平成30年度第3回化学物質のリスク評価検討会(有害性評価小検討会)議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

平成30年11月5日(月)10:00~11:25

場所

中央合同庁舎第5号館専用第13会議室(21階)

議題

  1. 平成30年度リスク評価対象物質の有害性評価について
    1. 酢酸イソプロピル
    2. ジフェニルアミン
    3. ジメチルアミン
    4. 1,1,2,2-テトラクロロエタン
  2. その他

議事

 
○増岡化学物質評価室長補佐 定刻となりましたので、ただ今より第3回有害性評価小検討会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。
 まず、委員の出席状況につきましては、本日、吉成委員から所用により欠席との御連絡をいただいております。
 それでは座長の大前先生に以下の議事進行をお願いいたします。
〇大前座長 それでは、今日は第3回有害性評価小検討会でございます。御協力のほどよろしくお願いいたします。
 最初に資料の確認をお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは資料の確認をさせていただきたいと思います。
 皆様方、タブレットをお手元に配布してございます。現在、厚生労働省におきましてはペーパーレス化を進めており、本日も資料はタブレットで閲覧をする方式で実施いたしますことを、まず御理解いただきたいと思います。
 既に御案内の委員もいらっしゃるかと思いますが、簡単にタブレットの使用方法を御説明させていただきます。
 お手元にタブレットとスタイラスペンを配布してございます。指又はそのペンで操作を行っていただくことになります。
 基本的ないくつかの操作のみに限定して御説明いたします。まず表示資料の切替えについてですが、まずお手元のところでは、資料一覧が見られるようになっているかと思います。資料の切替えは、それぞれ該当する資料を指又はペンでタッチしていただくと該当する資料が開きます。また、ページをめくる操作ですが、指を画面に当てて上下に動かしていただきますと、それに伴ってページが動いていきます。拡大・縮小ですが、指を2本当てて広げるように動かしていただきますと拡大、逆に狭めるように動かしていただきますと縮小となっております。また、資料内の文字の検索ですが、虫眼鏡アイコンをタップしていただきますと入力画面が現れるかと思いますが、そこに文字入力をしていただきますと検索ができます。
 このほかのタブレットの操作につきまして御不明の点等がありましたら、事務局までお問い合わせいただければと思います。
 それでは、引き続きまして資料の確認でございます。一覧を見ていただきますと、まず、議事次第、配付資料一覧という資料がございます。その後に資料1-1としてリスク評価書(案)酢酸イソプロピル、資料1-2として同じくジフェニルアミン、資料1-3として同じくジメチルアミン、資料1-4として同じく1,1,2,2-テトラクロロエタン、それから資料2として今後の予定です。また、各物質の評価値について参考資料1-1から1-4の4つ資料を付けております。
 参考資料2-1-1、2-1-2、2-1-3につきましては、酢酸イソプロピルの許容濃度等の提案理由ということで、順にACGIH、日本産業衛生学会(以下、「産衛学会」という)、DFGのMAKがそれぞれ付いております。次に、参考資料の2-2-1、2-2-2でございますが、こちらにつきましてはジフェニルアミンの許容濃度等の提案理由ということで、ACGIHとMAKのものがそれぞれ付いております。参考資料2-3-1、2-3-2、2-3-3、2-3-4でございますが、こちらはジメチルアミンにつきましての許容濃度等の提案理由ということで、それぞれACGIH、産衛学会、MAKのものについては1996年とあるものと2002年とあるものと2つ付いております。参考資料2-4-1、2-4-2、2-4-3、2-4-4でございますが、こちらは1,1,2,2-テトラクロロエタンについての許容濃度等の提案理由ということで順にACGIH、産衛学会、MAKにつきましては1973年、2002年のものということで添付してございます。
 それ以外にフォルダが3つございます。これは委員にのみ机上配布ということです。酢酸イソプロピル、ジフェニルアミン、特別有機溶剤とそれぞれございます。酢酸イソプロピルにつきましては、日本バイオアッセイ研究センターで行われましたがん原性試験の報告書と、平成21年度の行政検討会において提出しました関連資料をそれぞれ付けております。詳細につきましては、これは必要があったときに御覧いただくものとして、個別の説明は割愛させていただきます。また、「ジフェニルアミン」とあるフォルダにつきましても同様に、日本バイオアッセイ研究センターで行われた試験結果の報告書、及び平成23年度の行政検討会に提出された関連資料を収納しております。また、「特別有機溶剤」とあるフォルダですが、こちらにつきましても平成25年度の行政検討会でのリスク評価検討会の報告書、措置検討会の報告書、その他関連するパンフレット等を添付しております。こちらは必要があったときにまた御案内いたしますので、個別資料の内容についての説明は割愛させていただきます。
 資料の確認としては以上でございますが、タブレット等で見ることができないなどございましたら事務局までお申し付けいただきたいと思います。以上です。
○大前委員長 ありがとうございました。
 それでは本日の議題に入ります。本日は、4物質についてリスク評価を行うこととしております。評価をしていただいて、一次評価値、二次評価値を決定していただくというのが、きょうの検討会の主な目的でございますのでよろしくお願いいたします。
 まず酢酸イソプロピルにつきまして、事務局から説明をよろしくお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは資料1-1を御覧ください。
 こちらは「リスク評価書(案)」という名称になっておりますが、これは従前より資料の体裁を変え、リスク評価書のうち、基本的に有害性評価に関わる部分を記載した体裁としております。参考資料1-1として、従前と同様の体裁の資料を用意しております。どちらも同様の内容となりますので、資料1-1を御覧いただきながら、必要があれば参考資料1-1の方も見ていただければと思います。
 では資料1-1に沿って御説明をしてまいります。
 物質名、化学式、構造式につきましては省略させていただきます。
 物理的化学的性状ですが、外観は特徴的な臭気のある無色の液体、沸点は89℃、蒸気圧が25℃で8,050Pa、融点が-73℃、比重が0.88(水=1)、溶解性は、20℃の水100mLに対して4.331gなどとなっております。
 次に、生産・輸入量等でございます。生産量が2016年のデータ(推定値)で400トンです。また、別のところからのデータですが、製造・輸入量が30,000トンです。この値は、ノルマル体及びイソ体を含む酢酸プロピルの値ということになります。
 次に、有害性評価の結果です。
 まず発がん性ですが、「ヒトに対する発がん性が疑われる」としております。ラットを用いた2年間の吸入試験の結果、雄ラットについて中皮腫の発生・増加がみられ、4,000ppm群においては、その発生率がヒストリカルコントロールデータの範囲を超えております。雌につきましては、腫瘍性病変の発生・増加は認められておりません。雄ラットについて発がん性があり、ヒトに対する発がん性は否定できないということから、ヒトに対する発がん性が疑われると整理しました。なお、この結果につきまして、産衛学会は、「遺伝毒性が認められず、また腹膜中皮腫はこの試験に使用したF344系ラットの雄に特異的に自然発生する腫瘍のわずかな増加であり、ヒトに外挿することは妥当でない」という見解を示しております。
 次に、閾値の有無につきましては、遺伝毒性が判断できないというところから、判断できないとしております。
 次に、発がん性以外の有害性でございます。
 急性毒性については、ラット、マウス、ウサギそれぞれにおいて経口・吸入毒性に係る半数致死性量等のデータがあります。
 次に、皮膚刺激性/腐食性ですが、ウサギを用いた試験結果などから「刺激性:あり」としています。また、眼に対する重篤な損傷性/刺激性につきましても、ウサギを用いた試験などの結果から「刺激性:あり」とまとめております。
 また、皮膚感作性につきましては、モルモットを用いた試験において認められなかったということで、「なし」としております。
 呼吸器感作性につきましては、調査した範囲では報告は得られておりません。
 次に、反復投与毒性ですが、マウスを用いた2年間の吸入試験において、鼻腔における嗅上皮の萎縮等の影響からLOAELを1,000ppmと考察されております。こちらから不確実係数等を用い、4ページ、117行目の計算式から、評価レベルは7.5ppm(31mg/m3)と評価しております。
 生殖毒性につきましては、調査した範囲では報告は得られておりません。
 また、遺伝毒性につきましては、in vitro試験のAmes試験等で陰性の結果が報告されておりますが、情報が限られているということから「判断できない」としております。
 神経毒性につきましては、ヒト及びマウスに対しての報告からLOAEL=0.6mg/m3としております。
 続きまして許容濃度等ですが、ACGIHにおきましてTWA:100ppmを設定しております。こちらは酢酸プロピル異性体のデータ及び酢酸n-ブチルとの類似性に基づいた設定ということになっております。また、産衛学会におきましても100ppmを勧告しております。こちらにつきましては、眼の粘膜と鼻腔粘膜への両者の影響を予防する目的で100ppmが提案されております。DFGのMAKでも100ppmが設定されているほか、5ページの下から6ページ上にかけて、そのほかの機関における設定の状況につきましても記載しております。
 次に、評価値の提案ですが、一次評価値につきましては、発がん性を示す可能性があるが、遺伝毒性が判断できず、閾値の判断ができないとことから「なし」、二次評価値につきましては、ACGIH及び産衛学会が勧告している値ということで、100ppmを提案しております。
 以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
 御意見を伺う前に、産衛学会の許容濃度ですが、これは2017年提案で、今年正式な値になっておりますので、「暫定値」というのは消してください。
 発がん実験で雄のラットの腹膜中皮腫、こちらはヒトでは起きないだろうという見解を産衛学会は出しておりますが、いかがでしょうか。
○西川委員 ヒトに起きるか否かは別として、ラットでは、自然発生的にみられる腫瘍です。ただ、その施設の背景データの範囲を超えているということから、ルール上は「発がん性:あり」ということでよいのではないかと思います。以上です。
○大前座長 鼻腔の刺激についてはLOAELから計算して7.5ppmとなっておりますが、これは鼻腔の話なのでヒトだともう少しUFを小さくしてもよいのではないかと思います。
○西川委員 これはマウスのデータを用いていますが、実はラットでも同じようなデータになっています。この有害性評価書(別添2)の15ページ、119行目がラットの発がん性の試験ですが、そこにおいて反復投与の所見が書いてあります。123から124行目に、「雌はすべての群において嗅上皮にエオジン好性変化を認められた」ということで、これはマウスのLOAELとまったく同じになりますが、こういうのは1つあればよいということなのでしょうか。
○大前座長 1つだけあればよいというのは、どういう意味でおっしゃっているのでしょうか。
○西川委員 ラットの試験を代表して……。
○大前座長 ここに記載するのに十分であるのかという意味ですね。わかりました。
○西川委員 そうです。マウスの試験も並列するのか、あるいは1つあれば大丈夫だということなのでしょうか。
○大前座長 これは両方併記しても問題ないと思います。特にどちらか1種だけ記載するということではなかったと思います。両方の数字は同じですし、それは両方記載してもよろしいのではないかと思います。
○宮川委員 資料1-1、4ページ、126行目の神経毒性に関しての記載で「神経毒性:あり」、これは結構だと思いますが、根拠のところでは、高濃度で衰弱、嗜眠状態等がヒトのデータであり、マウスでは1,600ppmくらいで活動性の低下の報告があると書いてあります。LOAELとして0.6mg/m3という非常に低い値が書いてありますが、このLOAELを求めた根拠が簡単に見つかりませんでした。この129行から132行に記載している程度のデータしかないのであれば、LOAELを書く必要はないといいますか、逆にいうと、このLOAELがあるのであればここから評価値を考えなければならなくなります。LOAELの部分だけですが、一見しただけでは根拠が分からないので、確認の上、消していただいた方がよいような気がしますが、いかがでしょうか。
○大前座長 そうですね。少なくともこれはずいぶん違いますから、この0.6 mg/m3という値を確認していただいて、1,600ppmとかそうとう高濃度で麻酔作用が起こるのだと思いますが、そういう意味では削除した方がよいかもしれません。
○増岡化学物質評価室長補佐 わかりました。
○大前座長 そのほか、いかがでしょうか。
 事務局としては一次評価値はなし、二次評価値は産衛学会、ACGIHの100ppmを提案しております。二次評価値が100ppmで妥当かということですが。今、議論のあった修正はお願いするとして、数字自体はよろしゅうございますか。
 はい、どうもありがとうございました。
 では、次の物質、ジフェニルアミンをお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは資料1-2、参考資料1-2をご覧下さい。
 資料1-2に基づいて説明させていただきます。
 名称、化学式、構造式等については省略させていただきます。
 物理的化学的性状ですが、特徴的な臭気のある無色の結晶、沸点が302℃、融点が53℃、密度は1.2(g/cm3)、蒸気圧は20℃のデータですがほとんどなし、また、溶解性は水に対して非常に溶けにくいなどとなっております。
 生産・輸入量等ですが、生産量が2016年の推定で約2,500トン、製造・輸入数量は平成28年度の、これは経済産業省のデータですが、1,000トンなどとなっております。
 有害性評価でございます。
 まず発がん性ですが、「ヒトに対しておそらく発がん性がある」としています。ラット、マウスを用いました2年間の混餌による経口投与試験を行った結果、雄のラットで血管系腫瘍の発生の増加傾向などが認められ、また、雌のラットでは子宮に腺癌の発生の増加傾向が認められています。また、マウスにつきましては、雄マウスで血管系腫瘍の発生増加が認められています。なお、雌のマウスにつきましては、腫瘍の発生増加は認められておりません。
 以上のように雌雄のラット及び雄マウス、2種の動物に対してがんが認められたというところから、ヒトに対しておそらく発がん性があるとしております。
 閾値の有無ですが、こちらは遺伝毒性がないと考えられたことから「閾値:あり」としております。NOAELについては、雄マウスについて1,000ppmで血管系腫瘍の発生の増加があったというところから250ppmとされ、評価レベルにつきましては、種差、がんの重大性などを考慮し、また、混餌投与であるということからこれを吸入への補正を併せて行った結果、2.44mg/m3と算出されております。
 次に、発がん性以外の有害性ですが、急性毒性については、ラット、マウスの経口毒性、ウサギの経皮毒性について半数致死量等が示されております。
 皮膚刺激性/腐食性につきましては、Albinoウサギを用いた試験において軽度の皮膚刺激がみられたということから「あり」、また、眼に対する重篤な損傷性/刺激性につきましては、ウサギを用いた試験で中程度の結膜刺激がみられたということから「あり」としております。皮膚感作性につきましては、ヒト又はモルモットの試験結果から「なし」としております。
 呼吸器感作性につきましては、調査した範囲では報告が得られなかったというところから、「判断できない」としております。
 また、次に、反復投与毒性ですが、ビーグル犬を用いた2年間の混餌投与の試験におきまして、25mg/kg体重/日の用量でヘモグロビン含量や赤血球数の軽微な減少が認められたことに基づき、そこから種差等を考慮し、評価レベルとして、4ページ、114行目の計算式に基づき、0.3ppm(2.1mg/m3)としております。
 次に、生殖毒性ですが、こちらはラットによる2世代生殖毒性試験におきまして、児動物で1,500ppm投与群のF1の雌に体重増加抑制、1,500ppm投与群のF2に授乳14日及び21日に体重低下がみられたということから、NOAELが500ppm(46mg/kg体重/日)とされています。ここから種差等を考慮し、4ページ、132行目の計算式により、評価レベルを5.6ppm(38.6mg/m3)と求めております。
 遺伝毒性につきましては、チャイニーズハムスターを用いた染色体異常試験で、S9mix非存在下において構造異常を示しましたが、その他のin vivo試験におきまして多くの試験結果で陰性の結果であったということから、遺伝毒性は「なし」としております。
 神経毒性につきましては、調査した範囲では報告は得られておらず、判断できないとしています。
 次に、許容濃度等ですが、ACGIHおいて、混餌投与したラット及びイヌで、腎臓、肝臓及び血液疾患、皮膚や眼及び粘膜の刺激を最小化する値としてTLV-TWA:10mg/m3が設定されております。産衛学会におきましては設定されておりません。また、DFGではMAKが5mg/m3とされているほか、5ページ、163行目以下に記載のような設定が各機関においてなされております。
 次に、評価値ですが、一次評価値につきましては、発がん性が疑われ、遺伝毒性がなく閾値がある場合でありますが、先ほど評価レベルを求めたところ、次に説明する二次評価値10mg/m3の1/10以上となったところから、「なし」としております。二次評価値につきましては、ACGIHが勧告しているTLV-TWAを二次評価値(10mg/m3)としております。
 以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
 発がん、反復毒性、生殖毒性でそれぞれ評価値が出ておりますが、ACGIHの10 mg/m3の1/10に満たないということで「一次評価値はなし」という提案ですが、いかがでしょうか。
○江馬委員 生殖毒性のところですが、言葉が混乱しているというか、わかりにくくなっているので、125行からの文章ですが、これは両方、児動物に対するNOAELということなので、ちょっと整理された方がよいと思います。
 生後の児動物の体重低下と出生児数の減少、これは両方、児動物に対する影響なので、児動物か次世代に対する影響が500ppmということだと思います。132行目の計算式のところですが、500ppmの摂取量が雄で40mg/kg体重/日、雌で46mg/kg体重/日、これは雄・雌どちらの影響かわからないので、ここの計算値の出発点は40mg/kg体重/日になるのではないかと思います。
○大前座長 ありがとうございました。今の御意見についていかがでしょうか。
 これはF1には体重増加の抑制で、授乳14日、21日に体重低下、これはF2に対する影響、いずれも1,500ppmの投与群ですが……。
○江馬委員 この文章では、「両世代における出生児数の減少が認められた」という現象を生殖毒性として書いているのですが、厳密にいうと発生毒性です。ですから、「次世代動物に対するNOAELは」というふうに修正されて、NOAELは500ppmということでよろしいかと思います。
○大前座長 雄・雌のどちらをとるかは別として、125行目に「これより、発生毒性のNOAELは500」とありますが、これではまずいですか。
○江馬委員 「発生毒性のNOAELは500ppmとされた。」として、126行目の「また」以下を削除してもよいと思います。500という一番低い数字が出ていますので。
○大前座長 なるほど、わかりました。ありがとうございました。
 今の御意見でよろしゅうございますか。
 ありがとうございます。では、「また」以下は削除でお願いいたします。
 それから40 mg/kg/日をとるか46 mg/kg/日をとるかというもう1つの江馬先生の御意見ですが、これについてはどうでしょうか。
○宮川委員 この点ですが、前にも申し上げたことがあるかもしれませんが、LOAELの計算に使うのは、LOAELの計算からいえば40mg/kg/日の方が低いのでこちらが妥当だと思います。しかし、ここの記載では、生殖毒性のあり/なしを判断する根拠とする場合ですので、あり/なしの判断のときには、より高い値の46mg/kg/日の方が重要という場合があり得ます。特に、出生児数の減少というのは、「あり」の根拠としては残しておいた方が、体重低下だけよりも重要な情報になると思いますが、いかがでしょうか。
○大前座長 江馬先生、いかがでしょうか。数字を使うときの問題と、あり/なしの判断の問題と分けた方がよいのではないかという御意見ですが。
○江馬委員 宮川先生のおっしゃるとおりで、根拠として体重低下よりも出生児数の減少の方がよりインパクトがあるという点は、ドラスティックな意見でよいと思います。
○大前座長 では、これはこのままでよろしいですか。
○江馬委員 はい。
○大前座長 雄の40 mg/kg/日と、雌の46 mg/kg/日のどちらをとるかということに関しては、江馬先生のご意見は、40 mg/kg/日ですからこれは雄です。F0の雄が40 ですから40 mg/kg/日をとるべきではないか、雄が影響しているのか雌が影響しているのかわからないという、そういう御意見でしたが。
○高田委員 上の単位はmg/kg体重/日ではなくmg/kg/日です。先ほどの500ppmは46mg/kg体重/日です。
○大前座長 これは同じです。
 江馬先生の御意見は、雄で影響しているのか雌で影響しているのかわからないから、低い方の数字をとった方がよいのではないかという御意見ですが、いかがでしょうか。
○西川委員 やはりより低い40の方がよいと思います。
○大前座長 では、40 mg/kg体重/日をスタートに算出すると、評価レベルの値38.6mg/m3から若干小さくはなりますが、先ほどの二次評価値よりは大きいということで、一次評価値、二次評価値の数字は変わりませんが、ここの部分は40 mg/kg体重/日をスタートにして計算していただくということでお願いいたします。
○西川委員 反復投与毒性に関する評価レベルの計算のところですが、これはイヌの試験を用いていますが、365行目と379行目にマウスの試験があって……。
○大前座長 先生、どの資料を御覧になっていらっしゃいますか。
○西川委員 365行目と379行目にCD-1マウスの試験があって、最初の試験については377行目にNOAELが1.5mg/kg体重/日とあって、次の試験は397行目に1.7mg/kg体重/日に相当するとあります。これはイヌのNOAELよりも小さいのですが、これを採用しなかった理由について何か議論がありましたでしょうか。
○大前座長 まだ資料を探しきれていないのですが、ジフェニルアミンの……。
○西川委員 有害性評価書(別添2)、19ページの365行目です。
○大前座長 下の方ですね、わかりました。
 申し訳ないですが、何行目だったでしょうか。
○西川委員 マウスの試験があって、1つは365行目からの試験、そのNOAELが377行目に1.5mg/kg体重/日とあります。2つ目の試験が379行目からで、このNOAELが397行目に1.7mg/kg体重/日に相当するとあります。これはイヌのNOAELよりも小さいのですが、これを使わなかった理由は何かということをお伺いしています。
○大前座長 御質問は理解できました。いかがでしょうか。
○西川委員 自分で質問していて答えるのは変ですが、最初の試験は「1群匹数不明」と書いてあって、こういうところから採用しなかったのだと思いますが、2つ目の試験は、「1群各15匹」と書いてあって、これを採用しない理由がよくわかりませんのでお伺いしています。
 これも勝手に回答してしまうと、これは用量の設定が少しまずくて、10、520、2,600、5,200ppmですから、520ppmで所見があったときに、下の用量が10ppmになってしまうと、きっとそういうことなのだと思います。
○大前座長 たしかに用量はずいぶん大き過ぎます。そうすると、この10よりももっと上だろうと、そういうイメージですね。
○西川委員 ですから、何かそういう議論の記録があるのではないかと思いました。
○大前座長 なるほど。すいません、これをやったときに、記憶はないのですが、大分前だと思うので、多分、今先生がおっしゃったような根拠だった可能性は大いにありますが、確定はできません。
○西川委員 おそらくそういうことだと思いますので、これ以上追求はしません。
○大前座長 では、多分そうだろうということで、そして一応産衛学会もビーグル犬をとっていますし、これに関しましてはビーグル犬の試験をとるということで。ありがとうございました。
○高田委員 2ページ、64行目のところの発がん性のNOAELの根拠の文章の書き方で、混餌投与であることは上を見ればわかるのですが、ここにも投与経路は書いておいた方がよいと思います。
○大前座長 そうですね。そこの部分は投与経路の追記をお願いいたします。
 そのほかございますか。
 では、数字につきましては事務局の御提案のとおり、一次評価値は「なし」、二次評価値はACGIHの10mg/m3ということでよろしゅうございますか。
 では、文章の中の修正はよろしくお願いいたします。数字としては今の「なし」と10(mg/m3)ということでよろしくお願いいたします。
 では、次はジメチルアミンをよろしくお願いいたします
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは資料1-3、参考資料1-をご覧下さい。
 資料1-3に基づいて説明してまいります。
 名称、構造式、化学式等については省略させていただきます。物理的化学的性状ですが、刺激臭のある無色の圧縮液化気体、比重が0.7(水=1)、沸点が7.0℃、融点が-92.2℃、蒸気圧が25℃で2.03×105Pa、溶解性は水100mlに対して354gなどとなっております。
 生産・輸入量等ですが、平成28年度のデータで製造・輸入量が19,900トンなどとなっております。
 次に、有害性の評価でございます。
 発がん性につきましては、マウス及びラットにおける試験で、投与に関連した腫瘍の発生がみられておらず、なおACGIHはA4(ヒトに対する発がん性物質として分類できない)としていることから、「ヒトに対する発がん性は判断できない」としております。
 次に、発がん性以外の有害性ですが、急性毒性については、ラットの吸入毒性、経口毒性、経皮毒性、マウスの吸入毒性、経口毒性、ウサギの経口毒性について、それぞれ半数致死量等が示されております。
 次に、皮膚刺激性/腐食性ですが、ウサギを用いた試験結果などから「腐食性:あり」としております。
 次に、眼に対する重篤な損傷性/刺激性ですが、こちらもウサギを用いた試験の結果、軽度の刺激性を示したというところから「あり」とされております。
 続きまして皮膚感作性ですが、モルモットを用いた試験におきまして、陽性反応が認められたということから「あり」とされております。
 呼吸器感作性につきましては、調査した範囲では報告は得られておりません。
 反復投与毒性ですが、こちらはラットを用いた2年間の吸入ばく露試験において、鼻腔組織の病変が10ppm以上の群で濃度に依存してみられ、10ppm群では局所的で軽微、50ppm群では中程度、175ppm群では重度であったというところから、LOAELは10ppmとされています。評価レベルにつきましては、種差等を考慮して3ページ、93行目の計算式によって0.075ppm(0.138mg/m3)と求めております。
 生殖毒性につきましては、ラットを用いた経口投与の試験において、胎児に何ら形態学的変化は認められず、発生毒性のNOAELは1,000mg/kg体重、しかし繁殖に及ぼす影響に関する試験の結果がないことから、生殖毒性を「判断できない」としております。
 遺伝毒性につきましては、in vitroの試験において染色体異常が検出されているものもありますが、in vivoでの信頼できる染色体異常試験又は小核試験が報告されていないということから、「判断できない」としております。
 神経毒性につきましては、ヒトでこれを示唆する報告があるものの、疾患を持つ患者等の結果である、また、動物試験でいくつか観察されていますが、いずれも高濃度のものであり、神経毒性を詳細に検討した信頼できる試験の報告がないことから、「判断できない」としております。
 続きまして許容濃度等ですが、ACGIHがTLV-TWAとして5ppmを勧告しております。こちらにつきましては上気道及び下気道、並びに消化管の刺激を理由としております。また、産衛学会は2ppmを勧告しております。こちらにつきましては、ラットとマウスにおける10ppmの鼻腔内の影響が呼吸上皮と嗅上皮において局所的で軽度であったところから、LOAELからNOAELと種差のdynamicsを総じて不確実係数を5とし、許容濃度として2ppmを提案するとされております。DFGのMAK、その他NIOSH等の設定につきましては、145行目以降に記載したとおりとなっております。
 以上を踏まえまして評価値ですが、一次評価値につきましては反復投与毒性の評価レベルから0.075ppm(0.138mg/m3)、また二次評価値としましては産衛学会の勧告値を用いまして、2ppm(3.7mg/m3)としております。
 以上でございます。
○大前座長 ありがとうございます。いかがでしょうか。
 一次評価値の0.075ppmもACGIHあるいは産衛学会の許容濃度も影響は同じものをとって、計算の仕方でこれだけ差が出てくるということですが。
○宮川委員 一次評価値の値がずいぶん小さくなっていますが、そもそもこの利用方法としては一次的なスクリーニングということで、通常よりも十分な安全係数をとっても、スクリーニングということであれば問題はないと思いますので、これを採用したらよいと思います。
○大前座長 二次評価値に関してはACGIH、産衛学会で、提案理由が妥当なものであれば低い方をとるという原則でやっております。
○西川委員 先ほどのジフェニルアミンと同様なコメントになりますが、反復投与毒性に関する評価レベルの設定について、LOAELが10ppmということですが、この資料の16ページ、249行目からのマウスの試験も、その次のページの264行目にNOAELが10ppmと記載があり、ACGIHは、ラットもそうですが、マウスについてはほぼNOAELに近いものだと言っています。したがって、同じような所見であってラットだけではなくマウスについても先ほどと同様に併記してはどうかと思います。
○大前座長 併記についてはよろしゅうございますか。LOAELをとるかNOAELをとるか、これだけ軽微だから機関によってNOAELでよいだろうという判断と、やはりあるからLOAELにしようという判断の両方あり得ると思います。産衛学会は、それを両方合わせて5という少し小さめの方をとっているという判断になっています。では、その追記はよろしくお願いいたします。
○江馬委員 3ページ、96行目からの生殖毒性のところですが、99行目に「胎児に何ら形態学的変化は認められず、発生毒性のNOAELは1,000mg/kg体重」とありますが、胎児に体重低下や死亡が多かったというような根拠がないとNOAELの文章に続いていかないと思います。この文章では「NOAELは1,000mg/kg体重であった」というふうになってしまうと思います。そういった根拠があればここに書いておいた方がよいと思います。
○大前座長 形態学的変化以外の根拠があれば、という御意見ですね。
○江馬委員 はい。下の文書も今のところと同じです。原典がわからないので何ともしようがないのですが。
○大前座長 ずっと下の17ページ、272行目以降に生殖毒性のデータが3つ書いてありますが。
○江馬委員 はい、ここの274ページから276ページの文章がそのまま3ページにも書いてあります。
○大前座長 そうです。テストガイドラインに則ってやって何もなかったということ、これをとっているわけですね。今先生がおっしゃったような詳しい中身は書いていませんので、ここでもどうしようもないのですが。
○江馬委員 もし分かれば書いておいた方がよいと思います。
○大前座長 そうですね。では、もし分かれば、概評的な変化だけではなく、もう少しNOAELの根拠となるような記載をするということにしたいと思います。
 そのほか、いかがでしょうか。
 特にないようでしたら事務局提案の一次評価値0.075ppm、二次評価値2ppmということでよろしゅうございますか。
 どうもありがとうございました。
 それでは最後の物質です。1,1,2,2-テトラクロロエタンにつきまして御説明をよろしくお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは資料1-4と参考資料1-4となります。
 資料の1-4に従って御説明をいたします。
 名称、化学式、構造式等は割愛させていただきまして、物理的化学的性状です。外観は特徴的な臭気のある無色の液体、沸点が146℃、蒸気圧が25℃で647Pa、融点が-42.5℃、比重が1.59(水=1)、溶解性は20℃の水100mLに対して0.29gなどとなっております。
 また、生産・輸入量などですが、現状調べた範囲では、製造・輸入数量は不明です。
 次に、有害性評価の結果でございます。
 発がん性につきましては、ヒトに対する発がん性が疑われるということで、IARCで2Bなどとされています。
 閾値の有無につきましては、遺伝毒性の判断を根拠としまして「判断できない」としております。以下の「閾値ありの場合」とある記載は参考ということで、仮に「閾値あり」ということであれば、考えられるLOAEL、それに基づく評価レベルを参考として記載するものです。次のページに「閾値なしの場合」とありますが、こちらも参考となりまして、閾値なしの場合、発がんの過剰発生リスク10-4に相当する濃度ということで計算しているものです。いずれも参考ということになります。
 次に、発がん性以外の有害性でございます。
 急性毒性については、ラットの吸入毒性、経口毒性、マウスの吸入毒性、ウサギの経皮毒性について、それぞれ半数致死量等が示されております。
 次に、皮膚刺激性/腐食性ですが、こちらにつきましてはウサギやヒトに対する試験の結果等から「刺激性:あり」となっております。
 また、眼に対する重篤な損傷性/刺激性ですが、ウサギ、モルモットを用いた試験の結果から刺激性などが認められています。
 皮膚感作性、呼吸器感作性につきましては、いずれも調査をした範囲では報告は得られておりません。
 次に、反復投与毒性です。ラットを用いた14週の混餌投与試験から、U.S.EPAは雌雄の肝臓相対重量増加に基づきNOAELを20mg/kg/日、LOAELを40mg/kg/日としています。またNTPは生存と体重の変化及び病変発生率の増加に基づきNOAELを20mg/kg日としており、環境省はLOAELを20mg/kg/日としております。これらからLOAELにつきましては20mg/kg/日を用い、ここから種差等を考慮して評価レベルを求めますと0.2ppm(1.68mg/m3)となります(5ページ、165行目)。
 生殖毒性ですが、ヒトへの報告はなく、動物については親に強い毒性影響がみられる場合に限定された報告はあるものの、データが限定的であり「判断できない」としております。
 遺伝毒性ですが、ヒトに対する報告はありません。また、動物試験ですが、in vitroでは、陽性の報告はあるけれども多くは陰性であり、チャイニーズハムスターでは、卵巣(CHO)細胞及びマウス線維芽細胞に姉妹染色分体交換を誘発したけれども、染色体異常を誘発しなかった。また、in vivoでは、雄のマウス及びラットに腹腔内投与で肝臓等にDNAの結合が認められたが、雌雄マウスの肝細胞に経口投与で不定期DNA合成はみられなかった。吸入ばく露で雄ラットの骨髄細胞に染色体異常を誘発しなかったが、雌ラットでは誘発し、雌雄マウスの末梢血赤血球に経口投与で小核を誘発した。ラットを用いた優性致死試験では吸入ばく露で陰性、ショウジョウバエの伴性劣性致死試験では吸入ばく露、経口投与ともに陰性であった。これらのことから、結論としては「判断できない」としております。
 神経毒性につきましては、インドにおける1959年から60年に実施された労働者を対象とした調査などで振戦等の影響がみられたということで、そこでの濃度からLOAELを9.1ppmとされています。6ページ、214行目の計算式から、評価レベルを0.9ppm(6.2mg/m3)としております。
 続きまして許容濃度等ですが、こちらはACGIHが1ppmを勧告しております。これは産業上の事例及び毒性試験で、影響が10ppm辺りで起きるというところからの勧告となっております。産衛学会につきましても1ppmを勧告しております。こちらにつきましては、動物試験の結果あるいはヒトに対する調査の結果等からの勧告となっております。こちらは改訂を提案されたということです。また、DFGのMAKで1ppmが勧告されているほか、NIOSH、OSHA等につきましても8ページ、279行目以下のような値が勧告されております。
 評価値ですが、一次評価値につきましては、発がん性を示す可能性があるが、遺伝毒性が判断できず閾値の判断ができないため「なし」、二次評価値につきましては、産衛学会及びACGIHが勧告する値ということで1ppmとしております。
 資料としての説明は以上となりますが、若干補足ということで説明させていただきます。
 こちらにつきましては、特別有機溶剤という位置付けになっております。特別有機溶剤は何かと申しますと、もともとは有機溶剤中毒予防規則の中で規制されていた物質ですが、発がん性が「ある」あるいは「疑われる」といったIARCで2B相当以上というものにつきましては、発がんに考慮しなければならないということで、現在、特定化学物質障害予防規則(以下「特化則」という)に規定をしております。関係資料として、委員のみ机上配布とさせていただいております。
 詳細については長くなりますので概略のみ説明だけさせていただきます。平成25年度に行政検討会において検討しており、その報告書がございます。1つは、番号を振っておりませんので見づらいと思いますが、「平成25年度化学物質のリスク評価検討会(第2回)・別冊08『発がん性のおそれのある有機溶剤の今後の対応』」で、これが平成25年度のリスク評価検討会の報告書になります。こちらを開いていただきますと10物質ほど記載がありまして、こちらの物質について検討を行いました。
 結論部分だけ紹介させていただきます。報告書の最後から5ページ目になりますが、「以上のように、発がんのおそれのある有機溶剤については、沸点が低いために高濃度のばく露のおそれのあるものが含まれるほか、作業環境測定においては、測定の評価結果が第2管理区分又は第3管理区分に区分される作業場が認められ、また、有機溶剤等健康診断においては、生物学的モニタリングに関する検査で区分2又は分布3に区分される結果が認められるなど、職業がん予防の観点からは、発がんのおそれのある有機溶剤の労働者へのばく露が懸念される」とされております。
 先ほどのフォルダ内の資料一覧を見ていただきたいと思いますが、ここにもう1つ「平成25年度化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会・報告書(第2回)」というのがございます。項目5に「健康障害防止措置の検討結果」とあり、その中で(1)(2)(3)とありまして、(3)が「発がんのおそれのある有機溶剤」、つまり特別有機溶剤に関する記載となります。ここで、「発がんのおそれのある有機溶剤については、発がん性という有害性を勘案した規制を行うことが必要である。特化則の特別管理物質と同様の以下の措置を講じることが必要である」とあり、作業記録の作成、記録の30年間の保存等について必要だと結論をいただいたところです。
 こちらを踏まえ、特別有機溶剤として特化則に規制したものですが、局所排気装置等の設置などの基本的措置については、基本的に有機溶剤中毒予防規則を準用しております。今申し上げましたような検診記録の30年保存などにつきましては、発がん性に着目するものということで、特化則の規定を用いているということになるわけです。ただ、特化則に追加した際に、特化則固有の規制については適用の判断を見送っているものがいくつかあり、こういうものにつきましては詳細なばく露調査を行い、リスク評価を行った上でその適用について検討するということにされております。今回は、1,1,2,2-テトラクロロエタンの1物質ですが、他の9物質を含め特別有機溶剤10物質につきましても、今回改めてリスク評価を行うということにさせていただいたという状況です。
 長くなりましたが、経緯につきまして補足させていただきました。
 以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。いかがでしょうか。
 反復投与のところ、5ページ、157行目からですが、U.S.EPAとNTPはNOAELを20mg/kg/日、しかし環境省はLOAELを20mg/kg/日ということで、環境省だけがLOAELにしています。これは後ろの方の表を見ると20mg/kg/日で若干肝臓の細胞に変化が出ているというところがあり、おそらくそれをとっているのだと思います。我々はいかがいたしましょうか。LOAELとして20mg/kg/日で計算していますが、これをNOAEL=20mg/kg/日として計算するのか、あるいはLOAEL=20mg/kg/日として計算するのかというところです。
 後ろの有害性評価書(別添2)23ページ、256行目あたりにその記述があります。ここの238行からの実験、F344ラットの実験が20、40、80……320 mg/kg/日とありますが、249行目のところに「20mg/kg以上の群の雄および40mg/kg以上の群の雌で肝細胞の空胞化、……」という記述がありますので、おそらく環境省は、ここの20mg/kgをとってLOAELとしたのだと思いますが、NTPとU.S.EPAは、これは軽度な変化ということで、NOAELとしてよいのではないかという判断をしたのだと思います。本検討会ではいかがいたしましょうか。環境省のLOAELでいくのか、あるいはNTP、U.S.EPAはNOAELといっていますのでそちらをとるべきなのかということですが、いかがでしょうか。
○西川委員 私としては、肝細胞の空胞化も病理組織所見ですから、これを重視して、LOAEL=20mg/kg/日として算出する方法でよいかと思います。ただ、U.S.EPAやNTPがNOAELを20mg/kg/日としているのは、肝臓の相対重量の増加があまり大きな意味がないということですので、肝細胞の空胞化については言及していないところから、私としては環境省の考え方に同意したいと思います。
○大前座長 たぶんNTPは自分のところの実験結果を見て言っていると思いますが、環境省はNTPの報告書を見て言っているという、そういうパターンで、二次的な判断をしているということだと思います。今回のこの原案はLOAELから出発していますから、LOAELとしてみるのであれば変える必要はまったくないということになります。このレベルをどうみるのかはクリティカルな専門家の判断ということになろうかと思います。
 では、現段階では本委員会はLOAELを20mg/kg/日で計算し、この原案どおりでいくということでよろしゅうございますか。
 そうしましたら、そういうことにいたします。今のLOAEL、NOAEL以外について何か御意見はございますか。
○津田委員 細かいことですが、2ページ、41行目は2Bが「疑われる」という日本語になっています。33行目も「疑われる」ですが、本来は「発がんの可能性がある」と発がん性を示すのが正しいと思います。原文は「possibly」とあって「疑われる」という言葉は使っていません。時々間違いがありますが、直した方がよいと思います。例えば、それが8ページ、286行目へ行くと「可能性がある」となっていて表現の不一致があります。「疑われる」は2Bでは使わない方がよいと思います。
○宮川委員 毎回、その点について疑問に思うのですが、IARCの結果を訳すときには先生がおっしゃられたとおりに正確に訳してもらいたいと思っています。この会議としての発がんの判断はGHSの記述に基づいた表現ということになっています。IARCでいうと1と2A、それからGHSの区分1A、1Bと区分2が少し混乱していることがありますので、これは規則書に書いてあると思いますが、見た人がIARCの訳だと誤解しないようにわかるような言葉をよろしくお願いしたいと思います。
○川名化学物質評価室長 今のところは津田先生の御指摘のとおり、IARCのところの記述は修正させていただきます。発がん性の全体の評価につきましては、我々のルールに従ったGHS区分の表記にさせていただきます。
○大前座長 カッコの中の記述が少し違うということなので、そこは2箇所修正してください。
○津田委員 そうすると2Aであった場合にはどういうふうになってくるのでしょうか。
○宮川委員 2AだとGHS区分1B、動物実験では確かな証拠がある場合ですから「おそれがある」ということになったと思います。ですから、「疑い」という表記はGHS区分2の場合ですから、IARCでは2B相当ということになります。
○津田委員 2Aの場合は「おそらく」という言葉を使うということでしょうか。
○宮川委員 「おそらく」という言葉です。
○大前座長 場合によってはカッコの中は原文を入れましょうか。英語でそのまま入れてしまうという手もありますし、そうすれば間違えないと思います。その方がよいかもしれません。我々の判断のところ、IRCの判断のところについては、カッコの中は原文を入れる、probably、possibleでしょうか、これがわかるように入れるという方法もあると思います。
○宮川委員 もっと正確にやるのであれば、GHSに合わせた方もsuspectedであるという表記方法もありますが、そこまでやると少しくどくなるかもしれません。
○川名化学物質評価室長 一度やってみて、どこまでやるかはその後に全体を見ながら考えさせていただきたいと思います。
○西川委員 リスク評価書案の3ページ、73行目から85行目の「閾値なしの場合」のところと、その下の87行目から92行目ですが、実は下の方は上の文章をコンパクトにしてあるだけのような気がします。どうもこれは重複ではないかと思っています。
○大前座長 そうですね、重複ですから下は要らないですね。
○西川委員 それから、その評価書案の7ページ、249行目に「黄痘」という言葉があって、私の知らない専門用語かと思い調べたのですが、そのような用語はありませんでした。それ以降の資料を見ても全部この「黄痘」と書いてありますが、これは「黄疸」の間違いではないかと思います。もし間違いであれば訂正をお願いいたします。
○大前座長 可能性は大きいですね。1,1,2,2-テトラクロロエタンは肝障害がすごく強い物質で、肝臓にくるというのは非常に有名ですから黄疸の可能性は大きいと思います。これはどうやったら確認できますでしょうか。
○西川委員 元の資料も「黄痘」になっています。
○大前座長 そうですか。そうすると、本当に「黄疸」という英語になっているかどうかはオリジナルに戻らないとわからないわけですね。しかし、たしかに「黄痘」という言葉は聞かないです。やはりこれは「黄疸」でよいと思います。では、これは「黄疸」と訂正していただけますでしょうか。たぶんそれで間違いないと思います。
○江馬委員 5ページ、生殖毒性の167行目からですが、ここのNOAELは、この試験のNOAELという意味ではなく生殖毒性に対するNOAELの記載でよいのですか。
○大前座長 そうです。
○江馬委員 168行目のところに「親に強い毒性影響がみられる場合に限定された2次的な生殖毒性の報告はあるが」とありますが、親にみられた毒性は体重低下だけで、それほど強い影響ではないので、「親に毒性影響がみられる場合に発生毒性の報告はある」という程度の文言でよいと思います。
○大前座長 今の親の体重低下の話というのは174行目の根拠の欄の話でしょうか。
○江馬委員 そうです。
○宮川委員 私も賛成で、この168行からの記述ですが、もしかしたらこの下の参考のところで引用していない論文で、非常に高い濃度の実験で母胎の死亡がみられているものがあるかもしれませんが、そのようなところについては触れる必要がないと思いますので、ここではこの参考で取り上げられた結果に関することを簡潔に書いていただくのがよろしいかと思います。そうすると、江馬先生のおっしゃったとおりでよろしいかと思います。
 特に、「2次的な生殖毒性の」という、2次的なメカニズムでもって母胎への影響が胎児の方に出ているということが正確にメカニズムとして検証されていない、実証されていないものについて、安易に母胎毒性が強いから2次的というのはなるべく控えた方がよいと思います。ここで書いてしまうと、この委員会が「2次的だ」と言っていると思われるのは困ると思いますから、江馬先生のおっしゃるとおりに書き換えていただくのがよろしいと思います。
 ちなみにこの参考で書いたものだけ見ると、母胎でのNOAELはこれ、胎児の方のNOAELはこれとさっと書くというのが最近のやり方かもしれませんが、今回の結果からでは生殖毒性は判断できませんと、その判断でよいでしょうか。江馬先生の御意見をお聞きしたいと思います。
○江馬委員 よろしいと思います。
○大前座長 これを作ったのは随分昔なので、生殖毒性に関する考え方や母胎毒性に関する考え方が、おそらくより強かったときの文章ではないかと思います。そうしますと、実際は、生殖毒性は「判断できない」で、根拠としてヒトの報告はないと、その後は動物実験においても生殖毒性に関するデータが限定的であると、そのような感じでしょうか。
○江馬委員 はい。
○大前座長 では、そういうふうに直していただいて、「親に強い毒性がみられる場合に限定された2次的生殖毒性の報告があるが」は削除することにします。
○高田委員 先ほどの黄痘の件ですが、ACGIHの評価書を見ますと、63番というところに「黄疸が検出されなかった」という表現があります。
○大前座長 ありがとうございます。では、「黄疸」で間違いないので訂正してください。
○西川委員 細かいところですが、評価書案の続きの資料24ページ、280行目からマウスの試験があるのですが、これは混餌投与の試験です。しかしppmしか書いていないので、他の試験と同様にmg/kg/日の値がもし出せるのであれば比較がしやすいのではないかと思います。
○大前座長 これはNTPの実験ですからあると思います。では、以前の評価書で修正できるところがあれば、今のppmにmg/kg/日を追加できれば追加していただきたいと思います。
 そうしましたら、一次評価値、二次評価値につきましては事務局の御提案どおり一次評価値は「なし」、二次評価値は産衛学会あるいはACGIHが勧告しております1ppmということでよろしゅうございますか。
 どうもありがとうございました。
 それではきょうの4物質に関する審議は終了でございます。
 その他ございましたら、事務局の方からよろしくお願いいたします
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは資料2の「今後の予定」を御覧いただきたいと思います。
 こちらの日程につきましては、委員の方にも確認をし、調整をさせていただいた日程となります。第4回につきましては11月15日午後3時から、第5回が12月10日午後3時から、第6回が12月17日午後3時からということで予定を入れさせていただいております。
 なお、有害性評価書の作成状況なども踏まえまして、日程につきましては開催できるところ、できないところが出てくる可能性もございますので、必要があれば日程はあらためて調整させていただきたいと思いますが、現状としてはこちらに記載した日程でございます。
 以上です。
○大前座長 今のところは15日、12月10日、17日を予定しておいてください。場合によっては変更ということですが、変更といっても追加の変更ではなく、なくなるという方の変更だと思いますが、そうなるかもしれないということで、それに関しては後日また連絡がいくだろうということです。
 そのほか事務局、あるいは先生方から何かございますか。
 ないようでしたら、本日の小検討会を終了いたします。どうもありがとうございました。