2019年9月26日 第154回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和元年9月26日(木) 17:00~19:00

場所

TKP新橋カンファレンスセンター ホール14G

出席者

【公益代表委員】
    荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員
【労働者代表委員】
    川野委員、北野委員、櫻田委員、津村委員、八野委員、村上委員、森口委員
【使用者代表委員】
    池田委員、齋藤委員、早乙女委員、佐久間委員、佐藤委員、鳥澤委員、松永委員、輪島委員
【事務局】
    坂口労働基準局長、吉永審議官、久知良総務課長、黒澤労働条件政策課長、石垣監督課長、長良労働関係法課長、井内労働衛生課長

議題

(1)副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方について
(2)賃金等請求権の消滅時効の在り方について
(3)その他

議事

 
○荒木会長 それでは、ほぼ定刻になりましたので、ただいまから第154回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の委員の出欠状況ですが、御欠席の委員として、公益代表の平野光俊委員、藤村博之委員、水島郁子委員、両角道代委員、労働者代表の世永正伸委員と承っております。
議事に入ります前に、分科会委員の交代について事務局から報告をお願いいたします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
分科会委員の交代につきまして御報告させていただきます。
お手元に参考資料No.1といたしまして、労働条件分科会委員名簿を配付しております。本日付で新しく委員に就任された方々につきまして御紹介させていただきます。
まず、労働者代表委員として新たに情報産業労働組合連合会書記長、北野眞一委員に御就任いただきました。
同じく労働者代表委員として新たに日本基幹産業労働組合連合会事務局長、津村正男委員に御就任いただきました。
同じく労働者代表委員として新たに全日本自動車産業労働組合総連合会副事務局長、森口勲委員に御就任いただきました。
以上が新たに委員に就任された方々の御紹介でございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
次に、事務局から定足数の報告をお願いいたします。
○労働条件政策課長 定足数について御報告いたします。
労働政策審議会令第9条第1項により、委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。
○荒木会長 それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
(報道関係者退室)
○荒木会長 それでは、本日の議題に入りたいと思います。お手元の議事次第に沿って進めてまいります。
本日の議題の「(1)副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方について」につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
資料No.1といたしまして、副業・兼業に関する資料を御用意しております。ごらんいただきたいと存じます。
1ページに、副業・兼業の促進に係る検討の経緯について記載しております。「閣議決定文書等」とございますように、働き方改革実行計画におきまして「労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業の普及促進を図る」とされておりまして、ガイドラインの策定あるいはモデル就業規則の改定について盛り込まれております。
これを受けまして、平成29年10月より「柔軟な働き方に関する検討会」を開催いたしまして、平成30年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、また、改定版「モデル就業規則」を策定しております。
一方「未来投資戦略2018」あるいは「成長戦略実行計画」におきまして、働き方の変化等を踏まえた実効性のある労働時間管理のあり方について、労働者の健康確保に留意しつつ、労働政策審議会等において検討を進める。あるいは検討会における健康確保の充実と実効性のある労働時間管理のあり方についての検討を加速し、2019年中に結論を得る。その上で労働政策審議会において議論を開始し、可能な限り速やかに結論を得るとされております。これを踏まえまして、平成30年7月より「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」を開催いたしまして、去る8月8日に報告書が公表されております。
このような動きを踏まえまして、本日はこの報告書について御報告させていただき、御議論いただくというものでございます。
続きまして、2ページをごらんいただきたいと存じます。ただいま申し上げました平成30年1月に策定されております「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の概要を載せております。例えば「3 企業の対応」におきましては「副業・兼業を認める場合には、労働者から副業・兼業の内容等を申請・届出させることが考えられる」。就業時間の把握といたしまして「労働者の自己申告により、副業・兼業先での労働時間を把握することが考えられる」。「4 労働者の対応」といたしまして「勤めている企業の副業・兼業に関するルールに照らして、業務内容や就業時間等が適切な副業・兼業を選択する必要」といったことが策定されております。
3ページに、同じく平成30年1月に改定されました「モデル就業規則」について掲載いたしております。改定以前は、遵守事項といたしまして「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」とされておりました。これにつきまして、平成30年1月改定版でございますが、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」「労働者は、事前に、会社に所定の届出を行うものとする」「次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる」といたしまして「労務提供上の支障がある場合」「企業秘密が漏洩する場合」「会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合」「競業により、企業の利益を害する場合」といったものが掲げられております。これらに関しましては、これまでの裁判例などをもとにこのように整理されたものでございます。
4ページでございます。このような副業・兼業に関する現行制度でございますが、関係する法令といたしまして、労働基準法第38条に「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」とされておりまして、昭和23年の通達によりまして「『事業場を異にする場合』とは事業主を異にする場合をも含む」とされております。
具体的には下の枠の中に一つの例がございます。事業主Aのもとで働いていた労働者が後から事業主Bと労働契約を締結した場合の取り扱いの例でございます。この例におきましては、事業主Aで1日5時間の所定労働時間の後、事業主Bにおいて1日4時間労働する場合でございます。そうなりますと1日に9時間ということで、原則となる法定労働時間8時間を1時間超える労働が発生するというものでございます。
この場合には、事業主Aが契約を締結した後に事業主Bが契約を締結しているため、事業主Bに法的に割増賃金の支払い義務、すなわち8時間を超える1時間部分に関して義務があるということになります。後から契約を締結する事業主は、その労働者が他の事業場で労働していることを確認した上で契約を締結すべきとの考え方によるものでございます。
このような規定を踏まえまして、次の5ページでございます。先ほど申し上げました「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」におきまして、事業主を異にする場合の実効性のある労働時間管理のあり方について検討を行っていただいたものでございまして、去る8月8日に報告書が公表されているというものでございます。
6ページに、この検討会報告書の骨子が書かれております。本日、お手元に参考資料No.2といたしまして、検討会の報告書全文をお配りしております。お時間を頂戴いたしまして、以下、参考資料No.2によりまして報告書の内容について御報告させていただきたいと存じます。
3ページからでございます。「Ⅰ.はじめに」には、先ほど資料No.1で御説明いたしました検討の経緯などが書かれておりまして、「1.副業・兼業の現状」の「(1)働き手側」といたしまして、総務省のデータによりますと、副業を希望している雇用者数は2007年に299万3000人だったものが2017年には385万人に増加し、実際に本業も副業も雇用者として働いている者は2007年の102万9000人から2017年の128万8000人に増加しているということ、また、雇用者総数に対する副業をしている者の割合を本業の所得階層別に見ると、本業の所得が199万円以下の階層と1000万円以上の階層で割合が比較的高くなっており、分布が二極化していることが書かれております。
また、JILPTの調査によりますと、1つ目といたしまして、全体的に本業と副業が同じ業種である割合が高いこと、2つ目といたしまして、副業をする理由として最も当てはまるものを見ると「収入を増やしたいから」が多いこと、一方、本業の収入が高くなると「自分が活躍できる場を広げたいから」などの割合が高くなること、3つ目といたしまして、副業の就業形態を見るとパート・アルバイトが多いこと、4つ目といたしまして、副業の平均実労働時間は収入が1番目に多い副業においておよそ週13時間であること、5つ目として、本業と副業の合計した平均実労働時間はおよそ週48時間であること、一方、本業の就業形態が正社員の者に限って見るとおよそ週57時間程度であることが記載されております。
5ページでございます。「(2)企業側」といたしまして、1つ目といたしまして、副業・兼業を認めていない企業は85.3%であること、2つ目といたしまして、企業側の労働面の課題・懸念として、本業がおろそかになる、長時間労働につながる、労務・労働時間管理上の不安があるなどが記載されております。
次に「2.副業・兼業の促進に向けた政府の対応状況」でございますが、ここにおきましても、先ほど資料1で御説明いたしました内容と同様のことが記載されているところでございます。
続きまして、7ページの「Ⅱ.労働時間法制の変遷と労働時間通算の規定等について」でございます。ここにおきましては、先ほど資料1で御説明いたしました労働基準法第38条、通算に関する規定に関する経緯や、その解釈、事業主を異にする場合においても通算するといったものに関しまして、詳細に記載されているところでございます。
続きまして、10ページの「Ⅲ.企業、労使団体へのヒアリング結果」でございます。この検討会におきましては、検討会の事務局によります11社の企業ヒアリングや、検討会において実施いたしました労使団体へのヒアリングについて記載されています。
「1.労働時間管理について」でございます。1つ目といたしまして、ヒアリングをした企業の多くに共通していたのは、副業・兼業先に雇用を認めていない、または本業、副業・兼業の通算した労働時間が法定労働時間以内となるような副業・兼業しか認めていないということ、その理由としては、日々の労働時間管理が実務上できない、労働者の申告に信頼性がない、さまざまな労働時間制度がある中で実務ができないといったことが記載されております。
次に、11ページでございます。労働団体へのヒアリングでは、1つ目といたしまして、副業・兼業については、長時間労働、安全配慮義務、秘密保持義務、競業避止義務など多くの課題があることや、一つの勤務先の所得では不十分であるため、やむを得ず複数の仕事を掛け持ちしている者もいる状況を踏まえれば、副業・兼業をいたずらに後押しすべきものではないといった御意見、2つ目といたしまして、労働基準法第38条の労働時間通算規定などの現行の労働時間ルールを遵守すべきという御意見、3つ目といたしまして、労働者の自己申告に寄りかかった制度にするべきかどうかということには慎重な意見を持っているとの御意見が記載されております。
次に、使用者団体へのヒアリングにおきましては、1つ目といたしまして、副業・兼業の推進に当たっては、さまざまな観点から懸念すべきことがまだ多いという御意見、2つ目といたしまして、企業はどこまで対応すれば就業時間の把握義務を履行したことになるのかが明確にされていないと現場は混乱するのではないかという御意見、3つ目といたしまして、割増賃金の算定に当たっては、日々管理していくことは極めて困難であることといった意見が記載されております。
次に、12ページの「2.健康管理について」であります。1つ目と2つ目におきまして、ヒアリングをした企業では、各社の工夫により健康管理が実施されているということ、3つ目といたしまして、労働団体へのヒアリングでは、労働時間や就業環境などについても通算を行った上で、要件を満たす者について必要な措置を講じることが必要との御意見があったこと、4つ目といたしまして、使用者団体へのヒアリングでは、副業・兼業の導入と労働時間の削減を両立させるのは大変難しいとの御意見が記載されているところでございます。
13ページの「Ⅳ.諸外国の状況について」でございます。ここでは、ヨーロッパ諸国の状況や、検討会において実施されましたフランス、ドイツ、オランダの現地視察について記載されております。
それらの結果につきましては、16ページの「4.諸外国の状況から見えたこと」にまとめられております。1つ目といたしまして、欧州諸国では、事業主が異なる場合に労働時間を通算する国と、しない国がほぼ半々であるということ、フランス、ドイツ、オランダの実態を調査したところ、制度上、実労働時間について通算することとなっているが、必ずしも実際に運用されているものではなく、監督指導についても必ずしも実施されていない状況であること、2つ目といたしまして、割増賃金については、異なる事業主間では通算されていないこと、3つ目といたしまして、健康確保対策について、複数の使用者に雇用されている者か否かで使用者に課される実施義務に違いはないことといったところがまとめられております。
次に、17ページの「Ⅴ.実効性のある労働時間管理や健康管理の在り方に向けて」でございます。ここでは労働時間管理や健康管理の課題と方向性について記載されております。「1.現行制度の課題」の「(1)健康管理について」であります。1つ目といたしまして、現行制度では、副業・兼業をしている者に対する特別の健康確保対策はとられていないこと、2つ目といたしまして、ただし、副業・兼業をしている者に対して何らかの健康確保対策をとるとしても、自社のみで働いている労働者に対して講じることができる措置と比較すると限定的になり得る可能性があることなどが記載されております。
「(2)上限規制について」でございます。18ページにかけまして、1つ目といたしまして、現行制度では、通算の結果、上限規制を超えて労働させた事業主が法違反となるが、日々厳密に把握することは実務上かなり難しく、使用者からすると副業・兼業自体を認めることに慎重になり得ること、2つ目といたしまして、副業・兼業をしたいという労働者の雇用を阻害するというデメリットとなり得ることが記載されております。
「(3)割増賃金について」でございます。1つ目といたしまして、現行制度では、通算の結果、法定労働時間を超えた労働時間について割増賃金の支払い義務が生じるが、本業・副業間での割増賃金の通算が時間外労働の抑制機能を果たし得るか疑問であることといったことが記載されております。
次に「(4)副業・兼業先の労働時間の把握方法について」でございます。まず、現行制度では、ガイドラインにおいて、労働者からの自己申告により副業・兼業先での労働時間を把握することが考えられるとされているが、自己申告が正しいかどうかがわからないこと、また、労働者が副業・兼業の事実を使用者に知られたくないことがあること、19ページをお開きいただきたいと思いますが、使用者間で労働者の労働時間数などの情報をやりとりする場合については、事務量がより膨大となること、他社の適切な対応がなければ困難となること、また、いずれの場合でも、労働時間に関する法制度や労働者の働き方が制度創設時と異なっており、副業・兼業先の労働時間の把握が困難となっていること、副業・兼業先が雇用か非雇用かの判断が難しい場合もあることといったことが記載されております。
「2.今後の方向性」でございます。「(1)議論の前提」といたしまして、1つ目といたしまして、労働時間の通算制度については、労働者の健康を保護するための規定であることには変わりはないということ、2つ目といたしまして、しかし、労働時間制度や、さまざまな働き方の普及などに伴い、労働時間の通算は実務的に非常に困難となっていることといったことが記載されております。
20ページの「(2)健康管理について」でございます。4つ目の部分から、制度の見直しの方向性として、太字で書かれている方向性が複数示されております。
「1-1 事業者は、副業・兼業をしている労働者について、自己申告により把握し、通算した労働時間の状況などを勘案し、当該労働者との面談、労働時間の短縮その他の健康を確保するための措置を講ずるように配慮しなければならないこととすること(公法上の責務)」。
「1-2 事業者は、副業・兼業をしている労働者の自己申告により把握し、通算した労働時間の状況について、休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えている時間が一月当たり八十時間を超えている場合は、労働時間の短縮措置等を講ずるほか、自らの事業場における措置のみで対応が困難な場合は、当該労働者に対して、副業・兼業先との相談その他の適切な措置を求めることを義務付けること。また、当該労働者の申出を前提に医師の面接指導その他の適切な措置も講ずること」。
2といたしまして「通算した労働時間の状況の把握はせず、労働者が副業・兼業を行っている旨の自己申告を行った場合に、長時間労働による医師の面接指導、ストレスチェック制度等の現行の健康確保措置の枠組みの中に何らかの形で組み込むこと」と、この3つの方向性が記載されておりまして、これらは「あくまで、考えられる選択肢の例示である」とされております。
「(3)上限規制について」でございます。22ページから制度見直しの方向性としまして、太字で記載されております。「1労働者の自己申告を前提に、通算して管理することが容易となる方法を設けること(例:日々ではなく、月単位などの長い期間で、副業・兼業の上限時間を設定し、各事業主の下での労働時間をあらかじめ設定した時間内で収めること)」、23ページでございますが、「2事業主ごとに上限規制を適用するとともに、適切な健康確保措置を講ずることとすること」、この2つの方向性が記載されております。これらにつきましても「考えられる選択肢の例示」とされております。
次に、24ページの「(4)割増賃金について」でございます。制度の見直しの方向性として「1労働者の自己申告を前提に、通算して割増賃金を支払いやすく、かつ時間外労働の抑制効果も期待できる方法を設けること(例:使用者の予見可能性のある他の事業主の下での週や月単位などの所定労働時間のみ通算して、割増賃金の支払いを義務付けること)」、25ページでございますが、「2各事業主の下で法定労働時間を超えた場合のみ割増賃金の支払いを義務付けること」と2つの方向性が記載されており、「考えられる選択肢の例示」とされております。
次に「(5)他の事業主の下での労働時間の把握方法について」でございます。1つ目といたしまして、他の事業主のもとでの労働時間の把握方法については、労働者の自己申告が基本となると考えられること、2つ目といたしまして、労働者が申告を拒む場合や、どの程度の客観性を求めるのかは、とる選択肢によって変わり得ること、26ページでございますが、3つ目といたしまして、自己申告のタイミング、頻度について引き続き検討が必要と記載されております。
次に「(6)その他」でございます。1つ目といたしまして、労働者の副業・兼業の目的などで取り扱いを変えることも考えられるが、実際には区分の基準を検討することは困難と考えられるということ、2つ目といたしまして、厳格な規制になってしまうと労働者が副業・兼業しにくい、企業が副業・兼業を行う者を雇わないなどにより、副業・兼業の非雇用化が進み、かえって労働者の不利益につながりかねないことにも留意が必要と指摘されております。
最後に「Ⅵ.おわりに」といたしまして「労使の参画の場である労働政策審議会において、引き続き積極的な議論が行われることを期待する」と記載されています。
以上の報告を踏まえまして、本日、このように御報告させていただき、労政審におきまして御議論いただくというものでございますが、ただいま説明してまいりましたさまざまな課題のうちの健康管理につきましては、労働条件分科会ではなく安全衛生分科会におきまして御議論いただきたいと考えております。一方、労働時間管理と健康管理は相互に関連する部分も考えられますので、それぞれの分科会の議論において必要な連携が図られますように留意してまいりたいと考えております。
説明は以上でございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
ただいま事務局から副業・兼業の場合の労働時間管理に関し、これまでの経緯や検討会の報告書について説明がございました。
検討会の報告書の26ページ、最後のところですが、ここで「労働者の健康確保や企業の予見可能性にも配慮した、副業・兼業の場合の実効性のある労働時間管理の在り方について、労使の参画の場である労働政策審議会において、引き続き積極的な議論が行われることを期待する」と記載してあるところでございます。そこで、まずこの報告書を踏まえまして、委員の皆様から御意見をいただければと考えております。御質問、御意見等ありましたら、よろしくお願いいたします。森口委員。
○森口委員 それでは、労働側から意見を申し上げたいと思います。
政府から、副業・兼業については、技術開発やイノベーションに有効ということで、その普及促進を図る方針が示されております。先ほど実態調査のご報告がありましたが、中身を見てみると、生活費を補うことを目的とする部分も多く、また、複数の仕事が合わさることで長時間労働につながってしまうということを労働側としては懸念しております。
労働者が経験の幅を広げて能力を高めて生産性を向上させていく手段は、副業・兼業だけではなくて、例えば、ボランティア、地域の活動、自分で勉強することなど、さまざまあるのではないかと捉えております。そして、副業・兼業をしなくても生活ができるようにすること、また、仕事以外の活動ができる時間、精神、経済的なゆとりを確保することを先に検討すべきではないかと考えております。
そして、検討会の報告書では、上限規制や割増賃金につきまして、事業主ごとに適用するとの選択肢が示されておりますけれども、労働契約の基本原則や労働条件の最低基準を定める労基法は、副業・兼業を行う場合でも等しく適用されるべきものであると考えております。したがいまして、資料No.1の4ページに記載されております「事業場や事業主を異にする場合でも労働時間は通算する」という現行の行政解釈は堅持すべきであるということを労働側の意見として述べさせていただきます。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかにございますか。輪島委員。
○輪島委員 先ほど課長から御説明がありましたように、参考資料No.2の「おわりに」のところの労政審の場で実効性のある労働時間管理のあり方を見つけていくということは大事だと思っておりますが、積極的な議論が本当にできるかどうかというところになると、報告書にもありますように、使用者側としても非常に懸念することが多い議題ではないかと思っているところでございます。
26ページの「(6)その他」のところです。どこを政策ターゲットにするのかということも、1つ目の丸のところにさらっと書いてありますが、1は、これから活躍していく、自己実現を目指していきたい、そういう方に向けてはポジティブにというふうに思いますが、2は、現実問題として今ほど申しましたように課題もあるという認識をしています。
検討会の報告書を踏まえて、今後この分科会で副業・兼業の議論を本格的に開始されるということでございますが、報告書にあるとおり、副業・兼業は自社では得られない経験による新たな技術開発、オープンイノベーションにつながるメリットが期待はされると思いますけれども、やはり一番大事な労働者の健康確保、それから、今ほど申しましたように整理するべき課題がたくさんあるのではないかと考えております。各企業において長時間労働の改善、休暇の取得促進、4月から施行されたばかりで、働き方改革を推進していく真っ最中でありますので、副業・兼業を普及促進するということでむしろ労働者の健康が阻害されるということは本末転倒なのではないかと思っています。
私ども経団連の中で会員企業に実態調査をすると、報告書と同じでありますが、副業・兼業を認めない理由として、企業実務の観点では複数事業主間の労働時間の通算規定、現行の法制度に対応することが難しいというような意見が多く挙がっているところでございます。
以上を踏まえまして、今後、議論を進めていく上で、労働者の健康確保と企業実務に混乱のない労働時間管理、労務管理が両立できるように、慎重に議論を進めていきたいというふうに使用者側としても考えているところでございます。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。川野委員。
○川野委員 検討会の報告書を報告いただいたところでございますが、先ほど輪島委員からございましたとおり、検討会のヒアリング等々においても、またこの分科会においても、労使双方から、さまざまな意見が、この間、出されてきたところでございます。
資料No.1の6ページに複数の選択肢が示されているところでございますが、労基法においては、労働条件の原則として、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」と位置づけられております。報告書の中にありますとおり、副業・兼業の実態としては、本業の所得が199万円以下の方々や、パート・アルバイトの方々が多く、また、本業・副業ともにパート・アルバイトでやらざるを得ない方も多いような状況の中で、政策の方向性として、副業・兼業を促進するものであっていいのか。また、労働者保護の観点から、過重労働防止や健康確保、労働者と使用者の実務上における雇用責任や安全配慮義務、また、個人情報保護の観点からの業種・職種など労働者のプライバシーの取り扱い、また、履行確保に向けた措置など、さまざまな問題、課題をバランスよく満たすものはどのような方策があるのかということは、慎重かつ丁寧な検討が必要なのではないかと考えておりますので、そうしたことも踏まえて、丁寧に慎重に議論を進めていただければと思います。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。佐久間委員。
○佐久間委員 まず、検討会の報告書につきましては、前提となるどういう方がこういう副業・兼業をやっているか、その平均の時間数、労使双方、働き手、企業側としての実態、こういうのも非常によくまとめられているのではないかと思っています。
ただ、今まで示された、ガイドラインに基づいて自己申告が前提になるというのがあると思いますが、まだその前としても、自己申告しない方々をどういうふうに副業・兼業を把握していくか。また、そこは自分たちで言わないのだからやむを得ない、言った方だけを巻き込んでいくのか、捉えていくのか、そこの前提が明確になっていないと話が分かれてしまうのではないかという懸念があります。
これから労働条件分科会においても協議していくことになると思いますが、その捉え方、どこから把握していくかということと、今まで私たちが進めてきた労働時間、割増賃金、時間外労働の上限規制等々、そういうものの議論と副業・兼業というのが相反するところも出てくると思いますので、これは労働側、私ども使用者側としても、できるところ、できないところを明確にしていきたいと考えております。
以上でございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
齋藤委員、どうぞ。
○齋藤委員 資料の御説明、ありがとうございました。
企業実務という観点から、少し細かいかもしれませんが、事務局の方に確認させていただきたい点がございます。まず、資料No.1の最後のページの大きな2番、上限規制についての1の部分でございます。副業・兼業の上限時間について、あらかじめ週単位、月単位等で設定と、方法について記載いただいております。非常に難しい課題の検討の方向性としてお考えいただいた部分かと思いますが、企業実務としては、上限時間をあらかじめ設定となりますと、事前に本業の会社と副業先の会社が実務上調整するということを想定されているものなのか、こういった点についてどんな議論が検討会であったか、もしあれば御教示いただければと思います。よろしくお願いします。
○荒木会長 お尋ねですので、事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 ただいまの齋藤委員の御指摘でございますが、検討会の報告書で申し上げますと、22ページをごらんいただきたいと存じます。ただいま御指摘いただいたのが、1の「日々ではなく、月単位などの長い期間で」という部分でございます。先ほど説明を省略いたしましたが、その下の部分に、その趣旨など、この検討会での御見解をまとめていただいているところでございます。
1つ目といたしまして、日々ではなくといった趣旨でございますが、労働時間の管理をやりやすくしていこうというところでございます。2つ目にございますが、それによります効果といたしまして、あらかじめ設定するといったことも含めまして、ほかの事業場における労働時間の変動、日々の変動といったものを考慮する必要がなくなりますので、リスクマネジメントの観点からもよろしいのではないかといったものでございます。
その下の部分に関しましても、今、齋藤委員が御指摘いただいた点にも関連しますが、それぞれの事業主におきまして、三六協定を含め、締結されていることになりますと、あらかじめ設定するということになると、いわばそれぞれが働ける枠をどのようにとるのかといった関係性も出てくると考えられるため、そこはまさに検討する一つの課題として、22ページの下から2ポツ目でも認識されているところでございます。
同様のことは22ページの最後のポツのところにもございます。自分のところと相手との関係をどのように考えるか、ここは引き続き検討が要るところでございます。同趣旨のことが23ページの1ポツにもございます。
したがいまして、今後御議論いただく中におきましては、今、齋藤委員から御指摘いただいた点も踏まえまして、丁寧な御議論をお願いすることになろうと考えております。
○荒木会長 よろしいでしょうか。
ほかにはいかがでしょうか。鳥澤委員、お願いいたします。
○鳥澤委員 御説明、ありがとうございます。
中小・零細企業が副業・兼業を導入した場合の問題点や留意点についてお話させていただきます。
まず、副業・兼業の制度をつくるに当たっては、労働者の自己申告が前提になってくると思っております。といいますのは、もちろん労働時間の長さなど健康確保措置の問題もございますが、競業等の企業情報の管理という観点から考えても、ある程度の情報を雇い側が知っていないと副業・兼業を許可できるかという判断ができないため必要だと考えます。そのあたりで恐らく労働者側が開示する情報と企業側が求める情報に齟齬が生じるため、このすり合わせをする必要があると存じます。
2つ目として、資料No.1の4ページにあります通算の労働時間の問題です。例えば、参考に書いてあるような事業主Aが1日5時間、事業主Bが1日4時間で最初に行っていたのですが、例えば途中で労働条件が変わって事業主Aが6時間になり、通算で考えると2時間残業という形で所定外の時間が発生したときに、果たしてBのほうが残業代を負担するべきかという問題が出てくると思います。その場合に企業間での調整が果たしてきくのかどうかということは今後検討が必要ではないかと思っております。
また、企業間の情報の共有ということを考えると、規模も業態も違う中で果たして事務作業等の情報の共有、事務作業がうまく連携できるかというのも今後の懸念材料かと思います。
先ほども話がありましたが、私ども建設業は、業界を挙げて労働時間の短縮や休日等をふやそうとしている一方で労働者が所得の増加のために副業・兼業をするとなると、労働環境を1社が改善しても通算すると労働環境の悪化につながるということもございますので、このあたりもよくよく考えていかなければいけないと思います。
もちろん、先ほどありましたように、自社だけでは身につけられない技術や経験があるというのは企業にとってもメリットがあると考えていますので、今の段階ではいいとも悪いとも言えませんが、今後、具体的な課題等を洗い出し、すり合わせをして対策していくときに初めて出てくる問題なのかと存じますので、今後も深い協議が必要かと思っております。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
早乙女委員、お願いいたします。
○早乙女委員 私も先ほどの齋藤委員と同じく、企業実務の観点から事務局に確認させていただきたいと思います。資料No.1の6ページの3番の割増賃金は、先ほど参考資料で御説明いただいたところですが、こちらは制度の見直しが考えられるということで2点例示していただいております。この中の1の例として、他の事業主における所定労働時間のみを通算するという方法が記載されております。こちらについては、例えば副業・兼業先でパートタイム労働者としてシフト制で働くというように、毎月、所定労働時間が流動的になるケースもあろうかと思います。このような場合にはどのように対応することが考えられるのか、もし検討会の中で何か議論されていましたら御紹介いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○荒木会長 事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 ただいまの早乙女委員の御質問でございます。検討会報告書によりますと、24ページの部分が御指摘いただいている箇所でございます。太字の1におきましても、週や月単位などの所定労働時間のみの通算ということですが、こちらも先ほどの上限のところとやや類似しておりまして、1の1つ目の黒ポツにございますように、他の事業場における日々の変動といったもの、それによらずに予見可能性のある仕組みがここの御議論の趣旨であったと承知しております。したがいまして、先ほどのように、所定労働時間のみ、あるいは月単位といったまとまったことをあわせ考えますと、日々変動している場合でもある程度まとまった捉え方、あるいは所定労働時間が違った場合であってもある程度まとまった単位で捉えてはどうかというのがここの検討会の御趣旨であると思います。しかしながら、詳細に関しましては、御指摘のとおり、企業実務の対応の可能性なども含めまして、丁寧な御議論をお願いしたいと考えております。
○荒木会長 よろしいですか。
ほかにはいかがでしょうか。津村委員。
○津村委員 御説明、ありがとうございました。
少し重複する部分があるかと思いますが、労働側からも改めて意見を申し上げたいと思います。
まず、健康管理の部分でまとめをされておりまして、この観点で意見を申し上げたいと思います。そもそも、労働安全衛生法の中では、健康確保措置が求められる対象者の選定に当たりまして、複数の事業者間の労働時間を通算して選定することは求められていないというのが、釈迦に説法ではありますが、労働安全衛生法の位置づけだと認識しております。
本検討会の報告書の中では、通算した労働時間などを勘案して健康確保措置を講ずるように配慮しなければならないこととする、こういった選択肢が示されておりますし、副業・兼業を申告した場合には健康確保措置の枠組みに何らかの形で組み込む、こういった選択肢も示されております。今後、十分な検討がされるし、必要だと思いますが、健康確保を強化する、こういった方向性が選択肢として示されたということについては、労働側としては一定の評価をしたいと思っております。
ただ一方、先ほど来、話が出ておりますが、上限規制に関しましては、事業主ごとに適用するという選択肢が示されておりますし、また、割増賃金に関しましては、各事業主のもとで法定労働時間を超えた場合のみ支払いを義務づけるという選択肢が示されております。これらの選択肢につきましては、そもそも法の理念やその目的から少し逸脱しており、労働者の保護や権利を後退させる選択肢なのではないか、こういった受けとめをせざるを得ないと思っております。
複数の事業主のもとでの労働につきましては、それぞれで月100時間未満、複数月平均80時間以下などの上限時間を設定できるようにするといった考え方につきましては、健康確保を目的に導入したばかりの上限規制の考え方と矛盾するのではないかという受けとめをさせていただいております。
また、加えまして、自社以外での労働時間の把握につきましては、これも先ほど来、使用者側からも出ておりますが、実務上の課題がある。こういったことは労働側としても承知しておりまして、ある程度は労働者の自己申告によって把握することも一つの選択肢、方法であり、検討する必要があるという受けとめをさせていただいておりますが、そもそも論でありますけれども、副業・兼業を含めた労働時間の管理とその把握、加えて健康確保の責任につきましては、そもそも一義的には使用者が負うといった原理原則に戻りまして、今後の議論の前提ということにして検討を進めていただくようにお願いしたいと思っております。
以上でございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。輪島委員。
○輪島委員 事務局に質問ということで、次回以降、資料で整理していただければというお願いでございます。資料No.1の4ページ目で、先ほど森口委員からも御指摘があった労働基準法第38条の解釈と、昭和23年5月14日の局長通達のところです。まとめるとこういうふうに書いてありますが、報告書本文で言うと7ページ目、工場法のところについての説明で、なお書きのところに「当時の注釈書からは、事業主が異なる場合にも同規定が適用されることが読み取れる」とあります。ここら辺もクリアにする必要があると思いますし、注釈の5に「ただし、使用者が異なれば通算しないという説もあった」ということですので、こういうことも新たに検証をしていく必要もあるのではないかと考えているところです。
資料No.1の4ページに戻っていただきまして、労働時間のところです。まず、1つは、契約が前後でこうなっているということが一般的に理解されているのかどうかということも考えなければいけないと思います。少し応用なのかもしれませんが、3つの就業先があったとしたらどうするのかということもこの中でどうするのか、それから、学生時代に予備校の講師をしましたといって、先にA事業所で予備校の契約が成立していて、その後、就職したといってB事業所があって、週1回講師をしているというと、それは先の契約のほうが生きていくわけなので、そうするとどっちが本業でどっちが副業なのかということ、さまざまなケースを考えるとややこしいと思います。整理していただいて議論していく必要があるのではないかと思っているところです。
○荒木会長 ほかにはいかがでしょうか。川田委員。
○川田委員 他の委員の御発言と重複するところも多いのですが、私なりに考えたことと、最後に、若干細かいところですけれども、参考資料No.2の報告書について伺いたい点があります。
まず、これまでの御発言の中で多々指摘されておりますが、副業・兼業の問題を考える際に、一方でイノベーションの創出を容易にするというような点は非常に魅力的ではあるわけです。他方で、報告書で示された実態等からすると、十分な収入が得られていない方が収入を確保するために長時間働くことに対する歯どめを緩めてしまう点もあるという状況の中で、労働基準法制としてやはり基本になるのが、最低基準として労働者の健康確保を図る点にあるというところは間違いないといってよいのだろうと思います。
今回の報告書を見ますと、例えば参考資料No.2の13ページ以下で示されている外国の状況などを見ても、あるいはこれまでの御発言でも、実効性のある制度をつくっていくということが非常に難しいのではないかと思っています。
一方、資料No.1の3ページ目のモデル就業規則のところで御説明があったように、労働法の通説としては一定の範囲内では兼業が認められるという考え方も前提とすべきところであって、そうすると、兼業があることを前提とした時間管理のあり方自体は何らかの形で考えていく必要があるし、また、そこで働き過ぎに適切な歯どめをかける実効的な仕組みを考える必要があるだろうと思います。
この点については、簡単に言えるようなことではないと思いますが、恐らく労働基準法制のほかに、具体的な健康被害のおそれがあるようなところに対応していくところに重点を置いた安全衛生法制であるとか、あるいは検討の基盤になる、学説等で学術的に話されることもあるような法理論についての、例えば労働契約の付随義務論として兼業に関する情報をどこまで使用者、労働者に申告を求めることができるのかといったような問題などを多角的に考えて、そういう多角的な検討の結果、お互いに支え合うような、ある種、相互補完的に作用することで実効性がある制度を構想することができるのではないか、今後検討していく上で、そういう多角的な検討が必要なのではないかと考えています。
最後に、一点、報告書について、これはかなり細かい点ではあるのですが、そういうことを考えていく際に、実情を踏まえた議論という点では、もちろん日本の職場の状況が一番重要であるわけですけれども、同時に、この報告書でも行われているような外国の状況というのも一定の参考になり得ると思います。そういうこととの関係で、例えばこの検討会の中で、参考資料No.2の13ページ以下に出てくる外国における兼業の具体的な状況、日本においては前のほうのページで、例えば収入が二極分化しているという分析がされていましたが、外国における兼業のイメージについて何か把握されているところがあったら教えていただきたいと思います。
以上です。
○荒木会長 事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 今の川田委員の最後の点の外国の状況でございますが、13ページ以下に状況が書いてあるところでございます。また、詳細につきましては、今後、検討会におきます資料の蓄積といったものも御紹介させていただきたいと思っているところでございまして、それも踏まえての御議論をお願いしたいと考えております。
○川田委員 ありがとうございます。今後の議論の中で、もしかしたらそういうことも必要になるかもしれないということを述べておきたいと思います。
○荒木会長 ほかにはよろしいでしょうか。佐久間委員。
○佐久間委員 この副業・兼業の場合、労働者性の関係もありますが、どこかの企業に従業員として働いていて、もう一方では、副業なのか本業なのかわかりませんけれども、フリーランスとか雇用類似の関係で独立した経営者になっている。そこでの契約の仕方で、請負契約または雇用契約を結んでの契約形態によって労働者性、使用者性というのが出てくるかもしれませんが、もしこういうのが出てきた場合でも、自己申告の場合、経営者としての考え方だったら自己申告の必要性はないものかどうか、副業も2社、3社実施している形態もあるかもしれませんけれども、その辺の観点というか、考え方について、除外していいものか、労働者性があるかどうかによって労働条件分科会で議論していくテーマなのか、そこを教えていただければと思います。
○荒木会長 事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 佐久間委員の御指摘でございますが、この検討会におきましては、基本的に、本業、副業・兼業がそれぞれ雇用形態で行われているものが議論の射程であったと思います。一方で、いわゆる非雇用のほうとの関係も言及されているところでございます。もちろん、労働基準法におきましては、労働契約、雇用契約といったものが基本となっているところでございますので、まずは議論のベースといったもの、そもそも38条が適用される射程も、これは労働契約、雇用の問題であるというところでございます。
ただ一方、労働者性に関しては、そのような意味では、ここでは労働時間の通算というところでございますので、労働者性自体をここで議論するといったものではないと考えております。いずれにいたしましても、働き方が多様化するといったところは一つ留意する点でございますので、今後の議論の中でも気をつけてまいりたいと考えております。
○荒木会長 ほかにはいかがでしょうか。
それでは、(1)の議題は以上といたしまして、ただいまいただいた御意見も踏まえまして「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方について」は今後さらに議論を深めてまいりたいと思います。
次に「(2)賃金等請求権の消滅時効の在り方について」、事務局から説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 それでは、資料No.2-1、資料No.2-2に沿って私から消滅時効の御説明をさせていただければと思います。
その前提といたしまして、前回の労働条件分科会、7月1日におきまして「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」の御報告をさせていただきました。その際にもいろいろ御意見を賜ったところでございます。本日は、資料No.2-1をごらんいただければと思いますが、消滅時効のあり方に関してこの検討会で幾つか項目としてカテゴライズした形で論点を提示したところでございます。
資料No.2-1の1から7まで大きく分けて7つの論点がございます。本日は1から4に関して主に御議論いただければと考えております。5の記録の保存、6の付加金の支払い、7の見直しの時期、施行期日等につきましては、この次の分科会で主に御議論いただければということでございまして、検討会で掲げられた主な論点を2回にわたっておさらいする形で御議論いただければと考えております。
それでは、資料No.2-1の「1検討の前提」でございます。
検討会報告では、民法とその特別法である労働基準法の関係についてどのように考えるかということでありまして、大きく2つ並列して論点を提示しているところでございます。労基法の消滅時効が労使関係における早期の法的安定性の役割を果たしていることや、大量かつ長期に発生するといった賃金請求権の特殊性に鑑みて、合理性があれば、民法よりも短い消滅時効期間を定めることも可能との考え方がある一方、労働者保護を旨とする労働基準法で民法よりも短い消滅時効期間を定めるのは問題である。いわば両論の形でまとめたところでございます。
なお、現行でも、退職手当や災害補償の請求権等については、労働基準法において民法よりも短い消滅時効期間を定めていると記載しておりますが、こちらについては、資料No.2-2の4ページをごらんいただければと思います。一番上に労働基準法115条の条文をそのまま書いておりますが、「この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によって消滅する」ということでございます。大きく分けると、賃金、災害補償、その他、その他の中には後ほど御議論いただければと思いますが、年次有給休暇も入っておりまして、それから退職手当、この4つに区分いたしまして、労基法の消滅時効期間は、退職手当が5年間、それ以外は2年間という整理でございます。
仮に、民法の短期消滅時効が、現在はまだありますけれども、こちらがあることを前提として民法上の消滅時効期間と比較すると、賃金の中で「月又はこれより短い期間によって定めた使用人の給料に係る債権」による短期消滅時効が働いております。それが1年です。ここと比較いたしまして、労働者にとって重要な請求権の消滅時効が1年ではその保護に欠けるが、10年では使用者には酷にすぎ、取引安全に及ぼす影響も少なくないため、労働基準法115条において2年間と定められたというのが労基法の制定の経緯となっているところでございます。
ただ、災害補償、それ以外の請求権に関しては明確な記録がございませんが、賃金請求権のこの理念に合わせて一律に2年としたと考えられるところでございます。
なお、退職手当につきましては、昭和63年に法改正が行われまして、従来の2年から5年に延びたという経緯がございます。民法上の消滅時効期間は、原則は現行民法第167条で10年となっているところでございます。この10年と比較いたしますと、災害補償、その他、賃金についても月給よりも長い期間によって定められたもので、こちらについては実は短期消滅時効がかからないということでございますので、その旨を先ほど申し上げた論点のところに記載しています。
大きな論点の「2賃金等請求権の消滅時効の起算点について」でございます。
こちらは補足したほうがよいかと思われますので、資料No.2-2の8ページをごらんいただければと思います。民法の一部改正法で新しく、いわゆる主観的起算点が設けられました。こちらは条文を見ますと、改正後の民法第166条第1号でございまして「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」というのが設けられております。従来からあるのが「権利を行使することができる時から十年間行使しないとき」ということで客観的起算点という整理でございます。
7ページをごらんください。今回の民法改正に関する法務省の公開資料を載せております。考え方としては、権利を行使することができることを知ったとき(主観的起算点)と権利を行使することができるとき(客観的起算点)、こちらに関して基本的に同一時点であるケース、例示といたしまして、売買代金債権など契約上の債権は基本的にはこちらに当たるだろうということでございます。この場合の消滅時効は主観と客観が一致するので5年となります。
一方で、主観と客観が異なるケースということで、例示としては消費者ローンの過払い金の不当利得返還請求権が掲げられております。こちらは、権利を行使することができるときよりも後ろに知ったときが発生するといったケースでございます。過払いであることを知ったときが、仮に実際できるときよりも後ろに行った場合は、知ったときから5年となりますので、実際に権利を行使することができる時点から5年以上の期間、時効が完成しないということです。
ケース2は、仮に、知ったときが大分遅くなって、権利を行使することができるときから10年を超えてしまった場合、その場合は時効期間が満了するのは10年ということで整理されています。これが改正民法の原則となっているところでございます。
労働基準法の取り扱いに関しては10ページをごらんください。先ほど労働基準法第115条の規定がございましたが、その解説として「注釈労働基準法」を紹介しております。「本条および本法は、時効の起算点について規定をおかないが、一般的にいって、具体的に権利が発生したときである。したがって、賃金請求権については、それが具体化する各賃金支払期である」ということで、基本的には客観的起算点に統一した解釈、運用がなされているのが現状であろうということでございます。
それを受けまして、論点といたしましては、6ページをごらんいただければと思います。こちらは検討会の報告に沿って論点を紹介させていただければと思います。
賃金請求権は、基本的には契約に基づく債権ということでございまして、先ほどの民法改正の資料に倣って捉えると、主観的起算点と客観的起算点は基本的には一致しているということであります。例えば賃金請求権の客観的起算点については、基本的には各賃金支払い日となりますが、賃金支払い日というのは、法令上、労働者に対しての明示事項であり、基本的には労働者としても各賃金支払い日を知っていると考えられるということでございます。
なお、検討会の議論の中では、例えば、名ばかり管理職や固定残業制などに関して裁判で後で判断が変わったような場合、労働者は裁判で確定した段階で初めて権利行使ができることを知るというような考え方もとれるのではないかという議論がございました。
この点については検討会においてどういう整理をされたかといいますと、仮に新たに主観的起算点を設けることとした場合、場合によっては労働者が裁判等においてより多くの未払い金を請求することが可能となり、労働者の保護に資する可能性がある一方で、幾つか論点がある中で、主観的起算点による消滅時効期間は今回の改正民法により新たに設けられたものであり、その解釈は今後の裁判例の蓄積に委ねられていることを踏まえると、どのような場合が「知ったとき」に当たるのかが専門家でないとわからず、企業の労務管理に混乱を来すだけではなく、労働者から見てもわかりにくいので、新たな紛争が生じるおそれがあるという課題がある。ここも両論併記で取りまとめているところでございます。
大きな論点の「3賃金請求権の消滅時効期間について」でございます。
こちらに関しても検討会の報告に沿って御説明させていただければと思います。11ページをごらんください。前回の分科会でも内容については御報告済みでございますが、抜粋で申し上げますと「以上を踏まえると」ということで3つほど提示しております。
例えば、現行の2年間の消滅時効期間のもとでは、未払い賃金を請求したくてもできないまま債権が消滅してしまっているという現実の問題もある。あるいは、仮に消滅時効期間が延長されれば、労務管理等の企業実務も変わらざるを得ず、紛争の抑制に資するため、指揮命令や労働時間管理の方法について望ましい企業行動を促す可能性があるということなどを踏まえると、現行の労基法上の賃金請求権の消滅時効期間を将来にわたり2年のまま維持する合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要ではないかと考えられるということでございます。
この検討会の議論の中では、例えば改正民法の契約上の債権、これは先ほど起算点のところで御説明した内容でございますが、と同様に、賃金請求権の消滅時効期間を5年にしてはどうかとの意見も見られたところでございますけれども、消滅時効規定が労使関係における早期の法的安定性の役割を果たしていることや、大量かつ定期的に発生するといった賃金債権の特殊性に加え、労働時間管理の実態やそのあり方、企業における影響やコストについても留意しということで、具体的な消滅時効期間については速やかに労働政策審議会で検討し、労使の議論を踏まえて一定の結論を出すべきであるという整理でございます。
加えまして、もう一つ、退職手当についても論点が提示されておりました。これに関しては、先ほど申し上げたように、昭和62年の労働基準法改正で既に消滅時効期間は5年となっているということでございまして、その経緯も踏まえつつ、賃金請求権の消滅時効期間とあわせて検討することが適当であるという形でまとめているところでございます。
資料No.2-1に戻っていただきまして、大きな論点の「4賃金請求権以外の消滅時効について」に関して検討会報告で提示された論点は、主に年次有給休暇と災害補償請求権でございました。
年次有給休暇に関しましては、ここにありますように、仮に消滅時効期間を延ばす場合、制度趣旨は、年休はそもそもその権利が発生した年の中で取得していることが想定されている仕組みではないかという意味でございますが、その制度趣旨あるいは取得率の向上という政策の方向性に逆行するおそれがあるのではないかということで、検討会の報告の中では、必ずしも賃金請求権と同様の扱いを行う必要性がないのではないかという形で議論がまとめられているところでございます。
災害補償請求権につきましては、現在、先ほど申し上げたように、民法の消滅時効と比較すると短いという整理がされるわけでございますが、それに加えまして、改正民法では契約に基づく債権の消滅時効期間は原則5年とされたこととの関係、あるいは災害補償請求権に関しては使用者の無過失責任でございますが、これと調整規定が設けられている民法の損害賠償請求権、これは使用者の故意過失が要件ということで、不法行為によるものであれば消滅時効期間は3年とありますが、こことの関係はどうやって整理するかという論点がございました。
加えまして、No.2-2の12ページをごらんいただければと思います。一番下の5行が災害補償請求権の論点の抜粋でございます。仮に労基法の災害補償請求権の消滅時効期間を見直す場合、使用者のいわゆる免責のための労災保険制度の短期給付の請求権の消滅時効の扱いをどう考えるか、さらにその場合に、ほかの労働保険、社会保険の給付との関係、併給調整をどう考えるかといった課題があるという形で整理しております。
こちらに関しては14ページをごらんいただければと思います。労働保険や社会保険関係法令の消滅時効期間を整理したものでございます。使用者の災害補償責任は労働基準法で現行2年となっております。労災保険に関して言うと、労災保険の給付が、いわゆる使用者の災害補償責任を免責する効果を持っているわけでございますが、長期給付、これは年金でございますけれども、こちらは5年、短期給付は2年で整理されているところでございまして、労働基準法と労災保険法の消滅時効期間は一致しているということでございます。仮に労働基準法の消滅時効期間を2年より延ばすことになった場合、労災保険をどうするかという課題になってまいります。今と同じような形で、労働基準法と労災保険法の消滅時効を同じように合わせようとすると、今度は特に健康保険などが典型になりますが、労災保険の休業補償給付と健康保険の傷病手当金は併給調整が規定上なされていることなどを考えると、健康保険のほうをどうするかといった議論に波及する。いわば社会保険全体の時効のあり方に波及するのではないかというようなことで、この検討会では課題として提示していたという経緯がございます。
本日は、以上4点につきまして主に御議論いただければと事務局としては考えております。よろしくお願いいたします。
○荒木会長 ありがとうございました。
ただいまの説明につきまして、御意見、御質問があればよろしくお願いいたします。村上委員。
○村上委員 御説明、ありがとうございました。
資料No.2-1の2の消滅時効の起算点についてであります。今、御説明いただいたように、従前の改正前民法では客観的起算点であったところを民法改正では新たに主観的起算点を設けることになった。これを踏まえて賃金請求権の消滅時効をどうするのかという論点だと理解しております。この点についてはまだ結論を持ち合わせておりませんが、検討するに当たって、資料No.2-1の2の2つ目のポツにあるように「どの時点が主観的起算点に該当するかといった新たな労使間の紛争が生じるリスクをどのように考えるか」ということではなく、そもそも主観的起算点とは何かということを改めて整理しておくことも必要ではないかと思います。
そこで、質問ですが、法律家の先生もいらっしゃるので、お考えがあれば教えていただきたいと思います。資料No.2-2の6ページには、賃金等請求権については主観的起算点と客観的起算点は基本的には一致ということで、そうなのだろうと思うのですが、ただ、例外的に異なる場合があるということです。
その際、主観的起算点というのは、8ページの先ほど御紹介いただいた政府参考人の答弁の下のほうにありますけれども、権利の発生原因についての認識と、権利行使の相手方である債務者を認識することが必要ということです。相手方の認識というのは当然わかることですが、では権利の発生原因についての認識とは何なのかということが課題になるかと思います。検討会でも、先ほど御紹介いただいたように、いわゆる名ばかり管理職の例が出されておりますが、この場合は裁判などにおいて管理監督者として扱われていたけれども、実はそうではなかったということがわかった時点が権利の発生原因を認識した時点と言えるのかどうか、必ずしもそうではない場合もあるのではないかと思われるのですが、そこはどう考えればよいのかということについて何かお考えがあれば教えていただきたいと思います。
○荒木会長 事務局からお願いします。
○労働関係法課長 現時点で裁判例などを手元に持ち合わせておりませんが、できれば整理させていただければと思います。概括する限り、裁判の判決なりが出て、それが確定した、そうなってくると、例えば、そこで訴えた労働者以外のその企業で働いているほかの労働者に関して言うと、判決が確定した時点で初めて自分は権利行使できることを知ったという形で捉えることができるのではないかという御議論が検討会の中でもあったと承知しておりますので、その議論を報告の中では取りまとめたということでございます。
○荒木会長 村上委員。
○村上委員 私も、この点について十分勉強できているわけではないのですが、例えば法律の解釈を誤っていたとか、条文に書いてあるのだけれども、知らなかったということも権利を行使できることを知らなかったことになるのかどうか、実際知らなかったというのはどういうことなのかというところをもう少し具体的に考えてみることが必要ではないかと思いますので、今後、十分検討いただきたいと思っております。
○荒木会長 輪島委員。
○輪島委員 起算点のところで私どももつけ加えて言うと、先ほど課長の説明の管理監督者性のところと固定残業代、よく出てくる話だと思いますが、労働時間の算定という意味で、今、私どもとしては全体に非常にセンシティブになっています。作業準備時間が労働時間になるのかどうか、そういうものを労働時間として請求できないと思っていたところ、請求できると知った。それについて言うと、例えば学習時間、パソコンを使って社内の勉強をしているとか、仮眠時間、小集団活動の時間、取引先との接待の時間、移動時間とか、論点はたくさんあると思っておりまして、多種多様な論点があると私どもも認識しているところでございます。
そういう意味で言うと、行政指導や裁判の際に、個々の人ごとにこうした論点について、請求できることを知ったときというのはいつなのかを確認したり、労働時間かどうか確認する作業というふうに、それが労使それぞれに求められることだと大変な労力がかかるだろうと思いますし、また訴訟の長期化も誘発するというふうなことを大変心配しているところでございます。
以上です。
○荒木会長 八野委員。
○八野委員 今の点は非常に重要なところだと思っていますので、今後この中でもしっかりと議論していきたいと思っています。ある意味、今までの判例等の中からも参考になるものがあれば提示していただければと思っております。
「1検討の前提」ということで、資料No.2-1、2-2の最初のほうのページになると思いますが、今回の改正民法のところを見ますと、職業別に異なる短期消滅時効が合理性に乏しいこと、または実務的に判断が難しいという問題が生じていることから、時効の期間が統一化され、簡素化されたと認識しております。
労基法115条における賃金等の債権の消滅時効期間は、こちらにも書いてありましたが、民法における1年の短期消滅時効が、労働者にとって重要な賃金請求権の消滅時効が1年ではその保護に欠けるという労働者保護の観点から特別に2年に延長されたものと認識しています。労働者保護という労基法の趣旨、これをもう一度きちんと捉えて、やはり労基法の基準が民法を下回るということであってはならないと考えています。労働者保護を目的とした労基法が民法の定める一般的な債権の権利保護の水準より下回るということは許されないと認識しておりまして、改正民法と同様、5年の消滅時効期間であるべきというのが労働側の意見ということで述べさせていただきたいと思います。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。北野委員。
○北野委員 私も「1検討の前提」で少し意見を述べさせていただきたいと思います。改正民法第624条2項では、労働者が既に履行した割合に応じて報酬を求めることができるというふうに新たに規定が設けられたと認識しております。また、請負についても、従来であれば請け負ったものが完成して報酬を請求できるということだったのが、改正によって、履行の割合に応じて報酬を請求することができるようになったということからしますと、先ほど副業・兼業の中でも意見があったと思っているのですが、請負と雇用がますます近接してきたのではないかと考えることもできるのではないかと思っています。
その上で、近年では請負で働く個人事業主の労働者性が争われる事案がふえていると思っています。例えば、今回の改正民法でいきますと、個人事業主であれば民法の消滅時効期間が適用される。一方で、労働者であれば労基法の消滅時効期間が適用されるということになりますと、労働者性の有無によってどちらの消滅時効期間を適用するのかということになると思いますし、そういう意味では、判断が難しいという事例もこれからふえてくることにならないかと思っています。その点でも、改正民法と異なる取り扱いをするということは恐らく無用の混乱を招くのではないかと危惧されます。また、早期の法的安定性を確保するという観点からも民法と同じ消滅時効期間にすべきではないかと意見を申し上げておきたいと思っています。
それから、きょう、説明はなかったのですが、参考資料No.3の3ページに、消滅時効に関連する規定を有する他の法律においては消滅時効期間は変更していないものが大半というふうに記載されております。率直に申し上げますと、他の法律が変更しないから変更しなくてよいという理由にはならないのではないかと思っておりますので、いずれにしろ、労基法の趣旨を踏まえた労働者保護に資する方向でやはり改正すべきではないかという点についても意見を申し上げておきたいと思います。
以上でございます。
○荒木会長 ありがとうございました。
川野委員。
○川野委員 「1検討の前提」で、先ほど八野委員からございました労基法115条における退職手当の請求権に関して検討の必要性について触れておきたいと思います。資料No.2-2の4ページ、退職手当の請求権の年数の設定根拠について記載があるところでございます。
1から3は、当時の見直しで延長された背景ですが、その状況は今に至っても変わっていないという認識を持っております。加えて、検討の必要性があると思われる課題として、1点目に、高年齢者雇用安定法の関係で平成25年4月から原則65歳までの雇用義務が発生し、雇用確保措置として多くの企業では継続雇用制度という制度を導入しているところが多いということです。継続雇用制度においては、60歳で雇用が1回満了して、それから5年間の新たな雇用が継続するということでございまして、退職金を60歳で1回受給して、それから5年間、同じ雇用主のもとで働き続ける状況が続くということでございます。例えば退職金の算定基礎などに課題があるとしても、雇用関係が継続する中で争いを起こせるかという労働者の立場があると思います。加えて、5年間の継続雇用が続いて、その収入で生活を営んでいる方々は、退職金に関する認識が薄い中で、その退職金を改めて自覚する時期が5年後に発生することもあり得るのではないかということです。
2点目として、今、65歳定年制に向けた取り組みが多くの企業の労使で進められているという背景がございます。私どもの組織で、中小と呼ばれる300人未満の150社と、300人以上の中堅以上の企業150社の労働組合についてアンケート調査を行った際に、複数回答ありで高年齢者継続雇用の課題の有無について設問を設けたところ、定年延長に取り組んでいるところが25.2%、労使で検討しているところが50.6%、合わせると75.8%が定年延長を見据えた議論をスタートしている、または取り組みをスタートしているという実態があります。
そうしたことを踏まえると、現役中の退職金制度の見直しも含めた、段階的な定年年齢の引き上げ、賃金及び退職金の見直し、年齢的な経過措置の導入等々、対象者や実施時期によって複雑な賃金や退職金の計算の発生が実態として起こっているということでございます。そうした状況が広がる中において退職金の請求権が5年間のままでいいのか、検討の余地があるのではないか、検討の必要があるのではないかと思っておりますので、御検討いただければと思います。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
輪島委員。
○輪島委員 私も「1検討の前提」ということで一言だけ申し上げておきたいと思います。労働基準法は刑罰法規ということでございますので、民法が改正されたからといって、それに連動して改正するという必要性はないのではないかと考えております。先ほど八野委員がおっしゃったように、1年が2年に修正されているということですが、5年が2年にも修正されているので、基本的に条件という意味ではパラレルではないかと思います。
また、民法の基準を下回ってはならないという御主張については理解しているところですが、民法を下回るものというのは、先ほど事務局からの説明にあったように幾つもあるという中で、どういうふうに議論するのかということではないかと思います。
また、労働側の主張の通り、仮に民法どおりにするというようなことであれば、それは民法の改正のときにあわせて議論されたはずです。そうではなく、労働政策審議会に預けられているやはり賃金というものは、賃金債権というものの特殊性等、早期に確定していかないと、何万人もいる会社が毎月給与という形で支払いをしているその企業実務において、余り長い期間、権利が消滅しないというようなところは非常に大きな影響があると思っています。その点から言うと、現行の賃金請求権の消滅時効期間を特に変える必要はないと従来から申し上げておりますけれども、2年で特段の問題はないのではないかと思っているところであります。
それから、先ほど村上さんがおっしゃった起算点の関係も、言い漏らしましたが、賃金債権について言うと、主観的起算点という考え方がこれまでなかったということなので、どのような影響があるのかということも含めて慎重に議論していきたいと思っています。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
八野委員。
○八野委員 ここのところは前回の労働条件分科会の中でも意見が分かれたところと聞いておりますが、賃金は雇用労働者にとって生活の糧であるということと、労基法というのは皆様も御承知のとおり、労働者の最低の権利を記したものであると捉えております。そういう意味で、賃金について言及しているということと、民法の観点から言えば、賃金のところだけが逆に違うものをとれば、誰にでもわかりやすいシンプルな時効制度ということで民法が統一化したものがまた複雑化してしまうという問題もあるかと思います。
それと、さまざまな課題が起きて時効の問題になるときに、普通に賃金が支払われて、普通に賞与が支払われて、普通に退職金が支払われている企業にとっては何ら問題もないことであって、そこに関して何かしらのトラブルが起きたものについてこの時効というものがどうあるべきものなのかが課題になってくると思っています。そういう意味で、労働者保護の観点が非常に重要なところだという認識のもとで意見を言わせていただきたいと思います。
以上です。
○荒木会長 ありがとうございました。
佐久間委員。
○佐久間委員 労働側の御意見、民法と同様に5年に合わせるという意見もよく理解できます。ただし、これも繰り返しになりますが、これが一挙に5年となりますと、どの職位、どの時期からというのが混乱することが予想されます。昭和22年の施行以来、社会に定着し、民法の改正があったわけですけれども、労使間で有効に機能してきているのではないかと私ども考えております。
その中で未払い賃金の支払い請求がなされた場合、さかのぼる期間が長くなってしまうと、中小企業、零細企業にとっては事務負担になかなか耐えられない。従業員の証拠書類とか、そういうのが使用者側には、不備と言われればそうかもしれませんが、残っていないという状況で事務に混乱を来す。それが長くなったことによって倒産、破産に追い込まれてしまったときに、労働債権は優先的に返す債権になりますから、一般の債権者になかなか返せなくなってくるおそれも出てくると思います。
私たちは、現状の2年間というものをお願いしながら、もし5年間になった場合も一挙にできるものではないと思いますので、その辺をこれからも検討して留意していきたいと考えております。
○荒木会長 それでは、時間も大分短くなってきましたので、(2)の議題については以上といたしまして、次の議題「(3)その他」に移りたいと思います。参考資料No.4について事務局から報告をお願いします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
お手元に参考資料No.4がございますので、ごらんいただきたいと存じます。
働き方改革関連法につきましては、順次、施行されておりますが、厚生労働省におきましては、この法律の趣旨、内容につきましてわかりやすく解説いたします動画の配信を開始しております。具体的には、厚生労働省ホームページの働き方改革特設サイト、そういったインターネット上におきまして動画配信を開始しております。
まずは、Part1ということで、働き方改革の意義などを解説したものを配信しておりまして、今後、順次、時間外労働の上限規制あるいは年次有給休暇など、テーマごとにわかりやすい解説の動画を配信してまいりたいと考えております。
2ページ目でございますが、ただいま配信しております意義の第1巻につきましては、厚生労働大臣から、企業の皆様、労働者の皆様に働き方改革への取り組みを呼びかけておりますとともに、労使団体の皆様からも御賛同いただきまして、動画によるメッセージを寄せていただいております。
若干お時間をいただきまして御紹介させていただきますと、日本経済団体連合会副会長冨田様からは「社員よし、企業よし、社会よしの『三方よしの働き方改革』を目指していきましょう」とのメッセージをいただいております。
日本労働組合総連合会会長神津様からは「労使関係で働く者の納得感を確保して取り組んでいきましょう」とのお声、同じく副会長芳野様からは、「社会全体で働き方改革の機運を高める取り組みとしての『Action!36」」について御紹介いただいております。
3ページでございますが、日本商工会議所会頭三村様からは、「多くの経営者が働き方改革を自社の課題と前向きに捉え、実現していくことを心から希望している」というメッセージを頂戴しております。
全国商工会連合会会長森様からは、「人手不足が深刻化している中、小規模事業者が発展していくためには、生産性を向上させ、処遇改善をなし遂げることがとても重要である」とのメッセージを頂戴しております。
全国中小企業団体中央会会長森様からは、「働き方改革は中小企業をよりよいものにしていき、収益を上げる生産性革命である」というメッセージをいただいております。
このような形で労使双方の皆様のお力添えもいただきながら周知に取り組んでおりますことに関しまして、この場をお借りしまして改めて御礼を申し上げますとともに、今後とも、労使の皆様とともに働き方改革について厚生労働省として取り組んでまいる所存でありますことを申し上げ、御報告とさせていただきます。ありがとうございます。
○荒木会長 ただいまの説明につきまして、何か御質問、御意見等があればお願いいたします。よろしいでしょうか。
ほぼ終了の時間となりましたので、ほかに特段御発言がなければこれまでとしたいと思いますが、何かございますか。よろしいでしょうか。
それでは、本日はここまでとさせていただきます。
最後に、次回の日程等について事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 次回の労働条件分科会の日程、場所につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木会長 それでは、これをもちまして、第154回労働条件分科会は終了といたします。
なお、議事録の署名につきましては、労働者代表の櫻田委員、使用者代表の早乙女委員にお願いいたします。
それでは、以上といたします。本日はありがとうございました。