2019年9月13日 第14回新型インフルエンザ対策に関する小委員会 議事録

健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室

日時

令和元年9月13日(金)14:00~16:00

場所

厚生労働省 専用第21会議室(17階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

議題

(1)WHOにおける新型インフルエンザのパンデミックフェーズ改定に伴う新型インフルエンザ等対策政府行動計
   画の変更について
(2)新型インフルエンザ等における特定検疫港等について
(3)新型インフルエンザ等におけるサーベイランスについて
(4)新型インフルエンザ等における医療体制においての医療資機材の整備について
(5)新型インフルエンザ等対策における今後のワクチンの考え方について
(6)細胞培養事業の評価結果(報告)
(7)新型インフルエンザ等対策医療機関整備状況(報告)
 

議事

 

○福井新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 定刻となりましたので、ただいまから第14回新型インフルエンザ対策に関する小委員会を開催いたします。本日の出席状況は、委員13名中10名御出席ですので、会議が成立しますことを御報告いたします。なお、参考人として公衆衛生対策班、医療・医薬品作業班の3名の委員に御出席をいただいております。開会に当たりまして、日下感染症課長から御挨拶申し上げます。
○日下結核感染症課長 皆さんこんにちは、厚生労働省健康局感染症課長の日下と申します。よろしくお願いします。本日はお忙しいところ、新型インフルエンザに関する小委員会に御出席いただきまして、ありがとうございます。最近の新型インフルエンザ対策の取組といたしましては、平成23年から実施しておりました新型インフルエンザ開発・生産体制基盤整備第2次事業が、本年の3月末をもって終了をいたしました。この事業においては、当所の目的、目標でありますワクチン株の生産体制について、株を入手してから半年間で、ワクチンが国民全体に行き渡るという製造体制を構築すること、これが達成できたことを今年の5月17日に公表をさせていただいたところです。
本日の小委員会においては、新型インフルエンザのパンデミックフェーズの改訂に伴います政府行動計画の変更、そして7月3日の作業班において、御議論をいただきました今後の新型インフルエンザに対するワクチンの考え方、これらについて議論をしていただく予定となっております。このため委員の皆様方におかれましては、それぞれの専門的な立場から活発な御議論をお願いしたいということで私の御挨拶とさせていただきます。本日はよろしくお願いいたします。
○福井新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 日下課長は所用により退席いたします。それでは新班員を御紹介します。国立国際医療研究センター病院国際感染症センター長の大曲貴夫様です。国際医療福祉大学医学部感染症学教授の加藤康幸様です。新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野教授の齋藤昭彦様です。国立感染症研究所感染症疫学センター長の鈴木基様です。本日は御欠席ですが、国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の長谷川秀樹様にも委員に御就任いただいております。
続いて、事務局の人事異動がありましたので、御紹介いたします。結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室長加藤です。
続いて、本委員会の委員長ですが、岡部委員長の退任に伴いまして、谷口委員が感染症部会長より指名されておりますので、谷口委員に委員長をお願いします。ここからは谷口委員長に進行をお願いいたします。
○谷口委員長 国立病院機構三重病院の谷口と申します。御指名ということで、このような所に座っておりますが、言いたいことは言いたいと思っていますので、皆様方もよろしく御協力のほどお願い申し上げます。
まず事務局から審議参加に関する遵守事項について御報告をお願いします。
○福井新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 審議参加について、御報告します。本日御出席をされた委員の方々の過去3年度における関連企業からの寄付金・契約金などの受取状況について、申告をしていただきました。委員の皆様の申告内容については、机上に配布しておりますので御確認いただければと思います。事務局で申告内容を確認しましたが、審議や議決に不参加となる基準に該当ございませんでした。以上です。
○谷口委員長 次に事務局から配布資料の御確認をお願いします。
○福井新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 配布資料ですが、議事次第、委員名簿、座席図のほか、資料が1~7、参考資料が1~8-3まで配布しております。議事次第に書かれている配布資料の一覧と照らして不足の資料がありましたら、事務局にお申し付けください。
申し訳ありませんが、冒頭のカメラ撮りについては、ここまでとさせていただきますので、御協力よろしくお願いいたします。以上です。
○谷口委員長 ありがとうございました。本日の議事に入っていきたいと思いますが、議事に入る前に本日の議題が非常にたくさんありますので、確認をいたしたいと思います。最初に(1)WHOにおける新型インフルエンザのパンデミックフェーズ改訂に伴う新型インフルエンザ等対策政府行動計画の変更について、(2)新型インフルエンザ等における特定検疫港等について、(3)新型インフルエンザ等におけるサーベイランスについて、(4)新型インフルエンザ等における医療体制においての医療資機材の整備について、(5)新型インフルエンザ等対策における今後のワクチンの考え方について、(6)細胞培養事業の評価結果(報告)です。最後(7)新型インフルエンザ等対策医療機関整備状況(報告)です。時間がきっと押してくると思いますので、早速議題(1)のWHOにおける新型インフルエンザのパンデミックフェーズ改訂に伴う新型インフルエンザ等対策政府行動計画の変更について、御議論をいただきたいと思います。まず事務局から現状あるいは論点について、御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 それでは説明します。資料1、参考資料1を御用意ください。資料1の表題に書いてありますが、WHOにおける新型インフルエンザのパンデミックフェーズ改定に伴う新型インフルエンザ等対策政府行動計画等の変更についてです。参考資料の2ページ目、WHOパンデミックインフルエンザフェーズ(平成21年)という所です。これは2009年のパンデミックインフルエンザのWHOのフェーズです。このときの特徴としましては、フェーズが1から6までありますが、この図の下に書いてあるような条件を満たした場合には、WHOでフェーズを決めていくということで、そのフェーズに合わせて当初、各国がいろいろな対応を決めるという形になっておりました。資料1ですが、2009年のパンデミックインフルエンザの後に、平成25年6月に発行されたWHO暫定ガイダンスにおいては、新たなパンデミックのフェーズが示されておりました。その内容が今回、平成29年5月に最終版となりましたということで改定が行われております。
参考資料の3ページ目が新しいものですが、四角の枠の中に記載がありますように、WHOのリスクアセスメントを考慮しつつ、この特徴としましては、各国が独自にリスクアセスメントを行い、それに基づいた対策を講じることとなっております。つまり、これまでは世界各国がWHOの決めるフェーズに合わせて対応ということだったのを、各国の独自リスクアセスメントに変えるという内容です。我が国の新型インフルエンザ等対策政府行動計画に関しましては、我が国のリスクアセスメントに基づいて対策を行うということが、もともと計画の根底にありますので、今回の改定を受けて大きい内容としての変更はありませんが、このフェーズの引上げ、引下げや、フェーズ4のときの対応というような文言がありますので、そういった文言に関して今回改定をしたいということで提案したいと考えております。以上です。
○谷口委員長 以上のことに関しまして、改定内容につきましては、今の段階ではよろしいですか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 それでは、改定内容も合わせて説明します。参考資料1の3ページ目以降に具体的な改定が、現在のものと今後の案という形で左右で示しております。行動計画の中では、発生段階の所でWHOの「フェーズの引上げ及び引下げ等」の情報を参考にという所を、「公表する」情報を参考にという形にし、政府行動計画における発生の段階、下の表ですけれども、WHOのフェーズの対応表を削除という形で考えております。また次のページですが、海外発生期のところで、「WHOが新型インフルエンザフェーズ4の宣言若しくはそれに相当する公表」というところで、フェーズ4の宣言というのがありますので、こういった文章を削除するという形で考えております。下記につながるところも同じような内容の変更です。以上です。
○谷口委員長 事務局からの原案が示されましたが、これにつきまして質疑、あるいは御議論等ございましたらお願いします。
○押谷委員 変更後の文章ですけれども、「WHOが新型インフルエンザ又は急速にまん延するおそれのある新感染症の発生を公表する前であっても」と書いてありますが、現在WHOが情報を得て公表しないということは通常考えにくい。ここで言っているのは、本来はWHOがリスクアセスメントをした結果、新しいガイダンスの中ではパンデミックを宣言する場合もしない場合もあると書いてあるので、パンデミックを宣言する、IHRに基づいてpublic emergency international concernを宣言するというようなことを多分指していると思います。ここで書かれている発生を公表というと疫学的な状況のことなので、リスクアセスメントと読み込めないように思います。だから、WHOがリスクアセスメントをした結果ということが、本来ここでいうべきことなのかなと思うのです。これだけ見ると単純な疫学情報、例えばヒト・ヒト感染が発生しました、それを公表するかどうか。その結果として、WHOはどう判断して、通常こういうことが起こると必ずリスクアセスメントをやっていますので、そこが本当はここで言いたいことなのかなと思うのですけれど、なかなかこの文章を読んで、そう読めずに、何か疫学的な状況のことを言っているのかなという気がするのですけれども。
○谷口委員長 ほかに、この件につきまして御議論はございますか。
○釜萢委員 専門の先生がおられるので教えていただきたいと思うのですが、なぜこういう変更になったというところが、私自身は必ずしも十分理解できないでおります。2009年の時はWHOからフェーズの宣言が出され、それに応じて国内も対応するやり方だったけれども、今回はそこが外れると理解しているのですけれども、そのことが、実際にどう変わるのか、特に国民の皆さんにお伝えする場合に、どのような変わりがあるのかが見えないように感じます。今、押谷先生からお話がありましたが、もう少しその辺りを補って教えていただけるとありがたいと思います。
○谷口委員長 事務局、ありますか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 まず、政府行動計画の場合の国民の皆様への対応ということでいうと、政府行動計画では、正に今回削除するとしている対応表に発生期の話が書いてありますが、国内における未発生期、国内ではなく世界も含めた未発生期、海外で発生していて国内では発生していない時期、国内で発生しているときの早期、国内で感染しているとき、小康期という形で、それぞれの国内における状況を更にリスクアセスメントして、それに対しての対応がそれぞれまとめてあるというのが行動計画の概要になります。
したがって、WHOのフェーズという意味でいうと、今出てきているのはパンデミックとパンデミックの間の時期、つまりパンデミックがまだ出ていない時期と、軽快期、新しい亜型が出ているけれど人への感染が確認をされている、ヒト・ヒト感染までは至っているかどうか、どちらかはっきりしないという時期、それとパンデミック、明らかに新しい亜型のインフルエンザの人への感染が世界に拡大している時期という形になっておりますが、それもそれぞれの項目の所にきちんと該当する所がありますが、まずは国としてのリスクアセスメントによって対応するので、今回の変更が直接骨格の所に関与しないと考えているということです。
また、押谷先生から御指摘いただいたところですけれども、基本的に新型インフルエンザの宣言に関しましては、持続するヒト・ヒト感染で国民の多くが免疫を持っていないときということですので、そこの定義に該当する新型インフルエンザの内容をWHOが公表したときということになりますので、そういったリスクアセスメントのことも、ここの中で含有していると考えております。
○釜萢委員 委員の皆様は、それで大体十分御納得いただいているのかどうか、ちょっと分かりにくいような気もするのですけれども、この形でよいのかどうかについて、もう少し委員の皆様から是非御意見を賜りたいと私は思います。
○谷口委員長 いかがでしょうか。グローバルフェーズとローカルフェーズが前回のときにはかなり混乱をして、もちろんパンデミックというのはずっと広がっていくものですから、メキシコですごい状況になっていたときも、日本はまだそうなっていなかったわけですよね。そのような世界各国が異なる状況にあるとき、WHOはフェーズ4を宣言したわけで、必ずしもそれが各国の実情を反映していなかった。世界は広いですから、今回はそれぞれの地域、日本国内であってももちろん違うわけですので、そういったところでの感染の実情をきちんとアセスメントをして対応してくださいというのが、WHOの考え方だろうと思います。
○釜萢委員 谷口先生の御説明で、大変よく分かりました。ありがとうございます。
○谷口委員 押谷先生の話ですけど、新感染症という日本語の定義で、WHOのパンデミック、あるいはPHEICというのは、また定義が違うので、それらを同時に議論するから混乱するのだろうと思います。日本語の新型インフルエンザと英語のノーベルインフルエンザも全然意味が違うので、一緒にはできませんよね。だから、そこら辺がおかしくなっているのかなという気はするのですけれど、ただ、ここでWHOが公表するのは、押谷先生が言われるように発生ではなく、実際にリスクアセスメントの結果として、今こういう状況であるということがくるのだろうと、それはそう思います。実際に多分コンクリートなことは前回のこともありますのであまり言わないのではないかという気はします。そうすると、文言をどのようにするのが適切かという話なのでしょうかね。
○押谷委員 多分発生の公表というのはかなり違和感があるので、日本でいうと、新型インフルエンザとか新感染症に相当するような、感染症と考えられるようなものが発生した状況を、WHOが公表するということだと思うのですけど、それはWHOのリスクアセスメントにも基づくし、日本もリスクアセスメントをしなければいけない、ガイダンス上もそうなっているので、そういうことが、これだけを読むと読み込めなくて、新型インフルエンザ又は急速にまん延する恐れのある新感染症の発生と考えられるような状況を、WHOが公表したというのだったら何となく分かるのですけれども、単に発生というと、それはどちらかというと何人発生しましたというような疫学情報のことのような印象はあります。
○谷口委員長 いかがでしょうか。要するに単なる現象ではなく、きちんとしたリスクとして伝えているという意味を入れていきたいということですよね。
○押谷委員 その結果として、WHOはpublic emergency international concernを宣言する場合もあるし、このガイダンスの中には宣言しない場合もあると書いてあるので、そういうことも考慮しながら日本は考えていくということだと思うのですけれども、この文章でそういうことが読み取れるかどうかという問題だと思うのです。
○加藤新型インフルエンザ対策推進室長 御議論ありがとうございます。趣旨は分かりましたので、私どもも多くの方が見て分かりやすい文章になるように、もう少し考えて、また改めて御相談させていただきたいと思います。
○谷口委員長 少し文言を、リスクアセスメントということが読み取れるように御考慮いただくということですね。ほかに御意見、御議論、ございますでしょうか。そうすると、基本的には実際のフェーズ4の宣言、旧フェーズに関する文章は削除するということでよろしいでしょうか。皆さん、うなずいておられますので、これは原案のとおり削除していただく。新しい文面は、少し御考慮いただくということでよろしいでしょうか。どうもありがとうございます。
続きまして議題(2)新型インフルエンザ等における特定検疫港等につきまして、事務局から論点をお願いします。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 それでは、資料2について御説明させていただきます。新型インフルエンザ等における特定検疫港等についてということですが、これは新型インフルエンザが発生したときに海外からの水際対策の際に、幾つかの空港や港を特定検疫港等という形で指定の告示をした上で、検疫を実施するという、いわゆる検疫の集約ということに関しての内容です。現在の方針としては、新型インフルエンザ等対策の政府行動計画の中で、国は、停留を実施する場合には、厚生労働省の要請に基づき各省庁間で協議を行い、海外における発生状況、航空機・船舶の運行状況等に応じて、特定検疫港等を指定し、集約化を図ることを検討するとなっております。
旅客機等については、成田、羽田、関西、中部及び福岡空港で、貨物専用機については検疫飛行場での対応を検討する。
客船については、横浜港、神戸港、関門及び博多港で対応することになっております。また、ガイドラインのほうでも、同様の内容の記載があります。
2.の現状と課題の所を見ていただくと、近年、訪日外国人の旅行者の増加がありまして、航空機等の運行も、大きく増加してきています。現在の運行状況等を踏まえて、特定検疫港等を再検討する必要があると考えておりまして、なお、2020年には訪日外国人の旅行客者数も4,000万人にするとの政府の目標が掲げられており、今後、更に運航便の増加が見込まれると考えております。
今後の方向性についての案が、3.で示しております。特定検疫飛行場については、現在の5空港では発着枠等にもう既に余裕がなく、他の空港から新たに受入可能な航空機数は限定的であるため、5空港に次ぐ航空機発着実績がある千歳空港と那覇空港を新たに追加し、受入枠の増加を図る必要性があると考えております。
また、港に関しては、特定検疫港については、近年、九州・沖縄地区においてクルーズ船の入港実績が著しく増加しているため、現在の4海港のみでは対応が困難になることが懸念されております。そのため、地域別の状況を考慮した上で、クルーズ船の入港実績の多い港のうち、検疫手続を円滑に行うことができる旅客ターミナルビルが整備されている長崎、鹿児島、那覇を新たに追加し、受入枠の増加を図る必要性があると考えております。旅客ターミナルビルというのは、港の検疫のときいろいろな検疫のスタイルがありますが、比較的空港の検疫に近い形で、陸上で建物の中で検疫ができるという形で円滑な対応ができると考えております。
なお、改定案としては、行動計画のほうは、先ほど御説明しました成田、羽田、関西、中部及び福岡等といった具体的な地名の所は、全て特定検疫飛行場という形にしておりまして、港に関しても、特定検疫港という形にしております。具体的な7海港、7空港に関しては、ガイドラインのほうで追加させていただくという形で考えております。以上でございます。
○谷口委員長 新型インフルエンザ等発生した場合の検疫の集約についての改定ですが、御質問、御議論等がありましたらお願いいたします。特によろしいでしょうか。基本的には、多分、リスクアセスメントに基づいて必要な場合ということなのだろうと思いますし、季節性レベルの新型インフルエンザということであれば、多分こういったことは起こらないのだろうと思います。では、改定について御同意いただいたものと判断しますがよろしいでしょうか。
ありがとうございます。続いて、議題(3)新型インフルエンザ等におけるサーベイランスについて、事務局から御説明をお願いします。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 それでは、資料3について御説明させていただきます。新型インフルエンザ等におけるサーベイランスについてです。現在の方針ですが、新型インフルエンザサーベイランスにおいては政府行動計画のほうで、国は、インフルエンザによる入院患者及び死亡者数の発生動向を調査し、重症化の状況を把握する。また、国は、季節性インフルエンザ及び新型インフルエンザに関する疫学、臨床、基礎研究や、検疫等の有効性に関する研究を推進し、科学的知見の集積を図るということが示されております。
また、ガイドラインのほうでは、具体的なサーベイランスのガイドラインがありますので、そちらのほうで平時から行われている入院サーベイランスを継続して実施し、季節性インフルエンザとの比較により、重症化のパターンを把握する等により、治療に役立てるということが方針として決まっております。
現状と課題ということで、2.のほうに記しております。インフルエンザの入院患者の数や臨床情報を把握するということに関しては、インフルエンザの入院患者の発生動向や重症化の傾向を把握することとして、「インフルエンザにかかる入院サーベイランス」という形で開始されておりまして、基幹定点の医療機関で現在実施しております。このサーベイランスに関して、平成30年度の厚生労働科学研究費補助金の新型インフルエンザの研究事業の中で、「新型インフルエンザ等の感染症発生時のリスクマネジメントに資する感染症のリスク評価及び公衆衛生対策の強化に関する研究」において、サーベイランスにおいて、院内感染を含む入院患者を届け出するとしているため、院内感染症例を含まないインフルエンザが原因で入院した、真の重症例を区別して把握することが望まれるとの提言が出ております。
これはどういうことかというと、インフルエンザで入院した方は、全員が届出の対象にはなっているのですが、実際には入院した後に、何らかの理由で病院の中でも感染している人も入ってきておりますので、いわゆる市中での感染の入院症例と、そうではないケースが両方報告されているのが現状ですので、市中での重症化の数という意味で言うと、院内で感染した症例はきちんと区別できるほうがいいのではないかということです。
3.今後の方向性としては、季節性インフルエンザの比較により、重症化のパターンを把握する必要性があるため、季節性インフルエンザのサーベイランスのところが、真の重症例と院内での感染の症例が明確に分かるように、サーベイランスの記載方法を見直す必要性があるのではないかと考えております。
提案内容としては、2ページ、提案1は、感染症発生動向調査、インフルエンザの入院患者の報告の記載方法を変更したいということです。ここのところに院内感染症例の場合は、本調査票の備考欄に「院内感染」と記載することとしてはどうかと考えております。
提案2は、感染症サーベイランスシステム(NESID)において、入力項目に院内感染の該当の有無を追加して、区別できるようにしてはどうかと考えております。
こういった内容に関して、本年9月から翌年4~5月というのは1つの区切りですので、記載方法の具体的な変更や時期については、途中での変更というようにならないように、早くても2019年、2020年のシーズン以降なのではないかと考えておりますが、こういった内容を、今回、御議論いただいて、御同意いただけるようであれば、感染症部会のほうに上げたいと考えております。以上でございます。
○谷口委員長 現状のインフルエンザの入院サーベイランスについて、このような改定をしたらどうかということですが、御質問、御議論等はありますか。
○鈴木委員 質問ですが、インフルエンザ入院サーベイランスで、確かに重症なインフルエンザをディテクトしたいというのが主の目的なわけですが、そういう観点から言うと、そもそもの届出基準の時点から、院内感染の症例は除外するといったやり方もあるのではないかと思いますが、そういった点については研究班などで、既に何か議論などはされているのでしょうか。
○松井参考人 感染研の松井です。本件は谷口委員長が代表されておられます研究班で、検討を続けてまいりました。WHOのパンデミック・インフルエンザ・シビアリティ・アセスメント、御承知のとおり3つのインディケーターがありまして、そのうちシアリアスネスとインパクトに当たるもの、発生動向調査の中で取っているのは、実は入院サーベイランスだけとなります。というところで、まず、シアリアスネスとインパクトがごっちゃになっているというところが、1つ大変気になっているところですので、分けた形で取る必要があるというように考えます。以上です。
○谷口委員長 ほかに御意見、御議論はありますか。
○齋藤委員 新潟大学の齋藤と申します。今の内容についてですが、インパクトの定義について教えていただけますか。
○松井参考人 まだパンデミック・インフルエンザ・シビアリティ・アセスメントのインパクトという項目については、WHOのほうでもいろいろな目安を出していますが、まだ、あくまでも現状では(案)の段階です。例えば医療機関におけるインパクトということであれば、入院患者数ということが1つの指標であるかもしれませんし、医療機関インパクトはもう少し細かい項目を入れようと思えば、それはそれでいろいろあるのだろうと思います。
また、代表的なものとしてはソーシャル・インパクトと言って、例えば学校であったり、保育所なりがクローズするとそれ自体で家族に対するインパクトというようなところで、まだいろいろな議論が進んでいる段階です。入院サーベイランスということで言うと、現状、入院している患者さんというのは、恐らく医療機関に対して負荷になりますので、そういう意味においては、重症インフルエンザが重症化して入院したという方と、図らずも院内感染によって入院した方、ただし、全員インフルエンザの患者さんですので、インパクトの指標としては、この2つを合わせていいのではないかと考えています。ただし、これはあくまでも現行のサーベイランスの中で読み込める数値ということでありますので、いろいろ制約があるのは承知しております。
○齋藤委員 ありがとうございます。重症度に関しては、例えば挿管が必要な症例であるとか、ある程度決まった定義はあるのですか。
○松井参考人 資料の中に収集項目が入っているのかなと思いますが、事務局のほうで、それを説明していただいてよろしいでしょうか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 それでは、参考資料3を御覧ください。参考資料3の3ページ目、インフルエンザ入院サーベイランス調査票というのがあります。こちらのほうに具体的な対応のことも含めて記載があります。こういった内容の中で、例えばICUの入室であったり、人工呼吸器の利用というものや、検査の実施のことに関する項目も調査対象となっております。
○齋藤委員 呼吸の評価と、脳炎・脳症に関する評価をして、それらに異常があるものが重症例ということでよろしいでしょうか。
○松井参考人 1点、これ、入院時点というか、報告対象になった時点での状況ですので、入院経過中のところを全部追っているわけではないということが1つの制約です。
○齋藤委員 ありがとうございました。
○谷口委員長 ほかによろしいでしょうか。
○加藤委員 院内感染のデータの使い方のとして、インパクトに当たるのか分からないのですが、施設内でインフルエンザが広がりやすいシーズンというのがあるような気がします。高齢者の施設で、特にアウトブレイクが多いシーズンには、院内感染対策ができていないというだけではなくて、入院している患者さんの免疫だとか、流行した株に左右される面もかなりあるのではないかと思います。院内感染の届出を、特に施設内で流行しやすいシーズンを明らかにするデータとして使うという方法もあるのかなと思います。実際、オーストラリアでは、そういう高齢者施設とか、病院でのアウトブレイクの報告が集計されているので、そういう使い方もあるのかなと思いまして、参考です。
もう1つは、症例定義を多分これから決めていくのだろうと思いますが、外泊時に感染するなど、入院患者さんがどこで感染したか非常に分かりにくいときがあります。現場で毎週カウントする際に、医療機関にとって煩雑な作業になりはしないかというのが懸念されるところで、院内で発症したとか、何かもう少し分かりやすい定義の仕方もあるのかなと思いました。以上です。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 ありがとうございます。
○谷口委員長 ほかにありますでしょうか。
○坂元委員 川崎市の坂元でございます。院内感染のデータというのは、統計データだけで、個々の病院ごとに公表されるということはないと思います。なぜかというと、医療機関側にとって、捉え方によって院内感染というのはネガティブに回りから言われることがあります。あの病院はちゃんと感染対策がなっていないのではないかということで、場合によると、正直に言うのをためらう部分があるので、その辺のデータの取扱いについて、もし、お分かりになればお教えいただければと思います。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 基本的には個々の病院ごとに出すというものではありません。
○谷口委員長 よろしいですか。ほかにありますでしょうか。
○川名委員 後でまた議論が出てくるのかもしれませんが、サーベイランスとして集めたデータが、どうやって現場にフィードバックされていくのかというのを教えていただければと思います。
○松井参考人 今のではなくて、先々の話でしょうか。
○川名委員 例えば新型インフルエンザが発生した2009年の時にも、多分、症例を集めていて、厚生労働省のホームページなどでリストが出ていたと思いますが、それだけ見ても、どの程度の重症度の患者さんが流行しているのかというのを把握しきれなくて、緊急で研究班を立ち上げて、新型インフルエンザ症例集を作った記憶があります。そういったように集めたデータが現場にリアルタイムにフィードバックできると、「今回出てきたインフルエンザがどのぐらいの重症度なのか」とか、「どういった合併症が多いのか」というのが現場ですぐ分かると思うので、そういったフィードバックの仕方について、どのぐらい検討されているのかということです。
○松井参考人 あくまでも入院サーベイランスというのは、サーベイランスとして基幹定点から定常的にデータを集めているというところが大きな価値であります。そういう観点からいきますと、やはり新型インフルエンザが始まったときには、いろいろスペシャルスタディであったり、その他のメカニズムというものも加えて全体的にその評価をしていくということですので、入院サーベイランスだけで、このシアリアスネス、インパクトというようなものを測れるというようには思っておりませんが、1つの大事な情報源であろうと考えています。
○谷口委員長 恐らくクリニカルシビアリティというのと、パンデミックの全体のインパクト、シビリティが低くとも、感染者が多ければ入院数は増えますので、その違いも出てくるのだろうと思いますが、今、お話にあったように、院内感染を含めれば、院内感染という新たな情報は得られる。それは、ひょっとしたらインフルエンザとしてのインパクトとしての指標になるかもしれない。そういう意味では、この原案のように、それも含めて別個立てで院内感染例、あるいは定義にもよるのですけれども、入院して何日後に発症したとかそういう定義も入れてもいいと思いますが、そういうのを入れて進める。あるいは、もう1つは、これはクリニカルシビリティを見る、サーベイランスであるから、そういうのは最初から削除する。この2つの案だろうと思いますが。
○押谷委員 そういうクリニカルシビアリティを見るためのパンデミック発生時のサーベイランスとしては、この現行の入院サーベイランスはいろいろな課題があるということがいろいろな所で議論されてきて、多分、研究班等とかでいろいろ検討されているのだと思いますが、資料3にあるように、このこと自体は全然私は反対ではなくて、院内感染事例を分けるというのはいいと思いますけれども、「新型インフルエンザ等におけるサーベイランスについて」と書かれていて、「現状と課題について」というようにまとめられていて、それは、現状と課題は院内感染だけの問題なのですか、というところが、やはり、なかなか我々に、研究班等とかでいろいろ検討されているのだと思いますが、見えてこないので、どこがどのようになっているのか。
例えば、現行の入院サーベイランスの大きな課題としてアウトカムが分からないとか、サブタイプが分からない、新型インフルエンザ発生時に季節性インフルエンザと混合流行した場合に、2009年もそうだったのですけれども、どれが新型インフルエンザなのかよく分からない。現行の集め方では、それは分からないはずなのですが、そういういろいろな課題があって、その中の1つの、全体から言うと、重要度からいうと、必ずしも高くないようなことがこういう形で課題というように出されると、ちょっと違和感があって、だから全体のこういうサーベイランスについてもどんなに課題が、前回、別の会議だったかもしれませんけれども、発言したのですが、やはり全体像がなかなか分からなくて、どういう課題があって、それに対して、今、国がどういうところまでいっているのか、大きな課題についてどういうところがまだできていないのかというような整理は、やはりきちんとしていただかないと、我々には余り全体像が見えてこないという問題があると思います。
○谷口委員長 ほかはよろしいでしょうか。サーベイランスの課題になると、私も言いたいことがたくさんあるものですから、ただ、これをやっていると、1日終わってしまいますので、これは、やはり1度きちんと整理したほうがいいと思いますが、いかがですか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 サーベイランス全体のことに関しては、研究班でもいろいろ取り組んでもらっていることもありますので、そういった所の進捗等も含めて、1度また別の所でまとめさせていただきたいと考えております。
○谷口委員長 やはり1度やらなくてはいけないことだろうと思います。それで、今回の議題ですが、少なくとも、これは今後のことを考えていくために、取りあえずはここを少し変えたいというところだと思いますが、そうすると、院内感染は定義から外すか、あるいは、それも入れて、これまでのサーベイランスを続けて、ただ、そこに院内での発症ですということを入れるかということですね。いかがでしょうか。それぞれ一長一短はあるかもしれませんし、うちは多いから嫌だなという、でも、基本的にどのような対策をしていても、インフルエンザの院内感染というのは必ず起きますので、それがその病院の対策が不備だということには、決してつながらないとは思いますけれども。いかがですか。
○齋藤委員 新型インフルエンザが起こったときの実際の医療の現場は、非常に多忙になり、その様な中で当然院内感染も当然起こると思います。その様な中で、この報告書を書き、インフルエンザの院内感染も含めた形で報告するのは、現場においては、やはり負担が大きいと思います。あと、施設によって、大部屋中心の病院、個室中心の病院がありますが、それによって、院内感染の頻度が変わります。先ほどの御意見の中で、院内感染が、いわゆるインフルエンザのトランス・ミッシビリティーを決める1つの指標になるかもしれないというお話があったのですが、それも多分、各施設の状況によって異なると思います。私個人の意見としては、現場の多忙な状況なども考えると、院内感染は除いた方がシンプルな気が致します。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 事務局から補足させていただきます。政府の行動計画の中の基本的な、いろいろな、例えば発生率とか、罹患頻度とかそういったものがありますが、その中の1つの大きな情報としては入院患者の予測数というのがありますので、その院内感染も含めて実際に発生したときの入院患者数には入ってくるので、そこら辺のところも1つ御議論の中で念頭に置いていただければと思います。
○坂元委員 データを集めても、国のほうは個々の病院単位では発表しないというスタンスはよく分かるのですが、逆に自治体病院などは情報公開条令などで公開を求められたときに、つまりこういう調査をやっていると分かったときに、多分、出さざるを得なくなると思います。それをノーという根拠がなくなってしまうのです。こういう調査をやっていますと分かったときに、例えば、川崎市立病院が、市民からその情報を出してくれと言ったときに、これをノーと言うことはなかなか難しいので、実際こういう調査をやれば、そういう事例も当然出てくるだろうというように思います。
○谷口委員長 確かにインパクト、病院へのインパクトとすれば、院内感染によって入院が長くなるわけですから、それも影響するものではあります。ほかによろしいでしょうか。
○坂本参考人 聖路加国際病院の坂本です。医療現場にいる者の立場として意見を述べさせていただきますが、報告をするということ自体に関しては、定義がシンプルなものであればそれほど負荷は掛かりません。例えば入院4日目以降に発生したインフルエンザは型どおり院内発生としてくださいといった明確な定義や、外泊した場合の注釈などを付けていただけると有り難いですけれども、それだけの話なので、報告は全く問題ないと思われます。複雑な定義はコンプライアンスが悪くはなるだろうと予測します。
それで、集めたデータをどのようにフィードバックして活用されるかというところは、今回の議論で明確にするのは難しいと思いますが、報告をするからには、現場に有益な情報としてにフィードバックしていただけると有り難いところです。その点が今後より明確になれば有り難いと思います。
○加藤新型インフルエンザ対策推進室長 事務局から多少の補足です。現状、既に院内発生も含めたデータを集めさせていただいておりますので、現場のほうで追加で発生するものとしては、それが新しく設ける院内発生の定義には当てはまるかどうかを御確認いただいて、チェックを付けるか付けないかということになりますので、我々の定義次第ではありますが、なるべく現場に御負担の掛からないような方法でやりたいと思っております。
もう一点は、そういった形で、トータルで言うと現状の数字をそのまま引き継ぐことになりますので、大きくデータの変動が発生しないというのも除外しない場合の利点かなと思っております。
最後に御指摘いただいたデータのフィードバックは、やはり我々としてしっかり考えていかなければいけないものだと思っておりますので、引き続き取り組んでまいりたいと思います。以上です。
○谷口委員長 データのコンティニュイティーというか、今までのものが、また逆に、ガンッと下がったら怖いですけれども、実際に比較していく上では、ヒストリカルデータというのは多分重要なので、それもあるということですね。ほかに御意見はありますでしょうか。これは事務局に確認しますが、これはここで決めることではないのですね、多分。サーベイランス全体に関わることですから。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 もし、今回ここである程度の御意見がまとまるようであれば、感染症部会のほうにそういう方向の整理をしていただきたいことを提案する形になります。
○谷口委員長 いかがでしょうか。シンプルにという案と、これまでのデータの継続性を含めてという案、ただ、そのフィードバック方法によっては、いろいろな問題が生じるリスクもあるということだろうと思いますが、いかがでしょうか。負荷としては、季節性のときにはそれほど大きな負荷ではなかろうということですけれども、パンデミックのときにはもちろんあり得ると。釜萢委員、どうぞ。
○釜萢委員 院内感染を含めてどのぐらい入院があったかという情報は、きちんと把握しておきたいと思いますので、入院事例全数の報告が必要でしょう。院内感染による入院数の増加は必ずしも地域の流行状況を反映しませんので、先ほどの症例定義のようなことをなるべくシンプルに出して、そして、それがまた追加の情報として把握できれば、そのほうがよろしいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○谷口委員長 いかがでしょうか。意見は出尽したというように考えます。いずれにしろ、いずれの考えもあるものですから、これでもって総意というわけには今のところいかないだろうと思いますが、どちらかというと、このままいっていただいて、表現方法を工夫していただくというのであればいいのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
というところで御納得いただいているようですので、これも、これで御納得いただいたということにさせていただきます。ありがとうございます。
続いて、議題(4)新型インフルエンザ等における医療体制においての医療資機材の整備について、これもまたいろいろありそうですが、事務局からお願いします。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 資料4について説明いたします。新型インフルエンザ等における医療体制においての医療資機材の整備について、これは新型インフルエンザに対応していただく、一般医療機関に対しての体制整備に関する支援の内容です。現在の方針として最初のポツです。まず政府行動計画で、個人防護具の準備などの感染対策等を進めるように要請する。これは国と都道府県が一般医療機関に対してです。また、国及び都道府県等は、必要となる医療資機材をあらかじめ備蓄・整備する。国は、都道府県等に対し、医療機関において、必要な医療資機材や増床の余地に関して調査を行った上で、十分な量を確保をするよう要請することが決まっております。ガイドラインではその内容をより詳細に書いています。
現状としては、この行動計画に基づいて、都道府県が確保した新型インフルエンザ等の患者の入院医療を提供する医療機関が必要な病床及び医療資機材をあらかじめ整備して、医療体制の強化を図ることを目的として、「新型インフルエンザ患者入院医療機関設備整備事業補助金」制度を平成20年から開始しているところです。具体的な内容として、新設、増設に伴う初年度に購入する必要な需要品(消耗品)及び備品購入費、人工呼吸器及び付帯する備品が入っています。また、個人防護具(マスク、ゴーグル、ガウン、キャップ、フェイスシールド)、簡易陰圧装置、簡易ベッドが含まれています。
2ページ目です。今回議論いただきたいことは主にガウンです。平成26年の研究班で、「新型インフルエンザ等発生時に初期対応を行う「検疫所」「医療機関」「保健所」における感染対策手引」があります。この手引の中でも、エボラ出血のように患者の血液・体液やウイルスで汚染されたものとの直接接触で感染するものに関しては、WHOやCDCのガイドラインにおいて、カバーオールタイプの着用が推奨されております。一方で、新型インフルエンザは飛沫感染ですので、エボラのような直接接触に伴っての接触感染は基本的にしないことから、今後新規の購入に関して次のような案で提案をさせていただきたいと考えております。現在、ガウンに関しては耐水性の不織布素材であって、長袖で体の全面をおおうような形のもので、こういった内容のものを、今後は、新型インフルエンザは基本的には飛沫で前からかかることが非常に多いこともありますが、もちろん後ろ開きである程度おおえるようなもので、前面をおおえるものということ。あと、頭から足まで完全におおうような、カバーオール形の全身防護具は含めない形を考えております。
また簡易陰圧装置・アイソレータですが、こちらもWHOなどのガイドラインにおいては、簡易陰圧装置や患者搬送用のアイソレータに関する記載はありません。また国立諌染症研究所のホームページに、類似の感染経路のものである中東呼吸器症候群や鳥インフルエンザ(H7N9)で患者搬送における感染対策によると、搬送従事者、患者のそれぞれが、必要とされる感染対策を実施すれば、患者搬送にアイソレータを用いる必要はないとの記載があります。
一方で、国内医療施設は、これまで受入れ状況などを勘案して、アイソレータや簡易陰圧装置を整備してきたという実状がありますので、十分な精査を行う必要性があると考えております。以上のことから次のように提案したいと考えておりまして、簡易陰圧装置・アイソレータの整備については、今後見直しに向けた調査を行っていきたいと考えております。以上です。
○谷口委員長 以前にもそういう話があったと思いますが、PPE及びアイソレータについての改定ですが、御質問、御議論はありますでしょうか。
○坂元委員 川崎市も以前、非常に高額なアイソレータを買って、それ以降ほとんど使ったことはないです。それと防護服の問題もやはり従来使っているものは、あれを着てやると非常に対外的にインパクトが強い、何かものすごい恐ろしいこと起こっているような印象を与えます。その印象面から見ても、医学的に見ても十分防護できるものであれば、自治体としては費用の観点からもできるだけ簡便なもので、合理的なものにしていただければと思っております。
○谷口委員長 限りある資源ですから。ほかに何か御質問、御議論はありますか。
○坂本参考人 今の御意見に医療現場のほうからも賛成いたします。現場で一番心配なのはインフルエンザの感染経路を考えると飛沫感染です。空気感染は理論上起こり得るのでしょうけれども、実験室の中で起こっているような細かい粒子を意図的に発生させて吸い込むような状況は、自然な環境ではほぼ生じません。接触感染の可能性も、もちろん先生方御存じのとおりなくはないですけれども、手の上で30分ぐらい生存すると言われているインフルエンザウイルスは、エボラのような様式で創傷粘膜感染を起こすウイルスと異なり、顔に触れなければ医療者に感染のリスクが生じないということであれば、全身をおおう着慣れないスーツを汗だくになって出入りするたびに着脱し、その際にばく露の危険性を負うよりは、WHOやCDCが推奨しているように、ガウンを着用し、眼を覆い、マスクはN95とサージカルマスクのいずれが適切かという、議論はありますけれども、それはさておき、口元と鼻をおおう格好で、つまり、日常使っている防護具を着脱することが現場では最もスムーズに、対応人員が少ない中でも安全に対策を実践することにつながるのではないかと考えます。
○谷口委員長 極めて合理的な改定ではないかと伺っております。ほかに御議論、御質問はありますか。
○押谷委員 この議論自体は特に問題はないと思うのですけれども、資料4の2ページの所で、3.の➀、3つ目のポツで、ちょっと細かいことですが、「一方で、新型インフルエンザ等は飛沫感染であり」と書いてあって、これは今、最新のいろいろなエビデンスを総合すると、実はパンデミックインフルエンザを含む新型インフルエンザの感染経路として飛沫感染は実は重要ではないかもしれないとか、いろいろなエビデンスが言われてきていて、その議論はどこかでしないといけないとは思うのですが、それはさておいて、飛沫感染でありと言い切っていいのかという問題があります。
あともう1つ、これも3ポツですが、「新型インフルエンザ等は」となっていて、等はと言ったときに、エボラみたいなものが爆発的ヒト・ヒトと感染することは考えにくいですけれども、そうなった場合は、理論的にはエボラなど入る可能性があるので、ここに「等は」を入れるのはどうなのかなと思いました。
○谷口委員長 おっしゃるとおりだと思いますが、文言の修正は必要ですね。
○齋藤委員 今の感染経路の関して、小児科医の立場から一言言わせていただきます。この案に関しては賛成ですが、例えば感染者が、授乳が必要であるとか、診察などで暴れてしまう場合、体の前面をおおうようなエプロンであれば腕が直接子どもに接触したりします。子どもは大人と違い、インフルエンザには、接触感染対策と飛沫感染対策を同時に通常行いますが、その観点からも、そのような状況では、そこをしっかりとカバーすることができる防護具を着用するのも大事な点なのではないかと思いました。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 今回の改定するときにも、いわゆるエプロンは袖なしのものではなくて、長袖という所は残したいと思っておりますので、そういう所は留意したいと考えております。
○谷口委員長 ほかはよろしいですか。
○加藤新型インフルエンザ対策推進室長 資料の文言についてはまたちょっと検討して、御確認を頂ければと思います。
○谷口委員長 御提案については基本的に賛成頂いて、あと細かい、インフルエンザのエアロゾル感染とか、そういうところはまた今後考えていくということだろうと思いますが、よろしいでしょうか。ほかに御意見がありましたら。
○坂本参考人 当院では東京都の御支援を頂いて、中央区保健所と一緒に毎年新型インフルエンザ対策訓練をしております。その際にアイソレータの使用が現場の運用をかなり難しくすることを経験しています。例えば、気管挿管されている患者や、輸液ラインが1本つながっている患者であっても、アイソレータを使用することによって搬送が難しくなります。そもそも民間救急車に入らないとか、息苦しくて患者がパニックになるといった、具体的なことも経験しておりますので、もしまたいろいろなエピソードを知りたければ是非お声掛け頂ければと思いますが、アイソレータの使用に関する科学的根拠などを踏まえた上で、その必要性について今後再検討頂きたいと思います。
○谷口委員長 棺桶みたいなものですからね。今後見直しに向けて考えていくということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは続きまして、議題(5)に入ります。新型インフルエンザ等対策における、結局みんな等が付くのですね、今後のワクチンの考え方について御説明をお願いします。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 資料5を御覧ください。本議題に関しては、ワクチン作業班で議論いただいた内容を基に今回資料を作っております。1ページ目の新型インフルエンザ対策の全体像ですが、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある新型インフルエンザ等への対策は、➀医療以外の対策による感染対策です。不要不急の外出の自粛要請であったり、施設の使用制限、各事業者に業務縮小や接触機会の抑制といった感染対策。医療における対策として、➁ワクチンと抗インフルエンザウイルス薬等を含めた対策、この2つを総合的に行うことと、今回なっております。そういった意味では、一番最初、水際対策では早期封じ込めを行うことや、医療体制の強化を行うことで、ワクチンの早期開発や生産、接種などの準備や実際の感染拡大の抑制をやっていく意味で、ワクチンは非常に重要なファクターの1つになっております。
2ページは、今日冒頭で日下からワクチンの細胞培養事業の整備が整ったことの話がありましたが、まずその細胞培養に伴ってのワクチンがそもそも行われるようになった過程は、2009年の振り返りが必要ですので、御存じの先生方も多いと思いますが、今一度ここで振り返らせていただきます。2009年の新型インフルエンザは発生してから、4月28日の段階で製造可能量の試算を各製造販売業者に依頼をしております。その後、随時更新をしており、最終的に10月1日の段階で、平成21年度に2,700万人分が確保できることになりました。これは製造方法は季節性のインフルエンザの作り方で、鶏卵を使ったワクチンです。そうした2,700万人でしたので、輸入のワクチンも確保したほうがいいのではないかと、2,700万人では全国民分にはいたらないということもありましたので、より多くの準備が必要ということで、輸入ワクチンを購入しております。このときは大体回数で9,900万回。1人2回で計算すると約5,000万人分になります。最終的にはそこまでの需要がなかったことになりましたが、そのときに確保が非常に困難だったというところです。また、今、例えば発生したときに、細胞培養を行わない輸入ワクチンを行うということであれば、実際に輸入のものを各国でいろいろ引合いがある中で確保する形になりますので、この数自体の確保が確実にできるという保証はありません。
そのような状況から、その後の作られた政府行動計画の中では、新型インフルエンザのワクチンに対しては、まず、製造の基となるウイルス株や製造時期の異なるパンデミックワクチン、プレパンデミックワクチンの2種類を用意することが決まりました。プレパンデミックワクチンに関しては発生する前の段階に製造を備蓄されるワクチンで、プレパンデミックワクチンは発生後に新型インフルエンザウイルスを基に製造するワクチンです。
また予防接種に関するガイドラインも作成されており、ここで細胞培養法によるワクチンの生産体制整備をすることが決められております。また、プレパンデミックワクチンの備蓄を行う。発生時にパンデミックワクチンの確保を行うこと。厚生労働省は、製造販売業者に生産の要請を行うこともここで決められております。そのような状況で細胞培養法の事業が行われてきました。それに合わせて新型インフルエンザの整備状況が6ページになります。
資料6で細胞培養の具体的な量や製造販売業者のことが書いてありますが、ワクチン株入手から約半年で合計3社において、全国民分のH5N1ワクチンの生産可能体制が整備されております。また新型インフルエンザが発生したときにどの亜型が発生するか分かりませんので、その亜型に対して、インフルエンザワクチンを迅速に承認することが必要で、そのためのスキームとして、プロトタイプワクチンのスキームが既に3社中2社で薬事承認を取得しております。H5N1以外の亜型に対する細胞培養法の状況として、今、パンデミックの可能性が一番リスクが高いと考えられているのはH7N9ワクチンが、感染症部会でも審議いただいて提示されていますので、そのH7N9ワクチンに関して臨床研究を行っておりますが、プロトタイプワクチンの手法を用いて、2社中1社で有効性が示されております。以上のことから、H5N1の亜型については全国民分のワクチンを新型インフルエンザの発生から6か月以内に製造することが困難な可能性もあるため、対応を検討するように考えております。これは亜型によっては例えばH5M1であれば全国民分ができるだろうと考えられていますし、亜型によってはこのプロトタイプワクチンの承認の手法で有効性が示せることもありますので、これに関しては実際に発生したものでなければはっきりと分からないところです。
次はワクチンの製造スケジュールです。これは以前からワクチンの製造スケジュールを出していましたが、今回の細胞培養事業を受けて実際に生産量が決まりましたので、その決まった量に合わせて最新のものに更新したものです。大体パンデミックが発生して一番いい理想的なパターンでいった場合には、大体18週ぐらいからの出荷が見込まれます。その後、実際週に大体600から800万人分ができることになりますが、これはあくまでも理想的なスケジュールのときです。実際の各社のワクチンの製造における進捗状況が8ページになります。3社はH5N1のいずれもできる形になりますが、上2社に関して、プロトタイプワクチンの薬事承認までができており、H7N9に関しては一番上のKMバイオロジクス社ができている状況です。
9ページは細胞培養法による体制における課題について、新型インフルエンザ発生時に全国民分へのワクチンを入手する体制が整備されたことが一つの利点です。また細胞培養法では、ワクチン製造販売業者においてワクチンの製造技術や設備の維持・向上を図ることもできます。一方で、事業継続に関しては、やはり費用がかかることがあります。また検討しないといけない要素として、1つは亜型への対応の範囲です。どの亜型までをカバーすればいいのか。また、製造量は今全国民分ということですが、亜型によってできる製造量が異なります。これをどこまで検討する必要性があるのか。またそれに合わせて対応できる企業数は、やはり3社全部できることを目指していくのかどうか。また場合によっては更に追加が必要なのか、いずれ検討しなくてはいけないと考えております。施設の維持や技術の内容も、どのレベルでの施設の維持、どのレベルでの技術の維持が必要になってくるのかがあります。
なお現状において、近々で対応しないといけないというか、H5N1の亜型について対応できる体制を整備しようとするときに、上げている課題としては薬事承認は少なくとも迅速に承認することが非常に重要ですので、そのためには薬事承認が速やかにできるプロトタイプワクチンの承認を取っておく必要があると考えております。また、有効性に関しては、プロトタイプワクチンの承認は動物実験で有効性が示せれば、そのまま市場で使うことができることになりますので、可能なものに関してはできるだけ医師主導治験やその他の方法を用いて、免疫原性に関する評価等を含めて、事前評価をできる限りやっておいたほうがいいのではと考えております。また、施設及び人員の確保、技術の向上の意味で、こういったものは技術をいかに向上していくか、施設の人員の確保に関しての課題をクリアしていく必要性があると考えております。
10ページは、新型インフルエンザ対策における今後のパンデミックワクチンの取組の方針として、新型インフルエンザ発生時に、速やかに有効なワクチンを全国民に供給することが目標としてありますので、その上では、まず、パンデミックワクチンに関しては以下の2つの課題に対応したいと考えております。➀対応する亜型はどの亜型でも対応できるエビデンスの収集は、ワクチン作業班などでもう少し検討いただきたいと考えております。➁また細胞培養事業で開発された生産技術の向上を引き続き検討していただきたいと考えております。こうした形でパンデミックワクチンの方針がある程度固まることにより、今後、プレパンデミックワクチンを含めたワクチン全体の検討ができると考えております。以上です。
○谷口委員長 H5N1を中心としたパンデミックワクチンが一段落、今後の取組方針について御説明頂きましたが、御質問、御議論等はありますでしょうか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 先日、ワクチン作業班で1つ質問というか宿題の形で頂いていたのですが、H1やH3のときにパンデミックのようなものが出たときに、このプロトタイプワクチンのスキームが使えるかに関して、いわゆる新型に該当するような、広汎に国民に広がっていて、重症度が高いとき、要するに従来の季節性の範囲を超えて、新型に該当すると判断されたときには使用できると考えております。
○谷口委員長 今のスキームで、法的には、H1、2、3であってもパンデミックの規定を満たせば今の枠組みでいけるということですね。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 はい。
谷口委員長 法的にですね。この方針について御議論、御質問はありますでしょうか。
○坂元委員 実際のワクチンの供給ですが、おそらくこれは3種類のワクチンがあるということは、相互にワクチンが乗り入れられないことから考えると、多分都道府県単位で、ここのメーカーのワクチンと決めて多分継続的に流通させていくことが考えられますが、これは市町村ごとにやったら本当に複雑になってしまうと思います。だからこのガイドラインの中での1つの書き方として、「国は都道府県、市町村、卸業者と連携して」と書いてあるのですが、私的には、やはり都道府県が指揮権ではないけれども、国と調整して市町村を調整していくパターンを取るのが理想的で、市町村と都道府県はやはり並列ではないだろうと思います。実際に市町村ごとにバラバラに対応したらできないので、ここは国と都道府県、それで都道府県の調整の下、それに市町村がそれに従ってやっていくスキームのほうが、私はいいのではないかと思います。そこら辺をもう少し明確にしていったほうがいいと考えております。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 先日、今年3月に発出しました住民接種の接種要領では、基本的にはここの未発生期のときに、市町村の所での調整は都道府県である程度担っていただく形で記載させていただいております。実務的に実際そういう形を取っていただくことになると思いますので、引き続きそこのところは周知してまいりたいと考えております。
○谷口委員長 現状のパンデミックワクチンと今後の方針ですが、実際にUncertainty(不確実性)が常に付きまとうわけですけれども、今の考え方でこの細胞培養法を用いて対応できる亜型を増やしていくことと、現在の生産技術をきちんと維持していこうという方針で、よろしいでしょうか。
○信澤委員 今までも新型ワクチン用の細胞培養ワクチンについて、何回か意見を述べさせていただいたところですけれども、一応この3月で生産体制整備はできたとなってはおりますが、各ワクチンメーカーは、まずはH5N1ウイルスを使って、それも1つのクレードで1つの株ですけれども、薬事承認取られてはいるのが事実で、それがここにも書いてありますが、同じH5N1にしてもクレードが違ったらどうなのか。あるいはH5N1でパンデミックが起きる可能性は非常に低いとは思いますので、ほかの亜型の場合にはどうかが、果してH7だけでいいのかという辺りも不安なのと。
あと薬事承認を取った後に、鶏卵ワクチンのように季節性ワクチンとして毎年系を動かしているのであればいいのですが、今のところ多分企業努力でその製造ラインの維持はされているとは思いますが、実際にパンデミックが起きたときに、その必要量を承認を取った、あるいは生産体制整備事業の中でやっていたように、スムーズに生産ができ、十分量の製造ができるのかは以前から不安なところです。今は季節性は作っていませんけれども、もし事務局で各メーカーが承認を取った後で生産ラインをどの程度維持し、全国民分のワクチンを半年以内に製造するだけの、何か工夫をしているような情報はお持ちでしょうか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 今、各メーカー3社においては、この施設をどうやって維持していくかということと、その整備事業の当初の目標はできましたが、そこから先の展開をどうしていくか。特に、そのプロトタイプワクチンの薬事承認を取得することや、プロトタイプワクチンに基づく製造の課題が、例えば有効性が示せなかった場合に対しての対応案というのは各自考えていただいていて、それに対する対応案というのはある程度いただいておりますが、それに伴っての対処、今少しずつ進めていくべき準備をしている段階と聞いております。
○信澤委員 自分の研究班のことを申し上げるわけではないのですが、もしといいますか、一応そのパンデミックワクチンを細胞培養で行うということは国がバックアップして決まって、生産体制整備されたわけですが、その後そのラインを確保するために季節性ワクチンも細胞培養法で製造してはどうかという、今実用化への取組を行っています。メーカー4社が研究班に入って、協力してはくださっているのですが、やはりメーカーのトップのほうの意向というのは、必ずしもその細胞培養ワクチンを、季節性の細胞培養ワクチンを製造する方向に余り興味がないというか、進めようと思わないところももちろんあるわけですね。そこら辺で、もし国の事業として、国の事業としてそれができるか分かりませんが、パンデミックワクチンを確保するということも踏まえて何かバックアップではないですが、国の厚生労働事業の中で何らかの助言なり、メーカーに対するそちらの声にもう少し力を入れてほしいというようなことを言っていただくなり、何かそういう方針を出していただけると非常に安心な気はするのですけれども。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 基本的には現状の細胞培養で作っていただいた設備を用いて維持・展開、維持していただきたいということや、そういった季節性のことも含めて私たちとしてはお願いというか、検討していただきたいということは伝えてはおります。ただ、そういうものの中での技術的なものといったものもありますので、進捗状況についてはどうしても各社の差が出てきています。そういったことに関して、更に私たちの取り組めることというのは、引き続き取り組んでまいりたいと考えているところです。
○加藤新型インフルエンザ対策推進室長 思いとしては、私どもも是非季節性に取り組んで、各社さんで採算ラインにしっかり乗せてやっていただきたいというのは、同じ方向を向いていると思います。現状いろいろ課題があるというのもお伺いしております。もちろん国もできる限りのバックアップはしたいと思いますが、ずっと何か財政支援をするみたいなものは非現実的ですので、そこはちょっと難しいですが。何ができるかというのを、今後きちんとメーカーさんと話し合っていく必要あるのではないかと認識しております。
○齋藤委員 事務局にお伺いしたいのですが、前回のパンデミックの時には、どれだけの人に優先順位付きで投与できるかというところが大きな問題となりました。今回、このような形で、ある程度の見通しがついていることは素晴らしいと思うのです。一方で、例えば既に海外で市販化されている皮内ワクチンは、投与量を通常の5分の1に下げることが可能で、新しいデバイスでもっと多くの人に、日本だけではなく海外の国々の人たちのことも考え、接種できる人を増やすようなことも検討されてもいい事項ではないかと思うのですが、いかがですか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 インフルエンザというわけではないのですが、ワクチン全体でいろいろな研究でそういったアプローチもされているのは、私たちも情報としては伺っています。新型インフルエンザに関しては、通常の季節性と比べて必要抗原量が多いというのが一つ大きな課題になっているのも聞いておりますので、正に本当はそういった、今、齋藤先生のおっしゃったようなデバイスというのは私たちも望んでいるところではあるのですが、そういったところには引き続き私たちも情報をなるべくキャッチアップしていきたいと考えております。
○川名委員 確認なのですが、資料の5で、ワクチン製造スケジュールに関する棒グラフがありますが、2009年の頃はワクチン作るのに6か月くらい掛かると言われていました。当時24週で出来ていたとすると、現在は18週まで短縮されてきたと、単純に理解していいのかというところです。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 2009年のときには、実際鶏卵で作ってはいますが、あのときはかなりタイミング的には鶏卵として比較的早く出来るタイミングだったと聞いております。その理由としては、本来季節性のために準備していたものがまだ製造する前の段階だったので、鶏卵が十分な量を確保できたということですが、もし、例えば鶏卵を作り始めているときに発生した場合、ほかの季節性のインフルエンザとか作り始めているときに使った場合は、鶏卵を確保するところから始まりますので、そうなると同じ鶏卵でも更に一年以上経過が必要になります。そういった観点からすると、一年以上掛かるのが18週、更に卵でのとてもタイミングの良い時期だった2009年と比較しても、更に短縮できている形で考えております。
○川名委員 そうしますと、少なくとも6か月以上掛かっていたのが4か月半で出来るようになってきたということですね。非常に良いニュースだと思いますし、新型インフルエンザ対策自体に対するポジティブな影響というのも結構大きいのではないかと思うので、これは良いニュースだと思います。
○坂元委員 この新型インフルエンザワクチンについてですが、実は川崎市としてもメーカーから相談を受けているというのは、やはりこの新型インフルエンザワクチンも市販後調査の対象になるということです。ただし集団接種の際の市販後調査は具体的にどのようにやればいいかとか、自治体がどの程度協力してくれるのかとか、医師会の先生がどの程度協力してくれるのかということもあります。そういう自治体や医師会のバックアップがないと、やはりメーカー側も非常に特殊な場合なので大変だろうなということです。やはり自治体のバックアップというのも積極的にしていく必要があるだろうと思います。そういう体制を整えていって、メーカーのほうにも頑張って製造してくれと言うのも、一つは必要ではないかと思っております。
○谷口委員長 ありがとうございます。
○釜萢委員 谷口委員長がおっしゃったように、非常に不確定な要素あるいは、条件がたくさんある中でどうするかということなので、なかなかはっきりした方向を明確に打ち出すのは難しいのですが、現時点で分かっていることは、細胞培養のワクチンを導入した経緯も踏まえて、細胞培養に関するこれまでの取り組みがきちんと生きるようにすること。それから一方で、鶏卵をやめるという選択は当面ないわけですから鶏卵もきちんとやっていかなければいけない。鶏卵だけで、国民分のワクチンを早期に作るというのは無理だろうと思いますから、だから今の細胞培養と鶏卵と両方の体制を維持していくことは是非必要なのだろうと思います。その場合に、それぞれのメーカーの事情とか、方針がありますから、そこをいかに国がきちんとその辺りも情報をしっかり把握なさった上で、何とかこの体制が今最大ワクチンを作れる体制を維持するか。それには予算的な制約がある中でどうやるかということで、信澤委員が言われた季節インフルエンザの細胞培養による実用化と、一方で鶏卵も残さなくてはならないというところでの難しい問題について、是非引き続き正面から取り組んでいただきたいとお願いを申し上げます。以上です。
○谷口委員長 ありがとうございます。非常に前向きの意見を頂いたと思っています。実際に細胞培養の枠組みができたわけですし、これを進めていくという方針については御異論はなさそうです。ただし、いろいろな課題は頂きましたので、現状のセファゾリンの問題もそうですが、ワクチンはナショナルセキュリティですので、地方自治体、医師会、国家あるいは研究、そういったところからこのように取り組んでいくのだろうと思います。よろしいですか。どうもありがとうございました。
では、続きまして議題(6)に入ります。細胞培養事業の評価結果です。よろしくお願いします。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 すみません。前後してしまって申し訳ないのですが、資料6は報告事項です。感染症部会やワクチン作業班でも報告させていただいておりますが、新型インフルエンザワクチンの開発・生産体制整備臨時特例交付金事業の終了報告です。1ページ目ですが、細胞培養法のワクチン実生産施設整備等推進事業を指しており、下の絵ですが鶏卵を使っていた従来のもの、これは1年半から大体2年くらいというのは先ほど御説明しましたが、卵を実際に入手するところから考えるとこれくらいですが、それが約半年くらいでできるようになるということで、今回細胞培養法を実施しました。2ページですが、実際に出来た量はKMバイオロジクス社が5,700万人分、武田薬品が3,300万人分、北里第一三共ワクチン株式会社(現第一産業バイオテック)が2,300万人分という形で、生産ができるようになっております。ケンバイロジク社と武田薬品はどちらもプロトタイプワクチンの薬事承認を取得しております。以上です。
○谷口委員長 確かに前後したような気もしますが、細胞培養事業のその後の結果ですが、御質問ございましたらどうぞ。
○坂本委員 的外れかもしれませんが、かなりの人数分のワクチンを短期間で接種することになろうかと思うので、供給と接種の体制などのロジスティックについても検討をお願いできればと思います。恐らく地域の1つの大規模病院でまかなえる接種回数というわけにはいかないと予想いたしますので。
○谷口委員長 住民接種のところですね。ほかに御意見、御質問、よろしければ次の議題に入りたいと思います。議題(7)について、新型インフルエンザ等対策医療機関整備状況ですが、よろしくお願いします。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 資料7について御説明いたします。これは、参考資料7にある、平成31年1月28日の感染症部会で決定していただきました新型インフルエンザ対策における医療体制に関する情報提供・共有の強化で、それを受けての内容です。新型インフルエンザの国内初発例から地域発生早期までに対応する入院機関が、都道府県にどれくらい整備されているかということです。この情報はずっと以前から各都道府県から頂いていました。公表という形になっておりませんでしたが、事前に公表することで国民の皆様がどこに行けばいいか、そういうことがよく分かることや、実施の整備状況の確認もあり、今回公表に至ったわけです。実際の今回の公表、集計結果を出しております。各都道府県の医療機関数が左で、真ん中が実際に公表していいと言っている医療機関数、非公表としている医療機関が一番右端です。公表としている医療機関に関しては準備が整いましたら、以前御説明したように、厚生労働省のほうのホームページでも一元的に見ていただけるような形にしたいと考えております。以上です。
○谷口委員長 整備状況というか、数です。御質問、御議論等ございますか。
○釜萢委員 この表を拝見しますと、都道府県によって医療機関の公表、非公表はさておき、医療機関数に随分ばらつきがあります。これはここに登録をしてきた医療機関の定義というか、どういう医療機関をここに載せるかというところが県によって少し認識が違ったのだろうと思います。これはこれとして、第1回の公表はこういう形でやっていただいてよいと思いますが、今後は都道府県に対して、国が求めている内容ををもう少しわかりやすく示してそれぞれの実情が反映されるような形を求めたいと思います。
○谷口委員長 ほかに御質問、御議論、どうぞ。
○坂元委員 確かに釜萢先生が言った都道府県によって非常にばらつきがあるということ、公表、非公表ですね。恐らくこういうものがある程度出て行くと、一般の市民から見たら、非公表ってどうして非公表で、どうして公表なのかという素直な疑問が湧いてくると思うのです。やはりある程度そういうものに対しても応えていかないと、ちょっと説明がつかないということですね。我々は何となくそこは理解できますが、多分一般市民の方は理解できないのかなと思うので、それも考えていかないといけないかと思っております。
○齋藤委員 私も今のお二人の委員と全く同じ意見で、これを見た瞬間、かなりばらつきがあることに気づきます。理解するのに時間がかかります。各都府県でのその基準が異なることは、よく分かるのですが、実際にこれが国民の前に出たときに、あれなぜ私の県はこんなに多いのとか、あるいは少ないのとか。そういう素朴な疑問が出ると思います。
○谷口委員長 ほかに御議論、基本的にパンデミックの初期にきちっと対応ができる医療機関ですね。だと思いますが、特に御質問、御議論ございませんか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 ちょっと補足をさせていただきますと、今回集計するにあたっては、1回、数を頂いた後に数などを見ながら都道府県のほうにもう1回、こういうコンセプトですというのは説明をしたいというのも加えてはいるのですが、各都道府県のほうで新型インフルエンザ対策の計画がもうありますので、それに沿っての回答が恐らく来ていると考えています。今後いろいろな対策等の、新型インフルエンザ対策も、国の対策も皆様から御意見頂きまして、適宜変えていっておりますので、そういったことを反映して今後どうなるかに関しては、引き続き私たち年に1回集計していきますので、見守っていきたいと考えています。
○谷口委員長 多分都道府県によってもいろいろな戦略があるということだろうとは思いますが、よろしいですか。では、こういう整備状況にあって、今後もこれはフォローしていくという形だと思います。ありがとうございました。
めでたく、何とか議題が終了しました。用意していただいた議題は以上で終了ですが、委員の皆様からこの新型インフルエンザ対策の全般について、御発言があれば頂きたいと思います。先ほどもサーベイランスの話も出ましたし、この際いろいろなことは考えておいたほうがいいのかもしれませんので、どうぞ御忌憚なく、幸いにして先生方の御協力のおかげで時間はございますので。
○川名委員 さっきもちょっと言わせていただいたのですが、ワクチンに関して言えば、これまではプレパンデミックワクチンを備蓄し、そして本当にパンデミックになったら、プレパンデミックワクチンを使ってパンデミックワクチンが出来るまでの時間を稼ぐというのが、基本的な方針だったと思います。しかし、パンデミックワクチンが早く出来てくる、出来ることが可能になってきたということは、プレパンデミックワクチンの備蓄のウエイトを少しずつ減らして、パンデミックワクチンをできるだけ早期に作っていくことを主とする方向に少しずつハンドルを切っていける可能性が出て来たということだと思います。少しそういったようなことも念頭に入れて、少しずつハンドルをシフトしていくようなことも検討していいのではないかと思いました。以上です。
○谷口委員長 ありがとうございます。どうぞ。
○坂元委員 この新型インフルエンザのワクチンの住民接種というのは、最終的には都道府県とそれから市町村がその責任においてやっていくという形なのですが、恐らくどこの自治体も今試行錯誤している段階だと思います。川崎市でも医師会の先生と相談して、集団でいくか、個別でいくか、その比率をどうするか検討しております。自治体によっては集団を一切やらないという自治体もあるようだと聞いています。恐らく自治体ごとに対応が様々になってくると思います。ただ、これをいつまでもどうしようかと考えているわけにはいかないので、やはりある程度の時期までにそれぞれの自治体ごとに、どういう方法でやるのかをある程度明示していかないといけないと思います。実際流行が起こったときにわけが分からなくなるということです。やはりきちんといつぐらいまでに方針を示してぐらいのことを考えたほうがよいのではないか、つまりそろそろワクチンの目途も立ったので、そろそろその時期かなと考えております。
○谷口委員長 ありがとうございます。この際ですから、どうぞ。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 住民接種に関しては、接種要領を出させていただいて、また、それに対してのQAを取りまとめているところでして、近いなるべく早い段階でQAのほうを出すということと、それに関連する添付書類、いろいろ国に届けてほしい、こういった数字を登録してくださいというような登録の様式に関しても、示したいと考えております。
○谷口委員長 パンデミックワクチンについては体制についても手引が出来て、今後、坂元先生の言われるような形で進めていかれるということだろうと思いますが、それに加えてプレパンデミックワクチンについても全体として考えていかねばならないだろうという御意見を頂いております。ほかによろしいですか。よさそうですので、それでは事務局にお返しをいたします。
○福井新型インフルエンザ対策推進室長補佐 今後の日程については追って御連絡をさせていただきます。事務局からは以上です。
○谷口委員長 どうも長い間、ありがとうございました。皆さんの御協力をもって、きちっと議題を全部こなすことができました。これまで日本は何とかなってきたのかもしれませんが、これを機会に、更に良い体制になっていければと思います。どうもありがとうございました。これで終了させていただきます。