第15回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 議事録

健康局 健康課予防接種室

日時

令和元年10月2日(水)10:00~

場所

中央合同庁舎5号館 講堂(低層棟2階)

議題

(1)ロタウイルスワクチンの定期接種化について
(2)予防接種施策の現状について
(3)報告事項
   ・風しんの追加的対策の進捗状況について
   ・各部会からの審議状況等報告
(4)その他

 

議事

 

○元村予防接種室長補佐 それでは定刻になりましたので、第15回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催いたします。本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。

 本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、関係者の方々におかれましては御理解と御協力をお願いいたします。また、傍聴の方におかれましては、「傍聴に関しての留意事項」の厳守をお願いいたします。なお、会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音することはできませんので御留意ください。開会に先立ちまして、健康局長より御挨拶を申し上げます。

○宮嵜健康局長 皆さんおはようございます。会議の開催にあたりまして一言御挨拶を申し上げます。委員の皆様方におかれましては、御多忙のところ御出席をいただきましてありがとうございます。また、日頃から予防接種施策の推進に御理解、御協力を頂き、重ねて御礼申し上げる次第でございます。私ごとですが、7月の異動で健康局長に着任いたしました。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本分科会は前回の開催から約1年半ぶりの開催となりますが、これまでの間分科会の下におかれました各部会におきまして、多くの課題について活発な御議論を頂いてきております。本日は部会での議論を踏まえて、ロタウィルスワクチンの定期接種化について御議論いただきますとともに、予防接種施策全般について御議論いただければと思っております。また、各部会の最近の審議事項を御報告させていただきます。各委員におかれましては、忌憚のない御意見を頂ければと思っております。

 厚生労働省としましては、今後とも予防接種施策の推進に積極的に取組んでまいりますので、引続き皆様方の御理解と御協力をお願い申し上げまして、簡単ではございますが挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○元村予防接種室長補佐 健康局長は用務により途中退席させていただきますので、御容赦願います。

 続いて、分科会委員に改選がありましたので御報告いたします。分科会長を務めていただいておりました倉根委員をはじめ、亀井委員、川西委員、森委員が本分科会より御勇退され、磯部委員、奥田委員、川俣委員、信澤委員、脇田委員が新たに就任されました。分科会長については、厚生科学審議会令第5条第3項の規定において、分科会所属の審議会委員の互選により選任することとなっております。新たな分科会長を選出するにあたり、厚生科学審議会の委員の方々に事前にお諮りしたところ、国立感染症研究所所長の脇田委員が分科会長に選任されましたので、ここで御報告させていただきます。

 なお、分科会長代理ですが、規定により分科会長から御指名いただくこととなっておりますが、脇田分科会長より、中野委員を御指名いただいておりますので、本日は御欠席ですが御報告させていただきます。

 また、本分科会では、ワクチンの被接種者や保護者の方の意見を施策にいかすことを目的に、公募により選考した参考人にも御参画いただいておりますので、御紹介いたします。一般社団法人「知ろう小児医療守ろう子ども達の会」の阿真京子参考人です。阿真参考人の選考の経維を簡単に御説明いたします。昨年6月に、それまでの一般参考人の任期が満了となりましたので、その後、募集を行い、10名の応募者がありました。応募時に提出いただいた書類の選考を経て、8月末に「一般参考人の選考に関する検討会」を開催し、書類選考により選ばれた4名の方を面接し、最終的に阿真氏が参考人として選ばれ、本分科会より御参加いただいております。

 次に本日の出席状況について御報告いたします。磯部委員、奥田委員、中野委員、福島委員、三田村委員、山中委員、山本委員から御欠席の連絡を受けております。現在、委員19名のうち12名に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会令第7条の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。

 議事に先立ちまして、資料の確認をさせていただきます。ペーパーレス化の取組を推進しておりますので、本分科会はお手元のタブレット端末で資料を閲覧する方式で実施いたします。タブレット端末の資料を御確認ください。番号01の議事次第及び委員名簿~番号11の利益相反関係書類を用意しております。資料の不足、端末の操作について御不明な点等がありましたら、事務局員にお申し出ください。

 申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りについては、ここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。ここからの進行は脇田分科会長にお願いいたします。

○脇田分科会長 皆さんおはようございます。本分科会長に選出されました脇田です。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、まず事務局のほうから審議参加に関する遵守事項について、報告をお願いいたします。

○元村予防接種室長補佐 審議参加の取扱いについて御報告いたします。本日御出席いただきました委員から予防接種・ワクチン分科会審議参加規定に基づき、ワクチンの製造、販売業者からの寄付金等の受け取り状況、薬事承認等の申請資料への関与について申告していただきました。各委員及び参考人からの申告内容については、資料11の利益相反関係書類を御確認いただければと思います。

 本日はグラスソ・スミスクライン株式会社及びMSD株式会社が製造するロタウィルスワクチンに関する審議を予定しておりますが、議事内容に関し、「退室」や「審議又は議決に参加しない」に該当する方はいらっしゃいませんでした。引続き、各委員におかれましては、講演料等の受取について、通帳や源泉徴収票などの書類も確認いただくことにより、正しい内容を申告いただきますようお願いいたします。事務局からは以上になります。

○脇田分科会長 ありがとうございました。それでは議事に入りたいと思います。議事次第を御覧ください。議題が4つありますが、今日の議題(1)ロタウィルスワクチンの定期接種化についてです。こちらのロタウィルスワクチンの定期接種化ですが、「ワクチン評価に関する小委員会」及び「基本方針部会」で議論が重ねられて定期接種化に向けた方針や具体案が取りまとめられてきております。本分科会におきまして、これまでまとめられた方針を確認いただきまして、この方針で進めてよいかどうか、結論を出していただくという観点で御議論をいただきたいと思っております。それでは、資料1について事務局のほうから説明をお願いいたします。

○林予防接種室長 事務局です。03資料1、ロタウィルスワクチンの定期接種化についてを御覧ください。2ページ、ロタウィルス感染症及びロタウィルスワクチンの概要です。主に乳幼児に、重度の脱水などの症状を認める病気で、全国で数万人が毎年入院されている病気ですが、ワクチンが2種類開発されており、商品名でいうとロタリックスとロタテックです。それぞれ接種回数が違うという特徴があり、ロタリックスは生後6週から24週までに2回、ロタテックは生後6週から32週までに3回経口接種するというものです。

 3ページ、定期接種の導入については議論されてきましたが、731日に「ワクチン評価に関する小委員会」で「技術的な課題に関する議論の取りまとめ」がまとめられました。その後、基本方針部会で審議され、今回、部会にお諮りするわけですが、お諮りする事項を大きく2つに分けています。1つ目は、ロタウィルス感染症を、予防接種法の対象疾患として追加し、ロタウィルスワクチンの定期接種を行うこととしてよいか。その際に2社のワクチンを対象とすることとしてよいかということで、関連する資料をまず前半で御説明します。

 4ページ、ワクチン評価に関する小委員会の取りまとめにおける記載です。ロタウィルスワクチンは、ロタウィルス下痢症を発症するリスクを低下し、この有効性はロタリックス及びロタテックで同等と考えられたということです。また、ロタウィルスワクチンには間接効果(集団免疫効果)すなわち接種した人以外にも感染症のリスクが減るという利益が及ぶという効果があると考えられたと、まとめられています。

 5ページ、安全性についてです。小委員会では、ロタリックス及びロタテックの安全性は同等と考えられた。また、海外においてロタウィルスワクチンの接種後、腸重積症の発症リスクが増加するという報告があることから、我が国においても腸重積症の発症率のデータの整理が必要と考えられたので、その整理を小委員会でも行ってきました。

 6ページ、腸重積症がそもそもどの程度発症しているか、そのような意味でのベースラインデータの整理について、小委員会取りまとめの内容をお話します。我が国においてロタウィルスワクチン接種後に腸重積症の発症率が増加するリスクを否定することはできないが、そのリスクは大きなものではないと考えられた。月齢3か月以降、徐々に腸重積症の発症率が増加することを踏まえると、ロタウィルスワクチンの初回接種は早い時期に実施することが必要であると考えられた。

 7ページ、ロタウィルスワクチンが定期接種化された場合、副反応疑い報告等によって報告される腸重積症の報告数が見かけ上、増加した場合であっても、必ずしも腸重積症の発症数全体の増加を意味しないことに留意が必要ではないか。腸重積症全体の発症数が増加していないことを確認する観点から、研究班によるサーベイランスやNDBを活用したモニタリングを合わせて実施する必要があるのではないかといった意見があった。

 この部分を詳しくした資料が8ページです。腸重積症の発症数と報告数との関係をイメージして書いています。図を見ていただくと、アイウとなっていますが、アが乳児における腸重積症の全発症数、イが副作用等報告によって任意接種の段階で薬機法に基づいて報告されている腸重積症の報告数です。これが定期接種化されると、薬機法の報告範囲よりも予防接種法の報告範囲のほうが広い部分があります。また、腸重積というリスクがあるということが広く啓発されることによっても報告数が増えるのではないかと考えています。このようなことから、定期接種化後に副反応疑い報告によって報告された腸重積の報告数というのは、これまでよりも増える可能性があると考えています。一方で、乳児における腸重積はそもそも発症しているものですし、報告によって全てが報告されるわけではないので、報告数と全発症数の関係についてどのように考えるかということが課題です。必ずしも報告数が増えたということが、全発症数が増えたことを意味しないのではないかというのが小委員会の取りまとめです。

 9ページ、副反応検討部会においても、この点が検討され、同様に定期接種化前後で報告の頻度が増加しても、そのことをもって、ワクチンにより腸重積症の発症が増加したと決論付けるべきではないのではないかという検討が行われました。このため、腸重積症の全体の発症数が増加していないことを確認するため、あるいは増加の度合を確認するために他の方法を合わせる必要があるということで、小委員会での報告と同様に、2つの方法について提議されています。

 1011ページが2つの方法です。その1つが研究班によるサーベイランスです。これは任意接種が始まる前後でも行われたのですが、全国の9つの地域の医療機関に御協力をいただき、腸重積の症例でその病院に来た全ての症例を御報告いただき、その症例数が増えていないかどうかという検証を行ってきたものです。定期接種化の前後においては腸重積の増加は見られなかったというデータが出されています。

 もう1つが、NDBの活用、すなわち日本中のレセプト情報を集めて、その情報から腸重積の発症を探ることができないかという方法です。これについてもいろいろな制約がありますが、腸重積症整復術が行われたレセプトの数を集計することは可能です。試みに2013年~2017年まで集計したものを示していますが、この間においては0歳児の腸重積発症は増加しておらず、むしろ徐々に減少してきたという結果が出ています。

 12ページはリスクベネフィット分析についてです。腸重積というリスクがあるので、これを上回るベネフィットがあるのかどうかということですが、小委員会の議論のポイントとしては、我が国におけるロタウィルスワクチンによるリスクとベネフィットを比較した場合、ロタウィルスワクチンの接種を推奨している諸外国の報告と同様に、ベネフィットがリスクを大きく上回ると考えられたということです。12ページの1番下に、その根拠を書いていますが、ロタウィルスワクチンによる副反応によって腸重積症が1例生じる間に、480例のロタウィルス胃腸炎の入院例が予防されていると推計されたということです。

 13ページは接種費用についての検討です。現状で入手可能なエビデンスにおいては、ロタウィルスワクチンは費用対効果が良いとは言えないことから、費用対効果の観点からは、現状の接種にかかる費用でロタウィルス感染症を予防接種法の対象疾病とするには課題があるという決論でした。

 その理由として、14ページに「費用対効果の推計」について掲載しています。費用対効果の推計方法について様々な議論がありましたが、14ページの推計においては、直接医療費を接種する場合、あるいは接種による直接医療費やロタウィルス胃腸炎による直接医療費を勘案するとともに、親御さんの生産性損失、看病するために掛かる費用など、いわゆる仕事を休まなくてはいけないといったこと等も含めた費用を勘案したものですが、ロタリックス、ロタテックともに費用対効果の分析を行うと、ワクチンを接種するほうがお金が掛かるという推計になったということです。これは、小児のワクチンなので、小児自身のQOLを評価するというよりも、むしろ親御さんの生産性損失を評価しようということで、そのルールで行われた分析です。一方で、医療保険の薬価の算定等には、本人のQOLの定価部分を勘案する一方で生産性損失については勘案しないというルールで行っている場合もあるので、このような方法で行われた推計についても15ページに示しています。1QALY1人の1年分の命に相当する費用ですが、これを得るのに687万円掛かるという推計になっています。医療保険の分野でも500万円の1つの目安の値として、それを上回るものについて費用、薬価を下げられないかといった議論が行われていることを踏まえ、この費用対効果について必ずしも良くないのではないかという議論が行われたわけです。

 16ページ、諸外国の例として、英国においても費用対効果が悪いということでプログラム導入が見送られ、その後値段が下がったことで導入されたという例があります。

 17ページ、このことを踏まえ、厚生労働省から利用者に対して、ワクチン費用の低減について、どのような対応が可能かを問合せさせていただき、予防接種基本方針部会に報告を頂きました。第33回予防接種基本方針部会において、価格を非公開とすることを前提として価格を回答していただく意思を表明したメーカーがあるので非公開で行いましたが、定期接種化に当たって費用対効果が良好となる水準には至らないものの、現行の価格に比べると一定の価格の低減を行うという回答がありました。

 このようなことを踏まえ、総合的に判断し、以下の2点を前提とした上で、ロタウィルスワクチンの定期接種化を進めるといいのではないかと、まとめられました。以下の2点というのは、腸重積症のリスクが上昇することや、ワクチン接種にかかわらず、乳幼児に腸重積症が発症することについて十分に周知すること。今回については、価格について、これ以上交渉することは難しいものの、費用対効果評価の取扱いや価格決定のプロセスについて、今後、予防接種制度のあり方の検討の中で議論するということです。また、2社のワクチンには大きな差がないものとして、両方を定期接種の対象とする方向で今後の議論を進めることが了承されました。

 ここまでが前半部分です。後半部分でお諮りする事項を19ページにまとめています。ロタウィルスワクチンの定期接種化に当たって、19ページにあるような具体的な規定についても御議論いただきました。順に、20ページ以降で説明します。

 20ページ、ロタウィルス感染症の疾病分類についてです。最初にも申し上げましたが、ロタウィルスワクチンについては集団予防効果があるということで、小委員会の議論についての3つ目の点ですが、ロタウィルスワクチンの導入後、ロタウィルス胃腸炎による入院患者数の減少割合が、ワクチンの接種率や有効性から期待される減少効果を上回っていたことやワクチン未接種の年齢層にも減少が見られたこと、成人の便検体におけるロタウィルス陽性割合の減少が見られたことなどを踏まえて、ロタウィルスワクチンの間接効果(集団免疫効果)があるのではないかと考えられています。このことから、第34回基本方針部会ではA類疾病として位置付けるという検討結果となりました。

 23ページ、定期接種の対象者及び接種方法です。最初に申し上げたとおり、ロタリックス、ロタテックの接種回数には違いがあります。また、接種年齢についても、ロタリックスは生後6週から24週までには接種を完了させるとともに初回接種は生後146日までに行うことが推奨されています。ロタテックは、生後632週に接種を行うこととなっており、同様に生後146日までに初回接種を行うことが推奨されています。

 また、接種の時期が遅くなってくると、腸重積症が起きやすい時期とも重なってくるという事情があります。このようなことを踏まえて、24ページの下のほうですが、定期接種の対象者については添付文書と同様に、ロタリックスについては生後6週から生後24週まで、ロタテックについては生後6週から生後32週までということにしてはどうかということです。評準的な接種期間は、自治体がこの時期に接種してはどうかということで通知等を行う時期の目安になっていますが、これについては他のワクチンの対象時期との整合や自治体の事務の状況とも勘案して、初回接種は生後2か月以降に行うことを評準的な接種期間としてはどうか。また、一番最後ですが、早い時期に1回目の接種を行ったほうがいいということなので、生後146日までとしてはどうかということで、評準的な接種期間については、この対象期間の中の一部である生後2か月から生後146日までとしてはどうかということです。ワクチンの接種方法については、添付文書どおり、それぞれ4週間以上の間隔をおいて接種してはどうかということです。

 26ページ、長期療養特例ですが、長期にわたって病気になってワクチンが接種できなかった方に接種期間を延長することができるような規定ですが、ロタウィルスワクチンについては、そもそも生後、限られた期間のうちに接種をすることが求められるワクチンなので長期療養特例の対象としないという検討結果でした。

 28ページ、定期接種対象者から除かれる者についてです。添付文書上の接種不適当者のうち、これまでの予防接種法に基づく規定の中で、定期接種が除かれる者に含まれていない部分については、今回対象とする必要があります。29ページの下ですが、添付文書の記載を踏まえ、定期接種対象者から除かれる者及び予防接種を受けることができない者として、腸重積症の既往歴のあることが明らかである者、先天性消化管障害を有する者(その治療が完了した者を除く)、重症複合形免疫不全症の所見が認められる者、この3つを追加するという検討結果でした。

 30ページ、先ほど2種類のワクチンがあると申し上げました。1種類のワクチンを使い始めたら、同じワクチンをその後も接種していただくことが原則になると考えています。しかし、以前にどのワクチンを接種したかということが分かるようになっていないと、それが徹底されないことになるので、3132ページにあるような予防接種済証や母子手帳の様式の中で、そのことが明記される必要があると考えています。

 33ページです。もし、同じワクチンを接種することができない事情が生じた場合どうするかということも決めておく必要があると考えています。諸外国においては、どうしても難しい場合には他のワクチンに途中で切り替わった場合についても、一定の条件のもとで効果が認められるような報告がなされています。このようなことを踏まえ、34ページの下に、第34回基本方針部会における検討結果として、ロタリックス又はロタテックのいずれか同一の製剤で接種を完了することが原則であるものを明確化する。また、ロタウィルスワクチンの接種を行った際に、予防接種済証や母子健康手帳に製剤の種類の記載を求める。ただし、一方の製剤の接種体制がない等の事情を有する市町村においては、他の市町村からの転居等のやむを得ない事情がある場合に限り、異なる製剤を組み合わせた接種を認めることができることとするということで御了承いただきました。ただ、この転居等の「等」の範囲や、どのような組み合わせすればよいかについては、基本方針部会で様々な御意見がありましたので、「詳細については今後検討の上で定める」としています。

 35ページ、ロタウィルスワクチンを接種後に吐き出した場合の対応についてです。経口で接種するワクチンなので、乳児が接種後すぐ、あるいは少したった後に嘔吐されることが起こり得ますが、この場合の対応については基本方針部会でいろいろな意見がありましたので、今後改めて検討の上で定めたいと考えています。

 36ページ、定期接種化の開始時期は、安定供給、自治体の接種体制、このようなことを踏まえ、令和210月に定期接種を開始するよう準備を進めてはどうか。定期接種化の開始時において、どのような方を最初の対象者とするかということです。余り誕生日の早い方を対象にしてしまうと、定期接種化を見越して、初回の接種をかえって遅らせる人が増える可能性があります。そのようなことは有効性の観点からも、安全性の観点からも好ましくないということで、評準的接種期間が生後2か月からであることを踏まえ、定期接種の最初の対象者は、令和28月生まれ以降の者とするという検討結果です。また、その範囲の中で、対象者が既に一部の接種を任意接種として行った場合、例えば8月生まれの方が9月に1回目の接種を行った場合、残りの接種を定期接種として扱うということとしてはどうかということです。

 37ページ、ロタウィルスワクチンとその他のワクチンの接種間隔についてです。生後2か月から数か月の間、非常にたくさんのワクチンを接種するというスケジュールになってきます。これまでの大きなルールとしては、定期接種化されている生ワクチンについては、接種後27日以上、他のワクチンとの接種の間隔をおくということになっていて、ロタワクチンを接種すると、同時接種しない限り、27日間は他のワクチンを接種できないということに、今までのルールをそのまま適用するとすればなってしまうわけですが、ロタウィルスワクチンについては、他のワクチン等の反応に影響を及ぼさないという意見も出ており、諸外国においても、そのような接種間隔に規制が余りないということです。この接種間隔のあり方については、今後さらに基本方針部会で議論することになっています。

 最後に、副反応の報告基準です。アナフィラキシー発生までの期間は4時間、腸重積症は接種後21日以内に起きたものを、副反応疑い報告の対象とするということです。こちらは副反応検討部会においての検討結果ですので、このような方向で進めたいと考えています。

 以上、このような検討結果を踏まえ、ロタウィルスワクチンの定期接種化の導入について認めていただけるかどうかを御審議いただければと存じます。よろしくお願いいたします。

○脇田分科会長 御説明ありがとうございました。ただいまの説明がありましたとおり、ロタウイルスワクチンの定期接種化について、まずは前半で、このワクチンを定期接種化するかどうか、後半で、定期接種化する場合の具体的な案について議論をお願いしたいと思います。

 部会で議論があったわけですが、事務局から説明のありましたとおり、接種が2種類のワクチンの組み合わせをどこまで定期接種として認めるか、それから、吐き出してしまったときの対応をどうするか。臨床の現場では、現状は任意接種ですが、吐き出してしまったときには、再度、接種をするような対応もかなり取られているところで、どのように考えるかというところが論点となりました。

 さらに、生ワクチンですので、間隔を一定期間空けなければいけないという取決めがありますが、この場合にロタウイルスワクチンも、それをどう考えるかというところが論点となりました。ロタウイルスワクチンを定期接種に導入することについて皆様からも御議論をお願いしたいわけですが、特に御質問、御意見あるいは各部会に所属されている委員からの補足の説明等があれば、お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○館林委員 12ページで、三重県津市で実施されたロタウイルスワクチン胃腸炎入院例の研究結果を基にというところから、5歳未満のロタウイルス胃腸炎入院例が年間約12,000例予防されていると算出され、一方で腸重積については、25例の腸重積症が増加すると算出されています。これは比較対照が違うと思いますが、これらの結果を踏まえると、腸重積症が1例症じる間に、480例のロタウイルス胃腸炎入院例が予防されていると推計されたとあるのですが、このうちの死亡に関して、ロタウイルスによる死亡例や年間の死亡例、腸重積に関する年間の死亡例はどのようなデータになっているのでしょうか。

○脇田分科会長 事務局、データはありますか。お願いします。

○林予防接種室長 事務局です。死亡例については、それぞれ、ほとんど発生しないということと認識をしております。腸重積症については、この報告の中には入っておりませんし、ロタウイルス胃腸炎については、非常に数が少ないということです。

 ワクチンによる統計ではなく、ロタウイルス全体による死亡例として、国の統計で7例が報告されております。また、腸重積症による死亡例は、国全体として2.5例が報告されておりますので、ワクチンによって新たな死亡が発生する例というのは、あるかもしれませんが、確率的には0か、1よりも少ない数字になると考えております。

○館林委員 何人かの小児科の先生にお伺いして、このワクチンが悪いということはないので、基本的に問題はないのではないかと推測しているのですが、親として、このワクチンが必要かどうかというのは、重症な命に関わる、あるいは後遺症が出るようなことが予防できるのか、その副反応としては、命に関わるようなことが起きないのかというところが、重要です。腸重積症というのは、子供の重い病気というイメージがあります、一方で、そのロタウイルスは、実際は7例死亡しているということですが、比較的よく経験する病気というイメージがあります。このワクチンを打ったほうがいいというのを納得して受けていただかないと、後で混乱が起きる元なのではないかと思います。

 腸重積というのは、このような症状で、症状が出たら、すぐにこのように対処しますとか、早く見つけて早く医療機関にかかれば対応ができて後遺症が起こりませんなど、一方で、ロタウイルスは予防できるとこんなにいいのだというように、定期接種化するのであれば、うまく説明できるようなことが、重要かなと、腸重積という言葉が独り歩きしないほうがというか、コミュニケーションに注意したほうがいいのではないかと感じました。

○脇田分科会長 ありがとうございます。ただいまの御意見ですが、やはりロタウイルスワクチンによるリスクとベネフィットがどのようなものであるかということを、広く定期接種化するわけですから、十分に周知しておくことが重要であるという御意見だと思います。この点に関しては、これまでの部会等でも議論がかなりされているところです。やはり、副反応として腸重積の症じる可能性があるということは十分に周知していく必があるということです。それから、今、御指摘がありましたが、ベネフィットの面です。やはり、このワクチンを受けることによって、入院するようなロタウイルス感染症を予防することができるというベネフィットがあることも、併せて広く周知する必要があるということです。事務局におかれましては、その点、十分に留意していただきたいと思います。この点について御意見はございますか。

○大石委員 富山県衛生研究所の大石です。これまでロタウイルスワクチンの定期接種化については腸重積の副反応にすごく神経を遣って、AMEDの予防接種班でも、これをずっと検討してまいりました。その結果が11ページの所に掲載されていると理解しております。

 腸重積がベースラインとして発生し、さらにロタウイルスワクチンに関連するケースも発生することは事実です。調査の中で困っていたのは、腸重積が発生した事例と、ロタウイルスワクチン接種の何日後に発症しているのかというワクチン接種との関連性の詳細が分からなかったということがあります。

 それで確認ですが、19ページのお諮りする事項(2)の中の「接種方法に関するその他の事項」に、「予防接種済証や母子健康手帳に製剤の種類の記載を求める」とあり、その様式は31ページに示されているところです。今回、この「お諮りすること」については、これまである枠組みを更に確実にするという意味でここに記載されているのだと思います。そのような理解でよろしいでしょうか。それとも、新たに提出を求めるものでしょうか。

○脇田分科会長 事務局、お願いします。

○林予防接種室長 予防接種済証と母子健康手帳についてのお尋ねですが、もともとの様式で、3132ページにありますが、予防接種済証については、今のままの様式を使いますとロタウイルス感染症だけを書けばよくて、必ずしもメーカー名を書かなくてもいい様式になっておりますので、これを改正する必要があると考えております。

 32ページについては、もともとメーカーという欄がありますので、そこに大体の場合、ロット番号のシールを貼ると、そこにロタテック、ロタリックスという名称が書かれることになるのだと思いますが、正確に申し上げると、それはメーカーではなく製剤名ですので、そのことを明確化したいと考えております。

○大石委員 了解しました。そうすると、その剤名も記載し、接種日も明確に分かることになると思います。これは医療機関の医師が自治体に報告するものと考えられますので、この情報を研究班などに共有していただくことができる仕組みがあれば、これから予防接種ワクチン接種と腸重積の発生ということが明確になってくると思います。この点について事務局としても御検討いただいて、今後の研究班によるサーベイランスにいかしてほしいと思います。以上です。

○脇田分科会長 ありがとうございます。この点いかがでしょうか。事務局、お願いします。

○林予防接種室長 副反応の因果関係を探るために、副反応と気付いた場合に集めるだけではなく、見つけたい有害事象を単独で集めて、また予防接種の接種記録を単独で集めて、その内容性と突合するということで、より正確な疫学調査ができるのではないかという御指摘だと認識しております。そのような問題意識は持っており、できる方法はないのかといろいろと考えております。頂いた御助言も踏まえ、何ができるかを今一度考えてみたいと思います。

 今年やっている取組としては、それを両方持っている所は大体は市町村ですので、市町村のレセプト情報と市町村の予防接種台帳を突き合わせて、発生頻度の差があるかどうかという研究をできないかという取組を今年、モデル的な取組をしているところです。

○大石委員 ありがとうございました。

○脇田分科会長 ありがとうございます。坂元委員、お願いします。

○坂元委員 川崎市の坂元です。1点は、この資料の33ページにありますが、乗り入れの問題です。市町村によっては1種類のワクチンしか接種体制がないという場合ですが、これは今後の検討課題です。ワクチンの選定に関しては、恐らく、市町村によってまちまちかと思います。もしかすると市町村によってワクチンを指定してしまう場合もあれば、それぞれの接種医に判断を任せて、その接種医から申請があったものを受けるというような様々な形態があるときに、もし、その接種医にワクチンの選択を任せた場合は、市町村の中でどのワクチンが使われているのかという実態が把握できない問題もあると思います。これは実際に調べてみたら、ある市町村の中では1種類のワクチンしか使っていないなど、いろいろな事例があると思います。この接種体制の在り方という点に関して注意をしていただきたいということです。それから、2種類のワクチンの乗り入れの問題に関しては、政省令に、このパターンは認めると書かれるのか、それを運用として現場に任せてしまうのかという問題もあると思うのです。

 いずれにしても、やはり乗り入れの問題は、あるパターンが駄目となると接種される方に不利益がありますので、自治体のほうに徹底する文書、注意喚起みたいなものを、もし可能であれば10月の接種実施までに出していただければと思います。

 この吐き出しの問題も、吐いてしまったという35ページの問題も今後の検討課題としてあるのですが、これは多分、現場で相当困るだろうと思います。この問題がどのように規則化できるかということも踏まえて、この2点、接種主体の、多分、隣にいらっしゃる市長さんも同じ悩みを持つと思うのですが、かなり現場では判断に迷う場合が出てくると思います。この辺の検討はしっかり検討していただいて、それで、接種主体の市町村の接種医の先生方に改めて周知をお願いしたいと思います。以上です。

○脇田分科会長 ありがとうございます。今、坂元委員の御指摘の問題、乗り入れというのは、自治体を越えて移動したときに接種するワクチンの種類が変わった場合、どこまでの範囲を認めるか。それから、吐き出した後どのように対応するかという問題は、こちらの部会でもかなり議論になったところです。この対応は検討するというお話になりましたが、現時点で事務局で何かお話できることはありますか。

○林予防接種室長 事務局です。基本方針部会で、そのような御意見を頂きましたので、今後、しっかり定めるということと、しっかり市町村等にお伝えするということに心懸けていく必要があると思っております。

 あくまでもロタリックス、ロタテックは最初に飲んでいただいたものを飲み続けることが原則であり、そこについては全く揺るがないものであると思っております。極めて例外的に、それが取り得ない場合にどのようにするのか。余り政省令レベルで杓子定規に決める必要はないと思っておりますが、一方で、何でも現場にということですと、そもそもの原則自体が失われてしまっては元も子もありませんので、そういった所を上手に表現できるように検討していきたいという姿勢です。よろしくお願いいたします。

○脇田分科会長 ありがとうございます。まずは、接種したときのワクチンの種類をしっかりと記録することが大事だと思います。その点はシールがきちんと貼られるように、そこにワクチンの種類が記載されるように工夫していただくようお願いしたいと思います。釜萢委員、お願いします。

○釜萢委員 少しまた話が戻りますが、先ほど館林委員から御指摘の件ですが、このロタウイルスは、定期接種になる前に、既に現場では、かなり市町村の財政的な支援もあって、任意接種の数が増えているという背景があります。

 このワクチンの効用について、どのぐらい効果が大きいのかというところについての御理解がいただけていないかもしれませんが、もともと昭和40年代、50年代は、このウイルスによる小児の感染症は非常に重症になる、そのずっと前からありますが、歴史的な病名で、今はそんな病名は使いませんが、仮性小児コレラや白色便性下痢症などという、昔の歴史的病名もあり、それはずっと冬期の小児の重症な下痢症の原因である。その頃はまだ原因は特定できてなく、よく分からなかったわけです。

 その後、現代では病原の検査もできるようになっていますが、非常に重症化し、私自身の経験でも非常に重症で不幸な転帰を取られた方を何人も存じております。特に小児科医にとっては非常に多いのですが、重症になり得る危険な病気という認識でずっとやってきました。その後、医療環境が大分改善して、輸液がかなり早い時期からすぐに対応できるようになって、大分、様子が変わってきたところがあります。

 しかし一方で、流行時期には、大変、外来も混雑して苦労してきたということもありますが、このワクチンが任意で入って以降、ロタの患者さんの数は激減しました。そして、重症の下痢が、特に乳児期早期からの生後6か月頃からの重症化する下痢症がすごく少なくなってきました。

 一方で、副反応としての腸重積については、小児科医は接種開始当初から大変気にしておりましたので、任意接種でも接種前の説明の段階では、接種後に、例えば、急にお腹を痛がるようにして普段と違う泣き方をした場合には、すぐに連絡してほしいとか、そういう注意は十分、これまでも与えながら、説明しながら接種を行っています。それは、今後も定期接種になったら更に徹底されるだろうと思います。

 そのような注意を払って腸重積について見てまいりましたが、今日の大石先生の班の報告などを見ても、発生数も増えていないし、年齢によって、ある時期から少し、ワクチンの接種に関係なく増えてくる時期があるので、今日提示されたような時期に安心して接種を行うのが一番ふさわしいだろうというのが、現在までの皆さんの共通の認識だろうと思います。

 そのことについてのアナウンスが、まだ十分ではなかったという御指摘もありますので、あえて発言いたしましたが、そのことについては、更に接種に当たって国民の皆さんにしっかりお伝えすることが大事だと思います。よろしくお願いいたします。

○脇田分科会長 ありがとうございます。よろしいですか。

○館林委員 ありがとうございました。このワクチンにどうこうということではなく、やはりコミュニケーションをきちんと取っていかないと、定期接種は難しいというのが自分の実感です。今、釜萢先生のお話を聞いて、そのようなことがみんなに伝わるといいなと思いました。

 あと、もう1つ気になるのは、受ける側から言えば、子供の健康を守りたい、命を守りたいというのと、重大な後遺症を残したくないことだけがエンドポイントなので、例えば、定期接種になって、地方でそんなに小児科の先生がいない所や全国津々浦々で、今、先生におっしゃっていただいたような体制が取れているのか等も気になりました。やはり、受ける際は、今のような体制があって、十分な説明があるような状況だといいと思っております。

○脇田分科会長 ありがとうございます。接種の体制、それから情報の周知の均霑化ですかね、そういったところもしっかりやっていく必要があるという御指摘だと思います。  少し話を戻します。小委員会及び部会でやりましたリスクベネフィットといいますか、そちらは納得できるのですが、費用対効果が今一つ十分ではないのではという議論がされて、それでメーカーにも値下げの可能性についてヒアリングをしたということがあります。

 こちらに関して、多少の値下げが見込まれる状況で、しかし費用対効果としては十分ではないですが定期接種化を導入すべきだという結論に現状なっているわけです。その点に関して更に御意見等ありますか。坂元委員、お願いします。

○坂元委員 これを接種する市町村としては、貴重な財源の中からやるという形で、もちろん、市民の方の健康を守るという意味では有益なものとは考えておりますが、限られた財源の中で、隣の市長さんも多分、同じ考えだと思いますが、やりくりする中で、やはり、その辺の考え方というのをしっかり明示してほしいです。

 有効性と安全性ということが予防接種法の中に記載されているのですが、いわゆる、費用対効果みたいな考え方というのはこの法律にないということです。これを契機に、今後の定期化を決める中の1つの議論すべき点として、しっかりと国でも費用対効果の議論を、きちんとしていただけたらいいかなと思っています。ここに今後、その費用対効果を前向きにやっていきますと書かれておりますので、このワクチンに限らず、今後、定期化されるワクチンも含めて費用対効果に関しての議論はしっかりやっていただきたいと考えております。以上です。

○脇田分科会長 ありがとうございます。川俣委員どうぞ。

○川俣委員 ありがとうございます。弱小の市町村からすると、大きな負担になってしまいます。もし副反応などが出た場合にどのようにしていくのかというのは大きな問題になります。ですから、国からのバックアップがかなり必要になってくると思いますので、是非とも、国として製薬会社にも価格を下げていただくことももちろんですし、私たち地方としても、予防することで皆さんの健康を守るという大きな使命もありますので、是非とも、その辺をしていただけると、費用対効果もありますし、高いのも分かるのですが、必要なものにお金を使うことが、これから必要になってくると思います。ただ、守るものも必要なので、その辺をよく検討していただけると有難いと思います。よろしくお願いします。

○脇田分科会長 ありがとうございます。沼尾委員、お願いします。

○沼尾委員 御説明ありがとうございました。私は医療が専門ではなくて、財政が専門ですので、少し違った観点から意見を述べさせていただきます。今の委員の皆様のお話や資料を拝見して、子供の健康を守るということで、これだけ日々御尽力されて、これだけの検討を重ねて、副反応についても検討しつつ、このような形でロタウイルスワクチンの定期接種化を出されたというところは本当に頭が下がります。この間、ワクチン・ギャップの解消のことや、確かに子供の健康ということで、ほぽ6割ぐらいのお子さんが任意接種をされているという話も聞いており、今の状況の中で、その居住自治体の財政力の有無によって、任意接種が良い条件で受けられたり、受けられなかったりというところを、定期接種化することで全ての子供にという機会を提供するという、その考え方自体は本当にそのとおりだと思います。

 ただ、その反面で、私が非常に気になっていることは、今回の資料で1つは、その費用対効果というところで、やはり、まだまだ費用が相当に大きいということと、その副反応については、やはり丁寧な説明は必要ですが、その症例が幾つか出た段階で非常に不安に思ってしまう親御さんもいらっしゃるだろうということです。そういったところに、若干の懸念が起こる中で、これを定期接種化したときに、数百億円単位での財政需要が発生するところを大変心配しています。

 これを地方交付税措置に乗せるということですが、この数年間、交付税の規模は16兆円程度で推移をしていると、今回、消費税率もようやく引き上がりましたが、それについても、もう使途は決まっている状況の中で、つまり交付税の需要を、ここで追加で、例えば数百億円乗せるということは、その分、税収がどこからか入ってくるわけではないので、当然、何か別の需要を算定から落とすということになってくるわけです。そうなったときに、確かに、子供の健康の優先度が高いのはそのとおりだと思いますが、実際に、実情としては社会保障分野でいうと、給付費は削減できないので、自治体職員の人件費や事務運営経費、先ほどおっしゃっていたような、本来の住民とコミュニケーションを取らなければいけない、そういった運営経費がなかなか掛けられないといったところで、すごく現場が苦労しているという話も耳にしています。

 そのような中で、本当にこれを入れてしまって、財政的に回していけるのだろうかと大変、懸念しているところです。そのように考えたときに、これを入れるのはいいのですが、更にもう1つ、定期接種のワクチンが増えて、現場も含めて大丈夫なのか、現場の自治体でそれに対応できるのかというところを含めた場合の、それらの費用も見込んだときに、これは本当に大丈夫なのかと心配しております。定期接種化の理念や子供の健康を守るということ、そのものについては全く否定するものではないのですが、やはり、そういったところの人員や財源が確保された上で進めていかないと、後々、国民に対する説明責任や信頼を失ってしまうとすると、それは非常にもったいないことなので、是非、その点については留意をした上で、これを進めていくような考え方でまとめていただければと思っているところです。以上です。

○脇田分科会長 貴重な御意見をありがとうございます。このまとめの部分にもありますが、費用対効果の取扱い、あるいは価格決定のプロセスについては、今後、予防接種の制度の在り方の検討の中で議論していくことになっています。イギリスのように、非常に厳密に、この費用対効果を取り扱って入札制度を取り入れるなど、そういった価格決定のシステムがあるということも、我々は今後、検討していく必要があると思っております。やはり、限られたリソースをどのように使っていくのか、予防接種にどのように使っていくのかということも十分に検討していく必要があると考えております。事務局から、これに関して何かありますか。

○林予防接種室長 事務局です。御指摘は非常にもっともだと思っております。地方交付税の仕組みについても丁寧に解説をいただき、この場でも御議論をいただいたことは、非常に意義のあることだと思っております。どこまでも伸ばしていけばいいというものではなくて、限られた社会全体のリソースの中で何を優先するのか、予防接種行政の中でも、そのような視点を持って運営していくことが必要だと思っておりますので、今後の検討の中でも皆様方と一緒に考えていけたらと思っております。

○脇田分科会長 ありがとうございます。そのほか、いかがでしょうか。池田委員、お願いします。

○池田委員 今、御議論いただいた財政的な面や費用対効果の点については、このワクチンも含めて、今後、更に検討していく必要があるというところは私も同感です。資料の少し細かい所で1点だけ申し上げたいのですが、14ページに推計の結果があります。右側の「差分」というのは、接種をした場合にどれだけお金が増えるかと、余計にかかるのかということの引き算になっているはずなのです。マイナスの数字が付いているのですが、「差分(接種群-非接種群)」ということは、お金が余計にかかってしまうので確かにマイナスと書きたくなるのですが、この引き算だとマイナスはプラスになっていないといけないのです。すみません、私も小委員会のときに気付くべきだったのですが、ここは後で修正いただければと思います。間違った形なので誤解を生じると困りますので、よろしくお願いします。

○脇田分科会長 ありがとうございます。それでは、更に御意見がなければ、先ほどから議論がありますが、具体的な定期接種化に当たっての規定のところで、19ページにまとめがあります。疾病類型や対象者、接種期間等々に関しての更なる御意見はいかがでしょうか。

○大石委員 費用対効果の所で少し考えていることを申し上げたいのですが、正直申し上げて、いろいろな基本方針部会、あるいは小委員会でも委員となっておられる費用対効果の専門の先生方がおられて、最近はよく論文化されておると認識しております。我々はその論文を読んで理解を深めるわけです。しかしながら、いろいろな科学論文をの中でも、医療経済の論文は専門性が高く、委員会に出席しても十分に中身が理解できていないというのが現状です。できれば、それぞれのワクチンの費用対効果の分析については、勉強会をするような場を作られてはどうかと考えます。我々、委員だけでなく、事務局も含めて理解していくことが望ましいのではないかという提案です。

○脇田分科会長 ありがとうございます。費用対効果、医療経済に関する勉強会、あるいは、我々委員を含めて検討を更に深めるべきであるという御提案だと思いますので、事務局もこの点を留意されて、今後、検討していただきたいと思います。さて、いかがでしょうか。川俣委員、お願いします。

○川俣委員 費用対効果の話の中で、今、ほとんどの地域の市町村が、小学校から中学校、中には高校まで医療費を無料にしているのです。そうすると、中には予防接種にお金を払うのだったら、病院に行ったほうがいいという親が出てきています。そうなったときに医療費が上がってしまうのです。その辺の費用対効果もかなり出ているので、私の中で理解不能ですが、病気になっても無料で治療してもらうほうがいいという親が実際に出てきています。

 それを現実に考えると、本当に幾らお金をかけたほうが、どちらがいいのか、悩むことが現実に起こっていることを少し把握していただくと、予防接種を受けてもらって医療費が下がったほうがいいかを検討する時期に来ているのかなと、市町村は争ったように、ここまで子供に、子育てに優しい街づくりというのは聞こえとしては一番なので無料化していくのです。

 そうすると、本当に親の気持ちがだんだん荒んでいるのか、医療費が無料なら、そちらがいいという親が実際に出てきているので、その辺を考えると、この予防接種の費用を負担するほうが得なのかを、費用対効果という言葉ではなく、今後の日本のためにはどちらがいいのかを考えるべきときかなと、この部会には合わないかもしれませんが、現実に出てきているので、それも加味していただけると有難いなと思います。お願いします。

○脇田分科会長 ありがとうございます。国民健康保険に予防接種は含まれないわけですが、その予防医療と健康保険という、そこの区分ですね。これを全体として見るべきではないかという御意見だと思います。この部会ではなかなか議論が難しいところではありますが、しかるべき場所で、そういった意見もあるということを、私としても述べていきたいと思います。更に御意見いかがでしょうか。

 費用対効果の話に少しシフトしましたが、具体的な所で、定期接種導入に当っての具体的な規定については少し議論が進んでいますが、更にこの点で御意見があれば、特に論点としては、坂元委員からもありましたように、乗り入れや吐き出しの問題は今後の検討課題となっております。

 例えば、標準的な接種期間が生後2か月からということになっているなど、対象者とは少しずれるところもありますので、その点を留意されてというところです。何かありますか。それでは、全体で更に御質問、御意見等ありますか。よろしいでしょうか。

 それでは、この辺りで議論をまとめたいと思います。ロタウイルスワクチンの定期接種化について、この基本方針部会、副反応検討部会等で具体案をまとめていただき、本日、この分科会で審議を頂きました。各部会でまとめられた原案どおりにお認めいただくということでよろしいでしょうか。

 ありがとうございました。事務局に確認ですが、今後はどういったプロセスで進んでいくことになりますか。お願いします。

○林予防接種室長 事務局です。御審議ありがとうございました。ただいま御了承いただきました内容を基に、交付税を含めた予算確保に関する調整、あるいは、政省令の改正に向けた手続きに入っていきたいと考えております。政省令の改正内容がまとまった段階では、改めて、この分科会に正式にお諮りする必要もありますので、何卒、御協力を賜りますようお願いいたします。

○脇田分科会長 今日も様々な意見が出ましたので、その点についての留意をよろしくお願いします。それでは、続いて議題2に進みます。予防接種施策の現状についてです。資料2について事務局から説明をお願いします。

○林予防接種室長 04、資料2「予防接種施策の現状について」をお開きください。議論の時間が限られていますので、資料の説明は、かい摘んでさせていただきます。予防接種施策の現状について全体をまとめた資料となっています。2ページ以降が予防接種施策の経緯等についてですが、3ページは予防接種法の戦後のいろいろな出来事と、予防接種制度の変更についてまとめている表です。こういった経緯を踏まえて4ページ、平成25年には予防接種法の大きな改正が行われました。定期接種の対象疾病について、A類疾病、B類疾病という形で整理され、対象疾病も幾つか追加されました。副反応疑い報告制度の法定化が行われました。また、この予防接種ワクチン分科会というものが置かれまして、その部会等の体制も含めて検討体制が整備されたところです。5ページには予防接種基本計画が計載されておりますが、こうした計画に基づいて、その後の予防接種施策が進められてきたところです。

 平成25年の改正の大きな原動力はワクチン・ギャップの解消ということでしたが、ただいま認めていただいたロタワクチンも含めて、導入された暁には、かなりこういったところも解消されてきたことになると考えております。7ページ、なぜ今日はこういった議題をお示ししているかということです。平成25年の改正法の中で、この法律の施行後5年を目途として、施行の状況を勘案し、検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるという規定が入っていまして、5年を少し過ぎておりますが、予防接種法あるいは予防接種制度全体の総点検をするというような観点で、今回資料を用意させていただいております。

 8ページからが、定期接種の実施状況についてです。9ページは御承知のとおり、予防接種法における接種の類型をまとめたものです。大きく定期接種と臨時接種という類型がありまして、定期接種の中にA類とB類という疾病があります。それぞれの考え方があって、A類は発生前の防止、あるいは重篤化の防止を考え方としています。B類疾病は、個人の発病、重症化の防止に力点を置いた考え方となっています。それぞれ、接種の努力義務のありなし、勧奨のありなし、あるいは接種費用の負担といったところが違っているということになります。それに応じて、健康被害救済の手厚さというところにも差ができているということです。

 10ページは、現在の定期接種の対象、ワクチンの対象者と、標準的接種期間についてまとめています。11ページ、平成25年の法改正と、それ以後に定期接種化されたワクチンです。御覧の6つのワクチンが定期接種化されて、ロタワクチンについて今日は御審議いただいたということです。12ページは定期接種の実施率です。多くのA類疾病については100%に近い接種率となっています。人口で単純に割っていますので、一部のワクチンについては計算上100を超えているものがございます。13ページは定期接種の費用負担についてですが、A類疾病については9割を地方交付税、B類疾病については3割程度を地方交付税で手当をするという形を取らせていただいております。14ページは、地方交付税単位費用です。1つの市町村を人口10万人とした場合に、幾ら分の財政需要があるかということを表しているものもです。感染症対策費の中のほとんどの部分が予防接種費用ですので、感染症対策費の全体像をもって予防接種費用の推移を把握していただくために資料として提出しております。平成25年の予防接種法の制定時にA類の定期接種の地方財政措置を2割程度から9割程度に引き上げるといったことが行われまして、このような形で推移しているところです。

 15ページからは定期接種化の検討についてです。16ページに、ワクチンの定期接種化までのプロセスの全体像を模式的にまとめております。開発、薬事申請から承認、そして、この分科会も含めた予防接種行政の中での検討、予算の確保、市町村での予算審議といったことと並行して、メーカーにおける供給が進みまして、最終的に定期接種等として実施できるということになりますけれども、こうした数多くの、また時間のかかるプロセスがございます。17ページは、予防接種行政に関する審議会・審査会で、この部会の下に置かれている部会や他の審議会の全体像です。この分科会の下には、予防接種基本方針部会、研究開発及び生産・流通部会、副反応検討部会の3つの部会が置かれております。被害救済に関しては、別の疾病・障害認定審査会の中に、感染症・予防接種審査分科会というものが置かれております。

 18ページ、19ページは、ワクチン導入に関する審議の進め方についてまとめています。18ページが、平成275月に予防接種基本方針部会でまとめられたもので、広く接種を促進する疾病・ワクチンに関する検討の進め方についてです。1の疾病ワクチンの「予防接種法の位置付け」に関する検討についてということですが、ワクチンが新たに製造販売承認を得た際には、ワクチン評価に関する小委員会において、予防接種法上の位置付けに関して審議を行うことといった取決めとなっております。また、2番のファクトシートの作成ですが、国立感染症研究所において行っていただいておりまして、必要な標準作業期間を原則として6か月にするといった規定があります。3番目に、ワクチン評価に関する小委員会における評価・検討についてですが、報告されたファクトシートを基に、参考人の協力も得ながら作業を進めるということになっております。19ページは、その進め方を図にまとめたものです。

 こうした検討に基づきまして、20ページに、現在定期接種化を検討中のワクチンをまとめております。新たな対象疾病に関する検討としては、今、御議論いただいたロタウイルスのほか、現在、おたふくかぜワクチン、帯状疱疹ワクチンについて議論がなされております。また、既に対象疾病となっている疾患についての接種回数や年齢、接種するワクチンの種類に関する検討として、不活化ポリオワクチン、肺炎球菌ワクチン、百日せきワクチンなどの検討が行われています。

 21ページからが、供給・流通についてです。22ページ、ワクチンの供給に関する関係者ですが、ワクチンが製造され、販売されます。そして、卸売販売業者を通じて市町村や医療機関に届き、そこから対象者に接種されるという大きな流れです。23ページは、ワクチンの製造の流れを書いておりますが、ワクチンの大きな特徴として、他の化学合成品などと異なり、例えば卵の中で育てるような例を書いておりますが、生き物の中で非常に時間をかけて育っていくというようなプロセスが含まれているということで、1つのワクチンを作るまでにかかる時間が長いということがあります。もう1つは、普通の医薬品と比べて、接種される数が非常に多いという特徴もあり、こういったところが供給においての非常に大きな特徴です。

 24ページは、国家検査についてです。ワクチンの安全性をきちんと担保するために、製造後に有効性及び安全性の試験をすることになっています。国家検定の対象品目は、ワクチンはこういったものに入るわけですが、自家試験だけではなくて、国家検定(一部の重要な試験を国立感染症研究所でも実施)をして、それで認められたものが供給されるという仕組みになっています。ときには、ワクチンを急いで供給しないといけないというような事象が発生した場合には、自家試験と国家検定を並行して行うといったような例外的な運用を行っている場合があります。

 25ページは、各ワクチンの年間生産量と接種人数です。先ほども申し上げたとおり、定期接種分だけでも、非常に多くの方が接種されるということでして、これに見合う供給を常に整えておく必要があります。

 27ページはワクチンの需要と供給についてです。この需要と供給のバランスが崩れるとワクチンが足りなくなるというリスクがあります。定期接種や任意接種の需要が伸びるということでワクチンの需給が難しくなる場合がありますし、また供給のほうの要因として、天災などによるもの、あるいはそのメーカーの中での様々な製造上のトラブルによるものといったことで供給が下がることによってもバランスが崩れる場合があります。こういった事象が常にそれなりの頻度で起きているというのが、近年の状況です。

 28ページからは、副反応疑い報告についてです。この仕組みが平成25年の法改正でも整備されました。副反応疑い報告と、医療機関や製造販売業者からの副作用等報告として頂くものを一元化して分析する形を取っております。29ページが全体像で、30ページがその具体的な取扱いです。予防接種法に基づくもの、薬機法に基づくものの両方がありまして、医療機関と企業から報告があります。以前は窓口を別々に分けて資料を作る形になっておりましたが、現在、平成2611月以降は、PMDAのほうで一元化して受け取らせていただきまして、審議会の資料の作成などを行っているということです。31ページに、製造販売業者からの報告数、事業者からの報告数と審議回数をまとめています。

 32ページからは、健康被害救済についてです。予防接種の副反応による健康被害は、極めてまれではあるが不可避的に生ずるものであることを踏まえ、接種に係る過失の有無にかかわらず、迅速に救済するという考え方の下で運営をさせていただいております。市町村を通じて申請を頂き、都道府県を通じて進達していただいて、厚生労働省のほうで疾病・障害認定審査会の意見を聞いて認定・否認するという形になります。34ページは給付額をまとめたもので、それぞれの接種の類型に応じて、医療費、医療手当、障害児養育年金、障害年金、死亡した場合の補償などを給付することになっています。

 35ページは健康被害認定に係る事務の具体的なフロー図です。36ページが実績で、近年ですと、年間100件程度の審査が行われて、その中の4分の3ぐらいが認定されているという状況になっています。

 最後に、38ページが今後の進め方です。この5年後を目途とした見直しの検討ということですが、この分科会の中では予防接種基本方針部会の中で、具体的な検討を行っていただきたいと考えておりまして、実際には予防接種基本方針分科会での検討を始めさせていただいております。年内は意見交換、ヒアリングなどを進めた上で、更に詳細な検討を行っていくというようなスケジュールで、現在検討いただいており、来年になると思いますが、提言等を取りまとめていただくことを目指して検討していただいているところです。

 本分科会は、この予防接種基本方針部会が、今後取りまとめた提言案に基づいて分科会として提言していただくという形になると考えています。既に部会のほうで検討しているところですが、本日の分科会では、予防接種基本方針部会で行われている具体的な検討における検討の視点や方向性に関して意見交換をお願いしたいと考えています。分科会の先生方の御意見と、部会での検討の方向というのが大きな齟齬がなく進むようにできればと思っていますので、この時点で、何か検討の視点、方向性について御意見がある場合には、是非ともおっしゃっていただきたいと考えています。よろしくお願いいたします。

○脇田分科会長 今、説明があったとおり、予防接種施策全般の見直しということで、ただいま基本方針部会で議論が進んでいるというところです。本日、こちらでは委員の皆様から意見を頂きまして、さらにそちらの検討にいかしていくということになりますので、様々な視点から方向性等に関する御意見、御質問等があればいただきたいと考えていますが、いかがでしょうか。

○桃井委員 2点申し上げたいと思います。16ページに、ワクチンの定期接種化までのプロセスの全体像が書かれています。これは非常にきちんとポイントを押さえておられると思いますが、決定的に欠けているのは、いかに国民に理解してもらうかというところだと思います。

 ワクチン行政で最も困難なのは、国民の理解です。疾患の場合、理解は得やすいのですが、予防ということに関して、特にワクチンという、効果も100%ではないという意味の不確定さがありますし、副反応はもっと不確定です。副反応疑いの報告として上がってくるもののかなりの部分は因果関係が立証されていないものですから、極めて不確実性のあるデータです。国民の理解が非常に難しいのは、不確実なものをどうやって適切に理解するかであり、情報を与える者の与え方次第だと思うのです。

 先ほど、「リスクコミュニケーション」という言葉が出ましたが、一般の方がリスクコミュニケーションと聞くと、危険性のコミュニケーションというように聞こえるかもしれませんが、専門家の方がおっしゃるのは、不確実性の情報に関するコミュニケーションの仕方というのが適切なのだろうと思います。

 その問題は非常に専門的な力を必要としますので、この開発、薬事、検討、供給、実施の中に余りそれが見えていません。これらのワンステップのどれよりも大事なものであり、それぞれの比較はできませんが、掲げた各項目に匹敵するほど極めて重要なもので、あるワクチンの行政がうまくいかなくなったときに、その最も大きな原因は国民の認知バイアスによる無理解の不適切さと言いますか、理解が十分にできていない、あるいは大きな誤解が生じているというところが大部分なのです。

 行政に関わる方や委員会に関わらせていただいている者たちはデータの読みは適切にできていますが、一般には、ほとんど正確には伝っていないというところが事実です。ワクチンほど認知バイアスを起こしやすいものはありませんので、それを必要性を含めて、いかに適正に、一般の方々、国民に理解していただいて、打つということのお気持ちを持っていただく、打つほうが、より多くのメリットがあるという気持ちを持っていただかないままに、政府が奨励するのだから打ちましょうという形で打った場合に、何か事象が起きますと、よりワクチンに対する疑いが強まって、非科学的な疑いも含めて強まって、なかなか修正が困難になるというのは、ワクチンと自閉症の歴史からも、また、HPVワクチン事象も含まれますが、そのような大きな問題がずっと生じているのは、正にこのリスクコミュニケーション、あるいは不確実性な事象に関するコミュニケーションの努力が十分に払われていなかったということに尽きるのだろうと思います。

 それはどこでやるのかと言うと、どこでやるかは書いていないので分かりませんが、基本方針部会なのか、あるいは全体の、別に部署を設けるのか。別に部署を設けても十分なほど、重要な問題だと私は思います。

 そのことを、継続的にどこで議論するのか、そして、この後のほかの部会の報告でもリーフレットを作ったという報告が出てくると思いますけれども、そのリーフレットの効果はほとんどゼロに等しかった。それは部会でも議論されましたが、リスクコミュニケーションの専門家が入って作られたのかという質問があったときに、「それはありませんでした」ということでしたので、もはや、これは今持っているデータをそのままお伝えするだけではリスクコミュニケーションあるいは不確実性コミュニケーションを遂行したとは言い難いので、是非専門家を入れて、継続的な予防接種行政に関するコミュニケーションの在り方、どのようなコンテンツを使えば国民が、最も多くの人たちに認識が深まるかも含めて、継続的にやるべき部署なり、どの委員会がやるかも含めて必要だと思います。それがないと、何か問題が起きたときには、その解決が延々と長引くということがございます。それが1点です。

 それから、もう1つは、開発、薬事、検討、供給、実施の後に様々な問題が生じ得るわけです。副反応部会の1つの仕事として携わらせていただいていますが、何か問題であるかもしれない事象が起きたときに最も困るのは、我が国には、National Vaccination Registerみたいなものがないために、疫学的な調査をしても、その疫学的調査が言えるパワーは非常に低いという、疫学的調査しかできないという現状があります。

 多くの国が、National Vaccination Registerをお持ちなので、何か問題があると、すぐに解析をして、非常に納得、説得力のあるデータが出てきています。これは因果関係がないとか、問題事象が増えていないとか、科学的に説得力のあるデータが出て論文化されて、問題の解決に進みます。我が国では、それができないために、問題がなかなか解決しにくい。これはワクチン行政上、極めて大きな問題だと思います。

 もちろん、お金もかかり、人手もかかりますが、これだけ大きな日本という国ですので、予防医学をきちんと進めるためには、是非ワクチンの仕事の中に、National Vaccination Registerを、今後、早急に組み入れるということも含めて議論を開始していただきたいと思います。以上、2点です。

○脇田分科会長 ただいま桃井委員からは、まず1点目として、ワクチンあるいは予防ということに関する不確実性に関するリスクコミュニケーションの重要性。それから2番目として、ワクチンの接種記録ですかね、National Vaccination Registerといったものの導入の御提案ということがありました。

○坂元委員 今の桃井先生の御発言は、非常に重要で貴重な発言だと思っております。特定のワクチンでの議論というわけではないのですが、例えばHPV1つ取り上げても、一旦いろいろなトラブルが起こって頓挫したら、その後は非常に曖昧なままにどんどん時間がたってしまうことです。以前、全国衛生部長会という、全国の都道府県の政令指定都市の保健の責任者の会議の席でも、WHOから、この停止の問題に関しては、女性の権利も含めて日本はHPVのことは深刻に考える問題だという意見が出されているという紹介もありました。今後の定期化のプロセスというのも1つの議論なのですが、一旦、何か問題があって勧奨接種が停止してしまったものを、どうやって議論して、どういうスタディをやって、どのように検証して考えていくかという、1つそういう道標も合わせて、予防接種の在り方としては示すべきではないかと思います。今後、こういう問題は、ワクチンがどんどん増えてくると思わぬ事故等で、勧奨接種を停止してしまうことが起こると、それをどういう研究をやったら復活できるのかとか、その辺の道標もしっかりと示した上でやらないと、今、桃井先生が言ったネガティブなインパクトだけが国民の間に広がってしまって、ワクチンそのものに対する信用性というものが失墜してしまうということは、我々、接種主体の市町村としても非常に憂うべき事態だと考えております。そういうトラブルがあったケースに関してどう処理していくかということも含めて、予防接種施策の在り方という中に、そういうことも入れていただけたらと思っています。

○脇田分科会長 ただいまの坂元委員の御意見は、ワクチン接種後の様々なトラブルと言いますか、そういったものをハンドリングしていくような指令塔機能と言いますか、そういったものを取り入れるべきだということかと思いました。ほかにいかがでしょうか。

○大石委員 先ほどの桃井委員の御意見に関連してコメントします。ワクチンのリスクコミニュケーションに関しては、AMEDの予防接種班で比較的長い期間、研究として進めているところなのですが、なかなか学問体系として難しいと実感しています。お母さんたちをどのように接種行動に導くかということをクエスチョンとしてリサーチしてきているのですが、これまでは明確なアウトプットが出せていないことは残念に思っています。

 ただ、リスクコミュニケーションの専門家が少ないという実情があると思います。以上がリスクコミュニケーションについてのコメントです。

 あと、2番目のNational Vaccination Registerについては、先日の基本方針部会でも参考人として意見を述べたのですが、マイナンバー制度などが関連するのかなと思うのですが、そういったことを将来的に利用されれば、先生がおっしゃったようなレジストリーが確立するのかなというように理解しております。以上です。

○脇田分科会長 まず、参考人からお願いします。

○阿真参考人 今回から参加しました参考人の阿真です。よろしくお願いいたします。桃井委員のお話の1つ目のところで、私も全く同じことを思いながら、この図を見ていました。国民への啓発というものが入っていないと思いながら見ていました。

 例えばですが、1つ前の話に戻ると、ロタの話で、任意が始まって、今は任意で60%ぐらいと広がっていって、実際にどうか。ロタと腸重積がどうなのかとか、そういったことも十分によく調べられていて、それだけ検証されているということが、来年の10月に定期接種が始まるに当たって、まだ1年あるというところで、国民への理解というのはすごく大事なのですが、国民に直接届けるというよりは、やはりメディアの方々にきちんと理解していただいて、例えばこれが始まってから1例何か悲しいことが起きたときに、1例をドーンと新聞やテレビで紹介されたら、もう信頼と言うか、私たちが行政とか国とかに対して、ロタは大丈夫だと思っているというものが一瞬にして崩れてしまうということがあります。それが実際に検証されてどうだったかというところまではしっかり見ていかないで、最初のドーンというニュースだけで、それで信頼性を失ってしまうということが、もちろんHPVでもそうだったと思うのです。

 なので、こうやってきちんと検証されたものですと。こういう可能性が出てくるものですということも含めて、厚労省の方々からもお話はメディアのほうにあると思うのですが、専門家の先生も入れてきちんと、メディアに対しては、これだけの検証を積んでいて、そして、それもずっと検証していっているものだということも含めて、どういう危険性もあるということも含めて、国民一人一人への、もちろん医療現場での啓発、予防接種を打つときの啓発というのはすごく大事なのですが、そこも大事なのですが、でも実際にパーセンテージを見てみると、今回の資料の中にもありましたが、ほとんど打っていますよね。HPV以外については、ほとんどの人が受けているということが多くの信頼を寄せていることの証ではないかなと思っています。SNSなどを見ていると、ワクチンを打つことを拒否している方も大変多い印象を受けるのですが、実際には国民の多くはちゃんと受けているということは、分かっているのだと思っています。

 なので、何か起きたときに、捉え方、メディアでの報道の仕方というのがすごく大事で、それによって私たちは一瞬にして信頼を失ってしまったり、流されてしまったりということです。その後でしっかり検証したということが同じインパクトで私たちには届かないということを理解いただけると、有り難いなと思います。以上です。

○脇田分科会長 我々、国立感染症研究所においても、感染症に関する法曹関係者も含めて、メディアセミナーということもやっておりまして、そういったところで理解を深めるということも重要なのですが、一方で、メディアのほうも、そういったものを担当して聞きに来ていただけるのは、大体科学部の方々で、何か大きな事象が起こると、そちらは社会的に問題になるということで、取り上げる部署が違ったりという問題もあるのかなと考えています。

○中山委員 今までの皆さんの御意見を聞いていて、国民がいかに理解できるかということがとても大事なことだと思いました。今のようにSNSが発達してきますと、センセーショナルな、人目を引きやすい情報ほど流通しやすくて、科学的な、冷静な情報はなかなか流通しにくいというのが現状だと思います。

これは先進国でもこういう問題が起こっていて、ニュースなどでも報道されていますが、麻疹などでも、排除が取り消されたという国もあるということで、どこでも起きている問題だと思います。また、これは教育と関係してくる問題なので、例えば保健体育とか、そういうところできちんとワクチンを中学生ぐらいから理解できるように、教育の中でも取り上げていくなどの地道な努力をしていかないと、なかなか国民に定着していかない問題だと思います。先ほどどなたかからもありましたが、1つの独立した勉強会でも設けて、地道に研究していくというのがよろしいのではないかと思いました。

○脇田分科会長 今の若い方々は特にSNS等で情報を拾いにいきますので、そういったインターネット、そういうところで分かりやすい情報を提供するというところで、きちんとしたデータを若い方々、いろいろな方々に取っていただけるようにしていく工夫も必要であるということだと思いますし、地道な教育、ワクチン教育、予防医学の教育も進めていく必要があるという御意見だと思いました。

○館林委員 今までの話は、私には少し違和感があります。時系列を遡って副反応が出たときに、これがどういうものなのか、まだ分かっていなかったと。私は専門部署の記者をずっとやっていましたが、だからと言って、センセーショナルかどうかは分かりませんが、それを報道しないということはないのです。誰の言い分もきちんと聞いて、これは全体にとって好ましくないから報道しないということはないので、書きぶりなどは気を付けますが、先生方がおっしゃることは分かるのですが、そこはその都度やっていく、どうするかはその都度考えているし、取扱いの大きさとか、どういう言葉にするか、どこを取り上げるというのは、その都度やっていて、専門部署の人間だから、社会面に対して力がないとか、そういう無責任なことはないのです。

 先ほども申し上げたように、こういう場合があったときにどう対処したらいいのかとか、人の気持ちをフレームアップさせないというか、あと、その人の立場に立ったらどう感じるのか、何でこのように感じたのかとか、そういうことをもう少し専門家目線ではなくて、丁寧に考えて、事前に説明していく努力というのはすごく重要だと思っていて、私どもは私どもで、余りにも一方的なことは言わないとか、ここまで分かっていて、ここまで分かっているから、どのように取り扱っていこうかというのは日々考えていることで、コミュニケーションというのはそんなに文切り型ではなくて、日々苦労して作っているものなのではないかと私は考えております。

○坂元委員 先ほど桃井先生から、National Vaccination Registerという話が出ましたが、この予防接種に関してのいろいろなシステムの問題ですが、これは市町村業務なのでやむを得ない部分はあると思うのです。例えば予防接種台帳にしても、市町村ごとにシステムが違って、ほかの市町村と直接なかなかつながらないこともあります。間に他のソフトを介入させないとつながらないということです。これは予防接種法の建前、それぞれの市町村の責任でやるということなので、やむを得ない部分もあると思うのですが、今後、こういう予防接種に新たなIT技術やシステムを導入するときに、なるべく市町村間でつながるようにするための委員会のようなものを立ち上げて検討していかないと、あくまでも市町村業務なので、そこがばらばらになってしまうということがあります。予防接種台帳には、そういう副作用の記録ではなくて、あれはあくまでも、こういう予防接種を受けたという記録なので、そこに桃井先生が言われた、もう少し学術的な価値を付加するようなものを入れれば、やはり若干違うと思います。それで、そういうシステムを導入したときに、自治体間で互換性をできるだけ持つものを導入すれば、より広く使用できるのではないかということを思っております。今後、もしシステムを導入するときには、やはり共通性を考えてやればいいのではないかと思っております。以上です。

○伊藤委員 ワクチンは、定期接種にした段階で人に対して強制するという作用が働くので、強制された人には、どうしても被害者になったという意識が働くのではないかと思います。

 ですので、定期接種を考えるに当たっては、今回のロタもそうですが、任意接種数が、例えば3割とか5割とか超えた段階で定期接種を考えるということにしなければいけないのではないかという気がしています。

 もう1つは、予防接種に伴う副反応が発見されにくいというのは、予防接種履歴が医療機関の診療録に入ってきていないことが一番大きな問題だと思います。それを解決するのは、実施主体が医療機関でありますし、予防接種そのものを初めから医療の中に取り込んでしまって一本化するほうが、現実的には簡単なのではないか。そうすることによって、いろいろな形のデータが取れる話になるのではないかと以前に考えたこともあります。今後、そういった視点もあって然るべきではないかという気はします。

 それからもう一点、副反応についてですが、ワクチンも医薬品ですので、ある一定程度の副反応は起きると思います。ですから、ワクチンを打って副反応が起きた人に対して、ある程度、不幸な、マイナス面に対応する補償制度ができているということを国民の皆さんに、マスメディアの方々も含めて理解していただくところからしないといけないのではないかと思っています。ワクチンを打って副反応が起きることに対して、ある程度認めていただけるようなコンセンサスを作っていかないと、この問題は解決しないのではないかと思います。以上です。

○脇田分科会長 そのほかに御意見はいかがでしょうか。

○沼尾委員 失礼するので、手短かに1点だけ申し上げます。先ほど財政需要の話を申し上げましたが、こういうことを丁寧に窓口で対応して、安心な仕組みを作るというときに、マンパワーの問題と、先ほどのICTなどの仕組みも含めた手続のところも含めて、そこの体制を見直していくというのは、恐らくこれは予防接種の領域だけではなくて、様々な社会保障のそれぞれの分野で生じていることだと思うのですが、そういうところを人員と仕組みを作るための財源というものがセットでなければ、この制度自体の信頼に関わるものなので、是非そこのところの体制についても、厚労省のほうでしっかりと考えていくことは大変重要ではないかということを改めて感じました。

○大石委員 沼尾委員の意見に関連するのですが、我が国の予防接種を運用していく中で、財源というのは明確にしておくべきであって、25ページに、取り分けワクチンの各種類、生産量、接種実施者数などが計算されていますので、これにワクチン自体の費用を掛ければ、どのぐらいの費用が掛かっているのかということが分かってくるとは思うのです。小児のワクチンと大人のワクチンをどのように位置付けるのかとか、日本の予防接種行政の根幹に関わるところに、そういう財源が明確になっていないと、しっかりした議論ができません。大人のワクチンをどこまで入れていくのだ、小児のワクチンと同じ位置付けでいいのかということも議論する必要があると思うので、是非、次の見直しに向けて、この辺の、今現在どのぐらいの国家予算が使われているのかを明確にされていないところがあるので、その辺を明示していただいて議論を深めていただきたいと思います。以上です。

○坂元委員 先ほどの伊藤委員の御意見は、ワクチンというものを医療保険の中で見たらどうかというのは、私も各予防接種部会に出ると、市町村からもそういう意見はかなり以前から出ています。検討すべきではないかということで、決してこれは、伊藤先生は躊躇しながらおっしゃっていましたが、特異な意見ではなくて、市町村の中には医療保険で見るべきだと考えている所も多いのです。

 それと、先ほどの地方交付税の話なのですが、これは厚労省の責任ではないと思うのですが、まず、予防接種の接種単価が示されていないのです。それに接種人数を掛け合わせると言っても、計算の全体が分からないということです。自治体としては、本当にこれは地方交付税で出ているのかということです。本当に予防接種を真剣に考えていくならば、中身が見えない地方交付税ではなく、予防接種にこれだけ出しているという1つの費用の透明化というのが、多分、隣の市長さんも同じ考えだと思いますが、つまり2人はその辺で共通しているのですが、やはり明示してほしいと思います。予防接種で実際どれだけ出しているのだということをできるだけ明示してほしいというのが、接種主体の市町村の考えです。以上です。

○脇田分科会長 最後に財源の明確化、それから予防接種が医療記録に記録されないところが様々な問題点でもあるだろうというところで、保険医療と予防接種の一本化ということも検討すべきではないかというような御意見がございました。

 それでは、もう時間がありませんので、これまでにしたいと思いますが、予防接種施策全般の見直しについては、引き続き部会のほうで検討がされ、提言がまとまった段階で、また本部会において御報告をさせていただくということになると思います。基本方針部会には、本日頂いた御意見をお伝えして、検討にいかしていただくように、事務局においても資料の作成等で工夫をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、続いて議題3に移ります。報告事項です。報告事項は2点あります。まず1点目の風しんの追加的対策について、事務局から報告をお願いします。

○賀登予防接種室長補佐 資料3に基づいて御説明させていただきます。風しんの追加的対策です。1ページからお願いします。風しんは感染力の強い飛沫感染の感染症で、先天性風しん症候群のリスクが非常に高い疾患の特徴があります。2013年と2014年に1万例を超えるような感染が発生しており、2018年にも3,000例近い報告がありました。2019年も既に2,000例を超える患者が発生している状況です。また、非常にくやしいことですが、先天性風しん症候群が今年になって3例発生しております。

 最新の状況ですが、2ページを見てください。去年の秋頃には、週に100200例という報告がありましたが、最新の状況では1桁になっているような状況で、一時期よりは落ち着いているということですが、依然として感染の拡大は続いている状況です。

 次に3ページです。今回の感染拡大には大きく特徴が2つあります。1つは、大都市圏で多くの患者が発生していること、4ページに移って、2つ目の特徴としまして、女性よりも男性、男性の中でも30代から50代が中心になっているような特徴が認められます。このような特徴を踏まえて5ページ目ですが、これまでは公的にワクチン接種の機会がなかった40歳から57歳の男性を対象に、去年の冬に定期接種の対象と決めました。また、その際にはワクチン接種の前に抗体検査を受けていただくことや、事業所健診の機会に合わせて抗体検査を受けていただける体制を整備するような方向で話を進めております。公衆衛生の観点からの具体的な目標につきましては、

 7ページ目ですが、まず20207月までに、対象者の抗体保有率を、現状では80%ぐらいですが85%以上に引き上げること、また2つ目の目標として、2021年度末までに、抗体保有率を更に90%まで引き上げることを目標として動いております。

 具体的な対応としましては、8ページのクーポン券を市区町村から受けられるように対象者に配っていただいております。これは全国統一のクーポン券ですが、最終的に、これを使って市町村と医療機関で費用をやりとりしていただく必要があります。その際には受託・委託の関係の契約が必要になります。その契約事務だけでも大変なものですので、今回は日本医師会や全国知事会に御協力いただき、集合契約という形でスピーディーな契約締結を実現させることができました。10ページ目、初年度の今年は全国の4047歳の方にクーポン券を送っていただいて、330万人に検査、70万人に予防接種を受けていただくことを念頭に置いています。その進捗状況としては、11ページ以降がクーポン券の配付状況です。7月までに9割以上の自治体でクーポン券(受診券)の送付が終っている状況です。1213ページは、実際にクーポン券が使われた使用実績です。抗体検査の実績が54万件、予防接種では97,000件のクーポン券が使用されていることが確認できております。実数でいうと分かりにくいかと思いますので、14ページの所に進捗状況をパーセンテージで示しております。こちらのほうは、今年度に抗体検査を受けると見込まれる330万人を分母にして54万件の抗体検査をしたという実績、それが全国平均の約16%でした。予防接種については、70万人の接種に対して97,000件の実績が確認できております。パーセントでいうと14%です。その数値を都道府県別に分解した表になっております。都道府県別に見ると、地域によってばらつきがあることが確認されておりまして、どの地域も共通ですが、引き続き着実な受診に向けて取組が必要と考えております。具体的な取組としましては、1517ページにあるように、ポスターを作ってみたり動画を作ってみたりという形で情報発信をしております。また、最近の取組としましては、18ページは、企業向けで、事業所検診の際に抗体検査も実施していただけるようなノウハウや、その必要性について説明するような機会も設けております。引き続き、こういった取組を続けながら対応を進めていきたいと考えております。説明は以上になります。

○脇田分科会長 ありがとうございました。風しん対策につきまして、進捗状況を説明していただきましたが、委員のほうで何かありますか。

○川俣委員 ありがとうございます。思ったよりも栃木県が、他県よりもパーセンテージがいいのはうれしかったですが、実は職員に聞くと、検査も受けていない人が何人かいるので、受けろと命令はしましたが、忙しいという理由で、なかなか。あなたが働かせているのでしょうと、私は市長会などで言われますが、それを何とか乗り切れる理由を先ほど坂元さんに教えていただきましたので。あなたのためにみんなが病気になるのだから、原因を作るなと、そう言えば皆さん受けてくれるのではないかと、アドバイスを頂きましたので、私のほうでもそういう取組、上から言うのも必要なのかと思って、今回、企業向けにというのは大変大きなことではないかと思います。休暇を取ってまでというのではないとしても、強制的に言われれば下の者は反応するのかというのはあると思うのです。この間、私の代わりに来た課長は確かに受けていましたが、その部下はまだ受けないのです。課長には浸透してもらおうと思っていますが、その下も行くように、こちらも努力したいと思いますので、皆さんのほうからもよろしくお願いしたいと思います。

○脇田分科会長 ありがとうございます。そのほか、いかがでしょうか。現状、330万人が対象で、そのうち70万人がクーポン券を使用しているということですか。定期接種対象が70万人というところですから、まだ2割弱の使用実績だと思います。

○大石委員 実態をタイムリーにお示しいただいて、状況はよく理解いたしました。クーポン券は4月くらいまで配り終わっているのだけども、現時点で抗体検査や予防接種が行われていないとなると、自治体として、何らかの形で後押しをしていただくことが大事なのかと思います。クーポン券を持っている人が行動しないと何にもならないわけですから、いろいろノウハウを駆使して進めていければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○脇田分科会長 ありがとうございます。

○釜萢委員 賀登室長補佐からの説明にありましたが、これまでに既に検査を受けておられる方はかなり意識が高い方で、医療機関へ行って検査を受けている。そういう方は予防接種の必要な場合には予防接種も比較的速やかに受けておられる方です。もっとたくさん、対象者にしっかりやってもらうためには健診を利用した検査が必要ですので、そこに対する取組、国も一生懸命やっていただいていますが、我々もそうですし、あとは健診実施機関とか、あるいは企業とかに、特に従業員の多い所にしっかりとお話していくことは今後の課題だと認識しております。

○脇田分科会長 ありがとうございます。やはり対象者を考えると、企業の職場での検診は非常に重要になってくるかと思います。クーポン券を7月までにほぼ配り終えていますので、今後の数箇月が勝負かと思いますので、事務局におかれても更なる周知をお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。それでは、次の報告に移ります。各部会からの審議状況の報告です。よろしくお願いします。

○元村予防接種室長補佐 資料4になります。各部会の審議状況について御報告させていただきます。分科会の下にある3つの部会、小委員会における審議状況について主なものを御報告します。なお、ロタウイルスワクチンや予防接種施策の見直しと最近の状況につきましては、経緯も含めて既に説明していますので省略させていただきます。

 まず、予防接種基本方針部会ですが、3ページ目からになります。前回の分科会以降、持ち回り2回も含めて14回開催されております。審議事項ですが、まず第21回では、「予防接種に関する基本的な計画」におけるPDCAサイクルに係る検討の一環として、医療関係者の取組として、参考人をお招きし、安全な予防接種の実施、間違い防止等の観点からヒアリングを実施いたしました。そのほか、部会のほうでは、特定感染症予防指針の改正について適宜、議論して了承していただいております。資料の5ページ目、第27回の分科会では、65歳以上の高齢者の方の肺炎球菌感染症の経過措置について、これまで接種を受けていない方への接種機会を提供するために、ワクチンの需給バランス等も勘案しつつ、2019年度以降も5年間にわたって、経過措置を延長することについて了承していただきました。

 7ページ目です。第32回の基本方針部会のほうで、報告事項として、予防接種の間違い報告を報告させていただいておりました。これにつきましては、本日の資料で参考資料2として添付しております。この報告は、定期接種実施要領に基づいて市町村からの報告を都道府県経由で御報告いただいているもので、毎年度取りまとめて報告しており、今回は平成29年度分の報告となります。これまで、この分科会のほうに毎年度報告しておりましたが、今回、取りまとめ後、速やかに報告するために基本方針部会のほうで報告を行っております。ちなみに、予防接種間違いの報告は、前回は6,602件でしたが、今回の報告件数は7,787件と増加しておりました。

 続きまして、8ページ目です。第34回の基本方針部会の報告事項ですが、予防接種健康被害者実態調査という調査について御報告させていただきました。本日の参考資料3として添付しております。この調査は予防接種施策の基本資料として、予防接種による健康被害で認定を受けられ、障害児養育年金又は障害年金を受給している方について、御本人や御家族が置かれている状況、現在、利用している福祉サービスの利用状況、希望するサービス等を調査したものです。このような実態把握としての調査は10年ぶりに行ったものです。障害年金等の受給者446名の方に調査票を送付し、273名の方の回答をまとめたものになっております。御回答いただいた方の状況等は様々ですが、現在、多くの方の状況としては、健康被害者及びその家族の高齢化が進んでおり、将来に対する様々な不満をお持ちであること、福祉サービス等の充実を望む声が多いことが見てとれました。

 続きまして、9ページ目です。ワクチン小委員会は、前回の分科会以降、計6回開催しまして、おたふくかぜワクチン、肺炎球菌ワクチン、帯状疱疹ワクチン、不活化ポリオワクチン、ロタウイルスワクチンについて、定期接種化に向けた技術的な検討を行っております。

 続いて、14ページですが、研究開発及び生産・流通部会についてです。予防接種の研究開発の推進及びワクチンの供給の確保に関する施策を推進するために基本的な事項について議論を行っております。直近の状況ですが、本年8月の第21回で、この生産・流通部会の下にあるインフル小委員会の議論を踏まえて、2019/2020年シーズンのインフルエンザワクチンの供給について議論しました。今シーズンのインフルエンザワクチンの供給につきましては、ワクチンを適切に使用すれば不足は生じない状況であると評価されました。また、今後の対応として、昨年に引き続き、13歳以上の方は原則1回接種とすること、また必要量に見合うワクチンを購入いただくことなどについて、医療機関等に協力を依頼することとされました。そのほか、B型肝炎ワクチン等の供給について、適宜、状況の報告が行われております。15ページ目、インフル小委員会ですが、こちらのほうは季節性インフルエンザワクチンについて、有効なものが安定的に供給できるよう、ワクチンの製造株の選定について技術的な検討を行うために設置されたものです。検討状況については生産・流通部会のほうへ報告しております。

 次に17ページ目ですが、副反応検討部会についてです。副反応検討部会は、薬事・食品衛生審議会の医薬品等安全対策部会と安全対策調査会との合同で実施しております。おおむね2か月ごとに、比較的同時接種が行われるワクチンと、比較的単独接種が行われるワクチンとにグループ分けをして予防接種による副反応が疑われる症例の報告について議論を行っております。前回の部会以降、11回開催されており、副反応疑いとして報告された全ての症例の概要並びに後遺症例、アナフィラキシー症例及び死亡症例の、より詳細な経過等の資料を基に審議され、これまでの報告において、ワクチンの安全性に重大な懸念が認められると評価されたものはありませんでした。

 副反応検討部会でのその他の議論としましては、第33回のときに、HPVワクチンに係る診療体制における協力医療機関等を受診している方を対象とした調査研究(症例フォローアップ調査)の報告が行われました。また、この年の1月に、HPVワクチンに関するリーフレットを公表しておりますので、そのことについて報告が行われました。それに関連して、18ページ目、第36回の副反応検討部会のほうでは、このリーフレットについて、HPVワクチンに関する情報提供について、情報がどの程度国民に届いているか等の視点から評価を行うことが適当かどうかについて議論が行われました。さらに、これに関連して、20ページ目、8月の第42回の副反応検討部会ですが、第36回のときの議論を踏まえて実施したHPVワクチンの情報提供に関する評価についての調査結果を報告しました。結果のほうでは、自治体でそのリーフレットが活用されている例が少なく、国民の認知が十分でない状況であることとか、リーフレットの内容や情報提供の方法等について様々な意見があり、情報提供の在り方等については専門家の意見も踏まえ、更なる検討を行うこととなった状況です。前後して恐縮ですが、19ページ目、第40回の副反応検討部会では、HPVワクチンの副反応疑いに係る報告について、これまで審議会に提出した資料の正確性を改めて確認するために、審議会に報告されていなかった症例の有無及び死亡症例・重傷症例の報告内容について再確認した結果を報告しました。報告結果を踏まえて、改めて安全性の評価を行い、これまでの報告について、内容、頻度、最終評価共に影響を与えるものではないという結論を得ました。また、現在の副反応疑い報告制度についての課題について、継続的な検討を行うこととなっております。以上になります。

○脇田分科会長 ありがとうございました。それぞれの部会の座長の先生がいらっしゃいますので、事務局からの報告に加えて、何か不足、追加等があれば伺いたいと思います。まず生産・流通部会の伊藤先生、お願いします。

○伊藤委員 特にありません。

○脇田分科会長 ありがとうございます。副反応検討部会の桃井委員、お願いします。

○桃井委員 1点だけです。リーフレットで、どの程度周知されているかを調査したという報告がありました。これは大変重要なことであると思います。その中で部会でも申し上げたのですけれども。例えば、「ワクチン接種後に起こり得る症状」とすると、行政あるいは我々は、それが何を意味しているかを正確に理解していますが、国民は、これは因果関係がある症状、ワクチンが原因で起きる症状と100%取ります。その認識ギャップは極めて大きく、誤解に基づくマイナスの認識を引き起こします。それは国民にとっても非常にマイナスになると思います。ですから、行政用語あるいは専門用語を一般の方に説明するときに、どのようにしたいのかということは極めて重要な問題で、これは今までのやり方では機能していないと言えるのではないかと思います。以上です。

○脇田分科会長 ありがとうございます。基本方針部会のほうは私が座長をしておりますが、特に追加はありません。それでは、ただいまの報告につきまして、委員の皆様から御意見、御質問等がありましたらお願いします。よろしいですか。ありがとうございました。それでは、本日の議事は以上となりますが、事務局から何かありますか。

○元村予防接種室長補佐 本日は長時間にわたり活発に御議論いただき、ありがとうございました。次回の開催については追って連絡します。事務局からは以上です。

○脇田分科会長 私の不手際で時間が少し延長してしまいましたが、これで第15回予防接種・ワクチン分科会を終了します。活発な御議論をしていただき、ありがとうございました。