第13回 厚生科学審議会健康危機管理部会 議事録

日時

令和元年11月14日(木)16:00~17:00

場所

中央合同庁舎5号館15階 専用第12会議室

議題

(1)「化学災害・テロ対策に関する検討会」の報告について
(2)その他

議事

 
2019-11-14 第13回厚生科学審議会健康危機管理部会
 
○杉原国際健康危機管理調整官 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第13回「厚生科学審議会 健康危機管理部会」を開催いたします。
厚生労働省大臣官房厚生科学課健康危機管理・災害対策室国際健康危機管理調整官の杉原でございます。よろしくお願いいたします。
委員の皆様には、本日は、御多忙のところ、お集まりいただきまして、御礼申し上げます。
本日は、脇田部会長、五十君委員、重村委員、吉川委員、高橋委員より、欠席の御連絡をいただいております。
大曲委員は、少々おくれて到着される旨を伺っております。
委員13名のうち、出席委員は過半数を超えており、会議が成立いたしますことを御報告いたします。
それでは、事務局を代表しまして、厚生科学課長の佐々木より、御挨拶申し上げます。
○佐々木厚生科学課長 先生方、皆さん、こんにちは。厚生労働省大臣官房厚生科学課長の佐々木です。
本日は、お忙しい中、お集まりくださり、お礼を申し上げます。
今、我が国政府は、来年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、危機管理を一層強化していくべきと考えております。そうした中で、本年5月に健康危機管理部会から、化学災害・テロ対策に関して、どのような対策をすべきなのかというお題をいただきました。これにつきまして、本日は、検討会を設置して、報告をいただいた内容を御審議いただきたいと考えております。
きょう、御報告、御審議いただく内容につきましては、ある意味で危機管理対策の一部になります。きょう、御審議いただいた内容を踏まえ、さらにどのような形であれば、我が国が来年の東京オリンピック・パラリンピック、また、それ以降もさまざまな形で行われますギャザリングイベントに対して対応していくのか、さらには災害においても、同様のことが起きた場合、どう対策していくかということを、ある意味できょうは、さらなるキックオフの第一歩として検討していきたいと思っておりますので、本日は、御審議いただくとともに、さまざまな御指導、御意見をいただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○杉原国際健康危機管理調整官 それでは、頭撮りはここまでとさせていただきますので、カメラの方は、御退室いただきますよう、お願い申し上げます。
(報道関係者退室)
○杉原国際健康危機管理調整官 続きまして、本日の資料の確認をお願い申し上げます。
議事次第、こちらの1枚紙です。
席次表です。
健康危機管理部会委員の名簿です。
資料になりますが、資料1としまして、化学災害・テロ対策に関する検討会報告書に関する説明資料という、横の説明資料です。
化学災害・テロ時における医師・看護職員以外の現場対応者による解毒剤自動注射器の使用に関する報告書、資料2です。
参考資料としまして、化学災害・テロ対策に関する検討会開催要綱です。
もう一つ、参考資料2としまして、厚生科学審議会令について、資料がございます。
欠落等がございましたら、御指摘いただければと思います。よろしいでしょうか。
それでは、これより議事進行につきまして、奥田部会長代理にお願いいたします。
○奥田部会長代理 奥田です。よろしくお願いします。
それでは、議題に入ります。
ただいまの佐々木課長から御案内がありました、化学災害・テロ対策に関する検討会の報告についてですけれども、事務局から、これまでの経緯について、簡単に説明をお願いいたします。
○佐々木厚生科学課長 厚生科学課の佐々木です。
今回、御議論をいただきます、神経剤解毒薬自動注射器につきましては、先ほども触れましたが、本年の5月15日に開催いたしました、前回、第12回の本部会において、部会の総意として、3点、御提言をいただきました。
1点目は、神経剤、解毒剤の自動注射器について、備蓄を検討すべきであるということ、1点目は備蓄でございました。
2点目は、そうした自動注射器をホットゾーンなどで実働部隊が使用できるように検討すべきであるということ、備蓄された自動注射器がホットゾーンなどで使える形にすることの具体的な検討です。
3点目は、自動注射器の医師等以外の仕様について、法令上の検討、さらにはマニュアル、訓練など、体制整備に向けて検討すべきであるということです。ある意味で、2点目をさらに深掘りして、法令上の解釈を含めた整備、さらには具体的なマニュアル訓練といった、使うことができる要件、体制ということの指示をいただきました。
この3点の提言を受けまして、本年9月に、厚生労働省内に化学災害・テロ対策に関する検討会を立ち上げました。この検討会は、大阪大学の嶋津教授に座長をお願いいたしました。
本部会からは、竹内委員に構成員として御参画いただきました。
こうした体制で、神経剤解毒薬自動注射器の備蓄や使用に当たっての法令上の整理や体制整備について、9月から10月までの間、議論を重ねてまいりました。
今般、検討会において、化学災害・テロ発生時における、先ほど医師等と申し上げましたが、医師や医師の指示を受けた看護職員以外の現場対応者による解毒剤自動注射器の使用に関しての報告書を取りまとめいただきました。
この後、検討会の報告書について、部会に御議論をいただく予定となっております。
本日の概要につきましては、以上をお願いしたいと考えています。
○奥田部会長代理 ありがとうございます。
前回、5月の部会の提言を踏まえて、神経剤に対する解毒剤自動注射器を医師以外の方が使用するということについて、法令上の問題、整備も含めて、御検討いただいたということであります。
その結果であります報告書について、事務局から改めて説明をお願いいたします。
○杉原国際健康危機管理調整官 事務局の杉原でございます。
それでは、主に資料1、報告書のまとめであります資料2、両方を参照しながら、御説明させていただきたいと思います。
資料1をごらんください。
化学災害・テロ対策の救護活動は、実際にはどのように行われているのかという全体像から、簡単に御説明させていただければと思います。化学災害やテロが発生したときには、汚染された地域、いわゆる汚染地域と呼ばれる地域が発災現場でございます。地下鉄サリン事件でいうところのいわゆる地下鉄の駅構内であったり、車両の中であったり、そういった非常に汚染があるエリアになりますが、こういったエリアのことをホットゾーン、汚染地域と呼びます。
その周辺、汚染の程度は低いものの、被害者がいる、傷病者が発生していて、まだ除染がされていない傷病者がいるような地域で、汚染の程度は低いけれども、そういった方々がいらっしゃって、二次被害のリスクのある地域をいわゆる準汚染地域、ウォームゾーンと呼びます。こちらでオレンジ色に記載されているところです。
こういったエリアにおきましては、化学物質による体への影響が考慮されますので、こうした化学物質に対する個人防護具を装着した警察官であったり、消防隊員であったり、そういった特殊な訓練を積んだ実働部隊の方々が、救助活動や現場の証拠の採取等を実際に行います。
こういったところで救助活動を行われた被害者については、除染というプロセスを経まして、二次被害のリスクが低減された状況で、汚染はほぼないと考えられるコールドゾーン、いわゆる非汚染地域、水色で示している地域ですけれども、そこに運ばれ、そういったところで設置されます救護所、ここでは、救命救急士や現場に駆けつけた医療職等が活動しますけれども、それによる救護活動が開始されます。
ここでの救護活動でワンクッションを置いて、医療機関への搬送をされて、医療機関で被災者への神経剤の解毒剤、静脈注射薬が使用されて、医療活動が本格的に開始するということが一般的な化学災害・テロ災害における救護活動の全体像でございます。
3ページになりますけれども、そのときに使われる解毒剤はどういうものかということを、こちらで御説明しております。神経剤の解毒剤ですけれども、神経剤とは何かと申しますと、サリンであったりとか、VXガスと呼ばれるもので、神経系に作用する化学兵器を指しておりまして、これに対しては、アトロピンやオキシム剤といった解毒剤(拮抗薬)が使用されております。こういった薬剤は、有機リン農薬中毒でも用いられる医薬品ですので、救命救急センターを持つ医療機関では、一定数を保有しております。
国内にある医薬品としましては、そういった解毒剤(拮抗薬)の静脈注射剤がございまして、形状としましては、こちらの表の左側にございますように、アンプル製剤であったり、プレフィルドシリンジ型であったりとか、こういったものでございます。
使用方法としましては、一般的には静脈注射、アトロピンに関しては、筋肉注射も可能なのですが、このように腕を縛りまして、血管が見えるようにして、そこからラインを確保して注射を行うといったプロセスが必要になります。
こういった医薬品に関しては、日本では、オキシム剤としてはPAMという医薬品、一般的にはプラリドキシムと呼ばれますが、あるいはアトロピンが国内で承認されております。
一方、海外ですと、主に化学兵器対策ということで、開発経緯としましては、軍の関係から開発が進んできたものでありますけれども、自動注射器という自動注射を行うことができる筋肉注射製剤が開発されております。
こちらの写真にございますが、大腿部に筋肉注射を打つことで注射ができます。日本にあるものとしましては、アナフィラキシーショックなどのアレルギーに対して使われるような、エピペンと同じような仕組みになっておりますが、ある一定の量の医薬品が、ぽんと押すだけで体内に注入されるような仕組みになっております。服の上からでも注射が可能で、あるいは自己注射も可能です。服の上からというのは、化学剤に対するものに関しては、いわゆる化学剤の個人防護具を着た上からでも注射が可能なものです。
こちらに関しては、国内ではいずれも未承認でございますが、世界中に幾つかの複数の自動注射器の開発がされておりますけれども、一部、アメリカにおいて、承認済みのものもございます。
こういった自動注射器がありまして、こういったものは、まさに議論がございましたがけれども、ホットゾーンやウォームゾーンと呼ばれる医師等が入ることを想定されないような地域においても、使用ができるものでございます。
自動注射器を特にホットゾーンやウォームゾーンの中で使えるようにしていこう、特に医師のいわば活躍が期待できないような地域、エリアであったり、期待できないような状況において、活用していこうということで、当部会の御提言をいただきまして、9月から10月30日にかけまして、5回の検討会を実施しております。
第1回検討会では、厚生労働省による医師のための備蓄について、また、医師による使用、解決すべきハードルとしては何があるのかといった観点を議論いたしました。
検討会の第2回以降、主に第5回まで、ほぼこの話題に集中しましたけれども、医師以外や医師の指示を受けた看護職員以外による使用について、医師法上の違法性阻却をどのように考えることができるのか、あるいは使用するとしたら、どのような手順にのっとって使用するのか、また、その使用を的確に使用するために、研修や訓練はどういったものが必要であるのかといった内容を議論いたしまして、第5回検討会において、検討会報告書を取りまとめました。そちらが資料2の検討会の報告書となります。
本日、健康危機管理部会、本会は第13回ということで、検討会の報告書の検討をいただきたいと考えております。
この後の流れなのですけれども、もし検討会の報告書が御了承いただけるのでしたら、それをもって、通知等を厚生労働省から実働部隊を所管する官庁に発出いたしまして、同時に研修や訓練、運用要領の策定等をオリパラに間に合うように進めてまいりたいと考えております。
これがこれまでの検討のタイムラインでして、具体的な中身につきまして、これから御説明させていただきます。主な論点としましては、2つございまして、1つ目は、医師以外が解毒剤自動注射器を使用するということに関する医師法上の考え方、これが5ページ目でございます。
もう一つは、災害・テロ発生時、どのように判断を行って実施すればいいかという実施手順、考え方、いわゆるアルゴリズムのようなものですけれども、それを検討いたしました。
こちらに関しまして、医師法上の考え方につきまして、私から御説明させていただきます。こちらの議論に関しましては、医師法を所管いたします、厚生労働省医政局医事課にも検討会に入っていただきまして、議論をいたしております。
有機リン系の農薬及びサリン・VX等の神経剤等のアセチルコリンエステラーゼの阻害による症状を来すおそれのある化学物質に関しては、今、御説明したものですけれども、それによる化学災害・テロ、これを当該事案と呼びますが、それによる集団的な被害が発生し、その被害者、対象者と呼びますが、その生命に重大な危害が及ぶひっ迫した状況において、医師及び看護職員以外の実働部隊の公務員が、その公務として、その解毒剤、アトロピン及びオキシム剤の自動注射器を使用する場合における医師法上の解釈は、次のとおりと考えられる。
1ですけれども、前提条件というか、一般論を記載しております。対象者に対する当該自動注射器の使用については、医行為に該当するものであって、実働部隊が使うとなると、基本的には反復継続をする意思を持って行うことになるため、医師、または、医師の指示を受けた看護職員以外が行った場合は、基本的には、医師法第17条、医師以外による医療の禁止という項目に該当することになります。
ただ、一般的に刑法上、法令、もしくは正当な業務による行為、正当業務行為と呼びますが、及び事故、または、他人の生命、身体に対する現在の危難を避けるために、やむを得ずした行為については、違法性が阻却され得るということが一般的な考え方としてございます。
医師法の違法性阻却の可否につきましては、もちろん個別具体的に判断されるものでございますけれども、今回、検討会におきまして、少なくとも以下の5条件を満たす場合には、17条における違法性が阻却されるものと考えられるということでございます。
5条件に関して、マル1からマル5までございますが、当該事案の発生時に医師等による速やかな対応を得ることが困難であること。これは先ほど述べましたとおり、ホットゾーンやウォームゾーンといった、医師が入ることが想定されない場所も含みますし、同時にコールドゾーンであっても、医師が到着していないような状況で、現場に自動注射器が存在するような場合、あるいは被害者の数が非常に多く、医師1人や医療従事者のみで到底対応できるような被害者の数ではない、需要が供給に対して、圧倒的に上回っているような状況です。こういった状況は、医師等による速やかな対応を得ることが困難な状況であろうということで、そういった状況であることが1つの条件と考えられております。
2として、対象者の生命が危機に瀕した重篤な状況が明らかであること。使う対象者としては、動くことができず、すぐにホットゾーンやウォームゾーンのような危ないところから移動することが困難であるような、そういった非常に重篤な被害者が対象であろうということです。
3番目が自動注射器の有効成分、アトロピン及びオキシム剤になりますが、症状の緩和に医学的に有効性である蓋然性が高いこと。つまり有機リン農薬やサリン及びVX等の神経剤等による症状が来しているという蓋然性が高いと判断されるということでございます。
当該注射器の使用者については、定められた実施手順に従った対応を行うこと。
5番目としまして、自動注射器につきましては、簡便な操作で使用でき、誤使用の可能性が低いこと。難しい注射の手順等に関しましては、医療行為として専門のトレーニングを受けた医師や看護師等が実施をする必要性がございますので、簡便な操作ができ、誤使用の可能性が低いことは、重要な観点になってきます。
4番目としまして、実施手順に従った対応を確実に行うためには、こういった5条件を満たすとして、実施条件に従った対応を確実に行うためには、使用者は、その使用に必要な講習を受けていることが望ましいという記載になっております。こういった議論がございましたのは、例えば神経剤によるテロが起こりましたが、実際にはそういった研修や講習を受けていないが、目の前に被害者の方が倒れているという状況のときに、打てないというジレンマが発生する可能性があるということもありますので、基本的には講習を受けていただくことは前提ですけれども、そうでないと使えないという状況を考えると、そういった状況のときに、患者の命を救うことができなくなってしまう状況が想定されることが背景にございます。
そういった形で、医師法上の違法性阻却の考え方に関して、意見が提示されました。
これを受けまして、こちらの医師法上の違法性阻却のところで、定められた実施手順のところ、つまり5条件に関して、どのように担保するかという観点で、次の6ページ目になりますけれども、自動注射器の使用判断モデル、いわゆるアルゴリズムといったものが策定されました。
主に3つの要件からなっております。1つ目は、化学災害・テロの蓋然性が高いことということで、前提として、その事案が化学災害・テロであるという可能性が極めて高いという状況として、以下の2項目を満たすことについて、研究班でベースの考え方をつくっておりますけれども、できております。手助けがないと、自力で動くことができない傷病者が3名以上いること、重症外傷による事案ではない、つまり爆発や傷病者の出血がないということ、この2項目を満たすということです。
次に、神経剤の特異的症状となりますけれども、症状の項目としまして、特に軽症者です。自力で汚染地域から避難できた傷病者に対して、次の5つの症状について問いかけを行うとともに、他覚的所見の確認を行って、全5項目について、少なくともそれぞれ1つの症状を満たす人が、全5項目について、1人ずつはいるような状況であるということです。
1つ目が突然鼻水が出たり、あるいは突然よだれが出る。視覚異常としまして、よく見えない、暗い、ぼやける、これは神経剤で特に特異的ですけれども、縮瞳が生じるためですが、そういったことによる症状、また、目が痛い、涙が出るといった目への刺激に伴う症状、息がしづらい、呼吸が苦しいといった症状、この5項目に関して、問いかけを行う。全てそれぞれ1人でもいることを満たすということです。
3つ目としまして、化学剤の検知器で、神経剤についての陽性アラートが発報すること。消防隊や警察では、各部隊が持っている頻度は高いですけれども、携帯型の検知器がございまして、そちらで神経剤についての陽性アラートが発報している。
この3つの条件が全て満たした場合は、対象者、一般の市民で、傷病者で対応中の部隊員のうち、体調が悪化した者、主に成人に限るとしておりますけれども、そのうち、第1優先として、手助けがないと、自力で動くことができない者、第2優先としまして、当初は自力で移動が可能でありましたが、その後、動けなくなった者、こういった方々に対して、自動注射器を使用する。
この自動注射器の使用というのは、あくまで緊急措置的な、救助から除染、緊急の医療搬送というプロセスにおける緊急措置でございますので、最終的な目的として、必ず迅速に医療機関に搬送して、適切な医療を受けるということが究極的な目的ですので、そこに必ずつなげることという形のフローになっております。
テロの蓋然性、症状、検知器という最初の3項目に関しましては、非常に判断が難しい場合もありますし、また、いずれかがノーであっても、化学テロの可能性がどうも高そうだという現場の判断が生じる場合も想定されると思います。また、現場に検知器がない場合も想定されます。
こういった場合において、いずれかはノーであるか、いずれかの条件の該当判断性に迷いが生じるか、あるいは化学検知器がないような場合に関しては、専門家の有する専門機関を含むとしておりますけれども、助言を求めることができる、専門家の助言に基づいて、部隊が判断を行って、注射を行うことというフローを別途設けております。
こうした形で、自動注射器の使用に関して、一定の整理を行ったということが、こちらの報告書の主な内容でございます。
事務局からは、以上です。
○奥田部会長代理 非常に短期間の間に報告書をまとめていただき、ありがとうございます。
ただいまの検討会の報告書の御説明に関しまして、御意見、御質問をお願いしたいと思います。検討会の委員の竹内先生、どうぞ。
○竹内委員 横浜市大の竹内です。
私から検討会に出させていただきましたので、今、杉原さんが話されたことの医療の面からのお話を補足でさせていただきたいと思うのですけれども、1つは、地下鉄サリン事件が起きたときと、今と比べたときに発展したのは、消防職員とか、警察の救助する側の安全性は非常に高まりました。それが言われていた除染ということで、現場でそういう毒物をとってから、病院に運ぼうということです。地下鉄サリンのときは、そのままみんなが突っ込んで、病院にそのまま運びました。一方で、地下鉄サリンのときは、13人亡くなり、6,000人以上の傷病者が出ていますけれども、かなりの方が助かっているということは、そうやって突っ込んだことがよかったと思うのですが、その後で、今後、今の時代を考えると、安全性が高まったことによって、救助する側が中に入れないのではないか、あるいは医師が現場に行くことは非常に難しいという矛盾を抱えていたということで、今、同じ状態でサリン事件が起これば、死者は倍増どころでは済まないのではないだろうかという懸念が一部にあったという感じでした。
今回の答申に関しては、今の医師法では、従来は、医師が現場の中の危険なところ、先ほどでいうと、ウォームゾーン、あるいはホットゾーンに入ってやるしかないというのが法律でしたが、それは現実的に時間もかかって無理だろうということで、これに関しては、消防とか、警察とか、海上保安庁とか、専属のテロ対策部隊にあらかじめ教育をした上で、条件を示した上で、実際、自動注射器を打つということを答申の結果としている状況です。
その担保としては、1つは、しっかりした教育体制も原則やりましょうということと、あともう一つは、基準に関しても、他覚的所見のよだれを垂らしているとか、見えないというところと、もう一つは、専門部隊ですので、検知器という毒物が何かというものを持っていますので、その2つが合わさったときに打つという安全性を担保したことが議論の結果です。もう一点は、それに合致しない場合には、医師の専門家の助言を得た上で、そこで1回踏みとどまろうということですので、なし崩し的に何でもかんでも打つということにはならないような歯どめをしっかり考えてという感じだと思います。
それに伴って、5月のときの親会でも審議いただいた備蓄ということに関しても、迅速性を考えた備蓄をここのところで引き続き検討いただいて、1つのモチベーションは、来年のオリンピックだと思いますので、オリンピックまでに何とか日本としても実働ができるような体制づくりのためには、教育も今年度中からやり始めるということが大事なのだろうということを、委員会としては審議している状況です。
以上です。
○奥田部会長代理 どうもありがとうございます。
今の竹内先生の御説明も含めて、御意見、御質問をいただけたらと思います。遠藤先生、どうぞ。
○遠藤委員 本当に短期間の間に法令上のことから、実際に現場で打つための要件といったところまで詳細に検討し、まとめてくださった報告書からは、構成員の先生方の御苦労が手にとるようにわかり、本当にありがたいと思いました。実施条件として、化学災害・テロの蓋然性と所見と検知器といった総合的な判断のもとに打つのは、全くそのとおりだと思うのですけれども、この3つの中の細かい内容の部分になるのですが、これら全てがパラレルというのですか、優位性なく、全部を満たす必要があるという部分で、専門家への助言を求めるフローに流れる状況が多くなり迅速性に欠けてしまう状況がおこるのではと思います。例えば化学災害・テロの蓋然性のところで、爆発や傷病者の出血がないという条件ですけれども、テロは多様化しておりますので、爆傷と化学剤が一緒に使われることも当然あるとは思います。重症外傷による事案ではないことを満たさないと打てないという部分で、同じ重みづけで入っているのはどうしてなのかと、素朴に疑問に思った点が1つです。
あと、症状の中の5つの症状ですが、鼻汁とか、流涎とか、眼痛、流涙、呼吸苦に関しましては、例えばびらん剤であったり、窒息剤、催涙剤などでも、比較的軽症な方に見られる症状であるのに対して、神経剤では流涎や呼吸苦は中等症にならないとみられない可能性があります。視覚異常というのは、恐らく縮瞳のことを指していらっしゃるとは思うのですけれども、縮瞳自体は、神経剤の中では、軽症よりも曲軽症でも縮瞳だけ見られるということがありますので、自力で脱出されてこられる方に、この5つの所見が全部整わないと打てないということになりますと、どうしても専門家の助言に流れてしまうケースが多くなるのではないかということを危惧しております。迅速性が求められますので、できるだけ全てイエスに向かうような条件というのが、より求められるのではないかという点から、教育の部分でそのあたりを十分に浸透させる必要性もあるのではないかと思いました。
○奥田部会長代理 貴重な御意見をありがとうございます。
今の件について、何かございますか。どうぞ。
○杉原国際健康危機管理調整官 御指摘いただきまして、ありがとうございます。事務局の杉原です。
おっしゃられた点で、1つ、爆発に関しての部分ですけれども、検討会でも議論になりまして、ただ、化学剤を使用する場合は、爆発とともに使用すると、基本的に気化してしまう可能性が高いので、使われる必然性は極めて低い、そういったものを爆発とともに使われるパターンは、ほとんどが戦争のときの化学兵器のような事案が大半で、テロのような事案で使うということは、ほとんど想定はされないだろうということで、原則論として、こういった見解が出されたという議論がございました。
ただ、爆発があった場合は、本当にわからなくなってしまいますので、つまり検知器が鳴ったとしても、神経剤を使ったテロであるかどうかは、判然としないことがありますので、そういった場合には、専門家の助言が受けられるようにという形の流れになっているといった議論がございました。
症状の縮瞳ですけれども、こちらの資料1の6ページのフローで見るところの症状の視覚異常の見えない、暗い、ぼやけるというところが、いわゆる縮瞳を担保するところでございますけれども、縮瞳に関しても、典型的症状として議論になっているのですが、一方で、縮瞳を診るということは、医療行為としてあるということで、特に医療から遠い世界で活動されているような部隊の方々には、これを1つの条件にしてしまうと、非常に難しいというコメントもございました。
そこで、もちろん教育の中にも、今、検討を進めておりますけれども、縮瞳はもちろん入れてまいりたいと考えております。そうした中で、誰もが簡単にとれる所見ということで、問いかけをして手を挙げるとか、そういった形で答えられるようなもの、あるいはぱっと見てわかるというところを非常に重視したのが、こちらの症状の5項目という形で整理がされました。御指摘いただきましたとおり、縮瞳に関しましては、研修、教育訓練の中で十分に指導できるような体制を、今後、考えていきたいと思っております。
資料2の本文の報告書の中の13ページになりますけれども、2の研修についてというところがございますが、ここで詳しく研修についてのどういった研修を行うべきかということに関して、到達目標とか、モデル研修を示しております。
縮瞳に関しましては、ここでいうところの2番目です。モデル研修の概要のところのプログラムのところです。神経剤等の化学物質という14ページのところになりますけれども、あるいはその後の神経剤等の化学物質への暴露に対する医療という部分に関して、そこのところで十分に周知を図ることができればと考えております。
○遠藤委員 縮瞳そのものは、誰もが判断できるような所見ではないので、他覚的所見の中には記載がないのですけれども、問いかけなどで実際に使われる方にとっては、眼粘膜刺激による見えにくいということではなくて、条件にあげられているのは、縮瞳による症状であるということを研修の中でちゃんと周知していただくということで、研修が進められるという理解でよろしいのですか。
○佐々木厚生科学課長 はい。
○遠藤委員 わかりました。ありがとうございます。
○奥田部会長代理 竹内先生、どうぞ。
○竹内委員 今、先生が言われたことが非常に実践的な話だと思うので、私自身としては、個人的な立場ではなくて、検討会の審議結果だけをお話しすると、先生が最初に言われたみたいに、爆発があったときに、放射線が入っていたのではないかと、複合が考えなければならない中で、爆発と化学テロも当然あるかもしれない。あるいは先生が言われた、いろんな症状、いろんな神経毒がある中で、いろんなものが出てくるかもしれないということで、この部会の中の審議としても、より実働的にやりやすい方向にどんどん行くのか、あるいは歯どめをかけて、ある意味やりにくいけれども、ちゃんとした正攻法でいくのかという感じになると、結論的には、かなり審議の中でも厳しい方向に行っているのは間違いないと思います。
1つの理由としては、消防も警察も自衛隊も現場の部隊も、責任ということを考えると、余りに裁量が強過ぎると、むしろ活動がしにくいのではないかという意見が出ていました。そういう点では、検知器を最初はなくすという議論もあったのですけれども、現場の活動をしやすくして、迅速にするためにも、迷いがないようなことを部会の最終案として盛り込むべきだろうということになっています。
一方で、先生がおっしゃるように、場合によっては、厳しい制約をかけたことによって、最初の一歩がおくれる可能性は否定できないとは思いますが、それを両方審議した結果としては、最終案としては、しっかりした歯どめをかけて、間違いがないということを優先して、こういう結果になっているという経緯があると思います。
○遠藤委員 ありがとうございます。
○奥田部会長代理 竹内先生、ありがとうございます。
ほかに先生方からございますか。立崎先生、どうぞ。
○立崎委員 実効性の高いことをまとめていただいて、すばらしいと思います。
細かいことですけれども、今の6ページの症状の表ですが、突然鼻水が出るとか、突然よだれが出るとかは、他覚所見でもいいのではないかと思う点が1点です。
2番目は、ハンカチで押さえるというのは、噴煙でもあれば、そういう人はかなり出てくるだろうから、かなり特異性が低い他覚所見ではないかと思ったので、そこはどのような議論だったのかを教えていただきたい。
3番目は、遠藤委員と同じですが、5つ全部がそろわないといけないのか、全項目について1人でもっていくには、全部満たしていないとという御判断だと思うのですけれども、そこまで厳しくしたのはなぜなのかということが疑問点でございます。
以上です。
○奥田部会長代理 どうもありがとうございます。
どうぞ。
○杉原国際健康危機管理調整官 ありがとうございます。
鼻水、よだれというのは、他覚的所見で説明できるところでございまして、鼻水が出て、よだれが出ていて、結局、地下鉄サリンのときの映像を実際に今回の検討会の中でも見ながら、検討を進めていたのですけれども、そのときに鼻水が出たり、よだれが出たりして、とにかくハンカチで口や鼻を押さえている人が非常に多く見られたということで、もちろん煙等が出た場合とか、何かほかのことがあったときには、刺激性のものが使われた場合にあり得るのですけれども、ただ、鼻を押さえることは余りないだろうという意見で、つまりよだれ、鼻水が自分の意思に反して出るのは、化学剤意外だと考えづらいだろうということで、特異性が高い所見として、今回、挙げさせていただいて、検討会の中では議論があったところでございます。
厳しくした点につきましては、化学剤検知器も他覚的な所見としてあるのですけれども、こちらについては、偽陽性がかなり多い。環境の化学物質に反応してしまって、陽性になる場合が、今、非常に普及しているような携帯型の検知器ですと、そういう可能性があり得るということで、比較的感度が高いのですが、特異度が低いということでございます。
その中で、特異性を上げるという観点で、今回、症状に関しては、これが既にそろっていれば、非常に特異度が高い所見になってくるので、特異度を担保したということで、感度の観点と特異度の観点の両方を含めた形で、こちらの症状と検知器が両方あるというプロセスをつくったと、検討会の中でそういった議論があったと思います。
○奥田部会長代理 竹内先生、お願いします。
○竹内委員 杉原さんが言われたことで、もう一点、補足すると、左で自動的にやるのは、あくまでも完璧な症状とか、そろったときだけに現場の部隊の判断で打ちましょう、そうではないときは、右側の表ですけれども、専門家の助言を得ましょうということで、責任の所在を専門家も一旦負うべきだろうということになっています。ただ、その専門家に迅速性にいえなくては、全く問題がないということで、そこに関しては、具体的に書いていないのですけれども、例えば先生の中毒110番も当然ながらその候補でしょうし、それとか、あるいは実際のオリンピックのときには、専門家を最初から委嘱して、テロとか、医学的な知識でやっていこうとか、あるいは地域のメディカルコントロールでも体制をつくってもらいましょうとか、左のところは、完全な医師以外、今まではやれなかった人がやるには、非常に厳しいのですけれども、そうではないときの少し迷いがあるときには、専門家の助言を入れた上で、後押しを専門家がするということを、1つの方向性が出ているのではないかと思います。
○奥田部会長代理 どうもありがとうございます。
石川先生、どうぞ。
○石川委員 日本医師会の石川といいます。
私は、テロというか、マスギャザリング災害ということについて、自然災害もずっと対応していたのですけれども、マスギャザリング災害について、今回、既にラグビーのワールドカップのところから、該当する医師会の先生方に御協力をいただきまして、要するに一斉ショートメールというやり方で、これはお金がかかるのですけれども、それを既にやって、何か起こったときには、一斉ショートメールで連絡をする。何回かに分けて、最初は何が何だかわからないし、NBCRといいますか、エクスプロージョンも含めて、何が来るかわからないので、そういうショートメール連絡網をつくった上で、かつそのときにどういう化学剤かわからない、あるいはどういう種類のエクスプロージョンなのかわからないということで、いわゆるノンストップ相談窓口を毎日開いておりました。
これはバックヤードでやっておりますので、ほとんどマスコミの方もわかりませんし、ただ、我々のところでは、キットをやって、要するにワールドカップの時期だけということでやっていますけれども、一番困ったのは、どこに置いてあるのかとか、要するに厚労省の方は、幾つか用意してあるので大丈夫だと言っても、該当する医師会の先生方の不安は、自分のバックにある病院は幾つアトロピンがあってとか、PAMが幾つあってということは、調べ尽くしてあるわけです。いざというときに、この剤を本当に持ってきてくれるのかとか、全くわからないということで、大変不安な思いをしたりしました。
要するにいわゆるワールドカップとか、そういったことばかりではなくて、テロはいつ起こるかわからないので、少なくともどこにどういうふうに言えば、それが出てくるのか、どこに分散して置いてあるのかぐらいは、一定に何かわかったほうが不安は少ないと思っております。
専門家の助言は、こういうふうに書いてあっても、どうやってつなげるのかがわからないと全くだめです。正直に言って、私たちは、放医研、中毒センター、感染研の全部に担当の人を決めて、このときはこの人ということで、1点のところでつないでいた経過があります。そうでもしない限りは難しいのです。ですから、どこにちゃんと連絡すれば、ノンストップの助言が得られるかということについては、きちんとしていないと、全く使い物にならないということです。
私は、小児科医でもあって、エピペンは、全国の小中学校で年2回、あるいは多いところでは3回ぐらいやっているのですけれども、普通の先生方にやっています。普通の先生方にやって、いざ起こったときはやれと、実際にやらなくて亡くなって裁判になったりしていますので、そういうことでは、ある面では、もう少し救急隊とか、そういった方であれば、もうちょっとまめにできると思いますし、もっと能力があると思いますので、許容の範囲はかなり拡大できるのではないかと考えております。我々の相手は普通の先生です。
○奥田部会長代理 どうもありがとうございます。
このフローを見て、専門家の助言というラインが、いかにきちんと運用するかということは、これからいろいろな関係部署と、そのことも含めて検討されるのだろうと思うのですけれども、1つの大きな課題だと認識をいたしました。
その件について、何かございませんか。どうぞ。
○高島健康管理・災害対策室長 おくれて申しわけございませんでした。健康管理・災害対策室長でございます。
今のお話に関しましては、2つ整理をしなければいけないと思ってございます。まずはマスギャザリングが起きる体制においては、当然のようにワークさせる必要があるだろうということでございます。日本中毒センターだけではなく、ほかの機関も活用させていただきながら、まさにワークできるマスギャザリングで、しっかりと相談できる体制、これはまさに来年度のオリンピック・パラリンピックに向けては、それをしっかりとやっていく必要があるだろうと考えてございます。
一方で、平時の段階からその体制をつくれるかどうかということは、また別の問題もございます。現状では、今、日本中毒情報センターの24時間ホットラインの中で対応できる部分でお願いしたいということを、基本的に考えてございますけれども、そこはどういう体制ができるかということは、引き続き検討させていただくことになると思ってございます。
繰り返しになりますけれども、先ほど石川先生がおっしゃるとおり、どこに剤があるのかということもあわせて検討していかないといけないと思ってございます。まずはオリンピック・パラリンピックに向けて、ないしはそういった同種のマスギャザリングが開催されるときには、そこに関係する皆様方には、ある意味秘密保持の契約を結んでいただく一方で、どこに何があるのか、どこで利用できるのかということの体制はつくらせていただくことになると思ってございます。その中で、先ほどの相談体制もしっかりと確保させていただくことになると思います。
一方で、平時のいつテロが起きるかわからないということも当然ございます。ここはまだ自動注射器が十分な量を確保できるかという問題もございますので、今、PAMのような静脈注射剤は、ある意味しっかりと確保できているわけですけれども、自動注射器に関しても、今回、検討会で備蓄の必要性を確認させていただきましたので、そこは同じような体制を順次つくっていきますので、その中であわせてトレーニングの部分、先ほど石川先生がおっしゃったように、救急隊員だけでない部分も考えていく必要があるということで、まずはオリンピック・パラリンピックの体制を先に整備させていただき、その上で次のステージに生かしていただきたいと考えてございます。
○奥田部会長代理 どうもありがとうございます。
ほかにございますか。先生、お願いします。
○古米委員 資料2の3章のところで、自動注射器の使用、判断モデルについてというところに書いてある基本的な考え方の最初に、客観的であることということが記載されています。実際の使用において、どういう判断基準かということが整理されていて、フローシートもクリアなのですけれども、要はある現場の方の1人の判断ではなくて、複数の方が判断するということは当然だと考えます。今の説明だと、手順としては1人で決断できるのか、あるいは複数人でどうやって客観性を担保しているのか。場合によっては、使用した後にどういったエビデンスを残すこと、あるいは客観性があったのかという証明というのでしょうか、そういうものがどう担保されるのかというのは、説明を聞いていて不明でした判断基準についてはクリアなのですけれども、実際にそれが正しく運用されているということを担保する証拠というのですか、記録はどのように考えておられるのでしょうか。緊急状況なので、そういった記録をとることは、非常に大変ですが。
○奥田部会長代理 どうぞ。
○竹内委員 竹内からよろしいですか。
最初に誰が判断するかというのは、4回目の部会でも話が上がっていましたけれども、消防とか、海上保安庁とか、警察にしても、指揮官がいますので、そこが普段からの部隊で、しっかり縦運用していますので、そこは指揮官であるだろう。
ただ、一方で、テロ対策などの場合には、多機関の現地調整所ができるのですけれども、それをしてしまうと、時間はかかるでしょうから、消防なら消防の指揮官、それが早いですので、そうやって迅速性は保つべきだろう。
今、先生がおっしゃったように、客観的な記録を残すことは、まだ議論はされていなかったので、それは今回の教育の中でも、親会議でいただいた意見を落とし込む必要はあるのだろうと思います。
○高島健康危機管理・災害対策室長 おっしゃるとおりでございまして、御指摘のとおりです。まずは組織の中での判断がございますので、部隊員の方が確実に判断することは、想定されてございません。あるいは部隊長の判断もございます。ただ、部隊長もまだ若い部隊長もいらっしゃるということなので、専門家の助言もそういったところでは受けられるような体制ということを入れさせていただきます。
おっしゃるように、どういう形で記録を残すのかということに関しては、事態が発生しているときに記録を残せということは、フローからしても難しいと思ってございますので、アルゴリズムの中では、そこは外させていただいてございますけれども、実際に使ったのかどうかという証拠、あとは、事後検証は当然必要になりますので、そこはトレーニングの中で私どもでも整理をさせていただき、各部隊にも御周知をさせていただきたいと考えてございます。
○古米委員 わかりました。
○奥田部会長代理 ほかにいかがでしょうか。石川先生、どうぞ。
○石川委員 1年間に4回か5回ぐらい、浅草橋を中心に、防衛医大の先生や防衛大学の先生方のOBが中心になっているNBCR対策推進協議会があります。そこがやっている朝から晩までの学習会ですけれども、半数が医師なのです。100人ぐらい集まるのですけれども、半数が医師で、その医師の半数が医師会の先生方です。極めてモチベーションが高く、朝から晩まで、例えば化学剤をやったら、化学剤の勉強だけやっているわけです。ずっと講演です。
ただ、一番大事なのは、爆発物テロだとみんなが言っているわけです。これは絶対テロの一番の中心軸にこれからなるだろうということで、特に今回札幌とか、周回でやるとやっていますけれども、新たに出てきたマラソンのところなどは大変危なくて、我々は心配しています。
我々はいつも自然災害も、想定の枠を広げて考えていますので、このテロ対策をやるのだったら、化学剤だけではなくて、爆傷について、少しでも出血死をなくすという方向はどうやってやるのかということを考えないとだめだと思うのです。私たちは、それを勉強の中心軸に置いてやったり、止血を中心にいろいろ勉強するということを医師会などではどんどんやっていますので、オリパラに向けて、そこら辺のことをやっていただいたほうがいいのではないかと思います。
○奥田部会長代理 どうもありがとうございました。重ねての宿題ということになるかもしれません。
ほかによろしいでしょうか。
最後に私から1つだけ、この剤ですけれども、これから恐らく検討されて、その検討過程には、この報告書を見ると、第三者による評価があることが期待されているわけだと思います。こういったものですので、薬事承認というのは非常に難しいのだろうと思います。ただ、海外には、そういうものもあるという記載がございました。
一番望ましいのは、薬事承認があって、薬事承認に至る具体的にプロセスを経て、実際により使いやすい、いろいろな体制が整備されてくるだろうと思いますので、継続してそういったことの試みということもなされることを期待したいと思います。
○高島健康危機管理・災害対策室長 ありがとうございます。
御指摘のとおりでございます。今回の自動注射器の使用に関する検討においては、部隊員の方が安心して使える環境をつくることが極めて重要でございます。そのために、医師法上の違法性阻却という整理をさせていただいてございますけれども、今、奥田先生がおっしゃっていただいたとおり、剤がまさにそれが安心なものかどうかというところの担保も当然必要になると考えてございます。
私どもとしては、現状として未承認の扱いになってございますので、国内の第三者による評価をもって、安全性を確認させていただいたものを利用するというスキームにさせていただいてございますけれども、これは当然のことながら、国内企業への働きかけをしっかりとさせていただき、適切な承認申請に向けた助言、これはしっかりとファイティングポーズをとっていかなければいけないと考えてございますので、そこはしっかりと対応していきます。
ただ、短期的な問題として、オリパラが約半年後ということでございますので、そこの部分でまずは優先度を高めさせていただいたというところで御理解いただければと思います。
○奥田部会長代理 どうもありがとうございます。
ほかによろしいでしょうか。
もし重ねてのコメントがなければ、この報告書について、オリパラに向けて、委員の皆さんの了解をいただけたと感じております。よろしいでしょうか。
もしそうであれば、事務局は、この報告書を踏まえて、さらに対策を進めるようにお願いしたいと思います。
この報告書を受けて、実際にどのように関係省庁、関係機関、実施部隊も含めて、連携体制を築いていくかということが鍵だと思いますので、その点、今後、しっかりとお願いしたいと思います。
○佐々木厚生科学課長 承知いたしました。
今、部会長代理から御指摘いただいた内容、各委員から御指摘いただいた内容等を踏まえ、しっかりと対応してまいりたいと思います。どうもありがとうございました。
○奥田部会長代理 どうもありがとうございます。
そのほか、事務局から、報告事項はございますでしょうか。
○佐々木厚生科学課長 ございません。
○奥田部会長代理 それでは、全ての議事が終了しました。
次回、またあれば、御予定いただくということだと思いますので、よろしくお願いします。
本日は、これで閉会といたします。どうもお疲れさまでした。