第8回 解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会(議事録)

日時

令和元年9月30日(月)14:00~16:00

場所

中央労働委員会 612会議室(6階)
(東京都港区芝公園1-5-32)

出席者(五十音順)

(かき)(うち)(しゅう)(すけ)     東京大学大学院法学政治学研究科教授
 
鹿()()()()()  慶應義塾大学大学院法務研究科教授
 
(かん)()()()()  立教大学法学部准教授

(なか)(くぼ)(ひろ)()    一橋大学大学院法学研究科教授

(やま)(かわ)(りゅう)(いち)      東京大学大学院法学政治学研究科教授

議題

解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する議論の整理

議事

  

○山川座長 それでは、ほぼ定刻ですので、ただいまから第8回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、本日もお忙しいところをお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。
本日の出欠状況ですが、小西康之委員が御欠席です。
また、法務省から、オブザーバーとして民事局の笹井朋昭参事官にも御参加いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
それから、本日の議題に入ります前に、事務局に異動がありましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。
○坂本労働関係法課課長補佐 本年7月9日付の人事異動で事務局に異動がございましたので、紹介させていただきます。
大臣官房審議官(労働条件政策、賃金担当)の吉永でございます。
○吉永審議官 よろしくお願い申し上げます。
○坂本労働関係法課課長補佐 続きまして、労働基準局総務課長の久知良でございます。
○久知良総務課長 よろしくお願いいたします。
○坂本労働関係法課課長補佐 以上でございます。
○山川座長 よろしくお願いいたします。
次に、事務局から、お配りしました資料の確認をお願いいたします。
○坂本労働関係法課課長補佐 本日は、資料4種類と参考資料1種類を配付させていただいております。
まず、資料1ですけれども、A3の紙でありまして、横置きのものでございます。「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関するこれまでの検討会における主な議論の整理」、見え消しで恐縮ですけれども、9月30日版というものでございます。
それから、資料2が横置きのA4の紙でありまして、「権利の法的性質のイメージ」というものでございます。
それから、資料3が、同じく横置きのA4のものでありまして、労働契約解消金の定義及び趣旨等について」。
それから、資料4が、こちらもA4横置きで、「解雇を不法行為と構成する損害賠償請求に係る裁判例」。
それから、参考資料も同じ形式のものでございますけれども、「労働契約解消金の性質について」でございます。
その他、座席表をお配りしておりますので、不足があればお申しつけいただければと思います。
○山川座長 ありがとうございました。
それでは、本日の議題に入ります。議題は「解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する議論の整理」です。
本日の進め方ですが、事務局から提出資料を説明していただきまして、その後、資料を踏まえて議論するという流れとさせていただきたいと考えております。
カメラ撮りも終了されているかと思いますが、される場合はここまでとさせていただきます。
では、事務局から資料の説明をお願いいたします。
○坂本労働関係法課課長補佐 それでは、資料につきまして説明させていただきます。
まず、A3横置きの資料1に基づきまして、適宜、他の資料も参照しながら説明させていただければと思います。
横置きの資料1につきましては、前回、6月の検討会にお出ししたものから、見え消しという形で、修正箇所が分かるような形で修正しております。後ほど、修正箇所につきまして触れさせていただきます。
それから、前回と同様に論点を四角囲みの中に入れておりまして、今回は5つの論点を設定させていただいております。
まず、論点①、1ページ目です。こちらにつきましては、形成権とする場合に加えて、形成判決とする場合の権利変動の内容及び時期、両者のメリット・留意点について、資料2のとおり解してよいかという論点を設定しております。
恐縮ですが、資料2をごらんいただければと思います。
資料2の1枚目につきましては、前回、6月の検討会にお出ししたものを若干修正しております。2枚目で、前回の検討会で御指摘いただきました形成判決という構成について記載しております。
1枚目から説明させていただきますと、形成権とする場合ということで、形成権構成という形で名前をつけております。
上の青い線が労働者の地位を示すものでありまして、無効な解雇が行われたときに金銭救済請求権、これを形成権と解しておりますけれども、形成権が発生する。
右に行きまして、その形成権の行使というものが、これまでの議論を踏まえますと、訴えの提起または労働審判の申立てということで記載しております。
形成権ですので、意思表示がなされたときに権利変動が生じるということで、その下に2つの権利変動の内容を書いております。
1つ目が権利変動①で、解消金債権、具体的な債権が発生するという権利変動でございます。括弧書きで記載しておりますけれども、この解消金債権の具体的な金額につきましては、当然ながら観念的に確定しているわけですけれども、労使当事者にとって明らかになるのは、判決の確定を踏まえてということで、判決確定等により金額が判明ということで記載しております。
それから、権利変動②ですけれども、そういった形で、判決で額が判明した解消金というものを支払ったという条件がついた、労働契約の終了という効果の発生というものでございます。
その後、時系列で見ますと、判決が確定しまして解消金の支払が使用者からなされる。そうしますと、権利変動の②につきましては、条件が成就しますので、それによって労働契約が終了するという構成でございます。
それから、下のほうに赤い矢印を書いておりますが、これは前回御指摘がありました、バックペイについても、この資料上、記載してほしいというものについて記載したものでございます。実線の部分と点線の部分がございますが、四角の中について説明させていただきますと、これまでの議論を踏まえますと、1回の訴訟手続によって請求が認められるバックペイの範囲につきましては、現行の運用を変更するための特段の規定を設ける必要はないのではないかという御議論がされております。
そうしますと、現行の運用ですと、判決の確定時までのバックペイが認められますので、裁判所のほうでそのように判断された場合には、下の図で言いますと、実線部分までのバックペイというものが、1回の判決で認められる範囲ということになっております。
その上で、後ほど少し触れますけれども、例えば参考資料のパターン3ないしパターン4という形で、労働契約の終了に、解消金だけでなくバックペイも必要だという形で解した場合には、まさにこの実線の部分のバックペイと解消金を両方払ったときに労働契約が終了するという仕組みでございます。
括弧で記載しておりますのは、実体法から見ますと、バックペイ自体は一般的に労働契約の終了までということで、解消金の支払がなされるまでということで、この点線部分も含めてバックペイが発生していると思われますけれども、判決が確定してから解消金の支払がなされるまでの間のバックペイにつきましては、別途の訴訟ないし請求等をしていただく必要があるということで考えております。
それから、1枚おめくりいただきまして、2ページ目が(2)形成判決とする場合のイメージでございます。
バックペイにつきましては、先ほどの(1)と同様でありまして、まず、無効な解雇等がなされたタイミングで形成原因というものが発生していきます。その後、労働者から訴えの提起がありまして、求める判決としては、2つの内容の権利変動を求めることが考えられるのではないかということで記載しております。1つ目が、解消金債権の発生を求めるということでございます。2つ目が、解消金の支払条件付きの労働契約の終了というものを求めるものではないかと考えております。
判決が確定しますと、形成判決ですので、それによる権利変動が生じることになりまして、こちらも先ほどの(1)と同様に、債権の発生と解消金の支払条件付きの労働契約の終了というものが2つあるのではないかと考えております。
解消金が支払われますと条件が成就しますので、労働契約が終了するという流れでございます。
次に、3ページ目をごらんください。3ページ目も前回の御指摘を踏まえたものですけれども、形成権構成と形成判決構成、両者のメリットないし留意点について、まとめた資料になっております。
まず、(1)の形成権構成につきまして、メリットとしましては、労働者の意思表示により債権が発生する。訴えの提起のタイミングで発生しますので、仮に判決が確定する前のタイミングであっても、解消金としての和解というものもできるのではないかというところがメリットでございます。
それから、留意点の部分につきましては、労働者の意思表示により債権は発生しておりますけれども、その額につきましては、判決が確定することによって判明するといった特殊性を有する形成権でありますので、判決確定前の状態について、例えば遅延損害金の起算日とか使用者の弁済ができるのかといった観点で、検討すべき論点が多岐にわたるというところが留意点となっております。
それから、(2)の形成判決構成ですけれども、メリットのところは2つ記載しておりまして、判決で債権が発生したり、労働契約が条件付で終了するということですので、権利行使の方法を訴えの提起等に限ることと親和的である。また、債権自体は判決確定によって発生しまして、同時に支払日が到来しますので、権利変動という意味では非常に明確なのではないかというメリットが1つ目でございます。
それから、2つ目については、解消金債権の発生と支払日が同時に到来しますので、遅延損害金の起算日等の論点については、結論を導き出しやすいのではないかと考えております。
留意点につきましては、判決確定まで解消金債権が発生しませんので、その間については「解消金」としての和解とか労働審判の調停というのは難しいのではないか。ただし、括弧で記載しておりますけれども、この場合でもなお、現行と同様ですけれども、解決金という形で、通常の合意解約という形で和解することは可能でありますので、突き詰めて言いますと、金銭の性質が解消金であるのか解決金であるのかというところで、何か差が出てくるようであれば、ここは大きな留意点になる可能性がありますが、もしそうでないのであれば、債権の発生のタイミングという問題になるのかなと思っております。
留意点の2つ目、3つ目でございますが、2つ目につきましては、形成判決構成というものが労働審判においてもできるのかどうかというところは、さらに検討する必要があるということでございます。仮に労働審判での行使が難しいということになりますと、実質的には裁判上の行使のみということになりますので、労働者の紛争解決手続の選択肢が限定されてしまうのではないかという懸念がございます。
それから、3つ目は、後ほど出てきますけれども、将来的に裁判外での権利行使も認めていくとする場合は、形成判決構成のままですと判決を求めないといけない形になりますので、抜本的な見直しが必要になってくるのではないかというところでございます。
それから、次の4ページ、5ページでございます。こちらも前回の検討会で御指摘いただきました、今回、1枚目、2枚目で出しています形成権構成及び形成判決構成が、既存の形成権ないし形成判決と、どのような点が違うのかというものをまとめた資料になっております。結論から申し上げますと、既存の権利とはいずれも異なる点があるのではないかと考えております。
4ページ目は、形成権の例としまして、賃料増減額請求権との比較でございます。賃料増減額請求権につきましては、賃料が不相当となる事情があったときに形成権が発生していきます。
その隣で、権利行使ということで意思表示するわけですけれども、まず、1つ目の違う点でありまして、賃料増減額請求権自体は裁判外でも権利行使が可能ということで、先ほどの解消金の場合は訴えの提起等に限られていますけれども、それとの違いが1つあるということでございます。
その下に権利変動というところがございまして、これは賃料が相当額に変更されるという変動が生じます。※のところに書いておりますけれども、支払日につきましては、先ほどの形成権構成ですと、判決の確定によって支払日が到来するという考え方でありましたけれども、こちらにつきましては、支払日自体は賃貸借契約に定める各賃料支払日ごとに順次到来していきますので、支払日の考え方も異なるのではないかという点があります。
それから、資料上、うまく表現できておりませんけれども、労働契約解消金の場合は、それを支払うことによって労働契約が終了するという大きな効果がありますので、その点につきましても違いがあるのではないかと思っております。
続いて、5ページでございます。5ページは、形成判決の例である詐害行為取消権との比較でございます。こちらの設例としましては、お金を借りている債務者が受益者に対して金銭を贈与したという形のものであります。
時間経過的に見ますと、詐害行為である贈与が行われたときに形成原因というものが発生していく。これは、請求については裁判上の請求で行うということですので、訴えの提起によって請求していく。
求める判決のところは、まず詐害行為である贈与の取消しを求める形成判決と、下のほうは、法律上、必ず強制されているわけではありませんが、一般的には、受益者から金銭の支払を求める給付の判決というものをセットで提起することが多いのではないかと考えております。
右に行って判決が確定しますと、まず形成判決の効果としては、詐害行為である贈与行為が取り消される。その結果、いわば不随的な効果としまして、下のほうですけれども、贈与行為が取り消されたことによって、債務者から受益者へ贈与した金銭を受益者が支払うという金銭債権が発生していくという形でございます。先ほどの形成判決構成の場合は、判決によって直接的に債権を発生していくという構成でありましたけれども、詐害行為取消権の場合は、あくまで形成判決の効果は詐害行為の取消しというところにとどまって、その付随的な効果として債権が発生していくという違いがあるのではないかと考えております。
A3の資料1にお戻りいただければと思います。先ほど、1ページの真ん中の論点①について御説明したところです。
論点②は、同じページの下に記載しております。これは、先ほどの形成権構成等のメリット、留意点の資料にも出ておりましたけれども、労働契約解消金の支払の効果である労働契約の終了につきましては、これまでの議論を踏まえますと、判決等でその額が確定した以後に効果が発生すると考えられるということで、御議論いただいております。そうした場合には、解消金の支払日(弁済期)については、判決の確定時に到来して、当該判決確定日等の翌日から遅延損害金が発生するという形で解してよいかという論点でございます。
ただ、その場合につきましては、形成権構成をとった場合には、意思表示のタイミングで債権が発生しておりますので、その履行遅滞が判決の確定後に到来するという、やや特殊なところについて、どのように説明していくかというところを論点にしております。
続いて、1枚おめくりいただきまして、2ページでございます。少し見づらいかもしれませんが、一番右側の列の上から4行目のところが、6月の資料から修正している箇所になります。この資料中で、内容を伴う修正をしているのは、この箇所のみということです。
前回の検討会のときに御指摘いただきまして、労働契約解消金に係る権利行使については、少なくとも制度創設時は、訴えの提起及び労働審判の申立てに限ることが考えられるという記載をしておりましたが、将来的に裁判外での権利行使をどのように考えるかという御指摘がありましたので、ここを新たに追記しておりまして、裁判外での権利行使の可否については、仮に制度をつくるとすれば、制度創設後の状況等を踏まえ、引き続き検討することが適当ということで追記しております。
続いて、論点の3つ目でございますが、こちらは4ページをごらんください。中段に論点③ということで、これも従前から深く御議論いただいておりますけれども、労働契約解消金の定義や趣旨等についての論点でございます。
こちらは、別の資料を御用意しておりますので、資料3という横置きの資料をごらんいただきながら聞いていただければと思います。資料3につきましては、解消金の定義、ないし、その趣旨等について、少し深掘りして論点を記載した資料になります。
まず一番上で、解消金の定義として考えられる案ということで、2案記載しております。
A案につきましては、これまでの検討会で御議論いただいた労働者の地位解消の対価。文章にするとすれば、無効な解雇として確認された労働者としての地位を、労働者の選択によって解消することの対価という考え方でございます。
それから、B案につきましては、前回の検討会で御指摘いただきました案でありまして、労働者の地位をめぐる紛争解決の対価ということで、無効な解雇により生じた労働者の地位をめぐる紛争について、契約の終了によって解消させる対価と、この2つを記載しております。
その下の三角の下に、解消金の考慮要素ということで、これも前回まで御議論いただいた内容ですが、客観的な考慮要素としては、勤続年数、給与額、その他の調整を行うものとして、企業規模や年齢等というものを記載しております。
それから、一定の評価が必要な考慮要素ということで、これは解雇の不当性と労働者の帰責性という2つを例として記載しております。
以下は、それぞれ定義をA案とした場合、B案とした場合に、各論点についてどういう考え方ができるのかというものを記載しております。
順に行きますと、真ん中の部分の解消金とバックペイとの関係でありますけれども、A案をとった場合につきましては、これも前回御意見が出ていたかと思いますけれども、労働者の地位解消の対価にバックペイが素直に入ってくるかというと、ここはやや微妙なところがあるかと思いますので、仮に解消金の中にバックペイを含めていくとした場合には、A案の場合は定義の見直しが必要ではないかというのが1つ目のところです。
一方、B案につきましては、それを少し解決するような形ですけれども、バックペイ自体は解雇紛争に起因して生じているものになりますので、紛争解決の対価としては、解消金の中に含むこともできるのではないかということで記載しております。
それから、2つ目の論点につきましては、解消金の定義と考慮要素との関係でございます。
まず、A案、労働者の地位解消の対価と言うことで、これは地位の対価を算出する必要があるのではないか。その際に、考え方ですけれども、過去分と将来分ということに分けることができるのではないか。これも前回お示しさせていただいております。過去分につきましては、これまでの就労実績の評価に対する対価。将来分につきましては、将来存続していくはずであった契約の対価という考え方ができるのではないか。
論点の1つ目ですけれども、各考慮要素と過去分、将来分との関係をどのように考えるかというところでございます。
勤続年数、給与額につきましては、過去の実績の評価をあらわすときも、将来の期待できる契約の対価を考えるときにも、両方共通しているのではないかというものでございます。
企業規模につきましては、これも個別事案によって違いはありますけれども、一般論で言えば、雇用継続の期待ということで、将来分との関係が説明できるのではないか。
年齢についても同様に、これも定年までの残存雇用期間、無期雇用の場合ですけれども、そういった考え方をするのか、再就職の困難度が年齢とともに上昇していくという捉え方をするのかによっても異なりますけれども、いずれにしても、将来分との関係というものが説明できるのではないかということで記載しております。
その下の2つのポツにつきましては、解雇の不当性と労働者の帰責性でございますけれども、まず、解雇の不当性につきましては、労働者の地位の対価自体は、解雇が不当であるか、不当でないかといったことで基本的には影響しないと考えられますので、別途、損害賠償請求が認められる場合を除けば、基本的には考慮されない。既に解雇無効という判断の中で、解雇の不当性は考慮されているものということで考えられるのではないかという記載をしております。
それから、労働者の帰責性につきましては、これも一般論として言えば、地位継続の確実性ということで、将来分に影響し得るのではないかという記載をしております。
右側のB案につきましては、労働者の地位の対価自体はAと同様にした上で、その後ですけれども、紛争解決の対価という定義を置いていますので、当該紛争を発生させるに至った労使双方の寄与度という考え方をすれば、解雇の不当性及び労働者の帰責性の双方を考慮するということも考えられるのではないかという記載をしております。
続いて、2ページ目をごらんください。残り3つ、資料3の関係では記載しております。ちょっと長くなって恐縮ですが、説明させていただきます。
一番上、損害賠償請求との関係でございます。こちらも前提としましては、解消金の請求権と損害賠償請求権というのは別の権利だという前提に立った上で、両方一緒に請求したときにどのような対応関係になるのかというところを記載しております。
最初の2つはちょっと基本的なことですけれども、損害賠償請求における「損害」には、財産的なものと精神的損害(慰謝料)が含まれておりまして、財産的損害につきましては、積極的損害だけでなく、逸失利益ということで消極的な損害も含まれていると解されております。
解消金との関係で見ますと、損害賠償請求の「損害」のうち財産的損害につきましては、将来得られるであったであろう逸失利益も含めまして、解消金でほぼカバーされているのではないか。すなわち、別途、損害というものが観念はされないのではないかというところでございます。
それから、精神的損害(慰謝料)についても、後ほど説明しますけれども、解雇を不法行為とする裁判例においては、解雇に伴う精神的損害というのは、財産的損害が賠償されることによって慰謝されるといった考え方もされておりますので、一般的には解消金のほうでカバーされていると解されるのではないかと記載しております。ただし、財産的損害の賠償では慰謝するに足りない特段の事情(例えば人格権侵害を伴う解雇)がある場合につきましては、別途の損害賠償請求が認められる余地もあるのではないかという記載をしております。
論点の部分につきましては、2枚目のところはA案もB案も同様の考え方ということで記載しておりますが、この損害賠償請求との関係につきましては、例えばB案とした場合には、紛争解決の対価ということですので、既に解消金の中に損害賠償請求で勘案されるようなことも全て含まれているということで、別途の損害賠償請求を行うことは認められないという整理をすることが可能かどうかという記載をしております。
先ほどちょっと触れました裁判例の関係で、これも前回御指摘いただいていますので、資料4をごらんいただければと思います。こちらはこの検討会の前身とも言えるシステム検討会におきまして、一度事務局のほうから、こういった形で解雇を不法行為と構成する損害賠償請求に係る裁判例をお示しさせていただいておりましたが、そちらについてアップデ-トしたものということになっております。当時の裁判例から削除したり、新たに追加しているものが若干ありますけれども、基本的な考え方としては、無期雇用の場合の解雇の事案に限定するような形で抽出しておりまして、前回、システム検討会でお示しした資料につきましては、裁判例が平成24年までのものとなっておりましたので、それ以降のものも記載しております。
ただ、なかなか網羅的に記載ができておりませんので、基本的には東京地裁、大阪地裁ということで、大規模の裁判所の事案を中心に記載しているというものになります。ここに記載されているものにつきましては、不法行為ということで認められた事案を中心に載せておりますけれども、実際の事案を調べてみますと、不法行為が認められないもののほうが、数としては圧倒的に多いということを念のためつけ加えさせていただきます。
時間の関係上、全部説明できませんので、ポイントとなるところだけ説明させていただければと思います。
まず、5ページ目に④という裁判例がございます。この裁判例は、慰謝料請求を認めた例ということで記載しております。中央タクシー事件、長崎地裁の平成12年の裁判例でございます。
ポイントだけ説明しますと、まず不法行為の内容等という左から4列目の下のほうですけれども、本件懲戒処分は、労働組合法7条1号(不利益取扱い)、3号(支配介入)の不当労働行為に当たり、違法な行為として不法行為を構成するということで、不法行為の内容等というところで、解雇が労組法に違反しているということも触れているような事案になっております。
一番右の慰謝料の請求のところで、原告としては120万円を請求して、裁判所としても60万円を認めています。理由としては、本件労使紛争の経緯と諸般の事情を斟酌ということで、やや特殊な事情がある解雇について慰謝料を認めているといった例になっております。
それから、もう一つ慰謝料を認めた例としましては、16ページの⑮になります。解雇無効確認等請求事件、これは東京地裁の平成28年の裁判例でございます。事案としましては、塾講師の方が退職後に未払い賃金を請求したところ、懲戒解雇されてしまったというものでございます。
不法行為の内容と慰謝料のところだけ説明しますと、不法行為の内容という欄の上から9行目、2つ目の鍵括弧の始まりでありますけれども、「本件解雇は、著しく相当性を欠く態様であり、単なる賃金や退職金の不払いにとどまらず、原告の名誉や社会的信頼、再就職にも多大な悪影響を与え、その経済的生活も危うくするものであったから、不法行為法上の違法性も備え、また、被告は、無効な本件解雇を強行したことに少なくとも重大な過失があるというべきである」ということで、悪質性を認定しているという事案になります。
慰謝料請求の一番右側のところで、原告としては200万円請求して、裁判所では120万円の慰謝料を認めているわけですけれども、理由を見ますと「原告は、精神的にも相当な苦痛を受けているものと推認され、本判決の理由において本件解雇が無効であるとの判断が示されることがその名誉回復を図る端緒となり、その精神的苦痛を多少なりとも慰謝するであろうこと、未払い賃金、退職金及び経済的損害の賠償が認容されることを考慮しても、なお、精神的苦痛を慰謝するための慰謝料として120万円の支払を要する」ということで、経済的損害の賠償だけでは足りないというものについて、このように慰謝料を認めている裁判例があるということでございます。
済みません、大変長くなって申しわけありませんが、資料3の2ページにお戻りください。先ほど資料3の一番上の損害賠償請求との関係まで御説明しております。
次に、真ん中の退職手当との関係、これも前回の検討会のときに御意見いただいた内容でございます。退職手当の性格につきましては、一般的に「賃金の後払い」であるとともに功労報償的性格を有するということで解されております。ただ、具体的に退職手当の計算の方法ですとか位置づけというのは企業ごとに異なりますので、性質を一意に定めるのは少し難しいのではないかと考えております。
論点でございますけれども、解消金との関係で見ますと、解消金は「賃金の後払い」というものとは別物ではないかと思われますけれども、仮に労働者の地位の対価のうち過去分といったものを考えるのであれば、その過去分と退職手当の功労報償的性格部分の関係をどのように考えるかというのを論点として記載しております。
最後、労働契約の終了と権利行使の帰趨について、これも従前から御議論いただいておりますけれども、解消金を請求した後に辞職や合意解約を行った場合というのを、地の文でまず記載しております。こうしたものにつきましては、再就職等をそれによって阻害していくのは、制度趣旨としてはあまり望ましいものではありませんので、あくまで解消金を請求した後に辞職した場合というのは、労働者の意思で解消金の効果としての契約終了というものを前倒ししているのだということと同視するのであれば、権利行使の帰趨には影響しないということで、請求が認められると解してはどうかというのがこれまでの議論でございます。
論点を2つ記載しておりまして、その場合に、辞職しなかった場合と解消金の額を同額にするかどうか。仮に辞職した場合と辞職しなかった場合とで額を変えるということであれば、それについては定義や考慮要素との関係で、どのように説明していくかということを記載しております。
最後の論点につきましては、解消金の請求後に辞職や合意解約以外の事由、例えば死亡とか、使用者のほうで別の理由で二次的解雇をしている場合に、どのように考えるかという論点でございます。こちらにつきましては、例えば死亡する時点までは労働者としての契約は続いていますので、それまでの評価ということで過去分のみを認めていくという考え方も可能でありますし、一方では、解消金の支払がなされなかったとしても契約は終了していたことになりますので、こういった取り扱いをどのように考えるかというのを論点として記載しております。
次に、論点④ですけれども、これは参考資料、一番下についている1枚紙をごらんいただければと思います。参考資料につきましては、解消金の性質をパターン1からパターン4まで、これも従前からお示しさせていただいている資料です。今回、赤字で書いてある部分を追記しておりまして、例えばパターン4で見ていただきますと、解消金とバックペイ、両方払ったときに契約が終了するパターンでありますけれども、その下の※印で、労働契約終了に必要となるバックペイというのは「解消金請求と併合提起をし」という部分を追記しております。
趣旨としましては、冒頭に説明しました形成判決構成を少し念頭に置いたものでありまして、形成判決構成ですと、判決の中で具体的にこういう金額を払ったときに労働契約が終了するということを書いていく必要があるわけでありますけれども、仮にバックペイを併合提起していない場合も、契約終了に必要な金銭として含めていくということをした場合には、実際、いつの時点ものでバックペイの金額がいくらなのかを含めて判決文の中に書くというのも、技術的にもやや難しいところがあるのではないか。
ということで、むしろ併合提起を促していくということと一回的に解決していくという観点からは、労働契約の終了に必要な範囲としてバックペイを入れるのであれば、それは併合提起して判決で支払が命じられた分ということに限ってみてはどうかということで記載しております。
最後ですが、A3資料の7ページでございます。論点⑤ということで、ここは労働者の帰責性の関係でありますけれども、仮に労働者の帰責性というものを解消金の額の算定の際に勘案することとしたという前提でございますが、その場合にどういう範囲の帰責性であればいいのかというところにつきまして、使用者が当該解雇に係る解雇事由として主張する労働者側の事情ということで、多少限定を入れてみてはどうかという論点でございます。
何も限定がない状態ですと、およそ労働者の帰責性として勘案されるものというのは、すべからくたくさん主張される可能性があるわけでありますけれども、解消金というのは、当該無効な解雇に起因して争っているものでありますので、労働者の帰責性についてもその範囲に限定してはどうかというものでございます。
資料の説明は以上でございます。
○山川座長 ありがとうございました。
それでは、議論に入りたいと思います。論点が多岐にわたっておりますけれども、御紹介いただいた資料1に記載された5つの論点について、それぞれ順に御議論いただきたいと思います。
まず、資料1の1枚目にあります論点①に関して、形成権構成と形成判決構成について、資料2のように理解してよろしいかどうかという点について、まず御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。
どうぞ、垣内委員。
○垣内委員 どうもありがとうございます。
前回以降、さらに形成判決構成についても整理していただいて、資料をつけていただいているということかと思います。形成権構成の整理については、基本的に従前と同様ですので、こういうことでよろしいのかなと考えておりまして、形成判決構成につきましても、きょうお出しいただいたようなものがもし形成判決構成をとるとすれば、考えられるだろう有力な方向性なのかなと思います。
論理的には、ほかの選択肢もあり得るところかなと思われまして、例えば形成判決構成の資料2の2ページ目ですけれども、判決確定によって、形成力の内容について、どう考えるかという点については、本日の資料では権利変動の内容を2つ並べていただいていて、解消金債権という金銭請求権が発生することに加えて、解消金の支払条件付き労働契約の終了という効果が発生することになっていて、こういう考え方が1つあり得る考え方かと思います。
他方、別の考え方としましては、専ら解消金債権のみが判決によって発生するとした上で、あとは形成権構成の場合と同じように、それが支払われたときに、実体法上の効果として労働契約が終了するという形で、形成判決の形成力の内容と労働契約の終了とを区別するというか、切り離すという構成も理屈としてはあり得るのかなと思いますけれども、私自身は、きょうお出しいただいているような方向のほうが、形成判決構成をとるのであればベターかなと考えております。
その理由ですけれども、もし形成判決構成をとった上で、解消金債権、金銭請求権の発生だけを形成判決で宣言することになりますと、結局、とりわけバックペイとの関係も考えたときに、幾ら払ったときに具体的に労働契約が終了するのかということが、判決主文の形では明らかにならないということもありまして、せっかく形成判決という形で厳格にやるということであれば、判決主文で、幾ら払ったときに労働契約が終了するというところまで明らかになっていたほうが、判決を要求することのメリットを十分に生かす道なのかなと思われますので、方向性として、第1次的な案としては、こちらの2つともに判決で宣言するというのは、確かに有力な考え方になるのかなという感じがしております。
それから、形成権構成をとるのか、形成判決構成をとるのかという両者のメリットあるいは留意点について、この資料の3ページですけれども、これについてもおおむねここで整理していただいたとおりかなと思います。形成判決構成、今回、新たにこういう形で検討の対象になっていて、デメリット、留意点、双方挙がっておりますけれども、メリットについては、このようなことかなと思いますし、留意点についても、ここで挙がったようなものが問題となり得るだろうと思います。
ちなみに、留意点の2つ目のところで、労働審判でどうかという問題ですけれども、これは確かに形成判決という構成そのものは、訴訟が必要ということになるわけですので、形成判決でしか解消金あるいは金銭救済請求ができないという仕組みをとりますと、これは判決でなければだめで、労働審判ではだめであるという考え方もあり得るところかなと思います。
ただ、既存の形成判決が問題となる各種の事例の中には、典型的なものとして、例えば離婚の訴えがありますけれども、これは離婚の訴えそのものは形成訴訟ですが、そのほかにさまざまな方法・手段での離婚の成立というものは認められているところですので、この金銭救済制度についても、訴訟以外に、例えば労働審判による行使というものも認められるのだという政策判断をするのであれば、そのような形で間口を広げることは十分あり得るのかなと思います。
ただ、いずれにしても、裁判手続を経て、判決あるいは審判という形式をもって、法律効果を発生させるという出発点をとったのだとしますと、留意点の最後にありますように、当事者間の合意だけで自由に使える制度にするというところに行けるかというと、そのハードルは若干上がるところはある。そのような方向性をとる場合には、形成判決あるいは労働審判でもできるというところからは、距離が遠いことになるのかなと感じているところです。
さしあたりは以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
主として3点、御指摘いただいたかと思います。
第1点目の御指摘は、今回の資料には直接は出ていないのですが、いわば形成判決の主文に、金銭の給付と契約の終了項も主文に書くということに関連しているという理解でよろしいでしょうか。
○垣内委員 形成判決構成をとったときに、どこまで主文に書くのかという点については、幾つか考え方があり得るところだろうと思いますが、きょう、お出しいただいている資料というのは、金銭請求の部分と契約終了の部分をいずれも主文に掲げることになるのだろうと理解いたしまして、そのほうが恐らく適切なのではないかということを申し上げたということです。
○山川座長 ありがとうございました。
それでは、ほかに御質問、御意見等ありますでしょうか。よろしいでしょうか。
資料2の、今、垣内委員から御指摘ありましたが、労働審判との関係、選択肢が限定されてしまうおそれということにつきまして、離婚と対比しても、訴え以外の手段も考えられるだろうという御指摘でしたが、この辺は現行の実務とも関係がありますが、何かございますでしょうか。
中窪委員、どうぞ。
○中窪委員 その点については、今回、こういう新しい制度をつくるときに、解消金支払によって労働契約が終了するという制度を、厳密な意味で判決に限定するか、それとも労働審判だと公的な判断ができますので、そこまで広げるかという一つの政策判断であると思います。その意味で、私はいいのではないかと思っております。
ただ、さらに事務局からも御指摘ありましたけれども、当面はそういう判決ないし労働審判に限るにしても、将来的にこれを外すという可能性がもしあるとしますと、その段階で権利の性質といいますか、制度そのものが変わっていくということは大きな問題になります。私自身は形成判決のほうがわかりやすいなという意識はあるのですが、将来的な方向も少し見据えた上で、今の段階で慎重に設計する必要があると思います。
○山川座長 ほかにございますでしょうか。
労働審判との関係は、私も同じような考え方で、幾つかの選択肢はあり得るだろうと思っております。訴訟でできることを審判だけでやっていいかというのは、多分、それ自体に形成力というか、権利義務関係の変動をもたらす効果があるということで、審判の場合はそういう色彩はあるのですが、直接的には、労働審判の場合は、異議を述べれば、理由を問わず通常訴訟に移行するというシステムですので、ややこれまでの家事審判等とは議論の性質が違ってくるのかなと思っております。
全く学術的な評価としては、異議を述べれば通常訴訟に移行するというのは、通常訴訟に付属した勧告的な仲裁制度のようなもので、通常の仲裁のように拘束力がないものであろうと思っていますので、そうすると、通常の審判の性質とは違うのかなと思っております。
また、主文についても、いろいろな考え方があり得るということでございまして、これも今後の議論次第によってくるかと思いますけれども、権利の性格にかかわってくるような感じがしまして、訴訟に行った場合の訴訟という紛争を解決する場合の対価と見るのか、裁判外の紛争も含めて、解雇をめぐる紛争を解決するための対価と見るのかという違いがあるのかなと、今お伺いしていて思いました。
それから、労働審判との関係ですけれども、基本的に現在の労働審判の運用はうまくいっていると理解されていると思いますので、それに影響を与えないということは、実務上の設計をする場合は結構重要ではないかと思っております。審判でも、さっきの通常訴訟との関係でいけば、通常訴訟でできることは審判でもできることになるのかなという感じがいたします。
その場合に、こちらの手続がもしできた場合になぜ使うかというと、審判の場合は3回の手続で終わらせないといけないという、ごく簡易な手続でして、審理とか心証の中身も違ってくると思いますが、通常訴訟の場合は、厳格な審理を行って解雇が無効であるという確定的な判断をしたことを前提とする。つまり、重い手続を前提とした上での解決金ということなので、重い手続で、それなりの解消金ということであれば、通常訴訟を選択し、そうでなければ、簡易な手続として労働審判。制度設計する際には、済みません、座長が余り踏み込んだことを言っていいのかどうかわかりませんが、制度の役割分担は十分考慮する必要があるのかなと思っております。
何かほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。
神吉委員、お願いします。
○神吉委員 済みません、小さい点ですが、資料2の1ページ目と2ページ目で、労働者の地位の青い矢印が、形成判決とした場合のほうは先まで続いているのですけれども、これは。
○坂本労働関係法課課長補佐 済みません、誤記ですので追って修正させていただきます。
○神吉委員 わかりました。効果はどちらをとっても同じということですね。
○坂本労働関係法課課長補佐 解消金の支払によって労働契約が終了するというのは、どちらの構成でも同じということになります。
○神吉委員 ありがとうございます。
○山川座長 よろしいでしょうか。
ほかにはいかがでしょうか。
垣内委員、お願いします。
○垣内委員 これも、むしろ後のほうで、また議論させていただいたほうがいいのかもしれませんけれども、形成権構成をとるのか、形成判決構成をとるのかということのメリット、留意点との関係で、後にこれが非常に大きな問題で出てまいります、資料3の労働契約解消金の定義とか趣旨との関係で幾つか論点が上がっていますけれども、不法行為に基づく損害賠償請求との関係ですとか、辞職等が生じた場合の扱いですとか、そのあたりの議論と説明の仕方等で若干関連してくるところはあるのかなと考えております。念のための確認です。
○山川座長 ありがとうございます。
資料3で、おっしゃるとおりかと思います。論点は、2ページ目以降についても、B案も共通かと考えておりますが、その点もまさに論点となるところになるかと思います。
ほかはいかがでしょうか。
それでは、時間の点もございますので、2つ目の権利の発生要件について、こちらは資料1の論点②でございます。御質問、御意見等ありましたら、お願いいたします。
垣内委員。
○垣内委員 どうもありがとうございます。
資料1の論点②のところで、支払日(弁済期)の発生時期について、まず判決等で確定した以降に終了の効果が発生し得ることになる場合にということで、弁済期は確定時でよいかということで、とりわけ形成権構成の場合にそのように解することができるのかという御趣旨の論点かと思いますけれども、確かに形成権構成、一般的な形成権で金銭請求権が発生しますと率然と申しますと、発生した金銭請求権について、直ちに弁済日が到来するというのは、何もほかに事情がなければ普通なのかなという感じはいたします。
けれども、ここで構想しているような制度の場合には、それではいろいろ不都合があるだろうということで、契約終了の効果については、金額がきちんと確定した後にしか発生しないという仕組みをわざわざ入れるのだとしますと、そのこととの関係で、弁済期についても確定日以降とすることが考えられるのかなと思います。形成権であることとの整合性という点では、これはちょっとへ理屈をこねるようなことになるかもしれませんが、そのような弁済期が、金額確定によって初めて到来するような金銭請求権を発生させる形成権なのだという説明をすることになるだろうと理解しているところです。
○山川座長 ありがとうございます。
この点も、構成をどうするかにかかわる論点ということで御指摘いただきました。
ほかにありましたら、よろしくお願いいたします。
よろしいでしょうか。この点も垣内委員からございましたように、いずれの構成かによって制度を設計する場合に、どのような書き方といいますか、条文の規律の仕方にするかという点によって、対応が変わってくるところがあろうかと思います。
資料2の権利変動①の金額判明という趣旨は、確定はしていないけれども、判決確定によって金額が確定するのか、あるいは客観的には確定しているけれども、判決によって明らかになる、どちらだったでしょうか。
○坂本労働関係法課課長補佐 先生がおっしゃるところで後者のほうかと思っていまして、客観的には、これは意思表示のタイミングで金額は確定しているけれども、それが当事者にとって明らかになってくるという意味で、判明してくるのは判決確定のタイミングなのではないかと考えております。
○山川座長 そうしますと、前回、鹿野先生から御質問があったかと思いますが、借地借家法上の賃料増減請求権と似たようなところがあるという感じでしょうか。あれも将来に向かって増減が発生する請求権で、しかし判決によって確定といいますか、明らかになるということだったでしょうか。
鹿野委員、お願いします。
○鹿野委員 賃料増減額請求権については、まさに形成権構成で、その意思表示のときに発生するということです。裁判等でやるときには、額は確かに後に判明するのですが、請求権行使の意思表示のときに、それに応じた権利変動が発生するということを前提に、その間の調整を規定しています。例えば、賃料の遅延分といいましょうか、賃借人に払い足りない分があったとすると、それについての遅延利息等をどういうふうに払うのかということについても借地借家法の中に規定が置かれているので、そのルールに従うということになっています。
それは、弁済期は意思表示によって到来しているという考え方なのだろうと思います。金額は当事者には判明していないかもしれないけれども、弁済期がそこで到来している。ただ、判明するまでの間の関係をどうするかということも、法的に明確に規定がある。今回は、弁済期も判決確定時とするのであれば、そこが賃料増減額の請求権とは違うということだろうと思います。
○山川座長 ありがとうございました。
そうすると、弁済期をどう考えるかによって、調整規定が別途必要になるかもしれない。
○鹿野委員 賃料増権額請求権と同じように、意思表示によって、その権利変動が発生し、弁済期も到来していると考えるのであれば、判決によって金額が明らかになるまでの期間があるわけですね。その期間についての取り扱いをどうするか。遅延損害金等を発生させるのかどうかということについて、また考えるということになるでしょうし、弁済期が判決確定時ということになるのであれば、まだ遅滞には陥っていないので、遅延損害金の考慮は必要ないということになる。
○山川座長 ありがとうございました。
中窪委員。
○中窪委員 今の点ですが、形成権という意味では共通しますけれども、賃料というのはずっと払うことがもともと決まっていて、その額をどうするかという、いわば継続の問題です。これに対して、今回払う額は、それと全然違う、契約解消するためのものですから、判決が確定することによって具体的な債務の内容が明確化し、金額もはっきりして、そこから遅滞に陥るのは自然な気がするのです。
○鹿野委員 私も、結論としては、今回の制度に関しては、判決確定時から遅滞に陥るということで結構かなと思っております。ただ、そこが賃料増減額請求権とは異なる取り扱いなのだということを確認したまでです。
○山川座長 ほかにいかがでしょうか。
垣内委員。
○垣内委員 今、鹿野先生の御説明いただいたとおりかなと思います。地代等の増減の場合は、相当長くなるということで、それはいきなり弁済期が到来するということなので、請求もできる。あとで過不足があったときには精算するということで、払い戻しをしたり、追加で請求したりということになるわけですけれども、その規定が設けられていて、かつ、もらい過ぎていたから返すという調整が生じたときに、年1割の利息をつけてやるというような、かなり厳しい規律になっているわけですけれどもね。
仮に解消金について同種の規律を設けるとすると、労働者のほうで何かもらい過ぎていたというので、かなりの利息を付して返すということになれば、そのお金を生活費等に使うこともなかなか難しいのではないかといったさまざまな問題もあろうということで、これまでの議論では、そこは少し異なる考え方をとったほうがいいのではないかということになってくるのかなと思います。
○山川座長 ありがとうございました。
ほかはよろしいでしょうか。
それでは、論点③、資料1の4枚目で、これに関しては資料3を先ほど説明いただいております。論点③につきまして、御質問、御意見等がありましたら、よろしくお願いいたします。
どうぞ、垣内委員。
○垣内委員 ありがとうございます。
この論点③については、資料3のほうで詳細に整理いただいておりまして、A案とB案ということで、A案が従来、この検討会でもずっと検討されてきた案で、新たにB案ということで出していただいているということかと思います。B案については、私自身も、仮にA案以外の考え方を考えるとすれば、こういうものが考えられるのかなと思っているところです。
B案をとった場合にどうなのか、あるいはA案の場合だったらどうなのかという整理については、おおむね資料でまとめていただいているとおりかなと思っております。先ほど、形成権構成か形成判決構成かという問題と関係が少し出てくるのではないかということを申し上げましたけれどもね。
具体的には、資料3の2ページ目で、1つには論点Ⅱとされている損害賠償請求との関係に関してです。ここは若干細かいお話になるかもしれませんけれども、仮にB案をとった場合には、紛争解決の対価ということで、バックペイについて書かれておりますように、当該解雇紛争に起因して生じた紛争を全体として解決することに対応した金銭ということを考えるわけですので、当該解雇に起因して、それが不法行為を構成することもあるのかもしれませんが、損害が発生して賠償すべきような関係にあるというときに、それも含めてその解消金の中に取り込んでいくというのは、B案を前提とするとあり得る考え方なのだろうと思います。
ただ、その場合に、民法上、例えば不法行為に基づく損害賠償請求権が発生するかどうかというのが709条の問題としてあるわけですけれども、その間をどう調整するのかと申しますか、解消金には含まれるとした上で、709条はどうなるかという問題があろうかと思いますけれども、恐らくB案を前提として、そこに含まれるということになったときは、709条との関係では、もう損害が解消金によってカバーされているので、709条で回復しなければならない損害は存在しないということが考えられるのかなと思います。
仮にそのような説明ができないのだとしますと、両請求権競合と申しますか、両方発生して回収できるということにならざるを得ない。督促で709条の適用除外とかにするのでない限りは、そうなるのかなと思いますので、調整されるとすれば、そういう形が1つ考えられるのかなと思います。
その関係で、形成権構成ですと、意思表示をすれば、そういう請求権が観念的には一定の金額をもって発生するということなので、それによって損害がカバーされているという説明がしやすいのかなという感じがしますけれども、形成判決構成で判決が確定すれば事態は同じかと思いますが、それまでの間については、必ずしもそうでないという見方もあり得そうで、そのあたりの説明の仕方が若干変わってくるところがあるのかなという感じもいたします。
それから、これは形成権か形成判決かということとは、また少し別のことですけれども、損害賠償請求との関係を考える際に、資料のどこに出ていたのかあれですが、そもそもベースとしての解消金の金額について、何らかの算定式のようなものを仮に立てるという考え方をとった場合に、不当性とか労働者の側の帰責性をそこに考慮するときには、労働者の帰責性のほうは減額事由として考えられるのに対して、不当性のほうは増額事由あるいは減額を妨げる事由として考えるということになるかと思うのですけれどもね。
B案で不法行為のような場合も含めて、全て解消金でカバーすると考えた場合には、恐らく算定式の中に不法行為に基づく損害賠償分というのは入ってこないのではないかと思われますので、増学的な調整というものを解消金の中で考えていくというインパクトがあるのかなという感じがいたします。
それに対して、A案をとって、帰責性のほうは考えるけれども、解雇の不当性のほうは別の問題だと整理する場合には、算定式からの調整は専ら減額方向ということで、そのあたりもこの両案で少し違いが出てくる可能性があるのかなという感じを持っております。
長くなって恐縮ですけれども、もう一点、形成権か形成判決かという問題との関係で、この資料3の2枚目の一番下のところ、労働契約の終了と権利行使の帰趨についてというところです。これは、いずれの構成をとっても、いずれの結論を導き出すことは最終的には可能だろうと思っておりますけれども、形成権構成の場合には、金銭請求権が一旦発生するという前提ですので、その後に辞職等の事情の変更があったときに、出発点としては、もう発生しているものを何らかの理由で事後的に発生しなかったことにする、あるいは消滅したことにするという規律があり得るかという形で検討していくということになるのかなと思われます。
形成判決構成の場合ですと、発生のための前提となっていた労働契約というものが、判決確定前にもう終了してしまっているという事態を前提として、それでもなお解消金を形成するのかという観点から、問題をいわば逆の方向から検討していくことになるのかなと思いますので、どちらかといえば、形成訴訟の基準時までの事情は全て考慮した上で、何かあればもう発生しないという方向に傾きやすいかなと。形成権構成の場合には、少しそれが逆の関係にあるのかなという印象を持っております。
以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見等ありましたら、お願いいたします。
神吉委員、お願いします。
○神吉委員 解消金に関する紛争が起きて、何らかの解消金とバックペイが認められた後に損害賠償請求するときに、損害が発生していない、既に解決済みであるという処理をすることは、そのとおりだと思います。
そう考えたときに、逆だったらどうなのかということが若干気になりまして、損害賠償請求のほうが先に認容されていた場合に、その後に解消金を請求するということは、何らかの影響があるのかどうか。解消金に関しては、まだはっきりと決まってはいないですけれども、事務局のほうで資料4におまとめいただいた、不法行為で争われたときの損害の認定などを見ますと、恐らく解消金で認められるもののほうが大きいと思うのですけれども、それが前提となって、先に損害賠償請求が認容されていると。でも、解消金でもしかすると取れるかもしれないと思ったときに、そもそも解消金を請求すること自体、認められるのかということ。
それから、もしB案だったりすると、紛争は既に損害賠償請求のほうで解決しているので、額の多寡はともかく、解消金請求もできないとしてもいいのかなと思ったりするのですが、A案、B案、いずれをとっても関係が気になるところではあります。
○山川座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでしょうか。
鹿野委員からお願いします。
○鹿野委員 定義ということからすると、B案のほうが、不法行為による損害賠償請求もこの中に含めてしまうという可能性が大いに出てきそうなのですが、順番として、この定義からするとこうなるという考え方より、そもそも制度の実質として、それはどちらがいいのかということを考えた上で、それに見合った定義を考えるということのほうがよろしいのではないかという気がします。損害賠償も全部ここに含めるのだというと、いずれにしても手続がかなり重くなりますね。
先ほど御指摘があった、先に損害賠償請求された場合にどうなのかというのも1つ大きな問題ですけれども、そうではない場合としても、全部ここに含むと、一回的な解決という意味では、メリットはもちろんあると思いますけれども、そこも全てやらなければいけないということになると、かなり重くなる可能性も出てきます。それがいいのか。それとも、損害としてカバーされている分は、もちろん別途には損害賠償請求できないわけですが、請求権としては別立ての可能性もあると立てておいたほうがいいのかと。そちらを検討したほうがよろしいのではないかという気がします。
○山川座長 ありがとうございます。
では、垣内委員、お願いします。
○垣内委員 直前に神吉先生のほうからお話のあった、先に不法行為に基づく損害賠償請求がされた場合の取り扱いということですけれども、これはきょう出ているA案、B案ということを前提にして考えますと、A案であれば、それは余り関係はしないということで、B案であれば、不法行為訴訟で認められた部分については、少なくとももう回収されているという前提で、他のバックペイ等も含まれるとされているわけですので、他の部分も考えた上でどうなのかということを、解消金の枠内では考えるということになるのかなと思います。
鹿野先生が言われた点は、全くそのとおりかと思いまして、B案のほうが全てここに盛り込まれてくるので、その意味では、解消金というのが非常に重たいものになるということはたしかですけれども、反面、そこで一回的解決が図り得るということをどう見るかということで、きょうのA案ですと、これは労働者の帰責性については考慮に入れる可能性が示されておりますが、解雇の不当性については考慮されないということだとすると、不当性といっても、不法行為を構成するようなレベルの不当性と、そこまで行かないかもしれない不当性と、さまざまあり得るのかもしれませんけれども、そこが片面的に労働者側の帰責性だけを考慮するということでよいのかどうかというあたりの政策判断と申しますか、その点も考慮の対象になってくるのかなという感じがいたします。
○山川座長 ありがとうございます。
いかがでしょうか。
中窪委員。
○中窪委員 今回、B案が新たに出てきたのは、私はある意味びっくりしたといいますか、今までA案で労働契約の解消の対価と考えておりましたので。確かに計算するときの要素として、なるほどこういうものも入り得るわけで、B案のほうがよりフレキシブルといいますか、柔軟性が入り得るという意味では、今までよりいいという考え方もありうると思います。ただ、これにしたから、必ずそこで損害賠償まで全部一緒に片づけるのかと言うと、また別の問題だと思います。B案のほうがそっちになじみやすいと思うのですけれども、損害賠償をどう考えるかは、もう一つ別に考えないといけない。
それから、賠償請求と言っても、一般の解雇無効のバックペイにプラスして、これが非常に悪質な要素があったからということで上乗せして請求する場合もあれば、もう元の職場に戻る意思がなくて、かわりに不法行為の損害賠償1本でやるというケースもあると思います。そういう中で、先ほど神吉委員が言われたのは、多分、後者のときに後で解消金を請求できるのかという話になると思うのですけれども、その辺を少し区別しながら考える必要があると思います。
話を戻すと、A案と比べてB案を取ることによって、具体的にどういう形で影響があるのか、考慮される要素の違いが、A案の場合とB案の場合で、使用者の責任の行為の悪質性だけなのか、それ以外にももう少し違い得るのか、詰めていただければと思いました。
○山川座長 ありがとうございます。
ほか、何かございますでしょうか。
多分、このA案とB案で解消金の定義については2つの性格があって、制度の趣旨との関係が第1点。つまり、A案の場合ですと、単なる辞職とどう違うのか。つまり、地位の解消は労働者から見れば辞職なわけで、それとの違いがどうなるのかという点が1つあって、B案の場合は紛争という要素が出てきますから、解雇紛争の解決という性格づけが反映されるという趣旨の違いが、第1点としてあるかと思います。
もう一つは、法的効果の違いというと、また別の話で、資料3にあるのは法的効果にかかわることで、どちらかと見ることによって、説明が簡単になる場合とそうでない場合があって、あとは最終的には実体法の仕組み方をどうするかによって違いが出てくるのかなと、先生方の意見を聞きまして思いました。
B案の場合も、対価という場合に、地位をめぐる紛争についてというのは、その紛争がどういうものかによって、また違ってくるといいますか、労働者の地位をめぐる紛争の捉え方によっても違ってくるような感じがします。損害賠償請求との関係では、御意見は多分一致するのかなと思いますけれども、例えば709条による損害賠償請求が後に来た場合に、それが請求自体失当として権利がないということと見るのか、そうではなくて、単に前に手続が先行したとか、そういう場合には損害が認定できないとか、不法行為の成立が事案として認められない場合があり得るのか。
これは今でもある話でして、解消金の手続が存在すると、そこで実際上考慮されているというのは、今の制度で解雇無効が確認されることによって、損害としては評価されないものになるというのと余り変わらないお話なのかなという感じは、お伺いしていて思ったところでございます。
それから、1点だけ。鹿野先生から手続が重くなるという点の御指摘がありまして、資料3のB案のほうに労働者の帰責性というのがありますが、これは前回の議論で出てきたのは、解雇事由にかかわる帰責性ということで、何でもかんでも入ってくるとなると、紛争が追加されてしまうので、それは含まないということでよろしいでしょうか。
○坂本労働関係法課課長補佐 その点につきましても、A3のほうの論点⑤に入れておりますので、ぜひ御意見を伺えればと思っております。A3の資料だと7ページになります。
○山川座長 済みません、先取りしてしまいました。今、論点③の話をしていましたので、ほかに③については、よろしいでしょうか。
どうぞ。
○鹿野委員 ③との関連で、恐らく資料3が出されていると思うのですが、その2ページの労働契約の終了と権利行使の帰趨についてというところで、解消金の請求後に意思表示がなされた後に、辞職や合意解約を行った場合とか死亡等した場合という論点が書かれています。これにつき、前も若干お話ししたかもしれませんけれども、不法行為による損害賠償に関する判例としては、交通事故の事案ですけれども、後遺障害による逸失利益の算定に当たって、事故後の別の原因による被害者の死亡を考慮することができるかどうかということを扱ったものがあります。
幾つか関連する判決はあるのですけれども、最高裁の平成8年4月25日、「民集」登載の判決で、逸失利益の算定に当たっては、事故後に別の原因で死亡したということについては、原則、考慮されないという趣旨の判決がございます。それとの関係をどういうふうにうまく説明するのか。もちろん、それと同じでないといけないという主張をするつもりはございませんが、こういう考え方で、これは整理できるのだというところをきちんとしておかなければいけないのではないかという気がします。
もちろん、1つは、損害賠償請求とは違うではないかというのはあるのですが、これも資料3の2ページ目の上のほうに書いてあるように、実質的には不法行為による損害賠償の損害と重複する部分があるわけです。一方が払われたら、他方はもう払われたものとしてカウントされなくなるというところがあるわけです。だから、そういう意味では、実質的に重複することはある。
そして、いわゆる形成権構成をとり、意思表示をすると、抽象的、観念的には、そこで権利は発生する。ただ、判決によって、最終的に金額が決まるというものとして、もし捉えるとすると、先ほどのような判決の考え方と、ここでの考え方をどこまで同じに、あるいは違うように処理するのか、その理由は何なのかということについて整理する必要があると思います。
済みません、判決をプリントアウトをするのを忘れまして、画面に出すようにしていたのですが、変なところを触って画面が消滅してしまいました。失礼しました。
○山川座長 最高裁、平成8年4月25日ということでよろしかったでしょうか。
○鹿野委員 そこれだけはメモしています。平成8年4月25日「民集50巻5号1221ページ」です。
○山川座長 ありがとうございました。
この辺も趣旨との関係で、他方では実体法上の仕組み方との関係で、喪失事由か考慮要素かという点とかかわりが出てくるのかなという感じがいたします。
ほかはよろしいでしょうか。
では、論点④になります。資料1の4ページ、右のほうにあります。これは参考資料にかかわる論点で、バックペイと労働契約の終了との関係ということで、解消金請求と併合提起されたものに限ることとしてはどうかという論点が提起されております。参考資料にかなり詳しいものが出ておりますが、この点はいかがでしょうか。
笹井参事官、お願いします。
○法務省民事局笹井参事官 この論点は、一番最初の論点①で、仮に形成判決構成をとった場合に、主文で何を書くかという問題の御指摘が垣内先生からありましたけれども、この点と密接にかかわってくると思います。と言いますのは、主文に条件付きで労働契約が終了するということを書くとすれば、どういう範囲の金銭を支払ったときに終了するのかということを書く必要が出てくるわけですけれども、例えば別訴があるといった場合に、解消金についての訴訟を担当した裁判所が、それを全て把握できるかという問題が出てまいります。そういった問題点を意識された上で、この論点④の御提案がされているのだろうと理解しております。
そういう意味では、確かに論点①のところで形成判決構成をとり、かつ、主文を2つというか、金額だけではなくて、労働関係の終了も書くということを前提とした場合には、この論点④という提案を採用せざるを得ないというか、必然的に採用することになるわけです。ただ、これもどこかで既に御説明されていたかもしれませんが、例えばバックペイの訴訟が既に先行した確定判決があるといった場合に、労働者としては再訴ができないという関係上、併合提起することができませんから、そういった労働者にとって不利益にならないかという問題ですとか。
あるいは、そもそも論かもしれませんけれども、同様にバックペイという同じ法的な性質を持っている実体法上の債権がある中で、手続的に併合提起されたかどうかということによって、扱いを異にすることが正当化できるかどうかということについては、少し検討が必要なのではないかと思います。
以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
では、垣内委員、よろしいですか。
○垣内委員 既にバックペイが確定されているときという点については、余り考えていなかったのですけれども、今、御指摘の前半にありましたように、形成判決構成をとって主文に書くことになりますと、併合されていないものというのは事実上困難であろうと思いますので、その場合にはこういう併合提起したものに限ると。あわせて、その併合提起するインセンティブとなるということも、効果としては期待できるかなと思います。
ただ、今、最後に御指摘のあったところは、根本的な問題として非常に重いところでありまして、実体法上、バックペイも支払われたときに終了すべきものだと考えたにもかかわらず、併合提起しないと効用が享受できないということになることでいいのかという問題はあるだろうと思います。そこは、どこかで政策的に割り切れる問題であるのか、それとも、そこは難しいという問題なのかということを引き続き考えていく必要があるのかなと思います。
○山川座長 ありがとうございました。
今、両委員から御指摘のありましたことですけれども、前提が幾つかありまして、まず形成判決構成をとるということと、それから、形成判決構成で、かつ主文に契約終了項を明示することという前提のもとでの議論ということになろうかと思います。したがいまして、形成権構成をとるか、または形成判決構成で主文に書かないことにすれば、論点としては直接的には出てこないのですが、ただ、形成判決構成をとったとしても、実体法上の効果として契約終了を法律か何かで書く以上は、その場合の要件をどうするかにはかかわってこざるを得なくて、そこのところの範囲をどの程度明確化できるかという問題にかかわってくるのかなと思います。
あとは、先行するシステム検討会にさかのぼってしまえば、バックペイというものを契約終了の効果に含めないとすれば、この問題はある意味で起きないということになりますが、これまでの議論の経過でこういう資料をつくっていただいているということかと思います。
いかがでしょうか。
あと、理論上の、あるいは技術的な可能性としては、併合提起をしなくても、何らかの債務名義が存在すれば、終了効があるということも考えられるのでしょうか。
○坂本労働関係法課課長補佐 理論上はそのようなこともあり得ると思います。
○山川座長 どうぞ、垣内委員。
○垣内委員 今の他の債務名義がある場合ということですけれども、もともとの出発点に立ち戻って考えますと、パターン1のように、バックペイは別物であるという整理が一番すっきりして、整理しやすいわけですけれども、政策的にバックペイが支払われることも労働契約終了の前提として確保したいという要請が、一方で強い主張としてあり、そのことを考慮した場合にどういう方策が考えられるかということで、パターン2からパターン4ということでいろいろ難しい議論をしてきているということかなと思います。
そこで、バックペイの支払を解消の契約終了の効果を前提にしましょうということを目指しているのは、結局、バックペイの履行確保ということであります。そのときに、債務名義があるバックペイについては、払われないと契約が終了しないのですよというのは、金額を明確に画するという点では合理性がある面はあるのですけれども、債務名義までつくっているのであれば、まともに任意に払えるような会社であれば、強制執行もできるのではないかということを考えたりしますと、その場合になぜ限定して契約終了の効果の要件にするのかといった疑問もあり得るところかなと思いまして、その辺もなかなか悩ましいところかなと感じているところです。
○山川座長 ありがとうございます。私もそれで行くべきだという趣旨での発言ではないのですけれども、債務名義もいろいろなものがありますし、それがバックペイに的確に合致しているかどうかも実を言うとわからない。和解でいろいろなものを引っくるめて解決金とした場合に、バックペイの範囲が一体どうなのかということもあります。
あと、笹井参事官が先ほど言われたことに関連して、明示的に一部請求しているような場合に、それはバックペイとして足りるのかどうかとか、いろいろな話も出てくるのか。さらにテクニカルな話が逆に出てきてしまうこともあろうかと思います。
中窪委員、お願いします。
○中窪委員 垣内委員がおっしゃったように、パターン1が一番明快だということは、誰もが合意すると思います。ですから、2、3、4でいろいろ考えて、こういう形で何とか一回的解決で、かつバックペイの支払まで画しようという、政策判断としては非常によくわかるのですけれども、その分、大変苦労が多いような気がしております。
この点は、さっきの解消金の性質とも絡むのですけれども、本検討会の報告書をどういう形でまとめるかにもよると思うのです、1つには、わかりやすくやればこういうものになる、という基本を打ち出す必要があるように思います。しかし、そのときこういう問題が残るので、他にこういう方策は考えられるけれども、また別にいろいろ複雑な問題が出てくる、というふうに濃淡をつけるような形にせざるを得ないのかなと、聞いていて思いました。
○山川座長 ありがとうございます。
今のことは、またこの検討会の中での御相談ということになると思います。趣旨が法技術的論点ということなので、検討としてはいろいろなものがあるということになろうかと思っております。
ほかはいかがでしょうか。
よろしければ、論点⑤、さっきちょっと先走ってしまいましたけれども、7ページの労働者の帰責性を勘案する場合に、その範囲が解雇事由として主張するものに限るものと解してよいかということでしたが、いかがでしょうか。
○中窪委員 どういう状況を想定しているのかというのが若干わかりにくいのですけれども、解雇の合理性をめぐっては、ふだんの態度とか、過去にいろいろな失敗があったとか、そういうものも含めて、権利濫用に当たるとか当たらないとか判断されていると思います。しかし、ここで言っているのは、そういう中の問題とは全然違う、後で調べてみたら経歴詐称があったとか、全然関係ないものについて、それを理由に減額できるかとか、そういうことと理解してよろしいでしょうか。
○坂本労働関係法課課長補佐 はい。
○山川座長 そういうことでよろしいですか。先ほどちょっと先走って言ってしまいましたが、多分、解雇事由以外のものも新たに主張できるとすれば、別途、紛争が拡大してしまうということへの考慮があるということが、これまでの議論の中でもちょっと出てきたかなと思います。
それでは、いかがでしょうか。
どうぞ。
○垣内委員 ここは労働法の先生方にお任せすべき論点なのかなという感じもいたしますけれども、基本的には、先ほど来、例えばいろいろな不当性の問題で審議範囲が拡大するのではないかといった問題も指摘されていたかと思いますけれども、およそ何でも見つかったら、全て主張して、それが考慮されるという無限定なことになりますと、審理等も長期化することも考えられますので、ここで掲げられているような当該解雇に係る事由として主張するような事由ということに限定できるのであれば、それは1つ合理的な規律なのではないかなと感ずるところです。
他方、同じことに対応する話といたしまして、ここでは明示的に書かれていませんけれども、使用者のほうの不当性ということが問題となる場合、これは当然前提なので書かれていないだけだと思いますが、当該解雇の不当性ということが問題なので、解雇以外にさまざま不当な使用者だということを持ち出してきて増額するということは、考えなくていいのだろうと考えております。
○山川座長 ありがとうございます。
これまでの議論ですと、懲戒解雇については、解雇当時、知らなかったことが後からわかったものを懲戒解雇事由として、当該解雇を根拠づけることは原則できないという判例がありますので、判例でできないとされていることを、解消金だからといって可能にするということになりますと、まさに紛争が拡大するということになるのかなと思いますけれども、時期を別にして2次的解雇するということは、実体法上は多分妨げられないだろうなと、そのことの心証が裁判官にどう映るかはともかくとして、手続的にはそれは妨げられないだろうなという感じはします。
いかがでしょうか。先ほど垣内先生がちょっとおっしゃったことに関係するかもしれないですけれども、この点も制度の性格にも関連しますけれども、最終的には条文をもしつくるとした場合には、その書き方にかかわる、どういう実体法の仕組み方をするかにかかわることかなという感じもしますけれどもね。
○中窪委員 さっきは質問だけにとどめてしまいましたけれども、私も解消金の制度の性格からすると、当該争われている解雇に合理的に関係する事情で判断するというのが、多分趣旨であろうと思います。それとは全然違うものが出てきた場合には、山川座長がおっしゃったように、2次的解雇によって労働契約がそこで終了していたとか、あるいは退職金の請求等で処理すべきものであって、そこは切り離したほうが合理的かなと思います。
○山川座長 ほかはいかがでしょうか。
どうぞ、神吉委員。
○神吉委員 その観点からしますと、この帰責性という言葉を使うのがやや広いのかと考えます。帰責性とか寄与度、両方が一つの行為に寄与しているというイメージでは多分なくて、解雇理由の存否を考えるときの解雇理由に、まさに当たる部分なのかなと思いますので、言葉遣いといいますか、中身をあらわすような、もうちょっと狭い言葉を考えてみたいと思います。
○山川座長 ありがとうございます。
これも、さらに具体化する際に、事務局のほうでも御検討いただければと思います。
論点⑤につきましては、ほかにいかがでしょうか。
ございませんでしたら、①から⑤まで、今まで御検討いただいてまいりましたけれども、言い忘れた点とかありましたら。
では、坂本課長補佐、お願いします。
○坂本労働関係法課課長補佐 少しお時間ありますので、もしよろしければ横置きの資料3の2枚目の論点ⅢとⅣというのがありまして、Ⅲは解消金と退職手当との関係で、論点4は辞職等をした場合としなかった場合で、解消金の額について違いを設けるかどうかというところですが、こちらももし何か御意見等ありましたら、お聞かせいただければと思います。
○山川座長 資料3の2枚目ということですね。お願いいたします。
中窪委員。
○中窪委員 また質問になってしまうのですけれども、論点Ⅲは、退職手当については各会社で多様なので、解消金には含まれないと考えるべきだけれども、それでいいだろうかという趣旨でしょうか。一部について含まれると考えるべきだろうかということですか。
○坂本労働関係法課課長補佐 論点Ⅲの意図としましては、先ほど先生がおっしゃったとおり、確かに退職手当の性質が具体的にどういうものなのかというのは、企業ごとに異なりますので、一概に説明というのは難しいかもしれないですけれども、解消金のうち労働者の地位の対価の過去分と、退職手当の中で功労報償的性格部分というものがどのくらいかというのもありますが、含まれているとすれば、それらの部分に重複みたいなものがあるのか、ないのかというところをお聞きしたいということであります。
○中窪委員 ありがとうございます。
一般的に退職金には、賃金の後払いと功労報償と両方含まれているけれども、それが具体的にどこまでというのは決して明確に分かれるものではなく、全体の中に両方が含まれていると私は理解しています。解消金として、この部分は過去の分だからといって重ねるというのは不要というか、無理なのではないでしょうか。全体として、いろいろな趣旨が含まれているけれども、とにかく解消金とは性格の違う手当と考えたほうがすっきりするのではないかと私は思います。
○山川座長 ありがとうございます。
この点も制度の性格にも若干関係する議論かもしれませんが、解雇が無効であれば、それだけだったら契約が存続することになるので、そもそも退職金は発生しない。退職していないことになるのが地位確認ということですので、それを解消金という制度をもし導入する場合には、契約が終了することになるので、退職金をどうするかというのが前提としてあるわけですね。その場合の解消金の趣旨の地位解消の対価とか紛争解決の対価というところに、退職金ということまで含めるかどうかという形の論点としての位置づけかと思います。
垣内委員。
○垣内委員 これは全く質問ということなのですけれども、退職手当が具体的に幾らの金額になるのかというのは、退職の事由等によってもいろいろ変わるということがあるのかなと思いますので、その点がまさに功労報償的性格とも関係するのかと思いますけれども、仮にこういう制度ができて、解消金の支払によって労働契約が終了するというときに、そのことが退職手当そのものとの関係では、どういう取り扱いを導くことになるのかということは、どっちが鶏か卵なのかわかりませんけれども、他方の前提問題としてあって、そのことを視野に入れつつ、この問題をちょっと考えないと、そごが生じてしまうことになるのかなという印象を持ったのですが、そのあたりはいかがでしょうか。
○山川座長 どうぞ。
○坂本労働関係法課課長補佐 現行では、労働契約解消金というのは存在しないものですので、今、個々の企業で定められている退職金の支払規定の中には当然入っていない。あとは、仮にこういった制度ができたときに、まず個々の企業のほうで退職金支払規定をどのように見直すのか、見直さないのかというのが企業側の状況としてはあると思いますし、それから、解消金の制度自体のほうで退職金というものをどのように取り扱うか。これは、法律上規定するとなると、なかなか難しいところがありますけれども、どう位置づけていくのかというところで変わり得るのかなという気がしております。済みません、ちょっと答えになっていませんが。
○山川座長 ありがとうございます。
垣内委員から、まず。
○垣内委員 済みません。
例えば、懸念される事態として、解消金では、退職金で功労報償的な部分もあるだろうことをおもんぱかって、その部分は減額するというか、その分は解消金に委ねますというたてつけをするのだけれども、退職金のほうでは、解消金が払われるのなら、そういうことをおもんぱかって、初めから低く考えましょうという事態が起こると、何か好ましくない事態が起こる。そういう事態を防ぐのに合理的な解消金制度を仕組んでおかないと、解消金制度ができたときに、各企業においてどういう対応をするかというレベルで、何か好ましくない対応をもたらしてしまうかもしれないという状況だと理解すればよろしいでしょうか。
○坂本労働関係法課課長補佐 いろいろなケースがあるかなと思います。先ほど申し上げたとおり、退職金規定をあらかじめ変えるというケースもあるかと思いますし、実際に裁判になったタイミングで、裁判所のほうで解消金の支払を命ずるとなったときに、企業の側から、いや、退職金として幾ら払っていて、これは趣旨と性質等も重複するので、その部分は支払を拒否するということで、新たなそういう争いみたいなものも生じる可能性もあるのではないかと考えております。
○山川座長 ありがとうございます。
では、神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 退職手当との重複が多分問題になるのではないかということを、大分前に私が言ったこととちょっと関係しているのかなと思いますが、そのときに申し上げた趣旨としては、重なっているから解消金部分から引かなければいけないということを具体的に提案したつもりはなくて、逆に過去分となっている、これまでの就労実績の評価という解消金の部分の趣旨について、対価を算定するときに、それを手放す地位の算定方法としては、そういったこれまでの就労実績というものを勘案するのではないかと、ちょっと当たり前のようにも思えるけれども、それが本当に当たり前なのかという問題提起のつもりで出しました。
というのは、過去分を評価する、例えばイギリスの不当性解雇の補償金の裁定だと、まさに勤続年数と解雇時の給与というものを勘案して、それを基本に過去の勤続を評価するものとして計算されていくのですが、それが日本の退職金と同じような趣旨なのです。だけれども、それはイギリスでは、退職金というものが企業にはほとんどないので、それを公的に補償するという趣旨ですけれども、日本では、それが特に大企業中心に、慣行としてかなりの額の退職金があるということからすれば、あるところとないところでばらばらな中で、解消金というものは、それとはまた別個の判断として計算してしまっていいのか。
そもそも過去分として、これまでの就労実績の評価を、退職手当とは別に公的に認めてあげる意味というのは何なのかということを、自分自身でも考えてみたくて申し上げたところではあります。
○山川座長 ありがとうございました。
私もそう言った記憶があるのですけれども、むしろ退職金制度が存在する場合に、もしそれが支払われるものだとした場合には、解消金の性格とか考慮要素に影響してこないかということにもかかわっているという理解でよろしいでしょうか。
○神吉委員 きょう、資料4のほうで事務局に出していただいた不法行為では、損害賠償というのは将来分しか見ていないのです。不法行為などで解雇による損害ということを考えていくときに、過去にどれだけその会社で地位を築いてきたかということは、引用される損害額とは余り関係ないと言われています。一方で、今回、新しく過去分というものを認めて、過去分と将来分をセットにするという設計自体は、一体どういうふうに出てきているのかなという趣旨です。
○山川座長 ありがとうございます。
判決の中でも、ハラスメントによる不本意退職などの場合には、退職自体が無効にならないとしても、退職金規定を適用する際に、例えば会社都合の退職金の支払事由の支払を命じて、あと、損害賠償は別個命ずるという判決があったように記憶していますが、この点、今のような観点から、過去の裁判例等も改めて見ていただければと思います。もし、そういう点、既に何かあれば、今でも構いません。
確かに、解消金制度によって契約が終了したということが、もし制度が導入されるとした場合にはケースとしては出てくるので、そういうことを就業規則とかに書くとか、実務的にはそういう事態が出てくるのかもしれませんが、わざわざそういうことまで規則に書くのかどうかというのは、実務上の対応で、法律的には、現在の裁判例にありますように、規定の解釈か何かで対応するのかなという感じはしますけれどもね。
ありがとうございました。
ほかはいかがでしょうか。
どうぞ、垣内委員。
○垣内委員 先ほどお尋ねのあった資料3の最後のページの論点Ⅳとの関係について、辞職等があった場合の取り扱いに関してですけれども、仮に論点の上のところで書かれているように、解消金の効果としての労働契約の終了の効果の前倒しと申しますか、そういうものとして辞職を位置づけるということになるのであれば、辞職の事実は解消金の算定との関係では原則的には考慮しないと。ですから、それによって何か解消金の額が変わるということは考えないというのが、一番すっきりしているのかなという感じがいたします。
ただ、場合によっては、当該無効である解雇の意思表示がなかったとしても、類似の時期に辞職したであろうという事情が認められるということがある場合の辞職というのは、もしかするとちょっと例外的な場合として区別する必要があるのかもしれませんけれども、その種のものでない限りは、そこは考慮しないというのが論点の上のところに書いてある考え方の帰結ということになるのかなと、今のところは考えているところです。
○山川座長 ありがとうございます。今、資料3の2枚目の一番最後の下の論点について御指摘いただきました。
ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、ほぼ定刻になりましたので、本日の議論はここまでにさせていただきたいと思います。
今回、新しく幾つか御指摘がございまして、鹿野委員からの判例の御指摘もありましたし、神吉委員からも論点の捉え方についての御指摘もありましたので、また、これらについても御検討いただいた上で、次回の議論の参考にするものができればと思っております。
それでは、本日の議論はここまでにさせていただきたいと思います。
次回の日程等について、事務局からお願いします。
○坂本労働関係法課課長補佐 次回の日程につきましては、現在調整中でございますので、確定次第、連絡をさせていただきます。
○山川座長 それでは、これで第8回の検討会を終了いたします。
本日は、お忙しい中、大変ありがとうございました。
 

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