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- 2019年7月22日 第12回毎月勤労統計の「共通事業所」の賃金の実質化をめぐる論点に係る検討会 議事録
2019年7月22日 第12回毎月勤労統計の「共通事業所」の賃金の実質化をめぐる論点に係る検討会 議事録
政策統括官付参事官付雇用・賃金福祉統計室 政策統括官付参事官付統計企画調整室
日時
場所
(東京都港区芝公園1-5-32 労働委員会会館)
出席者
構成員(五十音順、敬称略、○:座長)
石原 真三子 |
稲葉 由之 |
○今野 浩一郎 |
神林 龍 |
野口 晴子 |
山田 久 |
事務局
山田政策立案総括審議官 |
瀧原統計管理官 |
大野審査解析官 |
井嶋労働施策情報分析官 |
村木雇用・賃金福祉統計室長補佐 |
議題
(2)その他
議事
○村木雇用・賃金福祉統計室長補佐
それでは、定刻となりましたので、ただいまより第12回毎月勤労統計の「共通事業所」の賃金の実質化をめぐる論点に係る検討会を開催いたします。
構成員の皆様方におかれましては、御多忙のところお集まりいただき、まことにありがとうございます。
本日は、樋田構成員から御欠席の御連絡をいただいております。
ここで、事務局に人事異動がありましたので、御紹介させていただきます。
政策統括官として鈴木が着任しておりますが、本日は公務により欠席でございます。
政策立案総括審議官の山田でございます。
企画調整担当の参事官の武藤でございますが、本日は公務により欠席でございます。
審査解析官の大野でございます。
代表しまして、審議官の山田より御挨拶させていただきます。
○山田政策立案総括審議官
7月から政策立案総括審議官を拝命しております、山田です。
先生方には、大変お忙しい中、2月以降、精力的にこれまで御議論いただき、3月には中間的整理を取りまとめていただいておると聞いております。
引き続き、統計学、経済学にかかわる専門的なお立場から有意義な御議論をいただくように、よろしくお願いいたします。
○村木雇用・賃金福祉統計室長補佐
早速ですが、以後の進行につきましては、座長にお願いしたいと思います。
カメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○今野座長
それでは、よろしくお願いします。
今日は議事次第にありますように、最初は「共通事業所」及びその集計値に係る分析等についてです。
まず、資料の説明をしていただいて、議論をしたいと思います。
それでは、瀧原さん、お願いします。
○瀧原統計管理官
では、今回御用意させていただきました資料のうち、まず資料1「本系列と共通事業所の賃金の伸び率の比較」について御説明させていただきたいと思います。
これにつきましては、前回第11回のときに少し資料を提出させていただきましたけれども、これまでの分析の方向性としましては、本系列と共通事業所の賃金にどのような違い、あるいは共通性があるのかという部分について、賃金の水準をベースに、また、その水準の伸び率を見てきたわけです。水準の部分の議論が中心で、そこにバイアス等があるかどうかという議論をしてきたかと思いますけれども、実際に共通事業所で参考値として示しておりますのが、前年同月比、これがメインの指標になっておりますので、それを踏まえて伸び率の部分で見ていこうというものが、この分析の部分でございます。
2ページ、これは前回の資料と同じでございますけれども、共通事業所と本系列の規模別に見た各月の伸びを示したものでございます。前回、この表を見て、この時系列で見た数値においては本系列と共通事業所と一定の関係性、相関があるのではないかというお話がございまして、そこの部分を示したものがございませんでしたので、そこを計算したものを次の3ページにお示しさせていただきました。
これ自身は、この数値をそのまま散布図としてプロットしたものでございますので、実際にこの数値はそのままで、小数点以下は1位のみというものですので、点の打ち方が固定的になっておりますけれども、これで傾向を見ると、右上がりというもので、本系列の伸びと共通事業所の伸び率については正の相関があるのが見受けられるかと思います。ただ、R2自身は「規模5人以上」のところを見ていただければわかりますように、0.3662というものでございますので、強いとまではなかなか言えないものなのかなと思っております。
それ自身は、それ以降の規模別で見ていただけるとわかると思いますけれども、「規模500人以上」であれば同じ0.3程度なのですけれども、それ以降の499人未満のところ、特に「規模30~99人」あるいは「規模5~29人」になりますと、かなりばらつきが出ているところで、そこの部分の関連性は高くないといいますか、あまり出ていないというところが正直なところかと思います。
これにつきましては、規模別のカバー率の違いも結構効いているのではないかと思いますが、伸び率で見た場合、共通事業所の前年同期比を参考値として示しているものの数値について、本系列とはいかなる状況かという意味では緩い形での相関という程度、ただし、規模別に見るときには慎重に考える必要がある数字と言えるのではないかと思います。
ちなみに、次の4ページは、以前に既に示しているものですけれども、規模別、産業別で見た場合の本系列の事業所数と共通事業所の事業所数、30年1月で見た場合に、全体で4割ぐらいなのですけれども、規模別では大きな差がある。特にローテーションでサンプリングが1年半で入れ替わっていく「5~29人」については30%程度ということで、低くなっているというところが見られていたということで、この辺りの影響がこの前の3ページの散布図にも影響が出ているのではないかというのが、我々としての見方でございます。
5ページから、また別の分析になります。これは前回、本系列と共通事業所の伸びについて、産業別で見たときに、時点で切ったものと1月から12月までの動きで見た場合で違うのではないかということで、今回、3については新たにつけ加えさせていただきました。考え方としては、この前に3ページのところで示しました部分を産業別に見たものでございます。各プロットは1月から12月までについてプロットしているということで、本系列と共通事業所の伸びがどうなっているかということでございます。
ここの数字自身は、復元したデータでやっているものでございます。それで見た場合の産業と規模で見たものでございますので、その場合の数字は1月から12月までの賃金の伸びというものでやったもので、2つ目のところの「鉱業、採石業、砂利採取業」につきましては、データがないということで空欄になっております。そういう意味で、産業別に見ると全てのものがとれるわけではないのですけれども、これで見ても規模が500人以上のところは相関がある程度出ている部分があるのですけれども、規模が小さくなってしまうと低くなってしまう。それは各産業においても同じような感じになっているのですけれども、物によっては右上がりではなくて右下がりになるような部分も出てくる。相関が低いせいで、線自身が右下がりでxの係数がマイナスになるものも出てきているというものでございます。
これを、大分類で順に以下6ページ、7ページで示しておりますけれども、産業によっては大企業においてもサンプル数が少ないことがあろうかと思いますけれども、本系列が上がれば共通事業所も上がるというようなものが出ていないものも出てきているというのがあるので、なかなか産業別までいくと結構厳しいものがあるのかなというものでございます。この辺りがずっと大分類、10ページまで示しているものでございます。これは最初のものの補足的なデータと思っていただければ結構です。
11ページから、こちらが今度は本系列と共通事業所の賃金の伸び率の比較ということで、産業ごとに単位集計区分ごとの各月での動きを見たものでございます。これは前回少し御議論いただいたところですけれども、12か月の動きで見るというのと、各時点での伸びの違いを見るものでございます。これは1月、2月、3月という各時点において規模別でどういう動きになっているかを示しております。端的に申し上げますと、各月で見る場合には相関がさらに弱くなる傾向が見られるのかなということで、R2のほうも0.1でありますとか0.2という感じになってきているものも多くなっているものでございます。
なお、ここはミスプリがございまして、11ページの上の紫色の線の下に「本系列と共通事業所について単位集計産業の平均値の散布図を作成」という文章の下に※で「規模100~500人では生活関連サービス業」云々を除外しているというところですけれども、これは間違いでございまして、「規模500~999人」でございます。ここの下の「平成30年1月」の左から2つ目の部分を見ていきますと、オレンジ色の点がございます。ここは1つ外れ値があったので、これを除いているというものをここで書いているもので、「規模500~999人」の生活関連サービス、娯楽業というもののオレンジの点は、回帰計算から除いていますというものでございます。この点を除くと少しこの近似線が安定したということでございます。
ただ、これはずっとこれ以降、12ページは、4月、5月、6月というものでございまして、一定程度傾きはありそうな感じですけれども、R2で見た場合には、なかなか低くなっているものは多いというものでございましょうか。単位集計区分ごとで見たときの本系列と共通事業所の関係性の各月のものが以下のとおりで、ずっと示しているものでございます。
それが14ページまで、12月までを示したものでございまして、最後、5番ということで、共通事業所の賃金の平均賃金の伸び率と賃金の伸び率の平均の関係性、平均をとったときの伸び率、実際にこれが共通事業所の数値として示しているものですけれども、ただ、共通事業所自身が伸びを見るものだという御議論もある中ですので、賃金の伸び自身を平均してみたというもので、それ自身との平均賃金の伸びとの状況、相関を見てみたものが、この15ページ以下でございます。
これにつきましては、ここも数字の見方がなかなか難しいところではございますけれども、各月で見た場合にR2が低くなっているものもありますけれども、最初の1月でいきますと「規模500~499人」辺りになると0.24、あるいは、その下の規模ですと0.23ぐらいまでは出るので、一定程度見られるような感じもするところもありますけれども、そうでない、0.0台のところも少なからずあるというものでございます。実際、平均賃金から伸び率をつくるというところと、賃金の伸び率をどう見ていくかというのは、伸びを考えるときに一つの考え方ではあろうかと思いますけれども、そこはデータとしてどう見ていくか。伸びのみに注目できるのかどうかが悩ましいところなのですけれども、そこの部分を分析してみたというものでございます。これを18ページ、資料1の最後まで各月において計算させていただいたものでございます。
資料1につきましては、以上でございます。
続きまして、資料2もまとめて御説明させていただきます。これは1枚のみになりますけれども、10回、11回の分析の中で、共通事業所とはいえ、前回と同じ、両方とも回答をいただいた同じ事業所に着目して共通事業所を定義しているわけですけれども、ただ、実際に同じ事業所であっても労働者が入れ替わっていくというものが見られましたので、それについての残留率を計算して、お示しいたしました。
それにつきまして、残留率が高いところ、低いところ、いろいろある中で、そこの事業所の残留率と賃金の伸びについて、一定の相関があるかどうかというお話がありましたので、そこを計算したものでございます。仮に残留率と賃金の伸び率の関係で、人が入れ替わるところは賃金の伸びが低目で人があまり入れ替わらないところは賃金が高いという関係があれば、例えば仮に残留率100%、誰も人が動かなければ賃金は一体どれぐらい伸びていただろうかというのが計算上出せるということもありますので、そこの相関はどうか計算したものでございます。
ここは便宜上、100から残留率を引いたものを年間離職率というもので捉えて、それで回帰式をつくって計算したということでございます。なぜこうしているかといいますと、こうしておきますと、離職率がゼロ、イコール残留率が100になるのですけれども、つまり、原点のところでy切片が理論上の離職率ゼロのときの賃金伸び率になり得るということなので、y切片の数値を見れば伸び率が出せるということもあるかなと思って、そのようにやっておりました。
ただ、結論的に申しますと、ほぼ相関はゼロという数字になっております。残留率が高くて賃金が上がっているところもあれば、残留率が高くて賃金が下がっているところもあるということで、これでいきますと、x軸の上下に同じような形で分布しているのが見られるのかなと。無理無理に考えれば、ここの場合で、y=の式がありますけれども、そこのxの係数がマイナスの場合には右下がりになりますので、残留率が100、離職率がゼロの場合に起きるy切片プラスというものが出ているのですけれども、ただ、そう単純ではないというところで、逆に右上がりになっているところもありますので、実際にこの数字にはあまり意味がないと考えたほうがいいかなと思います。
そういう意味では、今回、共通事業所が個人ベースの賃金を見る一つの指標になり得るか。現実的には事業所ベースのコストというとり方になっているので難しいのですけれども、共通事業所で少し個人ベースに近い形のものが出せないかということにトライしてみたわけですけれども、実際問題としてはそのような見方で残留率と賃金の伸びを見るのは難しいのかなと思っています。このデータ自身、これで何か見る観点等があれば、またその辺りを御示唆いただければと思います。
今回用意しました資料は、以上でございます。
○今野座長
ありがとうございました。
それでは、何か御質問、御意見、お願いをいたします。
どうぞ。
○山田構成員
資料1なのですけれども、本系列と共通事業所の、今回は伸び率に注目して相関があるか。これを見るとあまりないなということなのですが、一つ気になったのは、例えば3ページで「規模100~499人」のところの散布図を見ると、実は2つのグループに分かれているように見えるわけです。これはつらつら考えてみると、多分29年の数字と30年の数字で固まりが生まれている。この背景は、たしか29年と30年で、本系列はベンチマークが変わっているということがあったのだと思うのです。29年は28年と29年のところでベンチマークがないので、共通事業所との相関を見るというのが、そもそもの関係を比較的あらわしているのではないか。逆に30年というのは、単純に伸び率を見るというよりは断層による影響も入ってしまっているので、これは29年と30年に分けて散布図をつくってみることが必要なのではないかという気がしました。
5ページ以降、30年の相関を見ているのですけれども、29年の散布図を見ることも必要ではないか。次の作業に追加になってしまうのですけれども、それをやったほうがいいのではないかという印象を持ちました。
○瀧原統計管理官
ありがとうございます。
おっしゃっていただいたように、3ページの「規模100~499人」のところ、ここが一番わかりやすく右と左に分かれておりまして、この各点のプロット地点を確認したわけではないのですけれども、これ自身、2ページの本系列を伸びを見ていただければわかるものでございますが、「100~499人」のところですけれども、29年は本系列のほうはマイナス0.5から始まってマイナスの辺り、あるいは高くても0.4ぐらいという数字が続いているのに比べて、30年自身、本系列が1月で2.0でそれ以降も1.何%という伸びになっていることが如実に、これがおっしゃっているようにサンプル入れ替えによるギャップが出ているということで、そこの部分が右と左にきれいに分かれているということがございます。
そういう意味では、29年の数字は、28と29ですから、そもそも共通であるということは共通事業所のほうは当然あるわけですけれども、そこでのギャップにかかわる部分はあまりここでは関係していない。幾つかの事業所は脱落というのはあるでしょうけれども、それがないので、そんなに差が出ていない。ところが、30年のほうは本系列のほうにギャップがかかってしまっているというところが出ているということで、そういう意味では、おっしゃるとおり、次の5ページ以降のところも、では、29だけだったらどうかというと、ちょっと違った数字になっているだろうということですので、これはそんなに難しい話ではありませんので、少し追加的に加えてみたいと思います。
○今野座長
ほかにいかがですか。
どうぞ。
○石原構成員
前回教えていただいたのに忘れてしまったので確認したいのですけれども、2ページ、3ページからの数字は、ウェイトをかけて平均したものの伸び率を全部見ているということでよろしいですか。前回、こことここが違うみたいなことをおっしゃっていた記憶があるのですけれども、全部ウェイトをかけて平均を出したものの伸び率を計算しているということですか。確認です。
○瀧原統計管理官
そこの部分は、過去の分析もそうだったのですけれども、ウェイトをかけて復元したデータと生のサンプルのみの平均なりあるいは分散なりを計算したものが混在していて、今回の部分も誤解を招くといけませんので、改めて説明させていただきます。
当然でございますけれども、2ページの最初の表は公表値ですので、共通事業所も本系列ももちろん復元したものでございますし、それをベースにした3ページのものも復元しております。これ以降のところは、5ページからのものにつきましては、基本的には復元した数字で計算しております。
復元していない部分は15ページからになりますけれども、15ページのところだけは、最初の行に書いておりますけれども、単位集計ごとの平均賃金の伸び率、これは復元したものです。それの後の賃金の伸び率の平均を出したもの、そこにはサンプルと書いております。ここの部分だけは、個々の事業所の伸び率を計算してそれを単純平均させていただいている数字ということで、ここだけがほかの数字と違ったものになっているということでございます。
○石原構成員
ありがとうございました。
○今野座長
ほかにどうでしょう。いいよ。まだ何かありそう。全部吐き出してください。
○石原構成員
お休みしたりして、皆さんの議論に追いついていなかったので、前にもお願いしていた統計委員会でどういう議論があったのかというのが、あまりありませんというお返事だったのですが、全部はチェックできないのですけれども、少しチェックしてみて、そうすると、おっしゃっていたとおりあまりちゃんとは議論できていなさそうなのですが、どうやら西村先生のどこかのお話にあったように、労働者個人の賃金の実感を知りたいとか、景気の動きを知りたいからということが、統計委員会のほうでも継続事業所サンプルに求められている。ちゃんと述べられてはいないのだけれども、そういう感じがあるので、それをつくるのであれば、1つの事業所で平均賃金がどれだけ変わったのか、ふえたのか減ったのかを、基本の単位として見るべきなのではないかと。
つまり、共通事業所の数字で何を出したいのかというのは、すごく最初からあったと思うのですけれども、単にウェイトをかけて平均したものだと本系列の数字と同じなのではないかと結構思っていたと思うのですけれども、統計委員会とか、もしかしたら厚労省の方もそうだったのかもしれないのですけれども、昔の議事録などを見ると、同じ事業所で働いていた場合にどれぐらい違うのかを議論している。そうすると、まずその基本となる数字は同じ事業所の中の賃金、もちろん人が入れ替わるなどはあると思うのですけれども、一番近いのは同じ事業所の中の動きをまず基本的なところで見て、それを平均するだの、分散を見るだのしたほうがというか、そういう数字をつくったほうが希望に合うのではないかという感じがするのです。
もし平均の伸び率と伸び率の平均が一緒なのであればどちらでもいいのですけれども、これは一方はウェイトをかけて平均を出していて、一方はサンプルだけなのでわからないのですけれども、違うようなので、まず単位を伸び率のほうに全部合わせて、そうすると、いろいろ難しい問題も出てくるかとは思うのですが、考え方としては、それを求められていたのではないかという気がしました。
○今野座長
その点については、もともとこれは事業所のデータなのでする。同じ個人が今年幾らもらって、来年幾らもらって、その賃上げ率、伸び率をベースにして、日本全体の賃金の数字を出して、それが個人の実感に合うではないかということで共通系列等の統計をつくったとしても、あくまでも事業所データなので、それとは遠い。それよりかはむしろ本来は各事業所の労務費としての平均賃金の伸び率を示しているというふうに理解したほうがいいというぐらいの議論まで、ここでは来ている。
ですから、そこから先にどうするかは、統計委員会の意見を参考にするけれども、それも参考にしつつ、我々がどうしたいかを決めればいいと思っております。今のところ議論はその辺りまでいっているかと。だから、個人の賃金の変化を立派に示す指標と言う必要はないのではないかというのが、全体の統一した意見かとは思います。
○石原構成員
すみません。そこはそうなのです。コストのほうを見ているというのは私も同意見なのですけれども、コストのほうを見るにしても、つまり、ウェイトをかけて平均を出してその伸び率を見るよりも、労務コストの伸び率を見て、例えばジョブクリの指標のような感じで、上がったところと下がったところでどれだけ割合が違うというような、今までの議論とは違う話になってしまいますが、平均を出すにしてもそちらの平均を出したほうが考え方的としては。
○今野座長
こちらの平均は何の平均でしたか。
○神林構成員
事業所ごとにデルタをとって、その平均値を出せということですね。
○石原構成員
そうです。そちらのほうが、各事業所の伸び率の分散とか、平均とか、いろいろなものを出せるのではないか。ただ、それが本系列とどう関係する、同じ分散なのか、それとも違うのかというのは、見るのが結構面倒くさいかと。
○神林構成員
そのときにウェイトはどうするのですか。
○石原構成員
同じ問題が起きるのではないかと。
○神林構成員
少なくともレベルに関するウェイトについては、どこかの時点の、特に期初ですね。期初時点でのウェイトを使うということで、全体を復元するというか、復元過程とコンシステントなウェイトにはなっているわけですね。一体どこに行くのかというのは別として。
ただ、デルタに一回変えてしまうと、デルタに対応するウェイトがここにはないので、それをクロスセクショナルウェイトで復元してしまうということは、自分としては何をやっているのかよくわからないのです。クロスセクショナルウェイトとデルタのウェイト、パネルウェイトは等しいというふうに想定するわけですけれども。
○石原構成員
それと、ちょっと思ったのは、わからないですけれども、もし仮に本系列の伸び率の分散みたいなものがあって、レベルだと偏りがあるのはもうわかったのですけれども、もしランダムに伸び率も分散しているとしたら、そのままウェイトを使ってしまってもいいのではないですか。
○神林構成員
稲葉さん、これはリサンプリングの手法は使えないですか。
○石原構成員
すみません。話を面倒くさくしてしまった。
○稲葉構成員
すぐには判断できないのですけれども、できそうな気もします。ただ、そうすると、公表数字を出すまでに随分時間がかかるかもしれません。
○神林構成員
観察数自体は多いので、リサンプリングの手法を使って近似的にウェイトを作成するというか、平均値を求める手法はある気がしますけれども、野口さん、どう思われますか。
○野口構成員
私もブートストラップを使うといいかなと思います。それで仮想的に。
○神林構成員
ただ、問題は真の値がわからないのですね。なので、ブートストラップを使っていった先が正しいかどうかがすぐにはわからないですね。何か確証のある数字があればいいのですけれども。
○今野座長
どこかで実験か何かはできないの。
○神林構成員
実験ですか。
○今野座長
とりあえず、ほかでデータをとってみるとか。
○野口構成員
日本は全数というのは存在しないのですか。
○石原構成員
経済センサスの労働者数。
○神林構成員
経済センサスは労働者数はわかりますけれども、賃金コストがわからないですね。なので、雇用保険データか。賃金支払い総額とこの毎勤の賃金支払い総額はどのぐらいずれますか。
○井嶋労働施策情報分析官
適用範囲が若干違うので、その部分は落ちると思いますし、完全に事業所の概念が一致しているかと言われると、これも少々疑問がありますので、なかなかこちらが想定している結果は出ないのではないかという気はいたします。
○神林構成員
比較したことはございますか。
○井嶋労働施策情報分析官
それは今までないです。
○神林構成員
ないですか。2つのデータセット、これは思いつきですけれども、毎勤でデルタをつくって、ブートストラップを使って平均値を求めるのと、雇用保険データで同じプロセスを当てはめて平均値を求めてみて、比較してみる。違う分布になってしまったら、多分どちらかが悪いのでしょうけれども、同じ分布が出そうだったら、当たらずとも遠からずと言ってしまう。だけれども、これは公的統計でやることですかね。
○石原構成員
でも、正しい数字は本系列でレベルの数字を出していて、あと何か参考値をつくれと言っているので、そうすると、本系列ではできない形の数字をつくるというのもありかなと。
○今野座長
ここの議論のこれまでのもう一つの結論は、共通系列をつくるときに、本系列との関係は気にしなくていいということです。共通系列は共通系列の独自の問題だと。そうすると、既存事業所はこうなっていましたという統計が出せればいい。そのときに、既存事業所はこうなっていましたという統計が出せればいいと。そのときに、既存事業所がこうなっていましたというものの真の値はどうやって出すのだろうかということで、そういう意味では、本系列の話は少し離して考えているというのが、今までの議論の結論かと思います。
○神林構成員
そういうことはあり得ると思います。つまり、毎勤の数字をどうこうするというよりは、むしろ西村さんがおっしゃっていたモチベーション自体は共有されていると思いますので、毎勤のデータを使って数字を出せるのかというお題として解釈すれば、一番ネックになっているのがウェイトですね。継続事業所の数字自体はあるので、パネルにはなっていると。なので、同一の事業所で追いかけてどれだけ賃金コストが変化したのかということに関しては、かなり正確な数字がとれているわけです。そのマイクロデータを使って日本全体の賃金コストや平均賃金コストがどう変化したかという数字をつくり直すということを考えると、議論が整理されるのかなと思います。
○今野座長
何となくそれでいくというふうに我々は決めたような、別に明示的に言ったわけではないですけれども、全体的にはそういう雰囲気だと。そうすると、ウェイトをどうするか。つまり、共通事業所の母集団はどこにあるのかという問題がどうしても残るという話になっていたのですね。
現在の厚生労働省がやっている方式は、全ての事業所が共通事業所であるということを前提にウェイトバックしているわけですね。
○神林構成員
レベルですね。レベルをウェイトバックしている。
○石原構成員
ただ、それだと、ただ単に共通事業所を膨らませているだけ。
○今野座長
現在の方式ではね。だから、何かいい手を考えてと言っている。
○石原構成員
なので、事業所ごとの変化の分布を見てあげると全然違う数字を出すことができるのではないかと。違うつくり方のものを出すことができるので、これは全然違うものですよとはっきり言えるのではないかと思うのです。
○今野座長
どうぞ。
○瀧原統計管理官
石原先生におっしゃっていただいた部分は、いわゆる平均賃金の伸びなどで今までやってきた部分について、今回、伸びだけに注目して伸び率の平均を出してみたということで、これが何らかの形で、結局、先ほども申し上げたように共通事業所は前年同期比のみが基本的には示すポイントになっていまして、共通事業所の平均賃金そのものにはあまり着目していないという捉え方をしているのは、まさに伸びを見たいということなのです。ただ、その伸びというのは、実際にやっているのは平均賃金の伸びなので、伸びだけを見るのであれば、その伸びを見た上で平均すると今おっしゃっていただいたような形が可能なのかどうかというところは、石原先生のアイデア、考え方として御提案いただいているのは、私もそこを何かできないかというところに非常に関心があるのです。
一方で、これも皆さん、先生方、十分御承知のことかと思いますけれども、サンプル全部に対して、おっしゃっているのは、事業所ごとに伸びをちゃんと見たらどうかということだと思うのですけれども、我々は、作業をやっている感じからいきますと、事業所ごとの伸びを出しても、それは実は事業所の平均賃金の伸びにとどまっているところがジレンマでして、個人ごとの賃金の伸びを平均できないというのが一番あります。結局、事業所単位で見るけれども、要は、オールジャパンでやっているのと同じ事業所の中での平均賃金の伸びしか出せていないなというのが、毎勤の限界としてはあるのかなとは思っております。
○石原構成員
それはまさに労務コストを出している、平均を出しているという話なので、つまり個人ではなくて事業所ごとの、それは意味があるのかどうかという問題にはなると思うのですけれども、日本全体の景気の実感を見ることに、事業所ごとの平均コストが上がったり下がったり、上がっているところもあれば下がっているところもあって、上がっているところが今回は結構多かったので、実感として景気がいいように思えるとか、事業所の平均であったとしても、事業所の伸び率だけを、個人ではなくても私は意味があるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○今野座長
どうぞ。
○山田構成員
私は毎勤というのは個人の平均賃金ではなくて、事業所の平均コストを示しているというのは、今回の過程を通じてはっきりおっしゃったほうがいいのではないかと。少なくとも我々の検討会としてははっきり言ったほうがいいのではないかと思っています。
その上で、私も最初から共通事業所、既存事業所と考えていたので、先ほど来、議論があったように、いわゆる本系列とは別のものとしてつくればいいというのは私も同じ考えです。ただ、先ほど来、議論があるように、どういうふうに戻すのかというウェイトの問題があるので、先ほど神林先生が具体的に御提案されましたけれども、リサンプリングのやり方とウェイトを、全数調査に近いところでやろうと思うと雇用保険データを使うしかないのではないかと。ただ、賃金データが別になっているので、一度雇用保険データでウェイトを考えてみてつくったものと、先ほどのブートストラップのやり方で、これはどれぐらい手間がかかるかにもよると思うのですけれども、そこの関係を見ることができるのであれば、検証してみる価値はあるのではないかと思います。
それよりももうちょっと直感的なことで言うと、雇用保険データの対象になっているものと、もともと毎勤が対象としていると思われるベンチマークですね。こことの関係を改めて整理してみて、どの程度違うのかを検証してみるところから始めるのはありかなと思います。
○今野座長
もうデータは全部雇用保険にしてしまうと。
いずれにしても、今、出てきたアイデアは検証してみる方法の一つだということで、我々としては、この検討会の中でそれを実際に検証するかどうかは別にして、こういう検証の仕方は可能性があるのだということをきちんと残しておくのは重要だと思います。
どうぞ。
○野口構成員
ごめんなさい。私は素人で全然何もわかっていないのですけれども、雇用保険データというのは個票で存在している。
○井嶋労働施策情報分析官
雇用保険個々の事業所のデータはもちろん個別にございますけれども、ただ、賃金などは多分毎月ではなかったと思いますので、労働者数の変化とか、その辺りはあるのですが、格付とか、その辺りもだいぶ事業所センサスと異なっていると思うので、計としては数字が見られるかなと思うのですけれども、細かく分けたときにどのぐらいきちんと相関しているのかというのは、疑問があるところでございます。
○神林構成員
事業所の賃金支払い総額はあるのではないですか。だって、保険料はそれで決まりますね。
○井嶋労働施策情報分析官
それは多分年間でとっているのではなかったかなと。私も詳細を承知しておりませんけれども、毎月のデータだったかと言われると、すぐに出てこないのですが。
○神林構成員
わかりました。自分の記憶だと多分毎月とっていたと思うのですけれども、被用者については毎月とっているわけではないというのは事実だと思います。ただ、事業所の総額については、恐らく毎月とっているのではないかと思います。出入りが入ると保険料が変わりますね。なので、年間でという計算は合理的ではない気がしますね。直感ですけれども、それは確かめていただきたいと思います。
そうすると、毎月勤労統計の数字と雇用保険の数字ですね。もちろん適用範囲が全然違いますので、どの辺りまでカバレッジがあるのかはよくわからないのですけれども。
○野口構成員
もう一個いいですか。厚生労働省さんのほうで、雇用保険のデータは集約されているのですか。
○井嶋労働施策情報分析官
雇用保険自体についても月報といいますか、年報みたいな形で集計しております。
○瀧原統計管理官
実際にデータ自身は労働市場センター業務室というところがございまして、そこで全部電子的に集約して、その中から一部事業所の改廃などの情報はデータとしてもらうということで、それは職業安定局の管轄なのですけれども、一応、全国のものは一本で集約しているということになっております。
○野口構成員
例えば毎勤で共通事業所をとっていますね。それと突合できますか。
○井嶋労働施策情報分析官
番号でということはできないので、名称を一個一個見ていくとか、そういったレベルなのかと思います。
○神林構成員
共通番号はないはずです。でも、ごく最近のデータに関しては、共通事業所番号を使うようになったのではなかったですか。
○井嶋労働施策情報分析官
事業所データベースというほうにデータを提供していると聞いているのですが、そのときには雇用保険のデータは消えていると思いますので、共通事業所番号のメンテナンスには使われていると思うのですけれども、その情報が使えるというのは、今、聞いてはいないので。
○神林構成員
それも確認をお願いできますか。どういう格好で共通事業所番号が格納されているのか。
○井嶋労働施策情報分析官
承知しました。
○神林構成員
もし共通事業所番号があるのであれば、結構簡単にマッチングができてしまうので。
○今野座長
その共通事業所番号って何。
○神林構成員
共通事業所番号というのは。
○瀧原統計管理官
マイナンバーの中での法人番号。
○今野座長
そういうことですか。
○瀧原統計管理官
それが今、どの程度整理されているのかは。
○山田政策立案総括審議官
出してくれとは事業所に言っていますけれども、それがどれだけ捕捉されているのかは聞いてみないとわからないですね。
○神林構成員
出してくれということですか。なるほど。
○野口構成員
何でお聞きしたかというと、適用範囲が違うとおっしゃっていたので、手始めに単純に毎勤でとっているのと雇用統計とどのぐらい違うのかを見るのが。
○井嶋労働施策情報分析官
一番簡単なのは、20時間未満のパートタイマーが雇用保険に入っていませんので、そこでもう事業所としては労働者数が変わってくるということでございます。
○神林構成員
いろいろ適用範囲が違うので全く同じ数字は出てこないと思うのですけれども、問題は伸び率なので、伸び率が、雇用保険事業所台帳で出てくる伸び率とこの毎勤で出てくる伸び率でどれぐらい違うのかは、チェックする材料の一つになるのではないかとは思います。ただ、週20時間以下、あとは短期労働者が落ちるので、システマチックに違うかもしれないですね。継続事業所に関するウェイトは、雇用保険台帳を見て修正することは可能ではないかと思います。実際にそれに近いことをやっているわけですから。
○今野座長
今の話は、雇用保険データを使うと、共通事業所の母集団がわかるということ。
○神林構成員
母集団があって、それはわからない。けれども、毎勤でデータをとってきたときと雇用保険でデータをとってきたときというのが別々のデータセット、サンプル2と考えるわけです。また別のデータのとり方があればサンプル3になって、それぞれの中で計算をしてあげて一致する方法をとっていくという、エンジニアリングのようなやり方です。分布がどうのこうのというのは全く考えずにとにかく数で勝負と言うと専門の人は怒ると思いますが、そういうやり方があるだろうと。
今、思いついたところだと、雇用保険台帳1つと経済センサス系統ですね。ビジネスフレームが1つで、あとは毎勤が1つで、多分3つのデータセットがあるので、それで全部伸び率を計算して、その分布がそれぞれどのぐらい変わっているのかをチェックする方法ですね。
○今野座長
経済センサスが毎年行われれば母集団が出る。
○神林構成員
はい。それがビジネスフレームを毎年更新するということで、一応統計局はそれを目指してやっているわけですね。
○瀧原統計管理官
そこに動こうとしているというか、動いてはいると思います。
○今野座長
そうすると、共通事業所の母集団は出る。賃金はもちろんわからないですけれども、従業員数はわかるわけですね。そうしたら、ウェイトバックできるね。
○神林構成員
そうですね。多分手順としては、ビジネスフレームは毎年更新されるとしても、事後的にですね。共通事業所が名簿の更新のタイミングのときに初めて継続サンプルの母集団ができるので、そこから1か月前まで戻していくという格好になるのではないかと。
○今野座長
もしかしたら、毎年やってみたら意外に安定しているかもしれない。そうしたら、安定していれば、確認さえできれば、それを使って早目に、つまり最終のフレームが出なくてもまあまあ正確にウェイトバックできると。アメリカではないけれども、こんな式にやると安定するぞというものをつくって。
○神林構成員
ビジネスフレームが1年1年使えるということであれば、多分、例えば30年1月から30年12月まで継続した事業所に関する賃金の伸び率は、30年の12月に計算するわけですけれども、そのときのウェイトを、29年から30年までの残存確率でウェイトをつけてあげるということをしてあげれば、1年ずれますけれども、12月のデータが出たときに伸び率を計算することができると思います。
そうでない、同じ期間でのウェイトを使うということになると、12月のデータが出た時点で、例えば名簿更新が12月だったらいいのですけれども、名簿更新が11月でしたということになると、次の年の11月まで待たないと12月のウェイトは出てきません。そんなに大きく事実として変わるようなことはないのかもしれないとは思いますが。
ただ、論理的には今と同じで、正しい名簿というか、正しい更新がなされたときに大きく違った場合には、事後的にさかのぼって訂正していきますという手順、可能性は残されていますね。大きなスランプがあったとき、リーマンショックみたいなものがぼんと来たときに前の年のウェイトを使いますというのがどこまで正しいかという問題は残ります。ビジネスフレームは今のところ使えないととりあえず考えたほうがいいと思いますので、それはなしということになると、その事業所・企業統計調査の名簿更新で、とりあえず今は5年になるのでしょうか。2~3年に一遍ずつ更新していたと思うのですけれども、その更新でウェイトをつくることになるのではないかと思います。
ただ、やっていることはクロスセクションの毎勤の集計と、ウェイトが違うだけで、ロジカルには同じプロセスを使っているだけなので、そうすると、今までの話ですね。ベンチマーク更新みたいなものがあったときに大きく断層ができますということは出てきてしまうかもしれないです。経済センサスに頼ればですが。
○今野座長
なかなか決定打が出ないな。
ほかにいかがですか。
先ほどのビジネスフレームは、毎年していくというのは検討中なのでしょう。
○瀧原統計管理官
そうです。
○今野座長
そうですね。神林さんが言ったように、いろいろ問題があるとしても、ずっとましになるだろう。毎年ビジネスフレーム、1年前のものを使ってというのもね。
○神林構成員
もしかしたら、そのときの準備のために、今使える経済センサスの名簿を使って、3年ぐらいの伸び率になると思うのですけれども、あとは経済センサスの場合は頭数ですね。なので、従業員数の伸びというか、変化率の分布をつくってあげて、それを母集団とみなして、毎勤のサンプル、各標本で人間の数の伸び率をつくってあげて、それがどうサンプルされているのかを比較してあげる。そうすると、ウェイトができますね。そのウェイトを使うプロセスを練習というか。
○石原構成員
それは毎勤の共通事業所のサンプルと経済センサスの全体のサンプルを比べるという感じですか。
○神林構成員
そうです。
○石原構成員
それで、分布が一緒だといいよね、使えるよねということ。
○神林構成員
そういうことですね。経済センサスの生き残り確率と人間の頭数の伸び率というのは、完全に全数で捉えている、センサスだという前提で。
○今野座長
ほかにいかがですか。
○瀧原統計管理官
今のお話は、まさに経済センサスで生き残っている事業所を母集団として捉えるということですね。そういう意味では、今の我々の毎勤の共通事業所というのが回答をしているかしていないかというところが入ってきてしまっているのですけれども、神林先生に御分析いただいたときには、共通事業所になり得る事業所を考えていただいて、その母集団という考え方でやるということですね。
○神林構成員
そうです。
○瀧原統計管理官
まさにより既存事業所という概念を取り入れた集計値をつくるという話ですね。
○今野座長
ほかにいかがですか。
どうぞ。
○稲葉構成員
本日の資料1に関する質問なのですけれども、5ページから11ページに関しましては、産業別、規模別に共通事業所と本系列の、これは前年同月比でよろしいわけでしょうか。それの散布図が作成されているわけですが、これは少し解釈が難しくなっているのは、それぞれのもととなっている事業所数が、産業別、規模別によって大きく違っているというところです。
それが4ページの表を見ればわかるのですけれども、例を挙げると、生活関連サービス業ですと「500人以上」の本系列が12事業所、そして、共通事業所が7事業所ということで、これの散布図が9ページの1段目の左から1番目と2番目。これを見ていくと、本系列ですとかなり高い数字、40%以上なのに対して、共通事業所がマイナス8%以下になっていると見てとれるのです。これで見ると、事業所数が非常に少ないとはいえ、共通事業所に含まれない事業所の前年同月比が高い値であると解釈できるかと思うのですけれども、この解釈で間違いないでしょうか。
○井嶋労働施策情報分析官
共通事業所ではないところの比較になりますので、つまり、別の事業所同士を含んだところを比較しているので、そこで高いところが入ってしまったり、低いところが入ってしまうと、こういう結果になるのかなと思っております。
○稲葉構成員
わかりました。ありがとうございます。
そうやって見ていくと、例えば7ページの「卸売業、小売業」の「規模500~999人」も同じように、これはある程度事業所数があるわけですけれども、大幅に違っているということは、そこのところの違う事業所であるからこれだけ前年同月比が高い値になっていると解釈するわけですね。わかりました。
とすると、これを踏まえて考えますと、数回前に提示された資料で気になる点が1点ありました。それは、国会の議論の中で西村先生が本系列と共通事業所の誤差についてメーカーである側は提示するべきだと話していたことです。そうしますと、統計を出す側としては標準誤差を出さなければならないことになると思うのですが、前年同月比の標準誤差を出すというのは、私が知る限りにおいては、日本においてはどこの府省もやっていないということで、新たな取り組みになるのではないかと思います。
参考資料1のほうで、6ページに産業別、事業所規模別の標準誤差率というものがあるのですが、これはきまって支給する給与額にかかわる標準誤差率が示されていて、かなり変わってきていることがわかるのですが、これは給与額ですので、前年同月比ではない。西村先生が指摘したのは、共通であるから、その前年同月比の誤差が小さいわけであって、それを根拠として共通事業所の系列のほうがわかりやすいのではないかとおっしゃっていますので、本系列での前年同月比と共通事業所での前年同月比の標準誤差率は、提示しなければならないかと思います。ただし、これまでにない話ですので、なかなか難しい話であるとは思います。
以上です。
○今野座長
ないというのは、必要がないからないの。難しいからないの。
○稲葉構成員
後者の難しいからないのだと思います。毎月調べている統計調査はあまりないのですけれども、完全失業率を出している労働力調査は毎月調べている調査で、確認したのはかなり前になるのですが、労働力調査でも前年同月比の誤差率については出していないと思います。
○今野座長
ほかにいかがですか。よろしいですか。
○瀧原統計管理官
確認だけなのですけれども、実際に毎月勤労統計において、この共通事業所系列を出しているというのは少し前向きというか、先進的とまでは言えないのかもしれないですけれども、日本であまりこういう形で共通した事業所でやろうというところはやっていないので、西村統計委員長なども、今後いろいろな数値を出していく中で一つこういう試みというのはあっていいのではないかというところで御示唆をいただいて、我々も取り組んできたと認識しております。そういう意味では、実は前年同月比に着目しようというところから始まって、それをまずは参考値として出していこうというものであったかと思います。
そのものについて、正直申し上げまして、その数値を出すに当たっての深い議論は我々厚生労働省として十分できていなかった。まずは出してみようということがあったので、そういう意味では、この検討会におきまして、かなり先生方に御議論をいただいて、少し深められたかなと。
ただ、それを受けて、西村統計委員長が、それであれば誤差の部分もちゃんと考えるべきではないかというのは、考えを深めたからこそ出てきた議論でございまして、出す最初の時点において、当然前年同月比を示すのだったら誤差率もあってしかるべきということまでは議論されていなかったというのが正直なところだと思います。実際問題、そういう取り組みがほかのところではまだないので、稲葉先生のおっしゃったように、どうやってやるのか、どうやったら出てくるのかというのも、国内ではほぼ例がないのかなと思っています。これは海外にあるのかもよくわからないのですけれども、アメリカの例もかなり大ざっぱに0.9を決めているというところも踏まえると、なかなか難しいのかなとは思うのです。
ただ、将来的に、例えばまずは共通事業所という観点をどのように導入していけるのかをここで御議論いただいて、最終的に実際に母集団なども含めてやろうと思いますと、また次の段階が必要かと思いますけれども、その中で稲葉先生のおっしゃったような前年同月比の誤差率をどう考えるかというのも、今、出す、出せないというよりは、そういう課題がある、場合によっては、やるとしたらどういったことが考え得るかみたいなところまで少し御意見をいただけると、この検討会としてはありがたいと。難しいものを出す、あるいは出せるかどうかというところまでは、正直我々も今のところではできないかと思いますけれども、そこの部分の御提示なりをいただけると非常にありがたいのかなと。
○今野座長
その点については、対前年同月比についての誤差率はあったほうがいい、ただし、どうするかは難しいというのが、我々が今もし報告書を書くとしたら、そこまでですね。今のお話は、難しいの中身をもう少しこうすれば難しいが解決するというアイデアが欲しいというお話。
○瀧原統計管理官
すみません。解決するまでは、その部分は現在決まった、あるいはこうやればいいというものは確立されていないかもしれないので、そういうものを検討するというぐらいでもいいのかなと。あるいは、こんな可能性がありますよというものがあれば、もちろんそれはありがたいですけれども、そこまでは我々として議論はできていないのかなとは思っております。
○今野座長
稲葉さんの御意見で我々検討会にとって重要なポイントは、難しい作業をここの研究会ではしないということなのですね。でも、その前に誤差率がわかる必要はあるということは合意しているわけだから、そうすると、それについてどうするかということについては次の場で頑張ってほしいということなのですけれども、その際に、頑張ってほしいときに、もしかしたらこんなことが考え得るというのがあったら最後に言い残してほしいというのが、瀧原さんが言いたかったのはそういうことかなと思うし、この検討会のできる範囲はそこまでかなと思っています。したがって、稲葉さんも遺言があったらここで言っておいてほしいということだと思います。
○稲葉構成員
何度か申し上げましたが、リサンプリングベースのブートストラップが答えであると。方向性としてはブートストラップ法を使用した何らかの方法で、これは推定でしかありませんけれども、推定することは可能ではないかと思います。
○神林構成員
公的統計でブートストラップで標準誤差を推定しているというのはあるのですか。
○稲葉構成員
研究面ではあります。研究面では幾つかの調査でブートストラップを使用したものはあります。例を挙げれば、住宅・土地基本調査でブートストラップ法を使用して、うまくいきそうだったのですけれども、現状ではまだ副標本法という方法を使っています。なかなか変化させるのは難しいというところなのかもしれません。両方推定値ではあるのですけれども、これまでずっと続けてきた方法を変えるというのは、その根拠をつくり出すところまでは至っていないのかなと思います。海外では事例はたくさんあると思います。
○今野座長
たくさんある。
○稲葉構成員
はい。
○野口構成員
公的統計の場合は継続性が問われるのですね。
○稲葉構成員
はい。
○瀧原統計管理官
今、おっしゃったのは、先ほどのお話ですと、ただし、時間がかかるので、うちのような毎月出していくところに追いかけて、同時にとかというのはなかなか難しいという考えになるのでしょうか。
○稲葉構成員
どの層をつくるのかがポイントになってきまして、今、資料に挙げられているように、共通事業所である層のところに事業所がなかったりしてしまうと、その時点で計算ができなくなるので、調査設計を変えていかなくてはならないということになります。副標本法みたいに決められた手順のまま計算できる話ではないので、その点で少し時間がかかるかもしれないという意味です。もしもう少し層を大きくとるのならば問題は生じないかと思いますけれども、そうすると、標準誤差の推定値は甘くなるということになるかと思います。
○瀧原統計管理官
海外の事例は、どちらかというと設計からしてそういうものが出せるような形にして出していくというものですか。
○稲葉構成員
そのとおりです。調査の標本抽出の設計からしてそのように組んでいますので、実施しやすい体制にはなっていると思います。
○今野座長
そこまでやると大変なので、今あるものを丸めてというのはできないの。丸めるのだったら基本設計を変えなくていいからいいよね。
○稲葉構成員
いろいろ議論があるのですけれども、それではだめだという方もいらっしゃるのですが、計算上はできると思います。
○今野座長
いずれにしても、こういう既存事業所の共通系列というのは、それなりに意味があるとなると、それは出す。そのときに、誤差はどうなるのだろうかということについては、私もよくわからないけれども、100点は難しいけれども、こういう方法で70点ぐらいになるとこんな誤差ですよというものをつけて、説明文書をつけて出す意味はあるのではないですか。
○稲葉構成員
そうですね。そうしますと、幾つかの仮置きをして、これは同等とみなそうとか、そういう仮置きを提示した上で数値を出すのは可能であると思います。
○今野座長
共通系列を出すときに、そういう情報がないよりかはすごく感じがいいというか、親切というか、いいよね。その手法はもっといい手法が出てきたら変えればいいわけで、いいのではないですか。
ほかに方法はあるの。それだけ。
○稲葉構成員
私が知っている研究の範囲では、それだけだと思います。違う案を実施すると調査設計が変わってしまうので、その方法だけだと思います。
○今野座長
なるほど。そうすると、お話を聞いていると、その方法のネックがあるとしたら、現在の規模別、業種別の切り方がよくないので、どうやってまとめればうまくいくかということさえ乗り越えればいいわけね。
○稲葉構成員
はい。
○今野座長
それを次の場で検討してもらって、研究してもらえばいいのだ。我々はそういうものが必要だということを出して。
○瀧原統計管理官
確認なのですけれども、切り方の話は切り方として重要なのですが、母集団の話はついて回っているのですね。母集団は今のままで切り方をざくっとやればできるということではなくて、母集団部分を解決しないといけないということは間違いないということですね。
○稲葉構成員
はい。
○瀧原統計管理官
ありがとうございます。
○今野座長
よろしいかな。
だいぶ今日の議論をお聞きしていて、私としては、これまでいろいろ議論をしていただいたので、一度全体を私と事務局で整理をして、抜けがないかを考えてみたいと思うのです。抜けがある点について、次の研究会でするということと、もう一つは、これまでいろいろ分析とか作業をしてきたので、そこでわかったこととわかっていないことをもう一度整理するということをしたいかと思っています。
今言ったことの2つをきちんとやらないと、また研究会をやっても意味がないので、そこを整理した上で次の委員会をさせていただくという手順にしたいと思います。
したがって、その整理に少し時間をいただいて、後から日程をお伺いするということにさせていただければと思います。そういう形の整理の段階に入ってもいいですか。
では、今日は少し早いですけれども、この辺りで終わりにさせていただければと思いますが、何かほかにございますか。よろしいですか。
どうぞ。
○野口構成員
これは予算の関係があるので言っても無駄かもしれませんが、どうなのでしょうか。1年でいいので全数でかけるということは全く不可能なのでしょうか。
○瀧原統計管理官
毎勤の全てにわたってはさすがに、東京都は「500人以上」は今度から全数で、今、ちょうど出てきているのですけれども、そこは数からいったら1,000とかというレベルなのですけれども、それでも結構大変でございまして、控えている「5~29人」とか「30~99人」のところの全数は、申しわけございませんが、無理だと思います。
○野口構成員
リソース的に無理ということですか。
○瀧原統計管理官
そうですね。実際に本当に経済センサスなり国勢調査並みの体制をとらないとできないものですし、ましてやそれを毎月というのは、まず無理でございます。
○野口構成員
2カ月でいいのですけれども。
○瀧原統計管理官
まさに真の値がわからない中での推計作業というところが、いろいろなところでネックになっておりまして、そういう意味では、経済センサスがあるので、労働者数については一応真の値が捉えられるというところになりますけれども、実際の賃金などは、そうはなっていないところですね。難しいです。そのレベルになってきますと、これはまた自分で墓穴を掘るかもしれませんけれども、そこは先ほど雇用保険データとの差という話がありましたが、ああいう業務統計の世界で実際にどこまで捉えられているかを考えるほうが現実的な対応だと思います。
○今野座長
よろしいですか。
それでは、終わりにいたしましょうか。今日は朝早く、最近この会合は朝早いのが多いのだよね。ありがとうございました。終わりにしたいと思います。
○村木雇用・賃金福祉統計室長補佐
皆様、長時間にわたり御審議いただき、ありがとうございました。
次回の開催は、調整の上、追って御連絡させていただきます。
これをもちまして、第12回毎月勤労統計の「共通事業所」の賃金の実質化をめぐる論点に係る検討会を閉会させていただきます。
本日はお忙しい中、御出席いただき、まことにありがとうございました。
(了)
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