令和元年度11月22日 第44回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和元年度第10回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)議事録

日時

令和元年11月22日(金) 14:00~16:00

場所

厚生労働省 専用第22会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

議事

○事務局 定刻になりましたので、ただいまより第44回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会及び令和元年度第10回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議を開催させていただきます。委員の皆さまにおかれましては、お忙しい中、御出席を賜りありがとうございます。

 始めに本日の委員の出欠状況について、御報告をさせていただきます。副反応検討部会の長谷川委員、安全対策調査会の柿崎委員と舟越委員から、それぞれ御欠席の連絡を受けております。この結果、副反応検討部会委員8名のうち7名、安全対策調査会委員6名のうち4名の委員に御出席をいただいておりますので、厚生科学審議会及び薬事・食品衛生審議会の規定により、本日の会議が成立していることを御報告申し上げます。なお、全ての委員におかれましては、関係企業の役員、職員等でない旨、御申告を頂いております。また、本日は議題2の関連で、参考人として3名の方に御出席をいただいておりますので、御紹介をさせていただきます。まず、一般社団法人 知ろう小児医療守ろう子ども達の会、代表理事の阿真京子様、株式会社博報堂 テーマビジネスデザイン局アカウントディレクターの野口真理子様、もうお一方、少し遅れておられるようですが、帝京大学大学院公衆衛生学研究科教授の石川ひろの様にも、御出席をいただく予定です。出席状況については、御説明を申し上げたとおりです。

 それでは、冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきたいと思いますので、メディアの皆様におかれましては、御協力をお願いいたします。続きまして、本日の審議の傍聴に関しまして、留意事項を申し上げます。開催案内の傍聴への留意事項を必ず守っていただきますようお願いいたします。留意事項に反した場合は、御退場をお願いする場合がございます。また今回、座長及び事務局職員の指示に従わず、会議中に退場となられた方につきましては、次回以降、当会議の傍聴は認められませんので、御注意をお願いいたします。

 今、帝京大学の石川ひろの様が御到着されましたので、御紹介をさせていただきます。本日の参考人として、帝京大学大学院公衆衛生学研究科教授の石川ひろの様に御出席をいただいております。よろしくお願いいたします。

 それでは、本日の座長につきましては、桃井副反応検討部会長にお願いしたいと思います。それでは桃井先生、進行をよろしくお願いいたします。

○桃井委員 それでは、開始させていただきます。参考人の3名の皆様方には、大変お忙しいところ御出席いただきましてありがとうございます。議題2まで、少々お待ちいただけますようお願い申し上げます。

 それでは、まず最初に事務局から、審議参加に関する遵守事項の御報告をお願いいたします。

○事務局 それでは、審議参加について御報告をいたします。本日、御出席をいただいた委員、参考人の方々の過去3年度における関連企業からの寄附金・契約金などの受取状況について、これまで同様に申告いただいております。本日の議題において、調査審議される品目は、MR、麻しん、風しん、おたふくかぜ、水痘、A型肝炎、23価肺炎球菌、HPVワクチンの各ワクチンであり、その製造販売業者は、一般財団法人阪大微生物病研究会、第一三共株式会社、武田薬品工業株式会社、KMバイオロジクス株式会社、MSD株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社でございます。

 各委員からの申告内容については、机上に配布をしておりますので、御確認をいただければと思います。引き続き、各委員におかれましては、講演料等の受取について、正確な御申告をいただけますようよろしくお願いいたします。事務局からは以上でございます。

○桃井委員 それでは、事務局から配布資料の御確認をお願いいたします。

○事務局 それでは、事務局より本日の資料について説明をいたします。まず、厚生労働省では、業務全体においてペーパーレス化の取組を推進しております。本合同会議におきましても、資料はタブレットで閲覧する方式で実施いたします。各委員、参考人におかれましては、お手元のタブレット端末で資料をご覧ください。なお、タブレット端末の操作方法につきましては、説明を省略させていただきますが、御不明な点、不具合等ございましたら、事務局員にお申出ください。

 続きまして、配布資料の説明をいたします。資料は委員名簿、資料一覧、議事次第、座席図、遵守事項等資料、資料1から資料16、参考資料1-1から1-3、また、委員限りの資料となりますが、資料番号なしで、各社のワクチン出荷量と副作用の発現頻度をまとめた資料がございます。また、黄色の紙ファイルにて、各ワクチンの添付文書をお配りしております。資料を御確認いただき、不足の資料がございましたら、事務局までお申出ください。

○桃井委員 よろしいでしょうか。それでは議題1、各ワクチンの安全性についての審議に入りたいと思います。まず、事務局から資料1から4まで御説明ください。

○事務局 はじめに全体的な事項を説明します。本合同会議での副反応が疑われる症例の報告につきましては、平成259月の合同会議において、定期的に検討を行うワクチンを選定し、比較的同時接種が行われるワクチンと、そうではない比較的単独接種が行われるワクチンにグループを分けて報告することとしております。本日は比較的単独接種が行われるワクチンについて、その副反応が疑われる症例の報告状況について説明します。

 比較的単独接種が行われるワクチンは、前回830日の合同会議において、本年11日から4月末までの症例について報告しております。本日は本年51日から8月末までの4か月間に報告された症例について、説明させていただきます。

 それでは、まず資料14について説明します。資料1をご覧ください。MRワクチンです。具体的な製品名は、1ページの上段にある商品名に記載しております。1ページの中段に表がありますが、こちらには医療機関への納入数量を基に推定した接種可能のべ人数、製造販売業者及び医療機関からの副反応が疑われる症例の報告件数を記載しております。MRワクチンの接種可能のべ人数は約111万人、製造販売業者からの報告は6件、医療機関からの報告は42件、うち重篤なものが12件でした。製造販売業者からの報告頻度は0.00054%、医療機関からの報告頻度は0.0038%となっています。

 1ページ下段の重篤例の転帰等の情報をまとめておりますが、後遺症症例、死亡症例の報告はありませんでした。2ページ目に移る前に、本資料を含め、各資料の1ページ目の見方について説明します。重篤症例の報告数については、製造販売業者と医療機関の双方から報告された場合には、重複を排除するため、医療機関の報告として計上しております。また、中段の表、報告数の部分ですが、集計対象期間内に報告された症例を集計していますので、この件数には接種日や発生日が対象期間以前の症例も含まれており、接種日が今回の対象期間内であったものについて、括弧書きでその件数を記載しております。また、製造販売業者ごとの出荷量や発現頻度については、別途、委員限りの資料をご覧ください。

 それでは、2ページをご覧ください。報告された症例を症状別に集計したものです。縦に見ていただいて、表の左側が前回の合同会議までに報告された件数、右側が今回報告された件数となっております。

 5ページは予防接種法の報告基準に定められた症状について、集計した結果を記載しております。こちらも左側が前回までの報告、右側が今回の集計対象期間に報告されたものとなっております。

 6ページから9ページは、報告された個別症例の一覧です。10ページはアナフィラキシーとして報告された重篤症例の件数をまとめております。今回の対象期間内では、1件がアナフィラキシーと報告されましたが、専門家の評価によりブライトン分類が3以上とされた症例はありませんでした。詳細については11ページをご覧ください。

 続いて12ページからは、死亡症例について掲載しております。こちらは前回830日の合同会議において、対象期間後に報告された症例として、調査中である旨を報告したものになります。その後の詳細調査によって、過去、平成30723日開催の合同会議で報告された症例と同一症例であることが判明しました。今回、新たに得られた追加情報については、下線を記載しております。当時の調査結果では、得られた情報から死因は不明であり、情報不足のためワクチン接種との因果関係は評価できない、とされていました。新たに得られた追加情報に基づく調査の結果、「剖検の結果、気管・気管支炎の所見及び免疫学的異常所見が認められたものの、明らかな死因は特定されず、乳幼児突然死症候群の可能性も考えられた。ワクチン接種との因果関係は不明である。」とされています。下線の情報も含めて、再評価をお願いします。

 13ページ以降には委員限りの資料として、詳細な経過や専門家の意見を添付しております。その内容を御発言いただく際には、患者さんの個人の特定につながらないよう、御配慮いただきますようお願いします。資料1は以上です。

 資料2は麻しんワクチンです。接種可能のべ人数は約3万人、製造販売業者から3件報告されており、報告頻度は0.0091%でした。1ページ下段の重篤例の転帰について、後遺症症例、死亡症例の報告はありませんでした。2ページは症状別に集計した結果、3ページは予防接種法の報告基準に定められた症状について集計した結果です。4ページは個別症例の一覧です。製造販売業者からの報告No2については、追跡調査に対する協力が得られず、情報が入手できなかったため、接種日・発生日などの詳細は不明となっています。5ページはアナフィラキシーのまとめです。今回はそのような症例はありませんでした。資料2は以上です。

 資料3は風しんワクチンです。接種可能のべ人数は約3万人、医療機関から重篤なものが1件報告されており、報告頻度は0.0033%でした。1ページ下段の重篤例の転帰について、後遺症症例、死亡症例の報告はありませんでした。2ページは症状別に集計した結果、3ページは予防接種法の報告基準に定められた症状について集計した結果です。4ページは個別症例の一覧です。5ページはアナフィラキシーのまとめです。今回の対象期間内では1件がアナフィラキシーと報告されましたが、専門家の評価によって、ブライトン分類が3以上とされた症例はありませんでした。詳細については6ページを御確認ください。資料3は以上です。

 資料4はおたふくかぜワクチンです。接種可能のべ人数は約50万人、製造販売業者からの報告は9件、医療機関からの報告は15件、うち重篤なものが10件でした。製造販売業者からの報告頻度は0.0018%、医療機関からの報告は0.0030%となっています。

 1ページ下段の重篤例の転帰について、医療機関から後遺症症例が2件報告されています。2ページから4ページは症状別に集計した結果です。5ページから7ページは、個別症例の一覧です。製造販売業者からの報告No5は報告医の協力が得られず、詳細調査が不能となり、接種日・発生日等が不明となっています。No7は追加情報によって、報告医が因果関係なしと評価をし、101日の追加報では報告対象外として報告されています。

 8ページは後遺症症例になります。No19歳男児、おたふくかぜワクチンを接種し、接種後23日後に意識障害が出現し入院、髄膜脳炎と診断され、抗菌薬・抗ウイルス薬治療などによって意識障害は改善したものの、有意語の消失など、発達退行が後遺症症状となった症例です。本症例については、第1報である医療機関からの報告年齢1歳と、その後の最新の報告として受け付けていた製造販売業者からの報告年齢9歳とで年齢の相違があり、年齢の相違について製造販売業者に指摘をしておりましたが、報告対象期間後の1030日に追加報告があり、年齢が1歳に訂正されています。

 表の一番右のカラムに、専門委員の評価を記載しておりますが、「情報不足のためワクチン接種との因果関係について評価できない」「評価には詳しい検査結果が必要である」といった意見を頂いています。この専門家の意見については、年齢の訂正に伴う評価の変更はないことを、全ての委員に御確認いただいております。

 後遺症症例No21歳男児、おたふくかぜワクチンを接種し、接種32日後に発熱、33日後にけいれん群発があり、ステロイド・IVIG治療によって意識障害は改善したものの、運動機能障害が後遺症症状となった症例です。髄液PCRによってワクチン株が検出されており、専門家より「ワクチン接種との因果関係は否定できない」「ワクチン接種との因果関係はある可能性が高い」といった意見を頂いています。

 9ページはアナフィラキシーのまとめです。今回、そのような症例はありませんでした。資料4は以上です。資料14の説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いします。

○桃井委員 それでは御意見、御質問等、よろしくお願いします。何かおありですか。特に御意見はありませんか。よろしいでしょうか。それでは、まとめさせていただきます。副反応疑いの報告頻度ですが、これまで検討したワクチン、あるいはこれまでのデータに比べて特段高くはない。それから、後遺症は今の御説明にありましたように、おたふくかぜワクチンで1歳児が2例、ともに髄膜脳炎でありました。そのうち1例からは、ワクチン株の検出もあったこともあり、ワクチン接種との因果関係はある可能性が高いという評価を得ております。死亡症例は、今回の期間中にはありませんでした。期間前の例で、情報が追加をされました。情報追加に伴い、何か御意見があれば承りたいと思いますが、「ワクチン接種との因果関係は評価できない」という評価には、特に変わりはありません。このようなまとめでよろしいでしょうか。

 それでは、この内容を踏まえまして、現状の取扱いの変更の是非について、何か御意見があれば承りたいと思います。よろしいでしょうか。それでは、このような評価から御審議いただいたワクチンについては、その安全性において重大な懸念は認められないということでよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。以上で資料14までのワクチンの審議を終了させていただきます。引き続き資料57までよろしくお願いします。

○事務局 それでは、資料57について説明します。資料5をご覧ください。水痘ワクチンです。接種可能のべ人数は約69万人、製造販売業者からの報告は5件、医療機関からの報告は17件、うち重篤なものが8件でした。製造販売業者からの報告頻度は0.00075%、医療機関からの報告頻度は0.0025%となっています。

 1ページ下段の重篤例の転帰について、後遺症症例、死亡症例の報告はありませんでした。2ページから3ページは症状別に集計した結果、4ページは予防接種法の報告基準に定められた症状について集計した結果です。5ページから7ページは個別症例の一覧です。6ページ、医療機関からの報告No81歳女児の症例では、急性脳症疑いと診断され、治療のため他院に転院しており、調査継続中のため、転帰日・転帰内容は現在不明となっております。

 8ページは前回830日の合同会議において、ヘルペス眼感染の症状で転帰不明として報告された症例で、継続調査によって後遺症と判明した85歳男性の症例です。ワクチン接種後、接種54日後に右眼に充血などが出現し、治療を行ったものの右眼の視力低下、角膜混濁が後遺症となった症例です。専門家からは、「ウイルス検出についての情報がなく、ワクチン接種との因果関係については判断できない」といった意見を頂いております。

 9ページはアナフィラキシーのまとめです。今回の対象期間内では、1件がアナフィラキシーとして報告されましたが、専門家の評価によってブライトン分類が3以上とされた症例はありませんでした。詳細については10ページを御確認ください。資料5は以上です。

 資料6A型肝炎ワクチンです。接種可能のべ人数は約5万人、医療機関から1件報告されており、報告頻度は0.0020%でした。1ページ下段の重篤例の転帰について、後遺症症例、死亡症例の報告はありませんでした。2ページは症状別に集計をした結果、3ページは個別症例の一覧です。4ページはアナフィラキシーのまとめです。今回はそのような症例はありませんでした。資料6は以上です。

 資料723価肺炎球菌ワクチンです。接種可能のべ人数は約31万人、製造販売業者からの報告は25件、医療機関からの報告は53件、うち重篤なものが9件でした。製造販売業者からの報告頻度は0.0081%、医療機関からの報告頻度は0.017%となっています。また、肺炎球菌ワクチンに関しては、「薬効欠如」などのワクチンの副反応ではないと考えられる症状が報告されていることについて、これまでの合同会議で御指摘いただいており、うち数として「肺炎球菌感染、肺炎等を除」いた件数も示しております。今回の対象期間では、製造販売業者から肺炎関連の症例が報告されており、これらを除くと製造販売業者からの報告は15件、同様に医療機関からの報告は52件となります。

 1ページ下段の重篤例の転帰について、後遺症症例、死亡症例の報告はありませんでした。2ページから8ページは症状別に集計した結果です。左側に★を付けている症状が、1ページでうち数として集計する際に除外したものになります。9ページは予防接種法の報告基準に定められた症状の集計結果です。

 10ページから13ページは個別症例の一覧です。10ページ、製造販売業者からの報告No1670歳女性、ギランバレー症候群の症例につきましては、保健センターからの報告症例であって、医療機関名の情報が得られず、調査不可となっています。

 14ページはアナフィラキシーのまとめです。今回の対象期間内では1件がアナフィラキシーと報告され、専門家の評価によって、その1件がブライトン分類3以上と評価されております。該当する症例は15ページに記載しております。70歳女性の症例で、肺炎球菌ワクチン接種4時間後、アナフィラキシー様症状が出現、接種10時間後の21時頃から喘鳴が出現し、翌日ステロイド、アドレナリン等の処置によって症状が回復した症例です。専門家による評価の結果、ブライトン分類3以上のアナフィラキシー症例、ワクチン接種との因果関係は否定できないと評価されております。

 16ページからは死亡症例についてです。No1の症例は対象期間前の報告で、前回830日の合同会議にて詳細調査中として報告した症例です。65歳男性の症例で、肺炎球菌ワクチン接種26日後に発熱、会話がおかしくなるなどの症状が現れ、頭部MRI検査の結果、大脳皮質、脳幹及び両側視床に高信号域が認められ、ステロイドパルス療法及び血漿交換療法が行われましたが、接種65日後に死亡が確認され、急性散在性脳脊髄炎が死因とされた症例です。調査の結果「死因は急性散在性脳脊髄炎とされた。ワクチン接種との因果関係は否定できない」とされています。なお、本症例につきましては、本剤接種10日後にインフルエンザワクチンが接種されており、別途、資料12として報告する死亡症例と同一の症例になります。

 17ページ、こちらは対象期間後に報告された症例になりますが、No2及びNo4の症例については、現在詳細調査中であり、調査結果が得られ次第、改めて報告いたします。No3の症例につきましては、医療機関などの情報が不明であり、これ以上の調査ができない症例となっています。

 18ページ以降に委員限りの資料として、詳細な経過や専門家の意見を添付しております。内容について御発言いただく際には、患者さんの個人の特定につながらないよう、御配慮をお願いします。資料7は以上です。資料57までの説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いします。

○桃井委員 ありがとうございます。それでは、資料57までの御意見等、よろしくお願いします。いかがでしょうか。

○倉根委員 肺炎球菌の17ページの3番目の方は、細菌性肺炎によって死亡されたということですよね。ということは、ワクチンとの関係というのは、もし原因菌がはっきりしているのであれば、ワクチンとの関係はあまりないと考えたほうが適切かなと思うのですが、いかがでしょうか。

○事務局 御質問にお答えします。こちらの症例の症例表に記載されている内容を拝見しますと、その他の医療専門家から報告を受けているものですが、そもそも接種日、ロット番号、併用薬などの報告もなく、細菌性肺炎が発現した日付についても不明として報告されていますので、その辺りの因果関係は不明、剖検も実施されたか不明であるという症例になっております。

○倉根委員 今後、更に情報が出てくるということはないのですね。

○桃井委員 情報が極めて少ないということですね。ほかにいかがでしょうか。御意見等はおありでしょうか。よろしいですか。それでは、資料57についてまとめさせていただきます。報告頻度に関しては、これまでに検討したワクチンに比べて特段高くはないと。後遺症は対象期間前に水痘ワクチンで1例ありました。評価は困難であるという結論でありました。アナフィラキシーの症例は23価肺炎球菌ワクチンで1例ありました。死亡症例は今回の期間中にはありませんでした。期間前に23価肺炎球菌ワクチンを接種し、その後、インフルエンザワクチンを接種し、その後にADEMを発症して、死亡したという例が1例ありました。当該ワクチンと死亡との因果関係は否定できないと評価をされております。

 対象期間後に報告をされた23価肺炎球菌ワクチンの中から3例、死亡症例が報告されました。1例は情報不足である、2例は情報を収集中であるということで、今後改めて報告され、御審議をお願いする予定です。以上がまとめですが、こんなまとめでよろしいでしょうか。この状況を踏まえまして、現在の取扱いに関して、何か御意見があれば承りたいと思います。いかがでしょうか。

 特になしということでよろしいでしょうか。それでは、御審議いただいたワクチンに関しては、これまでの副反応報告によって、その安全性において重大な懸念は認められないということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それでは、以上で水痘、A型肝炎、肺炎球菌に関しては終了させていただきます。続きまして、資料812までの説明をお願いします。

○事務局 資料8について説明いたします。こちらはサーバリックスについてです。接種可能のべ人数は1,701人で、製造販売業者からの報告は9件、医療機関からの報告は2件で、うち重篤なものは2件でした。これらのうち、今回の集計対象期間内に接種が行われた症例の数をそれぞれ括弧書きで記載していますが、今回の対象期間内に接種された報告が医療機関から1件報告されております。また、これまで同様、報告対象期間中の接種可能のべ人数を分母に、報告された症例数を分子にとって頻度を計算しております。製造販売業者からの報告頻度は0.53%、医療機関からの報告頻度は0.12%となっております。この数値を示しておりますが、接種数が極めて少ない中で、過去の症例が報告されていることから、当該頻度の数値自体はあまり意味のないものとなっております。また、販売開始からの累計は、参考としてその下の段に記載しております。1ページ下段の重篤例の転帰について、今回の報告対象期間に後遺症症例、死亡症例の報告はありませんでした。2ページから10ページは症状別に集計した結果を示しています。

 11ページは、予防接種法の報告基準に定められた症状について集計した結果を記載しております。今回の対象期間には該当する症状の報告はありませんでした。12ページから13ページは個別症例の一覧となっています。14ページはアナフィラキシーのまとめです。今回はそのような症例はありませんでした。15ページは接種後の迷走神経反射が疑われる症例でのアナフィラキシーの可能性について評価した資料になります。下の表のとおり、迷走神経反射が疑われる症例が3例ありましたが、ブライトン分類3以上として、アナフィラキシーが疑われる症例はありませんでした。資料8は以上です。

 資料9はガーダシルです。接種可能のべ人数は14,479人で、製造販売業者からの報告は5件、医療機関からの報告は2件、うち重篤なものは1件でした。これらのうち、今回の集計対象期間内に接種が行われた症例の数を括弧書きで記載しております。今回の対象期間内に接種された報告は製造販売業者から1件、医療機関から2件の報告がありました。製造販売業者からの報告頻度は0.035%、医療機関からの報告頻度は0.014%となっております。数値については、サーバリックス同様、接種数が極めて少ない中での過去の症例が報告されていることから、当該頻度の数値自体はあまり意味のないものとなっております。なお、販売開始からの累計は参考としてその下に記載しております。1ページ下段の重篤例の転帰について、今回の集計対象期間に後遺症症例、死亡症例の報告はありませんでした。

 2ページから7ページは症状別に集計した結果です。8ページは、予防接種法の報告基準に定められた症状について集計した結果を示しています。今回、血管迷走神経反射の報告が製造販売業者から2件、医療機関から1件、計3件ございました。9ページから11ページは報告された個別症例の一覧です。12ページはアナフィラキシーのまとめです。今回はそのような症例はありませんでした。

 13ページは、接種後の迷走神経反射が疑われる症例でのアナフィラキシーの可能性について評価した資料です。下の表のとおり、迷走神経反射が疑われる症例が3例ありましたが、ブライトン分類3以上として、アナフィラキシーが疑われる症例はありませんでした。

 こちらの資料については以上となりますが、ここで資料11をご覧ください。前回の830日の合同会議で報告したガーダシルの出荷数量に基づく接種可能のべ人数の数字に誤りがあり、資料の訂正について御説明いたします。これは、ガーダシルの製造販売業者であるMSD社において、20191月に出荷数量を管理するデータベースのリプレイスがあり、その際にシステムの設定に誤りがあって集計ミスが生じました。発生した事象については現在解消され、数値を確認する手順を対策として加え、今回報告する資料の集計対象期間においては誤りがないとの報告を受けております。

 この誤りの修正によって、830日に報告した資料10ガーダシルの副反応疑い報告状況については、平成3111日から平成31430日までの接種可能のべ人数が11,854人、製造販売業者からの報告は0.025%、医療機関からの報告頻度は0.0084%となります。なお、副反応疑い報告については報告漏れはございません。委員の先生方には御迷惑をお掛けいたしますことを大変申し訳ございません。こちらの数字につきましては、既に委員の先生方に御報告させていただいておりますが、改めて安全性について御評価いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 次に、資料10の失神関連副反応疑いについて御報告いたします。こちらは、HPVワクチン接種後の失神関連の副反応が疑われる症例をまとめた資料のアップデートになります。2ページから8ページがサーバリックス、9ページから12ページがガーダシルのまとめとなっております。

 2ページの1.サーバリックスの国内の発現状況です。販売開始から本年8月末までの報告は992例、発生率が10万接種あたり14.15例でした。このうち、意識消失のあった症例は661例で、10万接種あたりは9.43例でした。3ページは意識消失までの時間を表したもので、上の棒グラフは接種後30分までに発現した症例を、下の表は接種後30分以降に発現した症例をまとめたもので、多くは30分以内に発現しております。4ページから8ページは、意識消失があった症例の時期ごとの発現の傾向を示しています。8ページが最近の症例となりますが、ここ最近の事例として報告された症例はございません。

 9ページ以降はガーダシルの資料となります。9ページの1.ガーダシルの国内の発現状況です。本年8月末までの報告は403例、発生率が10万接種あたり20.2例でした。このうち、意識消失のあった症例は274例で、10万接種あたり13.7例でした。10ページはサーバリックスと同様に、それぞれ意識消失などの時間を示したグラフと表となっております。傾向については、サーバリックスと同様です。11ページは意識消失があった症例の期間ごとの発現傾向を示したものです。12ページが最近の症例に該当しますが、本年8月に1例報告されております。

 また、この資料について、前回830日の合同会議において、委員の先生から御質問のあった失神に関する資料のうち、ガーダシルの失神に関する海外の発現状況において、「意識消失の有無による集計はできませんでした」と記載されていた点を御指摘いただいております。こちらについて御回答申し上げます。

 MSD社においては、症例の詳細経過に意識消失があるかどうかを確認した上で件数を報告しており、国内症例についてはそれが可能であるものの、海外症例については意識消失の有無を経過から確認することができないために、「集計できない」と、これまで記載されてきました。この集計について、サーバリックスのGSK社においての集計を確認したところ、MedDRAの基本語である「意識消失」「失神」に該当する症例を集計しているということでしたので、MSD社においても、今後は同様に海外症例については「意識消失」「失神」に該当する症例を集計し、今回の資料から記載させていただいております。

 最後に、資料12をご覧ください。こちらはインフルエンザワクチンの死亡症例について記載をしております。本症例は2017/2018シーズンの死亡症例として、前回830日の合同会議において「詳細調査中」とされていた症例です。詳細については、資料7で報告しました肺炎球菌ワクチンの死亡症例と同一症例で、経過についてはインフルエンザワクチンの接種日を起点として接種後日数が記載されています。それ以外の内容については同様ですので、説明は省略させていただきます。資料8から資料12の説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○桃井委員 御意見等を頂戴したいと思います。

○濱田委員 失神に関係する資料10で、前回も出ていると思うのですが、ガーダシルとサーバリックスの日本における失神の発生状況と海外における失神の発生状況を参考資料として載せていらっしゃると思います。これは、後半のHPVワクチンにも関係するかもしれませんが、明らかに日本での発生は高いわけです。それを載せるという意味があるのかどうかということです。それから、これを載せた以上は、今後このワクチンの説明をする上では、なぜこうなっているかを説明していかなければいけなくなってくると思うのです。例えば意識障害の基準が違うとか、あるいは日本人に特別にそういうことが起きやすいということも説明せざるを得なくなってくると思うのです。それは、どのようにお考えなのでしょうか。それから、なぜこれをここに載せるのかということについて伺いたいと思います。

○事務局 まず、この資料を御用意させていただいている経緯としては、HPVワクチン接種後に失神を生じたケースが比較的多く報告されていまして、先ほどもどれぐらいの時間で失神が生じるかという分析の資料も御説明させていただきました。そういった当初の経緯を踏まえて、失神については継続的に集計させていただいているというところです。

 それから、国内と海外との比較ですが、確かに報告されている件数で見ると、10万接種あたりの数で言うと、国内のほうが多いという数字は出ていると思います。他方、こちらは自発報告になっていますので、実際の発生件数のうち、どの程度のものが報告として上がってきているか、あるいは先ほど御指摘のあった報告基準が完全に同じものであるかというところについては、確認する必要もあろうかとは思いますが、報告されている件数としては多いというのは、そのとおりと思っています。

○濱田委員 ここまで資料に載せた以上は、これを一般の方に「大丈夫です」と言うためには、それを説明していかなければいけなくなってくると思うのです。これは公開する資料ですから、情報提供をする場合にそれも説明していかないといけないでしょう。その辺を御検討いただきたいと思うのですが。

○桃井委員 この2つの数字が比較可能な数字かどうかということが第一です。基準が違ったり、集積方法が違ったりすれば、この2つの数字で比較して、日本が高い、日本人が高く出るということを言っていいかという考察が、まず大事だろうと思います。

 それと同時に、意識消失で転倒してけがを負ったという症例が何年か前にあったものですから、厚生労働省から接種後の注意喚起を医師会等を通じてなされて、接種後は座っているとか寝ているとか、動かないということで、突然立ち上がらないというような注意喚起が接種する医師によってなされて、その後、大きな外傷、転倒して外傷を負うというケースがなくなったという経緯がございます。

 ですから、接種側には十分にその情報が伝わっていると思われます。年代が関係しているかもしれませんが、そういう情報が伝わり、転倒による重大な事故がなくなっているという経緯があることも事実です。数値が比較できるかどうかは、より詳細に検討していただいてというように思います。よろしいでしょうか。

○長島委員 今の時点は誤解を非常に招きやすいデータの書き方だと思うので、きちんと国内と海外で、このように違うのだということがはっきりと分かるように、まず書いていただくと。自発報告とすれば、当然本来のものよりもかなり少なく出やすいということと、国内と海外の基準では、どちらが高く出やすいのかということがあれば、そこもきちんと書いていただいて、その上で、単純比較できるものではないが、参考として載せるとか、そういう書きぶりがないと非常に誤解を招くと思いますので、その辺は御検討いただければと思います。

○桃井委員 お二方の委員の御意見はもっともだと思います。数字を載せる以上は、その数字の意味するところ、あるいは読み方についても書くのが親切、かつ適切だろうと思いますので、よろしく御検討ください。よろしいでしょうか。

○濱田委員 ありがとうございます。

○桃井委員 ほかに御意見等はございますか。

○佐藤委員 資料103ページ目と、もう1つグラフが載っているのですが、5分ごとに刻んでいる理由がよく分からないのです。ほかのところがすごく少ないというのは分かるのですが、メジャーな作用が何分以内に出るか、という情報が重要かなと思いました。これほど細かく5分ごとに刻んだ特別な理由があったのでしょうか。

○事務局 先ほど申し上げたように、HPVワクチンの接種が始まって以降、失神をされて転倒をしてけがをされるといったケースがございました。それを受けまして、失神による転倒などを防ぐためには、どういった措置を取ればいいかを検討する上で、大体何分後ぐらいに、そういった失神が発生するのか、その傾向を明らかにする必要があろうということで、このような5分刻みの分析をさせていただいております。

 この分析の結果としては、その多くのものが30分以内に発生しているという考察をしまして、添付文書においても、接種後30分間は失神に備えて背もたれのある椅子などで休ませるといった注意喚起をさせていただいています。そういった経緯がございまして、資料としては5分刻みという分析になっております。

○桃井委員 よろしいでしょうか。

○佐藤委員 はい。

○桃井委員 ほかに御意見はおありでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、まとめさせていただきます。今回の報告では、過去に発生した症例が時間を置いて、直近の報告期間内に報告された例であると。全体の傾向としては、内容に関して、これまでの報告と大きな変化はないということです。

 また、前回のガーダシルの報告については、接種のべ人数の訂正がされました。これについては審議事項ですので、今回の期間内の審議が終わって、皆様に御意見を頂戴いたします。

 また、インフルエンザワクチンを接種された後に死亡例が1例、ADEMでの死亡例の詳細が報告されました。因果関係は否定できないとされています。以上のまとめでよろしいでしょうか。

 それでは、このようなまとめを踏まえまして、現状の取扱いについて、何か御意見があれば承りたいと思います。特に、この副反応報告の内容をもって、現状の取扱いを変える新たなシグナルの検出はないということでよろしいでしょうか。

○佐藤委員 確認させてください。肺炎球菌の死亡例が1つあったと思うのですが、インフルエンザと肺炎球菌のワクチンを2回連続して受けてしまったという御説明でしたが、安全性という点で、そういう連続してワクチン接種を受けるときにどのくらい時間を空けるか、といった注意はないのですか。免疫反応ですし、続けて何度もやるものでもないという感じがするのですが、そこまではフォローしきれないものなのですか。

○事務局 この症例については、まず肺炎球菌ワクチンを打った10日後に、インフルエンザワクチンを打たれています。23価肺炎球菌ワクチンは不活化ワクチンで、不活化ワクチンについては添付文書上、御指摘のとおりどちらのワクチンが因果関係があるのかという評価をする上で、現在の注意喚起としては6日以上の間を空けて接種することとされております。本症例については、接種10日後にインフルエンザワクチンを打たれているという症例になっていますので、安全性という点で、注意喚起に沿った接種はされているということにはなると思います。

○桃井委員 よろしいでしょうか。

○佐藤委員 はい。

○桃井委員 それでは、8月の合同会議で審議していただきましたガーダシルの報告について、接種のべ人数が修正されました。8,794から11,854の接種のべ人数の変更です。これにより、830日に御評価いただいた安全性評価に関する影響について、御意見があれば承りたいと思います。いかがでしょうか。倉根先生、いかがでしょうか。

○倉根委員 数が変わったという意味では、またこういうことが起こらないように注意していただきたいと思いますが、パーセンテージは、むしろ少し低くなるということでもありますので、安全性評価には影響はないと私は思います。

○桃井委員 ありがとうございます。ほかの委員の先生方も、これでよろしいでしょうか。分母の増大であって、安全性評価の審議内容には影響なしということでよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。これで資料については終わらせていただきます。

 なお、少し時間を頂戴いたしまして、あまり皆様の意見をフリーにお伺いする機会がなかったものですから、たまたま最後にHPVワクチンの期間の御審議を頂きましたし、20136月に、積極的勧奨のペンディングがあってから大分年月がたちました。その間、委員の先生方及び厚生労働省においては様々な分析、解析等をしていただいたところです。2013年のペンディングの文書の内容をここで少し振り返らせていただいて、共通認識を持たせていただくという目的です。

 「発生頻度等がより明らかになり、国民に適切な情報提供ができるまでの間、積極的な推奨とならないよう留意すること」という決定でした。

 それを受けて、病態に関する論点整理が20141月になされたのは、皆様も御承知のとおりです。その後、頻度等について、疫学的解析がなされまして、その内容について、大変詳細な分析がなされたところです。接種をしていない群にも同様の多様な症状が、様々な年齢層に発症しているということが判明しました。

 その後、2017年に、何年間かの間がございましたので、改めて論文等で病態に関する新たなエビデンスの整理がなされました。つまり、2014年の論点整理に変更が生じ得るような、新たなエビデンスがあるかどうか、あるいは安全性に関して新たなエビデンスがあるかどうかについてのファクトの整理がなされました。その結果、2017年の評価では、2014年の論点整理が大きく変わるような新たなエビデンスの出現はないということでした。

 201712月以降は、2013年の決定のいつまで、ということに関しては、先ほど申し上げましたように、「発生頻度等がより明らかになる」というところは、ある程度はなったのですが、「国民に適切な情報提供ができるまでの間」というところが、情報提供がなかなかうまくいかないということでもありまして、様々な情報提供の工夫がなされ、またその情報提供がどのように作動しているか、効果があるかどうかについての調査が、小規模の疫学的調査がなされて、報告されたところです。大変簡単ではありますが、そのようなところが経緯のまとめかと思います。

 今まで皆様方には、現状の取扱いについてのフリーな御意見を伺う機会がなかったものですから、あまり時間は取れないのですが、フリーに御意見を伺うことが、恐らく今後のプラスになるのではないかと思いまして、御意見を頂く時間を少し頂戴する次第です。フリーと申し上げましても、なかなかおっしゃりにくいと思いますが、何か御意見があれば承りたいと思います。

○長島委員 こういう判断は、まずは科学的な根拠にしっかりと基づいて判断していくということと、国民の最大の幸福というのを判断基準にすべきだと思っています。その観点からしますと、HPVワクチンの接種が有用であることを示す科学的な知見が、近年、世界から次々と報告されております。そのことを踏まえますと、日本において極めて低い接種率が、今後も更にずっと続いていくということは、国民にとって大きな不利益であると考えます。

 したがいまして、接種率を高くする必要がありますが、その最も有効な方法は積極的な接種勧奨を再開することだと思います。したがいまして、再開に向けての行程を具体的に検討すべき時期ではないかと思います。もちろん、そのときには接種対象者、保護者、国民の不安とか心配をできるだけ少なくするということは、極めて重要です。そこで、かかりつけ医が果たす役割も多いと思いますので、そこでは是非かかりつけ医も貢献していきたいと思っております。

 本日、この後のヒアリング等で、国民に対して丁寧かつ十分な広報を行うということを、まず第一歩として、積極的勧奨の再開というところに向いていただくことを希望いたします。以上です。

○桃井委員 ほかに御意見はございますか。

○倉根委員 もう1つ、桃井委員がおっしゃらなかったのですが、接種後に症状が出た場合に、どういう体制で診断や治療をしていくかという仕組みも、かなり整っていますし、どういうように対処すると、比較的早くそういう症状が消える、あるいは社会生活に戻れるかというような知見も、かなり集まってきていると思っています。

 それから、もう1つは、今、長島委員がおっしゃいましたように、それまでは発がんに対して子宮頸がんワクチンがどうかというデータが、使ってからの期間もありますから、十分なものがなかった。前がん病変に対するものは出ていましたが、近年、発がんに対してはどうかということで、それに対するデータも海外でも出ているし、我が国でも出始めていますし、研究もされているという状況だと思います。

 そういうことを考えますと、再開に向けての議論、少なくとも議論を始める時期に来ているのではないか。これまで議論を行うことがなかなか難しかった、そのためのデータも体制も整ってきているのではないかと思います。ですから、少なくとも再開に関しての議論というのは、始めても構わない、始められる時期ではないかという意見です。

○桃井委員 ほかにいかがでしょうか。

○濱田委員 非常に難しい問題だと思うのですが、このHPVワクチンが神経系への影響があるとする論文というのも出ていたことは確かで、それは、ある程度一般の方も知っているわけです。ところが、例えば2016年に出た論文が2018年に却下されているという事実もあり、そういう事実も国民には知らせて、その却下が正しいかどうかは別としても、そういったネガティブな面も、ある程度は説明をしていくようなことがないと、一般国民は納得しないのかなと思っているのですが。

○桃井委員 ほかにいかがでしょうか。何かを決めるためではありませんので、フリーな御意見を頂きたいというつもりでお伺いしております。

○五十嵐委員 それでは、安全対策調査会からも、意見を述べさせていただきます。今まで先生方がおっしゃったことはそのとおりだと私も思います。HPVワクチンの接種率が低いことと、婦人科の健診の受診率が日本では低いことの2つが恐らく主な理由になって、日本の女性の子宮頸がんの罹患患者数が毎年1万人近くに及んでいる。それから、死亡が2,800人程になり、以前と比べて30歳、40歳ぐらいの若い方が死亡される事を重く受け止めなくてはいけないと思います。

 個人的には、できるだけ再開の方向の議論をしていただきたいと考えています。しかも、海外では9価のワクチンが用いられており、日本でも治験が終わったと聞いておりますので、もし導入するならば、より有効性が広い9価ワクチンを考えるべきではないかと思います。

 しかし、もう1つ問題が残っています。先ほどから御指摘になっているHPVワクチン接種後に生じる様々な症状のうち、最も典型的なのが「機能性身体症状」です。日本医師会と厚生労働省が協力して、そのような症状を訴える患者さんをしっかりと診られる病院のリストを作りました。しかしながら、現場のドクターが患者さんを、いわゆるバイオサイコソーシャルに捉え、それに対応できる、支援できる体制が本当にできているかというと、まだ私は十分ではないと考えます。

 先ほど迷走神経反射がこのワクチンの後に起きるということが話題になりましたけれども、ほかのワクチンでも、例えばB型肝炎ワクチンでも12歳とか、15歳ぐらいの子どもに接種すると起きることがあります。12歳の少女は非常にデリケートです。そういう方たちが訴える症状にバイオサイコソーシャルに対応することが、日本の健康保険制度の中では医業として現状では成り立たないのです。例えば、そういう患者さんの訴えをじっくり聞いて、一緒に治していこうと激励してゆく治療が必要になるわけですが、それを実行しようとしても、現行の健康保険制度では正当な対価が認められていません。これが非常に大きな問題だと思います。ですから、そのような特殊な例に対しては、健康保険制度の中に特別の枠組みをつくって支援することも、是非、考慮していただきたいと考えます。以上です。

○桃井委員 ありがとうございます。長島委員、どうぞ。

○長島委員 今の点はとても重要であり、不安とか、心配を取り除くという意味でも、あるいは最も効果的なものの1つかと思いますので、そういう環境整備というのも、当然同時に進めていくべきと思っております。

○桃井委員 ほかに御意見等はいかがでしょうか。

○永井委員 明確な統計データを持っているわけではないのですが、前から知られていますように、このワクチンに関しては痛みが非常に厳しいというのが特徴だと思います。私は大学に勤務しておりますので、学生にこれを打った子たちに痛みがどうだったかというのを少し調べたこともあるのですが、やはり多くの人たちが非常に厳しかったと。普通のワクチンでは考えられないぐらい厳しかったと言っていますので、この痛み対策というのは、やる以上はしっかりしないといけないだろうと。実際、感覚の調査でいくと、感覚が厳しい子たちというのが5%ぐらいいるのです。やや厳しい子たちを合わせると、20%ぐらいいるのは分かっていますので、そういう子たちにワクチンを打つときに注意してやっていくと。そういうことも配慮しながらワクチンをやっていくというのが1つの方法ではないかと考えています。

○桃井委員 ほかにいかがでしょうか。もし御意見があれば事務局等にもお寄せいただければと思います。ファクト等の整理が20171222日の部会でされてから2年たちました。それももう一度チェックをし直すと、確認をし直すという作業もまた必要であろうと思います。様々な御意見を頂戴いたしました。折りに触れまして、御意見を頂戴しながら進めていくべきであろうと思いますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。議題1は以上で終わらせていただきます。

 それでは、議題2に入らせていただきます。HPVワクチンの情報提供について(ヒアリング)を事務局から御説明をお願いします。

○事務局 事務局でございます。資料13-1をご覧ください。前回の合同会議では情報提供に関する評価、調査結果を御報告させていただきまして、マル1・マル2の2つの検討事項をお示しさせていただきました。より確実に情報を届ける方法の検討、また、より分かりやすいリーフレットを目指した記載内容の改訂といったことについて検討事項としてお示ししたところです。

 そのときに頂きました御意見を、簡単にまとめておりますけれども、行政的な対応の説明が分かりにくいとか、子宮頸がんがどういった疾患か、こういったことを記載すべき。何を目的としたリーフレットなのかを明確化することが必要、リスクコミュニケーションの専門家が関わって分かりやすい表現とすべきといったような、リーフレットの内容についての御意見を頂きました。

 また、情報提供の方法についても、全自治体で対象者に送付することを検討してはどうかとか、自治体が情報提供できていない理由を分析してはどうかという御意見を頂きました。

 続いて、次の資料ですが、こういった御意見を踏まえまして、本日は参考人という形で、3名の方をゲストにお招きしております。ここに書いてありますような事項について御意見を伺いたいと考えております。接種対象者(1216歳の女子)及びその保護者への情報提供にあたりどのように情報を届けるか。情報提供として求められる内容及び情報の受け手に分かりやすい内容とは何か。その他、情報提供に関して留意すべき事項ということで、広報に関する御専門家、あるいは実務の方、医療のかかり方の経験のある方、また、情報に向けての立場の方をお招きしております。

 もう1つ資料がありますけれども、資料13-3は、前回頂いた御質問の中で、自治体が情報提供できていない理由について分析してほしいという御意見がありました。8月に御報告をしたアンケートの自由記載欄をまとめ直させていただきまして、そこに関わる回答の内容についてお示しております。情報提供の方法については、広報誌等に掲載しているが情報が十分届いていない、具体的な情報提供について、明確にしてほしい。情報提供の内容について子宮頸がんが若年で増加している現状を伝えるべき。また、それ以外について、積極的な勧奨について、国としての方向性を定めてほしい。対象者への周知と併せ、医療機関からの理解と協力も得られるとよい。配布用のリーフレットも提供してもらえるとよい。ということで、自治体の生のお声をここにそのまま掲載させていただきました。事務局からの御説明は以上でございます。

○桃井委員 これについて何か御意見等はありますか。よろしいでしょうか。1つだけお伺いしたいのですが、この前のリーフレット、自治体に配布した、しかしながら、それを活用した自治体はほとんどなかったという結果が出ました。これはなぜ、それを、つまり、そこに並べるでもなく、配布するでもなく、活用されなかった理由は把握しておられるでしょうか。

○事務局 資料13-3が、そこの御質問に対して、自治体がどう考えていらっしゃるかということを知るための手掛かりだと思っております。関連する自治体からの御意見としては、1つ目の○の2つ目の点、具体的な情報提供の方法について明確にしてほしい、国としては提供はしているけれども、どうしてほしいのかということを伝えていないのではないかという自治体側からの御意見がありました。また、そもそも国としての方向性を定めてほしいという御意見も出ているということでした。こういったところが手掛かりになると考えております。

○桃井委員 ありがとうございます。よろしいでしょうか。

 それでは、本日は参考人の3名の方々においでいただいております。その方々の御意見を頂戴しながら、我々が広報について考えるわけではありませんので、御担当部署において十分有効な広報の仕方について、そして、広報の実施について御検討いただければ大変有り難いと思います。最初に石川参考人から御説明になりますが、大変長くお待たせして、失礼いたしました。よろしくお願いいたします。

○石川参考人 帝京大学の石川です。よろしくお願いいたします。私は、公衆衛生学の専門職大学院におりまして、主に社会行動科学系の分野を担当しておりまして、特にその中でもヘルスコミュニケーション学を専門としております。今日はこういった機会を頂きまして、ヘルスコミュニケーション学という観点から見たときに、HPVワクチンに関する情報提供についてどういった背景が考えられるのか、それを改善するためにどういった方策が考えられるのかということを少しコメントさせていただきたいと思います。

 お手元の資料14です。ヘルスコミュニケーション学というのは、なかなか日本ではまだ耳慣れない分野かと思いますが、そちらによく引用される定義を引用しましたけれども、アメリカの健康施策であるHealthy Peopleであるとか、WHOなどによると、要するに、健康に関する情報を提供し、その人々の健康に向けた行動であるとか、考え、意識などに影響を与えていくというインフォームとインフルエンスということが、大きなキーワードとして挙がってくるかと思います。

 ヘルスコミュニケーションというものの、もう少し大きなくくりとしてサイエンスコミュニケーション、科学コミュニケーションというものがあるかと思っているのですが、科学コミュニケーションの考え方の中で、従来、一般市民が正しい行動、健康に向けて正しい行動が取れないのは、知識がないからであるという前提に基づいて、つまり、保健の専門家から科学的な正しい情報を伝えれば一般市民は知識の増えた状態になって、正しい行動を取れるようになるという形のコミュニケーションが行われてきたわけですが、これが必ずしも成功していないというのは、多分この事例でもそうだと思いますし、多くのリスクコミュニケーションの事例などで指摘されてきました。

 もう1つの前提は、その下のほうですが、つまり、一般市民は必ずしもその知識がないわけではなくて、専門家とは異なる文脈における知識や判断基準、価値観を持っているというような前提に立つと、コミュニケーションの在り方というのがすごく変わってくるということが言われています。つまり、リスクにしても、健康情報にしても、自分自身の価値観、日常生活の文脈の中で位置付けて理解している。ですので、その前提に立ちますと、コミュニケーションというのは専門家から市民への一方方向ではなくて双方向に受け取る、正にコミュニケーションになるということと、一般市民も、単に受動的に知識を受け取るだけではなくて、それを基に判断して、意思決定に関わっていくことが求められるということになるかと思います。正にこういったことが、今、求められているヘルスコミュニケーションの在り方なのではないかというので挙げさせていただきました。

 もう1つは、ヘルスコミュニケーションの中でも、特に予防行動を促すタイプのコミュニケーションに関する難しさというのは結構古くから言われていまして、いわゆる疫学者のRoseが言っているようなPrevention Paradoxと言っているのですが、その集団としては確かに大きなベネフィットを持つ予防でも、各個人が期待できる恩恵がほんの僅かで、その部分の僅かな恩恵というのは、小さいその目の前のリスクによって簡単に凌駕されてしまうというようなことが言われております。

 たばこを吸っていても元気で、長生きする人が身近にいるみたいな、そういった事例が正にそうだと思いますけれども、集団レベルで見ると、そうである、正しいことが、個人レベルではそうではないことが、間々あるということが1つの難しさであることと、それに関連してくるのが、多くの予防行動はコストが現在に掛かり、ベネフィットは将来にもらうという形になって、やはり目の前のベネフィット、目の前のコストというのが大きく捉えられ、その将来のものというのは割り引かれていくので、どうしても今のリスクを取って、将来の、より健康な状態を比べたときに、どうしても現在のリスクというのが大きく関わってきてしまうという部分があるのかなと思っています。この辺りが多分、今回のHPVワクチンに関する情報提供の背景にあるということは、ヘルスコミュニケーションという点から見ると、そのように整理できるかなと思っております。

 その辺りを踏まえて、情報提供の在り方ということを少し申し上げたいと思います。5ページ目の所で、医療文書の分かりやすさの評価の指標を、1つ参考例として挙げさせていただきました。これはSAMと呼ばれている指標ですが、これ以外にもアメリカのCDCが挙げているようなクリアコミュニケーション・インデックスと言われているような類似の指標が幾つかあります。これに照らして、今、多分これからの議論の土台になるのではないかと思いますけれども、これまで使われてきたリーフレットのシリーズのうち、主に青のリーフレットについてお話させていただきます。

 これを見てみると、これを得点化すると、決して低くはないのです。ただ、その問題点を挙げるとすると、例えば内容の「わかりやすさ」「みやすさ」とか、「レイアウト」「読み手の認知感情面への配慮」といった項目に分かれていますが、例えば情報提供量が多い。やはりどうしても多くなっていることだとか、その一方で、その検討後にどうしたらいいかということの情報が不足しているのではないかとか、リーダビリティーと呼ばれている、いわゆる読みやすさを計算するソフトがあるのですが、それにかけてみると難しいと出てきます。やはりリーダビリティーは、かなり低いだろうと思っています。

 それは、その背景には語彙が難しいということがあるかと思いますし、もう1つは、最後の読み手のパターン、モデルが示されているかという話で言うと、どう検討し、検討後にどう行動するかということのモデルが示されていないとか、不安が過度に増すかどうかというのは、この辺は慎重に議論する必要があるかと思いますが、不安をある程度増していることは確かであろうとは思っています。それが過度かどうかというのは、また別の議論だと思いますけれども、そのようなことが全体としては見て取れるかと思います。

 続いて、私がざっと見ていて気付いた点ということで申し上げますと、例えばリーフレットは誰を対象にしていくのかということが、これまでうまく活用されていなかったということともリンクしてくるのではないかと思います。青のリーフレットは「HPVワクチンの接種を検討しているお子様と保護者の方へ」となっているのですが、恐らくこのリーフレットのメインメッセージである検討してくださいという意義と効果、起こりうる症状について検討してくださいというメッセージからすると、検討していない人も含めて接種対象者全体に発信していくべきものではないかということがあるのではないかと思います。その行動そのものを促すというよりは、検討するという段階に入ってほしいというメッセージがもう少し明確に出るといいかなと思われました。

 特に1ページ目で言うと、どうしても意義と効果の所で、なぜ効果があるのかという議論が、よく医療者とか、専門職が作る説明書は、割とそうなりがちだというように認識しているのですが、効果の結論のほうを先に示し、根拠を後から示す形のほうが伝わりやすいのではないかとか、先ほども話に出ていましたが、「積極的におすすめすることを一時的にやめています」というのはどう取っていいのか、すごく迷う表現になっていますが、レイアウト上はすごく、これが結論のように見えるというのは問題かなと思います。

 副反応の所で言うと、特に青いリーフレットはすごく難しい表現が、そのまま使われている形になっていることと、数値がかなり書かれているのですが、先ほどのお話にもありましたように、数字をどう読むかということは、その人が持っている基準によってすごく変わってくる部分がありますので、それがうまくその意図どおりに位置付くような伝え方が必要だろうと思います。同じようなことが審議会とか、救済制度などに関する記載についても言えると思いますが、そういうものがあるという信頼感、安心感を持たせる側面と、それが必要とされる事態があるという不安を生む側面があると思うので、どういった意味でこれを書いていくのかということは、明確に位置付けていくことが必要かなと思いました。

 以上、まとめる形で、最後に、どう働き掛けていくかということですけれども、いわゆる人が意思決定、ふだん私たちがどのように意思決定しているのかということを考えると、一つ一つ吟味して考えている場合と、特に直感だとか、無意識に判断している部分の両方のプロセスがあるということが古くから言われております。これが二重過程理論と呼ばれていて、最近、行動経済学の研究者が取り上げたので、急に、割と脚光を浴びていますけれども、システム1と呼ばれる無意識に直感的に判断している意思決定プロセスに人がいる場合には、リスクベネフィットの情報よりも感情的な反応を引き起こして、意思決定を促していくというほうが有効になりますし、システム2に入っている場合には、行動のメリットとデメリットなどを、しっかり判断できるような情報を提供していくことが必要になると思います。

 こういったことから考えてみますと、今は健康教育、ヘルスコミュニケーションなどでもシステム1、つまり、無意識に健康的な行動を取れるようにする仕掛けということも行われていますが、この状況は、少なくともシステム1による働き掛けを使うような状況ではないと思います。むしろ、今、システム1の状況で、みんながやっていないから、まだやらない。厚労省が積極的な勧奨を差し控えているので、やらないという短絡的な判断に入っているところを、システム2の判断に引き上げる、そちらに入ってもらうということがすごく重要なのではないかと思っています。それは、接種・非接種のどちらかを促すということよりは、それを検討してもらう、正に青のリーフレットが初めにうたっていることが、そこの焦点なのではないかと思いますけれども、それを考えたときに、今、どうしても働いてしまっているシステム1の影響を少し解消し、システム2が働くような自分事として吟味して考えていくというような方向に促せる情報提供、コミュニケーションの在り方がすごく重要かと思っています。

 3点をその下に挙げさせていただきましたけれども、1つは、分かりやすさというのはすごく重要なファクターになっていて、やはり分かりやすいものというのは理解されやすいですし、そのように行動していく可能性も高くなるというようにされていますので、そういった分かりやすさは、1つ配慮するべき要因だと思います。もう1つは、社会的証明と呼ばれている、ある状況でそういう行動を行っている人が多いほど、それが正しい行動だと人は判断するということが知られています。これがサクラであるとか、行列ができていると、そこはいいお店だというような判断と同じなのですが、そういったことがどうしても確信が持てないとき、状況が曖昧なときというのはその傾向が強くなるので、接種状況のデータの示し方はすごく注意が必要だと思っています。つまり、接種状況が低いということを言うと、あっ、みんなやってないから、じゃあ、まだみんながやるまでは私も、というそちら側のループに入ってしまいがちですので、この辺りは注意が必要かなと思っています。

 最後ですが、行動につながる情報提供の在り方ということで、情報をもらった後、単に分かりやすいというだけでは必ずしも行動につながらないことが多くて、情報を基にどう行動したらいいのかということが、具体的にイメージできるような情報提供の在り方、あるいは意思決定支援ツール的なもの、ワークシート的なものでもいいと思いますが、そういったものがあると、どう情報を基に意思決定していったらいいのかの助けに、具体的にイメージするための助けになるのではないかと思っています。

 よくヘルスコミュニケーションで挙げられている情報の提示の仕方がいいのかということで、2点だけですが、統計データがいいのか、ナラティブと呼ばれるような事例の経験談的なものがいいのかということで言うと、この辺の科学的な根拠というか、研究の根拠はミックス、混在していて、主に数字は比較的に考え方に影響し、ナラティブは行動の意図に、より強く影響するというようなレビュー論文はありますが、いずれにしろ、きっと作用が違うので、そういう意味で併用がいいのではないかということと、フレーミングと呼ばれるようなメリットを強調するのか、デメリットを強調するのかということについては、よくデメリットを強調すると、人は動きやすいみたいなことを言うこともありますけれども、この辺りのトピックによって結構違うということが言われていて、この辺りも混在しているのかなと思います。

 ということで、少し戻りますけれども、どう働き掛けるかという10番目の所のスライドですが、そういったシステム2に入れるような、しっかり意思決定ができるような情報提供の在り方ということが非常に求められているということと、あと、長期的にはその情報の読み取り、判断ということをしっかりできるようなヘルスリテラシーを向上に向けた国民全体、このトピックに限らずということですが、そういった長期的な取組、学校教育なども含めて必要かなと思います。以上、コメントさせていただきました。

○桃井委員 ありがとうございました。それでは、御質問等は、3人の参考人の皆様が終わられた後にお願いいたします。次に、野口参考人、お願いいたします。

○野口参考人 博報堂という広告会社からまいりました野口と申します。資料15に沿ってお話させていただきたいと思います。今回、タイトルを「伝わる」コミュニケーションの考え方という形で意見を御紹介させていただければと思います。

 2ページ目は、私が所属している会社の概要となっております。弊社はマーケティングとか、あるいは、こういった広告物をどのように作るかということのコンサルティング・クリエイティブといったところの仕事を中心にさせていただいている会社です。

 3ページ、改めてですが、今回、情報伝達をしていく上に当たって、まずコミュニケーションとは、そもそも何かということを確認させていただきたいと思います。Communicationというのは英語ですが、日本語ですと、通常、情報とか、何か伝達するというような捉え方をされていますが、語源としてはラテン語のcommunicatioという言葉からきている言葉です。こちらは複数の人間や動物などが感情、意思、情報など受け取り合うこと。あるいは伝え合うことということで、もともとの語源は伝えるということではなくて、共有するということを語源にしています。今回、私どもの会社でも、基本的なスタンスとして持っている情報については「伝える」のではなくて、「伝わる」ことを目指すということを起点に置いておりますので、そこについてお話をさせていただきます。

 4ページ、では、どのように「伝わるコミュニケーション」がつくれるのかということの視点ですが、基本的には3つの視点で情報設計するように私どものほうでは心掛けております。1つは、情報の「回路」ということで、どなたに届けたいのかということで、対象を明確にすることと、その対象の方へ情報を確実に運ぶ回路の特定と選定を行うところで、どこに水を流していきたいか、その水はどこに到達するのかということを明確にするということを重要視しております。そこに乗せていく情報については、やはり適切な「量」と、適切な「質」ということが求められるところで、情報が非常に多すぎると、なかなか受容しきれないということで、例えば食事をモチーフに考えても、あまり多すぎると食べ残しが発生するとか、あまり多すぎると味わいも分からなくなるということが発生します。ここで適切な情報量と、あとはどの回路に流していくのかということの流れと合った情報量に調整していくことが求められます。

 最後に、情報量を適切な分量にした後に、どういった言葉、あるいは表現、イラストなのか、漫画なのか、文章だけでいいのかといったところで、受け取り手の方にどのように情報を表現していくと分かりやすくなるのかということで「質」を検討します。このときには、やはり情報を受け取った方がどのような行動をしていただきたいのかというゴールを明確に持ったことで、質を上げていくという形になります。「伝わるコミュニケーション」については、情報の「回路」と「量」と「質」の3点を重要視して、設計していくというのが私どもの考え方です。

 続いて、5ページ目の所ですが、今、現状、パンフレットは自治体のほうにお配りされているということですが、回路を検討していくに当たって、現状、皆様、国民の方がどのような情報の回路に接しているのかということを、性・年代別でお示ししたものとなります。男性の1060代までと、女性の1060代までの所で見ていただくと、白いエリアがテレビの部分で、少し薄いグレーがラジオ、少し濃いグレーが新聞、更に濃いグレーが雑誌です。分かりやすいようにパソコン、タブレット端末、携帯電話・スマートフォンというのは緑色にしておりますが、見ていただくと分かりますとおり、男性の20代、30代、女性の20代、30代のほうで、最も接触が多いのは、やはりパソコンとか、タブレット端末、携帯電話・スマートフォンと呼ばれるようなもので、従来、メディアという形でイメージされるようなテレビとか、新聞、雑誌というのは非常に少ない接触になっています。一方、高齢に上がるにつれて、そちらの接触が増えてくるという状況にあります。

 6ページを見ていただくと、こちらのグラフを、今度は年次別にどれぐらい分数接触しているのかというのを現わした図になります。私どもの会社で毎年定点的に生活者を対象に、どれぐらいメディアに接触しているかということを聴取しているのですが、2006年から2018年に比べて、今、皆様、国民の方が接しているメディアへの接触数は約400分ほどまで増えています。約400分というと、大体7時間弱ぐらいの分数、何かしらのメディアに接触しています。メディアの接触を牽引しているのはモバイルシフトと右に書いてありますが、皆様が持っていらっしゃるスマートフォンとか、携帯電話で常に通勤時であったり、あるいは車で通勤される方も含めてラジオと接触したりとか、いろいろな所で御自身でカスタマイズしたメディアに常に接触しているような状況にあります。こちらにお示ししているのですが、やはり情報量が非常に膨大になってきていますので、どの情報に自分が接触して知識を得るべきなのかというところに、なかなか到達できない生活者もいるのではないかなというところが、今の現状になっております。

 7ページ、適切な量を実は検討していくということになったときに、では、どの回路がいいのか、例えば若年の20代、30代の方は携帯あるいはモバイル、スマートフォンで接触したほうがいいよねということが分かりつつも、例えばテレビとか、新聞や雑誌、ラジオは特定のメディアのイメージというのも持っています。右側のほうの図表で見ていただくと、例えば比較検討したり、詳細な情報を得たいというときには雑誌広告とか、インターネットの広告というのが重要視されますし、興味、関心をひきたい場合はラジオとか、交通広告、内容をしっかり理解したいときや、読み込みたいというものになるとフリーペーパーとか、折込みチラシといったものが検討材料に挙がってきます。

 接触しているという事実と、メディアが持っているイメージというところの掛け合わせをうまく利用しながら回路を特定していく必要があり、かつ、それぞれの媒体によって流せる量が大分違ってきます。テレビCMであれば、大体1530秒間、新聞であれば、最大で言うと見開きの30段と呼ばれている全面の広告、雑誌で言えば、恐らく見開きのA42ページほど、ラジオで言うと大体1回あたりCM20秒が基本の単位になっていますので、この量の中でどれぐらいの情報が入れられるかということも考える必要がありますので、それぞれの媒体に合った情報量と、それにイメージに合ったメディアを選定していくというのが必要な事項となります。

 次に質を検討するという視点に立ちますと、8ページですが、情報を回路に流した先に、実際に情報の受け取り手はどのような状態になっていくのかということを、仮説を持って検討していく必要があります。マーケティングの中では、これは100年前から言われている法則で、AIDMAという言葉がよく使われてはきたのですが、これはもう非常に古い考え方で、インターネットの出現によって生活者が情報を取った後に起こす行動というのが変わると考えられています。AISASと呼ばれている行動で言うと、インターネットが出現してきて、皆様が例えばCMを見ると、続きはWebを検索してくださいみたいなことが情報提供のやり方としてあって、そこでSearchというのが出てきたりしていました。

 一方で、次に出てきているのがソーシャルメディアということで、生活者自身が御自身で情報を発信もできたり、あるいは非常に身近な方が情報を発信しているものに接するというようなことが起きるようになって、今度はSIPSの法則といった法則が言われるようになりました。この時代においては、やはり共感ということが非常に重要視されていて、何かいいなと思ったものに対して「いいね」というマークを押したりとか、あるいは登録をしたりといった行動が行われています。

 最近では分かりやすい情報が、これが何か誘導ではないかというような、非常に怪しく思われる生活者の方も非常に増えた情報環境となり、DECAXの法則というようなことも言われ始めています。これまでとは違って、あくまで広告等ではなく、御自身がコンテンツを発見するということをスタートにして、その後にそれについて深く自分が調べていきたいですとか、情報を取りたいというような認識を持たれた方がEngageと言われるような活動を通して、これは何か信頼していい情報なのかなということでチェックを繰り返しながら関係性を深めていって、最後、行動まで起こすという形で、これまでのマスメディアだけではなくて、御自身が持っていらっしゃるメディア、能動的な活動をより重視した行動モデルということが考えられ始めています。現状、スマートフォンの保有率は全国民の中で、8割を超えていると計算されています。情報の回路・量に加えて、このような生活者の行動モデルを配慮しながら情報の質を検討して、情報に触れた生活者に何をしてもらいたいのかというゴールを設定する必要があるということ。あと、特に「自分に関係がある」というように認識してもらうということは非常に重要だと考えられます。

 具体的な表現手法というのがどうあるべきかということを幾つか、910ページでお示しできればと思いますが、例えば先ほど石川先生のお話でもありましたが、怖いとか、何となく親しみやすいですとか、そういった感情が人間の行動を左右していきますので、やはり受け取り手が持つ感情と起こす行動というのをイメージした情報提供が必要ではないかと考えております。非常に有名なお話ですけれども、北風と太陽というので、ビュービューと風を吹かせた北風はコートを脱がすことができなくて、暖めるようなエンカレッジするような太陽がコートを脱がすことができたということで、どういった情報を与えると、どのような感情が起こり、どのような行動が起きるのかということを想定することは非常に重要なことだと考えております。

 今回、パンフレット、リーフレットが現状の情報の伝達手法だとお聞きしておりましたので、例えばですが、フォント・文字サイズでも大分情報の伝わり方が変わるということもお示しできればと思います。弊社では「つたわるフォント」というフォントを作っております。今、例示でMS明朝と、ゴシックのポップ体、TBUDの丸ゴシックをお示ししています。一番最後のものが私どもの「つたわるフォント」なのですが、やはりMS明朝ですと、非常にすっきりとはしていますが、やや冷たい感じを受ける方もいらっしゃるかもしれません。医療系の先生の中ではプレゼンテーションのスライドを一般生活者向けに全てポップ体で書かれている先生方もいらっしゃると思いますが、やはりポップ体ですと、少し親しみやすい感じを受けるかと思います。最後の丸ゴシックというのは、客観的な情報を、冷たくもなく温かすぎずもなくということで、読みやすいフォントとしてお示ししている例になります。今後の改善に向けては、文字のサイズとか、フォントについても検討されると、より分かりやすくなっていくのではないかと思います。

 11ページに改善の方向性ということで、幾つかお示しさせていただいておりますが、基本的には「つたわるコミュニケーション」というのは、「つたえる側」の情報の発信側ではなくて、「受け取り手」がどうあるべきかということを主体とする必要があります。現在の情報提供が、一般生活者が簡単に理解できるようになっているのかというところは御検討いただくとよろしいのではないかと思っております。加えて、情報を届けることができる「回路」というのが、対象者の年齢・性別等によって変わることが十分に考慮されているのか。自治体の市役所等での配布で十分なのかということも検討に挙げていただけるとよろしいのではないかと思います。

 リーフレットが3種類あるのですが、この3種類のリーフレットを受け取った方に何をさせたいのかということが、先ほど石川先生の御議論でありましたが、「検討している方へ」という非常に限定した方へ、これを検討してくださいという見出しになっていますので、受け取った方は検討している方を対象としたものだというように取ってしまうことと、検討してほしいということになってしまうので、これが正しい促進文面かということも併せて御検討いただけるとよろしいかと思います。内容について、保護者の方が読むべき内容が非常に多かったりですとか、お子様が読む部分はどこなのかというところが、一部、分かりづらいところもあるのかということで、「お子様と保護者の方へ」という視点でリーフレットの記載内容が統一されているかということを書かせていただいています。

 最後に、リーフレットに接種前にチェックするというのが3つチェックボックスがあるのですが、これは何のためにチェックをするのかというところで、戸惑いを生じられないように、何のためのチェックですということもお示しされるとよろしいのではないかと考えております。この3つの種類のリーフレットが、何を目的とした情報伝達なのかということのゴールを今一度明確にしていただけると、もともとの御検討事項にもあったかと思いますが、よろしいのではないかと思います。

 最後、1213ページは、アペンディクスのようなものですが、例えばですが、消費者庁の『消費者白書』では、「トラブルに遭わないように参考にする情報」で言うと、やはり若年の方はインターネットが非常に多いのですが、どの世代も「家族・友人・知人からの情報」というのは一定レベルで重要視されています。例えば、今回は親御様とお子様のどちらの対象にも情報を届けたいということであれば、そちらの情報が、お母さんから聞いたよとか、お子様がお母様やお父様にお伝えするというような情報還流があるような仕組みの検討をされることも有用ではないかということと、今、一度、自分が信頼できるという情報になった場合には、13ページにもお示ししているとおり、かなりの方がスマートソーシャルネットワークを使っておりますので、生活者そのものが情報発信の協力手にもなっていただけるような時代になっていること、そのような視点も踏まえていただけるといいのではないかと思います。お聞き苦しい点もあったかと思いますが、以上となります。

○桃井委員 ありがとうございました。では、最後に阿真参考人、よろしくお願いいたします。

○阿真参考人 HPVワクチンについて保護者の立場から子供の医療のかかり方について、伝える活動をする立場からということで、資料16になります。よろしくお願いします。2ページ、これまで12年間新しくお父さん、お母さんになった方々に子供の病気を学ぶ講座、医療のかかり方について伝える講座というものを開催してまいりました。

 3ページ、小児科の先生からお父さん、お母さんたちへ講座でお伝えいただいていることは4点あります。救急にかかるべきとき、そして子供の病気とその対処法について、3点目に予防接種について、4点目に地域の医療の現状について、これを繰り返し繰り返し新しく親になった方々へお伝えしてきました。

 4ページ、これまで12年半、講座開催回数は150回を超えて、受講者も5,000人とこちらの資料にはなっていますが、今日現在ですと6,000人となっております。

 5ページ、小児科の先生からパパ、ママに予防接種を伝えていただく際に必ずお話いただいていることは、これはどの予防接種についてもですが、1番目、病気そのものの説明、2番目、効果、どのぐらい予防の効果があるかということ。3番目、どんな副反応がどれぐらいあるかという、この3点をお伝えいただいています。聞いている親御さんたちが殊更に不安になるようなことはせずに、また接種していない方々を責めるわけでもなく、この3つで明確になっている事実を伝えていただくということをお願いしてまいりました。

 6ページ、2019年になってからHPVワクチンについて、小中高生の保護者の皆様から御質問を頂く機会が格段に増えてまいりましたので、当会では3回このような機会を持ちました。まずどのワクチンでも同じなのですが、情報提供方法について必要だと思うことをお伝えいたします。

 7ページ、1つ目には分かりやすいということ。2つ目には分かりやすさを追求するあまり、大事なことが抜けているものもありますので、それでは駄目だということ。3つ目には、病気について何を予防するのか、その病気自体のことを伝えるということ。4つ目は先ほどもお伝えしましたが、効果と副反応です。繰り返しになりますが、不安を煽らずに、責めずに、事実を伝えるという姿勢で行っております。

 HPVワクチンについてですが、例えば「HPVワクチンについて、積極的におすすめすることを一時的にやめています」という厚労省のページにも、リーフレットにも自治体のページにも書かれていますが、打とうと考えている人はこれを読むことで、返って不安になったという保護者からの声はしょっちゅう届きます。また、今年になって接種を希望した人が自治体や医療機関に問合せをしたときに、「本当に打つのですか、いいのですか」といった対応をされることで不安になったと言われるところです。私たちは保護者に情報発信をしておりますが、自治体や医療機関の先生方にまずは正確な情報を持っていただき、希望する人を迷わせないような対応をしていただくということが必要だと思います。つまり、自治体や医療機関への正しい情報の提供が必要であり、ただこの一文があるために自治体や医療機関も迷ってしまうという結果を招いているのだとは思います。

 9ページ、実際に様々な資料を見ていて、ワクチンについての資料は難しいと感じることが多いです。リーフレットで分かりやすく伝えるためのポイントをまとめてみました。目的が分かりやすいということ。非難する気持ちが含まれていないということ。言葉がやさしい、難しい言葉を使っていないということ。そして、分量が多過ぎないということ。一文が長過ぎず、簡潔であるということ。

 例えば、厚労省の、先ほど石川先生もおっしゃっていましたが、青いリーフレットについて「ワクチンの意義、効果と接種後に起こり得る症状について確認して検討してください」について触れます。まず、タイトルが長いです。そして、この一文だけでも既に目的が曖昧です。イラストでの説明や病気の説明は良いと思いますが、使用している言葉が非常に難しいです。「生涯類型リスク」という言葉も一般的ではありません。また、4枚という分量も多いです。接種が必要だとして書かれたものなのか、控えてほしいという思いで書かれたものなのかも私には読み取れません。

 10ページ、通常はあまり見ませんが、HPVワクチンの接種を希望する方は現状であれば自治体に問合せをしたり、また医療機関に問い合わせたりすることがあるので、市区町村のホームページや医療機関のホームページに載せることは接種を希望する方にとって有効だと、有意義だと考えます。

 11ページ、そしてもっと詳しく知りたいと思った方が直接厚生労働省のページに行く人は少ないと思いますが、先ほどの問い合わせた後のリーフレットのようなものや、厚生労働省のHPVワクチンについてのページにそのまま飛べるQRコードが付いていたら、詳しく知りたい人は見ると思います。6ページ目で示した通り、私たちの会で8月、9月、10月にHPVワクチンについて知る機会を持ったとお伝えしましたが、まずは接種を希望する人の声をお伝えしたいと思います。

 市のホームページを見て、かえって不安になったが、かかりつけ医に丁寧に説明してもらえたので打ちましたという方です。この方はかかりつけの先生から海外の状況、子宮頸がんという病気でどのぐらい亡くなっているか、また怖いと思っていたけいれんを起こした子たちが、その後回復している子が多いといったことを詳しく説明してもらえたので、打ちましたということでした。また病院へ問合せをしたところ、接種できないと言われましたという方もいました。この方が子供を産んだ産婦人科の先生が、常に必要性を発信されていた。もともと信頼関係があったので心配なく打ちました。高1の娘は「ほかのワクチンと何が違うの?」といった形で普通に打っていましたという声がありました。また、報道が加熱していた時期に娘が高校生で接種を見合わせました。現在も交際経験はないため接種を希望していますが、公費でないため値段が高過ぎて打てませんという声もありました。報道で聞いたAYA世代の死因の相当数を占めているというニュースがあり、接種への関心を持っています。だが映像も記憶に鮮明に残っていますという声もありました。

 13ページ、これは接種を希望しないと答えた人の声です。答えたというか、その場でお話を聞いた人の声です。映像を見てまだ怖さが鮮明に残っていて、あの映像を払しょくすることができませんという方。また、ここのところ打ったほうが良いのかと考えていたのだが、産婦人科の娘さんのHPV接種率が未だ恐ろしく低いということをネットで見て、これは事実というわけではないのですが、そういった情報を見てまた心配が増しました。がんは怖いので前向きに検討しようと思っても、副反応になる確率がほかのワクチンより高いのではと感じる。そういうニュースがよく出ています。最後に、「子ども」のためを思い接種させたことで、万が一重篤な副反応が起きた場合の親の後悔を考えると将来のがんのリスクより、今の安全を取ってしまうということで、先ほど石川先生がお話してくださったことと通じるなと思いました。

 14ページ、どのワクチンも同じですが、定期接種であっても、最後は親御さんの判断で、それが医療者にとって医学的に科学的に間違っていると思える判断だとしても、先ほどの方々のように子供のためを思って打たないということを選んでいるということで、打たない選択をする人に必要性を伝えることはありますが、決して責めない姿勢というのも必要だと考えております。

 最後です。15ページ、11月の報道でもHPVワクチンの副反応がほかのワクチンと比べて極めて多いということを、厚生労働省予防接種室が伝えたというものがありました。因果関係の判定は難しいということも理解しつつ、現状の副反応疑い報告と、接種が原因と証明されるものとを分けることを望みます。現状の副反応疑いには接種後に短期間で回復した失神なども含んでいるとのことです。五十嵐先生もおっしゃっていましたが、中学生の女子は難しい年齢で、実際に中学校に私は子供を通わせておりますが、入学式や卒業式、運動会といった緊張する場面で女の子たちが倒れるという、失神するという場面は度々見られております。これについては二次救急の先生方からも、小児科の先生方からもよく聞く話です。

 接種していない児童における失神の割合などの検証の結果もリーフレットなど、公に出ないことにはいわゆるまぎれ込み事故というのも私たちがどのように区別したらいいのか疑問を感じます。副反応の数字が極めて高いということが確実なのであれば、それを私たちが知る必要がありますが、時間が経過し、体調が回復した方のことや調査の結果分かってきたこと、そういったことをきちんと知りたいと思います。現状のリーフレットでは分かりにくい、接種が原因と証明された正確な数ということも知りたいです。不安な気持ちを持っている方が多い状態で、先ほどの失神に関連する資料を見ましたら余計に不安になると思います。

 単純比較できないということは、専門家の先生にとっては前提かもしれませんが、私たち一般の者には読み取ることは難しいです。意識障害の基準が違うことや、年齢などを合わせたデータを出したほうがよいのではないかと思います。専門家の先生が検証し、明らかになった情報を私たちが知ること。そして今現在接種を迷っている親子へきちんと情報が届くこと。接種を希望している人が接種できる体制が一番求められることだと思います。誰も悲しいことが起きることを望んでいないという共通する目的のために、本当に必要な政策が実行されることを願います。以上です。

○桃井委員 ありがとうございました。3人の参考人の皆様、それぞれのお立場からプレゼンテーションをしていただきました。御質問、御意見等あれば頂戴したいと思います。

○長島委員 目的と対象をきちんと整理して、行動にきちんと結び付きやすいものを知るということがよく分かりました。ありがとうございました。その点で、多分二段階に分けたほうがいいのかなと思ったのです。1つは基本的なことを分かりやすく書くものと、それを見てもっと深く知りたいと思った詳細を示すもので、詳細を示すものは例えばリンクのような形とか、QRコードの形で読みたい人は簡単に読みに行けるようにする。基本と詳細の二段階がいいかと思います。

 もう1つ二段階として全国共通のものと、自治体特有のもので、具体的な行動に移りたい場合はやはり自治体特有の情報がないと行動に移れないということで、例えば、これを読んで接種したいと思った人がどんな行動をとればいいかというところで、自治体の窓口なり、その地域で接種可能な医療機関のマップなどにリンクできるというもの。多分一番多いのが、よく分からないという場合は相談したいというのが一番多いと思いますので、その場合のかかりつけ医に相談しましょうとか、かかりつけ医がいない場合の自治体とか厚労省の窓口のリンクというものがいいのかなと思ったのですが、その辺りは3人の先生方はいかがですか。

○桃井委員 どなたでもどうぞ。

○石川参考人 おっしゃるとおりだと思います。やはり、必要とされていない情報というのは目から流れてしまいますので、必要とされているものを絞って伝えていくということと、おっしゃったように、具体的な行動がシミュレーションできるような、例えば自治体ごとにすぐ行動に移れる、あるいは相談先が見えるような情報提供の在り方は必要だと思います。そういったことを伝えていくためにリーフレットもそうですし、やはりインターネットなどでは、そういったリンクを張るという枝分かれさせていく作業がすごく簡単になるメディアだと思いますので、そういったものの併用も必要かなと感じました。

○桃井委員 ほかの参考人の皆様、よろしいですか。ほかに御質問、御意見などおありでしたらどうぞ。

○山縣委員 どうもありがとうございました。コミュニケーションに関して非常に整理できて良かったと思います。石川先生に少しお伺いしたいのは、こういうものが伝わらない問題として、時間割引というのは本当に予防の場合はとても大きくて、実感できない、痛くもかゆくもないところに何か投資して、後でと言われても難しいと思いますが、例えばもう1つのほうの、ジェフリー・ローズ先生が言われているようなPrevention Paradoxというのは、こういう予防接種とか、特にこういう子宮頸がんワクチンのようなときに、どういうふうにそれは判断するのかなというのが1つあるのですが、そこはいかがですか。

○石川参考人 この事例で特にということではないのですが、やはりワクチンを打ったことで将来の子宮頸がんを防ぐことができるというマスでのものと、打たなくても大丈夫だったという個人のストーリーはあるわけで、そういったもののところで難しくなってくる部分だろうと思います。

○山縣委員 そのときに先ほど桃井委員も言われましたが、こういう接種後のいろいろな問題が出てくるときの発生頻度はある程度は明らかになったのですが、それは実はきちんとした数字が出せていなかったり、先ほどの海外との比較も、なのでできなかったりという中で、予防接種を考えるときに必要な情報がすごく明確なものがないというのがあると思うのです。つまり、生涯の子宮頸がんワクチン、何もしないときのリスクと、それを打ったときのリスクに関してはある程度出ていると思いますが、接種後のいろいろな症状が出るか出ないかに関しての数字が必ずしもきちんと出ていないときに、どういう形でそれを伝えたらいいのか。それは多分阿真さんも、その辺のところがきちんと伝わってこないので迷うということを言われたと思うのですが、そういうときにどういう伝え方をすればいいのかというのは何かあるのですか。

○阿真参考人 明確なこともあると思いますので、明確なことをまずは出していくということ、あとは先ほどの失神の話で言えば、これは保護者に伝えるものにはとても使えないというか、これを出してしまうと本当にただ不安になってしまうので、やはり私たちの所まで来てちゃんと明確になったものしか出せないというのはあるので、そこを精査していただいて、時間が掛かってもちゃんと分かったものを伝えるということは気を付けているところです。

○長島委員 野口先生に教えていただきたいのですが、接種対象者の年齢とか保護者の年齢を考えると、その判断にSNSが極めて大きな影響を及ぼすのではないかと思いますが、SNSの特性として自分の好みとか、読みたい情報しか受け入れないというのは大きな問題があって、そこに自分の価値判断とか文脈と違う内容を知らせるというのは極めて難しいのではないかと思います。その場合に効果的な方法というのはありますか。

○野口参考人 いろいろなやり方があるかとは思いますが、まずもって親側と子供側では恐らく興味・関心を引くものはかなり違うかと思いますので、そこはまず検討したほうがいいのではないかと思います。やはり親御さんであれば、多くの方がお子さんの健康情報というところで、正しい情報を知りたいということについてはニーズがあるかと思いますので、やはり、今の報道に引っ張られてしまうところも含めて、情報に反応してしまうところで言いますと、親世代の方に正しい明確な健康情報で、今一度読んでいただきたいことがありますということで、興味・関心を引くこと自体は可能かと思います。

 一方で、子供側の関心というのは非常に多岐にもわたるところもありますし、御自身の健康についてというところを時間割引の考え方も含めて、何か非常に真摯に読むとか、あるいはこの世代の方々がSNSに本当に頻繁に触れているのかというところで言いますとやや難しいところもあるかなと思いますので、少し不明瞭な回答になって申し訳ないですが、SNSを活用するということであれば、親世代の方にフォーカスを当てて、大事なお子様についての健康情報というところで、きちんと正しい情報をアラートしていくのが必要ではないかと思います。

○桃井委員 ありがとうございます。ほかに御意見等おありですか。よろしいですか。予防接種の情報伝達が疾患よりもはるかに難しい上に、副反応疑いという極めて不確実性の高い事象に関するコミュニケーションですから、恐らく、ヘルスコミュニケーションの中でも最も難しいところだろうと思います。なおかつ、参考人の皆様がおっしゃいましたように、昨今の情報伝達の手段がシステム1が惹起されると言いますか、活性化されるような情報のツール、コンテンツがほとんどになってきていますので、正確に受け取れる情報の伝達が難しい現代の特性だろうと思います。

 しかしながら、より正しく受け取っていただかないことには予防接種行政は成り立ちませんので、3人の参考人の御意見を参考にして担当部署ではより有効な情報伝達の検討と、早急な実施、そして認知容易性ということも大変大事ですので、繰り返し情報を伝達するということもまた大事であろうと思います。

 なかなかこれは極めて難しいことですので、今日の御参考人のように専門家、あるいは阿真様のようなお立場の方の御意見を十分に、具体的に伺って実施するということもまた極めて重要だろうと思いますので、その辺りの検討と実施を早急に集中的にお願いいたします。厚生労働省の広報のホームページを見たところ、重点的に実施する方針であるということが書かれておりましたので、これなどは重点的に実施すべき事象であろうと理解しております。どうぞよろしくお願い申し上げます。3人の参考人の皆様方には大変お忙しいところ、おいでいただき大変有益なお話を承りまして誠にありがとうございました。それでは今日の審議事項及び内容は以上です。事務局から何かおありですか。

○事務局 本日は長時間にわたりまして、活発な御議論を頂き誠にありがとうございました。事務的な連絡を何点かさせていただきます。まず机上に配布しております添付文書集の黄色いファイルについては次回以降も再利用させていただきたいと思いますので、机上にそのまま置いてお帰りください。もし書き込み等されたようでしたら、お名前を書いていただければ次回以降同じ資料をお配りさせていただきます。また次回の開催日程については、調整の上追って御連絡をさせていただきます。

 最後に傍聴者の皆様へのお願いです。審議会委員がこの後退室をされますので、退室が終わるまでしばらくお待ちいただければと思います。事務局からは以上です。

○桃井委員 本日は委員の皆様方、そして参考人の皆様方、誠にありがとうございました。これで終わらせていただきます。
(了)