第2回人生100年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議 議事録

労働基準局 安全衛生部 安全課

日時

令和元年10月30日(木) 10:30~12:30

場所

中央合同庁舎5号館 専用第21会議室

議題

(1)高年齢労働者の特徴と課題について
(2)事例紹介等
(3)その他

議事

 

○吉岡中央産業安全専門官 会議の開催に先立ちまして御案内を申し上げます。今回の会議はペーパーレスで行う会議となっております。構成員の皆様におかれましては、お手元のタブレットで資料を見ながら御議論を頂くようお願いを申し上げます。傍聴の方におかれましては、御自身のタブレット等で厚生労働省ホームページに掲載されております資料を御確認いただくなどにより御対応ください。お手元のタブレットの操作方法について、御不明な点がありましたら事務局担当者をお呼びください。
 定刻となりましたので、ただいまより第2回人生100年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議を開会いたします。
 議事に入る前に、今回初めて御出席される構成員の方がいらっしゃいますので、御紹介いたします。独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所安全研究領域長兼建設安全研究グループ部長の高木様です。産業医科大学医学部公衆衛生学産業保健データサイエンスセンター教授の松田様です。なお、本日は御都合により植村構成員、乍構成員、南構成員、矢田構成員が御欠席となっております。また、高田構成員、松本構成員におかれましては、所用により途中で退席される予定とお聞きしております。本日は事例紹介を頂く3社から、3人の皆様に臨時構成員として御参画いただいておりますので、よろしくお願いいたします。また、オブザーバーとして今回から健康局健康課相原課長補佐にも御参加を頂いております。これ以降の議事進行を城内座長にお願いいたします。
○城内座長 議事に入りたいと思いますので、円滑な進行に御協力くださいますようお願いいたします。また、傍聴の皆様におかれましては、カメラ撮影等をここまでとさせていただきます。御協力お願いいたします。最初に事務局から配布資料の確認をお願いします。
○吉岡中央産業安全専門官 事務局から本日の資料について、確認をいたします。お手元のタブレットに表示をされているファイル名に00番から09番まで番号が付いております。00番が本日の議事次第、01番が資料1「第2回有識者会議の進め方」、02番が資料2「第1回有識者会議における主な意見」、03番が資料3「高齢者の身体機能等の現状」、04~06番が事例紹介を頂く皆様からの資料となっております。また、04番の事例1及び05番の事例2の資料については、非公開となっております。次に07番が飯島構成員からの御発表資料、08番が参考資料1として構成員名簿、09番が参考資料2として「労働安全衛生法における疾病予防(健康診断)等」として定期健診、THPの資料と前回の参考資料をお付けしております。お手元のタブレットを御確認いただきまして、表示されないなどの不具合がありましたら、事務局までお申し付けください。
○城内座長 どうもありがとうございました。それでは議事に入ります。まず初めに本日の進め方について、事務局から御説明お願いいたします。
○寺島副主任中央産業安全専門官 それでは資料1、第2回の進め方を御覧ください。1、前回の主な意見として、かいつまんで御説明いたします。その後2として、中小規模事業場における取組の実際ということで、前回の会議で中小企業においても取り組めるものとする必要があるという指摘があったことを踏まえまして、中小規模の事業場での実際の取組について、3社から御発表を頂きます。3として、前回、高年齢労働者の身体機能のデータについて御指摘があったことを踏まえて、高齢者の身体機能等の最新の知見について、御専門の東京大学飯島先生からの御発表を頂きます。
 後半に、これまでの御説明や基礎的なデータなどを踏まえて、高年齢労働者が健康で安全に働くための課題は何かとして、課題の洗い出しをお願いしたいと考えております。(1)~(3)まで事務局で考えたものを記載しております。(1)は身体機能、精神機能(認知等)の低下に伴う課題としてどのようなものがあるか。例えば筋力、平衡感覚、敏捷性が低下してくることで、どのような災害や傷病につながる可能性があるか。また、視力、聴力等の感覚が衰えることで、同様にどんな可能性があるか。認知、記憶力等が低下することで、どのような課題が生じ得るか。
 (2)健康状況について、高血圧等の基礎疾患による課題はどのようなものがあるかとして、高血圧、高血糖等の脳・心臓疾患のリスクファクターに関連する職場環境にはどのようなものがあるか。
 (3)として、高年齢労働者が働き続けることによるメリットを念頭に、知識経験、判断力、危険感受性をこれまで以上に生かすための課題は何か、例えば青壮年層への伝承のための課題は何かということで、御議論をお願いしたいと思っております。
 このように今回は課題の洗い出しを、お願いをしたいと考えておりまして、次回は課題への対応を中心に検討を進めてまいりたいと考えております。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。今の説明、進め方について、御意見、御質問等ありましたら発言をお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、前回の会議における主な意見について事務局から説明をお願いいたします。
○寺島副主任中央産業安全専門官 資料2の「第1回有識者会議における主な意見」を御覧ください。かいつまんで御紹介いたします。まず、企業規模の違いとして、前回、大企業のメーカー2社から御発表いただいたことに、先進的に取り組まれていることは確認できましたが、同様に取り組める企業は少ないのではないか。できない企業が放置されないよう、全ての会社が守れるような内容としていく必要があると指摘されております。
 また、進め方に関して、議論を整理して進めるべきということ。身体、精神機能のデータとして、エイジアクション100に記載されている調査が40年前のものということで古いため、その後の変化、最新の状況について調べる必要があるのではないかという御指摘を頂いております。また、歩行速度が10年若返っているというデータをもって対策をしなくてよいといった結論にならないように注意すべきとの指摘がありました。設備等のハード対策については、実際に職場でどのような対策が行われているかという点。また、先進技術の事例紹介として、先進的なテクノロジーの紹介についても御発言を頂きました。
 次のページ、健康管理の所へ行きまして、まず、定期健康診断をきちんと行った上で、その上で体力テストなど考えていくこと。体力面のデータについても、集約して個人のデータとして管理していけるような仕組みの御提案がありました。
 1行空けて、高年齢労働者の場合、生活習慣病の異常値が多くなりやすいということで、就労中に脳卒中を起こしてしまうようなケースが実際どういった職場環境で起こるのか見てはどうか。腰痛と、脳卒中などの命に関わる話とでは重み付けが違うという点の御指摘。また、生活習慣病など本人の身体機能や健康状況にあった職場環境の仕事をマッチさせるような工夫も必要であるという御指摘がありました。
 少し飛ばしまして、下のほうですが、労働災害防止以外の視点については、いわゆる労災事故だけではなくて、働き方、働かせ方のルール作りに何を加味していくか、議論すべきといったような御指摘もありました。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。事務局でまとめていただいたものですが、修正の御意見等ありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは次に移りたいと思います。議事の1、事例紹介等として、3社から御発表を頂きます。第1回での御議論において、中小企業において取り組めるような内容とすべきなどの御意見がありました。そこで本日は小売業、社会福祉施設、建設業における高年齢労働者の安全と健康の対策に熱心にお取り組みいただいている3社から、それぞれ御発表を頂きたいと思います。
 まず、原信ナルスオペレーションサービス株式会社品質安全部品質安全室長の佐久間様より、企業での取組について御紹介いただきます。それでは佐久間様よろしくお願いいたします。
○吉岡中央産業安全専門官 ここで事務局より傍聴席の皆様に御案内をいたします。これから御発表いただきます原信ナルスオペレーションサービス株式会社様及び次の目黒区社会福祉事業団ひがしやまホーム様の資料については、非公開扱いのために、ホームページの掲載を行っておりませんが、プロジェクターで映写しますので、傍聴席の皆様はスクリーンを御覧ください。また、企業の情報を含みますので、撮影は慎んでいただきますようお願いいたします。それではよろしくお願いいたします。
○佐久間臨時構成員 それではよろしくお願いいたします。原信ナルスオペレーションサービス株式会社の佐久間と申します。本日は、スーパーマーケットの水産部門作業室における転倒防止の取組ということで、弊社で取り組んだ事例の紹介をさせていただきます。
 スーパーマーケットにおける主な業務としては、商品の加工や製造、それから売場への陳列や補充、お客様への接客、チェックアウト、商品の販売に関することです。また、店内製造商品の原料や、メーカー様商品の荷受けや検品、発注、計画、売価やPOPの管理、清掃、廃棄等、多岐にわたります。
当社における労働者の年代別構成ですが、現状では40代以上の方が非常に増えており、50代の方が一番多い状況で、女性のパート社員が多く占めている状況です。今後については、更に高齢化が進んでいく見込みです。
 また、近年、雇用形態を変更し、これまでは正社員とパート社員は65歳までの雇用、アルバイトは70歳まで雇用であったものが、いずれも75歳までの雇用となり、今まで以上に高齢の労働者が働くようになってきています。 水産部門では、水産物を取り扱う為、氷詰めされた箱で商品が入荷します。2000年代中旬頃の状況ですが、大型店では氷詰めの発泡スチロールが1日約100ケース入荷しており、氷の量は1日で約250Lとなり、氷を溶かす為や魚を卸す時に洗う為に水を大量に流すというような状況がありました。それによって、床は非常に滑りやすく、また、長靴でないと作業室に入れないという状況にありました。
 水産部門作業室のドライ化について、2000年代中旬に、1店舗にて店長主導で改善活動があり、その後、全社に水平展開がなされました。取り組みの骨子は、水や氷を床に落とさないことで、作業台の変更や排水等方法等の改善がなされました。現在は全店で同様の作業台を使用運用しています。
 
 ドライ化に取り組んだことで、水産部門作業室の水ぬれが大幅に改善し、現状では、9時台の、改善前であれば水でぬれる時間帯であっても殆ど水濡れはなくなりました。またそれに伴いまして、それまで長靴で作業していたものが、現在は短靴履いて作業しています。短靴は防滑仕様のもので、会社から生鮮部門の作業員に貸与しております。
 ドライ化の取り組みにより水ぬれは大幅に改善しましたが、水でぬれた箇所そのものは滑りの原因になることから、床材水濡れ箇所も滑りにくいものに変更しました。
これらの取り組みにより、水産部門での滑りによる転倒の大幅に削減につながりました。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。
○吉岡中央産業安全専門官 事務局より申し上げます。現在、スクリーンに資料が写っていないところですが、構成員の皆様におかれましては、お手元のタブレットで、05番の事例紹介2というファイルを開いていただきますと、これから御発表いただく社会福祉法人目黒区社会福祉事業団の取組について、御覧いただけます。当面、こちらで発表を続けさせていただきたいと思います。
○城内座長 それでは、ひがしやまホーム施設長の横山様、よろしくお願いいたします。
○横山臨時構成員 社会福祉法人目黒区社会福祉事業団特別養護老人ホームひがしやま施設長の横山享子と申します。簡単に自己紹介をさせていただきます。目黒区社会福祉事業団開設時に入職しまして、事業団とともに歩んできました。私自身が在宅サービスセンターの介護士、生活相談員、特別養護老人ホームの介護士、生活相談員を経て、現在、施設長になっています。本日は、よろしくお願いいたします。
 初めに法人の概要を説明させていただきます。目黒区社会福祉事業団は、目黒区が設置する福祉施設を運営・受託するため、目黒区によって平成元年に設立された法人です。平成18年に指定管理者制度が導入され、区から受託された事業は指定管理者として運営しています。特別養護老人ホーム3施設、小規模多機能居宅介護事業所2施設、認知症通所介護2施設の高齢者施設と地域包括支援センター3か所、障害福祉施設4か所、母子支援施設1か所を運営しています。従業員数は、少し古い数字で申し訳ありませんが、法人全体で正規職員297名、契約職員93名、計390名です。
 それでは、目黒区社会福祉事業団の取組をひがしやまホームを中心にお話させていただきます。初めに腰痛予防への取組5点についてです。1つ目が夜勤の勤務時間の見直しです。平成2年、事業団の開設当初は特別養護老人ホームの夜勤は、16時半から翌9時半までの連続16時間勤務でした。開設して1年で、職員が腰痛が原因で特養勤務が困難になってしまい、それをきっかけに夜勤時間の見直しを検討し、平成5年に21時から翌9時半までの10時間勤務の夜勤時間に変更しました。夜勤の業務は、夕食のための離床介助から始まり、夕食介助、夕食後の臥床介助。夜間の排せつ介助、2時間ごとの体位変換、朝食のための離床介助、朝食介助と続きます。1人の職員が20人程度の利用者の移乗介助を何回もしなければならない状況にありました。夜勤を21時からに変更することで、夕食のための介助と朝食のための介助を分散することになり、夜勤者は利用者の臥床後に勤務を開始し、夜間のおむつ交換以降の業務を行うように変更しました。これにより利用者の移乗介助の回数が減って、勤務時間が短くなることで体への負担が減り、疲れが蓄積しにくい体制に変更しました。
 2番目に腰痛検診です。直接、介助を行う介護士と看護師は年に2回、腰痛検診を実施しています。
 3番目に腰痛予防委員会の設置です。施設長が委員長となり、介助の場面や業務の内容、職員の姿勢などから腰痛の原因や場面を特定し、解決に向けた検討と現場での実践の推奨と確認を行い、抱えない介護を進めています。腰痛予防の取組として当たり前のように思われるかもしれないのですが、1日に5回行っている申し送りは、以前は立ったまま行っていたのですが、ずっと動き続ける仕事なので、申し送りの時間は座るように変更したり、椅子に座って食事介助をするのですが、その椅子の座面が回るような椅子に変更することで、体をひねる体勢がなくなり、腰痛が軽減しています。また始業前に、腰痛予防体操を行うということを決めて実践しています。
 4番目に衛生委員会の活用です。衛生管理者を置き、心療内科の医師を産業医として、毎月、職場の課題について検討しています。腰痛に関しては、毎年、腰痛チェックを全職員に実施しています。現在は、口腔ケアの場面に腰痛を感じている職員が多いことが課題となっています。また、腰痛以外には、職場環境の改善やメンタルケアにも取り組んでいます。
 最後にリフトの導入です。特別養護老人ホーム3か所は、平成2年に中目黒、平成7年に東が丘、平成12年に東山が開設されました。一番新しい東山開設時に、4人部屋全室21室に天井走行リフトを導入しました。当時、既存の中目黒と東が丘にリフトはなく、腰痛が原因で休職したり退職する職員がいました。東山でも開設当初は、面倒や時間が掛かるなどという理由からリフトを使わない職員が多かったのですが、利用者のケアプランにリフトを使用するということを入れ、個人の判断ではなくケアの約束事の1つとして、リフトを使用しなければならない状況を作りました。職員は慣れてくるとリフトが必要と感じるようになり、現在の東山ホームの職員はリフトがなくては困ると言っています。また既存の中目黒や東が丘も、後付けで天井走行リフトを導入し、現在は活用しています。現在、職員に腰痛がないとは言えないですが、腰痛が原因で退職する職員はいません。天井走行リフトの写真です。天井にレールがあり、4人部屋の室内を自由に移動できます。
 次の1を御覧ください。初めにベッドの上で、対象者にスリングシート、青いシートですが、スリングシートを敷きます。2は、スリングシートのひもをリフトのフックに引っ掛けたところです。これからリモコンを使って吊り上げます。3番目は、リモコンの操作で吊り上げているところです。4は、ベッドから車椅子で移動中の場面です。女性職員1人でも、対象者の体重に左右されず、安全に確実に移乗介助ができます。5は、車椅子に座るまでリフトを使用しているところです。6は、車椅子に座り、移乗介助が終了です。
 次の写真ですが、身体拘束をしないためベッドを使用していない方もいらっしゃいます。この場合もリフトを使用していますので、職員1人で移乗介助が可能です。リフト導入以前は、床から職員2人、若しくは1人で抱えて車椅子に移乗の介助をしていました。
 次の写真を御覧ください。利用者44名のフロアの食堂で、管理している口腔ケアのセットです。自己管理できる自立の方以外の分なので、ほぼ全員となっています。毎年行っている腰痛チェックの昨年の結果、先ほども申し上げましたが、ひがしやまホームの職員が腰が痛いと感じているのは、口腔ケアでした。食後、1人の職員は洗面所前で、10人以上の利用者の口腔ケアを行います。口腔ケアは中腰の姿勢が続きますので、職員はきついと感じています。解決策として、介助者が椅子に腰掛けてはどうかという案がありましたが、洗面所前は狭く現実的ではなく、具体的な解決策がまだない状況です。
 次の写真は、1段にある歯ブラシの本数と洗面所の写真です。ここで車椅子の利用者約40人が、食後に口腔ケアを行います。
 最後に、職員が長く働き続けられる取組4点をお話させていただきます。初めに、メンタルケアへの取組です。腰痛が原因で退職する職員はいませんが、メンタルが原因で休職したり退職したりする職員への対応は、現在とても重要な課題となっています。衛生委員会が管理し、全職員を対象に産業医によるグループ相談や個別相談を行っています。新人職員にはマンツーマンでOJT研修を行い、安心して現場に出られるようにしています。また、現在は経験者の転職やほかの職業からの転職者が多く、OJTの研修担当者の精神的負担が大きくなってきています。ですので、研修方法の研修や研修担当者のフォローが必要となってきています。
 次に職層研修の実施です。現場の介護業務だけではなく、経験年数に応じたマネージメントの役割を実践できるよう研修しています。また指導職員へのキャリアアップ制度があります。3番目として、目標管理の実施です。職員一人一人の現在の課題と目標を明確にして、年間を通して取り組んでいます。
 最後に、異動希望や仕事に対する満足度などを記入できる自己申告書を基に、施設長は全職員と1年に1回、面談しています。もともとは異動希望のための申告書なのですが、現在の仕事の満足度なども含めて面談することで、職員一人一人のやる気や将来の希望などを確認しながら、面談しています。以上が社会福祉法人目黒区社会福祉事業団における取組です。ありがとうございました。
○城内座長 どうもありがとうございました。次に、株式会社忠武建基会長、安全衛生担当の磯上様、よろしくお願いいたします。
○吉岡中央産業安全専門官 失礼いたします。ここで事務局より構成員の皆様に御案内を申し上げます。忠武建基様において作成されました安全衛生教材を回覧させていただきますので、御参考としていただきますようお願いいたします。
○磯上臨時構成員 よろしいでしょうか。ただいま紹介いただきました、忠武建基の磯上でございます。本日は、高年齢労働者の安全と健康に関して、幅広く検討されている会議にお招きいただき、どうもありがとうございます。建設業、中小企業という立場から、私どもがこれまでに取り組んだ事例の一部を発表させていただきます。よろしくお願いいたします。
 こちらが本日のレジュメです。次が弊社の会社概要です。事業内容は、主に構造物の基礎となる杭を施工するものです。私たちの仕事は、高速道路の橋台、橋脚の基礎杭、鉄道工事など、社会の様々な場面で構造物を支えています。弊社社員の年齢構成は御覧のとおりです。60歳以上は全体の約2割ということになりますが、今後はその比率が高くなっていくと思われます。
 職場環境の改善に取り組む契機として、業界を取り巻く状況が大きく影響しています。現在、技能労働者の不足や高齢化が深刻です。高齢化に伴って、体調不良を訴える者も増加しています。これを改善するための課題は、若手人材が得にくくなっている今現在、高年齢労働者にいかに長く働いてもらうかということだと考えました。したがって、これらを実現するためには、安心して安全に働いてもらうための環境と、制度の整備が急務であるということです。課題を解決するための目標として、高年齢労働者が安全に働くための職場づくりと、安心して働くための制度整備を掲げています。
 次に、この課題を解決するための実際の取組を御紹介します。以下が、高年齢労働者が安全に働くための職場づくりに取り組んだ内容です。
 1つ目です。こちらは高年齢労働者の提案から生まれた資機材です。弊社では平成25年から、週間工程会議に現場からの要望という時間を設けました。その結果、高年齢労働者からも彼らの経験をいかした提案が上がるようになりました。その事例がこの資機材で、当時、69歳の社員のアイデアから生まれたものです。従来、重い鋼材を複数名の人力で持ち上げ、取り付けていました。写真のとおりです。この吊り具により、簡単で安全に取り付けられるようになり、作業効率が劇的に飛躍しました。提案をしやすい場を設けたことにより、高年齢労働者の経験をいかしたアイデアから新しい資機材の実現につながりました。全社的な能力開発に結び付き、気づきの社風の醸成にも役立っています。
 2つ目です。弊社では、写真の保護具等を装備して現場に入ることを義務付けしています。また、社員の健康を守るため、粉じん予防マスクや防振手袋などは特に質の高い保護具を選択し、じん肺や白蝋病の予防に力を入れています。現場での装備は多種にわたるため重くなり、高年齢労働者には負担が大きくなっています。墜落制止用器具は、フックの部分をスチール製からアルミ合金製のものを採用し、軽量化を実現しています。また、手持ちの工具もボルトのサイズに応じて、2本持つ必要があったものを1本に集約し、軽量化を図りました。同時に熱中症対策の備えとして空調服を全社員に支給するなど、保護具以外の装備についても、より一層の充実を図っています。
 3つ目です。これは安全・安心に仕事を進めるための現場でのルールをまとめたものです。ベテランの高年齢労働者も基本を再認識してもらって、無事故、無災害のリーダーシップを取ってもらっています。4、5、6については記載のとおりです。
 次に、高年齢労働者が安心して働くための制度整備です。社内制度の見直し、充実を図るという点では、就業日数に左右されない完全月給制及び有給制度を確立しました。働き方を見直して長く働いてもらうことに関しては、60歳から65歳への定年の引上げ、更に希望者へ上限年齢を設けない継続雇用、定年後の建設現場以外の活躍する場の提供、当社には安全設備などの製造販売リースを行っている関連会社があり、そこで体力的に建設現場作業が難しい高年齢労働者が活躍できる場を提供しています。
 取組の結果、効果についてまとめます。業界の習慣に捕らわれることなく、高年齢労働者が長く安全で安心して働けるよう実施した様々な職場改善は、高年齢労働者だけでなく幅広い世代の社員からも高い評価が得られました。全体的なモチベーションが向上し、年代間のコミュニケーションも円滑になりました。社員と会社との信頼関係が強くなり、結果、安全に対する意識も高まり、生産性の向上にも結び付きました。これらの取組により、チーム忠武という会社全体の一体感が生まれました。この会社で働く誇りが芽生え、そして気づきの風土が醸成されたことは、会社、高齢、若手社員、双方にとっても今後の大きな力になるものと確信しています。
 最後に、当社の安全への取組は、平成30年全国建設業労働災害防止大会において、よい事例として発表され評価いただいています。当社の評価につながっただけでなく、高年齢労働者ほか現場で働く者のプライド、モチベーションの向上にもつながりました。
 今後の目標と課題です。1、高年齢労働者の経験、技術などのいわゆる職人資産をいかし、安全で働きがいのある職場作りを継続し、更にそのノウハウを文書化し継承を進めていきます。2、ヘルメットに装着できるセンサーやリストバンド式脈拍計など、健康面をサポートする新たな装備、ツールを検討します。3、福利厚生の更なる向上を押し進め、働きやすい職場を目指します。4、関連会社における開発アドバイザーなどの制度を設け、高年齢労働者の受け皿を一層充実させるように努めていきます。以上で忠武建基の発表を終わります。御清聴ありがとうございました。
○城内座長 ありがとうございました。後ほど、御議論の時間を設けていますので、事例紹介を頂いた皆様への御質問についても、合わせてその際にお願いいたします。
 それでは、次に移りたいと思います。議事の2、高年齢労働者の特徴と課題として、東京大学高齢社会総合研究機構教授の飯島様から、高齢者の現状について御発表をお願いいたします。
○飯島構成員 東京大学の飯島と申します。今回、少しデータを出してほしいというリクエストも受けまして、特に高齢者の働いている方だけのデータをお出しするということ自体ができませんので、高齢者コホート研究の全般からどういうことが見えているのかということで、御理解いただければと思います。
 そこに、先ほど腰痛とか、いろいろありましたけれども、ここ最近注目されている筋肉の衰え、すなわち筋肉減弱(サルコペニア)という現象です。それをベースにということで、多面的な要素で老いが進んでくるという虚弱化(フレイル)というもの、それに関するデータをコンパクトにまとめましたので、御覧いただければと思います。
 お手元のスライドの7番の資料で、まず2枚目を御覧ください。我々のコホート研究の中にも、ただ身体のデータを取っているだけではなくて、幅広い質問票を取っている中で、収入を伴う仕事をしているかどうかというところもチェックしておりましたので、振り返って数字を見てみましたら、こういうことでした。これは千葉県の柏市で、柏スタディーということで縦断追跡をやっていますので、そこでのデータです。
 初年度のデータを振り返ってみますと、まず左側のグラフが男女ともの全体です。真ん中が男性、右が女性です。5歳刻みで年齢を区切ってあります。当たり前ですが、より高齢になればなるほど収入を伴う仕事をしている割合がグッと減ってくるということなのですが、70歳未満というところは、こういうコホート研究に参加したということ自体で少しリテラシーが高いということは言えるのですが、まあまあの割合です。特に、赤い折れ線グラフが右側のパーセンテージを表していますが、それなりの割合で働いている方々がいらっしゃるということです。ただ、これは非常にモチベーションが高い方だけというわけではなくて、実際は住民台帳から無作為抽出をしての自立高齢者ということになっていますので、ある程度のことは言えるかなと思います。
 3枚目と4枚目を御覧ください。長寿コホートの総合的研究ということで、これは走り始めたばかりの研究です。研究班長は鈴木隆雄先生ということで御了解いただいて、今回スライドを提供させていただきます。
 この長寿コホートの総合的研究というものは、私自身も比較的大きなコホート研究というものを走らせておりまして、それ以外にも全国で似たような研究者はいっぱいいらっしゃいます。特に、高齢者のコホートを持っているメンバー全員で集まりまして、ある程度の質の高い研究をやっていて、まあまあの規模をやっているという研究者が集まって、全部で13のコホートになるのですが、それを全部集めて、かなり多くの対象者数にして見ていくというものです。
 次のスライドを御覧ください。細かいデータは今日はお時間の関係上、割愛しますが、歩行速度が経年的にどうなっているのかというのはよく言われます。厚労省が後ほどお出しするかもしれませんが、以前まで、例えば高齢者の歩行速度は10年分ぐらい若返っていると。すなわち、75歳の方の歩行速度が10年前の65歳ぐらいの方の歩行速度だということは、よく言われています。それはいろいろなコホートを見ても、着実にスピードが上がっていることは確かなのですが、最新のデータまで付けて、どうなのかというものがこれです。
 このグラフは男女分けてありまして、1992年、2002年、2007年、2017年と、きれいな10年単位ではないのですが、約10年刻みで、4回にわたってのグラフで出してあります。こう見ますと、どの世代にも着実に上がっている感じがあると。これは当然、各研究者たちが使っているコホートというものには必ず大なり小なりのバイアスというものは避けられませんので、高齢者の全員を表しているかどうかということは言えないわけなのですが、とは言いましても、ある側面でコホート研究でずっとやってくると、こういう結果が見えてきたということです。
 次のスライドです。サルコペニアの有症率ということです。これも、私のほうの、ある1つのコホートからお出しします。全体的には、お元気な方が参加されているコホート研究かなとは思いますが、2,000人ぐらいの対象者の高齢者で無作為抽出された方です。男女で、これはもともとヨーロッパのワーキンググループがサルコペニアの筋肉の衰えの基準を出してきまして、日本人も含めたアジア人種に照らし合わせてみると、ちょっとフィットしないということが分かってきて、4年近く前に、日本を中心に、また台湾などとも一緒に、アジアの基準というものを出しています。そのアジアのサルコペニアの基準で照らし合わせてみますと、このぐらいの割合であるということです。加齢変化で男女とも増えていって、全体的には女性のほうが少し多いということが分かってきます。
 次のスライドです。筋肉の衰えであるサルコペニア群は余暇時間の過ごし方も問題でということで書いてあって、上段と下段にグラフがあります。上段は中等度以上、これはある研究で決めてある基準なのですが、中等度以上の余暇の過ごし方、比較的アクティブに動いているかどうかということです。下のほうのグラフは、中等度以上の仕事で、アクティブに動いているかどうかというもののグラフです。当然、グラフが大きいほうが1日の中で時間を割いているということで、よりアクティブであるというように判断しています。
 御覧のように、男女とも、そして余暇時間であっても仕事であっても、非サルコ群という、いわゆる筋肉の衰えのない高齢者よりはサルコ群という、筋肉の衰え、サルコペニアを持っているグループのほうがインアクティブな要素がありそうだということです。
 次のスライド、身体測定における加齢変化と、その次のスライドの運動機能における加齢変化ですが、これもコホート研究から引っ張ってきたものです。これは、複数の折れ線グラフが重なり合って見方が難しいのですが、Zスコアと言いまして、65歳ぐらいのデータ、いわゆる高齢者とされている年齢の括りの一番若いとされる65歳ぐらいのデータを一番ベース、ゼロとすると、5歳刻みの加齢変化を取れば、どういう項目が著明に加齢変化で落ちてくるのか、ないしは余り下がってこないのかというのを相対的に比較したというものです。生の数字をそのままぶつけて比べているものでありません。
 全体、男女ともというものと、男性、女性と分けています。これを一つ一つ解説してもしようがないのですが、ふくらはぎの太さとか上腕の周囲径とか、四肢SMIというのは、手足の筋肉量を身長で補正したものということで、今、このサルコペニアを評価していくためには、このSMIという筋肉の指標というものがゴールドスタンダードとして使われているのですが、こういうものが顕著に落ちてくるということが分かっております。
 その次のスライドの運動機能、フィジカル・ファンクションにおいて加齢変化はどうなのかというものです。当然、全ての項目において、加齢変化は5歳刻みで取ってくるということは分かるのですが、握力というのは一番コモンでよく使われているものなのですが、レンジが全体的に小さいということもありまして、それ以上に、例えば一番下のTUG(Timed Up and Go)というもので、急に立って、急に3、4mをダッシュして、クルッと回ってという、立って、座って、クルッと回転してという、足腰の総合力が問われるものですが、これはよくコホート研究で使われるのですが、これが一番加齢変化を取りやすかったり、開眼での片足立ちだったり、5回の椅子の立ったり座ったりということだったり、そこら辺の足腰の総合力が問われるというものが、一番加齢変化を取るということが分かってきました。
 次のスライドです。これは、厚労省のほかの有識者会議にも出させていただいたもので、フレイルに注目したものです。3つグラフがあるのでちょっとビジーですが、簡単に右上のものについてだけお話をします。御存じのように、フレイルということは我々は強く推進していまして、これは体が衰えたという部分だけではなくて、メンタル、社会的な要素と、多面的な老いというものが進んできて、複合的に自立が落ちてくるということをフレイルの流れとしているわけです。例えば、ある基準として身体的フレイルを持っているか否か、その一歩手前の予備群かどうかというものを、簡易測定で評価してみまして、それをたかだか4年近く様子を見るだけでも、新規の要介護認定とか、出してはいませんが死亡率とか、そういうことも大分変わってくるということが分かってきました。
 左下のグラフはオーラルフレイルなので、この有識者会議の中では割愛させていただきます。右下は社会的フレイルということで、独居度であったり、人とのつながりが非常に薄いとか、外出頻度が非常に少ないとか、そこら辺を我々の基準で決めた社会的フレイルの要素を持つだけでも、新規の要介護認定というものは、グッと鰻のぼりになってくると。これが、身体のデータを補正しても、そうであるということが分かってきたということになります。
 次が最後のスライドです。これも複数のグラフが重なり合って難しく見えるかもしれませんが、簡単に御紹介します。我々の高齢者コホート研究を用いて、もともと自立されていた高齢者の方々を対象に、ささいな衰え(老いの兆候)が積み重なるように出てきて自立度が落ちていくのですが、そのささいな衰えというものを比較的エビデンスベースで拾い上げました。そして、高齢者の市民同士だけでフレイルの視点に立ったチェックができるという、「フレイルチェック」というものを既に考案してあります。22項目にわたって成り立っているものです。これには医療的な内容(例えば採血をしたり、血圧を測ったりという要素)のものは入っておりません。高齢者市民同士だけで簡単にチェックできる身体機能であったり、社会的な要素であったり、心理的な要素であったり、お口の機能の簡単なチェックであったり、食のバランスであったり、幅広い要素で成り立っています。
 まず、青いグラフというのは、このフレイルチェックの要素の左側のほうは、いいデータが多かった方で、一番下に青丸と赤丸が書いてあると思うのですが、フレイルチェックというのは、カットオフを満たした方には青シールを貼る、悪いデータだった場合には赤信号シールを自分で貼るという、青と赤の形になっています。左側は非常に青が多かった、すなわちデータがよかった方です。右にいけばいくほど赤シールが多かった、すなわちデータが悪かった方ということです。
 全国的にも、こういうトレンドになっているのですが、これは、ある自治体だけを抜き出して、要介護認定とひも付けて、このフレイルチェックの新規要介護などの予測能を見たというグラフです。そうしますと、簡単に言うと、ちょっと真ん中の赤が8枚以上ぐらいになってくると、折れ線の赤線ですが、これが要介護認定の新規のものなのですが、8枚以上になってくると、グッと要介護認定が上がってくるようである、リスクが高くなってくるようであるということなのですが、このスライドで一番お示ししたいエッセンスは、右上のほうに青字で書いてある、フレイルチェック項目の22項目の中、全てが教育ツールになって重要なのですが、特に予測能が高いというものが見えてきていると。この優先すべき項目というのが、この3つの予測能が高いということが分かってきて、有名な握力、我々が座っているパイプ椅子というのは、大体40cmの高さがあるのですが、その椅子から片足でヒョイと立ち上がることができて、3秒間保持できるかどうかというもの、あと、実はこれはなかなかやらないのですが滑舌で、たんぼの「た」を「タタタタタタ」と5秒間、速く、どれだけ歯切れよく言えるのか、カエルの「か」を「カカカカカ」と言えるのかをある機械で測定します。パタカと言うものなのですが、その滑舌の歯切れのよさ、速さというものが、実はただおしゃべりかどうかということだけではなくて、全身の筋肉の状態も比較的反映しているということが分かってきて、予測能が高いということも分かってきて、これはオーラルフレイルというものの要素に入れているのですが、こういう比較的身近に、大きな機械などは必要とせず、簡単に測定できるもので、こういうものが落ちていると、ワンランクリスクが高い方であるということで、ちょっと慎重にセッティングしてあげたほうがいいということが言えるのではないかと思っています。
 以上、高齢者の労働ということにど真ん中のデータだけをお示しすることはできなかったのですが、高齢者コホート研究を扱っている人間の立場から、幾つかのデータを御提供させていただきました。以上です。
○城内座長 ただいまの御説明に関連し、事務局で用意された資料について説明をお願いします。
○寺島副主任中央産業安全専門官 資料03「高齢者の身体機能等の取組状況」について、事務局で準備した基礎的な資料について、簡単に御説明いたします。2ページ目の最初のスライドを御覧ください。こちらでは、今ほども飯島先生からも御説明がありましたが、1番の所に書いてあるように、全体として運動機能面では若返りの傾向が見られるということで、先生に追加いただく前のデータですが、下のほうにある日本老齢学会、日本老年医学会の研究グループの報告からきておりまして、内容は省略いたします。一番下の所にあるように、若返り傾向が見られると言っても、高齢になるほど個人差が大きいということは言われております。
 次のページを御覧ください。高齢者の身体機能についてのデータです。こちらはスポーツ庁の体力運動調査結果のデータです。握力と開眼片足立ちの年齢、年次推移を示しております。御覧いただいて分かるように、年々その値が向上してきているということが言えます。
 次のページです。このように若返りとか数値の改善ということがありますが、そうは言っても壮年者と比較すると、明らかな身体機能の衰えが認められるということで、左側の円グラフは、下の出典の所にありますが、平成12年から平成13年に掛けて高齢者対応基盤研究開発高齢者向け生産現場設計ガイドラインというものの中にまとめられている資料です。御覧いただいて分かるように、上肢、下肢、体の機能のほかに、聴覚、視覚についてグラフになっていますが、そちらのデータの衰えが大きくなっているということがあります。右側のほうは握力の変化ですが、これもピークとなっている30~40代に比べると、60歳以降に減衰が認められるということです。こちらについても一番下にあるように、衰えといっても個人差が大きいとは言われております。
 次のページからは循環器系疾患のデータです。こちらは第1回の検討会において、循環器系の疾患と関連する職場環境についての御指摘がありましたことから、高齢者の健康に関して主に循環器系疾患のリスクの観点から準備しております。まず、厚生労働省で実施している患者調査によれば、脳血管疾患や虚血性心疾患の患者数は加齢とともに増えていく傾向があります。このデータは、労働者でない方を含めた国民全般の一般的なデータとなっております。
 次のページは、就業者の脳血管疾患・心疾患による死亡数のデータです。こちらは過労死等防止対策白書にも掲げられているものです。次に、この死亡者数のデータを見ますと、全体の死亡数は減少傾向にあります。しかし、年齢別の内訳を見てみますと、60歳以上の方で7割を占めていることが分かっております。なお、こちらのデータは仕事中に亡くなった方の合計ではなくて、亡くなった方の集計のうち、職業に就いていた方の合計となっています。
 次のページは、脳・心臓疾患における労災認定事案についての年齢分布のグラフです。業務に起因すると認められた脳・心臓疾患についてですが、平成30年度に労災認定を受けた方のうち、9割が40歳以上となっております。また、右側のグラフは、雇用者100万人当たりの事案数ということで、発生率のグラフになっております。脳疾患・心臓疾患ともに、50歳代での発症が最も多くなっています。
 次のページは、同じく労災認定事案の業種別、職種別の分布についてのデータです。左側が業種別ですが、業種別は、運輸業、郵便業、右側の職種別では輸送・機械運転従事者が最も多くなっています。
 次のページは、これを雇用者100万人当たりの事案数にしたもので、業種別の分布です。漁業や運輸業、郵便業が多くなっております。ただし、漁業の事案そのものの数というのは多くはないというところです。以上のように、こちらのデータも御参考にしていただければと思います。
 次の最後のページになります。休業4日以上の労働災害の発生件数を事故の型別に年齢別分布を見たグラフです。左上の墜落・転落災害は女性より男性に多く、若年層に比べると高年齢層では4倍の開きがあります。また、右下の転倒ですと、女性のほうが多くて、特に高齢女性では発生率が非常に高くなっています。これとは対照的に、右上のはさまれ・巻き込まれ災害では年齢による違いはほかのものほど大きくはなく、未熟練の労働者のところで高くなる傾向が出ています。なお、こちらのグラフですが業種合計となっており、業種ごとの男女別、年齢別の就労状況の違いが反映されていないことに留意が必要となっております。基本的な資料としては以上です。
○城内座長 それでは、先ほど事務局から説明がありましたように、本日は高年齢労働者の安全衛生上の課題の洗い出しを中心にお願いしたいとのことですが、前回の議論と本日頂いた事例紹介の取組と、高齢者の現状についての御発表を踏まえ、御質問、御意見等がございましたら発言をお願いいたします。
○漆原構成員 飯島先生に御質問します。先生の資料の4ページでサルコペニアの所ですが、男女が若返っているという根拠に使われた資料だと思います。サルコペニアの診断基準の中で、(歩行速度)「毎秒0.8m」があったと理解しています。もちろん、それだけでサルコペニアと診断されるわけではないと思うのですが、ここで見ますと、85歳以上であっても、グラフで出ているものは、「毎秒0.8m」は大きくクリアしているので、ここの調査対象者は、非サルコペニアの人たちを、コホートでチェックをされていった。つまり、もともと身体的な要因が衰えないような状況の人たちの経年を診ていった、または、もともとある程度意識が高くて、体を動かすアクティブな人たちでも、経年変化で見ると10年で若返っているといった理解でよろしいのでしょうか。
○飯島構成員 この4枚目というのは歩行速度になりますでしょうか。
○漆原構成員 はい。
○飯島構成員 これは私自身のコホート研究だけではなくて、先ほど言った13の研究を全部合算してというものなのですが、恐らく私のコホートだけではなくて、ほかの先生方のコホートも、あえて筋肉の衰えるサルコペニアというものを外した、非サルコペニアグループだけをどのように追っていくのかという視点ではやっていないと思います。むしろ、私もそうですし、ほかの研究者もみんな、なるべく地域の住民の現状に近い状態を、なるべくコホートで演出しようと。ですから、当然、ある一定の割合はサルコペニアが入ってくるだろう、ある一定の割合はその予備群は入ってくるだろう、ある一定の割合はまだまだお元気だろうという前提で、みんなコホートを仕掛けている人は、本当に健康オタク的な、かなり健康指向が強い方ばかりになるべくならないようにと努力はしていると思うのです。ただ、コホート研究というもの自体が、ある一線以上のところからやっているものなので、最低でのバイアスは避けられない。そのバイアスをなるべく小さくしようとは努力していると。
 ですから、この歩行速度のデータも、後半戦の私のコホートのデータも、基本的にはサルコペニアも非サルコペニアも渾然一体として入っているだろうというコホートをナチュラルに追っているというものであります。
○漆原構成員 もう一点質問なのですが、事務局に提示していただいた資料についての質問です。脳・心臓疾患における労災認定事案の年齢分布についてという、年齢ごとに脳・心臓疾患と総数のグラフがあったと思います。ここで、50~59歳が一番高くて、60歳以上はガクンと下がる理由は、労働時間などの影響なのか。また、業種別では、漁業、運輸が高くなっている。この業種別のグラフでは年齢的な違いは加味されていないと思うのですが、そういったところに労働時間ですとか、年齢的なところが影響しているのかどうかについてお聞きしたいです。
 60歳以上の労働時間が仮に減少しており、発生の総数自体が減っているとすれば、労働時間について何か配慮があると考えられるのか。労働時間の抑制は高齢者での発症を抑えられるということなのか、もう1つの可能性として加齢により血管等が脆くなっていることによって、労災の認定基準、例えば100時間とか80時間を下回っていて、労災として認められない発症はしているのだけれども、結果として数字として上がってこないということが考えられるのかどうかについて、お聞きしたいところです。
○村山安全衛生部長 脳・心臓疾患や精神障害の労災認定に当たっては、一定の認定基準を設ける一方で、総合的、個別的な判断で対応しておりますが、脳・心臓疾患に関しては、「異常な出来事」や、「短期的な過重業務」もありますが、認定事案の多くが「長期的な過重業務」による疲労の蓄積で認定されております。先ほど漆原構成員から御指摘のあった単月100時間とか、複数月平均80時間を超える時間外労働があったことを基準にした事案が多いことに関しては、過労死防止対策白書等でも分析し、公表しております。
 その上で、資料3の10頁の50~59歳と60歳以上の分布状況について、ストレートにお答えできる準備は必ずしも十分ありませんけれども、基本的には加齢とともに血管等の器質的な変化によって疾患の発症率は上がってくるということが、全体的な傾向として、ほかの労災認定の年齢分布と比べれば、脳・心臓疾患の特徴として言えるという傾向があるだろうと思います。
 その上で、100時間超とか80時間超という基準があり、もちろんそうした基準より時間外労働時間が短くても、他の事情を総合的に勘案して労災認定されている事案も少なからず存在することは前提としつつ、ただ、一定の基準を踏まえて認定しているという現実がある中で、多くの労働者が継続雇用に移行する60歳を境にして、現実の労働時間が、特に雇用労働者の場合は大きく変わっていく実態が投影されているということも言えると思います。その上で、私どもの基本姿勢としては、脳・心臓疾患につながる著しい長時間労働ということに関しては、こうしたリスクを減らしていくために、なるべく減らしていくということで取り組んでいるところです。
○城内座長 そのほか、御質問、御意見等はございませんでしょうか。
○松葉構成員 先ほど事例を御紹介いただいたことを踏まえて、1点は意見、もう一点は御質問ということでお願いしたいと思っています。意見というのは、当たり前のような話ではありますが、ひがしやまホームから御紹介いただいた事例の中で、腰痛を起こしそうな危険箇所を皆で洗い出してという、いわゆるリスクアセスメントの手順を踏まれているのですが、私が関わっている介護施設とか社会福祉施設で、そのように皆で危険箇所を探し出して対策をというような組織的な取組をされているケースというのは、まだまだ少ないです。そういったことを、高齢者に限らずですが、更に高齢労働者の安全と健康を確保する上では、その危険箇所の洗い出しを現場の人たちでしっかりとやって、実態に即した危険箇所の特定及び優先順位付けという、いわゆるリスクアセスメント的なアプローチが大事だということは1つあるかなと思います。
 もう1つは、それを踏まえてリフトを使わなければいけない対象や場面をルール化している点が重要です。これも同様なのですが、作業マニュアル等を導入して作業している介護施設、あるいは第三次産業の分野ではなかなか少ないと認識しています。やはり、せっかくリフトを高いお金を出して入れても使わないままだという多くは、作業者に使ってくれと任せ放しで、組織としての作業マニュアル等を設けていない施設がほとんどです。その点では、是非ガイドラインの中で、組織的な作業手順やマニュアルを導入することの必要性というのを強調していただけると有り難いと感じております。
 もう一点は質問です。忠武さんのほうで、まず定年は65歳で、希望すれば年齢制限は設けてはいないが体力の様子に応じて、また別の仕事に転換しているという話がありました。その体力に応じてということに関して、体力の基準などがおありなのか、それについては同様に、横山構成員、佐久間構成員にも、体力的にその作業に向くか向かないかといったところを見極めるような仕組みというのはお持ちなのか、あるいはお考えなのかというのをお聞かせいただけると有り難いと思います。
○磯上臨時構成員 基準は作っていません。当然体力面も違っているので基準は作っていないのですが、正に本人のやる気の問題だけというところしか、今はつかみようがないと言うところでしょうか。
○松葉構成員 ありがとうございます。
○横山臨時構成員 特養の職員としては、常勤の職員としては夜勤を含めて定年まで、60歳までは働くのですが、それ以降に関しては、夜勤が一番きつい仕事なので、夜勤を抜いた短い時間であったり、日勤帯での8時間だったり4時間という時間で働けるのかどうか、これは御希望も含めてなのですが、そういうところで定年を超えても働いていただけるような仕組みは作っています。
○松葉構成員 ありがとうございます。
○佐久間臨時構成員 年齢や体力面によるによる配置について、会社側が見極めをするような基準はありませんが、スーパーマーケットですと部門によって様々な作業、例えば重い商品を持ち上げたりするような作業もありますので、本人のほうから申出があった場合については、上長判断により部門の転換も含めて対応しております。
○松葉構成員 ありがとうございます。前回、JFEあるいはトヨタからの御紹介で、両社のような大きな組織では、この職務ができる体力はここまでという基準を設けながら、配置転換をされているという情報がありましたが、中小規模事業場向けにそれを作ると言うよりは、今お話を伺うと、御自身が気付くような目安のようなものを示しつつ、個々に判断してというようなことが実態に即しているのかなというような実感を持ちました。ありがとうございます。
○城内座長 そのほか、御質問等はいかがでしょうか。
○河合構成員 事務局資料の一番最後のページの所で御質問をします。先ほどの質問でも最後のほうにありましたが、例えば転倒のようなものというのは、加齢に伴って身体的な能力が衰えてきて転倒する部分と、仕事に不慣れで転倒する部分と両側があるのだろうと思うのです。取り分け、高齢期になってきてなかなか職業が選びづらいという状況の中で、就職できたところで、今までやったことがない作業を、短い職業訓練だけですぐに現場に行かなければいけないという方がどのぐらいいるのかということは考えなければいけないのだと思うのですが、このデータで、ずっとその仕事でやってきた人の転倒の案件と、途中で入ってきた、高齢期になってからその職に就いた人が転倒とか巻き込まれといった事案とを分けられるのか、どういう就業の経緯があったのかで分類することはできるのでしょうか。
○寺島副主任中央産業安全専門官 今回のデータでは集計していませんが、もともと取っている労働者死傷病報告には経験年数、月数といったものがありますので、そこは分析できるか試みてみたいと思います。基本的には未熟練の方ですと転倒しやすい、若年層に少しそういった傾向が出るというのはございますが、転倒などは特に災害につながったときに出してくる、若い人ですと転倒しただけではけがをしないという面もありますので、そういった影響はあると思いますが、分析してみたいと思います。
○河合構成員 簡単に言えば、今後、途中から慣れない仕事に就く人の割合が増えてくるということになってくると思うので、そういう人の事故の予防を考えていくと、高齢期に新たな職に就いた人へのジョブ・トレーニングについてルールを作って、もう少しきめ細かくやるとか、時間をかけてやるということをガイドラインの指標にしていくというのは、私は大事かなと思います。以上です。
○城内座長 申し訳ありませんが、松田様が退席なさるので、先に御質問をお願いしたいと思います。
○松田構成員 3者の事例発表は大変に参考になりました。ありがとうございました。その上で御質問ですが、イギリスにはキャロル・ブラック・レポートというのがありまして、これは労働と健康の関係を包括的に検証したレポートです。その中に書いてあるのが、健康は就業の条件であると同時に、就業は健康を向上させるというエビデンスが出ています。日本では規模は小さいのですが、鹿児島のやねだんとか、埼玉のナガホリとか、農業生産法人で、高齢者を就業させると、高齢者のメンタルヘルスとか、メタボ関連のデータがよくなるというのが出ているのですが、忠武建基様では、そのような高齢者が働き続けることによって健康が向上しているようなエビデンスがあるのかという、そういう感覚でも感想でもいいのですが、あるのかということをお聞きしたいということです。
 もう1つは、厚労省のほうのデータで、聴力の話があるのですが、私が産業医をやっている会社で聴覚障害の方がいて、一番問題になるのは、機械をいじっているときの故障の音が分からないということなのです。でも、その原因を考えてみると、若い人向けに作っている故障音なので、高周波のものが多いのです。それで、低周波の故障音も出すような、そういうように分けてやったような研究があるのかどうか。それをお聞きしたいと思います。
○磯上臨時構成員 高齢者の方については、当然仕事をやっているというか、若い人間と一緒に仕事をやることによって、より若くなっていっているような気がします。当然ながら、データも何もないのですが、顔色、動き、滑舌も含めて、若者と一緒にやっていると、うまく健康を保っていける。高齢者は若者のエネルギーを吸い取っているのではないかという感じもします。
○城内座長 厚生労働省からお願いします。
○搆主任中央労働衛生専門官 今、松田構成員からお話いただいた聴力、視覚、具体的には聴力の話を頂きました。高齢化に伴って、前にお示しした資料のとおり、厚労省の資料の3枚目ですが、「高齢者の身体機能に明らかに衰えが認められる」。視覚と。
○松田構成員 聴力が落ちているのは分かっているのです。その中で、対策として、高周波の故障音だけではなくて、低周波の故障音も出すような取組をしている事例があるかどうかということをお聞きしたいと思います。
○搆主任中央労働衛生専門官 結論から申しますと、今はないと思います。ただ、当然、高齢者に対応していないと、聴力で機械の故障音を把握できなくて災害につながりますので、そういったことを今後は考慮していくことが必要かなと思います。
○中所主任中央産業安全専門官 故障音と言うか、注意喚起について、音だけで注意喚起するのではなくて、例えばパトライトを付けるように、音と、音以外の、例えば光のような、そういったもので知らせるというのが、高齢者対策の1つとして、過去にそういうものもあるということを出してはおります。それなので、そのときに音を低い音にするという発想はなかったものですから、そういうものはあるのかということを含めて、検討ということにはなろうかと思います。
○松田構成員 追加で言いますと、実際に私がやっている所でも、光とかでリマークが出るようになっているのですが、作業に集中していると、結局は音しか聞こえません。音しか注意しないので。だから、そういう音のところの配慮というのは必要なのかなと、これはコメントです。
○城内座長 津下先生、お願いいたします。
○津下構成員 ありがとうございます。それぞれの取組の中で、日頃の健康管理や気付きの場面、そして何か異変があったときの対応など、細かくされていると思いました。
厚生労働省のスライドの中の6、7ページのグラフの乖離についてですが、6ページで言うと死亡者数だと高齢者60歳以上が75%を占めます。そして発生数だとそれほどではないというグラフになって、この解釈が正しいかどうかということなのですけれども。高齢者の場合、何かが発生したとき、基礎疾患のこともありますので、誰かが見守って早く対応しないと、容易に死亡までいってしまう可能性とかがあるので、早期に対応が必要なのかなとも思います。
 例えば忠武さんから、若い人と高齢者をペアにして作業させていますというお話がありましたが、こういうことで早く高齢者の異変に気付いて対応する対策というのが重要ではないかなと思うのですが、このペアで行うことの意義についてどのように、どうしてこうしたほうがいいかなと思われたのか、根拠などを教えていただければと思います。
 それから循環器疾患の事故につながりやすい脱水とか、高強度作業、心拍数が高いような作業が長期に続くことがいけないということ。先ほどの厚生労働省の資料の8ページ目で、業態別に漁業、運輸業が良くないというデータがありました。漁業、運輸業では特定健診の業態別のデータから見ると、喫煙率が高いとか、メタボ率が高いとか、健診受診率が低いとか、日頃の健康管理がちょっとおろそかになりやすいということや、イベントが起こったときに、例えば漁業だったら搬送までに時間が掛かる、そういう要因があるのかとか、様々な要因がここの中に隠れているのかなと思いますが、その辺りの日頃の健康管理の状態、またその安全管理が十分に行き届いていない作業環境があったかどうか、また異変があったときの対応それぞれについて、漁業や運輸業が多い理由について、どう考えておられるのかということを御質問したいと思いました。
○磯上臨時構成員 ペア就労ということなのですけれども、実際には高齢者については仕事の職人的な技術を継承していく。たまたま2、3年前からなのですけれども、工事日報というのを私ども出しているのですけれども、そういったものを今電子化しているのですね。電子化は当然スマホとかタブレットとかから入力できるようにしているのですけれども、実はその分野について、高齢者は非常に苦手で、そういった面で若者はIT系のものを教える、高齢者は仕事の今後の技術継承をしていただくというような、正に私ども会社にとっては非常に楽な体制を取っているのです。それでお互いをリスペクトしつつ、仕事を進めているような感じに見受けられます。以上です。
○村山安全衛生部長 津下構成員から2点お投げかけを頂きました。1点目は資料3の6、7ページ目の関係ですけれども、先ほど寺島副主任から御説明申し上げましたように、6ページは就業者、すなわち働いている人のデータですけれども、働くことに伴って脳・心臓疾患ということではなく、働いている人が脳・心臓疾患で亡くなった数を表しているグラフで、こちらのほうが器質的な変化の影響がよりはっきり出ております。7ページの資料は労災の認定事案ですので、働くことに起因して脳・心臓疾患になったというケースについてのデータで、先ほど漆原構成員からの御質問と重なりますけれども、特に脳・心臓疾患の労災認定の1つの考え方として、長期的な疲労の蓄積をもたらす長時間労働の継続が、1つ大きなファクターになっていることがあろうかと思います。こうした視点の違いから、津下構成員、御指摘のような結果になっているということかと思います。
 2点目、その先の9ページの漁業、運輸業の所です。これは脳・心臓疾患の労災認定事案の業種別の分析です。取り分け運輸業に関しては、例えば荷主との関係をはじめ、取引上の関係などもあって、なかなか事業者、当該労使だけの努力では、拘束時間や労働時間の短縮が進みにくいという構造的な要因に加えて、近年は人手不足の中で働き手が高齢化している等の状況もありまして、かねてから他産業と比べ数の上でも率の上でも高いということです。
 漁業に関しては、津下構成員から正に御指摘がありましたような点が、過労死の防止対策研究の中で浮かび上がっているところです。長期的な運動不足とか、不規則労働とか、長時間の拘束に伴うストレスとか、様々なことの上に、御指摘がありましたような喫煙等との関係も指摘されております。この調査研究がまとまりましたときに、今までどちらかというと100万人当たりの発生率は注目されてこなかったものですから、漁業ではこういった状況なので是非対策を進めていただきたいということで、地域産業保健活動などとの連携・相談窓口の活用なども進めていただくように、関係の省庁や業界団体とも連携しながら対策を進め始めているという経緯もあります。
○津下構成員 脳血管疾患は、基礎疾患があってそのときの状況があって発症するということで、必ずしも労働に起因するということは判定しにくいことはあるのですけれども、そういう健康状態を配慮した働き方だったのかとか、また過労死認定の労働時間も若い人と同じ基準で時間が設定されていてもいいのかなという疑問もあります。高齢者の場合は、特にリスクが高い人の場合、雇用者側で就業時間についての配慮、目が届くような基準作りなども必要なのかなと感じました。
○鈴木構成員 安全衛生コンサルタント会の鈴木です。先ほど出た転倒災害の新たな職場に関するかどうかについては、特にデータはありませんが、私が今まで支援した事業場の中でのお話をさせていただきます。例えば新たな職場に就き、それに関連しての転倒災害というのはほとんど経験しておりません。過去の経験とは関係なしに、日常的に通路を通行しているうちに転倒したというような、要因をいろいろ探し出しても非常に難解な災害が結構多いように思っています。
 例えば事業場でどういう再発防止策を検討しているかというと、私が知っている範囲では、高年齢者の身体機能の低下という点にについてはほとんど注目せずに、そこで転んだということに対して直接的な原因だけに注目しています。段差などが全くない所だと、対策が立てづらいのですが、そういう点に検討が集中していて、もっと本当は身体機能の変化というところも検討すべきですが、今はまだそこに全く注目していないということを課題として、私たちは事業場と一緒にそれに対して改善を進めています。
 例えば通行だけではなく、ほんの1段ぐらい乗って運転する小型の牽引車両があるのですが、それは20から30cmのステップの1段の昇降が必要ですが、その最中に足を捻座したというような災害もありました。ではどういう再発防止を行うかというと、降りるための手順を定めたとか、注意喚起で終わってしまっているのですね。被災者は65歳ぐらいに方でしたが、年齢に関する要因検討などは全く検討されていないケースも多くあります。
 このため、そのような作業者はどこに行ってもリスクはあるわけで、転んだ場所だけにリスクがあるわけでなく、違う所で作業してもまた別の災害に合う危険があるということに注目しながら、今私たちは一緒に事業場を指導しています。
○松葉構成員 これまでは、高齢者の身体機能はこんなふうに変化しています、低下してきますという情報と、それが原因で起こっている災害を結び付けた形で情報提供されていることは少ないと感じています。今、鈴木構成員からお話があったことについても、つま先が上がりにくくなっていたことが、このフラットな場所でつまずいた理由なんだねと分かるように、その身体機能の状態とそこで起こってくる災害、実際に起きた災害事例とか、それに対する対策という構成での表現がされると、ガイドラインの中でも現実に使いやすい、分かりやすいものになるかと感じています。
○鈴木構成員 そうですね、今私は事業場はそこについて余り注目していないということをお話しましたけれども、それとともに高年齢者に対しての、身体機能の変化という点についても全く教育していない事業場が多く見受けられます。ですから労働者一人一人は全くそういう意識がない。多くの作業者は「最近は体力が衰えた」などとは言っていますが、余り実感していないというのが正直なところかなと思います。実感していない中なので、いろいろ言っても、なかなか理解してくれません。このため、体力検査などで数値で実感させたうえで、教育するということがすごく重要なのかなと思っています。
○津下構成員 教育という点も大事ですし、やはり我慢する風土というか、ちょっとつらくても皆がやっているから我慢しようという、仕事だから我慢してやっていこうという、それがちょっと大きな事故につながることもあるのかなと。その点で言うと、どういうことを困っているとかいうことを話し合える、職場で話し合って、それは一人一人個人的な話なのか、皆が困っていることであれば組織的な対応が必要です。フレイル予防とか、そういうことも職場で取り組みましょうということも出てくると思うので、困っていることを我慢せずに話し合って改善していくという、ことが大切と思います。正に職場の中での取組という、体制づくりというのが3社ともすごく丁寧に取り組まれているなと思いました。エビデンスとか大きいことでなくても、皆さんが日頃の仕事の中で困っていることを話し合えること、我慢し過ぎないこと、それから周りが気付いてあげていることもすごく大事かなと思っています。
 例えば、今日の論点にあります認知障害や記憶等が低下してくる。本人はなかなか認めたくない部分でもありますし、周りの人が先に気付くということもあると思うのですけれども、本人に対する教育とともに周りの人に対して本人のプライドとか、いろいろやりたいという思いを尊重しながらどう関わり合えるか。それで本人に合った仕事を自分から表現できるようにしていく体制というのが、そういう環境というのが重要だと思いました。
 自分たちが困っていることをお互いに言って改善につなごうという、例えばパートで働いている人がそこまで自分が意見を言っていいのか、自分がつらかったら辞めるしかないんじゃないかと思うところが結構多いのではないかと思うのです。その風土作りというのがすごく大事だと思いました。始まった経緯などがどこの職場にも広がっていくといいのかなと思いました。
○城内座長 ありがとうございます。今の教育等に関して、御発表いただいた3社様からコメント等ございますか。気を付けてくださったこととか。
○横山臨時構成員 今伺っていて本当にそうだなと思ったのですけれども、当然若い職員も年を取った職員も、特に特養の仕事ですといろいろ忘れたりとか、これをやらなければいけないということが抜けたりがあるのですけれども、それを周りの職員がカバーしていくということでその職員が働き続けられたりとか、また忘れていたよ、でも次はちゃんとしてねということでまたミスが減っていったりということがあるので、今伺いながらすごくそういうことなのだなと思いました。
○松葉構成員 今、津下先生からお話のあった件で、熊本の社会福祉施設が、「気になるシート」という仕組みを運用しています。何か気になることがあった場合、それをシートに書いて提出すると、まずは自分たちのグループの中で実態を把握し、対策まで検討したものを施設長に上げて、グループで対応できるものはそれで改善するし、組織として対応しなければいけないものは、お金を掛けてでも施設長のほうで対応するという仕組みです。最初はみんななかなか書かなかったけれども、実際に改善がなされたことを実感したら、どんどんと出てきて、今はこなすのに困っていますとおっしゃっていました。そういったやり方をやられているところがあります。冒頭のリスクアセスメント、危険箇所をみんなで探してと申し上げましたが、設備的な危険箇所だけでなく、いわゆる気掛かりなこと、心理社会的に負担になるようなことも含めて、リスクアセスメントされていると思いますし、そういった仕組みがガイドラインにも表現されていくと良いと感じています。
○城内座長 ありがとうございました。一番重要かもしれないけれども、ガイドライン等には盛り込みにくいところかもしれませんが、事務局から何かコメント等、現段階でありますか。
○毛利安全課長 今日は事例を御発表いただき、また飯島先生からも御発表いただきまして本当にありがとうございます。そうした中で、ガイドラインに盛り込む対策についても今日お話が及んだことについて非常に有り難いと思っておりますので、是非そうした御意見を参考にさせていただきながら、また次回の議論につなげていきたいと思っております。ありがとうございます。
○高木構成員 資料1に、高年齢者が健康で安全に働くための課題として示されている心身機能の低下は非常に重要なことですが、一方で、骨太の方針に掲げられたサービス業の高年齢労働者の安全を確保するためには、これまで数年間行ってきた小売業の実態調査を踏まえると、今日、発表された原信さんのような先進的な取組はまだほんの一部で、多くのサービス業では安全活動や安全教育はほとんどなされていないのが実状です。法定の雇入れ時安全教育は行われていても、その後の安全教育はほとんど見受けられません。それはパートタイム労働者は短時間労働、シフト制などのため、安全教育を実施することが難しいという側面があります。しかし一方で、先ほど示されたように高年齢者、50代60代の女性の転倒災害が多い。このような状況をみると、これまで、製造業、建設業が安全活動、安全教育を重ねたことにより労働災害を減少させたことを踏まえ、心身機能の低下という高年齢者特有の課題とは別に、軽作業など、それほど危険な作業を伴わないサービス業であっても、しっかりと安全教育、安全活動に取り組むことが高年齢労働者の安全確保には必要ではないかと強く感じています。この点も何らかの形で成果に反映させることが必要ではないかと思います。
○漆原構成員 今の御発言に関連するのかもしれませんけれども、厚生労働省の御提示いただいた最後のページの、転倒災害の千人率で、女性が有意に高い理由は、確か加齢や骨粗鬆症などにより骨密度が低くなってしまったために、通常ですとちょっとした転倒で痛いで済むところが、休業4日以上、つまり骨折などになってしまうケースで、それは先ほどの段差が有る無いというところと関係なく起きてしまうことであって、労働者による「注意」ということからすると、ソフト面とハード面の両面からどういうふうに対応すべきかについての研究や、「こんな所でなぜ」というような事例収集なども必要かもしれません。そのためには、冒頭で筋力の話がありましたが、それ以外に視覚ですとか聴覚ですとか、それ以外の加齢に伴う要因で注意すべきところが分かるようなデータを新たに取っていただくことは、ちょっと時間が無理なのかもしれませんが、お願いできればというところです。
○飯島構成員 幾つか短めに。今御質問というか御提言があったことに関して、例えば転倒骨折によっての大腿部頸部骨折、股関節の骨折に関しては、かなり山ほど研究されていて、特に我々医学会側では研究されていて、やっぱり道路での段差とか階段を踏み外してというケースよりは、むしろ注意が散漫になりやすい、不注意になりやすいリビングでの、例えば台所、リビングでのちょっと向きを変えたりとか、そういう時にバランスを崩して転んで、打ちどころが悪いと股関節骨折になっているということが、かなり明らかに証明されています。むしろ階段を下りるとか、ちょっとしっかりした段差は注意が働くので、むしろ転んでいないということが言われているんですね。
 あとちょっと話題を変えますけれども、先ほど津下先生からも言われたように、私も今、筋肉の衰えとかフレイルという、医学的なフィジカルなデータをお示ししてしまいましたけれども、やはりどういう職場関係でも「私、ちょっとつらいのです」ということをすっと言える場があるかどうか。それは幅広く言えば教育かもしれないのですけれども、そこら辺がいかに早め早めに未然に、ヒヤリハットと言いますか、ちょっと手前で止めさせるというものにつながるのかなと思っています。
 あともう1つ、このガイドラインに向けてということに関して、前回の第1回でも言ったのですけれども、いろいろ働く環境でのトラブルという意味では、やはりメンタルという部分と、腰痛も含めた体のパーツがちょっと痛くなりましたという、軽いというか死ぬ生きるの話ではない身体の痛みという話と、先ほど来からちょっとデータが出ています脳卒中とか心筋梗塞という本当の重病。この3つの分野である程度カバーされるのか、それともそれこそ今日3つのところから代表の方に来ていただいているのですけれども、例えばその3つだけではなく、4つ目、5つ目のカテゴリーといいますか、メンタルヘルスの部分の注意、腰痛も含めたそういう身体のパーツの注意。あと重病にはならないようにという、基礎疾患の配慮という、これだけでいいのか、それとも実は現場ではもうちょっとこんなのがあるのですというのがもしあるならば、もしかすると4つ目5つ目のカテゴリーがあるのではないか。我々が知らないだけでというのがあるのですけれども、いかがでしょうか。ちょっと抽象的な質問で申し訳ないのですけれども。
○磯上臨時構成員 4つ目かどうか分かりませんけれども、自分の状態を言いやすいような環境をまず作る。私たち建設業の場合、よくお酒を使うのです。そういうコミュニケーションの場を多く取るように、年何回かのみんなで集まる会や、各会議においての懇親会とかを催して、とにかく言い出しやすい環境をそこからみんなに、そういうことを言ってもいいんだということを、会社側はそういうところを醸成してやっています。とにかく言ってもらわないと始まらないので、そこを引き出すというところは確かに僕らの目標ではあるのかなと思います。
○城内座長 そのほかありますか。では私から御質問させていただきます。今まで佐久間様から例えば床材を貼り替えるとか、横山様から天井走行リフトを備え付けられたとか、磯上様からは器具の開発をなさったとか防護具を備えたとか、それぞれ初期の投資がかかっていると思うのですけれども、それについて最初は難しかったのではないかと思います。どんなふうにインセンティブを持っていかれたかというのは今後重要だと思いますので、何かヒントを頂けると有り難いと思いますが、それぞれいかがでしょうか。
○佐久間臨時構成員 当社のドライ化については、1店舗の店長が取り組んだ事例を全社に展開いたしました。全社での展開については、コストアップもありましたが、トップの判断によって進めることができました。
○横山臨時構成員 ひがしやま開設当初、かなり大変だったと聞いています。ただ開設に関わった職員からすると、平成12年に開設なのですけれども、介護保険がちょうど始まる年で、介護士対利用者の数が3対1という数字が明らかに出ていて、職員数が少ない、絶対的に少ない。その少ない職員の中でどうやって利用者の介助をするかとか、あとはお年寄りがどんどん年を取っていってどんどん動けなくなっていって、介助量が増えていく。その中で少ない職員でどうやってカバーしていくかとか、長く働き続けられるためにというところで、建設計画時にリフトが必要だと引かなかったと聞いています。
○磯上臨時構成員 私ども、最初は本当になかなか難しかったですね。でもこれをやらないと絶対にいけないんだと見えていましたので、そこで私が社長を辞めて、営業というかそういったところから抜けて、これは本格的にやらないといけないということで、会長なんていうその辺の町会長みたいな軽い感じで、今回安全衛生というところを本気で考えようと思ってやり始めたものですから。割とうちの会社はトップがそうやり始めたので、最初はいろいろありましたけれども、みんなにもすんなり協力してもらっているというところで、やりやすかった点はあります。
○城内座長 どうもありがとうございました。非常に貴重な情報だったと思います。そのほか、もう時間も迫っています。砂原委員お願いします。
○砂原構成員 手短に1点だけ。いろいろありがとうございました。非常に参考になることを聞けたと思いました。今後検討していくに当たってなのですけれども、加齢によって基礎的な身体能力が低下しても就労を継続するために考えないといけない部分と、高齢期の、健康を維持するというために必要なものは何かという部分と、その2つを分けて検討していく必要があると感じましたので、そういうところも触れていただけると有り難いと思いました。
○東構成員 介護サービスにおいてハード面をいろいろと導入されて、うまくいったというケースをお聞かせいただきありがとうございました。そのことで特にリフトなどは良いと言われているのですけれども、うまくいく施設といかない施設が必ずある。また、なかなか普及が進んでいないという実態がありますので、今日のご発表の施設は、いろいろな工夫をされていましたので、1つの事案として整理ができるのかなと思います。
 一方で、その方法を使えば必ずうまくいくかというものでもないのだろうと思いますので、是非、幾つかの導入の工夫事例も整理していくと良いのではないかと思います。
○城内座長 ありがとうございました。あとは御意見よろしいでしょうか。では本日予定している議題は以上ですが、最後にその他ということで他に御発言等ございますか。よろしいでしょうか。それでは本日の議題はここまでとします。
 前回及び本日の2回にわたり、企業規模や業種など様々な企業の皆様からヒアリングを行うとともに、基本的なデータについて御確認いただいたところです。つきましては、次回はこれまで2回の会合で構成員の皆様から示された問題意識や、それに対する対策について議論を深めていければと思います。事務局においては御意見を整理し、これまでの取組と浮かび上がってきた課題などをまとめ、議論の準備を進めていただければと思います。
 それでは進行を事務局にお返しします。よろしくお願いします。
○吉岡中央産業安全専門官 本日も御活発な御議論をいただき、大変ありがとうございました。次回第3回の有識者会議につきましては10月30日水曜日の午後1時半からを予定しています。それでは本日の会議はこれで終了といたします。ありがとうございました。