第14回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録

日時

令和元年8月1日(木) 13:00~17:45

場所

中央合同庁舎第5号館 専用第13会議室

出席者

委員

議題

 
1 開会
2 議事
   (1)部会長及び部会長代理の選出
   (2)国立研究開発法人国立循環器病研究センターの平成30年度業務実績評価について
   (3)国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの平成30年度業務実績評価について
   (4)国立研究開発法人国立がん研究センターの平成30年度業務実績評価について
   (5)その他
3 閉会

配布資料


【国立研究開発法人国立循環器病研究センター】

資料1-1 平成30事業年度 業務実績評価書(案)
資料1-2 平成30事業年度 業務実績評価説明資料
資料1-2別紙 研究の経過
資料1-3 平成30事業年度 財務諸表等
資料1-4 平成30年度 監査報告書

【国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター】

資料2-1 平成30事業年度 業務実績評価書(案)
資料2-2 平成30事業年度 業務実績評価説明資料
資料2-2別紙 研究の経過
資料2-3 平成30事業年度 財務諸表等
資料2-4 平成30年度 監査報告書

【国立研究開発法人国立がん研究センター】

資料3-1 平成30事業年度 業務実績評価書(案)
資料3-2 平成30事業年度 業務実績評価説明資料
資料3-3 平成30事業年度 財務諸表等
資料3-4 平成30年度 監査報告書

議事

第14回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会

○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室太田室長補佐
 定刻となりましたので、ただいまから第14回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会を開催いたします。委員の皆様には、暑くて大変お忙しい中、お集まりいただき、誠にありがとうございます。部会長選出までの間、議事進行役を務めさせていただきます医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室の太田と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は深見委員、福井委員から御欠席の連絡をいただいております。出席委員に関しましては8名ということで過半数を超えておりますので、会議が成立することを御報告いたします。また、昨年まで本部会の委員を務めていただいた永井委員、内山委員、本田委員が御退任されたため、新たに新しく本部会の委員に御就任いただいた方を御紹介いたします。五十音順に紹介いたします。庄子育子委員でございます。中野貴司委員でございます。前村浩二委員でございます。ありがとうございました。
 続いて、本部会の開催にあたり、医政局研究開発振興課長の伯野より御挨拶させていただきます。

○医政局研究開発振興課伯野課長
 研究開発振興課長の伯野です。本日は大変暑い中、また御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。また、今回から庄子委員と中野委員、前村委員に御参加いただいております。御快諾いただきましてありがとうございます。この部会ですが、本日を含めて2日間にわたりまして、NCの第2期中長期目標、中長期目標期間における4年目の平成30年度の業務実績評価について御意見をいただくもので、是非、委員の皆様方におかれましては、御専門の立場から忌憚のない御意見をいただきますようお願い申し上げます。NCは非常に大きな期待を受けているという一方で、いろんな御指摘、厳しい御指摘も当然あるという状況でございますので、是非、忌憚のない御意見をいただきますようお願い申し上げます。簡単ではございますが、冒頭の挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室太田室長補佐
 なお、大臣官房審議官の大坪については、公務により遅れての出席になりますので、御了承のほどよろしくお願いします。
 続いて、本日の会議資料の御確認をお願いします。本部会においては、ペーパーレス推進の一環として、資料の一部を紙面ではなくタブレットに入れておりますので、そちらで資料閲覧のほうをお願いいたします。委員の皆様のお手元に議事次第と座席表、そのほかに紙媒体として資料1-2、1-4、2-2、2-4、3-2、3-4として、それぞれ各センターの業務実績評価説明資料と監査報告書を配布しております。資料1-1、1-3、2-1、2-3、3-1、3-3は、業務実績評価書の案と財務指標でございますが、タブレットに格納しております。また、参考資料として、各センターの中長期目標、中長期計画などをファイルに綴って資料を閉じておりますので、御参考のほどよろしくお願いします。それ以外に、各センターの個別データを委員会の非公開資料としてタブレットに格納しております。
 そのほか、委員の皆様にはお手元に、評価を御記入いただく用紙としてセンターごとに平成30年事業年度評価評定記入用紙を配布しておりますので、8月21日水曜日までに事務局のほうに御提出いただければと思います。資料の不足、乱丁等ございましたら、事務局までお申し付けいただくようお願いします。
 続いて、タブレットの使用方法ですが、今はマイプライベートファイルという状態になっていると思いますが、見たい資料をクリックしていただくと出ます。資料をめくる際は指で画面を上下になぞったり、下のほうにツールバーが出ますので、矢印を押していただければと思います。操作で御不明な点があれば事務局までお願いいたします。
 それでは具体的な審議に入る前に、平成31年3月12日に独立行政法人の評価に関する指針が改正されましたので、事務局から変更点について御説明いたします。参考資料として机上に配布しております資料(青いファイル)の642ページに、独立行政法人の評価に関する指針の変更内容ということで記載しておりますので、そちらを御覧いただければと思います。評価委員からの御意見をいただくにあたって、「総務省における目標、評価の両指針の改定」が行われています。「目標の指針」については説明は省略いたしますが、評価の枠組みに関わる事項について、簡単に4点ほど御説明いたします。ポイントは4点で、1点目ですが、評価の活用の方法の明示を通じた活用促進ということです。例えば業績が悪い部門を改善すること、業績が良い部門をさらに向上させることを通じて改善努力を促進することを指針のほうに明示しております。
 続いて、643ページですが、2点目です。評価の目的、役割に応じたメリハリづけを行うということです。即ち、これを評価の重点化と呼んでいますが、評価の重点化を行います。重要度または難易度が高いと設定している目標については、必ず重点化の対象として、従来の単位や制度で評価を行うこととする一方、それ以外の重点化以外の項目については、簡素・効率化、効率的な評価となるよう、評価単位の柔軟化を認めることとしています。また、見込評価の期間、実績評価の活用という項目もありますが、こちらは次年度以降のことであることから詳細の説明は割愛いたします。
 次に644ページですが、3点目です。目標策定の指針の改定について目標策定の視点が追加されたことによって評価の視点も追加しましたが、こちらについても詳細の説明は割愛いたします。
 最後に4点目ですが、S、A、B、C、Dへの当てはめの基準の考え方が見直されます。評定基準に困難度という視点を導入して、困難度が高い目標が達成されたときには、SやAの評定となるようにします。逆に、目標設定時に困難度が高いとされた場合も、評価の時点で困難度が高くないと判明した場合は、評価の一段階引き上げを認めないようにします。なお、3、4点目の改正事項については、次期の目標期間、NCで言いますと、2021年から2026年の期間で見直しとなりますので、当面の間は従来どおりの評価基準で評価をいただければと考えております。説明は以上です。従来の評価基準については、評価書の後のほうにちょっと書いておりますので、そちらを御参照いただければと思います。長くなりましたが、事務局からの説明は以上です。御質問等あればよろしくお願いします。
 それでは、議事のほうに入ります。まず初めに、本部会の部会長及び部会長代理の選出を行います。厚生労働省国立研究開発法人審議令の第5条第3項において、「部会に部会長を置き、当概部会に属する委員のうちから、当概部会に属する委員が選挙する」と規定されております。なお、選出の方法については委員の互選となっておりますので、委員の皆様から御推薦いただければと思います。花井委員どうぞ。

○花井委員
 これまでの実績、御経験から祖父江先生にやっていただくのがいいんではないかと思います。どうでしょうか。

○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室太田室長補佐
 ただいま花井委員から祖父江委員の御推薦をいただきましたが、いかがでしょうか。御異議がないようですので、祖父江委員に本部会の部会長をお願いしたいと思います。

○祖父江部会長
 今御指名いただきました祖父江でございます。ナショナルセンターの評価という非常に大きな役割ですので、大変緊張しているところですが、部会長ということで、議事を進行させていただきますが、是非、皆様の御協力でよい評価にしていけたらと思っておりますので、よろしくお願いいたします。では座って議事を進めたいと思います。よろしくお願いします。
 もう1つ事前に決めることがありまして、参考資料2の所にありますが、「厚生労働省国立研究開発法人審議会令」第5条第5項に、「部会長に事故等があるときは、当概部会に属する委員のうちから部会長があらかじめ指名する者が、その職務を代理する」と定められているところです。この部会長代理をお願いしたいと思うのですが、本日御欠席なんですが、福井委員にお願いしたいと思います。これは指名ということですので、御了解いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、まず最初に国立循環器病研究センターのほうからの御説明といいますか、質疑、説明ということで、評価を始めたいと思います。今、入っていただけますか。

(国立循環器病研究センター入室)

○祖父江部会長
 よろしいですか。それでは、全員お集まりのようですので、国立循環器病研究センターの平成30年度の業務実績評価について御議論をお願いしたいと思います。
 まず最初に、理事長から御挨拶をお願いしたいと思います。小川先生、よろしくお願いいたします。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 国立循環器病研究センター理事長の小川でございます。国立循環器病研究センターは昭和52年、1977年に開設いたしまして、ちょうど42年となりました。新しい地区に移転したわけですが、昨年6月18日の大阪北部地震、9月5日の台風21号でかなりの被害を受けたのですが、一部の病棟を閉鎖したまま、救急病棟は無事だったものですから診療はもう2日後から開始して、何とか一部閉鎖のまま移転に持っていきました。
 新しい建物は今年の3月に完成いたしまして、4月に研究所から移転が始まりまして6月30日に、94人の重症患者を残したままですが、無事に移送が終了いたしました。そして、7月1日から新センターをオープンしてやっております。場所も比較的良く、建物も大きいですので、外来は1週間で大体もとのレベルに回復いたしまして、病棟も1か月で大体83%ぐらいまで回復しております。
 更に、研究所も4月から移転していましたので順調に研究が開始されておりますし、またオープンイノベーションセンターも既に企業も入りまして、そのスタートも順調に行っております。
 2つほど問題がございまして、臨床研究の観察研究で一部、倫理指針違反があったということ、昨年の地震のときに明らかになったのですが、電気事業法に基づく保守規定で一部、遵守の不履行があったという問題がございましたので、まず冒頭でお詫び申し上げます。以上です。

○祖父江部会長
 どうも有難うございました。それでは早速、御説明いただきたいと思います。「研究開発の成果の最大化に関する事項」の評価項目1-1及び1-2に係る業務実績及び自己評価について議論したいと思います。
 まず法人から御説明を頂きまして、その後、質疑応答という流れで進めていきたいと思います。時間は説明が15分、質疑が15分ということで限られておりますので、ポイントを絞っての御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 研究所長の望月でございます、よろしくお願いいたします。お手元の資料2を御覧ください。5ページ目の枠の中に中長期目標を書いております。1つ目に革新的な医療機器・薬品の開発、2つ目として循環器領域・生活習慣病領域における新規治療法の研究開発、3つ目に革新的な治療法の研究開発を掲げ、今年度は自己評価をSとさせていただきました。
 7ページです。革新的な医療機器・医薬品の開発として、これまで企業が医療機器になかなか参入してこないために当センターでは医療機器を開発してまいりました。昨年度は、体外式連続流型補助人工心臓システムの医師主導治験を完了いたしました。また、それに引き続いて、本機器を用いて次世代型心肺補助システムのECMOを開発しました。実際の製品ですが、右側を御覧ください。従来品は、真ん中の写真のように車椅子大体2つ分の設置型に対して、私どもの開発した新ECMOは非常に小さく、コンパクトで最軽量、世界最小となっております。実際には、右下にありますように、女性でも持ち上げられるほど軽量になっております。
 左側に特徴として、耐久性と抗血栓性と移動性・携帯性について書かれております。従来品との比較ですが、耐久性に関しては14日間まで使用可能である、血栓に関してはヘパリンを使わなくてもそのままで使える、それから非常に簡単なので救急車やヘリコプターの中でも使える、これによって救命救急が非常に効率化できるというように考えております。
 8ページです。循環器領域と生活習慣病領域における新規治療法の研究開発ということです。今年度は、突然死の原因として先天性のQT延長症候群(LQTS)は、これまで本邦では1,124例畜積したのですが、当センターでまとめて報告することができました。
 左側下段に書いてありますように、3つのタイプ(LQT1、2、3)があります。これは遺伝子の異常によってタイプが別れております。それをまとめることによって、赤で示していますように女性と男性に差があることが分かりました。これによって、右側のピラミッド型に書いてあるように、低リスク・中リスク・高リスク群に分けられることが分かりましたので、そのリスクに従って治療や生活指導、本人へのカウンセリングなどを検討していくことが可能となりました。
 引続き9ページを御覧ください。革新的な治療法に関しまして、当センターではペプチドホルモンを従来から発見し、それを更に臨床展開するということを重ねてまいりました。今年度は2つ、[1]と[2]として挙げております。脳梗塞期にアドレノメデュリンというペプチドを静脈注射で投与すると、予後が改善できる若しくは治療効果、麻痺の程度が改善できるということが前臨床試験で分かりましたので、今年度のAMED臨床研究・治験推進事業に採択され、実行していく予定でございます。
 2つ目、骨膜に特異的に発現する「オステオクリン」というペプチドなのですが、これを急性期の心筋梗塞の動物に投与すると心筋梗塞の予後改善、心破裂、抗炎症効果によって予後に改善することが分かりました。
 10ページです。通常、脳梗塞になると、血栓溶解療法にて梗塞領域を減らすことができるのですが、それが4.5時間に限られていたのです。その発症時期が分からない患者さんの場合には画像診断で、2つのイメージングを撮ることによって発症時期が予測できますので、4.5時間という時間が分からなくても、それで判定して投与が可能となるというスタディーを、欧州でWAKE-UP、ECASS4、EXTENDと会議を開催することにより、全世界統一の基準を作ることに向かっております。
 続きまして11ページです。これまで胎児の心疾患に関して、どのように状態を把握するかに関して困難でしたが、母胎血を採血することによって胎児側の心不全の程度を予測できることが分かりました。これは炎症ホルモンとしてのIL-6、TNF-αという分子を測定することで予測が可能となりました。また、革新的な医療機器の開発として、右側にありますが、ヒトの羊膜由来の間葉系幹細胞を心筋症の心臓に当てることによって、収縮能が改善するということを前臨床試験で示すことができました。
 12ページです。私どもは吹田研究という吹田市の住民を対象にコホート研究をしてきました。これは1万人、20年間のフォローをしておりますが、今回は頸動脈のエコーを20年間、5,000人を2年ごとに追跡して調査することによって、どういう頸動脈の異常があると循環器疾患が発症するかという成果を、成果1~成果3に示しております。頸動脈が1.1mmを超えると循環器の疾患になりやすい、また頸動脈が1mmに到達すると発症リスクが3倍程度になる。また、生活習慣を見直すことによって体重維持、適性飲酒、降圧剤・スタチンを服用しているとプラークが進展しにくい。つまり、循環器病を予防できることが分かりました。
 13ページです。従来より、循環器病予防のために、塩分制限として「かるしお」を普及してきました。右下のグラフのように、現在、認定商品数は延べ266品目まで増加しております。具体的に世界への展開も始めており、昨年はロシアに6月、10月に行き、ロシア版の「かるしおレシピ」を作成することができました。また昨年、ポーランドと日本との国交100周年記念事業として、ポーランドへも「かるしお」を展開する努力を進めているところです。
 14ページです。岸部新町に移転してから、900戸近くのマンション住民に対して右の図に示しますように携帯型のウェアラブルモニタリングを充実させ、体重体組成計、血圧計を配布することで、マンションの住民の健康管理システムを整えております。実際には、自動的に私どもの健康管理システムに住民の情報が入り、そこに循環器病センターの医師からの「どのような治療をして健康に注意していったらいいか」ということをフィードバックできるようなシステムになっております。
 続きまして、評価項目1-2です。実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備について説明いたします。中長期目標としては、枠内にありますように、産官学の連携を促進するということ、2つ目としては循環器疾患情報の収集・登録体制を構築することを掲げ、今年度はS評価といたしました。
 17ページをお開きください。産学官等との連携の強化に関しましては、先ほど理事長が申し上げましたように、オープンイノベーションセンターを充実させることで、国循内の「ひとつ屋根の下に」企業等との共同研究拠点を設置するということを掲げ、実際には左下に書いている「3つの機能」として、運営組織としてはオープンイノベーションセンター、研究拠点としてはオープンイノベーションラボの18ユニットを活用していただくことを推進しております。また交流拠点としては500平米近くあるサイエンスカフェをオープンし、医師、研究者、企業間の人事交流を進めていきたいと考えております。右下のオープンイノベーションラボの入居企業予定は、昨年度までに契約を完了したものが8機関で、現在は12機関が入居予定です。総額は昨年度5.7億円という契約額になっています。入居企業はそこに列記しております。共同研究例としては緑色枠内に、2つだけ、キヤノンとフィリップスの2例を書かせていただきました。
 18ページになります。新規治療法に関する企業との共同研究として、アメリカのCardurion Pharmaceuticals社と武田薬品との共同研究で心不全の治療薬を開発しております。右の上段に示しますように、心臓の肥大モデルに使いますと、右のグラフの黒で示しますように心肥大が軽減すること、また赤色やピンク色が心筋でブルーが繊維化なのですが、新規阻害薬のCRD、つまりこの薬を投与することによって繊維化が軽減されるということも分かりました。
 引き続き19ページです。日本人の脳梗塞の強力な感受性遺伝子も解明いたしました。記載しておりますRNF213遺伝子というのは、もともと日本で非常に多い「もやもや病」の原因遺伝子だったのですが、もやもや病に限らず、日本人の強い脳梗塞全般の発症リスクとなっていることを見いだしました。また、臨床研究の基盤整備として下段に書いておりますように、NIH承認の国際無作為化のFASTEST試験、これは血液の凝固因子製剤を投与することによって急性期脳出血に対する治療効果を調べるものです。また2つ目として、軽度の認知障害に対して抗血小板薬を投与する医師主導試験の症例登録を完了しております。
 20ページになります。循環器疾患情報の収集・登録体制としてレジストリを掲げております。Balloon Pulmonary Angioplastyという肺動脈の血管の拡張のレジストリを行っております。登録者数の比較のグラフですが、右側が国際のレジストリで、100程度に対して私どもは245と大きく凌駕していることがお分かりいただけるかと思います。また、右側に書いておりますが、[2][3][4]という、いろいろなレジストリを実際に推進しております。
 21ページです。難治性・希少性疾患の原因究明や創薬に資する治験・臨床研究として、従来よりナショナルセンターとして循環器病バイオバンク事業を推進しております。循環器のバイオバンク事業は、現在はおよそ1万7,000人の登録が終わり、それぞれの方々から血清、血漿、生細胞、DNAを登録していただくことによってナショナルバンクとしての機能を充実させてきております。
 またバンク事業だけではなく、[2]の家族性高コレステロールのグローバル治験、[3]肺動脈性肺高血圧症に対する抗IL-21阻害療法の前臨床試験を推進するなどの研究を行っております。以上、評価項目1-1と1-2について説明させていただきました。

○祖父江部会長
 どうも有難うございました。それでは、ただ今の御説明に対しまして御意見・御質問等よろしくお願いします。

○藤川委員
 14ページ目の国循マンションプロジェクトという点なのですが、これは予防が中心のように見受けられます。例えば、かかりつけ医の先生とか地域の連携、あるいは地域包括ケアシステムとか、そういう中で広がりを見せていって予防だけではなくて御自宅で異常値が見られたときに迅速な動きができるとか、そういうところまでは行っていないのかなと思います。そういったところまで行くと非常に地域では良い取組になるのではないかと思います。今後の展開のようなところを教えていただけますでしょうか。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 現在、そこまではまだ行っていなくて、まだ予防の段階でデータをフィードバックしているところです。ただ、調べてみますと、マンションの住民の3分の1が高齢者、3分の1が中年、3分の1が若年ということで、高齢者の3分の1の方は結構、循環器疾患を持っている方もおられます。そういう患者さんに関しては国循にかかっている方も結構おられるので、それを開業医の先生方と一緒にやっていこうというのは考えていますが、まだやっておりません。

○前村委員
 昨年は地震もあったのですが、非常に成果が上がっていて敬意を表します。幾つか質問させてください。16ページの定量的指標の所で、ファーストインヒューマン試験の実績が1件となっているのですが、具体的には何のファーストインヒューマンでしょうか。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 すみません、多孔化カバードステント(NCVC-CS1)の治療法をやりました。一応、分担でやりました。

○前村委員
 どこへの投与なのでしょうか。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 脳梗塞です。

○前村委員
 あと、補助人工心臓とかECMOとか、新しい物を開発されているのですが、現状ではこういう機器は海外からの機器が日本に入ってきて、輸入していることが多いのですが、ナショナルセンターとしては日本発の物が輸出できるようになればと思います。国際競争力という点ではいかがでしょうか。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 まず、体外式の人工心臓ですが、性能、いわゆる心拍出量の面からも世界トップクラスでありまして、国循で全部治験をやったのですが、9例を半年ぐらいですか、全部やってしまいました。恐らく来年ぐらいに製品化されると思います。それはもう、かなり世界のシェアがそちらに変わっていくぐらいの性能です。
 ECMOに関しましては心臓と肺なのですが、これも非常に小型の素晴らしい機械です。今年から治験が始まるのですが、恐らく来年には終わるぐらいの勢いでやっていけると思います。それが実用化されますと、恐らく世界のECMOが全部これに変わるぐらいの性能の良さであるというのは自負しております。

○前村委員
 有難うございます。

○国立循環器病研究センター小林病院長
 多分、委員の御質問は体内埋込み型のことも念頭に置かれているかと。

○前村委員
 はい、それも含めて。

○国立循環器病研究センター小林病院長
 一応、軸流ポンプを使った小さな補助人工心臓は今、開発中です。開発は終わっていると思うのですが、まだ治験のところまでは行っていないというところで、体内式に関してもスタートしております。

○前村委員
 はい、ありがとうございます。
 最後に1つ、いいですか。アドレノメジュリンを脳梗塞に投与することが始まりそうなのですが、アドレノメジュリンは国循で発見され、開発され、以前から心疾患等にも使ったことがあったかと思います。今までの人への投与の成果というのはいかがでしょうか。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 下肢虚血の方に投与した時には有効な成果が出ていて、いろいろなところで使っているので実際に脳梗塞に使っています。

○前村委員
 ああ、それが今回の脳梗塞ということですね。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 expandしているという状態です。

○前村委員
 はい、ありがとうございます。

○花井委員
 いささか個人的な興味なのですが、19ページのファクター7aの急性期脳出血に対するという、これは何らかの機序が分かっているのですか。というのは、7aは外資なのですが、日本の企業だけが持っているF7+10というのがあって、もしF7+10も同様の効果があるのであれば国内の企業とのイノベーションが連携できればいいなとちょっと思ったものですから。これはリコンビナント以外は無理だという話ではなく、国際治験だからF7aでやっているというイメージなのでしょうか。

○国立循環器病研究センター山本理事長特任補佐
 7aは10年ぐらい前に一度、某外資系企業の企業治験として国際共同治験が行われました。国内Ⅱ相試験は良い結果だったのですが、国際共同でⅢ相をやった時にポシャッてしまったのです。
 今回はもっと投与時間を狭めています。以前の国際共同治験は、確か発症してから6時間ぐらいまでは投与OKにしていたのですが、今回は発症してから2時間以内で投与するという、更にウインドウを小さくして、必ず成功させようということでやりました。それもアメリカ発なのですが、脳出血の急性期の国際治験ですがアメリカだけで完遂することは絶対ないので、日本が患者さんを入れていかないと治験が成功しませんので日本も参加してやるということです。これがうまく行ったら、次に別の凝固因子を考えるということになるのではないかと思います。

○祖父江部会長
 大西委員、どうぞ。

○大西委員
 どうも有難うございました。オープン・イノベーションのところなのですが、既に契約額として8機関、5.7億円契約を済まされているとおっしゃいました。これは昨年度、これだけの機関との契約が成り立ったということですか。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 すみません、8機関、5.7億というのは30年度に契約して、2年間とか3年分を含めてということなのですが。

○大西委員
 なるほど。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 単年度で全部が埋まるのが31年度になりますので、単年度は来年御報告できると思います。すみません、5.7億というのは全部まとめてしまいました。

○大西委員
 8機関との契約というのは30年度に成立があったということでよろしゅうございますか。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 はい。

○大西委員
 はい、ありがとうございます。

○祖父江部会長
 私から、1つ。この前もちょっとお聞きしたのですが、先般、脳卒中と心臓・血管系の疾患に対するいわゆる対策基本法が成立したと思います。今後、オールジャパンの悉皆性のあるデータを前向きに取っていくというのは、がんなどでは非常に成功しているわけですが、どういうプランニング、そういうことも含めて、どう考えておられるか。センターをどう置くかというのは、脳卒中などで今、盛んに議論が始まっていると思うのですが、もしできたら、その辺の構想をお聞きできたらいいかなと思います。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 有難うございます、昨年から始まっています情報の委員会で一応、登録をスタートしようということになっております。脳に関しては脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、循環器に関しては心筋梗塞を中心とした急性冠症候群と心不全、これは救急を要する心不全ですが、それと大動脈解離の3つを顕名で、名前を匿名化せずに、同意を得られたところからスタートしようということで、恐らく来年ぐらいからスタートできるのではないか。今年はその準備期間として今考えております。
 ただ、もう基本は結構できておりまして、循環器、心臓に関しては循環器学会と共同で、日本の1,300の循環器専門病院のデータを今集めております。これは顕名ではないのですが集めております。脳の方も200病院ぐらい全国の病院で集めています。がん登録のような感じで行きたいと思うのですが、がん登録は非常に時間が掛かりましたので、何とか、がん登録のノウハウを活かして、もう少し循環器疾患を全例登録できるようなシステムを考えてはいます。ただ問題点は、がんの拠点病院よりも恐らく循環器、脳卒中の病院は数が10倍以上になると思います。その辺が問題なのですが、でも先行しているがん登録を参考にして、利用できるところを使って、できるだけ早く立ち上げたいと思っています。

○祖父江部会長
 もう1つ問題になるかもしれないのは、がんに比べてフォローアップ、例えば心筋梗塞等は治るとどこかへ行ってしまうということがある。3年後に診てみたら心不全になっていたというアウトカムを長期にわたってフォローアップしていくシステムが非常に大事になってくると思うのですが、その辺はいかがですか。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 はい、おっしゃるとおりです。できるだけ顕名で、フォローを住民台帳等でできるまでは法律ができないと難しいと思うのですが、顕名で、できるだけ名前を挙げて追っていこうと。おっしゃるとおり、急性期はほとんど完璧に把握できます。心筋梗塞の死亡率が8%、大動脈解離が11%、心不全の死亡率が8%というデータも出ているのですが、おっしゃるとおり、この後が問題で、そのあとのデータが全くない現状です。それをやはりやっていかないといけないと思っています。

○祖父江部会長
 非常に期待が大きいですので、是非よろしくお願いしたいと思います。ほかにありますか。

○中野委員
 8ページ、先天性QT延長症候群における遺伝子検査の有用性に関する研究について教えてください。ここに記載されてある論文や内容を拝見いたしますと、例えば失神発作のあった方や症状があった方、あるいはQTcが非常に長い方にはとても有用な検査で、全国各地、いろいろなところで、この検査にお世話になっているのは伝え聞いております。
 日本には一方で、学校健診システムというものもあります。擬陽性も含めて、QTcがちょっと長い子供というのはたくさんの数で挙がってくると思うのです。そういった、多くの場合は病気ではないのだけれども、その中にも一部、何らかの重篤な疾患、その後で防ぎ得る重篤な事態に至る疾患が隠れているわけで、そういったところへの連携というか、スクリーニングに、この遺伝子検査を活かせる可能性は将来的にあるのでしょうか。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 実際に学校の心電図を見るのは、大阪に限って言えば、私どもの小児の専門医が心電図をみるということは分かるのですが、実際にそこまで伸びていることが分かって、遺伝子検査まで踏み込めるかと言うと、そこまではまだ至っていない。ただ啓発活動をすることによって、住民の皆さん方が納得していただけると広げていけるのではないかと思います。

○中野委員
 例えば、全国の心電図をみている医師の中にも、やはりいろいろな意味で温度差があって、どういうタイプのQTcなら危ないとか、ほかの波形がどうか、そういったことを例えばWebサイトとかに公開して、そういう例は積極的に循環器病センターに御紹介いただくとか、そういうシステムを何か作っていただけると、子供たちが一人でも幸せになれるかと思います。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 おっしゃるとおりで、遺伝子に関しては非常に積極的に宣伝いたしまして、データを送っていただいて検査するということは既にやっております。ですから、おっしゃるとおり、温度差はあるのですが、主治医の先生が必要であればすぐに調べるというシステムはできあがっております。

○祖父江部会長
 先ほどのオールジャパンの法律に基づく悉皆的なレジストリですけれども、1つだけ。遺伝子とか何か、バイオリソースみたいなものは取り入れていくお考えはございますか。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 まだ、そこまで。昨日もバイオバンクの会議があったのですが、それをレジストリとして行くのか、またバイオバンクとして両方で進めていくのか、どちらで整理してくのか考えている最中でございます。循環器疾患としては積極的に入れていきたいということは希望としては持っております。

○祖父江部会長
 是非、入れられる部分だけでも結構だと思うのですが入れていただけると、あとで非常にいろいろな解析が可能になってくるのではないかと思います。よろしくお願いします。よろしいですか。どうもありがとうございました、非常に活発な御意見をありがとうございました。
 それでは、次の「医療の提供等、その他業務の質の向上に関する事項」ということで、1-3から1-5まで議論したいと思います。これも説明15分、質疑15分ということです。まず説明をよろしくお願いいたします。

○国立循環器病研究センター小林病院長
 病院長の小林です。資料1-3~1-5までを説明させていただきます。23ページから始まります。評価項目1-3は医療の提供に関する事項で、これに関しては定量的指標・目標を大きく上回っており、所期の目標を質的及び量的に上回る顕著な成果を上げているということで、自己評価はSを付けさせていただいております。24ページの定量的指標ですが、心房細動の根治治療件数は194.8%、補助人工心臓装着患者の社会復帰を目指した外来管理患者数も達成率が111%、連携登録医療機関数も増加で、162%、それから全職員対象の医療安全や感染対策のための研修会開催も200%ということです。 
 25ページを御覧ください。高度・専門的な医療の提供として、[1]治療方針を決定するための補助人工心臓装着の医師主導治験を行いました。治療方針を決定するための、いわゆるBridge to decisionの医師主導治験を平成29年10月に開始し、翌年5月に終了しております。Intermacs1、すなわちショック状態の9例の患者で、装着後3例が離脱、6例が植込み型補助人工心臓に移行し、全例生存いたしております。これを使用しておりますのは、バイオフロートと呼ばれる重さ33gで、1分間に8Lを送ることができて2週間程度使用が可能ですので、その間にdecisionができるということです。
 [2]胎児・新生児心疾患における遠隔診断の試みですが、専門家のいない病院の胎児や新生児であっても遠隔診断で疾患を発見して、設備の整った病院に搬送することで救命率を上げることができると考えております。例えば、診断を行って当センターに搬送していただきますと、出生後、速やかに侵襲的治療に移行することができるわけです。
 26ページです。[3]ロボット手術の積極的な実施ということで、昨年度82件の手術を実施しており、平成29年度比としては72件の増加となっております。
 [4]生体弁劣化に対する経カテーテル的治療です。これは生体弁劣化に対する、いわゆるTAVIで弁を植え込んでいるわけですが、この結果はJACC Cardiovasc Interventionに発表しております。[5]植込みデバイスによる重症心不全・不整脈治療としては、ICD、CRT-Dの植込み件数としては国内最多の212件となっております。下のグラフにありますように、全国のトップとなっております。
 新たな診療体制モデルの構築・提供に関しては、脳卒中後てんかんの治療や急性期脳梗塞に対する血管内治療を行っております。
 臓器・組織移植と補助人工心臓治療の実施に関してです。1[1]心臓移植医療の推進は既に当センターでは120件を超える移植を施行しており、10年生存率95.4%と世界最良の成績です。[2]凍結保存同種組織を用いた治療ですが、これはもともと先進医療で行ってきたものを保険収載、更には平成30年4月に診療報酬が増点され、多数の施設にも提供することができるようになっております。[3]世界有数の補助人工心臓治療ということで、我々の施設は3年生存率93%と、世界最良の成績を得ております。[4]心筋症治療を行う日本における症例最大のセンターということです。これはDPCの統計からとったものですが、手術の有り無しを全て足しますと国内最大の456件であり、平成30年度はまだ統計が出ておりませんが、センターの集計では554件と増加しております。センターにかかっている患者が、どこからきているのかということが、よく問題になっているのですけれども、心臓移植に関しては下のグラフのように、大阪府の方は4分の1程度にとどまっております。また一方、DPCの心筋症入院患者においても、大阪府は約半数ということで、患者全体としては90%が大阪府からですが、こういう特殊な疾患に関しては全国区から来ていただいていると考えております。
 28ページを御覧ください。医療の質の評価に関して、本邦を代表する循環器疾患データのJROAD、先ほど理事長が少し話しましたが、その医療の質の評価ということで、下のグラフにありますように急性心筋梗塞、心不全の件数とともに、その成績、死亡率が出ております。また、どのような治療、どのような薬を使うかで、その成績なども解析しております。
 次に、患者等参加型医療の推進として、[1]意思決定支援や退院支援の実施ということで、サポートセンターを充実させております。チーム医療の推進に関しては、[1]重症心不全患者、心臓移植患者へのチーム医療、[2]デバイス遠隔モニタリングチームの活動を行ってきております。医療倫理等に基づく質の高い医療の推進として、[1]病院倫理委員会での審議ですが、この審議で小児臓器提供時の被虐待児除外に関する病院倫理委員会審議マニュアルを作成して、これを1例に適用し、問題となるような臓器提供を避けることができました。
 29ページです。評価項目1-4です。人材育成に関する事項に関しては、自己評価をAとさせていただいております。定量的指標としては、教育・研修プログラムの数は達成率が136%となっております。
 30ページです。リーダーとして活躍できる人材の育成として、術中経食道心エコー(TEE)の技術に優れた人材の育成を行っております。現在の心臓大血管手術では、術中経食道エコー(TEE)による評価は弁形成術や大動脈グラフト置換術などの問題点を診断するだけでなく、手術操作での様々なカテーテル類による合併症や空気塞栓を予防する上で必要不可欠となっております。我々は、JB-POT試験のための講習会を年1回大阪で開催し、300人以上の方の参加を得られております。
 [2]看護師特定行為研修準備室の開設ということで、全国でも実施施設が少ない重症集中管理コース・循環器関連の開講を予定しております。開講を予定しているのは既に認可を得ており、施設の認定を得るとともに、本年8月から教育研修をスタートさせて院内の看護師40名を目標に年間5名ずつ受講させるようにしております。
 31ページを御覧ください。移植・植込型補助人工心臓の専門家育成、同種組織採取に関するハンズオンの実施、連携大学院制度の充実を行っております。協定を結んでいる連携大学院は16大学に及んでおり、平成30年度は7名が博士号を取得しております。
 また、教授の輩出に関しては、平成30年度においては27名が教授となり、総計236名となっております。最先端の医療技術の研修に関しては、慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術の研修をアジアと協力して行っております。
 32ページです。モデル的研修・講習の実施として力を入れているのが、救急隊に対する講習の実施です。循環器・神経救急疾患の予防は時間依存性であり、いかに救急隊が治療可能な専門病院に直接搬送できるのかが重要なポイントとなっています。神経徴候による急性期脳卒中のトリアージ等、あるいは救急車内で心電図を撮って、当センターへの送信等で実現させております。救急隊との連携は密にしており、かなりの数の患者さんが豊能地区から迅速に運ばれております。また、若手医師に対する脳卒中セミナーの開催も行っております。
 33ページです。評価項目1-5ですが、医療政策の推進等に関する事項に関しては、自己評価Aとさせていただいております。定量的指標としては、循環器疾患の分野で大きく国際貢献する人数として達成率127.8%となっております。
 34ページです。医療の均てん化並びに情報の収集及び発信に関する事項です。先ほどからも話題になっておりますが、ネットワーク構築の推進、そしてデータ蓄積ということになります。[1]脳卒中データバンクのベンチマークデータの提供を開始して、右のグラフにありますように症例の蓄積がかなり増えて、今度はそれを解析するというところにまで進んでおります。これは、脳卒中・循環器病対策基本法の理念の1つのモデル事業となるデータ集積です。
 [2]ロボット補助下心臓手術の国内外への技術指導です。これは昨年の4月に保険適用となっておりますが、年間82例となっており、日本にいる5名のプロクターのうち2名がプロクターとして在籍しております。右下の学会指定プロクターとして指導した施設、あるいは国循で手術見学・指導した施設が日本だけでなく海外にもあり、このうち2施設からプロクターが新たに出て、また技術が広っていくところです。[3]心尖及び大動脈アプローチの経カテーテル大動脈弁植え込み術の指導は、共に指導できるのは日本で2人のみで、うちでは指定プロクターとして右に記載のある施設に指導をしております。
 36ページです。国への政策提言に関する事項として、国循指導での「血液製剤の使用指針」、新鮮凍結血漿の使用量削減のための「未承認薬・適応外薬の要望」などを行っております。医療の均てん化並びに情報の収集及び発信に関する事項として、情報の収集・発信としては、抗凝固療法中の患者への脳梗塞急性期再開通治療に関する推奨、それから、急性大動脈解離に合併する脳梗塞の診療指針、原発性高脂血症調査研究の総説作成とレジストリ開始を重点として行っておりますし、日本循環器学会をはじめとした各種ガイドライン作成への関与を行っております。情報の収集・発信に関して、NHK「病院ラジオ」の制作・収録への全面協力を行い、これによりNHKは「ギャラクシー賞」を受賞したと聞いております。
 37ページです。国際貢献としては、ミャンマーへの医療支援、国際バイオ医薬品統計学会でのプログラム作成、国際ガイドラインへの関与を行っております。
 公衆衛生上の重大な危害への対応として、大阪市北部地震の経験の共有と情報発信ということで、震災後救急患者数の急増した地域における特定機能病院としての役割を果たし、循環器救急疾患の発生頻度増加を明らかにしました。それが右のグラフです。この経験は、震災直後の循環器救急疾患対策の重要性を啓発することに繋がると考えております。また、震災時のエコノミークラス症候群の遠隔診断スクリーニングと体制整備も引き続き行っております。以上、1-5までを御説明させていただきました。どうもありがとうございます。

○祖父江部会長 
 それでは今の御説明について御意見、御質問等ありますか。

○中野委員
 医療倫理委員会や医療倫理コンサルテーションチームのことで教えください。数だけから申しますと、例えば10、20というのは国立循環器病研究センター規模の医療機関であれば決して多くないほうではないかと思いますが、身近な問題というのはもっとたくさんの数が発生しているのではないかと思います。そこに至らずに、どういった形で医療上の倫理の問題や、重篤な疾患の方が搬送されるケースが多いと思いますので、いろいろなケースがあると思いますが、どのように現場で対応しておられるか教えていただいてよろしいですか。

○国立循環器病研究センター小林病院長
 病院倫理委員会まで行く事例はここに書いてあるように少ないのですが、それとは別に、治療に関しては重症回診ということを行いまして、それは幹部を含めた5、6名で大体やるのですが、それで患者さんの意向や治療方針を確認しております。
 また病院倫理委員会に行く事前に、新しい高難度新規医療技術とか、適応外とか、あるいは認可されていない医薬品に関しては新規医療評価室というのがありまして、そこの段階でまず審査する。その中で既に整理されるものはここに出てきませんので、最終的に出てきたものとしてはこの件数だけということで、印象としては少ない数ですが、実際はもっとたくさんの検討をしております。

○前村委員
 国立循環器病研究センターでなければできないような非常に高度な医療をたくさん行っていると思いますが、一方で二次医療圏の中核病院としての役割もあると思います。国全体の国循でないとできないような医療、あと三次医療圏の中核病院としての医療、二次医療圏の中核病院としての医療の割合がどれぐらいかというのと、診た患者さんをどれぐらい逆紹介して地域に返しているのか教えてください。

○国立循環器病研究センター小林病院長
 紹介率も、逆紹介率も90%ぐらいだと思います。いわゆる我々の地域、豊能地区と言うのですが、それがどれぐらいの割合かというのも、ここにはないのですが全体としては80%とか90%ぐらいになります。循環器と言いますと、先ほどから言っている急性心筋梗塞、大動脈解離、脳卒中ということになりますので、どうしてもそういう患者さんが多くなります。一方、既に御説明したように特殊な疾患に関しては、全国からかなり来ていただいているというところが現状です。
 あとは地域に関してはどういうふうにしているかということについては、地域連携プログラムの中核となって、いろいろな地域におけるモデルとしてのものを作っていくことを今やっているところです。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 直接の御回答にならないと思いますが、循環器病院の特徴として、脳と心臓の救急を非常にやっておりまして、私も心臓専門であったので、その後の脳梗塞を起こしたときは分からないのですが、ここは心臓の患者さんは脳を起こすと必ず国循に来ますし、脳の患者さんも必ず心臓を起こすと国循に来ると。その合併率を今調べているのですが、30%ぐらいあるような感じで、その辺を国循として特徴としてやっていこうと。ちょうど対策基本法と同じような意図でもありますので、その辺は、ここでないとできないと思いますので調べていこうと思っております。

○祖父江部会長
 今のと関係するのですが、例えば法律に基づく全国の悉皆的なものはそれはそれとしてあるのですが、今、小川先生がおっしゃったのは、地域の中で、もう少しきめ細かいフォローだと思うのです。例えば、脳卒中で言えば回復期リハとか、地域包括ケアみたいな後方的な病院が幾つかありますが、そことの連携データのやり取りは何かありますか。それは今問題になっている1つの解決かもしれません。

○国立循環器病研究センター小林病院長
 確かに非常に重要な、遠隔期というよりも短期とか中期といいますか、数か月の連携に関しては、脳卒中は割と早くリハビリ病院に送って、あるいは外来で通院してもらうというプログラムがありますので、そういうのでフォローはかなりできているとは思うのです。ただ、やはりそれを全てできるかという、悉皆性ということにもっていくと、医療マイナンバー的なものがないと、なかなか難しいと感じております。どうしてもお年寄りですので、家族が引き取って遠隔地に行って、その結果がどうなったかというのが分からなかったりとか、そういう問題はあると思いますので、そういうことも考えて、これからのデータ収集というか登録に考えていきたいと思います。どうもありがとうございます。

○祖父江部会長
 そのときに認知機能みたいなものは何か見ておられるかどうか。いつも問題になるのですが。

○国立循環器病研究センター小林病院長
 認知機能は、うちの脳神経内科のほうが力を入れてやっていますので、そのことに関しては例えば、ある市でそういうことを全てスクリーニングしたりとか、かなり積極的にはやってくれております。

○祖父江部会長
 ほかには何かありますか。

○大西委員
 ここですぐにお答えいただけるかどうか分からないような質問で恐縮ですが、心不全の患者さんの統計が出ていますが、5年間で21万人~26万人に増えたというのはかなり急速に増えているような印象を受けたのですが、これに対しては何らかの背景やそれに対する対策に力を入れておられることが、もしあれば教えていただけますか。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 おっしゃるとおり、ものすごい勢いで増えているのですが、これは一番初めに始めるときに、転院の場合をどうするとか、そういう問題もあったのですが、実際、増えていることは事実です。と言いますのは、心筋梗塞でもなかなか亡くならなくなっていますし、心不全や心筋梗塞の治療も良くなりまして、ほとんど一遍帰って、救急で再入院するという感じで、心不全の患者さんは28万人と書いてありますが、実際はもっと多いと。それで介護に回る方もかなり多いのではないかと思っています。その辺の現状を調べてみないといけないなとは思っています。

○国立循環器病研究センター小林病院長
 確かに、心不全パンデミックということで非常に増えているのです。これは大阪府あるいは厚労省でも考えていると思いますが、今後は急性期病床よりも回復期の病床が必要です。心不全は繰り返してきますので救急のベッドも要りますが、やはり回復期を治療するベッドも必要ということで、そういう病床に変えていくということは考えていると思います。
 また、簡単な話で言いますと、心不全ノートみたいなものを付けていただいて、病院だけでなく、診療所でも心不全の患者さんをフォローしていただいて、悪くなったときに心不全ノートみたいなもので、こういうときには病院へ行きなさいよということを知らせて、うまくそういうところを流していくような形にしないと、やはり病院がパンクしていくことになるのではないかと考えております。

○大西委員
 是非、総合的な施策を御検討いただければと思います。ありがとうございました。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 今、医療体制の整備という会議も開かれておりまして、従来、循環器専門病院として心筋梗塞を中心にやってきたわけですが、心筋梗塞のインターベンションができなくても心不全のある程度の治療ができる病院をつくっていこうということで、今、病院長がおっしゃったように、病院の負担が軽くなるということも考えております。ですから、国循のように心筋梗塞の緊急のオペができる病院、普通の心筋梗塞の治療ができる病院にして、心筋梗塞の治療はできないが心不全の治療はできる病院というようなことに分ければ、少し負担が軽くなっていくのではないかという会議をやっております。

○祖父江部会長
 ほかにはよろしいですか。今の二次医療圏、更に末端の医療圏の見直しがいろいろ行われております。それはできればナショナルセンターが音頭取りを取って、こういう形がもっと良いとか、こういうふうにすると良いという提言を是非出していただけるといいかなと。心筋梗塞は長い病気の入口みたいな感じですので、その後どうしたらいいのかというのは、皆さんはなかなか分からずに、ふわふわしているという感じがありますので、是非それはお願いしたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

○藤川委員
 先ほどから、なるべく多くのデータを取るとか、別の病気で入ってきて、また別の病気になったらどうなのかという話が出ておりますが、しつこくて恐縮ですが、先ほどの予防に近いバンドを付けるという話で、そういったものを6NCの中で考えれば、若い方も高年齢の方も循環器センターが企画するというのは一番取り組みやすい疾病ではないかという感じがします。私も毎日、万歩計など、いろいろ計れるものを付けていますが、全然違和感もないですし、そうしたものをスマホに連携させることはできるので、そういったものを当事者が承諾して若いときから付け始めて、長い間データを取っていくようにすれば相当いろいろなデータが取れるのだと思います。予防もあるし、治療にもつながるということで、なおかつ大阪の近くだけではなく、なるべく全国的に取っていただき、地域でのかかりつけ医との連携もやっていただけるきっかけになるのではないかという気がするので、取り組みやすい機器を開発していただいて、なるべく多くに付けていただけるといいのではないかという気がしました。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 おっしゃるとおり、OICにも、JSRというゴムのメーカーですが、優れたモニターができるようなゴム製品を作ってモニタリングをしていくこともできています。今、実際やっているのは、日本で何か所やっているか分かりませんが、国立循環器病研究センターでやっているのは、全国的にペースメーカーとかICDをやっているのですが、在宅モニタリングと言いまして、全国に患者さんは帰っていくのですが、病院に国循に来なくても、自宅でモニターアンテナを立てておいて、国循に1週間に1回ぐらい全部データを送って、危ないと言うので先に予知して来てくださいというのを全国に広げてやっております。先生がおっしゃるようなことはかなりできると思います。
 6NCでも、今年から国立国際医療センターと医師の交流も始めていますので、そういうものが始まりますと、また密接に東京のデータも取りやすいのではないかと思っております。

○国立循環器病研究センター望月研究所長
 藤川委員が懸念されているまず通信のことが1つ問題になりまして、自分でログインしなければいけないと言うと、総務省の通信のシステムになってしまって、本来ならば、私どものデータがそのまま医療機関に何にもしなくても通信で行っているという状況が、予防やデータの蓄積には一番良いと思っておりますので、そこを乗り越えるための通信技術に関しても、オープンイノベーションセンターで頑張っていきたいと。取りあえず、まず少しずつ広げていく、それを念頭に置いて考えていきたいと思います。

○国立循環器病研究センター小林病院長
 先ほどから出ていますが、OICで、かなり企業が自宅のモニタリングとか、独居の方の監視みたいなことを結構興味を持って、彼らはビジネスの面から見ておられると思いますが、我々は非常に重要なことなので、協力して、そういうシステムを開発していきたいと思います。どうもありがとうございます。

○祖父江部会長
 いいですか。今のことを少しだけ追加でお聞きしたいのですが、国循マンションプロジェクトというのは、非常に興味があるのですが、今これは予防ではないかというお話が出たのですが、何かインターベンションしていくという意味というよりは、この中身のデザインがよく分からないのですが、マンションに住んでおられる900戸ぐらいの方について、何をやろうとしているのかという、デザインというかコンセプトというか、アウトカムメジャーをどうするのかとか、その辺のことを教えてください。

○国立循環器病研究センター小林病院長
 長期的に見ますと、予防、そこで安心して生活していただけるようにモニタリングみたいなことをやろうという流れではいるのですが、現在のところは、そういう循環器ドックということで、マンションの費用の中に含まれる高度循環器ドックを1回受けていただくというものを含んでやっております。ですから、データを蓄積していくということにもなるので、それはまだ取っ掛かりですが、そこをもう少し進めていきたいと思います。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 おっしゃるとおり、介入は必要ではないかと思いますが、まだそこまではいっておりません。ただ、高度人間ドックで心筋梗塞の予知というのは不可能と言われておりますが、国循でやっているMRIで特殊な方法で撮影しますと、プラークが破裂しそうか、そうでないという予知ができて、そういうこともデータとしては、介入ではないですが、それはかなり精密に追っていけると。それを全員が受けますので、かなりはっきりしたことが言えていくのではないかと思います。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは、大変良い議論ができていると思います。次は「業務運営の効率化、財務内容の改善、その他業務運営に関する重要事項」について議論したいと思います。評価項目2-1~4-1を議論したいと思います。説明は5分ですので、よろしくお願いします。

○国立循環器病研究センター柳樂企画戦略局長
 評価項目2~4までについて御説明します。資料の39ページ、10.平成30年度経営状況ということで、左上に経常収支の推移の表があります。平成30年度の経常収支差は、経常利益として緑色になっていますが、15億1,800万円の黒字で、経常収支率が105.1%で、平成29年度に続いて、2年連続の黒字決算となりました。昨年の6月の大阪北部地震で、建物や設備に当センターは大きな被害を受け、一部の病棟は年度を通じて閉鎖をするような状況となりましたが、復旧と効率的な運用に全力を上げた結果、法人収支、医業収支ともに前年度とおおむね同水準の黒字を確保することができました。
 40ページに評価項目2-1、業務運営の効率化について書いてあります。自己評価としてはBとしております。また、41ページ、評価項目3-1、財務内容の改善についても自己評価はBとしております。具体的なこれらの取組内容については、42ページを御覧ください。
 まず評価項目2-1に関しては、左側、効率的な業務運営体制の構築ということで、厚労省やAMED、PMDA、国立病院機構などとの人事交流を引き続き実施しました。また、オープンイノベーションセンターや、看護師の特定行為研修管理室の設置準備などを行って、いずれも今年4月1日に開設するなどの体制の見直しを行いました。
 また、[2]効率化による収支改善の取組ということで、高額の医療材料やカテーテルなどで、国循が買っている価格と、市場で普通に売買している市場価格との乖離が大きいもの、国循が高く買っているものについて、価格交渉を行って、点数改定によるスライド分と合わせて約1億8,000万円の削減効果を上げました。そのほか、後発医薬品の採用の一層の促進などによるコスト削減を行いました。
 評価項目3-1の財務内容の改善については、右側にありますように、各種の外部資金の獲得による収入増加に努めて、平成30年度からインターネットを利用した寄附受付を開始するなど、寄附金の募集などに努めた結果、寄附収入は56%増と大幅に増加しました。そのほか、治験の研究費、ライセンス収入など、いずれも前年度を大幅に上回る成果を上げました。
 最後に、43ページ、評価項目4-1、その他の業務運営です。この項目は内部統制の構築、移転に向けた施設・設備の整備、人事システムの最適化などが目標とされております。平成30年度におきましては、法令遵守と内部統制の面で改善に必要があるということで、自己評価としてはCとしております。具体的に取組内容は44ページに記載しております。
 今申し上げた法令遵守等内部統制については2点あります。1つは、当センターでは、通常、観察研究と呼んでおりますが、通常の診療の効果や予後の診療情報などを収集して行う研究を実施しております。この観察研究の一部について、厚生労働省の研究倫理指針が定める手続を取らずに研究を実施しているものがあることが分かりました。これについて本年2月以降、ほかにも同様な事案がないか、また原因究明や再発防止に向けた内部調査、検討を実施しました。センターとしては今回の事態を深く反省して、二度とこのような事案を起こさないよう、研究倫理の徹底や再発防止策の構築実施に努めているところです。
 もう1つは、昨年の6月の大阪北部地震の際に、非常用発電機について毎月1回の定期点検は当然行っておりましたが、年1回の定期点検、病院などの全館停電を要する点検を行っていないことが分かり、監督官庁から、停電を要する定期点検の実施などについて改善を求められました。
 これらについては、全て平成30年度中に対応を行って、監督官庁に報告いたしました。また、今後も継続して実施していくことにしております。
 施設設備に関しては、45ページに写真があるように、今年3月末に建物を完成して、建設業者から引渡しを受けました。また、大型医療機器や研究機器などの調達を行いました。今年度7月1日に向けて移転を行って、7月から全ての部門で新しいセンターで業務を開始しております。
 最後に、人事システムの最適化については、女性の非常勤理事を任命するなど、多様な人材の確保に努めております。また、文部科学省が行う女性研究者の研究環境の向上を図る補助事業がありますが、医療機関としては初めて当センターが採択されて、当センターの女性研究者に対する研究助成などを行いました。またクロスアポイントメント制度の活用を推進しており、対象者を2名に増加しております。これらの項目の説明は以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、今の御説明に対して、御意見や御質問等ありましたら、よろしくお願いします。

○花井委員
 4-1は、Cを付けておられますが、これは研究倫理に不適合があったということを反映しているかと思いますが、これは前提として、研究計画書自体では適合であって、その適合は国循の倫理委員会で適合と判断されて、研究を実施した中で不適合が生じた。それを倫理委員会が指摘したという事実関係でよろしいのですか。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 これは詳しく申し上げますと、全例倫理審査は通っているのです。その倫理審査の計画書の段階で、倫理審査計画書を書く段階で、これは国循のホームページに掲載するという一言があったわけですが、それがホームページに掲載していなかったという問題です。全例、倫理審査は全部通っているのです。ですから、ホームページに記載するという点でそれに齟齬があったということですると。ホームページに記載するというので。

○花井委員
 計画書で観察研究だから、オプトアウトの表示をホームページですると契約書に書いて、始めたものの、それが掲載し忘れた、なかったということですか。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 はい、そうです。それと、あと2題だけは、1回通っているものもありますし、通るだろうという主治医の確信で、論文を出すときに、提出日を許可日と書いて論文に出したと。その2つは、もうアウトです。

○花井委員
 ということは、倫理委員会自体がアウトではなくて、基本的には、この研究者がアウトということですか。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 そうです。私の認識はそうです。計画書に、しかも、それもインフォームドコンセントを得ている少数の、例えば心臓移植とか、そういうものまでオプトアウトすると。ホームページにと書いてありますので、それ以外のオプトアウトはしているのですが、ホームページにというのがなかったということです。

○花井委員
 なるほど。ということは、国循としては国循の研究者に研究倫理を徹底できていなかったという意味で、施設としてはちょっと足りなかったという整理になっているということですね。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 はい。

○花井委員
 分かりました。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 研究者は倫理委員会が通った段階で掲示してくれると思ったと。事務的なところとして、これは研究者が1本電話すればいいだけですが、その1本の電話がなかったということです。

○藤川委員
 今の質問のほうは、どちらかというと、うっかり忘れとか、手続ミスとか、あるいは認識不足とか、そういったようなことかなとお聞きした次第です。それにしても、それではいけないわけで、そういう倫理観といいますか、一人ひとりの高い志の問題であろうかと、まずは思います。
 他方の電気事業法ですが、(2)に電気主任技術者による保安に関する意見を尊重していないということが書いてあって、もちろん検査をされる方々はなかなか辛辣な言葉を使われるので、どこまでこのとおりなのかよく分かりませんが、ただ、これを拝見しますと非常に問題を感じると言いますか、何らかのアラームが出ていたのに、それを聞いていなかったというような文章に読み取れることからすれば、こうしたことが起きてしまうのはいろいろ含めて組織の風土の問題になるかと思いますので、その辺りは、もう少しいろいろ考えるべきことはあるのかなという印象を持ちました。

○国立循環器病研究センター柳樂企画戦略局長
 御指摘のとおりだと思います。今、電気事業法についての御指摘を頂きましたが、前段の研究倫理指針違反についても、やはり、背景としては個別の倫理指針についての周知徹底が不十分ということにとどまらず、やはり組織全体としての企業風土的なものも含めた改革は必要だと認識しております。研究問題、あるいは電気事業法の点検の問題にとどまらず、コンプライアンス意識の徹底や風通しの良い組織づくりに向けた取組を改善策として検討して、今年度中に実施していくつもりで現在進めているところです。

○前村委員
 ここに入るかどうか分かりませんが、全国的に働き方改革への対応というのは避けて通れなくなっているのですが、循環器センターも結構時間外が多いほうだったかと思いますが、今、何か取組はされていますか。

○国立循環器病研究センター小林病院長
 確かに厚労省からの通達もあったところで、今のところ考えているのは、病院情報システムにアクセスできる場所が病棟とか、あるいは医局でない所を準備したり、白衣を脱ぐとか、そういうことまで書いてありますが、やはり、正しく超過勤務を理解していただくことも大事ですし、あるいはワーキングシェアということで業務量を減らすということを考えております。
 幸いなことに、我々の所では80時間超えの超過勤務はここ2年ほどはありません。ただ、事務職のほうが逆に病院の移転のところで、80時間超というのが何か月かあったのですが、それももう解消されていくのではないかと思います。専門医制度が変わって若い人がなかなか来てくれないとか、いろいろなことがあるのですが、そういうことを克服していきながら働き方改革は考えていくということです。その中で、先ほど特定医療行為ができる看護師も養成して、医者でなくてもできることはそちらに任せようと、そういうことも考えております。なかなか難しいところですが、まだ始めたばかりですので、もう少し余裕を頂ければと思います。

○斎藤委員
 2-1以降は何かとても御自分たちが厳しく見ていらっしゃるような気がして、私はBをAと書いてしまったのですが、環境が非常に厳しい、しかも移転をして、普通よりもコストがかかる、災害があった、そういうような中で105%を超えるというのは非常に画期的な成果だと思うのです。その辺りをもう少し胸を張っていただいたほうが、私も点数を付けやすかったなと思います。
 1つお聞きしたかったのは4-1ですが、今の御説明を伺っておりますと、どちらかというと余り深刻な問題ではなくて、よくあることと言ってしまうと何ですが、スーパーマンではないので、こういうようなケアレスミスはあるだろうなという気がしているのです。それにもかかわらずC、それから今、風通しの問題、風土の問題ということをおっしゃっていました。ということは、これ以外にも何かそういう証拠が出ているのですか。もしそうであれば伺っておきたいのですが。そうでなかったら、なぜここまで深刻に受け止めているのかという気がしました。

○国立循環器病研究センター柳樂企画戦略局長
 これ以外に、今、隠している何か内部問題があるということはありません。平成30年度の実績としてはここに書いたものが全てということです。ただ自己評価については、総務省が定めている評価基準に従って我々も自己評価を付けて、今回のように両事案ともそれを踏まえた改善を行っている途上ですので、平成30年度中に全て終わったということではなくて、平成31年度も、今も引き続き改善対応をしております。そういうon goingで改善をしているものについては、B以上は付けないという委員会での評価の基準になっていると承知しております。それに即した自己評価を今回は付けております。御指摘については有り難く思っております。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 ありがとうございます。倫理のほうも、直ちにオプトアウトをしていまして、6か月がたちますが、誰一人として患者さんからの苦情はありませんし、全く今のところ訴えも何もありません。ただ説明をきちんとやっております。

○祖父江部会長
 それでは、どうもありがとうございました。全体を振り返って、前のところも振りながら、何か御意見があれば、もう一度、御質問、御意見等を出していただけたらと思いますが、いかがですか。
 私は前もお聞きしたかもしれませんが、いろいろな災害があったにもかかわらず、移転もあって大変だったと思いますが、それでも医業収入とか、経常収支が非常に良くて好調ですが、これはどういうことによっているのか、これは非常に参考になるのではないかと思いましたので。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 院長が詳しく御説明すると思いますが、非常に不幸中の幸いだったのが、屋上の50tの貯水槽の水が断裂していたものですから、10階がずっと水びたしになっていたのですが、手術室とかICUは何とか生きていたのです。ですから、患者も外来を1日目は止めたのですが、どんどん来るわけです。来たらやはり診ないと仕方がない。そういうことで2日目から外科の手術もできましたし、インターベンションもできたので、救急はかなりやれたというのが1つポイントではないかと思います。

○国立循環器病研究センター小林病院長
 基本的には先ほど言いましたように、手術は翌々日から開始できました。ICUも使えたというところで、変な話ですが、1日平均1万3,000点であった入院の収益が、その際には1万5,000点になったということで、数は減ったのですが、重症の手術が減らなかったので、それだけいけたということになります。それに尽きるのではないかと。
 それと、やはり一致団結して早く回復して、BCP上はいろいろ不備なところもありましたが、皆さんの協力でそれが速やかにできたということが一番ではないかと考えております。

○祖父江部会長
 全員の結束が逆に高くなったという感じを受けたのですが、これはそういう感覚もあるのですか。

○国立循環器病研究センター小林病院長
 実際のところは、結構大変なところもありまして、ここではなかなか言えないところもありますが、やはり基本的には、その場その場で最善の選択ができたということで、一致協力して1人の死亡者、あるいは怪我人もおられなかったということが幸いであったと考えております。風土として悪いと言われているのですが、逆にそういうときに追い込まれると、みんなが頑張ってやってくれるというのもありますので、風土が非常に悪いように卑下しておりますが、良いところも決して少なくないと、そういうふうに思っております。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 特に引越しのときは手術の直後とか、どこの病院も引き受けてくれませんし、地震のときも、一応小児科とか預けたのですが、1日で診られないということで全部帰ってきたのですが、皆それでも頑張ったと。この頑張りはすごいと思います。プロ集団だなと思っています。特に引越しのときは倫理問題の処理と一緒に重なって、もうパニックになっていたのですが、それでもみんな頑張って、倫理委員会の処理もこなしながらずっとやったと。これは涙ぐましい努力があって、これで1例でも事故があったら循環器病研究センターは潰れるなと思ったのですが、その悲壮感があって1例も事故がなく、人工心臓を付けた人もかなりいたのですが、それも無事移送が終わったというのは非常に職員を褒めたたえたいと思っております。

○祖父江部会長
 いいですか。どうもありがとうございました。それでは、最後に法人の理事長先生と監事のほうから、説明と言いますかヒアリングと言いますか、コメントをお願いしたいと思います。まず、監事のほうからお願いします。

○国立循環器病研究センター竹山監事
 それでは監事の竹山から申し上げます。2件ほど内部統制の問題が上がりましたが、実は内部統制については、私どもが年度の初めに監事の監査概要をお出ししているのですが、もう数年前から内部統制の徹底ということで、ある意味で非常に進んでおります。先ほど少し遠慮過ぎたとおっしゃっていましたが、幹部の方への内部統制はいかにあるべきかの周知と、コンプライアンス委員会なども充実しております。ですから、そこは御心配いらないと思います。
 あと業績についても、数年前から移転という問題を控えており、また施設が新しくなって減価償却費や情報関連コストも増え、患者自体の数は変わりませんから、コスト増という、今度は逆に厳しい問題が起こるということで数年前から、皆さんは医師であり研究者ですが、経営もしっかりしてくださいとお願いしています。これは数年掛けて協議してまいりまして、皆さんには数字の大切さと、経営観念についても浸透しております。したがって、ああいう地震があっても基本的には大きな支障なく乗り越えられたと評価しております。
 もう1つは、昨年も申し上げましたが、やはり大きなコストの増加に対しては、抜本的に費用の削減や収益の向上が必要ですのでアクションプランを作っていただきました。幹部の方は皆さん御承知ですから、かなり具体的になっています。これは組織の隅々に小さなお金ですが積み上げていって数億円、数年掛けて累計で10億円ぐらいの改善をしようというプランも出来上がっております。監事としては、今年の監査の概要に、その実行状況を検討していくことを加えております。以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。今のことについてはよろしいですか。続きまして、最後に理事長より一言よろしくお願いします。

○国立循環器病研究センター小川理事長
 病院も新しくなりまして、外来患者さんも大いに増えております。ヘリポートもできまして、ヘリの患者さんも来るようになりました。非常に活気に満ちておりますし、研究所のほうも素晴らしい機器が入りましたし、先ほどの人工心臓とか、ECMO、人工心肺が研究できるのも、日本一の大動物の実験施設がありますので、そういう賜物ではないかと思います。
 OICも、今年また新しい大きな企業が入ってくれそうで、皆さんは遠隔医療、在宅、その辺を目指すところです。ですから、そういうことでますます発展していくのではないかと思います。いろいろ風土を言われましたが、私は非常に風通しが良いセンターであると思っております。今回の問題は殊更大きく取り上げられて、Cを付けましたが、実際は私たちはそれに打ち勝ってやっていこうと思っております。確かに、その抜けがあったところは、これは医師だけではなくて事務体制も協力していかないと無理と思います。研究者ばかりに責任を負わすのは私は非常に間違っていると思いますので、その辺はきちんと皆さんで一致協力してやっていきたいと思っております。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。よろしいですか。それでは、以上で国立研究開発法人国立循環器病研究センターの平成30年度の業務実績評価を終了します。どうもありがとうございました。ここで5分休憩を取りたいと思います。

(国立循環器病研究センター退室)
(国立精神・神経医療研究センター入室)

○祖父江部会長
 それでは、国立精神・神経医療研究センターの平成30年度の業務実績評価について、御議論をお願いしたいと思います。初めに、理事長から一言、御挨拶をお願いします。

○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 ありがとうございます。国立精神・神経医療研究センター理事長の水澤でございます。最初の時間を使わせていただきまして、概要を簡単に説明させていただきたいと思います。
 平成30年度業務実績評価の概要を御準備ください。1ページです。私どものセンターのミッションは、精神疾患と神経疾患の克服でございます。そのために、病院とその絵にございますように、神経研究所と精神保健研究所の2つの研究所が一体となって研究開発を進めております。また、それらをサポートする装置といたしまして、4つのセンター内センターを設置しております。1つがTMC(トランスレーショナルメディカルセンター)です。これは文字のごとく、橋渡し研究、臨床研究を推進するものです。お隣のMGC(メディカルゲノムセンター)は、ゲノム医療の研究のみならず、バイオバンクを管理しております。その上のIBIC(アイビック)は、脳病態統合イメージングセンターです。これは、近年非常に重要な画像研究を担っておりまして、ADNI研究あるいは革新脳、国際脳といった画像研究のコアセンターとして活動しております。最後に、CBT(認知行動療法センター)ですが、これは我が国で初めて、国立として設置されたCBTセンターで、日本全体の認知行動療法の普及・啓発に貢献してきております。その右上の実験動物施設、ここにはマウス、ラット等のほかに霊長類、あるいは筋ジス犬といった非常に貴重な動物種も存在しており、研究をサポートしているということです。また、一番下に、専門疾病センターがあります。これも研究所と病院が一体となって、それぞれの疾患を研究し、診療するシステムです。後で、これについては、また詳しくお話があると思います。
 2ページです。こういう体制で、いわゆる基礎研究(T0)から臨床応用(T4)まで一気通貫に研究を進めるということを特徴としております。基礎研究は2つの研究所、臨床応用は病院が担っておりまして、その間を4つのセンター内センターと動物研究施設がつないでいるという構成でございます。
 3ページは、病院です。486床の中規模の病院と言えると思いますが、当然、この全ての病床は精神疾患と神経疾患に専ら活用するということで、それを1つの部と捉えますと、日本のアカデミアの病院といたしましては最大規模の病床を持っております。その内訳は右の病棟別内訳ですが、ピンクとブルーが一般の病床、つまり脳神経内科で、小児と成人があります。グリーンとイエローが精神科です。真ん中辺りの4階南病棟の「脳とこころの総合ケア病棟」は、従来は精神科の病棟でしたが、精神疾患は入院患者が減ってくるという状況もありまして、精神科と脳神経内科の両方が必要となるような病態がかなり多いということから、一般の病床として新しく開設して運営しております。
 また、「医療観察法」病棟は、我が国で初めてできた医療観察法の病棟です。全国800床の医療観察法病棟のセンターとして活動しております。
 左側の運営状況ですが、経常収益は170億円程度であり、小規模と思いますが、経常収支率100.6%ということで、独法化以降、ごく僅かですが初めて黒字化することに成功いたしました。御指導に感謝いたしたいと思います。
 4ページです。ナショナルセンターの1つの在り方として、治験とか臨床研究のレジストリ等の事務局機能を担うべしというお話がありますが、我々は筋疾患のレジストリのレムディーといったものを10年以上前から運営しており、現在は少なくとも11の全国レベルのレジストリを運営しております。それは右側の下のほうにまとめてあります。
 中でも特出して御説明したいのが5ページです。これは一言で言いますと、精神疾患の大規模レジストリで、それぞれの個々の患者さんの臨床情報をバイオマーカー、これには脳に発現する遺伝子の情報も含めたものですが、そういうものとひも付けることにより、その大規模データを解析することで、未だ判明していない精神疾患の病態、本態に切り込むということを可能にできると思っております。これは精神・神経学会等から全面的なサポートを受けておりまして、オールジャパンの研究体制ができております。
 以上のような体制になっており、6ページは、その成果の1つとして、何度かお話しており、いよいよですが、筋ジストロフィーのエクソンスキッピングの治療薬、ビルトラルセンが9月には薬事申請の予定であるところまで来ることができました。これは、この類の薬の中では最も効率が高いということで知られております。左側のOCHは多発性硬化症の薬として、やはり同じように当研究所で開発されて、当病院で治験等をして開発が進んでいる薬ですが、ようやく国内の大手製薬メーカーと契約が成り立ちまして、これから第Ⅱ相のPOC試験を開始するというところまで来ることができました。
 こういうことから、7ページですが、研究開発については、S評価、医療の提供、人材育成、医療政策に関してはA評価、業務運営の効率化につきましては黒字化等を考えてA評価、それ以外をB評価とさせていただきました。これから引き続き少し詳しい説明をさせていただきたいと思います。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、研究開発の成果の最大化に関する項目です。評価項目でいいますと、1-1及び1-2に関する議論をしたいと思いますので、まずは15分御説明で、15分質疑ということになっておりますので、時間が限られておりますので、ポイントを絞って御説明をよろしくお願いします。

○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長
 それでは和田から、項目の1-1と1-2を説明させていただきます。まず、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進ですが、先ほどありましたように、自己評価Sを付けております。その理由は、8ページの下段です。定量的指標は、医療の推進に大きく貢献する研究成果、平成30年度は目標値2件のところを実績として5件あげております。また、定量的数値で、論文の数は、平成30年度、インパクトファクターが付与された学術論文ですが、300件の大台に乗せております。
 先ほど申し上げました5件について具体的に説明申し上げます。9ページを御覧ください。先ほど少し話がありましたが、ビルトラセンの開発の成果です。これは世界発の筋ジストロフィーのエクソン53スキップ薬です。黒っぽい図の下の右ですが、そこにジストロフィンの回復を確認しております。つまり安全性のみならず、有効性を確認できたということです。類似薬の開発等がありますが、これほどまで強い発現をみたのは、ビルトラセンのみです。
 これらの成果を受け、共同開発先の日本新薬では、Ⅰ相、Ⅱ相試験を国内で完了いたしまして、この秋に承認申請をする予定です。これは日米同時承認の予定であり、ビルトラセンの開発は米国に導出できた例として貴重なものと考えております。
 その下ですが、ほかにもプレシジョン・メディシンを筋ジストロフィーで実現するために、無侵襲で採取できる尿の細胞をダイレクト・リプログラミング法で筋細胞に分化誘導する技術も合わせて開発に成功しております。
 10ページです。私どもは、新しい神経難病として「NINJA」というものの概念を提唱しております。これは臨床的には多発性硬化症に見えるわけです。しかし、通常のMRI検査では異常がないということです。しかし、よくよく解析をしてみますと、リンパ球解析と拡散テンソル画像解析を行いますと所見が取れてきたという例です。つまり、心因性と誤って判断されていたものの中に、こういう疾患があるのではないかということを示した例です。
 11ページですが、薬を用いない治療法の開発でも大きな進展が2つありました。そのうちの1つですが、左の真ん中辺りに、「ハイパーソニック・エフェクト」と書いてあります。これは、人間や動物の脳で聞こえない高周波成分の音を指します。この高周波成分が心の安定に重要であることを、これまで私どもは見いだしております。そのほかにも、左の下ですが、認知症の患者の行動・心理症状が、このハイパーソニックを聞いていただくことによって改善することも見いだしております。平成30年度は、マウスのハイパーソニック効果といたしまして、マウスの寿命が最大17%延長すると、人間で言いますと13歳の寿命延長が図られたことを見いだしております。
 12ページは、薬を用いない開発の2つ目です。経頭蓋直流刺激(tCDS)を用いた統合失調症に対する効果が、あらかじめ近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)で計測することによって予測できることを世界で初めて見いだしております。tCDSは、統合失調症の陽性症状、陰性症状、あるいは認知機能の改善をすることをこれまで見いだしておりますので、今回の発見は、統合失調症のプレシジョン・メディシンを将来可能にする成果ではないかと考えております。
 13ページです。基盤的研究でも大きな進展があり、定説を覆す発見です。これは脳の男性化・女性化に関するものですが、これまでは臨界期で、デフォルトが女性型で、そこにホルモンシャワーという現象が入り、男性型に転換していくことが定説でした。今回、私どもはそれだけではなく、臨界期よりも前の段階で視床下部からPtf1a遺伝子が発現することが重要であることを見いだしました。
 14ページは、先ほど申し上げましたようにインパクトファクターが付与された論文数です。右の上は平成30年度300件となっております。その下は、生物学・生化学の分野ですが、クラリベイト・アナリティクスの分析によりますと、私どもは国内の大学、研究機関の中で10位にランク付けされております。また同様な分析で、左の下にInCites Benchmarkingがありますが、やはり10位にランク付けされるところです。
 15ページです。評価項目1-2は、実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備ですが、こちらも自己評価Sです。その理由ですが、Ⅱの2つ目のポツにありますようにバイオバンクで非常に成果を上げております。平成30年度のバイオリソースの提供実績は26件、検体数は2,500以上を提供しているところです。
 16ページでは、そのほかの定量的指標として、First in human試験、医指主導治験等を平成30年度までに目標値6件ということでしたが、これまで実績値として200%を超える13件をあげております。また、その下に診療ガイドラインを中長期計画期間中に4件以上あげるという目標値に対しまして、そこにポツが4つありますが、平成30年度で4個、合わせて類計で14件のガイドラインへの貢献をしております。
 17ページを御覧ください。企業治験、医師主導治験、その他の臨床研究あるいは国際共同治験は、順調に増加していることを示しております。
 18ページは、先ほど申し上げましたバイオバンクです。一番上の骨格筋は、これまでも世界最大の規模でしたが、それに続きまして脳脊髄液についても、精神科の研究目的で収集いたしましたのが1,180検体と、これも世界のトップレベルとなっております。また認知症、パーキンソン病などの脳脊髄液も3,600弱の検体を収集しております。新たに、てんかん手術脳も収集を始め、既に95検体を集めているところです。また、ブレインバンクについては、生前同意ブレインバンクの草分けとして機能しておりますが、そのほかのブレインバンクと共同することによって、ハブとしての機能を発揮しています。
 19ページは、私どものバイオバンクが、6NC全体におけるNCBNでも中核的な活動をしていることを示したものです。
 20ページの左の図ですが、外部への提供実績を赤色で示しております。年々、堅実に増加していることがお分かりいただけるかと思います。また、この外部施設への提供が大体73%で、うち企業が16件というのも特徴的であるかと思います。
 21ページです。患者さんのレジストリに関わり、国のほうでクリニカル・イノベーション・ネットワーク事業が進行中です。この事業は、いわゆる縦軸と横軸からなっておりますが、そのいずれの軸においてもNCNPが重要な場面で関わっていることを示した図です。
 最後の22ページを御覧ください。私からの説明の最後になりますが、人事交流についてです。これまでPMDA、AMEDと定期的な交流を行っておりましたが、それに加えまして、准教授以上の人材を各大学等に平成30年度は6名輩出することができました。この輩出を可能にいたしましたのは、その下にありますように、国内外問わず多くの大学あるいは研究機関と連携協定等を結んで、共同研究や共同作業を行った結果と考えております。また、こういう官学だけでなく、民との共同にも力を入れておりまして、治験、共同研究、臨床研究などで連携している民間企業の数は、平成30年度は67社となりました。以上です。ありがとうございました。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは、今の御説明に対して御質問、御意見等はありますでしょうか。よろしいですか。
 では、私からちょっとお聞きします。非常によい成果を益々上げておられるという感じがしました。特に、モルフォリノ核酸の件はすばらしいと思ったのですけれど。19ページのバイオバンクのお話をされたのですが、これも今後、いずれのナショナルセンターもこのような形でバイオバンクを作って、それを協同研究というか、企業への導出なども含めてやっていただくといいなと思っているのですが、この実績を非常に上げておられるようですが、海外の、特に企業とのやり取りがなかなか難しい面があると思うのです。それから対価ですが、企業などに貸し出したり、導出した場合に、その対価をどれぐらい取っておられるかをちょっと教えていただけますか。まず、マイナーなポイントからですけれど。

○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長
 平成30年度で企業にバイオリソースを提供したのは4件になります。うち有償が1件だったかと思います。単価の設定は、民間の方々との御意見等も反映しながら、また我々がそれの開発に要した費用を勘案して、国立研究開発法人ですので営利はできませんので、少しでもそれに要した費用を頂くという形で設定しております。具体的な価格は、手元に資料がございませんので申し訳ございませんけれども、そういう形で設定しております。
 また、海外に提供するときに、その是非をチェックする仕組みも設けておりまして、利活用委員会並びに倫理委員会で厳重にチェックをしているところです。

○祖父江部会長
 海外のよくあるのは、アカデミアには提供できるのですが。

○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長
 はい、しております。

○祖父江部会長
 企業はなかなか壁があるようにも思うのですが、企業にも提供がありますか。

○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長
 はい、企業にも提供しております。先ほど申し上げました企業提供は海外が4件です。海外の企業提供が4件で、有償が1件です。

○祖父江部会長
 そうすると、実費レベルでの有償ということになりますか。

○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長
 はい、そういうことです。

○祖父江部会長
 その辺の、今後どうしていくかという問題があると思いますが、今のところはそういうレベルでやっておられるということで理解してよろしいでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長
 はい。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。ほかには何かありますか。

○前村委員
 9ページの下段の、「尿中細胞を筋細胞に変換し」という所で、ちょっと御質問したいのですが、これは効果を見るために尿中細胞を見るということか、尿中細胞を変換してそれを治療に使うということを考えていらっしゃるのですか。

○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長
 主には効果を見ることを考えております。今回、先ほど図で示しましたが、有効性を確認しました。通常は、筋生検という形を取っていますので、非常に侵襲性を伴います。それに代わる方法で、その効果を見るべく、もう少し侵襲性のない形で筋肉細胞が分化誘導できないだろうかということで、こういう方法を開発したところです。

○前村委員
 これが変換して筋細胞になるのでしょうか、尿中細胞が。

○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長
 はい、尿中細胞を分化誘導することによりまして、筋肉細胞に分化誘導しております。

○前村委員
 それを使うことも将来的には考えていますか?

○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長
 それは量的な問題等がありますので、大量に用意することができましたら、そういう道も開けてくるかと考えております。

○前村委員
 はい、ありがとうございます。

○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長
 ありがとうございます。

○国立精神・神経医療研究センター武田理事
 理事の武田ですが、直接担当しておりましたので、追加をさせていただきます。この場合、具体的には、MyoD、筋分化制御因子を使いまして、尿中の細胞を筋肉の細胞に変換しております。また、今御質問にあり、答えにありましたように、今のところは、これはある意味では生検に換わる侵襲性のない手段として開発しております。しかし、御指摘がありましたように将来的には、もし大量にきちんと準備することができるようになれば、これは治療的な側面も開かれるだろうと思っております。
 もう1つの波及効果というのは、現在対象にしていますのは筋ジストロフィーですけれども、こうした非常に侵襲性のない細胞を使う方法がほかの疾患にも使えるのではないかと考えて準備を進めている次第です。

○祖父江部会長
 よろしいですか。ほかにはいかがでしょうか。

○中野委員
 9ページのビルトラルセンですか、AMEDの成果事例に選出されたということで、すばらしい研究開発だと思いますけれども、お教えいただきたいのは、本薬剤の開発段階から神経センターがどのように関わられたのかということと、あと探索試験を行われたとき、当然、患者が対象になってくると思うのですが、これは神経センターの患者だけなのか、あるいは全国的にレジストリとかを活かして、そうした患者にも連絡した上で実施されたのか、それをお教えいただいてよろしいでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長
 正に、ここに開発者の武田がおりますので、直接お答えできると思います。

○国立精神・神経医療研究センター武田理事
 御指名ですので、私から述べさせていただきます。最初の開発に関してですが、私たちはエクソンスキップというストラテジーを筋ジストロフィーの治療に用いることを発案いたしまして、私たちから提案いたしました。最初に冒頭に理事長からも御紹介ありましたようなモデル動物を使い、このエクソンスキップというストラテジーが安全性で有効性が高いということを、まず証明することができました。その後、対象のデュシェンヌ型筋ジストロフィーのうち53スキップを目標とすることを提案し、それ以降、共同研究開発の契約を結んで企業とともに、その開発を進めてきております。臨床で最初に行いましたのが、先ほど出てきました早期探索的臨床試験ですけれども、これはプロトコールを準備した上で、医師主導治験として、私たちNCNPの病院で実施し、安全かつ有効であることを実証することができました。その後の後期相に関しては、企業に対して、今度は私たちがRemudy等を基盤として協力して実施して、ここまでまいったところです。

○中野委員
 どうもありがとうございます。もう1つ、そこから発展させて、このエクソン53スキップ製剤というのは、ほかの疾患にも活用できる可能性がありますか。

○国立精神・神経医療研究センター武田理事
 これは、先ほどモルフォリノと言っていただきましたけれども、人工の核酸です。構造としては、モルフォリノ環を使っておりまして、この構造は極めてToll-likeレセプター等を刺激しないということが知られており、なおかつ水溶性ですので安全性が高いことが分かっております。それで専らこれまでの研究は、筋ジストロフィーを対象としていましたけれども、この人工核酸自体は、ほかの疾患にも有効であると考えられます。ただ、その場合の課題としては、筋ジストロフィーの場合には膜が脆弱ですので、この人工核酸が静注によっても取り込まれていきます。したがって、こうした有効性を示すことができたわけですけれども、このモルフォリノ自体をほかの疾患に応用しようとしますと、その取込みが低いことが欠点になってくることです。そこで、ここからは研究として、モルフォリノに対して今度はアミノ酸を付加することにより、膜が脆弱でない場合であってもきちんと取り込まれるようなにできないかということを現在研究として進めているところです。モルフォリノ自体もほかの疾患にも可能であると思いますけれども、こういったペプチド付加型のモルフォリノができてまいりますと、この利用範囲は極めて広いものになると考えている次第です。

○祖父江部会長
 ほかにはありませんでしょうか。

○花井委員
 同じ話ばかりで恐縮ですが、これは先駆け指定しているので、RCTなしで、もう秋に申請できるということですよね。Ⅱ相だと、エンドポイントはどのような感じで有効性ということですか。つまり患者にとって、どのくらいの明るいニュースかというインパクトでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター武田理事
 大変恐縮ですけれども、直接やっておりましたので引き続き答えさせていただきます。RCTに行く前に、第Ⅱ相として安全性及び有効性を検証することができました。有効性は希少性疾患ですので極めて難しいのですが、特に米国等の協力も得まして、ナチュラルヒストリー、自然歴に対して本剤を投薬したものが有効性が高いことを実証することができました。それによって、この9月に承認申請を考えているところですが、これは先駆けですので、おそらく非常に短い時間で御審議を頂けると思いますが、同時に、条件付き早期承認制度の適用を受けるだろうと考えております。その際の条件は、おそらくはグローバルなフェーズⅢ試験、すなわちRCT及び製造販売後の全例調査が求められるのではないかと考えておりまして、それについては私どもも企業に対しては十分協力を申し上げて、その準備を進めているところです。

○祖父江部会長
 これは非常に画期的な、非常に大きな成果だと思います。多分、今のようにグローバルあるいはポストマーケティングのサーベイランスが今後、求められるかなという感じがします。ほかにはいいですか。では、私から1つお願いします。先ほどの水澤先生の御説明の中にちょっとあったのですが、オールジャパンの、これは精神疾患のレジストリを発足させられたということで、これは水澤先生やフカツ先生もよく御存じだと思いますが、がんとか脳卒中は、すぐ前に循環器医療センターの評価もあったのですが、全国オールジャパンの非常に悉皆性の高い前向きの調査を非常に細かく計画されていて、それを全国的に走らせることを今後やっていかれるようなのですが、がんはもう10年以上前からやっています。この2つは、どちらかというと法律的なバックアップもあって、全国の各病院がフォローしないと拠点病院になれないということで全国的にやっているのですが、この精神神経疾患のオールジャパンというのは学会オリエンテッドですか、非常に大きなトライだと思うのです。それから今のお話の前にあった筋肉もRemudyとか。ただ、オールジャパンでいろいろなことを前向きに細かく見ていくことになると、やはりシステム構築をやっていく必要があるのではないかと感じがするのですが、その辺は今後に向けてどうですか。

○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長
 既に、精神・神経学会等を中心に、オールジャパン体制を構築しているところです。また筋ジストロフィーについては症例数等が精神疾患に比べて少数ですので、私どもはRemudyを中心にして登録作業を進めていますので、ほぼオールジャパンの体制は既に取られているのではないかと考えております。精神疾患については、そのレジストリを実際に強力に進めています中込から回答をいたします。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事
 ただいまお話にありましたように、日本精神神経学会との連携は綿密にしているのですが、先生におっしゃっていただいたように、なるべく悉皆的にやりたいということがありまして、精神科の場合には、ほかに「七者懇」という様々な団体があります。日本精神科病院協会、日本精神・神経科診療所協会、それから当事者の家族の団体等にも声掛けをして綿密に連携をしながら、その項目立てのところから一緒に進めているところです。

○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 精神疾患はそういうことで、オールジャパンの体制ができたと思います。本当は法律のバックアップがあればとてもうれしいのですが、今のところはないので、学会と協力してやるというところです。筋ジストロフィーは先ほど少し話がありましたけれども、これまでRemudyというものと、その下に書いてある筋ジストロフィーの臨床試験ネットワークというのがありまして、それを今度は統合するような形で、21ページで御説明しましたけれども、いわゆるCIN(クリニカル・イノベーション・ネットワーク)の枠組みを使う、そういうことを今進めておりますので、筋疾患はそれで何とかうまくいくのではないかということで、期待しております。

○祖父江部会長
 これはやはり全体のナショナルセンターの構造にもなると思うのですが、それぞれ担当する疾患については、オールジャパンで非常に高い悉皆性をもって前向きに何かフォローできる体制というのは今後非常に重要になるのではないかと思います。法律がなかなかそう簡単にはいかないので、法律が通ると非常にやりやすくなるという局面はあるのですが、是非よろしくお願いしたいです。この精神神経疾患の前向きの調査というのは非常に期待したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 ほかにはどうですか。一応時間にはなったのですが、いいですか。もう一回、また最後に戻る機会をつくります。どうもありがとうございました。
 それでは次の「医療の提供等、その他業務の質の向上に関する事項」の評価項目1-3から1-5について、議論いたします。まず、法人から御説明いただきます、15分ですので、よろしくお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事
 よろしくお願いいたします。評価項目1-3「医療の提供に関する事項」です。自己評価はAを付けさせていただいております。NCNPの医療の提供に関する中長期目標の内容としては、センターで実施すべき高度かつ専門的な医療、標準化に資する医療の提供、そして患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供です。具体的に強調したい点に関しては、目標と実績との比較の所を御覧ください。まず、高度かつ専門的医療に関しては、後ほどこの未診断疾患イニシアティブにおけるNCNPの活動について説明いたします。
 24ページです。良質かつ安心な医療に関しては、診療科横断的及び多職種協働による専門疾病センターがありますので、これについて例を挙げて触れさせていただきます。そしてNCNPが非常に力を入れています認知行動療法センターの活動についても御紹介したいと思います。さらに、地域包括ケアシステムに対応した地域ケアに対する訪問看護ステーションの活動についても簡単に触れさせていただきます。なお、この医療の提供に関しては様々な定量的指標の中で病床利用率が若干、目標に達しませんでしたが、そのほかの指標に関してはいずれも目標を達成していることを申し上げたいと思います。
 従前よりNCNPは、ほかの医療機関では対応困難な希少疾患患者あるいは神経難病患者に、高度・専門的な医療の提供を続けており、これは昨年度も変わりません。希少神経難病症例の集積率は高く、そのために全国、特に遠隔地から集まる患者の割合が高い、というのが当院の1つの特徴です。
 26ページは、冒頭で少し触れました未診断疾患イニシアティブです。御存じのように希少疾病、神経難病の患者の多くはなかなか診断が付かない、あるいは原因が分からないという患者が多くあります。そうした患者の診断に関して、全国縦断的、専門分野横断的な連携体制が2015年度から始まっていますが、その当初よりNCNPは中核的な機関として中心的な役割を果たしてきたということがあります。これは昨年7月時点でのデータですが、およそ1,000家系で新たに診断が確定し、18の疾患で新規疾患概念が確立しました。これが今年の3月末までには42疾患に増えていると伺っているところです。さらには新しい治療薬の開発につながる発見も8件あったということで、順調に推移するとともに、大変重要な活動だと我々は捉えております。
 27ページです。良質かつ安心な医療の提供について、当センターの診療科横断的、多職種連携、包括的医療を展開している専門疾病センターの取組みを取りまとめた表です。ちょっと数が多いので、この中の「てんかんセンター」を例に説明させていただきます。
 28ページを御覧ください。NCNPは、てんかん診療において全国拠点機関として選定されています。したがって、てんかん専門疾病センターは、てんかんの地域医療ネットワークを構築し、さらに全国的な疫学調査を行っています。また、右下にありますように、難治てんかんの病態解明と診断・治療法の開発にも力を入れており、さらに特筆すべきは、本邦有数のてんかん外科治療実績です。年間100例ですけれども、そのうちの非常に治療困難な小児例が多いというのが特徴です。
 29ページは、てんかん診療実績の経年変化を示したものです。特に、外来新患数、ビデオ脳波モニタリングの検査数は、昨年度非常に増えていることがお分かりになるかと思います。てんかんの手術件数は例年100件前後ですが、昨年度に関しては、右下の棒グラフの赤い所ですが、5歳以下の患者の手術件数が全国的にも極めて多いことを特徴として強調したいと思います。
 30ページは、NCNPが力を入れている認知行動療法センターの活動をまとめたものです。認知行動療法とは、精神疾患の不安、抑うつを来す疾患の心理療法として非常に社会的ニーズの高い治療法ですが、現在は日本のどこでもこの治療を受けられるという状況にはありません。そこでNCNPは認知行動療法センターを設置し、不安、抑うつ以外の領域にも適用拡大の可能性を目指した臨床研究を数多く実施し、それらの研究成果を、数多くの研修を介して全国に展開し、均てん化に貢献するといった活動をしております。いわば研究から社会実装を見据えた活動をしているということです。
 31ページを御覧ください。今、国は地域包括ケアシステムを進めているところですが、NCNPは、従前より入院時から地域ケアを見通した医療の提供を目指してきております。御覧ください、訪問看護件数は年々増えております。また神経・筋疾患患者の在宅療養支援のための退院支援実施件数が昨年、飛躍的に伸びているのがお分かりになるかと思います。最後に、左下に病院運営のクリニカルインディケーターがありますけれども、注目していただきたいのは精神病床です。精神病床の平均在院日数は、大体全国平均で270日ぐらいですが、当院は37日です。極めて短い平均在院日数ですけれども、これはなるべく入院期間を短くして、訪問看護やアウトリーチといったもので地域定着を目指すという当院の指針を反映した数値だと考えているところです。私からは以上です。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 続きまして、人材育成に関する事項について、精神保健研究所の金より御説明申し上げます。この項目についての自己評価はAを入れさせていただいております。中期目標の内容としまして、単に医師個人個人の教育ではなく日本の精神医療におけるリーダーとして活躍できる人材を育成したい。そして日本の精神医療の将来にとってモデルとなる研修・講習を実施していきたいということです。リーダーとして活躍できる人材として特に重点的に取り組んでおりますのは生物統計学という分野です。精神学というのはなかなか効果の判定が難しい、あるいは疾患概念も一体何が違うか、どこからが病気なのか分かりにくいということがありますので、そこに統計的な手法を用いて、できるだけ納得のいく答えを出していきたいと考えております。そこで用いる統計というのは非常に特殊なものがありますので、これを重点的に訓練しております。モデル的研修というのは、例えば精神医療の病院で当たり前のように行われているデイケアというのも、実は精神保健研究所で初めて取り組み、それが全国に広まったものですが、そのようにして多くの先進的な治療モデルを作り、また研修を通じて均てん化を図っていきたいと考えております。
 具体的なモデル研修については次のページに、薬物依存、精神保健研究、あるいは認知行動療法等を紹介しております。実際にこうした人材育成の成果として、幾つかの大学等の指導者が輩出されております。
 34ページの研修の実施状況ですが、NCNP全体では非常に多くの研修が実施されております。それには例えば、光トポグラフィーのように、NCNPで初めて精神医療における重要性が確認された技術もあります。あるいは地域医療や認知行動療法など、多様な分野にわたって研修を行っております。重要なものを赤で印しておりますけれども、これについては35ページで詳しく解説いたします。
 35ページです。精神保健に関する技術研修課程としては、精神保健研究所で広い分野における研修を実施しておりますが、必ずしも個別の疾患の治療ではなく、地域・社会においてどのように支えるか、受け止めるか、また危険な行動をどのように食い止めるかといった多彩なテーマに対する研修を行っていることが特徴です。そして右欄に書かれている認知行動療法も、昨今では認知行動療法が様々な保険適用の拡大がありまして認められていますけれども、非常に多彩な精神疾患あるいは精神現象に対する認知行動療法に取り組んでおります。特にパーキンソン病のような神経疾患に対する認知行動療法というのは当NCNPの大きな特徴ではないかと思っております。そして下のほうのPTSD対策専門研修は、後のほうでまた詳しく述べますが、犯罪テロ等に対する精神医療関係者の準備性、対応スキルを高めるという意味での研修を展開しております。
 36ページは、一般市民を対象とした研修会のリストです。最先端の知識、医療の知見を市民に対して分かりやすく解説するという取組をずっと続けており、今年度も多くの方々に御参加いただいております。
 37ページからは評価項目1-5、医療政策の推進等に関する事項についてです。これも自己評価はAを入れております。この中期目標としましては、1つは、国の政策提言に対して貢献をする。もう1つは、私たち自身が医療の均てん化に対して積極的に取り組み、普及していく。そして公衆衛生上の重大な出来事が起きたときに、それに対して援助するということです。政策提言としましては、具体的に政策に反映されたもの、いわゆる提言と呼んでいますが、これが2件あります。それ以外にも様々な場面において、行政と連携し、必要な専門家的な助言をしております。例えば危険ドラックとか自殺対策はその例です。
 38ページ、均てん化は、行政とも連携をしながら必要と思われることを私たちがイニシアティブを取って広く普及活動をしているわけですけれども、IRUDあるいは診療データを活用したネットワークの構築、ゲノム情報データベース、摂食障害や依存症治療における全国拠点として形成し、医療観察法におけるネットワークシステム等々、多彩な病気において主導的な役割を果たして均てん化を行っております。公衆衛生上の重大な危害の対応については、大規模災害の対応として、3・11震災の影響になお苦しんでいる人たちの支援のために、現地の心のケアセンターと連携しております。私どもの研究所では、ペルー人質事件以来、様々な犯罪被害、自然災害、テロあるいは犯罪被害者、あるいは薬害HIVの家族支援、長崎の被ばく体験者等々、社会的な重大な問題について取組をしてまいりましたけれども、今後もそれを継続していきたいと思っております。
 39ページは国の政策提言について、過去からの一覧を示しました。幾つかの具体的な取組について御説明いたします。40ページは自殺総合対策推進センターです。自殺総合対策大綱の策定に関与し、それに基づき科学的な調査、そして支援活動の策定、その普及、自治体との協力について多面的な活動をしており、既に2019年度の各自治体での対策の方針等を2018年度中の課題として達成するなど、大きな取組をしております。また、外国との連携もしております。
 41ページです。薬物依存に関しては、近年、危険ドラック等の問題がよく指摘されていますけれども、ある薬物を危険ドラックに認定するかどうかは当研究所の基礎研究に基づいて判定する。そして治療システム、予防法について行政と連携しつつ取組をしております。
 42ページは政策研究です。神奈川県の「やまゆり園」での殺傷事件をきっかけに、措置入院の患者の円滑な社会移行をどのようにしていくかについて、関係者と協議を重ね、ガイドラインを作成し、平成30年度には厚生労働省からの部長通知として発出し、診療報酬改定にも反映されております。
 43ページは摂食障害対策についてです。今は難病にも等しいといわれている摂食障害について、系統的な支援、治療するためのプログラムを作り、当精神保健研究所の機関センターとして全体を統括する役割を果たし、順調に相談件数の向上、治療実態の解明等がなされております。
 44ページは、犯罪・災害・テロ等に対する専門家の研修事業をずっと継続しており、これは池田小学校事件をきっかけに、たまたま私が当地にいましたので、厚労省の担当者と相談の上で開始した研修事業ですが、現在順調に伸びており、累計で参加者11,324名に達しているところです。以上です。ありがとうございました。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、今の御説明に対して、御意見、御質問等はございますか。

○花井委員
 私たちも大分お世話になり、いわゆるPTSDとグリーフケアを先生に教わってからもう長いことやっていて、当時はグリーフケアやPTSD自体が領域として余り分からなくて専門の人もいなかったのです。こういう研修等々を大分積み重ねて、特に問題なのは、医療報酬で余り評価されない領域、摂食障害などもですが、ここで研修して専門的なスキルは付くのだけれども、行ったところで、それはお金を生み出さないという話ではなかなか活躍できないという事情があると思うのです。現状として、ここで研修を受けた先生方が、地域とか、元の所に帰って活躍度合は変化したのでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 ありがとうございます。あれ以来、PTSD等に対する治療法は随分進歩しており、認知行動療法が保険適用で認められているのですが、やはり点数が低いので、私たちが実際に講習をしても、1人の先生がボランティアで1週間に患者さんを1人治療できるかどうかがやっとであるということが実際の現状です。制度的なバックアップをどうするかということは、今後の大きな課題ではないかと思います。
 ただ、受講をされた先生方は、日常的にいろいろなトラウマの患者さんを治療されておりますので、そういう意味で研修で学んだことが非常に役に立つのだという声も多く頂いております。薄く広くという部分と、専門的に深くという部分をうまく両立できるように頑張っていきたいと思います。

○祖父江部会長
 よろしいでしょうか。ほかに何かございますか。

○藤川委員
 先ほど、てんかん関連の治療について御説明いただいたと思います。29ページの外来新患数がかなり増えているとか、あとは5歳以下の手術件数が増えているという結果については教えていただいたのですが、その左側のグラフ等を見ると、小児科の外来、あるいは小児科の入院も増えていて、他方、精神科はどちらも減っていたり、あるいは脳神経内科が出来ているからそこの部分も増えているとか、この数字が一体何を意味するのか、小児科対応というところに何らかの大きな意味があるのかとか、そういうことがよく分からなかったので、数字が増えた減ったというよりは意味するところについて教えていただけたらと思います。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事
 ありがとうございます。まず、小児の手術に関してはニーズが高いということで、脳神経外科が対応していて数がだんだん増えています。そして、小児のてんかん手術に対応できる脳神経外科の先生に数年前に来ていただいたということが大きいです。
 それから、精神科は、残念なことに当院の精神科のてんかんを専門にしていた医師が、たまたま退職されたり、辞職されたりということが影響しています。御存じかもしれませんが、精神科において、てんかんを専門とする医者がものすごい勢いで減っているのです。今、鋭意そのような人材を探しているところです。恥しい話ですが、実際は、そういうことです。

○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 てんかんの患者さんの数は、小児期に非常に多いのです。特に難治性の方々は小さい頃に手術をすると成績が非常によいと分かっています。ただ、これまではなかなか難しくて十分にできなかったということがありますが、現在、そういうことができるようになったということが1つ背景としてあると思います。

○祖父江部会長
 私からも2つ質問したいのですが、先ほど来、お話になっている認知行動療法は、国立施設としては初めてやられており、それから、非常に広い範囲で研究段階も結構入っていると思うのです。先ほどおっしゃったようにパーキンソン病、過敏性大腸障害や慢性疼痛もありますが、結構効いているように見えます。それから、薬のECOのOrganizationというか、薬を減らしていくことについても相当の威力があるということで、先ほどおっしゃったように、今後、これは精神・神経疾患以外にも適用できて期待が持てるのかとお聞きしておりました。
 結局、どうして効くのかというバックグラウンドは、どこまで研究的に追えるのかというのが今後の課題だと思います。一つ一つ、パーキンソン病にはどうして効くのかということまでいかないといけないのかもしれませんが、例えば、機能画像のようなものが、前後でどう変わるのかというデータは、先ほどMRIのセンターがあるというお話でしたので、そういう所で蓄積していくうちにエビデンスが見えてくるのではないかと思いました。皆さんもこれがどうして効くのかというのはいつも非常に疑問に思っておられると思いますが、何か今後の方策はございますか。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 一部のPTSDの疾患については、大脳辺縁系の過活動をMRI上でも見ることができますので、そういうものが変わるという治療開発の可能性があります。その領域のNMDA受容体に関する薬剤を投与することによってCBTの治療効果が改善されるのではないかとか、そういう脳の回路を踏まえた取組も、全てではありませんが一部については研究を行っており、恐らく、来年の評価部会では報告できるのではないかと思っております。

○祖父江部会長
 今後に期待していますので、是非よろしくお願いします。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事
 今、金所長から話があったとおりですが、CBTセンターでは、具体的にCBTをやるときに前後で脳の画像を撮っております。今、機能画像以外に注目しているのは、いわゆるコネクティビティの変化で、1本、N数は少ないのですが、コネクティビティに関する論文を投稿しているところです。

○祖父江部会長
 来年、是非また聞かせていただけるといいと思います。もう1つ、今の中で在院日数のことが少し出ました。精神病床だけに限っても37.3日と出ており、全国平均では267.7日です。先ほど来、少しお話があったように、デイケアとか訪問看護に回していくという診療の体系づくりは非常に画期的かと思っています。これを全国的に広げようと思うと相当きつい感じがするのですが、このセンター特有の現象なのか、これを1つの旗印にして、こういうやり方でどうですかということを均てん化という方向で考えていけるのかどうかについてはいかがでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事
 部会長のおっしゃるとおりのところがあり、当院は10対1入院基本料を取っています。平均在院日数が40日以下という要件があることで、1つ大きな目標ができているという点が影響しています。現在、日本の精神科病床の中で10対1入院基本料を取っている病院は実は減っているのです。やはり40日が厳しいだろうということがあります。現在、10対1入院基本料を取っている病院の稼働率は74%ぐらいということで、なかなか苦戦しているのが実際です。
 うつ病は初発から治るまで、普通に考えると2、3か月かかります。我々は最初の治りかけのところで退院させて、そして、それを訪問看護でカバーするというやり方をとっています。多分、全国的には40日は厳しいかと思うので、その辺りをもう少し緩和できれば、さすがに270日は減らしていけるであろうと思っています。

○祖父江部会長
 こういう診療システムのデザイン化と言うか、旗を上げて、これを均てん化するというのはセンターの非常に重要なミッションだと思いますので、私ももう少し緩いほうがいいということに同感ですのでよろしくお願いします。
 ほかには何かございますか。

○庄子委員
 訪問看護件数が大分増えてきているのですが、このままそちらでやり続けられるのか、それとも地域の訪問看護センターとの連携を進められるのか、どのようなことなのか教えてください。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事
 こちらの訪問件数は、NCNPの訪問看護ステーションです。我々の患者さんは、みんなNCNP近辺だけではなくてほかの地域にも退院していきますので、いろいろな訪問看護ステーションのサービスを受けています。私どもの訪問看護に関しては、恐らく、今後、看護のみならず在宅でのリハビリも見据えて、新たな体制や技法を作っていきたいと思っているところです。特にうちのセンターは、慢性や難治性の患者さんが多いので、そういう意味では、こちらの病院と緊密な連携が取れる訪問看護ステーションのほうがやりやすいという点はあります。

○庄子委員
 できれば渡せるものは渡していくという。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事
 できれば渡せるものは渡していきたいということです。

○祖父江部会長
 よろしいでしょうか。ほかに何かございますか。

○斎藤委員
 ど素人の質問なのですが、去年辺りから大きな社会面をにぎわせているのは子供の虐待で、これは、やはり普通の精神構造ではないと思うのです。去年か今年なのか分かりませんが、統合失調症による事件、京アニは今年の話ですが、そういうような社会的な大きな事件がたくさん出てきました。
 その辺りのことにインパクトを与える提言をたくさんなさっているであろうと思うのですが、それが今回、1-5では余り出てきていないので、素人からすると、Aを付けるのには、提言をなさっていないのかと思ってしまうのですが、その辺についてもう少しお話いただけますか。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 厚生労働省の発達障害児施策を担当している人間と、当部の部長、室長、私を含めて頻繁に意見交換をしております。そちらからの依頼で、毎年、研修を4回やっているのですが、来年度のプログラムを大幅に見直そうということを今考えているところです。虐待に対しては、PTSD、トラウマ研究、あるいは研修の中でも多く触れており、重要な柱になっております。
 虐待を受けた子供の影響は、3歳と14歳で受けるとずっとその影響が一生続くとか、あるいは、虐待を受けた回数の多さに比例して、大人になってからの自殺やアル中が増えるという、アメリカではそういう研究がたくさん出ていますので、それを踏まえて、その影響を最小化するようなことをしていくつもりです。
 それから、私どもは虐待の加害者も治療しています。加害者自身も被害を受けていたという過去があったりしますので、虐待の連鎖をいかに食い止めるかということはずっと大きなテーマです。今年はそれを分かりやすく提示しなかったので申し訳なかったのですが、非常に重視して取り組んでおります。ありがとうございました。

○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 補足いたします。関連して犯罪につながるような精神障害関係の事件があるかと思うのですが、先ほど少し申し上げた医療観察法の病棟が、その1つに対応すると思います。たくさんの方が入院されており、全国で800床くらいあります。現在、完璧な医学データが集まっているわけではないのですが、これまでのデータで言うと、再犯率は一般の病床、先ほども少し出てまいりましたが措置入院に比べても低いくらいです。
 すなわち、医療観察法の病棟での治療は、非常にうまくいっていて少し時間やお金が掛りますが、かなりよく治り、社会復帰される。私は最初に病院長で来たときに非常に驚きましたが、そういう事実があります。そういうことが、今、全国で実施されているという状況があり、文書で提言という形にはなっていないのですけれども、NCNPを中心として医療観察法の病棟を持った精神病院のグループがあり、そこでそういう研究が進んでいると思います。日本の犯罪につながるような精神疾患の治療は、社会復帰という意味でかなりうまくいっている側面があり、それは世界に誇れるのではないかというのが私の1つの考えです。補足があったら、どうぞ。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事
 もう一点です。児童虐待の問題は、本当に重要な課題だと思っております。確かに昨年度の提言の中にはないのですけれども、少し記憶があれですが、2、3年前に評価部会に出させていただいた資料の中にありますが、精神保健研究所の司法精神医学研究部の研究員が児童の性的搾取に関する政府の有識者会議に参加して、児童の性的搾取に関する事例を報告するとともに、その被害者対策について専門家意見として報告したということがありました。
 その方は、今、大学に出られて、現在はNCNPにおりませんけれども、我々はきちんと取り組まないわけではないということだけお伝えしたいと思います。

○祖父江部会長
 斎藤委員、よろしいでしょうか。

○斎藤委員
 Aにするとコメントを書かなくてはいけないのですが、今、伺っていてコメントを書くのがすごく難しいと。

○祖父江部会長
 提言の形でまとめて出していただくといいのかもしれません。そうすると分かりやすいと思います。よろしくお願いします。

○花井委員
 いろいろなアディクションがあります。1つはドラッグです。ドラッグについては、薬学の領域の専門家で話していると、ほとんど知識がないという実態が分かっています。センターの薬剤師の研修とか、研修でも薬剤師が薬剤師に対するというのが1つあるのかという話。
 あと、アディクションで言うと、ギャンブルです。どの論文だったのか、素人で読んだから分からないのですが、ギャンブルに嗜癖があったから精神症状を合併する率は2割ぐらいで、精神症状があったからギャンブルに依存する率が7割ぐらいという、間違っているかもしれないけれども、そういう精神疾患とアディクションの関係があると思うのです。カジノ等ができてしまうと、ギャンブルがどんどん増えるのでしょうか。
 それと、ある程度ギャンブルをすべきではない人とする人は、メディカルな意味で、ある程度ガイドできるようなことは出てくるのかと思います。その2つの点について、今、取組があれば教えていただきたいです。

○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 やはり、ギャンブルに対する依存は、薬物依存と同じように報酬刺激系という脳の回路があり、そこが関与していることは明らかですので、それに対しては、これから研究の取組を始めていこうかという話合いをしている段階です。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事
 先生がおっしゃったようにアディクションの問題は、ほかの精神疾患やストレスの二次的なものとして出てくるケースも結構あります。例えば、うつになったときにアディクションに走る人と走らない人はどういう人かとか、そういう研究は、精神保健研究所の薬物依存研究部でもやっています。ただ、少し問題だと思うのは、各研究機関によって、こちらは薬物、こちらはアルコール、こちらはゲームと分かれていることです。その辺りをうまく有機的に連携してやれるような体制を作っていかないと難しいかと正直思っているところです。

○花井委員
 薬剤師はどうでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事
 薬剤師に関しては、確かにこの薬物依存に関しては、少し質問の意味を取り違えているかもしれませんが、ゲーム依存はともかくとして、いわゆるベンゾジアゼピン等の通常に使われている医薬品の依存に関する教育や指導は、今、薬剤師に対して進められていると思います。通常の薬物依存に関してはどうかということについてはよく把握しておりません。

○祖父江部会長
 時間なのですが、1つだけ、今、IRUDの御説明がありました。これはAMEDが一押ししている非常に重要なお仕事で、先生方のセンターが中心になってやっておられるのはよく存じ上げております。
 これを見ると、最近はもっと増えているのでしょうけれども、36.9%の診断を確定したということで、逆に言うと、この数字だけ見ると、半分かそれを少し上回る人たちの診断はまだ未確定という状況ですね。これは次世代シーケンサーでやっておられるというお話だったのですが、細かい話で申し訳ないのですけれども、例えば、ノンコーディングの構造遺伝子変異みたいなものは、どの程度やっておられるのかということを、例えば、最近、神経とか何かの難病だと、ノンコーディングの繰り返し配列のエキスパンジョンは相当高頻度にあるのではないかという予測が出ているのです。こういう診断率を上げていこうとすると、今までの既存の次世代シーケンサーだけでは限界がくるのではないかという感じがしています。その辺りについて、何かお考えはございますか。

○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 おっしゃるとおり、この数字は36.9なのですが、先ほど話がありましたように昨年度末、今年の3月末では39.9ということで、ほとんど40%が診断できております。しかしながら60%は未診断にとどまるということがあります。その対応策の中で、一番有力なのは、N-of-1で、かなり絞れているけれども、1家系しかない場合への対応です。それはもう1家系探してマッチングをするとか、候補遺伝子の機能解析を、IRUD Beyondと呼ばれていますが、線虫やハエ等の小さな動物モデルを使って行うということで、後者は今120個ぐらいの候補遺伝子で進んでおり、そのうち30ぐらいは解明されるという、かなり好成績を収めております。
 それから先生がおっしゃったように、今我々がやっているのは、ホールエクソームシーケンスであり、イントロンも含めたホールゲノムにするというのが1つと、ロングリードにするとか、そういうテクニカルな新しい進歩を活用して診断効率を上げていこうという試みも同時にやっています。あとは世界と協力してやっていくということになろうかと思っております。

○祖父江部会長
 こういうのも、今、世界的にどうなっているのかというのが非常に問題にされていますので、是非、先陣を切っていただけるといいのかという感じがしています。

○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 そうですね。IRDiRC(International Rare Disease ResearchConsortium)とか、UDNI(Undiagnosed Diseases Network International)という国際連携のグループがあり、そういう所にAMEDが入っており、我々も一緒にやっておりますので、国際連携もかなり進んでいる領域かと思います。

○祖父江部会長
 よろしいでしょうか。時間が少し遅れましたが、続いて、業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項ということで、これは評価項目から言うと、2-1~4-1です。これは5分しかありませんが、説明をよろしくお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長
 まず、45ページです。業務運営の効率化に関する事項です。Ⅱの目標と実績との比較の[1]は、給与体系について人事院勧告を踏まえ、賞与の0.05か月の引上げや平成31年3月から月例給のベースアップ0.16%の改正を行っております。それから、[3]の後発医薬品については、平成30年度は達成度が105.9%で目標を達成しております。[4]の一般管理費については、平成26年度に比して35%以上の削減ということで、これについても目標値を達成しております。[6]の平成30年度の損益計算書による経常収支は100.6%で、これも目標の100%以上に達しております。
 46ページです。右上の病棟構成の見直しについては、先ほど理事長から説明がありましたように、青色の4階の南病棟を変えております。これにより、入院については昨年度に比べ27.2人の増、外来については20人の増となっております。真ん中のグラフですが、一番左の一般精神科については、先ほど中込理事から説明がありましたように、病院から地域への移行ということで入院患者の減、外来患者数は9.6人の増になっております。
 それから、左から3つ目は病棟再編による脳神経内科の1日平均入院患者数が19.4名の増、その右の小児神経科は入院希望の方に入院していただいており、9.2名の増となっております。下の平均患者数についても、同じように増えております。
 その結果、入院診療収益ですが、一般精神については4名減っておりますので、その分、1,200万円減となっておりますが、脳神経内科は病棟再編による影響ということで3億4,600万円の増となっております。その右側の小児神経科については、書き直しで大変恐縮なのですが、資料に記載の数字よりも3億8,100万円高く、23億1,700万円となっております。これについては昨年度より3億6,000万円の増、一番右から2番目の脳外科については1億1,000万円の増ということで、診療収益については、昨年度に比べて約9億円の増ということになっております。
 47ページです。経営改善等への取組の[2]です。手術件数を増やし、特に、てんかん患者などの件数が増加しております。それから、常勤職員は、薬剤師や精神保健福祉士を増やし、それに見合った診療報酬の増が得られるということになっております。事業収益ですが、右側に書いてある分だけ増えています。
 この結果、先ほど申し上げた診療収益の9億円の増を中心として、経常収益自体については、全体として研究事業、診療事業、その他の事業を全部足し合わせて172億円、それから、平常費用については171億円ということで1億円の黒字となっております。
 48ページです。財務内容の改善に関する事項です。平成30年度に獲得した外部資金が37億9,500万円で、これは一番低い平成23年度に比べて14億5,000万円の増で、対比162%となっております。また、49ページのその他の業務経営に関する事項です。法令の遵守については、監事等の面接を行っていただく等、誠実に実施しております。施設の整備、人事の最適化についても、記載のとおり適正に行っております。以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、御質問、御意見等はございますか。

○藤川委員
 杓子定規に捉えれば、計上収支の話は100%が目標なので、それより少し上ということになります。今までのことを考えたり、精神系の診療報酬が低い等いろいろなことを考え合わせると、今期はすごく頑張られたということで、できる限りAを付ける方向で私は検討したいと思うゆえに、もう少し補足説明を受けたいと思います。
 まず、いろいろな組替えと言いますか、病棟再編をしたり、あるいは、その中で入院していた患者さんを通院で対応されたりということもあるのですが、もちろん、それが病院にとってプラスになったというだけではなくて、患者さんに対するプラスはどういうことがあったのかということを1点教えていただきたい。それから、一般管理費についても例年以上にカットされているように見受けられるのですが、その内容はどのようなものがあったのかという点もお聞きしたいと思います。お願いします。

○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長
 まず、前者の部分から説明させていただきます。
 患者数の増についてはどのような効果があったのかですが、46ページの真ん中の図を御覧ください。精神科疾患を有する方については、入院している方がなるべく自宅や地元で暮らせるようにという全国的な流れの中で、入院から外来に移行するという政策に合わせた形の転換を推進することができると思っております。当センターが1つのモデルになっているかと考えております。
 もう1つは、真ん中に書いてある脳神経内科です。入院を待っている方が約100人程度おり、その方々に対して入院をなるべくしていただけるような体制を整え、治療を受けていただくという配慮をしているところです。また、小児神経科については、3階南病棟なのですが、今まで入院が余り芳しくなかったのですけれども、このことについても必要な方についてはなるべく入院していただくようにお勧めして、入院していただくという形を取っているところです。

○祖父江部会長
 患者さんにどういう効果があったかということなので、追加をお願いします。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事
 後半について追加させてください。実は神経疾患の患者さんで、精神症状を持っている方が少なからずいらっしゃいます。これまでは一般病床と精神科で分かれて、そういう患者さんをどちらで見るかというのでなかなか難渋する場合もあったのですが、新たな病棟は脳神経内科と精神科の両方の医者を付けました。そのために、割合、いわゆるリエゾンが同じ病棟の中で展開できるようになったので、そういう意味では精神症状を持った身体疾患、神経疾患の患者さんが入院しやすい環境にはなったと思っています。

○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長
 後半の部分の御質問が聞き取れなかったので、再度、お願いしたいのですが。

○藤川委員
 もう1つは、一般管理費の削減に関しては、パーセンテージ等で見ると昨年以上に促進されているように見えます。平成26年に比べて何パーセント削減しているということですが、平成30年度は今まで以上に削減されていると思うので、その内容を教えてください。

○国立精神・神経医療研究センター永田財務経理部長
 一般管理費については、こちらに詳細な資料が載っていませんが、細かい表の中に入っているところなのですけれども、経費のトータルとして、平成29年度は一般管理費が7,900万円あり、それが800万円減になり7,100万円になったということです。主なものとしては、水道光熱費や修繕費を少し抑えたりしながら、削って少しでも経費を落とすという努力をしてまいりました。

○藤川委員
 頑張りすぎると、時々、逆に疲弊するということもあるので、そこが問題にならない程度にやられているという理解で大丈夫ですか。

○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長
 ご指摘のとおりだと思っております。

○庄子委員
 入院の所で、病棟構成の変換がすごく効いていると思いますが、これはなぜ今だったのでしょうか。単純に点数で言えば、障害者病棟と精神科病棟では入院給付の体系が全然違うので、早く変えていればよかったのにと思わなくもないのですが、なぜ今だったのか教えてください。

○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長
 当センターは精神疾患と神経疾患の双方について、診療及び研究を任務としています。このため、新病棟発足の当初の考え方としては、病棟構成については同等ということでスタートしたものでございます。ただ、実施していく中で、神経疾患の方の入院の待機数が多いことや、脳神経内科、精神科の両面からのアプローチが必要な方がいらっしゃるということで、その構成を見直す必要があると考えられるようになりました。先ほど申し上げたように、精神科と脳神経内科の両方に必要な方々により多く入院していただけるように、病棟の再編を実施いたしました。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事
 少し補足いたします。精神科の病床、あるいは入院患者数が、これから確実に減っていくということが言われるようになったのは、恐らく、2、3年ぐらい前だと思うのです。その中で、精神科の病院の経営者等はどのように生き延びるかということをいろいろ考えていたのです。最終的にこれは歯止めが効かない、確実に減るという思いが、ここ2年ぐらいはしております。
 我々の病院にもその波は確実に来ております。140床から123床に減っているのですが、御覧になったように先ほどの表で、精神科の入院患者数の減少は4にとどまっているのです。つまり、もともと稼働率が非常に悪かったという部分があります。そういうこともあり、それと同時に、一般病床にただ変えるのではなくて、精神・神経センターでできるような病棟はないかということを考えて、このような形にしたということです。

○祖父江部会長
 その点について、1つ質問いたします。これは非常にうまくいったのは、今おっしゃったように精神、神経と言うのでしょうか、一般病棟に変えながら、神経の中でどちらかというと精神を持っている患者さんに変えていったというのがメインかと思いました。先ほど来おっしゃっている精神科の患者さんが外来や地域に出ていくという流れが、全国的かどうかは分かりませんが、少なくとも先生の所でやられていますよね。
 ただ、日本全国の精神科の病院に、このパラダイムが当てはまるかどうかというと、先ほどのお話の均てん化と同じで、やはりセンターだからできたというところがひょっとしてあるのかという感じがしたのです。これを全国均てん化の1つのモデルケースとして扱うかどうかというのはいかがでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事
 ありがとうございます。先ほど日数が40日はどうかという程度の問題をお話しましたが、多分、流れは全国同じだと思います。精神疾患患者さんでも対応できる地域包括ケアは国が進めている指針ですので、その方向で動いております。精神保健研究所も、その施策のためにいろいろ動いているところなので、そちらの方向に動きたいと思っております。

○祖父江部会長
 その空いた所を、神経疾患で、精神のある患者さんで埋めていくことはなかなか難しいかと思っています。

○国立精神・神経医療研究センター中込理事
 これは、なかなか難しいかもしれませんね。ここは私どものセンターの1つの特徴なのかと思っております。

○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 今の点についてです。個人的には、私は病院長のときにこういう方向に進めてきましたが、その1つの背景は、前職のときに、小さい大学でしたけれども、脳神経・精神診療科という大診療科、すなわち脳外科、脳神経内科、精神科、ペインクリニックの麻酔科という、精神、神経、脳を扱う領域の者がグループを作りました。そういう連携が必要なのではないかと思っています。現在は、割と精神科、脳神経内科はピュアな方を指向する方々が多いと思うのですが、両方を見ることができるような場所も必要なのではないかということを感じております。

○祖父江部会長
 私の医局でも、今年、精神科と脳神経内科の両方のレジデントをやっている者がおりますので、そういうのが今後は増えてくるかもしれません。ありがとうございました。
 大分、時間が超過しています。以上ですが、全体を振り返って何か御質問等はございますか。前のものに遡って御質問していただいても良いのですが、よろしいでしょうか。

○大西委員
 いろいろなお話をありがとうございました。48ページの3-1を拝見すると、獲得した外部資金の推移という所で、平成28~29年にかけてグッと上昇しておられます。これは、先ほどの研究開発の成果又は治験が大きな要因になっているのでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長
 はい、そのように考えております。従来の研究成果が上がり、それが外部の方々に認められて、結果として研究資金の獲得相当につながったということです。

○大西委員
 なるほど、ありがとうございました。やはり研究成果というのは大きい影響がありますね。

○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長
 はい、そのように考えております。

○祖父江部会長
 それでは、最後に、法人の理事長と監事からヒアリングを行います。まず、法人の監事から、業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○国立精神・神経医療研究センター林監事
 監査報告に関しては、27ページに記載しているとおりで特にコメントすることはありません。我々、監事2名は非常勤なのですが、注力している点は、理事会等の重要な会議には必ず出席、陪席して、必要があれば発言させていただいて、経営の状況を把握しております。それから、内部監査室と協働して、いわゆる主要項目の業務監査を年間を通して行っているということが、我々の一番のポイントだと思っています。以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。今のことについてはよろしいでしょうか。何か御質問等はございますか。
 最後に。理事長から一言よろしくお願いします。

○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 本日は誠にありがとうございました。我々NCNPの課題と展望ということで、3点申し上げたいと思っております。研究開発、病院経営、施設管理を選びました。
 研究開発に関して、神経疾患については今日もお話いたしましたが、神経難病、特に変性疾患の根本的治療薬の開発が喫緊の課題です。本日、筋ジストロフィーのエクソン・スキップのお話をいたしましたが、その次のお薬の候補を考えて進めていかなければなりませんし、それ以外のパーキンソン病やプリオン病といった変性疾患の治療も開発を進めなければいけないと考えております。
 もう1つは、我々がやっている免疫性疾患の病態解明と治療法です。これは病態解明そのものが分子標的治療に直結します。今日はOCHのお話をいたしましたが、多発性硬化症等の比較的CommonなDiseaseのみならず、今日はNINJAという形で1つの概念を説明いたしました。あるいは、そのほかに線維筋痛症や慢性疲労症候群といった病気など、これまで日の当たっていなかった病気の研究を進めていきたいと思っております。
 精神疾患は、先ほど申し上げた大規模レジストリが一番重要かと思っておりますが、もちろん、当面の治療やケア、予防についても最善を尽した形で進めていきたいと思っております。いずれにしても、アカデミアとしては日本最大の病床を有しておりますので、それを活用した臨床研究の推進を図っていきたいと思っております。病院経営については、今日、大分御議論いただきましたが、入院患者さんが減少していくという、特に精神科の診療の変化に対応していくために、厚生労働省とも相談しながら良い道を探っていきたいと考えております。
 最後ですが、施設管理の問題です。非常に老朽化が進んでおり、先日、水道費が一挙に数倍に跳ね上がり、水道管が破綻していることに気付きました。地面を掘ってみると、腐食が大変進んでいました。これまでもいろいろ御配慮いただき、今、修繕を行っておりますが、やはり建替え等を考えた計画を立てていかなければということが大きな課題と展望になっているということでございます。引き続き、よろしくお願い申し上げます。

○祖父江部会長
 それでは、これで国立精神・神経医療研究センターの評価を終了したいと思います。どうもありがとうございました。
 5分間休憩しますので、よろしくお願いします。

(国立精神・神経医療研究センター退室)
(国立研究開発法人国立がん研究センター入室)

○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室太田室長補佐
 がん研究センターの実績評価の議事に入る前に、審議官がまいりましたので御紹介させていただきます。大臣官房審議官の大坪でございます。

○大坪大臣官房審議官(国立高度専門医療研究センター担当)
 大坪でございます。前職から大変お世話になっておりましたが、厚生労働省に戻ってまいりましたので、引き続きよろしくお願いいたします。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは、国立がん研究センターの平成30年度業務実績評価について議論をしたいと思います。まず、初めに理事長から一言御挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○国立がん研究センター中釜理事長
 理事長の中釜でございます。本日は、よろしくお願いいたします。まず一言御挨拶させていただきます。我々国立がん研究センターは、57年前に設立され、以来、日本のがん医療、がん研究を牽引してきたと自負しており、センターとしてのミッションとしては、がんにならない、がんに負けない、がんと生きる社会を目指しているということであります。説明資料の1ページに概要が示されているわけですが、この中にありますように、NCCの使命として現在8つの項目を記載しています。本態解明という基礎研究と、それに基づく早期発見・予防法の開発や治療薬開発、標準医療の確立、さらに社会との共生のためのサバイバーシップ研究、これに加えて情報収集と提供、人材の育成、政策の提言、国際貢献というものを目指しております。さらに、これらの使命を果たすために、NCC自ら世界をリードするキャンサーセンターを目指すという目標の下に将来の展望としては、国立研究開発法人自ら中長期計画を立てて、6か年方針に基づいて日々努めているところです。具体的には、日本のがん医療を牽引するための6か年方針の骨格としては、重点的なテーマとして、ゲノム医療の実用化と最適化、希少がん、難治がん、小児がん、AYA世代がん対策の推進、さらには全国の診療水準の向上への寄与、予防サバイバーシップの研究の開発に取り組んでいるわけです。加えて、先ほど申しましたように世界トップ10の開発力を備えることを目指すということで、グローバルに通じる独創的ながん医療の創出、あるいは世界をリードする創薬・医療機器等の技術開発、アジアに多いがん種の予防、診断、治療をメインのテーマに据えて取り組んでいるところです。このような中長期的なビジョンに沿って事業運営を行っているわけですが、その成果について各担当の者から発表させていただきます。本日は、よろしくお願いいたします。

○祖父江部会長
 どうぞ、よろしくお願いします。それでは、最初の説明をお願いしたいのですが、研究開発の成果の最大化に関する事項ということで、評価項目で言いますと1-1、1-2です。それでは、説明をよろしくお願いいたします。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 よろしくお願いします。平成30年度の業務報告を申し上げます。資料3-2に従って説明します。今御紹介のように、研究開発に関する事項に関しては研究所長の間野から御紹介申し上げます。
 4ページの右側、がんの本態解明に関する研究です。当センターでは、前から肝炎ウイルスに起因した肝臓がん、肝細胞がんの大規模なゲノム解析を、世界に先駆けて行ってまいりました。今年度は、B型肝炎ウイルスによる肝細胞がんについて、大規模なゲノム解析だけではなく、ゲノムワイドな大規模なエピゲノム解析を合わせて行った成果を発表しました。それによりますと、左側の図ですが、Non-cancerous tissueというのが正常部ですが、正常部でメチル化が多くて、かつ、がん部でメチル化が特異的に下がっている所に赤色のゲノムの変異が集積していることが分かります。つまり、ゲノムの変異は、エピゲノムの変異と密接に関連して発がんを誘導していることが明らかになります。しかも、上のポイントに書いてありますが、B型肝炎ウイルスのゲノムが肝臓の細胞のゲノムに取り込まれると、逆にそこを起点として様々な染色体異常が生じて、がんの悪性化を誘導することも明らかになりました。これらの成果を、『Nature Communications』に発表したところです。
 5ページの右側、小児AYA世代のがんの解析です。小児AYA世代は肉腫が多いことが知られていますが、中でもユーイング肉腫は非常に多い、頻度の高い肉腫として知られています。ユーイング肉腫を国際共同研究で、大規模に様々なステージの検体を使ってゲノム解析を行いました。それによりますと、ユーイング肉腫では、EWSR1-FLI1という融合遺伝子が最も頻度が高いですが、普通の染色体転座による融合遺伝子の発症ではなく、実は不思議なことに、染色体が2つではなく、3つとか4つの染色体が一旦環状(リング状)になって、その後さらに分断して融合遺伝子が一気にたくさん生じるということが明らかになりました。しかも、それが、がんの発生の一番初期のクローンから存在していることが示されましたので、EWSR1-FLI1というのが発がんの本質的な原因であることが明らかになりました。しかも、様々なステージのゲノム解析を行いますと、例えば後に転移巣に現われた特異的な変異が、実はもともとの最初のがん組織、さらに前がん部の病変の中に、そのようなクローンが一部存在していることも明らかになりました。つまり、肉腫を発症するよりも恐らく1年から2年前に、既に前がん病変が生じていることが明らかになりましたし、がんが臨床的に発症した時点で、たくさんのがん細胞クローンからなっていることも明らかになって、転移を起こすようなクローンがもともと発症時にあるかどうかを調べることも大事だということが明らかになりました。
 6ページの右側、がんの予防法や早期発見手法に関する研究です。当センターでは、以前より血液中のマイクロRNAを用いて、がんを早期から診断するような診断法システムの開発を行ってまいりました。今年度は、予後不良のがんである卵巣がんに関する早期診断システムの開発を行います。卵巣がん患者428例、対象例4,046例の血液中のマイクロRNAを計測したところ、10種類の卵巣がんにおいてのみ血液中の発現量が上昇しているマイクロRNAを同定することができました。今度はその10種類のRNAの発現量を使った診断モデルシステムを作って、がんの存在を予測することをしました。その結果、左側のグラフにありますように、感度、特異度とも、極めて高い診断法を開発することに成功しました。「ポイント」の2つ目に書いてありますように、重要なことは、その診断法はステージⅠ、つまり早期の卵巣がんでも95%以上の陽性率を獲得しましたので、早期がんの診断が可能なアルゴリズムと言えます。このスタディーは既存の血清を用いた解析ですけれども、それが実際に臨床検査として使えるかどうか、前向きの臨床性能試験を行っているところです。
 7ページです。左側は胃がん、右側は大腸がんを、それぞれ内視鏡でリアルタイムに画像診断する人工知能の開発を行っています。当センターの研究所では、人工知能に関して非常に積極的に様々な企業と連携して開発を進めています。例えば左側の胃がんの所では、ポイントの3つ目に書いてありますが、正診率が約9割を達成しています。右側の大腸がんの診断では一番右下のグラフですが、Experience、つまり習熟した内視鏡医師が診断するものと比べて、高い精度及び得意度で大腸がんを診断する人工知能アルゴリズムを開発することに成功しています。これは薬基法の承認を目指して既に臨床試験を始めていますので、近い将来、医療の現場に用いることを我々は期待しています。
 8ページの左側、6NCコホートの共同研究基盤体制構築による連携の活性化です。右側の図にありますように、当センターでは、多目的コホート研究14万人、さらにゲノム解析を加えた次世代多目的コホート研究11万人の大規模なコホートを持っておりまして、その追跡をしております。もちろん当センターだけではなく、ほかの国立センターには、それぞれの疾患の特異的なコホートが存在しています。そこで、それら全体を横断的に解析できるような大規模なデータベースを構築して、相互乗り入れをして共同研究を盛んにしようということを行っております。今年度は、がんセンターの中に大規模な統合データベースサーバーの構築が完了して、それを使って様々な共同研究を行っております。例えば、タバコ、運動、アルコール摂取が、それぞれ様々な生活習慣病や癌に、どのような寄与率を持っているのかを明らかにしようとしています。現在は2020年頃を目途として、疾患総合的な健康寿命延伸のためのガイドラインを策定して提言したいと考えています。
 9ページの左側は、[1]代謝を標的とした新たながん治療法の発見です。ARID1A遺伝子は、がん抑制遺伝子ですが、卵巣がんや胆道がん、膀胱がんなどで高頻度に変異していることが知られています。そのようながんに対して、これまで有効な分子標的薬は存在していませんでした。ARID1Aというのは染色体の高次構造を決めるコンプレックスのメンバーですけれども、ARID1Aが壊れると、その結果としてSLC7A11という遺伝子の発現が低下することを突き止めました。この遺伝子が作る蛋白質は、アミノ酸の一種であるシステインを細胞内に取り込むトランスポーターをコードしています。ARID1Aが壊れると、SLC7A11が下がることによって細胞内のシステインが下がってしまって、その結果、そこから作られるグルタチオンが下がることが明らかになりました。グルタチオンは細胞内の酸化還元の還元に働く補酵素であって、それが下がると細胞内は酸化状態に傾きます。そこで、そのような細胞に還元阻害剤を加えますと、細胞は活性酸素が過剰になって細胞死が誘導されます。つまり、ARID1Aは壊れている細胞だけは、還元ブロッカーによって細胞死が誘導される、つまり、抗がん薬になることが分かります。一方、ARID1Aは壊れていないがん、あるいは正常な細胞においては、細胞内のグルタチオンが十分にあるために還元酵素阻害剤だけでは細胞死は移動されません。こうして、がん腫を超えてARID1Aが異常となっているがんに対する新しい分子標的薬が可能になるという研究成果でありました。
 右側は、[2]遺伝子パネル検査「OncoGuide TM NCCオンコパネルシステム」の薬事承認です。これまでも紹介しましたが、当センターでは、NCCオンコパネルという遺伝子検査のパネルキットを自ら開発して臨床試験を行い、さらに先進医療Bで実際の臨床性能を確認してまいりました。昨年の12月に、めでたく製造販売承認が下りまして、今年の6月1日に薬価が付いて、既に現在、日本でゲノム医療として広く使われています。こうして日本で開発したパネルが、日本で最初に承認された遺伝子パネル検査となって、現実に患者の元に届いたということになります。
 10、11ページは、主立った研究項目について、年度ごとの進展を紹介しています。時間の関係で、例えば一番最初の例だけ述べますと、平成27年度に先ほど申し上げましたNCCオンコパネルを開発して、それを臨床に実際に使えるかどうかを「TOP-GEARプロジェクト」と名付けて行っていました。そして、平成28年度には、品質保証検査室(SCI-Lab)を病院に設置して高い精度と信頼性をもって患者に結果を提供する可能性について研究を行ってきました。平成30年度は、先ほど申し上げましたように、12月に薬事承認されましたし、後で申し上げますが、「がんゲノム情報管理センター」を設置して、日本のゲノム医療のスタートに合わせて体制を整えてまいりました。令和元年度以降、6月1日にゲノムのパネル検査が保険承認されて、実際に皆保険のもとで、日本でのゲノム医療がスタートしています。
 13ページです。評価項目1-2の実用化を目指した研究開発の推進及び基盤整備です。がんゲノム医療の基盤整備として、がんゲノム情報管理センター(Center for Cancer Genomics and Advanced Therapeutics(C-CAT))を設置しました。右側の絵ですが、現在、日本では11か所のがんゲノム医療中核拠点病院と156箇所のがんゲノム医療連携病院において、ゲノム検査が保険診療のもとで行われて、がんゲノム医療がスタートしています。そこで行われる患者の診療情報と、パネル検査のゲノム情報を集約するセントラルデータセンターとしてのC-CATを設立しました。C-CATにおいては、それらの情報が紐付いて、安全に蓄えられて利活用されることになっています。その上にC-CATの役割と書いてありますけれども、1番として、がんゲノム診断の質の管理・向上、2番目に、C-CATで蓄えた貴重な情報の共有、3番として、そのようにして蓄えた情報を用いた新たな開発研究・臨床試験の促進、といった目的のためにC-CATが設立され、既に6月1日付けで活動を開始しております。なお、11か所のがんゲノム中核拠点病院には、当センターの中央病院と東病院の両病院とも選ばれていることを付け加えます。
 14ページ、産学官の連携ネットワークの構築です。御存じかと思いますが、SCRUM-Japanと呼ばれている大規模なオールジャパンの産学連携新薬開発プラットホームに関して紹介します。当センターの東病院を中心として、全国の260施設と17製薬企業との共同研究として、オールジャパンがんゲノムスクリーニングプラットホーム(SCRUM-Japan)が現在行われています。既に、11,000例を超える検体、患者の診断が行われ、48種類の医師主導治験、あるいは企業治験が走っています。SCRUM-Japanでは、単に治験をやるのではなく、実際に薬事承認、薬の承認を目指して活動を行っていますので、SCRUM-Japanの成果として、既に新しい薬剤が4種類、新しい診断機器・診断薬として5種類が薬事承認されて、患者のもとに届いています。さらに平成30年度は、SCRUM-Japanのパネル診断システムだけではなく、血液の中を流れている腫瘍由来のDNAを計測するリキッドバイオプシーと呼ばれる手法を用いた大規模なスクリーニングも、ゴジラプロジェクトと名付けているのですが、それが開始されています。
 研究に関しては最後のページになりますが、4番として国際連携・国際貢献について簡単に紹介します。国際連携については、当センターでは大きく3つの領域に分けて連携を進めています。1つは、対アジア、2番目は、対アメリカ、3番目は、対WHO/国際がん研究機関(IARC)です。例えば対アジアというのは、理事長の重点方針でもありますけれども、アジアにおける新薬開発の大きなネットワークを作って、しかも日本はリーダーシップをもって新薬開発をアジアで行っていくという目標の下に、左側の下に書いてありますが、第Ⅰ相の早期の臨床試験の、日本、香港、韓国、シンガポール、台湾の「AsiaOneコンソーシアム」という国際第Ⅰ相臨床試験のためのネットワークも既に作ってあり、既に第Ⅰ相臨床試験が走っているものも幾つかあります。それだけではなく、PATHWAY臨床試験、先ほど申し上げましたSCRUM-ASIAのようなことも行っています。
 最後に、WHO/IARCに対しては、IARCのがん登録コラボレーションセンターをアジアで作ったのですが、そこにセンター長として当センターの松田が任命されておりますし、IARCのScientifical memberとして、当センターの落合が入っておりまして、密接に連携を進めているところです。以上です。ありがとうございました。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。いかがでしょうか。今、御説明いただいた内容について御質問、コメント等ございますでしょうか。

○中野委員
 研究領域において例えば、がん遺伝子パネルの保険収載のことや、がんゲノム情報管理センターは本当に素晴らしい御研究で、なおかつ論文業績も素晴らしいと思います。その業績を大変高く評価申し上げたいのと同時に、最後に国際連携で触れられましたAsia Oneコンソーシアムとか、PATHWAY臨床試験ですか、これはアジア諸国で、例えば臨床試験とか適用拡大のことも目指していらっしゃるということですが、例えば日本で日本初のがん遺伝子パネルとか、あるいはSCRUN-Japanでも産学連携で新薬とか診断薬を4種類、5種類を開発されているわけですけれども、これをアジアに展開するのは可能なのか、それはいかがなのでしょうか。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 可能だと思いますし、それを今、非常に前向きに我々は行っています。希少がんなどでは、日本だけでやりますと、まだやはり患者の数が十分でないということもあります。そこで世界的な国際臨床試験という方向もあるのですが、折角例えば日本はアジアにいるわけですし、特に東南アジアなどは、がんの医療レベルを上げることに非常に熱心ですので、一緒に組んで、例えば特にアジアに多いようながん、胆道がん、胃がんとか、ネットワークで患者さんをリクルートして、アジア全体で新しい薬事承認のシステムを作ることは極めて重要だと思います。やはりアジアにおいて、日本がリーダーシップをとって、これから引っ張っていきたいと思っています。

○中野委員
 それができれば非常に素晴らしいですし、応援させていただきたいと思うのですが、それはアジア諸国での診断薬、治療薬などの費用などを考えた上でも、持続可能なサステイナブルな形で導入は可能でしょうか。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 それは国によるのです。日本は特殊な皆保険の国ですけれども、言い方は不適切かもしれませんが、やはり貧富の差が激しい国が多く、富んでいる人たちにとっては、そこの国のがんセンターに行って新しい薬を使えるようにすることはとても大事だと彼らは思っているので、まずはそういうところから一緒にネットワークを作っていくというのも重要だと思います。

○中野委員
 ありがとうございます。医療を是非、日本から発信して、アジアに広めたいと同時に、逆にアジア諸国の格差、拡大につながってはいけないとも思ったので、お尋ねさせていただきました。ありがとうございます。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 それに少し関連するのですが、やはりC-CATみたいなシステムは、むしろアジアに持っていったら役立つと個人的には思っています。数年後ぐらいにC-CATをアジア諸国に展開したいなと。そうすると、彼らにとってもデータを安全に保管して、その国が使えるようになるわけですから、そういうことは、これからを考えると、とても大きなプランになるのではないかなと思っています。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。

○前村委員
 病態解明、診断、治療の面で非常に素晴らしい成果を上げられていると思いました。1つ、6ページのマイクロRNAに関してお伺いしたいのですが、AUC=1.0というのは滅多に見ない、非常に感度も特異度が高いかと思いますけれども、これがほかの集団で検証されたら、もうこれだけで診断できるということで非常に素晴らしいと思ったのですが、この卵巣がん以外で、このマイクロRNAの診断の価値が評価されているかというのが1つと、卵巣がんでこれらのマイクロRNAがこれぐらい感度も特異度もよく関係しているのであれば、発がん自体に何らかの関連を持っているとも考えられるのですけれども、機能解析がやられていて、それをターゲットにした治療も進んでいるのかというのをお伺いしたいと思います。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 ありがとうございます。まず前者に対してですけれども、この卵巣がんで見つけた診断キットが、ほかのがんに当てはめられるかどうかですが、当てはめられるがんもあるのですけれども、当てはまらないがんもあるのです。やはりマイクロRNAのセットによって、肺がんでとても特異度が高いマイクロRNAセットとか、この診断モデルのように卵巣がんに高いのがあるのです。卵巣がんの診断能力の高いセットはほかの幾つかのがんではやはり同じような診断能力があるので、前向きに同じような条件でSOPを確立して採取した検体で、同じようなデータが出ることが臨床に使うために必須だと思います。2つ目の質問ですが、この卵巣がんのマイクロRNAに関してはまだ発がん機構そのものに関係しているかどうかということはやっていないのですけれども、既に乳がんのマイクロRNAについては実際の発症へのリンクを調べています。

○祖父江部会長
 どうぞ。

○大西委員
 いろいろな成果を上げられていて大変わくわくするのですが、一方で、こういう診断方法、治療方法、または薬剤の使用方法というのが変わってきますと治療の流れのようなものも大きく変化していくのかなと思うのですが、その辺についての見通しなどを、お話いただけることがあればお願いします。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 おっしゃるとおり、例えば先ほどのARID1Aなどが壊れていると、よく効く薬が実際ありますということになれば、患者の腫瘍がARID1A遺伝子が壊れているのかどうかを最初から調べたほうがよい時代にやがてなってくるのだと思います。だから日本においても、そういうパネル検査を今の進行期で使う状態から、前に持っていくことが必要だと思います。そのためには、パネル検査自体が安くなることと、それぞれの遺伝子を診断する際の診断の性能保証がそれぞれの遺伝子に対してきちんとされないといけないと思うのです。その2つのポイントが達成されればもう少し前の臨床段階でパネル検査が使われるようになるべきではないかなと思います。

○大西委員
 少し時間がまだかかりそうですか。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 いや、そんなことはないと思います。できれば、それを先進医療のような形で、当センターでそういうプロジェクトを進めていきたいと思っています。

○祖父江部会長
 今のことなのですが、先ほどのC-CATは、むしろアジアにいいのではないかというお話でしたが、例えばある治療薬が効きますよというのが出た場合、それはアジアだと先ほど少し触られた富裕層がいたりなど、余りそれを言うといけないのだと思いますが、逆に日本でそういう患者さんに対して自由診療でやっていくのかどうかですが、保険にない薬もたくさんあると思うのです。その辺の治療への展開というのは、何かときどき御発言されていたのでお聞かせいただければありがたいと思います。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 もちろん、私が答えるべき立場にいないと思うのですが、日本はやはりとてもよくできた国で、臨床試験で有効性が明らかに証明されていれば、少なくともまだ医療保険システムが破綻しないかぎりは、ちゃんと承認してくれると思うのです。それがいつまで続くかよく分からないのですが。そういう意味ではとてもフェアな、きちんとした科学的エビデンスが示せれば承認されて多分、皆さんに使っていただけるようになると思います。

○祖父江部会長
 もう1点お伺いしたいのですが、先ほどの質問とも絡むかもしれませんが、発がんのメカニズムは非常にバラエティがあるということを非常にインプレッシブに伺ったのですが、それはそれとして、これは発がんのメカニズムですよね。もう1つ私は神経なのですが、神経で発症に関わる遺伝子と、それから経過を規定する、あるいは予後を規定する遺伝子が別で、いわゆるモディファイヤー・ジーンというのですか、そういうものが結構見つかりつつあるのです。がんでも、やはりそういう発症に関わる部分と、同じ発症メカニズムでも経過をモディファイする別のモディファイヤーというのが、ちょっと素人なので分かりませんが、そういうのがありそうな感じがするのですが。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 ありがとうございます。広く考えればゲノムの不安定性を誘導するような遺伝子変異というのはモディファイヤーです。つまり多様性を用意してくれるのです。だから次々と新しい変なクローンができることを許すような変異がもともとあると、とても予後不良なのです。同じ遺伝子が原因となった白血病でも、P53という遺伝子が一緒に壊れていると、とても予後は悪いことが判っています。それはクローンの多様性を確保しているからなのです。一方もともと、がん遺伝子というのは、がんの発症というのは細胞の無限の増殖ですから、そこに関わる遺伝子はまた特殊な遺伝子セットがあります。

○祖父江部会長
 このオンコパネルは限られた数ですよね。それでは分かるのかどうかということなのですが。モディファイヤーも入っているわけですか。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 有名なモディファイヤーはもちろん入っているのですが、一方、がんにとても有効な薬がある患者というのは、まだ非常に少ないのです。恐らく2、3割というのが正直なところではないかと思います。例えば食道がんで、何が直接的な原因でがんが起きるのかということは、本当はまだよく分かっていないのです。だからそれを明らかにするためには、パネル検査だけでは駄目で、新しいがんの原因を見つけることができるようなアプローチ、例えば全ゲノム解析を大規模に行うなどが必要なのではないかと思います。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。ほかにございますか。

○藤川委員
 先ほどの中野先生の御質問と関連するのですが、先日、システム関連の世界的に有名な会社の拠点を日本に置きたいという話が出たときに、そんな人口が減るような所に置いても将来性がないから駄目だと一蹴されたというような話を聞いて、今朝の日経新聞の新薬開発拠点を中国にシフトするというような話も出たので、非常に危機感を覚えました。先ほどから日本がアジアの中でリーダーシップをとっているし、いけるというようなお考えなのかなと思ったのですが、いつの間にか母屋を取られてたようなことになりはしないのか、現状はまだあちらのほうが遅れているであろうけれども、いつのまにやらお金もどんどん投じ、人も多いし、規制も緩いしということで、すっかりあちらに優位になられていたということを阻止できるような戦略を今から考えていらしてほしいなと思いますが、その辺のビジョンはどうなのかを教えてください。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 ありがとうございます。正に、それを私たちは考えていることで、アジア地域の臨床試験における日本の立場を確固たるものにすることがとても重要だと思っています。例えばC-CATのようなシステムはとてもよくて、C-CATのデータを見ることができれば、日本にはこういう遺伝子変異の患者が3,680人いて、その患者さんたちにこういう治験薬ができましたと送ることができる。だからアジアの中で治験をするのなら、彼らにとって絶対に日本でするほうが費用対効果は高いというようなことを彼らに思わせることも、C-CATのとても大きな役割だと思います。
 もう1つ、先ほど申し上げた全ゲノム解析なども、やはりアジアと欧米とでは1つの遺伝子の変異のパターンなどが少し違うのです。向うに多い変異もあるし、アジア人に多い変異もある。ですので日本で新しいがんの原因を明らかにして、ちゃんと知財として国力として蓄えるというのはとても大事な使命だと思っています。

○祖父江部会長
 よろしいですか。先生、これはC-CATの流れを見ると、今、全ゲノム解析ということをおっしゃったのですが、これは情報だけが流れ、実際に全ゲノム解析をやる形にも可能なのですか。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 世界は大規模な全ゲノム解析をやろうとみんなしていて、今の世界の流れは全ゲノム解析を詳細な臨床情報と一緒にして解析するという流れなのです。ところが世界は、特にアメリカなどはそうですが、詳細な臨床情報を集めることができないのです。

○祖父江部会長
 なるほど。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 でもC-CATはできますから、そのC-CATの臨床情報を集めるシステムのプラットホームの上で全ゲノム解析をやれば、それぞれの患者さんが例えば、ある薬を使って、とても重篤な肺線維症を起こしたとか、例えばある薬を使って有効だったか無効だったかという情報を集めることができるのです。ですので、そこはやはり日本のとても大きなアドバンテージになると思います。

○祖父江部会長
 これ、今はパネルですよね。特定の遺伝子ミューテーションだという。それを全ゲノムにしていくというのも秘めていると。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 それは私が決めるわけではないので、是非、やっていただきたいと、政府にも、厚生労働省にもお願いしているところです。

○祖父江部会長
 なるほど。是非、それをやっていただけるといいなと思います。いかがですか、ほかにはよろしいですか。非常に素晴らしいプログレスだと思います。今おっしゃったようにC-CATが、いろいろな面でいろいろ変えていくのではないかという感じはしております。素晴らしいなと思いました。それではどうもありがとうございました。それでは、次の1-3から1-5の「医療の提供等、その他業務の質の向上に関する事項」を御説明いただきたいと思います。これも説明時間が15分ですので、よろしくお願いいたします。

○国立がん研究センター西田中央病院長
 ここの所は、中央病院長の西田と、東病院長の大津、並びに、がん対策情報センターの若尾でお話させていただきます。16ページです。医療の提供に関する事項です。まず私たちの目標としては、まず高度な専門的な医療を提供し、そして次世代の標準化に資する医療を開発することが1つ。それから患者の視点に立った多職種のチーム医療による良質で安心・安全な医療を提供することが大きな目標となっています。
 ページの下を見ていただくと、病院の指標が御覧いただけると思います。私どもとしては、稼働率を100%程度に保ちながら入院期間を短縮して、より多くの患者さんに、がん医療を受けていただくように努めています。これぐらいだったら普通の病院なのですが、その右側を見ていただくと、先ほど申し上げたように、臨床研究開発が私どもの主なる目標です。企業治験は両病院を合わせて638件です。これは、それぞれの病院が450件以上ずつやっています。それに加えて医師主導治験が79件、これも両病院が40件以上ずつやっています。我々が特に力を入れているのが、ファースト・イン・ヒューマン試験で、早期開発に力を入れてやっていこうということで現時点では新規が15件、全部合わせると61件やっています。その内訳の1つとして下に書いてありますけれども、先ほど間野から説明がありましたように、NCCオンコパネルの先進医療をやりましたし、この後、光免疫療法の話があります。大津先生、よろしくお願いします。

○国立がん研究センター大津東病院長
 17ページの左ですが、光免疫療法というのは、米国のNCIの小林先生のグループが開発された、がんに選択的に集積する抗体薬(抗EGFR抗体)に光感受性物質を付け加えて近赤外線を照射することによって特異的にがんの部位だけを死滅させるということ、それからimmunogenic cell deathと言い、免疫原性の細胞死を起こしますので、免疫的にも、より感受性が高くなることがあり、非常に効果が高い。既に頭頸部がんで、これは企業の治験として行われ、我々のところでは医師主導治験として食道がんでスタートし、胃がんも秋から医師主導治験としてスタートする予定です。局所では、かなり高いCR率、完全寛解が得られております。

○国立がん研究センター西田中央病院長
 以上の様に、非常に注目を集める治療を開発しています。同じく17ページの右側、低侵襲治療の開発・提供を今回挙げています。御存じのように日本は内視鏡治療は非常に先進的にやっていますが、今日取り上げたいのは、IVR治療です。IVR治療は、中央病院で6,000件、東病院で約1,000件やっていますが、この質と量というのは世界のトップ5に入るIVRの治療です。その1つの例として下に挙げてありますが、これは腎がんに対する凍結療法です。通常は内臓に近づいているとそれをできないのですが、これは局所麻酔でスペーサーを入れて局所麻酔で凍結をやります。ということは、患者さんはすぐに回復して帰れるような治療を提供できるということをやっております。
 18ページの右を御覧ください。こういったIVR治療あるいは内視鏡治療をする場合、機器開発は欠かせません。一昨年、東病院にできた次世代外科・内視鏡治療開発センター、NEXTと私どもは申していますが、ここではインキュベーションとともに新しい機器開発をやっております。そこでは下に書いてありますように、現在は企業治験が2試験、医師治療治験が光免疫療法を含めて1件、臨床試験が5つ走っている状況で、既に承認もされている機器もあります。
 続いて19ページを御覧ください。現体制になったときに2つの大きな目標を立てました。ゲノム医療を実装化すること。もう1つは、アンメットメディカルニーズの多い希少がん、難治がんの開発をするということで、特に希少がんの開発には力を入れております。御覧のように、中央機関に中央病院が指定されて、大きく分けて3つのプロジェクトを動かしています。1つは、希少がんでは病理診断が非常に問題になることがあるので病理診断適正化、それから希少がんには情報が少ないということでいろいろな方法を使って患者さんに届く診療情報を提供すること。それから今回一番申し上げたいのは医療開発をするということで、「MASTER KEYプロジェクト」を一昨年より立ち上げております。これは、SCRAM-Japanの希少がん版と言えばそれまでなのですけれども、希少がんというのは実態や病態がよく分かりませんので、希少がん患者をレジストリし、更にバイオマーカーに応じた治療開発を行うバスケット・アンブレラトライアルを行うというような研究開発プロジェクトです。大事なことは、このプロジェクトは、アカデミアは、がんセンターだけではなくてほかの大学とも、それから製薬企業、更にはそこに書いてあるように希少がんというのは、やはりコモンキャンサーと違って患者さんが集まりません。ですから、患者さんとスクラムを組んで産・カン・学、この場合のカンは患者さんの患ですけれども、産患学の共同でやっているプロジェクトです。現在、医師主導治験あるいは企業治験を含めて8試験がラウンチしており、年内に3試験を追加する予定でございます。
 この後、患者視点に立った良質かつ安心な医療の提供に関しては、レディースセンターを含めて、また大津から説明をさせていただきます。

○国立がん研究センター大津東病院長
 20ページの左側の患者のサポートに関して、中央病院では研究開発センター、東病院ではサポーティブケアセンターで、トータルに社会的、精神的なサポートも含めた体制を構築しております。特に、東病院で昨年度からレディースセンターを立ち上げまして、乳がんや婦人科腫瘍などの女性の特有の疾患において、その女性の特有の身体的、精神的及び社会的なトータルサポートということで、妊孕性の対応とか、それからアピアランスの問題、そして今回のゲノム医療が実装化されたことによって、遺伝性の腫瘍というのが見つかってくる率が上がるなど、こういったケースでは多々あって、そのことも含めた遺伝性の腫瘍に対するいろいろな遺伝相談等も含めたカウンセリングや、対応チームを作って対応しているところです。

○国立がん研究センター西田中央病院長
 この後は1ページ飛ばして、人材育成に関することを、若尾のほうから説明させていただきます。

○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長
 続きまして、22ページの評価項目1-4、人材育成について御説明いたします。人材育成では、様々なリーダーとして活躍できる人材であったり、あるいは連携大学院による人材育成、あるいは全国の医療従事者の専門研修など行っているのですが、一番強調したいのは、[4]海外からの医療従事者の研修等を非常に強化しております。実際には内視鏡が中心となるのですが、長期研修者も非常に安定して増加しているとともに、右側にグラフがありますが、2014年に比べて2018年では約1.5倍の研修生(年間208名)を受け入れたという実績を残しております。[5]全国の臨床研究の研究者を育成するためのe-learningのシステム・サイトを構築して運営しております。昨年度、平成30年度も1万6000人の新規登録があり、累計で10万人の登録者を得るような実績となっています。こちらは一部資金を受益者負担という形で、1,000万の資金を得て、その中で今後のシステム改修などもまかなうような形で運用しているところです。
 23ページは、評価項目1-5、医療政策の推進等に関する事項について、引き続き御説明いたします。こちらについては、1.国への政策提言に関する事項ということで、先ほどからゲノム医療の推進あるいはC-CATなどの報告をしておりますが、そのゲノム医療の仕組みを実際に実装するために国との緊密な連携により、このゲノム医療の仕組みを作り上げたことが大きな実績と考えております。右側ですが、医療の均てん化ということで、地方公共団体のがん対策支援の中では、特にがん検診の向上が大きな課題となっているのですが、ナッジや行動科学などを利用した検診受診勧奨用資材を開発し、その資材を都道府県あるいは市区町村と連携して、全国で展開したところです。その際にはクロスメディアでNHKとも連携して130万人にその資材を送付し、実際に、その結果として、前年度と比べて受診率が1.5から7.6倍に増加したという途中経過の報告もあります。
 24ページ、情報の収集・発信です。こちらで一番強調したいのは、全国がん登録についてです。今までの我が国のがん罹患数、がんと診断される方の数は都道府県が個々に実施している地域がん登録のデータを集めて、そこから推計していた状況だったのですが、平成28年(2016年)から全国がん登録が開始され、今年1月、初めて昨年度のがん罹患数を集計いたしました。地域がん登録の場合は、集めてから結果の報告まで約5年かかっていたのですが、全国がん登録法制化の仕組み、あるいはシステム導入などもあり、2年で全国の罹患数を出したところです。同時に、拠点病院を中心とした院内がん登録についてもデータの集計を進め、昨年度は初めて施設別、それもステージ別のデータを集計しております。
 [2]がん関連学会との連携によるがん情報サービスの充実です。昨年度(平成30年度)においては、年間6,600万PVのアクセス数で多くの国民の方にがん情報を伝えたところです。[3]は、がん対策が患者さんにどのように影響しているかということの結果です。1つは死亡率などを見るのですが、患者の実際のアウトカムを調べるのも非常に重要なモニターの1つです。その1つとして、患者体験調査は約2万人の方を対象に平成27年度について2回目の患者体験調査を実施するとともに、遺族調査を昨年度初めて5,000人のパイロット結果について報告いたしました。終末期では約3割の方が体の痛み、あるいは心のつらさを感じていることを初めて公表させていただいたとともに、そのパイロットスタディに基づいて、今年の初めに5万人を対象とした遺族調査を実施いたしました。こちらについては、現在データを集計しているところです。医療政策の推進の部分は以上となります。

○祖父江部会長
 先ほどと同じような形で、御説明いただいたことに対して御質問、コメントございますか。では、まず私から質問します。この全国版登録、それから院内がん登録についてですが、ちょっと前に新聞紙上でも非常に大きく報道されたと思うのです。内容と寄与感がマッチしないのですが、がんのオールジャパンの改正の観点から言うと、どれくらいをカバーしていて、もう1つは長期予防で、どれくらいまでを、その1人の患者さんのフォローをできているのかというところがよく分からないのですが、その辺を教えていただけるとありがたいと思います。

○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長
 ありがとうございます。まず、全国がん登録ですが、こちらは日本のがんの罹患数をカウントするためのもので、対象は全ての病院及び各都道府県が推薦する診療所を対象として、カバー率としては100%を目指したものとなります。今年の1月に昨年度の速報値が出たのですが、日本で平成26年に診断された方が99万5,000人という数値が出ています。それまでの地域がん登録では85万だったのが、制度が変わることで、今まで登録漏れと思われていたところも含めて若干数が増えたところです。こちらについては2016年に始まったものですので、今後ずっと引き続き予後調査をしていくことになるのですが、その予後調査も今までの地域がん登録の場合は、病院から住民票照会をかけるという形でなかなか対応できなかったところもあったのですが、この全国がん登録は法律に基づいて実施しておりますので、死亡小票の写しを頂くことで、それと登録をマッチングすることで、理論的には100%予後の評価ができ、しかもこれは100年にわたってデータを残すということで、長期フォローアップも今後できることが想定されております。一方、院内がん登録については、平成28年の拠点病院及び県の推薦病院などで診断された方が96万人です。これは病院単位の登録ですので、1人の患者さんが複数の拠点病院に掛かっていれば重複のある数字になります。ただ、全国がん登録で約100万人ですので、96万は、重複があるにしてもカバー率9割近くはカバーしていて、何らかの形で拠点病院に掛かっている状況と思われます。こちらも始まったのが2006年ですので、まだ長期予後のデータは出ていないところですが、今後全国がん登録の予後の情報が活用できるようになれば、拠点病院の生存率ももう少し長く、正確な数字が出せるようになると考えております。

○祖父江部会長
 そうすると、今後もこの法律に基づく全国がん登録と、それから拠点病院を中心にした院内がん登録というのは、並行してやっていかれると。

○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長
 はい、そうですね。全国がん登録は罹患数をカウントすることが目標としていますので、地域のがんの状況、そこの地域でがんの発生が多いのか、あるいは検診が推進されて早期発見がしっかりとできているのか、がん医療がしっかりと提供されているのか、様々ながんの状況を測るための指標となります。一方、院内がん登録は施設単位で、その施設で行われている医療について確認するためのもので対象が限られますので、そのとき行われた治療であったり、あるいは発見時、治療開始時のステージの情報など、より詳しい情報を含んでいますので、全国がん登録があるから院内がん登録は要らないということではなくて、それぞれ双方的に、お互いに連携した形で、違った目標で行われている形になります。

○祖父江部会長
 分かりました。どうもありがとうございました。ほかに何かございますか。

○藤川委員
 がん登録の話で、新聞などでそういう本来は法律的にやらなくてはいけないはずなのだけれども、協力的でない自治体があって、開示をしないようなものがあるというようなことを読んだことがあるのですが、それは現状としてそうなっているのでしょうか。

○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長
 そちらは恐らく院内がん登録で、各施設から自治体に対して住民票の照会をがんセンターが窓口となってやらせていただいていたのですが、そのときに対応していただけないという事実があったというのを、今年の春頃に報道されたというところだと思います。一方、全国がん登録については、そのような自治体の協力の是非に関わらず、死亡個票のデータから突き合いたしますので、今までできてなかった予後調査がしっかりと実施できる体制が整備されたということになります。

○藤川委員
 もう1ついいですか。少し出ていたのですが、働いている方が治療された後でどうかという話で、両立支援のところだと思うのですが、余り触れられることはなかったのですが、がんセンターのようなところが、なかなか地域に戻って働くことに関してまできめ細かな支援をすることは難しい部分もあるかと思うのですが、どの程度進んでいらっしゃるのか、教えていただきますか。

○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長
 すみません。説明は割愛させていただいたのですが、24ページの[4]で、やはり御指摘があったように、がんの医療が変わってきています。入院から外来にシフトして、外来も通院の化学療法なども進んでくる中で予後も改善されています。今、5年生存率で62.1%の方が御存命という状況の中で、がんの治療が終わっても働きながら治療を続けるという患者が増えてきています。ただ、まだ社会の認識としては、がんは不治の病で、なかなか珍しいもので、がんになったら働けないというイメージが強い中、今イメージを変えるということの活動をさせていただいています。実際は昨年度に取組んで、ガイドブックが出たのは今年度にずれ込んでしまったのですが、今までビジネスパーソンが見る情報サイトなどで、がんの治療と仕事の両立をしている方の情報提供などをさせていただいておりました。5年間続けてさせていただいたのですが、それの集大成として、今までの事例に基づいたもの、あるいは各企業の人事労務の方々にインタビュー、ヒアリングなどをして、その方の御協力を得て、企業の人事労務としてどのようなサポートができるかというようなことをまとめた人事労務向けのガイドブックを、それも中小企業向けのものと大企業向けのものを2種類、今年5月末に公表させていただいて、今ホームページなどを通して周知を図っているところです。やはり会社のほうで、がんの方でも働ける、そのためには様々な工夫がある、それもがんの制度を使わなくても今までの介護の制度であったり、女性の子育ての制度などをうまく、がんの患者さんにも流用することができるということも含めて、まずはガイドで周知を図って、それを広めようと考えているところです。

○藤川委員
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 よろしいですか。ほかにはどうでしょうか。先ほど大西先生のほうからも質問があったと思うのですが、がんの診療・医療全体がこれだけ変化してくると、そのガイドラインの流れ、診療の流れを示す、均てん化ということにも関係としてくるのですが、これをがんセンターとしてはどういう立ち位置で、そういうものを発信しているのかというところを教えていただけるといいかと思うのですが。

○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長
 まず、診療ガイドラインについては、各がん種ごとの専門の学会が作成しております。がんセンターとしましては組織として、そこにコミットするというよりは、個々の研究者、個々の医療者が各学会の会員として、その診療ガイドライン作りに携わっているというところです。私どもとしてはそのガイドラインの情報を、特に患者向けに分かりやすく、かみくだいた形で、がん情報サービスと先ほど御紹介しました情報サイトを通して公表しているところです。基本は医療者向けのガイドラインなのですが、学会によりましてはガイドラインを作るだけで、多くの学会は力尽きてしまって、一部の学会では患者向けのガイドラインができているのですが、まだそれが余り広がってないところです。私どものほうでは、それを患者さんも交えた形で、患者さん向けの情報、ガイドライン情報を作成させていただいて、それを普及し、広げているところです。あとは厚労省の制度として、全国に420を超えるがん診療連携拠点病院という病院が指定されておりますが、そこに相談支援センターという、患者さんの悩みや疑問に対応する窓口を作っていただいていますので、その相談支援センターの相談員の研修や、そこの対応すべき広報などを、私どもがんセンターで一括してやらせていただいており、その相談支援センターでがん情報サービスを活用した患者さん向けの説明、不安への対応などを実際に対応させていただいています。

○祖父江部会長
 よろしいですか、ほかに何かございますか。もしなければ、まだ時間が余っているかもしれませんが、どうもありがとうございました。医療の提供、その他の業務、質の向上に関する事項は終わりましたので、2-1から4-1までの業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項ということで、御説明は5分ですが、よろしくお願いいたします。

○国立がん研究センター北波企画経営部長
 企画経営部の北波でございます。どうぞよろしくお願いします。資料は25ページから3枚です。御説明いたします。まず、業務運営の効率化です。私どものセンターでは経常収支率というものをこの中長期にわたって100%超えるという目的の下で、目標を立てて収支を見て、また業務の効率化につなげているところです。25ページの左、財務のガバナンスの強化ということで、部門別の予算と実際がどのように乖離しているかというものも明らかにしつつ、それぞれの部門にしっかりとした予算の執行も促しているところです。実績から申しますと、事務部門での業務のトランスシェアの業務改革を進めた結果、経常収支率については平成27年以降は100%を超える状況になっており、それ以降4年連続で100%を超え、平成30年度については103.4%になっております。また、事務負担、一般管理費についても削減に努めており、平成26年対比で10%以上の縮減を実現しているところです。また、中長期にわたりましては資金力の強化も必要でして、26ページのⅠの自己収入の増加に関する事項を御覧ください。いわゆる外部資金の獲得というところで、平成30年度については150億円ということで、前年度比では16%の増となっております。特に、共同研究費の部分は企業等々との協力で行うものですが、これについては前年度比1.5倍以上という実績を上げているところです。
 右側の知的財産戦略についても、投資のバランスについては黒字ですし、また寄附金についても着実に増加しています。また、長期借入れについても、数年前と比べて、平成22年の対比としては25.8%まで低下しています。一部、MEXT等の整備とか、若干、財等で増えているところはありますが、全般的には長期借入金の残高は減少傾向にしているところです。
 27ページを御覧ください。その他業務運営です。法令遵守等と書いていますが、御覧頂きたいのは27ページの右側です。積極的な広報ということで、センターとしては広報企画にも努めており、メディア等への掲載件数についても大きく伸びているところです。この中でも5大紙、TVキー局での番組等での取り上げ等もありますし、その他として、雑誌や地方紙等に取り上げられる回数についても大きく伸びています。言ってみれば、医療雑誌、それから週刊誌、スポーツ紙にも掲載されている記事もあります。それだけ話題を提供するように努力をしているところです。雑ぱくですが、その他業務に関しては以上です。どうぞよろしくお願いいたします。

○祖父江部会長
 それでは、よろしくお願いします。何かコメント、質問等ございますか。

○藤川委員
 一般管理費の削減で、平成26年に比べてということですが、4,000万強を削減されていると思うのですが。

○国立がん研究センター北波企画経営部長
 はい、そうです。

○藤川委員
 物の値段がそんなに下がっているわけではないと思う中で、どのような削減があったのかというところ。相当、皆さんがコストカットを既にされている中で、更に絞っているとすれば、どういうところで下げられたのか、教えてください。

○国立がん研究センター北波企画経営部長
 基本的には、委託に回しているところとか、全ての業務の棚卸しということをさせていただきました。委託にしたほうがいいのか、もしくは内製化をしたほうがいいのか。こういう比較衡量をして、一部業務を移すとか。それからもう1つは管理コストから言いますと、いわゆる東病院とか、中央病院とか幾つか分散しているところの全体の管理を、全部事務部門ということで統括していくという一元化の取組を行うと、このような形は当然ながら、消耗品費、非常に細かなところも削減しながら、こういう形で4,000万ですが、削減してきたという経緯です。

○祖父江部会長
 よろしいですか。順番にお願いします。

○前村委員
 26ページで、共同研究費が非常に伸びているのは素晴らしいと思うのですが、1-1、1-2、1-3で、いろいろな研究を紹介していただいたと思うのですけど、どういう研究に対して共同研究というのは伸びているのでしょうか。

○国立がん研究センター北波企画経営部長
 では私のほうで全体的な話から申しますと、いわゆる創薬でありますとか、それから新たな取組として、センターではSCRUM-Japanであるとか、企業とともに行っていく事業を増やしております。そういう関係から申しますと、やはり共同研究費というのは大きく増えてきている兆候にあると見ております。

○国立がん研究センター間野理事・研究所長
 ちょっと付け加えますと、もちろん企業治験を積極的に取り入れて、その治験に関する共同研究費を獲得していることもありますし、もっと具体的な製薬開発とか、バイオマーカー開発とか、実際の医療機器とか、診断マーカーを見つけていくことにも非常に積極的に企業と交渉していまして、それも伸びる要因になっているのではないかと思います。

○花井委員
 寄附が結構伸びていて、何かクラウドファンディングを実施と書いてあるのですが、具体的にどのように、誰か担当がついて、何か強力なことをなさったのかどうかちょっと、もしかしたらほかのセンターに参考になるかもしれないですので。

○国立がん研究センター廣田統括事務部長
 これは民間からの登用で、専門の方を置いているのが1点。それで今年の4月なのですが、がん有明の寄附担当者の方がちょうど定年なので、今、非常勤で雇いました。一番大きな要因は、個別の寄附がとても高く、たまたま1.9億ということで、個別の寄附が伸びたということです。クラウドファンディングは患者サポートの関係で1点やっています。それも満額の寄附が集まったと、そういう状況でございます。

○花井委員
 では、この中でクラウドファンディングによるものがそんなに多いわけではないということですね。それは金額的には少なくて。

○国立がん研究センター廣田統括事務部長
 正直言って、500万。

○花井委員
 むしろ民間の担当の方が来て、大口があったということがこうなってきたのですか。

○国立がん研究センター廣田統括事務部長
 そうです。クラウドファンディングは御承知のとおり、周知を図るということの意味もやはりありますし、お金が当然それに伴なわればいいのですが。今回は、がん患者サポートの関係ですが、それが周知を図って広めるということの意味合いもあったと思いますので成果はあったのではないかと思っています。

○祖父江部会長
 いいですか、ほかには。先ほど質問がありましたが、共同研究費がこの4年ぐらいで非常に伸びていて。しかも4年間ぐらいが100%超えになっているということから言うと、一番大きな原因は共同研究費の伸びかなとちょっと思ったのですが、どうですかそれは。見えているという感じはしますが、先ほどの話ですと、企業治験、この治験は別の枠組にしてありますよね。

○国立がん研究センター北波企画経営部長
 はい、治験は別です。

○祖父江部会長
 だから、この中身が、先ほど簡単に御説明いただいたのですが、具体的にはなかなか難しいかと。

○国立がん研究センター大津東病院長
 大きなものが3つです。1つは企業資金での医師主導治験、もう1つは企業資金でのTR研究、SCRUMもそうですし。それから免疫関係の。

○祖父江部会長
 SCRUMも入っているのですか、これは。

○国立がん研究センター大津東病院長
 SCRUMは入っています。そこの部分と、あとは免疫関係で、かなり精細な検体の機能解析など行ってまして、それもSCRUMと、ほぼ同じくらいの研究費の取得になっています。あとは機器開発も少し始めていますのと、あとは基礎研究で、間野先生等がやっておられるPDXの、あれはAMEDと企業との共同研究になっていますが、そういったところでの話も結構入っているのではないかと思います。

○祖父江部会長
 なかなかほかのナショナルセンターで、ここまで共同研究が伸びているというのは、ほとんど例外的だと思うのですけど、非常に素晴らしいなと思っております。今、何か鳴りましたね。それでは、今のところはこれで終わりにしますが、最後に理事長先生と、それから監事の方から御説明等、あるいはステイトメント等を頂けたらと思います。それでは、まず監事のほうから監査結果等を取りまとめた監査報告について、御説明いただけますか。

○国立がん研究センター小野監事
 監事の小野と申します。よろしくお願いいたします。監査報告については、いわゆる企業で言うところの無限定適正意見ということで、監査報告で御報告するような重要な問題事象はありませんでした。ルールを遵守しているかというところも監事の仕事ですが、一方で事業を適切に発展させているか、あるいは妥当なリソースの分配であるかという、前向きといいますか、そちらも役割だと思いますので、その点で1点申し上げますと、我々NCのスタートは平成22年でございましたので、ちょうど10年目を迎えたという節目になります。この間、今日御説明しましたように、外部資金あるいは競争的研究資金等々が倍増したり、大変増加しております。それから病院の年間稼動率も西田院長からも御説明ありましたように、年間通算で100%を超えるという、これはかなりの高稼動だろうと思います。こういったことは職員の方の御努力ということで、大いに評価されるということは私も思っております。
 ただ一方で、これは無償でそういうことが起きるわけではなく、研究開発独法であるセンターの研究者の方々の、いわば時間コストというリソースが投入されて獲得されるというバランスシートになるのだろうと思います。ということで、これまでは順調に、こういうことで発展してきたと思うのですが、今後を考えたときに当センターのミッション、それから先ほどアジアの話やら中国の話というのが出ましたように、やはり一方で、がん研究あるいは実用化の熾烈な国際競争という、今は非常に重要な、近い将来を決めるようなところにあるのではないかと受け止められます。そういうことからすると、やはりここから先は、自己財源の確保はもちろん必要ですが、それと将来に備える、そのためにやはり研究に費やす時間コストの確保のベストミックスということを考えて運営化がなされるべきだろうということだろうと思います。本年の3月に独法を管轄する総務省から、「独立行政法人の目標の策定に関する指針」というものが新たに出されました。その中でも恐らくそういう趣旨だと思うのですが、例えば主務大臣による明確なミッションの附与ということがうたわれているのです。主務大臣側で目標を設定し、独法側で計画を作って実施していくという建てつけでございます。まず目標を打ち出す主務大臣側が明確なミッションをセンター側に附与する、NC側に附与すると、こういうことでございますので、そういった中で恐らく今後の重要なミッションというものがフォーカスされてくると思います。そのときに自己財源とそういうミッションに応えるというところがうまく両立できればいいのですが、リソースは限りがありますし、研究者の先生方の1日の時間は24時間と決まっておりますので、それのポートフォリオということを考えていくということかと。私はそういう目で、監事として見ていきたいと思っています。ありがとうございました。

○祖父江部会長
 今おっしゃっていただいて、本当にそのとおりです。このナショナルセンターの在り方委員会というので、大分議論は進んだのですが、今、この場は今までの流れの評価ということになっていますが、2年後ですね、これは。あと2年で終わりますので、その次をどうするかというのは、やはり今おっしゃったとおり、世界に向けてどうするのかというところが、これ評価にもつながってまいりますので、私どももどうするかということは、また御相談させていただきたいと思っています。よろしくお願いいたします。
 最後に、理事長のほうから一言、よろしくお願いいたします。

○国立がん研究センター中釜理事長
 本日は、各部門からこの1年間の実績について紹介させていただきました。我々センターはがんに対する高度医療を提供すると同時に、臨床開発を推進し、新しい医療を開発することが求められています。がんに関する正しい情報を患者に提供するも重要と考えています。一方で、冒頭に申しましたが、我々センターが世界をリードするキャンサーセンターを目指す、あるいは世界のトップテンの開発力を目指すという観点からは、まだまだ課題があると認識しています。これらの点を踏まえながら一層の向上に努めるとともに、その点も踏まえて、希少がん・難治がんの対策であるとか、より効率的な開発研究の推進の在り方についても継続的に議論を深めて行きたいと考えています。本日説明があったC-CAT等のデータベースの上手な利活用およびその加速も重要な課題の一つと考えています。
 一方で、患者の高齢化にともない病態が多様化し、治療モダリティも多様化・複雑化し、新規の治療に対する患者の反応性もこれまで以上に複雑になる中で、センターだけで解決できる問題もやはり限定的になってきていることを考えると、様々な機関、大学等との連携、あるいは国際的な連携、そういうものも今後の展開としては考慮する必要があると考えています。正に現在それらの課題にも取組んでいる状況であります。それから日本のがん対策としては予防・早期診断に加えて、治療の充実、がん患者の社会との共生があります。3つ目の社会との共生の部分に関しては、我々センターとしてできることとしては、サバイバーシップや就労支援に関わる様々な問題があります。サバイバーシップの課題は非常に重要と考えており、センターとして科学的なエビデンスをいかに構築できるかといった議論も深めながら、政策への提言、あるいは新規の事業課題の提案につなげていければと考えています。同時に世界の中で日本のプレゼンスを示していくという大きな使命、加えて先生方が御指摘のようなグローバルな視点で、がん患者さんの病態の複雑性、多様性の克服に向けた疾患横断的な課題にどのように取り組んでいくかということが、今後の課題と認識しております。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。よろしいですか。いいですか。では、これで国立研究開発法人国立がん研究センターの平成30年度の評価を終了したいと思います。どうもありがとうございました。

(国立がん研究センター退室)

○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室太田室長補佐
 事務局から今後の流れの御説明をさせていだいてよろしいですか。本日御議論いただきました平成30年度の業務実績評価につきましては、この後、本部会における御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえ、厚生労働大臣による評価を行って、その評価結果について法人に通知するとともに、公表いたします。決定した内容については、後日、委員の皆様にもお送りいたします。次回は8月8日(木)13時30分から、国立長寿医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センターの3センターの評価を予定しております。会場は、中央合同庁舎4号館です。こちらでございませんので御注意ください。4号館の1208会議室(12階)です。各委員におかれましては、評定記入用紙の御記入を終えている場合は机上に置いたまま御退席のほど、よろしくお願いします。また、後日御提出いただく場合には、8月21日中にメールで御送付いただきますよう、お願いします。また、本日の資料の送付を御希望される場合は、資料を送付いたしますので、机上の封筒に資料をお入れになって御退席いただければと思います。事務局からは以上です。

○祖父江部会長
 では、どうもありがとうございました。これで終わります。どうも御苦労様でした。