平成30年度第3回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーション議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

平成31年3月18日13:30開会

場所

LS新橋 Learning Square新橋6-A会議室

議題

  1. 開会
  2. 基調講演
    1. 「平成30年度リスク評価の結果について」
    2. 「個人サンプラーを用いた作業環境測定」
    3. 「化学物質を安全に取り扱うためのラベル・SDS・リスクアセスメント制度について」
  3. 意見交換(パネルディスカッション)
  4. 閉会

議事

(開会)
○司会者(前北) 定刻となりましたので、ただ今より平成30年度、第3回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーションを開催いたします。
本日はお忙しい中、第3回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーションにご参加いただきまして、誠にありがとうございます。私は三菱ケミカルリサーチの前北と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
早速ではありますが、お手元の資料の確認をさせていただきたいと存じます。議事次第が1枚。ステープル留めの3種類の基調講演資料それぞれ1部ずつ。A4のピンクと水色のアンケート用紙がそれぞれ1枚ずつとなっております。なおこちらのピンクのアンケート用紙につきましては休憩時間に、水色のアンケート用紙につきましては意見交換会終了後に回収させていただきます。そのほか、A5サイズの赤と青のカードが1枚ずつお手元にございますでしょうか。資料の不足などがございます方がいらっしゃいましたら挙手いただけますでしょうか。大丈夫でしょうか。
ありがとうございます。
なお、議事次第に誤記がございました。申し訳ございません。最初の講演者であられる名古屋先生の肩書は、正しくは早稲田大学名誉教授でいらっしゃいます。訂正してお詫びさせていただきます。
さて、このリスクコミュニケーションですが、働く方の健康障害を防止するために厚生労働省が行っている化学物質のリスク評価に当たりまして、関係する事業者や化学物質の取り扱いをされている方、また、事業者の団体の方との情報共有・意見交換を行うために実施しているものです。
それでは本日のスケジュールについて簡単にご説明いたします。
まず、「平成30年度のリスク評価の結果について」というタイトルで、厚生労働省が実施しております検討会の1つであります化学物質のリスク評価検討会で行われた検討内容につきまして、同検討会の座長でいらっしゃいます早稲田大学名誉教授の名古屋俊士先生に30分程度ご講演いただきます。続きまして「個人サンプラーを用いた作業環境測定」というタイトルで、厚生労働省労働基準局安全衛生部、化学物質対策課環境改善室室長の西田和史様に30分ほどご講演をいただきます。続きまして、「化学物質を安全に取り扱うためのラベル・SDS・リスクアセスメント制度について」というタイトルで、厚生労働省労働基準局安全衛生部、化学物質対策課化学物質国際動向分析官の吉澤保法様に20分程度ご講演をいただきます。
以上の基調講演が終わりましたらいったん20分程度の休憩を挟ませていただきます。なお、この休憩時間中にピンクのアンケート用紙を回収させていただきます。ピンクのアンケート用紙に基調講演をお聞きになったご感想、疑問点、ご質問などについてご記入いただき、会場内の事務局員にお渡しいただければと思います。休憩時間が始まってから15分程度経過したところでピンクのアンケート用紙を回収させていだこうと考えております。
後半の意見交換会では、会場からちょうだいいたしましたご意見を踏まえたかたちで進めてまいります。このため、前半の基調講演の部では質問の時間は設けずに進め、後半の意見交換の部でご質問にお答えしたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
後半の意見交換会では、コーディネータを東京理科大学薬学部教授の堀口逸子先生にお願いし、パネリストとして、基調講演の名古屋先生、西田様、吉澤様のほか、厚生労働省労働基準局安全衛生部、化学物質対策課化学物質評価室の川名室長及び増岡様にもお入りいただきまして、皆さまの疑問点にお答えしていきたいと存じます。
意見交換会につきましては、開始から1時間程度かけましてピンクのアンケート用紙にご記入いただいたご質問について回答し、その後会場からのご質問を直接お受けできたらと考えております。
なお、この講演会につきましては、後半の意見交換会を含めまして議事録作成のため録音をさせていただいております。録音の関係上、最後の質疑応答などにつきましても、マイクをお渡ししますので、マイクを通してご質問をいただければと思いますので、ご協力よろしくお願いいたします。
全体は約3時間程度を予定しております。
それでは、最初の基調講演であります「平成30年度リスク評価の結果について」を、早稲田大学の名古屋先生、どうぞよろしくお願いいたします。
基調講演1「平成30年度リスク評価の結果について」(早稲田大学 名誉教授 名古屋俊士)
 ただ今ご紹介にあずかりました早稲田大学の名古屋でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
(スライド1)
 皆さんに配られた資料は77ページくらいありますが、与えられた時間が短いので、本日のパワーポイント時間合わせて内容に一部を削ったものになっておりまして、皆さん方のお手元にありますものは、リスコミ終了後の資料として使っていただければということで進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 リスク評価の評価方法には初期リスクと詳細リスクがありますが、今回の場合は初期リスク評価の結果というかたちの報告になります。
 
(スライド2)
 「労働現場で取り扱われている化学物質の現状」ということですが、産業界で年間7万種類の化学物質が使用されています。また、毎年だいたい1,000物質くらい新規届出があります。あと、少量新規化学物質は年間17,000物質くらいです。
 
(スライド3)
新規化学物質の届出件数が実際どのくらいかというと、だいたい1,000物質くらいが届けられて、近年だいたいこのへんの1,000くらいのところで推移しているというかたちになっています。
 
(スライド4)
 リスクのところに入っていきますが、今日取り扱っているところはここのところ【初期リスク評価】のところです。ここの場合は有害物質の作業報告書、あとで触れると思いますけれども、このリスク評価委員会の前に「リスク評価に係わる企画検討会」という委員会がありまして、そこで本年度はどういう化学物質をリスク評価対象物質にすると決めて、それを12月に公表します。それに応じて1年間その対象物質を使用した状況を次の年に報告します。今年の場合ですと平成31年度はこういう物質がリスク評価対象物質になりましたよと。そうすると皆さん方は平成31年の1月から12月までその物質について、500kg以上取り扱った場合は、平成32年の1月から3月までのあいだに有害物ばく露報告書を届け出することが義務付けられています。それを我々がいただいてリスク評価対象物質の初期リスク評価を行います。初期リスク評価を行うには、評価のための濃度を決める「有害性評価小検討会」と、あとは実際に作業場に行ってばく露濃度のサンプリングをして、その濃度を評価を決める濃度と比較してリスク評価する「ばく露評価小検討会」があります。それらをまとめて検討する「リスク評価検討会」があり今日はそのリスク評価検討会で決まった【初期リスク評価】のところだけ皆さんにお話しします。
 初期リスク評価の中で有害性が高いと詳細リスク評価に行って、詳細リスク評価の中でこれは健康障害などいろいろなリスクが高いと評価された化学物質は健康障害防止措置の検討を行うために「化学物質の健康障害防止措置検討会」に送ります。この措置検討会の中で検討した結果的には、ホルムアルデヒドといったかたちのケースになります。私が知るかぎり、平成18年から平成29年まで、それは多分リスク評価としては232物質を評価してきました。いまは多分250物質くらいいっていると思います。結果的にはここにありますホルムアルデヒド、これは平成18年のものですが、これから平成28年はオルトトルイジンです。多分その間にこのリスク評価でかかっていた232物質の内の15物質が特化側の特定第2類管理物質及び管理第2類に指定された物質だと思います。こんなかたちでいま流れていますよというかたちでよろしいかと思います。
 
(スライド5)
 ここは、今やられている新しいリスク評価の考え方でして、平成18年以前はここに書いてありますように健康障害を発生させた化学物質について後追い的に、要するに化学物質によって健康障害が起こったものについてだけ規制をかけていたという流れでしたけれども、平成18年からはハザードではなくリスクベースの規制に変わってきました。このへんは皆さんご存じだと思いますが、前回、前々回はここのところは言わなかったので少し詳しく説明しておりますが、リスクベースの規制です。事業者はリスクアセスメントを実施して、その結果に基づいてリスクを低くしてください。重篤な健康障害のおそれのある物質については国が自ら、重篤なところでいうと発がん物質や生殖毒性、遺伝毒性などを取り上げていって、国みずからリスク評価を行う。今日はこのあたりの話になるかと思います。
 
(スライド6)
 実際このへんのところは先ほど言いましたように、こういうかたちの中でリスク選定物質が出てきますね。それに対して皆さん方でリスクに該当するものを年間500kg以上扱っているリスク選定物質があった場合につきましては、ここにリスクばく露の報告書を必ず国に提出してもらいます。そこに対しまして国によるリスク評価は、リスク評価のための濃度を決める有害物小検討会があり、あとで出てきますが一次評価値とか二次評価値を決める委員会があります。そのほかにもう1つは、実際に現場に行ってばく露濃度を調査測定し、その結果と評価濃度を比べて評価するばく露評価小検討会があります。有害性評価とばく露調査を合わせてリスク評価検討会で初期リスク評価を行います。初期リスクから詳細リスク評価へ行って、ここで有害性が高いとなったら健康障害防止措置検討会に行きまして、検討を行い特化物でしたら局排とか作業主任者など特化則に盛り込む内容を決めるという流れになっています。
 
(スライド7)
 ここは有害性の評価をするということと、ばく露実態調査をするのですよということを詳細に書いてあります。後ほど出てくると思いますのでそのときにお話ししたいと思います。
 
(スライド8)
 今日はここのところの話になるのではないかと思いますが、先ほど言いましたように有害物ばく露作業報告があったところに行きまして実際にどういうばく露があるか調査をします。実際かなり広範囲のところのデータが出てきていますが、全ての事業所を対象に測定ができるのかというと限られた事業所しかできませんので、その報告のあった事業所の中でコントロール・バンディングを行って、コントロール・バンディングの結果が一番高いと思われる事業場をターゲットにしてばく露の測定に行きます。あとは先ほど言ったように有害性評価小検討会で一次評価値、二次評価値を決めていただいて、これも後ほど出てきますけれども二次評価値の場合は、許容濃度かまたはACGIHの値を使いますから、もしかするとこの化学物質が詳細リスクを経て、健康措置検討会で検討されて、特化物になって法律になると、これの二次評価値が管理濃度になる可能性が高いです。実際にばく露濃度を測って一次評価値より低いところは、リスクは低いでしょう、二次評価値より少しリスクがあるという現状ではリスクが高くないというかたちで、この段階で終わります。先ほどありましたように二次評価値を超えているときにはやはりリスクが高いということで、詳細リスク評価にいきます。このときにどういうものが高かったのかを議論しまして、実際に同じところを測定するわけではなくて、同じ作業をしていても共通性のあるところで測定していない場所がありますので、そういうところも見てなるべく広くリスク評価を行って、もう一度リスク評価の中で測定しなおしますよというかたちになっています。
もう1つ有害性の場合は、もしかすると測定結果が出てくるまでの間が長かった場合に二次評価値の濃度が変わる可能性がありまして、そのときにはもう一度評価をするということ。一般的にはなかなかありませんが、そうしたかたちで見ていって、詳細リスク評価の中で二次評価値、ここは滅多にないのですが、こういうことがあればそれは自主的に管理してくださいと。二次評価値を超えているときには要因分析をします。それは特定事業場の問題なのかどうか。もし特定事業場だけの問題であれば、そのときはその特定事業場だけ指導すればよいわけですが、共通性の高いものになるとリスク低減の対策をしなければいけませんねというかたちになります。
例えば、エチルベンゼンなどの場合は要因分析をしますとガソリンスタンドもエチルベンゼンを使っていますし、造船の塗装作業が一番ばく露濃度が高かったのですが、塗装作業というのは造船ばかりではなく共通していますので要因分析をして、このときエルチベンゼンについては塗装作業そのもの自体がここに入ってきたというかたちの評価をしています。
 
(スライド9)
 ここは先ほど言いました、リスクをどうするか。先ほど言いましたように許容濃度(一次、二次評価)と個人ばく露濃度とばく露濃度の最大値を使って評価しますよと。ではばく露濃度の最大値はどうするのかというと、ここにありますように、もともと実際に8時間測ったばく露濃度と、もう1つは「統計的な処理」と書いてありますが、統計的な処理をするのは報告にあった全ての作業を全部測定しているわけではありませんから、測定していなかった事業所のばく露濃度を見逃す可能性がありますので、それを見逃してはまずいので、ガイドラインという手法がありますのでそれに従って統計的な処理をしていって、もしかしたら見逃しているところの中で、実際のばく露濃度測定をしている現場よりも、高いところがあるかもしれないといったときに、それを統計的に処理した値も使って、どちらか高い方、要するに実際にばく露している部分と区分推定で求めたいずれか高い方を最大値として、先ほど言いましたように二次評価値と比較しますよというかたちになります。二次評価値の場合はここにありますように、ばく露している場合にこれに起因して労働者が健康に悪影響を及ぼすということでACGIHだとか許容濃度といった濃度を二次評価値にを使う。ここの一次評価値の場合は1万人に1人の割合でがんが発生するおそれがあるというかたちで濃度が設定されています。こちらの二次評価値の方が、実際に私たちが使う上では重要なのではないかと思っております。
 
(スライド10)
続いて最近出てきた経皮吸収についてですが、経気道ばく露、要するに呼吸器系から入ってくるばく露の中でリスクが低かったら先ほど言ったように、企業の自主的な管理になります。リスクが高かった場合には当然工程共通の場合はリスク対策をして検討するということで、ここは先ほどの説明と同じで、ここに書いてありますように保護具などというかたちで自主的にきちんと管理してくださいと言うことになります。ここになってきますと健康措置の検討が必要で、最終的には特化側の適用を受けるというかたちの措置になります。
 皮膚吸収に対して勧告がなかった場合はここでいくのですが、勧告がある場合につきましては皮膚吸収の評価をしましょうよということです。ここに書いてありますように定量的な評価方法は未確立のため、原則としていまは定性的な評価を行っていますよということで、これに従って皮膚吸収のリスク評価をして、経気道ばく露のリスク評価と2つ合わせてリスク評価をしますよという流れになっています。
 
(スライド11)
 続いて初期リスク評価の結果の説明をお話ししていこうと思います。
 
(スライド12)
 ここは概要ということですが、最初に1,2-酸化ブチレンの場合、リスクが高かく、且つ、経皮吸収の勧告があります。ばく露濃度の最大値が二次評価値より高かったのでリスクが高いと判断されるので、先ほどからお話ししていますように、詳細リスク評価に移行して要因分析をしましょうというかたちにいまはなっています。
 ビフェニルに始まってこの3物質については、ばく露としてのリスクは低いけれども経皮吸収の勧告がありますから、経皮吸収の評価を行って、再度検討しましょうというかたちになっています。
 ノルマル-オクタン、から始まってメチレンビスまでの5物質につきましては、経気道ばく露も低いでしたし、経皮吸収の勧告もありませんでしたので、初期リスクで評価が終了ということになりました。今年度初期リスク評価を実施した9物質についてはこういうかたちの概要になっています。
 個別の化学物質について詳細は皆さんの手元の資料にありますが、それについて少しお話ししていこうと思います。
 
(スライド13)
 1,2-酸化ブチレンですが、ここにありますように、二次評価値は2ppmになっております。実際のばく露の中では最大ばく露が2.5ppmでした。これは区分推定が実際のばく露より高い。要するに区分推定してみたときに実際のばく露より高いところに最大値がありましたので、どちらを取るかというと先ほど言いましたように区間推定の値か実測のばく露濃度の値かどちらか高い方を最大ばく露にしますので、この場合は区間推定の2.5ppmが二次評価値よりも高いので間違いなくリスクは高いですね。同時に経皮吸収の勧告がありましたのでそれを含めて詳細リスクにいって、2つ合わせて要因分析して評価しましょうというかたちになっています。
 
(スライド18)
 実際のデータはここにありますが、実際に一番高かったばく露濃度は1.1 ppmでした。詳細はこのへんを見てください。どういう作業のときに一番高かったのかがわかります。二次評価値の2ppmに比べると実際のばく露は下がっておりますけれども、統計処理して求めた区間推定値の2.5ppmが二次評価値を超えていたので、リスク評価対象物質になりました。
 
(スライド19)
結果的には1,2-酸化ブチレンの製造・取扱事業場において最大ばく露は区間推定値の2.5ppmが二次評価値の方が高かったので詳細リスク評価にいきます。どういう作業のところが多かったかというと、投入や仕込み作業という共通がありますので、詳細リスクにいったときにもそういう同じ作業があるところに対してもう一度検討してみてくださいということで送ります。それを受けて、詳細リスクに行ったときには新しく測定場所を広げて、できたら事業場を広げていってばく露の可能性のある事業場を検討しますよというかたちです。先ほど言いましたように、経皮吸収がある物質につきましては、保護具のデータを積み重ねてリスク評価を確定させるべきですよというかたちで今のところ検討されています。先ほどありましたように定量的ではなく定性的に検討されていますよというかたちです。実際に現場に行って測定したデータを持ち帰って、また委員会の中でそれを繰り返していって、結果としてどういうふうにしたらよいかということをいまやっている段階になるかと思います。
 
(スライド20)
 次にビフェニルですが、二次評価値が0.2 ppmでした。皆さんの資料がここは区間推定値になっておりますが間違っていますので直していただければありがたいです。「区間推定値」ではなくて「個人ばく露濃度の最大値」になりますので直していただければと思います。そういうかたちで個人ばく露を下回っていますけれども、見ていただくと二次評価値が0.2 ppmです。0.00032ppmが個人ばく露の一番高い値です。二次評価値に比べて著しく小さいのですが、これは濃度的には低いのですが、ここにありますように経皮吸収の勧告がありますので、これに対する評価をちゃんとして、もう一度確定させてください。要するに詳細リスクに行くかどうかを確定させてくださいよということになっています。
 
(スライド25)
 実際のところはこうです。ばく露濃度の0.0032 ppmが、区間推定値よりも高かったです。見ていくと、こういうかたちの作業に応じて、突出していますけどね、比重を測定している作業の5分で測っていった作業中でのばく露濃度が0.0032 ppmということで、やはりばく露は少なかったけれども経皮吸収があるということでもう一度経皮吸収のデータを積み重ねた上で確定させましょうということになりました。
 
(スライド26)
今後の対応としましては、個人ばく露の測定値が0.2 ppmでしたけれども二次評価値より下回って、経気道からのばく露は低いですけれども経皮吸収の勧告がありますので、そのデータを積み重ねていってリスク評価を確定しましょうということになっております。ただ、神経毒性等を有することから、事業者は、リスクアセスメントを実施し、その結果に基づくリスク低減措置を講ずる必要があるとしています。
 
(スライド27)
 続いてジフェニルアミンのリスクは二次評価値が10 mg/m3、経気ばく露濃度の最大値は0.10 mg/m3合っていますけれども、区間推定値は0.10 mg/m3になっていますが、これは誤りで正解は0.11 mg/m3です。その結果、最大ばく露濃度は、区間推定上限限界値の0.11 mg/m3ですので、記載の0.10 mg/m3を0.11 mg/m3に修正お願いします。
 
(スライド32)
個人ばく露は0.10 mg/m3、区間推定値が0.11 mg/m3ですので、本当のばく露は0.10 mg/m3ですから少し違いますが、それでも10 mg/m3に比べると少ないですので問題ありません。ただしここにありますように経皮吸収の勧告がありますので、それを取り入れてリスク評価を確定させましょうというかたちになっております。
 こういうかたちで見ていただけると、ここに作業があります。皆さんのところにはもう少し詳細なデータがあります。この中でミキサーのところが一番ですね。今回の場合は経皮吸収があることでリスク評価は確定しませんすけれども、仮に、ばく露が高かったときにはこういう作業を見ながら同じような作業があるかどうかということで詳細リスク評価に行ったときにはそういう作業のところを測定しましょうということになります。
 
(スライド33)
 ジフェニルアミンにつきましては、最大ばく露区間推定は0.11 mg/m3でした。二次評価値に比べて著しく小さいので経気道からのばく露からは低いですよと。経皮吸収につきましては先ほどと同じようなかたちですが、リスク評価を確定させていきましょうというかたちのリスク対応になっております。ただ、生殖毒性を有することから、事業者は、リスクアセスメントを実施し、その結果に基づくリスク低減措置を講ずる必要があるとしています。
 
 
(スライド34)
 レソルシノールにつきましても全く同じでして、二次評価値は10ppmでそれに対してばく露濃度の区間推定値で求めたものが0.025 ppm、一応12人のデータですが、それで求めたばく露濃度が一番高かったのが0.012ppmですので、最大ばく露濃度は、区間推定値の0.025 ppmですので、二次評価値に比べて著しく小さい。先ほどからお話ししていますように、経気道ばく露につきましては低いのですが、経皮吸収がありますので、経皮吸収を評価していってそしてリスクを確定させましょうということで、ばく露は低いのですが経皮吸収があるということで、それが確定してから再評価しましょうというかたちになっております。
 
(スライド39)
実際は9人ですが、二次評価値の10ppmに対して個人ばく露の最大値は0.012 ppmということで、作業は反応釜への投入作業となっておりますが、こういうかたちのものがばく露として一番高かったということになっております。
 
(スライド40)
レソルシノールにつきましては最大ばく露濃度の0.025 ppmは二次評価値に比べて低く、経気道のばく露は、リスクは低いと考えられておりますが、経皮吸収勧告がなされている物質であるために、ここの場合英国でこういう勧告があったときちっと書いてありますが、英国で経皮吸収の勧告があった物質ですので、先ほど同じで経費吸収のリスクを確定させましょうという同じ扱いになっていますということです。ただ、神経毒性等を有することから、事業者は、リスクアセスメントを実施し、その結果に基づくリスク低減措置を講ずる必要があるとしています。
 
 
(スライド41)
 ノルマル-オクタンの場合は二次評価値が300ppmです。個人ばく露濃度0.78ppmと区間推定上限側限界値1.6ppmとを比べて、最大ばく露濃度は、1.6ppmになりました。また、この物質は経皮吸収勧告がない物質です。
 
(スライド46)
300ppmに比べて11人に作業者に対してばく露濃度の測定をしました。ばく露の最大値が1.6ppm。この1.6 ppmも実際のばく露ではなくて区間推定値の方が高かったのでこれを最大ばく露値として取り上げました。300 ppmに比べて1.6 ppmですから小さい。特にこの場合は経皮吸収の勧告がありませんので、もうリスクが低ければそのままということで、著しくリスクが少ないと認められるので初期リスク評価で終了していますというかたちの物質になります。
 
(スライド47)
 実際ノルマル-オクタンにつきましては、最大ばく露は区間推定で0.16 ppmでした。二次評価値の300ppmを著しく下回っていますので本来的にはリスクが低かった。同時に先ほどありましたように経皮吸収の勧告がされていませんので当然リスクは低いということで、経皮を考えずに経気道ばく露だけで考えてよいですので、初期リスク評価で完結。それで終わるということではありませんで、それと同時に事業場ではもともと発がん物質があるものを扱っていますからそういうかたちにつなげてきちっと管理してくださいという説明書を付けてそれぞれ送っていただけるというかたちになっています。
 
(スライド48)
 続いて酢酸イソプロピルですが、これにつきましても二次評価値が100ppmです。
個人ばく露濃度4.1ppmと区間推定上限側限界値6.1ppmとを比べて、最大ばく露濃度は、6.1ppmになりました。また、この物質は経皮吸収勧告がない物質です。
(スライド53)
9人の方のばく露濃度の最大は4.1ppmです。区間推定上限側限界値は6.1ppmで、要するに実際のばく露に比べるとガイドラインに従って統計的に計算した値の方が高かったので、この6.1ppmを最大ばく露濃度値として扱いましたけれども、100 ppmに比べて小さいですよということで、要するに呼気から入ってくるリスクは小さかったと同時に経皮吸収の勧告はありませんので、ばく露濃度だけで評価してよいというかたちになります。そのばく露濃度は当然二次評価値に比べて低かったですからリスクは少ないというかたちで、初期リスク評価で終了するというかたちになります。
 
(スライド54)
 実際は酢酸イソプロピルにつきましては最大ばく露値区間推定値が6.1 ppmでした。二次評価値100ppmに比べると下回っています。ACGIHや日本産業衛生学会から出てくる中に経皮吸収の勧告はありませんのでリスクは低いよと。リスクアセスメントの実施が義務付けられている神経毒性等があるということから、リスクアセスメントを実施し、基本的な措置を必ず自分のところでリスク低減措置が必要ですと書いて送るかたちになるかと思います。
 
(スライド55)
 続いてジメチルアミンにつきましては、2ppmが二次評価値というかたちで、8人の人に対して実際にばく露を測りましたけれども、ばく露濃度の最大値の0.33ppmに比べますと区間推定上限限界値の0.55ppmの方が高いので、最大ばく露濃度は0.55 ppmです。先ほどからあるように最大ばく露値濃度が二次評価値の2ppmを下回っていますのでリスクとしては低いです。同時に経皮吸収の勧告もないですので当然リスクは低いというかたちで、初期リスク評価で終了というかたちになります。
 
(スライド60)
 実際のばく露は、先ほどの区間推定値の0.55 ppmに比べますと0.33 ppmですから区間推定値の方がやはり大きいです。二次評価値の2ppmに比べて著しく小さいですし、最大ばく露は区間推定値になりますので、作業としてはこういう作業があって、二次評価値より小さかったですということになります。
 
(スライド61)
 最終的には同じことになりますが、ジメチルアミンにつきましては、最大ばく露量は区間推定上限限界値の0.55 ppmで、二次評価値の2ppmに比べると低いです。同時にACGIHと日本産業衛生学会などから経皮吸収についての勧告はありませんので、当然ばく露だけで評価すればよいわけで、ばく露はリスクとしては低いと考えられました。先ほどと同じですね、そうは言っても反復毒性等がありますので、リスクアセスメントを実施してその結果に基づいて低減することが必要ですよと。初期リスクで終わらせずにこういう毒性がありますからリスクアセスメントをちゃんとして低減措置を講ずることが必要ですよという書き方になるかと思います。
 
(スライド62)
 続いてビニルトルエンです。ここにつきましても二次評価値が20ppmです。この評価値はドイツのデータを使っています。有害性評価小検討会で検討されて、最新の値であるドイツの値でる20ppmを採用したのだと思います。先ほどお話ししましたように区間推定上限限界値の方が実測値より高かったので最大ばく露濃度として区間推定値の1.9 ppmを使います。それでも二次評価値に比べて低いですのでリスクは低いです。と同時に先ほどからお話ししていますように経皮吸収の勧告はありませんのでばく露だけの評価でよいので、ばく露の評価は低かったですからリスクは低いとして、初期リスク評価で終了というかたちになります。
 
(スライド67)
 実際の場合区間推定値1.9 ppmでそれに比べて個人ばく露濃度の最大は0.41 ppmですから低いとは言いながら、こういうかたちの作業の中で実際に測定してみたらこのくらいのばく露でしたよというかたちになりました。
 
(スライド68)
 最終的な評価はビニルトルエンにつきましては、最大ばく露量は1.9 ppmでした。二次評価より低くなりました。ACGIHや許容濃度委員会では経皮吸収の勧告はありませんから、この場合はばく露だけで評価すればよく、ばく露はリスクが低かったので、リスクは低いとして初期リスク評価で完了です。先ほどと違ってこの物質については神経毒性がありますので、リスクアセスメントを実施し、その結果に基づいた低減措置を講ずることが必要ですよというかたちの勧告になっております。
 
(スライド69)
 最後にメチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネートにつきましても、二次評価も0.005 ppmで低いです。それに比べまして実際の最大ばく露濃度は0.0014 ppmです。個人ばく露濃度の0.00023ppmに比べて区間推定上限限界値は0.004 ppmですので、最大ばく露濃度は0.0014ppmになり、二次評価に比べまして低いです。当然ばく露としては低いというかたちになります。ただしその場合経皮吸収があるかどうかを見て経皮吸収の勧告がありませんからばく露だけの評価というかたちになりましてリスクは低いということですので、初期リスク評価で終了というかたちになります。
 
(スライド74)
 実際に12人のデータで一番高かったところはここの0.00023ppmで、こういうかたちで少しずつ下がっていきますよというかたちになります。
 
(スライド75)
このようなかたちで最終的なまとめになりますと、最大ばく露濃度が0.0014ppm、それに比べて0.005ppmが二次評価値で当然最大ばく露濃度が下回っています。先ほどからお話ししていますように経皮吸収の勧告はありませんからばく露だけでよい、リスクが低いということですが、ここについては皮膚感作性があります。ここの用語は物質によって違っていまして反復毒性などいろいろありますのでここで見ていただければよいと思います。リスクアセスメントを行ってその結果に基づく低減措置を講ずる必要があるということになります。
 
(スライド76)
 最後になりますが、ここが先ほどお話ししました平成31年度の「企画検討会」の中で今年はどういう物質についてリスク評価しましょうということを9月に検討しました。このリスク評価対象物質に選定された対象物質に対して今年の1月から12月までの間に年間500Kg以上の製造・取り扱いがある事業場につては、例外なく有害物ばく露作業報告書の報告が必要です。報告は、来年の1月から3月のあいだに報告書を出すことが義務付けられていますということで、皆さん方こういう物質を扱っていたら扱っている量に応じて報告が義務付けられていますので、ぜひ注意して見ていただければと思います。先ほどお話ししましたように選ばれているのは発がん性物質、生殖毒性、神経毒性といったものから選定されています。
 本年度の初期リスク評価では、9物質の中では1物質だけが詳細にいきまして、あとは初期リスク評価の中でとどめるものと終わってしまうものがあるよというかたちでございます。以上が報告です。
 ありがとうございました。
(司会)
○司会者(前北) 名古屋先生どうもありがとうございました。
続きまして2つ目の基調講演として「個人サンプラーを用いた作業環境測定」につきまして、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課環境改善室、西田室長、どうぞよろしくお願いいたします。
基調講演2「個人サンプラーを用いた作業環境測定」(厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課環境改善室長 西田和史)
 ご紹介いただきました厚生労働省環境改善室長の西田と申します。よろしくお願いいたします。
 
(スライド1)
 本日は作業環境測定に個人サンプラーによる方法を導入することの基本的な考え方について行政検討会報告がまとまったということでこの機会にお話しさせていただきます。
 個人サンプラーといいますと個人ばく露評価の道具という見方が一般的ではあるのですが、あくまでも作業環境測定のツールとしての考え方ということで検討会の報告書から、検討会の背景と経緯、内容の概略、今後の計画の順にお話ししたいと思います。
 
(スライド2)
 まず検討会についてですが、この目的はここにありますとおり、作業環境測定はいま場の測定、A・Bという定点の測定で行われているわけですが、気中への発散の変動が大きいときや作業者の移動が大きく場の測定のデザインが困難なときなどには適切な作業環境の評価につながらない場合もいろいろ出てくるだろうと。そういうときにできるだけ合理的な方法ということで、個人サンプラーを用いた方法というのもコンセンサスも得られつつあることを踏まえ、検討を行ったということでございます。
 委員の方々は測定関係に詳しい有識者の方々、あるいは測定現場に通じている方あるいは企業、労使関係者ということでございます。
 検討につきましては一昨年10月より約1年かけて検討を行ってまいりました。
 
(スライド3)
 作業環境測定の制度についてということですが、本日は事業場の安全衛生管理者の方が多いということではございますが、振り返ってみますと昭和47年に安全衛生法ができたあと、昭和50年に作業環境測定法が施行されまして、有資格者による作業環境測定が制度化され、測定基準も定まり、大きな動きとしては昭和54年に「作業場における気中濃度の規制の在り方についての検討会」ということで、このときにA・B両測定の結果を踏まえて作業環境を評価すべきという、このときに個人サンプラーによる測定ということも検討されたわけでございますが、A測定を補う意味でB測定という濃度の高くなるところをやるといったような検討がされ、当時の技術的な観点、日本の職場慣行から安衛法の措置がこのように検討会の方向が出され、さらに昭和63年1988年に現在の評価基準が告示化され、管理濃度も規定化されたということで、30年たっているわけでございますが、今回の内容の検討は30年ぶりのある意味画期的な見直しにつながるものではないかと考えております。
 
(スライド4)
 それでは検討の経緯でございますが、その後88年に評価基準ができたあと、多少時代が下りますが、2010年、平成22年に「職場における化学物質の今後のあり方に関する検討会」、こちらは先ほどの名古屋先生に座長を務めていただいたわけでございますが、リスクベースに基づく合理的な化学物質管理の推進の一環として個人サンプラーによる測定の導入に向けた検討がされました。A・B測定で的確な評価が困難な業務を中心に個人サンプラーによる作業環境測定の導入に向けた検討をする必要があると提言されたところでございます。
 この提言を受けましてその後の動きとして「第12次労働災害防止計画」において、リスクに基づく合理的な化学物質管理の一環として、個人サンプラーによる測定の導入を検討するとされたところでございます。その間、各種委託事業、実証的な検証事業であるとか、作業環境実態把握業務等が行われ、各種技術的な検討も行われたところでございます。言ってみますと個人サンプラーによる測定とA・B測定による相関関係や、どういうふうに使えるだろうかといったところなども受けて個人サンプラーを活用した先ほどの検討会が立ち上がったというところでございます。
 その後、昨年4月よりスタートしました「第13次防」においての化学物質対策として、リスクアセスメントの結果を踏まえた作業等の改善。ここに書いてございませんが、化学物質のリスクアセスメントの義務化が平成28年2016年に行われております。そうした動きもあり、リスクアセスメントの結果に基づく作業環境の支援策も充実させていく必要があるだろうと。さらにその項目の1つとして作業環境測定の実施方法に個人サンプラーによる測定方法を追加し、測定・評価方法を選択できるようにするということで、政府の中期計画の中にも打ち出されたというところがあり、今回の検討会の報告はこの流れの中にあるものとご理解いただければと思います。
 
(スライド5)
 続きまして大きな2点目、検討会報告書の概要について説明いたします。先ほど名古屋先生の方からもありました化学物質管理ではこういったピラミッドがよくあるわけでございますが、この中で作業環境測定というのはここの規制対象の部分です。あとリスクアセスメントの義務の部分がありますということで、1つ着目しましたのはリスクの見積りの方法としては実測が望ましいとして、その中で個人サンプラーを用いた個人ばく露測定を掲げております。個人サンプラー測定を法定で義務付けると、一括して実施できる。例えば屋内と屋外では、屋外は法定ではありません。あとは手持ち式グラインダー、移動式グラインダーとか法定・法定外のものがございまして、そういったものを一括して推進することができるということで、それが労働者の健康確保に資するということで、将来的にはA・B測定と同様に法令で作業環境測定が義務付けられた広範な作業場に測定を導入することが望ましいと提言されたところでございます。
 こちらはA・B測定のイメージで、こちらは個人ばく露測定のイメージでございますが、後ほどまた違いを説明したいと思います。
 個人サンプラーによる測定のイメージとしては、同一行動をとる作業者が動き回る空間、基本的に8時間測定になりますが、この空間を単位作業場というか作業場と見て管理していこうという考え方でございます。当然この中には屋外や事務室がございますが、そういったところは除かれますということです。これはリスクアセスメントなどの個人ばく露評価ですとこのあたりも入ってくるということで若干違いはございます。さらに短時間測定のいわゆるB測定のところが高濃度発散源になると。これはここだけを見るというかたちで評価していこうという考え方でございます。
 
(スライド6)
 そこで、実はこれは全面導入せずに先行導入ということで部分的な導入を検討しております。その大きな理由としましては、個人サンプラーによる測定はある意味作業環境測定としては初めてになるわけでございますが、個人サンプラーを個人ばく露評価として用いた経験のある方は4割くらいいらっしゃるのですが、これを作業環境測定としてどのように事前調査してデザインするかといったようなあたりはこれからきちんと教育なり追加講習が必要であるということで、一定の期間を設けて測定を実施できる測定士の養成を推進する必要があるということから、一応大きく2つの作業について先行導入作業として挙げたところでございます。過小評価、過大評価いろいろあるわけでございますが、1つは溶接や吹き付け塗装、特化物を扱う溶接など。もう1つはベリリウムなどの低濃度の物質。作業者の動きによって評価結果がけっこう変動しやすいようなものということの導入を考えております。今後のスケジュールについてはまた後ほど説明いたします。
 測定士が現在3万人強いらっしゃいますので、この方々がいずれ個人サンプラーによる測定もできるようなかたちで基盤整備を進めていかなければならないと考えております。
 
(スライド7)
 続きまして報告書の中味に入ってまいります。この中で一番大事なところは7ページ(4)がポイントになります。「技術の進展を踏まえ、作業環境測定の方法に、労働者の呼吸域の空気を正確に測定可能」、ここが1つポイントです。もう1つは「かつ、8時間を通して作業場の測定・評価が可能な個人サンプラーによる測定方法を導入することは、リスクアセスメント及び作業環境測定を一括して実施することを促進」ということで、健康の確保に資するということです。ここがこの報告書のポイントになるところです。
 それと、これも検討会の中でいろいろ議論があり注釈を加えるべきだということで、「個人サンプラーによる測定」と「作業環境測定」及び「個人ばく露測定」との関係、言葉がわかりにくいということで、個人サンプラーは空気を測定する機器であり、この測定の目的が気中濃度の把握であれば作業環境測定、個人ばく露濃度の把握であれば個人ばく露測定であると。さらに得られるデータはどちらも基本的に同じで、基本的に同じと言いますのは、作業環境測定は法定義務のところを対象にするということでの管理が必要になってくるわけで、そういう意味で基本的に同じで、違いはそれぞれのデータの用途、評価の対象が異なるということでございます。同時に作業環境測定と個人ばく露測定を行うことも可能で、言ってみますと個人サンプラーによる測定をやれば両方同時にできることになるわけでございます。どちらも作業環境の改善に活用されるということでございます。
 
(スライド9)
 こちらは先ほどの概要にあったところです。溶接作業等は、現在粉じん則で規制されているわけでございますが、溶接材料にマンガンとかコバルトなどの特化物が含まれる場合は管理の対象になります。低い濃度については、0.05mg/m3以下の物質ということで考えております。
 
(スライド10)
 続きまして作業環境測定の方法。各論になってきますが、大事なことはあくまでも国がどっちにしろと決めるわけではなく事業者に決めていただくわけですが、作業環境測定士の意見を踏まえてということで、作業環境測定士が大きな役割を果たします。測定士は産業医を含む衛生委員会の測定結果の評価に基づき、どちらが作業場の実態に合った適切な方法かということを見て、当然どちらも一長一短あるわけでございますが、そこを選択するというのが1つの考え方です。
 2つ目としては大きくA・B測定と違うのは測定作業場の範囲と作業者グループという、個人ばく露評価ではSEGを使いますけれども、それの選定をどうするかといったところです。作業者グループの移動範囲の測定の対象、先ほど申し上げました複数の作業場所ということになってきます。A・B測定より若干複雑になっていますのは作業場所・行動・内容・時間等の記録が必要になってきて、測定結果及び評価に影響を与えないようにする。要は法定外の場所であるとか妨害物質といったところの注意が必要になってくるということです。
 グループの選定のところは、基本的に全員ではあるのですがあくまでも同一の作業に従事する人ということになりますので、日本ではけっこうこれは多いというよりむしろ少ない場合にどうするかということが問題になりました。1人だったら1人だけでよいのか、統計処理をする関係上1人ではまずいだろうということで複数日やるとか、いずれにしてもそこは別途検討が必要だとされたところでございます。
 今回の報告書は技術的なところは先送りというと変ですけれども、来年度以降検証を実施するとかいうようなところがけっこう多ございます。そこは後ほど説明いたしますが基盤整備事業として今後詰めていくということを考えております。
 
(スライド11)
 11ページにいきまして、8時間測定を基本とします。ここでよく出る質問は測定士が8時間ずっといなければならないのかということでございますが決してそうではなくて、最初のところはいなければいけませんが、技術的な問題がなければ担当者でも可と。さらに担当者についてもずっと張りつかなければならないのかということは、装着状況、ビデオカメラによる動画で確認できればよいということで、ある意味で事業場の担当者と測定士のあいだの信頼関係も含めて、そこは決められるようしておくということでございます。
 あとはここにありますように事務作業や屋外といったところの妨害物質や法定外の影響を受けないようにすることも必要だと。データロガーを取るとかいろいろ時間を確認する方法もあろうかと思います。
 あとは短縮できるケースとして繰り返し作業。これは基本的に原則4時間以上、少なくとも2時間以上。これは産業衛生学会のガイドラインにも出ておりますので、1時間ではなかなか、濃度の変動もあり短いのではないかということでこういう縛りをかけています。さらに発散源に近接する作業場所、いわゆるB測定に相当するものは15分間の短時間測定を行うとしております。ただ、個人サンプラーはサンプラーも小さいですが長時間にわたるということで、破過とか検出下限とかいろいろな問題があり、そこは物質ごとの検証が必要なのではないかということにしております。
 
(スライド12)
 続いて評価基準の検討でございます。こちらは基本的にA・B測定の現行の管理濃度を基本としてやる。ばく露評価ですと許容濃度などがありますけれども、基本的に場の改善ということで管理濃度を基本とし、ただ、こちらも評価値への具体的な換算方法がA・Bと同じでよいのかどうかとか、サンプル数とか日間変動などは別途検討が必要というふうにしております。
管理区分の決め方というのが、A・B測定ですとここの単位作業場は一致するわけですが、個人サンプラーの場合ですと複数作業場を8時間でいくと。高いところはB作業場だけということで、こういうふうに8時間測定でやりますと第1管理区分だけどBだけは第3管理区分になった場合、AとCは第1管理区分でよいのですが、Bはこれを改善しなければならないと、そういった流れになり、要は短時間と8時間が一致しない場合もあるということから、いわゆるマトリックス的なものではなく分けて見ると。また同じ場合は現行のA・B測定と同様に評価すると。「なお」とあるところは短時間測定の対象はよくばく露測定でもいわれるのですが、1人当たりのばく露は小さいけれどもけっこう濃度が高い場合、そこは場の改善としてはやはり複数の作業者が交代して連続して行う場合は合算するというようなことも必要だろうというような検討がなされました。
 
(スライド13)
 続きまして人材養成の話になってまいりますが、個人サンプラーは基本的に測定士が行います。新たな資格を設けることは特に考えておりません。測定士の資格を持っていれば、いわゆる分析とか採取も一部そうですがいまの測定士でも十分できるであろうということで、難しいのは事前調査とか選び方、デザイン、このあたりは追加的な講習が必要であろうということで、一応検討会においては実際されている方が受講可能な範囲で、3日間くらいで測定士を対象としているところです。
 
(スライド14)
一応第1種と書いてありますが第2種の方もこれで、実際に現場で経験を積まれている方はできるのではないかと思います。ただ、第1種の方は簡易分析しかできないというところで差が出てくるわけでございますが、特に測定の選択の基準であるとかデザインのあたりを少し多めにして追加講習をやっていくというようなことを考えております。
 
(スライド15)
 その他のところの基盤整備業ですが、こちらも次年度以降やっていく必要があると。さらにいろいろ指導・助言できる人材の充実が必要。基本的に個人サンプラーというのは事業場によって状況も違うということで考えなければならない要素が出てきます。ということでの専門人材の養成も望まれるのではないかと。アメリカなどですとハイジニストといったような人材も活用されていますけれども、そういったところ。さらにその他としてここは大きな話ですけれども、設備作業の改善の、健康障害防止措置のあり方については別途行政検討会。こちらは非常に大きな話になってきますので、ここではいったんこういったところにとどめておくと。
 
(スライド13)
 あともう1つB測定です。これは現行でも個人サンプラーを作業者に装着して可能ということも書いてございます。
 スケジュールでございますが、ここに示したとおり報告書が出て19年、まずは基盤整備の事業を進めます。テキスト作成であるとか講師養成研修の実施です。合わせて関係省令等告示とか作業環境測定省令の改正作業を行い、先行導入作業について測定士養成は2020年スタートし、平成21年度からのスタート、施行ということを考え、さらに検討会を開催し全面導入の可否を検討。要は改めて調査検討し、再度検討するというようなことを考えております。
 
(スライド15)
 来年度の基盤整備事業ということでございますが、具体的な測定方法、評価方法に関する検討ですね。選定数とか選定方法、評価方法。先ほどA・B測定と個人サンプラーは選択するということで、選択の目安になる考え方も整理すると、測定結果の評価方法をどうするか。さらに破過試験や妨害物質とか下限値などといったことの検証事項を洗い出すと。さらに測定を行う者の養成に関する検討。1つヘッドとして検討会の実施をするということが1つ。
 
(スライド16)
続いて先行導入作業に係る測定方法の検証、さらに追加的講習を行う。まず講師が必要になってきますので講師の養成を行っていくと。5年以上の実務経験を要する測定士であって、個人ばく露測定についてはある程度経験されている方が相当数いらっしゃるということでございますので、そういった方を中心に、講師で教える方はこの検討会の先生等も含めて考えているところでございます。
 以上、駆け足になりましたが私からの個人サンプラーを用いた作業環境測定についての説明を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
(司会)
○司会者(前北) 西田室長、ご講演どうもありがとうございました。
それでは、最後に、3つ目の基調講演でございますが、「化学物質を安全に取り扱うためのラベル・SDS・リスクアセスメント制度について」、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課、化学物質国際動向分析官の吉澤様、どうぞよろしくお願いいたします。
基調講演3「化学物質を安全に取り扱うためのラベル・SDS・リスクアセスメント制度について」(厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課 化学物質国際動向分析官 吉澤保法)
(スライド1)
○吉澤 ただ今ご紹介にあずかりました、化学物質対策課、化学物質国際動向分析官の吉澤でございます。私からは化学物質を安全に取り扱うためのラベル・SDS・リスクアセスメント制度についてご説明したいと思います。
 
(スライド2)
最初に、化学物質の労働災害、これは休業4日以上のデータをまとめたものでございますが、最近でいえば年間400~500件起こっているわけでございますが、そのうち化学物質による爆発火災災害、いわゆる危険性によるものが4割、中毒等の有害性によるものが6割でございます。
 
(スライド3)
当方では化学物質に関する化学物質管理としてこの三角形を常用しておりまして、先ほどの評価室でも同じようなものを使っていたかと思いますけれども、全体で化学物質は7万物質あるうちの現在673物質がラベル・SDS・リスクアセスメントの義務がかかっているところでございます。そのうち健康診断等の特別規制がかかっているものが122物質というわけでございます。
 
(スライド4-5)
こちらはごく最近追加した10物質でございますが、昨年12月に厚生労働省のホームページに掲示しておりますのでご参照いただければと思います。
 
(スライド6-8)

リスクアセスメント等の制度につきましてはこのような流れになっております。末端で言いますと化学物質を使っているユーザーにリスクアセスメントの実施義務がかかっているわけでございますが、そのリスクアセスメントを行うためには化学物質の危険有害性情報が分かっていなければならないということで、最初からラベル表示、SDSの交付をずっと続けてユーザーまで届ける、これが化学物質に関する情報伝達の制度になっております。例えば製造メーカーであればラベル・SDSの作成、輸入業者であれば入手したラベル・SDSの和訳が必要になるわけでございます。ただ、海外から輸入した場合はそれが日本のJIS規格に準拠しているかどうか、当然海外から輸入したものには日本の法令が記述されていませんので、SDSに適用法令の補足が必要になります。もし化学品をそのまま何の加工も加えずに流すのであれば、ここのところはほとんど変わらないわけですが、ただ表示者、通知者が変わりますので、ここは修正もしくは追記が必要になるわけでございます。
また、製造メーカー、ユーザーはリスクアセスメントを実施する必要があるわけですが、輸入業者あるいは中間業者でリスクアセスメントが必要になる場合がございます。それがここにありますとおり、小分け・詰め替え・希釈など、輸入業者や中間業者でも実際に化学物質を取り扱う場合がございます。その場合には、取り扱いに係るリスクアセスメントが必要になるわけでございます。
この資料は前々から使っているものでございますので皆さんよくおわかりかと思いますが、リスクアセスメントはまず情報を収集し、作業実態と合わせてリスクを見積り、見積もったリスクに合わせたリスク低減措置を考える。これがリスクアセスメントでございます。そのあとはリスク低減措置を実施する。さらにそれらを含めた結果について労働者に伝える、これが一連の流れでございます。
この資料は簡単でございます。最初に得る情報としてラベルに絵表示がついていますということでございます。
 
(スライド9)
厚生労働省ではキャンペーンとしてラベルをまず見ましょう、ラベルで危険有害性があればSDS(安全データシート)からリスクアセスメントをしましょうというキャンペーンをしているところでございます。ラベル教育用にモデルテキストも厚生労働省ホームページに掲載しておりますのでご活用ください。
 
(スライド10)
ここからリスクアセスメントの話に戻りますが、リスクアセスメントはリスクを見積もるわけでございますが、リスクの見積もりには危険性の重篤度とそれの頻度を勘案してリスクの程度を見積もる、あるいはその化学物質の有害性の程度と、それをどれだけばく露するかというばく露量からリスクを見積もる、この2種類を厚生労働省の指針で示しているところでございます。
 
(スライド11)
これは実測法と言いまして、リスクの見積り方法としてばく露限界値という、化学物質にどこまでばく露したら危険かというものをばく露限界値というわけでございますが、そのばく露限界値よりも実測値が上か下かでリスクを見積もるというものでございます。実測法としては作業環境測定が一部の物質について義務付けておりますので、ごく一般的な手法ですが、それ以外にも検知管やリアルタイムモニタを用いた簡易測定あるいは個人ばく露測定などがございます。一方、実測法によらないものとしてコントロール・バンディング、ECETOC-TRA、あるいはCREATE-SIMPLEなどがございます。
スライド12、13は単なるデータなので飛ばします。
 
(スライド14)
リスクアセスメントについてはだいたい半分くらいが実施しているわけでございますが、残り半分の実施していない方々の理由としては、人材がいない、あるいは方法がわからない、これが非常に大きいわけでございます。
 
 
 
(スライド15)
そこで厚生労働省ではモデルラベル、モデルSDSを公開して情報提供をする、あるいはリスクアセスメントの簡易ツールを開発し、それをホームページ上で公開することによってリスクの見積もりを支援する。さらに相談窓口あるいは専門家による訪問指導も行っております。さらに労働者の底上げを図るための教育テキストも公開しているところでございます。
 
(スライド16)
モデルラベル・モデルSDSというのは「職場のあんぜんサイト」というところで公開しておりますが、ここに「モデルラベル・モデルSDS情報」というところがありまして、ここをクリックすると検索画面が出てきます。この検索画面から個々の化学物質に関する危険有害性が出てきます。これはほとんどが純物質をモデル化したものでございますので、混合物の場合には複数の化学物質の危険有害性を勘案する必要がございます。また、ここに本来であればリスクアセスメント実施支援という欄があるのですが、これがいまモデルラベル・モデルSDSの画面なので消えています。トップ画面からですとここに「リスクアセスメント実施支援」という欄が出てきます。
 
(スライド17)
スライド17は厚生労働省ホームページで公開しているラベルSDS制度に関するパンフレットでございますが、飛ばします。
 
(スライド18)
ツールでございますが、現在厚生労働省のホームページ、「職場のあんぜんサイト」などで公開しているものがこれだけございまして、そのうち一番新しいものが「CREATE-SIMPLE」でございます。残りの時間これについて説明したいと思います。
 
(スライド19)
CREATE-SIMPLEは、従来厚生労働省で普及・啓発を図っておりましたコントロール・バンディングよりかなり詳しく評価できるものになっております。コントロール・バンディングというのはもともとILO(国際労働機関)が開発途上国の中小企業向けに作ったもので、非常に簡単なものになっております。ただ簡単に評価できる反面、非常に評価が大雑把で安全側に偏っているところがあって、事業主からはもっと正確に測れるツールが欲しいというような声があったわけでございます。そこで、CREATE-SIMPLEではかなり入力項目を増やしまして、具体的にいうとリスクを評価するための作業条件、頻度なども加えたところでございます。またどちらかといえば少量しか使わないような方向けのものにしております。
 
(スライド20)
これが最初の初期画面でございますが、ここに本来は物質名を入れるのですが、物質一覧から選ぶこともできます。ただこの物質一覧には全ての物質が入っているわけではございませんので、一部の物質についてここから選ぶことが可能になっております。
 
(スライド21)
物質一覧から選びますと、危険有害性が自動入力されるようになっております。自動入力した場合にはここに出てくるわけでございますが、物質一覧に該当する物質がない、あるいは自動入力結果について何か違うというようなことがある場合には、ここに直接選択入力することが可能になっております。ばく露限界値とGHS分類情報でございますけれども、現在これが非表示の状態ですけれども、ここの表示ボタンを押すとここに展開しまして危険有害性の一覧が出てきます。ここを変えることができます。
 
(スライド22)
次に、物質に関する情報として沸点、取扱量、含有率などを入力するようになっております。ここを自動入力した場合は、沸点は最初から入っていますけれども、その沸点がどうも自分が使っているものと違うということであればここは変えていただくということになります。
 
(スライド23)
次に作業条件を入力するわけでございますが、例えば作業の種類としてはスプレー作業がある、どれだけの面積で作業するかをここに入力し、ここに作業換気条件を入れるわけでございます。
 
(スライド24)
換気条件としてはレベルAからレベルFまでございますが、ここのクエスチョン欄にはこれだけ出てきますけれども、より詳しく説明しますと、換気レベルAというのは「特に換気がない部屋」で、こういうものが換気のない部屋に該当します。例えば「工業的な全体換気」であるとか、あるいは「局排の外付け式」であるとか、一応こういうようなことでございますが、これは少し細かすぎるのでCREATE-SIMPLEのクエスチョン欄ではここまで出てきませんので、参考までにご覧ください。
 
(スライド25)
続きまして作業の管理状況でございますが、例えば作業時間・作業頻度をここで入力できるようになっております。また、作業の際に付ける呼吸用保護具があればここに入力できるようになっております。最初、物質名で固体か液体かを最初に選ぶかたちになっておりましたけれども、もしここで固体を選びますと防じんマスクの入力欄になります。液体であれば防毒マスクの入力欄です。ここの種類は半面型か全面型か、フィットテストについては、「フィットテストをやっています」あるいは「フィットチェックをやっています」あるいは「何もやっていません」というのがここの欄に入るようになっています。ここまで入力して、「リスクを判定」というところをクリックしますと、いままで入力した内容からリスクレベルが判定されます。これは「Ⅲ&S」リスクレベルⅢでS=スキン。つまり皮膚吸収性があるというのがリスクレベルとして出てきます。
 
(スライド26)
ここに実施レポートの出力とありますが、クリックすると実施レポートのシートに移動します。CREATE-SIMPLEは「職場のあんぜんサイト」のホームページからエクセルをダウンロードして使うかたちになっておりますので、それぞれの各コンピュータにエクセルをダウンロードしてそれぞれのパソコン上で使うかたちになっておりますが、そのエクセルの別シートにこの実施レポートがあります。
 
(スライド27)
これが実施レポートでございますが、ここが最初に入力した欄です。この隣に別の欄がございますが、このCREATE-SIMPLEの特徴として入力条件を変えられるというものがございます。物質は固定ですが、その物質についての条件、例えばどれだけの頻度使いますかとか、あるいはどれだけの換気レベルですかとか、そういうような条件を変えられるようになっておりまして、ここで変更入力をした上で再度「リスクを判定」というところをクリックすると、ここに改善後のリスク評価が出てきます。このとおりCREATE-SIMPLEはいったん現状を入力した後でその現状を改善したときにリスクがどうなるかがわかるようになっているというのが特徴でございます。
 
(スライド28)
例えばここでいえばリスクレベルDからリスクレベルEへ、つまり外付け式から囲い式に変えるとリスクレベルが1つ下がって、ⅢからⅡに下がりますよというように、対策後の結果が出てくるところでございます。
 
(スライド29)
これは防毒マスクを付けていない状態からマスクを使った場合にどうなるかということでございますが、この場合半面型の防毒マスクをフィットチェックしながら付けた場合にはリスクレベルがⅡになるということでございます。
 
(スライド30)
これは先ほどの評価結果の下の方に自由記載欄がありまして、ここにさまざまな備考的なものを入力して「保存」をクリックすると、これがリスクアセスメント結果として保存されます。「結果一覧」というのは別シートなのですが、その別シートにいままでの経過が全て転記されるということでございます。
 
(スライド31)
厚生労働省ではそれ以外にもこのラベル・SDS・リスクアセスメント制度を支援するために電話相談窓口というものを作っております。この電話相談窓口では事業者さんから情報を聞き取って、ツールの入力代行することも行っておりますので、いままで使ったことがないという方はこういうようなことも利用されるとよろしいのではないかと思います。 また、実際に現場を見てほしいというようなご希望がございましたらコンサルタントの訪問指導も行っていますので、こういうものもご活用ください。
平成30年度は3月20日まででございますが、平成31年度の手続は終わっていまして、平成31年度は4月1日から再開します。この電話番号は平成31年度以降も変わりませんので、引き続き4月以降もご利用くださいますようお願いいたします。
リスクアセスメントはあくまで各事業者が自主的に行っているものでございますので、どのようなリスクアセスメントをするかは各事業者に任されているわけでございます。我々の方はコントロール・バンディングですとかCREATE-SIMPLEなどの簡易ツールを公開しておりますが、これはどちらかといえば何もない状態でやると大変なので簡易ツールで最初の端緒を作ってくださいということでございますので、もし簡易ツールに対してもっとよい方法がないかという場合には実測法であるとかあるいは直接専門家を入れて専門家の指導の下、その事業場に合ったオーダーメードのリスクアセスメントをしていただくなどといった方法もございますので、各事業者の体制ですとか作業実態に合ったリスクアセスメントをしていただければと思います。
私からの話は以上です。
(休憩)
○司会者(前北) 吉澤様、どうもありがとうございました。
それではただ今から3時15分まで休憩とさせていただきたいと思います。
その際に最初にお話しさせていただきましたとおり、ピンクのアンケート用紙をご記入いただけましたらと存じます。ピンクのアンケート用紙につきましてはこの時計で3時10分くらいを目安に回収させていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
意見交換(【コーディネータ】東京理科大学薬学部 教授 堀口逸子)
○司会者(前北) それではお時間となりましたので、後半の意見交換会を始めさせていただきます。
 コーディネータは東京理科大学薬学部教授の堀口逸子先生にお願いしております。よろしくお願いいたします。また、パネリストには基調講演を行っていただきました早稲田大学名誉教授の名古屋俊士先生。厚生労働省労働基準局安全衛生部、化学物質対策課環境改善室の西田和史室長。厚生労働省労働基準局労働安全部、化学物質対策課化学物質国際動向分析官の吉澤保法様に加えまして厚生労働省労働基準局化学物質対策課、化学物質評価室室長の川名健雄様。厚生労働省労働基準局化学物質対策課、化学物質評価室室長補佐の増岡宗一郎様にご登壇いただいております。
 予定では4時半までとなっておりますので、あらかじめ会場の方からいただきましたピンク色のアンケート用紙に記載のご質問について先生方からご回答いただき、そのあと時間の許すかぎり会場から直接ご質問を受け付けることもできればと考えております。
 それでは、堀口先生、よろしくお願いいたします。
 
○堀口 たくさんのご質問ありがとうございました。
 この意見交換会は、約10年やっています。最初にリスク評価についてお話ししたあとに細かい話をしていっていますけれども、皆さんのお手元に赤と青の紙があると思いますが、お持ちいただいて私の質問に挙げていただきたいと思いますが、この10年間くらいでこの意見交換会に参加したご経験のある方は赤、今日初めてお見えになった方は青ということで挙げていただいてよろしいですか。ありがとうございます。
 続いて、今回同じ内容で東京は2回目なのです。東京、大阪、東京ときていますけれども、最初の東京の同じテーマの意見交換会に参加いただいた方は赤、そうではない方は青を挙げていただいてよろしいでしょうか。わかりました。
 それでは進めていきたいと思います。
 まず名古屋先生が講演された分のご質問からいきたいと思います。
 リスク評価の結果は理解できました。なぜこの物質が選定されたのでしょうか。次年度以降、どのような物質が選定されるのでしょうか。
 
○名古屋 ここに選定されたのは本日報告しています「化学物質のリスク評価検討会」で私たちが選んでいるわけではなくて、リスク評価検討会の上にある化学物質のリスク評価に係わる企画検討会という委員会がありまして、その企画検討会の中で発がん性物質や生殖毒性などでいろいろ選ばれると同時に、SDSではどうなっているのか、事業場での取扱い量などがどうなっているのかということなどを総合的に判断し、先ほどの最後のパワーポイントがありましたけれども、アスファルトから始まって、そういうかたちで選ばれたもので、厚生労働省のホームページをご覧いただければ、企画検討会での検討内容がわかります。そこで各先生方の意見や、こういう物質を検討してくださいというパブリックコメントもきますので、それを合わせて委員会の中でどの物質を選定するか、あまりリスク評価対象物質の数が多くてもそのあとのリスク評価をするのに扱っている事業場が少なかったりしますと扱っている量や有害性の評価とかが困難になることも多々ありますので、いろいろな事をトータルで検討します。ので、リスク評価検討会で選ぶわけではなく企画検討会の中で選ばれています。これで答えになっていますかどうか。
 
○堀口 企画検討会は公開になっており傍聴可能ですのでよろしければ聞きにきていただければ、そのときにどのような候補物質が挙がっているかもご確認いただけると思います。
 次の質問ですが、二次評価値の算出はどのようにするのでしょうか。
 
○名古屋 先ほどのパワーポイントをご覧いただければわかりますが、「有害性評価小検討会」という検討会がありまして、これはお医者さんたちを中心に行われておりますが、先ほどの資料の8枚目をご覧いただくと、一次評価、二次評価というかたちで、有害性評価の検討会の中で委員の先生方が議論しまして、一次評価値は1万人に1人の割合でがんが発生するであろうと推測される濃度、あるいは試験から生殖毒性といったかたちで出てきます。多くの場合二次評価値の方が注目され、この場合はACGIHの値や許容濃度の値を見て、それを使って決めていただけるというかたちです。そこで決まった二次評価値を用いて、ばく露濃度と評価値を比較するというかたちで、リスク評価を行っています。このところは有害性評価小検討会の先生方がきちっと動物実験や疫学調査から出てくる許容濃度やACGIHの値で、最新のデータを使って二次評価値の濃度を決めてくれるというかたちだと思います。
 
○堀口 次です。事業場の数にもよりますが、個人ばく露測定データの測定数が、10程度が多い、もう少し測定数を増やす必要がないだろうか。
 
○名古屋 有害性評価をするために有害物ばく露作業報告書を出してもらいます。そのときには例えば80とか90とか報告書を提出した事業場はいっぱいあるのですが、これは厚生労働省の委託を受けた中災防さんが、全ての報告書の内容を検討して、その中から報告書を提出した事業所にアンケートを出しまして、この物質について事前調査させていただきますかと聞いたときに、「よい」という事業場が多ければよいのですが、良いといわれてのですが実際に事業場に行ってみるとそういうことなら「いや」だということがあって、全て受けてもらえるわけではなく、ほんとどの場合断られることが多いのです。そうした状況から事業場の数は80、90きたとしても、実際に事前調査を行い、さらにばく露濃度測定をさせてくれる事業場は、だいたい3つか4つしかないのが実情です。ただし、事業場の測定の数に関しては、リスク評価のためのガイドラインでが決まっていまして、このくらいの事業場の数があったときには何箇所以上の事業場で測定しなさいと決まっていますので、できるだけその決められた数の事業場を探す最大限の努力をします。例えば10やらないと評価できませんよとなっているときには中災防さんに頑張っていただいて、7つしかこなければ残りのところのところに一生懸命電話をかけたりしてお願いして、10箇所実態調査をしますということで、数が少ないというように思われるかもしれませんが、きちっと決められたルールに乗ってやっていますので、10が少ないというわけではなくて、本来的にはたくさんやりたいのですがなかなか協力していただける事業場がなくて苦労している部分が多いということでご理解いただければと思います。ただし、事業場の数につきましては、一応ガイドラインに決められている数ですので、それを使って評価して結果は十分統計的な根拠のある評価にとなっています。
 
○堀口 今日の資料を見ても事業者さんが特定されることはありませんので、皆さんのご協力を得られないとより正しい値に近づきませんので、ぜひ皆さんご協力よろしくお願いいたします。
 次の質問です。最大ばく露濃度は区間推定を行う。(統計予測)との説明であるが、どの程度の誤差範囲が考慮されているのでしょうか。
 
○名古屋 これもガイドラインでどのように統計処理を行うかがきちんと決められています。先ほど言いましたように事業場から出てきたデータは全ての事業場を測定しているわけではありませんし、提出された報告書から委託を受けた中災防がコントロール・バンディングを行って、全部の報告書の中で一番高い事業場のところから測定していきますよということはになっているので、当然低いところは入ってきていないのですね。そうするとどうしても対象の化学物質を扱っていない事業場のところもデータに入れなければならないし、逆に、報告されていない事業場で報告された事業場より高いばく露の可能性のある事業場もあるのです。そうすると実際に測定したデータだけで判断すると、もしかすると測定はしていないが本当はばく露が高い事業場の結果が漏れてしまうことがあるといけません。そこで、そうした漏れなどがあってはいけないことを考慮して、実際に測定されたばく露濃度の結果の中で一応10データ以上のデータを用いて区間推定上側限界値を求めるという決まりがありまして、ガイドラインに従って統計処理をすることによって、今までのばく露とは違った隠れた部分のデータが出てくるはずで、それを使うことによって隠れたデータで最大値を求めたとしてもそれでもやはりリスクが低ければよいのですが、もし高ければ次に詳細リスクにいったとき隠れたデータを掘り起こすためにどういう作業場へ行ったらよいでしょうかというかたちで進めますので、どうしても統計処理が必要になってきて、それはなぜかというと、全部のデータをするわけではなく隠れたデータを掘り起こして高濃度ばく露のうどの漏れがないようにするために統計処理をしています。この統計処理のしかたはガイドラインに従ってやっています。
○堀口 確認があります。ジフェニルアミンのばく露評価結果の最大ばく露濃度は0.10 mg/m3なのか、0.11 mg/m3なのか、という確認です。
 
○名古屋 パワーポイントには最大ばく露は0.10と書かれていますが、これは実際のばく露した濃度でして、推定値は0.11です。31ページに書いてありますが、個人ばく露のデータの最大値は0.10で、データの区間推定値を求めると0.11というかたちで、最大ばく露値は0.11を使っています。
 
○堀口 ジフェニルアミンのスポット測定の最大値に「-」が示されているのはなぜでしょう。正しく測定値を記入すべきではないでしょうか。0.0であれば0.0とすべきではないでしょうか。
 
○名古屋 多分ここはスポットを測定していないのか、もう1つはガイドラインに従って統計処理をするときに定量下限以下の値については0として扱うという決まりになっていますので、数値が書けない部分もあるということもご理解いただければと思います。この場合は作業環境測定もしていませんので、単位作業は14あったのですが、もしかしたら低かったのかあるいは測定できなかったのか、判定できませ。正確には、手元に資料がないのでわかりません。
 
○堀口 経皮ばく露に関していくつか質問をいただきました。リスク評価に経皮ばく露に関して勧告があれば考慮するとの説明であるが、勧告は海外の専門機関全てを対象としているのでしょうか。考慮すると皆さん今説明していますけれども、その勧告は海外の専門機関の全てを対象としているのか。
 
○川名 経皮勧告につきましてはACとか産衛学会といったところをこれまで対象にして拾っていましたけれども、今年の評価におきましてはそれ以外の外国の機関、ドイツの機関ですとかいったところの有害性情報も精査いたしまして、経皮勧告ありやなしやということで、経皮勧告があれば、経皮についてもばく露調査を行うというようなことで今取り組んでいるところでございます。
 
○堀口 経皮ばく露評価の法令制定はいつごろになりそうですか。
 
○川名 法令制定ということの意味がわかりかねるところがありますが、例えばこれまで特別規則で規制している物質について勧告があるものにつきましては、保護具の使用などをすでに義務付けたりはしております。
 
○堀口 経皮吸収が勧告された物質について、ばく露評価、リスク評価の計画がありましたら教えてください。
 
○川名 経皮ばく露につきましては昨年度の終わりに経皮ばく露の評価の方法について暫定的ではございますが方法を決めた上で、今年のばく露実態調査から取り組んでいるところでございます。今後順次経皮勧告のあるものにつきましては、ばく露実態調査において経皮ばく露の状況についても調査することにしております。その結果を踏まえて、またリスク評価の検討会においてどういうふうに評価していくのかを検討していただく予定にしております。
 
○堀口 今回の報告を含むこれまでの評価結果及び今後の評価結果を見られる専用サイトをご紹介いただきたい。名古屋先生のご報告のようにわかりやすくまとめていますか。
 
○川名 今日のような簡単なパワーポイントにはなかなかまとめきれないところはございます。一番よいサイトはなかなか簡単にはご説明できないのがつらいところではございますが、例えば今ですと厚生労働省の労働政策のところに安全衛生の部分があったかと思います。そこから入っていただきますと「化学物質のリスク評価」とかそういうようなところに入っていけるのではないかと思います。労働基準の中だったか。時間をいただいて、スマホであればどういうルートで入れるか時間内にお伝えしたいと思います。
 
○堀口 実はこの意見交換会の厚生労働省のマークがついた本日配布されている資料ですが、委託事業者さんが委託している期間中は見られるのですが、翌年になるとそれが見られないのです。
 
○川名 リスクコミュニケーションに関する情報につきましては「企画検討会」というページがございまして、そこのところで「意見交換会」というような項目が立っております。「意見交換会」の横に「開催案内」とか「資料」とか「概要」というものがあります。それぞれ「資料」をクリックすればそのときの資料は見ることができます。
 
○堀口 さかのぼって。
 
○川名 はい。
 
○堀口 わかりやすい資料というのは今の答えでよいのでないでしょうか。
 
○川名 お知りになりたいのはそういう会議資料をどこに掲示しているかということだと理解しました。
 
○堀口 2パターンあるようです。
 というのが1番のリスク評価についての質問でした。
 2番の個人サンプラーにいきます。2番はいろいろご質問があるようです。
 個人サンプラーによる測定を導入することによりリスクアセスメントと作業環境測定を一括して実施することを促進するものであるとうかがいましたが、個人サンプラーによる測定では屋外などの適用除外の作業場の対象物質が測定結果に影響を与える場合に、吸引ポンプを停止すること、となっています。これは法令適用外の場所が評価の対象に入ることを防ぐためとうかがっていますが、このような場合は作業環境測定とリスクアセスメント(個人ばく露測定)を別々に行う必要があると考えるのでしょうか。
 
○西田 たしかにおっしゃるとおり、作業環境測定は法定のところを測りますので、法定外のところに出ればそこは止めるというようなことは必要かと思いますけれども、一方では時間を把握するというやり方もあるのではないかと思います。そうしますと一括して例えば8時間のうち11時から12時まで屋外に出たということであれば、作業環境測定の場合はその部分を抜いたかたちで測定状況を把握するということも可能ではないかという趣旨でございますので、そういう意味で一括してできるという趣旨でございます。
 
○堀口 A・B測定と個人サンプラーによる測定のいずれかを選択するとは、どのような状況(事例)を想定されていますか。
 
○西田 事例ということにつきましては先行導入の作業ですね、1つは吹付け塗装、溶接のように作業者とともに移動するもの、もう1つはベリリウムとか濃度の低いもの、要は定点で測ると作業者の移動によって評価結果(管理区分1、2、3)、これが大きく変動し得るものと、いわゆる過大評価とか過小評価しやすいようなところについて測定士が衛生委員会等の意見を踏まえて事業者に助言する。要は作業環境測定というのは場の改善を目的とするわけですが、それにより、そこに働く人の健康障害防止・健康管理を図るためにどちらが合理的か、より正確に把握しているかというところをもって判断していただくことになりますので、したがいまして、このあたり追加的な講習が必要ということで、資料でも説明しましたとおり、目安となるような考え方というのも引き続き検討が必要と思っているところです。
 
○堀口 従来A・B測定で問題ない作業場で個人サンプラーの結果が悪く出た場合、A・B測定を優先的に選択することは可能でしょうか。
 
○西田 個人サンプラーの測定で作業環境測定をやって第3管理区分になった、従来のA・Bでは第1管理区分だったということですね。その場合、事業者が個人サンプラーを作業環境測定に選択されて管理区分が悪くなったということであれば、そこは実際そこの作業場が悪いというような判断により改善していただくということになりますので、それは選択した方法による結果を採用することとなります。当然逆の場合もございますので、ただ管理区分がよく出た方を選択するということではなく、そこの作業者のばく露というか健康障害防止の観点からどちらの方が場の改善として適切かということで選んでいただくということになります。
 
○堀口 位置付けとしては、「作業環境測定≒場」としてとらえればよいのでしょうか、従来と変わらず。「ばく露測定≒個人」の位置付けでよいのでしょうか」。
 
○西田 おっしゃるとおりです。作業環境測定というのは法律にも定義付けられております、作業環境の実態を把握するために空気環境その他の作業環境について行うデザイン、サンプリング分析ということで、「屋内作業場その他の作業場で政令に定めるところにより必要な作業環境測定を行う」として、空気環境その他の作業環境改善ということですので、場の改善に使うものです、一方で、個人ばく露測定というのはそこに働いている作業者のばく露濃度がどの程度あり、それを下げるためにどうしたらよいかという目的で使います。
 今回ポイントとして申し上げましたのは個人サンプラーによる測定というのは基本的に両方に活用できますということです。このあたりはパワーポイントの資料の7ページの注書きに書いてあります。「「個人サンプラーによる測定」及び「作業環境測定」及び「個人ばく露測定」」との関係ということで。手段としては共通ですが目的が異なるということでございます。
 
○堀口 現行のB測定で個人サンプラーを使用する場合は10分間サンプリングしている。今回短時間測定は15分間となっている。ともに管理濃度を比較する。今後サンプリング時間を統一することは考えているのでしょうか。
 
○西田 一応個人サンプラーについては装着などいろいろなこともあり、そこは15分ということで考えております。
 
○堀口 資料図5のような場所の場合、現行のB測定では作業者が数分で立ち去っても発散源の近くで10分間測定を行っている。個人サンプラーの場合だと作業者とともに移動するのだが、考え方を変えていった方がよいのでしょうか。
 
○西田 基本的に個人サンプラーは作業者に付きますのでそれに伴って移動するということで、おそらく5分で立ち去ってしまう、一方測定時間が15分だからその場合考え方を変えたらどうかというところなのかと思われます。
 そこについては短時間測定なりB測定の趣旨というのが、最も高い濃度がどれくらい出ているのかというところを見るということですから、そういう意味では同じかと思います。ただ評価方法でしょうか、5分で立ち去る15分測定、そこをどういうふうにするかというあたりにつきましてはまた評価方法は別途検討が必要なのではないかと思っております。
 
○堀口 A測定の測定時間は短すぎても長すぎても適当ではなく、日内変動を加味した計算で評価を行っています。8時間測定した場合も同じ計算式で評価を行うのでしょうか。
 
○西田 そこも報告書にありますが、測定結果の評価方法として、どのように計算するかということについては、この検討会の報告では別途検討するとしています。ただ、統計的な処理の方法というのは場の改善ということで使いますので、同じようなやり方でやっていくと思っております。
 
○堀口 8時間の作業で1時間だけ濃度の高い作業場で作業する場合、どのように計算するのか。
 
○西田 要は8時間で1時間だけ上がるということになろうかと思います。これが入れ代わり立ち代わりではなく、ある1点だけ上がるということになりますと、当然天井値とかSTEL(Short term exposure level)とか、そこは考慮しなければいけませんが、そういったものがないものであるということであれば、8時間で実際そういう作業をしてあと短時間測定でどういうふうに出るかといったところを評価して先ほどの資料12ページにあります方法で、要は悪い方向で評価するというようなかたちになろうかと思います。8時間測定と短時間測定の評価が異なる場合には悪い管理区分で当該作業場を評価するということになります。
 
○堀口 1日3交代勤務の方の測定はどのようにするのですか。
 
○西田 そこも、12ページ(ウ)のところになろうかと思います。短時間測定の対象となるばく露の高い作業を複数の作業者で交代していくということですね。3交代ですから24時間になりますかね。ただ、同じような考え方になろうかと思います。連続して行う場合は各人の測定結果を合算するというようなところになります。いずれにしましてもいろいろなケースが出てくるかと思いますが、そのあたりを含めてサンプル数や日間変動などをいろいろ考慮して、換算法については別途検討することになろうかと思います。
 
○堀口 複数の作業者で測定し個人差が出た場合最も高い結果が採用されるのでしょうか。
 
○西田 そこについても基本的に今対数正規分布などいろいろありますけれども、そういう評価のための換算方法については、基本的に今のA・B測定と同様にするわけでございますが、サンプル数が少ない場合にどのようにするかということについては別途検討が必要だと思っております。
 
○堀口 個人ばく露測定結果で、瞬時で極めて高濃度結果となった場合、健康被害との関係が疑われる可能性が高くなりますが、8時間平均のみでもよいのでしょうか。
 
○西田 それはよくないですね。それも先ほどの繰り返しになりますが、8時間測定と短時間測定の評価が異なる場合は悪い管理区分で、これは今のA・B測定も同じ考え方になろうかと思います。その上で、短時間ばく露限界値とか天井値とか、そこは考慮しなければならないのではないかと思っております。
 
○堀口 作業者グループ全員を測定すると、単位作業場が複数ある事業場だと測定機が大量に必要となってしまうと思うのですが、そうなると機器をそろえる分析機関の負担が大きくなるのではないでしょうか。現状それに対する対策は考えがありますか。
 
○西田 今おっしゃるのは同一作業者グループがすごく多い場合にはそうなるかもしれませんが、もう1つのお話の複数作業場にわたる場合、逆にA・Bですとそれぞれの物理的な作業空間に置かなければならないわけですが、これが、作業者グループがある程度特定できればかえってA・Bより複数作業場を測定する個数よりも減るのではないかということも考えられます。むしろ検討会で出ていますのは、日本の作業場の場合は同一の作業者グループというのは極めて少ない、むしろ1人とか2人とかの場合、それでもよいのかといったようなことが、これも検討が先送りにはなっていますが、そういった場合どういうふうに評価するかということは議論になっております。これまでのいろいろな検討会で、現場で経験されている人の感じからすると、多すぎて大変だという意見はあまり出てこなかったところです。いずれにしても多くなる場合にどうするかというときの1つの目安としては、欧米の方で個人ばく露測定のガイドラインで、そこで同一作業が多い場合はこれくらい下げるとか、そういったことも含めてサンプル数をどうするかということは引き続き検討と考えております。
 
○堀口 個人サンプラー測定のコストはどの程度と考えればよいでしょうか。
 
○西田 コスト計算まではこちらはまだしておりません。当然手数料を考えなければならない、最後はそういうことになってこようかと思いますけれども、要は測定機器をどれくらい付けるかということと、測定時間ですね。あとは測定士がどれくらい張りつくかといったようなところを勘案しなければいけませんので、その中で実際現実的にどれくらいの設定がよいのかということかと思っております。
 
○堀口 作業環境測定士の受験条件はどうなっていますか。
 
○西田 受験資格ということですと、それなりの専門性を持った上で、最低1年以上の作業環境測定の現場の経験が必要ということにはなっています。今の作業環境測定士の受験資格ということになると、大雑把に言いますとそうですが、理工系でなければ2年だとか、高校卒業だと少し長くなるというような条件が、学歴とか専門分野か否かで変わってくると思われます。今回の個人サンプラーができる測定士の要件としては、基本的に作業環境測定士の資格をお持ちの方であれば、追加講習を受講していただくことで、個人サンプラーによる作業環境測定ができるというふうにしたいと思っています。
 
○堀口 今後作業環境測定基準、評価基準の見直し(改正)が行われるとの理解でよろしいでしょうか。
 
○西田 はい。まさにそのとおりでございます。この基盤整備事業で測定方法なり評価方法をきちんと検討し、この事業の中で、測定基準や評価基準の改正に資するため検討会で議論し、さらにいろいろな検証等を行っていくということを予定しています。
 
○堀口 作業環境測定基準、評価基準の原案はいつごろ公表されるのでしょうか。
 
○西田 少なくとも1年間はこの基盤整備事業をやりますので、この1年間は、公表は難しいのではないかと。スケジュールにありますとおり、一応2021年度施行ということを考えておりますので、早ければ2020年度の半ばくらいにはパブコメ等で公表できればなと思っております。
 
○堀口 関連して、個人サンプラーによる測定の具体的な測定方法は平成31年度の基盤整備事業において検証するとのことですが、具体的な測定方法はいつごろ公開される予定になりますでしょうか。
 
○西田 それも先ほどと同じ答えになろうかと思いますので、2020年度半ば、以降と言った方が無難かもしれませんが。
 
○堀口 現時点で個人サンプラーの具体測定法の実例紹介、広報でもしていただけませんか。という。
 
○西田 作業環境測定としてはまだ実績はないのですが、個人ばく露測定としてどういう器具を用いてどういうふうにやっているかといったことについては、これまでの委託事業、中災防とか日測協等に委託した中で公表できるものはあるのではないかと思っていますが、今具体的にこれということでお示しできるものではないのですが。
 
○堀口 ご要望として対象10物質の例示をしてほしいというのと、先行導入の業種(職種)の具体例を提示してほしいということです。
 
○西田 先行導入の低濃度物質については資料9ページに示している、管理濃度0.05mg/m3以下のもので、これが規制対象となる作業環境測定の、大雑把に事業場数でいうと10分の1くらい(特殊健診を実施している事業場数を母集団とする。)が対象になっています。それとあとは作業者とともに移動するもの、吹付け塗装、有機溶剤を使っているものとか、溶接も特化物、マンガンとかコバルトとかを明らかに使っているものは対象になってくるということになります。
 事業の業種については特に問いません。法定のこういったものを取り扱ったり、製造したりしているところでの測定対象の法定義務は今回の個人サンプラーを導入することで変える考えはございませんので、大きく違うところとしては先行導入作業として2種類挙げたといったところが1つ、個人サンプラーの選択の余地ができるところというふうにご理解いただければと思います。
 
○堀口 測定方法の詳細は平成27年くらいに出された日本産業衛生学会技術部会の内容に沿ったものとイメージしてよいでしょうか。
 
○西田 産業衛生学会の個人ばく露測定ガイドラインのことと思われますけれども、それは十分に参考の上、8時間測定であるとか最低でも2時間といった形にしています。ただ、作業環境測定と違いますのは基準として許容濃度を使っているとか、あるいは段階を1ABC、2ABとか6段階の評価をされて、そこはこちらの個人サンプラーの作業環境測定については管理濃度を基準とした上で第1、第2、第3の管理区分でやるというところは違っています。一方で、いわゆる測定対象者の選定であるとかいろいろな測定方法や手段はけっこう参考にはさせていただいています。
 
○堀口 対象人数が少ない場合、対象人数による選定の考え方。測定時間などについて、今後いつごろ具体的に決まるのか知りたいですということです。
 
○西田 これについても次年度の基盤整備事業で検討しますので、少なくとも次年度いっぱいはかかるということで、早ければその検討結果が来年の今くらいに出ているのではないかと思いますが、皆さんご関心いただいていますので、オープンにできるものは早くにオープンにしていきたいと思っています。
 
○堀口 ご要望ですが、A・B測定か個人サンプラー測定かの判断は作業環境測定士が産業医を含む安全衛生委員会などで適切な方法を選択するとのことだが、事業者によって判断が大きく異なることが予想されます。今後Q&Aや運用ガイドラインなどにより、運用の統一性を高めてもらいたいというご要望をいただいております。
 
○西田 適切な方法を選択については、非常に大事なことだと思っていますので、このあたりの目安となる考え方は、次年度の基盤整備の検討会で、1(1)に目安や参考となる事項を整理すると検討すべき項目としても入れていますので、検討するとともに、当然追加講習においてどういう基準で選択するのかということは検討会の中に項目として入れるべきということで、14ページのカリキュラムの案の中に測定の選択の基準の方法ということで入れております。ここでのポイントは当然事業者サイドになるとコストのかからない方法とか手軽な方法というような事業者に対して、測定の目的はそこに働く作業者の健康障害防止のため、場の改善を行うためにいずれの方法が合理的なのかをよく考えられるような目安なり、そこはきちんと示していければと思っています。
 
○堀口 昨年お話しされていたナノレベル粉体に関する測定について、測定機はもう開発されましたかという、名古屋先生。
 
○名古屋 ナノにつきましては、今リスク評価の中で酸化チタンが止まっているのと、それからカーボンにつきましてもナノを扱うことになったのですが基本的に測定は吸引性粉じんを扱いましょうというかたちになりましたので、なぜナノにしないのかというと、ナノのサンプラーを使っていると凝集体が多い中でナノだけ使うと過小評価してしまうので、やはり生体影響を考えたときには吸引性粉じんがよいだろうということと、ナノのサンプラーは、一応作ってあるのですが、メーカーさんがまだ市販に至っていない部分があって、これから多分出てくるのだろうと思います。例えばたばこなどもそうですが、今燃焼型のたばこはデジタル粉じん計で測ると粒子がないから燃焼たばこはよいよと、でもナノで測ると必ず出てきているのです。そういう意味でナノのサンプラーは要るのですけど、技術的は追いついていますけれども値段としてどういうふうに設定するかというかたちのもの。今我々が開発しているのは相対濃度計として開発している部分で、諸外国はみんな粒子として数えていますがやっぱり相対でやる方がよいので、もう少しお待ちいただけるとメーカーさんから出てくるのだと思います。
 
○堀口 それでは個人サンプラーから次のラベル・SDS・リスクアセスメントの方に移りたいと思います。
 リスクアセスメント対象物質として今後追加予定の物質は何物質くらいあるのでしょうか。
 
○吉澤 それはまだ検討しておりませんので何物質ということは言えません。
 
○堀口 「職場のあんぜんサイト」においてSDSなどの更新はどのくらいの頻度で行われているのでしょうか。
 
○吉澤 SDSの更新はおそらくモデルSDSのことかと思いますが、モデルSDSについては現在約3,000物質について公開しております。それについて新しい物質のSDSも新しく作りながら既存物質について、古いものから順番に更新しておりますので、現在非常に古いものも残っております。今現在毎年150物質ずつ検討しているので、仮に全て既存物質を更新したとしても20年くらいかかってしまいます。ただ実際にはやはり事業者からここはすでに変わっていますとか、あるいは使用頻度の多いものについて優先的に更新するといったこともございますので、ものによっては3、4年で更新するものもあれば、作って以来一度も更新していないものもありますし、そこは一応優先順位を決めてやっていますので、一律に何年ごとというふうにはしていないということだけお答えしておきます。モデルSDSはあくまでも事業者が情報を収集するときの参考情報として公開しているものでございますので、モデルSDSのとおりに作らなければならないものでもありませんし、またモデルSDSがないから作らないよという、そういうものでもございませんので、あくまでも参考情報としてお考えいただければよろしいかと思います。
 
○堀口 コントロール・バンディングは安全側に出やすいが、CREATE-SIMPLE法はどうなのでしょう。今現在ベストな方法でしょうか。
 
○吉澤 CREATE-SIMPLEも所詮は簡易ツールです。ですからあいまいなものについては安全側になるように、やはりCREATE-SIMPLEでもなっていますので、もし精緻なリスクアセスメントをする場合には講義中にも言いましたとおり、専門家を入れてオーダーメードのリスクアセスメントをしていただくしかないです。ここは簡易ツールなのでと、割り切って使っていただければと思います。
 
○堀口 現在化学物質リスク簡易評価法を用いてリスク評価を行っていますが、CREATE-SIMPLEは物質の情報などを入力すれば全ての物質について評価できるのでしょうか。
 
○吉澤 これも講義中に述べましたけれども、全ての物質がリストに載っているわけではありませんので、主な物質については出てきますが、皆様方がお使いになっているもので出てこないものもございます。そういう場合にはSDSの危険有害性の情報を手入力で入れていただくかたちになります。これはやはりツールとして全てを網羅するのは物理的にもできませんので、そこはご勘弁願いたいと思うところでございます。
 
○堀口 CREATE-SIMPLEに関して今回いただいた資料ではトルエンのみでしたが、ほかの有害物質(エチルベンゼン・アセトンなど)との混合物の場合でもCREATE-SIMPLEは使用できますか。
 
○吉澤 混合物については簡易ツールですのでそこまでは対応していないということがございます。同じ危険有害性であれば使用量を合算してまとめてしまうことは可能かもしれませんが、ただその場合複数の物質で相互作用を起こした場合はどうなるかとか、そういう問題がありますので、基本的にはそれぞれの物質の状態については事業者側で責任をもってハザードレベルを評価してご入力いただくというかたちになります。
ラベルにしてもSDSにしても本来はその製品についてのラベル・SDSなので、その製品についての危険有害性が表示されている、あるいは通知されているのが望ましいのですが、提供する側はそこまでの知見がない場合がございますので、その場合には成分の危険有害性の情報を載せていただくかたちでもよいということにしております。その場合には先ほど言ったとおり、例えば急性毒性の区分1のものが複数あればその複数のものについての使用量を合算していただくなどして、リスクアセスメントする場合に工夫していただければと思います。
 
○堀口 似た質問ですが、混合物のリスクアセスメントで、CREATE-SIMPLEを代表化学物質で行うのではなく混合物として評価する方法がありますか。
 
○吉澤 残念ながら簡易ツールですのでそこまでは対応していませんので、ご入力いただく際にそこのところを勘案していただくかたちになります。
 
○堀口 CREATE-SIMPLEの評価結果はエクセルのまま保存されますか。コントロール・バンディングのようにPDFにすればリスクアセスメント実施のエビデンスになりますが、エクセルから日付入りのPDFにするのは各ユーザーでやるのでしょうか。
 
○吉澤 CREATE-SIMPLEはエクセルのツールですので、基本的にはエクセル上でのデータになります。ですから改変可能ですので、もし記録として固定されたいのであればエクセルデータをPDFに変換していただいたり、あるいは紙で打ち出したものを保存したりしていただくというかたちで情報を固定するのではないかと思います。
 
○堀口 ご要望ですが、CREATE-SIMPLEほかのリスク評価ツールの使用方法について、セミナーを実施していただきたいと思います。またマニュアルもWebで配布いただけましたら幸いです。
 
○吉澤 今現在「職場のあんぜんサイト」で掲載しているツールについては、ツールとともにマニュアルあるいは説明用資料がある場合は説明用資料も一緒に掲載しておりますので、それを参考にしていただくかたちになります。
セミナーに関して言いますと、厚生労働省の方ではラベル・SDSに関する普及啓発事業、先ほど「ラベルでアクション」などがありましたけれども、それと同時に普及啓発セミナーを行っております。また、ツールの開発は毎年行っておりますが、ツールの開発の際には必ずツールに関する説明会を行っておりますので、そういう普及啓発セミナーあるいはツール説明会といったような機会を利用して勉強していただければと思います。それに関しましては厚生労働省のホームページで告知したり、あるいは我々がそういうセミナーを委託している業者に、経済団体ですとかそういうところへの広報をお願いしておりますので、そういうところからも情報が入手できるのではないかと思います。あとは全国都道府県の労働局にもそういう情報を下ろしていますので、労働局さんの方から情報がいく場合もあるかと思います。
 
○堀口 CREATE-SIMPLEのバージョンアップ版のリリースはいつごろですか。
 
○吉澤 CREATE-SIMPLEは昨年3月に最初に載せまして、今までは使用量が1リットル以上ですとか1キログラム以上ですとか、そういうような少量のものの区分しかありませんでしたけれども、それよりもう少し上の方の数量まで区分を分けて使用量を中程度のものも入力できるようにという改訂をしております。また、皮膚吸収に関してスクリーニング的な大雑把なものについて定性的なものだけれどもレベルがわかるような試みとしての皮膚吸収のリスクアセスメントツールに対応することができるとか、今までのような化学物質の有害性だけでなく化学物質の危険性についても、つまり爆発火災の危険性についても評価できるとか、いろいろなことを今年度試みていますので、年度末の掲載をお待ちいただければと思います。一応平成30年度事業ですので年度末には新しいバージョンのものが掲載されていると思います。
 
○堀口 CREATE-SIMPLEではなく、ほかの支援ツールの18枚目のスライドの一番下に書いてあるEMKG-EXPO-TOOLはどのように使うのですか。
 
○吉澤 こちらはリスク評価検討会で専門家の方からご紹介がありまして、ドイツのツールについても厚生労働省のホームページからリンクできるようにしようということで載せたものでありまして、実はEMKGについては、厚生労働省は一切手を加えていないのです。ただリンクが貼ってあるだけということで、これを使える方は使っていただければと思います。1つ上のECETOC-TRAの方は、ECETOC-TRA自身は欧州のツールで欧州版のものを掲載しているだけですが、こちらについては一応マニュアルを和訳して日本語版のマニュアルがついているということで、ECETOC-TRAの方が若干とっつきやすいではないかと思いますが、EMKGの方は使える方は使っていただければといったところです。
 
○堀口 SDS・ラベル、RA義務物質選定において、DFG:MAKに基づく方針を採用するのはいつごろになりそうですか。
 
○吉澤 今現在義務物質の選定にあたってはACGIH、アメリカの専門家会議のデータですとかあるいは日本産業衛生学会、日本のデータですとかを採用しておりますが、それ以外にも適当なデータがあれば参考にすることにしております。ただ、一律にしているわけではありませんので、採用するというのは、特にそういう方針を決めているわけではありません。今後はそういうことがあるかもしれませんが、今のところはACGIHと産衛学会がメインになります。
 
○堀口 医薬品は安衛法57条の対象外になるとのことですが、主成分が第2種有機溶剤であってもリスクアセスメントなどの対象外というのは使う側にとってそれほど危険な物質ではないと思われてしまうのではないでしょうか。たとえリスクアセスメント対象外であっても毒性や危険性があるということを理解するのはある程度の知識や経験がないと難しいのではないかと感じています。また、医薬品は特別則の対象外となるのでしょうか。
 
○吉澤 まずリスクアセスメントに関して、たしかに義務付けはラベル・SDSの表示通知対象物質がリスクアセスメントの義務対象物質でもありますが、それだけやればよいというわけではなく、労働安全衛生法は法理としてあらゆる危険有害性から労働者を遠ざけるということが根本になっておりまして、労働安全衛生法28条の2において、「危険有害な化学物質を取り扱う場合にはリスクアセスメントをするよう努めなければならない。」努力義務と言いますが、そういう条文がございます。この場合の危険有害性があるものというのは、大臣告示でJIS規格に基づく危険有害性があるもの、すなわちGHS分類で区分がついたものは危険有害性ですよと、そういうものはリスクアセスメントをすることに努めなければならないと決めているところでございます。
ということもありまして、ラベル・SDSに関しては必ずしも義務対象物質だけラベル・SDSをするのではなく、メーカーあるいは輸入業者でそういう危険有害性のあるものについては、すべからくラベルを添付してください、SDSを交付してくださいということをお願いしております。これも努力義務ということになりますが。
ですから、おそらくユーザーの方には義務対象物質だけでなく、義務対象物質でないものについてもラベルが付いていたりSDSが付いていたりする化学品もあるかと思います。そういうものに関しては積極的にリスクアセスメントをするよう努めていただくようお願いしたいと思います。
 
○堀口 一応全部読んだつもりになっています。
 時間がありますので、追加でフロアから私が読み忘れていたり、ご質問したい、またはご意見がある方がもしいらっしゃれば挙手していただけませんでしょうか。所属とお名前は言わなくても大丈夫です。
○A氏 化学物質のリスクアセスメントについて1点お聞きしたいのですが、今化学物質のリスクアセスメント、評価結果の周知は義務になっていますけれども、結果に基づく措置の実施は努力義務になっています。これについては今後もしばらく義務化される予定はないのでしょうか。
 
○吉澤 努力義務というのは決してやらなくてよいというわけではないので、もしリスクアセスメントの結果が悪ければやっていただきたいということはあるのですが、なぜ努力義務かというと、リスクアセスメントは事業者の自主的な取組なので、結果の評価も事業者の方で評価していただく、リスク低減措置を決めていただくというかたちになるのです。義務化してしまったとたん、リスク評価にバイアスがかかってしまうので、義務化しないと言い切ってしまうこともできないのですが、当方としてはリスク評価をきちんとやってください、リスク評価の結果については労働者やあるいは安全衛生委員会などに広く周知してください。その中でリスク評価の結果が悪ければ当然社内で何とかしなければならないというモチベーションになりますので、それで職場が少しずつ改善の方向に向かっていくのではないかということを期待しております。
 そのために、労働安全衛生法101条で、SDSについては労働者に周知しなければならない。また、リスク評価結果について周知することは労働安全衛生規則の方にありますので、とりあえずデータをきちんと伝えていただく、伝えた以上はきちんと結果について責任を持っていただく。これは労働安全衛生法理として広く安全配慮義務というのがありますので、結果が悪いものを放置していれば当然安全配慮義務に抵触してしまうかと思います。リスクレベルが安全側になるように努力していただくと。リスクレベル3であれば2になるように努力していただく、2であれば1になるように努力していただくということです。
 また、労働安全衛生法令では個別規制とは別に一般的な衛生基準というものがあります。これは職場環境が、例えばばく露限界値を超えるような濃度である場合にはばく露を低減することが衛生基準に一般的な規則として義務になっております。これに抵触しますと労働安全衛生法22条でしたか、一般的な労働安全衛生法違反に引っかかってしまいますので、悪いという結果を知っていながら改善しなければ、やはりそれは労働安全衛生法全体から見て違反行為に当たります。
 
○A氏 今、おっしゃられたとおりで、我々も別に努力していないわけではないのです。今評価方法がまだ定まっていないところでなかなか対策をとってもリスクを下げきれないものがあるのです。そういったものについて、我々は少なくとも周知をして保護具は付けなさいよという指導はしているのですが、現在できるのはそこくらいまでということで、これがもし義務化になるとさらに作業場自体、作業自体に踏み込まなくならなくなるのでお聞きした次第です。
 
○吉澤 リスク低減措置については特別規則と違って何をしなさいということを具体的に述べるのではなく、リスクを低減するようなあらゆる方法をとってください、作業環境濃度を下げられるのであれば作業環境濃度を下げていただき、もし下げきれないのであればマスクを必ず付けていただく、さらに労働者にちゃんとリスクについて知らしめるよう教育していただく、そういうようなさまざまな方法をとって全体的にリスクを下げるというのがリスクアセスメントによる措置になります。
 
○堀口 よろしいでしょうか。
 ほかにいらっしゃいませんか。
 
○川名 それではスマホをお持ちの方は一緒にやってみませんか。回りくどいやり方ですが、厚生労働省のホームページから入ってみたいと思います。まず厚生労働省のホームページをまず出してみてください。厚生労働省のホームページを出しますと右の方に「メニュー」という青いバーが3つほど並んでいるかと思います。そこを押していただくといろいろとカテゴリが出てきますが、その中の上から3つ目に「政策にいて」という項目を押していただきたいと思います。そうするとこんど分野別の政策一覧が出てきますのでこれを押していただいて、「健康医療」とか「子供子育て」「福祉介護」の下にある「雇用・労働」という太文字の項目の上から3つ目の「労働基準」を出していただいて、そのページに飛んだらずっと下の方にいっていただいて、「施策情報」と太文字で書いた項目が出てくるかと思います。その真ん中くらいに「安全・衛生」という項目がございます。それを押してください。そうすると「安全・衛生」のページに「施策紹介」というところがありますが、その「施策紹介」の上から6個目に「職場における化学物質対策」という項目がございますのでこれを押してください。そうすると「職場における化学物質対策についてと」いうページにいきます。少しそれますが、この「新着情報」のところには例えば上から3つ目、「セミナー『化学物質のリスクアセスメントとGHSラベルを用いた How to職場の安全衛生教育』案内」平成30年事業は終了してしまいましたけれども、こういうご案内ですとか、その下に「初心者向け、化学物質のラベル・SDS及びリスクアセスメントに関するセミナーのご案内」。これも平成30年度は終了していますけれども、こういうようないろいろなセミナーの開催案内や、その下にはこのリスクコミュニケーションのご案内というようないろいろなイベントのご案内を載せている項目がございます。
その下に「化学物質対策について」という項目がございます。その項目の下から3つ目になりますが、「職場における化学物質のリスク評価」という項目があって、これを押していただくとこれまでのリスク評価の取組についていろいろな情報を載せてございます。
 一番上には「1.リスク評価対象物質の選定等」というようなことで、今現在もううそになってしまいましたが、「リスク評価対象物質・案件の選定の考え方(最新)」というような項目がございます。これ最新と言いながら少し古くなっていますが、昨年のリスク評価で対象物質として選定したものはどういうような考え方で選定したのかなどを記載した資料が載っていたり、その下は「リスク評価実施物質」ということでこれをクリックしていただくとこれまでリスク評価の対象としてきました物質につきまして、そのリスク評価の報告書がまとめて掲載されていたりしております。その下には「これまでのリスク評価の進捗状況」ということで、これも情報が古くなっていて申し訳ありませんが、これまで選んできた物質が今どういう状況にあるのかということで情報を提供しております。
 その下にはいろいろなガイドラインが入ってございます。先ほど名古屋先生からご紹介いただきましたばく露評価のガイドラインですとかリスク評価の指標といったようなガイドラインを載せています。その下には意見交換会の平成29年度までの資料を掲載しているところがございます。その下にはリスク評価関係の検討会ということで、ここでは平成21年度から29年度まで開催してまいりましたいろいろなリスク評価関係の検討会の資料ですとか議事録といったものをここで紹介させていただいております。
 これまでのリスク評価の物質ごとの報告書というのは、先ほどのリスク評価実施物質の項目で最終版を公表しておりますし、あとは関係検討会のうちの化学物質のリスク評価検討会のページをご覧いただきますと、一番上の方に「報告書」というところがございます。この「報告書」でその年度にやりました物質についての最終的なリスク評価の結果を報告書として公表してございます。平成30年度分につきましてもまもなく公表したいと考えております。またこのホームページのところは、平成29年度までが掲載されておりますけれども、平成30年度分についても欄を追加して資料、議事録を今後掲載していく予定でございます。
 こういったページをご活用いただいていろいろと情報を収集していただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
○堀口 わかりました。わざわざありがとうございました。かなり深いところにあるのですね。
 
○川名 1回覚えれば多分、「職場における化学物質のリスク評価」とか、そういうキーワードで検索できるようになるかと思います。
 
○堀口 皆さんご確認できましたでしょうか。それでは時間もちょうどとなりましたので、これにて終了させていただきたいと思います。
 ご協力どうもありがとうございました。
(閉会)
○司会者(前北) 先生方、どうもありがとうございました。
以上をもちまして平成30年度第3回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーションを終了いたします。皆様、ご参加いただきましてありがとうございました。
なお、今後の参考のため、水色のアンケート用紙にご記入いただき、机の上に残しておいていただければと思います。この水色のアンケート用紙は裏表の2ページものとなっておりますので、ご協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
また、先ほど手にとっていただきました赤と青のカードもそのまま机上に残しておいていただければと思います。
本日はまことにありがとうございました。