平成30年度第2回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーション議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

平成31年3月1日13:30開会

場所

TKPガーデンシティ東梅田 バンケット4A会議室

議題

  1. 開会
  2. 基調講演
    1. 「平成30年度リスク評価の結果について」
    2. 「個人サンプラーを用いた作業環境測定」
    3. 「化学物質を安全に取り扱うためのラベル・SDS・リスクアセスメント制度について」
  3. 意見交換
  4. 閉会

議事

(開会)
○司会者(西村) ただ今より平成30年度、第2回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーションを開催したいと存じます。
本日はお忙しい中、第2回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーションにご参加いただきまして、誠にありがとうございます。私は、(株)三菱ケミカルリサーチの西村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
早速ではありますが、お手元の資料を確認させていただきます。まず議事次第が1枚でございます。続きまして、本日は3つの基調講演を予定しておりますが、それぞれホッチキス止めで3種類の基調講演の資料がございます。それから、A4のピンク及び水色のアンケート用紙が1枚ずつございます。ピンクのアンケート用紙につきましては休憩時間に、水色のアンケート用紙は意見交換会全体の終了後に回収させていただきます。そのほか、A5サイズの赤と青のカードが1枚ずつお手元にございますでしょうか。もし、お手元にないようでしたら手を挙げていただければと思いますが、いかがでしょうか
ありがとうございます。
さて、このリスクコミュニケーションですが、働く方の健康障害を防止するために、厚生労働省が行っている化学物質のリスク評価に関しまして、関係する事業者や化学物質の取扱いをされている方、また、事業者の団体の方との情報共有・意見交換を行うために実施しているものでございます。
それでは、本日のスケジュールについて簡単にご説明いたします。
まず、「平成30年度のリスク評価の結果について」というタイトルで、厚生労働省の検討会である、化学物質のリスク評価検討会で行われた検討内容につきまして、検討会の委員でいらっしゃいます帝京大学医療技術学部教授の宮川宗之先生に30分ほどご講演をいただきます。次に「個人サンプラーを用いた作業環境測定」というタイトルで、厚生労働省労働基準局安全衛生部、化学物質対策課環境改善室室長の西田和史様に25分ほどご講演をいただきます。3つ目といたしまして、「化学物質を安全に取り扱うためのラベル・SDS・リスクアセスメント制度について」というタイトルで、厚生労働省労働基準局安全衛生部、化学物質対策課化学物質国際動向分析官の吉澤保法様に20分ほどご講演をいただきます。
以上の基調講演が終わりましたらいったん20分程度の休憩を挟ませていただきます。なお、休憩時間にピンクのアンケート用紙を回収いたします。このピンクのアンケート用紙に、基調講演をお聞きになったご感想、疑問点、御質問などについてご記入いただき、会場内の事務局員にお渡しいただければと思います。
後半の意見交換会では、会場からいただいたご意見を踏まえた形で進めてまいります。このため、前半の基調講演の部では、御質問の時間は設けずに進め、後半の意見交換会の部で御質問等にお答えしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
後半の意見交換会では、コーディネータを東京理科大学薬学部教授の堀口逸子先生にお願いし、パネリストとして、基調講演の宮川先生、西田様、吉澤様のほか、厚生労働省労働基準局安全衛生部、化学物質対策課化学物質評価室の増岡様にもお入りいただきまして、皆さまの疑問点にお答えしてまいります。
意見交換会につきましては、開始から1時間程度をかけてピンクのアンケート用紙にご記入いただいた御質問について回答いたします。その後、20分程度かと思いますが、会場からの御質問にお答えするという形式で進めていこうと考えております。
なお、この講演会につきましては、後半の意見交換会を含めて議事録作成のため録音をさせていただいております。録音の関係上、最後の質疑応答の際はマイクをお渡ししますので、マイクを通して御質問をお願いできればと考えております。
全体として約3時間を予定しております。
では、最初の基調講演であります「平成30年度リスク評価の結果について」を、帝京大学の宮川先生にお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
基調講演1「平成30年度リスク評価の結果について」(帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科 教授 宮川宗之)
 皆さん、こんにちは。帝京大学の宮川と申します。よろしくお願いいたします。初めに「平成30年度リスク評価の結果について」ということでお話しさせていただきます。
 このスライドですが、厚生労働省の方で用意していただいたものであります。
 
(スライド1-2)
 まず、リスク評価について説明いたします。現在、労働現場で取り扱われております化学物質の現状です。これはよく皆さんご存知だと思いますが、7万種類ほどあるといわれていて、さらに毎年千物質ぐらいの新規の届出があるということで、有害性がよくわかっていない、いろいろな化学物質が使われる場合もあるということになります。
 
(スライド3)
 これが新規化学物質の届出件数の推移でございます。ご覧いただけますように、千前後、最近では千を超えていることも多いですが、そのぐらいが毎年、新規として届けられているということになります。
 届出件数が減る傾向もあったのですが、5年ぐらい前からは横ばいということでございます。
 
(スライド4)
 これはよく出てくる図なのですが、労働安全衛生法の関連法令において化学物質がどういう規制を受けているかという体系です。一番上に製造禁止物質などがありまして、そのあと製造許可あるいは特別規則、これは有機則や特化則で規制されている物質ですが、それが百数十物質あるということになります。さらにそれを含めまして、現在、673物質についてはラベル表示、SDS交付、リスクアセスメントの実施義務がかかっています。それ以外のものにつきましても、このSDSやラベル表示、あるいはリスクアセスメントの努力義務があるということにはなっていますが、実際にはなかなか行われていないというのが現状だと思います。
 
(スライド5)
 化学物質対策の方向性ということで、これも毎年同じような話をさせていただいているのですが、過去の対策というのが、「ハザードベース」、これは事故が起きた後にそれに対して厳しい規制をかけるというやり方です。「後追い」と書いてありますが、特別規則による管理のし方で個別具体的に発散抑制措置であるとか、作業環境の測定であるとか、健康診断など細かなことを決めて、それによって規制をし、災害が起こらないようにするというのが過去の対策のやり方です。一方、現在は、もちろんそういうものも残るわけですが、平成18年以降、「リスクベース」の規制ということで、事業者がリスクアセスメントを自ら実施し、その結果に基づいてリスクの低減措置を行うということになっています。
 ここでいう「リスク」というのは何かというと、健康障害の起こる可能性あるいは起きたときの重篤度も含めた可能性です。それを事実上、許容できる範囲に抑えるということがリスクの管理ということになります。それを自主的にやっていただくというのがリスクベースということです。ただ、一部の化学物質、673物質ですが、これに関しては、そのためのリスクアセスメントの義務がかかっているということになっております。
 さらに、事業者に個別にやっていただくとともに、重篤な健康障害のおそれのある物質については、国自らリスク評価を行い、リスクが高い場合には規制を考えるということになっております。
 この「国自らリスク評価を行う」というのが、実際に特定の化学物質を毎年選び、それを使っている事業場に調査の協力をお願いし、そこでばく露のレベル、それから許容できるばく露レベルを比較するということを基本にし、リスクの評価、すなわち、この状態で使っていて健康障害は生じる可能性があるか否かを評価し、それが高いと思われた場合には、こちらにあるような規制を考えていくということで、「各事業場取扱い状況に応じたリスクアセスメント」と書いてありますが、その結果、必要性に応じて規制をかけるということが現在行われております。
 ちなみに、その「国自らが行うリスクアセスメント」の一つとして、リスク評価検討会という委員会を開催しており、そこでいろいろな検討をし、実施をしております。私はそこのメンバーを務めさせていただいている関係で、毎年ここでお話をさせていただいております。
 
(スライド6)
 今、申し上げました、厚生労働省のリスク評価の制度ですが、有害物ばく露作業報告をお願いしているのが平成18年からとなります。化学物質の有害性情報は厚労省が調べ、それから実際に取り扱っているところに出向いて行って、ばく露状況を調べます。そして両方を比べてリスクを評価するということが行われています。
 対象物の選定ですが、重篤な有害性が指摘されたり、あるいは健康障害防止措置の導入が求められている物質を広く募り、実際にパブリックコメントを募集していると思いますが、そして国の検討会で選定しています。それで選ばれた物質について作業場から報告を求め、そして求められたものによって国自らがばく露実態の調査をします。
 実際に、どの程度のばく露を労働者が受けているのかを調べ、また、一方で、有害性情報を収集します。そして収集した情報、これは文献調査になりますが、それによって有害性評価、つまりどういう有害性があるかという文書を作り、それとともに各国のいろいろな機関が作っている許容濃度のようなもの、ばく露限界値などどのようなものがあるかを調べて一覧にし、そして最終的には「ここまでなら大丈夫ではないか」というばく露限界値と実際のばく露の様子を比べ、ばく露の方が低ければリスクは少ないだろう、健康障害が起こる可能性は低く、基本的には受容できるところにあると判断されます。一方で、こういう基準となるばく露限界値を超えているようであれば、リスクが高いと判断され、何らかの対応が必要となります。
 その場合には、健康障害防止対策を決定し、特別規則による措置として局所排気装置を求めたり、作業主任者を求めたり、作業環境測定を義務にしたり、特殊健康診断を義務にしたりということを必要に応じて考える、というのがこの図式になっております。
 
(スライド7)
 本日は、時間がありませんが、今言ったことが細かく書いてあります。1つ、リスク評価で一番重要なのは、とにかく有害性を把握し、どの程度のレベルまでのばく露であれば健康障害が起きる心配がないのか、という決定をすることです。「評価値」と書いてありますが、実際には、ACGIHや日本産業衛生学会などの関係機関が決めた許容濃度等があればそれが基準になります。さらに、量-反応関係の解析から、NOAEL(無毒性量)を設定し、一定のデフォルト値を使って許容濃度を決めるときと同じような方法で評価値を求めるということもします。そこで出てきた評価値で実際のばく露状況を評価することになります。
 評価値ですが、実は2種類あります。今申しましたように、この事業では「一次評価値」というものと「二次評価値」というものを使っています。基本的に申しますと、一次評価値というのは、動物実験で、例えば100 ppmである程度の有害な作用が出たので種差を考えましょうとか、あるいは、動物実験でのばく露時間と、人間が1日8時間働いて週5日間勤務する場合のばく露時間を調整して導いてくるのが一次評価値ということになります。細かい話はできませんが、有害性について、実験データ、あるいは実験データをまとめたレビューの文書などから、求めたのが一次評価値です。
 二次評価値というのは、基本的には同じような考え方なのですが、もう少し細かいところを考えて、日本産業衛生学会などが決めた許容濃度など、それを二次評価値として使っております。
 基本的には、二次評価値よりも一次評価値の方がデフォルト値を使う関係で低い値が設定される場合が多いです。そうすると、一次評価値と二次評価値とがあって、基本的には二次評価値というのがいわゆる許容濃度に相当するものですので、その値よりもばく露が低ければ基本的にはリスクは高くはないと考えてよいということになると思いますが、この国のリスク評価では初期リスク評価の段階では、デフォルト値を使って低めに設定した一次評価値も使います。これはスクリーニングのための比較的厳しい値で、そこよりも低ければリスクは低いと判断します。それから一次評価値よりは高いけれども、許容濃度などの二次評価値よりは低い場合も、現時点でリスクは高くないということになっています。なお、後の方で出てくるスライドには、二次評価値よりも低い場合には基本的にはリスクは低いという書き方をしているものがたくさんありますので、ご承知おきください。
 問題となるのは、許容濃度を超えたばく露が見つかったという場合ですが、この場合には詳細リスク評価に移行します。もう一度、丁寧に詳しくばく露状況を調べチェックをするという観点から、別の年度に詳細リスク評価をやることになっております。このときに使うのは基本的には二次評価値、すなわち、日本産業衛生学会の許容濃度やACGIHのTLVなどを使って評価をするということになっております。
 ここまでよろしいでしょうか。
 
(スライド8)
 それからもう1つ、今申し上げました二段階のリスク評価というのは、全体としては初期リスク評価と、その初期リスク評価で引っ掛かった場合の詳細リスク評価は別の年度にやるという二段階となっておりますし、この1回目の初期リスク評価の中でも一次評価値と二次評価値という2つの評価値を使って考えています。私自身もやっていて、ときどき混同してしまうことがありますが、こういう方法で評価を行っております。
 
(スライド9)
 そのリスク評価の手順です。今申しましたように、許容ばく露濃度と、これは一次、二次評価値ですが、それから個人ばく露濃度を比較する手順を標準化としています。リスクアセスメントというのは、業者の方々に義務でやっていただく場合には、なかなか難しいということから、厚労省では簡易な手法も宣伝しています。健康リスク評価の基本は許容濃度とばく露濃度を比べて、ばく露濃度が許容濃度に比べて低ければとりあえずリスクが受容範囲にあると考える。これが健康リスク評価の基本中の基本です。そのような比較のために、一次評価値、二次評価値を使います。それから実際に測定を行った個人ばく露濃度、8時間加重平均を使い、2つを比較するという方法でやっております。
 
(スライド10)
 それから、最近問題になった化学物質には、経皮ばく露による経皮吸収があり、気中濃度は低く、吸い込む量は低いけれども、どうも経皮ばく露で体内に入ることによって健康障害が起きているのではないかという物質がありました。そこで、最近、経皮ばく露による吸収についてもしっかりやりましょうということになっています。ばく露は経気道ばく露に限らず、経皮ばく露による吸収があるということです。
 実は、去年まではこのスライドはありませんでした。今までは、経気道ばく露を中心に基準値(評価値)よりも低ければリスクは低いと、ばく露が高ければリスクは高いと判断していたわけですが、それだけではダメだと、気中の濃度は低くても経皮吸収があるような物質については、別のばく露経路があるので、気中濃度が低くても高いばく露を受ける可能性があり、その場合にはリスクが高いということになります。
 その判断の仕方には3段階あるのですが、1つは、経皮吸収については、日本産業衛生学会やACGIHなどが経皮吸収に気を付けるという観点から、「皮」マークや「Skin」マークを付けている場合がありますが、それがない場合にはとりあえずは経皮吸収は心配しなくてもよいということです。
 そして「皮」マークや「Skin」マークがある場合には、ここに「勧告あり」と書いてありますが、経皮吸収のことを考えなければきちんとしたばく露評価はできないとういうことから、経皮ばく露を評価するということになっています。しかし、残念ながら定量的な評価方法が未確立のため、原則として定性的な評価になります。このように、「皮」マーク「Skin」マークが学会等によって勧告されている場合には、個別具体的にその化学物質の毒性や使用状況を考え、定性的にリスクが許容範囲だろうか、つまりリスクは低い、あるいは対応が必要だろうか、つまりリスクが高いという判断をすることになっています。
 したがって、経気道ばく露でリスクが高いか低いかという点は、許容濃度との比較で判断し、経皮ばく露による吸収に関しては、「皮」マークがあるか否か、経皮吸収の勧告が学会等からされているか否かということでまず考え、勧告されていれば、定量的な評価ではなく、現時点では毒性の作用等を考えて、あるいはその使用状況を考えてリスクの判断をするということになっています。
 この辺がなかなか難しいところです。
 
(スライド11)
 今年度の初期リスク評価の結果について、これからお話をいたします。
 
(スライド12)
 実は、例年、評価の結果については数物質の話で済むのですが、今年はたくさん物質があり、全部について細かいお話をする時間がありません。したがって、比較的リスクが高いとされた1,2-酸化ブチレン、それから、吸入に関してはリスクが低いけれども経皮吸収の勧告があるので、そこについてはもう少し丁寧に見なければならないとされたのがこのビフェニル、ジフェニルアミン、それからレソルシノールの3つです。この辺りについて少し丁寧に説明します。最後に、リスクが低いとされたノルマル-オクタン、酢酸イソプロピル、ジメチルアミン、ビニルトルエンそれからメチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネートについては、経皮吸収が問題にされておらず、経気道ばく露は低いということですので、結果だけを見ることにしたいと思います。
 
(スライド13)
 まず、1,2-酸化ブチレンの初期リスク評価結果の概要です。二次評価値は2 ppmです。これが最も基本になる評価値です。これについては、ACGIHでも日本産業衛生学会でも許容濃度等を出していないために、米国産業衛生協会(American Industrial Hygiene Association:AIHA)が出している2 ppmを二次評価値に採用しました。ばく露評価の結果ですが、個人ばく露測定を9人について行っていて、その最大ばく露濃度が2.5 ppmと二次評価値を超えていました。さらに、この物質については経皮吸収の勧告もあります。こちらはドイツ研究振興協会、MAKバリューを出しているDFGというところが経皮吸収の勧告をしていることから、経皮吸収があるということでありました。したがって、最大ばく露濃度が二次評価値を超えているということからリスクが高いという評価になります。かつ、経皮吸収の勧告もあるので、きちんとその要因、経皮吸収がどうあり得るのかといった点の評価もしなければならないということでも、リスクが高いということになります。
 
(スライド14)
 1,2-酸化ブチレンの製造・輸入量は、平成25年度では617トンになります。
 
(スライド15)
 化学物質の細かい話は、省力させていただきますが、注意すべき毒性である発がん性については、「発がん性が疑われる」(IARCで2Bレベル)ということになっています。それから、反復投与で化膿性炎症等という鼻腔の病変が生じます。この実験で影響が見られた最も低い濃度が50 ppmです。これを基に定められた方法で計算をすると、評価レベルが0.38 ppmとなります。こうした値が一次評価値の候補になります。
 
(スライド16)
 許容濃度の設定は、今申し上げましたように日本産業衛生学会やACGIHの値がないためにAIHAを使い2 ppmということになります。
 また、一次評価値については、先ほど1つ候補があると申し上げました。反復投与毒性のときに0.38 ppmと計算できるとなっていました。しかし、このリスク評価の方法には、次のような取り決めがございます。すなわち、発がん性を示す可能性のある物質の場合、一次評価値がこの発がん性を基に決められれば、生涯過剰発がん10-4レベルというところを計算し、それを一次評価値にします。あるいは、遺伝毒性がない場合については、閾値を求めて計算するということになっています。この物質は、遺伝毒性があって閾値がないわけです。なおかつ、この10-4レベルに相当する濃度が設定できない、これはユニットリスクというものが公表されていないと計算できないものですので、そのような場合には一次評価値はなしにするという取り決めになっております。したがって、この場合には一次評価値はなしとなります。
 したがって、二次評価値の2 ppmのみを使って評価をしたということになります。
 
(スライド17)
 実際のばく露です。個人ばく露測定データの最大値については、少し少ないですが、9人の労働者の現場の測定をして、個人ばく露で最大だったものが1.100 ppm、それからバラツキを考えて計算した上側5%点の計算値が2.5 ppmでした。この2.5 ppmが許容濃度を超えています。
 二次評価値(許容濃度)は2 ppmになります。
 
(スライド18)
 実際のばく露ですが、低い人が多いのですが、一部、個人ばく露で1.1 ppmの方がいました。さらに、データから区間推定でもって上側5%の高い濃度を計算すると、上側5%点が2.5 ppmになりますので、これが二次評価値を超えているということからリスクが高いと、さらに経皮ばく露にも注意が必要な物質ということになります。
 
(スライド19)
 そこで、今後の対応ですが、1,2-酸化ブチレンの製造・取扱事業場においては、最大ばく露量2.5 ppmが二次評価値2 ppmを上回っていることから、詳細リスク評価を行う必要があると判断し、詳細リスク評価に移ります。
 ただ、詳細リスク評価の際には、二次評価値を上回るばく露量があると思われる作業等について、作業工程に共通した問題があるか否かをきちんと分析した上で、詳細リスク評価を行うことになります。
 さらに、経皮吸収勧告がドイツのDFGからなされていますので、それを採用し、具体的な作業において、経皮吸収に関する知見だけではなく、保護具の使用状況等、作業の実態のデータを取ってリスク評価を行うべきだという結論になり、後年度に詳細リスク評価が行われることになっております。
 ここからは経皮吸収が問題になった物質が続きます。
 
(スライド20)
 ビフェニルの初期リスク評価について説明をいたします。二次評価値が0.2 ppmです。最大ばく露濃度は0.0032 ppmとはるかに低い値だったのですが、リスクは低いが、経皮吸収勧告があることから経皮ばく露に係るリスク評価を行い、そのリスクを確定させる必要があるということになります。
 時間が押してきましたので、ここ以降は少し急ぎます。
 
(スライド21-26)
 神経毒性があるということから0.01 ppmとか、反復投与毒性で腎臓に影響があるということから評価レベルを1.86 ppmといった一次評価値の算出はできますが、実際は、こちらの0.2 ppmというACGIHのTLVを二次評価値としております。一次評価値については、発がん性を示す可能性がありますが、遺伝毒性の有無が判断できず、したがって閾値を設定できないために一次評価値は用いないということになり、二次評価値を使って評価をします。
 結果としては、個人ばく露も、全データから計算した上側5%の推定値も0.0032 ppmとか、0.0027 ppmと非常に低い値です。
 したがって、本物質については、二次評価値の0.2 ppmよりも低く、経気道からのばく露によるリスクは低いと考えられるものの、経皮吸収勧告がされていることから、保護具の使用状況等作業実態のデータを今後も調べてリスクを確定させる必要があるということになっております。
 
(スライド27)
 次は、ジフェニルアミンです。こちらは二次評価値が10 mg/m3、実際の最大ばく露濃度が0.10 mg/m3とはるかに二次評価値よりも低いという結果でしたが、やはり経皮吸収の勧告があることから、この部分についてもう少し詳細に検討して判断する必要があるということになっております。
 
(スライド28-30)
 この物質も一次評価値を計算しようと思うと、反復投与による化膿性の炎症が鼻腔病変等で2.1 mg/m3、あるいは生殖毒性で33.6 mg/m3という数字が出るのですが、一次評価値はなしです。やはり発がん性が疑われ、遺伝毒性がなく、これは閾値があるのですが、実際に動物実験によって計算をしてみると、そこから求められた一次評価値の評価レベルが二次評価値の1/10以上の場合、すなわち、10倍の開きがない場合にはわざわざ一次評価値を定めないということになっていますので、一次評価値はなしということになり、このACGIHのTLVを二次評価値に使った結果が10mg/m3ということになります。
 
(スライド31)
 個人データの最大ばく露が0.1 mg/m3、上側5%の推計値が0.11 mg/m3ということで、どちらも10 mg/m3よりも相当低く、二次評価値ははるか上になります。
 
(スライド32-33)
 したがって、吸入経気道ばく露によるリスクは低いと考えられますが、やはり、経皮吸収勧告がDFGからなされていることから、保護具の使用状況等作業実態のデータをきちんと調べた上で、リスクを判断しなければならないということになります。
 
(スライド34)
 それから、レソルシノールの初期リスク評価です。二次評価値が10 ppm、最大ばく露濃度が0.025 ppmで、二次評価値よりも相当低いものになっております。ただし、経皮吸収勧告があるということで、やはりこちらも経気道からのリスクは低いけれども、経皮のことを考えると、作業実態等を考えてリスクを確定させる必要があるということになった物質です。
(スライド35-37)
 こちらは、日本産業衛生学会とDFGの値はありませんが、ACGIHの10 ppmを使っています。一次評価値はやはりなしです。二次評価値の10 ppmを使って評価をした結果がこちらになります。
 
(スライド38-40)
 個人ばく露の最大値が0.012 ppm、上側5%点が0.025 ppmということでいずれも相当低く、経気道からのリスクは低いと考えられますが、これはイギリスの安全衛生庁から経皮吸収勧告がされている物質ということなので、保護具の使用状況等作業実態を考えた上でリスク評価を確定しなければならないということになりました。
 ここまでが経皮吸収がある物質です。
 もう時間がきましたので、あと数分で終了します。
 
(スライド41)
 ノルマル-オクタンです。二次評価値は300 ppmです。最大ばく露濃度が1.6 ppmとはるかに低く、また、経皮吸収勧告はないということで、リスクは低いと判断されたということになります。
 
(スライド42-47)
 個人ばく露の最大値が0.79 ppm、上側5%推定値が1.6 ppm、それに対して許容濃度が300 ppmということでしたので、その二次評価値300 ppmと比べると十分に低く、経皮吸収の勧告はどこからも出されておりませんので、リスクは低いということになります。
 
(スライド48-51)
 酢酸イソプロピルです。こちらは二次評価値が100 ppmになります。最大ばく露濃度が6.1 ppmで100 ppmに比べて相当低く、経皮吸収の勧告もなしです。
 
(スライド52-54)
 個人ばく露の最大値が4.1 ppm、上側5%が6.1 ppmと十分に低く、また、「皮」マークもないということで、リスクは低いと考えられるということですから、初期リスク評価で終了ということになります。
 
(スライド55-61)
 ジメチルアミンですが二次評価値が2 ppm、日本産業衛生学会の許容濃度です。また、最大ばく露が0.55 ppmと2 ppmよりも低く、経皮吸収の勧告もないということから、こちらについてもリスクは低いと認められるというのが結論になります。
 個人ばく露の最大値が0.33 ppm、上側5%が0.55 ppm、それに対して許容濃度が2 ppm、経皮吸収の勧告もないことからリスクは低いというのが結論となります。
 
(スライド62-68)
 最後はビニルトルエンです。二次評価値が20 ppm、最大ばく露が1.9 ppmということで、これも1/10以下になっています。また、経皮吸収の勧告がないのでリスクは低いという結論になった物質です。
 個人ばく露の最大値が0.41 ppm、上側5%が1.9 ppmで、二次評価値の20 ppmと比べて十分に低いということ、また、経皮吸収の勧告がなされていないことからリスクは低いということになりました。
 
(スライド69-75)
 もう1つありました。最後は水添MDIです。これについては、二次評価値が0.005 ppmです。最大ばく露濃度が0.0014 ppm、経皮吸収の勧告はありません。
 上側5%推定値も0.0014 ppmということから、リスクは低いという結論になります。
 もちろん、最後の方の物質も含めて、リスクアセスメントは各事業者にやっていただく必要があります。それぞれいろいろな毒性を有することから、そのためには各事業者様にはリスクアセスメントをしてくださいということが全部の物質に書いてあります。
 以上、今年度の物質は大急ぎになりましたが、ご報告ということになります。
 
(スライド76)
 なお、平成31年に選定された物質は、発がん性がIARCの2B相当のもの7物質が候補に挙がっていることになります。
 時間がまいりましたので、ここで終了したいと思います。
 ありがとうございました。
(司会)
○司会者(西村) 宮川先生、どうもありがとうございました。
引き続きまして2つ目の基調講演ですが、「個人サンプラーを用いた作業環境測定」につきまして、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課環境改善室、西田室長、どうぞよろしくお願いいたします。
基調講演2「個人サンプラーを用いた作業環境測定」(厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課環境改善室長 西田和史)
 皆さん、こんにちは。ご紹介いただきました、厚生労働省境改善室長の西田と申します。
 続きまして、作業環境測定に個人サンプラーによる方法を導入することの基本的な考え方について行政検討会報告が昨年11月にまとまりました。
 実は、作業環境測定機関の方も大変大勢いらっしゃるということで、11月の富山でのシンポジウムでもご紹介させていただきましたが、そのときは時間が足りなくて、質疑等のお時間が取れずに、多くの方からクレームをいただいたところでございます。当部としましても、非常にエポックメーキングといいますか、画期的な出来事でもあり、逆に言いますと、誤った理解のもとで認識されてはならないと思いますので、できる限り正しく理解していただくよう、本日、このような機会をいただき、大変ありがたいと思っているところでございます。
 では、資料に沿って説明させていただきます。
 
(スライド1)
 まず「個人サンプラー」といいますと、個人ばく露評価の道具という見方が一般的でございます。本検討会で、まず1つ念押ししておきたいのが、個人ばく露測定に新たに導入するという検討ではなく、あくまでも法定の作業環境測定のツールとして現行のA・B測定による定点測定に加えていこうということでございます。
 それでは、行政の考え方につきまして、検討会報告書から検討の背景と経緯、内容の概略、今後の計画についてお話しさせていただきます。
 
(スライド2)
 まず、検討の背景でございます。こちらは第13次労働災害防止計画でございます。今年度、昨年4月からスタートしておりますが、この中で、国の中長期施策として「作業環境測定に個人サンプラーによる測定方法を追加する」とはっきりとうたっております。具体的にどういう記述になるかといいますと、「作業環境測定の実施方法に個人サンプラーによる測定方法を追加し、作業態様に応じた測定評価法を選択できるようにする」と書いてございます。まさにこれに沿った検討ということでございます。
 実は、この前の第12次労働災害防止計画においても、「個人サンプラーによる測定方法の導入を検討する」としているところでございます。
 
(スライド3)
 続きまして、作業環境測定制度の変遷について簡単に振り返ってみたいと思います。昭和の時代に結構いろいろ動きがありました。特に大きなところとしては、昭和50年の安衛法の改正によって測定基準に従って測定義務が規定されました。その後、作業環境測定法で有資格者による測定が義務付けられました。
 もう1つ大きな動きとして、昭和54年の「第一次報告書」でB測定の導入が検討されました。報告書の初めにも触れさせていますが、ここで法に基づく測定について、現行のA・B測定と個人サンプラーによる個人ばく露測定の2つの手法を比較した上で、当時の技術的な観点、日本のいろいろな職場環境から、安衛法上には措置としてA・B測定が導入されたという経緯がございます。この頃は、個人サンプラーの器具が大きいとか、分析にしても今ほどではなかったということがあり、現実的なのはA・B測定であるということになった経緯があります。
 その後、昭和63(1988)年に、測定結果の評価と措置義務を体系化して、現行の制度ができ、それから30年が経過しているというところでございます。
 そこでこの検討会ということですが、資料は付けておりませんが、この後、平成22(2010)年に「職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会」という大きな、その後の化学物質に関する法改正のベースとなった検討会を開いており、その中においても「A・B測定で的確な評価が困難な業務を中心に、個人サンプラーによる測定の導入に向けた検討をする必要がある」という提言がなされております。
 実は、今回この検討会というのはそういった流れの中であるわけですが、ここで「目的」と書いてありますが、「気中への発散の変動が大きいとか、作業者の移動が大きく場の測定のデザインが困難なときなど、適切な作業環境の評価とならない場合もあり、こういったところに、個人サンプラー測定の技術の進歩や、測定のデザインの結果の各種評価方法についてもコンセンサスが得られつつあることを踏まえ、検討を行う」としております。
 したがいまして、平成22年に行われた検討会の結論というのも、ある意味では1つのコンセンサスが得られるという形で、第12次労働災害防止計画で検討するというふうにされたということです。
 その後、さらに平成27(2015)年9月、化学物質によるリスクアセスメントの義務化がされたわけでございます。先ほど宮川先生からお話がありましたが、この部分でございます。こういった中で、リスクの見積りの方法として、個人サンプラーを活用した作業環境測定を1つの選択肢として入れられたというところも、ひとつ個人サンプラーを活用した動きがあります。また、日本産業衛生学会の方でガイドラインができたといった動きもございます。
 
(スライド4)
 こうした動きがある中、一昨年、2017年の10月、検討会の委員のメンバー10人で、作業環境関係の有識者、労使、測定機関の方々にお集まりいただき、6回にわたって検討会を開催いたしました。
 検討としては、個人サンプラーをいかに作業環境測定の測定基準なり評価基準に入れ込むかということ、それからもう1つは、個人サンプラーを用いて作業環境測定をするとなりますと、これまで個人ばく露測定をされた方というのは多いかと思いますが、デザインなどをどうするかといったところの必要な知識要件や人材養成についての検討を行いました。
 
(スライド5)
 この報告書の概要を説明いたします。一番のポイントとなることです。なぜ、個人サンプラーを作業環境測定に導入するのかということです。これは、我々としては化学物質管理のあり方、先ほど宮川先生からハザードベースからリスクベースというお話がありましたが、行政としても、今後、7万物質というように物質が増えていく中で、企業における事実的なリスクベースによる管理が必要ではないかと思っております。したがって、リスクアセスメントの義務化もその流れの中にあります。一方では、国によって厳格に特化則で規制されているものがあるという現状がございます。
 そういった中で、個人サンプラーという1つのツールを用いて、法定義務である作業環境測定と個人ばく露測定の両方を一括してできるようになるのではないかと、A・B測定に加え、法定の作業環境測定に個人サンプラー測定も位置付ければ、職場によっては屋内ではなく屋外にも有害物質を扱い場合があるとか、手持ち式グラインダーや移動式グラインダーなど法定/法定外のものがありますが、そこを行き来して、きちんとそのばく露量なり、リスクを見積もりたいという場合に、そこは法定の方と、このリスクアセスメント義務のところをいっしょにできるというところが、いってみれば、リスクアセスメント及び作業環境測定を一括して実施することを促進するという点が大きな狙いとしてございます。
 これは労働者の健康確保に資すると、作業環境測定の目的というのは場の改善にあるわけですが、それは、ひいては労働者の健康管理、健康障害防止に向けてやるという、その原点に立ち戻って進めていくというところが根本にございます。
 このため、将来的にはA・B測定と同様に、法令で作業環境測定を義務づけられた広範な作業場に――、これは全部とは言っていません。事務所衛生基準規則や構内とかでCO2を測るものはさすがに個人サンプラーではまずいのかなというところもありますので、そういったところを除いて、広範な作業場というのが望ましいとしております。
 
(スライド6)
 そこでイメージとしては、こちらは作業環境測定のイメージです。A測定とB測定が発散源にあります。こちらは個人ばく露測定ということで、全体を8時間で測るということですが、これを融合させていくということでございます。この下に書いている話は、また、大事なことですので、後ほどご説明いたします。
 個人サンプラーによる測定ですが、こちらは正確だと思います。個人ばく露測定とどう違うかというと、個人サンプラーによる作業環境測定といってもらってよいのですが、あくまでも「法定義務のところを測る」ということです。一方ではサンプラーを着けているということで、ずっと8時間移動するわけですから、法定外のところも当然移動します。そういう場合は除きます。除く場合に、時間を記録するというのもありますし、ポンプをオン・オフするというようなところもあろうかと思いますが、複数の作業場を行ったり来たりするという場合には、法定のところ、ここが単位作業場といいますか、作業場して管理されます。これがA・B測定ですと、それぞれのところでこうやるということでございますが、ここの作業者グループが何人になるかわかりませんが、そこで着けることによって、複数場所を管理できます。一方で、B測定相当のところ、非常に近接作業が高く、発散するというというようなところは、短時間測定として測るというようなことを制度設計として考えております。
 ここでお話ししておきたいのが、先行導入作業ということでございます。個人サンプラーによる測定を実施できる測定士の数は十分ではないということから、一定期間を設けて、いわゆる作業環境測定としての個人サンプラーの測定を実施できる人材を養成する必要があるということから、まずは広範な作業を全面的にということではなく、部分的に導入することを考えております。特に個人サンプラーの特性が発揮できるものとして2つございます。
 1つは発散源が作業者とともに移動する溶接や吹き付け塗装のように、発散源と作業者の間に測定点を置くことが困難な作業です。もう1つは、ベリリウムやMOCAもそうですが、非常に管理濃度が低い物質です。これは作業者やいろいろなゆらぎによって、ちょっとした距離によって大きく評価結果が変動しやすい物質です。こういったものから導入していこうということを考えております。
 今後のスケジュールについては、また後ほど説明いたしますが、基盤整備事業等を考えております。
 
(スライド7)
 続いて、報告書の内容に入っていきます。これは総論部分と各論部分がありますが、この中で大事なポイントが4番目です。先ほどの概要のところでも申し上げましたが、作業環境測定の方法に、労働者の呼吸域の空気を正確に測定可能で、かつ、8時間を通して作業場の測定・評価が可能な個人サンプラーによる測定方法を導入することは、事業者において、リスクアセスメント及び作業環境測定を一括して実施することを促進するものであり、労働者の健康の確保に資するものであると、あえてこの辺は少し丁寧に書いております。あくまでも「呼吸息の場を測る」と、ですからばく露濃度の測定ではないのかということもあるのですが、確かにそれにも使えるということではありますが、ここでは、あくまでも「作業環境測定にも場の管理として活用できる」と書いております。
 そこでここの注書きのところですが、ここだけでも何時間も議論したのですが、やはり委員の中にもいろいろな考えの方がいらして、この機会に個人ばく露測定を導入していくべきではないかとおっしゃる方もいますし、いや、これまでの30年以上の作業環境測定の実績を見れば、そことどう並立させるのかという話もあります。そこで、あえてこの注書きのようなものも報告書の中に入れました。
 ここに書いていますのは、個人サンプラーというのはあくまでも測定する機器であると、目的が何にあるかによって名称が変わると、労働者の作業する環境中の気中濃度の把握であれば「作業環境測定」であり、個人ばく露濃度の把握、どれだけ吸い込んだかというばく露量ですが、先ほどのばく露実態調査のようなものがこちらになろうかと思いますが、そうであれば「個人ばく露測定」になります。
 その次にまだ加えております。得られるデータはどちらも基本的に同じだと、ここで「基本的に」と書いていますのは、作業環境測定は法定義務のところがかかっていますので、個人ばく露の方が同じに測ったら少し高めになるのではないかというところがございますが、基本的には同じであると。そして、違いはそれぞれのデータの用途、すなわち評価の対象が異なることです。
 そして、この次も大事な点ですが、個人サンプラーによる測定のデータを利用して、同時に作業環境測定と個人ばく露測定(リスクアセスメント)を行うことも可能であり、どちらも作業環境の改善に活用されると、ここでも個人ばく露測定を推進される委員の方々からは、個人ばく露測定というのはどうも作業改善や作業管理に使われるという認識を持たれているのですが、決してそうではなく、まず優先順位としては作業環境の改善に活用すると、それを正確に認識してもらいたいということでこういう注書きをしております。
 
(スライド8)
 次のところで重要な点としては6番目になります。作業環境測定基準に基づく測定として、A・B測定と個人サンプラーによる測定のいずれかを選択可能としました。どちらかにしろということは、国はあえて決めません。そして、選択に当たっては、事業者が決めるわけですが、作業環境測定士、産業医等を含む安全衛生委員会等での作業環境測定結果の評価などに関する意見を踏まえて決めてくださいとしております。そして、一定期間経過後、その評価をした上で、広範な作業場に導入できることが望ましいとしております。
 
(スライド9)
 先行導入のうち、1つは管理濃度が0.05以下ということでございまして、特殊健康診断結果から、全体の1/10ぐらいに当たるということでございます。
 
(スライド10)
各論のところです。ここで先ほど言いました選択というところ、それから実際、この測定基準の中でいろいろ議論になったのは、範囲や作業者グループ、個人ばく露評価ではSEG(Similar Exposure. Group)という言い方をしますが、それから作業時間をどうするかといった辺りに結構時間をかけて議論をいたしました。
 測定対象作業場の範囲は法定の屋内作業場、そして、この場合、測定対象でない作業場の対象物質または妨害物質が測定対象作業場の測定結果及び評価に影響を与えないようにする必要があります。また、グループの選定の中では、同一の作業場所・区域での移動範囲内で同一の対象作業に従事する作業者グループを特定、原則としてその全員を測定の選定対象とします。全員といいますと、結構多いように見えますが、ほとんどの委員が、同一作業をしている人というのは少ないだろうと、むしろ、一人とか二人とかそういう場合が多いだろうから、少ない場合はどうしようかという点について議論になりました。多い場合は、主たる作業と補助の作業が混在している場合は主たる作業を行うものを優先して絞り込んで、2回目以降の場合は絞り込みができるようにすると。あと、少ない場合ですが、人ですと統計的なデータが取れるかという問題にもなり、3人ぐらいは必要ではないかという話が出ました。ただ、結論として、ここでは決めず、欧米のガイドラインや実例等を参考に、最低ラインを別途検討としております。
 実はこの報告書ですが、読まれた方はお気付きかもしれませんが、「別途検討」というところが多く書いております。この場で具体的に決めると、かえって縛ってしまうというところもあり、これからまた決めていこうということになっております。
 
(スライド11)
 測定時間は8時間です。ただ、8時間ずっと測定士がいなければならないのかというとそうではなく、取付けはやっていただきます。技術的な問題がなければ取り外しは担当者でも可としております。また、吸引ポンプのオン・オフや行動経路、作業時間、測定機器の装着状況は、測定を行う者または測定を行う者から指示を受けた事業場の担当者もしくはカメラによる動画記録のいずれかによって確認していきます。作業が継続していれば測定時間は8時間を超えてもよいということです。また、作業時間の短縮ですが、繰り返し作業の場合は原則4時間以上、少なくとも2時間以上です。これについては1時間ではどうかという考え方もあったのですが、繰り返し作業であっても、濃度の変動を考えると2時間は確保する必要があるのではないかということになりました。それから、発散源に近接する作業ですが、これはB測定相当ですが、15分間の短時間の測定が必要であろうということにしております。
 測定方法についても、こちらはサンプリングと分析方法ですが、原則、現行の方法と同じでございます。ただ、個人サンプラーはどうしても時間が長いということとサンプラーが小さいということから、いろいろ破過試験や添加回収試験で検証は必要であろうということで、来年度以降検証を実施するとされております。
 
(スライド12)
 続きまして、評価基準です。こちらも基本は現行の評価基準と同じでございまして、管理濃度です。こちらも労働者に健康上の悪い影響を起こさないよう、測定結果から作業環境管理の良否を判断する際の管理区分を決定するための手法ということで、日本産業衛生学会やACGIHのばく露限界値を基に、今、諸外国の動向と作業環境管理技術の実用可能性等を考慮して、行政的な見地から設定しているということでございます。管理濃度を基本とすること、これも、ばく露限界値を使うのではないかという話もありましたが、それでは個人ばく露測定評価ではないかということになりますので、管理濃度が基本です。
 それから、評価値への換算は現行のA・B測定と同様とします。ただ、評価値への具体的な換算方法については、サンプル数や日間変動等を考慮し、これも別途検討する必要があるということです。
 管理区分の決め方ですが、これはよくA・B測定ではマトリックスを使っておりますが、これはあえて2つに分けております。といいますのは、8時間測定と短時間測定が必ずしも一致しないケースがあるということです。8時間測定で3現場行きましたと、短時間は作業場BということになるとAとCは8時間測定で評価し、Bはどちらか悪い方で評価します。ただ、これが一致する場合は、現行のA・Bと同じとしております。ただ、短時間測定の対象となるばく露の高い作業について、複数のものが入れ替わり立ち替わりという場合は、これは非常に危ないケースになるわけですが、各人の測定結果を合算することで8時間測定結果を評価するとしております。
 時間がだいぶん押してきました。
 
(スライド13-14)
 測定士の養成ですが、基本的に測定士が行います。追加的な講習を必須とします。特に、これは平成24年、25年ぐらいの個人ばく露測定の関係のいろいろな委託事業の中で検討された追加的講習をベースに、特に個人サンプラーの場合、A・B測定と個人サンプラーによる測定の選択の基準をどうするかという、最初の事前調査やデザインなど、そこをしっかりと習得する必要があるだろうと考えております。サンプリングも破過試験や定量下限値などの問題も出てきますので、そこを注意しながらになりますが、分析は現行のA・B測定と変わらないと思いますので、そういったかたちで、これも今後どのようにするかということを考えていこうということでございます。
 戻りまして、「その他」とありますが、ここは重要になります。「測定結果を踏まえた作業環境改善のあり方」ですが、ここは健康障害防止など多岐にわたるということから、測定の結果に応じた、設備・作業等の作業環境改善等の健康障害防止措置のあり方については、別途行政検討会の場において検討するということにしております。
 それからB測定も、これは個人サンプラーで可能ということです。
 スケジュールとしては、今年度できたところで、来年度ですが、環境測定士養成テキスト作成、講師養成研修、あといろいろ「別途検討する」ということも来年度の基盤整備事業として予定しております。それから改正省令等の改正作業もございます。そして20年度から養成研修をスタートしまして、改正省令等の施行は2021年度ということで、さらにそこでの先行導入状況を見ながら全面導入の可否を検討するということにしております。
 
(スライド15)
 今後の予定ということで、いま、行政の方で考えていることとしまして、大事なこととして大きく2つございます。評価基準に個人サンプラーによる方法をどうするかということを落とし込まなければならないということと、養成研修ですが、作業環境測定法の施行規則の追加講習などをきちんと定めていかなければならないということから、検討会を開催して、測定結果の評価方法を選定するとか、そうしたことを検討してもらうと同時に、採取方法、検証事項の洗い出し、さらに測定を行う者に対する詳細検討を行うというふうにしております。
 
(スライド16)
 実際、検討会のもとで、先行導入作業に係る測定方法の検証ですが、破過、分粒機能の低下やデザインとか、分析方法の定量下限、検出下限、破過試験、添加回収試験等と同時に、追加的な講習の講師養成講習の実施を考えております。これは平成31年度後半になります。それまでに、研修マニュアルを作り、講師養成のためのテキスト・教材を作っていくということを考えております。
 以上、大きな転換点になる中、個人サンプラーをこの機会に普及していければよいと考えているところではありますが、大事なことは、合理的な策定方法ということでは、過大評価・過小評価の両方があります。個人サンプラーになれば必ず厳しくなるということではなく、逆のケースも結構出てくるのではないかと思います。どちらが合理的かということで、事業場の実情に応じて、選択できるような形になれる一歩になればよいと思っております。
 以上、私からの説明を終わらせていただきます。ありがとうございます。
(司会)
○司会者(西村) 西田室長、どうもありがとうございました。
それでは、最後に、3つ目の基調講演でございますが、「化学物質を安全に取り扱うためのラベル・SDS・リスクアセスメント制度について」、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課、化学物質国際動向分析官の吉澤様、どうぞよろしくお願いいたします。
基調講演3「化学物質を安全に取り扱うためのラベル・SDS・リスクアセスメント制度について」(厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課 化学物質国際動向分析官 吉澤保法)
今、ご紹介にあずかりました、化学物質対策課、化学物質国際動向分析官の吉澤でございます。質問時間をなるべく多く取りたいということで、私は、15分ぐらいで説明したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
(スライド2)
化学物質につきまして、毎年500件前後労働災害が発生しているわけですが、内6割が有害性による事故で、4割が爆発火災等の危険性による事故ということになっております。
 
(スライド3)

化学物質につきましては、厚生労働省の方では、ここにある三角形で化学物質管理を行っておりまして、厚生労働省の方で把握している化学物質が全体で約7万ございますが、そのうちの673物質が、ある程度危険・有害性があるということで、その化学物質の譲渡・提供を行う場合には、ラベル表示、SDS(安全データシート)交付を義務付けているわけでございます。ラベル表示、SDS交付の物質につきましては、その取扱い時にはリスクアセスメントの実施義務がございます。
この物質につきましては、先に説明されましたリスク評価検討会等で一定の危険・有害性があるとなったものについて、この673物質に追加しているわけですが、最近でいえば、昨年の7月から10物質ほど追加されております。
この10物質というのは、平成28年に追加すべきとされた10物質と、それから昨年4月に禁止物質の一部除外ということで、石綿分析用試料等が許可対象になりましたので、その1物質を足して10物質です。
10物質と1物質なので、11物質なのではないかと思われるかもしれませんが、ホウ酸につきましては、従来ありましたホウ酸ナトリウムと一本化しまして、ホウ酸及びそのナトリウム塩という形で対象物質になっておりますので、1個減って10物質ということでございます。
 
(スライド4-5)
これですが、石綿分析用試料を除く物質についてリーフレットを作りました。これは、昨年7月から適用になっておりましたが、作業が遅れてしまい、昨年末にようやくこれを公表することができました。これにつきましてはホームページにも載っていますし、各労働局、厚生労働省の方にこの印刷版がございますので、各団体などで会議に使いたいということでありましたら、労働局もしくは厚生労働省の方にお話をしていただければ、可能な限りご送付したいと思っています。こちらA3表・裏で、いわゆる袋綴じになっています。
 
(スライド6)

化学物質のラベル・SDS・リスクアセスメントにつきましては、このような流れになっており、最初に製造メーカーあるいは輸入業者で化学品を譲渡・提供を行う場合は、ラベル表示、SDSの交付が必要になっているわけです。国内メーカーであれば自ら作っていただき、輸入業者であれば、それを輸入したときに輸入元からのラベルあるいはSDSがあるはずですので、それを和訳していただきます。ただ、一応、国内に流通させるためには、当然、それはJISに準拠していなければなりません。また、SDSであれば、適用法令欄には当然、国内法令を書く必要がございますので、それは補足していただく必要がございます。
次に、中間業者の段階で何か変更がある場合には、当然変更していただくのですが、ただ、買ったものを売るだけであれば、表示者あるいは通知者のところだけを修正いただくだけで、次にお渡しいただくということになるかと思います。
最後に、ユーザーでは、受け取ったラベル・SDSを使ってリスクアセスメントを実施するわけでございます。リスクアセスメントには57条の3に基づく義務物質、それから28条2に基づく努力義務がございまして、それはそれぞれやっていただくわけでございますが、やった結果につきましては、労働安全衛生規則の576条あるいは577条で、衛生基準を守らなければならないという条文もございますので、必ずしもリスクアセスメントの実施の義務だけはあるけれども措置義務はないとは考えず、きちんと衛生基準を守っていただきたいと思います。
また、リスクアセスメントの実施結果につきましては、労働者への周知が義務づけられておりまして、また、労働者教育の中にはそのリスクアセスメントの結果についての周知も入っておりますので、これもきちんとやっていただきたいと思います。
また、リスクアセスメントにつきましては、ユーザーと製造メーカーだけではなく、輸入業者、中間業者もリスクアセスメントを必要とする場合がございます。ここに書いてありますとおり、ただ、買ったものを売るだけであれば、それは取扱いにはなりませんが、小分けしたり詰め替えしたり、あるいは希釈したり等を行う場合、それは取扱いにあたりますので、その場合にはリスクアセスメントの義務が生じます。
 
(スライド7)
リスクアセスメントについて、これはよく使われる資料ですが、危険有害性の特定、リスクの見積り、それからリスクの見積りに応じたリスク低減措置の内容の検討でございます。それらについて、厚生労働省の支援措置が書いてありますが、これはまた後でご説明いたします。
 
(スライド8)
最初に危険有害性の特定ですが、ラベル表示は国際基準でこの9つが決まっています。それぞれ意味がございまして、例えば、急性毒性という有害性では、ドクロマークもしくは感嘆符(!)になります。この違いは、区分1~3までがドクロマークで、区分4が感嘆符でございますが、一番危険・有害性が低いものは「!」でもよいけれども、危険・有害性が高いものには、きちんとドクロマークを使ってくださいということです。
 
(スライド9)
これは、厚生労働省で「ラベルでアクション」ということで、ラベルを見たら必ず危険有害性を確認し、必要に応じてアクションをするという運動をやっております。まずラベルを見て判断してくださいというキャンペーンになります。この「ラベルでアクション」の中では、ラベル教育を推進しておりまして、厚生労働省のホームページに教育テキストのモデルテキストを掲載しております。これについては、また後ほどまとめてお話しさせていただきます。
 
(スライド10)
リスクの見積りについては、今までの話もありましたが、リスクというのは「重篤度×頻度」で決めるもの、あるいは「有害性の程度×ばく露の程度」、いわゆる気中濃度が高くなれば高くなるほどばく露リスクが高まりますので、それでリスクの程度を見積もることができます。
1つの方法としては、日本産業衛生学会、あるいはアメリカの労働衛生専門家会議ですとか、そうしたところが出しておりますばく露限界値があります。それを超えますとリスクが生じますが、それ以下であればリスクは許容の範囲内であるという、これが最も単純なものであります。ただ、これは測定する必要がございますので、測定をしない方法というのもいくつかございます。
 
(スライド11)
今まで、厚生労働省が周知していたコントール・バンディングですが、これは、ILOが開発途上国の中小企業向けに作ったものですので、非常に簡単なものになっております。それよりももっと高度なものとしてはECETOC TRAでとか、CREATE-SIMPLEなどがございます。
このCREATE-SIMPLEついては、後ほど詳しく説明したいと思います。
 
(スライド12)
ラベル表示やSDSの交付に関しては、一応、このとおりに実施しておりますが、この中で「譲渡・提供先から求められれば表示している」というのが非常に多いと思います。求めがあれば表示している、あるいは送付しているのであれば、最初から表示してください、交付してください、というのが厚生労働省の考えでございます。
 
(スライド13)
年々、ラベル・SDSの交付は増えておりますが、ただ第13次の労働災害防止計画では80%以上を目標としておりますので、もう少し頑張りたいところでございます。先ほども申しましたが、「求めがあれば表示している、通知している」は、「求めがなくても表示する、通知する」に変えていただきたいと思うところでございます。
 
(スライド14-15)
それらの情報によってリスクアセスメントをするわけですが、実践率はだいたいこのぐらいで、法定化学物質でもだいたい8割、法定外の化学物質では7割強というところでございます。そして、その「していない理由」としては、「人材がいない」「方法がわからない」が非常に多いわけでございます。
ところで、このデータの左側が化学物質に限らず、全事業所の理由になります。その中から、化学物質を使っている事業所だけを抜き出したのが、この右側の棒グラフでございます。これは、ここにありますとおり「特別集計」ということでございまして、通常の統計調査とは別に行ったものでございますので、これは一応参考値ということで載せさせていただいております。
このとおり、「人材がいない」「方法がわからない」が問題でございますので、厚生労働省ではモデルラベル、モデルSDSを公表したり、あるいは簡易ツールを公開したり、相談窓口をつくったりとそういうことを行っています。また、教育用テキスト等もホームページに載っています。
 
(スライド16-18)
こちらに情報の入手方法がございますが、「職場のあんぜんサイト」で「GHSモデルラベル・SDS情報」というところをクリックしていただきますと、モデルSDSを検索する画面が出ますので、これを活用していただきたいと思います。
また、制度的なパンフレットも厚生労働省のホームページに載せております。
「職場のあんぜんサイト」にはツールも載っておりますので、こういうものもご活用いただきたいと思います。この中で特にCREATE-SIMPLEについては、去年3月に載せたばかりの非常に新しいものでございまして、また非常に使いやすいということで、厚生労働省の方でも、現在、普及に努めているところでございます。
 
(スライド19)
特徴としては、それほど化学的知識がなくても使えるように、ごく簡単なものですが、コントロール・バンディングよりも少し入力項目を増やして、措置をリスクに反映させるという点がコントロール・バンディングとは違うところです。
時間になってしまいましたので、省略しながら説明していきたいと思います。
 
(スライド20-26)

CREATE-SIMPLEでリスクの見積りを入力するのですが、こちらの物質一覧から物質リストを表示させて選択していただき、それによってばく露限界値、GHS分類情報、いわゆる危険有害性情報が自動的に入るようになっています。ただ、これは7万物質すべて載っているわけではございませんので、必要に応じてここは手入力することもできます。沸点ですとか、取扱量、含有率も入力していただきます。また、作業条件として換気条件や、どのくらいの面積に塗布しますかというような欄もございます。換気条件というのは、CREATE-SIMPLEには詳しくは載っていないのですが、スライド24が換気条件AからFまでの概要でございます。
さらに作業条件として作業時間やマスクを着けるか着けないかということも入力できるようになっております。その結果、この「リスクを判定」をクリックしますと、リスクレベルが自動的に計算されます。この「実施レポートに出力」をクリックしますと、エクセルの次のシートに出力されます。
 
(スライド27)
これが次のシートですが、ここは特にCREATE-SIMPLEの特徴ですが、今の条件を変えて入力し直すことができます。例えば換気レベルをEにしますとか、新たに入力し直して、ここの「再度リスクを判定」というところをクリックしますと、「対策後」ということで、変更後のリスクが出ます。
 
(スライド28-29)
この場合、換気レベルをDからEに引き上げたところ、リスクレベルが3から2に変わったということです。また、作業条件を変えても同様にリスクが下がります。
 
(スライド30)
これは、実施レポートの下の部分ですが、ここは自由記載欄になります。ここには自由に記載していただいて、記録に役立てていただくということです。
そして、ここの「結果の保存」をクリックしますと、記録画面に今までのデータが全て転記される形になっています。
このように、CREATE-SIMPLEは非常に使いやすく、措置を非常にわかりやすく見ることができますので、リスクアセスメントをする上で非常に有用ではないかと思っています。
 
(スライド31)
分からないことがありましたら、こちらに電話相談窓口を置いておりますので、技術的なことについてはこちらに御質問をいただければと思います。これは3月20日までとなっておりますが、平成31年度も4月1日から新たに委託事業を継続いたしますので、4月1日から同じように相談できる予定でございます。この電話番号、メールアドレスにつきましても、おそらく4月以降もこのまま変わりないはずですので、厚生労働省のホームページで平成31年度の内容をご確認いただければと思います。
どうもありがとうございました。
(休憩)
○司会者(西村) 吉澤様、ありがとうございました。
それでは、ここで15時15分まで20分弱休憩時間を取りたいと思います。お手元のピンクのアンケート用紙でございますが、御質問等をご記入いただきまして、休憩時間が終わるまでに事務局の者にお渡しください。
では、休憩時間とさせていただきます。
意見交換(【コーディネータ】東京理科大学薬学部 教授 堀口逸子)
○司会者(西村) それではお時間になりましたので、後半の部・意見交換会を始めさせていただきます。
コーディネータは、先ほどご紹介いたしました東京理科大学薬学部教授の堀口逸子先生にお願いしております。パネリストには、基調講演をいただきました帝京大学医療技術学部口授の宮川宗之先生、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課、環境改善室の西田和史室長、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課、化学物質国際動向分析官の吉澤保法様に加えまして、厚生労働省労働基準局化学物質対策課、化学物質評価室室長補佐の増岡宗一郎様にご登壇いただきます。
質問が大変多く、予定は4時でございましたが、4時半ぐらいまで先生方からご回答いただきたいと思います。
それでは、堀口先生、よろしくお願いいたします。
 
○堀口 よろしくお願いいたします。
本日は、たくさんの質問をいただきましてありがとうございました。
お手元に赤と青の紙が残っていると思いますが、意見交換会にこれまでご参加の経験のある方は赤で、そうではない方は青の紙を挙げていただけますでしょうか。
わかりました。来たことのない方が多いですね。
では、1、2、3の講演の順番でいきたいと思います。質問が多いので、答えも簡潔にお願いします。
1番からいきます。
リスク評価における一次評価値のER1と二次評価値のER2の大小関係がER1、ER2の方が大きいに対して、作業環境測定における第一評価値EA1と第二評価値EA2の大小関係が、EA2がEA1よりも小さいので、お客様に説明する場合に混乱させてしまいそうです、という話です。
 
○宮川 第一評価値と第二評価値ですが、作業環境測定の結果を評価する場合のものと、リスク評価の一次評価値、二次評価値はまったく別のものなので混乱のないようにお願いします。一次評価値というのは、動物実験等からNOAELを求め、安全係数で割って、労働時間と実際の動物実験のときのばく露時間の補正をして、デフォルト値を使って計算したのが一次評価値です。そして二次評価値は学会等の許容濃度等を使っています。
作業環境測定の方は算術平均の推定値と上側5%の推定値という扱いだと思いますので、全く意味が違います。誤解のないようにお願いいたします。
 
○堀口 ばく露評価実態調査の条件がわかりません。局所排気装置がない場所では高濃度で当たり前、特殊な現場で過去実践されているエチルベンゼンの船底の塗装、と書いています。
 
○宮川 リスク評価で行っている場所は、言い方としては「個人ばく露」という言い方になっていたかと思いますが、それで実際に作業をしている状況で測定をしていると思います。
 
○堀口 付け加えて、どうぞ。
 
○増岡 局所排気装置など措置を講じている場合にリスクが低いとの結果が出たとして、果たしてこれをリスクが低いという評価でよいのかということも含めての御質問かと思いますが。
 
○A氏 その逆です。特殊な条件というか、局所排気装置がないようなところで実際に測定して、高い測定値が出て、当たり前じゃないかという話です。
 
○増岡 国のリスク評価では、まず、スクリーニングとして初期評価を行って、リスクが高いおそれがある場合は詳細評価を行った上で、必要があれば規制などを検討していくという流れになります。実態調査では、局所排気装置を設けている場合もあれば、設けていない場合もあります。現行の規制の下、対策として十分なレベルに達しているものであれば、特別規則での規制など上乗せしていくということにはならないというところを含め、リスクが低いという判断をしております。たしかに条件は事業場によって異なるところはありますが、そこはあくまでも現状、どのような対策を講じているかを見させていただいて、その上で、上乗せの規制が必要か否かということを見ています。
 
○堀口 全数調査ではないはずです。ご協力をいただかないとリスクを評価ができないことになっているので、皆さんご協力くださいと厚生労働省の方からいつも呼びかけをしていますが、評価結果を見ていただければわかるように、Nの数がものすごく少ないですよね。それは、全ての会社が協力しているわけではなく、局所排気装置がないようなところは、申し訳ないですが、協力していないのではないかという想像はつきますよね。
それで、正確な評価をするには、全数に近いデータがあることが大前提になっているので、皆様の方には、どうかリスクアセスメントへのご協力をお願いしますというのが、リスク評価をしている宮川先生のお立場だと思います。
 
○宮川 そのとおりで、なるべく実態が分かればと思います。ただ、何百カ所も手を挙げられると逆に予算的に困ることもあります。
 
○堀口 初期リスクならびに詳細リスク評価の結果、リスクの高い化学物質については、特化則に指定される傾向にあるのでしょうか。
 
○増岡 初期リスク評価はスクリーニング的なもので、作業を分けて評価をするようなことはしておりません。その物質を取り扱っている作業でリスクが高い可能性があるか否かというところをまず見ていきます。その上で、その可能性があるということであれば、詳細リスク評価に移って、事業場の特別な事情によらない作業共通のリスクがあるか評価することになります。詳細評価の結果リスクが高い作業については、特化則への規制を検討します。
 
○堀口 評価基準でACGIHや日本産業衛生学会の許容濃度などで明確になっていればよいが、安衛法で通知義務のある673物質などで、基準値が明確になっていない場合は、どのように評価するのでしょうか。
 
○宮川 基本的には、二次評価値がそういうところから得られないものは、今まで対象にはなっていなかったと思います。
 
○増岡 おそらくそういう場合が多いかと思います。二次評価値の決め方として、許容濃度があるものについては、それを優先して採用していきます。ない場合につきましては、動物試験等の結果を勘案しながら評価レベルを決定していくことになります。現状では、あまりそのようなケースはないとは思います。
 
○堀口 それから、経皮ばく露についての御質問がいくつかあります。
皮膚吸収が学会などで設定されている場合は、経皮ばく露が評価されるということですが、これはトルイジンによる膀胱がんが引き金であるという説明がありました。たしかに、福井の工場への調査時には、経皮から吸収されて膀胱がんに至ったという結論に導かざるを得ない結果しか得られなかったようですが、発がんするまでには長い時間が必要かと考えます。
過去に遡っても経皮や吸入の影響はなく、経皮から吸収されたトルイジンが発がんの原因なのでしょうか。本当に経皮による吸収が発がんにまで至るのでしょうか。過剰反応ではありませんか。
 
○宮川 個別の具体例について、私はお答えできる立場にはありませんが、そもそもがリスクアセスメントをするときに、ばく露経路がさまざまある場合には、それをトータルに考慮しないと予見可能なリスクを回避する、リスクアセスメントにつながらないと思います。すなわち、これまで特段取り立ててこなかった方が本来からいえばおかしいのであり、私は、経皮を考慮することが、過剰反応には当たるとは思いません。
ただし、経皮ばく露を定量的に評価するのは非常に難しく、きちんと評価しようとすれば、気中濃度から考えると、血中濃度や尿中の濃度がこんなに高いのはおかしいという観点から見なくてはなりません。ただ、リスクアセスメントをするために、わざわざ全員から血液を採るとか、採尿をお願いするというのは大変なので、定量的な評価が難しいということもあり、これまで行われてこなかった部分があると思いますが。
本来は、全体のばく露を評価しないとリスクアセスメントになりませんから、私は過剰反応ではないと思います。
 
○堀口 今の話に関連して、経皮吸収に関する知見や作業実態のデータを蓄積していくとのことだが、定量的なデータを集めるには、何らかの例示が必要と思われる。諸外国で実施されている例なども紹介いただけると、職場の作業環境管理という観点で、今後の取組に生かせると思います。
経皮ばく露の定量的な評価があれば、よりわかりやすいです。
経皮ばく露の定性的な評価基準がまとまった資料があればご教示いただきたい。
以前に評価された物質で、経皮ばく露評価はなされていましたか。なされていない場合、再評価する予定はいつ頃ですか。
 
○宮川 少なくともこの事業では、これまで経皮吸収について定量的な評価をしたということはなかったと思います。それから、現段階では、いろいろな情報を集め、可能な範囲でなるべくきちんとした定量的な方法でやるのが望ましいと思っています。定量的、定性的な方法も含めてどちらも検討中という状況です。
 
○増岡 すでにこれまでに評価したものにつきましても、経皮からの吸収の可能性があるものについては、順次、有害性も含めて、今後評価の対象にしていきますが、そこは順次、優先順位を考えながら実施していくことになろうかと思います。
 
○堀口 それでは、大量に質問が来ている2番目の個人サンプラーに関する質問にいきたいと思います。
まず、個人サンプラーとはどんなものか。被験者が携帯しているだけなのか。何かしらの吸引動作があるのか。価格帯はどのぐらいか。対象物質によっても違うと思うけれども。複数メーカーが取り扱っているのか。
 
○西田 具体的に、どこのメーカーでどういうものを扱っているのかということまでは当方としては把握しておりません。基本的に胸元に着ける、呼吸器に近いところの空気中の物質を吸引できるようなもので、アクティブサンプラーとかパッシブサンプラーという名前のものもあると聞いております。そういうものであるということです。
あとは、特定のメーカーしか扱っていないのかという御質問ですが、これについては、諸外国では個人ばく露の評価、日本でも個人ばく露評価としてリスクアセスメントで活用されているところもあり、複数の外国メーカーも含めて扱っているところは認識しております。
 
○堀口 先ほど、ご説明にもあったと思いますが、個人サンプラー測定実施は、A・B測定は行わなくてもよいのか。個人サンプラーの具体例を教えていただきたい。個人サンプラー測定の場合、デザインが大容量にならないか。気中への発散の変動が大きいとき、作業者の移動が大きく、デザインが困難である場合の具体例を教えてほしい。
 
○西田 まず、最初の質問、個人サンプラーを行ったらA・B測定は行わなくてもよいのかという御質問ですが、これは選択性ということですので、そのような形で現状考えています。A・B測定の補完で個人サンプラーをするのではなく、いずれか、これは作業環境測定士の意見を踏まえて事業所が決定することにしております。
それから、デザインが大変でないかということですが、確かにそうした点はあろうかと思います。そのために、基盤整備事業としてデザインの仕方、やり方を含めて、追加講習が必要と考えているところでございます。ただ、個人サンプラーについては、個人ばく露評価が目的かと思いますが、4割ほどの作業環境測定機関で活用経験があるというデータもこちらでは把握しておりますので、ある程度、個人ばく露測定評価という形でノウハウをお持ちであれば、全く初めてのところからやるということにはならないのではないかと思っています。
 
○堀口 A・B測定か個人サンプラーかというのを事業者が作業環境測定士の意見も踏まえ選択するとありますが、どちらが良いか、作業環境測定士が判断できるよう、基準となるものが作成されるとありがたい。作業グループの特定には難しい場合もありそうなので、事前にQ&A集があるとよいです。
個人サンプラーで測定する場合と、A・B測定をする場合の選択定義があいまいであれば、安易に費用の安い方で測定することになりそうだと感じるのですが、というご意見があります。
前の会場でもあったのですが、個人サンプラーで8時間測定する場合、8時間の記録がしっかりできるか疑問に感じる。測定者、作業者のどちらが記録をするとしても負担が大きいのではないかと。作業場のB測定に比べ、個人サンプラーなるものは捕集の破過が懸念されるが、捕集剤の交換、トラブルの対処等を考慮すると、測定士が8時間現場にいなければならず、実現は困難かと思われますが、どう考えればよろしいでしょうか、という御質問です。
 
○西田 個人サンプラーかA・B測定かの選択基準につきましては、この報告書にありますとおり、当然、作業環境測定士のみではなく、産業医を含む衛生委員会での作業環境測定機関の評価や意見に基づき、アドバイスしていくことになります。選択の際に費用の低い方に流れるのではないかという点については、確かに指摘されるところでございます。
よく言われるのが、これまで10分でやっていたところ、8時間ということになるとどうしてもA・B測定の方にいくのではないかということではあるのですが、ここはいろいろと考えようにより、合理的な作業環境の測定ということで、8時間で見るとそれほど高くはないケースも出てきて、そちらの方が合理的であるということであれば、過大評価をせずに出るような場合には、個人サンプラーを選ぶというケースが出てくるのではないかということが1つあります。
それから複数作業場を測定しなければならないということになりますと、A・B測定では各作業場に6点、6点、6点と設けますと18点ですが、これが同一作業者グループが3人ぐらいであれば3人が着ければよいということで、個人サンプラーが選ばれるようなケースを考えております。あとは、リスクアセスメントと同時並行的にやる場合には、個人サンプラーを選んだ方が有利といいますか、当然、基本的には労働者の健康を守るという目的のため、その合理的な選択肢としてあるのではないかと考えております。そのあたりの基本的な目安や参考となる考え方については、次年度の基盤整備事業において検討するとともに、追加講習の中でも入れ込む方向で考えています。
捕集剤の破過の問題ですが、このあたりは、おっしゃるとおり、この報告書にもありますとおり、破過試験、添加回収試験等についての分析法の検証を実施するということにしております。その中で、いまお話のあったQ&A、こういう場合はどういう点に留意しなければならないかということをきちっと明記しなければならないと思っております。
それから、どうしても8時間いなければならないのかというお話でございますが、このあたりも、報告書にもありますが、基本的には装着するとき、ここは絶対にいなければなりません。それはA・B測定も同じだと思います。あとは、どの程度オフにするときや、行動記録に関しても、一応、事業場の担当者の職氏名を確認した上で、ある程度信頼してやらなければならないところもあるのではないかと思われます。事業場の実態に合わせてやっていくということも含め、追加講習の中でQ&Aというものも必然的に作っていかなければならないと思っております。
 
○堀口 Q&Aだけではなく、事業者側でのメリットについて、事業者側で実施する際の判断基準や、事業者側への説明について、できれば、ホームページなどで説明していただきたい、というご要望もあります。
 
○西田 選択にあたっての判断基準ということですね。
 
○堀口 多分そうだと思います。
 
○西田 判断基準となる基本的な目安や参考となる考え方については、次年度の基盤整備事業において検討するとともに、追加講習の中でも入れ込む方向で考えています。なお個人サンプラーによるメリットとしては、大きく3つですが、複数作業場の場合と、濃度の低い時間帯があるという場合には8時間にすることによって過大評価とならない場合、それからリスクアセスメントと同時にできるという点です。
 
○堀口 先ほどもありましたが、A・B測定または個人サンプラーによる測定は事業者が選択するということであるが、その選択の合理性はどのように評価をするのか、同じ事業場内でもA・B測定と個人サンプラーによる測定が混ざっても問題はないのでしょうか。
 
○西田 混ざってもというのは、両方やっても問題ないというご趣旨でしょうか。
 
○堀口 それか、同じ事業場内で……。
 
○西田 わかりました。同じ事業場の中である事業場ではA・B測定をやって、ある現場は個人サンプラーによる測定をということですね。もちろん、それはあり得ると思います。そこは状況に応じてだと思います。複数場所を移動するという場合、例えば同じ物質を扱うにしても発散源とともに移動するもの(の場合は個人サンプラーによる測定)、また、あまり移動しないものであれば、同じ物質であってもそこはA・B測定の方が合理的に測れるということではA・B測定にするということです。正直申し上げて、行政側で1から10まで全部決めるということはなかなか難しく、当然、事業場に応じて実情が異なりますので、そこは、いろいろなケースに応じてやってもよいのではないかと考えております。
 
○堀口 似たような御質問になってきているのですが、休憩時間などでポンプを一次停止した場合、測定時間が8時間未満となりますが、問題はありませんか。
 
○西田 そこは問題ありません。労働時間の中で当然、休憩時間はありますので、その辺りは、問題はないと考えております。又、作業時間の短縮というところの運用の中で、柔軟に対応は可能かと思っております。
 
○堀口 先行導入の後、広範囲な作業場に個人サンプラーを導入するとき、個人サンプラーを用いた作業環境測定をするか否かの判断は事業者がするのでしょうか。それとも義務化でしょうか、あるいは測定士の判断になるのでしょうか。
 
○西田 基本的に、今回の検討においては、作業環境測定という法定の制度は動かさずに個人サンプラー測定を選択制で導入するという前提で検討いたしましたので、作業環境測定士の意見を踏まえて事業者が選択するということで考えております。
 
○堀口 「義務化」という言葉を使われている方が何人かいらっしゃるのですが、いつまでにどの程度まで義務化されるのでしょうか。
 
○西田 義務化ですから、個人サンプラーによる作業環境測定ということになろうかと思います。個人ばく露測定は義務化されたリスクアセスメントの1つのツールとして用いられているものでございますので、その観点から申し上げますと、具体的には2021年度、2022年度に、基盤整備事業でその体制が整ったということが前提ですが、個人サンプラーによる作業環境測定が、一部の先行導入作業、2つの作業について義務化されるということです。
 
○堀口 また、元に戻りますが、個人サンプラーを用いた測定を実施する人は、作業者に装置を取り付ける人は、第二種測定士でもよいのか。第一種測定士でないとダメなのか。
 
○西田 第一種と第二種の違いは、分析できる範囲の違いでございます。個人サンプラーとA・B測定と大きく違うのは、最初のデザイン、事前調査の部分になってきますので、そういう意味から、この検討会の中では第二種でも可とするというように議論が進みましたので、そのように考えております。
 
○堀口 個人サンプラーを着けた作業者が測定対象外の作業を行った際、その時間を除くとなっていますが、やはり測定士などが記録を録らないと正確に測定できないような気がします、というご指摘があります。
 
○西田 もちろん、そういう形で測定士が立ち会ってやるということを拒むものではありませんが、そうしますと、どうしても測定士が拘束される時間が長くなります。この報告書の中では、その担当者の職氏名を確認した上で、ある程度、事業場の方に責任を委ねていくという形で進めていかざるを得ないのかと思っております。
 
○堀口 個人サンプラーの測定時間は、原則4時間以上、少なくとも2時間以上の測定とありますが、もう少し数字(時間)をきちんと決めていただきたいです。生産性の向上に直結しにくいので、法律がなければお客様からの要望がありません。
 
○西田 きちんと決めるということでは、繰り返し作業の場合は少なくとも2時間ということで、ある意味では最低限を定めるということになりますが、これ以上数字を決めることが適当か、日本産業衛生学会のガイドラインも参考にしつつ、ご意見として承りたいとお答えせざるを得ないと思います。
 
○堀口 同じ測定対象物質、同じ作業をA・B測定と個人サンプラーで異なる事業者がそれぞれ測定した場合、どちらが優先されるのか。相関は取っていくのか。
 
○西田 まったく同じ事業者で、同じ作業をやっている方で、例えば去年は個人サンプラーをやって、今年はA・B測定ということですか。
当然、同時にやられることはないかと思います。もし同時にやられるとすれば、これは作業者の健康や安全を考えれば、悪い結果を取っていただくと、行政としては答えざるを得ないと思います。ただ、相関を取るのかというところになりますと、これは難しいのですが、そこはいろいろな作業場の環境、合理性ということを考えまして、これまでA・B測定でやっていたけれども、これからは個人サンプラーにしようということであれば、それはその都度、測定した結果に基づいて措置をしていけばよいということです。過去のものについて相関を取らなければならないと、そこまで求めているものではございません。
それから、もう1つ、これは参考にしていただきたいのですが、きょうはご紹介できませんでしたが、同じ作業場で個人サンプラーによる測定と、A・B測定でやった結果の相関についてどうなったのかということについて、これは平成24年、25年に中央労働災害防止協会に委託した実証研究事業がございます。もし関心のある方がおられましたら、その部分のデータを後ほどメールで提供することも可能です。いわゆるベリリウムなど低濃度物質はどちらかというとA・B測定の方が高く出て、個人サンプラーが低く出ました。吹き付け塗装や溶接の方は、作業者と一緒に移動するということで、逆にA・B測定の方が低く出て、個人サンプラーが高く出ました。相関関係ということではそうしたデータはあります。
 
○宮川 フロアにいるつもりで発言をします。
国が実施するリスク評価の方法ですが、個人ばく露測定、これは個人サンプラーによる測定と立場は違いますが、実際には同じことをやっているわけです。個人ばく露測定と作業環境測定A測定を両方やっています。今日の資料の中にもその両方をやられているものが載っており、物質によっては、A測定の方が高く出ている場合もあります。
 
○堀口 先生、それは何ページでしょうか。
 
○宮川 スライド番号52を見ても、これはA測定の中のこの「最大値」という意味が、1つしかないからだと思いますが、これも両者の関係を見る1つの重要なデータだと思います。この国の事業はもう10年近く行われているので、相当程度このデータは溜まっていますから、ぜひここを基に設計をして、資料にしていただければよいと、常々思っています。
 
○A氏 それは公開できるものでしょうか。ばく露実態調査で採取したデータでしたか。
 
○宮川 そうです。
 
○堀口 情報公開請求されたらしなくてはならないのではないでしょうか。
 
○A氏 ばく露実態調査は公開してもよいという前提でやっているのでしょうか、
 
○増岡 統計処理等しているものについては問題ないと思いますが、個々の事業場の実際の測定データについては、そのままというわけにはいかないのではないかというところです。
 
○堀口 誰かやってみますか。
 
○A氏 作業環境測定協会が国立大学などいろいろな大学を調査して、その中でもA測定が高くなって、個人ばく露が低かった、あるいはその逆もありますが、そういうデータもあり、報告書に出ています。ですから、報告書を見ていただければ公開されていますので、それも使えると思います。
 
○堀口 報告書の名前かどこを見ればよいのでしょうか。
 
○A氏 いますぐには出てきません。後で。
 
○堀口 ではそういう報告書があるということで、そのような報告書を参考にして決めていただければよいと思います。
 
○西田 いずれにしても、相関関係ということであれば平成24年、25年の中央労働災害防止協会に委託した国の事業で、いろいろな物質について検討した結果、まん中に並んでいるもの、あるいはA、Bの方に大きく振れているもの、個人サンプラーによる測定の方に振れているものと、傾向は出ております。
 
○堀口 時間の話もありまして、8時間の行動経路の記録は大変ではないかという話と、15分の測定を管理濃度で評価するのはどうでしょうか、測定の費用が高くなるのではないでしょうか、また、作業者グループが1人の場合に3日間必要なのは大変ですと。それから8時間の途中で化学防護衣を着脱することがあって、着脱時間はわからないけれども、測定装置の取り付けは作業環境測定士が実施しなければなりませんか。個人サンプラーの測定が8時間、条件において2~4時間というところが現在のA・B測定との両立の難しさを感じますと。
それから、個人ばく露測定との位置付けの違いについて、もう少し実例を交えて整理をお願いしたいということです。
また、就業時間は基本的に7.75時間で、かつ、昼休憩をはさむから原則8時間測定というのは、なかなか難しいのでは。そして、化学物質取扱い作業時間となると、より少なくなるため、ほとんどのケースで2時間測定になるのではないでしょうか、と同じように現場の話が何枚か出ておりますので、Q&Aを作るときは、そこに触れないと大混乱が起こるような気がします。
それから、作業環境測定に個人サンプラーを適応した場合、結果として第1から第3管理区分と評価されるのは同様でしょうか。従来方法と併用して結果が異なった場合は、どう理解すべきでしょうか。サンプラーは対象の化学物質により異なるのでしょうか、という御質問なのですが。
 
○西田 申し訳ありません、全ての質問を覚えていないのですが。
 
○堀口 最後の質問だけで結構です。
 
作業環境測定に個人サンプラーを適応した際には、結果として第1から第3管理区分と評価されるのは同様でしょうか。
 
○西田 第1から第3までの管理区分の評価は同様です。
個人サンプラーとA・B測定で評価が異なった場合という質問でしたでしょうか。
 
○堀口 従来方法と併用して、結果が異なった場合です。
 
○西田 異なった場合、悪い方を取っていただくということになると思います。そこはA・B測定でもBで悪く出れば悪い方に評価していくということになりますので、併用した場合はそういうことになると思います。
それから最初にあった8時間の行動記録は大変ではないかという御指摘ですが、その辺りについては、検討会の報告書で書いた以上のことはお答えできないのですが、確かにここはどうするのかということで、各論の中で、担当者を決めてやっていくとか、作業時間の記録を取ってもらうとか、そのようにして、できるだけ測定士さんが拘束されないようにはしたつもりですが、ただ、現場ごと、ケースバイケースでいろいろなことが出てこようかと思いますので、結論から申し上げますと、このあたりは測定士養成研修の中でQ&Aも含めて整備していく必要があると思っております。そのためには、まず講師がきちんと理解していなければならないわけですから、そのための基盤整備として、来年度は講師養成研修をやっていきますので、そこで具体的な事例も集めながら、現場が混乱しないように検討していきたいと思っております。
 
○堀口 リスクアセスメントとして活用した場合は、有機則、特化則以外の化学物質も対象となるため、評価が明確になるのでしょうか。
 
○西田 特別規則で規定したのは第1、第2、第3の管理区分に分けて、そこから改善しなければならないということで、リスクアセスメントの場合は、リスクレベルを下げるということが第1目的にあるわけです。ですから、そのための見積りに使って、そこは事業者さんでやってもらうのがよいかもしれません。
 
○吉澤 管理濃度が存在しないので、当然ばく露限界値や許容濃度といったものを代わりに使って評価していたと思います。
 
○西田 ですから、ばく露限界値よりも下げればよいわけですよね。
 
○吉澤 そういうことです。
 
○堀口 作業内容によって個人差が非常に大きくなる可能性があるのですが、その際の判断はどのようにするのでしょうか。
 
○西田 作業内容によって変わるケースということですね。今の御質問というのは、同一作業、同一作業グループをどのように取るかということになろうかと思います。そこは本当に事業場の作業態様によって千差万別で、この場で、こういう場合にはこうだというところを決めるのは現段階では難しいと思います。
したがいまして、こちらも、いろいろな事例を集めながらQ&Aを作り、歩きながら考えるということになると思います。基本的に、こちらでイメージしておりますのは、個人ばく露のガイドラインのSEGというのを1つ目安として描いているものはございます。ただ、それが欧米などで実際にどのように運用されているかということを、きちんと情報収集しながら、報告書にも書いていますが、これは法定ですから、やはり最低ラインをきちんと決めておかなければならないという認識を我々は持っておりますので、決めていきたいと思っております。
 
○堀口 サンプラーそのものですが、サンプラーは対象の化学物質によって異なるのでしょうか、という御質問と、防爆のものはありますでしょうか。
 
○西田 同じ人が異なる物質を扱っていて、異なる物質を採取するということになりますと複数着けていただくことになるか、あるいは日を違えてやっていただくことが必要になります。防爆のものがあるかどうかですが、すいません、こちらでは情報はありませんが、委員をやっていただいている中央労働災害防止協会の方で、個人ばく露実態調査をやられているということで、いろいろなサンプラーに関しての情報をお持ちのようですから、そこは確認しておきたいと思います。いずれにしましても、大事なことは、作業者が装着して、危険が伴ってはいけないということが大前提にありますので、そこを注意して最低基準としてどういうものでなければいけないのか、定めるべきは定めていく必要があると思っております。
 
○堀口 パッシブ方式も可能でしょうか。
 
○西田 同様な御質問はあるかと思いますが、固体捕集でそれで採れるというものであれば可能ではないかと考えています。これまでA・B測定ではあまり想定されていなかったと思いますが。
 
○堀口 吹き付け塗装作業が混合有機溶剤で実施される場合、個人サンプラーによる作業環境測定は実施してもよいのでしょうか。また、捕集剤、脱着溶媒などの関係で、1人の作業者に3台以上吸引ポンプを着けてもらう必要がある場合、作業の妨げになると思われますが、何かよい方法はありますか。
 
○西田 たしかに混合有機溶剤も法定であれば、A・B測定でもやらなければならないかと思います。ただ、問題なのは3種類以上になって、それを3つ着けるとなると負担であるということかと思います。
これは、これまでの検討会ではあまりそういった議論はなされていなかったところでございまして、また、基盤整備事業の中で検討会を開く予定にしておりますので、そこでそういったご懸念をどうすべきか、要は、作業の妨げにならないような形で装着していただくなり、小型のものを使っていただくということを検討したいと思います。あるいは、繰り返し作業ということであれば、時間帯をずらしてやるという方法もあるかもしれません。
 
○堀口 環境状況を管理する測定方法と、作業者を対象にしたばく露評価をどう混ぜ合わせて評価するのでしょうか。
 
○西田 我々は、今回、作業環境測定のツールとして個人サンプラーを用いるということを目指して検討してきたわけですが、この報告書の注)書きでお話しいたしましたように、個人ばく露評価にも活用できるということでございます。こちらがイメージしておりますのは、測定して得られた結果を、作業環境の改善、管理区分に合わせてどうかということに活用する場合と、それから個人ばく露でどれぐらいばく露したかということで使われる用途があって、それぞれ違いますが、それを1回の測定でそれぞれの用途で使えるのではないかと思っております。
 
○堀口 私どもが関与する事業場は、ほぼ1、2名が有害作業に従事しています。複数日にわたってサンプリングするような方法は考えられませんか。
 
○西田 もちろん、そこは考えなければいけないのではないかと思っております。おっしゃるように、同一作業グループが1、2名というところが結構あるような感じです。そうすると、その1、2名の1日のデータだけで、先ほどの第一評価値や第二評価値が取れるのかという問題が出てきます。検討会の中では3点は必要ではないかという意見もあり、そうなりますとどうしても複数日にわたって取るということになります。ただ、この複数日というのは、現行のA・B測定においても複数日で取るという仕組みにはなっています。実態としては1日でやられるケースが多いかと思いますが、そういう意味では、複数日ということも考えられると思っています。
 
○堀口 塗装ブースでの作業があるのですが、送気マスクを着用して作業しているところや、局所排気装置での塗装を行っていると、個人サンプラーを装着する業務が見当たらない。1-ブロモプロパンのように、有機則になっていない物の扱いに使用できたらと考えているが、職場作業者でばく露評価結果が確認できない。
 
○西田 そうした有機則の対象になっていない物質について、きちんとリスクアセスメントをされたいということであれば、個人サンプラーを用いて個人ばく露評価をされて、それをリスクの見積りに活用していただくのはよいことではないかと思っております
 
○堀口 西田室長は、WHO、IOHAから説明を求められた場合、個人ばく露測定と同じではないかと言われたら、どのように説明されますか。
 
○西田 個人ばく露測定と同じではないか、と聞かれたら、確かにやり方としては同じということになります。ただし、作業環境測定制度というのは日本オリジナルのものだと聞いておりますので、法定義務としてやっており、目的が違うとお答えしようと思います。
 
○堀口 法定義務のところは、作業環境測定されているので高くても1.5倍程度で、1日8時間未満であれば高濃度となることはない。図5の説明例が適切でないのではないでしょうか。
 
○西田 先ほどもお話がありましたが、ここは今のA・B測定、要は短時間測定というのは、B測定相当のものと捉えています。そういうことから、短時間の測定が必要な場合とそうでない場合ということを記述しました。図5については、この例が適切か否かということはありますが、最も高い濃度にばく露するというケースがこの図5の中では右上のところに出てくると、ここを短時間測定すればよいという趣旨で申し上げました。ただ、どういう意味でこのように記したかといいますと、個人サンプラーであれば複数の作業場を1回で測定でき、評価もできます。そこで、8時間測定では管理区分1とでましたと、それで短時間測定で管理区分3と出た場合、この小さいところだけを下げればよいという、そういう趣旨で記したつもりです。
 
○堀口 ACGIHは、ACGIHの定義するルールで測定・評価しなければばく露限界値TWAを使うことを認めていません。それでも、個人サンプラーで行われますか。
 
○西田 ACGIHでやられているのは個人ばく露測定・評価だと思います。目的を個人ばく露測定・評価のために使うのであれば、ACGIHのルールに従ってやっていただく必要があろうかと思います。一方、我々が法定の、日本の安衛法の中で作業環境測定としてやる場合は、1.5倍とかそこでやればよいのではないかと思います。
それから、管理濃度を使うのはどうかということですが、これも作業環境測定として個人サンプラーを用いて測定する以上、管理濃度をA・B測定と同じ指標で使うのが妥当ではないかという議論が検討会でありました。確かに、その中でも日本産業衛生学会ガイドラインが用いられているばく露限界値や許容濃度とか、新たな概念を設けてはどうかという議論もありましたが、そうなるとダブルスタンダードになるのではないかという話もあり、結果として管理濃度に落ち着いたということです。
 
○堀口 講習について御質問がきております。
作業測定を行う場合、講習を受けた者しか個人サンプラーを使用した測定ができないのか、またその場合、講習を受けた者が1人いれば、ほかの作業環境測定士にもその講習を受けた者が教育をして、それで教育を受けた測定士も個人サンプラーを使用した測定ができるのか。
 
○西田 前提として、測定士の方もお忙しい方ですから、それぞれ測定機関に属しているとしても、1人の方が事業場に出向かれるかと思います。そのような形態で動かれる以上、単独で行かれる測定士には全員受講していただく必要があると考えております。といいますのも、お話の中で申し上げましたが、デザインや事前調査、その辺りがこの作業環境測定のルールの中でやっていく上で難しい部分があるのではないかということですし、また、選択をどうするかというのをどう考えていくのかというところもございますので、基本的に同じ測定機関であれば、機関内での伝達ということもあるのかもしれませんが、基本は全員に受けていただきます。
ただ、作業環境測定機関の方が複数で行かれる場合は、誰か一人受けていればよいというふうには思っております。
 
○堀口 測定士の養成講習で実務経験年数を条件に定める必要はありますか。
 
○西田 測定士の資格をお持ちであれば、実務経験は考えておりません。
 
○堀口 個人サンプラーを用いた作業環境測定を行う者への追加的な講習の参加資格者は第1種作業環境測定士のみで第2種は不可か。
 
○西田 いえ、第2種も可能です。
 
○堀口 何単位で何日間の教育でしょうか。
 
○西田 これも、今のところの制度設計として決めているのが、資料の14ページになりますが、3日間18時間ぐらいを考えております。お忙しい方であるということと、ある程度、分析、サンプリングのノウハウもお持ちであると思いますし、分析については特に新しい要素もそれほどないであろうということから、3日間ぐらいで十分できるのではないかというのが検討会ではまとまったところでございます。ただ、これから講師養成講習などで検討していく上で、当然ながら測定士によって能力にバラツキも出てくると思いますので、一部省略できるようにするとか、追加的に何かやるとか、そういうことは出てくるかもしれません。
 
○堀口 8時間の話がもう1枚ありました。立ち会いを行わない場合、測定の評価は正しく行えますか、それから労働者の行動を確認する方法として、カメラだけではなくヒアリングでもよいのでしょうか。
 
○西田 ヒアリングですか……、そのあたりはケースバイケースで柔軟に運用していく必要もあるとは思っております。カメラだけでよいかというところですが、そこは事業場との間での信頼関係なり、そこも含めて、担当者の職氏名をある程度確認しながらやっていくというところを担保した上で運用していくのではないかと思います。そこも含めてQ&A、基盤整備の中で追加していかなければならないと思っております。
 
○堀口 それでは3番にいきます。
CREATE-SIMPLEで自動入力されるSDSの情報は、1年ごとなど定期的に更新されますか。
 
○吉澤 基本的には、新たな物質が追加されたりするときなどには更新しておりますが、定期的にと決めているわけでありません。必要に応じて更新をさせていただきます。
 
○堀口 リスクアセスメントを実施していない事業所が多いと思われるが、厚労省としてのPRを今後どのように行いますか。リスクアセスメントは1回実施すればそれで終わりでよいのか。
 
○吉澤 リスクアセスメントにつきましては、あくまでも事業者が自発的に行うものでございますので、行政としては事業者にやっていただくようお願いするしかありません。その中でも、今までやっていなかった作業を新たに始めるとき、今まで使っていなかった物質を新たに使い始めるとき、それが法定物質であった場合には必ずリスクアセスメントをしていただきます。これは義務です。それ以外については、労働者の健康と安全を守るために、是非ともリスクアセスメント実施してくださいとお願いをしております。
過去に1回もやったことがなければ、1回やらなければリスクについての正確な判断がつきませんので、必ずやるようにしてくださいとお願いをしております。そのことは、いままでの委託事業でもそういうキャンペーンも張っておりますし、労働者教育事業では全国12カ所でセミナーも行っております。皆様方もそちらの方の、国主催のリスクアセスメント・セミナーにもご参加いただければありがたいと思います。
 
○堀口 化学物質リスクアセスメント簡易入力支援サービスは、事業者の代わりにコントロール・バンディング、CREATE-SIMPLEのいずれかで評価代行が可能でしょうか。その際に提出する資料はSDSでしょうか。
 
○吉澤 電話相談窓口のページに「代行入力」というものがあるかと思いますが、これは、これは例えばメール、ファクシミリ、時間はかかるかもしれませんが電話、いずれかで情報を伝えていただければ、受託業者であるコンサルタントの方で、代わりに入力をし、入力した結果を相談していただいた方にメールもしくはファクシミリでフィードバックいたします。
当然、コントロール・バンディングよりもCREATE-SIMPLEの方が入力項目が多いので、その分、時間はかかりますが、どちらのツールでも入力を行う事業内容になっておりますので、どんどんご活用いただければと思います。
 
○堀口 入力項目が多過ぎると書いてあります。
 
○吉澤 入力項目は、より実態に合った評価を行うためでございます。コントロール・バンディングでよく言われるのですが、やたらに過大評価が出る、何かあるとすぐに物質を代替しろという結果が出てくると言われます。そのようなことがありましたので、入力項目を増やし、より実態に合った評価ができるようにしたものでございます。
 
○堀口 頻度が3問あるけれども、常時、2時間/day、/week、/月、/年の中の1問で十分ではないでしょうか、というご意見です。
 
○吉澤 それは意見として承ります。
 
○堀口 CREATE-SIMPLEのツールで、混合物質のリスクアセスメントはできますか。
 
○吉澤 そこまではできません。複数の物質について個々に評価をして、リスク評価結果が一覧で出ます。リスクアセスメントというのは、評価結果をもって措置につなげるというものでございますので、例えば複数の物質について異なるリスク結果が出た場合には、一番リスクの高いものを採用して措置を取っていただければ、他の物質に対する措置についても当然クリアできると思います。
あるいは、もし複数あって、SDSで一番リスクの高いものはこれだということがわかっていれば、その一番リスクの高いものについてリスクアセスメントをして、措置を取っていただければ、それよりもリスクの低い物質についてはクリアできることになりますので、それは各事業者の方でご判断いただければと思います。
リスクアセスメントのやり方については、各事業者さんの判断に任されております。
 
○宮川 この質問の意味が、もし混合物を取り扱う事業者を考える場合、それに対応するようにCREATE-SIMPLEが作られているのかという質問だとすると、CREATE-SIMPLEの中身は記憶していませんが、混合物の場合、例えば神経毒性を示すような物質がいま対象になっているという場合に、それぞれ別々にやって許容濃度以下だから大丈夫だとはなりません。その場合には、そのそれぞれの許容濃度分とそのばく露濃度を、割り算をして足したものが1を超えるか否かというやり方がありますので、それが自動で全部できるかと、そういう質問だと思います。
 
○吉澤 リスクアセスメント指針では、そういう場合に最もリスクの高いものが100%だとしてリスクアセスメントをしてくださいというふうになっていたと思います。
○宮川 実態としてサイエンティフィックに合理的なことを判断しなければならないので、そういう意味の質問であれば気を付けてくださいと、法令遵守だけをすればよいということではなくて、健康障害の予防のためには合理的な判断が必要だということです。
 
○堀口 資料6ページのオレンジ色部分にある「義務:法57条」と「努力:安則24条の14、義務:法57条の2、努力:安則24条の15」について、それぞれ義務と努力義務としてやることの違いをもう一度説明してください。
 
○吉澤 時間がなくてあまり細かく説明はしませんでしたが、これは、3ページ前の三角の表でいうところの673物質については義務です。それ以外の物質についても、危険有害性がある場合にはラベル表示、SDSの交付の努力義務があり、同じようにリスクアセスメントについても努力義務があります。つまり法57条、あるいは法57条の2の義務物質についてはリスクアセスメントも義務ですが、安則24条の14、安則24条の15では、その673物質以外のものについても危険有害性があると判断した場合には、ラベル表示、SDS交付、リスクアセスメントをしていただくよう努めてくださいということになっております。
 
○堀口 工場などの作業現場で使用されている塗料やシンナーなどの容器の表示を見ると、有機溶剤や特定化学物質のような法規制物質を個々に表示せずに、「SDSをご確認ください」と表示しているものも多いが、せめて法規制物質だけでもすべて表示するようにできないのでしょうか。SDSを見ればわかるのでしょうか。事業所にSDSがない場合も非常に多いのが現状です。
 
○吉澤 ラベル表示対象物質については、必ずSDSを交付しなければならないことになっておりますので、SDSがないということはないはずです。結局、なぜ、ラベル表示に成分が消えたかといえば、もともとは特別規制物質の100物質余りだけがラベル対象物質だったところ、これが、リスクアセスメントの義務化のときに、やはりラベルを見てわかるようにしなければいけないということで、今現在の673物質全てについてラベル表示が義務づけられました。その結果、該当する物質数が何倍にもなってしまい、もし成分の中に複数の法定物質があって、それを全部書けということになりますとラベルの中に書き切れないと、そういうことからラベル表示の中では個々の成分までは書かなくてもよいということにさせていただいております。その代わり、ラベル表示対象物質は必ずSDSの通知対象物質でもありますので、SDSを見てご確認くださいと、それはある意味制度上、正しいことです。
 
○堀口 リスクアセスメントを実施するにあたり、会社が登録しなければならないことはありますか。また、実施する者が持っていなければならない資格などはありますか。報告書のフォーマットなどがないので、実施に二の足を踏んでおります。
 
○吉澤 リスクアセスメントは事業者の自主的な活動ですので、リスクアセスメントを行うために何か登録するとか、あるいはリスクアセスメントをするべき特別な資格があるとかそういうことは一切ございません。各事業者が特性に応じたリスクアセスメントを実施していただく形になります。
ただ、何もないとリスクアセスメントはどのようにしたらよいのだと、いうことがございますので、厚生労働省の方では、リスクアセスメントのツールとしてコントロール・バンディングやCREATE-SIMPLEを提供し、さらに、そのツールに入力する情報を得るためのモデルSDSも公表しています。今現在、義務対象物質も含めて3,000物質ぐらいのモデルSDSを公表しておりますので、職場のあんぜんサイトを見ていただければ、大抵の物質はあるかと思います。
 
○堀口 ホウ酸はすでにあったホウ酸ナトリウムと一緒にされましたが、ヨードホルムはヨウ素及びその化合物にまとめられませんでした。何か意図があるのでしょうか。
 
○吉澤 これは、記録上議論されなかったということしかわかりませんので、その議論されなかった意図が今は不明になっております。
 
○堀口 職場のあんぜんサイトの情報更新は適確に行われていますか。ACGIHなどが古い数値が見られます、というご指摘があります。
 
○吉澤 モデルSDSは先ほど言いましたとおり、現在3,000物質ぐらいあるのですが、毎年150物質ずつ作り直しております。今まで作られていなかった物質について新規に作るというものもありますし、すでに公表しているものについて、内容が悪いということで作り直すケースもございます。ただ、こちらの能力的な問題で、毎年150物質しかできず、3,000物質すべてについてすぐ直すということは難しいです。危険有害性が高くて、見られる頻度の高いものを選んで見直している結果、後回しになってしまうものもございます。
 
○堀口 宮川先生から付け加えはありますか。大丈夫ですか。
安全管理者、衛生管理者、総括安全衛生管理者などへの説明はどのように進められていますでしょうか。危険物の保安講習と同様に3年程度の法改正内容などの説明が(講習会など)必要ではないでしょうか、というご意見がありました。
 
○吉澤 それは法改正に関する説明会をやってくれという話だと思うので、それはこちらも極力行うように努めております、ということだけお答えしておきます。
 
○堀口 SDS交付を目標80%にするための今後の進め方があれば教えていただきたい。
 
○吉澤 今現在行っているものについては、先ほどのスライドの中にもあるとおりでございまして、今後、さらに何か効果的な方法について、アイデアをいただければ参考にさせていただきたいと思います。
 
○堀口 たくさんの質問を似たようなものを一緒にしつつ、読み上げを終了いたしました。別途、御質問がある方は、フロアで終了してからお声かけをしてください。
以上、終了です。
 
○西田 個人サンプラーの講習の関係で1点、付け加えさせていただきます。
たしかに、いろいろ不安なところが多いというのは理解するところでございます。実は、来年度、「講師養成研修」の実施を予定しております。具体的に申し上げますと、講師となり得る方については、作業環境測定士経験5年以上の実務経験をお持ちで、個人ばく露測定の一定の知見を有する方、個人ばく露測定をやられたことがあるという方が、登録測定機関700のうち4割ぐらいが「ある」とお答えいただいていますので、これはある意味、心強いデータだと思っております。
そういう中で、こちらとしては日本産業衛生学会のガイドラインあるいは諸外国のガイドラインが1つのベースで、そちらのガイドラインは個人ばく露評価というのはある意味では作業環境改善を第一の目的としているところでございます。それを我々の法定の中でどのようにするかというところの違いはありますが、目指す目的は同じということで、ある程度のベースのある中で、皆様方が混乱しないように誘導できればと思っております。
 
○堀口 4時半になりましたので、これにて終了したいと思います。
皆様、ご協力ありがとうございました。
(閉会)
○司会者(西村) 先生方、ありがとうございました。
以上で平成30年度第2回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーションを終了したいと存じます。
皆様、ご参加ありがとうございました。
なお、今後の参考のため、水色のアンケートのご記入をお願いいたします。
以上でございます。ありがとうございました。