2019年12月4日 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録

日時

令和元年12月4日(水)16:00~

場所

厚生労働省講堂(低層棟2階)

出席者

出席委員(19名)五十音順

(注)◎部会長 ○部会長代理
 他参考人2名

欠席委員(4名)
 
行政機関出席者
 
 樽見英樹(医薬・生活衛生局長)
 森和彦(大臣官房審議官)
 中井清人(医療機器審査管理課長)
 関野秀人(医薬安全対策課長)
 新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
 森口裕(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
 櫻井信豪(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
 木下勝美(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役) 他


 

議事

○医療機器審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、御多用の中御出席いただきまして、ありがとうございます。現時点で中島先生が少し遅れているようですが、もうすぐお見えになられるかと思います。委員23名のうち18名に御出席いただいておりますので、定足数を満たしていることを御報告申し上げます。

 最初に、本日の審議に参考人としてお越しいただいている先生を御紹介申し上げます。議題2について、国立大学法人東北大学医学系研究科細胞治療分野教授の阿部俊明先生にお越しいただいております。議題3について、国立大学法人筑波大学脳神経外科脳卒中予防治療学教授の松丸祐司先生にお越しいただいています。

 続いて、部会を開始する前に事務局より、所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について、報告いたします。第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定しています。今回、全ての先生方より、薬事分科会規程第11条に適合している旨、御申告いただいていますので報告させていただきます。その都度、御書面にて御提出していただいいており、御負担をお掛けいたしておりますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 それから、申し遅れましたが、樽見局長が遅れております。30分ほど遅れて見える予定です。それから、先般、この部会でも報告申し上げた薬機法改正ですが、臨時国会で可決されまして、本日付けで薬機法改正が公布されております。薬機法改正の施行についてはそれぞれにおいて1年、2年、3年とあるのですが、医療機器の審査の関係は1年以内の施行となっております。報告申し上げます。

○事務局 次に、本日の議題の公開・非公開の取扱いについて説明いたします。平成13年1月23日付け薬事・食品衛生審議会決議に基づき、議題1については会議を公開で行い、議題2以降の議題については、医療機器の承認審査等に関する議題であり、企業情報に関する内容などが含まれるため非公開といたします。

 これより議事に入りますので、カメラ撮りはここまでといたします。御協力のほど、よろしくお願いいたします。

 続きまして、配布資料の確認をさせていただきます。事前にお知らせいたしましたとおり、本日はペーパーレスで会議を進めたく、お手元には議事次第、座席表及びタブレットの使い方の資料のみ、紙でお配りしています。タブレットの操作について御不明点等がございましたら、お近くの事務局員までお声掛けいただければと思います。

 それでは、以後の進行について、荒井部会長、よろしくお願いいたします。

○荒井部会長 資料について特に御意見がございませんでしたら、これから議題に入ります。議題1「医療機器の認証基準の改正及び廃止について」です。事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 議題1について、事務局から御説明いたします。本議題では、医療機器の認証基準の改正及び廃止について、御報告させていただきます。資料1の1ページ目を御覧ください。今回の認証基準の改正及び廃止の概要をまとめたものです。「2 改正の内容」の1つ目の○を御覧ください。「コール形換気用気管チューブ」「非コール形換気用気管チューブ」については、認証基準において、それぞれJIST7224T7221に適合することを求めております。製品の外観は3ページ目のとおりで、コール型とはチューブ先端の直径が小さい特殊な形状を指しているものとなります。

 1ページ目の「2 改正の内容」に戻ります。これらの基準については、令和2年1月にJIST7224がJIST7221に統合されることに伴い、「非コール形換気用気管チューブ」の認証基準に「コール型換気用気管チューブ」を統合する改正を今回行います。なお、今回の改正に伴い、認証基準で求める要求事項に差はございません。また、6ページ目の認証基準新旧対照表のとおり、今回の認証基準の統合に伴い、「コール型換気用気管チューブ」の廃止を併せて行います。

 続いて1ページ目に戻りまして、「2 改正の内容」の2つ目の○を御覧ください。「歯科用精密磁性アタッチメント」については、認証基準において、生物学的安全性の評

価方法について規定したJIST0993-1及びT6001に適合することを求めております。これらの製品の外観は5ページ目の下部のとおりです。

 1ページ目に戻ります。今般、「歯科用磁性アタッチメント」の評価項目を規定したJIST6543201711月1日に制定されたことに伴い、当該JISの中で0993-1及び6001を引用規格として規定したことに伴い、認証基準として引用するJISをT6543に変更するものとなります。なお、説明させていただいた認証基準改正及び廃止案については、現在パブリックコメントを実施中です。以上で事務局からの説明を終わります。

○荒井部会長 JISの変更に伴っての認証基準の改正ということです。御意見、御質問等はいかがでしょうか。よろしければ、これで議題1を終了させていただきます。以降は非公開になりますので、傍聴の皆様は御退席くださいますよう、お願いいたします。

○医療機器審査管理課長 準備が整いましたので、再開いたします。

○事務局 本部会の利益相反について御報告いたします。資料9「競合品目・競合企業リスト等一覧」をお開きください。まず、1ページ目の「RETISSAメディカル」ですが、不正乱視によって視力が障害された患者に対し、視力補正をする目的で使用される機器であり、同様の効能・効果等を有する製品として、資料に記載された品目が競合品目として提出されています。

 2ページの「Woven EndoBridgeデバイス」ですが、前方循環型又は後方循環型の分岐部に位置する、ワイドネック型の頭蓋内動脈瘤に対する血管治療のために使用される機器であり、同様の効能・効果等を有する製品としては資料に記載された品目が競合品目として提出されております。

 3ページの「エドワーズ サピエン3」ですが、外科的に留置された大動脈生体弁の機能不全に対する適応追加に係る審議であり、同様の効能・効果等を有する製品として、資料に記載された品目が競合品目として提出されております。

 その他、一般的名称に係る影響企業のリストが4ページから7ページまでございますので、必要に応じて御覧ください。

 本日の審議事項に関する競合企業として、資料9に示す企業について、委員の皆様から寄付金、契約金等の受取状況をお伺いしましたところ、薬事分科会審議参加規程第12条の審議不参加の基準に基づく審議に参加できない委員はいらっしゃいませんでした。以上、御報告いたします。

○荒井部会長 ただいまの事務局からの説明につきまして、御質問あるいは御意見はよろしいでしょうか。よろしければ、次の議題に入らせていただきます。

 議題2、医療機器「RETISSAメディカル」の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績評価の要否についてを始めます。本議案については、先ほど御紹介いただいた阿部俊明先生に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。それでは、事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 議題2について説明いたします。資料2のファイルをお開きください。本議題では、医療機器「RETISSAメディカル」の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績評価の指定の要否について、御審議をお願いいたします。

 まず、ファイルの1ページ目を御覧ください。既存の一般的名称のいずれにも該当しない医療機器に対しては、部会の御意見を聞いて、新たに一般的名称を新設することになります。今回、新設を予定する一般的名称は、「レーザ網膜走査型眼鏡」です。定義は「レーザ光を用いて網膜走査し、画像を網膜に投影することによって視力補正を行う機器。例えば、レーザ光を出力する光源部及びレーザ光を網膜走査する光走査部からなる」となっています。

 本品は、クラスⅡ管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、本品は保守点検を行う必要のある医療機器と考えております。一般的名称の新設に関する説明は以上です。

 引き続き、審議品目及び審査の概要については、総合機構より説明をお願いいたします。

○医薬品医療機器総合機構 ファイルの通し番号の5ページ、資料2-2の専門協議委員を御覧ください。本審査に当たり、4名の専門委員から御意見を頂いております。

 審査の内容について御説明いたします。以後の説明は、ファイルの通し番号のページ数は「218分の何ページ」と書いてあるのですが、こちらに基づいて御説明いたします。初めに品目の概要について御説明いたします。12ページの「審議品目の概要」を御覧ください。本品は不正乱視の患者に対して可視光領域のレーザ光を照射し視力補正を行う機器です。12ページの中段の図1が、本体の全体図で、右側の図2が本体の外観です。眼鏡型の部分をアイウェア投影部と言いまして、眉間の辺りにあるカメラで対象物を撮影し、制御ボックス内で可視光領域のレーザ光に変換いたします。その後、アイウェア投影部に内蔵されたプロジェクタから網膜に向けてレーザ光が照射されます。使用方法は、制御ボックスを起動後、アイウェア投影部を顔に近付けると、見ることができるようになります。使用方法としては以上です。

 次に、開発の経緯について御説明いたします。13ページの中段の()開発の経緯の1段落目の下から2行目を御覧ください。角膜疾患によって引き起こされる不正乱視は屈折面が不規則な状態になっている疾患です。次に、2段落目の上から3行目に移っていただきまして、例えば原因の1つである円錐角膜は、角膜中央部の菲薄化又は変形を主徴とする疾患で、角膜の突出が軽度な場合は眼鏡やソフトコンタクトレンズでの視力補正が可能ですが、進行した場合はハードコンタクトレンズが用いられます。ただし、角膜の変形の程度が大きい場合は、機械的な摩擦により、違和感や痛みのため長時間の装用が難しいことがあります。また、ハードコンタクトレンズと角膜の形状が適合せず、ハードコンタクトレンズが装着できずに外れてしまうことがあります。更に進行した場合は、角膜移植が必要となる疾患です。

 眼鏡やソフトコンタクトレンズでは十分な視力が得られず、ハードコンタクトレンズが装用又は装着できない場合、患者のQOLを維持又は向上させるため、視覚補助具である拡大鏡や拡大読書器などを用いて生活を送られている方が本品の対象になります。

 次に、14ページ中段の「本品はMaxwell視を用いることで」という箇所に移ってください。本品はMaxwell視光学系という原理を用いており、瞳孔中心部にレーザ光を照射し、水晶体の中心にレーザ光を通すことによって角膜及び水晶体の屈折力に依存せず、疾患の影響を受けずに網膜に結像することができます。当該原理により、既存の眼鏡やコンタクトレンズでは十分な視力が得られない不正乱視の患者に対し、視力補正ができる機器として開発されました。なお、本品は外国における許認可を取得しておらず、使用実績はありません。

 次に、非臨床試験成績のうち、安全性に関する点について御説明いたします。16ページ中段の【放射線に対応する安全性】という箇所を御覧ください。レーザ製品の安全基準について定めた国際規格及び日本産業規格に準拠した試験を実施しております。本品のレーザ出力は0.316μWであり、長時間レーザ光に晒されても安全なレーザ製品であるクラスⅠレーザの上限値の約1,000分の1の値となっています。また、米国FDAの光放射製品の性能基準である連邦規則集(CFR)において、危険とみなさないクラスⅠレーザの上限値0.39μWを満たしております。この連邦規則集(CFR)では、クラスⅠレーザは、より高いクラスのレーザとは異なり、長期的な照射による危険性の懸念が示されていないレーザ光というようになっています。

 これらの試験結果を中心に、本品と同一のレーザ出力の製品が医療機器ではなく一般消費者向けとして既に使用されている実績があることも踏まえ、特段の問題はないと判断いたしました。

 次に、臨床試験成績について御説明いたします。20ページ下段の()試験デザインを御覧ください。国内で実施された臨床試験成績が提出されました。国内2施設において、1516眼が登録されました。主要評価項目が装用前からのLogMAR値の変化量と設定されました。達成基準は眼鏡矯正群に対して0.2改善すること、差がマイナス0.2より小さな値となることと設定されました。本品は視力補正を目的とした機器ですので、主要評価項目を視力としております。

 臨床試験の結果の前に、視力について御説明いたします。25ページの下段の図7「視角と小数視力について」を御覧ください。視力とは、眼で見分けられる2つの点が眼に対してなす角度(視角)から算出します。このグラフの中に四角囲みで図を記載しておりますが、Cのマークのランドルト環の切れ目が眼に対してなす角度のことになります。例えば健康診断や運転免許の取得更新時に測定する視力のことを、小数視力と言います。眼科領域では、小数視力を統計的に評価するためには、この小数視力をLogMAR値という常用対数を取った値に変換することが一般的になっております。

 次に、26ページ上段の表4「小数視力とLogMAR値との関係」に移ってください。例えば小数視力2.0は、LogMAR値はマイナス0.301、小数視力1.0LogMAR0.00、小数視力0.1LogMAR1.00に相当します。小数視力の場合は、値が大きいほど視力がよいことを表しますが、LogMAR値の場合は値が小さいほど視力がよいということを表します。

 本臨床試験では、22ページの下段の「観察スケジュール」という所に示しているETDRS視力表を用いて測定しております。この視力表は、眼科領域の臨床試験で使用されている視力表で、読むことができた文字の数からLogMAR値を算出する方法となっております。本臨床試験では、2回の来院で計3回の視力測定を実施しています。

 続いて、本臨床試験の試験結果について御説明いたします。26ページ下段の表5「LogMAR値の変化量の比較」を御覧ください。裸眼のLogMAR値をベースラインとしたLogMAR値の変化量の平均は、Visit1、1回目では裸眼矯正群でマイナス0.083、本品群でマイナス0.688でした。Visit1の2回目では、眼鏡矯正群でマイナス0.201、本品群でマイナス0.596Visit2では眼鏡矯正群でマイナス0.164、本品群でマイナス0.650でした。

 眼鏡矯正に対してどの程度改善しているのかを表す眼鏡矯正群と本品群との差については、Vist1の1回目ではマイナス0.605Visit1の2回目ではマイナス0.395Visit1ではマイナス0.486でした。例えば改善の度合いの一番小さなVisit1の2回目のマイナス0.395の場合、本品を装用することによって0.395改善したことになります。LogMAR0.395というのは2.48倍に相当しまして、この2.48倍というのは、同じ距離から見た場合に2.48倍狭い2つの点というのを見分けることができるということを表しています。

 続いて、本臨床試験の不具合・有害事象について御説明いたします。29ページの中段の3.不具合及び4.有害事象を御覧ください。本臨床試験において不具合の発生は報告されておりません。また、有害事象の発生は、軽度の結膜充血が1件(6.3)及び軽度の上咽頭炎が1件(6.3)でしたが、治験責任医師は本品の使用との因果関係を否定しております。

 次に、総合機構における審査の概要について御説明いたします。審査における主な論点は4点です。1つ目の論点は、本品の有効性についてです。30ページ中段の1)試験デザインについてを御覧ください。不正乱視の患者は、既存の眼鏡やコンタクトレンズで視力補正ができない場合は、視力補正が十分にはできませんが、眼鏡やソフトコンタクトレンズを装用することがあるため、比較対象を既存の視力補正の中から眼鏡としております。

 達成基準については、屈折異常を有する被験者を対象とした文献では、LogMAR値が0.2以上変化していれば、確からしい変化であると報告されていること、また安定した眼疾患の患者でもLogMAR値で0.16の変化は認められるというように報告されていることから、眼鏡矯正群に対してLogMAR値が0.2改善と設定することは妥当と判断いたしました。

 続きまして、31ページ下段の2)試験結果についてを御覧ください。本臨床試験では視力測定を3回行っており、いずれの測定においても眼鏡矯正群と本品群とのLogMAR値の差は、達成基準であるマイナス0.2より小さい結果であり、統計学的に有意な差が認められました。

 次に、2つ目の論点である本品の安全性について御説明いたします。34ページ中段の()本品の安全性評価の妥当性についてを御覧ください。本臨床試験で発生した有害事象は軽度の結膜充血が1件(6.3)及び軽度の上咽頭炎が1件(6.3)でした。本品には同一のレーザ出力で一般消費者向けとして使用されている製品がございます。一般消費者向けの製品は、消費生活用製品安全法という法律に基づいて、重大製品事故が発生した場合は報告することとなっています。申請者に確認したところ、網膜の障害などといった重篤な有害事象は発生していないと回答を受けています。非臨床試験の箇所で御説明した内容も踏まえまして、本品の安全性を確認できたと判断いたしました。

 次に、3つ目の論点である本品の臨床的位置付けについて御説明いたします。35ページの冒頭を御覧ください。本品はプロジェクタが片側にしか付いておりませんので、視力補正が可能なのは片側のみになります。本品は、瞳孔中心部にレーザ光を通す原理のため、瞳孔からレーザ光が外れますと網膜には結像せず、視力補正の効果は得られなくなるため、装用時の患者の動きが制限されるというような特徴があります。そのため、日常的に本品を装用して生活を送るのではなく、本や新聞などを読む作業をしやすくするというような位置付けになるというように考えております。

 次に、35ページ下段の()製造販売後安全対策について、の上に8行移っていただきまして、本品の別の特徴として、屈折面が不規則な状態である不正乱視の患者の眼に対し、ハードコンタクトレンズが接触することなく視力補正が得られるということは、患者にとってベネフィットがあるというように考え、不正乱視に対する視力補正の選択肢の1つとして臨床的意義はあると判断いたしました。本臨床試験の結果も踏まえ、既存の視力補正の方法を用いても十分な視力が得られない患者に対し、本品が使用されることが適当と判断いたしました。

 次に、4つ目の論点である本品の製造販売後安全対策について御説明いたします。35ページ下段に()製造販売後安全対策についてを御覧ください。本品の適正使用のための情報提供として、本品はレーザ光を網膜に照射する機器であることから、スクリーンとなる患者の網膜の機能が有効性に直接影響いたします。また、視力低下の原因となる疾患が特定されていない状態で本品が使用された場合、原因疾患に対する必要な対応が遅れる可能性があります。以上を踏まえ、本品を使用する前に角膜や水晶体を含む中間透光体や網膜について眼科医の評価を受ける必要がある旨を添付文書において情報提供することが適当と判断いたしました。

 続いて、36ページ上段の2.使用成績評価の要否についてを御覧ください。レーザ光の安全性については、非臨床試験の結果及び本臨床試験において懸念される有害事象が確認されていないことを中心に審査し、本品と同一のレーザ出力の製品が一般消費者向けとして使用されている実績があることも踏まえ、市販前に確認する必要のある安全性については評価されたというように判断いたしました。

 有効性については、通常は眼に入ってきた光を角膜及び水晶体の屈折力を用いて網膜に結像させているのに対し、本品はMaxwell視光学系というものを用い、角膜及び水晶体の屈折力に依存せず、網膜上に結像させる機器になります。本臨床試験において、レーザ光を瞳孔中心部に通すことができれば、視力補正の効果が得られるという本品の原理が確認できていることから、使用成績評価の指定は不要と判断いたしました。

 以上の審査を踏まえ、総合機構は39ページ下段に記載している使用目的で、本品を承認して差し支えないと判断し、本医療機器・体外診断薬部会において御審議いただくことが適切と判断いたしました。本品は生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科会では報告を予定しております。総合機構からの御説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○荒井部会長 ありがとうございます。それでは初めに、参考人としてお越しいただいています阿部先生から、追加の御説明がございましたらお願いいたします。

○阿部参考人 まず、不正乱視の矯正に関しては、道具は幾つかありますけれども、大体利点、欠点それぞれあって、患者側から見ると同じ疾患の不正乱視でもその機器に対して対応できる程度がかなり異なっておりますし、ニーズも異なりますので、色々な選択肢があるのは、患者側からしてみるとすごく大事だと思います。もしこれが使えるようになるのであれば、それは選択肢が増えていいのではないかと思います。

 また視力の改善がこの機器で得られているようですが、読書速度や臨界文字の改善も見られており、臨界文字サイズというのは患者がイライラしないで字が読める程度を示しているので、患者はこの機器を着けることで読書時間を長く持続することができる、すなわちQOLの改善につながる可能性もありますし、読書速度が上がることは学習能力の向上などにつながることを考えると、患者にとってはやはり価値のあるものになるのではないかという印象を受け取ります。

○荒井部会長 ありがとうございます。委員の方々から御質問、御意見はいかがでしょうか。

○大隈委員 2点ほど確認させていただきたいです。臨床試験において、角膜や水晶体の混濁の程度と有効性の関係について調べられておりますけれども、全ての混濁の程度が軽度か異常なしということで、かなり混濁の程度がこの有効性に影響するのではないかと思うのですが、中等度以上の混濁の程度に対しては、何かしら評価をし対処しておられるのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 総合機構からお答えいたします。委員から御説明頂いたとおり、確かに臨床試験では中等度以上の混濁が入っておりません。この結果からは、軽度の混濁であれば、本品の有効性は一定程度認められるということまでは分かったのですけれども、それ以上の混濁については、有効性の検証はできていないと結果からは言えます。混濁については、角膜や水晶体の場合、混濁がどの場所にあるのかなどに基づき分類されていますが、本品については、混濁がどの場所に存在したとしても、瞳孔中心部の所をレーザ光が通れば視力補正はできるというのが原理になります。本品の原理を十分に眼科医に伝えた上で、あとは臨床試験において、軽度の患者であれば、一定程度の視力補正があったことを伝えようと思っております。

 また、レーザの特性として、混濁があると光が散乱して有効性が低下する方向にいくとは思いますので、その点についても情報提供をさせていただいて、十分に混濁の程度を踏まえながら、まず使用前にきちんと評価していただいて、本品で視力補正する意義がある患者を見極めていただく必要があるかと考えております。

○大隈委員 分かりました。もう1点ですが、有害事象が2件ほど発生しています。1つは軽度の結膜充血で、もう1つが上咽頭炎で、どちらも治験の責任医師からは因果関係はないと言われておりますので、無関係のようですけれども、そういう場合でもやはり有害事象としてはカウントしておいた方がいいのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 臨床試験においては、有害事象は本品との因果関係によらず、患者、被検者にとってよくない事象を全て収集するということになっておりますので、その上で評価をさせていただいております。ですので有害事象としてはこの2件はカウントさせていただいております。

○大隈委員 それに関連してですけれども、その場合添付文書の中に臨床試験の安全性のところに記載があります「有害事象の発現率及び発現件数は」となっていますけれども、これは発現件数は前の方が分かりやすいような気もするのです。頻度があって件数だと頻度の中に件数が含まれているので重複しているような気もするのですが、これはこういう書き順になっているということでよろしいですか。

○医薬品医療機器総合機構 添付文書の有害事象の発生率の記載については、検討させていただいて、読む眼科医の方が見やすいような記載に改めさせていただきたいと思います。御指摘ありがとうございます。

○大隈委員 分かりました。ありがとうございます。

○荒井部会長 小西委員どうぞ。

○小西委員 今日のお話を聞いておりますと、世界に類を見ない画期的な製品に思われますけれども、レーザ光というと普通はレーザポインタ、あるいは人工的にレーザを発出するようなイメージに思っておりまして、この機械を見ますとその自然光をレーザ光に転換して見るというような形で。どのような原理でこういうことが行われているのかを是非知りたいということが1つです。

○医薬品医療機器総合機構 資料2の14ページの下段、図6に、Maxwell視光学系について記載しております。こちらは2つの眼を模式したものを並べておりますが、左側が通常私たちが見ている状態で、外から入ってくる光を水晶体と角膜で屈折して網膜に適切に投影してあげることになっています。それに対して本品はMaxwell視光学系というのを用いており、この右側の図には眼の模式図の中にもう1つ楕円形の丸があると思います。こちらが水晶体と言われるレンズの部分を模式しております。ここの中心に光を通してあげると屈折をほぼせずに、網膜に投影できるというのが光学的な原理です。これを用いてあげると眼の疾患が角膜や水晶体にあっても見えるようになるということです。委員の御指摘の、本品はなぜこのレーザで見れるようになるのかという点につきましては、本品が用いているレーザ光は、可視光領域と言われる、我々が普段見ることのできる波長の領域のレーザ光になっており、認識できる光の波長のものを網膜に照射しているので、外から入ってきている光で、ものが見えているのと基本的には原理は変わらないことになります。説明が分かりにくいかもしれないのですが、以上です。

○荒井部会長 今の小西委員の最初の御質問は、可視光をどうやってレーザ光に変換しているかというところのメカニズムについてです。

○小西委員 13ページの上の図を説明してほしいのです。どこからレーザが出ているかと。

○医薬品医療機器総合機構 13ページに網膜操作の模式図と、その上のページに原理を書かせていただいているのですが、まず、眉間の所にあるカメラで画像を撮ります。撮影された画像には、画像を構成する色の情報が記録されます。それをレーザで点描し網膜に走査していくような原理になっています。

○小西委員 では、それを単に見ているのではなくて、一回写して画像にした上で、それをレーザ光に変換しているということですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい、そうですね。

○小西委員 分かりました。

○医薬品医療機器総合機構 ですので、冒頭にサンプルを回して説明させていただきましたが、カメラでピントを合わせるために、多少のラグがありまして、あとおっしゃっていただいたとおり、レーザに変換する動作もありますので、少しラグがあるので、あまり速い動きには追従できません。

○小西委員 よく分かりました。もう1点よろしいでしょうか。有害事象のことですが、レーザ光の害はよく知られており、レーザポインタの光を目に入れますと目が見えなくなると言われているので、それが一番気になるのですが、レーザ光の出力を、例えば動物実験で、これぐらい上げていって、どこからその有害事象が出てくるかを、動物実験でも確認しているかどうかということと、その有害事象の中には、例えばアドリアマイシンとドキソルビシンのように、1回投与では全然有害事象はないけれども、少量でもずっと蓄積していくと、心臓が駄目になるというような、そういう有害事象があるのですが、そういった蓄積効果が出るのかどうか、その点を明らかにしてほしいです。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。まず、本品が用いているレーザ光は、委員が冒頭おっしゃっていただいた、普段私たちが会議で使っているレーザポインタというのは、クラス2と言われるレーザの出力になっており、こちらは覗くとやはり眼に影響が出ます。本品が用いているのはクラス1の、それより低い出力のレーザ光になっており、同じクラスに入るものとしては、おもちゃ用の玩具用のレーザポインタ、子供が使って、誤ってそのレーザが眼に当たってしまうことも想定するような、レーザの出力のレーザポインタと同じぐらいの出力となっております。

 おっしゃっていただいた、これで本当に安全かというところについては、例えば動物実験で実時間で何年も何十年もやって安全だったからそのように決めましたというようには、実際のところはなっておりません。ただ、規格を作る上で、どこかでは線を引かなくてはいけないのですが、本品、クラス1に分類するに当たっては、1日当たり8時間を超えない時間のレーザの使用であれば眼に影響が出ないだろうというのが、今の科学水準では決められているものになります。

 ですので、1日8時間使っていても、例えば次の日に日を跨いでまた同じ程度使ったとしても、持ち越して網膜に障害があるというようなことは今のところ懸念されていないことになっております。本品は1日当たり8時間を超えないようにという情報提供はさせていただくつもりです。

○荒井部会長 よろしいですか。その他、御意見いかがでしょうか。

○永井委員 今の御説明で安全性についてはよく分かったのですが、現場で目茶苦茶な使い方をされるようなことはないかという観点から、これは眼科医の処方によって使えるのか、それとも市販でどんどん使えるのか、さらには将来的に保険適用になっていくものなのか、その辺りはどうでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。まず、1点目の本品の使われ方について、添付文書にも書かせていただきましたが、まず、不正乱視であること、あとレーザを当てるものになりますので、網膜がきちんと機能していること、角膜や水晶体の混濁の程度など、眼のさまざまな領域の評価を踏まえて、本品が使用できる患者を選んでいただきたいと考えております。例えば、家電量販店などで電化製品を買うような形で本品が購入されることは想定しておらず、眼科医の下で本品が必要な患者というのを適切に診断していただきたいと考えております。

 保険については、本品の使用目的は視力補正と冒頭説明させていただきました。本品と同じような位置付けに並ぶのは、眼鏡であったり、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズです。これらと同じ取り扱いになると考えており、申請時においては申請者からは特段保険適用については考えてはいないと聞いております。

○荒井部会長 よろしいですか。

○山上委員 眼科医からのコメントということで、使われ方ですけれども、円錐角膜の患者さんで、ハードコンタクトレンズを使えないアレルギーの方が結構多いので、そういう時に確かに有用かと思います。あと恐らく眼科ではロービジョンの外来をやっている所が結構ありまして、そういう所で視力が出ない方に関して、こういうのを使うというような感じで使われてくるのが一番いいのかと考えております。

 あと他の適用としては、例えばデッキ用としては、円錐角膜で角膜移植をしても不正乱視が強いケースもありまして、そういう場合にも有用性があるかと思います。

○荒井部会長 どうぞ。

○渡邉委員 水晶体の中心を通って網膜に一直線に像を結ぶということですが、1点だけで通すわけですね。となると平面図を見るにはいいと思うのですが、例えば立体的なものを見る場合、奥行きというのは分からないのではないでしょうか。その点はいかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 コメントありがとうございます。本品の特徴として、片側にしかプロジェクタが付いていませんので、視力補正は片方でしかできません。ですので両眼視ができる、利き眼で見て、もう一方の眼で補正して立体的に見ているような、それが日常生活においてできている患者にとっては、本品は余りメリットはないと考えております。一方で、例えば円錐角膜ですと、一般的には両眼性となっておりまして、両方とも視力がすごく悪くて、視力補正をしても視力が得られないような患者にとっては、例えばルーペを近付けて読むとか、単眼鏡みたいなものを片眼で見ているような、読書をする時に見ているような状況ですので、本品はそれをレーザで代替してあげるような位置付けですので、委員がおっしゃっていただいたとおり、両眼視で立体的に見れるというような位置付けではありませんので、そこは使用する際に本品の特徴をきちんと説明した上で、納得した上で患者に使っていただきたいと考えております。

○荒井部会長 その他には御意見、御質問はよろしいでしょうか。それでは、特にないようですので、議決に入らせていただきます。一般的名称「レーザ網膜走査型眼鏡」を管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器として指定する、ということでよろしいでしょうか。また、医療機器「RETISSAメディカル」につきまして、本部会として、承認を与えて差し支えないものとし、また、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定を不要としてよろしいでしょうか。さらに、使用成績評価は不要としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、このように議決させていただきます。本件はまた、分科会にて報告させていただきます。これで議題2を終了いたします。阿部先生、どうもありがとうございました。

 続きまして、議題3に入らせていただきます。議題3「Woven EndoBridgeデバイス」の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績評価の要否について始めます。本議題につきましては、冒頭に御紹介いただきました松丸先生に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。それでは、機構から説明をお願いいたします。

○医薬品医療機器総合機構 医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。資料3の冒頭、本品目の専門協議委員一覧を御覧ください。本審査に当たり、資料にお示しする3名の専門委員の御意見を頂きました。以降の説明においては、緑色で大きく記載されております1/359から始まる通し番号のページ数に基づいて御説明いたします。

 初めに、品目の概要を御説明いたします。通し番号9ページ、審議品目の概要を御覧ください。本品は、脳動脈の分岐部に位置する破裂リスクの高い大型の脳動脈瘤に使用する塞栓材です。本品は図1に示しますように、ニッケルチタン合金ワイヤー等で編み込まれた球状の留置部及びデリバリーシステムで構成されます。本品は既存の塞栓用コイルと同様に、大腿動脈から挿入したカテーテルを介して、経皮的に留置がなされます。本品には脳動脈瘤の形状に適合させるために、円筒状のSLタイプ及び球状のSLSタイプがあります。後ほどの説明にも出てまいりますが、本品の構造の特徴として、図2のように中心部が少しくぼんでいる形状を有しています。

 次に、開発の経緯を御説明いたします。10ページ下段、開発の経緯及び外国における使用状況等に関する資料を御覧ください。脳動脈瘤は血圧上昇、外傷による血管損傷等により脆弱化した脳血管壁が血圧により進展する病態であり、破裂すると致命的なくも膜下出血となります。脳動脈瘤の破裂防止を目的として、本邦においては外科的な手技である開頭クリッピング術、又は塞栓用コイルを用いた血管内治療が行われており、脳動脈瘤の発生部位及び全身状態等を考慮して治療方法が選択されます。特に脳動脈瘤の血管側の開口部が広い形状、以降、ワイドネック型と呼ばせていただきますが、ワイドネック型は塞栓用コイルが落脱しやすい脳動脈瘤です。そのため、それらの脳動脈瘤に対する血管内治療においては塞栓用コイルに加えて、コイル塊の保持を行うためのアシストステントを併用した治療が行われています。

 しかしながら、このような脳動脈瘤が血管分岐部にある場合、アシストステントが血管壁へ十分に圧着しないことで、塞栓用コイルの保持機能が発揮されにくいこと、手技が複雑になること等の課題があります。本品はこれらの課題を解決するために、分岐部に位置する脳動脈瘤を対象に本品のみを留置することで治療可能とするデバイスとして開発されました。

 続きまして11ページ、表の2()外国における使用状況を御覧ください。本品は米国で201812月、欧州で201312月に許認可を取得しており、2019年8月時点で約○○○本の販売実績があります。本品の非臨床試験については特段の問題は認められませんでしたので、臨床試験成績について説明いたします。

 18ページの初め、WEB-IT試験を御覧ください。WEB-IT試験は以降、本臨床試験と呼ばせていただきますが、本臨床試験はワイドネック型の分岐部脳動脈瘤に対する本品の有効性及び安全性の評価を目的に、米国・欧州を含む31施設で実施されました。

 次に、本臨床試験成績の概要について御説明いたします。21ページ、表10を御覧ください。主要有効性評価項目は、術後12か月において追加治療の実施、くも膜下出血の再発及び親血管の閉塞がなく、コアラボ解析で治療対象瘤が完全閉塞した症例の割合と設定されました。本臨床試験の結果、本品群の成績は54.77%、90%信頼区間下限値47.97%であり、事前に設定された性能目標35%を達成しました。

 主要安全性評価項目については、22ページ表12を御覧ください。主要安全性評価項目として、1.術後30日以内の死亡又は重大な脳卒中、2.術後31日以降365日以内の脳神経に起因する死亡又は治療対象瘤と同側に発症した重大な脳卒中のいずれかに該当した症例の割合が設定されました。本品群の成績は0.67%、90%信頼区間上限値6.04%であり、性能目標20%を達成しました。なお、不成功症例の1例は、術後22日に発生したくも膜下出血の症例でしたが、治療対象瘤との因果関係は否定されております。

 次に、本審査における主な4つの論点について説明いたします。初めに、本品の有効性及び安全性についてです。26ページ下段から27ページにかけて御覧ください。本臨床試験の結果、設定された性能目標を達成しておりましたが、脳動脈瘤の完全閉塞率は54.77%でした。本品は脳動脈瘤を治療する塞栓材であるため、動脈瘤を完全に閉塞することが重要ですが、先ほど御説明しましたとおり、本品の構造の特徴として中心部がくぼんでいる形状であることから、脳動脈瘤と血管の接続部であるネック部の血流が残存しやすく、以降、ネック部残存と呼ばせていただきますが、本臨床試験では、このネック部残存が多く認められたことから、完全閉塞率が低かった可能性があると考えられます。

 また、ネック部残存を除く不完全閉塞率は、術後6か月で13.48%、術後12か月で10.71%であり、一般的にネック部が残存していても動脈瘤内への血流が認められない場合には、破裂リスクは低いと考えられること、術後6か月時点で完全閉塞が見られなかった症例も術後12か月の時点で閉塞の程度が高くなる傾向が観察されたことを踏まえ、当該閉塞率は臨床上許容可能と判断いたしました。また、不完全閉塞症例についても、術後12か月までに破裂症例は認められなかったこと、術後6か月以内において本品に関連した死亡や重度脳卒中も発生していないことを踏まえ、本品の有効性及び安全性は示されたと判断しました。なお、12か月以降の長期成績については、後述する使用成績調査において引き続き確認を行っていく必要があると考えます。

 2つ目の論点は、海外で実施された本臨床試験の試験成績を用いて、本邦における本品の有効性及び安全性を評価することについてです。26ページ中段を御覧ください。総合機構は、患者背景等の内的要因及び脳動脈瘤の治療方法、抗血小板療法、周術期管理等の外的要因について、国内外差が大きくないこと、日本人は欧米人と比較して、体格及び血管径が小さいことが懸念されますが、本品の使用においては標準的な血管内治療におけるマイクロカテーテルと同等の大きさのものを使用するため、アプローチ血管について本品特有の懸念がないこと、本品のサイズ選択等、本品特有の手技については、十分なトレーニングを実施することで、本品の有効性及び安全性を担保できると考えられ、本品特有の懸念がないことから、国内臨床試験を実施せずとも、日本人患者集団における本品の評価を行うことは可能と判断いたしました。

 3つ目は、本品の適応に破裂動脈瘤を含めることについてです。27ページ下段に記載しました()本品の適応、破裂脳動脈瘤についてを御覧ください。本邦においては脳動脈瘤治療に対する血管内治療デバイスとして、塞栓用コイルを除き、破裂動脈瘤に対する適応を取得しているものはありません。総合機構は、破裂脳動脈瘤は未破裂脳動脈瘤と比較して再破裂、再出血のリスクが高まる懸念及び本品を使用することで脳動脈瘤の血栓化が遅れる懸念があるため、慎重に評価する必要があると考えます。

 27ページ、表17にお示しますように、本臨床試験では破裂から60日以内の破裂脳動脈瘤9例に対して本品が使用され、8例がフォローアップを完了しました。その結果、術後12か月の完全閉塞率は62.5%であり、ネック部残存症例の血管造影画像を確認したところ、瘤内に血流が残存していないことが確認されました。また、本臨床試験における破裂脳動脈瘤症例において不完全閉塞症例はなく、再破裂・再出血は発生していませんでした。

 以上のとおり本臨床試験では、9例と少ない症例数ではありますが、破裂脳動脈瘤症例に対し、本邦において報告されている成績よりも良好な傾向の成績が示されたことから、本品の破裂脳動脈瘤症例に対する臨床上のベネフィットはリスクを上回ると判断し、本品の適応に含めることは妥当と判断しました。なお、破裂動脈瘤に対する成績については、この後に御説明いたします使用成績調査においても、継続して評価を行う予定です。

 4つ目の論点は、市販後の安全対策及び使用成績評価についてです。30ページ下段を御覧ください。申請者は本品の使用者に対し、表19にお示ししますトレーニングを実施することを予定しています。トレーニング内容については、日本脳神経血管内治療学会と協力して取りまとめ、さらに同学会とともにワイドネック型分岐部脳動脈瘤用デバイスの適正使用指針を作成する予定です。総合機構は、本品の留置方法は、既存のアシストステント等と同様ですが、本品の場合、適切なトレーニングを実施し、トレーニングを受講した使用者により、治療対象となる脳動脈瘤の形状等に合わせて適切なサイズを選択し、治療することが重要であると考えることから、承認条件1を付すことが妥当と判断しています。

 続いて、使用成績評価についてです。31ページト項及び表20「使用成績調査計画書()」を御覧ください。総合機構は、本品の臨床試験は海外のみで行われていること、及びサイズ選択が治療成功に大きく影響すると考えることから、本邦においてサイズ選択を含めた本品の市販後の適正使用状況を確認する必要があると考えます。また、本品を破裂脳動脈瘤に使用した際の安全性、ネック部が残存することによる長期安全性等についても使用成績調査にて確認する必要性があることから、使用成績評価に関する承認条件2を付すことが妥当と判断しました。

 使用成績調査は、販売開始から一定症例数に達するまでは全例を調査対象とした上で、先ほど御説明しました破裂脳動脈瘤に関する議論を踏まえ、破裂脳動脈瘤についても調査に組み入れることとしました。評価項目は既存の脳動脈瘤治療用デバイス同様の内容です。症例数は、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○未破裂脳動脈瘤100例と設定しております。破裂脳動脈瘤については、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○25例と設定しました。

 以上の審査を踏まえ、総合機構は本機の承認をして差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断しました。また、本品は使用成績評価の対象に指定し、使用成績評価の調査期間を7年とすることが妥当と判断しました。生物由来製品及び特定生物由来製品には該当しないと判断しました。なお、薬事分科会では報告を予定しております。総合機構からの報告は以上です。御審議のほど、よろしくお願いします。

○荒井部会長 ありがとうございます。それではまず、参考人としてお越しいただいている松丸先生から、追加の御説明をお願いいたします。

○松丸参考人 補足させていただきます。説明にありましたとおり脳動脈瘤の治療は、現在、開頭治療とカテーテル治療があります。カテーテル治療は、その低侵襲性から治療成績が良くて入院期間が短く、合併症が少ないために医療費も削減できるということで、現在、全世界で適応が拡大しております。

 説明にありましたとおり、従来のカテーテル治療は、脳動脈瘤の中にコイルを充填するという方法でしたので、動脈瘤の入口が広がっておりますと、それが血管の方に出てきてしまい、虚血性合併症を起こすという問題がありました。脳動脈瘤が非分岐部にある場合、その血管にステントを置いて、脳動脈瘤の入口の部分に足場を作ってコイルを充填するという方法で解決してまいりましたが、脳動脈瘤が血管の分岐部のちょうど間にあるような場合では、通常の1本のステントでは、脳動脈瘤の入口をカバーすることができないので、治療が困難であります。

 そのような動脈瘤に対しては、簡単なものは開頭治療で解決できるのですが、開頭治療が難しい場合、無理をして開頭クリッピングをしてしまう、あるいはカテーテル治療の場合は、ステントを複数使うということで、治療が複雑になってまいります。そうしますと当然、治療成績も悪いということで、我々のカテーテル治療の弱点でありました。今回のデバイスは、その動脈瘤が分岐部にあって、かつワイドネック型動脈に特化した機器で、我々血管内治療医としては期待しております。実際にヨーロッパで先行して使われておりますが、非常に良い成績が報告されて来ております。

 本品の審査の過程で、現在、実例もありましたが、一つ懸念されたのが、臨床試験での完全閉塞率が少し低いのではないかということですが、我々は脳動脈瘤の閉塞状態は、通常3段階で判断します。1つは完全閉塞、もう1つはネックの残存、もう1つは動脈瘤全体が見えてくるという3段階で判断するのですが、完全閉塞とネックの残存という判断の違いは主観的で、微妙なところがあります。そして厳しく判断する論文だと完全閉塞率は20%や30%になりますし、厳密な判断をする所は完全閉塞率が低くなりますが、緩い所は完全閉塞率が高い報告になって、非常にまちまちです。

 私たちの施設でも1年後の脳動脈瘤の状態を厳密に判断しますと、完全閉塞率は6割程度、ネックの残存と含めますと9割以上になりますが、それが実態です。もちろん臨床試験はコアラボでの評価ですから、非常に厳密に評価されたということと、あとは機器の性質上、ちょうど動脈瘤の入口の真ん中の所の機器が動脈瘤の中に出っ張っていますので、そこの部分は残ってしまうことがあります。動脈瘤の破裂は、通常動脈瘤の先端部から起きますので、入口の部分が少し見えるということは、我々は臨床的には余り問題となっておりません。そういうことから考えまして、この閉塞率は十分ではないかと考えております。

 あと、くも膜下出血例が今回の臨床試験では9例と、非常に少なかったことが問題なのですが、従来の日本でのデバイスに関して言いますと、動脈瘤の中に留置するコイル治療というものは破裂瘤にも適応となっております。破裂動脈瘤と未破裂動脈瘤の治療の違いは、未破裂動脈瘤は計画的に治療しますので、治療の前から抗血小板薬を投与して、患者さんの虚血性合併症を減らすということをしますが、破裂動脈瘤では救急で来ますので、そういうことができません。ですので、動脈瘤の中にコイルを置くということは問題になりませんが、ステントを置くということになりますと血栓ができるという問題があって、ステントは破裂動脈瘤には適応となっておりません。

 本機器は非常に大きなメリットですが、血管の中に何も留置しないで動脈瘤の中に留置するというものですので、事前に抗血小板液を投与しなくても、理論的には虚血性合併症は発生しないため、また実際にこの9例でも大きな合併症は発生していないため、破裂急性期例にもこの動脈瘤を使うことは安全ではないかと判断いたしました。そうは言いましても新規性の高いものですので、我々治療医としてはどのように使っていくかということは慎重に考えなければいけないと考えております。

 適正使用指針は我々が学会で中心となって計画していきますが、1つは従来の治療法で治療できるようなもの、開頭治療で容易に治療できるものは治療しないということは盛り込もうと考えておりますし、この機器が効果を発揮しやすいものを明らかにして、そういうものに使用するというふうに、適正使用指針は決めていきたいと考えております。

 また、市販後調査に関しましても、特にくも膜下出血例での長期成績は、未破裂動脈瘤は本当に長い期間にわたって動脈瘤の破裂を予防できるかどうかということを明らかにしなければいけませんので、学会が中心になってこの市販後調査もしていきたいと考えております。以上です。

○荒井部会長 大変分かりやすい御説明を頂きましてありがとうございます。それでは、委員の方々から御意見、御質問をどうぞ。

○齋藤()委員 このデバイスですが、2013年から欧米で使用されていて、特にヨーロッパでは○○○例以上の使用実績があるとのことですが、それが最近になって日本で導入されるようになった経緯と、海外では、○○○例近い症例の臨床成績が蓄積されているにもかかわらず、なぜ安全性に対して評価する必要があるのかという点についてお聞かせください。市販後にトレーニングを課すことは、初めてのデバイスとのことで極めて重要と思います。これまでの海外での臨床データを外挿することにより、安全性に関しては市販後調査期間を短縮できるのではないかと考えます。7年間と設定することは結構厳しい条件ではないかと思います。これらの点についてもご意見をお聞かせください。

○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。本品ですが、コメントを頂いたとおり欧州で2013年から発売されておりまして、米国では2018年の12月に承認をされているものになります。この時期、現在、承認申請が行われた理由としましては、こちらの製品を作っている米国のメーカーになるのですが、こちらをテルモ社が買収しまして、それで日本に入れようということになりまして申請がなされております。

 既に○○○件近い症例のデータが集まっているというところに関してですが、既に使われたものに対して安全性というものの評価はある程度できるとは考えておりますが、本邦において抗血小板薬が米国・欧州のものと、日本で適応を持っているものというのが少し異なります。また、日本人において抗血小板薬をどの程度使ったらよいのか、それできちんと血栓ができないかといった評価については、やはり日本において市販後に行う必要があると考えまして、使用成績評価が必要であると考えております。

○齋藤()委員 分かりました。そうすると現在日本で実施されている動脈瘤に対するステント療法の中でのこのデバイスの位置づけを明確にして、抗血小板療法などの薬物療法が海外と異なる可能性もあり、今後市販後調査で日本での臨床データをしっかり蓄積して評価していくとの理解でよろしいでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 そうです。

○齋藤()委員 分かりました。どうもありがとうございました。

○荒井部会長 松丸先生、今の説明でよろしいですか。

○松丸参考人 この機種は従来のステントと治療の対象との動脈瘤が違うので、役割はかなり違うと思います。あとは御指摘のあったとおり、やはり日本人の抗血小板薬ですが、海外では使われているけれど、日本にはない抗血小板薬がありまして、それがない状況で安全に使えるかどうかというデータは必要かと思います。

○長島委員 先ほどの参考人の先生のお話にあったことにも関係するのですけれども、欧州では既に2013年から使われていることで、その市販後の調査で長期成績に関してはどうなっているのかという点と、欧州においては破裂脳動脈瘤に対する治療の中における臨床的位置付けというのはどうなっているかと、この2点を教えていただければと思います。

○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。まず、海外での長期成績についてです。本品臨床試験に対する長期成績ですが、評価期間は先ほど御説明しましたとおり12か月で有効性・安全性が評価されています。その後の長期の観察といたしまして5年まで観察を行うこととなっておりまして、本品が申請された時点では2年目までのフォローアップが完了した症例があります。その中では1年目と比較して、特段長期の安全性に何か問題があるようなデータは提出されておりません。

 また、欧州で長く使われているというところで、欧州の安全性情報についても申請者に確認しておりまして、既存の塞栓用コイルと比較して、特段大きな特別な有害事象などが多く出ていないことが確認されております。

○長島委員 脳動脈瘤に対する治療上の臨床的な位置付けというのは、欧州ではどうなっているのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 米国でも本邦での申請と同様に、破裂脳動脈瘤に対する使用は承認されております。そこまでまだ数は多くないということですが、きちんとトレーニングを受けて、一番最初から本品を使用するというわけではなく、ある程度本品の使用に慣れたドクターから破裂脳動脈瘤に対しても使用が開始されているという状況です。

○松丸参考人 よろしいでしょうか。後半の質問ですけれども、恐らく欧州と日本では状況が違うと思います。と言いますのは、脳動脈瘤の治療が欧州だと7割から8割がカテーテル治療、日本だと4割がカテーテル治療という現状です。欧州ではそういう背景がありますので、恐らく、確実なお話はできないのですが、本品を破裂動脈瘤にも、かなり積極的に使っていると考えておりますが、日本では破裂動脈瘤に対して開頭クリッピングが積極的に行われておりますので、本品が導入されても開頭治療が簡単なものに関しては、本品は使わないと思います。それは我々も適正使用指針で、従来治療で非常に良い成績のものに新規のものを使うことは控えるべきと言及しようと思っておりますので、少し違うかなと考えております。

○長島委員 もう一点ですけれども、欧米における市販価格はどれぐらいですか。

○医薬品医療機器総合機構 アメリカにおいては○○○ドルですので、日本円にして約○○万円で販売しているとのことです。

○長島委員 欧州では。

○医薬品医療機器総合機構 失礼いたしました。欧州の方は調査ができていないのですが、恐らく米国と同様であるかと思います。

○長島委員 それをお聞きしたのは、現在、医療経済的な側面も治療法である時に、ある程度こういうのもできなければいけないということで、ただ、その辺をしっかり適応を、正に最適使用ガイドラインで決めていくということですと、例えば想定される対象患者の数、全体に対する割合というのは、どのように想定されていますでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 申請者の説明によりますと、ワイドネック型の分岐部瘤というものが、約年間4,000例程度あります。ただし、それら全てが血管内治療であったり、本品の適応になるわけではありません。

 申請者の今後の販売予定ですが、大体1年目は○症例程度、その後に順次拡大していく予定と伺っております。

○長島委員 最適使用ガイドラインで、しっかり対象を限定されるよう期待しております。

○荒井部会長 確認ですが、米国の方では破裂は適応に入っていないようにここには書いてありますが、先ほどの説明は、それでいいのですか。先ほどの説明では、欧州は入っていますが、米国は入っていないと11ページには記載しているのですが。

○医薬品医療機器総合機構 失礼しました。米国の方なのですが、使用目的に明確に破裂・未破裂の記載がありませんが、承認としては破裂にも使えるものを持っているとのことです。

○荒井部会長 11ページの記載は使用状況であって、承認の項目ではないわけですね。

○医薬品医療機器総合機構 これは使用目的の記載になります。

○荒井部会長 なるほど、分かりました。その他の御質問はいかがでしょうか。

○一色部会長代理 新しいデバイスが出る時に、いつも問題になるのですけれども、本品は単品で用いるということを最初におっしゃったと思いますが、これは明確にそういう運用がされるという理解でよろしいでしょうか。例えばコイルを入れてうまくいかないので、これを使うというようなことは想定されていないと思いますが、想定されていないけれど、きちんと縛られる体制になっているのかということについて、お伺いしたいと思います。

○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。本品を留置する前にコイルを入れて、その後に本品を入れるというような使い方ですが、本品の原理上、動脈瘤と血管の分かれている部分を内皮化できれば、動脈瘤は血栓化できるというものですので、余り奥の方にコイルを先に詰めるというメリットはありません。なので、まず使用方法としては、本品は単品として使用されるものと考えます。また、この点についてなのですが、トレーニング時にきちんと本品のみで使用するということを適切に説明するということと、あとは必要に応じて適正使用指針内でもそのような内容を盛り込みたいと考えております。

○一色部会長代理 そうすると、今度は逆の立場で言うと、先にこのデバイスを入れて、サイズを例えば過小評価して、十分に膨らみ切れなかったというような場合に、後からコイルを入れるということはないということでよろしいのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 この治療をしてすぐの時点ですと、本品ですが、離断する前ですと、3回まで留置のし直しが可能ですので、1回本品を置いてみて、少しサイズが合わないということであれば、回収してまた別の少し大きいサイズを留置することが可能です。

○一色部会長代理 その場合は1個しか請求できないということになりますが。参考人の御意見も伺いたいと思います。

○松丸参考人 サイズ違いは大きな問題だと思います。欧州での使用経験が大分増えてきまして、計測の仕方が確立してきたので、当初はサイズ違いがあって、複数のデバイスを出して、結局1つしか置かないということがありましたが、そういうのは減っていると聞いております。ただ、それはゼロにはならないので、ここをどうするかという妙案はありません。

○梅津委員 サイズ違いの話が出たのですが、脳動脈瘤の壁の厚さは全て一様ではなく、ある所が厚いとか、薄いとかがあるのが一般的です。本報告書に示された展開した図をみるとかなりきれいな形(正円)でこの図が書かれていると思うのですが、現実はやはり相当形が変わって留置というようなことになってしまうのでしょうか。

○松丸参考人 私からよろしいでしょうか。基本的に動脈瘤の形が非常に複雑なものは適応外だと思います。シンプルな形の動脈瘤のみ、やはり有効なものと考えておりますので、そこは適正使用指針で書き込んでいきたいと考えております。

○医薬品医療機器総合機構 少し補足させていただきますと、本品のどのサイズを選択するかというのが、事前に造影画像等から脳動脈瘤に縦と横の長さを測りまして、本品を選んでいくのですが、その時の表のようなものがあって、それに従って選ぶことになっておりまして、松丸先生より御説明いただきましたとおり、余りにもそこのサイズが合わないというものは、本品が適応できるサイズがもうなくなってしまうので、本品を使うことができなくなると考えます。

○荒井部会長 その他よろしいでしょうか。大変高価なものになりそうですので、これは本当に慎重に考えなければいけない。松丸先生に質問ですが、ここの添付文書などの書き方を見ていますと、本当に使用対象は限定されるということですが、確かにフローダイバーターなどもあると思います。実際の現場では、このような限定された使用方法で特段問題がない、要するに、ここに書かれた適応以外の部分でもっと救える患者さんがいるのに、適応が絞られているために使えないというような不具合はないという理解でよろしいでしょうか。

○松丸参考人 この機器の性質上、何でも使えるデバイスではないので、この適応が適切ではないかと考えております。使用経験が増えていきますと、今後変わってくる可能性はありますが、現状ではこれが良いと思っております。

○荒井部会長 ありがとうございます。その他御意見いかがでしょうか。よろしいですか。それでは特に御意見がないようですので、議決に入らせていただきます。医療機器「Woven EndoBridgeデバイス」につきましては、本部会として、承認を与えて差し支えないものとし、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定を不要としてよろしいでしょうか。また、先ほど御議論いただきましたけれども、使用成績評価は期間を7年として指定することとしてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、このように議決させていただきます。本件も分科会にて報告を行う予定であります。それではこれで議題3を終了いたします。松丸先生、どうもありがとうございました。

 続きまして議題4に入らせていただきます。議題4「医療機器エドワーズサピエンⅢの使用成績評価の指定の要否について」を始めさせていただきます。事務局の方から説明をお願いいたします。

○事務局 事務局より、議題4、「エドワーズ サピエン3」の使用成績評価の指定の要否について御説明します。資料4を御用意ください。まず2ページ目を御覧ください。今回、御審議いただく医療機器の品目の概要となっております。申請者はエドワーズライフサイエンス株式会社です。

 本品目は、「自己大動脈弁弁尖の硬化変性に起因する症候性の重度大動脈弁狭窄を有し、かつ、外科的手術を施行することができず、本品による治療が当該患者にとって最善であると判断された非慢性的透析患者」に対する適応で承認を取得しているものです。今回、「外科的に留置した大動脈生体弁の機能不全に対する適応追加(TAV in SAV)」を目的として申請されております。こちらは、平成30年2月に御審議いただいたTAV in SAVの適応を持つ「コアバルブ Evolut R」と同様の考え方に基づき、本品についても使用成績評価の対象とすることが妥当であると考えております。

 調査期間については、既承認品である「コアバルブ Evolut R」と同様の考え方に基づき、販売準備・症例登録期間1.5年、フォローアップ期間5年、データ入力/集計等期間0.5年の計7年を課すことが妥当であると考えております。説明は以上となります。御審議のほど、よろしくお願いします。

○荒井部会長 ありがとうございます。委員の方々から御意見、御質問等いかがでしょうか。よろしいですか。本品は、余り遠い昔ではなくこの部会で検討させていただいたかと思います。よろしいですか。それでは議決に入らせていただきます。医療機器「エドワーズ サピエン3」の使用成績評価は、期間を7年として指定することとしてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、このように議決させていただきます。本件も、分科会にて報告をさせていただきます。これで議題4を終了いたします。

 続いて議題5に入ります。「医療機器の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定及び特定保守管理医療機器の指定の要否について」を始めさせていただきます。では事務局から説明をお願いします。

○事務局 議題5について、資料5に基き御説明します。御用意ください。既存の一般的名称のいずれにも該当しない医療機器がありまして、新たに一般的名称を申請する際には、「いずれのクラス分類に該当するかについて」、また「その保守管理に専門的な知識を要するものとして、特定保守管理医療機器に指定するか否か」について、御審議いただいております。今回は、医療機器の承認に際し、一般的名称の申請の必要なものが3品目ございます。

 資料5-1を御覧ください。新設予定の一般的名称は「ホウ素中性子捕捉療法用中性子照射装置」です。定義は、「高エネルギーの陽子を生成し、適切なターゲットに衝突させることにより、ホウ素中性子捕捉療法に用いる中性子を発生し患部に照射する装置を言う。主にがん治療に使用する。陽子を高エネルギーに加速する加速器、中性子照射装置等からなり、陽子輸送装置を有するものもある。一般に、イオン源、ターゲット、モデレータ、コリメータ、位置ぎめ装置、可動式治療台、オペレータコンソール等を装備している」です。

 本品は、クラスⅢ、高度管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定につきましては、本品は保守点検を行う必要のある医療機器であるため、必要と考えております。

 次に資料5-2を御覧ください。新設予定の一般的名称は、「ホウ素中性子捕捉治療用治療計画プログラム」です。定義は、「ホウ素中性子捕捉療法を実施する際に、CT装置等から得られた結果を基に、治療を行う治療溶液や体内の線量分布を計算及び表示し、治療計画を支援する医療機器プログラム。当該プログラムを記録した記録媒体を含む場合もある」です。

 本品につきましては、クラスⅢ、高度管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定につきましては、本品は、保守点検を行う必要のある医療機器ではないため、不要と考えております。

 続いて資料5-3を御覧ください。新設予定の一般的名称は「病変検出用内視鏡画像診断支援プログラム」です。定義は、「内視鏡画像から得られた情報を更に処理して診断等のために使用する医療機器プログラム。病変候補を検知する機能を有する。当該プログラムを記録した記録媒体を含む場合もある」です。本品は、クラスⅡ、管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定につきましては、本品は保守点検を行う必要のある医療機器ではないため、不要と考えております。

 説明は以上となります。御審議のほどよろしくお願いします。

○荒井部会長 ありがとうございます。3品目についてですが、御質問、御意見いかがでしょうか。3品目目の内視鏡のものは、今までは医者が診て、「ここに病気変がある、ない」としていたものを、見落としをなくすという観点から、機械がある程度判断して、「ここは要注意」みたいなアラートを出す機械という理解でよろしいのですか。

○事務局 事務局です。御質問ありがとうございます。先生のおっしゃるとおりの御理解でよろしいと思います。

○荒井部会長 だんだんとこういうソフトウェアが増えてきて、色々に健診等でも使われるようになってきていますが、なかなか微妙なところです。不注意で見落としてはいけないので、あくまでそれを防止するためのものとして、注意力を持ってきちんとやっていればいいのですが、逆に、べったり頼ってそれにお任せになってしまうと、これは恐ろしい話になります。この辺の話はこれからも出てくると思いますが、慎重に議論していかなくてはいけないかと感じますね。

○長島委員 ここのところを見ると、「本品の位置付けは、医師の補助であり、本品のみでダイ状況へのスクリーニングや確定診断を行うことは目的としていない」とはっきり書いているので、現時点では、そのように捉えられないようにしっかり考えていくことかと思います。

○荒井部会長 ありがとうございます。その他御意見いかがでしょうか。よろしければ議決に入りたいと思います。3つあります。まず、「ホウ素中性子捕捉療法用中性子照射装置」を高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器として指定することでよろしいでしょうか。

 はい。その次に、次のプログラムの方です。「ホウ素中性子捕捉療法用治療計画プログラム」を高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器としては指定しないこととしてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。3つ目です。「病変検出用内視鏡画像診断支援プログラム」を管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器として指定しないということでよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、このように議決させていただきます。本件も分科会にて文書報告を行う予定としております。これで議題5を終了します。

 それでは、議題6「医療機器の再審査結果について」を始めさせていただきます。事務局から説明をお願いします。

○事務局 事務局です。事務局より議題6「医療機器の再審査結果について」、御報告いたします。資料6をお開きください。再審査は、改正前の薬事法第14条の4に基づき、原則、新しい医療機器について再審査期間を定め、承認後の使用成績等の調査を行わせるもので、その調査資料に基づいて、有効性及び安全性の再確認を行うことを目的とした制度です。今回は、再審査結果の報告が2件あります。

 まずは資料6-1を御覧ください。販売名は「XIENCE V薬剤溶出ステント」及び「PROMUS薬剤溶出ステント」です。申請者は、アボット バスキュラー ジャパン株式会社です。この2品目は同一の医療機器であり、経皮的冠動脈ステント留置術を実施するに際し、血管内腔の確保を目的に病変部に留置して使用するステントと、ステントを病変部に送達させるためのデリバリーカテーテルから構成される医療機器で、平成22年1月8日に承認されました。

 本使用成績調査では、本品の臨床使用実態下における医療機器の不具合発生状況、安全性、有効性等を確認することを目的として、2品目で合計2,013例が評価対象となりました。医療機器の不具合発生、有効性及び安全性について調査したところ、特段の問題はありませんでした。このため、薬事法第14条第2項第3号イ~ハまでのいずれにも該当しないこと。すなわち、再審査結果の区分を、効能・効果、用法・用量などの承認事項について変更の必要がない、カテゴリー1と判断しております。

 続いて、資料6-2を御覧ください。販売名「Arctic Front Advance冷凍アブレーションカテーテル」、「Freezor MAX冷凍アブレーションカテーテル」及び「メドトロニックCryoConsole」です。申請者は、日本メドトロニック株式会社です。

 「Arctic Front Advance冷凍アブレーションカテーテル」は、経皮的に血管内に挿入される柔軟なオーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルであり、薬剤抵抗性を有する再発性症候性の発作性心房細動を治療する目的で使用される医療機器です。「Freezor MAX冷凍アブレーションカテーテル」は、前述したArctic Front Advance冷凍アブレーションカテーテルと同じ目的の医療機器ですが、先端部がチップ電極になっている点が異なり、前述のものと併用することで発作性心房細動を治療する目的で使用されます。また、「メドトロニック Cryo Console」は、前述のカテーテル2品目と接続して冷凍アブレーション手技を制御及び記録する装置であり、ソフトウェアによって、液体冷却剤の送達制御、患者情報及び一連の手技に関する記録、気化冷却剤回収の制御並びに病院の排気システムを介した冷却剤排出の制御を行います。この3品目は全て、平成26年2月19日に指定、承認されました。

 本主要成績調査では、本品の臨床使用実態下における医療機器の不具合発生状況、安全性、有効性等を確認することを目的として、695例が評価対象となりました。医療機器の不具合発生、有効性及び安全性について調査したところ、特段の問題はありませんでした。このため、先ほどと同様、薬事法第14条第2項第3号イ~ハまでのいずれにも該当しないカテゴリー1と判断しております。以上の報告につきましては、事前に委員の先生方に資料をお送りしておりますので、簡単な報告とさせていただきます。以上、御報告といたします。

○荒井部会長 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、委員の方々から御質問、御意見ございますか。

○一色部会長代理 1つだけよろしいですか。

○荒井部会長 どうぞ。

○一色部会長代理 先ほどの議題の時にも申し上げたのですが、冷凍のバルーンのアブレーションカテーテルの審査の時に危惧したとおりで、単独使用が前提とのことであったにもかかわらず、現場では追加のカテーテルを出して治療することが横行していて、それが保険点数の高騰化に直結しています。各デバイスの有効性に対して私は意見を言うつもりは全くありませんが、やはり、それでも承認の条件というのは、本来きちんと守られるべきものではないかと思う次第です。

○荒井部会長 大変、貴重な御意見だと思います。確かに、立て付けとしてこの部会では、基本的に安全性、有効性までで、承認を与えるわけですが、値段のことも時々出ることはありますが、そこは踏み込めない。今の御指摘について、中井課長から少しコメントを頂いた方がいいかもしれません。

○医療機器審査管理課長 ここの部会では、確かに御指摘のとおり、有効性、安全性がメインだと思います。ただ、御指摘のとおり、どうしても使い方がどんどん、医療現場の裁量というのもあると思いますが、我々としては、できる限り当初の目的どおり、添付文書等に書かれているように使っていただくということは再三周知徹底させていただきたいとは思います。なかなかそれで答えになっているかどうか分かりませんが、引き続き対応させていただきたいと思います。

○荒井部会長 ありがとうございました。本当に大変重要な問題で、どう使われていくかという点については、だんだんぶれが生じてきます。ぶれてくると言っても、悪い意味ではなくて、臨床現場に必要性があってぶれるのならば、ある種止むを得ない部分もあるでしょうが、それでもそういった状況を横目である程度知っておきながら、審議を進めていかなくてはいけないと思います。その他御質問、御意見よろしいでしょうか。

 正直申しますと、再審査の項目は、ここの委員の方々の半分ぐらいの方々が、一緒に、最初の審査をさせていただいているので、とても時間がたつのが早いなと感じております。御意見よろしいですか。ございませんでしたら、これで議題6を終了させていただきたいと思います。次に議題7、部会報告品目についてを始めさせていただきます。事務局から説明をお願いします。

○事務局 議題7、部会報告品目について資料7に沿って御説明します。横向きの資料をお開きください。令和元年7月から令和元年9月末までの3か月の間に承認された品目のうち、クラスⅣの医療機器、臨床評価が必要なクラスⅢの医療機器、承認基準外の対外診断用医薬品など、本部会への報告対象となっている品目についてまとめております。医療機器66品目については、事前送付をもって報告とさせていただき、詳細な説明は割愛させていただきます。対外診断用医薬品4品目は24ページに記載しており、新規検査項目、コンパニオン診断薬、新規の使用目的の追加等、重要なものについては販売名覧及び使用目的欄の内容を記載しておりますが、こちらも詳細については割愛させていただきます。以上、報告いたします。

○荒井部会長 ありがとうございます。この議題7につきまして、これはあらかじめ資料送付済みですが、御意見、御質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、これで本日予定されていた議題が全て終了しました。事務局から連絡ありますでしょうか。

○医療機器審査管理課長 ありがとうございました。次回の部会につきましては、2月中旬の開催を予定しておりますが、詳細についてはまた連絡させていただきたいと思います。連絡事項は以上になります。

○荒井部会長 ありがとうございます。それでは、これをもちまして、本日の医療機器対外診断薬部会を閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

( 了 )

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から一部公開で開催された。
 

照会先

医療機器審査管理課 

再生医療等製品審査管理室 室長 大原(内線4226)