技能実習評価試験の整備等に関する専門家会議(第37回)

                              人材開発統括官海外人材育成担当参事官室

○日時 令和元年10月9日(水) 15:00~17:00

○場所 厚生労働省労働基準局第1会議室(16階)

○出席者
  大迫委員、岡野委員、椎根委員、當間委員、冨高委員、羽柴委員、
  花山委員、二村委員
  厚生労働省人材開発統括官海外人材育成担当参事官室、出入国在留管理庁在留管理支援部在留管理課
  外務省領事局外国人課、外国人技能実習機構、公益財団法人国際研修協力機構
  (グラビア印刷関係)全国グラビア協同組合連合会、経済産業省
  (RPF製造関係)日本RPF工業会、経済産業省、環境省
  (鉄道施設保守整備関係)日本鉄道施設協会、国土交通省
  (棒受網漁業関係)大日本水産会、水産庁
 
○議題
  1 座長及び副座長の選任等について
  2 印刷職種(グラビア印刷作業)の追加について
  3 PF製造職種(RPF製造作業)の追加について
  4 鉄道施設保守整備職種(軌道保守整備作業)の追加について
  5 漁船漁業職種(棒受網漁業)の追加について
 
○議事
  1 座長及び副座長の選任等について
  ○ 専門家会議の座長及び副座長の選任について、座長を岡野委員、副座長を椎根委員とすることで了承
   された。
 
  2 印刷職種(グラビア印刷作業)の追加について
  ○ 全国グラビア協同組合連合会より概ね以下のとおり説明があった。 
  ・ 前回の専門家会議で、グラビア印刷は食品向けの製品を扱っているが、試験問題の中に「製品が衛生的に
   製造されているか」を入れる予定はあるか、また、出来上がった製品の衛生的な保管に関する指導・教育
   を技能実習で行ったり、実技試験で問う予定はあるか、との指摘があり、検討を行った。
   全国グラビア協同組合連合会の多くの組合員の工場は、軟包装衛生協議会が作成している衛生管理自主基準
   (業界基準)を満たすとして認定を受けている。認定を受けた工場では、製品に異物やホコリが混入しない
   ようにクリーンルーム(エアーシャワー)や消毒設備の設置、作業者に作業着・帽子の着用、出来上がった
   製品の衛生的な保管など業界基準を守りながら作業している。実習生を受け入れる場合においても、業界基準
   に基づき指導・教育を行うことになるため、技能実習の必須業務や実技試験の問題にこれらを入れることと
   したい。
  ・ 審査基準については、必須業務の中に衛生管理作業を加えることとし、衛生管理作業には、1)作業者の
   作業着、帽子、毛髪等の付着物の点検作業、2)製品の衛生的な取扱いを追加している。
  ・ その他、前回の専門家会議での指摘を踏まえ、印刷において大事な作業である調色とドクターブレードの
   調整が明確になるよう、前準備作業の「4.インキの溶剤希釈調整」を「4.インキ調色、溶剤希釈調整及び
   ドクターブレード調整」と変更した。
  ・ 試験基準について、初級では基本的な業務を遂行するために必要な基礎的な技能及び知識、専門級では
   初級の技能者が通常有すべき一般的な技能及び知識を試験内容とした。
  ・ 学科試験の試験基準では、項目として、1.グラビア印刷作業の意義、2.グラビア印刷作業で使用する
   原材料に関する知識、3.グラビア印刷作業に関する知識、4.グラビア印刷作業者の衛生管理に関する
   知識、5.グラビア印刷作業に伴う安全衛生に関する知識をあげている。
  ・ 実技試験の試験基準では、項目として、1.グラビア印刷作業、2.製品の衛生管理、3.安全衛生を
   あげ、審査基準の記載内容に応じた内容を、初級、専門級に入れている。
  ・ 実技試験は初級、専門級のいずれも製作等作業試験と判断等試験により行う。
  ・ 試験実施機関の体制は、全国グラビア協同組合連合会を試験実施機関とし、事務局の他、外国人技能実習
   評価委員会において、試験基準、試験問題、採点基準の審査・決定、結果報告を行い、外国人技能実習評価
   試験委員会において、試験基準案、試験問題案、採点基準案の作成を行う。
 
  ○ 同団体からの説明に対して、概ね以下のような質疑があった。
   委員)同じ試験課題で、初級では製作等作業試験、専門級では判断等試験となっているものがあるなど、
     専門級では初級よりも判断等試験の時間が長くなっている。判断等試験は製作等作業試験の実施が
     困難な場合に実施するのが原則であるが、どのような考えで判断等試験により実施することとしたのか。
   説明者)グラビア印刷機は非常に大きな機械であるため、2~3名以上のチームで作業を行うとともに、
     前準備作業だけで数時間を要する。このため、技能等を評価する上で重要な作業を取り出して製作等作業
     試験を行うこととした。また、2号技能実習では自ら判断して作業する内容が多いため、専門級では初級
     に比べて判断等試験の時間が長くなっている。
   委員)試験監督者によって評価にバラツキが生じないようにしていただきたい。
   説明者)対応について検討する。
   委員)明らかに危険な行為等があった場合には試験を中止するといった項目を入れておかれてはどうか。
   説明者)そのように対応したい。

  ○ 検討の結果、印刷職種(グラビア印刷作業)について、次回以降、引き続き議論が行われることとなった。
 
  3 RPF製造職種(RPF製造作業)の追加について
  ○ 日本RPF工業会より概ね以下のとおり説明があった。
  ・ RPF事業は、プラスチックゴミなどの廃棄物を原料としてJIS規格の工業製品である固形燃料を製造する
   ものである。最近では、海洋流出プラスチックなどが世界的に問題になっているが、プラスチックゴミ削減の
   解決策としても注目を浴びているところである。この技術を日本にとどまらず、海外に積極的に普及させて
   いきたい。
  ・ RPFの特徴だが、1)原料の発生履歴が明瞭で製品の品質が安定している、2)配合比率により熱量の
   調整が可能である、3)石炭と同等の熱量がある、4)石炭と比べて価格が安く経済性がある、5)石炭と
   比較し、CO2排出を33%制限できる、6)使用先は製紙業界、石灰業界、セメント業界等である。
  ・ RPFには2つのタイプがある。まず、ペレットタイプと言われるもので主に石灰、セメント業界の
   ロータリーキルン炉などで使用される。次に、マルチタイプと言われるもので主に製紙業界の循環流動床炉で
   使用される。
  ・ 実習ニーズだが、送出国から、1)廃プラスチックの適正処理手法としてRPF製造技術を活用したい、
   2)化石燃料の代替としてRPFを活用したい、3)海洋へのプラスチックゴミの流出削減寄与に期待して
   いる、4)日本式の生産管理手法を取得させ母国の経済発展に寄与させる、5)帰国後、類似製造業及び固形
   燃料製造業で実習技能の活用を期待している、6)母国での雇用及び新たなエネルギー源の創出を通じて環境
   と経済の両立する社会の実現に資することを期待している、といったものがある。
  ・ 海外実習ニーズの事例だが、インドネシアは世界第4位の人口を抱え、著しい経済発展を遂げており、それ
   に伴い都市化が進み、都市ゴミ、特にプラスチックゴミが増えている。各地の埋立地は満杯状態で、焼却発電
   に舵を切っている。また、豊富な森林資源を利用した木材加工業から出る木質廃棄物を原料とした木質
   ペレット製造業が育っているが、この製造工程は、RPF製造工程と似通っており、廃プラスチックを混合
   して生産すれば、より高い熱量をもつものが生産できる。脱石炭の動きが見られる中、同国での製紙会社
   などでRPFの使用が見込まれている。
  ・ その他の発展途上国の状況だが、ベトナムは、日本の支援によるRPF製造工場がある。木質ペレット製造
   工場は森林資源が豊富なマレーシア、ベトナムで普及している。
  ・ 技能実習の目標と内容だが、1号では、各実習項目の基礎的な知識を修得し、安全衛生を理解して、上長の
   指示に従って作業ができる水準を目指す。2号では、実習項目を2つ増やし、1号で修得した知識、技能を
   踏まえ、実習生自身で判断し、上長に報告できる水準を目指す。3号では、実習項目を更に1つ増やし、部下
   に指導・指示ができる水準を目指す。
  ・ 各実習項目の説明だが、1)受入検査は、原料が廃棄物由来であることから、想定しない物が入って来る
   可能性があるので、危険物と不適合物を除去するための識別能力を修得する。2)原料及び不適合物の管理
   は、原料となる廃棄物を種類別に保管し、不適合物を別の場所に保管するための技能を修得する。3)原料
   配合投入は、RPF製造作業において重要な作業であり、各原料の特性、特に各原料の発熱量を理解し、
   JIS規格に合うように配合する技能を修得する。4)破砕作業では、破砕状況の監視が主な作業となり、破砕
   機で異常な状態が起きていないか、不具合を早期に発見し、正常な稼動に戻す技能を修得する。この実習は、
   意図的に不具合を再現することが困難であることから、これまで起きた事例をもとにした座学実習と、実際に
   不具合が発生したときの実践実習を併用する。5)成形作業も、成形状況の監視が主な作業となり、不具合
   を早期に発見し、正常な稼動に戻す技能を修得する。破砕作業と同様、不具合の再現性が困難であること
   から、座学実習と実践実習を併用する。6)最終検査は、製品の出荷前検査で、2号以降の実習項目となる。
   形状検査と発火を防止するための温度検査の技能を修得する。また、分析結果の解読と生産へ反映させる
   技能もここで修得する。7)日常点検では、点検チェックリストの記入を通じ、日本式の管理システムを行う
   知識と技能を修得する。8)設備メンテナンスでは、破砕機、成形機の清掃、消耗品の交換などを定期的に
   行う。大規模保守点検及び修理作業は外部のメーカーに依頼し、実習作業の対象外となる。この作業は3号
   より行われる。
  ・ 説明のまとめだが、a.都市ゴミ、特に廃プラスチックの有効な処理手法である、b.木くず、稲わら等の植物
   由来の未利用材を原料とした固形燃料化に応用できる汎用性のある技術である、c.脱炭素社会に向けて化石
   燃料の代替としてのエネルギー源となる、d.プラスチック資源循環戦略のアクションプランに対応した廃プラ
   スチックの海洋流出の抑制に寄与できる、e.現地での雇用創出が期待できる、f.日本国として発展途上国へ
   の環境対応支援に貢献できる。
 
  ○ 同団体からの説明に対して、概ね以下のような質疑があった。
   委員)想定される事故としてはどのようなものがあるのか。
   説明者)RPF工業会の会員企業のRPF製造業者から集めたところによると、けがの種別としては挫き、
     転倒、切創等が多く見られる。具体的には、重機から降車中に捻挫したものなどであり、その対応策と
     しては、注意喚起、安全教育の再実習となる。その他、設備周辺を歩行中の不注意により設備架台に顔面
     を強打し打撲したものなどであり、その対応策としては、当該箇所及び類似箇所の全てにウレタン等の
     保護材の設置となる。
   委員)破砕する機械の中で何か詰まったりして内部に人が入らなければいけない場合などで重大な事故が
     起きたときに、日本人がやりたがらない労働環境で外国人を使っているのではないかなどと言われるの
     ではないか。廃棄物処理業の労働災害の発生率が高い中で、RPF製造職種が追加された場合に実習生
     が安全に技能実習を行うための対応策を検討していただきたい。
   説明者)御指摘を踏まえて対応策を検討したい。
   委員)日本人であれば、一人前になるのにどのぐらいの期間を要するのか。
   説明者)日本人であれば、大体3年ぐらいで、色々なケースを経験して一人前になることができる。実習生の
     場合は、特に安全衛生に関しては、中途半端な理解では危険につながることもあるので、言葉のハンディ
     を加味して、時間をかけて安全を確保しながら研修させていく必要があり、5年程度はかかると考える。
   委員)RPF製造職種について2号や3号まで技能実習を行う技能があるのか。どの部分に高い技能があり、
     かつ、修得等にどれだけの時間を要するかを示していただきたい。
   委員)実習しなければいけない技能要素は何があって、それを修得するのにこのぐらいの期間がかかる、
     その結果、全体としてこのぐらいの期間が必要という説明をしていただきたい。
   説明者)次回の専門家会議でお示ししたい。
 
  〇 検討の結果、RPF製造職種(RPF製造作業)については、次回以降、引き続き議論が行われることと
   なった。
 
  4 鉄道施設保守整備職種(軌道保守整備作業)の追加について
  ○ 日本鉄道施設協会より概ね以下のとおり説明があった。
  ・ 国内の軌道保守整備の実施体制は、鉄道事業者が保守整備作業の計画及び管理を実施し、保守整備会社が
   具体的な作業を実施する。今回の対象職種は、主に保守整備会社の従事員が実施する。従事員の推移は、
   これまで作業の機械化等による整備技術の改善を進め、現在、約2万5,000人となっている。今後も効率化を
   進めるが、設備の老朽化等も進んでいくため、技能が必要な作業は残されている。
  ・ 軌道保守整備の軌道とは、路盤から上のレール、まくら木、道床のことである。軌道は列車の走行する力を
   受けて、それを下の構造物に伝えるという非常に重要な役割を担っており、こうした荷重を繰り返し受ける
   ことによって徐々に変形し、また、経年によって劣化するので、定期的な保守が必要となる。
  ・ 軌道は大きく分けて、バラスト軌道とバラストがなくコンクリート板の上に軌道を引いたスラブ軌道が
   ある。最近では保守の効率化等を考えて、スラブ軌道も増えているが、依然、バラスト軌道が大半を占めて
   いる。
  ・ 軌道保守整備作業のうちレール交換は、レールが車輪と接触し摩耗することなどから、定期的な交換作業で
   ある。また、バラストを取り扱う作業は、一番変形するのが道床であることから頻繁に発生する作業で、整備
   する際には上下方向や左右方向について所定の位置になるように整正する。このような作業をした後は、所定
   の寸法に収まっていることを確かめることが不可欠であることから、軌道検測作業も非常に重要な作業と
   なる。
  ・ 作業が完了した後は、その上を列車が運行するので、所定の精度に仕上がっていることが安全を確保する
   上で非常に重要となる。それぞれの項目について仕上がりの基準が細かく定められており、その基準内に
   収まるようにミリ単位で整備する必要がある。1つ例を挙げると、高低は10mの糸を張って、その間で
   どれぐらい狂っているかを整備する基準としているが、中央で7mm以内の精度に仕上げるという、極めて
   精度の高い作業が行われている。
  ・ 軌道保守整備作業と一般の土木作業で大きく違う点は、列車の運行の間で行われることである。列車が頻繁
   に運行される区間では、日中の線路内の作業は難しく、終電から始発までの約4時間程度での作業となる。
   このため、短い時間で効率的かつ正確に作業をする必要がある。また、作業はグループで行うため、役割
   分担に応じた仕事の理解や実施、あるいは相互のコミュニケーションが非常に重要となる。
  ・ 技能実習の目標と実習内容だが、第1号は、作業の補助ができることを目標としている。このため、実習
   内容は各作業の器具等の準備作業や必要な機材の分配、あるいは補助作業とする。第2号は、各作業を正しく
   できることを目標にしており、実習内容は第1号の実習内容に加えて、糸張り検測作業、レール吊り上げ及び
   横移動作業、通り整正作業などを実習する。第3号では、高度な作業を実施できること、あるいは各作業を
   従事員に指導できること及び品質の確認ができることを目標としている。また、安全衛生業務は、線路内で
   仕事をする上で触車をはじめとした労災事故防止のため、どの役職にあっても確実に守るべきことを内容と
   している。このため、第1号からしっかり修得してもらい、第3号まで繰り返し実践していくものと考えて
   いる。
  ・ 第1号の具体的な目標は、軌道保守整備作業の目的をまず理解して、作業に使用する器具・材料の選択や
   準備ができることを考えている。このため、例えば、レール交換の作業は、器材を準備したり、あるいは
   レールを吊り上げる前にレールの金具をレールに引っ掛けるような補助的な作業を行う。
  ・ 第2号の具体的な目標は、正しく道具を使って正しい作業ができることを考えている。このため、レール
   交換を例に取ると、レールを吊り上げたり横に移動するという作業を作業者として行う。
  ・ 第3号の具体的な目標は、修了時に、軌道を所定の位置に修繕できることやより高度な作業も実施できる
   ことを考えている。各作業について作業長として従事し、作業員の指導及び作業後の品質確認を行う。
   さらに、レールの切断をしたり、レールに穴を開けたりという作業を行う。
  ・ 諸外国からの実習ニーズだが、職種追加の要望を頂いているベトナムやタイでは、日本での実習を通して
   技術を学び、自国のレベルアップを図りたいというニーズがあり、それらのニーズに対応した技能実習を
   行う。軌道保守整備作業は、鉄道を運行している国ならばどこでも実施しているが、国によってレベルや
   取組が大きく違う。基本となる作業面では、ベトナムやタイにおいては作業後の仕上がりの確認が厳正では
   ない、あるいは作業後の環境整備が十分ではないという課題があり、これらは鉄道の安全、安定輸送を
   脅かすものとなっている。これについて、日本では標準化されたルールやそれを確実に実施する仕組みが
   ある。また、安全意識の向上という部分については、例えば保護具の着用が定着していない、あるいは基本
   動作の徹底や作業現場の整理整頓が十分でないなど労働災害に対する意識が低い。これらについても、日本
   には基本ルールやマナーの徹底、安全を担保する仕組みがある。これらを踏まえて、技能実習では軌道保守
   整備と安全衛生の業務に取り組む。
  ・ 現在、東南アジアでは交通渋滞等の課題から、都市部において、多くの鉄道プロジェクトが進行中であり、
   その円滑な運営が課題となっている。また、既存の鉄道への需要も高くなっており、鉄道の安全・安定の確保
   は重要な課題となっている。このように、現地での軌道保守整備作業における人材育成のニーズがますます
   高くなっているが、現地の対応は必ずしも十分ではない。例えば、ベトナム鉄道は、ヘルメットや安全
   チョッキを着用していないという状況が見られる。また、線路上に器材が散乱していたり、作業員が作業集団
   から離れた所に1人でいたり、レールに座ったりする状況が見られるが、これらは日本では決して許されない
   基本動作を逸脱した行為である。このようなことから、鉄道の安全性の向上、作業員の作業安全の向上の観点
   から、日本においてレベルの高い保守整備を修得し、それを活かして、母国で必要とされる軌道保守整備に
   関する技術力の向上に貢献できると考えている。
  ・ 今回、職種追加時に試験実施機関となることを予定している日本鉄道施設協会は、昭和28年に設立された
   組織を母体に、公益法人改革により、平成23年度に社団法人から一般社団法人に移行した非営利の組織で
   ある。協会の目的は、鉄道施設に関する技術の振興と鉄道の安全性向上に関する業務を実施して、公共の福祉
   の増進に寄与することである。現在、会員は鉄道施設に関わる鉄道会社、保守整備会社等の関係者により構成
   されており、個人会員が約1万人、企業会員が1,200社となっている。主な業務は、色々な技術的な調査を
   する業務、技術図書の出版等の公益出版業務、保安業務となっている。保安業務は、鉄道工事に関わる従事員
   の安全教育及び従事員資格の認定業務であり、北海道から九州までの各JRに対応して6か所に事務所を設置
   しており、年間10万人の安全教育を実施している。
 
  ○ 同団体からの説明に対して、概ね以下のような質疑があった。
   委員)1つの作業ミスやコミュニケーションミスが重大な事故を引き起こす可能性がある職種であると思う
     が、技能実習生が日本語が十分でなくコミュニケーションがうまくいかないことなどへの対策を何か
     取られる予定はあるのか。
   説明者)作業安全とお客様安全とがあり、作業安全についてはミーティングでよく打ち合わせてから作業に
     入る。また、何か重大なミスがあって脱線するような事象はないかというお客様安全の懸念もあると思う
     が、最終的な仕上がり検測を行い、合格に達していないと、その日の列車は走らせられない。そして、
     安全状態の確認に関して別の責任者がおり、その責任者が確認する。
   委員)作業において専門用語での日本語のやり取りが発生すると思うが、実習生が日本語の専門用語を修得
     するのに何年程度かかると想定しているのか。また、第3号の修了時には作業長レベルになることを想定
     されているが、日本人は何年程度かかるものなのか。
   説明者)専門用語については、仕事で繰り返し使うことになるので、それほど修得は困難ではない。むしろ
     日常会話の方がより時間がかかると考える。向き不向きもあるが、日本人で作業長レベルになるには大体
     3年から5年程度かかる。
   委員)実習生が作業長になるのは、専門用語の習得なども含めて、5年あればある程度可能という考えか。
   説明者)そのとおりである。
   委員)作業長はグループのまとめ役であり何らかの責任があると思うが、軌道保守整備が適切に行われずに
     重大事故が発生した場合、実習生が最終的な責任を負わされることはないという理解でよいか。
   説明者)そのような理解でよい。現場では、作業責任者が仕事の段取り、仕上がり、精度などを確認するが、
     その中に、現場を統括する工事管理者がおり、それらの者が安全に関する全ての責任を負っている。
 
  ○ 検討の結果、鉄道施設保守整備職種(軌道保守整備作業)については、厚生労働省、出入国在留管理庁に
   おいて、省令の改正案に係るパブリックコメントを実施し、その結果を踏まえ、審査基準案や技能実習評価
   試験案等について引き続き議論が行われることとなった。
 
  5 漁船漁業職種(棒受網漁業)の追加について
  ○ 大日本水産会より概ね以下のとおり説明があった。
  ・ 棒受網漁業とは、海の表層を泳ぐ魚を光や撒き餌で船の周りに集め、網ですくい上げる漁業をいう。現在
   は、サンマを対象とした棒受網漁業が主体であるが、アジ、サバ、イワシを対象としたものも存在している。
  ・ 棒受網漁業の主体であるさんま棒受網漁業について紹介する。操業時期は5月から12月であるが、本年
   2月に水産庁の許可が下りたため、周年での操業が可能となっている。さんまの水揚量は平成20年度以降
   減少傾向にあるが、単価の上昇により水揚金額は200億円近くで比較的安定して推移している。操業隻数は
   減少傾向にあるが、東日本大震災後は150隻程度で推移している。
  ・ 水揚地は花咲、厚岸等の北海道の道東地域、大船渡、気仙沼等の三陸地域が主体となっている。主要水揚
   地においては、市場、加工・流通業や運送業、造船・機械等の関係業界の経済活動を通じて、地域経済の
   維持発展のために大きく貢献している。
  ・ 棒受網漁業の作業は、出港準備、操業準備、操業、水揚げに分類できる。漁期が始まる前の出港準備では、
   網の修理や機器点検、実操業で使う漁具の組立て等を行う。出港し、漁場に到着し、操業準備として、集魚灯
   と呼ばれるライト、機器類の準備等を行う。その後、操業では、集魚灯を操作し、網の上に魚を集め網を上げ
   ながらポンプで海水ごと魚をくみ上げて、魚倉と呼ばれる倉庫に氷と一緒に入れて保管する。魚倉がいっぱい
   になると港に戻り、最後に水揚げを行う。
  ・ 審査基準の必須業務を1号から3号まで比較すると、1)漁具の製作・補修作業は、1号では基礎的な
   ロープの扱い、網を編むことができるレベルを求めている。2号は、応用的なロープの扱い、網を修繕する
   ことができるレベルを求めている。3号では、具体的な棒受けの模型網を製作することができるレベルを
   求めている。
    2)漁具・漁労機械の操作作業と3)漁獲物の処理作業を比較すると、1号では操業の準備、補佐ができる
   レベルを求めている。2号では操業で使用する機械を利用し、操業の中心的作業ができるレベルを求めて
   いる。3号では漁場探索等を行い、操業の一連作業ができるレベルを求めている。
  ・ 1号では、基礎的な漁具製作や操業の準備や補佐作業ができることを目標としており、主な実習内容は、
   ロープワーク、魚汲み作業準備、漁獲物の選別等とする。
    2号では、応用的なロープ処理や網の修繕、操業の中心的作業等ができることを目標としており、主な実習
   内容は、1号に加えて網の補修、揚網作業、漁労機器の操作等とする。
    3号では、棒受網の製作や操業に係る一連の作業ができることを目標としており、主な実習内容は、2号に
   加えて棒受網の製作、集魚灯の操作等とする。
  ・ インドネシアの漁業は、日本と同規模の棒受網漁船や漁労機器は無く、棒受網漁船をシンプルにした敷網
   漁船が、漁船全体の約2割を占める600隻ほど存在している。敷網漁業とは、棒受網漁業と同様に、光や餌
   で網の上に魚を集めてすくい上げる漁業である。インドネシアの平均魚消費量は年間約40kgと、日本の平均
   魚消費量約25kgより多い状況である。
  ・ ミャンマーの漁業も同様に、日本と同規模の棒受網漁船や漁労機器は無く、木造の小型敷網漁船が漁船全体
   の20%を占める600隻ほど存在している。ミャンマーの平均魚消費量は年間約70kgと多い状況である。
  ・ 送出国の実習ニーズをまとめると、両国ともに水産業が盛んであり、国民の年間の平均魚消費量は日本より
   多いが、漁業技術や漁労機器等は未熟で、漁法は棒受網の簡易版である敷網漁業が主体となっており、効率的
   な漁業が行われていない。
  ・ インドネシアでは、水産業が急速に成長している一方で、業界を担う熟練者の確保が追い付いておらず、
   研修と教育の場も限られている状況である。
  ・ ミャンマーでは、漁業をより効率的かつ大規模に実施し、漁業生産を拡大させるため、国内の漁船員に、
   近代的な漁労機器・漁具を使用する日本の棒受網漁業の技術を習得させたいという要望がある。
  ・ 技能実習により、基礎的な漁業技術や効率的な操業方法を習得するとともに、資源を有効活用するための
   漁獲物の品質管理や資源管理の考え方を学ぶことにより、送出国の漁業技術の向上及び人材育成に貢献
   したい。
  ・ 最後に、試験実施機関である大日本水産会は、明治15年に設立され、水産業に関わる我が国の500余の
   代表的な団体や企業が会員とした団体である。水産業界の意見を国の施策へ反映させ、漁業に関する国際
   会議・地域管理機関等の活動支援、漁船から食卓までの品質衛生管理の向上支援等を行っている。
   平成30年度は、漁船漁業8作業及び養殖業1作業の技能実習生、約2,000名に対して試験を実施した。
 
  ○ 同団体からの説明に対して、概ね以下のような質疑があった。
   委員)棒受網漁業は相当効率的で一気に捕れてしまうと思うが、資源管理はどの部分で読み取ればよいか。
   説明者)例えば、日本の場合は集魚灯の色などで魚を識別して必要な量だけ集めて捕ることができるので、
     こうした漁獲量を調整する技能も母国に持ち帰っていただけると思う。
   委員)日本にせっかく来たけれども、サンマが全然いないから操業できないということになったらどうする
     のか。
   説明者)サンマは水産庁の管理計画下、資源管理が行われている魚種なので、明らかにもう来年捕れない
     ということであれば、監理団体である漁協が実習生を受け入れないと考えられる。
   委員)実習生が陸上と海上にいる割合はどのようになるのか。
   説明者)4月から操業準備を行い、5月から12月頃まで操業し、残り4月まで陸上で作業を行う。そのため、
     陸上での作業が4か月程度、海上での作業が8か月程度となる。
   委員)陸上で行う必須業務にはどのようなものがあるのか。
   説明者)漁具の製作・補修作業の他、漁具・漁労機械の操作作業を岸壁に横付けした漁船内で行うことが想定
     される。
   委員)インドネシアやミャンマーにおいて日本と同規模の棒受網漁船や漁労機器がないとのことだが、技能
     移転は可能なのか。
   説明者)漁船や漁労機器にかかわらず必要な、基礎的なロープの結び方や漁具の製作・補修作業に関する
     技能の移転が可能と考えている。また、漁具・漁労機械の操作作業についても、漁具・漁労機械が
     異なっても、操作の原理的な部分は共通であるため、技能の移転が可能と考えている。
  
  ○ 検討の結果、漁船漁業職種(棒受網漁業)については、厚生労働省、出入国在留管理庁において、省令の
   改正案に係るパブリックコメントを実施し、その結果を踏まえ、審査基準案や技能実習評価試験案等について
   引き続き議論が行われることとなった。
  
                                                              (以上)