令和元年度化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーション(意見交換会)(第1回)議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

令和元年12月5日(木)13:30~16:37

場所

エッサム神田ホール1号館 2階多目的ホール

議題

  1. 基調講演
    1. 「リスク評価の結果について」
    2. 「がん原性指針対象物質の追加、変異原性試験の基準の一部改訂等について」
  2. 意見交換(パネルディスカッション)

議事

(開会)
○司会 それでは、定刻となりましたので、ただいまより2019年度第1回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーションを開催いたします。
 まず初めに、お手元の書類の確認をお願いいたします。A4のピンクと水色のアンケート用紙、それぞれ1枚ずつ、こちらですね、ピンクと水色、赤と青のはがき大のカードが1枚ずつお手元にございますでしょうか。
 このリスクコミュニケーションですが、働く方の健康障害を防止するために厚生労働省が行っている化学物質のリスク評価に当たりまして、関係する事業者の方、また事業者の団体の方との情報共有、意見交換会を行うために実施しているものです。
 厚生労働省からの委託を受けまして、私どもテクノヒルが運営を担当しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日のスケジュールについて簡単に御説明いたします。
 まず、「リスク評価の結果について」というタイトルで、厚生労働省の検討会である化学物質のリスク評価検討会で行われた検討内容につきまして、検討委員でいらっしゃいます早稲田大学名誉教授の名古屋俊士先生に30分ほど御講演いただきます。
 次に、「がん原性指針対象物質の追加、変異原性試験の基準の一部改訂等について」というタイトルで、厚生労働省、労働基準局、安全衛生部、化学物質対策課、中央労働衛生専門官の阿部泰幸さまに30分ほど御講演いただきます。
 以上、基調講演が終わりましたら、一旦15分ほどの休憩をいただきます。なお、休憩時間にピンクのアンケート用紙を回収いたします。ピンクのアンケート用紙に基調講演をお聞きになった御質問、御意見などについて御記入いただき、会場内の事務局員へお渡しください。後半の意見交換会は、会場からいただいた御意見を踏まえた形で進めてまいります。
 後半の意見交換会では、コーディネーターを東京理科大学、薬学部、医療薬学教育研究支援センター、社会連携支援部門教授の堀口逸子先生にお願いし、パネリストとして基調講演の名古屋先生、阿部中央労働衛生専門官にお入りいただいて疑問点にお答えいたします。
 意見交換会につきましては、開始から1時間ほどはピンクのアンケート用紙に御記入いただいた御質問について回答し、その後、30分ほど会場からの御質問を直接お受けいたします。
 なお、この講演会につきましては、後半の意見交換会を含めて、議事録作成のために録音をさせていただきます。録音の関係上、最後の質疑応答の際はマイクをお渡ししますので、マイクを通して御質問をお願いいたします。
 全体の終了は16時30分までを予定しております。
 
 それでは、最初の基調講演、「リスク評価の結果について」を早稲田大学の名古屋先生、どうぞよろしくお願いいたします。
《テーマ1:リスク評価の結果について》
○名古屋先生 ただいま御紹介にあずかりました早稲田大学の名古屋と申します。よろしくお願いいたします。
 
[スライド1枚目]
 ここに書かれていますように、2019年のリスク評価の実施状況についてということでお話させていただきたいと思います。
 
[スライド3枚目]
 
 ここの労働現場で取り扱われている化学物質の現状は皆さんよく御存じのことだと思いますけども、労働現場で取り扱われている化学物質の現状ということでございまして、我が国の産業で使用されている化学物質は、主なものだけで大体7万種類ぐらいあります。それから、毎年1,000種類の物質が新規で申請されています。少量の物質ですと、1万7,000種類で推移しているということになります。
 
[スライド4枚目]
 
 この労働安全衛生関係法令における化学物質管理の体系については皆さん御存じのことと思います。今日扱うところは、ここで出てくる労働者に危険または健康影響が生ずるおそれがある物質等につきまして有害性評価をしますよということです。ここで有害性ばく露報告書をもらいまして、そして、初期リスク評価、詳細リスク評価と、今日はここのところの話しになります。詳細リスクでさらにリスク評価がしたほうがいいということになると、措置検討会に行って、それが特化則になるという流れですが、今日はここの初期リスク評価の結果のところのお話をしようと思っています。
 
[スライド5枚目]
 
 これはちょっと古いのですけども、今の化学物質対策の方向性はこうした流れということです。ここにある平成18年以前というのは、どちらかというと、ハザードベースの規制ですよ、労働者に健康障害を発生させる化学物質について、言わば後追いで規制をかけている。何かその物質によって健康障害が起こったときに、初めてその物質について規制措置を考えるという形でした。
 そうしますと、後追いになってしまいますので、平成18年からリスクベースの規制という現行の対策に変わってきました。
 リスクの小さな化学物質については、事業者がリスクアセスメントを実施、その結果に基づいてリスク措置をとってくださいよ。そうした中で発がん性の物質については、重篤な健康障害のおそれのある物質については、国自らリスク評価を行い、リスクの高いものについて規制をかけましょうということを、現在行っています。今日はここのところですね、こういうふうに流れてきております。ここまでで約200物質ぐらいやっていまして、特定化学物質になったのが17~18物質ですか、ちょっと数はしっかりしませんが、そういう化学物質が規制されているよということでございます。
 
[スライド6枚目]
 
 リスク評価制度のここもそうですね、平成18年発生当時ということは、国がまだ行っておりましたので、要するに国の定めた一つの委員会の中で、皆さんで議論しながら、どういう物質について規制をかけたらいいだろうかと議論していました。あとはパブリックコメントなんかを求めながら物質を決めていくという流れでした。それで決まった化学物質に対してばく露報告を皆さん方からいただいて、その化学物質につきまして、実際に健康有害性の評価をして、結果的には何をしているかというと、要するにリスクの判定する基準の評価値ですね、評価値をここで決める。あとは、ここは実際にばく露測定をしていって、そして、それと二つ合わせて、初期リスク評価を行い、初期リスクで終了するか、さらに詳細リスクに行くかを判断します。リスクの高い化学物質は、詳細リスク評価へ行って、そして、詳細リスク評価から次の健康措置検討会に移り、措置検討会では、どういう規制をかけたらいいかなということを検討しているという形の流れになっています。
 
[スライド7枚目]
 
 ここの評価スキームもそうですね、先ほどと評価値を設定するということでは全く同じですが、先ほどの場合は、一つの委員会で有害性とばく露測定行っていたのですけれど、平成21年からはリスク評価対象物質を決める企画検討会、それから、リスク評価検討会、それから、健康措置検討会、要するに三つの部会に分かれていて、そこの中のリスク評価を行う検討会の下に有害性を検討し評価値を決める小検討会とばく露を調査する小検討会があり、小検討会での結果を合わせてリスク評価検討会で検討しているということです。これは有害性のデータを集めていて、そして評価値になる、ACGIHとか許容濃度を参考にして二次評価値を決めています。もし、そういうものがなかったときには、NOAEL等を使って委員の先生方が、評価値を決めるという。ここは実際に事業場からばく露報告があったところから、コントロールバンディングしながら、この作業の中で、一番ばく露が高い事業場はどういった事業場だろうかということを探して、実際にその事業場にお邪魔して、聞き取り調査をして、それから、そこで測定が了解された事業場に対しまして、個人ばく露濃度、作業環境測定、スポット測定等をします。
 その結果を総合的に合わせて評価します。このばく露最大値の推定も後で出てくると思いますが、要するに、実際にばく露測定した結果を基に統計処理して区間推定値を求めます。実際のばく露濃度と区間推定で求めた値の高い価をばく露最大値として評価に使います。それで、区間推定値をなぜ求めて使っているかというと、実際にばく露濃度は測定しているけど、もしかして、ばく露濃度を測定していない作業者が測定した作業者よりも高いばく露受けているのを見逃してしまう可能性のないようにするために統計処理し、区間推定値を求めます。その二つの値で高いほうの値であるばく露最大値をここでいうところの評価値と比べて、リスクについて判定しましょうというふうな流れになっております。
 
[スライド8枚目]
 
 このばく露評価スキームですね、先ほど言いましたように、初期リスク評価ですが、先ほどありましたように、ばく露報告があったところの事業所に行って、実際に8時間の個人ばく露濃度測定します。先ほど言いましたように、有害性評価の小検討会が、この一次評価値、二次評価値を決めます。一次評価値はここですね、二次評価値がこの後、評価化学物質が特化則の特化物になったときに、多くの場合は管理濃度になる濃度と考えていただければ結構です。そうした中で、実際に現場に行って測定します。一次評価値、これは発がん性を考慮して評価する場合の数値です。1万人に1人の割合でがんが発生するであろうと推測される濃度です。一次評価値より低いばく露の作業はリスクが低いと評価し、終了します。また、一次評価値と二次評価値の間の作業も現時点では、リスクは高くないとして、終了します。
 詳細リスクというのがここですね。二次評価値より高いばく露を受けた作業者の集団は、やはり、リスクが高いので、右側の詳細リスクにいって、再度検討しようということなのです。
 先ほど申し上げたように、実際のばく露ではなくて、区間推定値が、この二次評価値を超えているときには、やはり、それも詳細リスク評価を行うということになります。そういう形の中で詳細リスクでは、有害性につて再評価をしますけど、なかなか新しく情報がすぐ出てくるわけではありません。大体、一般的には、ここに出てきた値がそのまま使われることが多いと思います。もしかしたら、そうでないときは、新しい値も一応検討しましょうということになります。
 ばく露につきましては、初期リスクで測定を行った作業場とそのほかに、初期リスクで測定に行ったと同じ作業をしている別の作業場でばく露濃度測定を行ってくるということです。
 そうした中で、ここにありますように、二次評価値より低い作業、まあ、めったにないのですけど、先ほど言ったように、区間推定で求めた値は、詳細リスクで現場に行ったときのデータがそろってくると、改めて統計処理を行うと二次評価値を超えないことが起こる場合があります。これはほとんどないのですけど、こういうケースがあった、そのときには詳細まで行ったのですけども、そこで終了という形になります。
 あとは、ここの二次評価値を超えたときに要因分析をします。それは特定事業所の問題なのか、工程が共通しているかどうか。まあ、いい例かどうかわかりませんけど、例えば、エチルベンゼンなんかもそうです。要するに、ばく露の測定に行ったときに、二次評価値を超えているのが造船の塗装だけだった。要するに塗装だけだったのです。そうすると、例えば一番多くあった作業は、ガソリンスタンドで、物すごくエチルベンゼンを多く取り扱うのですが、著しくばく露濃度が低かったから、要因分析として見たら、それは特定事業場の問題で、当該事業場の指導・監督で十分でしょうということになって、ガソリンスタンドは規制の対象から除外がされました。やっぱり二時評価値を著しく、超えているのは造船の塗装だったのですね。作業は造船の塗装だけれども、やはり塗装は工程が共通しているので、塗装作業の全てについて規制をかけたほうがいいということになり、エチルベンゼンについては塗装作業を健康措置検討会に送り、特化物としての規制の検討を行うことになりました。そういう意味での要因分析をしていますよということになるかと思います。
 
[スライド9枚目]
 
あとリスクの判断は、これは先ほどと同じです。要するに言いました、一次評価値は1万人に1人の割合でがんが発生するであろうと推測される濃度で、ほとんどリスク評価という形では記述はしますけども、評価のときにはなかなか使いません。一番使うのはここの二次評価値ですね、要するに、労働者が毎日当該物質にばく露した場合に、これに起因して労働者が健康に悪影響をうけることがないであろうと推測される濃度です。一般的に、許容濃度だとか、要するにACGIHの値を使います。
 それから、もう一つはここですね、ばく露の場合につきましては、作業場で実際に測った時の最も高いばく露と区間推定値で求めた値のどちらか高い値を個人ばく露濃度の最大値として、二次評価値と比べて最大値が二次評価値を超えたら詳細リスクに行きますよということになります。
 あと、Ceilingと書いてある。Ceilingの場合、今回は2物質だったのですけど、Ceilingの場合、要するに8時間のCeilingしか与えなかった場合について、今は検討中ですということで、ちょっと後でお話しできるかもしれません。
 
[スライド10枚目]
 
 ここは経皮吸収ですね。膀胱がんが出ましたので、経皮吸収のあるものについては確実に経皮吸収の評価をしましょうよということです。今のところ定量的な評価方法が未決定です。ワーキングで議論していますけど、そのワーキングで議論したことを今は現場に持っていって、そこで実際それでいいかとどうかという形のものを検証しまして、それが出てくるときちんとした定量方法が確立しますが、今のところは原則としては定性分析を評価して行われます。経皮吸収というのはこんな形です。だから、リスク評価しても経皮吸収のあるものは、ばく露とこことは別に経皮吸収のリスク評価もしますよということになっています。
 
[スライド11枚目]
 
 このリスク評価対象物質の選定は、そうですね、これが先ほど言いましたように、リスクの物質の選定という形になります。先ほど言いましたように、今はここにあります7月のリスク評価の企画検討会のときに選定作業を行い、今年はこの物質モリブデン化合物です。ここがリスク評価対象物質になりました。ということで、多分ここにあります12月になってくると、リスク評価物質がこれですよと公表されます。そうすると、これにつきましては来年の1月から12月まで、1年間で500キログラム以上、この物質を取り扱ったところは、再来年の1月から3月の間にばく露報告書を作成して、ばく露の報告書を作成して監督所に届けることが義務づけられています。
 そんなような形で今は流れて、先ほど言ったように平成18年、一番最初に特化物になり規制がかかったのがホルムアルデヒドです。ここは酸化チタンですね。今はちょっと止まっていますけども、酸化チタンです。
 それから、24年、25年辺りが、リフラクトリーセラミックファイバー、それから、ジクロロメタンかな。だから、やっぱりリスク評価が終わっても、これから法律をつくるための検討会である健康措置検討会で、ときにいろんなことが起きることがあります。リフラクトリーセラミックファイバーの場合なんかは、例えば健康措置検討会は9回ぐらいやっています。だから、リスク評価が終わっても法律になるまで時間がかかっています。先ほど言った酸化チタンはまだ法律にはなっておりません。
 
[スライド13枚目]
 
 あとは、見ていただければわかりますけども、このリスク評価の実施状況初期その1について今日お話しするところの内容です。今年の中ではこれだけの物質についてリスク評価をしていますけども、今日は時間の関係で詳細リスクに行くものだけを説明します。見ていただければわかりますけど、ここは二次評価値ですよね。二次評価値に比べて、ばく露濃度が低かったものにつきましては、初期リスクで終わりますよということです。
 見ていただければわかりますように2-クロロフェノールの二次評価値が0.5で、濃度は1.1です。要するに比べてばく露が高い、これは詳細リスクへ行きますという風に見ていただければと思います。今日は皆さんの資料はこれら詳細リスクに行く物質ついてお話をしようと思います。
 
[スライド14枚目]
 
 今、この初期その2については、ばく露小検討会が終わって、これらはリスク評価検討会が12月の19日に行われます。そのときに議論するので、本日は説明しません。でも、これも見ていただければ、もう皆さんすぐわかると思います。二次評価値に比べてばく露が高いもの、これは詳細リスクに行くよと思っていただければ結構ですね。こういう風に、このエチリデンノルボルネンは明らかに二次評価値に比べてばく露濃度が低いですから、初期リスク評価で終わるねというふうに見ていただければ結構だというような、そんな形で予測は皆さんつくと思いますので、参考にしていただければと思います。
 それでは初期リスク評価対象物質についてお話ししていこうと思います。
 
[スライド15枚目]
 
 まず、2-クロロフェノールについて、リスク評価の結果で、ここにありますように、ばく露限界濃度の二次評価値が0.5ppmです。この場合の二次評価値は実際有害性評価小検討会で決めます。実際、評価に用いる濃度は、ここに記載されているように、ACGIH、産業衛生学会等の各機関で指標の設定が行われていないため、生殖毒性、神経毒性などに係わる評価レベルを参考に設定されました。それが0.5ppmです。
 実際に9人の作業者に対して測定した結果、最大ばく露濃度は1.1ppm、ここにあります区間推定値ですね、要するに、実際にはかったばく露濃度はこれよりも小さいのですけども、統計処理した区間推定値が1.1ppmでした。この1.1ppmがこの二次評価値を超えていますので、やっぱり2-クロロフェノールは詳細リスクに行きます。
 もう一つ、ここにあります様に、経皮吸収はありませんので、ここについては検討しなくて結構ですねという形のまとめになるかと思います。
 
[スライド16、17枚目]
 
ここのところの基本情報等及び有害性評価結果の概要は時間の関係でちょっと省かせてください。
 
[スライド18枚目]
 
 この0.5ppmは二次評価値です。どこからとってくるかというと、先ほど言いましたように、ACGIHも産業衛生学会等も設定されておりませんので、有害性評価小検討会の先生方が生殖毒性などを参考にして0.5という二次評価値を決めたという形になるかと思います。
 
[スライド19枚目]
 
 実際は作業者、それも6人いる作業者の中で、ばく露濃度として実測が一番高かったのはこの作業者の0.49ppmなのですけども、先ほど言いました、このデータを使って統計処理した区間推定値が1.1ppmです。そうすると、この二つの濃度の中で一番高い濃度と、二次評価値を比べると二次評価値より最大ばく露の方が高いということになりますので詳細リスク評価の必要があるということになります。一応、スポット測定が書いてありますけど、スポット測定は参考にしているという形だけです。
 
[スライド21枚目]
 
  最終的には、ここにありますように、最大ばく露は区間推定値の1.1で、二次評価値を超えて詳細リスクへ行きます。ここのところは先ほど報告書へ書いてありますように、詳細リスク評価に行ったときに、どういうところに対して実態調査がいいですかということが書かれています。
 
[スライド22枚目]
 
 次がメタクリル酸メチルになります。ここのところは、産業衛生学会の許容濃度の値が2 ppmですから、2 ppmが二次評価値ということになります。
 ばく露濃度測定は15人で、区間推定値から求めた値が180 ppm、これは先ほどありましたように、実際のばく露濃度の一番高い値よりも区間推定値のほうが高いでしたから、その値を最大ばく露レベル180 ppmとして、ここの二次評価値の値より最大ばく露濃度が超えているので詳細リスク評価に行きましょうということになります。これは経皮吸収はありませんので、それは考慮しなくて結構ですという形になるかと思います。
 
[スライド23、24枚目]
 
 ここの基本情報等及び有害性評価結果の概要のところは先ほど言いましたように、ちょっと省かせてもらってよろしいでしょうか。
 
[スライド25枚目]
 
 有害性評価結果の概要(つづき)のここは先ほど書かれたような二次評価値になります。
 二次評価値は先ほど言ったように、日本産業衛生学会の許容濃度の値を採用しています。
 
[スライド26枚目]
 
 実際に事業場へ行って測定してみると、事業場でも結構ばく露濃度は高いです。実測値の最大値は120 ppmです。それとこのばく露濃度のデータを使って、区間推定値を求めると180 ppm、どちらが大きいかというと、こちらの区間推定値の方が大きいですので、一応最大ばく露値としては180ppmということです。それを二次評価値と比較すると、やはり詳細リスク評価に行かなきゃいけないということ形になります。
 
[スライド27枚目]
 
 この次のばく露評価結果のグラフを見ていただけると、二次評価値が2 ppmですから、これですね、ここの集団は二次評価値を超えているよという形です。作業はこの表にありますような作業ですねということを書いておきました。それは後で見ておいてください。
 
[スライド28枚目]
 
 評価としては先ほどと全く同じです。製造事業所において最大ばく露は区間推定値が180で二次評価値を超えておりますので、詳細リスクに行きます。
 それから、この二次評価値のところはいいですね、ここはちょっと説明が、難しいので、後でもし何か説明の必要があったら質問してみてください。
 このリスクの判定及び今後の対応はですね、最大ばく露値が明らかに二次評価値を上回っているので詳細リスクに行きます。二次評価値を上回ると考えられる作業は、洗浄だとか、希釈・溶剤としての使用をした製造、こういうところについて作業の工程が共通しています。ここの作業は二次評価値を超えていますので、当然、詳細リスク評価の測定に行った場合、今回測定した事業場のほかに、同じような作業のところへ行って、もう一度測定して、きちっと評価するということになるかと思います。あと実態調査の場合は、調査に行った事業場のほかに報告書はいっぱい来ているのです。ただ難しいのは、報告書を提出した事業場は多いのですけども、問診したときに測定を許可してくれる事業場がどんどん、どんどん減っていくということなので、結果的には測定することが難しい部分はある。そういうところへもう一度お願いして、測定範囲を広げるということ形になるかもしれませんね。経皮吸収はありませんということです。
 
[スライド29枚目]
 
 これはブテナールですね。ここのところのばく露限界0.3ppmは先ほど言いましたCeilingの値を採用した二次評価値ですね。要するに、ACGIHが勧告しているTLV-TWAの値が無く、TWA- Ceilingとして勧告している値を参考に設定した値です。
ただ、ばく露小検討会の中でもそうなのですけども、TWAとCeilingは、慢性ばく露系がTWAで、急性ばく露系がCeilingのような、いずれか一方ではなて、それぞれちゃんと別の軸として評価されるべきものだということです。急性毒というのは、急性するためのものではなくて、慢性があって、その中で突出してちょっと濃度が高くなってくると、やっぱり慢性の影響も出てくるよという形なので、やっぱり慢性の評価に急性の値をリスク評価に使っても問題ないということです。ただし、測定として、今検討段階だから何とも言えませんけど、検討している中では、Ceilingの値を二次評価として採用する可能性が出てくるということであれば、当然その測定の方法ですとか、測定の回数、サンプリングの時間、そういったものをもろもろ検討していく必要があるということになります。つまり、Ceilingの値を使うときには、通常のばく露濃度のほかにスポット測定、要するに、ばく露の高いところの濃度をたくさんはかっていって、それがもしかして二次評価値を超えたら、やっぱり詳細リスクに行きましょうという形の検討をしていますよということです。要するに、今まではリスク評価にスポット測定というのは評価には使っておりませんで、参考値に使っているだけでした。Ceilingを使った場合にはスポット測定の値を使って評価しましょうということになるか、今は検討を進めているというところでございます。これが皆さんに示せる一番最初の事例だと思います。
ここで見ていただくと、先ほど言いましたように、ばく露濃度は0.12ppmだったのですが、スポット測定の最大値が1.2ppmということですから、やっぱりここのスポット測定の値を無視できないということです。もともと経皮吸収はありましたね。要するにスポット測定の値が二次評価値を超えているので、詳細リスク評価に行きますよというのと同時に、また経皮吸収の報告もありますから、詳細リスクに行って経皮吸収の観点からの評価を行います。経皮吸収につきましてもワーキングで検討していまして、どういう測定をしようかということを検討していますので、今までワーキングで検討したことを、実際に詳細リスク評価に持っていったときに、その方法で検討してみて、その方法がいいかどうかということを検証することになっています。そして、まとまったら、先ほど定性的なものを定量的に持っていくという形になるかと思います。
 
[スライド30、31枚目]
 
実際にこの基本情報と有害性評価の結果の概要は、申し訳ありませんが省略します。
 
[スライド32枚目]
 
これはいいですね。二次評価、先ほど言いましたようにCeilingの値として0.3ppmを二次評価値に経皮吸収はあります。
 
[スライド33枚目]
 
実際のばく露実態調査の結果を見ていただけると、最大ばく露は実測値の0.12ppmでここが一番高かったです。でも、先ほどのようにスポット測定、作業環境もあります。スポット測定は最大値が1.2ppmです。この値を使いました。見ていただけると、スポット測定の値は二次評価値を超えています。でも、ばく露は低いですねという結果になっています。Ceilingの値を使用して評価をするは初めてなですけども、こういうスポット測定の値を使って詳細に持っていったという事例も初めてだと思います。
 
[スライド34枚目]
 
 ここにあるばく露評価結果のグラフにありますように、実際の二次評価値は0.3ですからばく露は低いのですけども、やはりスポット測定、要するに短時間ばく露を評価に用いましたということです。
 
[スライド35枚目]
 
 結果的には、取り扱っている事業において、個人ばく露の最大値は0.12ppm、二次評価値を下回っているのですが、スポット測定の最大値が1.202 ppm、これを上回っていることから詳細リスクが必要としてしまいます。
 ただ、実際に今回現場測定に行きましたときには、今話した様なCeilingの値を考えたスポット測定をあまり行っていませんでしたので、スポット測定の値をそれほど評価しておりませんでした。今度はなるべくスポット測定の数を増やしていって、その中で一番高い値を評価の対象と出来るような測定をしましょうということです。今までは意外と1回しか測定しておりませんで、B測定に近い値だったのですが、それを機会にスポット測定としてきちんと測定することになりました。
 スポットとしてB測定と違うのは何かというと、呼吸域のところでとろうという。B測定の場合は違いますね。呼吸域でとるのが一番いいのですけども、このスポット測定につきましては、呼吸域のところをなるべくとるようにして、できるだけ数多くとって、その中の最大値を評価に用いるという形になっている。
 あとは、経皮呼吸の勧告はなされています、その点についても検討はこれから必要です。
 
[スライド36枚目]
 
 では、次のしょう脳ですね、しょう脳につきましては、ここはACGIHのTLV-TWAの値がありますので、2 ppmというばく露限界値がありました。
 それから、8人の作業者につきましてばく露濃度測定をしました。ここもそうです、先ほど言いましたように、区間推定値ですね、区間推定値が13 ppmということで、経皮吸収はありませんから、要するにばく露だけで評価をすればいいということ形ですので、区間推定値が二次評価値を上回っていますので、詳細リスク評価に行って要因分析をして、測定して詳細リスク評価をしましょうという形になりました。
 
[スライド37、38及び39枚目]
 
  ここは先ほど言いましたように、基本情報と有害性評価の結果の概要は省略します。
 
[スライド40枚目]
 
 このばく露実態調査の結果を見ていただけるとわかりますけども、個人ばく露の最大値が実測の最大値で一番高かったところで、5.3ppmとなります。
 こうした中で一つあるのは、こういう5.3ppmという値を示す作業の重みですね、ここの作業の事業場には当然、詳細リスク評価に行っても測定するのですけども、もう一つは、このままにしておくとこの1つの作業のためにしょう脳を取り扱う全ての事業場に規制がかかってしまいますので、やはり、これに相当する製造業の方たちが健康措置検討会でしょう脳の規制について検討しているときに、うちの作業場の作業はこれだけばく露は低いので、この作業は規制から外してくださいということを議論して規制を検討します。先ほどのエチルベンゼンもそう、エチルベンゼンのときは、ここは塗装でしたけど、これガソリンスタンドでした。そのガソリンスタンドでのばく露濃度は二次評価値より著しく4桁、5桁低いところですということなので規制から除外しました。その検討はリスク評価検討会でやるんではなくて、健康措置検討会でやります。だから、健康措置検討会では業界が、うちのばく露はこれだけですので、この規制から外してくださいという議論を健康措置検討会でやります。
 
[スライド41枚目]
 
 実際見ていただけると、これ実際に2を超えているのはこのdの作業者の一つなのですね。dの作業場の人だけなのですが、やはり、ここは超えているので、やはり詳細リスクにいくということになります。要するにこの作業者に対して、もう一度現場を探して、この作業、ここだけの問題なのか、あるいは、ほかのところでも同じことが起こっているのかどうかという形で調べてもらうということになると思います。
 
[スライド42枚目]
 
 実際、しょう脳のところでは、取り扱っているばく露は最大値、区間推定値が13 ppmで、二次評価が2 ppmですので詳細リスクに行く必要がありますよ。
 あとは、非定常作業における特に高いスポットが認められる、これですね、非定常作業についても高いスポットが認められているので、やっぱりこういうところも先ほど言った測定のところのデータを見ながら、できるだけ同じことが反映できるかどうかということを詳細リスクの中で確認できる測定をしてくださいよというお願いをしています。
 
[スライド43枚目]
 
 このチウラムが最後になりますね。二次評価値が0.05ppmです。これはACGIHのTLV-TWAを二次評価として使っています。
 16人の作業者に対してのばく露濃度測定の結果、区間推定値が最大ばく露値の2.4mg/m3ということでした。当然、先ほどからも繰り返しお話ししましたように、二次評価値に比べて区間推定値のばく露最大値が高いので、当然、詳細リスク評価に行くということになります。
 
[スライド44、45枚目]
 
 ここの基本情報と有害性評価の結果の概要は省略します。申し訳ありません。
 
[スライド46枚目]
 
ここの有害性評価の結果(つづき)を見ていただけるとわかりますように、ACGIH のTLV-TWAが0.005です。これを使いまして二次評価値にしましたよということでございます。
 
[スライド47枚目]
 
 ばく露実態調査の結果を見ていただくと分かります様に、実際、有効作業者、15人に対して、最大ばく露は0.58 mg/m3ですね、さらに、区間推定値を求めると、2.4 mg/m3です。要するに、実際の作業者のばく露の値よりも区間推定値の2.4が二次評価値を超えているから詳細リスクへ行くということになります。
 こでもスポット測定はしていますし、ここは作業環境測定もしています。これらの値も参考にします。
 
[スライド48枚目]
 
 実際、ばく露評価結果のグラフを見ていただけるとわかりますけど、これで0.05ですから、もうこのe1の作業者から上全部、この集団は全部ばく露濃度が二次評価値を超えています。それに比べて区間推定をするともっと高いばく露をする人がいるということになるかと思います。
 
[スライド49枚目]
 
 チウラムにつきましては、最大ばく露が区間推定値の2.4 mg/m3で、二次評価値の0.05 mg/m3を超えていますので詳細で行きます。実際に、後で見ていただければ、ここに書いてありますけど、対象物質の小分けだとか、製剤の投入や取出し、秤量、包装などが二次評価値を上回った作業です。そういう作業工程は共通した問題かを実際の現場で詳細に分析するとともに、実態調査に行った作業以外に高いばく露の可能性のある作業を確認してくる必要があります。
 経皮吸収はありませんから、ばく露だけ評価すればいいということになるかと思います。
 このような流れで詳細リスク評価に行く物質についてだけ申し訳ありませんでしたけども、報告しました。
 あと、先ほどお話ししましたように、残り19日にやる物質につきましても、二次評価値とばく露を比べて見ると、皆さんも推測できるように、二次評価値を超えているものは詳細リスクに行って、二次評価値を超えていないものは初期リスクで終われるという結果が、委員会でも同じ結果が出てくると思います。
 ちょうど時間が来ましたので終了したいと思います。どうもありがとうございました。
(司会)
○司会 名古屋先生、御講演ありがとうございました。
 続きまして、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課の阿部中央労働衛生専門官に「がん原性指針対象物質の追加、変異原性試験の基準の一部改訂等について」御講演いただきます。よろしくお願いいたします。
《テーマ2:がん原性指針対象物質の追加》
○阿部中央労働衛生専門官 厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課、中央労働衛生専門官をやらせていただいています阿部と申します。よろしくお願いいたします。
 今回、大きく分けて二つのネタをやらせていただくんですが、その前に、すみません、御報告です。先ほど名古屋先生に御説明いただきましたばく露作業報告の告示のやつですね。本日、無事に官報が掲載されまして、ホームページに今載りました。本当にジャストナウな感じで載りましたので、後ほど、よろしければ御覧いただければと思います。
 
[スライド1枚目]
 
 そうしましたら、内容のほうを説明させていただきます。講演なんていうようなかた苦しいものじゃなくて、行政はこんなことをやっておりますよというのを御説明させていただくものだというふうに思っていただければと思います。率直に申し上げて、恐らく皆様のほうが個々の物質の性状も含めてお詳しいと思いますし、行政のほうで検討が足りていないところとか、お気づきの点とかもあるかと思います。ぜひそういったところについては、御質問の形でも何でも結構ですので、後でアンケート用紙のほうに記載いただくとか、直接当方までお話をいただくなど、ご検討いただければと思います。
 
[スライド2枚目]
 
 そうしましたら、まず一つ目、がん原性指針対象物質の追加のほうをお話しさせていただきます。スライドの2枚目、がん原性指針とは何か……ということで、ちなみに、このがん原性指針なるものを聞いたことがある、知ってるぜ、という方はどのぐらいいらっしゃるでしょうか。――ありがとうございます。思いのほか皆さん、御存じなんですね。自分のやっている仕事ですが、多分半分ぐらいの人というか、世の中の大半の人は知らないだろうなあと思っていたところがあるんですけれど、御承知おきいただいているというのは非常に光栄です。
 その指針の内容ですが、資料の方に書かせていただきましたとおり、「がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのある化学物質等で厚生労働大臣が定めるものを製造し、または取り扱う事業者が当該化学物質による労働者の健康障害を防止するための指針を公表する」と、こういう規定がございます。「がんその他の重度の健康障害」というところの中身については、今のところ、私が承知している限りではがんがメインだと思うんですけれども、こういうものが、労働安全衛生法第28条第3項というところで規定されているわけですね。もし興味を持っていただけるようでしたら、後で法令集などを御覧いただければと思うんですけれども。
 具体的な対象物質としては、まずは、スライドで(1)としている「国が実施した発がん性試験で動物への発がん性が認められた物質」というのが挙げられます。リスク評価検討会の傍聴にお越しいただいていたり、議事録を御覧になっていたりすると、何となくキーワードを聞いていたりとか、発言者がちらほら見かけられたりするかもしれませんが、厚生労働行政では、日本バイオアッセイ研究センターという動物実験をやる機関を整備していまして、現在そのセンターは独立行政法人に移管されておりますけれども、設立以来、長らく発がん性試験をやってきています。
 その長期発がん性試験の開始時期が昭和58年というふうになっていますけれども、こちら、遡ると、新規化学物質の届出の制度ができたとき、化学物質の有害性調査がキーワードとして出てきたことに端を発するものなんですね。私自身は、その頃まだ生まれていなかったので、何とも言いかねますし、皆様もさすがに昭和五十年代当時から、現役ばりばりで働いていらっしゃったという方ばかりではないでしょうから、そんな時代もあったんだな……くらいの御認識じゃないかと思うんですけれども。
 この有害性調査、新規化学物質の届出とかを御担当いただいている方がいらっしゃったらお分かりになるかと思うんですが、今、変異原性試験とかは試験機関さんに委託されているところが多いんじゃないかなと思うんですけれども、その制度設立当時、変異原性試験をやれる機関なんか国内にそうそうないというような話があったそうでして、その辺、日本国内でちゃんと化学物質の有害性調査等が円滑にできるようになるように国がいろいろ援助をするという規定が労働安全衛生法に盛り込まれました。そういった規定に基づいて、当時、昭和五十何年当時に、厚生労働省──当時は旧労働省ですね──のほうで、日本バイオアッセイ研究センターというのを設けて、しっかり化学物質の有害性調査に取り組んでいこうと。そういった流れになったそうです。
 この日本バイオアッセイ研究センター、昔は変異原性試験用の菌株を配ったりなんかして、精度の管理に関与していたなんて話を先日聞きまして、そうだったんだ……とちょっと勉強になったりもしたんですけど。ともあれ、そのセンターが稼働してから、長期の発がん性試験を昭和58年以降、順次やってきているわけです。その他、まだ具体的な試験結果があまり積み重なっていないところも多いですけれども、短期・中期の発がん性試験ですとか、あるいは遺伝子改変動物、ノックアウトマウスを使ったがん原性試験なんかも近年開始してきております。
 ともあれ、こうして発がん性試験を行った結果、発がん性が認められると有識者の方々から評価いただいたものについては、この法28条3項に基づく指針の対象として、行政として注意喚起を行っていこうと、そういうような取組ががん原性指針のおおまかな位置付けです。
 スライド中、(2)として「IARCの発がん性分類のグループ1~2Bに相当する」云々というところは、こういうものもあるんだな……というふうにご理解いただければと。また、さらにその下、※として「リスク評価の結果、特定化学物質障害予防規則等により発がん性の観点での規制がなされた場合は、当該規制の範囲については指針の対象から除外する」というところについては、がん原性指針にもともと入れていた物質でも、特化則で規制されたらその分を外しますということですね。
 この辺り、二重規制にならないよう、一方で規制の対象にしていたものを、もう一方で新たに規制の対象にするときには、元の規制から外していくとか、そういうことをいろいろやっていくと、だんだん文章全体が読みにくくなってきて、指針でも何を書いているのかわからなくなってくる部分があるかもしれませんが、現行の指針で「○○を除く」とか、特化則等とのデマケについて説明するペーパーがいろいろ出ていたりする部分は、そういう趣旨で書いているものですので、読みにくいなと思うところがございましたら、ぜひそういう視点で文章を見ていただければと思います。広く一般的には、まずは特化則等の規制を遵守していただきつつ、その範囲に含まれない部分については、がん原性指針に基づく措置を講じていただくと、そういった流れで適切に現場で化学物質管理をやってくださいという話に尽きるかと思いますが。
 
[スライド3枚目]
 
 すみません。冒頭、話が長くなりましたが、次のスライドです。
 これは、ちょっとPowerPointのパターン設定の影響で色が違うんですけど、先ほど名古屋先生に御説明いただいたペーパーのところにも書いてある図と内容は同じものです。がん原性指針は、右下にある赤枠で囲っている部分のことですね。このピラミッドの図自体は我々いろいろなところで使っておりますので、あるいは、これまでにもちらほら御覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、実はその中にもちゃんと書かれているんですよというご紹介です。
 
[スライド4枚目]
 
 次のページは、具体的に指針の中でどういった措置を求めているかということですね。正直なところ、あまり変わったことは書いていません。おおよそ、労働安全衛生行政が普段言っていることを並べて書いているだけなので、あまり変わった内容は含まれていないんですね。一応なぞりますと、作業環境管理や作業管理をやりましょうと。労働衛生教育や労働者の把握、ラベル表示・SDS交付をやりましょうと。よくある化学物質管理のパッケージだと思います。
 ただ、いま軽く飛ばして話をしましたが、保護具の使用とか、作業環境測定に関しては、ちょっと特別なことをやっていると言えるかもしれません。個々の物質ごとに、推奨する保護具とか作業環境測定の方法というのを別途お示しするような形をとっているんですね。これは、指針そのものに書いているというよりは、指針を公示したときに併せて、労働基準局長通知という形でまとめたものをお示ししているんですけれども。作業環境測定の方法については、法定の物質は採用するべき方法をそれぞれ規定することになっていますが、がん原性指針の対象物質についてはそのような位置付けのものがもともとあるわけではないので、こういった方法であれば、現に作業環境測定ができるはずですよというところを指針とは別途お示ししているわけですね。あるいは、保護具についても、例えば○○ゴム製のやつなら耐透過性が高いとか、そういったレベルの検討を国のほうで委託事業の形で実施しておりまして、その結果を周知させていただいていると。こういった情報を踏まえて、ぜひその現場で保護具の選定を行ってほしいと、そういう趣旨でお示ししているものでございます。
 
[スライド5枚目]
 
 こちらは現行の指針対象物質の一覧になります。最初の物質、四塩化炭素が平成3年ということなので、それこそ昭和の頃から長期発がん性試験を始めて、そこで発がん性ありとされたものを順次並べてきているといったところですね。時々、4物質についてまとめて指針にしたりですとか、山谷もあるように見えますが、ともあれ、平成3年8月の四塩化炭素以降、順次追加してきています。このスライドのページのタイトル、「1~13/38」というのは、全38物質中の1番目から13番目という意味で書いています。
 
[スライド6~7枚目]
 
 次が14番目から26番目で、最後に38番目まで並べております。リスク評価の対象物質と結構被っていますね。
 実はちょっとこの後、すみません、御説明というか、補足させていただかないといけない点もあるんですけど、ともあれ、こういう38物質を今まで指針の対象にしてきているということになります。
 
[スライド8枚目]
 
 それでは、今回、リスコミでがん原性指針を取り上げさせていただいた理由は何かということなんですが、二つ対象物質の追加をやろうというふうに考えているというのがきっかけです。実は今ちょうどパブコメをやっています。「労働安全衛生法第28条第3項の」で始まる「厚生労働大臣が定める化学物質」のような件名になっておりまして、ちょうど来週の週明け12月9日までを期限としてやらせていただいているところです。
 既に幾つか御意見をいただいていまして、実はその御指摘に関して、この後、補足説明をしなきゃいけないなと思っているんですけれども。
 今回の改正の中身を端的に申し上げますと、アクリル酸メチルとアクロレイン、この2物質について、日本バイオアッセイ研究センターでやっていた発がん性試験の結果、動物での発がん性が認められたということで、がん原性指針対象物質に追加するというものになります。このがん原性指針、法令上の構成がちょっとわかりにくいんですけど、指針にその物質の名前を書いているだけじゃなくて、まずは大臣が指針の対象にする物質を告示として定める形になっています。その告示には、対象とする物質の名前だけ並んで書いてありまして、措置の中身は全然何も書いていないんですね。それに対して、指針そのものは公示という形で官報掲載する部分があるんですが、これまた、わかりにくいんですけど、指針の中身自体を官報掲載するわけではないんです。官報に掲載するのは、指針を定めたということと、指針そのものは厚生労働省で閲覧に供するみたいな、そういう報告の文書だけなんですね。なので、指針の中身をご確認いただくためには、官報ではなく厚生労働省のホームページとかを見に来ていただく必要があるんですけれども、そういった形でやっている指針の中身に、この2物質を新規に追加するという話でございます。
 そのほかに、先ほどお示ししていた対象物質の一覧の一番最後のところ、平成28年にいくつか対象物質の追加をしていた中の一つ、「メタクリル酸2,3-エポキシプロピル」について手を加えることとしています。このメタクリル酸2,3-エポキシプロピル自体は、平成28年の改正のタイミングで告示にも加えていますし、指針の方にも反映していたわけなんですが、ただ、このとき、実は作業環境測定の方法とかが国のほうで検討が未了だったので、作業環境測定を講ずべき措置の内容から外すということをやっていました。今回、無事に作業環境測定の方法の検討が終わりましたので、メタクリル酸2,3-エポキシプロピルについて作業環境測定を指針で求める措置の対象に追加するという形です。
 スケジュールは下半分に記載のとおりです。具体的な内容は8月の措置検討会で検討いただいているので、関連の資料などについては、もしご興味を持っていただけるようでしたら、そちらを御覧いただければと思うんですけれども。今まさにパブリックコメントをやっている、ここに書いてありましたね、案件名が。「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める化学物質の一部を改正する件」と。この案件名だけだとピンと来ないかもしれませんが、パブコメの資料の中にある概要資料のほうには、本日ご説明させていただいたような改定のポイントが書いてありますので、もし御関心がございましたら御覧いただければと思います。
 
[スライド9~10枚目]
 
 次のページでは、今回新規に追加する物質その1、アクリル酸メチルはこんな物質ですというところを御紹介しております。
 10ページ目の右下に書いておりますように、ラット雌雄において腫瘍発生増加が認められた、というようなことが平成29年度第2回の有害性評価小検討会で御議論、御確認いただいておりまして、今回、追加に至ったという話です。平成29年度の検討会で……というとだいぶ気が長い話のように感じられるかもしれませんが、この検討会の時点では、結局、指針や通知でお示しする作業環境測定方法や保護具の中身の検討がまだなかなかできていない、具体的に書き込める材料がないということで、告示の改訂と指針の改正をセットでやるということを前提にすると、具体的な改定は今このタイミングということになっているわけですね。そういった意味では、今、リスク評価の検討会等を傍聴いただいている方とかは、結果が出るのは2年後、3年後ぐらいになるのかな……と思ってみていただくといいのかもしれません。
 
[スライド11~12枚目]
 
 こちらはもう一つの新規追加対象物質であるアクロレインです。構成としては先ほどのアクリル酸メチルと同じですね。ラット雌雄及びマウス雌において腫瘍発生増加が認められたと。
 
[スライド13枚目]
 
 次が各物質についての作業環境測定の方法です。こちらは8月の措置検討会のほうで御確認いただいている資料そのままなんですが。例えば、アクリル酸メチルについては球状活性炭捕集でいけますよと。その場合の定量下限はこれぐらいまで出せるでしょうというような話をまとめています。ですが、ちょっとアクロレインについては、測定方法の中身の検討はほぼほぼ完了しているという状況なんですけれども、捕集法のところに記載しているカートリッジが特定のメーカーさんに特注で作ってもらったものになっているんですね。リスク評価の検討の段階では別にそれでも問題ないわけですが、がん原性指針で求める措置の対象に、特注品による測定を入れるというのも微妙だなあというのもありまして、ここは今回は検討中ということにしてありまして、作業環境測定自体、がん原性指針のアクロレインの措置の対象には含めない想定になっています。
 3つ目のメタクリル酸2,3-エポキシプロピルなんですけれども、実はここが、先ほど申し上げたパブコメでご指摘いただいているものになります。この資料の上では、産衛学会・ACGIHとも濃度設定は「なし」としているんですが、実はこれ、産衛学会の方で、直近でメタクリル酸2,3-エポキシプロピルの許容濃度を出されているんです。という話をパブコメでご指摘いただきまして、現在、その点をどう反映するか考えているところになります。この資料を載せた後で、実はさっき名古屋先生に御説明いただいていた中にもメタクリル酸2,3-エポキシプロピルがありまして、そこに二次評価値がちらっと書いてあることに気付いたりもしたんですけど、ともあれ、すみません、こちらについては、そういったステータスであるという点、補足させていただきます。
 具体的には、ちょうど今月半ばに次の措置検討会の開催予定がありますので、その中とかで訂正の御説明はさせていただくかもしれません。具体的には、許容濃度として0.01 ppmという値が勧告されています。そうすると、この定量下限0.0069 ppmだと、作業環境評価基準に基づく評価ってどこまでできるのという話が出てくることになります。この点、現在内部で検討しているところでして、例えば採気量2Lじゃなくて、もうちょっと長くとれば定量下限がクリアできるじゃないかとか、その辺を詰めているところです。
 先ほどのがん原性指針の対象物質の中にも、もともと許容濃度とかが何も出ていない物質がございまして、そういう子たちについてどういうふうにやっているかというと、作業環境測定自体は措置の内容には入れると。ただし、作業環境評価基準に準じた測定結果の評価までは含めない、というような書き方をしていたりします。なので、メタクリル酸2,3-エポキシプロピルについても、そこに入れることになるのか、それとも測定のところをちょっと工夫して、許容濃度の0.01 ppmというのを参考にした評価をお願いするという形をとるのか。そのあたり準備が間に合えば次の措置検で御相談させていただければなと。
 
[スライド14枚目]
 
 使用すべき保護具については、3物質ともお示しする予定です。アクリル酸メチル、アクロレイン、メタクリル酸2,3-エポキシプロピル、それぞれについて防毒マスクとか、あるいは保護衣、保護手袋の材質ですね。基本的にはクラス6のものを推奨するのかなと思っていますけれども。あとは、保護メガネの書き方ですね。ゴーグル型とか、スペクタクル型とか、あるいは蒸気からの保護が必要な場合には適切な除毒能力を有する全面形面体の呼吸用保護具みたいなところとかを今お出ししているところでございます。
 
[スライド15枚目]
 
 以上、がん原性指針の対象物質追加と、メタクリル酸2,3-エポキシプロピルについては測定の追加というところを検討しているというのが私のネタの一つ目でございます。
《テーマ3:変異原性試験の実施に係る基準の見直し》
[スライド1枚目]
 
もう一個の御説明をさせていただきたいのですが、こちらに関して、もしかしたら、本日いらっしゃっている方の中に、変異原性試験とかを受託されている試験機関の方がいらっしゃったりしますか? ──いらっしゃったりは……されなさそうですね。
すみません。正直こちらのネタはマニアック過ぎて、技術的に深いところまでご説明できるかどうかの自信がないんですよね。ただ、リスク評価検討会の中の有害性評価小検討会の一部として、遺伝毒性評価ワーキンググループというのがありまして、そちらで今年の9月にご検討いただいた結果の概要を御説明するというものでございます。もしも、新規化学物質の届出とかの御担当をされていたことがある方がいらっしゃいましたら、うちの化学物質評価室のほうで受付などさせていただいているケースがあるかもしれませんけれども、そのときに提出していただいている変異原性試験のお話です。
 
[スライド2枚目]
 
これも多分皆さんにとってはおさらいに近いと思うんですが、スライド中の紫の枠のところ、労働安全衛生法第57条の4第1項で、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の定める基準に従って有害性の調査を行っていただいた上で、その結果を厚生労働大臣に届けなければならない、という規定がございます。いわゆる安衛法の新規化学物質の届出ですね。実際には、ただしこれこれこういう場合を除く、みたいな規定が幾つかありまして、いわゆる少量新規とか、昔の高分子化合物の場合の例外とかがあったわけなんですけれども、今回の話はあくまで新規化学物質の届出そのもののお話です。
この法律の「厚生労働省令で定めるところ」というところの具体的な中身を書いているのが、スライド中の緑の枠のところ、労働安全衛生規則第34条の3でございまして、変異原性試験、化学物質のがん原性に関し、変異原性試験と同等以上の知見を得ることのできる試験、またはがん原性試験と。この3つの試験種類が規定されています。
もう一個、組織、設備等に関し、有害性の調査を適正に行うため、必要な技術的基礎を有すると認められる試験施設等において行うことと。いわゆる安衛法GLPの試験機関でやっていただく必要がございますよというのが労働安全衛生規則で規定されています。
一方で、安衛法57条の4の規定に戻っていただくと、厚生労働大臣の定める基準に従って有害性の調査を行ってくださいとなっています。この「厚生労働大臣の定める基準」って何なんだということなんですけれども、その具体的な中身がスライド中の青の枠のところにある告示となっています。多分、安衛法の化学物質関係を御担当されている方でも、この告示を見たことがある人はあまり居ないんじゃないかなと思うんですけれども、実はこういうものがあるんですね。
こちらの告示に関しては、薄い青の枠内にあるような通知・事務連絡が出されています。この通知の具体的な内容は今回はちょっと省略させていただいて、もし御関心があれば後で御覧いただければと思うんですけれども。この告示の中で、変異原性試験以外の種類の試験については労働基準局長が定める、のような書き方になっているんですが、変異原性試験については結構細かい点まで規定されていたりする、というのが今回のご説明の背景にあります。つまり、変異原性試験に関しては、この昭和63年の告示が今も生きていて、それに基づいて、より詳細な試験の手法、具体的なやり方について通知・事務連絡でお示ししているということになります。
 
[スライド3枚目]
 
他のところでも使っているこのピラミッドの図で言うと、今回話題にしている有害性調査は一番下のところですね。
 
[スライド4枚目]
 
さて、変異原性試験の実施に関して、実は、事業者の方々から届け出ていただいた試験結果について、我々から有識者の方々にその結果を審査していただいて評価いただくという枠組がございます。
その結果に基づいて、これこれこういうところに注意してくださいとか、ここを改善してくださいみたいな通知をお返しする、みたいなアプローチでやらせていただいているんですけれども。……ちなみに、すみません、新規化学物質の届出とかをされていて、変異原性試験の結果に対する化学物質対策課長名の通知とかを受け取ったことのある方とかはいらっしゃいますか? ……さすがに居ないですかね……。……ああ、いらっしゃった。すみません、御面倒をおかけしております。
この通知でお知らせする内容については、対象の物質を取り扱う際のばく露防止とかに関するものもあるんですけど、実際には結構試験の方法に関するマニアックな指摘が多いんです。変異原性試験の方法のここがおかしいとか、この方法だと試験結果のこれこれの部分の評価が正確にできない、みたいな指摘を有識者の方からいただいて、その内容を届出事業者の方にお伝えするようなケースが結構あるんですね。一方で、そうして有識者の方からご指摘をいただくものの中には、本来、個別の試験結果について逐次改善を求めるのではなくて、厚生労働省のほうからしっかり考え方を整理してお示しするべきだろう、と思われるような共通の課題がございまして、ちょっといろいろたまっていたネタがあったものですから、今年の9月にまとめて有識者の方々にお諮りしたのでした。
 
[スライド5枚目]
 
細かいところはちょっと飛ばしますけれども、実は先ほど御紹介しました実施の基準、大臣告示の中で、試験に使用するプレート数についての項目がありまして、2枚以上使用することというのが規定されています。他方で、本試験を2回実施する場合には用量設定時のプレート数は1枚でもよいとする取り扱いがOECDガイドラインに準拠するものとして認められているというようなお話がございまして、これが現行の告示上は引っかかることになる、というのが一つのポイントです。
スライド中の青の枠内に記載しておりますように、そもそも現行の大臣告示では、変異原性試験はまず用量設定の試験をやって、次に本試験を行うという構成になっています。用量設定試験って、もともと用量を設定するためだけにやるもののはずなので、本来、2枚やらなきゃいけないとかのプレートの枚数に関する取り決めって要らないんじゃないのという発想は確かに言われてみればあるかなと思うんですけれども、昭和50年代当時以降、制度をつくってきた過程において、何らか経緯があったのだろうとは思うんですが、ともあれ、用量設定試験と本試験、それぞれ2枚以上実施することというような取扱いが告示で規定されていたわけです。
そこで、先ほど申し上げた『いや、別に用量設定って1枚でもいいじゃない』というような御指摘とか、そういったところを踏まえて、今回、有識者の方々にお諮りした結果、これは告示を改定するべきであろうというような結論が得られたというのがこのページの上半分のお話です。
 
このページの下半分では、プレインキュベーション法とプレート法というのが二つ書いてありますが、どっちかというとプレインキュベーション法のほうがいいよというのが今回出た結論です。
実は、届け出ていただいた試験結果の中で、プレート法のみで陰性と判定しているケースがたまにありまして、これはプレインキュベーションもしっかりやらないと結論は出ないだろうというような指摘を有識者の方から結構いただくケースがあったのでした。その辺り、プレインキュベーション法でないと正確な判断ができないような物質の条件って何かあるんですかとか、そういうご相談をさせていただいたんですが、これといった条件を厳密に設定するのは難しいと。だけれども、少なくとも、どのような物質でもプレインキュベーションを採用した方が望ましいというのは言えることなので、そのベースで考え方をお示ししようという結論になっているとの理解です。
 
[スライド6枚目]
 
このページの上半分で記載しているS9については──といっても、私も自分で取り扱ったことがないので、具体的にどのようなものなのかは正直分かっていないんですけれども──、陽性対照物質を試験において使わなきゃいけないというような規定があるんですね。で、その陽性対照物質として、2-アミノアントラセンという物質が使われていると。そういったケースについて、2-アミノアントラセン一つではだめで、他の物質も併用する必要がありますよ、といった指摘をいただくことが結構ありまして、そこのところの取扱いをどうしようかとご相談したわけです。結論としては、ここに書きましたように、S9が十分に信頼性のあるものでない場合には、ほかの物質も併用することが望ましかろうと。また、S9の使用期限のような話もありまして、製造後6カ月以内のもの……でなければならないとまでは言わないんだけれども、そのくらいを目安として考えるといいねという結論が一応出ています。
 
このページの下半分、被験物質の純度換算というのは、どうしても純度が高くない物質で試験をするときが出てきますので、そういう場合はどうするのかという話なんですけど、一応今、厚生労働省のホームページのほうにもQ&Aということで、こういう考え方で純度換算をやっていただきたいということを書いているものがあります。ただ、あまり文書としてまとまったものになっていないので、そこをもうちょっとしっかり整理して、明確にしましょうと。根拠文書をつくりましょうというような方向性になっています。
 
[スライド7枚目]
 
その他、細々としたところを書いてございますけれども、このあたりについては、届出の御担当とかには場合によっては影響があるかもしれませんが、今までの運用からそこまで変わるようなものではないと考えています。これまでも、個別の届出について、担当ベースで、ここをこういうふうに修正してほしい、とかお願いしていたものを整理して、改めてまとまった文書として厚生労働省のほうから関係有識者の方々に通知という形で考え方をお示ししようとしているものでございます。
例えば報告書の年の表記について西暦に統一するとか、そのレベルの事務的な点もありますので、場合によっては影響があるかもしれませんが、そうなんだなというふうに思っていただいて、なるべく御協力いただければという方向性かなと思っておるところでございます。
 
[スライド8枚目]
 
こんな話題は毎度の化学物質のリスク評価とはだいぶ毛色が違う話なんですけれども、リスク評価検討会という枠組みの中ではこういった議論もしていますので、世の中いろんなことがあるんだなということを一つ御紹介させていただきました。可能であれば話のネタとして持ち帰っていただければなと思っているところでございます。
私のほうから以上です。
(休憩)
○司会 ありがとうございました。
 それでは、ここで15分間の休憩とさせていただきます。後半の意見交換会は14時50分から開始する予定でございます。
 お手元のピンクのアンケートに御質問などを、遅くとも14時45分までに御記入いただき、会場におります事務局員へお渡しいただくか、事務局員が回収に参りますので、挙手にてお伝えください。どうぞよろしくお願いいたします。
《意見交換会》
○司会 それでは、後半の意見交換会を始めさせていただきます。
コーディネーターは、先ほど御紹介いたしました東京理科大学の堀口先生にお願いしております。また、パネリストに基調講演を行っていただきました早稲田大学の名古屋先生と厚生労働省の阿部中央労働衛生専門官に御出席をいただいております。
予定では、16時ごろまで、4時ごろまで、あらかじめ会場からいただきました御質問について、先生方から御回答いただきたいと思います。
それでは、堀口先生、よろしくお願いいたします。
○堀口先生 皆さん、こんにちは。先ほど、次の御紹介もありましたが、また、名古屋先生から、あり方検討会についての情報提供もあったんですけど、ちょっと赤と青の紙を皆さん持っておられるので、あり方検討会、これまで傍聴された御経験のある方は赤、まだ行ったことがないという方は青を挙げてもらってよろしいでしょうか。お願いします。
赤の方、結構、いらっしゃいますね。ありがとうございます。
 普段、ここ数年、厚労省の方と委員の先生とでやってきましたが、残り2回は企業の方にも御登壇願う、平成22年の最初のような形になるみたいなので、皆さん、もしよろしければ御参加ください。
 それでは、今日フロアからいただきました質問から始めたいと思います。
 
 まず、初期リスク評価について、リスク評価とされた物質については、その取り扱いについて法的に留意する点はないとの理解でよいでしょうか。
○名古屋先生 初期リスクで終わった物質については法的な措置はないのですけど、ただ、報告書の中に、本物質は、ラベル表示などの義務対象物質ですよとか、発がん性が疑われる物質ですとかの情報と併せて、一応、濃度が設定されているので、その濃度を参考にしながら自主的な管理、リスク低減措置を講ずる必要のあることが報告書に記載されているので、その記載事項を参考にきちんと管理してくださいとなっています。法律的なものはありません。
○堀口先生 ばく露評価の手順に組み込まれているのだと思いますが、実際の分布が正規分布になっていないようなものでも区間推定するのは実態を正しく把握できないのではないでしょうか。
○名古屋先生 区間推定値を求める場合は、測定結果が対数正規分布しているかどうかを見て、対数正規分布してなかったらそれは評価に用いません。対数正規分布をしないケースは、濃度の高いグループのところと濃度の低いグループのところが別れているケースで、そうすると不連続になってしまうので、対数正規分布をしていないことが多いです。それからもう一つは定量下限以下の値については、ガイドラインで評価に入れないことになっています。
 一応、出てきたデータについては、きちんと検討会で議論していていますし、区間推定に関しては、ガイドラインで求め方及び判断方法が決まっていますので、それに従って、きちんとした統計的な処理手順にのっとってやっていますので大丈夫です。
○堀口先生 あと、個人ばく露測定データから区間推定値へ換算する方法と、その意味は何でしょうか。スポット測定値の場合はどうなるのでしょうか。スポット測定値と区間推定値の差はどのぐらいで、どの程度でしょうか。
○名古屋先生 区間推定値を決める理由というのは、先ほどお話ししましたように、実際にばく露濃度を測定したデータだけで判断すると、もしかすると測定しなかった作業者の中に、本当は高いばく露濃度にばく露している可能性のある作業者を見逃してしまうおそれがありますので、それは怖いですので、一応、見逃さないために区間推定をしています。
 二次評価値にACGIHの勧告値が用いられた現行のリスク評価の場合、スポット測定はあくまでもリスク評価を行う時の参考でして、要するにA測定、B測定という形の中のB測定に相当するもので、確かに一日ずっと作業していると、瞬間的に高い濃度の作業がったとしても、それが、要するにばく露測定のように測定時間が長いと、短時間ばく露の高い濃度を見逃してしまうケースが考えられます。つまり、ばく露は低いのだけれどスポットが高いというケースです。そうしたスポットの高い部分があったら、そのスポットも状況によって、考慮しましょうということです。例えば屋外のタンクローリーの積込み作業なんかを風下で作業をするともの物すごく高いばく露濃度になります。それはちょっと外しましょうという形で、一応、短時間ばく露の高い濃度についても、評価するときの参考値にはするのですけど、それによって評価を変えるということはないです。
 今回の様に二次評価値にCeilingを用いた場合は、化学物質のリスク評価検討会である委員が、ACGIHのceilingや日本産業衛生学会が言っている最大許容濃度、これはいずれも必ずしも急性影響を予防するという意味ではなくて、やはり慢性の影響を予防するためのものなのです。だから、平均値はそれより低いけれども、ばらつきの大きい値がこの濃度を超えると慢性の影響も起こり得るという意見を述べられ、それを受けて、ceilingのある物質を評価するときには通常のばく露測定に加えて、スポット測定を行う。要するに慢性とか急性とかにするのではなくて、慢性の影響を予防すると言うことから、急性の影響を評価するために、通常より多めにスポット測定を行うということについて、今、議論をしているところです。繰り返しになりますが、結論が出ているわけではありませんけど、ceilingのある物質を評価する場合については従来の測定法にプラスアルファとしてスポット測定のデータを使って、それを評価の参考にしましょう。じゃあ、どうするか。これから実際に事業場等で測定を行った結果が出てきます、それらの結果を踏まえて再度議論しましょうということになっています。
○堀口先生 あと、TLV-Ceilingとはどういう意味ですか。
○阿部中央労働衛生専門官 微妙なところですが、一旦、私の方から。最近、たまたま──いや、たまたまというか、さっきお話もありましたように、TLV-Ceilingの取り扱いに関してリスク評価検討会の中で話題になっている部分がございまして、先ほどから名古屋先生の御説明を横で伺いながら、ちょこちょこ画面の方に関係の資料をお出ししていたので、もしよろしければこちらを見ていただければと思っているのですが。
 リスク評価の取組に関しては、リスク評価実施要領ですとか、ばく露評価ガイドラインというのが根拠のドキュメントになっています。前者のリスク評価の実施要領が平成18年、後者のばく露評価のガイドラインが平成21年に作られたものですね。ただ、それが策定以来ずっと手つかずで、初版のままやってきていた結果、最近改めて見返しますと、若干現状に合ってない部分があったというのがありました。そのため、検討会委員の方々の御指摘も踏まえながら、今、改定の検討を事務局の方でやらせていただいています。
 今、御質問いただいた点については、基本的にこの辺りのドキュメントに書かれている内容でして、例えばさっきの区間推定ってどうするんでしたっけ、とかの話はばく露評価ガイドラインの方に載っています。改定も含む最新の検討状況については、今年度の第2回化学物質のリスク評価検討会の資料に関連のドキュメント諸々を載っけていたり、その下の位置付けでやっているばく露評価小検討会のうち、先日開催させていただいた本年度第3回の中で、ばく露評価ガイドラインの改定の検討を行った際に使った資料とかを載せておりますので、そちらをご覧いただければと思います。
 区間推定の話は、ばく露評価ガイドラインの中で、最大値の推定についていろいろ書いている箇所がありますので、この辺を見ていただくと、多分、御質問に対する細かい御回答になるのかなと思って見ておりました。
 それと最後のTLV-Ceilingとは何ですか、というところなんですけど、これも今ご紹介した実施要領等の改定の検討のお話の中でどこかで話が出ていたと思うんですけど、Ceilingは、いついかなる場合も超えてはならない値ということになっています。
 ACGIHが勧告しているTLVには大きく分けて3つの種類がありまして、普段TLV-TWAといっているものは、通常8時間TWAの話だということなんです。それからSTELというのがあって、それが15分TWA。15分間その濃度でばく露し続けたらアウトみたいな感じですね。そして最後にCeilingというのがあって、これはいついかなる場合も超えてはいけない値とされています。
 いついかなる場合も超えてはならないということなので、担当者的には、急性ばく露の話なのかなと漠然と思っていたら、そうじゃないよという話を御指摘いただいたというのが先の検討会での議論でして、先ほどの名古屋先生の中でも触れていただいていたのは、そういう御趣旨だと理解しております。
 こんな感じの御回答でよろしいでしょうか。
○堀口先生 あと、いろんな許容濃度がありますが、それぞれの特徴はという。
○阿部中央労働衛生専門官 質問を先取りしちゃいましたかね。今ご説明させていただいたようなことらしいですよ。
○堀口先生 追加調査はどのように行われるのでしょうか。
○名古屋先生 詳細リスク評価に行って、追加調査をするときには、有害物ばく露報告書が提出されていますので、その報告書の中で、先ほど言いましたように、初期リスクのときもそうなのですけど、事前調査に行って、こういう測定をしますから測定させてくれますかということを事業場にお願いするのです。
 実際80ぐらいの事業場から報告書があっても、その中から実際に測定候補の事業場に連絡を取って、測定の概要説明に伺っても良いかと問い合わせると、15カ所ぐらい良い返事を頂いて、実際に測定の概要説明に伺うと、実際に測定させてもらうという事業場は、大体、4社か5社ぐらいで、ほとんど測定をさせてもらえないというのが実態なので、そういうときに、詳細リスクの測定に行くので、どうしても、事業場側では、やはりこの測定によって、これから規制がかかってしまいますからという言い方で、心良く測定を受けて頂けません。この事業を委託されているところが、初期リスクの事業場にお願いして測定するか、できるだけ初期リスクと同じ作業のあるところをばく露報告書のあった事業場から見つけて、丁寧に説明して測定をさせていただくという形になります。
 それともう一つ、1社だけ物すごく高いばく露があって、その影響を受けて詳細リスクに行くような事例がありますので、そういう事例について、やはりほかの事業場も当たらないと、その1社だけに規制をかけていいのか。
 逆に言うと、要因分析すると、1社だけの作業でしたら、ほかのところの事業場には規制をかけずに、その作業だけにかければいいということになるから、その辺の規制のところは、リスク評価検討会のところではなく、健康措置検討会に持っていって検討していただくことになっています。
○堀口先生 ありがとうございます。
 名古屋先生、Ceiling値で評価した2物質の説明がありましたが、これまではこのような物質はなかったのでしょうか。
○名古屋先生 Ceilingだけで評価した物質はなかったと思います。
 今回、初めてACGIHのTLV-TWAがなくて、Ceilingしかなかったので、Ceilingで評価しましょうというのが、この2物質だったので、これが初めてです。ガイドラインを平成21年に委員会で作成したときには、発がん物質が主体で、ceilingのある物質がリスク評価の対象になるような、そんな状況にはありませんでした。今回初めてでしたので、Ceilingをどう取り扱うかという議論をしたときに、今、説明があったような、新しくガイドラインが変わりましたので、それについては、そこを見ていただけるとありがたいです。これから実際に測定を行ってみて、やっぱりその評価法が合っているかどうかということ形の結果を見ながら確定していきたいというのが今の、段階です。
○堀口先生 ありがとうございます。
 それでは、個別の評価なのですが、メタクリル酸メチルの場合、二次評価値2 ppm、産業衛生学会の値ですね、がACGIH、DFGと比較して特質的に低い値になっています。この妥当性についての見解をお伺いしたいということです。
○名古屋先生 私のところはばく露評価小検討会なのです。これは有害性評価小検討会で扱う事項ですので、ちょっと、申し訳ありませんが、私、答えられません。
○阿部中央労働衛生専門官 実はメタクリル酸メチルだけじゃなくて、次やる予定の1-ブロモプロパンについても、業界の方からは御意見いただいております。
 そういう場合の考え方についてなんですけれども、そのメタクリル酸メチルの初期リスク評価の案として本年度第1回のリスク評価検討会の資料としてお出ししていたものを、今、画面の方に映しました。スクリーンや画面を頑張って見ていただかなくても、もしお手元にPCをお持ちとかだったら、Webに掲載している検討会資料の方をご覧いただければと思うんですが。該当の部分については、とりあえず注記をつけています。「本物質の関係業界から、本評価において二次評価値の根拠として採用した日本産業衛生学会の許容濃度について、ACGIH(中略)の方がより適当であるとの意見がある」というような記述をしている箇所ですね。
 ここの考え方なんですけれども、有害性評価小検討会での御議論については議事録も載せておりますので、よろしければ、その辺の細々としたところを御覧いただければと思うんですが。ベースとしては、初期リスク評価なので、基本的には行政指導のベースなんですね。
 いかに事業者さんの方で意識をもってやっていただくかというような自主的な努力の範囲になるのかなと思っておるんです。このメタクリル酸メチルに関しては、ある意味、ばく露実態調査の結果の方を見ながらやっていたというのが正直あると思うんですが、仮にACGIHとかの50 ppmを採るとしても、実際の現場の測定結果は、さっき名古屋先生の方からお話しいただきましたけれども、個人ばく露の値が最大で120 ppmというところがあったんですね。これが果たして、2 ppmに対する120 ppmなのか、ACGIHとかの50 ppmに対する120 ppmなのかというのは、印象としては違いはあるとは思うんですけれども。でも、今までのやり方からいくと、初期リスク評価でばく露レベルが二次評価値を超えていたら、とりあえず詳細へ進みましょうというやり方を採ってきていることを鑑みますと、最大ばく露の値の方が大きいのは確かだと言えるよねと。詳細リスク評価のプロセスで2 ppmを基準にとるのか、それとも50 ppmの方が妥当なのか、これは議論がまだ残るかもしれないですけど、それはそれとして、一旦、詳細でいくことは間違いなかろうもんという。そういうところで、ある意味、議論は持ち越しているという理解です。 なので、例えば先ほど名古屋先生の方から、長年、リスク評価の取組について面倒を見ていただいている中で、二次評価値が管理濃度になっていくことが事実上多いという、これは傾向としてはそうだと思うんですけれども、本件に関しては、最終的にこの産衛の2 ppmという値を基準として採用していくことの妥当性も含めて再検討ということにはなるのかなと思います。
 ただ、役所の担当者の率直な印象からすると、やっぱりこの180 ppmというばく露は流石にひどいよねという方向に、印象としては引きずられると思います。
この物質に限らないんですけど、業界の方からすると、許容濃度とかTLV-TWAとかで設定されている値の根拠が、他の機関から提案されている値と比べて微妙だよねと、そう感じられる部分はあるのかもしれません。でも、現場に行ったらばく露の実態はすごかったですよ、どっちが妥当とかというレベルじゃなく飛び越えてますよという話になると、厚生労働省としてはどうしても引きずられざるを得ないと思うんですね。ばく露の濃度低減といったときに、どこまで下げるんだという議論はあると思いますが、少なくとも改善は必要だよねという議論のトラックには、これは載ってしまうので。ですので、これは、業界さんの方と会話させていただく中で、個人的に申し上げている点なんですが、産衛学会の許容濃度とかACGIHのTLVとかの値の設定のところで争うのではなくて、是非、我々がばく露実態調査に行っても空振りするような現場の管理を進めていただくべきですよと。例えば、有害性があって揮発性が高い物質だということで、これは高濃度ばく露があるんじゃないかと現場に調べに行ったら、実際には現場がきれいに管理されていてばく露濃度は全然高い値が出ませんでした、みたいな。そうすると、結果的にリスクは低いという評価結果になりますので、是非、その方向で努力いただけると、最初から労働者の方々も有害物にばく露しないで済むし、事業者さんとしても規制強化につながらないで済むし、Win-Winでいいんじゃないかなと私なんかは思っています。
○堀口先生 名古屋先生、つけ加えることがありますか。
○名古屋先生 いや、ないです。
○堀口先生 メタクリル酸メチル、同じような、同じようなというか、皆さん感じていらっしゃることは同じなんだと思うんですけれども、ACGIHの50 ppmを二次評価値と考えると、ばく露評価結果のうち、B2、120 ppmの作業のみがオーバーしています。要因解析として、特定事業場の問題と考えることが可能と思いますが、二次評価値が2 ppmだと結論が大きく変化する。この差をどのように考えるのかの御見解を伺いたいということです。
○名古屋先生 なかなか難しいのですけども、先ほど言いましたように、これから詳細リスクに行ったときに、例えばb2の人と同じようなラインの作業をしているところがあるかどうか。仮に、この作業と同じ様な作業があって、測定したら同じような結果が出てきたら、やっぱりそこのところをどう取り扱うかを議論する必要がありますが、それはリスク評価検討会で議論する議題ではなく、申し訳ありませんが、健康措置検討会で扱うことになります。
 それと、もう一つは、仮に二次評価値が50ppmになった時でも、b2の作業は二次評価値を超えているので、詳細リスクから健康措置検討会に行きます。その時、b2以外の作業は、低いとして、リスク評価から外すかどうかと、この議論はリスク評価検討会でやるのではなくて健康措置検討会で行います。リスク評価検討会は、あくまでも決められた二次評価値に対して、リスク評価を行い、今回の場合のように詳細リスクに送ることを決めるだけです。二次評価値の値及びその影響については、健康措置検討会にいって、そこで検討する事項です。私も健康措置検討会の委員ですので、その検討会で意見を述べますが、現状では詳細リスクの測定結果もそろっていないので、今ここで述べることは控えさせてもらいます。
 例えば、リフラクトリーセラミックなんか、本来的には製造業だけに対して測定していて、ばく露濃度が二次評価値より高い結果があったので、詳細リスクを経て健康措置検討会まで行きました。実際に健康措置検討会で検討してみると、短期ですけども、解体だとか、改修作業で作業者がすごく高い濃度にばく露していることが明らかになり、実際に測定した製造業以外の解体・改修などの作業が規制対象になりました。
 ということで、健康措置検討会では、逆に言うと、リスク評価を行わなかったその物質についても、実際に測定を追加していって規制をかけることがあります。また、健康措置検討会では、著しくばく露の低い作業を規制から除外することなどの検討も行います。つまり、健康措置検討会では、詳細リスクの結果報告を基に検討を行った結果、特化物にすることが妥当であると判断されると、特化物としての必要な措置である作業環境測定、作業主任者の選定、局所排気装置の設置、特殊検診などの実施の義務付けなどをきめることになります。
○堀口先生 メタクリル酸メチルの詳細リスク評価について、二次評価値を上回ると考えられる作業は、2 ppmを超える作業が対象でしょうか。それともB2の顕著な作業だけが対象でしょうか。
 仮定の話になりますが、詳細リスクの結果が自主的対策の実施指導と判定された場合、その二次評価値は2 ppmでしょうか。それとも50 ppmで判断するのでしょうか。
○名古屋先生 それはなかなか難しくて、二次評価値を決めるのは有害性評価小検討会ですので、リスク評価検討会で二次評価値について議論することはありません。二次評価値を議論するとしたら、詳細リスク評価を経て、健康措置検討会に行って、現在の2ppmの二次評価値を管理濃度にするかどうかを検討する時だと思います。今、ここでちょっと答えるのはちょっと難しい。
○堀口先生 状況ではないと。
○名古屋先生 ないと思います。
○堀口先生 メタクリル酸メチルで、洗浄云々の作業とありますが、もっと詳細に作業の内容わかる表現を採用できませんでしょうか。
○阿部中央労働衛生専門官 どういう区分……といいますか、作業の分類にするの適当なのかというのがもしあれば、逆に、御提案といいますか、御提言といいますか、していただけるといいかなと思うんですけど。ここにお越しいただいている皆さんには、多分、何を言っているかというのは通じると思うのでやや専門用語を交えて申し上げますけど、「有機溶剤業務」というのを有機則で定義しているじゃないですか。あの定義のレベル感も、多分、見る人によっては、大概ばくっとしているというふうになると思うんですよ。でも、おそらく有機則の有機溶剤業務の定義って、通常の法令の書きぶりからすると、結構細かく書いている方だと思うんです。「洗浄」とかの業務について一つ一つ列挙しているわけですから。
 ここで一旦、メタクリル酸メチルの例に戻って、特にばく露が高かったb2の方に関して言うと、メタクリル酸メチルを使った「MMA洗浄作業」となっていますけど、要は洗浄作業をやっていたということなんですね。そこで、二次評価値を上回ると考えられる作業として書いているのが、「洗浄、溶剤、希釈・溶媒としての使用、他製剤の製造等」の作業ということになっておるんですけれども。ここの書き方については、もともとばく露作業報告のときに、どういう作業をやっているかということで記入いただく欄の区分をベースにしているんです。いま、画面の方に有害物ばく露作業報告のパンフレットを出力しますので……見えますかね? もしよろしければ、後で見ていただければと思いますが。
 印刷の作業、書き落とし、剥離または改修の作業云々の中に、洗浄、払拭の作業みたいな表現が並んでいます。特化則で1,2-ジクロロプロパンとかも洗浄という言い方をしていますけど、大体、このぐらいが法令に落とし込むときのラインなのかなと、素朴な印象としては思います。
 それをさらに、いや、これこれの作業なんです、という作業の限定をどこまでできるんだろうと考えると、例えば対象物まで洗浄作業の定義の中に入れるかというのは、結構、厳しい気がします。その対象物の定義がまた難しいですし。クリアに一言で定義できる表現があればいいんですけど、あまり具体的な作業に限定しすぎると、かえって最終的には例示列挙にしかならないとかいうことになって、ますます何だかよくわからないということになるんじゃないかなというおそれがある気はします。担当者としては、そういうことが懸念としてあるなという趣旨で考えているので、今、案文を準備しているメタクリル酸メチルの初期リスク評価書の中では、まだちょっと精査できていないところがあるので、いろいろ変更は入るかもしれませんが、これよりもさらに細かく作業を限定して書くというのは厳しいかなと。今回頂いた御意見が、もしそこを細かく書くべきだという御趣旨であれば、ぜひ、これこれこういう作業というのを言っていただけるとありがたいです。
 ただ、b2の人の作業、この中身がよくわからないということだとすると、すみません、ばく露評価のときには、個々の事業場さんのお話は非公開で、オープンにはできないという前提でやらせていただいていまして、評価書の方もばくっと書いているので、あまり具体的な作業内容を言えない部分は御了解いただきたいと、そういう話かなという気がします。
○名古屋先生 実際、これが我々のリスク評価検討会に出てくる前に、要するに委託元のところのばく露委員会でもちゃんとワーキングがあって、その委員会で表現を全部書いていて、その委員の先生方がどういう作業かは一応わかっていて、この表現でつけ加える部分はつけ加えようということを行った結果の報告書が、ばく露濃度小検討会に上がってきて、小検討会でさらに修正を加えた報告書がリスク評価検討会に上がってきます。リスク評価検討会で検討している時は、一応、担当者が来ていますから、「これ、どういう作業」って聞いて、「ああ、そういう作業なのか。だったら、この表現でいいね」という形で、修正等はおこないます。あまりだらだら書けないので、一応、決まりがあって、ここよりはもう少し詳しいのですけども、報告書として書くときにはもう少し省略された形のものが出てくるということになります。一応、それぞれの委員会の段階で、きちんとした議論はして、記載しています。
○堀口先生 ありがとうございます。
 先ほどからのまとめというか、御意見ですが、メタクリル酸メチルは汎用性の高いものまであり、広く多様な取り扱いがあると思われます。ACGIHが50 ppmを示している中で、多くの現場では、それを基に化学物質RAをしていると思う。ここで2 ppmが規制として入ってきた場合、現場の影響が大きいですと。ACGIH、50 ppmとの差や、現実的な2 ppmばく露管理の方策を示す必要があるのではないでしょうかという御意見になります。それから。
先生、どうぞ。
○名古屋先生 今、管理濃度委員会がなくなりまして化学物質の健康障害防止措置に係わる検討会、さっきから話に出てくる健康措置検討会に統合されました。昔の管理濃度委員会というのは、ACGIHと産業衛生学会のどちらかの濃度が変更されたとき、管理濃度の変更を検討していました。検討に際しての決め事がありまして、ACGIHと産業衛生学会の濃度のいずれかの濃度を採用するということです。さらに、平成26年管理濃度の変更の検討基準に、最新の情報も加味することという事項が加わりました。
 以前の管理濃度の変更の時には、従来に設定された管理濃度の変更でしたので、現在検討している物質の作業環境測定結果を日本作業環境測定協会から取り寄せて、現場に多大なる迷惑が掛からないように、検討結果に反映させていましたが、現在は、リスク評価対象物質の管理濃度を決めるので、当然、現場のデータがありませんから、現場を考慮した判断は難しいかもしれません。しかし、原稿の健康措置検討会では、リスク評価の結果に応じていろんな皆さんの現場の話を聞いて管理濃度の決定に反映できるようになっています。
 それは、従来の管理濃度の変更のときに比べると、昔はえいやともう決めていましたが、現在は皆さんの意見を聞く機会を設け、委員会で現場の状況を説明していただくとともに、意見交換を行います。それから、そうした意見等を参考にして、きちんとどちらが妥当かという議論にはなるので、その分だけ時代は進んでいているし、よくなっているのかなと思います。昔は、医学的見地と測定技術の検討も行っていたのですが、現在のような公開でない時代は、外から見ると、もう力仕事で、低い濃度を何も議論なくすっと決めていたと思われる時代がずっと続いていましたということです。
○堀口先生 ありがとうございます。
 スチレンやアクリル酸メチルなど、ポリマー原料となっている場合、ポリマーで使用する場合、残留モノマーの裾切り値などはあるのでしょうか。
○阿部中央労働衛生専門官 裾切り値という考え方は、残留モノマーの考え方かというとちょっと微妙な気がするんですけれども。特化則とか、がん原性指針とかも全般にそうなんですが、概ね重量濃度で1%というのを規定としては設定しています。
 ただ、当然のことながら、ここで指定している物質はあくまで単量体としてのものなので、例えばアクリル酸メチルにしても、ポリマーになっているものは、そもそもアクリル酸メチルなのかという話になります。ポリマーになってたらそれはもはやアクリル酸メチルじゃないですよね。なので、残留モノマーという表現ではないですけれども、当該物質について、裾切り値が1%なら1%、そこに含まれているのであれば該当するという話になると思います。
 というところを残留モノマーのところに当てはめて考えると、恐らく読み方としては、ポリマーの中に重量濃度で1%超えるモノマーが残留していたら、それは当該物に含まれるということになる、考え方としてはそういうことになるのかなと。
○堀口先生 アクロレインに関して。製薬会社にて原料試験を行っていますが、ある原料の確認試験において、アクロレインのにおいの確認を行うことがあり、直接、においを確認、行わなければなりません。ほとんど濃度がないとは思いますが、その場合に注意しないといけないことなどがあれば、御教示お願いします、とのことです。
○阿部中央労働衛生専門官 すみません、逆に、においを嗅ぐ作業というのがあるんだというのを存じませんでした。
 前提として、特化則もそうですし、有機則もそうなんですけれども、基本的に有害物へのばく露の防止という考え方でやっていますけれども、何かの理由で一時的ににおいを嗅ぐ試験をやらなきゃいけないとして、そういうケースでも常にガスマスクしてなきゃいけないとか、そこまで求めるわけじゃないわけです。
 ただ、もしそれが、例えば一定の濃度を超えるガスを吸ったら直ちにぶち倒れるおそれがあるとか、そういうような有害性の高いものの場合は、例えば事前に何らかの試験──試験なのか、検知する何がしかの措置を行って安全性を確保してくださいということを恐らく申し上げるんじゃないかなという気がするんですけれども。においの閾値は──多くの物質ではかなり微小な量でもにおいは感じられるようになっているんじゃないかと思うんですが、その閾値は超えているけれど、人体に影響が出るおそれがあるような許容濃度やTWA、STELの値──各物質の許容濃度等は資料に載っていますので、そちらを御覧いただければと思うんですが──そういったところを踏まえながら、ちょっとにおいを嗅ぐ分には、まあ、大丈夫でしょうという範囲で実施されているものなのであれば、その試験の方法そのものを否定するとか、そういうことにはならないんじゃないかなと思います。
 繰り返しになりますけど、においをちょっと嗅ぐのが必要な作業だということであれば、それはそれでやっていただくと。ただし、安全性をどう確保するかという観点で、それで何某か、例えば急性障害を負うおそれがあるような濃度のばく露が出てくるおそれがあるとかということであれば、そういったことが起こらないように事前に危険をフィルタリングしていただくとか、そういうことは必要なのかもしれません。
○堀口先生 ありがとうございます。
 それで、がん原性指針対象物質の追加について、アクロレインの作業環境測定の方法などの検討終了はいつごろの見込みでしょうか。今後のスケジュールを御教示ください。
 あと、資料2の13ページに記載された方法に確定する確率はどの程度でしょうか。
 多分、同じような質問です。アクロレインとメタクリル酸の測定方法の決定はいつごろになる見込みですかというお尋ねがありました。
○阿部中央労働衛生専門官 まず、がん原性指針に関しては、作業環境測定の方法というふうにご説明していますけれども、いわゆる作業環境測定基準──告示ですね──告示レベルでこれでやってくださいというのをがちっと決めているものではないです、ということを念のため申し上げておこうかと思います。
 作業環境測定をやってくださいというところまでは指針上で求めている措置なんですけれども、具体的にどの方法をとるかというところまでは決めていないと。というか、そもそも作業環境測定基準だって、「液体捕集方法」とかぐらいしか書いてないですからね。実際の測定において、どこのメーカーの何という器具を使えばいいのかとかというところまでは、正直、どこにも書いていないと思うんです。
 じゃあ、何でがん原性指針では国でわざわざ作業環境測定の方法とかをお示ししているのかということなんですが、知られている選択肢が一個もないのに、どこかしらでできるんじゃないか、というスタンスでとりあえず測定をやってくれというのはさすがに無責任だろうという考え方で、とりあえず一つは可能な方法があるよとお示ししているという理解です。なので、いろいろ調べていくと、もっと効率的でいい方法がありますよということなら、それはそれで、そちらの方法を使っていただければいいんじゃないかなと思います。現実的に求められるのは、これと同等以上の分析ができればよいという話にしかならないかと。
 ということを念頭になのですけれども。アクロレインについては、本年度、委託事業の方で検討を続けてもらっていまして、多分、これでいけるんじゃないかなという方法が開発できているという話は聞いています。
 ただ、この資料に記載しているSilicaカートリッジがどうやら委託事業での特注品ということでして、これが特注品のまま、要はそのメーカーに特注でお願いしないと測定機器が用意できませんみたいな、そういう状態のままで方法として示すのは問題かなと。これが解消されてくれば、何か指針の改定のタイミングにでも反映させるんでしょうというふうに思います。
 スケジュール感については、そういった意味で確約はできないんですが、今年度の委託事業の成果が今年度末にまとまって出てきます。そのときにどういう報告をいただけるかによって、引き続きもうちょっと検討しましょうかであれば、多分、さらに1年後になるでしょうし、いや、もうこれでいけそうですというような報告がまとまって出てくれば、じゃあ、次、やりましょうかねということを、ひょっとしたら検討するかもしれません。
 差し当たりは、すみませんが、スケジュールががっちり固まっているものではないということ、それから、この方法でないとだめという意味で作業環境測定の方法をお示ししているというものではないというところを念頭に御勘案いただければいいのかなといます。
○堀口先生 ありがとうございます。
 がん原性指針対象物質と、担当当局が実施しNITEから公表されているGHS分類結果とはどのような関係にありますか。
○阿部中央労働衛生専門官 すみません、全く関係しないわけではないですが、直接リンクしているものではないです。どういうことかといいますと、これは本当に事務的な話なんですけど、GHS分類の見直しというのを毎年やっています。化学物質対策課の中でも別のラインで担当しているんですが、実際には、GHS分類の見直しをやるに当たって、キャパシティ的にできる物質数がある程度限られるので、毎年、今年はどの物質をやろうかということを検討しながらリストアップしていっています。今回、がん原性指針の対象物質が決まって、指針を改定できましたということになれば──一応、順調にいけば今年度中にできる予定なのですが──ですね、恐らくその情報を来年度のGHS分類の見直しの中で反映していくということになるんじゃないかなと思います。
 ということは、それが実際に分類内容に反映されて、例えば職場のあんぜんサイトとかに掲載されるのはいつですかというと、早くて来年度の後半とかですかね……というのがスケジュール感でしょうか。いろんな事情でそのとおりにいくかというのがお約束できないところはあるのかなと思いますが。
○堀口先生 それで、厚労省の職場の安全サイトにおけるがん原性に係る新対象物質の提示では34物質のみ記載されていて、平成28年3月31日に追加された4物質が記載されていないので、今回の2物質を含め、早急に記載をお願いしたいというなのが二人御指摘いただいております。
○阿部中央労働衛生専門官 大変申し訳ございませんでした。ご指摘の箇所は、実は今、ちょうど掲載手続をやっています。それは追加物質だけじゃなくて、今回、私の方でがん原性指針の改定をやることになって、過去の情報を振り返ってみたんですが、だいぶ前に改定されていたものも含めて載っていなかったんですよね、情報がね。本当にすみません。それに気付いたので、実は、がん原性指針の最新の情報とかがあまりちゃんと載ってなかった部分について、ついこの間、厚労省のホームページの方は平成28年の改定までの情報を整理したものを一式掲載しました。
 その時に、職場のあんぜんサイトの方にもがん原性指針そのものの情報について掲載の依頼をかけているんですが、ちょっと掲載内容が複雑になっていまして、ここの通知の何を引用するとか、掲載内容についてやりとりしているんですけど。ちょっと作業が遅れていまして、恐らくひと月以内には載ると思うんですが、まだ反映できていません。あと、職場のあんぜんサイトについては、がん原性試験の実施結果も載せているんですけれども、こちらについても、アクリル酸メチルとアクロレインの試験の結果を追加で載せています。そば屋の出前ですみませんが、実は、今、やっています、ということで御勘弁いただけるとありがたいです。
○堀口先生 あと、特化則とがん原性指針の関係性について、もう少し詳しく知りたいです。
 リスク評価の結果、特化則の規制がなされても、がん原性指針に残る物質(特化則でカバーされないがん原性指針の規制)というのは、どういう部分なのでしょうか。
○阿部中央労働衛生専門官 がん原性指針についてそんなに御質問いただくと思っていませんでした。手持ちで用意は一応してはいたんですけど──今お話しした厚労省ホームページのがん原性指針のページにちょうど関連資料を載せているので、そこのページで御紹介します。
 画面の方にも出力しましたが、現行の指針が、「現行版」という一番上に載っているやつです。その中に、指針全体に関する留意事項というのがあります。これは通達ベースです。その別紙1として、がん原性指針と各規則との関係という資料がありまして、例えば有機溶剤の関係であればこれこれだとか、ほかの物質についてはこれこれだとか書いてあります。
 例えば、有機則の場合は、有機則の方で5%という裾切り値が設定されている一方で、がん原性指針は1%であるというところがあるわけです。なので、5%を超える部分は有機則の世界ですと。5%は超えないけれど1%は超えている、ここはがん原性指針の範囲ですというような考え方になるわけです。
 それから、業務の種類としては、有機溶剤業務かどうかですね。有機則の方は有機溶剤業務ということで対象の業務を決めておりますので、それ以外の業務で有機溶剤に該当するがん原性指針対象物質を使っている場合には、5%かどうか関係なく、がん原性指針の世界ですよと、こういうような意味合いの整理になっております。
 ほかの物質の考え方も同様ですね。作業の別で見たときに、それぞれ特化則で決めている範囲ってどこだっけという話と、特化則であれば1%超というのが裾切り値としてあるよね、ということを合わせて考えていただいた上で、それ以外の作業であって1%超の範囲はがん原性指針の対象です、みたいな読み方をしていただければよいかなと。ほかの特別有機溶剤業務とかも、何かいろいろややこしく書いていますけれども、基本的な考え方は同様です。
 そんな感じでよろしいでしょうかね。
○堀口先生 がん原性試験の結果の記録と労働者の把握は、指針改正前の情報収集も必要ですか。がん原性結果の経過。
○阿部中央労働衛生専門官 措置の内容の話ですかね。このご質問を実際に書いていただいた方、この会場にいらっしゃるわけですよね。もし何か、回答の趣旨が違うぞと思ったら、突っ込み入れてください。
 具体的な指針の内容を見ながらの方がいいのかな。ちょっと古いんですけど、平成28年のときはパンフレットを出してなかったようなので、平成26年の改定のときのパンフレットベースでいきますかね。
 いま画面に出しましたが、考え方としては、8ページの辺り、「労働者の把握」として、対象物質等を製造または取り扱う業務に、常時、従事する労働者について、1カ月を超えない期間ごとに次の事項を記録してくださいとか、それをさらに30年間保存するよう努めてくださいというような書き方をしています。
 過去の情報をどこまで遡って収集する必要があるかというと、そもそもこれ自体が指針ですので、実施するように努めていただきたいというのが基本的な御解答だと思います。
 一方で、現実的には、数十年前というようなレベル感の過去の情報になると、遡って把握し切れない部分も出てくるとは思いますので、調べてみてわかる範囲があれば、その分だけでもとっておいてもらうということだと思います。
 今、全く関係ない仕事をしている労働者の方々へのヒアリングをどこまでやるのか……みたいなこととかもあるとは思うんですが、これは大変申し訳ないんですけれども、これが指針であるということを踏まえて、自主的な取組としてどこまでやれるのかという世界の中で御検討いただく範囲の話かなと思います。
 これは労働者側の視点というよりは使用者側の視点からの御説明になりますけれども、当然のことながら、後々、労働者の方に健康影響が出たという話があった場合、各事業者さんの方にも責任が問われる可能性があるわけです。そういったことも考慮しながら、ある意味、事業者さんの御自身のリスクの管理という観点から確保できる範囲の情報をしっかり持っておく。考え方としては、そういったことも考慮いただきながら、把握できるものはしておいていただくというのが望ましいのかなと思います。
○堀口先生 ありがとうございます
 がん原性試験の話ですが、多分、グループ3区分では対象になりますが、そうなると対象物質がもっと多いのではないでしょうか。それらもがん原性試験を行いますか。その選定の基準はどのようになっているのでしょうか。
○阿部中央労働衛生専門官 がん原性指針の話ですか、試験の話ですか。
○堀口先生 「試験」と書いてあります。試験を行いますかと。
○阿部中央労働衛生専門官 もしあれでしたら、皆さんに目をつぶっていただいた上で質問を出していただいた方に手を挙げていただくという手も考えるんですが……これ試験の話ですかね、指針の話ですかね。がん原性試験というのは長期の吸入試験とかの対象物質の話なんですが……。
 どなたか、実際、書かれた方が会場にいらっしゃると思うので、挙手いただかなくても、一言「試験だ」とか、もしくは「指針だ」と言っていただくだけでもいいんですが……どっちかによって、結構、回答内容が違ってくるんですけど。
 書いた方は……あれ、いらっしゃらない。
 じゃあ、とりあえず、試験と指針の話、両方しますので、ちょっと道がそれるかもしれないですけど、御勘弁くださいね。
 まず、がん原性試験の対象の物質の選定の仕方です。
 長期吸入の試験とかの想定の話かなと思うんですけれども、さっきの資料2の、国が実施した発がん性試験で動物への発がん性が認められた物質というところですね。
 この長期発がん性試験の対象物質、どうやって選んでいっているんですかということに関しては、実はこれ本当にややこしいんですけど。いちばん昔の四塩化炭素とかを選んでいた時代は、広く使われている度合いと既存の情報等からみて、特に怪しそうなものを専門家の方々の見識で選んでいただいていたようです。
 私もちょっとこの昭和の最後のころとかの試験物質を選んでいるときの考え方は、正直、プロフェッショナルに選んでいただいていたという以上のことは把握できていません。一方で、最近は、予め化学物質のリスク評価検討会などの枠組で、製造・輸入量や有害性情報、他の試験の成績等の条件で候補物質をリストアップした中から優先順位を付けて物質を選んでいくというアプローチをとっています。「職場における化学物質のリスク評価」のページというのがあるので、もしよろしければ、後でそちらを見ていただければと思うんですけど。
 まず、リスク評価に係る企画検討会というのをやっています。発がん性試験に関しては、企画検討会の中では、中期発がん性試験の候補物質を選ぶということをしています。この企画検討会で選んでもらった候補物質の中から、具体的にどれをやりますかというのを、発がん性評価ワーキングで選定するというプロセスを経てきています。中期発がんはこれで選んでいます。
 なので、どういう物質を引っ張ってきているかというところに関しては、その企画検討会の方の資料とかを御覧いただくといいと思うんですけれども。おおまかに言うと、例えば変異原性試験や形質転換試験を国の委託事業でやっているんですが、それでひっかかったものとかを候補のリストに入れた上で、製造・輸入量とかの情報を照らし合わせたりしながら、だんだんフィルタリングして絞り込んできていますというのが中期です。
 長期の試験も同様に、それまでのスクリーニング試験の結果とかを踏まえながら候補物質のリストを作っていまして、有害性評価小検討会で対象物質の選定をやってきています。この物質ならいけそうだとか、やる意味がありそうだとか、というところを見ていただいたりしています。あとは、実際に試験をやっていただく日本バイオアッセイ研究センターとかの知見ですね。試薬が買えそうかどうかとか。これ、怪しいよねといっても、どこでも試薬を買えませんみたいな物質が結構あるらしいんです。それこそ何週間も連続して試験物質を投与しなきゃいけないんで、試薬が結構必要らしいんですが、その試薬がなかなか大量に買えないと。そうすると当然試験ができないということになりますので、それが制約になったりはしています。……というのが、長期とか中期とかの「がん原性試験」の対象物質の選定についてのご説明です。
 もう1個の、「がん原性指針」の対象についてのお話ですが。国が実施した長期発がん性試験で陽性が出たもの以外に、発がん性グループ1~2Bに相当すると専門家が判断した物質とかを指針の対象にしてきていますので、そこに絡めてのお話なのかもわかりませんが、グループ3──これはIARCのグループ3の話だというふうに理解した上でのお話ですが──それをどう取り扱うかということなんですけれども。
 IARCのグループ3に関しては、その中から選ぶということはしていません。リスク評価の対象とする物質を選ぶ際に、IARCはグループ3といっていても、別の枠組みで、例えば化審法のスクリーニング評価とかで発がん性区分がついているような場合に、結果としてそういうものをひっかけることはありますが、IARCのグループ3の中から敢えて何かの対象物質を選ぶということは、今の枠組みではおそらく無いです、という御回答になるかと思います。
 その辺を踏まえつつ、じゃあ、がん原性指針の対象にするものは端的に言うと何なのか……という話だとすると、先ほどいろいろ申し上げたがん原性試験の中でひっかかったやつを順次指針に入れていく、という話になろうかなと。何か狙って指針に入れていくというよりは、スクリーニング試験で出てきた結果、これは発がん性があるんだということになれば、じゃあ、指針の対象にも入れなきゃねというような感じかなと思います。
そんな感じでいいでしょうか、どうでしょうか。
○堀口先生 ありがとうございます。
 何かあれば、後半、よろしくお願いします。
 それで、変異原性試験についての質問があります。プレート数はOECDのガイドラインと同じになったのか。
○阿部中央労働衛生専門官 ネタとしては用意していましたが、まさか質問を頂くとは思っていませんでした。マニアックな方がいらっしゃるんですね。せっかく来たんだから質問しちゃおうかなということですかね。
 ちょっと表現に微妙なところがあるかもしれませんが、私の理解について御説明させていただくと、OECDのテストガイドライン上は、そもそも試験のプレートの枚数は3連──3枚組と言ってもいいですかね──とするのがデフォルトだとされています。それに対して、科学的に妥当な理由がある場合には2枚組でよいということになっています。
 その2枚で構わない場合として、実務的に……というか、慣用的に認められている例の一つが、2枚の試験を2回やっている場合だというふうに伺っています。
 なので、ガイドラインに一言一句合わせるとしたら、3枚というのを原則に書いた上で、2枚でもいいよ、こういう場合はね、という書き方になる。それが、本来のガイドライン──本来のというか、オリジナルのOECDのガイドラインにがっちり合わせようとした場合の形になると思うんですけれども、事実上、3枚で出てきているケースというのは、あまり無いんじゃなかろうかと。現行の告示の規定もあって、2枚・2枚の試験で届出を出していただいていることが一般的である中、3枚を原則とするというところまで告示で縛るべきというようなご意見は専門家の方からも出ませんでしたので、今回検討している告示改定の方向性も、厳密にOECDのガイドラインの文面そのものに合わせたわけではない。ただし、国際的に、学術的に認められている運用で問題がないとされているものを、素直に受け入れられるようにするということで、今回、ある意味、規制の緩和という形をとっているという話なのかなと思います。
○堀口先生 変異原性試験の実施に係る基準の見直しで、7ページに、「テスト菌株の前培養に当たっては、それ以上増殖しないようにする」と記載されていますけれども、これは室温放置ではなく、水冷、氷冷等が必要ということでしょうか。
 以前、培養終了後、氷冷すると菌に悪影響があると伺った記憶があるのですが、そんな心配はナンセンスですか。
○阿部中央労働衛生専門官 本当にマニアックな方がいらっしゃるんですね。そもそも今の質問の意味が伝わった方ってどのくらいいらっしゃいますか? ほぼゼロ。――ですよね。
 すみません、率直に申し上げますと、私自身も試験の手法自体についてはちょっとよくわからないところがあるので申し訳ないんですが。細かい書き方とかは、今後、通達の検討をさせていただく中で、こういう書き方で本当にいいのか、誤解がないのかというところは詰めていかなきゃいけないなと思っています。
 今、御指摘の点は、恐らくこの「培養を止めるのみならず、それ以上増殖しないようにする」という表現だけでは曖昧だと、そういうことかなと思いますが、他にもこういう課題が実はあるんだけど……というのがありましたら、よろしければ、ぜひこの点以外も含めて、通知でこれだけ書かれてもちょっと困るんだけどとか、ぜひ御指摘いただければと思います。
 というところを前提になんですけれども。すみません、今の『冷凍したらどうなんだ』とかのご懸念については、私、技術的に把握しておりませんので、後でちょっと専門家の人に確認してみようと思います。
 もし御連絡先をいただければ、その方に御質問の回答をさせていただくようにしますし、あるいは、こんな御質問をいただきましたが、御回答はこんな感じですというのをどこかに載せるとか、何かのやり方でお伝えできないか考えたいと思います。
○堀口先生 フロア終わってから、お名刺を渡してください。お願いします。
 それで、まだあるんです。すみません。変異原性試験の試験種について、エームズ試験で陰性、染色体異常で陽性であったような物質で、小核試験、in vivoを実施することに意味はありますか。その他の遺伝毒性試験種についても、コメントがあれば、お願いいたします。
○阿部中央労働衛生専門官 私自身の試験手法に対する理解度のレベル感は、先のご説明で大体、御理解いただいたと思うので、今ご指摘の点についても、あまりこの場でコメントできる知見は持ち合わせがないんですけど。
 これは私自身は素人の話で、かつ具体的な施策に直接関係するような話じゃなく、科研費とかで行われている研究とかの話なんですが。毒性試験の意味について議論をしていくと、そもそも変異原性試験だけでいいのか、最後はやっぱりがん原性試験みたいなのを何かしらやらなければいけないんじゃないのという話に、多分、行き着いちゃうんですよね。施策上は、それを全部やっていただくというのは厳しいので、どこまでやれば良しとできるのかという、その線引きが難しいんだろうなと思っていまして。今のご質問とは逆の視点からだと、例えばin silico──いわゆるQSAR、構造活性相関とかの結果も採用できないのかとか、こういう分野に関してはいろいろ議論があるんだろうと思います。
 それでは労働安全衛生法上どうするのかということに関してなんですけれども。今の時点では、具体的に試験の種類をどうするべきかというような検討は、私が承知している限り動いておりません。結局、事業者さんに届出を義務づける、そのときに試験をやっていただくという形になっているので、制度の話をすると、いや、そこまでやってもらうんですか、やってもらった結果、どうするんですかという話に当然なるんですよね。
 なので、毒性試験としては、現時点でいろいろな課題があることは承知しているんですけれども、制度、枠組みの話としてどうしていくのかといったところについては、まだ具体的に検討していく事項はないというのが正直なところです。
 今回、遺伝毒性評価ワーキンググループでこの変異原性試験の手法を取り上げたというのは、純粋に、変異原性試験の届出で現に出てきているものに対する先生方からの怒涛の突っ込みがあって、その突っ込みをどう受け止めるかという観点でやっていますので、すみません、本質的にもうちょっとここを検討した方がいいんじゃないのというのがありましたら、ぜひ、後で御意見いただければ。
○堀口先生 どうぞ。
○参加者1 今の質問を書いた住化分析センターの中澤と申します。
 質問の意図は、化審法の判定にどういう影響があるか。小核試験の結果が反映されるのか、全くされないのか。化審法だけじゃなくて、事業者としては、化審法だけではなく、その試験データをもって、REACHとか、ほかの国の新規の申請もしたいわけで、そのときにAmes陰性で染色体陽性だった物質の、そのさらに小核のデータがあることに、判定が変わるかというところを確認したいです。
○阿部中央労働衛生専門官 それだと制度的な話なので、役人でもある程度回答できるんですけど、そもそも化審法とリンクはしていませんので、結論としては特に影響はないということになるかと思います。
○堀口先生 よろしいですか。
 今後、REACHや他国のリスク評価の結果を労働安全衛生法に反映させていくという方針はありますか。
○阿部中央労働衛生専門官 今の、もう一度、お願いしていいですか。
○堀口先生 今後、REACHや、ほかの国ですね、他国のリスク評価の結果を労働安全衛生法に反映させていくという方針はありますか。
○阿部中央労働衛生専門官 ちょっと確認させていただきたかったのが、REACHとかでどこまでかというのは、ほかの国ということですよね。
 端的に申し上げると、労働安全衛生法自体が国内法なので、条約レベルで何か別の枠組が決められるようなことがあれば、どうなるかはちょっとわからないですという話だと、まずは思います。条約に加盟するとなると、国際法的に国内法よりも条約が優先されるということになりますので。そういう話が出てくるようなことがあれば、労働安全衛生法も、当然、それに対応させていくということになるでしょうと思います。
 ただ、そういう条約がある云々という話は、私、あまり聞いたことないので、とりあえず労働安全衛生法自体は国内法の世界で検討していくものだという世界観のもとで申し上げますけれども。他国の、もしくは他の学術機関とかが設定しているものを、直ちに、何の検討もせずそのまま取り入れるということは、国内法上あり得ないと思います、事実上。特に労働安全衛生法は罰則規定がついている、刑事罰がつく法令なので、いわゆる罪刑法定主義に反することになりかねませんし。
 そういったこともあって、法制上の話として、ご質問のような形は恐らくないと思います。
 じゃあ、リスク評価とか、もしくは何か別の枠組での検討に際して、それを参照する形にすることができるのかなというと、例えばREACHのリスク評価の結果とかが、他国での検討の成果がJISとかに何らかの形で取り入れられました、とかという話になるとすると、行政機関は御承知のとおりJISを参照することは基本的に求められることになっていますので、そういうところまでもってくれば、間接的には他国での知見を参照する形になると言えるのかもしれません。
 でも、通常、そもそもJISを導入する時点で──導入というか、策定する時点で、他国のものをそのままということはないですよね。ほぼ間違いなく、ローカライズしているわけです。
 それは、産業界さんとかの御意向とかも踏まえながら、各主務省庁と各業界さん、有識者の方々の御意見を合わせながらやってきているという理解ですので、それはつまり、REACHの内容そのままのものが出てきますということは恐らくないでしょうと実務的に推測できるわけです。あくまでこれは推測ですが。……という、そういういろいろな前提を考慮すると、REACHなり他国なりの結果が、そのまま何のプロセスも経ずに国内法に取り込まれるということは、ほぼ事実上ないんじゃないかなと担当的には思います。これは、あくまで通常の役人が通常の法制の考え方とかをベースとして推測できる範囲としては、そういうことぐらいまでは申し上げられるのかなというぐらいですかね。
○堀口先生 ありがとうございます。
 新規化学物質の届け出について、化審法と安衛法を統合できないだろうか。
○阿部中央労働衛生専門官 貴重な御意見として承って、担当者に伝えておきます。
○堀口先生 あと、化学物質管理の体系、ピラミッドの図があったと思うんですけれど、それにおいて化学物質評価室の担当されている部分はどこになりますか。
○阿部中央労働衛生専門官 そんなのを知ってどうされるんですかね。いや、まあ、お話できる範囲でするのは構いませんけれども。
 どこまでやっているかなんですけど、結構、組織の中って流動的です。そのときに、その担当者が何をどこまでできるかとか、諸般の事情で来られなくなっちゃった人がいたりしたらどうするのかとか、そういうことを考慮しながら、実務的に誰が何を担当するかというのは、その場その場で結構所掌替えがあったりしますので、大まかな傾向の話と御理解ください。
 今、私の方で担当させていただいている範囲に限らず、化学物質評価室という組織の中でやっている部分に関しては、まずピラミッドの図の左下の「新規化学物質の届出」は、評価室でやっています。その右に並んでいる変異原性試験の結果を踏まえた「ばく露低減措置の指導」とか、「健康障害防止指針による指導」──これががん原性指針ですね、この辺も評価室です。
 「新規化学物質の届出」の上、「届出の際、強い変異原性が確認された物質」──これはいわゆる変異原性指針ですね、これも評価室でやっています。「許容濃度が勧告された物質」から「動物での発がん性が確認された物質等」というところに矢印が書かれているのは、ここはあれですね、動物試験をやるところ、この辺も化学物質評価室の所掌です。
 その左上、「有害物ばく露作業報告」もそうですね。初期、詳細、措置の検討──措置の検討がちょっと微妙なんですけど、とりあえず「国のリスク評価」の点線の範囲までは基本的に評価室でやっています。
 具体的に規制を義務づける話とか、措置の検討というところになると、ちょっと複数の課、室にまたがるところがありまして、例えば健康診断の内容──特殊健診ですね──であれば労働衛生課でやっています。今だと産業保健支援室だったかな──違うかもしれませんが──でやっています。
 先ほどちょっと話が出ました管理濃度については、「管理濃度等検討会」というのが昔ありまして、その管理濃度等検討会をやっていたのが環境改善室というところになります。その環境改善室で濃度関係とか作業環境測定の方法とかの検討をやっていますので、このピラミッドの図で行くと、「措置の検討」の中でも作業環境測定関係は環境改善室で恐らくやることになります。──本当にこんなローカルネタでいいんですかね。一応、説明続けますけど。
 実はちょっと枠組みが微妙なところがあるのが、ラベルとかSDSの義務対象物質の検討でして、これは実は化学物質評価室と化学物質対策課本課の共管みたいなところがあります。ラベル・SDSの制度自体を持っている化学物質対策課本課の担当官と、リスク評価担当の化学物質評価室で協働しながらやっているみたいな──でも、どっちかというとラベル・SDS担当者の方が重いかなみたいな──そんな感じでやっています。私自身は辞令上化学物質評価室所属になってないんですけどね。そんな感じです。
 今申し上げた、大体、この辺のもろもろの話を化学物質評価室という組織で一応やっていることになっているんですけど、化学物質評価室の中にも、大きく分けると、リスク評価の関係と、変異原性試験とか届出系のものと、大きく2つのラインがあって、大体、そこが連携したりしなかったりしながら仕事しているという感じですね。
○堀口先生 ありがとうございます。
 その他の化学物質の管理についての御質問なんですけど、最近、ナノマテリアルを使用した化学製品の取り扱いが増加する傾向にあります。
 そこで、質問なのですが、1、水にナノマテリアル(多層カーボンナノチューブを数%分散させた製品)は「ナノマテリアルの労働現場におけるばく露防止等の対策について」に示される指針の対象となりますか。
 対象となる場合、SDSなどにおいて特に注意して伝える情報は何ですかという御質問です。
○名古屋先生 今、多層ナノチューブのところで申し上げますと、我々がリスク評価を行う対象物質というのは、年間に500kg以上使わないとリスク対象物質になりません。だから、多層ナノカーボンチューブも、最初のナノマテリアルの中の規制物質である5物質の中には入っていたのですけれども、実際は発がん物というのが動物実験の結果は出ましたけれども、どこの事業場でも年間取扱量が500kgを越える事業場がありませんから、多層ナノカーボンチューブは発がん物質として各事業所で測定して管理しなさい、リスク評価しませんという結果になっています。
 だから、これからナノ関係の物質が出てきていても、年間500kg以上使わない限りはリスク対象物質になりませんということまで決まっています。
 だから、個別にナノカーボンが出てきて、それが年間500kg以上使ったときには、多分、そこから報告書が出てきます。そうしたらリスク評価をしますよということ形になります。
 だから、なかなかナノがリスク対象物資になるのは難しいのかも。今、ナノ対象物質は5物質あって、酸化チタン、カーボン、銀ナノと、それからフラーレンと多層ナノカーボンチューブがありますけど、ナノカーボンチューブはやらなくなりました。今、4物質で、実際に行っているのは酸化チタンで、今年からカーボンブラックにリスク評価を始めていますよということになっています。
○堀口先生 ありがとうございます。
 どうぞ。
○阿部中央労働衛生専門官 今、名古屋先生からご説明いただきましたのはリスク評価の考え方のところかなと思います。で、一応、がん原性指針の規定の関係で補足させていただきますと、これはガイドラインベースだというところがベースになっちゃうんですが、そもそもばく露しようがない状態のものは構わないとかにはしているんですよ。
 例えば、完全に密閉されたボンベで扱っている場合。これは、まあ、ばく露防止措置はいいよねみたいな。洩れたりしないやつですね。これはリスク評価も同じ考え方で、密閉のボンベを運んでいるだけだから、別に洩れるようなことが無ければばく露しないからさ、といって、ばく露は発生していない、という評価もしてきたりしてきているわけなんですね。
 なので、先ほどおっしゃっていただいた、水に溶かしている類の作業が、果たして物質にばく露する形態でやっているのかどうなのかというところは、まず一つ境目だと思います。
 さらに、水滴にカーボンナノチューブが含まれていた場合に、ばく露の経路ってどこなのかということだと思うんですけど。ミストで出るのかなとか──出るんですかね、出ないのかな、どうなんでしょうか──というのがまず一つ。
 それから、経口でどこまでリスクが出るのかというのは、これはちょっと、我々、普段、経口のリスクってあまり見ていないので。労働安全衛生分野だとですね、経口のリスクというのはあまり見ていないことが多いので、そこのところとかをどう捉えるのかというのがまず一つだと思います。
 さらに経皮があるのかないのか。何となくですけど、カーボンナノチューブが水に溶けているものをべたっと塗ったとしても、何か、しみ込んでいかない気がするんですけど、そこのところをどう評価するのか。この辺の積み重ねの中で、果たしてばく露することによるリスクがそこにあるのかないのかというところで検討する話かなと思うんですけれども、実際、ちょっとすみません、多分、その知見はあまり我々もないと思うので、通常、ミストとか、経口の──じゃない、吸入のばく露とかがありそうな作業なのであれば、そこはちょっと注意しましょうかとかいうところを御勘案いただきながら対応を検討いただくしかないのかなという気がします。
○名古屋先生 前、多層ナノカーボンチューブをやったときに、樹脂の中にナノカーボンを入れたときに、それを切断する作業のときには出てくる可能性があるので、それについては規制がかかりますよという話になったんですけども、実際には多層ナノカーボンチューブがリスク評価から外されましたから、ありませんでしたけれども、今言ったように、それが加工されたとしても、何かの作業によって環境に出てくるときは、当然、リスクの対象にはなりますねという、リスク対象物質になりますねということだと思います。
○堀口先生 ありがとうございます。
 皆さんから出していただいた質問票については、今、全部終了しました。なので、まだ時間がありますので、フロアの方から、今のやりとりを踏まえた上で、重ねて御質問等ありましたら、挙手をしていただければと思いますが、皆さん、いかがでしょうか。
 御質問ありませんか。
 御質問ないですか。
 あちらの方、お願いします。
○参加者2 確認なんですが、今日の前半のリスクアセスメントの話は、基本的にはリスク評価によって特定化学物質予防規則に追加することをやっているので、後半でおっしゃっていたがん原性指針の自主管理であるという話とは違う話だというふうに理解してよろしいんですね
○名古屋先生 そうだと思います。
○参加者2 そうしますと、そういうリスク評価の結果、法規制がかかってしまうと、非常にその汎用していたものは過去のものを遡って法規制が出るということが起こります。
 例えば、この間というか、今度ノーベル賞をいただくリチウムイオン電池なんかですと、コバルト酸リチウムはコバルト及びその有機化合物に該当する。そのときに対応する極の材料としてポリアセチレンとか、繊維状の炭素繊維みたいなものを試験研究していて、常時使用で、年数回どころじゃなくて、毎日、そういったリチウムイオン電池をつくった人がいたら、その人は、要するに過去にそういったようなものを使ったということになっちゃうんですよね。
 なので、法規制のレベルがすごく上がっちゃうんですけども、そのようなことで理解してよろしいんでしょうか。
○阿部中央労働衛生専門官 すみません、御質問の趣旨がよくわからないところがあって、もし誤解があったらご指摘いただければと。
 前提として、指針ベースの指導という話をさせていただきました。初期リスク評価をやらせていただいたときのリスク評価書とかも基本的に同じような考え方でお出ししている部分がありまして、初期リスク評価の結果、まだ詳細リスク評価が必要で、評価は確定していないけど、自主的な管理を推進してくださいみたいな、そんなような書き方をしているんですよね。
 実際にどんなことを言っているかというと、プレスリリースをしている平成30年度のリスク評価の例を画面に出力しますけど、要は、とりあえずリスク評価の結果が出ました──出ましたというか、中間報告みたいなものですけどね、初期なので──その結果に対しては、法整備までは行っていないリスク評価の途中経過ですが、その時点で注意喚起を促すというのが、行政指導の範囲でやらせていただいているものです。その時点では法令にまではなっていないので、例えばそれが法令違反になるということはないですが、行政が注意喚起をする──いわゆる行政指導のベースで、ぜひ、自主的に管理をしてくださいと周知する。その後に、法令整備までいきました、特化則に入りましたといったときにも、それはあくまでそのタイミングからその改正法令の適用はされますので、過去に遡って適用されるということはありません。
 法令改正によって、例えば何年か前に対象物質を使っていた当時特殊健康診断をやっていなかったじゃないかとか、作業者の把握を記録していなかったじゃないかということを、施行後に過去に遡って違反をとるということは、法令上ないです。
○参加者2 確認なんですけれども、コバルト及びその化合物とか、エチルベンゼンとか、特化則に法規制されたものは、配置転換後の、現に行為をされる労働者に対しての特化則の特殊健康診断を要求しているので。
○阿部中央労働衛生専門官 それはあれでしょうか。過去に使っていたから、今も特殊健診をやりましょうの、その系統の部分の話ですか。
○参加者2 そのとおりです。
○阿部中央労働衛生専門官 それは、何でしょう、現に雇用されている範囲においては、その労働者の健康管理に関して事業者さんに御責任がありますよねという前提で規制を検討しているものだというふうに理解しておりますので、『過去にさかのぼって規制を適用している』というのではなくて、『現在雇用されている労働者に対する健康管理』だというふうに思います。
○参加者2 ですから、法規制は要求される。それががん原性指針になっているものは、それが自主管理になっていてということで理解してよろしいんですね。
○阿部中央労働衛生専門官 はい。自主管理ですね。物質としては特化則と重なる部分もありますので、特化則とかぶっている部分は特化則側に当然なりますが。
 というのが大前提ですけど、特化則がかかっていない部分において、がん原性指針で求めている措置というのは、あくまで自主的に、これを参考に取り組んでほしいというようにお示ししているものですので、それと、実際に政省令改正までいきましたと、法令改正されましたという後の法令の適用の話とは全然違います。
○参加者2 ですので、要するに後から法律ができてきたコバルト3リチウムとか、あと、よく調べたら、もしかしたら要するに多層ナノカーボンチューブがまじっていたような、いわゆるウィスカー型の炭素繊維みたいなものを、法規制物質かどうかを過去に遡って調べる義務は企業側にはあるんでしょうか。
○阿部中央労働衛生専門官 調べる義務というのは、何でしょう。雇用されている労働者の健康管理を当該時点でしていたか、していないかという話でしょうか。もし、おっしゃっている意味が、例えば20年前、30年前から働いている人が居て、その人を今も雇用している場合に、その健康管理の責任が事業者にあるのかということであれば、あります、という理解です。
 ただ、そのときに、言うてもさと、20年前、30年前にうちの会社でどんな事業をやっていたかなんて知らんしさと、コバルトを扱っていたかどうかなんて知らんよというようなケースがあった場合にどうなのかという趣旨であればです。これは後から規制されたんじゃないかということを言われると、いや、それはどこかのタイミングで規制するわけですから、その前後って絶対あるので、当然そこはベースにならざるを得ないんですけど。ただ、本来、継続的に雇用されている方であれば、適用される可能性はあるんじゃないかという気がします。それは現に雇用されている労働者であれば、そこの健康管理の責任というのは当該雇用されている事業者さんにある。それは適用される化学物質が増えましたということがあった場合に、過去の業務歴等も調べていただくということは、その法令の範囲においては発生するかもしれません。
 ただ、実際に、いや、そんなに言うてもね、あの人絶対関係ないから、みたいな人をどこまで調べるんだとかというところに疑義があれば、これはもう監督署に聞いてください。
 もうあの人、30年会計一筋ですよみたいな、絶対、工場なんか行ってないからみたいな、そういうところをどこまで確認するかというと、多分いろんなケースがあると思うので。ただ、法令上は、あくまで改正法令の施行の時点から発生する義務です。ただし、その義務の範囲として、現に雇用されている労働者がいて、その過去の情報を把握する必要があるということが発生する可能性はあるとは思います。発生したときにどこまで遡れるかというのは、多分、各事業者さんの労働者の方々をどう管理されていたかということ次第だと思いますので、そこはちょっと、本当に20年前、30年前、何を使っていたかわからないんだけどみたいなケースがどこまであるのかというところなのかもしれませんけどね。
○参加者2 コバルト3リチウムみたいなすごくわかりやすいものが出てきちゃったものですから、その辺りをちょっと確認しようかなと思って。
○阿部中央労働衛生専門官 それはでも、10年ぐらい前に、あの人、作業していたからさというのがあったら、それは、引き続き、健康管理の対象に入れていただくしかないんじゃないかなと思いますけどね。
○参加者2 わかりました。
○堀口先生 ほかにありますか。
 いかがでしょうか。
 どうぞ。
○参加者3 先ほど、変異原性のところで、欧州REACHの結果が、変異原性かちょっと忘れましたけど、そのままプロセスを経ずには再評価しないというお話があったのですが、例えば日本の企業がin vivoの変異原性試験を欧州REACHで求められて、試験を実施して、そのデータフォルダーになっていると。ただし、陰性の結果だったので、特に有害性報告の義務もないんですが、自主的に有害性情報報告をしたときに、その結果をもって、例えば既に強い変異原性を示す物質として指定されているものについて再評価をいていただける機会というのはあるんでしょうか。
○阿部中央労働衛生専門官 あるんじゃないかなという気がします。直近でいくと、本当に特定の物質なのでもうあれなんですけど、バットオレンジ-7というものについて、変異原性指針の対象の見直しというのをやっているんですよ。
 何をやったかというと、強い変異原性が認められるようだということで、もともと対象物質に──いつだったっけかな、平成28年とかだったかな──加えていたんですけど、いや、ちょっと待ってよと業界さんから言われまして。で、別の試験結果がこんなのあるよと教えてもらいまして、その試験結果を有識者の方々に見ていただいた結果、指針の対象物質から外すことをしているものがあります。なので、例えばそういう、厚生労働省が用意している変異原性指針とか──いや、がん原性指針の場合は、逆に、我々が多分一番がっつりしたデータをつくった上で持ってきているので、それがひっくり返るということはあまりないかなという気が正直するんですけど──変異原性指針であれば、事業者さんから届け出いただいた試験結果を有識者に審査いただいた結果、強い変異原性が認められるよねという評価を頂いたものをピックアップしていますので、それに対して、反訴──じゃないですけど、反論されるような材料が現にあって、それが確からしいということであれば、御提供いただいて、見直しを行うということはあり得るのかなと思います。
○参加者3 ありがとうございます。
 あと、もう1点。がん原性のものなんですけれども、がん原性試験をちょっと私、アクリル酸メチルの試験報告書をちょっと読ませていただいたんですけれど、そのときの投与量の決め方で、最大160 ppmか何かで投与されていたかと思います。
 そのときの13週間の試験とか、予備試験をいろいろやられている中で、たしか鼻の粘膜かどこかに炎症があるんだけれど、試験体の生死に関わるものではないから、ここを最大容量にしてやるというような形で決定されたかとちょっと記憶はしているんです。
 そういうことでいきますと、例えば長期の臓器毒性を低い投与量で示すような物質であったりとか、そういったものについては、発がん性を見ようとしても検体が死んでしまって見られないと、適切な試験ができないと。逆にあまり毒性は強くないんだけれども、刺激性とか、ちょっと腐食性があるようなものが、投与量の高い状態で試験されると、何か炎症から化膿を起こして、がん化するとかというようなところで、何か、化学物質の危なさというのですかね、何か、あまり今まで危なくないよねと思っていたものがどんどん発がん性、がん原性の指定物質にされるような気がしてちょっと危惧はしておるんですけれども、すみません、その辺、どんな感じなんでしょうね。
○阿部中央労働衛生専門官 すみません、多分、御質問──というか、御指摘の点をアタマから順番に追っかけるのは微妙な気がするので、順不同的な回答になっちゃうんですけど。
 まず、発がん性が今まであると思ってなかったものについて、発がん性ありの評価が出ました、だんだん増えてきてますよね、というお話であれば、それは増えていきますよ。評価が定まっていない物質について調べているんですもの、みんな。通常、減っていくことはないわけですし。
 もし新たな知見が得られて、それまでの評価について見直しがあったら、それは行政としても対応するんですよ。ですけど、発がん性のある、もしくは発がんのおそれがあるものについて、それは増える一方で大変じゃないかというのは、いや、世の中、やっぱりいろいろ危険がいっぱいなんだねと受け止めていただくしかないんじゃないかなと思います。だからこそ、それをリスクとして捉えて、現場ではいろいろ管理をしていただく必要があるんだと。
 いや、そんな言ってもがんなんて出ないでしょう、30年も40年も使い続けていて、がん出ている人なんか知らないもの、というふうにおっしゃる業界さんも中にはいらっしゃるんですけど、いや、そういうものじゃないですよと。我々は、行政の立場としてはやっぱり言わざるを得ないです。
 じゃあ、その試験の報告書の内容とかも含めてどうなのか……なんですけど。ちょっとごめんなさい、どこの部分の話をされているのかというのがはっきりと理解できていない可能性があるんですが、動物で試験をやっている中で、いや、そもそも長期のがんを評価する以前の問題として死んでまうやんけという、そういう高濃度のばく露はどうなんだ──というところは、実はこれは先生方に御議論いただく中でもポイントになっているところだと認識していまして、時々やっぱりそういう、この投与量ってそれでいいの? みたいなところの御指摘はいただいているという認識です。これは長期に限らず、中期とか、遺伝子改変マウスの試験とかでも同じ議論をしてもらっています。
 事前の試験はあくまで参考の試験なので、その中で高濃度過ぎて何週間とかの試験期間に耐えられないことが確認されたといったケースは、当然のことながら、本試験──というか、本番の──中期なら中期、長期なら長期の試験をやる中で投与量の見直しは行っています。逆に言うと、事前の試験の結果を踏まえて本試験の投与量を評価してもらっていると。なので、これ以上やり過ぎると試験が成立しないので、最高の投与量はここまでなんですわみたいなところとかを見ながら投与量の決定はしてもらっているという理解です。
 そういった物質について、じゃあ、現場でどう管理するかという話に多分なってくるんですけど、がん原性試験では、最終的に発がん性が認められるかどうかという観点で○×をつけているわけですね。ですが、別にそのがん原性の有無の判断に使った試験の投与量そのもの──最大投与量とかをそのままNOAEL、LOAELの計算に使っているわけじゃないわけですよ。実際にがん原性指針の対象にしたときに何を評価値の参考としているかというと、基本的にはACGIHとか産衛の値なんです。なので、例えばバイオアッセイ研究センターでのばく露濃度が高いと思われる部分があったとして──逆に低い濃度でも何でもいいんですけど──その試験の条件と、各物質を使っていらっしゃる現場での管理の際の参考値というのはイコールではないので。あくまで試験結果は○×をつけるために参照している。それを踏まえて、我々としては予防的観点から、事業者さんに自主的な管理を求めている。そのときの参考値はバイオの試験の濃度と関係なくて、現に産衛なり、ACGIHなりが出している許容濃度とかTLVである。
 逆に、許容濃度とかTLVが出ていない物質については、作業環境測定までは求めていたとしても、評価まで求めていないわけですよ、指針上。というような扱いをしていますので、一体となって考えていくと、何かぐちゃぐちゃとしちゃうと思うんですけど、一つ一つのパーツに分けて考えていただくと、実はこれとこれは切り分けて考えられているとか、プロセスごとにそれぞれ違いますので、そういう見方をしていただくと、おそらく御指摘の懸念に対する回答にはなるのかなという気はしています。
 大体、そんな感じですかね。
○参加者3 ありがとうございました。
 ちょっと名前が、がん原性とついた途端に、そのお客さんが手を引いてくので、ちょっとそれがあるので。
○阿部中央労働衛生専門官 それは、あれですね。私も個人的にいろいろ思うところは無くはないんですよ、発がん性という評価の仕方。これは実はお電話で問い合わせいただいたりするのに対応させていただいたりする中であるんですけど。IARCが発がん性区分を付けたりされるでしょう。それに対して、これはどっちかというと規制をしてほしい側のコメントだったりするんですけど、IARCで発がん性があると言っているものを、なんで労働安全衛生法で規制しないの、と。結構、来るんですよ、正直、そういうお問い合わせ。
 ここにいらっしゃる方は、多分、化学のメーカーさんとかが多いと思うので、そんなに全部規制されたらやっていられるかとか思っていらっしゃる方も居ないとは限らないと思うんですけれども。
 そういう産業界側の感想とは別にして、行政としても、それは純粋に無理があるわけですよ。だって、赤身肉とか労働安全衛生法で規制するような話にはならないわけじゃないですか。IARCで発がん区分はついていますけどね、みたいな。食肉加工業者さんにそういうものに労働者をばく露させちゃいけないと言って規制するんですかと。労働ばく露に対する規制という意味では、職業的に肉を食べている場合だって無いわけじゃないでしょうみたいな、言い方によってはそういうこともあるわけですけど、それはまず労働安全衛生法令の世界で規制を考えるべきものなんですかと。
 それじゃあ、どうして、我々、がん原性試験とかの取組を進めているかというと、赤身肉とかはともかく、実際、吸入とか、労働現場でありそうなばく露で発がん性があるとされているもの──少なくともそういう知見があるとされているものがあるのは確かだと。これはやっぱり国としても無視できないよね──というところをベースにしなきゃいけないというのが、まさに名古屋先生から最初に御説明いただいてきた経緯としてあるわけで、そこは無視できないと、ここはもう業界の方々にも御理解いただくしかないと思います。
 その上で、です。果たしてがん原性がある、発がん性があるといったとき、IARCみたいなところでは、とにかくあるかないかの、○×の評価をされているという話だと私は理解しているんですけど。それを踏まえつつも、我々が有害性の評価だけではなく、現にばく露がどのぐらい発生しているのかもあわせて評価しているという、まさにそこがIARCとかとの違いなんですよね。2本の軸でやっているというところを御理解いただきたい。
 がん原性指針というのは、ハザードベースで確かに評価していますけど、まあ、でも、現にそこにハザードがあるんだったら無視できないでしょうということを我々として言っているだけなんですね。法令レベルの規制を検討するためのリスク評価は別途やっている。なので、いやあ、これ、うちの主力商品でさ、発がん性があると言われちゃったら困るんだよねとか、業界さんのお立場としてそう思われるのもわかるんですけど、でも、発がん性があるらしいというのは事実なんですから、しょうがないんですよねと。行政としてはそう言わざるを得ない。是非、そこのところは、単に○×だけじゃなくて、リスクとしてちゃんと管理していただく必要があるんだよということを、流通さんも含めて、化学物質を取り扱われる業界さんの中で認識をちゃんと改めていくとか、そういうことが必要なんじゃないのかなと思います。そういうことを、多分、今、あり方検で議論しているんじゃないかなと思いますが。
○堀口先生 食品安全委員会では、IARCはハザードの話をしていて、私たちはやっぱりどれだけ食べるかというところで、要するにばく露ですけれども、なので、IARCのランクを発がん性の程度だとか、そういうふうに捉えないでくれというメッセージは常日ごろから一般の人向けに出しているんですね。
 なので、やはりそこがメーカーさんも同じように言っていただけると、こちらもやりやすいかなと思います。かつ、私たちも評価書をつくっておりますが、「遺伝毒性」という言葉も非常に消費者には誤解を生む言葉でして、要するに自分の子どもや孫に、要するに遺伝していくものだというふうに受け取られる単語になっているので、「遺伝毒性」がですね、なので、そういった誤解がないように、実は説明を常日ごろから繰り返しやっているというところです。
 そこは、なので、労働衛生の分野で対象者が限られているかもしれないですけれども、食べ物に関してもリスク評価をして、やはりさっき言われた「がん原性」という言葉だったり、「遺伝毒性」という言葉が誤解しやすいということに対してメッセージは出し続けていますし、IARCの実はランキングは、ここのリスク評価のところでは参考にはいますけれども、食品安全委員会は全く参考にしていません。
同じ国内でもそういう政府機関によって、IARCのランキングの捉え方は全く違います。
 以上です。
○阿部中央労働衛生専門官 仲が悪いなんて、そんな。
○堀口先生 いや、こちらは仲がいいかもしれないですけれども、食品安全委員会的にはいつも迷惑をしている方なので。ランクが上がれば、私たちはがんになりやすいというふうに受け取られてしまうので、ばく露量が違いますと、西洋の方々と食べている量も違いますとか、そういうようなメッセージは出しています。実質、売り上げが25%落ちたりして、メーカーさんは大変になっているのも現状なので、そういった説明をメーカーさんの方からも丁寧にしていただけると、お互いにwin-winになれるのかなと思います。ありがとうございました。
 じゃあ、すみません、時間が来ましたので、もし何かほかに御質問がある方がおられましたら、終了後に、各自、御質問していただければと思います。
 先ほど、名刺を渡した方もいらっしゃると思うので、ぜひ、名刺を渡していただければと思います。
 それでは、皆さん、どうもありがとうございました。
(閉会)
○司会 先生方、どうもありがとうございました。
 今年度の化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーションにつきましては、今回の議事次第とは異なる内容で、年明けの1月17日に大阪で第2回を、翌週、1月24日に東京で第3回を開催いたします。詳しくはテクノヒルホームページにて御案内しておりますので、御覧くださいますようお願いいたします。
 以上で、2019年度第1回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーションを終了いたします。皆様、御参加ありがとうございました。
 なお、今後の参考のため、できましたら水色のアンケート用紙に御感想を御記入の上、事務局員へお渡しくださいますようお願いいたします。また、お配りいたしました赤と青のカードも同様に事務局員へお渡しください。
 本日は、お越しいただき、ありがとうございました。