平成30年度第2回化学物質のリスク評価検討会(有害性評価小検討会)議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

平成30年9月10日(月)10:00~11:00

場所

厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎17階)

議題

  1. 平成29年度ばく露実態調査対象物質(初期評価)の評価値について
    1. ビフェニル
    2. 1,2-酸化ブチレン
    3. レソルシノール
    4. オクタン(ノルマル-オクタンに限る。)
  2. その他

議事

 
○増岡化学物質評価室長補佐 定刻となりましたので、ただ今より第2回有害性評価小検討会を始めたいと思います。委員の先生方におかれましては、本日は大変お忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。
 まず、委員の出席状況についてですが、本日、高田委員、吉成委員から所用により欠席との御連絡をいただいております。
 早速でございますが、座長の大前先生に以下の議事進行をお願いいたします。
〇大前座長 おはようございます。今日はよろしくお願いいたします。今日の目的は、一次評価値、二次評価値を最終的に決定することでございますので、御協力よろしくお願いいたします。
 それでは最初に事務局から資料の確認をお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは配布資料について確認いたします。
 資料1は、「平成29年度ばく露実態調査対象物質(初期評価)の評価値について」ですが、本日は4物質御審議いただくということもあり、それぞれ枝番を付けております。資料1-1が「ビフェニル」、資料1-2が「1,2-酸化ブチレン」、資料1-3が「レソルシノール」、資料1-4が「オクタン(ノルマル-オクタンに限る。)」となっております。
 次に資料2は、「今後の予定について」です。また、参考資料1は、4物質それぞれの有害性評価書として、参考資料1-1として「ビフェニル」、参考資料1-2として「1,2-酸化ブチレン」、参考資料1-3として「レソルシノール」、参考資料1-4として「オクタン(ノルマル-オクタンに限る。)」を添付しております。また、参考資料2として許容濃度等の関連資料で提案理由書等を付けております。またこの他、委員の皆様には机上配布資料として化学物質のリスク評価検討会というファイルの資料を置かせていただいております。不足等ございましたら事務局までお申し付けいただきたいと思います。
〇川名化学物質評価室長 本日の議事終了後、委員の皆様に情報提供をさせていただくとともに、御意見を伺いたい件がございます。恐縮でございますが、議事終了後しばらくお待ちいただくようお願い申し上げます。
〇大前座長 閉会後に情報提供があるということですので先生方はお残りください。
 特に資料の過不足はございませんか。
 それでは本日の議題に入ります。本日は4物質でございますが、最初にビフェニルにつきまして事務局から説明をお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 
 それでは資料1-1「ビフェニル」を御覧ください。化学式、物理化学的性状、生産量等用途につきましては説明を割愛させていただきます。また、重視すべき有害性につきましては、本日は評価値案の検討ということになっておりますので、こちらで用いましたものを中心に御説明させていただきます。
 1の発がん性ですが、発がん性につきましてはヒトに対しておそらく発がん性があるということです。根拠としましては「経口投与によりF344ラットの雄に膀胱の移行上皮がん、移行上皮乳頭腫、扁平上皮がん及び扁平皮乳頭腫が認められたことから、雄ラットに膀胱がんを誘発すると考えられた。また、BDFlマウスでは、雌に肝臓の肝細胞がんと肝細胞腺腫の発生率が有意に増加したことから、雌マウスに肝細胞がんを誘発すると考えられた」ということを根拠にしております。
 閾値につきましては判断できないということでございまして、「遺伝毒性」の判断を根拠としています。遺伝毒性につきましてはさらに右側の欄の、「重視すべき有害性 2発がん性以外」というところです。「生殖毒性:判断できない」、「神経毒性:あり」、とある下に、「遺伝毒性:判断できない」とあり、こちらにつきましては、「ヒトにおいてビフェニルの遺伝毒性に関する報告はない。In vivo試験で、ラットの骨髄細胞を用いる染色体異常試験及びマウスの骨髄を用いる小核試験で陰性の結果が得られ、マウスの胃、大腸、肝臓、腎臓、膀胱、肺、脳及び骨髄によるDNA鎖切断試験で陽性の結果がみられた。また、アメリカのEPAはビフェニルばく露により観察された遺伝毒性は酸化的損傷及び細胞毒性による二次的なものと考えられるとしている」とされており、有害性評価書の取りまとめにおいては判断できないと結論しております。
 また、左下に行きまして反復投与毒性に関する毒物試験につきましては、ウサギ、ラット、マウスへの吸入試験等におきまして、LOAELは5mg/m3で、評価値レベルは0.01ppmとしています。また、許容濃度等でございますが、ACGIHがTLV-TWAとして0.2ppmを勧告しております。この勧告の値としましては、「ビフェニル粉塵に吸入ばく露されたラットやマウスの鼻粘膜の刺激及び呼吸困難が起きる可能性を最小限にする濃度」ということで勧告されております。なお、日本産業衛生学会(以下、「産衛学会」という)においては、許容濃度等は勧告されておりません。また、DFGにおいても設定はありません。NIOSH、OSHAにおいてはそれぞれTWAとして0.2ppmが勧告されております。
 以上を踏まえまして、右下、評価値(案)でございますが、こちらは机上配布したファイル資料の資料4「リスク評価の手法」、こちらは評価値の考え方についても含んだものでございますが、この資料4を合わせて御覧いただきたいと思います。
 3ページ目の中程から下に「リスクの判定方法等」ということで「1 一次評価」とありまして、一次評価につきましては「発がん性を考慮して評価を行うことが必要な物質の場合」、また4ページ目を御覧いただきますと、イの中程ですが、「発がん性以外の有害性を中心として評価を行う物質の場合」と、それぞれ場合分けをしております。ビフェニルにつきましては、ヒトに対しておそらく発がん性があるということで、「発がん性を考慮して評価を行うことが必要な物質の場合」に該当するかと思いますが、先程御説明しましたように閾値についての有無が「判断できない」となっております。またこの「発がん性を考慮して」という場合ですが、3ページ目(4)1ア(ア)発がん性の閾値がないとみなされる場合、4ページ目の(イ)発がん性の閾値があるとみなされる場合、少し下の(ウ)発がん性の閾値の有無が不明な場合と、それぞれ場合分けされております。本件につきましては、発がん性の有無については閾値の有無が判断できないとされておりますので、(ウ)発がん性の閾値の有無が不明な場合ということになろうかと思われます。
 以上から、一次評価値については「なし」ということで記載しております。
 次に二次評価値でございますが、リスク評価の手法からいきますと、5ページ目の中程から二次評価値の考え方について記載がございます。こちらで2 ア(ア)で「日本産業衛生学会の許容濃度、また米国のACGIHがばく露限界値を設定している場合については、これらのいずれからか採用する」ということが1番目の設定の仕方ということになっており、本件につきましてはACGIHが0.2ppmという値を勧告しておりますので、それを採用して0.2ppmを二次評価値ということにしております。
 説明は以上でございます。
〇大前座長 ありがとうございました。
 ヒトに対する発がん性のデータは、バイオアッセイの研究によってこのような発がんがあったというような結果になっております。それからEPAが2013年にそれを採用しているということです。それからACGIHのTLV-TWAは1968年と非常に古いですが、NIOSHが2015年に出したREL値と数字が同じですから0.2ppmという数字は概ね良い値だろうと思っておりますが、先生方の御意見はいかがでしょうか。
○西川委員 反復投与毒性のところですが、ウサギ、ラット、マウスで試験をして、結果としてコントロールがないなどの理由でEPAはこれを採用していない。EPAのドキュメントを見てみますと、この試験自体が1940年代と大変古いものです。これはむしろここに記載しない方がよいのではないかと思います。それに代わる試験としては、バイオアッセイで行った2年間の試験の非腫瘍性の変化について書くのも1つの方法ではないかと思います。
 また、細かいところですが発がん性の2行目のところ、「扁平皮乳頭腫」、「上皮」の「上」が抜けていますので追記をお願いします。
 以上です。
〇大前座長 ありがとうございました。反復毒性は1940年の古いデータなのであまり信用性がなく削除したらどうかと、それに代えてバイオアッセイの発がん以外の情報が当然あるはずで、これを加えたらどうかという御意見でした。
 ちなみにバイオアッセイの実験を加えると反復毒性の情報がリスク評価書の16ページの407行目からありますが、これにバイオアッセイのデータは入っていないのですか。
○増岡化学物質評価室長補佐 16ページの記載はヒトへの影響ということでございまして、その前に動物試験に関しましては7ページの下からバイオアッセイで試験が行われております。
〇大前座長 7、8ページですね。
○西川委員 参考資料1-1の262行にNOAELが42.7(mg/kg体重/日)という数字が出ています。
〇大前座長 書くのであればこれから計算した値を書いた方がよいということですね。そうするとこのppmは混餌投与ですよね。そうするとこのppmは餌の中の濃度になりますね。そうするとこれは吸入に換算しなくてはいけないということですので、ただちには数字が出てきませんが、いずれにしてもこちらから空気中に換算した値を出すべきだということで、よろしくお願いいたします。その数字がどうなるか今計算できないのでわかりませんが。
〇川名化学物質評価室長 御指摘を踏まえまして内容も修正させていただき、先生方に御確認いただくということにしたいと思います。
〇大前座長 よろしくお願いいたします。
 それから、二次評価値は先程言いました、ACGIHが0.2ppmでこれはNIOSHのRELが2015年で同じ値0.2ppmを出していますので、これを採用したらどうかということでございますが、これはいかがでしょうか。
 よろしゅうございますか。そうしましたら一次評価値はなし、先程の反復投与毒性によって非常に低い数字が出てくれば、そのときにまた考える必要があると思いますが、二次評価値は0.2ppmということにしたいと思います。
○清水委員 評価値ではなく遺伝毒性のところですが、遺伝毒性については判断できないということになっております。資料1-1には「遺伝毒性は酸化的損傷によるあるいは細胞毒性による二次的なものであると考えられる」と記載されております。一方、参考資料1-1の10ページに遺伝毒性の文章がございますが、ここにはそういった記載は無く、ただ陽性とのみ記載があります。この二次的要因についての記載は、最終的な有害性の総合評価表の方で初めて言及されております。25ページの遺伝毒性の最後の2、3行のところです。例えばリフラクトリーセラミックファイバーなどもそうでしたが、今までの私の経験では、二次的なものによる場合は一応遺伝毒性ありと判断してきたと思います。この場合も遺伝毒性は「判断できない」ではなく、「あり」と判断してよろしいのではないかと思います。ただしそれはあくまでも二次的なものであると考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
〇大前座長 ありがとうございます。参考資料1-1の10ページからずっと遺伝毒性の試験の結果が載っておりますがマイナスがたくさんあってプラスがときどきあるという結果になっています。この結果を御覧になって、やはり「遺伝毒性あり」と書いた方がよいという御意見でしょうか。
○清水委員 「判断できない」としたのはそういうことだったと思うのですが、たしかリフラクトリーセラミックファイバーの場合にもほとんど出ず、やはり今回のような二次的な酸化的損傷が出たということで「遺伝毒性あり」と判断したと思います。
〇大前座長 そうしますと、この実験結果を総合的に見ると判断できないということでよいけれども、二次的な毒性のところで引っ掛かるということですね。
○清水委員 はい。
〇大前座長 わかりました。そうしましたら、「遺伝毒性は判断できない」に関しては、実際のデータを見ますと非常にマイナスが多くプラスは少しですのでよいだろうと、ただし、それが二次的な要因によるものなのかどうかに関しては、評価表には記載がありますが評価書の方には記載がないということですので、ここは資料1-1から削った方がよいということでよろしいですか。
○清水委員 ちゃんと調べないといけないのではないかと思います。
〇大前座長 EPAの意見で二次的なものと考えられるとしているわけですね。それが評価表の方に反映しているということでございますが。
○清水委員 記載はそこにしかなく本文の方には一切記載されていませんので、その辺をもう一度確認した方がよいのではないかと思います。
〇大前座長 ではEPAの情報をもう1回確認してください。
〇川名化学物質評価室長 有害性評価書の10ページ、EPAの評価をしている部分の内容を確認させていただきまして、そこでEPAが二次的なものと明確に言っているのであれば、10ページのところにEPAがそういうふうに判断していますという記載を加えるということでよろしいでしょうか。
〇大前座長 それで結構です。
その他に御意見ございますか。
〇宮川委員 座長がおっしゃった、反復投与の毒性で、低い値が出た場合の評価値の計算について話がありましたけれども、発がん性の疑いがある場合にはそちらにはいかずに閾値は…。
〇大前座長 発がん性の場合はリスクがないと、もともと一次評価値なしということにしていたと思うので。
〇宮川委員 そうすると、どちらにしても一次評価値は計算できないということでよろしいわけですね。
〇大前座長 はい。
〇宮川委員 机上配布の資料の書き方では、その辺が明確でなかったので、どうだったのかなと気になっておりましたので。
〇大前座長 わかりました。
○津田委員 参考資料1-1、25ページ「キ 発がん性」のところで、膀胱がんもできるけれども結石もできるということですね。これは人間に起こり得るということでしょうか。ここにあるデータは、少なくとも動物のデータしかなく、このデータから判断すると発がん性と結石との関連性が認められるわけです。例えばサッカリンが典型的な例です。途中でIARCがgroup3にグレードダウンしたことがありました。そういうこと等は大丈夫でしょうか。
〇大前座長 IARCがこれを評価しているか否かわかりませんが、その辺りどうでしょうか。
○津田委員 調べましたがこの物質は評価してありません。しかし、バイオアッセイさんのきちんとしたデータがあるので、IARCで評価してもらうように提案することはだれでもできます。5年毎ですが、次の評価会議は春4月にあるはずなので、1度厚生労働省さんから聞いてみて、その候補物質として入れてほしいという要望を出されるとよいと思います。要望を出せば、それから5年の間にIARCのPreambleに沿った判断がなされるということになります。
〇大前座長 ありがとうございました。ではそのようによろしくお願いいたします。
 それでは次の物質、1,2-酸化ブチレンの御説明をよろしくお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは資料1-2「1,2-酸化ブチレン」を御覧ください。化学室、物理化学的性状、生産量等につきましては割愛させていただきます。重視すべき有害性、まず発がん性でございますが、ヒトに対する発がん性が疑われるということで、「IARCはヒトではデータはないが、実験動物で発がん性の限定的な証拠があるとし、ヒトに対する発がんの可能性があるとしている。DFGは動物実験の結果及び遺伝毒性の結果からヒトに発がんが予想されるとしている」としております。なお、閾値の有無につきましては「なし」ということで、こちらも遺伝毒性の判断を根拠としております。左下の方に遺伝毒性につきまして記載がございます。遺伝毒性につきましては「あり」ということで、in vitro試験の結果としましては、「細菌を用いた試験ではネズミチフス菌、大腸菌に遺伝子突然変異及びDNA傷害を誘発し、動物細胞を用いた試験では、マウスリンパ腫細胞に遺伝子突然変異を、チャイニーズハムスター卵巣細胞に染色体異常及び姉妹染色分体交換を誘発した」とございます。また、in vivo試験結果でございますが、「経口投与又は注射した場合に、ショウジョウバエに伴性劣性致死、染色体の相互転座を誘発した。」また、ラットの優性致死突然変異につきましては陰性の結果が出ておりますが、こちらにつきましては、NTPは1,2-酸化ブチレンの精巣内濃度が低かったためであると考察されております。
 以上を踏まえまして、IARCは発がん性分類の総合評価において、1,2-酸化ブチレンがアルキル化剤として直接作用することを考慮に入れており、NTPは1,2-酸化ブチレンを明らかな変異原性物質とし、DFGは1,2-酸化ブチレンが遺伝毒性を有すると、それぞれしております。
 その他の有害性でございますが、右上の方、生殖毒性につきましては「判断できない」、神経毒性については「あり」とされております。また、左下で反復投与毒性に関する動物試験データにつきましはて、LOAELが50ppmと判断されておりまして、これから求められる評価レベルは、0.38ppmとなります。
 次に許容濃度等でございます。ACGIH、産衛学会ともに設定されておりません。その他、DFG、NIOSH、OSHA、UKにつきましても設定なしということでございますが、AIHAが2003年に発がんのリスクを最小化するなどといった理由によりまして、2ppmを勧告しております。
 以上を踏まえまして評価値(案)でございますが、一次評価値につきましては「なし」としております。こちらにつきましても、机上配布資料4を合わせて御覧いただきたいと思います。4ページ目に(4) 1ア(ア)に「発がん性の閾値がないとみなされる場合」とございまして、本件につきましては閾値がないと判断される場合ですのでこちらに該当することになります。しかしながら、ユニットリスク等についての情報がないということです。資料4ページをめくっていただきますと、いちばん上に閾値がない場合でさらに「がんの過剰発生率が算定できない場合」につきましては「二次評価値に移行する」とあります。すなわち一次評価値については「なし」ということになるわけでございます。本件はこちらに該当するということで、一次評価値につきましては「なし」としております。
 次に、二次評価値でございます。「リスク評価の手法」の5ページに「二次評価値の決定」とあります。まず(ア)として、「許容濃度またはTLVが設定されている場合」とありますが、本件については、設定されていません。次に(イ)のaのところで「米国のREL等その他国際外国機関において職場環境に関する濃度基準が定められている場合は最新の知見を考慮していずれかの値を用いる」とございます。本件を調べた範囲におきましては、AIHAが2ppmを勧告しておりますので、こちらを採用して二次評価値を2ppmとしております。
 以上でございます。
〇大前座長 ありがとうございました。発がんに関しましてはIARCが2B、閾値の有無につきましては閾値がなしということで、一次評価値を決めることができればよいのですが残念ながらその情報はないということで、一次評価値はありません。二次評価値はAIHAが2003年に2ppmという値を出しておりますが、その後の期間にデータがないのでこれを使うことの是非ということでございますが、御意見いかがでしょうか。AIHAを使うのは今回初めてかもしれません。前もありましたか、あまり記憶にないですね。
○増岡化学物質評価室長補佐 ACGIH以外を使った例も過去にはあったと思いますが、AIHAであったかどうかは定かではありません。
○西川委員 発がん性のところですが、「実験動物で発がん性の限定的な証拠がある」ということですが、これはもう少し具体的に書いた方がよいと思います。試験自体はNTPでやった試験でマウスの鼻と肺に腫瘍が出ておりますので、そのあたりを記載した方がよいのではないかと思います。
〇大前座長 ありがとうございます。もう少し発がん性の文章の中味を充実したらどうかということでございますが。
○増岡化学物質評価室長補佐 そのようにいたします。
〇大前座長 その他いかがでしょうか。
○津田委員 この文言ですが、限定的な証拠がある場合は2Bにならないのですけど。
○西川委員 でもIARCは2Bにしている。
○津田委員 ですから「限定的」という言葉自体がおかしいのではないですか。ここでいうとサフィシェントエビデンスがないと2Bにはならないです。
〇大前座長 そうですか。
○津田委員 違いましたか。
〇大前座長 2Aがサフィシェントエビデンスではなかったですか。
○津田委員 2Aはヒトに対して何らかのデータがないとならないです。
〇大前座長 2は動物ですよね。1はヒトですが。
〇津田委員 2Aはもちろん動物でサフィシャントエビデンスは間違いない。ヒトに対してのばく露の何らかのデータがある場合は2Aになるのですが、2Bはたしか動物のデータでもサフィシェントエビデンスである必要があります。
〇宮川委員 念のため、発がん性のところはIARCの基準をそのままこの会議で用いるというわけではないということになっていたと思いますので、実際にこのデータで判断すると疑われる程度というのは妥当なところかと思います。
○津田委員 「IARCで疑われる」と書いてあるのは間違いだということです。2Bは「可能性がある」です。原文には「possible carcinogen」と書いてあります。
○宮川委員 この中の文章は、「ヒトに対する発がんの可能性がある」とIARCは書いているという文章なので、可能性はよろしいわけですね。
○津田委員 はい。
〇川名化学物質評価室長 この点につきましては有害性評価書にも、IARCに関する記載はありますので、そこはIARCの判断を正確に訳し直しまして記載することとさせていただきたいと思います。ただ、全体の発がん性の用語につきましては、GHSコードの分類にしたがって記載しておりますので、そこのところはIARCの表記の仕方とは違うという点は御理解いただければと思います。いずれにしましても、IARCはどのように評価したのかということにつきましては、IARCの評価の仕方をもう一度確認した上で記載させていただきます。
〇大前座長 評価書が何年に作られたのかわかりませんが、時々ルールが変わって表記の仕方も変わっているので、この有害性評価書自体が古いものですと、今のルールブックと少し違う表記がしてあることはありますね。
〇川名化学物質評価室長 この件につきましては津田先生からいつも御指摘、御指導いただいておりますので、その点は我々の方もしっかり定義を確認しながら表記させていただくということにさせていただきます。
〇大前座長 よろしくお願いいたします。そうしますと一次評価値は残念ながらデータがないということ、二次評価値はAIHAの2ppmを採用するということでよろしゅうございますか。
○西川委員 評価については結構ですが、細かい点ですが1つは左下の反復投与毒性における動物試験データというところで、LOAEL=50ppmと書いてあるところの下から2行目に「扁平上皮化成」とありますが、化成の「成」は「生」という字です。
 もう1つは右下の一次評価値のところで、発がん性を示す可能性があり、「閾値がなく遺伝毒性がある場合」はたくさんあるのですが、これは順番からいくと、「遺伝毒性があり、閾値がない場合」と書くべきではないでしょうか。
〇大前座長 おっしゃるとおりです。順番はそのように変えてください。
 その他なければ次の物質に進みたいと思いますがよろしゅうございますか。
 ありがとうございました。
 それでは、3番目の物質、レソルシノールにつきまして説明をよろしくお願いいたします。
○増岡化学物質評価室長補佐 それでは資料1-3「レソルシノール」を御覧ください。化学的構造式、物理化学的特性、生産量等については割愛させていただきます。
 重視すべき有害性でございますが、まず 1 発がん性でございます。ヒトに対する発がん性は判断できないとしています。こちらは動物試験において発がん性の証拠はみられなかったということと、ヒトへの影響(疫学調査及び事例)について、調査した範囲では報告はなかったというところからそのようにしております。
 それ以外でございますが、生殖毒性については「なし」、また、神経毒性につきましては「あり」、遺伝毒性につきましては「なし」とそれぞれしております。
 左下の反復投与毒性に関する動物試験データですが、こちらにつきましてはF344ラットを対象とした104週の経口投与試験において、これからNOAELを50mg/kg体重/日ということで判断しております。こちらから不確実係数として種差10を考慮しまして、評価レベルとしては6.7ppmとしました。
 また、許容濃度等でございますが、こちらにつきましては、ACGIHが勧告をしております。こちらの勧告理由ですが、産業における経験及びフェノール又はカテコールのTLVからの類推に基づき10ppmということで勧告しております。
 以上を踏まえた評価値ですが、一次評価値につきましては「なし」としております。机上配布資料の「4.リスク評価の手法」の4ページから御覧いただきたいと思いますが、中程から下、「発がん性以外の有害性を中心として評価を行う物質の場合」とあります。今回は評価値が出ておりますのが反復投与毒性に関するものとなります。5ページに「(ウ) (ア)(イ)以外の毒性の場合」とありますが、(ア)の生殖発生毒性、(イ)の神経毒性のいずれでもない毒性につきましてはこの(ウ)に該当することになります。よって、反復投与毒性について得られたNOAEL等から評価値を算定しますが、こちらにつきましては、先程御説明申し上げたように、6.7ppmという値になります。一方、二次評価値の10分の1以上の場合については、一次評価値は設定がないということになっております。
 その二次評価値でございますが、ACGIHが勧告しておりますので、二次評価値については、この値である10ppmを採用ということになります。そしてこの10ppmの10分1、1ppmを超えるということになりますので、一次評価値については設定がないということになります。
 以上でございます。
〇大前座長 ありがとうございました。
 このACGIHは1976年と決して新しくはございませんが、この数字しかなく、他の機関の勧告もないということで、二次評価値としては10ppmでどうかということでございますが、いかがでしょうか。
〇江馬委員 反復投与毒性のところですが、雄でNOAELを得られなかったけれどもLOAELが112mg/kg体重/日で、雌でNOAELが50 mg/kg体重/日、そして評価レベルはNOAELから計算しているのですが、雄のLOAELから計算するともっと低い値が出ます。ですからLOAELから計算すべきだと思います。LOAEL 112 mg/kg体重/日でNOAELが50 mg/kg体重/日になるとは限らないと思います。UFがさらに10入ります。
〇大前座長 どちらから出発するかで10がかかってくるということでございますが、いかがでしょうか。
 今までは、NOAELの値が存在すれば、LOAELの値はそれから算出してくることが多かったと思いますが、この物質のようにLOAELとNOAELが10倍違わないというものは、今、江馬先生から言われたような、そういうことも起きるわけです。
 これは多分、今までルールブックの中には記載がないことだと思います。御意見いかがでしょうか。
 どういうふうに考えるかということになりますが、LOAEL、NOAELが10倍違わないことは結構あるかもしれません。ですから、そのときにどう考えるかです。今まではあまりそういうことには気が付かなかったものですから、NOAELから出発してLOAELというやり方でずっとやってきたと思います。
 もしLOAEL(112mg/kg体重/日)から出発したとしたら、6.7ppmは15分の1ぐらいですから、少なくともこの10ppmの10分の1よりは下になるということで、一次評価値ができるかもしれないということですね。
〇西川委員 今の件ですが、参考資料1-3の8ページ、269行目からの試験のことかと思います。まずここでわからないのは、なぜ雄の投与群が、112、225mg/kg体重の2群しかないのかということです。雌と同じように50 mg/kg体重近辺の投与量があれば多分問題はなかったような気がします。
 雌のいちばん低い用量にみられた所見というのは、脳の相対重量や肝臓の相対重量の増加で、275行に書いてありますように、これは体重の減少によるものと考えられると、私もそう思います。したがって、これは追加で10の係数を掛けるような所見ではないと思います。
 ですから、これはNOAELを用いた事務局案の評価でよいのではないかと思いました。以上です。
〇大前座長 ありがとうございます。
 そのルールブック上では、今、特にルールはございませんが、実際のこの実験の中身を見ると、NOAELから出発したこの値でよいのではないかという西川先生の御意見でした。
 そのNOAEL、LOAELをどう扱うかというのは別のところで議論して決めなければまずいと思います。ここではおそらく軽々にはルールブックには載せられないということだと思います。
〇江馬委員 雌のNOAELの根拠というのは、280行目に書いてありますが、運動失調、衰弱等が投与群の雄、及び100、150mg/kg体重群の雌で見られたということで、相対重量の低下だけではないように書いてありますが。
〇西川委員 雌はよくて、雄のLOAELとした所見が体重増加抑制に関連するものであるということなので、あまり重篤なものではないというふうに思いました。
〇江馬委員 280行目から281行目に、「運動失調、衰弱、流涎、振戦が投与群の雄及び100、150 mg/kg体重群の雌で見られた」というふうに書いてあります。ですから、これがLOAELあるいは雌のNOAELの根拠になった所見だというふうに読みました。
〇大前座長 雄の112mg/kg体重群で見られたこれらの所見は、決して軽くないからという御意見ですね。
〇西川委員 これは実際にデータを見てみなければわかりません。程度がかなり軽い可能性もあります。
〇大前座長 この評価書自体は信頼できる二次資料から作っておりますので、NTPやSIDSに書いてあるところからもってきているものです。多分オリジナルは見ていないと思いますので、この物質についてはオリジナルに返って、今、江馬先生がおっしゃったこのレベルがLOAELを取る必要があるぐらい重篤なものなのか、あるいはそうではないのかということをチェックした方がよいでしょうか。
〇宮川委員 一点、これは104週間の試験とは書いてありますが、280行の運動失調、流涎その他の症状は、投与後から間もなく始まって30分から1時間という急性の症状なわけです。そうすると、連続投与でもって重篤な障害が出たというよりは、そのときの急性の影響を反映しているものということですから、そこまで重篤とはみないという考え方もあり得るのかという気はいたします。
〇大前座長 1時間ぐらい続いてその後は収まったということですから、残存するような神経影響ではないだろうというお話です。したがって、NOAELは50mg/kg体重/日ということで今回はよいのではないかということです。
 江馬先生、よろしいでしょうか。
 これは長期影響ではなく急性影響というふうに考えたらどうかということですが。
〇平林委員 確かにそのように書いてはございますが、「各5日間の投与期間の終わりにはより強く表れた」ということがあります。もし、毎日投与を続けたら蓄積する可能性は考慮しなくてもよいのでしょうか。
〇大前座長 これは104週間の実験ですから、ずっと投与はしていると思います。
〇平林委員 各5日間の投与期間の終わりというのは、どういう意味でしょうか。      
〇宮川委員 多分、104週といっても土日は休んで月金の投与ですから、月曜日から金曜日にまでかけて多少効果が蓄積していって、金曜日には強くみられたということですが、それが週単位で悪化しているということは書いてはいなかったと私は理解しました。
〇平林委員 土日に回復する程度の蓄積であると、ただし投与がずっと続くと蓄積する可能性がもしかしたらあるのではないかと思いましたので、そこのところを確認する必要があるのではないかと思います。
 
 
〇大前座長 今の平林先生の意見が理解できなかったのですが、1週間でみると週末の方が急性影響は強く出て、それが毎週毎週104週間ずっと実験されたと、そして104週間のときに最初と比べて強いかどうかに関しては確認する必要があると、そういう御意見でしょうか。
〇平林委員 土日お休みをすれば治る程度であればこれでかまわないというふうに判断するのか、もし土日を休まなければさらに蓄積していくことを確認する必要があるか否かということです。
〇大前座長 労働現場ですので基本的に週5という想定をしています。24時間ばく露でもありませんし365日ばく露は想定していないということです。
〇江馬委員 よくわからないのですが、104週のように長い実験で急性的な影響がみられても、毒性影響ととらないでよいのかということですが、どうでしょうか。
〇大前座長 急性毒性の影響であることは間違いないです。これはエサを食べさせる実験ですが、1時間ぐらいで収まるということだと思います。ですから、急性毒性が存在することは間違いないと思います。
 いかがいたしましょうか。この委員会として、このオリジナルをもう一度チェックするという方向に進むのか、あるいは今まで議論がありましたように、短時間に回復する影響で、しかも週末は少し強めに出るけれども、土日を挟めば戻るというタイプの影響であろうということなので、112mg/kg体重/日という数字のLOAELからいかなくても、NOAELの50 mg/kg体重/日からいけばよいのではないかという御意見、したがって今回の事務局案どおりでよいのではないかということですが、どちらにしましょうか。
〇西川委員 急性毒性を重視する必要はないと思いますが、もしデータに遡れるのであれば見た上で慎重に評価した方がよいのかもしれません。
〇江馬委員 有害性評価書の10ページの351行目からマウスの104週間の実験の記載があり、そこでも「投与後、短期間、横臥、振戦などの症状が認められた」と書いてあって、同じような状況になっています。これも、短期間と書いてありますが、ラットと同じように30分から1時間程度のものだったかということは確認しておいた方がよいと思います。
〇大前座長 これはNTPのレポートだと思いますので、入手はもちろん可能だと思いますから確認はできるだろうということでございます。データ自体の信頼性は間違いないと思いますが、92年のデータで、ゼロを含めて3濃度しかやっていないというところはございます。どうしましょうか、いったん確認しましょうか。
 そうしましたら、確認をして、今の1時間程度で収まる急性毒性が許容できる範囲であるということであれば事務局案どおりで、もし許容できないということであれば、次回ペンディングとしてやり直すということでよろしいでしょうか。
 では確認ですが、一応NTPの原著に戻って見て、その結果特に問題がなさそうであれば事務局案どおりだけれども、問題がありそうであればもう一度この委員会でディスカッションをします。それと同時、NOAEL、LOAELの扱いをどうするかということは別のところでディスカッションをします。そういうことでよろしいでしょうか。
 では、このレソルシノールに関しては今日の段階ではペンディングということにさせていただきます。
 その他、御意見はどうでしょうか。
〇川名化学物質評価室長 そうしましたら、今の確認の内容によって右側に書いてあります評価値(案)も変わり得るということでよろしいでしょうか。
〇大前座長 二次評価値は変わりませんが、一次評価値がひょっとしたら追加になるかもしれないということです。といいますのは、112 mg/kg体重/日からスタートしますと多分二次評価値10ppmの10分の1よりも小さくなると思いますので、一次評価値が追加される可能性があるということです。
 二次評価値は、76年と古いデータですがこれしかないので、これでよいですね。二次評価値はこの値に基づいて進めていただければよいと思いますが、一次評価値に関してはペンディングということになります。
〇川名化学物質評価室長 わかりました、ありがとうございます。
〇大前座長 では、次の物質、ノルマル-オクタンにつきまして説明をよろしくお願いいたします。
〇増岡化学物質評価室長補佐 それでは資料1-4「ノルマル-オクタン」を御覧ください。化学式、構造式、物理化学的性状、生産量等については割愛をさせていただきます。
 重視すべき有害性、まず発がん性ですが、ヒトに対する発がん性については、調査した範囲内で十分な情報が得られていないということから、判断できないとしております。
 また、発がん以外の有害性につきましては、生殖毒性は判断できない、神経毒性は「あり」ということです。神経毒性についてはCF1マウスに対する吸入ばく露試験の結果からNOAELは2,000ppmとされており、不確実性係数等を考慮し、評価レベルを100ppmと求めております。また、遺伝毒性につきましては判断できないとしております。さらに左下にまいりまして、反復投与毒性に関する動物試験データにつきましては、F344ラットに対する試験の結果、こちらはNOAELとして7.48 mg/L(1,600ppm相当)とされておりますが、そちらからは評価レベルとして120ppmという値が算出されております。
 次に許容濃度等でございますが、ACGIH、産衛学会のいずれも300ppmを勧告しておりまして、ACGIHにおきましては、粘膜刺激と高濃度における麻酔作用の可能性を最小化することを意図して300ppmを提案しております。また、産衛学会におきましては、急性毒性に関する同系列の炭化水素類との毒性比較や、我が国の許容濃度としてブタン500ppm、ペンタン300ppmを採用していることなどから300ppmを勧告しております。
 以上を踏まえまして、評価値案でございますが、まずは二次評価値からまいりますが、ACGIH、産衛学会ともに300ppmを勧告しておりますので、こちらを採用して300ppmとしております。また、一次評価値につきましては、神経毒性から評価レベルとして100ppmという数値を算出しておりますが、こちらが2次評価値の10分の1以上になることから、一次評価値としては「なし」としております。
 以上です。
〇大前座長 ありがとうございました。
 ノルマル-オクタンについては神経毒性、麻酔作用ぐらいしかなかったということで、二次評価値については、産衛学会、ACGIHが300ppmを使っておりますからこれを採用しようということです。それから一次評価値は反復毒性のデータで10分の1以下にはならないので作らないという提案ですが、いかがでしょうか。
 この提案どおりでよろしいですか。
 では、ノルマル-オクタンに関しましては一次評価値なし、二次評価値が300ppmということでお願いいたします。
 今日の議題は以上でございます。
 「その他」につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
〇増岡化学物質評価室長補佐 では、資料2は「今後の予定」となります。平成29年度のばく露実態調査物質の有害性評価ということで、今後の有害性評価書の改定状況にもよるところがございますが、下半期、現時点では10月下旬から12月の上旬にかけて2回および予備1回ということで予定をしております。細かな日程の調整につきましては、また後程委員の皆様方と調整をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 先程ペンディングということでいただきました部分につきましても、この中で検討をさせていただきます。
〇大前座長 そういうことでございます。
 本日は、先程のレソルシノールに関しましては、一次評価値のところでNOAEL、LOAELのどちらを使うかということでNTPのレポートの原著を少し振り返ってみまして、その結果によっては一次評価値ができるかもしれないということですが、二次評価値は変わりません。
 ビフェニルに関しては、遺伝毒性のところのEPAの書き方を少し変更していただくということで、事務局案から少しずれるところが出てまいりました。
 今後の予定につきましては、今説明されたとおりでございますので、よろしくお願いいたします。
 以上で本日の有害性評価書検討会を閉会させていただきます。
 ありがとうございました。