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第7回 社会保障審議会企業年金・個人年金部会 議事録
日時
令和元年8月23日(金)16:00~18:11
場所
厚生労働省18階専用第22会議室
出席者
(委 員) 神野部会長、森戸部会長代理、伊藤委員、井戸委員、臼杵委員、内田委員、大江委員、小川委員、金子委員、小林委員、白波瀬委員、藤澤委員、細田委員、渡邊委員
(オブザーバー)松下国民年金基金連合会理事長、宮園企業年金連合会理事長
(オブザーバー)松下国民年金基金連合会理事長、宮園企業年金連合会理事長
議題
(1)マッチング拠出、iDeCo等について
議事
- 議事内容
○神野部会長
それでは、定刻を過ぎておりますので、ただいまから第7回になりますが、「社会保障審議会企業年金・個人年金部会」を開催したいと存じます。
委員の皆様には、大変御多様のところ、万障繰り合わせて御参集くださいましたことに深く御礼を申し上げる次第でございます。
本日は、委員の皆様方全員に御出席をいただいておりますので、当然のことながら定足数の3分の1を超えておりまして、会議が成立していることをまず御報告申し上げたいと思います。
議事に入るに先立ちまして、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○吉田企業年金・個人年金課長
企業年金・個人年金課長です。よろしくお願いします。
まず、冒頭、今日は局長、または審議官は公務の関係上、出たり入ったりすることをお許しいただければと思います。
それでは、資料の確認をさせていただきます。
本日の資料といたしましては、資料1「ヒアリング等における主な意見」、資料2「マッチング拠出、iDeCo等について」、参考資料として委員名簿を用意しています。
また、井戸委員と大江委員から御説明の資料をいただいていますので、用意しています。
事務局からは、以上になります。
○神野部会長
ありがとうございました。
それでは、議事に入りたいと存じますので、大変恐縮でございますが、カメラの方はここにて退室をお願いしたいと思います。御協力をいただければ幸いに存じますので、よろしくお願いいたします。
本日の議事でございますが、お手元の議事次第を御参照いただければと思います。本日は、マッチング拠出、iDeCo等につきまして議題とさせていただいております。
3月の部会では、関係諸団体に属する委員の皆様に御発表を頂戴いたしましたけれども、本日のテーマでございますiDeCoにつきましては、日夜現場で取り組んでおられます井戸委員と大江委員から、制度及び運用面の改善要望等について御発表をしていただきます。
その後に、事務局のほうから資料1、それから資料2を一括して御説明いただいた上で、委員の皆様方から御意見、御質問を頂戴したいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、まず井戸委員からお願いできますでしょうか。
○井戸委員
井戸でございます。今日は、発表の機会を頂戴しましてありがとうございます。
私のほうから、DCの確定拠出限度額の見直しなどと、あとは手続の改善について発表させていただきたいと思います。
資料をめくっていただきまして、4ページでございます。現在のiDeCoの拠出限度額の上限なのですけれども、この図の緑色のようにどこに該当していらっしゃるのかによって非常に分かりづらいことがございます。
それで、提案が3つございます。
1つ目は、上限の掛金に端数がある場合、分かりにくくなってしまうこともあるので、万単位でもよいのではないかと思っております。
2つ目でございます。年金の職業間の格差、企業間の格差というのが広がってしまいますので、5ページの図のようにiDeCoで差が埋められるようにするというのはいかがかと思います。
例えば、5ページにありますようにシンプルに簡素化するということと、それからマッチング拠出でございますが、事業主掛金を超える加入者拠出が現在認められておりませんが、そういう規制を廃止してiDeCoでの拠出もできるようにする。つまり、iDeCoとマッチング拠出を個人が自由に選べるようにするというのがよいかと思います。そうすると、長期的な視点で申し上げますと、企業年金の穴埋め型の自由度が増すのではないかと考えております。
3つ目なのですけれども、4ページの下のところに書いてございますが、iDeCoの加入可能年齢の引き上げでございます。現在60歳までですけれども、企業型のDCも含めまして全部65歳にし、それからライフスタイル、働き方も考えますと70歳というのを視野に入れてもいいかと思っております。
そして、受給開始年齢60歳以降も、自由にいつからスタートしたらいいかが決められるというように、自由度をライフプランに合わせて増すのがいいかと考えております。
では、7ページをご覧ください。iDeCoの手続の簡素化でございます。今年の7月から兼務規制の緩和がございまして、対面で説明が受けられるようになっているのですけれども、加入のときは対面でできるのですが、加入後はコールセンターでと言われることが多いようです。できれば加 入後も対面が望ましいのではないかと考えています。
手続面なのですが、iDeCoを始めるに当たっては運営管理機関を選んだり、第2号の場合は事業主の証明というのが、事業主さんも従業員さんも負担が大きくなってしまいますので、御提案としましては事業主証明書が不要になるように第2号被保険者の上限を一律にすること。
それから、2番目は電子化、できればスマホなどで手続が簡潔にできるようになればよいと考えております。
8ページからは、iDeCo+でございます。iDeCo+の導入の手続のところも、手続に3~4カ月かかるということがございます。
それで、9ページをご覧ください。iDeCo+の改善提案なのですが、5つございます。
従業員数は現在100人以下となっていますけれども、300人くらいに上限の人数を上げるのはいかがかということ。
それから、ホームページを拝見させていただいたのですが、少し見づらい、分かりづらいと思っております。ですので、Q&Aなどの工夫が必要かと思います。
それから、インターネットで完結できないというのが大変問題かと思いますので、印字で印鑑がなくてもスムーズにできるようにしていただければと思います。
次に現場でお聞きする事業主さんが混乱していることなのですが、法人のマイナンバーとか、日本年金機構の事業所ナンバーで、何か一本化しないと番号がたくさんあってよく分からなくなるということを聞きましたので、ここで挙げさせていただきました。
コールセンターが少しつながりにくいという声もございましたので、ここでつながりやすくというふうに御提案させていただきました。
残り10ページと11ページなのですが、こちらのほうは見やすさとか、選びやすさということです。「運用商品の選び方」は、積み立てと長期というのはもう制度上できるのですが、分散投資というのを自分でしないといけないということなので、選びやすさとかメニュー化というのは各金融機関様が工夫されていらっしゃいますけれども、引き続き分かりやすい工夫をしていただきたいと思います。
11ページは、私がセミナーなどでよく使う図なのですけれども、フローで御自身が働き方、いつからいつまで働くのかとか、それから企業年金を一時金受け取りだけでなくて年金受け取りにすると、支出と収入の収支が実は赤字にならないようになる。繰り下げも考えてするとできるのではないかというようなことをお見せしています。分かりやすいアプローチをするというのもされていらっしゃるとは思うんですけれども、さらに、引き続きお願いしたいと思っております。
私の発表は、以上でございます。ありがとうございました。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
それでは、大江委員お願いいたします。
○大江委員
大江でございます。発表の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
私の方からは、普及の現場でどんな説明をして、どんな声が聞こえているかということでお話をしたいかと思います。
まず1ページ目なのですが、一般的にiDeCoだけを説明するというよりは、多くの場合、「現役世代が利用できる資産形成制度」としてつみたてNISAと合わせてどういうふうに活用したら良いのかということをお話ししてくださいというオーダーを受けることが多いです。それぞれ制度ごとに目的が違いますので、その目的、特徴などをお話ししながら説明するわけですが、iDeCoですと老後資産形成が目的ということです。
それから、2ページになりますが、iDeCoのほうは元本確保型の商品があるということが特徴としてございます。
ですので、3ページにございますが、一般的に老後資産づくりであればまずiDeCoを検討してはどうか。
ただ、60歳まで絶対におろせないですし、積み立て上限もあるので、つみたてNISAと併用して利用するということをお勧めしています。
また、50歳以上の方であるとか、課税所得がないという方については、例えばつみたてNISAを優先するであるとか、投資信託に向かないという方はiDeCoというような説明をしております。
このような説明をする中で、次の4ページになりますが、「加入に関心を持った方のネックになっていると思われる点」を3点、それから「事業主にとって負担になっていると思われる点」を2点、お話をさせていただきたいと思います。
5ページになりますが、iDeCoの加入年齢についてです。井戸委員の御発言にもございましたように、現在60歳までということですが、もう少し広げてほしいという御意見はございます。今は男性ですと8割、女性でも5割以上が60代前半は働いているということからすると、ここは加入できてもよいのではないでしょうか。
それから資格ですけれども、それぞれごとに上限が決まっているので、自分がどこに所属するのか、年金があるないとか、いろいろございますので、どこの資格か分からないという声も少なくはございません。
それから、企業型のDCの加入者については、現状はほぼiDeCoの加入が全員と言いながらできないという現状がございます。
具体的には6ページになるのですけれども、企業型の確定拠出年金というのは一般的に会社の退職金制度の一部でございますので、勤続年数や役職が上がるごとに掛金が上がるような設計になっていることが多うございます。そうしますと、現在同時加入する場合にはマッチングは入っていない、それから、上限をiDeCo分引き下げるということが必要でございますので、上限頭打ちは困るということで労使とも同時加入を認めることが少ない。同時加入をなかなか認めないことが多いということがございます。
ここを広げていくということで、どれくらいのニーズがあるかというのは数を本当は拾ってみるべきだと思うのですけれども、ここを検討してみる余地はあるのではないかと思います。
次に7ページになりますが、加入をするときには掛金、それから契約先、商品配分、この3つを決めないと進まないということがございます。特に契約先につきましては、1つの金融機関を決めて、それがずっと受け取り完了まで長く続く。変更する場合には、現状ですと現物の資産を売却するということもあって、ここを決めることにとても抵抗感があってなかなか進まないという話は聞きます。
それから商品配分ですが、井戸委員の御発言にあったように商品の見せ方のところはまだ工夫が必要だと思いますし、マル4にございますが、制度とか手続につきましても十分な理解が進んでいるとは言えません。
8ページをご覧いただきたいのですが、2017年に行った調査ですけれども、60歳前に受け取ることができないという基本的なこともまだ分かっていない方も一定数いらっしゃいますし、質問の下のほうの3つですけれども、これは答えとしては間違っているのが正解なのですが、例えば商品が変更できるであるとか、掛金が変更できるといったところもなかなか理解ができていないことがあるので、継続的な情報提供、教育というのは必要と思います。
それから、9ページになります。これは再三出てきていると思うのですが、iDeCoの手続がスマホで完了しないということで、若い世代にとっては なかなかハードルが高い。スマホで完結するについては、一部の金融機関でネットバンキング利用者の方のみ、紙の押印がなしで加入できるようになってきているように聞いておりますけれども、国民年金基金連合会さんの受付以降のところはまだネットでの処理というのが進んでいないと聞いておりまして、時間、手間、コストの短縮には至っていないので、ここを何とかしなければいけないのではないかと思います。
ここから10ページ以降は、事業主負担の部分です。まず、事業主の証明書が2号の被保険者の方には必要で、これが今は40万事業所まで登録が進んでいるようですけれども、会社の側でまだ知らないという事業主もいらっしゃいますし、会社の印鑑を押すということに関して抵抗感を感じる事業主さんも正直いらっしゃいます。
それから、社員の側からすると、会社の人事とかに自分のお金のことを知られるということ自身にとても抵抗があって、何となく嫌だなという御意見は正直、多数ございます。
ここをシンプルにしていこうということになりますと、2号の枠を1つにするというようなことも一つかと思いますし、それからなかなか難しいのかもしれませんが、前年の資格に基づいて翌年であるとか、データ連携とか含めて負担がない形にしていくという検討は必要かと思います。
最後にiDeCo+ですけれども、井戸委員からも御発言がありましたように、この紙による手続き部分は迅速に改善をすべきだと思いますし、人数につきましても従業員さんへの継続教育がなかなかできていないという企業型の会社については、その受け皿としても100人という枠をもう少し広げていくということは検討してはいかがかと思います。
私からの発表は、以上です。どうもありがとうございました。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
お2人の委員には、短い時間で簡潔に要領よく御説明を頂戴したこと、深く感謝を申し上げる次第でございます。
それでは、引き続いて事務局のほうから、資料につきまして御説明いただければと思います。
○吉田企業年金・個人年金課長
資料1、2を通しで説明いたします。
資料1をお開きください。これまでの部会でもお示ししたもので、ヒアリングにおける関係団体からの御意見等をまとめたものになります。本日御議論いただくテーマに関する部分ですが、9ページをご覧ください。
iDeCoについて、改革の視点として、個人の自助努力をより一層支援する観点から、シンプルで利便性の高いDC制度への見直しが必要といった意見がありました。
加入可能年齢として、企業型DC・iDeCoの双方において加入可能年齢の拡大を検討すべきといった意見がありました。
拠出限度額として、
・拠出限度額の引上げを検討すべき、
・一方で、拠出できる人との格差という問題がある、
・中小企業における普及の問題、非正規労働者における退職給付の問題がある中で、税制優遇で自助努力を支援していくということに、どういう合理性があるか、
・資格区分・限度額部分を簡素・合理化すべき、
・制度の分かりやすさや、制度間の公平性を確保する観点から、iDeCoの拠出限度額を企業型と合わせることを検討すべき、
・企業年金のない者の拠出限度額を2.3万円から5.5万円に引き上げるべき。そして、この5.5万円を自由に埋めることができるようにすべき
といった意見がありました。
企業型DCにおけるiDeCoの同時加入として、
・規約に定めがない場合も個人型への加入資格を与えるなど、個人型DCの加入要件の緩和を検討すべき、
・本人の希望によりiDeCoへの加入を可能とするべき、
・掛金上限の合算について、撤廃も含めた見直しが考えられるのではないか
といった意見がありました。
10ページに続きまして、事務手続の改善を求める意見が何点かございました。
マッチング拠出について、
・拠出限度額内でのマッチング拠出の完全自由化を実現すべき、
・退職給付の債務・債権関係を明確化するため、従業員・企業双方の拠出についての区分管理が必要、
・拡大していくという方向性については、慎重な意見が必要
といった意見がありました。
iDeCoプラスにつきましては、既に5月の部会で御議論いただきましたので省略します。
ポータビリティについて、
・制度面の整備が順次行われてきたが、実効性において課題、
・日本版IRAの創設を検討すべき
といった意見がありました。
続きまして、資料2をお開きください。本日のテーマの「マッチング拠出、iDeCo等について」、資料を用意しています。今回の資料も、これまでの回と同様にファクトを整理しておりますので、御議論をいただければと思います。
2ページをご覧ください。企業型確定拠出年金加入者の老後の所得確保に向けた個人の取組を支援する仕組みとしてマッチング拠出があります。
絵の部分をご覧ください。赤枠で囲った部分、赤字の※1としていますが、企業型DCにおいてマッチング拠出が用意されています。
3ページ、マッチング拠出を導入している事業主の割合は30.7%となっていますが、近年、導入割合は横ばいとなっています。
4ページ、マッチング拠出を未実施の企業は、未実施の理由として、「会社の事務負担が大きい」、「従業員の関心が低い」、「事業主掛金以下という規制が使いにくい」といった点を挙げています。
5ページ、マッチング拠出を利用している者の多くは、拠出額が5,000円以下となっています。
6ページ、マッチング拠出の考え方です。
企業年金制度は、退職給付制度であって事業主による拠出が基本であるとの考えの下、従業員が希望する場合には、従業員による拠出を認め、老後の所得確保に向けた個人の取組を可能とする制度です。
このため、従業員による拠出を認めるに当たっては、事業主の掛金負担が従業員に転嫁され、加入者掛金が基本となることがないよう、事業主掛金を超えない範囲内で認めることとされました。
この点に関して、さきほど資料1で見ていただきましたように、マッチング拠出の制限の撤廃を求める意見があります。
7ページ、同じく企業年金である確定給付企業年金における加入者掛金も、事業主掛金の額を超えることができないとされています。
8ページ、企業型記録関連運営管理機関は、事業主掛金と加入者掛金を区分して管理し、毎年少なくとも1回、加入者に対して事業主掛金と加入者掛金をそれぞれ通知することが法令上定められています。
続きまして、「個人型確定拠出年金・iDeCo」です。
10ページ、これまでの部会でもお示ししてきた資料で、赤枠で囲った部分がiDeCoになりますが、一つ一つ見ていきたいと思います。
11ページ、現在の加入者数は、2019年3月末現在、121.0万人となっています。
12ページ、2017年1月、iDeCoの加入者範囲を、これまでの第1号被保険者と企業年金のない第2号被保険者から、企業年金加入者、公務員等共済加入者、第3号被保険者にまで拡大しました。
※の部分ですが、ただし、企業型確定拠出年金加入者については、企業型の規約にiDeCoにも加入できることを定めた場合に限られています。
13ページ、iDeCoの拠出限度額の考え方です。
第1号被保険者のiDeCoの拠出限度額、現行月額6.8万円は、国民年金基金の拠出限度額が既に設定されていた中で、新たな選択肢としてiDeCoが導入されたことから、国民年金基金とiDeCoの共通の拠出限度額としました。
企業年金がある第2号被保険者のiDeCoの拠出限度額、現行月額2万円又は1.2万円は、マッチング拠出の実態の大半をカバーする水準を勘案して設定しました。
5ページに戻っていただきまして、左の円、企業型のみを実施している場合の拠出限度額5.5万円のマッチング拠出ですので、マッチング拠出額は最大で2万7500円となります。拠出額は低い者から高い者までいるわけですが、マッチング拠出の実態の大半をカバーする水準として、2万円を、個人拠出であるiDeCoの掛金額の上限としました。もちろん2万円を超えてマッチング拠出をしている者もいますが、2万円という水準であれば、マッチング拠出をしている者の拠出水準の大半をカバーできるという考え方になります。
5ページ、右の円、企業型と確定給付型を実施している場合も同様に、拠出限度額2万7500円のDCのマッチングですので、マッチング拠出額は最大で1万3750円となります。これも、マッチング拠出の実態の大半をカバーする水準として、1万2000円を、企業型と確定給付型を実施している場合の個人拠出であるiDeCoの掛金額の上限としました。
13ページにお戻りいただきまして、上の箱、3つ目のマル、企業年金がない第2号被保険者のiDeCoの拠出限度額、現行月額2.3万円は、確定給付型を含む企業年金を実施している企業の事業主掛金と加入者掛金の実態の大半をカバーする水準を勘案して設定しました。
14ページ・15ページ、iDeCoの掛金額別の加入者割合になります。第2号被保険者と第3号被保険者は、拠出限度額の上のほうまで拠出している者の割合が高くなっています。
15ページ、左の円、第1号被保険者は拠出限度額が月額6.8万円ですが、2万円までで6割弱、6万円を超える者が2割程度となっています。
16ページ・17ページ、これまでの部会において委員の皆様からもお求めのあった数字ですが、企業型DCの事業主掛金額別の加入者割合になります。時点がさきほどのiDeCoと異なっている点にはご留意願います。これは、2018年度の運営管理機関からの業務報告書から作成しています。
16ページの左の円が、企業型のみを実施している場合で、拠出限度額は5.5万円になります。右の円が、企業型と確定給付型を実施している場合で、拠出限度額は2万7500円になります。
17ページの左の円が、企業型を実施し、規約で個人型の加入を認めている場合で、拠出限度額は3.5万円になります。右の円が、企業型と確定給付型を実施し、企業型の規約で個人型の加入を認めている場合で、拠出限度額は1万5500円になります。
このような拠出額の実態を踏まえ、企業年金のない第2号被保険者の拠出限度額、さきほど見ていただいた現行月額2.3万円は、税制改正のプロセスを経て設定されています。
18ページ、iDeCoの加入資格や拠出限度額の管理を行う国民年金基金連合会は、日本年金機構との情報連携により、iDeCo加入者の公的年金被保険者資格の種別と保険料納付状況を把握することができます。
第2号被保険者については、企業年金の実施状況によってiDeCoの拠出限度額が異なるため、事業主証明書の提出を求めていますが、分かりやすさの観点と事業主証明書を不要にする観点から、第2号被保険者の拠出限度額を統一すべきとの意見があります。
19ページ、企業型確定拠出年金の実施企業は、マル1の事業主掛金のみ、マル2の事業主掛金とマッチング拠出の組み合わせ、マル3の事業主掛金とiDeCo加入の組み合わせ、これら3つの選択肢のうち、いずれかを企業単位・規約単位で選択します。
マル2のマッチング拠出については、事業主に事務負担が生じること等から、規約に定めた場合に限っています。
マル3の企業型の加入者のiDeCoへの加入については、企業型の事業主掛金とiDeCoの掛金の合計額が拠出限度額に収まるよう、事業主掛金の上限の引下げが必要となること等から、規約に定めた場合に限っています。
絵の部分をご覧ください。マル1の事業主掛金のみの場合は、月額5.5万円以内で事業主が拠出可能です。2019年3月末現在、マル1を採用している事業主は2万1765で、全体の65.7%を占めます。
マル2の事業主掛金とマッチング拠出の組み合わせは、マッチング拠出のところで説明したように、月額5.5万円以内で事業主と加入者が拠出可能で、加入者は事業主掛金の範囲内で拠出可能ですので、絵のような拠出のイメージになります。事業主が2万7500円、加入者が2万7500円を拠出すると、拠出限度額の5.5万円に達します。事業主が2万7500円を超えて拠出すると、加入者が拠出できる額は逓減していきます。
マル2のマッチング拠出を採用している事業主は1万186で、マッチング拠出のところで御説明したように、全体の30.7%を占めます。
マル3の事業主掛金とiDeCo加入の組み合わせは、事業主の拠出限度額は月額3.5万円となり、この範囲内で事業主は拠出可能です。加入者は2万円以内でiDeCoに拠出可能ですので、絵のような拠出のイメージになります。
マル3のiDeCo加入を認めている事業主は1,187で、全体の3.6%となります。
なお、下の欄外の※1の部分、企業型と確定給付型を実施している場合は、事業主掛金の上限である5.5万円は2万7500円、3.5万円は1万5500円に、iDeCoの掛金の上限である2万円は1万2000円にそれぞれ読み替えて適用する必要があります。
20ページをご覧ください。企業型でiDeCo加入を認める際、事業主掛金の上限を低くしていますが、これは1つ目のマル、現行の仕組みは、企業型の事業主掛金の上限を月額3.5万円とすることで、加入者のiDeCoの掛金額にかかわらず、企業型の事業主掛金とiDeCoの掛金の合計額が必ず拠出限度額・月額5.5万円に収まることを担保した事務処理の簡便さを重視した方法です。
しかしながら、多くの企業が昇格・昇給に伴い掛金額が増えるタイプの設計を採用している中、事業主掛金の上限の引下げは行いにくく、その場合は、当該企業の企業型の加入者全員がiDeCoに加入できないこととなります。
※の部分、この規約の制約があるのは企業型確定拠出年金のみで、確定給付企業年金の加入者は、本人が希望すればiDeCoに加入できます。
国民一人ひとりが老後の所得確保に向けた取組を行うことができるようにする観点から、規約の制約なく、本人が希望すればiDeCoに加入できるように改善すべきとの意見があります。
21ページ、規約の制約なく本人が希望すればiDeCoに加入できるように改善する場合、企業型の事業主掛金とiDeCoの掛金の合計額が拠出限度額に収まるよう、企業型の記録関連運営管理機関とiDeCoの拠出限度額の管理を行う国民年金基金連合会との情報連携が必要となります。
企業型の事業主掛金が3.5万円を超える者は、iDeCoの掛金額によっては、合計額が拠出限度額の5.5万円を超える可能性があり、iDeCoの掛金額の調整が必要となる場合があります。
絵の部分をご覧ください。このような形にすると、これまで規約の制約により加入できなかった企業型の加入者全員が、本人が希望すればiDeCoに加入可能となりますが、赤丸の部分、事業主が3.5万円を超えて拠出している従業員については、拠出限度額に収まるよう、iDeCoの掛金額が逓減していくよう調整が必要となります。
この点、※の部分になりますが、現在、中小事業主掛金納付制度・iDeCoプラスについては、iDeCoの事業主掛金と加入者掛金の合計額が拠出限度額・月額2.3万円に収まるよう、加入者掛金の掛金額が自動的に調整されています。
現在、事業主掛金が3.5万円を超えている者ですが、16ページにお戻りいただいて、左の円グラフ、ちょうどいい区分にはなっていませんが、事業主掛金が3万円を超えている者の割合は1割強という状況になっています。
22ページ、企業型の加入者の個人の取組を支援する仕組みとしてマッチング拠出がありますが、事業主がマッチング拠出を導入している企業の場合、当該企業の企業型の加入者全員がiDeCoに加入できません。
マッチング拠出を導入している企業の企業型の加入者は、マッチング拠出かiDeCo加入かを加入者ごとに選択できるようにすべきとの意見があります。
絵の部分をご覧いただきますと、仮に企業型の加入者が規約の制約なく本人が希望すればiDeCoに加入できることとする場合、それを基本としつつ、さらにマッチング拠出を実施している企業の場合は、その企業の加入者は、マッチング拠出も選択肢として、左のマッチング拠出か右のiDeCo加入か、各自いずれかを選択可能ということになります。
23ページ、マッチング拠出とiDeCo加入とでは、加入者掛金の上限額のほか、事務費負担や資産運用で違いがあります。
事務費負担は、マッチング拠出の場合は事業主負担が多く、iDeCoの場合は加入者本人の負担になります。
資産運用は、マッチング拠出の場合は企業型確定拠出年金として資産を一体的に管理することとなり、事業主が委託した運営管理機関の提示する運用商品から選択することになります。iDeCo加入の場合は、企業型確定拠出年金とiDeCoの資産をそれぞれ管理することとなり、iDeCoについては多くの運営管理機関・運用商品から自由に個人が選択することになります。
24ページから2点、参考データを付けています。
24ページ、企業型確定拠出年金においては、8割以上が昇格・昇給に伴い掛金額が増えるタイプの設計を採用しています。このような企業にとっては、事業主掛金の上限の引下げは労使ともに行いにくいことになります。
25ページ、企業型DC加入者から企業への問い合わせ内容です。企業型の加入者の場合、本人の希望だけではiDeCoに加入できないこと等が要因だと思われますが、加入者から企業へのiDeCoについての問い合わせ内容の大半・87.0%が「自分がiDeCoに加入できるかについて」の確認となっています。
以上、企業型確定拠出年金加入者がiDeCoに加入しにくい実態と、改善を求める意見についてご説明しましたが、このような実務的な改善にとどまらず、発想・考え方自体を転換し、非課税枠を公平とした上で全て埋めることができるようにするものとして、4月の部会でもご紹介しました「穴埋め型」の意見があります。
26ページがその「穴埋め型」ですが、企業年金は企業が任意で行う退職給付制度である以上、給付水準は企業ごとに異なり、そもそも企業年金がない方もいます。
また、企業年金の中でも、確定給付型と確定拠出型とでは、制度創設の経緯を反映して制度間で仕組みが異なっていますが、双方の特徴を併せ持つハイブリッド型の普及が進んでいます。
老後の所得確保に向けた支援・非課税枠を公平にする観点から、iDeCoを活用した「穴埋め型」の意見があります。
具体的な仕組みは左の枠囲みの部分、
・全国民について、個人別に老後のための非課税枠を設ける、
・現役時代は一定の上限額まで非課税による積み立てを認め、運用段階についても非課税、支給時に課税、いわゆるEETとする、
・企業年金がある場合は、DB・DCへの企業の掛金額を上限額から控除し、残余がある場合は個人の所得から非課税拠出が可能
といったものです。もちろん、クリアすべき課題も何点かございます。
右の絵、穴埋め型のイメージをご覧ください。個人ごとに共通の非課税枠があり、企業年金の事業主掛金がある場合はその掛金額がまず充てられ、残り分がiDeCoの拠出限度額になります。
※の部分にあるように、企業型DCでマッチング拠出を導入している企業の場合は、さきほど説明したように、iDeCoかマッチング拠出かを加入者がそれぞれ選択可能とすることも考えられます。
企業年金がない一番左の枠の方は、全てiDeCoでの拠出が可能という整理です。資料全体を通じて水色を事業主掛金の色にして、ピンクを個人の掛金の色にしているのですが、いずれの場合も、このピンクの個人の掛金で非課税枠を埋め切ることを可能にするという考え方が「穴埋め型」だと私どもは理解をしています。
27ページ、話題が変わりまして、加入可能要件です。
確定拠出年金の加入可能要件として、公的年金の被保険者資格を有していることに加えて、企業型は65歳未満、iDeCoは60歳未満という年齢要件があります。
28ページ、加入可能年齢の引上げと受給開始時期の柔軟化です。
確定拠出年金は、老後の所得確保を図るという制度趣旨の下、受給開始時期を60歳以上と設定して、それまでの間の中途引き出しを原則禁止とするとともに、拠出・加入可能年齢は60歳到達前までとしています。
※1の部分、受給開始時期を60歳以上としたのは、確定拠出年金制度創設の検討当時は、老齢厚生年金の支給開始時年齢についてこれから段階的に引き上げられていく状況にあり、公的年金の補完として確定拠出年金も60歳から受給できるようにしたものです。
※2の部分、企業型確定拠出年金の加入可能年齢は、2011年改正で、当時の高年齢者雇用確保措置を踏まえ、最大65歳まで加入可能となりました。
高齢期の就労の拡大を制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図る観点から、加入可能年齢を引き上げるとともに、受給開始時期を柔軟化して、個人の状況に応じた選択肢を増やすべきとの意見があります。
ただし、高齢期における生活は多様であって、それぞれの方々が望ましいと考える生活水準、働き方への希望、収入・資産も様々であることから、引き続き60歳からの受給も選択できるようにすべきとの意見があります。
29ページ、いわゆる骨太の方針で、公的年金制度について、「現在60歳から70歳まで自分で選択可能となっている年金受給開始の時期については、70歳以降も選択できるよう、その範囲を拡大する」ことが盛り込まれています。
30ページの成長戦略でも、同様の記述が盛り込まれています。
31ページ、iDeCoや国民年金基金については、公的年金の被保険者資格を有していることが加入の前提となっています。
土台となる公的年金の被保険者資格ですが、現在、厚生年金被保険者を除き、国民年金の加入は60歳までとなっています。
ただし、40年の納付済み期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない場合で年金額の増額を希望するときは、60歳以降でも国民年金に任意加入できます。また、外国に居住する日本国籍を有する者で、20歳以上65歳未満の者も任意加入できます。
この間、国民年金の任意加入者については、国民年金基金への加入が順次認められてきた一方で、iDeCoへの加入が認められていません。
32ページ、中途引き出しです。4月の部会でも御議論いただきましたが、iDeCoに限らず、確定拠出年金においては中途引き出しを求める意見がありますが、原則として60歳到達前の中途引き出しは認められていません。
33ページ、iDeCoについては、iDeCoに加入できず、年金資産を積み増すことができない場合であって、通算の掛金拠出期間が短いこと又は資産額が少額であること等の要件を満たす場合に限って、中途引き出しが例外的に認められています。
iDeCoに加入できず年金資産を積み増すことができない場合として、現在、「保険料免除者であること」に限定されていますが、外国に居住する方も、iDeCoに加入できず年金資産を積み増すことができません。
さきほど見ていただいたように、仮に国民年金の任意加入者のiDeCoへの加入が可能となれば、外国に居住する日本国籍を有する者については、年金資産を積み増すことができるようになります。
34ページ、受給の形態です。確定給付企業年金・確定拠出年金ともに、相当数が一時金受給を選択しています。特に確定拠出年金では、一時金受給が企業型・個人型ともに9割程度と、この傾向が顕著です。
iDeCoは、資産額が少額のケースが多いことも一時金受給が選択される要因であるとの指摘があります。
35ページ、iDeCoの老齢給付金の一時金払いの1件当たりの給付額の分布になります。iDeCoは、右の円グラフの企業型と比べて、金額が少ない割合が高くなっています。
36ページと37ページ、iDeCoの加入手続ですが、インターネットだけでは完結せず、各種書類の提出が必要となっています。
38ページ、iDeCoの加入時等の手続を知ると、約4割の方が加入を思いとどまるというアンケート結果があります。
手続の中で最も煩わしいと思うものとして、「勤め先の証明書を作ってもらう必要がある」、「どの金融機関でも、インターネットだけでは完結せず、書類の提出が必要」といった点が挙げられています。
iDeCoの普及のためには、事務手続をオンライン化すべきとの意見があります。
39ページ、iDeCoでは制度の利用に当たって加入者等が下の表にある手数料を支払う必要があります。手数料には定期的に支払うものと新規加入時等に支払う一時的なものがあります。
40ページと41ページ、iDeCoに関する広報については、厚生労働省、国民年金基金連合会、運営管理機関、関係団体等が連携して、普及・推進に向けた様々な取組を実施しています。本日は、委員の皆様のお手元には、パンフレットの実物を配付させていただいています。
42ページ、公的年金・企業年金・個人年金の3つをアメリカでは「三本脚の椅子」と呼び、ドイツでも「社会保障の3本柱」と呼び、これらによって老後の生活に備えることが定着していると言われています。
43ページ、日本でも公的年金・企業年金・個人年金の組み合わせを巡る議論・研究がなされてきました。
続きまして「ポータビリティ」です。
45ページ、個人の資産が明確に分かれている確定拠出年金については、年金資産の持ち運び・ポータビリティが容易で、制度創設時から確定拠出年金間のポータビリティは認められていました。
一方、制度間のポータビリティとは、転職時等に制度間の資産移換を可能とするものです。より多くの制度間のポータビリティを拡充することで、個々人の選択肢が広がるなど、継続的な老後の所得確保に向けた取組を行いやすい環境となることから、これまでに2004年と2016年の法改正で拡充してきました。
46ページ、2016年の法改正で、企業型確定拠出年金から確定給付企業年金への資産移換が認められましたが、企業型確定拠出年金から通算企業年金への資産移換が認められていません。
このため、確定給付企業年金と企業型確定拠出年金を併用している企業を退職した場合には、資産をiDeCoにまとめて移換することはできる一方で、通算企業年金にまとめて移換することはできません。
47ページ、2016年の法改正前は、確定給付企業年金の加入者はiDeCoに加入できませんでした。このため、確定給付企業年金の制度終了後にiDeCoの加入者となっている者はおらず、通算企業年金に残余財産を移換することで年金受給につなげることを想定していました。
しかし、2017年1月以降、確定給付企業年金の加入者もiDeCoに加入することが可能となったことから、確定給付企業年金の制度終了後の残余財産をiDeCoに移換できるようにすべきとの意見があります。
48ページ、通算企業年金とiDeCoの比較です。通算企業年金は、給付の部分をご覧ください。原則65歳受給で、80歳までの保証期間付き終身年金といった特徴があります。
49ページ、転職元の企業の事業主は従業員が企業年金の加入者資格を喪失したときに、転職先の事業主は新たに従業員が企業年金の加入者資格を取得したときに、それぞれポータビリティに関する説明義務が課せられています。
最後に話題が変わりまして、厚生年金基金と国民年金基金などについてです。
51ページ、これまでの部会でもお示しした資料ですが、厚生年金基金について、健全化法が施行された2014年4月1日から2019年3月31日までの5年間、特例的な解散や他の企業年金制度への移行を促進してきました。
52ページ、特例解散期間終了後の2019年4月以降は、健全化法により、厚生年金基金については、責任準備金の額以上の積立金を有している必要があるとともに、最低責任準備金の1.5倍の額又は最低積立基準額のいずれか低い額以上の積立金を有している必要があります。
企業年金連合会については、責任準備金の額以上の積立金を有している必要があります。
残る8つの厚生年金基金と企業年金連合会は、現在、いずれも財政は健全となっていますが、ページの下の部分、健全化法では、解散するよう検討する旨のいわゆる検討規定が盛り込まれています。
53ページ、厚生年金基金は代行返上時に代行部分の年金資産を国に返上していましたが、健全化法の施行以降は、これに加えて、解散時においても、企業年金連合会に移換されるのではなく国に返上されることとなり、国への返上に際しては、厚生年金基金と国のデータの突き合わせを行った上で解散・代行返上を行っています。
企業年金連合会は中途脱退者や解散した厚生年金基金の加入員等の資産とデータを引き継いでおり、健全化法の規定の趣旨を踏まえ、企業年金連合会と国のデータの突き合わせ作業を進めています。
具体的には、企業年金連合会と日本年金機構においてシステム改修の上、データの突き合わせを実施予定。企業年金連合会と国のデータの突き合わせについては、2009年から2014年までに突き合わせを実施し、同年5月までに実施することとなっていた所定の作業は終了。システム改修を待たず、過去の突き合わせ分のうち、新しい資料等により再調査等が可能なものについて優先して実施し、本人照会が必要なものについては、今後順次、作業が進んだものから開始予定。作業状況については、定期的に、企業年金連合会と日本年金機構のホームページで、それぞれ進捗状況を公表、としています。
54ページと55ページは、企業年金連合会による年金給付の仕組みで、説明は省略させていただきます。
56ページ、支払保証制度です。
支払保証制度は、母体企業の倒産や経営悪化などによりやむを得ず制度終了したときに積立不足が生じている場合において、加入者等に対して一定の年金額が保証される仕組みです。実施に当たっては、事業主が支払保証に必要な保険料を負担します。
厚生年金基金については、代行部分を持ち、代行部分の上乗せ給付に対し一定の給付水準の確保を求めていたこともあり、企業年金連合会が厚生年金基金間の共済事業として上乗せ給付について支払保証制度を実施していましたが、健全化法施行後、多くの厚生年金基金が解散・代行返上に向かうことが想定されたこと等を踏まえ、支払保証制度の事業を終了しました。
なお、※の部分ですが、企業年金連合会の支払保証制度は、厚生年金基金が解散した際の残余財産を企業年金連合会に移換して年金化した解散基金加入員等に保証対象者が限られていました。
確定給付企業年金における支払保証制度については、財源のほか、「導入する必要性、企業年金の性格、受給権との関連、モラルハザードの回避方策など」が検討課題とされています。
OECDのガイドラインでは、外部積立型の確定給付型の企業年金制度には支払保証制度の実施を必ずしも求めていません。ドイツやスウェーデンにおける支払保証制度も、例外はありますが、原則として外部積立の制度以外の内部留保型のみを対象としていると承知をしています。
57ページは、諸外国の支払保証制度になります。
58ページからは、国民年金基金になります。
59ページ、国民年金基金の加入員数は2018年末時点で約36万人であり、40歳から59歳が8割強を占めています。平均年齢は48.7歳となっています。
60ページ、各国民年金基金における加入勧奨の取組により、2018年の新規加入員数は約3万人となりました。
長くなりましたが、以上です。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
大部な資料でございましたが、マッチング拠出とiDeCo等々についての資料を御説明いただいたわけでございますけれども、委員の皆様方から御意見、御質問があれば頂戴したいと思います。いかがでございましょうか。どうぞ。
○金子委員
金子でございます。いつもながら、よく整理された御説明をいただき、ありがとうございます。
私のほうから実は幾つか意見を申し上げたいんですけれども、その前に興味本位で恐縮なのですが、1つだけ質問させていただきたいと思います。
それは、13ページから14、15、16あたりなのですけれども、13ページ目には個人型確定拠出年金の拠出額の根拠として、企業年金の実態、企業年金を実施している企業の事業主の掛金だとか、加入者掛金の実態の大半をカバーする水準と、そういうふうに根拠が書かれております。それで、そのとき恐らく掛金の分布を見たと思うのです。
それに対して、14ページ目以降では実際に実施してiDeCoの掛金の分布が出ているわけなのですけれども、その想定と随分違っているようなところというのはどこかありますか。
○神野部会長
質問はその1点でよろしいですか。
○金子委員
はい。
○神野部会長
では、質問だけお願いします。
○吉田企業年金・個人年金課長
まず時点が違うというのがありまして、これは2.3万円に認められたのが平成21年度の税制改正の時点ですので、今は掛金額というのが資料にあるとおりここまで成熟しているというのが1点あります。
13ページの赤枠点線で囲った部分の加重平均で2.3万円を見ているわけですが、この白くなっている確定給付型の部分、この事業主掛金額というものも加重平均して計算して2.3万円になっているということでして、16ページ以降のDCの掛金額からみて2.3万円を導くことは皆様方この資料だけからは困難になっている等々もあるということです。
○金子委員
私が聞きたかったのは、想定した分布に比べて随分掛金が多いのではないかとか、少ないのではないかとか、言っていることは分かりますか。それを想定してと言うのかどうか分からないですけれども、時点が違うということもあるのかもしれないですが、ある種、掛金額を分布を見て設定されているとは思うのですが、それと比べて実際にiDeCoの14ページだとか15ページに掛金の分布があるわけでございますけれども、随分多い、随分少ないというようなことがあるのであれば、ちょっと教えていただきたいと思った次第です。
○吉田企業年金・個人年金課長
失礼しました。まず、額の分布を想定して設定はしていなくて、実態としてマッチング拠出を見て、大半をカバーできる水準として2万円や1.2万円というものを設定させていただいているところであります。
感想としては、14ページにあるように、比較的、拠出限度額の上のほうにまで拠出している方が多いということは見てとれるかと思います。
○金子委員
分かりました。そうなのかなとは思いつつ聞いたわけでございますけれども、この後、私のほうから意見として4点ほど述べたいと思います。大半が、それこそ井戸委員ですとか大江委員の御主張と重なる部分があるとは思うのですけれども、私のほうからもお話をさせていただきたいと思います。
まず1点目が、企業型DC加入者のiDeCo加入要件の緩和に関するようなものでございまして、資料2でいいますと恐らく19ページ目以降、少し 何ページかにわたっているものについてでございます。
この話をする前に、私自身としても企業年金自身を広げることができるのであれば、それにこしたことはないとは思っております。
ただ、よくそれこそ森戸先生などもおっしゃっていますように、真の政策目標というのは企業にしっかりとした企業年金を持たせるということではなく、企業の労働者に老後の所得を確保する手段を提供することであるべきだと思っております。
この観点で、職場に企業年金があるかないかにかかわらず、一人ひとりに老後の所得を確保し得る環境を等しく提供すべきだと思っています。
第2号被保険者に限定して申し上げますと、職場に確定給付企業年金がないのであれば、DCとして月額5.5万円の枠を与え、その枠の範囲内において企業型DCの事業主拠出、従業員によるマッチング拠出、あるいはiDeCoへの拠出をどのように組み合わせても使うことができるというのがいいのではないかと考えております。
したがって、企業型DC加入者に規約に特段の定めがない場合であっても、総額月額5.5万円の範囲内で企業拠出の枠が余っているのであればiDeCoへの加入を認めるべきだと思います。
また、マッチング拠出を希望する場合には、事業主拠出額の水準によらず、総額合わせて5.5万円の枠に入っているのであれば、マッチング拠出が行えるようにすべきだと思います。
特にマッチング拠出については、実は3月29日に行われた第3回の部会で損保協会さんがすごく分かりやすいというか、おもしろい資料を出しております。ここにいらっしゃる方は今持っていないと思うのですけれども、後ほど御関心があればもう一度見直していただきたいのですが、別紙1というところにマッチング拠出の分布が出ておりまして、それを見ますと、マッチング拠出額が事業主拠出に達している加入者が非常に多いこと、恐らくこれはたしか半分くらいと示されているように読めると思うのですが、多くなっております。このように、事業主拠出額の廃止を恐らく望んでいる加入者というのは多いものだと思われます。
それからまた、職場に企業DCも確定給付型の企業年金もない場合の話でございますけれども、現在iDeCoへの拠出が月額2.3万円になっています。これについても、さっきお話ししましたDC全体として月額5.5万円の枠を適用すべきだと思っています。つまり、この人たちにおいてiDeCoの月額上限を5.5万円に広げるべきだと思っております。
資料で先ほどの吉田課長からも少し感想としてお話しされていましたけれども、14ページの一番左側のグラフで2.3万円の月額上限のところをご覧いただきますと、ほぼその上限に近い2万1円以上の拠出をされている方が46%にも達するということでございまして、拠出上限の拡大のニーズは非常に高いのではないかと思います。
こうすると、結局第2号被保険者については職場に確定給付企業年金がない場合でiDeCo、それから企業型DCの合計の拠出額は月額5.5万円、それから確定給付型企業年金がある場合にはiDeCo、企業年金の合計が2.75万円の2パターンにすることができるのではないかと思います。そういう意味では、分かりやすい制度にするという観点からも望ましい方向に向かうのではないかと思っております。
なお、現在iDeCoにつきましては最低拠出額は事実上5,000円になっているところがございます。このままにしておきますと、企業型で残りの枠が5,000円未満の方というのは結局iDeCoに入れないということになってしまいますので、最低拠出額についてはできるだけ下げるべきではないかと思っております。これが、1点目でございます。
2点目が、DCの加入可能年齢の引き上げと受給開始時期の柔軟化ということで、資料2でいいますと28ページ目あたりの話でございます。現在、希望する人は就労期間を延長できるように政府全体として環境整備を進めているところだと思います。これに対応する意味もございまして、DCについては加入可能年齢を引き上げるべきだと思います。
例えば、運営管理機関の連絡協議会というところで資料を年次報告書みたいな感じで作られていると思うのですが、それによりますと、60歳以上で運用指図者になっている方が年々増えております。18年3月時点で24万人に達しておりまして、このうち17万5000人が企業型になっている。つまり、大半は働き続けている人であって、収入があるがゆえにだと思うのですが、裁定請求する必要に迫られていないのだろうと思います。60歳以上で加入可能になれば、この人たちも何割かは加入されるのではないかと思っております。
それから、就労期間の延長を望まない人の存在も忘れてはならないと思っておりまして、引き続き60歳からの受給も選択可能であるべきだと思っております。
3点目が、国民年金の任意加入者のiDeCo加入のところで、資料2でいいますと31ページ目のところでございますけれども、国民年金基金との比較が少し出されているのですが、国民年金基金と、それからiDeCoの加入者数で比較しますと、かつては国民年金基金のほうが圧倒的に多かったわけでございます。それが17年ごろに逆転し、18年3月にはiDeCoは国民年金基金の加入者の2倍以上に達しているということでございます。
つまり、かつてiDeCoというのは国民年金基金に比べますと大して重要な存在ではなかったのかもしれませんけれども、今においては国民年金基金と同様に重要な存在となっているわけでございます。そういう意味においては、国民年金基金に認められているものと同程度のものをiDeCoでも認められるべきだと思っております。
最後に、4点目が加入のiDeCoの手続のオンライン化についてでございまして、資料でいうと36ページ目に相当するところでございます。手続が煩雑だと、人というのはその手続を先延ばしにしてしまうのですね。ですから、民間企業でサービスを行うのであれば、なるべく利用者の負担が少なくなるよう、細心の注意を払って手続を設計するわけでございます。それくらい手続というのは加入を推進するためには重要なことだと思っております。
我々のアンケートでも、iDeCoに加入したいと考えた方に手続に関する5つの事項、例えばどの金融機関でもインターネットだけでは完結せずに書類の提出が必要だとか、あるいは申込書には基礎年金番号を記載する必要がある、あるいはサラリーマンの場合には勤め先の証明書が要る。あるいは、申し込みから口座開設まで通常2カ月程度かかるとか、住所変更だとか掛金額、引き落としの金融機関の変更をする場合には必ず書類の提出が必要ということを説明しますと、もともとその前までは加入したいと答えた方の半数くらいが脱落してしまうという結果でございました。
これはアンケートの話なのですけれども、実際にネット証券の方などに聞きましても、資料の請求件数に対して申し込み件数が半分以下と言っていたと思うのですが、それしかないということでございますので、現状申し込みの手続というのが加入の非常なネックになっているということではないかと思います。したがいまして、iDeCoの加入促進を図るためにも加入手続の簡素化ですとか電子化を図るべきであって、個人から見ればインターネットだけで申し込み手続が完結できるよう、金融機関、それから運営管理機関にインフラを提供すべきだと思っております。
なお、資料2の36ページのところに加入手続しか記載されていないのですけれども、住所変更だとか掛金の額の変更などについて、いわゆる諸手続についても同様に簡素化だとか電子化をお願いしたいと思っています。
それからまた、iDeCoに関連する業務で、事業主の定常業務というのがあると思うのですけれども、これについても電子化が図れるように、くれぐれもこの対応については中途半端なものに終わらないようにしてほしいと思っております。
以上、長くなりましたけれども、4点ほどお話をさせていただきました。
○神野部会長
御丁寧に御説明いただいたわけでございますが、事務局のほうからコメントがあれば頂戴しておきます。
○吉田企業年金・個人年金課長
金子委員の御提案に、マッチング拠出とiDeCoの拠出で、残余分があれば全部埋められるという御提案があったわけですが、今日資料を用意させていただいた19ページ以降の企業型DCにおけるiDeCoの同時加入の場合は、この19ページのマル2とマル3のバランスを考えて設定したものの、マル3については規約の制約があり、かつ、上限額を下げる、というのがなかなかやりにくいから見直しをという御提案が経団連を含めてあったので、今回資料を提出させていただいたわけです。
それに加えて、金子委員の御説明は全部埋められるようにということなので、穴埋め型もあわせてやる形です。ただ、マッチング拠出については企業年金の枠内で今やっているということをどう考えるのかということです。さらには、5.5万円を全部埋められるようにしたときに、例えば12ページに限度額の表がありますが、DBを併せて実施しているところの限度額はどのように考えるのか、2.75万円までいっていいのか、さらには そもそものDBの部分をどう評価するのかというところを、委員の御提案までいくと考えていかなければいけない点と受け止めました。
最低拠出額のiDeCo5,000円未満という点は、新規の加入者の場合、2,777円の手数料を取られますので、その観点から5,000円と設定されていますが、2回目以降の引き落としについては必ずしも5,000円ではなくていいのではないかというような御指摘もあろうかと思います。
手続の簡素化については、加入のみならず様々な諸変更についてもできる限り可能とするよう、国企連とよく相談をしていきたいと思っております。
○神野部会長
ありがとうございます。
内田委員からお手が挙がりました。どうぞ。
○内田委員
労働側の内田です。御説明ありがとうございます。また、以前要望しました資料、スライド5を出していただき、ありがとうございます。
今回の資料で、資料5になりますが、「マッチング拠出の拠出状況」を見ますと、事業主掛金以下という規制の上限である2.75万円近くまで拠出している加入者は非常に少ないという現状があることが示されているかと思います。
こうした実態や、また企業年金制度は事業主拠出が基本であるということを踏まえれば、加入者掛金は事業主掛金を超えない範囲とするという考え方は重要であると考えます。
また、一方でスライド14でiDeCoの掛金については実態としてはいずれの場合も拠出限度額の上限近くの額を拠出している加入者の割合が高くなっているということがございますが、仮に第2号被保険者のiDeCoの拠出限度額の引き上げを行った場合を考えますと、特に企業型、DBを実施し、規約で個人型への加入を認めているところでは、退職給付の性格を有する事業主掛金を減少させることが考えられますので、そこは問題であると考えます。iDeCoの拠出限度額の見直しについては、早急に結論を出すのではなく、時間をかけて慎重に検討する必要があるのではないかと考えますので、よろしくお願いします。
もう一点、スライドの38になりますが、「iDeCoの加入手続」、先ほど金子委員からも御意見がありましたが、確かに加入については必要書類が多く、手続も手書きが多いということで、アンケートでも手続の中で最も煩わしいと思うものが「どの金融機関でも、インターネットだけでは完結せず、書類の提出が必要」であるということが上位に挙げられておりますので、電子化できる部分はオンライン化を進めるべきだと考えます。
以上、3点です。
○神野部会長
どうもありがとうございます。コメントをどうぞ。
○吉田企業年金・個人年金課長
13ページをご覧いただいて、内田委員の御指摘は、例えば、今、個人型の2万円や1.2万円はマッチング拠出の実態を反映して設定しているわけですが、仮にマッチング拠出が成熟化して、この2万円が例えば2.2万円に上がったときに、御指摘の企業型3.5万円と個人型2万円というのを明確に区分していますので、2.2万円に上がったときに、では事業主掛金を3.3万円に下げるのか、こういう御指摘だったかと思います。
そういう点を回避するためにも、企業型DCのiDeCo同時加入については、3.5万円を超える部分について逓減するような形、資料では19ページ以降に出させていただいていますが、こういう要望・意見の形になれば、マッチング拠出が成熟化したときにそれ見合いのiDeCoの2万円・1.2万円となっている限度額も問題なく引き上げられます。今のままですと、事業主掛金も減るのではないかという御指摘だったかと思いますが、そのとおりの問題があると理解しています。
○神野部会長
ありがとうございます。ほかはいかがでございますか。
では、どうぞ。
○細田委員
日本商工会議所社会保障専門委員会委員の細田でございます。
商工会議所の会員には中小・小規模事業者が多いので、なかなかこの辺の話というのは難しいところで、いわゆるDCとかDBといったものを採用していないような企業が大変多いわけですけれども、そういう中で、このiDeCoについて2、3点申し上げたいと思います。
井戸委員ですとか大江委員、皆さんが既におっしゃっていることとかぶってしまうことが大変多いのですけれども、まず資料2の2ページについてです。この左端から2つ目に、「企業型も確定給付型も実施していない場合」とあり、商工会議所の会員ですと、おそらくここがかなり多いのではないかと思うのですが、そこで働く従業員の方々がさらに自分の努力でもって自分の老後をということを考えますと、月額2.3万円の拠出金で切られているというのはいかがなものかと思います。
ちょうどこの絵で見ても、下の部分が空白になっていますので、この部分が5.5万円でいいのかどうか、その辺は疑問なところですけれども、埋められるような、少しでも増やせるような工夫がされるとさらによろしいのではないかと思います。どこら辺まで出せるかというのはそれぞれの個人の問題になってくるとは思いますけれども、少なくとも法律的にというか、月額2.3万円しか拠出できないという制限をする必要はないのではないかと思います。
それから、20、21ページのところですけれども、企業型DCを実施している企業の場合に、iDeCoの加入が非常に難しくなっています。確かに、ある程度年齢や、会社における経験年数が上がってきますと給料も上がってきます。そのために、iDeCoに加入したくてもできなくなるというケースが出てくるというのは問題かなと思いますので、この辺についての改善も是非お願いしたいと思います。
それから、28ページに書かれております加入年齢の問題についてです。実は、私は65歳を超えてしまったので、仮に65歳まで引き上げられても加入できないのではないかと思いますけれども、今、国のほうでも企業の定年について議論されていますが、そういう中で、加入年齢が60歳で切られているというのはいかがなものかと思いますので、この辺も是非見直しをしていただきたいと思います。
最後に、これも皆さん盛んにおっしゃっていますけれども、36ページから38ページに書かれている手続の煩雑さですね。個人で加入しようとすると非常に大変な手続で、例えば36ページの絵を見ただけでも多分嫌になるだろうと思うのですけれども、これだけあちこちで判子を押さなくちゃいけないとか、事業主の判子も必要だとかになってくると、なかなかハードルが高いなと思いますので、この辺の加入手続の徹底的な簡素化も、是非お願いしたいと思います。
国のほうでも、マイナンバーカードの普及を、非常に大きな課題として取り組んでいて、マイナンバーカードでいろいろな公的なサービスを受けられるようにするということを進められていると聞いておりますので、是非この辺もマイナンバーカードを利用するなりということを積極的にしていただきたいと思います。以上です。
○神野部会長
では、どうぞ。
○吉田企業年金・個人年金課長
何点か、御回答します。
細田委員から、まず企業年金がない方の個人型2.3万円の限度額を5.5万円に引上げをというお話があったかと思いますが、今は最大値である5.5万円までは認めていないというところです。資料の13ページにあるように、企業年金を実施しているところの事業主掛金と個人掛金の大半をカバーできる実態として、今2.3万円までしか認められていないという部分があります。
さらには、企業型DCのiDeCo同時加入のお話がありましたが、これは上限の引下げが行いにくいので、その場合、当該企業の加入員全員がiDeCoに入れないというところが一つの大きな問題なのだろうと思っています。
利用を希望する個人・企業が障碍なくiDeCoや企業年金を利用できるようにしていくというのは非常に大事な視点でありまして、制度面・手続面の徹底的な合理化・簡素化というのをしていかなければいけないと思います。
○神野部会長
ありがとうございます。
では、小川委員どうぞ。
○小川委員
日本年金数理人会の小川でございます。
我々数理人は、平成の最初から先行して行われていた確定給付型の制度を中心に携わってきております。したがいまして、私のほうからは確定給付型との比較の中でという切り口で3点ほどコメントをさせていただきたいと思います。
まずはスライドでいうと20ページ目ですけれども、先ほど来出ておりますように、企業型のDCの実施企業で、本人が希望すればiDeCoに加入できるように改善の要望がなされておりますが、そこに書いてあるのですけれども、確定給付企業年金でいえばそれは既に希望すれば加入できるようになっているわけですから、やはりここについては平仄を合わせたほうがいいと考えております。
続くスライド21にありますように、これを達成するためには運営管理機関と国民年金基金連合会様の間での情報連携が必要になるというテクニカルな問題がありますけれども、これにつきましては今年の4月に実質的に収束を見ました厚生年金基金が解散していく、移行していくというところで、資料でいうと53ページに少しあったのですけれども、やはりいろいろシステム改修したりして、新たなところにつながなければいけないということがございました。
しかしながら、このコストというのはやはり制度改善に伴う関係者間でどうしても負担をしなければいけないコスト、いわば社会的なコストというふうに捉えられると思っております。
このコストは、今回でいえばこの両機関のみならず、プランスポンサーたる事業主、ひいてはメリットを享受するであろう加入者にも跳ね返ってくる可能性は出てくると思います。したがって、この社会的コストというものを低減していくように、なるべく少なくしていくような十分な工夫というのが検討されるべきではないかと考えております。
例えば、具体的にいうと情報連携がリアルタイムというのがよろしいとは思うのですけれども、それに拘泥することなく、許容範囲内であればタイムラグを許容するとか、そういうことでかなりコストが抑えられるのではないかと考えております。
2点目は、スライドでいうと28ないし31なのですけれども、ここには加入可能年齢の引き上げとか、国民年金の任意加入者のiDeCoの加入ということが要望されておりますが、これもあえて言うほどでもないのですけれども、確定給付企業年金では既に60歳以上も加入できるようになっているわけですので、これにつきましては早期に平仄を合わせたほうがいいと考えております。
最後ですけれども、これも出ておりますが、スライドの36~38のところで確定給付企業年金、あるいは生命保険会社が従業員の拠出を伴って売っております拠出型の企業年金、あるいは財形などもそうなのですけれども、これは企業の福利厚生の一環として制度運営そのものがなされるためにやはり企業の介在が必須で、そうなりますとなかなか個人がオンラインで加入するのは難しいというのは仕方がないと思いますけれども、皆様がよく御存じのように火災保険とか自動車保険のような損害保険、あるいは生命保険でも個人の自助努力として加入している、生命保険会社で売っている個人年金というのは徐々にオンラインでも加入できるようになっておりますので、こちらにつきましてもiDeCoもやはり個人の自助努力という観点では平仄を合わせてオンライン化ができるようにすべきだと思っております。以上でございます。
○吉田企業年金・個人年金課長
何点か御指摘いただきましたが、まずiDeCoのシステム改修費については現在新規加入時の手数料2,777円の中で見ていただいていまして、今後、仮に今回制度改正がいろいろな見直しがあったときにシステム改修費ももちろん必要になると思いますが、この中で積算し直しての捻出になると思っています。
御指摘のDBとDCの加入可能年齢ですけれども、27ページを見ていただいて、DBにつきましては現在年齢制限がなく厚生年金被保険者であれば加入可能という形になっていますので、同じく退職給付制度である企業型DCについてもどのように考えるのかが論点になります。
○神野部会長
ありがとうございました。ほかはいかがでございますか。
では、どうぞ。
○宮園企業年金連合会理事長
ちょっと話題は変わるのですけれども、ポータビリティの関係で1点申し述べさせていただきたいと思います。
資料でいいますと46ページでございますけれども、2つ図面がありまして、右側の図に分かりやすく赤いバツでお示しいただいておりますが、企業年金関係者からはこのバツがなくなるようにと、つまり企業型DCから通算企業年金への資産移換を可能にするようにという強い要望が出ております。
図にございますとおり、企業型DCの加入者が転職等によって当該企業の加入者資格を失った場合、転職先の企業に企業型DCがあれば問題ないわけですけれども、DBがあっても資産移換を受け入れるための規約がないケースも相当ございまして、また、そもそも転職先に制度がないということも結構ございます。
その場合はiDeCoに資産移換をすることができるわけですけれども、定められた期間内に手続をとらないと資産が自動移換になるということで、これも意外に多数存在しているという実態がございまして、せっかくのポータビリティの制度が老後資産の形成に十分活かされていない実態があると思っております。
これは、加入者の方の認識不足ですとか、資産運用に対して関心がそれほど高くないといったような背景もあると思いますけれども、一方で、通算企業年金は先ほど御説明がありましたとおり一定の予定利率で算定した年金額を保証する終身年金でございまして、安定した財務状況を維持しておりますので、資産移換がもし可能になれば自ら資産運用を行うことに消極的な方であっても、安心して老後資産の形成ができるということになりますので、老後資産形成という観点から是非ともこれを実現していただきたいと要請をさせていただきたいと思います。
さらに追加で申し上げますと、中途退職者の年金資産というのは比較的少額であることが多くて、将来の年金額もそんなに大きな額にはならないということもございます。通算企業年金の場合、資産を移換された後に追加して掛金を拠出するという機能がございません。そのため、通算企業年金は老後の資産形成の手段として限界も持っております。
これから働き方がどんどん多様化して、転退職を繰り返すという働き方が増えてくると思います。そういう中で、加入者の立場に立って、俗な言い方ですけれども、勤め人人生の節目の都度、確かな受け皿として継続的な老後資産形成を支えていくことができるよう、通算企業年金に一定の追加拠出の機能を付加するということで、活用の道を開いていけたらと希望しております。以上でございます。
○神野部会長
御指摘ありがとうございました。
では、どうぞ。
○吉田企業年金・個人年金課長
1点、現状では転職を繰り返す場合や、資料にも盛り込ませていただきましたが、DBとDCを併用している場合の企業を退職した場合に、通算企業年金に資産をまとめることができないといった問題点が生じていると認識をしています。
資産を移換するに当たって、その資産の運用、またはその後の受給の在り方を個々のニーズに合わせて選択できるようにすることが望ましいと考えますので、企業型DCから通算企業年金への資産の移換が可能となれば、資産の移換先の選択肢が広がると思っています。
その先の追加拠出につきましては、税制面の対応のほか、限度額管理をどうするのか、まさに国企連と企年連の限度額をどのようにして情報連携していくのか等々の課題もあると思います。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
ほかはいかがでございますか。どうぞ。
○藤澤委員
藤澤でございます。コメントが3点ございます。
1点目は、マッチング拠出の制限の撤廃に関する要望ですが、スライドでいうと6ページになります。
加入者掛金は事業主掛金を超えない範囲で定めるという部分ですが、加入者掛金に関するルールは、スライドの7ページにあるように、DB法の施行令でも同様の記載となっていまして、DBのルールとの平仄をとってマッチング拠出のルールを決めたという側面もあると思っています。
ただ、DBの場合、実態として加入者掛金を拠出している制度はそんなに多くないと思っています。
一方で、DCのほうは導入割合が30.7%と一定の割合を占めるようになっておりますので、このかなり少ないDB制度の加入者掛金のルールに引きずられてDCのマッチング拠出のルールが決まっているのだとすると、少し違和感を感じる部分があります。
ですので、逆にDCのマッチング拠出の実態や、関係団体からの要望を踏まえてDC制度の加入者掛金のルールを再考した上で、DB制度もそれにそろえるといった逆の発想があってもよいと考えています。
2点目ですが、iDeCoに関する見直しで幾つか御説明ございましたが、例えばスライドでいくと20ページのところの「企業型DC加入者のiDeCo加入の要件の緩和」ですとか、28ページの「加入可能年齢の引上げと受給開始時期の柔軟化」ですとか、31ページの「国民年金の任意加入者のiDeCo加入」ですとか、36ページから38ページの「iDeCoの加入手続オンライン化」については、これまで複数の委員の方から同様の意見がありましたが、私も基本的には全て賛成しています。是非、前向きに検討していただきたいと思っています。
その中の1つのスライドで、28ページの加入可能年齢の引き上げと受給開始時期の要望の部分です。加入可能年齢の引き上げと受給開始時期の始期は引き続き60歳とすべきという論点でございますけれども、加入可能年齢と受給開始時期は原則、同一の年齢とした上で、その両方を引き上げて受給開始時期は公的年金のように60歳まで繰り上げ支給を認めるというようなオプションもできないかと考えております。
DC法は第1条にあるように、目的としては国民の高齢期における所得の確保にかかる自主的な努力を支援するというような点があろうかと思います。
スライドの30ページとか31ページにあったような骨太の方針や成長戦略の議論を見る限り、この高齢期の考え方が今、変わりつつある時期に差しかかっていると思っています。
全世代型の社会保障ということで、公的年金においても働き方の多様化に応じた年金受給開始時期の選択肢の拡大の議論が行われていますが、公的年金を補完する確定拠出年金についても、高齢期における所得の確保という目的を考えると、原則として受給開始時期も引き上げながら、60歳までの繰り上げ支給を認めるということが現実的ではないかと考えています。
最後に、46ページのポータビリティの企業型DCから通算企業年金への移換の部分です。一般にDCからDBへの移換は給付カーブの違いもあって普及させるのが難しいと考えていますが、働き方の多様化に対応して何らかの受け皿が必要になると思っています。その受け皿として、通算企業年金を活用するというのはすごく自然な発想だと思っています。
ですので、先ほど説明がありましたけれども、企業年金連合会の通算企業年金は保障期間が付いていますが、終身年金も提供する主体であり、超高齢期の所得を保障する上で今後重要な役割を担っていくと考えていますので、この部分のポータビリティについても前向きに検討していただきたいと考えています。
一方で、終身年金については保険会社の中でもリスク管理が難しいタイプとされています。理由としては、死亡率の長期的な予測が困難であって、いわゆる大数の法則が働かないような分散不能なリスクも含んでいるというようなことがありますが、企業年金連合会が受け皿としての役割を増すにつれて、より長期的に安定的な財政運営を行うためのリスク管理の仕組みというのもあわせて検討する必要があると考えています。
以上、3点がコメントとなります。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
では、どうぞ。
○吉田企業年金・個人年金課長
まず、資料7ページに、同じく企業年金であるDBの加入者掛金が事業主掛金を超えられない仕組みを御紹介させていただきましたが、DBの加入者掛金に引きずられて企業型DCの加入者掛金の仕組みがあるわけではなく、あくまでも企業年金の在り方として事業主拠出を超えられないということで、平成23年の改正でマッチング拠出が認められました。
御指摘のとおり、DBの加入者掛金というのは採用しているDBも少ないわけですし、また、拠出時課税で、生命保険料控除の適用という形になっていて、企業型DCの加入者掛金とは仕組みも異なっています。
28ページの年齢の引上げですが、受給開始時期の柔軟化について、繰り上げ・繰り下げという概念を藤澤委員は述べられましたが、公的年金やDBと違って、支給開始年齢があっての繰り上げ・繰り下げという概念がDCの世界にはなく、あくまでもこの期間内での受給開始時期の選択という形になっています。現行60から70歳で、拠出を止めたらいつでも受給可能というのがDCの制度でして、DBとは、言い方と言いますか、概念が違うというところがあることを補足して説明させていただきます。
○神野部会長
どうもありがとうございました。ほかはいかがでございますか。
では、臼杵委員どうぞ。
○臼杵委員
ありがとうございます。いろいろな委員の御意見を伺っていて、例えば手続の簡素化ですとか、加入可能年齢をフレキシブルにしていくとかということについては基本的に賛成でございます。
それで、拠出額のことでちょっと意見を申し上げると、私も穴埋め型がきれいにできれば一番すっきりするのではないか。企業・事業主がその税制を活用してくれないというか、できない場合に、個人でその機会が得られるようにするという意味で穴埋め型がいいのではないか。DBについても、何らかの方法で拠出額の計算のようなものが事務的な負担なしにというか、なしというのはちょっと言い過ぎでしょうけれども、過度な負担なしにできるようになればいいのではないかと思っています。
そうすると、例えば金子委員のおっしゃったとおり、枠としては66万円誰でも出せるということになってきても、多分出せない人も実態としてはかなりいて、自助努力しないからそれが悪いんだというような議論はちょっとまずいのだろうという意味で、そこは3本柱というお話もありましたけれども、公的年金が第1の柱だとすれば、出せないような人についてはそこできっちり手当てをしていく。所得再分配の強化なのか、分かりませんけれども、そういうトータルの支援が必要なのかなという気がしています。
あとは、1つ提案というか、考え方なのですが、マッチングとiDeCoの関係なのですけれども、マッチングというのはある意味でiDeCoというか、経済的には個人が出しているものですから、結局iDeCoと同じような機能ではないか、同じ意味を持っているということでいくと、これを企業年金と考えると事業主拠出との関係が問題になってくるので、むしろこれはiDeCoだ、企業型DCのプラットフォームを使ったiDeCoなのだというふうに考えると、企業年金ではないという言い方がいいのかどうか分かりませんけれども、少し違うんだと、それで限度額を管理していく。穴埋め型になるかどうか分かりませんけれども、そうすると例えばDBのない場合には66万のうちで事業主が出さなかった分はそこで出せることになります。
プラットフォームとして、国企連さんと同じ役割を事業主ができるかどうかはよく分かりませんけれども、事業主がiDeCoの運営管理をある程度手伝うというような形で考えていくのはどうだろうかということをちょっと今、思っています。以上です。
○神野部会長
コメントはありますか。
○吉田企業年金・個人年金課長
いわゆる「穴埋め型」につきましては、資料でも提出させていただきましたが、やはりDBの部分の算出をどう考えるのかというのは課題になるかと思っています。
臼杵委員からは、4月の部会のときにも具体的な提案をいただいておりますので、また次回にもより具体的な議論ができればと思っておりますし、資料を用意させていただきたいと思います。
○神野部会長
ありがとうございます。ほかにいかがですか。
では、どうぞ。
○森戸部会長代理
詳細な資料をありがとうございます。委員の皆さんの御意見にも基本的に賛同できるところが多いのですが、まず穴埋め型という話が出ているので、穴埋め型というのは私もあちこちで使っているのですけれども、本当はいろいろなイメージがあって、DCだけで考えるのか、DB、DCで考えるのか、退職金なども含めて考えるのか、もしかしたら公的年金も含めて考えるのか、いろいろなレベルがあるのですけれども、いずれにしても発想としては穴埋めというか、全国民が一人ひとり同じ枠を持っていて、それをどう埋めるかという話です。
それで、すごくシンプルに考えればみんなが同じ枠を、66万円でもいいのですけれども持っていて、これを埋められるルートはというか、埋められる人は大きく2人いて、自分か企業かだ。企業が埋めるならば残りは自分だし、半分半分かもしれないし、企業に勤めていないならば、あるいは企業が出してくれないならば自分で埋められると、こういうイメージだと思うんです。それぐらいであればというか、シンプルで、国民全体としても理解ができるのではないかと思っています。
それで、今日お話に出ていて非常に象徴的だと思ったのは、マッチング拠出の半分までしか、事業主と同じところまでしか出せない。なぜならば企業年金だからというところに全て問題が集約されていると思うのですけれども、企業年金は退職給付制度で事業主による拠出が基本だと6ページなどに出ていますが、これが企業年金なのか、私的年金なのか、それとも金子委員もさっき言っていただきましたけれども、企業年金とか呼び名はともかく、要は国民が老後所得をちゃんと確保できればいいということで、そのための制度とすべきだし、そういうふうに考えなければいけないのではないかというところにきているのだと思います。だから、企業年金であるから、それが基本だというところがそもそももうちょっと考え直さなければいけないのではないかというのが1つです。
6ページなどにも、企業年金だから基本だという、そもそもその基本というのが、企業年金ではなくて老後所得をみんなに確保することが基本だというふうに移るべきなのではないかというときに、こういうマッチングは半分までだというか、事業主が出すところまでだよという発想でいいのかというのはちょっと疑問があります。
それから、従業員に転嫁されとかという、悪いというか、企業がろくな方向に考えないというような発想でできているのも、そういう会社もあるのかもしれませんけれども、それこそそれは労使交渉で労側が歯止めをかけるべきことだと思うし、これはちょっと分かりませんけれども、ここが撤廃されても規約上マッチング拠出はここまでですという枠を設けることは、今の法制度でもマッチング拠出するか、しないかも決められるのだから、これを撤廃してもマッチング拠出は企業が出した分までしかうちの会社では出せませんと決めるのは、そういう規約を作ること自体は妨げられないのかなとかも思います。つまり、うちの会社は危険だと思う労側はそうやればいいのではないかと思います。
ただ、そう言いつつ、それはばかばかしいような気もしますので、私はマッチング拠出の上限規制については撤廃した方がいいだろうと思っています。
それから、臼杵さんより先にしゃべらないと大体先に言われるから、先にしゃべっておけばよかったなと思ったのですけれども、iDeCoとマッチングの話は全く同じ意見で、さっきの国民に分かりやすいのは、要するに同じ枠を自分で埋めるか、会社が埋めるかだよというならば分かるのですけれども、そこには自分が埋めるといつもマッチングとiDeCoがありまして、それぞれ何万、何万で、1.何万でと、今日課長は死ぬほど何度も説明しているから流れるような説明でしたけれども、多分、物すごく分かりづらいことだと思うんです。ここにいる人たちも正直、あれ、1.何万だっけと思いながら、でも、分かったふりをして聞いているわけで、これを国民全体に分かれというのは無理な話です。
そういう意味でも、マッチングもiDeCoも同じ話で、要は自分で出すという話でしょうというような、なるべくシンプルでみんなに分かりやすい制度にしていくにはどうしたらいいか。少なくとも中身はいろいろ複雑なのかもしれないけれども、労働者側からはシンプルに捉えられるような制度を作っていくという方向で何とか制度を作れないか。
それは、今までは企業年金だったから、企業がちゃんと責任を持っていろいろ複雑なこともやってくれる制度だったけれども、やはり労働者の側、従業員の側、国民一人ひとりもこの制度に関与してというか、一緒に参加してやっていくような制度にならざるを得ない時代になってきたから、よりシンプルにしなければいけないんだよという要請が強くなったのではないかと思います。以上です。
○神野部会長
では、小林委員どうぞ。
○小林委員
私からは、大きく4点申し上げたいと思います。
まず1点目、iDeCoの加入要件に関してです。多くの委員の方の御意見と重複する部分が大半ですが、例えば、企業型DC加入者について、資料21ページに記載いただきました、本人希望に応じて規約の制約なくiDeCoへの加入を可能にする仕組みは、経団連からも要望をさせていただいている事項ですので、是非進めていただきたいと思います。
あわせて、28ページにあります加入可能年齢の範囲拡大につきましても、高齢期の就労期間の延伸が進む中で多くの会員企業からも要望が出ていますので、是非実現していただくようにお願いします。
ただし、受給開始年齢に関しましては、過去の部会でも申し上げましたが、高齢期の働き方が多様化し、健康状態等、個人差も大きい中で受給ニーズも多様化していると認識しておりますので、現行と同様に60歳から可能にしていただきたいと思います。
また、国民年金の任意加入者のiDeCoの加入につきましても、老齢期の所得確保に向けた自助努力をより一層支援する観点で、iDeCoへの加入を可能にしていく方向性は理解できると考えております。
2点目は、これも既に御発言が多く出ていますが、iDeCoの手続面に関してです。資料38ページで御紹介をいただいたように、iDeCoの加入手続の負荷が制度普及の阻害要因になっている実態を踏まえれば、やはり全面オンライン化等で加入者本人の利便性向上を早期に図るべきと考えております。
一方、事業主サイドにおいても、企業型DC加入者のiDeCo加入要件の緩和という今回の見直しが実現すれば、今後その加入者数はより一層増加していくと見込まれ、事業主証明を始めとする事務負荷が、それに伴ってさらに増大することを懸念しています。
正直、現状でも既に大きな負荷があり、事務処理部門からも声が出ている会社もございます。この証明書を提出する理由が、加入者個人の属性により掛金の上限が異なることに起因することも踏まえれば、先ほど来出ています穴埋め型の議論にも通じると思いますが、制度の枠組みを統一することで、手続そのものも簡素化、廃止できる部分もあるのではないかと思います。
DCを老後資産形成の1つの大きな基軸としていくのであれば、制度運営にかかわる個人、事業主双方の事務負荷はできるだけ減らすことも重要な観点だと思いますし、手続面を考える観点でも、制度の在り方そのものの抜本見直しを含めて踏み込んだ検討が必要と考えております。
3点目が、企業型制度における事業主掛金の拠出状況についてです。資料の16~17ページに掛金分布のデータが示され、先ほども御説明がありましたように、多くの企業においては職位等に応じて掛金の傾斜配分が行われている実態はもちろんありますが、それに加えて、現状の掛金の基本設計が、恐らく2001年の法が施行された時点の上限額、すなわちDB年金なしの場合で月額3.6万円、DB併用の場合で1.8万円、これを前提に組まれたものではないかということを考慮する必要があると考えております。
実際、16ページのデータを見ますと、制度導入当初の限度額の範囲内に9割方の加入者が分布をしていることが見てとれると思います。事業主の立場からすれば、掛金拠出額の見直しのニーズや意思があったとしても、これまでのような上限額が小幅に何度も引き上げられた中で、その都度、掛金設計全体を見直すことは、労使の合意形成を含めて実務上の負荷が非常に大きく、現実的にはなかなかついていけないのだと思います。
結果として、せっかく法改正をしても、その効果が反映されていかないという実態もあるのではないかと思います。掛金の水準は、上限が設定されれば、その範囲内での対応にならざるを得ず、また、ただいま申し上げたような観点も踏まえて考えれば、現状の掛金の拠出実態が必ずしも十分に労使のニーズをカバーするものになっていないということについては御留意をいただきたいと考えております。
最後に4点目、「支払保証制度」についてであります。資料の56、57ページに記載をいただいておりますが、この支払保証制度につきましては、現行の確定給付企業年金法が成立する以前から申し上げてきているとおり、経団連として制度は不要と認識していまして、改めて反対の旨を申し上げておきたいと思います。
現行の確定給付企業年金制度の性格を考えれば、受給権の保護については継続基準並びに非継続基準に基づく財政検証の実施によって、個々の制度が担保すべきものと思います。特に非継続基準については、最低積立基準額の算定方法に対する経過措置が終了し、国債の利回りの低下によってクリアすべき水準そのものも高くなっています。さらに、追加掛金拠出の基準も2018年に強化されたことを踏まえれば、引き続きそれぞれの事業主が各制度における財政検証結果を踏まえて必要な掛金拠出を行うことをもって、必要十分な対応が図られていると認識しています。
あえてモラルハザードを惹起するような仕組みを導入する必要はないと認識しており、経団連としては絶対に反対ということを一言、付け加えさせていただきたいと思います。私からは、以上です。
○神野部会長
では、内田委員どうぞ。
○内田委員
労働側の内田です。1点だけ、先ほど御発言のありました支払保証制度についてですが、労働側としましては、支払保証制度は受給権保護の観点から大切な制度だと考えております。
過去、確定給付企業年金法の国会審議で、企業年金の加入者及び受給者の受給権保護を図る観点から、セーフティネットとしての機能を持つ支払保証制度についてモラルハザードの回避などに留意しつつ、引き続き検討を加えることと附帯決議がなされておりましたが、今、「放漫経営をしている企業は保証制度に頼って積み立て不足を放置するモラルハザードの発生が予測される」などの指摘があり、実現していない実情があります。
2007年の企業年金研究会で挙げられました検討課題について、引き続き検討を進めるべきではないかと考えます。以上です。
○神野部会長
伊藤委員、手が挙がっていましたか。どうぞ。
○伊藤委員
今の点だけではないのですけれども、全体のことですが、まずやはり働く側の立場から企業年金、私的年金を考えますと、今回6ページのところに明確に書いてくださっていますけれども、企業年金というのは退職給付であって事業主による拠出が基本だ。だから、事業主の掛金拠出が従業員に転嫁されるようなことがないようにしないといけないということで、マッチング拠出というものは事業主の掛金の範囲で認めることになったわけで、もともと認められていなかったわけです。
この基本的な考え方というのは、働く側にとって極めて重要な部分ですので、これを踏まえた上で検討していく必要があると思っています。
先ほども森戸先生から、状況が変わっているというか、社会的な要請があるのだというお話もありましたけれども、労使関係の実態ということを 考える必要もあると思っています。過半数代表者でこの企業年金をどのように守っていくかというようなことが、労側が歯止めをかけるべきという 話もありましたけれども、必ずしも実態として実効性を発揮できるかというところは十分考えていかなければいけないと思っています。
マッチングのところについては、未実施の理由というところで、使いにくい規制があるという回答は複数回答なのに余り多くないですし、上限が張り付いている人も余り多くないということで、継続的にフォローアップしていけばいいかと思います。
それから、企業型と個人型の併用の場合についてですけれども、これについては最初に申し上げたように事業主拠出を引き下げることになる可能性がありますので、非常に問題があると思っています。これを拡大することで、事業主拠出を引き下げるということにつながるという懸念を持っております。
それから、企業年金のある企業における個人型の拠出状況というのは、確かに上限に張り付いている人が多いというデータが今回出てきましたけれども、これについては今、申し上げた事業主拠出が従業員に転嫁されることにならないようにするという考え方をやはり持つ必要があると思っています。
今日何人かの委員の意見で、18ページのところですね。分かりやすさとか、事業主証明を不要にする観点から、国年2号の限度額を統一化するという意見があるという話がありました。この点については、企業年金制度というのは社会保障制度であるということや、税の公平性ということを踏まえて丁寧に検討していきたいと思っております。
それから、34ページの受給形態のところですけれども、これについては受け取り方法についてライフプランの意識醸成、涵養という観点からも、受給者、加入者の意識を高めていくようなことが必要だと思っています。
また、広報というか、情報提供に当たっては今回手数料の資料が出ておりますけれども、こういったネガティブな情報も含めて確実に示していくことが金融リテラシーの向上につながると思いますので、やっていくべきだと思います。
質問が2つありまして、1つは13ページですけれども、2.3万円の上限のところで、先ほど質問があり、2.3万円が要は企業年金の全部掛金、個人も事業主拠出も全部合わせて加重平均したら大体こうだという話だったんですけれども、これについて今日的に変動する要素というのがありますかということをお聞きしたいと思います。
それから、もう一つの質問は国民年金基金なのですけれども、個人型DCは国年各号の被保険者が全部入れるようになったわけですが、国年基金が1号しか入れないことにしている理由というか、1号以外に加入させられない理由みたいなものがあるのかということをお聞かせいただきたいと思います。
31ページのところで、任意加入者のところもiDeCoと国年とを比較して説明されているので、なぜ国年基金は1号だけなのかというところを教えてください。
○神野部会長
事務局のほうから質問にお答えいただくのと、何か全体を通してコメントがあればお願いいたします。
○吉田企業年金・個人年金課長
まず、2点質問いただいた点に御回答します。
資料の13ページ、2.3万円を設定したのがこの赤枠の点線の囲みの部分ですが、先ほど金子委員にも御回答申し上げたように、平成21年度の税制改正で2.3万円にしていますが、当時はこの絵の3.5万円にiDeCoの2万円という同時加入の形はなかったわけです。当時5.5万円の限度額ではなかったのですが企業型DCのみと、DBと併用型の企業型DCの事業主掛金、さらにはDB型の事業主掛金と加入者掛金、ここを見ています。そして、このDB型については、当時は厚生年金基金が多かったわけで、それと状況は大分変わっており、今はiDeCoの掛金もかけられるようになってきていますし、厚生年金基金からDBに変わってきている点が変動要素です。
もう一つは、国民年金基金の枠を広げられない理由、言い換えれば、なぜ今第1号被保険者だけかという御質問だったかと思います。国民年金基金については、第1号被保険者のみを対象として、基礎年金の上乗せとして自らの判断で加入できることができる確定給付型の制度としています。
穴埋め型の提案が仮に実現したらというところですが、これは事業主拠出がまずあって、残余を個人年金で埋めていこうという発想で、その個人年金としてiDeCoだけではなくてDB型の国民年金基金を穴埋めの手法として使うかどうかというのは一つの大きな論点だと思います。
個人型の非課税枠、この絵のピンクの枠というのは第2号・第3号全体に広がってきていますので、今第1号被保険者のところのみピンクと国民年金基金のオレンジの併用というのが認められていますが、第2号・第3号被保険者の部分についても国民年金基金のオレンジの併用を認めるべきと、かねてより国民年金基金の関係者からは御要望をいただいている点です。
ただ、乗り越えなければいけない課題は幾つかあって、国民年金基金は今、付加年金を代行する形になっています。第1号被保険者のみの付加年金ですので、第2号・第3号被保険者に付加年金という形はとっていません。その部分をどのように考えるのか。さらには国民年金基金の税控除は社会保険料控除です。第2号・第3号被保険者に広がったiDeCoのこのピンクの枠については、小規模企業共済等掛金控除ですので、これらをどのように考えるかも論点になると思っています。
1点だけ、19ページにある企業型DCとiDeCoの併用について、若干分からなかったのですが、事業主掛金を今は3.5万円に折らなければいけないという、まさに事業主拠出が減るという現行の仕組みが私ども問題だと言うことで、20ページ以降の資料を出させていただいていることを付け加えさせていただきます。
○伊藤委員
ちょっとだけ付け加えさせていただいてよろしいですか。
○神野部会長
どうぞ。
○伊藤委員
今、後で言われたところですけれども、19ページのところにあるように現状では、企業型DCとiDeCoを併用する場合に3.5万円まで事業主拠出を減らさなければいけないという現行制度については問題があると思っておりますので、これが改善されるということになるのだったら、それはいいことかもしれないと今は思っております。
○神野部会長
では、どうぞ。
○渡邊委員
お時間になっているのに申しわけないのですけれども、私からも少しだけコメントさせていただきたいと思います。
マッチング拠出に関して、事業主掛金以下といった規制に関しては、老後の所得確保のために穴埋め型というような形で制度を整えていくならばともかくとして、今はまだ企業年金だ、個人年金だというような形で規制をしている段階では、やはり企業年金だということを重視して、その事業主掛金以下の規制を撤廃しようというようなことに関しては慎重であるべきだと考えております。
もう一点、資料の25ページに書いてありました、企業型の加入者の場合の問い合わせ事項に関して、自分がiDeCoに加入できるかについての問い合わせというのが一番多くなっているということは、ある意味、自分が勤めている会社でどういった制度が行われているのかといったような認識に欠けている状況が見てとれるのではないかといった点がありますので、まずは自分の会社がどういった制度を運営しているのかといったことに関して労働者も興味、関心を持つべきですし、会社側も適切に継続して説明をしていく必要があるのではないかと思いました。以上です。
○神野部会長
では、松下オブザーバーどうぞ。
○松下国民年金基金連合会理事長
今日は、iDeCoの現状と課題について御議論いただきましてありがとうございました。特に、加入年齢の引上げにつきましては、連合会としましても本年の3月の本部会で要望させていただいたところでありまして、本日、論点として具体的に取り上げていただいたことに感謝いたしております。
そういう意味では、企業型DCとiDeCoの同時加入を含めました、iDeCoのさらなる充実の案につきましては、今後厚労省、それから関係者と連携して検討していきたいと考えております。
また、多くの方から今日御意見を頂戴したiDeCoの手続の簡素化、オンライン申請につきましても非常に問題提起としては重く受け止めております。
私どもが認識しておりますのは、御案内のとおり、iDeCoのこの運営というのは36ページにもございますように、非常に多くの関係者との役割分担、協力のもとで全体の事務フローが成り立っている仕組みになっているわけでございます。
そういう意味では、iDeCo全体を例えばスマホで対応できるようにするであるとか、手続全体の簡素化、効率化の検討に当たっては、こういう多くの複数の関係者とのインターフェースといいますか、全体の事務のつながりをどのように改善していくか、こういう視点が極めて重要ではないかと考えております。
そういう意味で、連合会単体でできること、できないことがあろうかと思いますので、この辺も関係者、厚労省とよく連携して進めてまいりたいと考えている次第です。
冒頭に吉田課長のほうからも御説明がありましたように、28年の改正以降、非常に飛躍的に加入者の方が増えておられて、この3月末で121万人ということでしたけれども、直近の6月末でいうと128万人ということで、制度改正前に比べますと約4倍の規模になっているわけです。
同時に、iDeCoの事務手続に関しても28年の月平均の事務量が大体2万4000件でございましたけれども、これが30年については10万7000件ということで、これもやはり4倍強に増えております。
私ども、事務処理体制については外部委託も利用して対応しているところですけれども、この事務処理の人員につきましても28年では約30名強の体制でしたが、これを現在200名強というところまで増やして対応してきております。
こういった形で、システムの改修や業務の標準化というのを私どもなりに進めてきているところでありますけれども、今日いただいた御意見も参考にさせていただきながら、さらなる効率化というところに取り組んでいきたいと考えております。以上でございます。
○神野部会長
事務局の方から、特にありますか。
○吉田企業年金・個人年金課長
1点だけ、渡邊委員から御指摘いただきましたように、iDeCoの拠出限度額について労働者が関心を持つのは当然としても、事業主も、現在、DC法の規定に基づいて事業主証明書を発行していただいているわけでありますが、従業員に、うちはDBをやっているのでiDeCoの限度額は1.2万円ですとか、DCもDBもやっていないので2.3万円ですとか、うちはDCをやっているから2万円ですとか、森戸先生から先ほどありましたように我々は分かっているかもしれませんが、従業員は分かっていないという点を踏まえて、これはやはり事業主の皆様がちゃんと従業員に周知していただくということも1つ大事な指摘だったと思います。
○神野部会長
ありがとうございます。ほかはよろしいですか。
済みません、私の不手際で終了の予定の時間を過ぎておりますので、この辺で本日の議論は終了させていただければと思います。
今回をもちまして、それぞれの課題別の議論については一巡をいたしましたので、次回以降は税制改正等を見据えた議論にしていきたいと考えております。
それでは、今後の予定について事務局のほうから御連絡をいただければと思います。よろしくお願いします。
○吉田企業年金・個人年金課長
次回の部会の開催日時は、事務局から各委員に御都合をお伺いした上で正式な御案内をお送りしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○神野部会長
どうもありがとうございました。
それでは、これにて第7回の「企業年金・個人年金部会」を終了いたします。最後まで御熱心に御討議いただきましたことに、深く感謝を申し上げる次第でございます。
どうもありがとうございました。