第79回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録

 

 

79回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会(議事録)
 
1.日時 令和元年101日(火) 14:0015:20
 

2.場所 AP虎ノ門貸会議室
A
        
  (東京都港区西新橋1ー6-15 NS虎ノ門ビル11階))

 
3.出席委員
(公益代表委員)
○東京大学大学院法学政治学研究科教授 荒木 尚志

○大阪大学大学院高等司法研究科教授 水島 郁子
○読売新聞東京本社編集委員  宮智 泉

(労働者代表委員)
○全日本海員組合奨学金制度運営管理部長代理 楠 博志
○ 日本化学エネルギー産業労働組合連合会副会長 安原 三紀子
○日本基幹産業労働組合連合会中央執行委員 黒島 巖
○UAゼンセン政策・労働条件局部長 髙橋 義和
○日本労働組合総連合会総合労働局長 村上 陽子
  
(使用者代表委員)
○日本通運株式会社 総務・労働部専任部長 北 隆司
○東京海上ホールディングス株式会社人事部ウエルネス推進チーム専門部長 砂原 和仁
○セコム株式会社 人事部主務 久保田 祥子
○鹿島建設株式会社安全環境部部長 本多 敦郎
○日本製鉄株式会社 人事労政部部長 山内 幸治
○一般社団法人 日本経済団体連合会労働法制本部長 輪島 忍  

4.議題
(1)複数就業者への労災保険給付の在り方について
(2)その他
 

 

5.議 事

○荒木部会長 定刻になりましたので、ただいまから第79回労災保険部会を開催いたします。初めに、前回の部会以降、新しく就任された委員がおられますので、事務局より紹介をお願いします。

○労災管理課長 労災管理課長です。それでは御紹介いたします。新しく御就任されました委員は3名の方です。委員名簿を席上に配布しておりますので、御参照いただければと思います。3人の方、労働者代表として、新たに御就任いただきました。名簿の順で、まず日本基幹産業労働組合連合会中央執行委員の黒島巌様でございます。

○黒島委員 黒島です。よろしくお願いします。

○労災管理課長 UAゼンセン政策・労働条件局部長の髙橋義和様でございます。

○髙橋委員 髙橋でございます。よろしくお願いします。

○労災管理課長 日本化学エネルギー産業労働組合連合会副会長の安原三紀子様でございます。

○安原委員 安原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○労災管理課長 以上、3名の方に御就任いただいております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○荒木部会長 よろしくお願いいたします。

 本日の委員の出欠状況は、公益代表の大前委員、中野委員、森戸委員、労働者代表の田久委員が欠席です。また、使用者代表の本多委員からは遅れての御出席との連絡を受けています。出席者は現在13名でありますが、公益代表、労働者代表、使用者代表それぞれ3分の1以上の出席がございますので、定足数は満たされていることを御報告いたします。カメラ撮りはこれまでということでお願いします。

 本日の議事に入らせていただきます。第1の議題は「複数就業者への労災保険給付の在り方について」です。事務局から説明をお願いします。

○労災管理課長 資料は№1のみです。まず、表題は複数就業者への労災保険給付について、副題として、中間とりまとめで提示された論点の検討についてと付けております。6月におまとめをいただきました、中間とりまとめで提示された論点について、今回幾つか御提示をさせていただきます。

 目次にお示ししていますが、業務上の負荷の合算についてを中心に、特別加入制度の在り方についても御議論をいただければと思います。

 それでは順次御説明をいたします。3ページを御覧ください。業務上の負荷を合算して評価することについて、労働時間、心理的負荷についてです。現行制度を掲げておりますが、特にこれは新しいものではなく、今まで御説明した資料をダイジェストにしたものです。現行制度は、労働基準法に基づく使用者の災害補償責任は、同法の災害補償に相当する労災保険給付が行われる場合には、免除されるという規定があります。したがいまして、労災保険が実質的に、事業主の災害補償責任を担保する役割を果たしているということです。

 一方で、労災保険制度の大きな目的は、被災労働者の傷病死亡等に対して、迅速かつ公正な保護を行う。労働者の稼得能力や、遺族の被扶養利益の喪失の填補を行うことを目的としています。

 「このため」という所ですが、5ページに相当するものですが、災害補償責任の範囲と、労災保険の給付の関係ですが、範囲が必ずしも一致はしていないということです。

 2つのポツがありますが、例えば通勤災害に関する保険給付、あるいは介護補償給付、二次健康診断等給付のように、労災保険法で独自に補償しているものがあります。また、いわゆる年金払いのものや、特別支給金のように、労災保険法で労働基準法に基づく災害補償責任の、いわば上乗せというような位置付けになっているものもあります。これらの労災保険給付と、基準法に基づく災害補償責任の範囲との関係です。

 現在、脳・心臓疾患や精神障害の労災認定においては、これまでも御説明したとおり、原則として、事業場ごとに労災認定における業務起因性の判断を行っていますので、複数の事業場における業務上の負荷を合わせて評価するといった取扱いはしていないということです。

 4ページ、論点です。3つほど掲げています。1つ目が、複数事業主に雇用され、各事業場で使用される場合には、それぞれの事業場で負荷を判断して、労災認定をしています。現行制度の4つ目を少し短くしたものが、その内容になっております。

 一方で、複数事業場で使用される場合、複数の事業場で働いている場合であっても、同一事業主に雇用されている場合であるとか、あるいは同じ派遣元から労働者派遣をされて、別々の事業場に行っていますという労働者の場合には、各事業場での労働時間や心理的負荷を合算して、全体として評価し労災認定しています。仮にそういう疾病になったらということですが、これらの違いをどうするかというのが論点の1つ目です。

 論点の2つ目として、仮にということで、複数就業先の業務上の負荷を合わせて評価して初めて労災認定できるといった場合に、労災給付を行うと。これは現行の取扱いとは異なる取扱いですが、こういう取扱いをするとなれば、考え方としては通勤災害と同じように、いずれの事業場も災害補償責任を負わないというように定義することも考えられないか、というのが2つ目の論点です。

 3つ目の論点は、少し分かりにくいかもしれませんが、複数の就業先の業務上の負荷を合わせて評価して、初めて労災認定ができるような場合に、新たに保険給付を行う場合の前提があるのですが、その前提の下であっても、一の就業先における業務上の負荷によって労災認定できるような場合、複数の就業先で働いていらっしゃって、そのうちの1つの就業先で労災認定できるという場合には、現行と同様に、当該事業場における労災として認定すべきではないか。その場合は、現行と同様の取扱いということで、当該事業場に災害補償責任があると。ほかの就業先にはそういった責任がないと判断すべきではないかということで、あくまでも2つ目、3つ目については、仮にという、新しい取扱いをした場合の論点ということで掲げています。以上が4ページ目です。

 5ページ目は、先ほど申し上げましたように、労災保険の給付と基準法の災害補償との関係ということで、これも今までの資料でお出ししたものです。

 6ページは大阪高裁の判決で、5月の部会でお示しをした裁判例です。いずれもこれまでの既存資料です。

 7ページ目です。2つ目の論点の柱ということですが、仮に業務上の負荷の合算を行って、労災認定するといった場合の認定方法について考えてみるというものです。労働時間や心理的負荷の関係です。現行制度については、前回の部会で御説明した内容になっています。9ページ以降は、前回の部会で御説明したものを添付をしています。

 現行制度認定プロセスということですが、労災認定は原則として基準監督署において行っています。個別事案ごとに認定できるかということを判断しています。労働者に発症した疾病については、被災労働者への有害因子へのばく露の程度等と、発症の経過、病態や医学的意見等の医証を総合的に検討し、労災認定できるかどうかを判断をしています。ただし、特定の疾病や判断が難しい事例については本省協議を行っており、監督署だけが全部処理をしているわけではないということです。労災認定の可否、本省で協議した上で判断する場合もあるということです。

 調査方法は申請があった場合、様々な調査をして、業務上の負荷について把握をしているということです。①から④に例示をしていますが、申立書の内容をしっかりチェックをするというのは当然ですが、関係者からの聴取、医学的資料を主治医等から収集、あるいは意見を聞くと。その他の客観的な資料も収集するといったプロセスを経て、事実関係を把握をして認定を行っています。前回も御説明しましたが、現行でも脳・心臓疾患や精神障害について、複数就業先で働いていたという場合には、監督署がそれぞれの事業場での労働時間や、具体的な出来事を調査しています。ただ、現行では先ほども申し上げましたように、原則事業場ごとに判断をしている、合算をしないということです。ただし、事業主が同一、使用者が同一という場合には、事業場が異なる場合であっても、一の事業として業務上の負荷を合算して判断をしています。

 8ページ目、論点ですが、仮に業務上の負荷の合算を行うということで、このような場合に認定方法をどうするのかという論点です。現行でも脳・心臓疾患や精神障害については、先ほど御説明申し上げましたように、複数就業先での過重負荷や心理的負荷があったという申立てがあれば、それぞれの事業場での労働時間や、具体的な出来事の調査をさせていただくということです。複数就業先の業務上の負荷を合算するということであれば、特段新しい調査等、認定プロセスが必要になるということではなくて、これまでと同じようなプロセスで認定していけるのではないかというのを論点として立てさせていただいています。8ページ目は以上です。

 参考資料9ページ目から12ページまで、先日8月の部会でお示しをさせていただいた、労災の認定について、認定のプロセス、運用状況、脳・心臓疾患や精神障害の業務起因性判断のフローチャートを掲げています。今回説明は省かせていただきます。

 13ページです。仮に業務上の負荷の合算を行うと、そして労災認定を行うと、こういった場合の保険料負担はどうするのかということです。現行制度は、これも従前から御説明申し上げた内容を、少し文字にしました。

 保険料率ですが、業種ごとに災害率等に応じて定まっているということで、かなり幅があります。ただし、業務災害分以外は、事業主の管理下において生じる災害ではないですし、有効な災害防止措置を講ずる手立てもないという考え方から、全業種一律となっています。例えば通勤災害や社会復帰促進等事業などについては、全業種で一律となっております。

 15ページは、何回かこの部会でお示しをした資料の一部ですが、労災の保険率について、左側が全業種平均の推移です。右側のほうに保険率を構成する要素ということで、業務災害分、非業務災害分、社会復帰促進等事業及び事務の執行に要する費用分を考えております。業務災害分においては平均ということですが、非業務災害分であるとか、社復事業、事務所の執行に要する費用分は全業種で一律となっています。このような構成になっていますが、業務災害分がかなり業種によって違うということで、いわゆる労災保険率については、業種によって幅があるというような状況です。

 戻っていただきまして13ページです。現行制度の2つ目、メリット制です。個別事業場の災害の多寡に応じて、労災保険率を増減させているというメリット制があります。災害が多ければ、料率が高くなり、少なければ低くなるという制度になっています。この算定においては、例外があります。事業主の災害防止努力が及ばない保険給付等、これは通勤災害ですが、それについてはメリットに反映しないようにする。また、災害補償責任の範囲を大きく超える部分についてもメリットに反映させない。更に前回御説明しましたが、遅発性疾病の関係についてもメリットに反映させないものもあるということで、幾つかの例外があります。

 14ページです。このような現行制度を踏まえて、仮に業務上の負荷を合算して評価して労災認定をしますと、こういう取扱いを採用した場合に、どのように考えるかということですが、いわゆる保険料負担全体的にどのように考えるかということが1つ、2つ目として、メリット制はどのように考えるかというのが、個別の事業主の料率についてどのように考えるかということが、2つ目の論点です。負荷の合算について、今回お示しをしている論点は以上です。

 幾つか参考資料が付いていますが、これまで御説明した内容となっていますので、省かせていただきます。

 最後に、特別加入制度の在り方についてということで、今回、複数就業と特別加入の関係について、論点を掲げています。19ページを御覧ください。現行制度の所に特別加入の目的を書かせていただいています。これも前回御説明した内容の中に入っていますが、労災保険は労働者の労働災害に対する保護を主目的としています。したがって、基準法上の労働者ではない方については対象外ということですが、業務の実態や災害の発生状況等から見て、労働者に準じて労災保険により保護するにふさわしいという方については、労災保険の特別加入を認めるということで、昭和40年に発足しています。特別加入には、中小企業事業主であるとか、あるいは一人親方、海外派遣者と、第一種、第二種、第三種のカテゴリーがあります。法律上、誰が事業主とされるかというのはそこに書いてありますが、事業主等が入るという場合には、当該中小企業事業主が事業主とされています。第二種の場合は特別加入団体、第三種特別加入については、実は労働者だった方が多分主だと思うのですが、当該事業の事業主が法律上事業主とされています。

 中小企業事業主や一人親方等というのは、労働基準法上の労働者ではないということになると、労働時間という概念がないということですが、その場合にいわゆる過重負荷をどのように見ているのか。特に労働時間をどのように見ているのかということですが、これは実際に働いていた時間を労働時間と考えて、業務遂行性が認められる時間ということで推計して、労災認定のときに判断基準として使っています。

 20ページは、複数就業する場合とこの特別加入の関係です。論点の1つ目は、複数就業されている方で、1つ以上、3つ、4つ仕事を持っているという場合も考えられるので、このような書き方になっていますが、1つ以上特別加入をしている場合、一方で労働者一方で特別加入といった場合ですが、その場合、賃金額の負荷の合算について議論をしておりますが、特別加入制度の趣旨を踏まえると、労働者、労働者の場合と、労働者、特別加入の場合と、異なる取扱いにする必要は特にないのではないかというのが1つ目の論点です。

 2つ目は、対しまして本業が労働者で、副業として労働者以外の働き方を選択されている。副業で特別加入をしていない、あるいは特別加入の適用される範囲ではないという場合は、労災保険制度においては、賃金額の合算、あるいは負荷の合算の議論をする場合には、対象とするのは困難ではないかと。保険制度の枠外なので困難ではないだろうかというのが2つ目の論点です。

 あと資料を付けております、いずれもこれまで御説明した内容ですので、省略させていただきます。簡単ではありますが、資料の説明は以上です。よろしくお願いいたします。

○荒木部会長 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして何か御質問、御意見があればお願いいたします。

○輪島委員 まず事務局にお伺いしたいのですが、資料1の表題ですが、6月にとりまとめたものは、中間とりまとめという表現になっていなかったように思うのですが、中間とりまとめという位置付けなのかどうかをお伺いしておきたいと思います。

 それから総論ですけれども、先週、労働条件分科会において、兼業、副業の場合の労働時間管理の在り方についても議論が始まったところです。それで、労働時間の関係についていうと、別途検討会がありまして、検討会の報告書を踏まえて議論をすると承知しています。その点でいうと、労働時間の報告書にも記述がありましたけれども、副業、兼業自体は、自社では得られない経験による新たな技術の開発やオープンイノベーションにつながるメリットが大きいと期待はされますけれども、やはり健康確保という観点と、こちらの部会の関係ですけれども、労災保険の給付や労災発生時の使用者の責任の範囲は、整理するべき課題が非常に多いのではないかと認識しているところであります。各企業において長時間労働の改善、休暇の取得促進に取り組んでいる、つまり労基法の改正に伴う対応をしていて、いわゆる働き方改革を推進している最中ですが、兼業、副業を普及、促進するということで、一方で、労働者の健康が阻害されるということは、やはり本末転倒ではないかと思っているところです。

 それから、経団連の会員企業に、調査しているところですけれども、副業、兼業を認めないという理由として、企業実務の観点では、複数事業主間の労働時間の管理の通算や労災の在り方、健康確保の状況について、現行の法制度に対応することは難しいのではないかという意見をたくさん頂いているところです。そういう点を踏まえますと、最終的にこれから議論を進めていくわけですけれども、労働者の健康確保と企業実務に混乱が生じないような、労務管理を両立するような検討をしていきたいと思っています。

 それから強調しておきたいと思いますが、いずれの課題についても、労災と安全衛生と労働時間は、相互に密接して関係している。1つの議論だけを先行することがないように、他の審議会の動向や他の論点との整合性についても、慎重に進めるようにお願いしておきたいと思います。

○荒木部会長 ありがとうございました。事務局からは、よろしいですか。

○労災管理課長 すみません。1点目の中間とりまとめという表現ですが、6月にまとめていただいた表題が結構長い表題になっているものですから、便宜上中間的とりまとめという文言を使っております。それほど大きな位置付けを変更するとかそういう意図ではなく、単に表現ぶりとして短くした、複数就業者のうんぬんという、検討状況ということでまとめていただいたのですが、そういう意味では短くしすぎたかなというところはありますけれども、特に位置付けを何か変えたとかそういう意図ではありません。あくまでも表現を短くしたということです。

 2つ目の御指摘事項については、健康確保措置、労働時間の管理は重要だということは、我々もしっかり認識しているところです。

○荒木部会長 村上委員。

○村上委員 ありがとうございます。今、輪島委員から御指摘がありましたけれども、926日に行われた労働条件分科会には私も参加しております。副業、兼業の、具体的には労働時間の通算の問題に関して、使用者側委員の皆さん方から様々な実務上の課題について御指摘いただいたのを、私どもも聞いてきたところです。また、労働側としても、実務上でいえば様々な課題があることは認識しているところです。ただ、そもそも副業、兼業を促進するしないという議論は、それはそれであって、、労災保険部会で議論しているのは、現在もダブルジョブ、トリプルジョブという複数就業をされている方がいて、そういう方々が被災した場合にどうするのかということです。、労働時間の通算の問題より先行させて議論をして結論を出していくことが求められているのではないかということです。何度もこれまでも申し上げてきた点です。

 本日示していただいた論点に関して1点意見を申し上げます。4ページの業務上の負荷を合算して評価することについての論点の1つ目です。ここに示されているように、複数の事業場で使用される場合に、同一の事業主や同一の派遣元からの派遣の場合には、それぞれの事業場での労働時間や心理的負荷が合算されて、全体として労災認定される一方で、事業主が複数の場合には、それぞれの負荷の判断となり全体としては評価されないという差が生じています。しかし、被災した労働者は、いずれの場合でも個人であり、事業主が異なるからということで別の人格になるものではありません。被災労働者に必要な給付を行って、労働者の福祉の増進を目的とするのが労災保険ですので、そういった観点からしますと、被災労働者個人に着目して同様に救済すべきであると考えております。以上です。

○荒木部会長 ありがとうございました。

○輪島委員 せっかくの村上委員の御発言ですけれども、労働条件分科会での議論は、労使ともに珍しく、兼業、副業の関係については、大きな方向性について同じような方向性でいると、私もそう感じたところです。労災保険だけ少し先行して議論をすることについて問題なし、構わないというところは、やはり私どもとしては若干ダブルスタンダードではないかとも思いますので、その点だけ申し上げておきたいと思います。

 それから、中間とりまとめという表現ですが、今の説明は分からないわけではないですが、そういう認識でいるかどうかというのは、若干認識に違いがあるのではないかということについても、コメントしておきたいと思います。

○荒木部会長 前回の中間とりまとめと今回言われているものは、普通の中間とりまとめでありますと、大体議論をして最終結論に至る途中の仮のとりまとめということですけれども、前回は新しい課題が白紙のまま提起されて、そこで中間とりまとめというのは、少し表現としては違和感があったところで、議論の整理という趣旨の文書であったと考えております。ほかにいかがでしょうか。

○安原委員 それでは、本日御提示いただいている論点の1-1、今、村上委員から1つ目について意見がありましたが、私からは論点2つ目について、これは少し質問になるかもしれませんが、申し上げたいと思います。論点2つ目ですけれども、複数の事業先の業務上の負荷を合わせて初めて評価されるという。

○荒木部会長 何ページですか。

○安原委員 4ページです。論点3つあるうちの真ん中の、目題の項目についての意見になります。まず確認ですが、ここで記載されている2行目の後ろのほう、災害補償責任という言葉が出てくるのですけれども、これは労基法上の災害補償責任という理解、整理でよろしいのかということが1点。それを前提で質問になりますが、複数の就業先の業務上の負荷を合わせて評価して初めて労災認定できるという場合に、通勤災害と同様に、いずれの事業場も災害補償責任を負わないという整理にした場合に、労働者についてのデメリットみたいなものは生じ得るかどうかについて確認したいと思います。

○荒木部会長 事務局からお願いします。

○労災管理課長 1つ目の御質問ですけれども、定義をしっかりせずに使っておりまして恐縮ですが、災害補償責任というのは、労働基準法上の災害補償責任ということです。ほかのページに書いてある災害補償責任も、全てその意味です。

 2点目ですけれども、労働者側のデメリットということですが、今の取扱いであれば、要するに業務上の負荷を合わせて評価して初めて労災認定できるというケースが、そもそも存在しておりませんので、今だと労災認定されないということになりますから、そういう意味ではデメリットは生じないのではないかと考えられると思います。

○荒木部会長 よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。

○楠委員 事務局に質問があります。7ページ、調査方法の2つ目、現行でもという所です。複数就業先での過重負荷又は心理的負荷があったことの申立てがあった場合、監督署がそれぞれの事業場での労働時間、具体的出来事を調査しているということですがが、補償災害が起きたときの請求については、原則被災労働者の勤務先を監督する労働基準監督署宛てに行うということになっておりますよね。そこで、複数就業先、勤務先が監督署の管轄をまたいでいる場合、それぞれの管轄監督署宛てに提出するということになりますが、複数の就業先の業務上の負荷を合わせて評価して初めて労災認定できるような場合には、それぞれの管轄監督署が横の連絡といいますか、お互いに連絡を取りながら最終的には合算して判断するということになるのか、別に何か付随した申請が必要になるのか、その辺があれば教えていただきたいと思います。

○荒木部会長 事務局からお願いします。

○補償課長 今の御質問は、管轄外にまたがった2つの事業場での場合、この場合仮に負荷を合算する場合にどのようになるのか。1つは、1つの監督署が処理するのか、今御指摘いただいたのは、2つの監督署でそれぞれ調査をして合算するのか、どうなるのかということです。これは、これから運用を決めていかなければいけない課題でもあるかと思いますけれども、現行2つの事業場にまたがって調査をしなければならない場合においては、請求を受けた監督署で基本的には調査をしております。ですから、他所管内にある事業場におきましても、請求を受けた監督署で労働時間なりの調査を行っている。現行ではそういう状況です。仮に負荷の合算を認めるときに、いずれの監督署でこれを判断するのかということですけれども、それについては、これから運用面でまた検討をしていかなければならない課題であると思っております。以上です。

○楠委員 これから運用で決めていくということで、次の8ページの論点の所ですが、論点で示された考えで基本的には問題はないのではないかと考えます。現行でも複数就業先での過重負荷、心理的負荷があったときの申立てがあった場合には、今お答えいただいたようにそれぞれの事業場について労基署が調査しているということですので、今後、複数就業先で業務上の負荷を合算するということになった場合にも、そういう運用がこれからまとまっていけば、請求人あるいは事業主に新たな事務的な負担を掛けないためにも、現行の認定プロセスというものでよいのではないかと考えます。以上です。

○荒木部会長 ほかにはいかがでしょうか。

○輪島委員 78ページの1-2.ですが、基本的には複数事業場の業務上の負荷を調査するということは、これまでどおり、つまり7ページにあるようなことでこれまでどおりとしても、仮に合算して認定するということになると、認定のプロセスはこれまでどおりでよいのかということだと思います。8ページで言うと、結論は同じなのかもしれませんが、認定プロセスを変更する必要はないのではないかという意味では多分、変更する必要はないのだと思うのですけれども、これまでの認定プロセスとは異なるプロセスになるのではないかというのは、事実ではないかなと思います。

○荒木部会長 プロセスが変わるのかというお話もあったのですが、いかがですか。事務局から何かありますか。

○労災管理課長 認定プロセスというのは、どこからどこまでを指すのかというのは、確かにやや不明瞭な感じがありますが、大まかなフレームとして監督署に申し立てていただいて、監督署が調査していろいろなものを総合的に判断して決めて、難しければ本省に協議を行うと。こういう大きなプロセスとしては変えなくてもいいのではないかなという意味で掲げました。おっしゃるように、仮に業務上の合算を行って評価するということになれば、今はやっていない。ある意味作業ですので、調査する内容は今までと同じということであったとしても、我々行政側として、最初にAという事業場でどうなのかな、Bという事業場ではどうなのかなと。どちらでも認定基準には達していないけれども、ABを足したらどうなってしまうのだろうかと。そういう意味での判断のための作業は、多分必要になるのだろうとは思われますが、大きな意味でのプロセスは、それほど変更しなくてもいいのではないかという意味で書かせていただきました。

○水島委員 私もこの点は疑問に思います。複数就業先の負荷を合算することに決まり、それを受けての申立てがあった場合、それが初めての事例となり、判断が付きかねるので、本省に協議を行って、そこでプロセスを含めて判断することになるのか、それとも複数就業先の負荷を合算することが決まったら、判断のプロセスをあらかじめ準備しておくのか、どちらかだと思うのですが、どのようにお考えですか。

○労災管理課長 あらかじめ細かく基準を定めておいて、監督署に判断させるというようにするのか、あるいはこういうケースについては、例えば本省に協議するようにという、そういうある意味ルールですが、ルールとして決めるのかということについては、まだこの議論はこれから続くと思いますけれども、その中で我々としても御議論いただきたいなと思っているところです。大別すると恐らくどちらかになるとは思うのですが、どちらかのやり方を考えなければいけないのだろうなと思っているところです。以上です。

○水島委員 業務上の負荷を合算して評価することを総論的な論点として出されているように思いますが、これは1つ先の議論にも思います。どのような合算であるかという中身を、ある程度決めておかなければ、業務上の負荷を合算するという論点を検討できないように思います。

 例えば、もともと脳・心臓疾患の例で挙げられていたのは、労働時間で、単純に労働時間プラス労働時間で負荷を合算することを想定されていたと思いますが、例えばAという事業場で労働時間が長くて、もう片方は労働時間は短いのだけれども、労働時間以外の負荷要因が厳しい場合に、そうしたものをどう合算するのかという疑問が出てきます。これは今話をすることではなくて、認定基準の話なのかもしれませんが。

 更に難しいのが精神障害で、これも労働時間プラス労働時間の合算であれば、比較的簡単ですが、事業場においてある出来事があって、例えばそれが「中」である。しかし、その後の使用者の対応や周りの同僚の対応いかんによって「強」と修正する、こういうことを行っているわけですよね。こうした修正は、現行の認定基準の下では、私の理解では一つの事業場の中で行われているのであって、そうなりますとA事業場の「中」エピソードと別の事業場の「中」エピソードを単純に合算できるのか、そうした疑問があります。

 負荷を合算すること自体には、必ずしも反対ではないのですが、負荷の合算を実際どのように行うのかということを、この場で詰めて考える必要はないのか、あるいは、それは認定基準の問題であると整理されるのかというところを、質問させていただきたいと思います。すみません、長くなりました。

○労災管理課長 最終的には認定基準であるとか、認定の方法をどうするかというところの議論で決めなければいけないと思っております。まず、今回いろいろと現行の取扱い等を示させていただいているのですが、今の認定基準の中でも労働時間、それから労働時間以外の負荷についてそれぞれ評価して認定していると、こういう状態にあるわけです。同一の事業場ということになってはいますが、先ほど申し上げましたように、事業場という単位で見れば同じ事業主の下でも複数の事業場で働いていらっしゃるという場合があって、そういう場合は要するに、複数の事業主に雇用されて複数の事業場で働いている場合と、負荷を評価するという意味では非常に似ているのではないかなと。医学的に見て、厳密に言うとどうなのかというのはあるかと思いますが、シチュエーションとしては非常に似ているのではないかなと思っております。

 したがって最初の例で、例えば労働時間と心理的負荷等をどうするのだということはあるのですが、まずはそれぞれの事業場で認定できるかどうかというのを評価して、どちらも認定基準には達していないと、認定できないということになった場合には、言わば1人の事業主の下での事業場ということで、複数事業場ということを仮にですけれども、そういうやり方が良いかどうかは多分、これからの議論に委ねられるのだと思いますが、複数の事業場で1人の事業主の下で働いていると、こういう場合に、ある意味擬制して判断することも可能なのではないかなと思っています。

 ただ医学的に厳密にそれが正しいのかどうかということはありますので、いずれにしても認定基準をどうするのかといった問題になろうかと思います。それはまた別途、検討が必要なのかなと思っております。

○荒木部会長 よろしいですか。ほかにはいかがでしょうか。

○楠委員 私も負荷の合算についてです。これは何ページということではなくて、就労の在り方についてです。仮にA社、B社で労働者として就労する場合、1日の間で夕方まではA社、その後はB社という就労の在り方もあると思いますし、例えば1週間の中で3日はA社、残り2日はB社とか、1か月の中で10日はA社、残る10日はB社とか、1年の場合もあると思います。そういった就労形態の中でどの程度の期間までを負荷の合算として対象とするのか、その辺のお考えがあれば教えていただければと思います。

○補償課長 現在考えているというか、これもまた今後の議論になるのかもしれませんが、負荷の合算については、例えば脳・心臓疾患であれば、発症日から6か月を見ておりますので、基本的にはその中で見るのかなと思っております。複数事業場の場合はまた違うのだという医学的知見があるのであれば、それはまた今後の議論になるのではないかなと思いますが、現時点ではそのように考えています。

○楠委員 分かりました。

○荒木部会長 ほかにはいかがでしょうか。

○村上委員 先ほどの安原委員の質問に対してお答えいただいた点です。もう一点確認しておきたいのですが、資料4ページの○の2つ目の部分に関連してなのですが、複数の事業場の負荷を合算して初めて労災認定できるという場合については、いずれの事業場でも災害補償責任ではなく通勤災害と同様にするといった場合、通勤災害と同様ということでいうと、労基法第19条の解雇制限なども掛からないということになるのかならないのかについて、若干どうなのかなというところはあります。そういう質問と、先ほどの水島委員の疑問は、私どもとしても疑問というか、解決していかなくてはいけないと思っております。ただ、この場で何かできる話ではありませんので、制度、枠組みを作った後、並行的に、医学的にどのように判断するべきなのかということを、少し研究していただくことは必要ではないかと思っております。

○荒木部会長 最初の点は、事務局からよろしいですか。

○労災管理課長 基準法上の問題ということになりますので、この部会の所掌ではないかもしれないのですが、ただ、災害補償責任と表裏一体の条文だとは思いますので、そこは基本的に適用されないのではないかと思います。条件分科会のほうの所掌かなと思っておりますが、いずれにしても通勤災害と同様にというのは労災保険制度の中で、要するに災害補償責任と必ずしも対になっていないと、こういう意味で使わせていただいたということです。以上です。

○輪島委員 先ほどの村上委員の発言について、水島委員の発言もそうですが、1112ページの所で言えば、11ページはA社のもので、合算するわけですから、もう一枚フローチャートがあって、A+Bでどうするのかというプロセスに違いが当然できるのだろうと思います。そのため、それはどのようになるのかというところで、数が少なければ本省協議だということをきちんとフローも考える必要があるのではないかと思います。

 4ページの1-1.の論点の所ですが、やはり事業主が違うということで業務上の負荷の判断において、様々な点を考慮しなければいけないのではないかと思っています。事業主の相違で、合算のルールを異ならせている点という意味では合理性があると思いますが、やはり疑問というか、例えばイメージを考えると、同じ業務内容であったとしても、同じ事業所で月80時間の時間外労働をしているケース。2つ目は、兼業、副業で2つの事業場でそれぞれの所定労働時間が週30時間ずつということで、1人の人は20時間の時間外になるので、×480時間で月80時間。ということは、先ほどの1事業所で80時間と、複数事業所で80時間というのは同じケースになると思いますが、それを同じ負荷として本当に評価できるのかどうか。

 それから、余りイメージできないのかもしれませんが、例えばA事業所ではハラスメントを受けていて、B事業所では上司が非常に良い人で、非常に快活に働いているとすると、そのときに合わせ技で中+弱が強になるのかとか、そういうようなことも含めて、事業主が異なれば考慮要素が大きく異なってくるということなので、このように機械的に合算することは本当にそうなのかどうかという気がしないでもないということです。

 4ページの2つ目、3つ目の点ですが、合算して初めて労災認定できるということであれば、1つの事業場で労災補償責任を負わせることはできないのではないかと思いますし、3つ目の○について言えば、1つの事業場の業務上の負荷によって労災認定ができるというのであれば、それはそれで、そういう方向性なのかなとも思います。

○荒木部会長 恐らく負荷の合算という言葉が適切でないのかもしれませんね。合算というと足し算で、40時間と40時間を足したら80時間だというようなことをイメージしがちなので、そうではないと。性質の異なるものを両方考慮して、判断できないかというのが提起されている課題かと思いますが。

○労災、建設・自動車運送分野担当審議官 今ほど来、負荷の合算の議論がずっと出ておりまして、この部会で御議論いただくべき範ちゅうと、また、やはり私どもはこの認定基準を作って、過労死の関係の労災認定をやらせていただいておりますが、極めて医学的な知見に基づいて作らせていただいているというのが実態です。輪島さんがおっしゃる点は、いろいろごもっともな点はあろうかと思います。

 実は脳・心臓疾患の認定基準、この場でも大前先生から御質問がありましたが、80時間は何を根拠に出しているのかというお話の元になりますと、やはり睡眠時間の話になってまいります。それは、124時間ですし、これは個人にとっては同じものですので、そこのところをどのように捉えるのかという話になりますと、先ほど来ちょっと合算についても御議論がありましたが、どちらかというと合算のような世界なのかなという感じもいたしますけれども、それはまた合算、負荷についての御議論がこの場で決まった後に、運用の段階の議論として認定基準をどのようにしていくのか、あるいは認定基準にどうやって当てはめるのかというようなところで御議論していくべき課題なのかなと。

 また、精神の場合は出来事をどのように見るかと。もちろん120時間とか、非常に長い時間働いていたというのもありますが、基本的には出来事をどう見るかということでやっておりますので、そこのところがA社、B社どう違うのかをどのように見るか。これもやはり、かなり医学的な整理をもとに我々は今までもやっていますし、今後も新たな取扱いということであれば、そういうことを議論していかなければいけないと考えているところです。村上委員がおっしゃったように、どういうところまでこの部会で議論の範ちゅうとしていくのかというところとも絡みますが、私どもとしては現状、制度的な枠組みの議論と、その先、もし制度的枠組みが整理されれば、運用の議論を行政のほうでさせていただきたいと考えているところです。

○荒木部会長 具体的な判断基準については非常に専門的な知見も必要ということですが、基本的な考え方についてここでは議論していただきたいということかと思います。そういう点では14ページの論点辺りは、もし可能であれば御議論いただければと思いますが、いかがですか。輪島委員、どうぞ。

○輪島委員 この点では基本私どもとしては給付の合算と同じような考え方を取るのが自然ではないかと思っています。

○荒木部会長 どうぞ。

○輪島委員 業種については、同じ業種があり得るのか。例えばコンビニとコンビニ、ファミレスとコンビニ、清掃とクリーニング、それとも同じ業種の中でやるときにどうするのかというのと、A事業所とB事業所が業種をまたぐときに、そこでメリット制をどうするのかとか、よく考えますと結構難しいと思っています。

○荒木部会長 14ページの論点は2つありますが、最初の○、仮に業務上の負荷を合算して評価して労災認定をする場合、当該給付に係る保険料負担についてどのように考えるか。この問いの意味をもう少し事務局から分かりやすく説明していただけますか。

○労災管理課長 これは端的に言いますと、保険料率を定める際にどういう負担にするかということです。そういう意味では、今は業種によって異なる料率になっている部分もありますので、そういう考え方にするのか、それとも全業種共通ということで全て同じ率で負担を頂くのか、多分、基本はその2つになると思います。それも含めて、ほかにもいろいろな応用パターンがあるのかもしれませんが、マクロとしてどういうふうに負担したらよいのかというのが1つ目の論点です。2つ目は、個別の事業場へのメリットへの反映の仕方ということです。

○荒木部会長 確認ですが、仮に業務上の負荷を合算して評価して認定する場合というのは、合算しなければ労災認定できない場合ということですね。

○労災管理課長 おっしゃるとおりです。

○荒木部会長 合算して初めて認定することになったという場合に、Aという業種とBという業種で就業しているときに、Aでも労災が起こった、Bでも労災が起こったとして、保険料率の計算に反映させるのか、それとも個別に見た場合には労災認定はできないので、特定の業種における労災発生とは評価せずに、何か一律の通勤災害と同じように、どこの業種で起こったとはせずに一律に算定する。いずれの保険料負担と書いてあるので少し分かりにくいのですが、保険料率の計算においてどう取り扱うかという問題提起でよろしいですか。

○輪島委員 はい。

○荒木部会長 ということですから、これは特定の事業主の話をしているのではなくて、当該業種の保険料率の算定においてどう扱うかというのが第1の問いです。第2の問いは、そうやって決まっている保険料率に関して、保険給付がなされたことを個別の使用者のメリット制に反映させるべきか。そういう2つの問いということです。この点についていかがですか。

○山内委員 基本的なことに戻るかもしれませんが、この部会で決める枠組みの話は先ほどあったかと思いますが、ずっと議論されている業務上の負荷を合算して認定するかしないかということは、この部会で決めるべき枠組みですか。

○荒木部会長 恐らく、そこはここで決めて、それはどういう基準で認定するかというのは、かなりテクニカルなことになると、そういう整理かと考えております。

○山内委員 労災認定を認定するしないに、合算するしないというのを保険部会で決める。

○荒木部会長 現在では、1事業場単位でしか認定しないような扱いになっているところ、複数就業の場合にも、その負荷を合算と言いますか、双方考慮した場合には認定でき得るのではないかということになれば、それは具体的にどうやるかというのは、より専門的な検討に移すのかもしれませんが、今は事業主が異なる、事業場が異なるというときに負荷を双方考慮していないのを、双方考慮して被災労働者を救済するべきか否かということが今議論されていると思います。

○山内委員 今更ながらの部分でもあるかもしれませんが、労災保険として複数の就業先で働いていらした方が傷病等になって、片方しか保険が下りないこと自体の現行の問題点については、そんなに隔たりがないのではないかというところだったかと思います。やはり一番引っ掛かっていたのは、合算をどうやって考えるかという話と、その場合の労災認定をどういう仕組みでやっていくのかという辺りが引っ掛かっていたと思います。これまでの論点の整理ですが、仮に業務上の場合はどうだという御議論しかなくて、本当に労災認定自体合算するかしないかをこの部会で決めるとしたら、「仮に」を取ったところを議論しなければいけないのではないかと感じております。

○本多委員 既にあった発言と重なるかもしれませんが、これまでの議論は額の合算、今回負荷の合算ですが、額の合算についてもかなり議論が早いなという話が各委員から出ていたと思います。それでも本当に十分に議論されたのだろうかという認識は若干あります。

 負荷の合算について、基本的方向を定めるというのは、この部会の役割であれば、もう少し現実のところを企業側としてもいろいろな課題があると思いますし、それが監督署としてもいろいろなことがあると思いますが、そういうところの課題を掘り下げてみないと方向性を定めることはできるのでしょうか。先ほど認定基準に関しても、詳細については確かに別の所で専門的な議論をされるのでしょうが、大きな枠組みはある程度我々も認識をしておかないと方向性を導き出すのはなかなか難しいような気がします。いずれにしろ、少しスピードが早過ぎるのではないかという認識があります。

○荒木部会長 ありがとうございました。ほかに御意見はありますか。

○髙橋委員 私もこの場には初めて出させていただきましたが、前任担当者とこれまでの経緯について引継ぎを行った中で、ここの部会の中で決めるのは、今現在の法律では認定されない、適用されないような労災というものに対する法的な枠組みであって、その中の具体的な運用については別の所で、あるいはこの後の議論の中でしていくのだと認識しております。今現在、単一事業所でないと認定できないものを、2つの事業所あるいは複数の事業所に広げるということは、今の法律の枠を超えた考え方をどうするかという大きなフレームの話だと思っておりますし、やはりそれについてはここで議論をして方向性を決めていかないといけないと思っております。全体のフレームと、その中身の議論等が多少曖昧なところがあって分かりにくい部分もあると思いますが、その辺はもう一度はっきりと確認する必要があると思います。少なくとも、ここでは今の法律で決められているもので対応できないものについてどういうふうに決めていくかという認識であるということを、1つの意見として述べさせていただきます。

○荒木部会長 ありがとうございました。例えば14ページの問題などは、これに「仮に」と書いてあるのは、例えばメリット制などは自分の事業場における就労のみでは労災とは認定され得ない事柄が、複数就業の他の事業場での就労も合わせ考えると、労災認定されたとしても、それが自分の就業関係で発生した労災としてメリット制によって不利に考慮されるというのは、恐らく合理的でないと多くの方が考えるのではないかと。そういうコンセンサスができれば「仮に」というのは取れて、メリット制には反映させないと考えるのが妥当ではないかということで、1つ問題のクリアができる。そういうことで、論点としては仮に、こういうことがあるのだけれどもどう考えるべきかという提示がされているのかなと考えております。この点について御意見があれば伺いたいと思います。そのことを判断するためには、なおもう少し調査を踏まえた上での検討が必要ということであれば、その旨の御提示があってもいいかと思います。そういう議論を今しているのかなと考えております。

○輪島委員 そういう意味で、14ページの論点1の「保険料負担」については、先ほども申しましたように、同じ業種の中で仮に兼業していたとしても、災害補償責任というのは、他の事業場においては発生はしていないわけですから、そういう意味では保険料負担に影響を与えないようにすると、先ほど申し上げたとおりですが、給付の合算と同じような考え方、メリット制についても同じような考え方を取るのが自然ではないかと思っております。

○荒木部会長 この点については労働側は何か御意見はありますか。

○村上委員 労災保険の保険料負担は、実際、事業主側の負担ということですので、特段こうすべきという形ではないのですが、通勤災害と同様の整理をするということであれば、輪島委員が御指摘のような形の額の合算のときと同じような整理となっていくのは妥当ではないかと考えております。

○荒木部会長 他の論点でも結構ですが、何か御意見はありますか。

○髙橋委員 大きな2番の「特別加入」のほうでも大丈夫ですか。

○荒木部会長 どうぞ、特別加入のほうでも。

○髙橋委員 特別加入のほうで、20ページの2つ目の○、副業で特別加入していない場合についてまで合算の対象とするのかどうかということですが、基本的には副業で特別加入できるにもかかわらず、特別加入していないということであれば、それについては特段合算対象にする必要はないのではないかとは考えます。ただ、この場の議論ではなくて、別の場の議論になるのかもしれませんが、特別加入制度というのは、最初の御説明にもありましたとおり、昭和40年からスタートしている制度ということと、以前の部会の中でも質問があったと思いますが、特別加入の対象となる業種はどこにするのかというのが、何か数字的な基準があって決まっているということではなくて、過去からの経緯の中でできたということを考えますと、この辺についてはもう一度見直しをする必要があるのではないかと思います。

 19ページの現行制度にあるとおり、「業務の実態、災害の発生状況等からみて労働者に準じて労災保険により保護するにふさわしい者」と書いてありますので、特別加入制度がセーフティネットとして機能するように、その対象がどこになるのかということを含めて、もう一度見直しをするのが必要ではないかと思います。

○荒木部会長 ありがとうございます。輪島委員、よろしいですか。

○輪島委員 同じく20ページの1つ目の○については、雇用足す雇用の議論をしているわけで、そういう意味では雇用足す特別加入ということになろうと思いますので、基本的にここにあるように、労働者としてカバーをするということではないかと思います。

 2つ目は髙橋委員と同じですが、やはり加入をしていないということであれば対象外になるのではないかと思います。

○荒木部会長 ありがとうございました。ほかにはいかがですか。

○黒島委員 今、輪島委員からもありましたが、20ページ、論点の1つ目ですが、労働者の場合と異なる取扱いにする必要はないのではないか。つまり、1つ以上特別加入している場合は、賃金額の合算や負荷の合算において、そういった制度の趣旨を踏まえますと、労働者と同様の扱いにするということになりますので、そういった方向性、考え方については労働側も賛成という立場です。

 労基法上の労働者ではなくても、労働者に準じて労災保険によって保護するにふさわしい者として、労災保険に特別加入しているわけですから、同様に取り扱うべきだと考えております。以上です。

○荒木部会長 ほかにはいかがですか。特にほかにないということでしたら、本日の議論は以上といたします。どうもありがとうございました。本日の議事録の署名委員は、労働者代表の村上委員、使用者代表の山内委員にお願いします。本日は御多忙の中、御参集いただきどうもありがとうございました。