2019年11月15日 第10回医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議 議事録

保険局医療介護連携政策課

日時

令和元年11月15日(金) 16:00~18:00

場所

中央労働委員会会館講堂(7階)

議題

1.  医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律の施行について(案)(NDB・介護DB・DPCDBの連結解析関係)
2. その他

議事

 

○遠藤座長 定刻より前ですが、構成員の皆様は全員御着席ですので、ただいまから第10回医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議を開催いたします。久し振りの開催です。構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中を御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 議事に先立ちまして、本日の構成員の出欠状況について、事務局から報告をお願いします。また、前回の会議以降、事務局に人事異動がありましたので、併せて紹介をお願いいたします。
○山下課長(保険局医療介護連携政策課) まず、第10回、今回の医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議の開催に当たり、ちょうど1年ぶりでありまして、構成員の皆様の任期が満了となっていた関係上、改めて事務局から皆様方に再任の手続を取らせていただきました。御協力いただきましてありがとうございます。一方、武藤香織構成員は御都合により任期満了をもって退任ということになりましたことを、この場を借りて御報告いたします。なお、これを踏まえまして、本有識者会議の構成員名簿を一部改正しております。お手元、若しくはタブレットの資料1を御覧ください。

 次に、本日の構成員の皆様の出欠状況を御報告いたします。本日は樋口構成員、松田構成員から、御欠席の連絡を頂いております。また、欠席された松田構成員の代理として、村松圭司様に御出席いただいております。また、国民健康保険中中央会の斉藤様がオブザーバーとして御参加するのですが、遅れて参加されるとの連絡を頂いております。
 次に、事務局の人事異動について紹介いたします。大臣官房審議官(医療介護連携担当)の八神です。公務の関係で八神は途中で退席いたしますが、御了承ください。続いて、老健局老人保健課介護保険データ分析室長の北原です。最後に、私は保険局医療介護連携政策課長の山下です。どうぞよろしくお願いいたします。
 また、今回から事務局として同席するメンバーを紹介させていただきます。保険局医療課医療技術評価推進室長の岡田です。保険局医療介護連携政策課長補佐の駒田です。保険局医療介護連携政策課保険データ企画室長補佐の梅澤です。老健局老人保健課長補佐の石丸です。老健局老人保健課地域情報分析支援専門官の田邉です。紹介は以上です。
 それでは、以降の進行については、座長の遠藤先生にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○遠藤座長 それでは、議事に入ります。カメラの頭撮りはこれまでにしていただければと思います。本日の議題は2つあります。議題1として、「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律の施行について()(NDB介護DBDPCDBの連結解析関係)」を、まず議題としたいと思います。次に、議題2「その他」として、老健局老人保健課より介護関連データベースの概要等についての説明があります。最後に、海老名構成員より紹介があると聞いています。まず、議題1について、事務局より資料の説明をお願いします。
○山下課長 議題1に関係する資料として、資料3「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律の施行について()(NDB介護DBDPCDBの連結解析関係)」をお開きください。1ページをおめくりいただいて、全体像の次のページ、右下に「2」と書いてあるスライドの「これまでの経緯」を御覧ください。

 本有識者会議ですが、昨年の516日に第1回を開いて、ちょうど1年前の本日1115日に第9回報告書()について議論をした上で、翌日に報告書を取りまとめていただきました。その結果、法律を取りまとめて、今年の5月に「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案」が成立というところまでに至りました。
 続いて、次のスライドを御覧ください。昨年、この有識者会議で取りまとめていただいた報告書のポイントについて書いてあります。まず、1.議論の経緯です。2つ目の○で、本報告書においては、NDB、介護データベースというのは保険医療介護の悉皆的データベースであり、連結解析や幅広い主体による利用促進により、地域包括ケアシステムの構築や学術研究、研究開発の発展等に寄与し、国民生活の向上につながることを期待しているとまとめております。
 また、3.運用面の課題と対応ですが、(1)第三者提供の手続等ということで、第三者提供に係る個別審査を円滑に実施し、迅速に提供するための方策を検討すること。また、相談・助言の仕組みなど、利用者の個々のニーズに対応できる利用者支援を充実させること。さらに、安全かつ利便性の高い第三者提供を可能にするための環境整備を検討すべき。さらにオープンデータやデータセットの充実化、オンサイトリサーチセンターの機能など利用ニーズが増えていくことへの対応策を検討すべき。そして、利用するデータの性質に応じた適切なセキュリティ対策を講ずるべきということになっています。
 続いて、次のスライドを御覧ください。(2)データベースの整備のあり方として、2020年度に向けて、カナ氏名などを活用したハッシュ値の生成により、NDB、介護BDで匿名での連結解析ができるような対応を進めるべきだというように書かれています。
 次に、4.実施体制・費用負担のあり方です。2つ目の○です。第三者提供に要する費用の利用者負担を求めることを可能とすべき。ただし、公益的な利用確保のためには利用目的の公益性や利用者受益の程度などに応じて費用負担軽減の仕組みも検討すべきということが報告書で提言されています。
 続いて、5枚目のスライドを御覧ください。これは参考として、本年の5月に成立した健康保険法の一部を改正する法律です。オレンジで囲んでいる所が正に、この有識者会議でまとめていただいたもので、こういった形で法律で実現しているということです。
 次のスライドが、この法律の内容です。1(1)両データベースの情報の提供(第三者提供)、連結解析ということで、最初のポツですが、相当の公益性を有する研究等を行う自治体・研究者・民間事業者等の幅広い主体に対して両データベース(NDB介護データベース)の情報を提供することができることを法律上明確化したものです。(2)情報の適切な利用の確保の2つ目のポツですが、情報の提供を受けた者の義務違反等に対して厚生労働大臣は検査・是正命令等を行うこととする。また、その義務違反に対しては罰則を科すこととするということで、これが法律に書かれております。
 また、(3)手数料、事務委託ですが、情報の提供を受ける者から実費相当の手数料を徴収する。ただし、国民保健の向上のため重要な研究などには手数料を減免できることとすると法律に書かれています。
 続いて、7枚目のスライドです。正に、皆様方にお集まりいただいて、本有識者会議で何を議論していただくかということを改めて明確に整理しています。先ほどお伝えしました法律の施行というのは、来年の10月ということで、202010月の施行のものと、20224月の施行のものがあります。具体的に言うと、20224月の遅い施行のほうは、DPCNDB介護データベースとの連結です。一方、202010月施行のものは、第三者提供の法定化、それに伴って民間企業にも提供できることにした、その範囲をどうするか。また、安全管理措置義務を法定化したのですが、法律だけではない、より具体的な内容について、どう定めるかということが、まだ残っているということです。これらについて、御議論いただきたいということでお集まりいただきました。
 もう少し具体的に言いますと、次の○の所で4つ整理をしています。1つ目が、匿名データの第三者提供の対象者の具体的な範囲。これは省令で定めることになっていますが、省令で定めるに当たっての考え方について、有識者の皆様の御意見を伺いたいと思います。2番目として、安全管理措置義務の具体的な内容で、これも厚生労働省令に書かなければいけませんので、これについての考え方について御意見を頂きたいと思っています。3番目として、匿名データの提供の可否を決定する委員会の立ち上げということで、個別にデータの提供依頼が来て、それに対する審査をするのですが、その審査をする委員会をどういう形で位置付けるかを議論していただきたいと思います。最後に、匿名データの提供時に徴収する手数料の額はどういう考えで作っていけばいいのか、また、その手数料を減免する場合の基準についてもどう考えればいいのかという議論をしていただきたいと思います。
 次からは、今、1から4までお伝えしたことについて、それぞれについて事務局のほうで考えた整理の考え方について御紹介いたします。その考え方について、御議論を賜ればと思っています。
 9枚目のスライドを御覧ください。匿名データの作成の方法に関する基準について具体的にどのように書き込むか、省令でどのように書くのかということです。四角で囲っている所と赤い文字で書かれているのが、正にその基になる法律の条文です。医療保険等関連情報を復元することができないようにするために、厚生労働省令で定める基準に従い加工した医療保険等関連情報をどのように定めるかということです。考え方としては、2番目の○ですが、我々としてはレセプトデータ等の匿名加工基準を検討するに当たっては、医療分野の個人情報を匿名化する際の基準について、既に規定しているものがあるので、そういったことを参考に基準を設けてはどうかと考えています。
 具体的に、どういう省令が既にあるのかということについて、次の10枚目のスライドです。次世代医療基盤法施行規則の第18条ということで、1号から5号まで書いてあります。1号で言うと、医療情報に含まれる特定の個人を識別することができる記述等の全部又は一部を削除すること。2号として、医療情報に含まれる個人識別符合の全部を削除すること。3号として、医療情報と当該医療情報に措置を講じて得られる情報等を連結する符号を削除すること、4号として、特異な記述等を削除すること。このようなことが書かれていますので、こういった事例を参考にして、私どもの省令のほうでも作業をしてはどうかと考えています。
 続いて、11枚目のスライドです。匿名データの提供に係る手続の具体的内容です。考え方としては、改正法では、厚生労働大臣が匿名医療保険等関連情報の提供を依頼しようとする者、いわゆる提供申出者に対して当該情報を提供する場合は、厚生労働省令で定める方法や手続によるものと書いてありますので、その手続については既に類似の制度もありますし、また、私どももこれまでガイドラインを通じて運用しておりましたので、そのガイドラインに沿った運用を維持していく方針としてはどうかと考えています。具体的なものについては、現行のガイドラインで求めている提供申出書の記載事項の例というようにありますが、こういったことをガイドラインで求めていますので、これらを基に私どもの省令のほうに書いていってはどうかと考えています。
 続いて、12枚目のスライドです。第三者提供の対象となる提供申出者と、申出者がやる業務についてどう考えるのか。法律を読みますと、「厚生労働大臣は、次の各号に掲げるものであって、匿名医療保険等関連情報の提供を受けて行うことについて相当の公益性を有すると認められる業務として、それぞれ当該各号に定めるものを行うものに提供することができる」という法律があります。その中に、1号、2号とあって、3号として、法律に「民間事業者その他の厚生労働省令で定める者」とあります。この者に対して提供するのですが、一体どういう業務に対してかと言うと、その者がやっている業務として、「医療分野の研究開発に資する分析その他の厚生労働省令で定める業務」とあって、この場合は括弧書きで(特定の商品又は役務の広告又は宣伝に利用するために行うものを除く。)と、法律に明確に書いてあります。
 この法律を前提として、厚生労働省令でどのように書くかということですが、考え方については、その下の2つ目の○にありますが、これまでの利用実績をもとに相当の公益性を有すると認められる業務を明確化した上で、提供申出者は特定の主体が利用目的によらず排除されることがないよう幅広く規定するということとしてはどうかと考えています。
 具体的に、相当の公益性を有すると認められる業務というのはどういうことなのかということですが、それは14枚目のスライドを御覧ください。「第三者提供の対象となる提供申出者・業務」とありますが、省令で定める相当の公益性を有すると認められる業務については、この5つを書いてはどうかと。具体的に言うと、医療分野の研究開発に資する調査分析、保健医療政策の企画・立案に関する調査分析、疫学に関する調査分析、保健医療経済に関する調査分析、あとはその他なのですが、上記のいずれにも該当しないものの国民保健の向上に資する業務ということで省令に定めてはどうかと考えています。
 また、上記業務のうち相当の公益性を有すると認められるための要件として考えられるものとして、対象業務というのは匿名データの直接の利用目的となっており、匿名データを利用して行った業務の成果が公表されるということ、また、個人及び法人の権利利益や国の安全を害するおそれがないこと、さらに匿名データの安全管理措置がちゃんと講じられていること。このようなことを前提として要件を定めてはどうかと思っております。
 次の15枚目のスライドを御覧ください。過去にナショナルデータベースの利用目的を調べて、どういう目的かを分類すると、先ほど言った4つの内容で大半がカバーされていて、残りの7%ぐらいが「その他」ということで、上記のいずれにも該当しないけれども国民保健の向上に関する業務ということで整理できていますので、こういった考え方でどうかと思っております。
 また、16枚目のスライドですが、これはナショナルデータベースではないのですが、参考までに付けております。統計法の施行規則で、匿名データの提供を受ける場合にどういうことをやっていれば相当の公益性を有して匿名データの提供を受けることができるのかを同じように省令で定めているものがあります。第1項において、それぞれこういうことをしているのであれば相当の公益性を有するということで、統計の匿名データの提供では、1号から4号まで書いてあります。また、2項に、こういう人に対しては、たとえ統計の作成を行っていても、この人たちには提供しませんということで、例えば暴力団や個人情報の保護の法律に対して過去に違反をした人は除くと整理しているということです。これは参考の例として、こういうものがあるということで御紹介させていただきました。
 次に17枚目のスライドを御覧ください。匿名データの安全管理措置の具体的内容です。これについても安全管理措置ということで、匿名医療保険等関連情報の漏えい、滅失、又は毀損の防止その他の当該匿名医療保険等関連情報の安全管理のために必要かつ適正なものとして厚生労働省令で定める措置を講じなければならないと法律にあります。その厚生労働省令の考え方として、2つ目の○ですが、現行のガイドラインにおいても、匿名データの安全管理について、様々な措置を講ずることを求めておりますので、具体的に省令で書くとしたら、現行のガイドラインをきちんと厚生労働省令に書くということを原則としてはどうかと考えています。具体的に、どのようなことがガイドラインに書いてあるかと言いますと、次のスライドを御覧ください。措置のカテゴリーだけで申しますと、組織的管理措置、人的管理措置、物理的管理措置、技術的管理措置、その他の管理措置とあります。そういった安全管理措置を行うに当たってのこういったカテゴリーに沿って、安全管理でやるべき措置が書かれていますので、こういったことを省令にきちんと明記していくこととしてはどうかと考えています。
 続いて、20枚目のスライド、委員会の立ち上げです。この匿名医療保険等関連情報を提供する場合、厚生労働大臣はあらかじめ社会保障審議会の意見を聞かなければならないということが法律に定められております。それで、その社会保障審議会なのですが、考え方としては、現在既に匿名データの提供の可否について審議している「レセプト情報の提供等に関する有識者会議」及び「要介護認定情報・介護レセプト等情報の提供に関する有識者会議」というのがありますので、このそれぞれの有識者会議を社会保障審議会の下にそれぞれ位置付けることとしてはどうかと考えています。もしそれでよければ、社会保障審議会のそれぞれの部会、これは医療保険の話であれば医療保険部会、介護保険であれば介護保険部会でというものがあるのですが、それぞれの部会の下にそれぞれのレセプトデータ、また要介護認定情報のデータについて、提供の可否を審議する会議を位置付けるということを通じて、社会保障審議会の意見を聞かなければならないという法律の要請に応えることとしてはどうかと考えています。なお、もしナショナルデータベース(NDB)と介護データベースを連結して利用したいということがあれば、それぞれの有識者会議を合同で開催する。有識者会議は今後は委員会という名称になるのかもしれませんが、合同開催する形で、一緒になって審査をすることとしてはどうかと考えています。
 最後のスライドですが、手数料の額について御説明します。法律には手数料はどう書かれているかと言うと、第17条の2の第1項で、「実費を勘案して政令で定める額の手数料を国に納めなければならない」と書かれています。また、2項として、「その手数料を納めようとする者が都道府県その他の国民保健の向上のために特に重要な役割を果たす者として政令で定める者であるときは、政令で定めるところにより、当該手数料を減額し、又は免除することができる」という規定があります。そこで考え方として、2つ目の○の2行目からですが、実費を勘案して政令で定めるところの考え方については、作業量に応じた費用については、人件費なども踏まえた時間単位の金額を設定した上で、作業に要した時間に応じた手数料額を算出するという形にしてはどうか。まず人件費があって、作業に要した時間があって、それを掛け算することによって手数料額を算出することとしてはどうかと考えています。一方で、施行後、その後、運用とか実績を踏まえると、また手数料の額というのは改正される可能性はありますが、まずはそういった考えで定めてはどうかと考えています。
 次に、手数料の減免の考え方ですが、3番目の○です。国の行政機関、地方公共団体、科研費などの補助金の提供を受けて国民保健の向上を直接の目的とする調査研究事業を行う者のほか、これらの方々と共同研究を行う者については、匿名データの提供を受けて行う調査研究事業については一応、公的に行われておりますので、その調査研究事業の結果得られる利益を公に還元することを目的としており、さらに法律にあるとおり、国民保健の向上のために特に重要な役割を果たす者と考えられますので、こうした者を政令で減免の対象者と規定してはどうかと考えています。以上、事務局からの話です。今回皆様方にお集まりいただいて議論していただきたいこと、7枚目のスライドで、1から4について議論していただきたいことを、8枚目のスライド以降でお伝えさせていただきました。事務局からの説明は以上です。
○遠藤座長 部会で議論する内容について、非常に分かりやすく説明していただきました。また、事務局の原案も示されております。皆様に御意見を承りたいと思います。いかがでしょうか。
○村松代理人(松田構成員代理) 代理出席にもかかわらず、発言をお認めいただいてありがとうございます。21ページの手数料の額等についての意見です。国の行政機関、地方公共団体、科研費等の補助金の提供を受けて研究を行う者ということですが、こういったビッグデータの解析については、どちらかと言うと若手の研究者のほうがデータに詳しかったり、プログラミング技術に明るいかと思います。一方で、科研費等の補助金を受ける場合には既存の研究業績がないと、なかなか取りにくいという実態もありますので、是非、若手研究者については、ある程度減免の措置をお考えいただけるといいかと思います。
○遠藤座長 御意見として承りましたが、個別に事務局のコメントは必要ないですね。
○葛西参与 私が気になったのは19ページです。今の話とは大分離れているのですが、匿名データの安全管理措置のところです。私は常々、この会でも技術的な発言が多いのですけれども、その中で今、解析基盤を構築するための調査研究ということで、かなりの量の研究者の解析を行ったり、実際にデータベースを触るための環境がどうなっているかという調査をしたりしております。それをしてよく分かったのですが、ほとんどセキュリティ対策をしない方と、かなりガッチリとセキュリティ対策をされている方が、研究者によってかなり幅があるのです。恐らく今もそうですが、ここに書かれている規定のイメージでは、「適切な措置を講ずる」という言葉は、多分、本人にとっては全員適切なのです。誰も不適切な管理をしようとはしていないと思うのです。

 一方、気になっているのが今のNDBにせよ何にせよ、政府は比較的クラウド・バイ・デフォルトなので、全部クラウドにしろと言っているわけではないのですけれども、クラウドへの適用を議論することが結構多いのです。そういった意味で言うと、クラウドに対応するようなガイドライン状態にあるかというと、そうではない。ちょっと細かいことを言うと、例えば標的型攻撃も含めて、クラウドはインターネットを必ず経由しないとアクセスできないので、そういったところへの対策等は明記されてないですよね。そういう意味で言うと、ここで考えられている省令そのものは何も反対ではないのですけれども、もうちょっと粒度を細かくして実益がある形でのガイドライン化が必要ではないでしょうか。それは必ずないとまずいかなと。
 あと、もう1個は標的型攻撃も含めて、セキュリティの脅威というのは結構日々発生しています。そういったことを研究者に全部強いるのは、恐らく無理というか、負担が大きすぎると思います。これはオンライン経由かもしれないのですけれども、できれば均質な解析環境を国のほうで実費相当で提供していくという流れになるのではないかと。というのは、研究者に真面目に守らせようとするととんでもない負担で、実際の研究なのかセキュリティの対策をやっているのか分からなくなってしまうので、これは避けなければいけないということです。よくビジネスモデルとして私自身も当然アドバイスをしているので、アドバイスをする立場でも、その辺りをよく考えなければいけないと思います。
 もう1点、少し関係があることを言いますと、実はNDBとか介護総合データベースとか、それぞれのデータベースはセキュリティの対策レベルがまちまちです。この均質化も是非、厚生労働省として検討していただく必要があります。要するに、適切なセキュリティ対策をやっていると感じるものと、かなり独然的な考え方に基づいてあまり合理的な対策を打ってないというものも散見されるので、これらをどうやって均質化していくか。かつ、投資というか、お金、運用費を下げるかということも大事なことではないかと思います。今、気付いていることは以上です。
○遠藤座長 重要な御指摘だと思います。
○山本座長代理 今の葛西さんの御指摘は大変重要で、この基になっているガイドラインはNDBの方で約10年前に作ったものです。その10年前の状況を言いますと、少なくともこのデータが格納されているシステムはインターネットから切り離さないといけないという条件になってしまっているのです。それが現状ですが、現代的かというと、そうではないところがあります。そういう意味で、今すぐにはこれで仕方がないとしても、9回までの検討会でも、クラウド上での分析用の基盤の話が出ていたと思うので、今すぐに実現するのは難しいかもしれませんけれども、そういうことを踏まえて随時見直していくということが必要なのではないかと思います。
○遠藤座長 ほかに何かありますか。
○海老名構成員 データを使わせていただく自治体の立場から、意見を申し上げたいと思います。データのセキュリティの部分は余り専門家ではないのですけれども、県民、広く国民のデータを扱うということなので、昨年の会議でも申し上げたように、技術的なところは専門家の議論に委ねるにしても、やはり国民に、あなた方のデータが扱われることに当たっては、万全のセキュリティが講じられているということについては、きちんと説明をしていただきたいと思っています。それがあって初めてデータを活用できるのではないかと思っておりますので、その部分は是非、自治体の立場からもお願いしたいと思っております。

 それから、手数料のことについてです。21ページですが、私どもは使わせていただく立場で、住民、県民、市民の方々の生活や保健の向上という観点で使っております。もともと公費でやっている部分もありますので、何らかの手当てをお願いしたいということを昨年申し上げたところ、その部分については今回の資料の中で一定の御配慮を頂いていると思っております。是非、この方向で引き続き御検討いただきたいと思っております。
 それから、ちょっと話題がそれてしまうかもしれないのですけれども、今回は法施行に向けた話題が中心になっていると思っております。昨年の会議で、ほかのデータベースとの連結解析について検討したという経緯があって、1点、事務局にお願いできればと思っていることがあります。今回、NDB介護データベースなどのデータが連結解析されることについては、私ども自治体としても医療・介護・地域包括ケアの推進において、PDCAサイクルを回していくという観点で、非常に有用であると思っております。こういった点から、いわゆる看取りの情報なども加えて解析できるようになると、非常に有用ではないかと考えております。例えば、亡くなった場所とか死因などで、どのようにして亡くなったのかということも併せて解析できると非常にいいのではないかと思っております。
 こうした亡くなった時の情報については、既にある人口動態統計という形で、国が収集されているというように承知をしています。一定のデータ項目が含まれている介護給付費実態調査では、データを連結して解析できると聞いたこともあります。昨年の検討の過程でも、第三者提供の要件が1つのテーマだったと思いますが、人口動態統計であれば統計法という第三者提供の規定も整備されているので、かなり実現可能性があるのではないかと考えております。NDB介護データベースと、併せて亡くなったときの情報の連結についても、検討いただければと思っております。よろしくお願いいたします。
○遠藤座長 御要望として承りました。ほかに何かありますか。
○山本座長代理 今日の検討事項の中で、匿名データの作成方法が、一応案として上がっているわけです。このこと自体は全然問題ないと思うのですけれども、介護総合データベースに入っているものにしても、NDBに入っているものにしても、実は国が個人から個別に収集したものではなくて、間に医療機関や介護事業者が入っているわけです。そのことによって、患者のプライバシーだけではなく、医療機関や介護事業者の差別化につながるような情報が入っていると考えられます。ですから、そのことに対する一定の配慮がないと、もし、この分析によって特定の事業者にものすごく損害を与えるようなことになった場合に、そもそもこのデータを出してこなくなるということが起こりかねないのです。単に国民を守るための匿名加工だけではなく、仲介事業者の権利にも一定の配慮が要るのではないかと思うので、もし可能であれば、それをどこかで取り上げていただければと思います。
○遠藤座長 そうですね。そのとおりだと思います。ほかに何かお気付きになったことはありますか。
○村松代理人 14ページの3-2.第三者提供の対象となる提供申出者・業務で1点、事務局にお伺いしたいことがあります。省令で定める業務として考えられるものとして、医療分野の研究に資する調査分析等々が上げられております。一方で16ページのほうを御覧いただきますと、統計法では、学術研究の用に供することを直接の目的とすること等々の記載があります。実際にNDB・介護DBは、非常に大きいデータです。例えば、14ページにあるような医療に限った分析以外にも、工学の分野の先生方が興味を示されているということもあろうかと思います。工学の先生方は、医療分野の研究をされているわけではないですが、データ処理とか、そういうリアルワールドデータをどのように解析するかという手法の分析などを行われている方々は、特にこういったジャンルについて非常に公益性は高いものの国民保健という観点からは少しずれてくるのではないかと考えております。したがって、省例で定める業務として考えられるものの中に、保健に限らずとも国民の利益に資するものであれば認められるのかどうかというところを御教示いただければと思っています。
○遠藤座長 これは何かコメントできますか。
○山下課長 一応、その他、上記のいずれにも該当しないが、国民保健の向上に資する業務というところで、更に具体的に読めるような内容かどうか。今は抽象的な話の議論になっていますけれども、抽象的な議論をどれだけしても難しいと思います。実際にどのような研究をなさろうとしていて、ナショナルデータベース若しくは介護データベースを使おうとされているのかというところから、先ほど言った提供すべきかどうかを審査する有識者会議で議論してもらいます。今は有識者会議ですが、将来は社会保障審議会の下に置かれる委員会の下で検討するのだろうと思います。なので、まずは国民保健の向上に資するということが必要です。研究の中には医療のデータ、介護のデータがありますので、国民保健の向上に使われるように規定されているわけです。ですから、それなりに関連はあると思っていますので、そういったところを個別個別に判断するということで、今、抽象的な形で議論をするのは避けたほうがいいのではないかと思いました。
○遠藤座長 ほかに何かありますか。それでは大体、御意見は出尽くしたと考えてよろしいですね。ありがとうございました。ただいま、いろいろな御意見が出ました。ただ事務局が出された原案については、大筋で御同意を頂けたと思います。また、いろいろな課題あるいは御要望等々もありますので、事務局においては、本日の御意見を参考にしながら進めていただきたいと思います。したがって、今後のやり方としては、ただいまのような議論もあったことを踏まえて、この内容を社会保障審議会の医療保険部会と介護保険部会に御報告していただくという流れですね。
○山下課長 はい。
○遠藤座長 それと同時に、ただいまのような御議論も踏まえて、政省令の作成作業に着手していただくという理解でよろしいですか。
○山下課長 はい、そのとおりです。
○遠藤座長 そういう流れですけれども、部会としてはそれでよろしいですか。ありがとうございます。では、そのように進めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。次に議題2、「その他」として老健局老人保健課から、介護関連データベースの概要等についての説明をお願いします。
○北原室長 では、参考資料117枚目のスライドを御覧ください。「介護関連データベースの構成」というタイトルのスライドです。まず、介護関連データベースには3種類あります。1つ目が介護保険総合データベースで、介護保険法に基づき2018年度より、市町村からのデータ提供が義務化されております。内容としては、要介護認定情報と介護レセプト等の情報を含んでおります。

 2番目のデータベースが通称「VISIT」と呼ばれるもので、通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等、事業のデータとなっております。こちらは2017年度からリハビリテーション計画書等の情報を収集しているもので、前回の2018年度の介護報酬改定において、データ提出を評価するリハビリマネジメント加算()といったものを新設しております。今年3月末時点で、577事業所が参加しております。
 3つ目のデータベースが、「CHASE」という名前のデータベースです。こちらは介護DBVISIT」を補完する高齢者の状態、ケアの内容等のデータが含まれているものです。現在開発中で、次年度から運用を開始する予定となっております。内容については科学的裏付けに基づく介護に係る検討会を設置し、具体的な内容を検討し、お陰さまで今年7月に取りまとめが実施されたところです。
 次のページのスライドの1819枚目は、VISITの具体的な内容を示したものです。後で御参照いただければと思います。また、20枚目以降のスライドは、先ほど御説明申し上げたCHASEについての説明ですが、21枚目にありますように、検討会で今年7月に取りまとめが行われ、スライドの21枚目以降に、その概要を示してあります。
 少し飛んで、29枚目のスライドを御覧いただけますでしょうか。こちらは御報告ですが、先月1028日に開催された社会保障審議会介護保険部会において、「介護関連データベースの一体的な利活用について」というタイトルで、データベースに関する議題を扱わせていただいております。具体的には30枚目のスライドの1つ目の○にありますように、「CHASEについては介護DBVISITに収集されている要介護認定情報や介護レセプトの情報、リハビリテーション計画書等の情報を補完するデータを収集する目的で構築を進めているが、これら介護関連データベースを連結することで一体的に活用し、更に、その連結データをNDB等と連結することによって、より有益な解析が可能になると考えられる。こうした考えに基づき、VISITCHASEで収集したデータについて、介護DBNDBのデータと連結解析を可能とすること、公益目的での研究者等への第三者提供を行うことなど、データの活用を進めるために必要に応じて法制的な対応を含めた環境整備を進めることを検討してはどうか」といった内容を部会にお諮りし、現在、部会の中でも議論を進めていただいているところです。報告は以上です。
○遠藤座長 報告事項ではありますが、関連ということで御報告いただきました。御質問等があれば承りたいと思います。よろしいですか。介護保険のほうでもそのようなデータベースが進んでおり、それは介護保険部会で適宜報告されているということです。それでは、この案件についても、以上までとさせていただきます。最後に、全国知事会が開催しているデータ解析の活用事例WTの内容について、海老名構成員より紹介があると伺っております。それでは海老名構成員、よろしくお願いいたします。
○海老名構成員 栃木県の海老名でございます。本日はお時間を頂き、ありがとうございます。私は、全国知事会という都道府県を代表する立場で参加させていただいておりますので、本検討会に関連した知事会の活動について、若干の時間を頂いてお話したいと思います。

 参考資料2をお願いいたします。1ページの下になりますが、全国知事会では、少子高齢化などを背景に社会保障制度の持続可能性そのものが課題となる中、QOLの向上を図りつつ、社会保障に掛かる負担を軽減し、併せて社会保障制度を支える力を強くする施策の強力な推進が必要との考えのもと、「行動する知事会」として平成307月に「健康立国宣言」というものを決議しています。
 2ページの上ですけれども、この宣言に基づき、各都道府県における先進・優良事例の横展開の取組をスタートし、21の領域を設定して、それぞれWTを立ち上げ、お互いにアドバイスなどを行いながら取組を深化しているところです。併せて、各WTでは取組を進めるに当たっての重要なポイントや視点を主な取組のポイントとして整理し、これに基づいて横展開の進捗を確認しております。
 2ページの下です。この先進・優良医療事例の更なる横展開を図り、QOLの向上を図りつつ、持続可能な社会保障制度の構築に向けた取組を更に進めるために国に対しての提言も取りまとめております。
 3ページを御覧いただきますと、本日の会議に関連するWTとして、データ解析の活用事例WTというのが設置されており、本県、栃木県がそのリーダーを務めさせていただいております。WTの中では3点、国にお願いしたいことが出ています。この会議の所掌でないことも承知している部分はあるのですが、お力添えいただけないかということで御紹介をさせていただきたいと思います。
 具体的には4ページ以降になります。1点目が、改革工程表にも記載がある「保健医療データプラットホーム」の構築については、都道府県がレセプトデータなどを解析する際の有用な基盤になると期待しております。実際にどのようなことができるかなどは、まだ見えていない部分があり、今後の構築に当たって、私ども自治体からの意見聴取の機会を与えていただくなど、是非、自治体の意見を反映していただくとともに、具体的な活用事例を教えていただいたり、相談・助言等の支援を充実いただければと思っております。また、準備期間を確保させていただきたいと思っておりますので、具体的な内容やスケジュールなどについては、迅速に情報提供いただければと思っております。
 2点目は、既にオープンデータなどで対応いただいているというように承知しておりますけれども、汎用的なデータについては、引き続き一元的に解析・集約した共通のデータセットを定期的に提供いただけますと、私どももデータ解析がしやすい部分があります。このような環境整備の強化を是非、お願いしたいと思っております。また、先般の法改正で一定の整理をしていただいたというように承知しておりますが、先進的な都道府県ではレセプトデータの収集時に、同じ県内の市町村あるいは被用者保険の保険者から、データ提供を受けるのは難しいという声も聞いております。データ連結解析を進めるに当たり、個人情報の取扱いについて、更に整理をお願いできればと考えております。
 5ページの(3)に関連した3点目です。昨年のこの会議でもデータ活用支援の仕組みの話がありました。人材育成確保に向けた取組の強化とともに、先ほどお話した他の医療保険者、審査支払機関、大学などの研究機関が保有するデータの活用や協力・協働が、より進むようにデータ解析の必要性・重要性について国からも是非、関係機関への一層の周知に御協力を頂ければと考えております。
 最後の6ページです。各都道府県では、このような形でデータを実際に活用するような取組が進んでいます。より効果的・効率的な施策を推進するために様々なデータを解析し、そこで得られた結果を施策に活用していく、いわゆるEBPMを推進することと併せて、住民の方や関係者に分かりやすい情報提供を行って、施策への理解を捉進することが重要という考えの下でデータ解析に取り組んでいます。本日の会議のテーマである、データ解析の基盤を整備するという国の取組には、都道府県としても大変期待をしているところですので、この会議にも積極的に関わらせていただき、データ解析に、より一層取り組んでいきたいと考えております。引き続きいろいろな場面で、本日御参加の皆様方の御指導をお願いしたいと考えております。私からは以上です。
○遠藤座長 都道府県の立場から、利活用する上での考え方や御要望をおっしゃったわけです。これについて何かお考えはありますか。事務局から何かありますか。特段よろしいですね。貴重なお話をありがとうございました。それでは、本日用意をした案件はこれで終了いたします。もし全体を通して、何かおありになる方があれば承りたいと思います。何かありますか。よろしいですか。それでは、本日の検討会はこれにて終了したいと思います。次回の日程について、事務局から報告をお願いします。
○山下課長 次回の日程については、追って、また皆様方にお知らせしたいと思います。
○遠藤座長 それでは、これをもちまして本日は閉会としたいと思います。ありがとうございました。