薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会 令和元年度第1回適正使用調査会・安全技術調査会合同会議

日時

令和元年9月13日(金)16:20~17:20

場所

厚生労働省11階 共用第8会議室
(千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館)
 

出席者

適正使用調査会出席委員:(11名)五十音順、敬称略 ◎座長

 

安全技術調査会出席委員:(9名)五十音順、敬称略




適正使用調査会欠席委員:(3名)五十音順、敬称略
 
  • 西村 元延
  • 野村 恭一
  • 矢口 有乃


安全技術調査会欠席委員:(2名)五十音順、敬称略
 
  • 岡田 義昭
  • 脇田 隆字



参考人:敬称略
 
  • 松下 正



日本赤十字社:敬称略
     
  • 佐竹 正博
  • 石丸 健
  • 後藤 直子
   


事務局:
 
  • 石川 直子  (血液対策課長)
  • 山本 匠     (血液対策課長補佐)
  • 富樫 直之  (血液対策課長補佐)

 

議題

  1. 1.日本赤十字社におけるヘモビジランスについて
  2. 2.「輸血療法の実施に関する指針」の改正について
  3. 3.その他

配布資料

資料ページをご参照ください。

議事

 

○山本血液対策課長補佐 予定より早いのですが、準備が整いましたので、これから、令和元年度第1回適正使用調査会・安全技術調査会合同会議を開催いたします。本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。

 はじめに、資料の確認をお願いいたします。委員の皆様は、タブレットに、マイプライベートファイルという画面を表示してください。その画面に第1回安全技術調査会と合同会議のフォルダが2つあるかと思いますので、合同会議のフォルダを開いていただければと思います。

 資料は、計14あります。まず議事次第、2番目に座席表があります。3番目に適正使用調査会と安全技術調査会の委員名簿がございます。その次に、参考人の名簿、資料1、資料2-1、2-2、2-3、参考資料1、参考資料2、参考資料3、参考資料4-1から4-3がございます。タブレットに入っていないものがあれば、御指摘いただければと思います。宜しいでしょうか。

 現在、厚生労働省では審議会のペーパーレス化に取り組んでおりまして、本調査会でも、このようにタブレットを使用しております。タブレットの使用方法については、ペーパーレス審議会タブレット操作説明書を御覧いただければと思います。また、本日は委員改選後初めての開催となりますので、タブレットの操作について、本説明書に沿って説明させていただきます。

 まず操作に関しては、指で画面を触っていただくか、もしくは、お手元にあるタッチペンで触れていただければ動かすことができます。ページをめくる際には、指を横に動かしてページをめくっていただければと思います。また、画面に指を2本置いて動かすと、拡大、縮小ができます。次は、注意点となりますが、このタブレットは2つのファイルを同時に開いて閲覧することができません。別の資料を閲覧したい場合は、画面左上のマイプライベートファイルというボタンを押していただいて、再度、資料一覧から別の資料に移るという形で使っていただければと思います。何か不明点等がございましたら、事務局までお声かけください。

 次に、本日の委員の方々の出欠状況、参考人及び日本赤十字社からの出席者の御紹介をさせていただきます。タブレットの2番の座席表を開いてください。本日の出席者と参考人の松下委員と日本赤十字社より来ていただいている方が示されております。委員の皆様には、座席表をご確認いただき、本日の出席者と参考人の紹介とさせていただきます。

 本日は委員改選後の初めての会議となりますので、委員の皆様に御留意いただきたい事項について2点御説明差し上げます。

 第一には守秘義務の関係です。国家公務員法第100条において、「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と規定されております。委員の皆様は、非常勤の国家公務員としてこの規定の適用を受けますので、職務上知り得た秘密について漏らすことのないようお願いいたします。

 第二に薬事に関する企業等との関係になります。薬事分科会規程第11条において、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されております。審議の忠実性・公平性を確保する観点から規定されておりますので、これらに該当する場合、又は任期中に該当することとなった場合は、速やかに事務局に御連絡をいただければと思います。留意事項の説明は以上となります。

 最後に、本日出席の全ての委員の皆様より薬事分科会規程第11条に適合している旨を申告していただいておりますので、御報告させていただきます。間もなく議事に入りますので、カメラ撮りはここまででお願いいたします。

 本日は、議題2に輸血療法の実施に関する指針の改正を挙げております。これに関しては、適正使用と安全技術の両方の観点から御意見をいただくため合同会議としておりますので、委員の皆様には、御議論のほど宜しくお願いいたします。

 また、本会議の座長は、先程、適正使用調査会の座長に選出された半田委員にお願いしたいと思います。それでは、以後の進行は半田座長にお願いいたします。

○半田座長 それでは、引き続き宜しくお願いしたいと思います。まず、議題1「日本赤十字社のヘモビジランスについて」、日本赤十字社より資料の説明を宜しくお願いいたします。

○日本赤十字社後藤安全管理課長 では、資料1、日赤で行っているヘモビジランスについて、昨年の結果を中心にお話いたします。本日は、まず医療機関から報告いただいた副作用等の症例数の推移、輸血感染症のお話、そして、最後に輸血副作用の概要についてお話いたします。

 2ページです。医療機関から報告された副作用や感染症の症例数の推移を示しています。昨年は、全部で2,600件ほどの御報告をいただきました。黄色の副作用の部分については前年から1,000件ほど増加しておりますので、これにつきましては、後ほど御説明いたします。

 3ページです。輸血後に感染が疑われ、医療機関から御報告いただいた症例数の推移を示しました。個別NAT導入後は、年間、100件以下の報告数で推移しております。

 4ページ、輸血による感染が特定された症例の原因血液を、採血年と安全対策の導入状況とともにお示ししました。HCVHIVについては、プールNATの時代でも発生数はかなり少なく抑えられていましたが、HBVは年に10件ほどの発生がありました。2014年に個別NATを導入して以降は、HBVも年に1例以下の発生となっております。

 5ページです。この中で、感染数の多いHBVの原因献血者について、検査システムごとの感染状況をお示ししました。一番左の20プールNATのときには青と緑で示しましたが、個別NATでは陽性となる感染既往のドナーが半分以上でしたが、真ん中のHBc抗体の判定基準を厳格化した時代には感染既往の献血者は排除され、個別NAT導入後は新規感染の個別NAT陰性の血液による感染事例が残りました。

 6ページ、2018年の解析結果をお示しします。報告件数は、Bが13件、Cが17件、細菌感染疑いが23件、CMVが8件、HEV10件、パルボウイルスB19が1件の合計72件で、輸血による感染が特定されたのは、Bの1件、細菌感染の4件、HEVの7件の合計12例となっておりました。

 7ページは、個別NAT陰性の血液によるHBV感染の事例となります。11月末の献血でDNAが陽性となり遡及調査を行ったところ、2週間前の献血時の個別NAT陰性血小板が患者さんに使用されておりました。受血者の方は翌月はDNA陰性でしたが、輸血の2か月半後、1月31日にDNA陽性が認められ、献血者のDNAと塩基配列が一致しておりました。この患者につきましては抗ウイルス薬を投与されましたが、肝炎ではない原因で8月に死亡されておりました。

 8ページです。遡及調査はガイドラインにもあるように、大きく分けて、医療機関発と供血者発の2種類があります。医療機関発の場合、輸血した血液は個別NAT陰性となっています。この血液の安全性については、献血者の次回の献血又は事後検査依頼を行い、それらの検査結果で担保しています。供血者発の遡及調査の場合は、複数回献血者の陽転情報をもとに調査を行っています。個別NATのウインドウ・ピリオドを基に定めた遡及調査期間の献血血液について受血者の感染状況を調査しているというところです。

 9ページです。次回献血又は事後検査依頼による献血者の追跡状況を示しました。症例の調査が終わったときに献血者の次回献血がないものについては献血者の方に事後検査依頼を行って、併せて、その後の献血があるかどうかについても定期的に調査をしております。そのような方々が「追跡対象」に当たります。事後検査をお願いした献血者の9割以上について、その後の検査又は献血でウイルスが陰性であるということが確認されていることが分かりました。

 10ページ、次はHEVの感染症です。昨年(2018)は7例の特定例がございました。

 11ページです。症例の内訳は、自発報告、医療機関からの報告が5例、遡及調査から判明したものが2例で、原因血液については、赤血球、血小板、FFPのいずれもありまして、ジェノタイプは全て3でした。受血者の転帰は、幸い全て軽快又は回復となっておりました。自発報告でいただいた症例については、輸血後に肝機能障害があってBでもCでもないということで、Eの調査をすることが多いことから、ALTの最高値は4桁までいっているものが多いですが、遡及調査で判明したものについては、日赤から情報提供をしてから調べているということもありまして、肝機能障害の度合いは低くなっておりました。

 12ページは輸血による細菌感染についてです。初流血除去や保存前白血球除去の安全対策を導入後、血小板製剤による感染は17例を認めております。原因となった菌の内訳は、右に示したとおりです。

 13ページ、昨年の症例4例をお示ししました。原因となった細菌は、連鎖球菌が2例、黄色ブドウ球菌が1例、大腸菌が1例でした。原因となった製剤は、採血3日目の洗浄血小板が1例、採血4日目の血小板が2例、採血翌日の血小板製剤が1例となっておりました。いずれの症例も回復又は軽快されております。そして、症例の1と3は同じ献血者の異なる献血時の血液が原因となっていました。次のスライドでお示しします。

 14ページです。症例1は1月の献血で、洗浄血小板を輸血した患者にG群連鎖球菌感染が疑われるということで報告がありましたが、バッグは空バッグでしたので、同時製造品の原料血漿で検査したところ、無菌試験陰性となっていました。

 次の症例3は5月の献血によるもので、こちらも患者から連鎖球菌が検出され、血小板製剤の培養試験でも連鎖球菌が検出され、患者の菌と一致しました。この献血者が症例1と同じであるということが分かりましたので、症例1の空バッグに無菌生食を添加し培養を行ったところ、連鎖球菌が検出されました。

 献血者につきましては、6月に面談を行ったのですけれども、この1月、5月の献血時の体調不良はなく、6月に採取した血液培養は陰性でしたが、咽頭スワブから、シークエンスタイプは異なるもののG群連鎖球菌が検出されておりました。

 輸血後感染症のまとめとなりますが同じ話となりますので、説明は割愛させていただきます。

 次に、輸血の副作用についてです。日本赤十字社では、20年以上、輸血副作用の原因解明のため副作用が報告された症例全てについて詳細調査と患者検体を用いた検査を行ってきました。2018年からは、副作用が疑われる事例全てを収集し、重篤な副作用について詳細調査と検体を用いた検査を行うという手順に変更いたしました。この変更により、17ページの棒グラフですが、軽微な副作用の収集件数が1,000件ほど増加しておりますが、下の方に集まっている重篤な症例の報告数は前年とほとんど変化がありませんでした。

 18ページです。そしてもう一つ、副作用の分類を少し変更しております。蕁麻疹、アナフィラキシー、アナフィラキシーショックの3つを、アレルギーと重症アレルギーの2つというように分類しました。下のグラフに旧分類と新分類での症例を示しておりますが、大きな差はないということが分かっております。

 19ページです。製剤別の副作用では、血小板による副作用が43%とやはり一番多く、次が赤血球、FFPの順となっておりました。下のグラフで示しましたが、赤血球はアレルギーの他にも発熱と呼吸困難の割合が高くなっていましたが、血漿が多い製剤であるFFPPCについては、圧倒的にアレルギーの割合が高くなっております。

 20ページ、TRALITACOの評価結果を示しています。TRALIが疑われTRALIの評価を行った131例のうち、TRALIが4例、possible-TRALIが1例と、評価件数の3.3%のみとなっておりました。TRALIではないとされた症例のうち87例は心原性肺水腫と考えられ、TACOと疑われた21例とともにTACOの評価を行ったところ、TACO55例、その他のオーバーロードが53例となっておりました。

 21ページ、こちらは2004年以降のTRALITACOの評価状況となっております。TACOと心原性肺水腫のオーバーロードの事例がとても目立つようになってきました。これは諸外国でも同様の傾向で、今年は、TRALITACOともに新しい評価基準が提唱されて世界的にも注目が高まっております。

 22ページは副作用のまとめとなりますが、こちらも説明は割愛させていただきます。以上となります。

○半田座長 御報告ありがとうございました。血液の安全性というのですか、1980年の前半に非常に不幸な感染症が起こってからすでに40年近く経っていまして、今回の御報告を聞いたところ、感染症に関しましては本当に格段の安全性というものが得られたということで、本当にこれは、各方面の皆様方の今までの努力の成果かなと思います。

 それでは早速、委員の方から御質問あるいはコメントを宜しくお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

○濱口委員 輸血後の細菌感染について教えていただきたいのですが。先程、4例あって、そのうちの1例目と3例目は同じ方であったということだったのですが、原因菌としてG群の連鎖球菌が、検出されています。特別な遺伝子変異をもつ菌をこの方が保菌されていて、そして、実際に血小板製剤の中に入り、輸血を受けられた方がこういう敗血症を起こすというか、細菌感染を起こしているということは、この菌特有の増殖活性があるのか、一般のものと大して変わらないのだけれども、たまたまこういう状況になっているのか、その辺りを検討されていたら教えていただきたいのですけれども。

○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 このGストレプトコッカス、これは一般に市中で見られる細菌と特にシークエンスが変わっているようなところはございません。普通に見られるものと全く同じです。ただ、血小板の中で相当、1078/mlぐらいになりますと、かなり重篤症状を示すことはそのとおりだと思います。

○半田座長 宜しいですか。他にいかがでしょうか。

○朝比奈委員 朝比奈と申します。輸血後のE型肝炎についてです。こちらは7例ということで肝炎の発症では一番多くなっているわけですが、地域差があったかということ、ないとは思うのですけれども、特に北海道からの報告があったかどうかということと、それから、献血者の状況について、その後面談等で確認されていればちょっと教えていただきたいのです。

○日本赤十字社後藤安全管理課長 北海道からの症例は、北海道で採血された血液による症例はございませんでした。献血者の方については、後でアンケートというか、状況はお聞きしているのですけれども、遡及調査の事例は北海道での献血検査で陽性になったことから遡及調査を行った献血者の方については、喫食歴がある方もいらっしゃいましたけれども、それ以外については特に地域差があるわけでもないですし、喫食歴に特徴的に何かあるというものはなかったかと思います。

○半田座長 ちょっと今の件で、輸血後肝炎の残存リスクはHEVということで、これに対しては、今後、安全対策等々を当然やられていくわけですけれども、具体的にはどのような対策を取られるのですか。

○日本赤十字社後藤安全管理課長 日赤ではHEVNATの導入の準備を進めておりまして、本日も安全技術調査会の議題にも挙がっておりますけれども、来年の夏過ぎぐらいには導入できるように準備を進めているところです。

○半田座長 他にいかがでしょうか、宜しいですか。

○荒戸委員 2018年になって非重篤症例、特に蕁麻疹の発生が非常に多くなっているのですけれども、対応手順が変わったという御説明はあったのですが、このように急に増えた理由をどのようにお考えになっているか、あと、これが発生した製剤の種類が分かれば教えてください。

○日本赤十字社後藤安全管理課長 件数の増加につきましては、今までは報告いただいたものを中心に集めていたのですけれども、過去の副作用歴ですとか、そのようなものについても遡って調査するなども行っておりますし、あとは、血液センターの方に御相談いただいた例ですとか、洗浄製剤の発注に基づいて過去の副作用歴を調査したものなども含まれますので、従来よりははるかに多い件数が上がっているということになるかと思います。

○半田座長 宜しいでしょうか。

○日本赤十字社後藤安全管理課長 製剤につきましては、先程、お話したように、FFPPCがやはり多いです。

○半田座長 ありがとうございました。他にいかがですか。

○西脇委員 名古屋大学の西脇です。TRALITACOの割合で、TACOが増えてきたという御報告で、これは全世界的な傾向だということなのですけれども、その背景としては何か、高齢化だとか、どんなことが考えられているのでしょうか。

○半田座長 いかがでしょうか。

○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 一番考えられるのは、医療機関の先生方の認識の違いだと思います。ですので一般には、特にTACOなどにつきましては、輸血の副作用というよりは、一般の医療における副作用と思われて報告はなかったと思われますが、それが輸血の副作用としての考え方が、多くの先生にも、そういう意味で報告が上がるようになったというのが一番の原因かと思います。

○半田座長 宜しいでしょうか。ありがとうございました。それでは時間も迫っていますので。日本赤十字社におかれましては、輸血安全の向上、安全監視の一環として、今後も情報収集等々に御努力願えれば幸いだと思います。

 続きまして、議題2に移りたいと思います。「輸血療法の実施に関する指針の改正について」です。まずは、松下参考人より参考資料4-1について説明していただいて、続きまして、事務局より資料2についての説明をお願いいたします。それでは松下参考人、宜しくお願いします。

○松下参考人 10分程お時間をいただきまして、松下班班会議の研究結果の御報告をさせていただきます。参考資料4-1です。右下のページ数に従って御説明いたします。2ページです。当研究班は、最初は使用指針の改正ということで、改正は平成30年3月に発出されております。その後、学会ガイドラインは改訂されました。現在、学会誌のホームページに出ております。今回話題になっている実施指針に関しては、血液型検査、不規則抗体スクリーニングなどの検査、管理体制、製剤の安全性などに関して、最新の知見を反映させた研究を行いましたので本日御報告いたします。

 同時に、実施指針の当班会議の改正案を資料の21ページからお示ししておりますが、時間の関係上全てを辿ることはできませんので、主にスライドを使って御説明いたします。3ページを御覧ください。報告内容ですが、全ての改正案を御報告する時間はありませんので、5点に絞って御報告いたします。まず、副作用・合併症と安全対策、すでに先程の議題で出ておりますので、重なる部分は割愛してお話いたします。続いて自己血輸血です。血液製剤の温度管理、管理体制におけるコメディカルの配置、そして小児の輸血検査です。

 4ページです。まず、副作用と合併症対策において、ABO不適合輸血、メジャーミスマッチが起こったときの緊急対策として、当学会が発出している輸血副作用ガイドにおいては、起こったときに輸液セットを新しい点滴セットにもちろん交換するのですが、そのときに静脈留置針を残したまま、つまり、慌てて抜針してしまって、後の血管確保ができないということを避けるために、患者さんの安全性を考えてこのような提言を行っておりますので、是非実施指針にも盛り込まれるべきと考えました。

 5ページです。同様に副作用と合併症対策です。今もお話がありましたが、非溶血性輸血副作用に関しては、別添として参考資料4-2にありますとおり、本学会は有害事象対応ガイドラインを発表しておりまして、それに基づいて提言を行っております。具体的には、重篤なアレルギー、アナフィラキシーのときのアドレナリンの筋肉内注射、その他のアレルギー反応に対する抗ヒスタミン薬の使用に関して、治療としては推奨いたします。それから、予防投与の限定的な適用、ステロイドの使用方法、同時に血小板輸血における洗浄血小板の有用性、赤血球輸血における赤血球洗浄の有用性。発熱があった場合に、漫然としたアセトアミノフェンの予防投与は推奨しないが、頻回の発熱がある場合には構わないという形で、こちらをまとめたものを参考資料の37ページに載せております。

 6ページです。HBVHCVHIV感染の件に関しては、先程、御発表がありましたものと同じ内容ですので、6ページから8ページは割愛させていただきます。

 先程、日赤からも御報告がありましたが、9ページにあるようにHBV感染の大幅な減少、HCVHIVに関しては個別NAT導入後の感染が現時点で確認されていません。本日はデータはお示しいたしませんけれども、2017年以降、血液製剤によって輸血後にこういった感染が起こったという学会論文発表は、論文検索上は認められておりません。

 10ページです。したがって理論的感染リスクも考慮すると、輸血後の必須の検査として、輸血後のHBVHCVHIV検査に関しては、意義が低下しているのではないかと考えております。ただ、担当医が患者さんのリスクを考慮して検査を行うべきであるという具体的な状況、例えば万が一この病原体に感染した場合の大きな影響、もちろんこれには患者さんのお考えも含まれます。あるいは、患者さんの現在の病態が非常に重い場合に、万一感染が起こったら非常にまずいことになりますので、担当医としては、輸血後の感染症の検査をしたいというようなことや、頻回の輸血患者さんとか、免疫抑制患者さんが考えられます。こういうことをインフォームド・コンセントに際して、感染リスクの説明を行うべきであると39ページに修正してまとめました。

 続いて自己血輸血です。こちらに関しても、学会のガイドラインとして、参考資料4-3にある赤血球製剤の使用ガイドラインに、自己血輸血の適応と推奨について説明してあります。クリニカルクエスチョン、CQ-1から2-5までにまとめました。いずれにしても、現在行われている貯血式自己血輸血の有用性が、従来の欧米を中心としたエビデンスでは必ずしも強く言われていないこと、回収式自己血輸血に関しては、臨床的な場面・症例に応じて有用なものが認められるということを発表しております。

 続いて12ページで、赤血球製剤の温度管理です。現在、赤血球製剤を冷蔵庫から出して部署で使用する場合に、室温に放置しておける上限は30分と実施指針に記入しております。近年の欧米の研究あるいはガイドラインにおいては、その30分に関しては元々根拠がなく、60分でも問題はないのではないかという研究論文を4報載せておりまして、本邦の研究論文が3番目にあります。いずれに関しても60分で問題ないと。2番目に関しては、実験的に細菌を混入させたときの30分と60分には差がなかったということです。3番目の本邦の論文では、28℃暴露の影響を見ております。4番目の英国のガイドラインでは、60分ルールを元々採っておりまして、3回までという形になっていますが、いずれにしても60分として差し支えないものと考えて、33ページに記載しております。

 13ページ以降は、輸血療法の管理体制におけるコメディカル職の配置に関して、本学会、あるいは班会議の意見を述べさせていただきます。13ページには、臨床輸血看護師が配置されている病院の方が、製剤の廃棄率が少ないというデータがあります。

 14ページには、平成28年度の使用実態調査より、臨床輸血看護師が行っている業務と、配置後に改善されたことが述べられております。

 15ページには、管理体制における薬剤師の役割に関して、血漿分画製剤の使用時の原料血漿の採血国等々の説明について、薬剤師の活用が必要であるということを、本学会が出したチーム医療に関する指針においても述べております。その文言は16ページにありますが、製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための血液法の基本方針の第8の2において、その説明に薬剤師等を活用するということが、以前から謳われております。

 17ページです。こういうことから担当看護師の配置の理論的根拠、あるいは担当薬剤師の配置の有用性に関して、参考資料の26ページに改正案として記載させていただきました。

 18ページは、小児の輸血検査に関してです。子供さんに関しては、いわゆるABO血液型の抗A、抗B抗体に関しては自然抗体ですので、ある程度、生後何箇月かして、暴露が進んだ後に抗体が出てくるものであり、新生児はほとんどの場合、移行抗体以外は陰性のことが多いです。そういうことで、オモテ・ウラ一致率の各年齢ごとの一致率を学会発表のデータを中心にまとめたものです。1歳未満に関しては76.5%の一致率となっております。

 19ページです。ゼロ歳児に輸血を行う場合、主にNICUといった場合が考えられるのですが、そういう輸血によって同種抗体ができたのではないかという、すなわち不規則抗体ができたのではないかという11名の解析を学会のグループが行っております。その結果、満3か月未満で不規則抗体ではないかと疑われた3名について検討を行ったところ、3か月以降の輸血が2名、もう一例は疑い例であることが分かりました。すなわち、新生児期及び3か月未満で、赤血球輸血が原因で同種抗体産生を証明できた症例はなかったことが分かっております。

 20ページです。乳幼児の輸血検査として、オモテ試験、ウラ試験に関しては、生後1年未満ではオモテ試験の結果のみで暫定的に血液型を判定して良いのではないかということです。2番の不規則抗体スクリーニング及び交差適合試験に関しては、生後3か月になるまでの間は不規則抗体検査を省略しても良い、あるいは交差試験も場合によって省略しても良い。ただし、不規則抗体検査は、母親の移行抗体を考えて、母親の血漿ないしは血清を用いて行うのが望ましい。このことが、赤ちゃんの負担軽減、赤ちゃんの採血量の減少につながると考えて、29ページに記載してあります。

 簡単ですが、班会議からの意見を参考人として述べさせていただきました。ありがとうございました。

○半田座長 松下参考人、ありがとうございました。引き続き、事務局から資料2についてをお願いします。

○山本血液対策課長補佐 事務局から資料2を御説明いたします。資料2-1、輸血療法の実施に関する指針の改正についてです。こちらに要点をまとめておりますので、こちらを見ていただいた後に、詳細な具体的な記載については資料2-3の新旧対照表で御説明いたします。

 今回、研究班の報告等を頂いて、改正の要点として4つ挙げております。1ポツ目は、個別NAT導入により、輸血用血液製剤からのB型肝炎、C型肝炎、HIVの感染リスクが低下していることを踏まえた見直しに関してです。これは、当該ウイルスからの感染リスクは極めて低くなっていることを踏まえて、現行の指針に関連する部分の記載を見直しております。一方で、この指針において、輸血時の検体の保存を求めております。これに関しては、遡及調査のため変更せずに維持することとしております。

 2ポツ目は、研究班報告の反映です。これは先程、御報告がありましたとおり、赤血球製剤を所定温度外に出した場合の取り扱いについて変更しています。輸血有害事象についてはガイドラインが出ておりますので、これを参考にして追記しています。小児の検査については、最近の知見を参考として追記しております。

 3ポツ目です。安全な輸血療法の実施体制を構築するための見直しとして、この指針において医療機関に輸血責任医師を配置することを求めております。その方が、輸血実施手順書を作成することを明記することにしております。

 その他として、用語の整理等としております。それから、別途、遡及調査ガイドラインというものがありまして、輸血療法の実施に関する指針をいくつか引用した部分があります。今回改正すれば、その改正部分を遡及調査ガイドラインにそのまま反映するという記載整備を考えております。

 続いて、資料2-3で具体的な記載内容について説明をします。要点1の感染リスクに関することです。新旧対照表の11ページ及び12ページをご覧ください。副作用の概要の部分でして、右が現行で、左が改正案となります。輸血後の肝炎のところで、現行は、感染のリスクとして、「供血者がウインドウ期にあることによる感染が問題となる」という記載があります。これに関しては現行の安全対策の結果、感染リスクは低下していることを踏まえ、左側の改正案では、「個別NATの導入などの結果、供血者がウインドウ期にあることによる感染も含めて極めて稀となっている」という記載をしております。

 この感染リスクに関しては、研究班報告にもありましたが、輸血用血液製剤の安全対策の導入の効果と、輸血によるHBVHCV及びHIVの感染リスクというものを、参考5で示しています。こちらには理論的な感染リスクが示されておりますので、それを一つ参考とすれば良いかと思いました。

 また、研究班報告で、現行指針の第3章にある輸血用血液の安全性を基に、現行の安全対策をまとめたものがありますので、これを参考6という形で示しております。ここの記載の変更を踏まえて、1ページ、12ページの自己血輸血の部分についても記載の変更をしております。1ページをご覧ください。右側の現行では、自己血輸血に関して「安全性の高い輸血療法である」ことから「積極的に導入することが推奨される」というように、安全面からこういう記載がありました。研究班報告でもありましたように、臨床の論文のエビデンスと、現行の感染リスクを踏まえて、「自己血輸血などは臨床状況に応じて自己血輸血を行うことを考慮する」という形に記載を変えております。

 もう一つ、これに関する改正に関してですけれども、2ページの適正な輸血の部分です。右側の現行で、1)供血者数のところで、高単位の輸血用血液の使用について、供血者を減らして感染リスクを減らすということが書いてありますけれども、現行の感染リスクと、あとは400ml採血の増加や血液製剤の製造方法の変化がありますので、こちらの部分を削除しても良いかと考えました。

 2)血液製剤の使用方法と、3)輸血の必要性と記録に関してですが、血液製剤の使用指針が別途ありますのと、実施指針の第11章に同様の記載がありますので、こちらも削除ということを考えております。

 要点で示した患者検体の保存に関しては、9ページに記載があります。4ポツとして、患者検体の保存とありますが、これは医療機関において検体の保存を求めているものです。改正案として、医療機関は輸血による感染事例の遡及調査として、輸血時の患者血液を保存をすることを記載しております。これによって、検体の保管に関しては維持するという記載にしております。以前の審議会でも、委員より輸血前の検体の重要性が指摘されておりますので、現行にもある記載ですけれども、こちらの方にその記載を維持しております。これが、1ポツの感染リスクを踏まえた記載の変更になります。

 続いて要点の2ポツの研究班報告です。8ページです。赤血球製剤を所定温度外に出したときの取り扱いについてです。輸血用血液製剤を所定の温度管理外に出した場合は、できるだけ早く使用することとしております。使用しない場合に関しては、現行では30分以内に再度保存するというようにしておりましたが、これを60分以内に変更しております。また、「保管法」を「取り扱い」という形に記載の整備をしております。

 有害事象の部分に関しては、新旧対照表の11ページです。輸血に伴う副作用・合併症対策の一番最初の部分に、研究班の方で示されている「科学的根拠に基づく輸血有害事象対応ガイドラインを参考とすること」という形で記載しております。

 研究班報告にあった小児の検査については13ページから14ページをご覧ください。先程、研究班の報告にあった小児の輸血検査のまとめを記載しております。研究班の報告では、「生後1年未満の児ではオモテ検査の結果のみで血液型を判定して良い」と書いてあります。一方、現行の指針では、5ページに小児の検査についての記載があります。現行の記載については、「生後4か月以内の乳児にはオモテ検査のみで血液型判定をして良い」でして、最近の知見とは変わりがあります。知見というのは変わりうることなので、この「生後4か月以内の乳児」という記載は「乳児」に変更しております。「参考1を参考とすること」という記載を取っております。それから、6ページの乳児での適合血の選択、7ページの交差適合試験の省略の乳児に関する場合に関しても参考1を記載しております。

 その他に関しては13ページの自己血についてです。適用に当たって、1回採血量の設定を慎重に対処するということで、「体重40kg以下」と記載しておりましたけれども、これを「50kg」に変えております。

 要点の3ポツは、管理体制の構築の見直しです。新旧対照表7ページの右の下の方に、実施体制の在り方という部分があります。こちらに輸血実施手順書の記載がありますが、この手順書に関してはここに記載があるのみで、これを作成する者に関しては明記されておりません。これを、医療安全上の観点から記載者を明記するということで、4ページに輸血管理体制の在り方の2ポツとして、「責任医師の任命」という項目があります。この部分に、輸血責任医師が輸血手順書を作るということを明記しております。その手順書に関しては、別の研究班で、医薬品の安全使用のための業務手順書作成マニュアルというものがありますので、これを参考に示すとしております。また、輸血療法委員会と責任医師に関しては、他の通知も参考に管理者が設置任命すると記載しております。

 要点にあった記載整備に関しては、昨年改正された基本方針においても、院内採血は原則行うべきではないということにしておりますので、13ページにあるように、12章の「院内採血」という章は削除しております。また、「Rho」と書いてあるのは「Rh」へ記載整備するなど所用の改正をしております。以上です。

○半田座長 まず、松下参考人の方から、当該実施指針の改正案、研究班の報告がありました。その後、資料2-1で事務局案の説明をいただきました。あと資料2-3が新旧対照表になっています。皆様方から、忌憚のない、専門的な立場からのいろいろなコメントや御意見をいただければと思います。

○薄井委員 先程、C型肝炎やB型肝炎は感染率が少なくなってきているので、検査の方も簡略化とは言わないけれども、簡素にしてもいいのではないかという意見もあるということでした。医療の現場では、輸血後のC型、B型肝炎の感染のチェックということで、例えばB型肝炎だとHBs抗原の検査なしにDNA検査(HBV核酸定量検査)が頻回に行われています。臨床家としては、輸血後の肝炎だからより精度の高い検査で早期に診断する必要があるということがその理由です。

 今年の3月に日本肝臓学会から出された、肝炎診療ガイドラインには、肝炎スクリーニングアルゴリズムが載っております。まずはHB(B型肝炎)ですと、HBs抗原が陽性か陰性かというところから始まって検索するようなアルゴリズムです。いきなり高額な検査(HBV核酸定量検査など)をどんどんやるというのは、輸血後肝炎のスクリーニングで必要だということは分かりますけれども、この現状から踏まえると過誤ではないかという意見があります。その辺はどうかなということで今回の改訂案を見ていました。表5には従来の方針が書かれています。すなわち、輸血前の肝炎検査として、B型肝炎はHBs抗原、HBc抗体、HBs抗体の測定が入っています。輸血後検査は、核酸増幅検査(NAT)としてDNA検査(HBV核酸定量検査)を測定することを指示しており、C型肝炎についても同様の指示がなされています。医療現場では、指針に従って輸血前検査が陰性の場合は、DNA検査を試行することになって、昨今、医療費の削減を言われているものですから、恐らく保険審査では査定される可能性が高いと思います。そこのところをどのように考えたらいいかを教えてください。

○半田座長 今の御質問に関しては、今回の使用指針案を読むと、輸血後感染症は全数検査ではなくて、主治医がある程度のリスクを鑑みて、そこで随時やるというような方向に一応書かれています。ただ、その検査が実際はDNARNAの検査が良いのかという御質問だと思います。今の件に関してはいかがですか、専門的な立場から又は事務局から何かありますか。

○石川血液対策課長 本来の趣旨は、正に座長からコメントをいただいたとおりです。必要なときに必要な検査をしていただきたいということです。この別表の書き方も併せて今回見直した方がということであれば、本日の調査会はこれを実際に部会に上げていく事前の御審議ということですので、御指摘を踏まえて、本日は脇田先生が御欠席ですが、また御相談させていただきたいと思います。今回の改正の趣旨は、リスクが非常に下がっているということをまず医療現場によく知っていただいて、必要があれば必要な検査をしていただきたいということを今回広く周知をしたいという趣旨です。

○半田座長 薄井委員、宜しいでしょうか。

○薄井委員 それで宜しいと思います。実際にそういう状況であろうということを、是非皆さんに理解していただきたいと思います。

○半田座長 他にはいかがですか。今の輸血後感染症の件、あるいはそれ以外のことでもメジャーなところとして、あとは管理体制の問題等々も大分改訂がありましたが、いかがでしょうか。

○長村委員 12ページの自己血輸血のところです。「院内での実施管理体制が適正に確立している場合には、稀な血液型の患者の待機的な外科手術の貯血的自己血輸血」と書かれていますが、稀な血液型の患者だと貯血式で、その他はどうなのか。この文の、これに係るところはちょっと変えた方が宜しいかと思いました。

○山本血液対策課長補佐 御指摘を踏まえて、また検討させていただきます。

○長村委員 お願いいたします。

○半田座長 他にはいかがでしょうか。

○長島委員 感染リスクが下がったということを、例えば看護師とか様々な医療関係者にも十分理解していただくと同時に、国民・患者さんにも十分理解していただかないと、今まで輸血後に検査をしていたのに、急にしなくなったということで不安がってしまうので、マスコミ等を通じて十分な情報提供、広報をしていただけるとありがたいと思います。

○半田座長 今の件でいかがでしょうか。輸血の同意というところですので、各医療機関が同意書もちょっと見直していただくということですよね。それも一つ加えるべきだという御意見だと思います。

○山本血液対策課長補佐 先程の御意見に関して、新旧対照表の16ページを御覧ください。こちらに輸血用血液製剤の安全対策の導入効果と輸血によるHBVHCV及びHIVの感染リスクというものを載せております。これは、日本赤十字社の輸血情報から取っております。こういう部分に記載することによって、広く医療関係者に周知できるのではないかと思ってここに記載しております。

 患者さんに関しても、この指針を読んで医療機関に来るという声も聞いておりますので、こういう部分に記載しているということは、長島委員の指摘どおり、多くの方に今の現状の感染リスクを伝えるという媒体としては一つあるのではないかと思います。

○半田座長 はい、どうぞ。

○田中委員 関連してです。輸血後の検査を廃止することについては問題はないと思います。ただし、今まで輸血前に採っていた血液は、遡及調査のために維持すると明記してあるのですが、やはり広く皆さんに知っていただくためにも、輸血前の血液の保存することは遡及調査のために維持されることを、是非強調して知らせていただければと思います。

○半田座長 田中委員から、その辺のところをきちんと確認していただきたいということでした。

○長村委員 12ページのHIV感染の部分で、「医師は、感染リスクを考慮し、感染が疑われる場合などには」という文言が非常に大事です。患者さんにとっては何十万分・何百分の1であっても、その1に当たったということに関しては全く受け入れられないのです。何かと言うと、その感染が疑われる場合には見逃さずにきちんと検査をするということが非常に大事なのではないかと思っています。100分の1に当たってしまったというように患者さんは思うのです。でも、その1は1分の1だと、自分には1分の1だというように感じるのです。頻度というのは非常に大事なのですが、本当にゼロにならない限りは、ゼロが何年も続かない限りは、ここは同意書に入れるとしても考慮した方がいいかと思います。

○半田座長 はい、どうぞ。

○薄井委員 私は、輸血後の感染症の肝炎チェックの頻度を下げろと言っているのではなくて、きちっと臨床の状況を見ながらやってはどうかという意見を言いたかったのです。先生が御指摘のとおりで、ちょっとでもALTASTが高いようなことがあれば、すぐに診るべきであります。それは最初に見るのはHBs抗原、HBc抗体の値でしょう。それで問題があれば、そこから先はいろいろ調べるわけですから、そういう順序を踏んだ検査体制にしていただかなければいけないと思います。その一方で、DNA検査だけやればいいのだという話になると、1回だけ検査を行って検査の意味について説明をしなければ、患者さんは来なくなってしまう。もう野に放たれてしまうような輸血を受けた患者さんもいらっしゃるので、それは絶対に捉えた方がいいのです。つまり、繰り返し見るという体制はむしろ取った方がいいのではないかと思います。

○半田座長 担当医師の判断というところはなかなか難しい問題がありますけれども、是非文言の中にある程度ニュアンスを入れ込んでいただければということだと思います。他にはいかがでしょうか。特にありませんか。

 私の方から一つなのですけれども、この輸血療法の実施指針、それから併せて血液製剤の使用指針というのが発出されたのが1999年だかと思います。それからすでに20年余りが経っています。実際に輸血安全というところを国が中心になって推進してきたのは1980年代の前半です。具体的には1986年ですから、すでに30年から40年経っているということです。今、気付いた点は、松下参考人からも御報告があったのですが、急速に進歩する現在の科学的な知見と、この実施の指針とか使用指針がかなり乖離してきているということです。このような通知ですけれども、実際に改正するとなると1年がかりです。その間に医療はどんどん進んでいきます。

 実際に、国が主導し、発出しているガイドラインというのは、他にちょっと見当たらないのではないでしょうか。ほとんどがアカデミアを中心とした民間で作っているということもありますので、そういう面からも、今回は参考資料がすごく多くて、引用が多くなってきているわけです。この際ですから、この改正案は今年度中に作られるわけですけれども、当該指針の今後の在り方を考えていかないといけないのではないか。例えば、これは全てやめてしまって、全部民間の学会に移行させるとか、いろいろな案があると思うのです。この辺に関して、皆様方から御意見はありますか。松下参考人は何か御意見はありますか。

○松下参考人 私は、日本輸血・細胞治療学会の理事長を務めておりますので、それなりにこういうことを発言いたしますと、学会の総意であるかのように思われるかもしれませんが、あえてその辺は個人的な意見も踏まえながら少しお話したいと思います。輸血療法に関しては、非常に一般的に日本中で毎日のようにたくさん行われている治療法です。しかしながら、過去に感染あるいは不適合輸血によって、何人もの患者さんがお亡くなりになっているという、とても危険性に満ちた治療でした。そういう反省を踏まえて、血液法ができ、被害者の方の意見を聞きながらこういう審議会も活発に行われ、更により安全な輸血療法を目指すために行政はしっかりと管理するという体制が、私どもの学会の先輩方を中心に出来上がってきたわけです。

 しかしながらその間に、血液センターあるいは分画製剤の安全性が非常に向上して、本日お話がありましたように、輸血後の感染症リスクが極めて減少しつつあるという背景もあります。一方で半田座長が言われたように、医学的な介入の必要性に関して、本来アカデミアたる学会は様々な研究を行い、ガイドラインを発出し、あるいは欧米の最新の知見を紹介しという形でアドバイスを行っていくということが、一般的な医学・医療の世界では割と多く見られる例だと思います。こと、輸血に関しては、どうしても行政の責任あるいは行政の使命といったことが、これまで非常に強調されてきたこともあって、こういう指針を国が責任を持って発出する体制になっております。

 ただ、半田座長がおっしゃったことを踏まえてつらつらと考えると、こういう指針に関して国が極めて重要な立場で介入していく体制について、歴史的な使命をこの時点で振り返って、将来へ向けてもう少し関連学会と行政の協調による、より効率的な運用というものを考えた方がいいのではないかというふうに個人的には思います。飽くまでも今後いろいろな意見もありますので、先生方の御意見を踏まえながら、学会としてもより深く考えていきたいと考えております。

○半田座長 すなわち、ダブルスタンダードが今はあるというように考えていただいて良いのかという感じがいたします。

○長島委員 過去の歴史的な経緯を考えると、国民に対して十分な現状の安全性が高まっているということの情報提供とか共有をして、国民の理解を得るということを同時に進めていかないと、専門家とか行政だけでこういうことを進めると、非常に後々問題も大きいかと思いますので、同時並行で国民との共有、理解も進めていきながら簡素化ということを進めていくのが良いのではないかと思います。

○半田座長 大変貴重な御意見をいただきました。他にはいかがですか。

○白阪委員 先程からお話が出ているように、過去の経緯もありますし、例えば輸血療法については遡及調査という非常に素晴らしい方法も書いてくださっています。ダブルスタンダードではなくて、ここで示すのは大枠で宜しいかと思います。細かいところは学会で決めていただき、ここは大枠を示す立場ではないかと思います。

○半田座長 今後の在り方に対して貴重な御意見をいただきました。概要を決めて、具体的な内容に関してはアカデミアの方に移管するというような形をおっしゃられたと思います。非常に参考になる御意見かと思います。他に何かありますか。

○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 いろいろな御意見があるかと思います。どちらに賛成とか言うのではなくて、輸血医療を行う血液というものは、献血者からいただいた血液がもとになっています。献血の事業というものは本当にボランタリーな方から頂いていますので、そういうところはやはり国の関与があった方が。本当にボランティアでやられている事業ですので、それがベースにあるということを意識の上に置いていただいて御検討いただければと思います。

○半田座長 やはり、非常に貴重な御意見をいただきました。時間も迫っていますので、宜しいでしょうか。

○石川血液対策課長 貴重な御意見をありがとうございます。先生方からもお話がありましたように、血液法は製剤の安全性の向上、それから安定供給、適正使用、献血者の保護という柱があります。また、関係者の責務もそれぞれ記載されております。国は、安定供給と安全性の向上というところは義務です。適正使用について、国は努力義務ということになっております。ですから、そこで国は安全性について責任をきっちり負うというところと、適正使用という観点では、これは医療関係者の責務に、適正な使用に努めるとともに、安全性に関する情報の収集及び提供に努めなければならないというのが医療関係者の責務になっています。

 それを踏まえると、今ある2つの指針について、我々としては輸血療法の安全性の向上と、適正使用の推進ということを目的にこれまでやってきておりますが、それが今はかえって現場と合わなくなっているということであるならば、今の法の精神を踏まえて、先生方からの御意見を踏まえて、少し整理をさせていただくのも必要なのかというのを感じました。

○半田座長 課長の方から、国としての考え方を言っていただいたと思います。もう時間も過ぎましたので、本日の御意見を踏まえ、改正の手続を進めていただきたいと思います。併せて、実施指針、使用指針の今後の改訂等々については、その在り方を含めて検討していただければと思います。ありがとうございました。次は議題3の「その他」についてです。事務局から何かありますか。

○山本血液対策課長補佐 事務局からは特にありません。

○半田座長 今回が初めての会合なのですが、委員の皆様から何か御発言はありませんか。なかなかこれだけ一堂に集まることはないのですが、大丈夫でしょうか。それでは、今回の合同調査会は終了させていただきます。ありがとうございました。

○山本血液対策課長補佐 ありがとうございました。
                     

(了)