2019年9月4日 第14回毎月勤労統計の「共通事業所」の賃金の実質化をめぐる論点に係る検討会 議事録

政策統括官付参事官付雇用・賃金福祉統計室 政策統括官付参事官付統計企画調整室

日時

令和元年9月4日(水)15:00~17:00

場所

中央労働委員会7階 講堂
(東京都港区芝公園1-5-32 労働委員会会館)

出席者

構成員(五十音順、敬称略、○:座長)

  石原 真三子
  稲葉 由之
 ○今野 浩一郎
  樋田 勉
  野口 晴子
  山田 久

事務局

  鈴木政策統括官
  山田政策立案総括審議官 
  武藤参事官(企画調整担当)
  瀧原統計管理官
  大野審査解析官
  井嶋労働施策情報分析官
  村木雇用・賃金福祉統計室長補佐

議題

(1)毎月勤労統計の「共通事業所」の賃金の実質化をめぐる論点に係る検討会 報告書(案)について
(2)その他
 

議事

 


○村木雇用・賃金福祉統計室長補佐
 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第14回毎月勤労統計の「共通事業所」の賃金の実質化をめぐる論点に係る検討会を開催いたします。
 構成員の皆様方におかれましては、御多忙のところお集まりいただき、まことにありがとうございます。
 本日は、神林構成員から御欠席の御連絡をいただいております。石原構成員はまだ到着されておりませんが、遅れての到着かと思います。
 早速ですが、以後の進行については座長にお願いしたいと思います。
 カメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。よろしくお願いします。
 
○今野座長
 それでは、よろしくお願いします。
 今日は報告書の検討というのが主要なテーマですが、その前に前回の宿題があったものですから、その宿題の報告からまずしていただければと思います。
 
○瀧原統計管理官
 では、事務局から説明させていただきます。
 まず、宿題事項ですけれども、資料1で説明させていただきます。これにつきましては、前回、第13回に、賃金伸び率と、通常の賃金の前年同月比としてやっております伸び率との比較ということで資料を出させていただきました。その際に、賃金伸び率の平均を出す際にどのように平均をとるかということで、労働者の加重をかけた平均というのを前回紹介させていただいたのですけれども、労働者の加重をかけないという考え方もあるのではないかという御議論もありまして、それについて試算してみてはどうかというお話がありましたので、やったものでございます。
 資料1の2ページでございます。この表で、前回は、例えば一番左側の5人以上のところを見ていただきますと、本系列で平均賃金の伸びを各月で書いております。その次に共通事業所の平均賃金の伸びで、3列目がサンプルの賃金伸び率の労働者加重平均で、この3系列の数字を前回提示させていただきましたけれども、それに4つ目としまして、サンプルの賃金の伸びの単純平均、1事業所1ウェイトという形で計算したものがこの表でございまして、これを各規模別で出しております。やはりサンプルの賃金の伸びの平均も加重のかけ方によって少し数字がずれているというところがわかるかと思いますけれども、全体的にどのような違いが出ているかというのをグラフで見ていただければと思いまして、次の3ページにグラフを描いております。
 これはサンプルの賃金の伸びの平均ということですので、前回お示ししたのは青い線でございます。今回、新たに単純平均として加えたグラフが緑の線になります。5人以上のところで見ていただきますと、緑の線が一番上に出てきているということでございまして、単純平均すると少し高く出ているのが、平成30年各月の数字で見られるのかなと。単純平均すると相対的にウェイトが高くなるのは規模の小さいところですので、規模の小さいところが30年で言うと少し賃金の伸び率自体は高かったのではないかということで、それはこの規模別のところで見ていただければわかるかと思いますけれども、5~29人のところのラインが、緑のラインでいきますと1.5を超えたところで出てきておりますので、やはりこの辺りの影響が出ているということ。あと、5~29人だけで見ていただきましても、青いラインよりも緑のラインのほうが上に出ているということで、同じ5~29人の規模においても、29人とか25人という、この中では比較的大きいところよりも、5人とか6人、7人というようなさらに小さいところのほうが相対的に高かったというところが見られるのかなと。ただし、これは伸び率の平均ですので、実際に賃金額の水準が低いと、同じ金額が上がっても当然伸び率は高目に出るということがありますので、水準のレベルというのも当然影響してくると思います。ただ、1%伸びた、1.5%伸びたというような比較で見ると、やはり小さいところで高く出ているものがわかるのかなということであります。
 そういう意味では、賃金の伸びの平均をとるという統計あるいはそういう分析は余り多くないわけですけれども、このようなことをすることによって、また少し新たな観点から見ることができるのではないかということで、1つ今回、御議論の中で、伸びの平均という概念を検討いただいた中での資料として提出させていただくものでございます。
 以上でございます。
 
○今野座長
 ありがとうございました。
 今の点について何か御質問はございますか。よろしいですか。
 それでは、もう一つ、報告書に入る前に、これまでもここでいろいろ議論があったりとか、混迷を深めたりとか、どう整理したらいいかということで、事業所の単位のとり方の問題でいろいろ議論があって、やはりきちんと整理をしたほうがいいということになっていると思います。したがって、その整理について事務局で案をつくっていただきましたので、それを説明していただいてから報告書に入りたいと思います。
 
○瀧原統計管理官
 では、資料2「事業所の概念図」をごらんいただければと思います。この資料自体は、先ほど今野座長からお話がありましたように、概念を整理して取りまとめていこうという御示唆があったことと、あと、実際、前回の第13回のときに石原先生から整理ということで図をつくっていただきましたので、それをベースにしつつ、少し事務局のほうで整理したものがこの資料2でございます。
 では、ページをめくっていただきまして、2ページでございます。これは後で御議論いただく報告書の中に出てくる言葉でございますけれども、実際にこの検討会で結構メインの議題となった既存事業所というものの整理、概念というのをまず上のほうでさせていただいております。これは母集団と左に書いておりますけれども、日本全体の事業所、全事業所に対してどういうカテゴリー分けをするかというもので、それをn-1年、n年、n+1年という動きで見たものでございます。
 世の中の全事業所につきましては、真ん中でいきますと、その年にできた、1年前にはなくて新しくできたものを新設事業所、それ以前よりあるものを既存事業所としております。この2つが合わさって、n年における全事業所になるわけですけれども、ただ、それを時系列で見ていくと、当然、前年のn-1年にあったけれども、n年にはもうなくなってしまった、廃業してしまったという事業所がありますので、そこを青い廃業事業所というところで書いていると。これは推移的にはこのようにn-1年、n年、n+1年という形でずれていくもので整理できるのではないかと。
 その上で、標本として見た場合にどう考えることができるだろうかということでございます。上の母集団で行きますと、全事業所が黒い枠線で入っておりますけれども、そこから無作為抽出でサンプリングした標本といいますのは、下の図でいきましても、ちょっとわかりにくくて恐縮なのですけれども、一番外側の黒い枠で囲ったもの、これを調査対象事業所と書いております。そこの中には幾つかの要素がございまして、当然、上の赤い新設事業所のサンプリングされたものとしての、調査対象としての新設事業所が下にございます。あと、それ以外に、新しくできたわけではないのですけれども、前年においてはサンプルに入っていなかったという事業所をオレンジで描いておりまして、それをサンプルイン事業所と書いております。この2つが前年、例えばn-1年においては調査対象事業所に含まれていないカテゴリーかと思われます。それ以外につきましては、前年に存在しているわけですけれども、真ん中のところで見ますと、黄色のところでnと書いておりますが、共通事業所というのはまさにそういうところで今回の議題の中心になるのですが、それ以外のものもございます。当然、共通事業所は定義から、前年未回答だったり当年未回答であったものは入りませんので、そこも含めた概念として、継続事業所というのを緑で書いております。この緑の枠が継続事業所というサンプルでございます。これは上で言うところの既存事業所からサンプリングされたものということで、対応関係はそうなっているのかなと。
 そうすると、既存事業所ですから、1年前も存在した事業所からのサンプリングということで考えると、先ほど申しましたオレンジのサンプルイン事業所についても緑の枠内に入ってまいります。あと、共通事業所と、それに入らないものとして、サンプルインに含まれるか否かはあるかもしれませんけれども、当月未回答の事業所、この白い枠のものと、あとグレーで書いております前月未回答事業所というものがそこから除かれて、除かれた結果が共通事業所になるというものでございます。あと、前回調査の中の調査対象事業所から抜けていくものとして、サンプルアウトする事業所。事業所がなくなるわけではないのですけれども、調査対象から外れるというものでのサンプルアウト事業所。そして最後、一番下に、これは事業所そのものが1年前にはあったけれども、当年はなくなるものとして、廃業事業所ということで整理したものでございます。
 そういう意味では、全事業所に対しての無作為抽出の調査対象事業所。一方で、既存事業所に対してのサンプルの継続事業所というのがこういう関係で整理されて、その一部として共通事業所が考えられるのではないかと。その場合に共通事業所については、未回答事業所があるということで、そこの部分が非標本誤差として入ってくるというものでございます。
 これを時系列で見たときに、当月未回答のものというのは、翌年において前年同月未回答事業所に相当するということで、黒い矢印で書いているのは、そことそこが対応するということで書いております。
 それが全体的な整理なのですけれども、ただ、御留意いただきたいのは、下の右側に※で書いておりますけれども、この図というのは前年同月と比較するときにどこと比較するのかというのは実は書いておりませんで、例えば黄色の共通事業所は、共通事業所(n)と1年前の共通事業所(n-1)というのがありますけれども、これの伸びを計算するものでは決してないということであります。n-1というのは、それよりさらに前、その1年前と比較するときの共通事業所であって、nと比較するものは、このn-1年においては別のくくりになるというところがありますので、この概念図は、その時点時点でどう事業所が考えられるかというもので、前年同月の比較対象を書いてはいないというところに御留意いただきたいと思います。
 そのことがありますので、次の3ページのところに、この図を若干補足する形で描いています。基本構造は同じなのですけれども、比較のために描き位置を変えたりしているものがあります。これでまずは皆様方と共通認識している共通事業所、下のほうの絵を見ていただきたいと思います。共通事業所の前年同月比はどう比較しているかというところで、当然、n年においては、茶色い太線で囲っている黄色のところに共通事業所(n)と書いてある、これがn年における前年と比較する対象となるときの共通事業所です。これの比較するn-1年の共通事業所は、オレンジの太い点線で囲われたところがイメージになるということで描いております。どこまで引っ張るかというのは別なのですけれども、大体のイメージとしては、n-1年にあって、n年においてサンプルアウトしたり廃業したりしていないということと、あと、n-1年においては新設事業所なのだけれども、そのまま翌年、n年において存在しているものであれば、当然共通事業所の対象にはなります。あと、未回答という部分は入らないですけれども、それ以外のところは入るということで、このオレンジの点線を描いたと。
 ですので、今回、共通事業所を御検討いただいたときに非常に特徴的だったのが、こういう前年同月のどこをとるかというのを限定しているというのが共通事業所の特徴だったわけですけれども、それがこのようなあらわれ方をしているというものでございます。
 そのように考えますと、上のほうの母集団のところで、これは厳密に言いますとうまく描き切れなくて、母集団で比較というよりは、実際に前年同月比を計算するのはサンプルのほうですので、継続事業所の概念でやるべきところでありますが、イメージを単純にするために、上の母集団のところで既存事業所はどう比べていくのかという概念を整理させていただいております。
 くどいですけれども、全事業所についてはこういう位置を合わせるということはやっておりませんで、新設事業所と既存事業所を足したものが全事業所で、それと1年前の全事業所を比較するという、これが全事業所での、毎勤で言いますと本系列の前年同期比の考え方です。これには日本の中のいろいろな動き、経済動向とかも含めてトータルでの平均賃金がどう動くか見るときには、この黒い枠線の中でのものを単純に比較する。
 既存事業所については、共通事業所と同じ考え方に立つと、この緑の破線のところが、例えばn年でいきますと、n-1年と比べるときにはそこにありますn年の前年同月比という緑の破線になるのではないか。n+1年において前年と比べる場合には、それが上にスライドしてつくっております、右側にあります緑の破線になるのではないかということで、ここは比較対象が変わっていくというもので描いております。
 ただ、説明の中で申し上げて恐縮なのですけれども、実は既存事業所の前年比をどうとるかというのは、必ずしもこの方向のみではないと思います。といいますのは、既存事業所というのを日本の既存事業所として考えていくと、1年前に存在したということであれば、n-1年のところの既存事業所をもう少し下までとるという考え方も実はあり得るのではないか。ただし、それは廃業した事業所、n年においては廃業してしまっていますので、そこは除くほうが合理的という考え方も成り立ちますので、そこは今回いろいろお考えいただいた中で、固まっているわけではないかと思うのですけれども、少しそういう部分について、またいろいろ今後も考えていかないといけないという余地はあるのではないかと。
 いずれにしても、少し頭の整理なり、皆さんの概念をできるだけ近くするという形で試しに描いてみたものでございますので、御議論いただければと思います。
 以上でございます。
 
○今野座長
 いかがでしょうか。これは、この絵も重要ですけれども、このネーミングはずっと、報告書はこのネーミングでいくということですので、そういう点でも重要かなと思います。
 どうぞ。
 
○石原構成員
 済みません。遅くなってしまって申しわけありませんでした。
 前回の会議のときのネーミングがちょっとこれとは違うので、なぜ変えたのかなと思いました。共通事業所ではなく、共通標本事業書にしましょうというようなことで多分合意していて、あと、継続標本事業所という名前にしましょう。それは共通標本事業所と、それから未回答の部分を含んだもの。つまり、共通事業所の対象となっている事業所を継続標本事業所と呼びましょうというふうに前回したと思うのですけれども、それは名前として、継続という名前がついていると、今、継続していないサンプル、全部含んだものになってしまっているので、どうしてですか。
 
○瀧原統計管理官
 ありがとうございます。
 そこは御議論があろうかと思いますけれども、2点ほどございまして、あのときの議論で、1つは既存事業所の中でサンプルになっているものをどうするかという御議論があったと思います。それを今野先生が名前を何にするかという話で、あのときに神林先生は継続事業所とおっしゃっていたというところが1つありまして、それをそのまま使ったというところがあります。あと、石原先生御自身、共通標本事業所という形でおっしゃっていたかと思っております。よろしいですよね。
 
○石原構成員
 はい。神林さんが共通標本事業所にしましょうとおっしゃっていたと思うのですけれども。それでそういう名前にしたという。
 
○瀧原統計管理官
 わかりました。ちょっとそこはあれなのですけれども、それで、1つこうしているものは、共通標本事業所と新たにつけることはもちろん可能なのですけれども、概念的には今やっている共通事業所を整理したということだと思いますので、共通事業所の黄色いものについては現行と同じものでやっている整理です。継続のほうは新たな概念なのですけれども、ですので、同じものをあらわす言葉を余り変えると、共通事業所は一体どうなったのだということもあろうかと思いますので、そこは標本というのを明確化するというポイントはあるのですけれども、共通事業所を同じ言葉で整理するとこちらのほうがいいのかなということ。
 あと、もう一つ、継続標本事業所で書くと、実は既存と継続というのはどう使い分けるかというところがございまして、既存のものから標本をとったという意味では、継続標本事業所とは既存標本事業所とも言えるものになるのですね。ですので、既存と継続というのを同じ考え方でとるとすると、使い分けるのは、継続で使うのであれば、標本のものは継続だけれども、母集団、日本全体での概念は既存という言葉で整理させたということでございます。
 
○今野座長
 重要なことは、これは第三者が読むわけですから、我々だってこんないろいろ混乱しているのに、第三者が読んだときに、なかなかこの概念図、つまりこういうカテゴリー分けをするということを頭に入れるのは非常に難しいと思います。ですから、ネーミングの問題も一つありますけれども、そういうカテゴリー分けを明確に報告書で示すほうが重要かと思います。したがって、このように整理した図を報告書の中にきちんと入れて、これに沿って名前を使っていきますよということをきちんと書いて、読者にわかるようにしていくということが重要かなと思うので、結論的にはこれでいいかなという感じがするのだけれども。これを標本とすると、何かちょっと長いなという感じもするし、どうですか。
 
○石原構成員
 気持ちはすごくよくわかるのですけれども、ただ、実際に継続はしていないので、既存事業所の標本ということですね。それはサンプルインが入っているので、実際問題、継続はしていないのですね。なので、継続という言葉を使っていいのかなという気はするのです。
 前回、今野先生のリクエストに応えたのは、共通事業所と、それから答えなかった人たちをあわせたもののネーミングが欲しいというのが今野先生のリクエストだったのですよ。
 
○今野座長
 サンプルインではなくて。
 
○石原構成員
 サンプルインではなく。共通事業所と、共通事業所の対象者なのだけれども答えなかったという人たちをあわせた呼び方は何かと言われて、それは継続事業所でしょうと神林さんが名前をつけて、標本だから、継続標本事業所にしましょうというような流れだったと思うのです。なので、あくまでも継続している事業所に関してのネーミングを考えてみたのです。
 一方、瀧原さんのサンプルインと共通事業所と答えなかった人たち全部をあわせた名前が欲しいというのもすごくよくわかるのですけれども、でも、継続はしていないので、何か違う名前にするとかのほうが。何か別の単語はないですか。
 
○今野座長
 何かありますか。
 
○山田構成員
 標本として、なかなか表現が難しくて、この絵も恐らく事前にかなり説明をしないと理解ができないであろうところがあって、これはどうしても仕方のないところがあると思うのですけれども、ここで言っている継続事業所というのは、このように書くと毎期毎期に継続事業所があるように見えるのですけれども、実際は前の期に対して継続事業所で、あるいは当期は次の期に対してまた別の継続事業所があるような状況ですね。
 そういうふうにとれば、サンプルとして継続している事業所だと。要は、私自身は、言葉をどうするかというのは後で考えればいいと思うのですけれども、継続事業所であれば継続事業所と書いておいて、しっかり横にその意味合いを書き込んでおく。より適切な表現があればそちらに変えるということでいいのではないかなと思います。
 
○石原構成員
 わかりました。
 では、共通事業所とサンプルインの事業所と、回答していない事業所を全部あわせたものを継続事業所と呼びましょうということ。それで、新規のサンプルインはなしで。
 
○瀧原統計管理官
 わかりました。今の山田先生のお話もあわせて、石原先生のお話でいくと、継続自体がサンプルとしても継続という意味で整理するのであれば、まさに共通事業所に未回答分を足したという概念だろうと思いますので、そういう意味では、実は緑にしてしまうとまずいのですけれども、今の下の標本の図で言いますと、緑枠のところからサンプルインの上に緑の線があるのですが、その下のところのラインですね。そこで線を引いて区切ったものの下側が継続事業所で、サンプルとしての継続としての意味がありますということで、継続事業所の意味を整理した上で、下の標本で緑で書いている枠については、それにサンプルインの事業所を加算する概念になりますので、これがまさに既存事業所なのですね。既存事業所からサンプルされたものという形になりますので、実はサンプルかサンプルではないかというところは、上に新設事業所があって、下はサンプルも新設事業所なので、そういう意味では、下の図の緑のところも既存事業所のサンプルだと考えれば、既存事業所という言葉でもいいのかもしれません。
 
○石原構成員
 いや、これは。
 
○今野座長
 母集団の既存事業所と区別ができなくなってしまう。
 
○瀧原統計管理官
 そうですね。そこの問題はあります。
 
○石原構成員
 このサンプルインは新設だけですか。
 
○瀧原統計管理官
 サンプルインは既存事業所です。
 
○石原構成員
 ですよね。何で。
 
○瀧原統計管理官
 サンプルインという言葉だけで言うと新設も入るのですけれども、ここで言うのは狭義のサンプルインです。
 
○石原構成員
 そういうことですね。わかりました。私、自分の図のほうがわかりやすいので、済みません。
 
○今野座長
 今、瀧原さんが言ったように言葉を変えた場合に、この図の言葉を前提に報告書を書いているから、そうするとまたごちゃごちゃしないですか。
 あともう一つは、今、瀧原さんが言ったように、下の標本のグリーンの全体を継続事業所と言わないとすると、このネーミングをまた考えなければいけなくなる。少なくとも既存事業所というネーミングは使えない。
 
○瀧原統計管理官
 実際、この未回答部分も含めた共通事業所という概念自体は、分析の中では出てきた話ではありますけれども、既存事業所からの標本をとったという意味では、今ある緑の枠のほうが検討の対象としては一つキーになるところではあるかと思いますので、ここの言葉がないことには、やはりちょっと困ります。
 
○今野座長
 石原さんの意見は、共通事業所と未回答を足し合わせたものを継続事業所と言って、グリーンの枠は別途ネーミングを考えろという話ですね。
 
○石原構成員
 はい。
 
○山田構成員
 サンプルですよね。サンプル対象事業所ということですね。そちらのほうが直感的に近いですかね。
 
○今野座長
 でも、これは先ほどあったように、グリーンの枠は既存事業所のサンプルなのですね。
 
○瀧原統計管理官
 そうです。あくまで既存事業所です。
 
○今野座長
 そうなのです。あくまでも。
 
○石原構成員
 ただ、どちらかというと、標本からサンプルインの新規事業所をマイナスしたものというふうに私は書いているのです。
 
○瀧原統計管理官
 まさにそうです。
 
○今野座長
 ちょっとこれは考えさせてください。いずれにしても、今から報告書を検討する際には、とりあえずこの名前で検討させていただいて、あとはネーミングを変えるのだったら一括変換すればいいだけの話なので、そこはまた別途考えさせていただけますかね。よろしいですか。
 どうぞ。
 
○稲葉構成員
 回答、未回答のところの概念について質問いたします。この箱の横軸に当たるものが、前半部分が回答で、後半部分が未回答というような概念図のつくり方だと思うのですが、n-1年、n年、n+1年において、当月未回答の部分と前年同月未回答の図示の仕方が微妙に違っているのですけれども、何かこれは意味があるのでしょうか。
 
○瀧原統計管理官
 上のほうの2ページの図でよろしいですか。
 
○稲葉構成員
 そうです。
 
○瀧原統計管理官
 これはちょっと明示的になると、余り強い意味を出すとよくないかと思ったのですけれども、これが示したいことは、例えばn年の前年同月未回答は、前年の当月未回答に相当するということで、そこのサイズを合わせているということでございます。
 
○今野座長
 これは厳密に、図にするとごちゃごちゃしてしまうけれども、要するに未回答は今月のみ未回答、前年のみ未回答、両方未回答、本当はこの3つの足し算だよね。そうするとごちゃごちゃしてしまいますけれども。
 
○稲葉構成員
 そうですね。そうしますと、3ページのn-1年の未回答のところはどう解釈すればよろしいのでしょうか。
 
○瀧原統計管理官
 ここは言葉がちょっと変わっているのですけれども、n-1年のところでは、これは翌月未回答という言葉を出しているのですが、この翌月未回答というのは2ページの図では出てこない概念でして、n-1年のところを対n年で見たときには翌月未回答という概念が出てきまして、これに相当するのはn年のところの当月未回答のうちで、新規とサンプルインのところでの未回答を除いたものという対応でございます。
 
○稲葉構成員
 わかりました。
 ただ、注を入れていただかないとすぐにはわからないかと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
○今野座長
 もしかしたら、余り細かいことを言わないで未回答とすっと書いておいて、あとは何となく放っておいたほうがわかるかもしれないな。
 
○瀧原統計管理官
 なので、これは本当にどこと比べるか。いわゆる未回答というのは、3ページの下の図でいきますとグレーのところだけなのです。ここが未回答だということで、白い翌月未回答とかというのは全然関係ない話なのですけれども、比較の概念ですとこれを持ち込むことになって、共通事業所の前年同月比を考えるときには、ここは非常に非標本誤差が出るところであるので、ちょっと書いたと。確かに、注も何もないので、これだけ見たら何だというところはあろうかと思います。
 
○今野座長
 そういう意味では、この図を報告書に出すときに、読み方の注が入ったほうがいいね。
 
○瀧原統計管理官
 そうですね。
 
○今野座長
 ほかにいかがですか。
 では、とりあえず先ほどのネーミングはこのままに一応しておいて、報告書は検討するということにさせていただければと思います。
 この報告書の原案が今日出ていますが、前回、骨格について御議論いただいて、それをベースにして事務局から原案をつくっていただいて、皆さんからコメントをいただいて、コメントに対して修正をした分が今日出ている原案だというふうにお考えいただければと思います。その原案でこれから御議論いただきたいと思うのですが、ただ、神林さんが海外に行っていて、コメントが遅れたのですね。先ほど聞いたら、今朝着いたというので、細かい点は別にして、重要な点としてはこんなコメントが神林さんからあったということを紹介していただいてから議論に入ったほうがいいかなと思いますので、まずその点からお願いできますか。
 
○瀧原統計管理官
 では、神林先生の御紹介はございますが、その前に、先に資料全体に報告書案のほうを説明させていただければと思います。資料3-1以下になります。
 まず、全体の構造を御説明させていただきます。資料3-1をごらんいただければと思いますけれども、これが報告書案でございます。めくっていただきまして、1ページのところから目次でございまして、報告書案本体自体は、1から7の章で構成されているものと、その後ろに、目次の2ページになりますけれども、参考資料をつけさせていただいております。これ自体は開催要綱でありますとか、皆様方、構成員のお名前、あるいは開催実績、そして3月末にまとめました中間的整理を資料としてつけるという構成にしております。
 あと、これとは別に3-2というもので、ちょっと分厚い資料になって恐縮ですけれども、資料編というものをつけております。先に資料編のものを見ていただきまして、1枚めくっていただきますと目次がございまして、中身自体は、検討会は本日で14回目になりますけれども、その間につくらせていただいた資料を、先ほどの本体の報告書の章立てに合わせて構成を組み替えております。その組み替えしたものとして、この資料をずっと並べて番号を打ち、ページを打ちという形で整理したものと考えていただければと思います。
 ここでの資料を本体の報告書で引用する際には、この資料編のページ、あるいはこの資料のナンバー等を使ってここに見ていただくという構成をとっているものになっておりますので、まずこれは、そのような形で資料編でバックデータとして整理したというものでございます。
 最後、資料4としては、この報告書の概要ということで、少し文章として長い報告書になっておりますので、全体の構成と、そこに記載したポイント事項を整理したというものがこの概要、1枚紙でございます。
 以上のような構成になっているということをもとに、3-1の中身を簡単に説明させていただければと思います。本文は3ページからになります。
 まず最初のところで「本検討会の開催趣旨」ということで整理して書いているものでございます。開催要綱等をベースに書いているものでございまして、2月22日に第1回を開催して以降、本日で第14回ということで、この報告書を取りまとめたという書き方で冒頭始めさせていただいております。
 2番目のところは「毎月勤労統計について」ということで、これは概要等を書いておりますが、(1)の一番下のところを見ていただきますと、最後に括弧書きで「(資料〔1〕(資料編P2~3)参照)」とございますけれども、こういう形で先ほどの資料編のところを引用という形で整理させていただいております。
 続きまして、(2)は実質賃金についてということで、毎月勤労統計における実質賃金とはいかなるものであるかということを簡単に書いておりまして、毎月勤労統計、本系列において名目賃金指数を消費者物価指数を割って実質賃金指数をつくっていて、それを公表しているということで、細かい資料については、資料〔2〕をご覧くださいというものになっております。
 続きまして、今回の検討会の主たるものであります共通事業所の概要をそこに書いております。(1)のところは作成・公表の経緯ということで、実際に検討会でも御説明させていただきましたけれども、毎月勤労統計においては抽出調査ですので、サンプル入れ替えのとき、あるいは労働者ウェイトの基準値の更新のときにギャップが発生するということで、そのギャップ修正を行うということを従来まで毎月勤労統計はやっていたわけですけれども、このギャップ修正自体が過去にさかのぼって修正されることで、使いづらいという意見も出ていたということで、これらについて、次の5ページになりますが、厚生労働省における検討会や統計委員会でのワーキンググループ等で議論されて、一つには新旧係数をそのまま接続する。断層自体はそのまま存在するのだけれども、一方で、最初の段落の一番最後ですけれども、継続標本による参照値を形成することを検討するようにとされました。
 これを受けて、毎月勤労統計において30年1月にローテーション・サンプリングを導入したのですけれども、その際に、併せて今回議論に出てくる共通事業所という概念を入れて、それでの比較値、前年同月比ですけれども、それを参考値として出すこととして、30年1月分の確報から公表が開始されたというのが経緯でございます。
 (2)には共通事業所の目的・定義ということで、目的は先ほどのギャップを除くということがあったわけですけれども、その際に2時点間の賃金の動向を見るための前年同月比を参考にして公表するということになっております。
 具体的な方法としては、(2)の2パラ目になりますけれども、当月と前年同月と両方に回答している事業所を調査対象とする。そこに限定するということと、それを母集団の本系列と同じものと想定した上で、前年同月の労働者のウェイトを当月と同一のものとして集計したものという形で計算しているというのが共通事業所であるということでございます。
 6ページに参りまして、共通事業所の公表値の概要になりますけれども、この場合、当月と前年同月を比べるということですので、先ほどの図の議論とも同じですけれども、今度は当月と翌年を比べるということも発生するので、その際に各年各月で2つの集計値が存在する公表値になるということでございますので、1年間の動きを見るにはそのための目的は果たしているわけですけれども、一方で、長期的な時系列比較は想定しないということで、そのために指数というものも作成していないというのが共通事業所の公表値であるということを整理しております。
 そこからこの検討会でいろいろ御議論いただきました分析のこと、本系列と比較しての分析を書いたものでございます。細かいのは省略しますけれども、共通事業所の特徴として、先ほどの定義から集計値が2つあることでありますとか、あるいはウェイトが異なっているということで、その2つの賃金も単純には比較できないものになっているということがございます。さらに次の7ページにございますけれども、特定の2点間の比較というもので整理しておりますので、長期間、あるいは前月とか、今月と来月というような比較も難しいものになっているということがございます。
 そういうこともあり、共通事業所の定義から来る特徴が発生しているということでございまして、最後のところは、回収率を前年同月、通常普通の抽出ですと、当月どれだけ回収率があったという影響は本系列でも当然受けるわけなのですけれども、共通事業所に関しては、前年同月に回答があったかというところでサンプルが限定されるということで、本系列とは違う標本誤差が発生しているものであるというところが最初の(a)のところでございます。
 次は(b)で、これはサンプル数の話になりますけれども、共通事業所のサンプルの数は各月約1万で、一方で、本系列は約2万5000ということで4割程度になっているというのが現状ですし、また、規模間でも相違が出ている。なぜ相違が出ているかというと、下のところにございますけれども、ローテーションの入れ方で、500人以上は全数ですので入る可能性が高いわけですが、500人未満は抽出で、さらに5~29人規模になりますと、抽出であって、かつ、調査期間が短く半年ごとにローテーションするということで、5~29人については3分の1程度にしかならないというところを記載したものでございます。
 次が8ページになりますけれども、(2)として今度は共通事業所の集計値の特性ということで、実際、今回議論したのは賃金の話ですので、賃金について幾つかの分析をさせていただいたということでございます。ただし、賃金の分析に当たっては、通常公表されているのがウェイトをそろえているものですので、そこのウェイトをもちろん比較可能なようにした上での分析というのが必要になるわけですけれども、その場合に、やはり本系列とは少し差が出ていて、全体的な傾向として、共通事業所の集計値のほうが少し高いのではないかと。ただ、それを細かく単位集計区分で見ていくと、相関は比較的規模の大きいところで見られるということと、あと、回帰分析等のモデルでやった場合には、産業・規模別の区分で見ていくと、明らかにどこも高くなっているとかいうものは言えなくて、高いところもあれば低いところもあるということで、一定の特徴を示すとまでは言えなかったというところが賃金水準でございます。
 一方、賃金伸び率はさらにもう少し難しい分析になったわけですけれども、時系列で見ていくと、本系列と一定の相関はあるのですが、その水準、これは計で見たと思うのですけれども、乖離が見られるということでありますとか、あるいは各月において産業・規模別に見た場合には相関が非常に低いということで、次の9ページにわたっているのですけれども、時系列比較した場合には、経済の動向等の影響を受けて、各産業・規模区分で同じような動きを見せるのですけれども、ただ、やはり影響の大きさ等々についてはそれぞれ産業・規模によって違うこともあり、共通事業所を見れば本系列の動きがわかるというものにはなっていないというものが見られるということでございます。
 パートタイム比率、女性比率については、初期のころにやった分析ですけれども、これはやや偏りがあったというところがあろうかと思います。
 それから、共通事業所につきましては、先ほどの図の議論でもございましたけれども、未提出、未回答の事業所の影響があるということがございましたので、これも分析をして、やはり何らかのバイアスが存在するのではないかということで見たところ、賃金額ですと、未回答の事業所に比べて共通事業所のほうがやや高いのかなということで、サバイバル・バイアスというものが出ているのではないかと。特に前年同月の提出状況も要件にしていることで、より強いバイアスが考えられるのではないかということでございます。
 ただ、その辺りのバイアスについては、神林先生に分析いただいた部分のことを少し9ページの最後に加えておりますけれども、サンプル更新の頻度によって、そこは一定程度緩和が期待されるという話はございました。
 次は10ページ、標本誤差の話でございます。これは議論として、共通事業所はサンプルサイズが小さいので誤差が大きいのではないかというところが直感的に感じられたので、その辺りの分析を進めた話でございます。
 結論的にはというか、まず、誤差自体を評価するのがなかなか難しいというところがございます。それは共通事業所の母集団が何かと。今、一応、本系列と同じという想定のもとでやっていたわけですけれども、どうも違うのではないか。違うとなると、なかなか誤差率の計算は困難だというところが一つ整理されたところであります。
 また、補足的に前年同月比について言うと、これは今の通常の集計値、平均賃金等の推計方法とまた異なる方法で誤差というのは考えなければいけないのではないかということで、それ自体も難しいという話はございました。
 ただし、一方で、とはいえ、共通事業所について何らかの誤差の評価ができないかということで、変動係数というもの、ばらつきを平均値で標準化する手法でございますけれども、それを見た場合には、本系列と比較して明確な大小関係がなかったということで、共通事業所はサンプルが少ないのだけれども、変動係数で見た場合にはそんなに差があるとは言えないのではないかというのを書いております。
 そのことを少し深めるために、(5)で時間相関という概念を持っています。時間相関という言葉が一般的かどうかということもありますけれども、一応最初のところに書いてありますが、2時点間、各月とその前年同月とで、賃金なら賃金額について相関がどうあるか、どういう状況になっているかを見たもので、事業所単位で分析した場合には非常に相関係数が高かったということで、同じ事業所においての賃金変動というのは比較的安定しているのだろうということでございますけれども、これを単位集計区分というくくりで見ても、やはり本系列に比べると共通事業所は変動する部分が小さいということで、結果的に安定的なものになっているのではないか。
 安定的になっているがゆえに、サンプルサイズが小さくても変動係数が小さくなっているのではないかというところが、ここで書いているものでございます。
 続きまして、11ページ、年間残留率のことを書いておりますけれども、これは共通事業所について、同じ事業所を取ろうとしている、同じ事業所の平均賃金を出しているということで、労働者の賃金の伸びというのに近いものが捉えられるのではないかという議論があるのですけれども、実際には事業所内での入離職というのもございますので、単純に同じ労働者の賃金変化を示していると捉えるのは適切ではないというところがこちらでの御議論いただいた結果かと思っております。そういう意味では、共通事業所の集計値というのは、労働者の賃金の変化に近いものとして利用するには、やはり一定の留意が必要だろうと。そういう見方は難しいのではないかというところを書いてございます。
 あと、今回のような継続しているサンプルの活用事例としてアメリカの例がございますので、その紹介を書いております。
 ただ、11ページの下のほうに書いてありますけれども、アメリカでは、母集団情報というのが、失業保険の加入事業所の名簿を使っているということで、最新の情報に更新されているもので劣化していないということもあって、その辺りが実際にこれを活用できるポイントではないかということで書いておりまして、次の12ページになりますけれども、毎月勤労統計でいきますと、5年に1回の経済センサスを使っているということで、そのまま同じようにできるかというと難しいと思われるのですけれども、活用事例としては参考になるのかなと。
 あと、実質化の検討ということもありましたので、デフレーターについても御議論いただいたものを整理しております。最初のほうは毎勤の使っているデフレーター、消費者物価指数のことを書いておりますけれども、これにつきまして、12ページの下の2つのパラグラフでございますが、物価の専門家のヒアリング等も実施して、共通事業所のデフレーターというものはなかなか難しくて、本系列と同じように考えていくのが適当ではないかと。ただし、本系列のデフレーターについては、帰属家賃を除くのか、含むのかというものについて、現在は除いておりますけれども、含むという考え方もあろうかと思いますし、あるいは地域別の物価というのも考えられることがあれば、そういうのもいいと。
 あと、毎月勤労統計が事業所ベースである、そして、賃金は労働コストだという見方もあるので、そういう観点からのデフレーターの設定というのもあるのではないかというのがありました。ただ、いずれにしても、繰り返しますけれども、本系列にかかわる話でもありますので、本検討会においてはそれ以上深めるものにはしていないということでございます。
 13ページは、今までが分析したものの大まかな整理でございますけれども、それを基にどういう考察があり得るかということで、中心的な課題である共通事業所の賃金動向という意味では一体何を示しているのか。本系列との代替可能性。本系列を示すものの代替として使えるのかという議論があったと思いますけれども、結論的にはこの前の4章で分析したとおり、やはり違う特性があるということで、少なくとも本系列を代替し得るものではないと考えるのではないかということであります。
 それ自体が、実際に何を示しているかというところで、本系列が全国の事業所の動向を示すことになりますけれども、そのうち1年前も含めて回答しているというところを考えると、そのうちの一部のカテゴリーといいますか、一部の事業所についての動向を示しているものではないかというところで分析結果が出たものであります。
 (2)はそういうデータを使った現状についての整理でございますけれども、ローテーション・サンプリングを30年1月から入れておりますが、現在、移行期間中にあるということで、入れ替えも2分の1であったり、あるいは調査期間も3年でやるところを2年のもの、あるいは4年のものもあるという状況のデータでの分析ですので、これが平準化するのは平成4年以降だという状況をここで記載しております。
 14ページになりますと、先ほど言いましたように、4年目のサンプルだとかがあると、サバイバル・バイアスというものが強く発生している可能性もあって、それらの移行期間における一定の影響が現在はデータ分析に入っているのではないかというところが一つの考察でございます。
 あと、500人以上の本来全数でやるべきところが、厚生労働省によって、東京都においてそこが抽出になっていたという事案がございました関係で、今の動きと今後の動きは少し変わってくる可能性もあるので、そこの影響も考えないといけないのではないかということが(3)でございます。
 (4)は共通事業所の集計値自体、今、公表しているものについてどう評価するかというものでございます。
 実際、ギャップの部分についての除去した指標としてやっているということで、ギャップを除去しているという意味ではまさにそのようなことができている指標だということで有効な面はあるのではないかと。また、サンプルサイズが小さいという議論もありましたけれども、変動係数等で見ると安定性があるということで、使えない数字ではない。一定程度安定性が見られるので、今後とも参考値として提供していくことは可能であり、適切ではないかと考えられるのですけれども、ただし、先ほどから出てきている結論の方向性ですけれども、共通事業所の集計値と本系列を示す指標というのは違うものだ、異なるものだということで、やはり本系列を代替するものではないということで、母集団自身もそうすると何が母集団というのがまだ今の時点では明確になっていないということで、本系列の復元というのも「近似的な方法」であるという留意点があることはしっかり考えないといけないということをここで書いております。
 次に15ページでございますけれども、そのような点を考えると、現在の定義の中では時系列比較が可能な指標を作成することは難しいだろうということは、中間的整理のところでも申し上げたのですけれども、そのものは引き続き書いております。ですので、今後も参考値として名目値を出すということが適当ではないかというものを書いているところでございます。
 これらの整理、考察のもとで、提言という形で先生方に御議論いただいたものを書いております。最初には、継続的な調査対象事業所のデータの活用の可能性ということで、共通事業所が本系列を代替するものではないのだけれども、その意味するものは何かということで、(1)の2つ目のパラグラフになりますけれども、1年以上前から継続して存在している全国の既存の事業所を代表するものではないかと考えられるということでございます。そのように考えると、そこの部分を明確にすることによって母集団がはっきりしてくると、時系列比較が可能で実質化できるような概念で、そこを検討できるのではないかということで、既存の事業所の動向という新たな集計値の概念を示していくことでどうかということでございます。
 そのことにつきましては、15ページの下から書いておりますけれども、商業動態統計等で既存店という概念がございまして、そこの部分で、既存店のみについて売上動向を見るという手法もございますので、そういうものを参考にしつつ、16ページになりますけれども、新しく開設された事業所とか廃止された事業所を除いた集計を考えていけるものにはなるのではないかということでございます。
 次のところが、先ほど図で話がありました概念の整理でございます。これは先ほどの図で描いたものを言葉で書いたもので、全事業所等と調査対象事業所で、それにパラレルに係るものとして既存事業所とそのサンプルとしての継続事業所という形でここに書いておりますけれども、ここは先ほどの議論での整理があり得るのかと思っております。
 ここで言うところの継続事業所のうちのサブカテゴリーの中に共通事業所というものが考えられるのではないかということでございます。
 その違い自体で、文字で書いておりますのは、既存事業所というのは全事業所のサブカテゴリーなのですけれども、継続事業所、これはサンプルインも入ったものですが、そういうサンプルインとかサンプルアウトの影響を受けるということで、これは既存事業所のサンプルであるがゆえにギャップが発生するものという特性は出てまいります。
 一方で、共通事業所のほうは、サンプル入れ替えの影響を除いておりますので、そういうのはないのですけれども、ただ、今度は標本誤差の影響が出てくるということで、それぞれに課題というのが存在しているということでございます。
 ただ、いずれにしても母集団を既存事業所として復元方法を考えていくのがいいのではないかというところを16ページで書いております。
 次が(3)でございまして、時系列比較が可能となるような既存事業所の動向を示す新たな手法の検討ということで、そういう時系列比較が可能となる、先ほどの継続事業所というのを使っておりますけれども、それについて既存事業所の動向をあらわす指標として検討してはどうかという提案でございます。
 これで、本系列のほうが全ての事業所の動向、日本全体の中での経済構造の変化等も含めた賃金水準の基本指標となっているのですけれども、それを補完する情報として既存事業所の動向を提供することができるものではないかということでございます。
 少し飛ばしますけれども、実際、最後のパラグラフ、このためということで、我が国で継続的に経済活動をしている事業者に着目して、かつ、時系列比較可能な集計値とすることができると、本系列とは違った角度から我が国の経済の動きを把握する可能性を持った指標としてできるのではないかと。従来の賃金統計を補完していくこととともに、労働者一人一人の賃金の動向を、あくまでも近似的ではございますけれども、そういうものもあり得るということです。
 ただ、そうは言いつつ、継続事業所と共通事業所、それぞれ特性が違いますので、それぞれのメリット・デメリットとかも踏まえた形でのものが検討としては必要なのではないかということでございます。
 母集団については、基本的には既存事業所というものの母集団を設定することが非常にポイントになりますけれども、そこをどうとっていくかというのは、今後の検討事項なのかなというところでございまして、18ページで、今現在、毎勤自体が経済センサスを使っておりますので、まずはそれをベースに考えていくことになると思いますけれども、それ自体が今、経済センサスをもとにした事業所母集団データベースを、できるだけそのときそのときの適時的な状況を反映するような改善に取り組んでいるので、その辺りはしっかり注視していきたいということ。
 あと、これはまだ今後の課題かと思いますけれども、例えばアメリカのような雇用保険関係のデータを使っていくことでありますとか、別の統計との活用というのも検討の可能性を期待したいと書いております。
 なお、この最後のなお書きのところは、そういう母集団設定というのができて初めて誤差計算ができる。それまでは誤差計算が難しいのですけれども、ただ、母集団設定というのもまだ課題があることなので、集計表に例えばサンプル数を明示するという形でユーザーへの情報提供をしていくのがいいのではないかということを書いております。
 (5)が今後の分析の必要性ということで、これは5章のところで書きましたけれども、現在、ローテーション・サンプリングの移行中ということでありますとか、東京都の500人以上のこともございますので、現時点で本検討会での分析は暫定的なものだということでございますので、制度自体が平準化して安定した分析ができる時点でもう一度しっかり分析をした上で、この既存事業所の動向を示す新たな指標のあり方を検討すべきだということで書いております。
 最後、なお書きのところは、先ほどもありましたけれども、改めて今回の議論の中で労働者の賃金動向の実感という概念というか捉え方があったわけですけれども、毎勤統計はあくまでも事業所単位であるので、やはりその中での労働者構成の影響とかが含まれているので、個々の労働者の賃金の変化を捉えるのは原理的には無理だというところを改めて申し上げまして、そういう観点から、もしそのようなものが必要であれば、パネルデータとかを検討していくことも掲示させていただいているものでございます。
 最後に結びのところは、このような継続サンプルを使っていくことに関して、実際、日本の賃金統計についてはほとんどこういう実績がなかった中ですので、意欲的な取り組みだということは考えられますけれども、まだ分析が十分ではないので、そこはしっかり検討していくことを期待したいと書いております。
 いずれにしても、最近、EBPMとかいうものが言われている時代ですので、統計ユーザーのさまざまなニーズに対応したデータの提供からしっかり検討を進めることを願うということを書いております。
 あとは、最後のほうになりますけれども、実際に今回の共通事業所自体がギャップの影響を除くという話になっておりますけれども、ただ一方で、標本誤差の影響も起きているということですので、そういう意味では、統計制度自体をそもそも本系列で精度を高めていくことが大事だということで、そのためにもローテーション・サンプリングの安定的な実施やデータベースの適時的な更新、回収率の向上もしっかり取り組む必要があるということで、最後に20ページの取りまとめ、結びとしまして、本系列のあり方については、このミッションを超えるわけなのですけれども、いろいろこの検討会で本系列に係るようなさまざまな課題にも議論が及びましたので、そういうことを踏まえて、統計ユーザーの利便性を考慮したさらなる情報提供や毎月勤労統計の精度に係る不断の見直し等について継続的に検討を行うことなど、統計メーカーとして精度の向上に精力的に取り組むことを期待したいという形で締めさせていただいているものでございます。
 それのポイントとして、資料4は今のものを整理した形で、まず、共通事業所の特性から見られるものを一番上のブルーのところで書いておりますけれども、左側にはサンプル入れ替え等の影響を除去することとして有効で、伸び率自体もサンプルは少ないのだけれども安定性があるもので、有効な指標ではないかと。
 一方で、2時点間を比べるという一つの目的に特化した部分はあるので、2つの集計値が各月に存在してしまうなどということで、時系列比較は可能ではないということで、実質化は難しいというのが現状のものであります。
 その中で、実質化ということは検討できないかというところで、この検討会で御議論いただいたわけですけれども、そのためには、やはり母集団に当たるようなものを想定した上での考え方が必要になりますので、そういう何か新たな概念を検討していくべきではないかということで御議論いただいて、共通事業所自体が本系列の代替というわけではなくて、継続的に経済活動を行っている事業所の一部を実際に示しているような状況だと考えられるので、では、そのような指標を考えるのがいいのではないかというところが提言で書いているもので、新たな指標の検討ということを書いております。
 こういうものがうまく設定できれば、新設事業所の影響排除とか安定的な賃金の動向を把握できる可能性というのがありますし、また、本系列と違った角度から経済の動きを把握できる可能性があるということで、それによりまして、時系列比較や実質化というところも視野に入るというか、その可能性が出てくるのではないかということでありますし、あるいは労働者から見た賃金動向の実感というところも近くなるのではないかということでございます。
 ただし、そういうものに関して提言の赤いところの2つ目になりますけれども、新たな指標に必要な検討ということで母集団というものをどう考えていくか。それは最新の情報をちゃんと反映できるかどうかというところもポイントになろうかと思いますし、その上で今後の分析の必要性ということで、先ほどの現状を踏まえると、制度が平準化する際のデータを基に新たな指標のあり方を検討すべきであるという形で概要を整理させていただいております。
 長くなりましたが、以上でございます。
 神林先生のほうからは、お忙しい中で文案を見ていただきまして、言葉の定義として少しいただいているのは、先ほど何度も申したように、制度が平準化するという言葉を使っているわけなのですけれども、制度が平準化するというのはわかりにくいということで、標本の交代、実際のサンプルの入れ替えですね。その形でのデータが安定していくということを言うべきではないかということでありますとか、あとは、言葉としてより正確に、これのほうが正確ではないですかという感じで書かれた部分はありますけれども、その点については神林先生自身が、研究者の言葉というところと行政の書き方は少し違うのかもしれないので、そこは参考にしてくださいという形での修文案をいただいております。
 ただ、中身について、意味合いが違うでありますとか、書きかえるべきだというところは基本的にございませんでしたので、そこの点を御報告させていただきます。
 以上でございます。
 
○今野座長
 ありがとうございました。
 それでは、自由に御議論をいただければと思います。どうぞ。
 
○山田構成員
 12ページのデフレーターのところなのですけれども、これは質問なのですが、下から10行目ぐらいのパラグラフの中に、共通事業所のデフレーターの検討を行ったのだけれども、「共通事業所の集計値に適したデフレーターというものは考えにくく、あくまでも本系列と同様のもの」という文章があるのですが、この同様という意味合いですね。同じものということなのか、ここの意味合いを教えていただきたいです。
 
○瀧原統計管理官
 言葉自体、同様というもので使っておりますけれども、要は共通事業所というもの自体が事業所の中で一部を占めているわけですけれども、それが例えば地域性に明らかに偏りがあるとか、産業別にこうだというふうになると、もしかしたらデフレーターの考え方も変わってくるのかもしれませんけれども、基本的には本系列と同じサンプルの中の一部の集団ということで、そこに特化したデフレーターというのは考えにくいのではないかということで、そういう意味では明確に言うと同じという考え方では書いております。
 ただ、もし先生方で、やはりそこは考慮する要素があり得るという意味では、もしありましたら、同様というちょっと緩めた言い方もあるのかなと思いますけれども、今、我々としては同じものでいいのではないかという考え方で整理したところでございます。
 
○山田構成員
 同じというのは具体的に言うと、本系列で使っているもので実質化すると。
 
○瀧原統計管理官
 そうです。使うとすると、そのデフレーターというのがまずは妥当なのかなということであります。
 
○山田構成員
 でも、そこがちょっとコンフュージングなのは、基本的には実質化ということの系列は出さないわけですね。だけれども、あえてやればということですか。ちょっとここの意味合いがとりづらいのです。
 
○瀧原統計管理官
 例えば、実質化自体ができるかどうかというのは、今のままでは難しいということの中で、今回いろいろ提案等もさせていただいたのでございますけれども、そのようにもしできるとしたら、これは、デフレーターを何を使うかというのは、母集団が何かというのは全然独立した議論だと思います。そういう独立した議論の中で、デフレーターについては、仮に何らかの形で実質化ができるようになったときにどのような考え方をとることができるかということで、デフレーターという観点から見ると、何か新たな考え方なり、例えば母集団はこういうふうにやりましょう、デフレーターはこういう方向でやればいいのではないかというようなところには議論は向いていないということで、新たな追加的な検討項目としては提起していないという感じであるのです。
 
○山田構成員
 そこは若干、さっと読んでしまうと、実質化ができるのだから、今のデータに対してデフレートしたものを出すのがいいのではないかというふうに読めるようにも思えるので、そこはちょっと誤解のないように書いたほうがいいのではないかなということですね。だから、特別に、確かに実質化するときに基本的には一定の賃金の系列をデフレートするときに消費者物価指数を使うというのは一般的な話なので、そういうところからは大きな枠としてはずれていない。その程度のことを言っているにすぎないということですね。ちょっとそこは何となく表現が、実質化できるのだというふうに…。
 
○今野座長
 多分重要な点は、我々が議論したのは実質化できるかどうかとかと離れて、もし実質化するとしたらデフレーターとして何を使ったらいいのかというのを専門家を呼んで検討したわけですね。先ほど瀧原さんが言われたように、共通事業所という一つの事業所群が特定のどこか地域とかに偏ったときに、それに当てるデフレーターは新たに考えなければいけないのではないかということを検討して、結局、結論は、難しいという感じだったと思うのです。あのときも地域別に偏ったとき、地域別にデフレーターをつくれるのかということを検討したわけですけれども、結局それは難しいということで、もし実質化するとしたらデフレーターは本系列と同じものを使わざるを得ないだろうなというのが結論だったと思います。
 ですから、そういう点からすると、気になるのは仮にというのが一つと、もう一つは適当であるというのが少し強いかなと。表現の仕方としてはそこの2点ですかね。適当であるでもいいけれども、やむを得ないというのも何か変だし、そこは表現を考えなければいけないけれども、もうちょっと弱いほうがいいかなという感じがしますね。適当であるというとすごく前向きな感じがする。つまり、我々の結論は、ほかにもう選択肢がないという感じでしたよね。
 
○山田構成員
 だから、概念的には地域別とかいろいろ言われるのだけれども、多分、実務的にはなかなか代替物がないのでそうせざるを得ないというか、そこの表現をどうするかというのはあるのですけれども。
 
○今野座長
 ですから、委員会の我々の意見からすると、少し弱目にしてくれたほうが我々の議論を上手に反映しているかなと思います。
 ほかにいかがですか。
 石原さん、どうぞ。
 
○石原構成員
 ちょっとたくさんあるのですけれども、まず小さい点から。多分、先ほどの神林さんの中に入っていたのではないかと思うのですが、サンプル数という言い方が散見されるのですが、一般的に使うものなのかもしれないのですけれども、サンプル数という言い方はおかしいのです。サンプルというのは標本の一つのサンプルなので、いっぱい対象事業所が入っているサンプルが1個、標本が1個、その中に事業所の観測値がいっぱい入っているわけですね。なので、サンプル数ではなくてサンプルサイズとか、サンプルの大きさとかという言い方をしないと、ちょっとこいつわかっていないなと思われると報告書を読んでもらえない可能性があるので。
 
○瀧原統計管理官
 それは、いわゆるサンプルというのは集合体としてのものを指しているということなので、サンプルの数というと、集合体が幾つかあるということになるのですね。そういう意味では、標本数と言えばよいのでしょうか。標本も違うのですか。
 
○石原構成員
 一緒です。標本はサンプルですから。
 
○瀧原統計管理官
 そうですか。実は、神林先生は標本数という言葉を言われて。
 
○石原構成員
 いや、それは単に翻訳しているだけなので、神林さんはオブザベーションの数とかを言っていたはずです。多分。
 
○今野座長
 観測値の数。
 
○石原構成員
 はい。稲葉先生は事業所数とかおっしゃっていた。稲葉先生が事業所数とおっしゃっていたものをサンプル数と書き直しているので、それはやはりちょっとまずいというか、すごく「サンプル数」と出てくるので。
 
○瀧原統計管理官
 一番端的には、これは実は本当に初期のころからうちのほうで使っているのですけれども、資料編の3-2の11ページの上で、そもそも共通事業所ってどれぐらい数があるのだという話のときに、これが初出でして、サンプル数と書いたところで始まっているというところがありまして、これの引用でサンプル数としてしまっているのです。要は、事業所がどれだけあるのだということになるので、そういう意味では事業所数ではあるのですけれども、共通事業所の集計対象になっている事業所数というのを端的に言うと。
 
○石原構成員
 事業所数ですね。
 
○瀧原統計管理官
 端的に言うと事業所数ですか。結局、そこの数が大きい、小さいというところはサンプルサイズというか、サンプルサイズが小さいとか大きいとかとさせていただいたけれども、具体的に1万とか2万5000というときにどう使うのが適切かというところで、それは事業所数。
 
○石原構成員
 別にサンプルサイズが幾つ、1万とかでも構わないと思います。見て見ぬふりをしていたというか、すごくよく使われている言葉なので余り突っ込まなかったのですけれども、報告書ですし、本当は間違っている。
 
○瀧原統計管理官
 わかりました。では、そこは修正の形で。標本というのも、個々の標本ではなくて、標本集団としての標本を標本ということなのですね。
 
○石原構成員
 私のこの間の図は標本でしたよね。T-1年の標本でしたよね。それを神林さんは標本でオーケーだと言っていたので。
 
○瀧原統計管理官
 サンプルサイズ1万事業所という言葉はいいということですね。
 
○石原構成員
 そうですね。
 
○山田政策立案総括審議官
 では、サンプルサイズ。多分、事業所数だと母集団のほうの事業所数とも思えるので、サンプルサイズで。
 
○石原構成員
 サンプルの中の事業所とかそういう言い方はして。
 
○瀧原統計管理官
 サンプルサイズという言葉で使って問題ないということであれば、サンプルサイズに全て修正させていただきます。
 
○今野座長
 そうすると資料編も直さなければだめですね。
 
○石原構成員
 そうですね。
 
○瀧原統計管理官
 これは直します。全て同じような形にさせていただきます。
 
○石原構成員
 最初から言っておけばよかったですね。済みません。
 
○今野座長
 ちょっと遅い。
 
○石原構成員
 済みません。ごめんなさい。
 
○今野座長
 いいですよ。次。
 
○石原構成員
 それで、報告書に関して私自身は違うなと思っている部分がありますので、大きく4つあります。1つが、現在の共通事業所の集計値について、評価のところですけれども、14ページぐらいです。現在の集計値が指標として有効なものである。今後とも参考値として提供していくことが適切と考えるというふうに報告書案ではなっているのですが、私自身は、この検討会に参加していて話をしていた記憶からいうと、この集計値は作成に問題があるということと、それから、意味がわからないという大きく2つの問題があったと思います。
 作成の問題があるというのは何だったかというと、何回目かのときに稲葉先生がおっしゃっていた、共通事業所がゼロになってしまう単位集計区分が幾つかあります。その単位集計区分はゼロなので、ゼロのまま集計していますという問題があったと思います。それを今でも変わらずにそのまま集計しているとすると、それはその統計作成上どうなのかなという問題があったと思います。
 それともう一つ、作成上の問題点として前回、今野先生がおっしゃった、去年の観測値を今年のウェイトで母集団に戻して、今年の観測値も今年のウェイトで母集団に戻して前年同月比をつくっているので、去年の観測値を今年のウェイトで戻している意味。確かにギャップは回避されているのですが、それは何の数字になるのだかよくわからないという問題が2つあると思います。去年の数字を今年のウェイトで戻しているために、何で実質化したらいいのか、どの消費者物価指数を使ったらいいのかわからないというようなことになってしまうのではないかと思います。
 なので、作成上、特に最初に言ったほうの共通事業所がゼロになってしまうところをそのままゼロのまま集計してしまうのはよくないので、ぜひ修正していただきたい。もし今の共通事業所をそのまま使い続けるのであれば、ぜひ修正していただきたいと思います。
 
○今野座長
 では、まず、ゼロから。
 
○瀧原統計管理官
 まず前段のほうですけれども、前段のほうの課題につきましては、これは課題として残っております。課題として残っておりますが、実はこれは共通事業所特有の問題ではございませんで、本系列でもある話でございます。共通事業所は、結局カバー率自体が全体で4割ぐらいという話になりますけれども、その4割がゆえにゼロになる、ゼロセルというのが非常に増える、あるいは顕著に割合が高くなるということになれば、共通事業所特有の問題としてはあるのかもしれませんけれども、カバー率4割の結果としては、それほど増えていないのですね。そんなにゼロセルの数が増えていない。
 ゼロセル自体がそもそも規模の大きい、小さい産業においては、本系列でもそこの危険性は残っていまして、本当に1個や2個のときにたまたまそこが出ないというゼロセルがあるときにどう集計するかというのは本系列の課題としても残っておりますので、そういう意味では、共通事業所で修正できるというよりは、これは毎勤そのものとして、そういう場合の処理の適切なところ。今は一応そこを平均値としてならしている形でやっておりますけれども、そこの検討の中での話かなということで、共通事業所特有の問題としては入れなかったというところが一番のことでございます。
 もう一つ、2つ目のほうにつきましては、比較の話なのですけれども、これは実はこの共通事業所の比較としてウェイトをそろえるというのは何をやっているかというと、例えば給与とかのラスパイレス指数と同じ考え方だと思うのです。要は、違う種類のものを同じ条件にする。ウェイトをそろえてやるときに比較する。だから、今年と去年を比べるときは、多分そろえるという意味では有効なものだと思います。だから、東京都とどこかの自治体とを比べるというときに、それを比較するという意味では一つの見方としてウェイトの影響だけを除去して、そこの条件をそろえることによって比較する手法としては意味があるものだと思うのです。
 ただ、それを、例えば平成30年と29年を比較するときに30年に合わせて比較するというのは意味があるのですけれども、それを時系列に、今度は29年と28年を29年にそろえたときに、そこでの数字と30年でそろえた数字を比べるというのは、だんだんわけがわからなくなってくるということで、そういう意味では、2時点間の比較というのは条件をそろえるということで意味があるのだけれども、長期的に時系列で見ると、どこにそろえるかというのがばらばらなものを時系列で見ていくのは難しいということで、まさにそこは2時点間の比較をしているために特化した共通事業所の前年同月比を時系列的な指標として見るのが難しいというために起きていることだと思います。
 
○今野座長
 後者については、結局、現在の共通系列というのは、サンプルの入れ替えとベンチマークの入れ替えによるギャップをなくして、それを除去したときにどういう賃金の変化になるのかにすごく集中しているのです。そういう意味の範囲内で、ラスパイレスは意味がある。その範囲内でね。私、報告書はそういう書き方になっていると思うので、いいかなと思うのです。
 もう一つ、前者については、これを報告書でどう書くかなのですけれども、書いてもいいし、書かなくてもいい。つまり、書かなくてもいいとすると、共通系列特有ではないので書かない。それにもかかわらず重要だったら、本系列でも問題があると思いますけれども、本系列も含めて、今後、ゼロのものをどうするかは検討してほしいということをどこかにさっと書いておくか、選択肢は2つだと思うのです。
 いいですか。もう一つ、今言った後者の選択肢をとるとすると、我々がもし書くとすると、サンプル数が減るので、ゼロの部分が増える可能性があるから、特に検討が必要なので、本系列も含めてゼロをどのように対応するかということについては今後検討してほしいという書き方になるかなと思います。
 
○石原構成員
 どこかのときに、前月のデータを使って修正するというようなお話、多分、私がいなかったときだと思うのですけれども、どなたかが。前月の数字を使ったらいいのではないかというようなことを、それは勘違いですかね。議事録にあったような気がするので。
 
○今野座長
 いろいろな意見があって、そういう意見もあったかもしれませんけれども、くくりをもう少し大きくしたほうがいいんじゃないとかいう案もあるので、そこについては具体的なハウツーはいろいろありますけれども、この件について余り具体的ハウツーを報告書に書く必要はないので、書くとしたら、もう一度、その問題が大きいのでどうするかを検討するというのも一つの大きな課題ですというぐらいで書いておくのが適切か、あるいは先ほど言ったように共通系列特殊ではないので書かないか、どちらかの選択肢だと思います。私はどちらでもいいのだけれども、でも、共通系列で特にゼロセルが増える心配があるのであれば、報告書にそういうことを書いておくことも重要かなと思います。
 
○石原構成員
 多分、この検討会で発見されたことなので、少し書いておいたほうがいいのではないかと。
 
○今野座長
 では、考察か何かのところで少し書いておく。
 
○瀧原統計管理官
 わかりました。それはありだと思います。
 実際、これは非常にかぶるといいますか、共通事業所でやったからゼロセルになる場所があるとすると、それは実はふだんからゼロセルになる可能性が高いところなのですね。なので、そこは共通事業所で見なくても、実は翌月ゼロセルになるような危険性のあるセルということになろうかと思いますので、そういう意味では共通事業所でそういう観点が出てきたので、それは本系列の課題としても重要なこととして、今後ちゃんと検討するというのはあるかと思います。
 
○今野座長
 ただ、本系列との共通だから、提言に書くにはちょっとあれなので、考察の中でそういう点に気をつけたらいいかなということを書いておくという感じかな。
 
○石原構成員
 今の部分が。
 
○今野座長
 場所は考える。
 それで終わりですか。じゃないよな。いいよ。
 
○石原構成員
 まだあります。共通事業所の問題点としてもう一個、何を示しているかよくわからないという問題があるということです。この中に明示的には書かれていなかったのですけれども、式があるので見ればわかるということなのかもしれないですが、共通事業所は本系列に対して復元していて、つまり、日本の全事業所がもし共通系列だったらという仮定の下の数字ということなのです。なので、共通事業所の数値というのは多分、この検討会ができた混乱の理由というのが、本系列の数字があります。共通系列の数字もあります。何でこっちを実質化しないのだというような話でこの検討会が始まったと思うのですけれども、何で真実が2つあるのだということですね。
 実は、本系列のほうはちゃんと全事業所の母集団からサンプルされました。それを全事業所に戻してつくっていますという数字なのですけれども、共通事業所のほうは、その中のよくわからないのだけれども生き残った人たちがいて、そのよくわからない生き残った人たち全員がもし全事業所だったらという仮定で数字をつくっているので、数字としてよくわからないのではないかということですね。なので、式が出ているからわかるでしょうというのではなくて、そこをすごく丁寧に、これはこういう事業所について、あたかも全事業所がこの事業所であるかのような仮定の下につくった数字ですというのをちゃんと説明すればよかったのではないか、ちょっとは混乱がなくなったのではないかなという気がします。
 なので、その説明をするべきでしたし、では一体、この共通事業所というのはどういう意味があるのかというのは、ちょっとよくわからないという問題もあると思います。
 
○今野座長
 その点についてはこの研究会でも何度もあったのですけれども、共通系列を残すとしたら、共通系列はこういう意味だということの説明をちゃんとつけて出すようにしてほしいということは皆さんの共通の意見だったと思います。ですから、今後、共通系列を使う場合はそういう説明。今おっしゃったのも一つですし、ほかのこともあるかもしれないけれども、この共通系列の特性はこういう意味ですよということをユーザーに理解していただいて、使っていただく。その説明文は丁寧にしましょうということは私は合意だと思うのですけれども、どこかに書いてあるのではないの。
 
○石原構成員
 書いていないですよね。
 
○今野座長
 書いてあるのではないの。どこかに書いてあったと思ったのだけれども。
 
○石原構成員
 書いていますか。
 
○瀧原統計管理官
 それは、そもそも今回の御指摘の話は、14ページの有効性の話とかに書いてあるところについては、ここで書いているのはその一部になりますけれども、(4)の3つ目のパラグラフのただし書きのところです。ここについて、本系列と共通事業所の示すものというのは、本系列が示すものとは異なる、本系列を代替するものではないということで、今の復元方法はいわゆる近似的なものになっていますよという留意点がありますというところがまずそこで一つ触れていることでございます。
 そのときに、この近似的な方法は近似の打ち方として適切かどうかというのは、何を示すかによって評価は変わるものだと思っておりまして、そういう意味では、今回この議論の中で共通事業所が何かというのはこれ以降の提言のところで既存事業所を代表しているものではないかという形になりますので、戻し方としては、既存事業所に戻すというところを、16ページの一番下のところですけれども、共通事業所の母集団である既存事業所への何らかの復元の方法を考えるべきだという形の流れになっております。
 あと、サイズの話は既存事業所の中でほとんど触れていないのですけれども、既存事業所というのは実は全事業所の中でのウェイトとしてはそれなりに高いもの。新規と廃業というのは決してそんなに日本で事業所が変わっていくわけではないので、そうすると、実は本来なら既存事業所に戻すべきところだけれども、今は全事業所に戻している。それは既存事業所と全事業所で賃金の額とか伸び率は、これはもしかしたら結構差があるかもしれませんけれども、労働者の数とかウェイトのかかり方というのは、全事業所と既存事業所で見た場合には多分そんなに大きくは変わらないものだと思っていますので、そういう意味では、ウェイトとして既存事業所のウェイトを使うべきところを全事業所で使っているというのは、近似的だということまでは言えるのではないかと。今回、今まで共通事業所のもとが何かというのは何もない中ではそこまで言えなかったのですけれども、既存事業所であるという方向性でまとめていただけると、近似的であるというふうなことまで言える。
 
○今野座長
 瀧原さん、多分そんな難しいことを言っているのではなくて、単に、この系列はこういう性格のものですと。余り評価しなくていいから、それだけを書いておけばいいのではいかと思います。
 近似かどうかなどと言ってしまうと評価が入って、何に対する近似だとかいうことになるので、そうではなくて、これは、そのほかいろいろ考えなければいけませんけれども、例えば今の石原さんの例で言うと、全事業所が共通事業所であるということを前提に出した統計ですということをたださらっと書いておけばいい。そういう意味の統計の性格を書いておけばいいということで、どこかに書いてあるのではないかと思うのだけれども。
 
○瀧原統計管理官
 わかりました。5ページの(2)の下から2つ目のパラグラフの3行目に「母集団を本系列と同じものと想定した」とちらっと書いてありますけれども、ここをもう少し丁寧に書くという感じでしょうか。
 
○今野座長
 そういうことも説明をつけて、今後、共通系列を出されるわけだから、そのときにそんな説明ももう少し丁寧に書いておいてというのを考察辺りに書いておく。そのときに丁寧な説明の中に何を入れるかというのはいろいろ考えなければいけないと思いますけれども、もしかしたらサンプル数とかそういうのも重要かと思いますが、そういうのも含めて、どういう丁寧な説明をしたらユーザーがより正しく共通系列を使うようになるかという意味で説明を入れてということだと思います。
 そうすると、それは多分、考察のどこか落ちつきのいいところで探して。
 
○瀧原統計管理官
 先ほどの14ページの一番下から4行目に「留意が必要である」と書いていますけれども、こういう情報をちゃんと共通事業所のところ書くべきだということですね。
 
○今野座長
 丁寧に、そのようなことを。場所はもっとほかに、今思いついたことでしょう。だから、もう少し時間を置いて、より適切な場所を探して書いておくということでいいと思います。
 
○山田構成員
 私もそこは全く同じ意見で、石原先生がおっしゃったのですけれども、これだけ読むとちょっと我々が議論したニュアンスより強い印象を持ったのですね。適切だという言葉ですね。14ページの共通事業所を今後とも提供していくことが適切と考えると。ただ、やはりユーザーとして今回の混乱というのは、まさに共通事業所というものが一体何なのか。何となく本系列を代替するものだというふうに思われる中で使われたので実質化できるのではないかという議論が出てきているわけですから、そこのユーザーの誤解を解かないとだめなので、出してもいいのだけれども、その際にはしっかり定義をしなければ誤解を与えますよという意味で、ここに丁寧に共通事業所の意味合いを付記するというのをここに書き込んだほうがいいと思いました。
 
○樋田構成員
 私もおおむね同じ意見なのですけれども、14ページの(4)の第1パラグラフの最後のところで、指標として有効であるというのは結構強い表現ですね。ですので、ここのできるだけ近いところに、例えば全事業所と共通事業所は等しいという仮定を置けるとか、あとはサバイバル・バイアスが十分に小さいとか、そういった前提のもとに有効な指標なのだというようなただし書きをつけておかないと、ここの有効というところがひとり歩きしそうなので、少々心配かなと思いますので、この部分は検討いただければと思います。
 
○今野座長
 この報告書の全体のつくりからすると、これは有効なのですが、ある範囲内で有効というふうに明確にしていて、いろいろなギャップ修正ということについて見て、ギャップ修正した上で対前年と比較するという範囲内で有効であるというのは全体のトーンなので、私はいいかなと思っているのですが、今おっしゃったように、その「有効である」のすぐ後ろに、ただし、この有効性を担保するにはこういうことをちゃんと理解してほしいという文章を加えればいいかなということかと思っています。どうですか。
 
○石原構成員
 ぜひ、違うのだと書いてあるのですけれども、何がどう違うのかが余り具体的に書いていないのです。本系列との違いがあるというだけだと、何の違いがあるのだろう、同じではないかみたいな感じになってしまうので、こういう仮定のもとで、共通事業所が全事業所と仮定した上の数字ですとか、それを言うと多分ユーザーは、こういう性格があるのだとわかるので、その意味で使おうということになると思うのです。うなずいていただいてありがとうございます。そう思いますので、そこの違いを明確にここに書いていただいて、しかも、統計のホームページにも書いていただくとかいうようなことをしていただくといいと思います。
 
○今野座長
 どのように説明文章をくっつけるかは厚労省が考えていただいて結構ですので、ですから、今、石原さんが言われたのは、多分一つの例示。重要な例示なのですけれども、ほかにもあるかもしれないので「等」をくっつけて、こんなものを含めて、より丁寧な説明をしてくださいというのをこの辺りに加えればいいかなと思います。
 ほかにいかがですか。
 
○石原構成員
 いっぱいあって済みません。これはここでまだちゃんと議論していないことなのですが、提言のところの既存事業所の話なのですけれども、前回は共通事業所を既存事業所に復元するというようなお話で何となく終わった感じがして、瀧原さんの今の説明も、共通事業所のサンプルを既存事業所に復元するという書き方、どうなのですかね。皆さんの理解はそんな感じですか。
 私、ちょっと図を描いたりして考えてみて、実は既存事業所は、さっきの定義で問題になっていましたけれども、共通事業所とサンプルインの継続事業所のサンプルを復元したほうが、より正確な既存事業所の集計値を得ることができると思うので、共通事業所を離れてしまいたいなと思っているのです。つまり、既存事業所の正確な集計値を出したらいいのではないかというふうに。
 
○今野座長
 その点については、我々が言っているのは新しい新系列だとすると、新系列をつくるときにはこんなことが考えられるよねと、幾つかの例がどこかに書いてあったよね。どこでしたっけ。
 
○瀧原統計管理官
 17ページとかですかね。17ページの(4)の前の辺りのものについては、新たな既存事業所に期待できる話として書いているものでございます。
 
○石原構成員
 ちょっとこれ、私自身あやふやなのですけれども、瀧原さん自身は継続事業所から復元しようという感じで書いているのですか。
 
○今野座長
 新系列をどうつくるかということについては、こういう方法がベストであるという議論はしていないのです。ただし、可能性はいろいろあって、石原さんがおっしゃっているように、ここで言うと継続事業所のデータを使って母集団に復元して、だから、これは完全に本系列と同じようなやり方でやる。そういう方法もあるし、あるいは共通事業所だけを使って復元しようという方法もあるし、幾つか可能性としてはあると。
 実現可能性とかいろいろな面を考えてどれがベストかということについては、我々は別にここできちんと議論していないので、そうすると、もし今おっしゃられるようなことがあるとすると、新系列をつくるときにこんなことがあり得るよなということが確かどこかでずっと書いてあったと思うのです。考察のほうかもしれないけれども、その中にも、今おっしゃられたような方法もあり得るということをどこか例示として入れておけばいいのではないかなと思うのですが、考察かどこかであったはずなのです。
 
○石原構成員
 17ページぐらいですかね。
 
○瀧原統計管理官
 そうですね。例えば、16の定義の後のところも、一番下のなお書きのところは、これは共通事業所の母集団である何らかの復元の方法ということですけれども、石原先生がお聞きになった共通事業所を復元しようとしているのかという点については、今野先生がおっしゃったように、そこはまだ詰めていないものだと思っています。普通に戻すとすれば、概念は、今ここで書いている継続事業所を復元するのが既存事業所になるものだと。なので、私の書いた図ではサンプルインを入れているというのはまさにそこなのですね。サンプルインを入れないと復元ができないという形になります。
 ただ、それだとギャップが発生するので、逆に、ギャップを除くという観点からすると、共通事業所なりそちらの入れ方を入れていかないとできないので、そういう意味で、17ページの(4)の直前に書いている共通事業所のメリット・デメリットを踏まえてというのは、継続事業所を考えるのだけれども、共通事業所のいいところも含めて、では、どこを組み合わせていくかというのが今後の課題ではないでしょうかという書き方にしております。
 
○今野座長
 そういう意味では、石原さんが言われたような方法も例示としてはあり得るということがもしあるのだったら、どこかの例示で入ればいいかなと思うのです。
 
○石原構成員
 実は前回から少し考えて、既存事業所の母集団は、もしかしてよくわからないかもしれないという話で前回終わったと思うのですけれども、経済センサスがセンサスなので、1年ごとにないかもしれないのですけれども、例えば3年置きにセンサスがあると、3年たってしまうと古くなってしまうのですけれども、そこで既存事業所と新設事業所、廃業事業所の母集団が確定するので、サンプリングの仕方さえ気をつければ、既存事業所の集計値、新設事業所の集計値を作成することができると思うのです。母集団が確定すると思うのです。古くなってしまうけれども。
 そうすると、本当に共通事業所からどんどん離れてしまって申しわけないのですけれども、最初のころの議論に、多分、神林さんが論文に書いていたものだと思うのですけれども、日本では本系列、全体の系列はあるのだけれども、既存事業所と新設事業所と廃業事業所の区別をした集計値は今のところ存在しないのだけれども、その既存事業所、廃業事業所、新設事業所のダイナミックな動きを見るというのは非常に重要な経済指標ではあるので、共通系列とは離れてしまうのですけれども、そこを検討してほしいというぐらいは。
 
○今野座長
 ちょっと待ってね。今、石原さんは違うことを2つ言ったので、1番は、母集団設定を、既存事業所の母集団をどう設定するかということについての方法を言ったわけだね。その辺りについては母集団設定はいろいろ考えてやってくださいということで書いてあるので、わざわざもういいかなと思うのですけれども、それは次の検討委員会に任せればいいかなと思います。
 後者は別の問題で、我々が言うような新系列をつくると、本系列と違って既存事業所だけが出ますから、新規事業がどうで廃業がどうだということがわかるようになるのですね。ということは、新系列が持っている新しい意義なわけです。この新系列をつくるとこんないい点がありますよということなのだよね。
 だから、その点については、新系列をつくろうというのが我々の提言なので、新系列をつくったらこんないい点がありますよということは書いておいてもいいかなと、今おっしゃられたような意味で、そう思っているのですけれども、どうですか。それは考察でもいいので。
 今言ったことを報告書に明示的には書いていないよね。つまり、ある意味では日本経済のダイナミズムがわかると。新系列というのはこんないい点がありますよとかいうのをどこかで書いてあると思うので、その中で例示として、今言ったようなこともわかるのですよということを書いておく。
 
○瀧原統計管理官
 既存事業所の動きを明確に捉えることができる。
 
○今野座長
 本系列と我々の新系列の両方見ると、その違いというのは、実は新規にどれだけ入ったとか、廃業がどれだけかということなのです。そういうことがわかることは、ユーザーにとって有益ではないのかと。そうすると、日本の経済のダイナミズムを見る上で、我々が提言している新系列があるとすごく役に立ちますよという意味で、いい点がありますよということは、わざわざ新系列を提言しているので、そのいい点は書いておいたほうがいいのではないかというのが石原さんの提言。それはあってもいいかなと。どこに書くかはまた考えさせてもらうけれども。
 
○山田構成員
 17ページの3段目ぐらいにそれに近いことが書かれているので、そこをもうちょっと追記すればいいのではないかなと。ダイナミックなということも出ていますし、だから、新設と廃業と既存のダイナミズムがこれを使うことによってわかるようになるという可能性が期待されるとか何とか。
 
○今野座長
 そうだね。ここをもう少し。
 
○石原構成員
 できれば、共通事業所は変化率を見ていたのですけれども、既存、新設、廃業は、その時点の集計値も両方欲しいなと。
 
○瀧原統計管理官
 こういう形でつくった新しい指標は、水準もわかるし、それから出るものも出る。まさにそういうものだと思います。
 
○今野座長
 しかも実質化もできるということです。だから、それがいい点で、あと、今言ったダイナミズムがわかるのもいい点で、そういういい点はいっぱい書いておいたほうがいいよな。せっかく提言するのですから。
 どうぞ。
 
○稲葉構成員
 私のほうから2点ほど意見があります。まず第1点は概要の整理の仕方について、そしてもう一点は、用語の定義についてです。
 先ほどまでの議論と関連性があるので、概要の整理について、資料4のところですが、本検討会の出発点となったものは、共通事業所の賃金の実質値を公表しろというような意見が出発点にあったかと思います。それを踏まえて考えますと、資料4で実質化にかかわる部分というものが右上の青い四角のところだけになってしまいますので、少し分量としては少な過ぎるのではないかと感じました。
 報告書本文のほうの13ページ、14ページにあります共通事業所の話、特に(4)の共通事業所の集計値の有効性及び実質化の可否にかかわることを、こちらの概要部分にもう少し書いて、実質化が困難であるというような理由を示すべきではないかというのが1つ目の意見です。
 もう一つの意見は、報告書内にある賃金の伸び率と賃金の前年同月比という2つの用語を使われていますが、これは使い分けていらっしゃると思うのですけれども、見る限りにおいては少しわかりづらいので、報告書内に何らかの定義を入れていただければ読みやすくなるかと思います。
 以上2点です。
 
○今野座長
 では、後者は言葉の問題なので精査をしていただいて、前者はまた相談させていただきますか。
 
○瀧原統計管理官
 そうですね。一応今回の実質化については、流れ的には、ブルーのラインの中では一番右ですけれども、上の2つの集計値があるとかいうことから実質化は困難と、これは現状の話で、検討の中では、実質化できる指標を検討することは可能ではないかという流れの中で、最終的な赤の中ではこういう既存事業所の動向を示す指標をつくることによって、薄い赤の枠、右側ですけれども、実質化も可能になるのではないかと。一応流れ的には実質化という流れではそういう感じかなというので書いているということ。
 14ページのところで言うと、一番わかりやすい顕著な部分としては、実質化困難な理由というのは、右上の青の1つ目で書いたところかなと思うので、ここに何の要素を足すといいかなというところを少しお伺いできると。
 
○稲葉構成員
 中間的な取りまとめのときにも出ていたと思うのですが、1年を超えるような指数を作成することはできないといったことが挙げられていたと思います。そういった項目も含めるべきですし、あるいは先ほど石原先生から御指摘があったような復元にかかわることについても加えていいのではないかと思います。
 
○今野座長
 ちょっと考えさせてもらおう。なぜかというと、復元にかかわることは、言うとまたわかりにくいのだよな。我々はわかっているのですけれども、これをこの1枚の中に書くとなると。だから、ちょっと考えさせてもらおう。
 今の話は、資料4についての構成についての御意見ではないので、そうすると右上のブルーのところをどう書くかということですね。余りいっぱい書くとわかりにくくなってしまうし、ちょっと今、考えているのです。
 
○稲葉構成員
 お任せします。
 
○樋田構成員
 10ページの標本誤差についての記述等についての意見です。ここでは共通事業所のデータの信頼性というのを確認するために、変動係数を使って検討しています。変動係数について見てみると、共通事業所と全事業所で余り差がないということで、信頼性はあるだろうということになっているのですけれども、標準誤差の式の中には、標準誤差の大きさというのは変動係数だけではなくてサンプルサイズにも依存します。その点の記述が一応されてはいるのですけれども、サンプルサイズが小さい分だけはルートがかかりますけれども、その分だけ標準誤差が大きくなるということ。その前提のもとでの議論なのだということは触れて、もう少しクリアにしておいたほうがいいかなと思います。
 といいますのも、データの信頼性については、この後の部分で10ページ以降でも変動係数での議論を踏まえてデータの信頼性があるということを何度か触れていますので、その点は明らかにしておく必要があるかなと思います。
 以上です。
 
○今野座長
 今のお話は、10ページ目で言うと、文章では「共通事業所はサンプル数が少ないものの」と書いているわけですね。普通は少ないと変動係数が大きくなるにもかかわらずという、そういうことがもう少しわかるようにしろということですか。
 
○樋田構成員
 変動係数自体はサンプルサイズには関連しませんけれども、サンプルサイズが小さければ、標準誤差は大きくなりますね。そこの部分について書いたほうがいいかなということです。
 
○瀧原統計管理官
 そういう意味では、サンプルサイズが少ないもののと書いていますけれども、逆に言うと、サンプルサイズが小さいので、その影響を受けることは留意しつつも、変動係数の部分については小さいというイメージですね。サンプルサイズが小さいから標準誤差が影響を受けていることは前提としてあるけれどもということでしょうかね。
 
○樋田構成員
 変動係数が同じでサンプルサイズが小さいということは、サンプルサイズが小さい分に応じて標準誤差は大きくなってくる。だから、統計としての精度が下がるということについては触れておく必要があるかなということです。
 
○今野座長
 どう書いたらいいかだな。ちょっと後から聞いて。アイデアを出してあげてください。どちらにしても10ページの「サンプル数が少ないものの」と、この辺りですね。
 ほかにいかがですか。よろしいですか。
 そうすると、細かい点はいろいろありますけれども、大きく言うと、結局、この報告書で修正しなければいけないポイントは、先ほどのゼロセルの問題。それと、デフレーターについて少し書き方を変えるということ。あと、新系列の意義を先ほど石原さんが言ったような意味で強化をしてくれということと。従来どおりの共通系列を出すのはいいですけれども、それについて少し丁寧な説明文をくっつけること。もう一つは、最後のサンプルサイズが小さいということについてどういう表現を変えるか。大体このぐらいで整理できるかなと思います。ほかにあればお聞きいたしますが、今まで皆さんがおっしゃられた中で重要なポイントは、今言ったことかなと思います。
 もう一つ、稲葉さんが言われた概要についてはお任せいただきますが、実質化が困難ということについての説明をもう少し丁寧にしたほうがいいのではないかと。こういうことかなと思います。よろしいですか。
 では、個々について、こんなふうに対応したらいいんじゃないかというのは、私も既にかなり言いながらここで議論させていただきましたので、今おっしゃった内容に基づいて修文をいたしますので、どう修文するかということについては私にお任せいただけますかね。よろしいですか。
 また、私が先ほど整理したポイントは私の整理なので、事務局も整理していると思いますので、ポイントをもう一度突き合わせて、何を修正しなければいけないかということは整理いたします。その上で私の責任で修文をさせていただきます。
 それでは、今日の報告書についての議論はこれで終わりにさせていただければと思います。
 その次のその他というのは何かありますか。
 
○瀧原統計管理官
 その他は特にございませんので、一応、本日御議論いただいた点を踏まえた上で取りまとめの方向という形になろうかと思います。座長に御一任という部分はございますけれども、その件につきまして、我々もメモ等も含めて、座長のもとでまとめさせていただきたいと思います。それでこの報告書案という形でまとめたものを、我々厚生労働省としてホームページの掲載や各方面の周知というふうにさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
○今野座長
 それでは、最後に、厚生労働省から御挨拶がありますので、お願いをします。
 
○鈴木政策統括官
 皆さん、どうも大変御苦労さまでございました。
 今野座長を初めとしまして、構成員の皆様方には約半年間で14回という非常に密度の濃い議論をいただきまして、まことにありがとうございます。
 今、瀧原が申し上げたように、座長に御一任いただきましたので、本日いただきました御意見を踏まえて早急に報告書を修正いたしまして、できるだけ早く公表したいと考えてございます。
 毎勤につきましては、これまでいろいろなところで使われている重要な統計だということは我々も認識しておったのですけれども、最近、なかなか使いにくいとかいう声も上がってきておりました。そうした中で、今回の共通事業所の実質化というテーマでありましたけれども、いろいろな面から毎勤について、今の問題、それから将来こうしたほうがよりよくなるのではないかという御提言をいただいたと思っております。今回の報告書を踏まえまして、さらに私どもも検討してまいりまして、毎月勤労統計がより使いやすく、また、国民に信頼されるような統計に育っていくように頑張ってまいりたいと思いますので、引き続き、皆様方の御尽力を賜ることをお願い申し上げまして、私からの御礼とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
○今野座長
 それでは、14回にわたり、いろいろありがとうございました。終わりにしたいと思いますね。
 では、終わりにします。ありがとうございました。
 
○村木雇用・賃金福祉統計室長補佐
 皆様、長時間にわたり御審議いただき、ありがとうございました。
 これをもちまして、第14回毎月勤労統計の「共通事業所」の賃金の実質化をめぐる論点に係る検討会を閉会させていただきます。
 本日はお忙しい中、御出席いただき、まことにありがとうございました。



                                                                                                                                                                                       (了)

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