは国にできる支援もやりますし、つくる側の責任をもってやっていただくこととのバランスを取りながら進めていくことかなというふうに思っております。
○堀口先生 宮川先生、いかがでしょうか。
○宮川先生 今の話を聞いて思ったことがあります。SDSでもってGHSの区分のチェックをして、それでコントロールバンディングでリスク評価をしようという考え方が基本にある。私の今日の話の趣旨は、本当にそれを改めていただいて、個別の化学物質ごとに、許容濃度があるものについては、それと比べるのが本来なので、ぜひそれをやっていただきたいというのが私の考え方です。国のリスクアセスメント指針にも載っているコントロール・バンディングに否定的なことを言うのは申しわけないような気もするのですけれども、基本は個別の物質ごとに、特に混合物の場合は個別の成分物質ごとに、どのぐらい作業環境中に発散するのかのチェックをする。さらに有機溶剤等の似たような作用があるものについては、複数の物質がある場合には多少面倒な計算式ですが、例えば2成分があったとしたら、それぞれのばく露量と許容濃度の比を求めて、それらの合計が1以上にならないようにしようという計算式があります。その前段階として、個別の成分物質をチェックをして、それでリスクアセスメントをするというのが、作用が同じでないものの可能性がありますので、本来の方法。そういう意味では、昨年のJISの改正で、これまで混合物のGHS区分の評価をするとき、いわゆる濃度限界値よりも低いところで、SDSをつくらなければいけないという基準値がありまして、例えば発がん性の物質のときには1%と0.1%、10倍ぐらい違うんですけれども、その低いほうの基準で、SDSをつくらなければいけないということになっているものについては、その物質の成分のGHS区分を書きなさいとなった。そうすると、成分ごとに見ることを先に考えたほうが、私としては本来の原理原則に近いのかなと思います。確かに混合物としてしっかり区分をつけていただいて、それをコントロールバンディングでやるというのが楽な方法かもしれませんけれども、これは生体に対する影響を評価する原理原則からいくと、個別の物質ごとにきちんと見る、すごく面倒くさくてもそれが本来の姿かなという気がしています。
○堀口先生 今先生がお話しくださった内容は、先生の資料の21ページのリスクの見積もりから始まるところから、まとめになるまでのところのお話ではないかと思うんですが、よろしいですか。
 産業医の先生は実は化学物質は余り知らないので、先生からも、「産業医からリスクアセスメントの回答がちょっとおかしいですよ」という御指摘があったと思いますけれども、皆さんのほうは化学物質を扱うプロフェッショナルとして、健康影響については産業医は理解していると思いますけれども、今日も資料などをごらんになって、リスクアセスメントしていただければと思います。
 それから、今SDSの交付義務の物質についてのお話をしておりましたけれども、一方でSDS交付義務対象外、または、その原因物質が特定できていないものによる災害が多いというのも、中村さんのスライドにもあったと思うんですけれども、5枚目のスライドにあったんですけれども、「毒性のデータがない物質、GHS区分が全て分類できないなどについて、国としてデータを取得する、または企業にデータ取得を促すような施策は考えられていますか」と、「SDSがあってのデータの話ばかりでは参考にならないとお思いですか」「化審法で28日反復等、有害性データが取っていると思うんですけれども、労働安全衛生法の枠組みでも、目、皮膚の刺激、皮膚感染ぐらい生産量に応じて義務づけてもいいのではないかというふうに思うのですけれども」という御意見ですが、中村さん、お願いします。
○中村課長補佐 御意見ありがとうございます。
 まさに、今これから検討会で具体的な議論になっていくと思いますけれども、国が化学物質のリスク評価をどうやっていくか、その国のリスク評価の中で、事業者のほうには何を求めるかということが、まさに今後議論になっていくんだと思います。御質問にありましたように、有害性や危険性がわかっていない物質で、意外に国内で多く流通しているものというものもありますし、ただ今の仕組みの中では、その実態が把握できていないということが課題になっていまして、例で挙げた胆管がんの原因となった物質も、あれは当時海外でも発がん性区分が3だった、要は人に対する発がん性については具体的にわからないということだったんですけれども、あの事件が起こってから国内で調べたところ、相当量の流通があったということが実はわかっていて、そういったことを把握できるような仕組みとか、それを把握した上で、その物質についての有害性とかを国が調べるのか、それとも事業者さんに調べることを求めていくのか、そういったことの仕組みづくりというのは、まさに今回の検討会のテーマの一つになっていくというふうに思っています。
○堀口先生 宮川先生。
○宮川先生 目とか手に対する腐食性・刺激性、これについては以前はウサギの目に薬を入れるとか、動物愛護の観点から問題になる試験が標準だったのが、ここのところin vitro の試験が次々とOECDのガイドラインに載っていますので、費用的にも動物愛護の観点からも問題なくできるようになるのかなと思います。もう少し先になるかもしれないけれども、試験をやってみようかという会社がふえるのかなという気もちょっとはしています。
○堀口先生 ただそれに関係すると思うんですけれども、「発がん性の試験の実施は非常にハードルが高いと思いますけれども、代替法の開発とか、そういうことに厚生労働省のほうで取り組む予定とかはあるのでしょうか」という御質問があります。
○中村課長補佐 実は世界的に課題になっていて、今発がん性試験といってもいろいろな試験がありますけれども、本当に長期で毒性を調べるような試験ができるという機関というのは、多分世界でも片手ほどしかなくて、日本はバイオアッセイ研究センターという厚生労働省の施設をもっておりますけれども、それも一つの物質を調べようとすると、億単位のお金がかかって、かつ期間も5年ぐらいかかるという状況ですので、さらにより短期に、かつ発がん性を推定できる方法はないかという研究開発というのは、多分今後国でもやることになると思いますし、恐らく民間の事業者さんのほうでもやられていくのではないかというふうに思います。ただ、難しいのはどこまでコストと時間をかけるのかということとのバランスはあるのかなと思っていまして、発がん性を完全にあるかないかを白黒つけるためには相当なコストと時間がかかると、それとの比較でどこまでの対策を求めていくのかということの整理が必要なのかなと思っています。
○堀口先生 宮川先生、何かコメントを。
○宮川先生 今のに関して非常に重要なのは、バイオアッセイ研究センターは大変貴重なデータをこれまでたくさん出しているということです。実は、先ほどの胆管がんの物質についても試験データがあって、まだ世の中では発がん性に注目されていない段階から、実はそのデータに沿って国が実施しているモデルGHS分類で区分2をつけたんですね。発がんの疑いがあると。私は、事故が起きたときに、思わず自分が前にかかわったモデル分類がどうなっていたかなと気になって調べたら、一応バイオアッセイ研究センターのデータをもとに疑いがあるという区分になっていた。その後、この物質は区分1に格上げになっていますけれども、そういう意味では非常に貴重なデータを、お金をかけてでも厚生労働省がバイオアッセイ研究センターに出してもらっていた。非常にいい施策をやってきたことだと思いますので、ぜひここはコストがかかってもしっかりと維持をして続けていただきたいというのがございます。
○堀口先生 はい、ありがとうございます。
 それで、皆さんにちょっと聞くのを忘れていたのですが、赤と青の紙を用意してもらっていいですか。検討会が9月から4回開かれていて、今ホームページを確認すると、まだ議事録とかは出ていないですよね。それで、今日何が検討されているかというまとめは中村さんのほうから御提示いただきましたが、ここは場所も大阪なので出張していかなければいけないから、ライブ放送をやっているわけでもないので、9月から12月までの4回ですけれども、その4回の検討会に参加したことがある方は赤、参加していないという方は青を上げていただいてよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、ホームページで、その検討会の資料はアップされているんですけれども、検討会の資料をちょっと見たという方は赤、チェックはまだしていませんという方は青を上げていただけますか。お願いいたします。はい、ありがとうございました。
 ぜひ、東京に来るのが大変だと思いますので、ホームページなどを今後チェックをしていただければと思います。私は食品安全委員会の委員をしておりまして、先ほど評価の話があったと思うんですけれども、化学物質が食品に使われるようであれば、実は評価技術企画ワーキンググループというのが立ち上がっておりまして、毒性をどうやって評価していくのかという、食品も全世界的に評価については議論していく最中で、それこそin silicoを使ってどうやってやっていくのかと、どういうモデルがいいのかとか、私たちももともとはネズミさんの実験から考えているものですから、そういった評価をどうやっていくのかというのは、まさに食品も考えている最中でございます。また、実はここにも御意見があったのですけれども、皆さんと関係するところとしては、器具容器、食品に使われる器具容器のポジティブリスト制度が始まることになっておりますが、今日のSDSやGHSの話を聞きながら、実はポジティブリストも4区分に分けて発がん試験が必要だとか必要ではないとかを決めるんですけれども、全く想像以上にデータがなかったというところで、法律の施行がおくれることになりました。なので、これは化学物質を扱う皆さんと使う側、何に使うかというのはいろいろなんですけれども、表裏一体で一緒にやっていかなければいけないのかなと、宮川先生も食品安全委員会の専門委員なので、ちょっとコメントいただけるとありがたいです。
○宮川先生 食品安全委員会で審議する場合と、それから、労働環境は若干違うところがありまして、赤ちゃんからお年寄りまで全員が口にする食品と、それから、給料をもらって自分がどういう仕事をしているか、ある程度わかった上でやる場合ということでは違うのですけれども、逆にリスク評価の基本は同じかなとも思います。ただデータが少ない場合の扱いが、ちょっとこれはなかなか悩ましいところです。先ほどちょっとがんの関係でより簡易な評価法が出てきたらいいなという話がありましたように、現に厚生労働省は中期試験とか短期試験というのを始めていますね。それから、in silico、つまりコンピュータの上で計算をして、物質の構造などから作用を予測する。もし私がGHS分類をしてSDSをつくる立場で、そういうデータが出たときにどうするか。ネズミではデータが出ていない、人でも出ていないのに、これでもって発がん性の疑いとしていいのかどうか。世の中のコンセンサスが得られて、災害発生を防止するためにはそういうようなことも念のためSDSに書くことにしましょうということであれば、どんどんこういうデータで区分2(疑いがある)とできるわけですけれども、実際はネズミのデータもないのにそういうことをやって、我々がつくっている製品に発がん性があるかのように思われるのは困るというような意見も出てくると思います。その辺が悩ましいところです。ただSDSに関しては、少なくとも労働環境に関しては、専門家が見て、産業医等が解釈をするということの前提をもとに、少し安全サイドでもって、幅広くデータをとって記載をしていくのがいいのかと思います。食品安全委員会ではちょっと訳が違って、規制につながる場合には相当の根拠がないと、ある意味では国民の権利を制限するということになるので、少し慎重にならなければいけないということもあります。
○堀口先生 あと、「厚生労働省の中村さんの講演のスライド6により、零細から大企業の間で、災害発生は大差なく発生していることはわかりました。ただ対応策については、中小、特に零細企業について、中程度以上の規模の企業とは異なると思います。私どもの会員の業界の方の中にも零細企業が数十社ありますけれども、協会や国の講演会にも出席できず、会員向けの電子メール情報も利用できないのが実情です。クリエイト・シンプルの普及活動で会員企業に伺ったときは、面談中の課長が、ライン作業員が病気で欠員が発生したから急遽ライン作業に駆り出されることを経験しました。中小、零細企業の中には、操業することが精いっぱいであるという業者があることに留意する必要があります。本来これらの事業者にこそ知ってほしい情報を、今のシステムではうまく伝えられません。本日のこの会議もとても重要な教育の機会ですけれども、ここに中小、零細の事業者が出席できませんと、対策については今後の化学物質などの管理のあり方検討会などを通じて議論があると思いますけれども、現在国としてアイデアがあれば、コメントくださればありがたく思います。」ということで、国からいくと多分言いづらいと思うので、城内先生と宮川先生が何かアイデアがあればと、城内先生、どう思われますか。
○城内先生 実は、私がGHSにかかわった当初から考えていたことがあるんですけれども、それは、例えば国がガイドラインを出すと、大都市で講演会して終わるんですよね。そこに来られる方たちはいつも一緒で、ガイドラインが末端に行くことはそんなにないかなということがずっとあります。そこで私が主張しているのは、人を派遣してくださいということです。今も、実は検討会でも人を派遣しているシステムをぜひ使ってくださいと言っているんですけれども、やはり人が行って現場を見て、その労働者とか事業者の方と話をして、何をしなければいけないかというのはface to faceで伝えないと、かなり難しいと思うのです。なので、特に中小企業を対象にしてそういうシステムをぜひつくってくださいと言い続けています。
○堀口先生 宮川先生、お願いします。
○宮川先生 これは先ほどの講演でも言いましたけれども、産業医の方に、特に労働安全衛生コンサルタントの資格までもっている産業医の方には、化学物質のことをよく勉強していただいて、依頼をされた企業でもって丁寧に説明、あるいは教育ができるような能力を身につけていただく、そこをちょっと国のほうからプッシュしていただければという気がします。小さい方でも従業員50人以上では産業医の選任義務があるわけで、そういうところでふだんの健康管理だけという方ではなくて、化学物質のことがわかる産業医に来てもらう。そういう方向になればなという気がしております。
○堀口先生 で、済みません。田中さんのところはやはりお客様として中小の企業さんもいらっしゃるかと思うんですけれども、中村さんのほうではどのように思われますか。仕組みというか。
○田中氏 どう答えていいのかというのは思いますが、本社としては基本的には出せる情報は全て出しています。ちょっと使用していただくという観点では違うと思うんですが、当社の製品を委託で製造していただくこともあります。そのときにはできる限りの情報も出しますし、あとはどこまで出すかと、基本的には考え方次第なのですが、例えば安全対策だとか、そういったこともなるべく出しようにしています。
 あと、済みません。話が戻って、SDSに情報がないということはよくあります。当社でも特に開発段階ですとありません。ないことが多いです。ただそれでも、ジョウシの段階に関したら必ず外へ出すようにしていますので、当社としては出せうる情報は出すように努めているというような現状です。
○堀口先生 田中さんのスライドは現場スタッフの研修会とかされているようですが、これはやはり工場単位とか、そういうような現場に沿った形でされているのですか。
○田中氏 そうです。その化学物質をたくさん使う工場に対して行っています。実際に使うものが現場のスタッフだとか、作業員の方ですので、そういった方にこの研修会そのもの、本当に現場の生の声を上げていただいて、こんなふぐあいがあるだとか、ということも上げていただいて、改善できるようにとやっております。
○堀口先生 という3人のお話を踏まえて、いかがでしょうか。
○中村課長補佐 実は、検討会の第2回、第3回は、いろいろな方からヒアリングをやらせていただいて、その中で、実はフレキソ製版をやっていらっしゃる工業組合の方に来ていただきました。ここがまさに労働者の方の数が10人とかそのぐらいの小規模零細の方々の集まりでありまして、実際出てきてお話をされた方も会社経営をされている社長さん方でございました。この方々から話があったのが、まさに御意見にあるように、そもそも労働安全衛生法のことを認識していない、それから、自分の会社は当然化学物質をいろいろ使っているんですけれども、化学物質を使っているという、まずそもそも意識がない、だから何もやっていませんということを、検討会の中でお話をされていたんですけれども、結局こういうところがまだ一定数あって、そういう方々にリスクアセスメントをやりなさいとか言っても難しいだろうなという実感は、そういう話を聞いて思ったんですよね。では、こういう方に何か少しでもちゃんと意識をもって対策をとってもらうためには何が必要かというと、まさに検討会でそういう議論もやっているんですけれども、幾つか城内先生がおっしゃっていただいたように、ラベルでとにかく事業者の意識がなくても労働者に情報を伝える必要があるんじゃないか、そこから何かが起こるんじゃないかという御意見もありますし、サプライチェーンの中で、上流から化学物質が来るときに、きちんと情報を伝えるような仕組みをもう少しちゃんとつくらなければいけないんじゃないか。実はそのフレキソ製版の人たちが言っていたのは、化学物質を購入するときに全然説明がないと、だから我々としては何もわからないということがあって、それがいいかどうかは別としても、そういう意識の方も非常に多くいらっしゃるのだろうなと思いますので、そういう御意見も踏まえながら、どういう仕組みをつくっていけるのかということを、恐らくそこをきちんと押さえないとなかなか悲惨な事故というのはなくなっていかないだろうなと思いますので、まさにそれが検討会の一つの重要なテーマでありますので、これからもいろいろな方の御意見を聞きながら検討していきたいと思っています。
○堀口先生 それで、多分御提案だと思うんですけれども、規模の小さい事業所での災害発生に注意が必要とされている件に関して、「教育対応がわからないということは一概にも言えないんですけれども、化学物質の取り扱い方法などに関する適切な情報提供の仕組みをつくっても、効果がないのではないでしょうか。それよりも、業界ごとに使用可能なポジティブリストをつくり、作業環境管理、作業管理、健康管理はこうしようと外力が指導していかなくては効果が上がらないのではないでしょうか」という御意見がありました。それで、労働環境を守っていくという機運が生まれるように、改善されるように情報公開に御尽力いただきたいという御意見がありました。それで、ただその情報公開とか、情報がないとか言っている話は皆さんも御指摘しておられまして、「化学物質の有害性については長期間経て健康障害になったものもあり、使用するものとしても最新情報の編集に手間と時間がかかっています。国、または公共の団体などによる情報の共有化を強化していただけないでしょうか」、そういう御意見があります。
 あと、今日、取り組みの一つとして、サプライチェーンのお話があったと思うんですけれども、「大手化学メーカーなどで実施されている、ユーザーも含めたサプライチェーン全体に向けた化学物質のSDS化の取り組みの例があれば教えてほしいです」というお話があるのですが、それはいつごろ、議事録を見ればわかるとか、そういう感じなんですか。
○中村課長補佐 ちょっと私から簡単に御紹介しますと、これをやっていたのは日本化学工業協会というところでして、ただ今やられている数というのが大体40社ぐらいとおっしゃっていたので、それで十分かどうかというのはあるんですけれども、日本化学工業協会のホームページのほうで、これでつくった情報は全て公開していますということをおっしゃっていましたので、それを御参考いただければ、該当する化学物質がもしあれば参考になる情報は手に入れることはできるのではないかと思います。協会さんもこれからこの取り組みをどんどん広げていきたいと思っているということをおっしゃってはいましたので、私たちも協力をしながらこういう取り組みが進んでいけばいいなというふうに思っております。
○堀口先生 はい、ありがとうございました。御参考にホームページをされていただければと思います。
 それで、先ほど中小企業さんの従業員だけじゃなく、経営者も意識づけができていないというようなお話もあり、それはフロアのほうからも御意見をいただいておりまして、「安全衛生に対する意識づけをつくる方法があれば御教授ください」とか、「リスクに対する意識が低い」というコメントをいただいております。「リスクアセスメントをいかに作業者にわかりやすく行ってもらうか、意識づけの方法などについて学びたいと思いました」というコメントをいただいております。それで、私は化学物質の専門ではなく、実はそっちの意識づけとか、そちらの専門でございまして、多分産業医の先生の中には御存じの方もいらっしゃるかとは思うんです。基本的には文系の方々が大学時代に学習してきている教育心理学であったり、行動科学に基づいた従業員教育というものを知っていかないと、多分そういうものは大分研究もされていますし、そういう行動変容モデルみたいなものも開発されているので、そういう方々と一緒にそういう従業員改革、意識改革について取り組まれると、少しめくらめっぽうではなくヒントが得られてくるのではないかなと思います。それに似た感じなのですが、化学物質のリスクアセスメント実施率の向上のために、今現在厚生労働省としての対策はありますでしょうか。御質問なんですけれども。
○中村課長補佐 先ほど宮川先生からも御紹介いただきましたけれども、今推進しているのはクリエイト・シンプルだったりするんですけれども、化学物質のリスクアセスメントはなかなかハードルが高いという声は非常に多いので、毎年化学物質のリスクアセスメントの実施を支援するようなツールをいろいろ工夫をして開発をしていまして、それも職場の安全サイトという化学物質関係の情報を載せている厚生労働省のページがあるのですけれども、そこで公表をして御利用いただけるようにはしております。
○堀口先生 それで、そのリスクアセスメントが定着している企業の事例を知りたいということなんですけれども、その安全サイドを見ればわかりますか。
○中村課長補佐 実は好事例を皆様に共有するということができていないというのもあって、来年度からそういったことをやっていこうとは思っていますので、そのページの内容についてはどんどん充実を図っていきたいというふうには思っています。
○堀口先生 はい、ありがとうございます。
 これを全部読んでいたら時間がなくなってしまうので、今までのお話を踏まえて、フロアのほうから御質問、御意見等ありませんでしょうか。これだけは聞いておきたい。
 はい、どうぞ。
○質問者 今日はどうもありがとうございました。
 私は化学物質のメーカーではなくて、物をつくっているほうのメーカーです。化学薬品を使っているほうのメーカーの者なんですけれども、一つはISOで14,000の環境監査の中で、リスクアセスメントがこういれようということで、SDSをなるべく引っ張ってきて、それで過去のページのほうでリスクアセスメントをやって、そのPDFで出して、とりあえずここまでみんなでやってみようということで、我々は活動をしております。その上で、今日のお話とかを聞いておりますと、胆管がんの話もあったんですけれども、やはり化学物質というのは絶対に安全なものはないんじゃないのかなという印象があって、怖いものだなという印象があります。SDSである程度危険だということがわかっていても、現場の人たちは過去からの習慣で割と無防備に使ったりとか、普通に使っていることもあるので、私の印象としてはこれからはもうちょっとおどすのではないんですけれども、現場の人たちに本当に危ない可能性があるんだから、しっかり防具を使ってくださいということを、本当におどすぐらいの感じで徹底していくべきなんじゃないのかなと、不明なものであれば、不明だから安全というのではなしに、不明だから余計もっとちゃんと防護してくださいねと口うるさく言わないといけないんじゃないのかという印象を受けたんですけれども、そんな感じで活動を進めていくことでいいんでしょうか。印象としては。
○堀口先生 田中さん、どうですか。実際に現場におられるので。
○田中氏 化学物質の怖さというのは非常に重要だと思います。ちょっと参考になるかはわからないんですけれども、当社ですと、例えば化学物質とかで危険体感というのがあります。化学物質を取り上げますと、例えば硫酸なんかを流して魚が黒くなって、非常に反応性が高いとか、あとは粉じん爆発とか実際に小スケールですけれども、火がつきますとか、そういったやり方をやっております。何かわからないんですが、怖さという面では実際の実演をしてみると、危険が及ばない範囲ですけれども、そういったことをやるのも一つの手かなとは思います。
○堀口先生 宮川先生。
○宮川先生 毒性があるかどうかわからない不明なものは気をつけよう、まさにそのとおりです。許容濃度があるということは既に何か毒性がわかっていての許容量なのだから、これは危険有害性がある化学物質、危ないのだと思われる。個人的には、許容濃度があるものは、そこ以下のばく露で使えば大丈夫だと学会が言っている、コントロールの目安が示されている物質なのかなと思います。ちゃんと管理をして使えば、事業者が責任を果たせると考えていただくことが重要なのかなと。有害性のマークがついている物質はやめて、何だかわからない何も書いていないやつを選ぼうとすると、かえって毒性があるものに出会ってしまう可能性がある。もう一つ、中学校、高等学校ぐらいでGHSの基礎、こういうマークがついていたら危ないんだよということを、理科の実験などでちょっと教えるとか、あるいはこうやって被害を防ぎましたみたいなお話を入れてもらうとか、文科省にも御協力を願うようなことがあってもいいような気がいたします。
○中村課長補佐 ちょっと一つだけ補足なんですけれども、参考になればなんですけれども、厚生労働省のホームページで、規制されていない物質を含めてこういう災害の事例がありますよというのを毎年載せていますので、もし従業員教育とかでコンテンツが欲しいなということがあれば、参考になれば使っていただければというふうに思います。
○堀口先生 恐怖を与えるというのは、心理学で恐怖喚起コミュニケーションというふうに言われています。恐怖喚起コミュニケーションは日常的なやらねばならない行動、要するに防じんマスクをつけるとか、手袋をつけるとか、そういうものについては余り効果がないんですよ。最初の気づきを起こさせるには非常に重要なんですけれども、なれてくるじゃないですか。忘れていくんですよ。なので、年に1回の定期健診とか、そういうものをちゃんと受けましょうというのにはとても有効なコミュニケーションなんだけれども、恐怖喚起コミュニケーションをやっていれば、ずっと手袋をしたり、マスクをするのが定着をするかというと、それはちょっと違うんですよね。組み合わせが多分必要なんです。だから、初めて従業員が来たときには、多分それは言わなければいけないことだとは思います。先ほど田中さんが言われていた、ちょっと見せるというのが、いわゆる見える化というやつで、やはり百聞は一見にしかずなので、恐怖であったり、そういう見える化とか、そういうものを組み合わせていくことと、いつそれをやっていくのかというタイミングの話がとても重要になるかというふうに思います。城内先生、GHSで教育のお話も今出たと思うんですけれども、コメントをいただければと思います。先生、お願いします。
○城内先生 教育はずっと草の根的にやり続けていますが難しいですね。それで、さきほどの人を派遣するほうがいいのじゃないかということと関係するのですが、実は厚生労働省で今人生100年時代と高齢者の安全と健康という委員会をやっています。日本には化学企業はたくさんあって、OBで熱心に企業の中で安全衛生をやっていただいた方が多いんですよね。リタイアされている方も多くて、そういう方たちを、私はぜひ活用していただきたいと、実は思っています。それは、先ほどから話が出ている産業医の先生もいるんですけれども、宮川先生もおっしゃっていたように、産業医の先生は診療所の外には余り興味をもたないように思います。産業医として外に出ていく活動というのは、もちろん得意な先生もいらっしゃいますけれども、全員がそうではないので、やはり教育のツールとしては別のことも必要かなと、私は思っています。GHSのほうから言うと、GHSの文章は最初にラベルが書いてあるのです。それはラベルが大事だからラベルが最初に書いてあるんですね。危険有害性を調べるというのは実はSDSが最初なのですが、情報伝達としてはラベルが最初ですよという意図がGHSの文章の中にあるので、厚生労働省からも何年か前にラベルでアクションという標語も出されました。今はとにかく情報がそこに届いているということが、私は最初に大事だと思っています。赤い枠で囲まれていたら、多分人は見るだろうし、見たからといって全員が読むことはないかもしれませんが、とにかく情報が届いているというのが最初だと思うので、そこを教育の一番最初にしてほしいなと思っています。
○堀口先生 フロアのほうから、「将来労働者になる子供たちに対して、SDSなどの教育を行うということは考えられませんか。知らないことが一番恐ろしいことだと思います」という御意見もいただいております。
○城内先生 実はGHSが導入されたときに、学校関係の学会に行ったり、発表したりとか、いろいろアクセスしようとしたんですけれども、もう鉄の扉なんですよ。学校教育というのは。どうしようもないです。ただ、実は工業高校とか、日本大学の附属のほうから、ちょっと話をしてくれというのはたまにあったりして、学生は興味をもってくれると思います。ただ学生の前に立ちはだかっている文科省とか、先生とかの壁が大きいです。それでも私はまだ諦めていないですけれども、何とかしようと思っています。
○堀口先生 諦めじゃないです。同じです。食品安全委員会も諦めておらず、今教科書の間違い探しをしているところです。なので、ぜひ皆さん、経営産業省のLPガスのガス安全室は業界団体と経営産業省が一緒に文部科学省に何か言いに行って、副読本を業界がつくって、それを配付することに成功しているので、皆さんのほうもぜひ、業界も役所も一緒になって別のお役所に、進言するかなと思っています。
 ほかにフロアから、それでは、後ろの方から。
○質問者 今日はありがとうございました。
 厚生労働省のほうから、モデルSDSが約3,000物質抽出されていますよというお話がありました。この3,000物質というのは、情報提供義務のある物質全てが含まれているというふうに理解してもよろしいでしょうか。
○中村課長補佐 はい、そのとおりです。
○質問者 その中で、許容濃度などをちゃんと書かれている物質というのは、大体どれぐらいあるんでしょうか。
○中村課長補佐 済みません。そこは私も正確にお答えできないんですけれども、一応毎年、予算の限りがあってできる範囲もあるんですけれども、情報の更新もしているので、わかっている情報は一応全部入っているはずだと思います。
○質問者 非常に大切なデータが詰まったものだと思っております。先ほど宮川先生のほうからも、そちらで今・・・というお話がありましたけれども、ぜひともそれをどうやって生かしていくかというようなことをもっと大々的にアピールしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○堀口先生 はい、ありがとうございます。
 そうしましたら、そちらの方、手が上がっていたと思います。
○質問者 今日はどうも貴重な話、ありがとうございました。
 弊社は化学メーカーで輸出も輸入もやっているんですけれども、ラベルSDSの話に関しては、国内の話ばかりだったと思うんですけれども、弊社の場合、原料を海外から、特にアジアから輸入する場合があるんですけれども、当社は特殊なあれかもわからないですけれども、2割から3割ぐらい輸入原料を使っているんですよ。そうしたら、それでSDSが発行されないとか、ラベルがついていないとか、ついていてもGHS対応になっていないとか、いろいろあるんですよ。私どもが輸出する場合はGHS対応のラベルを張って、しかも輸出国の言語でやると、日本語、英語、例えば別の言語とか、3枚張ったらいいとか、そんな極端な例もあるのに、日本に入ってくるほうはほとんどフリーパスで入ってくると、この通関の厚生労働省さんと管轄が違うかもわからないですけれども、その辺を強化しないと、日本国内が頑張っても輸入原料が全然じゃないかという気がするんですけれども、その辺はどうでしょうか。
○中村課長補佐 おっしゃるように、日本国内に流通させるときには国内法規が適用されてしまうので、多分輸出する国の規制が非常に緩いと、緩い状態で日本についてしまうということになりますから、あるかなと思います。どこの国から輸入するかということにもよるかなと思うんですけれども、通関のときにどこまで求められているかというのは、例えば禁止物質とかは非常に通関できちんと見ると思いますけれども、ちょっと済みません。そこは私は詳しく存じ上げていないんですが。
○質問者 国内で流通するんであれば、輸入業者がつけるんであれば、何らかの義務はあると思うんですけれども、英語のラベルでオーケーのはずはないので、英語だとまだいいんですけれども、英語以外の言語だと、・・・も読めないので、そこはぜひ日本語のラベルを義務化していただけるような形になればありがたいなと思うんですけれども、よろしくお願いします。
○堀口先生 城内先生。
○城内先生 そんなに詳しくはないんですけれども、今おっしゃったように、例えば外国から日本に来るときの日本の法律に従うというのがあるわけですが、そこで外国の人は毒劇法とか、消防法とかはかなり調べて気にしていますが、労働安全衛生法というのは、国内の工場の中の話なので、GHS対応は労働安全衛生法でしましたというのは、それは多分通関は見ていないかもしれません。安全輸送のほうはもちろん全部対応していますので、飛行機とか船でくるやつは国連の危険物輸送に沿った日本の航空法と船舶安全法とかにかかわってくると、書きかえもできると思いますけれども、安衛法は多分ないと思います。
○質問者 輸出国じゃなくて、多分日本国内に入れた場合に、そこからはディーラーなり商社なりの責任になると思うんですけれども、そこの責任をきっちりしないと、全然理解していない人が多いので、そこを厳しくやっていただきたいなと思います。
○中村課長補佐 実は結構うちにも問い合わせがありまして、輸入業者さんから英語のSDSのままでいいですかという問い合わせも非常に多いんですけれども、そこは我々も日本で流通させて日本の労働者が見るんだから、ちゃんと日本語にしてくださいという指導はしているんですけれども、そこはきちんと広めていきたいというふうに思います。
○質問者 ありがとうございました。
○堀口先生 時間が来たので、あと1問だけ聞けますが、誰かいらっしゃいますか。
○質問者 食品工業協会のウエノです。特に中小企業が多いので、中小企業の立場から今日ものを言わせていただきますけれども、ちょっともう一度説明が必要だと思ったのは、実は我々の事業の会員さんでもコメントをいただいたとおりの状態でして、日本全体にだと思うんですね。実はどこの工業協会にも属していない企業さんはかなりいらっしゃると思うんですね。そこのカバーをどうしていくかというのは国の施策もかなり大きいので、これはちょっと一歩かなり踏み込んだ施策がないと、なかなか声が届かない。そこをちょっと今後の委員会の先生方も共通認識になって、そういうところを真剣に協議していただきたいというのがお願いになります。
○堀口先生 コメントありがとうございます。
 それでは、時間が来ましたので、もし先生方に何かお尋ねしたいことがある方は、個別に終了してからつかまえてください。よろしくお願いします。
 どうもありがとうございました。
(閉会)
○司会者 どうも今日は大変お忙しいところ、ありがとうございました。お手元のブルーのほうのアンケート、今後の自社セミナーの参考にさせていただきたいと思いますので、ぜひ御協力お願いします。それから、赤と青の紙を戻していただければと思います。
 それでは、補足になりますけれども、ラベルSDS活用促進事業で、電話、メールでの相談事業を3月11日までホームページでやっています。また、中小企業さん、小さな方で、おわかりにならない方がいましたら、同じくこの事業の後方支援をやっております。お金もかかりませんし、匿名で保護されますので、ぜひ御活用いただければと思います。
 それでは、本日は長いお時間ありがとうございました。先生方にもう一度拍手をお願いいたします。ありがとうございます。