2020年1月21日 第4回化学物質による疾病に関する分科会 議事録

日時

令和2年1月21日(火) 16:30~18:30

場所

中央合同庁舎5号館厚生労働省労働基準局第1会議室(16階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者

参集者:五十音順、敬称略
上野晋、圓藤吟史、武林亨、角田正史、野見山哲生

厚生労働省:事務局
西村斗利、西岡邦昭、栗尾保和、佐藤誠 他

議題

(1)労働基準法施行規則第35条別表第1の2第4号の1の物質等の検討について
(2)その他

議事

議事録

○小永光職業病認定業務第二係長 少し早いですが、労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会を開催いたします。
分科会を開催する前に傍聴される方にお願いがございます。携帯電話については、電源を必ず切るか、マナーモードにしていただくようお願いいたします。そのほか、別途配布している留意事項をお読みの上、会議の間はこれらの注意事項をお守りになっていただきますようお願いいたします。万が一、留意事項に反するような行為があった場合には、この会議室から退出をお願いすることがありますので、あらかじめ御了承ください。
それでは、これより「第4回労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。写真撮影等はこれまでとさせていただきます。以後、写真撮影等は御遠慮ください。それでは、座長の圓藤先生に議事進行をお願いしたいと思います。
○圓藤座長 それでは、議事に入る前に、事務局から本日の資料の確認をお願いいたします。
○小永光職業病認定業務第二係長 それでは、資料の確認をお願いいたします。本分科会はペーパーレスでの開催とさせていただいておりますので、お手元のタブレットで資料の確認をお願いいたします。資料1「化学物質評価シート(告示への新たな症状又は障害の追加について)」、資料2「化学物質評価シート(感作性検討用)」、資料3「告示対象物質の整理」、資料4「2019年5月22日付けの許容濃度等の勧告(2019年度)」です。その他、第1回から第3回の分科会の資料も格納しておりますので、必要な際にまた御説明させていただきたいと思います。資料の不足等はございますでしょうか。以上です。
○圓藤座長 それでは、最初に事務局から資料の説明をお願いいたします。
○秋葉中央職業病認定調査官 それでは、資料1について説明いたします。これまでの分科会において、大臣告示に規定されている化学物質による疾病への新たな症状及び障害の有無について検討を実施しており、検討方法としては、まず、厚生労働省が実施した調査研究報告書において、「化学物質による新たな症状及び障害に関して1報以上の報告があった物質」について、各委員に、新たに告示への追加する症状及び障害があるかを評価いただいたところ、前回の分科会の時点で26物質が「追加すべき」又は「次回以降再検討」とされたところです。この資料1は、この26物質について、各担当の先生方に、具体的に告示に追加する症状及び障害があるかについて再評価いただいたものになります。本日は、これに基づき、告示に追加すべき症状及び障害があるか否か、追加すべきであれば、追加すべき症状及び障害の内容について、検討いただきたいと考えております。
続いて、資料2です。これは、前回の分科会において、告示に新たに追加する症状等はないが、感作性について別途議論するとされた物質を抜き出したものになります。
資料3は、前回の分科会において、告示に記載された「ベンゼンの塩化物」と「弗素及びその無機化合物」について、具体的なSDS交付対象物質名の御質問がありましたので、整理した資料を作成いたしました。
まず、「ベンゼンの塩化物」についてです。告示が全面改正された際の平成8年3月29日付基発第181号通達において、「芳香族炭化水素のハロゲン化物」とは、「ベンゼン環を1つ又はそれ以上有する芳香族化合物にハロゲンのみが置換された化合物をいう」と記載されていますので、SDS交付対象物質のうち、「ベンゼンの塩化物」はベンゼン環にハロゲンのみが置換した、記載の5物質となります。
また、「弗素及びその無機化合物」についてですが、SDS交付対象物質としても「487 弗素及びその水溶性無機化合物」と包括的に規定されており、網羅的に把握することは困難であると考えています。
なお、NITE、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の化学物質総合情報提供システムで、「487 弗素及びその水溶性無機化合物」の該当する化学物質を確認したところ、別添の73物質となっており、2つの弗化水素及び弗化水素酸を除きますと70物質となります。
次に、資料4です。これは、感作性について御議論いただく際の参考資料として、日本産業衛生学会による2019年度許容濃度等の勧告になります。
資料1から資料4の説明については以上です。
○圓藤座長 初めに、資料1に基づき、上から順に個々の物質の検討に入りたいと思います。今回も前回同様、記載していただいた委員から、「○、△、×」等の評価と、その理由を簡単に説明していただいた上で、議論していきたいと思います。議論では、「追加すべき」、「追加すべき症状及び障害はない」、「次回以降再検討」の3つに分類して、「追加すべき」とされたものについては、「告示上の表記」についても併せて検討していきたいと思います。なお、前回同様、「追加すべき症状及び障害はない」とされたものについては、一旦検討の対象外としたいと思います。このような進め方でよろしいでしょうか。
(同意)
○圓藤座長 それでは、1番の「弗化水素酸」から検討したいと思います。弗化水素酸の上段の評価者から、説明をお願いしたいと思います。角田先生、お願いします。
○角田委員 事故的ですが多発しています。ただ、皮膚障害、前眼部障害、気道・肺障害以外に腎障害を入れるかどうか迷っています。「○」を残したのは腎臓の病理的変化を記した論文があったからなのですが、今の日本の事故的な障害で、腎障害が単独で起こることは考えられません。気道から吸い込むわけですから、それだけの高濃度ばく露になると、当然のことながら前眼部障害、気道・肺障害のほうが前面に出てきているので、単独で起こるということではないと思うので、そこら辺が迷うところです。
例えば、中国で弗素がたくさん入っている泥炭を燃やす作業をずっとやっている人であれば、骨硬化症が起こるなど、それぐらいのレベルになるので、腎障害はあり得ると思うのですが、日本の場合は、多分洗浄で使っていて、それを浴びるという事故的なもののみなので、腎障害単独は少ないのではないかと考えました。単独で起こらないものをあえて付けるかどうかについては、御議論いただきたいと思いました。
○圓藤座長 野見山先生、お願いします。
○野見山委員 事故的ばく露であるため、基本は「×」なのですが、そうは言っても事故的ばく露が通常起きる事案であれば考慮に値すると思います。無尿の報告があるのですが、本当にそれが、これの毒性として起きているのか、終末期で起きているのか、その辺がジャッジできないということもあって、あえて「×」としております。以上です。
○圓藤座長 私は低カルシウム血症と組織壊死について気になります。皮膚障害の後、組織壊死がくるのであって、皮膚障害なしの組織壊死はないと思います。そうした腐食性のものの結果、腎障害も出てくるように思うのですが、臨床的に考えると、低カルシウム血症や組織壊死、腎障害も、意識して治療しないことには助からないわけですから、明記しておくことは結構ではないかと思います。労災の認定に資するとなると、一番分かりやすい皮膚障害があればそれで全てだと言ってしまえば、それまでですが、これについて、少し先生方に議論を頂きたいと思います。武林先生はいかがでしょうか。
○武林委員 私も、腎障害については2次的な可能性もあるため、そこは少し慎重に議論したほうがいいと思う一方で、少なくとも組織の壊死、実際には、現場でも骨への影響というは結構ありますので、そうした場合には、皮膚障害に比べるとかなり重い障害でありますので、骨格系への影響として採ってもいいのではないかと思います。皮膚障害との重みの違いは十分に考慮すべきではないかと思っています。
○圓藤座長 上野先生、いかがでしょうか。
○上野委員 私は、どちらかと言うと、圓藤先生が御指摘された低カルシウム血症については、臨床的には事故的なばく露があった後に低カルシウム血症が起こり得ることを想定して、その場で軽症に見えても、やはり24~48時間ぐらいは入院して、特に不整脈が出ないかどうかというモニタリングも必要な症状だろうと考えておりますので、そういうことを明記しておいても私はいいのかなと考えております。
○圓藤座長 先ほどの腎障害にしても、結構な症例数があります。
○角田委員 あります。最終的に、事故例になると腎障害は出るので、それで気を付けなければいけないということは、回復してきても、最終的な死亡原因が腎不全ということは結構あります。
○圓藤座長 いかがいたしましょうか。各委員の認識はほぼ一致しているのですが、記載すべきかどうかについては、もう一度文献調査をした上で、次回に結論を出すことにさせてもらってよろしいでしょうか。
(同意)
○圓藤座長 今までの告示に記載する症状や障害の記載の仕方、あるいはここに記載する場合の条件等をもう一度精査した上で、記載する症状名等の妥当性も含めて、もう一度議論をしたいと思います。それから、先ほど武林先生がおっしゃった、組織壊死は骨の壊死までありますから、入れるとしたらその辺の表記の仕方も悩ましいところでありますので、できたら次回にははっきりと決めたいと思っております。本日の議論はここまででよろしいでしょうか。
(同意)
○圓藤座長 では、これは次回の宿題として5人全員で少し考えていきたいと思っています。
続いて、「砒化水素」です。私は、腎障害は共通に現れる障害ではあるけれども、溶血を伴います。動物実験で確かめますと、砒化水素は体の中に入ると速やかに酸化され、腎臓へ到達するときには砒化水素の形態ではなくて、酸化された形の亜砒酸を中心として、そして砒酸、それからメチル化した砒素になっています。そのため、砒素による障害もあるようです。したがって、私は腎障害も加えてはいかがかと思っております。上野先生、いかがでしょうか。
○上野委員 報告書にありましたLeeの論文を見て、この論文では、実際にばく露のあった作業員の腎生検を行って、組織像を電子顕微鏡で確認しております。臨床的には急性砒化水素中毒と慢性カドミウム中毒ということで、慢性カドミウム中毒の診断はよく分からなかったのですが、生検から亜砒酸の中毒の障害と一致する、尿細管細胞のミトコンドリア変性や、全体としては急性間質性腎炎の所見であったので、溶血による2次的な腎障害というだけではなくて、やはり砒素による直接的な腎障害の可能性はあると考えて「○」にしております。
○圓藤座長 野見山先生、何かございますか。
○野見山委員 ヘモグロビンによるものなのか、直接的なものかというところが1つの大きな点だと思います。直接砒素が毒性を発揮するのであれば、基本的には「○」ではないかと思います。
ただ、2次的にしろ、ヘモグロビンが生じて腎障害が生じるというのも、考えてみれば玉突きで起きるわけですから、それも採択ということであれば、それはそれでいいかなというように思います。その辺のところがどちらなのかということで、前回「△」にしました。
○圓藤座長 角田先生はいかがでしょうか。
○角田委員 私はLeeの論文のところで、腎不全、急性腎障害で出ていまして、これが砒化水素が毒作用を及ぼすということであるので、カドミウムでも出ているのかもしれませんが、Leeでは腎障害が出ているので、腎障害を加えてもいいのではないかと思って「○」にしています。
○圓藤座長 武林先生は御意見はございますか。
○武林委員 今伺っている範囲であれば、この議論でいいのではないかと思います。
○圓藤座長 私が追加したYoshimuraの論文にある現場へ行ったことがあるのですが、これは事故的と言うよりも、よく知らないで起こった急性ばく露であり、しんどくなったということで病院に行ってから溶血しているのが分かり、治療していったら砒化水素ばく露が分かったということです。したがって、腎障害という形で取り入れてよろしいでしょうか。
(同意)
○圓藤座長 では、これは腎障害として告示に表記を追加する方向とします。次回、どのような表記名にするか、また、それの根拠について、文書化した上で再確認したいと思います。
「弗素及びその無機化合物」です。武林先生からお願いします。
○武林委員 先ほど物質の特定は難しいということになりましたので、角田先生が評価されているように、「×」ということでいいのではないかと思います。
○圓藤座長 角田先生はいかがでしょうか。
○角田委員 これも物質が多岐にわたっており、対象物質をどうするかというところなので、情報が足りないということで「×」にいたしました。
○圓藤座長 私は、分けたほうがいいだろうと思い、以前「○」にしました。少なくとも、弗化水素と同じような動態をする化合物と、弗化塩のようなものとを区別する必要があるのではないかと感じました。
例えば、弗化ナトリウムや弗化カルシウムは、歯科で歯に塗布してう歯を予防するのに用いますが、間違って弗化水素にしますと死亡しますので、毒性は全然違うと思います。
しかし、弗化ナトリウムについては、初期リスク評価ができており、それについて読んでみますと、毒性がないわけではなくて、例えば大量に経口摂取した場合は胃酸と反応するようで、消化器管に出血するような重篤な障害が出てくるようですので、全く毒性がないというわけではないと思います。
私はこの中の物は幾つかに毒性が分かれるのではないかとは思いますが、先ほど武林先生や角田先生がおっしゃったように、分けるのはかなり厳しいのではないかと思うに至りました。上野先生、何かございますか。
○上野委員 皆さんの御意見に異存ありません。
○圓藤座長 では、本来は分けるべきだと思うのですが、分けるだけの根拠に乏しいということで、今回は一旦、追加すべきものとしては加えないことにしたいと思います。
「ホスフィン」は角田先生からお願いします。
○角田委員 コリンエステラーゼ阻害作用があるということが前のほうに書いてあったのですが、症状を見て、コリンエステラーゼ阻害作用と明確に出ているものが余りないので、それは厳しいかなと思います。
ただ、「頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状」となっているので、しびれや知覚障害が出ていた場合に、それを末梢神経症状などと捉えるかどうかというところが難しいので、それで私は「△」にしました。
○圓藤座長 野見山先生、お願いします。
○野見山委員 コリンエステラーゼ阻害はあるということかもしれませんが、それに基づく症状と符合しないため、「×」としています。
○圓藤座長 上野先生、いかがでしょうか。
○上野委員 角田先生も御指摘されているのですが、もともと報告書にあったシステマチックレビューを、いわゆる職業ばく露とどう関連付けて評価すべきなのだろうかというところで迷い、私は最初の評価で「△」としました。
○圓藤座長 それでは、次回までに、コリンエステラーゼ阻害作用による障害が複数例あるかどうか、文献検索をもう一度した上で、再検討したいと思います。
「硫化水素」について、武林先生お願いします。
○武林委員 特に追加する根拠になるものはないということで、「×」です。
○圓藤座長 角田先生、お願いします。
○角田委員 症例報告で、まず血圧上昇が前半のほうで3つ、4つ出ているのですが、結構一過性のものが多く、症状に伴って頻脈などが起こっているのだと思います。そのため、因果関係が明確ではないかなと思います。
神経症状に関しては、Trevtという先生がたくさん症例を集めておられるのですが、数年後に発生するものが結構多いので、因果関係は明確ではないと思い、「×」にしました。呼吸機能停止もあるので、低酸素症によるものの可能性もあるとも考えたので、加えなくてもいいのではないかなと思いました。
○圓藤座長 私は、意識障害、血圧上昇、洞性頻脈などがありますが、これはもう既に記載されている症状の範疇であり、必ずしも「○」にすべきではないだろうと、今の時点では考えております。上野先生、いかがでしょうか。
○上野委員 報告書にあった論文を見て、因果関係がはっきりしないものが多いため、その時点では「△」にしておりました。
○圓藤座長 野見山先生もよろしいですか。
○野見山委員 はい。新たに加えなくていいと思います。
○圓藤座長 それでは、追加すべき症状及び障害はないにいたします。
「塩化ビニル」です。角田先生、お願いします。
○角田委員 非常に迷いました。肝臓の病理的変化を伴う肝機能障害が起こるとされておりますが、非腫瘍性がどのようにして起こるかがよく分からないということ、門脈圧亢進の続発かどうか、それ以外とする根拠が少し乏しいのではないかと思いました。ただ、起こっており、判断が微妙なので「△」にしました。
○圓藤座長 野見山先生、お願いいたします。
○野見山委員 肝障害で「○」にしております。Tamburroの1984年もありますが、2010年の比較的新しい文献で、結構詳細に検討されています。そのため、肝障害はあると思います。一方で、肝障害から肝血管肉腫の流れについては、読む限りでは余り明確ではないのですが、ただ、肝障害の存在自体はあるだろうということで、肝障害を加えること自体に問題はないのではないかと考えました。以上です。
○圓藤座長 私も前駆症状としてあってもいいのではないかといたしました。武林先生、いかがでしょう。
○武林委員 少なくとも疫学的には、肝障害から肝血管肉腫という関連を読み取ることが非常に困難だったので、位置付けが難しいということで、この時点では「×」としておりました。肝障害単独であるエビデンスが出てきているということであれば入れるのはいいかと思いますが、読んだ範囲では必ずしも肝血管肉腫と肝障害が結び付きませんでした。
○圓藤座長 肝血管肉腫の前の段階に、門脈圧亢進があってもおかしくはないです。
○武林委員 それはそうですね。
○圓藤座長 それの前段階に肝障害があってもいいのですが、問題は、肝障害が多数例あるかどうかという点です。
○野見山委員 見る限りは多数例はないと思います。先ほど武林先生の表現について、私もそう感じています。1つの論文の中に、肝障害があり門脈圧亢進があるという流れをパッと見ている論文がないものですから、そこは少し不安な感じがするのです。ただ、しつこいようですが2010年のペーパーは比較的新しくて、そこでエビデンスが出ていたので、そこには疑義がないと思います。因果関係を考えて、入れるかどうかについてはもう少し議論が必要かもしれませんが、その議論がなくても、肝障害を入れてもいいのではないかと考えました。
○圓藤座長 角田先生、いかがですか。
○角田委員 Hoが、常に肝機能検査で異常を示している男性13人で調べて、これが塩化ビニルによるものかどうかということをどう結論付けたか、少し強引かという気がするのですが、実際、13人中12人いました。Caveの文献では、脂肪肝が84%、脂肪性肝炎が80%と脂肪性肝炎が多く、これはアメリカのケンタッキー州ということもあり、肥満との関係がどうなのかが一番気になったので入れませんでした。よく見ると慢性肝炎も少し微妙かなと、肝線維症などの所見ありと出ており、25名中4名ですから多いと思いました。
○圓藤座長 肝障害としてしまうと、塩化ビニルでなくても、普通の肝障害、脂肪肝もあるし、肥満、ウイルス性のものもあり、いろいろな肝障害がありますので、鑑別が結構難しいと思います。そういう悩ましいところがありますよね。いかがいたしましょうか。
○角田委員 Tamburroの文献は、ただ、これは肝病変を焦点性過形成で肝細胞の病理的変化をずっと見ているところなので、ここを障害というまで上げるべきかというところは悩ましいです。
○圓藤座長 では、これも再検討に持っていきますので、今日は結論を出さないで、次回、文献をみんなでもう一度読んだ上で議論したいと思います。
次は、「1,2-ジクロルエタン」についてです。上野先生、よろしくお願いいたします。
○上野委員 報告書にあった論文以外に調べてみたところ、比較的新しい2019年の論文がありました。タイトルを見ると、いわゆる1,2-ジクロルエタンのばく露によって起こった中毒性脳症の症例でした。臨床的な所見がいろいろ書いてあったのですが、結局、脳波所見で徐波化が全部起こっていて、中枢神経抑制の範疇であろうということで、今回は特に追加する必要はないと思い「×」としました。
○圓藤座長 角田先生、いかがでしょうか。
○角田委員 私も中枢神経系抑制で説明できるのかと思い、「×」としました。
○圓藤座長 それでは、追加すべき症状及び障害はないに分類いたします。
次は、「ジクロルメタン」です。上野先生、よろしくお願いいたします。
○上野委員 こちらも、報告書にあったものが事故的なばく露で、それ以外にも急性中毒の症例報告があるぐらいなので、エビデンスとしてもさほど多くないので、今回は対象から外していいのではないかという判断をいたしました。
○圓藤座長 野見山先生は、いかがでしょうか。
○野見山委員 私も、これは対象から外していいと思っています。その理由は、沃化メチルにもばく露しており、沃化メチルは精神症状を起こすものなので、どちらなのかよく分からないということで「×」にしております。
○圓藤座長 中枢神経系抑制が既にありますので、追加すべき症状及び障害はないということにさせていただきます。
次は、「臭化メチル」です。上野先生、よろしくお願いいたします。
○上野委員 当初はMagnavitaの生殖機能の報告が気になったのですが、調べた範囲ではほかに生殖機能に関する報告が見当たらなかったので、エビデンスとしては不十分かと思い「×」といたしました。
○圓藤座長 角田先生は、いかがでしょうか。
○角田委員 これも流産反復はともかくとして、Magnavitaの文献で精子の運動性低下や機能障害が1人だけというのは、多分、顕微鏡で見て評価したのだと思いますが、これを証拠とするのは弱いと思います。勃起不全は全員に見られているのですが、これもメンタルなど、神経的なものが少し入っているので、これを生殖障害とするのは少し難しいかと思います。
○圓藤座長 私も精巣障害を加えておりましたが、皆様方の御意見のとおりだと思いますので、追加すべき症状及び障害はないとさせていただきます。
次は、「テトラクロルエチレン(パークロルエチレン)」です。上野先生、よろしくお願いいたします。
○上野委員 報告書にある文献以外には精神症状に関する文献は見当たらなかったので、エビデンスとしては少し足りないかということで「×」とさせていただきました。
○圓藤座長 野見山先生は、いかがでしょうか。
○野見山委員 全く同じで、「×」にしております。
○圓藤座長 では、これも同じく「×」にして、追加すべき症状及び障害はないに分類いたします。
次は、「1,1,1-トリクロルエタン」です。上野先生、よろしくお願いいたします。
○上野委員 単独での心筋障害に関する論文は、報告書で紹介されていた論文以外に見当たらなかったので、対象外とさせていただきました。
○角田委員 1例であり、ほかの消化器系障害も単独とは考えられないというところなので、これは付けなくてもいいのではないかと思いました。
○圓藤座長 追加すべき症状及び障害はないにいたします。
次は、「トリクロルエチレン」です。上野先生、よろしくお願いいたします。
○上野委員 これは皮膚障害で、もともと中国の方に多いということと、論文で、中国の方で発症するバックグラウンドとしてHLA-B*1301アレルの保有者が重症薬疹を発症する率が高くなるということを示してありましたので、特には日本ではHLA-B*1301アレルを持つ方は稀にしかいらっしゃらないようなのですが、皮膚障害の記載はあってもいいのかなと判断しております。
○圓藤座長 武林先生は、いかがでしょうか。
○武林委員 実はまだ迷っております。中国での皮膚障害の報告があることは、よく承知しております。かなり特殊な免疫と関わるものであり、基の論文では、確か、hypersensitivity dermatitisといっていたと思います。そうすると、感作も含めて検討するのかしないのかということもあると思います。
それから、確か、この物質については、環境省の環境基準を作るときの議論でも文書に整理されていると記憶しています。その中では、今おっしゃったHLAは日本人は1%ぐらいいるという話にもなっていましたので、その観点からも、必要があれば含めるべきだと思う一方で、それぞれの論文はかなり苦労されて、症例と健康な人の比較のような形になっていて、因果関係をどこまでしっかり取るのかということで、皮膚障害という簡単な表現で本当にいいのかということも含めて、入れるにしても慎重に、扱いはもう少し整理した上で入れるべきということで「△」にしております。
○圓藤座長 角田先生は、いかがでしょうか。
○角田委員 これは皮膚障害が言われているので、「○」にしていいのではないかと思い「○」にいたしました。日本例では出ていない皮膚の疾病なので、少し違うかもしれないのですが、症例もあるので入れてもいいのではないかと思います。
○圓藤座長 そうすると、文献検索も含めて次回以降、再検討したいと思います。
次は、「沃化メチル」です。上野先生、よろしくお願いいたします。
○上野委員 そこに2016年のHeldらという、沃化メチルによる化学熱傷の症例の報告があったことと、これはLetters to Editorの形だったのですが、接触性皮膚炎の報告を見付けましたので、皮膚障害があってもいいのかなというぐらいで、この時点では一応「○」とさせていただいております。
○圓藤座長 武林先生は、いかがでしょうか。
○武林委員 文献等の所にも書いてあるのですが、Naiditchらの報告は、読んでみるとケースレポートによる事故的ばく露による皮膚障害ということで、それを採るのか採らないのかという議論が1点あるかと思います。
同じ観点で言えば、恐らく、先行する臭化メチルも同じようなcase reportがあると思いますので、見たところ、多分そこは含まれていないと思いますので、もし、これを扱うのであれば、当然、臭化メチルについても併せて検討しないと非常にバランスを欠くのかということで、ここは「△」という表現にしております。
○圓藤座長 先ほど臭化メチルは、一旦、「×」にして、追加すべき症状及び障害はないとしておりますが、これも含めて文献検索し直して、もう一度検討し、それで多数例あるかどうかを見ていきたいと思います。それを踏まえて、先ほどの臭化メチルについても見直してみたいと思います。
○角田委員 臭化メチルは皮膚障害はあるのですが、精巣障害についてもう一度見ていくということでしょうか。
○武林委員 皮膚障害のもととなる根拠も含めて、扱いが同じでいいのかということも含めて検討したほうがいいのではないかという意図です。
○圓藤座長 臭化メチルに関しても、皮膚障害について検索してあげるということですね。
○角田委員 単純にこの辺は、有機物なので、触れれば皮膚障害をまず起こしても不思議はないので、入っていてもこれはいいのかと思い、逆に沃化メチルは入っていなかったので、これは入れたほうがいいのかなと思って「○」を付けました。
○圓藤座長 精巣障害や勃起不全のほうは、一旦「×」にいたしますが、皮膚障害については、臭化メチルにどのような事例があるのか見ていきたいと思います。
次は、「アクリル酸ブチル」です。武林先生、よろしくお願いいたします。
○武林委員 十分な因果関係があるというには足りないのではないかと判断して「×」といたしました。
○圓藤座長 野見山先生は、いかがでしょうか。
○野見山委員 この症例は1つの論文から3つ記載されていて、転倒した車の運転手とその関係の人と、あとは地域住民を見ているということで、この信頼性がきちんとあるとすれば、近隣住民のばく露まで、濃度が低くなっている人まで一貫して同じ症状が出ているということで「○」にしております。そのため、この文献の信頼度によるのかなという気がしております。
○圓藤座長 1つの論文ということですね。
○野見山委員 はい。そこが少し気になるところです。
○圓藤座長 そうすると、その論文をみんなで読み直して、評価し直したほうがいいかと思います。文献をもう一度読み直したいと思います。
次は、「アセトン」です。武林先生、よろしくお願いいたします。
○武林委員 更に皮膚障害を追加する必要性はないのではないと思い、「×」にしております。
○圓藤座長 野見山先生は、いかがでしょうか。
○野見山委員 私もそのとおりだと思い、「×」にしております。
○圓藤座長 角田先生は、いかがでしょうか。
○角田委員 アセトンを触ると手がやられるというのは実験上あるので、追加してもいいと考えました。障害と言えるほど強いかと言われると微妙です。
○圓藤座長 それでは、一旦、「追加すべき症状及び障害はない」に分類いたします。
次は、「ニトログリセリン」です。上野先生、よろしくお願いいたします。
○上野委員 まず、通達における血管運動神経障害の説明では「血管を拡張させたり収縮させたりする神経の障害をいい」と書いてあるのですが、最終的に後半の落し所で、「血管運動神経障害を生じさせる化学物質としてはニトログリセリンがある」というような書き方をしてあって、私としては、異なるメカニズムを混在させているような気がしてならないのです。
それを踏まえて文献を見てみると、Monday morning anginaに代表されるような、ニトログリセリンを取り扱っている作業場で慢性ばく露している者が、週末時に作業場から離れることで起こる狭心症発作があります。その原因として、ニトログリセリンの慢性的な長期ばく露による血管内皮機能不全が考えられ、私の中では神経障害とは言い切れないところがあるので、通達の定義の議論も含めることになるかもしれないのですが、自分の中では分けて記載すべきではないかということで「○」にいたしました。
○圓藤座長 その場合、どういう症状名、あるいは障害名が妥当でしょうか。
○上野委員 血管内皮機能不全は、血管機能の障害なので、心血管障害というような言い方になるのが一番単純な言い方ではないかと思います。
○圓藤座長 心血管障害という言い方ですか。角田先生は、いかがでしょうか。
○角田委員 狭心症様発作と心筋梗塞は確実に起こると思うのですが、通達でニトログリセリンによるものは含まれると書いているので、血管運動神経障害という用語自体は適切なので、これを変えられるのかどうかということです。結局、これを分けるべきなのか、通達の書き方の問題で、それも入ると言われてしまえば加えなくていいし、それは少しおかしいから通達を変えましょうと言うなら、例えば、心血管系の障害や循環器系の障害などを入れなければおかしいかなということで、血管運動神経障害の範疇に入れてしまっていること自体が問題ではないかなということ、今までそれをやってきて、入れても問題ないという説明や周知が既になされていますからいいですよということであれば、しょうがないかというところです。
○圓藤座長 角田先生がお考えになる症状及び障害名は、どのようになりますか。
○角田委員 血管運動神経障害と書くと、メカニズムではあるけれど、これから狭心症や心筋梗塞が起こるというのがわかりにくいので、心臓に関して、狭心症、心筋梗塞が起こるのが分かるようなものをこちらに書いてしまえばいいのではないかと思います。
○圓藤座長 今の両委員の御議論について、ほかの先生方はいかがでしょうか。1つは、「血管運動神経障害」を「心血管障害」と書き改めるという手もあろうかと思いますし、例えば狭心症や心筋梗塞という言葉を追加するという手もありますし、両方併記する手もあります。分かりやすく、かつ、統制の取れた言い方がいいのではないかと思います。今までの記載の仕方の中で、血管運動神経障害という言い方は非常に細かい言い方で、これを見ると、何か心臓の血管というよりは他の部位の血管のようにも読めるので、どうかなと思います。
○武林委員 今、先生がおっしゃった血管運動神経障害は、自律神経障害であり、血圧低下や頻脈や脈圧などがニトログリセリンに直接出てこないのであれば、むしろ、今議論していただいた狭心症様発作みたいなほうが実際には分かりやすいというのは確かです。
ただ、そこを確認してからでないと、いきなり言葉を差し替えるのは難しいし、乱暴かもしれません。そもそも、「血管運動神経障害」という言葉がニトログリセリンに入っていること自体が妥当なのか、多分、圓藤先生は最初にそのように書かれたのだと思いますが、そこはもう一度ちゃんと確認した上で、狭心症様の発作が起こるということは、みんなの共通の理解であると思いますけれども、それが単なる追加でいいのか、血管運動神経障害という言葉を残した上で差し替えるのかというのは、少し整理した上で判断したほうがいいのではないかという気がします。
○角田委員 もしかすると、カルシウムシアナミドの多分シアンか何かがガーッと出てきて、そのメカニズムをこう表したのかもしれないと思います。
○圓藤座長 確かに、カルシウムシアナミドはそういう作用がありますかね。
○角田委員 はい。
○圓藤座長 血圧を下げたりする作用がありますからね。では、ニトログリセリン、カルシウムシアナミド、ニトログリコールの3つと、血管運動神経障害という言葉、それから、全体を整理したいと思います。ここの言葉が作られたときのいきさつは残っていますか。
○小永光職業病認定業務第二係長 それは確認させていただきます。現状は、狭心症様発作は載っているのがニトログリコールであり、残りの2つの物質にはそれが入っておりませんので、そのときの整理があるかどうか確認いたします。
○圓藤座長 もう一度全体を整理し直したほうがいいかもしれないので、それは次回までの宿題にさせていただきたいと思います。
次は、「メタクリル酸メチル」です。上野先生、よろしくお願いいたします。
○上野委員 私はこれを「○」にしております。Nissenの論文は、オペ室の看護師が骨セメントの混合中にメタクリル酸メチルの蒸気にばく露して、角膜潰瘍が起こったということだったので、通達の内容からすると、前眼部の障害としてもいいのかと考えて「○」にいたしました。
○圓藤座長 武林先生は、いかがでしょうか。
○武林委員 1つの論文だけだったので、これだけで因果関係ありとまで言うのは難しいかと思います。これは起こっているという事実はそのとおりだと思うのですが、もう少しほかにも同じような報告があればと思いましたけれども、特にばく露濃度が出てくるわけでもありませんし、この論文だけでは十分に「○」と言うには判断が難しいだろうということで「×」にいたしました。
○圓藤座長 このNissenの論文には何例か載っているのでしょうか。
○武林委員 確か1例です。
○角田委員 これは1例です。セメントとの混合中というのが少し気になるのです。
セメントの粉じんが眼に入って、血管に損傷が出来たのかという気もしないでもないです。
○圓藤座長 セメントの粉じんというのは、結構怖いですからね。1例であるということですので、ほかの症例があるかどうかだけ確認して、なければ落としたいと思います。
次は「キシレン」です。これは前眼部障害があってもいいのではないかと思いましたが、熱キシレンのばく露と限定されていましたので、余り好ましくないのではないかなということで「△」にしました。武林先生、いかがでしょうか。
○武林委員 論文を読んでみたところ、そもそも自覚的なアウトカムだけということもありますので、今、先生がおっしゃったことも含めて、今ここで採る必要性はないのではないかということで「×」といたしました。
○圓藤座長 上野先生、よろしいですか。
○上野委員 結構です。
○圓藤座長 角田先生、いかがでしょうか。
○角田委員 キシレンは、眼に入ればまずいかなと思ったのですが、刺激症状ぐらいであれば入れなくてもいいかと思います。
○圓藤座長 もちろん、ここになくても労災として認定されることはありますので、今回は、列挙しないことにいたします。
次は、「パラ-tert-ブチルフェノール」です。感作性のほうが気になったのですが、日本産業衛生学会の感作性物質に挙げていないということで、私は「×」にいたしました。感作性の分類は資料4がありますので、少しそれも見ておいていただきたいと思います。
○小永光職業病認定業務第二係長 日本産業衛生学会の感作性分類は資料4の18ページです。
○圓藤座長 18ページですか。採るとしたら気道の第1群、それから皮膚の第1群について特に考えていってはいかがかと思いますが、感作性以外の皮膚障害が起こるのか起こらないのかという議論も必要ですし、今まで感作性か非感作性か区別していないので、全体の流れを含めて今日は議論はしないでおきたいと思っております。これについて、一般論として議論しておきたいと思いますが、何か特にございませんか。特に、第1群になっているようなものについての取扱いを考えていきたいと思っておりますが、宿題にしておきたいと思います。よろしいでしょうか。
(同意)
○圓藤座長 続いて「ベンゼン」です。武林先生、いかがでしょうか。
○武林委員 文献を読みましたが、そこにもありますように、1つの報告は事故的な非常に高いばく露、もう1つもばく露濃度が33ppm、59ppmということですので、現状を考えるとかなりオーダーも変わってきていますので、ここで採る必要はないのではないかということで「×」としております。もし、非常に高くても含めるということであれば、もちろん判断は変わるかと思います。
○圓藤座長 野見山先生、いかがでしょうか。
○野見山委員 事故的ということで、「△」にしています。先ほど武林先生がおっしゃったとおりで、基本的にそれを含まないのであれば「×」でよろしいかと思います。
○圓藤座長 多数例あって、かつ、我が国で今後そのような事件が起こるかどうかということで見ていきたいと思います。ベンゼンについてはかなり厳しい規制がされていますので、そんなに高いばく露は今のところ想定しなくていいのかなと考えております。では一旦取り下げます。
次は、「メチレンビスフェニルイソシアネート」です。感作性について、特に挙げていないということで落としました。上野先生、いかがでしょうか。
○上野委員 私はこれも必要ないと思いましたし、文献を見たら、若干この物質と職業性喘息の発症に関するものが見受けられたので、感作性と何か関係があるのかなと少し思いましたけれども、今の圓藤先生の御説明で、特にということであれば異存はございませんので、「×」でいいと思います。
○圓藤座長 感作性の議論はまた後ほどいたしますが、皮膚障害と気道障害は既に入っておりますので、その中に感作性のものも含まれているということで、今のところはあえて分ける必要はないということで「×」にいたします。
「ヘキサヒドロ-一・三・五-トリニトロ-一・三・五-トリアジン」です。上野先生、いかがでしょうか。
○上野委員 これは迷いましたが、「×」でいいと思っております。文献を調べると、この物質を主成分とするcomposition C-4という爆薬を製造するときの事故的な急性ばく露の症例が割と見受けられて、その場合には痙攣発作の症例報告があるのですが、そのときに意識消失があったかなかったかという点の厳密な区別というのは、ほとんど記載されていません。最初懸念されていたのは、意識消失を伴う痙攣だったので、意識消失を伴わない痙攣があるかどうかというところだったのですが、その区別が付けられるほどのエビデンスが集められなかったのと、もともと急性ばく露の症例でもあるので、今回は対象外としてもいいのかなと思います。
○圓藤座長 角田先生、いかがでしょうか。
○角田委員 痙攣のない意識消失と意識消失のみを区別するには、何か文献的に弱いのではないかと思いましたので、特に必要ないのではないかと思います。意識消失を伴う痙攣はあるので、あえてもう1つ付けなくてもいいかなと思いました。
○圓藤座長 野見山先生、よろしいですか。
○野見山委員 これは、そもそも本文の今採択されている「意識消失を伴う痙攣」の、「意識消失を伴う」というのが必要なのかどうかということかなと思います。結局、「痙攣」と書いてしまえばそれで収まってしまうのかなという気がいたします。どういう経緯でそれが決められたのかは分かりません。
○圓藤座長 しかしながら、今までの告示内容を修正するほどのエビデンスはないということで、議論から外したいと思います。
次は、「有機リン化合物」です。上野先生、いかがでしょうか。
○上野委員 前回の議論で、皮膚障害が有機リン化合物に共通した症状等であるかも含めての調査ということでしたが、NIOSHのSkin Notation Profilesに登録されている有機リン系農薬全てに共通するものとはちょっと言えないかなと思います。ただ、ジクロルボスに関しては皮膚障害というものが追加されてもいいのかもしれないということで、「△」にさせていただきました。
○圓藤座長 角田先生、いかがでしょうか。
○角田委員 こちらは農薬の特徴かもしれないのですが、事故的でかつ混合物の結果ということが多いと思ったので、あえて入れなくてもいいかなと思って入れませんでした。
○圓藤座長 武林先生、いかがでしょうか。
○武林委員 私も特に、今の議論を踏まえて、追加する必要はないのかなと思います。そもそもこの中には、コリンエステラーゼの阻害のようなことは出てこなくて、別の話ですけれども、全て症状として現れているので、こことの整合性も含めて考えなければなと思います。
○圓藤座長 症状のほとんどがコリンエステラーゼ活性阻害に伴うものですね。
○武林委員 ただ、コリンエステラーゼとは明示的に出てこないので、そこが原則だとすると先ほどのところもコリンエステラーゼの阻害そのものではなくて、症状との突き合わせで、記載しているということなのかなと思いました。ここに関しては、追加の必要はないのではないかと思います。
○圓藤座長 それでは、追加はいたしません。
次は、「カーバメート系化合物」です。上野先生、いかがでしょうか。
○上野委員 これは、メソミルを含むカーバメート系と皮膚障害との因果関係に関する情報が十分ではないということで、「×」にさせていただきました。
○圓藤座長 角田先生、いかがでしょうか。
○角田委員 こちらに出ているのは、1例で事故的なもので、日本の産業職場では余りないので、必要ないのではと思いました。
○圓藤座長 次は、「ジチオカーバメート系化合物」です。上野先生、いかがでしょうか。
○上野委員 個人的には、マンガンを含有しているマンネブが気になったのですが、報告書にあるお二人の報告がマンネブ単独によるパーキンソニズムということで論じていたのですけれども、これ以外の文献を検索したところ、ほとんどがマンネブとパラコートの混合ばく露によってパーキンソン病の発症リスクが上がるというような、そういう混合ばく露の文献でしたので、マンネブによるパーキンソン病の発症ということについては、ちょっとエビデンスが十分とは言えないかなと判断いたしました。
○圓藤座長 角田先生、いかがでしょうか。
○角田委員 こちらもやはり混合ばく露であるので、因果関係はかなり微妙ではないかなと思ったので、これは入れるにはエビデンスとしては弱いと判断いたしました。
○圓藤座長 武林先生、いかがでしょうか。
○武林委員 同じ判断です。
○圓藤座長 野見山先生、いかがでしょうか。
○野見山委員 結構です。それでいいと思います。
○圓藤座長 では、これも外します。以上で個別の検討は終わりますが、何かここまでで意見ありますでしょうか。
○角田委員 ベンゼンの塩化物に関して議論していません。
○圓藤座長 抜かしていましたね。54番の「ベンゼンの塩化物」です。先ほどの資料3の中に5つあるのですが、今のところはいかがでしょうか。特定の障害があるというものは見えなかったのですが、例えばパラ-ジクロロベンゼンは防虫剤として使用していて、労働者ではなくて一般の家庭の人が防虫剤を大量に家の中にまいてという事件もあったようですけれども、特殊な環境かなと思って「×」にいたしました。武林先生、いかがですか。
○武林委員 確か、この報告書だとそれぞれの研究が物質ごとになっていたということもありますので、この整理の仕方でいいのかそれぞれでやるべきなのかということで、そもそも論になってしまいますが、今まで一緒だったので、むしろ違うそれぞれの物質のものを混ぜて1つのリストを作るということがいいのか、それぞれにするのがいいのかということは整理しておいたほうがいいかなと思いました。今までの経緯は、おそらく塩化物の中に含まれるものは全部まとめてリストに書いてきたと思うのですが、研究がもし進んで物質ごとに作れるのであれば、本来はそういう整理をしておいたほうがいいのではないかと思います。その観点では十分に読んではいませんでしたので、「△」という非常に曖昧な判断にしております。
○圓藤座長 先ほどの資料で、オルト-ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、パラ-ジクロロベンゼン、ヘクサクロロベンゼン、それぞれで前眼部障害、気道障害、肝障害を見て、またそれに追加するものがあるか見ていく必要はあろうかと思います。軽く見た感じでは、特異的な物質と特異的な症状というのは見付からなかったのですが、もう一度見てみましょうか。それとも一旦ここで終わりにしてよろしいでしょうか。
○角田委員 1つだけなのですが、オルト-ジクロロベンゼンは、除草剤の製造中ということなので一応、産業職場かなという感じです。ただ、濃度がないので、これは1例だけ皮膚が出ていて、上海でモノクロロベンゼンやクロロベンゼンでも原因の皮膚炎と判断された例があるという文献です。ただ、確かに皮膚にクロロベンゼンやジクロロベンゼンを落とせば皮膚障害が出ると思うので、皮膚障害はあってもいいかなという感じですが、そうしたら有機物は皆そうではないかということにもなるので、あえて入れるほどのものかなということです。ただ、物質がそれぞれ別で1例ずつというのもちょっと弱いのですが、中国では皮膚炎や皮膚痤瘡が結構出ているということです。いずれも、こちらの2つは産業職場かなと思います。
○圓藤座長 では、この辺も分けて、追加する症状があるかどうか再検討いたしましょうか。恐らく難しいですが、確認という意味で検討してみましょうか。
○武林委員 確認はしてもいいような気はいたします。
○圓藤座長 そのほか、全体として個別に議論しなかった物質を含めて意見はございますか。感作性については残っておりますが、特によろしいですか。
(同意)
○圓藤座長 確認するものが宿題として結構残っておりますが、追加すべきとされた物質については、今日の議論を踏まえて、各先生方に次回までに評価の理由、文献等、文献等にある職業ばく露の状況を再確認いただいて、告示上の表記についても確認いただきたいと思います。また、次回以降再検討、それから確認となったものについては、次回までに文献等も調べていただいた上で、確認して、加除修正していただきたいと思います。
なお、本日「追加すべき症状及び障害はない」とされた物質については、一旦検討の対象外にしたいと思います。事務局は、本日の検討で必要とされた文献や、これから委員より依頼があった文献等については、入手をお願いいたします。このような進め方で、次回の検討会では既に告示に記載されている物質の追加すべき症状及び障害について取りまとめたいと思います。
各先生方に宿題がございますので早めに持ち寄って、最後は全体としてまとめたいので、持ち寄ったものを回覧した上でこの検討会に持ち寄りたいと思いますので、早めの作業をお願いいたします。
感作性については、前回のときから残っているのは、ニッケル及びその化合物、ベリリウム及びその化合物、2-ヒドロキシメチルメタクリレート、メチレンビスフェニルイソシアネート、N-(一・一・二・二-テトラクロルエチルチオ)-四-シクロヘキセン-一・二-ジカルボキシミドの5物質ですが、日本産業衛生学会の資料も踏まえて検討したいと思います。そのときに、既に例えば皮膚障害等があるものに対して感作性が分かるような表記に変えるのか、あるいは追加するのか、それが悩ましいところです。またそれらも含めて御意見を頂きたいと思います。
皮膚障害の場合はそれでいきますが、気道障害の場合は喘息という言い方もありますし、ほかの言い方もありますので、追加すべき事柄というのは結構難しいかなと思います。次回までに結論が出ないようでしたら来年度に回して、感作性について全体としてどうするのかを議論した上で、個別の物質について議論することとするか、次回の検討会に回してもいいのではないかなと思います。何か御意見はございますか。
○武林委員 もう一回確認ですが、この議論は、今まで皮膚障害や気道障害とされているものに、感作性というものを加えるか加えないかという観点で、それをより狭くするという意味か、もう少し別に、例えば皮膚障害というところに更に感作性障害を加えるという意味で、それも含めて議論するということでしょうか。
○圓藤座長 1つには、狭くなる場合もありますし、追加するという見方もあるし、あるものには感作性が付いていて、あるものには付いていないというと、付いていないものには感作性がないのかと誤解を招くおそれもあると、そういうこともありますので、全体としてどういう表記がいいのかというのを議論しないと、個別の議論を先にやってしまうと混乱を招くのではないかと思いますので、混乱を招かない表記の仕方を考えたいと思います。そうしますと、個別の議論より全体での議論を先にした上で、あるいは許容濃度の提案理由書なども見た上で検討したいと思いますので、次回までには厳しいかなと思います。そのため、来年度の検討課題かなと思っております。
○武林委員 話を蒸し返すようですが、先ほどのトリクロルエチレンは、日本産業衛生学会のリストでも一応、皮膚感作性1になっているのです。まずは今までにのっとって、入れるなら皮膚障害として入れて、その後、感作性ということを加えるかどうかは、その先の議論という、そういうイメージでも構わないということでしょうか。まず広く今までと同じような入れ方をするということを優先する、つまり、宿題になっていて、これからもう一回読み直すのですが、恐らく資料4の許容濃度の勧告を確認しても、トリクロルエチレンは皮膚感作性分類が1になっていますから、皮膚障害は基本的に感作性との関連のある皮膚障害ということになっていると思います。それでも文献で読んだときに、皮膚障害を加えるという判断をした場合には、まずは皮膚障害として加えておいて、感作性という言葉をどう使うかは、ほかの物質と横並びで、その先でもう一回検討するというふうに置き換えて、読み直せばいいということでよろしいでしょうか。
○圓藤座長 取りあえず、そのようにしておきましょうか。特に、行政の立場からの御意見はございませんか。
○小永光職業病認定業務第二係長 今までは、感作性と区別せずに、感作性のものも感作性を書かずに記載していると通達上書かれていますので、実際に今入っているものについて、感作性のみを確認したのか、両方の文献を確認した上で載せたのかというのは、やはり確認しないと、例えば感作性のみに落とすというのは難しいのかなと思っています。変更するにしても慎重に議論、確認は必要なのかなとは思っております。
○圓藤座長 そうしますと、今期の検討会としては、感作性か否かというのは置いておいて、皮膚障害があるかどうかということで議論しておきたいと思います。来期で感作性の取扱いについて議論したいと思います。そのときに、今の科学における感作性の考え方、明白に分かれるのかということも含めて議論しないと、中途半端にやってしまうと余計に混乱を起こしてしまうので、慎重にやりたいと思っております。そのほか議論すべきことは、発がん性等についてはまた来期以降でやりますし、来期は六百何十物質が控えていて、そのうちの症例のあるものというのは100程度あるようですので、それの議論も来期はしていかざるを得ないのかなと思っております。ほかに御意見はございませんか。
それでは、本日の検討会はこれで終了いたします。長時間ありがとうございました。次回の日程を含めて、事務局から御説明をお願いいたします。
○秋葉中央職業病認定調査官 次回の日程ですが、既に日程調整をさせていただいており、3月9日(月) 10時からとなっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○圓藤座長 以上ですね。
○秋葉中央職業病認定調査官 はい。本日は、お忙しい中大変ありがとうございました。
○圓藤座長 どうもありがとうございました。