2019年7月19日 第1回化学物質による疾病に関する分科会 議事録

日時

令和元年7月19日(金) 15:30~17:30

場所

中央合同庁舎5号館厚生労働省労働基準局第2会議室(15階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者

参集者:五十音順、敬称略
  上野晋、圓藤吟史、武林亨、角田正史、野見山哲生

厚生労働省:事務局
  松本貴久、西村斗利、西岡邦昭、栗尾保和、佐藤誠 他

議題

(1)労働基準法施行規則第35条別表第1の2第4号の1の物質等の検討について
(2)その他

議事

議事録
○小永光職業病認定業務第二係長 定刻となりましたので、労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会を開催いたしますが、開催する前に、傍聴をされている方にお願いをいたします。携帯電話などの電源は、必ず切るかマナーモードにしていただくようお願いいたします。そのほか、別途配布しております留意事項をよくお読みいただきまして、会議の間はこれらの事項を守って傍聴するようお願いいたします。万が一、留意事項に反するような行為があった場合には、当会場から退室をお願いすることもありますので、あらかじめ御了承ください。
これより、第1回労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。最初に、本分科会に御参集を賜りました先生方を五十音順に御紹介させていただきます。上野晋先生です。圓藤吟史先生です。武林亨先生です。角田正史先生です。野見山哲生先生です。
続きまして、事務局を紹介いたします。大臣官房審議官の松本です。補償課長の西村です。職業病認定対策室長の西岡です。補償課長補佐の栗尾です。職業病認定対策室長補佐の佐藤です。中央労災医療監察官の横田です。中央職業病認定調査官の秋葉です。安全衛生部化学物質対策課の中村課長補佐です。なお、私は職業病認定対策室の小永光です。よろしくお願いいたします。
それでは、労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質の疾病に関する分科会の開催に当たり、松本大臣官房審議官から挨拶させていただきます。
○松本大臣官房審議官 御紹介を賜りました松本です。労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会の設置、開催に当たりまして、一言御挨拶申し上げます。まず、本日御参集の先生方におかれましては、日頃より労働基準行政、とりわけ労災補償行政に対しまして、格段の御理解と御協力を賜っていますことを、この場を借りて御礼を申し上げます。
分科会のもととなります労働基準法施行規則第35条専門検討会は、労働基準法施行規則別表第1の2に例示列挙すべき業務上の疾病につきまして、当時の中央労働基準審議会の答申等に基づき、医学専門家により検討していただくため、昭和53年度から定期的に開催しているものです。
直近は昨年度、本日御参集の圓藤先生、上野先生にも御参加いただき御検討いただきまして、昨年11月に報告書を取りまとめていただいたところです。この報告書では、オルト-トルイジンによる膀胱がんの別表追加のほか、行政当局において情報収集をした化学物質による新たな疾病について、化学物質による疾病に関する分科会を設置して検討に着手するとともに、本分科会の中で、新たな化学物質による疾病について幅広く検討することを望むとされたところです。
この報告を受け、厚生労働省といたしましては、労働基準法施行規則第35条専門検討会の下に、化学物質による疾病に関する分科会を設置しまして、本日第1回の検討に着手いただく準備をしてきたところです。具体的には労働基準法施行規則別表第1の2第4号に基づく大臣告示に規定されている化学物質について、新たに追記すべき症状及び障害等があるか否か、また、大臣告示に規定されていない化学物質による疾病及び障害として新たに追記すべきものがあるか否か等を、分科会の検討課題としてお願いをしたいと考えています。
この別表第1の2は、医学経験則上、業務との因果関係が明確であると考えられている疾病を列挙しており、被災労働者におきましては請求の円滑さ、また我々行政のほうとしては認定業務の迅速化に、大変大きな役割を果たしているものです。そういった意味で、今回議論いただく化学物質による疾病は、大変多くの化学物質があるので非常に多岐にわたる検討が必要となり、先生方に大変な御苦労をおかけすることになりますが、是非、忌憚のない御意見を頂きながら専門的かつ十分な御議論を頂いた上で結論を取りまとめていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。簡単ではありますが、分科会開催に当たりまして、私からの挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○小永光職業病認定業務第二係長 ありがとうございました。松本審議官は公務の都合により、ここで退席させていただきます。
(松本審議官退席)
○小永光職業病認定業務第二係長 続きまして、開催要綱に従い、本分科会の座長を選出していただきたいと思います。座長は参集者の互選により選出されることとされておりますが、どなたか御推薦等いただけませんでしょうか。
○武林委員 圓藤先生にお願いしたいと思います。
○小永光職業病認定業務第二係長 ありがとうございます。圓藤先生に座長をという御意見がありましたが、どうでしょうか。
(異議なし)
○小永光職業病認定業務第二係長 ありがとうございます。では、圓藤先生よろしくお願いいたします。お手数ですが、座長の席に移動をお願いいたします。
(圓藤座長移動)
○圓藤座長 座長を拝命しました圓藤です。労働基準法施行規則第35条検討会というのは非常に重要な会議でございまして、そのうちの化学物質は非常に数が多く、また多彩な症状がありますので、しっかりと検討していくべきだと思っております。前回の検討から5年経たって、検討すべきことがたくさん溜まっておりますので、迅速に進めていきたいと考えています。皆様方の御協力を得まして、今年度中に一定程度の成果が出るように努めたいと思いますので、御協力よろしくお願いいたします。
それでは、議事に入る前に、事務局から本日の資料の確認をお願いします。
○小永光職業病認定業務第二係長 資料の確認の前に、傍聴されている方にお願いがあります。写真撮影等はこれまでとさせていただきます。以後、写真撮影等は御遠慮いただきますようお願いいたします。
それでは、資料の確認をいたします。本分科会ではペーパーレスでの開催とさせていただいておりますので、お手元のタブレットで資料の確認をお願いいたします。 本日の資料は、資料1として、「労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会開催要綱」、資料2-1として、「労働基準法施行規則第35条専門検討会報告書の概要」、資料2-2として、「労働基準法施行規則第35条専門検討会の報告書(平成30年11月)」、資料3として、「化学物質による疾病に関する分科会の検討事項」、資料4として「業務上疾病の関係法令等」、資料5-1として、「省令施行通達(昭和53年3月30日付基発第186号)」、資料5-2として、「大臣告示の改正通達(平成8年3月29日付基発第181号)」、資料5-3として「省令改正通達(平成31年4月10日付基発0410第1号)」、資料6として、「労働基準法施行規則別表第1の2第4号に基づく大臣告示に列挙する疾病の選定に関する基本的な考え方」です。資料7として「検討の進め方」、資料8として、「業務上疾病に関する医学的知見の収集に係る調査研究報告書(平成26年度)」、資料9として、「スクリーニング評価様式(告示記載物質に係る新たな症状又は障害報告一覧)」、資料10として、「告示記載物質に係る有害情報一覧」、以上資料1から10までとなっております。資料の不足等はございませんでしょうか。以上となります。
○圓藤座長 それでは、最初に議事次第のアについて、事務局から資料を説明いただいて、議事を進めたいと思います。
○秋葉中央職業病認定調査官 それでは、私のほうから御説明させていただきます。まず、資料の1から8まで御説明申し上げます。
初めに資料1です。化学物質分科会の開催要綱です。趣旨・目的については、先ほど松本審議官からもお話がありましたが、御覧のとおりです。次のページが参集者名簿です。各先生方について、先ほど紹介させていただいておりますが、所属、役職、専門分野は御覧のとおりです。
次に資料2-1です。労働基準法施行規則第35条専門検討会報告書の概要です。この労働基準法施行規則第35条専門検討会は昨年度に開催され、11月に報告書が取りまとめられています。開催経緯ですが、前回は平成25年度に開催されました。その25年度の検討会以降の新たな医学的知見の状況を踏まえ、別表第1の2に新たに検討すべき疾病があるか否かの検討が行われたものです。このときの検討疾病が左の枠内の3つです。
1つ目、労災請求のあった個別事案、すなわち芳香族アミン取扱事業場で発生した膀胱がんの事案の業務上外に関する医学専門家等による検討会において、業務と疾病との因果関係についての考え方が示された疾病です。検討が行われた結果、矢印の右が、「オルト-トルイジンによる膀胱がん」を別表に追加することが適当とされました。
2つ目、労働基準法施行規則別表第1の2各号に規定する包括救済規定に該当した疾病、すなわち平成24年度から28年度までの期間において、別表第1の2各号の包括救済規定に該当するとして労災認定された疾病です。検討の結果、矢印の右のほうですが、現時点において別表に追加する必要のある疾病はないが、理容師・美容師のシャンプー液等の使用による接触性皮膚炎に関しては「化学物質による疾病に関する分科会」を設置して検討を行うことが妥当とされました。
そして3つ目、行政当局において情報収集を行った化学物質による疾病、即ち前回、平成25年度の検討会報告の求めにより、行政当局において情報収集を行った労働基準法施行規則別表第1の2第4号の1の規定に基づく、厚生労働大臣告示に規定されている168の化学物質に係る新たな症状又は障害についてです。検討の結果、矢印の右側ですが、行政当局で収集を行った疾病に加え、大臣告示に規定されていない化学物質による疾病についても化学物質分科会において検討を行うことが適当とされました。概要は以上です。
報告書の本文は、資料2-2にありますが、時間の関係もありますので、後ほど御覧いただくこととしたいと思います。
次に資料3です。今般の化学物質分科会における検討事項です。本分科会で検討していただく事項を事務局で整理したものです。まず、左上の縦書きの枠囲み、「新たな化学物質による疾病の検討」ということで、3つあります。1番目として、大臣告示に規定されている168の化学物質のうち、当該化学物質による新たな症状及び障害に関して、「症例報告」・「疫学研究報告」がある121物質を選定しています。この121物質というのは、平成26年度から29年度までの委託事業の調査研究において、新たな症状及び障害に関して1件以上報告がなされている物質になります。これにつきまして、矢印の右のほうですが、労働基準法施行規則別表第1の2第4号の1に基づく大臣告示に規定されている化学物質による疾病への新たな症状及び障害として、追加する必要性の有無について御検討いただくものです。
検討の視点ですが、ここでの検討に当たっては、その新たな症状・障害が通常の労働の場において発症し得るか否かということと、その化学物質によって引き起こされた症状又は障害であることが特定されているかという視点でお願いしたいと思います。
検討事項の2番目ですが、SDS(安全データシート)の交付義務のある673物質から、既に大臣告示に規定されている168物質を除いた505物質のうち、当該化学物質による新たな症状及び障害に関して、症例報告が3件以上なされている物質としています。
そして、3番目は、平成25年度の労働基準法施行規則第35条検討専門会において検討されたものの、大臣告示に規定されていない30の物質について、現在までに症例報告がなされた物質としています。この2番目と3番目は、今年度委託している調査研究における新たな症例報告の有無や、その他、症例報告に関する文献の状況等を踏まえた上で、矢印の右のほうですが、労働基準法施行規則別表第1の2第4号の1に基づく大臣告示に追加するか否かを御検討いただくものです。検討の視点では、先ほどの1番目の検討事項の検討の視点に加えて、その物質が日本国内で取扱いがあるか否かということを視点としていただきたいと思います。
次に、左下の枠囲み、「具体的検討が要請された事項」です。理美容師等における接触性皮膚炎についてです。これについては、矢印の右のほうですが、大臣告示又は労働基準法施行規則別表第1の2に追加することが可能か御検討いただくものです。検討の視点は、皮膚炎等を起こす物質を特定することができるか否か、特定できない場合には、どのように規定ができるかということでお願いしたいと思います。
このほかに先生方から、検討すべき物質につきまして何か御提案がありましたら、今見ていただきましたものと同様に御検討をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
続きまして資料4です。業務上疾病の関係法令です。法令の大元は、労働基準法第75条です。労働者が業務上負傷したり疾病にかかった場合の使用者の災害補償責任を規定したものです。このうち、業務上の疾病及び療養の範囲は厚生労働省令で定めるとされています。これを受け、労働基準法施行規則において、業務上の疾病は別表第1の2に掲げる疾病とされています。
そこで、別表第1の2です。第1号から第11号まであります。化学物質等による疾病については、2ページ目になりますが、第4号に掲げられています。第4号は1から9まであります。このうち1が「厚生労働大臣の指定する単体たる化学物質及び化合物にさらされる業務による疾病であって、厚生労働大臣が定めるもの」となっています。この関係が4ページ目からになります。これが労働基準法施行規則別表第1の2第4号の1に基づく告示で、先ほど御説明したとおり168の物質がここに規定されています。この告示を御覧いただきますと、左の欄に化学物質が書かれており、それに対して右の欄に「症状又は障害」がそれぞれ対応する形で明記されています。
2ページ目に戻ります。一番下、第7号です。「がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による疾病」で、各種のがんについてこちらで規定されています。1から22まであります。 3ページ目の下のほうに、第10号として、「前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾病」と規定されています。この第10号に基づく大臣告示が7ページ目になります。この告示において、特定の物質による疾病ということで、御覧のとおり3つ定められています。
続きまして資料5-1です。労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行通達です。労働基準法施行規則第35条の規定は昭和53年に抜本的に改正され、同年4月に施行されましたが、改正の趣旨、改正後の規定の内容、運用上の留意点等について示されているものです。なお、労働基準法施行規則第35条に関しては、その後も別表の改正や告示の改正があり、この施行通達も現在までに5回改正が行われています。中身につきましては、時間の関係もありますので後ほど御覧いただくこととし、ここでは説明を省略させていただきます。
資料5-2です。これは先ほど御覧いただきました労働基準法施行規則別表第1の2第4号の1に基づく大臣告示が平成8年に全部改正されましたが、その際に発出された通達です。改正の趣旨、改正の内容等が示されています。中身の説明は、こちらも省かせていただきます。
資料5-3です。労働基準法施行規則の一部を改正する省令の施行通達です。昨年度、労働基準法施行規則第35条専門検討会において検討が行われ、取りまとめられた報告書を踏まえ、労働基準法施行規則別表第1の2の第7号の11に「オルト-トルイジンにさらされている業務による膀胱がん」が追加されました。この通達はこれに係る省令改正の趣旨、改正内容の周知、関係通達の改正その他事項について示されたものです。
資料6です。先ほどの平成8年の大臣告示の改正通達に示されていました労働基準法施行規則別表第1の2第4号に基づく告示に列挙する疾病の選定に関する基本的な考え方を抜き書きしたものです。告示に列挙する疾病の選定に関しては、原則として次の1及び2に該当する疾病のうち、通常労働の場において発生しうると医学経験則上評価できるものを列挙疾病として規定するというものです。1及び2に該当する疾病というのは、「わが国において症例があったもの」、「わが国において症例がなくとも、諸外国において症例が報告されているもの」、この2つを指します。したがいまして、症例の報告があるものでも、それが事故的な原因による疾病や、総取扱量が極めて少ない化学物質による疾病のように、一般的には業務上疾病として発生することが極めて少ないものは除くとなっています。今般の化学物質分科会においても、この基本的な考え方に基づき御検討いただきたいと考えています。
資料7、今後の検討の進め方です。先ほど御説明した本分科会における各検討事項について御検討いただく時期と、次回以降の分科会の開催スケジュールを、事務局の案としてお示しするものです。まず、「1 検討方針及び検討の時期」についてです。(1)労働基準法施行規則別表第1の2第4号に基づく大臣告示に規定されている化学物質による疾病への新たな症状及び障害の追加に関する検討については、平成26年度から29年度に行った「業務上疾病に関する医学的知見に係る調査研究」で取りまとめられた報告書に基づき、令和元年度より検討を行う。(2)大臣告示に規定されていない化学物質による疾病については、令和2年度より検討を行う。(3)理美容師のシャンプー液等の使用による接触性皮膚炎については、上の(2)の議題と併せて令和2年度以降に検討を行う。以上のように考えています。
そして、「2 の分科会の開催スケジュール」です。本日が第1回で、第2回を10月に、第3回を12月にそれぞれ開催、第4回を年明けの1月か2月に、第5回を2月か3月に考えています。各回の検討内容は御覧のとおりです。なお、必要に応じ、3月以降に第6回を開催することも考えています。 資料8です。「業務上疾病に関する医学的知見の収集に係る調査研究報告書」です。この報告書の1ページ目に背景と目的が書かれていますが、この調査研究は、平成25年度に開催された労働基準法施行規則第35条専門検討会の報告書において、「行政当局において、引き続き新たな化学物質による疾病について幅広く情報収集に努めることを望む」とされたこと等を受け、労働基準法施行規則別表第1の2に基づく告示に規定されている化学物質による新たな疾病の発生等について、医学文献に基づく情報収集を行うという形で、平成26年度の委託研究として業者に委託して実施したものです。
2ページ目に研究の方法が載っています。この委託研究では、告示に規定されている168の化学物質のうち、3ページ目以降の表に示された39の化学物質について文献レビューの作成が行われました。この39物質というのは、告示に規定されている168物質のうち、無機の酸及びアルカリ、金属及びその化合物、ハロゲン及びその無機化合物を対象として選定されたものです。これ以外の物質に関しては、この委託研究と同様に、平成27年度から29年度の委託研究においてレビューが行われています。先ほど見ていただきました分科会の1番目の検討事項にある化学物質につきましては、この平成26年度の研究報告書と、残りの平成27年度から29年度までの研究報告書に基づき、先生方に御検討いただくことになります。
資料1から8までの説明は以上です。
○圓藤座長 ありがとうございます。それでは、具体的に検討を進めるに当たり、いくつか確認しておく事項があります。資料3を御覧いただきたいのですが、事務局案としまして、労働基準法施行規則別表第1の2第4号1に基づく大臣告示に規定されている化学物質による疾病への新たな症状及び障害の有無についての検討については、規定されている化学物質のうち、新たな症状及び障害に関して、「症例報告」・「疫学研究報告」がある121物質を検討対象とする。そして、大臣告示に新たに追加する化学物質の有無の検討については、「大臣告示に規定されていないSDSの交付対象物質のうち、当該化学物質による症状及び障害に関して症例報告が3以上ある物質」、「平成25年度の35条専門検討会において検討されたものの、大臣告示に規定されていない物質のうち、現在までに症例報告がなされた物質」、「理美容等における接触性皮膚炎」が一応の検討対象ということで、そのほかに先生方から告示物質に入れるべきとの提案があったものについては検討するということにしたいですが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○圓藤座長 ありがとうございます。それでは、続きまして資料6を御覧いただき、新たに告示に列挙する物質と症状又は障害については、資料6の考え方に基づいて、原則として進めたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○圓藤座長 ありがとうございます。具体的な検討方法について議論したいと思います。検討の進め方としては、事務局の案のとおり、最初は厚生労働省が調査研究の報告を得ている「大臣告示に規定されている化学物質による疾病への新たな症状及び障害の有無」について検討することにしたいと思います。
検討方法としては、まず資料8の調査研究報告書において、「化学物質による新たな症状及び障害に関して1報以上の報告がある121物質」から、各物質2名の委員で、検討対象物質の候補を判定し絞り込みを行った上で、そこで候補になったものについて、それ以降の検討会で告示への追加する症状及び障害があるかを議論するという提案ですが、いかがでしょうか。
(異議なし)
それでは、事前に各先生に記載いただいております資料9で、検討対象物質の絞り込みの議論を行いたいと思います。資料9と10について事務局から説明をお願いいたします。
○秋葉中央職業病認定調査官 資料9です。告示記載物質に係る新たな症状又は障害報告一覧です。先ほど見ていただきました資料3の1番目の検討事項にあります大臣告示に規定されている168の化学物質のうち、当該化学物質による新たな症状及び障害に関して、「症例報告」・「疫学研究報告」がある121物質につきまして、労働基準法施行規則別表第1の2に基づく大臣告示に規定されている化学物質による疾病の新たな症状及び障害として追加すべき必要性の有無について御検討いただく際の様式です。
今回は、手始めに25物質のみ御検討いただくことを考えており、事前に各先生にスクリーニング評価の記載を行っていただきました。この表に「委員による評価」の欄がありますが、この欄に、告示に新たに症状又は障害を追加することへの可否について、「◎、○、△、×」という記号を表記していただいています。この◎は必ず追加すべきというものです。○が追加すべきというもの、△が評価保留、×が追加する必要はないという意味です。また、その右の「評価の理由」の欄には、そのように評価した理由を記載いただき、◎又は○と評価される場合は、症状又は障害と、根拠となる医学文献等も記載いただいています。なお、残りの96物質につきましては、次回以降の分科会で同様に御検討いただきたいと考えています。
資料10です。告示記載物質に係る有害情報一覧を用意しています。今般御検討いただく化学物質について、事務局にてSDSの有害性情報等を一覧表にしたものです。御検討に当たり参考としていただければと思います。私からの説明は以上です。よろしくお願い申し上げます。
○圓藤座長 それでは、資料に基づき個々の物質の検討に入りたいと思います。本日は評価基準のすり合わせの意味もございますので、資料9の化学物質について上から順に、記載していただいた委員に「◎、○、△、×」の評価と理由を簡単に説明していただいた上で、1物質ずつ議論していきたいと思います。なお、本日の分科会において、検討対象物質とすべきか否かについて、一定の方向性が出せない物質がある場合には、それらの物質については次回に再検討したいと思います。このような進め方でよろしいでしょうか。
(異議なし)○圓藤座長 それでは1番のアンモニアから検討したいと思います。アンモニアの上段の評価は私が検討いたしました。神経系、消化器系とございます。発熱は気道の炎症によるものかどうか。それから呼吸困難というのがございますが、いずれも急性中毒による症状と思われます。また、既に告示に記載されています気道・肺障害の一症状とみなしていいのではないかということで、追加の必要性なしとして×にいたしました。次に、武林先生、御意見いただきたいと思います。
○武林委員 元々、ここに挙がっておりますのは事故的でもありますし、今、圓藤先生がおっしゃったようなこともございますので、私も同じような判断をさせていただきました。
○圓藤座長 他の先生方は御意見ございませんでしょうか。現時点では検討対象とする必要ないとしておきますが、あくまで今日のレベルでございまして、正式には次回以降に決定したいと思います。新たな知見等がございましたら、修正は図りたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
次、塩酸(塩化水素を含む)です。アンモニアと同じ記載になってしまっていますね。もう一度記載を確認したいと思います。発熱は気道の炎症によるもの、呼吸困難は急性中毒による症状と思われ、また、気道・肺障害の一症状であるということです。次に武林先生、お願いします。
○武林委員 これは元々、溶接という条件が加わったときの症例の報告ということでありますので、一般の条件下ということから外れるということではないかということで、ここに特定の条件下と書いてございますが、×とさせていただきました。
○圓藤座長 よろしいでしょうか。3つ目、過酸化水素です。私は、頭痛と一次的な嗅覚障害は気道・肺障害で説明が付くのではないかということです。それから、視神経炎、前眼部障害とは別なのかというのを検討する必要があると思っております。毛髪の脱色は、皮膚障害に含めるのかを御検討いただきたいと思います。武林先生、お願いいたします。
○武林委員 ここに挙がっている報告のうち、頭痛については比較的普通の工程の中で測られているということもありますので、今、圓藤先生がおっしゃったような元々の別の障害とセットで起こっているということなのか、この情報だけでは十分に分からなかったということで、参考文献を確認したほうがいいのではないかということを記載させていただきました。
○圓藤座長 もう一度文献を確認して、次回以降に結論を出したいと思います。
続きまして、弗化水素酸(弗化水素含む)についてです。これはメカニズムに書かれていますように、全身症状を示しまして、低カルシウム血症、筋肉の壊死、腎障害といった記述が必要なのではないかということ。また、韓国で弗化水素酸の漏出事故があり、多数の人間が被害を受けた事例もございますので注意喚起としては必要であろう。ただし、資料6の考え方において、事故的な原因による疾病は除くとされています。この弗化水素酸によるのはほとんど事故的なものですが、結構被害が起こっておりまして、私、個人的には、事故的なものであっても皮膚障害、前眼部障害又は気道・肺障害という言い方だけでは不十分ではないだろうかと思いまして、◎にいたしました。武林先生、お願いいたします。
○武林委員 ここに挙がっているものについては事故的ばく露ですけれども、今、圓藤先生が御指摘されましたように、そもそものメカニズムから考えますと、この低カルシウム血症ということがベースになっていろいろなことが起こります。実際に書き方として低カルシウム血症、筋肉壊死、腎障害といったことが書けるのかというのがよく分かりませんでしたので、低カルシウム血症をベースとしていろいろなことが、多彩な症状が起こり得るということをどう注意喚起するか、あるいは例示するかということについては、是非御検討いただき、次回も少しそこは詰める必要があるのではないかと思います。
○圓藤座長 先生方、御意見ございませんでしょうか。
○角田委員 弗化水素酸のものでは大阪医大が何例か出してます。事故ではあるんですけれども、結局、通常業務でも弗化水素酸を使って何かを洗うなど、事故が起こりやすい物質なのですかね。大阪医大のグループがここに載ってない理由は、気道・肺障害がメインだったので、確かその論文は、気道・肺障害に入るからということで入れなかったのですが、症例報告のはずなので、それに腎臓障害とかが入っている可能性が結構あると思うので、その辺のデータを少し加えてみてもいいのではないかと思いました。動物実験レベルでは腎障害を起こしますし、治療をどうするかというのは、その論文に引き続いて大阪医大のグループが3つほど、論文を出していましたので、少しそれを参照してみて、載せるべきかどうかというのを検討してもいいのではないかと思います。
○圓藤座長 ほかの先生方、資料6にありますような事故的なものはどう扱うのかということにも絡みますし、少し次回以降に検討したいと思いますが、よろしいでしょうか。
次、ペルオキソニ硫酸アンモニウムです。若干、私のほうは感作性をどう取り扱うのかというのを今まで議論していなかったというのは気になるところでございます。武林先生、お願いします。
○武林委員 そこに記載がございますが、息切れという症状の現れ方と、気道障害と元々あるものとを同じというふうに考えていいのか、その表現の問題もありますので、そこが含まれるのであれば追加する必要はないということで、ここには書かせていただきました。ちょっと気道障害と息切れは、必ずしも1対1でないような印象が、言葉としてはあります。
○圓藤座長 そうですね。息切れといえば症状であって、疾病名というよりも症状名ですね。
○武林委員 どちらかというと、自覚症状の1つでもあるでしょうし。
○圓藤座長 はい。それから感作性はどうしましょう。
○武林委員 そうですね。
○圓藤座長 今まで感作性についての扱いはどうしていましたかね。また、少し次回以降に検討しましょうか。
○小永光職業病認定業務第二係長 今、告示に記載されている症状又は障害についての一覧等を確認して、また、提示させていただきたいと思います。
○圓藤座長 そうですね。続きまして、ペルオキソニ硫酸カリウムについてです。私は、息切れ、呼吸困難は気道障害に含まれるとしたのですが、これも武林先生の御指摘にも絡むかも分かりません。上野先生、お願いします。
○上野委員 もちろん気道障害の可能性もあるのですが、単純に症状、今御議論いただいた症状ということでいうと、ここには息切れや胸痛、呼吸困難と書いてあるのですが、これは心筋炎などでも似た臨床症状は見られるので、果たしてこれを一元的に呼吸器系の障害と見ていいのかどうかが、これだけでは分からないかなと思い、こうした記載をさせていただきました。
○角田委員 この原著を見てみれば、心筋炎になるほどのことなのかというのは、はっきりするような気もするのです。これは多分、業務でヘアブリーチ剤を使用したということで、少し呼吸の問題が起こったというようなことで書いているのではないかと思います。
○圓藤座長 次回、再検討ということにしたいと思います。
次、アルキル水銀化合物(アルキル基がメチル基又はエチル基である物に限る)についてです。私はこれ、急性中毒で、現在の告示に示されている症状の延長にあるのではないかということと、消化器系とかがありますので、それをどう扱うかというのが悩ましいところかなと思っております。上野先生、お願いします。
○上野委員 私も消化器系の症状というところでとても迷いました。文献を先んじて目を通させていただきました。確かに、症例報告としてこの報告書にあるように、実験中に誤って、アルキル水銀が滴下して、その後、かなり長期間、2か月間にわたって消化器症状があって、最終的に聴力障害とか神経障害とか、いわゆるアルキル水銀の症状が現れているので、何かしらのアルキル水銀中毒だなというのは、もちろん可能性として考えられるかなというところです。これは急性中毒ともいえるので、これを事故的なものとして扱っていいのかどうかというところで、そこをあまり考えずに、症状だけでこういうことも起こり得るのかなと思ってしまいました。その消化器症状というのが遷延して出ているというような内容が書いてあったので、ちょっと悩ましいところでした。
○圓藤座長 そうですね。これは経気道ばく露と考えていいのですか。
○上野委員 あくまで、その症例報告の文面だと、手袋をしている上にポトッとアルキル水銀の液がかかったみたいな、そういう表現しかなかったのです。結局それがどういうばく露に相当するのかが、ちょっと分からない。
○圓藤座長 手袋の材質が合わなくてアルキル水銀が透過したのか、手袋をしていない部位にばく露したのか、経気道なのか、そこが分からないですね。
○上野委員 基本的に症例報告なので、ばく露経路については分からなかったです。
○圓藤座長 これは1例ですので、複数例あって、確からしさというのも必要かなと思います。
○上野委員 おっしゃるとおりだと思います。
○圓藤座長 次回以降その辺を含めて、文献を皆様で読んでいただきまして評価したいと思います。
続きまして、アンチモン及びその化合物に移ります。私がその症例を見ましたところ、アンチモン鉱山の労働者でシリカとの混合ばく露であり、シリカによる可能性が大きいであろうと思っております。上野先生、いかがでしょう。
○上野委員 これも分かる範囲で少し文献を見たのですけれども、1つの症例については、鉱物組成の分析結果まで載っていて、圓藤先生がおっしゃるように、アンチモンは2%で、実はシリカが86%だったということで、これはシリカの影響である可能性が高いのではないかと思います。ほかの症例に関しては、ちょっとそこまでのデータがないものですから、アンチモンを含有した粉じんによるばく露というのを考慮したほうがいいかと思い、その点でもう少し検討が必要なのかもしれないと考えます。
○圓藤座長 はい。したがって△にしておりますが、よろしいでしょうか。続きまして、塩化亜鉛についてです。閉塞性隅角緑内障というのがあって、既に表記した前眼部障害というのに含まれています。それから№2は誤飲であり、対象外であろうとして×にいたしました。上野先生、お願いします。
○上野委員 これも誤飲という事故的なものということを考えたら、№2は対象外になるかもしれません。フラックス自体、強酸性だとは思われますが、膵炎が起こったと書いてあり、強酸性のもので膵炎症状が出るか、というのがちょっと謎です。1例目に関して、閉塞性の緑内障については前眼部障害とみなしていいだろうということ、2例目を自分が少しうまく判断できなかったため、△とさせていただきました。
○圓藤座長 カドミウム及びその化合物です。事故の症例のばく露について原著にあたる必要があるだろうと、高血圧についても同じだろうと思います。ただ、あまりここにはなかったのですが、IARCなどではヒトでの肺がんの起因物質としているということで、腎がん、前立腺がんにおいても正の関係があるとしておりますので、発がん性について検討してはいかがかと思っております。上野先生、お願いします。
○上野委員 私は△にしたのは、いずれも少しカドニウムとの因果関係がこれだけではあまりはっきりしなかったということで△にさせていただきました。
○圓藤座長 クロム及びその化合物について、武林先生、お願いします。
○武林委員 クロムについては、肝臓への影響ということが出てきますが、かなり古い文献だったと思います。1965年とか1941年という文献でありますので、当然、時代の変化がありますので、ここから今のタイミングで因果関係を評価できるかというと、もちろん確認したほうがいいとは思いますが、元々厳しいのではないかというような記載をさせていただいております。
○上野委員 今、武林先生が御指摘になったかなり古い文献のほうで、しかもクロムタンク場における作業の際の廃棄によるばく露とあったものですから、クロムだけかどうかがよく分からないということと、三価クロムのばく露の疫学研究の記載があったのですが、ここに載っている文献を自分で見付けられず、一方で三価クロムの長期ばく露に関する他の文献が見つかりました。そのため今回は評価を保留させていただきました。
○圓藤座長 コバルト及びその化合物につきまして、武林先生、お願いします。
○武林委員 2番について、もう少し確かに詳細に考えるべきだと思います。ほかのところは、いろいろな混合ばく露であったり、アレルギーと診断された人の分析であったりなどということがありますので、ここから通常の作業を想定することは難しいだろうということで、このように書かせていただいております。それから、上野先生もここに記載していただいているものについては、元々、所見というのがかなり一般的でない指標を使っていますので、これで因果関係を言い出すと検査的なものを全て持ってくるということになりますので、それも含めて、この段階では判断が難しいのでないかということで×を付けさせていただいております。
○上野委員 武林先生がおっしゃるように、職業的に通常想定されるばく露の症例がほとんどなかったということなのです。コバルトによるばく露という意味で、毒性学的な文献を調べましたが、例えば、人工関節にコバルトが使われていることで、内部被ばくというか、体内からのばく露によって何らかの臓器毒性が起こるという文献の中で、視神経の障害が起こっているという報告がありました。ただ同じようなことが職業的に起こるものであるかというと少し疑問が残ります。○としましたが、そこまで積極的に加えるべきかどうかというのは、皆さんからも御意見を頂きたいと思います。
○圓藤座長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。セレン及びその化合物(セレン化水素を除く)につきまして。武林先生、お願いします。
○武林委員 症例報告には腹痛という症状が記載されていますが、これも実は、かなり古い論文をオリジナルで、それをATSDRが評価書で引用しているという記載でございましたので、確認ぐらいはしてもいいのではないかということです。実際には、ばく露の濃度や時間も不明であるため、それほど確度の高い情報ではないとは思いますが、このような記載にさせていただいております。
○上野委員 武林先生は確認だけはした方がよい、というコメントでしたが、私はそこまでする必要はないかなと思ったので空欄にさせていただきました。
○圓藤座長 タリウムにつきまして、武林先生、お願いします。
○武林委員 具体的な症状として、今回、感覚異常とか灼熱感ということが書かれています。これも既に、多様な症状が記載されていますので、そことの突き合わせぐらいはしてもいいのではないかということで、このように記載をした次第であります。
○上野委員 私は、末梢神経障害は既に掲げられておりますので、これ以上の記載はあまり必要ないかなという判断です。
○圓藤座長 鉛及びその化合物(四アルキル鉛化合物を除く)につきまして、武林先生、お願いします。
○武林委員 鉛は非常に悩ましいところで、血圧値の小さな変化のようなものは、最近の論文を見ていると、確かに多少差があるぐらいのことは記載がされています。しかし、その話と労働基準法施行規則第35条で取り扱おうとしていることを、どれぐらい整合させるべきなのでしょうか。疾患としての高血圧みたいな話ではないと思いますので、そういう観点からするとどうなのだろうかと思いました。それから、生殖影響についても、いろいろな分類の中では入ってきてはいると思いますけれども、そのことと実際の作業でヒトに起こって、こういう労働基準法施行規則第35条の対象になるようなものなのかということについては、少し整理をしたほうがいいと思います。これは鉛に限らず、今後この手の情報は多いと思いますので、一応、確認のために△とさせていただきました。
○上野委員 症例報告があまりにも多彩だったので、因果関係というか何をどう結び付けて考えていいのかが分からなかったところがあります。また、血中鉛濃度がどのぐらいのところで起こっているのかという点を見ていたのですが、その中にあまりにも血中鉛濃度が高いと思われるコホート研究とかがあったので、文献を調べたのですが、多分これは、この報告書に転記する時に単位を間違ったのではないかと考えました。そのこともあって評価を保留させていただきました。
○圓藤座長 続いて、ニッケル及びその化合物(ニッケルカルボニルを除く)です。野見山先生、お願いします。
○野見山委員 ニッケルですが、消化器症状に関しては他の物質も混ざっているようなので、ニッケルが主原因かが分かりにくいということです。成人性呼吸促迫症候群の報告は一症例のみであり、労災にしていいのかどうか、と考えられます。又、本症例はむしろアレルギーも疑われるのではないか、ということで△にしてあります。肝機能については障害レベルといえない域内での差であること、コントロールが事務職なので比較対象になるかどうか、又、疫学の結果から労災対象としていいか、ということで△にしてあります。
○圓藤座長 角田先生、お願いします。
○角田委員 これに関しては、呼吸器系のほうが成人性呼吸促迫症候群となっています。これだとすると重い疾患ですけれども、原著ではそんなに重いとは書いてなかったです。「タービン軸にニッケルをスプレーする金属アーク作業に従事している」というのが、とりあえず吸入ばく露のものではないかということで、原著をしっかり見るべきではないかと思いました。あとは水飲み器から誤飲したり、そもそも環境大気中のニッケルというのはちょっと違うのではないかと思います。肝臓の障害も、ニッケルによるものかどうかが疑わしいところなので、ほかのところは挙げるほどもないと思い、2番の成人性呼吸促迫症候群がどの程度か、これをよく見て呼吸器疾患に入れるべきか考えるべきだと思います。ただ、一般的に慢性吸入では肺がんを除いてはないとされていますから、あえてこれ1つで言えるかどうかは問題なので△にしました。
○圓藤座長 次はニッケルカルボニルです。野見山先生、お願いします。
○野見山委員 不定愁訴の域から出ないのではないかと思います。ありとあらゆる症状が出ているため、ばく露から引き起こされているとは考えにくいということで×にしました。
○圓藤座長 角田先生、お願いします。
○角田委員 これも症例ではないかと思ったのです。不眠、神経不安、動悸といったその辺のことが、今までに出ている頭痛、めまい等、動悸、発熱なども気道・肺障害で説明がつくのではないかと考えて×にしました。
○圓藤座長 次はバナジウム及びその化合物です。野見山先生、お願いします。
○野見山委員 疫学レベルでの結果だけで、これが本当に労災になり得るかどうかということ、それも神経行動学検査の有意差のみなので×といたしました。
○圓藤座長 角田先生、お願いします。
○角田委員 私も同じです。結局、評価したのは神経行動試験というアンケートか何かで評価したもので、その項目でちょっと有意差が出たという程度ですし、これは横断研究でもありますので、それほど大きなことではないということで、必要ないのではと判断いたしました。
○圓藤座長 次は砒化水素です。野見山先生、お願いします。
○野見山委員 溶血後の腎障害かということで、そういった二次的なものも含むのか不確かなので△にしました。
○圓藤座長 角田先生、お願いします。
○角田委員 これも意見はほぼ同じですが、メカニズムで砒化水素が腎臓の糸球体及び尿細管に直接毒作用を及ぼすことが証明されているということがありましたので、腎障害を加えてもいいのではないかというところを考え、それで一応、○にいたしました。二次的なもの以外、つまり溶血性腎不全のほかに、直接作用を及ぼすということが言われているということなので、直接作用の影響はどうかと思って○にいたしました。
○圓藤座長 砒素及びその化合物(砒化水素を除く)について、野見山先生、お願いします。
○野見山委員 非常にたくさん研究があり、SMRの方向性が統一しておらず、全てが寄与しているというレベルにはなっていないということから×としました。
○圓藤座長 角田先生、お願いします。
○角田委員 虚血性心疾患の報告は確かにあり、健康労働者効果というのもありますが、逆に低いものも非常に多くて、一定の効果もなく、かつ、書いている分ではほかの要因を考えてやったものとはあまり思えないという感じの論文でしたので、これは特異的なものではないと考えて×としました。
○圓藤座長 ブチル錫について、野見山先生、お願いします。
○野見山委員 嘔吐感とか、症状は刺激性で、ばらばらの印象もあるので×にしています。
○圓藤座長 角田先生、お願いします。
○角田委員 まず、トリブチルスズオキシドが多く、トリブチル錫の中で酸化トリブチル錫が一番強いということで、最初に使われなくなったものですから、使用されてないということです。ほぼ、業務従事者でない自覚症状でした。目も確かに浴びれば可能性はありますが、今トリブチル錫系の吹付け作業は使用自粛など、先進諸国ではほぼ使用禁止になっていますので、これもまず起きないのではないかと思い×にいたしました。
○圓藤座長 ベリリウム及びその化合物について、野見山先生、お願いします。
○野見山委員 先ほども少し話が出ましたけれども、感作性をどう考えるかというところだと思います。既に気道・肺障害の中に含まれて労災になっているとすれば、改めてということではないでしょうし、もし感作性という観点から加えるのであれば入れるのでしょうが、その辺も加味して△にしております。
○圓藤座長 角田先生、お願いします。
○角田委員 こちらはベリリウム過敏症、慢性ベリリウム肺と報告されているのですが、皮膚障害と気道・肺障害のほうに入れて十分ではないかと思ったので、×にいたしました。
○圓藤座長 マンガン及びその化合物について、野見山先生、お願いします。
○野見山委員 この中枢神経症状は、あくまでも疫学研究で言われているもので、いくつか研究がありますが、症例でなく、労災として含まれるのかと考えました。呼吸器系のものについては、これはマンガンなのか、粉じんなのか、あるいはほかの金属も含まれているようなので、マンガンの影響と特定できないので×としました。
○圓藤座長 角田先生、お願いします。
○角田委員 神経障害に関しては、マンガンパーキンソニズムの軽いものかなという感じで、そちらに入ってしまうのではないかということで、あえて付けなくてもいいかなと思いました。大昔、マンガン粉じんの吸入によるマンガン肺炎というのが知られていて、確かにそれが2番の呼吸器系の疾病に合致するとは思うのです。ただ、マンガン鉱山における作業環境的なばく露(1985年)というのが、あえて現状のばく露状況でこれを呼吸器症状として付けるべきかというのは疑問でしたので△といたしました。
○圓藤座長 塩素について、野見山先生、お願いします。
○野見山委員 これは事故的なものだと思いますので、そういう観点からも当然×だと思います。循環器系のものについても事故によるものということで、症状としてはそういった症状も出るだろうということで×としました。
○圓藤座長 角田先生、お願いします。
○角田委員 こちらも事故的なものということと、疫学研究報告は目の刺激など、もう既に出ているものとして含まれるため、追加する必要はないと考えました。
○圓藤座長 臭素について野見山先生、お願いします。
○野見山委員 どうもこれも3つとも事故的なものですので、刺激による症状ということで片付けられるのかなということで×としています。
○圓藤座長 角田先生、お願いします。
○角田委員 神経的なものや精神無力症というのがあるのですが、いずれも特異な条件下で事故的なものであるため、×といたしました。
○圓藤座長 以上で25物質を概観いたしました。全体を通して何か御意見はありませんか。一部、文献に当たって確認する必要があるものがあります。1つは現在告示に記載されている症状又は障害の一覧表を次回に用意していただいて、その妥当性というものを検討していきたいと思います。
○小永光職業病認定業務第二係長 分かりました。
○圓藤座長 できればその中のものを使いたいし、どうしてもそれにはまらないのであれば、追加するかどうかを次回に検討したいと思います。あまり細かくし過ぎても、あまりにも大きくしても分からなくなってしまいますので、その辺も今後検討したいと思っております。全体の印象でもよろしいのですが、御意見はありませんか。
○角田委員 1つだけ。12番のコバルトについてです。上野先生に別の文献を御紹介いただいたのですが、もう1つこちらで出ているほうは、民間療法などで傷患部にコバルト粉末を掛けて治そうとしたのですかね、非常に特殊な例なのです。
○上野委員 かなり特殊だと思います。
○角田委員 先生の文献だと可能性はあるかなと思ったのですけれども、こちらの例からは、まずならないと思うのです。
○上野委員 これはたまたま見付けたものです。症例報告と、それに合わせたレビューがあって、その中でコバルトばく露に関するこれまでの報告の一覧表のようなものが掲載されていました。ただ、その中で職業的なばく露は、この報告書に使ってある文献のみで、他は職業ばく露以外のばく露、例えば先ほどお話した人工関節に使ってあるコバルトが影響を及ぼしているという話です。コバルトの職業ばく露というもの自体は、通常の業務においてきちんと作業環境が維持されているのであれば、あまり考える必要はないのではという印象は確かにあります。職業ばく露と非職業ばく露が混在しているかと思います。
○圓藤座長 本日、いくつかの物質について、検討すべきである、あるいは検討対象にする必要はないと決めることはできるかと思いますけれども、一部のものについては文献を調べるなり、検討するものがありますので、その作業を宿題として、次回に決めるということでいかがですか。今日決めなくてもいいですよね。
○小永光職業病認定業務第二係長 はい。
○圓藤座長 大体の感覚で×や△にしているのは、どちらかとすると検討対象とすべき必要のないほうになります。○あるいは◎の場合には検討対象になるかもしれませんし、混じっているものもありますので、次回に検討したいと思います。実は、次回のものが非常に多く、残り96物質を検討する必要があります。この25物質と96物質と合わせて検討する必要がありますので、迅速にしたいと思っております。進め方に関して、この方法でよろしいでしょうか。
○武林委員 今日で大体の様子が分かりました。今日のことを考えると、今度物質が増えたときに、もう少し×を多くしてもいいのではないかと思います。
○圓藤座長 そうですね。
○武林委員 例えば、もう非常に古いものについても、念のためにやりましたけれども、それをやらなくてもあまり問題がなければ、次の96物質のときにはそこはバサッとやっていいのか、あるいは同じようにもう少し残したほうがいいのかという、その辺はいかがでしょうか。
○圓藤座長 資料3をもう一度御覧いただきたいと思います。検討の視点ですが、通常労働の場において発症しうるかという視点が1つと、当該物質による症状又は障害として特定していいかというのが2つ目です。それから資料6、通常労働の場において発症しうると医学経験則上評価できるものかどうかとあります。1例しかなくて、これは特異な例であるという場合は△にしていたのですが、最終論として×にしていいのではないかということです。事故的な原因であるものは原則として入れないけれども、ただ弗酸については、私は入れたいという気がしますので、その辺をどういうように考えるかというのはあります。
○武林委員 例えば、弗酸のときの議論は事故的と言うよりは、非定常的な作業で挙がるものと、本当に事故的で挙がるものと実際には異なると思います。弗酸などはむしろ事故的と言うよりは、例えば清掃作業とか、すごく定常的に長い作業ではないけれども、非定常的な作業である可能性もあるので、入れてもいいのかなと思ったりもしました。その辺も読みながら判断できるのであれば、×と△と○の違いみたいなものとしてよければ、そうしたいと思います。
○圓藤座長 資料6をもう一度見ていただきたいと思います。「原則として、次の1及び2に該当する疾病のうち、通常労働の場において発症しうると医学経験則上評価できるものを列挙疾病として規定する」というのは先ほどと同じです。「したがって、症例の報告のあるものでも、それが事故的な原因による疾病や」とありますが、これが今議論したところです。「総取扱量が極めて少ない」、あるいは昔多かったけれども、現在ではまずないというものについては考えると。「少ない化学物質による疾病のように、一般的には業務上疾病として発生することが極めて少ないものは除く」と。現在発症している可能性が低いものは除くと。我が国において症例があったものや、我が国において症例がなくても諸外国において多数報告されているもの、1例だけというものは、原則除いていくという線であるかと思います。そうしますと、どうしましょうか。この25物質について、この辺の見方を見て、担当の2人だけでなくて、みんなで見ていきますか。それとも担当の人が文献などを当たって、もう一度リバイスするという形にしていきましょうか。それでよろしいですか。とりあえず担当の人間が文献を当たらなければいけない場合とか、今の基準でもう一度リバイスして、調整したいと思います。それは独立して評価していただいて、合わなかったものに関しては、次回じっくり議論したいと思いますし、2人が一致したようなものについては、原則としてその方向ですると。この担当以外の方々も、これについて異論があるということがありましたら、意見を出していただくという形で、次回25物質については確定したいと思います。それでよろしいでしょうか。では、そういうようにさせていただきます。次回はこの線で、できるだけ△なしにして、○か×のほうにしていただくような形にしたいと思います。それから、文献は、先生方は入手できますか。
○小永光職業病認定業務第二係長 事務局に言っていただければ、こちらで入手いたします。例えば、平成26年の委託事業の報告の中で出てきているものについては、こちらで入手しているものがたくさんありますので、まずは今回御意見を頂いた中で原著が必要とされたものについては、こちらから提供させていただきますし、必要な文献があればこちらにメールを頂ければ御提供いたします。
○圓藤座長 分かりました。では、そういう形で進めさせていただきます。それでは次回、この25物質を検討したいと思います。事務局で、これについては、評価シートの第2版として修正してもらいましょうか。そして先生方には、もう一度再評価していただけますようお願いします。それから、今回同様、評価シートに理由を記載していただけますようお願いいたします。次回の96物質については、また割振りをしていただけますか。
○小永光職業病認定業務第二係長 はい。それでは、事務局で作成してお送りさせていただきます。
○圓藤座長 これだけ物質が多いと、この委員会の場だけではほとんど進まないと思いますので、宿題として作業をしていただいて持ち寄るということで、時間を省略したいと思います。96物質についても、適当に割振りをしていただきますようお願いいたします。割り振りについて、こちらはとやかく言わないことにいたします。よろしいでしょうか。何か先生方から御意見はありませんか。事務局のほうでも、進め方等で何か発言はありませんか。
○小永光職業病認定業務第二係長 1点すみません。先生方に御依頼をさせていただくに当たって、今回第2版として修正いただくものと、追加でお願いする96物質と、大体どのぐらいの期間を設定すればいいですか。
○圓藤座長 次回は10月31日でしょう。たっぷり時間がありますので、96物質は全部宿題でしょうね。
○小永光職業病認定業務第二係長 では早速、割振りを決めて送らせていただきます。
○圓藤座長 そうですね。早急に割振りをしていただいて、夏休みの宿題として先生方に。
○小永光職業病認定業務第二係長 では、また検討会の1、2週間ぐらい前までに御提出していただくぐらいにさせていただきます。
○圓藤座長 そうですね。
○小永光職業病認定業務第二係長 また、25物質のほうは、事前に少し調整などもしていただいたほうがよろしいですか。
○圓藤座長 どうしましょう。それぞれやるときはやりますね。
○野見山委員 これは1回やって、もう1回チェックをするというパターンでいくのか、それとも一気に96物質をやってしまうということですか。
○圓藤座長 25物質に関しては、今日あらかたザッとやりましたよね。そしてどれも決めていないのですけれども、次回は決めたいと思っています。96物質に関しても次回、全体をザッと見たいと思います。
○野見山委員 一気に。
○圓藤座長 いや、全体は見ますけれども決めない。次々回に96物質を決めたい。
○野見山委員 そうすると、3回ぐらいで行ってしまうということですか。
○圓藤座長 それぐらいでないと間に合わないでしょう。
○小永光職業病認定業務第二係長 今回は決めるといっても、あくまでも本分科会で検討いただく物質を選定いただくということで、検討対象にならないものを省いていただくという趣旨です。そこから実際に検討対象に上がったものについては、どういう症状名で告示に載せるかというのは、その後の第3回以降でご検討をお願いしたいと思っています。
○野見山委員 では、早めにやっておかないといけないということですね。
○圓藤座長 そう。
○野見山委員 分かりました。
○圓藤座長 だから96物質は、一気にやる必要があるかなと思ったのです。
○角田委員 今日は3時からでしたけれども、2時半からで間に合いますか。今日、25物質で一時間半ぐらいだったのに。
○武林委員 もう××はどんどん切るのだったらできると思います。今日、×に近いものが大体何となく分かりましたから、結構一致するのではないかと思うのです。そうしたらもう一気に。
○圓藤座長 今回は慎重にやりましたし、一つ一つ発言、説明していただくことにしましたけれども。
○圓藤座長 大体、先生方と意見が一致しないものはあまりなかったと思います。議論すべき物質は限られるのではないかと思いますので、できるだけ急いでやりたいと思います。そういうことでよろしいですか。そうすると、取りあえず25物質に関しての締切りは早くしておいていただけますか。
○小永光職業病認定業務第二係長 分かりました。
○圓藤座長 3つに分けられますよね。それをきれいに分けられるような整理を事前にしておいて、次回の委員会で決めたいと思います。そこの部分はそんなに議論をしなくても済むのかなと思っています。96物質については、ある程度ギリギリにならざるを得ないかと思っています。
○小永光職業病認定業務第二係長 はい、分かりました。そのように作成をして送付させていただきます。
○圓藤座長 そういうことで、私のほうからの議論は終了したいと思います。あと、次回の日程等を事務局から御説明願いたいと思います。
○秋葉中央職業病認定調査官 改めて次回の日程ですが、既に日程調整させていただいており、10月31日の木曜日となっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。本日はお忙しい中お集まりいただき、御検討いただきましてありがとうございました。
○圓藤座長 どうもありがとうございました。