技能実習評価試験の整備等に関する専門家会議(第38回)

                                 人材開発統括官海外人材育成担当参事官室
 
○日時 令和元年10月30日(水) 15:00~17:00

○場所 厚生労働省専用第12会議室

○出席者
  大迫委員、岡野委員、椎根委員、當間委員、冨高委員、羽柴委員
  厚生労働省人材開発統括官海外人材育成担当参事官室、出入国在留管理庁在留管理課、外国人技能実習機構、
  公益財団法人国際研修協力機構
  (水産加工食品製造関係)一般社団法人全国水産加工業協同組合連合会、水産庁
  (溶接関係)一般社団法人日本溶接協会、経済産業省、国土交通省
  (そう菜製造)一般社団法人日本惣菜協会、農林水産省
 
○議題
  1 水産加工食品製造業職種の試験の実施・運営状況の報告について
  2 溶接職種の試験の実施・運営状況の報告について
  3 そう菜製造業職種の変更について
 
○議事
  1 水産加工食品製造業職種の試験の実施・運営状況の報告について
  ○ 水産加工食品製造業職種の試験の実施・運営状況について、全国水産加工業協同組合連合会より概ね以下
   のとおり説明があった。
  ・ 職種・作業の概要だが、非加熱性水産加工食品製造業職種は、塩蔵品製造、乾製品製造、発酵食品製造、
   加熱性水産加工食品製造業職種は、節類製造、加熱乾製品製造、調味加工品製造、くん製品製造で、全部で
   2職種、7作業となる。
  ・ 技能実習評価試験の実施結果及び運営状況だが、各職種・作業共通で、初級、専門級、上級の試験を実施
   している。初級では、上からの指示に従って各種作業が問題なくできるレベル、専門級では、上からの指示が
   なくても作業内容を理解して自主的に作業ができるレベル、上級では、原料と最終製品を考慮した上で作業
   工程を作り、作業者を指示して作業させることができるレベルで、現場では班長クラスのレベルであると設定
   している。
  ・ 試験実施機関の概要だが、代表に代表理事会長がおり、事務局は専属が4名、補助が4名の8名体制となって
   おり、技能実習評価委員会は選任基準により委嘱した7名の委員に評価に当たっていただいており、技能実習
   評価試験委員会も選任基準により委嘱した7名の委員に試験問題、試験基準等の案を作っていただいている。
   また、試験官が試験監督者であり北海道から沖縄まで全国に41名を置いて試験を実施しており、管理官は
   試験を補佐する者で27名置いている。
  ・ なお、試験の合否は毎月下旬に開催する技能実習評価委員会で決定している。
  ・ 技能実習評価試験運営状況の自主点検表を御説明する。1番で、多岐にわたる作業の知識と技術を修得する
   職種である。水産の場合は、季節等による原料の固体差の見極め、加工手段の選択、製品知識等、複雑かつ
   高度な技術が求められるので、技能実習の職種に適していると考えている。5の1)で、水産加工食品全国
   団体連絡協議会に水産加工の14団体が入っており、この協議会で報告し承認されている。3)で、水産庁
   漁政部加工流通課振興班から評価委員会にアドバイザーとして参加していただいているが、改善の指摘を
   受けていないなど、その他特段の問題は生じていない。
    7番で、当該職種に関する専門的な知見を有することは、技能実習評価委員、技能実習評価試験委員、試験
   官は、実務経験者又は学識経験者にお願いしている。また、技能実習評価委員が交代する際には交代前より
   同委員会に参加して引継ぎを行っていただき、技能実習評価試験委員が交代する際には試験問題の見直し
   経緯が分かる文書を保管して引き継いでいる。10番で、試験を適正に行うため、事務作業を受検前後で事務
   局担当者を分けているが、受検申込みから合格発表までを前半と後半に分けて、担当者が分担して全体の
   進捗状況を月に2回ほど確認しながら進めている。また、試験問題に疑義が生じた場合には、技能実習評価
   委員会、技能実習評価試験委員会に諮るとともに、隔年で開催する試験官、管理官の研修会議の場で内容の
   共有を図っている。研修会議が隔年の理由は、事務局担当者が1年を掛けて全国の試験会場に出向いて試験
   の実施状況等の確認・修正を行い、その翌年に研修会を開催しているためである。
    11番で、北海道から沖縄までの全国約100地域で試験を行っている。受検者が所属する実習実施者が水産
   加工業者ということもあり、実習先が地方の漁村の背後地で地方都市まで車で数時間かかる場所もある。
   このため、本会では実習先に近い公共施設の公民館などを使って試験を開催している。現行、105か所の公共
   施設を利用して、月に100回ほどの試験を開催している。
    14番で、試験業務に係る経理は、他の経理と区分して実施していた。しかし、水産協同組合法に基づき単年
   度で決算処理を終わらせるため、事業年度内に収支差額が生じた場合には一般会計に繰り入れ又は一般会計
   からの補填を行うこととしていたため、令和2年度の会計から是正したい。
    15番で、試験業務内容が外部に漏れないように、事務局担当者が試験を行うこともあるため、事前にコン
   プライアンス研修も受けている。また、事務担当者、試験官、管理官と個人情報の取扱いを含む守秘義務契約
   も結んでいる。さらに、文書管理規程も整備している。
    17番で、試験不合格者には1回に限り再受検の機会を与えている。ただし、在留期限間際の申請もあり、
   受検者側の了解の上で、再試験の手続きと開催準備が間に合わない場合は、希ではあるが再試験をお断りする
   こともある。
    19番で、試験の実施も昨年で19年目を迎え、時代とともに水産加工技術も変化しているため、大きな
   見直しを昨年行ったところであるが、引き続き、不断の見直しに努めたい。
    26番で、学科試験の問題の見直しとともに、問題のパターンも毎月作成している。
 
  ○  同団体からの説明に対し、概ね以下のような質疑があった
   委員) 毎年、受検者数がうなぎ登りに増加しているが、今後も試験を適切に実施できるのか。
   説明者)これまでも試験官と管理官の補充に努めてきたところである。今後、受検者がこれ以上増加した場合
     には、適宜、試験官と管理官を補充するとともに、今年度に新規採用した本部の職員も含めて調整を
     図っていきたい。
   委員) 技能実習評価試験委員、技能実習評価委員、試験官は、実務経験者は運用上実務経験が一定年数
     以上の者が選任されているとのことだが、今後、受検者数がさらに増加しても、実務経験の基準が担保
     できるようにしていただきたい。
   説明者)ご指摘を踏まえて対応したい。
   委員) 試験官の選任基準に、「最適の学識経験者」、「最適の実務経験者等」とあるが、「最適の」は不要
     ではないか。
   説明者) ご指摘を踏まえて削除することとしたい。
 
  ○ 報告の結果、水産加工食品製造業の技能実習評価試験について、試験実施機関は会議で受けた指摘に対応
   し、より一層適切な実施に努めることとされた。
  
  2 溶接職種の試験の実施・運営状況の報告について
  ○ 溶接職種の試験の実施・運営状況について、日本溶接協会より概ね以下のとおり説明があった。
  ・ 技能実習評価試験の概要は、溶接職種は手溶接作業と半自動溶接作業に分かれており、実技・学科とも作業
   ごとに設定している。手溶接作業は、溶接棒をホルダーでつかんで溶接を行う作業になり、溶接棒が溶けて
   鋼板に付く度にホルダーを下げないと溶接ができない。半自動溶接作業は溶接ワイヤーを使う形になり、
   ワイヤーが自動的に送給されるので手の高さは変えずに済む。
  ・ 学科試験は、初級(1年目)が、必須になっており、日本語(平仮名分ち書き)の試験問題で、解答方法は
   ○×式、問題数が20問で、60%以上が合格となっている。専門級、上級では学科試験の受検が任意となって
   おり、学科試験に合格すると優良ポイントが付与され、言語は日本語、漢字かな混じりで、漢字にルビを
   振っており、解答方法は多肢択一法としている。専門級が30問で合格基準は65%以上、上級が50問で合格
   基準が65%以上となっている。なお、学習参考書として「職種別研修テキスト(溶接)」が発行・販売されて
   いる。また、安全衛生は、「溶接職種に従事する技能実習生の安全・健康の確保」と「技能実習生の皆様へ
   溶接作業等の災害防止についてのお知らせです」を見てもらうように、当会のホームページで周知している。
  ・ 実技試験は、手溶接作業の場合について初級がA-2F、N-2Fであり、これらは裏当金あり、裏当金なしと
   なる。鋼材と鋼材を下に置いて溶接するときに隙間ができるが、その隙間に下から金属を当てる場合に裏当金
   ありと言う。なお、A-2Fは、Aが裏当金あり、2が中板、Fは溶接姿勢が下向きを指す。このため、N-2Fは
   中板の下向き姿勢で裏当金がないとなる。また、初級は判定方法が外観試験のみとなっている。専門級は
   2種目が選択受験となっている。必須種目はA-2F、N-2Fのどちらかを選び、選択種目は中板の下向き以外の
   姿勢である縦向き、横向き、上向き、パイプとパイプを溶接する固定管のほか、板が厚板で19mmのものの
   下向き1つを選択する。
    これらの必須種目と選択種目の両方を合格すると専門級の合格となる。上級は、専門級で合格していない
   種目を1つ選択して受検することとし、それぞれの業種に合った溶接の試験を受検して、合格してもらうこと
   を意図している。
    半自動溶接作業の実技試験の場合は、手溶接作業の裏当金の有無のほかに、SSを加えている。風などの
   影響がない工場では、半自動溶接はトーチからガスとワイヤーが流れて溶接をする。一方、屋外の現場では
   風があるので、ガスが流れてしまい良い溶接ができない。そこで、SSという、ガスを流さないで、溶接
   ワイヤーにフラックスを入れて、溶けたときにガスが出るものを使用する。
    SSの他に、裏当金の有無、鋼材の厚み、溶接姿勢を組み合わせて、試験の区分を設けている。そして、
   初級は1種目を選択受検、専門級は必須種目と選択種目の両方を合格、上級は専門級で合格していない種目を
   1つ選択して受検する。
  ・ 合格基準は、手溶接作業がJIS Z-3801とWES 8201に基づいて判定し、半自動溶接作業はJIS Z-3841と
   WES 8241に基づいて判定している。なお、WESは日本溶接協会規格という民間規格である。合否の判定
   期間は試験後2か月程度で、初級は1週間程度で判定している。
  ・ 試験実施機関の概要は、一番上が当協会の会長で、下に事務局があり、要員認証管理委員会がある。同委員
   会は、要員認証機関としての日本溶接協会の管理主体であり、認証業務の遂行とその公平性の確保及び認証
   スキームの開発と維持に責任を持つ。なお、当協会はJISに基づく溶接技能者の資格を取り扱っており、日本
   適合性認定協会から溶接技能者資格の認証機関として認定されているため、同委員会を設置している。同委員
   会の下に、溶接技能者認証委員会を設けており、溶接技能評価試験の合否の決定、評価に係る業務全般の
   統括、スキームの開発・変更に関する事項などを討議している。また、同委員会の下に、溶接技能者認証小
   委員会、溶接技能者運営委員会を設置している。このうち、溶接技能者認証小委員会は、溶接技能者認証委員
   会から権限を委任され、溶接技能評価試験の合否の決定、合格の取消しを行う。一方、溶接技能者運営委員会
   は、認証委員会から権限を委任され、溶接技能評価試験の運営上の諸問題の処理等に関する事項、試験問題
   及び採点基準の案の作成・決定を行う。さらに、その下に、地区溶接技術検定委員会を全国9か所に設置し、
   技能実習評価員の割当て、試験の実施、試験結果の評価、溶接技能者認証委員会への試験結果の報告などを
   行っている。溶接技能評価試験を実施しているのは同委員会となる。その下に、当協会とは他団体となる指定
   機関がある。当協会は各都道府県にある溶接協会を指定機関として認定し、溶接技能評価試験の事務、補佐
   業務等を行っている。
  ・ 技能実習評価試験の実施結果は、手溶接作業の初級の学科・実技試験で、平成28年度が受検者数841名、
   平成30年度が受検者数892名となっている。次に、専門級の学科試験は、平成28年度が新制度となる前で
   受検者はおらず、平成29年が67名、平成30年度が320名となっている。専門級の実技試験は、平成28年度が
   受検者がおらず、平成29年度が128名、平成30年度が730名となっている。
  ・ 次に、半自動溶接作業の初級の学科・実技試験で、平成28年度が受検者数6,286名、平成30年度が6,432名
   となっている。専門級の学科試験は、平成28年度は人数が少ないので省略するが、平成29年度の受検者数が
   1,077名、平成30年度1,894名となっている。
  ・ 技能実習評価試験運営状況の自主点検表は、職種の条件に関して特段の問題はないと考えている。また、
   試験実施機関の要件に関して、当協会は一般社団法人として日本産業規格や日本溶接協会規格に基づき、
   長年にわたり機密保持、公正性、公平性を保持しながら、溶接技能者の資格を扱っており、そのノウハウを
   生かして、技能実習評価試験も行っており、特段の問題はないと考えている。なお、当協会は溶接技能者の
   認証機関として、公益財団法人日本適合性認定協会から認定されており、認定に当たっては、1年から1年半
   かけて審査を受け、問題なしとなっている。また、昨年度の技能実習評価試験の収支差額はプラスとなって
   いるが、これは全国7地区に有する試験会場の施設・設備、機器の修繕、電算システムの改修等に当てる予定
   である。評価システムの要件は特段の問題ないと考えている。
 
  ○ 同団体からの説明に対し、概ね以下のような質疑があった
   委員) 半自動溶接作業の専門級の学科試験の合格率が平成29年から平成30年で大幅に低下しているが、
     問題の難易度を上げたのか。
   説明者) 問題の難易度は変更していない。
   委員) 日本工業規格が日本産業規格に変更されたが、溶接職種の試験内容に影響はないか。
   説明者) 影響はない。
 
  ○ 報告の結果、溶接職種の技能実習評価試験について、試験実施機関は会議で受けた指摘に対応し、より
   一層適切な実施に努めることとされた。
 
  3 そう菜製造業職種の変更について
  ○ そう菜製造業職種の変更について、日本惣菜協会より概ね以下のとおり説明があった。
  ・ 変更は2点あるが、1点目はそう菜製造業職種の必須業務の加熱調理の技能実習1号で、現行では、炊く、
   茹でる、揚げるの中の全て又は1つ以上の調理を行う、となっている。これを、今回、炊く、茹でる、揚げる
   に、炒める、煮る、焼く、蒸すの4つを加え、合計7つに変更したいと考えている。変更の理由は次のとおりで
   ある。これら7つの加熱調理のうち、比較的、技能等の修得等が容易と考えて、炊く、茹でる、揚げるの3つ
   を代表的な加熱調理と位置付け、その他の炒める、煮る、焼く、蒸すの4つは「等」にくくっていた。
   しかし、昨年の専門家会議で3号整備を御審議頂いた際に、「等」では、不明確であり受け取り方によっては
   内容が変わってしまうので、「等」を削除したほうがよいのではないかとの御指摘を頂いた。しかしながら、
   炊く、茹でる、揚げる以外の他の4つの加熱調理も、送出国では当然、実習ニーズが存在していることや、
   技能実習2号と3号では習熟等するものとして必須業務に列挙されていることから、技能実習1号からこれらの
   4つの技能等も修得等しておくことは実習生の利益につながるものであると考えている。
  ・ 2点目は、使用する設備、機械の要件である。加熱調理機器、非加熱調理機器の要件が、一部の実習実施者
   や監理団体で、誤った読み取り方をされるということが現実に起きているので、記載内容がより明確となる
   ように変更したい。現行は、加熱調理機械は1~7、非加熱調理機械は8及び9が必要であり、連続式の場合は
   1種類以上、固定式の場合は2種類以上所有していることを要件とする記載になっている。これは、加熱調理
   機械は連続式の場合は1種類以上、固定式の場合は2種類以上所有していること、非加熱調理機械は8番の
   固定式ミキサー及び9番の連続式野菜洗浄機の両方を所有していることを要件として求めることを意味して
   いる。しかし、加熱調理機械のみならず非加熱調理機械も、連続式の場合は1種類以上、固定式の場合は2種
   類以上所有していることを求めていると誤った解釈がされるおそれがある。また、昨今、合える(和える)
   機能を有する連続式野菜洗浄機が開発・普及されたことにより、固定式ミキサーを使わなくても、連続式の
   野菜洗浄機で均一に合える(和える)技能を習得することが可能となっている。このため、合える(和える)
   機能を有する500L水容量以上の連続式の野菜洗浄器を使用する場合に限り、8の固定式ミキサーを所有する
   ことを要しないとの記載に改めたい。
    また、炒める、焼くで使用する固定式の平釜の機械があるが、ティルティングパンとグリドルという機械が
   含まれているのかとの問合せを多数頂いている。どちらの記載も炒める、焼くの技能を習得することが可能で
   あるため、これらの機械が平釜に含まれることを明確化したい。

  ○ 同団体からの説明に対し、概ね以下のような質疑があった。
   委員) 「合える(和える)機能を有する500L水容量以上の連続式の野菜洗浄機を使用する場合に限り、8を
     所有することを要しない」とあるが、所有することを要しないとは、実技試験のときに10kg以上の食材
     を混合する固定式のミキサーを使用する試験は出題されないということか。
   説明者)後日回答させていただきたい。
   委員)委員の我々が指摘したことが技能実習の現場のニーズと合致していなかったのであれば、専門家会議
     で指摘いただきたかった。今回の修正後も適切な内容となっているか引き続き御検討いただきたい。
   説明者)指摘しなかったことはお詫びしたい。適切な内容となっているか引き続き確認していきたい。
 
  ○ 検討の結果、そう菜製造業職種(そう菜加工作業)の審査基準等について了承することとし、指摘事項への
   回答は座長一任とされた。
 
(以上)