平成30年度第1回化学物質のリスク評価検討会(発がん性評価ワーキンググループ)議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

平成30年9月12日(水)10:00~11:59

場所

労働委員会会館 612会議室

議題

  1. 既存情報による発がん性評価について
  2. その他

議事

 
〇増岡化学物質評価室室長補佐 定刻となりましたので、ただ今より、第1回「発がん性評価ワーキンググループ」を開催いたします。委員の先生方におかれましては、お忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。
 本日の委員の出席状況でございますけれども、皆様御出席をいただいております。また、特別参集者といたしまして、前座長の西川先生にも参画いただいております。
 それでは、議事に入ります前に座長の選出をさせていただきたいと思います。事務局といたしましては国立医薬品食品衛生研究所、安全性生物試験研究センター長の平林委員にお願いしたいと考えておりますが、いかがでございましょうか。
(異議なし)
 ありがとうございます。
 それでは、平林委員に座長をお願いすることとし、以下の進行は座長にお願いいたします。
〇平林座長 おはようございます。
 それでは、不慣れではございますが、御指名ですので座長を務めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、配布資料について、事務局の方から御説明をいただけますでしょうか。
〇増岡化学物質評価室長補佐 それでは議事次第に配布資料の一覧を記載しております。こちらと照らし合わせつつ確認いただければと思います。
 まず、資料1-1「文献調査を踏まえた平成30年度発がん性評価について」、資料1-2「文献による発がん性評価物質一覧(平成30年度第1回発がん性評価ワーキンググループ)総括表」、資料1-3「文献による発がん性評価物質一覧(平成30年度第1回発がん性評価ワーキンググループ)」です。また、参考資料として、参考資料1「発がん性評価ワーキンググループ参集者名簿」、参考資料2-1「職場で使用する化学物質の発がん性評価基準骨子」、参考資料2-2「既存情報による発がん性評価のうち、専門家による発がん性評価の基本的な考え方」です。また、参考資料2-3として、文献情報を、1枚紙に加えまして水色の厚めの紙ファイルを机上配布しております。タグ付けておりますが、物質それぞれに通し番号を付け、複数の文献がある物質については枝番を付しております。
 また、これも机上配布となりますが、黄色い紙ファイルを配布しております。こちらは常備資料ということで、発がん性評価ワーキンググループのときにはこういったものを添付させていただければと考えているものです。
 資料としては以上になります。不足等ございませんでしょうか。ございましたら、事務局までお申し付けいただければと思いますが、よろしいでしょうか。では、資料は以上となります。
〇平林座長 よろしいでしょうか。
 では、本日の議題に入ります。議題(1)「既存情報による発がん性評価について」について事務局から説明をお願いいたします。
〇増岡化学物質評価室長補佐 それでは資料1-1を御覧ください。本発がん性評価ワーキンググループでは、平成25年の設置以降、文献調査に基づく発がん性の評価を行っております。当初は、主に化審法のスクリーニング評価において年間製造輸入数量の全国合計が10トン以上のものを中心に、その中でもIARCで1~2Bに分類されてはいないけれどもそれ相当の可能性のあるようなものについて、発がん性評価を行っていただいておりました。また、現在は、1トン以上10トン以下の物質を対象として、資料1-1の1.のところにも記載がございますが、「一般化学物質製造数量等届出のあった物質」の中から、2.にあります選定基準によって選んだものについて、昨年度及び今年度に分けて評価を進めていただいております。
 物質選定の基準については、1もしくは2に該当するものということで、国際がん研究機関(IARC)又は他の評価機関において発がん性分類がなされていないが、発がん性試験等が実施されている物質、あるいはIARCの発がん性分類が3(ヒトがん性について分類できない)又はEU等他の機関において同等の評価であるが、発がん性試験情報の公表が評価後と考えられる物質、こういったものを対象に、61物質ほど選定しております。
 このうち、36物質につきましては昨年度、ワーキンググループにおいて検討いただいておりまして、そのうち1物質、N,N-ジメチル-パラ-トルイジンについて2B相当以上との評価をいただいております。
 本日は、残りの25物質について評価していただくということで、資料1-2に対象となる25物質を掲載しております。こちらにつきましては、事前に各委員から評価をいただいております。一覧の中で「検討結果」とあるところが各委員に判断いただいたものとなります。〇、判断保留、空欄があります。その意味ですが、〇は、文献などからIARCの1~2B相当と判断されるもの、空欄は、文献からは1~2B相当ではないと判断されたものです。判断保留は、いずれとも判断できないものとなります。
 次に資料1-3を御覧ください。先程1-2で御覧いただいた物質について、それぞれ動物試験の文献をこちらに記載しております。欄としては#1~5までございますが、時代を追って新しい文献から古い文献へ遡る順でそれぞれ1、2、3、4、5というふうにナンバリングしております。また、委員より事前にいただいた判定理由も付記しております。
 本日の検討の進め方です。25物質を5物質ごと委員に分担いただき、事前に検討いただいております。まず事務局より5物質ごとに概要を御説明し、その後、分担いただいた委員より補足説明をいただき、その上で御検討いただくというふうに進めさせていただきます。
 それでは、早速ですが、最初の5物質です。通し番号は飛び飛びですが、6番(ジクロロビス(η(5)-シクロペンタジエニル)チタン(IV))、8番(1,3,2-ジオキサチオラン-2-オキシド)、12番(p-ブロモフェノール)、17番(2-ブロモ-2-(ブロモメチル)グルタロニトリル)、18番(1,2,3,4-ブタンテトラオール)です。物質名につきましては、長いものもございますので省略しつつやらせていただければと思います。
 まず、6番の物質(ジクロロビス(η(5)-シクロペンタジエニル)チタン(IV))です。91年の文献がありますが、これはラットを対象とした2年間の経口試験が行われたものです。委員からは、「NTP試験で雌雄のラットの前胃に前がん病変~乳頭腫がみられ、雄では扁平上皮がんも観察されている。これらは背景データよりも高頻度であるが、マージナルの頻度であり、ヒトへの外挿性への議論はあると考えられる。雌雄にみられていることから、2B扱いになると考えられる。」ということで、判定としては1~2B相当と判定いただいております。
 8番の物質(1,3,2-ジオキサチオラン-2-オキシド)です。74年の文献があり、こちらはマウスの雌を対象に皮下あるいは腹腔内へ塗布する456日間の試験となっております。委員からは、「雌マウスを用いた皮膚塗布、皮膚2段階、皮下、腹腔内投与で明らかな造腫瘍性は示さなかった。これらの試験は定型的ではなく、雌マウスのみであることから十分な結論は得られない」として、判断保留という判定をいただいております。
 次に12番目の物質(p-ブロモフェノール)です。マウスについて18週の経皮の試験が行われております。「雌マウスを用いた限定的なプロトコールの経皮投与による試験結果では、発がん性はみられていない。十分な情報が無い」ということで、判断保留という判定をいただいております。
 17番目の物質(2-ブロモ-2-(ブロモメチル)グルタロニトリル)です。こちらは2010年の文献が2つあります。それぞれラットに対する2年間の経皮投与とマウスに対する2年間の経皮投与試験です。「ラット及びマウスを用いた経皮ばく露試験が実施されている。皮膚刺激性はみられるが、造腫瘍性は示していない。使用形態からは、これ以上の試験は求められていないが、環境からのばく露による発がん性リスクについて情報が無い」ということで、判断保留という判定をいただいております。
 18番目の物質(1,2,3,4-ブタンテトラオール)ですが、96年と94年の文献があります。96年の文献は、ラットに対する混餌投与、104週~107週の試験に関するものです。94年の文献は、ラットに対する混餌投与による78週の試験に関するものです。「雌雄のラットを用いた2年間の混餌投与試験において、投与に関連した発がん性はみられなかった」また、「雌雄のラットを用いた78週の混餌投与による慢性毒性試験において、投与に関連した増殖性病変や腫瘍性病変はみられていない」ということで、1~2Bには相当しないという判定をいただいております。
 以上です。
〇平林座長 ありがとうございました。
 それでは、補足を小川先生の方からお願いいたします。
〇小川委員 小川でございます。よろしくお願いいたします。
 6番の物質(ジクロロビス(η(5)-シクロペンタジエニル)チタン(IV))につきましては、NTPの試験で、ラットの雌雄でequivocalという評価がされているということで、雌の方では発がんまでには至っていないというところもあって、実際評価のところでは初めは2Bとしていたのが、3に落とされるという可能性もあるデータではないかと思われますが、通常の動物の実験からすると雌雄で懸念があるということになりますと、2B相当に初めはなるのではないかと考えております。御意見をいただけますと幸いですが、いかがでしょうか。
〇平林座長 物質ごとに進めてよろしいでしょうか。
〇増岡化学物質評価室長補佐 それで差し支えございません。
〇平林座長 では、今の小川先生の説明に対して御意見をお願いいたします。
〇西川委員 このグリーンのファイルの6番、その7ページにデータが出ています。これはラットの試験で雌雄ありますが、neoplastic effectsというところを見ても、コントロールに比べてゼロに対して1、ゼロに対して2で、これはまったく増えているか分かりませんから、NTPはequivocalなエビデンスであると判断しているわけです。たしかに雄雌同じような傾向はありますが、これは2B相当以上とはとてもいえないような気がしますが、いかがでしょうか。
〇平林座長 聞き洩らしたかもしれませんが、マウスでは発がん性はないということでしょうか。
〇小川委員 マウスでは実験がされていないということでデータがありません。equivocalというのをどういうふうにとるのかということで、西川先生がおっしゃるように、発がんの症例数も非常に少なく、これはとる必要がないという判断もあり得ると思います。
 1つ教えていただきたいのですが、AmesでTA 100だけがwithout S9でpositiveというのは、これはあまり有意な所見としてとらなくてもよいことになりますでしょうか。
〇若林委員 いえ、without S9で有意であれば、遺伝毒性はあります。
〇小川委員 そういう点も少し考慮する必要があるかということですが、いずれにしても発がん性までは言う必要はないということであれば、保留にした方がよいというデータだと考えます。
〇平林座長 メカニズムはどうでしょうか。
〇小川委員 これにつきましては前胃と腺胃と両方に増殖性の病変やインフラメーションがあるということですので、継続的な刺激が起こり得る物質だろうということは考えられます。Amesのデータで多くのものはNegativeですが、1つだけPositiveというものがどのように関与しているのかという点は、まだグレイな部分があるということになるかと思います。
〇平林座長 津田先生、いかがでしょうか。
〇津田委員 このデータを見る限りでは、ラットには発がん性はないと判断します。ですから、2Bに相当するのは少し難しいと考えます。
〇平林座長 判断保留という形にはなりますか。
〇津田委員 そうですね。一応、変異原性がありということですので、まだ2B相当の1つ下の、もしこれがIARCの評価に変わったら3になると思います。
〇平林座長 小野寺先生は。
〇小野寺委員 同じ意見で、結局最終的に「2Bに該当するか」と言われると、そこまで強力な発がん状況はありませんが、「完全にネガティブか」と言われるとそうでもないので、今の段階では、動物試験では情報があるけれど、津田先生が言われたような判定になるのではないかと思います。
〇平林座長 そうしますと、遺伝毒性があるということと、発がん性については十分なデータが得られていないということから、ヒトへの発がん性の推測が難しいということで、判断保留ということでよろしいでしょうか。
〇小川委員 異存ありません。
〇若林委員 先回も委員の中で2Bのカテゴリーの考え方が少しずつずれて、そこが多々議論になったことがありましたので、議論を進める前に、これ(参考資料)でよいと思いますが、もう一度「2Bとは」という点についておさらいをしてから進めた方がスムーズにいくと思います。今から20数件あってそこで議論になりますから、確認は数分で済むと思いますので、確認をして進めた方がよいと思います。
〇平林座長 津田先生にお願いするのがよろしいかと思いますので、お願いしてもよろしいでしょうか。
〇津田委員 原則としてGLPに対応したCROにおいて、雄雌ある程度の数で有意差をもって腫瘍が発生しているという結果でsufficient evidenceと判定された場合には、それだけで2B、すなわちヒトに対して発がんの可能性があるということになります。
 例外的ですが、9月10日(月)に行われた化学物質のリスク評価検討会の有害性評価小検討会でも問題になったケースがありまして、IARCでsufficientではなくlimited evidenceで評価物質が2Bになっていたのですが、それについてPreambleのまとめを確認してみましたら、その物質は代謝がヒトでオペレートする可能性の強い証拠があり、その証拠からlimited evidenceでも2Bの根拠になるということでしたので、そういうルートもあります。
 しかし、2Bは基本的には、もちろんヒトのばく露が多少あるということもありますが、動物だけからいうとsufficient evidenceであるということ、そしてlimited evidenceの場合は、そのADMEがヒトでもオペレートする、そういう証拠をもってlimitedでもsufficientに近い判断をすると、この2つであります。
〇平林座長 ありがとうございました。
 では、議論を続けたいと思います。
 では、8番の物質から、小川先生お願いいたします。
〇小川委員 8番(1,3,2-ジオキサチオラン-2-オキシド)につきましては、先程事務局から御説明がありましたように、投与方法としても定型的ではなく、発がん性を評価するには十分な証拠はないということで判断保留とさせていただきました。以上です。
〇平林座長 ありがとうございます。
 御意見、お願いいたします。
〇若林委員 「十分な証拠がない」場合は、はっきりしたevidenceがあれば2Bなのですけれども、そうではないものは空白になるのではないでしょうか。発がん性があるかもしれないけれどもしっかりしたevidenceがなければ、これは2B相当ではないというように判断せざるを得ないのではないかと私は思います。もしそうでないと、判断保留がたくさん増えると思います。
〇西川委員 私も同じ考えです。
〇平林座長 そうすると、ここで得られている結果は、評価をするに十分なデータがあるということが前提で、それで発がん性がはっきりないということであれば2B相当ではなく、空欄にするということだと思います。しかし、データが不十分であるというふうに判断すれば、データ不足ということで、判断保留ということはあり得るかと思います。いかがでしょうか。
〇西川委員 その前に、この被験物質が文献8のどれに相当するのかがよく分かりませんので教えてください。
〇小川委員 名前が同じ名前ではないものがありまして、即答できないので、少し調べます。
〇西川委員 同じと考えられるものについても見てみましたが、ありませんでした。もっと別の名前かもしれません。
〇小川委員 時間がかかる可能性がありますので、次に進んで、また後日かこの時間内にできればということでお願いいたします。
〇平林座長 事務局も分かりませんか。
 では、そこは飛ばすことにします。
 12番の物質にいきます。
〇小川委員 同じ議論になるかと思いますが、12番の物質(p-ブロモフェノール)につきましても行われているのは、経皮のプロモーション試験だということですので、発がん性を評価するにはデータとしては不十分だというふうに考えております。
〇平林座長 御意見ありますでしょうか。
 他には試験はないということですね。プロモーション試験で経皮で、18週しか見ていないというところからすると、このプロモーション試験の結果として発がん性が認められなかったということではありますが、通常の発がん試験が行われていないということから、判断するに足るデータが足りないということで保留ということにしたいと思います。いかがでしょうか。
 ありがとうございました。
〇若林委員 今からずっとやっていくものは、発がん性だと判断するに足る試験が行われていない場合が多いです。その場合には判断を保留にするのでしょうか、それとも、「十分な証拠がない」というように判断してグループ2Bではないとするのか、そこのところがいつも議論が分かれるところです。多くの場合が、プロモーションの発がん試験であったり、ラットだけであったり、限られた被験物質だというもので、それらがこれからずっと出てきます。それらのものはIARCの2B相当のしっかりしたエビデンスを出すに足りる発がん実験は行われていないものだと思います。それらのものは、たぶん2Bには入らないと思います。
 3は「発がん性がない」と書いてありますが、十分な試験が行われていないから発がん性がないのか、そうではないのかは分かりません。ですから、判断を保留するのか、2B相当ではないというふうにするのか、そこは非常に迷います。
 この会の目的は、2B相当のものをピックアップするということで、判断保留であっても、空白であってもどちらでも構わないということであれば、どちらでもよいと思いますが、判断保留がたくさんあった場合には、それらのものについて発がん性があるかどうかをさらにやらなければならないという話になるのであれば、今後のいろいろな進展が大変だと思います。2B相当のものだけをピックアップするということでしたら、判断保留であっても空白であっても別にかまわないと思いますが、その点はどうでしょうか。
〇川名化学物質対策室長 まずは、これはスクリーニングということですので、この物質が2B相当以上なのか、それについてまず優先的に御判断いただければと思います。その他のものにつきましても、情報不足なのかどうなのかということは御議論いただいて、その上で結論が出ないのであれば、議事録として残させていただきまして、そういった委員の皆様の御意見も参考にしながら、2B相当に当てはまらなかった物質の今後の進め方については、また別途検討させていただきたいと考えております。
 お手元の常備資料2「職場で使用される化学物質の発がん性評価の加速化(詳細)」に、今やっている発がん性のスクリーニングの加速化のフローがございます。今、我々が先生方に御検討をお願いしておりますのが、このまん中の上から2つ目の太枠のところ「既存の発がん性に関する情報による判断」でございます。ここで、発がん性の証拠あり、いわゆるIARCの2B相当以上なのかと、そういうことを御判断いただきます。そして、これに該当するということであれば、その物質については、今後はリスク評価の候補物質として考えていくと、そういう流れに乗せようというものでございます。その他のものにつきましても、これからまたさらに新たな情報があるのか、ないのかということで情報収集であるとか、あるいはその下、今度は発がんWGではなく遺伝毒性のWGになりますが、そちらの方で遺伝毒性を見た上でさらにスクリーニングの流れを進めていくと、そのようなスキームになっております。ですから、まずは発がん性の「あり」「なし」というところで、2B相当といえるのかどうかという御議論をいただければよろしいかと思っております。
〇平林座長 ありがとうございます。
〇西川委員 今の点、まったくそのとおりだと思います。結局、2B相当以上、あるいはそうではないと2つに分けるわけです。問題は、ガイドラインに則ったきちんとした試験があって陰性なものもあるわけですから、それについては分かるような形でマーキングをしていけばよいのではないかと思います。
〇平林座長 そうしましたら、話を戻してもよろしいでしょうか。
 12番の物質につきましては、プロモーション試験しか行われておらず、データ不足ということで、判断保留と、とりあえずそういうことで進めさせていただきたいと思います。
 次の17番の物質をお願いいたします。
〇小川委員 17番(2-ブロモ-2-(ブロモメチル)グルタロニトリル)につきましても、まったく同じ議論になるかと思います。ラットとマウスを用いた経皮ばく露試験です。この試験では発がん性はないということですが、通常の発がん性評価の方法としては十分とはいえないということから、判断保留とさせていただきました。
〇平林座長 御議論をお願いします。
 これは、吸収についてのデータは何かございますでしょうか。
〇小川委員 特になかったと認識しております。
〇平林座長 経皮であっても2年間の試験が行われていますし、もし吸収についてのデータがあって、全身ばく露が期待できるのであれば、ここから判断がある程度できるのではないかと思いました。
〇小川委員 いただいたデータの中にはそういったことは見つけておりません。
〇平林座長 西川先生、こうした場合はどうしたらよろしいでしょうか。
〇西川委員 経皮ばく露試験であるからといって、必ずしも吸収のデータがあるとは限りません。おそらく付いていないと思います。NTPのけっこう古い試験のデータですから、やむを得ないのではないかと思います。
〇平林座長 2010年と書いてあります。
〇西川委員 古くないですね。発言を撤回します。
 全部の評価書を見なければ分かりませんが、これぐらいの年の試験でも付いていない可能性はあると思います。
〇平林座長 その場合、やはり経口なり全身ばく露をしていないということで、データ不足と判断すべきでしょうか。
〇西川委員 経皮ばく露試験による発がん性はない、というふうに結論できると思います。
〇平林座長 そうすると、この場合には、差し当たり「2B相当」ではないという判断が可能でしょうか。
〇西川委員 もちろん可能です。問題は、この判定を判断保留にするか、あるいは何も書かないかのどちらかになると思います。
〇平林座長 先生はどちらでしょうか。「なし」でよいでしょうか。
〇西川委員 私は「なし」でもよいのではないかと思います。若林先生、いかがですか。
〇若林委員 私も「なし」でよいと思います。2B相当を拾うか否かということであれば拾いません。判断保留とした場合、これはまた後から検討するのでしょうか。これで完全に発がん性試験をやってあって陰性となりますと、もうどこもやらないので保留としてもさらにデータが出てくることはないですし、ここで「発がん性はないから2B相当でない」として、捨ててしまってよいのではないでしょうか。
 判断保留にすると、また何度でも出てくることになるのではないでしょうか。そういうのがますます増えてくると思います。境界線上にあるのを拾ってくると、ますます増えてくると思います。動物実験がだんだんとやりにくくなってきて、データも出にくいということを考えると、これ以上は期待できないと思います。そして、ここで明らかに発がん性があるとは考えられないということになれば、もうそれは保留ではなく、「ないと判断した」というふうにやっていった方が前に進むと思います。
〇西川委員 そう思いますが、これは経皮なので、経口ばく露あるいは吸入ばく露でしたらまた違う結果が出るのではないかという小川先生のご懸念かと思いました。
〇小川委員 おっしゃるとおりで、NTPの判断としましては、普通の使用者、一般の人に関しては懸念はないということになりますが、職業ばく露などいろいろ考えたときに、経口か吸入ばく露で全身ばく露がされているということが担保されていないと、この物質は「4相当」という言い方まではできないということです。ですから、この段階で2Bにできるかといわれれば、もちろんそういったデータはないということですが、この段階では3という言い方になるのかもしれませんが、まったく懸念なく十分なデータがあるというのは言い過ぎではないかと思っています。
〇平林座長 少なくとも全身の吸収のデータがないと、これは判断ができないというところかと思います。
〇小野寺委員 まず1つは、若林先生が先程おっしゃいましたように、「判断保留」という判定は、「2B以外」という考え方と言い切って、「3かそれ以下」ということで、ただ、どれにするかは判定はまだ分からないということ、それからもう1つはしっかりしたがん原性の試験の中で、ネガティブなものはネガティブという判定でよいと思います。今回のこの17番の試験は経皮ですが、各群50匹で2年間という十分な試験期間と数を使ってターゲットを皮膚にして試験をし、そこでネガティブという結論が出ています。それで今度は経口ではどうか、静脈ではどうかという話になると、どんどん話が膨らんでいって、そういう物質はほとんどないと思います。今回、経皮ばく露試験での発がん性があったならば、他の臓器の発がん性の有無については、次の段階で検討すればよいと思います。現在与えられた資料の中で、今の時点では発がん性は認められないと結論を出すことは、大きな間違いではないと思いますが、いかがでしょうか。
 ハザード評価をするか、リスク評価をするか、それともう1つ、与えられた資料の中でどう判断するかの3つだと思います。
〇川名化学物質評価室長 先程申し上げましたが、本日は、まず各物質について2B相当といえるのかどうなのかと、そこを御判断いただくということだと考えております。それで、それ以外のものにつきましては、いろいろと懸念される点を御議論いただき、発がん性がないと判断できそうであれば、今後の検討の優先順位は下がることになるでしょうし、懸念点があり、そうした点を払しょくするような試験があれば、今後の検討については優先度を高めて遺伝毒性WGに流していくなど、そういう判断材料として使っていけるのではないかと思っております。
 ですから、いろいろと皆様から懸念される点については出していただいて、それを議事録で整理して、今後、今回の物質だけではなく、他の会で行われた物質についてもそうだと思いますが、これまでも若林先生から御指摘があったように、「判断保留」と「×」の判断基準は不明確であるというところもございますので、一回、これまで検討して2Bに相当しないとされた物質につきましても、議事録や資料を振り返りながら、整理をさせていただきたいと思います。その上で、どういう点を気にしなければならないのかということを明確にし、優先順位のリストを作って、今後のスクリーニングに流していくということで取り組んでまいりたいと考えております。
 いろいろと議論はあるかと思いますが、「これは×に近い」、「この点は気を付けた方がよい」というような御意見をいただきまして、今後それぞれの物質の留意点としてまとめるということでやらせていただければと思います。
〇平林座長 17番の物質に対する「2B相当ではない」という判断については、経皮ばく露試験であるということから少し懸念があるという見解がありました。これに対しては、限りなく空白でよいのではないかという御議論だったと思います。ただ、完全に「発がん性なし」とするのには忸怩たるものがあるというところかと思います。
〇川名化学物質評価室長 完全に「発がん性なし」とか、そういったところまで御判断を求めるわけではございません。リストに挙がった物質については、現時点では2Bにならなかったということですから、この後も新しい情報の有無も含めてウォッチリストという形で載せていくことになろうかと思います。
〇平林座長 ありがとうございます。
 では、次の18番の物質をお願いします。
〇小川委員 18番の物質(1,2,3,4-ブタンテトラオール)につきましては、十分な用量の混餌投与の試験がラットで行われておりまして、用量の設定としても特に問題のない試験が行われております。JECFAのNOAELの設定よりも高い用量で行っておりまして、それで特に発がん性のデータもないということから、むしろ×としても問題ないという物質であると判断しました。以上です。
〇平林座長 御異論はございますでしょうか。特になければこれは×ということにしたいと思います。
 ありがとうございました。
 次、事務局お願いいたします。
〇増岡化学物質評価室長補佐 では、続きまして19番(2-ヨードプロパン)、20番((4-エトキシフェニル){3-[(4-フルオロ-3-フェノキシ)フェニル]プロピル}(ジメチル)シラン)、23番(水酸化アンモニウム (アンモニア水))、41番(ジブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛)、67番(2-ジメチルアミノエタノール)までの5物質となります。
 19番の物質(2-ヨードプロパン)です。75年の文献があり、マウスへの静脈内投与24週の試験において、低及び高用量で有意に肺腫瘍が増加したが、それに用量依存性は認められなかったとされています。委員からは「プロモーション作用など特殊な発ガン性試験、動物数の充足性、観察項目が限定され、IARCの基準に該当させる判断として不足する」との理由で判断保留という判定をいただいております。
 20番の物質((4-エトキシフェニル){3-[(4-フルオロ-3-フェノキシ)フェニル]プロピル}(ジメチル)シラン)です。91年に2つ文献があり、ラットの104週の混餌投与、マウスの97週の混餌投与に関する試験で、いずれも発がん性は認められませんでした。委員からは「2種の動物で2年間投与し全身評価した結果であるため」との理由で、判定としては「1~2Bには相当しない」という判定をいただいております。
 23番の物質(水酸化アンモニウム (アンモニア水))です。92年、85年、72年と合わせて4つ文献があります。1番目の文献はラットの24週の飲水投与、2番目の文献もラットの24週の飲水投与、3番目の文献はマウスへの経口投与、4番目の文献はマウスへの飲水投与となっております。これらの中で、「アンモニアについては、ラットに対して有力なプロモーターであること、しかしヒトにおいてヘリコバクターピロリと関連した胃がんが発生する可能性がある」とあるもの、アンモニア投与後DEPCを投与すると、より多くの肺腫瘍が発生したというデータある一方で、アンモニアのみの投与では発がん性は認められなかったとする試験結果を示すものもあります。委員からはプロモーター作用ということで着目いただいておりますが、単独な発がん性は不明ということで、判断保留という判定をいただいております。
 41番の物質(ジブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛)です。これは69年の文献でして、マウスに対して3週間の経口投与後18ヵ月の混餌投与を行うという試験で、腫瘍頻度に有意な発がん性の徴候は認められなかったということです。委員からは「IARCの基準に該当させて判断するには不足している」ということで、判断保留という判定をいただいております。
 次のページの67番目の物質(2-ジメチルアミノエタノール)です。こちらは88年の文献で、マウスの105週または123週の飲水投与の試験で、腫瘍の誘発は認められなかったという結論でした。委員からは「IARCの基準に該当させる判断としては不足している」ということで、判断保留という判定をいただいております。ただ、この物質につきましては、実は平成27年度にラット肝中期発がん性試験を実施し、陰性との評価を得ていますので、黒でハッチング(資料1-3備考欄)をさせていただいております。
 以上でございます。
〇平林座長 ありがとうございました。
 小野寺先生、追加の説明をお願いいたします。
〇小野寺委員 内容的には今事務局から発表された内容そのものであります。
まず19番(2-ヨードプロパン)ですが、これは肺に腫瘍ができたのですが、文献を見ていただくと分かると思いますが、これは単独の実験ではなく20種類ぐらいの化合物をまとめてやったうちの1つで、数や、対象臓器を限定しています。たしかにこれを投与することによって肺の腫瘍が増えていますが、用量相関性や、雌雄の記載がありません。先程からの話で、可能性はありますが、これ1つで発がん性2Bとは判断できないので、ネガティブではないと判断し保留としました。
 次の20番((4-エトキシフェニル){3-[(4-フルオロ-3-フェノキシ)フェニル]プロピル}(ジメチル)シラン)ですが、これはきちんとした2年間の発がん性試験をラット及びマウスでやっても発がん性は認められないので、これはネガティブという結果でよいと思います。
 23番の水酸化アンモニウムですが、これは形態としてはアンモニア水です。刺激性はありますが、アンモニア単独での発がん性試験はあまり例がありません。ヒトの場合でもピロリ菌との関係で発がんの可能性があるアンモニアですが、実際にラットでピロリ菌に感染しているものに対し、アンモニアを投与したらプロモーション作用があったという結果です。ただし、アンモニア単独でやっても発がん性は全く認められません。それから、吸入や、下の文献では、マウスの飲水の試験をやっていますが、結局臭気が強くて投与はなかなかできず、非常に低用量での結果です。発がん性以外では眼や皮膚などの刺激性ということは文献なり実験がたくさんあります。ただし、発がん性になりますと、2B以外ですが刺激性があるので、慢性的に皮膚に接触すれば発がん性が出てこないとはいえませんが、そこまでいくには相当の刺激がなければならないので、こういう長期に投与できない物質の発がん性の「あり」「なし」を判断するのはいかがなものかなと、個人的にはそう思いました。
 次の41番(ジブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛)ですが、これもマウスの数(雌雄各18匹)が非常に少ないので発がん性評価は判断できません。これもたくさんの実験の中の1つですが、この投与による有意な発がん性は認められなかったということで2B以外です。ただ、本当にネガティブかというと、そこは分かりませんが、2Bではないという結論にして保留にしました。
 67番(2-ジメチルアミノエタノール)ですが、これは先程も申し上げましたように、最近の文献はありませんでしたが、ラット肝中期発がん性試験を加えて、当該試験で陰性となっているということであれば2Bではないのではないかという結論でよいという判断です。
〇平林座長 ありがとうございました。
 まず、2B相当のものはとりあえずこの5物質の中にはなかったということで、よろしいでしょうか。
 その次に、空欄にするか判断保留にするかという点を御議論いただこうと思います。
19番(2-ヨードプロパン)については、静脈内投与24週各24匹のデータであるということから、これだけで判断するのは難しいという理由で、データ不足による判断保留ということかと思いますが、よろしいですか。
 次の20番((4-エトキシフェニル){3-[(4-フルオロ-3-フェノキシ)フェニル]プロピル}(ジメチル)シラン)は十分なデータがあって、発がん性はなかったので、これは空欄ということです。
 それから23番(水酸化アンモニウム (アンモニア水))は、このアンモニア水はいかがいたしましょうか。濃度を上げての試験もできませんし、もともとヒトでもばく露できないということからすれば、限りなく空欄に近い判断保留にしておく方がよいかというところではないかと思いますが、何かございますか。
〇若林委員 これはIARCでは試験をしていないのでしょうか。
〇小野寺委員 していません。
〇若林委員 していないのですね。
〇津田委員 アンモニア水は職場ばく露はあるのでしょうか。
〇小野寺委員 アンモニア水やホルマリンという物質は、もの凄く刺激性が強く、臭気もあって、相当な低用量であってもヒトが空気中にあることを検知できます。職場で耐えられない程のばく露があるかというと、よほどの事故でもない限りは考えにくいと思います。あとは、対策室長等の判断で、使用状況と労働衛生との方面から考えていただいた方がよいのではないかと私は思います。
〇平林座長 よろしいですか。
 次の41番(ジブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛)につきましては、18ヵ月の試験が行われてはいますが、これは何が足りなかったのでしたか。
〇小野寺委員 マウスのみの試験ということと動物数です。
〇平林座長 マウスだけということと、動物数が少ないということですが、もう少し匹数を上げると出る可能性がありますか。
〇小野寺委員 私はないと思いますが、先程も言いましたように、きちんとした発がん性のコンプリートな試験をしていないので、ここで「ない」という結論はつけられないということで保留にしました。
〇平林座長 では、データ不足ということで保留にさせていただきます。
 67番(2-ジメチルアミノエタノール)ですが、これは平成27年度のラット肝中期発がん性試験で陰性という結果も出ているところですし、もともとマウスでの試験ですが、匹数も十分で105週ないしは123週まで見られているということからすると、これはむしろ空欄ということにさせていただきたいと思います。
 よろしいでしょうか。
〇西川委員 20番は農薬抄録からの判断です。これは食品安全委員会(以下、「食安委」という)では評価されていないと思いますが、これはそのまま採用してよいということですか。
〇川名化学物質評価室長 これはたしか食安委では評価が終わっているものだったと思います。
〇西川委員 そうですか。では、食安委の評価書を用いた方がよろしいのではないでしょうか。
〇川名化学物質評価室長 実は私もそう思っておりまして、基本的に農薬抄録が出ているということは、食安委の評価も終わり、農薬登録も終わっているものだと思われます。
〇西川委員 それは間違いないでしょうか。
〇川名化学物質評価室長 間違いないと思います。
〇西川委員 であれば、私は農薬抄録をたたき台として食安委の評価書を作るのですが、多くはありませんが、変わることがあります。
〇川名化学物質評価室長 西川先生が御指摘のこの農薬抄録ですが、私も農薬抄録よりもまず食安委の評価書等、この農薬抄録を用いて行われた評価の結果から入っていく必要があろうとは思っております。ただ、委託した時点においては、優先的に検索するデータベースの中に農薬抄録が入っていたということもあり、今はこの農薬抄録を使っておりますが、今後同様な作業を行うにあたっては、生の試験データというよりは、各評価機関の評価書での判断結果をまず拾うという方向で整理させていただければと考えております。
〇西川委員 評価機関の評価ということになると、農薬抄録は農林水産省での判断ということですね。
〇川名化学物質評価室長 農薬抄録の場合、農薬登録については、食品安全性の観点からは厚労省経由で食安委において評価しますし、環境影響の観点では環境省の方で評価するということになっております。おそらく、そういった仕組みで農薬登録されたものが農薬抄録という形になっているのだろうと思っております。
〇西川委員 食安委で評価が済んでいればよいと思いますが、この資料を見て「あれっ?」と思っていたことがあります。例えば、資料1-3、通し番号20番の文献No.1の資料(ラットを用いた飼料混入投与による慢性毒性/発がん性併合試験、シラフルオフェン農薬抄録)ですが、毒-79にラットの全動物における腫瘍性病変の発生率が書いてあります。通常、全動物であればよほどのことがない限り死亡動物を含めて全て検査するのですが、動物数が各群90匹のところ、臓器によっては検査動物数の非常に少ないものが含まれています。こういうのは食安委で見れば目につくところなのではないかと思いました。一方、マウスの方は、文献No.2の資料(マウスを用いた飼料混入投与による発がん性試験、シラフルオフェン農薬抄録)の毒-97にあり、動物数が各群70匹で、それに近い数字で検査がなされております。それに比べてラットの方は、検査動物数が非常に少ないものがあるというのが気になりました。
〇平林座長 これは、もしかすると非投与群と最高用量(20,000ppm)は一応匹数が出ているように見えますが、いかがでしょうか。
〇西川委員 例えばラット(雌)の腎臓ですと、対照群検査動物数88に対して最高用量群は83匹しか見ていません。
〇平林座長 そうしますと、このデータに疑義があるということで、改めてデータを見直す必要があるということでしょうか。
〇西川委員 まず皆さんで御議論ください。
〇小野寺委員 私はこれを見たときに、GLPの試験で20,000ppmという高い用量をやること自体よくやれたなと思っています。今のn数のところは低いところはありますが、これはたしかに詳細に検討しなければ分かりませんが、その中において、傾向的にこれだけ網羅的な検査をして、そういう傾向が起きていないということが陰性ではないかと判断した理由なので、「完全にこれがゼロか」と言われると、それに関してそこまでシビアにやる必要のある試験なのかと思います。例えば1例だけ起きたがんをどう評価するのかというのと同じように、n数も、私が見ていて違和感があるような数字ではなく、たぶん途中死亡とかアクシデントがあるのではないかと思います。ただ、先程も言いましたが、最高用量20,000ppmというのは非常に高用量なので、そこで完全に最後まで評価できなくても、発がん性に関しては問題ないという判断をしました。
〇川名化学物質評価室長 今、食安委のホームページでシラフルオフェンの評価状況を確認させていただきました。そうしましたら、平成20年2月9日に食安委から厚生労働省に、シラフルオフェンの1日摂取許容量を回答するような文書が出ております。そのときにシラフルオフェン改定第2版の農薬評価書が添付されております。2012年です。その中には、ここに掲載されておりますラットを用いたこの試験についての引用もございまして、一応、結論としては、「発がん性、催奇形性及び遺伝毒性は認められなかった」というような要約で掲載されております。
〇西川委員 ありがとうございました。結構です。
〇平林座長 ありがとうございました。
 では、67番まではよろしいでしょうか。
では、次を事務局お願いいたします。
〇増岡化学物質評価室長補佐 それでは69(イソブチルアルデヒド)、71(オクタデカンアミド)、72(Hexanamide)、73(フタル酸ジ-n-ヘプチル)、74(ブチルフタリルブチルグリコレート)の5物質です。
 まず69の物質(イソブチルアルデヒド)です。99年の文献があります。ラットとマウスを対象とした2年間の吸入ばく露試験に関するものです。雌雄のラットとマウスに発がん性が認められなかったということで、委員からは「1~2Bには相当しない」と判定をいただいております。
 71番の物質(オクタデカンアミド)です。66年の文献ですが、マウスに対して膀胱の粘膜下への330日の埋植試験が行われており、腫瘍発生は有意ではなかった、また、ラットについても試験をする必要があるということで判断保留と判定いただいております。
 72番の物質(Hexanamide)です。こちらは80年の文献があり、ラットとマウスを対象とした12ヵ月間の混餌投与試験が行われております。委員から、マウスに悪性中皮腫およびリンパ腫の増加がみられたが頻度が低かったということと、実験期間が12ヵ月であるということからデータとして不十分であるとして、判断保留と判定いただいております。
 73番の物質(フタル酸ジ-n-ヘプチル)です。2009年と2012年に文献があり、2012年の文献は、ラットの26週の経口投与の試験、2009年の文献は、ラットに対する28日間の経口投与試験に、それぞれ関するものです。1つ目の文献では、「1,000mgと2,000/kgと26週試験にてGST-P陽性細胞巣が増えた、としているがその数が一定の面積の肝切片、たとえば個数/cm2、で計測されていないので客観性に難がある」とされ、また、2009年の文献では、「DENプロモーション後に検体の投与を行っているが、GST-P陽性巣の測定値が提示されていない。DENを投与しなかった群では肝腫瘍の発生をみたが、有意差は不明(n数の提示は無い)」とされていることから、判断保留と判定いただいております。
 74番の物質(ブチルフタリルブチルグリコレート)です。1968年と2001年の文献があります。2001年の文献は、ラットに対する2年間の混餌投与試験に関するもの、68年の文献はラットに対する1年間の混餌投与試験に関するものとなっております。No.1の文献では、腫瘍頻度の有意な増加は認められなかったとされ、68年の試験では、異常はみられなかったとの結論であったことから、委員からは「具体的な数値がない」、あるいは68年の文献については「ウサギとラットの試験の記載があるが発がん性試験の内容ではない」ということで、判断保留と判定いただいております。
 以上でございます。
〇平林座長 ありがとうございました。
 津田先生、追加の説明をお願いいたします。
〇津田委員 特に今の御説明で追加することはありません。この中で2B相当は1つもありません。
〇平林座長 ありがとうございます。
 5物質ともに2B相当はないということで、69番(イソブチルアルデヒド)については十分なデータがあって空欄ということ、71番(オクタデカンアミド)についてはマウスのデータだけでラットが足りないということ、それから72番(Hexanamide)については12ヵ月ということで期間が不足している、73番(フタル酸ジ-n-ヘプチル)につきましては可能性としては懸念がありますが、発がん性試験がきちんとされていないというところで、「限りなくゼロ」と入れますか。
〇津田委員 フタル酸の他の同族体、フタル酸エチルでしょうか、これは確か発がん性があったと思いますが、それで同族体をやったので、1つはプロモーション試験、1つは短いですから評価に値しないということです。
〇平林座長 分かりました。そうすると、他のフタル酸との関係もございますし、これは判断保留ということです。それから、74番(ブチルフタリルブチルグリコレート)につきましては、データが古いことやきちんとした数値がないということから、ここから判断するのは難しいだろうということでよろしいでしょうか。
〇津田委員 はい、よいと思います。
〇平林座長 以上です。
〇西川委員 細かい点ですが、72番(Hexanamide)、これは抄録しか付いていませんが、中皮腫という腫瘍がどこにも出てこないので、これは間違いでしょうか。
〇津田委員 中皮は抜いてください、悪性リンパ腫です。
〇西川委員 73番(フタル酸ジ-n-ヘプチル)ですが、GST-P陽性細胞巣の解析方法に問題があるという御指摘ですが、資料1-3、通し番号73番の文献No.1の資料(Nakane et al. (2012) Twenty-six-week oral toxicity of diheptyl phthalate with special emphasis on its induction of liver proliferative lesions in male F344 rats, J. Toxicol. Sci., Vol.37, No 3, 527-537.)で534ページのTable 4等を見ますと面積と数について記載があります。どういうところが客観性に問題があるのか教えていただけますでしょうか。Table 4の脚注を見ますと、面積あたりのフォーサイの数についてもカウントとして記載されていますので、この個数の信頼性に問題があるということでしょうか。
〇津田委員 普通はカウント数(/cm2)というふうになるのですが、これを見てもよく分かりません。「Count (foci/mm2):counts of GST-P positive foci/whole area observed」と書いてあります。ちょっと意味が分かりません。
〇西川委員 全体を見てフォーサイの数をというふうに理解しますが。
〇津田委員 「全体」といっても標本の全体でいくつとカウントしたのでは、客観的な数字になりません。普通は一定のエリアにどれだけかというふうにカウントします。
〇西川委員 多分その前のページに組織の標本があって、こういうような形で計測したということだと思います。
〇平林座長 西川先生、「whole area」というのは、どのぐらいの面積を見たということが記載されるべきではないでしょうか。
〇西川委員 私よりも津田先生の詳しいので聞いてください。
〇津田委員 座長の言われたとおりです。「whole are」といってもいったいどれだけになるのかがよく分かりません。その中でどれだけあったといわれても分かりません。例えば一定の面積、cm2あたりどれだけあったのか、cm2あたり占めるエリアの面積の提示がはっきりしていないので判断できないということにしました。
〇小川委員 この文献のMATERIALS AND METHODSのところ529ページ、右上のパラグラフのいちばん下に、通常のやり方とは少し違うかもしれませんが、GST-Pのフォーサイのカウントの仕方として、少なくとも5つの細胞以上のものをカウントしたというようなクライテリアと、トータルでten fields of viewということで、approximately 600-800 hepatocytesで1 fieldという規定の中で、見たエリアの中でどれだけというのがある程度、少なくともカウントに関してはmm2であるということと、エリアに関しては見たエリアの中の何パーセントということですので、一応、定量という意味ではできているのかなというふうにもみえますが、いかがでしょうか。
〇平林座長 たぶん、これが通常通りに行われる方法と違うということで、データの読み方が納得いかない点がおありだったかと思いますが、いずれにしましても、これは2B相当ではないということ、それから、いずれにしても発がん性試験がされていないというところから、ここでの判断としては、変更はないかと思いますので、次に進めさせていただいていいでしょうか。
〇西川委員 この記載を残すのでしょうか。つまり、「客観性に難がある」という点です。
〇津田先生 そのcm2で書いてあるというのはどこでしょうか。何ページでしょうか。
〇小川委員 MATERIALS AND METHODSは529ページの右上のStatistical analysisの直前のところに、定性・定量の仕方の記載があります。だいたいどれぐらいの検討をしたかということと……。
〇津田委員 liver sectionと書いてありますが、具体的な広さ等は何も書いていません。
〇小川委員 先程のTable 4の脚注にカウントについてはfoci/mm2になっていて、エリアに関してはパーセントということなので、全体の見たエリアに対してフォーサイがどれぐらいを占めるかということがパーセントで記載されていますので、通常とは少しやり方が違いますけれどもコンバートすることは可能ではないかというふうには思われます。
〇小野寺委員 結論としては変わりませんから、あとは西川先生が言いましたように、この判定理由のところに客観性についての言及を残すか、削除するかというところが議論だと思いますので、「GST-P陽性巣のみをもってがん原性の判断はできない」だけでよろしいのではないでしょうか。
〇西川委員 私もそう思います。
〇平林座長 津田先生いかがでしょうか。
〇津田委員 そうしてください。
〇平林座長 では、GST-P陽性所見が得られたとはいうものの、これだけでは判断が十分にできないということで、判断保留とさせていただきます。
〇西川委員 それから、その下のn数の提示がないということですが、これは資料が抄録しかないのですね。私はチェックしていませんが、フルのペーパーを見たら書いてあったりするのではないでしょうか。もしそうであれば、これもあまり書かない方がよいのではないかという気がしました。
〇平林座長 これはデータが得られなかったということでしょうか。
〇岩村有害性調査機関査察官 そうです。文献を収集したときには得られなかったということで、この1枚紙のAbstractだけがあるということになります。
〇西川委員 これは論文としてはきちんとした論文ですし、おそらく数ぐらいは書いてあると思います。
〇津田委員 しかし、これで判断するしかないので、この範囲では「ない」というふうに書きました。
〇平林座長 得られたデータが抄録のみで、詳細が不明であったというような記載ではいかがでしょうか。
〇津田委員 同じ意味です。
〇平林座長 そういうことで判断保留ということにさせていただきます。
 そこまでよろしいですか。
〇津田委員 アポロジーですが、フルテキストに入ると課金されるのでやめたということです。Elsevierでも課金されます。
〇平林座長 先生、それは事務局の方におっしゃっていただくとよかったかもしれません。
〇津田委員 ElsevierでやればPDFが取れると書いてあります。
〇川名化学物質評価室長 その点については申し訳ございません。今回、作業の依頼自体が遅れたということもございまして、先生方には時間がないという状況を作ってしまったところがございます。今後、このような取組を行う際には、まずは余裕をもってお願いするということと、その中で必要な文献については、言っていただければ当方で手配する段取りを考えたいと思います。その点、よろしくお願い申し上げます。
〇平林座長 ありがとうございました。
 では、次をお願いいたします。
〇増岡化学物質評価室長補佐 続きまして75番(N,N-ジメチルアミノ-N’-フェニル-N’-(フルオロジクロロメチルチオ)スルホン)、77番(トリトリル=ホスファート)、78番(ベイシック グリーン-4)、79番(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド (CBS))、80番(ソルベント バイオレット-13)までの5物質です。
 まず75番の物質(N,N-ジメチルアミノ-N’-フェニル-N’-(フルオロジクロロメチルチオ)スルホン)です。文献は4つあり、93年のものが2つ、82年、68年のものです。No.1の文献ですが、こちらはラットに対する2年間の混餌投与試験で、No.2の文献もマウスに対する2年間の混餌投与試験、No.3の文献はマウスに対する2年間の混餌投与試験、No.4の文献はラットに対する2年間の混餌投与試験となっております。委員からは「Ames試験で陽性であるが、SCEは2000mg/kg/b.w.まで陰性、また、ラットで甲状腺癌1例を含む濾胞腺腫の増加を認めたが、機序からヒトへの外挿性は乏しいと考えられる。また、マウスでは発がん性を認めないという結論が文献2と3で得られている」ということから、1~2Bには相当しないと判定いただいております。
 77番の物質(トリトリル=ホスファート)です。88年の文献があり、ラットとマウスを対象とした2年間の混餌投与試験で、「ラットで単核性白血病、マウスでハーダー腺腫瘍の増加が認められているが、いずれもヒストリカルデータの範囲内であった。また、変異原性は陰性である」ということから、1~2Bに相当しないと判定いただいております。
 78の物質(ベイシック グリーン-4)です。2006年、2001年、96年、91年の4つの文献があります。No.1の文献はラット・マウスに対する104週の混餌投与試験、No.2の文献は同様にラットとマウスに対する104週の混餌投与試験、No.3の文献はラットに対する7ヵ月間の飲水投与試験、No.4はラットに対する2.5ヵ月間の飲水投与試験となっております。「マラカイトグリーンについては、明瞭な有意差は認めないながら、雌ラット甲状腺濾胞腺腫や乳腺癌の頻度の増加が認められている。また生体内での主な代謝産物とされるロイコマイカイトグリーンについて、雌マウスで背景範囲内ながら、肝腺腫の用量依存性の増加、雄ラットで有意差をもって精巣間質性細胞腺腫がみられる。また、PBと同等のプロモーター活性がみられる。また遺伝毒性が示されている」ということです。
 追加で、2005年の食安委の動物用医薬品専門調査会において食品健康影響評価が行われており、こちらの評価書の結論は、「LMGについては雌マウスの肝臓に発がん性を有することが示唆された、また、ラット肝臓及び甲状腺に発がん性が弱いながらも示唆された。また、MGは雌ラット肝臓及び乳腺における発がん性が弱いながらも示唆された」とあります。こちらも含めてということで、1~2B相当と判定いただいております。
 次に79番の物質(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド (CBS))です。68年の文献で、マウスに対する18ヵ月間の経口投与試験が行われております。「動物試験(マウス)では発がん性を認めない。2つの加水分解物、メルカプトベンゾチアゾールとシクロヘキシルアミンの発がん性は、ラットとマウスの種々の系統を含む多くの長期経口試験で調べられていて、発がん性を認めない。遺伝毒性試験は陰性」ということから、1~2Bには相当しないと判定いただいております。
 80番の物質(ソルベント バイオレット-13)です。84年の文献があり、マウスに対する18ヵ月の経皮の試験となっております。「経皮投与による動物試験(マウス)では発がん性を認めないが、ヒトの発がん性の予測には十分なデータとは言えない。また1983年のAmes試験で陽性」ということから判断保留と判定いただいております。
 以上です。
〇平林座長 ありがとうございました。
 追加の説明は事務局からいただいた以上にはございませんので、順番にいきたいと思います。
 75番(N,N-ジメチルアミノ-N’-フェニル-N’-(フルオロジクロロメチルチオ)スルホン)につきましては、Ames試験陽性ということではありましたが、Sister chromatid exchangeが陰性ということ、それからラットでみられた腫瘍についてはヒトへの外挿性が乏しいということから、まず2B相当以上ではないということで、これは特段留意しなくてもよいのではないかというふうに考えました。
 77番(トリトリル=ホスファート)につきましては、ラットの単核性白血病についてはヒトへの外挿性に疑義もあるということもありますし、ヒストリカルデータの範囲内であったということ、それから変異原性が陰性ということですので、これも2B相当以上ではないと、それから懸念も少ないだろうというふうに判断しております。
 78番のベイシック グリーンについては後回しにさせていただきます。
 79番(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド (CBS))につきましては、これはたしか18カ月のマウスのフルの試験が行われていまして、全て陰性ということで、ラットの試験が行われていないというところをどう考えるかということではございますが、少なくとも2Bではないというふうに考えます。
 80番(ソルベント バイオレット-13)につきましては、これは経皮試験しか行われていないということ、それからAmes試験が陽性ということですので、2B相当ではないとは思いますが、データ不足による判断保留ということにさせていただこうと思っております。
 最後に78番のベイシック グリーンですが、これは事務局の方からも説明がありましたとおりで、食安委の方からも弱い発がん性があるという評価もされているということもありますので、これが十分なデータかというと2Bに相当するかどうかは厳しいと思いますが、あえて〇にして、御議論いただければと考えた次第です。
 御意見をお願いいたします。
〇若林委員 食安委の小川委員からもう少し詳しく説明をしていただければと思います。
〇小川委員 先程おっしゃっていただいたように、いくつかの臓器で発がん性がみられるということと、遺伝毒性の機序が否定できないというようなことから、発がん性の可能性について排除していないというふうに理解しております。
〇西川委員 先にマラカイトグリーンについてですが、データそのものはNo.2の文献の10ページ、11ページにあります。10ページを見ますと、雌のラット・マウスについてのデータですが、マウスについては発がん性なし、ラットについても腫瘍は甲状腺、肝臓、乳腺に出ていますが、NTPの判断はequivocalです。some evidenceでもないということです。一方、ロイコマイカイトグリーンで、11ページを見ますと、雌のマウスでどうも肝臓の腫瘍が有意に増えているということです。結果としては、ラットについてsome evidenceでもないということは、言い換えると、おそらく限定的なエビデンスでもないというNTPの判断なので、そのあたり慎重に議論していただければと思います。
〇小川委員 食安委も含め、このデータが非常に少ないとか、もともとラットで発生しやすいものという御意見もあるかと思いますが、機序として遺伝毒性が否定できないということが少し検討する必要があるのではないかと思っております。
 それから、equivocalの扱いが私も今一つよく分からないのですが、No.2の文献の12ページのところにNTPの評価の仕方が書いてありますが、もちろんsome evidenceであれば非常にクリアになると思いますが、equivocal evidenceとしたものに関しては、こちらに記載されておりますように、「marginal increase of neoplasms that may be chemical related」という言い方になっていて、それをどういうふうにとるのかというところが少し難しいと思っております。
〇西川委員 たぶんどちらとも判断つかないということだと思います。IARCでいっているlimited evidence(限定的なエビデンス)というのは、おそらくsome evidenceに相当すると思います。そういうことから考えると、some evidenceもないようなもの、いちばん最初にIARCの分類について説明していただきましたが、some evidenceがあって、プラス、メカニズムがあれば2B相当になるのですが、それ以下のものが果たして2Bでよいのかという気がしています。
〇小野寺委員 通し番号78番の文献No.2の資料(NTP Technical Report on the Toxicity Studies of Malachite Green Chloride and Leucomalachite Green (CAS Nos. 569-64-2 and 129-73-7) in F344/N rats and  B6C3F1 mice)の10ページのラットとマウスの結果を見てみますと、結局nonneoplastic lesionsのliverのところでeosinophilic fociが5/48、10/48、13/48、14/48と用量相関的に、slightlyに増えています。一方、その下のneoplasticのところを見ると、liverのhepatocellular adenomaが1/48、1/48、3/48、4/48と高用量(300~600ppm)について少し増えています。しかし、これをもって発がん性があるといえるかというと、あるとまでは断言できないけれども、少なくともトレンドがありそうだなというところのequivocalだと思います。
〇西川委員 マウスの肝腫瘍はあると思います。
〇小野寺委員 マウスですか。
〇西川委員 マウスですよね。
〇小野寺委員 ラットです。F344の話ですが。
〇西川委員 しかし、実際の腫瘍はコントロール1に対して高用量群の3ですね。
〇小野寺委員 いえ、最高用量は4です。下の行になっていますが4/48で、1/48と4/48だと有意差の有無の判断は難しいところです。こういう値になってくると、これだけのデータをもって「ある」とも言えませんが、しかし「全然関係ありませんか」と言われると、やはりなんらかの傾向はあるというような結論しかこのデータだけでは出ないと思います。
〇西川委員 NTPがこれはsomeでもないと言っているのは、全部は見ていませんが、おそらく背景データを考慮した上での話ではないでしょうか。
〇若林委員 小野寺先生が指摘する10ページ目のラットとマウスの実験からすると、これは2B相当ではないです。
〇平林座長 そうしますと、もとより御議論いただきたいと思っていたところですが、これは2B相当ではないということを御判断いただいて、ただ、限りなく要注意物質というような扱いにしていただけたらということでいかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
〇川名化学物質評価室長 食安委の方でも、「この物質については発がん性のメカニズムを明らかにすることはできず、ヒトにおける発がんリスクは明確ではないが、現時点では評価書試験結果を見る限り、げっ歯類における発がん性が示唆され、遺伝毒性も否定できないことから、ADIを設定することは適当でない」という結論になっていると、そういうようなことに留意しつつ我々としても注意してこれは見るということで、念頭に置いておくという扱いにさせていただければと思っております。
〇若林委員 通常の判断保留よりも、もうワンランク上げたような説明をされたらいかがでしょうか。
〇川名化学物質評価室長 心しておきます。
〇津田委員 これらの代謝は分かっているのでしょうか。
〇平林座長 食安委の方からはメカニズムが明瞭でないので判断できないということが書かれておりましたので、分かっていないのだろうと思います。
〇津田委員 それは発がんのメカニズムは分からないということで、私の質問は、代謝のメカニズムはどうかということで、ヒトと同じ代謝であるかということです。もしヒトと同じような代謝経路を経るとすると、先程申し上げたように、2B相当にlimitedでも入る可能性があるということです。
〇平林座長 少なくともロイコマラカイトグリーンまではいくはずだと思いました。
〇川名化学物質評価室長 メカニズムまでは評価書には載っていません。
〇平林座長 いえ、代謝です。
〇川名化学物質評価室長 評価書に載っている試験が亜急性毒性試験、マウスを用いた2年間発がん性試験、ラットを用いた2年間発がん性試験、それから遺伝毒性試験、これだけの試験しかありません。
〇平林座長 そうすると、どうしましょうか。
〇津田委員 ちょっと調べなければ分からないですね。例えばヒトと同じような薬物代謝経路を通って排泄されてくるということであれば、これはデータからみてlimited evidenceに近いです。その代謝経路がヒトと同じようなところを通ってきて、このlimited evidenceの結果をもたらしているとすると、これは2Bに相当するということになります。
〇平林座長 問題はlimited evidenceに相当するかということですが、西川先生からかなり否定的な御意見を頂戴しているところでございますので、やはり判定は限りなく2Bに近いけれどデータが足りないので保留とし、そして2B相当ではないということでここではまとめたいと思います。
〇川名化学物質評価室長 津田先生の御指摘もございますので、そのあたりの追加情報が得られるのかどうかは別途事務局としても努力したいと思いますし、仮に得られないとしても、食安委の評価や本日の御議論も踏まえ、我々としても留意して情報をウオッチし続けるということにさせていただければと思います。
〇平林座長 ありがとうございます。
 他の物質についてはいかがでしょうか。
〇西川委員 細かい点ですが、資料1-3、通し番号77番(トリトリル=ホスファート)の「追加文献等による判定理由」欄、「ラットで単核性白血病」と書いてありますが、正式には「単核球性白血病」です。
〇平林座長 失礼いたしました。誤植を修正しておいていただけますでしょうか。
〇小川委員 もう1つ、資料1-3、通し番号78番(ベイシック グリーン-4)の「追加文献等による判定理由」欄のところですが「精巣間質性細胞腺腫」とありますが、「間細胞」ではないでしょうか。
〇平林座長 精巣間細胞腺腫でございます。
 他、よろしいでしょうか。
 では、事務局お願いいたします。
〇増岡化学物質評価室長補佐 それでは最後、81番(N’-2-チアゾリルスルファニルアミド)、82番((Z)-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オレアミド)、86番(5-ウレイドヒダントイン)、90番(5-(1’,2’-ジチオラン-3’-イル)-バレリアン酸)、91番(3,4,4’-トリクロロジフェニル尿素)です。
 まず81番の物質(N’-2-チアゾリルスルファニルアミド)です。52年の文献になります。対象は、ラットとマウスで、マウスについては経口試験、ラットについては非経口試験行っておりますが、腫瘍発生は認められなかったということで、委員からは「遺伝毒性なし、ラット、マウスに対して発がん性なし」ということで、1~2Bには相当しないと判定いただいております。
 また、82番の物質((Z)-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オレアミド)です。99年の文献で、ラットとマウスを対象とした2年間の経皮試験が行われています。ラット及びマウスともに発がん性の証拠は得られなかったということで、委員からは1~2Bには相当しないと判定いただいております。
 86番の物質(5-ウレイドヒダントイン)です。84年の文献となります。ラットへの106週間の混餌投与試験を行い、腫瘍発生頻度の有意な増加は認められなかったということから、1~2Bに相当しないと判定いただいております。
 90番の物質(5-(1’,2’-ジチオラン-3’-イル)-バレリアン酸)です。2008年、2006年、1980年が2つ、計4つの文献があります。No.1の文献では、ラットを対象に6~10週の飲水投与または混餌投与試験が行われ、GST-P陽性細胞の面積及び百分率が増加したという結論となっています。また、No.2の文献では、ラットに対する24ヵ月の経口投与試験が行われ、病理組織学的変化は認められていません。80年のNo.3の文献ではラットに対する飲水投与試験、またNo.4の文献ではマウスに対する5日間の静脈内、皮下、腹腔内への投与試験が行われております。以上から、1~2Bには相当しないと判定いただいております。
 最後に91番の物質(3,4,4’-トリクロロジフェニル尿素)です。2013年、81年、75年と3つ文献があります。No.1の文献ではヒト乳腺細胞に対するin Vitroの48時間の試験、No.2の文献ではラットに対する2年間の混餌投与、同様の3番目の文献もラットに対する2年間の混餌投与試験となっております。委員からは「ラットへの混餌投与試験において発がん性が認められなかった」ということから、1~2Bには相当しないと判定いただいております。
 以上でございます。
〇平林座長 ありがとうございました。
 若林先生、追加の説明をお願いいたします。
〇若林委員 今の説明のとおりですが、あえて追加をしますと、82番((Z)-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オレアミド)はラット、マウス、これは全部経皮投与ですので、今までの他の先生方の判断からしますと、経皮投与ですから発がん性はありませんが、十分な発がん性試験に足るかどうかという点からしますと、私は2B相当ではないとしましたが、判断保留ということでもよいのかもしれません。それが82番です。
 それから90番の物質(5-(1’,2’-ジチオラン-3’-イル)-バレリアン酸)ですが、これはジエチルニトロソアミンや、これにディフィシエントの条件で、この化合物を投与しますと、GST-P陽性細胞巣が増加しますが、2番目のラットのSDを使った用量が26、60、180mg/kg/dayで24ヵ月投与したものでは発がん性は認められないということから、GST-P陽性細胞巣はポジティブでも発がん性はないということでよいと判断し、2B相当ではないということで空白にしました。
 以上2化合物について追加をいたしました。以上です。
〇平林座長 ありがとうございました。
 まず5物質とも2B相当ではないという御判断を頂戴したところでございます。
 ほぼ明瞭な結果が得られていますが、追加がございましたとおり、82番((Z)-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オレアミド)については経皮投与のみということで、これを判断保留するか否かというところが御議論の対象かと思います。先生、82番の物質について、吸収のデータは何かございますでしょうか。
〇若林委員 82番のしっかりしたデータはNTP TECHNICAL REPORT(文献No.1)のデータだけでありまして、吸収については、そのデータの中からは読み込めませんでした。
〇平林座長 そうすると、先程と同様、「経口ないしは吸入ばく露のデータが足りない」ということで判断保留の可能性があるかと思いますが、御意見はございますでしょうか。
 82番以外につきましては判断保留もなしとし、82番のみに判断保留を付けるということですが、よろしいでしょうか
 では、これでひととおりの検討が終了いたしましたが、全体を通して何かございますでしょうか。
〇小川委員 先程、西川委員から御質問のありました通し番号8番の物質(1,3,2-ジオキサチオラン-2-オキシド)のケミカルについてですが、CASナンバーからもう一度確認しました。この8番の文献(Van Duuren BL et al  (1974) Carcinogenic activity of alkylating agents. J Natl Cancer Inst 53, 695-700)の696ページ、TEXT-FIGURE I. The chemical structures of the test compounds.の中の12番のものに相当しております。名前も12番のグリコールサルファイトの方に該当します。CASナンバーが一致しておりますので、それでよろしいかと思います。
〇西川委員 ありがとうございました。
〇平林座長 話は戻りますが、西川先生はデータが確認できないというクレームだったかと思いますが、それが分かれば大丈夫でしょうか。
〇西川委員 12番の物質については発がん性がなかったので、記載がないということですね。
〇平林座長 発がん性がなかったから、記載がされていないということでよろしいでしょうか。
〇西川委員 細かくは見ていませんが、結論にはそうなっていますね。
〇平林座長 IPが行われていて、定型的な試験ではないし雌のみで雄がされていないということもあって、データが足りないということで判断保留という結論は変わりません。
 そうしましたら、可能であれば事務局の方からデータがいただけるというものもいくつかあったかと思いますが、ひととおりの議論が済みました。
 他に追加の御議論はございますでしょうか。
〇小野寺委員 先程から判定の中の言葉使いが問題になっていますが、もう少しクリアにして、「保留」という言葉が、発がん性が疑われるけれども2Bとは言えない保留なのか、文献がなくて判定ができない保留なのか、データは出ているけれどもネガティブとは言い切れない保留なのか、その辺のところを正確に分けていただければ、こちらとしても保留の内容を明確に判定できると思います。その点について、これから御検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。
〇川名化学物質評価室長 承知しました。
〇増岡化学物質評価室長補佐 それでは、本日25物質御検討いただきましたものについて、最後に判定だけ確認させていただきます。
 まず6番の物質は保留に修正、8番、12番、17番については判断保留のままとなります。18番については空欄のままとなります。19番については判断保留、20番については空欄のまま、23番については判断保留、41番も判断保留です。67番については空欄に修正、69番は空欄、71番、72番、73番、74番はいずれも判断保留のまま。それから75番と77番はいずれも空欄のままです。78番については、判定を保留にするが、高い注意を払っていく必要があるものということで整理いたします。また、79番については空欄、80番については判断保留、81番は空欄、82番は保留に改めます。86番、90番は空欄、91番も空欄のままとなります。
 間違いございませんでしょうか。
〇平林座長 先生方、よろしいでしょうか。
〇津田委員 もちろんこの方法でよいのですが、最後の判定が「空欄」というのはどうも落ち着きませんので、〇、×、△くらいにしたらいかがでしょうか。〇は2B相当、△は十分に注意するで、もういいというのが×という方が分かりやすいと思います。空欄にしておくというのは気になります。
〇川名化学物質評価室長 今回の御議論だけではなく、過去の議論も含め、御評価いただいたものについては、それぞれのときに〇、×の付け方にもぶれが生じてしまうところがどうしてもありますので、一度総括させていただければと思います。
 もう少し先のことを申しますと、この常備資料の2番、先程見ていただいた発がん性評価の加速化のスキームですが、これも平成25年に御議論いただき、こういうスキームでやっていこうということで文献に基づく発がん性の判断という取組もやってきたところです。前の経済産業省や厚生労働省の他の部局でやっているスクリーニングの情報等を活用した文献による発がん性の判断というところは、だいたい予定していた物質については1度目を通した状況になってきているのではないかと思っております。ただ、その後、このスキーム全体が今現在どういう状況になっているのかということ、それから今後このスキームをどういうふうに動かしていけばよいのかというようなことについても、これまでの取組を総括した上で、皆様の御意見をいただきながら考えていく必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。
 いずれかのタイミングで事務局の方で整理したものをお示ししながら、委員の皆様から御意見をいただき、今後の進め方についても御議論いただければと考えているところでございます。
〇平林座長 ありがとうございます。
 他にございませんでしょうか。
 なければ、議題1の本日の文献情報による評価はこれで終了させていただきます。
 次に、議題2、その他について事務局から説明をお願いいたします。
〇増岡化学物質評価室長補佐 それでは次回のワーキンググループですが、日程は来年の2月頃をめどに、具体的な日程は追って調整をさせていただければと思います。議題といたしましては、本年度実施しております中期発がん性試験の評価、それから来年度に実施する中期発がん性試験の物質選定等について御諮りする予定にしております。よろしくお願いいたします。
〇川名化学物質評価室長 先程私が申し上げましたとおり、今後のこの発がん性スクリーニングなどについても、なるべく早く議題にしていきたいと考えております。といいますのも、この発がんスキームを始めてから5年以上たっているということもあります。本来であれば5年たてば総括した上で、次の展開ということを考えるタイミングになっていると考えておりますので、そういった議題についても急きょ入れさせていただくこともあり得るということをお含みおきいただければと思います。よろしくお願いいたします。
〇若林委員 今回、事務局が三菱ケミカルリサーチさんに移ったということで、いろいろ日程調整をさせていただいていますが、やはり初めてということもあって、我々のところに情報が来るのが遅かったり、非常に錯綜しているケースがありますので、その点、御注意いただければと思います。
〇川名化学物質評価室長 よく打ち合わせをした上でやらせていただきます。申し訳ございません。
〇平林座長 他、よろしいでしょうか。
 はい、それでは以上で本日の発がん性評価ワーキンググループを閉会いたします。御協力ありがとうございました。