地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会(第7回) 議事録

日時

令和元年10月31日(木) 9:30~12:30

場所

TKP赤坂駅カンファレンスセンター ホール13B

出席者

構成員(敬称略・五十音順)

・朝比奈 ミカ   中核地域生活支援センターがじゅまる センター長
          市川市生活サポートセンターそら 主任相談支援員
・池田 昌弘    NPO法人全国コミュニティライフサポートセンター 理事長
・奥山 千鶴子     NPO法人子育てひろば全国連絡協議会 理事長、認定NPO法人びーのびーの 理事長
・加藤 恵     社会福祉法人半田市社会福祉協議会半田市障がい者相談支援センター センター長
・菊池 馨実    早稲田大学法学学術院 教授
・佐保 昌一    日本労働組合総連合会 総合政策局長
・助川 未枝保     船橋市三山・田喜野井地域包括支援センター センター長
・立岡 学         一般社団法人パーソナルサポートセンター 業務執行常務理事
・田中 滋     埼玉県立大学 理事長
          慶應義塾大学 名誉教授
・野澤 和弘      毎日新聞 論説委員
・原田 正樹    日本福祉大学 副学長
・堀田 聰子        慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科 教授
・本郷谷 健次     千葉県松戸市長
・宮本 太郎        中央大学法学部 教授


参考人(敬称略・五十音順)

・江澤 和彦    日本医師会 常任理事
・長野 敏宏    公益財団法人正光会御荘診療所 所長
・前神 有里    一般財団法人地域活性化センター 人材育成プロデューサー
・西村 朗     埼玉県 福祉部福祉政策課長

議題

(1)論点に関する議論
(2)関係者からのヒアリング 

議事


○市川地域福祉課課長補佐 おはようございます。定刻になりましたので、ただいまより、第7回「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」を開催させていただきます。
皆様におかれましては、大変お忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。
本日の出欠でございますけれども、池田洋光構成員、大原構成員、知久構成員、宮島構成員、室田構成員から御欠席の御連絡をいただいております。また、加藤構成員、堀田構成員からはおくれて御参加との御連絡をいただいているところです。
本日、知久構成員は御欠席でございますけれども、西村朗埼玉県福祉部福祉政策課長に参考人として御出席いただいております。おわびと訂正でございます。机上に配付させていただいている座席表のほう、西村参考人のお名前を誤って記載してしまっております。おわびして訂正申し上げます。
続きまして、本日、後半にヒアリングを行わせていただきますけれども、本日のヒアリングを御快諾いただいた参考人の皆様を簡単に御紹介させていただきます。
まず、日本医師会常任理事の江澤和彦参考人です。
公益財団法人正光会御荘診療所所長の長野敏宏参考人です。
一般財団法人地域活性化センター人材育成プロデューサーの前神有里参考人です。
なお、本日、事務局のほうですけれども、国会用務等でおくれて参加、途中退席等がございますけれども、御容赦いただければと思います。
続きまして、資料の確認でございます。本日の資料は全部で8点でございます。机上に置かせていただいております。
1つ目が議事次第、座席表を挟みまして、資料1-1、1-2、ヒアリング参考人からの資料ということで資料2-1、2-2、2-3、参考資料1ということで池田構成員からの配付資料、それから、立岡構成員からも資料を別に置かせていただいておりますけれども、配付資料をいただいております。それから、参考資料2ということで構成員名簿となっておりますので、御確認をお願いいたします。
もし、不足などがございましたら、お申しつけいただければと思います。よろしいでしょうか。
それでは、ここからの議事運営につきましては、宮本座長にお願いをしたいと思います。
カメラの方々は、これで御退室いただきますようにお願いいたします。
○宮本座長 おはようございます。早い時間からお集まりいただき、大変ありがとうございます。本検討会も第7回になりまして、各方面からの期待や関心も高まる中で、いよいよ佳境に入ってきたと申し上げてよいのか、ゴールを見定めながら議論を進めていく段階に入ってまいりました。一層の御協力をよろしくお願いいたします。
きょうは前半1時間くらいをめどに「包括的支援体制の構築に向けた基本的な考え方」として、これは前回も御議論いただいているわけですけれども、新たな事業の枠組みに関して、その実施に向けて具体化するべき問題、検討するべき基本的な考え方を論じていただく。さらに、地域共生社会の大きな理念とその包括的推進体制、支援体制の整備の関係について議論もいただきたいと思います。
それから、今、市川さんのほうからも話がありましたように、後半では、参考人の方々にお忙しい中御出席をいただいておりますが、それぞれの方から10分から15分程度のプレゼンテーションをいただくと。その後、40分間くらいをとって質疑、意見交換をしていきたいと思います。何とぞよろしくお願いいたします。
それでは、議事の(1)「包括的支援体制の構築に向けた基本的な考え方」というところから入っていきたいと思います。
まず、事務局から資料1-1、資料1-2を続けて説明していただければと思います。よろしくお願いいたします。
○吉田生活困窮者自立支援室長 おはようございます。室長の吉田でございます。
資料1-1「包括的支援体制の構築に向けた基本的な考え方」をごらんください。座長からもありましたとおり、第6回において事業の基本的な考え方をお示しさせていただいたところです。6回でいただいた議論も踏まえつつ、7回目はより詳細な部分、中間とりまとめの中で今後検討すべき課題として挙げていただいたものも念頭に置きながら、資料を事務局として整理させていただいております。中身の御説明をさせていただきます。
1ページ目から、これまでの議論の整理ということで、2ページ目以降に資料をつけてございます。
2ページ目から5ページ目までは、第6回でお示しさせていただいた資料をそのままつけさせていただいています。少しだけ御説明をさせていただきますと、2ページ目の資料につきましては、この事業の全体のスキームを整理させていただいています。3つの事業、「断らない相談支援」「参加支援」「地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援」を一体的に実施していく市町村が行う事業を創設していくことを御提案させていただいています。
3ページ目でございます。新たな事業の枠組みというところでその特徴を整理させていただいていますが、前回も御議論いただきましたとおり、市町村の手挙げに基づく任意事業であるといったような性質でありますとか、法律上に市町村の支弁規定でありますとか国等の補助の規定を新設し、一本の補助要綱に基づいて制度別に設けられた各種支援を一体的に実施するというようなことを整理させていただいたところでございます。
4ページ目が新たな事業についてのイメージというところ、5ページ目が新たな事業と既存の事業の関係性、3つの支援の具体的な内容を整理させていただいたところでございます。
こういうことを前提として踏まえまして、6ページ目、今回御議論いただきたい点を事務局として整理させていただいています。論点でございますが、今般、市町村による包括的支援体制の構築の一手法として新たな事業の創設を検討しているが、その実施方法はどうあるべきかということでまとめさせていただいています。
その下に概要という形で整理させていただいていますが、後ろのほうでいろいろと細かい論点も含めて整理をさせていただいています。それを概略的に目次的な要素も含めてというような形ですけれども、4つの○で概要を整理させていただいているところです。
簡単に説明させていただきますと、1つ目の○は、新たな事業については、課題が複合・複雑化した場合を含めて、住民一人一人の異なるニーズに応えていくことが必要です。市町村が包括的支援体制を構築する際の一つの手法として、先ほどから申し上げている3つの支援を一体的に実施する。そして、それに対する国の財政支援の仕組みを見直すというものです。
2つ目の○ですけれども、考え方といたしまして、もちろん既存の取り組みや機関等を生かしながら進めていくことが必要だと整理させていただいています。また、地域ごとに住民のニーズや資源の状況は異なりますので、圏域の設定でありますとか会議体の設置、既にいろいろなものができているようでございます。そういうものを踏まえつつ、市町村が裁量を発揮しやすい仕組みとするというようなことが必要ではないかと2つ目の○で書かせていただいています。
3つ目でございます。プロセスを重視していくということを整理させていただいていますが、地域福祉計画の策定の枠組み等も活用しながら、地域住民との意見交換など、プロセスを重視して、構築を進めることが求められますということです。その際、モデル事業を実施してございます。200自治体ぐらいが手を挙げてやっていただいている状況でございますが、一定の成果が上がってきている市町村もございますので、その取り組みについて参考にさせていただくのはもちろんのこと、プロセス等も含めて、ほかの市町村の方々が参考にできるようにすることが必要であり、国としてはそういうことも念頭に置いて、基本的な考え方や踏むべきプロセスをお示ししていく必要があるのではないかということを記載させていただいています。
最後に、市町村の取り組みを後押しするということが必要ですので、さまざまな領域、対人支援とか政策領域がございます。そういう既存の取り組みとの連携が進むような方策を新たな事業の中に位置づけていくことも必要だと思いますし、地域福祉計画の位置づけでありますとか、広域自治体である都道府県の役割、市町村の取り組みを後押しする観点からの役割というものをしっかりと整理していくべきだろうということでまとめさせていただいています。
こういう概要を前提に、7ページ目以降、より詳細なところを整理させていただいています。新たな事業の実施方法等の詳細というところです。
8ページ目から、3つの支援のそれぞれの要素について詳細を整理させていただいていますが、「断らない相談支援」についてでございます。
事業スキームとしては、前回お示ししているものを枠囲いの中で整理させていただいています。4つの分野に係る相談支援事業を一体的に実施するということなど、ア、イ、ウという形で前回、体制の要件としてこういうものが必要ではないかということをお示しし、御議論いただいたところです。
1の基本的考え方ということで、前回の議論も踏まえて、「断らない相談支援」とは何なのかという御指摘もいただきましたので、より詳細な部分を基本的な考え方として整理させていただいています。4つポツがございますが、1つ目として、市町村として、介護、障害、子供、困窮の相談支援に係る事業を一体的に実施し、属性にかかわらず、制度のはざまであったりとか、課題が複合化していたり分野横断的な課題がございます。そういうものも含めて包括的に受けとめていくということではないかということ。
2つ目のポツですが、各相談機関について整理していますが、相談を受けとめて、みずから対応できない相談につきましては関係機関につなぐ役割を有するということが前提でございます。その中で、特定の相談機関や窓口が全てを丸抱えするということではございませんで、適切に多機関協働を進め、市町村全体でチームによる支援を行っていくことではないかということ。
3つ目でございますが、相談になかなかつながらない方、来られない方もいらっしゃいます。そういう方を想定し、積極的にアウトリーチも行うということ。
4つ目でございますが、生活困窮のプラン、自立支援計画も参考に、本人や支援関係者等で目標でありますとか支援内容・方針等を共有しながら、チームによる包括的な支援を提供していく。こういうことが「断らない相談支援」の基本的な考え方に当たるのではないかと整理をさせていただいています。
9ページ目は圏域でございます。図示をさせていただいています。住民に身近な圏域、市町村域という形で、例えば住民に身近な圏域においては相談の受けとめをしていくということとか、市町村域においては多機関のネットワークの構築をしていくということで、これまでの議論などを踏まえると、大まかにこういう形で整理ができるのではないかということでお示しをしつつ、○でございますけれども、「断らない相談支援」を行う場所を明示していただきたいということで我々から前回御提示させていただいたところですけれども、明示するところも含め市町村域全体で支援の体制を確保することが必要ですので、そういうことを念頭に既存の機関も活用しつつ、地域の実情に応じてこういう圏域についても検討する必要があるのではないかということで整理をさせていただいています。
10ページ目は会議体でございます。包括的支援体制の構築に向けては、多職種連携、多機関協働というものが基盤となります。そういうものがより充実していくためには、情報共有、協議を行う場ということが重要ではないかということで1つ目の○でございます。
2つ目の○ですが、一方で既存の属性別の制度にも既にネットワークや会議体がございます。参考のところで会議体の例、地域ケア会議などを挙げさせていただいています。こういうものに十分に留意して、これを有効活用しつつ、包括的な支援の提供に向けた個別事例の検討等を行うことが望ましいのではないかということで整理をさせていただいています。
4、人員配置、資格要件についてでございます。市町村域全体で「断らない相談支援」に必要な機能を確保していくということでございますが、それぞれ担っていただく各相談支援機関における人員配置というものも論点としてなってきますが、それぞれの機関が担う機能でありますとか、現在の職員さんの配置状況なども踏まえて、市町村において検討していくことが必要ではないかと考えております。
その際、既存事業、それぞれ地域包括支援センター等の人員配置基準などは資格要件等が決まってございます。また、各相談支援機関に求められる機能も一定程度決まっているところでございますので、そういうものを適切に確保することには留意が必要でしょうということを整理させていただいています。
11ページからは2つ目の支援の要素「参加支援」でございます。
事業スキームは、第6回資料からの抜粋ということで書かせていただいております。
基本的な考え方ですけれども、「参加支援」につきましては、社会参加・就労支援、見守り等居住支援など多様な支援が本人や家族のニーズに合わせてきめ細かく提供されることが重要でございます。市町村が地域の状況や資源等を踏まえて既存の制度の支援メニューをしっかりと活用していくということは必要でございますし、また、既存制度では利用できる支援が存在しないはざまのニーズに対しましては、事業を柔軟に組み立て、実施することが求められるということで、小さい字で「実施方法の例」と書いてございますが、前回生活困窮者自立支援制度の任意事業のメニューを念頭にということも書かせていただきました。それをより具体化しますと、市町村が必要と判断するメニューについて、申し上げた任意事業の対象者を拡大化する形で実施していくというようなやり方が一つの例としてあり得るかなと思っております。
2つ目の○でございます。なお、小規模市町村については、支援メニューや地域資源が十分にないこと等が想定されるため、都道府県でありますとか他市町村とも連携していくといった視点も含めて検討いただくことが必要かなと考えております。
12ページ目、地域づくりのところでございます。
事業スキームは第6回から抜粋してございます。①コーディネート機能と②場や居場所の確保というものが必要で、例えばコーディネート機能については、ア、イで整理させていただいているように、個別の活動や人とのコーディネート、また地域のプラットフォーム、これらが密接に連携しながら地域の活動を高めていく、こういう支援体制づくりが必要かと考えております。
それを6回で示させていただいたところですが、13ページでございます。今回、さらに詳細をということで整理させていただいていますが、まず1のコーディネート機能のところでございます。1つ目の○ですが、このコーディネート機能につきましては、地域の個別の活動や人を詳細に把握してつなげていくという機能ですので、住民の身近な圏域での活動が必要ではないかと考えてございます。あわせて、個別の活動や人のつなぎを広げていくということも重要です。そういうときには、住民に身近な圏域よりも大きな範囲、市町村域でさまざまな活動を把握して、交流を生み出すという視点も必要ではないかというふうに1つ目の○で整理をさせていただいています。
2つ目ですけれども、介護保険の世界でも今申し上げたようなこと、生活支援コーディネーター協議体を置くということで求められているところですけれども、圏域については市町村圏域、日常生活圏域、双方を射程に入れて重層的に取り組むということになってございますので、そういう既存の取り組みにも十分留意する必要があるかと思ってございます。
3つ目の○は、担っていただく方、どういう方に担っていただくかということを整理していますが、福祉に関する専門的な知識は必ずしも求められるものではなくて、地域のことをよく知っている住民などが担うことも考えられるのではないか。あわせて、他省庁の人材関連施策との連携ということで、地域おこし協力隊とかさまざまな取り組みが行われてございます。連携や重層化といった視点も重要ではないかということです。
2の場や居場所の確保のところですが、既存の場や居場所を活用しつつ、世代や属性を超えて住民同士が交流できる場や居場所がこれまで以上に生み出されることが望ましいということで、3世代交流の場など、いろいろ属性や世代を超えた場が生み出されることが望ましいとうことを1つ目の○で書いてございます。
一方で、2つ目の○ですが、同世代、同じ属性の住民が交流することを目的とした場や居場所は、似た状況にあったり同じ悩みを抱える住民同士が交流できることを重視したりするものがあるということで、子育て中の方々が悩みを共有するといったようなことが例示として挙げられるかと思いますが、そういう同じ悩みを抱える住民同士が集うというような場もございます。こうした機能も一定確保する必要があるのではないかと書かせていただいています。
14ページ目でございます。13ページ目までが3つの支援の内容を整理させていただいていまして、14ページ目からはプロセス、市町村が事業に取り組んでいただく包括的支援体制を構築するという観点から進めていただくプロセスを、その重要性も含めて整理をさせていただいているところです。
1、構築に向けたプロセス等ということで、住民の方のニーズとか資源を十分に把握した上で、地域住民さんと意見交換、議論をしながら考え方を共有しつつ、検討を進めることが必要です。
2つ目の○です。地域づくりについてですが、既存の地域のつながりであるとか支え合う関係性などを十分把握した上で、その役割を理解した上で、地域住民の主体性を中心に置いて活動を応援することを基本とするということ
3つ目の○ですが、地域福祉計画、後ほど説明させていただきますが、そういうプロセスも重要です。社会福祉法で地域住民等の意見を反映させるように努める旨が規定されていることから、こうした機会も活用していくということです。
4つ目の○は庁内体制のことを書いていますが、検討していただいた結果、地域づくりについて福祉以外の他分野と連携していく。まちづくりとか市民協働とかいろいろございます。そういう分野と連携を進めたり、多機関の連携が円滑に進むようにするためには、庁内の組織体制の見直しが必要となるというような、検討の結果、そういう結論が出る可能性もございます。しっかり都庁内全体で検討を行うことも必要ではないかということです。その際にはと書いていますが、前回の芦屋市さんのヒアリングなどからも出てきている例示ですけれども、プロジェクトチームを立ち上げて、職員同士が日々の業務の困難さなども共有しつつ、分野横断的な議論を行っていただいて、職員お一人お一人の意識を高めて、内発的にこういう検討に加わっていただく工夫も必要かなと整理させていただいているところです。
5つ目ですが、小規模市町村につきましては、先ほど「参加支援」のところでも触れました支援体制の構築等について、都道府県や他市町村とも連携をするといった視点をもって検討を進めることが重要ではないかというところです。
これが構築に向けたプロセスでして、事業実施後の対応ということで、2のほうにまとめさせていただいています。事業を開始した後も、地域住民の意見を聞きながら、定期的国事業の実施状況等の分析・評価を進め、改善を行う必要がある。
2つ目の○で、地域づくりについては、必ずしも行政主導で計画的に進むものではないことに留意して、これも地域住民の方々との意見交換をしながら、長期的な視点で確認していくということ。
3つ目ですけれども、一度整備した庁内の組織体制についても、事業の実施状況によって課題なども見えてくると思います。そういうこととか、地域住民のニーズの変化等も踏まえて柔軟に見直していくことが必要ではないかという整理をさせていただいています。
15ページ、16ページ目ですが、他領域、さまざまな対人支援・政策領域における取り組みとの連携といった視点です。個別支援と地域づくりという観点から分けて整理をさせていただいています。
15ページは、1、個別支援の観点というところですが、1つ目の○ですけれども、多機関が連携して支援をしていくことが必要ですので、分野を超えて連携を図って相互理解を深めることが必要で、そのための環境の整備、人と場が重要になります。
2つ目の○ですが、対人支援においては、保健、医療、福祉、教育等の各分野の専門職との連携、多職種連携による幅広いネットワークを構築していくことが求められておりまして、3つ目の○ですが、既存施策としてこういうネットワークの構築を目指したものが複数見られるところですので、こういう既存制度、既存資源の有効活用といった観点から他の政策分野との連携も重要です。具体的にはということで4つ目の○ですが、例えば自殺対策、居住支援、成年後見の権利擁護などの分野が挙げられるのではないか。具体的なやり方としては、会議への参画とか共通ツールの活用等を通じて、支援者同士の顔の見える関係性を構築していくことが必要であるということでございます。
16ページ目です。地域づくりの観点ということで整理をさせていただいています。1つ目の○です。前回、これもヒアリングからですけれども、高島市さんのところで社会福祉法人の地域貢献について触れていただきました。地域の子供の学習面、生活面での支援でありますとか、相談支援から浮かび上がったニーズに対してシェルターの提供とか緊急物資の支援などさまざまな取り組みを行っていただいている様子がヒアリングからわかったところです。こういう取り組みにつきましては、社会福祉法人だけではなくて、医療法人、協同組合などでも同様の取り組みを行っている事例がございます。
2つ目の○ですが、こういう多様な主体による取り組みが面的に広がっていくようにというところですけれども、新たな事業においては、地域の多様な主体から成るプラットフォームの構築を促進し、活性化するための方策を検討していく必要があるというところです。
3つ目の○です。地域づくりの関係では、多分野、地方創生、まちづくりなどを例示させていただいていますが、他の政策領域との連携、重層化を進めることが必要ですということで、具体的には、地方創生、コンパクト・プラス・ネットワーク、地域循環共生圏などの取り組みが進められております。地域には、地域住民やNPO等が主体的に行う多様な取り組みも存在しているところです。
最後の○はプラットフォームとの関係ですけれども、構築と活性化に当たっては、今申し上げたような政策領域を含め、幅広い主体、住民が参画できる仕組みとすることが必要でございまして、この機能でありますとか位置づけについて、具体化を検討していく必要があるというところです。
17ページですが、プロセスのところでも御説明しましたが、地域福祉計画・地域福祉支援計画における位置づけというところです。1で現行の取り扱い、2で新たな事業創設後の取り扱いを整理させていただいています。
現行でございますが、前回の社会福祉法改正の中で、市町村の策定の努力義務がかかってございます。福祉の各分野における共通事項を定める上位計画として位置づけられました。また、市町村が包括的支援体制の整備を進める場合には、こういう地域福祉計画に記載することとされているところです。都道府県の策定する地域福祉支援計画も同様でございます。
こういう前提でございますが、新たな事業創設後の取り扱いにつきましては、市町村が新たな事業を実施する場合にも、地域福祉計画の記載事項としてはどうかということを考えてございます。市町村が、住民や関係機関との意見交換を重ね、共通認識を醸成しつつ、新たな事業の全体像を計画に位置づけるということを推進する。また、定期的に事業の実施状況の分析・評価を進めるといったようなところです。
都道府県においても、今申し上げたようなこと、市町村の支援ということもございますが、包括的支援体制の構築における役割について、記載事項としていってはどうかと考えています。
3つ目の○ですが、多分野の計画もございます。介護保険事業計画など他の分野の計画との記載の整合をしっかりと図っていく必要があると考えてございます。
最後の○ですが、地域共生社会の推進に向けては、地域福祉計画だけではなくて、自治体の最上位計画である総合計画にも記載をしていただいている自治体が出てきているところです。こうすることを通じまして、福祉部局だけではなくて、自治体全体で地域共生社会を推進していくといったことも重要かなと考えてございまして、そのような取り組みを好事例として積極的に周知していくことも考えられるのではないかと記載させていただいています。
18ページ目、都道府県の役割です。基本的考え方のところで3つほど都道府県の役割として整理させていただいています。(1)で市町村における包括的支援体制の構築の取り組みの支援、(2)で広域での人材育成やネットワークづくり、(3)で広域での支援や調整が求められる課題への対応で、そういう役割を担っていただくことが考えられるのではないかと整理しています。
2つ目の○です。特に、小規模な自治体や自立相談支援機関を有しない町村につきましては、きめ細やかな支援が必要です。「参加支援」などにつきましては、市町村とも意見交換をしながら、事業の共同実施の調整、都道府県に対する事業実施の委託の調整等、サポートを積極的に行う必要があると考えてございます。
2の具体的な役割の例ということで、今、申し上げた3つの役割に沿って例示させていただいています。市町村の構築の取り組みの支援としては広域実施とか一体実施、また、先駆的取り組みやノウハウ等の情報収集、情報発信というものがあるかと考えてございますし、人材育成やネットワークづくりについては、研修の開催でありますとか支援員同士のネットワークづくりがあるかなと考えてございます。
(※)の部分ですけれども、人材育成につきましては、都道府県の役割として進めていただくということが考えられますが、この事業は市町村の手挙げであるということなども踏まえますと、国がしっかりと果たすべき役割というのもあるかなと思っておりまして、そういうことも検討を行っていく必要があるかなと考えてございます。
(3)で広域での支援や調整が求められる地域生活課題への対応ということで、例示としてDVなどいろいろと挙げさせていただいていますが、住民の身近な圏域で対応しがたい場合とか、より専門的な支援が求められる場合には、県の役割が重要になってくるかなと考えてございます。
19ページ目以降は参考資料でございまして、必要に応じて参照していただければと思います。
引き続きまして、資料1-2でございます。「『地域共生社会』に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進」ということで、座長とも御相談をさせていただきながら、地域共生社会と今検討している包括的支援の関係性というようなところで少し整理を試みていくことが必要かと思いまして、この資料を用意させていただいています。
中身をごらんいただきますと、1ページ目はこの検討会、第1回で出させていただいた資料ということで「日本社会や国民生活の変化(前提の共有)」という形で書いてございますが、簡単にかいつまんで御説明させていただきますと、日本の福祉制度の変遷といたしましては、高齢者介護、介護保険制度などがございます。そういうものを基点として、障害福祉、児童福祉など各分野の相談支援の充実が制度化されてきたところです。もちろん属性別、対象者別の専門性は高まってございます。専門的な支援が提供されているわけでございますが、8050問題など世帯の複合的なニーズ、ライフステージの変化に柔軟に対応できないといった課題が出てきているところです。
その背景として挙げられるのが、共同体機能の脆弱化と人口減による担い手の不足というところがございます。地縁、血縁、社縁が弱まってきているというところとか、人口減少を踏まえて地域における担い手といったものも不足しているところです。
矢印の下のところで、一方で、地域の実践の中では、多様なつながりや参加の機会の創出により、「第4の縁」が生まれている例などがありますし、また、担い手という側面でいえば、福祉の領域を超えて、農業、産業、住民自治などのさまざまな資源とつながることで、多様な社会参加、地域の持続の両方を目指す試みが見られるところです。
こういう状況を踏まえつつ、地域共生社会の理念的なことを整理してございますが、制度・分野ごとの「縦割り」というものを超えていく。また「支える側」「支えられる側」という固定的な従来の関係を超えていくということで、地域や一人一人の人生の多様性を前提とし、人と人、人と社会がつながり支え合う取り組みが生まれやすい環境を整えていく、そういう新しいアプローチが必要なのだという前提でございます。
そういう考え方に基づいて、2ページ目ですけれども、「地域共生社会」に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進ということで、今、申し上げたような「地域共生社会」の実現を展望する際には、一人一人の多様な参加の機会を拡大していくことが必要です。そういう点を考えますと、福祉政策だけではなくて、保健・医療など対人支援領域全般にわたる連携が必要ではないかということです。また、地域社会の持続といった観点では、先ほどからも御説明していますが、地方創生、まちづくりなど多様な政策領域との協調が不可欠です。今後、各分野、各方面との議論を深めつつ、互いの政策目標の重なり合いを確認しながら、共通の目標実現に向かっていくことが大事であるというところです。
2つ目の○ですが、我がほうで申し上げますと、「地域共生社会」に向けた取り組みは地道で継続的なものであるが、まずは、対人支援分野による包括的支援の普及の流れを確かなものとすることが必要だと考えてございまして、平成30年施行の改正社会福祉法におきましては、市町村における包括的支援体制の構築といったものが努力義務として整理され、規定されているところです。
またというところで3つ目の○ですが、今、御議論いただいていることですが、市町村において包括的支援体制の整備を進める際の手法の一つとして、3つの支援を一体的に行う事業、新たな事業を創設し、市町村が取り組みを進めやすいように、国の財政支援の仕組みも見直すことを検討してございますというところです。
最後の○ですが、「地域共生社会」の理念を踏まえて、いずれの手法をとる場合においても、検討を進めるに当たっては、相談支援の体制であるとか多職種・多機関連携のネットワークなど既存の取り組みで生かせるものはもちろん活用しながら、それを市町村内の対人支援全体に広げていくこととか、地域づくりという側面で言えば、他の多様な政策領域における取り組みとの連携を深めていくといったようなことに留意していくことが必要ではないかというふうに整理をさせていただいております。
少し長くなりましたが、以上でございます。
○宮本座長 どうもありがとうございました。
お聞きいただいたように、構成員の皆様に御議論いただいた結果、大分整理が進んできているわけでございますけれども、そうであるがゆえにさらに明確にしなければいけない点等もいろいろ浮かび上がってきているという局面かなと思います。
今、事務局から提示いただいた論点について、意見交換をしていきたいというふうに思います。何か事務局から補足はありますか。
○吉田生活困窮者自立支援室長 1点補足させていただきます。
意見を紙で提出していただいている構成員の先生方がおられまして、本日御欠席の池田洋光構成員の資料「地域共生社会推進検討会に関する意見」という形で1枚物を整理いただいて、提出いただいているところです。あと、別とじになっていますが、立岡構成員、きょう御出席でございますが、こちらでも資料を出していただいていて、これらも踏まえつつ、意見交換をお願いできればと考えてございます。
○宮本座長 ありがとうございました。
意見交換に入りたいと思います。ぜひ、挙手をして御意見いただければと思います。
では、菊池構成員、よろしくお願いいたします。
○菊池構成員 早稲田大学の菊池でございます。私は法律学、中でも社会保障法という分野を専攻する研究者でございます。幽霊会員でございまして、きょう初めて出席をさせていただきましたが、きょうも中座させていただくので、私がここにいるのは実体がある存在か、自分でもちょっと自信がないところがございますが、せっかくですので、取りまとめに向かうという段階ですので、発言をさせていただければと思います。
新たな体制の構築に向けた方向性には異論ございません。少し現場と離れたところにいる者として指摘させていただきたいことが5点あるのですが、1つは、包括的な支援体制構築がなぜ求められるのかと、その理念をある程度明確にしておく必要があると思います。そこが資料1-2で今回お示しいただいているように見られますけれども、取りまとめにおきましても、少なくとも冒頭部分にでも、今後の政策展開向けた基盤となり得るものを示してほしいと思います。
今回、改正では、資料6ページにありますように、国の財政支援の仕組みを見直すということですけれども、見直す程度で今回の構想は実現が図られるとしても、本格的な相談支援体制の整備のためにはより多くの財源を必要とすることが明らかであります。そうした財源の必要性を国民に説得力を持って示すための論理立てを今から考えなければいけないのではないかと。それが示せなければ、今回改正を超えてより包括的な支援の枠組みを設け、新たな段階に移行することは難しいと思います。
そのために3つ指摘しておきたいと思いますが、1つは個別的な相談支援体制づくりと地域づくりが相互循環的に機能することによって、人と人がつながり支え合う新たな社会的基盤ができ得るのだという、先ほどもありましたが、積極的な説明が可能と思います。しかし、これだけでは弱いのではないかということです。一つは、社会保障というのは社会生活上生じ得るさまざまなリスクあるいは要保障事由に対して社会的に対処するための仕組みとして発展を遂げてきております。相談支援は伝統的に、社会保障では対応できなかった社会的排除などの事象に対処するものとして本格的な展開が図られようとしています。
社会保障と相談支援との理論的な整理が必要ですが、ある施策に対して財源を注ぎ込むことに対して社会的合意を得ていくためには、こうした誰にでも起こり得る社会的リスクといった説明の仕方も説得的であるかもしれません。
もう一つは、これは立岡構成員の資料にもあって、私も賛同するのですが、御案内のとおり全国各地で頻繁に大規模自然災害が発生している。このことが手がかりになるのかもしれないと思います。なぜ地域が必要か。相談支援が必要か。個人や家族では到底対応できず、公的な支援に全てを頼ることもできない。災害支援の中にその一つの答えを説得力を持って見出すことができるかもしれないと思います。そうした視点を取りまとめに少し入れ込んではどうかということです。
2つ目に、新たな包括的支援体制の整備に当たって事業スキームのイメージが明らかにされていまして、この資料でも圏域、会議体、人員配置、資格要件などの要素が示されていますが、これらがどのレベルで法的に整備されるかを多少でも意識した議論を示していただけるとよいと思います。こうした作業は本格的には取りまとめがなされた後、審議会と並行して事務レベルで詰められていく作業でしょうが、どこまでが法令事項となり、どこからが行政規則等で規律されるかによって、新たな事業の法的な基盤、ひいては支援対象者や支援者、地域住民の側の利益が大きく左右される可能性があることに留意したいと思います。
3つ目に、トップランナーではない多くの自治体、とりわけ町村も包括的支援体制構築の議論の対象になっていることを十分意識した仕組みづくりや議論が必要だと思います。私の主観的な印象にすぎないかもしれませんが、資料を拝見すると、例えば14ページなどで小規模市町村などについても目配りはされているものの、なお書きで触れられていたりするのが気になります。この事業を全国的に推進することを前提とした目線での配慮がもっと必要かもしれません。
4つ目に、15ページで触れられている権利擁護の視点であります。43ページにもありますが、権利擁護支援ということで主として念頭に置かれているのは成年後見制度のように見えます。ともすると法律家的な発想では、成年後見制度を地域ネットワークの中核に置きがちです。しかし、私は必ずしもそうではないと考えています。権利擁護システムとしても成年後見制度という大がかりな仕組みだけではなく、むしろ社協の日常生活自立支援事業のさらなる展開や、アメリカの年金代理受取人制度のようなさまざまな、より小回りのきく制度の展開などを考えたほうがよいのかもしれません。しかし、今回の検討で権利擁護の視点は希薄だと思います。成年後見制度が厚労省の所管となったこともありますので、ここで議論するのは所管外になりますが、広く言えば社会・援護局の課題であると思いますので、今後、本格的な検討を行っていただきたいということです。
最後に、年金事務所や地域型年金の活用ということを少し入れてはどうかと。所得保障制度も地域での生活を営む上では非常に重要な要素です。支援体制の中に組み込んでいただけないかと。こういったものを活用するということにも可能性は十分開かれているのではないかと思います。
最後に、包括的支援体制の整備に当たって取りまとめにおきましては、先ほど申しました自然災害に対する支援とともに、今後検討すべき課題として、外国人との共生という視点、ここが先ほどの説明でも見えてこないのですが、これは非常に重要な課題になってきますので、少なくとも触れてほしいなと思います。
長くなって済みませんでした。
○宮本座長 ありがとうございました。
菊池構成員から、幽霊という自己紹介もありましたけれども、しっかり二本の足でお立ちいただいた法律家らしいかちっとした論点を5つお示しいただきました。
なかんずく第1の問題ですね。この制度の理念にかかわって、なぜこれが今すぐに必要なのかということを既存の社会保障との関係です。いわばその埒外に誰にでも起こり得るリスクが広がっている、そこにまた災害社会というのが重なってきているというあたりから論を起こしていくということは極めて大事な問題というふうに受けとめました。どうもありがとうございました。
非常に大事な御指摘でしたので、もし事務局のほうから現段階で可能なリプライがあればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○吉田生活困窮者自立支援室長 ありがとうございます。
詳細な部分は今後しっかりと整理をしていきたいと思いますが、理念を明確にしていくことが必要だということは我々も強く認識してございます。そういう観点も含めて、座長とも御相談して、きょうは資料1-2を出させていただいているということで、まだまだ充実をさせていいかないといけないところかなと思ってございます。誰にでも起こり得るリスクというような説明の仕方があるのではないかという御提案もありましたので、そういうことも視野に入れながら、もう一段整理をしていきたいと思います。
また、自然災害につきましては、前回の御議論の中でも出てきたかと記憶してございます。やはり今の状況を踏まえると、そういう視点もしっかりと入れていく必要があるかなと考えてございます。
あと、小規模市町村とかの取り組みにつきましては、我々としては十分配慮していくべき必要性があると考えてございまして、今回の資料でも不十分ではあるかもしれませんが、そういう観点を入れたつもりでございます。より具体的な御議論をいただく中で、ここもよりしっかりと書き込んでいきたいと思います。
外国人との共生というような観点でございます。資料には済みませんが、これも十分書き込めていないかもしれませんが、我々もそこは意識をしてございます。例えばきょうの資料1-1の4ページには、図示した新たな事業の全体というものがございまして、例えばということですが、「断らない相談支援」で多機関協働の中核機能が新たな加わるわけですけれども、その中でつなぎ先として多文化共生というようなところも入れさせていただいています。いろいろな外国人の方がふえていくという状況もございますので、こういう相談支援の局面でのつなぎ先としての多文化共生ということでありますとか、また、地域づくり、場づくりといったところでも、外国人の方と日本人の間でうまくコミュニケーションをとって相互理解を深めていくといった観点も必要かなと思っております。
いずれにしても、外国人との共生というような部分は十分意識をして整理をしていきたいと思っております。
以上でございます。
○宮本座長 ありがとうございました。
もう一点だけ、菊池構成員から出された2番目の論点で、少しデリケートな論点かもしれませんけれども、どこまでが法的に整備されていく領域と受けとめればいいか、もしこの点についても、今、何かお聞きできればと思います。
○吉田生活困窮者自立支援室長 まだまだ我々として中で整理をしていて、議論をしているところですけれども、いただいている議論なども踏まえながら、しっかりと事業などは法律に位置づけていく必要があるかなと考えております。具体的には、社会福祉法という法律を持ってございます。前回の改正でも市町村の包括的支援体制づくりの努力義務を規定しているところでございますので、そういうものにプラスする形で、こういう新しい事業を書き込んでいくことが必要かなと思います。
加えて申し上げると、きょう冒頭でも御説明しましたが、市町村の支弁の規定とか国の補助の規定というようなものも必要かなと考えていまして、一本の補助要綱で属性にかかわらず支援をしていくということを実現するためには、少なくともそういう規定が法律上ないと、なかなか取り組みにくいかなと思っておりますので、そこら辺につきましては、今、まさしく検討中でございますが、法律の中に書き込んでいく方向で整理をしないといけないかなと考えているところです。
○宮本座長 ありがとうございました。
それでは、議論を続けてまいりたいと思います。
佐保構成員、前回は参考人でいらっしゃいましたが、今回からは構成員でいらっしゃいます。
○佐保構成員 ありがとうございます。私のほうからは1点先に御質問というか確認をさせてきたいのですけれども、先ほど事務局の説明の中で多分説明されていたと思いますし、この資料にも書かれているとは思うのですが、確認の意味で1点質問させていただきます。
スライド10の「4.人員配置、資格要件について」でございます。「断らない相談支援」の窓口ですね。市町村によって相談支援のあり方というのはいろいろあると思うのですが、例えば市町村に事務局機能だけを置いて、各相談機関を活用して、それぞれの機関が相談支援窓口を設置するというか、相談支援窓口として機能するといった手法も想定しているということでよろしいかどうかの確認が1点です。
○宮本座長 それでは、事務局、お願いいたします。
○吉田生活困窮者自立支援室長 ありがとうございます。
具体的にどういう形をイメージされているのかというのはございますが、市町村が地域の実情とか自分たちの資源を踏まえて検討していただくというのが前提ですが、今、おっしゃっていただいたように、市町村の本庁にそういうバックアップ機能というか、各相談機関のつなぎのような方を置いていただいて、各相談機関はそれぞれいろいろな相談を受けとめ、対応できる部分は対応していただいて、難しい部分は専門機関につないでいただく。そういうことが前提だと思いますが、バックアップの機能をちゃんと充実させて、断らない相談支援を初めとする今回の事業、包括的な支援体制構築に向けた今回の事業を取り組んでいただくというのは、あり得る選択肢なのではないかと考えてございます。
○宮本座長 以下、お続けください。
○佐保構成員 ありがとうございます。
もちろんそういった支援のあり方、相談窓口のあり方というのは各市町村によって、それから、各市町村の社会資源、地域資源によっていろいろ形態があるのではないかと思いますが、一例示として御質問させていただきました。
「断らない相談支援」に必要な機能を確保するために、例えば自治体にいろいろな機関から人員を集中させるというということもあり得るかなと思っておりますが、そうなってくると各相談機関の機能に影響が出るのではないかといったことが現場の方から声として心配だという声が上がってきています。とりもなおさず各相談機関の中である程度のレベルを持った者が相談支援のキーマンとなっていくのではないかと思っていますので、そういう人員を集中するということに対しての懸念が少しあるといったところで、市町村がバックアップ機能というか、きちんとそこで機能をして、それぞれが相談支援に当たっていく。今、事務局が御説明なさったように、解決できるものと解決できないところで、解決できないところは皆さんで他職種連携でやっていくといったあり方があるのかなと思っていますが、現場のほうからそういった懸念の声が上がっているということを伝えたいと思います。
また、相談支援にはある程度のレベルの者というかスキルを持った者が求められると思っておりますが、自治体では定期的な人事ローテーションがあるというところで、ちょっと懸念をしているということ。
また、小規模自治体では、人員配置が困難なケースも想定されるのではないかと考えています。人材育成の観点から、長い人事ローテーションを必要としたり、後継者づくりといった中長期的な視点が自治体のほうにも求められるのではないかと思っております。
あわせて、ネットワークの補完とか事務負担の軽減の観点から、AI、RPA、IoTの利活用といったことも同時に推進していくことが重要ではないかと思っております。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
佐保構成員からの問題提起、大変大事と受けとめておりまして、今回の地域共生社会のビジョンは決して究極の唯一のワンストップを設けるわけではなくて、むしろ包括的支援の入り口は多様であったほうがいい、たくさんあったほうがいいということです。
ただ、逆に言えば、佐保構成員が御懸念のとおり、既存の制度をそのままにつながってねと放り出すことになってしまってはいけないわけです。そこで、自治体としてのバックアップ機能というお話があったわけですけれども、今、バックアップの中身について、特に人員面とか事務負担の軽減等について幾つか御示唆はありましたけれども、佐保構成員としてお考えの大事なバックアップ機能、もしよければ少し具体的にお挙げいただけると参考になるかと思うのですが。
○佐保構成員 私の経験上といったところで何なのですけれども、やはり市町村、人事ローテーションがあります。早いところだと3年ぐらいで定期的にローテーションしていったりというのがあって、各相談機関とかそれ以外の方はある程度長年相談事業をやっていらっしゃったりして、受け取る側の自治体のほうにどんどんわからない人が入っていったりすると、なかなか中長期的に考えると相談支援の充実、「断らない相談支援」をやっていくのには若干厳しいものもあるのではないかと思っています。
やはりモデルとかでやっている自治体さんの中には、もう8年、9年同じ部署にとどまって仕事をされている方もいらっしゃいますし、そういったローテーションのあり方ということ。それは自治体の考え方にもよると思うのですけれども、そういったことが必要だということと、それから、そういった方がかわった瞬間にそこの機能が低下するということもあり得ますので、常に後継者づくりを一緒にやっていく。一緒に育成、養成を図っていくといった観点が必要ではないかと思っていますし、もうひとつ、ネットワークづくりに関して言えば、会議体やいろいろなものをやって顔の見える関係づくりというのは必要だと思うのですが、なかなか皆さん忙しくて、集まっている時間が限られてくる。スケジュール調整も必要になってくるということを考えると、それと一緒にIoTとかSNSとかいろいろなものを活用したネットワークづくりも重要ではないかと考えております。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
では、原田構成員、よろしくお願いします。
○原田構成員 具体的な議論になってきますので、少し細かくなりますけれども、5点お話をさせていただきたいと思います。
1つは菊池構成員に引き続きまして理念のところですけれども、資料1-2で共同体機能が弱くなってきたということと、人口減という柱で議論されていますが、実は地域共生社会という根っこのところには社会的孤立の問題と多様性というものが本当はないと、共生のところにつながらないような気がするのです。そこのところでは外国人の問題もそうですし、もう少し共生というところにつながるストーリーがはっきりするといいのではないかというのが1点です。
それから、資料1-1に戻りまして、ここから具体的な話になるのですけれども、5ページのところで既存の事業と新たな事業との関係が整理されておりますが、困窮分野の相談が現行の仕組みの中で縦割りになっているというところが非常に気になるところです。生活困窮そのものは従前の縦割りのものをなくしていくという前提でつくってきていますし、今現在、生活困窮の支援にかかわっている人たちはそのつもりでやっている中で、この絵だけを見ますと、高齢、障害、子供、新しい柱として困窮の分野があるという、この絵は現行を正しく示していないのではないだろうか。その上で、生活保護行政はこの現行の仕組みの中に書き込む必要があるのかないのか。生活保護行政を外したところで「断らない相談支援」といったところに非常に違和感が出るのではないかというのが位置づけの問題です。
2つ目は、佐保構成員のところとも重なりますけれども、この「断らない相談支援」の仕組みとか人材の部分ですが、特に9ページのところで今回、圏域についても示していただいているのは大変ありがたいなと思うのですけれども、より住民に身近な圏域であればあるほど断らない相談というのが実は非常に重要で、ここの部分が非常に弱いのです。相談の受けとめと解決に向けた対応しかないのかと。
以前の地域共生社会の議論の中では、まさにここのところがアウトリーチの機能が必要であったり、それをバックアップするというところがあるので、相談を受けとめるのではなくて、相談をどう掘り起こすのかも含めた、従来にない、来た相談だけを受けとめるのではなくて、むしろひきこもりの問題等々を含めて、このアウトリーチ機能みたいなものが住民に身近な圏域のところに求められて、かつ、それができるワンストップの部分が市役所に1カ所あるのではなくて、より住民に身近なところで総合相談の仕組みをうまくシステム化しないと、中央のところで1人誰かがいて、何でも来てくださいだけでお茶を濁されてしまうのではないかという懸念があるということ。同時に、人の配置のところも、先ほど佐保構成員がおっしゃったように、市町村ごとに検討を行うのでは余りにも市町村のほうがイメージしにくいので、もう少し具体的な事例等々を示していく必要があるのではないかという部分です。
3点目は「参加支援」のところですけれども、参加支援の参加のイメージが非常に福祉行政の中だけの参加のイメージで、もっと参加のイメージを広げなければいけないのではないかという、これは具体的には例えば社会福祉法の4条で地域生活課題というところに教育というものが入りましたけれども、この教育というのは学校教育だけではなくて、当時の説明では社会教育も含めるのだと。生涯学習のような分野と参加支援みたいなものを広げていかなければ、生活困窮の任意事業だけのイメージでは非常に参加のイメージが弱いのではないかという点です。
最後ですけれども、それを含めて計画のところです。確かに前回の法改正で努力義務というところまでいったのは大きな一歩だったと思いますけれども、これだけの内容のものを市町村で展開するとすれば、努力義務で結果として策定率がなかなか上がらないという現状を考えたときに、地域福祉計画をもう一歩確実なもの、あるいは義務化できるような働きかけができるのかどうなのか。それがないと地域福祉計画を基盤にこういう仕組みをつくろうという絵が崩れてしまうのではないかと思うのですけれども、そのあたりのところも御検討いただければと思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
原田構成員から、これもそれぞれ大変大事な論点を4点あるいは5点と整理してよいでしょうか。お伺いいたしました。特に2点目、スライド5にかかわった御意見については、一言事務局からお答えいただいたほうがいいのかもしれません。いかがでしょうか。困窮分野とあわせて何か一つの縦割りのように見えているけれども、恐らくこれは困窮者自立支援制度というのは地域共生社会に先駆けて包括化の先陣を切っていたはずなのだけれども、そのあたりはどうなのだろうかというニュアンスの御意見だったと思いますが、いかがでしょうか。
○吉田生活困窮者自立支援室長 ありがとうございます。
おっしゃっていただいたとおりだと思っております。困窮分野については、今も「断らない相談」というものを実践されていらっしゃるケースも多いですし、分野を包括して取り組むということでやっていただいていると思っております。
少し言いわけっぽくなりますが、5ページにつきましては、「断らない相談支援」の、これは予算を一体的にするかしないか、それと、はざまを埋めていくのかというような観点を分かりやすく整理しようとした図でございまして、心としては、①の「断らない相談」と地域づくりのところは、各分野の予算、お金を一体的にして交付していこうという趣旨でやっていきます。「参加支援」の部分は、はざまの部分を強化していくというような形で整理していきますということを図示したもののことを意味内容としてはお示ししたいなと思ったところです。
一方で、今、そういう御意見もいただきましたので、少し何か工夫ができないか。今、申し上げたような趣旨の資料なのだということをより明確化するかということもあるかもしれませんが、ちょっと工夫はしてみたいと思います。
関連して、生活保護行政のことも言っていただきました。もちろんこの断らない相談、また、新たな事業については生活保護というのも射程に入れてやっていくべきものだと思いますし、市町村にもそういう方向性で取り組んでいただきたいと考えてございますので、それ自体、まだ資料に書き込めていないという御指摘はあるかもしれませんが、思いとしてはそういうところでございます。
続けて、何点か言っていただいたことに触れさせていただいてもよろしいですか。
○宮本座長 もちろんです。
○吉田生活困窮者自立支援室長 アウトリーチ機能のところを御指摘いただきました。これも図がいろいろあって大変申しわけないですが、9ページは確かに相談の受けとめ、解決に向けた対応という形でアウトリーチのことを余り書いていないわけですけれども、全体の事業のスキームを整理した4ページなどでは、これはまさしく全体像を端的にあらわしたつもりの図でございます。断らない相談のところに「新」ということで黄色い人の影がございます。そこにはアウトリーチによる支援など継続的な伴走支援の機能という形で書かせていただいていまして、アウトリーチの必要性、重要性というものは我々としても意識をしていて、4ページの図ではということですが、アウトリーチは記載させていただいていますし、上の四角の中でいろいろと説明を書かせていただいていますが、3つ目の○などでアウトリーチによる支援の必要性、伴走とともにやっていって関係性を保つというようなことも記載させていただいていまして、ここの重要性というのは我々としても大変認識をしているところでございます。
最後は、地域福祉計画のところについても触れていただきました。法律上どう書いていくか、どう書けるのかという論点はいろいろあるわけでございますが、我々の思いとしては、やはり手を挙げていただくところにはしっかりと地域福祉計画をつくっていただいて、包括的支援体制をつくる上での全体像、見取り図みたいなものは整理していただきたいなと考えてございます。その際には、きょうの資料にも書いてございますが、住民の皆さん方としっかりと議論をしていただいて、ビジョンというか共通の認識をつくりながら、考え方、全体像を整理していく。それを必要なところを地域福祉計画に書き込んでいただくというようなプロセスが非常に重要かなと考えてございます。
○宮本座長 原田構成員、よろしいでしょうか。原田構成員が挙げていただいた一連の論点の中で特に2番目の論点、スライド5にかかわって新たな事業と既存事業の関係のところですけれども、これは実は検討会開催前に室長に私のほうからもお願いしていたところなのですが、地域でこの報告書を受け取る皆さんは、やはりまずはここをごらんになると思うのです。「断らない相談」というのはどの事業が当てはまるのだろうかと。あるいは関係性の育成というのはどの制度がこれに対応するのだろうか。どうしてもそういうマニュアル的な読み方をするのが普通だと思いますので、そこでなるべく誤解を生じないような工夫をしていくということ。スライド5の趣旨については、今、室長からもお話があったわけですけれども、もう少しわかりやすく、かつ柔軟なものであるということですね。それぞれ同じ制度が参加支援にも、関係の育成支援にもかぶっていくのだというあたりも含めて丁寧に説明していく必要があるのかなと思います。
原田構成員の4点目の論点、参加支援というのはさらに生涯教育等ともかかわるのではないか。恐らくきょうの事務局からの説明にもありましたけれども、地域共生社会という言葉自体がいわば他局や他省庁の取り組みともかかわるようないわば大きなバージョンと、とりあえずこの報告書で問題にしていく、小さいとは言いませんけれども、当面のバージョンとがございまして、断らない相談についても参加支援についても関係性の育成支援についても、大きなバージョンと当面のバージョンがあって、恐らく原田構成員が御指摘の生涯教育との連携というのは、先ほど理念にかかわっても御説明があったように、これからさらにじっくり推し進めていく大きなバージョンでの参加支援の扱い方ということになっていくのかなと思って聞いておりました。
どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
では、立岡構成員、資料も御提出いただいているところでございますので、よろしくお願いいたします。
○立岡構成員 立岡です。
資料を出させてもらっております。一応、議論をしていると言いたいことがだんだんわからなくなってきてしまうときがあるので、やはりきちんとまず文章にまとめたほうがいいだろうなということで、まとめさせていただきました。
今回の論点の部分に関してですけれども、いわゆる包括的支援体制の構築の一手法としてどう実施していくかというところが今回の協議に関する事項だと思うのです。その中で先般、兵庫県明石市のほうに伺って泉市長にいろいろとお話を聞いてきた中において、明石市で更生支援及び再犯防止等に関する条例というものを再犯防止の観点からつくったと。非常にびっくりしたのですね。明石市の市民の方はここまで優しいのかというと言葉が何とも言えないのですけれども、言ってみるならば、結局はそういう罪を犯した人であっても、明石市の市民に関して言えば地域社会の中できちんとみんなでサポートしていくのだ、みんなで生きていくのだというようなことを条例化しているということは、すごいなと思いました。
その中で、何でこれができたのですかと聞いたときに、それは既存の子供の支援とか障害の支援、高齢の支援をまずきちんとやるのだと。やって、市民の満足度が高まっていく中において、犯罪で被害があった人のことをきちんとサポートする。その上で、いわゆる犯罪というものが起こらないような社会づくり、まちづくりをしていくというようなことが地域共生社会なのだというお話をされたのです。これはすごいなと思ったのです。
というと、今この議論をしている中において、地域共生社会を包括的な形の体制でつくっていくといったときに、まさにこの条例のつくり方は一つの参考になるのではないかなと思いまして、今回、これは一つの手法になるのかなと。やっている再犯防止の内容に関しては、まさに被疑者・被告人の段階において、入り口のところでどのように施設内処遇ではなくて社会内処遇していくかというところをやっています。この辺は菊池先生の専門の部分だと思うのですけれども、そういう意味では、明石市の手法というのは一つ参考になるのではないかと思って、挙げさせていただいております。
それと、これは原田先生がしゃべったのとダブる部分があるのですけれども、まさに生活保護の部分です。高齢の方とか障害の方に生活保護を受けている人が多い中において、地域の中で活動していくというところで、生活困窮者自立支援法の事業の中の任意事業を活用することができるとなると、一つのまた新たな居場所というか、新たな活躍の場所になったりするのかなと思って、私は非常に画期的なのではないかと思ったので、ここに記載させてもらっております。
それと、繰り返しますけれども、地域の観点の中においては再犯防止、更生支援というところの視点がないかなと。広域のところの部分に関して、刑務所出所者等というところが記載されていますけれども、ここの部分はきちんと書き込む必要があるのかなと思っています。
あと、菊池先生からお話しいただきましたけれども、災害の部分に関しても、まさに今、今回の台風の関係等で宮城県も被災している中において、丸森町とか大郷町で大変な状況になっています。そんな中、本当に社協の皆さんたちが頑張っていただいて、いろいろなところから応援もいただきながら、ボランティアセンターを回すというところでかなり大変な状況の中にあって、そちらの業務にとられてしまうと、やはり相談のところの業務がちょっとおろそかになってしまう部分もあったりするので、いろいろな相談の窓口で、日本全体で社協さんというのがあらゆる相談の窓口になったりもしている中において、どうしても災害時になると人員が別のところにとられて、なかなか面と向かってきちんとした相談ができないといったところの中において、断らない相談というものをつくっていくのであれば、災害時にもきちんと対応ができるような、災害時でも断らない。あと、災害のところは新たな別な制度があるので、その制度もきちんと理解していけるという、災害とかこの辺に特化した部分の人材育成も踏まえた上で、断らない相談というものをきちんとつくり上げていただきたいなと思っています。
4番目は朝比奈さんが今、多分ここのところで結構、鹿児島の検討会でいろいろお話しされていると思うのですけれども、身寄りのない人が身寄りのない人を支える当事者の会という活動が非常に広がりつつあって、ある意味、非常にいろいろな困難な状況に置かれた当事者の方が役割として、同じような境遇の人たちのことを支える。一人だと心細い中において、じゃ、手術するときに手術に立ち会うかとか、入院しているときはお見舞いに行き合おうかみたいな、そのような当事者の会ができてきていることとかがあって、中にはサークルみたいな形のものを書いているのですけれども、サークルはまたちょっと当事者の会と違うのではないかと思ったりもするので、4ページのコミュニティ(サークル活動等)のところに互助組織というか、互助会みたいなものを入れてもらうとありがたいなと思った次第です。
あと、追加なのですけれども、資料1-2の「『地域共生社会』に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進」の1つ目の○で、こちらの資料にも入っているのだと思うのですけれども、「また、地域社会の持続を図るという点では、地方創生、まちづくり、住宅施策、地方自治、環境保全、教育など」のところに、やはり司法施策というものを入れていただく必要があるのかなと思いますし、1-1の4ページの多分野協働プラットフォームの中にも、司法なのか司法施策なのか、その辺を入れていただければなと思います。
あと、明石市は明石市の中において更生支援みたいなことをやっていますけれども、今、高橋課長もここにおられるのですが、定着支援センターが全体でいわゆる更生支援的なことをやっていますけれども、やはり「断らない相談」とかを考えていくと、入り口の支援の部分に関しても定着が何らかの役割を担うみたいな形のものができればなと思うので、そこもまた地域共生社会の「断らない相談」の中に入れ込んでいただければありがたいなと思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
大きくは3点、それにかかわって表現ぶりの問題等、具体的な論点が2つあったかと思います。更生支援のお話もございまして、日本で刑務所に入っている人というのは6万人台で、アメリカなんかは230万を超えていることを考えると非常に少ないわけですが、しかし、その中で高齢者と障害者の割合は確実にふえてきているということで、まさに更生支援と地域共生社会のビジョンというのは極めて密接にかかわっていくということも明らかだろうと思います。
立岡構成員から、これは先ほど菊池構成員からも重要さが強調されましたが、災害支援との関係の御指摘がありましたけれども、具体的にこの報告書が扱う3つの事業と災害支援の関係について、ここをこうつなげると、今、多くの方々が災害社会の到来を実感している中で、この事業そのものの役割について説得性が高まるのだけれどもなというものがもしあれば、東日本等でかかわっていらっしゃる立岡構成員の御経験にも照らして、何かアイデアをいただければと思いますが、いかがでしょうか。
○立岡構成員 私たちは被災者の支援をやってきて、すごく被災者の方、最終的に残るのは被災困窮者の方とか、被災して、そもそも孤立しているみたいな方だったのですね。その中ですごく感じるのは、生活困窮者自立支援法の自立相談の仕組みというのは、まさに被災者の生活再建に直結するというか、被災者の生活再建に向けた支援に関しても、生活困窮者自立支援法の自立相談支援のスキームをある意味災害時に活用ができるというふうにしていけると、非常にいいのかなと思っています。
というのも、困窮者法の制度は全国一律に、当然ながら福祉事務所があるところにあるわけで、言ってみると人員が不足するわけですね。そのときに困窮者法の支援員の方々が被災地に応援に行って、同じようにサポートに当たるというような形のものができると、当然、災害時における使える制度が違うので、その辺はきちんと勉強してということにはなろうかと思うのですけれども、そのような枠組みを進めていく。
ただ、社協さんが多いとどうしても、自立相談支援をやっているけれども、ボラセンもとかというとどうしても人がとなってしまったりするのです。でも、そこにどこか各地域から災害時に応援に行けるみたいな形になると、非常に効果的なのかなと正直思っています。
○宮本座長 ありがとうございました。
今や、障害者福祉や高齢者福祉と並んで、被災者福祉とでも言うべき分野が確立されなければいけない状況でございます。その先陣を切るような議論になっていければと思います。
ほかにいかがでしょうか。
助川構成員、その後、朝比奈構成員も続けてよろしくお願いします。
○助川構成員 人材に関して2点、意見があります。
10ページの人材配置と資格要件につきまして、今、包括支援センターで仕事をしておりまして、専門職の資格要件がすごく明確に決まっているのです。そうしますと、やはり専門職の確保が非常に難しいという状況も発生しておりまして、今回のいろいろな機能を果たすためには人材が必要なのですけれども、その人材の資格要件に関しましては適切にというだけではなく、市町村の裁量における柔軟性も必要ではないかと思いますので、その点も一つ考えていただければありがたいと思います。
2点目です。その前の9ページに、これだけたくさんの機能を担わなくてはいけないわけで、制度ができたら機能を担うのは人材でして、やはりいろいろな人材が燃え尽きたりとかいろいろな状況が想定されますので、今後はこの機能をどのように市町村ごとの実情に応じて果たしていけるのかということの検討が必要になってくると思います。
その中で、市町村の中の相談支援に関するスーパーバイズ、人材育成のところなのですけれども、これはまだまだ本当に高齢者の分野においてもスーパーバイズできる人とか、人材育成の体系は、介護保険制度の研修体系はすごくできているのですが、そこのところが、言葉を選びますが、長年やってきますと、その実情とだんだんと乖離してくることもありますので、やはり人材育成に関しては常に現場に即した研修体系を検討していただきたいと思います。
ありがたいことに、今回、18ページで都道府県の役割が出てきておりまして、小さな市町村では、市町村で人材育成の研修を組むのは講師の確保とかが非常に大変になりますので、やはり県の役割、その上の指導者養成の国の役割まで含めて、研修体系をきちんと明確にしていく必要があると考えています。特に内容が重要でして、現場に即した研修をやっていただきたい。理論的なものもすごく基本として必要なのですけれども、個別の相談に入りますと、かなり応用バージョンも必要ですから、現場に即した講師がそれをきちんと伝えていただくというような考え方が必要かなと思っています。
人材育成の県の役割及び国のほうでその方向性を決めるという役割と同時に、市町村が研修を受けた人たちのフォローアップ、実際的にそれがきっとネットワークづくりとリンクすると思うのですけれども、市町村ごとのフォローアップの必要性も感じております。1回受けたら終わりではなく、やはりフォローアップをしていただきたいと思います。
それから、スーパーバイズに関しましては、市町村ごとにスーパーバイザーの配置はとても考えにくいと思いますので、それは広域の形で県のいろいろなところにスーパーバイズできる人員配置みたいなことも考えていただけたらと願っております。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
人材育成にかかわって大きくは3点になるでしょうか。お話をいただきました。
済みません。私が膨らませてしまっていたところがあって、だんだん時間がなくなってきていまして、続けて朝比奈構成員からもお願いいたします。
○朝比奈構成員 中核センターがじゅまるの朝比奈です。
私のほうからは主に広域ということについて意見を述べさせていただきます。
まず、前提として、包括的な支援体制をつくるというのは、社会全体でいかに重層的なセーフティネットを張っていくのかということだということを押さえておく必要があると思います。千葉県は平成16年から県単の事業で中核地域生活支援センターを実施してきておりますけれども、この中核センターに来る相談は時代の中で変化をしてきていて、制度の進展に伴って、来る相談というのも変わってきているのですが、変わらないのが、中核センターで受けとめた御相談をいかに身近な支援につないでいくかという役割を負っているというところなのです。
ただ、一方で、2012年から国の補助事業でよりそいホットラインというものが始まっていますけれども、よりそいホットラインが始まって気がついたのですが、中核センターで見えていなかった、もっとつながる力の弱い人たちがよりそいホットラインにつながって、よりそいホットラインが中核センターや各市町村の事業につなげる支援をしてくださっているということなのです。
ですから、中核センターで漏れているところを受けとめていたつもりが、実はさらに漏れているところがあったということを感じていて、やはり重層的であるということが具体的にどういうふうに必要なのかということと、それぐらいリアルに実際の住民の方々の生活が非常に孤立の度合いを深めているということも改めて感じているところです。さらに、自殺対策の若年者向けのSNSの相談が始まって、そうした状況はさらに非常に深刻になっているとも思っておりまして、こうした意味での行為規制ということもしっかり押さえておく必要があるかなと思っております。
一方で、先ほど立岡構成員から出た再犯防止の事業なのですが、千葉県は中核センターの機能を使ってこの再犯防止のモデル事業をやっているのですけれども、例えばどこそこの町に、もともといたところに戻りたいという方に事前に刑務所にいる間にお会いして、私たちが支援をして調整を図るわけですけれども、そうするとそこの行政が受け取ってくれなくて、複数の市町村の間でどこが見てくれるかというところで、私たちがうろうろするということが起きてきています。
そういう意味では、ここに調整というのがありますけれども、援護の実施者問題というのが非常に大きくて、これは刑余者が象徴的にあらわしているのですが、例えば身寄りのない人を積極的に受け入れている病院の所在地だったり、民間のシェルターが所在している市町村だったり、その人をどこが見ていくか。例えば、就労支援していく、自立していくというところについては余り接点がなく済むのですけれども、生活保護ですとか、生活保護は現住地ですけれども、障害は刑務所に入る前に支援を受けていた自治体が援護の実施者になるということになっていて、制度的にもつじつまが合っていないところがあって、こうしたところを外国人の問題なども含めて、よりこうした問題が顕著になってくるだろうと。そこで調整ということが具体的に何を指すのかということも含めてしっかりと広域の役割を位置づけておく必要があるのではないかと思っています。
○宮本座長 ありがとうございました。
社会全体としてのセーフティネットの拡張との関係、それから、支援の広域性の問題について、非常に大事な御指摘をいただきました。
だんだん時間もなくなってきていますが、済みません。野澤構成員、よろしくお願いします。
○野澤構成員 済みません。時間が足りなくなってきたところで恐縮です。私も、菊池構成員ほどではないのですが、幽霊に近いものですから、一言言わなければいけないなと思って。
全体的に書かれていることは本当にもっともで、このとおりで私はいいと思っているのですけれども、誰がやるのかというところがすごく気になっていて、前にも言ったと思いますけれども、制度をつくって、それなりに財源を集めて、さあやってくださいと。これまではずっとこれで通用したと思うのですけれども、今やもう人がいなくて、やりたくても手を挙げられないというのが実情だと思うのです。なので、今は新しい制度をつくるときには、これができるような人材の確保や育成までもセットで議論しておろしていかないと、なかなかできないと思うのです。どれもこれも難しい事業だと思います。これまでの福祉の手法とか概念だけではなかなか手が届かない。だからこそ必要なわけで、それを誰がやるのかなというと、今のままだと比較的余裕のある社協さんとか大きな社会福祉法人が現場で担っていくのかなと。でも、いいところがあるのはわかっていますけれども、そこだけでは手が届かない、もっと新しいものをやれる、むしろ違う畑の人とか、イノベーションを起こせるような人をもっと呼び込まないといけないなと思っているのです。そう考えたときに、やはり国の役割、どこかで小さく※で書いてありましたけれども、ここがとても大きいなと思っています。
今、現役世代の人口が減っていく中で、一体どこにいるのかと思うと思うのですけれども、これは大きなバージョンになってしまうかもしれませんけれども、やはり学校教育の中における福祉に対して余りにも教えられていないなと思っていて、今ここでこういう議論をしていますけれども、世間一般では福祉というと相変わらず車椅子を押したり、お年寄りの食事やおむつの介助ぐらいのイメージしかないのですね。だから来ないわけで、このあたりを小中高あたりからきちんと教えていくということも必要だし、もう一つは、今、実は金融機関だとかメーカーだとかも物すごいリストラですよ。これだけ人が足りない足りないと言っている一方で、そういう大企業のホワイトカラー、特に50代はターゲットですね。そういう人たちの行き場がないということで相当悲惨な状況になっている。
彼らはコーディネート能力とかコミュニケーション能力、交渉力だとか構想力を持っている人たちが相当いるわけで、資格はないかもしれないけれども、むしろこういう事業をやるのに割と力量を持った人だっているはずなのです。これまでは現場でのニーズを感じて自己発生的に人材というのはこういうところで出てきたのですけれども、それだけではもう足りないと思っていまして、むしろ国がある程度人材の確保のところから仕掛けていくようなものも必要だなと思っています。
ここにも各地のいい事例が紹介されているし、モデル事業をやっていますけれども、全体からしてみればほんのごくわずかだと思います。これだけではとても足りないと思うのです。もっと革命的に労働市場とかの流れを変えるようなことをしないと、金をかけた井戸から水を汲もうとしたって限界があると思います。もっと水をこちら側に呼び込むような政策がもう一方で必要だなと思います。これは大きなバージョンかもしれませんけれども、やはりどこかでそういう仕掛けを組み込んでほしいなというのが私の意見です。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
イノベーションを起こせる人をいかに呼び込むかというのは大変大事な御提起ではないかと承っておりました。
では、池田構成員。
○池田(昌)構成員 3つありますが、駆け足でいきたいと思います。
1つは「参加支援」のところで生活困窮者自立支援制度の任意事業の活用ということも書かれているのですが、既存の制度の弾力的な運用みたいなことも今、求められていると思っています。先ほどからも出ていましたが、例えばあきが出てきている高齢者施設を、障害者の施設がなくて、ほかの町まで行かなければいけないという方がちょっと利用できる。新たに制度をつくるというよりは、自治体がある程度運用を緩和できれば受けられるという体制ができるといいなと思っています。
また、児童相談所の一時保護の子供たち、特に中学生、高校生たちが管理をされるのではなくて自主的に暮らすような場が必要になってきています。緊急一時の受け入れを10年ぐらいやってきて感じるのは、時代がすごく動いていて、今必要なことが翌年になると変わっていたりするので、その意味では、時代や状況に合わせて多様に受けられるような柔軟性があるといいなと思っています。
2つ目は、13ページの1の3つ目の○で、他省庁の人材関連施策というふうに書いてありますが、これとあわせて、既に公民館とか、あるいはまちづくり協議会とか地域運営組織で住民が職員を雇って地域づくりを進めている中にかなり福祉的な要素が含まれているところもあるので、そういう活動に乗せていただいて、一緒に考えていくというようなことも必要になっていると思います。
先ほど宮城県の話が立岡構成員からありましたが、東日本大震災のときに国の仕組みで「サポートセンター」という被災者支援の拠点ができました。熊本地震以降は「地域支え合いセンター」という名前に変わりましたが、実はそれは平時でも役立つものだろうなと思っています。何よりも平時からやっていないと災害の日常化に対応できないなと思っていまして、宮城県では今、専門職の研修に誰でも参加していいよということをやっていますが、住民の方と一緒に研修を受けたほうが専門職の学びが大きいですね。地域の高齢者が災害時にやれることはたくさんあって、そういう役割を日常的にもしていくということを住民の方と一緒に考えていくことも必要になっていると思います。
最後、18ページの広域、都道府県の役割というところになりますが、全国でやるのか、都道府県でやるのかというと、全国だと大き過ぎるし、都道府県だとおそらく実践が少な過ぎて、うまくこの研修をやっていくことは難しい県も出てくるのではないかと思うので、ブロックぐらいということも考えられるのかなと思っています。
2000年に認知症研究研修センターというものができたときに国の方が、メダカの学校のように誰が先生で誰が生徒かわからないような研修が今、重要だと説明されていましたが、。実はこれを研修で担うのは難しいのではないかと思います。それぞれが持っているノウハウや実践をみんなで交流して学び合ってつくっていくような既存の研修では乗り越えられないという感じもしているので、その意味ではここをもうちょっと深めていくことが必要なのかなと思いました。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。大きく3点承りました。
では、奥山構成員。後ほどヒアリングの後ももう一回議論の機会は設けたいと思いますが、今、お願いいたします。
○奥山構成員 すみません。私も途中で帰らなければいけないので一言だけ。
今、池田構成員からもありましたけれども、私は子ども分野の居場所支援や相談支援のところをさせていただいている者です。これだけ議論が進んでまいりましたので、具体的な方向で進んでいくところで一言申し上げたいと思います。
全体のスキームとしては本当に大賛成なのですけれども、やはりこれだけのことを全国の各市町村さんが取り組むとなると、かなりの理解と熱意がないと進めていけないのではないかと思っておりまして、そういう意味では、具体的に進むときに池田構成員もおっしゃられたとおり、今、既に実施している事業を少し縦出し、横出し、柔軟に活用するというようなことも示していかないと、なかなか取り組んでいただけるところが増えないのではないかと思っております。
そこで、既存の事業等を活かしながら進めていく事例を示していただくということと、1番、2番、3番の「断らない相談支援」「参加支援」「地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援」のところでは、この中のどこかを強調してやってもいい、そういったことを示していただかないと、実際に大きな自治体の事業を受けていますと、同じ子ども局の中でも分野が違うと行政のほうの調整がすごく難しくて、現場も混乱するのですね。やはり省庁、部局のほうがしっかりとそこは共通認識を持っていただいて、プロジェクトチームをつくるとおっしゃっていましたけれども、そこがしっかりしないと現場が非常に右往左往するというようなイメージを持っておりますので、まずは行政側の理解というのが非常に重要だと思っております。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
よろしいでしょうか。済みません。私のほうで、朝だと余り疲れていないせいか、余計な交通整理をし過ぎて時間をとってしまって、最後はせっつくような形になって大変反省しております。
ここで4分ほど休憩を入れさせていただいて、10分から再開をさせていただいて、お待たせしました、参考人の皆さんからお話を承ってまいりたいと思います。それでは、10分まで休憩をさせていただきます。
 
(休 憩)
 
○宮本座長 それでは、短い休憩時間で大変恐縮ですけれども、会議を再開させていただきたいと思います。
後半は、参考人の方々からプレゼンテーションいただいた上で、皆さんから質疑応答に入っていただいて、また全体の議論の時間をもう少し確保できればと思っております。
先ほど参考人の皆さんについては事務局からも御紹介がありましたけれども、改めてお願いをできればと思います。
○市川地域福祉課課長補佐 事務局から、参考人の皆様を、簡単でございますけれども御紹介させていただきます。
まず1人目、江澤参考人でございます。江澤参考人は、岡山県倉敷市や山口県宇部市で医師として地域包括ケアシステムの構築に向けて、「本質は『地域づくり』『まちづくり』」でありますとか、「医療も介護も『生活の視点』の重視」といった「地域包括ケアシステム構築10か条」というものも掲げて取り組んでおられます。本日はそうした取り組みを踏まえて、専門職による地域づくりの参画についてお話をいただきたいと考えております。
2人目、長野参考人でございます。長野参考人は、愛媛県愛南町で精神科医師として地域にかかわるとともに、町が直面する厳しい状況ですとか変化に対応して「皆で生き抜く」ための産業起こしといった取り組みにもかかわっていらっしゃいます。本日はそうした御経験を踏まえて、包括的支援体制の構築に取り組むに当たっての必要な考え方などについてお話をいただきたいと思っております。
3人目、前神参考人でございます。前神参考人は、地域づくりにおける人材育成に取り組まれるとともに、内閣府の地域活性化伝道師や総務省の地域力創造アドバイザーとして地域の実践にも取り組まれていらっしゃいます。2018年3月までは愛媛県の職員として、保健福祉部生きがい推進局長寿介護課などでの勤務の御経験もございます。そうした御経験を踏まえて、地域づくりにおける多様な資源の関係性のあり方について、本日はお話をいただきたいと考えております。
以上でございます。
○宮本座長 ありがとうございました。
それでは、大変お待たせをいたしました。初めに、江澤参考人からよろしくお願いいたします。
○江澤参考人 ただいま御紹介にあずかりました江澤でございます。本日はこのようなヒアリングの機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
私は、「地域共生社会の実現へ向けて-専門職による地域づくりへの参画-」というテーマでお話をさせていただきたいと思います。立場としましては、医師会、かかりつけ医、あるいは医療法人の経営者としての取り組みを中心にお話をさせていただきたいと思います。特に行政、あるいは専門職団体等がいかにファリシリテーター役となって住民が主体の地域づくりができるかどうかという観点で取り組んでまいりました。
それでは、資料2-1でございます。1ページめくりまして、2ページ目でございますが、左上のところに倉敷の医師会とか市の構築推進ということで、倉敷市が2015年に複数の部局を統合して地域包括ケア推進室を立ち上げ、それと同時に、倉敷医師会も地域包括ケアシステム委員会を発足したところでございます。
下から2段目ですけれども、倉敷市の地域ケア会議は、非常に早いほうだと思いますが、2007年にスタートしております。倉敷市も中核都市で、比較的規模の大きい都市でございますので、エリアを4つに区分いたしまして、4地区でそれぞれ地域ケア会議が同時スタートしました。私はその中の水島地区というところで2007年の立ち上げから委員長を仰せつかって、現在も務めさせていただいております。
右上のところですけれども、倉敷市地域ケア会議、私の所属している水島地区の委員の構成でございます。そこにございますように、民生委員、愛育委員、栄養委員、このボランティア団体を中心とした方々と、右側にあります行政の方々と、左上の専門職団体等で構成をされています。事務局は、当然倉敷市が事務局をつかさどっております。
右の段の2段目の福田高齢者支援センター、これが地域包括支援センターでございまして、倉敷市は全て民間に委託しておりまして、私の水島地区には3つの地域包括支援センターがあり、その地域包括支援センターから順番に3年ごとに委員に入り、そして、残りの2つの支援センターはオブザーバーとしてこの会議に参加をしております。
私が一番、委員長として、特に当初、立ち上げの3年間、非常に力を注ぎましたのは、この民生委員を初めとするボランティア団体の尊重でございます。特に私は地域力の中で非常に力強い支援は、こういった互助の力だというふうに思っています。長年にわたる志高いボランティアを続けてきたという大変な実績があり、地域を本当に支える礎になっていると思います。その状況の中で、いきなり倉敷市とか地域包括支援センターというものが上から覆いかぶさることだけはとにかくさけるようにお願いしてきましたし、倉敷市の事務局職員には、とにかく黒子役になっていただきたいというふうに常々お願いをして、不要なボランティア団体と行政とのアレルギー反応を生じないように、特に最初の3年間は民生委員さんたちのボランティア団体の力がないと地域づくりは不可能というふうに考えて立ち上げたところでございます。
ですから、地域包括支援センターの職員にもお願いいたしまして、定期的にボランティア団体の総会とかいろいろな会合にちょくちょく顔を出して、まず顔と名前を憶えてもらうようにというのが最初のスタートでございました。
左の写真が地域ケア会議の親会議でございます。倉敷市は3構成になっておりまして、一番小さい規模がミニ地域ケア会議。ミニ地域ケア会議と申すのは、個別事例の課題に対応するものでございまして、そうした課題の抽出あるいは検討を行って、もう一つ、やや大きいのが小学校区を単位とした小地域ケア会議がございます。ミニ地域ケア会議の上に小地域ケア会議があって、これは小学校区単位で地域づくりに対する議論を行う会議でございまして、それらを取りまとめするのがこの写真にあります親会議でございまして、この地域ケア会議において、地域づくりの方針、あるいはここはまさに戦略をつくるところでございますが、地域づくりの方向性等をいろいろ共有する会議でございます。
そして、ここで私がいつも気をつけているのは、やはりこういった異なるメンバーが互いに理解、尊重することが非常に重要であると思っておりますし、特に保険者や自治体の進める地域包括ケアシステムの構築に関する基本方針が同一の目的のために地域内の専門職や関係者に共有される状態、これを規範的統合と申しますけれども、規範的統合を推進するためには、この地域ケア会議のチームワークが非常に重要でございます。そして、行政の方も関係団体も役員の方が出ておられますし、民生委員さん等も会長さんは順繰りに2~3年ごとにメンバーが少しずつ入れかわります。ですから、そういった中でどうこのミッション、理念を継続していくか、規範的統合を共有していくかというのは地域ケア会議においては重要なテーマとなってまいります。
右下が、平成20年1月に当初、地域づくりの理念ということで、初年度に「みんなが支えあって暮らせる想いやりあふれる街づくり」を掲げたところでございます。
続きまして、3ページでございます。3年が過ぎ、非常に良好な関係が得られております中で、私は委員長として、いわゆる機が熟すタイミングであったと思っておりますけれども、3年たって4年目から地域住民とのワークショップ、いわゆる住民の集いを開催することを提案いたしまして、これは今まで毎年、第1回から第9回まで行っておりますけれども、毎年1回行うことになっております。
これは当初、住民の関心が高いのはやはり認知症でございまして、当然、我がことにもかかわりますし、認知症は非常に医療、介護もかかわるので、認知症ということをまず掲げました。第2回目は東日本大震災の経験を踏まえて、特に災害に対しては、地域包括ケアシステムの推進というのが災害対策には非常にバックボーンになりますので、そういったことを議論しました。それから、住民アンケートをしたところ、認知症に優しい地域づくりをしていきたいということになりましたので、その後から「ボケても我がまち」というキャッチフレーズを掲げて、現在まで、認知症に対して優しい地域づくりをやっていこうということで毎年行っております。
下の写真は、こういった非常に和気あいあいと、イメージカラーでございますオレンジのものを身に着けるか持ってくることをルールといたしまして、私の講演でありましたり、あるいはほかの専門職の講演でありましたり、講演の後は毎年、KJ法でグループワークをして、こういったプロダクトを市のほうで保存しておりまして、和気あいあいと行っております。発表するときには我先にということで手が挙がって、非常に楽しい雰囲気で行っております。
続きまして、4ページでございますが、この地域ケア会議の取り組みの一環として、まず倉敷市で第1号、最初のほっとオレンジカフェ、いわゆる認知症カフェでございます。「ほっと」は気持ちがほっとするの「ほっと」と、温かい「ホット」をかけて、ほっとオレンジカフェというふうに当時命名いたしまして、当初、このエリア内の3つの地域包括支援センターに認知症カフェを設置して、開催を始めたところでございます。これが2014年2月でございまして、翌年には、好事例ということで倉敷市全域の市の正式な事業となったところでございます。
そして、この3つの地域包括支援センターが地域の実情に応じて非常にアットホームな小ぢんまりとしたカフェもありましたり、あるいは商店街やスーパーへ出て行って出張型のカフェを行っていたり、あるいはボランティア団体がどんどん積極的にかわるがわる入っているカフェ等、いろいろありまして、地域の実情に応じて三者三様に行っているということが、当時、私はうれしく思った次第でございます。
そして、この基盤となりましたのは、地域包括支援センターと地域住民が日ごろから顔の見える関係で、もう名前で呼び合う関係になっていたということが大きいと思っております。
右上が開催場所等で、こういったものを住民にどんどん情報提供していたところでございます。
左下は、これも当時、委員長として私は大変うれしかったのですけれども、民生委員の方が立ち上げと同時に3カ所にこういった民生委員さんの心温まるハンドメイドの看板をつくってくださいまして、いまだにずっと使っておりますけれども、非常に心温まる思いで、民生委員さんには感謝状をお送りさせていただきましたし、何よりも住民ボランティアの支援というのが力強いところでございます。
4ページは風景でございます。
続きまして、5ページです。平成27年度には、当地域ケア会議において事業計画をこのように立てたところでございまして、この中で4番の自助・互助への支援のところございますが、認知症マイスターというのを掲げまして、これは後ほどお話しさせていただきます。その後、認知症出前講座とか、要は共通のパワーポイントを誰もが出て行って、いろいろなところでプレゼンテーションできるようにしようとか、そういった取り組みを始めたところでございます。あわせて、24時間365日の地域包括支援センターの連絡先等を住民に明示するチラシをつくったところでございます。
次のページに行きますけれども、認知症マイスターの研修です。当初、これは私の発案でさせていただきましたが、認知症サポーターの方は相当大勢いらっしゃる一方で、登録制ではないので地域づくりをするときの仲間としてなかなか声かけしづらいということが背景にございましたので、認知症マイスターという登録制でございまして、もし、お力添えいただけるのであればということで、地域づくりの仲間としてということで当初始めたのがこの認知症マイスターでございます。国がこれから進めるチームオレンジと非常に似通っているかなと思っております。内容的には、主に認知症の方への基本的な知識とかかわり方を座学で学んでいただいて、実際にグループホーム等へ訪れて、認知症の方とコミュニケーションをとってもらう。この2つの課程を修了すると、修了証を提供して認知症マイスターという認定をしたところでございます。
こちらも大変いい取り組みということで、倉敷市のほうでこの翌年には、今、倉敷市の全域事業として正式な事業になっているところでございます。
認知症マイスターで、右上が最初のモデルケースで行った養成研修で、左下が修了証をお渡ししているところでございまして、対象は一般住民でございますが、非常にモチベーションが高くて、我々が何も申すまでもなく、認知症カフェ等にみずから応援に入っていただいて、非常に力強い、ありがたい存在でございます。
続きまして、7ページですけれども、認知症マイスターの方の役割ということで、そこにお示しのような地域づくり、あるいは家族の橋渡し等の役割をしていただいております。今、マイスターもふえまして、きょう現在で我々の水島地区だけで70名、研修中が9名おりまして、こういった形で少しずつ認知症マイスターがふえているところでございます。
そして、私が必ずお願いするのは、必ず余裕があるときに、自分のできる範囲で参加していただきたいと。負担と思った瞬間に、あるいは義務感を覚えたときにボランティアではなくなるので、自分がハッピーで幸せを、あるいは笑顔を少し周りに分け与えたいと思うときだけ参加してくださいとお話をしております。
続きまして、8ページですけれども、マイスターの次の構想は地域マネジャーでございまして、要は地域をパトロールしていただく住民を今後、検討しているところでございまして、廃用症候群やフレイルの早期対応や孤独死の早期発見というのは、やはり身近な住民が一番早いわけでございますし、決して孤独死で家で亡くなっていることが不幸ではなくて、早く見つけていただくことが大事なことでございますので、死をタブー視しないで、今後こういった方々も養成できればと思っています。
続きまして、9ページですけれども、当ケア会議の課題と今後の展望ということで、ケア会議の委員に関しては、今後、地域づくりの観点からいうと、警察であったり消防、あるいは住宅関係者、金融機関の関係者、教育委員会、そういった方々にもぜひ入っていただきたいと思っておりますし、全世代型へどう取り組むかというのは大事なことだろうと思っております。
そして、ボランティア団体の尊重というのが非常に重要な要素だと思っております。
続きまして、10ページでございますけれども、これは国の資料なので何を言いたいかと申しますと、今、総合事業とか包括支援事業、こういった地域支援事業が行われていて、左下の住民主体の通いの場というのは非常に議論がなされています。
私が申し上げておりますのは、住民主体の場に専門職、例えばかかりつけ医とか専門団体、医師会等の団体がかかわることで非常に中身が、今、9万カ所を超える住民主体の場が全国にあって、多くは体操をされておりますけれども、さらに専門職がかかわることで有意義な取り組みが期待できると思っておりますし、私はこういったところに、例えばかかりつけ医師であれば、体重計とか血圧計を持っていって、それをもとに話の花が咲いたり、あるいはポリファーマシーの議論もできるかもしれませんし、いろいろ生活習慣病へのアドバイスもできるかもしれません。そういったことを記載しております。
右下は、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施ということで、いわゆるフレイル対策ですけれども、こういったところもフレイルは必須アミノ酸の摂取、いわゆるたんぱく質の摂取と筋肉の負荷運動、レジスタンスエクササイズ、いわゆるスクワットのような運動を二者同時介入したときのみに医学的成果が認められておりますので、そういったことを市町村が企画立案段階から関係団体とか専門職が入っていくことによって、より質の高いエビデンスの伴うものが取り組みできると考えております。
続きまして、11ページは今月27日の一般介護予防事業の推進方策に関する検討会で日本医師会として提案させていただいたものでございまして、ぜひ市町村のこういった地域支援事業における相談窓口を医師会等がかかわることによって、市町村の支援にもなりますし、あるいは質の高い取り組みができるのではないかということで、こういった提案をさせていただいたところでございます。
右下のところも、地域リハビリテーション活動支援事業も市町村がリハビリ専門職の派遣に大変苦慮している実情もございますので、医師会が窓口となることによって、継続的に安定的にリハビリ専門職の派遣が支援できますし、また、その取り組みの質の向上が期待できるところでございます。
続きまして、12ページでございます。実は、かかりつけ医の機能には医療的機能と社会的機能がございます。医療的機能は皆さんよく御存じのことだと思いますけれども、社会的機能は、日常行う診療のほかに地域住民との信頼関係を構築し、健康相談、健診、がん検診、母子保健、学校保健、産業保健、地域保健等の地域における医療を取り巻く社会的活動、行政活動に積極的に参加するとともに、保健・介護・福祉関係者との連携を行うことと、在宅医療にも理解を示すとしておりますけれども、こういった社会的機能がますますこれから期待をされておりますし、地域から必要とされるもので、着実にこういった社会的機能に取り組むかかりつけ医がふえておりますので、こういったところで地域共生社会にも貢献できるものと思っております。
続きまして、13ページは私の医療機関の取り組みですけれども、私は専門がリウマチなのでリウマチ教室とか、ほかの専門医師も糖尿病教室等いろいろ行っておりますが、こういったところに当然これは当院の患者さんだけではなくて、地域住民もお声がけをしてきて来ていただいておりますし、介護予防教室、これはまさに地域住民の方に来ていただいて定期的に行って、そして、出前講座は我々専門職が地域の公民館等へ赴いて、いろいろ座学とか健康測定、体力づくりを行っております。
右下は病院の中で定期的に認知症カフェを開催しているということで、こういったものは当然手弁当でございますけれども、実はこういったインフォーマルな活動が我々の医療機関や介護事業所においてもこれから非常に重要な住民ネットワークの構築ということにつながっていくと思っております。
続きまして、14ページは病院のホールで住民や子供たちと高齢者を招いて、これはコンサートを行っておりますけれども、これからの病院あるいはこれからの医療機関、介護事業所というのは、こういった住民の集まる場、決して病気の人だけが使う建物ではないはずで、こういったことで地域共生社会にいろいろ貢献する社会資源となり得ると考えております。
続きまして、15ページでございます。これは最後の事例ですが、私ども病院の障害者病棟に入院されている、御本人から許可をとっておりますので、ツチヤマさんと申し上げますが、48歳で、今、ALSで、唯一右の股関節がかすかに動くのみで、右膝でいつもパソコンを打たれております。高校、大学、社会人と野球選手として活躍されて、多分このツチヤマさんの人望が大変厚く、毎年二十数名の方が、全国から当時の野球仲間が集まってまいります。当院に入院して2年目でございまして、昨年も1回しましたが、今回、うちの看護師の提案でうちのホールを使ったらどうかということで、うちのホールは地域住民に無料でいつでも貸し出ししておりますので、ホールで楽しくこういった集いができて、非常に楽しい思いをしたということで、次の16ページに私宛てにお礼状が届いて、私は最初この開催を知らなかったので大変驚きまして、うれしく思いました。このお手紙は右膝で打たれたパソコンのお手紙の一部でございますけれども、アンダーラインを引いておりますが、「呼吸器を付けて良かったと心から思っております」ということで、意思決定支援の中で、結果的にこの方が喜ばれているかなと思っております。
17ページ、私もたびたび病室を訪れていろいろお話をさせていただく中で、私も経営者になって最初におむつを自分で漏らしていろいろな体験をする中で、ただ、私は自分でおむつを交換するので全然つらいことではなくて、第三者がおむつを交換するということがつらいですよねといろいろな話をする中で、ツチヤマさんがその話を聞いて私にくれた手紙の一部の抜粋ですけれども、「私は初めて履いた時は悔しくて辛くて洗面所で家内と号泣しました。この悔しさ辛さ屈辱感は体験しないと気持ちはわからないと思います」ということで、この一節で私は涙が出ましたけれども、こういった思いをどう地域共生で救っていけるのか。これをどう住民、周りの人と共有していけるのかというのが非常に重要なことだと思っています。
後半の文章の一節には、今の私の目標は、自分の故郷である香川県と第二の故郷、宇部は偶然私のもう一つの地元ですけれども、奥様の実家でゴルフをしたり、奥様のお母様の手料理をいただいて大変思い出があるところでありまして、帰るということで、必ず奇跡を起こします。そう信じて毎日頑張っていこうと思いますということで、このツチヤマさんが本当に地域に帰ってちゃんと共生という概念の中で、あるいは社会的包摂という視点の中で支えることができるかどうか、私もこれから考えて、ぜひこの夢をかなえていきたいと思っています。
最後に「地域包括ケアシステム構築10か条」でございますけれども、これは私が勝手に提唱しているものですが、「本質は『地域づくり』『まちづくり』」で、とにかく住民が主人公で、住民が主体とならない限りは共生社会も地域包括ケアシステムも当然進まなくて、先ほど申しましたが、冒頭にお話ししたように、行政とか我々関係者団体はとにかくファシリティーター役に徹するというふうに思っております。そして、住民とともに築く「ご当地システム」でありますし、特に総力戦ということで、いろいろな方がかかわることが非常に重要だと思っております。
そして、よく我々は医療介護とか多職種連携と申しますが、我々の真のパートナーは住民でありますので、町内会であり、老人クラブであり、民生員さんたちであり、住民とのダイレクトなネットワークが非常にこれから求められております。
「自助」「互助」は不可欠、それから「前世代対応型」は先ほど申し上げましたけれども、今後非常に重要な課題がございますし、「住み慣れた地域」とか「生活の視点」、そして「地域づくり」への参画ということで、今、取り組みをしております。そして、何よりもやはり地域への「愛着」「想い」。今のツチヤマさんも、地元へ帰りたいとか、人生においていろいろな大成功をおさめた方々がまず真っ先に寄附とかされるのも自分の地元の町、生まれ育った町でありますし、そうした学校でございますし、やはりこういった地域への「愛着」「想い」というのが非常に推進の原動力になると思っております。
最後に19ページで尊厳の保障へ向けてということで、これは私のライフワークが尊厳の保障ですけれども、誰しも好き好んで病気や障害あるいは障害者、認知症、要介護者になっているはずはいるはずもなくて、人生の最期まで少しでも自分らしくありたいというのは誰しもの共通の願いだと思っております。私たちの周りには、今度お祭りに行こうとか、初詣に行こうとか、お花見に行こうということが約束できない方が大勢いらっしゃいますので、そういった方々に対して何ができるのか。これは住民全体でこれから共通の課題として、そして、共感力を持って取り組むことが重要だと考えておりますので、きょうはそういった取り組みの一環として発表させていただきました。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
○宮本座長 ありがとうございました。
地域共生社会と地域包括ケアシステム、さらには医療との関係を大変具体的かつ考えさせられる事例を通してお示しいただいたと思います。
続きまして、長野参考人、よろしくお願いいたします。
○長野参考人 よろしくお願いします。愛媛県愛南町から長野と申します。お時間いただきます。
2ページです。愛南町は四国の端っこにありますけれども、捉え方として、ここが今とても大事で、私はこの町に住んで23年くらいになりますけれども、昔、10年ぐらい前は、特に町が小さくなって大変だとか、遠くて大変だとか、あれが大変だ、これが大変だとすごく思っていたのですが、大変なのは変わらないのですけれども、それを一々掘り下げていってもどうにもならないことはどうにもならないし、何とかなることは何とかなるし、高齢化もそんなに怖くないし、何となく全体としては、「まあまあ遠く、まあまあ厳しい」という捉え方に変わってきました。悪くないのです。私もこの町がなければ本当に生きていられなかったかもしれないなというふうに思っています。とてもいいところですので、皆さん、ぜひ遊びに来ていただいたらと思います。
自分の立ち位置はいろいろありますけれども、医者としてもたくさんいろいろな方に出会います。町で2万人の人口のところで3,000人を超えました。家族、歩いていない集落はもうないですし、本当にいろいろな方々に出会います。私自身、最後の医者、精神科医、町の最後のとりでですので、必ず何とかしなければいけない。その位置にずっと居続けるということから見えてきた風景があります。
あと、ボランティア活動を精力的にやってきました。みんな楽しく仲間が寄って民生員さんとかいろいろな人たちと集まってみたいなことを今もやっていますけれども、10年以上やってきて、そこの限界を感じながら、日常にソーシャルビジネスというかどうかわからないですけれども、日々稼ぎながら生きるというところに変わってきて、そこから見えてきたことがあります。
あと、やはり自分ですね。人のことではまるっきりないなと思っています。議事録に残るとちょっと嫌なので多くは言いませんが、いろいろなことを経験してきましたし、地域もあれよあれよという間に小さくなりました。小学校が19あったこの町が、今、1学年で子供が生まれているのが80人です。本当にあれよあれよという間に、あっという間に来ます。私たちの町は昭和25年から人が減っていますので、そんな急なはずはないのですけれども、あるところから本当に急激に来るというイメージです。そんなことを感じています。
あと、災害のことに関しては、考えさせることがいろいろあります。
その次が、ただ、私たちが改革者でも何でもないのです。先輩たちからありますけれども、やはり原点は、私たちは精神障害の方、長期入院も含めて、本当に人生を失っていく方々が日々いるということだと思うのです。今、日本でも1年以上入院されている方が20万人、一向に全く減りません。私たちの病院にも30年、40年、退院させられていない方がいらっしゃる。本当にそこからスタートしながら物事を考えている。
それから、だんだん重ねてきました。もともとは医療の仕事と地域の中でいろいろやることというのは何となく2本立て、アフターファイブみたいな感じだったのですけれども、今はもう全く同じで動いていますが、いろいろな課題意識、認知症であったり3障害を重ねたのは平成10年ごろでしょうか。それからボランティア活動中心だと、ボランティア活動は年間20回以上イベントを組んでいましたので、本当に精力的にやったつもりです。そこから本当に解決を物事みんな生きていくために日常に変えていくというのが2006年ごろで、このころは盛んに、ともに生きる、ともに働くという共生という言葉を使っていましたが、「ともに」とは何ぞやというのに結論を出せませんでした。一緒に酒飲んで、一緒に食べに行ってが「ともに」だと思っていた時期もあるし、いろいろな経営を始めてからは、みんなの生活がこければ自分の生活もこけるようなリスクを背負い合って生きている、これが「ともに」かなと思ったりしていたのですけれども、あるところで言われたのは、障害を持った方々も含めて皆さんのことを異質と思っているから「ともに」と言うのではないですかということを言われたことがあって、すっかり「ともに」とか「共生」という言葉を使わなくなってきてしまいました。
最近はさらにネットワークみたいなものもいろいろ考えていく中で、災害を軸にしていくことになっていたのがいいなと思っているのは、田舎で一番人が出ていくのは密過ぎる人間関係ですので、つながりを、つながりをといってどんどんつながり強化するのは本当に窮屈だし、私も嫌です。災害の場合は、全ての方を視野に入れながら、災害のときはよろしくね、そのときは助けてよと。ふだんはもっと緩くしながら、災害のときだけは助けてよという、そんなネットワークづくりができるなということに気づいて、いろいろやっています。
かなわない目標を一番上に置いていますが、目の前で亡くなっていく方にもたくさん出会う中で、生涯を全うできる社会が要るのか。誇りを失わずというのはさらに高い目標で、永遠に到達しないことはわかりつつも、ここを目指したいと思っています。
病院のほうも、精神科医療の構造の問題、医療の構造の問題は注目をしていますので、病床149床あったものを閉じる体制まで持ってくることをしています。
その次が原点の平山寮で、その次はイベントの様子を少し載せていますが、障害者のサッカーとか、障害者のスポーツとか、障害者がつくったとか、そういう枕言葉をとにかく徹底的に一個一個なくしていくことに時間をかけてきました。あと、イベントをするときも、これも10年ぐらい前まで特に大事にしていたことですけれども、楽しいことをメーンにいろいろやりながら、そのイベントのやり方もちょっと通常と違って、段取り八分などということではなくて、段取りをできるだけせずに、イベントは失敗しても構わないので、当日できるだけすき間をあけておくと、つくった出番とかつくった居場所ではなくて、本当に皆さんが活躍していかれるので、できるだけすかすかのイベントにしようみたいなこととか、いろいろな工夫をしながら積み重ねた次があります。
その一方で、いろいろネットワークを組んで、できるだけオープンで、常に初めから一般住民の方も皆さん入っているネットワークなのですけれども、勉強するということは続けていないと、集団になると一気に違う方向にあっという間に行ってしまうので、ひたすら考えて勉強するということを継続しています。
その次、これがちょうど平成15年ごろです。本当に町が厳しくなってきて、最後のとどめ、今も真珠母貝の大量へい死が始まっていてとても困っているのですけれども、20年前に真珠母貝の大量へい死があって、その5年後に誘致企業の撤退で、500人以上の従業員の企業が一気に撤退されると、あの町ではどうにもならない。町の人の挨拶が「仕事がないね」というような状況になってきて、そんなときにふと思ったのは、本当に一番困っているのは障害を持った方とか福祉事業者とかそんなことではまるっきりないなと。いろいろ皆さんとやっている中で、皆さん私にできることはないだろうかと必ずおっしゃる。みんなで集まって、楽しいねというよりは、本当に具体的な課題解決にみんなの力、小さな力が結集しないかなみたいなことを思いながら、この「なんぐん市場」というビジネスの組織をつくりました。いろいろな人たちとつくっています。
そのときの設立趣意は、枕言葉を全部並べることは不可能で「様々な立場の住民が」という書き方をして、町の方もそうだし、町の外で町から出た方もそうだし、いろいろな方の力をかりながら地域貢献をしたいのだ。地域活性化につながる産業を起こしたい。このとき、実は10年かけてやっと自前で起こした300万円ぐらいの事業、たった一つでしたから、自前で雇えるのはたった1人だったのですけれども、その時点で産業を起こしたい、産業がないと生きられないのだということ。先輩たちの文化を見ていても、山を開いたり、海でとる技術をつくったり、産業の歴史を見ていると本当に壮大なことをやられていて、そんなイメージを持ってこんなことを書きました。それは誰のためでもないということです。
次のページが今の事業です。大分広がってきたというか、一つ一つ形にしてきました。今、耕作地が10ヘクタールぐらいになりましたので、愛南町の耕作地は米と果樹で1,000ヘクタールですから、農地の1%ぐらいを担うようにはなってきましたし、一方で遊び心というか希望が要って、あるものを守るだけでは結構苦しいので、本当に新しいもの、明るいものをつくろうと思って、早々からアボカドに取り組んだり、今はさらに次のユーカリの栽培を始めていたり、いろいろなことをやっています。
それを15年、本当に死に物狂いでやってきましたけれども、そこで少しずつ産業を起こしたいと書いたのも、そう妄想話ではなくなってきて、養殖であったり、アボカドも正式に行政とも産地化連絡会が9年越しに立ち上がって、次の段階に行っています。2年前にデビューが銀座千疋屋というとんでもないことになりましたけれども、そうしながら、今度は地元でいろいろやっていこうと、こんなことも少しずつ希望が出てきています。
ただ、本当にお見せしたいのは次の写真で、文章で書くと無理だなと思ったので写真だけにしたのですけれども、資源と言われるものをつくっているのも、担っているのも、本当にいろいろな人たちなのですね。仕事があるのならと施設を出てきた人ももちろんいらっしゃるし、10年以上入院していた方もいらっしゃるし、御自身のがんの治療をされながらの方もいらっしゃるし、この十数年でNPOで現役の社員のまま亡くなった方が4人。亡くなったことはうれしくも何ともないのですけれども、その亡くなる1カ月前まで給料をお支払いして亡くなる、そんな場所になってきたということは、私たちにとってはとても誇りで、それが町の農地を守っていく、産業、生産をしていくということにちょっとずつ具体的につながってきたかなと思います。
そのようなことで地域を何とかと動いていると、今の医療ではいけないなと常に思っていて、病院の改革もぼちぼちやって、精神科病院も20年でこのようなモデルチェンジをしています。
そのあたりは20ページ、少し先ほどのらせんの図をどんなふうに考えてきたかなと思って、これは振り返って考えたことです。やはり御本人の生活が真ん中にあって、皆さんが何となく、伴走という言葉も私は今回使うだけで今まで使っていなかったので書かなかったですが、必要なときだけ支援をさせていただく。ずっと伴走している方というのはいろいろな方がいらっしゃって、地域づくりとまとめてしまうと難しいですけれども、やはり一番初めにやったのは味方づくりなのだろうなと。それから世論、地域の文化、大きな緩やかな文化をつくりつつ、あくまで生活を基盤とする資源をつくっていく。生活を基盤とする資源を新しくつくることもあるけれども、既存のものを御本人から見て資源化していくという考え方もすごく大事にしてきたのだなと思います。
医療・福祉に関しては変革と書きましたが、とにかく縮小の中では、つくることより閉じることのほうがはるかに難しいので、あえて変革と書きました。身の丈以上に医療・福祉資源があると、そこに取り込んで地域行政からは離れていくということを十分経験していますので、あえて変革という書き方をしました。こんなところでしょうか。
最後に21ページからですが、少し今回の検討会にあわせてどう思うかまとめてみました。地域共生とか包摂社会とか、私たちはできるだけ地域で皆さんと飲み会でしゃべれるような言葉で物事を組み立てたいと思っているので、余りこういう言葉は使わないのですけれども、もしここを目指すとしたら、人口が減少しても自然発生では絶対ないということです。よくプレゼンをしても、海外で韓国などで話したときも、では都市部はどうするのだとすぐ質問が飛んできてしまうようなことですけれども、人口が減ってもそのまま実現していくものではない。そこはちゃんと腹に据えておかないと無理ですし、日本でいくともう来年には東京も人口が減り出すので、ここはよくわかっておかなければいけないことかなと思います。むしろ逆に進む可能性が非常に高い。だけれども、逆に進んだときはもう社会は成り立たないというふうに思っています。
基盤はやはり、お一人お一人がどう生き続けられているかということが基盤にないとずれていく。
いろいろなことを、私のことと捉えることが一番大事なこと。私たちも認知症の啓発などで地域の集会所で真っ先に聞くのは、皆さん、ぼける予定の方はどれぐらいいらっしゃいますかと手を挙げていただきます。大体、最近、ほぼ99%挙がるようになってきて、意地でも挙げてくださらない方もいらっしゃるのですけれども、ぼける予定の方はどうですかと。私はぼける予定ですよというふうに話を始める。認知症だけではなくて、ありとあらゆることでここが大事かなと。
共通意識は、教えるとか伝えるとかではなくて、見つけるなのだと思うのですけれども、よく地域の方が合い言葉で言うような共通意識というのは実はずれていることが多いことにも気づいていて、例えば仕事がない、仕事がないとおっしゃるので仕事を募集しても、今度は働き手がいなくて、仕事がないのではないなとか、そのままの言葉ではだめなのだと。皆さんが本当に思っている共通意識を見つけることができて、誰かが一人声を上げてくれると、それは本当のものなのだと。この共通意識というのは簡単なことではないのですけれども、ここを皆さんがどう思うかということを一緒につくっていくことがやはり鍵かなと思っています。
「断らない相談」という非常に格好いいことにならないかなと、ちょっと心配はしつつですが、やはり専門職は壊しがちで、例えばデイサービスにしてもヘルパーさんにしても、私たちの町でよく聞くのは、ヘルパーさんが入り出したから周りの人がつくりに行っていた食事を、もうプロが入っているから、台所の段取りもあるから私たちはもう行けないよねと引いてしまうのです。そういうことを私たちがちゃんと見きわめているかどうかということはとても難しいことだし、そのスタンスを忘れてはいけないなと思っています。
あとはやはり相談支援、ケアマネジメントも全部そうですけれども、危機介入です。危機のときの介入をちゃんとやらなければ、伴走していますなどというのは言うのをやめたほうがいいだろうと。危機時の支援が絶対に要るのだろうなと。ちょうどきのう診察で聞いていた話もそうなのですけれども、病気がよくて、コントロールがよいときは訪問看護もデイケアも来てくれるけれども、悪くなったら家族に全部丸投げで、警察に言ってくださいと言われる。こんなときに手伝ってほしいのだけれどもと、そのとおりだと思うのです。危機のときの支援というのはとても大事なことだけれども、一人では絶対にできないので、やはりチームでやっておく。よく聞くのは、何かあったら連絡してくださいと言っておいたのですけれどもねという、これをなくさないと大変なことだと思います。
やはり最後まで残らなければいけないのは基礎自治体なので、覚悟を決めてやる意味でも基礎自治体の役割は大事。いろいろありますけれども、実は地域で本当に人材をちゃんと安定して雇用できていくのも最後は基礎自治体だけになっていきますので、とても大事なことかなと思います。つないで終わりというのは本当に意味がなくて、つないだ後が大事かなと。
あと、時間をかけなければとても人の人生なんて絶対にわかりませんので、時間をかける。本当に生活困窮も始まって張り切っている方たち、いいなとは思うのですけれども、みんなに障害者手帳をとらせて、はい、福祉的就労ねみたいな、そんなのがいっぱい出て、結局切れていくみたいなものがどんどんあって、時間をかけてしないと本当にうまくいかないなという気がします。
格好つけるわけでは決してないですけれども、私たちは後ろに控えておいて、かつ、いざというときは最後まで何とかする覚悟、この2つが要るのかなと思っています。
参加支援です。これが軽くならないようにというふうにはとても思いますが、連携、連携と言い出したときに、大体手が尽きているなと思っていて、本当に覚悟を持ってやらないといけない。私たちも働く場をつくるというか、働く場をつくったわけではないけれども、それが結果として働く場としてとても有益だったのは、企業にお願いをしなければいけないのに、きょうから働かせてください、1カ月分給料を前借りさせてください、けれども、あさって来なくなるかもしれませんということは頼めないのですね。そういう意味では、最後まで責任とるような資源をある程度手のうちに持っていないと機能してこないのではないかという気がします。社会資源をつくっていくことももちろん権利擁護の大事な取り組みだと思います。あと、さっきの資源化です。資源をちゃんとつくっていくのだけれども、あるものをどう生かすか。活用ではないかもしれないです。御本人の視点からして使えるようにしていく。
けれども、使えるようにしていくのに「何とか頑張ってよ」だけではとても無理で、仕かける側は、ちょっと小さなお土産があると。これは東北で池田さんに教えてもらったのですが、御用聞きに行くときに水がありますよとか、何か持っていないと御用聞きに行きにくいのだという、それは西日本のときもまさにそうで、トラックで御用聞きに行く。水を積んで、食べ物を積んで、ラップを積んで、紙コップを積んで聞きに行く。これがとても大事かなと思っていて、そんなことが要るかなと思ったりしています。
どんな取り組みも必ず限界があるということは認識しておかないと、サロンをやっています、カフェができました、いいでしょうと、隣でおばあちゃんが倒れているのに誰も目を向けていないとか、そんなことが起きてくるので、どの取り組みにも限界があるという謙虚さというのをとにかく私たちは忘れてはいけないなと思っています。
あと、生活困窮者自立支援法は頑張っていますけれども、まだまだ未熟です。やはりある程度熟成してこないと、もっと苦労しないと無理かなと思っていますけれども、こういうことの出口だったり参加というのは1カ所にするととてもまずくて、どんなに小さな市町村でも2カ所、例えば行政と社協とか、行政とNPOとか、意地でも2カ所用意しておくことは絶対に大事かなと思っていて、頼り過ぎるとちょっと危ないかなと思います。
私たちも保健師さんたちとみんないろいろな課題があって、やってもやってもずっとだよねということは覚悟していて、皆さんいろいろなものが続いていきますので、目配せし続けられて、一回出会った方とずっと目配せし続けられるかどうかが鍵かなと思います。
あと、政策に関して、本当に今ちょうどターニングポイントだなと思っていて、この100年からこういうふうに改めて見ていくと、介護保険とか障害者総合支援法とかがこの100年の最後の後回しになったのだなと思ったり、大規模化、機能分化とか、どう考えても縮小のときには合わないような政策がまだぐんぐん推し進められていたりとか、これから一番、とにかく難しいのは閉じていくこと。学校の統廃合もそうですし、今回の公立病院の問題もそうですし、閉じるのがおくれると、そのおくれたときに膨大なコストが要るので、次のコストがなくなってくるので、閉じることに関して、閉じながら地域行政をちゃんとつくるということがとても大事かなと思うのと、行政無駄論を絶対なくさないとまずいなと思っています。公を縮小させると本当に最後厳しくて、民間は縮小に向かないですね。今の日本の民間は縮小に絶対向かないので、明らかに縮小を見据えているときは公に踏ん張っておいていただかないとうまくいかないなと。私たちももちろん担いたいと思いますけれども、公を担う民間もたくさん出てきたけれども、民間はあるラインからは、やはり飯が食えなくなってどうしようもなくなったら消滅せざるを得ないので、ここはすごく大事かなと。
とにかく今、分担か分断か機能分化されている。これは全然、医療・福祉だけではなくて、私たちは温泉経営もしていますけれども、ボイラー屋さんを呼んで、配管屋さんを呼んで、蛇口屋さんを呼んでとしているうちに、だんだん業者がなくなってくると、もう修理もできない。そんなことではないですね。生活ができないものがどんどん消えていきます。
最後です。これはもう大話です。皆さんに申し上げることではないけれども、とにかく私は、小学校も含めて教えるとかいうところをもう一歩超えたところで教育改革から社会をつくり直さないと間に合わないと思いますが、排除する理由のほうが圧倒的にできやすい社会だなと。私も年間ずっと記者会見を覚悟していきるのはちょっと苦しいですね。感染症もそうですね。本当に老人施設で感染症対策のために冬の間は家族面会禁止ですということが当たり前になってきたのでは、地域共生もへったくれもない。いろいろな意味で責任者探しが行き過ぎていたり、迷惑をかけないようにとか、こういうものが切りかわってこないといけないのかなという気がします。それは本当に、あす、きょう、自分にいつ降りかかるかわからない。これが常に不安との隣り合わせでは、優しい社会にはなかなかならないだろうなと。本当に大きな転換を、小さな町の生活から感じています。
いつも折れそうになって、いつも逃げ出したくなりながらやっていますので、話半分ぐらいに聞いていただけたらとてもありがたいかなと思います。
以上でございます。(拍手)
○宮本座長 ありがとうございました。
地域共生が産業起こし、まちづくりに行きつかざるを得ないということを非常に説得的にお示しいただくと同時に、長野参考人が共生、伴走、連携という言葉に非常に慎重であるということも我々としては重く受けとめるべき事柄かなと思いました。ありがとうございました。
続きまして、前神参考人、よろしくお願いいたします。
○前神参考人 前神でございます。
私からは、課題解決ではなくて、新しい価値創造型の思考でクリエイティブな地域づくりをしている実践を愛媛県伊予市双海町と山形県置賜地方の2つの地域からお話ししたいと思います。
どちらも巻き込まないということを大事にしています。よく人や地域を巻き込むと言いますが、巻き込まれた人はたまったものではないのですね。あの人に巻き込まれてえらい目に遭ったとか、そういうふうに巻き込むというのは使いませんか。そのように巻き込まれて何かに参画した人は、私は次何をしましょうかというふうに自分を巻き込んだ人に聞きます。だけれども、それはすごく共感する、おもしろいね、私も仲間に入れてというふうに入ってきた人は、私が次これをやっておきますよとか、誰々さんがこうしてくれるそうですとかいうふうに、どんどん提案をしてくるのです。なので、共感で集まった仲間でやることは結構未来を開いていく力があるなと思います。そういった事例をお話ししたいと思います。
あと、もう一つ大事な視点としまして、「だけ」とか「ばかり」という同じような属性の人でずっと考えていると、割と案が尽きるのかなというのも2つの事例の中から出てきます。スライドで6番目の愛媛県伊予市双海町というところからお話ししたいと思います。
赤く線を引いている、たったこれだけの小さい地域です。平成の合併で伊予市になりました。それまではずっと社会教育とか地域教育、あとは交流観光体験などでまちづくり、人づくりをやってきた歴史のある町です。「しずむ夕日が立ちどまる町」ということで、特に何があるわけでもないのですが、町をあらわしているのがこの下灘駅という駅です。これは結構、鉄道マニアなどには有名で、無人駅ですが、なぜかここに人が集まってくるというような地域です。
そこが合併をして、市になって大きくなったらもっといろいろなことができるのだというふうに住民の皆さんは合併に期待をしていましたが、合併後、多くの地域で、あれができなくなった、これができなくなったと、合併を言いわけに、できないこと探しが始まりました。そのときに町の人たちが、合併10周年にどんなイベントをするかというような楽しいことを考える地域の人だったので、これでは寂しいということで立ち上げたのが、この地域住民による地域活性化の学び舎ということで、まちづくり学校双海人(ふたみんちゅ)といいます。
この双海人の特徴は、ここの校訓が「ふたみ」というふうに書いていますけれども、お互いが学び合う関係性で、名前を学校というふうにしています。そして、誰でも参加オーケーで、3分の1ぐらいは町外から来ています。ここを運営している人は地域の人たちです。役所の人がするのは、もう少し役所じゃないとできないこととか、場所を貸したり物を貸したりということです。
学校運営のキーワードで大事にしているのは4番目の「小さな社会実験から」ということです。まずはやってみようということです。
スライド10枚目の右下に、ちょっとわかりにくいですが、高齢の女性が写っています。このときに皆さんが言っていたのが、高齢者の食事を何とかしたいということです。まちづくり学校双海人では、月1回例会で学びの時間とみんなで考える時間を持っていますが、いつまでに誰が何をするということが決まらないことは、そのまま寝かしておくことになっています。このおばあちゃんたちは、いつまでに誰が何をするか決まらないので、ずっと寝かしたままになっていました。
その寝かせた意見、夢がそのうちかなうのですけれども、次をめくっていただくと、この町の商店街は、昔は映画館もあったりすごく華やかなところだったのですが、今残っているのは診療所とお酒屋さんと散髪屋さんとお醤油を醸造しているところです。この4つしか残っていません。その中で最後の日用品と食料品を売る店がなくなったときに、もうこれで商店街で会うこともなくなるねというような会話があり、それで私たちにできることは何かと、まちづくり学校双海人で考えたのがこの軽トラ市でした。
そうすると、軽トラ、車で物を運んできて店舗のかわりにするので、簡単にお店ができて、そこでの出会いとか会話する場というのがとても大きくて、まずこの下の靴を並べているおじさんは、市役所の近くの町の中から来ている商店街の靴屋さんですが、皆さんの履いている靴、商店街で買われているでしょうか。なかなか市の中心部にある商店街でも大変です。在庫がいっぱいあります。そうすると、ここが一番人気なのですね。おばあちゃんたちが手押し車でやってきて、私こっちがええな、あんたそっちが似合うんじゃないとか言いながら足を入れて話すのですよ。卵切れたけん、買うてきてということはあっても、私の靴が傷んだけん、買うてきてとは言わないですよね。そして、このおじいさんも八十幾つの靴屋さんですけれども、在庫がこうやってはけていくのが楽しくて楽しくて、ここに半額と書いていますが、夏冬で年に2回半額セールもやってくます。
でも、寂しいことに免許返納の日が来ました。それで、どんどん家に閉じこもって出て来なくなりました。見かねたお孫さんが、遠くから来るのでちょっと毎月はきついんだけれどもということで、3カ月に1度くらいですが連れてきてくれるようになりました。そうすると、そういう楽しみができるとこのおじいさんもまた元気になって来ています。
次のページの②のところで握手している写真がありますが、わしら元気やけん、診療所に行かんけん、全く会わんよなというふうに握手しているのですね。4年ぶりかな、5年ぶりかなと。それぐらい人がすかすかで点在で住んでいるところは人と会いません。子供たちが自分たちのお小遣いを持って買い物をして、おつりをもらう経験もできません。なので、ここは貴重な社会学習の場にもなっています。
この下に移住のことがいきなり出てきますが、このように人が減ってきた。合併前は9,000人弱ぐらいだったのが、もう今は4,000を切るまでになりました。だけれども、人が減っていってもにぎやかな過疎で生きていきたいという思いがありまして、平成23年度に33集落全部人口推計を出してみました。これは役所側で出してみました。住民の皆さんに見せたらショック死するレベルでした。なので、これをどういうふうに見せるかということを私たちは考えました。人を危機感であおるやり方はよくないと思います。危機感であおられた人は、どうなるか希望が見えないままそれを見せられると固まるのですね。思考が停止します。
近所の子供の数を数えたんよという住民が出てきました。この小学校に通う人はいなくなるんじゃないかというふうに、住民のその素朴な疑問から、33の集落の数字があるけれども、怖いけれども見てみますかというところから始まりました。ここはトライアスロンをやっている地域で、全国から人が来ます。関東から来た家族が、4人家族でここに住みたいという移住の希望の相談が役所にかかってきました。だけれども、なかなか空き家がないと。空き家はあるのですが、貸家がない。それをみんなで何とか探したら、そこの子供2人が入学してくれると子供が増えるよねということで、町のみんながわっと盛り上がりまして、大家さんを知っているから連絡するとか、そういうふうに自動的に動き始めて、移住の取り組みが始まりました。まさにタイトルの真ん中、読みにくいのですけれども「若返り玉手箱~移住交流で学校を救え!~」というのがプロジェクトの名前です。パンドラの箱をあけたら若返るよというメッセージを込めました。
15ページは、市役所が2015年の広報に大きく出しました。「しあわせはきっと いよしにある」と。それぐらいの動きが出てきまして、この右側の広報の写真の子供を抱いている4人家族です。周りの人たちは移住を支えてきた地域の人です。この人は介護職の仕事をしていて市外の事業所に勤めていたのですけれども、自分の住む地域でつくろうということで、訪問介護の事業所を立ち上げました。こういう新しい事業所ができて、そうか、ないものはつくればいいということですね。そして、また1組の家族が移住してきました。17枚目のスライドです。
家が見つかるまでに2年かかったので、エンジニアだったお父さんがパンの学校に行って、パン屋を開業してくれました。パン屋のなかったこの地域にパン屋ができて焼きたてのパンが食べられるようになり、住民が6人増え、今すごく人気のパン屋さんなので、地域もにぎやかになりました。ここにたくさん近所の人が集まっていますが、奥の和室で何かのぞき込んでいるのは赤ちゃんがいるのですね。お母さんが赤ちゃんをおんぶしたまま接客していると、大変でしょう、私たちが見てあげるからとか、ここにずっといて、パンが残っていたら買うのですね。お客さんが来たら、お先にどうぞどうぞと言うのですよ。
今度は、地元の方で自宅を改装して、週2回ランチを提供する食堂を開店した人が現れました。すると、さっきの写真の高齢者の食事を何とかしたいといっていた人たちも、食堂を開業しました。週に1回開店の食堂ですが、彼女たちはそれで生活するのではなくて、地域の人にこういうことをしたい思いでやるので週1回なのですね。
ここで出しているのは、昔から高齢者が食べてきたものです。今は手間暇がかかるし、配食サービスではそういうものは食べられません。配食サービスは食事は届きますが、孤食ですということで、高齢者の食事を何とかしたいというのは、食べたかったものを食べて、そして、いろいろな人とおしゃべりをしている、そういう場をつくりたいということだったのですね。
そうすると、19ページを見るとこんなふうに人がいっぱいいるわけです。あちらの食堂ではない部屋でみんなで体操したり、いろいろな講和をしたりしています。
高齢者だけではなくて、私たちもと立ち上がったのが20ページの女性たちです。この地域でみんなで健康に幸せに暮らしていきたいという思いから始めたのが、自宅を改装し公衆浴場の許可を取り、四国初の米ぬか酵素風呂です。お茶も飲めたらいいよねということでカフェの許可もとりました。そうすると、東京の紅茶屋で働いていた紅茶を入れるのが上手な移住者の方もそこで働き始めたり、地域の人がいろいろできることを持ち寄って地域の憩いの場にもなっています。 そして、いろいろ事業が起きていく中で、地域の中に複数のなりわいをつくって、やりたいことを実現すると同時に、困っていることの解消のきっかけづくりをしたいという思いが一度に解決していく。困ったことをどうしようとだけ考えると、どんどん課題が細分化されるのですけれども、やりたいことを実現しながら、少し困った人のところに手が届くというような動きができてくると、生活困窮の方や学校になじめない、仕事に行けなくなった人も包摂するような地域が出てきまして、再スタートをその人のペースで切れるのですよというような地域の温度というのが、今、とてもいい感じで醸成されています。
23ページにパン屋さんが、地図に落としてみたらこんなにたくさん御飯を食べるところがあるよと。知らない間にこんなにたくさんできていました。なので、きょうはどこに行こうかなとホッピングするのも、外に出ていくきっかけもできたりして、そうすると双海だけじゃないんよということで、旧伊予市にもこういうNPO法人ができたりして、全く介護保険とかに頼らない仕組みで活動をしています。この民家みたいな家が、夜は居酒屋になったり、やっているNPOの活動内容を25ページに書いていますが、青い文字を見ていただくと、いろいろな分野のことをやっています。これは制度の中に入らないからできるということでもあり、地域の人たちといい形に、いい加減で調整していくことができます。
そういう地域の移住サポートセンターは、この古民家の中にあります。これも古民家を残さないといけないという文化的な建築を残すという視点から動いている人たちがここを借りまして、コワーキングスペースとシェアオフィスにしています。その中に、民間の移住相談窓口を一般社団法人で住民でつくりまして、市からワンストップの窓口としての委託を受けるという形で進めています。
そこではいろいろな地域ごとに移住を扱う団体がいて、そこをいろいろ間で調整していくような役割をしながら、公的な仕事なのだけれども、公的っぽくない場所にあるので、いろいろな移住相談が来ます。ここに2つの相談を挙げていますが、この中身を見ると福祉的要素を含むものがたくさんあります。移住のイメージは皆さんは、もっと何か夢を持って田舎で暮らしたいとか、テレビとかの影響でそう思うかもしれませんが、いろいろな理由で人は住むところが変わります。それを役所には行きにくいのですね。
これは伊予市ではないですが、もう一つのとある自治体のものも載せていますが、こういう移住相談を受けている窓口があります。なぜ移住相談に来るかというと、スティグマがないからです。あそこに行っていることを見られたとしても恥ずかしくない。濃い人間関係の中でも行きやすいところに人は相談に行きます。相談窓口をつくっても、行きたくなければ行きませんということです。そこでは、つなぐ、つなぐとよく言いますけれども、どこかに紹介するのではなくて、私たちは間を取り持つというところを大事にしているので、最後までそこの窓口で受けます。本当は後ろで役所の違う課の人が動いているのだけれども、そこに行きたくない人をそこに連れていったりはしません。
そして、山形でも同じようなことが起きていまして、31ページからですけれども、山形では置賜地方の8市町の21万人の人たちが圏域で一緒に活動していまして、これを行政でも広域行政事務組合、一部事務組合ですね。ごみとか電算、消防などをやっている組合がやっているというのも特徴です。
そして、そこの中でも圏域の人と地域をつなぐ事業というのをやっていまして、役所の会議室ではなくて、ぱっと見八百屋さんが、御両親が仕事をもうリタイアされて空き店舗になっていたところをコワーキングスペースに息子さんが改装してやっているところです。ここで年3回だけ集まって、あとは自主活動なのですが、私たちはこの地域でどうやって生きていきたいのかということを考えるのです。こういうことはなかなか公的な機関の研修でやったりはしないのですが、そこは結構肝になると思います。
皆さんの意見で出てきた1年目の終了したときの意見が、33枚目のスライドの「ゆるふわ」という言葉なのです。このゆるふわの雰囲気があったから、私たちはここに来ることも、ほかの活動もいろいろできたのです。それはなぜかというと、単にこれは適当にふわっとしているというのではなくて、許されて包摂できる寛容さがあるからゆるい。そして、ふわっとしているのは、目標をはっきり定めているわけではないので、探索的にみんなでそれを探して、本質的なことに向き合う勇気があるのではないかということでゆるふわなのです。2年目にもっとそれがはっきり見えてきましてかなりシンプルになっています。
そこで気がついたのが、地域おこしの型に合わせて地域づくりをやるのではなくて、私たち自身がどうやって望む地域をつくるのかということなのではないのかということです。地域づくりとは、まさしくこの地域でどのように生きていきたいのか。地域をこういうふうにしましょう、目標をつくって私が何をできるかというのではなくて、私を生かして地域を活かす。私が今やっていることが地域にどのような貢献になるのかから入っていくと、それなら私もできるというふうにみんなが難しいと思うことが簡単に変わっていきます。どちらから見るかということですね。それで、新しい時代のまちづくりというのは、これまでのやり方や常識にとらわれないで、今ここで変化している、起き始めている未来を感じ取ることが大事だよね、そのためにいろいろなプロトタイプをしていくことだということで、いろいろな活動がここで生まれました。
そして、今まで知らなかった地域の事例ともつながりまして40枚目のスライドにガーデンフェスティバルというものがありますが、人が減って新しい動きのなくなった町内会で、ここ数年置賜に合宿で来ている東京の大学の学生さんたちが、夏合宿の中で町内会の行事を企画し1日限りのイベントを実施しました。このイベントがきっかけとなって、町内会の人たちが自分たちでこういうことをやろうという動きがこの後起きまして、内発的な動きと外発的な組み合わせというところがこちらでは起きています。
48枚目を見ていただくと、今まで私たちは赤い丸の頑張っている人たちのところばかり見ていたのではないかと思うのです。なので、このモデルを横展開しましょうというのをよく言ってきたと思いますが、横展開ではなくて、気がつけば同じような形のものが隣で知らない人たちがやっていたり、多様な動きがあるということ。いろいろあって、つながるところがつながって、全体が機能しているのだということを理解する必要があるのと、パラダイムも古いことが終わっていく前に新しいことが起きていく。この変化に敏感であること。そして、最後のウェルビーイングのところですが、ポイント、ポイントのところで横に書いていますが、結局、私のウェルビーイングとは何かという4つ目の○のところなのです。ここをわからないで議論をすると、政策の形だけを考えがちなのです。だけれども、これから先、スマート自治体とかが進んでいくようになって、役所の人の仕事が減った分をどこに力を注ぐのかというときに、何が私たちにとって幸せなことなのか、いいことなのかという実体験をもって話せない職員は、なかなかそういうところのイメージが湧かないということなので、この視点に返って考える訓練というのを今、2つの地域ではやっています。
最後に、変化が起こるときというのを見てみると、役割分担から入らないということだと思います。経過を公開しながらいろいろな意見を受け入れながら、責任を持って臨むためにみんなで判断するのだ、情報は共有する。そうすると解決へ向かっていく。
でも、最初に役割を決めて結果だけ公表したことはどんどん閉じていって、結局何もつながらない結果に終わってしまうということが多かったのではないかと思います。なので、どんどん間をつないでいくような人たちを育てていくということも、いろいろな課題を解決するということを急ぐよりも先に必要なのかなと思います。
以上です。(拍手)
○宮本座長 ありがとうございました。
本当に課題を価値創造に転換している具体的なお話を承ったと思います。
それでは、質疑応答に入っていきたいと思います。お三方のプレゼンテーション全体を通してで構いません。いかがでしょうか。
確かに時間は差し迫っておりますが、そこまで遠慮される必要はございませんので、若干延長することも可能だと思います。いかがでしょうか。
堀田構成員、恐らく何かあるのではないかと。
○堀田構成員 ありがとうございました。それぞれ皆さん、いつも学ばせていただいて、ありがとうございます。
2つお伺いしたいのですが、まず、江澤先生と長野先生には、専門職の方々がいかに日ごろは出過ぎず、本当に本人ならではの尊厳を中心にしながら、奪い過ぎず、しかし、後ろに控えているのだけれども、最後まで何とかするという覚悟をというのは、ますます今回の「断らない相談」とかそこからの展開、そこでも問われていると思うのですが、前半の議論でもというか、毎回ほぼ議論になっていると思いますが、今までも専門職の方々がどうやってより力を発揮できるのかということで、ケースの会議もあれば、そこからあしたの100人にどうするかというような会議体もいっぱいあるわけですけれども、どうするとそれぞれの先生方がお話しくださったような尊厳を、常に一人一人にとっての普通の暮らしを大事に、出過ぎず、しかし最後はしっかりというところに向けた、もう一方、その専門職の活躍を促すことができるためには何がかなめと思っていらっしゃるかということを1つ伺いたいと思います。
それから、前神さんには「やりたいことから」というのが本当に具体的な展開をお聞かせいただいて、各地でやはり課題からではないからこその展開があるのだなと思ったのですけれども、一方で、それぞれのこの地域でやりたいという思いは、この学びの、例えば双海の学校とかの中に出ていって、いろいろな人たちのいろいろな動き、いろいろの人の「やりたい」を聞いていると、あるいは隣でちょっとしたことをおばちゃんたちが何かやり始めると、みんな日ごろは、私これやりたいとか思っていなくても、だんだん湧いてくるというものなのか、なかなか自分で自分がどうしたいのだろうかとか、それこそ最後のところにもかかわるのですけれども、自分のウェルビーイングって何だとか、そして、自分自身の中から湧いてくる「やりたい」とか、それは自分だけではなくて仲間はどうなのかしらとか、意外とやりたいからというのは簡単なようで、「やりたい」が大好きな人にとってはどんどん出てくるのですけれども、なかなかそれがおなかの中に鎮まっている方々も多いと思うので、みんなの日ごろはこれをやりたいですというタイプではない人たちも眠っている自分ならではのということがふつふつと湧いてくるような、そのダイナミズムはどうやって、何が鍵になってきたのかということを教えていただければと思います。
○宮本座長 ありがとうございました。
それでは、江澤参考人、長野参考人、それぞれ専門職についての御質問をよろしくお願いいたします。
○江澤参考人 ありがとうございます。
1つはプレゼンテーションの中で少し申し上げましたけれども、例えば地域ケア会議とか、あるいは住民のワークショップの中でいろいろな職種が交わったりします。その中に複数の専門職がいらっしゃいますけれども、一番の入り口は、異なる立場でございますが、相手の立場を常に理解して尊重し合う。その風土をどうつくるかというのが、私は委員会としての役割だと思っていますけれども、必ずそういった専門職の方々の尊重と、その上で敬意を表しつつ、ともに共同作業を行うというスタンスをいつもとってきました。
そして、私のお示した地域ケア会議は実はマイクを常にぐるぐる回します。誰もしゃべらない回はなくて、1つのテーマについて必ずマイクを回して、そして意見を必ず出していただいて、その意見に関しては必ずそれが実現するように、どんな細かいことでもいいのですけれども、そういうことを行ってきています。
それから、もう一つ大事な視点は、地域に責任をどう持つか。地域に責任を持つということを常に考えています。病院で言いますと、例えば大学病院から一泊アルバイトで来る医師がいるかもしれませんが、その医師においては、その地域の住民の一晩の命や救急医療を守る責任があるわけです。ですから、地域に責任を持つということが、まして私たちは一晩ではなくて365日その地域で責任を担ってやっておりますから、それに関して、恐らくいい理念とかいいビジョンに関しては多くの方々が共有してくれます。私はこれは日本人のいい特性だと思っていますけれども、ちゃんとした理念とかいい方向性に関しては共有してくれるので、やはりいい理念とかビジョンを出して、それを実現、実行していくと少しずつ仲間がふえてくるのだろうと思っています。
以上でございます。
○宮本座長 ありがとうございました。
では、長野参考人、お願いいたします。
○長野参考人 1つは文化づくりというか、最後まで何とかするようにサポートしてあげるのがいいことなのだという文化がないですよね。病院に来てお米がないと言っている方にお米をあげると、おまえだけやったら次の医者はやれないから困るじゃないかとかですね。だらだらやればいいとは思わないのですけれども、本当に困っているときにはどんな立場でもちゃんとサポートするのだよというようなところの文化がつくれないといけないということと、覚悟をもって最後までやろうと思ったら、その覚悟を受けとめる後ろの責任者が要ると思うのです。いいよ、後で責任をとるように一緒に考えるし、責任をとるから思うようにやってみなとか、こうやってみたらとか、とまってみたらとか、その専門職の責任をとる方が要ると思うのです。今、本当に横にいてこけさせたら、骨折させたのはおまえのせいだみたいな話では、安心感を持ってサポートできない。何かあったら困るから引くという習慣が蔓延していますので、そこの文化をしっかり政策上もつくって、その上でこういうことに関してきちんと社会が守るというか、組織の責任者ももちろん大事なのですけれども、その文化をつくらないと、時間がかかると思うのですけれども、そうしないとこれは専門職個人の問題では決してないのだろうと思います。
○宮本座長 ありがとうございました。
では、前神参考人、お願いいたします。
○前神参考人 やはり場があるということだと思うのです。やりたい思いを最初に持っている人のところから動き出すのだと思うのです。まちづくり学校双海人という月1回ちゃんと集まる場所があって、そこで語れた人のことから始まっていって、それを見ていて共感した人が、あっ、私もということで次のことをやっていく。でも、小さいことから始めるというプロトタイピングの中に参画する場というのがあったり、それが最初は双海人という場だったのが、酵素風呂のカフェなんかに行くといつも誰かがいるのです。そこで思いを話す。それを聞いて何かが次に生まれる。
置賜の場合でも、スタジオ八百萬という子ワーキングスペースにいろいろな人が来て、出会って、そこでまた生まれていく。その先で始めた人のところでまたというふうに、対話する場があるということが結構大事ではないかと思います。一度そういう場があると、そこから後はSNSとかでもその場はつくっていけるのではないかと思います。
○宮本座長 堀田構成員、よろしいでしょうか。
○堀田構成員 はい。
○宮本座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
では、池田構成員、お願いします。
○池田(昌)構成員 もう時間がないので、質問というよりは感想になります。今の制度等で、なければつくって解決していくというようなことも話にあったのではないかと思いますが、つくっていくということもとても大切なのですけれども、伺っているとかなり試行錯誤されています。その時々でうまくいっているかどうかは必ずしも見えませんが、10年、20年たってその時々でそれを評価しながら取り組んでおられた話を聞くと、目の前の問題をできるだけ早く解決しなければいけないのだけれども、でも、やはり時間をかけながらやらないとできないのだということを認識します。せかされればせかされるほどかえって地域をだめにするというか、住民の方の取り組みを壊していくというような報告だったのではないかと思ったのです。
住民の方は知恵もあるし、力もあって、一緒にやることで見えてくることがあります。福祉の関係者はどうしても地域づくりというと最終イメージがあって、そこに向けて住民の方を誘導してしまい、結果は住民主体ではなくてこちら主体の地域づくりをしがちです。住民の方に寄り添って、住民の方と一緒に考えてつくっていくことを制度でも支えてもらえないと、現場はせかされて、かえってうまくいっていないということも起きている中で、今日のお話は、そういうことがうまくやられている事例だということでお聞きしました。
○宮本座長 ありがとうございました。
せかすようなことをしてはいけないというのは、座長としても重く受けとめたいと思いました。
本郷谷構成員。
○本郷谷構成員 一言だけというか、感想も含めてなのですけれども、日本には2,000近い地方自治体があって、それぞれ、いろいろな環境を持っていますけれども、この大きな時代の流れの中で社会を変えていかなければいけないという問題意識があります。その一つの大きな手段として共生社会というものが大変重要な役割を占めている。そういう意味で、共生社会を新しくつくっていくということが大変重要だと思います。
その重要な要素として、福祉の包括的な体制づくりというのも大変重要なテーマだと思いますし、それもつくらなければいけないわけですけれども、我々基礎自治体からいくと大変ギャップがあるのです。1つは、福祉というのは、福祉分野だけで福祉はできないのですね。もう一つは、何か問題が起きた人たちを、要するに要支援者だけを支援すればいいという問題ではなくて、支援を必要とする人もいるし、支援は必要ではないが注意を要する人もいるし、支援の要否が不明な人もいます。一方で、支援を要しない人もいて、現在は、こうした支援を要しない人を中心とした日常的な社会構造ができあがっています。
この検討会の議論は、これはこれで非常に多くの大変重要な、またすばらしいものだと思っているのですが、要支援者の視点から物を考えて仕組みをつくろうとしているということになると、我々はこの2つをどうやって現場で合わせていくか。要するに、日常的な社会構造の中にどうやってこの新しい仕組みをつくり込んでいくかということが大変大きなテーマで、これがうまくいっているところはない。これからみんな苦しんでやっていかなければいけないということだろうと思います。
そういう意味で、国、県の役割をしっかりと書いて、要するに共生社会の必要性、そして共生社会の中における包括的な方針が必要。それと、各市町村は一生懸命取り組むけれども、取り組んでいる市町村だけでなく、取り組もうとする市町村を増やしていくための仕組み、制度ということも国、県の役割としてぜひ書き込んでほしいなという気がいたします。ちょっと感想として。
○宮本座長 ありがとうございました。
加藤構成員、最後に一言。
○加藤構成員 ありがとうございます。
私は、今回発表していただいた方のお話を聞かせていただいて、大事なのだけれども、難しいところを上手に展開している、3番の地域やコミュニティにおける支え合う支援とか育成といったところを上手にされている事例なのだなと思って聞かせていただきました。
一方で、この図の中に、ここだけは「新」というのはないのですね。今までやってきたものをより活用してという案になっているのだけれども、実は人材の育成だったり場のコーディネート、地域の人たちの意識変革だったり、一緒にやっていく文化という時間のかかる作業のところに新規施策みたいなところとか、それを担う人は誰なのだろうみたいなところがもうちょっとこの図の中でもイメージできたり、この時間のかかる作業にこそ人とお金をどうやってやっていくのかなみたいなところがもう少し見えるといいのかなと少し感じたりしたところです。
○宮本座長 ありがとうございました。
西村参考人、よろしいですか。
○西村参考人 はい。
○宮本座長 ありがとうございます。
私の不手際で少し時間が延びてしまいましたけれども、改めて3人の参考人の方々には本検討会に、これは社交辞令ではなくて本当に大事な素材を与えていただいたこと、深く感謝申し上げたいと思います。
それでは、皆さんの食事時間をかなり侵食しておりますので、そろそろ終了とさせていただきたいと思いますけれども、事務局のほうから御案内をお願いいたします。
○市川地域福祉課課長補佐 事務局から次回の御連絡でございます。次回は11月18日月曜日の15時から18時で開催を予定してございます。会場などの詳細は、追って御連絡をさせていただきます。
以上でございます。
○宮本座長 では、本日はここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。
参考人の皆さん、ありがとうございました。

照会先

社会・援護局地域福祉課

(代表電話) 03-5253-1111(内線2233)