2019年10月25日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和元年10月25日(金)16:00~

場所

厚生労働省専用第22会議室(18階)

出席者

出席委員(17名)五十音順

(注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(4名)

行政機関出席者

 樽見英樹(医薬・生活衛生局長)
 森和彦(大臣官房審議官)
 山本史(医薬品審査管理課長)
 関野秀人(医薬安全対策課長)
 新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
 森口裕(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
 宇津忍(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
 鈴木章記(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役) 他
 


 

議事

○医薬品審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催させていただきます。本日は遅い時間、またお忙しい中、さらにかなり天候が悪い中、御参集いただきまして本当にありがとうございます。本日の委員の御出席の状況でございますが、大賀委員、金子委員、川上委員、増井委員より御欠席との御連絡を頂いております。まだ到着されていない先生もおいででございますが、本日現時点におきまして、当部会委員数21名のうち16名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告申し上げます。
 続きまして部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について御報告申し上げます。今回全ての委員の皆様より薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいております。委員の皆様におかれましては会議の開催の都度、書面の御提出をお願いしており御負担をお掛けしております。恐縮ではございますが、引き続き御理解と御協力を頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、杉部会長に以降の進行をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○杉部会長 それでは、本日の審議に入りたいと思います。まず事務局から配布資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、報告を行ってください。
○事務局 それでは配布資料の確認を順番にいたします。本日、机上に議事次第、座席表、座席表の裏面に部会委員の名簿を配布しております。また、議事次第に記載されている資料1から10-3をあらかじめお送りしているところです。会議のペーパーレス化に向けた取組として、本日の部会ではあらかじめお送りした紙資料と同様の内容の電子ファイルをタブレットに格納し、閲覧していただけるようにするとともに、机上配布の紙資料を審議品目に係る諮問書、審査報告書及び添付文書としております。このほか、資料11の審議品目の薬事分科会における取扱い等の案を机上に配布し、またタブレット内には資料12として、審議品目に係る専門協議の専門委員リストを、資料13として競合品目・競合企業リストを格納しております。タブレットの動作不良などがありましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し付けください。
 続いて本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告いたします。タブレットの資料13を御覧ください。1ページ目ですが、コレクチム軟膏0.5%です。本品目はアトピー性皮膚炎を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の品目を競合品目として選定しております。
 続いて2ページ目ですが、ソリリス点滴静注300mgです。本品目は視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の品目を競合品目として選定しております。
 続いて3ページ目ですが、ルセンティス硝子体内注射液ですが、本品目は未熟児網膜症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 4ページ目を御覧ください。andexanet alfaですが、本品目はこちらに記載の予定効能・効果としておりますが、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 最後に5ページ目ですが、システアミン塩酸塩になります。本品目はシスチン症における角膜シスチン結晶の溶解を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。以上です。
○杉部会長 今の事務局からの説明に、何か特段の御意見と御質問はございますでしょうか。それでは、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆さんの了解を得たものといたします。それでは委員からの申出状況について、報告をお願いいたします。
○事務局 各委員からの申出状況につきましては、次のとおりとなっております。まず議題1のコレクチムですが、退室委員はなし、議決に参加しない委員は代田委員、議題2のソリリスにつきましては退室委員なし、議決には参加しない委員が代田委員、武田委員。議題3のルセンティスにつきましては、退室委員なし、議決には参加しない委員が大森委員。議題4、議題5は退室委員、議決に参加しない委員ともにございません。以上です。
○杉部会長 今の事務局からの説明に何か御意見ございますでしょうか。なければ皆さんに確認いただいたものとしたいと思います。本日は今のお話のように審議事項は5議題、それから報告事項が5議題となっております。それでは審議事項の議題1に移りたいと思います。議題1について、機構から概要の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料1、医薬品コレクチム軟膏0.5%の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。タブレットを御覧になる際には、資料1のフォルダを開き、星印のマークが付いている審査報告書のファイルをお開きください。
 アトピー性皮膚炎に対する基本的な薬物治療は外用療法とされており、現在、ステロイド外用剤やタクロリムス軟膏等が使用されております。本剤はデルゴシチニブを有効成分とする軟膏剤です。本剤はJAK/STAT経路の活性化を阻害し、各種サイトカイン刺激により誘発される免疫細胞及び炎症細胞の活性化を抑制することにより、アトピー性皮膚炎に対して効果を発揮することが期待され、開発に至りました。今般、アトピー性皮膚炎患者を対象とした国内臨床試験により、当該患者に対する本剤の有効性及び安全性が確認され、医薬品製造販売承認申請がなされました。
 なお、2019年9月時点において、本剤は海外において承認されておりません。本品目の専門協議では、本日の配布資料12に示します専門委員を指名しております。以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性に関しては、審査報告書、青字で表記しております通し番号の34ページ、表31を御覧ください。国内第III相試験の主要評価項目である最終評価時、こちらは投与4週後又は中止時に当たりますが、mEASIスコア変化率について、本剤群はプラセボ群に対する優越性が検証されました。以上より機構は、アトピー性皮膚炎患者に対する本剤の有効性は示されたと判断しました。
 安全性に関しては、審査報告書通し番号34ページ、表32を御覧ください。国内第III相試験の投与4週後までの有害事象の発現状況を示しております。プラセボ群と比較して、本剤群で有害事象の発現割合が高かったものの、本剤群で特定の有害事象が多い傾向はなく、また、本剤群で認められた有害事象はいずれも軽度又は中等度でした。
 さらに審査報告書通し番号44ページ、表45を御覧ください。本剤の長期投与時の有害事象の発現状況を示しております。投与期間の長期化に伴い、有害事象の発現割合が増加する傾向は認められませんでした。
 次に、審査報告書通し番号45ページ、7.R.2.5の項を御覧ください。本剤の注目すべき有害事象として、本剤の塗布部位における皮膚感染症の発現状況について検討しました。カポジ水痘様発疹は、国内試験において本剤群のみに認められ、国内第III相試験の1例は重篤な副作用とされたことから、本剤投与中はカポジ水痘様発疹を含む皮膚感染症の発現に注意が必要と考えました。したがって、添付文書において皮膚感染部位には塗布することを避けるよう、注意喚起する必要があると考えました。以上より機構は、皮膚感染症の発現に十分注意しながら使用することで、本剤の安全性は許容可能と考えております。
 以上、機構での審査の結果、アトピー性皮膚炎に対する本剤の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、本剤を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。なお、本品目は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体は劇薬に該当し、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しました。薬事分科会では報告を予定しております。機構からの説明は以上になります。御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
○杉部会長 今の御説明に対して、先生方から何か御質問、御意見ございますでしょうか。
○長島委員 既存の類薬、外用ステロイドとかタクロリムス軟膏との使い分けというのが非常に重要になってくるかと思うのですけれども、その辺り、例えば学会にガイドラインの作成をお願いするとか、何かお考えでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。その点については、本剤は初のJAK阻害剤の外用剤になり、外用ステロイドやタクロリムス軟膏との使い分けについて、臨床現場に十分な周知が必要かと考えております。学会とも連携してガイドラインに記載していただくように、働き掛けていきたいと考えております。
○長島委員 最近は、薬剤の選択の場合に医療経済的な視点も必要とされておりますけれども、この薬剤はもし薬価が付くとなると、類薬よりはかなり高くなると予想されるようなものでしょうか。
○医薬品審査管理課長 薬価の話ですので、ほかの部署が所掌しているということで、はっきりしたことは言えないのですが、類薬に比べて高くなる可能性はあるとは思っております。
○杉部会長 よろしいでしょうか。では、そのほか先生のほうからどうぞ。
○大谷委員 本剤は基本的には外用剤ということで、全身的な副作用はほとんど臨床試験等でも見られていないように感じます。ただ、薬物動態のところを拝見しますと、一応血漿中に実際に薬物が検出されているということ、それからその定量下限が1.0ng/mLということで、これはin vitroのデータと比較するためにモーラー(M)に換算しますと約3.2nM程度、そして高い例ではこの10倍、すなわち32nM程度の血漿中濃度が確認されているという面がございます。
 こういった観点で、一方で臨床ではなくて、今度は基礎のほうの薬理試験を見ますと、in vitroでのJAKファミリーに対する阻害作用は、大体1桁nMということですので、ほぼIC50に近い所が定量における下限に設定されているという形になります。こういった観点で、こういうかなり全身性の副作用も一応考えなければいけないような薬剤において、この薬物動態を考えるときに定量下限が1.0ng/mLという設定が果たして十分なものなのか、マスを使って測っているのであれば、もう少し精度の高いような検出方法があったのではないかという点について、要するに、どこまでこういう薬剤に対して血中濃度をしっかりと追っていくことが必要というふうに審査の中で考えておられるのか、その辺の御意見を拝聴したいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 まず血中濃度に関しては、既承認の経口JAK阻害剤と比較して、本剤は低濃度になっております。
○大谷委員 それは同じ成分ではないですね。
○医薬品医療機器総合機構 同じ成分ではないです。
○大谷委員 そうすると、それは当然Ki値若しくはIC50値との比において、IC50の何倍、Ki値の何倍の血中濃度、そこで比較しないと恐らくいけないと思うのですが、そこで見ても低いということでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 IC50は、類薬同士ではそんなに変わらないと思うのですけれども、IC50は試験系によって変わってくるので、血漿中の濃度と比較するのは、かなり難しいと考えます。
○大谷委員 いわゆるvitroでのポテンシーの比同士の比を取る形が一番正しいと思うので、そこがちゃんと確認されていればいいと思うのですけれども、ちょっと疑問に思いましたのでお伺いした次第です。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。また本剤の検出方法に関してはLC/MSを使っていて、これ以上の感度というとなかなか難しかったのかなというところで考えております。御指摘ありがとうございました。
○赤羽委員 全身投与したほかの場合と比べますと、この皮膚軟膏の場合は副作用はかなり少ないということではあるのですけれども、やはり特にアトピー性皮膚炎の患者さんですと、皮膚のバリヤー機能が障害されているような方々もいらっしゃるかと思うのです。
 通し番号で29ページになりますでしょうか、表22の所で症状の重症度と血中への移行との関係を出した表では、やはり重症度が高いほど血中移行率が高くなる傾向があるようなのと、その下に書いてある副作用の発現と重症度の関係に関しても「余り相関はなかった」と書いてはあるのですけれども、実際には60何%から70何%まで、それなりに相関はあったようなのですが、患者さんへの何か使用説明書などで、その辺のところの、特に皮膚の状態と血中濃度の関係、それから副作用の発現率のリスクに関して、何か資材のようなもので提供されるような御予定はおありでしょうか。一応添付文書のほうには、それなりの説明はされているのですけれども、なかなか一般の方に分かりやすいような形では書かれていないように感じたのですけれども。
○医薬品医療機器総合機構 資材で、その点については十分説明する必要があると考えます。また、添付文書には既に記載のとおり、潰瘍部位等では皮膚吸収が高まる可能性があるので、塗布を避けるよう注意喚起しています。
○杉部会長 よろしいでしょうか。
○堀委員 塗り方についてお尋ねします。ステロイド軟膏を使用する場合ですと、例えば眼の周りの使用は駄目とか、ステロイドの用量によっては、塗る部位が限定されるものがあるかと思います。今、この添付文書を拝見していますと、眼の周りは駄目という指示がなく、最大1回につき塗布量が5gということしか書いていません。そうなると眼の周りのアトピーの場合、すごく眼の周りの部位に5グラム全部を厚く塗ってしまって、結局一部の所だけがすごく厚くなってしまってもそれで良しとする方もいらっしゃると思うのです。そのような場合を考えると、その使用法、塗り方については、今の赤羽委員の関連にはなるかと思うのですけれども、添付文書に詳しく何か書かれるということは予定されていますでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 添付文書の適用上の注意に、眼に入らないように眼を含む粘膜への塗布は避けることや、眼に入った場合は十分に洗うよう注意喚起をさせていただいております。また、患者さんに、使い方を十分に周知していく必要があると考えており、現在、申請者が患者向けのガイドを作成中ですが、適正使用ができるように、本日頂いた御指摘を踏まえて、十分に申請者にも申し伝えたいと思っております。
○堀委員 ありがとうございます。どうしても眼の周りに関しステロイド軟膏とかの場合ですと、それは避けてくださいという文言が書かれていることが多いので、その部分に関しましては、それが可能かどうか、是非明示していただければ幸いです。ありがとうございます。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。
○長島委員 ほかの薬剤との併用に関する注意喚起を、添付文書に書くかどうかという問題で、報告書の49ページの下のほうで、本剤とタクロリムス軟膏については、併用に関する臨床試験成績はないことから「使用を推奨できる根拠は乏しい」と書いてあって、「したがって、本剤とタクロリムス軟膏との併用については、医師が個々の患者の状態を踏まえ、病変部位によって使い分ける等の慎重な判断が望まれる」と書いてあるのですが、このことが添付文書には反映されていないと思うのですけれども、ここのところで、特に初めて使うような場合、きちんと注意喚起する必要はないでしょうか。
○審査第一部長 本剤は皮膚科領域の外用薬ですので、内服薬の場合の併用投与とは異なり、体のある部分にはタクロリムス軟膏、ある部分には本剤、あるいはステロイドと外用剤を部位別に塗布することを「併用」と記載させていただいております。病変部位でも、先ほどのびらんの部位は避けるとか、強いステロイドの場合は顔の部分は避けるとか、そういった個々の病変について使用する薬剤を医師が判断していくことになると考えております。
○長島委員 要するに臨床試験成績がないし、併用を推奨できる根拠は乏しいと書いてあるので、そのことはきちんと伝えないといけないのではないかと思いますし、病変部位によって使い分ける等の慎重な判断が望まれるということも、はっきりと伝えるべきではないかと思いますがいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 その点については、資材で適切に対応させていただきます。また、併用したときの有効性・安全性については、製造販売後調査の中で情報を収集し、今後に活かしていくべきだと考えておりまして、その点については申請者に伝えております。
○杉部会長 そのほかいかがでしょうか。特にございませんでしょうか。今の49ページの件については情報提供に御留意いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 それでは議決に入りたいと思いますが、代田先生におかれましては利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことにいたします。本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは承認を可といたしまして、薬事分科会に報告させていただきます。
 それでは議題2に移りたいと思います。議題2について、機構から概要の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料2、医薬品ソリリス点滴静注300mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構よりご説明いたします。タブレットの資料2のフォルダを開き、星印の付いている「審査報告書」のファイルをお開きください。
 本剤の有効成分であるエクリズマブ(遺伝子組換え)は、ヒト補体であるC5に対して高い親和性を有するヒト化モノクローナル抗体です。本邦では、2010年4月に「発作性夜間ヘモグロビン尿症における溶血抑制」、2013年9月に「非典型溶血性尿毒症症候群における血栓性微少血管障害の抑制」、2017年12月に「全身型重症筋無力症(免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法による症状の管理が困難な場合に限る)」の効能・効果で承認されています。
 今回の開発対象である視神経脊髄炎スペクトラム障害は、中枢神経系の自己免疫性炎症性脱髄疾患であり、本剤は補体C5の開裂を阻害し、抗アクアポリン4抗体を介した補体活性化によるアストロサイトの傷害を抑制することで、再発の抑制作用を示します。
 今般、視神経脊髄炎スペクトラム障害に対する有効性及び安全性が確認されたとして、医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。海外では、2019年8月現在、米国、欧州等の50の国又は地域において本剤は承認されており、視神経脊髄炎スペクトラム障害については、2019年6月に米国にて、2019年8月に欧州にて、承認されています。なお、本剤は希少疾病用医薬品に指定されています。本申請の専門委員として、資料12に記載されている5名の委員を指名しています。
 臨床成績を中心に、審査の内容を説明させていただきます。まず有効性ですが、審査報告書の一番下、全31ページの通し番号で8ページの表3及び9ページの図1を御覧ください。視神経脊髄炎スペクトラム障害患者を対象とした国際共同第III相試験において、表3に示しましたように主要評価項目である、独立評価委員会により判定された初回の治験中再発までの期間について、本剤群とプラセボ群との間に統計学的な有意差が認められ、9ページの図1のカプランマイヤー曲線で示したように、再発が抑制されています。
 次に安全性ですが、審査報告書の通し番号16ページの表13を御覧ください。表中のNMOSDが今回の申請対象の視神経脊髄炎スペクトラム障害となりますが、既承認効能・効果における本剤の安全性プロファイルと比べ、視神経脊髄炎スペクトラム障害患者で臨床上問題となるような差異は認められていないことから、添付文書において既承認効能・効果と同様の注意喚起をすることが適切と考えています。
 効能・効果については、審査報告書の通し番号21ページ、下から8行目の「機構は以下のように考える」から始まる段落を御覧ください。視神経脊髄炎スペクトラム障害の治療は、急性増悪期の治療と再発予防に大別され、それぞれ治療方法が異なり、国際共同第III相試験では、再発までの期間が評価されたことから、本剤の効能・効果において再発予防である旨を明記し、「視神経脊髄炎スペクトラム障害の再発予防」とすることが適切と考えています。
 また、国際共同第III相試験で本剤の作用機序の観点から、抗アクアポリン4抗体陽性の患者のみを対象としたことを踏まえると、効能・効果に関連する使用上の注意において、「本剤は抗アクアポリン4抗体陽性の患者に投与すること。」と注意喚起することが適切と考えています。
以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年間とすることが適切と判断しました。薬事分科会には報告を予定しています。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○杉部会長 それでは、先生方から何か御質問、御意見はありますか。
○長島委員 添付文書によると、本剤は抗アクアポリン4抗体陽性の患者に投与することとなっていますが、1つは陽性と陰性の患者の割合はどれくらいかというデータがあるのかということと、この抗体の検査は保険適用になっているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構よりお答えします。診療ガイドラインに、抗アクアポリン4抗体陽性患者は約8割程度、陰性患者は2割程度という記載があります。また、抗アクアポリン4抗体の検査については、保険適用されています。
○杉部会長 そのほかはいかがでしょうか。
○佐藤委員 添付文書で、抗アクアポリン4抗体陽性のことについては5.10の所で書いてあるのですが、これを4番の効能又は効果の所で「抗アクアポリン4抗体陽性患者の」というように書かないのは、なぜでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。全身型重症筋無力症においても、実際には効能・効果に関連する注意の項で、5.9として抗アセチルコリン受容体抗体陽性の患者に投与することと記載されています。この全身型重症筋無力症も実際には抗体陽性の方を対象にして実施されています。今回の視神経脊髄炎スペクトラム障害も同様な状況になりますので、同様な対応とさせていただいています。
○杉部会長 よろしいでしょうか。
○奥田部会長代理 この効能・効果ですけれども、急性期が終わった後にお薬を投与して再発を予防するということだと思うのですが、やめどきというのはどのようにお医者さんは判断するのですか。ずっと使い続けるお薬ですか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構よりお答えします。
 視神経脊髄炎スペクトラム障害は、再発によって非常に大きな視力障害や脊髄障害に伴う歩行障害等を受ける疾患です。なるべく長期にわたって、再発がない状態を維持することが重要と考えています。現時点で疾患の活動性を評価し、再発予防薬を中止しても大丈夫と判断できる医学的な情報は、まだ確立されていません。基本的には個々の患者の状態を診ながら、本剤を継続していくことになると考えます。添付文書で注意喚起していますように、再発の頻度について検討し、「再発の頻度の減少が認められない」ような状況の場合には、継続の可否を判断していただくように注意喚起をしています。
○奥田部会長代理 良い効果が期待できるようなデータなのですが、長期間使うと例えば自己抗体などができて使えなくなったりするということが起きると問題と思うので、一体どのように使っていくのかをお伺いした次第です。この薬に対する自己抗体ができるかどうかというのは、そういったことはまだ検討や調査というのはないのですか。
○医薬品医療機器総合機構 今回の臨床試験では、自己抗体の有無による有効性の減弱等については十分に評価されていません。
○杉部会長 そのほかは。
○飯島委員 この薬剤は、髄膜炎菌感染症が非常に重篤な合併症として問題になると思うのですが、ワクチンを打っても発症する例があるわけです。この添付文書を見ますと、じっくり読んでみると、ワクチンを接種しても発症した例や死亡に至った例が認められていると書いてあるのですが、もう少しそこを前のほうで強調されるべきではないかと、私は感じるのですが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。基本的には、この添付文書の警告欄の情報は、どの事項も必要になりますので、順番が高いほうが優先順位が高いということを意図しているわけではなく、この全ての事項を守っていただくということが重要と考えています。御心配いただいています髄膜炎菌感染症については、患者安全性カードを保有していただくようにしています。それで少しでも症候が認められた場合は、抗菌剤等の投与を早期から行っていただくことが大変重要になりますので、そのような対応は今回の疾患の効能・効果が承認されたとしても、既承認の効能と同様に行っていただくことを考えています。
○杉部会長 よろしいでしょうか。そのほか先生方から何か御質問はありますか。
○岡委員 今のに関連しまして、その他の副作用で頭痛が10%以上の頻度で生じているのですが、これは髄膜炎の症状として生じているのではなく、これ自体が高頻度で頭痛を引き起こすと考えてよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構よりお答えします。
 この頭痛の副作用と報告されているものは、感染性髄膜炎による頭痛に全て該当するものではなく、感染性髄膜炎と全身性敗血症の頻度については、この頭痛とは別にカウントされています。
○医薬品医療機器総合機構 補足させていただきます。審査報告書の16ページの所で、先ほどお伝えしました既承認の効能・効果と今回の申請対象である視神経脊髄炎スペクトラム障害に対しての、主な有害事象の発現状況を記載させていただいています。頭痛の有害事象についてプラセボ群と本剤群でそれほど大きな差はないということから、今回の疾患で特に懸念になるようなことはないと考えています。
○杉部会長 よろしいでしょうか。そのほか先生方から何かありますか。ないようですから、議決に入りたいと思います。代田先生、武田先生におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくこととします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは承認を可として薬事分科会に報告させていただきます。
 それでは議題3に移りたいと思います。議題3について、機構から概要の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料3、医薬品ルセンティス硝子体内注射液10mg/mLの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より説明させていただきます。
 紙資料は、資料3の審査報告書を御覧ください。タブレットは、資料3のフォルダを開いていただいて、星印の付いている審査報告書ファイルをお開きください。審査報告書の一番下の通し番号5/34ページの「1.起源又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧いただければと思います。未熟児網膜症(ROP)は、未熟性に起因した発達途上の網膜血管が、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の過剰産生により異常増殖する疾患です。異常な新生血管及び線維血管増殖組織が進展することで、網膜剥離等を経て重篤な視力低下又は失明に至る場合があり、小児の失明原因の第1位と報告されています。
 ROPに対しては、レーザー光凝固療法が標準的な治療法とされていますが、十分な有効性が得られない患者も存在すること、また施術に伴う全身麻酔等の使用に伴う身体的負担が生じることなどから、新しい治療法が望まれています。
 本薬は、VEGFに対する遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体の抗原結合性断片です。本邦において本剤は、2009年1月に「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性症」で承認され、以降、主に成人の各種眼科疾患に対して承認を取得しています。
 本剤はROPの発症に中心的な役割を担っているVEGFを直接阻害することで、ROPに対する有効性を示すということが期待されています。本剤のROPに係る開発について、本年3月時点では外国において承認されている国又は地域はありませんでしたが、本年9月に欧州で承認を取得しています。今般、本邦においてもROPに対する有効性及び安全性が確認されたとして、本剤の製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。なお、本剤は「未熟児網膜症」を予定効能・効果として、希少疾病用医薬品に指定されています。
 本品目の審査に関して、専門委員として資料12に記載されています4名の委員を指名しました。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。通し番号8/34ページ、「7.1.1国際共同第III相試験」の項を御覧ください。本剤の有効性及び安全性を検討する目的で、ROP患者を対象にレーザー光凝固療法を対照とした無作為化非遮蔽並行群間比較試験が、日本を含む国及び地域で実施されました。有効性の結果については次のページ、9/34ページ、表5を御覧ください。主要評価項目である治療開始24週時の治療成功割合は、本剤0.2mgで80%、対照群であるレーザー群で66.2%であり、統計学的な有意差は認められませんでしたが、数値の上では本剤0.2mg群で高い傾向が認められました。
 通し番号17/34ページ、表14を御覧ください。本試験の主要評価項目は、複合的エンドポイントでしたが、主要評価項目の各構成要因別の成績においても、主要評価項目の結果と大きく矛盾するような傾向は認められませんでした。
 以上より、今般実施された臨床試験では、対照群に対する統計学的な有意差は認められませんでしたが、本剤0.2mgでは標準治療であるレーザー群に対して、より高い治療効果を示す傾向にあり、この群間差には臨床的意義があると考えられること、また本剤を含めたVEGF阻害剤のROPに対する有用性を報告する文献が複数存在していることなども考慮すると、本剤0.2mgのROPに対する有効性は、期待できると判断しました。
 安全性について、通し番号19/34ページ、表16を御覧ください。表中にあるH2301試験というものは、今般、実施された国際共同第III相試験のことであり、またH2301E1試験はH2301試験の継続試験のことを意味しています。また、同じ表の中の一番右に成人疾患というカラムがありますが、こちらは加齢黄斑変性症等の既承認の成人疾患の臨床試験の成績を示しています。成人疾患と比較して、ROP患者において特定の眼の有害事象の発現割合が高いという傾向は認められませんでした。
 通し番号20/34ページ、表17を御覧ください。眼以外の全身の有害事象について、成人疾患と比較してROP患者では、重篤な有害事象の発現割合が高い傾向にありましたが、ほとんどの事象で治験治療との因果関係は否定されており、低出生体重児の一般的な合併症として予測可能な事象でした。また本剤は、薬理作用に起因して神経発達や成長に対して影響を及ぼす潜在的なリスクを有しますが、今般、実施された臨床試験成績からは明確な影響は認められませんでした。この点について、現在、実施しているH2301E1試験を承認後に製造販売後臨床試験に切り替えた上で、各患者さんが5歳の誕生日を迎えるまで観察を継続して、長期的な安全性を検討するということになっています。以上のとおり、本剤のROP患者に対する長期的な安全性は確立されていないものの、臨床試験で認められたベネフィットを踏まえると、現時点における本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 以上のような検討を行った結果、本剤は治療選択肢が限られているROPに対して、患者の身体的負担が比較的小さい新たな治療選択肢を提供するものであり、臨床的意義があると判断したため、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断しました。本申請は希少疾病用医薬品としての申請であることから、再審査期間は10年とすることが適当と判断しました。薬事分科会では、報告を予定しています。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。
○杉部会長 それでは、先生方から何か御質問はありますか。
○長島委員 この医薬品も、やはり臨床上の位置付けで特にレーザー治療との使い分けというか、あるいはどちらを最初にやったらいいのかなど、どういう場合にどちらを選択すべきかということを、添付文書の所には一応書いてはあるのですが、臨床試験がこうだったとそれを見ても、なかなかどういう場合にどちらをどう選択すればいいかというのは、判断できない内容だと思うのです。例えばこれも、学会でのガイドラインなり、あるいはもっと分かりやすいような資材提供なり、何かをお考えでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただきまして、ありがとうございます。機構より回答させていただきます。
 まず、本剤とレーザー光凝固療法の大きな違いとしては、患者さんの身体的負担があります。レーザー治療に要する時間は30分から、難治症例では4、5時間にもなるということが報告されていて、全身麻酔あるいは鎮静剤が長時間使用される場合もありますので、患者の身体的負担が大きいとされています。したがって、特に全身状態が不良な患者さん、全身麻酔に耐えられないような患者さんに対しては、なかなか治療が難しいという側面があります。一方、本剤については、硝子体に注射するということで、侵襲性のある投与方法ではあるものの、レーザー治療と比較すると短期間で投与を終了できますので、全身麻酔は不要、多くは鎮静なしでも投与可能ということがあります。したがいまして、特に全身状態が悪い、レーザー治療が適さないような患者さんに対して、この薬剤が使用されやすいというところはあると思っています。
 ただ、患者さんによって全身状態については、かなりばらばらというところもありますので、なかなか一律にこういう場合はこちらというところは、医療上も難しいところはあると思っているのですが、実際どのような注意喚起あるいは情報提供ができるのかという点については、申請者とも協議をさせていただきたいと思います。
○杉部会長 よろしいですか。
○堀委員 使用上の安全性の年齢について、お尋ねします。添付文書の3ページの所に、小児などへの投与で新たに新生児が加わっていました。未熟児網膜症というと、未熟児として生まれた方がなるというのは分かるのですが、新生児というと一般的には出生してから約1か月間というのが新生児だと一般市民は思うところです。そうなりますと、未熟児で生まれた方であっても、1か月間はそれに関してこの薬の投与はしないということなのでしょうか。この新生児が加わった理由をお話いただければ有り難いです。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただきまして、ありがとうございます。機構より回答させていただきます。
 新生児というものが新たに加わったというわけではなく、今、既存の添付文書では低出生体重児、新生児という形で並んで記載されています。今般、未熟児の患者さんに対する投与経験が臨床試験で積まれたということがありますので、低出生体重児という記載を消すという対応になりましたので、資料中の添付文書の下線の引き方が少しよくなかったかもしれません。基本的にはそういう形で、添付文書上、未熟児は低出生体重児に分類されますので、それ以外の新生児の方への投与経験は今のところないというところがありますので、こういった形の記載ぶりになっているということです。
○堀委員 では、未熟児ではなく、普通分娩で生まれた新生児に関しては、今においては検証使用経験はないということなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 おっしゃるとおりです。
○堀委員 分かりました。では、未熟児の新生児と、普通分娩で生まれた新生児とは、全くこれは別ものと考えてよろしいのですか。
○医薬品医療機器総合機構 そうですね、未熟児網膜症に対して使うことについては全く問題はありません。
○堀委員 分かりました。添付文書の書き方が、ちょっと分かりにくいのかなと思ったので、指摘させていただきました。
○飯島委員 僕は小児科医ですので、未熟児も新生児に必ず含まれてしまいますので、私はこの表現は何か変えたほうがいいように思います。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。ちょっと安全対策部門等とも協議をさせていただきまして、必要に応じて修正させていただければと思います。
○杉部会長 よろしいでしょうか、ほかには大丈夫でしょうか。それでは議決に入りたいと思います。大森先生におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、承認を可とさせていただきまして、薬事分科会に報告させていただきます。
 議題の4に移りたいと思います。議題4については、事務局から概要の説明をお願いいたします。
○事務局 議題4、資料4、andexanet alfaを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。タブレットの資料4のフォルダをお開きいただき、事前評価報告書のファイルをお開きいただいて1ページ目を御覧ください。
 申請者はブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社、予定される効能・効果は「直接作用型第Ⅹa因子阻害剤(アピキサバン、リバーロキサバン又はエドキサバン)投与中の患者における、生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時の抗凝固作用の中和」です。
 まず、対象者数について御説明いたします。活性型血液凝固第Ⅹ因子(以下、「FⅩa」)阻害薬は、抗凝固薬の一種であり、抗凝固療法中に出血性合併症が発現した場合、抗凝固薬の薬理作用に起因する増悪を避けることは難しく、andexanet alfa(以下、「本薬」)は、FⅩa阻害薬による治療中に急性大出血を発現した患者におけるFⅩa阻害作用の急速な中和を目的として開発されました。現時点での予定される効能・効果に係るFⅩa阻害薬の治療対象は、非弁膜症性心房細動(以下、「NVAF」)患者、深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症患者並びに下肢整形外科手術施行患者です。市場調査によると、2018年におけるアピキサバン、リバーロキサバン及びエドキサバンの対象疾患によらない全投与患者数は、それぞれ53.3万人、50.9万人及び52.2万人であり、それぞれの薬の治療対象のうち、大出血の発現頻度が最も高いNVAF患者における大出血の発現率(それぞれ1.26、3.00及び3.38%/年)を掛け合わせ、本薬の推定患者数を計算し、年間3万9,630人と推定しております。
 以上より、5万人未満という基準を満たしていると考えております。
 次に、2ページ目の中段を御覧ください。医療上の必要性について御説明いたします。現在、本邦では、FⅩa阻害薬の特異的な中和剤は存在しません。そして、本薬は遺伝子組換え不活性型ヒト第FⅩa因子であり、FⅩa阻害薬の抗凝固作用を無効化し、抗凝固状態から急速に回復させることが期待されます。海外では、ガイドラインにおいて、リバーロキサバン及びアピキサバンの投与により発現した、生命を脅かす又はコントロール不良の出血時の中和剤として本薬が有用となり得る旨記載されています。
 以上より、医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に、2ページ目の下段からの開発の可能性について御説明いたします。海外において、日本人及び外国人健康成人を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照第II相試験が実施中であり、Part1において日本人被験者での本薬の安全性等が確認され、アピキサバン投与時の日本人被験者と、外国人被験者における本薬の薬物動態及び抗FⅩa活性の変化率が類似していたことから、FⅩa阻害薬による治療中に急性大出血を発現した患者を対象とした非盲検非対照国際共同第III/IV相試験に本邦からも参加し、当該試験は現在実施中です。当該試験の中間成績等に基づき、本薬は、米国で2018年5月、欧州で2019年4月に、それぞれ「リバーロキサバン、アピキサバン投与患者における生命を脅かす出血又は止血困難な出血発現時における抗凝固作用の中和」の効能・効果で承認されています。
 以上より、開発の可能性は高いと考えております。よって、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○杉部会長 ありがとうございました。非弁膜症性心房細動の患者さんは非常に多くて抗凝固薬の使用例は多いのですが、その中で重篤な出血を起こす例が対象ということで人数が少ない、希少疾患ということで扱われたということです。先生方から何か御意見はございますか。
○平石委員 このお薬の対象となる患者さんが、今、御説明いただいたように5万人未満というのは十分同意できるのですが、類薬、例えば同じ抗凝固薬であるワルファリンに対するプロトロンビンの複合薬、あるいはダビガトランに対するイダルシズマブも同様に希少疾病用医薬品として指定されているかどうかについて、教えていただきたいと思います。
○事務局 事務局よりお答えいたします。ワルファリンの拮抗薬に関しては希少疾病用医薬品に指定されています。
○平石委員 ダビガトランについてはいかがですか。
○事務局 指定されていません。
○平石委員 ダビガトランの中和薬は指定されていないということですが、その違いはどこにあるのでしょうか。
○事務局 企業からの申請がありませんでした。
○平石委員 分かりました。ありがとうございます。
○杉部会長 そのほか何かございますか。このお薬の審査というよりは、これを希少疾患を対象とした医薬品として扱っていいかどうかという審議です。よろしいでしょうか。議決に入りたいと思います。本議題について指定を可として、よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、指定を可といたしまして薬事分科会に報告させていただきます。議題5に移りたいと思います。議題5も事務局から概要をお願いいたします。
○事務局 事務局です。議題5、資料5、システアミン塩酸塩を希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明をいたします。タブレットの資料5のフォルダを開いていただき、2つ目の事前評価報告書のファイルをお開きください。報告書1ページ目の中段ですが、申請者はマイランEPD合同会社、予定される効能・効果は、シスチン症における角膜シスチン結晶の溶解になります。オーファンの3要件につきまして順番に御説明させていただきます。
 まず、1ページ目の対象患者数ですが、シスチン症は、指定難病のライソゾーム病に該当します。本邦での総患者数は、大体3~10人程度と報告されています。
 以上より、患者数は5万人未満という基準を満たしていると考えています。
 次に、2ページ目の医療上の必要性について御説明します。国内外において、システアミン酒石酸塩を含有する経口製剤が、現在、腎性シスチン症の治療薬として承認されています。しかしながら、今回対象の角膜は無血管組織ですので、当該経口製剤では角膜シスチン結晶に対する効果は期待できず、本邦においては、当該疾患に対して有効な治療薬は承認されていません。
 以上の検討の結果より、医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に、開発の可能性についてですが、2ページ目の中段以降になります。海外では、シスチン症患者を対象とした第Ⅲ相試験において、角膜シスチン結晶に対する本剤の有効性及び安全性が確認され、欧州においては、2017年1月に、当該試験成績等に基づき、本剤が承認がされているところです。本邦では、日本人健康成人を対象とした第I相試験において、本剤の忍容性及び安全性が確認されており、今後、日本人シスチン症患者を対象とした第III相試験が実施される予定です。
 以上より、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがいまして、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。よろしく御審議のほどお願いします。
○杉部会長 ありがとうございます。これも希少疾病用医薬品として審議をすることを認めてもらいたいということですが、よろしいですか。専門の先生方が把握しているのが大体10人ぐらいですから、よろしいですね。それでは、議決に入りたいと思います。本議題につきまして指定を可として、よろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告いたします。報告事項に移りたいと思います。報告事項につきましても事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 事務局です。報告事項につきまして、まとめて御報告を順にさせていただければと思います。最初に、報告議題1、医薬品ディナゲスト錠0.5mgの製造販売承認について御報告させていただきます。資料ですが、報告事項のフォルダを開いていただき、資料6のディナゲストをお開きいただければと思います。本剤は、有効成分であるジエノゲストを0.5mg含有する錠剤であり、現在、本邦において同じ成分を1mg含有する錠剤が子宮内膜症、子宮腺筋症に伴う疼痛の改善の別の効能・効果で承認がされているところです。今般、持田製薬株式会社より、本剤(ジエノゲストを0.5mg含有する錠剤)について、国内臨床成績に基づき月経困難症の効能・効果で製造販売承認の申請がなされました。
 機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断しています。
 続きまして、報告事項、議題2に移りたいと思います。報告事項、議題2が条件付き早期承認制度(ビルテプソ点滴静注250mg)になります。報告事項のフォルダに戻っていただき、資料7をお開きください。こちらの部会では条件付き早期承認制度につきましては初めての御報告になりますので、最初に制度の概要につきまして簡単に御説明をさせていただければと思います。資料7の12/12の一番最後のページに、医薬品の条件付き早期承認制度というカラーの1枚紙を付けています。こちらの制度ですが、重篤で有効な治療方法が乏しい疾患を対象とするもので、我が国での検証的臨床試験の実施が困難なものや、その臨床試験に長期間を要するものについて、なかなか承認申請時に提出することが難しいため、それ以外の臨床成績等で一定の有効性及び安全性を確認し、市販後に必要な調査等を実施することを承認条件として製造販売承認をした上で、重篤な疾患に対して、医療上の有用性が高い医薬品の早期実用化を推進するというコンセプトの制度になります。これまでも検証的臨床試験の成績を求めることなく、市販後に必要な調査等を実施することを承認条件として、製造販売承認を行っている品目もございますが、このような取扱いの整理を明確化させていただき、平成29年10月に通知をしているところです。今般、御報告をさせていただきます品目につきまして、申請者のほうから、こちらの制度の該当性について申請がございましたので、その制度の該当性について御説明させていただければと思います。
 資料1ページにお戻りください。今回の対象品目ですが、販売名はビルテプソ点滴静注250mg、一般名はビルトラルセン、申請者は日本新薬株式会社となります。エクソン53スキッピングにより、治療可能なジストロフィン遺伝子の欠失が確認されているデュシェンヌ型筋ジストロフィーに係る効能・効果で、承認申請が9月になされています。
 当該薬剤の条件付き早期承認制度の該当性について、機構の報告書に基づいて御説明をさせていただきます。報告書の7ページを御覧ください。適応疾患の重篤性ですが、こちらは筋ジストロフィーが対象ということで、生命に重大な影響がある疾患に該当すると判断されています。続きまして、2つ目の要件である医療上の有用性ですが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する既存の治療法として、現在、ステロイドが唯一の治療法として承認されていますが、長期的な予後の改善に対するエビデンスが乏しく、副作用も存在しているところですので根本的な治療法がない状況です。以上の内容から、医療上の有用性が、本品につきましては一定程度期待できるものですので該当すると判断しています。
 次に、3番目の要件の検証的臨床試験等の状況ですが、資料8ページになります。DMDの有病率が新生男児の3,500人に1人と報告されており、エクソン53スキッピングにより、治療可能なジストロフィン遺伝子の欠失を有するDMD患者を対象とした検証的な臨床試験の実施には、相当の期間を要すると判断されています。
 最後に、有効性及び安全性についてですが、資料8ページ、9ページで御紹介している、国内第I/II相及び米国第II相試験において、本剤投与によりジストロフィンが増加し、自然歴データと比較して運動機能が改善したことが示されています。したがいまして、本剤の一定の有効性及び安全性が示されたと判断されています。
 以上を踏まえ、11ページに示す3点の内容を承認条件として、条件付き早期承認品目に該当すると判断しています。なお、本剤の承認の可否及び承認条件等については、今後、機構で審査させていただき、改めてこの部会で御議論いただく予定です。議題2につきましては以上になります。
○事務局 続きまして、議題3、優先審査指定品目の審査結果について、事務局より御説明いたします。報告事項のフォルダをクリックいただき資料8のファイルをお開きください。ページ番号は、資料最下部に記載しております9分の(/9)で示している番号に基づき説明いたします。優先審査の取扱いについては、資料2ページに概要をお示ししています。この制度は、医薬品医療機器等法第14条第7項の規定に基づき、希少疾病用医薬品や、その他医療上特に必要性が高いと認められる品目を指定し、他の品目に優先して審査を行うものです。その指定に当たっては、適応疾病の重篤性、医療上の有用性を総合的に評価して判断することとしております。
 資料1ページにお戻りください。今回、優先審査品目に該当しない品目がありましたので報告いたします。品目名は○○○○○○○○○、○○○○○、成分名は○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○、申請者は○○○○○○○○○○○○○○です。○○○○○に係る効能・効果で承認申請がなされています。
 当該薬剤の優先審査の該当性について御説明いたします。資料6ページを御覧ください。適応疾患の重篤性については、生命に重大な影響がある疾患(致死的な疾患)に該当すると判断されています。
 続いて、医療上の有用性について御説明いたします。まず、ガイドラインを踏まえ、○○○○○に対する既存の治療法がないとは言えません。次に、○○○○○○試験では、○○○○○○○○○○○○○○○○群に対する本薬群の○○○○○○○○○○が○○○○○ており、既存治療である○○○○○○群に対する本薬群の○○○が○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○とは言い難いこと、○○○○○○試験の○○○○○○について、○○○○○が○○○○○○○○○○○○○されておらず、本薬の対照薬と比較した○○○○○○が○○○○○○○○○○○○○○○○○ことを踏まえ、○○○○○○○○患者において、本薬が○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○を上回る有効性が期待できるとまでは判断できません。安全性、肉体的・精神的な患者負担については、既存治療と比較して特段優れているとは言えません。
 以上を踏まえ、当該品目は、優先審査品目に該当しないと判断いたしました。説明は以上になります。
○事務局 続きまして、議題4、希少疾病用医薬品の指定の取消しについて、御説明させていただきます。資料9をお開きください。こちらは希少疾病用医薬品試験研究中止届出書になりますが、届出者は興和株式会社、医薬品の名称はバルプロ酸ナトリウムになります。本剤は、平成29年3月24日、脊髄性筋萎縮症を予定される効能又は効果として希少疾病用医薬品に指定されました。しかしながら、中止の理由にございますとおり、検証的試験及び継続投与試験における主要評価項目が未達成でした。機構と相談し、開発継続は困難と判断したため、今回、中止届が企業から提出されたところです。そのため、本剤の本予定効能・効果に係る希少疾病用医薬品の指定を、今回、取り消すこととしました。
 最後に、議題5、医療用医薬品の再審査結果について御報告いたします。資料10-1から10-3の3品目になります。資料10-1、有効成分名は『メチルフェニデート塩酸塩』、販売名は『コンサータ錠18mg、同錠27mg及び同錠36mg』、資料10-2、有効成分名は『テリパラチド(遺伝子組換え)』、販売名は『フォルテオ皮下注キット600μg』、資料10-3、有効成分名は『オランザピン』、販売名は『ジプレキサ筋注用10mg』、これら3品目につきましては、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査及び製造販売後臨床試験に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はないカテゴリー1と判定しています。
 なお、資料10-1にございますコンサータ錠につきましては、5月の本部会においてビバンセと同等の承認条件を付すという御報告をしていて、その後、関係学会と調整をさせていただき、先月の9月に承認条件を変更する通知を発出しているところですので、併せて御報告させていただきます。報告事項は以上です。
○杉部会長 ありがとうございました。本日の報告事項は、通常と異なり申請取消しとか審議をしていいかどうかの案でした。今の事務局からの報告に対しまして、何か先生方から御質問はございますか。よろしいでしょうか。なかなか分かりにくかったと思いますが、その薬の審議そのものよりも、取消しとか審査を優先審査して品目から除くとか、そういうことでございます。よろしいですか。それでは、特に報告事項については質問はないようですから御確認いただいたと理解したいと思います。本日の議題は以上ですが、事務局から何かございますか。
○事務局 ありがとうございます。次回の部会ですが、11月29日(金)、午後3時から開催させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
○杉部会長 それでは、今日はこれで終了したいと思います。長い間ありがとうございました。
( 了 )
 
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局 

医薬品審査管理課 課長補佐 荒木(内線2746)