第83回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録

 

 
第83回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会(議事録)
 
1.日時 令和元年12月23日(月) 10::00~10:26
 
2.場所 厚生労働省 共用第6会議室
           (東京都千代田区霞が関1-2-2  中央合同庁舎5号館3階)
 
3.出席委員
(公益代表委員)
○東京大学大学院法学政治学研究科教授 荒木 尚志
○慶応義塾大学名誉教授 大前 和幸
○名古屋大学大学院法学研究科教授 中野 妙子 
○大阪大学大学院高等司法研究科教授 水島 郁子
○読売新聞東京本社編集委員  宮智 泉
○慶応義塾大学大学院法務研究科教授 森戸 英幸

(労働者代表委員)
○全日本海員組合奨学金制度運営管理部長代理 楠 博志
○ 日本化学エネルギー産業労働組合連合会副会長 安原 三紀子
○全国建設労働組合総連合労働対策部長  田久 悟
○日本基幹産業労働組合連合会中央執行委員 黒島 巖
○UAゼンセン政策・労働条件局部長 髙橋 義和
○日本労働組合総連合会総合政策推進局長 仁平 章
  
(使用者代表委員)
○日本通運株式会社 総務・労働部専任部長 北 隆司
○東京海上ホールディングス株式会社人事部ウエルネス推進チーム専門部長 砂原 和仁
○セコム株式会社 人事部主務 久保田 祥子
○鹿島建設株式会社安全環境部部長 本多 敦郎
○一般社団法人 日本経済団体連合会労働法制本部長 輪島 忍  

4.議題
(1)複数就業者への労災保険給付の在り方について
(2)その他
 
5.議 事

○荒木部会長 定刻ですので、ただいまから、第83回労災保険部会を開催いたします。本日の委員の出欠状況についてですが、山内委員が欠席でございます。そうしますと、出席者は17名でございますが、公益代表、労働者代表、使用者代表、それぞれ3分の1以上の出席がございますので、定足数を満たしていることを御報告いたします。それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いをいたします。
本日の議事に入らせていただきます。第1の議題は「複数就業者への労災保険給付の在り方について」です。前回の労災保険部会では、論点整理案について議論いただきましたが、本日は前回の論点整理案と各委員からの御意見を踏まえた形で、事務局に報告案を作成いただきました。まず、事務局より報告案について説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○労災管理課長 おはようございます、労災管理課長の田中です。資料1を御覧ください。複数就業者に係る労災保険給付等について(報告)(案)です。先ほど部会長からもお話がありましたように、前回の論点整理案をベースにして、各委員からの御意見を踏まえた上で、事務局として報告案を作成いたしました。
1、2ページ目の途中までですが、これまでの経緯等を書いております。これは、本年6月27日に、それまでの議論を中間的に整理しまして、そのときと内容的には余り変わってはおりませんが、まず我が国の副業・兼業を取り巻く実状を書いております。それから、「働き方改革実行計画」、「未来投資戦略2018」、今年の6月21日に閣議決定された「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ・令和元年度革新的事業活動等に関する実行計画」、これらの各種閣議決定にも副業・兼業に係る記載があったという内容です。特に、6月21日に閣議決定されたものの中には、労災補償の在り方について、現在、労働政策審議会での検討を進められているが、引き続き論点整理等を進め、可能な限り速やかに結論を得るとされていたところです。これらの実状や政府の動きを踏まえて、昨年の6月22日以降、労災保険制度における複数就業者に係るセーフティネットの在り方について御議論いただいてきたことを書いております。
次のページですが、6月27日には、先ほど申し上げた「復数就業者への労災保険給付についての検討状況」として、これまでの議論や、今後検討すべき課題の整理を行い、その後も精力的に議論を深めてきていただいたことを書いております。
その次の、今般という所ですが、労災保険部会の報告の取りまとめを行う際の定番の書き方として、「今般、当部会において下記のとおり意見の一致をみたので、この旨報告する。」という一文を書いております。その次に、これも報告案の定番として、この報告・規則を受けて、厚生労働省においてこれこれの措置を講ずることが適切であるという書きぶりになりますが、今回は「厚生労働省においては、労働者災害補償保険法及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律を改正するための法律案を次期通常国会に提出することをはじめ所要の措置を講ずることが適当である」として、まとめております。
次の記以下ですが、内容的には前回の論点整理案と同じものですが、若干の変更点等もありますので、御説明申し上げます。まず1は、いわゆる額の合算の件として、複数就業者が被災した場合の給付額の見直しです。見直しの方向ですが、基本的に変更はありませんが、災害補償責任の在り方については、これは見直しの方向と表裏一体だろうということで、位置を変えております。内容的には変わっておりません。次の、保険料負担の部分についても、前回の御議論から内容的には変わってはおりません。3ページ目の通勤災害についてという所ですが、ここの取扱いについても、特に前回の論点整理案からは変更はありません。
2は、複数就業者の認定の基礎となる負荷についてです。いわゆる負荷の総合的な評価による認定ですが、見直しの方向についてという所の中で、これも先ほどの額の合算の所と同じですが、災害補償責任の項目について、見直しの方向と表裏一体であろうということで見直しの方向に入れているわけですが、特に内容的に変更があるわけではありません。あと、文言のところで、「業務上の負荷を合算・総合して」というような書き方をしておりましたが、前回御意見がありましたので、「業務上の負荷を総合して」という表現に全て統一をしております。それから、認定方法についてという所ですが、内容的にも前回からの変更はありません。先ほど申し上げたように、負荷を「合算・総合して」という所を「総合して」と修正しております。(3)の給付額についてという所ですが、特に前回からの変更はありません。4ページ目、保険料負担についてですが、この部分についても特段の変更はありません。1と2については以上です。
3は、1及び2に係る共通事項です。(1)複数就業者の範囲についてという所ですが、項目の一番下になお書きがあります。この部分については、次の(2)の特別加入者の取扱いの所に入っていましたが、前回の御議論を踏まえて、複数就業者の範囲についての所に移行させております。特別加入している場合を除いて、労働者以外の働き方を選択している場合については、労災保険制度の趣旨を踏まえ、今回の複数就業者に係る保険給付の対象とはしないという整理になっている内容を、(1)に移行させたということです。移行させた残りの(2)と、(3)、(4)、(5)について、特段の変更はありません。
4は、その他運用に関する留意点です。この中の(1)申請手続き等についてという所ですが、前回、論点整理案で御覧いただいたときの申請手続きについてとして、非災害発生事業場における労使の負担軽減の観点から、証明事項を必要最低限にとどめる等の対応を検討するということを書いておりましたが、それに加えて、次のページの、その他、当部会において運用に係る検討を行う必要があるとして、運用について幅広くまた御検討いただくということを明記いたしております。その次の(2)、(3)についても、前回の論点整理案からの変更は特段ありません。
それから参考資料として、これまでお出しした資料の中に重複しているものもかなりありましたので、重複しないよう、現状であるとか制度の概要といったものについて取りまとめをいたしました。参考資料2は、前回の労災保険部会における委員の皆様方の主な意見をおまとめしたものです。報告案については以上です。よろしくお願いいたします。
○荒木部会長 ありがとうございました。ただいまの説明について、御質問、御意見等があればお願いします。
○輪島委員 資料1の2ページ、記の上の所のパラグラフですが、労働保険徴収法の改正も併せてという所ですが、徴収法の部分がどこにあるのかだけ確認をしておきたいと思いますので、事務局から御説明をお願いできればと思います。○労災管理課長 労働保険徴収法の改正に関わる部分は、メリット収支率の算定の部分です。これは額の合算とか、負荷の総合化の所にも出てきますが、その整理を行うのに徴収法の改正が必要になるということです。
○輪島委員 ありがとうございました。今、御報告を頂きましたとおり報告の案ですが、前回も同じことを申しましたが、おおむね妥当な中身ではないかと考えているところです。複数就業者に対する労災保険給付について、現行制度では保護に欠けている部分がある。そこの拡充をするということでの環境整備と理解をしておりますので、使用者側としては、この報告のとおりまとめていただくということで、よろしいのではないかと考えているところです。
なお、資料1にも書いていただきましたが、法律が通った後、まだ様々な政令、省令、指針、PR、周知も大事ではないかと思っていますので、検討事項は更に残されている部分があると思いますので、引き続き当部会で議論してまいりたいと思っているところです。私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがですか。
○田久委員 私も今、輪島委員が言われたように、前回も言わせていただきましたが、おおむね報告案とおりでいいと思いますが、改めて運営の方法や残された課題について、特に、ここに直接ということではないのですが、1つは、周知の関係では労働保険事務組合に対しても制度の徹底をして頂きたいこと。もう1つは、特別加入制度の関係も、実態、新たな仕事や、今、働き方も含めて変わってきていて、産業の中でも特に違いが出てきている。ITなどは新しい資源の関係も含めて、いろいろな働き方が変わってきている中で特別加入制度の、そういった部分での対象範囲や運用の改善などを、是非この部会の中でも検討をきちっとして、実態に即して、そういったところでは運用していく、範囲を広げていく。こういったことの検討を是非進めていただければと思っていますので、何度も言っていますが、改めて要望したいと思っています。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがですか。ほかに特段御意見がないということでしたら、この報告について、このとおり厚生労働大臣に建議をしたいと考えますが、いかがですか。
(異議なし)
○荒木部会長 ありがとうございました。それでは、そのように進めさせていただきたいと存じます。労働政策審議会令第7条第7項により部会の議決をもって分科会の議決とすることができ、同令第6条第7項により分科会の議決をもって審議会の議決とすることができると定められております。また、労働条件分科会運営規程第7条において、当部会の議決をもって分科会の議決とすることとなっています。そして、労働政策審議会運営規程第9条において、分科会の議決をもって審議会の議決とすることとなっています。ということを踏まえ、事務局のほうで建議と報告のかがみをお配りいただければと存じます。
ただいまお配りいただいた建議と報告のかがみの案について、御確認を頂きたいと思います。
お手元にあるかがみのとおり、部会長から分科会長、分科会長から会長宛てに報告をし、この報告のとおり厚生労働大臣宛てに建議を行うということでよろしいでしょうか。
                                   (異議なし)
○荒木部会長 それでは、そのように取り扱うこととします。事務局においては、この建議に基づいて法案作成作業を速やかに進めていただき、当部会に法律案要綱を諮問していただくよう、よろしくお願いします。
それでは、次の議題に移ります。第2の議題は、その他となっています。事務局より説明をお願いします。
○労災管理課長 それでは、お手元の資料2に基づいて御説明申し上げます。これは雇用保険部会報告(抄)ですが、これは先週の金曜日に取りまとめられました職業安定分科会の雇用保険部会の報告の一部です。労災保険制度にも密接に関連する部分がありましたので、御紹介し、それからこの事項について少し御議論いただければと思っております。
雇用保険制度等の見直しについては、全般的な見直しが雇用保険部会の中でされておりましたが、その中の、その他という事項の中に、法令上の給付額に変更が生じた場合の取扱いという項目がありました。ここに書かれておりますように、例えば、毎月勤労統計の変更等に起因する追加給付のように、雇用保険業務において賃金日額の範囲、これは自動変更対象額などですが、こういった給付額を計算する基礎となる指標に変更が生じた場合、個々の給付額決定の実務における変更と異なり、より広い範囲の受給者に影響があり、追加的な支給の必要が生ずる場合があるというものです。これは仕組みの違うところが若干ありますが、労災保険においても同様の事象が起こるというものです。
このような場合において、対象となる当時の受給者が亡くなられた場合には、その遺族に給付を実施する必要があるなど、連絡及び手続に時間を要します。対象者の安心のため、こうした場合の給付に関しては、雇用保険法の規定による消滅時効を援用しないこととすべきだと、報告がまとめられました。
先ほど申し上げましたように、毎月勤労統計等の数値を労災保険制度においても、年金のスライド率あるいは休業補償給付のスライド率などで使っているということがあります。今年1月に発表いたしましたが、毎月勤労統計の不適切な取扱いにおいて、追加給付の必要性が大量に生じているという状況もあります。
ここに書いてあるところですが、特に遺族に給付を実施する、つまり対象となる方が亡くなられてしまっている場合については、再度、遺族の方々に請求していただく必要がありますので、そういう意味では時効の問題が課題となります。受給者が御存命であれば特に時効の問題は起こりませんが、遺族の方については再度請求していただくというプロセスが必要になりますので、時効の問題が生じるということです。
時効を援用しないので、会計法などの法整備が必要かと思われますが、労災保険制度にも共通する課題だと思いますので、できれば同じような整備をするべきではないかと事務方としては考えているところです。簡単ですが、説明については以上です。よろしくお願いします。
○荒木分科会長 それでは、ただいまの説明について、何か御質問、御意見はありますか。
○輪島委員 資料2の今の説明は分かるのですが、具体的に労災保険の雇用保険とパラレルに、どういうふうに表現として整理をするのかをお聞きしたいと思います。
○労災管理課長 パラレルになっている所は、ここの2行目になりますが、給付額を計算する基礎となる指標に変更が生じた場合に、このような措置が必要であるという整理になっているわけですが、労災保険においても毎月勤労統計をはじめとして、数値の変更によってこのような追加給付の支給が必要になるといった事象が起こる点が共通なのかと思っています。
時効を援用しないこととすべきと書いてあるのですが、やり方は幾つかあるかと思います。1つのやり方としては会計法第31条の中に、我々行政が勝手に時効を援用しないこという規定がありますので、その特例を設けることとするのかと、今のところ考えています。したがいまして、会計法の特例を規定すると、こういった形になるかと思います。以上です。
○輪島委員 そうすると、先ほど資料1でまとめた所に、このものを何か追加して書くとか、そういう話ではなくて、全く別の処理をするということでよろしいでしょうか。
○労災管理課長 副業・兼業の問題とは直接関係ないというとあれですが、直接的なものではないのですが、今回、法整備をするに当たって、同時に整備すべき問題ではないかということで御紹介をしたということがありますので、副業・兼業の報告書とは全く別のものかと思っております。
○輪島委員 ありがとうございました。よく理解しました。その上で言うわけではありませんが、しかも雇用保険部会の取りまとめなので、それについてとやかく言う必要はないのですが、例えばということで、毎月勤労統計の変更等に起因する追加給付のようにということで、必要が生ずる場合があるという書きぶりですが、そもそも毎月勤労統計に問題があったので、追加的な支給の必要が生ずる場合があると、それはそうなのでしょうが、もう少し問題と結果の反省点がここの中には何も含まれてないという気がしますので、その点だけ申し上げておきたいと思います。
○荒木部会長 ありがとうございました。ほかにはいかがですか。よろしいですか。そうすると、これも法律案要綱の中に盛り込むことになる、ということですね。それでは、特段、御意見がないということであれば、この件についても法律案要綱に盛り込むということでお願いしたいと存じます。それでは、本日予定した議題は以上になりますが、事務局から何かありますか。基準局長、お願いします。
○労働基準局長 労働基準局長でございます。本日、複数就業者に関わります労災保険給付の在り方について、建議となる部会報告を頂きました。昨年6月の労災保険部会から御検討をお願いしてまいりましたが、荒木部会長をはじめ委員の皆様には大変熱心に御議論いただきまして、本日取りまとめを頂きましたことを深く感謝申し上げます。本部会報告並びに、本日その他の議題で御議論いただいた事項につきまして、労災保険法などを改正するための法律案要綱を速やかに作成いたしまして、本部会にお諮りした上で次期通常国会に提出をいたしたいと考えております。委員の皆様方のこれまでの多大なる御協力に感謝を申し上げますとともに、引き続き今後とも御支援、御協力を頂きますように、お願いを申し上げます。ありがとうございました。
○荒木部会長 私からも一言御礼申し上げます。複数就業者の労災保険給付の在り方につきまして、今般、複数就業者の保護を拡充する形で、部会、分科会、そして審議会の意見を取りまとめることができました。公労使各側の委員の皆様の御協力に対して、改めて御礼を申し上げます。ありがとうございました。以上をもちまして本日の部会は終了とします。本日の議事録の署名委員は、労働者代表の仁平委員、使用者代表の輪島委員にお願いをします。それでは、以上とします。どうもありがとうございました。