第14回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会 議事録

健康局 健康課予防接種室

日時

令和元年11月13日(水)10:00~
 

場所

中央合同庁舎5号館 専用第22会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
 

議事

 

○元村補佐 定刻になりましたので、第14回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会を開催します。本日は御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、関係者の方々におかれましては御理解と御協力をお願いいたします。また傍聴の方は、傍聴に関しての留意事項の遵守をお願いいたします。なお、会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音することはできませんので御留意ください。

 続きまして、委員の出欠の状況について御報告いたします。菅沼委員から御欠席の連絡を受けております。現在、委員8名のうち7名に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会の規程により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。また、本日は参考人として2名の方に御出席いただいております。本日の議題に関連して、国立感染症研究所感染症疫学センターの神谷元参考人です。続いて予防接種推進専門協議会からの御推薦で、福岡看護大学基礎・基礎看護分野基礎・専門基礎分野教授、岡田賢司参考人です。

○岡田参考人 岡田でございます。どうぞよろしくお願いします。

○元村補佐 それでは、申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。なお、これ以降は写真撮影、ビデオ撮影、録音することはできませんので御留意ください。

 それでは、議事に入る前に配布資料の確認をいたします。これまでと同様にペーパーレスの開催とさせていただきます。お手元のタブレットには議事次第、委員名簿、座席表、資料1-11-2、資料2、参考資料13、各委員からの審議参加に関する遵守事項のファイルをそれぞれ格納しております。不足の資料等がございましたら事務局にお申し出ください。

 それでは、ここからの進行は大西委員長にお願いいたします。

○大西委員長 おはようございます。大西でございます。本日は御出席ありがとうございます。今日もなかなか難しい議論があろうかと思いますけれども、よろしくお願いいたします。それでは事務局から、審議参加に関する遵守事項等について報告をお願いいたします。

○元村補佐 それでは事務局から、審議参加に関する遵守事項等について御報告をいたします。本日御出席いただきました委員及び参考人から、予防接種ワクチン分科会審議参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄付金等の受取状況、申請資料への関与について申告を頂きました。各委員、参考人からの申告内容については、タブレットに資料を格納しておりますので御確認いただければと思います。

 本日の審議事項は、沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(DTaP)、不活化ポリオワクチン(IPV)についてを予定しております。こちらのワクチンの製造販売業者は、KMバイオロジクス株式会社、阪大微生物病研究会、第一三共ワクチン株式会社、サノフィ株式会社となっております。岡田参考人より、沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(DTaP)及び不活化ポリオワクチン(IPV)についての作成に関与しているとの申告を頂いておりますので、それぞれの該当のワクチンについて、「審議又は議決が行われている間、審議会場から退出する」に該当することから、この取扱いについてお諮りいたします。なお、このほか「退出」や「審議又は議決に参加しない」に該当する委員及び参考人はいらっしゃいません。以上です。

○大西委員長 ただいま事務局から、本日の審議参加についての報告がございました。岡田参考人は、沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(DTaP)及び不活化ポリオワクチン(IPV)についての審議又は議決が行われている間、審議会場から退出するとのことです。しかしながら参加規程によりますと、審議会場から退出するとの取扱いにつきましては、当該委員等の発言が特に必要であると当部会が認めた場合には出席し、意見を述べることができるという規程になっております。岡田参考人においては、御専門のワクチンに関する知見をお話いただくために、退出せずに審議に御参加いただきたいと思いますが、委員の皆様よろしいでしょうか。

(異議なし)

○大西委員長 それでは、岡田参考人は退出せずに参加していただくということでお願いいたしたいと思います。ありがとうございます。

 それでは議事に入ります。議題1の沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(DTaP)について、審議を始めたいと思います。前回731日の本小委員会で、ポリオワクチンの5回目の接種、それからDTaP2期接種について検討を要する当面の論点()について、議論を行いました。これを今後の検討の道しるべとすることとして、具体的な議論を進めていきたいと思います。本日の議題1は、百日せきワクチンについて議論を行いたいと思っています。お呼びしております神谷参考人から「百日咳の海外の状況」として、諸外国の対策の実情と効果について御紹介いただき、次に事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。

 まず資料1-1です。「百日咳の海外の状況」という資料がございますけれども、これに基づいて神谷参考人より説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○神谷参考人 よろしくお願いいたします。おはようございます。国立感染症研究所感染症疫学センターの神谷です。資料1-1「百日咳の海外状況」について御説明いたします。次のスライドの2枚目ですけれども、まず海外の状況をお話する前に、少し国内の百日せきの状況について振り返らせていただきたいと思います。

 御存じのとおり201811日から、百日せきはそれまでの小児科定点のサーベイランスから全数把握疾患へと変更になりました。その結果、より正確な国内の百日せきの疫学情報が分かってきております。こちらに御紹介しているのは、今年の上半期の百日せきの届出患者についての年齢分布です。この全数把握によって分かってきたことが幾つかあります。

 1つは、5歳から15歳の学童期に非常に患者が多く集積していること、そして、この集積の中で青色のバーは、定期接種の4回の百日せき含有ワクチンをしているにもかかわらず、発症してしまったという方たちになります。この方たちが5歳から15歳に限定しますと、約80%に達するということが分かってきましたまた、小児科定点のサーベイランスでははっきりしていなかった成人の患者も少なからずいらっしゃるということが分かってきました。そして最も大事だと思われるのが、0(1歳未満)に患者がたくさん集積していて、今年は前半で400人ぐらいの報告があることです。赤色で示してあるのは、まだワクチンを接種できる月齢に達していない、ワクチンを接種する前に感染してしまっている小さいお子さんたちで、そのような児が多数いるということが分かってまいりました。

 次のスライドですが、6か月未満の患者に関して、去年は届出がありますと、積極的に国立感染症研究所 FETP(実地疫学専門家養成コース)から患児の予防接種歴等を確認しました。この図は月齢で1か月ごとに0か月から5か月までの報告患者の月例分布を示しており、予防接種回数により色分けされています。月齢2の所に日本の場合はピークがあり、そしてワクチン接種歴のないお子さんが、非常に多く存在するということが分かっております。

 次のページ、では、この6か月未満のお子さんに、誰が百日せきを感染させているかというところが問題になってくるかと思うのですけれども、これも分かっている範囲ですが、一番多いのが兄弟で大体4割ぐらい、それから父親・母親というところが続いております。以上国内の疫学をまとめますと、6歳から15歳の患者が多く、その8割が4回接種をしっかりしていること。成人にも患者がいること。そして0歳児、特に3か月未満で1回目のDTPを打っていない児の患者が多く、そのピークは2か月にあるということが分かってきております。

 これを踏まえていただいて、海外の状況について、少し御紹介したいと思います。スライドの5枚目ですけれども、アメリカの百日せきのサーベイランスについて御紹介いたします。アメリカは百日せきのサーベイランスはずっと全数報告でした。1950年ぐらいからホールセルのDTPを接種していましたが、1990年に入ってacellularDTPに変わっております。そして2004年からは10歳、そして成人へ向けての成人用の百日せき含有ワクチンが接種され始めました。しかし、この2000年以降、右上の小さい図にありますように、百日せきの患者報告数が増加傾向にあり、この理由が非常に注目されました。

 そんな中、次のスライドですけれども、アメリカのカリフォルニア州全域にわたりまして、非常に大きなアウトブレイクがありました。現地で積極的疫学調査が行われまして、ワクチンの効果と持続期間に関する調査が行われました。アメリカは百日せき含有ワクチンを2か月、4か月、6か月、それから15か月から18か月に1回、そして46歳、就学時前に1回接種して、そしてTdap1112歳に接種するということになっておりますので、日本に比べると学童期も含め1回多い5回接種をしていますが、5回ワクチンを接種した人と、全くワクチンを打っていない人について、このアウトブレイクの中の罹患状況を調べますと、DTP5回接種の効果というのは9割近い効果があるということが報告されています。しかしながら、5回接種後の経過時間ごとに検討をしております下半分の図を見ていただくと分かりますが、接種直後、0回の接種の方と比べて、接種後1年以内は98%という非常に高い効果を認めているのですけれども、1年ごとにその効果は下がっていって、5年以上たつと、その効果は70%まで低下するということが分かってまいりました。

 次のスライドは、百日せきのアメリカの年齢別の発症率ですけれども、先ほどの5回しっかりワクチンを打っているにもかかわらず、数年たつと効果が下がるというところを踏まえてこの図を見ていただきますと、やはり5回目を接種してから時間が経過した後の7歳から10歳、それから11歳から18歳といった10代の若者たちの患者というのが多くなっているというのが分かっていただけるかと思います。また、日本と同様1歳未満のお子さんに患者が多いということが報告されています。この1歳未満の児に百日せき菌をうつしているのは誰かということで、米国でも同じような調査がされていますけれども、米国のほうは日本と比べますと少し分布が違っておりまして、お父さん・お母さんが半分以上で、兄弟は20%程度にとどまっているということが報告されております。

 こういった状況の中で9枚目になりますけれども、カリフォルニア州よりやや北のワシントン州で、その2年後に百日せきのアウトブレイクがあり、アメリカのCDCが調査し報告書を出しております。これを見ますと、患者の年齢分布は5回のDTPを接種した直後の年齢層は、報告患者数が減っているのですけれども、時間の経過とともに患者が増加しているのが分かります。アメリカは11歳から12歳のところにTdap接種をしているのですけれども、接種後12年は効果が認められていますが、その後また患者が増えるということで、長期間百日せきを予防することを期待されて導入されたTdapですけれども、効果が時間経過とともに低下する、という先ほどのカリフォルニア州と同じような傾向になっております。

 この件に関する詳細な研究結果が次の10ページ目のスライドになります。Tdapを接種してから1年以内、1年から2年、2年から4年という形で、ワクチン効果を、カリフォルニア州の研究と同じようなデザインでワクチン未接種の人と比較し効果を検討したものですけれども、1年以内では高い効果が認められるのですけれども、時間経過とともに効果が下がっているということが分かります。この結果からCDCでは2回目のTdapの追加ワクチンの接種についての検討が行われました。

 その検討結果が11枚目のスライドになります。これはちょっと見にくい図で申し訳ないのですけれども、この黄色い線がTdapを再接種しない場合の患者数の変化予測です。つまり現状のサーベイランスに基づく患者の分布になります。16歳時にTdapを追加接種すると緑の線のような患者数になると予測され、追加接種後すぐは、やはり先ほどと同じように患者が少し減少するのですけれども、しばらくすると接種しない人と同じような分布になると推測されています。10年後の追加接種の予測も同様で、接種後のみ患者数が少し現象するが、その後は追加接種なしと変わらないという結果となり、これに基づいてアメリカのではTdapの更なる追加接種は行わないという決定が下されました。その結果、移行抗体の効果を期待して直接妊婦さんにTdapを接種する方針に変わっていっております。アメリカはこのような状況ですけれども、ほかの国の様子も少し御紹介いたします。

 スライド12がオーストラリアになります。オーストラリアは2か月、4か月、6か月と、4歳、それから11歳から17歳にTdapということで、計5回百日せき含有ワクチンを接種しておりますが、5歳未満の患者の約半数が6か月未満ということで、同じように小さいお子さんに患者がかなり出ているということと、月齢別発症率では1か月が最多で、月齢が大きくなるごとに減少ということで、2か月からワクチンを接種するため、日本と比べて患者のピークが少し前になっているということが特徴として挙げられます。また、右の図ですけれども、見ていただくと分かるとおり、日本と同じように、5歳から15歳に一番患者が多くなっています。

 次のスライドは、オーストラリアのパースで実施された6か月未満の百日せき患者の感染源の調査の結果です。こちらを見ていただきますと、2008年から2010年の流行が少なかった時期は、一番近くにいる御両親からの感染が多かったのですけれども、2011年、2012年のオーストラリア全土での百日せきの流行時には、患者が多かった兄弟の世代からの感染が一番多くなっていると報告されています。学童期における百日せき報告患者数が多いと、6か月未満の患者の感染源調査において、兄弟の占める割合が高くなるというのは、日本でも認められている現象かと思います。

 14枚目のイギリスでは、2か月、3か月、4か月、それから34か月にDTaPを標準的に接種しております。こちらも小さいお子さんはしっかりと打たれているので患者が少ないのですけれども、10代になってくると、患者が増えてきているということで、10歳から14歳の年代の報告数が一番多くなっております。2010年以降、6か月未満の患者数は減少しているのですけれども、これは追加接種が加わったのではなく、妊婦さんへのTdapの接種が新しく始まっています恐らく3か月未満のお子さんの患者の減少は、妊婦へのTdapの接種が要因である、とイギリスでは解析されております。

 ほかの国も百日せき対策はいろいろと苦労されているのですけれども、いろいろな文献等を見てまとめますと、少なくともacellularの百日せき含有ワクチンを使用している国では、最終ワクチン接種から数年で患者の増加が認められています。追加接種をすることで数年間は予防できていることから、乳児からできるだけ百日せきを遠ざける方針で、ワクチンを活用しているのが諸外国の対策で、例えば就学時の追加接種であったり、乳児に接する機会の多い医療従事者、小さいお子さんを世話する人などへの接種の推奨が行われています。また多くの国が追加接種ではなく、妊婦への接種による移行抗体による小さいお子さんの予防に政策を変更しています。またそういった国では、多くの国が月齢2か月で最初のDTaPを接種しています。

 16枚目のスライドでは、妊婦への百日せきの含有ワクチンの接種状況についてまとめた表を御紹介します。今、御紹介したアメリカやイギリスでは、2012年から既に妊婦ごとにTdapの接種が行われています。そのほかの国も追随して妊婦へのワクチン接種が行われています。接種のタイミングについては各国少しばらつきがありますけれども、特に一番最初に導入を始めたイギリスから最近詳細な報告がありました。

 17枚目のスライドになりますけれども、イギリスでは、百日せきの妊婦への接種が始まって以降、3か月未満児の百日せきの確定例が約8割減、入院例は約7割減と報告されています。また、死亡を予防するワクチンの効果は95%と報告されています。2013年以降イギリスでは、3か月未満児の百日せきの死亡例が18例報告されていますが、そのうちの16例が妊娠中のTdap接種歴がなかった母親から生まれた児ということで、現在イギリスでは妊婦への百日せき含有ワクチンの接種は、高い効果があるという評価をしており、ほかの外国からの報告でも同じような報告が次々と示されている状況です。簡単ですが、海外の状況は以上です。

○大西委員長 ありがとうございました。質疑や意見交換は、次の資料の説明の後にまとめて行いたいと思います。続けて、事務局より資料の説明をお願いします。

○奥山補佐 おはようございます。事務局です。それでは資料番号04、資料1-2を御覧ください。百日せきジフテリア破傷風混合ワクチンの資料となります。2ページ目は今までの審議経過となります。3ページ目、4ページ目を御覧ください。20197月の小委員会で、効率的に検討を行うために事務局で論点を整理させていただきました。

 次に5ページ目となります。今回は定期接種化すべきかどうかを決める議論ではないので、そのような御意見は一旦封印していただき、それぞれの論点について現在の科学的知見から何がどの程度分かっていて、未知の部分も含めてどう解釈しけばよいかについて御議論いただきたいと思います。前回までの検討を踏まえた本日の論点として、3つを挙げさせていただきました。本日は接種回数を増やすべきかという議論ではなく、これらの3点について議論をお願いできればと思っております。

 6ページ目は百日せきの概要となります。7ページ目は百日せきの発生状況となります。左側は2019年の1週から26週までの百日せき患者の症例の年齢分布で、0歳と7歳をピークとする学童期に流行が見られました。乳児期では赤色の、ワクチン接種前の児の罹患が多い一方、学童期では青色の、ワクチン接種歴が4回ある小児の罹患が多くなっていました。右側は生後6か月未満の報告を更に詳しく見たものですが、月齢では2か月がピークとなっております。

 8ページは百日せきの重症度についての報告です。百日せきによる入院例の報告では患者の多くを乳児が占めており、チアノーゼなどの重篤な症状は月齢が小さい児に多く見られました。死亡例は12年間で13例、乳児と高齢化に二複化していました。ここではまず論点1として、百日せきの発生状況と重症度を踏まえ、百日せきワクチン接種回数を増やす目的は乳児の重症化予防と考えるか、学童期以降の疾病負荷の軽減と考えるかについて御検討いただきたいと思います。

 次に、資料の9ページは百日せきの発症年齢の推移についてです。左側は2007年から2016年の小児科定点報告の際の百日せき患者の年齢分布です。百日せきが流行する年齢層は年度により変動が見られ、例えば2013年では幼児が占める割合が高く、学童期は低くなっていました。右側は全数報告となった後、2018年のものですが、2019年と同様に7歳を中心とした学童期に流行が見られました。

 10ページを御覧ください。百日せきに対する抗体保有状況と発生動向の関係についてです。左側は2013年の百日せきに対する抗体保有率ですが、この年はワクチン接種前の乳児と5歳を中心とした幼児に低い傾向が見られました。一方、2018年では9歳を中心とする学童期で低い傾向が見られ、年度により異なる傾向が見られました。また、9ページの発生動向と合わせて見ると、この2013年、2018年において抗体保有率が低い年代と百日せき患者の多い年代は概ね一致していました。

 11ページは各国の百日せきワクチンの接種スケジュールを掲載しております。日本では初回接種として生後3か月より3回、1歳代に1回の追加接種が実施されていますが、海外では日本で接種されている年齢に加え、就学前や青年期の追加接種、妊娠時の接種を推奨している国もあり、各国の対応にバラ付きが見られます。

 次に、12ページでは乳児に対する百日せきの感染経路を掲載しています。左側の表は6か月未満の百日せき患者の推定感染経路ですが、両親・同胞がそれぞれ34割を占めていました。感染源となった同胞は、4回目のワクチンを接種してから34年しか経過していない5歳以下の小児も多く含まれており、必ずしも百日せきワクチンの効果が持続していないことが考えられました。

 13ページはDPTワクチンの有効性・安全性についてです。右側は現在日本で使用可能な三種混合ワクチンである阪大微研のトリビックの臨床試験の報告です。乳幼児期に3回又は4回のDPT接種歴があり、第2期のDTを接種していない11歳以上13歳未満の小児を対象とし、DPTを追加接種した際の安全性及び免疫原性を検討しています。左側は海外の報告になりますが、DPTワクチンの接種歴が4回ある4歳から6歳の児を対象とし、5回目のDPT接種の有効性や安全性を評価しています。どちらの研究においても反応率は有効であり、局所反応が多く報告されますが、この規模の対象人数ではワクチンと関連した重大な有害事象は認めなかったと報告されています。

 次に14ページ目、百日せきワクチンに対する集団効果についてです。CDCの見解では、百日せきから人々を守るには集団免疫効果には期待できない可能性があると記載されています。一方で、カナダでは14歳から16歳を対象にTdap接種を追加したところ、1歳未満の患者の減少が認められており、集団免疫効果を報告する論文も見られます。Tdapという記載がこの先も出てまいりますが、TdapDTP製剤の中で百日せき、ジフテリアの抗原量の少ない製剤を意味します。

 次に15ページです。日本における百日せきワクチンの持続期間についての報告です。左側はDPT-IPVを初回接種として乳児期に3回、1歳代に1回追加接種をした後の抗体価の推移を見た報告です。1期追加接種から3年後の4歳時の抗体陽性率は約30%まで低下を認めました。また、米国のアウトブレイク時の報告では、ワクチンエフェクティブネスは1年後には7割、24年後には約3割程度に低下したとされます。右下のアウトブレイク時の報告ですが、DTaP又はTdapワクチンを接種後、数年上の年齢までは患者数の減少が見られますが、更に上の年齢では患者数が多くなっており、ワクチンの効果は短期間であることが考えられます。

 16枚目になります。百日せきワクチンを追加した場合の流行の変化についてです。左側は米国からの報告になりますが、2005年に11歳から12歳に対してTdapが導入された後の流行の変化、右側はスイスにおいて4歳から7歳にDPTを追加した後の変化になります。どちらにおいても追加した年代の患者数の減少は見られますが、より年長に流行が集積していることが分かります。

 最後に17ページ目、妊婦に対するTdap接種についてです。米国CDCでは、百日せきワクチンを追加するとその23年後に患者数が集積するとされており、2011年にACIPではハイリスクである乳児を守るために妊婦・乳児の世話をする関係者へのTdap接種を開始しました。その他の国でも、妊婦へのTdap接種への有効性・安全性は報告されていますが、日本では海外の製剤であるTdapは承認されておらず、日本で使用可能な製剤の安全性・有効性は確立されていない状況です。資料についての説明は以上となります。

 18ページを御覧ください。上段ではここまで御説明した資料のポイントを挙げています。これを踏まえて、8ページ目の論点1とこのページの論点2、百日せきが流行する年齢層・免疫保有状況・ワクチンの持続期間を考えてどのような免疫保有の状態が目立つか。論点3、考える接種年齢と接種の目的、集団免疫効果の有無に照らしてどのような有効性が予測されるかについての議論をお願いします。事務局からは以上です。

○大西委員長 ありがとうございました。本日のこの小委員会では定期接種すべきかどうか、というような御意見を頂くのは一旦横に置かせていただきたいと思います。それぞれの論点について、先ほど3つの論点について提示されておりますが、1つずつ、現在の科学的知見から何がどの程度分かっていて、あるいは何が分かっていないのか、未知の部分に関しましてどう解釈していけばいいのかというようなところから議論をお願いしたいというように思います。論点が3つに分かれていますので、相互に関連はあるとは思いますけれども、順に議論していきたいと思います。まず資料の8ページ、9ページを踏まえて、論点1として百日せきの発生状況と重症度を踏まえ、百日せきワクチン接種の接種回数を増やす目的として乳児の重症化予防というように考えるのか、学童期以降の疾病負荷の軽減と考えるのかについて議論をお願いしたいと思います。

○原委員 佐賀大学の原です。この論点1は少し違和感があります。私としては二者択一ではなくて、目的としては乳児の重症化予防と考えて、その方策の1つとして感染源である学童期での疾病負荷を軽減するのではないかと思います。いかがでしょうか。

○大西委員長 皆様どうお感じになられたのかというところですが、直接のゴールとそのゴールに向けて何をすべきかというような、間接的なものというように分けたほうが議論がしやすいという趣旨だと恐らく思います。

○多屋委員 私も原委員の御意見に賛成です。究極の目的は乳児の重症化を予防することだと思います。そのためには、現在患者数が多い学童期前後の疾病負荷を軽減する。正にそれが目標ではないかと思います。

○大西委員長 御意見、いかがでしょうか。

○大藤委員 私も先生方の御意見と同じで、最終のゴールは乳児の重症化予防だと思いますが、今、学童期でかなり患者数が多いこと、あと乳児にうつしてくる感染ルートとしてやはり兄弟間もあることを考えますと、学童期の疾病負荷を減らすと最終的に乳児の重症化予防にもつながっていくのではないかと思っています。

○大西委員長 池田先生、何かございますか。

○池田委員 私はどちらという、ちょっと優劣は付け難くて、両方に効果のあるような方法を考えていくことがいいかと思います。基本的には先生方のお考えのとおりで結構だと思います。

○大西委員長 よろしいですか、御意見はいかがでしょうか。皆様共通の御意見としては乳児の発生をできるだけ少なくしたい。重症化予防というところは間違いない。それに向けてどうするかということですが、学童期という話もありますし、資料の中では妊婦さんに打つというほかの考え方もある。どれかを選ぶ必要はないのだと思いますけれども、主を置いて、それに向けての方策が複数出てくる可能性はあるのかなと思います。近藤先生、いかがですか。

○近藤委員 私も委員長のおまとめのような考えでよろしいと思います。

○林室長 今後の資料の作成方針もあるので確認させていただきたいのですが、学童期の疾病の負荷の軽減そのものに目的があるのかどうかを確認させていただきたいと思っています。今の委員長のおまとめであれば乳児の重症化予防が目的なので、その手段はいろいろなものがあり得て、その中で学童期の疾病負荷の軽減というところが、もし手段として効果的ならばそれもいいし、ほかの方法でもいいというおまとめのように感じました。先生方のおっしゃっている中では違うようなニュアンスの方もいらっしゃったかもしれないので、すみません、今後はどういう範囲で私たち事務局は論点を御用意すればいいかということにも関わりますので、確認をさせていただきたいと思います。

○大西委員長 ありがとうございます。私のまとめと皆様の御意見に齟齬があるのではないかという指摘です。いかがでしょうか、多屋先生。

○多屋委員 まず、乳児なのですが、0歳と幅広いので、ワクチンを受けていない月齢の、乳児期早期の重症化を予防するということと、0歳と兄弟関係ですと、ちょうど就学前後の年齢層の兄弟が多いので、そこを減らすということがセットではないかと思っております。0歳前半の重症化を予防するためには、その人の感染源となっている兄弟、ちょうど数歳上の兄弟の年齢層の患者数を減らすと私は考えておりました。

○大西委員長 今の多屋先生の御意見を私が理解すると、主目的は0歳、その方策の1つとしてどうしても無視できないのはその兄弟、家族を含むというイメージかと思いますが、兄弟が特に大きいだろうということで、やはり手段というように考えてよろしいですか。

○多屋委員 はい。そのように考えて結構かと思います。

○池田委員 すみません、ちょっと質問させていただきたいのですが、例えば小さい子の兄弟がいなければ、その年齢層の子であってもワクチンは受けなくてもいいということではないわけですよね。目的は多分両方であって、やはり学童の疾病を減らすこともその子にとって重要だから、そうしないと受ける気持ちに親もなかなかならないかもしれない。そこは優劣がなかなか難しいところがあって、両方にとってwin-winではないけれどもプラスになるような考え方もあるかと思うのですがいかがでしょうか。

○大西委員長 池田先生、ありがとうございます。池田先生の御意見に関して、皆様どのようにお感じになるのか、ちょっと御意見を頂きたいのですが。

○多屋委員 池田先生がおっしゃる意見も大変よく分かります。就学児童ですと百日せきは非常に感染力が強い病気なので、1人患者が出ると多くの人々にうつっていきますので、学校での教育の現場を考えると、疾病負荷を減らすという目的も十分に考えてもいいかと思います。

○大西委員長 ほかの先生方、いかがでしょうか。日本の今の百日せきの現状、1万数千人、もうサーベイランスが始まって1年半とか110か月ぐらいですか、ひょっとしたらもう少し数は多いのかなと思っていますが、1万人を超える症例がある。

 私たちが持っている手段も限られている。要するに、持っているワクチンの性質として非常に限られているということで、もちろん日本から百日せきの数を限りなくゼロにすれば乳幼児、乳児の数が減るのは確かなのですが、まず戦略的にどこに主眼を置くかというのはある程度明確にしておかないと議論がまとまっていかない。あるいは必要な手立てを立てるための戦略が立てにくいのかなというのが個人的な意見です。池田先生のお考えは分かるのですが、若干現状は難しい。全方位に手を広げるのが本当にいいのかどうかというのはちょっと考えなければいけないのかなと思います。

○池田委員 乳児の重症化予防、これは疾病負荷としても非常に重要なところですし、そこは一番大事なアウトカムというか、ゴールだとは思います。それに対して学童期の方に打つとき、その本人にメリットがなければ親は積極的に考えない可能性もあるので、そこは手段で使われているという言い方というか、そういう考え方ではないほうがいいかなと思いましたので発言させていただきました。

○大西委員長 ありがとうございます。恐らく感じているところは一緒なのだけれども、その表現方法は気を付けなければいけないという理解でよろしいでしょうか。はい。大藤委員、いかがでしょうか。

○大藤委員 はい。同じです。

○大西委員長 もう一回整理をしたいのですが、今、一番大事なのは乳児であることに関してという言い方をするのもやはりまずいですか、それが一番と。それを達成するためにいろいろなことを考えなければいけなくて、手段とは申しませんけれども、当然影響を与えている学童期、現状ではサーベイランスのデータから行きますと、患者が一番多いところのピークも視野に入れておかなければいけないというようなことかと思います。室長、いかがですか。

○林室長 そういうことであれば、主目的が乳児の重症化予防ということなので、それを達成するための方法として何人かの専門家の先生は学童期の接種しかないというように信念を持っていらっしゃるようにも感じますけれども、論理的にはそこに限定されずに、あらゆる方法を考えるという御意見だと理解をさせていただきました。違っていなければそのように考えたいと思います。

○大西委員長 よろしいでしょうか、意外と大事な局面です。

○多屋委員 今、室長がおっしゃられた学童期を減らすだけが目的というように感じてはもちろんおりません。乳児期の重症化を減らす方法には、ほかにも当然のことながら方法はあると思っています。その1つとしてという意味でした。

○金川委員 多屋委員と同じです。乳児の死亡を減らしたいということで、3か月ぐらいから早くに打ちましょうというのが三種混合だと思うので、まだ乳児がかかる可能性が非常に高い学童期の子供に打つというのは当然必要な手段だと思います。

 現場でよく話をしているのは、お母さんたちがアメリカではよく打っていますよと。妊娠するというか、子供が必要だと思ったときはお母さん、打ってくださいねということも現場では言っています。最近よく来られるのは、アメリカで孫の誕生があるのでおじいちゃん・おばあちゃんが面会に行きたいと言うと、アメリカの病院では三種混合を打っていないと面会を許可しないというような状況がある。いろいろな手段で、赤ちゃんにうつさないようにという手段をそれぞれ現場では言っているということで、このデータから見て最も有効なのが、学童期の子供に打つというのが現在の考えではないかと思います。

○大西委員長 ありがとうございます。大筋のところは、先ほど室長のおっしゃったようなところでよろしいでしょうか。私、まだ勘違いしていますか。大丈夫ですか。

 今、百日せきの問題で一番大きいのは0歳児、乳児のところの疾病負荷であろう。そこは皆さん、何の御異論もないと思います。それに関しまして、現状の百日せきの日本における状況、患者の年齢分布あるいは使えるワクチンの種類等々、いろいろ制限がありますけれども、そういうところも当然見ていかないとというところも異論ないと思います。

 ただ、学童期の数を減らすことが主目的ではない。よろしいですか。というのは、年齢分布が変化してきたときにワクチン接種の場所をまた入れ替えていかなければいけないという、非常にフレキシブルな対策が必要だとお考えなのかどうか、ちょっと気にはしているのですがいかがでしょうか。

○原委員 以前はもう少し年齢の高いところでの発症が多かったのが、このごろ就学前などでの発症が多いというように変わってきてもいるので、そういうフレキシブルな考え方も必要と思います。しかし、だからといって、ずっと追加で接種していかなければならないかというところまでは言えないと思います。

○大西委員長 もちろん、そういうことが可能であれば検討の余地はあるとは思いますけれども、あくまでも乳児の数をきちっと抑え込むことができるのであれば、そういう方策があればというように考えてよろしいですか。具体的に何をすればどうなるかというアイディアがあるわけではないのですが、考え方の整理としてなのですが、御異論ないということでよろしいですか。

 それでは論点1は一番大事なところではありましたけれども、この委員会での共通の認識としては、まずは乳児の重症化予防を一番重要に考えたいと思います。そのために何ができるのか、何をしていかなければいけないのかということをいろいろな背景を踏まえて議論したいと思います。論点2が百日せきが流行する年齢層、それから免疫保有状況、ワクチンの持続期間を考えてどのような免疫保有の状態を目指すかということで、事務局の説明あるいは神谷参考人の御発表を踏まえて議論をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。百日せきが流行する年齢が資料の9ページということになろうかと思います。資料1-29ページですね。免疫保有状況が10ページ、それからワクチン持続期間というのが15ページということになろうかと思います。

 私から少し質問と確認をさせていただきたいのですが、資料1-29ページ、小児科定点時代のデータと今の全数報告のデータ、これは違うフォーマットでグラフ化されています。何かちょっとイメージが違うのですが、やはりこれは小児科定点時代、何かサーベイランスの限定が影響している可能性がありますか。

○神谷参考人 小児科定点のときは、1つは小児科の限られた定点からの報告であるということと、もう1つは臨床診断のみの報告であって、現在のサーベイランスはきっちりとした検査・診断の報告ということになっているので、そこが大きく違うと思います。

○大西委員長 あと、これは多屋先生に確認したいのですが、9ページの定点報告時代の2013年は1歳児から4歳児の数が多くて、赤丸でハイライトされていて、10ページの所で、抗体保有状況、2013年を見ると、やはり5歳児の辺りに下のピークがきているということで、この10以上という所のラインを見ておけば、およそ予測が付くと。

○多屋委員 いつも、このPT抗体保有率を見るときは青の10以上を保有している人がどれぐらいいるかという形で見ています。小児科定点のときは、なかなか集団発生を捉えきれなくて、小児科定点には全く患者は受診していないけれども、小児科定点になっていない隣の小児科の医療機関には多数の患者が受診しているということで、なかなか患者の集団発生を捉えにくいという現状があったこともありますので、現在の百日せきの状況を見るのは、やはり全数届出疾患になってからの状況かなと思っています。

 もう1つ、私が解釈が難しいと思ったのは、2013年と2018年、5年たって、ちょうど抗体保有率が低い年齢層がぴったり5歳ではないのですが、4歳上に上がっているということについてどう考えるかという点です。検討が必要かなと思っているのですが、去年と今年の全数届出疾患の年齢分布を見ますと、2018年は5歳から6歳で約2倍から3倍患者が違います。今年になると今度は6歳から7歳で倍ぐらい患者が違います。ちょうど1年動いていることもあって、この辺りに何か原因と考えるものがないだろうかということも考えています。抗体保有率ということで見ると、今、委員長がおっしゃったように、10ページの青いグラフの10EU/mL以上あるかどうかということで見ています。

○大西委員長 委員の皆様から論点2について、何か御意見はございますでしょうか。

 もう一点だけ確認なのですが、これは神谷先生に質問させていただきたいのですが、資料1-1の感染経路の所で、4ページになります。表以外の所に、「上記以外、家族内不明74(19)」というのは、家族内が予測されるのだけれども、お父さんかお母さんか分からないという意味ですか。

○神谷参考人 サーベイランスそのものには、何歳の誰から感染したかというような詳細を明確に書くのは必須ではないので、感染研から積極的に情報に関する問合せを保健所にお願いし、保健所から医療機関等を経由して、患者の周りでせきをしていた人がいたかを伺っています。従って、家族の中にいたような気がするとか、家族にはいたけれども誰かはっきりしないという情報を含めると、家族内では誰かがせきをしていた、という人たちが多数いたということになります。ただ、はっきりとした情報が必ずしも得られないので詳細が分からない場合には、今の上記以外、に含めています。小さなお子さん、特に3か月とか2か月のお子さんが、飛沫感染である百日せき菌の蔓延している人ごみに自分から出向いて感染するということはまず考えられないので、明確に誰とは言えないまでも小さなお子さんの感染源が周りにいるということは言えるかと思います。

○大西委員長 この調査のときに、兄弟姉妹のところは、その方の年齢というのは確認されているのですか。

○神谷参考人 一応問い合わせはするのですが、はっきりと回答が得られた報告例が少なかったので今回は示しませんでした。ざっとした年齢群別については、厚労省の資料1-2にあったと思うのですが、0歳から5歳と6歳以上というところが情報としては限界なところがあって、詳細を明確にするには更なる問い合わせが必要になります。

○大西委員長 先生方から何かございますか。

○岡田参考人 抗体保有状況と年齢分布の所で、先ほどの多屋先生のお答えと同じ部分です。スライド10番の右の2018年流行予測調査です。一番抗体保有率が低い年齢は9歳となって解釈が難しいとずっと思っていました。最近気付いたのが、スライド9枚目右の2018年の患者数では5歳から15歳が一番多いことがわかりました。2018年の抗体保有状況は9歳が確かに低いですが、5歳から15歳のところが、ほかの年齢層に比べるとやはり抗体価が低いように見えます。そうすると、まとめにあるように、抗体保有率が低い年代と百日せきの患者の発生の多い年度というのが、2018年は一致をしていると思います。

○大西委員長 これは、なぜこの所に落ち込みができてしまったのですか。

○岡田参考人 不活化ワクチンですから、恐らくブースターが掛からなければ、ワクチン接種後は、ワクチンでの抗体はどんどん下がっていくと思います。

○大西委員長 そうであるならば、2013年のデータより若い頃は低いわけですよね。それが、2018年に何で逆に高くなっているのかということが、ちょっと説明が付かないのですが。

○岡田参考人 それは、どこかで自然感染を受けているのかもしれないのです。5歳のところがですね。2013年の5歳の抗体保有状況は30%です。2018年の10歳の所は50%になっていますよね。その間の年齢で感染を受けている可能性があると。ワクチンはこの年代ではやっていませんから。

○大西委員長 2013年時代の5歳の所で感染をある程度受けているのであれば、2018年の9歳の所が底上げされて、補整されてきてもいいのだと思うのですが、これはそのまま残っているということですよね。

○岡田参考人 はい。2013年で5歳が一番低いのですが、それから上がっていっていますよね。2018年の10歳を見ると、上がっています。一方、2018年の9歳の所は、2013年の4歳を見ると40%ですよね。2018年は9歳で見ると30%ですから、この世代はもしかしたら余り感染は、流行予測調査によれば受けていなかった可能性があります。しかし、患者の発生状況からすると、5歳から15歳が一番多くて、全体の7割ぐらいを占めていますから、細かい年齢は多少ずれるかもしれませんが、5歳から15歳というところが、抗体保有率が低くて、その年代に患者が出ているという大まかな推移かなと感じたのですが、疫学の多屋先生、神谷先生からの御意見も頂ければと思うのですが。

○大西委員長 多屋先生、お願いします。

○多屋委員 もう1つ思っているのは、2012年の11月から三種混合が四種混合ワクチンに変更となっていまして、2013年のグラフは三種混合ワクチンを受けた子供たちの結果、2018年は2012年の11月から四種混合ですので、就学前の年齢層の子供たちは四種混合ワクチンを受けているのです。そういうことかどうかは、それはもっと検証しなければはっきりしたことは言えないと思うのですが、四種混合ワクチンのほうが若干抗体が、ある程度維持されることが長いということはないだろうかと。それで、2018年の789歳というのは、三種混合ワクチンを受けた後、10年弱たった子供たちで、その子供たちが多くかかっているというような考えもできないかなと思い、このグラフを見ているところです。しかし、もちろんこれだけでは何とも言えない部分です。

○神谷参考人 全数報告になった後の情報の1つ大きな特徴なのは、地理的な情報が分かるようになったことです。2018年は例えば一番流行が多かったのは香川県で、その次が宮崎県ですが、そういった場所は抗体保有率調査の調査対象にはなっていないので、この2つのグラフは、まず1つは疫学的な情報が全く違う時代のデータであることと、2018年に少なくとも言えることは、必ずしも流行している所の患者の検体が採られているわけではない、ということがありますので、この図だけを見て何か結論を下すというのは少々難しいかと思われます。

○大西委員長 ありがとうございます。あと、百日せきワクチンの持続期間ということに関しては、ある程度短いということはよろしいのですか。ただ、製剤によって少し違うかもしれないということですか。

○多屋委員 四種混合ワクチンを接種した子供たちの年齢で、若干抗体保有率が少し高めなのかなという印象です。

○大西委員長 ただ、具体的なデータがあるわけではないという理解でよろしいですか。

○多屋委員 はい。この結果しかありません。

○大西委員長 論点2に関して、このワクチンの免疫の持続期間等にも、短いのだろうなということと、それから、乳児への感染源も神谷参考人のデータにもありましたが、年齢もまだよく分からないし、親御さんからというようなところもありますし、多様であるということで難しい問題だと思います。

 次の論点とも関連しますので、次に進みたいと思いますが、論点3が、考えられる接種年齢、接種の目的、集団免疫効果の有無に照らして、どのような有効性が予測されるかということについて議論をお願いしたいと思います。多屋先生、まず追加で接種をするとしたらどの年齢層にいって、どういう効果が予測されるかというのはいかがでしょうか。

○多屋委員 この結果から考えるとすれば、抗体保有率が低い、そして患者が多い年齢層で、免疫を高めて、そして、しばらくその維持で患者の減少を期待する。

○大西委員長 どのぐらい効果が期待されますか。

○多屋委員 接種後抗体保有率のグラフで見ていますと、34年で下がり、5年ぐらいすると下がり方がなだらかになって、余り変化していないというグラフが先ほど事務局の資料で紹介されていたと思います。スライドの15枚目ですが、このぐらいは維持しているのかなと思います。

○大西委員長 そうすると、乳児の事例が劇的に減ることを予測するためには、どういうデータが必要なのでしょうか。私は具体的に見えていないのですが、いかがでしょうか。

 15ページの百日せきワクチンの持続期間で、DPT-IPV接種後のPTIgG抗体値の推移ということで、接種3年後の4歳児の抗体陽性率は31.9%と低下を認めたということで、一旦打っても、どのぐらい持つのかは分からないということなのですか。百日せきワクチンの集団免疫効果に関しては、どうお考えになりますか。

○原委員 集団を人口全体で考えてしまうと、ないとしか言いようがないと思うのですが、乳児の重症化を予防するという視点で考えると、その乳児の所属する所に近い集団というようにして考えると、ある程度は期待できるのではないかと思います。カナダではあったという報告もあるぐらいですから、そこの年代をきちんと定義し直して考えてみると、ある程度は期待できるのではないかと思います。

○大西委員長 今の御意見はいかがでしょうか。先生の集団というのは、やはり年齢で考えるのでしょうか、それとも家族構成で考えるのでしょうか。いろいろな考え方があると思うのですが。

○原委員 家族構成が一番だとは思うのですが、今の話の中では就学前の辺りのところにという話で考えると、そこでの感染源として考えた学童期のところを集団と考えるという、そういう意味です。

○金川委員 先ほどからの議論で、乳児の重症化を減らすという意味では、9ページの右側のグラフの0歳の赤い所が減るというのは、最終目標だと思うのです。それを減らす手段として、学童期の抗体陽性率を上げるという、モニターをするところだと、学童期の陽性率を上げることによって、いわゆる学校での流行を抑えるということだと思います。だから、モニターするのであったら、0歳の1度も接種していない人の患者が減るということが、まず究極の目標かなとは思います。途中の経過として、学童期の子供たちの抗体が上がることを目標とするということではないかと思います。

○大西委員長 そうすると、学童期の所の抑え込みで、乳児、特に1か月、2か月、3か月という辺りの数を減らすだろうと。池田先生、何か御意見はございませんか。

○池田委員 今のお考えで結構だと思います。

○林室長 確認したいのですが、先ほど論点2の議論をお伺いしていて、10ページの免疫保有状況というのは、ワクチンだけで維持されているわけではなくて、実際の流行であるとか不顕性感染があるからこそ、特に10歳以降でこれだけ高い抗体保有状況が維持されているのだという御意見だと承りました。

 そう考えると、もし5歳で接種して、その時期の流行が抑えられるとすると、どこかに新しい流行を作らない限りは、この免疫保有状況というのは維持できないわけだし、維持でなければまた流行が起きるわけなので、結局もっと上の年齢で同じような流行を起こすということにならざるを得ないし、そういうことで患者が減らなかったというのがアメリカの例として神谷参考人からも御発表いただいたことなのだと思います。それなので、小学生を減らすべきとおっしゃっている先生方に、中学生、高校生で流行が起きたほうが、トータルとしていいから、そう思っていらっしゃるのかということを確認させていただきたいと思います。

○大西委員長 なかなか難しい御質問ですが、いかがでしょうか。

○金川委員 基本的に先ほどから論点になっているのは乳児を減らすということで言って、11歳の弟、妹が乳児というのは、確率としてはすごく低いと思うのです。兄弟で年齢が10歳以上離れた兄弟がたくさんいるかと言うと、そんなにいないと思うので、学童期、567歳ぐらいの子供をしっかりとカバーすると、乳児への影響が少ないと思います。その後、流行が上にずれるのであったら、それはしようがないと言ったらおかしいのですが、乳児を守るという意味では、上にずれるのは安全性としてはよりいいのではないかと思いますけれども。

○大西委員長 百日せきは感染力が高いというところもあるので、だから大丈夫とも、ひょっとして言えないのかなという危惧はあるのですが、室長がおっしゃるのは、どこかにフォーカスを残しておかないと、ワクチンだけでは十分な抗体保有率の維持というのが難しいのではないかということだと理解しましたが、岡田先生、いかがでしょうか。

○岡田参考人 室長が言われるのは、追加接種の回数は、1回だけで議論をしてくださいということですか。

○林室長 ですので、次回に論点2に戻っていただいてもいいと思っているのですが、この目標が百日せきのエリミネーションを達成するために、毎年でも5年に1回でもいいのですが、百日せきの抗体接種をやり続けましょうということが目標だというようにここで議論されるのであれば、もちろんそういう議論の進め方というのはあるのだと思います。論点1で確認したのは、乳児を減らすことが目的で、そのために一番スマートな方法を考えましょうということだと理解したので、あらゆる考え方の中から、一番いい方法はないだろうかということを考える必要があるのかと思って、ここまできているわけですが、何を目標にするかということに依存するのだと思います。

○岡田参考人 目標は乳児の重症化を減らすことです。追加の接種回数は1回に限らないということでよろしいですよね。今後の議論の前提として、確認させてください。

○林室長 この議論を続けていくと、最終的に費用対効果であるとか、安全性とのリスクベネフィットの分析にまで進んでいきますので、それで十分にリスクベネフィットも高く、費用対効果も高いということであれば、否定されるものではないと思います。ただ、6歳でやります、11歳でやります、16歳でやります、結果としてお父さん・お母さんの世代で流行が起こります。では、21歳でやります、26歳でもやります、いつまでもやっていくのですかということまで、この委員会で答えた上で、結論を出していただきたいと思います。

○岡田参考人 追加の回数は問わずに議論をしてよいということですね。

○林室長 あらゆる選択肢は排除しませんけれども、その中でどれが一番安全で、有効で、効率的なのかということも含めて、この委員会できちんと議論いただきたいと思います。

○大西委員長 現時点では、もちろん、いろいろな方策の可能性は否定しないと。ただ、最終的には、これを現実につなげていくところで、ベストのつもりが全く現実につながらないというのも困る話ですので、いろいろと幅広に議論をしていきたいと思います。

 私が理解できていないところで、皆様に御意見いただきたいのですが、妊婦のワクチンということに関して、どのようにお考えでしょうか。

○多屋委員 今、3つの方法が考えられると思います。その1つが、乳児の重症化を予防するというのが究極の目標だとして、今、患者が多い就学児の子供たちの疾病負荷を減らすのと、妊婦への接種によって移行抗体をなるべく長く維持させて、今は3か月からワクチンが始まっていますが、それをもう少し早めにすることで、妊婦からの移行抗体と自分自身が受ける抗体で、乳児の前半をカバーしつつ、更に乳児前半への感染源となっている、今、患者の多い層を減らすという、この3つで乳児の重症化を予防するという方法があるのではないかと考えています。

○大西委員長 先生方、御意見はいかがでしょうか。

○原委員 私も多屋委員と同じ考えで、諸外国では妊婦に対しても接種はされていて、実際に乳児の重症化防止をしているというところがありますし、また、今は日本では3か月からということになっていて、一番患者が多いのが2か月のところになっていますので、これを接種開始が2か月からできるとなると、そこのところがまた減ってくるのではないかと思います。

○大西委員長 神谷先生のデータで、妊婦のTdapの接種に関する英国の御紹介があったと思うのですが、もう一度説明していただけますか。

○神谷参考人 イギリスではスライド16にあるように、2012年から「妊娠週数16週以降のどの時点でも構わない」と書かれていますが、Tdapを接種しています。その次の17枚目のスライドは、イギリスの百日せきサーベイランスの結果を妊婦にTdap接種を開始する前の2012年までのデータと、それ以降のデータで比較すると、3か月未満の百日せきと診断された例が約8割、その中で入院が必要だった人たちが約7割減少し、死亡例のほとんどが妊娠中のTdap未接種の妊婦から生まれた児であるということです。

○大西委員長 英国の疾病の状況で、日本とは若干異なる、要は10歳から14歳のところにメジャーな層があるというところは日本と違うのだと思うのですが。

○岡田参考人 追加で説明させていただきます。イギリスはそれまでTdapが入っていませんので、患者年齢で、一番多かったのが生後3か月未満でした。2012年に百日せきでの死亡例が14人報告され、そこで初めて妊婦へのTdap接種が開始されました。導入後12週で妊婦のTdap接種率が3%から80%まで上がって、2013年には百日咳での死亡は3人にまで減りました。

 Tdapを妊婦に導入していなければ、乳児の死亡というのはずっと続いて、14人も子供たちが亡くなったので、恐らくイギリス国内では早く妊婦への接種率を上げないといけないということでキャンペーンを張って、妊婦の接種率が上がり、このようなめざましい効果となったと考えられます。犠牲者が出ないと妊婦へのTdapが導入できない社会では困ります。乳児の重症化を目標にするのだったら、妊婦への百日せきワクチン接種は必須だと思いますが、今すぐには日本国内ではやれないような状況にあると多くの関係者は思っています。心配ですが。

○大西委員長 有効性は非常にあるだろうということですが、現実問題としては、すぐにということにはならないということですか。製剤がないということですね。岡田先生は、Tdapを日本で使えるようにして、妊婦への接種を進めたほうがよいとお考えでしょうか。

○岡田参考人 はい。Tdapを入れるか、今の日本のDPTを妊婦に使うかということだと思います。日本のDPTの添付文書には、妊婦に打ってはいけないとは書いていません。

 また、現在欧米でで使われている2種類のTdapに関しても、妊婦へはオフラベルでの適用になっています。日本国内で妊婦への安全性を見るのは必要なことだと思いますが、大変だと思います。Tdapをもう一回導入するための開発治験をするのか、あるいはトリビックで妊婦への接種試験はするかだと思います。特定臨床研究に該当するかどうかは、判断できません。今のところ、みんなが安心して接種できる製剤がないと思います。

○大西委員長 現状を説明していただきました。具体的な製剤の名前が出てきましたが、それはさて置き、現状は理解できたというところだと思います。あとは、3か月を1か月前倒しというようなところも効果はあるだろうというような考え方で、その現実的な問題点というのは何かあるのですか。

○多屋委員 現在、定期接種の接種開始が生後3か月になっているのが四種混合ワクチンなので、今の制度だと接種をしにくい現状にあると思うのですが、それを1か月前倒しにできることで、2か月の患者のピークは少し減らせるのではないかとは思います。

○大西委員長 論点3について、ほかに何か御意見はございますか。よろしいでしょうか。今回、乳児の疾病負荷を下げたいと。そのためいろいろな方策があるだろうけれどもということで、幾つか御意見を頂いております。

 学童期へのというような話ももちろん重要でありますが、接種を受ける本人への予防効果というよりは、乳児への集団予防効果をという話になりますと、池田先生から冒頭にありましたように、手段としてというようなことで言うのであれば、非常に精密に期待できる効果を計算しなければいけないのだろうなとも思います。

 ここではそういう技術的なこともしっかりと説明していく必要がありますので、今日、皆様方からいろいろな御意見を頂きましたが、事務局には、そのような意見も踏まえて、改めて資料と論点の整理をしていただきたいと思います。よろしいでしょうか。

 それでは、議題2は予定をオーバーしておりますが、不活化ポリオワクチン、IPVについてに移りたいと思います。事務局から資料の説明をお願いいたします。

○奥山補佐 資料番号05、資料2を御覧ください。2ページは今までの審議経過です。3ページはポリオワクチンの5回目接種について、20197月の小委員会の論点を事務局で整理させていただきました。4ページを御覧ください。百日せきの議論と同様に、定期接種化すべきという前提ではなく、現在ある知見と未知の部分の解釈を基に、論点についてフラットな視点で御議論を頂きたいと思います。前回までの検討と行程表を踏まえた本日の論点として、3点挙げさせていただきましたのでお願いいたします。5ページはポリオの概要です。

 6ページより資料の説明に入ります。現在の世界の状況として野生型ポリオウイルス2型は2015年に、3型は今年10月に根絶宣言がされ、現在は野生株の1型のみがアフガニスタンとパキスタンの2か国で流行しています。ワクチン株由来のポリオウイルスによるアウトブレイクは、現在も各地で発生しており、最近だと20199月にフィリピンで発生が確認されました。一方、日本では1960年代半頃までにポリオの流行はほぼ収束し、1981年以降、野生株によるポリオ症例は報告されていませんが、特にフィリピンなどの患者発生のある国との往来が見られます。7ページが現在の国内のポリオ対策の概要です。

 8ページが現在の不活化ポリオワクチンのスケジュールです。日本では20129月に、定期接種が生ポリオから不活化ポリオへ変更されました。現在、IPVの接種は生後3か月より3回と、追加接種として1歳代に1回の計4回行われております。

 9ページは各国のIPVスケジュールです。米国のCDCIPV2か月、4か月、6か月、46歳の4回接種を推奨しており、最終接種は4歳以降に行うこととしておりますが、なぜ4歳かというエビデンスは明らかではありません。日本の定期接種は、米国と回数は同じですが、4歳以降の接種はなされていない状況です。

 10ページは、現在のIPV実施率と抗体保有率の推移です。2012年にIPVに変更され、引き続き高い実施率を維持しています。右側が流行予測調査です。IPV接種が開始された以降の世代は、高い抗体保有率を維持していることが分かります。

 11ページは感染症流行予測調査より、IPV接種者のみの抗体保有率状況を示したものです。定期接種としてIPV接種がされている世代は、この時点で6歳までとなります。幾何平均抗体価は、年齢が上がるにつれて低下傾向が見られますが、抗体保有率は80%を維持していることが分かります。

 12ページは、DPT-IPV4回接種後の抗体価の推移の追跡調査です。抗体価は、1歳の追加接種時は高い値を認めますが、4歳にかけて低下し、その後6歳までは維持される傾向が見られます。しかし国内においてIPV接種後、長期にわたる抗体価の変化は明らかになっていません。

 13ページは、他国のIPV4回接種後の抗体価の推移です。接種から45年後も高い抗体保有率を維持していますが、これ以上長期にわたりIPV接種後の抗体保有率を追跡した報告は見られません。

 14ページは、IPV接種国におけるポリオの発生事例の報告です。左側がフィンランドで、1957年よりIPVの定期接種が開始され、長期間、ポリオの発生はありませんでしたが、1984年に患者の発生があり、以降10名の患者発生が見られました。また右側のイスラエルの報告では、2005年より5回のIPV接種がされており、20134月に施行された環境サーベイランスより、野生型ポリオウイルスが検出され、その後検出は広範囲にわたりましたが、ポリオの患者発生はありませんでした。

 15ページは、IPV5回目接種の安全性についてです。3回の初回接種と1回の追加接種を完了した46歳の60名の小児を対象とし、5回目接種の安全性を検討した報告では注射部位の紅斑、腫脹は比較的多く認められましたが、この対象人数の中で、重篤な有害事象や死亡例は認められませんでした。

 16ページは、IPV単独接種の副反応疑い報告をまとめたものです。平成254月から令和元年6月までに、主に定期接種として延べ230万人に接種されましたが、この間に副反応疑い報告としての重篤例は30例、因果関係が不明である死亡例は1例報告されました。以上が資料のポイントで、下がその論点です。

 論点1は世界のポリオの流行状況、ワクチンスケジュール、日本における流行のリスクや抗体保有率の状況を踏まえ、どのような免疫保有状況を目指すか、日本における流行のリスクの大きさをどう評価するか、現在の免疫保有状況とIPVの特性を踏まえ、具体的にどの程度の免疫保有状況を目指すかといった点から、御議論をお願いいたします。

 論点2は、ポリオの発生がない我が国における5回目接種の有効性をどう考えるか、接種回数を5回とした場合、現在と比べてどの程度の効果が見込まれるかといった点から、御議論をお願いいたします。

 論点3は、IPV5回目接種の安全性に問題がないか、接種により得られるメリットと、接種におけるリスクの大きさを比較し、どのように判断するかといった点から、御議論をお願いいたします。

○大西委員長 ありがとうございました。百日せきに関する議論と同様に、不活化ポリオに関しても、今回は幅広く議論をしていきたいと思いますので、定期接種化すべきかどうかという議論にはいかないということになります。それぞれの論点について1つずつ、現在の知見をどう解釈していくのか、あるいは分かっていない部分をどう考えていけばいいのかについて、御議論を頂きたいと思います。論点123とありますので、順番に整理しながら進めていきたいと思います。まずは論点1ということで、我が国でどのような免疫保有状況を目指すのか。もちろん世界のポリオの流行状況、ワクチンスケジュール、日本における流行のリスク、抗体保有状況を踏まえ、どこを目指していくのかということだと思います。委員の皆様、いかがでしょうか。

○大藤委員 世界の中では、まだポリオが発生しているということと、日本に入ってくる人や出る人、旅行者が増えているという状況を考えると、輸入ポリオが入ってくるリスクは常にあるのではないかと思っています。なので、どのような抗体・免疫保有状況を目指すのかということに関しては、今は抗体保有率として高いレベルを維持していくことが大事ではないかと考えています。

○大西委員長 ほかに御意見はありますか。

○岡田参考人 「IPVの特性を踏まえて」と書かれていますので、少しだけIPV接種後の免疫について紹介させていただきます。IPV世代とOPV世代では、得られる免疫が少し違っていると思います。OPVでは腸管免疫が期待できます。経口感染が起こったとしても、腸管内で中和ができると考えられます。万が一、血中に入って脊髄前角に行くまでに血中の中和抗体で中和できると思われます。一方、IPV世代は腸管免疫がほぼ期待できないと思います。腸管での免疫が期待できないため、経口感染したウイルスはいきなり腸管から血中に入っていく可能性があると思います。ポリオの潜伏期間の早いものは、3日とか5日ぐらいで発症しているケースがありますから、IPV世代に関しては血中の中和抗体価を高く維持しておくことが求められています。「IPVの特性を踏まえて」と書かれています。IPV世代はOPV世代と違って、血中中和抗体価を高く維持しておくことが必要だと思います。

○大西委員長 ほかに御意見はよろしいでしょうか。

○多屋委員 感染症流行予測調査事業で、IPVのみを接種している子供たちの抗体保有状況が、今はもう6年目に入ってきていますけれども、11ページのスライドで御覧いただけるように、中和抗体は18以上持っていてほしいということで、ずっとこの割合を出しています。海外で抗体測定している国はなかなかなくて、抗体価が下がってくるのを確認しない前に追加接種をしてしまっているので、どこまで維持されているのか、もちろんデータはないと思うのです。特に1型を見ていただきますと、幾何平均抗体価が1管から2管、5歳、6歳になってくると下がってきていることと、1割未満のところもあるのですけれども、1割以上、18以上の中和抗体を持っていない群が出てくると、少し心配ではないかと思っています。今日明日どうということではないのですが、5歳とか6歳の幾何平均抗体価が2管ぐらい下がっているのと、抗体保有率が9割を切ってきているところが心配な部分かと思っています。

○大西委員長 ここの論点1で、流行のリスクの大きさという意味では、ゼロではないことは理解しやすいのですが、大きさと言ったときにはどういうようにお考えになるのですか。例えば、マダガスカルでペストの流行が起こりましたと。それがフランスに入るリスクが一番高いけれども、シミュレーションをすると0.1人以下で、決して高くはないというデータもあります。なのでゼロではないというのと大きさというのは、またちょっと違う議論だと思うのです。先生方の御意見というか、お考えを聞いておきたいと思います。

○岡田参考人 説明にあったようにフィリピンでのcVDPVsによるポリオ患者は2例になっていますが、4例に増えています。日本が属しているWPROでも、パプアニューギニアや中国などで今、cVDPVsが少しずつ増えつつあるという状況があります。これだけインバウンドが増えてくると、ウイルスが入ってくる可能性は年々増えていっているのではないかと思います。

○大西委員長 フィリピンあるいは近くのアジア諸国の状況も、ダイレクトに関わってくるだろうということかと思います。あとは血中抗体価を高く維持しておく必要があるということと、多屋先生は今まで8倍というところを見ていたけれどということですが、ひょっとしたら、8倍で見るのは適当ではないということになるのですか。

○多屋委員 いや、18以上の抗体保有率で今までもずっと見てきていますし、海外でも多分18以上の中和抗体価という、同じような考え方だと思うので、それを基に作ったグラフが11ページのスライドということです。10番のスライドは赤とか黄色などの色があるのですが、18以上は黄色のグラフになります。

○大西委員長 そうすると全体としては18を指標に、モニターしていくことが重要ということですね。論点1に関して、もし先生方から御意見がなければ、論点2に移りたいと思います。論点2は追加して5回にした場合に、現在と比べてどの程度の効果が見込めるかということです。特に抗体保有率の上昇がどういうようになるか。患者数の減少はなかなか難しいと思いますけれども、リスクがどれだけ小さくなるかということかと思います。論点2について、先生方はどのようにお考えでしょうか。これはある程度数値化することが説明することにつながると考えるのが悩ましいのではないかと思っています。皆様、恐らく共通の認識だと思うのです。リスクはあるけれども、非常に小さなというか、一旦起きてしまえばインパクトが大きいので、プロバビリティーは小さいだろうと思うのですが、その計算をするとなると、なかなかややこしい議論になるのではないかと思っています。近藤先生、何か御意見はありますか。

○近藤委員 おっしゃるとおりで、流行と言うよりは1例でも出たらという段階と、環境中でワイルドタイプが見つかったらという段階があります。そちらのほうですらかなり小さいのですけれども、インパクトは大きいと。流行という話になってきて、複数でチェインが出てくるという話になってくると、それももちろん数例とか輸入状態とか、そういうポピュレーションによると思いますが、2桁のタイプということには、なかなかなりづらいのではないかと思います。

 そもそもウイルスが入ってくるということは起こっているとは思うのです。それが検出されるかされないか、何をきっかけに検出されるか、とても小さいリスクですけれども、それよりも気になるのはインパクトのほうです。インパクトとしては、どこまで事前にやっていくかということです。もちろん、そういうウイルスが日本国内に入ってきた、あるいはそういう症例が入ってきた段階で、周りの人が発症していないということでの免疫を高めるのであれば、岡田先生がおっしゃったようにIPVの特性を考えて、維持していくということに社会としてのメリットがあるのかと考えます。余り答えになってなくてすみません。

○大西委員長 ありがとうございます。なかなか難しい論点ではありますが、ほかの先生方はいかがでしょうか。そうすると、論点3も非常に難しいところではあります。IPV5回目接種の安全性に問題はないかということに関しては、恐らくかなりスッと答えられるのですけれども、その下の「接種により得られるメリットの大きさと、接種によるリスクの大きさを比較して、どのように判断するか」という整理の仕方ですが、先生方、いかがでしょうか。

○池田委員 今日の資料を拝見する限りでは、ますます予防の重要性が高まっているのは間違いないのですが、5回目の接種の有効性というか効果、そして患者数の減少ないし患者が出る確率をどのぐらい減らすかというエビデンスが、必ずしも十分ではないような印象なのです。もちろん、そこは専門家の先生方のお考えに一番頼ることになると思うのですが、今拝見した資料や説明だけから言うと、これは不確実性が高すぎて、なかなか判断が難しいのではないかと思っております。先生方からいろいろな御意見を伺えればと思います。

○大西委員長 不確実性は高そうだと思います。多屋先生、いかがですか。

○多屋委員 海外ではVDPVのアウトブレイクが起こっているということを考えますと、中和抗体価を一定に高めておくというのが1つです。

 それから、不活化ワクチンだとどうしても腸管免疫が十分でないために、麻痺は発症しないけれども、ウイルスに感染して腸管で増えているという状態が起こってしまうことになると思いますので、探知はできないけれども、入ってきたときに分からないまま広がるということは考えておかないといけないのではないかと思います。ただ、現状では6歳のところで若干、中和抗体保有率が落ちてきているのではないかという傾向が見え始めていると思うので、これは重視して継続的に調査する必要があると思います。ただ、やはり急性弛緩性麻痺を起こした患者が本当にポリオではないか、ポリオウイルスが検出されていないかというサーベイランスも、同時にしっかり強化していかなければいけないと思います。海外から日本に来られる方が、これからもますます増えてくると思いますし、VDPVが流行している国もありますし、日本にいらっしゃる方が海外に渡航される方も非常に多いので、そういう意味で抗体保有率を維持しておくということは、とても大事なことではないかと思います。

 もう1つは、最近少し忘れられがちですけれども、昭和5052年生まれの人の1型抗体保有率が低いまま残ってしまっています。この方々がVDPVの流行している国に渡航するようなときは、やはり自分の予防のために、ちゃんと追加で予防接種を考えておくことも、忘れてはいけないのではないかと思います。

○大西委員長 このワクチンの副反応という意味でのデメリットは余り。接種によるリスクというのは。

○多屋委員 以前、生ポリオワクチンの接種控えがありました。このときに受けず、その後接種されたお子さんが随分増えて、20129月から緊急的に不活化ポリオワクチンが定期接種に導入されましたけれども、余り大きな副反応は報告されておりません。既に16枚目のスライドに示されているように、特別重篤な副反応が多いワクチンではないと考えております。

○大西委員長 あと、もう一点。論点2に若干戻ってしまいますけれども、5回目の接種をすると、長期的な抗体保有率がどの程度上がるかというデータは、どこかに何かありますか。ないですか。

○岡田参考人 日本で開発されたセービン由来のIPVですから、世界中どこにも長期的な抗体保有率のデータはないと思います。もう1つ、論点3の安全性に問題はないかというところです。接種によって得られるメリットですが、患者さんが出ていないのはワクチン効果だと考えられますが、その効果は非常に見えにくいと思います。大西委員長が言われるように、接種によるメリットと接種によるリスクと患者が発生したときの社会のインパクトも、一緒に検討していただきたいと思います。

○大西委員長 個人の疾病予防と、1例出たときの社会的なインパクトを未然に防ぐというのがメリットですね。社会的なインパクトというところを踏まえていくと、もちろんワクチンというのはそういう意味合いが非常に大きいのですが、接種によるデメリットというか、副反応というのは個人に出てくるものなので、そこら辺の計算ではないけれど、しっかりと議論をしていく必要があるのではないかと思います。

 あと、よろしいですか。できるだけ抗体保有の状況を高めておく、維持する、あるいは足りないところは高めていくというのが非常に重要というのは、共通する考え方だと思います。ただし、実際にどの程度の大きさのリスクがあるのか、4回接種と5回接種で抗体保有率がどれだけ改善するのかというところに関しては、まだ根拠も乏しいし、そのデータを取ってくるというのも、なかなか難しい状況があるのではないかと思います。そういうことも踏まえて議論を進めていかなければいけない。大変難しい議論ではあると思いますけれども、そのように考えております。今日の議論を踏まえ、委員の皆様の御意見を踏まえ、事務局に改めて幾つか資料を用意していただくことになろうかと思いますが、何の資料を作ればいいかというのを、もう少し具体的にしたほうがいいですか。

○林室長 今日も先生方の御意見の中に出ていたと思いますけれども、こういった論点に資するデータ等をこれ以上集めることは、ほぼ困難だと思っております。私どもとしても最大限集めましたし、事前に岡田参考人からも情報提供を頂くなどしましたし、ファクトシートもありますので、入手し得る限りのものは載せていると思います。ですので、この先は今頂いたいろいろな視点などをどう考えるかということを、言葉にしてまとめていくような資料は御提示できると思うのです。そういうことで議論を続けていただくことになるのではないかと思います。

○大西委員長 議論の整理をしていくというところに、助けになる資料を作っていただいていくということになろうかと思います。

○原委員 今日は接種するかどうかというところは、議論しないようにということだったので、どこで発言していいか分からなかったのですが、危機管理ということで考えると、集団免疫を高めておくことは大事なことで、そのように考えると、抗体価が十分上がることに加え、接種率も十分高くなかったら結局、集団発生を起こしてしまうということもあると思いますので、そういった視点でも考えていく必要があるかと思います。

○林室長 時間があるのでちょっと発言させていただきます。接種するかどうかというのは、有効性や安全性といったことを一つ一つクリアしていった上で議論すべきだと思いますし、そういう議論の整理がされている時とされてない時があると思います。これからこの小委員会では、できるだけそういったことを一つ一つ議論して優劣を付けた上で、最終的に議論を頂くという形にしていきたいと思っています。

 それから、今おっしゃった中で「集団免疫」という言葉が出てきたので、論点1に関連してお伺いしたいと思います。ポリオの集団免疫というものを求めていくときに、おっしゃっている集団免疫というのがどういう性格のものなのか。例えば麻しんとかポリオのOPVのときに言っていた、持続的な感染を起こさせないという意味での集団免疫と、ウイルスがそこにあっても自分が発症しないという免疫とは、ちょっと質が違うのではないかという御意見もあったと思います。「集団免疫」とおっしゃるものの質が違うのであれば、そこを明確にしていただけると、議論にも資するのではないかと思います。接種率をどうするかというのは、そういった議論が全部終わった後のことだと思います。それが必要であって、かつ免疫保有率をどこまで高めるかというターゲットが設定できるのであれば、それを実現するためにはどうするのがいいかということだと思いますので、接種率を高めるためにどうするかというのは、今の時点ではまだちょっと早いかなと思っております。

○大西委員長 今の御質問というか、集団免疫というものをこの疾患に関してどういうように捉えていくかということですが、どなたか。

○岡田参考人 注射のIPV世代は、個人の免疫を高めて社会の集団免疫を高めるということでないのでしょうか。OPVの持つ集団免疫効果とは違うのだろうと思います。

○大西委員長 個人の免疫を高めることが、集団免疫につながるということですか。

○岡田参考人 個人の集まりを集団と考えると、接種していない人たちまで注射で免疫が得られるかというと、恐らくそれはないだろうと思います。「集団免疫」という言葉からすると、注射の場合は個人の免疫が高まって全体の免疫が高まっていくのだろうと思います。

○大西委員長 林さん、今のでいいですか。

○林室長 岡田参考人が、そういう意見を度々おっしゃっていることについては理解しています。岡田参考人がおっしゃっていたことを私が解釈すると、OPVには腸管免疫があるので、ウイルスはその人の中でほかの人の感染源になるということが阻止できる可能性があるけれども、IPVにはそういうことがない。流行を抑制する効果がない中でIPVの効果を発揮しようとすると、どこか求める抗体保有率の閾値のようなものがあるわけではなく、極論をすれば、全員が免疫を持ってないと発症を阻止できないとおっしゃっているのかなと理解しております。

○金川委員 同じですけれども、集団免疫というのは、アウトブレイクを起こさないようにという考えで使っている言葉なので、もしも個人の保有率が軒並み下がれば、アウトブレイクが起こる可能性はあるわけです。究極的に言えば個人の防御がないと、アウトブレイクが起こる可能性はあるわけですよね。はしかだと95%の人が打てれば、そこの集団でアウトブレイクが起こることはない、という総パーセンテージを出しているのですけれども、IPVの場合、何パーセントの人が予防していたらいいかという問題ではなくて、大きな意味での集団免疫としてアウトブレイクを起こさないということで、個人の免疫を高めましょうという理解でいいのではないかと思います。「集団免疫」という言葉の定義が、ちょっとずれているのではないかと思いましたが、そういう意味かと思います。

○大西委員長 難しいな。ちょっと素人的な質問を先生にいたします。麻しんの場合は95%ですが、IPVの場合は本当に100%でないと、アウトブレイクを抑えることはできないのでしょうか。

○金川委員 いや、アウトブレイクという意味で100%でなければということではなくても、免疫の低い人が掛かる可能性はありますよね。結局、意味は同じですけれども、何パーセントの人がカバーしていたら、もうそこでアウトブレイクは起こらないかという意味で言うと、はしかのように感染率が高いとどんどんうつっていきますが、逆にポリオなどだと、いわゆる環境汚染でウイルスがずっと残っていると、アウトブレイクとして数はたくさん出ないけれども、いつまでも感染する機会が残っていく可能性があるので、そういうことも含めて全員が高めておかないといけないのではないかと思います。

○大西委員長 分かりました。この点に関してはよろしいでしょうか。もうちょっと議論したほうがいいですか。

○林室長 ほかの先生が黙っていらっしゃるので、賛成なのか、同意なのか、反対なのかよく分からないときがあって、多分委員長もご苦労くださっているのかと思いますが、私のほうからは特に結構です。

○多屋委員 私は先ほど申し上げたとおりで、IPVだと腸管免疫が十分ではないために、感染したら腸管で増えてウイルスを出してしまうのです。ただ周りの人が感染しても、麻痺を発症するのを予防できる中和抗体を持っていれば麻痺は予防できるのですけれども、そこが落ちてくると、知らない間に感染し、麻痺を発症するリスクがあるのではないかと感じています。ですから抗体保有率を高めておくというのは、たとえ周りにウイルスがあったとしても麻痺を発症しないように、自分自身を守っておくというように考えているのです。

○大西委員長 そうすると、IPVの接種率を上げることによって個人の予防は上げられるけれども、集団に対する影響力に関しては、余り効果がないということですか。

○多屋委員 腸管免疫が得られにくい分、ウイルスが入ってきたときにその人の体の中で増えてしまうことを、完全に予防することはできないという意味ではないかと思います。しかし周りの人がしっかり免疫を持っていれば、麻痺は予防できるのではないかと考えています。

○大西委員長 原委員、何かありますか。

○原委員 やはりポリオも、麻痺を予防するというのが一番の目的だと思います。集団での抗体価が高い人が周りにいれば、誰かが発症したとしても、そこから先、抗体が高くてウイルスを排出したとしても、麻痺に至るほど重篤化しなくて済むのではないかと考えました。

○池田委員 先ほども同じようなことを申し上げたのですが、リスクに対する備えは非常に重要だし、いわば定性的にこういうものが非常に重要だということは、私も十分理解をしているつもりですが、5回目接種の有効性とか抗体価の現状の経年的な変化について、何か追加的なエビデンスを作るというか、今後そういうデータを作っていくということは、なかなか難しいのでしょうか。もしそういうものがあると、必要性とそれに対する有効性なども、もう少し明確になってくるかと思うのです。あるいは、そんなデータを作っているのを時間的に待っていられないという状況であれば、また別だと思いますし、現時点で判断しないといけないと思いますが、そこはいかがでしょうか。

○林室長 先生方から追加があれば言っていただければと思いますが、2012年に不活化ポリオが導入されて、今、小学校1年生ぐらいまでに標準的な接種世代がきていますし、当時は接種控えの影響があって、小学校3年生ぐらいまで、不活化ポリオに替わった世代が出てきています。DTPと一緒に議論をしていますけれども、DT2期の接種年齢が5年生か6年生であることを考えると、それと似たような時期に接種するということであればそろそろというか、一度判断をしないといけない時期に近づいているという認識で議論をしています。ですので、そういった世代が例えば20歳、30歳になるまで待ってみれば、どうなっていくかが分かるからというのは、もちろんそういうことだとは思うのですけれども、そこまでを待つかどうかというのは一度、議論するチャンスが必要だと思っています。

 海外ではセービンに限らず、ソーク株のものも含めれば、不活化ワクチンの接種経験があるわけです。そういった方々が大人になられたときに、どのくらいの抗体保有率を持っていらっしゃるかというのが分かるといいのですけれども、これを調べたデータなどを入手することが困難で、私どもが海外の方から調べるのは難しいという状況にあります。

○大西委員長 池田委員のおっしゃっているようなデータを取ってくるのは、なかなか難しいのだろうと。ただ一旦、やはり議論は進めていくということかと思います。

○近藤委員 科学審議会で言うのもどうかということですが、インパクトの話がちょっと出ましたね。日本社会でのインパクトという面もありますが、ポリオの問題に関しては、やはり国際社会のインパクトという面もあるということを、一言加えさせていただきます。

○大西委員長 おっしゃるとおりだと思っています。ほかに御意見はよろしいでしょうか。それでは、以上で本日予定していた議題は終了となります。その他、事務局から何かありますか。

○元村補佐 次回の開催については、追って御連絡をさせていただきます。

○大西委員長 それでは、本日の第14回ワクチン評価に関する小委員会を終了したいと思います。本日は活発な御議論を頂き、大変ありがとうございました。