2019年12月13日 第2回国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループ 議事録

政策統括官付参事官付統計企画調整室

日時

令和元年12月13日(金)10:00~12:00

場所

中央労働委員会7階 講堂
(東京都港区芝公園1-5-32 労働委員会会館)

出席者

構成員(五十音順、敬称略、○:主査)

  臼井 恵美子
  大久保 一郎
  小塩 隆士
 ○加藤 久和
  小山 泰代
  津谷 典子
  樋田 勉

構成員以外の関係者

  西郷 浩(早稲田大学政治経済学術院教授)


事務局

  鈴木政策統括官
  山田政策立案総括審議官
  武藤参事官(企画調整担当)
  中村世帯統計室長
  細井統計企画調整室長
  飯島政策立案支援室長
  大野審査解析室長
  川田世帯統計室国民生活基礎統計専門官
  寺坂審査解析室総合解析係長

議題

国民生活基礎調査の推計方法の見直しについて

議事

 


○細井統計企画調整室長
 おはようございます。ただいまから第2回国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループを開会させていただきます。構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中を御出席いただきありがとうございます。臼井先生、小塩先生におかれては、少し遅れての御出席ということですが、本日は全ての構成員に御出席をいただくということになっております。そして、審議協力者といたしまして、早稲田大学政治経済学術院の西郷先生に御出席をいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。また、前回のワーキンググループ以降に、事務局の異動がありましたので御紹介をさせていただきます。政策統括官の鈴木です。政策立案総括審議官の山田です。参事官の武藤です。審査解析室長の大野です。審査解析室総合解析係長の寺坂です。それでは、鈴木政策統括官より、御挨拶をさせていただきます。

○鈴木政策統括官
 それでは改めまして、御参集の構成員の皆様方、本日は年末のお忙しい中、当ワーキンググループに御出席いただいて、誠にありがとうございます。令和元年がもうすぐ終わろうとしておりますけれども、私どもにとりましては、今年は統計不正問題に対応する1年でございました。皆様方には御心配、御迷惑をおかけしまして、誠に申し訳ございません。厚生労働省としましては、8月に厚生労働省統計改革ビジョン2019というのを策定いたしまして、現在、再発防止、信頼回復に努めているところですが、何よりもこの厚生労働統計が国民に親しまれる統計として再生するためには、統計調査をきちんと行い、その結果をきちんと公表していくことが道筋かと思っております。そのためには、不断の取組として、統計の精度向上に努めていきたいと考えています。
 本日の議題である、国民生活基礎調査、これは名前のとおり、国民生活に最も近しい調査でありまして、国民の皆様方から、いろいろと御活用いただいていると思っております。本日はちょっと間をおいての開催ですので、議事内容が盛りだくさんとなっておりますが、皆様方の御知見を頂戴しまして、御忌憚のない御意見を頂きまして、議事が有効なものとなりますようお願い申し上げまして、開会の御挨拶とさせていただきます。よろしくお願いします。

○細井統計企画調整室長
 本日の審議ですが、12時までの予定とさせていただいておりますが、審議の状況によりましては、予定時間を若干過ぎる可能性もあります。そのような場合、御予定のある先生方には、御退席していただいても結構でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、以降の進行を、加藤主査にお願いいたします。

○加藤主査
 皆様本日はお忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。第1回のワーキンググループでもいろいろな御意見が出たと思います。今日は、先ほど細井室長からもお話がありましたように、非常に盛りだくさんということですので、早速ではありますが第2回ワーキンググループの議事を進めてまいりたいと思います。議事となります推計方法の見直しについてですが、前回のワーキンググループでは、事務局より日本の世帯数の将来推計(全国推計及び都道府県別推計)を利用した、新たな推計方法の提案がありました。本日は、国民生活基礎調査の過去のデータを用いて、新たな推計方法による試算結果を、事務局において取りまとめていただきました。その試算結果について御議論をお願いしたいと思っております。資料につきましては、御覧のように非常にボリュームがございますので、まず1ページから20ページまでの世帯票の試算結果まで御議論いただきまして、次に21から31ページの健康票、介護票の試算結果、最後に32から42ページの所得票、貯蓄票の試算結果と区切る形で進めさせていただきたいと考えています。それでは早速ですが、事務局より推計方法の見直しについて御説明をお願いいたします。

○中村世帯統計室長
 それでは資料の1ページ目をお開きください。6月のワーキンググループにおいて、新たな推計方法について私どもから提案させていただきました。具体的には、これまでの拡大乗数の持ち方を変えまして、世帯構造と世帯主年齢階級をクロスした層別に乗数を持つというのが1点目。2点目は、ベースになる情報は、国勢調査結果ではなくて、社人研が公表しております世帯数の将来推計を活用する。国民生活基礎調査の大規模調査結果の推計については、この将来推計の都道府県別推計を使います。簡易調査結果につきましては、全国推計を利用いたします。今回のワーキンググループでは、この新たな方法によって算出した試算値と、現行の推計結果、国勢調査結果を比較した結果を取りまとめて資料にしております。なお、今回試算したものは2年分になっており、大規模年の平成22年データと中間年の平成27年データを用いて概況等で出している主な結果を算出しております。
 1ページ目の中程からですが、この社人研の将来推計を利用するに当たって、整理すべき点というのが4点ほどあります。1点目は、都道府県別推計の結果は、国勢調査と同じ年の5年ごとの数値しかないので、例えば2016年の都道府県別の世帯構造、世帯主年齢階級別世帯数をどのように算出するのかということです。
 2つ目は都道府県別推計には、指定都市の推計値がない。これをどうするのかということです。
 3点目は、全国推計や都道府県別推計では、三世代世帯や母子世帯等の表章がない、これをどうするのかという問題です。
 4つ目が、実際の国民生活基礎調査では、世帯主年齢の不詳というものが出現します。この不詳データの扱いをどうするのか。この4点について、次のページ以降でその方法を御説明します。
 2ページ目を御覧ください。まず、1つ目の推計値のない年次の算出をどうするかということですが、真ん中に社人研の将来推計の公表サイクルというものがあります。国勢調査結果が出た後に一番先に出るのが、全国の推計人口、その後に全国の世帯数、その後に都道府県市町村別の人口、最後に都道府県別の世帯数というものが出されます。おおむね国勢調査から4年後ぐらいに出るという仕組みになっております。
 下の表を御覧いただきたいのですが、赤枠の所、全国推計がまず先行して出されます。全国の値が出るわけです。その後に青枠の所、5年ごとの都道府県別の数値を出しているわけですが、全国推計という答えがあるので、それを社人研の5年ごとの推計数については、都道府県別に割り振るというやり方をしております。したがいまして、今回2016年の数値をどうするかということですが、同じように割り振るという扱いにしたところです。
 3ページ目を御覧ください。ここからが具体的な算出方法になります。まず作業として、2016年の都道府県別の世帯数の算出ですが、アイウの順番に算出しております。アの所では、2015年と2020年の都道府県別の世帯数が出ておりますので、その割合を求めます。イの所で5年間の差があるわけですが、その差を2015年の割合に、機械的に5分の1年分のばすというやり方で、2016年の構成割合を算出しています。ウの所で、2016年の全国推計世帯数に、イで算出した割合を乗じて、都道府県別の推計世帯数を求めると、北海道でいいますと、242万1,554世帯となります。
 次に4ページ目を御覧ください。次に北海道の世帯構造と世帯主年齢階級別の推計世帯数を算出するわけですが、まず赤枠のアの所で、2015年と2020年の構成割合を求めます。次にイの所で5年間の割合の差を直線的に1年分のばした2016年の構成割合を求めます。ウの所で、先ほど3ページで算出した2016年の北海道の世帯数に、イの割合を乗じるということで、緑枠の世帯数を求めています。
 次に5ページ目をお開きください。2つ目の指定都市別の数値をどうするかということですが、2016年の札幌市を例にしております。左の赤い点線の枠は、2015年の国勢調査結果で、北海道と札幌市の世帯数です。これを右の赤枠のとおり、北海道に占める札幌市の割合を求めます。
 次に6ページ目を御覧ください。緑枠の4ページ目で得られた北海道の推計世帯数に、赤枠の札幌市の割合を乗じる。そうして右下の青枠の2016年の札幌市の推計世帯数を算出するというやり方をしております。
 次に7ページ目を御覧ください。母子世帯や三世代世帯などの表章していない部分をどうするかということですが、2015年の国勢調査結果から、ひとり親と子から成る世帯、これを母子世帯と母子世帯以外の世帯に分割した割合を求めます。同様にその他の一般世帯を三世代世帯とその他の世帯に分割した割合を求めます。表の上に文章がありますが、※の1つ目の所、当初私どもとしましては、父子世帯も区分して乗数を作るという考え方をしていましたが、そもそも父子世帯の出現頻度が非常に低く、都道府県別の数値が年によっても安定しないので、ここについては母子世帯以外の世帯という、2区分にして、父子世帯についてはこの母子世帯以外の世帯の所の乗数で算出するということにしております。
 ※の2つ目ですけれども、国勢調査では、母子世帯は55歳以上でくくられております。黄色のように、55から59歳、60から64歳の2区分についてはまとめて同じものを用いるということにしております。
 次に8ページ目を御覧ください。4ページで得られた北海道の推計世帯数に、先ほどの母子世帯などの割合を乗じて、それぞれの推計世帯数を算出しております。
 9ページ目は、4つ目の世帯主年齢不詳の扱いについてです。実際に黄色にマークをしておりますが、各世帯構造の計の欄を用いた拡大乗数を用いるということで、以上を前提にした試算結果を出しています。
 次に10ページ目を御覧ください。ここからが実際の新たな推計方法による平成22年と27年の結果です。世帯票の結果の表1ですが、これは世帯構造、世帯類型別世帯数と平均世帯人員を求めております。表側の平成22年、27年の所は数値が3段書きになっていて、現行はこれまでの方法による推計値、現在公表している値です。新推計という所ですが、これが今回のやり方で試算した結果で、ピンクがかった所は国勢調査結果です。黄色のマーカーがありますが、これは現行と新推計を比べ、国勢調査に近いほうを黄色にしています。平成22年の世帯数を見ていただきますと、三世代世帯、父子世帯以外は、新推計のほうが国勢調査結果に近い結果となっております。平成27年を見ていただきますと、三世代世帯、母子世帯、父子世帯以外は新推計のほうが国勢調査結果に近い値となっています。なお、いずれの年次においても、父子世帯の所ですが、国勢調査の結果に比べますと、倍近い過大推計値となっております。ただし、もともと出現度合は低いので、構成割合だけで見ますと、0.1ポイント程度となっております。ここは後から所得票にも影響している部分がありまして、御議論いただく点と思っております。
 次に11ページを御覧ください。表2は、世帯構造別に65歳以上の者のいる世帯数です。平成22年と27年の世帯数を見ますと、三世代世帯以外は新推計のほうが国勢調査結果に近い値となっています。
 次に12ページを御覧ください。表3ですが、世帯構造別に高齢者世帯数を見たものです。平成22年、27年ともにその他の世帯以外は、おおむね新推計のほうが国勢調査に近い結果となっております。
 13ページ目を御覧ください。表4ですが、児童のいる世帯の推計です。平成22年、27年ともに黄色のマーカーをしておりますが、夫婦と未婚の子のみの世帯、ひとり親と未婚の子のみの世帯は新推計のほうが国勢調査結果に近い値となっております。
 次に14ページ目を御覧ください。平成22年の世帯票の個人単位の集計です。表5-1ですが、性・年齢階級別に、15歳以上の者の仕事の有無の割合を現行推計及び国勢調査結果と比較したものです。真ん中の男の所ですが、35歳から39歳の階級以上の所で、新推計のほうが国勢調査結果に近い結果となっています。右側の女性は多くの階級でこちらは現行の推計のほうが国勢調査結果に近い結果となっております。表の上に文章が何行かありますが、4行目のなお書きの所、仕事の有無の不詳を除いた割合で今回、総数を求めて割合を出しているのですが、この不詳の人数というのが、国民生活基礎調査に比べて、国勢調査のほうが2倍ぐらいあるといったところが、恐らく割合に何か影響を与えているのではないかと思っております。表5-2ですが、労働力調査で比較を行っております。見ていただきますと、おおむね国勢調査結果で比べたものと同じような結果になっています。
 次に15ページを御覧ください。表6-1と6-2は、平成27年のデータで、先ほどの表5と同じ集計をしたものです。おおむね平成22年と同じような結果の出方をしております。文書になお書きがありますが、平成27年になりますと、国民生活基礎調査に比べ、国勢調査の不詳が4倍を超えるぐらいになっています。
 次に16ページを御覧ください。表7-1と7-2です。これは平成27年のデータを用い、仕事ありの者について、雇用形態の構成割合を見たものです。男女ともに現行の値と新推計の値、どちらが国勢調査の結果、労働力調査の結果に近いのかというのがバラバラに出ております。なかなかここは評価が難しいのかなと思っております。
 次に17ページから19ページです。こちらは表8の平成22年データを用い、世帯構造、世帯類型別の世帯数を都道府県別に出しております。現行と試算①と新推計の3種類の推計値と、国勢調査結果を比較しております。
 17ページの表の上のほうの結果という赤枠の所を見ていただきますと、これが先ほど申し上げました3種類の推計値のうち、平成22年の国勢調査に最も近い都道府県の数をカウントしております。新推計の所が赤枠で主に大きい数値になっていますが、一部の区分を除き、国勢調査結果に近い結果になったということです。なお、今回試算①というのが初めて出てきたのですが、これは1回目のワーキンググループにおいて、樋田先生から都道府県別推計の世帯数にある程度の誤差があるのであれば、世帯票の有効回収世帯数で調整する過去に研究会で行った試算①の方法でも検証してはどうかといった御意見を頂きましたので、今回併せて数値を作ったものです。
 次に20ページを御覧ください。こちらの表9は年齢階級別に世帯人員数を見たものです。平成22年、27年ともに、一部の年齢階級を除いて、新推計のほうが国勢調査結果に近い結果となっております。以上で一旦切りまして、御議論をお願いいたします。

○加藤主査
 ありがとうございました。事務局から日本の世帯数の将来推計を利用するに当たって整理するべき点、世帯票の試算結果についての御説明がありました。非常に痛し痒しの所もありますが、一般的にどうなのか、これについては委員の皆様、まず御質問、御意見等ありましたらお願いできればと思います。どなたからでも御自由に御発言いただければと思います。津谷先生、よろしくお願いします。

○津谷委員
 はい。最初3分の1ぐらいの御説明をいただいて思ったのですが、新しい将来推計世帯数を使って推計が行われていますが、この将来世帯推計は都道府県別には5年に一度しか行われていないので、基本的にここではリニアインターポレイション、つまり線形内挿を行っているということですよね。線形に内挿していくということで、結果をみると圧倒的に新しい推計方法で将来推計世帯数を算出する方法が適しているように思います。
 ただ気を付けなければいけないと思った点が3つほどあります。まず、現行の方法と新しい方法と国調を見比べて、どちらがどれぐらい近いかということを統計的に検討することです。これはこれでよいのですが、結果を見てみると、ほとんど差がないものと、先ほどの父子世帯のように大きく変わっているものがあります。ですので、単にどちらがより近いかという比較だけではなく、どれくらい近いか、それともかい離しているのか。そして、統計的に有意な差があるものについては、特に注意しなければいけないと思います。これを見てみますと、非常に数が少ない、そして割合が少ない場合にかい離が見られるようです。小さな数は統計的な安定性に欠けるだけでなく、これを推計に使いますと、ブレの大きい結果が出る傾向があります。特に小さな数や割合を分母として割る場合、小さな数値の差がものすごく大きな推計結果の差を生み出すことになるのではないかと思います。とはいえ、たとえ数が少なくても「その他」として一括りにしてしまえないケースもあります。例えば、政策的に大変重要な母子世帯もそうですが、父子世帯もそうです。これには2倍近い差があるというお話でしたが、具体的にどれぐらいの推計値の差があるのか。数値としての数理的な説明はさておき、社会的、政策的に大きな意味があるものについては慎重に考える必要があると思いました。
 あと1つは、推計値のパターンについてです。全くパターンが見られないものが散見されますが、年齢別に見たときに男女でパターンが大きく違っています。それについて私たち委員も意見を出し合って、もし対応が必要なら対応していただく必要があるのではないかと思います。ちなみにこの年齢の不詳ですが、性別と並んで年齢は最も基本的な人間の属性ですが、年齢の不詳はこれからも増えてくると思いますので、これをどう処理するかは難しい問題です。そしてその不詳が今度は世帯主の年齢で発生し、さらに世帯構造別に世帯主の年齢で集計する場合や、ましてや地理的な区分で集計するということになってきますと、何重にもクロスが掛かってきますので、ますますこの不詳の影響が大きくなる可能性があるのではないかと思いました。
 3つ目ですが、先ほど就業に関して、仕事をしているか、していないか。している人はどういう就業形態なのか。これは従業上の地位と呼ばれるものですが、このような就業の有無・形態別のフィットについての検討を、国調と労調もお使いになっておやりになっていたと思います。これについては加藤先生のほうが御専門ですので、主査の御意見をお伺いしたいのですが、例えば年齢は1年経過すると全員が1歳年を取る、つまり全員が同じ方向に一定の規則性をもって変化するという基本的な属性ですが、仕事はそうではありません。女性の場合は特にそうですが、仕事を辞めたり、また始めたりというように、非常に出入りの多いもので、本来ライフコースの中で見ていくべきものです。国調は実施年の10月1日付けの情報を収集していますが、労調は毎月実施されていますので、ここでは年次報告という形の年の平均を使っているのでしょうか。

○中村世帯統計室長
 5月分でやっています。

○津谷委員
 分かりました。

○中村世帯統計室長
 国民生活が5月中の仕事なので、同じものでやっています。

○津谷委員
 そうですか、それなら結構です。次に従業上の地位についてですが、私もこれについて国勢調査を使って分析したことがあるのですが、国勢調査の質問の仕方も変わってきていまして、特に雇用者の内訳が変わってきています。雇用者は人に雇われて働くエンプロイーですが、その種類の区別は難しい場合があるのではないでしょうか。国調は自己申告ですので、従業上の地位を自分で判断して回答するとなると、その情報にどれぐらい信頼性があるのかということについて疑問の余地があるのではないかと思います。これを考えると、従業上の地位を基準として推計結果を見たときにどうなるのか。ここまで合わせていくとなると、どうしても無理が出てくるように思いますので、どちらの推計がより適切かの検証の基準をどこまで設定するのかということについても、再考する必要があるのではないかと思います。完全にフィットしたらむしろ驚きですので、私はパターンが見られないというのも、ある程度予想された結果かと思います。以上です。

○加藤主査
 ありがとうございました。今の件について何かありますか。

○中村世帯統計室長
 まず1点目の父子世帯の過大推計については、先ほども御説明いたしましたが、所得票の所でも若干課題かなというところがありますので、今回、拡大乗数の持ち方を母子世帯以外の所で拡大乗数を持たせているのですが、そこの工夫の余地があるのではないかと思っております。

○津谷委員
 ひとり親とその子からなる世帯を、母子世帯と父子世帯とそれ以外の世帯という3つに分けていますが、現段階ではまだ父子世帯が非常に少ないので、母子世帯だけをくくり出したわけですが、残りの母子世帯以外の割合を乗数に使っておやりになったということですね。ただ母子世帯以外の世帯に占める父子世帯の割合は、まだそれでも少ないですよね。

○中村世帯統計室長
 はい。

○津谷委員
 ですので、母子世帯とそれ以外の世帯を足して2で割るという、そんな大雑把なことをやってもいいのかなと、ちょっと私は心配に思いました。

○中村世帯統計室長
 私どものほうで、例えば先生方から御意見を頂いて、次の3回目でまた集計をしてお示ししたいと思っております。具体的には、今1つ考えているのは、母子世帯と父子世帯をまとめたもので乗数を作るというのが1つあって、試算する価値があるのではないかかと思っております。それ以外にも何かこういうやり方で数値を作ってみてもいいのではないかという御意見を頂ければ、それも併せて集計して、次回にお示しできればと考えております。

○津谷委員
 母子世帯と父子世帯以外のひとり親とその子からなる世帯というのは、具体的にはどういうものですか。

○中村世帯統計室長
 これは年齢の制限がないので、例えば40歳と70歳という、大人同士といったところが今だんだん増えてきている部分です。そこの割合が非常に大きくなっているので、そちらに引っ張られたところかなと思っています。

○津谷委員
 つまり、ここでは私たちが通常イメージする父子世帯や母子世帯ではなく、未婚化が進んでいるため中年の独身の子供とその高齢の親からなる世帯が多くなっているということですか。そうしますと、中年の子供に結構稼ぎもある場合が考えられるということになります。つまり、これは私たちのイメージする社会福祉の対象になるような母子世帯や父子世帯ではなく、これらは異なったライフコースの段階と経済状況にある世帯で、おそらくこの結果はそれに引っ張られているのだろうと思います。ですので、やはりここでは乗数を考え直して、もう一度御試算いただくということがよろしいのではないかと思います。

○中村世帯統計室長
 そこは先ほども申し上げたように、1つは母子、父子をまとめた乗数。それ以外に何かアイデアを頂きたいと思っております。所得票の説明の後、改めてもう一度御議論いただければと思います。

○加藤主査
 ありがとうございます。他にどなたか御意見はありますか。

○臼井委員
 先ほどどのような方法があるかということですが、例えば15歳未満の子供のいるひとり親と子の世帯と、それ以外の15歳未満の子供のいないひとり親と子からなる世帯と分けるのを1つの方法として考えられるのでしょうか。

○中村世帯統計室長
 母子世帯の年齢は親が65歳未満、子供は20歳未満の未婚となっておりまして、それをまた別の15歳という区分でやるのがいいのかどうかというのはあるかと思います。

○加藤主査
 よろしいですか。どなたかありますか。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 14ページの労働力調査の仕事あり、なしと比較なさっているのですが、先ほども津谷先生からの御質問にもあったのですが、仕事ありの定義というのは労調と国民生活基礎調査では同じですか。労調のほうは多分アクチュアル方式で、以前は月末の1週間でしたが、それが最近は長くなったらしいのですが、そのアクチュアル方式の仕事あり、なしであるのに対して、国民生活はどちらにも読めるような感じの聞き方であったようです。確かそこは修正していただいたようにも覚えているのですが、とにかく今の定義が労調と国民生活のほうで合っているかどうか一度確認していただきたいというのが1つです。

○中村世帯統計室長
 まず、平成22年の国民生活基礎調査は、調査が6月の頭ですので、5月中の仕事の状況ということで聞いております。収入を伴う仕事を少しでもした方は、仕事ありということです。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 1か月ということですか。

○中村世帯統計室長
 1か月です。労働力調査のほうは、仕事の有無について月末の1週間というアクチュアルの形で聞いております。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 アクチュアルだけれども、聞いている期間が違っているということですか。

○中村世帯統計室長
 はい、そうです。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 だから、必ずしもそこが合わないからと言って定義が違うせいというのもあるのかもしれませんね。

○中村世帯統計室長
 はい。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 分かりました。あとは13ページの世帯構造の推計数の所、表4の上半分の所ですが、核家族世帯を見ますと、新推計よりも現行推計のほうが国調に近い結果になっていますが、それをブレイクダウンするとなぜか新推計のほうが国調に近くなるということで、何かここはすごく不思議な感じがしました。確かに数字を見ますとそうなっているので、御説明に間違いがあるというわけではないと思うのですが。
 13ページの表4の上の推計数の所の平成22年と平成27年とで核家族世帯を合計で見ますと、現行推計のほうが国勢調査のほうにより近い形になっているのですが、それを夫婦と未婚の子のみの世帯と、ひとり親と未婚の子のみの世帯とブレイクダウンすると逆に新推計のほうが国調に近くなるという、何かちょっと逆説的というか、不思議な結果に私には見えたのですが。夫婦と未婚の子のみの世帯というのは、新推計のほうが現行推計よりも少なくなっていて、逆にひとり親と未婚の子のみの世帯のほうは現行推計のほうが新推計よりも少なくなっているということで、結局、合計のほうでやりますと、過大推計と過小推計がうまく消し合って、合計ではかえって今のほうがいいというような形になっているように見えてしまうのは、何でこういうことが起きているのかということについて何か感触でもあれば。

○中村世帯統計室長
 細かい所まで分析はしていないのですが、1つは、ひとり親の所は父子が倍になっているということがここに入ってきてきます。その影響は若干なりともあるのかなと考えております。

○小山委員
 今の話題になっているひとり親と子については、国調でひとり親と子の世帯主の年齢階級で見るというのは、親が世帯主か子供が世帯主かというのはどちらも入ってきてしまいますが、その辺は確認済みで、こちらでも世帯主の年齢階級で集計していらっしゃるので、その定義の整合性は確認されていると思います。その中からまた母子世帯とか父子世帯とか、特定のものを取り出すとなると、国民生活のほうでは親や子供の年齢の制限もありますし、実際にどうかというところまでは今この場で分からないのですが、やはりそこの所の定義の確認と言いますか、ちょっとした違いみたいなものがあちこちに差となって表れてきているのかなという気はします。また、私どもの推計でもそうですが、国調でひとり親と子といった場合には、多くは未婚ではあるのだろうとは思いますが、印象レベルの話で申し訳ないですが、その子が未婚かどうかということも基本的には考慮されていないということに、そういったところのずれみたいなものもあちこちに影響が出てくるのかなという気はしています。ですので、また後ほど詳細にということですので、その辺は御説明いただければと思います。

○加藤主査
 ありがとうございました。よろしいですか。小塩先生、お願いします。

○小塩委員
 1つだけ質問させてください。総じて見ると全体的な印象として、新推計のほうが国調に近くなったという感じはします。14、15ページを見ますと、仕事の有無の構成割合だけがパフォーマンスが悪くなっているというか、国勢調査から外れている傾向が強いと思いますが、何か構造的な要因はありますか。ここに不詳部分が、国勢調査はかなり数字が大きめになっているので、これが影響しているのかなと思いますが、何か構造的な要因があるのか質問いたします。

○中村世帯統計室長
 真しく不詳の影響は国勢調査のほうが非常に大きくなっていて、この割合というのは不詳を除いたものを総数にした割合を求めているので、国勢調査のほうが、本来不詳が国民生活と同じぐらいなら同じような分布になるのかも分かりませんが、その違いが抜けて、分布に開きというか差が出ているのではないかと思っております。ですから、ここを何かこれのために補正するというのが非常に難しいのではないかと思っており、そこはそういう理由がありますよというのを、例えば説明のときにきちんと明示することが必要かと思っております。

○津谷委員
 小塩委員の御質問を聞いて2つのことを思いました。1つは、年齢や世帯構造もそうですが、それ以外の属性、特に就業については、内訳を構成するカテゴリーの定義を、調査票に戻ってもう一度確認を頂くことをお願いしたいと思います。先ほども言いましたように、仕事は辞めたりまた始めたりということがありますので、どの時点の情報であるかについて注意する必要があると思いました。これは再確認です。そして、推計結果を見ると、かなりばらつきが出ていたり、誤差が大きかったり、明らかなパターンが見られなかったりしています。特に誤差が大きいものは小さな数や割合である場合が多いので、こういう問題は必ず発生すると思います。ですので、気を落とされないで前向きに対応していただきたいと思います。むしろこれがすごく安定していたらびっくりします。これが第1点目です。
 第2点目は、仕事の形態と呼ばれている従業上の地位についてです。非正規雇用の明確な定義は難しく、例えばパート・アルバイトであれば明らかに非正規雇用ですが、最近は働き方が多様化していて、回答者が答えるときに結構難しく判断に迷うのもあるのではないかと思います。ここにいらっしゃる細井室長も参加されていたかと思いますが、基幹統計調査の非正規雇用と正規雇用の定義の違いをどのようにすり合わせるのかについて確か6つぐらいの府省が合同で検討会を開催したことがあります。この定義は調査によって違っていて、結局全く同じにはできなかったのですが、調査間でどのような違いがあり、区別の難しいボーダーラインにあるものをどうするのかについて熱のこもった話し合いがなされました。長年就業関係の調査を実施している府省の担当者でも難しい問題ですので、チェックを掛けることはいいのですが、費用対効果を考えたときにここまで下ろすことは適切なのかどうかお考えになる必要があるのではないかと思います。仕事をしている、していないというのは、従業上の地位に比べたらクリアカットな問題だと思いますので、仕事の有無を使うことは適切だと思います。以上です。

○加藤主査
 臼井委員、お願いします。

○臼井委員
 今、津谷先生がおっしゃることがわかりました。確かに14ページの男性と女性で見ますと、男性は新推計で黄色になっていて、ところが女性は新推計は黄色になっていなくて、16ページの正規・非正規で見ますと、女性のほうも正規は新推計で黄色のハイライトが多く、非正規は黄色のハイライトが多くないというところからも、もしかしたら非正規を回答者の方々がどのように解釈しているかによって、結果に差が出てきているのかもしれないと私も思いました。

○加藤主査
 ありがとうございます。今までの意見をずっとまとめますと、1つはやはり仕事の有無に関しては定義の違いや測定の仕方の違いがあって、どこまでこれで一致を求めるかという問題と、ひとり親と子の父子世帯の問題、この2つが一番大きな課題ではないかと議論が出ているわけです。この質問等については、また後で続けさせていただきまして、関係するところも出てくると思いますので、時間の関係もありますので、次に進めさせていただきたいと思います。続いて、健康票・介護票の試算結果について、21~31ページまで御説明をお願いします。

○中村世帯統計室長
 それでは、21ページを御覧ください。ここからは平成22年の健康票データを用いた主な項目の集計結果です。まず、健康票というのは世帯員単位で集計しますので、新推計と現行の推計結果の違いを生む大きな要因として、世帯人員数の分布が性・年齢階級別にどの程度変化したのかを見たのが参考表1です。右のほうの増減欄を見ていただきますと、総数では20~40代が増加し、それ以外が減少しています。男では20~40代が増加、特に20~30代で200万人強の増加となっております。女のほうは男ほどではないのですけれども、やはり20~30代で増加し、それ以外が減少しているということで、こういった分布に変わっているという前提でお考えいただければと思います。
 次に、22ページを御覧ください。図1と参考表2は、現行と新推計で性別に有訴者率の上位の症状を見たものです。下の表を御覧いただきますと、男の5位と6位、女の8位と9位が逆転しております。そもそも拮抗していたところの数値が若干変わって、順位が逆転していますけれども、有訴者率そのものが大きく変動するものはなかったということです。上の棒グラフを見ていただいても、現行と新推計とで、ほぼ同じような高さになっています。
 次に、23ページを御覧ください。図2と参考表3は現行と新推計とで、性別に通院者率の上位傷病を見たものです。男は下の表で4位と5位が逆転、女は2位から4位の順位が入れ替わっており、9位と10位が逆転しているといったところがありますけれども、先ほどと同様に、数値そのものが大きく変わってしまうものはないと思っております。
 次に、24ページを御覧ください。図3と図4は、12歳以上の者について、悩みやストレスの有無を見たものです。性・年齢別に見ても、それほど大きな数値の差は出なかったということです。
 次に、25ページを御覧ください。図5は12歳以上の者について、こころの状態、K6の項目ということで、この構成割合を見ております。これも見ていただいたとおり、ほぼ同じような値で大きな変化はなかったということです。
 次の26ページは、20歳以上の者の健診や人間ドックの受診状況を見たものです。性・年齢別に見ても、大きな差は出なかったということです。
 次に、27ページを御覧ください。図8は、がん検診の受診割合を性や部位別に見たものです。赤い枠の中の黄色が現行の値、緑が新推計の値となっており、これも性・部位で見ても、それほど大きな違いはなかったということです。
 次に、28ページを御覧ください。ここからは平成22年の介護票のデータを用いた、主な項目の試算結果です。図9と参考表は、世帯構造別に要介護者等のいる世帯の構成割合を見たものです。現行に比べて新推計では核家族世帯、三世代世帯が上昇し、その分、その他の世帯の割合が低下したということです。その内訳として、下に赤枠で囲っている部分が増え、その他の世帯が減少したということです。
 次に、29ページを御覧ください。図10は、要介護者等との続柄別に見た主な介護者の構成割合です。図11は性・年齢階級別に、同居の主な介護者の構成割合を見たものです。上が現行、下が新推計で、ほぼ同じような値になったということで違いは見られませんでした。
 30ページを御覧ください。図12は、要介護度別に同居の主な介護者の介護時間を見たものです。これもそれほど違いがなく、ほぼ同じような形になっております。
 次に、31ページを御覧ください。左の図13は、性別に同居の主な介護者の悩みやストレスの有無を見ております。右側の図14は、いわゆる老老介護の割合を見たものです。いずれも両方で大きな違いは出なかったということです。健康票と介護票の主な結果は以上のとおりです。

○加藤主査
 今、事務局から健康票と介護票の試算結果についての御説明がありました。どうぞ委員の皆様、御質問、御意見等がありましたら、御自由にお願いいたします。

○津谷委員
 全体的な印象として、健康票と介護票は驚くほど一致しているというか、新推計と現行の推計との間には、ほとんど差がなかったことは驚きです。もちろん統計的に非常に頑強であったということは、とても良かったと思います。ただ、お伺いしたいのは介護票についてです。介護票は世帯票からリサンプルして取っているわけですけれども、世帯員のだれかが回答していらっしゃるわけですよね。要介護者等のいる世帯では、要介護度が高くなって本人が答えられない場合もあると思いますが、回答者は介護を提供する者と受ける者が混ざっているのですか。もし世帯に要介護者自身しかいない場合、要介護度が高くても本人が答えているということもありますよね。

○中村世帯統計室長
 混ざっています。

○津谷委員
 そうですよね。何を思ったかというと、唯一大きく違っていると思ったのが、28ページの世帯構造別の割合です。この割合が新推計を使うと核家族世帯、三世代、同居世帯が多くなって、当然、その残りであるその他は小さくなっています。そこで、この国民生活基礎調査では要介護者と介護提供者のどちらが答えているのかが問題になります。人口の高齢化が非常に進んでいますので、回答者が介護をする側か受ける側かによりかなり大きな差が出てきているのではないでしょうか。とはいえ、これは政策的には重要な事柄ですが、ここで見せていただいたように、どちらを使っても結果にほとんど差がありませんので、それほど気にする必要はないのかとも思いますが、もし御説明を伺えればと思います。

○中村世帯統計室長
 介護票は国民生活基礎調査大規模年では、5,500地区ほど調査をします。その中の2,500地区で介護保険法の要支援・要介護者がいれば、対象となってくるものです。まず、その他の世帯が減っているというところですが、資料の10ページを御覧ください。これはそもそもの世帯票の分布です。今回、新しい乗数を持たせたことによって、世帯構造の中のその他の世帯が大幅に減っているのです。それが介護票に全部イコールではないのですけれども、そのうちの2,500世帯を抜いても同じように、その他の部分が減ったということになるのではないかと思っております。今回、単身の若い層が随分増えたわけですが、その方そのものは要介護者にはならないので、そこは影響が出てこないだろうと思っております。

○加藤主査
 私も一言だけお聞きします。事務局からもお話いただきましたが健康票、介護票の場合、21ページにもありますように、実際の中身と言うよりも、結局、世帯人員の分布の変化をどう捉えるかです。ここの黄色とプラスになったところをどういうように把握していくか。これを認められてしまうと、後は結果として何も動かせないわけですから、ここをいかに問題がないというように考えるかというところに、意見が集約するのではないかと思うのです。その点はいかがでしょうか。どういうことで考えていくべきなのでしょうか。

○中村世帯統計室長
 そもそも一番の問題点として過去から指摘されているのが、国勢調査結果と国民生活基礎調査の結果とでは、国民生活基礎調査のほうが回収率がどんどん落ちてきて、いわゆる非標本誤差が拡大しているということです。それを国勢調査結果といろいろ分析したところ、一番極端に出ているのが、都市部の若年単身者の捕捉が十分できないというのが、過去から分析した結果で分かってきました。それをどういうように補正すればいいかということで、今回、世帯構造と世帯主年齢のクロスの拡大乗数を層で作ってのばしてみてはどうかというので、のばしたものが世帯票の試算結果なのです。まず、そういう結果で単身が随分増えたと。今度、健康票というのは個人単位で集計するので、それを個人でのばしてもやはり同じ結果になるということだろうと思っております。そこは連動性があるというか、それはそれでいいのではないかと思っております。

○加藤主査
 どなたか、いかがでしょうか。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 今、加藤先生が御指摘になった点は、私も興味があるというか、関心があったのです。21ページです。今回の試算の大きな目標というのは、中村室長が御説明になったように、従来の拡大乗数の在り方というのは、世帯の将来推計とか国勢調査とか、違うところから世帯数の数値と世帯主の年齢の数値などを組み合わせて作ってみたということですよね。要は、象徴的に「世帯数を合わせにいった」という言い方をさせていただきますけれども、世帯数を合わせていった結果、世帯人員の年齢構成が21ページのように変わったということです。これは従来よりも国勢調査の年齢階級分布のほうに近づいているという理解でよろしいですか。どこかでその試算が行われたのですか。世帯票や何かでそういうものが出てきているのかどうか、パッと見たときに分からなかったのです。それが出てきているのかというのが1つです。
 もう1つは、これも加藤先生がおっしゃったことと同じですけれども、21ページの新推計と現行推計との差というのが、どういうところに寄ってきているのですか。ここの推定乗率の掛かり方が、こういうように変わったからこういう結果になったというような説明があると、すごく納得できるのではないかという気がしたのです。

○中村世帯統計室長
 まず、国勢調査との関係です。20ページを御覧ください。これは性では見てないのですけれども、年齢階級で見ますと、ほぼ国勢調査に近づきました。
 もう1つの、どこがあまり差が出なかったのかというところですが、例えば通院者率とか有訴者率というのは、加齢に伴って高くなります。今回、若い層が多く増えたけれども、そもそもそこの部分の有訴とか通院というのは、そんなに高くないのです。一方で高いところの高齢者の分布が減ったと。そこが相殺されて、あまり変わらなかったのではないかと思います。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 2つ目のほうは、私の質問の仕方が悪かったと思います。21ページの表を見ますと、現行と新推計とがあるわけです。これはもともと同じデータを使っていて、拡大乗率の掛かり方が違うから結果が違うわけですよね。ですので、拡大乗率のほうを見て、どこがどういうように変化したから、結果がこういうように変わっているのですということが分かると、新推計と現行推計が世帯人員の分布ということに関して、どういう効果を及ぼしているかが分かると思うのです。もし、そういう説明をしていただけるようだったら、していただきたいというのが2番目の質問です。

○中村世帯統計室長
 ここは世帯構造と世帯主年齢の拡大乗数を都道府県別に持たせて、都道府県別の数字を出して積み上げた結果なのです。

○寺坂審査解析室総合解析係長
 室長が申し上げたように、都道府県別と世帯構造別と年齢階級別に乗数を作成いたしました。手元に資料がないので、すぐには確認ができないのですけれども、基本的には世帯構造で、核家族等のところの乗数が大きくなるような分布になっていたと思います。ですので、恐らく乗数の効き方としては、今回増えた核家族世帯等の乗数の部分が大きくなって、今回の結果になっているというように考えていただければよいのではないかと思います。

○加藤主査
 いかがでしょうか。

○小塩委員
 素朴な疑問で申し訳ありません。先ほどの御説明にあったかもしれないのですが、今回の新しい推計では、若い人が相対的に増えているということでしたね。若い人のほうが健康だとしたら、全体で見たら健康関係の数字が良くなっているのが自然かと思うのです。しかし必ずしもそうではなくて、あまり変わらないということです。これには何か原因があるのでしょうか。

○大久保委員
 今の御質問ですが、22ページを見ていただくと、参考2の総数が、新推計のほうが全体として少し下がっています。これは新推計の方が若者が増えたことによって傾向としてはあまり大きな変化ではありませんが、下がっているということでは、つじつまが合うのではないかと思います。

○津谷委員
 先ほどの御質問の意味がよくわからなかったのですが、この推計は平成22年度を対象にやっているだけですよね。だから良くなった悪くなったというのは、時間の経過の下でより健康になったかどうかというお話ではなくて、今やっている推計と世帯数の将来推計を都道府県別にくくり出して、世帯主の年齢別に見ていったということでおっしゃったのでしょうか。

○中村世帯統計室長
 健康の関係で言うと、全体としては通院者率にしろ有訴者率にしろ、下がるのではないかということをおっしゃったということです。トータルでは大久保先生がおっしゃったように、22ページや23ページの総数の部分では若干下がったと。

○津谷委員
 恐らく統計的に有意な差はないのではないかと思います。むしろ世帯構造から影響を受けることは、むしろあまり望ましくないと言うとおかしいのですが、病気になってどういう病気になったのかといったような細かいことまで見ると非常に複雑になるのですが、それでも父子家庭や核家族世帯の割合などで影響のあったところもあるように思います。とはいえ、これはリサンプルして取ったデータですから、それほど大きな影響はないのではないでしょうか。個人的な感想としては、これはそれほど大きな問題ではないのではないかと思います。現行の推計と新推計によってもちろん差はあるわけですが、非常に大きく異なっているわけではないので、こういう結果になったのではないかと思います。

○加藤主査
 よろしいでしょうか。例えば、個人的には先生方もおっしゃるように、数字としては特に問題はないだろうと思うのですが、見せ方の問題です。例えば、23ページのランキングが変わってしまうということですよね。そこまでどういうように神経を働かせるのがいいかというのは分からないのですけれども、数字としてはそれほど大きな違いがない。ただ、たまたま似通っているところでランキングが変わってしまう。それはやむを得ないことだというように判断せざるを得ないのかと思っています。いかがでしょう。他にどなたか御質問はありませんか。

○小山委員
 20、21ページ当たりの世帯人員数の推計のお話です。これは世帯数の将来推計を経由して、世帯人員を出してきているということです。世帯人員というのは人口なので、人口の将来推計と、こちらで出した推計との比較をやってみてもいいのかなという気がしています。その結果がどうなるかというのは、今はちょっと分からないのですけれども。

○中村世帯統計室長
 もともと国民生活基礎調査の推計方法というのは、1つの拡大乗数で、世帯数と世帯人員数という2つの値を出しているのです。それは平成29年の研究会でも、そういうことの妥当性について検証したということがあります。世帯数と世帯人員数、要は人口については非常に強い相関があるということで、その当時の1つの拡大乗数で2つの世帯数、世帯人員数を出すという方法自体は妥当だということでやっているのです。世帯数を出す集計と世帯人員数を出す集計を、それぞれ乗数を持たせるという考え方もあろうかと思うのですけれども、これは作業量も含めて、もしかしてそれをやることによって多分、集計結果としては問題が出てくる部分もあるのではないかと思っております。現実問題として人口で乗数を持たせるというやり方は、今のところは考えてないということです。

○小山委員
 ありがとうございます。人口は人口で別にということではないのですけれども、今は国勢調査と比較されていますよね。お使いになっている拡大乗数の効果を確認するという意味で、国勢調査と比較しているところを人口の将来推計値と比較してみるということを、一度やってみてもいいのかなと。これも印象レベルで申し訳ないのですが、そういったことを思ったもので、コメントさせていただきました。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 多分、小山先生がおっしゃっているのは、確認のための材料が増えるからということですね。人口推計あるいは将来推計人口になるかもしれませんけれども、こちらは世帯を中心にした推計の仕方です。一方で人口推計ないし将来推計人口のほうは、世帯人員のほうを念頭に置いた推計なので、理想的には両者が合うべきものですから、チェックの材料としてそれを使ったらいかがかというのが、小山先生の御指摘ではないかと思ったのです。

○小山委員
 西郷先生がおっしゃったとおりです。

○加藤主査
 他にいかがでしょうか。

○津谷委員
 若い年齢の割合が新推計では多くなっているから、より健康になるはずではないかということですが、健康票を見ると、症状の順位では「肩が凝る」とかの割合が若い人でも相当あります。むしろ今はIT化が進み、それにより増えていそうな症例が並んでいますので、若い人は健康で、高齢者がより不健康ということは、これを見る限り違うように思います。

○加藤主査
 まだ他にもあるかと思いますが、もう1つあります。最後に所得票、貯蓄票の試算結果について、32~42ページまであります。これについての御説明をお願いいたします。

○中村世帯統計室長
 それでは、32ページを御覧ください。ここからは平成22年の大規模調査と平成27年の簡易調査の所得票のデータを用いた主な項目の試算結果です。まず、32ページの表ですが、所得票は基本的に世帯単位で集計しておりますので、新推計と現行の推計結果の違いを生む要因として、世帯数の分布が世帯構造、世帯主年齢別にどの程度変化したのかを見たものです。
 まず、平成22年のデータで構成割合の増減を見ますと、単独世帯の所を赤枠で囲っておりますが、8.3ポイント増加、60歳代以下で増加、70歳以上の所で減少となっております。次に、夫婦のみの世帯を見ますと、総数では3.8ポイント減少、50歳以上の所で減となっております。夫婦と未婚の子のみの世帯は総数で微減、40歳以上でおおむね減少、ひとり親と未婚の子のみの世帯は総数で1.1ポイントの増加で、30歳代以上で増加となっております。総じて捕捉率の低い若年単身の補正が効いていると考えております。
 33ページは、平成27年のデータを用いて、同じように分布がどう変わったのかを見たものです。平成22年とおおむね同様の傾向になっております。特に、赤枠で囲っております単独世帯の所に若年単身の補正がより効いているということだろうと思っております。
 34ページは、実際の数値を出したものです。表10の1世帯当たり平均所得金額を現行と新推計で比較したものです。まず、真ん中辺りの平成21年の所得で見ていただきますと、全世帯では現行よりも16万7,000円の減少、高齢者世帯では2万7,000円の微減、一方で、児童のいる世帯は2万1,000円の微増となっております。右側の平成26年の所得で見ますと、全世帯は現行よりも28万8,000円の減少、高齢者世帯は11万4,000円の減少、児童のいる世帯は14万5,000円の減少ということで、平成26年のほうが平成21年に比べて低下の幅が大きい結果となっております。
 35ページの表11-1は、平成21年所得を世帯主年齢階級別に、表側にありますように4種類の数字を見ております。まず、一番上の1世帯当たりの平均所得金額を見ますと、70歳以上の所以外で現行よりも低い値になっています。次の世帯人員1人当たりの平均所得を見ますと、全ての階級で増加となっております。平均世帯人員や有業人員は、全ての階級で減少ということで、赤枠の50歳代以下の増減幅が大きい結果となっております。
 36ページの表11-2は、同様に平成26年の所得で見たものです。1世帯当たりの平均所得は全ての階級で現行よりも減少、世帯人員1人当たりで見ますと、59歳以下では増加で60歳以上では減少、世帯人員、有業人員は全て減少ということで、先ほどの平成21年と同様に、赤枠の所の増減幅が大きい結果となっております。
 37ページ表12-1は、平成21年の所得を所得金額階級別世帯数の分布で、一番下に中央値を出しております。まず、全世帯の所を見ていただきますと、増減欄に赤枠がありますが、これは全世帯の中央値が属する所を赤枠で囲っております。同様に、高齢者世帯や児童のいる世帯や母子世帯、それぞれの世帯の中央値に属する階級がこちらです。これよりも低い階級の所が増えているということです。中央値も全て低下という結果になりました。
 38ページは、先ほどと見方は同じですが、平成26年の所得で見たものです。全世帯、高齢者世帯、児童のいる世帯は同様の傾向になっておりますが、母子世帯だけは中央値も上がり、やや違う動きをしているという結果になりました。
 39ページの表13は、平成21年所得で相対的貧困率を見ております。全体の相対的貧困率というのが0.3ポイント上昇、一方で子どもの貧困率は0.4ポイント低下、いわゆる、ひとり親家庭も0.6ポイント低下という結果になりました。別途お配りしております席上配布資料を御覧ください。貧困率が全体の貧困率と子どもの貧困率や大人1人の貧困率の変化の方向が違うので、若干、分析を試みました。まず、一番上のグラフは全体の貧困率で、貧困線自体はマイナス3,000円ということで、ほぼ同じぐらいになっております。グラフ上でグレーの線が現行、赤の点線が新推計ですが、ほぼ重なっていて、貧困線未満の割合は0.3ですが、あまり差が見えないという状況です。真ん中の子ども貧困率は0.4ポイント低下したのですが、若干、その貧困線よりも低い所が気持ち下がったかなという程度で、あまり大きな差が見られないという結果になりました。
 最後の一番下の大人1人は、ここだけは割と差が出ており、貧困線未満の赤い点線の割合が低下し、逆に160万以上で赤い点線が上に出ていて、ここは割と明確に出ていると思っております。
 次に、2ページは等価可処分所得の相対度数分布を見たものです。現行の値と新推計の値の差を数字にしております。上が全体の貧困率です。赤枠の所の貧困線未満の割合というのが、このような全世帯や特定の年齢で割と顕著に出ているということです。下の子どもの貧困率と大人1人の所は、逆に、赤枠の貧困線未満の割合が減少しているということです。
 3ページです。全体の貧困率が0.3ポイント上昇したのですが、これを年齢区分別に貧困率の要因なのか、シェアの変化の要因なのかということで寄与分解したものです。一番上の表を御覧いただきますと、赤枠は貧困率の要因として0.5プラスに働き、シェアの要因が0.2マイナスに働いたという結果になりました。真ん中に、一番プラスに働いたのはどこかと見ますと、18~25歳の貧困率の要因が大きく寄与したということです。
 4ページです。先ほど、18~25歳が貧困率を押し上げる要因で一番大きいと申し上げましたが、具体的にそこをもう少し細かく見てみようということで見たものがこのページです。一番上の表は、貧困線を下回る25歳以下の構成割合を見たものです。赤枠のとおり18~25歳が割合が増えています。真ん中の表は仕事の有無を見たものです。「仕事あり」は増加して、下の表の「仕事あり」の中で勤め先の呼称を見ますと、正規が大幅に減ってアルバイトが大幅に増加していて、この辺りが分布で低いほうが増えているということに影響しているのではないかと思っております。
 5ページは、同じ全体の貧困率を世帯構造別に寄与分解したものです。上の表の赤枠ですが、貧困率要因が0.4低下に寄与し、シェア要因が0.7上昇に寄与しています。中身を見ますと、真ん中のグラフのとおり、男女の単独とひとり親と未婚の子のみのシェアの増加の要因、それと三世代の貧困率要因が上昇に寄与しているという結果になっております。
 6ページは、子どもの貧困率が0.3ポイント低下したのですが、それを世帯構造別に寄与分解したものです。上の表の赤枠のシェア要因が0.4低下に寄与したということで、その主な要因が真ん中のグラフ、その他の世帯のシェア減少が大きく低下に寄与したということです。ここは、下の表を御覧ください。その他の世帯にどのようなものが入るのかというと、例えば、祖父母と孫といったようなものが入ってくる。これ以外にも、あまり数はないと思いますが、大人の兄と18歳未満の妹などが入ります。そこの貧困率は下から2つ目の表の30数ポイントと高いのが落ち、シェアも3.8ポイントだったのが1.4に落ちており、この高い所のシェアが落ちたというのが大きな要因だろうと思っております。
 最後の7ページは、大人1人の貧困率が0.6ポイント低下して、これを世帯構造別に寄与分解したものです。上の表の赤枠の貧困率要因が1.0低下に寄与し、シェア要因が0.3上昇に寄与しております。主な低下の要因を見ますと、父子世帯が大きく低下に寄与しているという結果になっております。先ほどの世帯票の所でも申し上げましたが、父子世帯が過大評価になっており、それが所得票でもそのような所が出て、更に大人1人の貧困率、もともと出現頻度が少ない所に、そういった父子世帯の過大評価が表れてきているのではないかと考えております。以上が席上配布の説明になります。
 本体の資料に戻っていただき、40ページを御覧ください。表14-1と14-2は、平成22年と27年の生活意識の変化を見たものです。幾つかの世帯の累計で出しておりますが、いずれの世帯でも1ポイントを超えるような増減は見られなかったということです。
 41ページは、平成22年の貯蓄票のデータを用いた主な試算結果です。表15は貯蓄額階級別世帯数の分布と、1世帯当たりの平均貯蓄額を一番下に書いております。全世帯は200万円未満の所が増加し、400万円以上の所が減少ということで、ほかの各種世帯では、全世帯のような明らかな傾向が見られなかったということです。1世帯当たりの平均貯蓄額を見ますと、児童のいる世帯を除いて新推計が減少しています。これは、若い単身層が増える。そこはもともと貯蓄が少ないので、それが影響しているのではないかと思っております。
 42ページの表16は、借入金の階級別の分布です。一番下に、1世帯当たり平均借入金額を見ております。一番右の母子世帯を赤枠で囲っておりますが、1ポイント以上の変化があるのはこの部分だけで、それ以外の所はそれほど大きな差が出ておらず、1世帯当たりの平均借入金は、下の数字を見ていただきますと、先ほどの貯蓄ほどの大きな金額の差が出なかったということです。所得票と貯蓄票の関係は以上です。

○加藤主査
 ただいま、事務局から所得票、貯蓄票の試算結果についての御説明がありました。これから所得票、貯蓄票の試算結果のみならず、これまでの説明全体を通して委員の皆様、御質問、御意見等がございましたら、どうぞ御自由に御発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○樋田委員
 御説明ありがとうございました。質問と意見があります。まずは質問です。所得票の平均所得の推計額というのは、新推計と従来の方法でかなり金額の変化が大きくなっています。この変化がどうして起きているのかという分析をされているのでしたら、変化の要因を教えていただきたいというのが1点です。
 次に意見です。新推計と従来の推計での世帯数や構成比の変化を見てきましたが、変化の原因は新推計と従来の推計のウエイトの違いだと考えられます。ウエイトの違いがどこで起きているのかを見ておくことが必要だと思います。推計結果が変わっているのは、原因となるウエイトが変更されているためです。結果を見るだけでなく、ウエイトがどう変更されたのかを各区分において見ておくことが、変化の原因を探る上でも必要なのかなと思います。以上です。

○中村世帯統計室長
 1点目なのですが、32、33ページで世帯数の分布が所得票でどれだけ変わったかというところを申し上げます。1世帯当たりの額が平成21年と平成26年でより大きくなっているのは、要は単身の所の増加がより効いていることが影響しているのだろうと思っております。年を追うごとに捕捉率が、特に若年単身の所の捕捉率が悪くなるというのが、そのまま逆に新しい方法でのばしたときに、そこの補正がより効いているということであろうと思っております。

○加藤主査
 よろしいでしょうか。いかがでしょうか。これは後々、非常に大きな課題になるだろうというところだと思うのですが、先生、お願いいたします。

○小塩委員
 こういう理解でいいかという確認なのですが、今回、新しい推計で、36ページで確認できるのですけれども、全体で見ると1世帯当たりの平均所得がかなり低くなっていますよね。要するに、日本人全体が貧乏になっているということです。貧困率の計算のときに、中央値を計算されているのですが、これはあまり減っていないですね。これは、今回新しく統計のウエイトが高まった人として、若い単身の所得の低い人が増えたということなのですが、等価可処分所得で計算するときは、単身ですから分母が小さくなります。だから、世帯の平均所得で見るよりは、等価可処分所得ベースの中央値の低下具合が抑制されるということでよろしいですか。
 それと、にもかかわらず、やはり所得の低い若い層が増えているので、全体の貧困率が上昇したという理解でよろしいですか。

○中村世帯統計室長
 1点目はそのとおりで、相対的に所得が低いのは若い層、それと高齢者層の両方あります。高齢者世帯の層というのも、特に単身の世帯は所得が低いので、そこの割合は逆に減少しているのです。若い層も所得が低くて、そこはそれなりに相殺はされているのだけれども、トータルで等価可処分所得の分布を見たら、若干低いほうの分布に移行したということだろうと思っております。

○加藤主査
 小塩先生のお話の続きであれなのですが、例えば36ページでいうと、1世帯当たりの平均所得金額が下がって、等価可処分所得だと世帯人員も減っていて、分母が下がり分子も下がって、その結果として中央値がそれほど下がっていないという感じの理解になるのでしょうか。ちょっとそれは、余りにも乱暴ですかね。

○中村世帯統計室長
 等価で見たら、余り下がらないということなのですよね。

○加藤主査
 いかがでしょうか。他にどなたか御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。

○中村世帯統計室長
 申し訳ありません。ここは先ほど父子世帯の過大評価の所が、恐らく大人1人の貧困率に影響を与えているのだろうと考えております。やはり、父子世帯の拡大乗数をどうしていくのかというのを、冒頭の世帯票の所でも申し上げましたが、母子と父子で1つのくくりにして拡大乗数を作るというのが1つの案です。でも、他に何でやればよろしいかというのを、まず御議論いただければと思います。

○加藤主査
 そうですね、確かに父子世帯の問題が一番大きいので、事務局から逆に御質問を頂いたわけなのですが、どなたか御意見、お考えのある方はいらっしゃいますか。西郷先生はいかがですか。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 事務局から御提案のあったのは、恐らく今回のやり方だと父子世帯に与えられたウエイトが大きすぎてしまったということですよね。ですので、父子世帯を見たときに、その他の世帯に統合するのがいいのか、それとも母子世帯のほうに統合するのがいいのかというのは、今回やってみたその他と統合するのはもしかしたらウエイトが大きすぎてしまったのかもしれないということなので、まずは御提案のあったとおり、母子世帯と統合して推計してみて、それでどれぐらい差があるのかというのを見てみるというのが1つのステップかなと思います。
 あと、父子世帯を推定するときに、特定の世帯主年齢階級だけでまとめるのではなくて、もうちょっと広いカテゴリーで、なるべく数字が安定するようなグループというのを考えられるようであれば、それを考えるということです。その1つの候補が多分、母子世帯であると思います。

○加藤主査
 いかがでしょうか。津谷先生、お願いいたします。

○津谷委員
 確認させていただきたいのですが、新推計では、母子世帯には独立したユニークな乗数がここから取られているということですか。一方、父子世帯には、母子世帯以外のひとり親の世帯をベースとした乗数を使っていて、恐らくそれが父子世帯の影響を実際以上に大きく推計してしまったのだろうということで、今度は母子世帯と父子世帯に同じ乗数を使って推計を行うということですか。まとめてやるということですか。

○中村世帯統計室長
 母子と父子をまとめた数字でやるということです。どちらも同じもので、まとめたものでやってみると。

○津谷委員
 1番の父子世帯。

○中村世帯統計室長
 試算ですので、一通りでやるのがいいのか、それ以外の方法も御提案いただければ、それも含めて試算して見てみようと思っております。

○津谷委員
 分かりました。なぜお伺いしたいかというと、恐らく父子世帯の生活環境や社会経済的状況についてのデータが非常に少ないのではないかと思ったからです。そんなことを言えば、母子世帯についてのデータも少ないわけですが、父子世帯や母子世帯に特化したある程度信頼性のある統計データはないのでしょうか。このような父子世帯・母子世帯に特化した調査は、厚労省の全一般統計調査も含めて存じ上げないのですが、そういう調査はないのでしょうか。国勢調査の元の生データから、母子世帯と父子世帯をくくり出すことは可能でしょうか。なぜお聞きするかというと、相当データ規模の大きな独立した調査があって、母子世帯と父子世帯を比べることができれば、後付けではない乗数の推計のようなものをやってみることができるのではないかと思ったからです。もちろん費用対効果の問題がありますので、そこまでやる必要があるかどうかということは別ですけれども、これについてどなたか御存じであればお教えいただければと思います。

○中村世帯統計室長
 ちなみに、平成22年の国勢調査の分布で、父子世帯の単独で拡大乗数を作って試算したことがあります。そのときに出てきた数値が5万3,000世帯ということで、今度は過小評価になってきたというのがあります。父子単独というのはやはり望ましくないのかなというのもあるので、まずは母子父子を足したものでやってみるということかなと思っております。
 それと、平成22年の国勢調査結果と、国民生活基礎調査で実際に当たった地区をマッチングさせて、拡大せずに国勢調査結果の世帯数と国民生活で集められた世帯数でどれだけ違いがあるのかと。捕捉率というのも出したのですが、これも母子世帯でいうと79.2%、国調100に対して79.2、ほぼ8割ぐらいです。父子世帯が76.8%ということで、そんなに大きな違いは出ていないので、まとめてやってしまうのが1つの手かなと思っております。

○加藤主査
 まとめてやるというのが1つの手だとは思うのですが、1つは、まとめたときにこれの政策的な意味合いですよね。最終的に言えば、母子世帯と父子世帯を分ける必要があるのかないのかということも含めて。

○中村世帯統計室長
 結果は分けます。ですが、乗数の持たせ方を1つにするということです。

○加藤主査
 そうですね。いかがでしょうか。

○中村世帯統計室長
 世帯票は合わせにいくというか、評価し得る国勢調査結果というのがあって、それに現行よりも相当近づいたというのがある程度見えるわけです。所得票というのが前々からも申し上げておりますように、日本の正しい所得分布がない中で今回、平均所得が落ちて、世帯人員1人当たりで見ると逆に上がるという結果が出ています。貧困率は全体で0.3上がったということで、所得分布を見ると低いほうにシフトしたということになるわけです。
 私どもは、よく全国消費実態調査との比較というのを貧困率等でされるわけですが、そもそも調査方法に違いがあって、調査内容も違いがあって、集まった世帯の所得分布というのが国民生活は比較的低所得を拾えています。一方の全国消費実態調査は、どちらかというと中間所得層のほうが厚めに拾えているというのが分かっていて、貧困率を出したら国民生活基礎調査のほうが高い結果になっているということです。過去にそういう2つの調査の違いについて分析して、一定の結論が出ていて、政府としては両方見ていきましょうということになっているわけですが、今回の新しい方法でやると余計に全国消費実態調査との差が出てしまいます。所得分布も更に低いほうに出てしまう、そのこと自体が、調査が違うのだから、それは説明がつけばいいのだと考えてよろしいのか、やはりそれはどうなのかと考えるのか、そこを非常に悩んでおりまして、この辺りをどう考えたらいいのかという御意見を頂ければと思います。

○加藤主査
 小塩先生にお話をお聞きしたいと思います。

○小塩委員
 結論を導き出すのはなかなか難しいと思います。私も実は両調査の違いがあるということで、政府の見解がない時点でOECDに行って質問攻めに遭いました。どちらを日本政府は使うのかということなのですが、両方見ていきますと答えて、現在もそのようになっていたと思うのですけれども、どちらを見るかという話ではなくて、両方見るしかないのではないかなというのが個人的な考え方です。
 それよりも重要なのは、今回、平成21年の数字で、ちょっと数字は変わるという試算結果を見せていただいたのですが、1年だけで見てもあまり意味はないのです。やはり、貧困率がどういうトレンドを見せているか、どういう変化をしているかという時系列的な変化が必要だと思うのですが、となると、今日していただいたような作業を各時点においてやらないといけません。あるいは、貧困率だけではなくて、今日の前半のお話でも推計の仕方を見直したらこのような数字になるという紹介をしていただいたのですが、同じような作業を過去に遡ってやらないと、やはり統計の連続性という面では問題があると思います。そこまで事務局として作業を進められて、その作業が終わった後で新しい貧困率なり、あるいは他のケースについても公表されるのか、ちょっとそこら辺のお考えをお聞きしたいなと思います。

○中村世帯統計室長
 まず遡りなのですが、この調査が始まって以降を全部やるかというと、そこは今のところ考えていません。ただ、貧困率とかを見る上では、今回、平成22年調査を大規模でやったので、例えば平成25年、平成28年、今度出す平成31年、その程度は数値を作る必要はあるのかなと思っております。遡ってもう1回、新しいやり方で数字を全部差し替えるのかというと、それは考えていません。新しいやり方で、例えば過去の貧困率や主要な数字を3、4回遡って再集計すると、この程度の変化で、傾向はこうでしたということは、推計方法を変えて新しいやり方で公表するときに合わせて、参考値という形で出すというのは当然考えているのですが、全部の統計表を新しい数字を求めて、これからはこちらですというところまではやらないと考えております。

○小塩委員
 ちょっとそこは、更に考えていただく必要はあるかなと思うのです。特に、OECD.Statという各国の所得分布とか貧困率を比較するページがあって、日本もそこに数字を出しているのですが、過去の数字も同じような手法で出したものを並べるというのは、やはり筋だろうと思いますので、そこの扱いは慎重に考えていただく必要はあると思います。

○中村世帯統計室長
 実は、今年やりました大規模調査で、OECDの所得定義が変わって、令和元年の調査の結果というのは新しいOECDの所得定義で貧困率を出します。そうすると、例えば自動車税とか自動車重量税というのは過去は取っていなかったのですが、それを今回取って加味した貧困率を出すわけです。それは遡ってはできないので、データがないのでできないので、やはりどこかで切り替わったということは言うしかないと思っております。過去に全部遡って、やり方を変えたということで数字を変えるというのは、今のところ考えておりません。定義というのは変わり得るということですので、変わったことだけをきちんと明記するということだろうと思っております。

○山田政策立案総括審議官
 諸外国の所得の統計の取扱はどうなっていますか。

○中村世帯統計室長
 OECDの定義が変更になって、それを採用するかどうかというのは正に各国の裁量ですので、ある年から採用している所もあれば、対応できない、要は調査としてそこまで取れないという事情もあって、統一されていないというのが実情だろうと思っております。

○小塩委員
 よろしいでしょうか。

○加藤主査
 どうぞ。

○小塩委員
 よく理解できました。ただ、日本国内に限っても、最近のいろいろな経済政策とか再分配政策の効果を検討するというのは、重要な作業だと思います。そうすると、全ての数字を過去に遡って見直す必要は必ずしもないと思うのですが、もし貧困率の数字を新しくしたというふうに出す場合は、やはりある程度過去の数字と比較できるような形にしないと数字だけ一人歩きする危険があると思いますので、そこは注意していただきたいと思います。

○中村世帯統計室長
 分かりました。ありがとうございます。

○加藤主査
 他にどなたかありますか。

○臼井委員
 話は変わってしまうのですが、先ほどの母子世帯のことについてお伺いします。母子世帯の定義というのは、要するに65歳以上の母子世帯がいないということなのですが、これは一体どういうことなのかなというのをお聞きしたいなと思います。

○中村世帯統計室長
 この調査では、65歳未満の母親と、20歳未満の未婚の子で構成する世帯を母子世帯と定義して取っているということです。

○臼井委員
 例えば、父子世帯と母子世帯の問題が一番最初の所にありましたので、その問題にどのように対応すべきかというときに、父子世帯も同じように年齢制限を区切っていたということですか。

○中村世帯統計室長
 父子も65歳と20歳というのは同じです。

○臼井委員
 ところが、母子世帯以外の世帯には、様々な高齢の。

○中村世帯統計室長
 そうです。

○臼井委員
 そのように紛れ込んでしまっているという問題があったので、ここを統合しようという話になったのですか。

○中村世帯統計室長
 統合というか、もともと年齢制限を加えないひとり親世帯という結果も出していて、それとは別に母子、父子というのも出しているということなので、統合するのはあくまでも今回の推計方法の拡大乗数の持たせ方を統合した形で数字を作るということだけです。結果そのものも統合するという気はありません。

○臼井委員
 それで、母子世帯とか父子世帯には地域性があるかもしれなくて、都道府県によって多い所と少ない所があると思ったのですが、それとどの程度データで父子世帯をサンプリングできているのかとか。

○中村世帯統計室長
 ちょっと今、確認していますが、恐らく父子世帯というのがそもそも出現頻度が非常に低いので、都道府県別までは出していなかったと思います。そもそも全国で見ても非常に低くて、誤差が大きいので、ですから、そこまでは無理なのだろうなと。

○臼井委員
 もともとそういう。

○中村世帯統計室長
 ごめんなさい、説明が間違っておりました。母子、父子共に、大規模のときは県別に数値を出していますが、出ている数値というのが1,000世帯単位で出すので、1とか2とかという程度しか分からないので、それなりの誤差があるし、年によっては相当の違いが出てきているのかなと思います。

○臼井委員
 そうなってくると、こういう調査で母子世帯の状況を把握しようとするには、なかなか難しいところがあるので、話はずれてしまうかもしれないけれども、もし母子世帯のことを詳しく知りたいなら、オーバーサンプリングしないと明らかにならないかもしれません。

○中村世帯統計室長
 母子世帯の調査は、国民生活基礎調査で把握できる範囲というのはサンプル数の限界もありますが、例えば全国ひとり親世帯等調査というのがあって、周期的に子ども家庭局で抽出調査をやっております。そこでは母子世帯が抱えるいろいろな、例えば養育費の話とか、別途特定の母子に絞った形で調査をやっているので、詳細はそういう所を見ていただくのだろうと思っております。

○加藤主査
 よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。今までいろいろな御議論があったのですが、母子世帯と父子世帯を同じ乗数で取りあえず進めてみるという議論であったのではないかと思っております。先生方、まだ御質問、御意見等はあるかと思いますが、そろそろお時間ということで、皆様から頂いた御意見については事務局で整理していただき、次回のワーキンググループで再度検討したいと思います。本日予定しておりました議題は終了いたしましたが、委員の皆様におかれましては後日、御不明な点や御意見がございましたら、今月中に事務局宛てにメールで御連絡いただければと思います。それでは、事務局にお返しいたします。

○細井統計企画調整室長
 皆様、長時間にわたり御議論いただき、ありがとうございました。次回、第3回のワーキンググループについてですが、来年2月から3月の間に開催を予定させていただければと思います。日程調整も含め、事務局から御連絡させていただきますので、構成員の皆様方におかれましては、よろしく御協力いただきますようお願い申し上げます。これをもちまして、第2回国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループを閉会させていただきます。本日は、お忙しい中、御出席いただき、誠にありがとうございました。
 


                                                                                                                                                                                       (了)

照会先

政策統括官付参事官付統計企画調整室

電話:03-5253-1111(内線7373)