平成30年度第4回化学物質のリスク評価検討会(有害性評価小検討会)議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

平成30年12月10日(月)15:00~16:57

場所

中央合同庁舎第5号館 共用第6会議室(3階)

議題

  1. 平成30年度リスク評価対象物質の有害性評価について
    1. アジピン酸
    2. ビニルトルエン
    3. 1-ブロモプロパン
    4. メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネート
    5. クロロホルム
    6. 四塩化炭素
  2. 特別有機溶剤のリスク評価について
  3. その他

議事

 
○増岡化学物質評価室長補佐 定刻となりましたので、ただ今から平成30年度第4回有害性評価小検討会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 まず、出席状況でございます。本日は高田委員、平林委員から所用により欠席との御連絡をいただいております。
 それでは、座長の大前先生に、以下の議事進行をお願いいたします。
〇大前座長 それでは、本日も御協力よろしくお願いいたします。
 まず、最初に事務局から資料の確認をよろしくお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは、タブレット端末の最初に開いてあるページに、資料の一覧として載っているかと思います。議事次第の資料一覧に載せているものと同じですが、順番に確認いたします。
 まず、資料1-1「アジピン酸 リスク評価書(案)」とその別添1、別添2。資料1-2「ビニルトルエン リスク評価書(案)」とその別添1、別添2。資料1-3「1-ブロモプロパン リスク評価書(案)」とその別添1、別添2。資料1-4「メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネート リスク評価書(案)」とその別添1、別添2。資料1-5「クロロホルム リスク評価書(案)」とその別添1、別添2。次に資料1-6「四塩化炭素 リスク評価書(案)」とその別添1、別添2となっております。次に資料2としまして、「特別有機溶剤10物質に係るリスク評価の進め方について」、資料3として、「今後の予定について」となっております。また、委員の皆様に限り、参考資料として、今回、資料で引用しております許容濃度等の提案理由書等につきまして、それぞれ添付しております。
 まず、御報告がございます。今回、リスク評価書の関係で、有害性評価をしていただく物質を6物質、事務局案の方で掲げさせていただいておりますが、そのうちの3つ目の1-ブロモプロパンにつきましては、有害性情報等、更なる調査が必要ではないかと考えており、資料の御用意はさせていただきましたが、本日は審議をせず、残りの5物質について審議をしていただきたいと考えております。
 以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
 今日は6物質が5物質になったということですので、よろしくお願いいたします。
 この検討会のメインの議題は、一次評価値、二次評価値をどうするかという点について最終的に決める委員会でございますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、最初にアジピン酸につきまして、事務局から資料の説明をよろしくお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは、資料1-1を御覧ください。「リスク評価書(案)(有害性評価部分)アジピン酸」とあるものです。
 表紙をめくっていただきまして1ページ、まず「1 物理化学的性質」の「(1)化学物質の基本情報」のところ、名称、別名、化学式、構造式、分子量、CAS番号につきましては記載のとおりでございます。こちらの物質については、労働安全衛生法施行令別表第9に収載の物質ということで、ラベルあるいはSDSの対象となっております。
 次に「(2)物理的化学的性状」ですが、外観は、無臭で無色の結晶性粉末、密度1.36g/cm3、沸点338℃、蒸気圧は18.5℃で10Pa、蒸気密度は5.04(空気=1)、融点152℃、引火点196℃、発火点422℃、溶解性は15℃の水100mLに対して1.4gなどとなっております。
 「(3)生産・輸入量、使用量、用途」でございますが、生産量が2016年の推定で約1,204トン、輸入量が2016年で41,588,073トン、製造・輸入数量が平成28年度の数字で80,000トンなどとなっております。用途につきましては、ポリアミド(ナイロン66)の原料、ウレタン原料、可塑剤原料、紙力増強剤、香料原料となっております。製造輸入者等につきましては、記載のとおりです。
 次に「2 有害性評価の結果」です。
 「(1)発がん性」につきましては、「ヒトに対する発がん性は判断できない」としています。調査した範囲では、吸入ばく露による発がん性の報告は得られておりません。また、ラットを用いた2年間の混餌投与試験において、腫瘍発生率に有意な差はみられておらず、また、2ページ、37行目以下に記載のとおり、国際機関による分類も行われておりません。これらを根拠としております。
 次に、「(2)発がん性以外の有害性」です。
 急性毒性です。ラットの吸入、経口、マウスの経口、ウサギの経口及び経皮について、2ページ、50行目以下に記載のとおり半数致死量等が示されております。
 次に、皮膚刺激性/腐食性ですが、刺激性「あり」としています。ウサギに対する試験の結果において、軽度の刺激性がみられたほか、ヒトにおいても皮膚に軽度の化学火傷を生じるという報告がございます。
 目に対する重篤な損傷性/刺激性につきましては、刺激性「あり」。こちらもウサギに対する試験の結果、角膜混濁及び虹彩の刺激がみられ、また、ヒトに対するアジピン酸の眼刺激性の閾値については、20mg/m3という報告もございます。
 次に、皮膚感作性ですが、「判断できない」としています。モルモットの実験で皮膚感作性を示さない、また、ヒトに関する情報もないことからこのようになっております。
 呼吸器感作性につきましては、製薬工場の作業員が気管支喘息を起こし、刺激性を示さない濃度であっても気管支喘息を起こしているということから、「あり」としております。
 次に、反復投与毒性ですが、NOAELは750mg/kg体重/日としています。ラットを対象にした2年間の混餌投与試験において、3%以上の群で体重増加の有意な抑制が認められたことなどを根拠とし、雌雄ともにNOAELは1%、こちらを換算しますと750mg/kg体重/日相当となっております。こちらから種差等を考慮して求めた評価レベルは、3ページ、99行目の式により、107.1ppm(630mg/m3)となっております。
 一方、LOAELにつきましては1,600mg/kg体重/日としています。こちらはラットを対象とした33週間の混餌投与試験において、1,600mg/kg体重/日で腸の慢性炎症がみられたということを根拠としております。こちらからも種差等を考慮して評価レベルを求めますと、3ページ、110行目の式から、22.8ppm(134.4mg/m3)と算出されます。
 次に、生殖毒性です。ヒトへの影響を調査した報告及び吸入ばく露による動物試験報告は得られていません。また、経口投与によるラット、マウス、ウサギ、ハムスターでの催奇形性試験ではいずれも陰性、母体毒性も見られない用量であること、生殖能に関する試験情報が得られていないことから「判断できない」としております。
 次に、遺伝毒性です。in vitro試験系では、復帰突然変異試験等いずれにおいても陰性、in vivo試験系では染色体異常試験等のいずれにおいても陰性を示していることから、遺伝毒性は「なし」と判断されています。
 次に、神経毒性です。製造工場における労働者の疫学調査において、自律神経系に障害が起こるという報告があるほか、ラットを用いた試験におきまして、抑うつ、呼吸困難、運動失調、痙攣などがみられたこと、あるいは33週間の混餌投与において行動の異常(無関心)がみられたことから、神経毒性は「あり」としております。
 次に、「(3)許容濃度等」です。ACGIHがTLV-TWAとして5mg/m3を設定しております。こちらには、製造工場における労働者の疫学調査において、自律神経系、胃腸及び上部気道の粘膜に障害が起るとされており、この調査を行った著者らはばく露限界4mg/m3としております。こうしたことを踏まえ、自律神経系と消化管の機能障害及び上部気道の粘膜刺激を最小にする値として、ACGIHは、TLV-TWA5mg/m3いう値を勧告しております。日本産業衛生学会(以下、「産衛学会」という)におきましては、許容濃度の設定はされておりません。また、DFG MAKは2mg/m3とされておりますが、NIOSH REL、OSHA PEL、UK HSE、OARS等については、設定されておりません。
 次に、「(4)評価値」です。まず一次評価値です。反復投与毒性の欄を御覧いただきますと、ここに動物試験より導き出された評価レベルがございます。しかしながら、これは、二次評価値の1/10以上であることから、一次評価値については「設定なし」となります。次に二次評価値ですが、5mg/m3と提案しております。こちらは、ACGIHが勧告しているTLV-TWAを二次評価値としたものです。
 説明は以上でございますが、先ほど御説明しましたように、DFG MAKで2mg/m3と設定がされております。設定年等も考慮して、事務局案のとおりACGIHの5mg/m3という値でよいのかという点につきまして、御検討いただきたいと考えております。
 以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
 アジピン酸ですが、刺激以外はあまり大きな影響はないというタイプの物質でございます。いかがでしょうか。
 今、事務局からありましたように、二次評価値として、ACGIHの5 mg/m3あるいはDFG MAKの2 mg/m3では、設定年が1993年と2016年と随分異なるわけですが、この辺りをどのように考えるかという点に関して御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。DFG MAKの2 mg/m3にしましても、これは決してアジピン酸の刺激性ではなく、情報はないのでリン酸相当ということで2 mg/m3という値を、最も厳しい値として設定しているわけです。ACGIHもアジピン酸のデータがないので、「データを探してください」というようなことです。数字を決めるようなデータが実は乏しいという、そういうことが提案理由に書いております。
 ルール上は、ACGIHか産衛学会の値が第1選択で、そこで適当でなければDFG MAK等の値にするということになっております。
 特に御意見がなければACGIHの値を採用でよろしいでしょうか。DFG MAKの値を採用するには少し根拠がしっかりしていないという点がありますので、ルールブックどおりにしたいと思います。
 それから1点、確認をして欲しいのですが、19行目の生産・輸入量のところですが、20行目の生産量が1,204トン(2016年、推定)、次の行、輸入量が41,588,073トン(2016年)、その次の行、製造・輸入数量が80,000トンとありますので、この輸入量の4,158万トンは誤りではないかと思いましたので、この数字は確認していただけませんでしょうか。
○増岡化学物質評価室長補佐 わかりました。確認いたします。
○大前座長 そのほか、アジピン酸に関しまして御意見、御質問はいかがでしょうか。
○江馬委員 生殖毒性のところ、4ページ、117行目ですが、「母体毒性も見られない用量であること」とありますが、これは要らないと思います。
○大前座長 はい。確かにおっしゃるとおりです。では、ここのところは削除をお願いします。
 今、2箇所修正がありましたが、一次評価値なし、二次評価値が5 mg/m3ということでよろしいでしょうか。
 はい、どうもありがとうございました。
 それでは、次の物質、ビニルトルエンにつきまして御説明をよろしくお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは、資料1-2を御覧下さい。
 1ページ目からですが、「1 物理化学的性質」の「(1)化学物質の基本情報」です。名称、別名、化学式、構造式、分子量、CAS番号等につきましては、記載のとおりです。こちらも労働安全衛生法施行令別表第9の対象物質となっております。
 次に、「(2)物理的化学的性状」です。外観は特徴的な臭気のある無色の液体、比重は0.90~0.92(水=1)、沸点が170~173℃、蒸気圧が20℃で0.15kPa、蒸気密度(空気=1)が4.1、融点が-77℃、引火点45~53℃、発火点が489~515℃、溶解性が25℃の水100gに対して0.0089gなどとなっております。
 「(3)生産・輸入量、使用量、用途」ですが、製造・輸入数量については情報が得られませんでした。用途については塗料用改質剤、絶縁強化剤、医薬品、農薬中間体などとなっております。製造者、輸入等につきましては記載のとおりです。
 次に「2 有害性評価の結果」でございます。
 「(1)発がん性」については、「ヒトに対する発がん性は判断できない」としています。ヒトの知見がないということと、ラット・マウスを用いた吸入試験では発がん性を示唆する結果が得られなかったということから、「判断できない」としております。なお、国際機関等の分類につきましては、IARCが3(ヒト発がん性について分類出来ない)とされているほか、2ページ、56行目以下に記載のとおりの分類がなされております。
 次に3ページ、「(2)発がん性以外の有害性」です。
 まず、急性毒性です。ラットの吸入、経口、経皮、マウスの吸入、経口、経皮、ウサギの経皮につきまして、記載のとおり半数致死量等が示されております。
 次に、皮膚刺激性/腐食性ですが、「あり」としています。ヒトに対し400ppmより高い濃度で皮膚への刺激性がみられ、また、ウサギへの試験の結果、中程度の刺激性がみられたことを根拠にしています。
 次に、眼に対する重篤な損傷性/刺激性です。こちらも「あり」としています。ヒトに対し、400ppmで眼に刺激を感じる、また、ウサギの試験の結果においても、軽度の刺激性がみられたということを根拠にしています。
 次に、皮膚感作性ですが、こちらは「判断できない」としております。スチレンの皮膚アレルギー患者において、ビニルトルエンの3つの異性体全てに交差反応がみられるという点、モルモットを用いたmaximization試験で陰性の結果が報告されているという点、これらを考慮して「判断できない」としております。
 呼吸器感作性は、調査した範囲内での報告は得られておりません。
 反復投与毒性ですが、LOAELが10ppmとされております。B6C3F1マウスを用いた103週間の吸入ばく露試験において、10ppm及び25ppmのばく露群において鼻腔粘膜の退行性及び炎症性変化の発生数が増加し、これらの病変には呼吸上皮の限局性慢性活動性炎症やびまん性の過形成が含まれていました。また、ばく露群の多くのマウスに細気管支の慢性活動性炎症がみられたが、対照群ではそれらの変化はみられなかったという結果から、LOAELについては10ppmとされております。また、この10ppmから種差等を考慮し、4ページ、130行目の式により、0.075ppm(0.36mg/m3)という評価レベルが求められております。
 次に、生殖毒性は、「判断できない」としております。モルモットを用いた吸入ばく露試験で奇形がみられたという報告、あるいはラットを用いた腹腔内投与試験で胚の死亡が増加したとの報告、あるいは経口投与試験で母動物の体重抑制や胎児の体重減少の報告があるものの、明確な生殖毒性を示す情報は少なく、「判断できない」としております。
 次に、遺伝毒性です。遺伝毒性については、4ページ、150行目以下に記載のとおりですが、「判断できない」としております。陰性・陽性それぞれの試験データがあり、in vitro試験では、ネズミチフス菌を用いた復帰突然変異試験は、S9 mix添加の有無に関わらず陰性であった等、陰性の結果がある反面、ヒトリンパ球を用いた染色体異常試験及び姉妹染色分体交換試験もS9非添加で陽性である等、他に陽性の結果なども出てきています。これらを総合的に判断して、「判断できない」としております。
 次に、神経毒性です。ヒトにおいて、400ppmより高い濃度の長期ばく露で、中枢神経系を抑制し、また、ラットを用いた吸入試験において、知覚及び運動神経伝導速度の低下、軸索の変性がみられているということから、神経毒性は「あり」としています。また、NOAELについては50ppmとされています。こちらはWistarラットを用いた15週間の吸入試験で、100ppm以上の群で軸索の変性を示す電気泳動の変化及び軸索タンパクの変化がみられた一方、50ppmではこれらの変化がみられなかったというところから、NOAELを50ppmとされたものです。ここから種差等を考慮し、5ページ、173行目の式から評価レベルを求めたものが3.75ppm(18.11mg/m3)となっております。
 「(3)許容濃度等」です。ACGIHがTLV-TWAとして50ppmを設定しております。こちらはスチレンとの類似性等を考慮して勧告されたもので、この勧告は、ばく露労働者における粘膜と眼の刺激を最小化し、臭いによる不快感を減少するとされています。あるいは、ビニルトルエンを吸入したラットでみられた軸索タンパクの変性は、ビニルトルエンと同程度の濃度のスチレンを吸入したラットでみられた軸索タンパク変性よりも顕著であることなどを踏まえ、ビニルトルエンのTLVを、スチレンとの類似性に基づいて、再検討中です。産衛学会は、許容濃度は設定しておりません。次に、DFG のMAKですが、こちらは20ppmが勧告されています。このほか、NIOSHI はREL:100ppm、OSHAはPEL:100ppmなどを勧告しております。UKのHSE、OARSについては、設定されていません。
 「(4)評価値」です。一次評価値につきましては、反復投与毒性から求めた評価レベルの0.075ppm(0.36mg/m3)を一次評価値としております。また、二次評価値につきましては、ACGIHが勧告しているTLV-TWAを二次評価値として、50ppm(242mg/m3)としております。
 以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
 ビニルトルエンについて御意見、御質問はいかがでしょうか。
○吉成委員 化学物質の名称について、26、27、32、32、38、39行目のいずれもですが、スチレンの綴りを間違えています。正しくは、styeneの「y」「e」との間に「r」が入ります。ついでに、33行目の「3- Ethenylmethylbenzene」は、「-」と「E」の間が空いていますので直していただければと思います。
 207行目、210行目にもあるのですが、「NAEC」は「NOAEC」でしょうか。197行目には「NOAEC」となっていますので、207行目と210行目もNOAECではないかと思いますので御確認いただければと思います。
 3点目ですが、203行目にグルタチオン-トランスフェラーゼという酵素があるのですが、「GSH-トランスフェラーゼ」という書き方はしません。書くのであれば「グルタチオン S-トランスフェラーゼ」というのが酵素の名称としては一般的ではないかと思いました。
 以上3点、よろしくお願いいたします。
○大前座長 ありがとうございました。
 「styene」となって「r」が抜けているというご指摘です。それから「NAEC」は「NOAEC」ではないかということで、これは確認してください。たぶん「O」が抜けているのではないかと思います。それから、今のGHSのところ、これは「グルタチオン S-トランスフェラーゼ」ということでお願いいたします。ありがとうございます。
 その他いかがでしょうか。
○西川委員 1つ目は、4ページ、121行から122行目にかけて、121行目には「鼻腔粘膜の退行性」と書いてあって、次の122行目に「びまん性の過形成が含まれる」とあります。これは退行性変化ではなく、増殖性変化ですから念のために確認をお願いいたします。
 2つ目は、6ページ、206行目に「ラットにおける局部的影響」とありますが、局部というのは別の意味がありますので、「局所」の方がよいと思います。
○津田委員 「マウスあたり」、「ラットあたり」と書いてありますが、少し分かりにくいので、「マウス1匹当たりの腫瘍数」とした方がよいと思います。
○大前座長 何行目でしょうか。
○津田委員 例えば、20ページ、250行です。マウスも同じです。「悪性腫瘍を発生した合計ラット数」の記載はよいのですが、「およびラットあたりの悪性腫瘍数」、その上、243行には「マウスあたり」と書いてありますが、この記載は、「1匹当たり」としないと意味が分からないと思います。
○大前座長 はい。
 前の物質では、ACGIHか、DFG MAKのどちらを選択するかという問題がありました。このビニルトルエンはACGIHが50ppmで1981年の設定です。最後の行(5ページ、188行目)を見ますと、「スチレンとの類似性に基づいて再検討中である」とされており、この再検討がどのようになったのかは分かりません。それに対して、DFG MAKの20ppmでは、根拠を見ますとしっかりと書いてあります。先ほどのアジピン酸とは違って、DFG MAKの根拠が明確であるという差があります。この辺はいかがいたしましょうか。二次評価値をACGIHの50ppmでいくのか、あるいはDFG MAKが2016年と新しく、根拠も明確に書かれているということから、根拠としては確からしいという意味で20ppmをとるのか、いかがいたしましょうか。
 一応、ルール上は産衛学会の値、もしくはACGIHの値で、それによらない場合、次の選択肢としてNIOSH REL、DFGH MAK等を選ぶというルールになっております。
○西川委員 この評価は、スチレンとの類似性にその重みをもたせるような形で評価しているので、それでよいかということだと思います。
○大前座長 いかがいたしましょうか。
 ACGIHの1981年の提案ですと、軸索タンパクの変性等についてはスチレンよりもビニルトルエンの方が強いらしいということが記載してあります。DFG MAKの方では、6ページ、207行目にビニルトルエンのLOAEC、これはLOAELと同じだと思いますが、それが100 ppmということに基づいてNOAEL=33 ppmが算出されており、ここではビニルトルエンの結果を記載していることになります。場所は神経ではなく、鼻腔の話ですが。
○宮川委員 私は、ルールを決めたらなるべくルールに従った方がよいと思いますが、このルールについて、机上資料を読みますと、新しいものがある場合は2の二次評価値の決定(ア)の最後、「なお、最新の知見から判断し、(イ)による決定方法の方が適切な場合は、(イ)の方法によるものとする」ということで、(イ)にNIOSH REL又はDFG MAKと書いてあります。
 この年代の違いを見ると、やはり1981年と2006年と、相当異なりますので、この場合には、今、申し上げた二次評価値の決定ルールを適用して、また先ほどのスチレンとの類似性よりは本来の物質の方がよいということも考慮し、この場合はDFG MAKの値を採用してはいかがでしょうか。
○大前座長 いかがでしょうか。机上配布の資料のオレンジのところの5ページに「二次評価値の決定」というルールが書いており、今、そこを宮川先生がおっしゃったわけです。
 そうしましたら、20 ppmの方がより適切であるということでよろしいでしょうか。
 では、事務局案はACGIHの50ppmですが、この検討会としては、新しく、しかも根拠が明確であるということを理由に、ACGIHではなくDFG MAKの値である20 ppmを採用するということにしたいと思います。
 ありがとうございました。
○津田委員 発がん性分類のところ、303行のところについてもよろしいでしょうか。
○大前座長 今、見ていらっしゃる資料が違うのではないかと思います。おそらく「別添」の方を御覧になっているのではないかと思います。
○川名化学物質対策室長 先生がおっしゃっているのは別添2「有害性評価書」、21ページの303行目です。
○大前座長 そうですね。ちょっと確認を。津田先生、よろしいでしょうか。
○津田委員 こちらの方はよいと思います。先ほどは、間違ったことを書いてありました。
○大前座長 わかりました。ありがとうございます。
 では、その他、ビニルトルエンに関して何かございますか。
 なければ、次の物質にいきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 では、次の物質、メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネートについて、説明をよろしくお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 では、資料1-4、メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネートです。
 まず、「1 物理化学的性質」です。
 「(1)化学物質の基本情報」につきまして、名称、別名、化学式、構造式、分子量、CAS番号等は記載のとおりです。こちらの物質は労働安全衛生法施行令別表第9に収載の物質であるほか、毒劇法において毒物として指定されております。
 「(2)物理的化学的性状」です。外観はわずかに黄色で催涙性の臭いを有する液体です。密度は25℃で1.07g/cm3、沸点は167~168℃(2×106Pa)、蒸気圧は25℃で2.13×10-6 kPa、融点は15℃、ただし、含有する異性体の比率によって異なります。引火点は200℃、発火点が225℃、溶解性については加水分解されるなどとなっております。
 「(3)生産・輸入量、使用量、用途」ですが、製造・輸入数量が平成28年度で1,000トン、用途につきましては、ポリウレタン樹脂原料となっております。製造業者の情報は得られませんでした。
 次に「2 有害性評価の結果」です。
 「(1)発がん性」、こちらは、2ページ、38行目以下に各国際機関の分類等が示されておりますが、いずれも情報なしとなっております。
 「(2)発がん性以外の有害性」です。
 急性毒性につきましては、ラットの吸入、経口、ウサギの経皮につきまして、それぞれ半数致死量等が示されております。
 次に、皮膚刺激性/腐食性については、ウサギに対する試験の結果、軽度の刺激性を認めたということで「あり」としています。また、眼に対する重篤な損傷性/刺激性については、ウサギに対する試験の結果、軽度の刺激性が認められ、回復傾向を示したということで、「軽度の刺激性あり」としております。
 次に、皮膚感作性です。ポリウレタン工場でばく露によるアレルギー性皮膚炎の発生が報告されおり、また、マウスの耳介腫脹テスト、局所リンパ節試験で皮膚感作性が認められていることから、皮膚感作性は「あり」としております。
 次の呼吸器感作性は、モルモットの吸入ばく露試験で、軽度の遅延型アレルギー反応が認められており、弱い呼吸器感作性があったとの報告があるが、ヒトへの知見がなく、「判断できない」としております。
 反復投与毒性は、NOAELが1mg/m3とされています。Wistarラットを用いた4週間の鼻部吸入ばく露試験におきまして、1mg/m3では異常は認められなかったが、6mg/m3で鼻汁などの毒性評価の境界領域の反応が示されたこと、また、高濃度の36mg/m3では、呼吸器刺激症状と肺に明確な炎症が認められたことから、呼吸刺激性に対するNOAELは1mg/m3とされております。こちらから、3ページ、92行目の式で評価レベルを求めますと、0.0007ppm(0.0075mg/m3)となります。
 次に、生殖毒性です。妊娠前の投与による呼吸器系への影響が認められる濃度で、受胎率が低下しているが、催奇形性試験ではほとんど影響がみられていないことから「判断できない」としております。
 次に、遺伝毒性です。細菌を用いた復帰突然変異試験及び哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験とも結果は陰性であったが、in vitroの報告は少なく、in vivoの報告もないことから「判断できない」としております。
 神経毒性です。ラットに20ppm、5時間の吸入ばく露により死亡が見られました。これらのラットでは振戦と痙攣を伴う激しい呼吸器刺激性、肺の重度のうっ血と水腫がみられております。これらを踏まえ、モデルSDSでは、特定標的臓器毒性(単回ばく露)で、中枢神経系などにおいて区分1としております。しかしながら、この症状は、致死量に近い量のばく露であり、神経毒性によるものとは判断できないと考えられましたことから、神経毒性については「判断できない」としております。
 次に「(3)許容濃度等」です。ACGIHがTLV-TWAとして0.005ppmを勧告しております。こちらはToluene diisocyanate(TDI)の毒性データを基に設定されたものです。TDIとその水酸化物は、動物試験で膵臓や肝臓に腫瘍誘発能をもっており、TLV-TWAは0.005ppmです。そして、十分な知見が認められるまでは、暫定値としてTDIのTWAである0.005ppmを採用するとされております。なお、このTDIのTLV-TWAにつきましては、2016年に0.001ppmに変更されております。産衛学会におきましては、許容濃度の設定はございません。また、DFG のMAKにつきましても設定はありません。そのほか、NIOSH REL、OSHA PEL、UK HSE、OARSについては記載のとおりです。
 次に「(4)評価値」です。一次評価値につきましては、反復投与毒性に基づき求めた評価レベルがございますが、これが二次評価値の0.005ppmの1/10以上のため、一次評価値については「なし」となっております。二次評価値ですが、ACGIHが勧告するTLV-TWAの値を二次評価値0.005ppmとしております。こちらにつきましては、TDIのTLVを用いたものですが、TDIのTLVが0.001ppmに改訂されている点について、どのように考えればよろしいのか御検討いただければと考えております。
 以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
 メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネート(以下、「水添MDI」という)はいかがでしょうか。最後の二次評価値をどうするかについては後にしまして、それ以外のところで何かございますか。
○吉成委員 6行目の化学物質の名称ですが、「Cyclohexane、」となっていますが、「Cyclohexane、1,1’-methylenebis-(4-isocyanato)」までで1つの化合物ですから、切り方が間違っています。英数のカンマ「,」の方でお願いいたします。これでは別の物質になってしまいます。
 あと、この資料ではよくわかりませんが、不要なところにスペースがかなり入っているような気がします。例えば10行目の「Bis(4-」の「()と「4」の間にスペースがかなり入っています。両端揃えにしているからなのかわかりませんが、もしスペースであれば全部要らないと思いますので、削除していただければと思います。
○大前座長 スペースを取ることと、Cyclohexaneのところはハイフンですね。
○吉成委員 いえ、カンマです。CASネームだと思いますので、CASではCyclohexaneを前に出してカンマをして、スペースで後ろの名前を付けるとありますから、CASの名前であれば、カンマでよいと思います。
○大前座長 ありがとうございます。
 それから、7行目の「H12MDI」ですが、これはこれでよろしいのでしょうか。
○吉成委員 調べましたらこういう呼び方もあるようです。
○大前座長 わかりました。ありがとうございます。
 それから59行目に初めて「水添MDI」という言葉が出てきますので、その前にフルスペルで物質名を入れておいて、括弧で(以下、「水添MDI」という)という形でお願いします。
 特になければ、先ほどのACGIHのTLV-TWAの数値が、今0.005ppmですが、これはTDI相当ということで採用しています。これは、その当時、情報がない場合には、とりあえず類似化合物と同じにしておくという手法で、MDIもTDIもHDIもみんな0.005ppmという数値でした。今回、一昨年にACGIHがTDIを0.001ppmにしたということで、おそらく今朝辺りにACGIHのドキュメンテーションが皆さんのところに回ったと思います。時間が短かったので読み切れていないところがありますが、その最初のところだけ見ますと、眼や下部気道、鼻出血といった症状が0.001 ppmぐらいで増えているという報告が2007年にされており、それが0.001 ppmにした根拠だと思います。しかし、それはTDIの話です。それをこの水添MDIにも適用すべきか、あるいは水添MDIでそういうことがみられていなければTDIの0.001 ppmを採用することはないというふうに考えるのか、その辺りはいかがでしょうか。
 これは発がんに関してもいろいろ書いてあり、動物の発がんについても少しだけ書いてありますが、結局、ACGIHは、発がんを根拠にして0.001 ppmの設定をしていません。したがって、発がんのことは、0.001 ppmの中には考慮されていないようです。
 そのうちACGIHは水添MDIのことをTDI相当ということで0.001 ppmにするかもしれませんが、現段階では0.005 ppmということですから、これはこのまま0.005 ppmとしておいてよろしいでしょうか。
○西川委員 TDIに基づいて0.005 ppmにしたというのが、1988年の設定の経緯でしたので、2016年にTDIそのものの値が0.001 ppmに変更されているという点を考えると、やはりこちらも0.001 ppmにすべきではないかという気がします。
○大前座長 1988年当時の0.005 ppmの根拠は、おそらく、呼吸器影響です。水添MDIはその当時情報がありませんでしたが、同じジイソシアネートということ、呼吸器影響はありそうだということからそういう設定になったと思います。今回、TDIは刺激症状で呼吸器影響ではなく0.001 ppmにしています。それを採用してよいものか大変迷います。
○西川委員 そうであるとすれば、2016年に値を変更したという何らかの根拠を書いた方が、なぜ同様に同じ値にしないのかという説明にはなると思います。
○大前座長 そうしますと、リスク評価書本文の中には、根拠はTDIのTWAの0.005 ppmを採用したと書いてあるので、TDIが0.001 ppmに変わったことに関しては、その理由は書いた方がよいということでしょうか。例えば、2016年の提案理由を要約して、ACGIHは2016年にこういう理由で0.001 ppmにしたということを注意書きのような形として。
○西川委員 はい。それから、やはり先ほど座長がおっしゃったように、TDIについては動物実験で発がん性があります。そのあたりを考慮するかどうかは、やはり議論をした方がよいと思います。
○大前座長 現段階では、この物質の方の発がんの報告は全くないわけです。MDIに関しても動物実験で発がん性が若干あったような記憶があります。水添MDIと普通のMDIの1つの差は反応性が違うということで、おそらく水添MDIは反応性が強いので、あっという間になくなると思います。先ほど水に分解すると書いてありましたでしょうか、そのあたりの化学的な物性もこれは違うと思います。これは難しい議論になると思います。
 この場で、この水添MDIの発がん性を推定してよいものかという部分もありますが、そこまでやるのは厳しいという気はしております。
 西川先生のご指摘のように、ACGIHがTDIを0.001 ppmにした根拠を少し付け加えるとして、この物質の二次評価値自体は0.005 ppmということでよろしいでしょうか。
 確かに発がんの問題もありますが、それをここで議論するのは難しいと思います。
 そうしましたら、一次評価値はなし、二次評価値は現段階のところでは0.005 ppmというACGIHの値をとっておくということでよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。
○西川委員 細かい点ですが、3ページ、71行目の「・Buehler assay」は前に「・」が付いているので、これは改行するのですね。
 それから、2ページ、62行目、「眼に対する重篤な損傷性/刺激性:軽度」とありますが、他の試験は全て「あり」と書いて、内容に「軽度の××作用があった」と記載しているので、これは「軽度」ではなく「あり」とした方がよいと思います。
○大前座長 ありがとうございます。
○清水委員 4ページ、131行目の「肺炎」の後の括弧の「pneumontis」は「pneumonitis」です。また、その下の行の括弧綴じの後の「注」は要らないのではないでしょうか。
○大前座長 この「注」は要らないですね。あるいはこの「注」は下の「注」のつもりで書いてあるのでしょうか。
○川名化学物質対策室長 「注」を小さくします。
○大前座長 そういう意味ですね。
○西川委員 今の清水先生のコメントですが、「pneumonitis」とすると、これは間質性肺炎になってしまって、ここでは「気管支炎・肺炎」とありますので、「pneumonia」ではないかという気がしますので、念のため確認をお願いします。
○大前座長 ありがとうございます。あるいは気管支と肺では場所が違いますので、「bronchitis」と「pneumonia」の両方書きましょうか。あるいは、この括弧をとってしまいましょうか。それが一番よいですね。では、この括弧の「(pneumontis)」の部分は消しましょう。
○川名化学物質対策室長 今のご指摘は、「気管支炎・肺炎」の後ろの括弧部分を削除するということでよいでしょうか。
○大前座長 そうです。括弧の中の英文を含め、削除するということです。
 では、次がクロロホルムですね。よろしくお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 その前に資料2の方を先でよろしいでしょうか。
○大前座長 そうですね。では、資料2、特別有機溶剤の方を先にやっていただいて、それからクロロホルムと四塩化炭素をやるということでよろしくお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 残りの2物質は特別有機溶剤として、本日の審議をお願いしておりますので、まずご審議いただく前に、資料2「特別有機溶剤10物質に係るリスク評価の進め方について」に関し、御説明いたします。こちらについては、先日のリスク評価検討会の中でもお諮りし、その議論を踏まえて一部修正を加えております。
 資料2を御覧ください。「特別有機溶剤10物質」というのは、本年度のリスク評価の対象としている10物質です。これらは、現在、特化則の対象になっておりますので、通常、新規の物質をリスク評価する場合とは異なるポイントがあるだろうとの観点から、リスク評価の進め方を取りまとめたものです。
 1.(1)ですが、特別有機溶剤に係る有機溶剤業務は、現行、特化則の対象となっております。もともとは有機則で規制していたものですが、「有機溶剤業務」として12区分を設けておりました。特化則の方に移行された際も、対象となる業務は有機溶剤業務となっておりますが、特化則固有の措置のいくつかについては、その適用を保留しております。2つ目の○のところに、「現在適用を保留している措置」として、ぼろ等の処理、設備の改造等、立入禁止措置等を並べておりますが、こういった措置については、規制の適用を保留し、一旦リスク評価を行った上で、改めて規制の見直しを行っていくとされたものです。一端保留されたばく露抑制措置の追加等の要否を判断するというのが、今般リスク評価の1つの目的となっております。
 なお、1.(1)下の※のところで追記しておりますが、保護衣等の備え付けにつきましては、平成28年の改正において、経皮吸収のある特別有機溶剤を製造し、取り扱う全ての業務を対象として適用済みでありますので、今般リスク評価の中では、経皮の観点での評価は不要と考えております。
 次に(2)です。「有機溶剤業務以外の業務」とあります。現在、特化則が適用されておりますのは有機溶剤業務に限られておりますので、それ以外の業務についてリスクの高い業務の存否を検討し、必要があれば対象業務に追加していくということも今回のリスク評価の目的の1つとなっております。この追加の要否を判断するということがもう1つのポイントです。
 また、通常のリスク評価においては、リスクが高いところを見ていくことが中心になってまいりますが、特別有機溶剤では、既に規制されている部分も含めて評価することになりますので、低リスク業務の評価も含まれてこようかと考えております。
 次に、「2.ばく露評価小検討会における検討」、「3.有害性評価小検討会における検討」、「4.リスク評価検討会における検討」とそれぞれの検討会で、特別有機溶剤の評価のポイントに沿って、どういったことが必要になってくるのかという点を整理したものでございます。
 本有害性評価小検討会に関わる部分は3.ですが、2.及び4.についても簡単に御紹介させていただきたいと思います。
 まず、「2.ばく露評価小検討会における検討」ですが、(1)検討の進め方として、先ほど御説明しましたように、有機溶剤業務とそれ以外の業務とではリスク評価のポイントが異なることから、有機溶剤業務とそれ以外の業務とで区分して評価する、また、有機溶剤業務についても12の区分がございますので、その区分ごとに検討していく必要があるのではないかというものです。
 これを踏まえ、(2)事務局の作業です。ばく露実態調査を行うために、ばく露作業報告の提出を事業場に求めておりますが、報告された内容について、有機溶剤業務とそれ以外の業務に分類、また、有機溶剤業務については、その12の区分に細分類を行い、実際にばく露実態調査を行ったデータがどこに該当するのか突合します。
 その結果を踏まえて、(3)ばく露評価小検討会における検討では、分類が適切になされているのか、また、区分ごとに評価するために必要なデータ、データ数なども含めて十分なデータが得られているのかどうか、検証していただきます。
 この検証の結果、十分にデータがあり、評価可能であると判断された場合に、ばく露の最大値を決定していきます。また、評価不能ということになった場合には、その理由は、データが不足している等が、主に考えられますので、追加収集すべき情報等の内容を御検討いただくことを考えております。
 次に、「3.有害性評価小検討会における検討」です。1つ目の○です。特別有機溶剤を規制した際の有識者による検討の中で、特別有機溶剤については発がん性の観点から特化則に定めていることから、発がん性に基づいた評価とすることについて、二次評価値の決定等も含めて、どうしていくべきなのかという問題提起をいただきました。
 2つ目の○です。こういったことを踏まえ、今回、有害性評価、評価値の決定などについてどのようにしていくかということでございます。こちらの内容につきましては、先日のリスク評価検討会での検討内容も踏まえ、修正したものになります。
 特別有機溶剤は、発がん性の観点から特化則に規制するものでありますが、特化則においては、他の有害性も対象にしております。作業環境測定の基準になるような管理濃度、こちらは、基本的には産衛学会、ACGIHの許容濃度等から採用しているものですが、必ずしも発がん性を根拠とするものにはなっておりません。このため、特化則の規制の見直し等に係るリスク評価に当たっては、発がん性を根拠としていない場合も含めて、管理濃度に採用されている許容濃度等を二次評価値とすることが適当と考えております。ただし、当該許容濃度などが改訂されている場合というものもございます。こういった場合につきましては、新たな改訂後の許容濃度としていくことが適切ではないかと考えているところです。
 この点につきましては、本日、有害性評価小検討会でございますので、委員の皆様方にも御意見等を賜れればと考えております。
 次に「4.リスク評価検討会における検討」です。ここでは、2.及び3.のばく露・有害性両小検討会の検討を踏まえまして、リスク評価となるわけですが、まず1つ目の○、上記2.(3)、これはばく露評価小検討会におきまして、評価し得るデータがあるかどうかということを判断いただくということですが、評価し得るデータが得られていることが確認された場合には、リスク評価を行うことになります。通常ですと、初期と詳細の2段階評価を行っておりますが、特別有機溶剤の有機溶剤業務につきましては、評価し得るデータが得られていることが確認された上で評価を行っていること、また、区分ごとの評価となっており、作業工程に共通したリスクを評価していると考えられることから、基本的には1回の評価をもって評価終了とできるものと考えております。
 一方、有機溶剤業務以外の業務については、新たにリスクの高い業務を洗い出し、それを追加していく必要があるかどうかといった観点からリスク評価を行っていくことになります。したがって、通常の新規の化学物質についてリスク評価をする場合と同様と考えられますので、初期評価において、高リスクと判断された場合には、作業工程に共通した問題かをより詳細に分析することなどを目的として、詳細評価に移行すると考えております。なお、低リスクと評価された場合には、評価終了ということになります。
 長くなりましたが、説明は以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
 特別有機溶剤10物質に関わる説明をしていただきましたが、何か御意見、御質問はいかがでしょうか。
 この委員会は、有害性評価小検討会ですので、3.のところになりますが、1つ目は、発がんで二次評価値が決まるかどうかという点について、きちんと検討しなさいということだと思います。2つ目は、管理濃度委員会が措置検討会と一緒になったと思いますので、その措置検討会で管理濃度を決めることになっていると思います。その場合、措置検討会に持っていく情報は、本検討会からの情報ということになりますから、二次評価値がここで決まり、その上のリスク評価検討会でそれが決まれば、それが措置検討会に行って、それが管理濃度になるという流れだと受け止めましたが、そういうイメージでよろしいのですね。
○増岡化学物質評価室長補佐 そういう形になろうかと思います。
○大前座長 許容濃度の場合は、DFG MAKもACGIHもそうですが、発がんではない理由で許容濃度になっているものが結構ございます。ただし、その濃度であれば、発がんは起きないであろうということで提案しているものも結構あると思います。それから、産衛学会の場合は、「ψ(プサイ)」マークという、「この物質に関しては発がんを根拠にしていない」というマークを付けている物質がございます。
○西川委員 念のための確認ですが、この特別有機溶剤というものは、そもそも発がん性が疑われる物質です。ただし、二次評価値が発がん以外の点で決まったものがあるかどうか、そういうことを確認するということですね。
○大前座長 そこをしっかりチェックしなさい、ということでよろしいわけですね。もし、その二次評価値が発がん以外で決まっている場合、その濃度であれば発がんはまず起きないであろうと、そういうことを提案理由書で確認するということですね。ですから、しっかり確認して、二次評価値が発がんで決まっていればその値ですし、発がんで決まっていなければ、発がんに関してチェックをしておきなさいということだと思います。
 では、次の2物質がこの特別有機溶剤になります。
 では、クロロホルムについてよろしくお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 では、資料1-5、クロロホルムです。
 まず1ページ、「1 物理化学的性質」、「(1)化学物質の基本情報」です。名称、別名、化学式、構造式、分子量、CAS番号につきましては記載のとおりです。また、こちらの物質は、労働安全衛生法施行令別表第9に収載の物質であるほか、特化則で規制を受ける特別有機溶剤となっております。また、がん原性指針の対象であるほか、毒劇法の劇物にも指定されております。
 「(2)物理的化学的性状」です。外観は特徴的な臭気のある揮発性無色の液体、比重は1.45g/cm3(水=1)、沸点は62℃、蒸気圧は20℃で21.1kPa、相対蒸気密度は4.12(空気=1)、融点は-64℃、嗅覚閾値が85ppm。引火点、発火点、爆発限界につきましては情報がありませんでした。溶解性につきましては、20℃の水100mLに対して0.8gなどとなっております。
 「(3)生産・輸入量、使用量、用途」です。製造・輸入数量は、83,072トン(2016年度)、用途は、フッ素系冷媒、フッ素樹脂の製造、溶剤、有機合成、アニリンの検出、血液防腐用、医薬反応溶媒、農薬反応溶媒、試薬となっております。製造業者は記載のとおりです。
 「2 有害性評価の結果」です。
「(1)発がん性」です。「ヒトに対する発がん性が疑われる」となっております。こちらは、クロロホルムの発がん性に対するヒトでの不十分な証拠と、実験動物での十分な証拠に基づくということです。IARCで2Bと分類されているほか、各機関の分類状況については、2ページ、39行目以下に記載のとおりとなっております。
 遺伝毒性「なし」ということから、閾値は「あり」となります。この閾値に関係して、NOAELは5ppmとされています。マウスを用いた104週間の吸入ばく露試験において、雄で腎細胞がんの発生について有意な増加傾向が認められ、また、腎細胞腺腫、腎細胞がんを合わせた検定についても有意な増加が示されていたことから、腎細胞腺腫・がん発生のNOAELが5ppmとされております。こちらから種差等を考慮して、評価レベルとしては、3ページ、74行目の計算式により0.037ppmと求められています。
 次に、(2)発がん性以外の有害性です。
 急性毒性につきましては、ラットの吸入、経口、マウスの吸入、経口、ウサギの経皮につきまして、半数致死量等が示されております。
 次に、皮膚刺激性/腐食性ですが、ウサギの耳に原液を塗布した試験において、軽微な充血及び表皮剥離が観察され、また、腹部皮膚への貼付では軽微な充血、中程度の壊死及び痂皮形成を引き起こしたということから「あり」としております。
 次に、眼に対する重篤な損傷性/刺激性ですが、ウサギの眼への点眼において、結膜への軽微な刺激及び角膜の障害を引き起こしたということから「あり」としております。
 次に、皮膚感作性ですが、モルモットあるいはマウスを用いた試験におきまして、明らかな感作性は認められなかったことから「なし」としております。
 呼吸器感作性ですが、職業性ばく露による感作の症例の報告はないということから、「なし」としております。
 反復投与毒性ですが、NOAELは5ppmとされています。マウスを用いた104週間の吸入ばくろ試験において、5ppmから鼻腔の変化が認められたこと、骨化生は雌雄ともに最低濃度の5ppm群でも発生増加が認められたこと、また、腎臓の尿細管上皮には雄の30ppm以上の群で核の大小不同、好塩基性変化、嚢胞状過形成等が認められたことから、腎臓に対するNOAELは5ppmとされております。この5ppmを踏まえて評価レベルを求めますと、4ページ、125行目の式から0.4ppmとなります。
 また、LOAELは12ppmとされております。マウスを用いた13週間の吸入ばく露試験で、雄に、これは死亡例も含むということですが、12ppm以上で腎臓の近位尿管の壊死などがみられたこと、鼻腔障害は雌雄の12ppm以上で観察されたこと、本試験の肝臓に関するNOAELは50ppm、腎臓及び鼻腔のLOAELはともに12ppmということから、LOAELは12ppmとされております。この結果に種差等を考慮して評価レベルを求めますと、4ページ、143行目の式から0.1ppmとなります。
 次に、生殖毒性は「あり」としています。NOAELは10ppmです。Wistarラットを用い、妊娠6日~15日に吸入ばく露させた試験で、母体の体重増加の抑制が10ppmから認められ、胎児では30ppmから体重と頭殿長の減少が認められ、また、3ppmにも尾椎の骨化数の減少や胸骨分節の骨化低下が認められました。この胎児の体重減少、頭殿長の減少の結果に基づき、吸入ばく露の児の発生毒性の関するNOAELは10ppmとされております。この10ppmから種差等を考慮して、5ページ、156行目の式から、評価レベルは0.9ppmとなります。
 次に、遺伝毒性です。さまざまな試験において、概ね変異原性は陰性で、一部陽性を示す結果が得られていますが、類似の試験系では陰性の結果を示しているなど、特定の関連を示す結果とは考えられていないこと、また、その他多くの評価書においてもクロロホルムやその代謝物に直接の遺伝子障害はないと結論されていることから、遺伝毒性は「なし」としております。
 次に、神経毒性です。430ppmに4時間吸入ばく露したラットで明らかな半麻酔状態が認められたこと、マウスの経口投与では運動失調、鎮静及び麻酔等の急性の神経症状がみられたこと、また、5ページ、170行目以下に記載のヒトにおける吸入ばく露試験におきましても、めまい、頭痛、吐き気等の影響がみられたことを踏まえ、神経毒性「あり」としております。
 次に、「(3)許容濃度等」です。ACGIHのTLV-TWAは10ppm。ラットを用いた6ヶ月の吸入ばく露試験において、25~30ppmでは臓器の毒性を生じなかったけれども、50ppmでは腎障害と肝障害が生じ始めたことから、この臓器障害が出始める50ppmの1/5の値ということで提案されております。産衛学会では、3ppmを提案しております。こちらは、げっ歯類の吸入毒性試験における肝臓又は腎臓の非腫瘍性病変を予防すべき影響として、2年間の毒性試験の無毒性量から許容濃度値が求められたものです。肝臓を標的臓器とした場合、無毒性量がマウス(雌雄)、ラット(雌)ともに30ppm(脂肪性変化)であるということから、種差等を踏まえて3ppmを提案しているということです。この他、DFG のMAKでは0.5ppm、NIOSHの REL、OSHAの PEL、UKの HSE、OARS等につきましては、6ページ、199行目以下に記載のとおりです。
 次に、「(4)評価値」です。一次評価値については、発がん性が疑われ、遺伝毒性がなく、閾値がある場合に該当することから、動物試験から導き出された評価レベル、0.037ppmを一次評価値としております。また、産衛学会が勧告している許容濃度の3ppmを二次評価値としております。なお、こちらの3ppmというのは、現行の管理濃度でもあります。
 以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
 クロロホルムにつきまして、何か御質問、御意見はいかがでしょうか。
 バイオの実験で、腎細胞腺腫・がん発生のNOAELが5ppmですので、例えば産衛学会の3 ppmをとれば、それより下回っているということにはなります。一次評価値が0.037 ppm、二次評価値が3 ppmです。
 この原案どおりでよろしいでしょうか。先ほど申し上げましたように、発がんに関しては考慮しているということですが。
 特に御意見がなければ、次の物質にいってよろしいでしょうか。
○西川委員 このラットの反復投与における腎臓に対するNOAELが5ppmということですが、腎細胞がんを起こす用量はいくらだったのでしょうか。
○大前座長 両方ともマウスですが、マウスの腎細胞発がんは69行目に、「マウスの腎細胞線腫・がん発生のNOAELは、5ppmとされている」とあります。
○西川委員 そうですね。そうすると、非腫瘍性のエンドポイントと腫瘍性のエンドポイントは一致するということですね。重みからいくと、がんに対する重篤性に対する追加係数みたいなところは考慮しなくてもよいのでしょうか。完全に理解できているわけではありませんが。
○大前座長 この特別有機溶剤は、今回初めてだと思うので、その辺りをどのように考えるかという点については、今まで議論したことはないと思います。資料1-5の別添2が有害性評価書ですが、この23ページ、368行目にラットの腫瘍の発生率の表があり、373行目にマウスの腫瘍の発生率の表があります。これはいずれもバイオの実験です。マウスの場合、雄のマウスでコントロールが0/50、1/50、7/50、12/50で7/50からFishreのExact Testで**が付いています。雌は全てゼロという結果になっております。
 ラットの方は特にありません。マウスの雄の腎細胞のところだけ増えています。
○西川委員 マウスの雄の腎腫瘍の発生が30ppmから増えているということで、そうすると、この腎細胞の発がんに対するNOAELは5ppmということになってしまって、反復投与におけるNOAELと一致するということですね。
○大前座長 原案では二次評価値が3ppmでございますが、これは、今のマウスの雄の腎細胞腺腫、腎細胞がん、がん以外のところでもってきた結果と一致するわけです。
○西川委員 したがって、その発がん性という重篤性を考慮するか否かだと思います。
○大前座長 そういうことですね。それをどうするかというのは、この10物質については、今回初めての議論になるのではないかと思います。
○宮川委員 二次評価値については、規則どおりに許容濃度等を持ってきます。そして許容濃度等に発がん性が入っていればこの物質についても適用して問題はない、ルールどおりで大丈夫ではないかと思います。
 先ほどの閾値から計算する場合ですが、たまたまこの物質は遺伝毒性がないということなので、閾値から計算するときに、こちらでは発がんの重大性を入れたがんの結果でも一次評価値が計算されていて、0.037ppmということですから、一次評価値で最初に初期評価をする段階で、その重大性という1/10を考慮した評価はできるということになると思います。それ以上にルールを加える根拠というのが、今ひとつ理解できていません。
○大前座長 一次評価値は、青い字で書いてありますが、「過剰発生率10-4」に対応している値ということで、ここで既に評価はしております。
○宮川委員 私の勘違いかもしれませんが、これは10-4でしょうか?
○大前座長 違いますでしょうか。
○宮川委員 リスク評価表を見ていただきますと……。
○大前座長 これは、閾値があるので10-4ではないですね。
○宮川委員 はい。発がん性のところでの計算で、「別添1 有害性総合評価表」、10ページ、キ 発がん性のところからみると、NOAEL=5ppmからスタートして、種差と発がんの重大性、それからばく露時間が6時間ということを考慮して0.037ppmになっています。したがって、10-4という値は、この場合には適用されていないと思います。ですから、その書きぶりのところを修正する必要があるかもしれません。
○大前座長 そういうことですね。
○宮川委員 もう一度申しますと、6ページ、210行目以下に青字で記載したところは、閾値がない場合についての、いつも入るものが書いてあると思います。今回は、閾値があるに該当しますので、この記載のままでは、0.037ppmという値がこの方法で計算されたかのように誤解されてしまいます。その点、分かるような説明が入った方がよいかと思います。
○大前座長 今回、閾値があるので「過剰発生率10-4」で計算はしていません。閾値がない場合には、こういう形で計算してEPAかどこかの値が出てくるのだと思います。今回の場合は、もともとそういう計算に該当しないので、「過剰発生率10-4」に関する説明は、修正した方がよいということです。ですから、閾値がない発がん性の場合、最後の2行だけを残しておいて、青字の部分は消した方がよいということですね。そうすると誤解がないということだと思います。
○西川委員 わかりました。がんの重篤性も考慮した上で、0.037ppmということが確認できましたので、結構です。
○大前座長 そのほか、クロロホルムについてよろしいでしょうか。
○宮川委員 1点だけ確認をしておいてもらいたいのですが、この物質は、バイオの試験結果があるということは、この有害性評価小検討会でそのバイオの試験結果について確認し、措置の検討が必要かという点について過去に検討した物質であると思います。そうすると、言葉の問題なのですが、現在ではIARCの2Bや産衛学会の2Bに合わせてGHSの区分に相当する「ヒトに対する発がん性が疑われる」という表記になっていますが、そのときに、もしかすると「発がん性あり」とはっきりと言い切って判断していることがあるかもしれません。その辺の言葉の齟齬がないように、もし、バイオのデータを重く判断し、そのときの措置等ができているのだとすると、この書きぶりを「ヒトに対する発がん性のおそれ」とか、動物実験で明らかにというふうに下の方にも書いてありますし、その表現の方が適当な場合があると思います。ただ、今ここには記録がないと思いますので、確認をしていただくのがよろしいかと思います。
○増岡化学物質評価室長補佐 わかりました。確認をいたしまして、必要があれば修正をするようにしたいと思います。
○大前座長 よろしくお願いいたします。
 では、本日の最後の物質になります。四塩化炭素の御説明をお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 では資料1-6、四塩化炭素です。
 「1 物理化学的性質」の「(1)化学物質の基本情報」です。名称、別名、化学式、構造式、分子量、CAS番号につきましては、記載のとおりです。また、こちらの物質についても労働安全衛生法施行令別表第9に収載の物質であるほか、特化則に定める特別有機溶剤、また、がん原性指針の対象物質になっております。また、毒劇法の毒物にも指定されている物質です。
 「(2)物理的化学的性状」です。外観は特徴的な臭気のある無色の液体、比重は1.59(水=1)、沸点は76.5℃、蒸気圧は20℃で12.2kPA、蒸気密度は5.3(空気=1)、融点は-23℃、嗅覚閾値は21.4~238.5ppm、引火点、発火点、爆発限界についての情報はなく、溶解性につきましては、溶けにくいということで、20℃の水100mLに対して0.1gなどとなっております。
 次に「(3)生産・輸入量、使用量、用途」ですが、平成28年度で製造・輸入数量は8,138トン、用途は、ワックス樹脂の製造、製造業者は記載のとおりです。
 「2 有害性評価の結果」、「(1)発がん性」です。「ヒトに対しておそらく発がん性がある」としております。F344系ラットを用いた104週間の吸入試験の結果、肝細胞腺腫と肝細胞がんの発生頻度が125ppmのばく露群の雌雄で有意に増加、あるいは25ppmばく露群の雌における肝細胞がんの発生頻度(6%)は統計学的に有意ではないものの、試験施設における背景データの範囲を超えていました。また、BDF1マウスを用いた104週間のばく露吸入試験において、25ppm以上のばく露群で肝細胞腺腫と肝細胞がんの頻度が雌雄ともに有意に増加し、また、5ppmばく露群の雌では、肝細胞腺腫の発生頻度が対照群よりも有意に増加、背景データの範囲(2-10%)を超えるものでした。また、副腎の褐色細胞腫の発生頻度が25ppmのばく露群の雄と、125ppmのばく露群の雌で有意に増加しています。これらの発生頻度は、試験施設における背景データの範囲(0.3%、0-2%)を超えるものでした。これらを根拠としております。
 また、国際機関等における発がん分類の状況ですが、IARCが2Bとしているほか、2ページ、49行目以下に記載のとおりの分類がなされております。
 また、閾値につきましては、遺伝毒性の判断ができないということから、閾値の有無についても「判断できない」としております。
 次は、「(2)発がん性以外の有害性」です。
 まず、急性毒性です。ラットの吸入、経口、経皮、マウスの吸入、経口、ウサギの経口、経皮について、3ページ、93行目以下に記載のとおり半数致死量等が示されております。
 次に、皮膚刺激性/腐食性です。ボランティアを対象にした試験の結果、軽度の一過性紅斑が認められたことなどを根拠に、「あり」としております。また、こちらにつきましては、ウサギの試験においても中程度の皮膚刺激性が認められております。
 次に、眼に対する重篤な損傷性/刺激性です。ウサギを用いた眼刺激性試験において、眼刺激反応が認められたということで、刺激性「あり」となっております。
 次に、皮膚感作性です。四塩化炭素の皮膚接触により過敏化が起こるという古い記録もありますが、追加の皮膚ばく露試験の必要性は高くないということで、得られた情報の範囲では「判断できない」としております。
 次に、呼吸器感作性につきましては、調査の範囲では情報は得られておりません。
 次に、反復投与毒性です。英国北西部の化学工場でばく露歴のある135人の労働者等について調査した結果、非ばく露群に対し、中濃度ばく露群(1.1-3.9ppm)と高濃度のばく露群(1-11.9ppm)でALPおよびγ-GTPの有意な上昇あるいは上昇傾向が認められたため、ヒトの肝臓に対する影響が示唆されたことから、中濃度と高濃度の平均濃度、ここでは5.5ppm(35mg/m3)相当と算出されておりますが、LOAELについては、この濃度5.5ppmとされております。こちらから種差等、LOAELからNOAELへの外挿を考慮し、評価レベルは0.55ppmとしております。
 次に、生殖毒性です。妊娠しているラットを用いた吸入試験において、いずれのばく露群においても胎児体重の低下と頭殿長の減少が認められました。また、胸骨分節の骨化遅延が対照群(2%)に比べて高用量群で増加(13%)したが、ばく露に起因するその他の異常は認められませんでした。母体毒性として、体重と摂餌量の減少、ALTの上昇(対照群の4倍)や肝臓の肉眼的異常及び肝臓重量の増加が、334ppmばく露群では26%、1,004ppmばく露群では44%に見られた。母体毒性及び発生毒性が認められた334ppmをLOAELとされております。このLOAELから種差等を考慮し、6ページ、208行目の式から評価レベルを2.92ppmと算出しております。
 次に、遺伝毒性です。in vitro系の試験においては、多くの復帰突然変異試験において概ね陰性であった一方、ガス状態の四塩化炭素にばく露させた場合、TA98株において弱陽性、大腸菌に対して陽性を示されたこと、また、in vivoの系においては、不定期DNA合成試験等において多くは陰性、あるいはどちらともいえないという結果であり、また、小核試験も多くが陰性であったが、ラット肝臓においては陽性であったことから、「判断できない」としております。
 神経毒性です。ヒトに20mg/L(3,200ppm)の濃度にて5分間ばく露させたところ異常は認められなかったが、30mg/L(4,800ppm)濃度の2.5分間のばく露では軽微、40mg/L(6,400ppm)濃度の3分間のばく露では振戦、傾眠、よろめき歩行が、89mg/L(14,100ppm)濃度の0.8分間ばく露では意識喪失が認められたこと、また、ラットを用いた急性吸入毒性試験においては、4,600ppm以上の濃度群で中枢神経系の抑制作用が認められたことから、神経毒性については「あり」としております。
 次に、「(3)許容濃度等」です。ACGIHがTLV-TWAとして5ppm(31mg/m3)を勧告しております。これは、げっ歯類、霊長類及びヒトにおける研究で、肝臓が最も感受性が高い組織であることが判明しており、10~20mg/kg未満あるいは10ppm未満では肝臓毒性が認められていないこと、血中導体の検査から肝臓毒性を予測できること、また、PBPKモデル計算により、げっ歯類で肝臓毒性の兆候が認められない用量と同等の職業ばく露は5ppm程度であったことから、設定されております。
 また、産衛学会は、5ppm(31mg/m3)を許容濃度として提案しております。こちらは反復ばく露の試験で、ラット、イヌ、サルは10ppm、モルモットは5ppmで肝臓の脂肪化が認められたが、一方、1ppmではモルモットでも肝障害は認められなかったという点、また、職場における中毒を示した事例では、作業環境を10ppm以下に抑制したところ、異常が認められなくなったという点を踏まえ、勧告された値です。
 このほか、DFGの MAKでは0.5ppm、NIOSH のREL、OSHAの PEL、UKの HSE、OARSの設定等の状況は、7ページ、263行目に記載のとおりとなっております。
 「(4)評価値」です。発がん性が疑われるものの、遺伝毒性が判断できないことから閾値の有無を判断できないため、一次評価値は設定なしとなります。また、ACGIHが勧告しているTLV-TWA、産衛学会が勧告している許容濃度、いずれも5ppmですが、これを二次評価値としております。なお、管理濃度もこの5ppmを採用しております。
 以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
 四塩化炭素の資料別添2「有害性評価書」ですが、この資料の546行目、570行目にラット、マウスの発がんの結果が載っております。これはバイオが1987年に行った最初の実験だったと聞いております。これを見ていただくと、有意な**が付いているのは、ラットに関しては125ppm、マウスに関しては25ppm辺りからです。雌の肝細胞腺腫は5ppmでも付いておりますが、こういう感じになっています。肝細胞腫瘍の合計(がんと腺腫の合計)ですと雄も雌も25ppmで**が付いているという状況です。産衛学会とACGIHの許容濃度がいずれも5ppmで、その設定年度が1997年ぐらいだったと思いますが、その頃は、まだバイオのデータが未公表の時代で、発がんのデータはバイオにあったと思いますが、許容濃度には反映されなかったという時代のデータになろうかと思います。
 そういうことですから、発がんを考慮して許容濃度を作ると、もう少し下がるかもしれません。そのような状況下で、一次評価値、二次評価値をどのようにするかという議論です。これもなかなか難しい議論になります。
 単純にルールブックどおりにいけば、5ppmが二次評価値になりますが、先ほど申し上げましたように、ACGIHも産衛学会も、バイオの発がんの実験のデータが未公表で入手できなかった時代のものですから、それを考慮に入れていない段階で許容濃度が作られているという状況です。
○宮川委員  今の点ですが、私は原則としてルールに従い、なるべく動かさない方がよいと思っています。しかし、今後の検討課題ということも含め、現状のルールブックですと、がんが問題になる場合には、そもそも反復投与毒性や一般毒性などから一次評価値を計算しないと解釈できるルールになっています。しかし、今問題になっているのは、がんのリスクを考慮して特別有機溶剤にしているけれども、他の毒性も対象にしてリスクも考えるとなったときに、今回、この四塩化炭素の例でいえば、反復投与の毒性では、例えばLOAEL=5.5ppmから計算した評価レベルは0.55 ppmであったり、NOAEL=5ppmから計算した評価レベルは0.4ppmであったり、数値的に差異を生じることになります。したがって、もし、一般毒性の方も対象にして考えるということにして、算出された0.4 ppmの値の方を使うと1ケタよりも少しだけ低い一次評価値が出てきます。ですから、現状は、がんが問題になるものについては、一次評価値は計算しないというルールですが、今回から特別有機溶剤の議論に入りましたので、今後は、そこのところは見直すことが必要ではないかという気がします。
 今回、どうするかということですが、1ケタ違いますから、ルールよりも先にいくかどうかということが問題になるかもしれません。
 もう1つ、忘れないうちに申し上げておきますと、このバイオのデータで発がん性「あり」となっているので、記載が動物の実験データが書いてあるだけで、IARCも2Bですし、産衛学会も2Bですし、EUのCLPも区分2ですが、「ヒトに対しておそらく発がん性がある」というGHSの1B相当の文言になっており、これはこれでがんを基に指針が出ている物質ですから、当然この言い方がよろしいかと思います。しかし、先ほどのクロロホルムのところですが、同じように扱うとすると、クロロホルムの方も「ヒトに対しておそらく発がん性がある」ということにしないと、がんに基づいて指針が出ている物質として統一がとれなくなるので、確認できましたらよろしくお願いいたします。
○大前座長 いかがいたしましょうか。まだルールブックに書かれていないところが今回出てきているということです。産衛学会あるいはACGIHの5 ppmをとるのは適切ではないという感じはどなたもするのではないかと思います。
○西川委員 例えばDFG MAKはマウスの発がん性を考慮した評価をしているようです。その値が0.5 ppmなので、これを採用するという手もあると思います。
○宮川委員 そうしますと、先ほど言いましたように、(ア)以外の、新しいデータがあるような場合ですが、あれと同じように、相当時間が経っていて、新しいデータがあるときにDFG MAKなどを使うというルールがあったと思います。ただ、これは二次評価値の決定ですから、二次評価値の方にDFG MAKを使うということもあり得ると思います。
○大前座長 やはり、発がんのデータが得られなかった時点で、産衛学会もACGIHも作っていますので、これを使うのは少しまずいという気がします。今、西川先生がおっしゃったように、DFG MAKの0.5 ppmをルールブックの次のセレクションということで使って、これを二次評価値にするというのが、西川先生あるいは宮川先生の御提案ですが、いかがでしょうか。
○津田委員 労働衛生の専門家ではないのでよくわからないのですが、バイオの実験で見ると、110ppmで急に発がんしています。かなり強い発がん物質であると、そういうことを十分に認識した上で進めていただきたいと思います。
○大前座長 おっしゃるとおりです。
○津田委員 それから、この記載ですが、1987年設定とありますが、正しくは1999年です。IARCは、1999年が一番新しい設定です。1987年を1999年に訂正してください。
○大前座長 はい。ありがとうございます。
 そうしましたら、二次評価値はDFG MAKの値である0.5 ppmでよろしいでしょうか。今回は特別有機溶剤ですので、やはり発がんのことを考慮していない5ppmを使うのは適切ではないだろうということで、今回、DFG MAKの値を二次評価値で使うという結論にしたいと思います。よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。
 では、二次評価値以外のところで何か御意見、御質問はございませんか。
○江馬委員 「生殖毒性:あり」となっています。この「あり」となった理由は、児動物の母体毒性が出るドーズでの影響なので、これは生殖能に対する情報が十分ではなく、「判断できない」というふうになるのではないでしょうか。
 6ページ、199行目から、「いずれのばく露群でも母体毒性として」とあります。
○大前座長 その上のところの「いずれのばく露群でも胎児体重の低下、頭殿長の減少、胸骨分節の骨化遅延」とありますが、この辺りは発生毒性に関するデータで、生殖毒性に関するデータはありますか。
○江馬委員 催奇形性のデータがありますが、生殖毒性の方は十分に検討されていないということになるかと思います。
○大前座長 通常、生殖毒性といった場合に、先生がおっしゃる生殖能の方と発生の方と両方まとめて「生殖毒性」といっていますので、ここのところを「判断できない」としてしまうと、逆に適切ではないという気がします。
○江馬委員 多分、今までもそのようにしていたと思います。宮川先生、何か覚えていらっしゃいますか。
○宮川委員 あまり記憶ははっきりしないのですが、「なし」にすることはできません。発生毒性と生殖能試験、両方とも陰性というのがはっきりしていなければ「なし」にはしていなかったと思います。母体毒性が問題になるときは、母体毒性の程度を考慮した場合もあったかもしれませんが、もしこれが全て母体毒性の発現したところでしか見られないのだとすると、明確に「あり」とは言い切らずに、「判断できない」ということも以前はあったような気がします。ちなみに、GHSの分類をするときはいつも問題になります。生殖毒性は、GHSの規定自体が母体毒性は慎重に見る、つまりよほどひどい場合以外は「生殖毒性:あり」としてもよいという言い方をしていますから迷う場合も多いのですが、政府のGHSモデル分類では母体毒性があるときには、1つ落として疑いの程度にしていたと思います。「判断できない」というのも疑いの1つということであれば、これでよろしいかと思います。先生のおっしゃるとおりでよろしいかと思います。
○大前座長 それでは、188行目の「生殖毒性:あり」は「判断できない」という書きぶりにするということですね。ありがとうございました。
○宮川委員 1点だけ、今のところで確認ですが、これは親のところで、「体重と摂餌量の減少」とありますが、体重増加が抑制ではなく、絶対体重が減少しているのだとするとかなりの影響が母体にあったと思います。
○大前座長 200行目ですね。
○宮川委員 そうです。
○西川委員 多分、今のところは、ALTが対照群の4倍という、異常な上昇をしているので、そうとうな肝毒性があったと思います。
○大前座長 そうすると、母体に対する影響がけっこう大きい状態で、生殖毒性としては、今の「判断できない」というのが適切だろうということですね。ありがとうございました。
 その他、四塩化炭素についていかがでしょうか。
 特にないようでしたら、本日予定していた物質が終わりましたので、その他について、事務局から何かありましたらよろしくお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 では、資料3「今後の予定」を御覧ください。
 次回、第5回を1週間後の12月17日の15時から、また、年が明けました1月15日の10時から、第6回を予定しております。一部、調整中のところもあろうかと思いますが、よろしくお願いいたします。
 では次回、次々回とこのように日時が決まっておりますので、開催場所の確保をよろしくお願いいたします。
 その他、事務局ありますでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、本日の有害性評価小検討会を閉会といたします。どうもありがとうございました。