薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会 令和元年度第1回安全技術調査会

日時

令和元年9月13日(金)17:30~18:30

場所

厚生労働省11階 共用第8会議室
(千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館)

出席者

出席委員:(9名)五十音順、敬称略 ◎座長



欠席委員:(2名)五十音順、敬称略
 
  • 岡田 義昭
  • 脇田 隆字



参考人:敬称略
 
  • 松岡 佐保子



日本赤十字社:敬称略
     
  • 佐竹 正博
  • 石丸 健
  • 後藤 直子
   


事務局:
 
  • 石川 直子  (血液対策課長)
  • 山本 匠     (血液対策課長補佐)
  • 富樫 直之  (血液対策課長補佐)

議題

  1. 1. 座長の選出及び座長代理の指名について
  2. 2. 感染症安全対策体制整備事業について
  3. 3. NATコントロールサーベイ事業について
  4. 4. 日本赤十字社におけるHEV-NAT導入準備状況について
  5. 5. その他

配布資料

資料ページをご参照ください。

議事

 

 

○山本血液対策課長補佐 準備が整いましたので、令和元年度第1回安全技術調査会を開催いたします。本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。

 先程、合同会議を開催しましたが、安全技術調査会においては委員改選後第1回という形になりますので、本会議において座長が選出されるまでの間は、私が進行役を務めさせていただきます。それでは、議事を進めます。

 まずは資料の確認をいたします。マイプライベートファイルの第1回安全技術調査会のフォルダをお開きください。資料は合計8つあります。一番上に議事次第、次に座席表、3番目に安全技術調査会委員名簿、4番目に参考人名簿、5番目に安全技術調査会設置要綱、6番目に資料1、7番目に資料2、8番目に資料3があります。もし、お手元のタブレットにおいて資料がない方がいらっしゃいましたら、事務局へお声かけのほど宜しくお願いします。

 それでは改めて、安全技術調査会に所属する委員の方々を資料3の安全技術調査会委員名簿に従って御紹介差し上げます。朝比奈靖浩委員です。

○朝比奈委員 朝比奈です。宜しくお願いします。

○山本血液対策課長補佐 荒戸照世委員です。

○荒戸委員 荒戸です。どうぞ宜しくお願いします。

○山本血液対策課長補佐 内田恵理子委員です。

○内田委員 内田です。宜しくお願いします。

○山本血液対策課長補佐 大隈和委員です。

○大隈委員 大隈です。宜しくお願いします。

○山本血液対策課長補佐 岡崎仁委員です。

○岡崎委員 岡崎です。宜しくお願いします。

○山本血液対策課長補佐 岡田義昭委員は、今回は欠席と聞いております。熊川みどり委員です。

○熊川委員 熊川です。宜しくお願いいたします。

○山本血液対策課長補佐 白阪琢磨委員です。

○白阪委員 白阪です。宜しくお願いします。

○山本血液対策課長補佐 長村登紀子委員です。

○長村委員 長村です。宜しくお願いします。

○山本血液対策課長補佐 濵口功委員です。

○濵口委員 濵口です。宜しくお願いいたします。

○山本血液対策課長補佐 脇田委員は、本日欠席です。

 本日は参考人として、国立感染症血液・安全性研究部第2室から、松岡佐保子先生にお越しいただいております。また、日本赤十字社血液事業本部より、佐竹正博中央血液研究所所長、石丸健技術部次長、後藤直子技術部安全管理課長に御出席いただいております。間もなく議事に入りますので、カメラの頭撮りはここまででお願いします。

 それでは議事に入ります。議題1は「座長の選出及び座長代理の指名について」です。安全技術調査会設置要綱第4条第1項に基づき、座長は委員の互選により選出することとされております。どなたか御推薦いただけますでしょうか。

○内田委員 私からは濵口先生を御推薦したいと思います。これまでも安全技術調査会の座長を務めていらっしゃいましたので、適任ではないかと思います。

○山本血液対策課長補佐 宜しいでしょうか。それでは内田委員より、濵口委員を座長に推薦いただきました。濵口委員においては座長に互選されましたので、座長席への移動をお願いいたします。以後の進行は、濵口座長にお願いいたします。

○濵口座長 ただいま座長を拝命いたしました濵口です。引き続き、どうぞ宜しくお願いいたします。この安全技術調査会は先程もありましたが、安全技術の面で、かなり血液及び分画製剤の重要なところをカバ-しております。新しく委員になられた先生方もいらっしゃいますが、非常に重要な部分を担っているということで、活発な御意見をいただきたいのと、ここで議論される内容が日本の輸血医療の重要なパートを占めるという認識が、私も含めて必要になってくるかなと思っております。回数はそう多くはありませんが、是非この調査会の中で活発な議論をさせていただければと思っておりますので、御協力を宜しくお願いいたします。

 安全技術調査会の設置要綱第4条第3項に基づき、私が座長代理を指名することとされております。座長代理は、本日御欠席ですが、岡田委員にお願いしたいと思います。

 それでは議事を始めます。議題2「感染症安全対策体制整備事業について」です。事務局より御説明をお願いいたします。

○山本血液対策課長補佐 感染症安全対策整備事業は、新興・再興感染症と言われるような新たな病原体が国内に移入した場合などに備えて、血液対策課が国立感染症研究所に実施を依頼している事業となります。平成30年度の実績の報告については、大隈委員より宜しくお願いいたします。

○大隈委員 国立感染症研究所の大隈です。宜しくお願いします。昨年度の感染症安全対策体制整備事業の実績について、報告いたします。資料1を御覧ください。事業の目的は、今お話がありましたように、輸血用の血液製剤を含む血液製剤というのは、ヒト血液を原料とするためのウイルス等の病原体混入のリスクが存在いたします。本邦では、血液製剤の高感度なスクリーニング検査が既に行われており、安全性は極めて高いレベルで管理されております。しかしながら、国内に存在していなかったその他の病原体の輸入例、それから国内発生例が増加しております。御存じのように、約5年前にデング熱の国内発生例が確認されましたし、海外では平成27年から南米やアメリカのフロリダ州でジカ熱が大流行しております。また同じ時期に、アフリカや南米で黄熱が大流行しております。アフリカの黄熱は、過去20年における最大のアウトブレイクとなっておりまして、平成28年3月には、中国でアジア初の輸入症例が報告されました。

 このように、世界の一部の地域に限局的に発生していた感染症の病原体の日本への移入を想定し、新たな病原体の国内移入に備えて、実行性の高い対策として厚生労働省の血液対策課と日本赤十字社との連携の下、感染症リスク管理体制の整備を行ってまいりました。

 本事業では、国内に侵入して日本の献血血液への混入のリスクのある病原体について、血中のウイルス量の低い無症候性の感染者が献血する場合を想定して、高感度の核酸検査法を整備し、将来的な血液の安全対策に資することを目的としております。

 昨年度の実施内容です。1つ目は、黄熱ウイルスの高感度核酸検査法の開発です。2つ目は、献血で検査落ちとなった血液検体におけるデングウイルス、チクングニアウイルス、ジカウイルス及び黄熱ウイルスの核酸検査を実施いたしました。3つ目は、海外における血液安全に関する情報の収集及び交換です。この3つについて御説明します。

 1つ目は、黄熱ウイルスの高感度核酸検査法の開発についてです。これまで本事業において、デングウイルスの1~4型、チクングニアウイルス、ジカウイルスの高感度核酸検査法の開発及び、その一部のウイルスのマルチプレックス化を行ってまいりました。昨年度は、アフリカや南米でアウトブレイクが発生している黄熱の対策として、黄熱ウイルス(YFV)が血液に微量に混入した場合を想定し、このウイルスに対する高感度核酸検査法の開発を進めました。1-)は、高感度primerのスクリーニング方法の検討です。YFVの遺伝子型(ジェノタイプ)は7種類あります。これらの相互の遺伝的相同性は低いため、1セットのprimer-probeセットでは、全てのジェノタイプの検出は困難であると当初は考えておりました。ジェノタイプ間で比較的相同性の高いグループにまとめて、3つのグループに分けて、それぞれの高感度法を構築して、合計3セットの高感度法を組み合わせることにいたしました。

 1-)は、グループ1のスクリーニング用の鋳型(テンプレート)のRNA合成です。グループ1について、ワクチン株とJX898869(JX)を選択しました。ワクチン株のウイルスゲノムRNAは、同研究所のウイルス第一部より供与していただきました。JX株については、全長を5断片化してDNA合成し、これらからPCRの鋳型RNAin vitroで転写いたしました。

 1-)primer及びprobeのスクリーニングですが、まず533セットのforward primerreverse primerを設計し、登録配列のアライメント上で相同性が高い139セットを合成しました。SYBR Greenによって、RT-qPCRキットで極めて増幅効率の高いprimerセットをスクリーニングしたところ、19セット得ることができました。これらのセットの増幅遺伝子領域にTaqMan probeを設計し、TaqMan RT-qPCRキットで、PCRの増幅効率を指標にスクリーニングいたしました。その結果、9セットが高感度検査法として使用可能であると考えられました。以上から、139primerセットから、9セットの高感度primer-probe候補を同定することができました。これについては、図1、図2に示しております。

 1-)YFV核酸検査法の感度の確認です。YFVWHO国際標準品を用いて、希釈系列から抽出したRNAを用いて、特に増幅効率のよいYFVのBとEとIの3セットについて、感度の確認を行いました。その結果、3セット全てで0.1IU/mLを検出することができました。これについては図3に示しております。また、ヒト末梢血の細胞のゲノムDNAや、ヒト血漿RNA、キャリアのpolyA RNAといったものを用いて、非特異的な反応がないかどうか見たところ、それはありませんでした。特にYFV-Bについて、今回得られたグループ1のprimer-probe9セットのうち、YFV-Bの塩基配列は、アライメント上で1ジェノタイプ以外は極めて相同性が高いことが分かり、この候補が広範囲なジェノタイプのYFV株を高感度に検出できる可能性があると考えられました。

 次に2番目の実施内容に移ります。献血で検査落ちとなりました献血検体におけるデングウイルス、チクングニアウイルス、ジカウイルス、黄熱ウイルスの核酸検査の実施を行いました。日本赤十字社の協力をいただき、昨年度の6月以降に関東圏内で収集された献血血液のうち、検査落ちとなった血漿の20人プール100検体、合計2,000人分を得ることができました。これらの検体について、デングウイルス1~4型、チクングニアウイルス、ジカウイルス、黄熱ウイルスの核酸が検出されるかどうかを検討したところ、全ての検体においていずれもウイルスの核酸は検出されず、全て陰性と判定されました。これは図4に示しております。一応、陽性コントロールと陰性コントロールを準備して、それはそれぞれ陽性、陰性でしたので、検出系としては問題なく機能していることも確認いたしました。

 3つ目、海外における血液安全に関する情報の収集及び交換です。WHOの血液安全に関するカンファレンスに参加するとともに、各国の血液行政に関わるネットワーク会議(Blood Regulators Network)で活動することによって、感染症リスクの早期察知及び評価に基づく安全対策の検討を行いました。また、同研究所の病原体関連部署とも連携しており、情報の収集や交換を行っております。

 次に考察と課題です。昨年度は、黄熱の病原体である黄熱ウイルスについて、高感度核酸検査法の開発、整備を進めました。この遺伝子型は7つあり、当初は相同性の解析から3つのグループから3セットの高感度primer-probeを同定する必要があると考えておりましたけれども、最初のグループのスクリーニングにおいて6ジェノタイプを高感度検出できる可能性が高い1セットを同定することができました。そこで、3グループそれぞれから同定する手法を見直し、この候補について注目して、残りの1ジェノタイプも含めて今年度は感度を確認することで、最終的に検査法を確立したいと考えております。

 また、これまでに確立した核酸検査法を用いて、献血血液を用いて各ウイルスのスクリーニングを実施しました。これらのウイルスの国内でのアウトブレイクは起こっていないのですけれども、実際に献血された血液を用いてモニタリングを実施して陰性を確認するとともに、偽陽性等の不具合が発生しないことも確認できておりますので、検出システムの確認を継続できていることには意義があると考えております。これらの病原体が国内に移入した際の血液の安全性確保の緊急対策法として、有用な手法の1つであるということが示唆されたと考えております。4の結論については以上を踏まえたものになっておりますので、割愛いたします。

 最後に、本年度の実施予定内容です。1つ目は、黄熱ウイルスに対する高感度核酸検査法の開発の続きを本年度やらせていただき、全遺伝子型の検出確認を行いたいと考えております。それから、チクングニアウイルス、ジカウイルス、黄熱ウイルスの各ウイルスの高感度核酸検査法のマルチプレックス化を試み、効率化を目指したいと考えております。3、4つ目は昨年と同じですが、検査落ちとなった献血血液検体を用いて核酸検査を実施したいと考えておりますし、海外における血液安全に関する情報の収集及び交換も、引き続き行いたいと考えております。報告は以上です。

○濵口座長 ありがとうございました。ただいまの説明について御意見、御質問がありましたら、委員の先生方からお願いいたします。いかがでしょうか。

○岡崎委員 平成28年の中国での輸入症例は、これはワクチンを打っている方なのですか。それとも、さらな方なのですか。

○大隈委員 これについては、そこまでの情報がないのですが、一応、計11例が輸入感染したという報告があります。これがワクチンを打ったかどうかという情報は、現在は持ち合わせておりません。

○岡崎委員 基本的には、アウトブレイクが起こっているような、感染がアウトブレイクしているような国に行くときには、ワクチンは必須という形になっているはずなのですが、中国などではそういうことが行われていない可能性があるということを認識すれば良いということなのでしょうか。

○濵口座長 国内においては、日本においては、一応必ずワクチンを接種することになっていると思いますが、中国で実際に労働者がアフリカに行かれたりするときに、そういったものが徹底されているかどうかについては、確認はしていないところです。

○白阪委員 ここは血液の安全性を議論するところなので、少し議論がずれると思うのですが、実際にアフリカなどに行かれていた御自身が、そういう感染を心配して病院に来られても、多分今は、民間では検査できないのではないかと思います。近い将来民間でも検査できるようになると、患者さんはこのように非常に貴重な情報が、事前にゲットできるのではないかと思いますので、そういう方面での考え方もお願いしたいと思います。

○大隈委員 これについては、一応日本赤十字社と情報は共有しておりますし、今後そういった方面も検討していきたいと思います。ありがとうございます。

 

○濵口座長 他にいかがでしょうか。宜しいでしょうか。先程コメントがありましたように、これはどちらかというと想定している内容というのが、海外から国内にいろいろな形で集まってこられる際に、病原体が持ち込まれた場合、国内の血液安全のところでのリスクをできるだけ軽減させたいということで、それが一番の目的としてやっているものかと思います。日本赤十字社とも連携しながら情報の交換をして進めているということで、宜しいですか。これは確認ですが。

○大隈委員 そのとおりです。

○濵口座長 了解しました。それでは特に追加の御意見がないようでしたら、次の議題に移りたいと思いますが、宜しいでしょうか。では、次の議題に移ります。議題3「NATコントロールサーベイ事業について」です。事務局より御説明をお願いいたします。

○山本血液対策課長補佐 事務局です。NATコントロールサーベイ事業についてですが、これは核酸増幅検査の精度管理の実状を把握するために、血液対策課が国立感染症研究所に実施を依頼している事業となります。資料2に昨年度の報告がありますので、松岡参考人より説明をお願いできればと思います。

○松岡参考人 宜しくお願いします。資料2を御覧ください。NATコントロールサーベイ事業の昨年度の実績報告をいたします。まず1.事業の目的です。最近のNAT技術の進歩は目覚ましく、我が国においても20132014年に血漿分画製剤の原料プールと輸血用血液のNATスクリーニングの試験法が、それぞれ新しいマルチプレックス法に更新されました。それを踏まえて、2014年に血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的としたNATの実施に関するガイドライン、NATガイドラインの改正と、輸血用血液スクリーニングへの個別NAT導入に伴うNAT感度の改正が行われました。

 一昨年度、2017年度は新しいマルチプレックス法を用いたHIV-NATの特異性の実情把握を目的として、WHOHIV-1サブタイプパネルを用いた第9回NATコントロールサーベイを、輸血用血液のNATスクリーニング試験とHIV-1確認試験を対象として実施いたしまして、HIV-1に関する精度管理が日本赤十字社において適切に実施され、調査したHIV-1サブタイプ全てが問題なく検出されていることを確認しました。

 昨年度、2018年度は引き続いて、同様にHIV-NATの特異性の実情把握を目的として、WHOHIV-1サブタイプパネルを用いたNATコントロールサーベイを、今度は血漿分画製剤の製造会社を対象に、製剤の原料血漿プールのNAT試験を対象として実施いたしました。

 2.実施内容です。1)参加施設は4ページ目の表1を御覧ください。国内外の血漿分画製剤製造所等の5施設と、オブザーバー参加として試薬メーカー1施設が参加しました。2)パネルの調整内容ですが、5ページ目の表2を御覧ください。材料として第2次のHIV-1サブタイプWHO国際参照パネルと、第3次のHIV-RNA WHO国際標準品、第1次のHIV-2の国際標準品、及び第1次のHIV-RNA国内標準品を使用し、希釈として陰性血漿を用いました。NATガイドラインにおける原料血漿プールのHIV-NATの目標感度の1倍濃度が100IU/mLですので、その濃度に当たる100IU/mL濃度に全ての検体を希釈調整しました。また、参考の検体としてHIV-1の国際標準品と国内標準品には、目標感度の0.5倍濃度に当たる50IU/mLに希釈した検体も作成しました。陰性検体を加えた計16検体をブラインド化したパネルを参加施設に送付いたしました。

 3)測定です。血漿分画製剤の原料血漿プールNAT実施施設は、コバスTaqScreen MPXバージョン2を用いて測定をしております。この試験法はHBVHCVHIV-1の3ウイルスを同時に検出するとともに、種類も同定します。参加施設は検体No.1~16について、日を変えて3回測定しました。ただしNo.5の検体は、原料のパネル検体の力価が低かったため、十分量の検体が準備できませんでしたので、1回のみの測定としました。試薬メーカーもコバスTaqScreen MPXを用いて測定しております。検体No.1~16について、日を変えて3回測定しています。ただし5と8の検体は、3回分の検体が準備できなかったので、5については1回分、8については2回分の測定としました。

 4)結果について報告いたします。まず血漿分画製剤の原料血漿プールNATですが、6ページ目の表3を御覧ください。全施設において、HIV-1サブタイプA、B、C、D、AE、F、G、AG-GH、N及びOのHIV-1の検体を検出できることを確認しました。陰性対照は全て陰性と判定されました。また、国際標準品及び国内標準品を用いて作製した100IU/mL検体及び50IU/mL検体も全て検出できることを確認しました。HIV-2検体も検出を確認しました。血漿分画製剤の原料血漿プールNAT実施施設、全5施設において改正後のNATガイドラインに基づいて実施しているNAT検査は、HIV-1に関する精度管理が適切に実施されていることも確認いたしました。

 試薬メーカーにおけるNATに関しましても、同様に全てのサブタイプ型のHIV-1を検出できることを確認いたしました。また、陰性対照は全て陰性と判定され、国際標準品及び国内標準品は100IU/mL50IU/mL検体全て検出できることを確認し、HIV-2検体も検出を確認いたしました。

 3.考察です。一昨年、昨年にわたり実施しましたWHO HIV-1サブタイプパネルを中心に用いました第9回のNATコントロールサーベイにおいて、輸血用血液のNATスクリーニング試験とHIV-1確認試験及び血漿分画製剤の原料血漿プールのHIV-NAT試験において、HIV-1サブタイプA、B、C、D、AE、F、G、AG-GH、N及びOを検出できることを確認できました。また、試験を実施した全施設において、HIV-NAT試験における精度管理が適切に実施されていることを確認しました。また、試験を実施した全施設において、国際標準品及び国内標準品を用いて作製した低濃度検体、100IU/mL及び50IU/mL検体の検出も可能でした。サーベイ担当者からの意見としましては、輸血用血液のNATスクリーニング試験とHIV-1確認試験に使用されている機器の性能を鑑みまして、現在のNATガイドラインで定められている輸血用血液製剤のHIV-NATの目標感度200IU/mLを原料血漿プールのHIV-NATの目標感度100IU/mLと同等程度に変更することにおいて、今後検討していくことが可能ではないかと考えられました。

 最後に4.本年度の実施計画についても、この場で御承認をお願いしたいと思います。7ページの表4を御覧ください。これまでHBV, HIV-1と実施してきましたので、本年度は新しいマルチプレックス法におけるHCVNATの特異性の実情把握を目的とした第10回のNATコントロールサーベイの実施を計画しております。しかしながら、HCV-NATの感度・精度・特異性評価のための国際参照パネルが、現在WHOによってまだ制定されておりません。そこで、我々は国内献血を用いて、HCVの国内参照パネル候補品を国立感染症研究所にて作成しまして、6施設からなる多施設共同研究を実施し、候補品の力価を国際標準品に基づいて制定しました。この結果を別添資料にまとめております。

 この8ページの別添資料の表1にありますように、国際標準品を用いて表示力価を算出した国内参照パネルを制定しました。新規に制定したHCV-RNA国内参照パネル、HCV国内標準品、参考として国内外で検出されたHCV-RNA遺伝子型からなる市販血漿パネルを用いた評価用のパネル、表4にありますように、これらからなるパネルを作製して、サーベイを実施したいと思っています。それぞれの検体は300IU/mLに希釈して、準備したいと考えています。先生方におかれましては、HCV-RNAの国内参照パネル候補品を、NATのサーベイ等に用いる国内参照パネルとして御承認していただくとともに、この計画について承認していただきたいと思います。以上になります。

○濱口座長 ありがとうございました。ただいまの説明について御意見、御質問があれば委員の先生方からお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○白阪委員 非常に素晴らしいというか、よく頑張ってお仕事なさっているなと思って拝見しました。HIVについては御存じのとおり、感染が広がっていくと各地域ごとにリコンビナントといって、サブタイプ同士が混ざっていったりするので、多分このお仕事は今後も続けていかれるのかなと思って聞きました。先程の参照パネル等について、特に異論はありません。

○濱口座長 ありがとうございました。他はいかがですか。宜しいでしょうか。それでは、ただいまの白阪委員の御意見を参考に、引き続き今年度のNATコントロールサーベイ事業の実施をお願いしたいと思います。宜しくお願いします。

 次に議題4「日本赤十字社におけるHEV-NAT導入準備状況について」に移りたいと思います。日本赤十字社より、資料の御説明をお願いします。

○日本赤十字社石丸技術部次長 宜しくお願いします。それでは資料3に沿いまして、HEV-NATの導入準備状況について説明させていただきます。輸血用血液製剤のHEV安全対策につきましては、平成30年度の第4回血液事業部会に検討結果を報告させていただき、HBVHCVHIVに加え、HEVも同時に検出する開発試薬(以下、4価NAT試薬)による全数検査を実施することについて、準備を進めてきたところです。今般、現在開発中の4価NAT試薬の入荷予定時期等が明確になってきましたので、HEV-NATの全数検査について準備状況を報告いたします。

 まず、4価NAT試薬を用いたNAT検査システムの特徴について説明させていただきます。現行のNAT検査システムは、HBV-DNAHCV-RNAHIV-RNAのいずれかが陽性であれば検出することができるマルチプレックス試薬を使用しています。試薬メーカーからの情報によりますと、4価NAT試薬は、このマルチプレックス試薬にHEV-RNA検出用プライマー・プローブを追加して開発したもので、一度の検査でHBV-DNAHCV-RNAHIV-RNAの検出とは別に、HEV-RNAを検出することができます。また、既存の検査機器をそのまま使用することができますので、検体量や検査所要時間も現行とほぼ同じであり、検査体制を大幅に変更することなく導入することが可能なシステムとなっています。

 次に4価NAT試薬の検出感度について、現時点で試薬メーカーより得られている情報を表に示しました。WHOの国際標準品を用いた95%検出限界を示しましたが、4価NAT試薬は、現行NATのマルチプレックス試薬及び北海道地区で試行的に実施しているHEV-NATの試薬と同等の検出感度であると考えられます。

 最後に今後の予定ですが、4価NAT試薬の入荷時期に合わせて、評価試験及び各種バリデーション等を実施した後、令和2年秋頃からHEV-NATの全数検査を開始することを計画しているところです。以上となります。

○濱口座長 ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問があればお願いしたいと思います。

○岡崎委員 非常に良い試みだと思うのですが、今、既に海外でイギリスやオランダなどは、HEVNATを導入していると思うのですが、そのシステムは4価のものなのでしょうか。それとも、日本がこのような4価のNATを初めて導入するということなのでしょうか。

○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 これは日本が世界で初めてのことです。

○岡崎委員 確認ですが、海外で行われているのはプールNATということになるのでしょうか。

○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 プールである上に、やはり非常に大変だと思うのですが、1回流した後、もう1回やらなければならないかもしれません。我々のものはB、C、Iと同じ所に入っていまして、1回でできますので、サンプル量、時間等についてかなり有利な形になっていると思います。

○濱口座長 他はいかがでしょうか。一応、今、日本赤十字社の方から、来年の秋を目処にということだと思いますが、これはもう公開できるような情報と考えて宜しいのですか。

○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 秋頃には確実に始められると考えております。

○白阪委員 確認だけさせていただきたいのですが、偽陽性というのは、全くないと考えて良いのでしょうか。

○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 偽陽性が全くないということは、ほとんどあり得ないので、いくらかの頻度で必ず出てまいります。もちろん検出感度と同じく、Specificityと両方損なわないように、どの辺が良いかということは、今、かなり慎重にメーカーの方と進めているところです。

○白阪委員 つまり陽性反応が出たら、その後、確認か何かのステップを入れられることも、あるかもしれないということですか。

○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 これはロジスティクスも含めてですが、確認というのは相当後になりますので、非特異かどうか分からないところで、現在のB、C、Iもそうなのですが、そこで使う使わないは、つまりこちらで製品化するかしないかは、最初の検査結果で決まってしまいます。

 その確認がどうかというのは、それはドナーの方への通知のところで問題になります。言ってみれば、ゆっくり検査して、確実なものについてドナーの方へ連絡する。そのように考えています。

○朝比奈委員 このHEVですが、ジェノタイプの検出の感度とか、ジェノタイプ間差というのはあるのですか。どのジェノタイプをターゲットにしているとか、あるのですか。

○日本赤十字社石丸技術部次長 まだ我々の方に直接試薬が手に入っていないもので、そこまではお伝えできないのですが、今、北海道で試行的にやっている試薬と同等なジェノタイプの検出率は、持っているところは確認しているところです。

○朝比奈委員 北海道はジェノタイプ1、2、3、4、みんな同じと考えて宜しいのですか。

○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 そうです。

○岡崎委員 このHEVの検査が、他のBCIと違うのは、抗体検査をやらずに、そのままNAT検査に行っているというところだと思うのですが、その点に関する見解を教えてください。

○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 抗体ですか。スクリーニングという意味では、抗体の検査はほとんど意味をなさないので、このNATだけしか意味がないかと思います。抗体はずっと後に出てきますので、少なくともIgGを測る頃には感染性は大分低くなっているかと思います。

○岡崎委員 というか、今、IgAのタイプのHEV抗体は発売されていて、それは基本的には感染の初期のものなのですか。IgMの代わりに測っているようなものだと思うのですが。

○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 はい、IgMIgAも感染初期ではありますが、やはりNATで測る方がずっと速い形になります。

○内田委員 すみません。4価や3価の測定の詳細がよく分からないのですが、複数のウイルスが入った場合の検出感度というのは、どういう形になるのでしょうか。

○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 それは非常に重要な問題でありまして、これはHEVのときばかりではなくて、BCIのマルチプレックスを作るときには、先程のアルボウイルスの場合も全く同じですが、ダブル、トリプルにすることによって、他のものの感度がスポイルされることがないかどうかということは、非常に慎重にことを進めます。

 それと、競合が起こるということでもありますし、もう1つ大きなことは、片方が非常に高濃度のウイルスが入っていて、別のものが混在していたときに、それが捕まえられなくなるということが実際はあります。そういったことが、どのレベルまで起こるか起こらないかということも、非常に多くの検証を行って、最終的に安全なものが出来てきますので、その辺のところの検証というのは、メーカーと一緒ですが、相当慎重に進めてきたと考えています。

○濱口座長 他はいかがでしょうか。宜しいですか。先程適正使用の調査会の中で報告がありましたように、かなり安全面ではレベルが上がってきています。HEVについての対策が、またさらに進むということになりますと、さらに安全が高まっていくのかなということで、非常に喜ばしいところだと思います。

 その一方で、全体的な試験自体をどのような形で今後やっていくかということも、やはり議論が必要になってくるかなと思いますので、日本赤十字社におきましては、新しい試験をさらに導入するということと、それから、これまでの試験の見直しも含めてですが、積極的に検討していただければなと思っております。

 特に追加の御意見がないようでしたら、次に移りたいと思います。議題の5「その他」ですが、事務局から何かありますか。

○山本血液対策課長補佐 事務局から特に議題はありません。

○濱口座長 委員の皆様方から、何か追加の御意見がありましたらどうぞ。

○長村委員 来年はオリンピックの年ということで、前回のブラジルのときもジカウイルスとか、オリンピックの年に絡めて、何かしらのアウトブレイクがあったりするのですが、その辺の対策については、厚労省、日赤の方ではどのようになっておられますか。体制ですね。先程の議題1の感染対策、いろいろなマルチプレックスの新しいウイルスの検出も、オリンピックには間に合わないような計画になっておりますが。

○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 御質問ありがとうございます。もちろんそれは非常に大きな問題でありまして、3年前でしょうか、ジカのとき、それから、ずっと前で言いますとウエストナイル熱、その後はデング、いろいろな外来感染症があります。その度に我々の方も、一般の感染のところは我々の守備範囲ではありませんが、輸血での感染については非常に注意を払わなければならないということです。

 基本的には、ウイルスの感染モードというものが、非常に大きなファクターです。感染モードによって、我々の取り得る対策というものも変わってきます。これは当然と言えば当然なのですが、例えば感染症を持っていても、その人だけにほとんどコンファインできるような感染症の場合には、そういった人を追跡することだけで十分ですし、それが例えばシャーガスのようなものは、それで十分なわけです。

 デングになりますと、そこの周辺の蚊の媒介ですので、最初の感染者が見つかった所の周囲の人たちの献血の制限ということが中心になります。それからジカウイルスになりますと、これも蚊の媒介でありますが、ジカウイルスの場合は日本で蔓延するということは非常に考えづらいことではありますが、そういったことによって、こちらで講じる対策は個人を追い掛けるということ、それから、地域をある程度特定できるのであれば、その地域の献血制限をするということ、それから、それがもっとパンデミックな状況になりましたら、その地域全体の献血の制限ということになります。それ以上のことになりました場合には、これは特にジカの場合ですが、献血そのものを制限することが不可能な場合には、リスクのある受血者に関して、その血液を何らかの格好でスクリーニングするということがあり得るかと思います。これについて行ったのは、ジカウイルスに対する対策でありまして、これは厚生労働省、感染研の先生方と相談をしまして、リスクがあるのは例えば妊婦さんですので、妊婦さん以外の場合には、ジカウイルスに感染した血液受血者でも、大きな問題を起こすことはまず考えられませんので、妊婦さんに輸血される場合には、そういった血液に関してはこちらでジカフリーということを示して、それをシッピングするということを考えまして、血液センターとしてはその方策を厚生労働省に報告しまして、そういう形でやっていきましょうということを相談しております。

 ウエストナイルウイルスの場合には、非常に広範囲になる恐れがありましたので、御存じかと思いますが、こちらで1年ものストックではありませんが、数か月はNATができる試薬を毎年用意していた、毎年毎年、相当のお金をかけて用意したわけですが、1回も使うことはなく終了したことになりました。そのような感染症については、こちらでそれぞれ準備はしているところですので、先程挙げられました多くの外来感染症についても、一つひとつについて、我々の方ではNATでディテクトできるシステムは、その度に全部用意しております。

○長村委員 血液の対策は良いのですが、一般対策としては。

○濱口座長 長村委員、確認のお話なのですが。

○長村委員 一般的なところでも良いかなとは思うのですが、この会議が安全技術調査会なので、全体の体制としては少し違うところになるかなと思いますので、佐竹先生からのお話で良いと思います。

○石川血液対策課長 報道もありましたが、感染研も中心となって、健康局でサーベランス体制の強化といったことを自治体と協力して取り組んでいます。また、情報共有も今よりも迅速にできるような体制をということで、今、対策を進めておりまして、正に今月からラグビーワールドカップも始まりますので、そういう中でトライアルもしながら、一般的な感染症対策ということであれば、そちらで対策が進められています。

○長村委員 追加で言いますと、例えばこの地域の献血はもうできないよというときに、他でどのくらいカバーできるのかということです。実はちょうど今週、台風があって医科研に献血車が来ていたのですが、千葉の方が全部献血できない状態だということで、もっと募れという話もあったのですが、その辺が何か臨機応変にできるような体制があると良いかなと思いました。

それは技術的なところというよりは、全体の体制ということになると思います。

○石川血液対策課長 ご質問の趣旨を理解しました。それは本調査会とは別に献血推進調査会がありまして、それはどちらかというと非常時というよりは、一般的に今、若い方の献血者をどう確保するかということを重要課題として取り組んでいます。その中で、日本赤十字社で様々な工夫をしていただいておりまして、今、アプリといいますか、Webでいろいろ呼び掛けをしたりできるようなラブラッドという仕組み、複数回献血をしていただく方の仕組みがありまして、会員数も徐々に伸びております。

 そういったものも使いながら、献血間隔などもラブラッドを使いますと自動的に、あなたは今日から献血ができますよとか、必要なときには献血の呼び掛けするということを、今までは電話をしたり、いろいろアナログ的なことでやられていたようですが、今はそうした新しいIT技術なども使って取組をしておられますので、非常時にもそうしたことを活用していくことと思います。

 今回の台風、今は千葉が大変ですが、今年は九州の方も、この前は九州や四国など、全部ルームが閉まったり、バスが出せなかったりということもありまして、その対策として日本赤十字社で全国の担当者を集めて、そういう危機的な状態だということでの取組を促すといったこと、日本赤十字社の社内でもそうしたことをされていると聞いております。

○濱口座長 宜しいでしょうか。他はいかがでしょうか。特にないようであれば、事務局に議事を戻したいと思います。

○山本血液対策課長補佐 濱口先生、ありがとうございました。皆さん、今日はいろいろ御議論いただき、ありがとうございました。次回の安全技術調査会の日程は、また別途ご連絡差し上げたいと思います。本日は長時間にわたり、皆様、本当にありがとうございました。

 

(了)