第89回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会 議事録

日時

令和元年10月25日(金)10:00~

場所

厚生労働省 共用第6会議室(3階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

議事

議事内容
○阿部部会長 皆様おそろいですので、ただいまから第89回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会を開催します。議事に先立ちまして、雇用対策基本問題部会の委員に交替がありましたので、御紹介いたします。労働者代表の村上委員が退任されました。退任された委員におかれましては、大変お世話になりました。部会を代表して感謝申し上げたいと思います。新たに就任された方を御紹介いたします。一言、御挨拶お願いできればと思います。日本労働組合総連合会総合政策推進局長の仁平委員です。

○仁平委員 おはようございます。今月、連合の定期大会がありまして、そこで村上と交替いたしました、連合の仁平と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。

○阿部部会長 本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の桑村委員、勇上委員、労働者代表の小倉委員、紺谷委員、境田委員、使用者代表の吉村委員が御欠席となっております。
 それでは議事に入りたいと思います。議題1は高齢者の雇用・就業機会の確保についてです。前回の部会で様々に御議論いただきまして、事務局に資料を用意していただいておりますので、説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○野村高齢者雇用対策課長 次第に沿いまして、順次説明いたします。最初に資料1、前回の基本問題部会における主な意見ということで、事務局において概要をまとめました。高齢者の雇用・就業機会の確保の部分です。1点目は、65歳までの雇用機会の確保ということで、「同一労働・同一賃金に関する法改正への対応を確実に実行することが大事」という御意見を頂きました。2点目は、「個別の労使協議を最大限尊重するべき」という御意見も頂きました。3点目として、「継続雇用制度の経過措置について、令和6年度末を待たずに廃止し、希望される全員の方全てを対象とした形で進めていってほしい」といった御意見も頂きました。
 次に、70歳までの就業機会の確保についてのところです。(1)は事業主が講じる措置についてということでまとめています。1点目は、「成長戦略実行計画の7つの選択肢のイメージだけでは、企業がどのような対応をすればよいのか見えない」という御意見を頂きました。2点目、雇用ではない選択肢について、企業としてどこまでできるのか、企業との関係性を踏まえて検討していく必要があるという御意見も頂きました。3点目として、7つの選択肢があるが、高齢者の希望の多様性を踏まえれば、労使で決めた枠組みも選択肢として考えることができないかという御意見も頂きました。次のページにかけてですが、「65歳以降ではニーズが細分化されてくる。このため7つの選択肢のうち(e)~(g)が非常に重要になってくる」という御意見を頂きました。次の2つは、個別の事例について御意見を頂きましたが、今後、順次整理していきたいと考えています。
 その次です。「雇用以外の働き方の選択肢を設けるだけでなく、働き方のメニューも広げるべき」ということで、例えばということで、「週2日、週3日、短時間など、体力や健康状態に応じた働き方のメニューを用意すべきではないか」という御意見も頂きました。
 次の点ですが、「(e)(f)(g)の選択肢は、プラス面もあるが懸念も持たないわけではない」とした上で、「フリーランスなどでは様々な保護が薄くなるという点や、企業がどこまで何をやれば義務を果たしたことになるのかという点もあるため、中身を詰めていく必要がある」という御意見を頂きました。
 次の2点は労使の話合いに係るものですが、「労働組合がない場合にどのようにその機会を担保するのか」というところ、また併せて「過半数代表者が責任を一手に引き受けなければならないのか」という点を御指摘いただきました。
 次の2点は、中小企業に関する御意見です。1つは、「中小企業は業務の幅が限られているため、高齢者に合わせた業務を用意する余裕がない」ということに加えて、「企業が対応できない場合に、ハローワークやJEEDが支援して、希望する方に何らかの選択肢を提供するなど、関係機関によるセーフティネットを検討していただきたい」という御意見を頂きました。次のページです。「中小企業では大企業のように業務が専門化、細分化されておらず、経営基盤も脆弱であるため、努力義務でも希望者全員というのは厳しい」という御意見を頂きました。
 次の点は、履行確保を図る仕組みということで、これは行政措置について書いています。「努力義務段階でも行政措置が入るのは、企業実務上、懸念があるため慎重な議論をお願いしたい」という御意見がありました。また、必要な準備期間ということで、これは施行時期に係るものです。「労使双方で相当な準備期間が必要。事前の周知も期間をおいて丁寧に行う必要がある」という御意見を頂きました。
 次は、高齢者の活躍促進のための支援策についてです。1点目は「活躍のフィールドの拡大が非常に大事」という御意見を頂きました。2点目は、「高齢者を雇用する上で、安全・安心といった健康対策を十分に確保していく必要がある」とした上で、「職場が安心・安全・衛生・健康確保の観点を含めて対策を講じる必要がある」という御意見を頂きました。
 次の点は高齢者雇用全体にかかる施策の枠組みについてです。「企業による継続雇用だけでない多様な形で対応していただきたい」ということで、企業による就業機会の確保以外の部分の施策の充実というところの御意見も頂きました。次の点は、いわゆるパラレルキャリアを築いていくことが非常に重要であるということで、「50歳代からパラレルキャリアを見つけていく」ことが必要であるという御意見を頂きました。
 次のページ、(5)その他のところです。1点目は、1つの社でずっと継続雇用していくというところと、中途採用の促進という2つのテーマを扱っているわけですが、その政策の整合性をしっかりと分かりやすく説明すべきということです。また、「60代後半は60代前半に比べて健康や意欲、家庭などの面で働くことが難しくなる状況が起きやすくなる」として、「希望者全員に対して、様々な状況で対応することが困難になる。現状では、雇用することが難しいケースにどのような対応が行われているのか確認した上で、今後、どのようにすべきか考えていかなければならない」という御意見を頂いています。資料1については以上です。
 次に、資料2を御覧ください。これはデータに関するものですが、「高齢者の雇用に関する調査結果(速報値)」ということで出しております。2ページ目と3ページ目に調査の概要を付けています。主に今回は個人調査の結果を御紹介しています。ここに書いていますが、調査対象としては、全国で5,000人の男女ということで抽出を行いまして、今年の7月から8月にかけて調査を行ったと。回答状況については4番に書いてあるとおりで、2,883人の方から御回答いただいたということです。
 次のページに統計的処理を書いています。調査結果の復元ということで、本調査における有効回答について、住民基本台帳人口データにおける男女別、年齢階層別人口と同じになるよう、抽出率の逆数によるウエイトバックを行って、統計処理したというところを書かせていただいております。
 その上で3ページを御覧ください。1点目は、60歳代の高齢者の仕事の内容ということで、一番下に小さく書いていますが、2019年6月に収入になる仕事をしたと答えた方の御回答です。グラフを見ていただきますと、60歳代の高齢者の仕事の内容について、「会社、団体などに雇われて仕事をしていた」と答えた方が65.0%、約7割となっています。次に、「商店、工場、農家などの自営業や自由業であった」が約1割となっています。
 次の4ページは、60歳代の高齢者の勤務形態ということです。これも一番下に書いていますが、2019年6月に収入になる仕事をしたと答えた方のうち、会社、団体などに雇われて仕事をしていた方の回答です。これを見ますと、60歳代の高齢者の勤務形態については、「普通勤務」と答えた方が約5割、「普通勤務より1日当たりの労働時間が短い」と答えた方が約2割ということになっています。
 5ページは、60歳代の労働者の体力等の衰えに対する勤務先の配慮ということです。これも2019年6月に収入になる仕事をしていたと答えた方のうち、会社、団体などに雇われて仕事をしていた方の回答です。60歳代の労働者の体力等の衰えに対する勤務先の配慮について、「仕事の内容に関する個人的相談の場はあるが、体力や視力などの問題は個人的な問題として、特に配慮はしてもらえない」と答えた方が約4割いらっしゃるということです。次に、「会社とは、仕事の内容について個人的に相談・面接する場が定期的にあり、その際、作業上の問題なども相談できるので、配慮してもらっている」と答えた方が約3割いらっしゃいます。
 6ページは、定年等の後の仕事をどのように見付けたかという調査です。これも一番下の所に書いていますが、最初の定年に到達した直後、又は定年前に早期退職された直後に仕事をしていた方の回答ということです。その点について、どのようにして仕事を見付けたかについて一番多いのが、「勤務先の会社などで再雇用・勤務延長の形で働いていた」とされた方が約6割です。ただ、次に多いのが「勤務先からのあっせんによらず別の会社などに再就職した」という方が19.1%、約2割いらっしゃいました。
 7ページは、60~64歳の高齢者の65歳以降に働く予定について聞いています。2019年6月時点で収入になる仕事をしたと答えた60~64歳の方の回答です。「採用してくれる職場があるなら、ぜひ働きたい」あるいは「すでに働くことが(ほぼ)決まっている」と答えた方が、合わせて約6割となっています。
 8ページは、65歳以降に仕事をする場合の希望する働き方について聞いてます。2019年6月に収入になる仕事をされていて、65歳以降の働く予定について採用してくれる職場なら是非働きたい、あるいは、既に働くことがほぼ決まっているという方の回答です。複数回答となっていますが、最も高いのが「フルタイム」ということで約4割です。次に多いのが「短時間(週20~30時間未満の)」が約3割となっています。
 9ページは個人調査ではなくて企業調査になりますが、65歳を超えても雇用・就業する機会を提供しようとする場合の可能な働き方ということで、労働時間について聞いたものです。仮に、全ての従業員について65歳を超えても雇用・就業する機会を提供しようとする場合に可能な働き方として多いのは、「フルタイム」と答えた企業が約6割、このうち「短時間(20~30時間未満の)」と答えた企業が約5割程度となっています。これも複数回答です。
 10ページは、65歳以降に仕事をする場合の希望する働き方ということです。これは個人調査です。「パート・アルバイト」と答えた方が約4割、「正社員」が約2割という形になっています。
 11ページは企業調査で、仮に全ての従業員について65歳を超えても雇用・就業する機会を提供しようとする場合、可能な働き方として、「パート・アルバイト」と答えた企業は約6割、「嘱託」と答えた企業は約5割となっています。
 12ページは個人調査に戻って、65歳以降も働きたいと答えた方の今後の勤務希望です。これは65歳以降に仕事をする予定がある方が、今の職場で働きたいかどうかについて答えていただいたものです。「今の会社は就業規則上、65歳を超えて働けるので、ここで働き続けたい」という方が約7割です。「今の会社は継続雇用の年限が65歳までと定められているので、別の会社を探さなければならない」という方が14.9%となっています。このうち、「会社の規定にかかわらず、別の会社で働きたい」という方が5.3%いらっしゃいますが、今の会社での勤務を希望しない理由については、下のグラフのとおりになっています。一番高いのが「今の仕事は肉体的にきついから」、2番目は「今の会社は賃金が低いから」、3番目は「今の職場は人間関係や職場環境がよくないから」ということを答えていただいています。
 13ページは、収入を伴う仕事をする希望年齢ということで、これも60歳代の方が何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいかについて答えていただいたものです。一番左の所の括弧は空欄になっていますが、具体的な年齢を答えた方が全体の約4割いらっしゃるということです。その4割の内訳を下で見ますと、収入を伴う仕事をしたい年齢ということで、今回御議論いただいているところの66歳以上の年齢を答えた方が約7割となっています。このほか「年齢に関係なく、働けるうちはいつまでも働きたい」と答えた方が、全体の約3割程度いらっしゃったということです。
 14ページは、50歳前後から転職や職業能力向上のために取り組んだことは何かあるのかということで伺っています。この中で一番多いのは、「特に取り組んだことはない」が65.4%、約7割となっています。これに対して、「資格を取得するために自分で勉強したことがある」とされた方は約1割程度ということです。資料2については以上です。
 次に資料3、主な検討課題と論点を御覧ください。高齢者の雇用・就業機会の確保に関する主な検討課題と書いています。1、65歳までの雇用機会の確保についてということで、事業主の義務である65歳までの希望者全員の雇用確保措置の実施状況等を踏まえた上で、高齢者の更なる活用の促進に資するため、適正な待遇の確保など、どのような取組を強化することが必要か。
 2、70歳までの就業機会の確保についてです。(1)事業主の努力義務とする措置の在り方についてとして検討課題を例示しています。マル1の基本的な考え方として、1つは各措置を講じる場合に事業主が負う責務の程度など、事業主の関与の具体的な在り方に関して、各措置の間での均衡をどのように考えるか。2点目としては、個々の労働者に多様なニーズがあることと、それらに対する事業主としての対応可能性に鑑み、どのような仕組みが適切か。3点目としては、今回、話合いの仕組みが書いていますが、事業主がどのような措置を講じるのか、あるいは個々の労働者にどの措置を適用するのか、それぞれの場面についての労使での話合いについて、どのような仕組みが適切か。このようなことを書いています。
 2ページです。マル2措置として事業主が実施する内容について、それぞれ以下のような内容が考えられるのではないかということで掲げています。今回7つの選択肢があるわけですが、従来の定年廃止、定年延長、継続雇用制度の導入については、65歳までの雇用確保措置と同様の仕組みというものが考えられるのではないか。同様のと申しましても、今、65歳までのところは希望者全員義務化ということですが、そういったところではなくて、今回は努力義務ということですが、そういった措置としては同様のものが考えられるのかということです。
 2点目は、他の企業への再就職の実現についてということで、今、65歳までのところで認められている、特殊関係事業主による継続雇用制度の導入と、同様のものが考えられるのではないかということです。3点目は、個人とのフリーランス契約の資金提供及び個人の起業支援については、事業主からの業務委託ということにより就業することが考えられるのではないか。このような案を提示させていただいております。最後に、個人の社会貢献活動参加への資金提供については、事業主が自ら又は他の団体等を通じて実施する事業による活動に従事いただくということが考えられるのではないかということを書いています。
 2つ目の○の所は、雇用によらないフリーランス、企業、社会貢献活動といった選択肢について、労働関係法令による様々な労働者保護が基本的には適用されないこと等を踏まえて、どのような対応を取ることが考えられるのか。
 3ページは事業主の履行確保を図るための仕組みということで、努力義務に対して行政措置を設けることによる企業実務への影響を踏まえて、どのような仕組みが適切かということで、行政措置の在り方についても、御意見を賜りたいと考えています。
 (3)事業主による措置の導入に伴って生じる対応についてです。1つ目の○は、事業主の努力義務であることを踏まえれば、措置の対象とならない労働者が生じる可能性があることを鑑み、どのような支援策を整備する必要があるかということについて、御意見を賜りたいと考えています。2つ目、事業主による措置の実施状況等について、事業主の負担も考慮しつつ、制度の着実な運営に資するためにどのような方法により把握することが適切かということで、検討課題として掲げております。
 (4)新たな制度の円滑な施行を図るための必要な準備期間についてです。65歳までとは異なる新たな措置が選択肢として盛り込まれることに伴う、措置の導入に向けた個別の労使による話合いや事前の周知のほかに、どのような点に留意する必要があるかということを書いています。
 最後の所ですが、高齢者の活躍を促進するために必要な支援についてということで、例示として6つ掲げています。1つは、各事業主による70歳までの就業機会を確保する措置の導入促進のため、どのような支援があるか。2つ目は、高齢者と企業の双方のニーズに応じた再就職支援です。3点目として、地方公共団体あるいはシルバー人材センターによる多様な就業機会の確保をどのように充実するか。また、高齢者のモチベーションや納得性に配慮した、能力及び成果を重視する評価・報酬体系の構築支援をどのように図っていくか。次に、高齢者の安全と健康の確保、また高齢期を見据えたキャリア形成支援やリカレント教育の在り方ということで、こういったことを中心に御意見を賜れればと考えています。以上です。

○阿部部会長 資料1と資料2について、御質問、御意見はございますでしょうか。資料1は前回の議論をまとめたもので、資料2は今回調査をしたものを速報ですが、取りまとめていただきました。

○酒井委員 御報告いただいた調査結果に関して、1つだけ質問させてください。資料2の6ページ、定年などの後の仕事をどのように見付けたかという質問についてです。「勤務先の会社などで再雇用・勤務延長の形で働いていた」という方が最も多いのは当然だとして2番目に多いのが「勤務先からのあっせんによらず別の会社などに再就職した」で、2割近くいるということです。どのように捉えるかは人それぞれかと思いますが、個人的には2割もいるのかと、多少驚きをもって感じました。
 ただ、「勤務先からのあっせんによらず別の会社などに再就職した」という人たちが具体的にどのような人たちなのか、あるいは勤務先からのあっせんによらず再就職したとして、どのような経路で再就職したのかということは、調査上分かるのかということを質問させていただきます。
 と言いますのは、例えば勤務先のあっせんによらず再就職したという人たちが、もしかして資格を持っているような人たちだったということであれば、この結果の読み方も変わってくるのではないかという気がします。あるいは有資格者でないとしても、例えば取引先の企業を通じてといったような、経路によっては、大分その前に置かれていた状況に依存するのではないか、具体的には大企業にいた方のほうが有利だったとか、そういったこともあるのではないかと思いまして、この結果の解釈が異なってくるのではないかと思います。
 恐らく、こういうデータから我々は65歳以上の就職についても、何か予測めいたものを想像するかと思いますが、その意味でも、具体的な中身というものが分かったら教えていただけたらと思いました。よろしくお願いします。

○阿部部会長 今の段階で分かればお願いします。

○野村高齢者雇用対策課長 6ページの結果をどう分析するのかというのは、引き続き議論していきたいと存じますが、今の有資格者の話とか、例えば就職の経路、自ら勤務先のあっせんなどによらず別の会社などに再就職したと言っても、これまでの仕事の中でお付き合いのあった取引先や関連会社など、そういう所に行った経路は分かるかということなのですが、この調査のところでは、この回答だけにとどまっていて、この回答をした方が有資格かどうか、あるいはどういった先に就職したというデータは取っておりませんので、今の御質問には的確に答えられないのですが、引き続きこの数字が意味するところは分析していきたいと考えています。

○阿部部会長 ほかに何かございますか。

○春川委員 私からも、資料2の6ページの定年後の仕事をどのように見付けたかという調査内容の所について、意見提起させていただきたいと思います。今、お話のあった再就職あっせんというところではなく、「自ら事業を起こした」と回答した方の割合が1.7%であるということが、今回のこの調査の中では見えてきています。今後、議論を進めていく中で、参考資料1の(f)の個人の起業支援といったところが、1つ視野に入っているということを考えたときに、今回の調査で、実態として1.7%相当の方が起業されているということですが、この中で65歳以上の方は、数字的にはかなり小さくなってくるのだと思います。今後、ここを伸ばしていくというような施策なのだとすれば、この数字をどう見るのかについて、考えていく必要があるのではないかと思っています。今のところは、現行の制度下における自ら起業したということなので、この数値なのかもしれないのですが、その中身についても検証が必要だと思います。

○阿部部会長 今の時点で、何か事務局で分かることはありますか。

○野村高齢者雇用対策課長 この1.7%というのは60歳代全体の数字ですが、今あった年齢による区分は可能と考えているところです。現時点で、年齢区分に応じた集計が間に合っていませんので、また次回以降に提示させていただければと考えております。

○阿部部会長 では、清家委員、どうぞ。

○清家委員 今のやり取りと関連してお願いです。同じく4ページと5ページも、それぞれ勤務形態と勤務先の配慮について、60代ということで全て括られていますので、これも可能であれば60歳代前半と60歳代後半とに区分していただけると、今後の議論の参考になるかと思いますので、御提示いただけると有り難いと思います。

○阿部部会長 それはよろしくお願いします。ほかにいかがですか。よろしいですか。それでは、資料1、資料2はこの辺りにさせていただきます。
 次に、資料3の主な検討課題の所で、少しじっくり議論していただきたいと思いますので、1ページ目の1.と、2.の(1)のマル1の所について、まず御質問、御意見がございましたら、御発言いただきたいと思います。順次、2ページ目、3ページ目で、それぞれ御質問と御意見を伺いたいと思っております。それでは、1ページ目の1.と、2.の(1)のマル1の所で、御質問、御意見がございましたら、御発言ください。特段よろしいですか。後で御発言いただくことでも構いませんが、よろしいでしょうか。
 それでは、2ページ目の2.の(1)のマル2の、措置として事業主が実施する内容についての部分で、御質問、御意見がございましたら御発言ください。

○志賀委員 事業主の努力義務に関する措置について、個別具体ではなくて包括的な意見として申し上げます。元気で意欲のある高齢者の就業をより一層促進し、それまで培った経験や知識を社会で発揮いただくというのは、人口減少の中で我が国が持続的に成長し発展していくためにも重要なテーマであると思います。日本商工会議所・東京商工会議所が昨年実施した調査で、企業が、65歳を超えて雇用できない理由を尋ねたところ、63.3%が「本人の体力的な理由で難しい」と挙げるなど、高齢者本人の健康や意欲の面から継続雇用が難しい場合が考えられます。
それと、中小企業は業務に幅がありませんので、健康や体力面の個人差に合わせた業務の配置、創出が難しいという点で、高齢者の就業機会を確保していくというのには、まだ課題がある状況です。
 そうした中で、70歳までの就業機会の確保に関しては、中小企業の実態を十分に考慮して、柔軟かつ自由度が高い選択肢、また適用除外規定の設定について、検討をお願いしたいと思います。

○阿部部会長 御意見として承りたいと思います。ほかにいかがでしょうか。

○仁平委員 職場実態も踏まえて、現実的なものでなければうまくいかないのではないかと思っています。今日の大きなテーマでもある高齢者雇用については、これまでも時間を十分に掛けながら、労使が知恵を絞って、一歩一歩前進させてきたものだと認識しております。その認識で、4点ほど御意見差し上げたいと思います。
 1点目は法の趣旨の目的で、70歳までの就労確保ということが明記されておりますが、就業希望する労働者に対して、その機会を確実に提供できるような枠組みとすることが、当たり前のことではありますが、基本的な命題だなと思っているのが1点です。
 2点目は、選択肢の(d)についてです。資料3にも記載していただいておりますが、現行もグループ会社にまで拡大する場合は、事業主間の契約の締結が必要とされています。資料にあるとおり、(d)の他企業への再就職の場合についても、そうした契約書の締結を要件とするなど、基準については明確に定めておくべきだというように思っています。
 3点目は、選択肢(e)のフリーランスについてです。フリーランスの働き方には、今も多くの課題があって、それを放置したまま選択肢とすることはどうなのかと思っているということです。これは雇用類似の検討会の中でも、フリーランスの問題点は取り上げられているところです。そのフリーランスの課題解決を前提としなければ、労使間でのトラブルや紛争などは増えるでしょうし、この制度導入を認めた我々が、社会からも「何でこのようなものを入れたのだ」というように、批難の的になるのではないかという懸念も持っているということです。
 4点目は、それぞれの職場に合った就労確保の選択肢をセットするには、決定プロセスが極めて大事なのではないかと思っております。(a)(b)(c)(d)と(e)(f)(g)は、明らかに位置付けが違っておりますし、均衡が図れない制度を導入すると、仮に65歳以降の雇用継続を行いたくないという意思を持っている企業は、負担の掛からない選択肢のみを用意して、本来の目的を果たせなくなるのではないかと思っております。従って、適切な労使の話合いの枠組み、それと、これは前回も労側から申し上げましたが、労働組合がない職場における枠組みについても、検討していくことが重要ではないかと思っております。

○阿部部会長 事務局から何かありますか。

○野村高齢者雇用対策課長 2点目以降、法制上の措置の在り方について御意見を頂いたと考えています。2点目のところについては、検討課題にも掲げておりますが、今後どういった形で法律に位置付けるのか。頂いた御意見も参考に検討を進めていきたいと考えています。
フリーランスのところは、検討課題に、労働関係法令による労働者保護が基本的に及ばないところについて、どのように担保していくのかという部分ですので、今後の制度設計の中で、どういった法律上の位置付けができるのかも検討していきたいと考えています。
 最後のところで、今回の制度設計において、労使の話合いのプロセスは重視されていますので、その辺についても、どのように位置付けていくのか、また次回以降に考え方を示させていただきたいと考えています。

○阿部部会長 ほかにいかがですか。

○春川委員 今、お話いただいた部分ですが、マル2の措置として事業主が実施する内容で記載されている検討課題については、正に掘り下げていくべきだと思っていますし、今、お答えいただいたところもお願いしたいところです。
 今回の7つの選択肢の(e)(f)(g)の部分に関して申し上げますと、なかなかイメージがつかみにくいというのが率直な思いです。ですので、そういったところを行政側として、具体的にどのようなイメージを持たれているのかという点についても、今後、御提示願えたらと思います。例えばマル2の中にあるフリーランスや起業という選択肢について、「事業主からの業務委託により就業することが考えられる」という記載があります。今回、70歳までの就業ということを考えたときに、この業務委託が70歳まで行うような枠組みとして作っていく方向なのかどうかとか、あるいは支援した企業とは関係ない業態において起業した場合も含まれているのかなど、なかなかイメージしにくいと言うか、そういったイメージがあれば、より議論は深まるだろうと思っています。
 併せて、4つ目のポツの社会貢献活動についてです。社会貢献活動といったことは、当然企業における枠組みの中で、今回関わってくるのだろうと思います。そうしますと、その定義というのが当該企業、当該労使の枠組みの中で、この社会貢献活動といったものになってくるのではないかとも推察しているのですが、そうなると、そういった社会貢献活動は個別の労使に委ねるということなのかどうかとか、そういったことも検討の課題の中に入れていただけたら思っております。

○阿部部会長 事務局、何かあればお願いいたします。

○野村高齢者雇用対策課長 頂いた意見を踏まえて、次回以降はより具体的な資料を提示させていただきたいと思います。その上で、(e)の選択肢の所については業務委託をしてはどうかということで提示させていただいております。次回以降、より具体的な考え方を示したいと思います。(g)の所についても御指摘のとおり、やはり企業の適切な関与というのが重要であると考えております。そういったところでどのような要件を課すことができるのか、引き続き次回、具体的なイメージを提示させていただければと考えています。

○阿部部会長 よろしいですか。

○玄田委員 今、春川委員のおっしゃったコメントの、特に最後の点について非常に同感する部分が多いので、若干繰り返しになりますが、私からも1つ意見を申し上げます。個人の社会貢献活動への資金提供の部分です。恐らく何をもって社会貢献活動と考えるかというのは、非常に幅があると思っております。成長戦略の文字どおりの軸だけを拝見しますと、個人の社会貢献活動参加と書いてあるわけですから、個人がこれを社会貢献活動だとして非常に重要だと思うものに対して、資金提供するというのがまず一義的な見方であろうと思っています。ただ、それは当然事業主からも理解を得られるということだと思うので、余りこれを最初から事業主が認める社会貢献活動のようなものでやると、若干論理の流れが整合的ではないかなということを思っております。
 もう少し具体的に申し上げると、社会貢献活動には様々なものがありますが、恐らく60代後半に、今後担っていただく社会貢献活動については、地域における活動であると。つまり、高齢者が高齢者同士を支え合う、特に、健康で意欲のある高齢者が、地域の中でのコミュニティーの担い手になっていくということで考えると、決してグローバルとかナショナルなレベルだけではなくて、ローカルなレベルの社会貢献活動ということに対して、非常に重要な役割を果たすということに、今後の日本の高齢者社会に対応していくための、1つの大きな論点が隠されているのだと思います。
 ただ、もしかしたらそういう活動に個人が参加の意思を表明し、それでやっていく中で、事後的に企業にとってもこれは重要社会貢献活動と認められて、そこにある種の資金循環が流れていくというのは、これからのローカルな在り方にとっては極めて重要なものだと思います。是非、この社会貢献活動とは何かということを、またその決定の主体性についても、最初から幅狭く考えるのではなくて、今後の普及活動を含めた広いレベルでの意見を取り交わせるような労使の話合いとか、場合によっては、行政からの何をもって社会貢献活動とみなすかということについても幅広い情報提供とか、この辺りについては慎重に御議論いただきたいと思いましたので、コメントさせていただきます。以上です。

○阿部部会長 では事務局、お願いいたします。

○野村高齢者雇用対策課長 御指摘ありがとうございます。今の御指摘については、企業が行うものとそれ以外の枠組みで行うものと、高齢者の就労の在り方もあると思いますので、その全体像をまた整理して提示させていただきたいと存じます。

○阿部部会長 玄田委員や春川委員の意見についてですが、私も皆さんからの御意見をお伺いしていて、少し整理していただきたいところがありますので、あえて発言させていただきます。よく社会保障では自助、共助、公助という考え方があると思いますが、ここの話も、もしかしたら自助、共助、公助というのが大事になってくるのではないかと思うのです。特に社会貢献活動もそうですし、フリーランスあるいは個人の起業というのも会社が主体的にやるというわけではなくて、個人が主体的に自営をやりたいとか、フリーランスとして働きたいという、そういう希望を持つ方もいます。あるいは、社会貢献活動を自分がやりたいと、企業の支援がなくてもやりたいのだという人たちもいらっしゃるわけですよね。その辺りの議論がごちゃごちゃになると、我々が今、議論しようとしていることと少し混乱が出てくるような気がいたしますので、企業が果たすべき努力義務と個人の役割というのを、少し明確にした形で議論していったほうがいいかなと思っています。
 なので、例えば個人が主体的に開業したいといった場合に、企業はどういう手助けができるのかという議論もあっていいと思いますし、あるいは企業が主体的に、あなたはフリーランスとして契約したいのだけれどもどうかという、そういう企業が主体的に考える場面もあり得ると思うのですが、その辺りがごちゃごちゃにならないように議論していただきたいと思っております。

○野村高齢者雇用対策課長 次回、整理して資料を出させていただきたいと思います。

○小野委員 社会貢献活動については私のフィールドでもあるので、ちょっとお話をさせていただきたいのですが、今、阿部部会長とか玄田先生がおっしゃったことは、とても的を射ていると思っております。基本的に社会貢献活動とかボランティア活動というものは、個人が主体で行われるもので、個人の意思なくしては無意味であると思っております。あくまでも企業側というのは、それを刺激するというか支援するというか、個人のやりたい思いをあるべき方向へ持っていくようなフィールドを作るという役割だと思っております。逆に、こうせねばならないという枠を企業にはめてしまうと、例えば、自分の関連会社にそういう非営利の法人を作ったりとか、そこにそういう人たちを流し込むとかという、何かいびつなことが起こりかねないと思っています。ですので、企業側はあくまでも個人がやりたいということを、いかにその人のキャリアを広げていくか、という視点を持って支援するという立場でいてほしいなと思っております。
 もう1つです。定年退職後のセカンドキャリアを始めるには、やはりパラレルキャリアというものが絶対的に必要だと思っております。60~65歳の間の、今ここは義務化されている部分ですが、ここで助走期間としてパラレルキャリアを展開できるような施策を取っていただきたいなと思っています。今日配られた資料2の9ページなのですが、企業調査で可能な働き方の時間ということで、フルタイムを半分以上企業側が提示しているのです。今60~65歳でも、多くの企業ではフルタイムで働くことを求められているという感じになっているようです。
 私が企業でヒアリングした中でも、以前は結構フレキシブルに対応していたのだけれども、最近はフルタイムで働くことを求められるのだと言ってらっしゃる方が多くいます。60~65歳をフルタイムでがっつりと働いて、60~65歳が終わってしまったら、次に乗り換えられないという、今と全く同じことが65歳以降で起こるります。60~65歳期間を次に移るための助走期間として位置付けて、段階的に緩い時間的な裁量を持たせながら次のことを考えられる汽水域というか、乗り換えられるジョイントの部分であるというような設計というか、そういうことを全体的に見て考えていただけるといいかなと思います。その中の1つの選択肢として、社会貢献活動というものがあるという位置付けでいいのではないかなと思っております。意見です。

○阿部部会長 ではお願いいたします。

○野村高齢者雇用対策課長 先ほど阿部先生からも、自助、共助という言葉もありましたけれども、それぞれの企業が何をしなければいけないのか、あるいはそれ以外の所で個人としてどういう就労、高齢期の活躍の仕方があるのかを整理して、資料を提示したいと考えております。

○阿部部会長 お願いいたします。ほかにいかがですか。

○仁平委員 先ほどのフリーランスについて、誤解がないように若干私の意見を補足しておきたいと思います。やはり個人の生き方とか働き方を尊重するというのは大事なことだし、それは基本的に守らなければいけないと思っています。ただ、現状のフリーランスを見たときに、例えば、契約内容がしっかり文面として結ばれていない場合もありますし、結ばれたからといってそれが守られているかというと、中身の変更や、書いていないことも含めて、様々な問題が生じているというのが実態なのではないかと思うわけです。そういう意味で、形式だけフリーランスという選択肢を入れればいいということではなくて、やはり法の趣旨からすれば、働く人が能力を十分に発揮して、活躍の場になるということが担保できるようなものを、中身の検討も含めてしっかりやらないといけないということを申し上げます。よろしくお願いいたします。

○清家委員 先ほどから(e)(f)(g)について、様々な御意見が出ているかと思いますが、今日事務局から一旦それぞれこういう形で考えられるのではないかと提起されました。前回、私からも企業としてどこまでできるのか、企業との関係性についても指摘させていただきましたが、一定程度こういう整理もあると思っております。阿部先生から先ほど、更に議論を整理したほうがいいという御指摘もありましたので、個人の方の希望という部分と、企業として努力義務の中でどこまで措置していくのかという部分の整理を是非お願いできればと思います。

○阿部部会長 ほかに2ページで何かありますか。

○小林委員 70歳までの就業機会の確保の実現に向けて一言申し上げます。これについては65歳までの雇用の機会がしっかりと守られていることに加えて、労働条件もきちんと整備されていなければならないということが前提だと思っております。選択肢の(a)から(c)については、65歳までの雇用確保と同様の措置を図ることをイメージされているということでしたが、現行の継続雇用制度については、継続雇用したときと現役時代の処遇の差が、かねてからあるということで指摘されているところです。
 加えて、資料2の調査の5ページの所なのですが、「体力や視力などの問題は個人的な問題として、特に配慮してもらえない」と回答した方が37.6%おり、「会社は何も配慮してくれないので、必要な作業機器や什器などは自分でそろえている」と回答した方が6.9%となっており、合計すると半数近くの労働者の方が、勤務先の配慮が不十分だと感じていることが分かります。同一労働・同一賃金に関する法整備が今後施行され、こうした労働条件が改善されていくことは期待しているのですが、高齢になるほど個人のライフスタイルや就労への考え方とか、健康状態などがますます多様化していくと思います。
 労働条件ということで見ていくと、高齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針の中では、賃金と人事制度の見直しという項目が記載されています。このような体力的な問題という課題が顕在化されていることを踏まえていくと、この指針自体も有効に機能しているかどうか、ちょっと疑問視する点もあるのではないかなと感じております。ですので、70歳までの就業機会の雇用の実効性を高めるためには、やはり健康状態や社会的な配慮、環境に配慮する観点等からも、柔軟な労働条件をはじめとする65歳までの職場環境を整備していくことが、足固めとして必要ではないかなと思っております。
 また、先ほど小野委員からも意見がありましたが、60~65歳までというところのキャリア形成について、キャリアをもう少し積んでほしいとか、別のキャリアを積みたいとか、65歳以降どういうことをやっていきたいか、社会貢献なのか事業なのか分かりませんが、そういうことを考えていけるようなステップの期間として位置づけた上で、70歳までの雇用というのを加えて考えていっていただければなと思っております。以上です。

○阿部部会長 では、御意見として承ります。

○小野委員 65歳までの雇用機会の確保について今、御意見が出たのですが、私もこれはかなり同感している部分です。70歳に延ばすのであれば、65歳までをもっとしっかりやらないといけないと思っていて、資料1の一番上の1ポツ目の所にある同一労働・同一賃金の問題であったりとか、60歳で定年が来てから仕事が変わりすぎるとか、給料が変わりすぎるなどというのは、余りにも理不尽だと思っておりますし、そこの部分を65歳までしっかり確保した上での次の70歳だと思っております。だから、60~65歳までの部分というのが非常に重要で、そこをどうジョイントとして機能させるかということが、70歳以降も人生100年において、豊かな老後を過ごす上でのポイントになると思っております。以上です。

○阿部部会長 ほかに2ページでありますか。なければ3ページに移ります。3ページは(2)(3)(4)(5)です。これに関連して、御質問や御意見があれば御発言いただきたいと思います。

○玄田委員 (5)について申し上げます。幾つか必要な支援策が書かれていて、大変的を射たものだと思う一方で、こういうまとめをして改めて気付いたことを1つ申し上げると、これは成長戦略の(a)から(g)というまとめ方の影響なのかもしれませんが、60代後半以降の労働者を、労働者というよりもプレイヤーとしてどう就業継続するかとか、就業確保するかという面がやはり非常に強く表れているなということを感じます。というのも、この60代、特に後半の方々の働きとして、どういう働き方に喜びとか働きがいを感じるかというと、プレイヤーであるというよりは、どちらかというとマネージャーというか、自分のやってきた経験というのをうまく伝えられるとか、それをいかされるということに喜びのようなものを感じたり、自分のこれまで蓄積してきたスキルやノウハウが、次世代以降に活かされていくということの、もしかしたら言い方は良くないかもしれませんが、最後の花道のような形を整備するのであれば、そこをもう少し何か支援するようなことはできないだろうかと。
 先ほどから60代前半の方々の状況が大事だというのは私も全く同感で、そこでいろいろ問題になってくるのは賃金が当然下がると同時に、やはり当初の期待としては、定年が延長されたり継続雇用になることによって、より多くの技能継承とか知識の伝播というのがうまく進んでいく、そういう機会が確保できるということを、ある部分で期待しながら、こういう制度設計をした部分もあったのではないかなと思うわけです。
 ただ、一方で振り返ってみたときに、果たしてそれが当初の予定どおり、うまくマネジメントのスキルが活かされてきたのかというのは、若干反省してみないといけないと。例えば、様々な能力開発に関する企業内の職業訓練とか能力開発を見ても、いまだに教え手が足りないとか、ちゃんと指導してくれる人が足りないというのはずっとあるわけで、本来はその辺りを埋めるのに60代前半の役割もあったはずなのに、もしかしたらそこの部分がちゃんと目配りが十分できていなかったのかもしれないと思えば、やはり60代後半にも同じ課題がある。
 特に65歳までの継続雇用と更に違ってきているのは、例えば今、副業・兼業に期待が起こっているのは、単に人手が足りないということだけではなくて、ある種の越境学習というか、ずっと働いてきた会社を越えていろいろな知識と経験を身に付けたり伝えたりするということが、今の時代には以前に比べて重要になっているのではないか。そうすると、60代半ばまで働いてきた人がスキルを、もちろん企業内で伝えるだけではなくて、もっと幅広く様々な必要とされている人に伝えられるような、そういう意味でのあっせんとかマッチングのようなことを考えていくと、やはり自分自身のやってきたことがより認められて長く働くことの意味にもなると思います。
 さらに、もっと重要になるのは資料にもあったように、多分10年間を通じていろいろなことを伝えられるとなると、恐らく50代の働き方が変わってくる。やはり50代にやるべきことというのは、それこそ自分自身のそれまでの人生の棚卸しをして、一体何が伝えられるのか、何を伝えることができるのかということに、時間とか資源を費やす50代になるとするならば、それはもしかしたら、いろいろな意味で組織の中での風通しを良くしたりする上で、重要になってくるかもしれないので、ちょっと長くなって恐縮ですが、プレイヤーとして人手不足の中での就業機会、就業確保、継続だけではなくて、やはり60代の人々の持っている経験とかノウハウを、いかにして幅広に、特定の企業だけではなくて社会全体に使われていくための機会として、継続雇用というのをどう支援していけるかというマネジメントのスキルを、より社会的に活かすという方向についても、もし可能であれば検討を進めるべきではないかなと思った次第です。以上です。

○阿部部会長 では事務局、お願いいたします。

○野村高齢者雇用対策課長 支援策についてです。これは、企業における雇用確保以外の視点も含めて書いてあります。特にこれまで高齢者が培われてきた経験、知恵などを1つの企業の中で活かす、あるいは再就職という形で別の企業で活かしていく、更には地域において活かしていくというように、様々な活躍のしていただき方があるものと考えています。そういった幅広い視点から議論いただければと考えています。

○阿部部会長 ほかにいかがでしょうか。

○小野委員 (5)の所です。先ほど玄田先生が高齢期に差し掛かる方で、特に技能とか技術を持っている方々の経験等を継承していくことの重要性をお話されましたが、一方で、別のことをやりたいという高齢者の方も、実はたくさんいらっしゃいます。特に再就職であったりとか、新しいNPOで新しいことをやるときに、ハードルになるのはその人の思い込みであったりとか、経験というものに基づく頑固さというか、そういうものが非常に壁になったりすることもあります。ですので、特に高齢期に差し掛かる人たちのリカレントや、キャリア形成支援というものの中で、重要なものは学習棄却、アンラーニングということです。これは、今まで自分が培ってきたものをいかに真っ白にして、次の所に飛び込んでいけるかということが、非常に求められるところでもあります。
 ですので、1つは継続して技能を継承していくということも確かに大切なことではあるのですが、新しいフィールドで求められる人材になるためには、やはり自分を真っさらにするという、そういうことも必要であるということを、1つ忘れないでいただきたいなと思っております。これがどのようにリカレント教育や、キャリア教育の中で展開されるのかは、これからどう考えていくかということになるのですが、そういう考え方もあるということです。以上です。

○阿部部会長 では、御意見として承ります。ほかにいかがですか。

○志賀委員 今、玄田委員、小野委員がおっしゃったことは非常に同感できるものでして、企業と高齢者とがより良い関係性を持ち、さらに高齢者が企業の中で存在価値を高めていくためには、越境学習やアンラーニングが、非常に重要なことではないかと考えます。また、多くの人が60歳を過ぎてから次のキャリアについて考えるというのは少し遅いのではないかと感じております。14ページに「50歳前後から転職や職業能力向上のために取り組んだこと」という表がありますが、資格取得に関して勉強したり、研究したりというものは合計で12.8%と低水準に留まっているように思います。ですから、やはり早い時期から、資格取得をある程度念頭に置いたリカレント教育の充実策が必要になってくると思います。
 特にITスキル等、高齢者が不得意であると思われるような分野のリカレント教育に対する人材開発支援策を厚労省でより一層強化するような検討をしていただきたいと思います。以上です。

○阿部部会長 事務局、何かあればお願いいたします。

○野村高齢者雇用対策課長 今の視点も項目としては(5)支援策の一番下に掲げていますが、どのようなことが可能なのか、また次回以降、御議論を賜れればと考えています。以上です。

○阿部部会長 ほかにいかがですか。

○春川委員 3ページの(2)(3)(5)に関わる所について、意見申し上げます。資料2で御説明いただいた調査の中でも、例えば12ページで65歳以降も働きたいと答えた方の今後の勤務希望という所で、勤務を希望しない理由の中には、賃金の話がやはり上位に入ってきております。今回の考え方の中で、アルファベット(a)から(g)がありますが、ここは努力義務として選択といった折に、極端な話、先ほど来より話があります(e)(f)(g)を選択するということに関して、このアンケート調査から出てきている賃金との兼ね合いといった部分を、労働者側の視点からすると担保できる部分が、当然必要になってくるのではないかと思っております。そこが高齢者の活躍を促進するという意味にも当然掛かってくると思っておりますし、事業主の履行をどう確保していくのかというところにも関わってくるところだと思いましたので、この項で発言させていただきました。以上です。

○阿部部会長 では事務局、お願いいたします。

○野村高齢者雇用対策課長 これも制度に関わるところですが、次回以降、より詳しい考え方を示したいと思います。その上で申し上げれば、やはり今回の閣議決定あるいはこの審議会で御議論いただいているところにおいても、やはり労使の話し合いが非常に大事になってくるかと思います。今、御指摘いただいた件も含めて、支援策も含めてどのようなことが可能なのかお示したいと考えています。

○阿部部会長 ほかにいかがですか。全体を通して、何か御質問や御意見がありましたら御発言ください。よろしいですか。

○志賀委員 もう1ついいですか。「高齢者の活躍を促進するために必要な支援」についてです。先ほど酒井委員からお話があった、企業による就職先のあっせんというのは7%程度あったと思うのですが、やはり企業からのあっせんというよりも、「産業雇用安定センター」が非常に大きな成果を上げていらっしゃいます。高齢者と企業とのマッチング機能をより一層強化するほか、特に地方など人手不足が深刻化している地域において、重点的に窓口を設置して頂けるといいかなと思います。また、こういう措置の認知度を上げるため、広報活動にも力を入れていただけると、より一層スムーズな人手不足の解消につながるのではないかと思います。以上です。

○阿部部会長 御意見として承ります。ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、議題1については以上とさせていただきます。本日も各委員からたくさんの御意見を頂きましたので、事務局で整理していただいて、次回以降、それぞれの検討課題について更に具体的な議論を進めることができるよう、準備をお願いしたいと思います。
それでは議題2ですが、議題2はその他です。事務局から何かありますか。

○野村高齢者雇用対策課長 特にございません。

○阿部部会長 それでは、本日の議題については以上とさせていただきます。最後に事務局から、次回の日程についてお願いいたします。

○野村高齢者雇用対策課長 次回の日程については部会長とも御相談し、個別に委員の皆様に御連絡いたします。

○阿部部会長 予定されている議題は以上ですが、皆様から何かありますでしょうか。よろしいですか。それでは、本日の部会はこれで終了いたします。本日の会議に関する議事録については、労働政策審議会運営規程第6条により、部会長のほか2人の委員に書面を頂くことになっております。つきましては、労働者代表の春川委員、使用者代表の清家委員にお願いしたいと思います。本日もどうもありがとうございました。