2019年8月1日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和元年8月1日(木)17:00~

場所

新橋8E会議室(8階)

出席者

出席委員(18名)五十音順

(注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(3名)

行政機関出席者

 樽見英樹(医薬・生活衛生局長)
 森和彦(大臣官房審議官)
 山本史(医薬品審査管理課長)
 関野秀人(医薬安全対策課長)
 新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
 森口裕(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
 宇津忍(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
 鈴木章記(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役) 他

 

 

議事

○医薬品審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催させていただきます。本日は暑い中、また、お忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。本日の委員の出欠についてですが、佐藤委員、武田委員、平石委員より御欠席との連絡を頂いております。また、石川委員より少し遅れて御到着との御連絡を頂いております。本日は現在のところ、当部会委員数21名のうち17名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告申し上げます。

 続いて、事務局に人事異動がありましたので、御紹介申し上げます。厚生労働省医薬・生活衛生局長として着任しております樽見でございます。

○医薬・生活衛生局長 7月9日付けで局長を拝命しました樽見でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○医薬品審査管理課長 続いて、部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について御報告申し上げます。今回、全ての委員の皆様より薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいております。委員の皆様には会議の開催の都度、書面での御提出をお願いしており、大変御負担をお掛けしております。恐縮ではございますが、引き続き、御理解、御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 それでは、杉部会長に、以降の進行をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○杉部会長 それでは、本日の審議に入りたいと思います。まず、事務局から配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告を行っていただきたいと思います。

○事務局 それでは、配布資料の確認を順番にさせていただきます。机上に議事次第、座席表、座席表の裏面に部会の委員名簿を配布しております。また、議事次第に記載されている資料1から資料10をあらかじめお送りさせていただいております。会議のペーパーレス化に向けた取組として、本日の部会では、あらかじめお送りした紙資料と同様の内容の電子ファイルをタブレットに格納し閲覧していただけるようにするとともに、机に配布する紙資料を、審議品目に係る諮問書、審査報告書及び添付文書とさせていただいております。

 このほか、資料11として、審議品目の薬事分科会における取扱い等の案を配布し、タブレット内には、資料12として、各審議品目に係る専門協議の専門委員リスト、資料13として、競合品目・競合企業リストを格納しております。また、当日配布資料として、「過去の部会審議品目に係る部会委員の利益相反について」を配布しておりまして、タブレット内にも同じものを格納しております。なお、タブレットの動作不良等がありましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し付けください。

 続いて、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告させていただきます。資料13の1ページを御覧ください。「リティンパ耳科用250μgセット」ですが、本品目は鼓膜穿孔を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから競合品目はなしとしております。

 2ページ目を御覧ください。「ハルロピテープ8mg、他4規格」ですが、本品目はパーキンソン病を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載している品目を競合品目として選定しております。

 3ページ目を御覧ください。「フィアスプ注フレックスタッチ、他2規格」です。本品目はインスリン療法が適応となる糖尿病を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に記載の品目を競合品目として選定しております。

 4ページ目を御覧ください。「ビルトラルセン」です。本品目はエクソン53スキッピングにより治療可能なジストロフィン遺伝子の欠失が確認されているデュシェンヌ型筋ジストロフィーを予定効能・効果としており、同様の効能を有する薬剤として、資料に記載の品目を競合品目として選定しております。以上でございます。

○杉部会長 今の事務局からの説明に、何か特段の御意見等はありますでしょうか。特にないようですので、それでは、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様方の了解を得たものとしたいと思います。

 それでは、委員からの申出状況について報告をお願いします。

○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりとなっております。議題1、リティンパについては、退室委員、議決に参加しない委員ともになしです。議題2、ハルロピは、退室委員なし、議決に参加しない委員は大森委員、代田委員、長島委員です。議題3、フィアスプは退室委員なし、議決には参加しない委員は代田委員です。議題4、ビルトラルセンも同様に、退室委員なし、議決に参加しない委員は代田委員です。以上でございます。

○杉部会長 今の事務局からの説明に、特段の御意見はありますでしょうか。よろしければ、皆さんに御確認いただいたものといたします。

 議題に入る前に、事務局から過去に本部会で審議した品目に関して説明があります。よろしくお願いします。

○事務局 それでは、当日配布資料、過去の部会審議品目に係る部会委員の利益相反についてを御覧ください。タブレットのほうですと、一番上のファイルになります。薬事分科会の審議参加規程上、申請企業又は競合企業から50万円を超えて500万円以下の寄附金・契約金等の受取があった委員については、分科会等へ出席し意見を述べることはできますが、当該審議品目についての議決には加わらないこととなっております。

 今般、この規程に抵触する事案が発生しましたので、今回御紹介させていただきます。事案の概要としては、前回5月の医薬品第一部会で審議されたロナセンテープ大日本住友において、代田委員より大塚製薬から50万円を超えて500万円以下の寄附金・契約金等を得ているという申告がありましたが、その後、大塚製薬株式会社に確認したところ支払いはないとの報告を受けたため、当該委員に再度確認し、受取なしと変更する旨の御連絡を頂き、最終的に受取なしとして取り扱っています。しかし今般、今回の部会の開催に際しまして、別品目に関連して利益相反の確認を委員及び企業に対して行ったところ、企業から50万円を超えて500万円以下の支払いがあったという報告がありました。

 この件についての承認の可否への影響になりますが、当該品目の議決では、全員の委員より承認を可としてよいとの御判断を頂いておりましたので、当該委員が議決に加わらなかったとしても当該品目の承認の可否に影響はないと考えております。

 最後に改善策ですが、今回の事案発生の原因を確認の後、再発防止のための注意喚起の文書を作成し、今後、利益相反の申告や確認を依頼する度に、製薬企業及び委員の皆様に周知をさせていただきたいと考えております。以上でございます。

○杉部会長 分かりました。今の事務局からの説明に、何か御意見等はありますでしょうか。代田委員の最初の申告のとおりだったということです。

 次に、本日は審議事項が4議題、報告事項が5議題、その他1議題となっております。それでは、審議事項の議題1に移ります。議題1について、機構から概要を説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料1、医薬品リティンパ耳科用250μgセットの製造販売承認の可否等について、機構より御説明させていただきます。紙資料は資料1の審査報告書を御覧ください。タブレットについては資料1のフォルダを開いていただいて、★印の付いている審査報告書ファイルを御覧いただければと思います。

 審査報告書の3/25ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧いただければと思います。鼓膜穿孔は、中耳炎、鼓膜チューブ挿入術等が原因で生じ、通常は自然に閉鎖しますが、自然閉鎖が認められないものに対しては、自家組織を鼓膜穿孔部位に移植する鼓膜形成術等が行われます。しかし、鼓膜形成術等においては、侵襲性や聴力の低下などの課題があります。

 本剤は、遺伝子組換え技術により製造した塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)であるトラフェルミン(遺伝子組換え)を有効成分とする用時溶解の外用剤です。本剤を適用することによって、鼓膜の上皮層に存在するbFGF受容体に作用することで、上皮下結合組織の迅速な増殖を促し、穿孔した鼓膜を修復するということが期待されております。今般、国内で実施されました医師主導治験成績に基づいて、本剤の製造販売承認申請がなされました。なお、海外において、本剤が承認されている国又は地域はありません。

 本品目の審査に関して、専門委員として、資料12に記載されている5名の委員を指名いたしました。

 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明させていただきます。まず、有効性について、10/25ページ、7.1.1の国内第III相試験の項を御覧ください。本剤の有効性及び安全性を検討する目的で、自然閉鎖が見込まれない鼓膜穿孔を有する患者を対象とした非盲検非対照試験が実施されました。有効性の主要評価項目としては、観察期16週目における鼓膜閉鎖割合とされました。

 結果については、11/25ページの一番上の段落を御覧ください。観察期16週目における鼓膜閉鎖割合は75%であり、その95%信頼区間の下限は、事前に規定された有効性の閾値である50%を上回ったことから、本剤の有効性は示されたと判断いたしました。

 安全性については、同じページの上から2段落目を御覧ください。本試験において、65%の患者に有害事象が認められましたが、重篤な有害事象等は認められませんでした。また、因果関係が否定できない有害事象が30%の患者に認められましたが、認められた事象はいずれも耳漏でした。以上から、本剤の安全性に特段の問題はないものと判断いたしました。

 以上のような検討を行った結果、本剤は鼓膜穿孔における新たな治療選択肢を提供するものであり、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新投与経路医薬品であることから、再審査期間は6年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○杉部会長 ありがとうございます。委員の先生方から、何か御質問、御意見はありますでしょうか。

○長島委員 2点あります。1点目は、本剤と手術の使い分け、位置付けについてを、2点目は、小児患者に関して市販後臨床試験の必要性はないかということをお聞きします。1点目の本剤と手術の使い分け、位置付けですが、添付文書()の効能・効果に関連する使用上の注意の項を見ると、自然閉鎖が見込まれない患者で、同項の2、3で投与しないとされている患者以外は、一応、対象になると考えられますが、この場合に、従来行われている手術的治療と本剤で治療効果を比べたものがあるのか。あるいは、どういう使い分けになると想定されているのかということを教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 1点目の御質問について、まず、投与対象として、自然閉鎖が見込まれない患者さんとすることについては、既存の術式と同じです。

 添付文書() の効能・効果に関連する使用上の注意の項の2についてですが、鼓膜が障害されていて、障害部位によって鼓膜の再生が期待されない場合は、この薬剤の有効性が期待できないため投与しないことと記載しております。この点については、本剤特有の事項になっておりますので、このような患者でも既存の術式であれば有効性が期待できる場合もあると考えています。

 同項の3についての鼓膜あるいは鼓室内の環境がよくないときには投与しないことという趣旨の記載ですが、既存の術式でも投与は推奨されないということは同じです。

 以上より、投与対象については、既存の術式及び本剤に大きな違いはありませんので、患者への侵襲性の程度等を考慮して、既存の術式と本剤のどちらを選択するかは臨床現場で判断されるものと考えております。

○長島委員 その選択の理由が、例えば手術の経験が余りないからとかということになっても困りますので、この辺、やはり学会等で手術と本剤の位置付けというものもきちんと検討していただいて、一定の指針等を出することが可能であれば、今後、是非検討していただきたいと思います。手術が苦手だから本剤を選ぶというようなことがあっては困るということです。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。頂いた御指摘を踏まえて、検討させていただきます。

○長島委員 もう1点、小児患者については第III相試験で20歳未満が除外されていたということで、小児への安全性が確立していないということになっておりますが、一応本剤は小児への投与も可能ではあるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 今、御指摘を頂いたように、国内第III相試験の中では、20歳未満の患者は除外されておりました。ただ、第III相試験に先行して実施された臨床研究の中では、20歳未満の患者に対する投与経験はあるという状況です。その中で、安全性については、成人の患者と小児の患者で特に違いはなかった結果が得られております。したがって、添付文書上でも用法・用量において「成人」という記載は付けておらず、小児の患者に対する投与も可能というような理解です。

○長島委員 ただ、安全性は確立していないということで、市販後も小児に対する安全性の調査は必要であるという計画になっているかと思いますが、そこのところをきちんと、例えば臨床試験という形でしっかり行う必要性はないでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 現状としては、今、御指摘いただいたように、小児の患者さんに対する有効性及び安全性を検討するような形での市販後調査を計画しているところです。今回、計画するに当たって、小児の有効性を評価するために国内第III相試験の結果を小児でも再現できるかどうかという趣旨の中で症例数を設定しておりますので、臨床試験ではないのですが、ある程度有効性が検討できる調査計画にはなっているのではないかと考えています。

○長島委員 だから、添付文書から小児等に対する安全性は確立していないという記載が省けるようなしっかりした調査が行われることが望ましいと思いますので、その辺の検討をよろしくお願いいたします。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。検討させていただきます。

○杉部会長 ありがとうございます。ほかの先生はいかがでしょうか。

○柴田委員 添付文書()の用法・用量に関連する使用上の注意の項に、本剤の投与4週後を目安に効果の有無を確認し、うんぬんということが書いてあります。これはごもっともな指摘だと思いますが、一方で、最終的に有効性が見られた75%の患者は、1回目の投与の時点で、既に改善傾向が見られていたのでしょうか。つまり、どのぐらいのタイミングで改善傾向が見られて最終的に有効という判断をされたのかという情報がなければ、判断の目安がないのではないかなと思ったのですが、どうでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘の点は非常に重要と考えています。ただ、今回の臨床試験の中で収集した情報としては、最後に投与したときの鼓膜閉鎖割合をデータとして取っているということで、投与回数毎の孔の狭まり具合というのでしょうか、それについては具体的なデータとしては取っていないという状況です。したがって、具体的にデータに基づいた記載はなかなか難しいところではあるのですが、今までの既存の術式等の経験から、効くような患者であれば、回を追うごとに孔が小さくなっていくという傾向は当然見られるということは専門協議でも御意見を頂けましたので、そういったデータに基づくところではないのですけれども、専門委員からの意見も踏まえて、このような記載にしています。

○柴田委員 分かりました。

○杉部会長 よろしいでしょうか。ほかの先生はいかがでしょうか。非常に成績がいいような印象を受けますが、特にほかに質問はありませんでしょうか。ありがとうございます。それでは、議決に入りたいと思います。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。はい、どうもありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告をさせていただきます。

 それでは、議題2に移ります。議題2について、機構から概要を説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料2、医薬品ハルロピテープ8mg、他4規格について、機構より説明させていただきます。紙資料は、資料2の審査報告書を御覧ください。タブレットは、資料2のフォルダを開き★印の付いている審査報告書ファイルをお開きください。

 審査報告書の一番下、全46ページの通し番号で3ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤は、非麦角系ドパミンアゴニストであるロピニロール塩酸塩を有効成分とするパーキンソン病の治療薬です。ロピニロール塩酸塩の経口剤は、既にパーキンソン病の治療薬として国内外で承認されていますが、パーキンソン病患者では、摂食・嚥下障害や自律神経症状としての消化管運動障害が多く見られるため、そのような症状を呈する患者にも容易に投与が可能であり、安定した治療効果が得られる製剤を目指して、経皮吸収型製剤である本剤が国内開発され、今般、国内臨床試験成績に基づき、製造販売承認申請されました。

 本品目の審査に関して、専門委員として資料12に記載されています委員を指名しました。

 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明します。有効性について、審査報告書の通し番号23ページ、7.3.1、L-DOPA併用第III相試験の項を御覧ください。本剤の有効性及び安全性をプラセボ及び有効成分が本剤と同一の経口剤である既承認のロピニロール塩酸塩徐放錠と比較する目的で、L-DOPAで治療されているパーキンソン病患者を対象とした無作為化二重盲検試験が実施され、パーキンソン病の運動機能の評価指標であるUPDRS partIII合計スコアにより、有効性が評価されました。主要評価項目は、投与16週時におけるUPDRS partIII合計スコアのベースラインからの変化量とされました。審査報告書の通し番号25ページ、表25に示しますように、本剤群でプラセボ群と比較して有意に大きい改善が認められた上で、徐放錠に対する本剤の非劣性が示されました。

 続いて、安全性について御説明します。審査報告書の通し番号25ページ、表26を御覧ください。ドパミンアゴニストに共通する特徴的なリスクである悪心及び嘔吐、精神症状等を含め、貼付部位の有害事象以外の有害事象の発現状況について、ロピニロール塩酸塩徐放錠を上回る懸念は示されなかったことから、当該徐放錠と同じく、既存のドパミンアゴニストと同様の注意喚起を行うことで対応可能と判断しました。また、臨床試験で認められた貼付部位の有害事象については、その重症度、中止例、転帰等を踏まえると、皮膚刺激を避けるため貼付部位を毎回変更するなどの注意喚起を行うことで、許容可能なリスクと判断しました。

 以上のような検討を行った結果、パーキンソン病治療における新たな選択肢を増やす薬剤であり、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断しました。本剤は新投与経路医薬品であることから、再審査期間は6年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、製剤は劇薬に該当すると判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○杉部会長 ありがとうございました。委員の先生方から、何か御質問、御意見はありますか。

○大谷委員 こちらですが、経口製剤は開発されてから10年以上たつ薬剤かと思いますが、代謝経路が1A2ということで、喫煙等による影響というのはどれぐらいの情報が蓄積されているのか、またそういった内容が、経口剤も含めて添付文書に反映されていくような予定はないのかということをお伺いしたいのです。特に、喫煙から禁煙した場合に、実際に副作用が出ているような症例も、幾つか報告されているように伺っていますけれども、いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。現在のところ、経口剤で得られている以上の情報というのは、特に得られていません。

○大谷委員 経口剤も含めて、1A2と喫煙の関係というのは割とほかの1A2の基質ではよく見られているのですが、こちらは経口剤のほうにも多分書かれていないようなので、そちらとの統一性ということもあるのかもしれないのですが、経口剤のほうで、そういった情報がある程度蓄積されているのであれば、これを機に経口剤並びに今回の貼付剤について、併せて情報等を添付文書に載せていくということも必要なのではないかと思いまして、ちょっと質問させていただいた次第です。

○審査第二部長 お教えいただきありがとうございました。おっしゃるように、既存のお薬のこともありますので、既承認薬の添付文書を担当している安全部とよく相談して、今後検討したいと思います。ありがとうございます。

○杉部会長 よろしいですか、大谷先生。そのほか特にありますか。

○大森委員 添付文書の4ページに小児等への投与というのがあって、ここに低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない、使用経験がないとなっているのですが、ちょっとここの意図がよく分からなくて、低出生体重児や新生児、乳児に投与するというのは、そもそもあり得ないことなので、どういう意図でここが入っているのかなと思ったのです。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。御指摘のとおり、基本的に本剤は、特に小児の患者さんへの投与はあまり想定されませんが、記載要領に従ってこのような記載となっています。

○大森委員 先ほどの1つ前の審査などでも、小児に対する安全性というような文言はあったのですが、ここはそれに加えて低出性体重児、新生児、乳児と、何か強調されているところが何となく不自然な感じがするのですが、これが通常の表記なのでしょうか。

○医薬安全対策課長 確かに記載要領では、原則、こういった小児に関連するような記載、標準的な書き方として、こうした新生児も含めて書くような形での記載を求めていますが、それは多分、薬剤によってケースバイケースで、やはり現実的なところで、リアリティを持って考えていただいてもいいという余地はあると思います。これについても、もう少し妥当な範囲でやるという余地は、当然記載要領でも求めていますので、そこはこの剤に適切な範囲での記載ということで、また御意見を踏まえて検討も可能ではないかと思っています。

○杉部会長 御指摘ありがとうございました。

○長島委員 貼付剤特有の問題として、局所の皮膚症状に加えて、添付文書()の基本的注意の7に「貼付してある製剤を除去せずに新たな製剤を貼付した場合、本剤の血中濃度が上昇するため、貼り替えの際には先に貼付した製剤を除去したことを十分に確認する」というのがありますが、小児鎮痛の湿布などでは、本人が忘れていることは、よく耳にするものですから、ここは患者向けの資材等で、是非強調していただきたいと思います。

○医薬品医療機器総合機構 承知いたしました。患者向け資材を作成予定ですので、この点については注意喚起予定ではありますが、改めて十分、かつ正確にしたいと思います。

○杉部会長 御指摘ありがとうございました。そのほかはいかがでしょう。

○柴田委員 審査報告書の通し番号の29ページに書いてある割付ミスの件について、事実関係を教えてください。これは割付比2:2:1を間違えて、1:1:1としてしまったというものですが、機構の見解として、ここに書いてあることは妥当だと思うのです。「本来であれば割付ミスが発見された時点で試験を中止し、適切な試験を新たに実施すべきであった」と書いてあるのですが、タブレットの資料2-1の2.5、臨床に関する概括評価の12ページを見ますと、この割付のミスが分かったときに、「医薬品○○面談を行い、機構からの助言に基づき治験を中断した」「治験再開の可否について医薬品○○面談を行い」「機構と合意し試験を再開した」と書いてあります。事実関係として、この申請資料の中に書いてある表現が正しいのであれば、機構としては、理想的にはその時点で止めるべきだったけれども、継続したこと自体はあらかじめ納得の上で、継続することに同意していたという解釈で正しいですか。

○医薬品医療機器総合機構 そのとおりです。本来であれば、中止すべきという点についても、その時点で申請者には伝えています。

○杉部会長 そのほかいかがでしょうか。

○石川委員 突発性睡眠がよく問題になっています。それは、この副作用のリストには載っていなかったのですが、そういうところはどうでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘のとおり、ドパミンアゴニストで特徴的な有害事象の1つであります。今回の臨床試験の中では、発現状況については徐放錠と変わらない、特に本剤で強くその症状が出るという結果ではありませんでした。ただ、注意喚起については、添付文書の最初のページに赤枠でお示しさせていただいているように、警告として運転等はしないというような注意喚起をさせていただいています。

○石川委員 経口の徐放剤と比べて少なかったなど、そういう差は分からなかったのですか。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。審査報告書、通し番号32ページの下段の段落を御覧ください。こちらに各試験での突発的睡眠の有害事象の発現状況を記載しています。経口剤との比較が可能なのはJP-06試験です。ここについては、本剤群2例、徐放剤群1例ということで、現時点で経口剤を上回るほどのリスクは示唆されていないという評価をしています。

○杉部会長 よろしいでしょうか。そのほかはありますか。いろいろ御指摘いただいて、それにお答えいただきました。

 それでは、議決に入りたいと思います。大森委員、代田委員、長島委員におかれましては、利益相反に関する申し出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくこととします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。

 議題3に移りたいと思います。議題3について、機構から概要を説明してください。

○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料3医薬品フィアスプ注フレックスタッチ他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。タブレットの資料3のフォルダをお開きいただき、審査報告書のファイルをお開きください。

 本剤は、インスリンアスパルト(遺伝子組換え)を有効成分とするBolusインスリン製剤です。本邦では、同一有効成分のインスリン製剤として、ノボラピッド注フレックスペン等が承認されていますが、本剤は添加剤としてニコチン酸アミドを処方に加えることで、ノボラピッドと比較して本薬の皮下投与後初期の吸収を速め、インスリン作用の発現を速めた薬剤です。

 インスリン作用の発現が速くなることにより、本剤は食事開始後でも投与が可能となるBolusインスリン製剤として期待され、申請者より開発が行われました。なお、本剤は2019年6月現在、欧米を含む43か国で承認されています。

 本品目の専門協議では、資料12に示す先生方を専門委員として指名させていただいています。

 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床成績を中心に説明させていただきます。有効性については、審査報告書24ページの表23を御覧ください。Basal-Bolus療法を実施中の成人1型糖尿病患者を対象に、本剤の食事開始前の2分以内に投与とする食前投与、若しくは食事終了時又は食事が20分で終了しない場合は食事開始後20分時に投与とする食後投与、又はノボラピッドの食前投与をする国際共同第III相試験が実施されました。その結果、主要評価項目であるベースラインから投与26週時までのHbA1c変化量について、本剤食前投与群及び本剤食後投与群のノボラピッド群に対する非劣性が示されました。

 また、審査報告書28ページの表30を御覧ください。Basal-Bolus療法を実施中の小児1型糖尿病患者を対象に、本剤の食事開始前の2分以内に投与とする食事投与、若しくは食事開始後20分時に投与とする食後投与、又はノボラピッドの食前投与をする国際共同第III相試験が実施されました。その結果、主要評価項目であるベースラインから投与26週時までのHbA1c変化量について、本剤食前投与群及び本剤食後投与群のノボラピッド群に対する非劣性が示されました。

 以上から、本剤について食前投与だけでなく食後投与も含めて、一定の有効性は示されていると判断しました。一方で、ベースラインから投与26週時までのHb1Ac変化量等について、本剤食後投与群と比較して、本剤食前投与群で良好な結果が認められていることから、当該結果を踏まえた本剤の用法・用量については、後ほど御説明させていただきます。

 安全性については、審査報告書の42ページの下段の「機構は」から始まる段落を御覧ください。本剤の安全性について、各第III相試験において発現している主な事象はノボラピッドで既知の事象であり、低血糖等の個別の事象について検討した結果から、適切な注意喚起等がなされることを前提とすれば、本剤の食前投与及び食後投与の安全性は許容可能と判断しました。

 本剤の用法・用量については、審査報告書の50ページの中段の「機構は」から始まる段落を御覧ください。有効性の説明の中でお話させていただいたとおり、国際共同第III相試験のHb1Ac変化量、食後1時間の血糖増加量の変化量等の結果を踏まえると、本剤食後投与群に比べて、本剤食前投与群で良好な血糖コントロールが得られていること等から、本剤の推奨する投与タイミングとして、通常は食事開始時(すなわち食事開始前の2分以内)の投与とするが、必要な場合は食事開始後の投与とすることもできる旨の用法とすることが適切と判断しました。

 以上のとおり、機構での審査の結果、インスリン療法が適応となる糖尿病を効能・効果として、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断しました。本剤は、新剤形医薬品としての申請であることから、再審査期間は4年、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

○杉部会長 ありがとうございました。何か先生方から、御質問、御意見はありますか。

○堀委員 この薬の剤形についてお尋ねします。今、机の上にバイアルの1,000単位とペンタイプのもの300単位があります。患者の立場からすると、ペンタイプのものは非常に使いやすいと思うのですが、この1,000単位のタイプがあるメリットというのを教えていただけますか。

○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。添付文書()を御覧ください。添付文書()はフレックスタッチ及びペンフィルとバイアルとで分かれていますが、バイアルの添付文書()を御覧ください。バイアル製剤の用法・用量には、インスリンポンプを用いた用法や糖尿病昏睡等の場合に病院で静脈内注射を行う用法も含まれています。このような場合には、バイアル製剤のほうが製剤として使いやすいため、バイアル製剤についても承認申請されているところです。

○堀委員 なるほど。ポンプを使って投与するというのは私も分かるのですが、結局退院後に、患者が自分で投与する場合は、一般的に、こちらのフレックスタッチを使うということなのでしょうか。それとも、こちらのバイアルを常用するということなのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。患者さんが自身で皮下投与する場合は、ペンタイプのフレックスタッチを用いて投与、又はカートリッジタイプのペンフィルを別途販売している専用のペン型注入器に取り付けて投与するのが一般的かと思います。

○堀委員 では、バイアルを使うのは、さっきおっしゃっていた場合のみということでよろしいのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 1点補足をします。日本では非常に限られているのですが、バイアル製剤からインスリン専用の注射器を用いて皮下投与することも可能です。したがって、バイアル製剤が全く皮下投与には使われないというわけではありません。

○堀委員 分かりました。

○森委員 臨床医から補足させていただきます。歴史的には、このような使い捨てペンなどが普及する前は、こういったバイアルに入っているインスリンを、インスリン用の注射器で吸って空気を抜いて患者さん自身のお腹に打つということが実際に行われていましたが、近年では、大変少なくなってきています。ただし、実はコスト面ではこちらを注射で吸って注射するほうが、大分安くなるということもあり、一部の患者さんで全く行われていないわけではありません。しかし、もう大多数の御自分で注射している患者さん方は、このような使い捨てペンをお使いになるか、このカートリッジを入れて使うペンで注射をされているという状況です。したがいまして、こういったバイアル製剤を使う場合は、インスリンポンプのカートリッジに充填する際に使うか、ないしはノボラピッドは点滴内の混注は認められていますので、従来ヒトインスリンとノボラピッドだけが認められていますので、ノボラピッドのバイアル製剤を使って点滴に入れる場合もあり得るということです。

○堀委員 ありがとうございます。そうしますと、私ども患者としては、どうしてもお金を払う立場なので、診療報酬の薬剤の点数が低いという点では、こちらのバイアルのほうが低いと考えてよろしいのでしょうか。

○森委員 単一用量辺りの薬価は低いということです。

○堀委員 分かりました。ありがとうございます。

○杉部会長 森先生、分かりやすい御説明ありがとうございました。そのほか何か御質問はありますか。

○長島委員 臨床的位置付け及び既存薬との使い分けについて教えていただきたいのです。審査報告書の56ページに審査内容の臨床的位置付けで、食事のタイミングが予測できない場合や高齢者等で事前に食事量の予測が困難な場合では、食後の投与が適している状態もあるということで、もともと期待されていたところもこの点かと思うのです。添付文書では、そのことは特に書いていないので、どんな場合でも使えるということになると思いますが、こういう場合に使うのが望ましいとか、こういう場合にいいなどということを、何か資材等で説明される予定でしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。機構より御説明いたします。添付文書の用法・用量に関連する注意の項では、食後投与については臨床試験成績等を踏まえた上で、患者の状態に応じて判断することと記載させていただいています。医療従事者向け資材では、具体的な「患者の状態」の例示を挙げることで、どういったときに食後投与が必要かというのが伝わりやすくなるように工夫させていただく予定です。

○長島委員 既存のもので、食前の投与で問題がないような人が、これに切り替えるようなメリットはない、あるいはメリットはあるといった、その辺りはいかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。ノボラピッド注で、きちんとコントロールができている患者さんについては、そのままノボラピッド注を使われることがあるかと思います。一方、生活習慣の中で食後投与が必要な場合等が考えられる患者では、フィアスプ注が用いられることもあると思います。

○長島委員 これに切り替える前に、既存の薬と併用するということもあり得るのでしょうか。完全にこれに切り替えるということになりますか。

○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。食事時のインスリンとしては、基本的には切替えになると想定しています。

○杉部会長 御質問ありがとうございました。そのほかは。

○大谷委員 質問と言いますか、ちょっとコメントです。前のときもそうなのですが、この超速効といった文字をもう少し大きくできないのかなという気がします。特に糖尿病の患者さんですから、当然視力も落ちていますし、私ぐらいの年代でも、ここに書いてある「食事開始時又は後」などは、なかなか見にくいなというのがあるので、ここはもうちょっと工夫できないのかなという、これはコメントです。

○医薬品医療機器総合機構 御意見いただきありがとうございます。製剤見本のラベルの所かと思いますので、企業に御意見を伝えさせていただきます。

○森委員 今回のこの製剤は、食直前に注射する場合2分以内という「食事開始時」という用語が初めて使われている添付文書になっていますので、説明資材等でも、その2分以内ということが十分伝わるように御配慮いただけると思っています。従来のノボラピッドは、「食直前」という言葉で、「食直前」と「食事開始時」というのは日本語では余り変わらないのですが、一応これは医学用語として、5分、10分前と2分以内というニュアンスを伝えなければいけないので、そこのところをお願いしたいと思っています。

 もう1点、今回のこの臨床試験では、同一の患者さんが食事の開始時に注射した場合や食事を始めて20分以内のところを、入れ替わり使ったという試験はないようなのです。実際の患者さんでは、食事開始時にも使うし、時々食後にも使うということがありそうなので、試験データとしては不足気味かなと思ったのですが、ノボラピッドから切替えをするときに、食事開始時群と食後群にランダム化で分けられていて、その後の投与量は同一量で両群割り付けられて、特に問題なく使えていたということなので、おおむね変わりないということが担保されていると思いますが、それでよかったのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。機構より御説明いたします。最初の食事開始時の時間の説明については、資材で今までの超速効型の投与タイミングとは異なることも分かるように工夫させていただく予定です。

 臨床試験のデザインについては、御指摘のとおり、実際に使われるときは食前と食後と、患者さんの状態に応じて組み合わせて使われると考えています。一方臨床試験では、食前投与と食後投与の有効性、安全性を比較するという観点で、それぞれの群に割り付けて検討しており、実際の医療現場での使われ方とは少し違うかと思いますが、おっしゃるとおり、ノボラピッドからの切替え後に本剤食前投与群と本剤食後投与群の両群とも血糖コントロールの結果は非劣性の範囲には入っていますので、問題はないかと思っています。

○杉部会長 森先生、よろしいでしょうか。

○森委員 これは臨床の補足的なことになりますが、私ども糖尿病の患者さんを拝見していますと、例えば妊婦の方でつわりのときに、食事の量はかなり変動が大きいのですが、1型の方もおられますので、やはり食事の取り具合を見ながら調整できると大変有り難いと思います。また、消化器系や膵臓などの手術をした後にも、食事量が毎回変動する方が多々おられまして、食べる前は平気かなと思っても食べ始めたらもうすぐにお腹いっぱいという方もおられるものですから、このように少し食べた後に注射ができるというのは、とても臨床的には有能なものではないかと思っています。

○杉部会長 御指摘ありがとうございます。そのほかはよろしいですか。いろいろ御指摘も頂きまして、ありがとうございました。

 それでは、議決に入りたいと思います。なお、代田先生におかれましては、利益相反に関する申し出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として、薬事分科会に報告をさせていただきます。

 それでは、議題4に移りたいと思います。議題4について、事務局から概要を説明していただきたいと思います。

○事務局 議題4、資料4のビルトラルセンを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。タブレットの資料4のフォルダをクリックしていただきまして、2の事前評価報告書のファイルをお開きください。

 1ページ目ですが、申請者は日本新薬株式会社、予定される効能・効果は、エクソン53スキッピングにより治療可能なジストロフィン遺伝子の欠失が確認されているデュシェンヌ型筋ジストロフィーになります。

 まず、希少疾病用医薬品の3要件のうち、1つ目の対象患者数について御説明いたします。デュシェンヌ型筋ジストロフィーですが、指定難病である筋ジストロフィーのうちの病型の1つになります。本邦でのデュシェンヌ型筋ジストロフィーの総患者数は約5,000人と推計されていまして、本剤の投与対象となる遺伝子変異を有する患者さんが、そのうちの約8%と報告されていることから、本邦における本剤の投与対象患者数は約400人と推計されます。以上より、患者数が5万人未満という基準を満たしているものと考えております。

 続きまして、2ページ、2つ目の要件の医療上の必要性について御説明いたします。現在、本邦において、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの根本的な治療薬は承認されておりません。エビデンスが得られている唯一の治療法として、プレドニゾロンが承認されていますけれども、長期的な予後の改善に関するエビデンスが乏しく、副作用も存在することから、新たな治療薬の開発が望まれております。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に、3ページ目、開発の可能性について御説明いたします。国内の第I/II相試験及び米国第II相試験において、本剤投与により、本剤80mg群で投与前と比較して、ジストロフィンタンパクの発現につきまして、有意な増加が認められています。また、本剤の有効性を検証するための第III相国際共同治験が2019年9月に開始される予定となっております。以上より、本剤の開発の可能性は高いと考えております。

 以上のことから、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○杉部会長 ありがとうございました。先生方から何か御質問、御意見はございますか。

○赤羽委員 必要性は非常によく分かるのですが、1点だけ微かな危惧です。添付資料の代謝動態分布の所で11ページか12ページ辺りでしたか、腎臓に比較的濃度が高いという記載があったかと思います。どれぐらいの蓄積量がそこであるかということに関して少しだけ心配するのは、オフターゲット作用みたいなものが、もしかして濃度が高くなると何か起こったりする可能性はないかなというところで、その点についてはいかがでしょうか。

○事務局 御指摘ありがとうございます。こちらは御指摘のとおり、薬理作用に関する資料のオフターゲット遺伝子の発現変動解析の所で、腎細胞の発現量が出ています。今のところ、ヒトにおける明らかなリスクは認められなかったと記載されていますが、今回は承認申請の可否というわけではなく、今後、申請資料をそろえていただいて、第III相の共同治験が終わった後にまた申請いただきますので、その審査の中で適切に対応させていただきたいと考えております。

○赤羽委員 ありがとうございます。

○杉部会長 そのほか、先生方から何か御意見ありますでしょうか。希少疾患ということで指定をということですが、よろしいですね。議決に入りたいと思います。なお、代田先生におかれましては、利益相反に関する申し出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことにいたします。本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは、報告事項及びその他事項に移りたいと思います。よろしくお願いいたします。

○事務局 報告事項の議題1から議題3につきまして、事務局からまとめて説明させていただきます。

 報告議題1ですが、資料5の報告様式1のアフィニトールです。本剤は、エベロリムスを有効成分とする錠剤及び分散錠でございまして、現在、結節性硬化症に係る効能・効果として、普通錠のほうは結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫、結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫、分散錠は結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫の効能・効果で承認されております。今般、ノバルティスファーマ株式会社から、結節性硬化症に係る効能・効果及び用法・用量を変更する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断しています。

 続きまして、報告議題2、資料6になります。医薬品献血ベニロン-I静注用です。本剤は、スルホ化人免疫グロブリンGを有効成分とする注射剤でございまして、現在はガンマグロブリン血症等の効能・効果で承認されております。今般、KMバイオロジクス株式会社より、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の筋力低下の改善に係る効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断しています。

 3つ目ですが、報告議題3、テリボン皮下注28.2μgオートインジェクターの製造販売承認についてです。こちらは資料7になります。本剤は、テリパラチド酢酸塩を有効成分とする注射剤であり、本邦では既に「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」を効能・効果とし、1週間に1回皮下投与とするテリボン皮下注用56.5μgが承認されています。今般、旭化成ファーマ株式会社から、1回投与量をテリボン皮下注56.5μgの半量とし、週2回投与とする自己投与可能な製剤が開発され、当該用法・用量での剤形を追加する製造販売承認申請がなされています。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断しています。以上です。

○杉部会長 ありがとうございました。ただいま説明のありました議題1、2、3につきまして、この3品目ですが、先生方から何か御意見、御質問はございますか。よろしいですか。それでは、次の報告事項、議題4及びその他事項の議題1につきまして、事務局から説明をお願いします。

○事務局 その他議題1、資料10、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請を行うことが適当と判断された適応外薬の事前評価について、御説明いたします。その他議題のフォルダをお開きいただき、資料10のファイルをお開きください。初めに、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議、以下、「検討会議」と呼びますが、検討会議による検討における本「事前評価」の位置付けについて御説明いたします。最終ページの25ページを御覧ください。検討会議とは、欧米等では使用が認められているが、国内では承認されていない医薬品及び適応について開発要望を募集し、要望があれば本邦での医療上の必要性の評価、承認のために必要な試験の有無及び種類の検討を行う会議です。

 資料の右上から御説明いたします。学会や患者会等から要望が挙げられ、検討会議で医療上の必要性を評価し、医療上の必要性が高いと評価された医薬品については、厚生労働省が企業に対して開発要請を行います。企業は開発の手段として、その医薬品が医療現場において既に医学薬学上公知である場合には公知申請を選択し、本邦において有効性・安全性を確認する試験が必要な場合には治験等を行います。

 本部会での「事前評価」につきましては、図の真ん中の左下辺りに記載されていますが、企業が開発の手段として公知申請を希望し、検討会議で公知申請に該当すると判断された場合に、公知申請の「事前評価」として御確認いただくこととしております。本部会での御確認を頂いた後に企業が公知申請を行い、PMDAでの審査を経て改めて部会で承認をいただくという流れになります。

 それでは、検討会議で公知申請を行うことが適当と判断されましたリツキシマブ(遺伝子組換え)について御説明いたします。3ページを御覧ください。要望者は日本血液学会です。なお、要望効能・効果は血栓性血小板減少性紫斑病ですが、本薬の作用機序や国内外の診療ガイドライン等を踏まえると、本要望における検討対象に先天性血栓性血小板減少性紫斑病を含まないことが適切と考えられました。

 公知該当性について説明いたします。有効性の評価については15ページを御覧ください。リツキシマブ(遺伝子組換え)は、国内外の臨床試験の成績、ガイドライン及び国内における使用実態を踏まえ、日本人の再発又は難治の後天性血栓性血小板減少性紫斑病に対する有効性は期待できると評価されました。

 安全性の評価については、1517ページを御覧ください。後天性血栓性血小板減少性紫斑病に対して本薬を投与した際に、現在の添付文書にはその発現に関する記載がない有害事象が公表文献及び外国副作用報告で確認されましたが、原病の悪化に伴い発現したと考えられる事象や詳細が不明な事象又は他の要因が指摘されている事象であること等を考慮すると、後天性血栓性血小板減少性紫斑病患者における本薬の投与に際し、既承認の効能・効果と比較して、安全性上の懸念が高まる可能性は低く、後天性血栓性血小板減少性紫斑病患者における本薬投与時の安全性は管理可能と評価されました。

 以上より、再発又は難治の後天性血栓性血小板減少性紫斑病に対する本薬の有効性及び安全性は、医学薬学上公知であると判断されました。

 続きまして、効能・効果及び用法・用量等の記載の妥当性について説明いたします。効能・効果の評価については、17ページ中段を御覧ください。海外の臨床試験成績、国内外の教科書及びガイドライン、国内の使用実績から、後天性血栓性血小板減少性紫斑病を効能・効果として設定するとともに、効能・効果に関連する注意として再発又は難治の場合にのみ使用を考慮する旨の注意喚起を行うことが妥当とされました。

 用法・用量の評価については、同ページ下段を御覧ください。海外の臨床試験成績、国内外のガイドライン、国内の使用実績から、「通常、成人には、リツキシマブ(遺伝子組換え)として1回量375mg/m2を1週間間隔で4回点滴静注する。」とすることが妥当と判断されました。以上です。

 続きまして、報告事項議題4、希少疾病用医薬品の指定の取消しについて御説明いたします。報告議題のフォルダをお開きいただき、資料8のファイルをお開きください。届出者は全薬工業株式会社、医薬品の名称はリツキシマブ(遺伝子組換え)です。本剤は平成26年8月21日、後天性血栓性血小板減少性紫斑病を予定される効能又は効果として希少疾病用医薬品に指定されました。今般、後天性血栓性血小板減少性紫斑病に関して、令和元年5月29日に開催された第38回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請が妥当との評価がなされ、企業はこれ以上の試験及び研究実施の必要性がなくなったため、希少疾病用医薬品試験研究中止届書が提出されたものです。よって、本剤の本予定効能・効果に係る希少疾病用医薬品の指定を取り消すことといたしました。以上です。

○杉部会長 ありがとうございました。今の事務局からの説明について何か御質問、御意見はございますか。大丈夫ですかね。公知申請ということで諮らせていただくということになりました。

○事務局 先生、すみません、最後に1つだけ報告事項がございます。最後の報告事項議題5としまして、医療用医薬品の再審査結果について説明させていただければと思います。同じく報告議題のフォルダを開いていただき、今回、再審査結果9-1~9-8までの8成分の結果の通知書につきまして御報告させていただきます。

 資料9-1につきましては、有効成分は「アリスキレンフマル酸塩」、販売名は「ラジレス錠150mg」になります。資料9-2は、有効成分名は「モダフィニル」、販売名は「モディオダール錠100mg」、資料9-3は、有効成分は「タダラフィル」、販売名は「ザルティア錠2.5mg及び同錠5mg」、資料9-4は、有効成分は「シルデナフィルクエン酸塩」、販売名は「レバチオ錠20mg」、資料9-5は、有効成分は「バルサルタン/シルニジピン」、販売名は「アテディオ配合錠」、資料9-6は、有効成分名は「アログリプチン安息香酸塩」、販売名は「ネシーナ錠12.5mg、同錠6.25mg及び同錠25mg」、資料9-7は、有効成分名は「フェンタニルクエン酸塩」、販売名は「フェントステープ1mg、同テープ2mg、同テープ4mg、同テープ6mg及び同テープ8mg」、資料9-8は、有効成分名は「バゼドキシフェン酢酸塩」、販売名は「ビビアント錠20mg」になります。こちらの8品目につきましては、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査及び製造販売後臨床試験に基づきまして再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定しています。事務局から報告は以上になります。

○杉部会長 ありがとうございました。議題5について多くの薬の報告を頂きました。先生方のほうから、これらについて何か御質問、御意見はございますか。

○堀委員 今の議題5で、9-5のアテディオ配合錠についてお聞きしたいのですが、資料9-5の再審査報告書を開けてください。4.1.の特定使用成績調査というのがあると思います。表2の下の所に、「本剤は高血圧治療の第一選択薬として用いないこととされているが、本調査において、本剤投与開始前の高血圧症治療薬の投与がない症例が211例認められた」と書いてあります。この文面からは第一選択薬ではなく、ほかに薬をトライしてみて駄目だったときに、この薬を使うということだと解釈できるのですけれど、本剤投薬開始前の高血圧治療薬の投与がない症例が211例というのは、私にとってみたらかなり多いと思います。その理由というのはお分かりになりますか。

○事務局 事務局より回答いたします。具体的にどういう事例かという理由までは、はっきりと調査はされていないのですが、この高血圧治療薬の使われ方として第一選択薬としないことを求めていたものの、実際にはこういう使われ方があったということになります。ただ、この薬剤に限らず、こういった事例は一定数認められるということも事実としてございます。また、実際の副作用の発現率といった安全性の情報に関して、この試験の結果から見ると、前治療がない211例のものと、前治療があるものとを比較したときに、前治療がないもののほうが安全性上問題があるといったような状況ではないということは確認しています。

○堀委員 ありがとうございました。でも、211例あっても副作用がないということは、あえて第一選択薬として用いないというふうに明示されていることが、ちょっと揺らぐのではないかと思ったので指摘させていただきました。

○杉部会長 御指摘ありがとうございました。どうですか、事務局のほうは何か。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。明確な理由が確認できるわけではないので推察になりますが、高血圧の程度が重度の場合で、さらに高血圧治療にある程度精通した医師であれば配合剤を最初から投与する可能性は想定されます。実際に先ほど、少し説明がありましたように、安全性上、大きな問題があるので禁止しているというよりは、高血圧の治療では、まずは単剤で治療していただいて、それで効果不十分な場合に足していくというのが基本的な治療パターンとなるため、推奨できる用法・用量としては第一選択薬としないという、一般的に推奨できるものを添付文書では注意喚起しているという状況です。

○杉部会長 よろしいですか。

○長島委員 今の件で、例えば他の医療機関等から紹介された患者で、そこで既に投与されていて十分な効果がなかったというのも含まれるかもしれませんが、いずれにしても添付文書等で周知を図る場合に、従来のものでうまく伝達していないのであれば、添付文書あるいは資材の在り方を考えるとか、伝え方はやるとか、改善策がここに書かれていないといけないと思います。

○事務局 ありがとうございます。必要な注意喚起は、引き続き続けてまいりたいと思います。御意見ありがとうございました。

○杉部会長 御指摘ありがとうございました。そのほか、先生方からいかがでしょうか。大丈夫でしょうか。それでは、報告事項の議題1から議題5及びその他事項の議題1については、御確認いただいたものとしたいと思います。本日の議題は以上でございますが、事務局から何か報告はありますか。

○事務局 ありがとうございました。次回の部会は8月29()、午後4時から開催させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。以上です。

○森委員 大変申し訳ありません。1つだけ、先ほどのインスリンのFiaspのバイアルのことです。ノボが発売しているインスリンのバイアルでノボリンRというバイアルがあって、ノボリンRのバイアルはこれとは全く違う細長いバイアルの形をしているのです。一方で、インスリンのFiaspのバイアルはイーライリリーが販売しているヒューマリンRのバイアルの形状と外見が似ているというか、御存じの方は分かるかもしれませんけれども、少なくとも形はよく似ていて、黄色いラベリングされている点もほぼ共通なのです。ネット等で写真を御覧いただくと分かるかもしれません。もちろん注意深く見ればインスリンのFiaspのバイアルとヒューマリンRのバイアル差別化は付くのですけれども、やや類似しているという印象があります。同一の方が2種類使うことは少ないと思いますが、病棟で保管している場合に、病棟の看護師さんが間違えてしまう可能性が心配だなということがありますので、何らか識別がしやすくなるようなラベリングを工夫いただくことができるようでしたら、これから御検討いただきたいと思います。

○杉部会長 機構のほう、それでよろしいですか。

○長島委員 インスリンに関しては、低血糖発作による自動車運転中の問題というのがかなり問題視されているところですので、患者さん向けの資材等で、そこのところを特に強調するなり、あるいは医師からの説明でも、そこのところを是非強調していただくことを、よろしくお願い申し上げます。

○杉部会長 重要な点でございます。御指摘ありがとうございました。よろしいですか。機構のほう、それで対処していただけますか。

○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。森先生から頂きましたバイアルの識別性については、製剤見本のキャップはオレンジ色になっていますが、実際には朱色に近い赤色になる予定ですので、今よりは識別性が良くなるかと思います。頂いた御意見は企業のほうにも伝達させていただきます。長島先生の資材の件につきましても伝えさせていただきます。ありがとうございます。

○森委員 実は歴史的な色による製剤の識別の問題がありまして、インスリンのメーカーはいずれもヒト型のRのインスリンは黄色を使うというのが伝統的に多くて、今回、初めて超速効型でこのイエロー色が使われているのです。ノボラビットはオレンジ色で差別化されていたのですが、今回、ノボラビットと同じ製剤ですけれども、ちょっと配合基剤が違うのでイエロー色が使われていて、これが実はヒトのインスリンのRと非常によく似ているイエロー色だということがあったので、識別のときに御注意いただきたい。横に模様が入ったりしていて多少識別に役立つと思いますが、写真を御覧いただいている方は、ちょっと似ているかなと思っておられるかもしれません。以上、それでお話させていただきました。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。承知しました。

○杉部会長 御指摘ありがとうございました。ほかはよろしいでしょうか。今日は活発な議論をしていただき、そして御指摘いただきまして本当にありがとうございました。本日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

 

( 了 )

 

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局 

医薬品審査管理課 課長補佐 荒木(内線2746)