第32回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 議事録

健康局 健康課予防接種室

日時

令和元年8月7日(水)10:00~

場所

田中田村町ビル新橋会議室8E

議題

(1)ロタウイルスワクチンについて
(2)予防接種施策の現状について
 

議事

 

○元村予防接種室長補佐 それでは、定刻になりましたので、第32回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会を開催します。本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。また、傍聴の方は「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いいたします。なお、会議冒頭の頭撮りを除き写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので御留意ください。

 開催に先立ちまして、事務局側に人事異動がありましたので、紹介いたします。79日付けで、健康局長の宮嵜と健康課長の神ノ田が着任しております。それでは健康局長より御挨拶を申し上げます。

○宮嵜健康局長 健康局長の宮嵜です。会議の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。本日御出席の委員の皆様方には、御多忙のところ、また大変暑い中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。また、平素から予防接種施策の推進に御理解、お力添えを賜わっておりますことを、この場をお借りして御礼申し上げる次第です。今司会からありましたが、私ごとですが、この夏の異動で健康局長に着任いたしました。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、この部会は本日の開催で32回目ですが、これまで新たなワクチンの定期接種化などの多くの課題について、活発な御議論を頂いてきております。本日は審議事項として、ロタウイルスワクチンについての御議論を頂きますとともに、予防接種施策の全般について、御議論を頂ければと思っております。各委員におかれましては、それぞれの御専門の御立場から、忌憚のない御意見を頂ければと思いますので、よろしくお願い申し上げます。厚労省といたしましては、今後とも予防接種施策の推進にしっかりと取り組んでまいりますので、引き続き皆様方の御理解、御協力をお願い申し上げまして、簡単ではありますが、御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○元村予防接種室長補佐 健康局長ですが、用務により途中退席させていただきますので御容赦願います。

 続いて、出欠状況について御報告いたします。坂元委員、中野委員、宮﨑委員、山中委員から御欠席の連絡を受けております。現在、委員12名のうち8名に御出席いただいていますので、厚生科学審議会令第7条の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。

 続いて、本年7月に厚生科学審議会の改選があり、予防接種・ワクチン分科会及び基本方針部会に所属されておりました倉根委員が退任されております。また、本基本方針部会に新たに御参加いただくことになりました委員を御紹介します。全国市長会より御推薦いただきました那須烏山市長の川俣純子委員です。

 冒頭のカメラ撮りについては、ここまでとさせていただきますので御協力をお願いいたします。これ以降は写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので御留意ください。

 次に、本部会の部会長でありました倉根委員が退任されておりますので、部会長の選任をお願いしたいと思います。部会長の選任は、厚生科学審議会令第63項で、部会長は当該部会に属する厚生科学審議会委員の互選により選出するとなっております。本部会では、伊藤委員、山中委員、脇田委員が厚生科学審議会委員ですので、委員の皆様から、どなたか御推薦をお願したいと思いますが、いかがでしょうか。

○伊藤委員 よろしいでしょうか。伊藤です。倉根委員に引き続きまして、我が国の感染症の元締である国立感染症研究所所長の脇田委員にお願いをしたらどうかと思いますが、いかがでございましょう。

(異議なし)

○伊藤委員 ありがとうございます。

○元村予防接種室長補佐 ありがとうございます。ただいま伊藤委員より、脇田委員を御推薦いただきました。皆様の御承認を頂きましたので、脇田委員に部会長をお引き受けいただきたいと存じます。脇田委員におかれましては、部会長席への移動をお願いいたします。

 次に部会長代理ですが、規定により部会長から御指名を頂くこととなっております。脇田部会長のほうから御指名をお願いいたします。

○脇田部会長 皆さん、今御推薦いただきまして、部会長を務めさせていただきます、国立感染症研究所の脇田です。どうぞよろしくお願いいたします。ただいま部会長代理のことがありましたが、本日御欠席されていますが、これまで中野臨時委員が代理をされておられましたので、引き続きお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

○脇田部会長 ありがとうございます。

○元村予防接種室長補佐 ありがとうございます。それでは、中野委員には事務局より部会長代理の就任について確認いたしまして、次回の本部会において御報告いたします。

 続いて、本日の資料の確認をいたします。タブレットには、番号00の議事次第から番号12の第32回予防接種基本方針部会利益相反関係書類を、それぞれ格納しております。不足の資料等がございましたら事務局にお申し出ください。

 それでは、ここからの進行は脇田部会長にお願いいたします。

○脇田部会長 改めまして、よろしくお願いいたします。それでは事務局から、審議参加に関する遵守事項等について、報告をお願いいたします。

○元村予防接種室長補佐 審議参加の取扱いについて御報告いたします。本日御出席いただきました委員から、予防接種・ワクチン分科会審議参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄附金等の受取状況、申請資料への関与について、申告を頂きました。各委員からの申告内容については、資料12の第32回予防接種基本方針部会利益相反関係書類を御確認いただければと思います。

 本日の出席委員の申出状況及び本日の議事内容から、「退室」や「審議又は議決に参加しない」に該当される委員はいらっしゃいません。以上です。

○脇田部会長 ありがとうございます。それでは審議に入りたいと思います。まず議事次第を御覧ください。今日の議題は2つ、ロタウイルスワクチンについて、それから予防接種施策の現状についてです。

 まず、最初の議題1「ロタウイルスワクチンについて」です。資料1について、事務局のほうから説明をお願いいたします。資料1を御覧ください。

○永田予防接種室長補佐 資料1に基づいて御説明させていただきます。資料1、ロタウイルスワクチンについて(予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会からの報告)です。ロタウイルスワクチンについては、これまでも検討してきたところです。具体的には平成237月及び平成241月に、ロタウイルスワクチンが新たに製造販売承認されたことを受け、平成241月の厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会において、ロタウイルスワクチンに関して予防接種の対象とするかどうかを検討する方針となりました。その後、予防接種制度見直しについては第二次提言において、ロタウイルスワクチンの評価の必要性について提言され、また予防接種法改正の参議院附帯決議において、定期接種の対象とすること等について、早期に結論を得るよう検討することとされたところです。

 こうしたことから、ロタウイルスワクチンに関するファクトシート、ロタウイルスワクチン作業班中間報告書、ロタウイルスワクチンに関する最近の知見及びロタウイルスワクチンに関する評価・分析が取りまとめられ、基本方針部会の下に設置されておりますワクチン評価に関する小委員会において、ロタウイルスワクチンに関して、主に腸重積症のベースラインデータの整理、リスクベネフィット分析、費用対効果の推計といった3つの技術的な課題について、議論が重ねられてきました。今般、731日にワクチン評価に関する小委員会において、ロタウイルスワクチンの技術的な課題に関する議論の取りまとめが行われましたので、本日報告させていただきます。

 2枚目のスライドです。ロタウイルスワクチンの有効性についてです。資料の見方ですけれども、下の矢印の部分で、具体的に小委員会における議論などについて記載しております。上の四角囲みの所で小委員会での議論のポイントを記載しております。ロタウイルスワクチンの有効性については、小委員会において、ロタウイルスワクチンはロタウイルス下痢症を発症するリスクを低下し、この有効性はロタリックス及びロタテックの2種類で同等と考えられました。また、ロタウイルスワクチンには間接効果(集団免疫効果)があると考えられました。

 次のスライドは、ロタウイルスワクチンの安全性についてです。ロタウイルスワクチンについては、複数の国々から、ロタウイルスワクチン接種後、特に初回接種1週間以内の腸重積発症率が自然発症率よりも増加すること、相対リスクの増加が報告されました。また、腸重積症以外の副反応については、ロタリックス、ロタテックともに、いずれも一過性で重篤なものはまれとされています。なお、ロタリックスとロタテックで接種後の腸重積症の発症リスクに有意な差は認められておりません。

 こういったことから、小委員会においてはロタリックス及びロタテックの安全性は同等と考えられました。海外においても、ロタウイルスワクチンの接種後、腸重積症の発症リスクは増加するという報告があることから、我が国においても腸重積症の発症率のデータの整理が必要と考えられます。

 続いて、技術的な課題➀「腸重積症ベースラインデータの整理」についてです。先ほど申しました腸重積症ですが、1つ目の矢印に書いてあるように、ロタウイルスワクチンの初回接種1週間以内等の期間において、自然発症率よりも増加することが報告されています。こういったことから、2つ目の矢印ですけれども、厚生労働省の研究班のデータを分析し、1歳未満の乳児における腸重積症の発症率は、ロタウイルスワクチン導入前は102.8/10万人年と、日本の1歳未満児の腸重積のベースラインの発症率は、海外と比較して相対的に高い値であるという議論が行われました。なお、腸重積症入院患者に対する外科的処置の施行割合は、日本は海外と比較して低かったということです。

 このような議論を頂いた上で、我が国において、ロタウイルスワクチン接種後に腸重積症の発症率が増加するリスクを否定することはできないが、このリスクは大きいものではないと考えられました。月齢3か月以降、徐々に腸重積症の発症率が増加することを踏まえると、ロタウイルスワクチンの初回接種は早い時期に実施することが必要であると考えられました。

 5枚目のスライドです。技術的な課題➀「腸重積症ベースラインデータの整理」について(2)です。腸重積症の発症数と報告数との関係については、➀ロタウイルスワクチンが定期接種化された場合に、医薬品医療機器等法に基づく副作用報告に加えて、予防接種法に基づく副反応疑い報告が実施されるようになること、腸重積症に関する認知度が向上することなどにより、定期接種化前後で報告数が増加する可能性が事前に予測されること。➁副反応疑い報告では、ワクチンを接種して一定期間経過後に発症した、接種と因果関係のない腸重積症は報告されないことから、腸重積症の全発症数と、定期接種化後に副反応疑い報告等によって報告される腸重積症の報告数とは、差が生じること。➂定期接種化後も、腸重積症に関する認知度の向上など、発症数の変化以外の要因によっても報告数は変動し得ること。

 こういったことが議論されて、取りまとめとしては、ロタウイルスワクチンが定期接種化された場合、副反応疑い報告等によって報告される腸重積症の報告数が、見かけ上増加した場合であっても、必ずしも腸重積症の発症数全体の増加を意味しないことに留意が必要ではないか。腸重積症全体の発症数が増加していないことを確認する観点から、研究班によるサーベイランスや、NDBを活用したモニタリングを合わせて実施する必要があるのではないか、といった御意見を頂きました。

 続いて技術的な課題➁「リスクベネフィット分析」についてです。国内、また海外での報告について、小委員会において議論を頂きました。その結果、矢印の一番下ですが、我が国内においては、ロタウイルスワクチンの副反応によって腸重積症が1例生じる間に、480例のロタウイルス胃腸炎入院例が予防されていると推計されました。この結果、ロタウイルスワクチンの接種を推奨している諸外国の報告と同様に、ベネフィットがリスクを大きく上回るといった御議論を頂きました。

 こういった議論を踏まえ、小委員会での議論のポイントとして、我が国におけるロタウイルスワクチンによるリスクとベネフィットとを比較した結果、ロタウイルスワクチンの接種を推奨している諸外国の報告と同様に、ベネフィットがリスクを大きく上回ると考えられました。また、ロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることは、リスクベネフィットの観点からは問題ないと考えられました。

 続いて技術的な課題➂「費用対効果の推計」について(1)です。こちらについては、ロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることの是非を判断する観点から、ワクチンの費用対効果について評価が行われています。まず、中込らの報告によるものを御報告いたします。7枚目の資料の右側を御覧ください。費用対効果の推計の所ですが、今回の研究については、費用のみを比較した費用比較分析によって行われた研究です。ロタウイルスワクチンは他のワクチンと同時接種される場合が多いことから、の接種時を除き生産性損失も含める場合として推計が行われています。生産性損失や直接医療費については、左側の費用として考慮したものを御覧ください。直接医療費として、ワクチンの接種費用、ロタウイルス感染性胃腸炎発生時の費用などが計算されているところであり、生産性損失として、ワクチン接種時の生産性損失、ロタウイルス感染性胃腸炎発生時の直接非医療費、ロタウイルス感染性胃腸炎発生時の生産性損失などが考慮されています。その結果、の接種時を除き生産性損失も含める場合、ロタリックス、ロタテックそれぞれにおいて、接種群費用から非接種群費用の差分を取ると、これはそれぞれ1人当たりですけれども、ロタリックスにおいては-1,854円、ロタテックにおいては-3,331円という結果が出ております。

 こういったことから上の部分を御覧ください。ロタウイルスワクチン接種群の1人当たりの期待費用は、非接種群よりも高い、つまり費用対効果が良好ではない。ただし、全体でワクチン価格(又は接種費用)が少なくとも4,000円程度低下すれば費用は逆転し、接種群のほうが安価になる、という報告について議論が行われました。

 次のスライドは、技術的な課題➂「費用対効果の推計」について(2)です。こちらの報告は、厚生労働科学研究事業による星らの報告に基づくものです。中段右側ですが、費用対効果の推計として、QALYに基づいて計算されています。下の欄を御覧ください。こちらの研究においては、直接医療費、生産性損失といったところで、イの段の直接医療費を考慮した場合について、つまり支払者の視点で計算をしたところによると、ICERという1人当たりのQALYを獲得するのに幾ら必要かという指標ですが、支払者の視点では687.7万円/QALYであり、500万円/QALYを僅かに上回ったという計算になっています。なお、この際に接種費用が3万円から25,000円となった場合に、500万円/QALYを満たすという御議論がありました。もう1つの社会の視点については、生産性損失を含めた社会の視点では、33.7万円/QALY又は費用削減的であったという報告が上がってきています。

 このような2つの報告を踏まえ、小委員会で御議論いただいたところが、次のページでスライド9です。小委員会においては、2番目ですが、費用比較分析を実施した研究と、費用対効果分析を実施した研究の双方の結果を基に議論が行われました。その結果、小委員会での議論のポイントとして、現状で入手可能なエビデンスにおいては、ロタウイルスワクチンは費用対効果が良いとは言えないことから、費用対効果の観点からは、現状の接種費用にかかる費用で、ロタウイルス感染症を予防接種法の対象疾病とすることには課題があるという結論を頂きました。

 次のスライドを御覧ください。こちらは費用対効果という議論をされている中で、イギリスの例について事務局でまとめたものです。イギリスにおいては、20092月にJoint Comittee on Vaccination and Immunisation、予防接種に関する共同委員会において、ロタウイルスワクチンの評価が行われております。ロタウイルスワクチンは、胃腸炎の発生率を下げる効果があると考えられる、しかし、現在のロタウイルスワクチンの価格では、費用対効果の基準を満たさないため、ロタウイルスワクチンの定期接種プログラムへの導入については見送りとされました。この際、ロタリックスは135ポンド、日本円で約5,000円程度、ロタテックについては125ポンド、約4,000円程度として費用対効果の分析が行われました。その後、2011年に再び議論が行われましたが、2009年と同様に、費用対効果の基準を満たさないため導入を見送るという結論があったと理解しております。その上で2012年の春にイギリス保健省として、ロタウイルスワクチンについて入札が実施され、201211月に1社が独占するという形で、GSK社のロタリックスが費用対効果が良好となる価格で調達されることが決定され、20137月にロタリックスが小児の予防接種プログラムに導入されたと伺っています。

 こういったことを踏まえ、小委員会の議論が731日に取りまとめられたことを受け、事務局として、次のスライドになりますが、ロタウイルスワクチンの各メーカー、GSK社とMSD社に対して、ワクチンにかかる費用の低減についてどのような対応が可能か、検討・回答を現在依頼しています。依頼については81日付けで健康課長名で、回答については826日までに頂くようお願いしています。なお、ロタウイルスワクチンの国内価格については、税抜き・希望小売価格としてロタリックスは1本当たり1万円、ロタテックについては現在希望小売価格を設定していないということですので、過去に設定していた金額である1本当たり5,700円と伺っています。

 本日は、こういった小委員会の議論を踏まえ、ロタウイルスワクチンの定期接種化の可否について、これまでの技術的課題等に関する検討を踏まえ、ロタウイルスワクチンについて、定期の予防接種に導入することについてどのように考えるかといった点で御議論いただければと思います。

 なお、13ページは仮に定期接種化をするべしとなった場合のことです。その後、疾病類型はA類疾病とするのかB類疾病とするのかなどについて、法律によって規定を行い、対象者に係るものを政令において規定します。右下はヒトパピローマウイルスワクチンについて示していますが、それぞれのワクチンの種類については、省令において具体的に規定することが必要となります。事務局からの説明は以上です。

○脇田部会長 幾つか論点をまとめていただきました。ロタウイルスワクチンについて定期接種化を検討するということで、小委員会のほうでまとめていただき、その内容を部会として承認するかということになろうかと思います。つまり、ロタウイルスワクチンの定期接種化の可否についてということです。ポイントとしては、リスクベネフィットの観点、そして費用対効果の観点、大きく分けてこの2つがあります。

 ロタウイルスワクチンというのは、既に平成23年頃に製造承認されて、今は任意接種ということで、かなりの子供が接種しているということですので、もちろんベネフィットはある。リスクベネフィットの観点からは、もちろんベネフィットが上回るという論点だったと思います。ただ、一方で定期接種化するということになると、税金を使って定期接種化するわけですから、費用対効果については十分検討が必要という点で、この費用対効果については少し問題があるのではないかというところだったかと私は理解しました。

 委員の皆様から、ただいまの内容について御意見、御質問等を頂いて、議論を進めてまいりたいと思いますが、いかがでしょうか。まず、論点としてはリスクベネフィット、そして費用対効果という順番で進めていただければと思います。多屋委員、リスクベネフィットの観点からいかがですか。

○多屋委員 脇田部会長がおっしゃられたように、有効性については、もう発売から78年がたって、外来症例あるいは入院症例ともに減少しているという、小児科の臨床の現場では大きな効果が認められてきています。一方、安全性については随分腸重積症のことが話題になりましたけれども、研究班で詳細な検討をして、ワクチン発売前後で腸重積症が増えているというエビデンスは認められないこと。ワクチンに関係なく腸重積症というのは、日本では海外に比べると若干多いということなどもありましたので、ベースラインが明らかになってきたこと。そして、生後3か月のところで、統計学的な有意差はありませんが、若干その月齢で多い傾向があるということもわかりました。一方、日本は腸重積症を発症しても外科的手術にならず、内科的な高圧浣腸で治っている子供が、海外に比べると非常に多いことも分かってきています。今後も、腸重積症の初期症状を広く御家族や、あるいは保育所に行っている子供たちもいますので、保育所に伝えることで、外科手術にならないように、早めに治療を受けるということも大事になってくると思います。

 以上のことから、有効性は既に国内で証明されており、安全性についても随分議論がなされ、ベースラインも明らかになってきましたので、有効性・安全性に関しては、十分に定期接種化されることについて問題はないと、小委員会でも随分議論がなされたと理解しております。

○脇田部会長 小児下痢症の予防という観点から言えば、有効性は十分であると認知されているということですね。

○多屋委員 はい。もう1つは、胃腸炎のみならず、脳症を発症される子供だとか、少ないながらロタウイルス胃腸炎で亡くなっている子供が現在もいますので、そういう観点からも定期接種化のメリットはあるのではないかと思われます。

○脇田部会長 重症例の場合には脳炎を発症する場合もあるので、それを予防する効果もあるだろうということでしょうか。

○多屋委員 かからないということ自体が重要ではないかと思います。

○脇田部会長 ありがとうございました。一方で安全性の面で言うと、日本で腸重積症というのは小児の一般的な病気であることから、定期接種になると、どうしても接種を受けてから腸重積症を発症する例というのは出てくるのだけれども、任意接種でのデータを見ると、接種が始まったからといって、必ずしも腸重積症が増えているわけではないというようなところでしょうか。

○多屋委員 はい。

○脇田部会長 有効性・安全性に関してはいかがでしょうか。伊藤委員お願いいたします。

○伊藤委員 有効性・安全性に関しては余り議論がないのだろうと思っていますが、この副反応というか有害事象で起きてくる腸重積症の頻度が余りにも高い。腸重積は1,000人に1人の子供がなるので、定期接種化してしまうと、当然のこととして1歳未満というか、少なくとも半年未満の子供で腸重積症が起きたものに関しては、ワクチンで起きているのか、もともとのベースラインなのか区別が付かないので、当然のこととして補償の対象になる。患者さんの御家族の中には、ワクチンをやらなければよかったと思われる方、さらには手術をして後遺症が残る子供が出てくる可能性がある。そういう方に対する補償の問題を考えずに、定期接種化を国の責任でやるというところまで本当にいけるのかどうか。

 今頂いている資料を見る限りにおいて、その議論が欠落しているのではないかという気がとてもします。ですから、そういう補償の話まで入れようと思うと、生物学的なリスクベネフィットはもちろん議論の余地がないところだと思いますが、経済的な問題とか社会に与える影響も議論をしてからのほうが安全ではないかというように、資料を拝見して思っておりました。

○脇田部会長 どうしても定期接種化となると、腸重積症を発症したときに、予防接種をして腸重積症が発症したときの補償の問題が発生してくるということになります。そちらの点に関しても委員の皆様からお願いいたします。多屋委員お願いいたします。

○多屋委員 腸重積症に関しては、この7年随分議論を尽くしてまいりました。腸重積症は、どうしても0歳でも、半年を超えた頃から増えてきますので、ロタウイルスワクチンは生後2か月、6週から接種が可能です。日本小児科学会は、2か月ぐらいから、その他の定期接種と同時接種することなどを推奨していますけれども、なるべく早い時期に接種をすることで、本来ロタウイルスに関係なく起こる腸重積症の好発月齢を避けるということも可能になってくるのではないかと思います。もし定期接種化された場合は、特に初回接種は、接種ができる月齢になれば、なるべく早めに接種するということで、腸重積症のリスクは減らせるのではないかと思います。

 もう1つは、腸重積症の初発症状というのが、随分日本の人々の間に広まってきました。それは、もっとしっかり広める必要はあると思うのですけれども、外科手術をしなければいけないようなところまでいかないように、小児科の先生方、釜萢先生もいらっしゃいますが、随分丁寧に説明してくださっていますので、そういう点についても随分議論は尽くされたと思います。日本は、万が一健康被害があった場合、定期接種の場合は諸外国と比べてもかなり手厚い健康被害救済があります。なるべく早く、万が一発症しても外科手術にならないように治ってほしいと思いますが、定期接種では、健康被害救済制度というもので、救済されていくであろうと考えます。

○脇田部会長 伊藤委員からあった、1,000人に1人ぐらいの腸重積症の症例があるということになると、かなりの症例数があります。外科手術になる症例は少ないということなのですけれども、どの程度の方が外科手術まで行くのですか。

○多屋委員 海外では、腸重積症を発症した方の40%という数字が出ていましたが、日本は10%台となっています。日本は、もともと腸重積症が海外に比べて若干多い国ですので、ロタウイルスワクチンと全く関係なく起こってしまっている子供もいます。定期接種化されると、それが接種の後であるというのが確率的には多くなるかもしれないのですけれども、そのワクチンにはかかわらず、腸重積症になったときの治療、小児医療というのが、日本は随分しっかりしているのではないかと考えます。

○脇田部会長 釜萢委員お願いいたします。

○釜萢委員 伊藤先生が指摘された点が、これまで必ずしも十分議論されていなかったという御指摘については、本日はマスコミの方々もおられますけれども、国民的にしっかり議論をして方向を決めるべきだと思います。多屋先生に触れていただきましたように、小児科の医療現場では、この接種に当たって腸重積症のリスク等もしっかり話をして、そしてこのようになった場合にはすぐに連絡をくれるようにということも、保護者にはよく説明した上で接種に努めておりますので、その体制については、我が国においてはある程度十分な体制が取れるのではないかと思います。

 伊藤先生が指摘されるように、ワクチンと関係のない腸重積症と、ワクチンの副反応というところをどのように分けるかは、難しく不可能だと思います。しかし、本日お示しいただいたベネフィットの具合も踏まえると、場合によってワクチン接種後に見られた腸重積症に、ワクチンと無関係に起こったものが中に含まれているとしても、それを含めて予防接種法の健康被害救済でしっかりと国民に対して手当てをしていくのが、私はよろしいと思っております。

○脇田部会長 そのほかいかがですか。伊藤委員お願いいたします。

○伊藤委員 先ほど申し上げたのは、このワクチンそのものの接種を止めるということではなくて、やはり紛れ込みかもしれませんけれども、腸重積症が起きてきたら補償の対象にするのだと、それの費用を初めから盛り込んだ上で、こういう接種プログラムを組むのだということを、明示的にするのがいいのではないか。ですから、関係がないから、そんなに増えないからということでもなくて、関係が多少薄かろうが、腸重積症になった人に関しては補償をすることを前提にして、いわゆるシステムを組んでいくというようにしていかないと、過去にあったHPVと同じような議論というのがある。ワクチンで起きてくる副反応の問題に関しては、ある一定の確率で起きる。でも、それを因果関係があるとかないとか、ぎりぎりやって決めるというよりは、補償をする代わりにこの子ども全体を守るための制度設計をするということを明示的にしたほうが、予防接種そのものについての基本的な考え方としていいのではないかということで、先ほどのような話をさせていただきました。

○脇田部会長 ただいま様々な意見を頂きました。まとめてみると、ロタウイルスワクチンの接種によって腸重積症の副反応はもちろんある。ただ、自然発生の腸重積症もあり、その発症率が日本では多いということですので、どうしてもワクチン接種後の腸重積症の発症というものが、もちろんワクチンとの因果関係を抜きにしてもあり得るということです。それを含めてきちんと救済の対象にして、そしてこのワクチンの定期接種に関しては、有効性と安全性という面からは進めるべきではないかという議論であったかと思います。この点はいかがでしょうか、そのほかに御意見はありますか。

 ありがとうございます、ないようですので2番目のポイントである費用対効果に移ります。もちろん任意接種であれば、それぞれの御家庭でワクチンの有効性・安全性に関して考えて接種費用は自己負担ということ、あるいは市町村のある程度の補助というのもあるかもしれませんが、それで接種をすることになります。しかし、ロタウイルスワクチンを定期接種化するということになると、費用対効果については十分考慮していく必要があろうかという点だと思います。委員の皆様から御意見はありますか。

 事務局のまとめでは、現在の日本での小売価格で計算すると、費用対効果はむしろマイナスというような状況に計算上はなるということです。池田委員、ロタウイルスワクチンの費用対効果についてはいかがでしょうか。

○池田委員 小児科のほうでも、費用対効果の推計結果の解釈について、いろいろ議論がありました。子供の場合に、このQALYというのは一般的に健康改善の価値を測る単位になるわけですけれども、こちらの健康改善のQOLなどがなかなか測りにくい部分もありますので、この2つの推計結果が並記されているわけです。いずれの結果を見ても、日本で今、一般的に考えられている基準値を上回る、すなわち費用対効果の点で課題があるというような形で結果は解釈できるかと思います。なお、「費用対効果の推計」の➁にある500万円/QALYという基準については、現在、医療課のほう、中医協のほうで医薬品とか医療機器の価格設定の際に使っている基準値がこの500万円ですので、これを上回った場合には価格を引き下げるということで対応しているということです。

 また、イギリス等ヨーロッパ諸国、あるいはオーストラリアとかカナダでは、こうした基準値を作って、ワクチンも含めて価格の調整とか、あるいは適正使用の会議などの検討をしています。イギリスの場合には3万ポンド、大体400万円ぐらい、オランダの場合は4万ユーロ、大体500万円ぐらいでしょうか、このような基準値を使っているということです。こういう基準値を1つの参考にしながら価格の検討をしていくということは、我が国においても妥当な考え方ではないかと思います。

○脇田部会長 1QALY当たり500万円というところが基準になっていると。それを現在の計算では上回っているということですので、費用が少し上回るということかと思います。他の委員の皆様はいかがでしょうか。釜萢委員お願いいたします。

○釜萢委員 今後、仮に定期接種化されていくと、更に接種率が上がることが考えられますので、イギリス等の検討も踏まえて、本日は川俣委員もお越しですけれども、実施主体である市町村の負担をなるべく減らすという意味では、ワクチン代を更にメーカーのほうに考えていただきたいと私も思います。実際に接種を担当する小児科の立場からすると、飲ませるワクチンというのはかなり手間がかかって、その後嘔吐した場合の対応もありますし、なるべく確実に飲ませるためには、それなりに技術が要りますが、注射と比べると技術料の評価が低いということもあります。その点はやむを得ないと思って、子供たちのために一生懸命やっていますが、技術料が更に下げられるというよりは、きちんとワクチン代のほうで検討していただきたいというのがお願いです。

○脇田部会長 そのほかにいかがですか。川俣委員お願いいたします。

○川俣委員 行政としても、かなり金額が高いのかなと。また、実はロタウイルスに感染すると、保育園とか幼稚園の先生の対応がとても大変なのです。消毒にしても、普通のものよりも手間がかかりますので、できましたら予防接種で防げるというのは大きなことかと思います。ただ、この価格でいくと、うちのほうからすると弱小市なので、とても大変になってしまいますので、できましたら。イギリスも何年と掛かっていますが、価格を下げて、皆さんが予防接種を全体的に受けられるとなれば、薬品会社にしても数がたくさん出るということになると思いますので、価格的なところは下げていただけるように、こちらからも要望を出しているようなので、お答えいただけると有り難いと思います。安全性も確立されていていって、補償もできると、私どもとしても市で受けてくださいと言った後に、やはり障害がたくさん出るというよりは、対応能力があるということを父兄など保護者に伝えられることが一番なのかと思います。後で障害が出ますと言われることを、前もって分かって対応しますということが明記されていることと、先ほどと同じですけれども、料金も掛からないということは、その後にとって、脳の障害を受けるということもありますので、是非とも低価格で押さえていただいて、ひどくならないこと、日本は安全だということを証明できるようにしていただけると有り難いと思います。

○脇田部会長 部会としても、是非メーカーのほうに努力していただければ有り難いという意見だと思います。その他の委員の皆様はいかがでしょうか。磯部委員お願いいたします。

○磯部委員 法律の者なので詳しいことはよく分からないのですけれども、今の議論を伺っていて、先ほどの1,000人に1人の腸重積症が、もちろんワクチンによるものかどうなのかは分からないときに、疑わしきは被害を受けた方の利益にということで補償の対象にしていくと、そういうポリシーでいくべきだろうということ、それについては全く賛成です。しかし、補償さえすれば何でもやっていいという趣旨でないことは理解しているのですが、1,000人に1人であると。腸重積症というのはどんな病気なのか、どのぐらい怖いものなのかということもよく分からないのですが、トータルとしてのリスクが、その他の普通の定期接種と比べて、特に重大だというか、リスクが高いということではないのですね、ということの確認です。

○脇田部会長 腸重積症が自然発症するのが1,000人に1人ということです。ワクチンを接種しなくても1,000人に1人は発症する。ただ、そのワクチンを全員に接種するということになれば、当然ワクチンを接種したタイミングで腸重積症を発症してくる例もある。そういうところが重なってくると、予防接種との因果関係が十分に解明できないのだけれども、ワクチンを接種した後に腸重積症を発症してくる例も出てくるだろうというようなことが心配されます。

 一方で、ロタウイルスワクチンによる腸重積症の副反応というものも報告はされているわけですけれども、ただ、それが自然発症例よりもうんと増えるというようなデータはないと理解しています。ですので、実際にワクチンの安全性としては、定期接種にしても私は十分いいのではないかと理解しています。自然発生との重なりと言いますか、そこの切り分けが難しいのではないかということがあるということだと理解しています。中山委員お願いいたします。

○中山委員 私も伊藤先生がおっしゃったように、ワクチンが原因でない腸重積症もワクチンの後に発生したものであれば副反応に含めるというのでよろしいと思います。それを補償することにも異議はないです。その場合に、補償費用がどのぐらいになるかというのが試算されているのかは分からないのですが、もしそれを全部含めた上での補償が費用対効果の費用のところに乗ってくるのかどうか。そこを試算しないで費用対効果の議論ができるのかどうかがちょっと疑問に思いましたので、もし池田先生がお分かりでしたら教えてください。

○脇田部会長 事務局がいきますか、それとも池田委員お願いできますか。

○池田委員 現在の試算では、接種をしないときにも一定の数の腸重積症の患者さんが発生します、接種をした場合には、それが僅かに増える、その僅かに増える分の費用は乗せてあります。けれども、今の議論のように、一定の条件を満たす腸重積症の患者さんはワクチンによるかどうかということの判断がつかない。その場合に、全てこれを補償の対象とするとなると、非接種群の費用と接種群の費用での腸重積症に対するコストの考え方が変わってくるので、もしそれを含めるとすれば、この費用対効果の推計結果というのはまた変わってまいります。ただ、ワクチンを接種してからどのぐらいの期間の者を対象にするのかとか、腸重積症でも手術まで至らない軽度なものも多分ありますので、そういうところをどこまで入れるかというのは、もし決められるものであれば、もちろん推計は可能なのですが、本日初めてそういう議論が出てきたものですから。もし必要であれば、推計のほうはさせていただきます。

○脇田部会長 非常に大事なポイントでもあると思います。費用対効果という観点からは重要なポイントですので、可能であれば、その費用対効果について、それを更に入れた形でも出していただければと思います。やはり、そういう補償の問題もそうなのですけれども、腸重積症というものに関しての周知が重要であろうと。副反応、それから一般的に発症するものの周知というものを、十分にこの接種の前にしていくことも重要かと感じています。多屋委員お願いいたします。

○多屋委員 初回接種の後の1週間以内は若干腸重積症が増えるということは、海外でも国内でも認められています。1回目の接種は、米国では生後146日まで、15週を過ぎたら初回接種はもうしないというところまで明記されています。ヨーロッパでも、もっと早い時期までというようになっていますので、定期接種になった場合は、1回目の接種の時期については、しっかりと決めていくということがいいのではないかと思います。なぜかと言うと、後ろになればなるほど、自然発生的な腸重積症の頻度が増えてきますので、ワクチンによって起こる腸重積症を少しでも減らすということにつながるのではないかと思います。

○脇田部会長 先ほどの説明の中でもありましたが、3か月以降に腸重積症の自然発症が増えてくるということですから、1回目の接種をなるべく早い時期に設定するということも重要なポイントだろうと思います。そのほかにはいかがでしょうか。釜萢委員お願いいたします。

○釜萢委員 私の記憶では、定期接種に取り上げているワクチンの健康被害救済の費用をワクチン代に上乗せしているということは、これまでなかったように思うのです。事務局に確認をします。

○脇田部会長 事務局いかがでしょうか。

○永田予防接種室長補佐 事務局が認識している範囲においては、そのような過去の例、被害救済の分をワクチン価格に上乗せして考えるというのは、これまでなかったと考えております。

○林予防接種室長 補足させていただきます。予防接種法上の被害救済については税金で賄われておりますので、そのような取扱いです。任意接種については、企業からの拠出金を基にしておりますので、ワクチン価格の中に含まれているというふうに考えています。

○釜萢委員 私が伺いたかったのは、定期接種の件です。

○脇田部会長 費用対効果を考える際に、その点を含めるということもないということですか。

○林予防接種室長 これは研究次第だとは思いますけれども、今回行われている研究については、そういう部分について、資料の記載上は含まれていないというように書かせていただいております。詳細は確認する必要はありますけれども、含まれない推計がここに載っているというようにお考えいただければと思います。

○脇田部会長 そのほかにはいかがでしょうか。活発な御意見、御議論を頂きまして誠にありがとうございます。ワクチン評価に関する小委員会の取りまとめについては、当部会としても大きな異論はないということで了承させていただければと思います。その上で、本日御議論を頂きましたポイントについては取りまとめていただいて、「予防接種法の対象疾病とするには、現状の接種にかかる費用を更に低減することが必要である」ということを結論としたいと思います。さらに、現在メーカー2社のほうにはどのような対応が可能かということで、回答をお願いしているということです。その点の回答が頂ければ、その回答の内容を含めて、改めてまた部会のほうで定期接種化に関する議論をさせていただければと考えておりますが、いかがでしょうか。ありがとうございます。それでは、議題1に関しては以上で議論を取りまとめたいと思います。

 続きまして、議題2の「予防接種施策の現状について」に入ります。資料2-1と資料2-2について事務局から説明をお願いします。

○永田予防接種室長補佐 資料2-1に基づき、予防接種施策の現状について御説明いたします。まず、背景ですが、事務局としては今後、予防接種施策全般について、見直しを行っていきたいと考えております。こういった観点から、平成3010月に行われた第24回の基本方針部会でも説明しておりますが、その部会から時間がやや空きましたので、本日はまた改めて、現在の予防接種制度全般について御説明し、幅広い観点から委員の皆様の御意見を頂ければと考えております。

 まず、定期接種の実施状況について御説明いたします。2ページを御覧ください。現在の定期接種対象のワクチンについてですが、A類疾病・B類疾病という2つの類型で分けており、それぞれスライドに示したような感染症で、現在、定期接種が行われております。

 続いて3ページ、平成25年に前回の予防接種法の改正をしておりますが、それ以後に定期接種化されたワクチンについて、それぞれ表にしております。平成254月にヒトパピローマウイルス感染症、Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症の3つ、平成2610月に水痘、高齢者の肺炎球菌感染症、平成2810月にB型肝炎について定期接種化されたところです。また、先ほども御議論いただいたロタウイルスワクチンなどについても、御議論いただいております。

 次の4ページですが、定期の予防接種の実施率について示したものです。下の表については、地域保健・健康増進事業報告による実数を分子とする接種実施者数を、人口推計から標準的接種期間を考慮した推計値である対象人口で割り戻しておりますので、対象人口が実数値ではないということ、また、標準的接種期間を過ぎて接種した者が一定数含まれること等の理由により、予防接種実施率が100%を超えているものもありますので、御留意いただければと思います。そういった観点で4ページと5ページ、6ページと見ていただければと思いますが、定期接種、特にA類のものについては、非常に高い接種率のものが多くなっておりますし、近年、接種率が上昇している部分も多いかと考えております。また、インフルエンザやB型肝炎などのB類接種についても御覧いただければと思います。

 続いて、定期接種化の検討をしているものについて、それぞれの状況を説明します。8ページを御覧ください。広く接種を促進する疾病・ワクチンに関する検討の進め方について、こちらは、第13回の基本方針部会で示した資料です。薬事承認がされた何らかのワクチンがあった場合については、ワクチン評価に関する小委員会という所で議論がスタートするということです。

 その小委員会においては、右側の1番、広く接種を促進することの是非について検討を行い、国立感染症研究所にファクトシートというものの作成依頼をする形となります。この際に、科学的知見の収集方法や必要な論点などを具体的に小委員会で御議論いただく。その上で、国立感染症研究所においてファクトシートが作成され、その後、ファクトシートに基づいて議論が行われておりますが、そのファクトシートだけでは足りないような論点や知見については、厚生労働省の研究班等とそれぞれ協力しながら、事務局において追加の資料等を作成するという形で御議論いただいております。

 ワクチン評価に関する小委員会において、中間報告ないしは議論の取りまとめという形で、予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会、本日開催されている基本方針部会のほうに、その結果が報告され、改めて定期接種とすべきかどうかといったこと、例えばA類疾病とすべきか、B類疾病とすべきか、対象者をどうすべきかといったことは、この基本方針部会のほうで御議論いただくという形となっております。その上で、予防接種・ワクチン分科会で一応御承認を頂き、定期の予防接種に位置付けること等が、現在の日本の定期接種になっていく流れです。

 続いて9ページを御覧ください。現在この小委員会において、定期接種化を議論中のワクチンについて、それぞれの概要をまとめております。まず、4番目のロタウイルスワクチンについては、先ほど御議論いただきましたが、本日、基本方針部会に報告しています。また、2番目の不活化ポリオワクチンと、一番下の沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチンについては、先日行われた731日の第13回ワクチン評価に関する小委員会において、定期接種化に向けて今後の論点について整理したところです。

 そのほか、おたふくかぜワクチンについては、これまでも長く議論いただいておりますが、広く接種をするに当たっては、より高い安全性が期待できるワクチンの承認が前提となるため、新たなMMRワクチンの開発が望まれるといった御意見があり、企業のほうに開発要請をしております。また、単味ワクチンについて、副反応に関するデータを整理して、引き続き検討することとなっております。続いて沈降13価肺炎球菌結合型ワクチンですが、平成31年度以降も、引き続き65歳の者に対して、PPSVを用いた定期接種を継続することが望ましいという結論を頂いておりますが、PPSVの再接種やPCV13を用いたハイリスク者への接種については、引き続き検討することとなっております。続いて帯状疱疹ワクチンですが、帯状疱疹ワクチンによる疾病負荷が一定程度明らかとなったものの、引き続き期待される効果や導入年齢に関しては検討が必要とされております。

 続いて10ページ以降で、供給と流通について御説明いたします。11枚目ですが、一般的なワクチンの供給と、予防接種を受ける関係者の関係です。いわゆるワクチンメーカーに、製造業者、製造販売会社、販売会社(販社)とありますが、国内市場に流通させる新しいワクチンの研究開発・治験等を行っていただいており、製造販売業者から卸売販売業者のほうに販売が行われ、卸売のほうから、今度は予防接種を実際に実施していただく市区町村や日本医師会などへの流れができているということで、市区町村によって日本の定期予防接種が実施されているということです。

 12枚目のスライドを御覧ください。左側に不活化ワクチン、右側に生ワクチンの製造の流れをそれぞれ記しております。左側には精製の不活化というものがあり、右側には種ウイルスの接種というものがありますが、いずれも共通して言えることは、ワクチンの製造というのは非常に複雑な多くの工程を要するということと、また、それぞれの工程に時間が掛かりますので、1つのワクチンの製造についても、非常に時間が掛かるということを見て取っていただければと思っております。

 続いて13枚目の国家検定についてです。国家検定以外の一般的な医薬品については、それぞれ製造されているメーカーにおいて自家試験が行われ、そこで有効性・安全性等が確認された後に供給されるのが一般的なところですが、国家検定の対象品目となっているワクチンや血液製剤については、自社試験を行った後に国立感染症研究所において国家検定ということで、ダブルチェックという形で安全性が確認されております。この国家検定を経たものが供給されていくという順番になっております。下の部分については、迅速な対応が必要となった場合の例外的な運用として、その国家検定の中に並行検定と短縮検定というものがあることを図示しております。

 続いて14ページ、15ページには、各ワクチンの年間生産量と接種人数等を記しております。それぞれ対象疾患を一番左の欄に整理しておりますが、ワクチンによって、例えば一番上の4種混合ワクチンにおいては、複数の製造販売業者がいるというものもありますし、あるいは他のワクチン、例えばHib感染症や小児の肺炎球菌感染症などについては、1つの企業、製造販売業者によって作られているというものもあります。年間生産量や定期接種の実施者数等については、それぞれ表に記しているとおりです。

 続いて15ページ、ワクチンの需要と供給についてを御覧ください。上で図示しているように、需要と供給については、それぞれのバランスが非常に大事になっておりますが、下の欄に示すように、近年においては毎年何らかの形で需要と供給の課題が出ております。需要が増大する主なリスクとしては、定期接種の需要の変動や任意接種の需要の変動、供給側のリスクとしては、例えば天災等によって工場が壊れてしまったといったところでの供給の遅延や減少、ないしは個別事案において供給の遅延や減少がそれぞれ起きることがあります。これらの観点から、事務局としては、今後も安定的なワクチンの供給体制について検討が必要であると考えております。

 続いて副反応報告について、161718ページの説明をいたします。17ページを御覧ください。副反応報告疑いというものは、前回の平成254月の予防接種法改正で新たに設けられた制度ですが、医療機関から、現在は医薬品医療機器総合機構(PMDA)に副反応疑い報告がなされ、PMDAのほうで各種の調査などが行われます。その結果が厚生労働省に共有され、厚生労働省においては、厚生科学審議会副反応検討部会という所で、医薬局が運営する薬事・食品衛生審議会と連携しながら、それぞれのワクチンの副反応の発生状況等を確認しております。

 18枚目ですが、副反応疑い報告の提出方法についてです。平成261124日以前については、健康局、医薬局、PMDAのそれぞれが、予防接種法に基づく報告や、医薬品医療機器等法に基づく報告を受けてきておりますが、平成261125日以降については、医療機関や企業からのそれぞれの報告が、まずはPMDAに一元化されて報告されるという形になっております。先ほど御説明したとおり、PMDAのほうで厚生労働省に対してそれらの情報がまとめられた結果、副反応検討部会と安全対策調査会において、御議論いただいているという形となっております。

 19枚目は、それぞれの定期接種の対象となっている各ワクチンについて、副反応疑い報告の報告件数や副反応検討部会での審議回数を示しております。それぞれ製造販売業者からの報告、医療機関からの副反応疑いの報告、その重篤症例について記しております。

 続いて健康被害救済について、先ほどのロタウイルスワクチンのところでも御議論いただきましたが、21ページを御覧ください。ロタウイルスに限らないことですが、予防接種の副反応による健康被害は、大変申し訳ないことですが、極めてまれではあるが不可避的に生ずるものであることを踏まえ、接種に係る過失の有無にかかわらず、迅速に救済をするという趣旨で、予防接種の健康被害救済制度というものがあります。予防接種法に基づく予防接種を受けた方に健康被害が生じた場合については、その健康被害が接種を受けたことによるものであると厚生労働大臣が認定したときは、市町村より救済が給付されるという形となります。こういった流れにおいて、専門家により構成される疾病・障害認定審査会という所で、現在、御議論いただいております。

 予防接種に係る健康被害に対する給付額の比較については、22ページを御覧ください。どのような額で給付をするのかということについては、臨時接種及びA類疾病なのか、それともB類疾病なのかという整理が、まずあります。そういったものではない場合、いわゆる任意接種については、右側の医薬品副作用被害救済制度において救済が行われております。医療費、医療手当等については、それぞれ表に示しております。

 こういった健康被害認定に係る事務フロー図を、23ページに示しております。申請者については、市町村にまず申請をした上で、市町村のほうで予防接種健康被害調査委員会が行われ、それが都道府県知事に進達され、厚生労働大臣に進達され、疾病・障害認定審査会において議論が行われます。そして疾病・障害認定審査会のほうで厚生労働大臣に答申を行い、厚生労働大臣から都道府県知事、市町村長に対して、また最終的には申請者に対して通知が行われるという形となっております。

 24枚目を御覧ください。健康被害の救済給付に係る審査件数等の実績ですが、それぞれ平成26年度以降の健康被害救済の審査件数について実績を示しております。直近年の平成30年度については、審査件数が108件、認定件数がそのうち78件となっております。右側にはワクチン別の認定等の件数を示しており、左側にワクチンの欄がありますが、それぞれ認定と否認について表示しております。

 最後に25枚目ですが、平成3010月に行われた予防接種基本方針部会において頂いている、予防接種施策の見直しについての委員会の御意見を記しております。「必要なワクチンであっても、定期接種の対象年齢を超えると任意接種となってしまうが、国民がより接種を受けやすい体制を作るという観点から、幅広に対象年齢を設定すること等について検討してはどうか」「ロタウイルスワクチン、おたふくかぜワクチンについて、今後どのように定期接種化の検討を進めていくのか、見通しを示すべき」「ワクチンの安定供給を確保するため、実効的な対策を講じるべきではないか」「健康被害救済制度について、国の関与度合いにより救済の内容に差が設けられているが、他にも接種を受ける者の年齢等勘案する要素があることから、改めて検討し直してはどうか」以上のような御意見を頂いております。駆け足で大変恐縮ですが、事務局からの説明は以上です。

○脇田部会長 予防接種施策の現状について御説明を頂きまして、こちらの改正に向けた部会からの提言をまとめるということで、今後、議論を進めていくということですね。

○永田予防接種室長補佐 すみません、資料2-2の説明を忘れてしまいました。資料2-2を御覧ください。今、座長からも頂きましたが、今後の進め方について、こちらの事務局の案ですけれども、こういった形で予防接種施策全般に係る見直しというか、様々な再検討ということで、まずは第1ラウンドという形で、年内をめどに予防接種に関する施策の現状に関しての様々な意見交換をしていただき、また学会や関係団体及び自治体等から、それぞれヒアリングを進めていきたいと考えております。こういった意見交換やヒアリングで出た御意見を踏まえ、予防接種制度の見直しに関する論点整理を行いたいと思っております。年明け以降、第2ラウンドと称しておりますが、そういった論点ごとに更に深掘りするような形で詳細な検討を行い、予防接種施策の見直しについて、提言を取りまとめていただければと考えているところです。事務局からの説明は以上です。

○脇田部会長 今、資料2-2の御説明を頂きましたけれども、この予防接種施策の改正に関する部会からの提言を取りまとめるということを、今後、行っていくわけです。その第1ラウンド、第2ラウンドとありましたが、それについてのキックオフというような形で、現在の現状を御説明いただきまして、今後は、この現状に関する意見交換を進める、それから様々な団体からのヒアリングを行っていくというようなことで、論点整理を行っていくということです。年明け以降に更に詳細な検討を行って、提言を取りまとめていきたいということです。

 ですから、今日は内容の細かいところまでは議論しないということだと思いますけれども、皆様から何か御質問、御意見があれば頂きまして、さらにヒアリングを進める上で、どういった対象にヒアリングをしていくのかということに関しても御意見を頂ければと思いますので、忌憚のない御意見、御質問等を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。

○伊藤委員 幾つかあるのですが、まず1つは生産流通部会として、おたふくかぜワクチンの開発に関しては遅れているのは大変残念だと思っています。一方で、やはり現行の状況を容認すること、新しいのが出てくるまで、いつまでも待っている、雨が降るのを待っているというわけにもいかないだろうと思っています。先ほど申し上げたのですが、一定程度の副反応が出てくるというのは、ワクチンではしようがないのだと、その代わり補償をきちんとすることによって、集団的な防止をするのだという考え方、そういう社会としてのコンセンサスが得られるのであれば、現行のおたふくかぜワクチンでも使えないわけではないはずだと思っていて、そちらに議論の切替えができないかなと、常日頃思っています。それが先ほどのロタワクチンのところで発言させていただいた、いわゆる基本的なワクチンの副反応に対する考え方を変えていただきたいということも背景にあると思っております。それが1点です。

 もう一点が、脇田部会長を目の前にして言うのは、ちょっと気がひけるのですが、国家検定がワクチン供給についての足かせになっていないとは言い難い。ワクチン全ロットの調査をしなければ出ていかないというところが、やはり引っ掛かっているような気がするのです。よその国では問題になりましたけれども、昔と違って、今の日本のワクチンで品質の問題が出てくるかどうかとは分からないのですが、企業の責任できちんとしていただいて、国家検定に関しては例えばサンプルモニタリングのような形で同時並行して進めることで、マーケットに早く出せないかと。とりわけインフルエンザワクチンについては、国家検定が終わらないからマーケットに出てこないということもあるので、そんな形への道筋が開けないかなということ。

 それから、昨今いろいろな形で問題になっている、生物製剤基準とかGMPの基準が、余りにも厳格が過ぎるところがあって、良かれと思って変えてしまったのが、基準からいうといけないというので問題化していることもあるのだろうと思うと同時に、技術革新を阻害しているのではないかという懸念を持っています。そういう意味で、多少のゆとりというか、企業に対して裁量権を任せることが可能ではないのかという議論があってもいいのかなと考えておりましたので、せっかくの機会ですので、意見として申し述べさせていただきました。

○脇田部会長 ありがとうございます。1点目は、おたふくかぜワクチンの定期接種化へ向けた進め方が非常に時間が掛かっているというところで、少し考え方を変えて進めたらいかがかという御意見。それから2点目は、ワクチンの供給において、国家検定が足かせとなっているのではないかというところで、それは私からいろいろ申し上げるのも難しいので、また御議論いただければと思います。そのほか御意見、いかがでしょうか。

○池田委員 各論のことは、今後ヒアリング等も含めて、また議論があるのだと思うのですが、8ページ、9ページの定期接種化の検討という所の絵とか検討の審議状況などを見ますと、1回例えばファクトシートがまとめられて、その時点でのエビデンスというかファクトがまとめられて、その後にいろいろな懸念事項などがあって、慎重に議論が進んだり時間が掛かっているものもあるのですが、その間に恐らく新たな有効性・安全性に関するエビデンスが各国で出てきたり、あるいは罹患率が変われば費用対効果というものも変わってきます。そうした状況の変化もいろいろあると思いますので、1回ファクトシートができて、それを基にずっと議論するのではなくて、新しいエビデンスをアップデートしていくような仕組みが、この中に更に含まれる必要があるのかなと感じました。

 あと、これは定期接種化の可否に関しての部分の絵なので、その先が書いていないだけかもしれないのですが、1回この定期接種化という形になったとしても、接種方法の見直しであるとか、あるいはその他、新たな海外からのリスクベネフィットに関する情報が入ったとか、そういうものについて定期的に見直していくような仕組みも必要なのかなと感じました。ここに書いていないだけかもしれないのですが、ちょっと発言させていただきました。

○脇田部会長 ありがとうございます。ただいま池田委員のほうからは、ファクトシートの作成ではなくてアップデートに関してということで、御意見を頂きました。もちろん疾病負荷、あるいは様々な小児の定期接種化によって成人への疾病負荷が変わってくるとか、あるいは小児の罹患率が下がることによって成人への負荷が変わってくるとか、様々な環境の変化がありますから、当然ファクトシートのアップデートというのも、今後重要になってくると思いますので、そういったところの仕組みをきちんと作っていただくというのが望ましいという御意見だと思います。それから、定期接種化されたワクチンに関して、その後の見直しの仕組みを作っていく必要があるのではないかということです。

○多屋委員 今、ファクトシートのお話が出ました。8ページでは、国立感染症研究所では6か月をめどにファクトシートを作成と、かなり限定した期間が明記されています。ファクトシート作成を始めますと、担当者は休日返上で作成するわけですけれども、その後の検討期間が定められていないために、ファクトシートは、直近で作ったものでも2年ぐらい既にたってしまっていますので、その後の議論もある程度期間を定めて、頻回にこういう機会を設けていただけると有り難いなと思いました。最近は、随分計画を立ててくださっていますので有り難いのですけれども、是非ファクトシート作成以降の部分も、ある程度期間を定めていただきたいなと思いました。

○脇田部会長 その点は了承しました。アップデートの仕組みを作るということですね。ありがとうございます。そのほか御意見いかがでしょうか。

○釜萢委員 先ほど伊藤先生から既にお話いただいたし、今の多屋先生のお話とも関わるのですけれども、ムンプスに関しては、新たな優れた神経毒性の少ないもの、あるいはMMRでというのが平成25年に議論されていますが、それから既に6年たっていて、現状で新しいものは、なかなかまだまだ難しいわけです。一方で、耳鼻咽喉科学会から出ているように、やはり毎年かかることによって一定数の聴力障害が出ているということも踏まえると、これは現行のワクチンを是非早く使えるようにすべきだと思っている者が多いのですけれども、なかなかそういう形で議論が進んでいかないことに対しては、是非早く進めたいなと思っております。

 それから、この小委員会の件の、定期接種化に向けて今後の論点を開始した、今年の7月の小委員会の御決断は大変有り難く思っておりまして、この2つの不活化ポリオとDPTの関係は、是非早く進めていただきたいと思います。

 それから、やはりどうしても、この基本方針部会がしっかり役割を果たすべきだと私が思っているのが、HPVワクチンです。これは、厚労省の事務方にとってなかなか難しい問題であることは分かりますけれども、これまでの経緯を踏まえて、やはりしっかりと、いろいろな方面からの議論をもう一度整理して、そして国民にとって何が大事なのかということを、先ほどの副反応のことも、国民によく分かってもらうというのはそのとおりでありまして、それを踏まえた上で、是非方向性を決めなければいけないと思っております。

 関連して、今日は市長会から川俣委員にお越しいただいていますけれども、私が調べた範囲でも、市町村において予診票を送っている所もあるのです。今は積極的勧奨の差し控え中ですけれども、これは具体的には予診票を個別に送るかどうかというところが一番大きなポイントで、市町村によっては送っている所もあるのです。ですから、そういうところをむしろ、私は全国市長会に今後お願いしていこうかと思っていますが、その辺りの実施主体である市町村が、そういう判断ができるように、国がそれを邪魔しないようにしてほしいなと思っております。

 それからもう一点、長くなって恐縮ですが、風しんの追加接種の件です。今、非常にメーカーに増産を要請して、それにメーカーがよく応えてくれていますが、安定供給に関しては、林室長の予防接種室に日々御苦労いただいていることは、本当に分かっているのですけれども、もし仮に余ってしまった場合の対応について、やはりきちんと決めておいて、メーカーが不安なく増産をできる、むやみやたらに作るわけでは決してありませんので、しっかり必要に応じて増産ができる体制を国として整えていただきたい。これは前から何度も申し上げているところですけれども、医師会として強くお願いしておきます。以上です。

○脇田部会長 貴重な御意見をありがとうございます。おたふくかぜワクチン、それからHPVワクチンに関して、やはり進めていかなければならないということは、多分、共通の認識だろうと思います。ですので、この基本方針部会においても議論を十分に深めて、これらのワクチン、おたふくかぜワクチンに関しては定期接種化、HPVワクチンに関しては勧奨の再開ということだと思いますけれども、そちらに何とかできるように議論を進めていきたいと思います。

 それに関しては、先ほどロタワクチンのところでいろいろ議論がありましたけれども、やはり救済制度を、とにかくベネフィットとリスクについて十分に周知して、さらに副反応が起こった場合には救済をしっかりやっていくのだということを、国民の皆様に広くお示ししていくということが重要だろうと考えております。そのほか、いかがでしょうか。

○磯部委員 一番最後の健康被害の所の25ページで、宮﨑先生が御発言されたのではなかったかと思いますが、国の関与の度合いで救済の内容に差を設けているのは、検討し直してはどうかというものについてです。恐らく公権力の行使、若しくは公的関与の度合いに応じて救済の内容に差が付けられているといったことは、逐条解説にも書かれているところで、なぜ接種勧奨か努力義務かといえば、それはやはり集団予防を目的としているか、個人予防に重きを置くかという、A類・B類という分類が重要なわけで、そこは国の関与の度合いがあるから大事というよりは、なぜ国の関与があるかといえば、そもそもそういう目的が違うからだというところに帰着するのであろうと思います。ですので、集団予防のために一部の人に特別な犠牲が生じたという場合に、補償の額が厚くなるということの合理性はあると思っておりますので、それは維持したほうがいいと思いつつ、その上でいろいろ議論したほうがいいと、様々にもっと考慮することがあってよいだろうという議論には応じたいと感じました。

 その上で、今、HPVの話もありましたけれども、せっかく5年に1度というか、何だったらもう少し時間もたっているわけで、さらに今年はまだ第1ラウンドですから、来年まだ時間があるということであれば、本当にA類・B類という分類自体、あるいはその間というようなものもあっていいのか。そういう意味では、もっと制度を根幹から見直すような議論ができたらいいのではないかなという感想を持っております。以上です。

○脇田部会長 ありがとうございます。かなり議論は大きくなるかもしれませんが、予防接種のA類疾病・B類疾病といった疾病分類の見直しもできれば、という御意見だったと思います。そのほか、いかがでしょうか。

○川俣委員 先ほどから言われているように、健康被害の認定なども市町村が結局、最終的にするのです。でも、申立ては都道府県知事にするので、その辺の県の対応が最終的になくなってしまうという制度も、ちょっと違うのかなというのもあります。予診票を渡すことなどは、きっと事務レベルでもできることだと思うのですが、最終的に市町村に責任が問われるというのがどうなのかと、本当に思ってくるところもあるので、やはり、この辺は県にも参加していただいて、やれる制度のほうが、被害者認定には大きな意味があるのかなと。

 このままでは、小さな市町村1個だけの単位がみんな集まらないと、国に言えないのかなというのも出てくるのではないかと思いますので、ちょっとこの辺は県に入ってもらうとか、何かできるといいなと、このフロー表を見ると、ちょっと感じてしまったので。今までうちのほうではなかったので、実感としてなかったのですが、その検討を今後していただけると有り難いなと思います。

○脇田部会長 御意見、ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。

 かなり御意見を頂きましたので、今日はこの程度にとどめたいと思います。今後見直しに向けて提言をまとめる、この部会でまとめていくということを目指し、より具体的に論点も整理しながら議論を進めていきたいと考えております。今日の御意見につきましては、また事務局のほうで取りまとめをしていただき、次回から更に具体的な議論を行っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 議題2から報告事項に移りたいと思います。報告事項は、主なもの3点とその他ということになります。まず、報告事項の1つ目の「風しんの追加的対策について」の御報告をお願いいたします。資料3を御覧ください。

○賀登予防接種室長補佐 資料3で、風しんの追加的対策の現状について御報告申し上げます。感染症部会との合同部会などで昨年から御議論いただきました、風しんの最新状況です。

 まず、2ページを御覧ください。7月末の時点で、2,000例を超える患者数が現在も発生しております。1週間当たりの発生数は、一時期よりは落ち着いていますけれども、下がり切っているという状況ではございません。また、2019年に入ってから、先天性風しん症候群の患者さんが3例報告されている状況でございます。

 続いて、3ページを御覧ください。地域別に分けた患者数ですが、こちらのほうは昨年の傾向と大きく変わっておりませんで、大都市圏が中心の感染状況が発生しているということでございます。また、4ページを見ていただきますと、40代の男性をピークに患者数が発生しているというところについても、特徴は変わっておりません。

 5ページ目ですが、昨年12月に取りまとめました追加的対策の概要です。抗体検査と予防接種を組み合わせて3年間で実施するというようにされており、その際、居住地域外でも予防接種や抗体検査が受けられるように、市区町村から送付されたクーポン券を利用いただくというような仕組みにしております。8ページを御覧いただきますと、今年は第一弾として、40歳から47歳を対象にクーポン券の送付をさせていただくとしております。

 9ページがクーポン券の配布状況です。そういった取組はこれまでにない取組ですので、市区町村のほうには準備だったり対応について大変御尽力を頂いたわけでございますが、クーポン券の配布状況につきましては、7月までに9割以上の市区町村で配布できているという状況でございます。

 その使用状況が10ページ目です。4月、5月分の実績です。クーポン券が配布された実績のものですので少し低いのですが、抗体検査で12.5万件、予防接種で1.7万件の実施が確認できております。こういった状況を注視しながら、今後は実施率の向上に努めていく必要があると考えております。以上です。

○脇田部会長 風しんに対する追加対策について御報告いただきました。現在、4月、5月の抗体検査、予防接種実績が出ていますけれども、これは予想どおりであるのか、それとも低めなのか、その辺はいかがでしょうか。

○賀登予防接種室長補佐 全体の目標として、抗体検査は330万人、予防接種は70万人に受けていただくということを前提に考えており、その数に比べると12.5万件とか1.6万件という数字はまだ低いかと思っておりますので、これからどうやって実施率を上げていくかというところに力点を置かないといけないと思っております。

○脇田部会長 御質問等ありましたらお願いします。

○多屋委員 風しんのほうは、今お話がありましたように、まだ流行は止まっていないと思います。今回、この結果を初めて拝見しまして、全国で見てもクーポン券の使用率は1%にとどまっている、この数字はかなり大きなことと考えています。

 これから半年間、クーポン券は多分、年度末までの使用期限だと思いますので、あと半年間、企業様にも随分御協力を頂かないといけないと思うのですが、もう少し受けやすい環境づくりをしっかり構築していかないといけない。せっかくここまでして作っていただいた国の制度が、有効に活用されていないというのは本当に残念なことなので、あと半年、いかに受けていただきやすい環境づくりをするかを考えていっていただきたいと思います。

○脇田部会長 ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。

○釜萢委員 10ページの4月、5月の抗体検査・予防接種実績というのは、今後はどのような頻度でまた公表されてくるのでしょうか。

○賀登予防接種室長補佐 この実績自体は、どういった方法かというのは、この方法に必ずしも限られないのですが、四半期に1度の頻度では少なくとも出せるかと思いますし、それよりももうちょっと、実施当初のところは細かく見たほうがよいという御意見もあるかと思いますので、なるべく細かく出せるように関係者と調整を進めていきたいと思います。

○脇田部会長 よろしいですか。

○釜萢委員 まだ、4月、5月はクーポン券の発送も十分できない所も多かったので、この値が今後もずっと続くようでは困るわけなのですが、なるべくリアルタイムに近い接種あるいは検査の状況を知って、限られた時間なので、いかに国民の皆さんにアピールしていくかが大事。その中で、多屋先生が言われたように、もうちょっと方法を工夫して、検査の率を上げるというようなところもやっていかないと、何しろ限られた時間なので、とても危機感を持っております。引き続き、その辺りもよろしくお願いいたします。

○脇田部会長 よろしくお願いします。そのほかいかがでしょうか。この対策は始まったばかりといっても、もう既に8月になっておりますので、対象者を限って少し狭めて1年目を始めたというところですが、これは利用していただかないとなかなか対策が進まないというところですので、是非よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。

○川俣委員 ちょっといいですか。

○脇田部会長 川俣委員、お願いします。

○川俣委員 正直言って、40代男性が、他の医療機関にも一番来ない年代なのです、いろいろな部門で。医療というより「自分は元気だ」ということしか感じていない方が多いので、ここにいる方も同じだと思いますけれども、病院に行こうという気持ちにしてもらう。まずは御自分がなっているというより、他人に移さないためというのをアピールしていただけると違うのかなと。あと、お子さんたちにも言ってもらう。「お父さん、何で行かないの」と。それが一番強いのかなと思うので。

 うちのほうでも、いろいろな意味での検査を一番受けないのは40代なのです。仕事も忙しいので、よっぽど言わないと、「受けていますか」って皆さんに返したいぐらいなので、是非とも受けてもらえるよう、市町村も頑張りますけれども、大きなところで、国としても対策していただけると有り難いなと思います。よろしくお願いします。

○脇田部会長 ありがとうございます。事務局、よろしいですか。

○賀登予防接種室長補佐 御参考までですが、厚生労働省のほうで取り組んでいた広報のところを簡単に御説明させていただきます。710日だったと思いますけれども、NHKの「ガッテン」という番組で、昔は「ためしてガッテン」という番組でしたが、風しん特集を組んでいただいたりとか、今、広報活動の部分について充実しております。ただ、厚生労働省からの発信というだけでは、なかなか声の届かない箇所がたくさんあると思いますので、自治体の方にもよく御協力いただいたりとかして、より多くの方に、企業さんも含めて御協力いただける体制を今後しっかり構築していくというところで、頑張っていく必要があるかと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○川俣委員 こちらこそ。

○脇田部会長 よろしいでしょうか。はい、ありがとうございました。

 続きまして報告事項の2つ目の「平成30年度の麻しん風しん予防接種の実施状況について」です。資料4で御報告をお願いいたします。

○賀登予防接種室長補佐 資料4、平成30年度の麻しん風しんワクチンの接種状況でございます。第1期が98.5%、第2期は94.6%というパーセンテージでした。平成29年度よりも、それぞれ実施率は向上しているという結果です。簡単ですが以上です。

○脇田部会長 多屋委員、お願いします。

○多屋委員 非常にサラッと話されましたが、2018年度の結果、第1期は本当に素晴らしい結果になっていまして、全都道府県が95%以上の接種率になっているということ、2期はあと0.4ポイントで目標の95%になっているというのは、多くの自治体や保健所、医療機関の皆様方の努力の結果と、保護者の皆様の「受けよう」という思いが強かったからだと思います。その辺、十分エンカレッジをしていただきたいと思います。

 1つ、今回改定になった麻しんの特定感染症防止指針で、都道府県ごとに95%以上というのが目標だったのですが、今度は市区町村ごとにも目標を95%以上にしましょうという改定がなされたので、市区町村ごとの結果も是非公表していただいて、それぞれの所で目標が達成できるようにお願いできればと思います。

 最後に、子供たちの接種率がすごく高くなっているのはとても良いことで、今、風しんの患者さんの95%以上が大人になっています。子供たちの接種率がぐらつくと大変ですから、ここは維持しつつ、大人へ向けていただきたいなと思いました。

○脇田部会長 ありがとうございます。本当に平成30年度の日本地図は真っ赤っ赤になっていて、非常に接種率の向上が見られるということで、市町村ごとの接種率についても公表をお願いしたいという御意見でした。やはり、小児の接種率が上がって小児の感染が少なくなると、逆に今度は大人の病気になってきたと。これは世界的な動きでありまして、世界的にこの麻しん対策もなかなか難しいところにきているのかなと感じているところです。よろしいでしょうか。はい、ありがとうございました。

 続きまして3番目の「予防接種に関する間違いについて」です。資料5について事務局から説明をお願いいたします。

○永田予防接種室長補佐 資料5に基づきまして、予防接種の間違いについて御報告をさせていただきます。資料5を御覧ください。

 概要を御覧いただければと思いますけれども、市町村長は定期接種の実施に際して生じた間違いを把握した場合、都道府県を経由して厚生労働省へ報告するというように定期接種実施要領で定めさせていただいているところです。今般、平成29年度分につきまして全国分の取りまとめができましたので、御報告をさせていただくものです。なお、同じ内容につきまして、予防接種・ワクチン分科会にも報告をさせていただきます。

 1枚目の概要で、まず、延べの接種回数でございますが、平成28年度が約4,360万件だったものに対し4,630万件と、接種回数自体が増えているところがございます。また、間違い報告としても前年度が6,602件でしたので、7,787件と報告件数が伸びているところでございますが、下の部分に記載させていただいているとおり、健康被害が実際に生じたものとして35件が報告されたところです。いずれも発熱・接種部位の腫れ・発赤といったものでございまして、重大な健康被害につながる間違いはございませんでした。

 次のスライドを御覧ください。予防接種に関する間違いについてというスライドです。間違いの態様を11種類に分類し、それぞれの発症状況をお示ししたものです。4.接種間隔を間違えてしまったというものが全体の51.69%と50%を超えております。これは前年度と変わらない傾向で、今年度も同様であったというような形です。次のスライド以降で、それぞれの間違えてしまった理由につきまして、主な具体例について掲示をさせていただいているところですので、後ほど御覧いただければと思います。

 最後のスライドを御覧いただければと思います。このような予防接種の間違いに関する取組に対し、全国で予防接種事業者向けの研修会を実施し、間違い防止の注意喚起を行っているところです。厚生労働省では予防接種従事者研修として全国7ブロックごとにそれぞれ行っておりますし、国立国際医療研究センターにおきまして予防接種基礎講座、また都道府県が設置する予防接種センターにおいてそれぞれ研修、市区町村において研修等が行われているところでございます。

 また、参考2を御覧いただければと思います。本日も御出席いただいております国立感染症研究所の多屋先生を中心としまして、「予防接種における間違いを防ぐために」というような資料が作成され、全国の自治体や医療機関等に配布したり、厚生労働省のホームページで周知等を図っているところです。今般、参考資料2のように、2019年の改訂版を作成して取りまとめていただきましたので、今後厚生労働省のホームページなどを通じて、こういったものも全国に周知してまいりたいと考えているところでございます。

 その他、自治体に対しまして、予防接種の実施に当たって確認すべきポイントや、報告が多い間違い事例などを記載した通知を発出したり、参考資料2にも示させていただいている下敷き形式で、間違いを防止するようなものを周知したりということをやっているところです。間違い接種につきましては、今後も引き続き、厚生労働省としても防止に取り組んでまいりたいと考えているところです。報告は以上です。

○脇田部会長 ただいま、平成29年度の予防接種における間違いの取りまとめを報告いただきました。何か御質問、御意見等ございましたらお願いします。多屋委員、大丈夫ですか。

○多屋委員 3ページ目になると思うのですが、数としては少し大きな数になっていますが、この中の多くが接種間隔の間違いで、半分となっています。この中をもう少し詳しく今後出していただくことで、現状が分かると思います。

 現在、日本では不活化ワクチンの接種後は中6日以上空けて、生ワクチンの接種後は中27日以上空けて別の種類のワクチンを受けるというように定められています。一方、海外では、不活化ワクチンの接種後の間隔は定められていなかったり、今日の前半に議論になったロタウイルスワクチンのような経口の生ワクチンの接種も、接種間隔が定められていなかったりします。接種間隔を間違えてしまったという中には、そういうものも多く含まれることから、それほど大きな医学的な問題にはなっていないものも含まれているので、数字だけを見て誤解がされてはいけないなと思いました。それが公表されることで接種制度の見直しにもつなげていただけると有り難いなと思いました。

○脇田部会長 ありがとうございます。そのほかよろしいでしょうか。どうもありがとうございます。

 続きまして、「その他」でございます。資料67の説明をお願いいたします。

○江野監視指導室長 資料6、資料7に基づきまして、ワクチン製造に関する個別事例について2件の報告をさせていただきます。

 まず資料6、「はしか風しん混合生ワクチン「第一三共について」」です。こちらは、麻しん風しんの弱毒生ウイルスを含みます混合ワクチンであります。MRワクチンと称しますが、本MRワクチンにつきましては、第一三共バイオテック株式会社が製造し、第一三共株式会社が製造販売をしているワクチンでございます。

 本件につきまして、今年の4月ですが製造販売業者から報告がございました。内容につきましては、1つ目、ワクチン原液を希釈するための原料、これは希釈原料と申しますけれども、こちらにつきましては、承認書におきまして日本薬局方に基づく無菌試験を行うという規定がございましたが、製造所におきまして、この無菌試験を確立する上で事前に必要な事前確認が実施をされていなかったということでした。これは、希釈原料中に細菌の発育を阻害する物質が含まれていないこと、これを事前に確認をするというものです。事業者からは最終製品、最終的なワクチンを生成する段階で、日本薬局方で定められております事前確認を含めた適切な無菌試験が行われているということで、安全であるというような説明を頂いておりました。

 これにつきましての対応ですけれども、厚生労働省としては製造販売業者に対し、未実施でありました事前確認を改めて直ちに実施をさせています。その結果についてですが、希釈原料中に細胞の発育を阻害する物質が含まれていないことは確認をされております。したがいまして、本ワクチンに関する品質等への問題がないことについては確認をしております。さらに、厚生労働省としては、製造販売業者に対し、製造所における品質管理体制についての問題につきまして原因究明、それから対応方針を検討させまして、2点、以下の改善策を実施させてございます。1点目、まず従業員が承認書あるいは日本薬局方を正しく理解していないということに対し、内容の周知や承認書、日本薬局方の内容、その遵守につきまして、従業員に教育訓練をしっかりと実施をさせるということでございます。2点目、無菌試験の事前確認の実施状況を社として把握していないということに対し、実施状況を確実に管理していただくとともに、その実施状況を年1回、再確認するシステムを作るようにということでございます。

 関連して2枚目、3枚目が、第一三共株式会社から出されているプレスリリースとなります。426日付けで当社ワクチン製品に関するお詫びと御報告、さらに先ほど申し上げたとおり、最終的に事前確認を行った結果等について、719日付けで対応、品質管理体制強化のために実施した改善事項、こういったものが報告をされています。

 続きまして、資料7を御覧いただければと思います。B型肝炎ワクチンの品質試験の不備についてです。ヘプタバックスシリンジ、こちらはMSD株式会社が製造販売をしておりますB型肝炎ワクチンです。本ワクチンにつきましては、MSDの外国の工場で製剤化され、それが輸入をされ、国内の妻沼工場、埼玉県熊谷市にございます妻沼工場において品質試験を実施し、出荷されているものでございます。

 こちらにつきましても、本年7月に製造販売業者から報告があり、妻沼工場における品質試験のうち、力価試験及び表示確認試験に用いる緩衝液が、pHを調整するものでございますけれども、承認書上は「リン酸2水素ナトリウム1水和物」という規定でしたが、実際は水和物が付いていない無水和物である、「リン酸2水素ナトリウム」でpH調整をしてしまったというようなことでございます。本件につきましては、国内へ輸入する前の段階、MSDの外国の工場では承認書の通り、1水和物を用いた試験の実施がされていることを確認をしており、結果に問題はないということでございます。さらに、今回の事案を踏まえまして、これまで出荷した全てのロット、それから出荷予定であったロット、これらは全てMSD社が保有していたものですが、全16ロットにつきまして再試験の実施をしたということで、規格に適合していたことを確認をしております。

 最後の対応ですが、MSD社に対しまして原因究明、それから再発防止策の策定の指示をしておりまして、こちらについての報告は、今月すぐに提出いただく予定となっております。以上です。

○脇田部会長 2件のワクチン不備についての御報告ということになります。何か御質問等あれば頂きたいと思います。こういったことがないように、しっかりと製造工程を管理していただくことは重要だと思いますので、本省からの指導をよろしくお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。

 どうもありがとうございました。それでは、議事につきましては以上で終了いたします。そのほか、事務局から何かございますでしょうか。

○元村予防接種室長補佐 次回の開催につきましては、御連絡をさせていただきます。事務局からは以上です。

○脇田部会長 それでは、「第32回予防接種基本方針部会」を終了させていただきます。本日はありがとうございました。