平成30年度第1回化学物質のリスク評価検討会(遺伝毒性評価ワーキンググループ)議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

平成31年2月28日(木)14:30~16:03

場所

労働委員会会館 612会議室

議題

  1. 平成30年度に実施したBhas42細胞を用いる形質転換試験(16物質)の評価について
  2. 平成30年度に微生物を用いる変異原性試験を実施した物質(15物質)に関する遺伝毒性の総合評価について
  3. 平成31年度非遺伝毒性発がんスクリーニング試験対象物質の選定について
  4. 平成31年度エームス試験対象物質の選定について
  5. 変異原性指針対象物質(バットオレンジ7)の評価について
  6. その他

議事

 
○増岡化学物質評価室長補佐 定刻となりましたので、ただ今から平成30年度第1回遺伝毒性評価ワーキンググループを開催いたします。本日は大変お忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。
 委員の出席状況でございますが、本日、委員は皆様御出席いただいております。また、本ワーキンググループより、新たに増村様に就任いただいておりますので、御紹介いたします。よろしくお願いいたします。
 また、特別参集者として若林委員に御出席いただいております。同じく、特別参集者の
西川委員におかれましては、所用により欠席とお聞きしております。
 また、本日は評価をいただく試験を実施していただいた、日本バイオアッセイ研究センター、および、株式会社ボゾリサーチセンターの御担当に出席をいただいております。
 それでは、以下の進行を座長の清水先生にお願いいたします。
○清水座長 年度末のお忙しい時期にお集まりいただきましてありがとうございます。
 それでは、これから座長を務めさせていただきますが、議事に入る前に、事務局より議事次第と資料の確認をお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは、2枚つづりの議事次第がございますが、そちらを御覧ください。
 1枚めくっていただきますと、「配布資料一覧」とあります。まず資料1-1は「平成30年度にBhas42形質転換試験を実施した物質について」、資料1-2は日本バイオアッセイ研究センターが御担当された「Bhas42形質転換試験結果一覧」です。資料1-3は、同じく、ボゾリサーチセンターが御担当された「Bhas42形質転換試験結果一覧」です。
 資料2ですが、資料2-1は「平成30年度にエームス試験を実施した物質に関する遺伝毒性の総合評価について」、資料2-2はその総合評価の一覧表「平成30年度にエームス試験を実施した物質に関する遺伝毒性の総合評価(表)」、A3のものとなっております。また、資料2-3は、物質ごとの試験結果として、「平成30年度実施エームス試験結果概要」を添付したつづりがあります。
 また、資料3として、資料3-1「平成31年度非遺伝毒性発がんスクリーニング試験対象物質の選定方針」、資料3-2「平成31年度形質転換試験の対象物質のリスト」、それから資料3-3として、試験可能またはおそらく可能な物質について絞り込んだものとして「平成31年度形質転換試験の対象物質リスト(試験可能またはおそらく可能な物質)」を添付しております。
 資料4-1「遺伝毒性試験対象物質の絞り込みの方針(修正案)」、資料4-2「平成31年度変異原性試験候補物質」の一覧となっております。
 資料5-1「変異原性指針対象物質(バットオレンジ7)の評価について」、資料5-2「バットオレンジ7に係る変異原性試験結果」です。
 続いて、参考資料です。参考資料1-1「平成30年度非遺伝毒性発がんスクリーニング試験対象物質の選定方針」、参考資料1-2「Bhas 42細胞を用いる形質転換試験による調査の基準」。参考資料1-2は、平成26年度の第3回WGの合意事項となっております。それから参考資料2-1「発がん性スクリーニングにおける遺伝毒性(変異原性)の判断基準」、こちらは平成25年度の第1回WG後修正版です。参考資料2-2「遺伝毒性の判断基準の細部事項」、これも平成25年度第1回WG後の修正版となります。参考資料3-1は遺伝毒性試験対象物質の絞り込みの方針」、参考資料3-2「発がん性スクリーニングにおける遺伝毒性の構造活性相関結果の評価基準」、こちらは平成25年度の第1回WGの修正版になります。参考資料3-3は、平成29年度の第1回WG修正版の「発がん性スクリーニングにおける遺伝毒性の構造活性相関結果の評価基準」です。
 資料は以上でございますが、抜け等がございましたら事務局までお申し付けください。
○清水座長 ありがとうございました。不足がありましたら事務局の方にお願いいたします。
 それでは議題1に入りたいと思います。平成30年度実施したBhas42細胞を用いる形質転換試験の評価についてですが、事務局から御説明をお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 では資料1-1を御覧ください。
 まず、これまでの経緯というところですが、形質転換試験については、遺伝毒性評価WGにおいて、「遺伝毒性なし」と評価された物質及び構造活性相関の結果が「-」という予測結果であった物質の中から選定しています。選定方針については、参考資料1-1に付けております方針に基づいて製造量等を勘案した上で選定しました。
 平成30年度においては16物質を選定し、委託事業等により試験を実施しています。実施対象物質は、資料1-1の1から16ですが、これら16物質について本年度実施しています。本WGにおける検討事項ですが、まず(1)Bhas形質転換試験結果の陽性か陰性かの評価を行う、また(2)試験結果が陽性と判断されたものについては、基本的にラット肝中期発がん性試験の候補物質としていますが、そのように候補物質として追加していくのか否かを御検討いただくこととしております。
 資料1-2、1-3ですが、各試験機関より提出された試験結果の一覧表と物質ごとの概要になっております。本日は、試験機関にも御出席いただいておりますので、そちらから御説明をいただきたいと思います。
 まず資料1-2につきまして、日本バイオアッセイ研究センターより御説明をお願いいたします。
(日本バイオアッセイ研究センター) 担当いたしました8物質について説明させていただきます。
 まず、最初に一覧表をご覧ください。8物質中4物質が陽性と出ております。4物質を読み上げますと、7506の硫酸銅、7509のn-ヘプタン酸、7510のtert-ブチル=アクリラート、7512の2-イソプロピルフェノールの4物質が陽性の結果になっております。
 次のページから、各物質につきましてグラフと、陽性の場合には写真を載せております。上段が細胞毒性のグラフになります。その下の欄が形質転換試験のグラフ、そして陽性の場合は最後に代表的なウェルの写真を載せてあります。陰性対照、陽性対照、それから検体を処理したウェルの写真になります。
 早速、陽性と出ました最初の物質、7506(硫酸銅)の説明をさせていただきます
 まず、最初に用量設定試験、細胞毒性試験は10mMの最高濃度まで実施しております。最初の細胞毒性試験はクリスタルバイオレット法(CV法)による染色で行いました。0.63mMのところで強い細胞毒性を示しておりまして、図1の右から2つ目のプロットで、0.31 mMがCV法ですと100%を超す増殖率を示したのですが、こちらの固定した細胞をプレートの方で確認すると、位相差顕微鏡下で20%コンフルエント程度の細胞密度で、強い細胞毒性を示しておりました。
 この物質、高濃度の方で被験物質の沈殿があり、さらに2.5mM以上のところで一部細胞が固定され始めて、10mMは2.5から少しずつ固定作用が強くなっていって、その細胞の残り具合に応じて沈殿した検体が降り積もって、そちらが桁違いに強い吸光度を示しました。図1で見ておわかりのように、0.6 mMのところでちゃんと0に近いところになっているのですが、その0.31が実際の細胞と吸光度がかけ離れていたものですから、図2に示した細胞毒性試験をセルカウントで行った試験をもう一度同じ濃度域で実施しました。0.32 mMからやっていますが、そちらがちゃんと位相差顕微鏡と同様の結果になることを確認しております。セルカウントだとちゃんと死んでいるのを確認して、2回目の細胞毒性試験まで実施しております。
 この結果に基づき、図3にお示しした形質転換試験を実施しております。*が付いております0.040、0.080、0.16mMの3用量で濃度依存的に形質転換率の増加を示しました。そして、陽性でしたので、一番下のところに代表的なウェルの写真を載せております。
 次の物質7507(エチレンジアミン四酢酸ナトリウムカルシウム塩)に移ります。こちらは10mMの最高用量まで実施して、細胞毒性は示したのですが、図6のところで見ていただけるように、形質転換率に関しては上昇が認められませんでした。減少した方で有意差がついて*が付いておりますが、上昇はいたしませんでした。
 次の7508(2-オクタノール)に移ります。こちら10mMの最高用量まで細胞毒性試験を実施しております。1回目の試験の濃度設定で形質転換率が急激に落ちていたところがあり、そこの設定濃度幅が広かったので、間を刻んだ用量設定試験をもう一度組みまして、そちらでもう一度実施しております。細かく間を刻んではみたのですが、やはり刻んだところで急激に落ちる傾向は変わりませんでした。一応、毒性の濃度域が少し絞れたので、それをもとに図9の形質転換試験の方を用量設定して実施しております。こちらの結果は、細胞毒性を示し、形質転換率の方は上昇を示さず、減少の方で有意差が付いています。
 次の物質7509(n-ヘプタン酸)に移ります。こちらは陽性の物質になります。最初に10mMまで細胞毒性試験を実施し、2.5mMのところで若干増殖促進の傾向がありました。そこも含むような形で10mMを最高用量に、形質転換試験を実施した結果を図11に示しております。低濃度側でネガコンの次のプロットとその次のプロットである1.3mM、1.8mMで陽性を示しました。ただ、低濃度の方が一番形質転換率は強く、1.8mMで下がり、次の濃度で有意差が付かなくなり、さらに上の濃度は減少の方で有意差が付くというように、用量相関性が見られませんでしたので、もう一度確認試験を実施しております。
 設定容量をさらに細かく振っていったところ、1.2mM、1.5mMのあたりは同様に下がる傾向で出てしまったのですが、もっと低い濃度、ネガコンのプロットから2番目、3番目のところ、0.3mM、0.9mMの低濃度側の方で濃度依存的に上昇するところが捉えられました。その後は下がってしまうのですが、一応、この4点が増加傾向として有意差があり、下の方の2濃度は用量依存的な増加も捉えられたという確認試験を図12の方に示しております。陽性になりましたので、代表的なウェルの写真を一番下に示してあります。
 次の物質7510(tert-ブチル=アクリラート)ですが、陽性の物質になります。10mMまで細胞毒性試験を実施しております。図15ですが、同じく10mMまで形質転換試験の本試験を実施しましたところ、1点だけ5.0mMのところで有意な増加が認められまして、確認試験をもっと公差を刻んだ形で実施したところ、図16に示したとおりに4.0、5.0、6.0mMの3濃度のところで、用量依存的に増加しております。代表的なウェルの写真を一番下に示しております。
 次のページになります。7511(4-sec-ブチルフェノール)ですが、こちらは陰性です。最高用量として10mMの濃度まで細胞増殖試験を実施しており、0.63mMのところで強い細胞毒性を示しております。その結果をもとに形質転換試験を実施しました。その結果、細胞毒性は示しておりますが、形質転換率の上昇については有意差がありませんでした。減少傾向として*が付いているところは2濃度の方でありました。
 次は、7512(2-イソプロピルフェノール)です。こちらは最後の陽性の物質です。本物質は、10mMの最高用量まで細胞毒性試験を実施し、一度目の形質転換試験本試験を実施したところ、これも1ポイントのみで形質転換率の有意な増加が認められております。それを確認するために図22に示したように、細かい用量設定で実施し、0.11mMから0.21mMまでの3用量に関しまして、用量依存的な増加を確認しております。陽性ですので、代表的なウェルの写真を下に示しております。
 最後の物質7513(2,4,6-トリメチルフェノール)ですが、10mMまで実施しまして、細胞毒性はしっかりと示しておりますが、図25にありますように形質転換率の増加は認められませんでした。減少の方で*は3つほど付いておりますが、増加については認められず、こちらの物質は陰性になっております。
 以上、8物質中4物質が陽性の結果となっております。
 以上です。
○清水座長 ありがとうございました。
 ただいま、バイオアッセイ研究所の方から8物質の試験を行って、4物質は陽性であったという御報告をいただきました。どの物質でも結構ですが、何か御意見がございましたらお願いいたします。
○本間委員 これは、溶媒は何を使っているのでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター DMSOを使っております。
○本間委員 記載はありませんが。
○日本バイオアッセイ研究センター 一覧表のところに入れておりませんでした。申し訳ありません。全てDMSOです。
 すいません、最初の2物質が水で、残り6物質がDMSOでした。報告書の方にありましたので、訂正させていただきます。
○清水座長 本間先生、よろしいでしょうか
 他にはいかがでしょうか。
 特にございませんでしたら、次のボゾリサーチセンターの方からお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 ボゾリサーチセンターの到着が遅れているという報告をいただいておりますので、資料1-3と次の議題のエームスの方、こちらもボゾリサーチセンターに試験を行っていただいておりますので、順番を変えさえていただき、議題3からお願いしたいと思います。また、ボゾリサーチセンターが来られましたら、切りのよいところでこの議題1の続きをさせていただければと思います。
○清水座長 平成31年度の非遺伝毒性発がんスクリーニング試験対象物質の選定について、からということですね。
○増岡化学物質評価室長補佐 はい。
○清水座長 資料番号3-1からですね。
○増岡化学物質評価室長補佐 はい。
○清水座長 ではお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは資料の3-1、3-2、3-3を御覧いただきたいと思います。
 資料3-1、こちらは試験対象物質の選定方針です。遺伝毒性評価WGの評価により「遺伝毒性なし」と判断された物質、また、構造活性相関の結果が「-」であった物質について、形質転換試験が行われています。平成31年度は、「以下の観点から優先順位付けを行い、20物質程度を選定する。」ということで掲げていますが、1の(1)国内の製造・輸入量や(2)用途、あるいは2では「ただし、次の物質は試験対象から除外する」ということで、(1)常温で気体の物質、あるいは(2)天然物由来の物質や構造類似物質の混合物等については除外をすることにしております。また、3のところで、化審法で同じグループに属する化学物質については、まず炭素数の小さなものについて試験を行い、その結果が陰性であれば炭素数の大きいものについてはおそらく陰性であろうということで試験は省略、逆に炭素数の小さいもので陽性の結果が得られた場合には次に炭素数の小さいものと順次大きいものへ試験を行っていくこととしています。
 こういった方法で優先順位を付け、平成31年度については、20物質程度の選定を予定しております。
 次に、資料3-2を御覧ください。こちらは、今方針で説明しましたWGの評価によって「遺伝毒性なし」などと評価されたものにつきまして、製造・輸入量が1,000トン以上のもの、ならびに構造活性相関で「―」の結果が得られたものの中から、製造・輸入量が10万トン以上のものを列挙したものとなっております。
 右側から3つ目の欄、「H31候補」とある欄ですが、こちらが試験の可能性、実施可能か否かを評価したものとなっております。それぞれの記号の意味は、○が基本的に水溶性のものであって試験が可能であると考えられる物質、△は水に対して不溶もしくは難溶ですが、他の溶媒を使うことによっておそらく試験が可能であると考えられる物質となります。それ以外の▲のものは、現行の試験方法に照らしますと問題点がある物質、それから×を付けているものにつきましては、試薬が入手できないなどの理由によって試験が困難であると思われる物質です。
 また、「-」で「試験不要」と書いてあるものがございます。こちらの表の中で色付けをしておりますが、黄色の色付けがされている部分と、灰色で色付けがされている部分があります。黄色で色付けがされている部分については、既に形質転換試験が実施されており、試験実施済みのため「試験不要」ということで「-」が付けてあります。また、灰色でハッチングしているものについては、資料3-1の選定方針の3のところ、化審法で同じグループに属する化学物質は、炭素数の小さいもので陰性であるものについては、より大きな炭素数のものは省略とされていることから、そうした観点で省略されるものについては「試験不要」ということで、灰色でハッチングをし、試験不要の「-」を付けてあります。
 この結果、○(試験可能)もしくは△(おそらく可能と考えられる)であって、製造・輸入量1,000トン以上のものを資料3-2に、さらに絞り込みをかけ5,000トン以上のものを資料3-3に示しております。
 資料3-3ですが、こちらは資料3-2に掲げる物質から、試験が可能もしくはおそらく可能なものであって、製造・輸入量5,000トン以上のもの、構造活性相関がマイナスのものについては10万トン以上になりますが、これをピックアップしたところ、29物質あり、その一覧となっております。
 また、この中で緑色のハッチングをしてマークも赤い色にしているものがありますが、こちらは、化審法で同じグループに属する化学物質中、候補となりうるものの中で最も炭素数の小さい物質をピックアップしたものになります。
 このようにして限定しますと、20物質になり、事務局としてはこの20物質について、平成31年度の形質転換試験の対象物質とすることを提案するものです。
 簡単ではございますが、説明は以上です。
○清水座長 このグリーンで網掛けしたものが20物質ということですね。
○増岡化学物質評価室長補佐 はい。
○清水座長 いま、御説明がございましたが、何か御意見はございますでしょうか。
 特に御意見ございませんでしょうか。
○若林委員 資料3-3のアルカン酸の中でグリーンにラベルしたものと、していないものがあります。製造・輸入量は同等だと思いますが、どういう観点でこの白色△とグリーン色の○/△にしたのか説明をお願いします。
○増岡化学物質評価室長補佐 まず、○と△の違いにつきましては、○は水溶性で試験が可能と、△は水に不溶であったり難溶、あるいは一部、溶解度情報がないものもありますが、おそらく試験が可能であろうと考えられるという意味で付けております。また、緑でハッチングしているものとしていないものがありもます。例えばアルカン酸は7物質ほどリストしていますが、その中で緑色にハッチングしているものが2つあります。一番右側の「備考2」という欄を見ていただきますと、ここに炭素数が記載してありますが、この2つの物質は炭素数が9で、同列の中で最小ということになりますので、この2つを選定しました。
○清水座長 他にはいかがでしょうか。よろしいですか。
 特に御意見がなければ、この20物質につきまして、平成31年度の形質転換試験の対象とするということでよろしいですね。
 はい、ありがとうございました。
○増岡化学物質評価室長補佐 ボゾリサーチセンターの方が到着されましたので、前後しましたが、議題1に戻りまして、資料1-3の御説明をいただきたいと思います。
○ボゾリサーチセンター 本日は出席が遅くなりまして、大変申し訳ございませんでした。
 当社が担当いたしました形質転換試験の結果につきまして説明いたします。
 資料1-3がボゾリサーチセンターで担当しました試験結果になっています。
 この一覧表の一番上、試験番号に相当するものが弊社の試験の管理番号になっています。弊社では今回8物質を担当しまして、TG374から381の8物質の形質転換試験を行いました。
 次のページから、各物質の結果になっております。陽性を示したものに関しましては写真を添付しております。
 では、順次一覧表を中心に説明いたします。
 T-G374(マレイン酸ジメチル)の物質に関しましては、分子量が144程度だったので、10mMで試験をいたしました。細胞増殖試験の結果、次のグラフを見ていただきますとわかると思いますが、0.156mM以上で50%以上の増殖抑制作用が確認されましたので、IC50とIC90を参考にしながら本試験のドーズを決定しました。本試験のドーズは、一覧表の形質転換試験の項目にありますとおり、0.172mMから順次試験いたしました。その結果、上位3ドーズに関しましては、最終的にシャーレ上の細胞の密度がコンフルエントに達しなかったため、評価対象外としました。次の4番目のドーズから確認した結果、陰性対照群のフォーカスの出現率に対し、各用量群では統計的に有意性がなかったために陰性という判定にいたしました。
 次に、一覧表2番目のT-G375(ジブチルホスファート)という物質につきまして形質転換試験を実施しました。こちらは、弊社の確認不足で、ガイダンスのドキュメントの2,000µg/mLを最高ドーズにしたため、分子量が210以上ありますので、本来であれば5,000µg/mLからの試験にすべきだったのですが、増殖試験を2,000µg/mLから試験していました。そのために、10mMではなく約9.3mMから試験しています。ただ、トップドーズで細胞増殖抑制作用があったため、再試験は実施せず本試験の方に進みました。本試験でも9.3mMから試験をしておりまして、統計的な有意性もなかったため、この試験に関しましても陰性という判定で結論しました。
 次に、T-G376(2-イソブトキシエタノール)の物質の試験に関しましては、10mMから試験をした結果、細胞増殖抑制作用が全くなかったという結果になりましたので、本試験の方では10mMから公比2で希釈し、計4ドーズを選定して形質転換試験を実施しました。その結果、グラフを見てのとおり、細胞増殖抑制作用も形質転換率の増加もなかったため陰性と結論しました。
 次のT-G377(2-アクリロイルアミノ-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)に関しましても、10mMではなく、若干低いドーズで試験をしました。こちらは細胞増殖抑制作用がなかったため、もう一度再試験として10mMから試験をしました。その結果、抑制作用はなかったという結果になりましたので、本試験の方でも10mMをトップにして試験を実施しました。その結果、5mM以上のドーズで用量依存的な有意な増加が認められましたので、こちらの結果に関しましては陽性という判定で結論しました。
 次のT-G378(テトラエチレングリコールモノメチルエーテル)の物質についての試験ですが、こちらも同様に10mMから試験ができていなかったため、再度10mMで再試験を実施しました。その結果、細胞増殖抑制作用がなかったため、本試験の方でも10mMをトップドーズにして形質転換試験を実施しました。こちらは統計学的な有意性もなかったため、結論としましては陰性という判定にしました。
 次のT-G379(2-エチルヘキサノール)の試験に関しましては、分子量128でしたので、10mMで試験をいたしました。10mMで増殖抑制作用が確認されまして、5mMではわずかな細胞増殖促進作用が確認されましたので、これらの結果から本試験の方ではトップドーズを10mMにしまして、計7ドーズを振って試験を行いました。その結果、0.769から5.38mMのドーズにおきましては統計学的な有意な増加が確認され、用量依存性も確認されましたので、結果として陽性という判定としました。こちらも6.92から10mMにつきましては、培養中に細胞の密度がコンフルエントになっていなかったため評価対象外としております。
 T-G380(2-プロパン-1-イルペンタン酸)の試験に関しましては、分子量から考えました10mM相当で試験を実施いたしました。5及び10mMでは細胞増殖抑制作用が見られ、IC50が9.38という計算になりました。一方、0.0781から2.5mMに関しましては、増殖促進作用が確認されました。これらの結果を総合いたしまして10mMから試験を実施し、計7ドーズの用量を振って試験を行いました。フォーカスの増殖に関しましては、0.0137から0.37mMのドーズにおきまして統計学的な有意な増加が確認されました。こちらも3.33から10mMに関しましては、コンフルエントにならなかったため評価対象外としました。
 最後のT-G381(ジイソブチル=フタラート)に関しましても同様の結果なのですが、7.14mMから試験を実施しまして、50%以上の毒性が0.223mM以上で確認されました。これらの結果を総合しまして、本試験は0.232mMのドーズから試験を実施いたしました。その結果、0.0179から0.125mMにおきまして、陰性対照群に比較して統計学的に有意な増加が確認されましたので、判定としましては陽性と結論しました。
 弊社におきましては、T-G377(2-アクリロイルアミノ-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)、379(2-エチルヘキサノール)、380(2-プロパン-1-イルペンタン酸)、381(ジイソブチル=フタラート)の4物質について陽性という判定を結論いたしました。
 以上が弊社の評価になります。
○清水座長 ありがとうございました。
 ボゾリサーチセンターの方では8物質を行って、4物質が陽性ということですね。
 先ほどバイオアッセイ研究所の報告の中で、本間委員から溶媒は何を使ったかという質問がありましたが、こちらはいかがでしょうか。
○ボゾリサーチセンター 溶媒は報告中に記載されておりまして、T-G374に関しましては水を使っています。T-G375は0.5vol%のDMSOを使っています。T-G376は注射用水、水を使っています。T-G377も水、注射用水を使っています。T-G378も水、注射用水を使っています。T-G379が0.5vol%のDMSOを使っています。T-G380は同様に0.5vol%のDMSOを使っています。最後のT-G381についても0.5vol%のDMSOを使用しました。
○清水座長 ありがとうございました。
 それでは、ただ今のご報告に対して何か御質問、御意見がございましたらお願いいたします。
○本間委員 最後の2物質のグラフを見てみると、TOXICとなっていますが、私が見る限り、100%とそれほど変わらないような印象があります。これは、細胞毒性の上の試験では、これほどTOXICに現れなかったということでしょうか。
○ボゾリサーチセンター ドーズが大分違っています。例えばT-G378の物質に関しましては……、これは、あまりドーズは変わらないのですが、要するにコンフルエントにならなかったという意味でTOXICにしています。最終的に3週間培養後のシャーレの密度がコンフルエントになっていないという点で、判定としてTOXICという判定を出しています。
 1週間ぐらいは細胞増殖活性に関しましては1つ目の試験と変わらないのですが、3週間後の培養後にはこういったシャーレ上の密度では若干低いような結果になっていました。
○本間委員 他の試験では、結構細胞毒性が下がっているのにTOXICにならないということは、そちらの方はコンフルエントにはなったということでしょうか。
○ボゾリサーチセンター そうです。
○本間委員 わかりました。
○清水座長 他にはいかがでしょうか。
 特に御意見、御質問等はございませんか。
 それでは、特に御意見がなければ平成30年度に実施されました形質転換試験の結果につきましては、すべて妥当ということでよろしいでしょうか。
 はい、ありがとうございます。
 では、今回の評価の結果、陽性となった物質につきましては、中期発がん性試験の候補物質として追加ということでよろしいでしょうか。
 はい、ありがとうございます。
 では、中期発がん性試験の物質につきましては、企画検討会におきまして候補を選定の上、発がん性評価WGで決定いただくということになっておりますので、事務局は候補として追加、提案するようにお願いいたします。
 では、次に議題2に移りたいと思います。
 「平成30年度に微生物を用いる変異原性試験を実施した物質(15物質)に関する遺伝毒性の総合評価について」というタイトルですが、こちらに移ります。試験はボゾリサーチセンターに実施していただいていると聞いておりますので、ボゾリサーチセンターの担当者にも質疑に御参加いただければと思います。
 では、事務局の方からお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 では、資料2-1、2-2、2-3になります。
 資料2-1「平成30年度にエームス試験を実施した物質に関する遺伝毒性の総合評価について」をご覧下さい。1 これまでの経緯につきまして、遺伝毒性評価WGにおける評価によって、エームス試験が実施されているものの一部に不備があり、「遺伝毒性はあるが、強弱の判断不能」、または「遺伝毒性の有無の判断困難」とされた物質、あるいはエームス試験が実施されていないため、構造活性相関を行った結果「+」の判定となった物質などのうち、試薬の入手が可能な15物質につきまして、平成30年度の委託事業によりエームス試験を実施しております。
 試験の結果につきましては、資料2-2に掲げる表のとおりです。こちらにつきましては後ほど説明いたします。
 次に、2 本WGにおける検討事項です。【平成30年度に実施したエームス試験の結果】及び【遺伝毒性関する文献調査の結果】を踏まえ、ここに「22物質」とありますがこれは「15物質」の誤りですが、15物質それぞれについて遺伝毒性の総合評価、1遺伝毒性なし、2弱い遺伝毒性あり、3強い遺伝毒性あり、4遺伝毒性はあるが、強弱の判断不能、5遺伝毒性の有無の判断困難のいずれに該当するか評価を行います。
 また、3  評価結果を踏まえた対応としては、それぞれ次のようになります。1遺伝毒性なしの場合については、Bhas形質転換試験の候補物質の選定作業に回します。2弱い遺伝毒性ありという場合には、評価終了となります。3強い遺伝毒性ありの場合には、行政指導の対象物質となり、変異原性指針等の対象にすることについて検討を行うとともに、中期発がん性試験の候補物質にしていくことになります。4遺伝毒性はあるが、強弱の判断不能と、5遺伝毒性の有無の判断困難の場合については、別途検討とされています。
 それでは、資料2-2「平成30年度にエームス試験を実施した物質の総合評価」です。対象の15物質について事前にWGの各委員に評価を行っていただいており、その結果を記載しております。
 上から順番に簡単に紹介のみします。
 まず通し番号1の物質、2-[(チオシアナトメチル)スルファニリル]-1,3-ベンゾチアゾールですが、こちらは試験機関の結果としては陽性で、最大比活性値が2.97×104(Rev/mg)ということで、委員からは、試験は適当、総合評価は強い遺伝毒性ありと評価いただいています。
 2つ目の物質、トリアリルアミンですが、試験結果は陽性で、最大比活性値は4.31×102(Rev/mg)、委員からは、試験は適当で、弱い遺伝毒性ありと評価いただいています。
 3つ目の物質、2-メチル-5-ニトロベンゼンスルホン酸ですが、試験結果は陽性で最大比活性値は4.52×101(Rev/mg)、委員からは、試験は適当、弱い遺伝毒性ありと評価いただいています。
 4つ目の物質、4-クロロベンゾイルクロリドですが、試験結果は陰性で、委員からは、試験は適当、遺伝毒性なしと評価をいただいています。
 5番目の物質、ナフチオン酸ナトリウムですが、試験結果は陰性で、委員からは、試験は適当、遺伝毒性なしと評価いただいています。
 6番目の物質、2-エチル-9,10-アントラキノンですが、試験結果は陰性、委員からは、試験は適当、遺伝毒性なしと評価いただいています。
 7番目の物質、2-アミノナフタレン-1-スルホン酸ですが、試験結果は陽性、最大比活性値は5.80×101(Rev/mg)、委員からは、試験は適当、弱い遺伝毒性ありと評価いただいています。
 8番目の物質、1-クロロプロパンですが、試験はガスばく露法で実施され、試験結果は陽性、最大比活性値は12.50%、委員からは、試験は適当、弱い遺伝毒性ありと評価いただいています。
 9番目の物質、トリクロルアニリンですが、試験結果は陰性、委員からは、試験は適当、遺伝毒性なしと評価いただいています。
 10番目の物質、3-(ブロモメチル)ヘプタンですが、試験結果は陰性、委員からは、試験は適当で、遺伝毒性なしと評価いただいています。
 11番目の物質、5-クロロペンタン-1-オールですが、試験結果は陽性、最大比活性値は1.76×101(Rev/mg)、委員からは、試験は適当、弱い遺伝毒性ありと評価いただいています。
 12番目の物質、1,4-ジブロモブタン-2-オールですが、試験結果は陽性、最大比活性値は2.57×103(Rev/mg)、委員からは、試験は適当、強い遺伝毒性ありと評価いただいています。
 13番目の物質、2,5-ジクロロベンゾイル=クロリドですが、試験結果は陰性、委員からは、試験は適当、遺伝毒性なしと評価いただいています。
 14番目の物質、3-アミノ-4-メチルフェノールですが、試験結果は陽性、最大比活性値は7.60(Rev/mg)、委員からは、試験は適当、弱い遺伝毒性ありと評価いただいています。
 最後に15番目の物質、3a,4,7,7a-テトラヒドロ-1H-インデンですが、試験結果は陰性、委員からは、試験は適当、遺伝毒性なしと評価いただいています。
 その後に、前年度のものが付いていますが、こちらは参考ということで説明は割愛させていただきます。
 資料2-3は試験結果の一覧となります。
 以上でございます。
○清水座長 ありがとうございました。
 ただ今、事務局の方からまとめて御報告をいただきましたが、各担当の委員の方たちから個別にご発言はございますでしょうか。
○本間委員 これから個別にやるのでしょうか。
○清水座長 いえ、今発表していただきましたので。
○本間委員 それで終了ということですね。
○清水座長 はい。
○本間委員 では、少し。これまで総合評価というのは、主に文献的な側面から評価していたと思います。今回、エームス試験の実際の試験データから評価をするということで、こちらに関しては皆さんエームス試験を評価していますが、強い陽性を比活性が1,000以上、それ以外の陽性を陽性、それ以外を陰性ということだったと思います。その「強い陽性」に関しては問題ないのですが、通常の陽性について「弱い陽性」という判定をすることに少し抵抗があります。
 私としては、これまでの総合評価の考え方と少し違うのではないかと、簡単に言うと、強い、弱い、の間に中程度とかそういったものがあるべきではないかと思っています。比活性が数百ぐらいで、しかもいくつかの菌株で陽性反応を示すものについて「弱い」と言ってよいのか、しかもこれは構造活性相関の陽性です。つまり、これはメカニズム的にも非常に強い陽性を示すということがあるので、その扱いについて、これを評価しているときに疑問に思いました。
○清水座長 いままでの慣例から、過去の動物あるいはヒトで実際にがんが起きた物質をエームス試験にかけると、だいたい103以上であるというようなことがあり、それを1つの基準としていたわけです。構造活性相関からいうとオール・オア・ナッシング。100の陽性であっても構造活性相関ではプラスに付きますし、103でもプラスに付くということですよね。その辺の違いではないかと思います。
 他の先生方はいかがでしょうか。
○荒木委員 行政指導の観点から103以上だと通知が出るというところもあるのですよね。
○増岡化学物質評価室長補佐 先ほどの本間先生の御指摘の部分も含めて、簡単に説明します。今回のエームス試験のほかに文献を含めて判断いただくというところについては、基本的に変わるところはありません。この103が基準値としていかがかという御指摘がありましたが、この「強い遺伝毒性」と「弱い遺伝毒性」とに分けていることについては、先ほど荒木委員からも御指摘をいただきましたように、「強い遺伝毒性あり」というものは、基本的に変異原性指針の対象にし、指導の対象にしていくというところの違いがあります。
○本間委員 構造活性相関というのはそのメカニズムを考える上で非常に重要だと思っております。構造活性相関で陽性を示すのに、なぜ実際のエームス試験で陰性なのかというのは、予測が外れたといえば外れたのですが、それなりのナレッジがあるからそれを陽性としているのではないかと考えるわけです。
 例えば、今回私が1つ気になったのは6番の2-エチル-9,10-アントラキノンです。これは、もちろん構造活性相関としてはエームス試験のアラートがあるということです。反応を見るとTA100で非常に弱い反応が出ています。事業者の方では、そういう弱い反応では再現性を確認するために、2回の確認試験を行っていますが、やはり弱い反応が出ています。TA100のプラスS9です。S9だけで出るということは、やはりこれはアントラキノンなので、代謝活性化を受けて陽性を示すということだと思います。もちろん2倍以上にはならないので陽性ではないのですが、このような物質は変異原性をやっている立場の人間からすると、これが変異原性を示す構造を持っているということと、弱いながらも再現性がある陽性というか、反応性を示すということから、このような物質は、私としては何となく「弱い」としたいという気持ちがあります。
 他の物質は、もうクリアに2倍以上で、しかも複数の菌株で陽性ですからこれは間違いなく変異原性物質です。こういったものを果たして見逃してよいのかどうかということです。それが気になっています。
○清水座長 労働衛生安全法で、このエームス試験が義務付けられたというのも、本来は職業がんの予防という観点から法的に義務付けられたわけです。ですから、その線引きをどこにするかということで、代謝のこともいろいろ考えれば陽性の可能性が出てくる物質も多々あると思うのですが、どこで線引きをするかということで今までやってきていると思います。
○太田委員 参考資料2-1の判定基準というのがありますが、先ほど本間先生がおっしゃっていたのは、その中で「軽微な陽性は除く」というのがありますが、その「軽微な陽性」に入るのではないかと思います。強いか強くないかで現状2つに分けているので、「強くないもの」を一応「弱い」といっていて、マージナルなものは「軽微な陽性」という扱いでこれまできているという理解をしているのですが。
○清水座長 他には何か御意見ございますか。
○荒木委員 多分もう1つ菌株の問題があると思うのです。アントラキノンの類だと97とか2637というのがあり、おそらく2637はかなりプラスミドが入っているタイプで100と同じようなレスポンスをしやすいので、違う菌株を使えば、きれいに陽性になる可能性もあると思います。ただ、現状としてはガイドラインどおりでやっており、それで判定せざるを得ないという状況にあるのではないかと思います。確かに本間先生の御懸念は理解できます。
○清水座長 菌株としては、ボゾリサーチの方では5菌株でやっていただいているわけですね。ですから、その範囲で判断するしかないということになりますね。
 他に御意見ございますか。
 よろしいですか。
 特にほかに御意見がなければ、では、この資料2-2の判定ということで、とりあえず事務局の方で確認していただけますか。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは通し番号1番から順に結論のみ確認させていただきます。
 1番の物質については強い遺伝毒性あり、2番の物質は弱い遺伝毒性、3番も同じく弱い遺伝毒性、4番は遺伝毒性なし、5番も遺伝毒性なし、6番も遺伝毒性なし、7番は弱い遺伝毒性、8番も弱い遺伝毒性、9番は遺伝毒性なし、10番も遺伝毒性なし、11番は弱い遺伝毒性、12番が強い遺伝毒性あり、13番が遺伝毒性なし、14番が弱い遺伝毒性あり、15番が遺伝毒性なしです。
○清水座長 ありがとうございました。
○荒木委員 追加でよろしいでしょうか。
 1番の物質については発がん性のレポートが付いていたのですよね。ということは、これは強い遺伝毒性ありですが、ここの委員会ではなく、別のがん原性の方の委員会でこのレポートの評価が行われるという理解でよろしいでしょうか。
○増岡化学物質評価室長補佐 まず、こちらでエームス試験の結果、強い遺伝毒性ありとされたものについては、行政の方で指導等の対象にしていくという部分と、中期発がん性試験の対象にします。中期発がん性試験の候補にしていく中で、こちらの発がんレポートの内容なども加味しながら検討するということになろうかと思います。
○清水座長 一応遺伝毒性がないというものに関しましては、形質転換試験の候補物質に追加するということになります。また、強い遺伝毒性があるとされたものに関しましては、発がん性試験の報告があるものもありますが、行政指導の対象物質に指定するとともに、企画検討委員会発がん性WGで検討いただくと、そして中期発がん性試験物質の選定候補、発がん性試験の結果がある場合には、それはここで検討していただいて、発がん性試験をするか否かということになるかと思います。そのWGの方に提案していただき、決定していただくことになるかと思います。
 事務局の方でそのように対応をお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 はい。
 それから、遺伝毒性なしのものは、今回7物質ありまして、これは追って形質転換試験の対象候補にしていくというものですが、先ほど平成31年度の候補物質については20物質ほど選定をさせていただきましたので、その次の選定に回させていただくということになろうかと考えております。
○清水座長 平成31年度にはならないと、平成32年度以降になるということですね。
○増岡化学物質評価室長補佐 そういうことになろうかと思います。
○清水座長 わかりました。
○本間委員 先ほどのことですが、清水先生の評価された9番のトリクロルアニリンに「アニリン構造を持つため注意の必要な物質である」と記載されていますが、このような備考は非常に重要ではないかと思いますので、もし可能であれば、先ほどの2-エチル-9,10-アントラキノンのところにもこうした形で注意を入れるのはいかがでしょうか。これで何もないというのは何となく少し……。
○太田委員 今回、エームス試験がないということでやったのですが、実はこれは厚生省の時代にあったのです。そのときはエームス試験をやっています。やはり2倍、いかないのです。上がるのです。TA100でギリギリ2倍弱。ですから、一応「なし」にしているのですね。それから染色体異常試験もやっています。それで、マージナルといいますか、プラス・マイナスという結果が出ているのです。このように、全く真っ白ではなく、そういう状況ではあります。
○本間委員 ですから、こういう注意を示すと。
○太田委員 そうです。それはよいかと思います。
○清水座長 では、そういうことで記録に残してください。
 それでは次に移りたいと思います。
 先ほど議題3は終了しておりますので、議題4に移りたいと思います。議題4は「平成31年度エームス試験対象物質の選定について」ということでございます。事務局から説明をお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは、資料4-1、4-2を御覧ください。
 まず資料4-1です。こちらには方針の修正案と記載がありますが、参考資料3-1「遺伝毒性試験対象物質の絞り込みの方針」というのがありまして、こちらからの修正ということです。もともと対象物質については、WGの評価などによって遺伝毒性は「あり」と判断されるものの、その強さの程度が判断できない物質、あるいは遺伝毒性の有無が判断できない物質を中心に進めてまいりましたが、近年では主に構造活性相関の結果が「+」になったものを中心に選定をしているところ、その点を加味し、現在の状況に合うように修正したものです。
 資料4-1は、遺伝毒性評価WGの評価により、遺伝毒性「あり」と判断されるがその強さの程度が判断できない物質及び遺伝毒性が判断不可な物質、並びに、構造活性相関の結果が「+」であった物質について、エームス試験を行うということで、その際には試薬の入手性も考慮しつつ、以下の製造量等の観点も総合的に判断しながら優先順位を付けていくことを考えております。
 以上を踏まえ、資料4-2です。これまでに構造活性相関の結果が「+」であったもの、エームス試験が実施されていないもの、それから一部、これまでの評価の中において、遺伝毒性の強弱やその有無が判断できなかったことで評価が未確定になっているようなものを追加し、対象として一覧を掲げています。この一覧の中を見ますと、構造活性相関に関する記載があります。中ほどに使用したソフトの種類と、「判定」というところに黄色くハッチングされているところがあり、その後に「優先順位」とあります。これは、使用しているソフトが古いものと、平成30年度にやったものとで新しく切り替えているものがありますので、表を分けています。
 1ページ目からいきますと、使用しているソフトがDerek、ADME、Ultraとあります。参考資料3-2に、構造活性相関で使用したプログラムとそこからエームス試験対象物質を選定する場合の優先順位の考え方が示されています。そこでは、3つのプログラムを使用すること、優先順位の判断として、3つのプログラムすべてが陽性の場合には(1)第1優先順位、2つのプログラムの場合には(2)第2優先順位とすることが示されています。一覧表にも、そのような観点から優先順位を付けております。
 また、資料4-2の5枚目、通し番号66とある物質のところからは、使用しているソフトに変更があり、Derek、Ultra、Timesとなっています。参考資料3-3に、新しい優先順位についての記載があります。優先順位の判断として、1Derek及び2Ultraのプログラムで陽性の予測結果が得られた場合には、(1)第1優先順位とすること、この場合は3のTimesのソフトは使わないこと、また、1又は2のプログラムで陽性の予測結果が得られ、さらに3で陽性の予測結果が得られた場合は、(2)第2優先順位とすることが示されています。こちらは判断の確実性というようなところで差を設けています。
 資料4-2の方も、今の考え方に基づいして、優先順位のところで第1、第2と付してあります。
 それでは資料4-2をご覧ください。構造活性相関に基づく優先順位も加味し、製造量等、また、試薬の入手可否につきましても考慮の上、決定することになっています。赤字になっておいる「試薬入手可否」という欄を見ると、入手が困難なものが続いており、入手可能なものについては○を、また、入手は可能であるけれども純度がわからなかったり、在庫が少なかったり、あるいはその試薬の価格がかなり高額であるというものについては△を付けています。試薬が入手可能であることから試験が可能と思われるものが17物質あり、今回はこの17物質をそのまま平成31年度のエームス試験の候補として提案したいと考えております。
 以上でございます。
○清水座長 ありがとうございました。
 ただ今、事務局からの御説明では、平成31年度の試験にはこの入手可能な○印の付いた17物質について行いたいということでございますが、何か御質問はございますか。
○太田委員 選定はこれでよいかと思いますが、今回平成30年度で私が担当しました3つの試験ですが、選定理由は、構造活性相関が「+」で、かつ、エームス試験が未実施ということで選定されておりました。今回送られてきた資料を見ると、3物質とも古く、厚生省の時代に厚生省の委託事業で全てやっていました。そのように重複してしまう場合もありますので、エームス試験未実施というところは、古いデータも確認していただきたいと思いました。厚生省の委託事業で報告書が全部出ています。
○川名化学物質評価室長 その点、しっかり確認して対応します。申し訳ございません。
○太田委員 平成12年です。
○清水座長 平成12年にやっていますか、そうですか。では、その辺は事務局でもう一度御確認をお願いいたします。
○川名化学物質評価室長 はい。
○清水座長 それでは、特に他に御意見ございますか。
○増村委員 教えていただきたいのですが、資料4-1の構造活性相関についてですが、構造活性相関の結果が「+」であった物質というのは、具体的には参考資料の方で第1優先順位、あるいは第2優先順位になったものという意味でしょうか。
○増岡化学物質評価室長補佐 そのとおりでございます。
○清水座長 他に御意見ございますか。
 特になければ、では、ただ今確認していただいた物質について、平成31年度のエームス試験の対象とするということでお願いしたいと思います。
 それでは、次に移らせていただきます。議題5「変異原性指針対象物質(バットオレンジ7)の評価について」、事務局から説明をお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは資料5-1と5-2を御覧下さい。
 資料5-1は、今回評価をお願いいたしますバットオレンジについて、これまでの経緯を記載しております。この物質は、平成28年度のWGにおいて、文献調査で発がん性分類情報がなく、遺伝毒性情報のある物質を対象として遺伝毒性評価を行った際に、エームス試験の結果(1988年の文献)に基づき「強い遺伝毒性あり」と評価されたことから、変異原性指針の対象物質として指定されています。
 その後、事業者から、新たに実施したエームス試験の結果が陰性であったこと、また、欧州化学庁(ECHA)が公表するドシエ、これはREACHに基づいて事業者が有害性情報等を届け出るということになっているものですが、これに基づいて届けられた公開情報においても陰性の結果が示されていることから、評価の見直しを求められていたものです。
 平成28年度に評価した際の陽性の結果、また、新たに示された陰性の結果と、陽性、陰性両方の結果が示されていることから、本WGにおいて再評価をしていただきたいと考えております。
 資料5-2ですが、平成28年度のWGで評価した際の結果と、新たに提供された追加情報を記載してあります。1.のところが平成28年度のWGで評価した時点での文献情報で、NTPのデータベースの方からエームス試験を実施した結果です。こちらは4菌株について行われたものですが、強い遺伝毒性を有すると評価されています。こちらは、4菌株ですから5菌株には満たないわけですが、そのうち2菌株で強い陽性が出ていることを根拠としての判断です。
 2.は、今回新たに化成品工業会から提供された追加情報です。1つがECHAのドシエの公開資料です。エームス試験の結果、5菌株について実施をしているものですが、いずれも陰性との結果です。また、同じくエームス試験で、これは新たに試験が行われたものですが、こちらも5菌株いずれも陰性との結果です。また、エームス試験以外でもドシエの情報として、染色体異常試験、遺伝子突然変異試験について、チャイニーズハムスターの卵巣細胞を用いた試験が行われていますが、いずれも陰性との結果でして、追加の試験はいずれも陰性という結果になっています。
 このように、陽性の結果と、陰性の結果の両方がありますので、WGにおいて評価をいただきたいということでございます。
 簡単ではございますが、以上でございます。
○清水座長 ありがとうございます。
 ただ今、事務局から御説明がございましたが、平成28年度の遺伝毒性評価WGでは、これは文献調査で、この頃はこれしかなかったのでしょうか、103オーダーの強い変異原性があると、ただ1988年とかなり古く、実際には(1983)というのは試験を実施した年です。ですから1983年の試験データであると、しかもnon-GLPで行った試験であるということです。
 それに対しまして、2番の平成30年3月に化成品工業協会から提供された追加情報としては、2017年、これはドシエの資料になりますが、陰性であると、GLP適合で行った試験、これはドイツで行われています。それから有本化学工業で行った試験、これは2017年です。試験機関はシミックで、GLP適合試験であり、これも陰性であります。それ以外にはドシエで染色体異常試験、こちらもネガティブ、それからドシエの遺伝子突然変異試験でもネガティブという結果が出てきております。
 これに関しまして御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
○若林委員 1988年のものと新しいものとでは違ったデータが出ているということで、新しいデータではネガティブだということで、この2つのデータは前のデータがどうして陽性であったかということについて、ピュリティの問題などいろいろあると思いますが、どのようなディスカッションをしているのでしょうか。
○清水座長 平成28年は文献サーベイだけですね。文献の上だけでの判断ですね。
○増岡化学物質評価室長補佐 はい、そういうことになります。
○若林委員 特に古いときにどうして陽性であったのかということについて、新しいデータが出た際、レポートの中でディスカッションは何かされているのでしょうか、という質問です。
○清水座長 それはないです。
○若林委員 ただ、なかったということでしょうか。
○清水座長 これは私のスペキュレーションですが、古いこの試験データはバックグラウンドローンの発育が判定できなくて、サバイブしたものをカウントしているのではないかと、その可能性が高いと思います。沈殿が多かったか、あるいは抑制があったかということで、サバイブしたものをカウントしている可能性があります。そうでなければ、こんなに103まで上がるということはちょっと考えられません。
 いかがでしょうか。
○太田委員 この分厚い文献の2ページ目の裏にそのデータがあるのですが、TA97とTA98で上がっています。先ほど先生がおっしゃったように、沈殿域があるところにPと書いてあります。今回、国内でやった非公表の有本化学工業のGLPの適合試験でTA98はきれいに陰性になっております。TA97はやっていませんが、こちらの方のGLP対応の試験を信用してよいのではないかと思います。純度も99%以上となっております。
○清水座長 他には御意見ございますか。
○本間委員 こういうのこそQSARも一応かけてみて、何らかの構造的なエビデンスが得られるかを見て、そしてこの陰性の結果を保証するのがよろしいのではないかと思います。
○清水座長 構造活性相関を見たらどうかという御意見ですが。
○若林委員 今までの例ですと、弱いものがネガティブだったというのは結構あると思いますが、強いものでネガティブになったというのはあまり聞かないものですから、それで質問しました。
○清水座長 構造活性相関というとまた時間がかかってしまいますよね。
○本間委員 いえ、私が見ますから(笑)。
○清水座長 そうですか。
○太田委員 報告書の最後の方の日本語で。
○本間委員 溶媒って違いましたか、前のNTPと。
○太田委員 あまり詳しく書いていないのではないですか。300ケミカルをどんとやっているので。
○荒木委員 EUの試験の溶媒はDMSOですよね。それから日本の試験もDMSO。
○太田委員 日本の試験での溶媒も書いてありますね、一緒ですね。このまとめの表に全部そうなっていますね。プレンキベーション法も一緒ですので。
○若林委員 このバットオレンジ7というのは、実際に我々が接するようなものに使われているものなのですか、それともほとんど使用されていないものなのでしょうか。
○川名化学物質評価室長 業界から情報提供があったということは、何らかの製品には使われているということであろうとは思います。
○若林委員 そうすると、白黒を明確にした方がよいということですね。
○太田委員 最近行われた2つの試験がネガティブですので、そちらでよいのではないでしょうか。
○荒木委員 これはGLPですよね。
○川名化学物質評価室長 申し訳ございません、上の方がGLPか否かというところまでは十分に確認ができていないと思っています。ただ、この年代から見ると、その当時GLPというものがあったのかというところがございます。ただ、やられているところがNTPということでもありますので、あまり問題はないということかと思っています。
 とりあえずGLP適合という欄は、あまり重点に置かないでいただけるとよろしいかと思います。
○清水座長 構造活性的にはいかがでしょうか。
○本間委員 ありそうな気もしますが、ただ、エームス試験以外にも染色体異常試験、エームス試験の上位である哺乳類の遺伝子突然変異試験でもGLPで陰性ですので、この結果を見る限り、大きな問題はないのではないかと思います。
○清水座長 そういう御意見をいただきましたが、一応、陰性であるという判断でよろしいですか。
 ではこの物質に関しましては、平成28年度では強い変異原物質だったという報告がありますが、最近の試験ではネガティブな報告があるし、染色体異常試験あるいは遺伝子突然変異試験でもネガティブであるという報告から、この物質に関しては陰性であるという判断でよろしいですね。
 はい、そういう了解をいただきましたので、今後、この物質に関してそのように取り扱いをお願いしたいと思います。
○川名化学物質評価室長 先ほど清水先生がおっしゃられた沈殿の扱いですとか、サバイバルをカウントしている可能性が高いとか、そういったことも理由として挙げてよろしいのでしょうか。
○清水座長 私はそう思うのですが。
○荒木委員 でも、実際にはわからないので
○川名化学物質評価室長 わかりませんか、そこまでは。
○荒木委員 ええ。
○清水座長 わからない、推測です。
○川名化学物質評価室長 そうしますと、先ほど清水先生が整理されたような形で、最近行われているエームス試験で陰性であること、そしてさらに上位の哺乳類の細胞を使ったもので陰性であること、これらのことを総合的に判断してこの物質については陰性と判断すると、このような理由の整理でよろしいでしょうか。
○清水座長 はい。
○増村委員 もう1点、古い方のデータは純度がわからないのですね。ですから、純度不明のものでやられている試験であるということも1つ理由になるのかと思っています。
○川名化学物質評価室長 なるほど。
○清水座長 それも付け加えてください。
○川名化学物質評価室長 はい。今後、手続きを進めていくにあたり、これはこれまで変異原性の指針で対象に含めていたものでございますので、外すとなるとやはりきちんと理由を整理しなければならないということでございます。事務局の方でも整理させていただいた上で、あらためてまた御確認をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○清水座長 では、以上でこの議題5については終えたいと思います。
 では、次の議題6に移りたいと思います。
 6はその他ということでございますが、事務局から何かございますか。
○増岡化学物質評価室長補佐 特にございません。
○清水座長 特にないということですので、これをもちまして本日のWGを終了したいと思います。
 ご協力ありがとうございました。