平成30年度第2回化学物質のリスク評価検討会(発がん性評価ワーキンググループ)議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

平成31年3月7日(木)15:00~17: 09

場所

経済産業省別館231各省庁共用会議室(2階)

議題

  1. 平成30年度の中期発がん性試験の結果の評価について
    1. 4-アミノフェノールのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験
    2. o-ニトロアニリンのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験
    3. アセト酢酸アニリドのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験
    4. ヘキサン酸のラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験
    5. 3,4-ジメチルフェノールのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験
    6. メタクリル酸エチルのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験
  2. 「遺伝子改変動物による発がん性試験」の期間延長(可変化)について
  3. その他

議事

 
○増岡化学物質評価室室長補佐 定刻となりましたので、ただ今より、第2回「発がん性評価ワーキンググループ」を開催いたします。本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。
委員の出席状況ですが、特別参集者の西川委員から所用により御欠席と賜っておりますが、それ以外の委員の皆さま方におかれましては御出席いただいております。
〇平林座長 では、議事に入る前に事務局より議事次第と資料の確認をお願いいたします。
〇増岡化学物質評価室長補佐 それではお手元の資料を確認させていただきます。
まず、議事次第ですが、本日の議題は2つございます。まず議題1としまして、平成30年度の中期発がん性試験の結果の評価について、議題2としまして、「遺伝子改変動物による発がん性試験」の期間延長(可変化)について、です。
めくっていただきますと、配布資料一覧とあります。まず、資料1として、「平成30年度中期発がん性試験対象物質一覧」、物質ごとの試験の概要として、資料1-1「4-アミノフェノールのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験」、資料1-2「o-ニトロアニリンのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験」、資料1-3「アセト酢酸アニリドのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験」、資料1-4「ヘキサン酸のラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験」、資料1-5「3,4-ジメチルフェノールのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験」、資料1-6「メタクリル酸エチルのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験」と概要を添付しております。それから資料2としまして、「「遺伝子改変動物による発がん性試験」の期間延長(可変化)について」となっております。
また、こちらは委員限りでございますが、机上配布で2つほど紙ファイルの資料を置かせていただいております。薄い方の資料が、「平成30年度発がん性評価ワーキンググループ机上配布資料」とあるもので、試験の評価基準等定型的な資料です。それからもう1つ、紫色の厚めの紙ファイルですが、こちらは本日御審議いただきます中期発がん性試験に係る6物質につきまして、それぞれの試験報告書を添付しております。
資料としては以上になります。資料の不備等ございましたら事務局までお申し付けいただければと思います。
〇平林座長 よろしいでしょうか。
では、本日の議題に入ります。議題(1)「平成30年度の中期発がん性試験の結果の評価について」を事務局から説明してください。
〇増岡化学物質評価室長補佐 各物質の試験結果につきましては、本日、それぞれ試験機関の方にお越しいただいておりますので、各試験機関から御説明をいただくことになります。私の方からは、評価の基準について簡単に御説明をいたします。
黄色の紙ファイルの中にあります「常備資料8」とあるものですが、こちらに中期発がん性試験の結果の評価基準、こちらは平成26年度のWGで確認いただいたものを添付しております。御覧いただきますと、1とあるところに「陽性の判断基準」とあります。「投与群における肝臓の胎盤型Glutathione S-transferase(GST-P)陽性細胞巣の単位面積あたりの個数又は面積が、媒体対照群と比較して有意に増加し、かつ、用量反応性が認められる場合、又は単一の用量群において明らかな増加が認められる場合、陽性と判断する」となっております。
また、その次の2、3については、このWGにおいて陽性と判断された場合の扱いとなります。2の方には、原則としてがん原性指針の対象とする旨、また、3につきましては、原則としてリスク評価の候補物質とする旨記載しております。
また、ページをめくっていただきまして、参考1、2とありますが、参考2のところに、陽性と判断された場合、陰性と判断された場合とあり、それぞれ補足的に記載があります。(1)陽性と判断された場合については、フィージビリティ試験を行った上で、長期発がん性試験の候補として検討していくことについて記載しております。また、陰性と判断された場合については、原則として、肝臓以外の臓器を標的臓器とした中期発がん性試験の候補とすることについて記載しております。こちらにつきましては、本日の評価結果を踏まえて、それぞれ必要な措置・検討をさせていただくことになります。
評価基準につきましては、以上となります。
続きまして、資料1を御覧いただきたいと思います。本日御審議いただきます物質は6物質です。まず4-アミノフェノール、それからo-ニトロアニリンですが、これらはいずれも強い変異原性があり、行政指導対象物質ということで選定されたものです。試験実施機関は日本バイオアッセイ研究センターとなっております。それから次の2つ、アセト酢酸アニリドとヘキサン酸ですが、アセト酢酸アニリドにつきましては、平成26年度の遺伝毒性評価WGにおいて、強い遺伝毒性ありとされたことから中期試験の対象としたもので、また、ヘキサン酸につきましては、平成29年度に形質転換試験を行った結果、陽性の結果が得られたということで中期試験の対象としたものです。こちら2つにつきましては株式会社ボゾリサーチセンターが試験機関となっております。それから残りの2つ、3,4-ジメチルフェノールとメタクリル酸エチルですが、いずれも平成29年度の形質転換試験で陽性となったことから、中期試験の対象としたもので、株式会社DIMS医科学研究所が試験機関となっております。
各試験機関からは、後ほど御説明をいただきます。
○平林座長 では、まず4-アミノフェノールについて、試験実施者のバイオアッセイ研究センターの方から説明をお願いしたいと思います。
○日本バイオアッセイ研究センター 資料1-1、4-アミノフェノールのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験について説明いたします。
物質の4-アミノフェノールは、薄い赤みのある黄色の結晶です。オリーブオイルに混和して投与いたしました。製造量は1,000トン、用途としては頭痛薬のアセトアミノフェンの医薬の中間体、それから染料、ゴム用老化防止剤などに使われております。有害性情報としてはLD50が671 mg/kgで、標的臓器は腎臓とされています。
この物質のプロモーション作用の有無を検索いたしました。
方法は、被験物質投与群3群、媒体対照群及びフェノバルビタールを用いた陽性対照群の計5群の構成で、各群22匹のF344ラット(雄6週齢)を用いて行いました。起始物質としてはDEN200 mg/kgを腹腔内へ投与した後、3週目より6週間、オリーブオイルに混和させた被験物質を0、50、100及び200 mg/kg/dayの用量で連日投与しました。用量設定につきましては後ほど説明いたします。また、陽性対照群にはフェノバルビタールナトリウムを25 mg/kg/dayで強制経口投与いたしました。DENを処置した後、第3週の終わりに肝臓2/3切除術(PH)を行いました。動物は投与終了日の翌日に安楽死させ、肝臓の前腫瘍性病変である胎盤型Glutathione S-transferase(GST-P)陽性細胞巣、これは直径0.2 mm以上のものの数及び面積を計測し、肝臓の単位面積当たりのデータを算出いたしました。
投与量設定は、3回の試験に分けて行いました。急性(3回投与)試験は、被験物質投与量を250、500、1000 mg/kgに設定し、ラットに最大3日間強制投与しました。その結果、1000 mg/kg では2匹が死亡、500 mg/kgでは1匹が死亡しました。250 mg/kgでは投与の影響は認められず、代謝をした褐色尿は認められました。
この試験の後、これを基に3週間の反復投与試験を行いました。これはDENを1度腹腔内投与した後に、30、60、125、250 mg/kgに設定して、3週間連日強制経口投与しました。その結果、最高投与群の250 mg/kgで軽微な体重増加抑制がみられましたが、それ以外に特に変化は認められませんでした。この後の病理検査の結果、125 mg/kg及び250 mg/kgで腎臓の近位尿細管上皮に軽度の変性・壊死及び再生が認められました。
次に、肝部分切除をした動物を用いた2週間試験を行いました。投与量は200、300、400 mg/kgとして、肝部分切除を行った動物に投与いたしました。その結果、300 mg/kgと400 mg/kgでは投与数日以内に動物が死亡して投与を中止しました。この動物は、剖検の結果、肉眼的に肝臓の肥大や腎臓の皮質領域の白色斑が認められ、病理組織学検査で重度の尿細管壊死が確認されました。この下の濃度の200 mg/kgでは、一般状態や体重に影響は有りませんでしたが、肝臓と腎臓の重量増加が認められました。
以上の結果から、本試験の投与濃度は200 mg/kgを最高とするのが適切と考え、中用量を100 mg/kg、低用量を50 mg/kgとして実験を行いました。
次の結果にまいります。200 mg/kg群に一時的な摂餌量の減少が認められましたが、特に一般状態や体重に変化はありませんでした。
下に示しました3ページ、図1のグラフですが、一番上は陽性対象で有意差がついておりますが、それ以外のところでは有意差はついておりません。
肝臓重量については、次のページの表1に示しました。肝臓の重量は200 mg/kg、100 mg/kg、50 mg/kg、絶対重量で有意差がついております。200 mg/kgでは肝臓重量は、絶対重量では対照群の112%でした。このように4-アミノフェノールは肝臓重量を増加させました。
また、腎臓病変については、お示ししておりませんが、腎臓重量が増加しております。最高用量200 mg/kgのみで、対照群の109%に上昇しております。肝臓では特に病理組織学的変化は認められておりませんが、腎臓では尿細管の壊死や尿細管の過形成が認められました。
肝臓のGST-P染色の結果を表2に示します。陽性対照群フェノバルビタールは陽性細胞巣の数、陽性細胞巣の面積いずれも対照群の2倍以上の数値を出しております。しかしながら、4-アミノフェノールでは最高投与群で有意差はついておりますが、これは減少の値で有意差がついておりますので、この4-アミノフェノールについては、肝発がんプロモーション作用は陰性であると結論しました。
以上です。
○平林座長 ありがとうございます。
では、御質問。
○若林委員 この4-アミノフェノールに関しては、肝発がんプロモーションは示さないということで、この条件下ではネガティブであったということはよく理解できましたが、気になるのが、アミノフェノール、例えばアニリンですとか、オルト-トルイジンですとか、ああいうような化合物というのはいわゆる膀胱発がんというものと関係してきます。
○日本バイオアッセイ研究センター はい、そうですね。
○若林委員 それで、尿細管の壊死が認められていて、強い変異原性があるというようなことが遺伝毒性の方で指摘されているとすると、肝臓ではネガティブかもしれないが、他の臓器ではどうかということを考えると、少し気を付けておいた方がよいのではないかということを感じました。その点について、何かこれらの化合物、また、類似化合物の、例えば、置換位置が少し違うようなものでの発がん性ですとか、そのようなデータがあれば教えていただけないかと思います。
○日本バイオアッセイ研究センター 3-アミノフェノールとか、2-アミノフェノールというのがありますが、いずれも発がん性についてはデータ不足で、厚生労働省のあんぜんサイトを見ますと、3-アミノフェノールではラットでデータ不足・不十分、マウスで「なし」というようなものが出ております。
○小川委員 一応、確認ですが、有害情報のところに標的臓器として腎臓とございますが、これは今回の試験以外に情報としてどれぐらいの……。
○日本バイオアッセイ研究センター 28日の試験などで広範な腎臓の壊死があるというような情報はあります。
○小川委員 それ以上の情報はないということでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター そうです、発がん性の情報はありません。
○小野寺委員 Ames試験とか染色体異常試験の変異原性がポジティブという物質であって、毒性標的臓器が腎臓ということですが、先ほど若林先生が言いましたように、肝臓のfociは増加させていないということで、全体的な発がん性の評価を「なし」としてよいのか、それとも限定的に「肝臓でのGST-Pの増加に関する作用はない」という結論にするのかというところで、この試験によって結局、「発がん性は認められない」という結論の文章にしてよいのか、それとも「肝に対するプロモーションはなかった」という記載にするのかということに関しては、どういう意見でしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター この試験系自体が肝臓に特化した試験ですから、発がん性に関して他の臓器についてはコメントをしてはいけない試験だと思っています。ですから、プロモーション作用のみを記載するという形がよいのではないかと思います。
○小川委員 その点、今、結論的なことは言えないと思うのですが、ラット肝中期発がん性試験法は、ラット・マウスに対する発がん感受性は肝臓については90%以上で、非肝臓の発がん物質については20%ぐらいです。ただ、肝臓に対する発がん性というものがラットにおいては特に多いという割合から考えると、全体で60%ぐらいは検出できるということにはなるのですが、40%は難しいというところもあるということです。そうすると、やはり肝中期発がん性試験では陰性であったという言い方が妥当なのではないかと思います。ただ、非肝発がん物質の検出力はゼロではないし、全体の発がん感受性としては比較的高い試験系であると言えると思っております。
○平林座長 津田先生、よろしゅうございますか。
○津田委員 小川委員と同じ意見です。
○平林座長 ありがとうございます。
そうしますと、このWGの結論としては、この剤は少なくともこの系においてのプロモーション作用はなかったという表現で止めるということでいかがでしょうか。よろしゅうございますか。膀胱発がんの方につきましては、懸念が残るという若林先生のご意見もございましたし、引き続きもしデータが出てくるようであれば、そこはチェックをしていくということではないかと思います。
○若林委員 最近、大阪市大の鰐淵先生ですとか、小川先生たちのグループで膀胱について、γ-H2AXのインダクションを比較的簡便に検討できるというようなことを提言されていますので、もし膀胱が残っているようでしたならば、γ-H2AXのインダクションがかかっているか否かということを確認できればと思いますが。膀胱、残っていますか?
○日本バイオアッセイ研究センター 保存はしてあると思います。
○平林座長 解析可能でしょうか。
○小川委員 どれぐらいの期間置いておいても大丈夫かというバリデーションまではしておりませんが、比較的、安定的に染色は可能ではあるので、これがパラだからどうかというところはありますが、もし、イレギュラーにでも検討してもよいというか、ただ、そういう懸念があるということであれば、今のところ我々が見た試験においてはかなり高率に検出することができるので、本当は是非見ていただきたいという気持ちはございます。ただ、予算や経費等いろいろなことがあると思うので、簡単には言えないと思っています。
○若林委員 検討事項として議事録に残しておいていただければと思います。
○平林座長 検討事項ということで議事録に残すということにさせていただきたいと思います。
よろしゅうございますか。
では、引き続きo-ニトロアニリンについて御説明をお願いいたします。
○日本バイオアッセイ研究センター 資料1-2、o-ニトロアニリンのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験の説明をいたします。
o-ニトロアニリンはこれも黄赤色の結晶です。水に難溶ということでオリーブオイルに混和しました。生産量は1,000~2,000トン、これも医薬、染料、顔料等に使われております。LD50は1,838 mg/kgになっています。特に特定の標的臓器毒性はみられておりません。
方法を示します。各群22匹のF344ラットを用いました。方法は先ほどの試験と同じです。オリーブオイルに混和させた被験物質を0、100、200、400 mg/kg/dayの用量で、陽性対象にはフェノバルビタールナトリウムを用いました。
用量設定の理由に入ります。急性の3回投与試験を初めに行いました。投与用量は400、800、1500に設定しました。1500 mg/kgでは投与直後に顕著な麻酔様の作用が出まして、2回投与で3匹全てが死亡しております。800 mg/kgと400 mg/kgでは投与初期に軽微な麻酔作用がみられ、体重はわずかに減少しましたが、死亡はみられませんでした。
続いて3週間の反復投与で、DENを腹腔内投与した後にo-ニトロアニリンを投与しました。濃度は50、100、200、400 mg/kgに設定しました。200 mg/kg以上の用量では肝臓の重量が増加し、血液生化学ではすべての投与群で総コレステロールの増加、400 mg/kgでγ-GTPの活性上昇が認められました。
これに続いてPHで行った2週間試験ですが、これでは投与用量を200、400、600 mg/kgとしました。400 mg/kgと600 mg/kgでは投与初日直後に神経症状、麻酔様の作用がみられ、特に600 mg/kgでは1回目の投与直後に顕著にみられました。しかし、その後に何度か投与しますと、この麻酔様作用はみられなくなっていきました。そして600 mg/kgでは体重増加の軽微な抑制が認められました。また、肝臓の重量の顕著な増加が200 mg/kg以上で認められました。
以上の3つの結果から、本試験に用いる高用量はわずかな毒性兆候はみられるが、耐えうる用量として400 mg/kgが適切であると判断しました。そして、中用量を200 mg/kg、低用量を100 mg/kgとしました。
結果を示します。高用量の400 mg/kgで1例に肝部分切除の投与直後に一時的な失調歩行が認められたほか、体重増加の抑制や一時的な摂餌量の減少が認められるものがありました。
3ページ、図1に体重推移のグラフを示しました。このグラフで一番下にある折れ線グラフはo-ニトロアニリンを投与したもので、有意差の*が付いていますが、これは対照群の95%の体重でした。体重で若干の低下がありました。
次のページの表1にo-ニトロアニリンによる肝臓の重量を示します。400 mg/kgでは肝臓の絶対重量がコントロールの140%、相対重量が150%まで増加しておりました。また、200 mg/kgでは絶対重量で123%、100 mg/kgでは115%となっております。肉眼的に肝臓自体は肥大しておりました。また、病理組織学的には肝臓の小葉中心性の肥大、これが高用量のみほぼ全例で軽度に認められました。ただ、水腫様や脂肪変性は認められておりません。腎臓は相対重量のみ最高用量で若干、107%と増加しております。腎臓の病理組織学的変化はありませんでした。
表2には、o-ニトロアニリンによる免疫組織化学的変化を示します。フェノバルビタール陽性対照では、陽性細胞巣の数、陽性細胞巣の面積いずれもコントロールの2倍ぐらいの値を示しております。投与群では400 mg/kg、200 mg/kg等に有意差がついていますが、減少傾向で有意差がついておりますので、このo-ニトロアニリンも肝発がんプロモーション作用は陰性であると考えております。
以上です。
○平林座長 ありがとうございました。
こちらも肝発がんプロモーション作用はないという明らかなデータで、ただ、肝臓には毒性があるということだと思います。御質問、御意見等はございませんでしょうか。
○小野寺委員 中心静脈周囲の肝細胞の肥大があって肝重量が増えていて、肝臓の生化学的なデータというものには何も影響なかったのでしょうか。測ってないのでしたか。
○日本バイオアッセイ研究センター 本試験では血液生化学はしておりません。
○小野寺委員 予備試験か何かでは。
○日本バイオアッセイ研究センター 予備試験ではγ-GTPが上がりました。
○小野寺 γ-GTPが上がっているということは、肝細胞障害が何か起きているということですね。そうすると、再生性の変化はなかったのでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター 本試験ではありませんでした。
○小野寺委員 あと、GST-Pの数に有意差がついていましたが、これは減少でついているのですよね。この減少でついている理由というのは、結局、全体的な肝臓自体が大きくなったので、同じ程度に陽性細胞が出ていたとしても、単位面積当たりの数が少なくなったというふうにカウントされているという考えでよいのでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター 肝細胞自体が大きくなっているということから、相対的に数が減少しているということだと思います。
○小野寺委員 ありがとうございました。
○津田委員 肝臓が腫脹すると、切片の面積が大きくなるので単位面積当たりの数が少し減ります。したがって、そういうことも加味していると思われます。だからといって、数値をそのまま読んで、抑制するというようには結論できません。肝臓が腫れた場合は、測るエリア当たりの数は減りますから、そういうことが起こります。
○小川委員 大勢に影響がなくて申し訳ないのですが、γ-GTPは上がっていたということですが、ALT、ASTも上がっていたということでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター それは、有意差はつけていませんでした。
○小川委員 有意差はつかなかったということでね。なので、肝細胞なのか胆管系なのか少しわからないところはあるかもしれません。
○平林座長 よろしゅうございますか。
そうしますと、この剤は肝臓には毒性があるということが示されてはおりますが、少なくとも、プロモーション作用はないということで結論したいと思います。
ありがとうございました。
では次、3番目のアセト酢酸アニリドに移りたいと思います。ボゾリサーチセンターの方、お願いいたします。
○ボゾリサーチセンター 資料1-3、まずアセト酢酸アニリドのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験の結果について御報告いたします。
被験物質はアセト酢酸アニリドで、状態が固体で白からごく薄い黄色の結晶粉末で、水に溶けにくく、アルコール、アセトンにはやや溶けやすい感じではありましたので、コーン油に懸濁させて投与に用いております。製造・輸入量は平成27年度で2,000トン、用途は染料、顔料中間体となります。
有害性情報ですが、ラットを用いた急性毒性試験では、経口投与のLD50が800~6500 mg/kgと推定されております。また、細菌を用いる復帰突然変異試験では陰性又は陽性、ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験において陰性と判定されており、当該物質は平成26年度の遺伝毒性WGで「強い遺伝毒性あり」とされた物質となっております。
方法ですが、先ほどの方法と同じで、各群の匹数が25匹からスタートとなっております。
投与量の設定を決めるに当たり、まず、用量設定試験を2試験実施しております。まず1週間の反復経口投与の用量設定試験と、部分肝切除を用いた2週間の反復経口投与の用量設定試験です。1週間の用量設定試験については、投与量を200、600、2000と設定しました。2000 mg/kgの投与群では全例が死亡し、600 mg/kgでは軽度な体重増加抑制、対照群としてマイナス6%でした。血液化学検査による貧血、胸腺重量の減少、脾臓重量の増加がみられましたが、用量を制限するような変化ではありませんでした。
続いて、部分肝切除を用いた2週間の用量設定試験を行い、投与量を100、300、1000 mg/kgとしました。1000 mg/kgでは5例中4例が死亡しましたが、100 mg/kg及び300 mg/kgでは明確な毒性は認められませんでした。
したがって、本試験では600 mg/kgを高用量に設定し、以下約3で除した200と60 mg/kgを中及び低用量と設定いたしました。
結果となります。600 mg/kgでは一般状態として皮膚の蒼白化がみられ、被験物質投与の影響により、1例が死亡いたしました。また、体重増加抑制が認められ、対照群と比較してマイマス10%でした。剖検では200 mg/kg以上の投与群で脾臓の大型化がみられ、病理組織学的検査においては、600 mg/kgの投与群で肝臓のクッパー細胞の褐色色素沈着と髄外造血もみられております。本被験物質は、溶血性貧血とメトヘモグロビン血症を誘発することが知られておりますので、上述の変化は、メトヘモグロビン血症による溶血性貧血及び造血亢進を反映した変化と考えられました。
それ以外には、肝臓への被験物質の影響を示唆する変化として、60 mg/kg以上の投与群で肝重量の増加がみられており、200 mg/kg以上では小葉中心性の肝細胞肥大もみられております。しかし、被験物質投与群のGST-P陽性肝細胞巣の単位面積当たりの個数及び面積は、対照群と差はありませんでした。陽性対照群では体重、摂餌量、肝重量の増加、小葉中心性の肝細胞肥大がみられ、GST-P陽性肝細胞巣の単に面積当たりの個数と面積のいずれにも有意な差がみられており、本試験の妥当性が示されております。
以上の結果から、アセト酢酸アニリドは本試験条件下においては、肝発がんプロモーション作用は示さないと判断しております。
以上となります。
○平林座長 ありがとうございました。
この剤も肝毒性はあるものの、プロモーション作用はないという結果だと思われますが、御質問、御意見等はございませんか。
○若林委員 GST-P positive fociのことについてはよく理解できましたが、説明を聞いているうちにちょっと奇異に思ったのが、1-4の有害性情報のところで、このもの自体はここに書いてあるとおり「強い遺伝毒性あり」ということなのですが、細菌を用いる復帰突然変異では陰性又は陽性で、染色体異常試験では陰性で、だけれども強い遺伝毒性ありと、理解しがたい文章になっています。これは遺伝毒性部会の方でこのようにしたのでしょうか。OECDと厚労省の論文を引いていますが、染色体異常でも陰性で、Amesで陽性又は陰性、このようなものがどうして強い遺伝毒性になるのかという点が理解できないのですが。
○平林座長 何か説明はございますか。
○ボゾリサーチセンター 公開されている情報でしか分からないので、これ以上のことは分かりません。
○小野寺委員 事務局にお聞きしたいのですが、この物質というのは遺伝毒性WGで結論を出したのですよね。
○増岡化学物質評価室長補佐 はい、そういうことになります。
○小野寺委員 そのときの資料とか、今は分からないと思うのですが、発がん性を懸念したり遺伝毒性の有無から予測するときには、こういう遺伝毒性の結果というのは、例えば発がん性があったにしても、本当に直接的なものなのか、二次的なものなのかというところの判定をするときの根拠に乏しくなってしまうので、このへんのところは私も奇異に思っていたので、「強い遺伝毒性」というのは本当に結論だったのか、また、そのときの理由について、後ほど分かれば教えていただきたいと思います。
○増岡化学物質評価室長補佐 分かりました。後ほど、確認をさせていただきます。
○平林座長 そうですね、陰性と陽性で実際には陰性の試験が頼りないとか、そういうような理由でもあれば分かりやすいと思います。よろしくお願いいたします。
では、その点の整理はしていただくこととして、他によいでしょうか。
では、この剤につきましては、肝毒性はあるものの、肝発がんプロモーション作用はないということにしたいと思います。
ありがとうございました。
では、続いてヘキサン酸をお願いいたします。
○ボゾリサーチセンター 続きまして、資料1-4、ヘキサン酸のラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験の結果について御報告いたします。
ヘキサン酸は、透明から薄い黄色の液体で、水に微溶、エーテル、アルコールに可溶ですので、コーンオイルに溶解させて投与に使っております。製造・輸入量は平成27年度で10万トン、用途は香料、潤滑油、化粧品原料となっております。有害性情報はラットの急性毒性試験のLD50が1907~6440 mg/kg、遺伝毒性としてBhas試験の陽性が平成29年度で示されております。
方法は先ほどと同様ですので割愛させていただきます。
投与量の設定理由になります。こちらも1週間の反復投与と、部分肝切除ラットの2週間の反復経口投与の用量設定試験を行っております。
まず1週の試験ですが、投与量を100、300、1000 mg/kgとしまして投与を行いました。100、300、1000 mg/kgで5日間投与したのですが、体重、一般状態ともに変化が見られませんでしたので、最後に倍量にして200、600、2000 mg/kgとして2日間投与しましたが、明確な毒性は認められませんでした。
また、部分肝切除ラットを用いた2週間の反復経口投与の用量設定試験を、投与量を200、600、2000 mg/kgと設定して行いました。2000 mg/kg投与群では、対照群と比較してマイナス5%程度の軽度な体重増加抑制がみられましたが、用量を制限する重篤な毒性ではないと判断いたしました。
したがって、本試験ではLD50の半量以上に相当する2000 mg/kgを高用量に設定し、以下、公比約3で除した600、200 mg/kgを中及び低用量に設定いたしました。
結果になります。中用量の600 mg/kgでは体重及び肝重量の高値がみられました。2000 mg/kgでは被験物質投与の影響により2例が死亡し、摂餌量の減少もみられましたが、被験物質による一般状態の変化、体重、剖検時の肉眼所見、肝臓重量の変化、また、肝臓の病理組織学的変化はみられませんでした。被験物質投与群のGST-P陽性肝細胞巣の単位面積当たりの個数及び面積は対照群と差はありませんでした。また、陽性対照群は体重、摂餌、肝臓重量の増加、小葉中心性の肝細胞肥大などがみられ、また、GST-P陽性肝細胞巣の単位面積あたりの個数と面積いずれにも統計学的な有意差がみられ、本試験の妥当性が示されております。
以上の結果から、ヘキサン酸は本試験条件下において、肝発がんプロモーション作用を示さないと判断いたしました。
以上となります。
○平林座長 ありがとうございました。
この剤は逆に体重が少し増えて、絶対重量もそれにつられて増えていて、肝毒性は特になく、プロモーション作用も示していないというデータかと思いますが、御意見、御質問等はありませんでしょうか。
○小野寺委員 結果についてはこのとおりだと思うのですが、1つ気になるのは、先ほどのバイオアッセイさんのところは、用量の上げ方を公比2でやっていますが、ボゾさんは公比3です。ものの毒性の出方の立ち上がり方とか、感受性があるのですが、このヘキサン酸の場合、LD50値が2000~6000 mg/kgくらいと3倍ぐらいあるからどれが本当にLDなのかというのはわからないところがあります。もう1つは予備試験で1000 mg/kgを最高にやりならが何も起きなくて、2000 mg/kgでやることになり、その2000 mg/kgでもほとんど毒性が出ず、その値を最高用量に設定したときに、ほんとうに公比3で落として低いところまでやる意味があるのかという点を考慮すると、これはいろいろ考え方があると思いますが、できれば公比2ぐらいで落としていった方が最低用量のところが低過ぎずに設定できるというところがあると思います。
ものによってそういうことを考えて、投与量を設定した方がよいのではないかという気がしました。
○ボゾリサーチセンター そうですね、ありがとうございました。
○平林座長 ありがとうございました。
他に何かございませんでしょうか。
○小川委員 教えていただきたいのですが、この剤の場合は、普通の遺伝毒性はしなくて、形質転換試験だけを行ったということになるのでしょうか。こちらの黄色のファイルでいただきました、常備資料2のところで、検討するストラテジーとして、判断が不可であったりした場合に、形質転換の方に行くという流れだったと思いますが、これは遺伝毒性の結果がネガティブでBhasを行ったという形でよろしいのですね。
○若林委員 普通はそうです。
○小川委員 遺伝毒性をやっている方は、Bhas形質転換試験を遺伝毒性というと、「こういう書き方をしてもらっては」とおっしゃる方もいますので、ここではそう書いた方がよろしいのでしょうか。
○若林委員 いえ、このBhasは遺伝毒性試験としては扱っていなくて、プロモーション作用があるか否かということを見ていますので、表記としては少し変えた方がよいと思います。
○小川委員 そうですね。なので、有害情報の1.4のところで、遺伝毒性ではなく、in vitro形質転換試験とかそういう形で書かれた方がよろしいかと思います。
○平林座長 御指摘ありがとうございました。それは記載整備でお願いしてよいのでしょうか。
○増岡化学物質評価室長補佐 わかりました。御指摘を踏まえて、記載を修正いたします。
○若林委員 ありがとうございました。
では、この剤については、肝発がんプロモーション作用は示さないという結論です。ありがとうございました。
○増岡化学物質評価室長補佐 先ほどのアセト酢酸アニリドですが、平成26年度の発がんWGで、in vitro試験として3つほど試験結果を提示しております。Ames試験が2つと染色体異常試験です。Ames試験の1つが、これは厚生労働省の変異原性試験ですが、比活性値が1240であり、これを取ったということになります。残りの2つについては、もう1つのAmes試験の方はNTPのもので、これがNegative、それから染色体異常試験、これは厚生労働省の染色体異常試験ですが、こちらもNegativeとなっています。
結論としてはこのAmes試験のPositiveの結果が出たものを取ったということのようです。
○若林委員 はい、わかりました。
○平林座長 引き続きまして、3,4-ジメチルフェノールということで、DIMSの方から御説明をいただきたいと思います。
○DIMS では、資料1-5、3,4-ジメチルフェノールのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験の結果について報告させていただきます。
3,4-ジメチルフェノールは、外観及び性状が白色からごく黄色の結晶から粉末です。製造・輸入量は平成27年度で2,000~7,000トン、用途としましては、医薬、農薬、酸化防止剤、レジスト樹脂原料となっております。有害性情報ですが、急性毒性としましては、ラット経口でLD50が727 mg/kgとなっております。形質転換試験では陽性と判定されております。
試験方法としましては、今までの試験と同様ですが、本試験では各群20匹でスタートしております。また、陽性対照群はフェノバルビタールナトリウムを500 ppmの濃度で混餌投与して、実施しております。
次に、投与量の設定理由です。本試験を実施するにあたり、被験物質の投与量については4回の実験の結果を基に設定いたしました。
まず、ラットに被験物質を0、200、300、400及び500 mg/kg/dayの用量で2週間反復投与した結果、一般状態において被験物質投与による毒性影響がみられたものの、その他では、血液生化学的検査において軽微な影響がみられたのみであったため、より高用量を検討するために、750及び1000 mg/kg/dayの用量で各1匹に13及び2日間反復投与いたしました。その結果、750 mg/kg/dayでは投与7日目にPHを実施しましたが、その後も生存しており、1000 mg/kg/dayの用量では毒性作用が強く、投与2日目に切迫屠殺したことから、用量設定試験における投与量は750及び900 mg/kg/dayといたしました。
次に行った試験ですが、用量設定試験では本試験と同様にDEN処置及びPHを実施し、被験物質を3週間強制経口投与いたしました。その結果、一般状態で被験物質投与による影響がみられ、肝臓重量の有意な高値も認められました。ただ、体重において被験物質投与による影響がみられなかったことから、900 mg/kg/dayの用量が本試験において最小限の毒性兆候を示すのに十分な用量であると判断いたしました。
今までの3つの段階の試験では、製造元が富士フイルム和光純薬のものを用いて実施しておりましたが、本試験で使用する被験物質の製造元が東京化成に変更になったことから、毒性発現の差を確認して、本試験で用いる投与量を設定するために、再度、0、600、750及び900 mg/kg/dayの用量で2週間の反復経口投与をいたしました。その結果、一般状態において被験物質投与による影響がみられ、600 mg/kg/dayより体重の有意な低値又は低値傾向、肝臓重量の有意な高値又は高値傾向がみられたことから、本試験ではDEN処置及びPHを実施することを考慮して、750 mg/kg/dayを最高用量として、以下、公比3で除した250及び80 mg/kg/dayに設定いたしました。
結果になります。図1の体重の結果ですが、被験物質に起因した体重の変化はみられませんでした。一般状態では250の濃度から被験物質による影響がみられ、用量に関連して頻度が増強いたしました。摂餌量でも250 mg/kgの群で7週以降、750 mg/kgの群で第5集以降に有意な高値が認められました。肝臓重量(表1)では、250 mg/kg群において相対重量の有意な高値が、750 mg/kg群においては絶対及び相対重量の有意な高値がみられましたが、病理組織学的には被験物質に関連した変化は認められませんでした。
次に,
表2の肝臓のGST-P陽性肝細胞巣の個数及び面積の結果ですが、250 mg/kg群において対照群との間に有意な低値がみられたものの、用量依存性はなく、減少性の変化であることから、発がんプロモーション作用は検出されなかったと判断いたしました。陽性対照群ではGST-P陽性肝細胞巣の個数及び面積のいずれも有意な高値が認められたことから、肝発がんプロモーション作用が明確に検出され、本試験の妥当性が示されております。
結論といたしまして、3,4-ジメチルフェノールは,
本試験条件下において肝発がんプロモーション作用はないと判断いたしました。
以上です。
○平林座長 ありがとうございました。
プロモーション作用はないということは明快に示されていて、肝臓の相対重量の多少の増加はあるものの、特に病理学的所見はないということです。
それから、このBhas42の記載は修正をお願いいたします。
○小野寺委員 結果ではないのですが、途中で検体のメーカーを変えたということですが、CASナンバーがしっかりしていて、純度も99%以上で、変えたことによる変化というのは何が起きるのでしょうか。
○DIMS メーカーが変わることによって、性状が多少変わりました。和光の製品は褐色の結晶で、外観と性状が異なりましたので、一応確認をするという目的で2週間の反復投与を実施いたしました。
○小野寺委員 この溶媒はオイルでしたか。
○DIMS 媒体はコーンオイルです。
○小野寺委員 コーンオイルに両者を溶かしたときに、物性的には変わらないのですか。
○DIMS 物性的には変わりませんでした。ともに溶解いたしました。
○小野寺委員 もっと純度が低いものとか、光学異性体が出るとか、いろいろ不純物とかいわゆる純度がもっとばらつくのであればメーカーによって製造の原料が違ったりして、生物学的にというのもありますが、そのぐらいの微量で、生物学的に違うということは、そういう不純物とか何かに、すごく生物活性がある場合しか考えられないのです。99%がそのもので、ましてや量が大量ではないわけで、LD50でも結局1000 mg/kg以下ぐらいのところで反応が起きるものに関して、それほど差があるとは思わなくて、物理学的な違いでやってみたということですね。
○DIMS はい。
○小川委員 結果が明快に出ていると思いますが、本試験で自発運動の低下とありますが、前のところも一般状態で影響があったと記載があります。それは同じ自発運動の低下ということでよろしいですか。
○DIMS そうです。自発運動の低下がみられました。
○小川委員 わかりました。
○平林座長 若林先生、津田先生もよろしゅうございますか。
では、この剤につきましては、肝発がんプロモーション作用はないということで、次にいきたいと思います。
最後ですが、メタクリル酸エチルの結果について、引き続きお願いいたします。
○DIMS 資料1-6、メタクリル酸エチルのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験の結果について説明させていただきます。
被験物質のメタクリル酸エチルですが、性状は無色透明の液体で、水には不溶です。製造・輸入量は平成27年度で2万トン、用途は塗料、繊維処理剤、接着剤、成形材料原料となっております。有害性情報ですが、急性毒性としましてラットの吸入におけるLC50が8300 ppm、ラットの経口におけるLD50として14800 mg/kgとなっております。また、形質転換試験では平成29年度に陽性と判定されております。
試験方法ですが、先ほどと同様ですので省略させていただきます。投与量は0、100、300及び1000 mg/kg/dayで媒体はコーンオイルを用いました。
本試験における被験物質の投与量設定ですが、事前に行いました2つの予備試験の結果に基づき、設定いたしました。まず2週間反復投与毒性試験を行いまして、被験物質を0、500、1000及び2000 mg/kg/dayの用量で強制経口投与をしましたところ、1000及び2000 mg/kg/dayの群で肝臓の相対重量の有意な高値が認められ、2000 mg/kg/dayの群では体重の低値傾向も認められたことから、次に行いました用量設定試験では、投与量を1000及び2000 mg/kg/dayとしました。用量設定試験では本試験と同様にDENの処置及び肝部分切除を実施し、被験物質を3週間強制経口投与いたしました。その結果、1000及び2000 mg/kg/dayの群において、体重と摂餌量の有意な低値が認められ、さらに肝臓の相対重量の有意な高値も認められたことから、1000 mg/kg/dayの用量で毒性兆候を示すのに十分な用量と判断し、本試験における用量は1000 mg/kg/dayを最高用量とし、以下公比約3で除した300と100 mg/kg/dayに設定いたしました。
結果の説明に移ります。4ページ目の図1に体重の推移を示しておりますが、最高用量1000 mg/kg/dayの投与群では体重及び摂餌量の有意な低値が認められました。表1に肝臓の重量を示しておりますが、肝臓重量では1000 mg/kgの群において相対重量の有意な高値が認められました。しかしながら、病理組織学的には肝臓に被験物質投与の影響は認められておりません。表2に肝臓のGST-P陽性肝細胞巣の解析結果を示しておりますが、被験物質投与群において対照群との間に統計学的な有意な差は認められず、発がんプロモーション作用は検出されませんでした。
一方、陽性対照群では体重、摂餌量、肝臓重量の高値と病理組織学的にはフェノバルビタールの投与により認められる変化が観察され、またGST-P陽性肝細胞巣につきましては、個数及び面積のいずれも有意な高値が認められたということから、本試験の妥当性が示されております。
以上の結果から、結論といたしまして、メタクリル酸エチルは、試験条件下において肝発がんプロモーション作用はないと判断いたしました。
以上です。
○平林座長 ありがとうございました。
結論は明快に示されていると思います。Bhasの形質転換試験のところの記載整備はしていただくとして、それ以外にコメント、御質問等はございませんでしょうか。
○小野寺委員 細かいことなのですが、肝臓の相対重量が1000 mg/kgのところで有意差がついているのは、重量が増えたのは体重が減った結果というか、その関係でそうなったということでよいのでしょうか。いわゆる肝臓に障害があったとか、組織学的に変化があったということではないのですよね。
○DIMS 組織学的に変化はみられませんでした。
○平林座長 ほかに。津田先生もよろしいでしょうか。
○津田委員 全体のことで後から言います。
○平林座長 小川先生もよろしいでしょうか。
では、この剤につきましては、この系においてプロモーション作用は認められなかったということでございます。ありがとうございました。
そうしましたら、全体を通じて御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。
○津田委員 陽性コントロールのフェノバルビタールですが、500 ppmで経口投与している場合と、強制投与をしている場合とありますが、これはある意味で物差しの基準になっていますから、違う投与方法というのは問題ではないかと思います。
○平林座長 ありがとうございます。これは何かお作法はあるのでしょうか。
○津田委員 オリジナルは経口投与なのですが、施設によっては、フェノバルビタールの解釈によっては発がん性があるということになるので、それでやらないのかと思いますが、ここで見ても実際にデータが違いますよね。
○平林座長 事務局は何かありますか。
○増岡化学物質評価室長補佐 これは、オリジナルは経口投与でした。これは経口投与に原則的に合わせるべきと考えればよろしいのでしょうか。
○津田委員 ヒストリカルデータと比べるのであれば、500 ppmで餌に混ぜた方がわかりやすいと思います。
○日本バイオアッセイ研究センター 当方では、強制経口投与で行っているのですが、実際のところ、動物の体重が200グラム前後、餌の食い分が10グラム前後ということですので、計算しますと500 ppmということになります。同じものを投与しているとは思いますが、投与方法によって変わってくる可能性は確かにあります。
○平林座長 菅野先生。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 別のテーマでもよいでしょうか。フェノバルビタール以外の話でもよいでしょうか。
○平林座長 まずフェノバルビタールの話を先に終わらせましょう。
どのように整理しましょうか。
○増岡化学物質評価室長補佐 いずれにせよ、統一する必要があるのか、また、するとしてどうするのかというのが提起されたわけですから、事務局の方でも整理させていだきまして、方法については、また委員の皆さまにお諮りするような、WGの場でやるか個別にお聞きするかというところもございますが、そこのやり方も含めて、あらためて整理の上、お諮りできるようにしたいと思います。
○平林座長 ありがとうございます。
では、フェノバルビタールの話はとりあえずここで終了にして、菅野先生。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 もしγ-H2AXを腎臓で染めるとしたらの話ですが、まずDENは、ダブルストランドブレイクは起こさないのでしょうか。
○小川委員 肝臓では起こすと思いますので、少なくともγ-H2AXで見たときに、ダブルストランドブレイクではきれいに核内のfociを作ってくるのですが、それ以外でも細胞増殖が上がってくると染まってくるので、いろいろな機序で染まる可能性はあります。先生が懸念されるように、DENが打ってあるのでわかりにくくなるのではないかという点は、確かにあるとは思うのですが、それはやってみないと、そのバックグラウンドのデータがないので。肝臓に関してはDENで若干上がってきますが、この系で膀胱をやったことがないので影響はわかりません。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 肝臓もありませんか?
○小川委員 肝臓は、肝中期発がん性モデルではやっていません。DEN単独ではやったことはありますが。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 partial hepaticをかませた系ではやったことはないと。
○小川委員 やったことがないです。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 そうすると、肝臓、腎臓、膀胱あたりを横並びに見ておかないと危ないですか。膀胱だけじゃ足りないですよねとか、そこら辺を伺いたかったのですが。基礎データがあれば飛ばしたいのですが、なければ肝臓も見とけとか、当然腎臓は毒性が出ているので見たいとはこの系では思います。そうすると何臓器かなという御質問の前に、DEN-DENの作用と投与剤の作用が混ざったときにどう反対するかなということでお伺いしました。
○小川委員 もし可能であれば、肝、腎、膀胱的なところを見ていただくと、やはり、研究的な色彩がまだ強いことになるかもしれませんが、今後、このモデルに組み合わせるとかそういったことでも非常に有用な知見が得られるのではないかと思います。
○平林座長 ありがとうございました。
ほかに。
○若林委員 繰り返しになりますが、GST positive fociについていろいろな化合物でずっとやっていますので、津田先生が御指摘されたように、フェノバルビタールとか、とにかくアッセイ法は3つの機関で、少なくともプロトコルは統一しておいた方がよいと思います。
○平林座長 ありがとうございます。
○小川委員 私もそう思うところではあります。少なくとも、今までのものに関してはこの常備資料の7のところのプロトコルには、例えば動物に関しても何という規定は特にないということもありますし、このフェノバルビタールに対しても既知の陽性対象(フェノバルビタール等)という記載なので、今までやっていただいた分に関しては特に問題はないと思いますが、今後を考えると合わせていった方がよいだろうと思います。
たまたま、今までのデータを振り返って見たことがあるのですが、この条件でIGした場合のコントロール群やフェノバルビタール群の値はいつも非常にステーブルです。また、この投与量の餌の場合も実験の間ではまったく変わりはなく同じぐらいきちっと出て、そして陽性に出ているということなので、行われたデータに関しては特に問題はないのだろうと思いますが、おっしゃるとおり、今後に関してはできれば1つのプロトコルの方が、ものが言いやすいと思います。
○平林座長 津田先生、何か補足はありますか。
○津田委員 今までに関しては問題ないし、実は今、本当に2倍近くになっているか比べてみたのですが、投与0とフェノバール投与群とで今までの経験ですと2倍になるので、その辺はおよその値内に収まっていますが、ただ、手法としてやはり揃えた方がよいと思います。
○平林座長 わかりました。そうしますと、実現のしやすさといったことも含めて御検討いただくと。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 請け負う側としての確認ですが、検体の溶媒に合わせるという考えもあったと思います。どんな溶媒を使ってもフェノバールは出るということになっているのだとは思いますが、現場としては、そういう「合わせ」という発想も常にあるものですから、そことの関係を考えていただくとよいかと思います。統一するのに反対ではないのですが、過去のデータと突き合わせていただいて……。
○試験機関 フェノバールについて、使う側としてお話をさせていただきたい点が1点あって、フェノバールを粉末飼料に混ぜるということは、粉末飼料は動物室の中で飛散します。ということは、実験者側の労働安全衛生の部分で粉末飼料での実験というのは非常にやりにくいというところがあります。
それと、粉末飼料にフェノバールを入れたときに、どれぐらいで餌の交換をされるかはわかりませんが、どの程度の期間の安定性があるのかという点もはっきりしたデータが多分ないと思います。そういう意味では、やはり媒体の影響はもちろんありますが、強制経口投与の方が実験する側としては安全と感じております。その点も含めて御検討いただけたらと思います。
○平林座長 ありがとうございます。
ヒストリカルデータと比較できないということになるとそれは問題だと思いますが、その限りにおいて、実現可能で安全な方法で実行することは大事な視点だと思いますので、そのへんを含めて、できれば統一的な方法が見つけられるとよいと考えます。事務局の方で整理していただくということでしたので、その点、よろしくお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 わかりました。
○平林座長 それでは、議題1はこれで終了ということでよろしいでしょうか。
それでは、議題2、遺伝子改変動物による発がん性試験の期間延長について、お願いいたします。御提案をいただいた日本バイオアッセイ研究センターの方から御説明をいただくということになっているか思います。お願いいたします。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 説明させていただきます。
お手元資料の2です。3枚めくったスライド番号7からがデータ集になっております。図1、2、3、4、5、6となっております。まずそちらの図1から説明させていただいた方がよいと思います。
これは2-ブロモプロパンのrasH2のバイオアッセイで実施したデータです。簡便にするために、コントロール群と最高用量群だけにしています。致死性の腫瘍と、淡い線があって点が飛んでおりますが、それは最終解剖時の陽性率です。雄の2-ブロモプロパンは、解剖する前まではほとんどコントロールと最高用量群の差がなく、最後に1匹だけ致死性の腫瘍が出ました。雌の方は、御覧のように、やはり投与群とコントロール群の差があまりなく、計画解剖しますと非致死性の腫瘍が見つかる場合は、このように差が出てまいりますが、実際には複数の臓器の陽性なものですから、統計処理をしますと非常にマージナルなデータになってしまいまして、群間の有意差がつかないことがほとんどであって、たまにPeto検定でやっと陽性につくという状況がずっと続いている、というためのデータでございます。ひと言で言うとそういうことになります。
図2は二酸化チタンの例ですが。これも解剖してみるまでは1匹も死なないで6ヶ月を費やして、そして解剖してみると若干あるのですが、これも有意差をつけようとすると非常にきついと、これが雌雄でそのような状況です。
図3は4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(4-オクチルフェノール)という物質ですが、これも似たような傾向で、雄雌共に26週のところまでほとんど致死性腫瘍がなく、解剖時にも多くても2、3割で、それもすべての臓器を併せての頻度ですので、臓器ごとに統計をとっても有意差をつけることが難しいというデータになっています。
図4はポジコンでありまして、MNUを投与した場合には一応rasH2はきれいに反応しているということから、動物自体は感受性がないわけではないということを示しております。
次の図5です。こちらはネズミがp53のヘテロになります。p53ヘテロの方はさらに、26週の間ほとんど何も起こらないという傾向が強いデータです。先ほどと同じ、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(4-オクチルフェノール)の雄雌のp53が図5であります。肉眼的に致死性腫瘍が出ずに、解剖時にやっと1個、2個見つかっています。
図6がナイトロジェンダイオキサイドということであります。こちらについても投与群、対照群双方ともほとんどゼロの線を這うという形になります。
それで現場としては、図7を見ていただきますと、これは遺伝子改変動物が野生型に比べてどのぐらい早く出るものかというバイブル的な論文から引いているのですが、実は我々のデータもほぼこれに沿っております。要するに6ヶ月ですと、対照群がまったく出ないところでトリートメント群が1割と2割の間で出ると、それで6ヶ月目で殺してしまっているというのが現状であるということが文献上でもわかってはおったのですが、実際にやってみて、特にp53の方でその傾向が強いのですがrasH2もその範疇に入るという結果になっております。
図8については、釈迦に説法で申し訳ないのですが、普通の野生型の動物のがん原性試験というのは、実は2年ぐらいでちょうどやめるということを決めた経緯というのは、どうも生涯発がん試験、これは六ヶ所村でやって有名な田中らの、ばく露した後に全動物が死ぬまで飼ったというすごいデータですが、これで見てもわかるとおり、一番腫瘍の発生が統計学的に感度良く見つかるのは、ワイルドの動物でちょうど2年あたりで殺しているというところに合っています。ですから、経験上あるいは先達の人たちが、人間で発がん性のある物質をラットで何本か流されて、きれいに有意差が出るところは3年以上生きるネズミのちょうど2年ぐらいのところで殺せば、溶媒対照群、無処置対照群も減ってきますが、それにさらに投与による影響が重なるあたりが、一番感度がよいということで、そこらへんを選ばれていたのだろうと思います。
次の図9で御説明いたしますと、この遺伝子改変動物のナチュラルヒストリーがちょうど図9でいう、6ヶ月と9ヶ月の間の赤く塗ったところで立ち上がってくる白箱(□)のところがちょうどそれにあたるわけです。それに対して投与群が黒(■)のように上がっていきますが、野生型でちょうど2年でラットをやめているというところは、どうも我々の遺伝子改変動物では6ヶ月では早すぎるのではないかということが経験的にはっきりしてきました。
際限なく延ばすつもりは全くないですし、あまり延ばし過ぎますと溶媒対照群の方法の腫瘍発生頻度が上がってきて、有意差がつかなくなりますので、ちょうどよいところは6ヶ月と9ヶ月の間のどこかにあるはずだということに気が付いたといいますか、実際のデータを見てもそう思えるようになったということです。
そこで、図10ですが、やはり感度を保った状態で一番よいところで観察したいとすると、溶媒対照群がだいたい1割~1割5分、2割あたりの自然発生を得た段階で試験を終了するのがよいだろうと、Terminal Sacrificeをすると。そうすると、両群がゼロあるいはほとんど統計差が出ないぐらいゼロに近い試験が今多発しているのに対し、溶媒対照群も上がってきたところで、より正確に2年間の発がん試験と同じような条件で、この遺伝子改変動物の発がん性も見ることができるはずであるということで、最長9ヶ月を目途に試験の期間を延ばさせていただけないかと、そのことをお願いに上がった次第です。
このスライドがすべてなのですが、どこでやめるかということは、9ヶ月まですべての試験を引っ張る予定ではございません。ずっと見ていまして、溶媒対照群の死亡動物が上がってきて、もちろん肉眼解剖でまず見るわけですが、それで腫瘍ができているということが見えてきたところで、その段階で、もちろん投与群でどのぐらい増えているかも常に見ているわけですが、そこで一番差が出るところであって、2年間の野生型動物でのちょうどよいところにあたるところと同じところだということを病理の人たちに日々見ていてもらって、そこでやめるということで、今の段階では可変的でございます。最長9ヶ月、もしかすると7ヶ月、8ヶ月半あたりで終わるかもしれませんが、このような延長をお願いしたいということであります。
文字に書きますと、6枚目のスライドになります。紙では3面目の下になります。「計画の変更点」で、1.遺伝子改変動物(rasH2及びp53+/-マウス)による発癌性試験の期間を最長9カ月まで延長可能(可変可能)とする、ということであります。2.対照群の途中解剖例が10%ないし15%程度に達した時点で試験を終了することを目安とする。達しなかった場合は9カ月で終了する。最後は、3.試験終了の最終判断は、病理担当者の腫瘍発生の経過状況の判断に基づき、試験実施責任者が下すということで、病理担当者の観察をベースに決めていきたいということであります。
以上でございます。
○平林座長 ありがとうございました。
確認ですが、ということは、先生はこの系において、自然発症する発がん頻度が、試験ごとに変わるということをおっしゃっているのでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 試験ごとに変わらないとは思っていますが、ただ、rasH2の方は長い間で見ていると若干ぶれる傾向があります。p53の方が安定しているように見えます。
rasH2は御存じのとおり、遺伝子の作りがトランスジェニックであるので、若干ぶれるようでありますが、そういう意味では、逆にヒストリカルコントロールが揃う方向にいくのではないかと思っているわけです。何かの要因で、定点で切っているこの実験では、何にも出ないと思われます。ですからそれほどドリフトはしないと思いますが、今の段階ではあまりにも出てこないので、多分、このネズミとしての一生のスパンの中では早めに殺しすぎているのではないかという指摘でございます。とにかく、統計処理が非常にしにくいデータばかり出てきているということであります。
○平林座長 もう1つ確認ですが、先生が遺伝子改変で見られているデータは、野生型のデータはないということですか。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 一部あります。それで、どうも野生型でやっているよりも、早くやめると弱く出ています。そういう傾向があります。
実は、このプロジェクトではないのですが、前の交付金でやらせていただいている実験は、2年間のラットと26週間のrasH2というペアがいくつか走っています。それで比較することができます。それもこれに入っているのですが、やはり弱いです。
○小野寺委員 言っていることはよくわかりますし、今までヒストリカルデータが出てこなかったのでこういう議論ができなかったのは、やはり、今までやってきた実験データが積み重なってきたからできると思います。そもそも、トランスジェニックマウスを使った発がん性試験の意義というのは、いかに期間を短くするかというところも目的の1つだったわけです。長ければよいというものでもなくて、短くて、最小の期間でということで、26週と決めたのは、26週以下ではなく、26週以上はいくらやっても構わないのです。今までの既存のがん原性試験のラットの24ヶ月といっても、最低が24ヶ月で30ヶ月を超えてはならないという幅で皆さん決められた最低の基準でラットのがん原性試験=2年間になっているけれども、その辺のところはすごくフレキシブルで、それ以上長くても本来ならば構わないのです。
このトランスジェニックの場合は、定量的なところよりも定性的で、その時点において発がん性のトレンドがあるか否かだけをまずは見たいという点も、期間を決めた際に主眼としてあったわけです。データにも出ていますが、26週を過ぎると急激に腫瘍の発生率が上がってきます。1年ぐらいまでだと結構な腫瘍の数になり、例えばコントロールが60%で投与群が80%で有意差がないといえるかどうかとか、微妙なところになるところを精査するために、コントロールが絶対に出ないという時期をもっていて、26週以上ということ、最低26週ということにしたのです。26週まで長くもっていてということではなく、最低26週ということで多分決められたと思うので、別に26週以上やって、菅野先生が提案されたように、コントロールで腫瘍が出てきて、ある程度に検体の影響を網羅的に見られるという時期までもってくることに関しては、構わないと思います。
ただ、そうなったときにいくつか問題があって、1つ、実験ごとに実験期間がばらついてくる可能性があります。片や26週やったけれども、片や36週と10週ぐらいの差が出てきたときに、実験ごとにコントロールのあれがばらつくというのが1つです。そこを、出てきた腫瘍の発生率によって、同じように10%~15%ぐらいのところで、先ほどおっしゃった遺伝子の改変したところの入り具合によって、コピー数とかいろいろなところによって出方が違うので、その辺のぶれを発生率で補正しようという考えも別によいと思います。
ただ、2つ目の問題として、いつ実験を終了するかという判断を経時的に、病理学的な判断というのですが、マクロ的な判断しかできません。例えば皮下腫瘍など目に見えるところの腫瘍で10%ぐらい出てきたなと思って解剖してみたら、コントロールに20%、30%の腫瘍が入っている可能性も、病理学的にみれば微少なものからであると思います。そうなったときに、最初のところで、コントロールがだいたい10~15%ぐらい出てくるという想定が、果たして基準として確定できるかというところが心配です。いろいろな試験を横並びで見たときに、比較ができなくなる可能性というのはあると思います。
ですから、結論から言うと、菅野先生が実験の中で26週以上を投与したいというのであれば、それは構わないと思うのですが、ただ、実験終了の期間をどうやって統一するかだと思います。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 ですから、投与群の方でやめる気はなくて、対照群の方でやめようとしています。ですから、動物の方にぶれる要件がなければ、長くやっていると例えば7ヶ月半とか、その辺で固定してくると思っていますが、今のところはまだやっていないのではっきり申し上げられません。rasH2の方が例えば7ヶ月で、p53の方が8ヶ月半とか、そういうふうにどこかに収束すると考えています。
ただ、おっしゃるとおり、今のところ致死性の腫瘍でしか判定できませんから、クアンタムに発生するものですから、多少前後するとは思います。仰せのとおり、急峻に立ち上がります。9ヶ月以上やる気はないというのはそこです。今、6ヶ月は立ち上がり前なのです。特にp53はそうです。ですから、さすがに立ち上がる前で止まっているというのは、陽性に出るべきものを全部、先に刈り取っているのではないかという危惧がございまして、一度、6ヶ月以上ということで、黙ってやってしまえばよかったのかも知れませんが、一応、26週というのが、いろいろと文章になっているものですから……。
○小野寺委員 26週とは言っていなくて、26週以上と言っていると思います。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 そうですか。
○小野寺委員 そして、先ほど私も申し上げましたが、がん原性試験でラットは24ヶ月以上で、なおかつ30ヶ月以内にしろと、それ以上引っ張ってもダメだよということは、全部が自然発生腫瘍の確率が多くなるということで、ある程度、最低の時間を決める一方、最長も決めているのだと思います。その中で皆さんが便宜上一番短い時間でやっているということだと思います。期間が長くなればお金もかかりますし、検体も多く使います。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 こちらの資料にはお金や時間のことはまったく載せていませんが、それも全部計算はしてあります。
そういうことであれば、ぜひ、こういう判定の方法で26週以降の適切なところでやめるということでよろしいでしょうか、というお問い合わせにすり替えさせていただければそれでもよろしいのですが。
○小川委員 ちょっとまだよく理解できていないところがあるのですが、この図5で示しているのは、途中までは肉眼の病変か死亡で、最後は解剖したときの病理的な所見ということでよろしいのですね。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 p53に関しては、まだ肉眼です。ですが、解剖したときの肉眼所見です。ですから、内臓に腫瘍があったということが肉眼的に確認された動物の頻度です。
○小川委員 図7で論文から引用していただいているのは、Tumor incidenceはミクロの所見ということで、ミクロの所見がスポンタンは6ヶ月以上で上がってきているけれども、このミクロの所見が上がってきているのが、死亡と必ずしも一致はしないわけですよね。なので、この6ヶ月以上9ヶ月のところで死亡例が10%というのとイコールになるのが、どのように見たらよいのかというところがあります。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 そこはイコールではございません。ですが、傾向としてちょうどこのレンジに合っているということで引用させていただきました。詳細には多少ずれていると思います。
○小川委員 私ももしかしたら短いのではないかという気持ちは、わかるのですが、ICHの方を持ち出してよいかわかりませんが、この26週という期間を決めた経緯としては、ILSI、HESIの方でp53のヘテロについては、NIHとFDAとインダストリーが何ケミカルかたくさんやって、プロトコルのデータを決めて、日本においてはrasH2について担当して、いくつかのケミカルのデータをもって一応26週と決めたという経緯があります。
たしかに、p53の方はもしかしたらもう少し長い方がよいのかもしれないというディスカッションが、それを決めた2001年のToxicologic PathologyのILSIの論文にあるのですが、それを覆すということだとすると、それなりのデータがないと少し難しいのではないかというところが気になります。
あとは、やはりプロトコルを誰が読んでもフォローできる、プロトコルに従わなかった場合は、こういう理由で従わなかったというのが書けるような形にしなくても試験としては大丈夫なのだろうかというのが気になります。こういうファジーな感じのプロトコルというのは、一般的に、特には問題ないということになるのでしょうか。
○小野寺委員 先ほど言ったように、26週以上でやってはいけないという決め方ではなかったと思います。最低26週なので、結局、上限と下限を決めておいて、下限が最低26週は投与しましょうと、それ以上やればコントロールで腫瘍が出てくるので、弱い発がん性のものは検出できないだろうと、強い発がん性であればそこまでいかなくても26週前に出てきます。だけど、そこまでいっていて、もう出てこなかったならば、もうよいとしようと、それで30週やっても、多分今までやった実験がないだけの話で、それは受け付けられないかというと、受け取ることはできると思います。
ただ、そのときに、コントロールにおいても、先ほども言いましたが、20%ぐらい出てきたと、そうなって今度は投与群が40%出てきたときに、最終のところから後は検定でやるのだと思いますが、そういう考え方からいけば、30週になって90%と100%でも比較できるわけですよね。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 だんだん上にいけばいくほど有意差はつかなくなりますので、それは生涯試験をやればわかる話ですが、それをやる気は全くありません。ですから、小野寺先生がおっしゃっていただいたように、26週が最低限だとおっしゃっていただけるのであれば、我々はさらっとそのようにやりましたと言って、計画変更できたのですが、やはり小川先生がおっしゃるように、ICHではということで比較的26週でやめなさいというシグナルがくるものですから、それで、書類上もGLPでやるとすると、いろいろ制約が出てきたりするものですから、もちろん、可変式にさせていただくとしたら、全部、それに合わせて書類を書き直します。もし、ICHの方も26週……。
○平林座長 ICHはたぶん26週推奨だったと思います。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 その推奨というのが、我々には絶対命令に変わる傾向があるものですから、あるいは飼っている場所とかいろいろな問題で、うちは背景が出にくいのかもしれませんが、そこはわかりません。
○小野寺委員 例えば、26週というのはそんなに厳重に数値として規定されていて、それを絶対にやらなければならないかというと、最低26週を網羅していればよいというだけの話であって、もしも、10週でやめても構わないのです。なぜ、26週までやらなかったのだというコメントはこないと思います。
○平林座長 明確に発がんを見ることができればということですね。
○小野寺委員 見ることができればよいと思うのです。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 ですから、仰せのとおり、このMNUみたいなものはこんなに引っ張る必要はないかもしれません。
○小野寺委員 MNUは発がん物質で、こういうふうに上がりますよというので……。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 いえ、ですから、要するに、早くやめてもよい場合もあると。ただ、今回は、念押しで長く、9ヶ月まで引っ張るようにプロトコルをそのようにさせていただいてよろしいでしょうか、というのが1つと、小野寺先生にいわせればそれは当然によいとおっしゃってくださったようにも聞こえるのですが。後は判定基準ですよね。
○小野寺委員 もちろん、基準を最終的に26週の6ヶ月から36週を最高にして決めたとなった場合に、先ほども申しましたが、どこで止めたかという実験終了時の基準を明確にしておかなければ、他との比較ができなくなりますから、その辺のところがクリアできれば、例えば、2年間のラットの試験でも必ずしも104週ではなく、105週とか107週とかっていうところでぶれがけっこうあるのです。ただし、2年間の期間は投与しておいてということで、がん原性を始めたときには投与終了後から4週ぐらいの非投与期間をおいてから解剖しなさいということで実験をしたこともあるのです。そういうところからいけば、最低限の期間さえ守っていれば、あとはいつやめたかの理由がきちんとつけられれば、そして、これからデータを出していただくときに、その基準がきちんとぶれないように、これからいろいろな実験で検討していただければよいと思います。
ただ、こういうものがICHの中で公に全世界でというか、このトランスジェニックを使った試験でそういう方向になるかはまだ議論とデータが必要だと私は思うのですが、いかがでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 私としては非常にありがたい御意見です。
○平林座長 角度を変えて、図1の2BPの雌のデータがありますが、これだと今コントロールは10%にいっていますよね。これを実際にどこまでやるという判断をされるのでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 これは青い線が10%を超えていません。
○平林座長 これが踏みとどまっているからということですね。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 赤い線は10%超えていますが、青い線は……。
○平林座長 でも、ほとんど10%に近くなっています。ですから10にするのか15にするのかでもだいぶん違うというふうに感じるわけで、その判断をどうされるのかというのが今ひとつよくわかりません。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 10を超えて15です。それと、もしこれで投与群が振り切れる方に上がっていれば、逆に先ほどの早く終わってもよいという話にもなります。
具体的にこの場合にどうしますかというお問い合わせに関しては、これは若干延ばす可能性があります。もう1匹死ぬまで待とうという感じになると思います。といいますのは、臓器別にしてしまうと、これは有意差がこの試験はすべてPeto検定でしかつかないぐらいなのです。rasH2は全部病理診断が終わっていますので、これは病理診断の結果です。ですから、計画解剖込みの値は最終結論です。顕微鏡で見て投与群で半分以下の動物に腫瘍がなんらかあって、顕微鏡で見て、対照群に何らかの腫瘍が3割強あり、これを臓器別に分類すると、非常に少ない数同士での、0、1、2、3といったところでの統計処理になって、群間比較はつかないで、Peto検定でやっとつくというのが、今のこのrasH2のデータのほぼすべてです。群間で有意差がついたのは、このrasH2のではありません。全部Peto検定かCochran-Armitageでしかつかないのです。
○平林座長 ただ、小野寺先生もおっしゃっていたと思いますが、感度の問題ということと、もう1つは、これはあくまでも定性試験で定量試験ではないので、傾向として発がんが認められるか否かという点が最終結論だと思います。そこからすれば、強い発がん性物質はこうなるし、先生の名前の入っているベンゼンによる発がん試験などでも(p534欠失マウスの発がん頻度は)立ち上がりますが、コントロールは400日まで全く出ないというようなデータがあったと思います。これはあくまでも感受性の問題で、このトランスジェニックで早期の試験を行うにあたり、ワイルドタイプよりも感受性がよいというふうに考えていたわけではなかったと思います。
ですから、2年やるよりは早く出るけれども、だからといって、コントロールと比較したときに、どれだけきちんと見ているかというのは、剤の性質によって違うのではないかと思っています。出るものは出るし、出ないものは出ないというふうにきちんとデータはありますか。多分、トランスジェニックマウスとかノックアウトでも、その感受性の問題で、半年で切っているからこれまで見ることができなかったということは、そのとおりかもしれないですが、見ることができていないものもたくさんあったと思います。
したがって、それをどう考えるかというところですが、弱い発がん物質を9ヶ月まで延ばした結果、微妙なところで、一応、傾向としては見ることができましたという結果であれば、それはそれでよいのかもしれません。ただ、やはりプロトコルについて、今一つ判断基準がはっきりしないということに皆さんの懸念があるのだと感じています。
もともと、期間としては最低が26週で、延長されることについては特に問題はないと、若林先生もうなずいてくださっていますし、よろしいのではないかと思います。
○若林委員 化合物と動物の状態で、ケースバイケースで見ていけばよいと思いますが、目的はその化合物が発がん性を示すか、示さないかということの問題だと思います。
○津田委員 その物質によって期間を決めるということですか。そういうことにならないですか。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 実際にはそういうことはしないと思います。そういう操作ができる試験ではないと思っています。
○津田委員 ここのところで差がきれいに出たからやめてしまえとか。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 それはないです。
○津田委員 それをやると、非常にバイアスがかかってくるのでやめた方がよいと思います。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 逆に我々はこれから出る可能性があったものを全部その手前で殺しているのではないかということを申し上げにきたのです。
○若林委員 ここでやったならば、まったく意味がないということですね。
○津田委員 その開発者の野村先生辺りはその辺やっていないのですか。
○小野寺委員 この議論というか、こういう話が出てきたのは今回初めてです。発がん性の動物試験の期間というのは、できるだけ短くしたいと、長くしたいという議論はほとんどなかったのです。それで、サイエンティフィックに長くやれば出てくるだろうと言うけれども、どこに線を引くかというところで、この時点で出てこなかったらば「よし」としようと、そういう決め事だったと思います。例えば半年でやめて、1年たったならば出てくるかもしれないという物質であっても、今までは「半年では出てきませんでした」という結論だったと思います。その物質に本当に真の発がん性であるか否かというハザード評価をしているわけではなく、rasH2を使って半年やったときには出たきませんでしたというリスク評価だったのです。
その辺のところを、出てくるまでやるのが真なのか、それともある程度の閾値といいますか、いろいろな物質との比較をするために、期間を決めて、その期間で出てこないときは「よし」とするのか、それは考え方だと思います。そして、今のところは、先ほどから言っていますように、動物試験の期間は「ここまではやりましょう」として、これ以下でやるときにネガティブでも認めませんということであって、期間を長くしてポジティブに出しましょうという議論はなかったのです。
ですから、リサーチとしてやる分にはいくらやっても構わないと思います。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 わかりました。そういう意味では、我々の今回のこの立場はちょっと特殊かもしれません。
というのは2つありまして、1つは2年のフルのラットとペアでrasH2というペアリングがされている試験が走っています。要するに、ラット・マウスのフルを2本やる代わりに、片方を遺伝子改変にしなさいと、そのときにフルで出ていて、rasH2がもう少しやれば出そうなところ、途中で潰しちゃったというパターンがあるのです。それをどうするかというのが1つです。
もう1つは、実は、これは多臓器二段階の代わりに入れさせていただいた経緯がございます。あの場合は、期間はやはり26週で切っていましたか。要するに、あちらもイニシエーションをかけていますから、当然ベースラインが出るのです。ですから、その差で見ているので、その後釜であるという意味において、26週で切って出なかったからそれでよしとしてよいのかというところが我々は分からなくて、その2つの理由において……。
○小野寺委員 それで、多臓器のことに関しては、どのぐらいが適切なのかというのはわからないのですが、最初の1番目の中で、ラットのフルでやって陽性で出て、rasH2でやって26週で陰性で出なかった、これを9ヶ月やれば出て両方ともポジティブになるかという考え方については、私は今のところは必要ないと思います。なぜかというと、むしろ逆の方で、ラットの2年間をやったけれどもネガティブでした。それで半年のトランスジェニックをやったときにポジティブのトレンドがありましたという場合、この結果の判定をどうするかというのは非常に困るのであって、逆に、ラットのフルでやったものがポジティブだったならば、他の試験がネガティブでも、それはポジティブとして評価するしか今の段階ではないと思います。両方ともポジに出なければ、結果が一致しなければダメだという動物試験ではないと思います。
ですから、あくまでも、そこの時期を決めて、そこの時点での判定なので、ras H2では26週間では陰性だったけれども、それでもしも、先ほどから言っていますが、それを長くしてやりたいときには、やめる基準をプロトコルで最初からしっかりと決めておけば、それは実験としては成立するのではないでしょうか。
○平林座長 延長ということにつきましては、必要に応じてしていただいて、結果を見せていただくということで、ただ、屠殺の……。
○小野寺委員 そうなのですが、結局、実験でやるものに関してはよいけれども、仮の話として、今までは6ヶ月の中で決めて、そこの中の結果で判定してきたのですが、これから9ヶ月までやってポジティブでした、ネガティブでしたという結果が出たときに、では今までの物質と評価が異なる可能性はないのかと、それはやはり評価をしているときに基準がぶれるとなると、今までの結果をどこまで信用してよいかと、もしかしたらもっと長くすれば出たのではないかという議論が出てきたときには、それを抑えることができないわけです。
ですから、それを変えるときには、全部、ある程度のプロトコルに載って……。先ほどのフェノバルビタールでさえ投与方法を一緒にしようかという議論が出ている中で、そういう実験期間を不確定にするというのは、評価が難しくなってくるのではないかと思います。実験で出す分にはいくらでも構わないと思います。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 私は、差が出ないものは当然出ないと思っています。
○平林座長 ということは、期間を延ばして確認したいということになりますか。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 それはそうです。2年とか1年半よりは明らかに短いので、普通の試験をやるよりもかなり短縮はされています。しかし、短縮し過ぎたために、動物の持っている本来の性能を発揮しないうちに終わっている可能性が高いというのが私の危惧です。ちゃんと性能が出ているのにもかかわらず、差が出ないものはたくさんあって、それはそのとおりです。差があるものははっきりと差が出ます。それだけの話じゃないかと思っています。ですから、精度が上がるということで、偽陽性を増やそうとか、そういうことは思っておらず、本当にこんな状態でやめてしまって、偽陰性と逆に言われないでしょうかと危惧しております。
○小川委員 今、1群が25匹以上ということは、3匹死んだらということなのか、その死亡が腫瘍による死亡であることが確認できてというお話だとすると、次の日にはすぐに標本ができてという条件じゃないと、どんどん変わっていくわけですよね。9ヶ月と決めてあって、それで死亡が出た場合はそこのところで、やめますというのであれば、一定の条件になると思います。原則9ヶ月としていて、例えば死亡例が何匹か出たときには6ヶ月以上のところで、そこでやめるというのであれば、比較的ぶれないものになるかもしれませんが、その判定の方法が、先生が引用されているのが、腫瘍の発生というのと死亡というのとが少し入り交じっているような感じがしまして、対照群の途中解剖例が10%ないし15%に達した場合ということなのですが、これは死亡であって、腫瘍を持っている動物なのかがわからないということになると、私が懸念するのは……。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 いえ、それは病理学的に判定してということです。
○小川委員 それを数日のうちにきちっとやって、即座に判定するということを先生のところがするということは、ほかの受託者にも同じようにやっていただかないと、これはプロトコルなので、先生の言っていることは私もよくわかりますし、この6ヶ月というのは少し短いのではないかという懸念はわからなくもないのですが、やはり、試験という性格を考えると、どこかでプロトコルはきちっとフィックスして、誰がやっても同じようにできるというものでないと、そのデータを出したときに、外からアクセプトされることが非常に難しいことにならないかということを懸念します。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 ありがとうございます。9ヶ月にして、それに至る前にモリバントがこれ以上超えたらやめるということでも、我々は全く構いません。実質上変わりません。そのようにさせていただければ、非常にありがたいと思います。
○小川委員 それはバイオアッセイさんだけがやるということでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 これは、我々だけです。これは、公募の方ではなくて、交付金の事業の中でやっていますので、今のところ我々だけです。国から直接いただいております。
○平林座長 すいません、時間がもう5分も過ぎてしまいました。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 逆に、9ヶ月をめどにして、それ以前にモリバントがコントロール群で15%を目安に超えた瞬間に、ターミネートするということで一応基本線を引いておいて、なお、病理診断が1日、2日で間に合った場合には、その結論も考慮に入れるというふうに、しかしそれはやらなくてもよいと、でも、やればよりよいという形にしてもよいです。モリバントだけにしますか。そうであれば、実質上、誤投与とかあまりないですからそれは大丈夫なのですが。
○小野寺委員 今、菅野先生がおっしゃっていることはよく分っていますし、それをやることに関しては別に反対もしないのですが、その結果をどのように使うかと、試験としてやって、こういう公の場での評価に使うのかどうか、それとも、そういうものをやってデータを集める、リサーチとしてやる分には私はいくらやっても構わないと思いますが、評価をするときのプロトコルとしても、我々のこの場所だけで、では6ヶ月を9ヶ月まで延ばして、何かの条件があったらそれを短くしましょうというようなプロトコルを一概に決められるような状況ではないと思います。
短くする分に関しては、今の発がん性試験の中でも全部書いてあります。例えばコントロールに何パーセントの死亡が出たときにはそこで実験をやめなさいとか、腫瘍死があったときにはもっと短くしなさいとか、短くする分にはあるけれども、今までの概念からして、「最低ここまではしましょう」というところの最低の線を決めていて、今までのトランスジェニックの26週間というのを逆に最低9ヶ月にしましょうと、短くする分にはプロトコルを変えていくことはできますが、できるまで延ばしていきましょうという議論は、先ほども言いましたが、今までなかったのです。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 実質は同じなので。
○小野寺委員 いえ、実質は違います。もしも出なかったら最高9ヶ月までやらなければならないということになってしまうのです。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 ですから、実質同じなのです。
○小野寺委員 ですから、それを26週から9ヶ月39週までというのをここで決めてよいのかはよく分かりません。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 本当はもっとデータがあれば、30週とかでもよいのかもしれないのですが、分からないのです。誰もやっていませんから。実はp53は40週までやっている試験はたくさんあるのです。ですから、40週近くまではやっている試験は、文献上はたくさんあるので、39週は妥当ではないかということで提案をさせていただいております。
ですから、もう少し細かいことを言うと、実は、何回も申していますが、p53とrasH2では、結果は少し違うだろうとは思っています。rasH2の方が短いはずです。ですから、p53は40週に近くなるのではないかと思います。
両方の動物を一緒に扱おうとすると……。
○平林座長 それはコントロールの話であって、感度とはまた別の問題だと思います。ですから剤によってコントロールはずっと出なくても、感受性が高い物質であれば発がんはしますよね。ですから、それはp53だからとか、rasH2だからとか、そういうことではないように思います。
ここでは、試験ということではきちんと決める必要があるということで、39週にするのであればバリデーションも必要になるということになりますし、データが足りないというのはもちろん仰せのとおりということかと思います。今回の試験について、39週まで御覧になるというのは、それは見ていただいて差し支えがないという御意見なので、それは見ていただくことにしていただいて、それより以前に、決めた数以上に死亡があれば、その時点でやめるということで了承いただけるということでよろしいでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター・菅野所長 ありがとうございました。
○平林座長 はい、ありがとうございました。
予定した議題が終わりました。この他、事務局からありますか。
○増岡化学物質評価室長補佐 特にございません。
一応、事務局で整理するとしておりましたものにつきましては、また追って整理の上、お諮りしたいと思います。
○平林座長 以上で本日の発がん性評価WGを閉会いたします。ありがとうございました。