第92回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会 議事録

日時

令和元年12月20日(金)13:00~

場所

厚生労働省専用第22会議室(18階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

議事

 
○阿部部会長 それでは、ただいまより第92回「労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会」を開催いたします。
 年末のお忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の小野委員、桑村委員、勇上委員、使用者代表の志賀委員、渡辺委員が御欠席です。
 志賀委員の代理として、日本・東京商工会議所産業政策第二部副部長の杉崎様にお越しいただいております。
 なお、岸本大臣官房審議官につきましては、所用により後ほどお見えになると伺っております。
 カメラの撮影はここまでです。

 (カメラ退室)

○阿部部会長 それでは、早速ですが、議事に入りたいと思います。
 議題(1)「高齢者の雇用・就業機会の確保について及び中途採用に関する情報公表について」です。これまでの議論を踏まえまして、本日は事務局において作成した部会報告書の素案に基づきまして、意見の取りまとめに向けて議論を行いたいと思います。
 では「高齢者の雇用・就業機会の確保について及び中途採用に関する情報公表について」の部会報告書素案に関して、事務局より説明をお願いいたします。

○弓雇用政策課長 雇用政策課長の弓でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、資料「高年齢者の雇用・就業機会の確保及び中途採用に関する情報公表について(素案)」をお開きいただければと思います。
 こちらにつきまして、私と高齢者雇用対策課長とで順次読み上げさせていただきたいと思います。
 高年齢者の雇用・就業機会の確保及び中途採用に関する情報公表について(素案)
 高年齢者の雇用・就業機会の確保及び中途採用に関する情報公表については、「成長戦略実行計画」(2019年6月21日閣議決定)を踏まえ、労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会を2019年9月27日以降6回にわたり開催し、精力的に議論を深めてきたところである。
少子高齢化が急速に進展し人口が減少する我が国においては、経済社会の活力を維持するため、全ての年代の人々がその特性・強みを活かし、経済社会の担い手として活躍できるよう環境整備を進めることが必要である。
 特に、人生100年時代を迎える中、働く意欲がある誰もがその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境整備や中途採用に関する環境整備を図っていくことが重要である。
 (高年齢者の雇用・就業機会の確保)
 高年齢者の労働力人口や就業率は近年増加傾向であるが、65歳以降の者が持つ就労に対する意向を踏まえれば、今後さらに、個々の高年齢者のニーズや状況に応じた活躍の場の整備を通じ、年齢にかかわりなく活躍し続けることができる社会の実現を図ることが求められている。
 高年齢者雇用に関しては、高年齢者雇用安定法の累次の改正を経て、現在、企業における希望者全員の65歳までの雇用確保措置が整備されており、2019年6月1日現在で、31人以上規模企業の高年齢者雇用確保措置の実施割合は99.8%に達している。また、法に定める義務を超えた積極的な取組として、66歳以上働ける制度のある企業の割合は30.8%となっている。
 65歳以降の者については、就労に対する考え方のほか、体力や健康状態その他の本人を取り巻く状況等が、65歳以前の者と比べても個人差が大きく、より多様なものとなるため、企業に対して70歳までの就業機会の確保を求めるに当たっても、こうした事情に配慮した制度設計とすることが重要である。
 また、高年齢者の雇用・就業機会の確保を社会全体で推進するためには、事業主による取組のみならず、国等による再就職支援や労働者のキャリア形成等に関する支援、地方自治体やシルバー人材センターなどの地域の関係者による多様な就業機会の確保・提供等についても、より一層取り組む必要がある。
 (中途採用に関する環境整備)
 職業生活の長期化が見込まれる中、労働者が希望する職業や良質な雇用に円滑に就職できるよう支援することにより、労働者の主体的なキャリア形成を通じた職業生活の更なる充実や再チャレンジが可能となる社会の実現を図ることが求められている。
 また、AIなどの第4次産業革命による技術革新は急速に進展するものであることから、労働者の能力開発等を通じた企業の内部労働市場のみによって必要な人材を確保することは難しく、中途採用を通じて、外部労働市場から高度な技術や専門性、豊富な経験を有する人材を確保するニーズも高まっている。
 中途採用に関する環境整備としては、職場情報の見える化や求職者の状況に応じたマッチングの支援などの取組を推進しており、中途採用をめぐる現状をみると、転職によって入職した労働者数は長期的には増加傾向にあり、近年では大企業において大きく増加しているものの、正規雇用の採用者全体に占める中途採用比率は企業規模が大きくなるほど低く、大企業においては長期的な安定雇用の機会が新規学卒者を中心に提供されている状況がうかがえる。一方、求職活動を行っていない者を含めると、転職希望者は約643万人、就業を希望する無業者は約862万人となっている。
 こうした状況を踏まえれば、中途採用に関する環境整備をさらに推進していくことが必要である。中途採用に関する情報の公表により、長期的な安定雇用の機会を中途採用者にも提供していることを明らかにすることは、職場情報を一層見える化し、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングを促進するための情報提供の重要な柱となり得るものであり、さらには早期離職の防止にも有効な施策だと考えられる。
 当部会においては、これらの問題意識の下、高年齢者の雇用・就業機会の確保及び中途採用に関する情報公表について検討を行ったところであり、その結果は以下のとおりであるので報告する。
 この報告を受けて、厚生労働省において、法的整備も含め所要の措置を講ずることが適当と考える。

○野村高齢者雇用対策課長 I.高年齢者の雇用・就業機会の確保について
 1 65歳までの雇用機会の確保について
 70歳までの就業機会の確保に関する施策を推進するに当たっては、65歳までの雇用機会が確保されていることが前提である。このため、現行の高年齢者雇用安定法による65歳までの希望者全員の雇用確保措置(2024年度末に労使協定による継続雇用制度の対象者基準を適用できる経過措置は終了)の導入に向けた取組を引き続き行うことが必要である。また、その実施状況等を踏まえた上で、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消するための規定の整備等に関する法制度が2020年4月1日に施行(中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法の適用は2021年4月1日)されることなども踏まえ、60歳以降に継続雇用される労働者の適正な待遇の確保などの環境整備も図る必要がある。
 2 70歳までの就業機会の確保について
 働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者の活躍の場を整備するに当たっては、70歳までの就業機会の確保について事業主が一定の措置を講ずることを求める法制度の整備をはじめとした環境整備が必要である。なお、65歳までの雇用確保措置に関して「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」が定められていることを踏まえれば、70歳までの措置に関しても、その実施及び運用に関する指針を定めることが求められる。
 (1)70歳までの就業機会の確保を図る措置として、定年廃止、定年延長、継続雇用制度の導入といった現行の高年齢者雇用確保措置と同様の措置に加えて、事業主による、特殊関係事業主以外の企業への再就職に関する制度の導入、フリーランスや起業による就業に関する制度の導入、社会貢献活動への従事に関する制度の導入といった新たな措置を設け、これらの措置のうちいずれかを講ずることを事業主に対する努力義務とすることが適当である。
 (2)現行の65歳までの雇用確保措置では、労働関係法令による規制(解雇権濫用規制・雇止め規制・最低賃金など)により、「就業継続の可能性」と「就業時の待遇の確保」といった点が担保されており、就業規則で明確化されている。
 70歳までの各措置を講ずる場合に事業主が負う責務の程度など、事業主の関与の具体的な在り方に関しても、「70歳までの就業継続の可能性」と「就業時の待遇の確保」といった点について均衡が求められる。
 70歳までの各措置のうち、雇用による措置については、65歳までの雇用確保措置と同様、労働関係法令による規制により、これらの点が担保されている。一方、70歳までの各措置のうち、雇用によらない措置については、労働関係法令による規制が及ばないことから、努力義務について雇用によらない措置による場合には、事業主が制度の実施内容を明示して労使で合意し、労働者に周知するよう努めることが適当である。
 (3)現行の65歳までの雇用確保措置では、希望する高年齢者全員を対象とした制度を導入することが事業主の義務とされているが、65歳以降の高年齢者については、それ以前と比べて体力や健康状態その他の本人を取り巻く状況がより多様なものとなる。
 このため、今般の努力義務を設けるに当たり、事業主が講ずる措置について、対象者の限定を可能とすることが適当である。なお、対象者を限定する場合には、その基準について労使で合意が図られることが望ましいことから、この点について指針において明示することが適当である。
 (4)高年齢者の特性に応じた活躍のための多様な選択肢を用意することが重要であることや雇用によらない措置には労働関係法令による規制が及ばないことなどを踏まえると、70歳までの措置の適切な実施を図るためには、労使での十分な話し合いを行うことが求められる。
 このため、事業主がどのような措置を講ずるのかに関する話し合いについては、過半数労働組合又は過半数代表者との話し合いが想定されるが、65歳までの雇用確保措置と同様に、話し合いについて指針に明示することが適当である。
 また、事業主が努力義務について雇用によらない措置による場合の話し合いについては、過半数労働組合又は過半数代表者との間で合意するよう努めることを法律で定めることが適当である。
 さらに、事業主が複数の措置を講ずる場合において、個々の労働者にどの措置を適用するのかに関する話し合いについては、個々の労働者の希望を聴取することを指針において明示することが適当である。
 (5)現行の65歳までの雇用確保措置は、60歳まで雇用される高年齢者について、事業主が定年を65歳以上に定める又は定年を廃止し、同一の企業で高年齢者を雇用し続けることを念頭に置いた制度である。このうち継続雇用制度では、65歳まで特殊関係事業主で雇用を継続することも可能とされているが、法律上、雇用確保措置の責務は、60歳まで雇用していた事業主にある。
 従って、70歳までの措置については、60歳まで雇用していた事業主が、法律上、措置を講ずる努力義務を負うと解することが適当である。
 (6)事業主が70歳までの就業機会の確保に当たり具体的に実施する措置については、成長戦略実行計画に盛り込まれた選択肢のイメージごとに、それぞれ以下の内容とすることが適当である。
 ・「定年廃止」、「定年延長」、「継続雇用制度の導入」については、65歳までの雇用確保措置と同様のものとすること(継続雇用制度に係る対象者の限定については前述のとおり。)。
 ・「他の企業への再就職の実現」については、特殊関係事業主による継続雇用制度の導入と同様に事業主間で契約を締結するものとすること(対象者の限定については前述のとおり。)。
 ・「個人とのフリーランス契約への資金提供」及び「個人の起業支援」については、定年後又は65歳までの継続雇用終了後に元従業員との間で、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度を設けるものとする。なお、どのような事業を制度の対象とするかについては、事業主が導入する制度の中で定めることができることとすること。
 ・「個人の社会貢献活動参加への資金提供」については、定年後又は65歳までの継続雇用終了後に元従業員が、マル1 事業主が自ら実施する事業、マル2 事業主が委託、出資(資金提供)する団体が行う事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものに係る業務に70歳まで継続的に従事できる制度を設けるものとすること。なお、どのような事業を制度の対象とするかについては、事業主が導入する制度の中で定めることができることとすること。
 マル2の場合には、事業主と事業を実施する団体との間で、定年後又は65歳までの継続雇用終了後に70歳まで引き続いて事業に従事させることを約する契約を締結するものとする。この際、事業主が導入する制度の実施内容に基づき、事業を実施する団体が高年齢者に対して70歳まで事業に従事する機会を提供する旨を明示するものとすること。併せて、事業主の出資(資金提供)により高年齢者が従事する事業について、当該事業の円滑な実施に必要な出資(資金提供)を要件とすること。
 また、事業主の関与の具体的な在り方に関する他の選択肢との均衡の観点から、制度の対象となる事業は高年齢者に役務の提供等の対価として金銭を支払う有償のものに限ることとすること。
 (7)多様で柔軟な働き方を踏まえて、1つの措置により70歳までの就業機会を確保することだけでなく、複数の措置を組み合わせることにより70歳までの就業機会を確保することも、努力義務を満たす措置を講ずるものであると解することが適当である。
 (8)事業主の履行確保を図るため、厚生労働大臣は高年齢者等職業安定対策基本方針に照らして必要があると認めるときに、措置の実施について必要な指導及び助言をすることや、措置の導入に関する計画の作成及び提出、計画の変更や適正な実施を事業主に対して求めることができるようにすることが適当である。
 (9)70歳までの措置を講ずることが事業主の努力義務であることを踏まえれば、措置の対象とならない労働者が生じる可能性がある。このため、現行の再就職援助措置に係る努力義務及び多数離職の届出に係る義務の対象者について、事業主が70歳までの措置を講じない場合に70歳未満で退職する高年齢者及び事業主が対象者を限定した制度を導入した場合に当該制度の利用を希望しつつもその対象とならなかった高年齢者を加えることが適当である。
 (10)事業主による措置の実施状況等について、事業主の負担も考慮しつつ、制度の着実な運営に資するために把握することが求められる。このため、事業主が国に毎年1回報告する「定年及び継続雇用制度の状況その他高年齢者の雇用に関する状況」について、70歳までの措置に関する実施状況を当該報告の内容に追加することが適当である。その際、措置の導入状況に加えて、労働者への措置の適用状況についても把握することが必要である。
 (11)新たな制度の円滑な施行を図るためには、65歳までとは異なる新たな措置が選択肢として盛り込まれることに伴い、措置の導入に向けた労使による話し合いや事前の周知に一定の期間を要することが見込まれる。このため、過去の高年齢者雇用安定法の改正時の例も参考としつつ、適切な準備期間を設けることが適当である。
 3 高年齢者の活躍を促進するために必要な支援について
 高年齢者が活躍できる環境の整備については、法的な義務や努力義務に基づく事業主による雇用・就業機会の確保のほか、高年齢者の再就職支援やキャリア形成支援、地域における多様な雇用・就業機会の確保なども含めて進めるものである。今般の新たな制度の創設も踏まえて、高年齢者の活躍を促進するための支援として、国は関連する各施策に取り組むことが必要である。
 (1)事業主による雇用・就業機会の確保を促進するための支援について、国は以下のとおり取り組むことが必要である。
 ・70歳までの措置を講ずる事業主に対する助成措置や相談体制などの充実を図るほか、他社への再就職の措置に関する事業主間のマッチングを促進するための受け入れ企業の開拓・確保を支援すること。
 ・高年齢者のモチベーションや納得性に配慮した、能力及び成果を重視する評価・報酬体系の構築を進める事業主等に対する助成や相談・援助等を実施すること。
 ・加齢による身体機能の低下等を踏まえ、労働災害防止や健康確保の観点から対策を講じ、高年齢者が安心して安全に働ける職場環境の構築を支援すること。
 (2)高年齢者の再就職やキャリア形成に関する支援について、国は以下のとおり取り組むことが必要である。
 ・高年齢者と企業双方のニーズに応じた再就職の促進のため、ハローワークの生涯現役支援窓口や産業雇用安定センターによるマッチング機能の強化を図ること。
 ・高齢期を見据えたキャリア形成支援・リカレント教育を推進するため、労働者のキャリアプランの再設計等を支援する拠点の整備や、企業の実情に応じた中高年齢層向け訓練の実施等に取り組むこと。
 (3)地域における多様な雇用・就業機会の確保に関する支援について、国は以下のとおり取り組むことが必要である。
 ・地域の実情に応じた高年齢者の多様な就業機会を確保するため、生涯現役促進地域連携事業による、地方公共団体を中心とした協議会による取組を引き続き推進すること。
 ・シルバー人材センターにおいて高年齢者の活躍の場を広げ、地域の様々な課題解決を図るため、人手不足分野等での就業機会の開拓・マッチング機能や地域ごとの特色や実情を踏まえた積極的な取組(高齢者世帯の生活支援、子育て支援・家事援助サービス、空き家・空き地管理など)を強化すること。

○弓雇用政策課長 II.中途採用に関する情報公表について
 中途採用に関する情報の公表により、職場情報を一層見える化し、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングをさらに促進することが必要である。
 1 企業規模について
 情報公表を求める対象は、中小企業の中途採用が既に活発であることや中小企業への負担を踏まえ、労働者数301人以上の大企業についてのみ義務とすることが適当である。
 2 公表項目について
 情報公表を求める項目については、正規雇用労働者の採用者数に占める正規雇用労働者の中途採用者数の割合とすることが適当である。
 また、経年的に企業における中途採用実績の変化を把握するため、直近3事業年度の割合を公表することが適当である。
 3 公表方法について
 情報公表の方法については、企業のホームページ等の利用などにより、求職者が容易に閲覧できる方法によることが適当である。
 4 支援策について
 (1)正規雇用による中途採用実績の高い企業は、求職者にとっては正規雇用として採用される可能性が高いと期待できる企業であるが、中途採用実績の多寡のみをもって職場に対する評価がなされるべきものではなく、また、求職者にとっても採用後に自身が働く姿がイメージできる情報を得られることが有用であることから、企業におけるさらなる職場情報の自主的な公表が進むよう、支援を行うことが適当である。
 このため、大企業については、法的義務を求める項目以外にも自主的な公表が進むよう、中高年齢者、就職氷河期世代の中途採用比率等といった定量的な情報、中途採用に関する企業の考え方、中途採用後のキャリアパス・人材育成・処遇等といった定性的な情報の公表を支援することが適当である。
 また、中小企業についても、大企業に法的義務を求める項目と併せて他の情報の公表が自主的に進むよう、支援を行うことが適当である。
 (2)中途採用を希望する労働者と企業のマッチングを促進するため、正規雇用の中途採用に係る情報公表に関する好事例の収集・周知等を図ることが適当である。
 (3)中途採用に関する環境整備を総合的に推進するため、中途採用に関する情報公表のみならず、職場情報の見える化の推進やハローワーク等におけるマッチング機能の充実、人材確保支援等により一層取り組んでいくことが必要である。
 (4)労働者の職業選択に資するための職場や職業に関する情報の提供の促進については、上記のほかにも次世代育成支援対策推進法、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律、青少年の雇用の促進等に関する法律に基づく企業の職場情報の提供や、職業情報提供サイト(日本版 O-NET)(仮称)の構築などを進めているところであり、これらを踏まえ、国は求職者等の職業選択に資する職場や職業に関する情報の提供のために必要な施策を充実させることを国の施策として法律上も明確にすることが適当である。
 5 施行までの期間について
 法的義務の施行に当たっては、情報公表を求める規定が盛り込まれている他の制度の施行時期や企業実務を踏まえ、適切な準備期間を設けることが適当である。
 以上でございます。

○阿部部会長 ありがとうございました。
 本件につきまして、これから御質問、御意見を承りたいと思いますが、パートごとに御質問、御意見を承りたいと思います。
 まず1ページ目から2ページ目の真ん中、Iの上のあたりまで、前文の部分ですけれども、これに関しまして御質問や御意見はございますでしょうか。
 特によろしいですか。
 もし何かあれば、また後で御発言いただきたいと思います。
 Iの2ページ目から6ページ目の真ん中のあたりまで、IIの上まで、「高年齢者の雇用・就業機会の確保について」の部分で、何か御質問、御意見はございますでしょうか。
 春川委員、どうぞ。

○春川委員 ありがとうございます。
 私からは、3ページの中に出てきます労使合意の記載について確認をさせていただきたいと思います。(2)の中の記載としては一番下から2行目のところ、「事業主が制度の実施内容を明示して労使で合意し」という文言と、同じ項の中、その下の(4)になりますが、4ページの一番上に行きまして「過半数労働組合又は過半数代表者との間で合意するよう努めることを法律で定めることが適当である」と記載がある点についてです。これまでの議論の中では、雇用によらない選択肢(e)(f)(g)については、労使合意が必要と認識しているところですが、私が申し上げた2点の文章を見ますと、労使合意に至らなかった場合でも問題がない、というような受けとめにもなり得ますので、考え方を改めて確認させていただきたいというところでございます。

○阿部部会長 御質問ですので、事務局、お願いいたします。

○阿部部会長 春川委員、いかがでしょうか。

○野村高齢者雇用対策課長 労使合意の記述等について、制度の位置づけも含めて御質問をいただきました。
 まず、労使合意を得ることが努力義務かということにつきましては、今回の法律のたてつけといたしまして、雇用による措置、雇用によらない措置、いずれも努力義務ということが前提になってございます。法律上の要件としては、労使合意を得た上で雇用によらない措置を講じていただきたいということで考えております。ただ、全体が努力義務ということでございますので、労使合意を得られないとその措置が全く講じられていないということにはならないという理解でございます。

○春川委員 今回の全体のことに関して言えば努力義務ということも認識しておりますし、繰り返しになりますが、今の話では、雇用によらない選択肢については労使でまずしっかり話し合いをした上で、企業側が定める制度の内容について合意することに努める、あくまで合意しなければならないのではなくて、合意することに努めるということだという理解でよろしいでしょうか。

○野村高齢者雇用対策課長 そこをもう少し御説明いたしますと、労使合意を得た上で雇用によらない措置を講じることが、法律上求める措置でございます。ただ、努力義務でございますので、まだ法律の要綱等をお示しおりませんが、要綱あるいは条文においては、そこには達成された100点の姿が書かれるものと理解しております。ですから、労使合意を得ていただくというものが100点の姿ではございますが、努力義務でございますので、基本は労使合意をとっていただくのですが、とれない場合も当然プロセスにおいてあるわけでございます。合意をとるよう努めていただくというところについても、履行に向けた取り組みの一つではあるのではないかと考えております。

○阿部部会長 よろしいですか。
 志賀委員代理の杉崎様、どうぞ。

○志賀委員代理杉崎氏 ありがとうございます。
 本日提示されました報告書の素案でございますが、これまでの議論の内容が取りまとめられていることから、重みがあるものと認識してございます。また、70歳までの就業機会の確保に際しまして、全体的にバランスがとれており、現実的かつ納得性のある内容だと認識しております。その上で意見を申し上げさせていただきます。
 このたびの政策ですが、非雇用を含めた措置のうち、いずれかを講ずることを事業主に対する努力義務とするものですが、非雇用を含む措置の導入は、企業の人事戦略や処遇体系に大きな影響を及ぼしますので、厚生労働省におかれましては、努力義務の内容を幅広くかつ丁寧に周知することはもとより、資料に記載されております支援策にぜひ力を入れていただきたいと思います。
 特に中小企業は、専任の人事労務担当者がいないことが多く、経営資源や業務の幅、人事労務上の課題なども各社各様でございますので、例えば評価・報酬体系の構築、高齢者の安全、健康の確保など、職場環境の改善をはじめ、中小企業に対する相談支援を強力に講じていただくことが不可欠だと認識しております。
 また、治療と仕事の両立支援を強化していく必要もあるかと思いますし、十分な準備期間を確保していく必要もあると思っております。
 さらに、この政策が有効に機能するためには、企業に対する調査を通じて、非雇用の措置を導入した企業の好事例をしっかりと把握して横展開していくことで、企業に具体的なイメージを持ってもらうことが重要だと思いますので、この点についても意識していただければと思います。
 以上でございます。

○阿部部会長 では、御意見として承ります。
 ほかにいかがですか。
 紺谷委員、どうぞ。

○紺谷委員 私からは意見と要望という形になろうかと思いますので、お願いします。
 素案の3ページの(3)の労使合意の記載のところです。体力や健康状態が多様化するため、限定措置を設けると記載がありますけれども、労働安全衛生法、具体的には第62条では中高年労働者についての記載があります。配慮ということについて、事業主が中高年齢者その他労働災害防止上の措置として、特に配慮を必要とする者については、心身の条件に応じて適正な配置を行うようにという配置の配慮ですか、そういったものについて規定をしております。そういった定め、健康確保対策に関する規定を考慮すると、本人が就労可能な状態で、かつ継続して働くことを希望するということであれば、本来は使用者側が一方的に選定基準、限定措置を設けていいということにはならないのではないかと考えます。
 また、現行の改正高年齢者雇用安定法下の経過措置による継続雇用制度の対象にかかわる基準で、例えば過去3年間の人事考課が良好以上のものである者といった選定基準を設けることも認められているわけですけれども、65歳以上についても同様の規定を認めるということになるのであれば、これは過去にさかのぼるわけで、65歳未満の働き方にも大いに関係をするのではないかと考えます。
 そのため、努力義務段階ということであったとしても、こうした基準を労使合意なしに決められるということについては、労働者にとっても本意ではないと考えておりまして、労使合意が指針での記載にとどまることについては非常に残念だと思います。そうではありますけれども、労働者が納得できる基準が設定できるよう指針の段階でもきちんと設定をしていただきたいという要望です。

○阿部部会長 ありがとうございました。
 では、御意見として承ります。
 その他、いかがですか。
 仁平委員、どうぞ。

○仁平委員 全体にかかわる話でございますが、この出発点が成長戦略実行計画で既に枠組みが示されていたところからの出発だったということもございまして、議論の余地が少なかったという点は、私どもとして残念に思っているところがございます。
 しかし、意欲ある高齢者が年齢にかかわりなく働き続けることのできる職場環境の整備は非常に重要であると認識しておりますし、今回の報告書で一定の方向性が示されたこと自体は前向きに受けとめたいと思っております。
 その中で一つ具体的な話ですが、4ページ目に前に(a)(b)(c)(d)(e)(f)(g)と示されたもののうちの「個人とのフリーランス契約への資金提供」「個人の起業支援」「個人の社会貢献活動参加への資金提供」、こういったものについては依然として抽象的な内容が多く含まれていると受けとめておりまして、指針策定段階ではより踏み込んだ議論をさせていただきたいと思っております。
 あわせて、こうした雇用によらない働き方、これまでも指摘させていただいておりますが、労働関係法令による規制が及ばないという課題があるものですから、働く者の保護に関する法整備が不十分なまま、65歳以下になし崩し的にこのような働き方が広がっていくことには懸念を抱いており、そうしたことのないよう御留意いただきたいということを意見として申し上げておきたいと思います。
 以上です。

○阿部部会長 ありがとうございます。
 では、意見として承ります。
 ほかにいかがでしょうか。
 吉村委員、どうぞ。

○吉村委員 ありがとうございます。
 各論で恐縮ですが、2の(11)の準備期間の件です。こちらにも「適切な準備期間」と記載しておりますけれども、結論から申し上げますと、加えまして、丁寧な周知と十分な準備期間、このようなものが必要であるということを明記してはどうかというのが意見です。
 その理由ですけれども、先ほどもお話があったように、労使もしくは被雇用者との十分な協議が必要なことを考えますと、そういう期間が必要なのではないかということと、もともとこれは趣旨にのっとって適切に実行することが大事だと思いますので、そういう意味でもそれぞれで準備をする期間は必要なのではないかということです。
 また、大変恐れ入りますが、過去の改正時の例も参考にしつつとありますが、過去の例と今回の例が必ずしも一致していないのではないかと勝手に想像しております。ですから、そういう意味でも十分な期間が必要かと考えて発言させていただきました。
 以上です。

○阿部部会長 ありがとうございました。
 それでは、御意見として承ります。
 ほかにいかがでしょうか。
 清家委員、どうぞ。

○清家委員 先ほど、杉崎様、吉村委員からもありましたが、5ページの(11)については、既に配られております各委員からの十分な周知期間が必要等との指摘を含めて、施行時期については労使とも双方同じような認識かと思います。この点についての記述はぜひ配慮いただきたいと思っております。
 1点確認でございまして、5ページの(9)に再就職援助措置の努力義務と多数離職届出の義務の対象者についての記述がございますが、後段の多数離職届出については義務がかかりますので、企業側としては実務対応上確認をさせていただきたいと思います。具体的な例示としてここに2つ挙がっております。この点については現行の65歳までと同様の取り扱いという理解でよいのか、確認させていただければと思います。

○阿部部会長 事務局、お願いいたします。

○野村高齢者雇用対策課長 確認事項については、65歳までと同様と考えております。

○阿部部会長 よろしいですか。
 ほかにいかがですか。
 特段これ以上なければ、次のIIの「中途採用に関する情報公表について」の部分で御質問、御意見があれば御発言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 境田委員、どうぞ。

○境田委員 ありがとうございます。
 6ページの2の公表項目について、中途採用において希望者とのマッチングを促進するという観点で、情報公開が一定有益になるという前提で2点確認させていただきたいと思ってございます。
 1点目は、少しメッシュの細かい話になりますが、ここで言う中途採用者の定義、例えば先般の法改正で無期転換などが進められている中で、社内で非正規社員から正規になった場合が含まれるのか否か、こういったところについてはこの場ではなくて今後詰めていく項目なのかということについて、質問させていただきたいと思います。
 2点目としては、公表する内容を中途採用の割合としている点であります。昨日の全世代型検討会議の報告書においても、転職希望者が企業に開示してほしい情報は「正規雇用の中途採用実績」というアンケート結果が示されております。そういったところも含めると、中途採用者数を公表したほうが求職者、希望者にとって具体的でわかりやすい、中途採用希望者とのマッチングが促進されるという趣旨に合致するという考え方もあると思います。この部会においても、そもそも中途採用比率が高いということは定着率自体に課題がある企業なのではないかといった論議もなされていると思いますので、率と記載をされている趣旨、考え方について、改めて確認させていただきたいと思います。
 以上です。

○阿部部会長 事務局、お願いいたします。

○弓雇用政策課長 お答えいたします。
 まず、中途採用の定義でございます。現在も法制局と調整中ではございますけれども、基本的には新規学卒者の方は除くということ、また、新規学卒者と同じ採用枠で採用された方などについても除いていくということを前提として考えているところでございます。
 また、御質問の中で特に御発言のございました非正規から正規というところでございます。こちらについても同一企業におきまして非正規雇用から正規雇用へ転換された、正規雇用として新たに雇い入れたという扱いで、中途採用として解釈する方向で整理していきたいと考えているところでございます。
 1点目は以上でございます。
 また、中途採用の割合とその数についての御質問がございました。まず、先般の会議で示されている正規雇用の中途採用実績という数字について御発言の中で触れられていらっしゃいました。あちらで示されている実績は、第90回で私どものほうでアンケート調査の結果として示させていただいたものをそのまま引用されているというものでございます。こちらで言うところの正規雇用の実績は、割合、数を区別したような質問の形にはなっておりませんで、それぞれ例えば中高年、若年者など、どういった項目といいますか、属性といいますか、そういった方々に対する実績についての情報が得られたらよいと考えるかということについての御質問でございます。
 割合か数かということでございますけれども、御指摘のように、数の場合には採用の枠といいますか、実際にどれぐらい採用されたのかが明らかとなるといった点があるかと思われます。一方で、その割合としますと、例えば採用された方のうち、どれぐらいが中途採用かというところが明らかとなる。そういった意味で、中途採用の方が例えば少数派であるのか、また、その割合がふえているのかによりまして、企業の採用方針、職場の状況が把握しやすいというメリットがあるのかと考えているところでございます。
 また、数の部分については、直接的には例えば募集のときに、募集人数等によりまして一定程度把握することも可能な場合もあると考えておりますけれども、なかなか求人情報には割合の記載は見受けられない部分もございますので、そういった意味では求職者の方にとって新たな数値として、付加価値といった面で考えましても、割合といったものが適切ではないかと考えているところでございます。

○阿部部会長 いかがですか。
 ありがとうございます。
 酒井委員、どうぞ。

○酒井委員 今の議論に関連して、数より割合を重視するというロジックについては承知しましたけれども、そうすると、例えばその割合を公表するときに、全採用数が何人以上という規定は設ける予定はあるのでしょうか。要は、例えば昨今のように雇用が比較的堅調で、301人以上の規模の企業であればそこそこ毎年多くの採用があるということであればそういう問題は出てこないかと思うのですけれども、景気が悪くなったりして全採用数自体が非常に小さくなってきた、301人以上の規模であっても全採用数が物すごく小さくなってきたときにも、その場合にも常に割合で公表し続けるのかという質問なのです。

○阿部部会長 事務局、お願いします。

○弓雇用政策課長 法律上の義務づけという意味では、その割合ということを義務づけさせていただきまして、委員御指摘のような例えば採用数など、そのほかの公表によりまして有益な情報については、自主的な公表が行われるような形で支援していくということが報告書の中でも盛り込まれているところでございますので、求職者の方々にとって有益な情報が公表されるように支援してまいりたいと考えているところでございます。

○阿部部会長 ほかにいかがですか。
 仁平委員、どうぞ。

○仁平委員 6ページの最初のリード文に職場情報を見える化し、中途採用を希望する者と企業のマッチングを促進すると書いてあるのですが、改めて中途採用を希望する者をどのような雇用に結びつけるものなのか、そのためのどういう情報なのかが非常に大事なところだと思っております。2ページの背景のところにも書いてございますが、これを公表する目的を我々なりに考えますと、長期的な安定雇用の機会を中途採用者に提供することが非常に大事な視点なのだろうと思っております。そうしますと、安定雇用の中で中途採用者にも一貫した社内教育を提供し、職業生活をさらに充実させていくような、中途採用比率以外の情報もあわせて提供していくことが非常に大事なのではないかと思っております。
 もう一点、御意見として申し上げたいと思っておりますが、本来、この転職は本人の意思に基づいて行うものと思います。政府が転職を後押しする余り、安易な雇用の流動化につながらないように留意していただきたいというのを意見として申し上げたいと思います。
 以上です。

○阿部部会長 ありがとうございます。御意見として承ります。
 ほかにいかがですか。
 吉村委員、どうぞ。

○吉村委員 ありがとうございます。
 ここまでいろいろと御意見をさせていただきましたが、おおむね理解しているつもりでございます。
 4番の(1)のいろいろ御支援をいただくということについてなのですけれども、今のお話もそうですが、会社としても当然有為な人材を中途や新卒も含めて採用する、そのための努力はこれからより一層図っていかないと、必要な人材が採用できないというのは既に起こっています。ですから、こちらに御支援いただくような内容は当然各社で考えなくてはいけないことだと思ってございます。御支援がどういう御支援かわかりませんけれども、もともとの義務と支援というのは違うことだと思っておりますので、さまざまな御支援がある意味で会社のいろいろな義務に置きかわらないように、ぜひそのあたりは御配慮いただきたいと思っております。
 以上です。

○阿部部会長 ありがとうございます。
 では、御意見として承ります。
 その他、いかがでしょうか。
 全体を通して、もう一度何か御意見、御質問があれば御発言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 吉村委員、どうぞ。

○吉村委員 先ほどの高齢者のところで1つ意見を申し上げることを失念しておりまして、大変失礼しました。
 3の(1)なのですけれども、こちらについても御支援をいただくということで非常にありがたいことなのですが、具体的な内容として私の理解は、この3の(1)の下から2つの段落です。高齢者のモチベーション、加齢によるというここのいろいろな安全配慮等なのですけれども、恐らく実際に運用するときは、いわゆる(a)から(c)とか(a)から(d)という会社が雇用している限りにおいては目配りといいますか、管理や配慮はできると思うのです。ただ、今回の対象はそれ以外もある意味で踏まえていますので、(d)から(g)というのですか、(e)から(g)というのですか、このあたりはもともと雇用していた会社からは目配りができなくなってしまうので、そういう彼らへの配慮、いろいろな事例があると思いますので、そういうことを御紹介いただくことによって御支援をいただくことも必要かと思ったので、意見として発言させていただきました。

○阿部部会長 ありがとうございます。
 ただいまの御意見も承りたいと思います。
 その他はいかがでしょうか。
 特によろしいでしょうか。
 これ以上ないようでしたら、本日もたくさん貴重な御意見をいただきましたので、本日の報告書素案に対する皆様からの御意見を事務局は整理していただいて、次回の部会に向けて報告書案を準備していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 議題(1)はここまでとさせていただきまして、議題(2)の「その他」ですが、事務局より何かありますでしょうか。

○弓雇用政策課長 その他の議題はございません。

○阿部部会長 最後に、事務局から次回の日程についてお願いしたいと思います。

○弓雇用政策課長 次回の日程につきましては、部会長とも御相談しまして、個別に委員の皆様に御連絡させていただきます。

○阿部部会長 それでは、以上で予定されていた議題は全て終了しましたので、本日の部会はこれで終了したいと思います。
 本日の会議に関する議事録については、労働政策審議会運営規程第6条により、部会長のほか、お二人の委員に署名をいただくことになっております。
 つきましては、労働者代表の仁平委員、使用者代表は穗岐山委員にお願いしたいと思います。
 本日もどうもありがとうございました。